(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122901
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】風味油脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240902BHJP
A23D 9/04 20060101ALI20240902BHJP
A23G 1/38 20060101ALI20240902BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20240902BHJP
A21D 2/16 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23D9/04
A23G1/38
A23G9/32
A21D2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024718
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2023029381
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾森 仁美
(72)【発明者】
【氏名】都倉 資弘
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB05
4B014GB18
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GL10
4B026DC01
4B026DL02
4B026DL03
4B026DP03
4B026DP10
4B026DX02
4B032DB21
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK34
4B032DK47
(57)【要約】
【課題】
本発明は、風味付けされた新規の油脂、特にカカオ含有飲食品用として好ましく使用できる風味油脂を提供することを課題とする。
【解決手段】
ポリフェノール素材を油脂に配合し、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去して得られた風味油脂が、カカオ含有飲食品に使用した場合にカカオの風味を増強させることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、風味油脂の製造方法。
【請求項2】
さらに、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン及びグルタミンの群から選ばれる1種以上のアミノ酸の存在下で反応させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに、グルコース、フルクトース及びキシロースの群から選ばれる1種以上の糖の存在下で反応させる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
該風味油脂がカカオ含有飲食品用である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
該風味油脂がカカオ含有飲食品用である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
該風味油脂がチョコレート類用である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
該風味油脂がチョコレート類用である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することにより得られる風味油脂を、0.01~20質量%含有された、カカオ含有飲食品。
【請求項9】
該カカオ含有飲食品がチョコレート類である、請求項8に記載の飲食品。
【請求項10】
油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、油脂への風味付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の風味を向上させる目的で、風味油脂の開発がなされている。例えば、カカオの風味を付与、向上させる風味油脂として、特許文献1~2が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、脱臭焙煎胡麻油を含有するハードバター組成物を使用することで、良好なカカオ風味やコクが感じられる油性菓子を提供することができると記載されている。また、特許文献2では、カカオ脂以外の油脂中にカカオ豆由来の油溶性成分を含有することで、カカオ豆の持つ芳醇な香味を呈した食用香味油を提供することが可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-180297号公報
【特許文献2】特開平05-146251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、胡麻油の処理方法によっては胡麻油の風味が強く感じられる場合があり、条件設定が難しい。特許文献2では、風味油脂としての効果は示されているものの、何れも少量の配合ではチョコレートの風味増強効果は弱い。特許文献2では油脂に付与される、カカオ豆由来の油溶性成分の量が少ないことから、より力価の強い風味油脂が求められている。
【0006】
また、チョコレートの風味向上が可能と言われるような香料や抽出物をチョコレートに配合したが、チョコレートの風味増強効果としては満足のいくようなものではなかった。チョコレート類において、チョコレート類の風味付与や増強といった効果を得るには、チョコレート類の連続相である油脂そのものに着味する必要があると考えられた。
よって本発明は、風味付けされた新規の油脂、特にカカオ含有飲食品用として好ましく使用できる風味油脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリフェノール素材を油脂に配合し、特定の条件で反応させて得られた風味油脂が、カカオ含有飲食品に使用した場合にカカオの風味を増強させることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、風味油脂の製造方法、
[2]さらに、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン及びグルタミンの群から選ばれる1種以上のアミノ酸の存在下で反応させる、[1]に記載の製造方法、
[3]さらに、グルコース、フルクトース及びキシロースの群から選ばれる1種以上の糖の存在下で反応させる、[1]または[2]に記載の製造方法、
[4]該風味油脂がカカオ含有飲食品用である、[1]又は[2]に記載の製造方法、
[5]該風味油脂がカカオ含有飲食品用である、[3]に記載の製造方法、
[6]該風味油脂がチョコレート類用である、[4]に記載の製造方法、
[7]該風味油脂がチョコレート類用である、[5]に記載の製造方法、
[8]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することにより得られる風味油脂を、0.01~20質量%含有された、カカオ含有飲食品、
[9]該カカオ含有飲食品がチョコレート類である、[8]に記載の飲食品、
[10]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、油脂への風味付与方法、
に関するものである。
【0009】
また、本発明は換言すれば、
[11]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、風味油脂の製造方法、
[12]さらに、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン及びグルタミンの群から選ばれる1種以上のアミノ酸の存在下で反応させる、[11]に記載の製造方法、
[13]さらに、グルコース、フルクトース及びキシロースの群から選ばれる1種以上の糖の存在下で反応させる、[11]または[12]に記載の製造方法、
[14]該風味油脂がチョコレート用である、[11]に記載の製造方法、
[15]該風味油脂がチョコレート用である、[12]に記載の製造方法、
[16]該風味油脂がチョコレート用である、[13]に記載の製造方法、
[17]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することにより得られる風味油脂を、0.01~20質量%含有する、チョコレート類、
[18]油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、油脂への風味付与方法、
[19]風味付与された油脂がチョコレート用である、[18]に記載の油脂への風味付与方法、
に関するものでもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カカオの風味の増強が可能な風味油脂を提供することができる。そして、カカオの風味が増強された飲食品も提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、油脂を、ポリフェノール素材の存在下で、80~200℃、5~180分間反応後に、固形分を除去することを特徴とする、風味油脂の製造方法である。そして、該風味油脂をカカオ含有飲食品に配合することで、カカオの風味を増強させることができる。
【0012】
本発明でいう「カカオ含有飲食品」とは、カカオ由来原料を含む飲食品全般をいう。具体例として、チョコレート類、チョコレートフィリング、カカオフィリング、チョコレートドリンク、カカオドリンク、チョコレートスプレッド、チョコレートソース、チョコレートアイス、チョコレートソフトクリーム等が挙げられる。中でもカカオ含有飲食物の代表的な飲食物は、チョコレート類、チョコレートフィリング、チョコレートドリンクである。好ましくは該カカオ含有飲食品がチョコレート類である。なお、カカオ由来原料とは、カカオ由来の成分や素材を言い、カカオマス、ココア、カカオバター等が例示できる。
【0013】
本発明でいう「チョコレート類」とは特に断りのない場合でも、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、およびチョコレート利用食品に限定されるものではなく、油脂類を必須成分とし、カカオマス、ココア、全粉乳、カカオバター、カカオバター代替脂、ハードバター等を利用した油脂加工食品を総称するものとする。そして、チョコレート類を喫食した時に感じるカカオ由来の風味を、本発明では「チョコレートの風味」という。
また、本発明においてチョコレート用とは、チョコレート類に使用した場合に、その風味増強効果を示し、チョコレート類に使用することが好ましいと言えるものである。特に、該風味油脂自体にチョコレート様風味が感じにくい場合でも、チョコレート類に使用した場合に風味増強効果が見られる様な場合、「チョコレート用」との表現が適する。
【0014】
◆ポリフェノール素材
本発明でいうポリフェノール素材とは、ポリフェノールを40%以上含む素材をさす。具体的には、コーヒーポリフェノール素材、カカオポリフェノール素材、赤ワイン由来ポリフェノール素材、及びカテキン素材から選ばれる1以上を使用することができる。より好ましくはコーヒーポリフェノール素材、カカオポリフェノール素材、さらに好ましくはカカオポリフェノール素材である。適当なポリフェノール素材を使用することで、良好な風味油脂を得ることができる。
【0015】
該コーヒーポリフェノール素材としては、具体的には生コーヒー豆エキス等を挙げることができる。また、該カカオポリフェノール素材としては、カカオ生豆エキス等を挙げることができる。該カテキン素材としては、茶抽出物等を挙げることができる。該赤ワイン由来ポリフェノール素材としては、赤ワイン抽出物等や赤ワイン濃縮物等を挙げることができる。
【0016】
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材が油脂100部に対して下限が0.01部以上、0.05部以上、0.08部以上、0.1部以上、0.3部以上、0.5部以上、又は1部以上の存在下で加熱することが好ましい。また上限は8部以下、7部以下、6部以下、5部以下、4部以下、又は3部以下が好ましい。該ポリフェノール素材がこの範囲であれば、良好な風味油脂を得ることができる。
【0017】
◆油脂
本発明の風味油脂の製造方法において、該風味油脂は食品全般に使用することができる。該風味油脂に使用できる油脂は、基本的には食用油脂であれば特に制限されない。具体的には、パーム油、菜種油、ハイエルシン菜種油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、大豆油、こめ油、コーン油、綿実油、落花生油、ベニバナ油、オリーブ油、ゴマ油、亜麻仁油、パーム核油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、シア脂、サル脂、カカオ脂等の植物性油脂、乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、藻類油、微生物発酵由来の油脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。無論、これらのうちから2種以上を混合した油脂も使用することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様として、本発明に係る風味油脂はチョコレート類に使用することが好ましい。このことから、本発明に使用する油脂は、チョコレート類を調製する際に使用する油脂であることが好ましい。具体的には、カカオバター代替脂、また大豆油、菜種油、パーム油並びにこれらの分別油、極度硬化油、エステル交換油等が挙げられる。また、これら油脂を1種以上組み合わせて使用しても良い。いずれの油脂であっても、本発明に係る方法に供することで、チョコレート類に使用した際に、その風味をより好ましいものとすることができる。より好ましくはチョコレート利用食品に使用した際に、本発明の効果を強く発揮することができる。
【0019】
◆アミノ酸
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材と共に、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン及びグルタミンの群から選ばれる1種以上のアミノ酸の存在下で加熱させても良い。より好ましくは、トレオニン、アラニン、バリン、さらに好ましくはアラニン、バリンである。また、これらアミノ酸を1種以上併用する場合は、アラニンとバリンの併用がより好ましい。これらアミノ酸は、これらの塩類(塩酸塩等)であっても良い。
該アミノ酸は、油脂100部に対して下限が0.01部以上、0.03部以上、0.05部以上、0.1部以上、又は0.3部以上の存在下で加熱することが好ましい。また、上限は5部以下、4部以下、3部以下、又は2部以下が好ましい。この範囲であれば、良好な風味油脂を得ることができる。アミノ酸を1種以上併用する場合もこの範囲の量で含有することが好ましい。
【0020】
◆糖
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材と共に、或いは該ポリフェノール素材及び該アミノ酸と共に、グルコース、フルクトース及びキシロースの群から選ばれる1種以上の糖の存在下で加熱させても良い。より好ましくはグルコースである。
該糖は、油脂100部に対して下限が0.01部以上、0.03部以上、0.05部以上、0.1部以上、又は0.3部以上の存在下で加熱することが好ましい。また、上限は5部以下、4部以下、3部以下、又は2部以下が好ましい。この範囲であれば、良好な風味油脂を得ることができる。
【0021】
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材と共に、水の存在下で加熱させても良い。水は、油脂100部に対して下限が0.01部以上、0.05部以上、0.08部以上、0.1部以上、0.3部以上、又は0.5部以上の存在下で加熱することが好ましい。また上限は8部以下、7部以下、6部以下、又は5部以下が好ましい。この範囲であれば、良好な風味油脂を得ることができる。
【0022】
本発明の風味油脂の製造方法の好ましい態様として、油脂に、該ポリフェノール素材、該アミノ酸及び該糖を組み合わせて添加し、80~200℃、5~180分間で反応後に、固形分を除去する方法が挙げられる。最も好ましい態様として、油脂に、該カカオポリフェノール素材、該アミノ酸及びグルコースを組み合わせて添加し、80~200℃、5~180分間で反応後に、固形分を除去する方法が挙げられる。この組み合わせにおいて、最も良好な風味油脂を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の風味油脂の製造方法のプロセスを説明する。
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材を油脂に規定量添加して、80~200℃で加熱する。より好ましくは90~190℃、さらに好ましくは100~180℃である。この温度にて加熱することで、良好な風味油脂を得ることができる。なお、該アミノ酸、該糖、水を併用する場合は、該ポリフェノール素材と同時に添加することが好ましい。
【0024】
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材を油脂に規定量添加して、規定の温度で5~180分間加熱する。より好ましくは30~150分間、さらに好ましくは45~120分間である。この時間加熱することで、良好な風味油脂を得ることができる。
【0025】
本発明の風味油脂の製造方法において、該ポリフェノール素材を油脂に規定量添加し、規定の加熱温度及び時間加熱する。その際の圧力条件は、特に制限はない。例えば、反応系内を常圧状態で加熱しても、また減圧状態で加熱してもよいが、より好ましくは常圧状態で加熱する方が、風味が良好な風味油脂を得ることができる。減圧状態で加熱する場合、真空度は60mmHg以下が好ましい。より好ましくは4~60mmHgである。この範囲の圧力条件とすることで、使用する油脂の種類によっては酸化劣化を抑制しつつも、風味が良好な風味油脂を得ることができる。
また、反応系内を不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。ここでいう不活性ガスとして、窒素や二酸化炭素等を例示することができる。
【0026】
本発明の風味油脂の製造方法において、所定の反応の後、該ポリフェノール素材を含む固形分を除去する。当該除去の方法は、濾紙による濾過で行うこともできるほか、大規模に製造する場合はフィルタープレスや遠心分離機を使用することもできる。このようにして、目的とする風味油脂を調製することができる。
【0027】
本発明の風味油脂の製造方法において、規定の加熱温度及び規定の時間で撹拌しながら反応させる。反応は、加熱温度として設定した温度に油脂温度が到達した時点から時間計測を開始し、設定温度±5℃の範囲で、設定時間維持することで行う。ここで、設定温度までの昇温はできる限り速やかに行い、加熱温度及び時間を故意に変動させるような段階的な温度変化は行わないことが望ましい。
【0028】
本発明は、油脂をポリフェノール素材の存在下で80~200℃、5~180分間の反応後に固形分を除去して得られた風味油脂を配合した、カカオ含有飲食品の発明と言うこともできる。該風味油脂の製造方法、条件等は前述の通りである。飲食品の種類は特に限定されるものではないが、該風味油脂をカカオ含有飲食品中に0.01~20質量%含有させることで、カカオの風味が増強された飲食品を得ることができる。該風味油脂をチョコレート類中により好ましくは0.05~15質量%、さらに好ましくは0.1~10質量%、さらにより好ましくは0.5~10質量%で、好ましい風味のチョコレート類を得ることができる。
【0029】
また、本発明の風味油脂の製造方法は、換言すれば、油脂への風味付与方法の発明とも言うことができる。具体的には、油脂をポリフェノール素材の存在下で80~200℃、5~180分間で加熱した後に、固形分を除去することで、油脂に風味を付与することができる。こうして得られた油脂は、カカオ含有飲食品に配合すると、カカオの風味を増強させることができる。
【0030】
(実施例)
以下、実施例により、より詳細に発明の実施態様を説明する。なお、文中「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0031】
表1の配合に従って、風味油脂実施例1~11を製造した。なお、各ポリフェノール素材、アラニン、グルコースは下記のものを使用した。
・カカオポリフェノール素材:オリザ油化株式会社製「カカオエキス-P」
・コーヒーポリフェノール素材:オリザ油化株式会社製「生コーヒー豆エキス-P」
・赤ワイン由来ポリフェノール素材:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「レッドワインコンク」
・カテキン素材:太陽化学株式会社製「サンフェノン90S」
・アラニン:キシダ化学株式会社製「DL-アラニン」
・グルコース:キシダ化学株式会社製「D(+)-グルコース」
【0032】
風味油脂実施例1の製造
メラノNew.SS-7(不二製油株式会社製、以下、「カカオバター代替脂」と記載)100部に、カカオポリフェノール素材0.3部を添加し、常圧下で撹拌しながら(350rpm)、160℃で60分間反応させ、その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例1を得た。
【0033】
風味油脂実施例2の製造
風味油脂実施例1のカカオポリフェノール素材をコーヒーポリフェノール素材に変えた以外は、風味油脂実施例1の製造と同様にして、風味油脂実施例2を得た。
【0034】
風味油脂実施例3の製造
風味油脂実施例1のカカオポリフェノール素材を赤ワイン由来ポリフェノール素材に変えた以外は、風味油脂実施例1の製造と同様にして、風味油脂実施例3を得た。
【0035】
風味油脂実施例4の製造
風味油脂実施例1に水0.1部をカカオポリフェノール素材と同時に添加した以外は、風味油脂実施例1の製造と同様にして、風味油脂実施例4を得た。
【0036】
風味油脂実施例5の製造
風味油脂実施例4のカカオポリフェノール素材をコーヒーポリフェノール素材に変えた以外は、風味油脂実施例4の製造と同様にして、風味油脂実施例5を得た。
【0037】
風味油脂実施例6の製造
風味油脂実施例4にアラニン1.2部、グルコース0.3部、水0.3部を、カカオポリフェノール素材と同時に添加した以外は、風味油脂実施例4の製造と同様にして、風味油脂実施例6を得た。
【0038】
風味油脂実施例7の製造
風味油脂実施例6のカカオポリフェノール素材をコーヒーポリフェノール素材に変えた以外は、風味油脂実施例6の製造と同様にして、風味油脂実施例7を得た。
【0039】
風味油脂実施例8の製造
風味油脂実施例6のカカオポリフェノール素材を赤ワイン由来ポリフェノール素材に変えた以外は、風味油脂実施例6の製造と同様にして、風味油脂実施例8を得た。
【0040】
風味油脂実施例9の製造
風味油脂実施例6のカカオポリフェノール素材をカテキン素材に変えた以外は、風味油脂実施例6の製造と同様にして、風味油脂実施例9を得た。
【0041】
風味油脂実施例10の製造
風味油脂実施例4にアラニン1.2部をカカオポリフェノール素材と同時に添加した以外は、風味油脂実施例1の製造と同様にして、風味油脂実施例10を得た。
【0042】
風味油脂実施例11の製造
風味油脂実施例4にグルコース0.3部をカカオポリフェノール素材と同時に添加した以外は、風味油脂実施例1の製造と同様にして、風味油脂実施例11を得た。
【0043】
風味油脂比較例1の製造
風味油脂比較例1はカカオバター代替脂とした。
【0044】
【0045】
<検討1>
風味油脂実施例1~11、風味油脂比較例1を用いて、チョコレートでの風味評価を行った。
◆チョコレートの調製方法
チョコレートの調製方法は次の通りとした。表2-1、2-2に記載の原材料を、常法に従って混合、粉砕、混練を行い、チョコレートを調製した。その後、32℃にてシードテンパリングを行い(チョコシードLT(不二製油株式会社製)を0.2%添加)、10℃で30分間冷却した。その後、20℃で1週間エージングした物を風味評価に供した。なお、比較例1-2においては、表2-1に示すとおり、砂糖の一部をカカオポリフェノール素材に置換した。
【0046】
◆風味評価
普段からチョコレートの試作に携わるパネラー6名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味油脂を添加していない比較例1-1の風味との相対評価とし、チョコレートの風味の増強を評価した。評価点は、下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上を合格とした。結果を表2-1、2-2に示した。なお、ここでいうチョコレートの風味とは、参考例1-1のチョコレートを喫食した時に感じられる風味とした。
1点:比較例1-1と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
4点:比較例1-1よりもチョコレートの風味が感じられた。
7点:比較例1-1よりもチョコレートの風味が強く感じられ、その強度は参考例1-1と同程度の強度であった。
10点:最もチョコレートの風味が感じられた。
【0047】
【0048】
【0049】
比較例1-1のチョコレートの風味に対して、カカオポリフェノール素材をチョコレートに直接添加しても、チョコレートの風味はごくわずかしか強くならなかった(比較例1-2)。一方で、風味油脂実施例1~11を配合したチョコレートでは、比較例1-1よりもチョコレートの風味が強く感じられた。チョコレート風味の増強効果は、カカオバター代替脂の一部を風味油脂実施例に置換しても十分認められた(実施例1-6~1-11)。さらに、カカオバターのみを配合したチョコレートに風味油脂を少量添加しても、チョコレートの風味増強効果が認められた(実施例1-12)。
【0050】
表3-1、3-2の配合に従って、風味油脂実施例12~33を調製した。調製方法は、カカオバター代替脂或いはパームエースNに、カカオポリフェノール素材、各アミノ酸、各糖、水を添加し、常圧下で撹拌しながら(350rpm)、160℃で60分間反応させた。その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例12~33を得た。また、風味油脂比較例2としてパームエースNを用いた。
・パームエースN:不二製油株式会社製
・トレオニン:キシダ化学株式会社製「L-トレオニン」
・バリン:キシダ化学株式会社製「L-バリン」
・フルクトース:キシダ化学株式会社製「D(-)-フルクトース」
【0051】
【0052】
【0053】
<検討2>
風味油脂実施例12~33、風味油脂比較例1~2を用いて、チョコレートでの風味評価を行った。
◆チョコレートの調製方法
チョコレートの調製方法は検討1の方法を踏襲し、砂糖51.7部、カカオマス45.0部、カカオバター3.3部、乳化剤及び香料(適量)の配合のチョコレートを調製した(以下、ベースチョコレートとした)。ベースチョコレートに表4-1~4-7に記載の配合量でカカオバター或いは風味油脂比較例1~2、風味油脂実施例12~33を混合した。その後、32℃にてシードテンパリングを行い(チョコシードLT(不二製油株式会社製)を0.2%添加)、10℃で30分間冷却した。その後、20℃で1週間エージングした物を風味評価に供した。なお、ベースチョコにカカオバターを配合したものを参考例2-1とした。
【0054】
◆風味評価
普段からチョコレートの試作に携わるパネラー7名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。
風味油脂実施例を添加していない比較例2-1或いは2-2の風味との相対評価とし、チョコレートの風味の増強を評価した。評価点は、下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上を合格とした。結果を表4-1~4-7に示した。なお、ここでいうチョコレートの風味とは、参考例2-1のチョコレートを喫食した時に感じられる風味とした。
1点:比較例2-1或いは比較例2-2と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
4点:比較例2-1或いは比較例2-2よりもチョコレートの風味が感じられた。
7点:比較例2-1或いは比較例2-2よりもチョコレートの風味が強く感じられ、参考例2-1と同程度の強度であった。
10点:最もチョコレートの風味が感じられた。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
比較例2-1或いは比較例2-2のチョコレートの風味に対して、実施例2-1~2-47の配合のチョコレートでチョコレートの風味増強効果が認められた。より好ましくは、カカオポリフェノール素材、アミノ酸の組み合わせ、さらにこのましくはさらに糖を組み合わせた配合で、増強効果が強くなる傾向であった。また、カカオポリフェノール素材を高濃度配合して反応させた風味油脂実施例29を少量添加しても、チョコレートの風味の増強効果は得られた(実施例2-37~2-39)。
【0063】
表5に示した配合、加熱条件にて、風味油脂実施例34~44を調製した。調製方法は、カカオバター代替脂に、カカオポリフェノール素材、各アミノ酸、各糖、水を添加し、各加熱条件下で撹拌しながら反応させた。その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例34~44を得た。
【0064】
【0065】
<検討3>
風味油脂実施例34~44を用いて、チョコレートでの評価を行った。チョコレートは、検討2で用いたベースチョコレート90部と、表6の記載の各種検討油脂10部とを混合した。得られたチョコレートの風味評価は検討2の方法を踏襲し、比較例3-1との相対評価とした。
【0066】
【0067】
圧力条件を変更してカカオポリフェノール素材等を反応させた風味油脂実施例34~44の配合は、比較例3-1よりもチョコレートの風味が強かった(実施例3-1~3-3)。中でも常圧条件下で加熱する方が強くなる傾向であった。また、添加物の組み合わせや反応温度、反応時間を調整した風味油脂を配合した実施例3-4~3-11のチョコレートでは、比較例3-1のチョコレートの風味よりも強く感じられた。特に、常圧下、カカオポリフェノール素材とアミノ酸、グルコースの組み合わせを160℃で反応させることで、最もチョコレートの風味が強く付与できる風味油脂を得られることを確認した(実施例3―6、3-8~実施例3-11)。
【0068】
<検討4>
表7の配合に従って、ミルクチョコレートでの評価を行った。
ミルクチョコレートの調製は、砂糖、カカオマス、全脂粉乳、カカオバターを混合した。32℃にてシードテンパリングを行い(チョコシードLTを0.2%添加)、10℃で30分間冷却した。その後、20℃で1週間エージングした物を風味評価に供した(これを参考例4-1とした)。参考例4-1に配合のカカオバターの一部を風味油脂比較例1或いは風味油脂実施例22に置換したものを、比較例或いは実施例とした。
【0069】
◆風味評価
普段からチョコレートの試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味油脂実施例を添加していない比較例4-1の風味との相対評価とし、チョコレートの風味の増強を評価した。評価点は、下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上を合格とした。結果を表7に示した。
1点:比較例4-1と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
4点:比較例4-1よりもチョコレートの風味が感じられた。
7点:比較例4-1よりもチョコレートの風味が強く感じられ、参考例4-1と同程度の強度であった。。
10点:最もチョコレートの風味が感じられた。
【0070】
【0071】
ミルクチョコレートに風味油脂を配合しても、比較例4-1のチョコレートよりもチョコレートの風味が強くなる傾向が確認された(実施例4-1~4-3)。
【0072】
表8に示した配合、加熱条件にて、風味油脂実施例45~52を調製した。調製方法は、パーキッドM或いはメラノNT―R(共に不二製油株式会社製)に、カカオポリフェノール素材、各アミノ酸、グルコース、水を添加し、各反応条件下で撹拌しながら反応させた。その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例45~52を得た。なお、風味油脂比較例3としてパーキッドM、風味油脂比較例4としてメラノNT―Rを用いた。
【0073】
【0074】
<検討5>
表9の配合の原材料を用い、常法にて調製したチョコレートを40℃に温調し、アルミカップに各5gずつ充填し、10℃、30分冷却固化した。その後、20℃で1週間エージングした物を風味評価に供した。なお、風味油脂比較例3或いは風味油脂比較例4の20%を風味油脂実施例に置換したものを実施例とした。
チョコレートの風味評価は、普段からチョコレートの試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味油脂実施例を配合しない比較例5-1或いは5-2のチョコレートの風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したチョコレートの風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。3点以上で合格とした。結果を表9に示した。
1点:比較例5-1或いは比較例5-2と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
3点:比較例5-1或いは比較例5-2よりもチョコレートの風味が感じられた。
5点:比較例5-1或いは比較例5-2よりも強くチョコレートの風味が感じられた。
【0075】
【0076】
ノーテンパー系のチョコレートにおいても、風味油脂実施例はチョコレートの風味を増強させることを確認した。特に、160℃で反応した風味油脂実施例で、チョコレートの風味を増強する傾向であった(実施例5-2、5-4、5-6、5-8)。
【0077】
表10に示した配合にて、風味油脂実施例53~56を得た。調製方法は、パームエースNに、カカオポリフェノール素材、アラニン、グルコース、水を添加し、常圧下で撹拌しながら(350rpm)、160℃で60分間反応させた。その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例53~56を得た。
【0078】
【0079】
<検討6>
表11-1、11-2の配合に従って、洋生チョコレートでの評価を行った。チョコファンシースイート35(不二製油株式会社製、スイートタイプチョコレート)或いはチョコファンシーミルク35(不二製油株式会社製、ミルクタイプチョコレート)に検討油脂を配合し、60℃で完全溶解させた後、45℃に温調した。その後、洋生チョコレートをアルミカップに充填し、10℃で30分間冷却後、20℃で2日間保管し、得られたチョコレートを風味評価に供した。なお、比較例には風味油脂比較例2を用いた。
チョコレートの風味評価は普段からチョコレートの試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味付与処理をしていない油脂を配合した比較例6-1或いは6-2のチョコレートの風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したチョコレートの風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。3点以上で合格とした。結果を表11-1、11-2に示した。
1点:比較例6-1或いは比較例6-2と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
3点:比較例6-1或いは比較例6-2よりもチョコレートの風味が感じられた。
5点:比較例6-1或いは比較例6-2よりも強くチョコレートの風味が感じられた。
【0080】
【0081】
洋生チョコレートに種々の風味油脂を配合しても、比較例6-1或いは6-2のチョコレートよりもチョコレートの風味が強くなる傾向が確認された(実施例6-1~6-8)。
【0082】
表12に示した配合、加熱条件にて、風味油脂実施例57~62を調製した。調製方法は、カカオバター代替脂に、カカオポリフェノール素材、各アミノ酸、グルコース、水を添加し、各加熱条件下で撹拌しながら反応させた。その後60℃まで冷却後、固形分を除去して、風味油脂実施例57~62を得た。
【0083】
【0084】
<検討7>
風味油脂実施例57~62を用いて、チョコレートでの評価を行った。チョコレートは、検討2で用いたベースチョコレート90部と、表12の記載の各種検討油脂10部とを混合した。得られたチョコレートの風味評価は普段からチョコレートの試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味付与処理をしていない油脂を配合した比較例7-1のチョコレートの風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したチョコレートの風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。3点以上で合格とした。結果を表13に示した。
1点:比較例7-1と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
3点:比較例7-1よりもチョコレートの風味が感じられた。
5点:比較例7-1よりも強くチョコレートの風味が感じられた。
【0085】
【0086】
検討3での加熱温度よりも低い温度で加熱しても、得られた風味油脂実施例57~62を配合したチョコレートは比較例7-1よりもチョコレートの風味が強かった(実施例7-1~7-6)。加熱温度は高い方がチョコレートの風味の増強効果は得られるが、110℃以上での加熱により、本発明の効果がより発揮できる風味油脂が得られることが確認された。
【0087】
<検討8>
表14の配合に従って、チョコレートアイスでの評価を行った。脱脂粉乳、グラニュー糖、ココアを計量した。そこに60℃以上に加温した水道水を所定量の90%を入れ、混合した。70℃以上の湯浴上で、ホモミキサーで撹拌し(5000rpm)、そこに各検討油脂及び植物油脂(不二製油株式会社製「メラノメロー200」)を少量ずつ添加した。完全に各検討油脂及び植物油脂を添加後、20分間撹拌してアイスミックス生地を得た。アイスミックス生地を高圧ホモゲナイザーで均質化した物を(150kgf/cm2 を1パス 、エスエムテー株式会社製「LAB1000」)、冷蔵庫にて12時間静置した。静置したアイスミックス生地をアイスクリーマーで6~10分間練った。ゴムべらを用いてカップへ分注し(60g/個)、ショックフリージングした(40℃で30分)。その後、冷凍庫で1日以上保管した。
チョコレートアイスの風味評価は、普段からチョコレート等の試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味付与処理をしていない油脂を配合した比較例8-1のチョコレート風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したチョコレートの風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上で合格とした。結果を表14に示した。
1点:比較例8-1と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
4点:比較例8-1よりもチョコレートの風味が感じられた。
7点:比較例8-1よりもチョコレートの風味が強く感じられた。
10点:最もチョコレートの風味が感じられた。
【0088】
【0089】
チョコレートアイスに種々の風味油脂を配合しても、比較例8-1のチョコレートアイスよりもチョコレートの風味が強くなる傾向が確認された(実施例8-1~8-6)。
【0090】
<検討9>
表15の配合に従って、チョコレートドリンクでの評価を行った。すなわち、各原料を混合した後、70℃水浴中でホモミキサーにて予備乳化した。予備乳化液を高圧ホモゲナイザーにて乳化、均質化した(150kgf/cm2 を1パス 、エスエムテー株式会社製「LAB1000」)。その後、冷蔵庫で保存した。
チョコレートドリンクの風味評価は、普段からチョコレート等の試作に携わるパネラー5名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味付与処理をしていない油脂を配合した比較例9-1又は9-2のチョコレート風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したチョコレートの風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上で合格とした。結果を表15に示した。
1点:比較例9-1又は9-2と同程度のチョコレートの風味しか感じられなかった。
4点:比較例9-1又は9-2よりもチョコレートの風味が感じられた。
7点:比較例9-1又は9-2よりもチョコレートの風味が強く感じられた。
10点:最もチョコレートの風味が感じられた。
【0091】
【0092】
チョコレートドリンクに種々の風味油脂を配合しても、比較例9-1又は9-2のチョコレートドリンクよりもチョコレートの風味が強くなる傾向が確認された(実施例9-1~9-6)。
【0093】
<検討10>
表16の配合に従って、ココアクッキーでの評価を行った。粉類A(薄力粉、ココアパウダー、ベーキングパウダー)を計量し、篩をかけた。別途、検討油脂とマーガリン(「ブリザードプレミアムナチュレ」不二製油株式会社製)と粉糖を添加し、全卵を数回に分けて添加した。ここに粉類Aを添加し、ケンウッドミキサー(中速)で混合した。得られた生地をシーターで伸ばし(8mm)、型抜き後、焼成した(上火:170℃、下火150℃、15分間)。その後、乾燥焼きを行った(80℃、3分間)。
ココアクッキーの風味評価は、普段から洋菓子等の試作に携わるパネラー4名により、各サンプルを試食して、合議にて採点した。風味付与処理をしていない油脂を配合した比較例10-1又は比較例10-2のココア風味との相対評価とし、各風味油脂を配合したココア風味の増強を評価した。評価点は下記の通りとした。下記の判断指標の間の点数は、その上下の判断指標と対比して、その風味強度を点数化した。4点以上で合格とした。結果を表16に示した。
1点:比較例10-1又は10-2と同程度のココアの風味しか感じられなかった。
4点:比較例10-1又は10-2よりもココアの風味が感じられた。
7点:比較例10-1又は10-2よりもココアの風味が強く感じられた。
10点:最もココアの風味が感じられた。
【0094】
【0095】
ココアクッキーに種々の風味油脂を配合しても、比較例10-1又は10-2のココアクッキーよりもココアの風味が強くなる傾向が確認された(実施例10-1~10-4)。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、ポリフェノール素材の存在下で油脂を加熱して得られた風味油脂を使用することで、カカオの風味が増強されたカカオ含有飲食品を提供することが可能である。