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特開2024-12295DUX4の発現を低減するためのP38阻害剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012295
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】DUX4の発現を低減するためのP38阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240123BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20240123BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N5/077 ZNA
C12N15/11 Z
C07K14/47
C07K16/18
C12Q1/02
A61K31/4418
A61K31/4439
A61K31/506
A61K31/519
A61K31/7088
A61K31/713
A61K38/02
A61K45/00
A61P21/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171577
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2020520036の分割
【原出願日】2018-10-05
(31)【優先権主張番号】62/568,673
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,754
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/682,565
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/682,563
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.プルロニック
4.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520117639
【氏名又は名称】フルクラム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カカーチェ,アンジェラ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ロハス ソト,ルイス グスタヴォ アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ローリン エー.,サード
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス,オーウェン ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ロンコ,ルシエンヌ,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ニン
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン,アラン スコット
(72)【発明者】
【氏名】チャン,アーロン ナクウォン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DUX4及びDUX4によって調節される下流遺伝子の遺伝子およびタンパク質発現を低減するためにp38キナーゼを阻害する組成物および方法を提供する。
【解決手段】細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または、DUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減する方法であって、前記細胞を、前記細胞における活性p38タンパク質の低減をもたらす作用剤と接触させ、それによって前記DUX4ポリペプチドまたはDUX4の前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの発現を低減することを含む、方法とする。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減する方法であって、前記細胞を、前記細胞における活性p38タンパク質の低減をもたらす作用剤と接触させ、それによって前記DUX4ポリペプチドまたはDUX4の前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの発現を低減することを含む、方法。
【請求項2】
前記作用剤は、前記p38タンパク質の発現もしくは活性を阻害するか、またはその量を低減し、前記活性が、任意にキナーゼ活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、筋細胞、任意に終末分化筋細胞である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、対照細胞における、前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの発現レベルと比較して、前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの増加した発現レベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの前記増加した発現レベルが、前記細胞におけるD4Z4遺伝子座での低減した抑制によるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連している、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、前記細胞が、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の変異を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記発現を阻害する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記作用剤が、前記p38タンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドに結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記作用剤が、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記活性を阻害する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記作用剤が、前記p38タンパク質に結合する、請求項1~9、および13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記作用剤が、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、またはこれからなる、請求項1~9、13、および14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記作用剤が、小分子、任意に小有機分子または小無機分子を含む、請求項1~9、13、および14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記下流標的遺伝子が、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記p38タンパク質の前記発現または前記活性が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
DUX4-fl mRNA、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現と関連した疾患または障害の治療または予防を必要とする対象において、それを行う方法であって、前記対象に、前記対象の1つ以上の組織における低減した活性p38タンパク質の量をもたらす作用剤を含む薬学的組成物を提供し、それによって前記対象の1つ以上の組織における前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4タンパク質、または前記下流標的遺伝子をコードする前記ポリペプチドの発現を低減することを含む、方法。
【請求項20】
前記疾患または障害が、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、任意にFSHD1またはFSHD2である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、D4Z4遺伝子座で低減した抑制を含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、前記細胞が、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の変異を含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記発現を阻害する、請求項19~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記作用剤が、前記p38タンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドに結合する、請求項19~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記作用剤が、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる、請求項19~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記活性を阻害する、請求項19~24のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記作用剤が、前記p38タンパク質に結合する、請求項19~24、および28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記作用剤が、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、またはこれからなる、請求項19~24、28、および29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記作用剤が、小分子、任意に小有機分子または小無機分子を含む、請求項19~24、28、および29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記下流標的遺伝子が、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである、請求項19~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記p38タンパク質の前記発現または前記活性が、前記対象の筋組織において少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される、請求項19~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記対象の筋組織における前記p38タンパク質の前記発現または活性を阻害する、請求項19~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記対象における筋変性を減少させる、請求項19~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記対象における筋細胞のアポトーシスを低減する、請求項19~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記筋組織が、終末分化している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記薬学的組成物が、前記対象に非経口的に提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項39】
前記薬学的組成物が、前記対象の筋組織に提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、前記対象に、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現と関連した前記疾患または障害を治療するための第2の作用剤を提供することをさらに含む、請求項19~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
細胞における低減した活性p38タンパク質の量をもたらす作用剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物の単位剤形であって、前記単位剤形が投与される対象における1つ以上の細胞または組織における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現または活性を低減するために有効である、単位剤形。
【請求項42】
前記作用剤が、前記DUX4ポリペプチドに結合するか、または前記DUX4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに結合する、請求項41に記載の単位剤形。
【請求項43】
前記作用剤が、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる、請求項41または請求項42に記載の単位剤形。
【請求項44】
前記作用剤が、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、またはこれからなる、請求項41または請求項42に記載の単位剤形。
【請求項45】
前記作用剤が、小分子、任意に有機分子または無機分子を含む、請求項41または請求項42に記載の単位剤形。
【請求項46】
前記下流標的遺伝子が、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである、請求項41~45のいずれかに記載の単位剤形。
【請求項47】
前記組織が、筋組織であり、任意に、前記組織が、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連した変異を含む細胞を含む、請求項41~46のいずれかに記載の単位剤形。
【請求項48】
筋細胞のアポトーシスを低減する方法であって、前記細胞を、前記細胞における低減した活性p38タンパク質の量をもたらす作用剤と接触させ、それによって、前記細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減することを含み、任意に、前記筋細胞が、終末分化している、方法。
【請求項49】
前記細胞が、対照細胞における、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの発現レベルと比較して、前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの増加した発現レベルを有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記DUX4-fl mRNA、前記DUX4ポリペプチド、または前記下流標的遺伝子によってコードされる前記ポリペプチドの前記増加した発現レベルが、前記細胞におけるD4Z4遺伝子座での低減した抑制によるものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連している、請求項48~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、前記細胞が、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む、請求項48~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記細胞が、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の変異を含む、請求項48~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記発現を阻害する、請求項53~59のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記作用剤が、前記p38タンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドに結合する、請求項48~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記作用剤が、核酸、任意にDNA、RNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる、請求項48~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記作用剤が、前記p38タンパク質の前記活性を阻害する、請求項48~54のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記作用剤が、前記p38タンパク質に結合する、請求項48~54、および58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記作用剤が、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、またはこれからなる、請求項48~54、583、および59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記作用剤が、小分子、任意に小有機分子または小無機分子を含む、請求項48~54、58、および59のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記下流標的遺伝子が、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである、請求項48~61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記p38タンパク質の前記発現または前記活性が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される、請求項48~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、筋組織における筋細胞のアポトーシスを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減する、請求項48~63のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月5日出願の米国仮特許出願第62/568,673号、2017年10月5日出願の米国仮特許出願第62/568,754号、2018年6月8日出願の米国仮特許出願第62/682,563号、および2018年6月8日出願の米国仮特許出願第62/682,565号の優先権を主張し、これらの全ては、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年10月4日に作成された、当該ASCIIコピーは、FULC_027_02WO_ST25.txtという名前がつけられ、27KBのサイズである。
【0003】
本発明は、DUX4およびDUX4によって調節される下流遺伝子の遺伝子およびタンパク質発現を低減するためにp38キナーゼを阻害する組成物および方法に関する。本発明はさらに、DUX4の増加した発現またはDUX4の異常形態の発現と関連した疾患および障害、例えば、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を有する対象を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
筋ジストロフィー(MD)は、動作を制御する骨格筋の進行性衰弱および変性によって特徴付けられる30超の異なる遺伝子疾患の一群である。MDのいくつかの形態は、乳幼児期または小児期に発生し、他の形態は、中年期以降まで出現しないことがある。様々なMD疾患は、筋衰弱の分布および程度(MDのいくつかの形態は心筋にも影響を及ぼす)、発症年齢、進行速度、ならびに遺伝パターンについて異なる。
【0005】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、筋ジストロフィーの3番目に最も一般的な形態であり、世界中の15,000人に1人に影響を及ぼす。FSHDは、DUX4遺伝子のエピジェネティックな抑制解除をもたらす遺伝子突然変異によって引き起こされ、これはこの疾患を筋ジストロフィーの中でも独特なものにしている。FSHDの主要な徴候は、顔面、肩帯、上腕、および胴体の筋肉の衰弱および消耗であり、より重症例では下肢に影響を及ぼす。
【0006】
FSHDと関連した遺伝子突然変異は、D4Z4クロマチン構造の部分的な脱圧縮をもたらし、結果として、骨格筋において、DUX4、D4Z4単位によってコードされる転写因子を抑制することができない。報告されたFSHD症例の約95%を表す、FSHD1は、1~10個のD4Z4反復を残す、染色体4q35のサブテロメア領域におけるマクロサテライトD4Z4反復の欠失と関連している(Tawil et.al.,2014に概説される)。FSHD2は、染色体18上の染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1遺伝子(SMCHD1)における突然変異によって引き起こされる(van der Maarel et.al.,2007に概説される)。FSHD1およびFSHD2突然変異の両方は、4q35 D4Z4反復アレイでの抑制の喪失をもたらし、ダブルホメオボックス4(DUX4)転写因子をコードする、ダブルホメオボックス4、DUX4の全長形態、mRNA(DUX4-fl)の筋肉における異常な転写を可能にする(Tawil et.al.,2014)。FSHDと関連していることが見出されたDUX4-fl RNAアイソフォームは、3′非翻訳領域においてのみ異なり、特定された機能的区別を有さない。
【0007】
現在、FSHDの効果を停止または逆転することができる承認された治療はないが、快適性および可動性を改善するために、多くの場合、非ステロイド性抗炎症薬が処方されている。したがって、明らかに、当該技術分野には、例えば、FSHDおよび他の疾患を治療するために、DUX4、例えば、DUX4-fl mRNAおよび/またはDUX4タンパク質の発現レベルを低減するための新たな方法の必要性がある。本発明は、この必要性を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A-1B】FSHD筋管におけるDUX4タンパク質およびRNAの発現を示す。図1Aは、DUX4タンパク質および/または4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、核を検出するため)を結合する抗体を用いて染色されたFSHD筋管の顕微鏡写真を含む。成熟FSHD筋管は、培養(図示せず)においてアクチン横紋を示し、筋管内に含有される核の別個のセットにおいてDUX4タンパク質を発現した(図1A)。図1Bは、FSHD筋管および同質遺伝子野生型(健康)対照からの筋管におけるDUX4 mRNAの相対発現を示すグラフである。
図2】DMSOで治療された野生型筋管、またはFTX-2もしくはDMSOで治療されたFSHD筋管における示されたDUX4調節遺伝子のmRNA発現を示すグラフである。各示された遺伝子について、バーは、左から右へ、DMSOで治療された野生型筋管、DMSOで治療されたFSHD筋管、およびFTX-2(DUX4標的化ASO)で治療されたFSHD筋管に対応する。
図3A-3C】DUX4標的化ASOで治療されたFSHD筋管におけるMBD3L2 mRNAの低減を示す。MBD3L2は、qPCRによって測定されるPOLR2A mRNAに対して正規化された。図3Aは、DMSO対照または1μMのDUX4標的化ASOで治療されたFSHD筋管、および健康な正常同系野生型筋管(WT)におけるMBD3L2発現を比較する群化されたプレート品質管理データを示すグラフである。図3Bは、DUX4標的化ASO(FTX-2)の異なる希釈物で治療されたFSHD筋管におけるMBD3L2 mRNA発現の用量依存性低減を示すグラフである。図3Cは、DMSO~DUX4標的化ASOで治療されたFSHD筋管またはDMSOで治療された野生型筋管におけるMBD3L2シグナルを比較するプレートベースアッセイ統計を示す。
図4A-4D】DMSO対照での治療に対して、示されたp38α/β阻害剤で治療されたFSHD筋管におけるMBD3L2 mRNAおよびMYOG mRNAの発現レベルを示すグラフである。p38α/β阻害剤は、SB 239063(図4A)、VX-702(図4B)、パマピモド(図4C)、およびTAK-715(図4D)を含んだ。阻害剤の構造も提供される。
図5A-5B】パマピモドで治療されたFSHD筋管からのデータを示す。図5Aは、DUX4-fl mRNA(黒丸)およびMBD3L2 mRNA(白丸)における用量依存性低減を示すグラフである。図5Bは、DMSOまたはパマピモドのいずれかで治療されたFSHD筋管の顕微鏡写真を示す。
図6A-6C】非標的化対照(NT CTRL)と比較して、p38a MAPK14を標的化するsiRNA(siMAPK14 85およびsiMAPK14 86、図6Aおよび図6B)で治療された、またはp38aキナーゼ(MAPK14およびDUX4 pLAM)Cas9/sgRNA RNP(図6C)で治療されたFSHD筋管におけるMAPK14(図6A)およびMBD3L2(図6Bおよび図6C)のmRNAレベルを示すグラフである。図6Cでは、各治療について、左から右へ示される結果は、それぞれ、MBD3L2およびMYOGに対応する。
図7】DMSO対照治療レベルのパーセンテージとして、増加する投与量のFTX-1821(構造が示される)での治療後のFSHD筋管におけるDUX4タンパク質、MBD3L2 mRNA、およびp-HSP27タンパク質の発現レベルを示すグラフである。バーは、標準偏差を表す。
図8A-8B】筋管形成に対するFTX-1821の効果を示す。図8Aは、ビヒクル(DMSO)、または示される濃度のFTX-1821での治療、ならびにMHCおよびDAPIに対する抗体での染色(核染色)後に不死化FSHD筋管の形態の代表的な画像を提供する。図8Bは、試験された濃度のFTX-1821での治療後、MHC染色によって定義される、筋管における核の定量化を示すグラフである。バーは、3つのレプリケートの標準偏差を表す。
図9A-9B】インビトロでのFSHD筋管におけるアポトーシスアッセイの結果を示す。図9Aは、活性カスパーゼ-3(アポトーシスのマーカーとして)またはDAPIについて染色されたFSHD筋管の顕微鏡写真を提供する。アポトーシスは、左パネルおよび右の拡大領域において白丸によって示されるように、培養中の筋管のサブセットにおいて散発的に検出された。図9Bは、示された濃度のFTX1821で治療されたFSHD筋管における活性カスパーゼ-3シグナルの定量化を示すグラフである。
図10A-10B】FTX-1821によるFSHD筋管における下方調節された遺伝子の特定を示す。図10Aは、RNA-seqプロファイリングによって特定される差次的に発現した遺伝子を例示する、ヒートマップである。各条件についての3つのレプリケートをRNA-seqによって分析し、遺伝子を示されるように変化の方向および強度によってクラスター化した。カラーバーは、観察された正規化された変化を示し、例えば、FTX-1821によって下方調節された遺伝子は、DMSOのみで治療された試料において濃縮される。下方調節された遺伝子は、図10Aに列挙される。図10Bは、ビヒクル対照DMSOで治療された野生型細胞、DMSOで治療されたFSHD細胞、またはFTX-1821で治療されたFSHD細胞における、FTX-1821での治療後に下方調節されたDUX4標的遺伝子の正規化された発現レベルリードを示すグラフである。
図11】DMSOビヒクル対照、FTX-1821、またはFTX-839での示された治療後の、4つの別個のFSHD患者筋芽細胞株、FTCE-016、-020、-197、-196、および2つの野生型(WT)対照株に由来する筋管における、(POLR2Aに正規化された)DUX4標的遺伝子、MBD3L2の、qRT-PCRによるmRNA発現レベルを示すグラフである。
図12A-12B】様々なp38阻害剤についての情報を提供する。図12Aは、FSHD細胞におけるMBD3L2発現を低減するためのIC50を含む、示されたp38αおよびβ阻害剤の薬理を要約するデータの表である。同等のMBD3L2 IC50値が示され、同様の酵素効力を有することが報告されるp38αおよびβ阻害剤の広範な構造パネルにわたるFSHD筋管におけるDUX4下流遺伝子発現の阻害を示す。これらのデータは、p38阻害剤が、約6~68nMの範囲内のDUX4標的遺伝子、MBD3L2、低減IC50値をもたらすことを示す。図12Bは、図12Aに列挙されるp38阻害剤の化合物構造を提供する。
図13】遺伝子型の多様性を示し、初代および不死化株の両方、ならびにFSHD1およびFSHD2患者株を含む、「皿での臨床試験」に利用される様々な細胞株の表である。
図14A-14B】FTX-1821、FTX-839、またはDMSOビヒクル対照での治療後の9つのFSHD1および3つのFSHD2患者筋管(表2に列挙され、図14Bは2つのみのFSHD2細胞株を含有する)において決定される(qRT-PCRによる)POLR2Aに正規化されたMBD3L2 mRNA発現(図14A)および開裂カスパーゼ-3によって測定されるアポトーシス(図14B)を示すグラフである。
図15】0.3mg/kg FTX-1821の経口投与後のラットにおける血漿曝露、僧帽筋曝露、およびp38標的関与(リン酸化p38α:総p38α比)の時間経過を示すグラフである。
図16】A4およびC6異種移植TA筋におけるMBD3L2 mRNAレベルを示すグラフである。
図17】ビヒクル対照またはp38阻害剤、FTX-2865での治療後のマウス僧帽筋におけるリン光体/総MC2比を示すグラフである。
図18】ビヒクル対照またはp38阻害剤、FTX-2865での治療後のC6異種移植TA筋におけるMBD3L2 mRNAレベルを示すグラフである。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減する方法であって、細胞を、細胞における活性p38タンパク質の低減をもたらす作用剤と接触させ、それによってDUX4ポリペプチドまたはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減することを含む方法を提供する。これらの方法は、様々な異なるタイプの作用剤を使用して、細胞における様々な異なる生物学的プロセスを調節するために、およびFSHDのような異常DUX4発現と関連した疾患について対象を治療するために、実施され得る。
【0010】
本明細書で開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、細胞は、筋細胞、任意に終末分化筋細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対照細胞、例えば、健康な対象から得られる細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現レベルと比較して、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルを有する。いくつかの実施形態では、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルは、細胞におけるD4Z4遺伝子座での低減した抑制によるものである。特定の実施形態では、細胞は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連し、例えば、FSHDと診断された対象から得られたか、またはFSHDと診断された対象内に存在する。いくつかの実施形態では、細胞は、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、細胞は、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む。
【0011】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の発現もしくは活性を阻害するか、またはその量を低減し、活性は、任意にキナーゼ活性である。
【0012】
いくつかの実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の発現を阻害する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質をコードするポリヌクレオチドを結合するか、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドを結合する。特定の実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる。
【0013】
いくつかの実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の活性を阻害する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質を結合する。特定の実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、小分子、任意に小有機分子または小無機分子を含む。
【0014】
本明細書で開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである。
【0015】
本明細書で開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、p38タンパク質の発現もしくは活性、またはp38タンパク質の量は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される。
【0016】
関連する実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における、DUX4-fl mRNA、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現と関連した疾患または障害を治療または予防する方法であって、対象に、対象の1つ以上の組織における活性p38タンパク質の量の低減をもたらす作用剤を含む薬学的組成物を提供し、それによって対象の1つ以上の組織におけるDUX4-fl mRNA、DUX4タンパク質、または下流標的遺伝子をコードするポリペプチドの発現を低減することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、任意にFSHD1またはFSHD2と関連している。特定の実施形態では、対象は、D4Z4遺伝子座で低減した抑制を含む。いくつかの実施形態では、対象は、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、細胞は、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む。いくつかの実施形態では、対象は、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む。特定の実施形態では、p38タンパク質の発現もしくは活性、または量は、対象の筋組織において少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される。いくつかの実施形態では、方法は、対象における筋変性を減少させる。いくつかの実施形態では、方法は、対象における筋細胞のアポトーシスを低減する。いくつかの実施形態では、筋組織は、終末分化される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、対象に非経口または経口的に提供される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、対象の筋組織に、任意に非経口的または筋肉内に提供される。特定の実施形態では、方法は、対象に、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現と関連した疾患または障害を治療するための第2の作用剤または療法を提供することをさらに含む。
【0017】
本開示はまた、細胞における活性p38タンパク質の量の低減をもたらす作用剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物の単位剤形を提供し、単位剤形は、単位剤形が投与される対象における1つ以上の細胞または組織における、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現または活性を低減するために有効である。特定の実施形態では、作用剤は、DUX4ポリペプチドに結合するか、またはDUX4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに結合する。いくつかの実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、小分子、任意に有機分子または無機分子を含む。特定の実施形態では、組織は、筋組織であり、任意に、組織は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連した突然変異を含む細胞を含む。
【0018】
さらなる関連実施形態では、本開示は、細胞、例えば、筋細胞のアポトーシスを低減する方法であって、細胞を、細胞における活性p38タンパク質の量の低減をもたらす作用剤と接触させ、任意に、筋細胞が、終末分化され、それによって、細胞における、DUX4-fl mRNA、DUX4タンパク質、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、対照細胞における、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現レベルと比較して、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルを有する。いくつかの実施形態では、DUX4-fl mRNA、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルは、細胞におけるD4Z4遺伝子座での低減した抑制によるものである。特定の実施形態では、細胞は、FSHDと関連した1つ以上の突然変異を含む。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の発現を阻害し、任意に、作用剤は、p38タンパク質をコードするポリヌクレオチドに結合するか、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドに結合する。例えば、いくつかの実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、shRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなり、これは、p38を標的とする。いくつかの実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の活性を阻害し、任意に、作用剤は、p38タンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、小分子、任意に小有機分子または小無機分子を含む。特定の実施形態では、p38タンパク質、DUX4タンパク質、またはDUX4下流遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現または活性は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減される。特定の実施形態では、方法は、筋組織における筋細胞のアポトーシスを、対照、例えば、未治療細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%低減する。
【0019】
本明細書で開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、作用剤は、DUX4または下流標的遺伝子の発現を低減する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質、例えば、p38-αもしくはp38-βを結合するか、またはp38タンパク質、例えば、p38-αもしくはp38-βをコードするポリヌクレオチド、またはそのアンチセンスポリヌクレオチドを結合する。特定の実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、shRNA、siRNA、CRISPR gRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる。特定の実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。特定の実施形態では、作用剤は、小分子、任意に有機分子または無機分子を含む。いくつかの実施形態では、下流標的遺伝子は、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである。特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、MBD3L2、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、またはKHDC1Lである。
【0020】
本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質、例えば、p38-αもしくはp38-βを結合するか、またはp38タンパク質、例えば、p38-αもしくはp38-βをコードするポリヌクレオチドを結合する。いくつかの実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、shRNA、siRNA、mRNA、CRISPR gRNA、変性mRNA、モルホリノ、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、mRNAまたは変性mRNAは、抗体またはその機能的断片をコードする。いくつかの実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、遺伝子療法ベクター、例えば、p38、例えば、p38-αもしくはp38-β、または他の標的のポリヌクレオチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ウイルスベクターを含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、作用剤は、小分子、任意に有機分子または無機分子を含むか、またはこれからなる。いくつかの実施形態では、下流標的は、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである。いくつかの実施形態では、下流標的遺伝子は、MBD3L2、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、またはKHDC1Lである。いくつかの実施形態では、下流標的遺伝子は、CCNA1である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、部分的に、p38キナーゼ、例えば、p38-αの阻害が、DUX4およびDUX4によって調節される下流遺伝子の低減した発現をもたらすという発見に基づく。したがって、本発明は、例えば、異常DUX4発現と関連した疾患、例えば、FSHD、筋ジストロフィーの一種の治療または予防において、DUX4および/またはその下流標的遺伝子のいずれかの発現および/または活性レベルを低減するために、(単独で、または別の作用剤と組み合わせて)p38、例えば、p38-αの阻害剤を使用することに関する方法および組成物を含む。これは、様々な方法、例えば、DUX4-fl mRNAの発現を低減すること、DUX4タンパク質の発現を低減すること、DUX4タンパク質活性を阻害すること、CRISPRゲノム編集、および/またはDUX4タンパク質の分解を誘発することにおいて達成され得る。
【0022】
筋ジストロフィーは、体の筋肉の進行性衰弱を引き起こす遺伝子疾患の多様な群である。いくつかのタイプの筋ジストロフィーは、幼児期に症状を表すが、他のタイプは成人期に出現する。異なる筋肉群はまた、筋ジストロフィーのタイプに応じて影響され得る。例えば、Isin Dalkilic and Louis M Kunkelを参照されたい。発症の年齢、重症度、および影響される筋肉群が異なる、様々な形態の筋ジストロフィーを引き起こす、30個近い遺伝子が知られている。特定される遺伝子の数は毎年増加し、我々の理解を深め、これらの疾患の病因の全体的な複雑性を明らかにしている。
【0023】
例えば、2つの一般的な筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)および顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、いくつかの共通の特徴を有する独特な疾患であるとみなされる。DMDとFSHDとの間の類似性は、両方とも遺伝子疾患であり、症状が筋衰弱を伴う筋力低下を含み、障害を引き起こすことを含む(したがって、DMDおよびFSHDの両方は、筋変性を意味する筋ジストロフィーの大きなカテゴリーに群化される)。しかしながら、DMDおよびFSHDは、非常に異なる病因および疾患診断(DMDにおけるジストロフィン喪失対FSHDにおけるDUX4-ミオトキシンの発現)を有する。例えば、DMDでは、DMD遺伝子における突然変異(>2000が知られる)は、ジストロフィンの機能不全または喪失をもたらす。FSHDでは、疾患は、筋組織におけるDUX4遺伝子の過剰発現によるものであり、遺伝子における点突然変異によるものではない(DUX4タンパク質は、DUX4遺伝子におけるD4Z4反復の数が1~8である場合、または抑制が他のサイレンシング機構における突然変異によってD4Z4で喪失する場合に発現する)。他の相違としては、FSHDには骨格筋のみが関与するが、DMDでは骨格筋および心筋の両方が影響を受け、DMDには隔膜が関与するがFSHDには関与せず、一般的にDMDでは小児期発症があるが、FSHDでは成人期/青年期発症があり、DMDでは歩行に関する発症であるが、FSHDでは顔面および近位腕/肩での発症である。別の重要な区別は、DMDではステロイドへの応答があるが、FSHDではないことである。加えて、DMDのための承認された治療(米国におけるExondys-51、EUにおけるAtaluren)は、FSHDにおいて全く効果を有さないであろう。最後に、DMDでは男性のみが影響を受けるが、FSHDでは両性の同等の関与がある。
【0024】
FSHDはまた、異常な病理を有し、筋ジストロフィーの中でも、その発症が遺伝子条件およびエピジェネティック条件の両方を要するという点で独特である。遺伝子条件は、完全DUX4遺伝子の存在である。DUX4遺伝子は、通常は生殖系列および初期胚細胞において発現するレトロ遺伝子であるが、これは、成人組織においてD4Z4反復誘発性サイレンシングによって抑制される(Ehrlich and Lacey,2012)。各D4Z4要素は、プロモーターおよびDUX4 ORFを含有するが、ポリアデニル化シグナル(PAS)を欠き、急速なDUX4 mRNA劣化を引き起こす。対照的に、4qA許容性対立遺伝子上の遠位D4Z4単位において開始される転写物は、反復アレイの外に延在し、隣接するpLAM配列におけるPASに到達する(Tawil et al.,2014、Himeda et al.,2015に概説される)。得られるポリ-Aテールは、DUX4 mRNAを安定化し、健康な筋肉において通常発現されず、骨格筋機能に毒性であるタンパク質へのそれらの翻訳を可能する。骨格筋細胞におけるDUX4-fl発現を活性化する、2つのエンハンサー、DUX4筋原性エンハンサー1(DME1)およびDME2は、FSHDにおいてDUX4-fl発現を調節することが記載されている(Himeda et al.,2014)。
【0025】
FSHD1、FSHD2初期発生段階、ならびに生殖系列形成段階は、D4Z4クロマチンに転写許容性立体配座を与えると考えられる。これは、ヒストン修飾における変化、FSHD1におけるD4Z4の部分的だが可変の低メチル化、およびFSHD2におけるより広範囲の低メチル化によって証拠付けられる(Himeda et al.,2015)。しかしながら、ICF(免疫不全、動原体領域不安定性、および顔面異常)、D4Z4が強く低メチル化される、珍しい無関係のDNA低メチル化関連疾患を有する患者には筋ジストロフィー症状が不在であるので、D4Z4低メチル化は、疾患には十分ではない(OMIM Entry-#614069)。
【0026】
DUX4は、ホメオボックス転写因子タンパク質であり、筋肉におけるDUX4の発現は、転写プログラムを誘導し、骨格筋において通常は発現しない下流遺伝子およびタンパク質産物の発現をもたらす。例えば、DUX4発現は、FSHD骨格筋およびトランスフェクト細胞におけるいくつかの生殖系列遺伝子の導入をもたらす(Yao et al,2014、Ehrlich and Lacey,2012)。これらの新規転写物の多くは、FSHD筋細胞において発現するが、対照筋細胞では発現しない(Yao et al.,2014、Homma et al.,2015、Shadle et al.,2017、Bosnakovski et al.,2014)。DUX4の下流標的遺伝子のいくつかは、転写因子をコードするので、DUX4病理学的活性化は、筋肉における大きな遺伝子発現脱調節カスケードをもたらし、これは疾患を引き起こす(Yao et al.,2014、Homma et al.,2015、Shadle et al.,2017、Bosnakovski et al.,2014)。
【0027】
筋細胞における内因性(FSHD筋線維における)および強制DUX4発現は毒性であり、アポトーシスおよび酸化ストレスをもたらし、筋形成およびサルコメア機能に干渉する(Rickard et al.,2015、Homma et al.,2015、Bosnokovski et al.,2014、Tawil et al.,2014、Himeda et al.,2015)。疾患進行および発症年齢の両方における臨床異質性は、部分的に、DUX4転写における進行性変化をもたらすエピジェネティック不安定性によって説明することができる。DNA低メチル化および許容性DUX4転写の役割は、組み合わされたFSHD1および2欠損を受け継いだ患者において観察される高い臨床的重症度によって例示されている(Tawil et al.,2014、van der Maarel et al.,2007に概説される)。臨床異質性はまた、より軽度に収縮した反復(4-7)を有する患者と比較してより短い反復(1-3)を有する患者におけるより重度の表現型およびより若い発症年齢と共に、D4Z4反復短縮の重症度における相違によって説明される。
【0028】
DUX4は、その標的遺伝子の活性化がFSHD筋肉における主要分子シグネチャーであるので、FSHDの病理の原因としてここで認識される(Tawil et al.,2014、Himeda et al.,2015に概説される)。主要な下流標的遺伝子は、PRAMEF(黒色腫において優先的に発現する)、TRIM(三要素モチーフ含有)、MBDL(メチル-CpG結合タンパク質様)、ZSCAN(ジンクフィンガーおよびSCANドメイン含有)、およびRFPL(retフィンガータンパク質様)ファミリーを含む、染色体上で空間的にクラスター化される高度に相同性の遺伝子ファミリーのメンバーである(Geng et al.,2012、Yao et al.,2014、Shadle et al.,2017、Ehrlich and Lacey,2012、Tawil et al.,2014、van der Maarel et al.,2007)。FSHDと対照骨格筋とは、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、ZNF280Aなどを用いて区別することができる(これらに限定されないが、Yao et al.,2014、Shadle et al.,2017、Ehrlich and Lacey,2012に記載される)。
【0029】
注釈付きの化学プローブは、FSHD筋管におけるDUX4発現を低減する疾患調節小分子薬物標的を特定するためにスクリーニングされた。これらのスクリーニングは、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼアルファ(MAPK14またはp38α)の活性を阻害する複数の化学スキャフォールドを特定した。添付の実施例に記載されるように、小干渉RNA(siRNA)技術またはp38キナーゼのアルファアイソフォームを選択的に標的化する特定のガイドRNA‘(gRNA)でのCRISPR媒介性ゲノム編集を用いるMAPK14遺伝子のノックダウンも、FSHD筋管におけるDUX4およびDUX4関連下流遺伝子発現を低減することが示されている。選択的p38αおよびβキナーゼ阻害剤は、FSHD筋管におけるDUX4およびその下流遺伝子を特異的に低減し、それによってFSHD疾患プロセスの中心的な病態生理に影響を及ぼすことが見出された(データを本明細書で例示する)。同じ実験は、p38αおよびβキナーゼ阻害剤が、ミオゲニンまたは他の筋原性因子の発現に影響を及ぼさず、FSHD筋管における筋原性融合によって示される筋芽細胞の増殖または筋芽細胞の分化にも影響を及ぼさないことを明らかにし、それによって効果が筋肉に対する全体的な毒性によるものではないことを示した。これらのp38キナーゼ阻害剤小分子は、DUX4および関連下流遺伝子の発現を低減し、それによって、アポトーシス細胞死を低減することを含み、FSHD疾患プロセスの病態生理に影響を及ぼす。p38媒介性DUX4低減は、FSHDにおける下流炎症、脂肪浸潤、および線維化プロセスに影響を及ぼすことが予想されるであろう。
【0030】
α、β、γ、およびδからなる、p38 MAPKファミリーのメンバー、アイソフォームは、ストレスおよび生存への適応に必要な細胞応答において重要な役割を果たす個別の遺伝子によってコードされる(Whitmarsh 2010、Martin et al.,2014、Krementsov et al.,2013に概説される)。心血管および他の慢性疾患を含む、多くの炎症性疾患では、これらの同じp38 MAPKストレス誘発性シグナルは、疾患を、軽減するよりむしろ、悪化させる不適応な応答を誘発し得る(Whitmarsh 2010、Martin et al.,2014に概説される)。実際に、骨格筋では、長期運動、インスリン曝露および変性内分泌状態、筋細胞への筋芽細胞分化、活性酸素種、ならびにアポトーシスを含む、様々な細胞ストレスは、全てp38キナーゼ経路を誘導することが示されている(Keren,et.al.,2006、Zarubin et al.,2006)。実際に、p38キナーゼ経路は、炎症誘発性サイトカインおよび細胞ストレスを含む、多数の外部刺激によって活性化することができ、二重特異性MAPKキナーゼMKK3およびMKK6の活性化をもたらす。その活性化ループにおいてp38を順にリン酸化する、MKK3およびMKK6の活性化は、下流リン酸化事象を誘発する。これらは、HSP27、MAPKAPK2(MK2)、および核における転写変化に達する様々な転写因子のリン酸化を含む。控えめな数のp38調節転写物および大きな数のp38キナーゼの下流エフェクターが特定されている(Cuenda et al.,2007およびKyriakis et.al.,2001、Viemann et al.2004に記載される)。
【0031】
p38α MAPKシグナル伝達経路を阻害する異なる化学スキャフォールドからのいくつかの化合物は、リウマチ性関節炎、慢性閉塞性肺疾患、疼痛、心血管疾患、および癌を含む、様々な(非神経筋)徴候における臨床試験に入った。臨床試験におけるp38αおよびβの阻害は、安全であることが証明された。インビトロおよびインビボ薬理は、これらの臨床試験におけるp38α標的関与が、HSP27(間接標的)およびpMK2(直接標的)のリン酸化の低減を測定することによって示されるように、ロバストであったことを示す。
【0032】
p38α MAPKは、骨格筋生物学において、特に筋芽細胞の増殖を抑制し、分化およびその後融合して多核化筋管を形成することにおいて、重要な役割を果たすことが知られている。p38α阻害剤での変性および再生のプロセスを構成的に行っている筋ジストロフィー患者の治療は、明らかではない。p38αの完全ノックアウト(KO)は、胚致死性である。胚救出は、p38αが欠如した筋原性前駆体を試験するために、生後数日のpupの生存および衛星細胞の単離を可能にする。p38αが完全に欠如した筋芽細胞は、顕著に重要性の低い分化遺伝子を発現し、融合において重度の欠損を示す。P2 pupの組織学は、顕著に増加したサイクリング衛星細胞および左にシフトした線維分布を示す。(Perdiguero et.al,2007)。重要なことに、成熟筋肉(Myl1プロモーターによってcre駆動される)におけるp38αのKOは、初期の時点では不足を示さないが、6ヶ月齢でp38αが不足したマウスは、対照と比較して顕著により大きな再生およびI型線維、ならびにより小さな線維分布を示す(Wissing et.al,2014)。これらのデータは、p38αの阻害が、DUX4発現の調節から独立したメカニズムによって、FSHDに加えて、再生が不足した疾患において骨格筋再生を誘発することを示す。
【0033】
骨格筋では、p38は、筋形成中に遺伝子発現を調節することが示されている。p38γは、特異的遺伝子ノックアウトおよび条件付きノックアウトアプローチの両方を用いる筋形成に必要であることが示されている(Cuenda et.al.,2007、Kerin et.al.,2006、Aouadi et.al.,2006)。成人では、p38αおよびβの選択的阻害剤は、筋形成に対するp38γに関連した影響を回避する。
【0034】
本開示は、p38が筋形成中に活性化されること、ならびにFTX-839、FTX-1821などを含む、本明細書で例示される分子によるp38αおよびβの阻害が、FSHD筋管におけるDUX4発現およびその下流遺伝子プログラムを大いに低減することを見出す(データは本明細書に例示される)。理論によって縛られることを望むことなく、p38αは、より短い反復(FSHD1)またはSMCHD1突然変異(FSHD2)を有する突然変異D4Z4遺伝子座のレベルでの病理的DUX4発現、またはFSHD患者の筋肉における他のメカニズムによって抑制が失われる場合に必要な重要な筋原性エンハンサーの活性に影響を及ぼすことによって、DUX4発現を直接調節すると考えられる。これは、以前の臨床試験から差別化されたメカニズムであり、細胞質におけるp38の機能を標的化し、リウマチ性関節炎、疼痛、うつ病、慢性閉塞性肺疾患、および心血管疾患を含む、多数の疾患において有効性を示すことができなかった。p38の阻害剤は、FSHDについて臨床的に調査されたことがない。
【0035】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に内容で明記されない限り、複数の参照物を含む。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「および/または」という用語は、別段に示されない限り、本開示では「および」または「または」のいずれかで使用される。
【0037】
本明細書全体を通して、特に文脈で必要とされない限り、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」のような変形は、記載される要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を示すが、任意の他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の除外を示さないことが理解されるであろう。
【0038】
本出願で使用されるとき、「約(about)」および「約(approximately」という語は、等価物として使用される。約の有無にかかわらず本出願で使用される任意の数字は、関連技術分野における当業者によって理解される正常変動を網羅することが意図される。特定の実施形態では、「約(approximately)」または「約(about)」という用語は、別段に記載されないか、または文脈から明らかではない限り、記載される参照値のいずれかの方向での(より大きいまたは小さい)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下に該当する値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0039】
「投与」とは、本明細書では、作用剤もしくは組成物を対象に導入すること、または作用剤もしくは組成物を細胞および/もしくは組織と接触させることを指す。
【0040】
特定の態様では、本開示は、細胞、組織、臓器、または対象における、DUX4遺伝子、mRNA、もしくはポリペプチドの発現もしくは活性を低減するため、または、これらに限定されないが、本明細書に開示されるもののいずれかを含む、DUX4下流遺伝子もしくはポリペプチドの発現もしくは活性を低減するための方法を含む。特定の実施形態では、DUX4 mRNAは、DUX4-flである。本明細書で使用されるとき、「DUX4下流遺伝子」という用語は、DUX4によって転写活性化される(すなわち、その発現が増加される)遺伝子を指し、「DUX4下流ポリペプチド」という用語は、コードされたポリペプチドを指す。DUX4下流遺伝子の例示的な例が本明細書に提供される。特定の実施形態では、DUX4下流遺伝子は、図10Aに示されるものから選択される。
【0041】
本明細書に開示される方法は、インビトロまたはインビボで実施され得、特定の実施形態では、方法は、細胞、組織、臓器、または対象を、p38阻害剤と接触させ、細胞、組織、臓器、または対象における低減した量の活性p38タンパク質をもたらすことを含む。「p38阻害剤」という用語は、細胞、組織、臓器、または対象における低減した量の活性p38タンパク質をもたらす任意の作用剤を指し得る。細胞における活性p38タンパク質の量は、これらに限定されないが、p38タンパク質の総量を低減すること、またはp38タンパク質の1つ以上の活性を阻害することを含む、様々な手段を介して低減され得る。様々な実施形態では、p38阻害剤は、p38遺伝子、p38 mRNA、またはp38タンパク質の発現を阻害し得、および/またはp38阻害剤は、p38タンパク質の生物学的活性を阻害し得る。特定の実施形態では、生物学的活性は、キナーゼ活性である。例えば、p38阻害剤は、p38 MAPKのATP結合部位に競合的に結合し、そのキナーゼ活性を阻害し得るか、またはp38 MAPKのキナーゼ活性をアロステリックにブロックし得る。特定の実施形態では、p38阻害剤は、p38タンパク質の増加した分解を引き起こす。特定の実施形態では、p38遺伝子またはp38タンパク質は、哺乳動物p38遺伝子または哺乳動物p38タンパク質、例えば、ヒトp38遺伝子またはヒトp38タンパク質、例えば、ヒトp38-α(MAPK14)またはp38-β(MAPK11)遺伝子またはタンパク質である。
【0042】
RKまたはCSBP(サイトカイニン特異的結合タンパク質)とも呼ばれる、p38 MAPキナーゼ(MAPK)は、酵母Hog1p MAPキナーゼの哺乳動物オーソログであり、これは、サイトカインおよびストレスへの細胞応答を制御するシグナル伝達カスケードに関与する。4つのp38 MAPキナーゼ、p38-α(MAPK14)、-β(MAPK11)、-γ(MAPK12/ERK6)、および-δ(MAPK13/SAPK4)が特定されている。これらは、様々なアイソフォームを含む。特定の実施形態では、これらのいずれかは、本明細書に開示される方法によって標的化され得る。特定の実施形態では、p38阻害剤は、p38-α(MAPK14)またはp38-β(MAPK11)、例えば、これらの遺伝子またはタンパク質のヒトバージョンを阻害する。
【0043】
特定の実施形態では、標的化されたp38タンパク質は、以下に記載されるか、またはp38キナーゼ(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ14アイソフォーム1、ホモサピエンス)についてGenBankアクセッションNP_001306.1に開示されるアミノ酸配列を含む。
MSQERPTFYRQELNKTIWEVPERYQNLSPVGSGAYGSVCAA
FDTKTGLRVAVKKLSRPFQSIIHAKRTYRELRLLKHMKHEN
VIGLLDVFTPARSLEEFNDVYLVTHLMGADLNNIVKCQKLT
DDHVQFLIYQILRGLKYIHSADIIHRDLKPSNLAVNEDCEL
KILDFGLARHTDDEMTGYVATRWYRAPEIMLNWMHYNQTVD
IWSVGCIMAELLTGRTLFPGTDHIDQLKLILRLVGTPGAEL
LKKISSESARNYIQSLTQMPKMNFANVFIGANPLAVDLLEK
MLVLDSDKRITAAQALAHAYFAQYHDPDDEPVADPYDQSFE
SRDLLIDEWKSLTYDEVISFVPPPLDQEEMES(配列番号1)。
【0044】
特定の実施形態では、標的化されたp38遺伝子、cDNA、mRNA、またはコード配列は、以下に記載されるか、またはGenBankアクセッションNM_001315.2に開示されるp38-α核酸配列、またはその補体を含む。
TTCTCTCACGAAGCCCCGCCCGCGGAGAGGTTCCATATTGG
GTAAAATCTCGGCTCTCGGAGAGTCCCGGGAGCTGTTCTCG
CGAGAGTACTGCGGGAGGCTCCCGTTTGCTGGCTCTTGGAA
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GGAGTACTGCGACGCAGCCCGGAGTCGGCCTTGTAGGGGCG
AAGGTGCAGGGAGATCGCGGCGGGCGCAGTCTTGAGCGCCG
GAGCGCGTCCCTGCCCTTAGCGGGGCTTGCCCCAGTCGCAG
GGGCACATCCAGCCGCTGCGGCTGACAGCAGCCGCGCGCGC
GGGAGTCTGCGGGGTCGCGGCAGCCGCACCTGCGCGGGCGA
CCAGCGCAAGGTCCCCGCCCGGCTGGGCGGGCAGCAAGGGC
CGGGGAGAGGGTGCGGGTGCAGGCGGGGGCCCCACAGGGCC
ACCTTCTTGCCCGGCGGCTGCCGCTGGAAAATGTCTCAGGA
GAGGCCCACGTTCTACCGGCAGGAGCTGAACAAGACAATCT
GGGAGGTGCCCGAGCGTTACCAGAACCTGTCTCCAGTGGGC
TCTGGCGCCTATGGCTCTGTGTGTGCTGCTTTTGACACAAA
AACGGGGTTACGTGTGGCAGTGAAGAAGCTCTCCAGACCAT
TTCAGTCCATCATTCATGCGAAAAGAACCTACAGAGAACTG
CGGTTACTTAAACATATGAAACATGAAAATGTGATTGGTCT
GTTGGACGTTTTTACACCTGCAAGGTCTCTGGAGGAATTCA
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TCAGTTCCTTATCTACCAAATTCTCCGAGGTCTAAAGTATA
TACATTCAGCTGACATAATTCACAGGGACCTAAAACCTAGT
AATCTAGCTGTGAATGAAGACTGTGAGCTGAAGATTC

TGGATTTTGGACTGGCTCGGCACACAGATGATGAAATGACA
GGCTACGTGGCCACTAGGTGGTACAGGGCTCCTGAGATCAT
GCTGAACTGGATGCATTACAACCAGACAGTTGATATTTGGT
CAGTGGGATGCATAATGGCCGAGCTGTTGACTGGAAGAACA
TTGTTTCCTGGTACAGACCATATTAACCAGCTTCAGCAGAT
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GGATGCCAAGCCATGAGGCAAGAAACTATATTCAGTCTTTG
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TGCCAATCCCCTGGCTGTCGACTTGCTGGAGAAGATGCTTG
TATTGGACTCAGATAAGAGAATTACAGCGGCCCAAGCCCTT
GCACATGCCTACTTTGCTCAGTACCACGATCCTGATGATGA
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GCTCCAGGGCAGCCTCCACCTTGCTCTTCTTTCTGAGAGTT
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TTCTGTGCACTAGCCTGTGATTAACTTGCTTAGTATGGTTC
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GCCTTAAAAGGAGAGAAGAAAGTGTAGATAGTTAAAAGACT
GCAGCTGCTGAAGTTCTGAGCCGGGCAAGT

CGAGAGGGCTGTTGGACAGCTGCTTGTGGGCCCGGAGTAAT
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ACATGTGACCACATACGTGTTAGGAGGCTGCATGCTCTGGA
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GAAAACAAAAGAGAGAATGAGGGAAATTGCTA

TTTTATTTGTATTCATGAACTTGGCTGTAATCAGTTATGCC
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ATTTTTCAAATTTAGTGAGTTTCTCAAGTTTATTATATTTT
TCTCTTGTTTTTATTTAATGCACAATATGGCATTATATCAA
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CTTAGTTGTACATTTTTTGGTGAAGAGTATCCAG

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AAGAGTGGCCGAAATGACAGGGCTCAGCAGACTGTGGCCTG
AGGGCCAAATCTGGCCCACCACCTGTTTGGTGTAGCCTGCT
AAGAATGGCTTTTACATTTTTAAATGGTTGGGAAAGAAAAA
AAAAGAAGTAGTAGATTTTGTAGCATGTGATGTAAGTAATG
TAAAACTTAAATTCCAGTATCCATAAATAAAGTTTTATGAG
AACAGA(配列番号2)。
【0045】
特定の実施形態では、標的化されたp38タンパク質は、以下に記載されるか、またはp38キナーゼ(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ11アイソフォーム1、ホモサピエンス)についてGenBankアクセッションNP_002742.3に開示されるアミノ酸配列を含む。
MSGPRAGFYRQELNKTVWEVPQRLQGLRPVGSGAYGSVCSAYDARLRQKVAVKKLSRPFQSLIHARRTYRELRLLKHLKHENVIGLLDVFTPATSIEDFSEVYLVTTLMGADLNNIVKCQALSDEHVQFLVYQLLRGLKYIHSAGIIHRDLKPSNVAVNEDCELRILDFGLARQADEEMTGYVATRWYRAPEIMLNWMHYNQTVDIWSVGCIMAELLQGKALFPGSDYIDQLKRIMEVVGTPSPEVLAKISSEHARTYIQSLPPMPQKDLSSIFRGANPLAIDLLGRMLVLDSDQRVSAAEALAHAYFSQYHDPEDEPEAEPYDESVEAKERTLEEWKELTYQEVLSFKPPEPPKPPGSLEIEQ(配列番号3)。
【0046】
特定の実施形態では、標的化されたp38遺伝子、cDNA、mRNA、またはコード配列は、以下に記載されるか、またはGenBankアクセッションNM_002751.6に開示されるp38-β核酸配列、またはその補体を含む。
CGCCGCCTCCGCCGCCCTCCGCTCCGCTCGGCTCGGGCTCGGCTCGGGCGCGGGCGCGGGGCGCGGGGCTGGGCCCGGGCGGAGCGGCGGCTGCTCCGGACATGTCGGGCCCTCGCGCCGGCTTCTACCGGCAGGAGCTGAACAAGACCGTGTGGGAGGTGCCGCAGCGGCTGCAGGGGCTGCGCCCGGTGGGCTCCGGCGCCTACGGCTCCGTCTGTTCGGCCTACGACGCCCGGCTGCGCCAGAAGGTGGCGGTGAAGAAGCTGTCGCGCCCCTTCCAGTCGCTGATCCACGCGCGCAGAACGTACCGGGAGCTGCGGCTGCTCAAGCACCTGAAGCACGAGAACGTCATCGGGCTTCTGGACGTCTTCACGCCGGCCACGTCCATCGAGGACTTCAGCGAAGTGTACTTGGTGACCACCCTGATGGGCGCCGACCTGAACAACATCGTCAAGTGCCAGGCGCTGAGCGACGAGCACGTTCAATTCCTGGTTTACCAGCTGCTGCGCGGGCTGAAGTACATCCACTCGGCCGGGATCATCCACCGGGACCTGAAGCCCAGCAACGTGGCTGTGAACGAGGACTGTGAGCTCAGGATCCTGGATTTCGGGCTGGCGCGCCAGGCGGACGAGGAGATGACCGGCTATGTGGCCACGCGCTGGTACCGGGCACCTGAGATCATGCTCAACTGGATGCATTACAACCAAACAGTGGATATCTGGTCCGTGGGCTGCATCATGGCTGAGCTGCTCCAGGGCAAGGCCCTCTTCCCGGGAAGCGACTACATTGACCAGCTGAAGCGCATCATGGAAGTGGTGGGCACACCCAGCCCTGAGGTTCTGGCAAAAATCTCCTCAGAACACGCCCGGACATATATCCAGTCCCTGCCCCCCATGCCCCAGAAGGACCTGAGCAGCATCTTCCGTGGAGCCAACCCCCTGGCCATAGACCTCCTTGGAAGGATGCTGGTGCTGGACAGTGACCAGAGGGTCAGTGCAGCTGAGGCACTGGCCCACGCCTACTTCAGCCAGTACCACGACCCCGAGGATGAGCCAGAGGCCGAGCCATATGATGAGAGCGTTGAGGCCAAGGAGCGCACGCTGGAGGAGTGGAAGGAGCTCACTTACCAGGAAGTCCTCAGCTTCAAGCCCCCAGAGCCACCGAAGCCACCTGGCAGCCTGGAGATTGAGCAGTGAGGTGCTGCCCAGCAGCCCCTGAGAGCCTGTGGAGGGGCTTGGGCCTGCACCCTTCCACAGCTGGCCTGGTTTCCTCGAGAGGCACCTCCCACACTCCTATGGTCACAGACTTCTGGCCTAGGACCCCTCGCCTTCAGGAGAATCTACACGCATGTATGCATGCACAAACATGTGTGTACATGTGCTTGCCATGTGTAGGAGTCTGGGCACAAGTGTCCCTGGGCCTACCTTGGTCCTCCTGTCCTCTTCTGGCTACTGCACTCTCCACTGGGACCTGACTGTGGGGTCCTAGATGCCAAAGGGGTTCCCCTGCGGAGTTCCCCTGTCTGTCCCAGGCCGACCCAAGGGAGTGTCAGCCTTGGGCTCTCTTCTGTCCCAGGGCTTTCTGGAGGACGCGCTGGGGCCGGGACCCCGGGAGACTCAAAGGGAGAGGTCTCAGTGGTTAGAGCTGCTCAGCCTGGAGGTAGGGGGCTGTCTTGGTCACTGCTGAGACCCACAGGTCTAAGAGGAGAGGCAGAGCCAGTGTGCCACCAGGCTGGGCAGGGACAACCACCAGGTGTCAAATGAGAAAAGCTGCCTGGAGTCTTGTGTTCACCCGTGGGTGTGTGTGGGCACGTGTGGATGAGCGTGCACTCCCCGTGTTCATATGTCAGGGCACATGTGATGTGGTGCGTGTGAATCTGTGGGCGCCCAAGGCCAGCAGCCATATCTGGCAAGAAGCTGGAGCCGGGGTGGGTGTGCTGTTGCCTTCCCTCTCCTCGGTTCCTGATGCCTTGAGGGGTGTTTCAGACTGGCGGCTCCAGTGGGCCAAAGGGCAACCACATGAGCATGGGCAGGGGCTTTCTCCTTGGATGTGGGACCCACAGCAGCTTCCTGAGGCTGGGGGTGGGTGGGTGGGTGGTTTGGCCTTGAGGACGCTAGGGCAGGCAGCACACCTGGATGTGGACTTGGACTCGGACACTTCTGCCCTGCACCCTGGCCCGCTCTCTACCTCTGCCCACCGTTGTGGCCCTGCAGCCGGAGATCTGAGGTGCTCTGGTCTGTGGGTCAGTCCTCTTTCCTTGTCCCAGGATGGAGCTGATCCAGTAACCTCGGAGACGGGACCCTGCCCAGAGCTGAGTTGGGGGTGTGGCTCTGCCCTGGAAAGGGGGTGACCTCTTGCCTCGAGGGGCCCAGGGAAGCCTGGGTGTCAAGTGCCTGCACCAGGGGTGCACAATAAAGGGGGTTCTCTCTCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号4)
【0047】
特定の実施形態では、細胞、組織、臓器、または対象をp38阻害剤と接触させることを含む本明細書に開示される方法は、DUX4または1つ以上のDUX4下流遺伝子の発現または活性を阻害または減少させるために実施される。特定の実施形態では、DUX4またはDUX4下流遺伝子は、ヒト遺伝子である。例えば、DUX4ダブルホメオボックス4(ホモサピエンス)遺伝子は、以下に記載されるか、またはGenBankアクセッションNG_034189.2に開示されるヌクレオチド配列、またはその補体を含み得る。
ATGGCCCTCCCGACACCCTCGGACAGCACCCTCCCCGCGGAAGCCCGGGGACGAGGACGGCGACGGAGACTCGTTTGGACCCCGAGCCAAAGCGAGGCCCTGCGAGCCTGCTTTGAGCGGAACCCGTACCCGGGCATCGCCACCAGAGAACGGCTGGCCCAGGCCATCGGCATTCCGGAGCCCAGGGTCCAGATTTGGTTTCAGAATGAGAGGTCACGCCAGCTGAGGCAGCACCGGCGGGAATCTCGGCCCTGGCCCGGGAGACGCGGCCCGCCAGAAGGCCGGCGAAAGCGGACCGCCGTCACCGGATCCCAGACCGCCCTGCTCCTCCGAGCCTTTGAGAAGGATCGCTTTCCAGGCATCGCCGCCCGGGAGGAGCTGGCCAGAGAGACGGGCCTCCCGGAGTCCAGGATTCAGATCTGGTTTCAGAATCGAAGGGCCAGGCACCCGGGACAGGGTGGCAGGGCGCCCGCGCAGGCAGGCGGCCTGTGCAGCGCGGCCCCCGGCGGGGGTCACCCTGCTCCCTCGTGGGTCGCCTTCGCCCACACCGGCGCGTGGGGAACGGGGCTTCCCGCACCCCACGTGCCCTGCGCGCCTGGGGCTCTCCCACAGGGGGCTTTCGTGAGCCAGGCAGCGAGGGCCGCCCCCGCGCTGCAGCCCAGCCAGGCCGCGCCGGCAGAGGGGATCTCCCAACCTGCCCCGGCGCGCGGGGATTTCGCCTACGCCGCCCCGGCTCCTCCGGACGGGGCGCTCTCCCACCCTCAGGCTCCTCGCTGGCCTCCGCACCCGGGCAAAAGCCGGGAGGACCGGGACCCGCAGCGCGACGGCCTGCCGGGCCCCTGCGCGGTGGCACAGCCTGGGCCCGCTCAAGCGGGGCCGCAGGGCCAAGGGGTGCTTGCGCCACCCACGTCCCAGGGGAGTCCGTGGTGGGGCTGGGGCCGGGGTCCCCAGGTCGCCGGGGCGGCGTGGGAACCCCAAGCCGGGGCAGCTCCACCTCCCCAGCCCGCGCCCCCGGACGCCTCCGCCTCCGCGCGGCAGGGGCAGATGCAAGGCATCCCGGCGCCCTCCCAGGCGCTCCAGGAGCCGGCGCCCTGGTCTGCACTCCCCTGCGGCCTGCTGCTGGATGAGCTCCTGGCGAGCCCGGAGTTTCTGCAGCAGGCGCAACCTCTCCTAGAAACGGAGGCCCCGGGGGAGCTGGAGGCCTCGGAAGAGGCCGCCTCGCTGGAAGCACCCCTCAGCGAGGAAGAATACCGGGCTCTGCTGGAGGAGCTTTAGGACGCGGGGTTGGGACGGGGTCGGGTGGTTCGGGGCAGGGCGGTGGCCTCTCTTTCGCGGGGAACACCTGGCTGGCTACGGAGGGGCGTGTCTCCGCCCCGCCCCCTCCACCGGGCTGACCGGCCTGGGATTCCTGCCTTCTAGGTCTAGGCCCGGTGAGAGACTCCACACCGCGGAGAACTGCCATTCTTTCCTGGGCATCCCGGGGATCCCAGAGCCGGCCCAGGTACCAGCAGGTGGGCCGCCTACTGCGCACGCGCGGGTTTGCGGGCAGCCGCCTGGGCTGTGGGAGCAGCCCGGGCAGAGCTCTCCTGCCTCTCCACCAGCCCACCCCGCCGCCTGACCGCCCCCTCCCCACCCCCACCCCCCACCCCCGGAAAACGCGTCGTCCCCTGGGCTGGGTGGAGACCCCCGTCCCGCGAAACACCGGGCCCCGCGCAGCGTCCGGGCCTGACACCGCTCCGGCGGCTCGCCTCCTCTGCGCCCCCGCGCCACCGTCGCCCGCCCGCCCGGGCCCCTGCAGCCTCCCAGCTGCCAGCACGGAGCGCCTGGCGGTCAAAAGCATACCTCTGTCTGTCTTTGCCCGCTTCCTGGCTAGACCTGCGCGCAGTGCGCACCCCGGCTGACGTGCAAGGGAGCTCGCTGGCCTCTCTGTGCCCTTGTTCTTCCGTGAAATTCTGGCTGAATGTCTCCCCCCACCTTCCGACGCTGTCTAGGCAAACCTGGATTAGAGTTACATCTCCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCCCCCTCCCTGTGGATCCTATAG(配列番号5)。
【0048】
例えば、DUX4ダブルホメオボックス4[ホモサピエンス]mRNA遺伝子は、以下に記載されるか、またはGenBankアクセッションNM_001293798.2に開示されるヌクレオチド配列、またはその補体を含み得る。
ATGGCCCTCCCGACACCCTCGGACAGCACCCTCCCCGCGGAAGCCCGGGGACGAGGACGGCGACGGAGACTCGTTTGGACCCCGAGCCAAAGCGAGGCCCTGCGAGCCTGCTTTGAGCGGAACCCGTACCCGGGCATCGCCACCAGAGAACGGCTGGCCCAGGCCATCGGCATTCCGGAGCCCAGGGTCCAGATTTGGTTTCAGAATGAGAGGTCACGCCAGCTGAGGCAGCACCGGCGGGAATCTCGGCCCTGGCCCGGGAGACGCGGCCCGCCAGAAGGCCGGCGAAAGCGGACCGCCGTCACCGGATCCCAGACCGCCCTGCTCCTCCGAGCCTTTGAGAAGGATCGCTTTCCAGGCATCGCCGCCCGGGAGGAGCTGGCCAGAGAGACGGGCCTCCCGGAGTCCAGGATTCAGATCTGGTTTCAGAATCGAAGGGCCAGGCACCCGGGACAGGGTGGCAGGGCGCCCGCGCAGGCAGGCGGCCTGTGCAGCGCGGCCCCCGGCGGGGGTCACCCTGCTCCCTCGTGGGTCGCCTTCGCCCACACCGGCGCGTGGGGAACGGGGCTTCCCGCACCCCACGTGCCCTGCGCGCCTGGGGCTCTCCCACAGGGGGCTTTCGTGAGCCAGGCAGCGAGGGCCGCCCCCGCGCTGCAGCCCAGCCAGGCCGCGCCGGCAGAGGGGATCTCCCAACCTGCCCCGGCGCGCGGGGATTTCGCCTACGCCGCCCCGGCTCCTCCGGACGGGGCGCTCTCCCACCCTCAGGCTCCTCGCTGGCCTCCGCACCCGGGCAAAAGCCGGGAGGACCGGGACCCGCAGCGCGACGGCCTGCCGGGCCCCTGCGCGGTGGCACAGCCTGGGCCCGCTCAAGCGGGGCCGCAGGGCCAAGGGGTGCTTGCGCCACCCACGTCCCAGGGGAGTCCGTGGTGGGGCTGGGGCCGGGGTCCCCAGGTCGCCGGGGCGGCGTGGGAACCCCAAGCCGGGGCAGCTCCACCTCCCCAGCCCGCGCCCCCGGACGCCTCCGCCTCCGCGCGGCAGGGGCAGATGCAAGGCATCCCGGCGCCCTCCCAGGCGCTCCAGGAGCCGGCGCCCTGGTCTGCACTCCCCTGCGGCCTGCTGCTGGATGAGCTCCTGGCGAGCCCGGAGTTTCTGCAGCAGGCGCAACCTCTCCTAGAAACGGAGGCCCCGGGGGAGCTGGAGGCCTCGGAAGAGGCCGCCTCGCTGGAAGCACCCCTCAGCGAGGAAGAATACCGGGCTCTGCTGGAGGAGCTTTAGGACGCGGGGTCTAGGCCCGGTGAGAGACTCCACACCGCGGAGAACTGCCATTCTTTCCTGGGCATCCCGGGGATCCCAGAGCCGGCCCAGGTACCAGCAGACCTGCGCGCAGTGCGCACCCCGGCTGACGTGCAAGGGAGCTCGCTGGCCTCTCTGTGCCCTTGTTCTTCCGTGAAATTCTGGCTGAATGTCTCCCCCCACCTTCCGACGCTGTCTAGGCAAACCTGGATTAGAGTTACATCTCCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCCCCCTCCCTGTGGATCCTATAG(配列番号6)。
【0049】
特定の実施形態では、DUX4ポリペプチド配列は、以下に記載されるか、またはGenBankアクセッションNP_001280727.1に開示される。
MALPTPSDSTLPAEARGRGRRRRLVWTPSQSEALRACFERNPYPGIATRERLAQAIGIPEPRVQIWFQNERSRQLRQHRRESRPWPGRRGPPEGRRKRTAVTGSQTALLLRAFEKDRFPGIAAREELARETGLPESRIQIWFQNRRARHPGQGGRAPAQAGGLCSAAPGGGHPAPSWVAFAHTGAWGTGLPAPHVPCAPGALPQGAFVSQAARAAPALQPSQAAPAEGISQPAPARGDFAYAAPAPPDGALSHPQAPRWPPHPGKSREDRDPQRDGLPGPCAVAQPGPAQAGPQGQGVLAPPTSQGSPWWGWGRGPQVAGAAWEPQAGAAPPPQPAPPDASASARQGQMQGIPAPSQALQEPAPWSALPCGLLLDELLASPEFLQQAQPLLETEAPGELEASEEAASLEAPLSEEEYRALLEEL(配列番号7)。
【0050】
DUX4下流遺伝子または標的の配列は、当該技術分野において知られており、例示的なDUX4下流遺伝子は、以下に示されるアクセッション番号によって提供される。
MBD3L2:
ゲノムヌクレオチドアクセッションNC_000019.10(7049340..7051735)
mRNAヌクレオチドアクセッションNM_144614.3
タンパク質ポリペプチドアクセッションNP_653215.2
ZSCAN4:
NC_000019.10(57651497..57679152)
NM_152677.2
NP_689890.1
LEUTX:
NC_000019.10(39776594..39786135)
NM_001143832.1
NP_001137304.1
PRAMEF2:
NC_000001.11(12857086..12861909)
NM_023014.1
NP_075390.1
TRIM43:
NC_000002.12(95592018..95599723)
NM_138800.2
NP_620155.1
KHDC1L:
NC_000006.12(73223544..73225452、補体)
NM_001126063.2
NP_001119535.1
【0051】
生物学的試料、例えば、組織におけるp38、DUX4、またはDUX4下流遺伝子またはポリペプチドの発現レベルを決定する方法は、当該技術分野において知られており、例えば、RT-PCRおよびFACSを含む。
【0052】
一実施形態では、細胞、組織、臓器、または対象における、DUX4 mRNA(例えば、DUX4-fl)、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減する方法は、細胞、組織、臓器、または対象を、低減した量の活性p38タンパク質をもたらす作用剤(本明細書ではp38阻害剤とも呼ばれる)、例えば、p38-αおよび/またはp38-βの阻害剤と接触させることを含む。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の発現または活性を阻害する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質、例えば、p38-αおよび/またはp38-βの増加した分解を引き起こす。特定の実施形態では、細胞または組織は、細胞または組織における、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現または活性を低減するために有効な量の作用剤と接触される。特定の実施形態では、細胞または組織は、細胞または組織における活性p38タンパク質の量を低減するために有効な量の作用剤と接触される。特定の実施形態では、細胞は、筋細胞である。特定の実施形態では、細胞は、終末分化され、例えば、終末分化された筋細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対照細胞における発現レベルと比較して、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルを有する。特定の実施形態では、細胞は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、例えば、FSHD1またはFSHD2と関連している。例えば、細胞は、FSHDと診断された対象からの細胞または組織から誘導または入手され得る。本明細書に開示される方法は、インビトロまたはインビボで実施され得る。
【0053】
一実施形態では、本開示は、細胞または組織を、p38タンパク質の発現または活性を阻害する作用剤(本明細書ではp38阻害剤とも呼ばれる)、例えば、p38-αおよび/またはp38-βの阻害剤と接触させることを含む、細胞または組織のアポトーシスを低減する方法を提供する。特定の実施形態では、細胞または組織は、細胞または組織における、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現または活性を低減するために有効な量の作用剤と接触される。特定の実施形態では、細胞または組織は、細胞または組織における活性p38タンパク質の量を低減するために有効な量の作用剤と接触される。特定の実施形態では、細胞は、筋細胞である。特定の実施形態では、細胞は、終末分化され、例えば、終末分化された筋細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対照細胞における(すなわち、治療前の)発現レベルと比較して、DUX4ポリペプチド、または下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの増加した発現レベルを有する。特定の実施形態では、細胞は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、例えば、FSHD1またはFSHD2と関連している。例えば、細胞は、FSHDと診断された対象からの細胞または組織から誘導または入手され得る。本明細書に開示される方法は、インビトロまたはインビボで実施され得る。
【0054】
関連態様では、本開示は、対象に、対象における、または対象の特定の細胞もしくは組織における、活性p38タンパク質(例えば、p38-αおよび/またはp38-β)の量を低減する有効量の作用剤を含む薬学的組成物を提供することを含む、それを必要とする対象におけるDUX4タンパク質またはDUX4の下流標的遺伝子の増加した活性または発現と関連した疾患または障害を治療または予防する方法を含む。いくつかの実施形態では、作用剤は、p38タンパク質、例えば、p38-αおよび/またはp38-βの発現または活性を阻害する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の分解を誘導する。特定の実施形態では、作用剤は、p38タンパク質の活性を阻害する、例えば、p38タンパク質のキナーゼ活性を阻害する。方法のいずれかの特定の実施形態では、p38阻害剤は、対象の細胞または組織におけるDUX4および/または1つ以上のDUX4下流遺伝子の発現を低減する。
【0055】
本明細書に開示される治療方法の特定の実施形態では、疾患または障害は、FSHD1、FSHD2、免疫不全、動原体不安定性、および顔面異常症候群(ICF)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、ユーイング肉腫、軟部組織肉腫、横紋筋肉腫、ならびに成人および小児B細胞急性リンパ芽球性白血病から選択される。
【0056】
本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、対象は、FSHD1またはFSHD2と診断され、特定の実施形態では、対象は、FSHD1および/またはFSHD2と関連した1つ以上の遺伝子突然変異を含む。特定の実施形態では、対象は、D4Z4遺伝子座で低減した抑制を含む。
【0057】
本明細書で開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、対象は、転写活性DUX4の存在に基づいてFSHDを有するとして特定される。別の実施形態では、対象は、健康な対照に対して1つ以上の下流遺伝子、例えば、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aの増加した発現レベルの存在に基づいてFSHDを有するとして特定される。別の実施形態では、対象は、転写活性DUX4の存在および1つ以上のDUX4下流遺伝子、例えば、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aの増加した発現レベルに基づいてFSHDを有するとして特定される。
【0058】
別の実施形態では、方法は、p38キナーゼ阻害剤の投与の前の対象における、DUX4およびDUX4下流遺伝子、例えば、DUX4、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aのうちの1つ以上の発現レベルを測定することを含み得る。方法は、DUX4およびDUX4下流遺伝子、例えば、DUX4、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、およびZNF280A KHDC1Lのうちの1つ以上の発現レベルが健康な対照に対して上昇している場合、対象が治療を必要とすることを決定することをさらに含み得る。
【0059】
別の実施形態では、方法は、p38キナーゼ阻害剤の投与の前および後の対象の細胞における、DUX4およびDUX4下流遺伝子、例えば、DUX4、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aのうちの1つ以上の発現レベルを測定することを含み得る。方法は、p38キナーゼ阻害剤の投与の前および後の対象における、DUX4およびDUX4下流遺伝子、例えば、DUX4、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aのうちの1つ以上の発現レベルを比較することを含み得る。方法は、p38キナーゼ阻害剤の投与の前および後のDUX4およびDUX4下流遺伝子、例えば、DUX4、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、およびZNF280Aのうちの1つ以上の発現レベルの比較によって治療の有効性を決定することを含み得、発現レベル(複数可)の減少は、有効治療を示す。
【0060】
いくつかの実施形態では、p38キナーゼ阻害剤は、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、およびZNF280Aから選択される1つ以上の下流遺伝子を低減する。
【0061】
一実施形態では、DUX4ならびに下流遺伝子ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、およびZNF280Aの転写モジュレーターは、p38キナーゼによって阻害される。
【0062】
特定の実施形態では、対象は、10個以下または7個以下の反復(FSHD1)を含むように、4q35A D4Z4アレイの短縮を含む。特定の実施形態では、対象、または対象の1つ以上の細胞もしくは組織は、染色体4q35のサブテロメア領域に1個以上のマクロサテライトD4Z4反復の欠失を含み、任意に、細胞は、染色体4q35のサブテロメア領域に7個以下のマクロサテライトD4Z4反復を含む。特定の実施形態では、対象は、染色体の構造維持フレキシブルヒンジドメイン含有1(SMCHD1)遺伝子に1つ以上の突然変異を含む。特定の実施形態では、対象は、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子を含む。特定の実施形態では、対象は、少なくとも1つの非欠失4qA対立遺伝子およびSMCHD1突然変異(FSHD2)を含む。いくつかの実施形態では、対象は、車椅子に束縛される(例えば、CSS4.5および5)。特定の実施形態では、治療中または治療後、対象、例えば、FSHD1またはFSHD2と診断された対象は、筋変性の低減または減少した量または速度を示す。特定の実施形態では、治療中または治療後、対象は、例えば、定量的MRIを介して決定される、脂肪による骨格筋置換の低減、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも70%の低減を示す。特定の実施形態では、治療中または治療後、対象は、以下の臨床転帰評価のうちの1つ以上に対する利益の証拠を示す。
重量あり/なしの到達可能作業空間(RWS)によって測定される肩/腕機能、
タイムアップアンドゴー(TUG)または同様のアッセイによって測定される可動性、
日常生活動作(ADL)および生活の質(QOL)の患者レポート、ならびに
動力測定法によって測定される定量的骨格筋強度。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象は、これらの改善のいずれかを少なくともいくらかの時間、例えば、治療の開始または停止のいずれかの後に少なくとも1週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、または1年にわたって示す。
【0064】
別の態様では、本開示は、FSHD1、FSHD2、ICF、および同様の病理的変化が見られる疾患、例えば、ALSおよびIBM(Tawil et al.,2014)の治療のために、p38阻害剤、例えば、p38-αまたはp38-βの阻害剤を使用する開示される方法を提供する。
【0065】
本明細書に記載される方法のいずれかの特定の実施形態では、薬学的組成物は、対象に非経口的に提供される。
【0066】
本明細書に記載される方法のいずれかの特定の実施形態では、薬学的組成物は、対象の筋組織に提供される。
【0067】
いくつかの特定の実施形態では、対象にp38阻害剤を提供することを含む本明細書に記載される方法のいずれかは、対象に追加の療法を提供することをさらに含み得る。
【0068】
特定の実施形態では、追加の療法は、臨床管理を含む。一実施形態では、本発明は、FSHD1、FSHD2、ICF、ALS、IBM、ユーイング肉腫、軟部組織肉腫、横紋筋肉腫、ならびに成人および小児B細胞急性リンパ芽球性白血病の治療または予防方法を提供し、p38阻害剤は、DUX4および/または下流遺伝子および/またはタンパク質発現および/または活性を減少させるために使用され、理学療法、有酸素運動、呼吸機能療法、および/または整形外科的介入を含む臨床管理と組み合わされ得る。
【0069】
特定の実施形態では、追加の療法は、例えば、D4Z4メチル化を制御し、DUX4 mRNAを抑制し、および/またはDUX4シグナル伝達経路を阻害することによってFSHDにおける病原性DUX4タンパク質生成を低減するために、対象に、1つ以上のミオスタチン阻害剤、抗炎症剤、および遺伝子療法ベクターを提供することを含む。一実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における、FSHD1、FSHD2、ICF、ALS、またはIBMの治療方法を提供し、p38阻害剤、例えば、p38-αまたはp38-βの阻害剤は、DUX4および下流遺伝子および/またはタンパク質発現を低減するために使用され、例えば、D4Z4メチル化を制御し、DUX4 mRNAを抑制し、DUX4経路を阻害することによって、FSHDにおける病原性DUX4タンパク質生成を低減するために、ミオスタチン阻害剤、抗炎症剤、および/または遺伝子療法と組み合わされ得る。特定の実施形態では、方法は、p38の阻害剤およびミオスタチン阻害剤を使用して実施される。その受容体複合体に関与し、下流シグナル伝達を活性化するミオスタチンをブロックするために、ミオスタチンに直接結合(Fstl3、フォリスタチン、ミオスタチン抗体、GASP1、ミオスタチンプロペプチド、デコリンペプチド、ActRIIB-Fc)、またはその受容体複合体に結合(ActRIIB抗体)することのいずれかによって細胞外で作用する特定のミオスタチン経路阻害剤が、特定の実施形態において使用され得る。ミオスタチン阻害剤のいくつかは天然に存在し(ミオスタチンプロペプチド、Gasp1、フォリスタチン、Fstl3)、その他は操作されている(ミオスタチン抗体、ActRIIB抗体、ActRIIB-Fc)。
【0070】
特定の実施形態では、追加の療法は、対象に、DUX4またはDUX4下流標的または遺伝子の阻害剤、例えば、DUX-4fl mRNAおよび/もしくはDUX4タンパク質の発現(またはDUX4下流標的のmRNAもしくはタンパク質の発現)を阻害する阻害剤、またはDUX4活性、例えば、転写アクチベーターとしてのその活性、もしくはDUX4下流標的の活性を阻害する阻害剤を提供することを含む。特定の実施形態では、阻害剤は、DUX4ポリペプチドまたはDUX4下流標的ポリペプチドの分解を誘導する。特定の実施形態では、阻害剤は、DUX4またはDUX4下流標的遺伝子の核酸配列またはそのアンチセンスに特異的に結合するsiRNA、miRNA、gRNA、shRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一実施形態では、本発明は、FSHD1、FSHD2、ICF、ALS、またはIBMの治療方法を提供し、p38阻害剤は、DUX4および下流遺伝子およびタンパク質発現を低減するために使用され、DUX4またはDUX4下流標的の阻害剤、例えば、DUX4および/または1つ以上のDUX4下流標的転写物(例えば、DNAまたはmRNA)に対する小干渉RNA(siRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、ガイドRNA(gRNA)、マイクロRNA(miRNA)、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わされ得る。
【0071】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される、および/または異常DUX4発現もしくは活性に関連した、FSHDまたは任意の他の疾患もしくは障害を治療するために、FSHD骨格筋筋管におけるDUX4および下流遺伝子発現を低減するために、p38キナーゼの小分子阻害剤、例えば、p38-αまたはp38-βの阻害剤を使用する方法を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、p38、例えば、p38-αおよび/またはp38-βは、本明細書に開示される小分子または他の作用剤のいずれかによって阻害される。
【0073】
本明細書に記載されるp38阻害剤および/または他の作用剤ならびに組成物(例えば、阻害剤)は、所望の投与経路(例えば、非経口または経口投与)に適した任意の方法で製剤化することができる。いくつかの実施形態では、作用剤または組成物を細胞および/または組織と接触させることは、対象への作用剤または組成物の投与または提供の結果である。いくつかの実施形態では、作用剤または組成物(例えば、p38阻害剤)は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20回以上投与される。併用療法のいくつかの実施形態では、第1の作用剤または組成物の投与は、第2の作用剤または組成物の投与が続いて行われるか、またはこれと重複して、もしくは同時に起こる。第1および第2の作用剤または組成物は同じであってもよく、またはそれらは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第1および第2の作用剤または組成物は、同じアクターによって、および/または同じ地理的位置において投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の作用剤または組成物は、異なるアクターによって、および/または異なる地理的位置において投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数の作用剤が単一組成物として投与される。
【0074】
本明細書に開示される方法に従ってp38阻害剤と共に広範な投与方法が使用され得る。例えば、p38阻害剤は、局所、経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、リポソーム、吸入、膣内、眼内、局所送達(例えば、カテーテルまたはステントによる)、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内、経粘膜、肺、または非経口的に、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、および胸骨内を含む、注射により、デポまたはリザーバのインプラントにより、例えば、皮下または筋肉内に、投与または同時投与され得る。
【0075】
「対象」は、動物(例えば、哺乳動物、豚、魚、鳥、昆虫など)を含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ウシ(cattle)、ヒツジ、ヤギ、ウシ(cow)などのような家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどのような家禽、ならびにイヌおよびネコのような飼育動物である。いくつかの実施形態では、(例えば、特に研究の文脈において)対象は、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、または同系交配ブタなどのような豚である。「対象」および「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0076】
「組織」とは、共に特定の機能を行う同じ起源からの同様の細胞のアンサンブルである。特定の実施形態では、組織は、筋組織である。
【0077】
本明細書に開示される方法は、p38遺伝子またはタンパク質の発現または活性を阻害することができる任意の作用剤、例えば、これらに限定されないが、本明細書に開示されるもののいずれかを含む、p38-αまたはp38-β遺伝子またはタンパク質で実施され得る。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、p38阻害剤と接触していない対照細胞または組織における発現レベルもしくは活性、または参照レベルと比較して、(例えば、対象内の)細胞または組織におけるDUX4および/または1つ以上のDUX4下流遺伝子の発現レベルまたは活性の減少をもたらす。「減少」とは、例えば、参照レベルと比較した、少なくとも5%、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、または100%の減少を指す。減少はまた、例えば、参照または対照細胞または組織のレベルと比較して、少なくとも1倍、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍以上の減少を意味する。
【0079】
本明細書に記載される方法は、例えば、細胞または組織における、例えば、細胞または組織、例えば、対象における細胞または組織における、低減した量またはレベルの活性p38タンパク質をもたらす、任意のタイプの阻害剤を用いて実施され得る。特定の実施形態では、p38阻害剤は、p38阻害剤と接触した細胞または組織における活性p38タンパク質(例えば、活性p38-αおよび/またはp38-β)の低減、総p38タンパク質(例えば、総p38-αおよび/またはp38-βタンパク質)の低減、p38 mRNA(例えば、p38-αおよび/またはp38-β mRNA)の低減、および/またはp38タンパク質活性(例えば、p38-αおよび/またはp38-βキナーゼ活性)の低減を引き起こす。特定の実施形態では、p38阻害剤は、p38-αおよび/またはp38-βシグナル伝達経路活性または発現の低減を引き起こす。特定の実施形態では、低減は、p38阻害剤と接触していない同じタイプの細胞または組織におけるレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。細胞における、総p38タンパク質もしくはmRNAレベル、またはp38キナーゼ活性を測定する方法は、当該技術分野において知られている。特定の実施形態では、阻害剤は、p38活性または発現、例えば、mRNAおよび/またはタンパク質発現を阻害または低減する。特定の実施形態では、阻害剤は、p38タンパク質の増加した分解を引き起こし、細胞または組織におけるより低い量のp38タンパク質をもたらす。特定の方法はまた、DUX4またはDUX4下流遺伝子の発現の任意のタイプの阻害剤を利用し得る。特定の例では、阻害剤は、p38-αおよびp38-βタンパク質の両方を阻害するが、他の例では、阻害剤は、p38-αまたはp38-βのいずれかを選択的または優先的に阻害する。特定の実施形態では、阻害剤は、p38-γを阻害しない。
【0080】
開示される方法を実施するために使用され得る阻害剤は、これらに限定されないが、生体分子、(例えば、タンパク質または核酸)、例えば、これらに限定されないが、p38-αもしくはp38-β遺伝子、mRNA、またはタンパク質の発現または活性を低減または減少する作用剤を含む。特定の実施形態では、阻害剤は、生体分子の増加した分解を引き起こすことができる。特定の実施形態では、阻害剤は、競合、未競合、または非競合手段によって生体分子を阻害することができる。例示的な阻害剤としては、これらに限定されないが、核酸、DNA、RNA、gRNA、shRNA、siRNA、変性mRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、タンパク質、タンパク質模倣体、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、小分子、小有機分子、無機分子、化学物質、酵素の結合部位を模倣する類似体、受容体、または他のタンパク質、例えば、シグナル伝達、治療剤、薬学的組成物、薬物、およびこれらの組み合わせに関与するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、これに限定されないが、細胞における機能的タンパク質の量を低減するsiRNAを含む、核酸であり得る。したがって、特定のタンパク質、例えば、p38を「阻害することができる」とされる化合物または作用剤は、任意のタイプの阻害剤を含む。特定の実施形態では、p38阻害剤またはDUX4もしくはDUX4下流標的遺伝子の阻害剤は、本明細書に開示される阻害剤または任意の他の異なるクラスのいずれかである。
【0081】
特定の実施形態では、p38阻害剤(または他の阻害剤)は、comprises a nucleic acid that binds to a p38遺伝子(例えば、MAPK14またはMAPK11遺伝子)またはmRNA(または他の標的遺伝子もしくはmRNA)に結合する核酸を含む。したがって、核酸阻害剤は、標的ポリヌクレオチド配列、例えば、本明細書に開示されるp38-α配列と相補的な配列、またはそのアンチセンスを含み得る。特定の実施形態では、核酸阻害剤は、標的ポリヌクレオチド配列またはそのアンチセンスに対応するか、またはこれと相補的な、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも20、少なくとも24、または少なくとも30ヌクレオチド配列を含む。
【0082】
特定の実施形態では、核酸阻害剤は、細胞に投与される場合、標的遺伝子の発現を減少させる、RNA干渉もしくはアンチセンスRNA剤またはその部分もしくは模倣体、またはモルホリノである。典型的には、核酸阻害剤は、標的核酸分子の少なくとも一部分、もしくはそのオーソログを含むか、または標的核酸分子の相補的鎖の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子の発現は、10%、25%、50%、75%、またはさらに90~100%低減される。
【0083】
「相補的」核酸配列とは、相補的ヌクレオチド塩基対からなる別の核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸配列である。「ハイブリダイズする」とは、好適なストリンジェンシーの条件下で、対合して相補的ヌクレオチド塩基間で二本鎖分子を形成する(例えば、DNAにおいてアデニン(A)はチミン(T)と、グアニン(G)はシトシン(C)と、塩基対を形成する)ことを意味する。(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399、Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい)。
【0084】
「アンチセンス」とは、長さにかかわらず、核酸配列と相補的である、核酸配列を指す。特定の実施形態では、アンチセンスRNAは、個別の細胞、組織、または対象に導入することができ、内因性遺伝子サイレンシング経路に依存しないメカニズムを通して標的遺伝子の低減した発現をもたらす一本鎖RNA分子を指す。アンチセンス核酸は、変性バックボーン、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、または当該技術分野において知られる他のものを含有することができるか、または非天然インターヌクレオシド結合を含有し得る。アンチセンス核酸は、例えば、ロックド核酸(LNA)を含むことができる。
【0085】
本明細書で使用される「RNA干渉」とは、内因性遺伝子サイレンシング経路(例えば、ダイサーおよびRNA誘発性サイレンシング複合体(RISC))を通した標的mRNAの分解による標的遺伝子の発現を減少させる作用剤の使用を指す。RNA干渉は、shRNAおよびsiRNAを含む、様々な作用剤を用いて達成され得る。「短ヘアピンRNA」または「shRNA」とは、RNA干渉(RNAi)を介して標的遺伝子発現をサイレンシングするために使用することができるヘアピンターンを有する二本鎖人工RNA分子を指す。細胞におけるshRNAの発現は、典型的には、プラスミドの送達によって、またはウイルスもしくは細菌ベクターを通して達成される。shRNAは、比較的低速度の分解およびターンオーバーを有する点で、RNAiの有利なメディエーターである。小干渉RNA(siRNA)は、miRNAと同様に、通常は20~25塩基対の長さであり、RNA干渉(RNAi)経路内で機能する、二本鎖RNA分子のクラスである。これは、転写後にmRNAを分解し、翻訳を防止することによって、相補的ヌクレオチド配列を有する特異的な遺伝子の発現に干渉する。特定の実施形態では、siRNAは、18、19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドの長さであり、その3’末端で2塩基オーバーハングを有する。siRNAは、個々の細胞および/または培養系に導入し、標的mRNA配列の分解をもたらすことができる。本明細書で使用される「モルホリノ」とは、標準核酸塩基がモルホリノ環に結合し、ホスホロジアミデート結合を通して結合している、変性された核酸オリゴマーを指す。siRNAおよびshRNAと同様に、モルホリノは、相補的mRNA配列に結合する。しかしながら、モルホリノは、分解について相補的mRNA配列を標的化するのではなく、mRNA転写の立体阻害およびmRNAスプライシングの変更を通して機能する。
【0086】
特定の実施形態では、核酸阻害剤は、細胞に導入され得るメッセンジャーRNAであり、これは、p38または本明細書に開示される他の標的のポリペプチド阻害剤をコードする。特定の実施形態では、mRNAは、例えば、その安定性を増加させるか、またはその免疫原性を低減するために、例えば、1つ以上の変性ヌクレオシドの組み込みによって変性される。好適な変性が当該技術分野において知られている。
【0087】
特定の実施形態では、阻害剤は、p38または本明細書に開示される他の標的のポリヌクレオチドまたはポリペプチド阻害剤をコードする発現カセットを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、遺伝子療法ベクター、例えば、ウイルス遺伝子療法ベクターに存在する。ウイルス遺伝子療法ベクターを含む、様々な遺伝子療法ベクターが当該技術分野において知られており、例えば、AAVベースの遺伝子療法ベクターを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、ポリペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ポリペプチド阻害剤は、p38のような標的ポリペプチドに結合し、よって、その活性、例えば、キナーゼ活性を阻害する。ポリペプチド阻害剤の例は、抗体および断片のような、任意のタイプのポリペプチド(例えば、ペプチドおよびタンパク質)を含む。
【0089】
「抗体」とは、Ig分子の可変領域に配置される、少なくとも1つのエピトープ認識部位を通した、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはポリペプチドのような、標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン(Ig)分子である。本明細書で使用されるとき、用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、それらの断片、例えば、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、一本鎖(scFv)、それらの合成バリアント、天然発生バリアント、必要な特異性の抗原結合断片を有する抗体部分を含む融合タンパク質、キメラ抗体、ナノボディ、および必要な特異性の抗原結合部位または断片を含む免疫グロブリン分子の任意の他の変性された構成も包含する。
【0090】
「断片」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の部分を指す。この部分は、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含有し得る。抗体の「機能的断片」とは、抗体の1つ以上の活性を維持する断片であり、例えば、これは、同じエピトープに結合するか、または抗体の生物学的活性を有する。特定の実施形態では、機能的断片は、抗体に存在する6つのCDRを含む。
【0091】
特定の実施形態では、阻害剤は、標的ポリペプチド、例えば、p38タンパク質の分解を誘導する。例えば、阻害剤は、標的タンパク質の選択的細胞内タンパク質分解を誘導する、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)を含む。PROTACは機能的ドメインを含み、これは共有結合したタンパク質結合分子であってもよく、一方はE3ユビキチンリガーゼに関与することができ、他方は分解を意図した標的タンパク質に結合する。標的タンパク質へのE3リガーゼの動員は、プロテアソームによる標的タンパク質のユビキチン化およびその後の分解をもたらす。特定の実施形態では、阻害剤は、p38タンパク質(例えば、p38-αおよび/またはp38-β)を標的とするPROTACである。
【0092】
特定の実施形態では、阻害剤は、小分子阻害剤、またはその立体異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、同位体濃縮、プロドラッグ、もしくは薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、p38阻害剤は、p38-αおよび/またはp38-βを阻害する。特定の実施形態では、これは、p38-γを有意に阻害しない。特定の実施形態では、p38の小分子阻害剤は、これらに限定されないが、図12Bに示されるものを含む、本明細書に開示される小分子化合物のいずれかを含むが、これらに限定されない。様々なp38阻害剤が知られ、入手可能であり、いくつかは臨床開発されている。これらのいずれかが使用され得る。これらとしては、ARRY-797、VX-745、VX-702、RO-4402257、SCIO-469、BIRB-796、SD-0006、PH-797804、AMG-548、LY2228820、SB-681323、およびGW-856553が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な阻害剤化合物はまた、これらに限定されないが、以下を含む。
N-(4-(2-エチル-4-(m-トリル)チアゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド、
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-6-(1-(2,6-ジフルオロフェニル)ウレイド)ニコチンアミド、
6-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-8-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン、
6-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-2-((1,5-ジヒドロキシペンタン-3-イル)アミノ)-8-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン、
(R)-6-(2-(4-フルオロフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)-2-(o-トリル)ピリダジン-3(2H)-オン、
6-(5-(シクロプロピルカルバモイル)-3-フルオロ-2-メチルフェニル)-N-ネオペンチルニコチンアミド、
5-(2-(tert-ブチル)-4-(4-フルオロフェニル)-1H-イミダゾール-5-イル)-3-ネオペンチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン、
2-(6-クロロ-5-((2R,5S)-4-(4-フルオロベンジル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボニル)-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチル-2-オキソアセトアミド、
1-(3-(tert-ブチル)-1-(p-トリル)-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(2-モルホリノエトキシ)ナフタレン-1-イル)ウレア、
4-((5-(シクロプロピルカルバモイル)-2-メチルフェニル)アミノ)-5-メチル-N-プロピルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-カルボキサミド、
3-(3-ブロモ-4-((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)-N,4-ジメチルベンズアミド、
1-(3-(tert-ブチル)-1-(p-トリル)-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(5-フルオロ-2-((1-(2-ヒドロキシエチル)-1H-インダゾール-5-イル)オキシ)ベンジル)ウレア、
8-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-((1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-4-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン、
5-(2,6-ジクロロフェニル)-2-((2,4-ジフルオロフェニル)チオ)-6H-ピリミド[1,6-b]ピリダジン-6-オン、
(5-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-1-イソブチル-1H-インダゾール-6-イル)((2-(ジメチルアミノ)エチル)-l2-アザネイル)メタノン、および
(R)-2-((2,4-ジフルオロフェニル)アミノ)-7-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アンヌレン-5-オン。
【0093】
本発明の特定の阻害剤化合物は、立体異性形態で存在し得る(例えば、それらは、1つ以上の不斉炭素原子を含有し得るか、またはシス-トランス異性を示し得る)。いくつかの化合物は、2つ以上の不斉炭素原子を含み得る。「立体異性体」とは、1つ以上の不斉炭素原子(複数可)について配向(R/S)が異なるか、または二重結合について配向(シス:トランス)が異なる化合物を指す。立体異性体という用語は、例えば、置換ビフェニル部分を有する化合物における、単結合についての束縛回転から生じるアトロプ異性体も包含し得る。「エナンチオマー」とは、別の化合物の鏡像である化合物であり、すなわち、エナンチオマーの全ての不斉炭素原子は、他の化合物に対して逆の配向(R/S)で存在する。「ジアステレオマー」とは、別の化合物の鏡像ではないが、他の化合物に対して逆の配向(R/S)で存在する1つ以上の不斉炭素原子を含む化合物である。本発明の実施形態は、立体異性体の混合物を含み得るか、または単一の立体異性体を含み得る。単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、キラル試薬で開始するか、または立体選択的もしくは立体特異的合成技法によって調製され得る。あるいは、単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、標準キラルクロマトグラフィーまたは結晶化技法から単離され得る。「同位体濃縮」とは、1つ以上の原子が同位体でその天然存在量を超えて濃縮されている化合物を指す。例えば、重水素の天然存在量は、0.015%である。当業者は、H原子を有する全ての化学的化合物において、H原子が、実際にはHおよびDの混合物を表し、約0.015%がDであることを認識する。同位体濃縮化合物は、H/D比が0.015%よりも大きい1つ以上の特定の化学部位を有し得る。同位体濃縮化合物は、同位体標識と呼ばれ得る。
【0094】
特定の実施形態では、阻害剤は、遺伝子編集系の1つ以上の要素を含む。本明細書で使用されるとき、「遺伝子編集系」という用語は、細胞に導入される場合、内因性DNA配列の標的遺伝子座を変性することができるタンパク質、核酸、またはその組み合わせを指す。本発明の方法における使用に適した多数の遺伝子編集系は、当該技術分野において知られており、これらに限定されないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ系、TALEN系、およびCRISPR/Cas系を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に使用される遺伝子編集系は、CRISPR(クラスター化され、規則的に間隔があいた、短い回帰性反復)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系であり、これは、哺乳動物ゲノム操作に使用することができる細菌系に基づいて操作されたヌクレアーゼ系である。一般的には、系は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(例えば、Casエンドヌクレアーゼ)およびガイドRNA(gRNA)を含む。gRNAは、2つの部分、標的ゲノムDNA配列に特異的であるcrispr-RNA(crRNA)、および標的化された挿入部位でのDNAへのエンドヌクレアーゼ結合を促進するトランス活性化RNA(tracrRNA)からなる。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)と呼ばれる、同じRNAオリゴヌクレオチド中に存在し得る。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、別個のRNAオリゴヌクレオチドとして存在し得る。そのような実施形態では、gRNAは、会合してcrRNA:tracrRNA二本鎖を形成するcrRNAオリゴヌクレオチドおよびtracrRNAオリゴヌクレオチドからなる。本明細書で使用されるとき、「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は、sgRNAまたはcrRNA:tracrRNA二本鎖のいずれかとして存在する、tracrRNAおよびcrRNAの組み合わせを指す。
【0096】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas系は、Casタンパク質、crRNA、およびtracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、二本鎖RNA分子として組み合わされ、gRNAを形成する。いくつかの実施形態では、crRNA:tracrRNA二本鎖は、細胞への導入の前にインビトロで形成される。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、細胞に別個のRNA分子として導入され、crRNA:tracrRNA二本鎖が次いで細胞内に形成される。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAをコードするポリヌクレオチドが提供される。そのような実施形態では、crRNAおよびtracrRNAをコードするポリヌクレオチドが細胞に導入され、crRNAおよびtracrRNA分子が次いで細胞内で転写される。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0097】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、標的挿入部位近くのプロトスペーサーモチーフ(PAM)配列を含み得る、gRNAのcrRNA部分の配列特異性によって標的挿入部位に向けられる。特定のエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)での使用に適した様々なPAM配列が当該技術分野において知られている(例えば、Nat Methods.2013 Nov;10(11):1116-1121およびSci Rep.2014;4:5405を参照されたい)。
【0098】
標的遺伝子座についてのgRNAの特異性は、crRNA配列によって媒介され、これは、標的遺伝子座でDNA配列と相補的、例えば、p38-αまたはp-38-β DNA配列と相補的である約20ヌクレオチドの配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法に使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座のDNA配列と少なくとも90%相補的である。いくつかの実施形態では、本発明の方法に使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座のDNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%相補的である。いくつかの実施形態では、本発明の方法に使用されるcrRNA配列は、標的遺伝子座、例えば、MAPK14またはMAPK11遺伝子のDNA配列と少なくとも100%相補的である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcrRNA配列は、特定の標的遺伝子座または標的遺伝子に特有である標的配列を特定するために、当該技術分野において知られるアルゴリズム(例えば、Cas-OFFファインダー)を用いて、オフターゲット結合を最小化するように設計される。
【0099】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Casタンパク質またはオーソログである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、Streptococcus pyogenes(例えば、SpCas9)、Staphylococcus aureus(例えば、SaCas9)、またはNeisseria meningitides(NmeCas9)から誘導される。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質またはCas9オーソログであり、SpCas9、SpCas9-HF1、SpCas9-HF2、SpCas9-HF3、SpCas9-HF4、SaCas9、FnCpf、FnCas9、eSpCas9、およびNmeCas9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、C2C1、C2C3、Cpf1(Cas12aとも呼ばれる)、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(CsnlおよびCsx12としても知られる)、Cas10、Csyl、Csy2、Csy3、Csel、Cse2、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、およびCsf4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Cas9は、Cas9ニッカーゼ突然変異体である。Cas9ニッカーゼ突然変異体は、1つのみの触媒活性ドメイン(HNHドメインまたはRuvCドメインのいずれか)を含む。
【0100】
特定の態様では、本開示は、組成物、例えば、本明細書に記載される様々なクラスの阻害剤を含む、p38の阻害剤を含む薬学的組成物を含む。本発明は、p38阻害剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物を包含する。糖、多価アルコール、可溶性ポリマー、塩、および脂質のような、担体または希釈剤として一般的に使用される任意の不活性賦形剤は、本発明の組成物において使用され得る。使用され得る糖および多価アルコールとしては、限定なく、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。使用され得る可溶性ポリマーの例は、ポリオキシエチレン、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、およびデキストランである。有用な塩としては、限定なく、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムが挙げられる。使用され得る脂質としては、限定なく、脂肪酸、グリセロール脂肪酸エステル、糖脂質、およびリン脂質が挙げられる。
【0101】
加えて、薬学的組成物は、結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム、プリモゲル)、様々なpHおよびイオン強度のバッファー(例えば、トリス-HCL、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するためのアルブミンまたはゼラチンのような添加剤、洗浄剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール、シクロデキストリン)、滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度増加剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味剤(例えば、スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、フロー助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)、ならびに/またはアジュバントをさらに含み得る。
【0102】
一実施形態では、薬学的組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、徐放製剤のような、p38阻害剤を体からの急速排出に対して保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生物分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体での感染細胞に標的化されたリポソームを含む)を薬学的に許容される塩として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される、当該技術分野で知られる方法に従って調製することができる。
【0103】
加えて、本発明は、p38阻害剤の任意の固体または液体物理的形態を含む薬学的組成物を包含する。例えば、p38阻害剤は、結晶形態であり、非晶質形態であり、任意の粒径を有することができる。粒子は、微粒子化され得るか、または凝集された、粒状顆粒、粉末、油、油状懸濁液、もしくは固体もしくは液体物理的形態の任意の他の形態であり得る。
【0104】
P38阻害剤が不十分な可溶性を示す場合、化合物を可溶化するための方法が使用され得る。そのような方法は、当業者に知られており、これらに限定されないが、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)300、PEG 400、DMA(10-30%)、DMSO(10-20%)、NMP(10-20%)のような、共溶媒を用いる、ポリソルベート80、ポリソルベート20(1-10%)、クレモファーEL、クレモファーRH40、クレモファーRH60(5-10%)、プルロニックF68/ポロキサマー188(20-50%)、ソルトールHS15(20-50%)、ビタミンE TPGS、およびd-a-トコフェリルPEG 1000コハク酸塩(20-50%)のような、界面活性剤を用いる、HP β-CDおよびSBE β-CD(10-40%)のような錯体形成を用いる、ならびにミセル、ポリマーの添加、ナノ粒子懸濁液、およびリポソーム形成のような先進的アプローチを用いる、pH調整および塩形成を含む。
【0105】
p38阻害剤はまた、徐放剤形で投与または同時投与され得る。p38阻害剤は、ガス状、液体、半液体、または固体形態であり、使用される投与経路に適した方法で製剤化され得る。経口投与のために、好適な固体経口製剤は、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、ペレット、サシェおよび発泡剤、ならびに粉末などを含む。好適な液体経口製剤は、溶液、懸濁液、分散液、シロップ、乳濁液、油などを含む。非経口投与のために、凍結乾燥粉末の再構成が典型的には使用される。
【0106】
本明細書に記載される疾患または障害の治療における使用のためのp38阻害剤の好適な用量は、関連技術分野における当業者によって決定され得る。治療的用量は、一般的には、動物試験から誘導される予備的証拠に基づくヒトにおける用量範囲試験を通して特定される。用量は、望ましくない副作用を引き起こすことなく治療的利益をもたらすのに十分であるべきである。投与方法、剤形、および好適な薬学的賦形剤もよく使用され、当業者によって調整され得る。全ての変更および修正は、本特許出願の範囲内で想定される。
【0107】
特定の実施形態では、本開示は、p38ポリペプチドの発現または活性を阻害する(または低減したレベルの活性p38タンパク質をもたらす)作用剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物の単位剤形を含み、単位剤形は、単位剤形が投与される対象における1つ以上の組織における、DUX4ポリペプチド、またはDUX4の下流標的遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現を低減するために有効である。特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、MBD3L2、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、またはKHDC1Lである。特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、KHDC1L、ZSCAN4、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、PRAMEF15、またはZNF280Aである。特定の実施形態では、組織は、筋組織である。特定の実施形態では、組織は、終末分化され、例えば、終末分化された筋組織である。特定の実施形態では、組織は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連した突然変異を含む細胞を含む。特定の実施形態では、作用剤は、p38ポリペプチド(例えば、p38-αまたはp38-β)に結合するか、またはp38ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに結合する。特定の実施形態では、作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、変性mRNA(mmRNA)、shRNA、siRNA、ガイドRNA(gRNA)、マイクロRNA(miRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか、またはこれからなる。他の実施形態では、作用剤は、ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、または抗体もしくはその機能的断片を含むか、これらからなる。他の実施形態では、作用剤は、小分子、任意に有機分子または無機分子を含む。他の実施形態では、作用剤は、遺伝子発現カセット、任意に遺伝子療法ベクター、p38ポリペプチドの発現または活性を阻害するポリヌクレオチドまたはポリペプチド剤を含む。
【0108】
特定の実施形態では、単位剤形は、本明細書に開示される疾患または障害のいずれか、例えば、FSHDを含む、DUX4および/または下流DUX4標的遺伝子の増加した活性または発現と関連した疾患または障害を治療するために、有効量、有効濃度、および/または阻害濃度の、p38阻害剤を含む。
【0109】
「薬学的組成物」とは、特定の疾患または障害の予防および/または治療のために対象および/または細胞に投与または送達することができる1つ以上の作用剤の組成物を含む。
【0110】
「薬学的に許容される」は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なベネフィット/リスク比と相応して、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは混乱なく、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために利用される。
【0111】
「薬学的に許容される担体」は、限定なく、ヒトおよび/または飼育動物における使用に許容されるとして米国食品医薬品局によって承認されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色料、調味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、および/または乳化剤を含む。例示的な薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、ラクトース、グルコース、およびスクロースのような糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースのようなセルロース、およびその誘導体;トラガカンス;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物性および植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油のような油;プロピレングリコールのような、グリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールのような、ポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのような、エステル;アガー;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような、緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬学的製剤に使用される任意の他の適合性物質が挙げられる。任意の従来の培地および/または作用剤が本開示の作用剤と非適合性である限りを除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。補足活性材料はまた、組成物に組み込むことができる。
【0112】
本明細書で使用される「有効量」とは、特定の効果の達成、例えば、細胞、組織、臓器、または対象におけるDUX4-fl mRNAもしくはDUX4タンパク質、または1つ以上のDUX4下流標的のmRNAもしくはタンパク質の低減において有効な作用剤の量を指す。対象の治療的処置の文脈では、有効量は、例えば、対象、例えば、FSHDを有する対象における1つ以上の疾患症状を低減するために有効または十分な量であり得る。特定の実施形態では、低減は、治療の前の、または治療なしの量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%である。
【0113】
本明細書で使用される「有効濃度」は、特定の生理学的効果をもたらすために必要な作用剤および/または組成物の最小濃度(質量/体積)を指す。本明細書で使用されるとき、有効濃度は、典型的には、特定の生理学的効果を増加、活性化、および/または向上するために必要な作用剤の濃度を指す。
【0114】
「阻害濃度」は、特定の生理学的効果を阻害するために必要な作用剤の最小濃度(質量/体積)である。本明細書で使用されるとき、阻害濃度は、典型的には、特定の生理学的効果を減少、阻害、および/または抑制するために必要な作用剤の濃度を指す。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、約1mg/kg~約300mg/kgの投与量で投与され得る。別の実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、約1mg/kg~約20mg/kgの投与量で投与され得る。例えば、作用剤または化合物は、対象に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20mg/kg、または一連の値のいずれかの間、例えば、約10mg/kg~約15mg/kg、約6mg/kg~約12mg/kgなどの範囲内の投与量で投与され得る。別の実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、≦15mg/kgの投与量で投与される。例えば、作用剤または化合物は、合計1週間あたり105mg/kgのために7日間にわたって1日あたり15mg/kgで投与され得る。例えば、化合物は、合計1週間あたり140mg/kgのために7日間にわたって1日あたり2回10mg/kgで投与され得る。
【0116】
多くの実施形態では、本明細書に記載される投与量は、1回の投与量、1日の投与量、または1週間の投与量を指し得る。一実施形態では、作用剤または化合物は、1日あたり1回投与され得る。別の実施形態では、化合物は、1日あたり2回投与され得る。いくつかの実施形態では、作用剤または化合物は、1日あたり3回投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、1日あたり4回投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、1週間あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24回投与され得る。他の実施形態では、化合物は、2週間に1回投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、経口投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される作用剤または化合物は、1日あたり1回≦15mg/kgの投与量で経口投与され得る。
【0118】
使用される実際の投与量は、患者の要件および治療される状態の重症度に応じて異なり得る。特定の状況のための適切な投与量レジメンの決定は、当該技術分野の技術の範囲内である。便宜上、合計1日投与量は、必要に応じて分割され、1日中に少しずつ投与され得る。
【0119】
開示化合物を利用する投与量レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、および医学的状態;治療される状態の重症度;投与経路;患者の腎または肝機能;ならびに使用される特定の開示化合物を含む、様々な因子に従って選択される。当該技術分野の通常の技術を有する医師または獣医師であれば、状態の進行を予防、対抗、または停止するために必要な有効量の薬物を容易に決定および処方することができる。
【0120】
本発明の化合物および/またはその薬学的に許容される塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態、およびサイズ、ならびに治療される症状の重症度のような因子を考慮する担当臨床医の判断に従って調節されるであろう。
【0121】
いくつかの態様では、本発明は、FSHD筋管における、DUX4および下流転写物、MBD3L2の発現および/または活性を低減する小分子および/またはゲノムツール(例えば、小干渉RNA(siRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および遺伝子治療ウイルス)を用いて薬物標的をスクリーニングして特定するために使用される方法に関する。特定の実施形態では、方法は、FSHD細胞、例えば、FSHD1および/またはFSHD2欠損(例えば、突然変異)を含む細胞を含む筋管を、1つ以上の候補作用剤と接触させることと、次いで、候補作用剤と接触した筋管が、陰性対照、例えば、ビヒクルのみと接触した筋管におけるレベルと比較して、低減したDUX4活性、DUX4 mRNAまたはタンパク質の低減したレベル、DUX4によって調節された1つ以上の下流遺伝子の低減した活性、またはDUX4によって調節された1つ以上の下流遺伝子の低減したレベルを有するかを決定することと、を含む。DUX4および/またはDUX4下流遺伝子の低減した活性または発現と関連した候補作用剤が次いで特定され、それが調節する標的が特定され得る。例えば、siRNAの場合、DUX4および/またはDUX4下流標的遺伝子の低減した発現と関連したsiRNAの遺伝子標的は、本明細書に記載されるもののいずれか、例えば、FSHDを含む、DUX4および/または下流DUX4標的遺伝子の異常発現と関連した疾患または障害を治療するための薬物標的として特定される。同様に、小分子の場合、DUX4および/またはDUX4下流標的遺伝子の低減した活性または発現と関連した小分子の薬物標的は、本明細書に記載されるもののいずれか、例えば、FSHDを含む、DUX4および/または下流DUX4標的遺伝子の異常発現と関連した疾患または障害を治療するための薬物標的として特定される。特定の実施形態では、方法は、筋管の物理的または定性的特性を改善するために使用され得る、候補作用剤およびその標的を特定するために、筋管の物理的または定性的特性を評価し、よって、標的を、本明細書に記載されるもののいずれか、例えば、FSHDを含む、DUX4および/または下流DUX4標的遺伝子の異常発現と関連した疾患または障害を治療するための治療標的として特定することによって実施され得る。
【0122】
特定の実施形態では、本開示は、DUX4タンパク質の発現を阻害するか、またはDUX4の下流遺伝子標的によってコードされるタンパク質の発現を阻害する作用剤を特定する方法を含み、方法は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と関連した細胞から調製される筋管を、候補作用剤と接触させることと、筋管におけるDUX4タンパク質、DUX4タンパク質をコードするポリヌクレオチド、DUX4の下流遺伝子標的、またはDUX4の下流遺伝子標的をコードするポリヌクレオチドの発現レベルを決定することと、を含み、候補作用剤は、接触後に決定される発現レベルが、候補作用剤と接触していないか、または陰性対照作用剤と接触したFSHDと関連した細胞から調製される筋管における、DUX4タンパク質または下流遺伝子標的によってコードされるタンパク質の発現レベルと比較して低減する場合、DUX4タンパク質、または下流遺伝子標的によってコードされるタンパク質の発現を阻害する作用剤として特定される。
【0123】
本明細書に記載される方法のいずれかの特定の実施形態では、候補作用剤は、小分子、ポリペプチド、および核酸を含む、本明細書に開示される阻害剤のクラスのいずれかであり得、例えば、候補作用剤は、核酸、任意にDNA、RNA、gRNA、shRNA、miRNA、siRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド;ポリペプチド、任意にタンパク質、ペプチド、タンパク質模倣体、ペプチド模倣体、遺伝子療法ベクター、または抗体もしくはその機能的断片;あるいは小分子、任意に有機分子または無期分子を含むか、またはこれからなる。
【0124】
方法のいずれかの特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、例えば、MBD3L2、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、またはKHDC1Lである。特定の実施形態では、下流標的遺伝子は、例えば、ZSCAN4、LEUTX、PRAMEF2、TRIM43、MBD3L2、KHDC1L、RFPL2、CCNA1、SLC34A2、TPRX1、PRAMEF20、TRIM49、PRAMEF4、PRAME6、またはPRAMEF15である。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかは、潜在的な候補作用剤のライブラリーをスクリーニングすることによって行われる。特定の実施形態では、方法は、高スループットアッセイを用いて行われる。
【0126】
特定の実施形態では、方法は、成熟患者由来FSHD筋管を用いて行われる。
【0127】
一実施形態では、小分子のライブラリーは、FSHD筋管におけるDUX4または標的遺伝子発現または活性の標的調整剤をスクリーニングするために使用される。処置の前の3日、細胞は、骨格筋成長培地(PromoCell、C-23060)、20%FBSおよびPen/Strep(Gibco、15140148)を有するゼラチン化96ウェルプレートにおいてウェルあたり15,000個の細胞で播種する。処置の日、培地は、20%ノックアウト血清置換(Gibco、10828010)またはNbActiv4培地(BrainBits Nb4-500)およびPen/Strepが補足された骨格筋細胞分化培地(PromoCell、C-23061)に変更される。p38調節剤は、所望の濃度で、分化FSHD筋管を含有する培養培地に添加され、3~4日間インキュベーターにおいて培養される。筋管は、インキュベーターから取り出され、RNAは、RNeasy Micro Plus Kit(Qiagen Cat No./ID:74034)を用いて抽出される。cDNAは、Taqman Gene Expressionアッセイについて抽出されたRNAから調製されて、DUX4または下流標的遺伝子発現が測定される。POL2RA転写物は、内因性対照として使用される。
【実施例0128】
以下の実施例に記載される試験を、以下に記載される材料および方法を用いて行った。
略語
ASO アンチセンスオリゴヌクレオチド
DAPI 4’,6-ジアミド-2-フェニルインドール(二塩酸塩)
DMSO ジメチルスルホキシド
DUX4 ダブルホメオボックス4
DUX4-fl ダブルホメオボックス4全長
FSHD 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
Grna ガイドRNA
MBD3L2 メチルCpG結合ドメインタンパク質3様2
MHC ミオシン重鎖
MPAK14 マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ14
mRNA メッセンジャーRNA
MYOG ミオゲニン(筋原性因子4)
p HSP27 リン酸化ヒートショックタンパク質27
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
pLAM ポリアデニル化シグナル配列
POLR2A RNAポリメラーゼIIサブユニットA
qPCR 定量ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
sgRNA シングルガイドRNA
siRNA 小干渉RNA
【0129】
一般的な材料および方法
ヒト骨格筋筋芽細胞:
FTCE-00016-01(不死化FSDH筋芽細胞株、6.3反復)および同系株A4対照健康正常、およびC12 FSHD筋芽細胞を、全ての試験に使用した(Mamchaoui et al.,2011、Thorley et al.,2016に記載の通り)。4つの別個の初代患者筋芽細胞株、FTCE-016、-020、-197、-196がR.Tawilより提供された。FSHD筋芽細胞は、染色体4q35上のD4Z4の脱メチル化を介して異常DUX4を発現することが示された。
培地成分および組織培養材料は以下を含む。
【0130】
15%FBS(Hyclone、SH30071)およびPen/Strep(Gibco、15140148)が補足されたSkeletal Muscle Growth Medium(PromoCell、C-23160)。NbActiv4(BrainBits Nb4-500)およびPen/Strep(分化培地)。EmbryoMax 0.1% Gelatin Solution(EMDmillipore ES-006-B)。PBS(Gibco、10010023)、組織培養処理96ウェルマイクロプレート(Corning、CLS3595)、TC-Treated Multiwell Cell Culture Plat(Falcon、353046)。
【0131】
リアルタイムPCR試薬およびキット:
溶解バッファー-Roche Realtime Ready溶解バッファー19.5μL(20μLについて)(Roche、07248431001)、DNAse I(Ambion、AM2222)0.25μL、Protector RNase Inhibitor(Roche、3335402001)0.25μL、RNeasy Micro Kit(Qiagen、74004)、Taqman Preamp Master Mix(ThermoFisher Scientific、4391128)、Taqman Multiplex Master Mix(ThermoFisher Scientific、4484262)、ZSCAN4 Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs00537549_m1、FAM-MGB)、MYOG Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs01072232_m1、JUN-QSY)、RPLP0 Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs99999902_m1)、およびLEUTX Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs00418470_m1)。
【0132】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO):
ASOは、Exiqonから購入した。FTSE-000001(ExiqonからのDUX4 ASO、CAGCGTCGGAAGGTGG(配列番号18)、300610))、および非標的化ASO(Exiqon、AACACGTCTATACGC(配列番号19)、300610)。
【0133】
組織培養皿のゼラチンコーティング:
処置の3日前に行い、1gのゼラチン(例えば、Sigma G9391)および1Lの組織培養グレード水を組み合わせることによって0.1%ゼラチン溶液を作製し、30分間オートクレーブして溶解し、滅菌した。皿をコーティングするために十分な0.1%ゼラチンを、滅菌ピペットを用いて適用し、次いで溶液を吸引し、皿を空気乾燥し、室温で保存した。
【0134】
細胞播種:
処置の3日前に行い、ウェルあたり10,000個の細胞をゼラチン化96ウェルプレートに、または100,000個の細胞をゼラチン化6ウェルプレートに播種した。
【0135】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび化合物処置:
ASOまたは化合物処置について、細胞を、ASOまたは化合物を記載される濃度で含有する100μLのPromocell成長培地に播種した。
【0136】
骨格筋筋管分化:
0日目、培地を分化培地に変更する。プレートをインキュベーターから取り出し、成長培地を吸引し、プレートを、96ウェルには100μLおよび6ウェルプレートには1mLのPBSで1回洗浄し、96ウェルまたは6ウェルにそれぞれ、ウェルあたり100μLまたは2mLの分化培地を添加した。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは薬物を所望の濃度で添加し、プレートをインキュベーターに戻し、3~4日間インキュベートした。
【0137】
RNA調製:
細胞をインキュベーターから取り出し、培地を吸引した。細胞を以下のプロトコルのうちの1つに従って迅速に溶解し、96ウェルプレートにおける溶解について、直接溶解および1ステップRT-Preamp qPCRを以下に記載されるプロトコルに従って行った。各96ウェルについて、混合物は以下を含有する。19.5μLのRoche Realtime Ready溶解バッファー、0.25μLのRNAse阻害剤、0.25μLのDNAseI(キットに含まれるものではなくThermoからのもの)を調製した。20μLの混合物を各ウェルに添加し、5回混合し、5分RTでインキュベートするか、またはあるいは15分間激しく振盪した。溶解を顕微鏡下で観察した。試料を-80℃で少なくとも15分間冷凍した。
【0138】
qPCR1ステップ:
qPCRについて、細胞溶解物を1:10に希釈し、GAPDH、RPLP0、TBP、MYOG、FRG1、MYH3、ACTN2などの検出のために10μLの1ステップRT-qPCR反応に2μLを使用した。10μLの反応あたり、反応混合物は以下を含んだ。2μLのRNA(1:10希釈溶解物)、5μLのFast Advanced Taqman Master Mix(2倍)、0.25μLのRT酵素混合物(40倍)、0.5μLのTaqmanプローブセット(20倍)、および2.25μLのH20。以下の反応プロトコルをQuantStudio 7で実行し、48℃15分間、50℃2分間、95℃30秒間、40回、95℃5秒間、60℃30秒間、その後プレートを製造業者(Thermo)によって指定されるように読み取った。
【0139】
1ステップRT-前増幅をDUX4下流遺伝子、すなわち、MBD3L2、ZSCAN4、LEUTX、TRIM43、KHDC1Lの検出に使用し、POL2RA-VICを内因性対照として使用した。10μLの反応あたり、反応混合物は以下を含んだ。2.25μLのRNA(1:10希釈溶解物)、5μLのTaqman Pre-Amp Master Mix(2倍)、0.25μLのRT酵素混合物(40倍)、2.5μLのTaqmanプローブセット(0.2倍)*。*プールについてTaqMan Assays、等体積の各20倍TaqMan(登録商標)Gene Expression Assayを使用し、最大100個のアッセイを組み合わせた。例えば、50個のTaqManアッセイをプールするために、10μLの各アッセイを微小遠心管において組み合わせた。各アッセイが0.2倍の最終濃度であるように、1倍TEバッファーを用いて、プールされたTaqManアッセイを希釈した。上記例について、1mLの総最終体積のために500μLの1倍TEバッファーをプールされたTaqManアッセイに添加した。QuantStudio7プロトコルを48℃15分、95℃10分、10サイクル:95℃15秒、60℃4分、4℃無限で使用した。試料を次いで50μLに希釈し、qPCRステップを継続した。10μLの反応あたり、反応混合物は以下を含んだ。2μLのPreamp希釈物、5μLのFast Advanced Taqman Master Mix(2倍)、0.5μLのTaqmanプローブセット(20倍)、および2.5μLのH20。多重化する場合、体積を合計10μLに調整した。以下のプログラムをQuantStudio7で実行し、50℃2分間、95℃30秒間、40回、95℃5秒間、60℃30秒間、プレートを製造業者の仕様書(Thermo)に従って読み取った。
【0140】
RNeasy Micro Plus Kitを使用する筋管からの総RNA抽出のための方法:
6ウェルプレートにおいて、450μLのBuffer RLT Plusを添加した。溶解物を、2mL収集管(供給)に配置されたgDNA Eliminatorスピンカラムに溶解物を移すことによってホモジナイズし、カラムを30秒間≧8000xg(≧10,000rpm)で遠心分離し、次いでフロースルーを保存しながらカラムを廃棄した。250μLのエタノール(最終35%)をフロースルーに添加し、ピペット操作によって十分に混合した(遠心分離しなかった)。次いで試料を、形成され得る任意の沈殿物を含み、2mL収集管(供給)に配置されたRNeasy MinEluteスピンカラムに移した。カラムを15秒間≧8000xgで遠心分離した。フロースルーを廃棄またはタンパク質沈殿のために収集した。700μLのBuffer RW1をRNeasy MinEluteスピンカラムに添加し、これを次いで15秒間≧8000xgで遠心分離し、この後フロースルーを廃棄した。10μLのDNAseIを70μLのBuffer RDDと穏やかに混合することによってDNAse処置を行い、得られた溶液をカラムに直接添加し、これを室温で20分間インキュベートした。次いで、700μLのBuffer RW1を(製造業者の仕様書に従って)RNeasy MinEluteスピンカラムに添加し、カラムを15秒間≧8000xg.で遠心分離し、フロースルーを廃棄した。500μLのBuffer RPEをRNeasy MinEluteスピンカラムに添加し、これを次いで15秒間≧8000xgで遠心分離し、この後フロースルーを廃棄した。500μLの80%エタノールをRNeasy MinEluteスピンカラムに添加し、カラムを2分間≧8000xgで遠心分離してスピンカラムメンブレンを洗浄し、収集管をフロースルーと共に廃棄した。RNeasy MinEluteスピンカラムを新たな2mL収集管(供給)に配置し、最高速度で5分間遠心分離してメンブレンを乾燥させ、収集管をフロースルーと共に廃棄した。RNeasy MinEluteスピンカラムを新たな1.5mL収集管(供給)に配置した。14μLのRNaseフリー水をスピンカラムメンブレンの中心に直接添加し、これを次いで1分間最高速度で遠心分離してRNAを溶出した。約12μLのRNAを溶出した。
【0141】
Himeda et al.2015によって記載される方法を用いるDUX4-flの検出:
cDNA調製。10μLの反応物は、1μLのRNA(1μg)、0.5μLのOligo dT、0.5μLの10mM dNTP、および4.5μLのH20を含んだ。反応試料を65℃で2分間インキュベートし、氷に迅速に移し、少なくとも1分保持した後、2μLの5倍First strand Buffer、0.5μLの0.1M DTT、0.5μLのRNAse阻害剤、0.5μLのSSIV RTを含んだ、酵素混合物を添加した。試料を55℃で20分間および80℃で10分間インキュベートし、続いて4℃まで冷却した。1μLのRT反応、2μLの5倍GCバッファー、0.8μLのDMSO、0.2μLの10mM dNTP、0.2μLの10μM TJ38F、0.2μLの10μM TJ40R、0.1μLのPhusion II DNA pol、および5.5μLのH20を含有する10μLの反応混合物においてDUX4前増幅を行った。以下のプロトコルをQuantStudio 7で実行した。98℃2分、10サイクルの98℃、15秒、64℃、20秒、72℃、15秒、および4℃無限。
【0142】
ネステッドプライマーでのDUX4 qPCRを、1μLのDUX4前増幅DNA、5μLの2倍IQ SYBR Mix、0.4μLの10μM TJ38F、0.4μLの10μM TJ41R、および3.2μLのH20を含有する10μLの反応物において行った。以下のプロトコルをQuantStudio7で実行し、95℃3分、40サイクルの、95℃10秒、64℃15秒、72℃20秒、86℃10秒、次いでプレートをQuantStudio7で製造業者の指示(Thermo)に従って読み取った。Ct値をQuantStudio Realtime PCRソフトウェアから抽出し、Genedataを使用して、POLR2Aをハウスキーピング遺伝子として用いる発現の相対レベルを計算した。
【0143】
RNAseq方法:
Illuminaからの40bpシングルエンドリードは、FastQCでチェックすることによって良好な品質を有した(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)。「solexa1.3-quals」モードおよび「no-novel-juncs」としてのオプションでTopHat v2.1.1(Kim et al.,2013)を用いて、リードをhg19にマップした。gtf形式の既知のGeneをkgXrefテーブルと統合することによって、TopHatの遺伝子モデルを作製した。既知の遺伝子およびkgXrefの両方をhg19アセンブリにおけるUCSCテーブルブラウザからダウンロードした。鎖状性オプションを-r2としてSubreadパッケージからの特徴Counts機能を用いてリード数を得た。リードをDESeq2で正規化した(Love et al.,2014)。
【0144】
FSHD筋管免疫細胞化学:
簡潔に、細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で10分間室温で透過処理した。細胞を、PBST(0.1%Triton X-100を含む1倍PBS溶液)で透過処理した後、PBST中の10%Normal Donkey Serumまたは3%BSA(NDS)でブロックした。細胞を次いで、5%NDSを含むPBST中の適切に希釈された一次抗体と1時間室温で、または12時間4℃でインキュベートし、PBSTで3回室温で洗浄し、次いで5%NDSおよびDAPIを含むTBST中の所望の二次抗体とインキュベートして、核をカウンターストレインした。分化FSHD筋管においてE5-5抗体を用いる免疫細胞化学によってDUX4を検出した。市販の抗体を用いて活性化カスパーゼ-3を検出した(https://www.cellsignal.com/products/primary-antibodies/cleaved-caspase-3-asp175-antibody/9661)。
【0145】
RNAseq方法:
Illuminaからの40bpシングルエンドリードは、FastQCでチェックすることによって良好な品質を有した(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)。TopHat v2.1.1を用いてリードをhg19にマップした。gtf形式の既知のGeneをkgXrefテーブルと統合することによって、TopHatの遺伝子モデルを作製した。既知の遺伝子およびkgXrefの両方をhg19アセンブリにおけるUCSCテーブルブラウザからダウンロードした。鎖状性オプションを-r2としてSubreadパッケージからの特徴Counts機能を用いてリード数を得た。リードをDESeq2で正規化した。異なる時間で処理された、ニューロン試料におけるバイオロジカルレプリケートは、主成分分析によって示されるようにバッチ効果を有した。結果的に、このバッチ効果を低減するためにCombatを使用した。標準RPKM発現値を計算した。総遺伝子シグネチャーは、非常に小さく、標準統計カットオフ:86/19,799mRNA遺伝子で定義された。DUX4調節遺伝子シグネチャーは、総シグネチャー:77/86mRNA遺伝子=90%のマジョリティーであった。非DUX4調節遺伝子は、中度倍率変化:9/86mRNA遺伝子=10%、2~2.7倍logFCを有する総シグネチャーのマイノリティーであった。
【0146】
FSHD筋管のsiRNAおよびCas9/sgRNA RNP形質導入のための方法:
合成crRNAsは、Thermo Fisher Scientificから購入し、tracrRNAへのアニーリングは、仕様書に従って行った。要するに、crRNAおよびtracrRNAをTEバッファーに100μMで再懸濁し、混合し、アニーリングバッファーで5倍に希釈した。アニーリングを、ProFlex PCRシステムにおいて製造業者の推奨に従って行った。100ngのアセンブルされたcrRNA:tracrRNAを、500ngのTrueCut Cas9(ThermoFisher、#A36497)と、Neonトランスフェクションシステムキット(ThermoFisher、#MPK10096)と共に提供される再懸濁バッファー中でインキュベートした。15分のインキュベーション後、記載される方法に従って、反応を使用して50,000個の筋芽細胞をトランスフェクトした。MAPK14(3つのsgRNA)およびpLAM領域(DUX4のポリアデニル化配列、4つのgRNA)の標的化に使用される配列は、NT-CTRL、GTATTACTGATATTGGTGGG(配列番号8)、MAPK14、GCTGAACAAGACAATCTGGG(配列番号9)、CTGCTTTTGACACAAAAACG(配列番号10)、CTTATCTACCAAATTCTCCG(配列番号11)、pLAM、AGAATTTCACGGAAGAACAA(配列番号12)、CAGGTTTGCCTAGACAGCGT(配列番号13)、ATTAAAATGCCCCCTCCCTG(配列番号14)、AATCTTCTATAGGATCCACA(配列番号15)、およびsiRNA MAPK14、アンチセンス:UAGAUUACUAGGUUUUAGGTC(配列番号16)、センス:CCUAAAACCUAGUAAUCUATT(配列番号17)であった。
【0147】
インビボ材料および方法
PK/PD試験のためのラット:
雄Sprague Dawleyラット(6~8週齢)は、Hilltop Lab Animals,Inc.(USA)によって供給された。Wuxi AppTecへの到着後、動物は、獣医科スタッフまたは他の指定要員のメンバーによってそれらの一般的な健康状態について評価された。動物は、試験の開始前に少なくとも2日間(WuXi AppTecへの到着後)順応させた。動物は、順応中および試験全体を通して個別に収容した。動物室環境は、施設操作(目標条件:温度20~26℃、相対湿度30~70%、12時間サイクルの光オンオフ)に従って制御した。光、温度、および相対湿度を、AmegaView Environmental Monitoring Systemによって常にモニターした。飼料(Certified Rodent Diet #5002、PMI Feeds,Inc.、Brentwood、MO)は、二重パッケージの照射ペレットであり、飼料ロット番号および仕様書は、試験ノートブックに記録し、WuXi AppTecに保存する。水(逆浸透)を動物に自由に提供した。水質の周期分析を行い、結果をWuXi AppTecで保存した。検出レベルで、試験の結果に干渉することが予想される飼料または水に既知の汚染はない。試験#FULTH-20171120では、ラットは薬物投与の前に一晩絶食させ、ラットはいつでも水への自由なアクセスが可能であり、投薬後4時間で摂食させた。試験#FULTH-20171228について、ラットは、試験全体を通して飼料および水への自由なアクセスが可能であった。
【0148】
異種移植片試験のためのマウス:
雄NOD.Cg-Rag1tm1Mom Il2rgtm1Wjl/SzJ(Nod-Rag)マウス(6~8週齢)は、University of Maryland VR繁殖コロニー(USA)によって供給された。動物は、University of MarylandのHoward HallのUMB中心動物施設に収容した。動物は、順応(4~5日)中、生着手順全体を通して、薬物治療試験全体を通して群収容(4/ケージ)した。動物室環境は、施設操作(目標条件:温度20~26℃、相対湿度30~70%、12時間サイクルの光オンオフ)に従って制御した。光、温度、および相対湿度を、AmegaView Environmental Monitoring Systemによって常にモニターした。飼料(LabDiets 5P76 22.5%タンパク質齧歯類チャウ)を試験中自由に提供した。滅菌水を自由に提供した。試験の結果に干渉することが予想された飼料または水に既知の汚染はない。
【0149】
FSHDおよび対照異種移植マウスの作製:
C6およびA4 IPSC由来ヒト不死化同系筋芽細胞株を、約8週齢雄Nod-Ragマウスの両側前脛骨(TA)筋に異種移植することによって、FSHDおよび対照マウスを生成した。ヒト筋肉異種移植片を作製するために、マウス後肢のTA内のA4またはC6細胞を播種するためのニッチを、8週齢免疫欠損NRGマウスの後肢にX線を照射することによって作製し、マウス筋肉再生を防止した。1日後、50ulの2%BaCl2溶液を各TAの長さに沿って注射して、マウス筋組織を除去した。マウス組織アブレーション後、2x106個のC6細胞を各両側TA領域に注射し、4週間発生させた。A4またはC6細胞の生着後、Sakellariou et al.,2016によって記載されるようにヒト細胞の生着を改善させるために、動物を4週間の間欠神経筋電気刺激(iNMES)に曝露した。
【0150】
試験物品製剤および調製
適切な量のFTX-1821を正確に計量し、水中の適切な体積の賦形剤(0.5%(1%DMSO:99%メチルセルロース)と混合して、0.03mg/mLの最終濃度を含む均一懸濁液を得た。製剤を試験日に調製し、調製の1時間以内に投与した。動物に与えられる用量体積は、10mL/kgであった。2つの用量溶液の20~50μLアリコートを各製剤から取得し、LC-MS/MSによる用量正確性の決定のために取っておく。
【0151】
適切な量のFTX-2865を正確に計量し、適切な体積の注射のための滅菌0.9%食塩水と混合して、1mg/mLの最終濃度を有する透明溶液を達成した。製剤を試験日に調製し、10mL/kgの用量体積を用いて動物に与えた。
【0152】
FTX-1821試験物品投与およびPK/PD試験設計
FTX-1821(0.03mg/mL)の投与溶液を、Wuxi施設SOP後、0.3mg/kgの最終用量をもたらすために、10mL/kgの用量体積で強制経口投与した。用量体積を、投与の前に測定された体重によって決定した。それぞれの治療群の投与溶液濃度(mg/ML)、用量体積(mL/kg)、および最終用量(mg/kg)を、含まれるエクセル試験シートに記録した。摂食条件:一晩絶食し、投与4時間後に食物を戻す。
【0153】
FTX-2865試験物品投与および異種移植片試験設計
FTX-2865(1mg/mL)の投与溶液を、(各用量について)10mg/kgの最終用量をもたらすために、10mL/kgの用量体積でのIP注射を介して投与した。0.9%の滅菌食塩水を、(各用量について)ビヒクル対照として10mL/kgの用量体積でのIP注射を介して投与した。用量体積を、朝の投与の前に測定された体重によって決定した。それぞれの治療群の投与溶液濃度(mg/ML)、用量体積(mL/kg)、および最終用量(mg/kg)を、含まれるエクセル試験シートに記録した。BID注射を、標的カバレッジを最大化するために、約12時間あけた。試験動物は、ビヒクルまたはFTX-2865の合計14個の注射を8日かけて受け、8日目の最後の朝の注射の約1時間後に犠死させた。
【0154】
試料収集:
PKのための血液試料:約100μlの血液試料を、予め定義された各時点で頸静脈または尾静脈を介して得た。血液試料を、抗凝固剤としてEDTA-K2で処置された予め冷却された収集チューブに入れた。
【0155】
PK評価のための血漿収集:血漿収集のために半時間以内にPK血液試料を4℃、3000gで15分間遠心分離した。血漿試料を、ポリプロピレンチューブまたは96ウェルプレートに保存し、ドライアイス上で迅速に凍結し、LC/MS/MS分析まで-70℃で保存した。
【0156】
PKおよびPD評価のための筋肉収集:心臓穿刺による血液収集後、両側前脛骨筋および僧帽筋を収集した。左および右側からの各筋肉を迅速に別々に計量し、別個のチューブに配置し、次いでドライアイス上で急速冷凍した。一方の側からの筋肉を化合物濃度の測定に使用し、他方の側からの筋肉をPD分析のためにスポンサーへ送った。試料収集が1日の終わりにほぼ同じ時間に行われるように、投与をずらした。
【0157】
PK分析のための試料処理:
LC/MS分析のための血漿試料調製:10μLの血漿試料のアリコートは、150μLのIS溶液(ACN中の100ng/mLのラベタロールおよび100ng/mLのトルブタミドおよび100ng/mLのジクロフェナク)で沈殿させたタンパク質であり、混合物は、十分にボルテックス混合し、4000rpmで15分間4℃で遠心分離した。80μLの上清のアリコートを試料プレートに移し、80μLの水と混合し、次いでプレートを800rpmで10分間振盪した。1μLの上清を次いでLC-MS/MS分析のために注射した。LC/MS分析のための筋肉試料調製:筋肉試料を、Omniビーズ破砕機を用いて水中で1:4比(重量/体積)にホモジナイズした。ホモジネートを次いで薬物濃度の測定のために使用した。20μLの筋組織ホモジネートのアリコートは、200μLのIS溶液(ACN中の100ng/mLのラベタロールおよび100ng/mLのトルブタミドおよび100ng/mLのジクロフェナク)で沈殿させたタンパク質であり、混合物は、十分にボルテックス混合し、4000rpmで15分間4℃で遠心分離した。80μLの上清のアリコートを試料プレートに移し、80μLの水と混合し、次いでプレートを800rpmで10分間振盪した。0.3μLの上清を次いでLC-MS/MS分析のために注射した。
【0158】
分析方法(LC/MS、非GLP):
分析方法を実行するために使用される技術的詳細は以下を含む。装置:LCMS Triple Quad QTRAP 6500+(SCIEX、MA、USA)、マトリックス:雄SDラット血漿(EDTA-K2)、内部標準(複数可):CAN中100ng/mLのラベタロールおよび100ng/mLのトルブタミドおよび100ng/mLのジクロフェナク、MS条件ESI:陽性、FTX-1821のSRM検出:[マウス+ヒト]+m/z383.838>299.231、ラベタロール(IS):[M+H]+m/z329.2/162.1、トルブタミド(IS):[M+H]+m/z271.1/155、較正曲線:雄SDラット血漿(EDTA-K2)および筋肉ホモジネートにおけるFTX001821-02の1.00~3000ng/mL
定量化方法:試料中および標準溶液試料中の試験物品のピーク面積を、LC/UVまたはLC-MS/MS方法によって決定した。方法受容基準:線形性:≧75%のSTDを、生物流体におけるそれらの公称値の±20%(LLOQについて±25%)以内ならびに組織ホモジネートおよび排泄物試料におけるそれらの公称値の25%(LLOQについての30%)以内に逆算した。QC:≧67%のすべてのQCを、生物流体についてそれらの公称値の±20%以内ならびに組織および排泄物試料についてそれらの公称値の25%以内に逆算した。特異性:単一の空のマトリックスにおける分析物の平均計算濃度は、LLOQの0.5倍未満であった。感受性:生物流体および組織ホモジネートにおけるLLOQは、1~3ng/mLであった。キャリーオーバー:最も高い標準注射の直後の単一の空のマトリックスにおける平均計算キャリーオーバー濃度は、LLOQ未満であった。
【0159】
標的関与の免疫アッセイ評価のための筋組織の凍結割断、溶解、および調製のプロトコル:
約50mgの筋組織をドライアイス上に配置した。標本あたり1つの清潔なレーザーブレードを用いて50mg重量を得るために必要に応じて、筋肉試料を切断した。50mgの筋組織を予めラベル付けしたTT1 Covarisバッグ(Covaris、MA、USA)に入れ、ドライアイス上に保持した。TT1 Covarisバッグを液体窒素に浸漬させ、試料をCovaris cryoPREP(Covaris,MA,USA)において設定「5」で凍結割断した。TT1バッグを180°回転し、2-aステップを反復した。試料を予め計量/ラベル付けしたチューブに移し、全ての試料が調製されるまでドライアイス上に維持した。試料重量を記録した。RIPA溶解バッファーを調製した(R0278-500ML、Sigma、MO、USA)。10mlについて、2つのRoche PhosSTOPホスファターゼ阻害剤錠剤および1つのRoche EDTAフリープロテアーゼ阻害剤錠剤を添加した。凍結割断材料に、1mgあたり8μlのRIPAバッファーを各チューブに添加し、溶解物が均質になるまで各チューブをボルテックスした。全ての試料が処理されるまで、溶解物を氷上に維持した。溶解物を13,000gで5分間4℃での遠心分離によって除去した。上清を新しいチューブに移し、液体窒素で急速冷凍した(タンパク質アッセイあたり10μlを取っておく)。各試料のタンパク質含有量を測定するために、Bradford DCタンパク質アッセイ(5000112、Bio-Rad、CA、USA)を行った。試料を、タンパク質評価のためにPBSで1:20に希釈した。
【0160】
ホスホMK2および総MK2免疫アッセイ:
ホモジナイズされた僧帽筋溶解物を、内部開発されたMeso Scale Discovery(MSD)多重化ホスホMK2/総MK2免疫アッセイ(Meso Scale Diagnostics、MD、USA)を用いて評価した。各試料について、50μgのタンパク質に等しい、50μLの筋溶解物をMSDアッセイ上に装填した。筋溶解物におけるタンパク質濃度を、上記で記載されるBradford DCタンパク質アッセイによって決定した。試料を二通りに評価した。筋試料を予めコーティングしたMSDプレート上で一晩4℃で、オービタルシェーカー(300rpm)上でインキュベートし、翌朝評価した。
【0161】
筋組織の凍結割断、RNA抽出、およびRNA精製ならびに
MBD3L2およびCDKN1Bの定量的PCRアッセイ評価:
約3~5mgのTA筋組織をドライアイス上に配置した。筋組織を予めラベル付けしたTT1 Covarisバッグ(Covaris,MA,USA)に入れ、ドライアイス上に保持した。TT1 Covarisバッグを液体窒素に浸漬させ、試料をCovaris cryoPREP(Covaris,MA,USA)において設定「5」で凍結割断した。TT1バッグを180°回転し、2-aステップを反復した。試料を予め計量/ラベル付けしたチューブに移し、全ての試料が調製されるまでドライアイス上に維持した。RNAは、3~5mgの凍結割断筋組織からのZymo Direct-zol microprep RNAキット(CA,USA)を用いる精製であった。cDNAは、逆転写を介してRNAテンプレートから合成した。標的化された転写物を次いで、希釈ヒト特異的TaqManプローブを用いる14サイクルPCRアッセイで予め増幅した。遺伝子発現を、ヒト特異的TaqManプローブを用いるqPCRアッセイにおいて分析した。相対発現レベルを、2-ΔCt方法を用いてCDKN1B発現に対して正規化した。
【0162】
データ分析:
血漿および筋肉濃度対時間を、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェア(Cetera,NJ,USA)を用いて非コンパートメントアプローチによって分析した。C0、CLp、Vdss、Cmax、Tmax、T1/2AUC(0-t)、AUC(0-inf)、MRT(0-t)、MRT(0-inf)、%F、ならびに筋肉濃度対時間プロファイルおよびPDエンドポイントのグラフは、GraphPad Prizmソフトウェアバージョン7(CA,USA)を用いて報告される。筋肉PDを、GraphPad Prizmソフトウェアバージョン7(CA,USA)を用いて一元配置分散分析を介して評価した。異種移植筋肉におけるMBD3L2 mRNAに対するC6対A4細胞生着の効果を、GraphPad Prizmソフトウェアバージョン7(CA,USA)を用いて両側T検定を介して評価した。FSHD異種移植筋肉におけるMBD3L2 mRNAに対するFTX-2865対ビヒクル治療の効果を、GraphPad Prizmソフトウェアバージョン7(CA,USA)を用いて両側T検定を介して評価した。
【0163】
実施例1
配列指向性アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するDUX4の抑制は下流標的遺伝子を低減する
野生型筋管を、DMSO対照ビヒクルで治療し、DUX4タンパク質を発現する成熟患者由来FSHD筋管を、DMSOビヒクル対照またはExiqonから購入した1μMのDUX4配列指向性アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO、FTX-2)で治療した。治療後、筋管を、19.55μLのRoche Real Time Ready Lysis Buffer、0.25μLのDNAse1(Ambion、AM2222)、0.25μLのProtector RNase Inhibitor(Roche、3335402001)に溶解し、RNAを、RNeasy Micro Kit Master Mixに収集した。DUX4調節下流遺伝子(ZSCAN4、TRIM43、MBD3L2、LEUTX、およびKHDC1L)の発現レベルを、リアルタイムPCR(ThermoFisher Scientific、4484262)、ZSCAN4 Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs00537549_m1、FAM-MGB)、MYOG Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs01072232_m1、JUN-QSY)、RPLP0 Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs99999902_m1)、および/またはLEUTX Taqman Assay(ThermoFisher Scientific、Hs00418470_m1)によって決定した。Ct値をQuantStudio Realtime PCRソフトウェアから抽出し、Genedataを使用して、POLR2Aをハウスキーピング遺伝子として用いる発現の相対レベルを計算した。
【0164】
結果は、DUX4配列指向性ASOで治療されたFSHD筋管が、DMSOビヒクル対照で治療されたFSHD筋管と比較して、低減した量のDUX4ならびにDUX4下流転写因子標的遺伝子、ZSCAN4、TRIM43、MBD3L2、LEUTX、およびKHDC1Lを発現することを示した(図2)。
【0165】
図3Aにおけるデータは、DMSO対照または1 μMのDUX4 ASOで治療されたFSHD筋管、および健康な正常同系対照筋管におけるMBD3L2 mRNAの発現を比較する、群化されたプレート品質管理データである。図3Bは、DUX4 ASOの異なる希釈を用いる、DUX4および下流遺伝子、MBD3L2の薬理学的品質管理データおよび用量依存性低減を示す。図3Cは、WTに対してDMSOで治療されたFSHD筋管(Z’は0.512であり、信号対雑音(S/N)は5.1である)、およびDMSOまたはDUX4 ASOで治療されたFSHD筋管(Z’は0.319であり、信号対雑音(S/N)は4.6である)を比較するプレートベースアッセイ統計を示す。
【0166】
実施例2
P38小分子阻害剤はMBD3L2 MRNA発現を低減する

DUX4タンパク質を発現する野生型筋管および成熟患者由来FSHD筋管を、DMSOビヒクル対照または複数の濃度の、SB239063(図4A)、VX-702(図4B)、パマピモド(図4C)、およびTAK-715(図4D)を含む、異なる範囲のアイソフォームおよびキノーム選択性を有する様々なp38α/β阻害剤で治療した。治療後、対照および治療細胞を、MBD3L2 mRNA(DUX4下流遺伝子)およびミオゲニン(MYOG)mRNA(対照)発現のPCR定量化のために処理した。これらのp38α/β阻害剤は、FSHD筋管におけるMYOG mRNA発現への影響なしでのMBD3L2 mRNA発現の強力な(IC50約<10nM、図4A~D)低減を示した。
【0167】
FSHD筋管において、p38阻害剤(例えば、パマピモド)は、DUX4 mRNAおよびDUX4下流遺伝子MBD3L2 mRNA発現を、筋管形成に影響を及ぼすことなく、用量依存的に低減した。DMSO治療と比較される場合、10、100、および1000nMのFTX000839(パマピモド)は、FSHD筋管におけるqPCRおよびTaqmanによって測定されるように(図5A)、筋管への分化に影響を及ぼすことなく(図5B)、POLR2A mRNAに対して正規化されたDUX4-flおよびMBD3L2下流遺伝子mRNA レベルの両方を用量依存的に低減した。データは、p38阻害剤がMBD3L2 mRNA発現を、ミオゲニンmRNA発現に影響を及ぼすことなく、用量依存的に低減することを示す。
【0168】
実施例3
SIRNAノックダウンを介したP38 MAPK14 MRNAおよびMBD3L2 MR
NA低減

p38α MAPK14 85およびp38α MAPK14 86 siRNAsを、材料および方法に記載される患者FSHD筋管にトランスフェクトした。p38α MAPK14 85 siRNAおよびp38α MAPK14 86 siRNAの各々は(より少ない程度に)、非標的対照siRNA(NT CTRL 1およびNT CTRL 2)と比較して、図6Aに示されるように、p38 MAPK14発現を低減し、図6Bに示されるように、MBD3L2 mRNA(DUX4標的遺伝子)発現を低減した。データは、MBD3L2によって例示されるように、p38α MAPK14>50%のゲノム低減が、DUX4および下流標的遺伝子を特に低減したことを示す。
【0169】
実施例4
P38αキナーゼCAS9/SGRNA RNPを介したMBD3L2 MRNA低減

MAPK14またはpLAM(DUX4のポリアデニル化シグナル配列)のCRISPR gRNA標的化を、材料および方法に記載されるように行った。MAPK14またはpLAM(DUX4のポリアデニル化シグナル配列)に標的化されたCRISPR gRNAは、MBD3L2の発現における低減をもたらしたが、MYOGをもたらさなかった。データは、MBD3L2によって例示されるように、p38α MAPK14のゲノム低減が、DUX4および下流標的遺伝子を特に低減したことを示す。
【0170】
実施例5
FTX-1821はDUX4タンパク質およびMBD3L2 MRNAを下方調節する
患者由来FSHD筋管(D4Z4アレイの6個の反復を有する)を、DMSOビヒクル対照および異なるFTX-1821濃度で治療し、DUX4タンパク質およびMBD3L2 mRNAレベルを、方法および材料に記載されるように決定した。DUX4およびMBD3L2について、4つのバイオロジカルレプリケートを分析した。加えて、pHSP27レベルを決定した。pHSP27定量化のために、2つの独立した実験において3つのレプリケートを得た。
【0171】
FTX 1821でのFSHD患者由来筋管の治療は、標的関与の証拠としてホスホHSP27レベル(IC50=10nM)において観察される変化と相関するDUX4タンパク質(IC50=25nM)およびMBD3L2 mRNA(IC50=25nM)の濃度依存性低減をもたらした(図7)。結果は、DUX4タンパク質(IC50=25nM)およびMBD3L2 mRNA(IC50=10nM)の濃度依存性低減を示した。DUX4タンパク質およびMBD3L2 mRNAにおける低減は、標的関与の証拠としてp-HSP27レベル(IC50=10nM)において観察される変化と相関した。これらの結果は、FTX-1821によるp38α経路阻害が、強力なDUX4タンパク質およびMBD3L2 mRNA下方調節をもたらすことを示す。
【0172】
実施例6
FTX-1821は筋管形成に影響を及ぼさない
不死化FHSD筋管を、分化し、DMSOビヒクル対照または1μM、0.33μM、0.11μM、もしくは0.037μMの濃度のFTX-1821で治療した。4日後、細胞を固定し、MHCまたはDAPIに対する抗体で染色した。図8Aを参照されたい。筋管における核は、MHC染色に従って定量化した(図8B)。結果は、試験された濃度のFTX-1821での治療後に筋管形成または融合における変化を示さなかった。
【0173】
実施例7
FTX-1821はFSHD筋管におけるアポトーシスを低減する
アポトーシスを、材料および方法に記載されるように、インビトロでFSHD筋管における活性カスパーゼ-3レベルによって測定した。アポトーシスは、図9Aにおいて白丸および拡大領域によって示されるように、培養中の筋管のサブセットにおいて散発的に検出された。活性カスパーゼ-3シグナルを、異なる濃度のFTX-1821で治療されたFSHD筋管において定量化した(図9B)。結果は、活性カスパーゼ3の検出の低減(IC50=45nM)によって示されるように、アポトーシスシグナルの用量依存性低減を示し、この効果は、対照筋管と比較してFSHD筋管に特異的であった。DMSO治療後、活性カスパーゼ-3シグナルにおける変化は観察されなかった。
【0174】
実施例8
FTX-1821は病理的DUX4転写プログラム発現を低減する
DMSOビヒクル対照で治療されたFSHD筋管と比較して、FTX-1821で治療されたFSHD筋管における、その発現が下方調節されるDUX4経路における遺伝子を特定するために、方法および材料に記載されるように試験を行った。加えて、遺伝子発現はまた、DMSOで治療された野生型筋管において決定した。各条件についての3つのレプリケートをRNA-seqによって分析し、遺伝子を変化の方向および強度によってクラスター化した。
【0175】
図10Aのヒートマップに示されるように、多数の差次的に発現した遺伝子を、RNA-seqプロファイリングによって特定した。バーは、観察された正規化された変化を示し、例えば、FTX-1821によって下方調節された遺伝子は、DMSOのみで治療された試料において濃縮される。これらの遺伝子の発現は、FTX-1821(1μM)での治療後に正規化し、野生型における観察により近似させた。標準RPKM発現値を用いて計算され、総遺伝子シグネチャーは、非常に小さく、標準統計カットオフ:86/19,799mRNA遺伝子で定義された。DUX4調節遺伝子シグネチャーは、総シグネチャーのマジョリティーであり、これらの遺伝子は、図10Aに列挙される。非DUX4調節遺伝子は、中度倍率変化:9/86mRNA遺伝子=10%、2~2.7倍logFCを有する総シグネチャーのマイノリティーであった。図10Bは、FTX-1821での治療後に下方調節されたDUX4標的遺伝子の、材料および方法に記載されるように、正規化リードを示す。1群あたり3つの独立したレプリケートを分析した。
【0176】
実施例9
様々なFSHD1遺伝子型および表現型におけるMBD3L2 MRNAの低減
様々な異なるFSHD1遺伝子型を有する患者から得られる細胞におけるDUX4標的遺伝子の発現を低減するp38阻害剤の能力を、方法および材料に記載されるように行った。4つの別個のFSHD患者筋芽細胞株、すなわち、FTCE-016、-020、-197、および-196(Rabi Tawil寄贈)を、FTX-1821(1μM)またはFTX-839(1 μM)で治療し、DUX4標的遺伝子、MBD3L2のmRNAレベルを、治療後に決定した。
【0177】
MBD3L2発現レベルは、FSHD株の全てにおいて低減し、健康な対照、FTCE-396およびFTCE-014において測定されるものと同様のレベルをもたらした(図11)。これは、多様なFSHD1遺伝子型および表現型に由来する筋管にわたるp38阻害剤によるDUX4標的遺伝子低減の証拠である(同様の結果がFSHD2について観察され、データは示されない)。
【0178】
実施例10
FSHD1およびFSHD2遺伝子型および表現型からのMBD3L2 MRNAの低減
FSHD1およびFSHD2細胞におけるFTX-1821を用いるp38選択的阻害の効果を評価するために、初代筋芽細胞株は、University of RochesterのRabi Tawilにより寄贈された。図13は、試験において使用される13個のFSHD1および3個のFSHD2患者筋芽細胞の遺伝子型および表現型をまとめる。様々なFSHD1およびFSHD2筋芽細胞をDMSO、FTX-1821、またはFTX-839(1μM)で治療し、治療後、DUX4標的遺伝子、MBD3L2のmRNA発現レベルを決定した。加えて、FSHD1およびFSHD2株における活性カスパーゼ-3を測定することによって、アポトーシスを決定した。
【0179】
様々なFSHD1およびFSHD2筋芽細胞の各々は、MBD3L2の低減を示した(図14A、上11株)。低減は、健康な対照株(CTRL-FTCE-014)におけるものと同様の発現レベルをもたらした(図14A、下2株)。加えて、FTX-839での治療は、FSHD1およびFSHD2株の両方にわたるアポトーシスにおける、健康な対照株(CTRL-FTCE-014)において決定された量と同様のレベルまでの低減を示した(図14B)。これらの結果は、臨床的FSHD生検筋芽細胞が、筋管に分化される場合、FSHD1およびFSHD2遺伝子型および表現型の両方にわたる病理的DUX4下流遺伝子発現および結果として起こる細胞死の両方の低減を示すことを示す。
【0180】
実施例11
強力で選択的なP38阻害剤での治療後の野生型ラットの筋肉における標的関与
FTX-1821の薬物動態特性を動物モデルにおいて試験した。FTX-1821を雄絶食または非絶食Sprague-Dawleyラット(時点および治療群あたりN=6動物)に経口投与し、ホスホp38α:総p38αレベルを決定した。薬物治療の前および後のホスホMAPキナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)対総MK2比における変化を測定することによって、筋組織におけるp38系標的関与の薬力学分析を行った。使用される全ての方法は、材料および方法セクションに記載される。
【0181】
FTX-1821は、以前に記載されたもの(Aston et al.,2009、データ図示せず)と同様の血漿薬物動態特性を示した。これらの試験は、複数の筋肉および血漿へのFTX-1821の急速な分布を追加で示した。筋肉対血漿曝露比は、臨床的に関連する血漿曝露が達成される場合、ラットにおいて1以上であった。
【0182】
薬力学分析は、FTX-1821の単回経口用量(0.3mg/kg)が、臨床的に関連する血漿濃度をもたらし(Barbour et al.,2012)、薬物治療の1時間以内のラット僧帽筋におけるホスホMK2対総MK2比を有意に減少させた(図15)。P38系標的関与は、FTX-1821の単回用量後少なくとも12時間にわたって持続した(図15)。僧帽筋におけるP38系標的関与は、FTX-1821の血漿および筋肉濃度が20ng.mLまたはng.g超である場合、最大であり、曝露が減少した時点で低下した。ラット試験において達成されるFTX-1821の筋肉濃度は、FSHD筋管におけるインビトロデータに基づいてFSHD患者筋肉生検におけるDUX4依存性標的遺伝子のCmaxでの>70%低減をもたらすことが予測される(above上記)。
【0183】
この薬物動態および薬力学分析は、血漿FTX-1821濃度が20ng/mL超である場合、筋肉におけるp38系の最大阻害が達成され、ヒト筋肉において、7.5または15mgBIDの臨床的用量で、顕著なp38経路阻害が予想されることを示した(Barbour et al.,2012)。
【0184】
実施例12
強力で選択的なP38阻害剤での治療後のFSHD異種移植マウスにおけるDUX4ゲノムプログラムの阻害
Sakellariou et al.,2016によって記載されるように、C6(FSHD)およびA4(対照)IPSC由来ヒト不死化同系筋芽細胞株を、約8週齢雄Nod-Ragマウスの両側前脛骨(TA)筋に異種移植することによって、FSHDおよび対照筋異種移植マウスを生成した。4週間長の生着およびINMES手順後、FSHD異種移植動物を、8日間(合計14注射)ビヒクルまたはFTX-2865(10mg/kg)のいずれかのBID注射で治療し、8日目の最後の朝の注射の1時間後の約最大血漿濃度時(Tmax)に犠死させた。犠死時、血漿、僧帽筋、および両側前脛骨筋を収集し、薬物動態エンドポイント、標的関与、およびDUX4依存性mRNAの分析のために急速冷凍させた。MBD3L2を、ヒト特異的プローブを用いるqPCRによって評価し、ハウスキーピング遺伝子CDKN1Bに対して正規化した。pMK2およびMK2タンパク質濃度を、定量MSDアッセイによって評価した。
【0185】
A4またはC6筋芽細胞組織を4~6週間生着させた動物からのqPCRによるTA組織の分析は、FSHD(C6)対対照(A4)異種移植TA筋におけるMBD3L2および他のDux4依存性遺伝子(図示せず)の有意な(p<0.05)>10倍の増加を示した(図16)。1群あたりN=8TA試料。
【0186】
強力で選択的なp38阻害剤、FTX-2865でのFSHD異種移植動物の治療は、腹腔内(IP)注射によって与えられる10mg/kg用量の反復BID投与後の野生型マウスのTAおよび僧帽筋における>50%のホスホMAPキナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MK2)対総MK2比における変化(データ図示せず)によって測定されるように、p38系標的関与を生成した。FTX-2865治療は、マウス僧帽筋におけるホスホ対総MK2比を有意に(p<0.05)減少させ、顕著なp38系関与を示し、またp38系を>80%を阻害するために動物の骨格筋における十分な薬物濃度を示した(図17、1群あたりN=8僧帽筋試料)。加えて、FTX-2865治療は、FSHD異種移植TA筋におけるMBD3L2の発現を、ビヒクル治療動物と比較して有意に(p<0.05)減少させ、p38阻害による病理的DUX4遺伝子プログラムの抑制を示した(図18、1群あたりN=5-7TA試料)。
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本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、上記の特定の実施形態と併せて記載されたが、その多数の代替、変更、および他の変形が、当業者には明らかであろう。全てのそのような代替、変更、および変形は、本発明の趣旨および範囲内に含まれることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024012295000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【外国語明細書】