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特開2024-122923織機用の綜絖およびそのような綜絖を備える織機
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  • 特開-織機用の綜絖およびそのような綜絖を備える織機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122923
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】織機用の綜絖およびそのような綜絖を備える織機
(51)【国際特許分類】
   D03C 9/02 20060101AFI20240902BHJP
   D03C 3/40 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
D03C9/02 D
D03C3/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024027389
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】2301854
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】524075065
【氏名又は名称】ストーブリ・リヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-アレクシ・グリヴィオー
(72)【発明者】
【氏名】パトリス・プシタスキ
(57)【要約】
【課題】ジャカード織機用の新しい綜絖を提案すること。
【解決手段】この綜絖は、リンク(2)と、ポリマー材料から作られた少なくとも1本の棒(4)とを備え、その長手方向先端部(44)は、リンクの横断面(28、29)を覆う表面を備える。棒(4)およびリンク(2)は、長手方向軸(X1)に平行なリンクからオフセットされ、リンクの第1の周表面(S1)、棒(4)の周表面(S4)によって形成される第2の側方表面(S2)、および棒(4)によって形成され、被覆表面の一方を延長する第3の底部表面(S3)によって範囲を定められている、少なくとも1つの空洞(C44)を形成する。交差線(L44)が、第3の底部表面から延び、第1の表面の範囲を定める。第3の底部表面は、第2の側方表面に関して棒(4)の外側に向かって配置される。各空洞は、第3の底部表面から離れる方向に厚さ軸(Z1)に従って非対面である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャカード機構(102)を装備した織機(M)用の経糸(108)を案内するための綜絖(1)であって、前記綜絖は、長手方向軸(X1)に従って長さ方向に延在し、
- 前記経糸を通すためのアイレット(22)を備える、リンク(2)であって、前記アイレットは前記リンクの第1の横断面(28)と第2の横断面(29)との間で前記リンクを通り抜け、前記第1および第2の横断面は前記リンクの周表面(31)によって一緒に連結される、リンク(2)と、
- 前記長手方向軸に従って延在するポリマー材料の少なくとも1本の棒(4)であって、外側表面(S4)を備え、
前記ジャカード機構の、ハーネス(H)の部材(106、110)に接続するための手段(11A、11B)を備える第1の長手方向先端部(42)と
第2の一体型長手方向先端部(44)であって、少なくとも
前記リンクの前記第1の横断面(28)を部分的に覆う第1の被覆表面(S448)と、
前記リンクの前記第2の横断面(29)を部分的に覆う第2の被覆表面(S449)と、
アンカーヒール(442)と
を備える第2の一体型長手方向先端部(44)と
を備える少なくとも1本の棒(4)と
を備え、
前記第1の被覆表面(S448)および前記第2の被覆表面(S449)は、前記長手方向軸(X1)および前記長手方向軸(X1)に垂直な横方向軸(Y1)に平行であり、
前記リンク(2)は、前記棒(4)の前記アンカーヒール(442)と協働して、前記長手方向軸(X1)に平行な前記棒およびリンクの分離に対抗し、
- 前記棒(4)および前記リンク(2)は、前記棒の前記第2の長手方向先端部(44)において、前記長手方向軸(X1)に平行な方向に従って前記リンク(2)からオフセットされる少なくとも1つの空洞(C44)を形成し、前記少なくとも1つの空洞(C44)は、
前記リンク(2)の前記周表面(31)の一部によって形成された第1の表面(S1)と、
前記棒(4)の前記外側表面(S4)の一部によって形成された第2の側方表面(S2)であって、前記第2の側方表面は前記リンクの前記周表面(31)と前記棒の前記外側表面(S4)との間の交差線(L44)から、前記棒の前記第1の長手方向先端部(42)の方に延在する、第2の側方表面(S2)と、
前記棒(4)によって形成され、前記棒の前記第1の長手方向先端部(42)に向かう前記第1および第2の被覆表面(S448、S449)の一方を延長する第3の底部表面(S3)と
によって範囲を定められ、
- 各空洞内で、前記交差線(L44)は、前記第3の底部表面(S3)から延び、前記第1の表面(S1)の範囲を定め、
- 各空洞(C44)について、前記第3の底部表面(S3)は、前記横方向軸(Y1)に平行な方向に従って、前記第2の側方表面(S2)に関して前記棒(4)の前記外側に向かって、配置され、
- 各空洞(C44)は、前記長手方向軸および前記横方向軸に垂直な厚さ軸(Z1)に従って、前記空洞の前記第3の底部表面(S3)を形成する前記棒(4)の一部から離れる方向(D1、D’1)に非対面である
ことを特徴とする綜絖(1)。
【請求項2】
各空洞(C44)の前記第3の底部表面(S3)は、それが延びる前記被覆表面(S448、S449)と同一平面であるか、または実質的に同一平面である、請求項1に記載の綜絖。
【請求項3】
- 前記リンクは、前記リンクの前記第1の横断面(28)と前記第2の横断面(29)との間で前記リンクを通り抜ける少なくとも1つのハウジング(32)を含み、
- 前記アンカーヒールは、前記厚さ軸(Z1)に従って前記リンクの前記ハウジング(32)を貫通し、
- 前記ハウジング(32)の輪郭面は、前記アイレット(22)の側で長手方向に配置された近位部分(323)を含み、
- 前記ハウジング(32)の前記近位部分(323)は、前記長手方向軸(X1)に沿って、前記棒(4)上に形成された前記1つまたは複数の空洞(C44)と前記アイレット(22)との間に、配置され、
- 前記アンカーヒール(442)は、前記第2の長手方向先端部(44)の自由エッジ(44A)を形成し、
- 前記棒(4)の前記第1および第2の被覆表面(S448、S449)は、前記アンカーヒール(442)まで延在する、請求項1に記載の綜絖。
【請求項4】
- 前記棒(4)の前記第2の長手方向先端部(44)の前記アンカーヒール(442)は、前記リンクの前記第1および第2の横断面(28、29)にそれぞれ平行な2つの表面(S442、S’442)によって範囲を定められ、
- 前記アンカーヒール(442)は、前記ハウジング(32)の輪郭表面の前記近位部分(323)に長手方向で当接する、請求項3に記載の綜絖。
【請求項5】
前記交差線(L44)は、前記第2の被覆表面(S449)に接するエッジ(A49)まで延在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項6】
- 前記綜絖(1)は、ポリマー材料の2つの棒(4)を備え、各々が第1の長手方向先端部(42)および第2の長手方向先端部(44)を有し、
- 前記2つの棒の前記第2の長手方向先端部(44)は、各々が前記リンクの前記第1および第2の横断面(28、29)を部分的に覆い、
- 2つの空洞(C44)が、前記長手方向軸(X1)と横方向軸(Y1)とを含み前記アイレットの幾何学的中心(C22)を通過する平面の、両側の各棒の前記第2の長手方向先端部(44)に形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項7】
- 同じ記棒(4)の同じ第2の長手方向先端部(44)に形成された前記2つの空洞(C44)は、前記厚さ軸(Z1)に平行な同じ方向(D1)に従って互いに対向せず、
- 前記リンク(2)は平面であり、前記アイレットの幾何学的中心(C22)に関して対称的である、請求項6に記載の綜絖。
【請求項8】
前記第1の表面(S1)は、前記横方向軸(Y1)に従ってとられた、前記リンクの幅が、前記長手方向軸(X1)に沿って前記アイレット(22)から離れるにつれて減少する前記リンクの移行ゾーン(26)において前記リンク(2)の前記周表面(31)の一部によって形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項9】
前記第3の底部表面(S3)は、前記第3の底部表面(S3)を前記棒(4)の前記外側表面(S4)に接続し、湾曲しており、その凹みが前記第2の底部表面(S2)の方へ向く、接合エッジ(A3)によって前記棒(4)の前記外側に向かう前記横方向軸(Y1)に従って範囲を定められる、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項10】
前記接合エッジ(A3)は、前記交差線(L44)からある距離(d3)に延在し、前記距離の最小値は、前記リンクの厚さ(e2)の半分以上であり、これは前記厚さ軸(Z1)に従って前記第1の被覆表面(S448)と前記第2の被覆表面(S449)との間で測定される、請求項9に記載の綜絖。
【請求項11】
前記長手方向および横方向軸(X1、Y1)に平行な平面内の前記接合エッジ(A3)の突出部の曲率半径(R3)は、前記平面内の前記第1の表面(S1)の前記突出部の曲率半径(R1)以上である、請求項9に記載の綜絖。
【請求項12】
前記長手方向および横方向軸(X1、Y1)に平行な前記平面内の前記接合エッジ(A3)の前記突出部の前記曲率半径(R3)は、前記平面内の前記第1の表面(S1)の前記突出部の前記曲率半径(R1)の少なくとも1.5倍以上である、請求項11に記載の綜絖。
【請求項13】
前記空洞(C44)の長手方向レベルで、前記厚さ軸(Z1)に従う各被覆表面(S448、S449)の側において、前記棒(4)の前記第2の長手方向先端部(44)は、前記被覆表面によって形成される前記平面に関して前記厚さ軸(Z1)に従って測定され前記第1の被覆表面と前記第2の被覆表面との間で測定される前記リンクの厚さ(e2)以上である、厚さ(e44、e’44)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項14】
前記厚さ軸(Z1)に従った各被覆表面の前記側において、前記棒(4)の前記第2の長手方向先端部(44)は、前記第3の底部表面(S3)と前記第2の長手方向先端部(44)の自由エッジ(44A)との間に長手方向に、
- 前記横方向軸(Y1)に平行に測定され、前記自由エッジ(44A)の方向に減少する幅(l44、l’44)と、
- 前記厚さ軸(Z1)に従って測定され、前記自由エッジ(44A)の方向に減少する厚さ(e44、e’44)と
を呈する、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項15】
前記リンク(2)は、前記棒(4)の前記第2の長手方向先端部(44)によって完全に取り囲まれている少なくとも1つの長手方向先端部ラグ(24)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の綜絖。
【請求項16】
ジャカード機構(102)と、経糸(108)を案内するためのいくつかの綜絖(1)とを装備した織機(M)であって、前記綜絖(1)のうちの少なくとも1つは、請求項1から15のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする織機(M)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャカード機構を装備した織機用の経糸案内綜絖(warp thread guiding heddle)、さらにはジャカード機構およびこのような綜絖を備える織機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の技術分野は、各々が1本または複数の経糸を通すためのアイレットを備え、各々が1本または複数の経糸を垂直方向に変位させることを可能にし、緯糸を通すための杼を形成する、綜絖を用いる織機上の開口に関するものである。そのような綜絖は、織機上に、高い密度でハーネス内に隣り合って並べられ、綜絖と、隣接する綜絖のアイレットを通り抜ける経糸との間の摩擦を誘発する。
【0003】
特許文献1から、丸みを帯びた断面の2本の棒を綜絖のリンク上に、リンクの対応するハウジング内の各棒の長手方向先端部を係合することによってオーバーモールドすることが知られている。これらのハウジングは、比較的大きく、リンクが棒に接続される領域内でリンクを弱める傾向がある。ところで、オーバーモールド作業中に、リンク寸法のばらつき、およびこの作業中に使用されるモールド内のリンクの配置の変動に起因して、バリが形成される。これらのバリは、特に、リンクの周表面と各棒との交差部分に出現する。これらのバリは、綜絖がジャカード式織機のハーネスに装着された後、綜絖に隣接する経糸はこれらのバリに引っ掛かりやすいので、経糸の損傷または切断を引き起こす危険性がある。したがって、これらのバリは、オーバーモールド作業の後に減らされるか、または除去されなければならず、厄介で時間のかかる修正作業を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第EP-A-1908863号
【特許文献2】中国特許第CN-U-210596433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より具体的には、ジャカード織機用の新しい綜絖を提案することによってこれらの問題を是正することを目的とし、この綜絖を用いれば、製織中に隣接する経糸が引っ掛かる危険性が大幅に低減されるか、または解消される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、ジャカード織機用の経糸案内綜絖に関するものであり、この綜絖は長手方向軸に従って長手方向に延在し、
- 経糸が通り抜けるためのアイレットを備える、リンクであって、アイレットはリンクの第1の横断面と第2の横断面との間でリンクを通り抜け、第1および第2の横断面はリンクの周表面によって一緒に連結される、リンクと、
- 長手方向軸に沿って延在するポリマー材料の少なくとも1本の棒であって、外側表面を備え、
ジャカードハーネスの部材に接続するための手段を設けられた第1の長手方向先端部と、
第2の一体型長手方向先端部であって、少なくとも
リンクの第1の横断面を部分的に覆う第1の被覆表面と、
リンクの第2の横断面を部分的に覆う第2の被覆表面と、
アンカーヒール(anchoring heel)と
を備える第2の一体型長手方向先端部と
を備える少なくとも1本の棒と
を備え、
第1の被覆表面および第2の被覆表面は、長手方向軸および自体が長手方向軸に垂直な横方向軸に平行であり、
リンクは、棒のアンカーヒールと協働して、長手方向軸に平行な棒およびリンクの分離に対抗する。
【0007】
本発明によれば、棒およびリンクは、棒の第2の長手方向先端部において、長手方向軸に平行な方向に従ってリンクからオフセットされる少なくとも1つの空洞を形成し、この少なくとも1つの空洞は、
リンクの周表面の一部によって形成された第1の表面と、
棒の外部表面の一部によって形成された第2の側方表面であって、この第2の側方表面はリンクの周表面と棒の外部表面との間の交差線から、棒の第1の長手方向先端部の方向に延在する、第2の側方表面と、
棒によって形成され、棒の第1の長手方向先端部の方向に第1および第2の被覆表面の一方を延長する第3の底部表面と
によって範囲を定められる。
【0008】
各空洞内で、交差線は、第3の底部表面から延び、第1の表面の範囲を定める。さらに、各空洞について、第3の底部表面は、横方向軸に平行な方向に従って、第2の側方表面に関して棒の外側に向かって配置されている。最後に、各空洞は、長手方向軸および横方向軸に垂直な厚さ軸に従って、空洞の第3の底部表面を形成する第2の棒の一部から離れる方向に非対面(non-facing)である。
【0009】
本発明のおかげで、棒の第2の長手方向先端部の付近に形成された空洞は、リンク上への棒のオーバーモールドを行う際にバリが最も形成しやすい綜絖の特定のゾーンを空洞の内側へ凹ませることを可能にする。したがって、綜絖がジャカード式織機ハーネスに組み込まれるときに、ぴんと張られ、綜絖の外側表面に接触している、隣接する経糸は、空洞内に形成されたリエントラントエッジ(re-entrant edge)に接触することができない。これは、特に、リンクの周表面と棒の外側表面との間の交差線によって、または第1の底部表面と第3の底部表面との間のリエントラント接合エッジによって形成されるゾーンに関係する。これは、したがって、隣接する経糸が、これらのゾーン内に形成される傾向のある、バリと接触することを防ぐ。したがって、綜絖を使用するときに、バリが隣接する経糸を引っ掛ける、損傷する、または切断する危険性は、排除されないまでも、大幅に低減される。第3の底部表面から離れる方向において、第1の被覆表面に垂直な方向に従って空洞を制限する表面はないので、棒の第2の長手方向先端部は、スライドのないモールド内でオーバーモールドされてよく、これによりバリの形成がさらに制限される。
【0010】
有利であるが、必須ではない本発明の態様によれば、そのような綜絖は、技術的に許容可能な組合せで取り入れられる、次の特徴のうちの1つまたは複数を組み込み得る。すなわち、
- 各空洞の第3の底部表面は、それが延在する被覆表面と同一平面または実質的に同一平面である。リンクは、リンクの第1の横断面と第2の横断面との間でリンクを通り抜ける少なくとも1つのハウジングを含む。アンカーヒールは、厚さ軸に従ってリンクのハウジングを貫通する。ハウジングの輪郭面は、アイレットの側で長手方向に配置された近位部分を含む。ハウジングの近位部分は、長手方向軸に沿って、棒のところに形成された1つまたは複数の空洞とアイレットとの間に、配置される。アンカーヒールは、第2の長手方向先端部の自由エッジを形成する。棒の第1および第2の被覆表面は、アンカーヒールまで延在する。
- 棒の第2の長手方向先端部のアンカーヒールは、リンクの第1および第2の横断面にそれぞれ平行な2つの表面によって範囲を定められている。アンカーヒールは、ハウジング輪郭表面の近位部分に長手方向で当接する。
- 交差線は、第2の被覆表面に接するエッジまで延在する。
- 綜絖は、ポリマー材料の2本の棒を備え、各々が第1の長手方向先端部および第2の長手方向先端部を有する。2本の棒の第2の長手方向先端部は、各々がリンクの第1および第2の横断面を部分的に覆う。2つの空洞が、長手方向軸と横方向軸とを含みアイレットの幾何学的中心を通る平面の、両側の各棒の第2の長手方向先端部に形成される。
- 同じ棒の同じ第2の長手方向先端部のところに形成された2つの空洞は、厚さ軸に平行な同じ方向に従って互いに離れる方向に向く。リンクは平面であり、アイレットの幾何学的中心に関して対称的である。
- 第1の表面は、横方向軸に従ってとられたリンクの幅が、長手方向軸に沿ってアイレットから離れるにつれて減少するリンクの移行ゾーンにおいてリンクの周表面の一部によって形成される。
- 第3の底部表面は、第3の底部表面を棒の外側表面に接続し、湾曲しており、その凹みが第2の底部表面の方へ向く、接合エッジによって棒の外側に向かう横方向軸に従って範囲を定められる。
- 接合エッジは、交差線からある距離に延在し、その距離の最小値は、リンクの厚さの半分以上であり、これは厚さ軸に従って第1の被覆表面と第2の被覆表面との間で測定される。
- 長手方向軸および横方向軸に平行な平面内の接合エッジの突出部の曲率半径は、この平面内の第1の表面の突出部の曲率半径以上であり、好ましくは少なくとも1.5倍である。
- 空洞の長手方向レベルで、厚さ軸に従う各被覆表面の側において、棒の第2の長手方向先端部は、被覆表面によって形成される平面に関して厚さ軸に従って測定され、第1の被覆表面と第2の被覆表面との間で測定されるリンクの厚さ以上である、厚さを有する。
- 厚さ軸に従う各被覆表面の側において、棒の第2の長手方向先端部は、第3の底部表面と第2の長手方向先端部の自由エッジとの間で長手方向に、横方向軸に平行に測定され、自由エッジの方向に減少する幅と、厚さ軸に従って測定され、自由エッジの方向に減少する厚さとを呈する。
- リンクは、棒の第2の長手方向先端部によって完全に取り囲まれる先端部のところで少なくとも1つの長手方向ラグを備える。
【0011】
第2の態様によれば、本発明は、ジャカード機構と、経糸を案内するためのいくつかの綜絖とを装備する織機に関係し、そのうちの少なくとも1つは上述のものである。
【0012】
このジャカード織機の動作は、従来技術のものよりも信頼性が高く、経糸が引っ掛かる危険性が少ない。
【0013】
本発明は、その原理による綜絖およびその原理によるジャカード織機の3つの実施形態の以下の説明に照らしてより良く理解され、本発明の他の利点もより明確になるであろう。これらの実施形態は、添付図面を参照しながら単に例として挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による、ジャカード織機用の経糸案内綜絖の立面図である。
図2図1の細部IIの拡大図である。
図3】差込図A)に、図1の細部IIIの拡大図を、差込図B)に、差込図A)の矢印Bの方向の側面図を、差込図C)に、差込図A)の線C-Cによる断面を示す図である。
図4】2つの差込図A)およびB)に、図1から図3の綜絖に属するリンクの正面図および平面B-Bによる縦断面を示す図である。
図5】2つの差込図A)およびB)に、図1から図3の綜絖の棒とリンクと間の接合ゾーンの側面図、さらには図2の平面V-Vによる部分的縦断面を示す図である。
図6図5の矢印VIの方向の立面図における同じ接合ゾーン、さらにはそれぞれ断面線A-A、B-B、C-C、およびD-Dでとられたいくつかの断面を示す図である。
図7】2つの差込図A)およびB)に、2つの異なる角度で見たときの接合ゾーンを示す2つの斜視図である。
図8】第2の実施形態による綜絖に関する図7の差込図A)に類似する図である。
図9】3つの差込図A)、B)およびC)に、第2の実施形態の綜絖の接合ゾーンの側面図、縦断面図、および正面図を、差込図A)の矢印Cの方向で示す図である。
図10】第3の実施形態による綜絖に関する図6に類似する正面図、さらには断面線A-A、B-B、C-C、およびD-Dでそれぞれとったいくつかの断面図を示す図である。
図11図1から図10に示されている綜絖のうちの少なくとも1つ、さらには本発明によるハーネスを組み込んだ、本発明によるジャカード式織機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図11に示されているジャカード式織機Mは、いくつかのフック104を制御するジャカード機構102を備える。各フック104の下側先端部は、ヨーク106に関連付けられている。各ヨーク106の下側先端部106aは、経糸108用のリンク2ガイドを装備する綜絖1の上側先端部1aに接続されている。各綜絖1は、その下側先端部1bによって、吊りビーム112に固定されたばね110に接続されており、ビーム112は織機M上の図示されていないフレームにしっかりと固定されている。様々なヨーク106は、スタッフィングボード(stuffing board)114内に配置された穴を通り抜け、織機の深さおよび幅にわたって、分配される。要素1、106、110、および114は、織機Mに属しジャカード機構102によって制御されるハーネスHを形成する。
【0016】
図1から図10に示されている綜絖は、ハーネスHに組み込まれることを意図されている。
【0017】
図1から図7は、織機M上のハーネスHの経糸のための綜絖1ガイドの第1の実施形態を示している。
【0018】
綜絖1ガイドは、長手方向軸X1に従って延在し、綜絖本体部10およびリンク2を含む。綜絖本体部10は、長手方向軸X1に沿って、リンク2の両側に配置された2本の個別の棒4を備える。
【0019】
棒4は、Nylatron(登録商標)または天然ポリアミドPA6などの、ポリマーから作られ、好ましくは充填剤を添加しない。これらは、リンク2上にオーバーモールドされ、言い換えれば、リンク2の周りのオーバーモールド動作によって得られる。
【0020】
オーバーモールドとは、リンク2が少なくとも部分的に、リンク2の周りに陥凹部を一緒になって画成するモールドの少なくとも2つの部分から形成される射出成形モールド内に置かれることを意味する。この陥凹部は、棒4を形成することを意図されているポリマー材料を注入することによって充填される。実際には、綜絖1の2本の棒4は、有利には、2つの陥凹部を形成するモールド内でリンク2上に同時にオーバーモールドされる。オーバーモールド作業の最後に構成される棒の各々は、好ましくは、一体型である。以下で説明されるように、各棒4は、リンクによって画成されるハウジング内に係合される、ヒールと呼ばれる棒の一部によってリンク2に固定される。
【0021】
Y1およびZ1は、長手方向軸X1に垂直な綜絖1の2つの軸である。軸Y1はリンク2の幅に応じて延在し、Z1軸はリンク2の厚さに応じて延在する。Y1軸は綜絖1に対する横方向軸を構成し、軸Z1は綜絖1に対する厚さ軸を構成する。軸X1、Y1、Z1によって形成される参照フレームの中心は、リンク2のアイレット22の幾何学的中心C22に配置される。
【0022】
各先端部において、綜絖本体部10は、それぞれヨーク106またはばね110と協働するように設けられた、フック手段11Aまたは11Bを提供している。より正確には、図1の上側部分に示されている、棒4の一方は、第1の先端部42にフック手段11Aを載せ、図1の下側部分に示されている、棒4の他方は、第1の先端部42にフック手段11Bを載せる。フック手段11Aは、上側の棒4の周りに装着された、図示されていないチューブによりヨーク106を通しクランプするための開口部14を形成するエンドピース12を備える。フック手段11Bは、ばね110および摺動ダンパー19内にねじ込まれることを意図された雄ねじ18を備える。
【0023】
フック手段11Aおよび11Bは、それぞれ、綜絖1の上側先端部1Aおよび下側先端部1Bに配置され、好ましくは、棒4の残りと同時に、リンク2上にオーバーモールドによって製造される。
【0024】
フック手段11Aおよび11Bの例は、限定的ではない。たとえば、フック手段11Aは、特許文献2の教示によるものであってよい。
【0025】
棒4は、フック手段11Aおよび11Bを除いて、互いに同一である。
【0026】
各棒4は、その第1の長手方向先端部42の反対側で、第2の長手方向先端部44を備え、これにより、オーバーモールドによってリンク2に接続される。44Aは棒4の第2の長手方向先端部44の自由エッジであり、その第1の長手方向先端部の反対側にあることに留意されたい。
【0027】
各棒4は、それぞれ長手方向先端部42および44を画成し、それぞれ円形および非円形の断面を示す、互いに一体である、2つの部分43および45を備える。したがって、部分43は円形の断面を有し、部分45は非円形の断面を有する。長手方向軸X1に沿って、部分43は、部分45とフック手段11Aまたは11Bとの間に配置され、部分45は、部分43とリンク2との間に配置される。
【0028】
図3に示されているように、部分43の円形断面は、長手方向軸X1に平行な軸X43を中心とし、厚さ軸Z1に平行に測定された非ゼロの距離d43だけ長手方向軸X1からオフセットされる。横方向軸はY43と記され、横方向軸Y1に平行で、軸X1に関して軸X43と同じ方向に、距離d43だけ横方向軸Y1に関してオフセットされる。軸X43およびY43を含む平面は、棒4の部分43の対称平面である。
【0029】
部分45の、長手方向軸X1に垂直な横断面は、第2の長手方向先端部44と部分43との接合部を除いて一定である。言い換えると、棒4の第2の長手方向先端部44は、部分45の一部であり、その横断面は、長手方向軸X1に沿って変化する。
【0030】
リンク2は、単一の厚さの金属板、好ましくはステンレス鋼板から形成される。有利には、金属板を切断することによって得られる。
【0031】
リンクは、長手方向軸X2に沿って延在する。リンク2の幅部分が延在する、Y2と記される、横方向軸、およびこのリンクの厚さ部分が延在する、Z2と記される、厚さ軸がある。リンク2上の棒4のオーバーモールドされた構成では、軸X2、Y2、およびZ2はそれぞれ、軸X1、Y1、およびZ1と一致している。
【0032】
リンク2は、研磨された丸みを帯びた側方エッジ21を提供し丸みを帯びたエッジを有する経糸108を通すためのアイレット22を画成する、中央部分20を含む。このアイレット22は、厚さ軸Z2に従ってリンク2を貫通している。軸X2、Y2、Z2は、リンクの中間厚さ部分においてアイレット22の幾何学的中心C22で交差する。アイレット22は、リンク2の主平面内で長方形の形状であり、これは中央部分20の正中面であり、軸X2およびY2を含む。幾何学的中心C22は、リンク2の対称点であり、これは、棒4のオーバーモールド作業のためのモールドへの配置を、その向きに関する前提条件なしに円滑にする。
【0033】
リンク2は、また、2つの対向する長手方向先端部において、長手方向軸X2に従って、中央部分20にわたって延在する2つの長手方向ラグ24を備える。ラグ24は、長手方向先端部ラグであり、各々が中央部分20の幅に関して縮小された幅を呈する。中央部分20とラグ24との間で、横方向軸Y2に従って測定されるリンクの幅は、ラグ24に向かって漸進的に減少し、中央部分20の側方エッジ21は、湾曲エッジ25によって延長され、それらの間で中央部分20と長手方向ラグ24との間の移行ゾーン26の範囲を定める。
【0034】
図に示されている例では、移行ゾーン26は、リンク2の幅が長手方向軸X1に沿ってアイレット22から離れるにつれて減少するゾーンである。
【0035】
長手方向ラグ24の側方エッジは、27と記される。
【0036】
リンク2の第1の横断面および第2の横断面は、それぞれ28と29と記されている。これらの横断面は軸X2とY2に平行である。第1の横断面28は、図1図2図4図5、および図7の差込図B)で見ることができ、第2の横断面29は、図4図5図6、および図7の差込図A)で見ることができる。横断面28と29は互いに対向し、リンク2の厚さe2分だけ厚さ軸Z2に沿ってオフセットされ、これは一定である。横断面28と29は、アイレット22から長手方向ラグ24まで、リンク2の表面全体にわたって延在する。
【0037】
移行ゾーン26の各々において、細長ハウジング32が配置されており、これはオリフィスを構成し、その横断面28と29との間を、言い換えれば、厚さ軸Z2に平行にリンク2を貫通する。細長ハウジング32の最大寸法は、長手方向軸X2に従って延在する寸法である。
【0038】
リンク2の周表面は31と記される、言い換えれば、このリンクの外側エッジはアイレット22を含まず、ハウジング32の外側にある。周表面31は、長手方向エッジ21、湾曲エッジ25、および側方エッジ27を含む。
【0039】
各細長ハウジング32は、アイレット22の側にある第1の近位ローブ322と、長手方向ラグ24の側にある第2の遠位ローブ324とを備える。ローブ322および324は、長手方向軸X2に従って互いに連通する。したがって、各ハウジング32は、全体として鍵穴形状である。
【0040】
細長ハウジング32は、幾何学的中心C22を通る、軸Y2およびZ2を含む平面に関して互いに対称である。さらに、各細長ハウジング32は、幾何学的中心C22を通る、軸X2およびZ2を含む平面に関して対称である。
【0041】
各ハウジング32は、長手方向軸X2に従ってアイレット22の側で近位ローブ322の底部を画成する近位部分323と、最も近い長手方向ラグ24の側で遠位ローブ324の底部を画成する遠位部分325とを含む、閉じられた輪郭によって範囲を定められる。
【0042】
各オーバーモールドされた棒4の第2の長手方向先端部44は、移行ゾーン26において、リンク2の2つの横断面28および29を部分的に覆い、ハウジング32のレベルで、横断面28と29との間を貫通する。ハウジング32を通り抜けるときに、各棒4の第2の長手方向先端部44は、このハウジングの輪郭と協働するアンカーヒール442を形成し、この協働は、棒4とリンクとの間の、長手方向および横方向の両方向、言い換えれば、軸X1およびY1に平行な、相対的変位に対抗するようになっている。特に、ヒール442とハウジング32の輪郭との協働は、長手方向軸X1に平行な棒4とリンク2の分離に対抗する。
【0043】
図5の差込図B)の断面におけるアンカーヒール442のトレースは斜線で示されている。各アンカーヒール442は、それが属する棒4のリンク2上にオーバーモールドする際に形成される。
【0044】
各アンカーヒール442は、第1の横断面28と第2の横断面29との間の、これが形成されているハウジング32を貫通する。アンカーヒール442は、ハウジング32をシームレスに通り抜ける。
【0045】
各アンカーヒール442は、それが形成されている細長ハウジング32を完全に満たす。特に、ヒール442は、このハウジングの閉じられた輪郭の近位部分323および遠位部分325に当接し、これは、長手方向軸X1に平行な方向に従ってリンク2に関する第2の長手方向先端部44の相対的変位を阻む。ハウジング32内のヒール442のこの固定は、また、横方向軸Y1に平行な、横方向に従う棒4とリンク2との間の変位を阻む。
【0046】
この実施形態では、ハウジング32の閉じられた輪郭の近位部分323に当接しているアンカーヒール442の部分は、棒4の第2の先端部44の自由エッジ44Aを形成する。
【0047】
棒4の第2の先端部44は、移行ゾーン26の第1の側で、リンク2の第1の横断面28を部分的に覆う第1の被覆表面S448と、軸Z1に従う第1の側と反対の、同じ移行ゾーン26の第2の側で、リンク2の第2の横断面29を部分的に覆う第2の被覆表面S449とを提供する。被覆表面S448のトレースは、図6において斜線で示されている。被覆表面S448およびS449の各々は、アンカーヒール442によって範囲を定められている。言い換えると、被覆表面S448、S449は、アンカーヒール442まで延在している。被覆表面S448、S449は、それぞれ第1の横断面28、第2の横断面29と同一平面であり、したがって、軸X1、Y1によって形成される平面に平行に、また厚さ軸Z1に垂直に、延在する。したがって、リンク2の一部は、各棒4の第2の長手方向先端部44の2つの被覆表面S448、S449によって覆われ、その間に埋め込まれている。これは、横断面28、29に垂直な2つの方向、言い換えれば、厚さ軸Z1に平行な2つの方向における棒4とリンク2との間の相対的変位を防ぐ。
【0048】
したがって、棒4の各第2の長手方向先端部44は、リンク2と一体になっており、いかなる方向にも移動する可能性はない。
【0049】
第2の長手方向先端部44は一体である。これは被覆表面S448、S449を画成し、アンカーヒール442を含む。したがって、被覆表面S448、S449およびアンカーヒール442は、同じオーバーモールド作業で同じ陥凹部に充填することによって得られる。
【0050】
ハウジング32の近位部分323に最も近いアンカーヒール442の部分は、厚さ軸Z1に従って、それぞれ第1の横断面28の側と第2の横断面29の側とで2つの表面S442およびS’442によって範囲を定められている。表面S442およびS’442は、それぞれ、隣接する横断面28および29に対して平坦であり平行である。
【0051】
有利には、表面S442は第1の隣接する横断面28と同一平面にあり、表面S’442は第2の隣接する横断面29と同一平面にある。したがって、隣接する経糸108がリンク2と接触して移動する際の引っ掛かりを制限することが可能である。
【0052】
リンク2の各横断面28または29の側において、棒4の第2の長手方向先端部44は、湾曲した外部形状を有し、厚さ軸Z1に従って測定される厚さe4はヒール442に近づくにつれて、表面S442とS’442との間に画成されるヒール442の部分のレベルにおいてリンク2の厚さe2に等しい値をとるまで減少する。
【0053】
第2の長手方向先端部44の幅はl44と記され、横断面28の側で横方向軸Y1に平行に測定される。第2の長手方向先端部44の幅はl’44と記され、横断面29の側で横方向軸Y1に平行に測定される。リンク2の各側において、幅l44またはl’44は、ヒール442の自由エッジに近づくにつれて、ヒール442の自由エッジまたは細長ハウジング32の近位部分323の幅に等しい値をとるまで減少する。全体として、リンク2の両側、また図7を見るとわかるように、棒4の第2の長手方向先端部44は、表面S442またはS’442によって範囲を定められるヒール422の部分によってくちばしが構成されるイルカの頭部に似た形状を有する。
【0054】
図6の断面B-BおよびC-Cを見るとわかるように、長手方向ラグ24は、棒4の第2の長手方向先端部44に完全に埋め込まれている。言い換えると、各ラグ24における側方エッジ27、横断面28、29の一部分、および自由エッジは、関連する第2の長手方向先端部44と接触している。言い換えると、各第2の長手方向先端部44は、長手方向ラグ24を完全に取り囲んでいる。
【0055】
棒4の外側表面は、S4と記される。
【0056】
この外側表面S4は、部分45上で非円形断面を有し、アイレット22側では、表面S442およびS’442で終端している。
【0057】
各棒4について、棒4がリンク2にオーバーモールドされるモールドによって分割面が画成されると考えられる。この分割面は、リンク2の周りに棒4のための陥凹部を形成するモールドの2つの部分の閉じた平面に対応する。この分割線は、リンク2の第1の横断面28に平行であり、これと一直線上にある。綜絖1の分割線のトレースを形成する平面はπと記される。平面πは、第1の横断面28と被覆表面S448を含む。
【0058】
図7の差込図Aおよび差込図Bの比較からわかるように、第1の横断面28の側から見た場合と、第2の横断面29の側から見た場合とでは、先端部44の外部形状が異なる。言い換えれば、外部表面S4の形状は、棒4上の平面πに関して、棒4の一方の側または他方の側から見たときによって異なる。この幾何学的形状は、オーバーモールド作業時に使用されるモールドの陥凹部によって与えられる。
【0059】
より正確には、長手方向軸X1に沿った第2の長手方向先端部44の一部において、幅l’44は厳密には幅l44よりも小さい。
【0060】
空洞C44は、軸X1およびZ1を含む平面に関して、第2の長手方向先端部44の両側で棒4およびリンク2によって形成される。この空洞は、横方向軸Y1に従って、棒4の第2の端部44によって覆われているリンク2の部分を越えて、延在する。
【0061】
第2の長手方向先端部44上に配置された2つの空洞C44は、軸X1およびZ1を含む平面に関して互いに対称である。以下の説明は、これらの空洞のいずれにも適用される。以下で言及されている第2の長手方向先端部は、棒4の一方の第2の長手方向先端部44である。
【0062】
空洞C44は、リンク2の第1の表面S1、棒4の第2の側方表面S2、および棒4の第3の底部表面S3によって画成される。
【0063】
底部表面S3は、第1の長手方向先端部42の方向に、特に長手方向軸X1に従って、延在し、第1の被覆表面S448は第2の長手方向先端部44によって形成される。言い換えると、底部表面S3と第1の被覆表面S448との間の接合部は、第1の被覆表面S448によって形成される平面に含まれる線である。第1の実施形態では、有利には、底部表面S3は平面π内にある。したがって、表面S3およびS448は同一平面上にある。第3の底部表面S3は、長手方向軸X1に従って、リンク2の第1の横断面28の、周表面31を越えた延長線上にある。第1の実施形態では、有利には、表面S3および第1の横断面28も同一平面上にある。
【0064】
代替的に、表面S3およびS448のうちの、表面S3および第1の横断面28は、厳密に同一平面上になく、実質的に同一平面であり、それらの間に10°未満の角度を形成する。
【0065】
第1の表面S1は、リンク2の湾曲エッジ25の一部によって構成され、これは長手方向軸X1に平行な方向に従って第3の底部表面S3の側に配置される。言い換えると、第1の表面S1は、長手方向軸X1に従ってアイレット22から離れる方向に移動するときにリンクの幅が減少する、移行ゾーン26の一つにおいて、周表面31の一部によって構成される。
【0066】
第2の側方表面S2は、リンク2の外側表面S4と周表面31との間の交点を形成する線L44から第1の長手方向先端部42の方向に延在する外側表面S4の一部によって形成される。空洞C44内で、交差線L44は第1の表面S1の範囲を定める。交差線L44は、第1の表面S1と第2の表面S2との間の接合部を画成する。第2の表面S2は、第2の表面S2が横方向軸Y1に平行ではないという意味で、横方向であると言える。したがって、第2の側方表面S2は、軸Y1に向かって概ね横方向に延在する。第2の側方表面S2は、空洞C44を横方向に、言い換えると、横方向軸Y1に従って、内側に向けて、言い換えると、長手方向軸X1の方向に範囲を定める。交差線L44は、第2の被覆表面S449と同じ長手方向レベルに配置される。交差線L44は、第1の横断面28から第2の横断面29まで延在する。特に、交差線L44は、第1の被覆表面S448から第2の被覆表面S449まで延在する。交差線L44は、空洞C44内で、第3の底部表面S3から延在する。
【0067】
図7の差込図A)において、第1、第2、および第3の表面S1、S2およびS3は、それらの配置を円滑にするために、異なる密度を有するドットを有するゾーンによって識別される。同様に、交差線L44の延長線上に軸線が追加され、配置が容易になっている。
【0068】
第3の底部表面S3は、横方向に、言い換えると、横方向軸Y1に平行な方向に従って、長手方向軸X1から離れる方向に、言い換えると、長手方向軸X1に沿ってこの底部表面S3と同じゾーン内に配置されるリンク2の部分に関して、外側方向に、延在する。言い換えると、底部表面S3は、軸X1およびZ1を含む平面からある距離のところに延在し、この距離は非ゼロであり、この平面と第2の長手方向先端部44の材料内に埋め込まれた周表面31の部分、特に長手方向ラグ24の側方エッジ27との間の距離よりも大きい。
【0069】
したがって、各空洞C44は、横方向軸Y1に平行にリンク2からオフセットされている。
【0070】
それに加えて、各空洞C44は、有利には、長手方向軸X1に平行にリンク2からオフセットされる。言い換えると、第3の底部表面S3は、長手方向軸X1に平行な方向に従って、長手方向軸Y1に沿ってこの底部表面S3と同じゾーン内に配置されるリンク2の部分に関して、第1の長手方向先端部42の方向に延在する。
【0071】
この場合、空洞C44は、このリンクの横断面28および29のすべての方向、言い換えると、被覆表面S448およびS449に平行なすべての方向に平行にリンク2からオフセットされる。言い換えると、空洞C44は、リンクの外側に横方向に配置され、第1の長手方向先端部42の方向に、第2の先端部44によって覆われていないリンクの部分を超えて長手方向に配置される。
【0072】
第1の表面S1と第3の底部表面S3との間の接合部のところで、第1のリエントラントエッジA1が画成される。このエッジA1は、第1の被覆表面S448と第3の底部表面S3との間の接合線にも対応する。このエッジA1は交差線A44まで延在する。
【0073】
第2のリエントラントエッジA2は、第2の側方表面S2と第3の底部表面S3との間の接合部を画成する。第2の側方表面S2と第3の底部表面S3はエッジA2で交わる。エッジA2は、概ね長手方向軸X1に従って延在する。
【0074】
外側エッジA3は、外側に向かって横方向に第3の底部表面S3の範囲を定める。エッジA3は、交差線L44に対向するエッジA1の一方の先端部と、この同じ交差線に対向する接合エッジA2の一方の先端部との間の接合エッジである。このエッジA3は突出しており、第3の底部表面S3を、リンク2の横断面28の側、言い換えると、図7の差込図B)で見える側で、第2の長手方向先端部44の外側形状を画成する外側表面S4の一部S44に接続する。言い換えると、底部表面S3は外側表面S4の部分S44上に開いている。表面のその部分S44は、表面S442をアイレット22から離れる方向に延長したものである。
【0075】
言い換えれば、空洞C44は、
- 交差線L44を共通線とする、表面S1とS2との間のリエントラント二面体(re-entrant dihedron)、
- エッジA1を共通線とする、表面S1とS3との間のリエントラント二面体、
- エッジA2を共通線とする、表面S2とS3との間のリエントラント二面体
によって画成される。
【0076】
空洞C44の各々は、バリの存在が妨げにならない補強材を構成するが、それは綜絖1がハーネスHに組み込まれ、織機Mが稼動しているときに綜絖1に隣接する経糸にバリが接触する危険性がないからである。
【0077】
特に、平面X1、Z1の各側において、各空洞C44は、平面X1、Y1のこの側において棒4の外側表面S4とリンク2の周表面31との唯一の接合部である交差線L44に対する陥凹部を構成する。
【0078】
軸線X1、Y1に平行で、横断面29および被覆表面S449を含む平面はπ’と記される。
【0079】
厚さ軸Z1に従って、第2の側方表面S2は平面πとπ’との間にある。
【0080】
側方表面S2と反対側のπ’平面の側に配置される外側表面S4の一部はS’44と記される。表面S’44の部分は、図7の差込図A)に見えており、表面S44の部分の反対側である。これは表面S’442をアイレット22から離れる方向に延長する。
【0081】
幅l44は表面S44の幅であり、幅l’44は横方向軸Y1に平行に測定された表面S’44の幅である。幅l44およびl’44は、底部表面S3からヒール442の自由エッジに向かって減少する。
【0082】
第3の底部表面S3は、横方向軸Y1に平行な横方向に従って、第2の側部表面S2に関して、外側に向かって延在する。
【0083】
厚さ軸Z1に平行に測定された棒4の厚さは、断面が一定である棒4の部分45の一部において、e4maxと記される。リンク2の埋め込み厚さは、第1の横断面28の側の第2の長手方向先端部44において、e44と記されている。厚さe44は、空洞C44の長手方向レベルで厚さ軸Z1に平行に、言い換えれば、エッジA3とA2との交差点とエッジA3とA1との交差点との間の長手方向に、第1の被覆表面S448の平面と表面S44との間で、測定される最大距離である。第2の横断面29の側の、第2の長手方向先端部44におけるリンク2の埋め込み厚さは、e’44と記されている。厚さe’44は、第2の被覆表面S449の平面と表面S’44との間の、空洞C44の長手方向レベルで厚さ軸Z1に平行に測定された最大距離である。以下の関係が適用される。
e4max=e2+e44+e’44 (式1)
【0084】
厚さe44およびe’44の各々は、厚さe2以上である。以下の関係が適用される。
e44≧e2 (式2)
e’44≧e2 (式3)
【0085】
空洞C44の長手方向レベルにおいて、棒4の外側表面S4は、第1の被覆表面S448の平面に関して厚さ軸Z1に平行に測定された最大高さを呈し、これはe’44+e2に等しく、したがって厚さe2の2倍以上である。
【0086】
表面S44と横断面28との間の接合部まで延在するリエントラントエッジは、A48と記される。このエッジは、平面π内に含まれ、外側で被覆表面S448に接している。表面S’44と横断面29との間の接合部まで延在するリエントラントエッジは、A49と記される。このエッジは、平面π’内に含まれ、外側で被覆表面S449に接している。棒4上に存在する2つの空洞C44の各々の各交差線L44は、エッジA49まで延在する。
【0087】
綜絖1がハーネスHに一体化されているときに、隣接する経糸は、ぴんと張られ、概ね軸X1を横断する方向に従って延在するので、直線とみなされ得る。この場合、これらの糸のうちの1本が第2の長手方向先端部44に擦れるようになった場合、これは表面S44またはS’44の一方または他方に接触するが、その幾何学的形状を考慮すると、空洞C44のうちの1つの内側に侵入することはできない。これらの条件下では、そのような糸が、この空洞の内側に見つかるバリに引っ掛かる、バリにより損傷する、または切断される危険性はない。
【0088】
しかしながら、交差線L44に沿って、および/またはエッジA1およびA2の一方に沿って、バリが最も形成されやすいのは、各空洞C44の内側である。
【0089】
綜絖1の第2の長手方向先端部44に当接している経糸108の様々な位置が、図6の断面C-Cにおいて太い混線によって表されている。第2の長手方向先端部44の幾何学的形状は、経糸108を2つの空洞C44の外側で、エッジA1、A2および線L44からある距離のところに維持する。
【0090】
エッジA3は平坦であり、軸X1およびY1に平行な平面πに含まれる。その凹みは、軸X1およびZ1を含む平面に向かって、したがって第2の側方表面S2に向かって曲がっている。言い換えると、エッジA3は、軸X1とY1に平行な面内においてエッジA1とA2の間で外側向きに出っ張る。
【0091】
ところで、綜絖1のどの表面も、この第3の底部表面に垂直な厚さ軸Z1に従って、第3の底部表面S3から離れる方向で空洞C44に向いておらず、したがって、被覆表面S448に垂直になっていない。言い換えると、空洞C44、特に、第3の底部表面S3、第1の表面S1、および第2の側方表面S2は、厚さ軸Z1に平行な方向D1において互いから離れる方向に、またこの表面S3を形成する棒4の第2の長手方向先端部44の部分から離れる方向に、向く。これは、空洞C44が分割線πを有し、スライドのないモールドを用いて作製されることを可能にし、これはコスト、オーバーモールド作業の信頼性、およびバリの低減に関して有利である。
【0092】
第1の表面S1および接合エッジA3は各々、長手方向軸および横方向軸X1、Y1に平行な平面内に、円の円弧である突出部を有する。軸X1、Y1に平行な平面内の表面S1の突出部の曲率半径は、R1と記される、言い換えると、空洞C44の範囲を定める湾曲エッジの部分である。軸X1およびY1に平行な同じ平面内のエッジA3の突出部の曲率半径はR3と記される。曲率半径R1およびR3は、図6に示されている。曲率半径R3は、曲率半径R1以上であり、好ましくはこの半径R1の1.5倍以上である。
【0093】
エッジA3のこの比較的大きな曲率半径R3は、湾曲エッジ25と比較して、底部表面S3にテーパ形状を付けるが、これはこの接合エッジA3によって画成される空洞C44に経糸108が係合するのを防止するのに有利である。
【0094】
各ハウジング32は、隣接する第2の長手方向先端部44の空洞C44に関して主にアイレット22の側に、長手方向軸X1に沿って、配置される。特に、ハウジング32の近位部分323は、最も近い空洞C44とアイレット22との間に、長手方向軸X1に沿って、配置される。図示されていない代替的形態では、ハウジング32の遠位部分325は、最も近い空洞C44とアイレット22との間に、長手方向軸X1に沿って、配置される。
【0095】
各棒4について、各被覆表面S448、S449は、各空洞C44の長手方向レベルに、さらには各空洞C44に関するアイレット22の長手方向側に、主に、好ましくは排他的に配置される。
【0096】
有利には、各第2の長手方向端部44のレベルにおいて、2つの空洞C44は、リンク2の横断面28および29に垂直な、同じ方向D1に従って互いに向き合っていない第1の表面S1、2つの第2の側方表面S2、および第3の底部表面S3を有する。さらに、同じ棒4の2つの空洞C44の2つの第3の底部表面S3は同一平面である。
【0097】
実際には、2つの棒4の第2の長手方向先端部44の各々に2つの空洞C44が設けられていることを考慮すると、綜絖1は4つの空洞C44を有している。これら4つの空洞C44の4つの第3の底部表面S3は、有利には同一平面であり、これは棒4のオーバーモールド用モールドについて、単一の分割線を使用することを可能にし、このモールドの製造を簡素化し、またこの分割線でのバリも低減する。
【0098】
平面πは、軸X1およびY1を含むアイレット22の中央平面から、このアイレットの厚さe2の半分だけオフセットされている。これは、第3の底部表面S3が被覆表面S448と横断面28との延長線上にあることを可能にする。
【0099】
それに加えて、距離d43は厚さe2の半分に等しい。したがって、軸X43は平面πに含まれ、棒4の部分43の対称面X43、Y43は、各空洞C44の第3の底部表面S3と同一平面である。これは、各棒4の部分43がモールドの分割線に対して対称であることを意味する。
【0100】
2本の棒4の第2の長手方向両先端部44は、軸Y1およびZ1に平行でアイレット22の中心を通る平面に関して互いに対称である。その結果、平面πは両方の棒に対して同じである。ここでも、これはモールドの製造を単純化し、バリを制限する。
【0101】
接合エッジA3と交差線L44との間で測定された距離はd3と記される。有利には、距離d3の最小値は、リンク2の厚さe2の半分以上である。接合エッジA3が平面πに含まれるときに、d3は、接合エッジA3とこの平面内の交差線L44のトレースとの間の平面πにおいて測定された距離である。実際には、距離d3の最小値は、0.1から0.15ミリメートルの間で選択されてよく、これは棒4を著しく広げるかまたは重くすることなく、空洞C44の内側に存在するバリから経糸108を十分に離すための良好な結果をもたらす。
【0102】
以上に鑑みて、空洞C44の効果は、バリの発生という点で最も重要な棒4とリンク2との間の交差点、すなわち、長手方向軸X1に対して本質的に垂直な交差点、特に交差線L44とエッジA1との交差点が、各空洞C44において、したがって、図6の断面C-Cで表されるように、表面S44またはS’44の一方または他方に押し付けられる隣接する経糸108からある距離のところに後退させられることであると理解される。
【0103】
これは、特に、第3の底部表面S3に対して、10°以内で、垂直である交差線L44に当てはまる。
【0104】
図示されていない、代替的形態において、交差線L44は湾曲している。
【0105】
バリは、また、オーバーモールド作業中に、長手方向軸X1に平行で、第2の先端部44の外側、したがって空洞C44の外側に配置される、棒4の実質的に直線的な部分に、形成され得る。これらのバリには、長手方向軸X1に平行でないゾーンに形成され得るバリほどの危険性はない。
【0106】
他のバリは、また、リエントラントエッジA48およびA49に沿って形成され得るが、これらは直線的であり、エッジA48およびA49に接触することなく、リンク2の周表面31に、また表面S44およびS’44の一方に当接するので、経糸108を引っ掛ける危険性はない。
【0107】
図8およびそれ以降に示されている第2および第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の要素は同一の参照番号を付される。図8およびそれ以降のうちの1つにおいて、説明の残りにおいて言及されることなく、またはこれらの図に示されることなく説明において言及されることなく、参照がなされている場合、それは、第1の実施形態における同じ参照を有するものと同じ要素に関係する。以下では、もっぱら、これら第2および第3の実施形態のジャカード綜絖ガイドと第1の実施形態との相違点を説明する。
【0108】
第2の実施形態では、リンク2のハウジング32は、このリンクの長手方向先端部のところで開いている切欠である。言い換えると、第1の実施形態の長手方向ラグ24に似たラグは設けられておらず、ハウジング32の輪郭は開いている。この輪郭は、第1の実施形態の遠位部分325に似た部分を含まない。周表面31は、ハウジング32の輪郭の外側およびアイレット22の外側に画成され、長手方向エッジ21および湾曲エッジ25を含む。
【0109】
第1の実施形態に関する別の相違点は、リンク2が厚さ軸Z2に平行に測定された厚さe2を呈することであり、この厚さは一定ではない。この厚さは、図9を見るとわかるように、移行ゾーン26に比べて、アイレット22を画成する中央部分20において大きい。横断面28および29は、厚さe2が変化する横断面28の部分を除き、軸X1およびY1に平行である。
【0110】
被覆表面S448のトレースは、図9において斜線で示されている。
【0111】
2つの空洞C44が、棒4の第2の長手方向先端部44の軸X1およびZ1を含む平面の両側にそれぞれ形成され、各々が第1の表面S1、第2の側部表面S2、および第3の底部表面S3によって画成される。空洞C44は、第1の実施形態と実質的に同じ幾何学的形状を有する。
【0112】
厚さe2の変化する特徴は、空洞C44の第3の底部表面S3が配置される平面πがそのアイレット22の中心C22において軸X2およびY2によって画成されるリンク2の正中面と同一平面になることを可能にする。言い換えると、図9に見えている厚さの減少を呈するリンク2の幾何学的形状は、モールドの分割線、すなわち第1の実施形態と同様に画成される平面πと、リンク2の正中面を有する空洞44の第3の底部表面S3とが整列されることを可能にする。
【0113】
この実施形態では、アンカーヒール442は、それがオーバーモールドされるハウジング32全体を満たさない。特に、ヒール442のどの部分も、第1の実施形態の表面S442およびS’442に似た表面を提供しない。アンカーヒール442の自由エッジ442Aは、長手方向軸X1に沿って、このアンカーヒール442がオーバーモールドされているハウジング32の閉じられていない輪郭の近位部分323から非ゼロの距離d442に延在する。アンカーヒール442は、リンク2の横断面28と29との間で、ハウジング32を貫通している。この第2の実施形態において、アンカーヒールの自由エッジ442Aは、棒4の第2の先端部44の自由エッジ44Aを形成する。
【0114】
第3の実施形態において、綜絖1の棒4の第2の長手方向先端部44の軸X1およびZ1を含む平面の両側に画成される2つの空洞C44は、それぞれの第3の底部表面S3を有し、これは同一平面ではないが、第2の長手方向先端部44によって形成された2つの被覆表面S448およびS449の延長線上にそれぞれ画成され、移行ゾーン26において、リンク2の横断面28および29をそれぞれ部分的に覆う。被覆表面S448のトレースは、図10において灰色斜線で示されている。被覆表面S448は、軸X1およびZ1を含む平面に関して対称的ではない。
【0115】
第2の長手方向先端部44の両側に配置された2つの空洞C44の第3の底部表面S3は、平行であり、厚さ軸Z1に平行に、移行ゾーン26においてリンク2の厚さe2に等しい距離dπだけオフセットされた、2つの平面πおよびπ’によって画成される。この実施形態において、したがって、各棒4がリンク2上にオーバーモールドされるモールドに対して単一の分割線はない。しかしながら、棒4上で、平面X1,Y1の両側で、分割線は、排他的に平面π内で、それぞれ平面π’内に延在し、これは、隣接する経糸に対する引っ掛かりを引き起こし得るオーバーモールドによるバリの形成を制限する。
【0116】
2つの空洞C44は、被覆表面S448およびS449に垂直であり、軸線Z1に対して平行であり、各々それぞれの底部表面S3を画成する棒4の第2の長手方向先端部44の部分から離れる方向に配向されるそれぞれの方向D1およびD’1に従って制限されない。これら2つの方向D1およびD’1は互いに反対であり、すなわち、図10の断面C-Cの右側に示されている空洞C44について考慮された方向D1については上方に向けられ、この断面の左側に示されている空洞C44について考慮された方向D’1については下方に向けられる。
【0117】
この第3の実施形態では、リンク2は第1の実施形態のものと同一である。ヒール442は、ハウジング32の輪郭の近位部分323まで延在し、表面S442およびS’442は、リンク2の横断面28および29にそれぞれ平行である第1の実施形態と同様に画成されており、これらの横断面28および29と同一平面でないが、隣接する経糸108がリンク2と接触して変位するときに引っ掛からないようにハウジング32の内側に向かって、そこから後退して配置される。
【0118】
第1の実施形態と同じ表記法を使用して、以下の関係がある。
e4max=e2+e44+e’44 (式1)
e44≧e2 (式2)
e’44≧e2 (式3)
【0119】
この第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、ハウジング32の閉じられた輪郭の近位部分323に当接するアンカーヒール442の部分は、棒4の第2の先端部44の自由エッジ44Aを形成する。
【0120】
本発明の、図示されていない、代替的形態において、フック手段11Aを載せた上側棒4の2つの空洞C44は、隣接する被覆表面に対して垂直な第1の方向に非対面であり、フック手段11Bを載せた下側棒4の2つの空洞C44は、隣接する被覆表面に対して垂直な第2の方向に非対面であり、第2の方向は第1の方向とは反対である。言い換えると、上側棒と下側棒に設けられた空洞C44は、上側棒と下側棒との間で対向する方向に従って、それぞれの第3の底部表面S3に垂直に、限定されない。この場合、各棒4について、第3の底部表面S3が同一平面である場合に、上側棒4に対するモールド分割線は、下側棒4に対するモールド分割線に関して、厚さ軸Z1に沿って、第1および第3の実施形態のようにリンクが一定の厚さを有する場合に厚さe2に等しい距離だけオフセットされる。
【0121】
本発明の、図示されていない、別の代替的形態によれば、空洞C44のうちの少なくとも1つの空洞の底部表面S3は平坦ではない。
【0122】
同じく図示されていない別の代替的形態によれば、空洞C44の底部表面S3は、リンクの横断面と同一平面ではなく、言い換えると、それが延在するが被覆表面と同一平面でないが、後者に関して傾斜している。この場合、底部表面S3は、上述の表面S448またはS449のタイプの被覆表面を実質的に延ばすが、軸X2およびY2によって画成されるリンク2の正中面に対して平行ではない。
【0123】
代替的に、どのような実施形態であっても、リンク2はセラミック製とすることができる。
【0124】
本発明の、同じく図示されていない、別の代替的形態によれば、各ハウジング32は、長手方向軸X2に沿って並置された複数の陥凹部、たとえば複数の円形断面の穴によって形成され得る。
【0125】
本発明の、同じく図示されていない、別の代替形態によれば、各ハウジング32は、リンクの周表面31から形成され、横方向軸Y1に平行なリンク2の外側に開く、たとえば、長手方向ラグ24の側方エッジ27のところの、1つまたは複数の切欠によって形成され得る。
【0126】
本発明の、同じく図示されていない、別の代替形態によれば、各ハウジング32は、厚さ軸Z1に従って貫通していない。
【0127】
すべての実施形態において、ハウジング32は、棒4がアンカーヒール42によってリンク2に固定されることを可能にし、この固定は、棒が長手方向軸X1に平行にリンクから分離することを防ぐ。
【0128】
本発明の、図示されていない、さらに別の代替的形態によれば、空洞C44の範囲を定める第1の表面S1は、図に示されている実施形態と同様に、軸X1およびY1によって画成される平面に平行な表面の一部を含む。この第1の表面S1はまた、軸X1およびZ1によって画成される平面に平行な側方エッジ21の一部を含み得る。
【0129】
本発明の、図示されていない、さらに別の代替的形態によれば、棒4は、フック手段11Aおよび/または11Bの上に、特に、これらのフック手段の材料が棒4の材料と異なる場合に、オーバーモールドされる。
【0130】
本発明の、図示されていない、さらに別の代替的形態によれば、リンク2は、単一の長手方向先端部ラグ24を含む。
【0131】
本発明の、図示されていない、さらに別の代替的形態によれば、本発明による単一の空洞C44が、軸X1およびZ1を含む平面の片側の、第2の先端部44のところで、棒4上に形成される。
【0132】
本発明の、図示されていない、さらに別の代替的形態によれば、綜絖1は、単一の棒4を備えるか、または綜絖本体部10の棒4の一方のみが、1つまたは2つの空洞C44を設けられる。言い換えると、本発明は、単一の棒4を用いて実装される。
【0133】
本発明の実施形態または代替的形態にかかわらず、棒4の少なくとも1つの第2の先端部44に少なくとも1つの空洞C44が存在することは、オーバーモールドによるバリが最も形成されやすい綜絖の領域、すなわち交差線L44およびリエントラントエッジA1を空洞C44の内側に凹むように配置することを可能にする。これらの領域は、綜絖がジャカード式織機ハーネスHに組み込まれたときに、隣接する経糸108が到達しないので、これらの経糸がこれらのバリに引っ掛かる危険性を大幅に制限するか、または排除する。これは、バリ除去作業の必要性をさらに低減する。空洞C44、ならびに特に空洞C44の第3の底部表面S3、第1の表面S1、および第2の側方表面S2は、軸Z1に平行である、この底部表面S3を画成する第2の長手方向先端部44の部分から離れる、方向D1で、互いに向き合っていないので、空洞C44は、1本または複数の分割線が軸Z1に垂直であるモールドにおいてオーバーモールドによって形成されるべきスライドを必要とせず、バリを発生させる傾向はほとんどない。
【0134】
上述の実施形態および代替的形態は、これが技術的に実現可能である限り、組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0135】
A1 第1のリエントラントエッジ
A2 第2のリエントラントエッジ
A3 外側エッジ
A48およびA49 リエントラントエッジ
C22 幾何学的中心
C44 空洞
D1およびD’1 方向
d43 非ゼロ距離
e2 厚さ
e4 厚さ
H ハーネス
l44またはl’44 幅
L44 線
Mジャカード式織機
S1 第1の表面
S2 第2の側方表面
S3 第3の底部表面
S4 外部表面
S442およびS’442 表面
S448 第1の被覆表面
S449 第2の被覆表面
1 綜絖
1a 上側先端部
1b 下側先端部
2 リンク
4 棒
10 綜絖本体部
11Aまたは11B フック手段
12 エンドピース
14 開口部
18 雄ねじ
19 摺動ダンパー
20 中央部分
21 側方エッジ、長手方向エッジ
22 アイレット
24 長手方向ラグ
25 湾曲エッジ
26 移行ゾーン
27 側方エッジ
28 第1の横断面
29 第2の横断面
31 周表面
32 細長ハウジング
42 第1の先端部
43 部分
44 第2の長手方向先端部
44A 自由エッジ
45 部分
102 ジャカード機構
104 フック
106 ヨーク
106a 下側先端部
108 経糸
110 ばね
112 吊りビーム
114 スタッフィングボード
322 第1の近位ローブ
323 近位部分
324 第2の遠位ローブ
325 遠位部分
422 ヒール
442 アンカーヒール
442A 自由エッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】