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特開2024-122920トレーラ制御弁とトレーラ制御システム
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  • 特開-トレーラ制御弁とトレーラ制御システム 図1
  • 特開-トレーラ制御弁とトレーラ制御システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122920
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】トレーラ制御弁とトレーラ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 15/36 20060101AFI20240902BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B62D53/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027112
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】202310186842.X
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523408617
【氏名又は名称】ゼットエフ・コマーシャル・ヴィークル・システムズ・(チンタオ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】チュー・グオグワン
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049AA02
3D049BB15
3D049BB42
3D049CC03
3D049HH16
3D049JJ05
3D049JJ08
3D049KK16
3D049NN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トラクタとトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させる。
【解決手段】中継ピストン30の両端面は、制御口42に連通しブレーキキャビティ10に位置し、バランスピストン50は、オーバーラン量バネ55を介して第1のチャンバー31の底壁に接続され、且つ第1のチャンバー31の頂壁との間に、ブレーキキャビティ10に連通するスペースが残されている中継ピストン30及びバランスピストン50と、中継ピストン30の第2のチャンバー32に設置され、第1のチャンバー31に突入してバランスピストン50の弁口52に正対する調整ピストン60と、オーバーラン量調整口44であって、第2のチャンバー32に連通し、オーバーラン量調整口44の気圧が変わるにつれて、調整ピストン60が押し動かされて弁口52との間の距離を変えて、排気口の制御口42に対する気圧オーバーラン量を変えるオーバーラン量調整口44とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継ピストンと、前記中継ピストンの第1のチャンバーに設置されるバランスピストンとを含み、
前記中継ピストンの両端面は、それぞれ制御口に連通しブレーキキャビティに位置し、前記バランスピストンは、オーバーラン量バネを介して前記第1のチャンバーの底壁に接続され、且つ前記第1のチャンバーの頂壁との間に、前記ブレーキキャビティに連通するスペースが残されているトレーラ制御弁であって、
前記トレーラ制御弁は、
調整ピストンであって、前記中継ピストンの第2のチャンバーに設置され、前記調整ピストンが前記第1のチャンバーに突入して前記バランスピストンの弁口に正対する調整ピストンと、
オーバーラン量調整口であって、前記第2のチャンバーに連通し、前記オーバーラン量調整口の気圧が変わるにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口との間の距離を変えて、排気口の前記制御口に対する気圧オーバーラン量を変えるオーバーラン量調整口とをさらに含む、ことを特徴とするトレーラ制御弁。
【請求項2】
前記オーバーラン量調整口は、トレーラのエアバッグに接続され、
前記エアバッグの気圧が低減するにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口に近づき、
前記エアバッグの気圧が増加するにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口から離れる、ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラ制御弁。
【請求項3】
前記調整ピストンは、前記第2のチャンバーの内壁に係合する円環部と、前記円環部の第1の端に位置する第1のロッド部と、前記円環部の第2の端に位置する第2のロッド部とを有し、前記第1のロッド部は、前記第1のチャンバーに突入し、前記第2のロッド部は、第1のバネを介して前記第2のチャンバーの底壁に当接し、
前記オーバーラン量調整口は、前記第1のロッド部のある第2のチャンバーに連通する、ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラ制御弁。
【請求項4】
前記円環部の第1の端面に、軸方向に延在するリミットリブが設置され、前記リミットリブは、前記調整ピストンと前記弁口との間の最小距離をリミットするように、前記第1のロッド部のある第2のチャンバーに収容される、ことを特徴とする請求項3に記載のトレーラ制御弁。
【請求項5】
前記リミットリブは、周方向に均一に分布する複数のものを含む、ことを特徴とする請求項4に記載のトレーラ制御弁。
【請求項6】
前記円環部の周壁に環形溝が設置され、
前記環形溝に、前記第2のチャンバーの内壁にシール嵌合するシールリングが嵌設される、ことを特徴とする請求項3に記載のトレーラ制御弁。
【請求項7】
前記弁口にシールパッドが設置され、前記シールパッドは、第2のバネを介して前記バランスピストンの頂壁に当接し、
前記弁口において前記調整ピストンと間隔をあけ、前記シールパッドは、前記弁口をシールして被せ、
前記シールパッドが前記調整ピストンにより押し動かされるまで、前記バランスピストンにおいて前記オーバーラン量バネを押し動かし、前記弁口が開き、前記ブレーキキャビティにおける一部のブレーキガスは、前記弁口を介して調圧キャビティに入る、ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラ制御弁。
【請求項8】
前記中継ピストンと協働する弁部材をさらに含み、
前記制御口において吸気し、前記中継ピストンは、前記弁部材を押し動かして、前記ブレーキキャビティを吸気口に連通させる、ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラ制御弁。
【請求項9】
前記中継ピストンと前記トレーラ制御弁の弁壁との間に、メインバネが接続され、
前記制御口において吸気し、前記中継ピストンは、前記メインバネの作用力を克服して運動する、ことを特徴とする請求項8に記載のトレーラ制御弁。
【請求項10】
トレーラ制御システムであって、請求項1-9のいずれか一項に記載のトレーラ制御弁を含み、前記トレーラ制御弁の排気口は、トレーラのブレーキガス室に接続され、前記トレーラ制御弁のオーバーラン量調整口は、トレーラのエアバッグに接続される、ことを特徴とするトレーラ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラ制御の技術分野に関し、具体的に、トレーラ制御弁とトレーラ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラ制御弁は、トラクタ車両に取り付けられて、トレーラの制動を制御するために用いられる。トレーラ制御弁から出力されたブレーキガスをトレーラのブレーキガス室に輸送する経路が長く、且つブレーキガスの輸送中に一定の損失も存在するため、トレーラ制御弁に、一般的にオーバーラン量(制動時の排気気圧値の、制御気圧値に対する増加量を指す)を設定することで、トレーラの制動をトラクタ車両と同期するように保持する。
【0003】
現在のトレーラ制御弁は、そのオーバーラン量が出荷時に調整されると固定されるようになり、後続の使用において固定的なオーバーラン量に従って出力することしかできない。
【0004】
しかしながらトレーラの走行状況において、その無負荷と重負荷の時の質量の差が非常に大きく、これは、制動時に必要とされる制動力が異なることを意味する。現在のトレーラ制御弁は、固定的なオーバーラン量が設定されているため、往々にして重負荷の状況下での制動しか保証することができず、トレーラが軽負荷又は無負荷の時に、トレーラは往々にして軽いが、トラクタ車両は重く、この時、制動力を調整せず、即ち依然として固定的なオーバーラン量に従ってトレーラ制動のためのブレーキガスを出力する場合、少しのブレーキをかけると、トレーラタイヤが極めてロックしやすくなるという問題が発生し、トレーラタイヤが地面に擦れて異常摩耗を招き、ひいては走行事故を招く。
【0005】
説明すべきこととして、上記背景技術で一部開示された情報は、本発明の背景に対する理解を深めるためのものに過ぎないため、当業者の既知の従来技術を構成しない情報を含むことができる。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑みて、本発明は、トレーラ制御弁とトレーラ制御システムを提供し、調整ピストンを利用して、オーバーラン量調整口の気圧が変化する時に位置を自動的に調整することで、バランスピストンの弁口との間の距離を変え、トレーラ制御弁の排気口の制御口に対する気圧オーバーラン量をそれに伴って変化させ、オーバーラン量調整口の気圧が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を自動的に調整することを実現し、それによってトレーラの荷重が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を調整することを実現でき、それによりトラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させる。
【0007】
本発明の一態様によれば、トレーラ制御弁を提供し、この制御弁は、中継ピストンと、前記中継ピストンの第1のチャンバーに設置されるバランスピストンとを含み、前記中継ピストンの両端面は、それぞれ制御口に連通しブレーキキャビティに位置し、前記バランスピストンは、オーバーラン量バネを介して前記第1のチャンバーの底壁に接続され、且つ前記第1のチャンバーの頂壁との間に、前記ブレーキキャビティに連通するスペースが残されており、前記トレーラ制御弁は、調整ピストンであって、前記中継ピストンの第2のチャンバーに設置され、前記調整ピストンが前記第1のチャンバーに突入して前記バランスピストンの弁口に正対する調整ピストンと、オーバーラン量調整口であって、前記第2のチャンバーに連通し、前記オーバーラン量調整口の気圧が変わるにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口との間の距離を変えて、排気口の前記制御口に対する気圧オーバーラン量を変えるオーバーラン量調整口とをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施例では、前記オーバーラン量調整口は、トレーラのエアバッグに接続され、前記エアバッグの気圧が低減するにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口に近づき、前記エアバッグの気圧が増加するにつれて、前記調整ピストンが押し動かされて前記弁口から離れる。
【0009】
いくつかの実施例では、前記調整ピストンは、前記第2のチャンバーの内壁に係合する円環部と、前記円環部の第1の端に位置する第1のロッド部と、前記円環部の第2の端に位置する第2のロッド部とを有し、前記第1のロッド部は、前記第1のチャンバーに突入し、前記第2のロッド部は、第1のバネを介して前記第2のチャンバーの底壁に当接し、前記オーバーラン量調整口は、前記第1のロッド部のある第2のチャンバーに連通する。
【0010】
いくつかの実施例では、前記円環部の第1の端面に、軸方向に延在するリミットリブが設置され、前記リミットリブは、前記調整ピストンと前記弁口との間の最小距離をリミットするように、前記第1のロッド部のある第2のチャンバーに収容される。
【0011】
いくつかの実施例では、前記リミットリブは、周方向に均一に分布する複数のものを含む。
【0012】
いくつかの実施例では、前記円環部の周壁に環形溝が設置され、前記環形溝に、前記第2のチャンバーの内壁にシール嵌合するシールリングが嵌設される。
【0013】
いくつかの実施例では、前記弁口にシールパッドが設置され、前記シールパッドは、第2のバネを介して前記バランスピストンの頂壁に当接し、前記弁口において前記調整ピストンと間隔をあけ、前記シールパッドは、前記弁口をシールして被せ、前記シールパッドが前記調整ピストンにより押し動かされるまで、前記バランスピストンにおいて前記オーバーラン量バネを押し動かし、前記弁口が開き、前記ブレーキキャビティにおける一部のブレーキガスは、前記弁口を介して調圧キャビティに入る。
【0014】
いくつかの実施例では、前記トレーラ制御弁は、前記中継ピストンと協働する弁部材をさらに含み、前記制御口において吸気し、前記中継ピストンは、前記弁部材を押し動かして、前記ブレーキキャビティを吸気口に連通させる。
【0015】
いくつかの実施例では、前記中継ピストンと前記トレーラ制御弁の弁壁との間に、メインバネが接続され、前記制御口において吸気し、前記中継ピストンは、前記メインバネの作用力を克服して運動する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、トレーラ制御システムを提供し、この制御システムは、上記任意の実施例に記載のトレーラ制御弁を含み、前記トレーラ制御弁の排気口は、トレーラのブレーキガス室に接続され、前記トレーラ制御弁のオーバーラン量調整口は、トレーラのエアバッグに接続される。
【0017】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、少なくとも以下を含む。
【0018】
本発明のトレーラ制御弁とトレーラ制御システムは、調整ピストンを利用して、オーバーラン量調整口の気圧が変化する時に位置を自動的に調整することで、バランスピストンの弁口との間の距離を変え、トレーラ制御弁の排気口の制御口に対する気圧オーバーラン量をそれに伴って変化させ、オーバーラン量調整口の気圧が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を自動的に調整することを実現し、それによってトレーラの荷重が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を調整することを実現でき、それにより本発明のトレーラ制御弁は、従来のトレーラ制御弁のすべての機能を満たすことに加えて、トレーラ荷重が変化するにつれて異なる気圧オーバーラン量の出力を実現することができ、それによりトラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させる。
【0019】
以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的、解釈的なものに過ぎず、本発明を限定できないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
ここの図面は、明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成し、本発明に適する実施例を示しており、明細書と共に本発明の原理の解釈に用いられる。自明なことに、以下に記述された図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本発明の実施例におけるトレーラ制御弁の構造概略図である。
図2】本発明の実施例における調整ピストンの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、図面を参照しながら例示的な実施形態をさらに全面的に説明する。しかしながら、例としての実施形態は、様々な形式で実施可能であり、ここで記述した実施形態に限定されると理解してはならない。逆に、これらの実施形態を提供することで、本発明は、全面的で完全になり、且つ例としての実施形態の構想は、当業者に全面的に伝えられる。
【0022】
図面は、本発明の概略的な図解に過ぎず、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。図中の同じ図面符号は、同じ又は類似する部分を示すため、それらについて繰り返して説明をしない。具体的に説明する際に使用される「第1」、「第2」及び類似する用語は、何らかの順序、数又は重要性を表すものではなく、使用される「頂」、「底」及び類似する用語は、方位を制限するためのものでもなく、単に異なる構成部分を区別するためのものに過ぎない。説明すべきこととして、矛盾しない限り、本発明の実施例及び異なる実施例における特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0023】
図1は、実施例におけるトレーラ制御弁の構造を示し、図1を参照すると、本発明の実施例によるトレーラ制御弁は、
中継ピストン30と、中継ピストン30の第1のチャンバー31に設置されるバランスピストン50とを含み、中継ピストン30の両端面は、それぞれ制御口42に連通しブレーキキャビティ10に位置し、バランスピストン50は、オーバーラン量バネ55を介して第1のチャンバー31の底壁に接続され、且つ第1のチャンバー31の頂壁との間に、ブレーキキャビティ10に連通するスペース51が残されており、
トレーラ制御弁は、
調整ピストン60であって、中継ピストン30の第2のチャンバー32に設置され、調整ピストン60が第1のチャンバー31に突入してバランスピストン50の弁口52に正対する調整ピストン60と、
オーバーラン量調整口44であって、第2のチャンバー32に連通し、オーバーラン量調整口44の気圧が変わるにつれて、調整ピストン60が押し動かされて弁口52との間の距離を変えて、排気口(図1の視点では、排気口は見えない)の制御口42に対する気圧オーバーラン量を変えるオーバーラン量調整口44とをさらに含む。
【0024】
トレーラ制御弁の制御口42は、トラクタ車両のフットブレーキに接続され、フットブレーキからのブレーキガスを受け取るために用いられる。制御口42が吸気すると、ブレーキガスは、中継ピストン30を押し動かし、それによって中継ピストン30は、それとトレーラ制御弁の弁壁との間に接続されるメインバネ33の作用力を克服して運動する。中継ピストン30の運動により、それと協働する弁部材70が押し動かされて吸気弁71が開き、それによってブレーキキャビティ10は、吸気口(図1の視点では、吸気口は見えない)に連通するようになる。トレーラ制御弁の吸気口は、トラクタ車両のエアリザーバに接続され、排気口は、トレーラのブレーキガス室に接続される。吸気弁71が開くと、エアリザーバからのブレーキガスは、吸気口、ブレーキキャビティ10と排気口を介してトレーラのブレーキガス室に輸送され、トレーラの制動を実現する。
【0025】
排気口の気圧が上昇し続けるにつれて、ブレーキキャビティ10における一部のブレーキガスは、スペース51に入ってバランスピストン50を押し動かし、弁口52が調整ピストン60と接触して開くまで、バランスピストン50を、オーバーラン量バネ55の作用力を克服して運動させる。弁口52が開くと、ブレーキキャビティ10における一部のブレーキガスは、弁口52を介して調圧キャビティ56に入り、弁口52と調整ピストン60及びバランスピストン50の頂壁が同時に接触してシールするまで、バランスピストン50を押し動かして逆方向に運動させる。この時、排気口の気圧は、バランスに達する。
【0026】
ここで、弁口52にシールパッド57が設置され、シールパッド57は、第2のバネ58を介してバランスピストン50の頂壁に当接し、弁口52において調整ピストン60と間隔をあけ、シールパッド57は、弁口52をシールして被せ、シールパッド57が調整ピストン60により押し動かされるまで、バランスピストン50においてオーバーラン量バネ55を押し動かし、弁口52が開き、ブレーキキャビティ10における一部のブレーキガスは、弁口52を介して調圧キャビティに入る。
【0027】
上記制動過程において、弁口52が開く前に、排気口の気圧値の、制御口42の気圧値に対する増加量は、気圧オーバーラン量である。気圧オーバーラン量が大きいほど、トレーラのブレーキガス室に出力されるブレーキ気圧が大きく、トレーラの制動力が大きく、気圧オーバーラン量が小さいほど、トレーラのブレーキガス室に出力されるブレーキ気圧が小さく、トレーラの制動力が小さい。
【0028】
本発明のトレーラ制御弁において、調整ピストン60は、オーバーラン量調整口44の気圧が変化する時に位置を自動的に調整することで、バランスピストン50の弁口52との間の距離を変えることができ、調整ピストン60と弁口52との間の距離が変えられると、トレーラ制御弁の排気口の制御口42に対する気圧オーバーラン量もそれに伴って変えられ、オーバーラン量調整口44の気圧が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を自動的に調整することを実現する。オーバーラン量調整口44は、トレーラ荷重に係るエア供給源に接続されてもよく、それによってトレーラ荷重が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を調整することを実現でき、荷重が大きいほど、気圧オーバーラン量が大きく、荷重が小さいほど、気圧オーバーラン量が小さく、それにより本発明のトレーラ制御弁は、従来のトレーラ制御弁のすべての機能を満たすことに加えて、トレーラ荷重が変化するにつれて異なる気圧オーバーラン量の出力を実現することができ、それによりトラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させる。
【0029】
いくつかの実施例では、オーバーラン量調整口44は、トレーラのエアバッグに接続され、エアバッグの気圧が低減するにつれて、調整ピストン60が押し動かされて弁口52に近づき、エアバッグの気圧が増加するにつれて、調整ピストン60が押し動かされて弁口52から離れる。
【0030】
トレーラのエアバッグ気圧は、トレーラが受ける荷重の変化に伴って変化し、トレーラの荷重が大きいほど、エアバッグ気圧が大きい。エアバッグ気圧は、オーバーラン量調整口44を介してトレーラ制御弁に入って調整ピストン60に作用することができ、異なるエアバッグ気圧下で、調整ピストン60と弁口52との間の距離がそれに伴って変化することを実現する。調整ピストン60と弁口52との間の距離によって、制動時に中継ピストン30の耐えられるメインバネ33の作用力の大きさが決定され、調整ピストン60と弁口52との間の距離が小さいほど、中継ピストン30の耐えられるメインバネ33の作用力が小さく、気圧オーバーラン量が小さく、調整ピストン60と弁口52との間の距離が大きいほど、中継ピストン30の耐えられるメインバネ33の作用力が大きく、気圧オーバーラン量が大きい。
【0031】
オーバーラン量調整口44をトレーラのエアバッグに接続することによって、トレーラ荷重が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量をインテリジェントに調整することを実現でき、車両既存の管路レイアウトを少し変えて、トレーラエアバッグとトレーラ制御弁を接続するオーバーラン量調整口44の管路を1本追加するだけで、トラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させることができる。
【0032】
他の実施例では、オーバーラン量調整口44は、他の適切なエア供給源に接続されてもよく、トレーラ荷重の増加に伴ってオーバーラン量調整口44の気圧が増加し、トレーラ荷重の低減に伴ってオーバーラン量調整口44の気圧が低減することさえ実現できればよい。
【0033】
図2は、実施例における調整ピストンの構造を示し、図1図2を結び付けると、いくつかの実施例では、調整ピストン60は、第2のチャンバー32の内壁に係合する円環部62と、円環部62の第1の端に位置する第1のロッド部63と、円環部62の第2の端に位置する第2のロッド部64とを有し、第1のロッド部63は、第1のチャンバー31に突入し、第2のロッド部64は、第1のバネ66を介して第2のチャンバー32の底壁に当接し、オーバーラン量調整口44は、第1のロッド部63のある第2のチャンバー32に連通する。
【0034】
このように、オーバーラン量調整口44の気圧が増加すると、第1のロッド部63のある第2のチャンバー32におけるエアは、調整ピストン60を押し動かして弁口52から離れさせ、オーバーラン量調整口44の気圧が低減すると、第1のバネ66は、調整ピストン60を押し動かして弁口52に近づかせる。
【0035】
いくつかの実施例では、円環部62の第1の端面に、軸方向に延在するリミットリブ68が設置され、リミットリブ68は、調整ピストン60と弁口52との間の最小距離をリミットするように、第1のロッド部63のある第2のチャンバー32に収容される。
【0036】
リミットリブ68によって、オーバーラン量調整口44の気圧が非常に小さい場合、調整ピストン60と弁口52との間は、最小距離を保持することができ、それによりトレーラ制御弁が最も基本的な気圧オーバーラン量を有することを確保する。
【0037】
いくつかの実施例では、リミットリブ68は、周方向に均一に分布する複数のものを含む。このように、調整ピストン60に対して安定的なリミット作用を果たすことができる。
【0038】
いくつかの実施例では、円環部62の周壁に環形溝61が設置され、環形溝61に、第2のチャンバー32の内壁にシール嵌合するシールリングが嵌設される。このように、調整ピストン60と第2のチャンバー32の内壁とのシール嵌合を実現することができる。
【0039】
さらに、引き続き図1を参照すると、トレーラ制御弁にもう一つの制御口41がさらに配置され、制御口41もトラクタ車両のフットブレーキに接続され、制御口42と互いに冗長設計となる。トレーラ制御弁に、トラクタ車両のハンドブレーキに接続される制御口43がさらに配置される。これらの構造は、トレーラ制御弁の一般的な構造であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
本発明の実施例は、トレーラ制御システムをさらに提供し、このトレーラ制御システムは、上記任意の実施例に記述されたトレーラ制御弁を含む。ここで、トレーラ制御弁の排気口は、トレーラのブレーキガス室に接続され、トレーラ制御弁のオーバーラン量調整口44は、トレーラのエアバッグに接続され、トレーラのエアバッグ気圧を巧みに利用してトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を調整し、トレーラ制御弁がトレーラ荷重の大きさに伴って気圧オーバーラン量を自発的に調整できることを実現し、それによりトラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させ、車両既存の管路レイアウトを少し変えて、トレーラエアバッグとトレーラ制御弁を接続するオーバーラン量調整口44の管路を1本追加すればよい。
【0041】
以上をまとめると、本発明のトレーラ制御弁とトレーラ制御システムは、以下の有益な効果を有する。
【0042】
調整ピストン60を利用し、オーバーラン量調整口44の気圧が変化する時に位置を自動的に調整して、バランスピストン50の弁口52との間の距離を変えて、トレーラ制御弁の排気口の制御口42に対する気圧オーバーラン量をそれに伴って変化させ、オーバーラン量調整口44の気圧が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を自動的に調整することを実現し、オーバーラン量調整口44がトレーラのエアバッグに接続され、それによってトレーラ荷重が変化するにつれてトレーラ制御弁の気圧オーバーラン量を調整することを実現でき、荷重が大きいほど、気圧オーバーラン量が大きく、荷重が小さいほど、気圧オーバーラン量が小さく、それにより本発明のトレーラ制御弁は、従来のトレーラ制御弁のすべての機能を満たすことに加えて、トレーラ荷重が変化するにつれて異なる気圧オーバーラン量の出力を実現することができ、それによりトラクタ車両とトレーラとの制動の一致性を向上させ、車両の安全性を向上させる。
【0043】
以上の内容は、具体的な好ましい実施形態を結び付けながら本発明をさらに詳細に説明したものであり、本発明の具体的な実施はこれらの説明に限定されると見なしてはならない。当業者であれば、本発明の構想を逸脱しない前提で、さらにいくつかの簡単な変形又は置換を行うことができ、それらはいずれも本発明の保護範囲に属すると見なすべきである。
図1
図2