(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122890
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ダンパユニットおよび印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019373
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023029175
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 勝紀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056KB35
(57)【要約】
【課題】ダンパフィルムが正圧を受けた場合であっても、当該ダンパフィルムが剥がれる可能性を低減することが可能なダンパユニットおよび当該ダンパユニットを備える印刷装置を提供する。
【解決手段】ダンパユニットは、印刷時に負圧によりノズル面のノズル孔に供給される液体を収容する収容空間と、収容空間の一部を画定する収容壁と、収容壁に接着されて収容空間の他の部分を画定する可撓性を有するダンパフィルムとを含む収容体と、収容体の部にてダンパフィルムに対向する板部材とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷時に負圧によりノズル面のノズル孔に供給される液体を収容する収容空間と、前記収容空間の一部を画定する収容壁と、前記収容壁に接着されて前記収容空間の他の部分を画定する可撓性を有するダンパフィルムとを含む収容体と、
前記収容体の外部にて前記ダンパフィルムに対向する板部材と、を備える、ダンパユニット。
【請求項2】
前記板部材は、前記ダンパフィルムの中央部分に対向する、請求項1に記載のダンパユニット。
【請求項3】
前記板部材は、前記ダンパフィルムと前記収容壁との接続箇所のうち前記ダンパフィルムの前記中央部分を挟んで位置する一方の箇所から他方の箇所に亘る部分に対向する、請求項2に記載のダンパユニット。
【請求項4】
前記板部材は、前記収容体の内圧と前記収容体の外部の圧力とが同じであるとき前記ダンパフィルムから離間する、請求項1に記載のダンパユニット。
【請求項5】
前記収容壁は、前記収容空間を挟んで前記ダンパフィルムとは反対に位置する対向壁を有し、
前記収容体の外部にて前記対向壁に対向する支持部材をさらに備える、請求項1に記載のダンパユニット。
【請求項6】
前記板部材は前記液体の循環時に前記ダンパフィルムに接触する、請求項1に記載のダンパユニット。
【請求項7】
請求項1に記載のダンパユニットを備え、
前記ノズル面は、前記ノズル孔として第1ノズル孔を有する第1ノズル面と、前記ノズル孔として第2ノズル孔を有する第2ノズル面とを含み、
前記第1ノズル孔に前記液体を供給する第1流路と、前記第2ノズル孔に前記液体を供給する第2流路と、を備え、
前記収容体は、前記第1ノズル孔に前記第1流路を介して供給される前記液体を収容して前記ダンパフィルムとして第1ダンパフィルムを有する第1収容体と、前記第2ノズル孔に前記第2流路を介して供給される前記液体を収容して前記ダンパフィルムとして第2ダンパフィルムを有する第2収容体とを含み、
前記第1収容体に前記液体を供給する第1供給路と、
前記第2収容体に前記液体を供給する第2供給路と、
前記第1流路と前記第2流路とを接続する第1接続流路と、
前記第1供給路と前記第2供給路とを接続する第2接続流路と、
前記第2接続流路、前記第1供給路および前記第2供給路のうちの何れかに設けられ、前記第1供給路、前記第1収容体、前記第1流路、前記第1接続流路、前記第2流路、前記第2収容体、前記第2供給路、および、前記第2接続流路を介して前記液体の循環を行うポンプと、をさらに備え、
前記板部材は、前記第1ダンパフィルムおよび前記第2ダンパフィルムのうち前記ポンプの駆動時に正圧を受ける方のダンパフィルムに対向して設けられる、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に設けられるダンパユニットおよび当該ダンパユニットを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性を有するフィルム等で構成されるダンパー膜が溶着されたダンパーを吐出ヘッドに設けることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出ヘッドには負圧によりインクが供給されるが、上記従来の吐出ヘッドにおいてダンパー膜が正圧を受けてしまうと、当該ダンパー膜が剥がれる恐れがあった。
【0005】
本発明は、ダンパフィルムが正圧を受けた場合であっても、当該ダンパフィルムが剥がれる可能性を低減することが可能なダンパユニットおよび当該ダンパユニットを備える印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパユニットは、印刷時に負圧によりノズル面のノズル孔に供給される液体を収容する収容空間と、前記収容空間の一部を画定する収容壁と、前記収容壁に接着されて前記収容空間の他の部分を画定する可撓性を有するダンパフィルムとを含む収容体と、前記収容体の外部にて前記ダンパフィルムに対向する板部材と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、ダンパフィルムが正圧を受けて変位した場合に、ダンパフィルムに対向して設けられた板部材が当該ダンパフィルムに接触する。これにより、ダンパフィルムがそれ以上変位することを抑制することができ、もって当該ダンパフィルムが剥がれる可能性を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダンパフィルムが正圧を受けた場合であっても、当該ダンパフィルムが剥がれる可能性を低減することが可能なダンパユニットおよび当該ダンパユニットを備える印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る印刷装置の要部を示すブロック図である。
【
図2】
図1の印刷装置におけるダンパユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図2のダンパユニットの板部材を切り欠いてダンパフィルムを見易くした斜視図である。
【
図6】
図2のダンパユニットのヘッドホルダアッパーを示す斜視図である。
【
図7】
図2の第1収容体12Bをダンパフィルム29Bの面に垂直な方向のうち方向Dx2から見た図であり、板部材43および支持壁42を省略した図である。
【
図8】
図2の第1収容体12Bをダンパフィルム29Bの面に垂直な方向のうち方向Dx2から見た図であり、板部材43および支持壁42を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るダンパユニットおよび当該ダンパユニットを備える印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明するダンパユニットおよび印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本実施形態に係る印刷装置200の要部を示すブロック図である。印刷装置200は、例えば印刷用紙および布帛等の被印刷媒体に対して、液体の例示としてのインクのインク滴を吐出することで印刷を行う。印刷装置200は、カラーインクと総称されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインクのインク滴を被印刷媒体に吐出することで当該被印刷媒体にカラー画像を印刷する。被印刷媒体として例えば布帛にカラー画像を印刷する場合には、布帛の色および材質への影響を低減するために下地インクとして白インク(W)のインク滴が先に吐出され、当該インク滴の上に上記カラーインクのインク滴が吐出される。また、印刷部分に光沢を付与する場合や当該印刷部分の保護を行う場合にはクリアインク(Cr)のインク滴が吐出される。白インクはエマルジョンを含み、顔料として酸化チタンを含む。この酸化チタンは相対的に比重が高く、顔料粒子が沈殿し易い。そのため、顔料粒子の沈殿を抑制すべく白インクの循環処理が行われる。なお、白インクの循環処理については後で詳述する。
【0012】
印刷装置200は、
図1に示すように、制御装置102、サブパウチ103、インク供給路105A,105B、ダンパユニット100、第1流路117A,117B、第2流路118A,118B、ヘッドユニット104、および、ヘッドユニットホルダ70(
図2)を備える。なお、制御装置102はCPUおよびメモリ等を含む。
【0013】
ヘッドユニット104はヘッドユニットホルダ70に保持される。ヘッドユニット104は、例えば4つのヘッド部を含んで構成され、マニホールド152a,152b,155a,155bおよび第1接続流路104aを有する。マニホールド152aには複数の第1ノズル孔150aが連通している。各第1ノズル孔150aの先端であるノズルが第1ノズル面151aに形成されている。マニホールド155aには複数の第2ノズル孔153aが連通している。各第2ノズル孔153aの先端であるノズルが第2ノズル面154aに形成されている。マニホールド152a,155a内の白インクは図略の圧力室に導かれる。当該圧力室に導かれた白インクには、図略のアクチュエータとしてのピエゾ素子が駆動信号に応じて変位することで吐出圧力が付与される。この吐出圧力によりノズルから白インクが吐出される。なお、マニホールド152b,155bについても同様である。
【0014】
サブパウチ103は白インクを貯留する。本実施形態ではサブパウチ103は印刷装置200の例えば筐体内の側部に配置されている。
【0015】
インク供給路105Bはインク供給路105Aと同じ構成であるため、以下ではインク供給路105Aを代表的に説明する。また、以下の説明における上流および下流の概念は、白インクの循環処理時であることを特記する場合を除き、当該白インクを用いた印刷の実行時における上流および下流を意味する。
【0016】
インク供給路105Aは、導入路106A、第1供給路107A、第2供給路108A、および、第2接続流路109Aを有する。導入路106Aの上流端はサブパウチ103に接続されている。第1供給路107Aの上流端は導入路106Aの下流端に接続され、第2供給路108Aの上流端は導入路106Aの下流端に接続されている。すなわち、導入路106Aの下流端は第1供給路107Aと第2供給路108Aとに分岐されている。
【0017】
第2接続流路109Aの一端は第1供給路107Aに接続され、第2接続流路109Aの他端は第2供給路108Aに接続されている。これにより、第1供給路107Aと第2供給路108Aとが第2接続流路109Aによって接続される。第2接続流路109Aにはポンプ115Aが設けられている。第2接続流路109Aにおいてポンプ115Aの下流側(つまり循環処理における下流側)にはフィルタ116Aが設けられている。第1供給路107Aにおいて、第2接続流路109Aの接続箇所よりも上流側には電磁弁113Aおよびフィルタ114Aが設けられている。また、第2供給路108Aにおいて、第2接続流路109Aの接続箇所よりも上流側には電磁弁111Aおよびフィルタ112Aが設けられている。
【0018】
第1供給路107Aの下流端はダンパユニット100のポート10Aに接続され、第2供給路108Aの下流端はダンパユニット100のポート11Aに接続されている。ポート10Aはダンパユニット100における後述の第1収容体12Aの上流部分に接続され、ポート11Aはダンパユニット100における後述の第2収容体13Aの上流部分に接続されている。第1供給路107Aは第1収容体12Aに白インクを供給し、第2供給路108Aは第2収容体13Aに白インクを供給する。
【0019】
第1流路117Aの上流端は第1収容体12Aの下流部分に接続され、第2流路118Aの上流端は第2収容体13Aの下流部分に接続されている。また、第1流路117Aの下流端はヘッドユニット104のマニホールド152aの上流部分に接続され、第2流路118Aの下流端はヘッドユニット104のマニホールド155aの上流部分に接続されている。上記の第1接続流路104aは、マニホールド152aの循環処理時おける下流部分とマニホールド155aの循環処理時における上流部分とを接続する。これにより、第1流路117Aと第2流路118Aとが第1接続流路104aにより接続される。
【0020】
以上の構成において、白インクを用いた印刷時、つまりヘッドユニット104のマニホールド152a,155aに白インクを供給するときには、制御装置102により電磁弁111A,113Aが開放される。これにより、サブパウチ103内の白インクは水頭により導入路106Aに供給された後、第1供給路107Aおよび第2供給路108Aに供給される。第1供給路107Aに供給された白インクがフィルタ114Aを通流することで当該白インクの異物が除去され、第2供給路108Aに供給された白インクがフィルタ112Aを通流することで当該白インクの異物が除去される。
【0021】
第1供給路107Aを通流する白インクはポート10Aを介してダンパユニット100の第1収容体12Aに供給され、第2供給路108Aを通流する白インクはポート11Aを介してダンパユニット100の第2収容体13Aに供給される。なお、第1収容体12Aおよび第2収容体13Aの構成については後で詳述する。
【0022】
第1収容体12A内を通流する白インクは第1流路117Aを介してヘッドユニット104のマニホールド152aに供給される。マニホールド152aに供給された白インクのインク滴は第1ノズル孔150aにより被印刷媒体上に吐出される。このようにして第1流路117Aは第1ノズル孔150aに白インクを供給する。同様に、第2収容体13A内を通流する白インクは第2流路118Aを介してヘッドユニット104のマニホールド155aに供給される。マニホールド155aに供給された白インクのインク滴は第2ノズル孔153aにより被印刷媒体上に吐出される。このようにして第2流路118Aは第2ノズル孔153aに白インクを供給する。以上のように、白インクを用いた印刷が行われる。なお、インク供給路105Bを用いた印刷はインク供給路105Aを用いた上記印刷と同様に行われる。
【0023】
続いて、白インクの循環処理について説明する。白インクの循環処理の際には、制御装置102により電磁弁111A,113Aが閉鎖される。電磁弁111A,113Aが閉鎖された状態で、制御装置102によりポンプ115Aが駆動される。これにより、白インクはポンプ115Aから吐出されて第1供給路107Aを通流し、その後ポート10Aを介してダンパユニット100の第1収容体12Aに供給される。第1収容体12A内を通流した白インクは第1流路117Aを介してヘッドユニット104のマニホールド152aに供給される。その後、白インクは第1接続流路104aを通流し、マニホールド155aを通流する。マニホールド155aを通流した白インクは第2流路118Aを通流し、その後ダンパユニット100の第2収容体13Aを通流する。第2収容体13Aを通流した白インクはポート11Aを介して第2供給路108Aを通流する。そして、第2供給路108Aを通流した白インクはポンプ115Aに引き込まれ、以降は上記と同様に循環する。以上のようにして、ポンプ115Aは、第1供給路107A、第1収容体12A、第1流路117A、第1接続流路104a、第2流路118A、第2収容体13A、第2供給路108A、および、第2接続流路109Aを介して白インクの循環を行う。なお、インク供給路105Bを用いた循環処理はインク供給路105Aを用いた上記循環処理と同様に行われる。
【0024】
以下、ダンパユニット100の構成について詳しく説明する。
図2は
図1の印刷装置200におけるダンパユニット100を示す斜視図である。
図3は
図2のダンパユニット100の板部材43を切り欠いて第1ダンパフィルム29Aを見易くした斜視図である。
図4は
図2のダンパユニット100の平面図である。
図5は
図4のV-V線断面図である。
図6は
図2のダンパユニット100のヘッドホルダアッパー40を示す斜視図である。なお、
図2乃至
図6において互いに直交する方向を、第1方向Dx、第2方向Dyおよび第3方向Dzとする。第1方向Dxは例えば左右方向(主走査方向)であり、第2方向Dyは例えば前後方向(副走査方向)であり、第3方向Dzは例えば上下方向である。第1方向Dxのうち一方の方向をDx1とし、方向Dx1とは逆方向をDx2とする。第2方向Dyのうち一方の方向をDy1とし、方向Dy1とは逆方向をDy2とする。第3方向Dzのうち一方の方向をDz1とし、方向Dz1とは逆方向をDz2とする。但し、上記方向は何れも例示であって限定されるものではない。
【0025】
図2乃至
図6に示すように、ダンパユニット100は、2つの第1収容体12、2つ第2収容体13、ヘッドホルダアッパー40、および、支持プレート60を備える。2つの第1収容体12は、第1収容体12Aおよび第1収容体12Bを含む。2つの第2収容体13は、第2収容体13Aおよび第2収容体13Bを含む。なお、第1収容体12A,12Bおよび第2収容体13A,13Bが収容体に相当する。
【0026】
ヘッドホルダアッパー40は例えば樹脂製である。ヘッドホルダアッパー40は、枠体41、支持壁42、板部材43、支持部材44、支持壁45、および、底部46を有する。枠体41は、第1方向Dxに延在して第2方向Dyに互いに離間する2つの枠部、および第2方向Dyに延在して第1方向Dxに互いに離間する2つの枠部を含む。枠体41は底部46に支持されている。
【0027】
第1収容体12A,12Bおよび第2収容体13A,13Bは枠体41の内側に設けられる。第1収容体12A,12Bおよび第2収容体13A,13Bを枠体41に対して着脱可能に構成してもよい。第1収容体12A,12Bは可撓性を有する第1ダンパフィルム29を有し、第2収容体13A,13Bは可撓性を有する第2ダンパフィルム30を有する。第1ダンパフィルム29および第2ダンパフィルム30は例えばPP(ポリプロピレン)又はPE(ポリエチレン)等の合成樹脂で形成される。第1ダンパフィルム29は第1収容体12Aに対応する第1ダンパフィルム29Aおよび第1収容体12Bに対応する第1ダンパフィルム29Bを含む。第2ダンパフィルム30は第2収容体13Aに対応する第2ダンパフィルム30Aおよび第2収容体13Bに対応する第2ダンパフィルム30Bを含む。なお、第1ダンパフィルム29および第2ダンパフィルム30がダンパフィルムに相当する。
【0028】
第1収容体12Aは第1ノズル孔150aに第1流路117Aを介して供給される白インクを収容する。第1収容体12Bは第1ノズル孔150bに第1流路117Bを介して供給される白インクを収容する。また、第2収容体13Aは第2ノズル孔153aに第2流路118Aを介して供給される白インクを収容する。第2収容体13Bは第2ノズル孔153bに第2流路118Bを介して供給される白インクを収容する。第1収容体12Aの下流部分は先細り状に形成されており、当該下流部分に第1流路117Aの上流端が接続されている。
【0029】
図5に示すように、第1収容体12Aは、収容空間15、収容壁18、および上述の第1ダンパフィルム29Aを有する。収容空間15は印刷時に負圧により第1ノズル孔150aに供給される白インクを収容する。収容壁18は収容空間15の一部を画定する。収容壁18は、収容空間15を挟んで第1ダンパフィルム29Aとは反対に位置する対向壁16、および当該対向壁16の上端および下端のそれぞれから延びて第1ダンパフィルム29Aが接着される接着壁17を有する。第1ダンパフィルム29Aは収容壁18の接着壁17に接着されて収容空間15の他の部分を画定している。接着壁17に対する第1ダンパフィルム29Aの接着方法は例えば溶着であってもよいし、接着剤による接着であってもよい。本実施形態では第1ダンパフィルム29Aは接着壁17に溶着される。なお、第1収容体12Bおよび第2収容体13A,13Bの構成は第1収容体12Aの構成と同様である。
【0030】
板部材43は例えば2つ設けられる。各板部材43は底部46上に立設されている。一方の板部材43は第1収容体12Aの外部にて第1ダンパフィルム29Aに対向して設けられる。他方の板部材43は第1収容体12Bの外部にて第1ダンパフィルム29Bに対向して設けられる。板部材43は第2ダンパフィルム30A,30Bに対しては設けられていない。第1ダンパフィルム29Aに対向して設けられる板部材43は、第1収容体12Aの内圧と当該第1収容体12Aの外部の圧力とが同じであるとき第1ダンパフィルム29Aに対して間隔をおいて設けられる。第1ダンパフィルム29Bに対向して設けられる板部材43も同様である。
【0031】
支持壁42は一の板部材43に対して例えば複数設けられる。各支持壁42のうち方向Dx1側の端部は板部材43のうち方向Dx2側の面に接続されている。
図4では各支持壁42は例えば第1方向Dxに延在し、板部材43を支持する。各支持壁42は、板部材43のうち第1ダンパフィルム29A,29Bがある側とは反対側の面を支持する。
図4および
図5に示すように、第1ダンパフィルム29Aに対向して設けられる板部材43を支持する各支持壁42は、枠体41のうち第2方向Dyに延在して方向Dx2側に位置する枠部に接続されると共に底部46上に立設される。他方、第1ダンパフィルム29Bに対向して設けられる板部材43を支持する各支持壁42は底部46上に立設される。なお、
図4および
図5では、第1ダンパフィルム29A,29Bおよび第2ダンパフィルム30A,30Bの図示を省略している。
【0032】
各板部材43は第1ダンパフィルム29A,29Bの中央部分に対向している。第1ダンパフィルム29A,29Bの中央部分とは、平面視(つまり
図4の面視)で当該第1ダンパフィルム29A,29Bの延在方向における中央部分である。また、板部材43は第1ダンパフィルム29Aと収容壁18の接着壁17との接着箇所のうち第1ダンパフィルム29Aの上記中央部分を挟んで位置する一方の箇所P1から他方の箇所P2に亘る部分に対向している。板部材43は少なくとも第1ダンパフィルム29A,29Bの延在方向における中心に対向している。例えば、
図7に示すように中心は、収容壁18の接着壁17との接着箇所に内接する内接円の中心であればよい。また、
図7に示すように、中央部分は、この内接円の中心と、収容壁18の接着壁17と第1ダンパフィルム29Bとの接着箇所との間の点の集合領域と考えられてもよい。
図8に示すように、板部材43は、この第1ダンパフィルム29Bの少なくとも中央部分に対向する。なお、第1ダンパフィルム29Bに対向する板部材43についても同様である。
【0033】
支持部材44は例えば2つ設けられる。各支持部材44は底部46上に立設され、対向壁16に対向して設けられる。一方の支持部材44は第1収容体12Aの対向壁16に対向して設けられる。他方の支持部材44は第1収容体12Bの対向壁16に対向して設けられる。
【0034】
支持壁45は一の支持部材44に対して例えば複数設けられる。各支持壁45のうち方向Dx2側の端部は支持部材44のうち方向Dx1側の面に接続されている。各支持壁45は底部46上に立設される。各支持壁45は支持部材44を支持する。各支持壁45は、支持部材44のうち第1収容体12A,12Bがある側とは反対側の面を支持する。
【0035】
底部46は例えばビス等の複数の固定具59により支持プレート60に固定される。また、枠体41の内側で方向Dy2の方には4つのポートホルダ47が設けられている。ポート10A,11A,10B,11Bはポートホルダ47に保持されている。また、支持プレート60には貫通孔60aが設けられている。第1流路117A,117Bおよび第2流路118A,118Bは貫通孔60aに挿通された状態で第3方向Dzに延在する。ヘッドユニットホルダ70は支持プレート60の下面に取り付けられている。
【0036】
図4に示すように、平面視において第2収容体13Bは第2方向Dyと平行な方向に延在するのに対して、第1収容体12A,12Bおよび第2収容体13Aは第2方向Dyに対して交差する方向に沿って延在している。これにより、4つのポートホルダ47のうち第1方向Dxにおいて最外側に位置する2つのポートホルダ47同士の間隔は、第1収容体12Aの上記下流部分と第2収容体13Bの上記下流部分との間隔よりも大きい。これにより、作業者がヘッドユニット104のメンテナンスを行う際に第1供給路107A,107Bおよび第2供給路108A,108Bを対応する各ポートから取り外し易くなると共に、各ポートの流路抵抗を維持しつつダンパユニット100の小型化に寄与する。
【0037】
ここで、白インクの循環処理を行う際には、上述の通り電磁弁111A,113Aが閉鎖された状態でポンプ115Aが駆動される。これにより、白インクはポンプ115Aから吐出されて第1供給路107Aを通流した後ポート10Aを介してダンパユニット100の第1収容体12Aに供給される。他方、ポンプ115Aの駆動時に第2供給路108A内の白インクは当該ポンプ115Aに引き込まれる。そのため、第1収容体12Aの第1ダンパフィルム29Aは正圧を受け、第2収容体13Aの第2ダンパフィルム30Aは負圧を受ける。その結果、第1収容体12Aの内圧が当該第1収容体12Aの外部の圧力よりも大きくなり、第1ダンパフィルム29Aは外側に膨らもうとする。しかし、第1ダンパフィルム29Aに対向して板部材43が配置されているため、第1ダンパフィルム29Aは板部材43の方に若干膨らんで変位するものの、当該変位のあと板部材43に接触する。
【0038】
このように第1ダンパフィルム29Aは板部材43に接触することによってそれ以上変位しない。これにより、第1ダンパフィルム29Aの溶着部に負荷がかかることを抑制することができ、ゆえに当該第1ダンパフィルム29Aが接着壁17から剥がれることを抑制又は防止できる。また、上記の通り板部材43と第1ダンパフィルム29Aとの間に所定の間隔が設けられているので、当該第1ダンパフィルム29Aの変位領域が確保される。これにより、印刷時に第1ダンパフィルム29Aが一定量変位することにより当該印刷に起因する動圧を吸収することができる。なお、白インクの循環処理時において、第1ダンパフィルム29Aにかかる圧力(正圧)は例えば+20kPa程度であり、第2ダンパフィルム30Aにかかる圧力(負圧)は例えば-20kPa程度である。また、印刷時におけるアクチュエータによる白インクの引き込みに起因して第1ダンパフィルム29Aおよび第2ダンパフィルム30Aにかかる圧力(負圧)は例えば-1kPa程度であり、循環処理時よりも小さい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のダンパユニット100によれば、白インクの循環処理時に第1ダンパフィルム29A,29Bが正圧を受けて膨らんだ場合に、第1ダンパフィルム29A,29Bに対向して設けられた各板部材43が当該第1ダンパフィルム29A,29Bに接触する。これにより、第1ダンパフィルム29A,29Bがそれ以上変位することを抑制することができる。したがって、第1ダンパフィルム29A、29Bが接着壁17から剥がれる可能性を低減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、各板部材43は第1ダンパフィルム29A,29Bの中央部分に対向して配置されている。これにより、第1ダンパフィルム29A,29Bの部分のうち正圧を受けた際に最も膨らむ中央部分を板部材43に接触させることができる。したがって、第1ダンパフィルム29A,29Bの中央部分が一定以上膨らむのを防ぐことができる。
【0041】
また、本実施形態では、各板部材43は第1ダンパフィルム29A,29Bと各接着壁17との接着箇所のうち第1ダンパフィルム29A,29Bの上記中央部分を挟んで位置する一方の箇所P1から他方の箇所P2に亘る部分に対向している。これにより、第1ダンパフィルム29A,29Bの中央部分を含んで箇所P1から箇所P2に亘る部分が一定以上膨らむのを防ぐことができる。よって、第1ダンパフィルム29A,29Bにおける広範囲な部分の膨らみを抑制することができ、もって当該第1ダンパフィルム29A,29Bの剥がれを防止し得る信頼性がより高まる。
【0042】
また、本実施形態では、各板部材43は、第1収容体12A,12Bの内圧と当該第1収容体12A,12Bの外部の圧力とが同じであるとき第1ダンパフィルム29A,29Bに対して間隔をおいて設けられる。これにより、第1ダンパフィルム29A,29Bの変位領域が確保される。よって、印刷時に第1ダンパフィルム29A,29Bが一定量変位することにより当該印刷に起因する動圧を吸収することができる。つまり、印刷時における第1ダンパフィルム29A,29Bのダンパ機能も確保されている。
【0043】
また、本実施形態では、各支持部材44が第1収容体12A,12Bの外部にて各対向壁16に対向して設けられている。これにより、第1ダンパフィルム29A,29Bが各板部材43に接触することで当該板部材43から接触方向とは逆方向の圧力を受けた際に第1収容体12A,12Bが当該逆方向に傾倒するのを防ぐことが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態では、各板部材43は、第1ダンパフィルム29A,29Bおよび第2ダンパフィルム30A,30Bのうち、ポンプ115A,115Bの駆動時に正圧を受ける方の第1ダンパフィルム29A,29Bに対向して設けられる。換言すれば、ポンプ115A,115Bの駆動時に負圧を受ける方の第2ダンパフィルム30A,30Bには板部材43を設けない。これにより、ダンパユニット100の低コスト化および軽量化に寄与する。
【0045】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形例を採用することが可能である。例えば以下の通りである。
【0046】
上記実施形態では、ポンプ115Aを第2接続流路109Aに設けることとしたが、これに限定されるものではなく、第1供給路107A又は第2供給路108Aに設けてもよい。また、ポンプ115Bを第2接続流路109Bに設けることとしたが、これに限定されるものではなく、第1供給路107B又は第2供給路108Bに設けてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、サブパウチ103内の白インクを水頭により導入路106Aに供給したが、これに限らず、印刷時に負圧によりノズル孔に白インクを供給し得るのであれば、サブパウチ103内のインクをポンプにより導入路106Aに供給してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、マニホールド152a,152b,155a,155bを含む4つのマニホールドをヘッドユニット104に設けたが、これに限定されるものではなく、当該ヘッドユニット104に設けるマニホールドは例えば1つであってもよい。この場合であっても、ポンプ115Aの駆動により1つのマニホールドを介して白インクが循環する循環流路が設けられる。
【0049】
また、上記の通りマニホールドは例えば1つでも複数でもよく、また収容体は1つでも複数でもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、板部材43を第1ダンパフィルム29A,29Bに対向させて設けたが、これに限らず、第2ダンパフィルム30A,30Bにも対向させて設けてもよい。また、上記板部材43に対応して支持壁42を設けてもよい。
【0051】
また、上記の通り板部材43を第2ダンパフィルム30A,30Bに対向させて設ける態様に伴い、当該板部材43に対応して支持部材44を設けてもよい。また、前記支持部材44に対応して支持壁45を設けてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、板部材43を第1ダンパフィルム29Aと収容壁18の接着壁17との接着箇所のうち第1ダンパフィルム29Aの延在方向における中央部分を挟んで位置する一方の箇所P1から他方の箇所P2に亘る部分に対向させたが、これに限られない。板部材43を第1ダンパフィルム29A,29Bの延在方向における中心に対向させることができれば、当該板部材43の上記延在方向における長さは上記に限定されない。
【0053】
また、上記実施形態において、サブパウチ103をキャリッジに搭載したいわゆるオンキャリッジ式のサブタンクとしてもよい。この場合、サブタンクはチューブを介してメインタンクに接続される。
【0054】
さらに、上記実施形態では、循環させる液体として白インクを用いたが、これに限らず、白インク以外の液体を循環させる場合にも本態様を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
12,12A,12B 第1収容体
13,13A,13B 第2収容体
15 収容空間
16 対向壁
17 接着壁
18 収容壁
29,29A,29B 第1ダンパフィルム
30,30A,30B 第2ダンパフィルム
43 板部材
44 支持部材
100 ダンパユニット
104a,104b 第1接続流路
107A,107B 第1供給路
108A,108B 第2供給路
109A,109B 第2接続流路
115A,115B ポンプ
117A,117B 第1流路
118A,118B 第2流路
150a,150b 第1ノズル孔
151a,151b 第1ノズル面
153a,153b 第2ノズル孔
154a,154b 第2ノズル面
200 印刷装置