(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122877
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006843
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0026755
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ジン イェオプ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨウン フーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ジュ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AG02
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層型電子部品におけるクラックの発生を抑制する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含み、第1面~第6面を含む本体と、本体上に配置される外部電極と、を含み、本体は、誘電体層及び内部電極が第1方向に重なるように配置された容量形成部並びに容量形成部の第3方向の一面及び他面に配置されるマージン部を含み、マージン部は、容量形成部に隣接する第1領域114a、114b、マージン部の外表面に隣接する第3領域114d及び第1領域と第3領域との間に配置される第2領域114cを含み、第1領域に含まれる誘電体の平均グレインサイズをG1、第2領域に含まれる誘電体の平均グレインサイズをG2、第3領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG3とするとき、G2>G1及びG2>G3を満たす。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1~第4面と連結され、第3方向に連結される第5及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記本体は、前記誘電体層及び前記内部電極が第1方向に重なるように配置された容量形成部、及び前記容量形成部の第3方向の一面及び他面に配置されるマージン部を含み、
前記マージン部は、前記容量形成部に隣接する第1領域、前記マージン部の外表面に隣接する第3領域、及び前記第1領域と前記第3領域との間に配置される第2領域を含み、
前記第1領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG1、前記第2領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG2、前記第3領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG3とするとき、
G2>G1及びG2>G3を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1、前記第2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC2、前記第3領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC3とするとき、
C2>C1及びC2>C3を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記C1、C2及びC3は、
C2>C3>C1を満たす、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1領域は、前記容量形成部に接する第1-1領域及び前記第2領域に隣接する第1-2領域を含み、
前記第1-1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-1、前記第1-2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-2とするとき、
C2>C3>C1-2>C1-1を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC1'、前記第2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC2'、前記第3領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC3'とするとき、
C2'>C1'>C3'を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記マージン部の平均幅は200μm以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
G2は2μm以上5μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記マージン部の外表面から前記第2領域の前記マージン部の外表面に隣接する第3方向の一端までの第3方向の平均距離は、30μm以上50μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第2領域の前記マージン部の外表面に隣接する第3方向の一端から前記第2領域の第3方向の他端までの第3方向の平均距離は、20μm以上150μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1~第4面と連結され、第3方向に連結される第5及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記本体は、前記誘電体層及び前記内部電極が第1方向に重なるように配置された容量形成部、並びに前記容量形成部の第3方向の一面及び他面に配置されるマージン部を含み、
前記マージン部は、前記容量形成部に隣接する第1領域、前記マージン部の外表面に隣接する第3領域、及び前記第1領域と前記第3領域との間に配置される第2領域を含み、
前記第1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1、前記第2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC2、前記第3領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC3とするとき、
C2>C1及びC2>C3を満たす、積層型電子部品。
【請求項11】
前記C1、C2及びC3は、
C2>C3>C1を満たす、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記第1領域は、前記容量形成部に接する第1-1領域及び前記第2領域に隣接する第1-2領域を含み、
前記第1-1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-1、前記第1-2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-2とするとき、
C2>C3>C1-2>C1-1を満たす、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC1'、前記第2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC2'、前記第3領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC3'とするとき、
C2'>C1'>C3'を満たす、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記マージン部の平均幅は200μm以上である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記第2領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG2とするとき、
G2は2μm以上5μm以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記マージン部の外表面から前記第2領域の前記マージン部の外表面に隣接する第3方向の一端までの第3方向の平均距離は、30μm以上50μm以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記第2領域のマージン部の外表面に隣接する第3方向の一端から前記第3領域の第3方向の他端までの第3方向の平均距離は、20μm以上150μm以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
電子製品の小型化、スリム化、多機能化により、チップ部品も小型化が求められており、電子部品の実装も高集積化している。このような傾向に応じて実装される電子部品間の空間が最小化している。
【0004】
また、近年、自動車用電装部品に対する業界の関心が高まり、積層セラミックキャパシタも自動車又はインフォテインメントシステムに使用されるために高容量及び高信頼性の特性が求められている。
【0005】
積層型電子部品の誘電体層は、高誘電率を確保するために、BaTiO3のようなペロブスカイト物質を含むことができる。常温で積層型電子部品に電圧を印加すると、誘電体層に含まれる物質のペロブスカイト結晶構造により、積層型電子部品の厚さ方向には膨張が、幅方向には相対的な収縮が発生する。このような膨張及び収縮は誘電体層のクラックを発生させたり、誘電体と内部電極との間の界面が破断する現象を引き起こす可能性がある。特に、このような問題点は、印加電圧が相対的に高い大型厚膜製品においてより顕著になり得る。
【0006】
したがって、積層型電子部品の誘電体層の膨張及び収縮による応力を緩和し、発生したクラックの経路を変更するための構造的改善が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品に電圧を印加する場合、誘電体層の膨張及び収縮によるクラックの発生を抑制することである。
【0008】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品に発生したクラックが伝播し、容量形成部に損傷を与えることを抑制することである。
【0009】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結され、第3方向に連結される第5及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層及び上記内部電極が第1方向に重なるように配置された容量形成部及び上記容量形成部の第3方向の一面及び他面に配置されるマージン部を含み、上記マージン部は上記容量形成部に隣接する第1領域、上記マージン部の外表面に隣接する第3領域及び上記第1領域と上記第3領域との間に配置される第2領域を含み、上記第1領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG1、上記第2領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG2、上記第3領域に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG3とするとき、G2>G1及びG2>G3を満たす。
【0011】
本発明の一実施例による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結され、第3方向に連結される第5及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層及び上記内部電極が第1方向に重なるように配置された容量形成部、並びに上記容量形成部の第3方向の一面及び他面に配置されるマージン部を含み、上記マージン部は、上記容量形成部に隣接する第1領域、上記マージン部の外表面に隣接する第3領域及び上記第1領域と上記第3領域との間に配置される第2領域を含み、上記第1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1、上記第2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC2、上記第3領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC3とするとき、C2>C1及びC2>C3を満たす。
【発明の効果】
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、マージン部自体の強度を向上させることにより、積層型電子部品におけるクラックの発生を抑制することである。
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、マージン部の特定領域に粒成長領域を形成することにより、発生したクラックの伝播経路を効果的に変更することである。
【0014】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】一実施例による本体を分解して示す分解斜視図である。
【
図6】TiO
2を塗布する工程を行う時期に応じて吸湿率を測定した結果を示すグラフである。
【
図7(a)】一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を示すグラフである。
【
図7(b)】一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合を示すグラフである。
【
図8(a)】実施例及び比較例によるサンプルの3点曲げ強度を測定する方法を示す模式図である。
【
図8(b)】
図8(a)による3点曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【
図9(a)】
図8(a)による3点曲げ強度の測定で予想されるサンプルの破壊態様を示す模式図である。
【
図9(b)】
図8(b)による3点曲げ強度の測定で予想されるサンプルの破壊態様を示す模式図である。
【
図10(a)】TiO
2をk squareの上面に塗布した実施例と、TiO
2を塗布しなかったk squareサンプルである比較例において、温度に応じて現れる特性の変化を測定したものである。
【
図10(b)】TiO
2をk squareの上面に塗布した実施例と、TiO
2を塗布しなかったk squareサンプルである比較例において、温度に応じて現れる特性の変化を測定したものである。
【
図10(c)】TiO
2をk squareの上面に塗布した実施例と、TiO
2を塗布しなかったk squareサンプルである比較例において、温度に応じて現れる特性の変化を測定したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0017】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は、誘電体層を挟んで第1及び第2内部電極が交互に配置される方向又は厚さT方向、上記第1方向と垂直な方向である第2方向及び第3方向のうち、上記第2方向は長さL方向、上記第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施例による積層型電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、一実施例による本体を分解して示す分解斜視図であり、
図5は、
図2のA領域の拡大図であり、
図6は、TiO
2を塗布する工程を行う時期に応じて吸湿率を測定した結果を示すグラフであり、
図7(a)は、一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を示すグラフであり、
図7(b)は、一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合を示すグラフである。
【0020】
以下では、
図1~
図7を参照して本発明の一実施例による積層型電子部品100について詳細に説明する。
【0021】
本体110は、誘電体層111及び誘電体層111と交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含む。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)等が挙げられる。
【0026】
また、上記誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0027】
本体110は、本体110の内部に配置され、第1及び第2内部電極121、122が第1方向に重なる領域である容量形成部Acを含むことができる。
【0028】
容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成することができる。
【0029】
一実施例において、上記容量形成部Acの第1方向の一面には上部カバー部112が配置されることができ、上記容量形成部Acの第1方向の他面には下部カバー部113を含むことができる。
【0030】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0031】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0032】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0033】
カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はないが、カバー部112、113の平均厚さは50μm以上500μm以下であってもよい。ここで、カバー部112、113の平均厚さは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味することができる。
【0034】
カバー部112、113の平均厚さは第1方向のサイズを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0035】
図3を参照すると、一実施例において、上記容量形成部Acの第3方向の一面及び他面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0036】
図3に示すように、マージン部114、115は、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端と本体110の境界面との間の第3方向領域を意味することができる。
【0037】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0038】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0039】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0040】
一方、マージン部114、115の平均幅は特に限定する必要はないが、マージン部114、115の平均幅dmは10μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0041】
マージン部114、115の平均幅dmは、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、容量形成部Acの側面において等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0042】
内部電極121、122は、誘電体層111と第1方向に交互に配置される。内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ連結されることができる。具体的に、第1内部電極121の一端は第3面に連結され、第2内部電極122の一端は第4面に連結されることができる。すなわち、一実施例において、内部電極121、122は、第3面3又は第4面4と接することができる。
【0043】
図2に示すように、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0044】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0045】
このとき、本体110において、第1内部電極121の第2方向の端から第4面4の間、第2内部電極122の第2方向の端から第3面3の間をマージン部114、115とすることができる。
【0046】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0047】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0048】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
外部電極131、132は、本体110の第3面又は第4面に配置されることができる。具体的に、第1外部電極131は第3面3上に配置されて第1内部電極121と連結され、第2外部電極132は第4面4上に配置されて第2内部電極122と連結される。
【0050】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0051】
一方、外部電極131、132は、金属などのように、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに多層構造を有してもよい。
【0052】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に形成されためっき層を含むことができる。
【0053】
電極層に対するより具体的な例を挙げると、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0054】
また、電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。また、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0055】
電極層に含まれる導電性金属としては、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であってもよい。
【0056】
めっき層は実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0057】
めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0058】
第1及び第2内部電極121、122の平均厚さ及び誘電体層111の平均厚さは様々な値を有することができる。具体的に、IT用積層型電子部品の場合、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さ及び誘電体層111の平均厚さはそれぞれ0.35μm以下であることができ、高電圧電装用積層型電子部品の場合は、IT用積層型電子部品よりも第1及び第2内部電極121、122の平均厚さ及び誘電体層111の平均厚さが大きい値を有することができる。
【0059】
一般的に、高電圧電装用積層型電子部品は、高電圧環境下での絶縁破壊電圧の低下による信頼性の低下が主なイシューである。一実施例では、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さをte、誘電体層111の平均厚さをtdとしたとき、td>2×teを満たすことで、内部電極121、122間の距離である誘電体層111の厚さtdを増加させて絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0060】
一方、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さ及び誘電体層111の平均厚さの絶対値は特に限定されない。一実施例において、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さをte、誘電体層111の平均厚さをtdとしたとき、teは1μm未満であり、tdは2.8μm未満であることができる。
【0061】
上記誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。一方、本体110が複数の誘電体層111を含む場合、誘電体層111の平均厚さtdは、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さを意味することができる。
【0062】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0063】
上記内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。一方、本体110が複数の内部電極121、122を含む場合、内部電極121、122の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さを意味することができる。
【0064】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0065】
図3を参照すると、本発明の一実施例によるマージン部114、115は、それぞれ異なる3つ以上の領域に区分することができる。
図4は、第1マージン部114を基準にマージン部の各領域を示したものであるが、第2マージン部115にも同様に適用することができる。
【0066】
積層型電子部品の誘電体層は、高誘電率を確保するために、BaTiO3のようなペロブスカイト物質を含むことができる。常温で積層型電子部品に電圧を印加すると、誘電体層に含まれる物質のペロブスカイト結晶構造により、積層型電子部品の厚さ方向には膨張が、幅方向には相対的な収縮が発生する。このような膨張及び収縮は誘電体層のクラックを発生させたり、誘電体と内部電極との間の界面が破断(fracture)する現象を引き起こす可能性がある。特に、このような問題点は、印加電圧が相対的に高い大型厚膜製品においてより顕著になり得る。
【0067】
そこで、本発明では、マージン部の各領域による粒成長の程度又はTiイオンの含量を調節することにより、積層型電子部品の膨張及び収縮による応力を緩和し、クラックが発生した場合、クラックの経路変更を誘導して容量形成部 Acにクラックが伝播する現象を抑制しようとする。
【0068】
本発明の一実施例によるマージン部114は、容量形成部Acに隣接する第1領域114a、114b、マージン部114の外表面に隣接する第3領域114d、第1領域114a、114bと第3領域114dとの間に配置される第2領域113cを含むことができる。このとき、第1領域114a、114bに含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG1、第2領域114cに含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG2、上記第3領域114dに含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをG3とするとき、G2>G1及びG2>G3を満たす。これにより、マージン部114自体の強度を向上させることによりクラックの発生を抑制することができ、発生したクラックが容量形成部Acに伝播しないようにクラックの経路変更を誘導することができる。
【0069】
第1領域~第3領域114a、114b、114c、114dを区分する方法は特に限定されない。例えば、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、光学顕微鏡(OM、Optical Microscope)のダークフィールド(dark field)モードを通じてTiが拡散し、粒成長した層が他のマージン部領域よりも暗く観察されるようにしたり、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)の場合、研磨によりマージン部誘電体のグレインバウンダリを明確にし、誘電体の平均グレインサイズを直接測定して区分することができる。このとき、誘電体の平均グレインサイズは、各領域別に第1方向に任意の間隔である5つ以上の領域で測定した平均値であることができる。
【0070】
第1領域~第3領域114a、114b、114c、114dを区分するさらに他の方法としては、二次イオン質量分析器(SIMS、Secondary Ion Mass Spectroscopy)を用いてBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を測定する方法がある。
【0071】
第1領域~第3領域114a、114b、114c、114dを区分するさらに他の方法としては、X線光電子分析(X-Ray Photoelectron Spectroscopy)のDepth Profiglingを用いてマージン部114の外表面から容量形成部までの各領域において、深さ別にTi元素の含量を測定することにより区分することもできる。
【0072】
G2>G1及びG2>G3を満たすように第1~第3領域114a、114b、114c、114dに含まれる誘電体グレインサイズを調節する方法は特に限定されない。一例として、バインダー及びTiO2ゾル(sol)を混合してマージン部114の外表面に塗布した後、焼成によってTi又はTiOイオンの拡散を誘導し、第1~第3領域114a、114b、114c、114dに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量を調節することにより、第2領域114cに粒成長領域を形成させることができる。
【0073】
焼成過程でマージン部114に含まれる誘電体グレインのグレインバウンダリにTi-rich液体層が形成される場合、誘電体グレインの急速な成長が起こることができ、これは第2領域114cを粒成長領域として形成する方法になり得る。
【0074】
すなわち、本発明の一実施例による積層型電子部品では、第1領域114a、114bに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1、第2領域114cに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC2、第3領域114dに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC3とするとき、C2>C1及びC2>C3を満たすことができる。これにより、上記第1領域~第3領域において、第2領域114cが粒成長領域となるように形成することができ、マージン部114自体の強度を向上させることによりクラックの発生を抑制することができ、発生したクラックが容量形成部Acに伝播しないようにクラックの経路変更を誘導することができる。
【0075】
第1領域~第3領域114a、114b、114c、114dの粒成長又はBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を調節する方法は特に限定されない。例えば、領域が区分されていないマージン部114の外表面にバインダーを添加したTiO2ゾル混合液を、ブラシを用いたpainting、dipping又はrollerを用いて塗布し、マージン部114の内部に拡散させて第1領域~第3領域114a、114b、114c、114dの粒成長又はBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を調節することができる。
【0076】
このとき、本体110の工程状態によってTiO2の吸湿率に差が生じることがあるが、これはバインダー成分の蒸発量によるマージン部114の空隙率の変化によるものと予想される。
【0077】
図6は、TiO
2を塗布する工程を行う時期に応じて吸湿率を測定した結果を示すグラフである。各チップの工程状態によってTiO
2ゾルの塗布力に差が発生し、工程状態による吸湿率の差を確認するために、
図6による吸湿率の評価は、60℃、相対湿度0%で10時間維持して脱湿を行った後、60℃、相対湿度85%で10時間の間維持した。
【0078】
内部電極及び誘電体層が積層された状態で切断されたチップをグリーンチップ、300℃以上で80時間未満の仮焼をした状態のチップを1次仮焼チップ、1次仮焼後600℃以上で5時間以上の仮焼をしたチップを2次仮焼チップ、2次仮焼後1000度以上で1次焼成したチップをTSS(two step sintering)チップとした。
【0079】
図6を参照すると、初期のTiO
2吸湿率は、2次仮焼チップ、1次仮焼チップ、グリーンチップ、TSSチップの順に減少することが確認でき、2次仮焼チップのTiO
2初期吸湿率が最も高いことが確認できる。したがって、2次仮焼チップにTiO
2を塗布することが粒成長領域である第2領域114cを形成する上で最も有利であり得る。
【0080】
図7(a)は、一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合を示すグラフであり、
図7(b)は、一実施例によるマージン部の各領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合を示すグラフである。
【0081】
マージン部114の各領域におけるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量、又はBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量は、上述したようにSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)を用いてBaイオンのintensityに対するTiイオン、又はTiOイオンのintensityの割合で算出することができ、その単位はarbitrary unitに該当する。
【0082】
具体的に、積層型電子部品100を第2方向の中心部まで研磨して第1方向及び第3方向の面を露出させた後、マージン部114の外表面から容量形成部Acまで第3方向に沿ってスパッタリングしながら、発生する二次イオンを質量分析器で分析することにより、Baイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合又はBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合を測定することができる。
【0083】
上記マージン部114の各領域におけるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合、又はBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合は、第1方向に任意の地点で5回以上測定を行い、平均値をとることでさらに一般化することができる。
【0084】
図7の(a)及び(b)を参照すると、第2領域114cに粒成長領域が形成されたことが確認でき、第1領域及び第3領域114a、114b、114dには非粒成長領域が形成されたことが確認できる。このとき、粒成長領域とは、誘電体グレインの平均サイズが2μm以上5μm以下である領域を意味し、非粒成長領域とは、誘電体グレインの平均サイズが2μm未満である場合を意味することができる。
【0085】
図7の(a)及び(b)を参照すると、一実施例において、第1領域114a、114bに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1、第2領域114cに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC2、第3領域114dに含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC3とするとき、C2>C1及びC2>C3を満たすことが確認できる。これにより、上記第1領域~第3領域において、第2領域114cが粒成長領域となるように形成することができ、マージン部114自体の強度を向上させることによりクラックの発生を抑制することができ、発生したクラックが容量形成部Acに伝播しないようにクラックの経路変更を誘導することができる。
【0086】
一実施例において、第1領域114a、114bは、容量形成部Acに接する第1-1領域114a及び第2領域114cに隣接する第1-2領域114bを含むことができる。
【0087】
このとき、上記第1-1領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-1、上記第1-2領域に含まれるBaイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合をC1-2とするとき、C2>C3>C1-2>C1-1を満たすことができる。これにより、マージン部114を互いに異なる平均誘電体粒径を有する4つの領域に区分することができ、マージン部114自体の強度向上効果及び発生し得るクラックの経路変更誘導効果がさらに顕著になり得る。
【0088】
一方、マージン部114に含まれるTiイオンの一部は、拡散中に大気中の酸素と結合してTiOイオンの形態で存在することができる。
図7の(a)及び(b)を参照すると、一実施例において、第1領域114a、114bに含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC1'、第2領域114cに含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC2'、第3領域114dに含まれるBaイオンの含量に対するTiOイオンの含量の割合をC3'とするとき、C2'>C1'>C3'を満たすことができる。
【0089】
図5を参照すると、マージン部114の平均幅dmと第2領域114cの形成位置をd1及びd2を用いて定義することができる。
【0090】
一実施例において、マージン部114の外表面から第2領域114cのマージン部114の外表面に隣接する第3方向の一端までの第3方向の平均距離d1は30μm以上50μm以下であってもよい。これにより、Baイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合が周辺領域よりも高い、又は誘電体グレインの平均グレインサイズが周辺よりも大きい第2領域114cを適切な位置に配置することにより、マージン部114自体の強度向上効果及び発生し得るクラックの経路変更誘導効果がさらに顕著になり得る。
【0091】
一実施例において、第2領域114cのマージン部114の外表面に隣接する第3方向の一端から第2領域114cの第3方向の他端までの第3方向の平均距離d2-d1は、20μm以上150μm以下であってもよい。これにより、Baイオンの含量に対するTiイオンの含量の割合が周辺領域よりも高い、又は誘電体グレインの平均グレインサイズが周辺よりも大きい第2領域114cが、マージン部114で占める比重を適切に調節することにより、マージン部114自体の強度向上効果及び発生し得るクラックの経路変更誘導効果がさらに顕著になり得る。
【0092】
一実施例において、マージン部114の平均幅は200μm以上であってもよい。マージン部の平均幅が200μm以上である大型サイズの積層型電子部品の場合、中型又は小型サイズの積層型電子部品に比べて相対的に高い電圧が印加されることができる。印加電圧が高い場合、誘電体層111の収縮及び膨張の程度が増加して誘電体層111及び内部電極121、122の間が破断する現象、及び誘電体層111のクラックが発生する現象がさらに深化する可能性がある。本発明の実施例によれば、マージン部114の各領域による粒成長の程度又はTiイオンの含量を調節することにより、積層型電子部品の膨張及び収縮による応力を緩和し、クラックが発生した場合、クラックの経路変更を誘導するため、マージン部114の平均幅dmが200μm以上である高圧、大型製品の場合でも、容量形成部Acへのクラックの伝播を抑制することができる。
【0093】
(実施例1)
図8(a)は、実施例及び比較例によるサンプルの3点曲げ強度を測定する方法を示す模式図であり、
図8(b)は、
図8(a)による3点曲げ強度の測定結果を示すグラフであり、
図9の(a)及び(b)は、
図8の(a)及び(b)による3点曲げ強度の測定で予想されるサンプルの破壊態様を示す模式図である。
【0094】
実施例1-1は、k squareの上面にTiO2層を形成して焼成した場合、実施例1-2は、k squareの下面にTiO2層を形成して焼成した場合、比較例1-1は、k squareの上面又は下面にTiO2層を形成しなかった場合である。
【0095】
k squareとは、本発明の一実施例による誘電体層111と同じ成分を含み、2次仮焼まで進行して形成された10×5×1mm3サイズの均一で等方性のあるサンプルを意味する。
【0096】
実施例1-1、実施例1-2、比較例1-1の各サンプルは、
図8(a)に示す模式図のように3点曲げ強度の評価が行われており、具体的には、一定速度で治具を下げながら各サンプルに押し込まれた深さを力として認識する方式で測定が行われる。治具がサンプルの表面に到達した後には、加えられる力が増加するが、各サンプルが破壊するときの力(破壊力)を測定した。
図8(b)を参照すると、実施例1-1の場合は破壊力の平均値が49.1(N)、実施例1-2の場合は破壊力の平均値が35.1(N)、比較例1-1の場合は破壊力の平均値が32.4(N)であることが確認できる。
【0097】
図9(a)は、k squareにおいて誘電体グレインのグレインバウンダリで破壊が起こった場合を想定したものであり、
図9(b)は、k squareにおいて誘電体グレインの内部で破壊が起こった場合を想定したものである。実施例1-2はk squareの下面にTiO
2層を形成して焼成した場合であり、比較例1-1と破壊力値において大きな差はないが、実施例1-1はk squareの上面にTiO
2層を形成して焼成した場合であって、上面に含まれる誘電体グレインが下面に含まれる誘電体グレインより大きく、最初のクラック発生源Pから一定距離離隔した領域に粒成長領域が形成されており、クラックの伝播経路を変更することができるため、破壊力値が比較例1-1より高いことが確認できる。
【0098】
このような結果を本発明の一実施例による積層型電子部品100に適用すると、粒成長領域である第2領域114cをマージン部の最外層や容量形成部Acに接して配置する場合は実施例1-2のような場合に該当し、クラックの伝播経路を変更する効果が不足するのに対し、粒成長領域である第2領域114cが非粒成長領域である第1領域114a、114bと第3領域114cの間に配置される場合には、実施例1-1のような場合に該当してクラックの伝播経路を変更する効果に優れる。
【0099】
(実施例2)
図10の(a)、(b)及び(c)は、それぞれTiO
2をk squareの上面に塗布した実施例と、TiO
2を塗布しなかったk squareサンプルである比較例において、温度に応じて現れる特性の変化を測定したものである。
【0100】
実施例2-1、2-2、2-3はTiO2をk squareの上面に塗布して焼成したサンプルを使用し、比較例2-1、2-2、2-3はk squareに上面又は下面にTiO2を塗布せずに焼成したサンプルを使用した。
【0101】
比較例2-1、実施例2-1は常温(RT)で各特性の変化を測定した結果であり、比較例2-2、実施例2-2は150℃で各特性の変化を測定した結果であり、比較例2-3、実施例2-3は500℃で各特性の変化を測定した結果である。
【0102】
実施例1で行った3点曲げ強度の評価方法において、引張特性は、3点曲げ強度試験でサンプルの破断直前までの押し込まれた深さを測定した値であり、このときのStressとしてFlexural strength(MPa)値を測定し、靭性(Toughness)は、同じ測定法でstress-strainカーブの面積を計算して測定した。
【0103】
図10の(a)、(b)、(c)の結果を参照すると、引張強度、曲げ強度、靭性特性において、実施例2-1、2-2、2-3が比較例2-1、2-2、2-3と比べて向上することが確認できる。
【0104】
このような結果を本発明の一実施例による積層型電子部品100に適用すると、粒成長領域である第2領域114cが非粒成長領域である第1領域114a、114bと第3領域114cとの間に配置される場合、マージン部114自体の引張強度、曲げ強度、引張特性を向上させることができるため、積層型電子部品100におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0106】
また、本発明で使用される「一実施例」という表現は、互いに同じ実施例を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の一実施例の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の一実施例に説明されていなくても、他の一実施例においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施例に関連する説明として理解することができる。
【0107】
本発明で使用される用語は、単に一実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0108】
100:積層型電子部品
111:誘電体層
121、122:内部電極
131、132:外部電極
112、113:カバー部
114、115:マージン部
114a、114b:第1-1領域及び第1-2領域
114c:第2領域
114d:第3領域