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特開2024-122954沈殿食品を連続的に製造するためのパイプシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122954
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】沈殿食品を連続的に製造するためのパイプシステム
(51)【国際特許分類】
   A01J 25/00 20060101AFI20240903BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240903BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20240903BHJP
   A23L 11/45 20210101ALI20240903BHJP
【FI】
A01J25/00
B01D21/30 G
B01D21/30 F
B01D21/02 N
A23L11/45 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023845
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】23157975.6
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524066498
【氏名又は名称】ツーガー・フリシュケーゼ・アーゲー・オーバービューレン
【氏名又は名称原語表記】Zuger Frischkase AG Oberburen
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ロラン,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ゼルウィガー,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ツーガー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツヴィシク,ベンヤミン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐をパイプシステム内の連続プロセスで製造することができ、各々の反応物を正確に分配することができる、改良されたパイプシステム及び方法を提供する。
【解決手段】規定量の第一の媒体を沈殿させることによって、沈殿食品を連続的に製造するためのパイプシステム1であって、少なくとも一つのパイプライン4と、少なくとも二つのピグ2a,2bと、ピグ供給装置3と、媒体供給装置13と、制御装置と、を含み、沈殿媒体によって、少なくとも中間ピグ容積部14内に、規定量の第一の媒体の沈殿物を提供可能である、システム1とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプシステム(1)内で、規定量の第一の媒体を沈殿させることにより、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造するための前記パイプシステム(1)であって、
・ 規定された直径を有する、少なくとも1本のパイプライン(4)、
・ 前記少なくとも一つのパイプライン(4)内を流れる体積流量によって、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内を移動するように構成された、少なくとも二つのピグ(2a,2b)、
・ ピグ供給装置(3)であって、少なくとも二つのピグ(2a,2b)を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に供給するように構成される、前記ピグ供給装置(3)、及び、
・ 媒体供給装置(13)であって、規定量の第一の媒体及び沈殿媒体を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に提供するように構成される、前記媒体供給装置(13)、
・ 制御装置であって、前記ピグ供給装置(3)及び/又は前記媒体供給装置(13)を、
・ 前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)は、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に、互いに規定された第一の距離(15)を有して提供され、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の間の中間ピグ容積部(14)は、前記規定された第一の距離(15)及び規定されたパイプラインの直径によって規定され、及び、
・ 前記第一の媒体及び前記沈殿媒体は、少なくとも前記中間ピグ容積部(14)内に提供される、
ように制御するように構成される、前記制御装置、
を含み、
前記沈殿媒体によって、前記少なくとも中間ピグ容積部(14)内に、規定量の前記第一の媒体の沈殿物を提供可能である、前記システム(1)。
【請求項2】
前記制御装置は、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の間の規定された前記第一の距離(15)が維持されるように、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内を流れる一定の体積流量を提供するように構成され、特に、
・ 前記システム(1)は、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内の前記体積流量を決定するように構成された、少なくとも一つの流量計(24)、をさらに含み、及び、
・ 前記制御装置は、前記流量計(24)による前記体積流量の決定に基づいて、前記一定の体積流量を提供するように構成される、
請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)が、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内を流れる前記体積流量によって、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内を移動する間に、少なくとも前記中間ピグ容積部(14)内に、前記規定量の第一の媒体の沈殿物、が提供される、請求項1又は2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の各々は、
・ 前記少なくとも一つのパイプライン(4)の直径よりも小さい直径を有する、ピグ本体(6)、
・ 少なくとも一つのリップ(7)であって、前記少なくとも一つのリップ(7)が前記ピグ本体(6)から半径方向に延伸され、前記少なくとも一つのリップ(7)が前記パイプライン(4)内に存在する場合に、前記少なくとも一つのパイプライン(4)をシールする直径を有する、前記少なくとも一つのリップ(7)、
を含む、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)は、各々二つのリップ(7)を含み、
前記二つのリップ(7)は、前記パイプライン(4)内に存在する場合に、前記少なくとも一つのパイプライン(4)をシールするように、前記二つのリップ(7)が前記ピグ本体(6)から半径方向に延伸され及び直径を有し、特に前記二つのリップ(7)が互いに規定された第二の距離を有し、前記規定された第二の距離及び前記規定されたパイプラインの直径によって、中間リップ容積部(12)が規定され、特に前記中間リップ容積部(12)が、規定量の第二の媒体で充填されるように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記システム(1)は、前記ピグ供給装置(3)及び前記少なくとも一つのパイプライン(4)の間に提供された第一のバルブ(8)をさらに含み、前記第一のバルブ(8)によって、前記規定された第一の距離(15)を有する少なくとも二つのピグ(2a,2b)の前記少なくとも一つのパイプライン(4)内への導入を提供することが可能になり、特に前記制御装置が、
・ 前記第一のバルブ(8)を、
・ 前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)のうちの一つが、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に供給されるように提供され、及び/又は、
・ 前記媒体供給装置(13)が、前記規定量、特に前記規定された体積及び/又は前記規定された質量、の前記第一の媒体を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内、特に中間ピグ容積部(14)内、に提供する、
とすぐに開放させ、
・ 前記第一のバルブ(8)を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に供給されるために供給されたピグ(2a)が、前記開放された第一のバルブ(8)を通って移動される、とすぐに再び閉鎖させ、及び、
・ 前記第一のバルブ(8)を、
・ 前記媒体供給装置(13)が、前記規定量、特に前記規定された体積及び/又は前記規定された質量、の第一の媒体を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内、特に中間ピグ容積部(14)内、に提供し、及び/又は、
・ 前記少なくとも二つのピグ(2b)のうちの別の一つが、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に供給されるように提供され、及び/又は、
・ 前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)間の距離が、前記規定された第一の距離(15)に対応する、
とすぐに開放させる、
ように前記第一のバルブ(8)を制御するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記システム(1)は、
・ 前記第一のバルブ(8)及び前記少なくとも一つのパイプライン(4)の間に提供された第二のバルブ(10)であって、前記第一のバルブ(8)及び前記第二のバルブ(10)の間に、ピグ(2a)が受容可能であるように、前記第一のバルブ(8)及び前記第二のバルブ(10)が離間するように構成される、前記第二のバルブ(10)、及び、
・ 第一の供給ライン(11)であって、前記第一の供給ライン(11)が、前記第一及び第二のバルブ(8,10)の間、特に前記第一及び第二のバルブ(8,10)の間に受容される前記ピグ(2a)の前記中間リップ容積部(12)内に、前記第二の媒体を提供するように構成される、前記第一の供給ライン(11)、
を含み、
特に、
・ 前記制御装置は、前記媒体供給装置(13)が、規定量、特に規定容積及び/又は規定質量、の第一の媒体を、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内、特に前記中間ピグ容積部(14)内、に提供するとすぐに、前記第二のバルブ(10)を開放させるように、前記第二のバルブ(10)を制御するように構成され、及び/又は、
・ 前記第二の媒体が充填された前記ピグ(2a)が、前記開放された第二のバルブ(10)を通って、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内に、移動されるように構成される、
請求項6に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記媒体供給装置(13)は、規定量の前記第一の媒体を前記中間ピグ容積部(14)内に提供する、ように構成された第二の供給ライン(16)を含み、特に前記第二の供給ライン(16)は、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)のうちの少なくとも一つが、前記第二のバルブ(10)を通って移動された後に、前記第一の媒体を、前記中間ピグ容積部(14)に供給する、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記媒体供給装置(13)は、前記沈殿媒体を前記中間ピグ容積部(14)内に提供するように構成された第三の供給ライン(17)を含み、特に前記第三の供給ライン(17)が、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)のうちの少なくとも一つが、前記第二のバルブ(10)を通って移動された後に、前記沈殿媒体を、前記中間ピグ容積部(14)に提供する、請求項7又は8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記システム(1)は、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)が、前記体積流量によって規定された時間だけ移動可能であるパイプラインを提供する、ように構成された沈殿物パイプラインをさらに含み、前記規定された時間内に、規定量の前記第一の媒体が、前記中間ピグ容積部(14)内で沈殿し、特に前記沈殿物パイプラインが、減少した容積で増大したパイプライン長を供給するために、少なくとも一つのターンを含むパイプラインとして構成され、特に前記沈殿物パイプラインの少なくとも一部が、
・ 前記沈殿物パイプラインの温度を、従って規定量の前記第一の媒体の温度もまた、一定に保つように構成された断熱材、及び/又は、
・ 温度調節器であって、前記温度調節器によって、前記沈殿物パイプライン、従って規定量の前記第一の媒体もまた、冷却可能及び/又は加熱可能である、前記温度調節器、
によって囲まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記システム(1)が、前記パイプシステム(1)から、規定量の沈殿した第一の媒体の取出を提供するように構成された生成物取出ステーション(18)をさらに含み、特に前記生成物取出ステーション(18)が、前記少なくとも一つのパイプライン(4)内の開口部(20)として構成され、前記開口部(20)が、
・ 規定量の沈殿した第一の媒体が少なくとも一つのパイプライン(4)から取出可能であり、及び、
・ 前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)のサイズよりも小さく、少なくとも二つのピグ(2a,2b)が、前記体積流量によって、前記開口部(20)を横切って移動することを可能にする、
サイズを有し、
特に、
・ 前記開口部(20)が、前記少なくとも一つのパイプライン(4)から、前記沈殿した第一の媒体が、重力によって落下することを可能にするように、前記少なくとも一つのパイプライン(4)の底部に提供され、及び/又は、
・ 前記システム(1)は、前記生成物取出ステーション(18)内に流体の流れを提供し、前記流体の流れによって、規定量の前記沈殿した第一の媒体が、前記開口部(20)を通して流れることができる、ように構成された流体供給ライン、をさらに含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記システム(1)は、前記パイプシステム(1)から前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の取出を提供するように構成されたピグ取出ステーション(19)をさらに含み、特に、
・ 前記ピグ取出ステーション(19)は、第三のバルブ(21)として構成され、及び、
・ 前記制御装置が、前記第三のバルブ(21)を、
・ 前記第三のバルブ(21)は、前記少なくとも二つのピグ(2a)のうちの一つが前記パイプシステム(1)からの取出が提供されるとすぐに開放され、前記パイプシステム(1)からの取出が提供された前記ピグ(2a)は、次に、前記開放された第三のバルブ(21)を通って移動可能であり、
・ 前記第三のバルブ(21)は、前記パイプシステム(1)からの取出のために提供された前記ピグ(2a)が、前記開放された第三のバルブ(21)を通って移動されるとすぐに、再び閉鎖され、
・ 前記第三のバルブ(21)は、前記少なくとも二つのピグ(2b)のうちの別の一つのピグが、前記パイプシステム(1)からの取出が提供されるとすぐに、再び開放される、
ように制御するように構成される、
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項13】
前記システム(1)が、前記第一のバルブ(8)及び/又は前記第二のバルブ(10)及び/又は前記第三のバルブ(21)を通して、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)を移動させる、ように構成された少なくとも一つのシリンダーステム(9)をさらに含み、特に、
・ 前記少なくとも一つのシリンダーステム(9)は、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)を、前記体積流量の流れ方向内に移動させる、ように構成され、及び/又は、
・ 前記少なくとも一つのシリンダーステム(9)は、前記パイプシステム(1)内に延伸可能であり、前記開放された第一のバルブ(8)及び/又は第二のバルブ(10)及び/又は第三のバルブ(21)を通して、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)を押す、ように構成される、
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項14】
前記システム(1)は、前記生成物取出ステーション(18)から取出された規定量の前記沈殿した第一の媒体、をさらに搬送するように構成された生成物搬送ユニット、をさらに含み、特に、
・ 前記生成物搬送ユニットが、前記生成物取出ステーション(18)の下方、特に前記開口部(20)として構成された前記生成物取出ステーション(18)の下方、に配置され、及び、
・ 規定量の前記沈殿した第一の媒体が、前記生成物取出ステーション(18)、特に前記開口部(20)として設計された前記生成物取出ステーション(18)、から前記生成物搬送ユニット上に、重力によって落下する、
請求項11~13のいずれか一項記載のシステム(1)。
【請求項15】
パイプシステム(1)内で規定量の第一の媒体を沈殿させることにより、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造する方法であって、
・ 前記パイプシステム(1)内に少なくとも二つのピグ(2a,2b)を供給するステップ、
・ 規定量の第一の媒体及び沈殿媒体を、中間ピグ容積部(14)に充填するステップであって、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の間の前記中間ピグ容積部(14)が、前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)の相互間の規定された第一の距離(15)及び前記パイプシステム(1)の規定されたパイプライン直径、によって規定される、ステップ、及び、
・ 規定された第一の距離(15)及び充填された中間ピグ容積部(14)を有する前記少なくとも二つのピグ(2a,2b)を、規定された時間、前記パイプシステム(1)を通して、移動させるステップであって、前記沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐が、沈殿物の所望の程度で得られるように、前記規定された時間内に、前記中間ピグ容積部(14)内の規定量の前記第一の媒体の沈殿物が提供可能である、ステップ、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液(protein dispersions)、をパイプシステム内で沈殿(precipitation)させることによって、沈殿食品(precipitating food)、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造するためのパイプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
食品工業、特にチーズ製造、においては、クエン酸(citric acid)又はレンネット(rennet)等の沈殿媒体(precipitation medium)を添加することによって牛乳を沈殿させ、及び、一定のインキュベーション/相互作用時間後に、沈殿した牛乳をホエイ液(liquid whey)から分離することが一般的である。牛乳の沈殿は、バッチプロセスで実施されることが多い。なぜなら、予め既知の特定の容積を有する反応器(例えば、撹拌槽)に加えられる牛乳及び沈殿媒体の量が、チーズの所望される質量に応じて、投与できるためである。このようにして、完成したチーズは正確に所望の重量を有し、チーズを切断する必要がなくなり、その結果、食品廃棄物を少量にするか又は全くなくすようにできる。
【発明の概要】
【0003】
バッチプロセスによるチーズ製造の欠点は、一方では、オープンシステムであるため、食品に雑菌(germs)や不純物(impurities)が(例えば、各々の反応物(reactants)を添加/注入する際に)混入する可能性があること、及び、オープン加熱システムは、クローズド(及び、断熱)システムと比較して、エネルギーの消費が大きいことである。他方では、製造を、製造ステップごとに停止しなければならないため、バッチプロセスは非常に労力と時間がかかる。
【0004】
パイプシステムによる連続プロセスでのチーズ製造は、クローズドシステムであるため、バッチプロセスの上述の欠点を解消し、これは、一方では、雑菌又は不純物がシステム、ひいてはチーズ、に容易に侵入しにくくなるという点で、衛生面を著しく改善し、他方では、エネルギー効率を著しく改善する。さらに、パイプシステムを流れる間に、パイプシステムに供給された反応物(例えば、牛乳及び沈殿媒体)が混合されるため、各作業ステップで製造を中断したり、又は、反応溶液をデカント(decanted)/移送(transferred)したりする必要がなく、連続プロセスを実現することができる。
【0005】
従来技術によるこのような連続チーズ製造の欠点は、パイプシステム内を流れる牛乳の量、従って、牛乳を沈殿させるために必要な沈殿媒体の量、も正確に分配することが困難であることである。従って、沈殿媒体の量が少なすぎる場合の、牛乳が完全に沈殿したこと、又は、得られたチーズが所望の重量を有すること、を保証することは困難である。牛乳の沈殿が不完全な場合には、得られた反応生成物を、さらに所望のチーズに加工することができず、廃棄しなければならない場合がある。
【0006】
従来技術による連続的なチーズ製造の重大な欠点は、プロセス及び製造の時間にわたって沈殿した牛乳(すなわち、ホエイ液中に沈殿するチーズカード(curd:凝乳)フロック(flocs))がパイプシステム内で沈殿することである。このような沈殿は、沈殿した牛乳の非常に不安定な体積流量(volume flow)をもたらし、又は、最悪の場合、パイプラインの完全な閉塞をもたらす。さらに、パイプライン内でチーズカードが沈殿すると、チーズカードの一部がパイプライン内に残るため、製造プロセスの最後に、部分ごとの所望のチーズ量が得られない。
【0007】
連続チーズ製造のさらなる重大な欠点は、さらなる下流プロセスのために、チーズカードをチーズブロック(bloc)に充填する必要があること、すなわち、連続プロセスを、半連続プロセスに変換する必要があることである。均一な最終生成物を得るために、チーズカードブロックは等容性(isovolumetric)である必要があり、従って、カード(precipitate:沈殿物)の体積に従って正確に分配する必要がある。沈殿した牛乳の量が変化すると、異なるサイズのチーズブロックが生じ、チーズのその後の下流処理(例えば、スライス)が妨げられる。これは、比較的大量の食品廃棄物を発生させる可能性がある。
【0008】
従来技術の上述の欠点は、豆腐のような、パイプシステムにおける沈殿反応によって得ることができる他の食品の連続製造においても生じる。
【0009】
発明の目的
このため、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、をパイプシステム内の連続プロセスで製造することができ、各々の反応物、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、及び沈殿媒体、を正確に分配することができる、改良されたパイプシステム又は方法、を提供することが望まれている。
【0010】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服した沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造するためのパイプシステム及び方法、を提供することである。
【0011】
この目的は、独立請求項の特徴の少なくとも一部を実現することによって達成される。本発明を、代替的又は有利な方法で、さらに発展させる特徴が、従属する特許請求の範囲に記載される。
【0012】
発明の概要
本発明は、パイプシステム内で、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を沈殿させることによって、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造するためのパイプシステムに関し、
・ 規定された直径を有する少なくとも一つのパイプライン、
・ 少なくとも一つのパイプライン内を流れる体積流量によって、特に第一の媒体の体積流量によって、少なくとも一つのパイプライン内を移動するように構成された少なくとも二つのピグ(pig)、
・ ピグ供給装置(pig supply)であって、少なくとも二つのピグを少なくとも一つのパイプライン内に供給するように構成された、ピグ供給装置、
・ 媒体供給装置(medium supply device)であって、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、及び、沈殿媒体を、少なくとも一つのパイプライン、特に中間ピグ容積部(intermediate pig volume)、に供給するように構成されている、媒体供給装置、及び、
・ 制御装置であって、ピグ供給装置及び/又は媒体供給装置を、
・ 少なくとも二つのピグが、少なくとも一つのパイプライン内に、規定された第一の距離を有して提供され、少なくとも二つのピグの間の中間ピグ容積部が、規定された第一の距離及び規定されたパイプライン直径によって規定され、及び、
・ 第一の媒体及び沈殿媒体が、少なくとも中間ピグ容積部にて提供される、
ように制御するように構成されている、制御装置、
を含み、
沈殿媒体によって、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、の沈殿が、少なくとも中間ピグ容積部に提供可能である。
【0013】
少なくとも二つのピグ間の規定された第一の距離は、例えば、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグが、第一の媒体を供給する媒体供給装置を通過することによって、提供することができ、媒体供給装置は、次に、予め設定された体積又は質量(従って第一の媒体の密度に応じた所定の体積も有する)の第一の媒体を、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグの後方の空間/領域/区域/容積(これは、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグと少なくとも二つのピグのうちの第二のピグとの間の空間/領域/区域/容積に対応する)内に供給し、それによって、この供給された第一の媒体の体積又は質量が、中間ピグ容積部を規定する。少なくとも二つのピグのうちの第一のピグの背後の空間への、予め設定された第一の媒体の体積又は質量の供給が完了した後、ピグ供給装置は、少なくとも二つのピグのうちの第二のピグを供給し、それによって、少なくとも二つのピグの間に、中間ピグ容積部(第一の媒体の供給された体積又は質量によって画定される)が、存在するようになる。少なくとも一つのパイプラインは、規定されたパイプライン直径を有し、規定された中間ピグ容積部が、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグと第二のピグとの間に存在するので、それらは、結果的に、互いに規定された(第一の)距離を有する。
【0014】
少なくとも二つのピグ間の規定された第一の距離は、例えば、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグが媒体供給装置を通過し、その後、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグの後方の空間に、予め設定された体積又は質量の第一の媒体が、一定の体積流量又は一定の質量流(mass flow)により供給され、それによって、予め設定された体積又は予め設定された質量の第一の媒体が完全に供給されるまで、一定の体積流量又は一定の質量流のために規定された(供給(supply)/投与(dosage))時間が終了することにより提供することができる。この規定された時間が終了した後、ピグ供給装置は、少なくとも二つのピグのうちの第二のピグに供給し、それによって、規定された時間内に、少なくとも二つのピグのうちの第一のピグが前方に移動されてできた一定の容積又は一定の質量流によって規定され、少なくとも二つのピグの間に規定された(第一の)距離が存在する。
【0015】
沈殿という用語は、溶解した物質/成分が溶液から分離することを指す。沈殿は、例えば、非晶質のフロック又は結晶性物質のような形の沈殿物を生じる。基本的には、予め溶解していた物質の相転移が起こる。これらのフロックは、エージングが進むと、さらなる凝集のため拡大することが多い。その結果、これらは、より濾過されやすくなるか、又は、沈殿物を形成することができる。沈殿物/フロックの凝集は、しばしば、それらの溶解度をさらに低下させる。
【0016】
沈殿による沈殿物の形成は、例えば、その環境条件(例えば、pH値又は塩分含量)の変化、温度及び圧力の変化、溶媒の蒸発、溶媒の極性の変化、又は、例えば、適切な物質(沈殿剤/沈殿媒体)の添加による、物質の溶解度/溶解度積を超える生成物によって生じさせることができる。添加された沈殿媒体は、例えば、沈殿物の一部となるか又は溶解した物質をより溶解性の低いものに変換するか、又は、溶媒の溶媒特性のみを変化させるだけであることができる。残った液体は、上澄み液と称される。
【0017】
換言すれば、沈殿媒体という用語は、沈殿させる媒体、この場合は第一の媒体(例えば、牛乳又は他のタンパク質分散液)中で(化学)反応(沈殿反応)を引き起こす物質を指し、それによって、この第一の媒体は、例えば、フロック/フレーク/ピース/カードを沈殿させて形成する。沈殿した第一の媒体のこれらのフロックは、上澄み液中で沈殿物として浮遊及び/又は沈殿し(フロックの密度による)、沈殿ブライン(brine)/沈殿パーミエート(permeate)(牛乳の場合はホエイ)とも称される。フロックは、ますます大きなフロックに凝集することができ、従って、沈殿物のブロック全体までの、ますます大きなピースを形成する。その後、沈殿食品を得るために、これらのブロック(沈殿した第一の媒体の凝集したフロックから形成された)が、沈殿ブライン/沈殿パーミエートから分離(例えば、ろ過(filtering)/デカンテーション(decantation)によって)される。
【0018】
チーズ製造のために牛乳(第一の媒体)を沈殿させる場合、沈殿した牛乳(沈殿した第一の媒体)はフロックの形で沈殿し、ホエイ液(沈殿ブライン/沈殿されたパーミエート)中に沈殿又は浮遊する。フロックは、ホエイ液中に浮遊する全チーズカードのブロックが得られるまで凝集し続ける。
【0019】
沈殿媒体という用語が、第一の媒体の沈殿物のために使用できる全ての物質、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を包含することは、当業者には明らかである。
【0020】
本発明は、従来技術のシステム、特にバッチプロセスでの不連続的な製造に比べて、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造できるという利点を有する。このようにして、個々の作業ステップごとに製造を中断する必要がないので、製造の作業効率及び時間効率が著しく向上する。その代わり、プラント内には中断されない流れがあり、沈殿食品は、この流れの中で製造される。パイプシステムは、制御装置によってその全体を制御することができ、個々のシステム構成要素が互いに同期して機能するので、各作業ステップを、個別に制御したり、手動で実施する必要すらもない。さらに、本発明に係るパイプシステムは、一方では、クローズドシステムが利用可能であり、従って、個々の原料(第一の媒体、沈殿媒体等)及び沈殿食品への、雑菌、不純物等の混入が阻止/防止され、他方では、パイプシステムは、少数の部品(例えば、ポンプ、バルブ、供給ライン、電子部品等)で機能するので、衛生的及び簡単な製造を可能にする。又、本発明に係るクローズドシステムは、特にシステム内の加熱又は冷却の過程において、オープンシステムに比べて改善された断熱性を有するので、パイプシステムのエネルギー消費量も低減することができる。
【0021】
本発明に係るパイプシステムのもう一つの利点は、第一の媒体が、少なくとも一つのパイプライン、特に中間ピグ容積部、において、規定量、特に規定容積及び/又は規定質量、で既に正確に分配されており、従って、一方では、第一の媒体の完全な沈殿のための沈殿媒体の適切な投与量を決定することができ、他方では、生成物、すなわち沈殿食品、が所望の量(所望の体積及び/又は所望の質量)で得られることである。従って、沈殿食品の製造が、連続的なプロセスにもかかわらず、所望の量(所望の体積及び/又は所望の質量)で得られるようになり、従って、食品廃棄物がほとんど発生せず、資源効率が非常に高くなる。
【0022】
さらに、パイプシステムを通って移動されるピグは、プロセス時間及び製造時間(例えば、プロセス時間は、原材料がパイプシステムの開始点から終了点まで搬送され、そこで生成物として利用可能になるまでの時間を表し、製造時間は、朝の製造開始から、例えば夕方の、機械が停止するまでの時間を表す。)にわたって、沈殿した第一の媒体の(蓄積された)沈殿(例えば、沈殿ブライン/沈殿パーミエート中に沈殿するフロック)を防止する。ピグを使用する場合、-中間ピグ容積部内の定期的な-沈殿物の蓄積/沈殿は、ピグと共に前方に押し出され、それによって、タンパク質凝集体等の沈殿物が押し出される。さらに、パイプライン壁面の(固形)沈殿物(例えば、石灰岩/チョーク、以前の製造から沈殿した第一の媒体等)は、ピグによって掻き落とされ、パイプラインのクリアランス(clearance)/キープフリー(keeping free)を提供する。
【0023】
本発明に係るパイプシステムの利点は、使用するピグのサイズ及び形状にある程度依存することである。例えば、使用されるピグの直径が、パイプラインの内径よりも著しく小さい場合、例えば、媒体供給装置によって規定された体積で中間ピグ容積部に充填された第一の媒体は、パイプライン壁面とピグとの間の隙間を通って流れることができる。従って、第一の媒体(第一の媒体の量が所望より少ない)は、中間ピグ容積部から流出し、別の中間ピグ容積部(そこでの第一の媒体の量が望ましくないほど増加する)に流入する可能性があり、これにより、第一の媒体の所望の分配が達成されなくなる。
【0024】
ピグの直径がパイプラインの内径よりも著しく小さい場合には、ピグが、パイプライン壁面から沈殿物を掻き落としたり、前方に押し出したりすることなく、沈殿物上を流動/移動できるため、パイプライン壁面からの沈殿物の取出も、不可能であるか又は不完全にしかできない。
【0025】
それゆえに、ピグの直径(又は、ピグの最大拡大ポイントの直径)を、ピグがパイプライン(中間ピグ容積部から第一の媒体の出口に関して)を完全に又はほぼ完全にシールし、沈殿物を完全に又はほぼ完全に押し流すことができるように、(例えば、パイプラインの内径と全く同じ又はほぼ同じに)選択することが、特に有利である。ピグの直径(例えば、パイプラインの内径に適合されたリップ(lip)による)が、パイプラインの内径と正確に同じ(従って、パイプラインの内壁に接する)サイズである必要はなく、なぜならピグの直径(又は、ピグの最大拡大ポイントの直径)がパイプラインの内径より僅かに小さい場合にも、所望の分配及び沈殿物の取出が、十分にうまく機能する可能性があるからである。当業者には、十分に良好なシール及び/又は沈殿物の取出を達成するために、ピグの直径をどの程度大きく選択しなければならないかは、明確である。
【0026】
さらに、当業者は、ピグが異なる幾何学的形状(例えば、ピグが、球、円柱、ダンベル、リップピグ等として構成される)を有することができ、ピグが、その直径が所望のシール及び/又は所望の沈殿物の取出を提供する少なくともワンポイントを有することのみが重要であること、を知っている。
【0027】
さらなる実施形態において、制御装置は、一定の体積流量、特に第一の媒体の一定の体積流量、を提供するように構成され、少なくとも二つのピグ間の規定された第一の距離が維持されるように、少なくとも一つのパイプライン内を流れ、特にシステムは、体積流量、特に少なくとも一つのパイプライン内の第一の媒体の体積流量、を決定するように構成された少なくとも一つの流量計をさらに含み、制御装置は、流量計による体積流量、特に第一の媒体の体積流量、の決定に基づいて、一定の体積流量、特に第一の媒体の体積流量、を提供するように構成される。
【0028】
この実施形態は、ピグが、互いにより規定された第一の距離で、少なくとも一つのパイプライン内に供給され、一定の体積流量、特に第一の媒体の体積流量、によって、パイプラインを通って移動される(そうすることによって、互いにより規定された第一の距離を維持し、従って、中間ピグ容積部も維持する)ので、システム内に多数のピグ(例えば、5~15個のピグ)が存在する場合であっても、中間ピグ容積部は、全てのピグについて等しくなり、従って(媒体供給装置によって第一の媒体及び沈殿媒体が少なくとも一つのパイプラインに、特に中間ピグ容積部に、全てのピグについて一定の方法で供給される場合)、全てのピグの間で、中間ピグ容積部中の第一の媒体及び/又は沈殿媒体の量、特に体積及び/又は質量は等しい、という利点を有する。
【0029】
さらなる実施形態において、少なくとも二つのピグは、各々、少なくとも一つのパイプラインの直径よりも小さい直径を有するピグ本体と、少なくとも一つのリップと、を含み、少なくとも一つのリップは、ピグ本体から半径方向に延伸され、パイプライン内に存在する場合に、少なくとも一つのリップが少なくとも一つのパイプラインをシールするような直径を有する。
【0030】
ピグの少なくとも一つのリップは、パイプライン内に存在する場合、少なくとも一つのパイプラインをシールするので、一方では、第一の媒体及び/又は沈殿媒体は、中間ピグ容積部から出る/漏出することができず、他方では、さらなる媒体(例えば、さらなる第一の媒体)は、中間ピグ容積部に入ることができず、このことは、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体及び/又は沈殿媒体が中間ピグ容積部に提供されるとすぐに、これらの量は、パイプシステムを通過する間、同じままであり、従って、各々の場合において、所望の量の沈殿食品が得られる、という利点を有する。
【0031】
さらなる実施形態において、規定量、特に規定された体積、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、の沈殿は、少なくとも二つのピグが、少なくとも一つのパイプライン内を流れる体積流量、特に第一の媒体の体積流量、によって、少なくとも一つのパイプラインを通って移動する間に、少なくとも中間ピグ容積部に供給される。
【0032】
この実施形態は、パイプシステムの開始点で、第一の媒体と沈殿媒体が少なくとも中間ピグ容積部に提供され、ピグがパイプシステムを通過する間に、すなわち、製造プロセスを停止することない連続プロセスで、沈殿食品が形成され、これにより、パイプシステムの終了点(例えば、少なくとも一つのパイプライン内の開口部として構成された出口/生成物取出ステーション(product removal station))で沈殿食品が得られる、という利点を有する。
【0033】
さらなる実施形態では、少なくとも二つのピグは、各々二つのリップを含み、二つのリップは、ピグ本体から半径方向に延伸され、二つのリップは、パイプライン内に存在する場合に、少なくとも一つのパイプラインをシールするような直径を有する。
【0034】
この実施形態は、好ましくは一つがピグの前部領域に、一つがピグの後部領域に取り付けられる二つのリップにより、少なくとも一つのパイプラインがさらに効率的にシールされ、さらに、二つのリップがパイプラインの壁に沿って押圧され/移動するので、パイプラインの壁を、より効率的に、堆積物/沈殿物から取出/解放することができる、という利点を有する。
【0035】
さらなる実施形態において、二つのリップは、互いから規定された第二の距離を有し、中間リップ容積部(intermediate lip volume)は、規定された第二の距離及び規定されたパイプライン直径によって規定され、特に中間リップ容積部は、(中間のパイプライン容積部を充填する前に)第二の媒体、特に、例えば、沈殿物/沈殿したフロック(例えば、沈殿ブライン/沈殿パーミエート(例えばホエイ液)とも称されることができる)の取出後の第一の媒体、を規定量、特に規定体積及び/又は規定質量(中間リップ容積部が、第二の媒体、特にホエイ、で80%~100%の範囲の充填レベルまで充填されるような)で充填されるように構成される。
【0036】
この実施形態は、中間リップ容積部を第二の媒体、特にホエイ、で充填することにより、中間リップ容積部が脱気される(充填レベルが100%の場合、中間リップ容積部は完全に脱気される)という利点を有する。この脱気は、ピグが少なくとも一つのパイプラインを通過する際の乱流を回避することに役立ち、この乱流は、例えば、第一の媒体をパイプラインに充填することにより、パイプラインから空気が取出されるとすぐに発生することができる。乱流は、小さな粒子を誘発し、生成物回収の損失を誘発する。これは、中間リップ容積部を第二の媒体、特にホエイ、で充填することによって防止/低減される。
【0037】
さらなる実施形態では、ピグ供給装置は、少なくとも二つのピグが適用可能な傾斜路として構成され、少なくとも二つのピグは、ピグ受け部によって少なくとも一つのパイプライン内に規定された第一の距離で、傾斜路の端部に導入されることができるように、傾斜路上を移動可能である。
【0038】
さらなる実施形態では、ピグ受け部は、開口部又はゲート又は水門又はバルブとして構成される。
【0039】
これらの実施形態は、第一の距離を提供することなく、ピグを傾斜路上に配置することができる、という利点を有する。ピグは、傾斜路の上を/搬送され、それによりピグ受け部に到達し、少なくとも二つのピグが、規定された第一の距離で、少なくとも一つのパイプラインに導入されることが保証される。傾斜路の目的は、又、例えば、第一の媒体が、ピグ受け部で、パイプラインから単に流出しないことを保証することであり、従って、パイプライン内の体積流量は、所望の/設定されたように、制御されるか又は維持することができる。
【0040】
さらなる実施形態において、システムは、ピグ供給装置と少なくとも一つのパイプラインとの間に提供された第一のバルブをさらに含み、第一のバルブによって、少なくとも一つのパイプラインに、規定された第一の距離を有して、少なくとも二つのピグの導入が可能であり、特に制御装置は、
・ 第一のバルブが、以下になるとすぐに開放され、
・ 少なくとも二つのピグのうちの一つが、少なくとも一つのパイプラインに供給されるように提供され、及び/又は、
・ 媒体供給装置が、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を少なくとも一つのパイプライン、特に中間ピグ容積部、に提供し、
・ 第一のバルブは、少なくとも一つのパイプラインに供給されるために提供されたピグが、開放された第一のバルブを通って移動されると、すぐに再び閉鎖され、そして
・ 第一のバルブが、以下になるとすぐに再び開放され、
・ 媒体供給装置が、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を少なくとも一つのパイプライン、特に中間ピグ容積部、に提供し、及び/又は、
・ 少なくとも二つのピグのうちのさらに一つが、少なくとも一つのパイプラインに供給されるように提供され、及び/又は、
・ 少なくとも二つのピグの間の距離が、規定された第一の距離に対応する、
ように第一のバルブを制御するように構成される。
【0041】
この実施形態は、第一のバルブによって、一方では、少なくとも二つのピグ間の規定された第一の距離を正確に設定することができ、他方では、所望の量(例えば、体積)の第一の媒体が、少なくとも一つのパイプライン、特に中間ピグ容積部、に供給される、という利点を有する。さらに、第一のバルブは、ピグが導入されたときに、(所望されれば)少なくとも一つのパイプラインから、少なくとも一つのパイプラインの内側にある媒体が出ること、及び、少なくとも一つのパイプラインに、第一のバルブの前の領域からの媒体が入ること、を防止する。
【0042】
さらなる実施形態において、システムは、
・ 第一のバルブ及び少なくとも一つのパイプラインの間に提供された第二のバルブであって、ピグを第一のバルブ及び第二のバルブの間に受容可能であるように、第一のバルブ及び第二のバルブが離間されるように構成される、第二のバルブ、及び、
・ 第一の供給ラインであって、第一のバルブ及び第二のバルブの間、特に前記第一のバルブ及び前記第二のバルブの間に受容されるピグの中間リップ容積部、に第二の媒体を提供する、ように構成されている、第一の供給ライン、
をさらに含み、
特に、
・ 制御装置は、媒体供給装置が規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を少なくとも一つのパイプライン、特にピグの中間容積、に提供するとすぐに開放されるように、第二のバルブを制御するように構成され、及び/又は、
・ 制御装置は、第一のバルブ及び第二のバルブの間に受容されたピグの中間リップ容積部が第二の媒体で所望の充填レベルまで充填されるとすぐに、第二のバルブが開放されるように、第二のバルブを制御するように構成され、及び/又は、
・ 第二の媒体で充填されたピグが、開放された第二のバルブを通って、少なくとも一つのパイプラインに移動するように構成される。
【0043】
この実施形態は、第一のバルブ及び第二のバルブの間にピグを受容することができ、そこでは、第二の媒体が少なくとも一つのパイプラインに入ること又はパイプシステムから出ることがなく、第二の媒体をピグの中間リップ容積部に正確及び容易に充填できる、という利点を有する。
【0044】
さらなる実施形態において、媒体供給装置は、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を中間ピグ容積部内に提供するように構成された第二の供給ラインを含み、特に第二の供給ラインは、少なくとも二つのピグのうちの少なくとも一つが第二のバルブを通って移動された後に、第一の媒体を中間ピグ容積部に提供する。
【0045】
この実施形態は、少なくとも二つのピグのうちの少なくとも一つが第二のバルブを通って移動した後に、第一の媒体を中間ピグ容積部に導入することができ、従って、中間リップ容積部は、既に第二の媒体で充填されているので、第一の媒体を、中間ピグ容積部に、容易で、正確に、及び所望の量で、導入することができるという利点を有する。
【0046】
さらなる実施形態において、媒体供給装置は、沈殿媒体を中間ピグ容積部内に提供するように構成された第三の供給ラインを含み、特に第三の供給ラインは、少なくとも二つのピグのうちの少なくとも一つが、第二のバルブを通って移動した後に、沈殿媒体を中間ピグ容積部内に提供する。
【0047】
この実施形態は、沈殿媒体を、中間ピグ容積部に、容易で、正確に、及び所望の量で、導入することができるという利点を有し、沈殿媒体が、少なくとも二つのピグのうちの少なくとも一つが、第二のバルブを通して移動され、従って中間リップ容積部が、第二の媒体で充填された後に、中間ピグ容積部に導入することができる。
【0048】
さらなる実施形態では、沈殿媒体は、
・ クエン酸、特にクエン酸水溶液、
・ レンネット、特にレンネット水溶液、
・ マグネシウム塩、特にマグネシウム塩水溶液、
のうちの少なくとも一つである。
【0049】
さらなる実施形態において、制御装置は、特に供給ラインの少なくとも一つ内、より詳細には第三の供給ライン内に、沈殿媒体の一定容積の流れを供給することによって、少なくとも一つのパイプライン内、特に中間ピグ容積部内、に提供される沈殿媒体の量、特に容積及び/又は質量、が規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体を沈殿させるのに適切であるような、沈殿媒体の投与量を提供する、ように構成される。
【0050】
この実施形態は、中間ピグ容積部内の第一の媒体の量が規定され、ピグがパイプシステムを通って移動しても変化しないので、第一の媒体の完全な沈殿に必要な沈殿媒体の量が決定可能であり、従って、制御装置は、規定量の第一の媒体を沈殿させるのに十分な量の沈殿媒体が、中間ピグ容積部内に提供されるように、沈殿媒体の体積流量を制御できる、という利点を有する。
【0051】
提実施形態において、システムは、少なくとも二つのピグが、体積流量によって、特に第一の媒体の体積流量によって、規定された時間だけ移動可能であり、規定された時間において、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体が、中間ピグ容積部内で沈殿する、パイプラインを提供するように構成された、沈殿物パイプラインをさらに含む。
【0052】
さらなる実施形態では、沈殿物パイプラインは、減少した容積で増大したパイプライン長を提供するために、少なくとも一つ、特に数回、のターンを含むパイプラインとして構成され、特に沈殿物パイプラインの少なくとも一部が、沈殿物パイプラインの、従って、又、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体の温度を一定に保つように構成された断熱材によって取り囲まれ、及び/又は、温度調節器によって、沈殿物パイプライン、従って又、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体を、温度調節器が、冷却可能及び/又は加熱可能である。
【0053】
これらの実施形態は、(少なくとも一つのパイプシステム内を流れる体積流量、特に第一の媒体の体積流量、により)パイプシステムの端部において、第一の媒体が完全に沈殿(すなわち、沈殿した第一の媒体が、沈殿ブライン/沈殿されたパーミエート(上澄み液)中に沈殿物として浮遊及び/又は沈殿(密度による))し、それにより沈殿食品が得られる、ようにパイプシステムを沈殿物パイプラインによって延長することができる、という利点を有する。
【0054】
沈殿は、より高い温度で実施されることが好ましいので、例えば、沈殿物パイプライン、従って第一の媒体も、温度調節器/制御器によって加熱できることが、特に有利である。
例えば、沈殿食品の製造に切れ目のないコールドチェーンが関連する場合、例えば、沈殿物パイプライン、従って第一の媒体、を温度調節器によって冷却できることが、特に有利である。
【0055】
断熱材は、例えば、加熱された沈殿物パイプライン、従って、加熱された第一の媒体、が沈殿物パイプライン内である時間中に再び冷却されること(又は、冷却された場合に再び加熱されること)を防止し、これにより、加熱(及び/又は冷却)システムをよりエネルギー効率的にする。さらに、加熱(及び/又は冷却)システム及び/又は断熱材は、沈殿反応のために最適な温度を設定し、それを一定に保つことができる。
【0056】
さらなる実施形態において、システムは、パイプシステムから、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の沈殿した第一の媒体の取出を提供するように構成された生成物取出ステーションをさらに含み、特に生成物取出ステーションは、少なくとも一つのパイプラインの開口部として構成され、開口部は、
・ そこから、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の沈殿した第一の媒体が、少なくとも一つのパイプラインから取出可能であり、及び、
・ 少なくとも二つのピグのサイズよりも小さく(例えば、開口部は、球/ボールとして構成されたピグよりも小さい直径を有する)、少なくとも二つのピグが、体積流量によって、特に第一の媒体の体積流量によって、開口部を横切って移動することを可能にし、
特に、
・ 開口部が、沈殿した第一の媒体が、重力によって、少なくとも一つのパイプラインから落下することを可能にするように、少なくとも一つのパイプラインの底部に提供され、及び/又は、
・ システムは、生成物取出ステーション内に、流体流、特に水流を供給するように構成された、流体供給ライン、特に水供給ライン、をさらに含み、流体流、特に水流、によって、規定量、特に規定体積及び/又は規定質量、の沈殿した第一の媒体(これは、例えば、ブライン/パーミエート中の沈殿したフロック/フロックの凝集体、の形態で存在する)を、開口部を通して、流すことができる、
サイズを有する。
【0057】
この実施形態は、沈殿した第一の媒体(すなわち沈殿したフロック)を、中間ピグ容積部及びパイプシステムから、容易で(可能な限り完全に)取出することができ、ピグから容易に分離することができる、という利点を有する。特に開口部は、沈殿した第一の媒体(すなわち、沈殿したフロック)が、重力によりパイプシステムから簡単に落下することを可能にし、追加の部品(例えば、摺動器(slides)、レーキ(rakes)等)の必要性が無くなる。流体の流れ、特に水の流れ、により、反応生成物(すなわち、沈殿した第一の媒体の沈殿物されたフロック)を、パイプシステムから残留物なしに流すことができる。
【0058】
さらなる実施形態において、システムは、パイプシステムからの少なくとも二つのピグの取出を提供するように構成されたピグ取出ステーション(pig removal station)をさらに含み、特にピグ取出ステーションは、第三のバルブとして構成され、制御装置は、第三のバルブを、
・ 第三のバルブが、パイプシステムから少なくとも二つのピグのうちの一つが取出されるとすぐに開放され、開放された第三のバルブを通して、パイプシステムから取出されたピグが移動可能であり、
・ 第三のバルブは、パイプシステムからの取出のために提供されたピグが、開放された第三のバルブを通して移動されると、すぐに閉鎖され、及び、
・ 第三のバルブは、パイプシステムから少なくとも二つのピグのうちのさらに一つのピグが取出されると、すぐに再び開放される、
ように制御するように構成される。
【0059】
さらなる実施形態では、ピグ取出ステーションは、パイプシステム内に、生成物取出ステーションに続いて提供される。
【0060】
これらの実施形態は、沈殿した第一の媒体(これは、例えば、ブライン/パーミエート中の沈殿したフロック/フロックの凝集物、の形態で存在する)のいずれをも、パイプシステムから望ましくない位置で出させることなく、パイプシステムからピグを取出することができる、という利点を有する。特に生成物取出ステーションに続くピグ取出ステーションの配置により、ピグは、生成物取出ステーション、特に開口部上、を通過することができ、その後、第三のバルブを通して、パイプシステムから取出されるが、沈殿した第一の媒体(すなわち、沈殿食品)は、生成物取出ステーションを通してのみ出ることができるが、ピグ取出ステーションを通して、特に第三のバルブを通して、は出ることができず、従って、パイプシステムからは、生成物取出ステーション、特に開口部、においてのみ、得ることができる。
【0061】
さらなる実施形態において、システムは、第一及び/又は第二及び/又は第三のバルブを通して、少なくとも二つのピグを移動させるように構成された、少なくとも一つのシリンダーステム(cylinder stem)をさらに含み、特に少なくとも一つのシリンダーステムは、体積流量、特に第一の媒体の体積流量、の流れ方向に、少なくとも二つのピグを移動させるように構成され、及び/又は、少なくとも一つのシリンダーステムは、パイプシステム内に延伸可能であり、少なくとも二つのピグを、開放された第一及び/又は第二及び/又は第三のバルブを通して、押すように構成される。
【0062】
この実施形態は、特にバルブを通してのピグの移動が、対応する位置で可能でない及び/又は望ましくない場合に、シリンダーステム(これは、例えば、パイプラインの直径に適合させることができ、従って、残留物を残さずにパイプライン内の媒体を移動させることができる)によって、ピグを、バルブを通して、移動させることができる、という利点を有する。例えば、ピグを、パイプライン内の沈殿した第一の媒体の体積流量のみによって、生成物取出ステーションの開口部上に移動させると、ピグが、開口部上に押し出される結果となり、パイプシステムから、沈殿した第一の媒体が、開口部を通って脱落した後、ピグを、第三のバルブを通してさらに移動させることにもはや寄与しなくなる可能性がある。この場合、シリンダーステムは、ピグを、第三のバルブを通して、さらに押すために使用することができる。さらに、シリンダーステムは(特にパイプライン径に適合していれば)、沈殿した第一の媒体(例えば、ブライン/パーミエート中の沈殿したフロック/フロックの凝集物の形態で存在する)を、完全に生成物取出ステーション内に、特に開口部から、押すので、沈殿した第一の媒体を、パイプシステムから、完全に取出することができる。シリンダーステムの代わりに、特に伸縮することによって、媒体及びピグを、パイプシステムを通して、移動させるように構成された、任意のタイプのプッシャー(pusher)/摺動器(slide)を使用することができる。
【0063】
さらなる実施形態において、システムは、生成物取出ステーションから取出された、規定量の、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の沈殿した第一の媒体をさらに搬送する、ように構成された生成物搬送ユニット、特にコンベアベルト、をさらに含み、特に生成物搬送ユニット、特にコンベアベルト、は、生成物取出ステーションの下方、特に開口部として構成された生成物取出ステーションの下方、に配置され、沈殿した規定量、特に規定体積及び/又は規定質量、の第一の媒体が、重力によって、生成物取出ステーション、特に開口部として設計された生成物取出ステーションから、生成物搬送ユニット、特にコンベヤベルト、上に落下する。
【0064】
この実施形態は、生成物取出ステーションから取出された沈殿した第一の媒体(すなわち沈殿食品)を、さらなる処理ステップ(例えば充填及び包装)のために、直接的及び連続的に、移送することができる、という利点を有する。このようにして、連続的な製造プロセスが中断されることなく、「バッチ」への定量的な分配(例えば、中間ピグ容積部による沈殿食品の分配量)は維持され、コールドチェーン(cold chain)も維持される。
【0065】
沈殿した第一の媒体の有孔ベルトコンベアによる搬送は、ベルトコンベアによる搬送中に、沈殿ブライン/パーミエート(すなわち、沈殿した第一の媒体のフロックが浮遊する上澄み液)が流れ落ちることができ、これにより、沈殿した第一の媒体の大きなピース、すなわち凝集したフロック(例えばチーズカード)のみを、ベルトコンベア上で搬送することができる、という利点を有する。
【0066】
さらなる実施形態において、ピグ取出ステーションは、少なくとも二つのピグをピグ供給装置に戻すように搬送する、ように構成されたピグ戻りパイプライン(pig return pipeline)、をさらに含み、特に少なくとも二つのピグをピグ供給装置に戻す搬送は、搬送媒体、特にクエン酸溶液、によって達成可能である。
【0067】
この実施形態は、使用済みのピグをピグ供給装置に戻し、従って再利用することができ、それによって、沈殿食品の連続する製造プロセスを、限られた数のピグで実施することができる、という利点を有する。搬送媒体としてクエン酸溶液を使用することは、クエン酸溶液が、使用済みのピグを、使用された媒体及び沈殿食品の残留物から洗浄し、さらに、ピグを殺菌する、という利点を有する。
【0068】
さらなる実施形態において、システムは、少なくとも一つのセンサー、をさらに含み、少なくとも一つのセンサーは、
・ 少なくとも二つのピグの位置、
・ 第一及び/又は第二及び/又は第三のバルブの開放された状態、
・ 少なくとも一つのシリンダーステムの延伸状態、
・ 体積流量、特に第一の媒体の体積流量、
・ 沈殿媒体の体積流量、
・ 中間ピグ容積部の充填レベル、
・ 中間リップ容積部の充填レベル
・ 少なくとも二つのピグの流速、
・ 第一の距離、
・ 第一の距離、
・ 沈殿物パイプライン及び/又は第一の媒体の温度、
・ 生成物取出ステーションからの沈殿した第一の媒体の取出状態、
のうちの少なくとも一つを決定するように構成される。
【0069】
中間ピグ容積部に充填される第一の媒体の体積は、例えば、中間ピグ容積部の充填レベルを決定するセンサーからのデータに基づいて決定することができ、なぜなら、この体積は、中間ピグ容積部の決定された充填レベルに基づいて、計算することができるからである。中間ピグ容積部に充填された第一の媒体の質量又は体積、を決定するための、他の可能性/検出システムとしては、流量計、マスフローメーター、補償/平衡シリンダー、置換ポンプ、ピストンポンプ、体積カウンター、又は、質量カウンターがある。さらに、充填時間は、第一の媒体の一定体積の流量に対して決定することができ、これにより、中間ピグ容積部に充填された第一の媒体の体積を計算することができる。上述した可能性は又、さらなる体積、例えば、中間リップ容積部に充填された第二の媒体の体積、を決定するために使用することができる。
【0070】
この実施形態は、全製造プロセスを、センサー(又は、上記した他の検出システム)によって監視することができ、従って、制御装置は、少なくとも二つのピグが、規定された第一の距離/間隔を有して、少なくとも一つのパイプライン内に提供され、第一の媒体及び沈殿媒体が、少なくとも中間ピグ容積部に提供されるように、ピグ供給装置及び媒体供給装置を制御するために必要な情報も受信する、という利点を有する。任意に、制御装置は、さらなる製造ステップ、特に全ての製造ステップ、を制御及び調整する、ように構成することができる。
【0071】
本発明はさらに、パイプシステム内で、規定量、特に規定容積及び/又は規定質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を沈殿させることにより、沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐、を連続的に製造する方法に関し、
方法が、
・ 少なくとも二つのピグをパイプシステム内に供給するステップ、
・ 規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、及び、沈殿媒体を、中間ピグ容積部内に充填するステップであって、少なくとも二つのピグの間の中間ピグ容積部が、少なくとも二つのピグの互いに対して規定された第一の距離、及び、パイプシステムの規定されたパイプライン直径によって規定される、ステップ、及び、
・ 規定された時間内に、パイプシステムを通して、規定された第一の距離及び充填された中間ピグ容積部を有する少なくとも二つのピグを移動させるステップであって、前記沈殿食品、特にチーズ及び/又は豆腐が、沈殿物の所望の程度で得られるように、規定された時間において、中間ピグ容積部内で、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、の沈殿を、提供することができるステップ、
を含む方法である。
【0072】
さらなる実施形態では、少なくとも二つのピグは、パイプシステム内を流れる体積流量、特に第一の媒体の体積流量、によって、パイプシステム内で移動される。
【0073】
本発明を、図面に概略的に示された実施例を参照して、純粋に例として、以下により詳細に説明する。図中、同一の要素には同一の参照番号が付される。記載された実施形態は、一般的に、正確な縮尺では示されておらず、又、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明に係る、ピグ供給装置に4つのピグが提供されたパイプシステムの概略図を示す。
図2】本発明に係る、第一のバルブの前に一つのピグが提供されたパイプシステムの概略図を示す。
図3】本発明に係る、第一のバルブの前に一つのピグが提供され、第一のバルブと第二のバルブの間に第二のピグが提供されたパイプシステムの概略図を示す。
図4】本発明に係る、媒体供給装置が、第一の媒体を中間ピグ容積部に充填しているパイプシステムの概略図を示す。
図5】本発明に係る、生成物取出ステーションを含んだパイプシステムの概略図を示す。
図6】本発明に係る、ピグ取出ステーション及びピグ戻りパイプラインを含んだパイプシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図面の詳細な説明
図1は、本発明に係る、ピグ供給装置3上に提供された4つのピグ2a,2b,2c,2dを有するパイプシステム1の概略図を示す。パイプシステム1のこの例示的な実施形態では、ピグ供給装置3は、4つのピグ2a,2b,2c,2dが配置される傾斜路として構成され、傾斜路3は、ピグ2a,2b,2c,2dが、パイプライン4の方向、特にピグ受け部5の方向、の下方に摺動又は転動するような急角度を有する。さらに、ピグ供給装置3/傾斜路3、及び、ピグ2a、2b、2c、2dは、パイプライン4の方向、特にピグ受け部5の方向、に傾斜路3に適用される流体流、特に水流、によって流されることができる。この例示的な実施形態では、ピグ受け部5は、ピグ2a、2b、2c、2dが、パイプライン4内にわたって摺動することができる、パイプライン4の開口部として形成される。例示的なピグ2(ピグ2は、当業者に公知の任意の方法で設計することができる)では、パイプライン4の直径よりも小さい直径を有するピグ本体6及び二つのリップ7を有し、二つのリップ7は、ピグ本体6から半径方向に延伸され、二つのリップ7がパイプライン4をシールするような直径を有する。さらに、ピグ2は、パイプラインの直径よりも小さい直径を有する丸い頭部25を有し、パイプライン内での移動(直線及び曲線)を容易にする。
【0076】
図2は、本発明に係る、第一のバルブ8の前に一つのピグ2aが提供された、パイプシステム1の概略図を示す。ピグ2aは、傾斜路3を転がり(及び/又は、流され)落ちて、ピグ受け部5によって、パイプライン4に導入され、ここでは、第一のバルブ8の前に配置され、第一のバルブ8は、ピグ供給装置3を、パイプシステム1の残りの部分から分離する。適切なセンサー(センサーは、例えば、パイプライン4に取り付けられ、ピグ2aのチップを検出するか、又は、例えば、レーザーゲートによって、光学的にピグ2aを登録することができる)によって、パイプシステム1内のピグ2aの位置を、正確に決定することができ、これにより、制御装置は、ピグ2aが第一のバルブ8の前に配置されるとすぐに、第一のバルブ8を、正確に開放させることができる。
【0077】
図2に示す本発明に係るパイプシステム1は、シリンダーステム9も含んでおり、このシリンダーステム9は、制御装置によって、第一のバルブ8が開放されるとすぐに、パイプシステム1内にシリンダーステム9が移動し、その結果、ピグ2aが、開放された第一のバルブ8を通って、パイプライン4内に押されるように、制御される。ピグ2aが、延伸されたシリンダーステム9によって、開放された第一のバルブ8を通って、押されるとすぐに、シリンダーステム9は、再び後退し、第一のバルブ8は、シリンダーステム9が後退中に再び通過するとすぐに、再び閉鎖される。シリンダーステム9が、完全に後退して、初期位置に達するとすぐに、別のピグ2bが、ピグ受け部5を経由して、パイプライン4内を移動し、第一のバルブ8の前の位置に、移動する。
【0078】
図3は、本発明に係る、第一のバルブ8の前に提供された一つのピグ2b、及び、第一のバルブ8及び第二のバルブ10の間に提供された第二のピグ2aを有する、パイプシステム1の概略図を示す。この実施形態では、パイプシステム1は、第一のバルブ8とパイプシステム1の他の部分との間に提供された第二のバルブ10を有する。ピグ2aは、開放された第一のバルブ8を通って(例えば、円筒状のステム9によって)第二のバルブ10の前に押され、従って、第一のバルブ8及び第二のバルブ10の間に収容される。第一のバルブ8の前方には別のピグ2bがあり、このピグ2bは、第一の供給ライン11によって、第二の媒体が、第一のバルブ8及び第二のバルブ10の間、特に中間リップ容積部12、に導入され、ピグ2aが、第二のバルブ10を通って、移動されるとすぐに、開放された第一のバルブ8を通って(例えば、シリンダーステム9によって)移動し、第二のバルブ10は、媒体供給装置13が、規定量、特に規定容積及び/又は規定質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、がパイプライン4に提供されるとすぐに、制御装置によって、すぐに開放されるように制御される。
【0079】
図4は、本発明に係る、媒体供給装置13が、第一の媒体を、二つのピグ2a,2bの中間ピグ容積部14に充填している、パイプシステム1の概略図を示す。ピグ2aが第一のバルブ8を通過した後、中間リップ容積部12は、第二の媒体で、所望の充填レベルまで充填され、その後、媒体供給装置13が、第二の供給ライン16によって、パイプライン4に、規定量、特に規定容積及び/又は規定質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を提供した後、ピグ2aは、開放された第二のバルブ10を通って、パイプライン4に入る。
【0080】
ピグ2aが第二の供給ライン16を通過した後、第二の供給ライン16が、ピグ2aと第二のバルブ10との間の容積に、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、を提供する。一方で、この規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体が、ピグ2aと第二のバルブ10との間の容積に、完全に分配された後、又は、他方で、一定の体積又は質量の流量で時間が経過した後、規定された体積又は質量の第一の媒体が、ピグ2aと第二のバルブ10との間の容積に、完全に分配され、制御装置は、第二のバルブ10の開放、及び、第一のバルブ8及び第二のバルブ10の間(第二の媒体が中間リップ容積部に導入された)に存在するピグ2bが、開放された第二のバルブ10を通って移動(例えば、後続のピグ2cによって押されて)されるように制御する。
【0081】
このようにして、ピグ2a,2bは、規定された第一の距離15に存在するようになり、この距離は、所定のパイプライン直径と共に、中間ピグ容積部14を規定し、中間ピグ容積部14は、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体、特に牛乳又は他のタンパク質分散液、で充填される。
【0082】
システム1は、第二の供給ライン16における第一の媒体の体積流量(すなわち、スループット/流量)を決定する流量計24、をさらに含み、制御装置は、流量計24による第一の媒体の体積流量の決定に基づいて、第一の媒体の一定の体積流量レートを制御する。
【0083】
ピグ2a,2bの中間ピグ容積部14が、第一の媒体で充填されている間、別のピグ2cが、第一のバルブ8及び第二のバルブ10の間に配置され、別のピグ2dが、ピグ受け部5によって、第一のバルブ8の前に配置される。二つのピグ2a,2bが、(例えば、第一の媒体の体積流量によって)パイプシステム1を通って、さらに導入されるとすぐに、これら二つのピグ2c,2dも、互いに規定された第一の距離を隔てて移動し、その中間ピグ容積部にも、第一の媒体が充填される。このようにして、第一の媒体が、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、を定期的に提供され、パイプシステム1を通過する、連続プロセスが存在する。
【0084】
図示された実施形態では、パイプシステム1、特に媒体供給装置13、は第三の供給ライン17を有し、それによって、二つのピグ2a,2bが、(例えば、第一の媒体の体積流量によって)パイプシステム1を通って、さらに導入され、中間ピグ容積部14が、第三の供給ライン17を通過するとすぐに、沈殿媒体が中間ピグ容積部14に加えられる。このようにして、規定量、特に規定された体積及び/又は規定された質量、の第一の媒体が、中間ピグ容積部14内で沈殿し、一方、二つのピグ2a,2b、及び、従って、中間ピグ容積部14も(例えば、第一の媒体の体積流量によって)パイプシステム1内を連続的に移動する。
【0085】
図5は、本発明に係る、生成物取出ステーション18を含むパイプシステム1の概略図を示す。二つのピグ2a,2b(従って、中間ピグ容積部14も)が、(例えば、第一の媒体の体積流量によって)パイプシステム1内を、連続的に移動された後、例えば、第一の媒体の体積流量によって、調整可能なピグ2a,2bの流速が、二つのピグ2a,2b、従って、中間ピグ容積部14が、パイプシステム1内に留まる第一の媒体及び沈殿媒体(例えば、パイプシステム1の長さによっても制御可能)で充填される時間/期間が、沈殿反応が完全に起こり、二つのピグ2a,2b(従って、沈殿した第一の媒体で充填された中間ピグ容積部14も)が、生成物取出ステーション18に到達するのに十分な長さになるように選択される。
【0086】
まず、ピグ2aは(例えば第一の媒体の体積流量によって)生成物取出ステーション18に移動され、そこで、開口部20の上に移動される。ピグ2aは、開口部20より大きいので、開口部20には落下しないが、しかしながらその上を摺動する。ピグ2aの後に位置する、沈殿した第一の媒体が充填された中間ピグ容積部14も、ピグ2aの移動によって、生成物取出ステーション18を通って移動し、それによって沈殿した第一の媒体が、(例えば、重力によって)開口部20(パイプラインの底部に位置する)を通して落下し、その結果、パイプシステム1から取出される。パイプラインの開口部20を通して、圧力(例えば、ピグ2a上の第一の媒体の体積流量によって及ぼされる)が減少/急激に除去され、この圧力の除去により、ピグ2aがパイプラインを通って移動されなくなり、図示された実施形態における生成物取出ステーション18は、シリンダーステム9を有し、このシリンダーステム9は、ピグ2aを、生成物取出ステーション18の後に配置されたピグ取出ステーション19に、延伸運動によって押す。シリンダーステム9が再び完全に引き込まれ(初期位置まで)、沈殿した第一の媒体(これは例えば、ブライン/パーミエート中の沈殿したフロック/フロック凝集物の形で存在する)が、中間ピグ容積部14から取出された後、第二のピグ2bが、生成物取出ステーション18内に移動され、その後、(例えばシリンダーステム9によって)ピグ取出ステーション19内にも移動される。続いて、沈殿した第一の媒体が充填された中間ピグ容積部14を有するさらなるピグ2が、(例えば、第一の媒体の体積流量によって)生成物取出ステーション18に移動され、これにより、沈殿した第一の媒体を、連続プロセスで、パイプシステム1から取出することができる。
【0087】
沈殿した第一の媒体/沈殿した食品、を有するパイプラインが、意図せずに、流れ出ないように、生成物取出ステーション18が、パイプシステム1の先行する部分(例えば、沈殿物パイプライン)よりも高い位置(すなわち、地面からの距離が長い位置)にあると、特に有利である。その代わりに、高い位置にある生成物取出ステーション18は、沈殿した第一の媒体/沈殿した食品が、第一の媒体の流れ及びそれに伴うピグの動き、によってのみ、前方に押されることを確実にし、従って、生成物取出ステーション18による、パイプシステム1からの沈殿した第一の媒体/沈殿した食品の取出は、第一の媒体の(強制的な)流れに基づいてのみ、提供される。
【0088】
図6は、本発明に係る、ピグ取出ステーション19及びピグ戻りパイプライン22を含むパイプシステム1の概略図を示す。図示された実施形態では、ピグ取出ステーション19は、第三のバルブ21として構成され、制御装置は、ピグ2aが第三のバルブ21の前に提供されるとすぐに、第三のバルブ21が開放されるように、第三のバルブ21を制御する。続いて、ピグ2aは、開放された第三のバルブ21を通って(例えば、延伸されたシリンダーステム9によって)移動され、制御装置は、ピグ2aが第三のバルブ21を通って移動されるとすぐに(そして、延伸されたシリンダーステム9が再び第三のバルブから引っ込むとすぐに)、第三のバルブ21が再び閉鎖される、ように第三のバルブ21を制御する。続いて、制御装置は、ピグ2bが、第三のバルブ21の前に供給されるとすぐに、第三のバルブ21が、再び開放されるように、第三のバルブ21を制御する。
【0089】
図示された実施形態では、ピグ取出ステーション19は、又、二つのピグ2a,2bが、ピグ供給装置3に戻り搬送されるピグ戻りパイプライン22(ピグの再利用を確実にし、連続製造を提供するための)と、搬送媒体、特にクエン酸溶液、の流入を、ピグ取出ステーション19に提供する第四の供給ライン23も有し、搬送媒体は、二つのピグ2a,2bを、第三のバルブ21を通過するとすぐに、ピグ供給装置3に戻す搬送をする。
【0090】
搬送媒体としてクエン酸を使用することは、利点を有し、第一に、例えば、プロセスの沈殿媒体として既に使用されているため、その一部が、生成物に混入しても、成分表/食品の安全性、の面で問題がないこと、第二に、クエン酸には脱カルシウム効果があることである。これは、各製造サイクルの後に、ピグを確実に洗浄することに役立つ。もしピグに、脱カルシウムがされなかったら、パイプラインを通る摩擦抵抗は、製造時間が、長期化するにつれて、ますます大きくなる。
【0091】
本発明は、上記に図示したように、いくつかの好ましい実施形態を部分的に参照して例示されているが、実施形態の異なる仕様の多くの、変更及び組み合わせ、が可能であることを理解されたい。これらの変更の全ては、添付された請求項の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】