(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122851
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
B65H 57/28 20060101AFI20240902BHJP
B65H 67/048 20060101ALI20240902BHJP
B65H 67/056 20060101ALI20240902BHJP
B65H 57/04 20060101ALI20240902BHJP
B65H 65/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B65H57/28
B65H67/048 A
B65H67/056
B65H57/04
B65H65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194085
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2023030385
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】川合 雅士
【テーマコード(参考)】
3F110
3F112
【Fターム(参考)】
3F110CA04
3F110DA02
3F110DB08
3F110DB12
3F112AA06
3F112BA03
3F112CA03
3F112EA02
3F112EA06
3F112EB01
3F112EC03
3F112ED02
(57)【要約】
【課題】ボビンを切り替えて糸の巻取りを行う糸巻取機において、解舒性に優れたパッケージを製造するための構成を提供する。
【解決手段】糸巻取機1は、ターレット板40と、切替装置70と、を備える。ターレット板40は、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第1状態と、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第2状態と、を切り替える。切替装置70は、巻付ガイドと、規制ガイドと、外れ抑制ガイドと、を備える。巻付ガイドは、切替時において、接続糸93aを押圧して第2ボビン92に巻き付ける。規制ガイドは、切替時において接続糸93aに糸切れが生じた場合に、第2ボビン92側の糸93に対して、第2ボビンホルダの軸方向における移動範囲を規制する。外れ抑制ガイドは、切替時において接続糸93aに糸切れが生じた場合に、第2ボビン側の糸93が規制ガイドから外れることを抑制する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボビン又は第2ボビンを軸方向を中心として第1方向に回転させることにより前記第1ボビン又は前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する糸巻取機において、
前記第1ボビンを保持する第1ボビンホルダと、
前記第2ボビンを保持する第2ボビンホルダと、
前記第1ボビンホルダ及び前記第2ボビンホルダの軸方向に平行な方向を回転中心として前記第1方向に回転することにより、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更して、前記第1ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを製造する第1状態と、前記第2ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを製造する第2状態と、を切り替えるボビンホルダ移動機構と、
前記第1状態から前記第2状態への切替時において、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に作用する切替装置と、
を備え、
前記切替装置は、
前記第1状態から前記第2状態への切替時において前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸を押圧して糸を前記第2ボビンに巻き付ける巻付ガイドと、
前記第1状態から前記第2状態への切替時において前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸に対して前記第2ボビンホルダの軸方向における移動範囲を規制する規制ガイドと、
前記第1状態から前記第2状態への切替時において前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸が前記規制ガイドから外れることを抑制する外れ抑制ガイドと、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記規制ガイドは、前記第2ボビンホルダの軸方向における糸の移動範囲を規制するスリット状のガイドであることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記外れ抑制ガイドは、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸が前記巻付ガイドから離れる方向に移動する際に干渉するガイドであることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記規制ガイドが前記巻付ガイドとは分離して設けられており、
前記巻付ガイドよりも前記規制ガイドの方が前記第2ボビンに対して近くに位置していることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記第2ボビンの軸方向には、糸が巻き付けられて前記パッケージが製造される糸層形成領域と、前記糸層形成領域よりも前記第2ボビンの軸方向の外側にある端部領域と、が存在し、
前記切替装置は、前記第2ボビンの前記糸層形成領域に糸を巻き付けることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記切替装置は、前記第2ボビンのうち溝がなく直径が一定の領域に糸を巻き付けることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
弾性糸を巻き取って前記パッケージを製造することを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数のボビンホルダを備える糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのボビンホルダを備える糸巻取機が開示されている。一方のボビンホルダのボビンに対する糸の巻取りが完了した場合、糸巻取機は、ボビンホルダの位置を切り替える。その後、糸巻取機は、一方のボビンホルダと他方のボビンホルダの間にある糸にプレートを押し付けることにより、他方のボビンホルダのボビンに糸を巻き付ける。その後、一方のボビンホルダの回転が減速することにより、糸が切れ、他方のボビンホルダのボビンへの糸の巻付けが開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許第10-2000-0051263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、例えば一方のボビンホルダの減速時等において、プレートから糸が外れた場合、糸切れ時の糸の挙動が大きくなる。その結果、糸がボビンの不適切な位置(糸の巻付け幅から外側に外れた位置)に巻き付いたり、糸が絡んだ状態でボビンに巻き付いたりすることがある。この種のボビンに糸を巻き付けてパッケージを製造した場合、糸の絡みが生じ易いので、解舒性が低いパッケージが製造される可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ボビンを切り替えて糸の巻取りを行う糸巻取機において、解舒性に優れたパッケージを製造するための構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、第1ボビン又は第2ボビンを軸方向を中心として第1方向に回転させることにより前記第1ボビン又は前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する。糸巻取機は、第1ボビンホルダと、第2ボビンホルダと、ボビンホルダ移動機構と、切替装置と、を備える。前記第1ボビンホルダは、前記第1ボビンを保持する。前記第2ボビンホルダは、前記第2ボビンを保持する。前記ボビンホルダ移動機構は、前記第1ボビンホルダ及び前記第2ボビンホルダの軸方向に平行な方向を回転中心として前記第1方向に回転することにより、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更して、前記第1ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを製造する第1状態と、前記第2ボビンに糸を巻き取って前記パッケージを製造する第2状態と、を切り替える。前記切替装置は、前記第1状態から前記第2状態への切替時において、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に作用する。前記切替装置は、巻付ガイドと、規制ガイドと、外れ抑制ガイドと、を備える。前記巻付ガイドは、前記第1状態から前記第2状態への切替時において、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸を押圧して糸を前記第2ボビンに巻き付ける。前記規制ガイドは、前記第1状態から前記第2状態への切替時において前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸に対して前記第2ボビンホルダの軸方向における移動範囲を規制する。前記外れ抑制ガイドは、前記第1状態から前記第2状態への切替時において前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸が前記規制ガイドから外れることを抑制する。
【0008】
巻付ガイドや規制ガイドからの糸外れを外れ抑制ガイドが抑制するため、切替時において糸が切替装置から外れにくい。そのため、切れた糸の挙動を小さくできる。更に、切れた糸の移動範囲が規制ガイドによって規制されるため、切れた糸の挙動を一層小さくできる。以上により、切れた糸の絡みを抑えつつ、切れた糸を第2ボビンの適切な位置に巻き付けることができる。その結果、解舒性に優れたパッケージを製造できる。
【0009】
前記の糸巻取機においては、前記規制ガイドは、前記第2ボビンホルダの軸方向における糸の移動範囲を規制するスリット状のガイドであることが好ましい。
【0010】
規制ガイドの幅が小さいため、切れた糸の移動範囲を規制する効果を高くすることができる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、前記外れ抑制ガイドは、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の糸に糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン側の糸が前記巻付ガイドから離れる方向に移動する際に干渉するガイドである。
【0012】
これにより、巻付ガイドや規制ガイド(切替装置)によって糸がガイドされる状態を維持することができる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記規制ガイドが前記巻付ガイドとは分離して設けられている。前記巻付ガイドよりも前記規制ガイドの方が前記第2ボビンに対して近くに位置している。
【0014】
巻付ガイドよりも規制ガイドの方が第2ボビンに対して近くに位置しているため、糸切れが生じた場合において、第2ボビンの近くに位置する規制ガイドによって、第2ボビン側の糸を規制できる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2ボビンの軸方向には、糸が巻き付けられて前記パッケージが製造される糸層形成領域と、前記糸層形成領域よりも前記第2ボビンの軸方向の外側にある端部領域と、が存在する。前記切替装置は、前記第2ボビンの前記糸層形成領域に糸を巻き付ける。
【0016】
これにより、切替装置は、糸を端部領域まで案内することなく、糸を第2ボビンに巻き付けることができる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、前記切替装置は、前記第2ボビンの表面であって、かつ、溝がなく直径が一定の領域に糸を巻き付けることが好ましい。
【0018】
これにより、切替装置は、溝が形成されていない第2ボビンにも糸を巻き付けることができる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、弾性糸を巻き取って前記パッケージを製造することが好ましい。
【0020】
これにより、弾性糸を巻き取ってパッケージを製造するタイプの糸巻取機に本発明が適用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る糸巻取機の正面図。
【
図4】第1状態から第2状態に切り替える処理の前段部を示す糸巻取機の概略正面図。
【
図5】第1状態から第2状態に切り替える処理の後段部を示す糸巻取機の概略正面図。
【
図6】切替装置が接続糸に接触しない状態を示す比較例の糸巻取機の概略正面図。
【
図7】第1ボビンホルダの回転速度の低下の前後における、第2ボビンの近傍の糸道の変化を示す拡大正面図。
【
図11】変形例の糸巻取機の第1ボビンホルダの回転速度の低下の前後における、第2ボビンの近傍の糸道の変化を示す拡大正面図。
【
図13】変形例の切替装置の先端を厚み方向で見た図。
【
図14】変形例の第3ガイド部材を厚み方向で見た図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る糸巻取機1の正面図である。
図2は、糸巻取機1の側面図である。
図3は、糸巻取機1のブロック図である。以下の説明では、糸の走行方向の上流又は下流を単に上流又は下流と称することがある。
【0023】
図1に示す糸巻取機1の上流には、図略の紡糸機が配置されている。紡糸機は、糸93を製造して糸巻取機1に供給する。糸巻取機1は、糸93を第1ボビン91又は第2ボビン92に巻き取ってパッケージ94を製造する。
【0024】
図1では、第1ボビン91に糸93が巻き取られて糸層が形成されパッケージ94が製造されている状態が示されている。一方、第2ボビン92は、糸93が巻き取られていない空ボビンの状態である。糸93の対象は、例えばスパンデックス等の弾性糸である。また、糸93は、ナイロン又はポリエステル等の合繊糸であってもよい。
【0025】
また、
図2に示すように、本実施形態では、紡糸機から糸巻取機1には、糸送りローラ100から、第1ボビンホルダ41(第2ボビンホルダ42)の軸方向に並ぶ複数の糸93が供給される。また、第1ボビン91は、第1ボビンホルダ41(第2ボビンホルダ42)の軸方向に並べて複数設けられている。糸巻取機1は、複数の糸93をそれぞれ第1ボビン91に巻き取って、複数のパッケージ94を製造する。
【0026】
以下、糸巻取機1の詳細について説明する。
図1から
図3に示すように、糸巻取機1は、制御装置50と、フレーム11と、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、ターレット板(ボビンホルダ移動機構)40と、を備える。
【0027】
制御装置50は公知のコンピュータとして構成されており、CPU、RAM、SSD等を備える。CPUは、プロセッサの一種である。SSDには、糸巻取機1を制御するためのプログラム及びデータが予め記憶されている。CPUがプログラムをRAMに読み出して実行することにより、制御装置50は、糸巻取機1が備える様々な装置を制御する。制御装置50は、SSDに代えて、HDD又はフラッシュメモリを備えていてもよい。
【0028】
フレーム11は、糸巻取機1が備える各部を保持する部材である。第1ハウジング20には、トラバース装置21が取り付けられている。トラバース装置21は、トラバースガイド23が糸93と係合した状態で巻幅方向(第1ボビンホルダ41又は第2ボビンホルダ42の軸方向)に往復動することにより、下流側に送られる糸93をトラバースさせる。この糸93のトラバース動作により第1ボビン91又は第2ボビン92に糸層が形成される。
図3に示すように、トラバース装置21は、トラバースカム22と、トラバースガイド23と、を備える。
【0029】
トラバースカム22は、第1ボビン91又はパッケージ94と平行に配置されたローラ状の部材である。トラバースカム22の外周面には、螺旋状のカム溝が形成されている。トラバースカム22は、トラバースモータ51により回転駆動される。
【0030】
トラバースモータ51は、制御装置50によって制御される。トラバースガイド23は、糸93と係合する部分である。トラバースガイド23の先端は例えば略U字状のガイド部を有しており、糸93を巻幅方向で挟み込むようにして、糸93と係合する。トラバースガイド23の基端はトラバースカム22のカム溝に位置している。この構成により、トラバースカム22を回転駆動することで、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることができる。
【0031】
第2ハウジング30には、接触ローラ31が回転可能に取り付けられている。接触ローラ31は、糸93の巻取り時にパッケージ94の糸層に所定の圧力で接触しながら従動回転することにより、トラバースガイド23からの糸93をパッケージ94の糸層に送るとともにパッケージ94の糸層形状を整える。なお、モータ等の駆動部を用いて接触ローラ31を回転駆動してもよい。
【0032】
図3に示すように、糸巻取機1は、昇降装置60を備える。昇降装置60は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を一体的に昇降させる。具体的には、第1ハウジング20及び第2ハウジング30は、昇降部材65に取り付けられている。この昇降部材65には、ボールナット61が取り付けられている。また、フレーム11にはネジ棒62が取り付けられている。昇降モータ63を用いてネジ棒62を回転させることにより、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を昇降させることができる。昇降モータ63は、制御装置50により制御される。なお、昇降装置60は、ボールネジに代えてシリンダを用いて実現されていてもよい。
【0033】
第2ハウジング30には、操作パネル32が設けられている。操作パネル32は、オペレータによって操作される装置である。オペレータは、操作パネル32を操作することにより、糸巻取機1に対して指示を行う。オペレータが行う指示としては、例えば、巻取りの開始、巻取りの停止、巻取条件の変更等である。
【0034】
ターレット板40は、円板形状の部材である。ターレット板40は、フレーム11に回転可能に取り付けられている。ターレット板40は、円板の中心を通る法線を回転軸として回転可能である。ターレット板40は、
図3に示すターレットモータ53により回転駆動される。ターレットモータ53は、制御装置50により制御される。
【0035】
ターレット板40のうち、円板の中心を挟んで対向する2箇所には、それぞれ第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42が設けられている。第1ボビンホルダ41には、第1ボビンホルダ41の軸方向に並べて複数の第1ボビン91を装着可能である。第2ボビンホルダ42には、第2ボビンホルダ42の軸方向に並べて複数の第2ボビン92を装着可能である。ターレット板40を回転させることにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更することができる。ターレット板40を回転させるときの回転中心の方向は、第1ボビンホルダ41又は第2ボビンホルダ42の軸方向と平行である。また、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更するときの(後述の第1状態から第2状態に切り替えるときの)ターレット板40の回転方向は、第1方向(後述の
図4における反時計回り)である。なお、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更可能であれば、ターレット板40に代えて別の装置を用いてもよい。
【0036】
第1ボビンホルダ41は、第1ボビンホルダ41の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能である。第1ボビンホルダ41は、
図3に示す第1ボビンホルダモータ54により回転駆動される。同様に、第2ボビンホルダ42は、第2ボビンホルダ42の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能である。第2ボビンホルダ42は、
図3に示す第2ボビンホルダモータ55により回転駆動される。第1ボビンホルダモータ54及び第2ボビンホルダモータ55は、制御装置50により制御される。第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造するときには、第1ボビンホルダ41及び第1ボビン91は、軸方向(第1ボビン91の軸方向、第1ボビンホルダ41の軸方向)を回転中心として第1方向に回転する。同様に、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造するときには、第2ボビンホルダ42及び第2ボビン92は、軸方向(第2ボビン92の軸方向、第2ボビンホルダ42の軸方向)を回転中心として第1方向に回転する。つまり、パッケージ94が製造されるときの第1ボビン91及び第2ボビン92の回転方向は、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更するときのターレット板40の回転方向と同方向である。
【0037】
図1では、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42が上下に並んだ状態が示されている。このとき、高い方にある第1ボビンホルダ41の位置が巻取位置であり、低い方にある第2ボビンホルダ42の位置が待機位置である。糸巻取機1は、巻取位置にある第1ボビンホルダ41に対して糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。
【0038】
また、所定量の糸93を巻き取って、第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻となった場合、第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第1状態から、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第2状態に切り替える。以下、
図4及び
図5を参照して、第1状態から第2状態に切り替える処理について説明する。
【0039】
図4の上図には、第1ボビンホルダ41の第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第1状態が記載されている。具体的には、トラバース装置21は、第1ボビン91に巻き取られる糸93をトラバースする。接触ローラ31は、第1ボビン91(パッケージ94)に接触し、トラバース装置21でトラバースされた糸93を第1ボビン91(パッケージ94)に送る。これにより、第1ボビン91に糸93が巻き取られてパッケージ94が製造される。
【0040】
第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻になった場合、第1状態から第2状態への切替えが行われる。なお、パッケージ94が満巻になったか否かの判定は、例えば、パッケージ94の巻き太りに伴う接触ローラ31等の位置を検出するセンサ又は糸93の巻取り長さを検出するセンサ等の検出値に基づいて行うことができる。
【0041】
第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻になった場合、昇降装置60は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を上昇させる(
図4の下図)。更に、ターレット板40は、ターレットモータ53を駆動することにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を切り替える(
図4の下図)。これにより、第2ボビンホルダ42が巻取位置に位置し、第1ボビンホルダ41が待機位置に位置する。このとき、第1ボビン91(パッケージ94)と第2ボビン92の間に糸93が掛け渡されることになる。以下では、この糸93を接続糸93aと称する。また、第1ボビンホルダ41又は第2ボビンホルダ42の軸方向で見たとき(例えば
図4の下図)、接続糸93aは、第2ボビンホルダ42の軸位置に対して水平方向の第1側(
図4の左側)に位置しており、かつ、第1ボビンホルダ41の軸位置に対して水平方向の第1側(
図4の左側)からパッケージ94に巻き付けられている。
【0042】
次に、糸93を第2ボビン92に巻き付ける処理が行われる。具体的には、昇降装置60は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を下降させる(
図5の上図)。更に、第2ボビンホルダモータ55は、第2ボビンホルダ42を回転駆動する(
図5の上図)。この状態で、切替装置70が接続糸93aに作用する(
図5の上図)。
【0043】
切替装置70は、第2ボビン92に対して接続糸93aを押し付ける方向に接続糸93aを押圧する。これにより、第2ボビン92に対する糸93の巻付角度が、切替装置70による押圧前よりも大きくなる。巻付角度とは、第2ボビンホルダ42の軸方向で見たときにおいて、糸93が第2ボビン92に巻き付いている部分の角度である。第2ボビン92への糸93の巻付けは、第2ボビン92の軸方向における糸層形成領域内で行う。糸層形成領域とは、第2ボビン92の軸方向において、糸93が巻き付けられてパッケージ94が製造される領域である。また、糸層形成領域よりも第2ボビン92の軸方向の外側にある領域を端部領域と称する。また、ボビンによっては端部領域に溝(スリット)が形成されており、この溝に糸を案内して糸をボビンに固定することがある。これに対し、本実施形態の第2ボビン92には、糸層形成領域にも端部領域にも溝は形成されていない。また、第2ボビン92は円筒形であり、溝がない領域においては、直径が一定となる。
【0044】
切替装置70は、接続糸93aを押圧する動作を行うための図略のアクチュエータ(シリンダ、ソレノイド、又はモータ等)を備える。切替装置70のアクチュエータは、制御装置50により制御される。切替装置70が接続糸93aを押圧した状態で、第1ボビンホルダモータ54は、第1ボビンホルダ41の回転速度を低下させる。これにより、第2ボビン92に糸93を巻き付けることができる。また、第2ボビン92に糸93が巻付くことにより、接続糸93aに掛かる張力が大きくなるため、接続糸93aが切れる。接続糸93aは切替装置70により屈曲させられているため、基本的には切替装置70との接触箇所と第1ボビン91との間で接続糸93aが切れる。切れた糸93のうち第2ボビンホルダ42側の糸93は、第2ボビン92に巻かれる。また、切れた糸93のうち第1ボビンホルダ41側の糸93は、パッケージ94に巻かれる。以上により、第1状態から第2状態への切替えが完了する。
【0045】
その後、糸巻取機1は、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する(
図5の下図)。また、満巻となって待機位置にある第1ボビンホルダ41のパッケージ94が回収され、第1ボビンホルダ41には、糸93が巻かれていない新たな第1ボビン91が装着される。
【0046】
次に、
図6を参照して、第1状態から第2状態への切替え時に生じ得るパッケージ不良について説明する。
【0047】
図6は、比較例の糸巻取機1である。符号170は、比較例の切替装置を示す。
図6の上図に示すように、第2ボビン92に糸93を巻き付けた後に、第1ボビンホルダ41の回転速度を低下させて、接続糸93aが切れるタイミングにおいて、切替装置170が接続糸93aに接触しない事態を考える。
【0048】
接続糸93aが切れた瞬間に、糸93に発生していた張力が無くなってしまい、糸93の移動が規制されないので、切れた第2ボビン92側の糸93の挙動が大きくなる。そのため、第2ボビン92側の糸93が第2ボビン92の不適切な位置(糸93の巻付け幅から外側に外れた位置)に巻き付いたり、糸93が絡んだ状態で第2ボビン92に巻き付いたりすることがある。この種の第2ボビン92に糸93を巻き付けてパッケージ94を製造した場合、不適切な位置に巻き付いた糸93や絡んだ糸93と、その後に巻き付けた糸93と、の間で絡みが発生し易くなる。糸93に絡みが生じている場合、解舒性が低いパッケージ94が製造される。
【0049】
本実施形態の切替装置70は、この事態を発生しにくくするための複数の糸ガイドを備える。以下、切替装置70の詳細な構成について説明する。
図7及び
図8に示すように、切替装置70は、第1ガイド部材71と、第2ガイド部材72と、を備える。第1ガイド部材71には、巻付ガイド81と、規制ガイド82と、テーパ部83と、が形成されている。第2ガイド部材72には、外れ抑制ガイド84と、傾斜部85と、が形成されている。
【0050】
第1ガイド部材71は、切替装置70のベースとなる部材である。第1ガイド部材71は、上述したアクチュエータの動力を受けて移動する部材である。
図8に示すように、第2ガイド部材72は、固定具111を用いて第1ガイド部材71に固定されている。詳細には、第1ガイド部材71にはネジ孔が形成されており、第2ガイド部材72には挿通孔が形成されている。第1ガイド部材71のネジ孔と第2ガイド部材72の挿通孔を併せてネジ等の固定具111を差し込んで締結することにより、第2ガイド部材72が第1ガイド部材71に固定される。固定方法はこれに限られず、ボルトとナットで固定してもよいし、リベット又は溶接で固定してもよい。第2ガイド部材72に第1ガイド部材71を固定することにより、第1ガイド部材71及び第2ガイド部材72(即ち、巻付ガイド81、規制ガイド82、及び外れ抑制ガイド84)は一体的に移動する。
【0051】
第1ガイド部材71及び第2ガイド部材72は、何れも板状の部材を加工して形成された部材である。第1ガイド部材71及び第2ガイド部材72は、厚み方向に並べて配置される。本実施形態では、糸93の走行方向において、第1ガイド部材71の上流側に第2ガイド部材72が配置される。そのため、巻付ガイド81と外れ抑制ガイド84は厚み方向に並べて配置される(特に、外れ抑制ガイド84が上流側に配置される)。また、規制ガイド82と外れ抑制ガイド84は厚み方向に並べて配置される(特に、外れ抑制ガイド84が上流側に配置される)。ただし、第2ガイド部材72は、第1ガイド部材71の下流側に配置されてもよい。
【0052】
上述したように、本実施形態の糸巻取機1では、第2ボビンホルダ42の軸方向に並べて複数の第2ボビン92が配置される。切替装置70は、1つの第2ボビン92に対して、1組の巻付ガイド81、規制ガイド82、及び外れ抑制ガイド84を備える。従って、本実施形態の切替装置70は、複数組の巻付ガイド81、規制ガイド82、及び外れ抑制ガイド84を備える。複数組の巻付ガイド81及び規制ガイド82は、1つの第1ガイド部材71にまとめて形成されていてもよいし、それぞれ個別の第1ガイド部材71に形成されていてもよい。複数の外れ抑制ガイド84は、1つの第2ガイド部材72にまとめて形成されていてもよいし、個別の第2ガイド部材72に形成されていてもよい。
【0053】
以下、第1ガイド部材71及び第2ガイド部材72に形成された各ガイドの詳細について説明する。
【0054】
図8及び
図9に示すように、第1ガイド部材71にはスリット状の凹部が形成されている。また、スリット状の凹部は、第2ボビン92の軸方向における糸層形成領域の中央と重なる位置に形成される。このスリット状の凹部のうち最も根元側(先端側の反対側)の輪郭部分が巻付ガイド81である。第1ガイド部材71に形成された巻付ガイド81は、第1状態から第2状態への切替時において、接続糸93aに接触して当該接続糸93aを押圧する。これにより、接続糸93aを第2ボビン92に巻き付けることができる。
【0055】
第1ガイド部材71に形成されたスリット状の凹部のうち、巻付ガイド81以外の部分(言い換えれば、対向する2つの縁部を有する部分)が規制ガイド82である。第1状態から第2状態への切替時において、巻付ガイド81は接続糸93aを押圧する。つまり、接続糸93aは、巻付ガイド81と規制ガイド82で形成される領域に位置する。第1状態から第2状態への切替時において、接続糸93aは巻付ガイド81と第1ボビン91との間で切れる。切れた第2ボビン92側の糸93は、規制ガイド82によって巻幅方向(第2ボビンホルダ42の軸方向)の移動が規制される。そのため、切れた糸93の挙動を小さくすることができる。その結果、糸93が第2ボビン92の適切な位置(糸93の巻付け幅に含まれる範囲)に巻き付くとともに、糸93が第2ボビン92に巻き付く際に糸93に絡みが発生しにくい。特に、切替装置70よりも第1ボビン91に近い部分で接続糸93aが切れた場合、切れた第2ボビン92側の糸93の挙動が大きくなり易いので、規制ガイド82の上記の効果を一層有効に発揮できる。
【0056】
テーパ部83は、規制ガイド82よりも先端側に形成されている。テーパ部83は切替装置70の先端に近づくにつれて広がるように傾斜するテーパ状である。言い換えれば、切替装置70の先端に近づくにつれてテーパ部83の幅が広がる。規制ガイド82はテーパ部83の根元側に接続されている。テーパ部83の幅は、テーパ部83のスリット幅よりも広い部分を含む。規制ガイド82が第2ボビン92の軸方向における糸層形成領域の中央に設けられているため、第1状態から第2状態への切替時において、トラバース装置21のトラバース動作により糸93がテーパ部83に導かれる。また、第1状態から第2状態への切替時において、トラバース装置21から糸93を外す場合には、糸93が自らの張力によりテーパ部83に導かれる。第1状態から第2状態への切替時において、接続糸93aはテーパ部83にガイドされて、規制ガイド82を経由し、巻付ガイド81に接触する。つまり、テーパ部83は、接続糸93aを巻付ガイド81に向けてガイドする機能を有する。なお、巻付ガイド81、規制ガイド82、又はテーパ部83の形状は本実施形態とは異なっていてもよい。また、第1ガイド部材71からテーパ部83を省略してもよい。
【0057】
図8及び
図10に示すように、第2ガイド部材72に形成される外れ抑制ガイド84は、巻付ガイド81と対向する部分を有する。言い換えれば、外れ抑制ガイド84は、巻付ガイド81と規制ガイド82で形成されるスリット状の凹部の開放側の一部を閉鎖する。
【0058】
外れ抑制ガイド84を備えることにより、第1状態から第2状態への切替時において、接続糸93aが切れた場合、第2ボビン92側の糸93が巻付ガイド81や規制ガイド82から外れにくくなる。その結果、第2ボビン92側の糸93が第2ボビン92の適切な位置(糸93の巻付け幅に含まれる範囲)に巻き付くとともに、第2ボビン92側の糸93が第2ボビン92に巻き付く際に第2ボビン92側の糸93に絡みが発生しにくい。特に、切替装置70よりも第1ボビン91に近い部分で接続糸93aが切れた場合、切れた第2ボビン92側の糸93の挙動が大きくなって規制ガイド82から外れ易いので、外れ抑制ガイド84の上記の効果を一層有効に発揮できる。
【0059】
また、第1状態から第2状態への切替時において、接続糸93aが切れた場合、切れた第2ボビン92側の糸93は第2ボビンホルダ42の回転の遠心力により、径方向外側に広がるように大きく挙動する可能性がある。この点、本実施形態では、外れ抑制ガイド84が配置されているため、径方向外側に広がる第2ボビン側の糸93は、外れ抑制ガイド84と干渉する。そのため、切れた第2ボビン側の糸93の径方向外側に広がりを抑えることができる。
【0060】
図8及び
図10に示すように、外れ抑制ガイド84の先端側には、傾斜部85が形成されている。傾斜部85は、根元側に近づくにつれて広がるように傾斜する形状である。傾斜部85は、傾斜に沿って接続糸93aを巻付ガイド81及び規制ガイド82に向けてガイドする。
【0061】
また、本実施形態の切替装置70(第1ガイド部材71)は、
図7に示すように、第2ボビンホルダ42の軸方向で見たときにおいて、円弧状の部分を有する。これにより、切替装置70の先端を第2ボビンホルダ42に近づけ易い。言い換えれば、第1ガイド部材71により巻幅方向の移動が規制される箇所と、切れた糸93が巻き取られる箇所と、が近い。そのため、糸93の挙動を小さくした状態で、糸93を第2ボビン92に巻き取ることができる。
【0062】
次に、
図11から
図14を参照して、変形例の糸巻取機1について説明する。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0063】
変形例の糸巻取機1は、巻付ガイド81が規制ガイド82とは分離して設けられている点において、上記実施形態とは異なる。
図11及び
図12に示すように、変形例の切替装置70は、更に第3ガイド部材73を備える。変形例では、第1ガイド部材71に規制ガイド82が形成されており、第2ガイド部材72に外れ抑制ガイド84が形成されており、第3ガイド部材73に巻付ガイド81が形成されている。第3ガイド部材73(巻付ガイド81)は、糸切れ前の糸93の走行方向において、第1ガイド部材71(規制ガイド82)の下流側に配置されている。そのため、規制ガイド82から第2ボビン92までの距離は、巻付ガイド81から第2ボビン92までの距離よりも短い。言い換えれば、巻付ガイド81よりも規制ガイド82の方が第2ボビン92に対して近くに位置している。
【0064】
また、第3ガイド部材73は、固定具112を用いて第1ガイド部材71に固定されている。第1ガイド部材71と第3ガイド部材73の固定構造は、第1ガイド部材71と第2ガイド部材72の固定構造と同様である。
図11に示すように、第3ガイド部材73は、折曲げ部を有する。これにより、第3ガイド部材73の根元側は第1ガイド部材71に接触し、第3ガイド部材73の先端側は第1ガイド部材71から離間する。また、第1ガイド部材71、第2ガイド部材72、及び第3ガイド部材73は、一体的に移動する。
【0065】
図12から
図14に示すように、変形例の巻付ガイド81は、第3ガイド部材73の先端に形成されており、先端側に近づくにつれて幅が広くなるV字状である。この構成により、切替装置70が接続糸93aを押圧する際に、接続糸93aを、V字溝の内部に向けてガイドできる。また、巻付ガイド81は、ボビン軸方向における糸層形成領域の中央と重なる位置に形成される。これにより、糸切れ時において、接続糸93aが巻付け幅から外れた位置に移動しにくい。
【0066】
本変形例では、第1ガイド部材71が接続糸93aに向けて移動することにより、第3ガイド部材73の巻付ガイド81が接続糸93aを押圧して、第2ボビン92に糸93を所定角度巻き付ける。その後、第1ボビンホルダ41の回転速度を低下させることにより糸道が変化する。また、糸道は、巻付ガイド81によって屈曲する。そのため、接続糸93aには、巻付ガイド81との接触箇所において強い力が掛かるため、接続糸93aは巻付ガイド81と第1ボビン91との間で切れる。
【0067】
切れた糸93は、上記実施形態と同様、第1ガイド部材71の規制ガイド82により、巻幅方向の移動が規制される。更に、第2ガイド部材72の外れ抑制ガイド84により、切替装置70から外れず、切れた糸93の径方向外側の広がりが抑えられる。以上により、糸93の挙動を小さくした状態で、糸93を第2ボビン92に巻き取ることができる。
【0068】
なお、巻付ガイド81の形状は一例であり、V字溝に代えて矩形溝状であってもよいし、溝が形成されていなくてもよい。
【0069】
以上に説明したように、上記実施形態の糸巻取機1は、第1ボビン91又は第2ボビン92を軸方向を中心として第1方向に回転させることにより第1ボビン91又は第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。糸巻取機1は、第1ボビンホルダ41と、第2ボビンホルダ42と、ターレット板40と、切替装置70と、を備える。第1ボビンホルダ41は、第1ボビン91を保持する。第2ボビンホルダ42は、第2ボビン92を保持する。ターレット板40は、第1ボビンホルダ41及び第2ボビンホルダ42の軸方向に平行な方向を回転中心として第1方向に回転することにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更することにより、第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第1状態と、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する第2状態と、を切り替える。切替装置70は、第1状態から第2状態への切替時において、第1ボビン91と第2ボビン92との間の糸93に作用する。切替装置70は、巻付ガイド81と、規制ガイド82と、外れ抑制ガイド84と、を備える。巻付ガイド81は、第1状態から第2状態への切替時において、第1ボビン91と第2ボビン92との間の接続糸93aを押圧して糸93を第2ボビン92に巻き付ける。規制ガイド82は、第1状態から第2状態への切替時において第1ボビン91と第2ボビン92との間の接続糸93aに糸切れが生じた場合に、前記第2ボビン92側の糸93に対して第2ボビンホルダ42の軸方向における移動範囲を規制する。外れ抑制ガイド84は、第1状態から第2状態への切替時において第1ボビン91と第2ボビン92との間の接続糸93aに糸切れが生じた場合に、第2ボビン92側の糸93が規制ガイド82から外れることを抑制する。
【0070】
巻付ガイド81や規制ガイド82からの糸外れを外れ抑制ガイド84が抑制するため、切替時において接続糸93aが切替装置70から外れにくい。そのため、切れた糸93の挙動を小さくできる。更に、切れた糸93の移動範囲が規制ガイド82によって規制されるため、切れた糸93の挙動を一層小さくできる。以上により、切れた糸93の絡みを抑えつつ、切れた糸93を第2ボビン92の適切な位置に巻き付けることができる。その結果、解舒性に優れたパッケージ94を製造できる。
【0071】
本実施形態の糸巻取機1において、規制ガイド82は、第2ボビンホルダ42の軸方向における糸93の移動範囲を規制するスリット状のガイドである。
【0072】
規制ガイド82の幅が小さいため、切れた糸93の移動範囲を規制する効果を高くすることができる。
【0073】
本実施形態の糸巻取機1において、外れ抑制ガイド84は、第1ボビン91と第2ボビン92との間の接続糸93aに糸切れが生じた場合に、第2ボビン92側の巻付ガイド81によってガイドされる接続糸93aが巻付ガイド81から離れる方向に移動する際に干渉するガイドである。
【0074】
これにより、巻付ガイド81や規制ガイド82(切替装置70)によって接続糸93aがガイドされる状態を維持することができる。
【0075】
本変形例の糸巻取機1において、規制ガイド82が巻付ガイド81とは分離して設けられている。巻付ガイド81よりも規制ガイド82の方が第2ボビン92に対して近くに位置している。
【0076】
巻付ガイド81よりも規制ガイド82の方が第2ボビン92に対して近くに位置しているため、糸切れが生じた場合において、第2ボビン92の近くに位置する規制ガイド82によって、第2ボビン92側の糸93を規制できる。
【0077】
本実施形態の糸巻取機1において、第2ボビン92の軸方向には、糸93が巻き付けられてパッケージ94が製造される糸層形成領域と、糸層形成領域よりも第2ボビン92の軸方向の外側にある端部領域と、が存在する。切替装置70は、第2ボビン92の糸層形成領域に糸93を巻き付ける。
【0078】
これにより、切替装置70は、糸93を端部領域まで案内することなく、糸93を第2ボビン92に巻き付けることができる。
【0079】
本実施形態の糸巻取機1において、切替装置70は、第2ボビン92のうち溝がなく直径が一定の領域に糸93を巻き付ける。
【0080】
これにより、切替装置70は、溝が形成されていない第2ボビン92にも糸を巻き付けることができる。
【0081】
本実施形態の糸巻取機1は、弾性糸としての糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。
【0082】
これにより、弾性糸を巻き取ってパッケージ94を製造するタイプの糸巻取機1に本技術が適用される。
【0083】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0084】
上記実施形態では、満巻のパッケージ94を保持する第1ボビンホルダ41が待機位置、かつ、新たにパッケージ94を作成する第2ボビンホルダ42が巻取位置に位置する状態で、糸93を第1ボビンホルダ41から第2ボビンホルダ42に巻き替える。ただし、糸93を巻き替えるときの第1ボビンホルダ41、第2ボビンホルダ42の位置はこれに限られない。
【0085】
上記実施形態のトラバース装置21はカムドラム式であるが、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることが可能であれば異なる構成であってもよい。例えば、トラバース装置21に代えて、ベルト式のトラバース装置を用いることもできる。
【符号の説明】
【0086】
1 糸巻取機
40 ターレット板(ボビンホルダ移動機構)
41 第1ボビンホルダ
42 第2ボビンホルダ
70 切替装置
81 巻付ガイド
82 規制ガイド
84 外れ抑制ガイド
91 第1ボビン
92 第2ボビン
94 パッケージ