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特開2024-122848磁気軸受システム、圧縮機、及び冷凍装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122848
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】磁気軸受システム、圧縮機、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20240902BHJP
   H02K 7/09 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16C32/04 A
H02K7/09
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183995
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2023029362
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】入野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】戸成 辰也
(72)【発明者】
【氏名】田上 剣汰
(72)【発明者】
【氏名】付 裕
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】清田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】野口 孝浩
【テーマコード(参考)】
3J102
5H607
【Fターム(参考)】
3J102AA01
3J102BA03
3J102BA17
3J102BA18
3J102CA16
3J102DA03
3J102DA09
3J102DB10
3J102DB11
3J102DB26
3J102DB37
3J102GA20
5H607DD03
5H607GG21
(57)【要約】
【課題】磁気軸受システムにおいてインバータのコストを抑制する。
【解決手段】磁気軸受システム(100)は、回転軸(101)と、電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を有する磁気軸受(105,107,130)とを備える。電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端が、少なくとも3相以上の第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点に接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(101)と、電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を有する磁気軸受(105,107,130)とを備えた磁気軸受システム(100)であって、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端が、少なくとも3相以上の第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点に接続される
磁気軸受システム。
【請求項2】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の他端が、前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)と異なる少なくとも3相以上の第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点又は端部に接続される
磁気軸受システム。
【請求項3】
請求項2の磁気軸受システム(100)において、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせるモータ巻線(115,125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じるラジアル支持巻線(113,123)とを有するベアリングレスモータ(110,120)をさらに備え、
前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の一方であり、
前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の他方である
磁気軸受システム。
【請求項4】
請求項3の磁気軸受システム(100)において、
前記ラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、
前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である
磁気軸受システム。
【請求項5】
請求項2の磁気軸受システム(100)において、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第1モータ巻線(115)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第1ラジアル支持巻線(113)とを有する第1ベアリングレスモータ(110)と、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第2モータ巻線(125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第2ラジアル支持巻線(123)とを有する第2ベアリングレスモータ(120)とをさらに備え、
前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第1モータ巻線(115)及び前記第1ラジアル支持巻線(113)の一方であり、
前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第2モータ巻線(125)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の一方である
磁気軸受システム。
【請求項6】
請求項5の磁気軸受システム(100)において、
前記第1ラジアル支持巻線(113)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の少なくとも一方のラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、
前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である
磁気軸受システム。
【請求項7】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)及び前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)は、同じ圧力容器(150)内に配置され、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の前記一端は、前記圧力容器(150)内で前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)の前記中性点に接続される
磁気軸受システム。
【請求項8】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力と同じ方向又は逆の方向の電磁力を前記回転軸(101)に対して発生する他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)をさらに備え、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)の制御帯域が、前記他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)の制御帯域よりも低くなるように構成される
磁気軸受システム。
【請求項9】
請求項8の磁気軸受システム(100)において、
前記他の電磁石用コイル(106,108)を有する他の磁気軸受(105,107)をさらに備え、
前記電磁石用コイル(106,108)にはバイアス電流が供給され、
前記電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向とは互いに逆の方向である
磁気軸受システム。
【請求項10】
請求項8の磁気軸受システム(100)において、
前記他の電磁石用コイル(108A,137)は、前記磁気軸受(107,130)に設けられ、
前記電磁石用コイル(108B,136)にはバイアス電流が供給され、
前記電磁石用コイル(108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(108A,137)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向とは同じ方向である
磁気軸受システム。
【請求項11】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記磁気軸受(105,107,130)は、スラスト磁気軸受又はラジアル磁気軸受である
磁気軸受システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項の磁気軸受システム(100)を備える
圧縮機。
【請求項13】
請求項12の圧縮機(10)を備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気軸受システム、圧縮機、及び冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸の運動全てを能動的に位置決め制御する5軸制御の磁気軸受システムが知られている(特許文献1)。5軸制御の磁気軸受システムでは、回転軸を周方向に回転させるモータと、回転軸の軸方向位置を制御するスラスト磁気軸受と、回転軸の径方向位置を制御するラジアル磁気軸受とが設けられる。
【0003】
従来の5軸制御の磁気軸受システムにおいて、スラスト磁気軸受は、軸方向の電磁力を発生させることができ、軸方向の一方に電磁力を発生するフロント側スラスト磁気軸受と、軸方向の他方に電磁力を発生するリア側スラスト磁気軸受の2つのユニットから構成され、フロント側及びリア側のスラスト支持コイルに複数のスイッチング素子で構成されるインバータが1台使われている。ラジアル磁気軸受は、フロント側及びリア側にそれぞれ1つずつ配置される。各ラジアル磁気軸受及びモータのコイルに対しては個別にインバータが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-041236」号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Back to Back方式の磁気軸受システムでは、モータ及び2つのラジアル磁気軸受に代えて、フロント側及びリア側にそれぞれベアリングレスモータを配置することもある。この場合、1台のベアリングレスモータのモータ駆動コイルにインバータが1台必要となると共に、1台のベアリングレスモータのラジアル支持コイルにPWMインバータが1台必要となる。
【0006】
以上のように、従来の磁気軸受システムでは、多数のインバータを設ける必要があるため、製品のコストアップが避けがたかった。
【0007】
本開示の目的は、磁気軸受システムにおいてインバータのコストを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、回転軸(101)と、電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を有する磁気軸受(105,107,130)とを備えた磁気軸受システム(100)であって、前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端が、少なくとも3相以上の第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点に接続される。
【0009】
第1の態様では、第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)の電流を調整することにより、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端に印加する電圧を調整することができる。従って、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端の電圧調整のために専用のスイッチング素子を設ける必要がなくなるので、インバータのコストを抑制することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、前記第1の態様において、前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の他端が、前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)と異なる少なくとも3相以上の第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点又は端部に接続される。
【0011】
第2の態様では、第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)の電流を調整することにより、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の他端に印加する電圧を調整することができる。従って、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の両端とも、電圧調整のために専用のスイッチング素子を設ける必要がなくなる。これにより、インバータのコストをより一層抑制することができる。
【0012】
本開示の第3の態様は、前記第2の態様において、電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせるモータ巻線(115,125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じるラジアル支持巻線(113,123)とを有するベアリングレスモータ(110,120)をさらに備え、前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の一方であり、前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の他方である。
【0013】
第3の態様では、1台のベアリングレスモータ(110,120)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を動作させることができる。
【0014】
本開示の第4の態様は、前記第3の態様において、前記ラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である。
【0015】
第4の態様では、ラジアル支持巻線(113,123)に零相電流を流す場合に、ラジアル支持巻線(113,123)の軸支持力に対する零相電流の影響を抑制できるので、ベアリングレスモータ(110,120)の制御が容易になる。
【0016】
本開示の第5の態様は、前記第2の態様において、電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第1モータ巻線(115)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第1ラジアル支持巻線(113)とを有する第1ベアリングレスモータ(110)と、電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第2モータ巻線(125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第2ラジアル支持巻線(123)とを有する第2ベアリングレスモータ(120)とをさらに備え、前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第1モータ巻線(115)及び前記第1ラジアル支持巻線(113)の一方であり、前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第2モータ巻線(125)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の一方である。
【0017】
第5の態様では、2台のベアリングレスモータ(110,120)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108,108B)を動作させることができる。
【0018】
本開示の第6の態様は、前記第5の態様において、前記第1ラジアル支持巻線(113)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の少なくとも一方のラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である。
【0019】
第6の態様では、ラジアル支持巻線(113,123)に零相電流を流す場合に、ラジアル支持巻線(113,123)の軸支持力に対する零相電流の影響を抑制できるので、ベアリングレスモータ(110,120)の制御が容易になる。
【0020】
本開示の第7の態様は、前記第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)及び前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)は、同じ圧力容器(150)内に配置され、前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の前記一端は、前記圧力容器(150)内で前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)の前記中性点に接続される。
【0021】
第7の態様では、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端に電圧を印加するために、圧力容器(150)の内外を電気的に接続する専用の気密端子を設ける必要がなくなるので、インバータのコスト抑制だけでなく、さらに気密端子のコストを抑制することができる。
【0022】
本開示の第8の態様は、前記第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力と同じ方向又は逆の方向の電磁力を前記回転軸(101)に対して発生する他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)をさらに備え、前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)の制御帯域が、前記他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)の制御帯域よりも低くなるように構成される。
【0023】
第8の態様では、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108,108B,136)の制御帯域を低く設定しているため、電磁石用コイル(106,108,108B,136)のスイッチング周波数を下げることができ、スイッチングによる損失を抑えることができる。
【0024】
本開示の第9の態様は、前記第8の態様において、前記他の電磁石用コイル(106,108)を有する他の磁気軸受(105,107)をさらに備え、前記電磁石用コイル(106,108)にはバイアス電流が供給され、前記電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力の方向とは互いに逆の方向である。
【0025】
第9の態様では、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(106,108)のスイッチング周波数を下げることができ、スイッチングによる損失を抑えることができる。
【0026】
本開示の第10の態様は、前記第8の態様において、前記他の電磁石用コイル(108A,137)は、前記磁気軸受(107,130)に設けられ、前記電磁石用コイル(108B,136)にはバイアス電流が供給され、前記電磁石用コイル(108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(108A,137)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向とは同じ方向である。
【0027】
第10の態様では、磁気軸受(105,107,130)の電磁石用コイル(108B,136)のスイッチング周波数を下げることができ、スイッチングによる損失を抑えることができる。
【0028】
本開示の第11の態様は、前記第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、前記磁気軸受(105,107,130)は、スラスト磁気軸受又はラジアル磁気軸受である。
【0029】
第11の態様では、スラスト磁気軸受又はラジアル磁気軸受を有する磁気軸受システム(100)において、インバータのコストを抑制することができる。
【0030】
本開示の第12の態様は、前記第1~第11の態様のいずれか1つの磁気軸受システム(100)を備える圧縮機である。
【0031】
第12の態様では、圧縮機(10)を構成する磁気軸受システム(100)において、インバータのコストを抑制することができるので、圧縮機(10)を低コストで製造することができる。
【0032】
本開示の第13の態様は、前記第12の態様の圧縮機(10)を備える冷凍装置である。
【0033】
第13の態様では、冷凍装置に用いる圧縮機(10)を構成する磁気軸受システム(100)において、インバータのコストを抑制することができるので、冷凍装置を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、第1実施形態の磁気軸受システムを備えた圧縮機の概略模式図である。
図2図2は、第1実施形態の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の第1変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の第1変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図6図6は、第1実施形態の第2変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図7図7は、第1実施形態の第2変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図8図8は、第2実施形態の磁気軸受システムを備えた圧縮機の概略模式図である。
図9図9は、第2実施形態の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図10図10は、第2実施形態の第1変形例の磁気軸受システムを備えた圧縮機の概略模式図である。
図11図11は、第2実施形態の第1変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図12図12は、第2実施形態の第2変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図13図13は、第2実施形態の第2変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図14図14は、第2実施形態の第3変形例の磁気軸受システムを備えた圧縮機の概略模式図である。
図15図15は、第2実施形態の第3変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図16図16は、第2実施形態の第3変形例の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図17図17は、第3実施形態の磁気軸受システムに設けたラジアル磁気軸受における軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。
図18図18は、第3実施形態の磁気軸受システムの回路構成を示す図である。
図19図19は、第3実施形態の変形例の磁気軸受システムに設けたラジアル磁気軸受における軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。
図20図20は、CPMモータにおける軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。
図21図21は、図20に示すCPMモータのモータ巻線配置を示す図である。
図22図22は、図20に示すCPMモータの支持巻線配置を示す図である。
図23図23は、図20に示すCPMモータにおける支持力干渉角を示す図である。
図24図24は、図20に示すCPMモータにおけるx軸方向の支持力、y軸方向の支持力及び支持力干渉角に対する零相電流の影響を示す図である。
図25図25は、図20に示すCPMモータにおける1次、3次及び5次の各支持巻線係数の巻線ピッチに対する変化を示す図である。
図26図26は、第4実施形態の磁気軸受システムを構成するCPMモータの支持巻線配置を示す図である。
図27図27は、第4実施形態の磁気軸受システムを構成するCPMモータにおけるx軸方向の支持力及び支持力干渉角に対する零相電流の影響を示す図である。
図28図28は、SPMモータにおける軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。
図29図29は、図28に示すSPMモータのモータ巻線配置を示す図である。
図30図30は、図28に示すSPMモータの支持巻線配置を示す図である。
図31図31は、図28に示すSPMモータにおけるx軸方向の支持力、y軸方向の支持力及び支持力干渉角に対する零相電流の影響を示す図である。
図32図32は、第4実施形態の変形例の磁気軸受システムを構成するSPMモータの支持巻線配置を示す図である。
図33図33は、第4実施形態の変形例の磁気軸受システムを構成するSPMモータにおけるx軸方向の支持力、y軸方向の支持力及び支持力干渉角に対する零相電流の影響を示す図である。
図34図34は、第5実施形態の空気調和装置(冷凍装置の一例)の概略構成図である。
図35図35は、その他の実施形態の磁気軸受システムの第1例の回路構成を示す図である。
図36図36の(a)、(b)はそれぞれ、その他の実施形態の磁気軸受システムの第2例、第3例の回路構成を示す図である。
図37図37は、その他の実施形態の磁気軸受システムの第4例を備えた圧縮機の概略模式図である。
図38図38は、その他の実施形態の磁気軸受システムの第5例を備えた圧縮機の概略模式図である。
図39図39は、その他の実施形態の磁気軸受システムの第5例の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、図面において、同一の符号は同一の構成要素を表わすが、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化及び簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法と対応しない場合がある。
【0036】
(第1実施形態)
<磁気軸受システムの構成>
以下、第1実施形態の磁気軸受システム(100)を圧力容器(150)の内部に設けて圧縮機(10)を構成する場合について例示するが、磁気軸受システム(100)の用途は特に限定されるものではない。
【0037】
図1に示すように、磁気軸受システム(100)は、主として、回転軸(101)と、スラスト磁気軸受(105,107)と、ベアリングレスモータ(110,120)とを備える。以下の説明では、回転軸(101)の軸線に沿う方向を軸方向、回転軸(101)を中心とする円に沿う方向を周方向、回転軸(101)の軸線に対して垂直な方向を径方向と称する。
【0038】
回転軸(101)の軸方向の両端にはそれぞれ、圧縮機(10)の圧縮機構を構成するインペラ(102,103)が設けられる。具体的には、回転軸(101)のフロント側端部には第1インペラ(102)が設けられると共に、回転軸(101)のリア側端部には第2インペラ(103)が設けられる。すなわち、磁気軸受システム(100)はBack to Back方式である。尚、図1において、圧縮機構を構成する配管等の要素や制御部等の図示を省略している。
【0039】
スラスト磁気軸受(105,107)は、駆動軸(101)に対して軸方向の双方向に電磁力を作用させる構成を有する。具体的には、回転軸(101)の軸方向の中央部には、径方向に広がる円盤部(104)が設けられ、円盤部(104)のフロント側に軸方向の電磁力を発生する第1スラスト磁気軸受(105)と、リア側に軸方向の電磁力を発生する第2スラスト磁気軸受(107)とが配置されている。これにより、スラスト磁気軸受(105,107)は、円盤部(104)を電磁力によって非接触で支持することができる。
【0040】
第1スラスト磁気軸受(105)は、第1電磁石用コイル(106)を有する。第2スラスト磁気軸受(107)は、第2電磁石用コイル(108)を有する。スラスト磁気軸受(105,107)は、第1及び第2電磁石用コイル(106,108)に流れる電流を制御することにより、円盤部(104)の位置、つまり駆動軸(101)の位置を制御することができる。
【0041】
ベアリングレスモータ(110,120)は、電磁力によって駆動軸(101)を回転駆動し且つ駆動軸(101)のラジアル荷重を非接触で支持するように構成される。具体的には、回転軸(101)における第1インペラ(102)と第1スラスト磁気軸受(105)との間には、第1ベアリングレスモータ(110)が配置されると共に、回転軸(101)における第2インペラ(103)と第2スラスト磁気軸受(105)との間には、第2ベアリングレスモータ(120)が配置される。
【0042】
第1ベアリングレスモータ(110)は、第1回転子(111)と第1固定子(112)とを有する。第1回転子(111)は、駆動軸(101)に固定される。第1固定子(112)は、圧力容器(150)の内周壁に固定される。第1回転子(111)のコア部には、複数の永久磁石(図示省略)が埋設される。第1固定子(112)は、複数のティース部(図示省略)を有し、各ティース部には第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)が巻回される。第1ラジアル支持巻線(113)は、電力供給により回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じさせる。第1モータ巻線(115)は、電力供給により回転軸(101)に回転トルクを生じさせる。第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)はそれぞれ、3相以上の多相巻線(本例ではU相、V相、W相の3相巻線)である。
【0043】
第2ベアリングレスモータ(120)は、第2回転子(121)と第2固定子(122)とを有する。第2回転子(121)は、駆動軸(101)に固定される。第2固定子(122)は、圧力容器(150)の内周壁に固定される。第2回転子(121)のコア部には、複数の永久磁石(図示省略)が埋設される。第2固定子(122)は、複数のティース部(図示省略)を有し、各ティース部には第2ラジアル支持巻線(123)及び第2モータ巻線(125)が巻回される。第2ラジアル支持巻線(123)は、電力供給により回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じさせる。第2モータ巻線(125)は、電力供給により回転軸(101)に回転トルクを生じさせる。第2ラジアル支持巻線(123)及び第2モータ巻線(125)はそれぞれ、3相以上の多相巻線(本例ではU相、V相、W相の3相巻線)である。
【0044】
<磁気軸受システムの回路>
図2に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)には、第1インバータ(114)から電力が供給されると共に、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)には、第2インバータ(116)から電力が供給される。インバータ(114,116)は、例えばスイッチング素子を用いて構成されるPWM(Pulse Width Modulation)インバータであってもよい。インバータ(114,116)は、圧力容器(150)の外部に電気的に配置され、圧力容器(150)の内外を電気的に接続する専用の気密端子を介して、巻線(113,115)と接続される。インバータ(114,116)は、入力された直流電流を変換して巻線(113,115)に供給するための三相交流電流を生成する。
【0045】
第1ラジアル支持巻線(113)において、U相、V相、W相の各巻線の一端は中性点で結線される。第1インバータ(114)は、U相の巻線の他端に電圧Vur1を印加し、V相の巻線の他端に電圧Vvr1を印加し、W相の巻線の他端に電圧Vwr1を印加する。これにより、U相の巻線にはラジアル支持電流iur1が流れ、V相の巻線にはラジアル支持電流ivr1が流れ、W相の巻線にはラジアル支持電流iwr1が流れる。
【0046】
第1モータ巻線(115)において、U相、V相、W相の各巻線の一端は中性点で結線される。第2インバータ(116)は、U相の巻線の他端に電圧Vum1を印加し、V相の巻線の他端に電圧Vvm1を印加し、W相の巻線の他端に電圧Vwm1を印加する。これにより、U相の巻線にはモータ駆動電流ium1が流れ、V相の巻線にはモータ駆動電流ivm1が流れ、W相の巻線にはモータ駆動電流iwm1が流れる。
【0047】
本実施形態の磁気軸受システム(100)では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)の一端は圧力容器(150)内で第1ラジアル支持巻線(113)の中性点に接続されると共に、第1電磁石用コイル(106)の他端は圧力容器(150)内で第1モータ巻線(115)の中性点に接続される。
【0048】
これにより、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第1ラジアル支持巻線(113)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izf/3を重畳すれば、第1電磁石用コイル(106)に支持電流izfを零相電流として流すことができる。零相電流izfは、第1電磁石用コイル(106)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、ラジアル支持電流(iur1、ivr1、iwr1)の振幅をIr1、位相をφ1とし、モータ駆動電流(ium1、ivm1、iwm1)の振幅をIm1、位相をβ1として、
ur1=Ir1・sin(φ1)+izf/3
vr1=Ir1・sin(φ1+2π/3)+izf/3
wr1=Ir1・sin(φ1+4π/3)+izf/3
um1=Im1・sin(β1)-izf/3
vm1=Im1・sin(β1+2π/3)-izf/3
wm1=Im1・sin(β1+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0049】
また、図3に示すように、第2ベアリングレスモータ(120)の第2ラジアル支持巻線(123)には、第3インバータ(124)から電力が供給されると共に、第2ベアリングレスモータ(120)の第2モータ巻線(125)には、第4インバータ(126)から電力が供給される。インバータ(124,126)は、例えばスイッチング素子を用いて構成される。インバータ(124,126)は、圧力容器(150)の外部に配置され、圧力容器(150)の内外を電気的に接続する専用の気密端子を介して、巻線(123,125)と接続される。インバータ(124,126)は、入力された直流電流を変換して巻線(123,125)に供給するための三相交流電流を生成する。
【0050】
第2ラジアル支持巻線(123)において、U相、V相、W相の各巻線の一端は中性点で結線される。第3インバータ(124)は、U相の巻線の他端に電圧Vur2を印加し、V相の巻線の他端に電圧Vvr2を印加し、W相の巻線の他端に電圧Vwr2を印加する。これにより、U相の巻線にはラジアル支持電流iur2が流れ、V相の巻線にはラジアル支持電流ivr2が流れ、W相の巻線にはラジアル支持電流iwr2が流れる。
【0051】
第2モータ巻線(125)において、U相、V相、W相の各巻線の一端は中性点で結線される。第4インバータ(126)は、U相の巻線の他端に電圧Vum2を印加し、V相の巻線の他端に電圧Vvm2を印加し、W相の巻線の他端に電圧Vwm2を印加する。これにより、U相の巻線にはモータ駆動電流ium2が流れ、V相の巻線にはモータ駆動電流ivm2が流れ、W相の巻線にはモータ駆動電流iwm2が流れる。
【0052】
本実施形態の磁気軸受システム(100)では、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)の一端は圧力容器(150)内で第2ラジアル支持巻線(123)の中性点に接続されると共に、第2電磁石用コイル(108)の他端は圧力容器(150)内で第2モータ巻線(125)の中性点に接続される。
【0053】
これにより、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流そうとする場合、第2ラジアル支持巻線(123)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)に支持電流izrを零相電流として流すことができる。零相電流izrは、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、第2モータ巻線(125)に流れ込む。従って、ラジアル支持電流(iur2、ivr2、iwr2)の振幅をIr2、位相をφ2とし、モータ駆動電流(ium2、ivm2、iwm2)の振幅をIm2、位相をβ2として、
ur2=Ir2・sin(φ2)+izr/3
vr2=Ir2・sin(φ2+2π/3)+izr/3
wr2=Ir2・sin(φ2+4π/3)+izr/3
um2=Im2・sin(β2)-izr/3
vm2=Im2・sin(β2+2π/3)-izr/3
wm2=Im2・sin(β2+4π/3)-izr/3
となるように、インバータ(124,126)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流すことができる。
【0054】
尚、図2図3に示す例では、ラジアル支持巻線(113,123)からモータ巻線(115,125)に支持電流izf、izrを流したが、インバータ(114,116)及びインバータ(124,126)によって、ラジアル支持巻線(113,123)及びモータ巻線(115,125)の電圧を制御することにより、支持電流izf、izrの流れる向きや支持電流izf、izrの大きさを調整可能である。
【0055】
<実施形態の特徴>
以上に説明したように、本実施形態では、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の一端が、3相以上の多相巻線であるラジアル支持巻線(113,123)の中性点に接続される。このため、ラジアル支持巻線(113,123)の電流を調整することにより、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の一端に印加する電圧を調整することができる。また、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の他端が、3相以上の多相巻線であるモータ巻線(115,125)の中性点に接続される。このため、モータ巻線(115,125)の電流を調整することにより、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の他端に印加する電圧を調整することができる。従って、磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の両端において、電圧調整のために専用のスイッチング素子を設ける必要がなくなる。すなわち、スラスト磁気軸受(105,107)に対してインバータを設ける必要がないので、インバータのコストを抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)の一端が、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点に接続されると共に、第1電磁石用コイル(106)の他端が、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点に接続される。このため、1台の第1ベアリングレスモータ(110)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)を動作させることができる。
【0057】
本実施形態では、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)の一端が、第2ベアリングレスモータ(120)の第2ラジアル支持巻線(123)の中性点に接続されると共に、第2電磁石用コイル(108)の他端が、第2ベアリングレスモータ(120)の第2モータ巻線(125)の中性点に接続される。このため、1台の第2ベアリングレスモータ(120)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を動作させることができる。
【0058】
本実施形態では、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)の一端は圧力容器(150)内でラジアル支持巻線(113,123)の中性点に接続されると共に、電磁石用コイル(106,108)の他端は圧力容器(150)内でモータ巻線(115,125)の中性点に接続される。このため、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)に電圧を印加するために、圧力容器(150)の内外を電気的に接続する専用の気密端子を設ける必要がなくなるので、インバータのコスト抑制だけでなく、さらに気密端子のコストを抑制することができる。
【0059】
本実施形態の磁気軸受システム(100)を備えた圧縮機(10)では、インバータのコストを抑制することができるので、圧縮機(10)を低コストで製造することができる。
【0060】
(第1実施形態の第1変形例)
本変形例が第1実施形態と異なる点は、図4に示すように、1つのモータ巻線(第1モータ巻線(115)又は第2モータ巻線(125)の中性点と、2つのラジアル支持巻線(第1ラジアル支持巻線(113)及び第2ラジアル支持巻線(123))のそれぞれの中性点とが、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)、又は第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を介して接続されていることである。尚、図4において、図2図3に示す第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0061】
本変形例では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第1ラジアル支持巻線(113)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izf/3を重畳すれば、第1電磁石用コイル(106)に支持電流izfを零相電流として流すことができる。また、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流そうとする場合、第2ラジアル支持巻線(123)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)に支持電流izrを零相電流として流すことができる。
【0062】
零相電流izf、izrはそれぞれ、第1電磁石用コイル(106)、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、両者が足し合わされた電流izが第1モータ巻線(115)又は第2モータ巻線(125)に流れ込む。従って、第1ラジアル支持巻線(113)のラジアル支持電流(iur1、ivr1、iwr1)の振幅をIr1、位相をφ1とし、第2ラジアル支持巻線(123)のラジアル支持電流(iur2、ivr2、iwr2)の振幅をIr2、位相をφ2とし、第1モータ巻線(115)又は第2モータ巻線(125)のモータ駆動電流(ium1、ivm1、iwm1)の振幅をIm1、位相をβ1として、
ur1=Ir1・sin(φ1)+izf/3
vr1=Ir1・sin(φ1+2π/3)+izf/3
wr1=Ir1・sin(φ1+4π/3)+izf/3
ur2=Ir2・sin(φ2)+izr/3
vr2=Ir2・sin(φ2+2π/3)+izr/3
wr2=Ir2・sin(φ2+4π/3)+izr/3
um1=Im1・sin(β1)-iz
vm1=Im1・sin(β1+2π/3)-iz
wm1=Im1・sin(β1+4π/3)-iz
(但し、iz=izf+izr
となるように、インバータ(114,116,124,126)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができると共に第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流すことができる。
【0063】
以上に説明したように、本変形例では、2台のベアリングレスモータ(110,120)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、2台の磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)をそれぞれ動作させることによって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
尚、本変形例では、1つのモータ巻線(第1モータ巻線(115)又は第2モータ巻線(125)の中性点と、2つのラジアル支持巻線(第1ラジアル支持巻線(113)及び第2ラジアル支持巻線(123))のそれぞれの中性点とを、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)、又は第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を介して接続した。しかし、これに代えて、図5に示すように、1つのラジアル支持巻線(第1ラジアル支持巻線(113)又は第2ラジアル支持巻線(123))の中性点と、2つのモータ巻線(第1モータ巻線(115)及び第2モータ巻線(125))のそれぞれの中性点とを、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)、又は第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を介して接続しても、本変形例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(第1実施形態の第2変形例)
本変形例が第1実施形態と異なる点は、図6に示すように、第1モータ巻線(115)の中性点と第2モータ巻線(125)の中性点とが、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)を介して接続されていると共に、図7に示すように、第1ラジアル支持巻線(113)の中性点と第2ラジアル支持巻線(123)の中性点とが、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を介して接続されていることである。尚、図6図7において、図2図3に示す第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0066】
本変形例では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第2モータ巻線(125)の各相の巻線に本来のモータ駆動電流に加えて、izf/3を重畳すれば、第1電磁石用コイル(106)に支持電流izfを零相電流として流すことができる。零相電流izfは、第1電磁石用コイル(106)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、第2モータ巻線(125)のモータ駆動電流(ium2、ivm2、iwm2)の振幅をIm2、位相をβ2とし、第1モータ巻線(115)のモータ駆動電流(ium1、ivm1、iwm1)の振幅をIm1、位相をβ1として、
um2=Im2・sin(β2)+izf/3
vm2=Im2・sin(β2+2π/3)+izf/3
wm2=Im2・sin(β2+4π/3)+izf/3
um1=Im1・sin(β1)-izf/3
vm1=Im1・sin(β1+2π/3)-izf/3
wm1=Im1・sin(β1+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(116,126)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0067】
また、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流そうとする場合、第2ラジアル支持巻線(123)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)に支持電流izrを零相電流として流すことができる。零相電流izrは、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、第1ラジアル支持巻線(113)に流れ込む。従って、第2ラジアル支持巻線(123)のラジアル支持電流(iur2、ivr2、iwr2)の振幅をIr2、位相をφ2とし、第1ラジアル支持巻線(113)のラジアル支持電流(iur1、ivr1、iwr1)の振幅をIr1、位相をφ1として、
ur2=Ir2・sin(φ2)+izr/3
vr2=Ir2・sin(φ2+2π/3)+izr/3
wr2=Ir2・sin(φ2+4π/3)+izr/3
ur1=Ir1・sin(φ1)-izr/3
vr1=Ir1・sin(φ1+2π/3)-izr/3
wr1=Ir1・sin(φ1+4π/3)-izr/3
となるように、インバータ(114,124)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流すことができる。
【0068】
以上に説明したように、本変形例では、2台のベアリングレスモータ(110,120)を用いて、スイッチング素子を追加することなく、2台の磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)をそれぞれ動作させることによって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
尚、図6図7に示す例では、第2モータ巻線(125)から第1モータ巻線(115)に支持電流izfを流すと共に、第2ラジアル支持巻線(123)から第1ラジアル支持巻線(113)に支持電流izrを流したが、インバータ(114,116,124,126)によって、モータ巻線(115,125)及びラジアル支持巻線(113,123)の電圧を制御することにより、支持電流izf、izrの流れる向きや支持電流izf、izrの大きさを調整可能である。
【0070】
(第2実施形態)
<磁気軸受システムの構成>
本実施形態の磁気軸受システム(100)が第1実施形態と異なる点は、図8に示すように、回転軸(101)のフロント側端部に第1インペラ(102)及び第2インペラ(103)が設けられ、回転軸(101)のリア側端部にスラスト磁気軸受(105,107)が設けられ、第2ベアリングレスモータ(120)に代えて、ラジアル磁気軸受(130)が設けられることである。すなわち、本実施形態の磁気軸受システム(100)は、第1実施形態のようなBack to Back方式では無い。尚、図8において、図1に示す第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0071】
図8に示す例では、第1ベアリングレスモータ(110)とラジアル磁気軸受(130)とは、回転軸(101)の軸方向に並ぶように配置され、第1ベアリングレスモータ(110)は回転軸(101)のリア側に位置し、ラジアル磁気軸受(130)は回転軸(101)のフロント側に位置する。
【0072】
ラジアル磁気軸受(130)は、駆動軸(101)のラジアル荷重を非接触で支持するように構成される。ラジアル磁気軸受(130)は、圧力容器(150)の内周壁に固定される。回転軸(101)におけるラジアル磁気軸受(130)と対向する部分(131)の径は、他の部分の径よりも太くてもよい。ラジアル磁気軸受(130)は、複数のティース部(図示省略)を有する固定子(132)と、各ティース部に巻回された電磁石用コイル(135)とを有する。
【0073】
<磁気軸受システムの回路>
本実施形態の磁気軸受システム(100)の回路が第1実施形態と異なる点は、図9に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)、及び第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)が並列に接続されることである。尚、図9において、図2図3に示す第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0074】
本実施形態では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第1ラジアル支持巻線(113)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izf/3を重畳すれば、第1電磁石用コイル(106)に支持電流izfを零相電流として流すことができる。零相電流izfは、第1電磁石用コイル(106)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとし、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとして、
ur=Ir・sin(φ)+izf/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)+izf/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)+izf/3
um=Im・sin(β)-izf/3
vm=Im・sin(β+2π/3)-izf/3
wm=Im・sin(β+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0075】
一方、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流そうとする場合、第1モータ巻線(115)の各相の巻線に本来のモータ駆動電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)に支持電流izrを零相電流として流すことができる。零相電流izrは、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、第1ラジアル支持巻線(113)に流れ込む。従って、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとし、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとして、
um=Im・sin(β)+izr/3
vm=Im・sin(β+2π/3)+izr/3
wm=Im・sin(β+4π/3)+izr/3
ur=Ir・sin(φ)-izr/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)-izr/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)-izr/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(106)の第2電磁石用コイル(108)に所定の支持電流izrを流すことができる。
【0076】
尚、図9に示す例では、インバータ(114,116)によって、ラジアル支持巻線(113)及びモータ巻線(115)の電圧を制御することにより、第1モータ巻線(115)の中性点と第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間を流れる電流の向き及び大きさを調整可能である。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態によれば、2台のベアリングレスモータを用いたBack to Back方式以外の磁気軸受システム(100)においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(第2実施形態の第1変形例)
本変形例の磁気軸受システム(100)が第2実施形態と異なる点は、図10図11に示すように、第2スラスト磁気軸受(107)において、第2電磁石用コイル(108)に代えて、磁石(109)が設けられ、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)のみが接続されることである。すなわち、第2スラスト磁気軸受(107)がリア側に発生する軸方向の電磁力は一定であり、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に流れる電流の制御によって、円盤部(104)の位置、つまり駆動軸(101)の位置を制御する。尚、図10図11において、図8図9に示す第2実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0079】
本変形例では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第1ラジアル支持巻線(113)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izf/3を重畳すれば、第1電磁石用コイル(106)に支持電流izfを零相電流として流すことができる。零相電流izfは、第1電磁石用コイル(106)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとし、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとして、
ur=Ir・sin(φ)+izf/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)+izf/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)+izf/3
um=Im・sin(β)-izf/3
vm=Im・sin(β+2π/3)-izf/3
wm=Im・sin(β+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0080】
以上に説明した本変形例によれば、図9に示す第2実施形態のようにダイオードを設けることなく、Back to Back方式以外の磁気軸受システム(100)において、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
尚、図11に示す例では、ラジアル支持巻線(113)からモータ巻線(115)に支持電流izfを流したが、インバータ(114,116)によって、ラジアル支持巻線(113)及びモータ巻線(115)の電圧を制御することにより、支持電流izfの流れる向きや支持電流izfの大きさを調整可能である。
【0082】
また、本変形例では、第2スラスト磁気軸受(107)に磁石(109)を設けたが、これに代えて、第1スラスト磁気軸受(105)に磁石を設け、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)を接続してもよい。すなわち、第1スラスト磁気軸受(105)がフロント側に発生する軸方向の電磁力を一定とし、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に流れる電流の制御によって、円盤部(104)の位置、つまり駆動軸(101)の位置を制御してもよい。
【0083】
(第2実施形態の第2変形例)
本変形例の磁気軸受システム(100)が第2実施形態と異なる点は、図12に示すように、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)には、専用のパワーモジュール(161)から電力を供給する一方、図13に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)が接続されることである。ここで、第2電磁石用コイル(108)にはバイアス電流が供給される。すなわち、第2スラスト磁気軸受(107)がリア側に発生する軸方向の電磁力は一定であり、インバータ(161)を用いた第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に流れる電流の制御によって、円盤部(104)の位置、つまり駆動軸(101)の位置を制御する。尚、図12図13において、図8図9に示す第2実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0084】
本変形例では、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に所定のバイアス電流izrを流そうとする場合、第1モータ巻線(115)の各相の巻線に本来のモータ駆動電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)にバイアス電流izrを零相電流として流すことができる。零相電流izrは、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、第1ラジアル支持巻線(113)に流れ込む。従って、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとし、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとして、
um=Im・sin(β)+izr/3
vm=Im・sin(β+2π/3)+izr/3
wm=Im・sin(β+4π/3)+izr/3
ur=Ir・sin(φ)-izr/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)-izr/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)-izr/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(106)の第2電磁石用コイル(108)に所定のバイアス電流izrを流すことができる。
【0085】
以上に説明した本変形例によれば、図9に示す第2実施形態のようにダイオードを設けることなく、また、図10に示す第2実施形態の第1変形例のように磁石を設けることなく、Back to Back方式以外の磁気軸受システム(100)において、インバータのコストを低減することができる。具体的には、従来のスラスト磁気軸受用のインバータと比べて、図12に示すように、スイッチング素子を2つ削減することが可能となる。
【0086】
また、本変形例によれば、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に通電することで回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力と、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108)に通電することで回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力とは互いに逆向きであり、バイアス電流が供給される第2電磁石用コイル(108)の制御帯域は、第1電磁石用コイル(106)の制御帯域よりも低くなるように構成される。ここで、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)と第1ラジアル支持巻線(113)との間に第2電磁石用コイル(108)が接続されているので、インダクタンスが大きくなって第2電磁石用コイル(108)の制御帯域は低くなる。このため、第2電磁石用コイル(108)のスイッチング周波数を下げることができ、スイッチングによる損失を抑えることができる。
【0087】
尚、図13に示す例では、インバータ(114,116)によって、ラジアル支持巻線(113)及びモータ巻線(115)の電圧を制御することにより、バイアス電流izrの向き及び大きさを調整可能である。これにより、第2電磁石用コイル(108)の定電圧制御のみならず、インペラ(102,103)の負荷等に応じた第2電磁石用コイル(108)の低帯域電圧制御も可能である。
【0088】
また、本変形例では、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)にインバータ(161)から電力を供給し、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、バイアス電流が供給される第2電磁石用コイル(108)を接続した。しかし、これに代えて、バイアス電流が供給される第2電磁石用コイル(108)に専用のインバータから電力を供給し、第1モータ巻線(115)の中性点と第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に、スラスト制御用の第1電磁石用コイル(106)を接続してもよい。この場合でも、従来のスラスト磁気軸受用のインバータと比べて、バイアス電流用インバータの方が構成が簡単となり、コストを抑制できる。
【0089】
(第2実施形態の第3変形例)
本変形例の磁気軸受システム(100)が第2実施形態の第2変形例と異なる点は、図14に示すように、第2スラスト磁気軸受(107)に、スラスト制御用の第2電磁石用コイル(108A)と共にバイアス用の第3電磁石用コイル(108B)が設けられることである。ここで、図15に示すように、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)、及び、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108A)には、専用のインバータ(162)から電力が供給される。一方、図16に示すように、第2スラスト磁気軸受(107)の第3電磁石用コイル(108B)は、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に接続される。尚、図14図16において、図8図9に示す第2実施形態、又は図12図13に示す第2実施形態の第2変形例と同様の要素には同様の符号を付している。
【0090】
本変形例では、第3電磁石用コイル(108B)によりリア側に一定の軸方向の電磁力を発生させつつ、インバータ(162)を用いた第1電磁石用コイル(106)及び第2電磁石用コイル(108A)に流れる電流の制御によって、円盤部(104)の位置、つまり駆動軸(101)の位置を制御する。第2電磁石用コイル(108A)に流れる電流の制御は、第3電磁石用コイル(108B)による軸方向の電磁力を微調整するためのものである。
【0091】
本変形例では、第2スラスト磁気軸受(107)の第3電磁石用コイル(108B)に所定のバイアス電流izrを流そうとする場合、第1モータ巻線(115)の各相の巻線に本来のモータ駆動電流に加えて、izr/3を重畳すれば、第2電磁石用コイル(108)にバイアス電流izrを零相電流として流すことができる。零相電流izrは、第2電磁石用コイル(108)を流れた後、第1ラジアル支持巻線(113)に流れ込む。従って、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとし、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとして、
um=Im・sin(β)+izr/3
vm=Im・sin(β+2π/3)+izr/3
wm=Im・sin(β+4π/3)+izr/3
ur=Ir・sin(φ)-izr/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)-izr/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)-izr/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第2スラスト磁気軸受(106)の第3電磁石用コイル(108B)に所定のバイアス電流izrを流すことができる。
【0092】
以上に説明した本変形例によれば、図9に示す第2実施形態のようにダイオードを設けることなく、また、図10に示す第2実施形態の第1変形例のように磁石を設けることなく、Back to Back方式以外の磁気軸受システム(100)において、インバータのコストを低減することができる。具体的には、第2スラスト磁気軸受(106)にバイアス用の第3電磁石用コイル(108B)を設けることによって、スラスト制御用の第2電磁石用コイル(108A)に流す電流の大きさを小さくすることができる。このため、従来のスラスト磁気軸受用のインバータと比べて、インバータ(162)の電流容量を小さくすることができので、コストダウンが可能となる。
【0093】
また、本変形例によれば、第2スラスト磁気軸受(107)の第2電磁石用コイル(108A)に通電することで回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力と、同じ第2スラスト磁気軸受(107)の第3電磁石用コイル(108B)に通電することで回転軸(101)に対して発生する軸方向の電磁力とは互いに同じ向きであり、バイアス電流が供給される第3電磁石用コイル(108B)の制御帯域は、第2電磁石用コイル(108A)の制御帯域よりも低くなるように構成される。ここで、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)と第1ラジアル支持巻線(113)との間に第3電磁石用コイル(108B)が接続されているので、インダクタンスが大きくなって第3電磁石用コイル(108B)の制御帯域は低くなる。このため、第3電磁石用コイル(108B)のスイッチング周波数を下げることができ、スイッチングによる損失を抑えることができる。
【0094】
尚、本変形例において、図15に示すインバータ(162)の制御により、スラスト制御用の第2電磁石用コイル(108A)に流れる電流の向きを調整可能にしてもよい。
【0095】
また、図16に示す例では、インバータ(114,116)によって、ラジアル支持巻線(113)及びモータ巻線(115)の電圧を制御することにより、バイアス電流izrの向き及び大きさを調整可能である。これにより、第3電磁石用コイル(108B)の定電圧制御のみならず、インペラ(102,103)の負荷等に応じた第3電磁石用コイル(108B)の低帯域電圧制御も可能である。
【0096】
(第3実施形態)
本実施形態の磁気軸受システム(100)が第2実施形態(図8図9参照)と異なる点は、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108)ではなく、ラジアル磁気軸受(130)の電磁石用コイル(135)が、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に接続されることである。これにより、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
尚、本実施形態において、図17図18に示すように、ラジアル磁気軸受(130)に、ラジアル制御用の電磁石用コイル(135)とは別に、バイアス用の電磁石用コイル(136)を設けて、当該電磁石用コイル(136)を、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に接続してもよい。この場合、ラジアル制御用の電磁石用コイル(135)には、専用のインバータから電力が供給される。
【0098】
具体的には、ラジアル磁気軸受(130)は、バックヨーク部(133)及び複数のティース部(134)を有する固定子(132)と、ティース部(134)に巻回された電磁石用コイル(135)と備える。電磁石用コイル(135)は、例えば、第1径方向と、第1径方向に対して垂直な第2径方向のそれぞれにおいて、回転軸(101)(拡径部(102))を挟んで一対ずつ配置される。ここで、一対の電磁石用コイル(135)のうちの1つを、バイアス用の電磁石用コイル(136)に置換し、第1モータ巻線(115)の中性点と第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間にバイアス用の電磁石用コイル(136)を接続する。バイアス用の電磁石用コイル(136)が発生する径方向の電磁力は一定であり、ラジアル制御用の電磁石用コイル(135)に流れる電流の制御によって、拡径部(102)の位置、つまり駆動軸(101)の位置が制御される。尚、図18において、図9に示す第2実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0099】
バイアス用の電磁石用コイル(136)に所定のバイアス電流izfを流そうとする場合、第1ラジアル支持巻線(113)の各相の巻線に本来のラジアル支持電流に加えて、izf/3を重畳すれば、電磁石用コイル(136)にバイアス電流izfを零相電流として流すことができる。零相電流izfは、バイアス用の電磁石用コイル(136)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、ラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとし、モータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとして、
ur=Ir・sin(φ)+izf/3
vr=Ir・sin(φ+2π/3)+izf/3
wr=Ir・sin(φ+4π/3)+izf/3
um=Im・sin(β)-izf/3
vm=Im・sin(β+2π/3)-izf/3
wm=Im・sin(β+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、バイアス用の電磁石用コイル(136)に所定のバイアス電流izfを流すことができる。
【0100】
以上に説明した、図17図18に示す構成によれば、第2実施形態の第2変形例と同様の効果を得ることができる。
【0101】
(第3実施形態の変形例)
本変形例の磁気軸受システム(100)が第3実施形態と異なる点は、図19に示すように、回転軸(101)(拡径部(102))を挟んで配置された一対の電磁石用コイル(135)のうちの1つを、バイアス用の電磁石用コイル(136)及びラジアル制御用の電磁石用コイル(137)に置換することである。ここで、バイアス用の電磁石用コイル(136)は、図18に示す第3実施形態と同様に、第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)の中性点と第1ラジアル支持巻線(113)の中性点との間に接続される。また、ラジアル制御用の電磁石用コイル(135,137)には、専用のインバータから電力が供給される。
【0102】
本変形例によれば、第2実施形態の第3変形例と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(第4実施形態)
前述の第1~第3実施形態(変形例を含む。以下同じ。)の磁気軸受システム(100)では、第1ベアリングレスモータ(110)及び/又は第2ベアリングレスモータ(120)に零相電流を流すと、軸支持力がその影響を受けて、モータ制御が難しくなる場合がある。具体的には、軸支持力を2軸(x軸、y軸)制御しようとした場合に、零相電流を通電すると、x軸方向の軸支持力Fxと、y軸方向の軸支持力Fyに脈動が生じ、軸支持力Fxと軸支持力Fyとの間で干渉が生じる場合がある。
【0104】
そこで、本実施形態では、ベアリングレスモータ(110,120)のラジアル支持巻線(113,123)を短節巻きで巻回し、ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上に設定する。これにより、ラジアル支持巻線(113,123)に零相電流を流しても、ラジアル支持巻線(113,123)の軸支持力に対する零相電流の影響を抑制できるので、ベアリングレスモータ(110,120)の制御が容易になる。
【0105】
尚、ベアリングレスモータ(110,120)のラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数とは、「全スロット数/支持巻線の極数」であり、ベアリングレスモータ(110,120)のラジアル支持巻線(113,123)の各極各相のスロット数とは、「各極のスロット数/ラジアル支持巻線(113,123)の相数」である。
【0106】
以下、第1ベアリングレスモータ(110)がCPMモータ(コンシクエントポールモータ)である場合を例として、具体的に説明する。図20は、モータ巻線8極、支持巻線2極、24スロットのCPMモータにおける軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。図20において、図1に示す磁気軸受システム(100)と同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0107】
図20に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)は、第1回転子(111)と第1固定子(112)とを有する。第1回転子(111)は、駆動軸(101)に固定される。第1回転子(111)のコア部には、複数の永久磁石(111a)が埋設される。第1固定子(112)は、複数(本例では24個)のティース部(112a)を有し、ティース部(112a)同士の間の空間であるスロット(112b)に第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)が配置される。本例では、第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)はそれぞれ、U相、V相、W相の3相巻線である。
【0108】
図21は、図20に示す第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)を8極全節分布巻(2層)で構成した場合におけるU相、V相、W相の各モータ巻線配置を示す。各モータ巻線は、例えば、線径0.75mmの導線を4本束ねて(4パラ)8ターン巻とする。尚、図21において、各相のモータ巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。
【0109】
図22は、図20に示す第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)を2極全節(12ピッチ)分布巻で構成した場合におけるU相、V相、W相の各支持巻線配置を示す。尚、図22において、各相の支持巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。図22に示すように、各支持巻線配置において、対応する巻線同士の間には12個のティース部(112a)が介在しており、巻線ピッチは12に設定されている。
【0110】
以下、単位支持電流あたりの軸支持力が最も大きくなる全節分布巻の支持巻線配置における軸支持力に対する零相電流の影響について説明する。
【0111】
図23は、図20図22に示す第1ベアリングレスモータ(110)におけるx軸方向の磁気支持力とy軸方向の磁気支持力との間の支持力干渉角を示している。本来、x軸方向の磁気支持力が生じる場合、y軸方向の磁気支持力は生じないことが好ましいが、両方の支持力が生じた場合の相互干渉の程度を、図23に示す支持力干渉角によって表している。
【0112】
図24は、図20に示す第1ベアリングレスモータ(110)におけるx軸方向の支持力Fx、y軸方向の支持力Fy及び支持力干渉角のそれぞれと電気角との関係に対する零相電流iz(単位:A)の影響を示す。図24に示すように、零相電流izを流しても、支持力Fxの平均値は変わらないが、零相電流izが大きくなるほど、支持力Fyの脈動が増大して支持力干渉角が増加している。尚、図24に示す数値は、例示として、外径130mm、内径65mm、積厚25mmの固定子コアと、外径63mm、積厚25mmの回転子コアにより、図20に示すCPMモータを構成した場合の値である。固定子コア及び回転子コアの材料には35H360を用い、回転子コアに埋め込む磁石には、厚さ3mmのN48を用いた。
【0113】
そこで、本実施形態では、第1ラジアル支持巻線(113)の軸支持力に対する零相電流の影響を抑制するために、第1ラジアル支持巻線(113)を短節巻きで巻回すると共に、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の1/2以上に設定する。以下、零相電流通電時の支持力Fx、Fyの理論算出式に基づき、本実施形態の第1ベアリングレスモータ(110)の構成について具体的に説明する。
【0114】
支持力Fx、Fyの算出式は、下記の式(1)、(2)で表される。
【0115】
【数1】
【0116】
【数2】
【0117】
式(1)、(2)において、Rは、回転軸(101)の軸心からエアギャップ部(回転子コアと固定子コアとの間の空間)中心までの半径であり、Lは、モータの積厚であり、φは位相(固定座標)であり、μ0は、真空の透磁率であり、Brは、エアギャップ部の径方向磁束密度である。
【0118】
磁束密度Brは、パーミアンスPと起磁力F(磁石起磁力Fpm、支持巻線の起磁力Fs、モータ巻線の起磁力Fm)の積として、下記の式(3)で表される。
【0119】
【数3】
【0120】
パーミアンスPは、下記の式(4)で表される。
【0121】
【数4】
【0122】
式(4)において、gはエアギャップ部の径方向長さ、P0は、空間及び位相によって変化しないパーミアンス成分、P4は、空間及び位相によって変化するパーミアンス成分、ωは電気角周波数、tは時間である。
【0123】
磁石起磁力Fpmは、4極対を基本波として、下記の式(5)で表される。
【0124】
【数5】
【0125】
式(5)において、Fpm4は、起磁力Fpmの振幅である。
【0126】
支持巻線の起磁力Fsは、支持巻線分布Ns(φ)(U相分布Nsu(φ)、V相分布Nsv(φ)、W相分布Nsw(φ))と支持電流is(U相電流isu、V相電流isv、W相電流isw)の積として、下記の式(6)で表される。
【0127】
【数6】
【0128】
支持巻線分布Ns(φ)は、1極対を基本波とし、3倍及び5倍の空間高調波を考慮して、下記の式(7)~(9)で表される。
【0129】
【数7】
【0130】
【数8】
【0131】
【数9】
【0132】
式(7)~(9)において、Nsは、支持巻線のターン数であり、Ns1、Ns3、Ns5はそれぞれ、1次、3次、5次の支持巻線係数である。
【0133】
また、支持電流is(U相電流isu、V相電流isv、W相電流isw)は、直流のラジアル支持電流Isに零相電流izを重畳して
isu=-Is+iz/3
isv=Is/2+iz/3
isw=Is/2+iz/3
と表される。
【0134】
モータ巻線の起磁力Fmは、モータ巻線分布Nm(φ)(U相分布Nmu(φ)、V相分布Nmv(φ)、W相分布Nmw(φ))とモータ電流im(U相電流imu、V相電流imv、W相電流imw)の積として、下記の式(10)で表される。
【0135】
【数10】
【0136】
モータ巻線分布Nm(φ)は4極対を基本波とし、3倍の空間高調波を考慮して、下記の式(11)~(13)で表される。
【0137】
【数11】
【0138】
【数12】
【0139】
【数13】
【0140】
式(11)~(13)において、Nmは、モータ巻線のターン数であり、Nm4、Nm12はそれぞれ、1次、3次のモータ巻線係数である。
【0141】
また、モータ電流im(U相電流imu、V相電流imv、W相電流imw)は、モータ電流Imに零相電流izを重畳して
imu=-Im・sin(ωt)-iz/3
imv=-Im・sin(ωt-2π/3)-iz/3
imw=-Im・sin(ωt-4π/3)-iz/3
と表される。
【0142】
以上の各式を式(1)、(2)に代入することによって、支持力Fx、Fyはそれぞれ、下記の式(14)、(15)のように表される。
【0143】
【数14】
【0144】
【数15】
【0145】
式(14)において、第1項は、支持電流による直流支持力であり、第2項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)による干渉を含み、第3項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる基本波電流(Nm4Im)による干渉を含み、第4項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる零相電流(Nm12iz)による干渉を含む。式(14)の第2項及び第3項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にすれば、零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。式(14)の第4項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にしても、モータ巻線の3次巻線係数Nm12がizと作用しcos2ωtの脈動(干渉)が生じるが、パーミアンス成分(回転子パーミアンス)P4の二乗は小さいので、干渉の影響は小さく、モータ巻線の3次巻線係数Nm12を0にすることによって非干渉化も可能である。
【0146】
式(15)において、第1項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)による干渉を含み、第2項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる基本波電流(Nm4Im)による干渉を含み、第3項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる零相電流(Nm12iz)による干渉を含む。式(15)の第1項及び第2項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にすれば、零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。式(15)の第3項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にしても、モータ巻線の3次巻線係数Nm12がizと作用しsin2ωtの脈動(干渉)が生じるが、パーミアンス成分(回転子パーミアンス)P4の二乗は小さいので、干渉の影響は小さく、モータ巻線の3次巻線係数Nm12を0にすることによって非干渉化も可能である。
【0147】
図25は、図20に示す第1ベアリングレスモータ(110)において第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを変えた場合における1次、3次及び5次の各支持巻線係数Ns1、Ns3、Ns5の絶対値の変化を示す。尚、各次数の支持巻線係数Ns(2n-1)は、下記の式(16)によって算出される。
【0148】
【数16】
【0149】
式(16)において、Nshは、短節巻係数であり、Ndisは、分布巻係数であり、pnは、極対数であり、qは、各極各相のスロット数(本例ではq=4)であり、αは、各スロットあたりの角度(α=2π/スロット数であり、本例ではα=π/12)、Npは、巻線ピッチ(ピッチ数)であり、θcpは、コイルピッチ角(θcp=α×Npであり、本例ではθcp=π/12×Np)である。
【0150】
図25に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)が、図20に示すCPMモータである場合、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを、ラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の1/2以上(つまり6以上)、例えば8に設定することにより、3次巻線係数Ns3が0となり、支持力Fxを表す式(14)の第2項及び第3項並びに支持力Fyを表す式(15)の第1項及び第2項において零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。
【0151】
図26は、本実施形態の第1ベアリングレスモータ(110)として、図20に示すCPMモータの第1ラジアル支持巻線(113)を2極短節8ピッチ分布巻(2層)で構成した場合におけるU相、V相、W相の各支持巻線配置を示す。尚、図26において、各相の支持巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。図26に示すように、各支持巻線配置において、対応する巻線同士の間には8個のティース部(112a)が介在しており、巻線ピッチは8に設定されている。各支持巻線は、例えば、線径0.8mmの導線を8ターン巻とする。
【0152】
図27は、図26に示すように構成した本実施形態の第1ベアリングレスモータ(110)におけるx軸方向の支持力Fx及び支持力干渉角のそれぞれと電気角との関係に対する零相電流iz(単位:A)の影響を示す。図27に示すように、零相電流izを流しても、支持力Fx及び支持力干渉角に変化はみられない。従って、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを8に設定することにより、第1ラジアル支持巻線(113)の軸支持力に対する零相電流の影響を除外(非干渉化)できている。尚、図27に示す数値は、例示として、外径130mm、内径65mm、積厚25mmの固定子コア、外径63mm、積厚25mmの回転子コアにより、図20に示すCPMモータを構成した場合の値である。固定子コア及び回転子コアの材料には35H360を用い、回転子コアに埋め込む磁石には、厚さ3mmのN48を用いた。
【0153】
尚、以上の説明では、3次巻線係数Ns3が0となるように第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを設定する場合を例示した。しかし、これに限定されず、図25に示す各次数の支持巻線係数と巻線ピッチとの関係に基づいて、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の2/3近傍(本例では8近傍)に設定し、3次の支持巻線係数Ns3を最小化してもよい。或いは、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の2/3近傍以上(本例では8以上)に設定し、3次の支持巻線係数Ns3を低減しつつ1次の支持巻線係数Ns1の低下を抑制してもよい。これにより、必要な軸支持力を確保しつつ零相電流の干渉を低減できる。
【0154】
(第4実施形態の変形例)
本変形例が、前記第4実施形態と異なる点は、第1ベアリングレスモータ(110)として、SPM(Surface Permanent Magnet)モータを用いることである。尚、SPMモータでは、回転子コアは円筒状であるため、パーミアンスは直流値(平均値)のみとなり、変動成分は無い。また、SPMモータは4極モータであり、支持電流は交流である。
【0155】
図28は、モータ巻線4極、支持巻線2極、24スロットのSPMモータにおける軸方向に対して垂直な断面を示す概略模式図である。図28において、図20に示すCPMモータと同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0156】
図28に示すように、第1ベアリングレスモータ(110)は、第1回転子(111)と第1固定子(112)とを有する。第1回転子(111)は、駆動軸(101)に固定される。第1回転子(111)のコア部外周には、環状に永久磁石(111a)が配置される。第1固定子(112)は、複数(本例では24個)のティース部(112a)を有し、ティース部(112a)同士の間の空間であるスロット(112b)に第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)が配置される。本例では、第1ラジアル支持巻線(113)及び第1モータ巻線(115)はそれぞれ、U相、V相、W相の3相巻線である。
【0157】
図29は、図28に示す第1ベアリングレスモータ(110)の第1モータ巻線(115)を4極全節分布巻(2層)で構成した場合におけるU相、V相、W相の各モータ巻線配置を示す。各モータ巻線は、例えば、線径0.75mmの導線を4本束ねて(4パラ)8ターン巻とする。尚、図29において、各相のモータ巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。
【0158】
図30は、図28に示す第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)を2極全節(12ピッチ)分布巻で構成した場合におけるU相、V相、W相の各支持巻線配置を示す。尚、図30において、各相の支持巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。図30に示すように、各支持巻線配置において、対応する巻線同士の間には12個のティース部(112a)が介在しており、巻線ピッチは12に設定されている。
【0159】
以下、単位支持電流あたりの軸支持力が最も大きくなる全節分布巻の支持巻線配置における軸支持力に対する零相電流の影響について説明する。
【0160】
図31は、図28図30に示す第1ベアリングレスモータ(110)におけるx軸方向の支持力Fx、y軸方向の支持力Fy及び支持力干渉角のそれぞれと電気角との関係に対する零相電流iz(単位:A)の影響を示す。図31に示すように、零相電流izを流しても、支持力Fxの平均値は変わらないが、零相電流izが大きくなるほど、支持力Fyの脈動が増大して支持力干渉角が増加している。尚、図31に示す数値は、例示として、外径130mm、内径65mm、積厚25mmの固定子コアと、外径63mm、積厚25mmの回転子コアにより、図28に示すSPMモータを構成した場合の値である。固定子コア及び回転子コアの材料には35H360を用い、回転子コアに埋め込む磁石には、厚さ3mmのN48を用いた。
【0161】
そこで、本変形例では、第1ラジアル支持巻線(113)の軸支持力に対する零相電流の影響を抑制するために、第1ラジアル支持巻線(113)を短節巻きで巻回すると共に、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の1/2以上に設定する。以下、零相電流通電時の支持力Fx、Fyの理論算出式に基づき、本変形例の第1ベアリングレスモータ(110)の構成について具体的に説明する。
【0162】
支持力Fx、Fyの算出式は、前記第4実施形態と同様に、式(1)、(2)で表される。式(1)、(2)の磁束密度Brは、前記第4実施形態と同様に、パーミアンスPと起磁力F(磁石起磁力Fpm、支持巻線の起磁力Fs、モータ巻線の起磁力Fm)の積として、式(3)で表される。
【0163】
パーミアンスPは、下記の式(17)で表される。
【0164】
【数17】
【0165】
式(17)において、μ0は、真空の透磁率であり、gはエアギャップ部の径方向長さ、P0は、空間及び位相によって変化しないパーミアンス成分である。
【0166】
磁石起磁力Fpmは、2極対を基本波として、下記の式(18)で表される。
【0167】
【数18】
【0168】
式(18)において、Fpm2は、起磁力Fpmの振幅である。
【0169】
支持巻線の起磁力Fsは、支持巻線分布Ns(φ)(U相分布Nsu(φ)、V相分布Nsv(φ)、W相分布Nsw(φ))と支持電流is(U相電流isu、V相電流isv、W相電流isw)の積として、前記第4実施形態と同様に、式(6)で表される。
【0170】
支持巻線分布Ns(φ)は、1極対を基本波とし、3倍及び5倍の空間高調波を考慮して、前記第4実施形態と同様に、式(7)~(9)で表される。
【0171】
また、支持電流is(U相電流isu、V相電流isv、W相電流isw)は、交流のラジアル支持電流Isに零相電流izを重畳して
isu=Is・cos(ωt)+iz/3
isv=Is・cos(ωt-2π/3)+iz/3
isw=Is・cos(ωt-4π/3)+iz/3
と表される。
【0172】
モータ巻線の起磁力Fmは、モータ巻線分布Nm(φ)(U相分布Nmu(φ)、V相分布Nmv(φ)、W相分布Nmw(φ))とモータ電流im(U相電流imu、V相電流imv、W相電流imw)の積として、前記第4実施形態と同様に、式(10)で表される。
【0173】
モータ巻線分布Nm(φ)は2極対を基本波とし、3倍の空間高調波を考慮して、下記の式(19)~(21)で表される。
【0174】
【数19】
【0175】
【数20】
【0176】
【数21】
【0177】
式(19)~(21)において、Nmは、モータ巻線のターン数であり、Nm2、Nm6はそれぞれ、1次、3次のモータ巻線係数である。
【0178】
また、モータ電流im(U相電流imu、V相電流imv、W相電流imw)は、モータ電流Imに零相電流izを重畳して
imu=-Im・sin(ωt)-iz/3
imv=-Im・sin(ωt-2π/3)-iz/3
imw=-Im・sin(ωt-4π/3)-iz/3
と表される。
【0179】
以上の各式を式(1)、(2)に代入することによって、支持力Fx、Fyはそれぞれ、下記の式(22)、(23)のように表される。
【0180】
【数22】
【0181】
【数23】
【0182】
式(22)において、第1項は、支持電流による直流支持力であり、第2項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)による干渉を含み、第3項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる基本波電流(Nm2Im)による干渉を含み、第4項は、支持巻線に流れる基本波電流(Ns5Is)とモータ巻線に流れる零相電流(Nm6iz)による干渉を含む。式(22)の第2項及び第3項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にすれば、零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。式(22)の第4項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にしても、モータ巻線の3次巻線係数Nm6がizと作用しcosωtの脈動(干渉)が生じるが、支持巻線の5次巻線係数Ns5とモータ巻線の3次巻線係数Nm6の積は小さいので、干渉の影響は小さく、モータ巻線の3次巻線係数Nm6を0にすることによって非干渉化も可能である。
【0183】
式(23)において、第1項は、電機子反作用の影響を示し、第2項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)による干渉を含み、第3項は、支持巻線に流れる零相電流(Ns3iz)とモータ巻線に流れる基本波電流(Nm2Im)による干渉を含み、第4項は、支持巻線に流れる基本波電流(Ns5Is)とモータ巻線に流れる零相電流(Nm6iz)による干渉を含む。式(23)の第2項及び第3項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にすれば、零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。式(23)の第4項では、支持巻線の3次巻線係数Ns3を0にしても、モータ巻線の3次巻線係数Nm6がizと作用しsinωtの脈動(干渉)が生じるが、支持巻線の5次巻線係数Ns5とモータ巻線の3次巻線係数Nm6の積は小さいので、干渉の影響は小さく、モータ巻線の3次巻線係数Nmを0にすることによって非干渉化も可能である。
【0184】
図28に示す第1ベアリングレスモータ(110)において第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを変えた場合における1次、3次及び5次の各支持巻線係数Ns1、Ns3、Ns5の絶対値の変化は、前記第4実施形態と同様に、図25に示される。また、各次数の支持巻線係数Ns(2n-1)も、前記第4実施形態と同様に、式(16)によって算出される。
【0185】
従って、第1ベアリングレスモータ(110)が、図28に示すSPMモータである場合、図25に示すように、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを、ラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の1/2以上(つまり6以上)、例えば8に設定することにより、3次巻線係数Ns3が0となり、支持力Fxを表す式(22)の第2項及び第3項並びに支持力Fyを表す式(23)の第2項及び第3項において零相電流の影響を除外(非干渉化)することができる。
【0186】
図32は、本変形例の第1ベアリングレスモータ(110)として、図28に示すSPMモータの第1ラジアル支持巻線(113)を2極短節8ピッチ分布巻(2層)で構成した場合におけるU相、V相、W相の各支持巻線配置を示す。尚、図32において、各相の支持巻線を○(○の中の×は電流の向きが紙面手前から奥に向かう方向であることを表し、・は電流の向きが紙面奥から手前に向かう方向であることを表す)で示し、対応する巻線同士には同じ番号を付している。図32に示すように、各支持巻線配置において、対応する巻線同士の間には8個のティース部(112a)が介在しており、巻線ピッチは8に設定されている。各支持巻線は、例えば、線径0.8mmの導線を8ターン巻とする。
【0187】
図33は、図32に示すように構成した本変形例の第1ベアリングレスモータ(110)におけるx軸方向の支持力Fx、y軸方向の支持力Fy及び支持力干渉角のそれぞれと電気角との関係に対する零相電流iz(単位:A)の影響を示す。図33に示すように、零相電流izを流しても、支持力Fx、Fy及び支持力干渉角に変化はみられない。従って、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを8に設定することにより、第1ラジアル支持巻線(113)の軸支持力に対する零相電流の影響を除外(非干渉化)できている。尚、図33に示す数値は、例示として、外径130mm、内径65mm、積厚25mmの固定子コア、外径63mm、積厚25mmの回転子コアにより、図28に示すSPMモータを構成した場合の値である。固定子コア及び回転子コアの材料には35H360を用い、回転子コアに埋め込む磁石には、厚さ3mmのN48を用いた。
【0188】
尚、以上の説明では、3次巻線係数Ns3が0となるように第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチを設定する場合を例示した。しかし、これに限定されず、図25に示す各次数の支持巻線係数と巻線ピッチとの関係に基づいて、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の2/3近傍(本例では8近傍)に設定し、3次の支持巻線係数Ns3を最小化してもよい。或いは、第1ラジアル支持巻線(113)の巻線ピッチをラジアル支持巻線(113)の各極のスロット数の2/3近傍以上(本例では8以上)に設定し、3次の支持巻線係数Ns3を低減しつつ1次の支持巻線係数Ns1の低下を抑制してもよい。これにより、必要な軸支持力を確保しつつ零相電流の干渉を低減できる。
【0189】
(第5実施形態)
以下、第1~第4実施形態(変形例を含む。以下同じ。)の磁気軸受システム(100)が設けられた圧縮機(10)を備える冷凍装置の一例として、図34に示す空気調和装置(1)について説明する。
【0190】
空気調和装置(1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、対象空間の空調を行う装置である。空気調和装置(1)は、冷房運転を実行可能であり、主として、圧縮機(10)と、熱源側熱交換器(3)と、膨張機構(4)と、利用側熱交換器(5)とを備える。
【0191】
圧縮機(10)は、吸入管(6)を流れる低圧の冷媒を、吸入口(11)を介して吸入し、吸入口(11)を介して吸入した冷媒を圧縮して高圧の冷媒とした後に、吐出口(12)を介して吐出管(7)へと吐出する。尚、吸入管(6)は、利用側熱交換器(5)から出た冷媒を圧縮機(10)の吸入側(吸入口(11))へと導く冷媒管であり、吐出管(7)は、圧縮機(10)から吐出口(12)を介して吐出された冷媒を熱源側熱交換器(3)の入口へと導く冷媒管である。
【0192】
圧縮機(10)は、例えば第1実施形態で述べたように、主として、駆動軸(101)と、インペラ(102,103)と、ベアリングレスモータ(110,120)とを備える。インペラ(102,103)には、駆動軸(101)からベアリングレスモータ(110,120)の駆動力が伝達され、駆動軸(101)を軸心としてインペラ(102,103)は回転する。これにより、圧縮機(10)は、吸入口(11)を介して流入する吸入冷媒を圧縮する。
【0193】
熱源側熱交換器(3)は、冷却源としての水又は空気と熱交換させることにより、圧縮機(10)から吐出された冷媒の放熱を行う冷媒の放熱器として機能する。熱源側熱交換器(3)の一端は、吐出管(7)を介して圧縮機(10)の吐出口(12)に接続される。熱源側熱交換器(3)の他端は、膨張機構(4)に接続される。
【0194】
膨張機構(4)は、熱源側熱交換器(3)で放熱された冷媒の減圧を行う機構であり、例えば、電動膨張弁から構成される。膨張機構(4)の一端は、熱源側熱交換器(3)に接続される。膨張機構(4)の他端は、利用側熱交換器(5)に接続される。
【0195】
利用側熱交換器(5)は、加熱源としての水又は空気と熱交換させることにより、膨張機構(4)で減圧された冷媒の加熱を行う冷媒の加熱器として機能する。利用側熱交換器(5)の一端は、膨張機構(4)に接続される。利用側熱交換器(5)の他端は、吸入管(6)を介して圧縮機(10)の吸入口(11)に接続される。
【0196】
以上に説明したように、空気調和装置(1)において、圧縮機(10)、熱源側熱交換器(3)、膨張機構(4)及び利用側熱交換器(5)は、吸入管(6)及び吐出管(7)を含む冷媒配管によって順次接続されることにより、冷媒が循環する経路(8)を構成する。
【0197】
本実施形態の冷凍装置(空気調和装置(1))によると、第1~第4実施形態の磁気軸受システム(100)により駆動される圧縮機(10)を用いるため、インバータのコストを抑制して、冷凍装置を低コストで製造することができる。
【0198】
(その他の実施形態)
前記実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、磁気軸受システム(100)を圧縮機(10)に適用する場合を例示したが、磁気軸受システム(100)の用途は特に限定されず、モータ若しくは発電機等の回転電機、又はその回転電機を備えた各種機器等に適用可能である。
【0199】
前記実施形態では、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108,108B)又はラジアル磁気軸受(130)の電磁石用コイル(135,136)を、ベアリングレスモータ(110,120)のモータ巻線(115,125)及びラジアル支持巻線(113,123)のうちの2つの多相巻線の中性点の間に接続した。しかし、これに限定されず、例えば図35に示すように、2つの多相巻線のうちの一方の中性点と他方の端部との間に電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を接続してもよい。或いは、例えば図36(a)、(b)に示すように、多相巻線の中性点と、当該多相巻線に電力供給を行うインバータのDCバス中点又は1レグ中点との間に電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を接続してもよい。尚、図35図36(a)、(b)において、図2図3に示す第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0200】
図35に示す例では、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の端部(本例ではU相巻線の端部)と第1モータ巻線(115)の中性点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)が接続されている。ここで、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流そうとする場合、第1インバータ(114)から第1ラジアル支持巻線(113)のU相の巻線端部に向けて、本来のモータ駆動電流に加えてizfを重畳した電流iur_inを流す。U相の巻線端部で電流iur_inは分岐し、第1電磁石用コイル(106)には支持電流izfが流れる。支持電流izfは、第1電磁石用コイル(106)を流れた後、第1モータ巻線(115)に流れ込む。従って、第1ラジアル支持巻線(113)のラジアル支持電流(iur、ivr、iwr)の振幅をIr、位相をφとして、第1モータ巻線(115)のモータ駆動電流(ium、ivm、iwm)の振幅をIm、位相をβとして、
ur_in=Ir・sin(φ)+izr
ur=Ir・sin(φ)
vr=Ir・sin(φ+2π/3)
wr=Ir・sin(φ+4π/3)
um=Im・sin(β)-izf/3
vm=Im・sin(β+2π/3)-izf/3
wm=Im1・sin(β+4π/3)-izf/3
となるように、インバータ(114,116)を制御すれば、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0201】
図36(a)に示す例では、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点と、第1インバータ(114)のDCバス中点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)が接続されている。図36(b)に示す例では、第1ベアリングレスモータ(110)の第1ラジアル支持巻線(113)の中性点と、第1インバータ(114)の1レグ中点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)が接続されている。図36(a)、(b)に示すような構成においても、零相電流を利用して、スイッチング素子を追加することなく、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)に所定の支持電流izfを流すことができる。
【0202】
前記実施形態では、スラスト磁気軸受(105,107)の電磁石用コイル(106,108,108B)又はラジアル磁気軸受(130)の電磁石用コイル(135,136)に支持電流を流すための多相巻線として、ベアリングレスモータ(110,120)の多相巻線(113,115,123,125)を用いた。しかし、これに限定されず、例えば図37に示すような磁気軸受システム(100)を構成し、ベアリングレスモータ(110,120)の多相巻線(113,115,123,125)に代えて、通常のモータ(170)のモータ巻線(173)を用いてもよい。或いは、図38図39に示すような磁気軸受システム(100)を構成し、静止器の一例であるリアクトル(180)のリアクトル巻線(181)を用いてもよい。尚、図37図39において、図1~3、図8に示す第1又は第2実施形態と同様の要素には同様の符号を付している。
【0203】
図37に示す磁気軸受システム(100)が、図8に示す第2実施形態と異なる点は、第1ベアリングレスモータ(110)に代えて、通常のモータ(170)が設けられ、モータ(170)とスラスト磁気軸受(105,107)との間に他のラジアル磁気軸受(140)が設けられることである。すなわち、図37に示す磁気軸受システム(100)では、軸方向においてモータ(170)を挟むように2つのラジアル磁気軸受(130,140)が配置される。他のラジアル磁気軸受(140)は、ラジアル磁気軸受(130)と同様に、駆動軸(101)のラジアル荷重を非接触で支持するように構成される。他のラジアル磁気軸受(140)は、圧力容器(150)の内周壁に固定される。回転軸(101)における他のラジアル磁気軸受(140)と対向する部分(141)の径は、他の部分の径よりも太くてもよい。他のラジアル磁気軸受(140)は、複数のティース部(図示省略)を有する固定子(142)と、各ティース部に巻回された電磁石用コイル(145)とを有する。モータ(170)は、回転子(171)と固定子(172)とを有する。回転子(171)は、駆動軸(101)に固定される。固定子(172)は、圧力容器(150)の内周壁に固定される。回転子(171)のコア部には、複数の永久磁石(図示省略)が埋設される。固定子(172)は、複数のティース部(図示省略)を有し、各ティース部にはモータ巻線(173)が巻回される。モータ巻線(173)は、電力供給により回転軸(101)に回転トルクを生じさせる。モータ巻線(173)は、3相以上の多相巻線(例えばU相、V相、W相の3相巻線)である。
【0204】
図38図39に示す磁気軸受システム(100)が、図1に示す第1実施形態と異なる主な点は、圧力容器(150)の外部に、リアクトル巻線(181)を有するリアクトル(180)が設けられることである。リアクトル巻線(181)は、3相以上の多相巻線(本例では3相巻線)である。リアクトル巻線(181)の各相の巻線の一端は中性点で結線される。リアクトル巻線(181)の各相の巻線の他端には、第1モータ巻線(115)と同じく第2インバータ(116)から所定の電圧が印加される。第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)の一端はリアクトル巻線(181)の中性点に接続されると共に、第1電磁石用コイル(106)の他端は第1モータ巻線(115)の中性点に接続される。尚、リアクトル(180)は、インバータ(本例では第2インバータ(116)のみ図示)と同じく圧力容器(150)の外部に設けられる。このため、第2インバータ(116)から第1モータ巻線(115)に電圧を印加するために、圧力容器(150)の内外を電気的に接続する気密端子(191)が設けられると共に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)とリアクトル巻線(181)とを接続するために、気密端子(192)が設けられる。
【0205】
尚、リアクトル巻線(181)に代えて、他の種類の静止器(例えば変圧器)が有する多相巻線を用いてもよい。また、図37に示す磁気軸受システム(100)にリアクトル(180)を設けて、当該リアクトル(180)のリアクトル巻線(181)の中性点と、通常のモータ(170)のモータ巻線(173)の中性点との間に、第1スラスト磁気軸受(105)の第1電磁石用コイル(106)を接続してもよい。
【0206】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0207】
以上に説明したように、本開示は、磁気軸受システム、圧縮機、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0208】
1 空気調和装置(冷凍装置)
10 圧縮機
100 磁気軸受システム
101 回転軸
105 第1スラスト磁気軸受(磁気軸受又は他の磁気軸受)
106 第1電磁石用コイル(電磁石用コイル又は他の電磁石用コイル)
107 第2スラスト磁気軸受(磁気軸受又は他の磁気軸受)
108 第2電磁石用コイル(電磁石用コイル又は他の電磁石用コイル)
108A 第2電磁石用コイル(他の電磁石用コイル)
108B 第3電磁石用コイル(電磁石用コイル)
110 第1ベアリングレスモータ(ベアリングレスモータ)
113 第1ラジアル支持巻線(第1又は第2多相巻線)
115 第1モータ巻線(第1又は第2多相巻線)
120 第2ベアリングレスモータ(ベアリングレスモータ)
123 第2ラジアル支持巻線(第1又は第2多相巻線)
125 第2モータ巻線(第1又は第2多相巻線)
130 ラジアル磁気軸受(磁気軸受)
135 電磁石用コイル(他の電磁石用コイル)
136 電磁石用コイル
137 電磁石用コイル(他の電磁石用コイル)
150 圧力容器
173 モータ巻線(第1又は第2多相巻線)
181 リアクトル巻線(第1又は第2多相巻線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(101)と、電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)を有する磁気軸受(105,107,130)とを備えた磁気軸受システム(100)であって、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の一端が、少なくとも3相以上の第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点に接続され、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の他端が、前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)と異なる少なくとも3相以上の第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)の中性点又は端部に接続される
磁気軸受システム。
【請求項2】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせるモータ巻線(115,125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じるラジアル支持巻線(113,123)とを有するベアリングレスモータ(110,120)をさらに備え、
前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の一方であり、
前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記モータ巻線(115,125)及び前記ラジアル支持巻線(113,123)の他方である
磁気軸受システム。
【請求項3】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
前記ラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、
前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である
磁気軸受システム。
【請求項4】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第1モータ巻線(115)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第1ラジアル支持巻線(113)とを有する第1ベアリングレスモータ(110)と、
電力供給により前記回転軸(101)に回転トルクを生じさせる第2モータ巻線(125)と、電力供給により前記回転軸(101)を非接触で支持する軸支持力を生じる第2ラジアル支持巻線(123)とを有する第2ベアリングレスモータ(120)とをさらに備え、
前記第1多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第1モータ巻線(115)及び前記第1ラジアル支持巻線(113)の一方であり、
前記第2多相巻線(113,115,123,125,173,181)は、前記第2モータ巻線(125)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の一方である
磁気軸受システム。
【請求項5】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
前記第1ラジアル支持巻線(113)及び前記第2ラジアル支持巻線(123)の少なくとも一方のラジアル支持巻線(113,123)は、短節巻きで巻回され、
前記ラジアル支持巻線(113,123)の巻線ピッチは、前記ラジアル支持巻線(113,123)の各極のスロット数の1/2以上である
磁気軸受システム。
【請求項6】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)及び前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)は、同じ圧力容器(150)内に配置され、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,135,136)の前記一端は、前記圧力容器(150)内で前記第1多相巻線(113,115,123,125,173)の前記中性点に接続される
磁気軸受システム。
【請求項7】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力と同じ方向又は逆の方向の電磁力を前記回転軸(101)に対して発生する他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)をさらに備え、
前記電磁石用コイル(106,108,108B,136)の制御帯域が、前記他の電磁石用コイル(106,108,108A,135,137)の制御帯域よりも低くなるように構成される
磁気軸受システム。
【請求項8】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
前記他の電磁石用コイル(106,108)を有する他の磁気軸受(105,107)をさらに備え、
前記電磁石用コイル(106,108)にはバイアス電流が供給され、
前記電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(106,108)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向とは互いに逆の方向である
磁気軸受システム。
【請求項9】
請求項の磁気軸受システム(100)において、
前記他の電磁石用コイル(108A,137)は、前記磁気軸受(107,130)に設けられ、
前記電磁石用コイル(108B,136)にはバイアス電流が供給され、
前記電磁石用コイル(108B,136)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向と、前記他の電磁石用コイル(108A,137)に通電することで前記回転軸(101)に対して発生する電磁力の方向とは同じ方向である
磁気軸受システム。
【請求項10】
請求項1の磁気軸受システム(100)において、
前記磁気軸受(105,107,130)は、スラスト磁気軸受又はラジアル磁気軸受である
磁気軸受システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項の磁気軸受システム(100)を備える
圧縮機。
【請求項12】
請求項11の圧縮機(10)を備える
冷凍装置。