(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122854
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199830
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0026712
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒュン スーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ハン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジ ス
(72)【発明者】
【氏名】リョー、ヒェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温及び高圧環境における絶縁抵抗の劣化を抑制しながらも誘電率を確保できる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、本体の外部に配置されて内部電極と連結され、下地電極層131a、132a及び下地電極層上に配置されるめっき層132b、132bを含む外部電極とを有する。誘電体層は、第1方向に積層された第1層111a及び第2層111bを含み、第1層及び第2層はそれぞれBa、Ti及びSiを含み、第1層に含まれたTiに対するSiのモル比をS1、第2層に含まれたTiに対するSiのモル比をS2とするとき、1.5≦S2/S1≦3.0を満たす。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は前記第1方向に積層された第1層及び第2層を含み、前記第1層及び前記第2層はそれぞれBa、Ti及びSiを含み、
前記第1層に含まれたTiに対するSiのモル比をS1、前記第2層に含まれたTiに対するSiのモル比をS2とするとき、1.5≦S2/S1≦3.0を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG1、前記第2層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG2とするとき、G1>G2を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記G1及び前記G2は、1.2≦G1/G2≦2.0を満たす、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1層に含まれたTiに対するBaのモル比をB1、前記第2層に含まれたTiに対するBaのモル比をB2とするとき、1.002≦B2/B1≦1.005を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1層及び前記第2層はそれぞれ希土類元素をさらに含み、
前記第1層に含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR1、前記第2層に含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR2とするとき、0.005≦R1≦0.02及び/又は0.005≦R2≦0.02を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記希土類元素は、Dy、Ho、Tb、Gd、Er、Y、Ybのうち少なくとも一つを含む、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層は、Al及びMgのうち一つ以上をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の平均厚さは、0.1μm以上6.0μm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1層及び第2層は、それぞれ前記第1方向と交差する第2方向に延長されて側面が前記本体の外部に露出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第2層の少なくとも一部は、前記第2方向に前記内部電極の一側面をカバーする、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記第1方向に積層された第1層及び第2層を含み、前記第1層及び前記第2層は互いに異なる含量のSiを含み、
前記第1層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG1、前記第2層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG2とするとき、1.2≦G1/G2≦2.0を満たす、積層型電子部品。
【請求項12】
前記第1層に含まれたTiに対するSiのモル比をS1、前記第2層に含まれたTiに対するSiのモル比をS2とするとき、S2>S1を満たす、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第1層に含まれたTiに対するBaのモル比をB1、前記第2層に含まれたTiに対するBaのモル比をB2とするとき、1.002≦B2/B1≦1.005を満たす、請求項11又は12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第1層及び前記第2層はそれぞれ希土類元素をさらに含み、
前記第1層に含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR1、前記第2層に含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR2とするとき、0.005≦R1≦0.02及び/又は0.005≦R2≦0.02を満たす、請求項11または12に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
一般的に、積層セラミックキャパシタの本体は、BaTiO3系を主成分として含む誘電体層と内部電極とを交互に積層することにより形成することができる。このような本体は、還元雰囲気で焼成されるべきであり、このとき誘電体層を形成する材料は耐還元性を有しなければならない。
【0005】
しかし、酸化物の固有特性により還元雰囲気での焼成時に酸化物の内部の酸素が抜けて酸素空孔(oxygen vacancy)と電子が発生することがあり、高温及び高圧条件で上記酸素空孔の移動により積層セラミックキャパシタの絶縁抵抗が劣化するという問題点が発生することがある。
【0006】
このような酸素空孔の移動を減少させて積層セラミックキャパシタの絶縁抵抗の劣化を防止するために、希土類元素(rare earth element)を添加して酸素空孔の発生及び移動を抑制する方案を考えることができる。但し、より大きな容量を有するために誘電体層が薄層化され、積層セラミックキャパシタの使用環境がさらに過酷になるにつれて、高温及び高圧環境における絶縁抵抗の劣化を抑制するとともに、誘電率を確保することができる積層セラミックキャパシタに対する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、高温及び高圧環境における絶縁抵抗の劣化を抑制しながらも誘電率を確保することができる積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1方向に積層された第1層及び第2層を含み、上記第1層及び第2層はそれぞれBa、Ti及びSiを含み、上記第1層に含まれたTiに対するSiのモル比をS1、上記第2層に含まれたTiに対するSiのモル比をS2とするとき、1.5≦S2/S1≦3.0を満たす積層型電子部品を提供する。
【0010】
本発明の他の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1方向に積層された第1層及び第2層を含み、上記第1層及び第2層は互いに異なる含量のSiを含み、上記第1層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG1、上記第2層に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをG2とするとき、1.2≦G1/G2≦2.0を満たす積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、高温及び高圧環境における絶縁抵抗の劣化を抑制しながらも、誘電率を確保することができる積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図2の切断断面を部分的に示すものであって、誘電体層の詳細な構成を説明するための概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0014】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0016】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図4は、
図2の切断断面を部分的に示すものであって、誘電体層の詳細な構成を説明するための概略的な断面図であり、
図5は、
図4のK1領域の拡大図である。
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含む。
【0019】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0020】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。より具体的に、本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含んで容量が形成される容量形成部Acを含むことができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0021】
本体110は、第1方向に対向する第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面3、4、第1面~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0022】
誘電体層111は、上記第1方向に積層された第1層111a及び第2層111bを含むことができる。第1層及び第2層111a、111bはそれぞれ上記第1方向と交差する第2方向に延長され、側面が本体110の外側に露出することができる。すなわち、第1層及び第2層111a、111bの側面は、第3面及び第4面3、4を介して本体110の外側に露出することができる。また、第1層及び第2層111a、111bはそれぞれ、上記第1方向及び第2方向と交差する第3方向に延長されることにより、側面が第5面及び第6面5、6を介して本体110の外側に露出することもできる。
【0023】
図4に示すように、第2層111bの少なくとも一部は、上記第2方向に内部電極121、122の一側面をカバーすることができる。また、容量形成部Acは、上記第1方向を基準として上部から下部に第1内部電極121、第1層111a、第2層111b及び第2内部電極122が順次積層されていてもよい。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、容量形成部Acは、上記第1方向を基準として上部から下部に第1内部電極121、第2層111b、第1層111a及び第2内部電極122が順次積層されていてもよく、この場合、第1層111aの少なくとも一部が上記第2方向に内部電極121、122の一側面をカバーしてもよい。
【0024】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤、添加剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することにより形成することができる。また、誘電体層111は、第1層111aを形成する第1セラミックグリーンシートと第2層111bを形成する第2セラミックグリーンシートとを順次積層した後、焼成することにより形成することができる。セラミック粉末は十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料等を使用することができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。また、後述するように、第1セラミックグリーンシート及び第2セラミックグリーンシートに添加される様々な添加剤の含量は、積層型電子部品の信頼性及び誘電率特性を実現するために互いに異なってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1層111a及び第2層111bはそれぞれBa、Ti及びSiを含むことができる。また、第1層111a及び第2層111bは、互いに異なる含量のSiを含むことができる。例えば、第1層111aに含まれたTiに対するSiのモル比をS1、第2層111bに含まれたTiに対するSiのモル比をS2とするとき、S2>S1を満たすことができる。
【0026】
Siは、液相焼結に必要なガラスを形成する主な元素の一つであって、誘電体層に含まれたSiの含量は焼結中の物質移動に関与する液相の総含量に影響を及ぼすことができる。すなわち、Siは焼結助剤としての機能を果たし、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の緻密度を向上させ、高温及び高圧環境で積層型電子部品の絶縁抵抗が劣化することを防止することができる。
【0027】
これにより、誘電体層に含まれたSiの含量が低すぎると、誘電体結晶粒の緻密化が進行せず、積層型電子部品の絶縁抵抗が劣化することがあるが、誘電体層に含まれたSiの含量が高すぎると、過度な液相生成により誘電体結晶粒 の粒成長が行われないか、又は誘電率が低下するという副効果が発生することがある。
【0028】
したがって、本発明の一実施形態によれば、誘電体層に含まれたSiの含量を適切に制御するために、誘電体層111がS2>S1を満たす第1層111a及び第2層111bを含むことにより、第2層111bは酸素空孔の移動を抑制して積層型電子部品の信頼性を改善する役割を果たしながらも、第1層111aは第2層111bによる誘電率の低下を防止する役割を果たすことができる。
【0029】
一方、S1に対するS2の比率は、1.5≦S2/S1≦3.0を満たすことが好ましい。1.5≦S2/S1≦3.0を満たすとき、第2層111bに含まれた誘電体結晶粒の緻密化及び粒成長を同時に実現することができる。S2/S1が1.5未満である場合、本発明の酸素空孔の移動抑制及び信頼性向上効果が僅かである可能性がある。また、S2/S1が3.0を超える場合、第2層111bに含まれた誘電体結晶粒の粒成長が行われないか又は緻密度が低下することで、誘電率が低下したり、高温耐電圧特性が低下したりするおそれがある。S1及びS2を制御する方法は特に限定する必要はないが、第1及び第2セラミックグリーンシートにそれぞれ添加されるSi元素の炭酸塩、酸化物及び/又はガラスの含量を調節することにより上記S1及びS2を制御することができる。
【0030】
一実施形態において、第1層111aに含まれた誘電体結晶粒11aの平均サイズをG1、第2層111bに含まれた誘電体結晶粒11bの平均サイズをG2とするとき、G1>G2を満たすことができる。すなわち、第2層111bは、第1層111aより結晶粒界の分率が高くてもよく、これによって界面での電位障壁(potential barrier)を利用して酸素空孔の移動を抑制することにより、積層型電子部品の絶縁抵抗が劣化することを防止することができる。従来の場合、誘電体層が一つの層からなり、結晶粒界の分率が高くなるほど積層型電子部品の誘電率が低下するという問題点が発生することがあるが、本発明の一実施形態によれば、第1層111aは積層型電子部品の誘電率を確保する役割を果たし、第2層111bは積層型電子部品の絶縁抵抗が劣化することを防止する役割を果たすことができる。
【0031】
一方、G2に対するG1の比率は、1.2≦G1/G2≦2.0を満たすことが好ましい。G1又はG2が小さすぎると、積層型電子部品の誘電率を確保できず、G1又はG2が大きすぎると、過焼成による収縮の増加により、クラックや変形不良などが発生するか、又は絶縁抵抗が劣化するという問題点が発生するおそれがある。すなわち、G2が1.2≦G1/G2≦2.0を満たすとき、積層型電子部品における絶縁抵抗劣化防止効果及び誘電率改善効果が顕著となり得る。
【0032】
上記G1及びG2は、例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、第1層111a及び第2層111bを走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。
【0033】
上記G1及びG2の制御する方法は特に限定する必要はない。例えば、上記第1層に含まれたTiに対するBaのモル比をB1、上記第2層に含まれたTiに対するBaのモル比をB2とするとき、B2>B1を満たすことにより第1層111aに含まれた誘電体結晶粒11aに対する第2層111bに含まれた誘電体結晶粒11bの粒成長を抑制することができ、第2層111bに含まれた誘電体結晶粒11bの散布を制御することにより、積層型電子部品の耐電圧特性及び信頼性を向上させることができる。
【0034】
一方、上記B1に対するB2の比率は、1.002≦B2/B1≦1.005を満たすことが好ましい。B2/B1が1.002未満である場合、第2層111bに含まれた誘電体結晶粒11bの粒成長制御効果が僅かである可能性がある。また、B2/B1が1.005を超える場合、第2層111b内にポア(pore)が増加して緻密度が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0035】
上記B1及びB2を調節する方法は特に限定する必要はないが、例えば、第1及び第2セラミックグリーンシートにBaを含む酸化物及び/又は炭酸塩などのようなBa添加剤を添加することにより、Tiに対するBaのモル比を増加させることができる。
【0036】
一実施形態において、第1層111a及び第2層111bはそれぞれ希土類元素を含み、第1層111aに含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR1、第2層111bに含まれたTiに対する希土類元素のモル比をR2とするとき、0.005≦R1≦0.02及び/又は0.005≦R2≦0.02を満たすことができる。上記R1及び/又はR2が上記条件を満たすことで酸素空孔の移動を抑制し、積層型電子部品の高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。ここで、希土類元素は、例えば、Dy、Ho、Tb、Gd、Er、Y、Ybのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0037】
一実施形態において、誘電体層111は、Al及びMgのうち一つ以上を含むことができる。例えば、第1層111a及び第2層111bはそれぞれAl及びMgのうち一つ以上を含むことができる。Al及びMgは、Ba及びSiと共に液相焼結に関与する主要な元素であって、誘電体層111の焼成温度を制御する役割を果たすことができる。
【0038】
第1層111a及び第2層111bに含まれた各元素(Ba、Ti、Si及び希土類元素等)の含量とS1、S2、B1、B2、R1及びR2は以下の方法により測定することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、本体110の第3方向の中央部まで研磨して第1方向及び第2方向の断面を露出させた後、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装備を用いて誘電体層111の薄片化された分析試料を準備する。その後、薄片化された試料を、Arイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去した後、STEM-EDSを用いて得られたイメージで各元素のマッピング(mapping)と定量分析を行う。この場合、各元素の定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)で得られることができるが、これをモル含量(mol%)に換算して表すことができる。最後に、Tiに対するSi、Ba及び希土類元素のモル比を測定することにより、上記S1、S2、B1、B2、R1及びR2を測定することができる。
【0039】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はないが、例えば0.1μm以上6.0μm以下であってもよい。ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向のサイズを意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0040】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されてもよく、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122とが誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されてもよい。第1内部電極121及び第2内部電極122は、それらの間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0041】
第1内部電極121は、第4面4と離隔し、第3面3に一端が露出するように配置されることができる。また、第2内部電極122は、第3面3と離隔し、第4面4に一端が露出するように配置されることができる。
【0042】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はないが、例えば、0.4μm以上1.0μm以下であってもよい。内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味する。ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0045】
本体110は、容量形成部Acの第1方向に対向する両端面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ構成を有することができる。
【0046】
カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のためにカバー部112、113の平均厚さは20μm以下であってもよい。ここで、カバー部112、113の平均厚さは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0047】
カバー部112、113の平均厚さは、カバー部112、113の第1方向への平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0048】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に対向する両端面上にそれぞれ配置される第1マージン部114及び第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110を第1方向及び第3方向に切断した断面における内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0049】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0050】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除いて、内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成されたものであってもよい。あるいは、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に対向する両端面上に積層することにより、マージン部114、115を形成することもできる。
【0051】
マージン部114、115の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さは20μm以下であってもよい。ここで、マージン部114、115の平均厚さは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0052】
マージン部114、115の平均厚さは、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0053】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されることができ、上記第1面、第2面、第5面及び第6面の一部上に延長されることができる。また、外部電極131、132は、第1内部電極121と連結される第1外部電極131、及び第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0054】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されて内部電極121、122と連結される下地電極層131a、132a、及び上記下地電極層上に配置されるめっき層132a、132bを含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、第3面に配置されて第1内部電極121と連結される第1下地電極層131a、及び上記第1下地電極層上に配置される第1めっき層131bを含み、第2外部電極132は、第4面に配置されて第2内部電極122と連結される第2下地電極層132a、及び上記第2下地電極層上に配置される第2めっき層132bを含むことができる。
【0055】
下地電極層131a、132aは、例えば、金属及びガラスを含む第1電極層を含むことができる。上記第1電極層は、本体110の第3面及び第4面3、4を金属及びガラスを含む導電性ペーストにディッピング(dipping)した後に焼成することによって形成することができる。上記第1電極層に含まれる金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/又はこれらを含む合金等を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
下地電極層131a、132aは、例えば、金属及び樹脂を含む第2電極層を含むことができる。上記第2電極層は、金属及び樹脂を含むペーストを塗布及び硬化する方法で形成されることができる。第2電極層131b、132bに含まれる金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/又はこれらを含む合金などを含むことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂としては、絶縁性樹脂を使用することができるが、特に限定されない。例えば、樹脂はエポキシ樹脂を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
下地電極層131a、132aは、上記第1電極層からなる1つの層であってもよく、上記第2電極層からなる1つの層であってもよく、上記第1電極層及び第2電極層が順次積層された形態であってもよい。
【0058】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させることができる。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及び/又はこれらを含む合金などを含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。めっき層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層又は錫(Sn)めっき層であってもよく、ニッケル(Ni)めっき層及び錫(Sn)めっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/又は複数の錫(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0059】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0060】
(実験例)
まず、BaTiO3系粉末、有機溶剤、BaCO3、SiO2などを含む添加剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥することによりセラミックグリーンシートを設けた。その後、Ni粉末、有機溶剤及びバインダーを含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷することで、内部電極パターンを形成した。上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数個積層した後、焼成して誘電体層及び内部電極を含む試料番号1の本体を作製した。このとき、試料番号1の誘電体層は、Tiに対するSiのモル比がS1で、Tiに対するBaのモル比がB1である第1層のみで構成された。
【0061】
次に、同様の方法で試料番号2の本体を形成し、且つセラミックスラリーに添加されるBaCO3及びSiO2の含量を調節することにより、試料番号2の誘電体層は、Tiに対するSiのモル比が1.5×S1以上3.0×S1以下となるようにし、Tiに対するBaのモル比が1.002×B1以上1.005×B1以下となるようにした。すなわち、試料番号2の誘電体層は、上述した第2層のみで構成された。
【0062】
また、試料番号1と同様の方法で試料番号3~5の本体を形成し、且つセラミックスラリーに添加されるBaCO3及びSiO2の含量を調節し、試料番号3~5の誘電体層のTiに対するSiのモル比及びTiに対するBaのモル比が下記表1に記載の値を有するように調節した。
【0063】
その後、試料番号1~5の本体を、Cu及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピングした後、焼成して下地電極層を形成し、上記下地電極層にめっき層を形成してサンプルチップを完成した。
【0064】
次に、各試料番号当たり40個のサンプルチップに対して温度125℃、電圧12.6Vの条件で加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)を行い、故障が発生する時間を測定して平均故障時間(MTTF:Mean Time to Failure)算出し、LCR測定器(LCR meter)を用いて各試料番号の誘電率を測定し、表1に記載した。
【0065】
【0066】
上記表1を参照すると、試料番号1は、他の試料番号に比べて誘電率には優れるものの、信頼性がやや不十分であることが確認できる。試料番号2は、試料番号1に比べて誘電率にはやや劣るものの、他の試料番号に比べて信頼性に優れることが確認できる。これは、第2層に含まれたTiに対するSiのモル比が1.5×S1以上3.0×S1以下を満たし、第2層に含まれたTiに対するBaのモル比が1.002×B1以上1.005×B1以下を満たすことにより、第2層に含まれた誘電体結晶粒の緻密化及び粒成長の抑制を実現することができ、結果的に、酸素空孔の移動を防止して信頼性が改善されたと予想される。
【0067】
一方、試料番号3の誘電体層は、Tiに対するBaのモル比が1.002×B1未満と、誘電体結晶粒の粒成長制御効果が僅かであり、試料番号2に比べて信頼性に劣ることが確認できる。また、試料番号4の誘電体層は、Tiに対するBaのモル比が1.005×B1超であって、ポアの増加により信頼性が劣り、過度な粒成長抑制により誘電率が低下することが確認できる。試料番号5の誘電体層は、Tiに対するSiのモル比が3.0×S1超と過度であり、緻密度が低下して信頼性が急激に低下することが確認できる。
【0068】
すなわち、上記表1を参照すると、誘電体層を、誘電率に最も優れた第1層及び信頼性に最も優れた第2層で構成することにより、積層型電子部品の信頼性を改善しながらも誘電率の低下を防止できることが確認できる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0070】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0071】
なお、第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素とを区分するために使用されるものであって、当該構成要素の順序及び/又は重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
111a:第1層
111b:第2層
11a、11b:誘電体結晶粒
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:下地電極層
131b、132b:めっき層