(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122859
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】コイル内径垂れ矯正部材及び金属帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 47/26 20060101AFI20240902BHJP
B21C 47/18 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B21C47/26 D
B21C47/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207349
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2023029488
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】田染 智也
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英二
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026CB02
4E026EA17
(57)【要約】
【課題】ペイオフリールのリールに短時間で取り付け及び取り外しができるとともに、マンドレルに金属帯コイルを装入する際に、金属帯コイルに疵や損傷を与えることなく、金属帯コイルの内径垂れを矯正することができるコイル内径垂れ矯正部材及び金属帯の製造方法を提供する。
【解決手段】コイル内径垂れ矯正部材10は、金属帯コイル20を先端11bからマンドレル2に装入する際に内径垂れ21を徐々に押し広げて矯正する矯正部11と、リール3に嵌合する嵌合部12と、矯正部11をリール3に対して吸着させる1又は複数の永久磁石14とを備える。永久磁石14の合計吸着力が49.0N以上147.1N以下である。矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置と永久磁石14の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離dが30mm以上である。嵌合部12は、リール3の外径ODより1mm以上10mm以下大きい内径IDを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯コイルが支持されるマンドレル及びリールを有するペイオフリールのリールに装着して、金属帯コイルの内径部側に発生した内径垂れを防止するコイル内径垂れ矯正部材であって、
先端から根元端に向けて徐々に径が拡大するように傾斜する傾斜面を有し、前記金属帯コイルを前記先端から前記マンドレルに装入する際に前記内径垂れを徐々に押し広げて矯正する矯正部と、
該矯正部の根元側の端面に固定され、前記リールに装着する際に、円柱形状の前記リールに嵌合する円筒形状の嵌合部と、
前記矯正部の根元側の端面に固定され、前記リールに装着する際に、前記矯正部を前記リールに対して吸着させる1又は複数の永久磁石とを備え、
前記1又は複数の永久磁石の合計吸着力が49.0N以上147.1N以下であるとともに、前記矯正部の根元側の端面における最大径位置と前記1又は複数の永久磁石の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離が30mm以上であり、
前記嵌合部は、前記リールの外径より1mm以上10mm以下大きい内径を有することを特徴とするコイル内径垂れ矯正部材。
【請求項2】
前記矯正部は、円錐形状、円錐台形状、球欠形状、及び球台形状のうちのいずれかの形状を有することを特徴とする請求項1に記載のコイル内径垂れ矯正部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル内径垂れ矯正部材を用いて金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入した後、前記マンドレルに装入された前記金属帯コイルの巻き戻しを行うコイル巻き戻し工程を含むことを特徴とする金属帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイオフリールのリールに装着して、金属帯コイルの内径部側に発生した内径垂れを矯正するコイル内径垂れ矯正部材及び金属帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル状に巻き取った金属帯を払い出すペイオフリールのマンドレルに金属帯コイルを装入する際に、金属帯コイルの内径側において金属帯コイルの端部が垂れ下がる内径垂れが発生していることがある。当該内径垂れが発生していると、それが障害となって金属帯コイルをペイオフリールのリールからマンドレルに装入することが困難となり、当該内径垂れがマンドレルに干渉して金属帯コイルに損傷を与えたり、金属帯コイルがマンドレルに収まらずに落下したりする危険性がある。
【0003】
この内径垂れは、特に金属帯の剛性が小さい薄物材で発生しやすい。そして、従来は、内径垂れのある金属帯コイルについては、調芯後に金属帯コイルを一旦ペイオフリールに近接させておき人手で内径部数巻きをペイオフリール側に押出して橋渡ししておく。そして、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入したり、金属帯をペイオフリールのマンドレルに装入する前に、内径垂れの部分を切除しておくといった臨時作業が発生し、コイル替え作業時間ロスや歩留まりロスを発生させていた。
金属帯コイルの内径垂れを防止する方法については、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1に示す金属ストリップコイルの始終端テープでは、コイルの始終端を巻き締めして垂下りがないように、これをテープで貼着するようにしている。
また、特許文献2に示す鋼帯コイルの尾端止め装置では、鋼帯コイルの最内巻き部の近傍の板間に帯鋼を挿入し、帯鋼を剪断してからこの帯鋼を鋼帯コイルの内径側に折り曲げてクリップ止めするようにしている。
【0005】
また、特許文献3に示すコイル巻き始め端の弛み止め装置では、冷延コイルの内径部の巻き始め端を押さえロールで内径面に押し付けて密着させた後、この部分にU字形クリップを挿入して挟み保持するようにしている。
また、特許文献4に示す金属ストリップコイル内径自動溶接装置では、金属ストリップコイルの内巻垂下り先端部をコイルの内側から押さえて、コイルの内側先端部に金属製リボンを当てて溶接機で仮止めするようにしている。
【0006】
また、特許文献5に示す鋼板コイルの巻初め端溶接方法では、鋼板の巻初め端部の板幅方向の両側端における合わせ目を、リール上で溶接するようにしている。
また、特許文献6に示す金属ストリップコイルの巻始め端部の弛み止め方法では、コイルの巻始め端部を検出し、巻始め端部裏面または巻始め端部に重なり合うコイル内径面に接着剤を塗布した後、コイルの巻始め端部をコイルの内径側に押圧して固着するようにしている。
【0007】
また、特許文献7に示す金属ストリップコイルの仮止め方法では、金属ストリップを巻取りリールで巻き取る際に、巻取られるコイルの最内径部に相当する金属ストリップの上面とコイルの最内径部に接して巻取られる金属ストリップの下面の一方の面に接着剤を塗布して巻取るようにしている。
また、特許文献8に示すペイオフリールへのコイル装着方法では、内径だれ検出センサでコイの内径だれ量を検出し、検出した内径だれ量にもとづいてコイルに装入可能なペイオフリールのリール径を演算する。そして、演算したリール径となるようにペイオフリールのリールを拡縮してコイルに装入するようにしている。
【0008】
また、特許文献9に示すコイル挿入方法では、コイル内径保持治具を鋼帯コイル内に装着した状態で、鋼帯コイルをペイオフリールに挿入することによってコイル内径部に発生する内径垂れを修正しながら挿入するようにしている。
更に、特許文献10に示すコイル挿入方法では、ゴムスリーブを介したリールドラムの先端にリールドラムキャップを装着した状態で、鋼帯コイルをペイオフリールに挿入することによってコイル内径部に発生した内径垂れを修正しながら挿入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1-278913号公報
【特許文献2】特開平1-170519号公報
【特許文献3】特開平1-266918号公報
【特許文献4】特公平3-49670号公報
【特許文献5】特開平1-309722号公報
【特許文献6】特開平5-38520号公報
【特許文献7】特開平2-224816号公報
【特許文献8】特開2000-254726号公報
【特許文献9】特開2006-167723号公報
【特許文献10】特開2008-246544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この従来の特許文献1に示す金属ストリップコイルの始終端テープにあっては、テープ片が通板ロール等に付着し、押疵や異物付着等の金属ストリップコイルの品質欠陥に繋がるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に示す鋼帯コイルの尾端止め装置及び特許文献3に示すコイル巻き始め端の弛み止め装置にあっては、クリップがコイルカーピットに落ち込み回収が困難であるため、コイルを搬送するコイルカー設備のトラブルに繋がるという問題があった。また、クリップが金属帯搬送路上に落下した場合は、押疵や摺疵等の品質欠陥に繋がるという問題があった。
【0012】
また、特許文献4に示す金属ストリップコイル内径自動溶接装置及び特許文献5に示す鋼板コイルの巻初め端溶接方法では、コイルの内側を溶接する工程とコイルの溶接部の近傍を切除する工程とが必要となる。このため、これらの工程を含めると短時間でコイルをペイオフリールに挿入したりペイオフリールから抜き出したりする作業を実施することが難しく、実用性に乏しかった。また、ラインでコイルを巻き戻す際にペイオフリールに金属帯が残り、歩留まりの大幅な劣化が生じる、残った金属帯の処置に手間と時間のロスが発生する、溶接のための専用の装置が必要となりそのコストが発生するという問題があった。
【0013】
また、特許文献6に示す金属ストリップコイルの巻始め端部の弛み止め方法及び特許文献7に示す金属ストリップコイルの仮止め方法では、接着剤が通板ロール等に付着し押疵や異物付着等の品質欠陥に繋がるうえ、接着剤が強力でペイオフリール尻抜け時にも剥がれない場合は前述の溶接留めと同様の欠点が生じるという問題があった。
また、特許文献8に示すペイオフリールへのコイル装着方法では、リール縮小径には限界があり、内径垂れ量が大きくなると(薄手の金属帯では頻繁に発生)、対応することができないという問題があった。つまり、内径垂れ量の大きなコイルでは効果が不十分であり、適用対象が内径垂れ量の小さなコイルに限定されていた。また、内径垂れ量を自動測定しリール径を拡縮するための専用の装置が必要となり、装置導入のコストが発生するという問題があった。
【0014】
また、特許文献9に示すコイル挿入方法では、人力で片側の内径垂れを矯正してコイル内径保持治具を鋼帯コイル内に嵌め込むため、コイルの内径垂れ量が大きいとコイル内径保持治具を嵌め込むことが困難であり、内径垂れを矯正できないという問題があった。また、コイル内径保持治具が楕円形状であることから、コイルの内径垂れの矯正が不十分であると、内径垂れの部分とリールが接触して疵を発生させる場合があった。また、最終的にコイル内径保持治具がコイル外に排出されて回収でき繰返し使用できるとしているが、そのままでは散乱し、その都度、回収作業が発生するという問題があった。
【0015】
一方、特許文献10に示すコイル挿入方法では、特許文献1乃至9で説明した問題は解決できる。
しかしながら、特許文献10に示すコイル挿入方法にあっては、リールドラムキャップをリールドラムに装着するに際し、数個のビス、ブロック等を用いてリールドラムキャップをリールドラムに固定している。このため、リールドラムキャップをリールドラムから取り外すにはドライバー等の工具が必要となるとともに、リールドラムキャップの取外し作業及び取付作業に時間がかかっていた。このため、内径が異なるコイルをペイオフリールに挿入して巻き戻しを行うに際し、リールドラムキャップの取外し作業及び取付作業に時間がかかることから生産量が大幅に低下するという問題があった。これにより、特許文献10に示すコイル挿入方法は、コイルの内径が頻繁に変化しリールドラムキャップの取外しを頻繁に行う必要がある製造ラインでは実用性に乏しかった。
【0016】
また、特許文献10に示すコイル挿入方法では、数個のビス、ブロック等を用いてリールドラムキャップをリールドラムに固定していることから、リールドラムとリールドラムキャプとの芯がずれることがある。この場合、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに挿入する際に、金属帯コイルの内径部とリールドラムキャプとが接触し、金属帯コイルの内部に疵や損傷を与えるという問題があった。
【0017】
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ペイオフリールのリールに短時間で取り付け及び取り外しができるとともに、ペイオフリールのマンドレルに金属帯コイルを装入する際に、金属帯コイルに疵や損傷を与えることなく、金属帯コイルの内径部側に発生した内径垂れを矯正することができるコイル内径垂れ矯正部材及び金属帯の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル内径垂れ矯正部材は、金属帯コイルが支持されるマンドレル及びリールを有するペイオフリールのリールに装着して、金属帯コイルの内径部側に発生した内径垂れを防止するコイル内径垂れ防止部材であって、先端から根元端に向けて徐々に径が拡大するように傾斜する傾斜面を有し、前記金属帯コイルを前記先端から前記マンドレルに装入する際に前記内径垂れを徐々に押し広げて矯正する矯正部と、該矯正部の根元側の端面に固定され、前記リールに装着する際に、円柱形状の前記リールに嵌合する円筒形状の嵌合部と、前記矯正部の根元側の端面に固定され、前記リールに装着する際に、前記矯正部を前記リールに対して吸着させる1又は複数の永久磁石とを備え、前記1又は複数の永久磁石の合計吸着力が49.0N以上147.1N以下であるとともに、前記矯正部の根元側の端面におけるの最大径位置と前記1又は複数の永久磁石の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離が30mm以上であり、前記嵌合部は、前記リールの外径より1mm以上10mm以下大きい内径を有することを要旨とする。
【0019】
また、本発明の別の態様に係る金属帯の製造方法は、前述のコイル内径垂れ矯正部材を用いて金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入した後、前記マンドレルに装入された前記金属帯コイルの巻き戻しを行うコイル巻き戻し工程を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコイル内径垂れ矯正部材及び金属帯の製造方法によれば、ペイオフリールのリールに短時間で取り付け及び取り外しができるとともに、ペイオフリールのマンドレルに金属帯コイルを装入する際に、金属帯コイルに疵や損傷を与えることなく、金属帯コイルの内径部側に発生した内径垂れを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル内径垂れ矯正部材を装着したペイオフリールの一部を金属帯コイルの一部とともに示す概略図であり、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入する前の状態を示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコイル内径垂れ矯正部材を装着したペイオフリールの一部を金属帯コイルの一部とともに示す概略図であり、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入した後の状態を示している。
【
図3】コイル内径垂れ矯正部材をペイオフリールのリールに装着した状態を示す正面図である。
【
図4】
図3におけるコイル内径垂れ矯正部材の右側面図である。
【
図5】内径垂れが発生した金属帯コイルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係るコイル内径垂れ矯正部材を装着したペイオフリールの一部が金属帯コイルの一部とともに示されている。
図1においては、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入する前の状態が示されている。また、
図2には、金属帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装入した後の状態が示されている。
図1及び
図2において、金属帯コイル20の金属帯は、例えば、冷間圧延後焼鈍を施した鋼板上亜鉛めっき処理を施した溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0024】
また、
図1及び
図2に示すペイオフリール1は、巻回された金属帯コイル20を巻き戻すためのものであり、マンドレル2及びリール3を備えている。なお、本発明において、金属帯コイルを「巻き戻す」とは、コイル状の金属帯を伸ばしてラインに払い出すことを指す。
【0025】
マンドレル2は、胴長の円筒形状に形成され、図示しない拡縮機構によってその外径を拡縮することができる。マンドレル2には、
図2に示すように、金属帯コイル20が装入され、回転することにより金属帯コイル20を巻き戻す。マンドレル2は、金属帯コイル20を装入する際には、前述の拡縮機構によって外径が縮小され、金属帯コイル20の装入後は外径が拡大されて金属帯コイル20の内周面に密着して金属帯コイル20を安定的に支持する。
【0026】
また、リール3は、マンドレル2の軸方向一端(
図1及び
図2における左端)に固定され、リール支持部材4によって支持されることにより、マンドレル2を支持する。マンドレル2の軸方向他端には、マンドレル2を回転させるための駆動機構(図示せず)が設けられている。リール支持部材4は、金属帯コイル20をペイオフリール1のマンドレル2に装入する前は、
図1に示すように、リール3の下方に位置し、金属帯コイル20のマンドレル2への装入を可能としている。そして、リール支持部材4は、金属帯コイル20をペイオフリール1のマンドレル2に装入した後は、
図2に示すように、上昇し、リール3を下方から支持する。
【0027】
ここで、金属帯コイル20は、
図5に示すように、金属帯コイル20をマンドレル2に装入するに際し、金属帯コイル20の内径部20a側において金属帯コイル20の端部が垂れ下がる内径垂れ21が発生していることがある。当該内径垂れ21が発生していると、それが障害となって金属帯コイル20をペイオフリール1のリール3を経てマンドレル2に装入することが困難となり、当該内径垂れ21がマンドレル2やリール3に干渉して金属帯コイル20に損傷を与えたり、金属帯コイル20がマンドレル2に収まらずに落下したりする危険性がある。この内径垂れ21は、特に金属帯の剛性が小さい薄物材で発生しやすい。
【0028】
そこで、本実施形態においては、金属帯コイル20の内径部20a側に発生した内径垂れ21を矯正するコイル内径垂れ矯正部材10を
図1乃至
図3に示すようにペイオフリール1のリール3に装着するようにしている。
このコイル内径垂れ矯正部材10は、ペイオフリール1のリール3に装着され、金属帯コイル20をマンドレル2に装入する際に、金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げながら矯正する。これにより、当該内径垂れ21がマンドレル2やリール3に干渉して金属帯コイル20に損傷を与えることを回避する。
【0029】
コイル内径垂れ矯正部材10は、
図1乃至
図4に示すように、矯正部11と、嵌合部12と、複数の永久磁石14と、ハンドル15とを備えている。
矯正部11は、円錐台形状に形成され、先端(
図1における左端)11bから根元端(
図1における右端)11cに向けて徐々に径が拡大するように傾斜する傾斜面11aを有する。そして、矯正部11は、金属帯コイル20を矯正部11の先端11bから根元端11c及びリール3を経てマンドレル2に装入する際に金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げて矯正する。このため、矯正部11の先端11bの外径D1(
図3参照)は、金属帯コイル20が矯正部11の先端を通過可能なように、金属帯コイル20のほぼ楕円形の内径部20aの短径よりも小さくなっている。矯正部11の先端11bと金属帯コイル20の内径垂れ21の干渉を軽減する観点からは、外径D1は金属帯コイル20の内径部20aの半径に対して0.5倍以下であることが好ましい。さらに、矯正部11の先端11bと金属帯コイル20の内径垂れ21の干渉をさらに軽減する観点からは、外径D1は、内径垂れ21と金属帯コイル20の半径方向の中点を結んだ中心線とがなす最小距離より小さいことが一層好ましい。また、矯正部11の根元端11cの外径D2(
図3参照)は、傾斜面11aで金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げて矯正できるように、内径垂れ21と金属帯コイル20の半径方向の中点を結んだ中心線とがなす最小距離より大きくなっている。また、矯正部11の根元端11cの外径D2は、傾斜面11aで金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げて確実に矯正できるように、金属帯コイル20の内径部20aの短径よりも大きくなっていることが好ましい。
【0030】
また、嵌合部12は、矯正部11の根元側の端面(底面)11dに固定された円筒形状状の部材であり、コイル内径垂れ矯正部材10をペイオフリール1のリール3に装着する際に、円柱形状のリール3に嵌合する。嵌合部12をリール3に嵌合させることで、矯正部11をリール3に対し高い精度で適切な位置に固定する。嵌合部12の内径ID(
図3参照)は、リール3への嵌合を容易にするとともに、リール3の回転によるコイル内径垂れ矯正部材10の脱落を防止するために、リール3の外径OD(
図3参照)より1mm以上10mm以下大きい。嵌合部12の内径IDがリール3の外径ODより1mmm未満大きい場合には、嵌合部12のリール3への嵌合を容易に行うことができない。一方、嵌合部12の内径IDがリール3の外径ODに対し10mmを超えて大きい場合には、リール3の回転によるコイル内径垂れ矯正部材10の脱落を防止できないことがある。また、嵌合部12がリール3に対してガタツキが大きくなることで、金属帯コイル20の装入に際し、金属帯コイル20が矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまうことがある。
【0031】
また、複数の永久磁石14は、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3に装着する際に、矯正部11をリール3に吸着させるものである。これにより、コイル内径垂れ矯正部材10のリール3への装着に際してビス等を用いる必要はなく、短時間かつ容易にコイル内径垂れ矯正部材10をリール3へ装着することができる。複数の永久磁石14は、嵌合部12の内周側において、矯正部11の根元側の端面11dに固定された円板状の磁石台座部材13にボルト等で固定される。
【0032】
ここで、複数の永久磁石14の合計吸着力は、金属帯コイル20の端部が矯正部11に接触した際のガタツキを軽減するとともに、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3から取り外す時の負荷を軽減することを考慮し、49.0N(5kgf)以上147.1N(15kgf)以下とする。複数の永久磁石14の合計吸着力が49.0N(5kgf)未満であると、金属帯コイル20の端部が矯正部11に接触した際のガタツキが大きくなってしまう。また、当該ガタツキが大きくなることで、金属帯コイル20の装入に際し、金属帯コイル20が矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまうことがある。一方、複数の永久磁石14の合計吸着力が147.1N(15kgf)よりも大きいと、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3から取り外す時の負荷が大きすぎて、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3から容易に取外せない。
【0033】
また、複数の永久磁石14を磁石台座部材13(矯正部11)に固定するに際しては、
図4に示すように、矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置と複数の永久磁石14の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離dが30mm以上となるように、複数の永久磁石14を磁石台座部材13(矯正部11)に固定する。具体的に述べると、本実施形態において、
図4に示すように、7個の円板形状の永久磁石14が1つの永久磁石14を中心にその周りに環状に6つの永久磁石14を配置している。そして、環状に配置された6つの永久磁石14の径方向の最も外側の位置を結ぶ点線で示した円弧上の一点と矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置の円弧の軌跡上の一点との間の径方向直線距離dが30mm以上となるように、永久磁石14を固定する。径方向直線距離dが30mm未満では、金属帯コイル20をマンドレル2に装入する際に、金属帯が磁化して金属帯コイル20の内径部10a側の端部が矯正部11に吸着される。このため、金属帯コイル20をマンドレル2に装入するときに金属帯に疵や折れ曲がり等の損傷を引き起こす。金属帯コイル20が鋼帯コイルである場合には、前述の損傷が発生しやすい。このため、矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置と複数の永久磁石14の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離dを30mm以上とすることで、金属帯の磁化に伴う金属帯の損傷が生じる弊害を回避することができる。
【0034】
本実施形態において、金属帯コイル20は、板厚が0.1~3.8mmの鋼帯コイルであることが好ましい。板厚が0.1~3.8mmの鋼帯コイルでは内径垂れ21が高い頻度で生じるが、矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置と複数の永久磁石14の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離dを30mm以上とすることで、金属帯の磁化に伴う金属帯の損傷を抑制して矯正部11で内径垂れ21を矯正できるからである。
【0035】
また、ハンドル15は、矯正部11の先端11b側の端面に固定されている。ハンドル15は、作業者がコイル内径垂れ矯正部材10を持ち運んだり、ペイオフリール1のリール3に取り付けたり、リール3から取り外す時に、作業者が把持して作業を行うものである。ハンドル15を設けることにより、コイル内径垂れ矯正部材10の持ち運び作業、コイル内径垂れ矯正部材10のリール3への取り付け作業、コイル内径垂れ矯正部材10のリール3からの取り外し作業の作業性と安全性を向上させることができる。
【0036】
次に、コイル内径垂れ矯正部材10を用いての金属帯コイル20のマンドレル2への装入作業について説明する。
先ず、
図1に示すように、リール支持部材4がペイオフリール1のリール3の下方に位置した状態で、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3に装着する。この際に、嵌合部12をリール3に嵌合するとともに、複数の永久磁石14によって矯正部11をリール3に吸着させる。
【0037】
ここで、嵌合部12をリール3に嵌合することで、矯正部11をリール3に対し高い精度で適切な位置に固定することができる。また、嵌合部12の内径IDは、リール3の外径ODより1mm以上大きいので、リール3への嵌合を容易にすることができる。一方、嵌合部12の内径IDがリール3の外径ODに対し10mm以下大きいので、リール3の回転によるコイル内径垂れ矯正部材10の脱落を防止できる。また、嵌合部12のリール3に対するガタツキが小さく、金属帯コイル20の装入に際し、金属帯コイル20が矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまうおそれを回避することができる。
【0038】
また、複数の永久磁石14によって矯正部11をリール3に吸着させるので、コイル内径垂れ矯正部材10のリール3への装着に際してビス等を用いる必要はなく、短時間かつ容易にコイル内径垂れ矯正部材10をリール3へ装着することができる。
【0039】
また、複数の永久磁石14の合計吸着力は、49.0N(5kgf)以上147.1N(15kgf)以下である。複数の永久磁石14の合計吸着力が49.0N(5kgf)以上であるので、金属帯コイル20の端部が矯正部11に接触した際のガタツキを小さくすることができる。また、当該ガタツキが大きくなることで、金属帯コイル20の装入に際し、金属帯コイル20が矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまうおそれを回避できる。また、複数の永久磁石14の合計吸着力が147.1N(15kgf)以下であるので、コイル内径垂れ矯正部材10をリール3から取り外す時の負荷が小さく、内径垂れ矯正部材10をリール3から容易かつ短時間で取外すことができる。
【0040】
コイル内径垂れ矯正部材10をリール3に装着した後、金属帯コイル20を
図1における矢印Aで示す方向に移動させて、金属帯コイル20を矯正部11の先端11bから根本端11c及びリール3を経てマンドレル2に装入する。この際に、コイ内径垂れ矯正部材10の矯正部11は、金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げて矯正する。これにより、金属帯コイル20に疵や損傷を与えることなく、金属帯コイル20の内径部20a側に発生した内径垂れ21を矯正することができる。このため、内径垂れ21が障害となることに起因する金属帯コイル20のマンドレル2への装入困難性を抑制することができる。また、内径垂れ21がマンドレル2に干渉して金属帯コイル20に損傷を与えたり、金属帯コイル20がマンドレル2に収まらずに落下したりする危険性を回避することができる。
【0041】
次いで、金属帯コイル20をマンドレル2に装入した後、
図1における矢印Bで示す方向にリール支持部材4を上昇させて、
図2に示すように、リール3を下方から支持する。
その後、マンドレル2を回転させて金属帯コイル20の巻き戻しを行うことができる。
そして、このようにマンドレル2に装入された金属帯コイル20の巻き戻しを行うコイル巻き戻し工程を経た後、後工程を経て金属帯の製品が製造される。
【0042】
なお、ペイオフリール1のマンドレル2から金属帯コイル20を抜き出す場合に、ペイオフリール1のリール3にコイル内径垂れ矯正部材10を装着した状態で金属帯コイル20を抜き出すようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0043】
例えば、矯正部11は、先端11bから根元端11cに向けて徐々に径が拡大するように傾斜する傾斜面11aを有するものであれば、円錐台形状に限らず、円錐形状、球欠形状、球台形状などであってもよい。矯正部11が円錐形状、球欠形状、及び球台形状の場合でも、金属帯コイル20をマンドレル2に装入する際に、金属帯コイル20の内径垂れ21を徐々に押し広げて矯正することができる。
【0044】
また、永久磁石14の数は、7個の場合に限らず、7個以外の複数個あるいは1個であってもよい。但し、1又は複数の永久磁石14の合計吸着力を49.0N以上147.1N以下とするとともに、矯正部11の根元側の端面11dにおける最大径位置と1又は複数の永久磁石14の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離dを30mm以上とする。
【0045】
また、金属帯コイル20の金属帯は、冷間圧延後焼鈍を施した鋼板上亜鉛めっき処理を施した溶融亜鉛めっき鋼板に限らず、その他の金属帯、例えば、熱延鋼板、冷延のままの鋼板、冷延後に焼鈍を施した冷延鋼板、焼鈍後に電気亜鉛めっきを施した電気亜鉛めっき鋼板、錫めっき鋼板、アルミめっき鋼板などであってもよい。
【実施例0046】
本発明の効果を検証すべく、表1に示す仕様のNo.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材を用いて、金属帯コイル20をペイオフリール1のマンドレル2へ装入し、さらに250mpmの速度で金属帯コイル20の巻き戻しを行った。
【0047】
【0048】
その結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
ここで、使用した金属帯コイル20は、その内径が508mm、金属帯が板厚0.6mm、板幅1350mmの溶融亜鉛めっき鋼板であり、30mmの内径垂れ21が発生したものであった。金属帯コイル20の内径垂れ量は、
図5に示すように、垂れた金属帯(内径垂れ21)の先端21aから鉛直線22を引き、金属帯コイル20の内径部10aと交わる点20aaと垂れた金属帯(内径垂れ21)の先端21aとの距離Lである。
【0051】
[内径垂れの評価]
使用したNo.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材に対し、内径垂れの矯正の可否について確認した。内径垂れを矯正できていれば合格として○、矯正が不十分であった場合を不合格として×を評点として付けた。矯正は、金属帯コイルをマンドレル2に装入してマンドレル2を拡径した時点で、前述した金属帯コイルの内径垂れ量(距離L)が1mm以下に低減できたものを合格とした。当該内径垂れ量が1mmよりも大きく内径垂れ21とリール3の接触等により金属帯コイルをマンドレル2に装入できなかった場合は、不合格とした。
【0052】
[金属帯コイルの損傷有無の評価]
使用したNo.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材に対し、金属帯とリールもしくはコイル内径垂れ矯正部材との衝突による金属帯コイルの端面若しくは表面の損傷の有無を確認した。金属帯コイルの損傷がなければ○を、損傷があれば×を評点として付けた。
【0053】
[金属帯の磁化による金属帯コイルの損傷有無の評価]
使用したNo.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材に対し、コイル内径垂れ矯正部材に金属帯が吸着されることによる金属帯コイルの端面若しくは表面の損傷の有無を確認した。コイル内径垂れ矯正部材に金属帯が吸着されたか否かは目視で確認を行い、金属帯コイルの損傷がなければ○を、損傷があれば×を評点として付けた。
【0054】
[コイル内径垂れ矯正部材の着脱性の評価]
No.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材をリールに装着する際に要した時間及び当該コイル内径垂れ矯正部材をリールから取り外す時間を計測した。1分以内で着脱ができた場合は○を、1分以内で着脱ができなかった場合は×を評点として付けた。
【0055】
[コイル内径垂れ矯正部材の安定性の評価]
金属帯コイルの装入時及び巻き戻し時において、No.1~No.16のコイル内径垂れ矯正部材がリールから外れることなく使用できた場合は○を、外れた場合は×を評点として付けた。
【0056】
表1及び表2から明らかなように、本発明例を構成するNo.1~No.8のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、金属帯コイルの損傷(金属帯の磁化による金属帯コイルの損傷を含む)を生じることなく、内径垂れを矯正できた。また、コイル内径垂れ矯正部材をリールに装着する際に要した時間及び当該コイル内径垂れ矯正部材をリールから取り外す時間も短時間で済み、金属帯コイルの装入時及び巻き戻し時においてコイル内径垂れ矯正部材がリールから外れることなく使用できた。
【0057】
これに対して、矯正部11が円柱形状で本発明の要件(矯正部が、先端から根元に向けて徐々に径が拡大するように傾斜する傾斜面を有するという要件)を満たさない比較例を構成するNo.9のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、内径垂れを矯正できなかった(内径垂れの矯正の評価が不合格であった)。
【0058】
また、コイル内径垂れ矯正部材をリールにビス止め式で取り付けた本発明の要件(リールに装着する際に、矯正部をリールに対して吸着させる1又は複数の永久磁石を備えるという要件)を満たさない比較例を構成するNo.10のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、次のようであった。即ち、コイル内径垂れ矯正部材の着脱性の劣化に伴い、コイル内径垂れ矯正部材をリールに装着する際に要した時間及び当該コイル内径垂れ矯正部材をリールから取り外す時間が長時間となった。
【0059】
また、嵌合部12によるリール3への嵌め込みによりリール3に取り付けているが、永久磁石を用いない本発明の要件(リールに装着する際に、矯正部をリールに対して吸着させる1又は複数の永久磁石を備えるという要件)を満たさない比較例を構成するNo.11のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、次のようであった。即ち、金属帯コイルの装入時及び巻き戻し時において、コイル内径垂れ矯正部材がリールから外れた。また、金属帯コイルの端部が矯正部に接触した際のガタツキが大きく、金属帯コイルの装入に際し、金属帯コイルが矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまった。
【0060】
また、永久磁石を用いているが永久磁石の合計吸着力が1kgf(9.8N)と小さく、本発明の要件(永久磁石の合計吸着力が49.0N以上であるという要件)を満たさない比較例を構成するNo.12のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、次のようであった。即ち、金属帯コイルの装入時及び巻き戻し時において、コイル内径垂れ矯正部材がリールから外れた。また、金属帯コイルの端部が矯正部に接触した際のガタツキが大きく、金属帯コイルの装入に際し、金属帯コイルが矯正部11に衝突し、金属帯が損傷してしまった。
【0061】
また、永久磁石を用いているが永久磁石の合計吸着力が20kgf(196N)と大きく、本発明の要件(永久磁石の合計吸着力が147.1N以下であるという要件)を満たさない比較例を構成するNo.13のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、コイル内径垂れ矯正部材の着脱性の劣化に伴い、コイル内径垂れ矯正部材をリールから取り外す時間が長時間となった。
【0062】
また、矯正部の根元側の端面における最大径位置と永久磁石の径方向の最も外側の位置との間の径方向直線距離が10mmと短く、本発明の要件(当該径方向直線距離が30mm以上という要件)を満たさない比較例を構成するNo.14のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、次のようであった。即ち、金属帯が磁化されることによってコイル内径垂れ矯正部材に衝突し、金属帯に損傷が生じた。
【0063】
また、嵌合部の内径がリールの外径と同じであり、本発明の要件(嵌合部は、リールの外径より1mm以上大きい内径を有するという要件)を満たさない比較例を構成するNo.15のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、次のようであった。即ち、コイル内径垂れ矯正部材の着脱性の劣化に伴い、コイル内径垂れ矯正部材をリールに装着する際に要した時間及び当該コイル内径垂れ矯正部材をリールから取り外す時間が長時間となった。
【0064】
また、嵌合部の内径がリールの外径より15mm大きく、本発明の要件(嵌合部は、リールの外径より10mm以下大きい内径を有するという要件)を満たさない比較例を構成するNo.16のコイル内径垂れ矯正部材を使用した場合には、コイル内径垂れ矯正部材とリールの芯がずれて金属帯の損傷が発生した。