(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122917
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】冷凍食品
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240902BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240902BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240902BHJP
A23L 27/30 20160101ALI20240902BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L5/10 C
A23L27/00 D
A23L27/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026976
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023029183
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮武 史尊
(72)【発明者】
【氏名】増田 康之
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC03
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4B047LP06
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】粘性調味液が付着した油調済みバッター衣のレンジ加熱時のねばついた食感が抑制され、衣の食感が良好で、食味の良好な冷凍食品を提供する。
【解決手段】具材と、
前記具材を被覆する、バッター衣の油調品である揚げ衣と、
前記揚げ衣を被覆する粘性調味液と、を有する冷凍食品であって、
前記揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合が12質量%以下であり、且つ、
粘性調味液のブリックス値が60以下である、冷凍食品。粘性調味液中のナトリウム含有量が1000~4200mg/100gであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材と、
前記具材を被覆する、バッター衣の油調品である揚げ衣と、
前記揚げ衣を被覆する粘性調味液と、を有する冷凍食品であって、
前記揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合が12質量%以下であり、且つ、
粘性調味液のブリックス値が60以下である、冷凍食品。
【請求項2】
粘性調味液中のナトリウム含有量が1000~4200mg/100gである、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項3】
具材が食肉を含む、請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【請求項4】
前記バッター衣を構成する穀粉類が、加工澱粉を30質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【請求項5】
前記加工澱粉が、油脂加工澱粉、酸化澱粉及び架橋澱粉から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の冷凍食品。
【請求項6】
前記粘性調味液がスクラロースを含有する、請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物におけるバッター液は、従来は小麦粉と卵に、水または牛乳などを混ぜたものという意味で従来、使用されているが、近年、種々の組成が提案されている。揚げ物にバッター液を使うと、打ち粉及び卵を付して油調する場合に比べて製造時間の短縮になるだけでなく、バッター液に粘り気があるので具材によくからみ、衣が均一に付くという利点がある。
【0003】
特に、バッター衣の油調品である揚げ衣にタレを絡めた冷凍食品は、食べ応えのある惣菜として広く親しまれている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://www.maruha-nichiro.co.jp/products/product?j=4902165144741(2023年2月12日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、冷凍総菜の一つである、バッター衣の油調品である揚げ衣に粘性のあるタレを絡めた冷凍食品において、電子レンジ加熱後の揚げ衣がタレとともに喫食する際にねばつき、且つ、衣の食感をぼそつかせてしまう場合があることを知見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粘性調味液が付着した油調済みバッター衣のレンジ加熱時のねばついた食感が抑制され、衣の食感が良好で、食味の良好な冷凍食品を提供することを課題とする。
【0007】
また本発明は具材と、
前記具材を被覆する、バッター衣の油調品である揚げ衣と、
前記揚げ衣を被覆する粘性調味液と、を有する冷凍食品であって、
前記揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合が12質量%以下であり、且つ、
粘性調味液のブリックス値が60以下である、冷凍食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、粘性調味液が付着した油調済みバッター衣のレンジ加熱時のねばついた食感が抑制され、衣の食感が良好で、食味の良好な冷凍食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明は、具材と、前記具材を被覆する、バッター衣の油調品である揚げ衣と、
前記揚げ衣を被覆する粘性調味液と、を有する冷凍食品である。
【0010】
具材としては、魚介類、野菜類、果物類、海藻類、食肉、卵類又は加工食品が挙げられる。魚介類としては、魚類、貝類、エビ類、カニ類、タコ類、イカ類等が挙げられる。野菜類としては、ねぎ、オニオン、ごぼう、人参、かぼちゃ、ほうれん草、かぼちゃ、なす、シシトウ、アスパラガス、ピーマン、グリーンピース、コーン、れんこん、アボカド、さつまいも、じゃがいも、タラノメ、ウド、マイタケ、マツタケ、エノキ、シイタケ等が挙げられる。果物類としては、りんご、イチジク、バナナ、いちご、柿等が挙げられる。海藻類としては、ワカメ、ノリ、モズク、ヒジキ等が挙げられる。食肉としては、鶏肉のほか、牛肉や豚肉等の畜肉、クジラ肉等が挙げられる。食肉は塊肉、スライス肉、ひき肉等のいずれの形態であってもよい。加工食品としては、練り物、納豆、チーズ、菓子類等が挙げられる。具材としては魚介類、野菜類及び食肉類が一般的な具材として好ましく、とりわけ食肉類が好ましい。食肉類としては、食肉からなる具材と、食肉と他食材との併用品であって、食肉の割合が10質量%超である具材等が挙げられる。
【0011】
冷凍食品は、具材とバッター衣との界面に打ち粉を有するものであってもよい。打ち粉は、バッター生地と具材との接着剤の役目を果たし、油ちょう時に具材からバッター生地が剥がれにくくなる。打ち粉としては、小麦粉、澱粉、加工澱粉が挙げられる。澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉が挙げられる。加工澱粉としては、これらの澱粉にα化、エーテル化、エステル化、架橋、油脂加工、酸化から選ばれる1種又は2種以上の処理を施したものが挙げられる。
【0012】
上記の通り、本発明において、バッター衣の油調品である揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合が12質量%以下である。バッター衣の油調品である揚げ衣を構成する穀粉類には、打ち粉に由来する穀粉類は含めないものとする。従って、打ち粉が小麦粉を含む場合、打ち粉における小麦粉は、揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合に含めないものとする。
【0013】
打ち粉を用いる場合、具材100質量部に対し、打ち粉の量が1.5~10.5質量部であることが、打ち粉を用いることによる衣の結着性向上効果を高める点や全体の食感を良好とする点で好ましく、2.5~8.0質量部がより好ましく、2.5~5.0質量部が最も好ましい。
【0014】
なお、本明細書でいう小麦粉とは、強力粉、中力粉、薄力粉を含む。打ち粉における小麦粉含有量は、例えば90質量%以下が好適であり、85質量%以下がより好適である。
【0015】
本発明でいうバッター衣は、具材を被覆するバッター液からなる衣をいう。上記バッター液は、穀粉類と水とを含有する。穀粉類としては、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉等の穀粉と、澱粉、加工澱粉が挙げられる。澱粉及び加工澱粉としては、上記の打ち粉の例で挙げた各種の澱粉や加工澱粉が挙げられる。本発明では、バッター衣に含まれる穀粉類中、小麦粉の量が12質量%以下であることが重要である。
【0016】
本発明者は、バッター衣を油調してなる揚げ衣に粘性のある調味液で被覆した冷凍食品のレンジ加熱後の食感について検討した。その結果、粘性を有する調味液であって、一定程度ナトリウム量を含有する場合、レンジ加熱時に粘性調味液にマイクロ波が集中し、それにより揚げ衣にも熱がかかりやすく、レンジ加熱後、揚げ衣において食感がねばついてしまうことを知見した。上記現象について更に検討した結果、粘性調味液のブリックス値を特定量以下とし、且つ揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉含有量を特定値以下とすることで、上記の問題を解決できることを見出した。
【0017】
上記の観点から、バッター衣の油調品である揚げ衣を構成する穀粉類における小麦粉の割合は12質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であってもよい。
【0018】
またレンジ加熱において揚げ衣において食感がねばつく現象を一層抑制する点から、バッター衣に含まれる固形分中、蛋白質の含有量は4質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。本明細書において、固形分とは、水以外の成分の合計量をいう。
【0019】
バッター衣の油調品である揚げ衣を構成する穀粉類(以下、「前記穀粉類」ともいう。)中、小麦粉以外の成分としては、澱粉、加工澱粉が挙げられる。前記穀粉類は、小麦粉以外、澱粉及び/又は加工澱粉からなることが好ましい。前記穀粉類は、加工澱粉を含有することが冷凍食品の食感の向上の点や電子レンジのマイクロ波により熱収縮しない点で好ましい。この観点から、前記穀粉類が、前記の揚げ衣を構成する穀粉類中、加工澱粉を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することが特に好ましく、85質量%以上であってもよい。同様の観点からバッター液及びバッター衣中の加工澱粉の含有量は16質量%以上であってよく、22質量%以上であってよい。
【0020】
特に、前記穀粉類が、加工澱粉として油脂加工澱粉、酸化澱粉及び架橋澱粉から選ばれる少なくとも一種を含有することが、揚げ衣の食感向上や衣の結着性、電子レンジ調理時のマイクロ波による熱収縮を受けづらい点で好ましい。油脂加工澱粉は油脂加工に加えて、油脂加工以外の加工処理が施された澱粉であってもよい。
【0021】
前記穀粉類が、油脂加工澱粉を含有している場合、衣の食感のほか揚げ衣と具材との結着性の点で好ましい。油脂加工澱粉を用いる場合、前記穀粉類中、60~95質量%が好適に挙げられ、75~88質量%がより好ましい。また、油脂加工澱粉を用いる場合、バッター液及びバッター衣中、11~31質量%であってよく、16~26質量%であってよい。
【0022】
前記穀粉類が酸化澱粉を含有する場合はサク味等の衣の食感の点で好ましい。酸化澱粉は酸化に加えて、酸化以外の加工処理が施された澱粉であってもよい。
前記穀粉類が酸化澱粉を用いる場合、前記穀粉類中、酸化澱粉の割合が1~30質量%が好適に挙げられ、2~30質量%がより好適に挙げられ、3~30質量%がより好ましく、4~22質量%が更に好ましく、9~22質量%が特に好ましい。また酸化澱粉を用いる場合、前記バッター液及びバッター衣中、酸化澱粉の割合が0.1~4.9質量%であってよく、0.5~4.4質量%であってよく、1.0~4.0質量%であってよい。
【0023】
前記穀粉類が架橋澱粉を含有する場合、油ちょうの際にバッター生地が吸油しすぎることを防止する点や食感向上の点で好ましい。特にバッター生地は酸化澱粉と架橋澱粉を組み合わせて含有すると、酸化澱粉を含有することによる吸油しやすさを架橋澱粉により抑制してサクサクした食感を良好に得やすい点で好ましい。架橋澱粉としては、アジピン酸架橋澱粉及びリン酸架橋澱粉等が挙げられ、リン酸架橋澱粉が冷凍保管耐性の点で好ましい。リン酸架橋澱粉としては、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉を用いることができ、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を用いることが好ましい。架橋澱粉は架橋に加えて、架橋以外の加工処理が施された澱粉であってもよい。
【0024】
架橋澱粉を用いる場合、その含有量は、前記穀粉類中、0.8質量%以上が好適に挙げられ、1.5質量%以上がより好ましい。なお、架橋澱粉は、穀粉類中の含有量が98質量%以下であってよく、10質量%以下であってもよい。
また架橋澱粉を用いる場合、前記バッター液及びバッター衣中、0.35質量%以上が好適に挙げられ、0.55質量%以上がより好ましい。架橋澱粉は前記バッター液及びバッター衣中、40質量%以下であってよく、1.35質量%以下であってもよい。
【0025】
前記バッター液は、穀粉類100質量部に対する水の量が220~320質量部であることが、均一な厚みの衣を容易に得やすい点や本発明による衣の食感改善が高い点から好ましく、245~295質量部であることがより好ましい。
【0026】
前記バッター液及びバッター衣は、乳化剤や膨張剤、増粘剤、調味料など、穀粉類以外の成分を含有することができる。バッター液の水、穀粉類以外の成分の量は、好適には、穀粉類100質量部に対し、8質量部以下が好適であり、4.5質量部以下がより好適であり、3.5質量部以下が更に好適である。
【0027】
バッター衣の含有量は、具材100質量部に対し、5~25質量部であることが、食品全体の食感を良好なものとする点や具材とたれとの味のバランスを著しく損なわない点で好ましく、7~22質量部がより好ましく、8~15質量部が最も好ましい。
【0028】
本発明の冷凍食品は、具材を被覆するバッター衣の油調品である揚げ衣が、パン粉を付着させたものであってもよいが、パン粉を付着させていないものであることが、揚げ衣を構成する小麦粉の蛋白質含有量を特定値以下とする点及び粘性調味液のブリックス値を特定範囲とする効果が高い点で好ましい。バッター衣の油調品と粘性調味液との間にパン粉が介在しない場合、レンジ加熱の際に粘性調味液の熱が直接的に揚げ衣に影響するが、本発明では、当該構成においても、揚げ衣の食感低下を効果的に抑制できる。
【0029】
本発明の冷凍食品は、揚げ衣を粘性調味液が被覆するものである。粘性調味液とは、調味料を含有し、且つ、粘性を有する液体である。調味液における調味料としては、砂糖、砂糖以外の甘味料、塩、胡椒、酢、醤油、味噌、だし、酒かす、みりん、酒、コンソメ、ケチャップ、カレー粉、アミノ酸、核酸、有機酸等が挙げられる。本発明において、調味料は含塩調味料を含むことが好ましい。含塩調味料としては、塩、醤油、味噌が好ましく挙げられる。
【0030】
粘性調味液が粘性を有することは、冷凍保管における衣や具材への染込み(水分移行)を抑え、長期間の保存を経てもたれ掛け製品としておいしく喫食できるという利点がある。特に、具材がソースを内包しているときには、揚げ衣が蓋となり、電子レンジ加熱においてソースの流出を抑制する効果を有する。ここでいうソースとは、マヨネーズ、タルタルソース、ウスターソース、サルサソース、トマトソース、甘酢ソース、和風ソース、デミグラスソース、ミートソース、あん等が挙げられる。
【0031】
粘性調味液が粘性を有していることは増粘剤を含有していることで確認できる。増粘剤としては、澱粉若しくは加工澱粉、澱粉以外の増粘剤が挙げられる。本発明では、増粘剤として、これらから選ばれる少なくとも一種を含有すればよいが、とりわけ加熱、凍結及び解凍を経た後も粘性を維持する点や、好ましい食感を再現する点から、澱粉若しくは加工澱粉を用いることが特に好適である。加工澱粉としては、澱粉においてα化、エーテル化、エステル化、架橋、油脂加工、酸化から選ばれる1種以上の処理を施したものが挙げられる。
【0032】
粘性調味液に含有させる澱粉若しくは加工澱粉の中でも、本発明では、架橋処理を施したものであることが、加熱時の膨潤を抑制でき、離水時に老化しにくいため、冷凍及び解凍、並びに粘度加熱を経ても粘度変化や粘性調味液の物性や食感の変化を抑制できる点から好ましい。架橋澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。なかでも、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を用いることが好ましい。
【0033】
澱粉若しくは加工澱粉を粘性調味液中に含有させる場合、その量は、粘性調味液中1.5~4.0質量%が好適に挙げられ、2.3~3.3質量%がより好適であり、2.5~3.0質量%が更に好ましい。
【0034】
更に、澱粉及び加工澱粉以外の増粘剤を用いることで凍結時の粘性調味料のたれ落下防止を図ることができる点で好ましい。澱粉及び加工澱粉以外の増粘剤としては、ゼラチンのほか、寒天、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、及びメチルセルロース、アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラギーナン、加工ユーケマ藻類、精製カラギーナン、ユーケマ藻末、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、グルコサミン、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、マクロホモプシスガム等の増粘多糖類が挙げられる。澱粉及び加工澱粉以外の増粘剤の中では、ゼラチン、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、プルランから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい食感を再現しつつ、衣や具材への水分移行を抑制するという点で好ましく、ゼラチンが最も好ましい。
【0035】
澱粉及び加工澱粉以外の増粘剤を粘性調味液中に含有させる場合、その量は、粘性調味液中0.1~1.0質量%が好適に挙げられ、0.15~0.8質量%がより好適であり、0.2~0.6質量%が更に好ましい。
【0036】
粘性調味液は、ナトリウムを1000~4200mg/100g含有するものであってよく、1000~3700mg/100g含有するものであってよいが、特に、1000~3000mg/100g含有することが好ましい。上記の範囲内とすることで、タレの風味が良好で惣菜らしい美味しさを得ることができる。特に、粘性調味料における溶質量が電子レンジ加熱の熱のかかり方に影響する。本発明では、ナトリウム含有量を3000mg/100g以下とすることで、電子レンジ加熱時の熱が粘性調味料にかかりすぎて揚げ衣の食感が低下することを効果的に防止できる。この観点から、粘性調味液は、ナトリウムを1000~3000mg/100g含有することがより好適であり、1000~2000mg/100g含有することが更に好適であり、1100~1500mg/100g含有することが特に好適である。
ナトリウムの含有量を上記範囲とするためには、粘性調味料及びバッター衣における食塩の量を調整すればよい。
【0037】
ナトリウム含有量は、原子吸光法にて測定することができる。
測定方法は以下とする。サンプルは冷凍食品における粘性調味液の任意の3か所以上をサンプリングする。サンプリングした粘性調味液について、以下の方法で測定試料を調整する。
試料約0.5gを、PP製100mL容全量フラスコに精秤し、超純水80mL程度加えて軽く混合し、20%塩酸(富士フィルム和光純薬、精密分析用)5mLを添加したあと、同水で定容する。付属のねじ口蓋をし、転倒混和、室温で約1時間放置。5Bの濾紙で濾過して、均一清澄な試料抽出液を調製する。
この試料について、日立ハイテクサイエンス社製ZA3000を用いて原子吸光法にてNa濃度を測定する。測定条件としては空気圧160kPa、空気流量15.0L/min,アセチレン流量2.0L/min、検量線はナトリウム濃度が0μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL、2.0μg/mL、3.0μg/mL、4.0μg/mLの各試料を1%塩酸の水溶液を用いて作成する。3連以上の平均値をナトリウム含有量(粘性調味料100g当たりのナトリウム含有量)とする。
ナトリウム含有量は冷凍食品における測定値であるため、衣のナトリウム量が一部反映される場合がある。
【0038】
粘性調味液は、ブリックス値が60以下である。揚げ衣における小麦粉含有量を一定値以下とし、且つ粘性調味液のブリックス値を60以下とすることで、粘性調味液にマイクロ波が集中して揚げ衣の食感が低下することを効果的に防止できる。粘性調味液は、ブリックス値が40以上であることにより、粘性調味液における風味が良好となる。これらの点から、粘性調味液は、ブリックス値が45以上58以下であることがより好ましく、48以上55以下であることが更に好ましい。
ブリックス値を上記の範囲とするためには、粘性調味液中の糖類量を調整すればよい。
【0039】
粘性調味液のブリックス値は20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。屈折率はデジタル屈折計(ATAGO社製N2又はN3)を使用して測定することができる。
【0040】
冷凍食品は甘味を維持しつつ上記ブリックス値を実現するために、糖類以外の甘味料を使用することが好ましい。甘味料としてはスクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、アドバンテーム等が知られているが、スクラロースを用いることは砂糖に近い甘味曲線を付与できる点で好ましい。
【0041】
粘性調味液は上記スクラロースとともに糖類を含有してもよい。糖類としてはブドウ糖、果糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖等の二糖、オリゴ糖、還元麦芽糖、トレハロース、ソルビトール等の糖アルコール等が挙げられる。
【0042】
粘性調味液は、電子レンジ加熱時のねばつき抑制する点や適した食感を再現する点から、水分含有量が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。ここでいう水分量は調味料等に含まれる水分量を含む。
【0043】
粘性調味液は、冷凍食品において、具材100質量部に対して20質量部以上含有されていることが、粘性調味液を用いることによる上記効果に優れる点、食味の点で好ましく、40質量部以下含有されることが、食味が濃すぎることを防止する点や電子レンジ調理時の加熱ムラ軽減の点で好ましい。この点から、粘性調味液は、冷凍食品において、具材100質量部に対して22.5質量部以上32.5質量部以下がより好ましい。
【0044】
冷凍食品は、揚げ衣の表面の面積の10%以上の上に粘性調味液が存在することが好ましく、面積の30%以上の上に粘性調味液が存在することがより好ましく、50%以上の上に粘性調味料が存在することが更に好ましく、80%以上の上に粘性調味料が存在することが特に好ましい。このような形態の冷凍食品では、本発明の効果を十分に発揮することができる。ここでいう「上に存在する」とは、例えば揚げ衣の表面を被覆している状態を指す。
【0045】
粘性調味液は、粘度が、85℃にて3.0dPa・s以上が好ましく、5.0dPa・s以上10.0dPa・s以下が更に好ましく、6.0dPa・s以上8.0dPa・s以下が更に一層好ましく、6.5dPa・s以上7.5dPa・s以下であることが更に好ましい。
粘性調味液の粘度は、以下の方法にて測定できる。
前記の粘度は例えば調製時点の粘度であってもよい。
<粘度の測定方法>
粘性調味液150gを雰囲気温度20℃、85℃の恒温槽中の環境で1分間静置してから、B型粘度計を用いて回転数62.5rpmで該混合物の粘度を測定する。B型粘度計による前記混合物の回転の開始から1分経過時点の粘度の測定値を、測定対象の粘性調味液の粘度とする。B型粘度計による粘度測定は、例えば、リオン株式会社製の「VT-06」を用い、3号ローターを使用して行うことができる。
【0046】
本発明では、粘性調味液も、小麦粉を含有しないことが好ましく、小麦粉の含有量が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であるとより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが更に一層好ましい。また、粘性調味液はグルテン量が少ないことが好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に一層好ましい。但し、コチジャン、醤油、醤油原料、味噌、みりん等の発酵調味料に含まれる小麦粉及びグルテンは、一般的に発酵過程で極少量であるため、ここでいう含有量を含める必要はない。
【0047】
本発明の冷凍食品は、バッター衣の油調品である揚げ衣、揚げ衣に被覆された具材及び粘性調味料以外の成分を含有していてもよい。その様な成分としては、バッターに被覆されていない具材、例えば野菜や米、麺類等が挙げられる。本発明の冷凍食品中、揚げ衣に被覆された具材、揚げ衣(打ち粉を含む)及び粘性調味料以外の他の成分の割合は例えば50質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0048】
以上、本発明をその好ましい態様に基づき適宜説明したが、本発明は上記記載に限定されない。
【実施例0049】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0050】
(実施例1)
(第1工程)
(外練り肉)
畜肉60部、油脂12部、食塩1.6部、野菜(玉ねぎ等)43部、水25.5部、澱粉12部、パン粉16.5部、その他の調味料21部及び添加剤(蛋白素材等)8部を混練した。
(打ち粉)
パン粉を20部、澱粉を2部混合して用いた。
(バッター)
穀粉類ミックス(油脂加工澱粉79.9%、酸化澱粉14.6%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉3.1%、その他(膨張剤等)2.4%、小麦粉含有量0%、蛋白質含有量0.01%以下、食塩含有せず)40部に対して、水109部並びにその他添加材1.2部(小麦粉含有量0%、蛋白質含有量0.01%以下)を混合してバッター液を調製した。
(タレ)
アセチル化アジピン酸架橋澱粉5.5部、油脂5.4部、乳化剤0.1部、水40.6部、野菜類(ニンニク、ショウガ、果物)13.1部、ゼラチン0.6部、はちみつ5部、ソルビトール含有砂糖(ソルビトール含有量4.08%)24部、スクラロース0.2部、その他調味料105部(醤油32部、醤油原料34部、コチジャン7部、みりん10部、リンゴ果汁12部含有)を加熱混合して調製した。タレの粘度は85℃で7dPa・sであった。タレの水分量は55質量%であった。
【0051】
外練り肉12gを円筒に成形し、中にマヨネーズ2gを詰めて具材とした。この具材に、打ち粉0.5gを振った。バッター液1.3gを塗布した後、185℃で110秒間油調した。油調後の食品の全体にタレ4gを付着させた後、冷凍させて、冷凍食品を得た。
【0052】
(比較例1)
タレにおいてスクラロースを添加せず、ソルビトール含有砂糖の量を24部から64部に変更した以外は実施例1と同様とし、冷凍食品を得た。
【0053】
(比較例2)
穀粉類ミックスの組成を、油脂加工澱粉39.9%、酸化澱粉14.5%、小麦粉31%、コーンスターチ5%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉1.5%、食塩2.1%、その他(膨張剤等)6%に変更した。その点以外は実施例1と同様とし、冷凍食品を得た。
【0054】
(実施例2)
油脂加工澱粉としてリン酸架橋油脂加工澱粉を25部、油脂加工していないリン酸架橋澱粉を8.5部、α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を2.5部、酸化澱粉を1.5部、グアガムを0.2部、キサンタンガム0.05部、その他添加材2部(小麦粉含有量0%、蛋白質含有量16.3%以下)に対して、水110部を混合してバッター液を調製した。
(タレ)
アセチル化アジピン酸架橋澱粉4.7部、米澱粉1部、油脂5.5部、乳化剤0.1部、水51部、野菜類(ニンニク、ショウガ、果物)13.7部、ゼラチン0.6部、キサンタンガム0.2部、はちみつ7.2部、ソルビトールを含む砂糖調製品( CJフーズジャパン 社製、CJ-1)24部、スクラロース0.2部、その他調味料107部(醤油31部、醤油原料33部、コチジャン8部、みりん14部、リンゴ果汁12部含有)を加熱混合して調製した。タレの粘度は85℃で6.5dPa・sであった。タレの水分量は51質量%であった。
【0055】
(実施例3)
実施例2におけるタレの組成を、砂糖調製品を44部に、スクラロースを0.1部に、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を3部に、水を31部に、それぞれ変更し、食塩2.8部を添加した。その点以外は実施例2と同様として、冷凍食品を得た。タレの粘度は85℃で4dPa・sであった。タレの水分量は31質量%であった。
【0056】
(実施例4)
実施例3におけるタレの組成において食塩の量を2.8部から5.9部に変更した。その点以外は実施例3と同様として、冷凍食品を得た。タレの粘度は85℃で4.4dPa・sであった。タレの水分量は31質量%であった。
【0057】
(評価)
上記の冷凍食品5個を電子レンジで500Wで1分間加熱した。パネラー5名で喫食し、以下の評価項目を以下の評価基準で評価させた。5名の平均点を表1に示す。
【0058】
(レンジ加熱後のねばつき)
5:喫食時、レンジ加熱後の冷凍食品の表面にねばつきがない。
4:喫食時、レンジ加熱後の冷凍食品の表面にねばつきがほぼ存在しない。
3:喫食時、レンジ加熱後の冷凍食品の表面にねばつきが存在する。
2:喫食時、レンジ加熱後の冷凍食品の表面がねばついている。
1:喫食時、レンジ加熱後の冷凍食品の表面がねばつきが強い。
【0059】
(衣の食感)
5:ぼそぼそとした食感がない。
4:ぼそぼそとした食感がほぼ存在しない。
3:ぼそぼそとした食感が存在する。
2:ぼそぼそとした食感が目立つ。
1:ぼそぼそとした食感が食感の大半を占める。
【0060】
(タレの味付け)
5:タレの味を強く感じる。
4:タレの味を感じる。
3:タレの味が素材の味と同等である。
2:タレの味より素材の味が強い。
1:タレの味を感じない。
【0061】
【0062】
以上の通り、揚げ衣を構成する穀粉類中の小麦粉の割合が12質量%以下であり、且つ、粘性調味液のブリックス値が60以下である場合に、レンジ加熱後のねばつきが抑制され、衣の食感が良好となることが分かる。