(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122897
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240902BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20240902BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20240902BHJP
H01C 7/10 20060101ALI20240902BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201C
H01G4/30 201D
H01G4/30 201F
H01C7/02
H01C7/04
H01C7/10
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023158
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0026870
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒュン ドゥク
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ビュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャエ ミン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ヨン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ホ イン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ア ラ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E034DA07
5E034DC05
5E070AA01
5E070AB03
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC14
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5E082EE04
5E082EE05
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5E082FG03
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ06
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082KK01
5E082PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部電極と外部電極の連結性を向上させて積層型電子部品の電気的特性を改善し、積層型電子部品の本体に発生する放射クラックを抑制し、また、本体内部に水素が浸透することを抑制する。
【解決手段】積層型電子部品100は、誘電体層111及び誘電体層111と第1方向に交互に配置され、Niを含む内部電極121、122を含む本体110と、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含む。外部電極131、132は、Ni及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含み、内部電極121、122は、第1領域121a、122aを含み、第1領域121a、122aに含まれるPdの含量は、上記内部電極121、122において第1領域121a、122aを除いた残りの領域に含まれるPdの含量より大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置され、Niを含む内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される外部電極とを含み、
前記外部電極は、Ni及びPdを含む基礎電極層を含み、
前記内部電極は、第1領域を含み、前記第1領域に含まれたPdの含量は、前記内部電極において前記第1領域を除いた残りの領域に含まれたPdの含量より大きい、
積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1領域に含まれたPdの含量は、0.5at%以上である、
請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1領域に含まれたPdの含量は、3.0at%以下である、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1領域は、前記第1領域に含まれたPdの含量より大きい含量のNiを含む、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記内部電極のうち少なくとも一部は、前記第1領域を複数個含む、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記本体は、前記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含み、
前記外部電極は、前記第3面及び前記第4面に配置される、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1領域は、前記内部電極と前記外部電極の界面から前記第2方向に6.5μm以内の領域に配置される、
請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記基礎電極層は、第2領域をさらに含み、前記第2領域に含まれたPdの含量は、前記基礎電極層において前記第2領域を除いた残りの領域に含まれたPdの含量より大きい、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記基礎電極層は、前記第2領域を複数個含む、
請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記内部電極及び前記基礎電極層は、それぞれNiを主成分として含む、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記基礎電極層は、前記本体と隣接した第1層及び前記第1層上に配置される第2層を含み、
前記第1層に含まれたPdの含量は、前記第2層に含まれたPdの含量より大きい、
請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記基礎電極層は、前記第1面の延長線と前記第2面の延長線の間に配置される、
請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記基礎電極層は、前記内部電極と連結され、
前記外部電極は、前記基礎電極層上に配置され、Cu及びガラスを含む中間電極層を含む、
請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記中間電極層は、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一部に延長して配置される、
請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記外部電極は、前記中間電極層上に配置されるめっき層をさらに含む、
請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、前記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含む本体と、
前記第3面及び前記第4面に配置される外部電極とを含み、
前記内部電極は、第1領域を含み、前記第1領域に含まれたPdの含量は、前記内部電極において前記第1領域を除いた残りの領域に含まれたPdの含量より大きく、
前記第1領域は、前記内部電極と前記外部電極の界面に隣接した領域に配置され、前記内部電極の第2方向中央領域には配置されない、
積層型電子部品。
【請求項17】
前記第1領域は、前記内部電極と前記外部電極の界面から前記第2方向に6.5μm以内の領域に配置される、
請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記第1領域に含まれたPdの含量は、0.5at%以上である、
請求項16または17に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記第1領域に含まれたPdの含量は、3.0at%以下である、
請求項16または17に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記外部電極は、複数の前記内部電極と連結され、Ni及びPdを含む基礎電極層及び前記基礎電極層上に配置され、Cu及びガラスを含む中間電極層を含む、
請求項16または17に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を達成するチップ型のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など各種の電子機器が小型化、高出力化されることにより、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求も増大している。
【0004】
従来の一般的な積層セラミックキャパシタは、内部電極用ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層した後、焼成して本体を形成し、上記本体上にCu及びガラスを含む外部電極用ペーストを塗布し焼成することで、外部電極を形成した。しかし、上記焼成工程時に内部電極の収縮により内部電極が本体内部に陥没した形態で形成される可能性があり、これにより内部電極と外部電極間の連結性が低下し、積層セラミックキャパシタの電気的特性が劣化するという問題点が存在した。また、上記焼成工程時に外部電極のCuが内部電極に拡散して本体の体積膨脹を誘発することで、本体に加えられる応力を増加させて本体に放射クラックが発生するという問題点が存在した。
【0005】
積層セラミックキャパシタの電気的特性を改善するために、内部電極と直接的に連結される基礎電極層として、焼成電極の代わりにめっき層を形成するという方案を考慮することができる。但し、基礎電極層をめっき層で形成すると、実装のためのNiめっき層-Snめっき層以外に追加のめっき工程を行う必要があり、特に、電解めっき法などで本体上にNiを直接的にめっきして基礎電極層を形成するためには、過度なめっき時間が所要されるため、めっき層形成工程における化学反応によって本体内部への水素イオンの浸透が過度になるおそれがある。かかる水素イオンの浸透は、誘電体層を還元させながら絶縁抵抗を劣化するという問題点を引き起こし得る。
【0006】
そこで、内部電極と外部電極間の連結性を向上させて電気的特性を改善し、放射クラックを防止しつつも、めっき工程における化学反応により発生した水素が本体内部に浸透することを抑制することができる積層セラミックキャパシタの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極と外部電極の連結性を向上させて積層型電子部品の電気的特性を改善することである。
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、積層型電子部品の本体に発生する放射クラックを抑制することである。
【0009】
本発明の様々な目的の一つは、本体内部に水素が浸透することを抑制することである。
【0010】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置され、Niを含む内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記外部電極は、Ni及びPdを含む基礎電極層を含み、上記内部電極は、第1領域を含み、上記第1領域に含まれたPdの含量は、上記内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域に含まれたPdの含量より大きい積層型電子部品を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、上記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含む本体と、上記第3面及び第4面に配置される外部電極とを含み、上記内部電極は、第1領域を含み、上記第1領域に含まれたPdの含量は、上記内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域に含まれたPdの含量より大きく、上記第1領域は、上記内部電極と外部電極の界面に隣接した領域に配置され、上記内部電極の第2方向中央領域には配置されない積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の様々な効果の一つとして、内部電極と外部電極の連結性を向上させて積層型電子部品の電気的特性を改善することができる。
【0014】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の本体に発生する放射クラックを抑制することができる。
【0015】
本発明の様々な効果の一つとして、本体内部に水素が浸透することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図3】
図1のII-II'切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態による積層型電子部品の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図9】
図8のイメージをエネルギー分散型分光分析法(EDS)で分析してPd元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図10】実験例及び比較例に対する容量及びDF値を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面で示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のため任意に示したため、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義されることができる。
【0020】
[積層型電子部品]
図1は、 本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'切断断面を概略的に示した断面図であり、
図3は、
図1のII-II'切断断面を概略的に示した断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は、
図2のK1領域拡大図であり、
図6は、
図2のK2領域拡大図であり、
図7は、
図2のK3領域拡大図であり、
図8は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージであり、
図9は、
図8のイメージをエネルギー分散型分光分析法(EDS)で分析してPd元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0021】
以下で、
図1~
図9を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳しく説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下、「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、多様な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置され、Niを含む内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132とを含み、上記外部電極は、Ni及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含み、上記内部電極は、第1領域121a、122aを含み、上記第1領域に含まれたPdの含量は、上記内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量より大きくすることができる。
【0023】
上述したように、従来の一般的な積層セラミックキャパシタは、焼成工程時に内部電極の収縮により内部電極と外部電極間の連結性が低下して電気的特性が劣化するか、焼成工程時に外部電極に含まれたCuが内部電極に拡散することで本体に放射クラックが発生するという問題点が存在した。
【0024】
このような問題点を解決するために、内部電極と直接的に連結される基礎電極層として焼成電極の代わりにめっき層を形成する方案を考慮することができる。但し、基礎電極層をめっき層で形成すると、追加のめっき工程を行う必要があり、特に電解めっき法などで本体上にNiを直接的にめっきして基礎電極層を形成するためには過度なめっき時間が所要されるため、水素イオンの浸透が過度になるおそれがある。
【0025】
一方、本発明の一実施形態によると、外部電極131、132がNi及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含み、内部電極121、122は第1領域121a、122aを含み、上記第1領域に含まれたPdの含量は、上記内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量より大きいことで、内部電極121、122と外部電極131、132間の連結性を改善して積層型電子部品の電気的特性を改善することができ、めっき工程で発生した水素が本体110の内部に浸透することを抑制して絶縁抵抗が劣化することを防止することができる。
【0026】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100に含まれるそれぞれの構成についてより詳しく説明する。
【0027】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は、六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0028】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、第1面~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0029】
本体110は、第1面と第3面を連結する第1-3コーナーC1-3、上記第1面と第4面を連結する第1-4コーナーC1-4、上記第2面と第3面を連結する第2-3コーナーC2-3、上記第2面と第4面を連結する第2-4コーナーC2-4を含むことができる。また、第1面と第5面を連結する第1-5コーナー、第1面と第6面を連結する第1-6コーナー、第2面と第5面を連結する第2-5コーナー、第2面と第6面を連結する第2-6コーナーを含むことができる。上記コーナーは、本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することによりラウンド状を有することができる。本体110の第1面~第6面は、おおよそ平坦な面であることができ、平坦でない領域をコーナーとみることができる。
【0030】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認し難いほど一体化されることができる。
【0031】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することで形成することができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)等が挙げられる。
【0032】
誘電体層111の平均厚さtdは、特に限定する必要はないが、例えば10μm以下であることができる。また、誘電体層111の平均厚さtdは、所望の特性や用途によって任意に設定することができる。例えば、高電圧電装用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さtdは2.8μm未満であることができ、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために誘電体層111の平均厚さtdは0.4μm以下であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0033】
一般的に、誘電体層111の厚さが薄くなるほど電圧印加時に発生する応力によって本体110に放射クラックが発生し易く、本体110の内部に浸透した水素による絶縁抵抗の劣化が発生し易いため、積層型電子部品の信頼性が低下するという問題点がある。一方、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、外部電極131、132がNi及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含み、内部電極121、122が第1領域121a、122aを含むことで、本体110に放射クラックが発生することを防止し、水素が本体110の内部に浸透することを抑制することができ、これにより、誘電体層111の平均厚さtdが2.8μm未満または0.4μm以下の場合にも積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0034】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向における厚さ意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すれば、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0035】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、容量形成部Acの第1方向に向かい合う両面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同一の構成を有することができる。
【0036】
カバー部112、113の厚さtcは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは、100μm以下、30μm以下、または20μm以下であることができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0037】
カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向への厚さの平均を意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向断面において等間隔である5個の地点で測定した第1方向の厚さを平均した値であることができる。
【0038】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に向かい合う両面上にそれぞれ配置される第1マージン部114及び第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110を第1方向及び第3方向に切った断面において内部電極121、122の両端と本体110の境界面間の領域を意味することができる。
【0039】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0040】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される所を除き、内部電極用導電性ペーストを塗布し焼成することで形成されたものであることができる。または、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6と連結されるように切断した後、単一誘電体層または2個以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に向かい合う両面上に積層することで、マージン部114、115を形成することもできる。
【0041】
マージン部114、115の平均厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さは、100μm以下、20μm以下、または15μm以下であることができる。ここで、マージン部114、115の平均厚さは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0042】
マージン部114、115の平均厚さは、マージン部114、115の第3方向における厚さの平均を意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向断面において等間隔である5個の地点で測定した第3方向の厚さを平均した値であることができる。
【0043】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0044】
第1内部電極121は、第4面4と離隔し、第3面3と連結されるように配置されることができる。また、第2内部電極122は、第3面3と離隔し、第4面4と連結されるように配置されることができる。
【0045】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であることができ、より好ましくは、内部電極121、122は、Niを含むことができる。
【0046】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布し焼成することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0047】
図5及び
図6に示すように、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の内部電極121、122は、第1領域121a、122aを含み、第1領域121a、122aに含まれたPdの含量は、内部電極121、122において第1領域121a、122aを除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量より大きくすることができる。ここで、Pdの含量とは、エネルギー分散型分光分析法(EDS)で測定した原子百分率(at%)を意味することができ、内部電極121、122において第1領域121a、122aを除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量は、上記第1領域を除いた残りの領域に含まれたPdの平均含量を意味することができる。
【0048】
上記Pdは、Niを主成分とする金属内で水素拡散係数を低くする役割を果たすことができる。これにより、内部電極121、122がPdの含量が相対的に大きい第1領域121a、122aを含むことで、内部電極121、122に水素が浸透することを防止することができ、上記内部電極に浸透された水素が誘電体層111を還元させて絶縁抵抗を劣化させることを防止することができる。一方、上記水素は、主にめっき工程時に化学反応によって発生した水素を意味し、その他にもめっき液によって発生した水や、大気中の水蒸気として存在する水素も含むことができる。ここでめっき工程とは、後述するめっき層131c、132cを形成する工程を意味することができるが、基礎電極層131a、132aがめっき法により形成される場合、上記めっき工程は、基礎電極層131a、132aを形成する工程を含む概念である。
【0049】
第1領域121a、122aは、内部電極121、122内に球(sphere)状で存在することができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、第1領域121a、122aは、例えばフレーク(flake)状などの多様な形態を有することができる。
【0050】
一実施形態において、第1領域121a、122aに含まれたPdの含量は、0.5at%以上であることができる。第1領域121a、122aに含まれたPdの含量が0.5at%未満の場合、前述した水素浸透防止効果が小さい可能性がある。第1領域121a、122aに含まれたPdの含量の上限は、特に限定する必要はないが、例えば、3.0at%以下であることができる。一方、内部電極121、122において第1領域121a、122aを除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの平均含量は、特に限定する必要はないが、例えば0.2at%以下であることができる。
【0051】
一方、第1領域121a、122aに含まれたPdは、Niと合金形態で存在することができ、第1領域121a、122aは、上記第1領域に含まれたPdの含量より大きい含量のNiを含むことができる。第1領域121a、122aに含まれたPdの含量がNiより大きくなれば、主成分として含まれた金属の種類が変わり水素拡散係数が増加して、本発明の水素浸透防止効果が低下するおそれがある。
【0052】
一実施形態において、内部電極121、122のうち少なくとも一部は、第1領域121a、122aを複数個含むことができる。内部電極121、122のうち少なくとも一部が第1領域121a、122aを複数個含むことで、水素が本体110の内部に浸透することをより効果的に防止することができる。
【0053】
一実施形態において、第1領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132の界面から第2方向に6.5μm以内の領域に配置されることができる。すなわち、第1領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132の界面と隣接した領域に配置されることで、水素が本体110の内部に浸透することを効果的に抑制することができる。第1領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132の界面から第2方向に6.5μm以上離れた領域に配置される場合、上記第1領域は、めっき工程時に発生する水素イオンの浸透防止効果を発揮することができないため、本発明の水素浸透防止効果が小さい可能性がある。
【0054】
一方、内部電極121、122に第1領域121a、122aを形成する方法は、特に限定する必要はない。以下、好ましい一例として、第1領域121a、122aを形成する方法について説明する。先ず、内部電極121、122の端部にPd seedを形成した後、熱処理工程を行うことができる。上記熱処理は、例えば、150℃~1100℃の温度で15分~360分間行うことができる。次に、電解めっき法を用いてPd SeedからNiを成長させて後述する基礎電極層131a、132aを形成した後、上記基礎電極層に対する追加の熱処理を行うことができる。上記追加の熱処理は、150℃~1100℃の温度で15分~360分間行われることができる。すなわち、基礎電極層131a、132aは、Ni及びPdを含むめっき層であることができる。一連の熱処理工程によって内部電極の端部に配置されたPd seedの拡散を誘導することができ、これにより第1領域121a、122aを形成することができる。一方、上記基礎電極層を形成する前に、内部電極の端部にPd seedを形成し熱処理する工程を行うことで、めっき時間を短縮させることができ、これによりPd seedなしでめっき層を形成する場合に比べて、めっき工程時に発生する水素イオンが本体の内部に浸透することを抑制することができる。
【0055】
第1領域121a、122aに含まれたPdの含量と内部電極121、122において第1領域121a、122aを除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量を測定する方法の好ましい例示は、下記の通りである。
図8及び
図9のように、第3方向中央で切断した本体110の第1及び第2方向断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージを得た後、上記イメージを、エネルギー分散型分光分析法(EDS)を通じてPd元素をマッピング(mapping)する。この時、Pd元素をマッピングしたイメージにおいて、Pdの含量が高い領域は相対的に明るく、Pdの含量が低い領域は相対的に暗く表れることができる。ここで、Pdの含量が相対的に高くて明るく表れる領域を第1領域121a、122aと定義することができる。
【0056】
一方、第1領域121a、122aに含まれたPdの含量は、上記SEM-EDS分析を通じたPd元素マッピング(mapping)時に、相対的に明るく表れる第1領域121a、122aの中央領域で測定したPdの含量を意味することができる。また、内部電極121、122において、上記第1領域を除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量は、上記第1領域を除いた内部電極121、122の領域のうち任意の10個の地点で測定したPdの含量の平均値を意味することができる。上記10個の地点は、例えば内部電極121、122と外部電極131、132の界面から第2方向に6.5μm以上離れた領域で指定されることができる。
【0057】
内部電極121、122の平均厚さteは、特に限定する必要はないが、例えば3μm以下であることができる。また、内部電極121、122の平均厚さteは、所望の特性や用途によって任意に設定することができる。例えば、高電圧電装用電子部品の場合、内部電極121、122の平均厚さteは、1μm未満であることができ、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために、内部電極121、122の平均厚さteは0.4μm以下であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0058】
一方、前述したように、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、外部電極131、132がNi及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含み、内部電極121、122が第1領域121a、122aを含むことで、内部電極121、122の平均厚さteが1μm未満または0.4μm以下の場合にも積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0059】
内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向における厚さの平均を意味する。ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0060】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されることができ、上記第1面、第2面、第5面及び第6面の一部上に延長されることができる。また、外部電極131、132は、第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、外部電極131、132はNi及びPdを含む基礎電極層131a、132aを含むことができ、基礎電極層131a、132aは、第1内部電極121と連結される第1基礎電極層131a及び第2内部電極122と連結される第2基礎電極層132aを含むことができる。
【0062】
基礎電極層131a、132aは、Ni及びPdを含むことで基礎電極層131a、132aの緻密度が向上することができ、PdはNiとの合金性に優れるため、全率固溶体を形成することができ、これにより内部電極121、122及び外部電極131、132の間の連結性を向上させることができる。また、従来の場合、外部電極のCuが内部電極に拡散して放射クラックが発生するという問題点が存在したが、本発明の一実施形態の場合、基礎電極層131a、132aがNi及びPdを含むことで、本体に放射クラックが発生することを抑制することができる。
【0063】
一方、内部電極121、122と基礎電極層131a、132aに含まれた金属の拡散速度の差異による放射クラックをさらに効果的に抑制するために、内部電極121、122及び基礎電極層131a、132aは、それぞれNiを主成分として含むことが好ましいことができる。
【0064】
また、前述したように、基礎電極層131a、132aは、Ni及びPdを含むめっき層であることが好ましいことができる。基礎電極層131a、132aがNi及びPdを含むめっき層の場合、従来のCu及びガラスを含むペーストを塗布した後、焼成した焼成電極に比べて内部電極と外部電極間の連結性が向上することができるため、積層型電子部品の電気的特性を改善することができる。
【0065】
一実施形態において、基礎電極層131a、132aは、第2領域131a1、132a1を含み、上記第2領域に含まれたPdの含量は、上記基礎電極層において上記第2領域を除いた残りの領域131a2、132a2に含まれたPdの含量より大きくすることができる。基礎電極層131a、132aにおいて第2領域131a1、132a1を除いた残りの領域131a2、132a2に含まれたPdの含量は、上記第2領域を除いた残りの領域に含まれたPdの平均含量を意味することができる。
【0066】
前述したように、上記Pdは、Niを主成分とする金属内で水素拡散係数を小さくする役割を果たすことができ、これにより、基礎電極層131a、132aがPdの含量が相対的に大きい第2領域131a1、132a1を含むことで、本体110の内部に水素が浸透することを防止することができる。
【0067】
一方、第2領域131a1、132a1は、基礎電極層131a、132a内に球(sphere)状で存在することができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、第2領域131a1、132a1は、例えばフレーク(flake)状などの多様な形態を有することができる。
【0068】
一実施形態において、基礎電極層131a、132aは、第2領域131a1、132a1を複数個含むことができる。上記基礎電極層が上記第2領域を複数個含むことで、水素が本体110の内部に浸透することをより効果的に防止することができる。
【0069】
第2領域131a1、132a1に含まれたPdの含量と基礎電極層131a、132aにおいて第2領域131a1、132a1を除いた残りの領域131a2、132a2に含まれたPdの含量を測定する方法の好ましい例示は、下記の通りである。本体110の第3方向中央で切断した外部電極131、132の第1及び第2方向断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージを得た後、上記イメージを、エネルギー分散型分光分析法(EDS)を通じてPd元素をマッピング(mapping)する。この時、Pd元素をマッピングしたイメージにおいて、Pdの含量が高い領域は相対的に明るく、Pdの含量が低い領域は相対的に暗く表れることができる。ここで、Pdの含量が相対的に高くて明るく表れる領域を第2領域131a1、132a1と定義することができる。
【0070】
一方、第2領域131a1、132a1に含まれたPdの含量は、上記SEM-EDS分析を通じたPd元素のマッピング(mapping)時に、相対的に明るく表れる第2領域131a1、132a1の中央領域で測定したPdの含量を意味することができる。また、基礎電極層131a、132aにおいて上記第2領域を除いた残りの領域131a2、132a2に含まれたPdの含量は、上記第2領域を除いた基礎電極層131a、132aの領域のうち任意の10個の地点で測定したPdの含量の平均値を意味することができる。
【0071】
一実施形態において、基礎電極層131a、132aは、本体110と隣接した第1層及び上記第1層上に配置される第2層を含み、上記第1層に含まれたPdの含量は、上記第2層に含まれたPdの含量より大きくすることができる。以下、
図7~
図9を参照して第1基礎電極層131aを基準として説明するが、第1基礎電極層131aと第2基礎電極層132aは、第2方向を基準として互いに対称の関係にあるため、第1基礎電極層131aに関する説明は、第2基礎電極層132aに関する説明を含むものとする。
【0072】
図7~
図9を参照すると、第1基礎電極層131aは、本体110と隣接した第1層131a-1及び上記第1層上に配置される第2層131a-2を含み、上記第1層に含まれたPdの含量は、上記第2層に含まれたPdの含量より大きくすることができる。第1層131a-1に含まれたPdの含量が第2層131a-2に含まれたPdの含量より大きいことで、内部電極及び外部電極間の連結性の向上効果、放射クラックを防止する効果、及び本体の内部に水素が浸透することを抑制する効果がさらに向上することができる。一方、第1基礎電極層131aの第2領域131a1は、第1層131a-1に配置されることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0073】
第1層131a-1と第2層131a-2の境界は、本体110の第3方向中央で切断した外部電極131、132の第1及び第2方向断面をSEM-EDSに分析して得たPd元素のマッピング(mapping)イメージから区別することができる。すなわち、第1層131a-1は、第2層131a-2よりPdの含量が大きいため、
図9に示すように、第1層131a-1と第2層131a-2の境界は、Pd元素の分布度が急激に変わる地点であることができる。
【0074】
一方、第1層131a-1の厚さT1及び第2層131a-2の厚さT2は、特に限定する必要はないが、一実施形態において、T1>T2を満たすことができる。T1>T2を満たすことで上記内部電極及び外部電極の間の連結性の向上効果、放射クラックを防止する効果及び本体の内部に水素が浸透することを抑制する効果がさらに向上することができる。T1は特に限定する必要はないが、例えば1.5μm~2.0μmであることができる。ここで、T1は、第1層131a-1の第1方向中央領域における厚さを意味することができ、T2は、第2層131a-2の第1方向中央領域における厚さを意味することができる。
【0075】
一方、第2領域131a1、132a1を形成する方法及び第1層131a-1及び第2層131a-2に含まれたPdの含量を調節する方法は、特に限定する必要はない。前述したように、内部電極121、122の端部にPd seedを形成した後に熱処理する工程及び電解めっき法を用いてPd SeedからNiを成長させて基礎電極層131a、132aを形成した後、上記基礎電極層に対して追加の熱処理する工程を経て内部電極の端部に配置されたPd seedの拡散を誘導することができ、第2領域131a1、132a1を形成し、第1層131a-1に含まれたPdの含量が第2層131a-2に含まれたPdの含量より大きくなるように調節することができる。
【0076】
一実施形態において、基礎電極層131a、132aは、第1面の延長線E1と第2面の延長線E2との間に配置されることができる。前述したように、基礎電極層131a、132aが電解めっき法を用いて形成されためっき層の場合、上記基礎電極層は、ガラスを含まなくてよい。この時、基礎電極層131a、132aが第1面の延長線E1を超えて第1面まで延長されるか、第2面の延長線E2を超えて第2面まで延長される場合、ガラスを含まない基礎電極層131a、132aと本体110間のデラミネーションなどの問題が発生し得る。
【0077】
外部電極131、132は、基礎電極層131a、132a上に配置される中間電極層131b、132bを含むことができる。例えば、第1外部電極131は、第1基礎電極層131a上に配置される第1中間電極層131bを含み、第2外部電極132は、第2基礎電極層132a上に配置される第2中間電極層132bを含むことができる。
【0078】
中間電極層131b、132bは、導電性金属及びガラスを含むことができる。中間電極層131b、132bに含まれた導電性金属は、電気的連結性を確保する役割を果たし、ガラスは本体との結合力を向上させる役割を果たすことができる。
【0079】
中間電極層131b、132bに含まれた金属は、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決められることができる。例えば、電極層131b、132bに含まれた金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上であることができる。
【0080】
但し、中間電極層131b、132bに含まれた導電性金属がCuの場合、基礎電極層の配置による中間電極層131b、132bに含まれた元素が内部電極に拡散することを抑制する効果がより顕著になることができる。よって、一実施形態において、中間電極層131b、132bは、Cu及びガラスを含むことができる。
【0081】
また、中間電極層131b、132bに含まれた導電性金属がCuの場合、基礎電極層131a、132aと中間電極層131b、132b間の界面には、Ni-Cu合金層が配置されることができる。これにより、基礎電極層131a、132aと中間電極層131b、132b間の結合力を向上させることができる。
【0082】
一実施形態において、中間電極層131b、132bは、第1面及び第2面1、2の少なくとも一部に延長して配置されることができる。中間電極層131b、132bは、ガラスを含むため、本体110との結合力に優れ、中間電極層131b、132bが第1面及び第2面の少なくとも一部に延長して配置されることにより、基礎電極層131a、132aをカバーする形態で配置され、本体110と外部電極131、132間の結合力を向上させることができる。
【0083】
中間電極層131b、132bは、導電性金属及びガラスを含む1層だけで構成されることができるが、本発明がこれに制限されるものではなく、中間電極層131b、132bは、多層構造を有することができる。
【0084】
例えば、第1中間電極層131bは、導電性金属及びガラスを含む第1-1中間電極層及び上記第1-1中間電極層上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第1-2中間電極層を含むことができる。また、第2中間電極層132bは、導電性金属及びガラスを含む第2-1中間電極層及び上記第2-1中間電極層上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2-2中間電極層を含むことができる。導電性金属及び樹脂を含む第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層を含むことにより、積層型電子部品の曲げ強度を向上させることができる。
【0085】
上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層に含まれる導電性金属は、特に制限されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0086】
上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層に含まれる導電性金属は、球状粉末及びフレーク状粉末のうち1以上を含むことができる。すなわち、上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層に含まれる導電性金属は、フレーク状粉末のみからなるか、球状粉末のみからなることができ、フレーク状粉末と球状粉末が混合した形態であってもよい。ここで、球状粉末は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ割合(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粉末は、平たく長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ割合(長軸/短軸)が1.95以上であることができる。上記球状粉末及びフレーク状粉末の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得たイメージから測定することができる。
【0087】
上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層に含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。上記樹脂は、接合性及び衝撃吸水性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)などから選択された1種以上を含むことができる。
【0088】
また、上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層は、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、上記第1-1中間電極層及び第2-1中間電極層との電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割をし、複数の金属粒子を取り囲み互いに連結する役割を果たすことができる。
【0089】
この時、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融され、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を取り囲むようになる。この時、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0090】
一実施形態において、上記第1-2中間電極層及び第2-2中間電極層は、Snを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融され、溶融されたSnがAg、NiまたはCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により濡らすようになり、Ag、NiまたはCu金属粒子の一部と反応してAg3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に参加しないAg、NiまたはCuは、金属粒子の形態で残るようになる。
【0091】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snのうち一つ以上を含むことができる。
【0092】
外部電極131、132は、中間電極層131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。第1外部電極131は、第1電極層131b上に配置される第1めっき層131cを含むことができ、第2外部電極132は、第2電極層132b上に配置される第2めっき層132cを含むことができる。
【0093】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させることができる。めっき層131c、132cの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。めっき層131c、132cは、例えば、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0094】
図面では、積層型電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0095】
以下、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品について説明する。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品は、上述した本発明の一実施形態による積層型電子部品と同様の構成を有することができる。よって、上述した本発明の一実施形態と重複する説明は省略する。
【0096】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含み、上記第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面及び第4面に配置される外部電極131、132とを含み、上記内部電極は、第1領域121a、122aを含み、上記第1領域に含まれたPdの含量は、上記内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域121b、122bに含まれたPdの含量より大きく、上記第1領域は、上記内部電極と外部電極の界面に隣接した領域に配置され、上記内部電極の第2方向中央領域には配置されなくてよい。
【0097】
前述したように、第1領域121a、122aは、例えば、内部電極の端部にPd Seedを形成した後に熱処理する工程及び電解めっき法を用いてPd SeedからNiを成長させて基礎電極層を形成した後、上記基礎電極層に対して追加の熱処理する工程を経てPd seedの拡散を誘導することで形成されることができる。
【0098】
これにより、第1領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132の界面と隣接した領域に配置され、内部電極121、122の第2方向中央領域には配置されなくてよい。
【0099】
すなわち、上記基礎電極層を形成する前に、内部電極の端部にPd seedを形成して熱処理する工程を行うことで、内部電極121、122と外部電極131、132の界面と隣接した領域に配置される第1領域121a、122aを形成することができ、上記Pd seedを通じてめっき時間を短縮させてめっき工程時に発生する水素イオンが本体の内部に浸透することを抑制することができる。
【0100】
一方、第1領域121a、122aが内部電極121、122の第2方向中央領域に配置される場合、上記第1領域は、めっき工程時に発生する水素イオンの浸透防止効果を発揮することができないため、第1領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132の界面と隣接した領域に配置され、内部電極121、122の第2方向中央領域には配置されないことが好ましいことができる。
【0101】
ここで、内部電極121、122と外部電極131、132の界面と隣接した領域とは、例えば上記内部電極と外部電極の界面から上記第2方向に6.5μm以内の領域を意味することができ、これにより、一実施形態において、第1領域121a、122aは、上記内部電極と外部電極の界面から上記第2方向に6.5μm以内の領域に配置されることができ、第1領域121a、122aは、上記内部電極と外部電極の界面から上記第2方向に6.5μm以上離れた領域には配置されなくてよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0102】
(実験例)
<電気的特性の評価>
内部電極ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層して切断及び焼成を経て本体を作製し、上記本体表面に露出した内部電極端部にPd Seedを形成した後、150℃~1100℃の温度で15分~360分間熱処理を行った。次に、電解めっき法を用いてPd seedからNiを成長させて基礎電極層を形成した後、上記基礎電極層に対して150℃~1100℃の温度で15分~360分間追加の熱処理を行った。一方、全体めっき時間は、基礎電極層の複数の内部電極に対するカバレッジが100%になるまで進行した。以後、上記基礎電極層上にCu及びガラスを含む中間電極層、上記中間電極層上に順次積層されたNiめっき層及びSnめっき層を形成して実験例1のサンプルチップを完成し、これにより、実験例1は、Ni及びPdを含む基礎電極層と、上記第1領域を含む内部電極を含む。
【0103】
一方、比較例1は、実験例と同一の本体を準備し、Cu及びガラスを含むペーストに本体をディッピングして焼成した後、焼成電極上にNiめっき層及びSnめっき層を形成した。以後、実験例1及び比較例1の容量及びDF値を測定した。
【0104】
図10は、実験例及び比較例に対する容量及びDF値を測定して示したグラフである。
図10を参照すると、実験例1は、比較例1に比べて容量(capacitance)に優れ、DF値が低いことを確認することができる。これにより、実験例1は、比較例1に比べて電気的特性が改善可能なことを確認することができる。
【0105】
<水素浸透量の評価>
次に、本体中の水素浸透量を測定するために、実験例2及び比較例2を作製した。実験例2は、前述した実験例1と同一の方法で作製し、比較例2は、実験例1と同一の本体を準備し、Pd seedを形成する工程を省略した後、実験例と同一の方法で電解めっき法を用いてNiをめっきして基礎電極層を形成した後、中間電極層、Niめっき層及びSnめっき層を順次に形成して比較例2のサンプルチップを完成した。以後、ISO 17081標準試験法で上記実験例2及び比較例2の本体中の水素量を測定して、下記の表1に記載した。
【0106】
【0107】
上記表1を参照すると、実験例2の場合、Pd seed上に基礎電極層を形成することでNi及びPdを含む基礎電極層と、上記第1領域を含む内部電極を含むことで水素が本体の内部に浸透することを抑制して、めっき後に本体中の水素量が比較例2に比べて相対的に低いことを確認することができる。一方、比較例2の場合、Pd seedを形成する工程の省略によって基礎電極層がPdを含まず、内部電極が上記第1領域を含まないため、めっき後に本体中の水素量が実験例2より相対的に高いことを確認することができる。これにより、実験例2の場合、Pd seed及びNiめっきを用いて基礎電極層を形成することでめっき時間を効果的に減少させ、第1領域を含む内部電極を形成することで水素の浸透量を抑制することができることが分かる。
【0108】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定する。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0109】
また、「一実施形態」という表現は互いに同一の実施形態を意味せず、それぞれ互いに異なる固有な特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくとも、他の一実施形態でその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明と理解されることができる。
【0110】
また、第1、第2などの表現は、一構成要素と他の構成要素を区分づけるために使用されたもので、当該構成要素の順序及び/または重要度などを限定しない。場合によっては権利範囲から外れず、第1構成要素は第2構成要素と命名されることもでき、同様に、第2構成要素は第1構成要素と命名されることもできる。
【符号の説明】
【0111】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
121a、122a:第1領域
121b、122b:内部電極において上記第1領域を除いた残りの領域
131、132:外部電極
131a、132a:基礎電極層
131a1、132a1:第2領域
131a2、132a2:基礎電極層において上記第2領域を除いた残りの領域
131b、132b:中間電極層
131c、132c:めっき層