IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-122948多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ
<>
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図1
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図2
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図3
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図4
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図5
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図6
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図7
  • 特開-多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122948
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/44 20060101AFI20240903BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H04R1/44 330L
H04R17/00 332A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009810
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】18/172,579
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フェルプス
(72)【発明者】
【氏名】デビッド エー. ピーターセン
(72)【発明者】
【氏名】テリー イー. シンプソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ミラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超音波撮像のためのトランスデューサシステム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】2Dアレイ100、経路設定層120および集積回路140を含むトランスデューサシステムは、コントローラ160および/または患者を撮像するための超音波撮像装置180と共に作動する。集積回路140は、経路設定層120によってアレイ100に接続され、撮像中にアレイ100と作動するようにプログラムされる。集積回路140は、異なるピッチをもったマトリックスアレイなど、異なるタイプのアレイで同じ設計の集積回路を使用できるように、プログラム可能である。この設計によれば、1つの素子をシグナルプロセッサの複数の同一の処理回路と接続することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波撮像のためのトランスデューサシステムであって、
トランスデューサ素子の二次元アレイと、
セル内に送信および/または受信回路を有し、前記送信および受信回路の前記セルの各々が、それぞれ、送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルを備える、集積回路と、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイと前記集積回路との間に配置された経路設定層と、を含み、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイ、前記集積回路、および前記経路設定層がスタックを形成し、前記経路設定層が、複数の前記セルを前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続する、トランスデューサシステム。
【請求項2】
前記集積回路は、異なる数の前記セルを同じトランスデューサ素子に接続できるようにプログラマブルである、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項3】
前記集積回路は、前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続されていて同じ遅延でビームフォーマとして一緒に作動する前記複数のセルで、少なくとも部分的にビーム形成するように構成されている、請求項2に記載のトランスデューサシステム。
【請求項4】
前記集積回路は、前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続されていて前記トランスデューサ素子の1つからのまたはへの信号に対して別々のビームを形成するように別々に作動する前記複数のセルで、少なくとも部分的にビーム形成するように構成されている、請求項2に記載のトランスデューサシステム。
【請求項5】
前記集積回路は、異なるピッチおよび/または異なる数の前記トランスデューサ素子で作動するように構成可能である、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項6】
前記経路設定層は、前記トランスデューサ素子のそれぞれを前記セルの異なるセットに電気的に接続し、前記セットのそれぞれは、前記セット専用の複数の前記セルを含む、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項7】
前記経路設定層は、再分配層からなる、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項8】
前記経路設定層は、前記トランスデューサ素子の第1のピッチから、前記第1のピッチとは異なる、前記集積回路の信号パッドの第2のピッチへ、経路設定するように構成されたトレースを有する可撓性回路材料からなる、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項9】
前記集積回路は、半導体チップの特定用途向け集積回路からなり、前記特定用途向け集積回路は、異なるアレイの異なる素子ピッチで作動可能であり、前記特定用途向け集積回路は、前記トランスデューサ素子の二次元アレイとスタックされ、前記トランスデューサ素子の二次元アレイの前記トランスデューサ素子のピッチで作動するように構成されている、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項10】
多用途シグナルプロセッサを有する超音波トランスデューサを製造する方法であって、
第1のピッチを有する素子のアレイを選択すること、
前記アレイを、(1)前記第1のピッチから前記多用途シグナルプロセッサの第2のピッチへのピッチの変更を構築する中間層と、(2)前記多用途シグナルプロセッサと、にスタックすること、
前記多用途シグナルプロセッサを、前記第1のピッチの前記素子で作動するようにプログラムすること、を含む方法。
【請求項11】
前記アレイを選択することは、異なるピッチを有するアレイの中から選択することを含み、前記多用途シグナルプロセッサが前記異なるピッチのいずれでも作動するように構成可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多用途シグナルプロセッサが複数の信号処理ノードを含み、該ノードのそれぞれが、他のノードと同一の送信、受信、および信号処理回路を有し、
前記スタックすることは、複数の前記信号処理ノードが前記中間層を介して前記素子のそれぞれに接続するようにスタックすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プログラムすることは、前記素子の同じ1つに接続された前記信号処理ノード間で駆動電流およびダイナミックレンジを共有するように前記多用途シグナルプロセッサをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プログラムすることは、前記素子の同じ1つに接続された複数の前記信号処理ノードを使用して当該素子の同じ1つからの同じ信号から複数のビームを形成するように前記多用途シグナルプロセッサをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のピッチとは異なる第3のピッチの素子を有する別のアレイを選択すること、
前記別のアレイを、(1)前記第3のピッチから別の多用途シグナルプロセッサの前記第2のピッチへのピッチの変更を構築する別の中間層と、(2)前記別の多用途シグナルプロセッサとスタックすること、
前記別の多用途シグナルプロセッサを、前記第3のピッチの素子で作動するようにプログラムすること、をさらに含み、
前記別の多用途シグナルプロセッサと前記多用途シグナルプロセッサとが同じ設計を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記アレイの各素子と接続する前記多用途シグナルプロセッサの前記ノードの数とは異なる数の前記別の多用途シグナルプロセッサのノードが、前記別のアレイの各素子と接続する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
超音波撮像のためのトランスデューサシステムであって、
トランスデューサ素子の二次元アレイと、
セル内に送信および/または受信回路を有し、前記送信および受信回路の前記セルの各々が、それぞれ、送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルを備える、集積回路と、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイと前記集積回路との間に配置された経路設定層と、を含み、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイ、前記集積回路、および前記経路設定層がスタックを形成し、前記集積回路が、前記トランスデューサ素子の各々に接続される異なる数の前記セルで作動するようにプログラム可能である、トランスデューサシステム。
【請求項18】
前記集積回路は、複数の前記セルを前記トランスデューサ素子の各々に接続するようにプログラムされる、請求項17に記載のトランスデューサシステム。
【請求項19】
前記トランスデューサ素子の各々に接続される前記複数のセルは、駆動電流およびダイナミックレンジを共有する、請求項18に記載のトランスデューサシステム。
【請求項20】
前記集積回路が特定用途向け集積回路からなり、前記経路設定層が再配線配層からなる、請求項17に記載のトランスデューサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マトリクス(例えば二次元(2D))トランスデューサ(XDCR)アレイによる超音波撮像に関し開示する。超音波マトリクスアレイ用に開発されたシグナルプロセッサは同一の反復的なマトリクスの処理回路を含み、アレイの音響素子からの信号を処理する。
【背景技術】
【0002】
シグナルプロセッサを音響素子に接続するには2つの方法がある。最も古いのは、信号処理回路と音響素子との間で信号を通信するための可撓性またはプリント回路基板(PCB)のような接続回路を提供する方法である。第2の方法は、信号処理回路を音響素子マトリクスに平行面で合わせ、音響素子のマトリクスと信号処理回路のマトリクスとを整列させることによって各素子を接続し、それにより信号処理回路を音響素子スタックの一体部分にすることである。この第2の方法は、最も効果的であり、最低コストであり、多数の数千もの接点を含むことがあり得る回路を単純化する。
【0003】
この第2の方法において、信号処理回路のパターンは音響素子マトリクスの寸法に精密に一致し、したがって、所定の特定用途向け集積回路(ASIC)の再利用が制限される。音響トランスデューサ素子からASICの電子サポート回路への整列では、サンドイッチ型の剛性または可撓性のプリント回路か、ASICの上面に設けられる再配線層(RDL)を使用して実施される回路が使用される。この整列により、パターンを互いに一致するように引き伸ばしたり圧縮したりすることができる。処理回路は、音響素子に1個ずつ使用される。場合によっては、処理回路と音響素子との間にマルチプレクサを有する処理回路よりも多くの音響素子が存在する。このようにASICをアレイに精密に一致させることから、ASICは、同じではない音響素子のピッチを有するアレイなど、各種のアレイタイプごとに設計され、製造されるため高価になる。
【発明の概要】
【0004】
まず初めに、以下に説明する好ましい開示は、マトリクスアレイによる超音波撮像のシステム、方法、および/またはコンピュータ可読記憶媒体を含む。集積回路には共通の設計が用いられる。集積回路は、異なるピッチを有するマトリクスアレイなど各種のアレイに同じ集積回路の設計を用いることができるように、プログラム可能である。この設計は、1つの素子がシグナルプロセッサの複数の処理回路と接続することを可能にする。
【0005】
第1の態様において、超音波撮像のためのトランスデューサシステムが提供される。集積回路は、セル内に送信および/または受信回路を有する。送信および/または受信回路のセルの各々は、それぞれ送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルである。経路設定(ルーティング)層が、トランスデューサ素子の二次元アレイと集積回路との間に配置される。二次元アレイ、集積回路、および経路設定層でスタック(積層体)を形成し、経路設定層が、セルの複数をトランスデューサ素子の1つに電気的に接続する。
【0006】
一形態において、集積回路は、異なる数のセルが同じトランスデューサ素子に接続できるようにプログラム可能である。例えば、集積回路は、1つのトランスデューサ素子に電気的に接続された複数のセルであって同じ遅延でビームフォーマチャンネルとして共に作動するセルを使用して、少なくとも部分的にビーム形成するように構成される。別の形態として、集積回路は、1つのトランスデューサ素子に電気的に接続された複数のセルであって、該トランスデューサ素子からのまたは該トランスデューサ素子への信号の別々のビームを形成するようにそれぞれ作動するセルを使用して、少なくとも部分的にビーム形成するように構成される。
【0007】
別の形態によれば、集積回路は、トランスデューサ素子の異なるピッチおよび/または数に対し作動するように構成可能である。
【0008】
さらに別の形態において、経路設定層は、トランスデューサ素子のそれぞれをセルの別々のセットに電気的に接続する。各セットには、そのセット専用のセルが複数含まれる。
【0009】
別の形態として、経路設定層は、再配線層である。一形態において、経路設定層は、トランスデューサ素子の第1のピッチから、第1のピッチとは異なる、集積回路の信号パッドの第2ピッチへ、経路を設定するように構成されたトレース(線路)を有する可撓性回路材料である。
【0010】
一形態において、集積回路は、半導体チップとした特定用途向け集積回路である。この特定用途向け集積回路は、各種のアレイに対して各種の素子ピッチで作動可能である。二次元トランスデューサアレイとスタックされた特定用途向け集積回路は、その二次元トランスデューサアレイのトランスデューサ素子のピッチで作動するように構成される。
【0011】
第2の態様において、多用途シグナルプロセッサを備えた超音波トランスデューサを製造する方法が提供される。第1のピッチを有する素子のアレイが選択される。このアレイは、(1)第1のピッチから多用途シグナルプロセッサの第2のピッチへのピッチ変更を構築する中間層と、(2)多用途シグナルプロセッサと、にスタックされる。多用途シグナルプロセッサは、第1のピッチの素子を使用して作動するようにプログラムされる。
【0012】
一形態において、アレイの選択は、ピッチの異なるアレイから選択することを含む。多用途シグナルプロセッサは、その異なるピッチのいずれでも作動するように構成可能である。
【0013】
別の形態において、多用途シグナルプロセッサは、複数の信号処理ノードである。ノードのそれぞれは、他のノードと同一の送信、受信、および信号処理回路を有する。スタック(積層)することは、信号処理ノードの複数が中間層を介して素子のそれぞれに接続できるようにスタックすることを含む。例えば、プログラミングは、多用途シグナルプロセッサを、素子の同じ1つに接続されたノード間で駆動電流およびダイナミックレンジを共有するようにプログラムすることを含む。別の形態として、プログラミングは、多用途シグナルプロセッサを、素子の同じ1つに接続された信号処理ノードの複数を使用して、その素子の同じ1つからの同じ信号から複数のビームを形成するようにプログラムすることを含む。
【0014】
一形態として、本方法は、さらに、第1のピッチとは異なる第3のピッチの素子を有する異なるアレイを選択すること、(1)第3のピッチから別の多用途シグナルプロセッサの第2のピッチへのピッチ変更を構築する別の中間層と、(2)前記別の多用途シグナルプロセッサと、に前記異なるアレイをスタックすること、その別の多用途シグナルプロセッサを、第3のピッチの素子を使用して作動するようにプログラムすること、を含み、この別の多用途シグナルプロセッサと上記の多用途シグナルプロセッサとは同じ設計を有する。例えば、別の多用途シグナルプロセッサのノードの数は、アレイの各素子に接続される上記の多用途シグナルプロセッサのノードの数とは異なり、異なるアレイの各素子と接続する。
【0015】
第3の態様において、超音波撮像のためのトランスデューサシステムが提供される。集積回路は、セル内に送信および/または受信回路を有し、送信および/または受信回路のセルの各々は、それぞれ送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルである。経路設定層が、トランスデューサ素子の二次元アレイと集積回路との間に配置される。二次元アレイ、集積回路、および経路設定層がスタックを形成し、集積回路は、素子の各々に接続される異なる数のセルを使用して作動するようにプログラム可能である。
【0016】
一形態において、集積回路は、セルの複数を素子の各々に接続するようにプログラムされる。例えば、その各素子に接続される複数のセルは、駆動電流およびダイナミックレンジを共有する。
【0017】
別の形態において、集積回路は特定用途向け集積回路であり、経路設定層は再配線層からなる。
【0018】
本発明は、特許請求の範囲によって定義され、ここにおける開示は、特許請求の範囲を限定するものと考えられるべきではない。上述の様々な態様は、個々にまたはいずれか可能な組み合わせで使用され得る。他の態様および利点は、好ましい実施形態と関連して以下に説明される。これらのさらなる態様および利点は、上述したいずれかの態様とは独立して使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
コンポーネント(構成要素/部品)および図面は、必ずしも縮尺通りにはなっておらず、どちらかと言えば、本発明の原理を説明するにあたっての誇張が入っている。また、図面において、同様の参照符号は、各図を通して対応する部分を示している。
図1】超音波撮像装置と接続されたトランスデューサシステムの一実施形態に係るブロック図。
図2】トランスデューサシステムの一部の一実施形態に係るブロック図。
図3】オーバーレイ音響素子を備えた集積回路のセル配列を示す図。
図4】セル配列と異なるピッチをもつ音響素子の、図3のセル配列の2倍オーバーレイの例を示す図。
図5図4のオーバーレイ用にプログラムされたセル接続の例を示す図。
図6】セル配列と異なるピッチをもつ音響素子の3倍オーバーレイの例を示す図。
図7図6のオーバーレイ用にプログラムされたセル接続の例を示す図。
図8】マトリクスアレイを形成する方法の一実施形態に係るフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
個別のASIC設計が、典型的には、別個のピッチおよび/または素子数を有するマトリクストランスデューサのそれぞれに対しなど、各種のトランスデューサに対し、提供される。異なるASICを使用して多用途をサポートする場合、ソフトウェア、超音波工学、臨床的検証において労力が必要である。多製品用途に多数の音響マトリクスアレイソリューションを構築するための開発時間とコストは大きい。年間販売量の多い特定の製品でない限り諸経費は高く、このことは、通常、超音波トランスデューサにあてはまらない。
【0021】
多用途超音波マトリクスアレイシグナルプロセッサが提供される。同じシグナルプロセッサ(例えば、ASIC)を、経胸成人および小児、経食道成人および小児、ボリューム、薄いスライス筋骨格(MSK)(例えば、一次元の微細ピッチおよび他の次元の大きいピッチ)、および/または末梢血管トランスデューサなど、様々な用途に使用し得る。単一プロセッサ設計は、マトリクスアレイ素子サポート回路(ESC)のアレイを含む。同じプロセッサを、異なるアレイピッチおよび/または素子数に対応する様々な用途に使用することができる。作成される各シグナルプロセッサは、複数の異なる種類のトランスデューサのどれでも1つをサポートできる。
【0022】
経路設定(配線)層(例えば、再配線層(RDL))は、用途ごとに設計され、異なる処理および素子領域を可能にする。経路設定層は、サポート回路を複数の素子グリッドに一致させることができる。例えば、サポート回路グリッドは、1×N、N×M、または1×Mグリッドに対して働ける。
【0023】
経路設定層は、複数の信号処理ノードまたはサポート回路を1つの素子に接続するために使用され、駆動電流およびダイナミックレンジなどの特性を効果的に共有する。複数の音響アレイのいずれか1つとの使用をサポートする共通シグナルプロセッサは、ゲートアレイ手法として機能し、送信、受信、および信号処理を含む多数の同一の素子サポート回路が1以上の整数で組み合わされ、素子のアレイに取り付けられる。素子領域は、限定されるわけではないが、理想的には素子サポート回路領域とNの関係である。Nは、素子領域と素子サポート回路領域とが一致すると1であり得る。素子間の間隔が広い一次元アレイや二次元アレイなど、素子領域が広い場合、Nは1より大きくなり得る。
【0024】
ASIC設計は、1つ以上のASICが、経路設定を経て1つ以上の素子に並列に接続することを可能にする。音響素子を共有するサポート回路の送信電流は加算される。1つの素子によるサポート回路の共有により、受信および送信の信号対雑音比は増加し得る。シグナルプロセッサのサポート回路の方位角および仰角グリッドは、音響素子と領域整合させることができる。取り付けられたプリント回路または他の経路設定層は、アレイ整合を拡張することができる。所定の音響素子と接続する複数のサポート回路をもつことにより、シグナルプロセッサは、同じ素子信号から複数のビームを形成することをサポートすることができる。
【0025】
共通シグナルプロセッサソリューションをもつことで、続く用途でのコストと時間を最小限に抑えることができ、開発コストをより多くの製品に分散させることができる。シグナルプロセッサ設計は、音響スタック素子と処理回路との間のアナログ信号伝達範囲における共有を可能にする。共通シグナルプロセッサのクロックや制御器などのサポートインフラは、各種用途で使用され得る。
【0026】
図1は、超音波撮像のためのトランスデューサシステムの一実施形態を示す。トランスデューサシステムは、マトリクスアレイ(2D array)100から形成される。アレイ100とスタックされるシグナルプロセッサ(集積回路:IC)140は、異なる用途に使用され得る共通設計を有する。図1および図2は、1つの用途で使用される集積回路140を示すが、集積回路の設計により、異なる用途のトランスデューサで使用が可能である(図3図4、および図6を比較)。個別の設計ではなく、共通設計の集積回路140は、あらゆる用途のトランスデューサを作る際に使用され得る。例えば、集積回路140のチップのボックスが提供される。チップはすべて同じ設計になっている。そのボックスからのチップは、種々のトランスデューサのどれかを作るために使用され得る。いずれか所定のトランスデューサのための集積回路140は、チップ選択の対象となったトランスデューサで作動するようにプログラムされる。
【0027】
トランスデューサシステムは、図8の方法または別の方法を使用して製造される。トランスデューサシステムは、コントローラ(Controller)160および/または患者を撮像するための超音波撮像装置(Ultrasound Imager)180と共に作動する。集積回路140は、経路設定層(Route layer)120によってアレイ100に接続され、撮像中にアレイ100と作動するようにプログラムされている。
【0028】
トランスデューサシステムは、2Dアレイ100、経路設定層120、および集積回路140を含む。トランスデューサシステムは、コントローラ160および超音波撮像装置180と物理的および/または電気的に接続され得る。追加の、異なる、またはより少数のコンポーネントが提供されてもよい。例えば、一実施例において、経路設定層120は、集積回路140内に集積されおよび/またはその一部として提供される。他の実施例において、超音波撮像装置180の一部などとしてビームフォーマが提供される。集積回路140が部分的なビームフォーメーション(例えば、256、192、128、または64チャンネルにビーム形成された数千チャンネルのサブアレイ)を提供し、撮像装置180のビームフォーマが、ビームフォーメーション(256、192、128、または64にビーム形成された空間位置を表すサンプル)を完成させる。
【0029】
2Dアレイ100は、トランスデューサ素子のマトリクスアレイである。トランスデューサ素子は、圧電素子、CMUT素子、またはPMUT素子である。この素子は、2Dトランスデューサアレイとして完全にサンプルされたデカルトグリッドに分散される。スパースサンプリングまたは素子の他のグリッド間隔も提供され得る。数百または数千など、あらゆる数の素子が提供され得る。
【0030】
一実施例において、素子のアレイは、取り外し可能なトランスデューサアセンブリ内に配置される。例えば、アレイ100は、手持ち式トランスデューサハウジングに収容され得る。あるいは、カテーテルまたは内視鏡の構成が使用される。アレイは、特定の用途、例えば、特定の器官(臓器)をおよび/または特定の音響窓を通して撮像するために選択される選択ピッチ、面積、形状、中心周波数、および/または周波数レンジのために、設計することができる。
【0031】
2Dアレイ100は、方位角および仰角において分布する均等なまたは不均等な数の素子を有し得る。例えば、トランスデューサ素子の2Dアレイ100は、仰角に沿ったより少数のトランスデューサ素子に対し、方位角に沿ったより多数のトランスデューサ素子を有する。一実施例において、2Dアレイ100は、方位角で72、48、または84個の素子と仰角で80、60、または52個の素子である。正方形、長方形、円形、三角形、六角形、または他の形状のアレイを使用することができる。
【0032】
集積回路140は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他の集積回路など、チップまたはウエハ形態のプロセッサである。ここではASICを例として使用するが、他のシグナルプロセッサまたは集積回路を使用してもよい。ASIC140は、前置増幅および/またはデジタル化などの信号処理を提供する。ASIC140は、制御機能、完全ビームフォーメーション、部分ビームフォーメーション、および/またはパルサー(パルス発生)を実行することができる。
【0033】
一実施例において、ASIC140は、送信および/または受信過程のための部分的ビームフォーマである。受信過程において、サブアレイ内の個別素子102からの信号を結合し、出力チャンネルとしてサブアレイ信号を提供する。遅延および加算、加算のみ、および/または位相および加算部分ビームフォーメーションは、各サブアレイ32に関して提供され得る。その結果、超音波撮像装置180のビームフォーマの各チャンネルに関する信号またはデータが得られる。この受信過程の部分ビームフォーマは、サブアレイごとに別々にビーム形成して有効素子(サブアレイ素子)ごとに信号を撮像装置180に提供する、サブアレイビームフォーマである。部分的にビーム形成されたデータはシステムチャンネルに出力される。超音波撮像装置180の観点からは、サブアレイ内のすべての素子に関するすべての受信信号が、撮像装置180へ転送される前に、ビーム形成されるか、または相対的に遅延され共に結合されるので、サブアレイ全体が単一のアレイ素子を表す。次いで、このシステムは、多数のサブアレイ信号を一緒にビーム形成する。
【0034】
送信に関し、ASIC140は、様々なチャンネルのそれぞれに対するパルサーおよび駆動コントローラを含む。位相器(フェイザー/Phaser)および/または遅延器、増幅のための増幅器または他の回路が、チャンネルごとのパルサーおよび駆動コントローラと共に含まれてもよく、送信ビームフォーメーションの音響素子102に適用する、時間合わせされアポダイズされた電気波形を生成する。
【0035】
ASIC140は、アレイ100の多くの素子と共に作動する。ASIC140は、多くの独立したセル200に区分されたサポート回路(例えば、デジタイザ、プリアンプ、送信チャンネル、および/または受信チャンネル)を含む。図2は、ASIC140内の互いに隣接する2つのセルの例を示す。電気的に絶縁された回路を有する数十、数百、または数千のセル200またはノードが提供される。セル200は、アレイ100に使用される最小の素子(Element)102のピッチと同じまたは近い(例えば、10%以内)ピッチなどの任意のピッチを有する、デカルトグリッドなどの任意のパターンに、分布され得る。例えば、セル200のピッチは142μm×159μmである。方位角または仰角において等間隔または不等間隔を有する他のピッチを使用してもよい。
【0036】
各セル200の回路は、他のセル200の回路と同一であってもよい。図2の例において、セル(Cell)200の回路は、送信ビームフォーメーションのためのパルサー(Pulser)210および遅延器(Delay)または位相器220と、受信ビームフォーメーションのための遅延器250および増幅器(Amp)240と、を含む。コンポーネントとしてまたはセル200間の単なる接続として、加算器(Sum)230が、セル200からの相対的に遅延させアポダイズされた信号に基づく受信ビームフォーメーションのために提供されてもよい。加算器230を通過する受信信号を経路設定するためにスイッチを使用することができる。コントローラなど、その他の共用回路がASIC140に含まれ得る。セル200は、各々、送信および/または受信ビームフォーメーションまたは部分ビームフォーメーションのためのチャンネルである。各セル200内で繰り返される他の回路、例えば、アナログ-デジタル変換器および前置増幅器、を含み得る。
【0037】
図3は、方位角および仰角に分布するセル200を有するASIC140の一部の例を示す。単純化して3×4セル配列を示してあるが、より広いアレイのより多くのセル200が提供され得る。セル200は、音響素子102から信号を受け取り、音響素子102に信号を提供するためのノード、パッドまたは電気接点202を備えて示されている。図3の例では、1つの音響素子102(破線の方形)を簡素化して示してある。他の素子も提供されている。この実施例において、素子102は、セル200と同じか近いピッチを有するので、各セルのノード202は、1つの素子102にのみ接続する。実際の配列は、10.2mm×12.7mmの活性領域に対して72×80のセル200および素子102とすることができる。
【0038】
図4は、素子102(破線の方形)のアレイ100に接続された同じASIC140の一例を示す。この例の素子102は、セル200の142μm×159μmと比較して素子102は素子102ごとに213μm×212μmなどの大きなピッチを有する。方位角および仰角における各素子102の領域は、各セル200の領域よりも広い。この例において、素子102は、セル200の3×4配列を覆う2×3配列である。実際の配列は、10.2mm×12.7mmの活性領域に対して、72×80のセル200および48×60の素子102などである。その結果、存在する素子102の2倍多いノード202がある。
【0039】
図6は、セル200および対応するノード202の7×12アレイの例を示す。この例において、素子102(ASIC140の一部分にわたって示される破線の方形)は、243μm×248μmのピッチを有するので、素子102ごとに3つのセル200が存在する。実際の配列は、10.2mm×12.9mmの活性領域に対して、72×91のセル200および84×52の素子102などである。
【0040】
個数の不一致のために、各素子102が、接続され得る複数のセル200を有する。セル200の半分、1/3、または他の割合が、未使用であるか、素子102に接続されていない。ただし、予備セル200を素子102に接続することによって、その駆動電流およびダイナミックレンジを、同じ素子102に接続されたセル200間で共有することができる。同様に、同じ素子信号を別々に処理して、異なる走査線に沿って2つの異なる受信ビームを形成する(すなわち、同じ信号のコピーに異なる遅延または位相調整およびアポダイズを適用する)ようにしてもよい。
【0041】
図2は、2つのセル200が同じ素子102に接続される例を示す。図4は、素子102の各々に接続された複数(2つ)のセル200を示す。図6は、素子102の各々に接続された複数(3つ)のセル200を示す。矢印は、素子102のそれぞれの中心または電極に接続するノード202の対または三つ組を示す。4つ以上のセル200が素子102ごとに接続されてもよい。1つのセル200のみが素子ごとに接続される場合もある(例えば、図3を参照)。同じアレイ100の異なる素子102に接続されるセル200の数は違っていてもよい。
【0042】
複数の音響アレイ100をサポートする能力をもつ共通ASIC140は、ゲートアレイ手法として機能し、送信、受信、および信号処理を含む多数の同一の素子サポート回路(セル200)が1以上の整数で組み合わされ、素子102のアレイ100に取り付けられる。素子領域は、限定されるわけではないが、理想的には素子サポート回路領域とNの関係である。Nは、素子領域と素子サポート回路領域とが一致すると1であり得る(例えば図3)。素子間の間隔が広い一次元アレイや二次元アレイなど、素子領域が広い場合、Nは1より大きくなり得る(例えば図4および図6)。
【0043】
ASIC140の全体の領域がアレイ100よりも広く、経路設定層120が接点を圧縮する(まとめる)場合には、分数整合も可能である。分数整合は、アレイ100がより広く、経路設定層120として剛性または可撓性のプリント回路などのインターポーザを介して接続される場合にも、可能である。
【0044】
このような関係は、方位角および/または仰角に対して成立する必要はなく、むしろ領域に対してである。シリコンその他の半導体内に固定されたシグナルプロセッサ(セル200)の間隔は、方位角および仰角の1つの向きおよびサイズを有する一方、1つ以上の音響マトリクスパターンに好まれる第2の向きおよびサイズは異なっていることがある。一般に、これらのパターンの領域は、向きよってではなく、領域によって関連しており、経路設定層120が1つの音響素子102から整数個の信号処理回路(セル200)へどのようにして到達できるかによってのみ制限される。
【0045】
同じASIC140は、異なるピッチおよび/または異なる数のトランスデューサ素子102を有する別のアレイ100で作動することが可能であるか、作動するように構成される。同じ設計のASIC140を、異なるタイプのアレイ100、異なる用途のアレイ100、および/または異なる周波数、帯域幅、および/またはサイズ(例えば、ピッチおよび/または領域)の特性を有するアレイ100、において使用することができる。1つの所定のASIC140そのものは1つのアレイ100にしか接続し得ないが、ASIC140の設計は、同一のダイまたは設計で製造されたASIC140が、種々のアレイ100のいずれでも使用できるようにしており、同一設計のASIC140の個数を増やせる一方で、各種のアレイに対して個別にASIC140を設計するという設計要件を減少させられる。
【0046】
ASIC140は、複数のセル200を各素子102に接続するようにプログラムすることにより、素子102に提供されるおよび/または素子102から受信される信号を適切に扱うことができる(例えば、1つの素子からの信号を形成するために加算する、または、複数のビームを形成するためにおよび/または送信波形生成で電流を共有するために別々に処理する)。ASIC140は、素子102の各々に接続された異なる数のセル200で作動するようにプログラム可能である。経路設定層120は、2つ以上の信号処理ノード202を、駆動電流およびダイナミックレンジなどの特性を有効に共有する単一の素子102に接続するために使用される。さらに、素子回路(セル200)は、送信器電流が加算可能であり、そして戻った素子信号を複数のプロセッサで共有可能であることから、単一の素子102に取り付けられている複数の回路から恩恵を受けることを目的としている。各素子102で共有されているセル200が一緒に作動して共通の送信信号および/または受信信号が使用されるように、経路設定、スイッチおよび/または制御が使用される。ASIC140は、同じ遅延および/またはアポダイゼーションを有するビームフォーマチャンネルとして共に作動する各トランスデューサ素子102に電気的に接続された複数のセル200で少なくとも部分的にビーム形成するように構成される。あるいは、ASIC140は、1つのトランスデューサ素子102からの信号または1つのトランスデューサ素子102への信号に対し複数のビームを形成するように別々に作動する各トランスデューサ素子102に電気的に接続された複数のセル200で少なくとも部分的にビーム形成するように構成される。
【0047】
ASIC140は半導体チップである。所定のアレイに対して1つのASIC140が使用される。代替の実施例において、複数のASIC140が、共通アレイ100の別々の部分に接続するようにタイル張りされる。
【0048】
経路設定層120は、可撓性回路材料(flex)、デポジション/エッチングされた導体(例えば、トレースおよびビア)、再配線層(RDL)、導体を備えたインターポーザ、ワイヤ、プリント回路基板、および/またはノード202を素子102に電気的に接続するための導体を備えたその他のサポート構造である。ビア、トレース、ワイヤ、および/または他の導体と経路設定を使用することができる。
【0049】
経路設定層120は、トランスデューサ素子102の二次元アレイ100とASIC140との間に配置される。図1に示されるように、アレイ100、経路設定層120、およびASIC140は、スタックされて接着される。エポキシまたは他のボンディング、積層、フリップチップボンディング、および/またははんだによるアスペリティ接触が使用され、スタックの各層を物理的に接続するおよび/またはASIC140からアレイ100への導電性接続を形成する。
【0050】
二次元トランスデューサアレイ100とスタックされるASIC140は、二次元トランスデューサアレイ100のトランスデューサ素子102のピッチで作動するように構成される。経路設定層120が電気接続の経路を設定する。ASIC140は、多様なタイプのアレイ100で作動を可能にする設計を有するが、経路設定層120は、アレイ100とASIC140との組み合わせに特化した設計とされ得る。経路設定層120は、アレイ100のタイプに従って安価に効率的に設計できるので、経路設定層120は、アレイ100のタイプに応じて異なるものとし得る一方、ASIC140は、多数の異なるアレイ100のいずれとも作動するように設計される。
【0051】
経路設定層120は、素子102のピッチからセル200のピッチへ、ピッチを調整する導体を有する。同じ素子102への共通接続を有するセル200は、経路設定層120において互いに電気的に接続され得る(図2参照)。あるいは、素子102の電極が接続に使用され、および/またはASIC140内のスイッチ(例えば、マルチプレクサ)が接続に使用される。経路設定導体(例えば、単層または多層の可撓性回路のトレースおよびビア)は、1つのピッチから別の異なるピッチへ経路を設定する。セルピッチと素子ピッチとが同じ場合、経路設定はピッチを維持する。ASIC140のセル200の信号パッドまたはノード202は、素子102の電極に電気的に接続される。
【0052】
セル200の領域が素子102の領域と異なる場合、経路設定層120は、セル200の複数をトランスデューサ素子102の1つに電気的に接続する。素子102の各々が、接続された複数のセル200を有する。例えば、図4および図6に示されるように、経路設定層120は、それぞれ2つと3つのセル200および対応するノード202を各素子102に電気的に接続する。セル200の組(例えば、2つ以上)が各素子102に接続される。セル200の各々は、1つの素子102にのみ接続される(単一接続)。経路設定層120(例えば、RDL)は、2つ以上の信号処理ノード202を1つの素子102(図2参照)に接続するべく使用され、駆動電流およびダイナミックレンジなどの特性を有効に共有する。
【0053】
経路設定層120の経路設定および/またはASIC140のプログラミング(例えば、接点のスイッチ)を通じて、ASIC140は、様々なアレイで使用できる。例えば、図3は、セル200と素子102との1対1の接続を示す。ASIC140は、各セル200がビーム形成のための1つのチャンネルとなるようにプログラムされる。別の例として、図4は、セル200と素子102との2対1の接続を示す。ASIC140は、セル200の対が一緒にチャンネルとして機能するかまたは同じ信号を共有するべく機能するようにプログラムされる。図5は、図4のこの配列のためにノード202をリンクするプログラミングを示す。経路設定および/またはプログラミングによるリンク500は、素子102にセル200を組み合わせる様々なパターンの中のいずれかを有する。さらに別の例において、図6は、セル200と素子102との3対1の接続を示す。ASIC140は、セル200の三つ組が一緒にチャンネルとして機能するかまたは同じ信号を共有するべく機能するようにプログラムされている。図7は、図6のこの配列のためにノード202をリンクするプログラミングを示している。経路設定および/またはプログラミングによるリンク500は、3つのセル200を各素子102に接続する種々のパターンの中のいずれかを有する。
【0054】
アレイ100、経路設定層120、および集積回路140は、平行面でスタックされる。経路設定層100および/またはアレイ100は、曲面または球面を有することもある。介在層が含まれていれば、当該介在層は、アレイ100に対しては湾曲し、集積回路140に対しては平坦であり得る。介在層は、z軸接続を含む。
【0055】
コントローラ160は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ASIC、汎用プロセッサ、または制御プロセッサなどのプロセッサである。コントローラ160はASIC140を制御する。コントローラ160は、部分的なビーム形成を制御し、例えば、部分ビーム形成を使用するおよび/またはオフにするために遅延または位相調整および/または増幅を構成し、異なる素子102からの信号が位相調整または遅延なしで結合される。コントローラ160は、超音波撮像装置180との取り外し可能な接続のためのコネクタなど、トランスデューサプローブのコネクタに配置される。他の実施例では、コントローラ160は、超音波撮像装置180に、ASIC140に、および/またはトランスデューサアレイ100を備えたプローブヘッドにある。
【0056】
ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアがコントローラ160および/またはASIC140を構成し、所定のアレイ100に関するセル対素子構成で作動するようにASIC140をプログラムする。共通のASIC140設計が使用されるので、プログラミングが、ASIC140の使用されている特定のアレイ100に対しASIC140を構成する。同じ設計の異なるASIC140は、トランスデューサスタックまたはシステムに使用されている素子102当たりのセル200の数が異なるため、別々にプログラムされる。ASIC140内の経路設定スイッチが制御され得る。
【0057】
超音波撮像装置180は、医療診断用超音波撮像システムである。送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマは、送信受信スイッチングシステムを通して、超音波プローブのコネクタと接続するためのコネクタに接続する。ASIC140が部分ビーム形成を提供する場合、ASIC140からの部分的にビーム形成されたサンプルは、超音波撮像装置180のビームフォーマによってさらにビーム形成される。受信ビームフォーマは、サブアレイからの信号をビーム形成し、ビーム形成後のデータを、検出器および走査変換器などの撮像装置へ出力する。ボリューム(すなわち、3D)または四次元撮像のために、三次元レンダラが提供され得る。ディスプレイは、トランスデューサによる患者の音響走査から生じる画像を表示する。
【0058】
図8は、多用途シグナルプロセッサを備える超音波トランスデューサを製造し使用する方法の一実施例を示すフローチャートである。共通のシグナルプロセッサ(例えばASIC)設計が使用される。同じデザインで構築されたシグナルプロセッサは、複数の異なるタイプのトランスデューサで使用することができる。異なる用途に使用できるようになっているので、設計の全体的なコストおよび時間は、販売されるトランスデューサの数が増えるほど分散する。
【0059】
本方法は、図1図7のシステムまたはその他のシステムのいずれか1つを形成するために実行される。追加の、異なる、またはより少ない過程が提供されてもよい。例えば、過程812は、シグナルプロセッサのグリッドがアレイのグリッドと同じ(例えば、同じまたは近い(+/-5%)ピッチ)場合には実施されない。各過程は、図示された順番(上から下または番号)でも別の順番でも実行される。
【0060】
過程800で、素子のアレイが選択される。アレイは、所定の用途のために製造されるまたは製造しようとしているものとする。用途は、アレイのサイズ、必要な解像度、および/または作動周波数を規定し、次にこれらが素子の領域およびピッチを規定する。素子のアレイと対応するピッチが選択される。
【0061】
様々なアレイとピッチが選択肢に入る。アレイを製造する場合、適宜のピッチが可能である。利用可能なピッチは、多用途シグナルプロセッサ(例えば、ASIC)のセル領域の面積の整数倍に制限され得る。対応するピッチを有する利用可能なアレイのグループは、多用途シグナルプロセッサのセル、ノード、またはサポート回路の分布に従って確立される。例えば、図3図4、および図6は、3つの異なる対応ピッチを有する3つの異なるアレイを示しており、これらはすべて、同じ設計のASICで使用することができる。他の実施例において、より多数の利用可能なアレイおよびピッチが、回路分布をサポートする素子の領域の分数的または他の配列に従って提供される。
【0062】
用途(例えば、TTE、TEE、手持ち式(外部トランスデューサ)、内視鏡、カテーテル、および/または大人または小児の走査のための他のトランスデューサ)が決まれば、必要な素子ピッチが決定される。必要なピッチに最も近い利用可能なピッチが選択されるか、必要なピッチが使用される。経路設定層は、グリッド間の分数または整数の関係性に関して経路設定するように設計され得る。
【0063】
次いで、アレイが製造される。例えば、PZTスラブをダイシングし、エポキシで充填することによって、複合材料が形成される。他の実施例では、ダイシングの前に、PZTが過程810でスタック(積層)され、経路設定層に接合される。
【0064】
過程810において、アレイまたはアレイを形成するスラブが中間層にスタックされ、アレイピッチから多用途シグナルプロセッサのピッチへピッチの変更を構築し、多用途シグナルプロセッサにスタックされる。スタックのパーツは、シグナルプロセッサから素子までの電気的接点が形成されるように整合させられる。中間層は、決められたシグナルプロセッサパッドまたはグリッドと素子グリッド(すなわち所定のピッチ)との電気接続を提供するように設計される。
【0065】
中間層および/またはシグナルプロセッサは、過程812において信号処理ノードの複数が中間層を介して素子のそれぞれに接続するように設計され得る。多用途シグナルプロセッサのノードの各々は、同一の送信、受信、および信号処理回路を有する。これら同じ回路の複数が、1つの素子または形成される素子の1つに接続され得る。所定の回路のみが、1つの素子または形成される素子の1つに接続する。
【0066】
多用途シグナルプロセッサは、アレイの選択に関係なく同じである。多用途シグナルプロセッサは、信号経路設定のための中間層の設計があれば、多様なアレイおよびピッチのいずれでも機能するので、シグナルプロセッサは、共通設計のものである。特定のアレイの製造のためにシグナルプロセッサを選択することは、そのようなプロセッサのボックスまたはコレクションからの選択ということであり、異なるアレイまたは用途のために専用に設計された別々のプロセッサを選択する必要はない。
【0067】
スタック工程後、スタックは接着されるか接続される。アレイは、中間層にエポキシで接着され得る。中間層は、シグナルプロセッサにはんだ付け(例えば、はんだバンプまたはフリップチップボンディング)され得る。アレイは、スタック工程およびボンディング後にダイシングによって形成され得る。
【0068】
過程820において、多用途シグナルプロセッサは、選択されたアレイのピッチの素子で作動するようにプログラムされる。多用途シグナルプロセッサは、素子の同じ1つに接続されたノードまたは回路間で駆動電流およびダイナミックレンジを共有するようにプログラムされる。リンクは、同じ素子に接続された回路が一緒に作動するようにプログラムされる。例えば、同じ素子に対する回路は、複数のビームを形成するために同じ信号を別々に処理するように使用される。別の例として、同じ素子に対する回路は、信号が結合されるように、処理を共有するか同じ処理を行うように一緒に使用される。
【0069】
過程800~820は繰り返されてもよい。異なる用途が望まれる場合、過程800で先のトランスデューサ用とは異なるピッチを有するアレイが選択される。スタックは、過程810において形成され、場合によって、先のアレイの場合とは異なる数のシグナルプロセッサの回路が各素子に接続される。多用途シグナルプロセッサは、同じ設計の異なる例であり、当該設計のシグナルプロセッサが、中間層およびアレイ(例えば、アレイを形成するために使用されるPZT)とスタックされ得る。中間層は、アレイピッチの違いにより、異なる導体配列または経路設定を有している。選択されたアレイのピッチの違いにより、数の異なるノードが異なるトランスデューサの各素子に接続される。多用途シグナルプロセッサは、結果として生じる回路対素子の配列で作動するようにプログラムされる。このシグナルプロセッサは、異なるセル対素子配列に使用されるもので同じ設計を有するが、プログラミングおよび設計により、このような共通の設計が可能である。
【0070】
さらなる過程において、超音波撮像装置は、構成されプログラムされたトランスデューサで超音波撮像を行う。スタックまたはトランスデューサシステムは、トランスデューサプローブにおいて使用され、撮像装置に接続されることで、該撮像装置が、トランスデューサに適した用途で患者を走査することができる。送信処理の場合、シグナルプロセッサにおける送信ビームフォーマが、個々の音響素子に別々に信号を供給する。受信処理の場合、個々の音響素子からの信号は、部分的なビーム形成または共通の導体への接続などによって結合される。異なる隣接セットからのサブアレイ信号は、グループ出力を介して撮像装置のビームフォーマチャンネルに供給される。信号はビーム形成され、画像形成されて、患者の内部を表す1つ以上の画像が生成される。診断で使用するために画像が表示される。
【0071】
本発明を種々の実施例を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更および改変を実施できることは当然である。したがって、上述した詳細な説明は、本発明を限定するものではなく例示として解されるものであり、特許請求の範囲が、すべての等価のものを含み、本発明の思想および範囲を定めるべく意図されている、ということは当然理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波撮像のためのトランスデューサシステムであって、
トランスデューサ素子の二次元アレイと、
セル内に送信および/または受信回路を有し、前記送信および/または受信回路の前記セルの各々が、それぞれ、送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルを備える、集積回路と、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイと前記集積回路との間に配置された経路設定層と、を含み、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイ、前記集積回路、および前記経路設定層がスタックを形成し、前記経路設定層が、複数の前記セルを前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続する、トランスデューサシステム。
【請求項2】
前記集積回路は、異なる数の前記セルを同じトランスデューサ素子に接続できるようにプログラマブルである、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項3】
前記集積回路は、前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続されていて同じ遅延でビームフォーマとして一緒に作動する前記複数のセルで、少なくとも部分的にビーム形成するように構成されている、請求項2に記載のトランスデューサシステム。
【請求項4】
前記集積回路は、前記トランスデューサ素子の1つに電気的に接続されていて前記トランスデューサ素子の1つからのまたはへの信号に対して別々のビームを形成するように別々に作動する前記複数のセルで、少なくとも部分的にビーム形成するように構成されている、請求項2に記載のトランスデューサシステム。
【請求項5】
前記集積回路は、異なるピッチおよび/または異なる数の前記トランスデューサ素子で作動するように構成可能である、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項6】
前記経路設定層は、前記トランスデューサ素子のそれぞれを前記セルの異なるセットに電気的に接続し、前記セットのそれぞれは、前記セット専用の複数の前記セルを含む、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項7】
前記経路設定層は、再配線層からなる、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項8】
前記経路設定層は、前記トランスデューサ素子の第1のピッチから、前記第1のピッチとは異なる、前記集積回路の信号パッドの第2のピッチへ、経路設定するように構成されたトレースを有する可撓性回路材料からなる、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項9】
前記集積回路は、半導体チップの特定用途向け集積回路からなり、前記特定用途向け集積回路は、異なるアレイの異なる素子ピッチで作動可能であり、前記特定用途向け集積回路は、前記トランスデューサ素子の二次元アレイとスタックされ、前記トランスデューサ素子の二次元アレイの前記トランスデューサ素子のピッチで作動するように構成されている、請求項1に記載のトランスデューサシステム。
【請求項10】
多用途シグナルプロセッサを有する超音波トランスデューサを製造する方法であって、
第1のピッチを有する素子のアレイを選択すること、
前記アレイを、(1)前記第1のピッチから前記多用途シグナルプロセッサの第2のピッチへのピッチの変更を構築する中間層と、(2)前記多用途シグナルプロセッサと、にスタックすること、
前記多用途シグナルプロセッサを、前記第1のピッチの前記素子で作動するようにプログラムすること、を含む方法。
【請求項11】
前記アレイを選択することは、異なるピッチを有するアレイの中から選択することを含み、前記多用途シグナルプロセッサが前記異なるピッチのいずれでも作動するように構成可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多用途シグナルプロセッサが複数の信号処理ノードを含み、該ノードのそれぞれが、他のノードと同一の送信、受信、および信号処理回路を有し、
前記スタックすることは、複数の前記信号処理ノードが前記中間層を介して前記素子のそれぞれに接続するようにスタックすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プログラムすることは、前記素子の同じ1つに接続された前記信号処理ノード間で駆動電流およびダイナミックレンジを共有するように前記多用途シグナルプロセッサをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プログラムすることは、前記素子の同じ1つに接続された複数の前記信号処理ノードを使用して当該素子の同じ1つからの同じ信号から複数のビームを形成するように前記多用途シグナルプロセッサをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のピッチとは異なる第3のピッチの素子を有する別のアレイを選択すること、
前記別のアレイを、(1)前記第3のピッチから別の多用途シグナルプロセッサの前記第2のピッチへのピッチの変更を構築する別の中間層と、(2)前記別の多用途シグナルプロセッサとスタックすること、
前記別の多用途シグナルプロセッサを、前記第3のピッチの素子で作動するようにプログラムすること、をさらに含み、
前記別の多用途シグナルプロセッサと前記多用途シグナルプロセッサとが同じ設計を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記アレイの各素子と接続する前記多用途シグナルプロセッサの前記ノードの数とは異なる数の前記別の多用途シグナルプロセッサのノードが、前記別のアレイの各素子と接続する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
超音波撮像のためのトランスデューサシステムであって、
トランスデューサ素子の二次元アレイと、
セル内に送信および/または受信回路を有し、前記送信および/または受信回路の前記セルの各々が、それぞれ、送信および/または受信ビームフォーメーションのための第1のチャンネルを備える、集積回路と、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイと前記集積回路との間に配置された経路設定層と、を含み、
前記トランスデューサ素子の二次元アレイ、前記集積回路、および前記経路設定層がスタックを形成し、前記集積回路が、前記トランスデューサ素子の各々に接続される異なる数の前記セルで作動するようにプログラム可能である、トランスデューサシステム。
【請求項18】
前記集積回路は、複数の前記セルを前記トランスデューサ素子の各々に接続するようにプログラムされる、請求項17に記載のトランスデューサシステム。
【請求項19】
前記トランスデューサ素子の各々に接続される前記複数のセルは、駆動電流およびダイナミックレンジを共有する、請求項18に記載のトランスデューサシステム。
【請求項20】
前記集積回路が特定用途向け集積回路からなり、前記経路設定層が再配線層からなる、請求項17に記載のトランスデューサシステム。
【外国語明細書】