(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012293
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】NOx吸収体およびSCR触媒の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20240123BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240123BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240123BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240123BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240123BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240123BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01J35/04 301L
F01N3/08 B ZAB
F01N3/08 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/24 C
F01N3/035 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171200
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2020520590の分割
【原出願日】2018-10-12
(31)【優先権主張番号】62/571,427
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】パチェット,ジョセフ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シンイー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】SCR触媒と組み合わせた効率の良いNOx変換を行うための触媒物品、および該物品を用いた排気ガスの流れを処理するための方法を提供する。
【解決手段】選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびその上に配設された窒素酸化物(NOx)吸収体組成物の両方を有する基材を備え、前記NOx吸収体組成物が、アルカリ土類金属成分を含み、そして、前記SCR触媒組成物が、FeTiO
3、FeAl
2O
3、MgTiO
3、MgAlO
3、MnOX/TiO
2、CuTiO
3、CeZrO
2、TiZrO
2、V
2O
5/TiO
2、およびそれらの混合物からなる群から選択される混合金属酸化物成分を含む、触媒物品とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびその上に配設された窒素酸化物(NOx)吸収体組成物の両方を有する基材を備える、触媒物品。
【請求項2】
前記SCR触媒組成物および前記NOx吸収体組成物が、前記基材上の単一層内で混合されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記基材上において、前記SCR触媒組成物が、第1の層内にあり、前記NOx吸収体組成物が、第2の層内にあり、前記第2の層が、直接、前記基材上にあり、前記第1の層が、前記第2の層の上にある、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記SCR触媒組成物および前記NOx吸収体組成物が、軸方向にゾーン化された構成で前記基材上に配設され、前記基材が、入口端および出口端を有する軸長を有し、前記第2の層が、前記基材の前記入口端から前記基材の前記軸長の約5~約95%の範囲にわたって延在する第1のゾーン上に配設されている、請求項3に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記NOx吸収体組成物が、白金を実質的に含まない、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記NOx吸収体組成物が、担体材料上に含浸されたRu、Pd、Rhおよびそれらの組み合わせから選択される白金族金属(PGM)成分を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記担体材料が、分子篩または金属酸化物である、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記分子篩が、ゼオライトであり、前記金属酸化物担体が、セリアを含む、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記金属酸化物に、少なくとも1つのランタニド族金属がドープされている、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記NOx吸収体組成物が、アルカリ土類金属成分をさらに含む、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属成分が、バリウム成分を含む、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記SCR触媒組成物が、金属促進分子篩を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記金属促進分子篩が、任意選択的に、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFI、ならびにそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有するゼオライトである、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記SCR触媒組成物が、任意選択的に、FeTiO3、FeAl2O3、MgTiO3、MgAlO3、MnOX/TiO2、CuTiO3、CeZrO2、TiZrO2、V2O5/TiO2、およびそれらの混合物から選択される混合金属酸化物成分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記混合金属酸化物成分が、チタニアおよびバナジアを含む、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記基材が、フロースルー基材(flow-through substrate)および壁流フィルタ(wall flow filter)からなる群から選択されるハニカム基材である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記NOx吸収体組成物が、アンモニアを実質的に酸化しない、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記触媒物品が、エンジン排気ガスの流れからのNOxを低減するのに有効である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項20】
排気ガスの流れを処理するための方法であって、前記排気ガスの流れ中のNOxが低減されるように、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品と前記ガスを接触させることを含む、方法。
【請求項21】
排気ガスの流れを処理するための排出物処理システムであって、
排気ガスの流れを生成するエンジンと、
前記排気ガスの流れと流体連通している前記エンジンの下流に位置付けられ、処理された排気ガスの流れを形成するために前記排気の流れ内のNOxの還元に適合された、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品と、
前記触媒物品の上流に位置付けられた、前記排気ガスの流れへの還元剤の添加に適合された噴射器と、を備える、排出物処理システム。
【請求項22】
前記触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒、および前記触媒物品の下流に位置する触媒化スートフィルタの一方または両方をさらに備える、請求項21に記載の排出物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、選択的触媒還元(SCR)触媒および窒素酸化物(NOx)吸収体の分野、ならびにNOx含有排気ガスの流れの処理でそのような触媒を調製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、大気汚染の有害成分である。NOxは、内燃機関(例えば、自動車およびトラックの)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、石炭で加熱される発電所)、ならびに硝酸製造プラントなどからの排気ガスに含有される。
【0003】
排気ガス中のNOx(すなわち、NOおよびNO2)を低減し、それにより大気汚染を低減するために、さまざまな処理方法が使用される。1つのタイプの処理は、炭化水素またはアンモニアなどの還元剤を使用する、窒素酸化物の触媒還元を伴う。アンモニアまたはアンモニア前駆体を好適な触媒と組み合わせて使用することは、最小限の量の還元剤で高度の窒素酸化物除去を達成し得る。これは、例えば、アンモニア(NH3)などの還元剤がほぼ排他的にNOxと反応するため、選択的触媒還元と呼ばれる。
【0004】
アンモニアを使用した選択的還元プロセスは、NH3-SCR(選択的触媒還元)プロセスと呼ばれるか、または多くの場合、単にSCRと呼ばれる。SCRプロセスは、大気中の酸素の存在下で還元剤(例えば、アンモニア(NH3)またはアンモニア前駆体)を用いた窒素酸化物の触媒還元を使用し、主に窒素(N2)および蒸気(H2O)の形成をもたらす。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0005】
SCRプロセスは、エンジンの排気ガスから窒素酸化物を除去するための最も実行可能な技術のうちの1つである。典型的な排気ガスでは、窒素酸化物は、主にNO(>90%)で構成され、このNOは、アンモニアの存在下でSCR触媒によって窒素および水に変換される(標準SCR反応)。アンモニアは、最も効果的な還元剤のうちの1つであるが、尿素もまた、アンモニア前駆体として使用され得る。
【0006】
概して、SCRプロセスで用いられる触媒は、より高い動作温度(すなわち、約200℃~600℃)では良好な触媒活性を有するが、より低い動作温度では効率が大幅に低下する。より低い動作温度は、典型的には、エンジンの始動後、およびエンジンおよび触媒の予熱中に発生する。この時間は、概して、「コールドスタート」時間と呼ばれ、始動時の排気ガス処理システムの動作温度が低過ぎて、エンジン排気ガス中に存在する炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)および/または一酸化炭素(CO)を効率的に処理するのに十分な触媒活性を初期に発揮することができない。様々なトラッピングシステム(例えば、NOx吸収体)が、このコールドスタート期間中にエンジンから排出された初期の排気ガス排出物のみを貯蔵し、次いで、エンジン処理システムの触媒成分(例えば、SCR触媒)が十分な触媒活性に達したときに、より高温でそれら(すなわち、HC、COおよびNOxガス)を順次放出するために用いられる。
【0007】
例えば、NOx吸収体は、200℃未満の温度でNOxを捕捉し、200℃を超える温度でNOxを放出するために使用される。これらの材料は、典型的には、アルカリ土類金属(Ba、Ca、Sr、およびMgなど)の酸化物または酸化セリウムを含み、NOxガスを低温で吸収するときに無機硝酸塩(例えば、BaOまたはBaCO3がBa(NO3)2に変換される)を形成する。より高い温度では、無機硝酸塩は、NOおよび/またはNO2に分解し、それらを放出して排気ガスの流れに戻す。NOx吸収体は、概して、エンジン処理システム内のSCR触媒の上流に別個の触媒成分として位置する。多くの場合、NOx吸収体およびSCR触媒の動作温度は、エンジン処理システム内のそれらの別個の場所を理由に異なり、例えば、NOx吸収体は、多くの場合、エンジンのより近くに位置し、下流に位置するSCR触媒よりも速い速度で温度が上昇することになる。2つの触媒成分間のこの温度差は、多くの場合、SCR触媒が最適な動作温度に達して効率的なNOx変換を実行する前に、NOx吸収体からのNOxガスの早過ぎる放出をもたらす。
【0008】
加えて、ディーゼルまたはガソリン燃料中の微量の硫黄含有不純物の存在が、NOx吸収体の触媒活性に大きい影響を及ぼす。エンジン処理システムのNOx吸収体の上流に位置する酸化触媒は、排気ガス中の二酸化硫黄(SO2)を三酸化硫黄(SO3)に酸化し得、これは、硫黄被毒を悪化させる。アルカリ土類金属硫酸塩(例えば、酸化バリウムまたは炭酸バリウムは、三酸化硫黄(SO3)と反応して硫酸バリウム(BaSO4)を形成する)は、NOx吸収体の表面との酸素化硫黄化合物の接触時に形成される。残念ながら、これらのアルカリ土類金属硫酸塩は、NOxガスとの接触時に生成されるアルカリ土類金属硝酸塩(例えば、Ba(NO3)2)よりも安定しているため、脱硫法を使用するNOx吸収体からの除去のためにより高温(>650℃)を必要とする。脱硫に必要な極端な条件は、NOx吸収体の短寿命につながり得る。
【0009】
排出規制がますます厳しくなっていることに起因して、SCR触媒と組み合わせた効率の良いNOx変換(例えば、コールドスタート中に吸収されたNOx吸収体から放出されたNOxの)を提供するためにSCR触媒と同じ動作温度を本質的に呈する、耐硫黄性NOx吸収体を含む排出物処理システムを提供することが非常に望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、層状またはゾーン化された構成で同じ基材上に配設された選択的触媒還元(SCR)触媒組成物および窒素酸化物(NOx)吸収体組成物を有する触媒物品に関する。NOx吸収体組成物をSCR触媒物品に統合することは、SCR触媒組成物が、少なくともNOx吸収体組成物と同程度に高温の動作温度を有することを確実にする。したがって、SCR触媒組成物がその最適な動作温度に到達する前のNOx吸収体組成物からのNOxのいかなる早過ぎる放出も、最小化されることになる。このため、エンジン処理システムのいくつかは、本発明のSCR触媒物品を可能な限りエンジン排気口の近くに装着して、排気熱を利用し得、物品がより速く加熱されることを可能にする。本発明のSCR触媒物品中にNOx吸収体組成物を統合することは、そうでなければSCR触媒物品の上流に位置することになる、NOx吸収体のための別個の触媒ブリックの必要性を除去する。加えて、NOx吸収体組成物は、SCR触媒組成物の触媒活性を妨害せず、例えば、NOx吸収体組成物は、SCRプロセスで使用されるアンモニア還元剤を酸化しない。アンモニアは、硫酸アンモニウムを形成することによって、燃料中に存在する微量の硫黄含有不純物からの硫黄被毒に対してNOx吸収体組成物を実際に保護し、したがって、排気中の硫酸塩種がSCR触媒組成物またはNOx吸収体組成物と反応するのを防止する。
【0011】
本発明の一態様は、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびその上に配設された窒素酸化物(NOx)吸収体組成物の両方を有する基材を含む触媒物品に関する。いくつかの実施形態では、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物および窒素酸化物(NOx)吸収体組成物が、基材上の単一層内で混合されている。いくつかの実施形態では、基材上において、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が、第1の層内にあり、窒素酸化物(NOx)吸収体組成物が、第2の層内にあり、第2の層が、直接、基材上にあり、第1の層が、第2の層の上にある。いくつかの実施形態では、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびNOx吸収体組成物が、軸方向にゾーン化された構成で基材上に配設され、基材が、入口端および出口端を有する軸長を有し、第2の層が、基材の入口端から基材の軸長の約5~約95%の範囲にわたって延在する第1のゾーン上に配設されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物が、白金を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物が、担体材料上に含浸されたRu、Pd、Rhおよびそれらの組み合わせから選択される白金族金属成分を含む。いくつかの実施形態では、担体材料が、分子篩または金属酸化物である。いくつかの実施形態では、分子篩が、ゼオライトであり、金属酸化物担体が、セリアを含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物に、少なくとも1つのランタニド族金属がドープされている。
【0013】
いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物が、アルカリ土類金属成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属成分が、バリウム成分を含む。いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物が、金属促進分子篩を含む。いくつかの実施形態では、金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、分子篩が、任意選択的に、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFI、ならびにそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有するゼオライトである。
【0014】
いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物が、任意選択的に、FeTiO3、FeAl2O3、MgTiO3、MgAlO3、MnOX/TiO2、CuTiO3、CeZrO2、TiZrO2、V2O5/TiO2、TiO2/Sb2O3およびそれらの混合物から選択される混合金属酸化物成分を含む。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物成分が、チタニアおよびバナジアを含む。いくつかの実施形態では、基材が、フロースルー基材(flow-through substrate)および壁流フィルタ(wall flow filter)からなる群から選択されるハニカム基材である。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物が、アンモニアを実質的に酸化させない。いくつかの実施形態では、触媒物品が、エンジン排気ガスの流れからのNOxを低減するのに有効である。
【0015】
本発明の別の態様は、排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気ガスの流れ中のNOxが低減されるように、本発明の触媒物品とガスを接触させることを含む、方法、に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、排気ガスの流れを処理するための排出物処理システムに関し、排出物処理システムは、排気ガスの流れを生成するエンジンと、排気ガスの流れと流体連通しているエンジンの下流に位置付けられ、処理された排気ガスの流れを形成するために排気の流れ内のNOxの還元に適合された、本発明の触媒物品と、触媒物品の上流に位置する、排気ガスの流れへの還元剤の添加に適合された噴射器と、を備える。いくつかの実施形態では、排出物処理システムは、触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒、および触媒物品の下流に位置するスートフィルタの一方または両方をさらに備える。
【0017】
本開示は、限定されるものではないが、以下の実施形態を含む。
【0018】
実施形態1:選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびその上に配設された窒素酸化物(NOx)吸収体組成物の両方を有する基材を含む触媒物品。
【0019】
実施形態2:SCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物が、基材上の単一層内で混合されている、実施形態1に記載の触媒物品。
【0020】
実施形態3:基材上において、SCR触媒組成物が、第1の層内にあり、NOx吸収体組成物が、第2の層内にあり、第2の層が、直接、基材上にあり、第1の層が、第2の層の上にある、実施形態1または2に記載の触媒物品。
【0021】
実施形態4:SCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物が、軸方向にゾーン化された構成で基材上に配設され、基材が、入口端および出口端を有する軸長を有し、第2の層が、基材の入口端から基材の軸長の約5~約95%の範囲にわたって延在する第1のゾーン上に配設されている、実施形態1~3のいずれかに記載の触媒物品。
【0022】
実施形態5:NOx吸収体組成物が、白金を実質的に含まない、実施形態1~4のいずれかに記載の触媒物品。
【0023】
実施形態6:NOx吸収体組成物が、担体材料上に含浸されたRu、Pd、Rhおよびそれらの組み合わせから選択される白金族金属(PGM)成分を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の触媒物品。
【0024】
実施形態7:担体材料が、分子篩または金属酸化物である、実施形態1~6のいずれかに記載の触媒物品。
【0025】
実施形態8:分子篩が、ゼオライトであり、金属酸化物担体が、セリアを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の触媒物品。
【0026】
実施形態9:金属酸化物に、少なくとも1つのランタニド族金属がドープされている、実施形態1~8のいずれかに記載の触媒物品。
【0027】
実施形態10:NOx吸収体組成物が、アルカリ土類金属成分をさらに含む、実施形態1~9のいずれかに記載の触媒物品。
【0028】
実施形態11:アルカリ土類金属成分が、バリウム成分を含む、実施形態1~10のいずれかに記載の触媒物品。
【0029】
実施形態12:SCR触媒組成物が、金属促進分子篩を含む、実施形態1~11のいずれかに記載の触媒物品。
【0030】
実施形態13:金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される、実施形態1~12のいずれかに記載の触媒物品。
【0031】
実施形態14:金属促進分子篩が、任意選択的に、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFI、ならびにそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有するゼオライトである、実施形態1~13のいずれかに記載の触媒物品。
【0032】
実施形態15:SCR触媒組成物が、任意選択的に、FeTiO3、FeAl2O3、MgTiO3、MgAlO3、MnOx/TiO2、CuTiO3、CeZrO2、TiZrO2、V2O5/TiO2、およびそれらの混合物から選択される混合金属酸化物成分を含む、実施形態1~14のいずれかに記載の触媒物品。
【0033】
実施形態16:混合金属酸化物成分が、チタニアおよびバナジアを含む、実施形態1~15のいずれかに記載の触媒物品。
【0034】
実施形態17:基材が、フロースルー基材および壁流フィルタからなる群から選択されるハニカム基材である、実施形態1~16のいずれかに記載の触媒物品。
【0035】
実施形態18:NOx吸収体組成物が、アンモニアを実質的に酸化しない、実施形態1~17のいずれかに記載の触媒物品。
【0036】
実施形態19:触媒物品が、エンジン排気ガスの流れからのNOxを低減するのに有効である、実施形態1~18のいずれかに記載の触媒物品。
【0037】
実施形態20:排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気ガスの流れ中のNOxが低減されるように、実施形態1~19のいずれかに記載の触媒物品とガスを接触させることを含む、方法。
【0038】
実施形態21:排気ガスの流れを処理するための排出物処理システムであって、排気ガスの流れを生成するエンジンと、排気ガスの流れと流体連通しているエンジンの下流に位置付けられ、処理された排気ガスの流れを形成するために排気の流れ内のNOxの還元に適合された、実施形態1~20のいずれかに記載の触媒物品と、触媒物品の上流に位置付けられた、排気ガスの流れへの還元剤の添加に適合された噴射器と、を備える、排出物処理システム。
【0039】
実施形態22:触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒、および触媒物品の下流に位置する触媒化スートフィルタの一方または両方をさらに備える、実施形態21に記載の排出物処理システム。
【0040】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。本発明は、上記の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、ならびに本開示に記載される2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かにかかわらず、含む。本開示は、開示された発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈が明らかに別様に示さない限り、組み合わせ可能であるとみなされるべきであるように、全体的に読まれることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0042】
【
図1】本発明による触媒物品ウォッシュコート組成物を含み得るハニカムタイプの基材の斜視図である。
【
図2】
図1に対して拡大され、かつモノリシックフロースルー基材を表す
図1の基材の端面に平行な平面に沿って切り取られた部分断面図であり、
図1に示される複数のガス流路の拡大図を示す。
【
図3】
図1に対して拡大された断面の破断図であり、
図1のハニカムタイプの基材が、壁流フィルタ基材モノリスを表す。
【
図4】本発明のゾーン化された触媒物品の断面図を示す。
【
図5】外層(107)が、基材(100)の全長にわたって直接配設されている内層(106)の一部の上に配設されている、本発明の層状触媒物品の断面図を示す。
【
図6】内層(115)が基材(100)の一部分の上に配設され、外層(114)が基材(100)の残りの部分および内層(115)の上に配設されている、本発明の層状触媒物品の断面図を示す。
【
図7】本発明の触媒物品が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図を示し、本発明の触媒物品が、触媒化スートフィルタ(CSF)の下流に位置する。
【
図8】本発明の触媒物品が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図を示し、本発明の触媒物品が、触媒化スートフィルタ(CSF)の上流に位置する。
【
図9】本発明の触媒物品が利用される排出物処理システムの実施形態の概略図を示し、本発明の触媒物品が、エンジンの直ぐ下流に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ここで本発明が、より完全に以下に説明されることになる。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本明細書および特許請求の範囲に使用される際、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別様に指示しない限り、複数の対象を含む。
【0044】
本発明は、同じ基材上に配設された選択的触媒還元(SCR)触媒組成物および窒素酸化物(NOx)吸収体組成物を有する触媒物品に関する。NOx吸収体組成物をSCR触媒物品に統合することは、両方の触媒成分に対して同じ動作温度を提供する。これは、SCR触媒組成物がNOx吸収体組成物と少なくとも同じ温度であることを確実にする。NOx吸収体組成物は、SCR触媒組成物が活性である温度でNOxを放出するように設計され得、したがって、SCR触媒組成物がその最適動作温度に達する前の、NOx吸収体組成物からのNOxの早過ぎる放出を防止する。上述のように、SCR触媒組成物は、低い動作温度(例えば、200℃未満)では効率的な触媒活性を発揮せず、エンジン排気ガスは、この期間中、NOxを吸収および貯蔵することによって排気ガスの流れからNOxを除去するNOx吸収体組成物によって主に処理される。エンジンが暖まり、エンジン排気ガスの温度が上昇すると、本発明のNOx吸収体組成物およびSCR触媒組成物の動作温度は実質的に同じ速度で上昇する。したがって、高温に達すると、NOx吸収体組成物は、NOxを放出し、NOxは、近接して位置するSCR触媒組成物によって、アンモニアを還元剤として使用して直ちに変換される。SCR触媒組成物の触媒活性は、同じ基材上に(例えば、ゾーン化された構成または層状構成で)位置するNOx吸収体組成物による影響を受けない。特に、本発明のNOx吸収体組成物は、アンモニアの存在に対して不活性であり、SCRプロセスを妨害するようにアンモニアと反応せず、例えば、アンモニアを酸化しない。アンモニアの存在は、実際には、燃料中に存在する微量の硫黄含有不純物からのNOx吸収体組成物に対する有益な効果を提供する。理論に拘束されるものではないが、任意の酸化された硫黄含有不純物(例えば、三酸化硫黄種)は、アンモニアと反応して硫酸アンモニウムを形成し、これは、高温で三酸化硫黄とアンモニアとに戻るように容易に分解すると考えられる。特に、低い動作温度でSCR触媒組成物がアンモニアの高い貯蔵能力を有するとき、エンジン排気ガス中の任意の三酸化硫黄種は、特にSCR触媒組成物が同じ基材上のNOx吸収体組成物の上に層状になっている場合、NOx吸収体組成物に接触する前に、吸収されたアンモニアと反応することができることになる。そのような層状構成は、触媒組成物を汚染する可能性のある三酸化硫黄などの硫黄含有微量不純物とのいかなる接触からもNOx吸収体組成物を保護することになる。
【0045】
本明細書に使用される際、「触媒」または「触媒組成物」という用語は、反応を促進する材料を指す。
【0046】
本明細書に使用される際、「吸収体」という用語は、ガス種と反応して、高温および/または、例えば、排気ガス組成を純リーンから純リッチに変更することによるガス組成の変化のいくつかの組み合わせによって元のガス種に戻すように容易に変換され得る、化学的に吸収される種、表面複合体、または化合物を形成する材料を指す。
【0047】
本明細書に使用される際、「上流」および「下流」という用語は、エンジンから排気管に向かうエンジン排気ガスの流れの流動に応じた相対的な方向を指し、エンジンは、上流の場所にあり、排気管ならびにフィルタおよび触媒などの任意の汚染低減物品は、エンジンの下流にある。
【0048】
本明細書に使用される際、「流れ」という用語は、固体または液体の粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを広範に指す。「ガス状の流れ」または「排気ガスの流れ」という用語は、燃焼機関の排気ガスなどの気体成分の混合物を意味し、これはまた、液滴、固体粒子などの同伴された非気体成分も含有し得る。燃焼機関の排気ガスの流れは、典型的には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質粒子状物質(すす)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。
【0049】
本明細書に使用される際、「基材」という用語は、触媒組成物が配置されるモノリシック材料を指す。
【0050】
本明細書に使用される際、「担体」という用語は、白金族金属成分が適用される任意の高表面積材料、通常、金属酸化物材料を指す。
【0051】
本明細書に使用される際、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガスの流れの通過を可能にするのに十分に多孔質である、ハニカムタイプのキャリア部材などの基材材料に適用される触媒または他の材料の薄い付着性コーティングの当技術分野における通常の意味を有する。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の粒子の特定の固形分(例えば、30重量%~90重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、これは、次いで、基材上にコーティングされ、乾燥されて、ウォッシュコート層を提供する。
【0052】
本明細書に使用される際、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材上に触媒組成物を含有するウォッシュコートを含み得る。触媒物品はまた、パックベッド反応器で使用するためのモノリシックハニカムまたは他の固体形状に形成された触媒組成物を主に含み得る。
【0053】
本明細書に使用される際、「含浸された」または「含浸」は、担体材料の多孔質構造への触媒材料の浸透を指す。
【0054】
「低減」という用語は、任意の手段によって引き起こされる、量の減少を意味する。
【0055】
SCR触媒組成物
本発明のSCR触媒組成物は、混合金属酸化物成分または金属促進分子篩を含む。混合金属酸化物成分を含むSCR触媒組成物について、そこに使用される際の「混合金属酸化物成分」という用語は、2つ以上の化学元素のカチオンまたはいくつかの酸化状態の単一元素のカチオンを含有する酸化物を指す。1つ以上の実施形態では、混合金属酸化物は、Fe/チタニア(例えば、FeTiO3)、Fe/アルミナ(例えば、FeAl2O3)、Mg/チタニア(例えば、MgTiO3)、Mg/アルミナ(例えば、MgAl2O3)、Mn/アルミナ(例えば、MnOx/Al2O3)、Mn/チタニア(例えば、MnOx/TiO2)、Cu/チタニア(例えば、CuTiO3)、Ce/Zr(例えば、CeZrO2)、Ti/Zr(例えば、TiZrO2)、Ti/Sb(例えば、TiO2/Sb2O3)、バナジア/チタニア(例えば、V2O5/TiO2)、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物成分は、バナジア/チタニアを含む。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物成分中に存在するバナジアの量は、混合金属酸化物成分の総重量に基づいて、約1重量%~約10重量%の範囲である(混合金属酸化物成分の総重量に基づいて、0重量%の下限で、約10重量%以下、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、または約1重量%)。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物成分は、活性化または安定化され得る。例えば、いくつかの実施形態では、バナジア/チタニア酸化物は、タングステン(例えば、WO3)を用いて活性化または安定化されて、V2O5/TiO2/WO3を提供し得る。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物成分(例えば、V2O5/TiO2/WO3)中に存在するタングステンの量は、混合金属酸化物成分の総重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%の範囲である(混合金属酸化物成分の総重量に基づいて、0重量%の下限で、約10重量%以下、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、または約1重量%)。いくつかの実施形態では、バナジアは、タングステン(例えば、WO3)で活性化または安定化される。タングステンは、バナジアの総重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%の範囲の濃度で分散され得る(バナジアの総重量に基づいて、0重量%の下限で、約10重量%以下、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、または約1重量%)。SCR触媒組成物としての混合金属酸化物の例については、全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Schafer-Sindelindgerらの米国特許出願公開第2001/0049339号、Brennanらの米国特許第4,518,710号、Hegedusらの米国特許第5,137,855号、Kapteijnらの米国特許第5,476,828号、Hongらの米国特許第8,685,882号、およびJurngらの米国特許第9,101,908号を参照されたい。
【0056】
金属促進分子篩を含むSCR触媒組成物について、「分子篩」という用語は、ゼオライトなどの骨格材料および他の骨格材料(例えば、同形置換材料)を指す。分子篩は、概して、四面体タイプの部位を含有し、平均孔径が20Å以下である実質的に均一の細孔分布を有する、酸素イオンの広範な3次元ネットワークに基づく材料である。孔径は、環サイズによって画定される。1つ以上の実施形態によると、分子篩をそれらの骨格タイプによって画定することによって、SAPO、ALPOおよびMeAPO、Geケイ酸塩、全シリカ、および同一骨格タイプを有する同様の材料などの任意および全てのゼオライトまたは同形骨格材料を含むように意図されることが理解されるであろう。
【0057】
概して、分子篩、例えば、ゼオライトは、角を共有するTO4四面体から構成される開いた3次元骨格構造を有するアルミノケイ酸塩として画定され、Tは、AlもしくはSi、または、任意選択的に、Pである。アニオン骨格の変化を均衡させるカチオンは、骨格酸素とゆるく関連付けられており、残りの細孔容積は、水分子で満たされる。非骨格カチオンは、概して、交換可能であり、水分子は、除去可能である。
【0058】
本明細書に使用される際、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含む分子篩の特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプならびにゼオライト格子中に含まれるカチオンのタイプおよび量に依存して、直径が約3~10オングストロームの範囲である、極めて均一な孔径を有する結晶性材料である。ゼオライトおよび他の分子篩のアルミナに対するシリカのモル比(SAR)は、非常に広範囲にわたって変化し得るが、通常、2以上である。1つ以上の実施形態では、分子篩は、約2~約300、約5~約250、約5~約200、約5~約100、および約5~約50の範囲内のSARモル比を有する。1つ以上の特定の実施形態では、分子篩は、約10~約200、約10~約100、約10~約75、約10~約60、および約10~約50、約15~約100、約15~約75、約15~約60、および約15~約50、約20~約100、約20~約75、約20~約60、および約20~約50の範囲のSARモル比を有する。
【0059】
より具体的な実施形態では、アルミノケイ酸塩ゼオライト骨格タイプへの言及は、骨格内で置換されたリンまたは他の金属を含まない分子篩に材料を限定する。しかしながら、明確にするために、本明細書に使用される際、「アルミノケイ酸塩ゼオライト」は、SAPO、ALPO、およびMeAPO材料などのアルミノリン酸塩材料を除外し、より広範な「ゼオライト」という用語は、アルミノケイ酸塩およびアルミノリン酸塩を含むことが意図される。「アルミノリン酸塩」という用語は、アルミニウムおよびリン酸塩原子を含む、分子篩の別の特定の例を指す。アルミノリン酸塩は、極めて均一な孔径を有する結晶性材料である。
【0060】
1つ以上の実施形態では、分子篩は、独立して、3次元ネットワークを形成するために共通の酸素原子によってリンクされるSiO4/AlO4四面体を含む。他の実施形態では、分子篩は、SiO4/AlO4/PO4四面体を含む。1つ以上の実施形態の分子篩は、主に、SiO4/AlO4、またはSiO4/AlO4/PO4の四面体の剛性ネットワークによって形成されるボイドの幾何学的配置に従って区別され得る。ボイドへの入口は、入口開口部を形成する原子に対して6、8、10、または12個の環原子から形成される。1つ以上の実施形態では、分子篩は、6、8、10、および12を含む12以下の環サイズを含む。
【0061】
1つ以上の実施形態によると、分子篩は、構造が識別される骨格トポロジーに基づき得る。典型的には、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはそれらの組み合わせの骨格タイプなどの任意の骨格タイプのゼオライトが使用され得る。いくつかの実施形態では、分子篩は、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFIから選択される骨格構造タイプを含む。
【0062】
1つ以上の実施形態では、分子篩は、8環の小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。本明細書に使用される際、「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい、例えば、約3.8オングストローム程度である細孔開口部を指す。「8環」ゼオライトという語句は、8環の細孔開口部および二重6環の二次構築単位を有し、4個の環による二重6環構築単位の接続から生じるかご状構造を有するゼオライトを指す。1つ以上の実施形態では、分子篩は、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔分子篩である。
【0063】
上記のように、1つ以上の実施形態では、分子篩は、全てのアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ガロケイ酸塩、MeAPSO、およびMeAPO組成物を含み得る。これらは、限定されるものではないが、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44、Ti-SAPO-34、およびCuSAPO-47を含む。
【0064】
本明細書に上記で言及されたように、開示されるSCR触媒組成物は、概して、金属促進される分子篩(例えば、ゼオライト)を含む。本明細書に使用される際、「促進」は、分子篩に固有であり得る不純物を含むのとは対照的に、意図的に添加される1つ以上の成分を含む分子篩を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加された促進剤を有していない触媒と比較して、触媒の活性を増強するために意図的に添加される成分である。窒素酸化物のSCRを促進するために、本開示による1つ以上の実施形態では、好適な金属が分子篩内に交換される。銅は、窒素酸化物の変換に関与し、したがって、交換に特に有用な金属であり得る。したがって、特定の実施形態では、銅促進分子篩、例えば、Cu-CHA、を含む触媒組成物が提供される。しかしながら、本発明は、それらに限定されることを意図するものではなく、他の金属促進分子篩を含む触媒組成物も本発明に包含される。
【0065】
促進剤金属は、概して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、およびIIB族の遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。様々な実施形態において、金属促進分子篩を調製するために使用され得る、さらなる促進剤金属としては、限定されるものではないが、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。そのような金属の組み合わせは、例えば、混合されたCu-Fe促進分子篩、例えば、Cu-Fe-CHAを与える、銅および鉄が用いられ得る。
【0066】
1つ以上の実施形態では、酸化物として計算された金属促進分子篩の促進剤金属含有量は、焼成された分子篩(促進剤を含む)かつ揮発性物質を含まない基準で報告された総重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.5重量%~約4重量%、約2重量%~約5重量%、または約1重量%~約3重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、分子篩の促進剤金属は、Cu、Fe、またはそれらの組み合わせを含む。
【0067】
金属促進分子篩を含むSCR触媒組成物の例については、全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Rivas-Cardonaらの米国特許第9,480,976号、Stiebelsらの米国特許第9,352,307号、Wanらの米国特許第9,321,009号、Andersenらの米国特許第9,199,195号、Bullらの米国特許第9,138,732号、Mohananらの米国特許第9,011,807号、Turkhanらの米国特許第8,715,618号、Boorseらの米国特許第8,293,182号、Boorseらの米国特許第8,119,088号、Fedeykoらの米国特許第8,101,146号、Marshallらの米国特許第7,220,692号を参照されたい。
【0068】
NOx吸収体組成物
本発明のNOx吸収体組成物は、担体材料上に含浸された白金族金属成分を含む。本明細書に使用される際、「白金族金属成分」または「PGM成分」は、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)およびそれらの混合物を含む白金族金属またはその酸化物を指す。白金族金属成分の濃度は、変化し得るが、典型的には、含浸金属酸化物担体の総重量に対して約0.01重量%~約10重量%である。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物は、白金を実質的に含まない。本明細書に使用される際、「白金を実質的に含まない」という用語は、意図的にNOx吸収体組成物に追加される追加の白金がないこと、およびNOx吸収体組成物中に存在する白金金属が約0.01重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物は、白金を明確に除外する。他の実施形態では、白金族金属成分は、2つの白金族金属を、例えば、約1:10~約10:1の重量比で含む。例えば、いくつかの実施形態では、白金族金属成分は、ルテニウムおよびパラジウムを含む。
【0069】
白金族金属成分は、任意の好適な材料で支持され得る。いくつかの実施形態では、担体材料は、金属酸化物担体である。本明細書に使用される際、「金属酸化物担体」は、ディーゼルエンジン排気と関連付けられた温度などの高温で化学的および物理的安定性を発揮する金属含有酸化物材料を指す。例示的な金属酸化物としては、限定されるものではないが、セリア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、金属酸化物のアルミナ、シリカ、ジルコニア、またはチタニアは、金属酸化物担体を形成するために、セリアとの物理的混合物または化学的組み合わせとして組み合わせられ得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は、NOx吸収体組成物の総重量に基づいて、50重量%超のセリアを含む。さらなる実施形態では、金属酸化物担体は、NOx吸収体組成物の総重量に基づいて、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、または約90重量%超のセリアを含む。追加の実施形態では、金属酸化物担体は、NOx吸収体組成物の総重量に基づいて、約50重量%~約99.9重量%、約60重量%~約99.5重量%、または約80重量%~約99.0重量%のセリアを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は、原子的にドープされた金属酸化物の組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態では、金属酸化物担体は、限定されるものではないが、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Si、Nb、Zrおよびそれらの組み合わせから選択されるランタニド族金属などの、酸化形態のドーパント金属を含有するように変性される。いくつかの実施形態では、ドーパント金属は、Pr、Gd、Zr、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ドーパント金属またはそれらの組み合わせの総量は、NOx吸収体組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%の範囲である。例示的な金属酸化物としては、限定されるものではないが、アルミナ-ジルコニア、セリア-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアアルミナ、およびアルミナ-セリアなどの2つの金属酸化物の混合物が挙げられる。例示的なアルミナは、大きい細孔のベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナを含む。有用な市販のアルミナは、高嵩密度のガンマ-アルミナ、低または中程度の嵩密度の大孔径ガンマ-アルミナ、および低嵩密度の大孔径ベーマイトおよびガンマ-アルミナなどの活性化アルミナを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、担体材料は、分子篩、例えば、ゼオライトである。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物は、アルカリ土類金属成分をさらに含む。本明細書に使用される際、「アルカリ土類金属成分」という用語は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)を含む、元素周期表で画定された1つ以上の化学元素を指す。1つ以上の実施形態では、アルカリ土類金属成分は、塩および/または酸化物(例えば、BaCO3)としてNOx吸収体組成物中に組み込まれ得る。1つ以上の実施形態では、アルカリ土類金属成分は、バリウムを含む。アルカリ土類金属成分は、酸化物基準で、約1重量%~約30重量%、1重量%~約20重量%、または5重量%~約10重量%の量でNOx吸収体組成物中に存在し得る。
【0072】
NOx吸収体組成物の追加の例については、参照によりその全体が組み込まれる、Hephurnらの米国特許第5,750,082号、Melvilleらの米国特許第8,105,559号、Wanらの米国特許第8,475,752号、Holgendorffらの米国特許第8,592,337号、Briskleyらの米国特許第9,114,385号、Swallowらの米国特許第9,486,791号、Xueらの米国特許第9,610,564号、Wanらの米国特許第9,662,611号、Benderらの米国特許出願第2002/0077247号、Hilgendorffらの米国特許出願第2011/0305615号、Rajaramらの米国特許出願第2015/0157982号、Rajaramらの米国特許出願第2015/0158019号、Bibergerらの米国特許出願第2016/0228852号、およびGrubertらの国際特許出願第WO2016/141142号を参照されたい。
【0073】
基材
本発明の触媒物品のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料から構築され得、典型的には、金属またはセラミックハニカム構造を含むことになる。基材は、典型的には、触媒物品ウォッシュコート組成物が適用および接着される複数の壁面を提供し、それによって、1つ以上の触媒組成物の担体として作用する。
【0074】
例示的な金属基材は、チタンおよびステンレス鋼ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金などの耐熱性金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の総量は、有利には、少なくとも15重量%の合金、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、および最大20重量%のニッケルを含み得る。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどのような少量または痕跡量の1つ以上の他の金属を含有し得る。金属基材の表面は、高温、例えば、1000℃以上で酸化されて、基材の表面上に酸化物層を形成し、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を容易にし得る。
【0075】
基材を構築するために使用されるセラミック材料は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コージライト-αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩などを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、基材は、ハニカム構造または任意の他の固体形状、例えば、充填ベッド反応器で使用され得る任意の固体形状を形成する1つ以上の触媒組成物から構築され得る。例えば、基材は、第2の触媒組成物を含むウォッシュコート組成物でコーティングされる第1の触媒組成物から構築され得る。別の例では、第1および第2の触媒組成物は、共押出しされて基材を形成し得る。
【0077】
流路が流体流に開放されるように基材の入口から出口面まで延在する複数の微細で平行なガス流路を有するモノリシックフロースルー基材などの任意の好適な基材が使用され得る。入口から出口への本質的に直線の経路である流路は、流路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定される。モノリシック基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波形状、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状とすることができる薄壁チャネルである。そのような構造は、約60~約1200以上の断面平方インチあたりのガス入口開口部(すなわち、「セル」)(cpsi)、より一般的には、約300~600cpsiを含有し得る。フロースルー基材の壁の厚さは、様々であり得、典型的な範囲は、0.002~0.1インチである。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで6milの壁厚、または600cpsiで4milの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0078】
代替的な実施形態では、基材は、各流路が非多孔質プラグで基材本体の一端で閉塞され、代替の流路が反対側の端面で閉塞されている、壁流基材であってもよい。これは、出口に到達するために、ガス流が壁流基材の多孔質壁を通ることを必要とする。そのようなモノリシック基材は、約100~400cpsi、より典型的には、約200~約300cpsiなどの、最大約700またはそれよりも多いcpsiを含有し得る。セルの断面形状は、上記のように様々であり得る。壁流基材は、典型的には、0.002~0.1インチの壁厚を有する。代表的な市販の壁流基材は、多孔質コーディエライトから構築され、その例としては、200cpsiで10milの壁厚、または300psiで8milの壁厚、および45~65%の壁の気孔率を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素などの他のセラミック材料もまた、壁流フィルタ基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材タイプ、材料、または幾何学的形状に限定されないことが理解されるであろう。基材が壁流基材である場合、触媒組成物は、壁の表面に配設されることに加えて、多孔質壁の細孔構造内に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的または完全に塞ぐ)ことに留意されたい。
【0079】
図1および2は、本明細書に説明されるウォッシュコート組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。
図1を参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒外面4、上流端面6、および端面6と同一の対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図2に見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで基材2を通って延在し、流路10は、流体、例えば、ガスの流れの流動が基材2を、そのガス流路10を介して長手方向に通ることを許容するように、閉塞されていない。
図2でより容易に見られるように、壁12は、そのように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、ウォッシュコート組成物は、必要に応じて、複数の別個の層内で適用され得る。例示される実施形態では、ウォッシュコートは、基材部材の壁12に接着された別個の底部ウォッシュコート層14と、底部ウォッシュコート層14の上にコーティングされた第2の別個の最上部ウォッシュコート層16との両方から構成される。本発明は、1つ以上(例えば、2、3、または4)のウォッシュコート層を用いて実施され得、例示された2層の実施形態に限定されない。あるいは、本発明の触媒組成物(すなわち、SCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物)は、同じウォッシュコート層内で均質に混合されてもよい。
【0080】
例えば、一実施形態では、触媒物品は、各層が異なる触媒組成を有する多層の触媒材料を含む。底部層(例えば、
図2の層14)は、本発明のNOx吸収体組成物を含み得、最上部層(例えば、
図2の層16)は、本発明のSCR触媒組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、触媒物品は、触媒材料を含み、底部層(例えば、
図2の層14)が本発明のSCR触媒組成物を含み得、最上部層(例えば、
図2の層16)が本発明のNOx吸収体組成物を含み得る。
【0081】
別の例では、触媒物品は、1つ以上の層を有する触媒材料を含み、基材は、1つ以上の触媒組成物から構築される。一実施形態では、基材は、本発明のSCR触媒組成物を含むウォッシュコート組成物でコーティングされた本発明のNOx吸収体組成物から構築される。いくつかの実施形態では、本発明のSCR触媒組成物の2つ以上の層が基材に適用される(例えば、
図2の層14および16)。
【0082】
別の例では、基材は、本発明のNOx吸収体組成物を含むウォッシュコート組成物でコーティングされた本発明のSCR触媒組成物から構築される。いくつかの実施形態では、本発明のNOx吸収体組成物の2つ以上の層が基材に適用される(例えば、
図2の層14および16)。
【0083】
別の例では、基材は、本発明のSCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物を共押出することによって構築され、ウォッシュコート組成物でコーティングされない。
【0084】
SCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物の相対量は、様々であり得る。例えば、それぞれ、例示的な二重層コーティング内のNOx吸収体組成物中のPGM成分の相対量は、底部層(基材表面に隣接する)中のNOx吸収体組成物の総重量に基づいて、約10~90重量%を含み得、SCR触媒組成物は、最上部層中のSCR触媒組成物の総重量に基づいて、約10~90重量%存在する。SCR触媒組成物が底部層中にあり、NOx吸収体組成物が最上部層上にある場合に、同じ割合が適用され得る。
【0085】
図3は、本明細書に説明されるウォッシュコート組成物でコーティングされた壁流フィルタ基材の形態の例示的な基材2を例示する。
図3に見られるように、例示的な基材2は、複数の流路52を有する。流路は、フィルタ基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端54および出口端56を有する。代替的な流路は、入口端で入口プラグ58を用いて塞がれ、出口端で出口プラグ60を用いて塞がれて、入口54および出口56で対向するチェッカーボードパターンを形成する。ガスの流れ62は、塞がれていないチャネル入口64を通って入り、出口プラグ60によって止められ、チャネル壁53(多孔質である)を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58を理由に、壁の入口側に戻って通ることができない。本発明で使用される多孔質壁流フィルタは、要素の壁がその上に、またはその中に1つ以上の触媒物質を有するという点で触媒作用を受ける。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在してもよく、または壁自体が、触媒材料から全てまたは一部が構成されてもよい。本発明は、要素の入口および/または出口壁上の触媒材料の1つ以上の層の使用を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、基材は、軸方向にゾーン化された構成の別個のウォッシュコートスラリー中に含有される少なくとも2つの層でコーティングされ得る。例えば、同じ基材が、1つの層のウォッシュコートスラリーおよび別の層のウォッシュコートスラリーでコーティングされ得、各層は、異なる。これは、第1のウォッシュコートゾーン102および第2のウォッシュコートゾーン103が基材100の長さに沿って並んで位置する一実施形態を示す、
図4を参照することによってより容易に理解され得る。特定の実施形態の第1のウォッシュコートゾーン102は、基材100の前端または入口端100aから、基材100の長さの約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%の範囲を通って延在する。第2のウォッシュコートゾーン103は、基材100の後端または出口端100bから、基材100の総軸長の約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、または約10%~約35%延在する。本発明に説明されているように、処理システム内の少なくとも2つの成分の触媒組成物は、同じ基材上にゾーン化され得る。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物およびSCR触媒組成物は、同じ基材上にゾーン化される。例えば、
図4を再び参照すると、第1のウォッシュコートゾーン102は、NOx吸収体組成物を表し、基材の前端または入口端100aから、基材100の長さの約5%~約95%の範囲を通って延在する。したがって、SCR触媒組成物を含む第2のウォッシュコートゾーン103は、基材100の後部または出口100bから延在するゾーン102に並んで位置する。別の実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン102は、SCR触媒組成物を表し得、第2のウォッシュコートゾーン103は、NOx吸収体組成物を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、
図5に見られるように、基材100は、基材100の前端または入口端100aから基材100の後端または出口端100bまで延在する第1のコーティング層106と、基材100の前端または入口端100aに近接して第1のコーティング層106上にコーティングされ、基材100の部分的な長さのみにわたって延在している(すなわち、基材100の後端または出口端100bに到達する前に終結する)第2のコーティング層107とでコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、第1のコーティング層106は、SCR触媒組成物を含み得、第2のコーティング層107は、NOx吸収体組成物を含み得る。別の実施形態では、第1のコーティング層は、NOx吸収体組成物を含み得、第2のコーティング層は、SCR触媒組成物を含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、
図6に見られるように、基材100は、基材100の後端または出口端100bに近接し、基材100の長さに沿って部分的にのみ延在する(すなわち、基材100の前端または入口端100aに到達する前に終結する)第1のコーティング層115でコーティングされ得る。基材100は、第2のコーティング層114でコーティングされ得る。
図6に見られるように、第2のコーティング層114は、基材100の前端または入口端100aから基材100の後端または出口端100bまで延在する(したがって、第1のコーティング層115の上に完全にコーティングされる)。いくつかの実施形態では、第1のコーティング層115は、NOx吸収体組成物を含み得、第2のコーティング層114は、SCR触媒組成物を含み得る。別の実施形態では、第1のコーティング層は、SCR触媒組成物を含み得、第2のコーティング層は、NOx吸収体組成物を含み得る。例として提供された上記の実施形態、および触媒コーティングのさらなる組み合わせが包含されることが理解される。
【0089】
組成物の触媒金属成分および他の成分のウォッシュコートの量を説明する際に、触媒基材の単位体積あたりの成分の重量の単位を使用することが好都合である。したがって、単位、グラム/立方インチ(「g/in3」)およびグラム/立方フィート(「g/ft3」)は、基材のボイド空間の体積を含む、基材の体積あたりの成分の重量を意味するように本明細書に使用される。g/Lなどの体積あたりの重量の他の単位も使用されることがある。基材上の触媒物品(すなわち、NOx吸収体組成物およびSCR触媒組成物)の総含有量は、典型的には、約0.5~約6g/in3、より典型的には、約1~約5g/in3、または約1~約3g/in3である。担体材料なしのPGM(例えば、PGM成分のみ)の総含有量は、触媒物品に対して、典型的には、約0.1~約200g/ft3、約0.1~約100g/ft3、約1~約50g/ft3、約1~約30g/ft3、または約5~約25g/ft3の範囲内である。単位体積あたりのこれらの重量は、典型的には、触媒ウォッシュコート組成物による処理の前後に基材を秤量することによって計算され、処理プロセスが、高温での基材の乾燥および焼成を伴うため、これらの重量は、ウォッシュコートスラリーの水の本質的に全てが除去されたときの本質的に無溶媒の触媒コーティングを表すことに留意されたい。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCSFのフィルタ上の触媒材料は、触媒組成が異なる2つ以上の触媒組成物(例えば、選択的酸化触媒組成物およびSCR材料)を含む。そのような触媒組成物は、例えば、軸方向にゾーン化された構成で、壁流フィルタをコーティングするときに別個のウォッシュコートスラリー中に含有され、壁流フィルタは、1つの触媒組成物のウォッシュコートスラリーおよび別の触媒組成物のウォッシュコートスラリーでコーティングされる。これは、第1のウォッシュコートゾーン24および第2のウォッシュコートゾーン26が、上流端25および下流端27を有する基材28の長さに沿って並んで位置する、ゾーン化されコーティングされた壁流フィルタ20の一実施形態を示す、
図3を参照することによってより容易に理解され得る。このゾーン化された構成では、第1のウォッシュコートゾーン24は、第2のウォッシュコートゾーン26の上流に位置する(または第2のウォッシュコートゾーン26は、第1のウォッシュコートゾーン24の下流に位置する)。
【0091】
例えば、いくつかの実施形態では、触媒化スートフィルタの触媒材料は、選択的酸化触媒組成物および第2のSCR材料を含み、これらは、軸方向にゾーン化された構成で基材上に配設される。いくつかの実施形態では、ウォッシュコートゾーン24は、本明細書に開示される選択的酸化触媒組成物を表し、第2のウォッシュコートゾーン26は、触媒スートフィルタを与えるために本明細書に開示される第2のSCR材料を表し、第2のSCR材料は、選択的酸化触媒組成物の下流に配設される。別の実施形態では、第1のウォッシュコートゾーン24は、本明細書に開示される第2のSCR材料を表し、第2のウォッシュコートゾーン26は、本明細書に開示される選択的酸化触媒組成物を表し、触媒化スートフィルタを提供し、選択的酸化触媒組成物が第2のSCRの下流に配設される。
【0092】
別の例では、触媒化スートフィルタの触媒材料は、同じウォッシュコート内で混合され、かつ層状構成の基板上に配設された、選択的酸化触媒組成物および第2のSCR材料を含む。
【0093】
触媒組成物の作製方法
NOx吸収体組成物用のPGM成分含浸担体材料の調製は、典型的には、パラジウムおよび/またはルテニウム前駆体溶液などの活性金属溶液を用いて粒子形態の担体材料を含浸させることを含む。活性金属は、初期湿潤技術を使用して、同じ担体粒子または別個の担体粒子中に含浸させられ得る。いくつかの実施形態では、担体材料は、金属酸化物担体である。
【0094】
毛細管含浸または乾式含浸とも呼ばれる初期湿潤含浸技術は、異種材料、例えば、触媒の合成に一般的に使用される。典型的には、金属前駆体は、水溶液または有機溶液中に溶解され、次いで、金属含有溶液は、添加された溶液の体積と同じ細孔容積を含有する触媒担体に添加される。毛細管作用は、溶液を担体の細孔中に引き込む。担体の細孔容積を超えて添加された溶液は、溶液輸送を毛細管作用プロセスから、はるかに遅い拡散プロセスに変化させる。触媒は、次いで、溶液内の揮発性成分を除去するために乾燥および焼成され、触媒担体の表面上に金属を堆積させる。含浸された材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥中の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0095】
担体粒子は、典型的には、実質的に全ての溶液を吸収して湿潤固体を形成するのに十分に乾燥している。塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム(例えば、Ru(NO)およびその塩)、ヘキサアンミン塩化ルテニウム、またはそれらの組み合わせなどの、水溶性化合物または活性金属(すなわち、PGM成分)の錯体の水溶液が典型的に利用される。活性金属としてパラジウムを有する水溶性化合物の水溶液は、硝酸パラジウム、パラジウムテトラアミン、酢酸パラジウム、またはそれらの組み合わせなどの金属前駆体を含む。
【0096】
活性金属溶液を用いた担体粒子の処理後、粒子は、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、1~3時間)、粒子を熱処理することによって乾燥させられ、次いで、活性金属をより触媒的に活性な形態に変換するために焼成される。例示的な焼成プロセスは、約400~550℃の温度で10分間~3時間の空気中での熱処理を伴う。上記のプロセスは、活性金属含浸の所望されるレベルに到達するために必要に応じて繰り返され得る。NOx吸収体組成物の調製の追加の例については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Gotoらの米国特許第5,472,673号、Guthらの米国特許第5,599,758号、Hepburnらの米国特許第5,750,082号、Melvilleらの米国特許第8,105,559号、Wanらの米国特許第8,475,752号、Holgendorffらの米国特許第8,592,337号、Briskleyらの米国特許第9,114,385号、Swallowらの米国特許第9,486,791号、Xueらの米国特許第9,610,564号、Wanらの米国特許第9,662,611号、Benderらの米国特許出願第2002/0077247号、Hilgendorffらの米国特許出願第2011/0305615号、Rajaramらの米国特許出願第2015/0157982号、Rajaramらの米国特許出願第2015/0158019号、Bibergerらの米国特許出願第2016/0228852号、およびGrubertらの国際特許出願第WO2016/141142号を参照されたい。
【0097】
本発明のSCR触媒組成物のための金属促進分子篩の調製は、概して、分子篩中にイオン交換された金属(例えば、銅)を含む。イオン交換プロセスは、金属前駆体溶液を有する粒子形態の分子篩を含む。例えば、銅塩が銅を提供するために使用され得る。そのような金属は、概して、アルカリ金属またはNH4分子篩中にイオン交換される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bleken,F.et al. Topics in Catalysis 2009,52,218-228に開示されているように、当技術分野で既知の方法によってアルカリ金属分子篩中へのNH4
-イオン交換によって調製され得る)。
【0098】
SCR触媒組成物の追加の促進のために、いくつかの実施形態では、分子篩は、2つ以上の金属(例えば、1つ以上の他の金属と組み合わせた銅)で促進され得る。2つ以上の金属が金属イオン促進分子篩材料中に含められる場合、複数の金属前駆体(例えば、銅および鉄前駆体)が、同時にまたは別個にイオン交換され得る。特定の実施形態では、第2の金属は、第1の金属で最初に促進された分子篩材料中に交換され得る(例えば、第2の金属は、銅で促進された分子篩材料中に交換され得る)。第2の分子篩材料は、様々であり得、いくつかの実施形態では、鉄またはアルカリ土類金属もしくはアルカリ金属であり得る。好適なアルカリ土類金属またはアルカリ金属としては、限定されるものではないが、バリウム、マグネシウム、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。金属促進分子篩を含むSCR触媒組成物の調製の例については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Rivas-Cardonaらの米国特許第9,480,976号、Stiebelsらの米国特許第9,352,307号、Wanらの米国特許第9,321,009号、Andersenらの米国特許第9,199,195号、Bullらの米国特許第9,138,732号、Mohananらの米国特許第9,011,807号、Turkhanらの米国特許第8,715,618号、Boorseらの米国特許第8,293,182号、Boorseらの米国特許第8,119,088号、Fedeykoらの米国特許第8,101,146号、Marshallらの米国特許第7,220,692号、Byrneらの米国特許第4,961,917号、Shiraishiらの米国特許第4,010,238号、Nakajimaらの米国特許第4,085,193号を参照されたい。
【0099】
混合金属酸化物を含むSCR触媒組成物の調製については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、例えば、Brennanらの米国特許第4,518,710号、Hegedusらの米国特許第5,137,855号、Kapteijnらの米国特許第5,476,828号、Hongらの米国特許第8,685,882号、Jurngらの米国特許第9,101,908号を参照されたい。
【0100】
基材コーティングプロセス
上記の触媒組成物は、典型的には、上記のように触媒粒子の形態で調製される。これらの触媒粒子は、水と混合されて、ハニカムタイプの基材などの触媒基材をコーティングする目的でスラリーを形成し得る。
【0101】
触媒粒子に加えて、スラリーは、任意選択的に、アルミナ、シリカ、酢酸ジルコニウム、コロイド状ジルコニア、もしくは水酸化ジルコニウム、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含む)の形態の結合剤を含有し得る。他の例示的な結合剤としては、ボヘマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、およびシリカゾルが挙げられる。存在する場合、結合剤は、典型的には、ウォッシュコート全含有量の約1~5重量%の量で使用される。
【0102】
スラリーへの酸性または塩基性種の添加が、適宜pHを調整するために実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加によって調整される。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~6である。
【0103】
スラリーは、粒径を小さくして粒子の混合を増強するために粉砕され得る。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の機器で達成され得、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、専用の粒径分析器を使用して決定される。機器は、2010年にSympatecによって製造され、レーザー回折を使用して、少量のスラリーの粒径を測定する。D90は、典型的には、ミクロン単位で、数で90%の粒子が見積値未満の直径を有することを意味する。
【0104】
スラリーは、当技術分野で既知の任意のウォッシュコート技術を使用して基材にコーティングされる。一実施形態では、基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、またはそうでなければスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材は、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、10分~約3時間)、乾燥され、次いで、例えば、400~600℃で典型的には約10分間~約3時間、加熱することによって焼成される。乾燥および焼成後、最終的なウォッシュコートコーティング層は、本質的に無溶剤とみなされ得る。
【0105】
焼成後、上記のウォッシュコート技術によって得られた触媒含有量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差の計算によって決定され得る。当業者に明らかであるように、触媒含有量は、スラリーレオロジーを変化させることによって変更され得る。加えて、ウォッシュコートをコーティング/乾燥/焼成プロセスは、所望される含有量レベルまたは厚さまでコーティングを構築するために必要に応じて繰り返され得、2回以上のウォッシュコートが適用され得ることを意味する。
【0106】
排出物処理システム
本発明はまた、本明細書に説明される触媒物品を組み込む排出物処理システムを提供する。本発明の触媒物品は、典型的には、排気ガス排出物、例えば、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出物の処理のための1つ以上の追加の構成要素を備える、統合排出物処理システムで使用される。例えば、排出物処理システムは、触媒化スートフィルタ(CSF)および/またはディーゼル酸化触媒(DOC)をさらに含み得る。本発明の触媒物品は、排出物処理システムの様々な構成要素の相対的な配置が様々であり得るが、典型的には、スートフィルタの上流または下流、およびディーゼル酸化触媒構成要素の下流に位置する。処理システムは、アンモニア前駆体のための還元剤噴射器などのさらなる構成要素を含み、任意選択的に、任意の追加の粒子濾過構成要素を含み得る。構成要素の上記のリストは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0107】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム32の概略図を図示する
図7に例示される。示されるように、ガス状汚染物質および粒子状物質を含有する排気ガスの流れは、排気管36を介して、エンジン34からディーゼル酸化触媒(DOC)38、触媒化スートフィルタ(CSF)42、本発明の触媒物品(すなわち、SCR/NOxAd構成要素46)に運ばれる。DOC38では、未燃焼のガス状かつ不揮発性の炭化水素(SOF)および一酸化炭素の大部分が燃焼されて、二酸化炭素および水を形成する。加えて、NOx成分のある割合のNOは、DOC中でNO
2に酸化され得る。
【0108】
排気の流れは、次に、排気管40を介して、排気ガスの流れ内に存在する粒子状物質を捕捉する、触媒化スートフィルタ(CSF)42に運ばれる。CSF42は、任意選択的に、受動的または能動的なスート再生のために触媒化される。CSF42は、任意選択的に、排気ガス中に存在するNOxの変換のためのSCR触媒組成物を含み得る。
【0109】
粒子状物質の除去後、CSF42を介して、排気ガスの流れは、NOxのさらなる処理および/または変換のために、排気管44を介して本発明の下流の触媒物品(すなわち、SCR/NOxAd構成要素46)に運ばれる。排気ガスは、触媒組成物にとって、所与の温度で排気ガス中のNOxのレベルを低減するのに十分な時間を可能にする流量で構成要素46を通過する。窒素含有還元剤を排気の流れ中に導入するための噴射器50は、SCR/NOx構成要素46の上流に位置する。ガス排気の流れ中に導入された窒素含有還元剤は、ガスが46で触媒組成物に曝されると、N2および水へのNOxの還元を促進する。CSF42が既にSCR触媒組成物を含む排出物処理システムの場合、窒素含有還元剤を排気の流れ中に導入するための噴射器50は、CSF42の上流に位置する。あるいは、SCR触媒を有するCSF42およびSCR/NOxAd構成要素46を含む排出物システムの場合、1つおよび/または2つの噴射器50が、CSF42および/またはSCR/NOxAd構成要素46の上流に含められ得る。ガス排気の流れ中に導入された窒素含有還元剤は、ガスが触媒組成物に曝されると、N2および水へのNOxの還元を促進する。
【0110】
さらに、この窒素含有還元剤は、NOxの処理のためにSCR/NOxAd構成要素46と接触する前に排気ガス中に導入され得る。概して、このSCRプロセス用の還元剤は、排気ガス中のNOxの還元を促進する任意の化合物を広範に意味する。そのような還元剤の例としては、アンモニア、ヒドラジン、または尿素((NH2)2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウムなどの任意の好適なアンモニア前駆体が挙げられる。
【0111】
別の例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム72の概略図を図示する
図8に例示される。示されるように、排気ガスの流れは、排気管76を介してエンジン74からディーゼル酸化触媒(DOC)78に運ばれる。排気の流れは、次に、排気管80を介して、触媒化スートフィルタ(CSF)86の上流に位置する本発明の触媒物品(すなわち、SCR/NOxAd構成要素82)に運ばれる。CSF86は、任意選択的に、排気ガス中に存在するNOxの変換のためのSCR触媒組成物を含み得る。次に、排気ガスの流れは、CSF86につながる排気管84を介してSCR/NOxAd構成要素82を出る。窒素含有還元剤を排気の流れ中に導入するための噴射器70は、SCR/NOxAd構成要素82の上流に位置する。あるいは、SCR触媒を有するCSF86およびSCR/NOxAd構成要素82を含む排出物処理システムの場合、1つおよび/または2つの噴射器70が、CSF86および/またはSCR/NOxAd構成要素82の上流に含められ得る。
【0112】
別の例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム90の概略図を図示する
図9に例示される。示されるように、排気ガスの流れは、排気管92を介してエンジン91から本発明の触媒物品(すなわち、SCR/NOxAd構成要素94)に運ばれる。窒素含有還元剤を排気の流れ中に導入するための噴射器93は、SCR/NOxAd構成要素94の上流に位置する。排気の流れは、次に、排気管95を介して、SCR/NOxAd構成要素94の上流に位置する触媒構成要素A(96)に運ばれる。触媒構成要素Aは、限定されるものではないが、ディーゼル酸化触媒、触媒化スートフィルタ、または選択的触媒還元触媒とすることができる。次に、排気ガスの流れは、存在する場合、触媒構成要素B(98)につながる排気管97を介して触媒構成要素Aを出る。触媒構成要素Bの存在は、任意であり、限定されるものではないが、触媒化スートフィルタ、ディーゼル酸化触媒、または選択的触媒還元触媒とすることができる。
【0113】
このSCRプロセスに関して、排気ガス中のNOxの還元のための方法が本明細書に提供され、当該方法は、本発明の触媒物品(すなわち、SCR触媒とNOx吸収体組成物との組み合わせ)と、任意選択的に、NOxを触媒的に還元するのに十分な時間および温度で還元剤の存在下で、排気ガスを接触させ、それによって、排気ガス中のNOxの濃度を低下させることを含む。特定の実施形態では、温度範囲は、約200℃~約600℃である。本発明の触媒物品は、新鮮であるか、または水熱熟成され得る。NOx還元の量は、触媒物品との排気ガスの流れの接触時間に依存し、したがって、空間速度に依存する。接触時間および空間速度は、本明細書では特に限定されない。このように、触媒物品は、特定の用途において望ましい、高い空間速度でも十分に機能し得る。いくつかの実施形態では、窒素および水に変換される排気ガスの流れ中のNOx(すなわち、NOとNO2の混合物)の量は、排気ガスの流れ中に存在するNOxの総量に基づいて、約50重量%~約99.9重量%、好ましくは約75重量%~約99.9重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、変換されたNOxの量は、排気ガスの流れ中に存在するNOxの総量に基づいて、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、または95重量%であり得、各値が100%の上限を有するように理解される。
【0114】
いくつかの実施形態では、排気ガス中のNOxの還元のための方法は、排気ガスを本発明の触媒物品と接触させることを含み、SCR触媒組成物およびNOx吸収体組成物は、両方の組成物が実質的に同じ動作温度になるように、同じ基材上に配設される。本発明の触媒物品によって低減されるNOxレベルの量は、別個の基材上に配設された同じNOx吸収体組成物およびSCR触媒組成物を有する触媒物品の組み合わせと比較して、より高い。
【0115】
本発明の触媒物品のNOxを吸収および放出するプロセスに関して、排気ガスの流れ中のNOx(NO、NO2、またはそれらの混合物)を吸収するための方法が提供される。そのような方法は、排気ガスの流れ中のNOxのレベルを低減するのに十分な時間および温度で、本明細書に説明されるようにガスの流れをNOx吸収体組成物と接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、排気ガスの流れから吸収されたNOxの量は、排気ガスの流れ中に存在するNOxの総量に基づいて、約15重量%~約99.9重量%、好ましくは約30重量%~約99.9重量%である。吸収されるNOxの量は、いくつかの実施形態では、排気ガスの流れ中に存在するNOxの総量に基づいて、少なくとも15重量%、25重量%、35重量%、45重量%、55重量%、65重量%、75重量%、85重量%、または95重量%であり得、各値は、100%の上限を有するように理解される。いくつかの実施形態では、温度は、約200℃未満、約150℃未満、または約100℃未満である。
【0116】
本発明の別の態様は、NOをN2に変換するためにSCR触媒組成物(排気ガス処理システム内のNOx吸収体組成物と同じ基材に位置する)にとって十分な温度で、NOx吸収体組成物から排気ガスの流れ中にNOx(すなわち、NOおよびNO2の混合物)を放出するための方法を対象とする。いくつかの実施形態では、排気ガスの流れ中に戻されて放出されるNOの量は、NOx吸収体に吸収されたNOの総量に基づいて、少なくとも約55%~約100%、または少なくとも約75%~約100%(あるいは少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99.9重量%)である。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物からのNOの放出の温度は、約170℃~約350℃、好ましくは約250℃~約350℃の範囲である。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的触媒還元(SCR)触媒組成物およびその上に配設された窒素酸化物(NOx)吸収体組成物の両方を有する基材を備え、
前記NOx吸収体組成物が、アルカリ土類金属成分を含み、そして、
前記SCR触媒組成物が、FeTiO
3
、FeAl
2
O
3
、MgTiO
3
、MgAlO
3
、MnO
X
/TiO
2
、CuTiO
3
、CeZrO
2
、TiZrO
2
、V
2
O
5
/TiO
2
、およびそれらの混合物からなる群から選択される混合金属酸化物成分を含む、触媒物品。
【請求項2】
前記SCR触媒組成物および前記NOx吸収体組成物が、前記基材上の単一層内で混合されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記基材上において、前記SCR触媒組成物が、第1の層内にあり、前記NOx吸収体組成物が、第2の層内にあり、前記第2の層が、直接、前記基材上にあり、前記第1の層が、前記第2の層の上にある、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記SCR触媒組成物および前記NOx吸収体組成物が、軸方向にゾーン化された構成で前記基材上に配設され、前記基材が、入口端および出口端を有する軸長を有し、前記第2の層が、前記基材の前記入口端から前記基材の前記軸長の約5~約95%の範囲にわたって延在する第1のゾーン上に配設されている、請求項3に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記NOx吸収体組成物が、白金を実質的に含まない、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記NOx吸収体組成物が、担体材料上に含浸されたRu、Pd、Rhおよびそれらの組み合わせから選択される白金族金属(PGM)成分を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記担体材料が、分子篩または金属酸化物である、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記分子篩が、ゼオライトであり、前記金属酸化物担体が、セリアを含む、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記金属酸化物に、少なくとも1つのランタニド族金属がドープされている、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記アルカリ土類金属成分が、バリウム成分を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記SCR触媒組成物が、金属促進分子篩を含む、請求項1のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記金属が、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記金属促進分子篩が、任意選択的に、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびUFI、ならびにそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有するゼオライトである、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記混合金属酸化物成分が、チタニアおよびバナジアを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記基材が、フロースルー基材(flow-through substrate)および壁流フィルタ(wall flow filter)からなる群から選択されるハニカム基材である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記NOx吸収体組成物が、アンモニアを実質的に酸化しない、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記触媒物品が、エンジン排気ガスの流れからのNOxを低減するのに有効である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項18】
排気ガスの流れを処理するための方法であって、前記排気ガスの流れ中のNOxが低減されるように、請求項1に記載の触媒物品と前記ガスを接触させることを含む、方法。
【請求項19】
排気ガスの流れを処理するための排出物処理システムであって、
排気ガスの流れを生成するエンジンと、
前記排気ガスの流れと流体連通している前記エンジンの下流に位置付けられ、処理された排気ガスの流れを形成するために前記排気の流れ内のNOxの還元に適合された、請求項1に記載の触媒物品と、
前記触媒物品の上流に位置付けられた、前記排気ガスの流れへの還元剤の添加に適合された噴射器と、を備える、排出物処理システム。
【請求項20】
前記触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒、および前記触媒物品の下流に位置する触媒化スートフィルタの一方または両方をさらに備える、請求項19に記載の排出物処理システム。
【外国語明細書】