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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122886
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】発泡押出成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240902BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240902BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240902BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20240902BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20240902BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240902BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20240902BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B5/18
B29C44/00 E
B29C44/24
B29C44/36
B29C48/21
B29C48/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015322
(22)【出願日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2023030074
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 有輝
(72)【発明者】
【氏名】川又 周太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AH03A
4F100AK01B
4F100AK12B
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100AK25B
4F100AK27B
4F100AK29B
4F100AP00B
4F100AP00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10B
4F100CA01A
4F100DJ01A
4F100EC03A
4F100EC03B
4F100EH17
4F100EJ02A
4F100GB07
4F100GB81
4F100JA13
4F100JB16B
4F100JJ01
4F100JJ02
4F100JJ07
4F100JK04
4F100JK04A
4F100JK07
4F100JK10
4F100JK12C
4F100JL16
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00C
4F207AA15
4F207AB02
4F207AD06
4F207AG03
4F207AG20
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA14
4F207KB13
4F207KB22
4F214AA15
4F214AB02
4F214AD06
4F214AG20
4F214AR12
4F214AR15
4F214UA11
4F214UA14
4F214UB02
4F214UC02
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】曲げ剛性や耐衝撃性、埋込ナットの引抜強度等の機械的性質に優れるだけでなく、難燃性、リサイクル性、断熱性等に優れるという付加機能を有する発泡押出成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、発泡塩化ビニル系樹脂を主材とする芯材層1と、無発泡熱可塑性樹脂を主材とする表層2とを備えた発泡押出成形体である。前記芯材層1と前記表層2との境界面は、互いに溶融固化して一体化されていることを特徴としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡塩化ビニル系樹脂を主材とする芯材層と、無発泡熱可塑性樹脂を主材とする表層とを備え、
前記芯材層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化されていることを特徴とする、発泡押出成形体。
【請求項2】
前記芯材層と前記表層との間に無発泡硬質塩化ビニル系樹脂を主材とする中間層を備え、前記芯材層と前記中間層との境界面が互いに溶融固化し、前記中間層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化されているとともに、
前記中間層の平均厚さは1mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の発泡押出成形体。
【請求項3】
曲げ弾性係数は100MPa以上、または断面二次モーメントは800mm4以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の発泡押出成形体。
【請求項4】
前記芯材層における発泡塩化ビニル系樹脂の発泡倍率は1.1倍以上15倍未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の発泡押出成形体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の発泡押出成形体であって、
幅95mm厚さ30mmの寸法で一端側を固定し他端側の150mmを空中に突出させ、他端側から50mmかつ幅方向中央部になす1形のストライカを落下させるパンクチャー衝撃試験において、前記表層に亀裂が生じるストライカの高さが1.0m以上であることを特徴とする、発泡押出成形体。
【請求項6】
密度が0.6g/mm3以上であり、
前記表層と前記中間層の何れかまたは両方において、樹脂100質量部に対して木粉が10質量部以上含有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の発泡押出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂を用いた押出成形体であって、テーブルやベンチ等の屋外で用いる家具や、断熱性を要求されるサッシ等に用いることができる発泡押出成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂の押出成形体は、一定の断面形状の長尺物を容易に製造することができるため広く用いられている。内部が充填された中実の押出成形体であれば、強度が高く、内部に水分や異物が侵入することがないという特徴がある。また、内部が空洞の中空の押出成形体は、軽量でありながらも曲げに強いという形状的特徴がある。
【0003】
このような特徴を活かし、歩道や公園に設置されるベンチや、庭に載置されるテーブルの素材として、腐食し易い天然木に代替して用いられている。
また、多層構造とすることができるため、断熱性を要求される窓枠のサッシ等にも用いられている。
【0004】
従来では、上述のような中空の押出成形体を用い、長手方向の両端部を蓋状部材で閉塞したものをベンチ等に使用する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、金属または合成樹脂製の中空の押出成形体に合成樹脂で外表面を被覆する技術が開示されている。押出成形体には長手方向の切断面である両端部に、合成樹脂製の蓋部が設けられている。この蓋部により、中空部内に水分が侵入することを防止することができるとされている。また、蓋部には所定の溝部が設けられており、外表面の被覆部を成形するときに溝部内に被覆部の樹脂が充填される。充填された樹脂のアンカー効果で蓋部が強固に結合するとされている。
【0005】
また、中実の押出成形体を用い、木粉を配合することで木質様材として屋外用の素材として使用する技術も開発されている。
例えば、特許文献2には、中実の芯材及び表層部に木粉が配合された有色の合成樹脂を用いた木質様材の技術が開示されている。薄く形成された表層の木粉配合量を、芯材の木粉配合量よりも低くすることにより、木質感のある風合いと強度を維持したまま耐候性を向上させることができるとされている。
【0006】
木粉を配合した押出成形体においては、さらに別の技術も開発されている。
例えば、特許文献3には、芯材に木粉を配合したポリプロピレンを用い、被覆材には光透過阻止成分を含む他の熱可塑性樹脂を用いる技術が開示されている。被覆材には木粉が配合されていないため吸水のおそれがなく、光透過阻止成分により耐候性が高くなるとされている。その一方で、芯材は耐候性を考慮する必要がないので、安価なリサイクル樹脂を用いることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-39246号公報
【特許文献2】特開2000-301670号公報
【特許文献3】特開2005-279976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の技術では、押出成形体の両端を閉塞している蓋部が合成樹脂製であり、押出成形体それ自体が中空であるため、特に端部の強度が低くなる。そのため、ベンチ等に用いた場合、端部に硬い物が衝突する等の衝撃が加わると、蓋部が破損して、鋭利な破断面が露出したり、中空の押出成形体の中に異物や水分が侵入したりするという問題がある。
また、押出成形体が合成樹脂製である場合には、蓋部が破損して押出成形体の端部が露出すると、押出成形体の端部も破損しやすくなる。
【0009】
また、蓋部は芯材との嵌合のために複雑な形状であることから、一般的に合成樹脂の成形により製造されるところ、一般的な樹脂では難燃性に乏しく、たばこの火の不始末等により火事の原因になり得る。
【0010】
さらに、押出成形体が中空であることにより、内部で空気の対流が生じやすい。空気の対流が生じると空気と芯材との接触面で熱が移動しやすいため、断熱性に劣ることとなる。そのため、特許文献1のような中空の押出成形体を何らの充填処理をせず窓枠のサッシに使用すると、建物全体の断熱性を低下させてしまうという問題がある。
【0011】
一方、特許文献2や特許文献3のように、押出成形体を中実にすれば、端部を被覆する必要がなく、破損しやすい端部処理のための部材を設ける必要がない。また、中実であるため、押出成形体それ自体も高い強度を有し、内部の空気の対流も起こらない。
また、端部処理のための部材を設ける必要がないことから、難燃性を高めることが容易である。
【0012】
しかし、硬質の樹脂を押出成形体として用いる場合には、中実であるため押出成形体としての重量が重くなってしまうという問題がある。
重量については、特許文献2には、発泡剤を用いることができる記載がある。ところが、一般に発泡樹脂として用いられるポリウレタン樹脂やポリスチレン樹脂に発泡剤を用いて発泡樹脂とするだけでは、軽量化できる一方で耐衝撃性や曲げ剛性が低下する。
【0013】
特に、ベンチ等に用いる場合には、他の部材とボルト等を用いて結合させるために、埋込ナットを使用するのが一般的である。例えば、薄い表層を超えて芯材に対して埋め込まれる鬼目ナットが挙げられる。ここで、芯材が発泡樹脂であると、ボルトに張力が生じたとき、アンカー効果を発揮する外周の突起部分が、強度の低い発泡樹脂をえぐり取ってナット自体が引き抜かれてしまう。
特許文献2には、これらの弊害を解決することについて具体的にどのような構成とするかについては何ら言及されていない。
【0014】
また、硬質樹脂で芯材を構成すると、樹脂それ自体の熱伝導率が空気よりも高い(または熱抵抗が低い)ことにより、押出成形体としての断熱性が低下してしまう。
さらに、曲げ剛性を向上させるために、芯材に樹脂のアロイを用いると、押出成形体の再生利用ができず、リサイクル性に劣るという問題もある。
【0015】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、曲げ剛性や耐衝撃性、埋込ナットの引抜強度等の機械的性質に優れるだけでなく、難燃性、リサイクル性、断熱性等に優れるという付加機能を有する発泡押出成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の発泡押出成形体(以下、「成形体」という)は、発泡塩化ビニル系樹脂を主材とする芯材層と、無発泡熱可塑性樹脂を主材とする表層とを備えた成形体である。前記芯材層と前記表層との境界面は、貼り合わせや嵌合によるものではなく、互いに溶融固化して一体化されている。
【0017】
芯材層と表層とを互いに溶融固化して一体化させる方法の一例としては、共押出しによる方法や、表層の押出成形後に芯材層を発泡押出しで充填させる方法等を挙げることができる。
溶融固化して一体化されていることにより、成形体に曲げが加わったときに、芯材層と表層の境界面が層間剥離することなく一体として変形する。
【0018】
曲げモーメントに対する変形のし難さの指標である断面二次モーメントの観点からみると、芯材層単体や表層の個々の場合には特に薄い表層の断面二次モーメントは極めて小さくなる。それに対して、一体化している場合には、全体としてひとつの断面形状を形成するため、断面二次モーメントが大きくなる。つまり、同じ曲げモーメントまたは曲げ荷重に対して、一体化している方が曲がりにくくなり、曲げ応力も小さくなるため、成形体としての曲げ剛性や耐衝撃性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の成形体は、芯材層が発泡塩化ビニル系樹脂を主材とすることで、中実の芯材層となっている。発泡樹脂による中実構造であることにより、表層の内側が全てガスを含む樹脂で充填されている状態となっている。そのため、中空の場合と比べて空気の対流が起こらない一方で、熱伝導率の低いガスが独立気泡の状態で均等に分散されていることで、成形体全体の断熱性を高くすることができる。
【0020】
芯材層が発泡塩化ビニル系樹脂を主材とすることについては、機械的性質の観点からも特徴がある。
押出成形に用いられる溶融発泡成形においては、一般的にはポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられるが、これらは強度が低い。そのため、埋込ナットのように微小なアンカー部分に力が集中すると、そこに生じる応力が破断応力を超えてナット周囲の樹脂がえぐり取られてしまい、ナットが容易に引き抜かれてしまう。
そこで、強度の高い塩化ビニル系樹脂を主材とした発泡樹脂を芯材層に用いることで、ボルトに生じる張力でナット周囲の樹脂がえぐり取られてしまうことを防止することができるため、埋込ナットの引抜きが生じにくくなる。
【0021】
さらに、中実の芯材層であることにより、成形体を所定の長さに切断して利用する場合、切断面から芯材層の内部に水分や異物が侵入することがない。そのため、切断面を封止するための端部処理のための部材が不要となる。前述のように、端部処理のための部材が不要であることにより、成形体全体の難燃性を向上させることができる。
【0022】
加えて、芯材層に発泡塩化ビニル系樹脂を主材として用いることにより、上述のように機械的性質に優れるとともに、樹脂のアロイではないため再生利用しやすいという特徴もある。
なお、本発明において「再生利用」とは、成形体を粉砕溶融して再度ペレットに加工するマテリアルリサイクルだけでなく、化学的に分解して化学製品の原料とするケミカルリサイクルを含む。なお、以下では「再生利用」を単に「リサイクル」ということもある。
【0023】
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記芯材層と前記表層との間に無発泡硬質塩化ビニル系樹脂を主材とする中間層を備える構成とし、前記芯材層と前記中間層との境界面が互いに溶融固化し、前記中間層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化するとともに、前記中間層の平均厚さを1mm以上とすることも可能である。
前記芯材層と前記表層との間に無発泡硬質塩化ビニル系樹脂を主材とする中間層を有する多層構造とすることで、芯材層の発泡塩化ビニル系樹脂によって軽量化及び断熱性向上を図るとともに、中間層の無発泡の硬質塩化ビニル系樹脂によって強度を向上させることができる。
【0024】
また、埋込ナットを用いるときは、アンカー部分が硬質樹脂である中間層に埋め込まれることとなる。中間層に無発泡の硬質塩化ビニル系樹脂を用いることで、埋込ナットに張力が働いたとしても、硬質塩化ビニル系樹脂それ自体が十分な強度を有しているため、アンカー部分に作用する力によって周囲の樹脂がえぐり取られにくくなる。これにより、埋込ナットの引抜きがより生じにくくなる。
【0025】
さらに、表層の平均厚さが1mm以上であることにより、埋込ナットが引き抜かれそうになったとしても、アンカー部分が硬質の樹脂である表層に引っ掛かるため、これによってもナットの引抜きが生じにくくなる。
【0026】
加えて、芯材層と中間層の主材を同じ塩化ビニル系樹脂とすることにより、両者が同程度の温度で溶融する。異なる溶融温度であると、溶融温度の低い樹脂に合わせて押出成形する場合、一方の溶融厚さが不十分になり、境界面の接着強度が低下する恐れがある。しかし、芯材層と中間層とが同程度の温度で溶融することで、押出成形時に芯材層と中間層との境界面の溶融厚さが同等になる。そのため、互いにより一層強固に溶融固化させることができる。
【0027】
また、芯材層と中間層とが同じ塩化ビニル系樹脂であることにより、成形体を再生利用する場合、より再生利用しやすくなる。芯材層と中間層とが異なる樹脂であると、樹脂を分別する必要がある。ところが、芯材層と中間層とが溶融一体化していると分別が困難となる。
しかし、芯材層と中間層とが同じ塩化ビニル系樹脂であることで、異材質の場合に必要な分別の処理が不要となる。また、塩化ビニル系樹脂は汎用樹脂の中でもリサイクル率が高く、再生利用しやすい樹脂である。そのため、芯材層と中間層とに塩化ビニル系樹脂を主材として用いることで、成形体を容易かつ確実に再生利用することができる。
【0028】
本発明の他の手段としては、前記芯材層と前記表層とを合わせた全体の曲げ弾性係数を100MPa以上とすることも可能である。
前述のように、溶融発泡成形に用いられる樹脂の多くは強度に乏しいものであるが、同時に曲げ弾性率も低いうえ、発泡させることでより変形しやすくなる。そのため、これらの樹脂を発泡樹脂として芯材層に用いると、ベンチ等に利用する場合に、外力で曲がりやすく、衝撃にも弱くなる。
そこで、芯材層に曲げ弾性率の高いポリ塩化ビニル系樹脂を発泡樹脂として用いるとともに、成形体全体の曲げ弾性係数を100MPa以上となるように構成することで、成形体全体として曲がりにくく、耐衝撃性も向上させることができる。
【0029】
また、前記芯材層と前記表層とを合わせた全体の断面二次モーメントを800mm4以上とすることも可能である。
芯材層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化された状態において、さらに成形体を断面二次モーメントが800mm4以上となるような断面形状とすることで、成形体全体として、より曲がりにくく、耐衝撃性もより向上させることができる。
【0030】
芯材層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化された状態であっても、断面二次モーメントが小さい断面形状であると、曲げモーメントまたは曲げ荷重を受けたときに曲がりやすくなってしまう。
特に、矩形断面であると、扁平な断面で断面二次モーメントが800mm4を下回る形状(一例として、幅20mm厚さ5mmの板状では約208mm4)であると、成形体が容易に曲がってしまう。
【0031】
そこで、芯材層と前記表層との境界面が互いに溶融固化して一体化された状態において、さらに成形体を断面二次モーメントが800mm4以上となるような断面形状(一例として、矩形であれば幅10mm厚さ10mmの正方形断面や、扁平であっても幅50mm厚さ20mm等が挙げられる)とすることで、成形体全体として、より曲がりにくく、耐衝撃性もより向上させることができる。
【0032】
本発明の他の手段としては、前記芯材層の発泡倍率を1.1倍以上15倍未満とし、表層の平均厚さを1mm以上とすることも可能である。
発泡倍率が高すぎると芯材層の強度を低下させてしまううえ、発泡不良も生じやすくなる。そこで、発泡倍率を1.1倍以上15倍未満の範囲とすることで、均等に発泡させることができ、芯材層としての強度を確保することができる。
【0033】
本発明のさらに他の手段としては、パンクチャー衝撃試験において、前記表層に亀裂が生じるストライカの高さが1.0m以上であるように構成することも可能である。
パンクチャー衝撃試験は、試験片に、先端半球状の錘付きのストライカ、または所定の重さのなす形のストライカを衝突させて、試験片の破損の様子を観察する試験である(JIS K 7211参照)。
本発明では、成形体を幅95mm厚さ30mmの寸法で一端側を固定し他端側を150mm空中に突出させ、他端側から50mmかつ幅方向中央部になす1形のストライカを落下させる条件でパンクチャー試験を行った場合に、表層の一部に亀裂が生じるストライカの落下高さが1.0mm以上であるように構成する。
【0034】
表層の一部に亀裂が生じるストライカの落下高さが1.0mm以上となるように構成することで、芯材層が中空である場合と比較して、断面形状の選択の自由度が増え、同じ耐衝撃性を有する場合にはより軽量とすることができる。
芯材層が中空であると、成形体の幅が広くなるほど耐衝撃性が劣るため、幅の広いものとする場合には芯材層の厚さを増やしたり補強のリブを設けたりする必要がある。しかし、厚さの増加やリブの追加は成形体の重量を増加させることにつながる。
【0035】
それに対して、本発明のように、芯材層に発泡塩化ビニル系樹脂を用い、表層の一部に亀裂が生じるストライカの落下高さを1.0mm以上とする場合には、薄く構成することもでき、成形体全体として軽量にもなる。また、補強リブ等を設ける必要もないうえ、幅と厚さの比を選択する場合や、異形とする場合にも、形状や寸法の選択の自由度が高くなる。
【0036】
本発明のさらに他の手段としては、密度を0.6g/mm3以上とし、前記表層と前記中間層の何れかまたは両方において、樹脂100質量部に対して木粉を10質量部以上含有するように構成することもできる。
ここで、木粉とは、最大長さが1mm未満の木の粉状物を意味する。
木粉を含有させたうえで、樹脂や木粉の種類、及びそれらの配合割合を、密度が0.6g/mm3以上となるようにすることで、剛性や強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0037】
前述のとおり、本発明の発泡押出成形体は、発泡塩化ビニル系樹脂を主材とする芯材層と、無発泡熱可塑性樹脂を主材とする表層とを備えた成形体であり、芯材層と表層を溶融一体化させたものである。
芯材層が曲げ剛性や曲げ強度の高い塩化ビニル系樹脂を発泡させたもので充填されていることで、曲げ剛性や耐衝撃性、埋込ナットの引抜強度等の機械的性質に優れる。
また、芯材層が中実であることで、端末処理のための部材が不要となることから、難燃性を高めることができるうえ、発泡塩化ビニル系樹脂を用いていることから、リサイクル性、断熱性等に優れるという付加機能をも有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の発泡押出成形体を表す斜視図及び断面図である。
図2】本発明の変形例1の発泡押出成形体を表す斜視図及び断面図である。
図3】パンクチャー衝撃試験の試験方法を表す説明図である
図4】埋込ナット引抜強度試験の試験方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施するための形態について、図1に基づいて以下に説明する。
なお、各図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は一部強調または簡略化して示されている。
【0040】
本発明の発泡押出成形体(以下、単に「成形体」という)100は、図1(a)に示すように、長方形断面を有する芯材層1と、芯材層1の周囲を略均等に被覆する表層2とを備えている。芯材層1は塩化ビニル系樹脂に発泡剤を添加して所定倍率に発泡させた発泡塩化ビニル系樹脂を主材としている。表層2は、無発泡の熱可塑性樹脂を主材としている。
【0041】
塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂が使用できる。好ましく用いられるのはポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニルである。
【0042】
芯材層1の発泡倍率は、要求される曲げ剛性や耐衝撃性に応じて設計され、少なくとも発泡して独立気泡が生じている必要がある。そのため、発泡倍率の下限は1.1倍以上とするのが好ましい。
一方、発泡倍率の上限は、ボイドや発泡の不均一さを防止する観点から、15倍未満であるのが好ましい。
【0043】
本発明に用いる発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤;N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソ・テレフタルアミド、N,N'-ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミンなどのニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボキサミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、P,P'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジドなどのアジド化合物などをあげることができる。なかでもニトロソ化合物、アゾ化合物およびアジド化合物が好ましく使用される。
【0044】
また必要に応じて発泡剤と併用して発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤とは、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの働きをする添加剤である。発泡助剤としては、サルチル酸、フタル酸、ステアリン酸などの有機酸、尿素およびその誘導体などを挙げることができる。
【0045】
本発明に用いる発泡剤は、一般に160乃至220℃の分解温度を有していることが望ましい。好適な発泡剤と分解温度との関係を例示すると、次の通りである。
アゾジカルボンアミド(ADCA) 180~240℃
オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)180~220℃
重曹系発泡剤 160℃
【0046】
また、成形体100の層構成は、図1(b)に示すように、少なくとも芯材層1と、表層2と、中間層3とを備える多層構造としてもよい。この場合においては、芯材層1には発泡塩化ビニル系樹脂を用い、中間層3には無発泡硬質塩化ビニル系樹脂を用いることができる。
芯材層1と中間層3の構成については、上記以外にも、何れも発泡塩化ビニル系樹脂としてもよく、それぞれ発泡倍率を異なるものとする形態や、何れかの層に木粉や顔料等の添加材等を含有させることもできる。
【0047】
表層2に用いる無発泡の熱可塑性樹脂は、種々の樹脂を用いることができるが、一例を挙げるならば、硬質乃至軟質塩化ビニル系樹脂(PVC樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂(ASA樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂) 、アクリル樹脂等を採用することができる。
【0048】
また、表層2の厚さは、曲げ剛性や耐衝撃性、埋込ナットの引抜強度の観点から、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは2mm以上であり、さらに好ましくは3mm以上であり、さらに好ましくは5mm以上である。1mm以下であると、発泡PVC樹脂である芯材層1の体積の割合が相対的に増加するため、成形体全体としての曲げ剛性が低下する。耐衝撃性の観点からは、表層2は直接荷重を受ける部分であるため、1mm以下であると亀裂が入りやすくなる。また、埋め込みナットの引抜強度の観点からは、ナットの係合部が引き抜かれる直前にナットの外周の突起部分が表層2に引っ掛かることで抜け止めの作用が生じるところ、1mm以下であると表層2が容易に破断して引き抜かれやすくなる。
【0049】
表層2には、木粉を含有させてもよい。木粉は表層2の基材である樹脂100質量部に対して、10質量部~100質量部が好ましく、25~100質量%がより好ましく、50~100質量部がさらに好ましい。木粉等の合計含有量が10質量部以上であれば、剛性や強度を高くすることができ、鬼目ナット等を埋め込んだ場合であっても、抜けにくい。
木粉の平均粒径は、1μm以上1mm未満が好ましく、10~500μmがより好ましく、50~300μmがさらに好ましい。木粉の平均粒径が1μm以上であれば、剛性や強度を高くすることができる一方で、1mm未満であれば、密度の低下を抑制することができる。
なお、木粉の平均粒径とは、任意のメッシュサイズの篩を通過させ、それらを質量平均して算出される値を意味する。
【0050】
中間層3にも、表層2同様、木粉を含有させてもよい。木粉の含有量は、表層2同様、中間層3の基材である樹脂100質量部に対して、10質量部~100質量部が好ましく、25~100質量%がより好ましく、50~100質量部がさらに好ましい。
木粉の平均粒径も表層2同様、1μm以上1mm未満が好ましく、10~500μmがより好ましく、50~300μmがさらに好ましい。
【0051】
上述のような素材の芯材層1と表層2とは、押出成形により成形され、これら境界面が互いに溶融固化して一体化されている。芯材層1と表層2との成形については、例えば、共押出成形により同時に成形する方法や、表層2を押出成形した後、芯材層1を発泡押出成形する方法等が挙げられるが、いずれの方法を用いたとしても、芯材層1と表層2との境界面が互いに溶融固化して一体化されていれば足りる。
【0052】
成形体100の断面形状は、図1に示すような長方形断面を採用することができるが、曲面部を有する断面形状や、コの字形やH形の断面形状、左右非対称の断面形状等、種々の断面形状であってもよい。その断面二次モーメントは、耐衝撃性や曲げ剛性の観点から、800mm4以上であることが好ましく、より好ましくは10,000mm4以上であり、更に好ましくは100,000mm4以上である。断面二次モーメントの上限は1,500,000mm4以下とすることが好ましい。
【0053】
また、耐衝撃性やベンチ等に用いた場合の変形のしにくさの観点から、成形体100におけるJIS K7221-1に基づく曲げ弾性率は100MPa以上であることが好ましい。100MPa未満であると、人が座ったりする等して荷重が掛かったときに曲がりやすくなる。
また、曲げ弾性率は4,500MPa以下であることが好ましい。4,500MPa以上であると、芯材層1に用いる発泡塩化ビニル系樹脂の発泡率が低くなり、断熱性に劣り、重量も重くなる。
【0054】
『変形例1』
本発明においては上記の形態に限定されず、他の形態を採用することもできる。例えば、図2(a)(b)に示すように、サッシ等の異形の成形体101とすることもできる。このような異形押出しによる成形体においては、発泡塩化ビニル系樹脂を充填して芯材層1とした中実部と、中空部とを共存させることもできる。
異形とすることで、嵌合部やレール部等、形状的な役割を有する複雑な枠体を、一つの成形体で構成することができる。また、発泡塩化ビニル系樹脂を用いた芯材層1を有することで、軽量でありながら優れた断熱性を発揮することができるうえ、廃棄時には容易に再生利用することができる。
【0055】
次に、本発明の成形体の具体的な実施例と、従来技術の成形体の比較例について説明する。
「実施例1」
実施例1は、幅95mm厚さ30mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは213,750mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2と中間層3とを備える。重量は奥行1m当たり2,130gであり、密度は0.747g/mm3である。
芯材層1は厚さ20mm、幅85mmの発泡倍率3倍の発泡PVC樹脂である。表層2は厚さ1.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。中間層3は厚さ3.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。すなわち、無発泡層の厚さは合計で5mmである。
【0056】
「実施例2」
実施例2は、幅100mm厚さ32mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは273,068mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2と中間層3とを備える。重量は奥行1m当たり2,449gであり、密度は0.765g/mm3である。
芯材層1は厚さ20mm、幅88mmの発泡倍率3倍の発泡PVC樹脂である。表層2は厚さ1.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。中間層3は厚さ4.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。すなわち、無発泡層の厚さは合計で6mmである。
【0057】
「実施例3」
実施例3は、幅100mm厚さ38mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは457,268mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2と中間層3とを備える。重量は奥行1m当たり2,577gであり、密度は0.678g/mm3である。
芯材層1は厚さ20mm、幅82mmの発泡倍率3倍の発泡PVC樹脂である。表層2は厚さ1.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。中間層3は厚さ7.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。すなわち、無発泡層の厚さは合計で9mmである。
【0058】
「実施例4」
実施例4は、幅95mm厚さ30mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは213,750mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2と中間層3とを備える。重量は奥行1m当たり2,242gであり、密度は0.787g/mm3である。
芯材層1は厚さ20mm、幅85mmの発泡倍率3.5倍の発泡PVC樹脂であり、100質量部のPVC樹脂に対して、1質量部のADCA及び1質量部の重曹を添加している。表層2は厚さ1.5mmの硬質のASA樹脂であり、100質量部のASA樹脂に対して、15質量部の木粉を添加している。中間層3は厚さ3.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂であり、100質量部のPVC樹脂に対して、30質量部の木粉を添加している。すなわち、無発泡層の厚さは合計で5mmである。
【0059】
「実施例5」
実施例5は、幅95mm厚さ30mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは213,750mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2と中間層3とを備える。重量は奥行1m当たり1,792gであり、密度は0.629g/mm3である。
芯材層1は厚さ20mm、幅85mmの発泡倍率5倍の発泡PVC樹脂であり、100質量部のPVC樹脂に対して、1.5質量部のADCA及び1質量部の重曹を添加している。表層2は厚さ1.5mmの硬質のASA樹脂であり、100質量部のASA樹脂に対して、15質量部の木粉を添加している。中間層3は厚さ3.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂であり、100質量部のPVC樹脂に対して、30質量部の木粉を添加している。すなわち、無発泡層の厚さは合計で5mmである。
【0060】
「比較例1」
比較例1は、幅95mm厚さ30mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは159,417mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2とを備える。重量は奥行1m当たり2,282gであり、密度は0.801g/mm3である。
芯材層1は厚さ3.5mm、幅95mmの中空形状であり、中央部には厚さ3.5mmのリブが設けられて中空部が仕切られている。また、芯材層1は、硬質の無発泡PVC樹脂であり、100質量部のPVC樹脂に対して、30質量部の木粉を添加している。表層2は厚さ1.5mmの硬質の無発泡PVC樹脂である。
【0061】
「比較例2」
比較例2は、幅70mm厚さ30mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは157,500mm4)とし、層構成は、芯材層1と表層2とを備える。重量は奥行1m当たり3,194gであり、密度は1.521g/mm3である。
芯材層1は厚さ27mm、幅67mmの硬質のABS樹脂であり、100質量部のABS樹脂に対して、30質量部の木粉を添加している。表層2は厚さ1.5mmの硬質のASA樹脂である。
【0062】
「比較例3」
比較例3は、幅100mm厚さ23mmの長方形断面形状(断面二次モーメントは101,392mm4)とし、層構成は、芯材層1のみである。重量は奥行1m当たり1,714gであり、密度は0.745g/mm3である。
芯材層1は発泡倍率3倍の発泡PVC樹脂である。
【0063】
実施例1~実施例5、及び比較例1~比較例3をまとめると、下表の通りである。
【表1】
【0064】
『パンクチャー衝撃試験』
本発明の成形体100の具体的な実施例1~実施例5と、従来技術の成形体である比較例1~比較例3との耐衝撃性を比較した。
評価方法には、図3(a)に示すように、JIS K 7211に記載のパンクチャー衝撃試験を基本とし、試験片となる成形体100の一端側を固定し、他端側を150mm空中に突出させ、他端側から50mmの位置かつ幅方向中央部(図3(b)参照)になす1形(重量1kgf)のストライカを落下させた。
落下高さを少しずつ高くしながら複数回落下させ、試験片に破損が確認できた時点の高さを記録した。なお、芯材層が中空の試験片であって、リブにより中空部が複数仕切られたものについては、仕切られた部分における幅方向中央部に落下させた(図3(c)参照)。
【0065】
「試験結果」
試験結果を下記の表2に示す。
【表2】

中空の比較例1は、落下高さ0.8mで表層2に亀裂が生じた。一方、芯材層が無発泡樹脂で中実である比較例2は、落下高さ1.9mにおいても亀裂は生じず、僅かに表面に凹みが生じるのみであった。
それに対して実施例1~実施例5は、落下高さ1.9mにおいても亀裂は生じず、僅かに表面に凹みが生じるのみであった。なお、試験装置の制限により、1.9mが測定限界である。
【0066】
上記のように、成形体全体として同じ断面寸法である比較例1に対して、実施例1、実施例4、実施例5は2倍以上の高さからの衝撃にも耐えうる耐衝撃性を有していることが確認できた。また、無発泡樹脂で充填された中実の比較例2に対して、発泡樹脂を用いることによってより軽量である実施例1~実施例5は、少なくとも同等の1.9mの高さの落下にも耐えうる耐衝撃性を有していることが確認できた。
【0067】
『埋込ナット引抜試験』
次に、本発明の成形体100の具体的な実施例1~実施例5と、従来技術の成形体である比較例1~比較例3との埋込ナットの引抜強度を比較した。
評価方法には、図4(a)に示すようなM8の鬼目ナットを用い、長さ110mmの各試験片の中央部に設けた直径12.8mmの下穴に鬼目ナットを埋め込んだものを用いた。埋め込んだ鬼目ナットに対してボルトを取り付け、ボルトを10mm/minの速度で引っ張り、鬼目ナットが抜けたときの引抜き力を測定して比較した(図4(b)参照)。
【0068】
「試験結果」
試験結果を下記の表3に示す。
【表3】

発泡PVC樹脂のみの構成である比較例3は、1,270Nで鬼目ナットが引き抜かれた。一方、芯材層が無発泡樹脂で中実である比較例2は、6,860Nで鬼目ナットが引き抜かれた。また、中空であり、芯材層が無発泡PVC樹脂である比較例1は、550Nという低い力で鬼目ナットが引き抜かれた。
それに対して実施例1は2,420N、実施例2は2,650、実施例3は4,370N、実施例4は2,600N、実施例5は2,470Nで鬼目ナットが引き抜かれた。
【0069】
上記のように、発泡PVC樹脂のみの構成である比較例3に対して、実施例1、実施例2、実施例4、実施例5は約2倍、実施例3は約3.5倍の引抜強度を有していることが確認できた。また、発泡PVC樹脂を用いたことによってより軽量となっている実施例1~実施例5は、無発泡樹脂で充填された中実の比較例2に対しても極端な低下が見られず、実施例3にあっては、比較例2に対して約60%以上の引抜強度を維持していることが確認できた。
【0070】
実施例1~実施例3を比較すると、芯材層の高さは同一であっても中間層の厚さが厚いほど引抜き力は高くなることが分かった。
また、成形体全体や芯材層の寸法が同一である実施例1と実施例4とを比較すると、実施例4の方が芯材層の発泡倍率が高く表層がASA樹脂であるにも関わらず、表層と中間層とに木粉が含まれることによって引抜き力は僅かに高くなることが分かった。
さらに、発泡倍率以外同一である実施例4と実施例5とを比較すると、実施例5は発泡倍率が高いにも関わらず、木粉が含まれることによって実施例4との引抜き力の低下量は僅かであった。
【0071】
『断熱性試験』
次に、本発明の成形体100の具体的な実施例1~実施例5と、従来技術の成形体である比較例1~比較例3との断熱性能を比較した。
評価方法には、JIS A 1412に記載の熱流計法を用い、熱伝導率を測定して比較した。
【0072】
「試験結果」
試験結果を下記の表4に示す。
【表4】

中空構造であり、芯材層が無発泡PVC樹脂である比較例1は、熱伝導率が0.15W/mKであった。また、中実構造であり芯材層が無発泡PVC樹脂である比較例2であっても、熱伝導率が0.15W/mKであった。
【0073】
上記のように、中空構造で空気層を持つ比較例1、及び中実構造である比較例2に対して、実施例1~実施例5は中実であっても熱伝導率が低く、実施例4にあっては、比較例1の約37%程度であった。このように、本発明の成形体100は優れた断熱性を有しているということが確認できた。
【0074】
実施例1と実施例2とを比較すると、中間層の厚さが厚い実施例2の方が断熱性は高くなっているが、中間層がより厚い実施例3は、実施例2と比較して断熱性にあまり差が見られなかった。
また、成形体全体や芯材層の寸法が同一である実施例1と実施例4とを比較すると、実施例4の方が芯材層の発泡倍率が高く、表層と中間層とに木粉が含まれることによって断熱性が高くなることが分かった。
さらに、発泡倍率以外同一である実施例4と実施例5とを比較すると、実施例5は実施例4よりも発泡倍率が高いため、断熱性も高いことが分かった。
【0075】
『曲げ試験』
次に、本発明の成形体100の具体的な実施例1~実施例5と、従来技術の成形体である比較例1~比較例3との曲げ弾性率を比較した。
評価方法には、JIS K7221-1に基づく3点曲げ試験を行った。
【0076】
「試験結果」
試験結果を下記の表5に示す。
【表5】

上記のように、中空構造である比較例1に対して、同じ高さと幅である実施例1、実施例4は、曲げ弾性率が高くなっている。
【0077】
実施例1~実施例3を比較すると、芯材層の高さは同一であっても中間層の厚さが厚いほど曲げ弾性率は高くなることが分かった。
また、成形体全体や芯材層の寸法が同一である実施例1と実施例4とを比較すると、実施例4の方が芯材層の発泡倍率が高く表層がASA樹脂であるにも関わらず、表層と中間層とに木粉が含まれることによって曲げ弾性率は同等となることが分かった。
【符号の説明】
【0078】
100,101,102 発泡押出成形体
1 芯材層
2 表層
3 中間層
図1
図2
図3
図4