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特開2024-12290非神経学的及び/又は神経学的状態のIGF-1分析、調節及び疾患管理における改善
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012290
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】非神経学的及び/又は神経学的状態のIGF-1分析、調節及び疾患管理における改善
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240123BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K36/185
A61P43/00 111
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023170592
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020534156の分割
【原出願日】2018-08-28
(31)【優先権主張番号】735002
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(31)【優先権主張番号】742311
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(71)【出願人】
【識別番号】520070828
【氏名又は名称】ザ シージーピー ラボ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グアン,ジャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法を提供する。
【解決手段】動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、生物学的検体中での活性濃度依存性のIGF-1のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップ、およびブラックカラントアントシアニンの濃縮抽出物を治療有効量で前記動物に投与して動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップ、を含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)前記生物学的検体中の前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを標準と比較することで、結果の連続体の中で、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が、前記個体のIGF-1機能を評価するための相対標準に一致するか否かを確認するステップと;
d)ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で前記動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
改変されたIGF-1機能を有するバイオマーカーとして環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、動物における加齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記動物の第1設定年齢時、又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での前記動物に対する処置前に、前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)前記動物のさらなる設定年齢間隔又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の前記濃縮抽出物の前記治療有効量での前記動物に対する処置後に、前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと;
d)前記第1の設定年齢に対する前記設定年齢間隔、又はIGF-1機能障害を伴う前記非神経学的及び/又は神経学的状態の前記初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の前記治療有効量での前記動物に対する前記処置前に、前記生物学的検体中での前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを比較することで、結果の連続体の中で、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比において変化があるか否かを確認し、それにより前記動物における認知減退からの非神経学的及び/又は神経学的状態の発生リスクがベースラインデータの標準セットと比べて増加しているか否かを判定するステップと、
を含み、ここで前記測定された比が、BCA処置についての個別患者及びそこでの前記BCA処置に適した用量を選択するために用いられる、方法。
【請求項3】
IGF-1機能に対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、IGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の
自発的回復を予測する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記動物の前記非神経学的及び/又は神経学的状態の発症からの前記動物のベースライン時(<72時間)に前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと;
c)前記動物の回復中のさらなる規則的間隔で、前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと、
d)前記ベースラインからの前記動物の機能的回復をさらなる設定間隔で評価するステップと、
を含み、ここで、前記動物におけるより高いベースラインcGP濃度、前記より陽性の予後が機能的回復の前記評価に基づくように、データの連続体からのCGPの前記ベースライン濃度から、前記動物の非神経学的及び/又は神経学的状態の回復の短期転帰が予測される、方法。
【請求項4】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるための、製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用。
【請求項5】
それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための、経口投与用に製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用。
【請求項6】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの(正常/生理学的)濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させる又は正常化するための、動物への投与用に製剤化される濃縮されたブラックカラントアントシアニン(BCA)を治療有効量で含む抽出物。
【請求項7】
それを必要とする患者における高血圧症及び/又は脳卒中の影響を改善し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中に関連する症状を低減するための方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項8】
それを必要とする患者におけるパーキンソン病若しくはパーキンソン病に関連する症状、若しくは認識機能障害に伴う合併症の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記非神経学的及び/又は神経学的状態又は疾患が、脳血管発作若しくは脳卒中、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、レット症候群、脳振盪、高血圧症及びそれに伴う脳合併症、パーキンソン病及び/又は任意の他の加齢関連状態若しくはIGF-1欠損関連状態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
投与により、疾患又は状態の結果としてのcGP濃度における減少が停止する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
投与により、cGP濃度が投与のない前記患者において測定される場合よりも少なくとも1%高く増加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記BCAの添加により、前記CSF中のIGF-1及びIGF結合タンパク質でなく、cGPの濃度が増加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
BCAの添加後、cGP、IGF-1及びIGFBPの血漿濃度における測定可能な変化がない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
cGPの前記CSF濃度が、cGPの血漿濃度及びcGP/IGF-1比と相関する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記動物がヒトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記動物が健常である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記動物が、既存の状態又は病態を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記標準又はベースラインが、患者について収集されたデータセットに基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記標準又はベースラインが、集団について収集されたデータセットに基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的検体が、脳脊髄(CSF)、血漿、尿、及び/又は任意の他の生物学的検体(涙及び任意の他の身体機能)、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
cGPが、ELISA、HPLC、質量分析、及びそれらの組み合わせから選択される技術によって測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、経口投与用に製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤が、非経口投与用に製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤が、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、粉末、微粒子化された粉末又はゲルとして製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
1日あたり120mg~600mgの用量のアントシアニンを前記動物に提供するため、薬剤が投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
1日あたり50mg~1000mgの用量のアントシアニンを前記動物に提供するため、前記薬剤が投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
BCAの添加後、脳脊髄液(CSF)中でcGPが少なくとも25%増加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ブラックカラントアントシアニン(BCA)の範囲内に存在する前記環状グリシン-プロリン(cGP)濃度が、100mg中27ng~100mg中100ngの間である、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項29】
前記抽出物が、最大で40%のアントシアニンを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項30】
前記抽出物カプセル剤又は他の送達手段が、少なくとも50mg~1000mgのアントシアニンを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項31】
前記ブラックカラントが、限定はされないが、アメリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、及びニュージーランド内を含む、国際的に育成された任意のブラックカラント品種に由来する、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項32】
前記ブラックカラントが、40°を上回る緯度の北半球及び/又は赤道から50°北の南半球において育成された果実に由来する、請求項31に記載の抽出物。
【請求項33】
前記アントシアニン:デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、ペツニジン-3-ルトニオシド(rutonioside)、及びそれらの組み合わせを含めることによって特徴づけら
れる、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項34】
デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシドシアニジン-3-グルコシド及びシアニジン-3-ルチノシドが、前記抽出物中のアントシアニンの総量の少なくとも80%を含む、請求項33に記載の抽出物。
【請求項35】
前記抽出物が、ブラックカラントに由来し、標準のニュージーランドでのアントシアニン分析において、前記ブラックカラントからの非濃縮ジュース中で測定されるとき、
少なくとも60mg/100mlのデルフィニジン-3-グルコシド;及び/又は
少なくとも200mg/100mlのデルフィニジン-3-ルチノシド;及び/又は
少なくとも40mg/100mlのシアニジン-3-グルコシド;及び/又は
少なくとも240mg/100mlのシアニジン-3-ルチノシド;及び/又は
少なくとも14mg/100mlのペツニジン-3-ルトニオシド
を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項36】
動物におけるIGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)前記生物学的検体中での前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを標準と比較し、結果の連続体の中で、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が、前記個体のIGF-1機能を評価するための前記相対標準に一致するか否かを確認するステップと;
d)cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で前記動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法。
【請求項37】
改変されたIGF-1機能を有するバイオマーカーとして環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、動物における加齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記動物の第1設定年齢時、又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の治療有効量での前記動物に対する処置前に、前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)前記動物のさらなる設定年齢間隔又は前記非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の前記濃縮抽出物の前記治療有効量での処置後に、前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと;
d)前記第1の設定年齢に対する前記設定年齢間隔、又はIGF-1機能障害を伴う前記非神経学的及び/又は神経学的状態の前記初期段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の前記治療有効量での前記動物に対する前記処置前に、前記生物学的検体中での前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを比較することで、結果の連続体の中で、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比において変化があるか否かを確認し、それにより前記動物における認知減退からの非神経学的及び/又は神経学的状態の発生リスクがベースラインデータの標準セットと比べて増加しているか否かを判定するステップと、
を含み、ここで前記測定された比が、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料での処置についての個別患者及びそこでの前記cGPを含有する有機又は植物ベースの材料での処置に適した用量を選択するために用いられる、方法。
【請求項38】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるための、製剤化される薬剤の製造におけるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の使用。
【請求項39】
それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための、経口投与用に製剤化される薬剤の製造におけるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の使用。
【請求項40】
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの(正常/生理学的)濃度及び/又はcGPのIGF-1総測
定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させる又は正常化するための、動物への投与用に製剤化されるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で含む抽出物。
【請求項41】
それを必要とする患者における高血圧症及び/又は脳卒中の影響を改善し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中に関連する症状を低減するための方法であって、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項42】
それを必要とする患者におけるパーキンソン病若しくはパーキンソン病に関連する症状、若しくは認識機能障害に伴う合併症の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための方法であって、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法
【請求項43】
前記非神経学的及び/又は神経学的状態又は疾患が、脳血管発作若しくは脳卒中、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、レット症候群、脳振盪、高血圧症及びそれに伴う脳合併症、パーキンソン病及び/又は任意の他の加齢関連状態若しくはIGF-1欠損関連状態である、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
投与により、疾患又は状態の結果としてのcGP濃度における減少が停止する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
投与により、cGP濃度が投与のない前記患者において測定される場合よりも少なくとも1%高く増加する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の添加により、前記CSF中のIGF-1及びIGF結合タンパク質ではなく、cGPの濃度が増加する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の添加後、cGP、IGF-1及びIGFBPの血漿濃度における測定可能な変化がない、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
cGPの前記CSF濃度が、cGPの血漿濃度及びcGP/IGF-1比と相関する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記動物がヒトである、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記動物が健常である、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記動物が、既存の状態又は病態を有する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記標準又はベースラインが、患者について収集されたデータセットに基づく、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記標準又はベースラインが、集団について収集されたデータセットに基づく、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記生物学的検体が、脳脊髄(CSF)、血漿、尿、及び/又は任意の他の生物学的検体(涙及び任意の他の身体機能)、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
cGPが、ELISA、HPLC、質量分析、及びそれらの組み合わせから選択される技術によって測定される、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記薬剤が、経口投与用に製剤化される、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記薬剤が、非経口投与用に製剤化される、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記薬剤が、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、粉末、微粒子化された粉末又はゲルとして製剤化される、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の添加後、脳脊髄液(CSF)中でcGPが少なくとも25%増加する、請求項36又は請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記BCA抽出物及び/又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料中に含まれる前記cGP濃縮物を測定する前に、前記抽出物及び/又は材料が、Diaion HP20でコーテ
ィングされた樹脂ビーズを利用するクロマトグラフィーカラムを通じて処理される、請求項21又は請求項55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
それを必要とする患者におけるレット症候群の影響を改善し、及び/又はそれを治療するための、経口投与用に製剤化された薬剤の製造における、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物とIGF-1との組み合わせの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書に記載されるのは、非神経学的及び/又は神経学的状態のIGF-1分析、調節及び疾患管理に関する改善である。より詳細には、IGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用、並びにそれらを治療するための有機又は植物ベースの材料、例えばブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を含有するcGPの使用についての方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は、内分泌ホルモンとして生成されるタンパク質である。それは、成長ホルモンの効果の一次メディエーターであり、身体内のほぼすべての細胞における体成長を刺激する。成長効果に加えて、IGF-1はまた、神経細胞及び細胞DNA合成を調節しうる。
【0003】
それはまた、向神経性因子であり、認知機能などの種々の神経機能において決定的役割を担う。IGF-1は、一生を通じて生成されるが、幼仔期(特に新生仔)に最も低く、成体期の間に増加し、年齢とともに低下する。IGF-1機能の測定は、加齢に伴う認知減退のバイオマーカーであってもよく、さらに薬剤治療などの介入が有用なことがあるか否かについての、及びかかる治療をいつ開始すべきかについての理解を支援するために用いられてもよい。
【0004】
しかし、血漿IGF-1濃度は、IGF-1の直接的測定が、ある程度の信頼度で使用できないような矛盾した結果をもたらすことから、歴史的にはIGF-1機能に対して不十分なバイオマーカーであった。歴史的使用は、例えば成長ホルモン欠乏及び異常な成長パターンについてのスクリーニング試験として血液中のIGF-1について検査するためであってもよいが、その結果は、主に総IGF-1の指針であり、活性IGF-1に特異的な尺度ではない。
【0005】
直接的なIGF-1測定から得られる矛盾した結果が、不活性であるインビボでのIGF-1の大部分に起因することがあると理解される。それは主要な活性部分である。血漿中では、IGF-1の95%超が、IGF結合タンパク質-3(IGFBP-3)に結合し、IGF結合タンパク質-3は、一旦結合されると、IGF-1機能的受容体の活性化を阻止する。したがって、IGF-1が直接的に測定されると、活性型と不活性型との間に差がなく、それ故、活性部分が目的のバイオマーカーであるとして、インビボでのIGF-1の真の活性量についての知見は得られない。
【0006】
IGF-1/IGFBP-3の比は、非結合の生理活性IGF-1を示すための代替物として用いられてもよいが、実際、IGFBP-3の大部分がIGF-1に結合しないことから、この比はいずれにしても明確な指標を提供しない。
【0007】
理解されているかもしれないが、IGF-1の代替的尺度は、IGF-1機能を追跡し、ひいてはこの尺度を患者の健康のバイオマーカーとして用いるための手段として有利であってもよい。例えば、IGF-1の代謝産物である環状グリシン-プロリン(cGP)は、血漿中のIGF-1のバイオアベイラビリティを改善/正常化することを通じて神経
保護的である。
【0008】
IGF-1レベルを理解することに対応し、そこで患者の自然免疫及び修復系をそれらのIGF-1活性部分を増加させることによって調節又は支持することが所望されてもよい。
【0009】
さらに、IGF-1が種々の動物機能(多くの中の1つが神経変性機能)に密接に関連することから、それに関連した変化を測定するための方法と、様々な関連状態を治療する、改善する又はそれにおける治癒を促進するための方法の双方が有用なことがある。
【0010】
ヒト身体は、それ自身を損傷及び疾病から保護する能力を有し、例えば、我々のホルモン系がより活性化する。しかし、我々の回復を支援する能力は、特に高齢者においては加齢に伴うホルモンの減少に起因し、十分な回復を達成するのに常に有効とは限らない。脳卒中は、若年者及び高齢者集団に生じる。若年脳卒中患者がより迅速且つより良好な回復を来すことができる一方で、年配患者からの回復は緩徐且つ不良でありうる。IGF-1機能はまた、脳卒中の回復にとって重要である。したがって、脳卒中におけるIGF-1機能に対する信頼できるバイオマーカーが脳卒中又は他の神経学的状態の予後に用いられてもよく、さらに脳卒中の回復能力を予測する方法を個別患者に対する臨床管理を設計することに役立ててもよい。しかし、上記の通り、血漿IGF-1又はIGF-1/IGF結合タンパク質-3(IGFBP-3)比は、信頼できるバイオマーカーでない。したがって、脳卒中患者の自発的回復及びそれらの治療方法を支援するため、IGF-1機能に対する有望なバイオマーカーを見出すことが有用となろう。
【0011】
年齢関連状態として、パーキンソン病(PD)は、2番目に一般的な神経変性状態である。インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は、神経栄養因子であり、神経生存及び脳機能の維持における本質的役割を担う。循環IGF-1の増加及びIGF-1機能の障害によって特徴づけられるIGF-1抵抗性は、PD患者における神経障害及び認知減退に関連することが報告されている。上記の通り、血清中のIGF-1濃度における変化が、PDにおける予後及び治療応答を監視するのに用いられる、IGF-1機能障害に対するバイオマーカーとして用いられているが、これはさらに議論の余地がある。ベリーフルーツの高消費が、PDのリスク低下に関連することが報告されているが、この推定上の利益の根底にある機構は未知のままである。
【0012】
IGF-1機能障害に起因する非神経学的及び/又は神経学的状態のIGF-1機能の分析、調節及び疾患管理に関する改善のさらなる態様及び利点は、あくまで例示される後述の説明から明白となろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
IGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用、並びにそれらを治療するためのブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物などのcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の使用に関する方法が本明細書に記載される。この方法では、より正確には、cGP及びcGP/IGF-1比(ひいては活性IGF-1濃度)を調節するための手段、及びベースラインデータの標準セットと比べてのcGPレベルの低下又は低減を有する個体に対する具体的治療方法とともに、cGP及びcGP/IGF-1比を用いて間接的にインビボでIGF-1機能を測定する。
【0014】
第1の態様では、動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神
経学的状態を治療する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)生物学的検体中の測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを標準と比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が個体のIGF-1機能を評価するための相対標準に一致するか否かを確認するステップと;
d)ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法が提供される。
【0015】
第2の態様では、改変されたIGF-1機能を有するバイオマーカーとして環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、動物における加齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)動物の第1設定年齢時、又は神経学的状態の初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)動物のさらなる設定年齢間隔又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置後に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと;
d)第1の設定年齢に対する設定年齢間隔、又はIGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前、生物学的検体中での測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比において変化があるか否かを確認し、それにより動物における認知減退からの非神経学的及び/又は神経学的状態の発生リスクがベースラインデータの標準セットと比べて増加しているか否かを判定するステップと、
を含み、ここで前記測定された比が、BCA処置についての個別患者及びそこでのBCA処置に適した用量を選択するために用いられる、方法が提供される。
【0016】
第3の態様では、IGF-1機能に対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、IGF-1機能障害を伴う非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の自発的回復を予測する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)非神経学的及び/又は神経学的状態の発症からの動物のベースライン時(<72時間)に生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバ
イオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと、
c)動物の回復中のさらなる規則的間隔で、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと、
d)さらなる設定間隔でのベースラインからの動物の機能的回復を評価するステップと、
を含み、ここで、動物におけるより高いベースラインcGP濃度、より陽性の予後が機能的回復の評価に基づくように、データの連続体からのCGPのベースライン濃度から、動物の非神経学的及び/又は神経学的状態の回復の短期転帰が予測される、方法が提供される。
【0017】
第4の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるための、製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用が提供される。
【0018】
第5の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための、経口投与用に製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用が提供される。
【0019】
第6の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの(正常/生理学的)濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させる又は正常化するための、動物への投与用に製剤化される濃縮されたブラックカラントアントシアニン(BCA)を治療有効量で含む抽出物が提供される。
【0020】
第7の態様では、それを必要とする患者における高血圧症及び/又は脳卒中の影響を改善し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中に関連する症状を低減するための方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0021】
第8の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病若しくはパーキンソン病に関連する症状、若しくは認識機能障害に伴う合併症の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0022】
第9の態様では、動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと;
c)生物学的検体中での測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測
定量に対する比のいずれかを標準と比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が個体のIGF-1機能を評価するための相対標準に一致するか否かを確認するステップと
d)cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法が提供される。
【0023】
第10の態様では、改変されたIGF-1機能を有するバイオマーカーとして環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、動物における加齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)動物の第1設定年齢時、又は非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと;
c)動物のさらなる設定年齢間隔又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置後に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと;
d)第1の設定年齢に対する設定年齢間隔、又は非神経学的及び/又は神経学的状態の初期段階、又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前、生物学的検体中での測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比において変化があるか否かを確認し、それにより動物における認知減退からの非神経学的及び/又は神経学的状態の発生リスクがベースラインデータの標準セットと比べて増加しているか否かを判定するステップと、
を含み、ここで前記測定された比が、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料での処置についての個別患者及びそこでのcGPを含有する有機又は植物ベースの材料での処置に適した用量を選択するために用いられる、方法が提供される。
【0024】
第11の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるための、製剤化される薬剤の製造におけるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の使用が提供される。
【0025】
第12の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための、経口投与用に製剤化される薬剤の製造におけるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の使用が提供され
る。
【0026】
第13の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの(正常/生理学的)濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させる又は正常化するための、動物への投与用に製剤化されるcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で含む抽出物が提供される。
【0027】
第14の態様では、それを必要とする患者における高血圧症及び/又は脳卒中の影響を改善し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中に関連する症状を低減するための方法であって、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0028】
第15の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病若しくはパーキンソン病に関連する症状、若しくは認識機能障害に伴う合併症の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための方法であって、cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0029】
上記の利点は、変化することがある。バイオマーカーについては、上記のようなcGPは、IGF-1の安定な代謝産物であり、発明者の研究に基づくと、動物から採取される生物学的検体中で容易に測定される。cGPは、活性型と不活性型とを識別するという観点からIGF-1と同様の可変性を有しないことから、総IGF-1を測定するよりも信頼できる。cGPにおける変化を測定し、及び/又は神経学的状態に対処する上記の方法については、信頼できるバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の臨床適用の利点により、治療に適した患者及び個別の投与計画の選択が可能になる。cGPの増加は、神経学的状態のリスクを示し、cGPの減少は、神経学的状態の段階を示す。有利には、治療に適した患者は、それらのcGPレベルに基づいて選択されてもよく、cGPレベルの変化は、適合又は個別化された治療投与計画について容易に監視されうる。BCAの投与計画及び/又はcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の抽出を調節することにより、非神経学的及び/又は神経学的状態の効果的治療が可能になり、ひいては長期回復(3か月超)及び非神経学的及び/又は神経学的状態に伴う長期合併症(認識機能障害)の予防が改善される。さらなる利点は、cGPレベルが分析を容易にするために尿サンプルを測定することにより容易に監視されうることであり、将来的にBCA/有機植物抽出物を含有するcGPの大規模臨床試験にとって重大な意義を持つ。
【0030】
かかる測定可能な公知の方法でのブラックカラントの使用は、当該技術分野で公知でないか又は完成されていない。ブラックカラントジュース又はブラックカラントの他の形態(上記の抽出物でない)は、現在実現可能であり且つ本明細書に記載されるような公知の測定可能な方法で用いられていない。脳卒中及びパーキンソン病の知見は、有意且つ測定可能な利益を患者に提供するだけでなく、潜在的に既存の技術による治療に干渉しないか又は望まれない副作用を引き起こさないことがあり得る、ブラックカラントについての新規の又は少なくとも代替的な使用を特に示している。さらに、一般に天然生成物及びそれに関連する生理活性化合物については、本明細書に記載の方法及び使用は、治療に介入することが適切であるときを認識するための独自の方法を提供し、さらに治療の奏功又はそれ以外を評価するための方法を提供する。タイミング及び有効性へのこの洞察は、多数の薬剤に望まれるようなことであり、生理活性化合物を含有する天然生成物中に共通に観察されることではない。
【0031】
図面の簡単な説明
IGF-1機能障害を伴う非神経学的及び神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用、並びにそれらを治療するためのブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物などのcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の使用に関する方法のさらなる態様は、以下の添付の図面に対する参照とともに、あくまで例として示される以下の説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】BCAにおけるcGPの用量依存的増加を示す。データは、平均±SEM、p<0.0001として提示される。
図2A】ブラックカラント抽出物の添加前及び添加後における患者のCSFサンプル中でのcGPの変化を図示するグラフを示す。データは、平均±SEM、p<0.01として提示される。
図2B】ブラックカラント抽出物の添加前及び添加後における患者のCSFサンプル中でのIGF-1の変化を図示するグラフを示す。IGF-1濃度において統計学的差異が認められた。データは、平均±SEM、p<0.01として提示される。
図2C】ブラックカラント抽出物の添加前及び添加後における患者のCSFサンプル中でのcGP/IGF-1の比の変化を図示するグラフを示す。cGP/IGF-1比において統計学的差異が認められた。データは、平均±SEM、p<0.01として提示される。
図3A】BCAの添加後における血漿中でのcGPの変化を図示するグラフを示す。cGP濃度において統計学的変化が認められなかった。データは、平均±SEMとして提示される。
図3B】BCAの添加後における血漿中でのIGF-1の変化を図示するグラフを示す。IGF-1濃度において統計学的変化が認められなかった。データは、平均±SEMとして提示される。
図3C】BCAの添加後における血漿中でのcGP/IGF-1の比の変化を図示するグラフを示す。cGP/IGF-1比において統計学的変化が認められなかった。データは、平均±SEMとして提示される。
図4A】CSF cGPと血漿cGP濃度との間の相関を図示するグラフを示す。CSF cGPの濃度は、血漿cGPと有意に相関する(A、r=0.68、p=0.014)。
図4B】CSF IGF-1と血漿IGF-1濃度との間の相関を図示するグラフを示す。IGF-1濃度は、CSFと血漿との間で相関しなかった。
図4C】CSF cGPとCSF IGF-1濃度との間の相関を図示するグラフを示す。CSF中のcGPとIGF-1濃度との間で相関が認められなかった。
図4D】血漿cGPと血漿IGF-1濃度との間の相関を図示するグラフを示す。血漿中のcGPとIGF-1濃度との間で相関が認められなかった。
図4E】CSF cGPと血漿cGP/IGF-1モル比との間の相関を図示するグラフを示す。CSF cGPの濃度は、血漿cGP/IGF-1比と有意に相関する(E、r=0.66、p=0.016)。cGP/IGF-1比はまた、血漿cGP濃度と相関する(F、r=0.9、p<0.001)。
図5A】70歳未満の群(<70、黒色バー)と比べて、年配群(>=70、灰色バー)におけるIGF-1は減少した。データは、平均±SEM及びp<0.05として提示される。
図5B】年齢に伴うcGPの測定された変化を示すグラフを図示する。70歳未満の群(<70、黒色バー)と比べて、年配群(>=70)におけるcGP濃度は増加した。データは、平均±SEM及びp<0.05として提示される。
図5C】年齢に伴うcGP/IGF-1の測定された変化を示すグラフを図示する。70歳未満の群(<70、黒色バー)と比べて、年配群(>=70)におけるcGP/IGF-1比は増加した。データは、平均±SEM及びp<0.05として提示される。
図6A】正常対照(脳卒中なし)と(図15で提示される最新データと相関する)脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのIGF-1の測定された変化を示すグラフを図示する。
図6B】正常対照(脳卒中なし)と(図15で提示される最新データと相関する)脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのIGFBP-3の測定された変化を示すグラフを図示する。
図6C】正常対照(脳卒中なし)と(図15で提示される最新データと相関する)脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのcGPの測定された変化を示すグラフを図示する。
図6D】正常対照(脳卒中なし)と(図15で提示される最新データと相関する)脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのc-GP/IGF-1比の測定された変化を示すグラフを図示する。
図7A】試験の脳卒中患者が、神経学的スコアにおける有意な減少を示すことにより、3か月にわたる回復を来したことを示すグラフを図示する。
図7B】血漿cGPにおける増加への傾向が認められた。
図7C】(図16で提示される最新データと相関する)脳卒中回復の期間にわたるIGF-1における変化は認められなかった。
図7D】(図16で提示される最新データと相関する)脳卒中回復の期間にわたるIGFBP-3における変化は認められなかった。
図7E】cGP/IGF-1比における増加への傾向が認められた。
図7F】ベースラインcGP濃度は、脳卒中の回復と相関する。
図8A】尿分析から収集されたデータを示す。年齢適合対照と脳卒中との間での尿中のcGPの差異は、血漿サンプルにおいて認められた場合と類似する。
図8B】尿分析から収集されたデータを示す。予想通り、ベースラインと比べて、後の時点における尿cGPの増加への傾向が認められ、時点測定値における尿と血漿の間での差異もまた有意でなかった。
図8C】尿分析から収集されたデータを示す。尿中のcGP濃度は、血漿cGP濃度と有意な相関を有した(r=0.59、p<0.01)。
図8D】尿分析から収集されたデータを示す。尿中のcGP濃度は、cGP/IGF-1比と有意な相関を有した(r=0.63、p<0.001)。
図9】高齢者における尿cGPで認められた変化を示す。尿中のcGP濃度は、高齢者の順に有意に増加する。
図10A】尿中(図10B)でなく血漿中(図10A)のベースラインcGPの変化が回復に関連したことを示す(ΔmRS:mRSベース-3か月)(r=-0.630、p=0.003、図10)。
図10B】尿中(図10B)でなく血漿中(図10A)のベースラインcGPの変化が回復に関連したことを示す(ΔmRS:mRSベース-3か月)(r=-0.630、p=0.003、図10)。
図11】4つの異なる濃度(1、5、25及び100mg/水)における、ブラックカラント、クランベリー、ビートルート、ブラックエルダーベリー及びBHC複合体(ビルベリー及びセイヨウトチノキ)から選択されたベリーフルーツ中のc-GP濃度(含量)の結果を示す。
図12】陽性対照としてのBCAの用量範囲内でのcGP濃度の追加的分析としてのベリーフルーツサンプルからのデータを示す。cGP濃度は、100mgのBCA(対照)中で27ng、100mgのビルベリー中で46.7、100mg(10ng/mg)の新規に配合されたBCA中で100ngである。
図13】Vitalityによって提供された製品サンプルの、それらのcGP濃度を測定するためのさらなる分析からの結果を示す。Vitalityによって提供された製品サンプル(BC抽出物China-47、NZBCジュース濃縮物(T180212及びT180115)、アレパ抽出物、Enzogenol、タルトチェリー、紫小麦、紫人参及びビートルートというラベル)の4つの異なる濃度(1、5、25及び100mg/水)における分析からの結果。上で30ng/mgを用いて試験された最初のVitalityのBCAサンプルが陽性対照として用いられた。
図14A】神経学的スコア(NIHSS)における有意な減少を示すことにより、試験の脳卒中患者が3、7及び90日から各々回復を来したことを示すグラフを図示する。
図14B】神経学的スコア(mRS)における有意な減少を示すことにより、試験の脳卒中患者が3、7及び90日から各々回復を来したことを示すグラフを図示する。
図14C】FMスコアにおける改善を示すことにより、試験の脳卒中患者が3、7及び90日から各々回復を来したことを示すグラフを図示する。
図15A】正常対照(脳卒中なし)と3日未満の脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのIGF-1の測定された変化を示すグラフを図示する。
図15B】正常対照(脳卒中なし)と3日未満の脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのIGFBP-3の測定された変化を示すグラフを図示する。
図15C】正常対照(脳卒中なし)と3日未満の脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのcGPの測定された変化を示すグラフを図示する。
図15D】正常対照(脳卒中なし)と3日未満の脳卒中患者のベースラインレベルとの間でのc-GP/IGF-1比の測定された変化を示すグラフを図示する。
図16A】3日未満、7日及び90日各々の脳卒中患者のIGF-1の測定された変化を示すグラフを図示する。
図16B】3日未満、7日及び90日各々の脳卒中患者のIGFBP-3の測定された変化を示すグラフを図示する。
図16C】3日未満、7日及び90日各々の脳卒中患者のcGPの測定された変化を示すグラフを図示する。
図16D】3日未満、7日及び90日各々の脳卒中患者のc-GP/IGF-1比の測定された変化を示すグラフを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
上記の通り、非神経学的及び神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用に関する方法、並びにそれらを治療するためのブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物などのcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の使用が本明細書に記載される。この方法では、cGP及びcGP/IGF-1比(ひいては活性IGF-1濃度)を調節するための手段、及びcGPレベルの、ベースラインデータの標準セットと比べての低下又は低減を有する個体に対する特定の治療方法とともに、cGP及びcGP/IGF-1BP3比を間接的に用いて、インビボでIGF-1がより正確に測定される。
【0034】
本明細書を対象として、用語「約(about)」又は「約(approximately)」及びその文法的変形は、参照としての量(quantity)、レベル、程度、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量(amount)、重量又は長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%だけ変化する量(quantity)、レベル、程度、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量(amount)、重量又は長さを意味する。
【0035】
用語「実質的に」又はその文法的変形は、少なくとも約50%、例えば、75%、85%、95%又は98%を指す。
【0036】
用語「含む(comprise)」及びその文法的変形は、包括的意味を有するものとする、即ち、それはそれが直接的に参照する列挙成分だけでなく、他の非特定の成分又は要素を包
含することを意味するように解釈されることになる。
【0037】
ブラックカラントアントシアニン(BCA)という用語は、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じてブラックカラントの抽出物であると理解されるべきであり、BCAは、ブラックカラント濃縮物及び/又は還元果汁と互換的に置き換えられてもよい。さらに、BCA抽出物及び/又は濃縮物は、アントシアニンが存在するか否かと無関係に、cGPの供給源又は担体であってもよい。
【0038】
第1の態様では、動物における非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと;
c)生物学的検体中の測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを標準と比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が個体のIGF-1機能を評価するための相対標準に一致するか否かを確認するステップと;
d)ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法が提供される。
【0039】
第2の態様では、改変されたIGF-1機能を有するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、動物における加齢に伴う非神経学的及び/又は神経学的状態のリスクを予測する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)動物の第1設定年齢時、又は神経学的状態の初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと;
c)動物のさらなる設定年齢間隔又は非神経学的及び/又は神経学的状態のさらなる段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置後に、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと;
d)第1の設定年齢に対する設定年齢間隔、又は神経学的状態の初期段階、又はブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の治療有効量での動物に対する処置前、生物学的検体中での測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを比較することで、結果の連続体の中で、測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比において変化があるか否かを確認し、それにより動物における認知減退からの非神経学的及び/又は神経学的状態の発生リスクがベースラインデータの標準セットと比べて増加しているか否かを判定するステップと、
を含み、ここで前記測定された比が、BCA処置についての個別患者及びそこでのBCA処置に適した用量を選択するために用いられる、方法が提供される。
【0040】
第3の態様では、IGF-1機能に対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)を利用して、非神経学的及び/又は神経学的状態を有する動物の自発的回復を予測する方法であって、
a)動物から生物学的検体を得るステップと;
b)非神経学的及び/又は神経学的状態の発症からの動物のベースライン時(<48時間)の生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を測定するステップと、
c)動物の回復中のさらなる規則的間隔で、生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対する環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの濃度を再測定するステップと、
d)ベースラインからさらなる設定間隔での動物の機能的回復を評価するステップと、を含み、ここで、動物におけるより高いベースラインcGP濃度、より陽性の予後が機能的回復の評価に基づくように、データの連続体からのCGPのベースライン濃度から動物の神経学的状態の回復の短期転帰が予測される、方法が提供される。
【0041】
環状グリシン-プロリン(cGP)は、非結合及び生理活性IGF-1により天然に形成される安定な断片である。cGPは、IGFBP-3の結合形態に対するIGF-1の不活性化と濃度依存的様式で競合する。発明者は、cGPが、上記の濃度依存的様式での不活性化の結果として、活性IGF-1の量と強力に相関するような測定可能で信頼できるバイオマーカーであることを見出している。即ち、cGP濃度を測定することによる活性IGF-1機能の存在又はそれ以外が、可変の直接的なIGF-1の測定結果に対する信頼性に代わるものとして測定されうる。
【0042】
発明者の研究は、cGPの濃度が高まると、上記の濃度依存的様式を通じてIGF-1がIGFBP-3から一層遊離することになり、ひいては生体利用可能なIGF-1の増加をもたらすことを示している。
【0043】
直接的なcGP測定に加えて、発明者はまた、IGF-1に対するcGPの相対濃度(即ち、cGP/IGF-1比)もまた、患者における生体利用可能なIGF-1の量を表すことがあることから、さらに、潜在的にはIGF-1関連認知機能に適したバイオマーカーとしての役割を満たすことがあることを確認している。cGPの増加が神経学的状態のリスクを示し、及びcGPの減少が神経学的状態の段階と相関することも見出されている。それ故、BCAによる処置が認知減退の発生を阻止する又は遅延させることがあると予想される。
【0044】
用語「バイオマーカー」は、本明細書で用いられるとき、動物の健康及び機能といった機能を検討するための手段として、動物において追跡可能なcGP又はcGPの総IGF-1に対する比を指す。健康及び機能は、限定はされないが、動物又は集団におけるヒストリカルな標準測定値のいずれかと比べての、動物における「正常」又は「健常」状態の検出を含んでもよい。健康及び機能はまた、おそらくは状態、疾患又は異常状態に関連した動物の非正常又は非健康な状態の検出を含んでもよい。理解されるかもしれないが、「正常な」及び「健常な」などの用語は主観的な用語であるが、本明細書の文脈においては、これらの用語は、動物についてのヒストリカルな詳細及び/又は標準と称される集団に対する変動のいずれかと比べた、上記のバイオマーカー化合物又は比の相対的尺度である。
【0045】
上記の通り、標準は、個別動物について収集されたデータセットに基づいてもよい。例えば、一時期、例えば1週~6か月~2年にわたり、cGP及びcGPの総IGF-1に対する比を平均したデータが、動物に対して収集されてもよい。バイオマーカー濃度又は比における変動は、動物における「典型的な」数字、並びに典型的変動に対する正常又は標準な数字を理解するために用いられるそのデータ及び任意の偏差の範囲を見出し、ひいては非正常又は非定型な変化が生じるときを確認するため、観察及び分析されてもよい。
【0046】
標準は、代替的に、又は個別の動物データと併せて、集団に対して収集されたデータセットに基づいてもよい。集団は、例えば、性別群、年齢によって規定された群、症状、状態又は病態によって規定された群などであってもよい。
【0047】
cGP及び/又はIGF-1は、動物から採取された生物学的検体中で測定されてもよい。本明細書の対象として、用語「生物学的検体」、「身体サンプル」、又は「サンプル」は、互換可能に用いられもよく、また患者から採取又は抽出され、貯蔵され、後に分析される検体を集合的に指してもよい。検体を抽出するための技術は、例えば、スワブ、静脈穿刺、スティック、生検、分画、排尿、便サンプルなどを介してもよい。選択された実施形態では、生物学的検体は、脳脊髄液(CSF)、血漿、尿、任意の他の生物学的検体(涙及び任意の他の身体機能)、及びそれらの組み合わせであってもよい。
【0048】
生物学的検体中のcGP及び/又は総IGF-1は、ELISA、HPLC、質量分析、及びそれらの組み合わせから選択される技術により測定されてもよい。他の技術分野の分析技術であっても用いてよく、これらの技術に対する参照は、限定的に理解されるべきではない。
【0049】
第4の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるための、製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用が提供される。
【0050】
第5の態様では、それを必要とする患者における非神経学的及び/又は神経学的状態の影響を改善し、及び/又はそれらを治療するための、経口投与用に製剤化される薬剤の製造におけるブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物の使用が提供される。
【0051】
第6の態様では、動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの(正常/生理学的)濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させる又は正常化するための、動物への投与用に製剤化される濃縮されたブラックカラントアントシアニン(BCA)を治療有効量で含む抽出物が提供される。
【0052】
第7の態様では、それを必要とする患者における高血圧症及び/又は脳卒中の影響を改善し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中を治療し;及び/又は高血圧症及び/又は脳卒中に関連する症状を低減するための方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0053】
発明者は、高血圧症(高血圧)を有する患者にBCAを適用するとき、彼らの血圧が許容できる基礎レベルまで低下することを見出している。
【0054】
治療対象であり、且つ回復を予測するための非神経学的状態又は疾患は、限定はされないが、高血圧症、急性脳損傷(例えば、脳振盪)、肥満女性における体重変化、及び生後発達から選択されてもよい。
【0055】
第8の態様では、それを必要とする患者におけるパーキンソン病若しくはパーキンソン病に関連する症状、若しくは認識機能障害に伴う合併症の影響を改善し、及び/又はそれらを治療する方法であって、ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で投与することを含む、方法が提供される。
【0056】
治療対象の神経学的状態又は疾患は、限定はされないが、脳血管発作(CVA)若しくは脳卒中、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、高血圧症及びそれに伴う脳合併症、パーキンソン病、及び/又は任意の他の加齢関連状態若しくはIGF-1欠損関連状態から選択されてもよい。
【0057】
脳卒中は、脳への血流不良が細胞死をもたらし、典型的には適切に機能しない脳の部分をもたらすような典型的な神経学的状態である。発明者は、上記のバイオマーカーを介して、脳卒中患者においてcGP濃度及びcGPの総IGF-1に対する比が変化し、且つcGP又は比が減少する範囲が患者の回復及び予後の強力な指標であることを確認している。減少がより低いことは、回復がより迅速であること、潜在的には進行中の課題がより少ないことに関連する。しかし、これに対する正確な機構は、判明していない。というのは、IGF-1が、cGPレベル又はcGPの総IGF-1に対する比の減少がIGF-1の活性低下、ひいては神経経路のより緩やかな成長、ひいてはより緩やかな回復に対応することによる増殖に関連するからである。この知見に基づき、発明者は、ブラックカラント抽出物の投与により、cGPレベル及び/又はcGPの総IGF-1に対する比が増加し、ひいては脳卒中の影響が改善する、脳卒中が治療される、又は脳卒中及び/又は他の神経学的状態に関連する症状が少なくとも低減されることがあることを示している。
【0058】
発明者によって評価される神経学的状態のさらなる例が、2番目に一般的な神経変性状態であるパーキンソン病(PD)である。上記の通り、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は、神経栄養因子であり、神経生存及び脳機能における本質的役割を担う。障害されたIGF-1機能に伴う循環IGF-1の増加として特徴づけられるIGF-1の抵抗性は、特発性PDの疾患進行、認識機能障害及びPDの病理における役割を担う。したがって、IGF-1の血漿濃度の変化が、PDにおける予後及び治療応答を予測するため、IGF-1機能を監視するためのバイオマーカーとしても発明者により評価されている。
【0059】
本明細書の対象として、用語「改善」、「治療する」又は「~の症状を低減する」は、神経学的状態に関連する少なくとも1つの徴候又は症状の測定される影響を、ブラックカラント抽出物投与のない患者にて測定される場合と比べて、少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%低減することを指す。
【0060】
投与により、cGP濃度の減少又はcGPの総IGF-1に対する比の減少が、疾患若しくは状態により、又は疾患若しくは状態に関連する症状から引き起こされるような非正常状態の結果として、停止することがある。用語「減少を停止する」は、用いられるとき、cGP濃度及び/又はcGPの総IGF-1に対する比を、投与前に測定された濃度又は比の少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、
又は8%、又は9%、又は10%以内に維持することを指す。
【0061】
投与により、cGP濃度及び/又はcGPの総IGF-1に対する比が、ブラックカラント抽出物投与(BCA)のない患者において測定されることになる場合よりも、少なくとも1、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%高く増加することがある。発明者は、意外にも、BCAの添加後、脳脊髄液(CSF)中のcGPが25%増加することがあることを見出している。理論に拘束されない限り、これは、経口投与後の脳による有効な取り込みを示唆し、また任意の脳疾患の治療における有意な知見である。さらに、BCAは、ヒト血漿中でのcGPの形成を増強することがある。発明者が認識している限り、CSF中での少なくとも25%のcGPの有効な脳の取り込みを示している試験は他に実施されていない。BCAの添加の有効性及び取り込みを確認するため、さらなる臨床試験が進行中である。また、該機構の解明により、IGF-1機能を正常化するための介入としてBCAをさらに支持するための本質的な科学的証拠が得られることがある。
【0062】
上記態様中で示される動物は、ヒトであってもよい。動物は、代替的に非ヒト動物であってもよい。動物に対する参照は、本明細書中で用語「対象」又は「患者」と互換可能に用いられてもよく、一方又は他方に対する参照は、限定的に理解されるべきではない。
【0063】
一実施形態では、ブラックカラント抽出物が投与される動物は、非正常なcGP及び/又はcGPの総IGF-1に対する比を全く示していない健常動物であってもよい。本実施形態では、該抽出物は、後に生じる疾患、状態又は疾患若しくは状態の症状に関連することがある、cGP又はcGPの総IGF-1に対する比における変化を阻止又は回避するための手段として、予防的に投与されてもよい。或いは、動物は、既存の状態、病態、及び/又は状態若しくは病態に関連する症状を有してもよい。
【0064】
上記の通り、「正常な」及び「健常な」などの用語は主観的な用語であるが、本明細書との関連において、該用語は、動物についてのヒストリカルな詳細のいずれかと比べたバイオマーカー化合物若しくは比、及び/又はベースライン若しくは標準と称される集団に対する変動の相対的尺度である。個体のベースラインは、年齢、性別、及びIGF-1機能に関連することがある任意の他の医学的状態の間で変動してもよい。個体のベースラインからのcGP及び/又はcGPの総IGF-1に対する比の変化が、治療及びBCA投与計画を導くためのより決定的な情報であることが見出されている。発明者によって実施された例示的試験では、血漿中のcGPレベルが、健常女性においては3.5ng/mgであり、50~70歳においては8~10ng/mlであり、またPD患者においてはIGF-1抵抗性に起因して12ng~15ng/mlであることが示された。
【0065】
上記の薬剤は、一実施形態では経口投与用に製剤化されてもよい。経口投与は、生理活性化合物を投与するための非浸潤性の単純な手段であり、且つブラックカラントの観点で十分に検討された方法である。さらに、規制当局の承認を得ることを目的に、それは上記方法の市場化を意図して作製するための有用な手法であってもよい。経口投与への言及にもかかわらず、該薬剤はまた、非経口投与用に製剤化することができ、例えば非限定例として、注射、舌下ウエハ又は坐剤が挙げられる。血液脳関門(BBB)を克服することは、多数の生理活性化合物について当該技術分野で幅広く記載がなされていることから、経口的若しくは非経口的方法のいずれが好ましいか、又はさらにBBBが通過を可能にするか否かといったことは余談ともいえる。発明者は、経口投与されるブラックカラント抽出物が、血液脳関門を必ず通過することから、投与における有用な手段であってもよいことを見出している。
【0066】
一実施形態では、抽出物自体は、乾燥粉末であってもよい。抽出物粉末は、ミクロン範
囲内の直径まで微粒子化されてもよい。抽出物は、1000未満、又は100、又は10、又は1ミクロンの粒径を有してもよい。抽出物を含む薬剤は、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、粉末、微粒子化粉末、ゲル、液体で満たされた軟質ゲル、及びこれら形態の組み合わせとして製剤化されてもよい。技巧的なブラックカラント抽出物は、1000ミクロンを超える粒径を有する粗粉末であってもよい。かかる抽出物は水性環境下で可溶化することが困難であり得、それ故、上記抽出物の微粒子化形態は、可溶化がより容易であり、ひいてはより迅速且つより完全に摂取され、動物血流に移動することから、有用なことがある。
【0067】
上記の通り、用量は、治療有効量である。一実施形態では、治療有効量のブラックカラント抽出物は、1日あたりの用量が少なくとも50、100、又は150、又は200、又は250、又は300、又は350、又は400、又は450、又は500、又は550、又は600、又は650、又は700、又は750、又は800、又は850、又は900、又は950、又は1000mgのアントシアニンを動物に提供してもよい。用量は、動物に対して、1日あたり、50~1000mg、又は120~700mg、又は200~700mg、又は300~600mgのアントシアニンであってもよい。理解されるべきこととして、用いられる用量は、個別の動物代謝、動物種、動物体重、動物年齢及び他の要素などの要素に応じて変動してもよく、それ故、これらの用量は限定的に理解されるべきではない。
【0068】
ブラックカラント抽出物は、限定はされないが、アメリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、及びニュージーランド内を含む、国際的に育成された任意のブラックカラント品種に由来してもよい。
【0069】
ブラックカラント抽出物は、40°を上回る緯度の北半球及び/又は赤道から50°北の南半球において育成された果実に由来してもよい。
【0070】
一実施形態では、ブラックカラント植物は、クロスグリ(Ribes nigrum)種に由来してもよい。
【0071】
上記のブラックカラント抽出物は、果実、又は皮、ジュース、種子、茎、及びそれらの組み合わせから選択される果実部分を用いて作製されてもよい。一実施形態では、抽出物は、皮、ジュース、種子及び潜在的にはブラックカラント植物からの葉又は茎質を含む果実の解離及び酵素消化、その後の濃縮粉末(次に微粒子化されてもよい)を形成するための乾燥により、生成されてもよい。微粒子化粉末は、カプセル形態が所望される場合、任意選択的にはカプセル封入されるか、又はその他として最終形態まで加工されてもよい。別の実施形態では、ブラックカラント濃縮物及び/又は還元果汁は、cGPの供給源であってもよい。好ましくは、ブラックカラント濃縮物は、最大で65ブリックスの濃縮物であってもよい。本出願人は、65ブリックスより高い濃縮物の粘稠性が高すぎることを見出している。
【0072】
上記のブラックカラント抽出物は、ニュージーランドで育成された少なくとも1つのブラックカラント品種から収穫された果実から作製されてもよい。ニュージーランドで育成されたブラックカラントは、世界の他の地域で育成されたブラックカラントと比べて非定型な組成物を有し、通常よりも高いアントシアニンレベルを有することがあるという点でやや独特である。これは、暖かいが暖かすぎない夏(10~30℃の日内温度)と涼しいが涼しすぎない冬(-5~15℃の日内温度)といったニュージーランドの温帯気候;特にオゾン層がニュージーランドを低く覆う時期のブラックカラント果実熟成中での太陽/UV照射強度の増加;及びブラックカラントが育成される地方の「テロワール」に起因してもよい。ブラックカラントは、ニュージーランドの南島において育成されてもよい。
【0073】
しかし、これは本発明に対して想定される実施形態に対して限定的に理解されるべきではない。cGPの濃縮物を含有する、ベリーフルーツ、ナッツ、植物、低木などの有機又は植物ベースの材料の他のタイプ及び/又はそれらの組み合わせであれば、おそらくは本発明で用いることができる。さらに、これらの有機又は植物ベースの材料は、任意量又は最小量のアントシアニンを含有してもよい。非限定例として、クランベリー、ビートルート、ブラックエルダーベリー及びBHC複合体(ビルベリー及びセイヨウトチノキ)、紫人参、マツ樹皮、ビートルート、及び紫小麦を挙げてもよい。
【0074】
一実施形態では、ブラックカラント抽出物は、少なくとも1つの「Ben」ブラックカラ
ント品種から収穫された果実に由来してもよい。しかし、抽出物を形成するには、他のあらゆるブラックカラント品種が用いられてもよい。理解されているかもしれないが、品種の収量を混合することにより、アントシアニン量及びアントシアニン型が抽出物において変更及び/又は調整されてもよい。一実施形態では、ブラックカラント抽出物は、「Ben Ard」品種、「Ben Rua」品種、及びこれら品種の組み合わせ、又は他のブラックカラント品種に由来するブラックカラント植物から収穫された果実から作製されてもよい。
【0075】
上記のブラックカラント抽出物は、少なくとも10又は11又は12又は13又は14又は15又は16又は17又は18又は19、20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25、又は26、又は27、又は28、又は29、又は30、又は31、又は32、又は33、又は34、又は35%、最大では50重量%のアントシアニンを含んでもよい。
【0076】
ブラックカラント抽出物は、健康上の利益をもたらすため、少なくとも0.16ng/mgの濃度の環状グリシン-プロリン(cGP)及び/又は少なくとも所要量のcGPを含んでもよい。
【0077】
ブラックカラント抽出物は、アントシアニン:デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、ペツニジン-3-ルトニオシド(rutonioside)、及びそれらの組み合わせを含める
ことにより、さらに特徴づけられてもよい。これらの同じ化合物が、当該技術分野の文献中で、デルフィニジン-3-O-グルコシド、デルフィニジン-3-O-ルチノシド、シアニジン-3-O-グルコシド、シアニジン-3-O-ルチノシド、ペツニジン-3-O-ルトニオシド(「O」は、酸素原子によって連結されている配糖体を指す)と称されてもよいことに注目されたい。同じ化合物に対する別称として、化合物が偏光下で回転する方向を特定するための「D」命名法が用いられてもよく、例えばデルフィニジン3-O-β-D-グルコシドが挙げられる。「3」の形式のみを参照し、「O」又は「D」命名法を参照しないことは、本明細書の目的として限定的に理解されるべきではない。
【0078】
デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-グルコシド及びシアニジン-3-ルチノシドであるとして記されるアントシアニンの組み合わせは、抽出物中のアントシアニンの総量の重量を基準として、少なくとも80~90、又は91、又は92、又は93、又は94、又は95、又は96、又は97、又は98、又は99%を含んでもよい。すなわち、さらなるアントシアニンが存在してもよいが、主に用いられる抽出物は、上記のアントシアニンを含む。理論に拘束されない限り、これらのアントシアニンが、組み合わせで又は別々に、IGF-1の結合に対してインビボで観察される効果、ひいてはcGP濃度及び/又はcGPの総IGF-1に対する比において観察される増加に起因してもよいことが理解される。とはいえ、抽出物は、アントシアニン以外の他の化合物を含み、植物に由来していることから、これらの化合物に純粋に起因しない抽出物からの他の生理活性化合物又は相乗物質が存在してもよい。結果として
、これらの化合物を具体的に参照する場合、抽出物中に存在する可能性がある他の化合物の生理活性を排除することが意図されていない。
【0079】
1つの特定の実施形態では、抽出物は、以下のアントシアニン化合物を、すべてが測定されたとき、含んでもよく、標準のニュージーランドでのアントシアニン分析において、ブラックカラントからの非濃縮ジュース中で測定されるとき、
少なくとも60mg/100mlのデルフィニジン-3-グルコシド;及び/又は
少なくとも200mg/100mlのデルフィニジン-3-ルチノシド;及び/又は
少なくとも40mg/100mlのシアニジン-3-グルコシド;及び/又は
少なくとも240mg/100mlのシアニジン-3-ルチノシド;及び/又は
を含む。
【0080】
抽出物は、ブラックカラント果実から得られる非濃縮ジュース中で測定されるとき、少なくとも14mg/100mlのペツニジン-3-ルトニオシドをさらに含んでもよい。
【0081】
上記の利点は変動してもよい。バイオマーカーについては、上記のようなcGPは、IGF-1の安定な代謝産物であり、発明者の研究に基づき、動物から採取される生物学的検体中で容易に測定される。cGPは、IGF-1の非結合活性型から形成され、それ故、総IGF-1を測定するよりも信頼できる。cGPを増加させ、及び/又は神経学的状態に対処する上記の方法については、例えば測定可能で且つ公知の様式などでのブラックカラントの使用は、当該技術分野で公知でないか又は完成されていない。ブラックカラントジュース又はブラックカラントの他の形態(上記の抽出物でない)は、現時点で考えられる公知で且つ測定可能な様式で、また本明細書に記載のように用いられていない。脳卒中及びPDの知見は特に、潜在的には既存技術による治療に干渉することも又は望ましくない副作用を引き起こすこともなく患者に有意且つ測定可能な利益をもたらすことがある、ブラックカラントに対する新規な又は少なくとも代替的な使用を示す。しかし、発明者が、cGPのレベルを増加させるためにBCAを適用するとき、ビタミンCがアスコルビン酸としてBCAに添加される場合には有効性に対して負の効果を有することを見出していることは注目すべきである。
【0082】
cGPにおける変化を測定し、及び/又は神経学的状態に対処する上記方法については、環状グリシン-プロリン(cGP)の信頼できるバイオマーカーとしての臨床適用の利点は、治療及び個別の投与計画に適した患者の選択を可能にする。cGPの増加は、神経学的状態のリスクを示し、cGPの減少は、神経学的状態の段階を示す。有利なことに、治療に適した患者はそのcGPレベルに基づいて選択されてもよく、cGPレベルの変化は、調整及び個別化された治療投与計画において容易に監視されうる。BCAの投与計画を調節することにより、神経学的状態の効果的治療が可能になり、それ故、長期的回復(3か月超)及び神経学的状態に伴う長期合併症(認識機能障害)の予防が改善される。さらなる利点は、cGPレベルが分析を容易にするために尿サンプルを測定することにより容易に監視されうることであり、将来的なBCAの大規模臨床試験にとって重大な意義を持つ。
【0083】
さらに、一般に天然生成物及びそれに関連する生理活性化合物については、本明細書に記載の方法及び使用は、治療に介入することが適切であるときを認識するための特有の方法を提供し、治療の成功又はそれ以外を評価するための方法をさらに提供する。タイミング及び有効性に関するこの洞察は、時として多数の医薬品に望まれることであり、生理活性化合物を含有する天然生成物中に共通に認められるものではない。
【0084】
上記の実施形態はまた、広義では、個別に又は集合的に、本願の明細書中で参照又は指定される部分、要素及び特徴に、また任意の2以上の前記部分、要素又は特徴のいずれか
又はすべての組み合わせにあると述べられてもよい。
【0085】
さらに、具体的整数が、実施形態が関連する当該技術分野で公知の均等物を有するように本明細書で述べられる場合、かかる公知の均等物は、個別に示される時点から本明細書中に援用されるものとする。
【実施例0086】
研究実施例
非神経学的及び神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用に関する上記方法、並びにそれらを治療するためのブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物などのcGPを含有する有機又は植物ベースの材料の使用が、ここで具体的実施例の参照により説明される。
【0087】
実施例1
ブラックカラントアントシアニン(BCA)の添加により、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)の機能を改善するための栄養応答として、パーキンソン患者の脳脊髄液(CSF)中で環状グリシン-プロリン(cGP)が増加するか否かを知るため、発明者により試験を完了した。
【0088】
生物学的検体サンプルを患者から採取し、cGP及びcGPの総IGF-1に対する比について検体を分析し、cGP及びcGPの総IGF-1に対する比を活性IGF-1の存在及び機能の予測変数として用いてもよいか否かを確認した。次に、患者におけるcGPに対するブラックカラント抽出物添加の効果を分析するため、試験を続行した。
【0089】
すべての患者は、Van der Veer Movement Disorderクリニック及びニュージーランド脳研究所(New Zealand Brain Research Institute)の患者データベースからリクルートした。患者は、疾患のステージ及び診断からの期間と無関係に、試験への登録に適格であった。患者は、40歳以上であり、運動障害の神経学者によって確認された特発性PDにおける英国ブレインバンク診断基準を満たした。試験は、Upper South A Regional Ethics Committeeによって認可された(参照:URA/10/03/022)。試験集団のフロ
ーチャートは患者のリクルーティングを示す。患者は、Unified PD Rating Scale(UP
DRS)パートIIIを用いて評価し、さらに初回来診時にサンプルを得る前、一連の精神認知試験を実施した。これらは、HADS、ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination)(MMSE)、モントリオール認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MoCA)及びPD Questionnaire(PDQ-39)を含んだ。任意の学習効果を回避するため、2回目の来診については、利用可能であれば異なるバージョンの試験を用いた。表1は、試験前の患者の臨床情報及び評価を示す。患者の大部分が、明白な認識機能障害を伴わない特発性PDと診断された。
【0090】
【表1】
【0091】
試験方法は、ブラックカラント抽出物の添加前と28日後の双方で男性ボランティア7名から7対の脳脊髄液(CSF)サンプルを採取することを含んだ。
【0092】
各来診の間に、血漿及び脳脊髄液(CSF)サンプルを収集した。患者は、各来診の12時間前、「低アントシアニン食」(即ち、白米、白パン、ツナ、チキン、コーヒー及び非ハーブティー)を消費するように指示された。
【0093】
初回来診後、次の28日間にわたり、患者にブラックカラントカプセルを添加した。BCA濃縮カプセル(20%アントシアニン、Super Currantex(登録商標)20、Just the Berries Ltd. New Zealandによる資金提供(NZ Pharmaceuticals Limited製))の用量は、28日間にわたり1日2回服用された。各患者が服用する抽出物用量は、1日あたり約600mgのアントシアニンに相当した。抽出物は、ニュージーランドで育成されたBen
品種の果実から作製した。抽出物は、解離及び酵素消化により作製してから、乾燥して濃縮粉末を形成し、次に微粒子化し、カプセル封入する。
【0094】
上記の通り、ボランティアはパーキンソン病(PD)を有する人々であったが、IGF-1が神経栄養因子であり、神経生存及び(振戦などの症状が認められるようになるPD患者において障害された可能性がある)脳機能を維持することにおいて本質的な役割を担うことから、彼らは既にいくつかのIGF-1機能上の課題を有していたことになる。IGF-1の抵抗性は、循環IGF-1における増加によって特徴づけられてもよく、IGF-1機能の障害が、PD患者において認知減退を伴うことが報告されている。循環中のIGF-1は、貯蔵状態にあり、機能的でない。しかし、各IGF-1分子は、小さいcGP分子と、IGF-1が十分に機能的であることを可能にする、IGF-1の代謝産物とを含有する。cGPは、貯蔵状態のままで、且つ1対1の様式でのワーカーになることができる、IGF-1の数を決定するための門番のように作用する。したがって、cGPは、IGF-1の機能若しくは働きが十分でないとき、又は身体がより十分に働くIGF-1を求めるとき、患者の循環中で増加する。したがって、cGPは、IGF-1が全力で機能できるために重要であり、ひいてはIGF-1機能を改善することを通じて神経保護的である
【0095】
各サンプルを入手及び分析し、添加前及び添加後に採取した各サンプル中での総IGF-1、cGP及びIGF結合タンパク質1~3の濃度を測定した。サンプルは、ELISA及び高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)質量分析を用いて分析した。
【0096】
特記:
CSFサンプル
CSFサンプルを腰椎穿刺により得た。各来診中に約8mLのCSFを得た。平滑管内に収集したCSFサンプルは、収集から15分以内に、濡れた氷上でEndolab, Christchurch, New Zealandに輸送した。次に、サンプル受け取りから30分以内に、サンプルを室温、3000rpmで15分間遠心分離し、上清を2つの平滑管の間で等しくアリコートし、-80℃未満で凍結させた。
【0097】
血漿サンプル
血液サンプルを肘前窩の静脈穿刺を介して得て;20mLをヘパリン及びEDTA管の間で等しく分割した。サンプルは、収集から45分以内に、濡れた氷上でEndolabに直ち
に輸送した。次に、サンプル受け取りから30分以内に、サンプルを15分間遠心分離し(3000rpm)、血漿を平滑管内に吸引し、-80℃未満で凍結させた。
【0098】
インビトロサンプル
BCA中のcGPの存在可能性を分析するため、BCAを水に溶かし、5、50及び100mg/mlの3つの異なる濃度を得た。各濃度は5通りに分析している。
【0099】
下記は、cGPアッセイ及びHPLC-msにおける、BCA及び他の有機又は植物ベースの材料中でのcGPのレベルを測定する方法である。
【0100】
cGPアッセイ
cGPアッセイにおける内部標準として提供されるcGP-d。cGP-d(500ng/mLの50μL)を血漿100μLに添加し、ボルテックス混合した。溶液を、4.5mLの管内に含まれる1mLのPhreeリン脂質除去カートリッジ(Phenomenex, Auckland, New Zealand)に移し;アセトニトリル(MeCN)中の1%ギ酸500μLをカートリッジに添加し、4℃、1000rpmで5分間遠心分離し、濾液を収集することができた。真空濃縮器を用いて濾液を乾燥させた(1.5mTorで1時間、次に0.7mTorで45分間、室温)。乾燥したサンプルを100μLの10%メタノール/水で再構成し、定量のために超高圧液体クロマトグラフィーバイアルに移し、次に4℃、500rpmで5分間遠心分離し、任意の残存する微粒子を沈降させた。cGPを木炭除去ヒト血漿に添加することによって調製した標準である品質管理サンプルを、2つの異なる濃度のcGPとともに利用し、次にサンプルと同じ抽出手順を施した。
【0101】
高性能液体クロマトグラフィー質量分析アッセイ(HPLC-ms)
手短に言うと、クロマトグラフィー条件は、35℃のカラム温度で10%メタノール/90%水の初期移動相組成物が200μL/分で流れる、Synergy Hydroの2.5μmカ
ラム(Phenomenex)(100×2mm)から構成した。質量分析条件は、4000Vの電圧、30psiのシースガスフロー、2psiの補助ガスフロー、及び250℃のキャピラリー温度で正モードのエレクトロスプレーイオン化から構成した。断片化は、衝突ガスとしての1.2mTorrのアルゴン及び35Vの解離電圧を用いて行った。質量分析計は、cGP及びcGP-d各々に対して155.1→70.2m/z及び157.1→70.2m/zといった2つのトランジションを利用して、選択的反応モニタリング(SRM)モードで稼動させた。両ピークに対する保持時間は3.6分であった。未知のサンプルは、既知濃度の検量線と比べてのcGP/cGP-dのピーク面積比を用いて定量化した。
【0102】
ELISA
総IGF-1、IGFBP-1、-2及び-3の血漿及びCSF濃度は、市販のELISAキット(Crystal Chem, Chicago, IL, USA)を用い、製造業者の使用説明書に従って測定した。アッセイは、血漿サンプル中で4回繰り返したが、利用可能なCSF量が限られたため、CSFサンプル中では繰り返さなかった。
【0103】
統計分析
ブラックカラント添加後、cGP、IGF-1、IGFBP-1、IGFBP-2及びIGFBP-3における変化を分析するため、対応t検定を用いた。生物学的変化間の相関は、ピアソン検定を用いて計算した。0.05未満のP値を有意であるとみなす。
【0104】
結果
BCA中のcGP濃度のインビトロ分析
一元配置分散分析によると、cGPの濃度がBCAの異なる用量間で有意に異なることが示唆された(p<0.0001、n=5、図1)。cGPの濃度は、50mg/mlのBCAを用いる群において、低いBCA(5mg/ml)を用いる群と比べて有意に増加し(p=0.0001、n=5)、BCA用量が100mg/mlまで増加したとき、さらに増加した(p<0.0001、n=5)。
【0105】
CSF
CSFのcGP濃度は、BCAの添加後、有意に増加した(7.27±0.67から12.12±0.94へ、p<0.001、n=6、図2A)。cGP濃度における平均百分率変化は、添加後、74.36%増加した(p<0.05、t(5)=3.989。全部で7対のサンプルの中で、添加後、それらの6つが増加を示した。患者1名が、CSF中で16.9倍のcGPの増加を示し(11.30ng/mlから191.80ng/mlへ)、それは異常値(平均の15.7倍)として統計分析から排除している。患者1名が添加に応答せず、添加後のcGP濃度は一定を維持した(8.8~8.7ng/ml、図2D)。IGF-1、cGP/IGF-1比(図2B及びC)、IGFBP-2及びIGFBP-3の濃度における変化はなかった(表2)。
【0106】
血漿
BCAの添加後、cGP、IGF-1、cGP/IGF-1比(図3A~C)、IGFBP-1、2及び-3の濃度における統計学的変化はなかった(表2)。
【0107】
CSF対血漿濃度
表2は、添加前及び添加後のCSF及び血漿中でのcGP、IGF-1及びIGFBPにおける値を示す。IGFBP-1の濃度は、血漿中で低かった。IGFBP-3(3038~3029ng/mL)は、血漿中の主要なIGFBPであり、IGFBP-2(83.7~85.5ng/mL)は、CSF中の主要なIGFBPであった。CSF/血漿比は、IGF-1及びIGFBP-3双方において<1%であり;IGFBP-2において1.3~2%であり、またcGPにおいて52~71%であった(表2)。
【0108】
相関分析
ピアソン検定によると、CSF中のcGP濃度と血漿中のcGP濃度との間に有意な相関(R=0.68、p=0.01、図4A、n=12)、並びに血漿中のcGP/IGF-1の比とCSF中のcGP濃度との間に有意な相関(R=0.66、p=0.01、図4E、n=12)が示された。IGF-1濃度においてCSFと血漿との間に相関がなく(R=0.09、p=0.75、図4B)、且つCSFと血漿の双方におけるcGP濃度とIGF-1濃度との間に相関がなかった(R=0.04、p=0.85、図4D、R=
-0.12、p=0.69、図4C)。
【0109】
下の表2にまとめた結果は、添加前及び添加後の測定データを示す。
【0110】
【表2】
【0111】
考察
先に見出されているように、BCAは、天然栄養素であるcGPを含む。BCAの添加により、PD患者のCSF中でIGF-1ではなくcGPの増加がもたらされた。CSF中のcGP濃度は、血漿中のcGP濃度及びcGP/IGF-1の比と、血漿中での変化が有意でなかったとしても相関した。血漿からの中枢取り込みは、おそらくは血液脳関門(BBB)の機能に起因して、cGPにおいて高く、IGF-1及びIGFBPにおいて低かった。CSF中でのcGPの増加は、BCAの添加に対する栄養応答であってもよい。血漿cGPの非統計学的変化がその原因である可能性が高かった。その機構の解明により、BCAがIGF-1機能を正常化するための介入であってもよいことのさらなる科学的証拠が得られることになる。
【0112】
cGPは、BBを通過する能力を有する小さい親油性分子(192d)である。血漿cGPの約52%は、添加前、CSF中で見出され、添加後、71%に増加し(表2)、cGPのCSF濃度と血漿濃度との間に有意な相関が得られた(図3A)。したがって、たとえ添加による血漿中のcGP濃度の増加が有意でなかったとしても、血漿cGPは、CSF cGPの増加のための供給源であった可能性が高い。CSF中のcGPとIGF-1との間に相関はなく(図3C)、ここでは、CSF cGPの小部分が中枢神経系(CNS)におけるIGF-1から形成し、それがCNSにおいてIGF-1を切断する酵素も生じるためであるという可能性を除外しなくてもよい。
【0113】
cGPと対照的に、CSF中のIGF-1の濃度は、血漿IGF-1の約1%であり(表2)、それらの間に相関はなかった(図3B)。これらの観察結果は、CSF IGF-1が主に循環IGF-1と独立していたことを示唆する。IGF-1は、BBBを通過する能力が限られた、cGPよりも大きい分子(7600d)である。データは、cGPの中枢取り込みが高く、IGF-1が低く、それはサンプリングされたPD患者におけるBBBの維持された機能に起因することを示した。理論に拘束されない限り、変性する脳からの栄養的支持への要求により、cGPの血漿からCSFへの移行が促進されたという
可能性がある。したがって、アントシアニンの添加後のCSF cGPのさらなる増加は、IGF-1機能を改善するためのBCA処置に対する栄養応答であってもよい。cGPがBCAの天然栄養素であるならば、BCAの有益な効果は、生体利用可能なIGF-1、ひいてはその機能を改善することを通じて媒介されてもよい。CSF cGPの変化は有意であったが、より多数の症例を用いたさらなる臨床試験により、BCAの添加の有効性、特に血漿中でのcGPの変化が確認されることになる。
【0114】
結論
結論として、cGPはBCAの栄養素であり、BCAの添加により、PD患者のCSF中でのcGPの上昇がもたらされ、PDの脳におけるIGF-1機能が改善される。例えば、BCAの添加により、図2Aに示す通り、添加後のcGPのCSF濃度が有意に増加した(p<0.001,n=7)。cGP/IGF-1の比もまた、図2Cに示す通り、有意に変化した。
【0115】
CSF中でのcGPの増加は、血漿cGPの高い中枢取り込みの結果である可能性が高かった。IGF-1の中枢取り込みは、PD患者における保持されたBBB機能に起因して制限された。血漿中のcGP及びcGP/IGF-1比の変化は、変性脳におけるIGF-1機能についてのさらなる指標を提供し得、大規模臨床試験においてさらに評価されることになる。
【0116】
対照的に、添加により、CSF(図2B)サンプル中のIGF-1の濃度が有意に変化せず、IGF-1又は結合IGF-1の測定が、IGF-1機能の区別(活性型又は結合型)ができず、故にIGF-1活性の尺度として確実には利用できないことから、不良なバイオマーカーであるという事実が再現された。
【0117】
実施例2
本実施例において、バイオマーカーとしてcGPを用いる能力についてさらに評価した。試験のため、全部で29名をリクルートし、患者は70歳超又は70歳未満のいずれかであり、全員が正常な認知機能を有した。生物学的検体を血漿の形態で患者から採取した。血漿中のIGF-1及びIGFBP-3の濃度をELISAにより測定し、血漿cGPを高性能液体クロマトグラフィー質量分析アッセイにより測定した。
【0118】
結果は、図5A、5B及び5Cに示す通りであった。
【0119】
図5Aは、総血漿IGF-1の測定濃度が年齢とともにいかに減少する傾向があるかを図示するが、測定された総IGF-1における差異は比較的小さかった。
【0120】
対照的に、図5Bは、cGP血漿濃度が年齢とともにいかに変化するかを示し、その変化は明白であり、測定が容易である。図5Cは、測定されたcGPの総IGF-1に対する比もまた、年齢とともにいかに有意に変化するかをさらに示す。
【0121】
理論に拘束されない限り、cGP及びcGP/IGF-1比における観察された増加が、年配者において正常な認知を維持するための、血漿IGF-1の減少に対する代償性応答であることが推測される。
【0122】
実施例3
本実施例において、個別の治療レジームとしての脳卒中のリスク及び回復を予測するためのcGPバイオマーカーの臨床適用を試験するため、初期試験を完了した。
【0123】
(完了した最新試験は、本明細書で実施例8にて最新のデータ及び図面とともに説明さ
れ、ここで試験中に脳卒中後に入院して48時間未満の患者が十分でなかったことから、ベースライン測定値は72時間に修正したことに注目されたし。また、このデータとしてもはや利用されないmRSのベースラインデータは、脳卒中後3日未満の信頼できるものでなかったことから、NIHSSと交換している)
【0124】
IGF-1機能が脳卒中の回復にとって重要であることが理解されている。結果として、脳卒中におけるIGF-1機能にとって信頼できるバイオマーカーが、脳卒中の予後にとって有用なことがある。しかし、本明細書の他の箇所に記される通り、血漿IGF-1又はIGF-1/IGF結合タンパク質-3(IGFBP-3)比は、信頼できるバイオマーカーでない。cGPは、脳卒中患者の自発的回復中でのIGF-1機能にとっての有望なバイオマーカーとして試験した。
【0125】
脳卒中患者14名から、脳卒中発症からのベースライン時(<48時間)、1週後及び3か月後、血漿サンプルを収集した。さらに、試験における陰性対照として作用するように、年齢適合健常者から29の血漿サンプルを収集した。
【0126】
ベースラインと3か月との間での修正ランキンスケール(modified Rankin Scale)(
mRS)における差異(ΔmRS)を用いて、脳卒中後の機能的回復を評価した。血漿サンプル中のIGF-1及びIGFBP-3の濃度をELISAにより測定し、血漿cGPを高性能液体クロマトグラフィー質量分析アッセイにより測定した。
【0127】
結果によると、血漿IGF-1における無変化が示され、この結果は、バイオマーカーとしてのIGF-1の不良な性質をさらに再現している(図6A)。対照的に、脳卒中患者は、健常患者対照と比べて、有意により低いcGPレベル(p=0.006、図6C)及びc-GP/IGF-1比(p=0.001.図6D)を有した。
【0128】
脳卒中患者におけるIGFBP-3は、やや低下した(p=0.049、図6B)。IGFBP-3の低下の場合、遊離IGF-1を増加させるような陽性応答でありうる。
【0129】
したがって、cGP及びIGF-1に対するその比における変化は、脳卒中回復中のIGF-1機能に対する感受性がIGF-1測定単独に対する信頼性よりも高いようなバイオマーカーである。
【0130】
興味深いことに、脳卒中発症から48時間以内にcGP濃度が有意に減少した。この急激な減少が脳卒中の直接的な結果又は原因であるか否かは不確かであるが、これは観察可能な特徴であり、おそらくは異常な機能の指標であると思われる。
【0131】
図7A~7Eに図示されるような(更新された図14も参照)経時的に取得した結果によると、脳卒中患者が、3か月にわたり、mRS(ここでは表7に示すような最新のNIHSSに相当)の減少を示すことにより徐々に回復する(図7A)ことが示された。脳卒中患者において、3か月後、ベースラインレベル(<脳卒中後48時間)と比べて、cGPの増加(p=0.057、n=14)及びc-GP/IGF-1の増加(p=0.08、n=14、図7B及び図7E)への傾向が認められた。
【0132】
ベースラインcGPは、ベースラインと3か月との間での神経学的スコアにおける差異により評価される回復に負に関連した(ΔmRS、r=-0.651、p=0.022、図7F)。
【0133】
発明者の結果は、ベースラインcGPが脳卒中回復の短期転帰を予測することを示唆する。ベースラインcGPが高まると、患者における予後がより陽性になる。その結果はま
た、脳卒中回復の期間にわたってIGF-1及びIGFBP-3における変化がなかったことから、cGP及びcGP/IGF-1比の変化が、IGF-1及びIGF-1/IGFBP-3比よりも信頼できるバイオマーカーであってもよいという初期の知見をさらに支持する。
【0134】
cGPにおける増加は、脳卒中回復を促進するための栄養応答であると理解される。cGP及びcGP/IGF-1比の増加と同様、脳卒中回復中のcGPの増加もまた、脳卒中回復を促進するための栄養応答であると理解される。これらの知見は、回復がcGPと相関してもよく、cGPの添加が回復を補助することがあることを示す。さらに、脳卒中から48時間後のcGP濃度が、脳卒中患者における神経学的機能の回復と有意に相関することから(図7F)、これは、入院時のcGP濃度が回復の能力、ひいては治療向けの決定的情報を予測することを示唆する。これはまた、cGPレベルを増加させるための添加が、脳卒中からの短期回復をも補助することを示唆するであろう。
【0135】
実施例4
上記試験では、尿であっても有用な生物学的検体となるか否かを試験するため、試験に登録した患者から尿サンプルも採取した。試験中、全部で71の尿サンプルを採取し(対照30名、脳卒中患者33名)、これらのサンプルを上記方法と同様の様式で分析した。相関が存在することを確認するため、より早期の試験から脳卒中患者及び高齢対照におけるさらなる37の血漿サンプルも比較した。
【0136】
図8A及び図8Bは、尿分析から収集したデータを示す。血漿cGPは、脳卒中患者において、ベースライン(<脳卒中後48時間、p<0.01、n=9、図8A)時、正常対照(n=30)よりも有意に低下する。年齢適合対照と脳卒中との間での尿中のcGPの差異は、血漿サンプルにおいて認められた場合と類似する(図8A)。想定の通り、ベースラインと比べての、後の時点における尿cGPの増加への傾向が認められ、時点測定値における尿と血漿の間での差異もまた有意でなかった(図5B)。
【0137】
尿中cGP濃度は、血漿cGP濃度(r=0.59、p<0.01、図5C)及びcGP/IGF-1比(r=0.63、p<0.001、図8D)と有意な相関を有した。高齢者と若年者との間での尿サンプル中で、同様の結果が認められた(図9)。結果は、尿及び血漿を生物学的検体として用いてもよいことを示す。
【0138】
図10A及び図10Bは、尿中(図10B)でなく血漿中(図10A)のベースラインcGPの変化が回復に関連したことを示す(ΔmRS:mRSベース-3か月)(r=-0.630、p=0.003、図10A、10B)。
【0139】
それ故、尿中でのcGPの変化は、血漿中でのcGPの変化を表しうる。
【0140】
実施例5
当該技術では、ブラックカラントの様々な遺伝子型から、アントシアニン含量がブラックカラントジュース100mlあたり80~700mgであることが示唆される。ニュージーランドで育成されたブラックカラントがより高レベルのアントシアニンを有し、且つBen品種が選択された潜在的に生理活性のあるアントシアニンを潜在的により高濃度で有
することが理解される。任意の抽出及び濃縮に先立ち、ブラックカラントジュース中の選択されたアントシアニンの量の存在を確認するため、さらなるニュージーランドで育成された品種Blackadderに対するブラックカラントの2つのBen品種を比較する試験が終了し
た。
【0141】
下の表3はその結果を示す。
【0142】
【表3】
【0143】
上から理解できるように、Ben品種は、高い総アントシアニン含量と、Blackadderのよ
うな他のニュージーランドで育成された品種にとっても変化するアントシアニン特性とを有する。3つ全部のニュージーランド品種に対して上で測定された総レベルは、当該技術分野で記録された場合よりも十分高く、ニュージーランドで育成されたブラックカラントが他の場所で育成されたものと異なるという見解が支持される。さらに、例えば上記のBen品種を混合することにより、上記のBlackadderのようなニュージーランドで育成された
非Ben品種とであっても特性が大きく異なるようなアントシアニンの混合が可能な場合が
あることは注目されるべきである。
【0144】
実施例6
cGPの濃度を含む4つの異なる濃度(1、5、25及び100mg/水)でのベリーフルーツ(ブラックカラント、クランベリー、ビートルート、ブラックエルダーベリー及びBHC複合体(ビルベリー+セイヨウトチノキ))の選択についての分析からの結果を図11に示す。
【0145】
結果は、30ng/mgのブラックカラント中のcGPの濃度が、Vitalityから供給された先のブラックカラントサンプルよりも高いことを示す。これは、加工方法における可変性に起因することがあり、さらなる検討を要する。Diaion HP20でコーティングされた
樹脂ビーズを利用するクロマトグラフィーカラムを通じて処理されたこのBCAサンプルが、溶媒抽出プロセスを用いて抽出した先のBCAサンプルよりも3倍高いcGP濃度を有することは発明者によって注目されている。
【0146】
BHC複合体のcGP濃度は80ng/mgであり、ブラックエルダーベリー及びクランベリー中にcGPの画分が存在するが、より高濃度でのさらなる試験が必要であり得る。
【0147】
ブラックカラント及びビートルート以外では、他の3つのサンプルが100mgの濃度にて完全には溶解されなかったことも注目されている。
【0148】
図12は、陽性対照としてのBCAの用量範囲内で、追加的分析として供給したサンプルからのデータを示す。cGP濃度は、100mgのBCA(対照)中で27ng、100mgのビルベリー中で46.7ng、また100mg(10ng/mg)の新規に配合されたBCA中で100ngである。
【0149】
これらの結果は、クロマトグラフィーカラムを通じて処理されたBCAが、エタノール
溶媒抽出プロセスのみを用いて抽出されたBCAと比べて、より高いcGP濃度を有することをさらに示唆する。さらに、ビルベリー単独は、ビルベリーとセイヨウトチノキとの複合体よりも低いcCP濃度を有する。
【0150】
図13は、Vitalityによって提供された製品サンプルの、それらのcGP濃度を測定するためのさらなる分析からの結果を示す。Vitalityによって提供された製品サンプル(BC抽出物China-47、NZBCジュース濃縮物(T180212及びT180115)、アレパ抽出物、Enzogenol、タルトチェリー、紫小麦、紫人参及びビートルートというラベル)
の4つの異なる濃度(1、5、25及び100mg/水)における分析からの結果。上で30ng/mgを用いて試験された最初のVitalityのBCAサンプルを陽性対照として用いた。
【0151】
結果は、次のことを示す。
・ブラックカラントをアッセイ用の陽性対照として使用。cGPの濃度は29ng/mgであり、30ng/mgであった上記分析からの濃度に一致する。
・製品のcGP濃度は、次の通りである。
・タルトチェリーは、cGPの最高濃度(135ng/mg)を有し、陽性対照として用いたVitalityのBCA抽出物よりも4倍高い;
・NZBCジュース濃度(212)は53ng/mgである;
・NZBCジュース濃度(115)は61ng/mgである;
・紫人参は57ng/mgを含有する;
・Enzogenolは、VitalityのBCAに類似したcGP濃度(36ng/mg)を有する

・BC抽出物China-47は22ng/mgである;
・ビートルートは、VitalityのBCAと比べてcGPの半量(14ng/mg)を有する;
・アレパ抽出物は非常に低いcGP(4ng/mg)を有する;及び
・紫小麦は、この分析におけるcGPを有するように思われない
【0152】
上の製品サンプルが上で示す結果から増加したcGP濃度を有してもよく、さらに(これらの結果において示さないが)紫小麦がcGPを含有してもよいことは注目されるべきである。上記の通り、有機物質から抽出したcGP濃縮物(又はその存在)は、加工方法における可変性に起因することがあり、さらなる検討を要する。例えば、Diaion HP20樹
脂ビーズを利用するクロマトグラフィーカラムを通じて最初に処理された有機物質が、エタノール溶媒抽出プロセス単独を用いて抽出した先のBCAサンプルよりも3倍高いcGP濃度を有することは発明者によって注目されている。しかし、類似のcGP抽出能力を有する他の樹脂ビーズを利用してもよいことは理解されるべきである。さらに、cGP濃縮抽出プロセスは、アッセイ中、有機物質が水に溶解されうるか否か、及びcGPを含有する画分がクロマトグラフィーカラム内で正確に捕捉され、同定されているか否か、などの他の要素に依存してもよい。
【0153】
実施例7
本実施例において、試験は、レット症候群(RTT)と遺伝子診断された6歳少女の、IGF-1、メラトニン(MT)、ブラックカラント抽出物(BCA)、及びリハビリテーションで6か月間処置されてからの良好な進化を説明する。患者は、1歳時から正常な発達を停止した。
【0154】
患者は、低い体重及び身長を示し、典型的なRTTとしての主な診断基準を満たした。奇妙なことに、ゴナドトロピンが低いにもかかわらず、陰毛(タナーII)での非常に高い血漿テストステロンが認められた。副腎酵素欠損が不在であり、腹部超音波検査は正常
であった。
【0155】
治療の中身は、3か月間のIGF-1(0.04mg/kg/日、5/週、皮下)、次いで15日間の安静、MT(50mg/日、経口的、継続的)及び神経リハビリテーションであった。
【0156】
新鮮血液検査は絶対的に正常であり、陰毛が消失した。次いで、IGF-1、MT、及びBCAを用いた新しい治療がさらに3か月間開始した。その後、パブリックなタナー段階が、原因不明な条件下でIIIに上昇した。
【0157】
後続治療により、表4及び5に示す通り、初期機能障害の大部分における明確な改善がもたらされた。
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
上記の結果は、IGF-1による治療の効果、MT及びBCの抗酸化剤効果、並びにBCA投与後の環状グリシン-プロリン(cGP)における増加が、レット症候群を有する少女に内在する神経障害を改善するために有用であることを支持する。例えば、有意な所見が、治療の結果として歯ぎしりが消失したことである。ブラックカラントの抽出物がcGPのレベルを上昇させることから、IGF-1の分裂促進能が相殺されうることで、こ
のホルモンによる治療がより長期に延長されうる。
【0161】
IGF-1、MT及びBCによる継続治療により、進行中の試験に伴い、RTTにおいて生じる神経障害の大部分が回復し得る。
【0162】
結果はまた、(IGF-1及びMTに加えて)cGPとの組み合わせ治療後、レット症候群が改善し、他の疾患/症候群の治療を意図した物質/ホルモンの他の組み合わせとともに、cGPを用いてもよいことを示す。
【0163】
実施例8
本実施例において、脳卒中後3日以内の環状グリシン-プロリン(cGP)の血漿濃度と、いかに血漿cGPが短期的な脳卒中回復を予測することがあるかを評価するため、実施例3に対するさらなる更新試験を完了した。
【0164】
脳卒中患者は機能が回復する。この自己回復過程は、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)の機能を促進することに関連する。IGF-1機能を表すバイオマーカーは、脳卒中患者における回復を予測し、臨床管理を導くことを補助することがある。血漿IGF-1は、すべてが生体利用可能ではない。IGF結合タンパク質(IGFBP)-3及び環状グリシン-プロリン(cGP)は、IGF-1のバイオアベイラビリティを集合的に調節する。血漿IGF-1、IGFBP-3及びcGP濃度を、IGF-1機能に対するバイオマーカーとして、並びに脳卒中患者における臨床成績及び回復とのそれらの関連として評価した。
【0165】
方法
年齢適合対照対象50名(女性/男性が35名/15名)及び脳卒中を有する者34名(女性/男性が15名/19名)を脳卒中の3日以内にリクルートした。臨床的評価は、ベースライン(<3日)時、次いで7日目及び90日目のNIH脳卒中スケール(National Institutes of Health Stroke Scale)(NIHSS)、並びに7日目及び90日目の修正ランキンスケール(modified Rankin Scale)(mRS)及びFugl-Meyer Upper Limb
Assessmentスケール(FM)を含んだ。
【0166】
ベースライン時に脳卒中患者34名から、7日目に患者21名から、及び90日目に患者26名から、血漿サンプルを収集した。
【0167】
患者28名がフォローアップを完了していた。彼らの中で、患者21名が7日目に血漿サンプルを提供し、患者26名が90日目に血漿サンプルを提供した。したがって、全部で患者21名が臨床スコアを完了しており、すべての時間間隔で血漿サンプルを提供した。患者28名がベースライン時に血漿サンプルを提供し、90日目に臨床的評価を受けた。脳卒中の病歴を有しない年齢適合対照参加者50名(女性が35名)もリクルートし、全員が血漿サンプルを提供した(表6及び7)。
【0168】
【表6】
【0169】
【表7】
【0170】
IGF-1、IGFBP-3又はcGPの濃度は、前述の通り、ELISA又は高性能液体クロマトグラフィー質量分析を用いて測定した。
【0171】
結果
対照参加者は、有意な神経障害(NIHSS中央値(範囲):0(0-2))も全身体障害(global disability)(mRS中央値(範囲)0(0-1))も有しておらず、正
常な上肢機能(FM中央値(範囲):66(65-66))を有した。脳卒中患者では、経時的に脳卒中重症度(NIHSS)及び身体障害(mRS)が低下し、上肢機能(FM)が改善した。例えば、NIHSSスコアは経時的に改善した(F(2,20)=27.48、p<.001、n=21、図14A)。ベースラインと比べて、NIHSSスコアは、7日(中央値:2対4、p=0.01)及び90日(中央値:1対4、p<0.001)までに低下した。FMスコアが改善したように(中央値:64対65、p=0.001、n=21、図14C)、mRSスコアも改善した(中央値:3対2、p=0.003、n=21、図14)。
【0172】
IGFBP-3、cGP及びcGP/IGF-1モル比のベースライン濃度は、脳卒中患者において、対照対象よりも低かった。特に、対照群と比べて、IGFBP-3濃度(p=0.002、図15B)、cGP濃度(p=0.047、図15C)及びcGP/IGF-1モル比(p=0.043、図15D)は、ベースライン時、脳卒中群においてより低かった。IGF-1濃度(図15A)においては、対照群と脳卒中群との間での差異は認められなかった。ベースライン時のIGF-1/IGFBP-3比は、脳卒中群において、対照群の場合よりも高かった。
【0173】
血漿cGP及びcGP/IGF-1モル比は、IGF-1及びIGFBP-3と異なり、経時的に増加した。ベースラインcGP/IGF-1モル比は、ベースラインから90日目にかけて、NIHSSスコアにおける変化と相関した。特に、分散分析反復分析によると、脳卒中後、経時的に、cGP濃度(F(2,20)=5.345、p=0.01、n=21、図16C)及びcGP/IGF-1モル比(F(2,20)=3.946、p=0.029、n=21、図164D)における有意な増加が示された。ベースラインと比べて、cGPの濃度(p=0.014)及びcGP/IGF-1比(p=0.031)が、90日目までに有意に増加した。IGF-1、IGFBP-3の濃度及びIGF-1/IGFBP-3モル比は、経時的に安定なままであった(図16A、B)。
【0174】
考察
この試験は、脳卒中発症後、短期的に(<3日)、cGP、IGFBP-3の血漿濃度及びcGP/IGF-1比が減少することを示しており、IGF-1の自己分泌調節の障害を示唆している。次の90日にわたり、脳卒中患者は、神経学的機能及び全身体障害における改善を示した。これは血漿cGP及びcGP/IGF-1比の漸増と並行している。ベースライン時により高いcGP/IGF-1比を有する患者は、脳卒中後90日目、神経学的機能におけるより良好な回復を来した。これらの結果は、脳卒中回復におけるIGF-1の自己分泌調節の役割を示唆してもよい。cGP/IGF-1比における急激な変化は、脳卒中回復を予測するための有望なバイオマーカーであってもよい。
【0175】
血漿中の生体利用可能なIGF-1の量は、IGFBP-3及びcGPにより集合的に調節される。IGFBP-3の減少及びcGPの増加により、生体利用可能なIGFが増加しうる。年齢適合対照と比べて、IGFBP-3及びcGPの濃度は、ベースライン時、脳卒中患者において低下した。高血圧女性もまた、正常血圧女性と比べて、血漿IGFBP-3及びcGPの減少を示しており、心血管機能への関与を示唆している。脳卒中及び高血圧患者における血漿IGFBP-3の減少は、生体利用可能なIGF-1を改善するための自己分泌応答である。血漿cGPの減少は、自己分泌調節の障害を示唆する。その結論はまた、cGPの投与により、ラットにおける虚血性脳障害が予防され、高血圧ラットにおける全身血圧が正常化するという観察結果によって支持される。血管保護におけるcGPの機能は、インビボ及びインビトロ試験の双方により説明されている。有意でないが、上記試験における脳卒中患者のほぼ半数及び対照参加者のわずか1/4が高血圧であった。高血圧症は、脳卒中の主要なリスク因子であり、IGF-1の自己分泌調節の障害は、高血圧症及び脳卒中によって共有される病態生理であってもよい。
【0176】
cGPは、血液脳関門(BBB)を通過する能力を有する安定な小さい親油性環状ペプチドである。脳脊髄液(CSF)中のcGPの内因性濃度は、パーキンソン病患者の血漿中の場合の約50%である。cGP類似体の中枢取り込みは、ラットにおいて低酸素性-虚血性脳損傷後の最初の2時間で、>100%まで増強される。したがって、我々は、脳損傷が血漿からのcGPの中枢取り込みを促進し、それ故、脳卒中の急性期の間、血漿cGPレベルを低下させたという可能性を排除することができなかった。
【0177】
この試験における大部分の患者が、90日の追跡期間中、神経学的機能及び脳卒中の転帰における改善によって示される通り、経時的に部分的回復を来した。これらの臨床的改善は、経時的にcGP濃度及びcGP/IGF-1比の増加と並行していた。血漿IGF-1のバイオアベイラビリティの改善は、機能的回復に寄与することがある。ベースラインNIHSS及び年齢は、脳卒中回復に影響を及ぼす決定的要因である。それは、生物学的変化とこれらの交絡要因の可能性を伴う臨床成績との間の真の関係性を分析するために不可欠である。年齢及びベースラインNIHSSスコアの調節との相関分析により、ベースライン時にcGP/IGF-1モル比の増加を伴う患者が、脳卒中の90日目に神経障害の低減を有し、脳卒中から90日後に神経学的機能におけるより良好な回復を来すことが示された。
【0178】
対照群と比べて、脳卒中から3日後の患者において、血漿IGF-1濃度の減少又は増加のいずれかが報告されている。血漿IGF-1濃度における変化は、死亡率のみを予測するが、脳卒中患者の機能的回復は予測しない。この試験からの発明者の観察では、90日の追跡期間中、IGF-1濃度における変化は全く不明であった。この証拠は、血漿濃度IGF-1における変化がIGF-1機能における信頼できる尺度でないという示唆を支持する。
【0179】
これらの有望な結果は、血漿中のcGPに関連する変化がIGF-1機能に対する感受性バイオマーカーであることを示唆する。
【0180】
結論
低いcGP濃度及びcGP/IGF-1比は、脳卒中におけるIGF-1の自己分泌調節の障害を示唆する。cGP濃度及びcGP/IGF-1比の増加は、3か月後の臨床的回復に関連してもよい。入院時のcGP/IGF-1比は、より大規模な試験においてさらに確認される場合、脳卒中患者における回復を予測するためのバイオマーカーであってもよい。さらに、高血圧患者におけるcGP濃度の漸減もまた、脳卒中リスクに対するバイオマーカーであってもよい。
【0181】
非神経学的及び/又は神経学的状態のリスク及び回復を予測するための環状グリシン-プロリン(cGP)バイオマーカーの臨床適用、並びにそれらを治療するためのブラックカラントアントシアニン(BCA)/cGPを含有する有機又は植物ベースの材料の濃縮抽出物の使用に関する方法の態様は、あくまで例として説明されており、本明細書中の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、それらに対して修飾及び添加が実施されてもよいと理解されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるIGF-1機能障害に関連した非神経学的及び/又は神経学的状態を治療する方法であって、
a)前記動物から生物学的検体を得るステップと;
b)前記生物学的検体中での活性濃度依存性のインスリン様増殖因子1(IGF-1)のバイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとしての環状グリシン-プロリン(cGP)の濃度を測定するステップと;
c)前記生物学的検体中の前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比のいずれかを標準と比較することで、結果の連続体の中で、前記測定されたcGP濃度及び/又はcGP濃度のIGF-1総測定量に対する比が、前記個体のIGF-1機能を評価するための相対標準に一致するか否かを確認するステップと;
d)ブラックカラントアントシアニン(BCA)の濃縮抽出物を治療有効量で前記動物に投与し、
動物におけるcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比における減少を阻止し;及び/又は
動物における既存のcGPの濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を維持し;及び/又は
動物におけるcGPの前記濃度及び/又はcGPのIGF-1総測定量に対する比を増加させるステップと、
を含む、方法。
【外国語明細書】