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特開2024-122947微小機械留め具要素の製造方法、微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具、及び微小機械留め具要素
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  • 特開-微小機械留め具要素の製造方法、微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具、及び微小機械留め具要素 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122947
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】微小機械留め具要素の製造方法、微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具、及び微小機械留め具要素
(51)【国際特許分類】
   B23P 23/04 20060101AFI20240903BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20240903BHJP
   B23P 15/16 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B23P23/04
B23P15/28 Z
B23P15/16
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006073
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】23156908.8
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ハフェリ、 フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ズビンデン、 ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥビエフ、 ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】トゥーリア、 ラファエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】留め具要素を製造するための方法に関するものであり、締め付けトルクを加えるための締め付け工具と協働するように設計されたくぼみを備えるねじ又は他の締結要素などの微小機械留め具要素を、くぼみの視認可能な表面の状態を管理しながら製造する方法を提供する。
【解決手段】互いに接続された頭部及びシャンクを有する留め具要素のブランクを製造する工程と、その後に頭部にくぼみを形成する工程とを含み、前記形成工程は、切削部材(11)を用いて行われるくぼみを機械加工する作業と、マッティング部材(12)を用いて行われるくぼみの対象表面をマットにする作業とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小機械留め具要素を製造する方法であって、互いに接続された頭部及びシャンクを備える前記留め具要素のブランクを製造する工程と、その後に前記頭部にくぼみを形成する工程とを含み、前記形成工程は、切削部材(11)を用いて行われる前記くぼみを機械加工する作業と、マッティング部材(12)を用いて行われる前記くぼみの対象表面をマットにする作業とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記頭部にくぼみを形成する工程は、前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)が配置された単一の形成工具(10)を用いて行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記くぼみ形成工程が行われる期間すべてで、前記留め具要素は同じ位置に保持され、前記形成工具(10)のみが動かされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マッティングされる前記対象表面は前記くぼみの奥の面であり、前記マッティング作業は、前記形成工程の終了時に前記奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有するように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機械加工作業及び前記マッティング作業を実行するとき、前記形成工具(10)は異なる回転方向に駆動され、前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)は前記形成工具(10)の単一のディスク上に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記機械加工作業及び前記マッティング作業中、前記ブランクは切削部材(11)によって機械加工され、それぞれが前記形成工具(10)のディスクによって構成されたマッティング部材(12)によってマッティングされ、前記ディスクは平行かつ同軸である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記マッティング作業は、前記対象表面上を前記マッティング部材(12)が複数回連続して通過することによって行われ、各通過は、0.1μm~2μm又は0.5μm~1.5μmの通過深さまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具(10)であって、長手方向軸に沿って延びる本体を備え、前記工具は前記長手方向軸の周りで回転するように意図され、前記工具は、前記本体の長手方向端部に配置された、前記工具が回転するときにくぼみを形成するように留め具要素から材料を除去するように意図された切削エッジを備える切削部材(11)と、前記工具が回転するときに前記くぼみの対象表面をマットにするように意図された作用表面(120)を備えるマッティング部材(12)とを含むことを特徴とする、形成工具(10)。
【請求項9】
前記切削及びマッティング部材(11、12)は、前記工具が第1の回転方向に駆動されると、前記切削部材(11)が作動して前記マッティング部材(12)が作動せず、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に駆動されると、前記切削部材(11)が作動せず、前記マッティング部材(12)が作動するように構成された単一のディスクの形態である、請求項8に記載の形成工具(10)。
【請求項10】
前記ディスクは、複数の規則的に分布した周辺歯を含み、各歯は、その頂点に前記マッティング部材(12)の作用表面(120)を形成するレリーフ面(111)を備え、前記レリーフ面(111)はさらに、各歯のリーディング面と共に、前記切削部材(11)の切削エッジ(110)を画定する、請求項9に記載の形成工具(10)。
【請求項11】
前記切削及びマッティング部材(11、12)の各々がディスクの形態であり、前記ディスクは平行かつ同軸に配置され、前記切削エッジ(110)及び前記作用表面(120)はそれぞれ前記ディスクの周囲に配置される、請求項8に記載の形成工具(10)。
【請求項12】
前記マッティング部材(12)の作用表面(120)は円形断面を有する、請求項11に記載の形成工具(10)。
【請求項13】
前記マッティング部材(12)の作用表面(120)は、丸みのある頂点(121)によってつながれた弧(122)から成る多角形断面を有する、請求項12に記載の形成工具(10)。
【請求項14】
前記弧(122)は凹状の湾曲を有する、請求項12又は13に記載の形成工具(10)。
【請求項15】
頭部に接続されたシャンクを備える金属材料で作られた微小機械留め具要素であって、前記頭部は、開口部から奥の面まで延在するくぼみを有し、前記奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有することを特徴とする、留め具要素。
【請求項16】
前記くぼみは、トルクを伝達するための締め付け工具と協働するように意図され、前記シャンクはねじ山を有する、請求項15に記載の留め具要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小機械部品の製造に関する。本発明は、より詳細には、微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具、微小機械留め具要素の製造方法、及び微小機械留め具要素に関する。
【0002】
本発明は、時計製造の分野において有利な用途を有する。
【背景技術】
【0003】
微小機械の分野、特に時計製造の分野では、時計ムーブメント又は時計ケースなどのアセンブリの機械部品の美的外観が非常に重要である。特に、アセンブリを構成する部品の目に見える面の状態は、管理されていなければならない。
【0004】
この目的のために、いくつかの平坦な表面には、ギロシェ、サンレイ仕上げ、ペルラージュ装飾などの特定のレリーフを施すために、材料を除去することによる研磨又は装飾が行われる。
【0005】
しかしながら、いくつかの部品の接触が困難な表面は、非常に小さい寸法のために、機械加工されたまま残されている。そのような表面は、例えば、ねじの穴の奥のような、微小機械留め具要素のくぼみの奥の面である。
【0006】
このとき、これらのくぼみの奥の面の最終的な表面状態は、くぼみの機械加工の状態のみで決まる。とりわけ、この表面状態は、機械加工中に起こる振動現象に依存する。切削工具及び機械加工される部品の寸法が非常に小さいため、これらの現象を制御するのは非常に困難であり、機械加工された部品のくぼみの奥の面の多くは、製造の要求に適合する表面状態を有していない。
【0007】
留め具要素が高級時計製造産業向けの場合、仕上げ及び表面品質に関する要求が非常に高いため、不合格品の数はさらに多くなる。
【0008】
したがって、最も厳しい要求を満たすために、目に見えるすべての表面の状態が管理された留め具要素を製造することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、締め付けトルクを加えるための締め付け工具と協働するように設計されたくぼみを備えるねじ又は他の締結要素などの微小機械留め具要素を、くぼみの視認可能な表面の状態を管理しながら製造するという、前述の不利な点の解決策を提案する。
【0010】
さらに、本発明の目的の1つは、留め具要素の製造コストを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のための本発明の一態様は、互いに接続された頭部及びシャンクを備える留め具要素のブランクを製造する工程と、その後に頭部にくぼみを形成する工程とを含む、微小機械留め具要素を製造する方法に関する。くぼみを形成する工程は、切削部材を用いて行われるくぼみの機械加工作業と、マッティング部材を用いて行われるくぼみの対象表面をマットにする作業とを含む。
【0012】
有利には、マッティング工程は、製造要求を満たすように、機械加工後の対象表面の状態を修正することを可能にする。具体的には、このマッティング工程は、留め具要素の製造中に、マッティング部材によって生じる局所的な圧力の効果による材料の塑性変形によって、対象表面の状態を改善すること、すなわちマイクロメートルスケールで前記表面の幾何学的欠陥を最小限に抑えることを可能にする。
【0013】
具体的な実施形態において、本発明は、単独で、又は任意の技術的に可能な組み合わせで、以下の特徴の1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0014】
特定の実施態様では、頭部にくぼみを形成する工程は、切削部材及びマッティング部材が配置された単一の形成工具を用いて行われる。
【0015】
特定の実施態様では、くぼみ形成工程が行われる期間すべてで、留め具要素は同じ位置に保持され、形成工具のみが動かされる。
【0016】
特定の実施態様では、マッティングされる対象表面はくぼみの奥の面であり、マッティング作業は、形成工程の終了時に前記奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有するように行われる。
【0017】
特定の実施態様では、機械加工作業及びマッティング作業を実行するとき、形成工具は異なる回転方向に駆動され、切削部材及びマッティング部材は形成工具の単一のディスク上に配置される。
【0018】
特定の実施態様では、機械加工作業及びマッティング作業中、ブランクは切削部材によって機械加工され、それぞれが形成工具のディスクによって構成されたマッティング部材によってマッティングされ、前記ディスクは平行かつ同軸である。
【0019】
特定の実施態様では、マッティング作業は、対象表面上をマッティング部材が複数回連続して通過することによって行われ、各通過は、0.1μm~2μm又は0.5μm~1.5μmの通過深さまで行われる。
【0020】
他の目的に応じて、本発明は、微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具に関する。形成工具は、前述の製造方法を実行するのに有利なように適合されている。
【0021】
形成工具は長手方向軸に沿って延びる本体を備え、工具は長手方向軸の周りで回転するように意図されている。形成工具はさらに、本体の長手方向端部に配置された、工具が回転するときにくぼみを形成するように留め具要素から材料を除去するように意図された切削エッジを備える切削部材と、工具が回転するときにくぼみの対象表面をマットにするように意図された作用表面を備えるマッティング部材とを備える。
【0022】
特定の実施形態では、切削部材及びマッティング部材は、工具が第1の回転方向に駆動されると、切削部材が作動してマッティング部材が作動せず、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に駆動されると、切削部材が作動せず、マッティング部材が作動するように構成された単一のディスクの形態である。
【0023】
特定の実施形態では、ディスクは、複数の規則的に分布した周辺歯を含み、各歯は、その頂点にマッティング部材の作用表面を形成するレリーフ面を備え、前記レリーフ面はさらに、各歯のリーディング面と共に、切削部材の切削エッジを画定する。
【0024】
特定の実施形態では、切削部材及びマッティング部材の各々がディスクの形態であり、ディスクは平行かつ同軸に配置され、切削エッジ及び作用表面はそれぞれ前記ディスクの周囲に配置される。
【0025】
特定の実施形態では、マッティング部材の作用表面は円形断面を有する。
【0026】
特定の実施形態では、マッティング部材の作用表面は、丸みのある頂点によってつながれた弧から成る多角形断面を有する。
【0027】
特定の実施形態では、弧は凹状の湾曲を有する。
【0028】
本発明の別の形態は、微小機械留め具要素に関するものであり、金属材料で作られ、好ましくは本発明による製造方法の実施によって作られ、頭部に接続されたシャンクを有する。頭部は、開口部から奥の面まで延在するくぼみを有し、前記留め具要素は、奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有することを特徴とする。
【0029】
特定の実施形態では、くぼみは、トルクを伝達するための締め付け工具と協働するように意図され、シャンクはねじ山を備える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照すると共に、非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態による形成工具の平面図を概略的に示す。
図2図1の形成工具の切削部材の切断軸A-Aに沿った断面図である。
図3図1の形成工具のマッティング部材の切断軸B-Bに沿った断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態による形成工具の平面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面は、明快さのために必ずしも縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
【0032】
本発明の第1の態様は、使用者に見えるように意図された微小機械留め具要素、例えばねじ、好ましくは時計ねじの製造方法に関する。この微小機械留め具要素は、鋼、チタンなどの金属材料で作られ、好ましくは時計製造分野向けであるが、一般にすべての微小機械分野での使用に適合させることができる。
【0033】
この方法は、互いに接続された頭部及びシャンクを備える留め具要素のブランクを製造する工程と、その後に頭部にくぼみを形成する工程とを含む。
【0034】
このくぼみは、開口部から奥の面まで延在し、留め具要素にトルクを加えるために、スクリュードライバなどの締め付け工具のヘッドを受け入れるのに都合が良いように設計される。この例において、ブランクを製造する工程は、ブランクのシャンク上にねじ山を作るためのねじ山作成作業を含むことができる。代替的な例として、くぼみは単なる装飾用であってもよい。
【0035】
いずれの場合においても、留め具要素の頭部、したがってくぼみは、使用者に見えるように意図されている。くぼみは、任意の適切な形状、例えば十字形、多角形断面など、又は直線スロットの形状であってもよい。
【0036】
有利には、くぼみを形成する工程は、切削部材11を用いて行われるくぼみを機械加工する作業と、マッティング部材12を用いて行われるくぼみの対象表面をマットにする作業との両方を含む。くぼみの対象表面は使用者に見えるように意図されており、好ましくはくぼみの奥に相当する。
【0037】
これらの特徴のおかげで、くぼみの表面、特にくぼみの奥は、表面状態が管理されていて、表面は研磨などがされており、外観に関して最も厳しい要求を満たすことを可能にする。実際には、マッティング作業は、前記奥の面が、くぼみ形成工程の終了時にRaが0.01μm~0.1μm、好ましくは0.02μm~0.05μmとなるように行われる。
【0038】
またこれらの特徴によって、本発明による方法のおかげで微小機械留め具要素を優れた再現性で工業的に製造することが可能となり、これにより製造上の不合格品を大幅に低減又は排除することが可能になる。さらに、機械加工及びマッティング作業が方法の同じ工程の中で行われるという事が、留め具要素の製造時間を最適化し、そのコストを抑えることを可能にしている。
【0039】
機械加工作業は、くぼみが0.05~0.5mmの間、例えば100μm~200μmの間、例えば170μmの深さを有するように行われ、切削部材11が一回以上通過することでその目標を実行することができる。具体的には、機械加工作業は、空の通過とそれに続く仕上げ通過によって実行することができ、仕上げ通過は数マイクロメートルの深さ、例えば2μmである。
【0040】
マッティング作業は、対象表面上をマッティング部材12が複数回の連続した通過、例えば3回の通過をすることによって行われ、各通過は、0.1μm~2μm、好ましくは0.5μm~1.5μm、例えば1μmの通過深さまで行われる。そのようにして、対象表面の材料は、マッティング部材12によって冷間加工され、マイクロメートル又はマイクロメートル以下のスケールで対象表面を概ね平坦化することを可能にし、その結果、その表面状態を改善する。
【0041】
有利には、くぼみを形成する工程は、本発明の別の態様に従って詳細に後述される、切削部材11及びマッティング部材12が配置されている単一の形成工具10を用いて行われる。そのような形成工具10は、留め具要素のくぼみを作るために回転されるように、機械加工中心の工具ホルダに固定されるよう意図されている。
【0042】
この方法は、頭部の外面、すなわちくぼみの表面を除いた頭部の表面を研磨する仕上げ工程を含むことができる。
【0043】
図1に見られるように、形成工具10は、工具の回転軸に当たる長手方向軸に沿って延びる、例えば支柱の形態の本体を備える。切削部材11及びマッティング部材12は、本体の解放された端に配置される。切削部材11は、工具が回転されたときにくぼみが形成されるように、留め具要素の頭部から材料を除去するように意図された切削エッジ110を備える。マッティング部材12は、工具が回転されたときにくぼみの対象表面をマットにするための作用表面120を備える。
【0044】
有利には、くぼみ形成工程におけるすべての作業中、留め具要素は同じ位置に保持され、形成工具10のみが動き、様々に通過する。これにより、機械加工の許容範囲へ対応性が向上する。
【0045】
第一の実施形態において、切削部材11及びマッティング部材12は各々、形成工具10のディスクによって構成され、前記ディスクは平行かつ同軸である。このような形成工具10の設計を図1に示す。図2及び図3に見られるように、切削エッジ110及び作用表面120は、それぞれ前記ディスクの周囲に配置される。例として、ディスクは、数ミリメートル、例えば4mmの直径を有することができる。
【0046】
図2に見られるように、切削部材11は、円形のフライスの形状を有する。この切削部材11は、規則的に分布した複数の、例えば16個の、周辺歯を持ち、各歯はその頂点にレリーフ面111を備える。各歯のリーディング面と共に、レリーフ面111は切削部材11の切削エッジ110を画定する。
【0047】
この実施形態では、マッティング部材12は、図3に示されるように、丸みのある頂点121によって互いにつながれた弧122から成る、概ね多角形の断面を有することもできる。好ましくは、マッティング部材12は14個の頂点121を持ち、その半径は十分の数ミリメートルである。弧122は直線であってもよく、又は図3に詳細が示されるように、頂点121が通過する理論上の円からの最大偏差が百分の数ミリメートルとなるように寸法決めされた凹状の湾曲を有してもよい。
【0048】
あるいは、図示されていない本発明の実施形態では、マッティング部材12の作用表面120は、円形断面を有していてもよい。
【0049】
図4に示される本発明の第二の実施形態において、切削部材11及びマッティング部材12は、単一のディスクの形態である。このディスクは、図2に示される切削部材11を構成する第1の実施形態のディスクと実質的に同じ形状を有する。このディスクは、工具が第1の回転方向に駆動されると、切削部材11が作動してマッティング部材12が作動せず、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に駆動されると、切削部材11が作動せず、マッティング部材12が作動するように構成されている。より明確に言うと、レリーフ面111が、マッティング部材12の作用表面120になる。
【0050】
より全体的には、上記で検討された実施態様及び実施形態は、非限定的な例として説明されており、したがって他の変形例も考えられることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小機械留め具要素を製造する方法であって、互いに接続された頭部及びシャンクを備える前記留め具要素のブランクを製造する工程と、その後に前記頭部にくぼみを形成する工程とを含み、前記頭部にくぼみを形成する工程は、切削部材(11)を用いて行われる前記くぼみを機械加工するための機械加工作業と、マッティング部材(12)を用いて行われる前記くぼみの対象表面をマットにするためのマッティング作業とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記頭部にくぼみを形成する工程は、前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)が配置された単一の形成工具(10)を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記頭部にくぼみを形成する工程が行われる期間すべてで、前記留め具要素は同じ位置に保持され、前記形成工具(10)のみが動かされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マッティングされる前記対象表面は前記くぼみの奥の面であり、前記マッティング作業は、前記頭部にくぼみを形成する工程の終了時に前記奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有するように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機械加工作業及び前記マッティング作業を実行するとき、前記形成工具(10)は異なる回転方向に駆動され、前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)は前記形成工具(10)の単一のディスク上に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記機械加工作業及び前記マッティング作業中、前記ブランクは切削部材(11)によって機械加工され、それぞれが前記形成工具(10)のディスクによって構成されたマッティング部材(12)によってマッティングされ、前記ディスクは平行かつ同軸である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記マッティング作業は、前記対象表面上を前記マッティング部材(12)が複数回連続して通過することによって行われ、各通過は、0.1μm~2μm又は0.5μm~1.5μmの通過深さまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
微小機械留め具要素のくぼみを作成するための形成工具(10)であって、長手方向軸に沿って延びる本体を備え、前記形成工具は前記長手方向軸の周りで回転するように意図され、前記形成工具は、前記本体の長手方向端部に配置された、前記形成工具が回転するときにくぼみを形成するように留め具要素から材料を除去するように意図された切削エッジを備える切削部材(11)と、前記形成工具が回転するときに前記くぼみの対象表面をマットにするように意図された作用表面(120)を備えるマッティング部材(12)とを含むことを特徴とする、形成工具(10)。
【請求項9】
前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)は、前記形成工具が第1の回転方向に駆動されると、前記切削部材(11)が作動して前記マッティング部材(12)が作動せず、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に駆動されると、前記切削部材(11)が作動せず、前記マッティング部材(12)が作動するように構成された単一のディスクの形態である、請求項8に記載の形成工具(10)。
【請求項10】
前記ディスクは、複数の規則的に分布した周辺歯を含み、各歯は、その頂点に前記マッティング部材(12)の作用表面(120)を形成するレリーフ面(111)を備え、前記レリーフ面(111)はさらに、各歯のリーディング面と共に、前記切削部材(11)の切削エッジ(110)を画定する、請求項9に記載の形成工具(10)。
【請求項11】
前記切削部材(11)及び前記マッティング部材(12)の各々がディスクの形態であり、前記ディスクは平行かつ同軸に配置され、前記切削エッジ(110)及び前記作用表面(120)はそれぞれ前記ディスクの周囲に配置される、請求項8に記載の形成工具(10)。
【請求項12】
前記マッティング部材(12)の作用表面(120)は円形断面を有する、請求項11に記載の形成工具(10)。
【請求項13】
前記マッティング部材(12)の作用表面(120)は、丸みのある頂点(121)によってつながれた弧(122)から成る多角形断面を有する、請求項12に記載の形成工具(10)。
【請求項14】
前記弧(122)は凹状の湾曲を有する、請求項12又は13に記載の形成工具(10)。
【請求項15】
頭部に接続されたシャンクを備える金属材料で作られた微小機械留め具要素であって、前記頭部は、開口部から奥の面まで延在するくぼみを有し、前記奥の面が0.01μm~0.1μmのRaを有することを特徴とする、留め具要素。
【請求項16】
前記くぼみは、トルクを伝達するための締め付け工具と協働するように意図され、前記シャンクはねじ山を有する、請求項15に記載の留め具要素。
【外国語明細書】