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特開2024-122933複雑な微細構造におけるマルチスケール反応流
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122933
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】複雑な微細構造におけるマルチスケール反応流
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20240902BHJP
【FI】
G16C60/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028503
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】63/487,509
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル サラザール ティオ
(72)【発明者】
【氏名】アキレシュ パスプレディ
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティ ラマン バラスブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント クラウス
(57)【要約】
【課題】複雑な微細構造におけるマルチスケール反応流を提供する。
【解決手段】実施形態は反応流システムの挙動を決定する。一つのこうした実施形態は、反応流システムの複数のモデルを定義し、各定義されたモデルは、それぞれのスケールで反応流システムを表す。反応流システムの速度場は、定義された複数のモデルのうちの(第一のそれぞれのスケールでの)第一のモデルを使用して決定され、反応流システムの拡散率は、定義された複数のモデルのうちの(第二のそれぞれのスケールでの)第二のモデルを使用して決定される。次いで、反応流システムのための複数の反応パラメータが定義される。次に、反応流システムの挙動は、決定された速度場、決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって自動的に決定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応流システムの挙動を決定するコンピュータ実装方法であって、
反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することであって、速度場を前記決定すること、および拡散率を決定することが、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実施される、決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を含む方法。
【請求項2】
所与のスケールがマイクロスケール、分子スケール、または地下スケールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定義された複数のモデルのうちの少なくとも一つのモデルが、前記反応流システムの特性を示す幾何学的モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応流システムの前記複数のモデルの所与のモデルを定義することが、
一つ以上の不均一な表面反応のモデルを定義することと、
前記一つ以上の不均一な表面反応の前記定義されたモデルについて、速度則を鉱物溶解および沈殿の関数としてモデル化することと、
前記モデル化された速度則および一つ以上の均一系バルク反応のモデルに基づいて、所与のモデルを定義することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のモデルを使用して前記反応流システムの前記速度場を前記決定することが、
前記反応流システム内の材料の画像を受信することと、
前記画像を複数の相にセグメント化することであって、各相が材料、固体、または流体を表す、セグメント化することと、
前記第一のモデルを使用して、前記複数の相に基づいて、前記反応流システムの前記速度場を決定することであって、前記第一のモデルが単相流体流モデルである、決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が多孔性である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記材料が一つ以上の破砕をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記材料がナノ多孔性粘土材料である、請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記材料が、Cu0.66[Al3.33Mg0.66][Si]O20[OH]の式を有するワイオミング産モンモリロナイトである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記決定された速度場が多相速度場である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第二のモデルを使用して前記反応流システムの前記拡散率を決定することが、
分子力学シミュレーションの入力として、粘土中間層ナノ細孔中のバルク塩溶液のパラメータおよび塩溶液のパラメータを提供することと、
前記分子力学シミュレーションの前記入力を使用して、温度および塩濃度の関数として前記分子力学シミュレーションを実施することであって、前記分子力学シミュレーションを実施する結果が前記反応流システムの前記拡散率を示す、実施することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記拡散率がイオン拡散率である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン拡散率が、銅(Cu)2+のイオン拡散率である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応流システムのための前記複数の反応パラメータが、入力データを使用して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記入力データが、シミュレーション結果およびデータベースのうちの少なくとも一つから取得される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを前記反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を前記決定することが、
前記入力を用いて前記反応輸送解決器を使用して、移流拡散反応方程式を解くことであって、前記解決の結果が前記反応流システムの前記挙動を示す、解くこと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記反応流システムの前記決定された挙動が濃度プロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記濃度プロファイルが銅(Cu)2+の濃度プロファイルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応流システムの前記決定された挙動に基づいて、前記第一のモデルおよび前記第二のモデルを更新することと、
前記更新された第一のモデルを使用して、前記反応流システムの更新された速度場を決定することと、
前記更新された第二のモデルを使用して、前記反応流システムの更新された拡散率を決定することと、
前記更新された決定された速度場、前記更新された決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを前記反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの更新された挙動を決定することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応流システムの前記決定された更新された挙動が定常状態に達するまで、(i)前記更新することと、(ii)更新された速度場を前記決定することと、(iii)更新された拡散率を前記決定することと、(iv)前記反応流システムの更新された挙動を前記決定することとを反復することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
反応流システムの挙動を決定するためのコンピュータベースのシステムであって、前記コンピュータベースのシステムが、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が中に格納されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、
前記反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を前記コンピュータベースのシステムに行わせるように構成されている、コンピュータベースのシステム。
【請求項22】
反応流システムの挙動を決定するための非一時的コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、ネットワークを介して一つ以上のクライアントと通信しているサーバによって実行され、
コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読媒体がプログラム命令を備え、これがプロセッサによって実行される時に、
前記反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を前記プロセッサに行わせる、コンピュータ可読媒体を含む、非一時的コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、複雑な微細構造におけるマルチスケール反応流に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本出願は、2023年2月28日出願の米国仮特許出願第63/487,509号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
反応流モデリングは、流体流および化学反応を伴うプロセスを分析するためのツールである。他の実施例の中でも特に、こうしたプロセスには、地中炭素回収、地下水浄化、CO注入による原油増進回収(EOR)、構造材料の浸出・腐食・汚損による原位置採掘、リサイクル、持続可能なエネルギー用途のための電気化学システム(電池、燃料電池、電解槽など)が含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Abbott, J.W., Hanke, F., 2022. Kinetically Corrected Monte Carlo-Molecular Dynamics Simulations of Solid Electrolyte Interphase Growth. J. Chem. Theory Comput. 18, 925-934. https://doi.org/10.1021/acs.jctc.1c00921
【非特許文献2】Abd, A.S., Abushaikha, A.S., 2021 Reactive transport in porous media: a review of recent mathematical efforts in modeling geochemical reactions in petroleum subsurface reservoirs. SN Appl. Sci. 3, 1-28. https://doi.org/10.1007/s42452-021-04396-9
【非特許文献3】Agmon, N., 1995 CHEMICAL PHYSICS The Grotthuss mechanism. Chem. Phys. Lett. 50, 456-462.
【非特許文献4】Akkermans, R. L. C., Spenley, N. A., Robertson, S. H. 2021. COMPASS III: automated fitting workflows and extension to ionic liquids. Molecular Simulation, 47, 540-551
【非特許文献5】Al-Khulaifi, Y., Lin, Q., Blunt, M.J., Bijeljic, B., 2017. Reaction Rates in Chemically Heterogeneous Rock: Coupled Impact of Structure and Flow Properties Studied by X-ray Microtomography. Environ. Sci. Technol. 51, 4108-4116. https://doi.org/10.1021/acs.est.6b06224
【非特許文献6】Allen, M. P., Tildesley, D. J. 1987. Computer simulate of Liquids;Clarendon Press,Oxford Science Publications
【非特許文献7】Beckstein, O., Sansom, M.S.P., 2003. Liquid-vapor oscillations of water in hydrophobic nanopores. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100, 7063-7068. https://doi.org/10.1073/pnas.1136844100
【非特許文献8】Boek, E.S., 2014. Molecular dynamics simulations of interlayer structure and mobility in hydrated Li-, Na- and K-montmorillonite clays. Mol. Phys. 112, 1472-1483. https://doi.org/10.1080/00268976.2014.907630
【非特許文献9】Casewit, C.J., Colwell, K.S., Rappe, A.K., 1992. Application of a Universal Force Field to Main Group Compounds. J. Am. Chem. Soc. 114, 10046-10053. https://doi.org/10.1021/ja00051a042
【非特許文献10】Chatterjee A.,Ebina T.,Mizukami F.,2005. Effects of Water on the Structure and Bonding of Resorcinol in the Interlayer of Montmorillonite Nanocomposite: A Periodic First Principle Study. Phys. Chem. B, 109, 15, 7306-7313 https://doi.org/10.1021/jp045775z
【非特許文献11】Chen, L., He, Y.L., Tao, W.Q., Zelenay, P., Mukundan, R., Kang, Q., 2017. Pore-scale study of multiphase reactive transport in fibrous electrodes of vanadium redox flow batteries. Electrochim. Acta 248, 425-439. https://doi.org/10.1016/j.electacta.2017.07.086
【非特許文献12】Cygan, R.T., Liang, J.J., Kalinichev, A.G., 2004. Molecular models of hydroxide, oxyhydroxide, and clay phases and the development of a general force field. J. Phys. Chem. B 108, 1255-1266. https://doi.org/10.1021/jp0363287
【非特許文献13】Damiani, L.H., Kosakowski, G., Glaus, M.A., Churakov, S. V., 2020. A framework for reactive transport modeling using FEniCS-Reaktoro: governing equations and benchmarking results. Comput. Geosci. 24, 1071-1085. https://doi.org/10.1007/s10596-019-09919-3
【非特許文献14】Chemley, J.J., Dahowski,R.T., Davidson,C.L., Wise, M.A., Gupta, N., Kim, S.H., Malone, E.L., 2006. Carbon dioxide capture and geologic storage-A core element of a global energy technology strategy to address climate change. Jt. Glob. Chang. Res. Inst. 1-37.
【非特許文献15】Essmann, U., Perera, L., Berkowitz, M.L., Darden, T., Lee, H., Pedersen, L.G., 1995. A smooth particle mesh Ewald method. J. Chem. Phys. 103, 8577-8593. https://doi.org/10.1063/1.470117
【非特許文献16】Fager A., Crouse B., Sun G., Xu R., Freed D., 2019 “ Evaluation of Directly Simulated WAG Hysteresis at Pore Scale and its Effect on Injectivity Index” SPE 195734, SPE Offshore Europe Conf. & Exhib., Aberdeen, UK
【非特許文献17】Fager A., Otomo H., Salazar-Tio R., Balasubramanian G., Crouse B., Zhang R., Chen H., Schembre-McCabe J., 2021. “Multi-scale Digital Rock: Application of a multi-scale multi-phase workflow to a Carbonate reservoir rock”, Int. Symp. Soc. Core Analysts
【非特許文献18】Freed, D. 1998 “Lattice-Boltzmann Method for Macroscopic Porous Media Modeling.” International Journal of Modern Physics C 09 (08): 1491-1503. https://doi.org/10.1142/S0129183198001357
【非特許文献19】Holmboe, M., Bourg, I.C., 2014. Molecular dynamics simulations of water and sodium diffusion in smectite interlayer nanopores as a function of pore size and temperature. J. Phys. Chem. C 118, 1001-1013. https://doi.org/10.1021/jp408884g
【非特許文献20】Jerauld, G., Fredrich J., Lane N., Sheng Q., Crouse B., Freed D., Fager A., and Xu R. 2017. “Validation of a Workflow for Digitally Measuring Relative Permeability.” In. Society of Petroleum Engineers. https://doi.org/10.2118/188688-MS
【非特許文献21】Kang, Q., Lichtner, P.C., Zhang, D., 2007. An improved lattice Boltzmann model for multicomponent reactive transport in porous media at the pore scale. Water Resour. Res. 43, 1-12. https://doi.org/10.1029/2006WR005551
【非特許文献22】Kosakowski, G., Churakov, S. V., Thoenen, T., 2008. Diffusion of Na and Cs in montmorillonite. Clays Clay Miner. 56, 190-206. https://doi.org/10.1346/CCMN.2008.0560205
【非特許文献23】Krevor, S., Blunt, M.J., Benson, S.M., Pentland, C.H., Reynolds, C., Al-Menhali, A., Niu, B., 2015. Capillary trapping for geologic carbon dioxide storage - From pore scale physics to field scale implications. Int. J.Greenh. Gas Control 40, 221-237. https://doi.org/10.1016/j.ijggc.2015.04.006
【非特許文献24】Krynicki, K., Green, C.D., Sawyer, D.W., 1978. Pressure and temperature dependence of self-diffusion in water. Faraday Discuss. Chem. Soc. 66, 199-208. https://doi.org/10.1039/DC9786600199
【非特許文献25】Li, L., Peters,C.A., Celia, M.A., 2006. Upscaling geochemical reaction rates using pore-scale network modeling. Adv. Water Resour. 29, 1351-1370. https://doi.org/10.1016/j.advwatres.2005.10.011
【非特許文献26】Mackay, E.J., 2013. Modelling the injectivity, migration and trapping of CO2 in carbon capture and storage (CCS), Geological Storage of Carbon Dioxide (co2): Geoscience, Technologies, Environmental Aspects and Legal Frameworks. Woodhead Publishing Limited. https://doi.org/10.1533/9780857097279.1.45
【非特許文献27】MacQuarrie, K.T.B., Mayer, K.U., 2005. Reactive transport modeling in fractured rock: A state-of-the-science review. earth-Science Rev. 72, 189-227. https://doi.org/10.1016/j.earscirev.2005.07.003
【非特許文献28】Maes, J., Menke, H.P., 2021. GeoChemFoam: Direct Modelling of Multiphase Reactive Transport in Real Pore Geometries with Equilibrium Reactions. Transp. Porous Media 139, 271-299. https://doi.org/10.1007/s11242-021-01661-8
【非特許文献29】Molins, S., Soulaine, C., Prasianakis, N.I., Abbasi, A., Poncet, P., Ladd, A.J.C., Starchenko, V., Roman, S., Trebotich, D., Tchelepi, H.A., Steefel, C.I., 2021. Simulation of mineral dissolution at the pore scale with evolving fluid-solid interfaces: review of approaches and benchmark problem set. Comput. Geosci. 25, 1285-1318. https://doi.org/10.1007/s10596-019-09903-x
【非特許文献30】Noiriel, C., 2015. Resolving Time-dependent Evolution of Pore-Scale Structure, Permeability and Reactivity using X-ray Microtomography. Rev. Mineral. Geochemistry 80, 247-285.
【非特許文献31】Noiriel, C., Daval, D., 2017. Pore-Scale Geochemical Reactivity Associated with CO2 Storage: New Frontiers at the Fluid-Solid Interface. Acc. Chem. Res. 50, 759-768. https://doi.org/10.1021/acs.accounts.7b00019
【非特許文献32】Norgate, T.E., Jahanshahi, S., Rankin, W.J., 2007. Assessing the environmental impact of metal production processes. J. Clean. Prod. 15, 838-848. https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2006.06.018
【非特許文献33】Nose, S. 1984. A unified formulation of the constant temperature molecular-dynamics methods. Journal of Chemical Physics. 81 (1): 511-519. Bibcode:1984JChPh..81..511N. doi:10.1063/1.447334.)
【非特許文献34】Oliveira, T.D.S., Blunt, M.J., Bijeljic, B., 2019. Modelling of multispecies reactive transport on pore-space images. Adv. Water Resour. 127, 192-208. https://doi.org/10.1016/j.advwatres.2019.03.012
【非特許文献35】Parkhurst, D.L., Wissmeier, L., 2015. PhreeqcRM:A reaction module for transport simulators based on the geochemical model PHREEQC. Adv. Water Resour. 83, 176-189. https://doi.org/10.1016/j.advwatres.2015.06.001
【非特許文献36】Rahromostaqim, M., Sahimi, M., 2020. Molecular Dynamics Study of the Effect of Layer Charge and Interlayer Cations on Swelling of Mixed-Layer Chlorite-Montmorillonite Clays. J. Phys. Chem. C 124, 2553-2561. https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.9b10919
【非特許文献37】Rigby, D., 2004. Fluid density predictions using the COMPASS force field. Fluid Phase Equilib. 217, 77-87. https://doi.org/10.1016/j.fluid.2003.08.019
【非特許文献38】Sinclair, L., Thompson, J., 2015. In situ leaching of copper: Challenges and future prospects. Hydrometallurgy 306-324.
【非特許文献39】Smith, D.E., 1998. Molecular computer simulations of the swelling properties and interlayer structure of cesium montmorillonite. Langmuir 14, 5959-5967. https://doi.org/10.1021/la980015z
【非特許文献40】Sposito, G., Skipper, N.T., Sutton, R., Park, S.H., Soper, A.K., Greathouse, J.A., 1999. Surface geochemistry of the clay minerals. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 3358-3364. https://doi.org/10.1073/pnas.96.7.3358
【非特許文献41】Sridhar, N., 2017. Local corrosion chemistry - A review. Corrosion 73, 18-30. https://doi.org/10.5006/2246
【非特許文献42】Steefel, C.I., Appelo, C.A.J., Arora, B., Jacques, D., Kalbacher, T., Kolditz, O., Lagneau, V., Lichtner, P.C., Mayer, K.U., Meeussen, J.C.L., Molins, S., Moulton, D., Shao, H., Simunek, J., Spycher, N., Yabusaki, S.B., Yeh, G.T., 2015. Reactive transport codes for subsurface environmental simulation, Computational Geosciences. https://doi.org/10.1007/s10596-014-9443-x
【非特許文献43】Steefel, C.I., DePaolo, D.J., Lichtner, P.C., 2005. Reactive transport modeling: An essential tool and a new research approach for the Earth sciences. Earth Planet. Sci. Lett. 240, 539-558. https://doi.org/10.1016/j.epsl.2005.09.017
【非特許文献44】Sun G., Sun Z., Fager A., Crouse B., 2022. “Pore-scale Analysis of CO2-brine displacement in Bereatone and its Implications to CO2 Injectivity”, Int. Symp. Soc. Core Analysts
【非特許文献45】Teich-McGoldrick, S.L., Greathouse, J.A., Jove-Colon, C.F., Cygan, R.T., 2015. Swelling Properties of Montmorillonite and Beidellite Clay Minerals from Molecular Simulation: Comparison of Temperature, Interlayer Cation, and Charge Location Effects. J. Phys. Chem. C 119, 20880-20891. https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.5b03253
【非特許文献46】Wu, Y., Tepper, H.L., Voth, G.A., 2006. Flexible simple point-charge water model with improved liquid-state properties. J. Chem. Phys. 124 https://doi.org/10.1063/1.2136877
【非特許文献47】Xu, T., Sonnenthal, E., Spycher, N., Pruess, K., 2006. TOUGHREACT - A simulation program for non-isothermal multiphase reactive geochemical transport in variably saturated geologic media: Applications to geothermal injectivity and CO2 geological sequestration. Comput. Geosci. 32, 145-165. https://doi.org/10.1016/j.cageo.2005.06.014
【非特許文献48】Xu, R., Crouse B., Freed D., Fager A., Jerauld G., Lane N., and Sheng Q.. 2018. “Continuous vs Discontinuous Capillary Desaturation and Implications for IOR/EOR”, SCA 2018-066, Int. Symp. Soc. Core Analysts, Trondheim, Norway
【非特許文献49】Yoon, H., Kang, Q., Valocchi, A.J., 2015. Lattice Boltzmann-based approaches for pore-scale reactive transport. Pore Scale Geochemical Process. 80, 393-431.https://doi.org/10.2138/rmg.2015.80.12
【発明の概要】
【0005】
反応流モデリングツールは存在するが、これらのツールは改善から利益を享受することができる。実施形態は、こうした改善された機能を提供する。
【0006】
反応流モデリングには多くの業界において用途があるが、この分野での進歩の大部分は、地下システムにおける地球化学モデリングの開発を通して行われてきた。それ故に、本明細書に開示の例示的な実施形態は、このクラスで選択された代表的な用途、すなわち銅の原位置浸出の反応流モデリングを例示する。しかしながら、実施形態は、銅(金属全般)の原位置浸出のシミュレーション/モデリングに限定されず、それよりむしろ任意の反応流システムを分析するために実施形態を使用することができることに留意されたい。原位置浸出は、標的鉱物を溶解して関心の金属(この実施例において銅)を抽出または生成するための酸の地下循環を伴う。反応流モデリングを通して流体および流体-岩石界面の組成物のリアルタイムでの変化をモデル化することは、原位置浸出による銅生成の最適化、および代替的な設計および動作条件の考えられる結果の予測を可能にし、プロセスの最適化を容易にする。
【0007】
反応流モデリングには、関心の物理学のスケールに応じて、(i)連続レベルモデル42,47、および(ii)細孔スケールモデル28,29という、モデルの二つの広範なカテゴリーが存在する。細孔スケールで微細構造は完全に分解され、体積当たりの表面反応と連動した有効種輸送は、微細構造内で直接シミュレーションされ、入力は材料の特性である。連続スケールで微細構造は分解されず、モデルは有効な輸送、微細構造によって制限される反応速度、材料空隙率、または材料の表面対体積比などの特定の特性の入力を必要とする。実際の細孔スケール構造への入力としてのX線マイクロトモグラフィ(microCT)などの三次元(3D)顕微鏡撮像法の使用が可能であるが、反応流モデリングにおいて主流ではない。現実世界の用途では、実験測定を必要とせずに、または単純化されたモデルの仮説を制限することなく、正確な結果を生成するために、両方の側面、スケール、および3D撮像をモデルに含める必要がある。反応流に関する現在の解決策におけるこのマルチスケールの側面の欠如はまた、材料、反応、拡散パラメータに対するより小さい分子レベルのモデリングを含む。現在の反応流解決器における別の制限は、多相流(油、水、ガスなどの複数の流体流)を同時に記述することに関する。
【0008】
要約すると、既存の細孔スケールモデルは、未分解の細孔を通る流れ(例えば、マルチスケール流シミュレーション)を考慮せず、多相流を正確にモデル化することはできない。既存の連続スケールモデルは、透水性および空隙率に基づいて、簡略化された流れと輸送の方程式を考慮する。従って、フィールドスケールの問題をシミュレートするためのアップスケーリングと併せて細孔スケールで多相およびマルチスケール反応流を正確に解決するための解決策はない。文献の細孔スケールモデルと連続スケールモデルの両方は、材料、反応、拡散パラメータについてオープンソースデータベースに依存する。最後に、一次反応後の流れ溶液の二次種分化を正確に考慮することは、連続モデルにおいて大抵の場合で一般的であるが、細孔スケールモデルにおいては、ある程度制限される。「二次種分化を考慮する」とは、水化学を正確にモデル化する、または反応流モデルにおいて均一系反応を含むことも指すことに留意されたい。
【0009】
本明細書に記載の通りの反応流の用途を正確にモデル化するために、実施形態は、堅牢な多相(液体および気体の連成流)およびマルチスケール(分解細孔および未分解細孔を通る流れ)流れシミュレータ、およびマルチスケール(細孔スケールおよび連続スケール)反応シミュレータを有する反応流モデルを実施する。3D撮像ベースの微細構造モデルも、特性相関に対する単純近似を回避するために、実施形態で使用される。さらに、反応流モデリングは、材料、反応、拡散パラメータからの多くの入力を利用することに留意されたいが、これらをすべての用途のために文献およびデータリポジトリから見つけるのは容易ではない。この問題を解決するために、実施形態は、化学的特性を計算する分子モデリング構成要素の使用を通して化学的特性を得る。なおもさらに、本明細書に記載の反応流モデリングの実施形態は、反応流モデルにおける不均一系反応に加えて、均一系反応を含む。
【0010】
実施形態は、反応流システムの挙動を決定するためのコンピュータ実装方法およびシステムを対象とする。一つのこうした実施形態は、反応流システムの複数のモデルを定義し、各定義されたモデルは、それぞれのスケールで反応流システムを表す。次いで、反応流システムの速度場は、定義された複数のモデルのうちの(第一のそれぞれのスケールでの)第一のモデルを使用して決定され、反応流システムの拡散率は、定義された複数のモデルのうちの(第二のそれぞれのスケールでの)第二のモデルを使用して決定される。一実施形態において、速度場を決定すること、および拡散率を決定することは、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実施される。次に、反応流システムのための複数の反応パラメータが定義される。次に、反応流システムの挙動は、決定された速度場、決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって自動的に決定される。
【0011】
方法の別の実施形態は、反応流システムの成分濃度を決定するためのコンピュータ実装方法およびシステムを提供する。
【0012】
一部の態様において、定義された複数のモデルのうちの少なくとも一つのモデルは、マイクロスケール、分子スケール、または地下スケールでの反応流システムを表す。
【0013】
一部の態様において、定義された複数のモデルのうちの少なくとも一つのモデルは、反応流システムの特性を示す幾何学的モデルである。
【0014】
一部の態様において、反応流システムの複数のモデルの所与のモデルを定義することは、鉱物溶解および沈殿の関数として、一つ以上の不均一な表面反応のモデルを定義することと、次に一つ以上の不均一な表面反応の定義されたモデルの速度則をモデル化することとを含む。続行するには、こうした一実施形態は、モデル化された速度則および一つ以上の均一系バルク反応のモデルに基づいて、所与のモデルを定義する。
【0015】
一部の態様において、第一のモデルを使用して反応流システムの速度場を決定することは、反応流システム内で材料の画像を受信することと、画像を複数の相にセグメント化(すなわち、二等分、分類など)することと、を含み、各相は材料、固体、または流体を表す。次いで、反応流システムの速度場は、第一のモデルを使用して、画像の複数の相に基づいて決定され、第一のモデルは単相流体流モデルである。
【0016】
一部の態様において、決定された速度場は多相速度場である。
【0017】
一部の態様において、材料は多孔性である。一部の態様において、材料は、一つ以上の破砕をさらに含む。一部の態様において、材料はナノ多孔性粘土材料である。一部の態様において、材料は、Cu0.66[Al3.33Mg0.66][Si]O20[OH]の式を有するワイオミング産モンモリロナイトである。
【0018】
一部の態様において、第二のモデルを使用して反応流システムの拡散率を決定することは、バルク塩溶液のパラメータおよび粘土中間層ナノ細孔中の塩溶液のパラメータを、分子力学シミュレーションの入力として提供することを含む。次に、これらの入力を使用して、温度および塩濃度の関数として分子力学シミュレーションを実施する。こうした一実施形態において、分子力学シミュレーションを実施することの結果は、反応流システムの拡散率を示す。
【0019】
一部の態様において、拡散率はイオン拡散率である。一部の態様において、イオン拡散率は、銅(Cu)2+のイオン拡散率である。
【0020】
一部の態様において、反応流システムのための複数の反応パラメータは、入力データを使用して定義される。一部の態様において、入力データは、シミュレーション結果およびデータベースのうちの少なくとも一つから取得される。
【0021】
一部の態様において、決定された速度場、決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、反応流システムの挙動を決定することは、入力を用いて反応輸送解決器を使用して、移流拡散反応方程式を解くことを含む。こうした一実施形態において、解決の結果は、反応流システムの挙動を示す。
【0022】
一部の態様において、反応流システムの挙動は、濃度プロファイルである。一部の態様において、濃度プロファイルは、銅(Cu)2+の濃度プロファイルである。
【0023】
一部の態様において、方法は、反応性の低速システムの決定された挙動に基づいて、第一のモデルおよび第二のモデルを更新することと、更新された第一のモデルを使用して、反応流システムの更新された速度場を決定することと、更新された第二のモデルを使用して、反応流システムの更新された拡散率を決定することと、更新された決定された速度場、更新された決定された拡散率、かつ定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、反応流システムの更新された挙動を決定することとをさらに含む。一部の態様において、方法は、反応流システムの決定された更新された挙動が定常状態に達するまで、(i)更新することと、(ii)更新された速度場を決定することと、(iii)更新された拡散率を決定することと、(iv)反応流システムの更新された挙動を決定することとを反復することをさらに含む。
【0024】
本明細書に記載の実施形態はまた、反応流システムの成分濃度を決定するためのコンピュータ実装方法およびシステムを提供する。
【0025】
なおも別の実施形態は、プロセッサと、コンピュータコード命令が格納されたメモリとを含むシステムを対象とする。こうした一実施形態において、プロセッサおよびメモリは、コンピュータコード命令によって、本明細書に記載の任意の実施形態または実施形態の組み合わせをシステムに実施させるように構成されている。
【0026】
別の実施形態は、反応流システムの挙動を決定するためのクラウドコンピューティング実装を対象とする。こうした一実施形態は、ネットワークを介して一つ以上のクライアントと通信しているサーバによって実行されるコンピュータプログラム製品を対象とする。コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行される時に、本明細書に記載の任意の実施形態または実施形態の組み合わせをプロセッサに実施させるプログラム命令を含む。
【0027】
方法、システム、コンピュータプログラム製品の実施形態は、本明細書に記載の任意の実施形態、または実施形態の組み合わせを実装するように構成されてもよいことが注目される。
【0028】
さらに別の実施形態は、不均一な多孔質微細構造における銅の原位置浸出をシミュレートするためのマルチスケール反応流モデルを提供する。こうした一実施形態において、流体流シミュレーションを移流拡散反応シミュレーションと組み合わせるワークフローが利用され、それらの両方が反応流をモデル化するために使用される。こうしたワークフローは、分解細孔構造および未分解細孔構造の流れを含んでもよく、分子シミュレーション(イオン拡散率)および反応データベース(反応速度パラメータ)からのパラメータを利用することもできる。実施形態はまた、実施形態の決定された結果を、酸注入時のモデル方解石溶解のための他のオープンソースコードと比較することによって検証されている。粘土の分子力学モデルも、ナノ多孔質媒体中のイオン拡散率を推定するために提示され、水モデル中に溶解された塩は、開いた破砕内のイオン拡散率を推定するために実施される。このモデルは、浸出によって銅採掘に適用され、地下サンプルの破砕したデジタルロックモデルを通る反応流を分析する。細孔空間構造に沿った濃度分布を追跡することと、浸出経路を確認するために銅の出口濃度を計算することとによって結果を分析した。本明細書において以下に記載する幾つかの感度研究は、実施形態の堅牢性を示し、また酸入口流れ条件、ならびに銅生成に関する異なる反応タイプおよびスケールの重要性を示す。一実施形態は、単一スケール表面反応モデルからのモデルの複雑さを体系的に増加させて、競合的なバルク溶液反応も含み、多孔質媒体を通して流れてマルチスケール反応流をモデル化する。実施形態からの結果は、均一系バルク反応および不均一な表面反応を有するマルチスケール流量モデルが銅浸出を正確にモデル化することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
前述の内容は、添付の図面に図示の通り、例示の実施形態の以下のより具体的な記述から明らかとなり、ここで同様の参照記号は、異なる図面全体を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも原寸に比例していなく、その代わりに実施形態を例証することに重点が置かれている。
【0030】
図1図1は、一実施形態による、反応流システムの挙動を決定するための方法を示すフローチャートである。
図2図2は、細孔スケールでの酸注入による銅浸出を示す概略図である。
図3図3は、一実施形態による、反応流システムの特性を決定するためのワークフローの例示的な一実施形態である。
図4図4は、粘土ナノ細孔中に流れを含むマルチスケールオプションありの場合となしの場合で、格子ボルツマン法(LBM)シミュレーションから速度場を取得するために使用される例示的な連続ワークフローの工程を示す。
図5A図5Aは、例示的な一実施形態における鉱物粒子上での溶解および沈殿の表面反応を示す図である。
図5B図5Bは、表面反応およびバルク反応を組み合わせて、例示的な種の濃度を取得する例示的な機構を示す図である。
図5C図5Cは、一実施形態による微細構造モデルのボクセル内の例示的な種の濃度を更新するための例示的な反応流の方法である。
図6A図6Aは、長方形チャネル内に置かれた例示的な方解石ペレットの二次元(2D)形状における時間の関数としてのH濃度のプロットである。
図6B図6Bは、例示的なシミュレーションとGeoChemFoamの間の幾何学的形状の長さの関数としてのH濃度(M)の比較プロットである。
図6C図6Cは、GeoChemFoamを使用した空間H濃度の例示的なシミュレーションである。
図7A図7Aは、一実施形態による、酸注入による銅浸出をモデル化するために使用される例示的なデジタルロック微細構造である。
図7B図7Bは、一実施形態によって決定される、時間の関数としての定常状態銅濃度のプロットである。
図8A図8Aは、バルク水中の塩化銅の分子力学(MD)シミュレーション構造の例を示す。
図8B図8Bは、一実施形態による、水和ナノ細孔中の塩化銅を含む粘土の例示的なMD構造を示す。
図8C図8Cはそれぞれ、異なる塩濃度および温度で提示されるバルク水中の銅および塩化物のイオン拡散率のプロットを示す。
図8D図8Dはそれぞれ、異なる塩濃度および温度で提示されるバルク水中の銅および塩化物のイオン拡散率のプロットを示す。
図8E図8Eは、異なる温度および0.1Mの塩化物イオンで提示されたナノ多孔性粘土モデルにおける銅および塩化物のイオン拡散率のプロットである。
図9図9は、破砕を伴う銅フェライト鉱物(白色領域)を有する、例示的な岩石の三次元(3D)微細構造を示す。
図10A図10Aは、速度(ペクレ数)および反応速度(ダンケラー数)の関数としての銅出口濃度の表面プロットである。
図10B図10Bは、速度(ペクレ数)および反応速度(ダンケラー数)の関数としての銅出口濃度の等高線プロットである。
図11A図11Aは、10のペクレ数および様々なダンケラー数での時間の関数としての銅の出口濃度のプロットである。
図11B図11Bは、2.5のダンケラー数および様々なペクレ数での時間の関数としての銅の出口濃度のプロットである。
図11C図11Cは、ダンケラー数の関数としての定常状態銅濃度のプロットである。
図11D図11Dは、ペクレ数の関数としての定常状態銅濃度のプロットである。
図12A図12Aは、入口pHの関数としての銅種濃度のプロットである。
図12B図12Bは、入口pHの関数としての鉄種濃度のプロットである。
図13A図13Aは、不均一な表面反応のみを使用した例示的なモデルについての時間の関数としてのCu2+出口濃度のプロットである。
図13B図13Bは、均一系バルク反応と不均一な表面反応の両方を使用した例示的なモデルについての時間の関数としてのCu2+出口濃度のプロットである。
図13C図13Cは、入口酸濃度の関数としての定常状態Cu2+出口濃度のプロットである。
図14A図14Aは、単一スケール反応流システムの破砕を通して銅濃度を可視化する例示的なデジタルロックの断面画像である。
図14B図14Bは、マルチスケール反応流システムの破砕を通して銅濃度を可視化する例示的なデジタルロックの断面画像である。
図14C図14Cは、図14A~Bに示す反応流システムの各々についての、時間の関数としての銅出口濃度のプロットである。
図15図15は、細孔空間を通って浸出された金属のマルチスケール反応流シミュレーションの例示的な一実施形態である。
図16図16は、一実施形態による、反応流システムの挙動を決定するためのコンピュータシステムの簡略ブロック図である。
図17図17は、本発明の一実施形態が実装されうるコンピュータネットワーク環境の簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示の実施形態の記述を以下に示す。
【0032】
反応流モデリングは、流体流および化学反応を伴う任意のプロセスを分析するためのツールであり、例えば地中炭素回収14,23、地下水浄化43、CO注入による原油増進回収(EOR)26、構造材料の腐食および汚損41、およびレドックスフロー電池11が挙げられる。本研究において関心のあるそのような用途の一つは、銅の原位置浸出である38。原位置浸出は、標的鉱物を溶解して、関心の金属を生成または抽出するための酸の循環を伴う。世界の銅需要が増加するにつれて、原位置浸出は、銅を抽出する低コストの方法であることが証明されている32,38。リキシビアントの最適な組成を決定すること、注入流体の鉱物との均一な接触を達成すること、および鉱物溶解および沈殿に起因する岩石の透水性および空隙率を変化させることなど、原位置浸出から銅を効率的に抽出するための多くの課題が依然として存在する。従って、反応流モデリングを通して流体および流体-岩石界面の組成のリアルタイムでの変化をモデル化することは、原位置浸出により銅生成を最適化するのに、かつ代替的な設計および動作条件の考えられる結果を予測するのに有益である。それ故に、現実世界の銅の原位置浸出を最適化するために、反応流モデリングを使用することができる。さらに、実施形態は、銅の原位置浸出をシミュレートおよび最適化するために使用されるものとして本明細書に記載されているが、実施形態は、そのようなシステムに限定されず、また実施形態は、任意の反応流システムをモデル化および最適化するために使用されることができることに留意されたい。
【0033】
反応流は多くの業界で応用されているものの、この分野での進歩の大部分は、地下システムにおける地質化学モデリングに関連する2,27,28,31,49。反応流モデリングでは、連続レベルモデル42および細孔スケールモデルという二つの幅広いカテゴリーのモデルが存在する5,21。連続レベルモデルおよび細孔スケールモデルの使用は典型的に、関心の物理学の規模に依存する。細孔スケールで微細構造は完全に分解され、体積当たりの表面反応と連動した有効種輸送は微細構造内で直接シミュレーションされ、入力は材料の特性である。連続スケールで微細構造は未分解であり、微細構造の接続によって制限される効果的な輸送および反応速度を入力として提供する必要がある。入力は、平行管の球状のパックに対する透水性および表面対体積比の空隙率相関など、簡略化された微細構造の特性関係を使用して提供されることが多い。既存の方法によって使用される戦略は、まず所与の微細構造について細孔スケールで反応輸送をモデル化し、次に研究において特性関係およびモデルを連続スケールへとアップスケールして大規模に対応することである25。実験室実験30と反応流モデリングの両方での進歩によって、反応流の細孔スケール物理学をより良く理解するためのこのマルチスケール戦略の重要性が過去数十年間に示されている
【0034】
反応流における関心の二つの重要な特性は、反応速度および拡散係数である。速度定数、平衡定数、熱力学パラメータなどの反応パラメータは、LLNLデータベース、PHREEQCデータベース、MINTEQデータベースなどのオープンソース熱力学データベースで利用可能である。PHREEQC35、Reaktoro13、TOUGHREACT47などの幾つかのオープンソース反応流シミュレータは、これらのデータベースを利用して、化学反応および熱力学計算を実施し、流体相の組成を更新する。各データベースは特定の用途を対象とし、モデル化している用途に依存するため、適切なデータベースを選択することが推奨される。
【0035】
粘土などのナノ多孔性材料中およびバルク流体中での水中の溶質の拡散は多くの場合、分子力学シミュレーションを使用してモデル化される8,22,39,40,45。粘土は、粘土内のイオン移動を促進する重要な理由である水の存在下での膨張を含む、固有の特性を有する10。一部の研究者は過去に、これらの問題に対処していて、イオンおよび粘土の原子相互作用のための堅牢な力場(分子モデル12)が存在する。しかしながら、これらの研究は、室温でのアルカリ金属およびアルカリ土類金属などの単純な塩に限定されている。多くの反応流の用途には、NaおよびCa2+などの単純な種が関与するため、文献から拡散パラメータを見つけることが可能であり、それ故に研究者は概して、明示的に拡散のモデリングに焦点を当てない。しかしながら、あまり一般的ではないイオン種について利用可能な文献およびデータは限定されていて、Cu2+はそのような場合の一つである。従って、本文書において、分子シミュレーションを反応流ワークフローに組み込むことが、拡散率が選択するパラメータの一つである任意の用途に対する一般的なフレームワークを提供することが示されている。
【0036】
本明細書に記載の流体流の数値シミュレーション法は、格子ボルツマン法(LBM)である。LBMは、溶解可能な細孔スケールイベントのための直接シミュレーション法として、湿潤性、毛細血管効果、ビスカスフィンガリング現象などの物理的特性を決定するために、広く使用されている16,20,44,48。LBMは、ボルツマン方程式の離散バージョンを解決し、その起源を運動論に有する、立方格子上でしばしば行われる明示的な方法である。多相能力は、油および水などの不混和性多相シナリオをシミュレートするために利用可能であるものの、本明細書に記載の実施例は、単相流LBMを使用する。ここでは、代表的なサンプルの直接X線マイクロトモグラフィ撮像(microCT)から抽出された単相流シミュレーションが3D微細構造モデル上で実施され、目標は、3D微細構造の相互接続された細孔空間内の流速場を計算することである。さらに、LBM17,18へのマルチスケール伸長は、一部の半透水性材料または多孔質媒体(PM)領域を通る部分的な流れを可能にし、細孔接続は3D微細構造のモデルの分解能で明示的に解決されない。ナノ多孔性粘土は、こうした材料の例であり、本明細書に記載のマルチスケール伸長は、これらのタイプの半透水性材料で充填された領域における有効な流速場を計算することができる。
【0037】
本明細書において、マルチスケール反応流の上記の構成要素、例えば流速場へのmicroCT画像、均一系反応および不均一系反応、イオン拡散、分解細孔構造および未分解細孔材料領域を含むマルチスケール輸送を組み合わせるモデルが提示される。実施形態は、実施および検証されたマルチスケール多種反応流ワークフローを含む。以下に、3Dデジタルロック画像における鉱物溶解に対する一実施形態の適用を提示して、多孔質媒体を通る反応速度、速度、反応タイプ、pH、マルチスケール流の影響を説明する。原位置での銅浸出をモデル化するために使用される方法論も考察される。反応流ワークフローが導入され、反応流の異なる構成要素が説明される。例示的な実施形態は、分子シミュレーションを使用したバルクでの水の拡散率の検証ケースから始まる。次に、反応流方法論の検証は、方解石粒子溶解のテストケースをモデル化することと、結果を他の細孔スケール反応流シミュレーションの公開された結果と比較することとによって実施される。この検証に続いて、銅浸出のモデルを提示する。反応流モデルの拡散率を得るために、水溶液中のバルク銅イオンの分子モデルを、多孔質媒体の拡散率のためのミクロ細孔および粘土ナノ細孔における拡散に使用した。反応流モデルを用いて、一連の感度試験を実施することによって、pH、流体速度、表面反応性が銅生成に与える影響を調査した。次いで、均一系バルク反応をモデルに組み込み、銅生成に与えるその影響を理解した。モデルは、開いた破砕とナノ多孔性粘土の両方を通した輸送を含むように、かつ銅生成に与えるその影響を示すために拡張された。
【0038】
上述の通りのモデルは、反応流システムの挙動を決定するために、本明細書に記載の方法で利用されることができる。図1は、反応流システムの挙動を決定するための一つのこうした例示的な方法110を示す。方法110はコンピュータ実装され、当該技術分野で知られている通りのハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせによって実行されてもよい。例えば、方法110は、方法110の工程111、112、113、114、115をプロセッサに実装させるコンピュータコードを保存する関連付けられたメモリを有する一つ以上のプロセッサを介して実装されてもよい。さらに、実施形態は、出願人によって提供されるソフトウェアに実装されることができるものとして本明細書に記載されているが、実施形態は、既存のソフトウェアに実装されることに限定されず、代わりに実施形態は、当該技術分野で知られている通りのハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせを使用して実施されることができることに留意されたい。
【0039】
図1に戻ると、方法110は工程111で、例えばコンピュータメモリにおいて反応流システムの複数のモデルを定義することによって開始し、各定義されたモデルは、それぞれのスケールで反応流システムを表す。方法110の一実施形態によると、例示的なスケールは、とりわけマイクロスケール、分子スケール、地下スケールを含む。例示的な一実施形態において、異なるスケールのモデルが、異なる技法を使用して工程111で定義される。例えば、他の実施例の中でもとりわけ、X線断層撮影法による3D撮像、3D分子モデリング、および/または3D地震探査を工程111で利用して、それぞれのスケールでコンピュータモデルを生成してもよい。一実施形態によると、工程111で定義された複数のモデルのうちの少なくとも一つのモデルは、反応流システムの特性を示す幾何学的モデルである。方法110の別の実施形態において、工程111で所与のモデルは、一つ以上の不均一な表面反応のモデルとして定義される。こうした一実施形態において、反応速度則は、鉱物溶解および沈殿の関数として、一つ以上の不均一な表面反応の定義されたモデルについてモデル化される。次いで、所与のモデルは、モデル化された反応速度則および一つ以上の均一系バルク反応のモデルに基づいて定義される。一実施形態によると、不均一な表面反応は、流体中に溶解した種と、流体と接触している鉱物表面との間の反応を指す。さらに、一実施形態において、均一な表面反応は、流体中に溶解した種間の反応を指す。反応速度則は、実施形態における両方のタイプの反応に対して提供される。
【0040】
図1に戻ると、工程112で方法110は、定義された複数のモデルのうちの(第一のそれぞれのスケールでの)第一のモデルを使用して、反応流システムの速度場を決定することによって継続する。一実施形態によると、決定された速度場は多相速度場である。例示的な一実施形態において、反応流システムの速度場は、工程112で第一のモデルを使用して、反応流システム内の材料の画像を受信することと、画像を複数の相、例えば材料、固体、流体を表す相またはセグメントにセグメント化(すなわち、二等分または分類など)することとによって決定される。次いで、速度場は、第一のモデルを使用して、画像の複数の相に基づいて決定され、第一のモデルは単相流体流モデルである。一実施形態によると、計算流体力学(CFD)シミュレーションは、速度場を決定するために、工程112で実装される。例示的な一実施形態において、第一のモデルはmicroCTモデルであり、このモデルは、速度場を決定するために、格子ボルツマン法(LBM)に基づく流れシミュレーションの工程112で利用される。一つのこうした実施形態によると、工程112で実施されるLBMに基づく流れシミュレーション技法は、サブ分解能流および正確な多相流を可能にする。例えば、こうした一実施形態において、米国特許公開第2022/0207219 A1号に記載の機能は、工程112で使用されうる。
【0041】
一実施形態によると、材料(例えば、受信した画像に示される材料)は多孔性である。別の実施形態によると、材料は一つ以上の破砕をさらに備えてもよい。別の実施形態において、材料はナノ多孔性粘土材料である。なおも別の実施形態によると、材料は、Cu0.66[Al3.33Mg0.66][Si]O20[OH]の式を有するワイオミング産モンモリロナイトである。
【0042】
方法110は工程113で、定義された複数のモデルのうちの(第二のそれぞれのスケールでの)第二のモデルを使用して、反応流システムの拡散率を決定することによって続行する。一実施形態において、拡散率は、既知の技法を使用して工程113で決定される。一つのこうした実施形態において、拡散率は、BIOVIA Material Studio(登録商標)ソフトウェアアプリケーションのForciteモジュールを使用して決定される。方法100の一実施形態によると、反応流システムの拡散率は、最初にバルク塩溶液のパラメータおよび粘土中間層ナノ細孔中の塩溶液のパラメータを、分子力学シミュレーションの入力として提供することによって、第二のモデルを使用して決定される。第二に、これらの入力を使用して、温度および塩濃度の関数として分子力学シミュレーションを実施する。分子力学シミュレーションを実施することの結果は、反応流システムの拡散率を示す。例示的な一実施形態において、第二のモデル、すなわち工程113で使用されるモデルは、化学組成モデルである。こうした一実施形態において、化学組成モデルは工程113で、分子力学シミュレーションで使用され、拡散率を決定する。一実施形態によると、分子力学シミュレーション方法は、Forciteモジュールを使用して、BIOVIA Materials Studio(登録商標)で実装されうる。別の実施形態において、拡散率はイオン拡散率である。一実施形態によると、イオン拡散率は、銅(Cu)2+のイオン拡散率である。
【0043】
工程114で方法110は、反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することによって続行する。一実施形態によると、反応流システムのための複数の反応パラメータは、入力データを使用して定義される。一実施形態によると、入力データは、シミュレーション結果およびデータベースのうちの少なくとも一つから取得される。
【0044】
続行するには、工程115で方法110は、決定された速度場、決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、反応流システムの挙動を自動的に決定する。一実施形態によると、挙動は、以下に説明される方程式5を使用して工程115で決定される。例示的な一実施形態において、反応輸送方程式は、反応流システムの挙動を決定するために、工程115で解決される。一実施形態によると、決定された速度場、決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、反応流システムの挙動を決定することは、入力を用いて反応輸送解決器を使用して、移流拡散反応方程式を解くことを含む。こうした一実施形態において、解決の結果は、反応流システムの挙動を示す。方法110の実施形態において、反応流システムの決定された挙動は、濃度プロファイル、例えば種濃度プロファイルである。別の実施形態によると、濃度プロファイルは、銅(Cu)2+の濃度プロファイルである。別の例示的な実施形態において、工程115で決定される挙動は、関心の化学種(生成物)の全体的な生成速度である。
【0045】
方法110は、反応流システムの決定された挙動に基づいて、第一のモデルおよび第二のモデルを更新することと、更新された第一のモデルを使用して、反応流システムの更新された速度場を決定することと、更新された第二のモデルを使用して、反応流システムの更新された拡散率を決定することと、更新された速度場、更新された決定された拡散率、および定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、反応流システムの更新された挙動を決定することとをさらに含みうる。さらに、方法110のこうした一実施形態は、反応流システムの決定された更新された挙動が定常状態に達するまで、(i)更新することと、(ii)更新された速度場を決定することと、(iii)更新された拡散率を決定することと、(iv)反応流システムの更新された挙動を決定することとを反復することとをさらに含みうる。
【0046】
[例証]
例示的な一実施形態は、多孔質微細構造におけるマルチスケール反応流を解決するワークフローを提供する。反応流をモデル化するために、一実施形態は、微細構造を通る流れと組み合わせた化学相互作用(分子モデル、不均一系反応および均一系反応を伴う)をモデル化する。結果として得られる学習は、マイクロスケールシミュレーションからフィールドスケールシミュレーションまで拡張されることができる。反応流は従来、マイクロスケールシミュレーションまたはフィールドスケールシミュレーションのいずれかで研究されてきた。本明細書に記載の例示的なワークフローの実施形態では、マルチスケールで反応流をシミュレーションするためのギャップがブリッジされる。
【0047】
一実施形態によると、反応流モデルワークフローは、本明細書に記載の様々な構成要素(多相マルチスケール反応流など)、例えば流速場へのmicroCT画像、多相流、均一系反応および不均一系反応、イオン拡散、分解細孔構造および未分解多孔性材料領域を含むマルチスケール輸送モデリングを組み合わせる。この多相、マルチスケール、多種の反応流ワークフローの実証は、多孔質媒体を通る反応速度、速度、反応タイプ、pH、マルチスケール流の影響を理解するために、3Dデジタルロック画像における鉱物溶解の用途が提示される。
【0048】
実施形態は、マルチスケールおよび14マルチ物理モデリング、シミュレーション、プロセス最適化を可能にするDassult Systemes 3DS Experience Platformなどのシミュレーションエコシステムで協働することによって、設計および動作におけるグローバルな最適化のためのユニークな機会を可能にする複数の構成要素を有する。
【0049】
[例示的な方法論]
[実施例:銅浸出]
図1の方法110の例示的な適用を以下に提供する。
【0050】
フィールドスケールで原位置浸出を、地下形成物に酸を注入するための一連のウェルを用いて行い、ここで流体は、ウェルを通して鉱物溶解反応が抽出され、湿式精錬の後処理を通過させて溶液から銅を抽出した後に、流体が標的鉱物および生成溶液を有する相互接続された破砕された岩石中を流れる。図2は、破砕された岩石モデル225の細孔スケールでの酸注入による銅浸出を示す概略図である。フィールドスケールで酸は、親ウェルを通して破砕された地下岩石に注入され221、銅含有溶液224は、子ウェルを通したさらなる処理のために収集される。細孔スケールで、破砕された岩石に酸を注入して、出口で銅を生成する。デジタルロックモデル225(すなわち、コンピュータベースのモデル)は、反応性鉱物226a、未反応性鉱物226b、ナノ多孔性鉱物226c、細孔226dの四つのセグメント化された相を有する。図2は、流れ、質量輸送、化学反応を解くことによって実施形態を使用してモデル化されることができる細孔スケールでの銅生成を図示する。図2に図示したモデル225において、酸は、岩石(入口)221の一方の端に注入され、次いで酸は、破砕ネットワーク(黒色領域226d)を通して移流222a~bに起因して移動する。プロセスにおいて、酸はナノ多孔性粘土(濃灰色領域226c)を通して拡散し223a~b、鉱物(白色領域226a)と反応し、銅は岩石(出口)224の遠端で収集される。図2に図示した銅浸出の異なる物理学は、一実施形態によるマルチスケール反応流ワークフローにおいて、体系的かつ個別に扱われることができる。
【0051】
[実施例:反応流ワークフロー]
銅浸出への図1の方法110の適用の例示的な実装を以下に記載する。
【0052】
実施形態は、図3に図示したワークフロー330を使用して、反応流プロセスの異なる部分を連結することができる。図3のワークフロー330において、工程331でmicroCT画像(例えば、337)は、異なる領域にセグメント化され、工程332で流速場(例えば、338)を決定するために、LBM単相流体流シミュレータに供給される。工程333で、PHREEQCなどの反応データベースを使用して、例えば表339に示す計算などの反応計算を行うための速度パラメータを取得する。さらに、工程334で分子シミュレーションを、BIOVIA Materials Studio(登録商標)バージョン2021などの解決器を使用して実施し、(モデル340に図示の通り)イオン拡散係数を決定する。次に、工程335で、(工程332からの)速度場、(工程333からの)速度パラメータ、および(工程334からの)拡散率は、反応輸送シミュレーション解決器への入力として使用され、これは、デジタルロックモデル(例えば、モデル342)の3D細孔空間内の異なる種濃度プロファイル(プロット341に図示したものなど)を決定するために工程336で使用されることができる移流拡散反応方程式を決定する。
【0053】
[実施例:流体流モデリング]
銅浸出の例における方法110の工程112の例示的な実装を以下に記載する。
【0054】
LBMのデジタルロック(例えば、コンピュータベースのモデル、コンピュータ支援設計(CAD)モデルなど)アプリケーションを実施形態で使用して、(モデルによって表される)多孔性岩石の流体流の透水性を予測することができる。実施形態は、LBMを利用するために、多孔性岩石16.20,44,48の細孔スケールの記述に適したmicroCT撮像などの3D撮像法を採用してもよい。LBMは流体粒子の動態方程式に基づき、流体粒子の分子挙動の統計的記述を表す。LBMは、連続流体力学方程式を直接解くことなく、流体流の動的挙動をシミュレートするために使用されることができる。さらに、LBMベースの流体解決器は、特にデジタルロック(モデル)内の多孔質媒体の流れなどの複雑な幾何学的形状を伴う用途において、従来のNavier-Stokes PDEベースの数値方法の競合的な代替物と見なされる。
【0055】
一実施形態のLBM解決器で使用されるコンピュータベースのモデル幾何学的形状は、microCTスキャン画像からのボクセルに対応する3Dボリューム要素を含むことができる。加えて、実施形態で使用されるコンピュータベースのモデルは、サーフェルと呼ばれる細孔/固体表面要素を含むことができる。サーフェルを使用することは、効果的なサブボクセル解像度精度での細孔/固体形状界面の高忠実度の表現を可能にする。流体とサーフェルの間にすべり境界条件を適用することはできない。サーフェルの使用は、こうした一実施形態によって適用される特定のLBMの固有の特徴であり、実際的な数のグリッドセルを岩石体積で使用することを可能にすることによって計算コストを管理可能にすることができる。
【0056】
ここでは、マルチスケールフレームワークも考慮することができる。分解された細孔空間で直接シミュレーションを実施することができ、その一方で部分的流れが未分解多孔質媒体(PM)を通して可能である。こうした一実施形態で使用される岩石サンプルについて、未分解PM領域は、粘土ナノ多孔性材料と関連付けられることができる。PM領域を通した輸送は、セグメント化中に粘土ナノ多孔性材料として識別された3Dモデル内の領域にLBMマルチスケール伸長17,18を適用することによって達成されることができる。PM領域内の輸送強度を制御するために、有効なPM透水性を独立して推定し入力することができる。
【0057】
図4は、粘土ナノ細孔中に流れを含むマルチスケールオプションありの場合となしの場合で、LBMシミュレーションから速度場を決定するために使用される例示的な連続ワークフローの工程を示す、左から右への画像のシーケンスを示す。画像441は、灰色の値がX線吸収係数を表す、入力microCT画像である。画像442は、セグメント化された岩石モデル(microCT画像441に基づいて生成される)を図示し、ここで岩石モデルの相は陰影で示される。具体的に、陰影445aは反応性鉱物を描写し、陰影445bは未反応性鉱物を図示し、陰影445cは微多孔鉱物を図示し、陰影445dは空隙率を図示する。モデル442は次に、一実施形態によるLBMで使用されて、流速場を決定することができる。画像443は、分解された細孔空間を通る流れのみを考慮するLBMシミュレーションからの流速場の結果を図示する。画像444は、分解された細孔空間と、PMと印された領域との両方を通る流れを考慮するLBMマルチスケールシミュレーションからの流速場の結果を示す。計算された流体流の透水性値は、両方の流れシミュレーションで同じであり、これは、より大きい破砕ネットワークからの流れの寄与と比較して、流れに対するPM領域の寄与が、無視できる程度であることを示すことに留意されたい。これは事実であるが、PM領域が接触した流路に付加された時に、より多くの領域が反応性鉱物として印されるため、銅生成速度に対する無視できない寄与が依然として達成可能であることが予想される。
【0058】
[実施例:反応モデリング]
例示的な銅浸出の例の場合の方法110の工程114の例示的な実装を以下に提供する。
【0059】
一実施形態において、反応輸送モデルには、二つの反応カテゴリー、すなわち不均一な表面反応カテゴリーと均一系バルク反応カテゴリーがある。一実施形態において、第一に、表面反応の反応速度則は、(遷移状態理論に基づいて)反応に関与する水性種の濃度への鉱物溶解および沈殿の関数としてモデル化される。
【0060】
【数1】
【0061】
【0062】
【数2】
【0063】
【0064】
上記の二つの方程式から、鉱物表面反応が複数の平行な機構によって駆動されることを観察できる。例示するために、銅フェライト(モデル内の反応性鉱物)を、最終速度方程式およびパラメータを見るための例として取ることができる。酸との銅フェライトの反応は以下の通りである。
【0065】
【数3】
【0066】
本文書において、反応速度はプロトン活性に依存すると仮定される。従って、銅フェライト表面反応の反応速度方程式は、以下の通りに記述されることができる。
【0067】
【数4】
【0068】
方程式(4)で使用されるパラメータを表1に列挙する。
【0069】
【表1】
【0070】
【0071】
バルク均質種については、反応速度が速いため、一実施形態において、即時に平衡に達すると仮定される34。従って、水性種間の関係は、質量作用の法則を使用して見いだされる。例えば、方程式(3)の種を考慮したバルク反応を表2に列挙する。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例:反応輸送モデリング]
例示的な銅浸出の例の場合の方法110の工程115の例示的な実装を以下に提供する。
【0074】
一実施形態において、移流拡散反応方程式を解いて、各種の輸送をモデル化する。
【0075】
【数5】
【0076】
【0077】
図5Aは、酸(H)562の反応が鉱物表面553上を流れ、Cu2+563aおよび/またはFe3+563bを放出し、飽和指数(SI)に基づいて、鉱物の幾何学的形状を変更することができる表面反応を示す。一実施形態において、飽和指数SIを使用して、反応が溶解551または沈殿552反応であるかどうかを定義する。
【0078】
一実施形態において、図5Aに図示する表面反応を、バルク均一系反応と組み合わせる。図5Bは、デジタルロック3Dモデル554におけるボクセルレベルでのこの組み合わせの化学反応を示し、ここで陰影は粒子555a、細孔555b、反応性鉱物555cを示す。こうした一実施形態において、酸が、粒子555aボクセルの代わりに反応性鉱物555cボクセルと出会う場合(図5Bにおいて可視化)、酸は、隣接する細孔555bボクセルにおいて一定量の銅総量(濃度計算を容易にするために使用される数学的構築物)を生成する。こうした一実施形態において、バルク反応は平衡であると仮定されるため、バルク反応は、平衡定数に基づき異なる量で銅総量が瞬間的に銅種に変換される、よく混合されたバッチ反応器であると仮定することができる。輸送および反応方程式を解くために、一実施形態において、一次種および二次種を含む総濃度556を使用して、非線形方程式を連立線形方程式に変換することによって、グローバル陰的スキームが使用される。こうした一実施形態で使用される質量輸送(移流拡散反応)および代数的関係のための偏微分方程式(PDE)のセットは、さらなる一実施例で本明細書に列挙される。
【0079】
図5Cは、一実施形態による、図5A~Bに関連して本明細書の上記した反応流モデリングの数値実行を要約する方法557のフローチャートである。図5Cのワークフロー557は、関心の材料、例えば多孔性岩石の3D microCT画像のセグメント化された画像、すなわちセグメンテーションを受信する工程558から始まる。工程559で、受信した画像セグメンテーションを使用して、速度場を決定する。続行するには、工程560で、反応性鉱物に隣接する細孔ボクセルについて、移流拡散反応方程式が解かれ(例えば、図5Bに関係して上述の通り)、移流拡散方程式は、細孔ボクセルの残りの部分、すなわち反応性鉱物に隣接していない細孔ボクセルで解かれる。溶解および沈殿に起因する幾何学的形状の変化は、こうした一実施形態では考慮されず、短時間プロファイルがシミュレーションされるため、鉱物反応の溶解部分の反応速度が考慮される。さらに、図5Cのワークフロー557において、生成物の濃度が上昇し始めると、沈殿速度をゼロに平衡化することによって、沈殿が抑制される。工程560で輸送方程式が解かれた後、方法557は工程561に移動し、そこで総濃度が得られ、代数的な種分化方程式(a4~a9)に示す通りの線形変換を使用して二次種の濃度を得る。さらに、方法557は、銅の濃度が定常状態に達するまで、反復563(すなわち、工程560および561を繰り返す)してもよい。
【0080】
方法557の一実施形態によると、輸送方程式は、有限差分法を使用して工程560で解かれる。一実施形態は、細孔空間のボクセル化されたmicroCT画像から取得される構造化された均一なグリッドを使用し、方程式(5)の時間導関数は、一次陰解法を使用して離散化され、風上差分スキームを使用して移流項が離散化される。
【0081】
[実施例:拡散モデリング]
一実施形態において、MDシミュレーションは、参考文献6で詳述した通りの理論に基づき、Material StudioのForciteモジュールを使用して実行される。こうした一実施形態において、粘土上の原子の力場パラメータは、CLAYFF力場(参考文献12)、および水およびイオン(参考文献4および37)のCOMPASIII力場(柔軟な水モデルで更新)を使用してモデル化される。この実施形態における粘土モデルは、八面体シートにおいてAl3+とMg2+の同形置換を有する、Cu0.66[Al3.33Mg0.66][Si]O20[OH]の単位格子式を有する一般的なワイオミング産モンモリロナイトである。粘土表面上の部分電荷は、以前の文献から取られる19,22。一実施形態によると、粘土のシミュレーションモデルは、二つのモンモリロナイトの平行表面を有する定期的に複製されたシミュレーションセルを含み、各々が、Cu2+対イオンを有し、以前の研究からの2W水のようなナノ細孔中の分離および水を有する45個の単位格子から成る19。さらに、こうした一実施形態において、バルク塩化銅シミュレーションが、異なる濃度および温度でのイオンおよび水で充填された立方体ボックス中の異なる塩濃度で実施される。
【0082】
粘土シミュレーションは、NVTで1ns平衡化され、続いて1バールで1nsのNPTでNVTによって平衡化され、モンモリロナイト層を弛緩する。ナノ細孔粘土シミュレーションにおけるイオン拡散の生成実行は、5nsのシミュレーションでは298、398、498KでNVTアンサンブルで、Nose barostatを使用して1fs時間ステップで実施されることができる33。リープフロッグアルゴリズムを積分器として使用することができる。一実施形態は、粒子メッシュエワルド法を使用して、長距離静電相互作用を計算する15。一実施形態によると、レナード・ジョーンズ(LJ)相互作用および静電相互作用のカットオフは、12Aに設定される。
【0083】
一実施形態は、平均二乗変位(MSD)の勾配から反応輸送シミュレーションのための単純なイオンの自己拡散係数を計算する19。数個の水分子およびグロッタスの機構と呼ばれる量子トンネル効果を含む、より複雑な機構を有することが知られているプロトン(H)の拡散率を得るために、動力学的に補正されたMC-MDシミュレーションを、Materials Studio、または当業者に既知の他のそのようなシミュレーションツールでモデル化することができる。
【0084】
[実施例:実施形態で使用される偏微分方程式(PDE)]
【0085】
【数6】
【0086】
その一方で、代数的な種分化方程式のセットは、
【0087】
【数7】
【0088】
[実施形態の検証および適用]
本項において、(本明細書に記載の)反応流方法は、基本的な検証事例で適用および考察され、その後に、破砕した岩石を通る流れの事例への方法の適用に関する考察が続く。以下の項の各々は、ナノスケールの分子シミュレーションからマイクロスケールの流体流シミュレーションまでの結果を有する、反応流ワークフローの研究された異なる構成要素に基づく。これらの異なる項からの結果を組み合わせて、破砕した岩石または他のこうした反応流プロセス/システムを通した銅浸出をモデル化することができる。
【0089】
[基本的検証]
水拡散率
実施形態による分子シミュレーションから得られた水の拡散率を最初に検証した。これらの拡散率を表3に列挙する。水の拡散率は、異なる力場水モデルについて、BIOVIA Materials Studio(登録商標)のForciteモジュールを使用して計算され、水拡散率の実験値と比較された。4点水モデル(TIP4P/2005)および柔軟な3点水モデル(SPC/Fw、現在ではCOMPASIII力場モデルに組み込まれている)は、他の水力場モデルよりも正確であることが見いだされた。さらに、SPC/Fwは、粘土界面を正確にモデル化するために必要な水素結合構造および熱力学的特性をより良好に予測することが示され、従って、柔軟な3点水力場モデルを使用して、本明細書の粘土ナノ細孔におけるイオン拡散をシミュレートした。
【0090】
【表3】
【0091】
[方解石溶解]
本明細書に記載の作業は、細孔スケールでの単相反応流のベンチマークモデルで検証された29。このベンチマーク事例は、いかなる多成分反応または幾何学的形状の進化も含まなかった。これは、反応流の実装およびその境界条件を検証することを意図した。長方形チャネルに置かれた方解石ペレットの単純な2D形状を、参考文献29から取ったシミュレーションパラメータを用いて、同参考文献に提示の通りにシミュレーションした。方解石鉱物の周りに拡散境界層を有する濃度プロファイル662を、図6Aに示す。濃度プロファイル662において、濃度はキー669に従って図示されている。プロット661は、複数の反応流シミュレーション方法665a~fに対する時間(秒)666aの関数として、平均出口酸濃度(mol/cc)666bを示す。プロット661は、一実施形態のシミュレーション結果665fからのHの濃度プロファイルを、同じ幾何学的形状上で、他の反応流細孔スケールシミュレーション665a~e、すなわちボルテックス665a、Dissolvefoam 665b、格子ボルツマン665c、OpenFOAM DBS 665d、Chombo-crunch 665eを使用して得られた結果と比較する。この試験において、幾何学的形状は反応とともに進化しなかったため、短いシミュレーション時間(定常状態に達するまでの時間は3秒程度29)の結果のみを比較した。シミュレーションからの短い時間の平均出口濃度プロファイルは、本明細書で使用される反応流の実施形態を検証する参考文献29の結果と良好に一致した。図6Aに示す通り、方解石ペレットの周りの定常状態濃度プロファイル662は、表面でより低いHの濃度を有する尾部の形態での境界層を有した。Dissolvefoam 665bおよびOpenFOAM DBS 665dの線は、ほぼ重複する。
【0092】
図6Bは、表面上での反応の境界効果を示すプロット663である。プロット663は、幾何学的形状の幅667aに対するH667bの平均空間濃度を示すことによって、この効果を図示する。プロット663は、GeoChemFoamコード668aの結果および実施形態の結果668bを示す。シミュレーションからの空間濃度プロファイル664を、(図6Cに示す通り)reactiveTransportALEfoamと比較し、GeChemFoamコードの一部としてopenFOAMライブラリを共有し、濃度差670a~cが観察された28。コード間の一致、特に拡散層の厚さおよびH消費の速度は良好であった。
【0093】
[銅浸出への適用]
実施形態は、300μmの側部長さを有する立方体として岩石がモデル化される破砕した岩石微細構造における銅浸出のモデル化のために検証されている。例示的なモデル770を図7Aに示す。モデル770において、岩石中の白色領域771は反応性鉱物であり、岩石中の淡灰色領域772は未反応性鉱物であり、岩石中の濃灰色領域773は微多孔鉱物であり、岩石中の黒色領域774は細孔である。銅浸出を検証するために、モデル770を使用してシミュレーションを実施し、ここで酸775が岩石770の一方の端に注入され、銅溶液776が岩石770の出口で抽出される。岩石770を四つの領域に分割し、ここで銅フェライトを反応性鉱物771として使用し、ナノ多孔性鉱物773についてはスメクタイトを検討し、未反応性鉱物772については固体岩石を検討し、細孔774については空隙を検討した。粘土ナノ多孔性鉱物773およびデジタルロック770の細孔(破砕)774内部の拡散率を得るために、分子シミュレーションについて本明細書においてさらに説明し、続いて、銅生成/抽出776に対する入口流775条件および反応タイプの影響を示すための反応流シミュレーションの結果を示す。図7Bは、時間経過(秒)778bにわたる、図7Aからの銅生成/抽出776の出口濃度778aの比較を描写する。出口濃度778aは、pH=2 779の所与の値に対して計算され、図7Bに示す通りプロット777され、ここで約0.2秒後に濃度は横ばい状態になった。
【0094】
[粘土ナノ細孔中のイオン拡散率]
開いた破砕およびナノ多孔性粘土材料を通した反応流計算の一部として必要な拡散率値を得るために、粘土中間層ナノ細孔中で塩溶液を使用したように(図8Bに示すモデル884によって表される)、バルク塩溶液のMDシミュレーション(図8Aに示すモデル880によって表される)を使用した。バルク塩溶液モデル880は、バルク塩溶液中の密充填された球によって表される銅イオン881、塩化物イオン882、水分子883を含む。図8Bに示す粘土ナノ細孔885a~bは、参考文献から引用した一般的なワイオミング産モンモリロナイトである19図8Bにおいて、銅イオン886、塩化物イオン887、水分子888はすべて、モンモリロナイト層885a~bの間の球によって示される。図8Bはまた、水酸素893a、銅893c、塩化物893bの粘土細孔に沿った原子密度プロファイル889を含む。プロット889に示す通りの粘土ナノ細孔内の水酸素893a、銅893c、塩化物893bの密度は振動する。密度の振動は、ナノ細孔壁付近の有限サイズ効果から生じる標準的な特徴である。シミュレーションは、粘土ナノ細孔に関する多くの以前の研究で行われたように、これらの外部要因に対する拡散率の依存性を理解するために、温度と塩濃度の関数として実施された19,22,36
【0095】
図8Cは、温度の関数としての銅対濃度895aの拡散率値896a、すなわち498K 894a、398K 894b、298 894cを示すプロット890である。図8Dは、温度の関数としてのバルク液体水中塩化物対塩濃度895bの拡散率値896b、すなわち498K 894d、398K 894e、298 894fを示すプロット891である。プロット890および891は、両方のイオンの拡散率896a~bが温度とともに増加した(これは予想されたことであった)が、塩濃度895a~bの増加とともに減少したことを示す。濃度変化の増加に伴う拡散率のこの減少は、高塩濃度でのイオン-イオンクラスタリングの増加に起因し、これは各イオンの可動性を減少させた。
【0096】
同様に、図8Eは、異なる温度898での粘土ナノ細孔モデル内部の銅899aおよび塩化物899bの拡散率値897を示すプロット892である。幾つかの以前の研究は、粘土ナノ細孔内のNaなどの単純なイオンの拡散率を報告していて、本明細書に記載の作業は、その以前の研究内容を、銅浸出にとって重要な他のイオンに延長したものである。図8Eは、粘土中の銅イオン899aの拡散率897が、荷電粘土表面との相互作用の増加のために、予想されたバルク水の値よりも2桁程度遅いことを示す。
【0097】
[破砕した岩石モデルにおける酸注入による銅浸出]
図9は、銅フェライト鉱物および破砕を有する例示的な岩石の3D微細構造モデルの図990a~cを描写する。図990aは、3D岩石モデル994全体を描写し、その一方で図990bは、モデル994の上部部分995を図示し、図990cは、モデル994の下部部分996を図示する。図9はまた、図990a~cに描写した通りの銅濃度993a~cを図示する目盛りを含む。モデル994を使用して、岩石微細構造における酸の注入をシミュレーションして、複雑な3D微細構造における多種反応輸送を処理する実施形態の能力を示した。本項において、反応流シミュレーションの事例を、無次元数を使用して、異なる流れおよび反応条件を利用した幾つかの感度研究とともに説明する。不均一な表面反応のみを有することと、多種均一系反応を加えることとの効果も考察される。最後に、多孔質媒体を通る流れを導入して、破砕と多孔質媒体の両方を通るマルチスケール反応流をモデル化し、それを破砕のみを通る流れと比較する。シミュレーション結果は、3D岩石の濃度プロファイルを調べ、酸の出口濃度、および出口溶液の組成を提示することによって考察される。
【0098】
流れのパターンおよび反応を可視化するために、破砕992における銅の3D定常状態濃度プロファイルが利用される。銅の煙は、銅フェライト鉱物991a(3Dモデルでは白色の鉱物によって表される)と反応する酸によって生成されるため、白色の鉱物上に生じる。銅はその後、銅の流れおよび濃度勾配に起因して、破砕992の残りの部分に移流し、拡散する。高濃度993aは反応性鉱物の近くに示され、低濃度993cは、淡灰色991cおよび濃灰色991bの鉱物の上を流れる幾何学的形状の残りの部分に示されている。
【0099】
図10A~Bはそれぞれ、感度研究の結果を示すプロット1010および1011を図示する。具体的に、プロット1010は、銅生成1012c(出口濃度、z軸上に示す)に対する鉱物の入口速度および表面反応性の影響を理解するために、異なるペクレ数1012a(Pe、x軸上に示す)およびダンケラー数1012b(Da、y軸上に示す)を利用した感度研究を図示する。図10Aのプロット1010は、銅生成1012cに対するダンケラー数1012bの効果は、ダンケラー数1012bが、プロット1010の勾配1013によって図示された通り、前方反応の速度を増加させてより多くの銅を産生する効果を表すため、ペクレ数1012aよりも大きかったことを示す。
【0100】
図10Bの等高線プロット1011を使用して、図11Aおよび図11Bに示す通りの将来の実験において一定に保たれるであろうダンケラー数1014bおよびペクレ数1014aの値を決定した。等高線プロット1011は、各系列が銅のそれぞれの濃度に対応するダンケラー数1014bとペクレ数1014aを比較してプロットする。以下の項に記載の結果では、ペクレ数1014aについては10、ダンケラー数1014bについては2.5を定数として使用した。破線1015a~bは、さらなる分析用に反応速度および速度のために選択された値である。図10Bに示す破線1015a~bは、同時に一つのパラメータのみを変化させる一方で、図11A~Dの銅の定常状態濃度プロファイルをさらに可視化するために使用された。
【0101】
図11A~Dはそれぞれ、プロット1110、1111、1112、1113であり、一過性挙動を定常状態へと捕捉するための時間の関数としての感度研究結果を示す。
【0102】
図11Aは、出口濃度1114a対時間1115aのプロット1110である。プロット1110は、それぞれのダンケラー数10、2.5、0.5、0.125、0.025、0.005、0.001についてのプロファイル1117a~gを含む。プロット1110は、各濃度1114aプロファイル1117a~gが、10のペクレ数を表す破線1116に基づいて同時に定常状態に達したが、銅1114aの濃度の定常状態値が、ダンケラー数1117a~gの増加とともに増加したことを図示する。0.005のDa 1117fおよび0.001のDa 1117gを表す線は、ほぼ重複している。
【0103】
図11Bは、出口濃度1114b対時間1115bのプロット1111である。プロット1111は、それぞれのペクレ数500、250、50、10、2.5の系列1118a~eを含む。500のPe 1118aおよび250のPe 1118bを表す線は、ほぼ重複している。
【0104】
図11Cは、定常状態濃度1120対ダンケラー数1121のプロット1112である。プロット1112は、所与の入口速度で、表面反応性が増加した時に、より多くの銅が生成されたことを示す。これは、ダンケラー数と比較して出口での銅1120の定常状態濃度を示す図11Cで見ることができる。ペクレ数1118a~eが、図11Bの破線1119によって示す通り、2.5のダンケラー数で変化した時に、濃度プロファイルが定常状態に達する時間は、図11Bに示す通りに変化した。ペクレ数1118a~eが、図11Bの破線1119によって示す通り、2.5のダンケラー数で変化した時に、濃度プロファイルの定常状態に達する時間は、図11Bに示す通り、比較プロット1111で変化した。
【0105】
図11Dは、定常状態濃度1122対ペクレ数1123のプロット1113である。プロット1113は、低い速度が低濃度に対応し、その一方で高い速度では濃度に対する漸近値に近づくように、出口での銅の定常状態値1122が、ペクレ数1123への依存性を有するように思われることを示す。図10Bの破線1015aおよび1015bに対応する、図11A~Dに示す個別の各パラメータの感度を越えると、反応性を変化させることで全体的な銅生成が増加したが、銅フェライト位置の周りに依然として高い銅濃度がある場合、追加的な銅生成を制限する微細構造によって課せられる何らかの制限があるように思われることも観察されることができる。これは、システムから銅を除去するために速度も増加させない限り、反応性を増加させることは有益ではないことを意味した。この興味深い観察は、反応性と輸送のバランスにおける微細構造接続の役割を示す。
【0106】
[均一系バルク反応の組み込み]
本項において、破砕した岩石の3D細孔空間における鉱物表面上の競合的な均一系バルク反応と表面反応との間の相互作用を調べる。このモデルで使用される均一系バルク反応を表2に示す。これらのバルク反応が方程式のシステムに加えられると、出口銅生成に対する種分化およびpHの影響を理解することができる。
【0107】
図12Aは、特に0、1、2、3、4、8のpHでの入口酸性度1223a~fの関数として、銅種1224および1225の出口濃度1222を示す棒グラフ1220である。図12Bは、特に0、1、2、3、4、8のpHでの入口酸性度1227a~fの関数として、鉄種1228a~dの出口濃度1226を示す棒グラフ1221である。図12A~Bからの一つの観察は、出口での生成物濃度がpHの増加とともに減少したことであるが、これは、銅1224および1225ならびに鉄1228a~dの生成が、良好な反応性のために高酸濃度(低pH)を必要とする表面反応によって主に制御されるという事実に起因する。バルク中の競合反応は、二次銅種および鉄種、例えば入口pH条件による銅および鉄の変化に対する優先種を生成する。これは、任意の反応流シミュレータで適切に捕捉する必要がある効果であり、そうでなければ一次種濃度のバイアスされた推定が得られる可能性がある。この実施形態は、均一系バルク反応の単純なサブセットを含むが、現実世界の用途において、幾つかの競合表面およびバルク反応が大きいサイズの多孔性岩石と組み合わせられ、この種分化の問題は、生成物濃度に著しい影響を与えることになる。従って、水溶液のモデルで考慮される入口酸性濃度および種に対する選択された値は、任意の浸出用途を最適化するために非常に重要である。
【0108】
続行するために、銅イオン(Cu2+)生成の一次種に対する競合バルク反応の効果を調べ、結果を図13A~Cに示す。図13Aは、複数の異なるpH 1333a~fについて(具体的に0、1、2、3、4、8のpHで)、時間1332と比較した、不均一系反応についての出口濃度1331を示すプロット1330である。図13Bは、複数の異なるpH1337a~fについて(具体的に0、1、2、3、4、8のpHで)、時間1336と比較した、均一系反応および不均一系反応についての出口濃度1335を示すプロット1334である。図13Cは、酸濃度1342と比較した定常状態濃度1341のプロット1340である。プロット1340は、不均一系反応および均一系反応1343の系列と、不均一系反応1344のみの系列とを含む。
【0109】
プロット1330(図13A)および1334(図13B)を比較することは、入口pH条件(図13Aの1333a~f、および図13Bの1337a~f)が、均一系反応および不均一系反応1331と比較して、不均一系反応1330のみの表面反応性の減少に起因して増加したため、出口(図13Aの1331、および図13Bの1335)での銅イオンの濃度が減少したことを示す。興味深いことに、競合バルク反応が加えられた時に、銅イオン生成は、(図13Cのプロット1340に示す通り)表面反応のみが存在する時よりも高かった。定常状態濃度1341および酸濃度1342に基づいて、不均一系反応および均一系反応1343を不均一系反応1344のみと比較するプロット1340は、競合バルク反応が表面反応(Cu2+)からの生成物を消費し、従って反応を前方に移動させることを示す。それ故に、多種バルク反応を有することは、出口での生成物の組成および量に重要な効果を有し、銅浸出の問題を正確にモデル化するのに役立つ。
【0110】
[破砕した岩石および粘土における酸注入による銅の浸出 - マルチスケール]
破砕およびナノ多孔性粘土を通る流れの可能性(例えばマルチスケール反応輸送問題)も研究された。ナノ多孔性材料(この実施形態において、粘土)を通した輸送は、3D微細構造モデルでセグメント化されたナノ多孔性領域を通した種の拡散に主に起因して発生した。これらの拡散率は、本明細書に提示の通りのMDシミュレーションを使用して推定された。
【0111】
図14Aは、破砕1444のみを通る流れを有するデジタルロック破砕モデル1440の断面を示す。断面1440は、陰影を使用した材料相を示し、陰影1442a、1442b、1442cはそれぞれ、反応性鉱物、未反応性鉱物、微多孔鉱物を表す。図14Aはまた凡例1443を含み、それによって銅濃度は陰影に基づいて示される。図14Aは、銅濃度は反応性鉱物1442aに隣接して高いことを示す。銅濃度は、未反応性鉱物1442bおよび微多孔鉱物1442cに隣接してより低い。
【0112】
図14Bは、破砕1445およびナノ多孔性粘土1446cを通る流れを有するデジタルロック破砕モデル1441の断面を示す。断面1441は、陰影を使用した材料相を示し、陰影1446a、1446b、1446cはそれぞれ、反応性鉱物、未反応性鉱物、ナノ多孔性粘土を表す。図14Bはまた凡例1448を含み、それによって銅濃度は陰影に基づいて示される。破砕1445およびナノ多孔性粘土領域1446cを通るマルチスケール流は、銅が濃灰色領域1446cを通って、例えば位置1447で、貫通し始めたことを示し、これはモデル内のナノ多孔性粘土を表す。ナノ多孔性粘土を通る流れを組み込むことは、破砕1445と直接接触していなかった他の反応性鉱物1446aに達するのに役立ち、銅生成の推定の増加をもたらした。未反応性鉱物1446bの周りの銅濃度は、ナノ多孔性粘土および反応性鉱物と比較して、依然として比較的に低いままである。
【0113】
図14Cは、時間1451の関数としての出口銅濃度1450のプロット1449を示す。プロット1449は、単一スケール反応流のための系列1452(例えば、図14Aに示す通り)、およびマルチスケール反応流のための系列1453(例えば、図14Bに示す通り)を含む。多孔質媒体を通した輸送は比較的により遅いため、マルチスケール流1453が定常状態に達するには比較的により長い時間がかかることを、プロット1449で観察することができる。図14Cからの興味深い観察は、単一スケール反応流1452モデルを使用した時よりも多くの銅が経時的に生成されたことであった。これは、実施形態での通り、ナノ多孔性材料を通してマルチスケール流モデルを組み込むことが、銅浸出の反応流生成モデルの推定の精度を改善する上で重要な役割を果たすことを意味する。
【0114】
実施形態で利用されうる例示的なデジタルロックモデル1550を図15に示す。図15は、反応性鉱物1553a、微多孔鉱物1552c、未反応性鉱物1553bによって囲まれた細孔空間を通した岩石1552の破砕した中間部分(粘土材料中の破砕)の銅浸出1551を示す拡大図1551を含む。図15はまた、二つの層1557a~bの間に銅イオン1558、塩化物イオン1559、水分子1560を有する、二つの層1557a~bとしてデジタルロックの上方および下方にワイオミング産モンモリロナイトでモデル化された粘土の拡大図1554を含む。なおもさらに、図15は、銅イオン1561、塩化物イオン1562、水分子1563を含有するバルク分子流体としてモデル化された破砕中の流体の図1555を含む。
【0115】
[例示的な方法ワークフロー]
本明細書において、反応流システムの挙動を決定するコンピュータ実装方法が記載されている。
【0116】
実施形態は、単一スケール流および多種反応を伴うマルチスケール流を用いた反応輸送シミュレーションのためのワークフローを提供する。一実施形態において、単一スケール流とマルチスケール流の両方の流速場は、LBM単相流シミュレーションから取られ、マルチスケール反応流シミュレーションにおいて利用可能なデータベースからのイオン拡散率および反応のための分子力学シミュレーションと組み合わせられる。実施形態における反応輸送モデルを、方解石溶解の短時間シミュレーションで検証し、結果を他の反応流コードの公開された結果と比較した。実施形態の分子シミュレーション部分も、水拡散率の推定を用いて検証し、他の利用可能な実験値と比較した。
【0117】
マルチスケール反応流ワークフローを体系的に使用して、表面反応、競合バルク反応、pH、多孔質媒体を通した流れの重要性を、輸送パラメータと反応パラメータの両方に対する感度と組み合わせて調査した。これらのすべての結果において、銅浸出からの生成物である出口銅イオン濃度を分析し、不均一系表面溶解反応に加えて均一系バルク反応が含まれる場合、生成物の流れの組成を調べた。出口濃度と併せて、デジタルロックモデルにおける3D濃度プロファイルを検証して、輸送と反応性の両方の影響ならびに微細構造接続性を図示した。
【0118】
これらのシミュレーション結果を通して、銅浸出から生成される銅イオンの濃度を正確にモデル化するためには、表面反応と併せて均一系バルク反応を含めることが(出口流の組成に有意な効果を有するため)重要であることが観察された。pHが水溶液の化学的平衡に有意な影響を与え、出口流の種組成に異なる相対画分をもたらすことも観察された。最後に、多孔性材料を通るマルチスケール流が含まれ、これは岩石内のナノ多孔性粘土をモデル化した。このマルチスケール伸長は、当初は破砕と直接接触していなかったより多くの反応性鉱物に達する可能性があったため、出口銅イオン濃度に重要な効果を有した。破砕およびナノ多孔性粘土を通るマルチスケール流を組み込むことは、銅浸出からの銅イオン生成の予測に有意な効果を有することが示された。
【0119】
実施形態は、分子力学シミュレーション、LBM流体流シミュレーション、反応輸送シミュレーションを使用して反応および流体輸送が組み合わせられる、3D微細構造モデルにおけるマルチスケール反応流のための堅牢なワークフローを提供する。さらに、実施形態は、表面の不均一系反応に加えて、バルク均一系反応を反応流シミュレーションに含めるための単純かつ効果的な方法を提供する。これは、出口流における銅イオン生成に重要な効果を有する。なおもさらに、実施形態は、均一系反応および不均一系反応と組み合わせた破砕およびナノ多孔性材料を通るマルチスケール流をシミュレートして、デジタルロックモデルを通る反応流を正確にモデル化することができる。
【0120】
実施形態の正確な結果は、様々な反応流の現実世界の用途に使用することができる。例えば、実施形態は、他の実施例の中でも特に、銅浸出用途などの反応流システムを動作/制御するために使用されることができる。こうした一つの例示的実施において、実施形態を利用して、銅浸出用途のための最適化された動作パラメータを決定することができ、次に現実世界のシステムは、決定された最適化されたパラメータに従って動作するように制御されることができる。別の例は、多孔質材料であるコンクリートを通って流れ、鉱物セメント固体成分と反応する水に溶解したCO2の反応流の挙動である。
【0121】
本明細書に記載の反応流モデリングのワークフローは、以下の能力を組み合わせて、反応流シミュレーションを正確にモデル化する。(1)3D撮像(microCT)に基づく正確な微細構造モデル、(2)分解可能および分解不可能な細孔(複数可)を通るマルチスケール流、(3)組み合わせられたガスおよび液体のシミュレーションを解決するための多相流シミュレータ、(4)反応流モデルへの不均一系反応および均一系反応、(5)フィールドスケールの反応流シミュレーションをモデル化するための、細孔スケール流れシミュレーションからのアップスケール、(6)反応流をモデル化するために必要な材料、反応、拡散特性を推定するための分子シミュレーション、(7)多相、マルチスケールおよび多種反応流のための3D微細構造モデルにおける堅牢なワークフロー(ここでは、分子力学シミュレーション、LBM流体流シミュレーション、反応輸送シミュレーションを使用して、反応および流体輸送を組み合わせる)、(8)表面の不均一系反応に加えて、バルク均一系反応を反応流シミュレーションに含める効果的な方法。これは、出口流における種生成の決定に重要な効果を有し、実施形態に示す通りである、(9)デジタルロックモデルを通る反応流を正確にモデル化するための、均一系反応および不均一系反応と組み合わせた、分解可能な細孔材料および分解不可能な細孔材料を通る多相流、(10)Dassault Systemesの3DEXPERIENCE(登録商標)プラットフォームに実施形態を実装することが、多相、マルチスケール、多種反応輸送モデルの最適化を可能にし、それによってモデルを鉱業、石油・ガス、エネルギー貯蔵技術、化学業界、材料腐食などの産業におけるフィールドスケールシミュレーション用にスケールアップすることができる。
【0122】
[コンピュータサポート]
図16は、本明細書に記載の任意の様々な実施形態による、反応流システムの挙動を決定するために使用されうる、コンピュータベースのシステム2020の簡略ブロック図である。システム2020はバス2023を含む。バス2023は、システム2020の様々な構成要素間の相互接続として機能する。バス2023に接続されているのは、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどの様々な入力デバイスおよび出力デバイスをシステム2020に接続するための入力/出力デバイスインターフェース2026である。中央処理装置(CPU)2022はバス2023に接続されていて、実施形態を実施するコンピュータ命令の実行を提供する。メモリ2025は、例えば方法110など、本明細書に記載の実施形態を実施するコンピュータ命令の実施に使用されるデータのための揮発性記憶装置を提供する。ストレージ2024は、オペレーティングシステム(図示せず)および実施形態の構成など、ソフトウェア命令のための不揮発性ストレージを提供する。システム2020はまた、ワイドエリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当該技術分野で既知の任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインターフェース2021を備える。
【0123】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実施されうることが理解されるべきである。一部の場合において、本明細書に記載の様々な方法および機械は各々、コンピュータシステム2020など、物理的、仮想的、もしくはハイブリッドな汎用コンピュータ、または図17に関連して本明細書に以下に記載の、コンピュータ環境2120などのコンピュータネットワーク環境によって実装されてもよい。コンピュータシステム2020は、例えばCPU2022による実行のために、メモリ2025または不揮発性ストレージ2024のいずれかにソフトウェア命令をロードすることによって、本明細書に記載の方法を実行する機械に変換されてもよい。当業者は、システム2020およびその様々な構成要素が、本明細書に記載の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実行するように構成されてもよいことをさらに理解するべきである。さらに、システム2020は、システム2020に動作可能に内部または外部連結されたハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアモジュールの任意の組み合わせを利用して、本明細書に記載の様々な実施形態を実施してもよい。
【0124】
図17は、本発明の一実施形態が実施されうる、コンピュータネットワーク環境2120を図示する。コンピュータネットワーク環境2120において、サーバ2121は、通信ネットワーク2122を介してクライアント2123a~nにリンクされる。環境2120は、クライアント2123a~nが単独でまたはサーバ2121との組み合わせで、本明細書に記載の方法のいずれかを実行することを可能にするために使用されうる。非限定的な例において、コンピュータネットワーク環境2120は、クラウドコンピューティング実施形態、サービスとしてのソフトウェア(SAAS)実施形態などを提供する。
【0125】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実施されうる。ソフトウェアで実施された場合、ソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成されている、任意の非一時的コンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。プロセッサは次いで、命令を実行し、本明細書に記載の通りの様態で動作するように、または装置を動作させるように構成されている。
【0126】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして、本明細書に記載されうる。しかし当然のことながら、本明細書に含まれるこうした記載は、単に便宜のためであり、また実際に、こうした動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスからもたらされる。
【0127】
流れ図、ブロック図、ネットワーク図は、より多いもしくはより少ない要素を含んでもよく、または異なって配置されてもよく、または異なって表現されてもよいことを理解するべきである。しかし、さらに当然のことながら、特定の実装は、ブロック図およびネットワーク図と、特定の方法で実施される実施形態の実行を図示するブロック図およびネットワーク図の数とを決定付けてもよい。
【0128】
それに応じて、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的、仮想的、クラウドコンピュータ、および/またはそれらの何らかの組み合わせにおいて実施されてもよく、それ故に本明細書に記載のデータプロセッサは、図示の目的で意図されているにすぎず、実施形態の限定として意図されるものではない。
【0129】
例示的な実施形態を具体的に示し、記述してきた一方で、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が実施形態において行われてもよいことが理解されるであろう。
【0130】
例えば、図中の実施形態の前述の説明および詳細は、例示の目的で、出願人-譲受人(Dassault Systemes Americas Corporation)およびDassault Systemes、ツールおよびプラットフォームを参照するが、限定するものではない。他の類似のツールおよびプラットフォームが適切である。
【0131】
本明細書で引用されるすべての特許、公表された出願、参考文献の教示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応流システムの挙動を決定するコンピュータ実装方法であって、
反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することであって、速度場を前記決定すること、および拡散率を決定することが、一つ以上のデジタルプロセッサによって自動的に実施される、決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を含む方法。
【請求項2】
所与のスケールがマイクロスケール、分子スケール、または地下スケールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定義された複数のモデルのうちの少なくとも一つのモデルが、前記反応流システムの特性を示す幾何学的モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応流システムの前記複数のモデルの所与のモデルを定義することが、
一つ以上の不均一な表面反応のモデルを定義することと、
前記一つ以上の不均一な表面反応の前記定義されたモデルについて、速度則を鉱物溶解および沈殿の関数としてモデル化することと、
前記モデル化された速度則および一つ以上の均一系バルク反応のモデルに基づいて、所与のモデルを定義することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のモデルを使用して前記反応流システムの前記速度場を前記決定することが、
前記反応流システム内の材料の画像を受信することと、
前記画像を複数の相にセグメント化することであって、各相が材料、固体、または流体を表す、セグメント化することと、
前記第一のモデルを使用して、前記複数の相に基づいて、前記反応流システムの前記速度場を決定することであって、前記第一のモデルが単相流体流モデルである、決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が多孔性である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記材料が一つ以上の破砕をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記材料がナノ多孔性粘土材料である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記材料が、Cu0.66[Al3.33Mg0.66][Si]O20[OH]の式を有するワイオミング産モンモリロナイトである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記決定された速度場が多相速度場である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第二のモデルを使用して前記反応流システムの前記拡散率を決定することが、
分子力学シミュレーションの入力として、粘土中間層ナノ細孔中のバルク塩溶液のパラメータおよび塩溶液のパラメータを提供することと、
前記分子力学シミュレーションの前記入力を使用して、温度および塩濃度の関数として前記分子力学シミュレーションを実施することであって、前記分子力学シミュレーションを実施する結果が前記反応流システムの前記拡散率を示す、実施することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記拡散率がイオン拡散率である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン拡散率が、銅(Cu)2+のイオン拡散率である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応流システムのための前記複数の反応パラメータが、入力データを使用して定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記入力データが、シミュレーション結果およびデータベースのうちの少なくとも一つから取得される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを前記反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を前記決定することが、
前記入力を用いて前記反応輸送解決器を使用して、移流拡散反応方程式を解くことであって、前記解決の結果が前記反応流システムの前記挙動を示す、解くこと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記反応流システムの前記決定された挙動が濃度プロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記濃度プロファイルが銅(Cu)2+の濃度プロファイルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応流システムの前記決定された挙動に基づいて、前記第一のモデルおよび前記第二のモデルを更新することと、
前記更新された第一のモデルを使用して、前記反応流システムの更新された速度場を決定することと、
前記更新された第二のモデルを使用して、前記反応流システムの更新された拡散率を決定することと、
前記更新された決定された速度場、前記更新された決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを前記反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの更新された挙動を決定することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応流システムの前記決定された更新された挙動が定常状態に達するまで、(i)前記更新することと、(ii)更新された速度場を前記決定することと、(iii)更新された拡散率を前記決定することと、(iv)前記反応流システムの更新された挙動を前記決定することとを反復することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
反応流システムの挙動を決定するためのコンピュータベースのシステムであって、前記コンピュータベースのシステムが、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が中に格納されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、
前記反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を前記コンピュータベースのシステムに行わせるように構成されている、コンピュータベースのシステム。
【請求項22】
反応流システムの挙動を決定するための非一時的コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、ネットワークを介して一つ以上のクライアントと通信しているサーバによって実行され、
コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読媒体がプログラム命令を備え、これがプロセッサによって実行される時に、
前記反応流システムの複数のモデルを定義することであって、各定義されたモデルが、それぞれのスケールで前記反応流システムを表す、定義することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第一のそれぞれのスケールでの、第一のモデルを使用して、前記反応流システムの速度場を決定することと、
前記定義された複数のモデルのうちの、第二のそれぞれのスケールでの、第二のモデルを使用して、前記反応流システムの拡散率を決定することと、
前記反応流システムのための複数の反応パラメータを定義することと、
前記決定された速度場、前記決定された拡散率、および前記定義された複数の反応パラメータを反応輸送解決器への入力として使用することによって、前記反応流システムの前記挙動を自動的に決定することと、を前記プロセッサに行わせる、コンピュータ可読媒体を含む、非一時的コンピュータプログラム製品。
【外国語明細書】