(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122878
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】床用化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240902BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20240902BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B21/08
E04F15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007036
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2023029913
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲
(72)【発明者】
【氏名】川村 純平
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA12
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(57)【要約】
【課題】床用化粧板の化粧板基材として針葉樹合板を使用した場合でも、化粧板基材の経時的な含水率変化に伴う節などの凹凸の映出、及び反りが抑制されている床用化粧板を提供する。
【解決手段】厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される床用化粧板であって、
(1)前記化粧板基材は、針葉樹合板であり、
(2)前記化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、最表層に架橋硬化型樹脂層とを備え、
(3)前記化粧板基材と、前記基材シートとの間に、透湿度が1.5g/m
2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第1の防湿処理層を備える、
ことを特徴とする、床用化粧板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される床用化粧板であって、
(1)前記化粧板基材は、針葉樹合板であり、
(2)前記化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、最表層に架橋硬化型樹脂層とを備え、
(3)前記化粧板基材と、前記基材シートとの間に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第1の防湿処理層を備える、
ことを特徴とする、床用化粧板。
【請求項2】
前記化粧板基材の裏面側であって、前記化粧板基材に対して前記化粧シートを備える側とは反対側に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第2の防湿処理層を更に備える、請求項1に記載の床用化粧板。
【請求項3】
前記針葉樹合板は、片面又は両面に節を有する、請求項1に記載の床用化粧板。
【請求項4】
前記第1の防湿処理層の厚さが0.01mm以上0.2mm以下である、請求項1に記載の床用化粧板。
【請求項5】
前記第1の防湿処理層が前記化粧シートの一部であり、前記化粧シートの厚さが0.1mm以上0.4mm以下である、請求項1に記載の床用化粧板。
【請求項6】
前記第2の防湿処理層の厚さが0.01mm以上0.2mm以下である、請求項2に記載の床用化粧板。
【請求項7】
前記架橋硬化型樹脂層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の床用化粧板。
【請求項8】
針葉樹合板に積層することにより床用化粧板を製造するための積層体Aであって、
(1)前記積層体Aは、第1の防湿処理層と、化粧シートとを備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、
ことを特徴とする、積層体A。
【請求項9】
針葉樹合板に積層することにより床用化粧板を製造するための化粧シートであって、
(1)前記化粧シートは、基材シートの裏面側に第1の防湿処理層を備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、
ことを特徴とする、化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋の床用化粧板に用いられる木質系化粧板としては、良質な原木から得られる木質基材(広葉樹のラワン、ファルカタ等の合板)の上面に接着剤を介して天然木の意匠を有する化粧シートを貼着したものが知られている。また、天然木合板の代替材料としては、木質繊維又は木質片を接着剤により成形・固化してなる木質板(中密度木質繊維板:MDF、高密度木質繊維板:HDF、パーティクルボード:PB等)又はそれらを組み合わせた複合材が知られている。これらの木質基材としては、床用化粧板の外観への影響を考慮し、意匠層である化粧シートを貼着する木質基材の表面が平滑であり、且つ節などの欠点のない物が選定して使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には床用化粧材が開示されており、木質基材としてはMDFなどの木質繊維板、ラワンなどの南洋材合板が例示されるとともに、実施例ではMDFを使用して床用化粧材を作製したことが記載されている。
【0004】
また、従来の床用化粧板では、木質基材として特にPBを使用する場合には、経時的な含水率変化による寸法変化(いわゆる反り)が生じ易いため、木質基材のおもて面に化粧シートを貼着し、木質基材の裏面に防湿フィルムを貼着することにより、寸法変化を抑制する工夫がなされている。
【0005】
ラワン、ファルカタ等の広葉樹は合板に加工した際に節などの欠点の少ない樹種であることから多用されてきたが、成長が遅いことに加えて、近年、天然資源の窮乏、木材伐採制限等により原木が入手し難く、木材高騰の影響もあり材料不足が進んでいる。同時に、MDFなどの木質繊維板、PB等においても材料不足が進んでいる。
【0006】
よって、これらの木質基材の代替材料として、比較的入手が容易な針葉樹合板を使用することが提案されている。しかしながら、針葉樹合板は樹種の特性として合板の表面に節などの欠点を有する場合が多く、経時的な含水率変化に伴い化粧シートの表面まで節などの凹凸が映出することがあり、外観への影響があることが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、床用化粧板の化粧板基材(木質基材)として針葉樹合板を使用した場合でも、化粧板基材の経時的な含水率変化に伴う節などの凹凸の映出、及び反りが抑制されている床用化粧板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体からなる床用化粧板において、化粧板基材(針葉樹合板)と、化粧シートの基材シートとの間に特定の防湿処理層を備える態様によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の床用化粧板に関する。
1.厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される床用化粧板であって、
(1)前記化粧板基材は、針葉樹合板であり、
(2)前記化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、最表層に架橋硬化型樹脂層とを備え、
(3)前記化粧板基材と、前記基材シートとの間に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第1の防湿処理層を備える、
ことを特徴とする、床用化粧板。
2.前記化粧板基材の裏面側であって、前記化粧板基材に対して前記化粧シートを備える側とは反対側に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第2の防湿処理層を更に備える、上記項1に記載の床用化粧板。
3.前記針葉樹合板は、片面又は両面に節を有する、上記項1又は2に記載の床用化粧板。
4.前記第1の防湿処理層の厚さが0.01mm以上0.2mm以下である、上記項1~3のいずれか一項に記載の床用化粧板。
5.前記第1の防湿処理層が前記化粧シートの一部であり、前記化粧シートの厚さが0.1mm以上0.4mm以下である、上記項1~4のいずれか一項に記載の床用化粧板。
6.前記第2の防湿処理層の厚さが0.01mm以上0.2mm以下である、上記項2~5のいずれか一項に記載の床用化粧板。
7.前記架橋硬化型樹脂層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、上記項1~6のいずれか一項に記載の床用化粧板。
8.針葉樹合板に積層することにより床用化粧板を製造するための積層体Aであって、
(1)前記積層体Aは、第1の防湿処理層と、化粧シートとを備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、
ことを特徴とする、積層体A。
9.針葉樹合板に積層することにより床用化粧板を製造するための化粧シートであって、(1)前記化粧シートは、基材シートの裏面側に第1の防湿処理層を備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、
ことを特徴とする、化粧シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床用化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成され、化粧板基材(針葉樹合板)と、化粧シートの基材シートとの間に特定の防湿処理層を備えることにより、化粧板基材の経時的な含水率変化に伴う節などの凹凸の映出、及び反りが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の床用化粧板の一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の床用化粧板の一例を示す断面模式図である。
【
図3】本発明の床用化粧板に用いる化粧シートの一例を示す断面模式図である。
【
図4】本発明の床用化粧板に用いる化粧シートの一例を示す断面模式図である。
【
図5】本明細書における、JIS K7161の規定に従った引張弾性率の測定に用いるダンベル型試験片を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の床用化粧板について説明する。
【0014】
1.床用化粧板
本発明の床用化粧板は 厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される床用化粧板であって、
(1)前記化粧板基材は、針葉樹合板であり、
(2)前記化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、最表層に架橋硬化型樹脂層とを備え、
(3)前記化粧板基材と、前記基材シートとの間に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第1の防湿処理層を備える、
ことを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明の床用化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成され、化粧板基材(針葉樹合板)と、化粧シートの基材シートとの間に特定の防湿処理層を備えることにより、化粧板基材の経時的な含水率変化に伴う節などの凹凸の映出、及び反りが抑制されている。
【0016】
本発明の床用化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成され、上記(1)~(3)に示す所定の要件を満たしていれば、その具体的構成(層構成)については限定されない。
【0017】
具体的な実施態様では、本発明の床用化粧板は、例えば
図1に示されるように、厚さ方向において順に、化粧板基材1(針葉樹合板)と、第1の防湿処理層3Aと、化粧シート4とを少なくとも備える積層体から構成することができる。なお、化粧シートには基材シートが含まれているため、第1の防湿処理層3Aは、化粧板基材と、基材シートとの間に備えられている。また、化粧板基材1と、第1の防湿処理層3Aとの間、及び第1の防湿処理層3Aと、化粧シート4との間には、接着剤層2が備えられていてもよい。
【0018】
また、本発明の床用化粧板は、例えば
図2に示されるように、厚さ方向において順に、第2の防湿処理層3Bと、化粧板基材1(針葉樹合板)と、第1の防湿処理層3Aと、化粧シート4とを少なくとも備える積層体から構成することができる。なお、化粧シートには基材シートが含まれているため、第1の防湿処理層3Aは、化粧板基材と、基材シートとの間に備えられている。また、化粧板基材1(針葉樹合板)と、第1の防湿処理層3Aとの間、第1の防湿処理層3Aと、化粧シート4との間、及び化粧板基材1(針葉樹合板)と、第1の防湿処理層3Aとの間には、接着剤層2が備えられていてもよい。
【0019】
本発明で用いる化粧シート(本発明の化粧シート)は、厚さ方向において順に、例えば、基材シートと、透明性熱可塑性樹脂層と、架橋硬化型樹脂層とを少なくとも備える積層体から構成されていてもよい。また、本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、例えば、基材シートと、絵柄模様層と、透明性熱可塑性樹脂層と、架橋硬化型樹脂層とを少なくとも備える積層体から構成されていてもよい。なお、本発明の化粧シートにおいて、最表層の架橋硬化型樹脂層はいわゆる表面保護層としての役割を有する。
【0020】
図3は本発明の化粧シートの一例を示す断面模式図である。
図3では、基材シート6上に、絵柄模様層7、透明性接着剤層8、透明性熱可塑性樹脂層9、プライマー層10及び架橋硬化型樹脂層11が順に積層されており、基材シート6の裏面に裏面プライマー層5が更に備えられている。また、エンボス凹凸模様が形成されている。
【0021】
図4は本発明の化粧シートの一例を示す断面模式図である。
図4では、基材シート6上に、絵柄模様層7、透明性接着剤層8、透明性熱可塑性樹脂層9、プライマー層10及び架橋硬化型樹脂層11が順に積層されており、基材シート6の裏面に裏面プライマー層5を介して、第1の防湿処理層3Aが更に備えられている。また、エンボス凹凸模様が形成されている。このように、第1の防湿処理層3Aは、本発明の化粧シートの一部(最下層)として構成してもよいし、本発明の化粧シートは別に、第1の防湿処理層3A(例えば上記(3)の特性を満たす防湿フィルム又は防湿シート)を準備してもよい。
【0022】
本明細書では、本発明の床用化粧板の施工後に視認される面、すなわち化粧板基材から見て架橋硬化型樹脂層(表面保護層)が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、化粧シートから見て化粧板基材が積層されている方向を「下」又は「裏面」と称する。なお、積層体において「架橋硬化型樹脂層(表面保護層)の側」という場合に、略記して「架橋硬化型樹脂層(表面保護層)側」ともいう。
【0023】
以下、
図1~3を例示的に用いて本発明の床用化粧板、及び化粧シートの各層について説明する。但し、本発明の床用化粧板、及び化粧シートの層構成は図面の態様に限定されず、前述の通り積層体として種々の層構成を採ることができる。なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
【0024】
化粧板基材(針葉樹合板)
本発明の床用化粧板は、化粧板基材として針葉樹合板を用いる。
【0025】
針葉樹としては、例えば、椴松、唐松、蝦夷松、杉、ヒノキ、パイン、セコイヤ、トウヒ等が挙げられる。
【0026】
針葉樹合板を構成する木質単板の積層数(プライ数)は限定的ではないが、通常3~7枚が好ましく、5~7枚がより好ましい。また、針葉樹合板作製時に用いる接着剤も限定されず、公知の木工用接着剤が広く使用できる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。また、熱硬化型接着剤として、メラミン系、フェノール系、ユリア系(酢酸ビニル-尿素系など)等の接着剤も挙げられる。
【0027】
針葉樹合板は、樹種の特性として合板の表面に節などの欠点を有する場合があるが、本発明の床用化粧板は、針葉樹合板の上に所定の第1の防湿処理層を備えることにより、針葉樹合板に経時的な含水率変化があっても化粧シートの表面まで節などの凹凸が映出することが抑制されている。よって、本発明の床用化粧板は、針葉樹合板の表面に節などの欠点を有する場合でも床用化粧板の外観(意匠性)に影響を与えることなく使用することができる点で有用性が高い。かかる効果は、針葉樹合板の裏面に所定の第2の防湿処理層を更に備える場合にはより得られ易くなり、更に針葉樹合板の反りを抑制する効果もより得られ易くなる。
【0028】
化粧板基材の厚さは限定的ではないが、2~15mm程度が好ましく、2~12mm程度がより好ましい。
【0029】
化粧板基材と、第1の防湿処理層(例えば防湿フィルム又は防湿シート)とを積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤によりそれぞれを貼着する方法等を採用することができる。化粧板基材と、第2の防湿処理層(例えば防湿フィルム又は防湿シート)とを積層する積層方法についても同様である。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ウレタン、アクリル、ウレタン-アクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
【0030】
第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層
本発明の床用化粧板は、化粧シートが、厚さ方向において順に、基材シートと、最表層に架橋硬化型樹脂層とを備え、化粧板基材と、基材シートとの間に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第1の防湿処理層を備える。また、本発明の床用化粧板は、化粧板基材の裏面側であって、化粧板基材に対して化粧シートを備える側とは反対側に、透湿度が1.5g/m2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である第2の防湿処理層を更に備えていてもよい。
【0031】
なお、本明細書における防湿処理層の透湿度は、JIS K 7129B(プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法))に準じて温度40℃、湿度90%RH環境下での測定値である。また、本明細書における防湿処理層の引張弾性率は、JIS K7161の規定に従って、
図5に示されるダンベル型試験片を使用して25℃の温度環境下、引張圧縮試験機(オリエンテック株式会社製:テンシロンRTC-1250A)を用い、引張速度50mm/min、チャック間距離80mmの条件で測定した測定値である。
【0032】
第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層(以下、まとめて「防湿処理層」ともいう)は、所定の透湿度と、所定の引張弾性率との要件を具備する限り、その構成は特に限定されない。例えば、防湿フィルム又は防湿シートとして公知の材料を用いてもよく、また化粧シートの最下層として化粧シートの一部を構成する態様であってもよい。
【0033】
防湿処理層の厚さは限定的ではないが、第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層ともに、それぞれ0.01mm以上0.2mm以下が好ましい。また、第1の防湿処理層が化粧シートの一部である場合には、第1の防湿処理層を含む化粧シートの厚さは0.1mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0034】
防湿処理層の透湿度としては、1.5g/m2・24時間以下であればよいが、その中でも1.0g/m2・24時間以下が好ましく、透湿度の下限値としては0.1g/m2・24時間程度である。また、防湿処理層の引張弾性率は2400MPa以上4200MPa以下であればよいが、その中でも3500MPa以上4200MPa以下が好ましい。本発明では、特に第1の防湿処理層が当該物性を具備することにより、針葉樹合板に経時的な含水率変化があっても化粧シートの表面まで節などの凹凸が映出することが抑制されている。かかる効果は、針葉樹合板の裏面に所定の第2の防湿処理層を更に備える場合にはより得られ易くなり、更に針葉樹合板の反りを抑制する効果もより得られ易くなる。
【0035】
防湿処理層の構成は所定の物性(透湿度,引張弾性率)を満たす限り限定されないが、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のエステル系熱可塑性樹脂などの合成樹脂製フィルムを基材層(合成樹脂製基材層)とし、更に無機物の蒸着層を備えるものが好ましい。かかる構成を有する防湿処理層としては、公知の防湿フィルム又は防湿シートの市販品も使用できる。以下、上記構成を例示的に説明する。
【0036】
合成樹脂製基材層としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-プロピレン共重合体,エチレン-ビニルアルコール共重合体,これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂;ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂;ポリイミド,ポリウレタン,ポリスチレン,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0037】
合成樹脂製基材層は、一軸又は二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよい。合成樹脂製基材層は、無機物の蒸着層を備えることが好ましく、蒸着層が形成される基材としての位置付けから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。合成樹脂製基材層の厚さは限定的ではないが、9~25μmが好ましい。
【0038】
蒸着層としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物薄膜からなる無機酸化物蒸着層が挙げられる。蒸着層は、真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法等の周知の蒸着法によって合成樹脂製基材層に形成される。より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。
【0039】
蒸着層のガスバリア性を向上させる目的で、蒸着層上に表面コート層を設けてもよい。表面コート層としては、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。また、一般式R1
nM(OR2)m(但し、式中、R1、R2は炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合体とを含有し、更にゾル-ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下でゾル-ゲル法によって重縮合して調製される組成物が挙げられる。また、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体を組み合わせることによって、ガスバリア性、耐水性、耐候性等が著しく向上する。上記組成物にはシランカップリング剤等を添加してもよい。これらの樹脂又は組成物を蒸着層上にロールコート法、グラビアコート法等の塗布方法で塗布することにより表面コート層が得られる。表面コート層は蒸着層の保護層としても機能し、その厚さは0.1~2μmが好ましい。
【0040】
上記合成樹脂製基材層及び/又は上記表面コート層は、必要に応じて、コロナ処理等の表面処理を施すことができる。このような表面処理によって、更に隣接層との接着強度を高めることができる。
【0041】
合成樹脂製基材層と蒸着層との間、並びに防湿処理層の片面又は両面に更にプライマー層を備えてもよい。従って、防湿処理層の好適な構成は、例えば「合成樹脂製基材層/プライマー層/蒸着層/表面コート層」の態様であり、更に防湿処理層の片面又は両面にはプライマー層を設けた態様でもよい。
【0042】
これらのプライマー層は、合成樹脂製基材層と蒸着層との密着性を高める目的、防湿処理層を他の層に積層する際の密着性を高める目的として備える。
【0043】
プライマー層に用いる樹脂としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独又は混合して使用できる。プライマー層の形成は、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて行える。
【0044】
化粧シート
図3に例示される化粧シートは、基材シート6上に、絵柄模様層7、透明性接着剤層8、透明性熱可塑性樹脂層9、プライマー層10及び架橋硬化型樹脂層11が順に積層されており、基材シート6の裏面に裏面プライマー層5が更に備えられている。また、エンボス凹凸模様が形成されている。
【0045】
基材シート
基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層等が順次積層される。なお、最表層は架橋硬化型樹脂層(表面保護層)である。
【0046】
基材シートとしては、樹脂製フィルム、紙、樹脂含浸紙等の種々のものを例示することができるが、樹脂製フィルムの中でも樹脂成分として熱可塑性樹脂を含有するものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。本発明では、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の少なくとも一種を好適に用いることができる。
【0047】
基材シートは、着色されていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0049】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
また、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(A)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がさらに好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、分岐構造を有するため、硬化物層からブリードアウトしにくくなることが期待され、より長期的に優れた耐候性が得られる。
【0051】
【0052】
一般式(A)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。
【0053】
上記ヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-(2ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-エチル-ヘキサノイックアシッド2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、オクタノイックアシッド2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、2,4,6-トリス{2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)}-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2,4ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)1-3-5トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を採用できる。
【0054】
光安定剤としては、芳香族系化合物、アミン系化合物、有機酸系化合物、カテキン系化合物及びヒンダードアミン系化合物が挙げられ、中でもヒンダードアミン系化合物が好ましい。ヒンダードアミン系化合物とは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有するものである。
【0055】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1-オキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を採用できる。
【0056】
紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量は、基材シートを熱可塑性樹脂とした場合には、それぞれ樹脂100質量部に対して0.1~10.0質量部が好ましく、0.5~5.0質量部がより好ましく、1.0~4.0質量部がさらに好ましい。
【0057】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50~250μmが好ましい。
【0058】
基材シートは、必要に応じて、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すればよい。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、前述した第1の防湿処理層を形成したり、絵柄模様層(いわゆるバックプリント)を形成したり、後述する裏面プライマー層、後述するバッカー層等を形成したりしてもよい。
【0059】
絵柄模様層
絵柄模様層は、本発明の化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する任意層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。
【0060】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた既知の印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、化粧シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
【0061】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
【0062】
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN-ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用することもできる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0064】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0065】
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、層厚は0.1~15μm程度である。
【0066】
透明性樹脂層
透明性樹脂層は任意に設けることができる層であり、透明性であれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。上記透明性樹脂層の材質は限定されないが、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。本発明では、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の少なくとも一種を好適に用いることができる。本明細書では、透明性樹脂層が熱可塑性樹脂を含有する場合には、透明性樹脂層を特に「透明性熱可塑性樹脂層」と称する。
【0067】
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、着色されていてもよい。
【0068】
また、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、必要に応じて、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0069】
透明性樹脂層に含み得る紫外線吸収剤及び光安定剤の説明は基材シートの項目で説明した内容と同じである。つまり、基材シートの項目で例示した紫外線吸収剤及び光安定剤を透明性樹脂層に含まれる樹脂に対して同様の添加量で用いることができる。
【0070】
透明性樹脂層の厚さは限定的ではないが、40μm以上300μm以下が好ましく、その中でも60μm以上200μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が最も好ましい。透明性樹脂層の厚さを上記範囲に設定することにより、深いエンボスを形成することができると共に、傷の発生や絵柄模様層の摩耗による削れ(絵柄取られ)を抑制する効果が得られ易い。
【0071】
透明性接着剤層
絵柄模様層と、透明性樹脂層又は後述する架橋硬化型樹脂層(表面保護層)との密着性を高めるために透明性接着剤層を形成してもよい。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
【0072】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0073】
また、透明性接着剤層は、透明性を有する限り、必要に応じて、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0074】
透明性接着剤層に含み得る紫外線吸収剤及び光安定剤の説明は基材シートの項目で説明した内容と同じである。つまり、基材シートの項目で例示した紫外線吸収剤及び光安定剤を透明性接着剤層に含まれる樹脂に対して同様の添加量で用いることができる。
【0075】
透明性接着剤層の厚さは特に限定されないが、厚さが0.1~30μm程度、好ましくは1~20μm程度である。
【0076】
プライマー層
透明性樹脂層の上には、架橋硬化型樹脂層(表面保護層)用のプライマー層を設けてもよい。このプライマー層は透明性樹脂層と後述の架橋硬化型樹脂層との密着性を高める作用に加えて、架橋硬化型樹脂層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高めることができる。プライマー層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
【0077】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。これらの中でも、耐傷性及び耐候性の観点からポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂を含むウレタン樹脂系プライマー剤が好適に使用できる。
【0078】
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤;シリカ、炭酸カルシウム、クレー等のフィラー;水酸化マグネシウム等の難燃剤;酸化防止剤;滑剤;発泡剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0079】
プライマー層に含み得る紫外線吸収剤及び光安定剤の説明は基材シートの項目で説明した内容と同じである。つまり、基材シートの項目で例示した紫外線吸収剤及び光安定剤をプライマー層に含まれる樹脂に対して同様の添加量で用いることができる。
【0080】
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.5μm以上12μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、架橋硬化型樹脂層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高め易くなる。また、耐候剤などの添加剤を含有し易くなり、化粧シートに耐候性も付与し易くなる。
【0081】
架橋硬化型樹脂層(表面保護層)
本発明の化粧シートは、最表層に架橋硬化型樹脂層(表面保護層)を備える。なお、架橋硬化型樹脂層は、架橋硬化型樹脂の硬化物を含有する。
【0082】
架橋硬化型樹脂層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
【0083】
架橋硬化型樹脂層の樹脂成分としては、電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により最表層を形成する場合には、化粧シートの耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。これらの中でも、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0084】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0085】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0086】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重量平均分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。ここで、本明細書における重量平均分子量は、GPC分析(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定され、且つ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0087】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0089】
本発明では、電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に2個のラジカル重合性不飽和基を有する重量平均分子量1000~3000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と1分子中に3個~15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)を含有する混合樹脂を用いることができる。かかる混合樹脂を用いる場合には、架橋密度が高いため耐傷性、耐汚染性等の効果が得られ易い上、重量平均分子量及び/又は配合量を適宜調整することにより、架橋硬化型樹脂層を耐衝撃性に優れた態様としたり、Vカットなどの加工適性に優れた態様としたりする等、用途に応じた表面性能に調整し易いという利点がある。
【0090】
電離放射線硬化型樹脂中の上記オリゴマー(A)、上記オリゴマー(B)の含有割合は限定的ではないが、オリゴマー(A)及びオリゴマー(B)の合計量を100質量%とした場合に、オリゴマー(A)が50~90質量%、オリゴマー(B)が10~50質量%の範囲であれば好ましい。
【0091】
本発明では、電離放射線硬化型樹脂として、下記の樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含有する混合樹脂を用いることもできる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0092】
樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、ジイソシアネートの三量体により形成されるイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(特に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート)の三量体、トリレンジイソシアネートの三量体、メタキシレンジイソシアネートの三量体等が挙げられる。なお、トリレンジイソシアネート及びメタキシレンジイソシアネートはベンゼン環を有する点でヘキサメチレンジイソシアネートよりも耐候性が劣る可能性があるため、これらのジイソシアネートは水素添加されていることが好ましい。これらの樹脂Aは、架橋硬化型樹脂層の耐汚染性、耐アルカリ性等を向上させる効果がある。
【0093】
樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、当該脂環骨格としてイソホロン及びシクロヘキサンの少なくとも一種を有することが好ましい。具体的には、イソホロンジイソシアネートとブタンジオールとをモノマーとする重合体であるウレタンオリゴマーの末端にアクリレートを付加したもの、水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂Bは、架橋硬化型樹脂層に柔軟性を付与する効果があり、樹脂Aとの組み合わせにより架橋硬化型樹脂層に長期間に亘る優れた耐汚染性、耐アルカリ性等とともに、衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を抑制する効果を与える。
【0094】
なお、電離放射線硬化型樹脂は、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂であって、硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。なお、本発明では電離放射線硬化型樹脂の中でも、光重合開始剤を含まない点で原料樹脂の性質がそのまま架橋硬化型樹脂層の樹脂成分の性質に反映できる点、且つ耐候剤を併用する場合の選択の幅が広がるという点から電子線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0096】
上記例示の架橋硬化型樹脂は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0097】
架橋硬化型樹脂層は、例えば、プライマー層上に架橋硬化型樹脂と任意の添加剤とを含有する架橋硬化型樹脂層形成用組成物をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。塗膜の厚さは10μm以上15μm以下であることが好ましい(硬化後の架橋硬化型樹脂層の厚さと同様)。
【0098】
また、架橋硬化型樹脂層には、必要に応じて、染料,顔料等の着色剤、無機フィラー等の充填剤、耐候剤、消泡剤,レベリング剤,チクソトロピー性付与剤,難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗アレルゲン剤等の各種添加剤を加えてもよい。無機フィラーは主に艶消し剤として用いられる場合が多いが、架橋硬化型樹脂層に無機フィラーを含むことにより表面保護層の硬化収縮を抑制する効果も期待できる。
【0099】
架橋硬化型樹脂層に含み得る紫外線吸収剤及び光安定剤の説明は基材シートの項目で説明した内容と同じである。つまり、基材シートの項目で例示した紫外線吸収剤及び光安定剤を架橋硬化型樹脂層に含まれる樹脂に対して同様の添加量で用いることができる。
【0100】
上記抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び有機系抗菌剤がある。特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため望ましい。本明細書における無機系抗菌剤とは、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。
【0101】
上記抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。無機化合物としては金属を担持してなる材料であることが好ましい。
【0102】
無機化合物の無機材料としては例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等が好ましい。
【0103】
無機材料に担持される金属としては、例えば、銀、金、白金、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも亜鉛等が好ましい。市販品として例えば、日揮触媒製「アトミーボールTZ-R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0104】
有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
【0105】
フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業株式会社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油株式会社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。また、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成株式会社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0106】
スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の単量体成分としては、特許第6136433号に示されるような材料を用いることができる。
【0107】
その他に、有機化合物と無機化合物とを混合させる場合は、例えばアニオン性フェノール系と抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料が挙げられる。
【0108】
アニオン性フェノール系材料としては、タンニン、タンニン酸-吐酒石、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド樹脂、ノボラック型樹脂のスルホン化合物、ノボラック型樹脂のメタンスルホン酸、レゾール型樹脂のメタンスルホン酸、ベンジル化フェノールスルホン酸、チオフェノール系化合物、ジヒドロオキシ、ジフェニルスルホン系化合物、リガント化合物及びこれらの金属キレート化合物などから適宜選択して用いられる。
【0109】
亜鉛系材料としては、水溶性亜鉛化合物又は非水溶性亜鉛化合物、亜鉛/金属酸化物複合素材などから適宜選択され、非水溶性亜鉛化合物及び/又は非水溶性亜鉛・金属酸化物の複合粒子が水分散され、粒子径が50μm以下であり、前記金属酸化物がチタニア、シリカ、アルミナのいずれかを少なくとも一種含むものであることが好ましい。
【0110】
上記抗ウイルス剤としては、一般的に有機系と無機系とに大別することができる。有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系等がある。無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス、酸化モリブデン等に担持させたものがある。抗ウイルス剤の添加量は表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、詳細は抗ウイルス剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0111】
上記有機系の抗ウイルス剤のうち、特に粒子形状を保つベンゾイミダゾール系の抗ウイルス剤またはアニオン系の抗ウイルス剤が好適に用いられる。粒子形状を保つとは、つまり表面保護層の硬化型樹脂となる組成物(硬化前のインキ)内で溶解することなく、粒子の状態で存在する。このため、表面保護層を形成する過程において、イミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子を偏在させやすくすることができる。そして、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子をまたはアニオン系化合物の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0112】
上記アニオン系の抗ウイルス剤としては、例えばスチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物はスチレン、スルホン酸Na、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造のうち少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことが更に好ましい。これは、ウイルスにはエンベロープ有無の2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害し得る抗ウイルス剤の構造は異なると考えられるためである。
【0113】
上記無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、中でもリン酸系ガラス銀担持化合物または銀ゼオライト化合物、及び酸化モリブデン銀複塩化合物は少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、更に好ましい。
【0114】
上記銀系の抗ウイルス剤を上記表面保護層に添加する場合、表面保護層によっては変色する(添加した塗料の状態で熱・光により変色する場合や、表面保護層形成後に熱・光により変色する場合がある)が、この場合は紫外線防止剤や光安定剤等を適時添加することにより改善することが可能である。例えば、上記酸化モリブデン銀複塩化合物に対しては、ベンゾトリアゾール化合物を用いると変色改善効果が期待できる。
【0115】
エンボス加工
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行い、透明性樹脂層上、及び/又は、架橋硬化型樹脂層上からエンボス加工が施されていてもよい。例えば、架橋硬化型樹脂層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧及び賦型し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
【0116】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0117】
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0118】
裏面プライマー層
基材シートの裏面には、必要に応じて裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、基材シートと化粧板基材とを接着して化粧板を作製する際に効果的である。
【0119】
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートに塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0120】
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0121】
裏面プライマー層に含み得る紫外線吸収剤及び光安定剤の説明は基材シートの項目で説明した内容と同じである。つまり、基材シートの項目で例示した紫外線吸収剤及び光安定剤を裏面プライマー層に含まれる樹脂に対して同様の添加量で用いることができる。
【0122】
裏面プライマー層の厚さは特に限定されないが、通常0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm程度である。
【0123】
合成樹脂製バッカー層
基材シートの裏面には、必要に応じて合成樹脂製バッカー層を設けてもよい。合成樹脂製バッカー層を有することにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。なお、前述の裏面プライマー層も設ける場合には、基材シートの裏面に基材シート側から合成樹脂製バッカー層及び裏面プライマー層の順に設ける。
【0124】
合成樹脂製バッカー層を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET-G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどの非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上で使用できる。
【0125】
合成樹脂製バッカー層の厚みは、0.1~0.6mmが好ましく、0.15~0.45mmがより好ましく、0.20~0.40mmが更に好ましい。合成樹脂製バッカー層の厚みの下限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。また、合成樹脂製バッカー層の厚みの上限が上記範囲であることにより、化粧シートの反りがより一層抑制される。
【0126】
化粧シートの各層に含まれる各種添加剤のベシクル化
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(プライマー層や架橋硬化型樹脂層に添加される無機フィラー等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
【0127】
ベシクル化処理方法としては、超臨界逆相蒸発法の他に、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、逆相蒸発法、凍結融解法などが挙げられる。このようなベシクル化処理方法について簡単に説明すると、Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることよりベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルターを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得る方法である。
【0128】
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
【0129】
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、卵黄レシチン、水添卵黄レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0130】
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
【0131】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0132】
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0133】
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
【0134】
2.積層体A、及び化粧シート
本発明は、前述の床用化粧板の発明に加えて、当該床用化粧板を製造するのに有用な、積層体A、及び化粧シートの発明も包含する。積層体A(本発明の積層体A)、及び化粧シート(本発明の化粧シート)は下記の通りである。
【0135】
本発明の積層体Aは、針葉樹合板(化粧板基材)に積層することにより床用化粧板を製造するための積層体であって、
【0136】
(1)前記積層体Aは、第1の防湿処理層と、化粧シートとを備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m
2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、ことを特徴とする。このような本発明の積層体Aは、例えば
図1のうち、「第1の防湿処理層3A/接着剤層2/化粧シート4」(「/」は層間を示す)により構成される積層体である。
【0137】
また、本発明の化粧シートは、針葉樹合板(化粧板基材)に積層することにより床用化粧板を製造するための化粧シートであって、
(1)前記化粧シートは、基材シートの裏面側に第1の防湿処理層を備え、
(2)前記第1の防湿処理層は、透湿度が1.5g/m
2・24時間以下であり、且つJIS K7161の規定に従って測定した引張弾性率が2400MPa以上4200MPa以下である、ことを特徴とする。このような本発明の化粧シートは、例えば
図4で示されるように構成中に第1の防湿処理層3Aを備える化粧シートである。
【0138】
本発明の積層体A、及び化粧シートは、いずれも針葉樹合板を化粧板基材として使用し、これに少なくとも化粧シートを積層することにより床用化粧板を製造するのに適した中間材である。各用語の説明については、本発明の床用化粧板の項目で説明した通りである。本発明の積層体Aはその構成に第1の防湿処理層を備えており、本発明の化粧シートはその構成に第1の防湿処理層を備えている。よって、本発明の積層体A、及び化粧シートは、針葉樹合板に積層することにより床用化粧板を製造した後において、化粧板基材の経時的な含水率変化に伴う節などの凹凸の映出、及び反りを抑制することができる。
【実施例0139】
以下に実施例及び比較例並びに試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に示す内容に限定されない。
【0140】
実施例1
<化粧シートの作製>
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルム(基材シート)のおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、更に絵柄印刷層上に透明性接着剤層を形成した。
【0141】
次いで、透明性接着剤層の上に80μm厚の透明性ポリプロピレン樹脂を溶融押出しラミネート方式で積層することにより透明性樹脂層を形成した。
【0142】
次いで、透明性樹脂層のおもて面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層を形成した。
【0143】
次いで、プライマー層のおもて面に下記を主成分とする電離放射線硬化型樹脂組成物をロールコート法により15μm塗工し、酸素濃度200ppm以下の環境下において電子線照射装置を用いて、加速電圧175keV,5Mradの条件で電子線を照射して硬化させることで架橋硬化型樹脂層(表面保護層)を形成した。
(電離放射線硬化型樹脂組成物)
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 80質量部
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 20質量部
・マット剤(11μmシリカ) 14質量部。
【0144】
次いで、基材シートの裏面に透明性ポリプロピレン樹脂を溶融押出しラミネート方式で積層することにより、250μm厚のバッカー層を形成した。
【0145】
次いで、バッカー層の裏面にコロナ放電処理を施した後、裏面プライマー層を形成することにより化粧シートを作製した。
【0146】
<防湿処理層の作製>
12μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意し、片面に真空蒸着により10nm厚の酸化アルミニウム(アルミナ)膜を形成した。
【0147】
次いで、酸化アルミニウム膜上にポリビニルアルコール(PVA)及びシリケート系からなる表面コート層200nm厚を形成し、積層体(PETフィルム/蒸着層/表面コート層)を作製した(なお、「/」は層間を示す。)。
【0148】
次いで、PETフィルムの蒸着側とは逆面をコロナ放電処理した後、積層体の両面に、主剤(ウレタン樹脂及び硝化綿系樹脂の混合物)に硬化剤(イソシアネート)を添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にてそれぞれ固形分として1μm厚で塗布して接着用プライマー層を形成した。これにより防湿処理層(接着用プライマー層A/PETフィルム/蒸着層/表面コート層/接着用プライマー層B)を得た。得られた防湿処理層を、第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層として使用した。
【0149】
防湿処理層の透湿度は、1.5g/m2・24時間であった。また、防湿処理層の引張弾性率は3550MPaであった。
【0150】
<床用化粧板の作製>
節部を含む12mm厚30cm四方の針葉樹合板(樹種:唐松)の一方の面(おもて面)を#200のサンダーを用い平滑に処理した。
【0151】
次いで、針葉樹合板の両面に50μm厚のウレタン系反応型ホットメルト接着剤を介して防湿処理層をラミネートした。針葉樹合板のおもて面に第1の防湿処理層、裏面に第2の防湿処理層をラミネートした。なお、第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層ともに、接着用プライマー層Bが針葉樹合板と接するようにラミネートした。
【0152】
次いで、第1の防湿処理層の上に更に50μm厚のウレタン系反応型ホットメルト接着剤を介して化粧シートをラミネートすることにより床用化粧板を作製した。
【0153】
実施例2
第2の防湿処理層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0154】
実施例3
バッカー層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0155】
実施例4
第2の防湿処理層、及びバッカー層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0156】
比較例1
バッカー層を400μm厚とし、第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0157】
比較例2
第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0158】
比較例3
バッカー層、第1の防湿処理層、及び第2の防湿処理層を形成しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0159】
実施例5
架橋硬化型樹脂層を形成する電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子製 PG-711)を3質量部添加した以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0160】
実施例6
架橋硬化型樹脂層を形成する電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、アニオン性フェノール系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530A)及び亜鉛系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530B)をそれぞれ16質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして床用化粧板を作製した。
【0161】
試験例1
実施例及び比較例で作製した各床用化粧板について、下記の評価を行った。
【0162】
<節映出の程度の評価>
各床用化粧板を水平な台上に平置きし(床用化粧板は化粧シート側をおもてとなるようにする)、高温下(温度60℃で24時間放置)、高温高湿下(温度40℃、湿度90%で24時間放置)の各条件で床用化粧板のおもて面を肉眼観察し、節映出の程度を評価した。肉眼観察は、床用化粧板から斜め45°で1m離れたところから行った。評価基準は次の通りとした。結果を表1に示す。
【0163】
〇 :節映出が確認できない、
△ :わずかに節映出が確認できる(許容範囲)、
× :節映出が確認できる(不合格)、
××:明らかに節映出が確認できる(不合格)。
【0164】
<床用化粧板の反りの程度の評価>
各床用化粧板を水平な台上に平置きし(床用化粧板は化粧シート側をおもてとなるようにする)、高温下(温度60℃で24時間放置)、高温高湿下(温度40℃、湿度90%で24時間放置)の各条件で床用化粧板を横から肉眼観察し、反りの程度を評価した。評価基準は次の通りとした。結果を表1に示す。
【0165】
○:隙間がない、
△:最大3mm未満の隙間が確認できる(許容範囲)、
×:3mm以上の隙間が確認できる(不合格)。
【0166】
(抗ウイルス性能)
実施例1及び実施例5で作製した床用化粧板について、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で抗ウイルス性能試験を行い、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を下記評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
なお、表2中の抗ウイルス剤(質量部)とは、架橋硬化型樹脂層を形成する電離放射線硬化型樹脂100質量部に対する抗ウイルス剤の使用量(質量部)を意味する。
【0167】
〇:抗ウイルス活性値2.0以上であった(合格)、
×:抗ウイルス活性値2.0未満であった(不合格)。
【0168】
(抗アレルゲン性能)
実施例1及び実施例6で作製した床用化粧板について、アレルゲン性能を評価した。具体的には、実施例1及び実施例6で作製した床用化粧板(10cm×10cm)を細かく切断し、20~30ng/mlのコナヒョウヒダニ由来アレルゲン水溶液60mL中に1日間浸した後のアレルゲン量を水平展開クロマト法(マイティチェッカー)で目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。その結果を表3に示す。
なお、表3中に記載のアニオン性フェノール系材料(質量部)及び亜鉛系材料(質量部)は、電離放射線硬化型樹脂組成物100質量部に対するアニオン性フェノール系材料及び亜鉛系材料の使用量(質量部)を意味する。
【0169】
〇:アレルゲン量の減少が確認できた(ダニアレルゲンレベル判定が+判定以下(すなわち100匹程度/m2以下であり合格)、
×:アレルゲン量の減少が確認できなかった(ダニアレルゲンレベル判定が+判定超過であり不合格)。
【0170】
【0171】
【0172】