(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122927
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】質量分析器及びこれを利用した質量分析方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/24 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01J49/24
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027691
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0027162
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522261075
【氏名又は名称】ヨンインエース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 星 遠
(72)【発明者】
【氏名】金 善 泰
(72)【発明者】
【氏名】李 薫
(72)【発明者】
【氏名】鄭 胤 鎮
(72)【発明者】
【氏名】李 ヒョン 尚
(72)【発明者】
【氏名】李 南 錫
(57)【要約】
【課題】全体体積を減少させることができる質量分析器及びこれを利用した質量分析方法を提供する。
【解決手段】上部流路を提供する上部領域、下部流路を提供する下部領域、前記上部流路と前記下部流路を連結する反応通路を提供する反応チューブ、前記上部領域に結合されて前記上部流路を真空にする第1ターボポンプ、前記下部領域に結合されて前記下部流路を真空にする第2ターボポンプ、及びメーンポンプ、を含み、前記メーンポンプは、前記第1ターボポンプに連結されて、前記第1ターボポンプを通じて前記上部流路に連結され、前記第2ターボポンプに連結されて、前記第2ターボポンプを通じて前記下部流路に連結され、前記反応通路に連結されて前記反応通路を真空にする質量分析器が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部流路を提供する上部領域と、
下部流路を提供する下部領域と、
前記上部流路と前記下部流路を連結する反応通路を提供する反応チューブと、
前記上部領域に結合されて前記上部流路を真空にする第1ターボポンプと、
前記下部領域に結合されて前記下部流路を真空にする第2ターボポンプと、
メーンポンプと、を含み、
前記メーンポンプは、
前記第1ターボポンプに連結されて、前記第1ターボポンプを通じて前記上部流路に連結され、
前記第2ターボポンプに連結されて、前記第2ターボポンプを通じて前記下部流路に連結され、
前記反応通路に連結されて前記反応通路を真空にすることを特徴とする質量分析器。
【請求項2】
前記反応チューブと前記メーンポンプを連結する連結チューブをさらに含み、
前記メーンポンプは、前記連結チューブが提供する連結通路を通じて前記反応通路に連結されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析器。
【請求項3】
前記連結チューブ上の調節バルブをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の質量分析器。
【請求項4】
前記調節バルブは、ソレノイドバルブ(solenoid valve)を含むことを特徴とする請求項3に記載の質量分析器。
【請求項5】
前記上部領域は、
イオン生成通路を提供するイオン生成部と、
前記イオン生成通路に連結されるイオン選択通路を提供するイオン選択部と、を含み、
前記イオン生成通路及び前記イオン選択通路は、前記上部流路の一部であり、
前記第1ターボポンプは、前記イオン選択部に結合されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析器。
【請求項6】
前記イオン選択部は、前記イオン選択通路に位置する第1四重極フィルターを含むことを特徴とする請求項5に記載の質量分析器。
【請求項7】
前記上部領域は、前記イオン選択部及び前記反応チューブの間に位置するキャリヤーガス流入部をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の質量分析器。
【請求項8】
前記反応チューブに結合され、前記反応通路に連結されるサンプル流入通路を提供するサンプル流入管をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の質量分析器。
【請求項9】
前記下部領域は、
前記反応通路に連結される第2イオン選択通路を提供する第2イオン選択部と、
前記第2イオン選択部に結合されるイオン検出部と、を含み、
前記第2イオン選択通路は、前記下部流路の一部であり、
前記第2ターボポンプは、前記第2イオン選択部に結合されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析器。
【請求項10】
前記イオン検出部は、イオン検出器を含み、
前記イオン検出器は、前記第2イオン選択通路に露出されることを特徴とする請求項9に記載の質量分析器。
【請求項11】
イオン生成通路を提供するイオン生成部と、
前記イオン生成通路に連結されるイオン選択通路を提供するイオン選択部と、
前記イオン選択通路に連結される反応通路を提供する反応チューブと、
前記反応通路に連結される第2イオン選択通路を提供する第2イオン選択部と、
前記第2イオン選択部に結合されるイオン検出部と、
前記イオン選択部に結合され、前記イオン選択通路を真空にする第1ターボポンプと、
前記第2イオン選択部に結合され、前記第2イオン選択通路を真空にする第2ターボポンプと、
前記反応チューブに連結されて前記反応通路を真空にするメーンポンプと、
前記反応チューブと前記メーンポンプとの間の調節バルブと、を含むことを特徴とする質量分析器。
【請求項12】
前記反応チューブと前記メーンポンプを連結する連結チューブをさらに含み、
前記調節バルブは、前記連結チューブ上に位置することを特徴とする請求項11に記載の質量分析器。
【請求項13】
前記調節バルブは、ソレノイドバルブを含むことを特徴とする請求項11に記載の質量分析器。
【請求項14】
前記メーンポンプは、前記第1ターボポンプに連結されて、前記メーンポンプは、前記第1ターボポンプを通じて前記イオン選択通路を真空にすることを特徴とする請求項11に記載の質量分析器。
【請求項15】
前記メーンポンプは、前記第2ターボポンプに連結されて、前記メーンポンプは、前記第2ターボポンプを通じて前記第2イオン選択通路を真空にすることを特徴とする請求項11に記載の質量分析器。
【請求項16】
上部領域でイオンを生成及び選択することと、
前記上部領域で選択されたイオンを反応チューブに移動させることと、
前記反応チューブにサンプルガスを供給することと、
前記反応チューブ内の流体を下部領域に移動させることと、
前記下部領域でイオンを検出することと、を含み、
前記上部領域で選択されたイオンを前記反応チューブに移動させることは、
前記反応チューブに連結されたメーンポンプを利用して前記反応チューブを真空にすることと、
前記反応チューブと前記メーンポンプとの間の調節バルブを利用して前記反応チューブの圧力を調節することと、を含むことを特徴とする質量分析方法。
【請求項17】
前記上部領域でイオンを生成及び選択することは、第1ターボポンプを利用して前記上部領域に真空圧を加えることを含み、
前記第1ターボポンプは、前記メーンポンプに連結されることを特徴とする請求項16に記載の質量分析方法。
【請求項18】
前記反応チューブ内の流体を前記下部領域に移動させることは、第2ターボポンプを利用して前記下部領域を真空にすることを含み、
前記第2ターボポンプは、前記メーンポンプに連結されることを特徴とする請求項16に記載の質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析器及びこれを利用した質量分析方法に係り、より詳しくは、体積を減少させることができる質量分析器及びこれを利用した質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉塵等を含む大気及び水質の汚染が加速化されることによって、これを測定及び分析することができる方法が要求されている。このような測定及び分析のために質量分析器(mass spectrometer)が使用されることができる。
質量分析器は質量分析で化学作用剤等を識別又は分析する機器である。このような質量分析器は物質の質量を質量対電荷の比(mass-to-charge ratio)で測定して試料の構成成分を分析することができる。質量分析器内で様々な方法を使用して試料がイオン化されることができる。イオン化された試料は電気場及び/又は磁気場を経て加速化されることができる。即ち、イオン化された試料の一部又は全部は電気場及び/又は磁気場等によって経路が曲がることができる。検出器はイオン化された試料を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0059675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は全体体積を減少させることができる質量分析器及びこれを利用した質量分析方法を提供することにある。
また、圧力を個別的に制御できる質量分析器及びこれを利用した質量分析方法を提供することにある。
さらに、様々な変数を制御できる質量分析器及びこれを利用した質量分析方法を提供することにある。
本発明が解決しようとする課題は以上で言及した課題に制限されなく、言及されないその他の課題は下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の質量分析器は、上部流路を提供する上部領域、下部流路を提供する下部領域、前記上部流路と前記下部流路を連結する反応通路を提供する反応チューブ、前記上部領域に結合されて前記上部流路に真空圧を加える第1ターボポンプ、前記下部領域に結合されて前記下部流路に真空圧を加える第2ターボポンプ、及びメーンポンプ、を含み、前記メーンポンプは、前記第1ターボポンプに連結されて、前記第1ターボポンプを通じて前記上部流路に連結され、前記第2ターボポンプに連結されて、前記第2ターボポンプを通じて前記下部流路に連結され、前記反応通路に連結されて前記反応通路を真空にすることができる。
【0006】
また、本発明の質量分析器は、前記反応チューブと前記メーンポンプを連結する連結チューブをさらに含み、前記メーンポンプは前記連結チューブが提供する連結通路を通じて前記反応通路に連結されることができる。
また、前記連結チューブ上の調節バルブをさらに含み、
前記調節バルブがソレノイドバルブ(solenoid valve)を含み、
前記上部領域がイオン生成通路を提供するイオン生成部、及び前記イオン生成通路に連結されるイオン選択通路を提供するイオン選択部、を含み、前記イオン生成通路及び前記イオン選択通路は前記上部流路の一部であり、前記第1ターボポンプは前記イオン選択部に結合されることができる。
【0007】
また、本発明の質量分析器は、前記イオン選択部が前記イオン選択通路に位置する第1四重極フィルターを含むことができ、
前記上部領域が前記イオン選択部及び前記反応チューブの間に位置するキャリヤーガス流入部をさらに含み、
前記反応チューブに結合され、前記反応通路に連結されるサンプル流入通路を提供するサンプル流入管をさらに含むことができる。
【0008】
また、本発明の質量分析器は、前記下部領域が前記反応通路に連結される第2イオン選択通路を提供する第2イオン選択部、及び前記第2イオン選択部に結合されるイオン検出部、を含み、前記第2イオン選択通路は前記下部流路の一部であり、前記第2ターボポンプは前記第2イオン選択部に結合されることができる。
また、前記イオン検出部がイオン検出器を含み、前記イオン検出器は前記第2イオン選択通路に露出されることができる。
【0009】
また、本発明の質量分析器はイオン生成通路を提供するイオン生成部と、前記イオン生成通路に連結されるイオン選択通路を提供するイオン選択部と、前記イオン選択通路に連結される反応通路を提供する反応チューブと、前記反応通路に連結される第2イオン選択通路を提供する第2イオン選択部、前記第2イオン選択部に結合されるイオン検出部、前記イオン選択部に結合され、前記イオン選択通路を真空にする第1ターボポンプ、前記第2イオン選択部に結合され、前記第2イオン選択通路を真空にする第2ターボポンプ、前記反応チューブに連結されて前記反応通路を真空にするメーンポンプ、及び前記反応チューブと前記メーンポンプとの間の調節バルブ、を含み、
前記反応チューブと前記メーンポンプを連結する連結チューブをさらに含み、前記調節バルブは前記連結チューブ上に位置することができる。
前記解決しようとする課題を達成するために本発明の一実施形態による質量分析器は、前記調節バルブがソレノイドバルブを含むことができる。
【0010】
また、本発明の質量分析器は、前記メーンポンプが前記第1ターボポンプに連結されて、前記メーンポンプは前記第1ターボポンプを通じて前記イオン選択通路を真空にすることができ、
前記メーンポンプが前記第2ターボポンプに連結されて、前記メーンポンプは前記第2ターボポンプを通じて前記第2イオン選択通路を真空にすることができる。
【0011】
また、本発明の質量分析方法は、上部領域でイオンを生成及び選択すること、前記上部領域で選択されたイオンを反応チューブに移動させること、前記反応チューブにサンプルガスを供給すること、前記反応チューブ内の流体を下部領域に移動させること、及び前記下部領域でイオンを検出すること、を含み、前記上部領域で選択されたイオンを前記反応チューブに移動させることは、前記反応チューブに連結されたメーンポンプを利用して前記反応チューブを真空にすること、及び前記反応チューブと前記メーンポンプとの間の調節バルブを利用して前記反応チューブの圧力を調節すること、を含み、
前記上部領域でイオンを生成及び選択することが、第1ターボポンプを利用して前記上部領域に真空圧を加えることを含み、前記第1ターボポンプは前記メーンポンプに連結されることができ、
前記反応チューブ内の流体を前記下部領域に移動させることが、第2ターボポンプを利用して前記下部領域を真空にすることを含み、前記第2ターボポンプは前記メーンポンプに連結されることができる。
本発明の効果はその他の実施形態の具体的な事項は以上で言及したことに制限されず、言及されないその他の効果は下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の質量分析器及びこれを利用した質量分析方法によれば、全体体積を低下させることができ、
また、圧力を個別的に制御することができ、様々な変数を制御することができる。
本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されないその他の効果は下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の例示的な質量分析器を示した概略図である。
【
図2】本発明の例示的な質量分析器を示した切断斜視図である。
【
図3】本発明の例示的な質量分析方法を示した順序図である。
【
図4】
図3の順序図にしたがう質量分析方法を遂行する質量分析器を示した切断斜視図である。
【
図5】本発明の例示的な質量分析器を利用して質量分析方法を遂行した結果の中で一部を示したグラフである。
【
図6】本発明の例示的な質量分析器を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の技術的思想の構成及び効果を十分に理解するために、添付した図面を参照して本発明の技術的思想の好ましい実施形態態を説明する。しかし、本発明の技術的思想は以下で開示される実施形態に限定されることではなく、様々な形態に具現されることができ、多様な変更を加えることができる。単なる、本実施形態の説明を通じて本発明の技術的思想の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されているものである。
明細書の全体に亘って同一の参照番号に表示された部分は同一の構成要素を示す。本明細書で記述する実施形態は本発明の技術的思想の理想的な例示図であるブロック図、斜視図、及び/又は断面図を参考して説明される。図面において、領域の厚さは技術的内容の効率的な説明のために誇張されたものである。したがって、図面で例示された領域は概略的な属性を有し、図面で例示された領域の形状は素子の領域の特定形態を例示するためのものであり、発明の範疇を制限するためのものではない。本明細書の多様な実施形態で多様な用語が多様な構成要素を技術するために使用されたが、これらの構成要素がこのような用語によって限定されてはならない。これらの用語は単なる一構成要素を他の構成要素と区別させるために使用されただけである。ここに説明され、例示される実施形態はそれの相補的な実施形態も含む。
【0015】
本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとすることではない。本明細書で、単数形は文句で特別に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は言及された構成要素は1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
以下、添付した図面を参照して本発明の技術的思想の好ましい実施形態を説明することによって、本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の例示的な質量分析器を示した概略図である。
図1に示す通り、質量分析器Aが提供されることができる。質量分析器Aは流体内の特定成分を検出することができる。例えば、質量分析器Aは空気中の揮発性有機化合物(VOC)等を分析することができる。このために、質量分析器Aはサンプルガスの一部をイオン化させてイオン化されたサンプルを分析することができる。即ち、質量分析器AはSIFT-MS(Selected Ion Flow tube mass spectrometry)を含むことができる。質量分析器Aは上部領域1、反応チューブ3、下部領域5、第1ターボポンプP1、第2ターボポンプP2、メーンポンプPm、連結チューブ4、及び調節バルブ6を含むことができる。
【0017】
上部領域1は上部流路(図示せず)を提供することができる。上部流路内で流体が流れることができる。上部領域1はイオンを生成及び選択することができる。より具体的に、上部領域1はイオンソースからイオンを生成することができる。イオンソースはイオンになることができる粒子を意味することができる。より具体的に、イオンソースはイオン化反応を経て反応物イオンになることができる粒子を意味することができる。反応物イオン(Reagent ion)はサンプルガスと反応することができるイオンを意味することができる。イオンソースは中性分子等を含むことができる。例えば、イオンソースは窒素(N2)、酸素(O2)、及び/又は水(H2O)等を含むことができる。しかし、これに限定されることではない。生成された反応物イオンはフィルタリングされることができる。即ち、生成されたイオンの中で必要であるイオンのみが選択されて、反応チューブ3に移動することができる。上部領域1を通じてキャリヤーガスが流入されることができる。キャリヤーガスは流体の移動方向を一方向にガイドすることができる。選択された反応物イオン及び/又はキャリヤーガスは反応チューブ3に移動することができる。上部領域1に対するより詳細な内容は後述する。
【0018】
反応チューブ3は反応通路(図示せず)を提供することができる。反応通路は上部通路に連結されることができる。反応チューブ3は上部領域1で流入された反応物イオン及び/又はキャリヤーガスを下部領域5に移動させることができる。反応チューブ3にサンプルガスが供給されることができる。サンプルガスは質量分析が必要である対象を含むことができる。例えば、サンプルガスは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOCs)等を含むことができる。反応チューブ3に流入されたサンプルガスは反応物イオンと反応することができる。より具体的に、サンプルガスは反応物イオンと反応してイオン化されることができる。イオン化されたサンプルガスはサンプルイオンと称することができる。即ち、サンプルガスは反応物イオンと反応してサンプルイオンになることができる。サンプルガスのイオン化反応は次のように表現することができる。
R
++A->P
++N
R
+は反応物イオンを意味することができる。Aはサンプルガスを意味することができる。P
+はサンプルイオンを意味することができる。Nは反応物イオンがサンプルガスとの反応した後に中性化されたことを意味することができる。例えば、Nは、再び中性化されたイオンソースを意味することができる。反応チューブ3は曲線で曲がることができる。例えば、
図1に図示されたように、反応チューブ3は90°で曲がることができる。しかし、これに限定されることではない。
【0019】
下部領域5は下部流路(図示せず)を提供することができる。下部流路内で流体が流れることができる。下部流路は反応通路に連結されることができる。下部領域5はイオンの中で一部を選択することができる。下部領域5は選択されたイオンを検出することができる。即ち、下部領域5は反応チューブ3から流入されたイオンの中で一部を検出することができる。したがって、サンプルガス内の特定物質の濃度等を測定することができる。下部領域5に対する詳細な内容は後述する。
第1ターボポンプP1は上部領域1に結合されることができる。第1ターボポンプP1は上部領域1内に真空圧を加えることができる。即ち、第1ターボポンプP1は上部流路に真空圧を印加することができる。したがって、上部流路は低い圧力状態に維持されることができる。例えば、上部流路は約10-5torrに維持されることができる。このために、第1ターボポンプP1は真空ポンプ等を含むことができる。第2ターボポンプP1の駆動のために、追加的なポンプが直列に連結されなければならない。これに対する詳細な内容は後述する。
【0020】
第2ターボポンプP2は下部領域5に結合されることができる。第2ターボポンプP2は下部領域5内を真空にすることができる。即ち、第2ターボポンプP2は下部流路に真空圧を印加することができる。したがって、下部流路は低い圧力状態に維持されることができる。例えば、下部流路は約10-6torr乃至10-7torrに維持されることができる。このために、第2ターボポンプP2は真空ポンプ等を含むことができる。第2ターボポンプP2の駆動のために、追加的なポンプが直列に連結されなければならない。これに対する詳細な内容は後述する。
【0021】
メーンポンプPmは反応チューブ3に連結されることができる。例えば、メーンポンプPmは連結チューブ4等を通じて反応チューブ3に連結されることができる。メーンポンプPmは反応チューブ3内を真空にすることができる。メーンポンプPmによって、メーン通路は約10-1torr乃至10-2torrに維持されることができる。メーンポンプPmはこのような真空にするための適切な出力スケールを有することができる。実施形態で、メーンポンプPmは第1ターボポンプP1及び/又は第2ターボポンプP2の各々に連結されることができる。メーンポンプPmは第1ターボポンプP1の機能を補助することができる。即ち、メーンポンプPmによって、第1ターボポンプP1が上部流路内圧力を必要であるレベルに作ることができる。また、メーンポンプPmは第2ターボポンプP2の機能を補助することができる。即ち、メーンポンプPmによって、第2ターボポンプP2が下部流路内圧力を必要であるレベルに作ることができる。これに対する詳細な内容は後述する。
【0022】
連結チューブ4はメーンポンプPmと反応チューブ3を連結することができる。連結チューブ4によって、メーンポンプPmから反応通路を真空にすることができる。これに対する詳細な内容は後述する。
調節バルブ6は連結チューブ4上に位置することができる。調節バルブ6はメーンポンプPmから反応通路の真空を制御することができる。調節バルブ6は、例えば自動バルブを含むことができる。即ち、調節バルブ6はソレノイド(solenoid)バルブ等を含むことができるが、これに限定することではない。調節バルブ6に対する詳細な内容は後述する。
以上で反応チューブ3が曲線で曲がれたことを基準に図示し、説明したが、これに限定することではない。例えば、反応チューブ3は直線でまっすぐに伸びでもよい。
【0023】
以下では、
図2を参考して反応チューブ3が直線でまっすぐに伸びた実施形態に対して説明する。
図2は本発明の例示的な実施形態による質量分析器を示した切断斜視図である。
図2に示す通り、上部領域1はイオン生成部11、イオン選択部12、及びキャリヤーガス流入部13を含むことができる。
イオン生成部11はイオン生成通路11hを提供することができる。イオン生成通路11hは前述した上部流路の一部であり得る。イオン生成部11は、例えば第1方向D1に延長される管形状を有することができる。イオンソース供給部Saで供給されたイオンソースがイオン生成部11に移動することができる。イオンソースは酸素(O
2)、窒素(N
2)、及び/又は水(H
2O)等を供給することができる。実施形態で、イオンソース供給部Saがイオン生成部11に供給するイオンソースは大気の構成成分と類似することができるが、これに限定することではない。マイクロ波供給部Mで加えられたマイクロ波によって、イオン生成通路11h内のイオンソースがイオン化されることができる。即ち、イオンソースはイオン化されて反応物イオンになることができる。
【0024】
イオン選択部12はイオン選択管121、第1四重極フィルター123、及び第1フォーカシング部材125を含むことができる。
イオン選択管121は第1方向D1に延長されるイオン選択通路(未符号)を提供することができる。イオン選択通路は前述した上部流路の一部であり得る。イオン選択通路はイオン生成通路11hに連結されることができる。第1ターボポンプP1はイオン選択部12に固定結合されることができる。第1ターボポンプP1はイオン選択通路に真空圧を加えることができる。
第1四重極フィルター四重極フィルター123は第1フォーカシング部材125を通過した反応物イオンの経路を囲んだ4つのバーを含むことができる。4つのバーの各々は第1方向D1に延長されることができる。4つのバーの各々は金属を含むことができる。4つのバーの各々は外部電源(図示せず)等から電圧が印加されることができる。第1四重極フィルター123は電気場を形成することができる。第1四重極フィルター123によって形成された電気場によって反応物イオンの一部又は全部の移動経路は曲がることができる。
【0025】
第1フォーカシング部材125は第1イオン選択通路に位置することができる。第1フォーカシング部材125は中心に孔が形成された板形状であり得る。第1フォーカシング部材125はイオン生成通路11hで流入された反応物イオンの流れを中心に案内することができる。
キャリヤーガス流入部13はイオン選択部12と反応チューブ3との間に位置することができる。キャリヤーガス流入部13は第1連結管131、オリフィス133、及びキャリヤーガス流入管135を含むことができる。
第1連結管131はイオン選択管121に結合されることができる。第1連結管131は第1方向D1に延長されることができる。第1連結管131は第1連結通路(未符号)を提 供することができる。即ち、第1連結管131によって第1連結通路が定義されることができる。第1連結通路は第1方向D1に延長されることができる。第1連結通路はイオン選択通路と連結されることができる。第1連結通路にオリフィス133が位置することができる。
【0026】
オリフィス133は円柱形状の一部を含むことができる。キャリヤーガス流入管135は第1方向D1に交差される方向に延長されることができる。キャリヤーガス流入管135は第1連結管131に結合されることができる。キャリヤーガス流入管135はキャリヤーガス供給部Scに連結されることができる。キャリヤーガスはキャリヤーガス供給部Scからキャリヤーガス流入管135を通じて第1連結管131に移動することができる。キャリヤーガスは第1連結管131で反応物イオンと混合されることができる。キャリヤーガスは反応チューブ3で反応物イオン等の流れを案内することができる。例えば、キャリヤーガスは反応チューブ3で層流を形成して反応物イオンの流れ方向をガイドすることができる。キャリヤーガスは非活性気体等を含むことができる。例えば、キャリヤーガスは窒素(N2)、アルゴン(Ar)、及び/又はヘリウム(He)等を含むことができる。
【0027】
反応チューブ3は第1方向D1に延長される反応通路3hを提供することができる。反応通路3hは上部流路と下部流路を連結することができる。反応チューブ3にサンプル流入管2が結合されることができる。サンプル流入管2は反応通路にサンプルガスを供給することができる。より具体的に、サンプル供給部Ssからサンプルガスを受けて、反応通路3hに送ることができる。メーンポンプPmは連結チューブ4を通じて反応通路3hに連結されることができる。反応通路3h内でサンプルガスと反応物イオンが反応することができる。したがって、サンプルガスの少なくとも一部がサンプルイオンになることができる。
下部領域5は第2連結管51、第2イオン選択部53、及びイオン検出部55を含むことができる。
【0028】
第2連結管51は反応チューブ3に結合されることができる。第2連結管51は反応チューブ3と第2イオン選択部53を連結することができる。
第2イオン選択部53は第2イオン選択管531、第2四重極フィルター533、及び第2フォーカシング部材535を含むことができる。
第2イオン選択管531は第1方向D1に延長される第2イオン選択通路531hを提供することができる。第2イオン選択通路531hは反応通路3hに連結されることができる。第2ターボポンプP2は第2イオン選択管531に固定結合されることができる。第2ターボポンプP2は第2イオン選択通路531hを真空にすることができる。
【0029】
第2四重極フィルター533は第2フォーカシング部材535を通過したサンプルイオンの経路を囲んだ4つのバーを含むことができる。4つのバーの各々は第1方向D1に延長されることができる。4つのバーの各々は金属を含むことができる。4つのバーの各々は外部電源(図示せず)等から電圧が印加されることができる。第2四重極フィルター533は電気場を形成することができる。第2四重極フィルター533によって形成された電気場によって反応物イオンの一部又は全部の移動経路は曲がることができる。
第2フォーカシング部材535は第2イオン選択通路531hに位置することができる。第2フォーカシング部材535は中心に孔が形成された板形状であり得る。第2フォーカシング部材535は反応通路3hで流入されたサンプルイオンの流れを中心に案内することができる。
【0030】
イオン検出部55は第2イオン選択部53に結合されることができる。イオン検出部55は検出管551及び検出器553を含むことができる。検出管551は第2イオン選択管531に結合されることができる。検出器553は検出管551内に位置することができる。検出器553は第2イオン選択通路531hに露出されることができる。
図2に図示されたように、検出器553の法線は第1方向D1と実質的に平行であることができる。しかし、これに限定することではなく、検出器553の法線は第1方向D1と一定の角度を形成してもよい。例えば、検出器553の法線は第1方向D1に実質的に垂直してもよい。
第2イオン選択通路531hでフィルタリングされたサンプルイオンは検出器553によって感知されることができる。例えば、検出器553の法線が第1方向D1と実質的に平行である場合、検出器553は第2四重極フィルター533が形成する電気場によって曲がらず、直進したサンプルイオンの量を測定することができる。即ち、第2四重極フィルター533を制御して一部イオンのみが直進するように設定すれば、検出器553は直進したイオンの量を測定することができる。第2四重極フィルター533によって加えられた電気場に対する情報を利用して、直進して検出器553で検出されたイオンの質量対電荷比(mass-to-chargeratio、m/z)を計算することができる。第2四重極フィルター533を制御して直進するイオンを変えることができる。その後、同じ作業を繰り返すことができる。したがって、様々なイオンに対して質量対電荷比(m/z)を求めることができる。測定したデータを既存の確保された質量対電荷比(m/z)のデータと比較すれば、サンプルガス内の粒子の質量とその比率を求めることができる。
以上で上部領域1、反応チューブ3、及び下部領域5が一直線上に配置されたことと図示し、叙述したが、これに限定することではない。即ち、
図1に図示すように反応チューブ3は湾曲していてもよい。
【0031】
図3は本発明の例示的な実施形態による質量分析方法を示した順序図である。
図3に示す通り、質量分析方法(S)が提供されることができる。質量分析方法(S)は
図1乃至
図2を参考して説明した質量分析器A(
図1参照)を利用してサンプルガスを分析する方法であり得る。このために、質量分析方法(S)は上部領域でイオンを生成及び選択すること(S1)、上部領域で選択されたイオンを反応チューブに移動させること(S2)、反応チューブにサンプルガスを供給すること(S3)、反応チューブ内の流体を下部領域に移動させること(S4)、及び下部領域でイオンを検出すること(S5)を含むことができる。
【0032】
以下では、
図4を参考して
図3の質量分析方法(S)を詳細に説明する。
図4は
図3の順序図にしたがう質量分析方法を遂行する質量分析器を示した切断斜視図である。
図4及び
図3に示す通り、上部領域でイオンを生成及び選択すること(S1)はイオンソース供給部Saがイオン生成部11にイオンソースNを供給することを含むことができる。マイクロ波供給部Mによって、イオン生成部11内イオンソースNの少なくとも一部はイオン化されることができる。イオン選択部12に流入された流体の中で、イオン選択部12を経て質量分析に必要である反応物イオンのみを選択されることができる。選択された反応物イオンは反応チューブ3に移動することができる。この過程で上部領域1に真空圧が加わることができる。より具体的に、メーンポンプPm及び第1ターボポンプP1を利用してイオン選択通路を真空にすることができる。
【0033】
上部領域で選択されたイオンを反応チューブに移動させること(S2)は、メーンポンプPmを利用して反応チューブ3を真空にすることを含むことができる。したがって、反応通路3hが真空状態になることができる。この過程で、調節バルブ6を調節して反応通路3h内の圧力を調節することができる。
反応チューブにサンプルガスを供給すること(S3)は、サンプル供給部Ssで供給されたサンプルガスSPがサンプル流入管2を経て反応通路3hに供給されることを含むことができる。反応通路3h内でサンプルガスSPと反応物イオンが反応することができる。したがって、サンプルイオンが生成されることができる。
反応チューブ内の流体を下部領域に移動させること(S4)は、第2ターボポンプP2を利用して下部領域5を真空にすることを含むことができる。より具体的に、メーンポンプPm及び第2ターボポンプP2を利用して第2イオン選択通路531hを真空にすることができる。
【0034】
下部領域でイオンを検出すること(S5)は、検出器553がサンプルイオンを検出することを含むことができる。したがって、サンプルガスSPの成分を分析することができる。
図5は本発明の例示的な実施形態による質量分析器を利用して質量分析方法を遂行した結果の中で一部を示したグラフである。
図5に示す通り、横軸は反応チューブ内の圧力を意味することができる。縦軸は検出されたサンプルイオンを意味することができる。圧力が0.3torrから、圧力が増加するほど、反応物イオンと生成物の比率が上がることができる。圧力が一定数値を超えれば、比率は再び下がることができる。この値は圧力が約0.65torrである時、最大になることができる。圧力調節は調節バルブを利用して遂行されることができる。即ち、メーンポンプと反応チューブとの間の調節バルブを利用して、反応チューブ内の圧力を必要に応じて制御することができる。
【0035】
本発明の例示的な質量分析器及びこれを利用した質量分析方法によれば、調節バルブを利用して反応チューブ内の圧力を任意に調節することができる。したがって、様々な条件下で質量分析作業を遂行することができる。また、圧力を制御して、他の変数を制御することができる。例えば、反応チューブ内の圧力と反応チューブ内での反応時間を固定したまま、キャリヤーガス及びサンプルガスの流入量を制御することができる。或いは、キャリヤーガス及びサンプルガスの流入量を固定したまま、反応チューブ内の圧力と反応チューブ内での反応時間を制御することができる。したがって、最適の条件を見つけることができる。
本発明の例示的な実施形態による質量分析器及びこれを利用した質量分析方法によれば、2つのターボポンプを駆動するために、別のポンプが必要とされない。ターボポンプのそれ自体は正しく駆動できないことがあり得る。ターボポンプの駆動のために、追加的なポンプが必要とすることができる。本発明はメーンポンプを2つのターボポンプの各々に連結して、メーンポンプを利用して2つのターボポンプを稼動することができる。したがって、必要である全体ポンプ数を低下させることができる。したがって、全体装備の体積を低減し、費用を節減することができる。
【0036】
図6は本発明の例示的な実施形態による質量分析器を示した概略図である。
以下では、
図1乃至
図5を参考して説明したことと実質的に同一又は類似な内容は説明を省略することができる。
図6に示す通り、質量分析器A’が提供されることができる。
図6の質量分析器A’は、
図1を参考して説明したこととは異なりに、補助ポンプPxがさらに提供されることができる。補助ポンプPxは第1ターボポンプP1及び第2ターボポンプP2の各々に連結されることができる。メーンポンプPmは第1ターボポンプP1及び第2ターボポンプP2の各々に連結されなくともよい。メーンポンプPmは連結チューブ4及び調節バルブ6を通じて反応チューブ3に連結されることができる。
【0037】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更しなくとも他の具体的な形態に実施されることができることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないことと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0038】
1 上部領域
3 反応チューブ
4 連結チューブ
5 下部領域
6 調節バルブ
11 イオン生成部
12 イオン選択部
13 キャリヤーガス流入部
51 第2連結管
53 第2イオン選択部
55 イオン検出部
P1 第1ターボポンプ
P2 第2ターボポンプ
Pm メーンポンプ