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  • 特開-生体適合性ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122849
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】生体適合性ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20240902BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240902BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240902BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185378
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2023029154
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 晃明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】藤江 裕道
(72)【発明者】
【氏名】前多 萌日佳
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AB11
4C081BB05
4C081BB07
4C081BB08
4C081CA051
4C081CD111
4C081CD121
4C081DA12
(57)【要約】
【課題】生体組織や生体成分と接する医療用具又は医療用具用成形品を製造するための材料として好適に使用するためのユニット、を提供する。
【解決手段】ゲル成分と、プロテオグリカンと、を含む、ユニット、などを提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル成分と、プロテオグリカンと、を含む、ユニット。
【請求項2】
更にコラーゲンを含む、請求項1記載のユニット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト等の生体内に用いるためのユニットなどに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物は、原料となる単量体を選択することで様々な特性のものを設計することが可能であり、工業製品から日用品まで様々な用途に幅広く用いられている。このような高分子化合物の用途の1つに医療用具用途がある。医療用具は、血液等の生体成分や生体組織と接触する環境下で使用される。医療用具表面と生体成分や生体組織との親和性が低い場合、例えば、血液と接触した際、生体防御機構が活性化され、血液が凝固して血栓が形成される等の不具合が生じる。このため、医療用具は少なくとも生体成分や生体組織と接触する表面が生体適合性の高い材料で形成されていることが必要となる。
【0003】
生体適合性の高い材料について、これまでに様々な研究が行われており、ハイドロゲルのような含水材料に関しても、生体適合性が高い材料としてこれまでに様々研究がなされ、コンタクトレンズや人工関節軟骨材料等への応用が検討されてきた。しかし、従来の生体適合性の高い含水材料を人工関節や人工血管、カテーテル等の医療用具に適用しようとすると、上記含水材料の伸びや強度が不十分であり、使用寿命に耐えない場合や、所望の形状に成形して製造するのが容易でないといった問題があった。また、人工関節軟骨は、関節の動きをスムーズにしたり、関節にかかる衝撃を和らげるクッションの役割を果たすものであり、このような人工関節軟骨やこれを含む人工関節を製造するための材料には、生体適合性に加えて、優れた耐摩耗性、衝撃緩和効果、潤滑特性等の力学的特性が必要とされる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-210348
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高分子論文集、2015年72巻12号、p760~764、ポリビニルアルコールキャストドライゲルの乾燥条件が摩擦特性に及ぼす影響
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在も、伸び、強度、表面潤滑性に優れ、生体適合性にも優れ、生体成分又は生体組織に接触して使用される医療用具などに好適に使用できるユニット(例えば、ハイドロゲル)などが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、当該ユニットを提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、すなわち、本発明は、例えば「ゲル成分と、プロテオグリカンと、を含む、ユニット」である。更に、本発明は、当該ユニット(ゲル成分とプロテオグリカンとを含むユニット)に、コラーゲンを含む、こともある。
【発明の効果】
【0009】
このユニットを用いることにより、生体組織や生体成分と接する医療用具又は医療用具用成形品を製造するための材料として好適に使用すること、などができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】比較例及び実施例のハイドロゲル(ユニット)の作製方法を記載した模式図である。
図2】実施例記載の試験で用いた当該物質の測定の模式図(力学試験装置の模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかるユニットについて説明する。
【0012】
(ゲル成分)
本発明で用いるゲル成分(材料)は、通常、生体適合性のあるものであり、水を大量に含むことができ、酸素、水、栄養物及び酵素などの細胞生存に必要な物質を容易に拡散移動させることができる。ゲル成分の形態は、ユニットに組み込むことができれば特に限定されないが、例えば、粒子状、顆粒状、フィルム状、チューブ状、ディスク状、網状、メッシュ状、多孔質状、懸濁状もしくは分散状などが挙げられる。ゲル成分は、例えば、ゼラチンハイドロゲルなどハイドロゲル、樹脂(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA))を含有するハイドロゲル、が挙げられる。
【0013】
(プロテオグリカン)
プロテオグリカンはコアタンパク質にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等のグリコサミノグリカン(以下GAGと表す。)と呼ばれる糖鎖が共有結合した糖タンパク質である。プロテオグリカンは、細胞外マトリックスの主要構成成分の一つとして皮膚や軟骨など体内に広く分布している。GAG鎖は分岐を持たない長い直鎖構造を持つ。多数の硫酸基とカルボキシル基を持つため負に荷電しており、GAG鎖はその電気的反発力のために延びた形状をとる。また、プロテオグリカンは、糖の持つ水親和性により、多量の水を保持することができる。プロテオグリカンに含まれる多数のGAG鎖群はスポンジのように水を柔軟に保持しながら、弾性や衝撃への耐性といった軟骨特有の機能を担っている。
【0014】
プロテオグリカンのコアタンパク質はマトリックス中の様々な分子と結合する性質をもつ。軟骨プロテオグリカンの場合、N末端側にヒアルロン酸やリンクタンパク質との結合領域を持ち、これらの物質と結合すること、同一分子間で会合することもある。C末端にはレクチン様領域、EGF様領域などを持ち様々な他の分子と結合する。この性質により、プロテオグリカンはそれぞれの組織にあった構造を築く。プロテオグリカンのうち、コンドロイチン硫酸型プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸がコアタンパク質に共有結合されているプロテオグリカンである。
【0015】
サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンは、サケの鼻軟骨から抽出して得られたプロテオグリカンである。ここで、サケは、例えばサケ属(Oncorhynchus)に属する魚であるが、好ましくは細胞増殖性(例えば、培養したい細胞をより効率的に培養すること)の観点で学名が「Oncorhynchus keta」のサケが選択される。また、本発明に係るユニットに含まれるプロテオグリカンの含有量は、例えば所望の効果を発揮することなどの観点で、下限は好ましくは0.1μg/mL以上、より好ましくは0.2μg/mL以上、更に好ましくは0.5μg/mL以上である。本発明に係るユニットに含まれるプロテオグリカンは、例えば公報(日本特許第6317053号公報)に記載の方法で作製される。
【0016】
本発明に係るユニットにおいては、プロテオグリカンは、例えばゲル成分内に含有、ゲルの表面に塗布、などされる。
【0017】
(コラーゲン)
コラーゲンはアミノ酸が鎖状につながった分子量約10万のポリペプチド分子が3本集まったらせん構造を有しており、これが繊維状あるいは膜状の構造体を形成するものである。コラーゲンを構成するアミノ酸の種類と数は極めて特徴的で、その特徴の一つとして、一般的なタンパク質を構成する20種類の基本アミノ酸には含まれないヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンといったアミノ酸を含む。これらのアミノ酸はコラーゲンとその近縁の限られたタンパク質にしか含まれない特殊なアミノ酸であり、特にヒドロキシプロリンはコラーゲン中の全アミノ酸の約10%を占めている。このため、ヒドロキシプロリンがコラーゲン量の目安と考えることができるものである。
【0018】
(ユニットの含水率)
本発明に係るユニットは、更に水を含むことが好ましい。水分を含むことにより、より表面潤滑性が優れた材料とすることができる。本発明のユニットは、例えば、ゲル成分を含水させて、必要に応じて加熱して膨潤させたものでもよいし、当該ユニットを構成しうる単量体成分を水の存在下で重合して得られたものであってもよい。
【0019】
本発明のユニットにおける樹脂(PVAなど)の含有量は、特に限定はないが、ユニットの総量100質量%に対して10~20質量%が好ましい。
【0020】
本発明のユニットは、特に限定はないが、高い強度と優れた表面潤滑性を両立する観点で、飽和含水時の含水率が75(好ましくは80)~90%であることが好ましい。
上記飽和含水時の含水率(%)は、下記の式により求めることができる。
含水率(%)=(Ww-Wd)/Ww×100
Wwは、ユニットの飽和含水時の重量を表し、Wdは、ユニットの乾燥時の重量を表す。
本明細書において、「飽和含水時」とは、ユニットが最大限含水して膨潤した状態(23℃)の場合をいう。
【0021】
本発明のユニットは、特に限定はないが、飽和含水時(23℃)における光透過率(全光線透過率)を設定可能である。上記光透過率は、JIS K7361-1に準拠した方法にて求めることができる。
【0022】
本発明のユニットは、飽和含水時(23℃)における曇り度(ヘーズ値)を設定可能である。上記曇り度は、JIS K7136:2000に準拠した方法にて求めることができる。
【0023】
(ユニット)
上述のように、本発明に係るユニットは、「ゲル成分と、プロテオグリカンと、を含む、ユニット(集団)」などであるが、例えばゲル成分を更に用いて、当該ユニットを複数積層化したものを作製して、該積層化したものを、ヒト等の体内に移植することも可能である。また、本発明に係るユニットは、所望の効果を発揮させるために、例えば、更なる因子(成長因子など)、抗菌剤、抗カビ剤、などを加えることも可能である。
【0024】
本発明に係るユニットは、例えば、患部に移植して用いること、細胞移植などの細胞治療(自身の細胞または他人の細胞を用いて疾患を治療する治療法)、再生誘導医療(生体内に存在する幹細胞を、体外に取り出すことなく、怪我や病気で損傷した組織に局所動員し、機能的組織再生を誘導する治療)にて用いること、なども可能である。
【0025】
(ユニットの用途)
本発明のユニットの用途は、例えば、生体組織又は生体成分(例えば、体液等)と接触して用いられる医療用具に好適に使用することができる。なお、医療用具は、人若しくは動物の疾病診断、治療や予防に使用される機械器具、又は、人若しくは動物の身体構造や身体機能へ影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であり、例えば、血液等の生体成分や生体組織と接触する環境下で使用される機械器具である。
【0026】
本発明のユニットを適用することができる医療用具としては、例えば、下記を挙げることができる。
・胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用(ED)チューブ等の経口又は経鼻的に消化器管内に挿入又は留置されるカテーテル類;酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブのチューブやカフ、気管切開チューブのチューブやカフ、気管内吸引カテーテル等の経口又は経鼻的に気道又は気管内に挿入又は留置されるカテーテル類;尿道カテーテル、導尿カテーテル、バルーンカテーテルのカテーテルやバルーン等の尿道又は尿管内に挿入又は留置されるカテーテル類;吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテル等の各種体腔、臓器、組織内に挿入又は留置されるカテーテル類;留置針、サーモダイリューションカテーテル、IVHカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテル及びダイレーターもしくはイントロデユーサ等の血管内に挿入又は留置されるカテーテル類、
・これらのカテーテル用のガイドワイヤー、スタイレット等;各種器官挿入用の検査器具や治療器具等;ステント類や人工血管、人工気管、人工気管支等;体外循環治療用の医療器(人工心臓、人工肺、人工腎臓、人工弁等)やその回路類;人工関節、人工関節軟骨;人工骨頭;縫合糸;歯科材料;各種吸着体、
など。
【0027】
このように、本発明のユニットを使用して製造した医療用具もまた本発明の一つである。本発明は、基材を有し、更に、該基材表面上に上述したハイドロゲルを含む層を有する医療用具、も含まれる。
【0028】
(ユニットの物性の測定)
本発明のユニットの所望の物性の測定(摩擦試験など)は、例えば特許5614788号記載の力学試験装置で測定できる。図2に実施例記載の試験で用いた当該物質の測定の模式図(力学試験装置の模式図)を示す。
【実施例0029】
以下、本発明の実施例について、説明する。なお、以下実験で用いた試料等は以下である。なお、以下の実施例において、数値の単位%は、特段の記載がなければ質量%を意味する。
・プロテオグリカン(PG):プロテオグリカンF(プロテオグリカン含量20.0%以
上、一丸ファルコス)、以下実験ではプロテオグリカンの所定の量に合わせるようにプロテオグリカンFを用いた。
・デキストリン(DEX):松谷化学工業株式会社、マルトデキストリン(パインデックス
#1)
・PVA(ポリビニルアルコール)の粉末:東京化成工業株式会社、P0469(平均重合度:1、700、けん化度:97.0~100mol%)
・豚膝関節由来1型コラーゲン溶液(溶媒は酢酸、1型コラーゲンは以下COL1と標記することもある)、当該溶液はペプシンを用いて常法(例えば、蛯原哲也他、加齢に伴う牛皮膚組織コラーゲンの抽出性の変化と得られた標品の生化学的特性、CONNECTIVE TISSUE 31(1)17-23、1999)を用いて作製した。
・豚膝関節由来2型コラーゲン溶液(溶媒は酢酸、2型コラーゲンは以下COL2と標記することもある))、当該溶液はペプシンを用いて常法(例えば、蛯原哲也他、加齢に伴う牛皮膚組織コラーゲンの抽出性の変化と得られた標品の生化学的特性、CONNECTIVE TISSUE 31(1)17-23、1999)を用いて作製した。
【0030】
[実施例1~3:ハイドロゲル(ユニット)の作製]
図1記載の方法(キャストドライ(CD)法)に沿って、ハイドロゲル(簡易軟骨モデルの比較例及び実施例)を作製した。各実施例および比較例における各試料の組成は、以下に記載の通りである。まず、PVA/DEX溶液及びPVA/DEX/PG溶液の全体重量に対して15wt%のPVA粉末と2wt%のDEX粉末及びPG含有DEX粉末をそれぞれ超純水に溶解し、PVA溶液とDEX溶液及びDEX/PG溶液を得た(工程1)。次に工程1で得られたPVA溶液とDEX溶液及びDEX/PG溶液を混合し、PVA/DEX溶液及びPVA/DEX/PG溶液を得た(工程2)。工程2で得られたPVA/DEX溶液とPVA/DEX/PG溶液をそれぞれシャーレに30gずつ流し込み、8℃、50%RHの環境下に静置し、試料の重量変化が落ち着くまで乾燥させ、PVA/DEXキャストドライフィルム及びPVA/DEX/PGキャストドライフィルムを得た(工程3)。工程3で得られたフィルムをそれぞれ1Lの超純水中に72時間以上浸漬させ、PVA/DEXハイドロゲル及びPVA/DEX/PGハイドロゲルを作製した(工程4)。実施例1は、簡易軟骨モデルである。キャストドライ(CD)法は、例えば、非特許文献1に記載されている。
・実施例1:水84%、PVA15%、DEX0.8%、PG0.2%
・比較例1:水84%、PVA15%、DEX1.0%
・実施例2:水82%、PVA15%、DEX2.4%、PG0.6%
・比較例2:水82%、PVA15%、DEX3.0%
・実施例3:水80%、PVA15%、DEX4.0%、PG1.0%
・比較例3:水80%、PVA15%、DEX5.0%
【0031】
[試験1:動摩擦試験]
上述の比較例及び実施例について、この摩擦試験を行った。長さ18mm×幅10mmに打ち抜いた比較例及び実施例を37℃の生理食塩水で満たした液槽内に固定した。比較例及び実施例の摩擦相手材には、直径6.0mmのアルミナセラミックス球を用いた。垂直荷重0.9N、予荷重時間5秒、摩擦速度10.0mm/s、摩擦ストローク10mmの条件にて、往復50回(総摩擦距離1、000mm)の摩擦試験を実施した。当該試験結果を表1に示す。当該試験(測定)を各群4回(N=4)行った。表1に示す数値は、当該4回の測定の平均値を示す。*は、比較例と数値と比較して、t検定により有意差があること(p<0.05)を示す。この比較は、例えば、比較例1と実施例1との比較、比較例2と実施例2の比較、比較例3と実施例3の比較、である。
【0032】
表1に示すように、PGを入れた群(実施例)では、PGを入れなかった群(比較例)に比べ、摩擦の値(摩擦の値、Coefficient of dynamic friction)が小さくなった。
【0033】
【表1】
【0034】
[試験2:含水率測定]
10mm平方に打ち抜いた実施例及び比較例を60℃の環境下で静置、乾燥させた。当該乾燥が、60℃の環境下で重量変化率が0%台になるまで乾燥させた。膨潤状態のゲル重量と乾燥状態のゲル重量を測定することで含水率を算出した。当該試験結果を表2に示す。当該試験(測定)を各群3回又は4回(N=3又は4)行った。実施例2の測定は3回、その他の群(比較例1~3、実施例1、実施例3)の測定は4回であった。表2に示す数値は、当該3回又は4回の測定の平均値を示す。*は、比較例と数値と比較して、平均値の差の検定により、有意差が示されたこと(p<0.05)を示す。この比較は、例えば、比較例1と実施例1との比較、比較例2と実施例2の比較、比較例3と実施例3の比較、である。
【0035】
表2に示すように、PGを入れた群(実施例)では、PGを入れなかった群(比較例)に比べ、含水率(Water Content(%))が高くなった。
【0036】
【表2】
【0037】
[試験3:ヤング率測定]
動的粘弾性について、URL(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/knowledge/analytical-systems/thermal-analysis/basics/dma.html)記載の原理に基づき、動的粘弾性試験機(ElectroForce 5500、TA Instrument)を用いて貯蔵弾性率(Storage modulus(MPa))、損失弾性率(Loss modulus(MPa))を求めた。当該試験結果を表3(貯蔵弾性率)及び表4(損失弾性率)に示す。当該試験(測定)を各群3回(N=3)行った。表3に示す数値は、当該3回の測定の平均値を示す。*は、比較例と数値と比較して、t検定により有意差があること(p<0.05)を示す。この比較は、例えば、比較例1と実施例1との比較、比較例2と実施例2の比較、比較例3と実施例3の比較、である。
【0038】
表3及び表4に示すように、PGを入れた群(実施例)では、PGを入れなかった群(比較例)に比べ、貯蔵弾性率及び損失弾性率が下がった。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
[試験4:ゲル成分とプロテオグリカンとコラーゲンとを含むユニットの物性等確認]
ゲル成分とプロテオグリカンとコラーゲンとを含むユニットの物性等確認を行った。
【0042】
(ハイドロゲル(ユニット)の作製)
図1記載の方法(キャストドライ(CD)法)に倣い、ハイドロゲル(簡易軟骨モデルの比較例及び実施例)を作製した。各実施例および比較例における各試料の組成は、以下に記載の表5の通りである。表5に示す各成分の含有量の数値は、質量%の値である。表5に記載の「10倍PBS」は「10倍濃度のPBS」を示す。
【0043】
【表5】
【0044】
溶液の全体重量の15%のPVA粉末を量り取った。溶液の全体重量の2%、4%のDEX
/PG粉末を量り取った。COL溶液に含まれるCOL線維量が溶液の全体重量の0.1%に
なるようにCOL1溶液、COL2溶液をそれぞれ量り取った。COL1/2用に全体重量の
0.05%になるようにCOL1溶液、COL溶液をそれぞれ量り取った。COL溶液と10倍PBSの割合が9:1になるように10倍PBSを量り取った。溶液の全体重量からPVA粉末、DEX粉末とPG粉末(DEX/PG粉末)、COL溶液、10倍PBSの重量を差し引いた重量の超純水を量り取った。
【0045】
当該量り取ったPVA粉末を当該量り取った超純水に溶解した。この溶解した液をホットプ
レートスターラー(RSH-1DN、アズワン株式会社)を用いて90℃から95°Cの湯煎
環境で撹拌した。当該攪拌により、15wt%のPVA水溶液を作製した。
【0046】
当該量り取った10倍PBSを、当該量り取ったCOL溶液に溶解した。当該溶解後の駅に
当該量り取ったDEX/PG粉末を加えた。スターラーを用いて当該加えた後の溶液を25℃
で撹拌した。当該攪拌により、PG/COL溶液を作製した。
【0047】
PVA溶液を25℃程度になるまで撹拌させた。その後、当該作製したPG/COL溶液と混合し、25℃で2時間撹拌させた。当該攪拌により、PVA/PG/COL溶液を作製した。
【0048】
PVA/PG/COL溶液を直径52mmのシャーレに流し込み、マイクロピペット(3121 000.074、Eppendorf AG)を用いてPVA/PG/COL溶液中の気泡を除去しつつ、シャーレ中の溶液量が10gとなるようにした。
【0049】
小型低温恒温恒湿器(SH-242、エスペック株式会社)を用いて8℃、50%(相対湿
度)の環境下に静置した。当該静置により、試料の重量変化が落ち着くまで乾燥させた。当該
乾燥により、PVA/PG/COLキャストドライフィルムを得た。
【0050】
PVA/PG/COLキャストドライフィルムをそれぞれ0.4Lの超純水中に72時間以
上浸漬させた。当該浸漬によりPVA/DEXハイドロゲル及びPVA/DEX/PGハイド
ロゲルを作製した。この作製完了後、PVA/PG/COLハイドロゲルはこの浸漬で用いた超純水中に浸し、4℃の冷蔵庫内で保存した。
【0051】
(試験方法、動摩擦試験)
上述の比較例4~6及び実施例4~6について、この摩擦試験を行った。長さ18mm×幅10mmに打ち抜いた比較例及び実施例を37℃の生理食塩水で満たした液槽内に固定した。比較例及び実施例の摩擦相手材には、直径6.0mmのアルミナセラミックス球を用いた。垂直荷重0.9N、予荷重時間5秒、摩擦速度10.0mm/s、摩擦ストローク10mmの条件にて、往復50回(総摩擦距離1、000mm)の摩擦試験を実施した。当該試験(測定)を各群3回(N=3)行った。
【0052】
(試験方法、ヤング率測定)
上述の比較例4~6及び実施例4~6について、このヤング率測定を行った。動的粘弾性について、URL(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/knowledge/analytical-systems/thermal-analysis/basics/dma.html)記載の原理に基づき、動的粘弾性試験機(ElectroForce 5500、TA Instrument)を用いて貯蔵弾性率(Storage modulus(MPa))、損失弾性率(Loss modulus(MPa))を求めた。当該試験(測定)を各群3回(N=3)行った。
【0053】
(試験方法、含水率測定及びゲル厚さ(mm)測定)
上述の比較例4~6及び実施例4~6について、この含水率測定を行った。10mm平方に打ち抜いた実施例及び比較例を60℃の環境下で静置、乾燥させた。当該乾燥が、60℃の環境下で重量変化率が0%台になるまで乾燥させた。膨潤状態のゲル重量と乾燥状態のゲル重量を測定することで含水率を算出した。当該試験(測定)を各群3回(N=3)行った。更に、各群のサンプルを任意に1つずつ選択してゲル厚さ(mm)を測定した。
【0054】
(試験結果)
動摩擦試験(動摩擦係数)の結果を記載する。比較例4は0.002936、比較例5は0.03755、比較例6は0.03399、であった。一方で、実施例4は0.01718、実施例5は0.02359、実施例6は0.02106、であった。比較例4と実施例4との比較、比較例5と実施例5の比較、比較例6と実施例6の比較において、プロテオグリカンの添加により、実施例では動摩擦係数の減少傾向がみられた。
【0055】
貯蔵弾性率(MPa)の測定結果を記載する。比較例4は0.50340、比較例5は0.32920、比較例6は0.35848、であった。一方で、実施例4は0.56417、実施例5は0.57970、実施例6は0.64220、であった。比較例4と実施例4との比較、比較例5と実施例5の比較、比較例6と実施例6の比較において、プロテオグリカンの添加により、実施例では貯蔵弾性率の増加傾向がみられた。
【0056】
損失弾性率(MPa)の測定結果を記載する。比較例4は0.00167、比較例5は0.00158、比較例6は0.00107であった。一方で、実施例4は0.00361、実施例5は0.00198、実施例6は0.00208、であった。比較例4と実施例4との比較、比較例5と実施例5の比較、比較例6と実施例6の比較において、プロテオグリカンの添加により、実施例では損失弾性率の増加傾向がみられた。
【0057】
含水率(%)の測定結果を記載する。比較例4は81.26355%、比較例5は81.95242%、比較例6は81.45963%、であった。一方で、実施例4は84.02023%、実施例5は83.01041%、実施例6は82.41406%、であった。比較例4と実施例4との比較、比較例5と実施例5の比較、比較例6と実施例6の比較において、プロテオグリカンの添加により、実施例では含水率の増加傾向がみられた。
【0058】
ゲル厚さ(mm)の測定結果を記載する。比較例4は1.5mm、比較例5は1.2mm、比較例6は1.1mm、であった。一方で、実施例4は3.0mm、実施例5は2.6mm、実施例6は2.6mm、であった。比較例4と実施例4との比較、比較例5と実施例5の比較、比較例6と実施例6の比較において、プロテオグリカンの添加により、実施例ではゲル厚さの増加傾向がみられた。
【0059】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面も参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。

図1
図2