(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012297
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】NKG2D、CD16、および腫瘍関連抗原に結合するタンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240123BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240123BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240123BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 G
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172090
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2019564917の分割
【原出願日】2018-05-23
(31)【優先権主張番号】62/546,296
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,396
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/546,292
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/510,173
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/552,146
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,416
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,419
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】チャン, グレゴリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】チュン, アン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイニー, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ランディ, ブラッドリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ, ビアンカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規のがん免疫療法を提供する。
【解決手段】(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、(b)CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133に結合する第2の抗原結合部位と、(c)CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位とを含むタンパク質、前記タンパク質を含む製剤、並びに前記タンパク質または製剤を患者に投与することを包含する、がんを処置する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項2】
前記第1の抗原結合部位が、ヒトのNKG2Dに結合する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じポリペプチド上に存在する、請求項3に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項3または4に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じポリペプチド上に存在する、請求項5に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記第1の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、請求項5または6に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号1、配列番号41、配列番号49、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85および配列番号93から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号41と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号42と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項10】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号49と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号50と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項11】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号57と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号58と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項12】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号59と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号60と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項13】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号61と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号62と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項14】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号69と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号70と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項15】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号77と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号78と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項16】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号85と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号86と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項17】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号93と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号94と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項18】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号101と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号102と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項19】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号103と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインと、配列番号104と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項20】
前記第1の抗原結合部位が、単一ドメイン抗体である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記単一ドメイン抗体が、VHH断片またはVNAR断片である、請求項20に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項1、2、または20から21のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じポリペプチド上に存在する、請求項22に記載のタンパク質。
【請求項24】
前記第2の抗原結合部位は、CD37に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号109と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号113と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記第2の抗原結合部位は、CD37に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号117と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号121と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記第2の抗原結合部位は、CD37に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号125と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号129と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項27】
前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号134と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号138と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項28】
前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号142と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号146と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項29】
前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号150と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号154と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項30】
前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号158と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号162と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項31】
前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号170と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項32】
前記第2の抗原結合部位は、CD19に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号175と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号179と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項33】
前記第2の抗原結合部位は、CD19に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号183と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号187と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項34】
前記第2の抗原結合部位は、CD19に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号191と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号195と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項35】
前記第2の抗原結合部位は、CD19に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号199と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号203と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項36】
前記第2の抗原結合部位は、CD22に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号208と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号212と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項37】
前記第2の抗原結合部位は、CD22に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号216と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号220と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項38】
前記第2の抗原結合部位は、CD22に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号224と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号228と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項39】
前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号233と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号237と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項40】
前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号241と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号245と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項41】
前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号249と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号253と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項42】
前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号257と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号261と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項43】
前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号265と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号269と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項44】
前記第2の抗原結合部位は、CD52に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号274と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号278と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項45】
前記第2の抗原結合部位は、CD52に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号282と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号286と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項46】
前記第2の抗原結合部位は、CD133に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号291と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号295と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項47】
前記第2の抗原結合部位は、CD133に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号299と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号303と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項48】
前記第2の抗原結合部位は、CD133に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号307と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号311と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項49】
前記第2の抗原結合部位は、CD133に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインは、配列番号315と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインは、配列番号319と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項50】
前記第2の抗原結合部位が、単一ドメイン抗体である、請求項1から4または8から21のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項51】
前記第2の抗原結合部位が、VHH断片またはVNAR断片である、請求項50に記載のタンパク質。
【請求項52】
前記タンパク質が、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインの一部分を含み、前記抗体Fcドメインが、ヒンジおよびCH2ドメインを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項53】
前記抗体Fcドメインが、ヒトIgG1抗体のヒンジおよびCH2ドメインを含む、請求項52に記載のタンパク質。
【請求項54】
前記Fcドメインが、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項52または53に記載のタンパク質。
【請求項55】
前記Fcドメインが、ヒトIgG1のFcドメインと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、K439からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なる、請求項54に記載のタンパク質。
【請求項56】
先行する請求項のいずれか一項に記載のタンパク質および薬学的に許容される担体を含む製剤。
【請求項57】
請求項1から55のいずれか一項に記載のタンパク質を発現する1つまたは複数の核酸を含む細胞。
【請求項58】
有効量の、請求項1~55のいずれか1項に記載のタンパク質に、腫瘍細胞およびナチュラルキラー細胞を曝露する工程を包含する、腫瘍細胞死を増強する方法。
【請求項59】
有効量の、請求項1~55のいずれか1項に記載のタンパク質または請求項56に記載の製剤を、患者に投与することを包含する、がんを処置する方法。
【請求項60】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD37に結合し、処置される前記がんは、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、非ホジキンリンパ腫、および急性骨髄性白血病からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD20に結合し、処置される前記がんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびB細胞悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD19に結合し、処置される前記がんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、および急性骨髄性白血病からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD22に結合し、処置される前記がんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、およびヘアリー細胞白血病からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD30に結合し、処置される前記がんは、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および胎児性細胞癌からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD52に結合し、処置される前記がんは、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞性前リンパ球性白血病、B細胞悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、成熟T/ナチュラルキラー(NK)細胞新生物、ならびに胸腺腫からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記タンパク質の前記第2の抗原結合部位は、CD133に結合し、処置される前記がんは、乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮がん、精巣胚細胞がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠腫、膠芽腫、および頭頚部の扁平上皮癌からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月23日に出願された米国仮特許出願番号第62/510,173号、2017年7月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/539,396号、2017年7月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/539,416号、2017年7月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/539,419号、2017年8月16日に出願された米国仮特許出願番号第62/546,292号、2017年8月16日に出願された米国仮特許出願番号第62/546,296号、および2017年8月30日に出願された米国仮特許出願番号第62/552,146号に基づく利益および優先権を主張し、これらのそれぞれの全体の内容は、すべての目的のために本明細書中に参考として援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、その全体は、参照により本明細書に組み込まれている。前記ASCIIコピーは2018年5月21日に作成され、DFY-022WO.txtという名称であり、212kbのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、NKG2D、CD16、およびCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
がんは、この疾患を処置するための文献に報告されている十分な研究努力および科学進歩にもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。血液および骨髄のがんは、頻繁に診断されるがんの種類である(多発性骨髄腫、白血病、およびリンパ腫が挙げられる)。これらのがんに対する現在の処置選択肢は、すべての患者に効果的というわけではなく、および/または実質的な有害副作用を有する可能性がある。他の種類のがんも、既存の治療選択肢を使用して処置することが依然として困難である。
【0005】
がん免疫療法は、それらが非常に特異的であり、患者自身の免疫系を使用してがん細胞の破壊を促進することができるので望ましい。二重特異性T細胞エンゲージャーなどの融合タンパク質は、腫瘍細胞の破壊を促進するために腫瘍細胞およびT細胞に結合する、文献に記載されているがん免疫療法である。ある特定の腫瘍関連抗原およびある特定の免疫細胞に結合する抗体は文献に記載されている。例えば、WO2016/134371およびWO2015/095412を参照されたい。
【0006】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫系の構成要素であり、循環リンパ球の約15%を構成する。NK細胞は実質的にすべての組織に浸潤し、最初は、事前感作を必要とせずに腫瘍細胞を効果的に殺傷するそれらの能力によって特徴付けられた。活性化されたNK細胞は、細胞傷害性T細胞と同様の手段によって、すなわち、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞傷害性顆粒を介して、ならびに死受容体経路を介して、標的細胞を殺傷する。活性化されたNK細胞はまた、標的組織への他の白血球の動員を促進するIFN-γおよびケモカインなどの炎症性サイトカインを分泌する。
【0007】
NK細胞は、それらの表面における様々な活性化受容体および阻害受容体を介してシグナルに応答する。例えば、NK細胞が健康な自己細胞に遭遇すると、それらの活性は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の活性化によって阻害される。あるいはNK細胞が外来細胞またはがん細胞に遭遇すると、それらは、それらの活性化受容体(例えば、NKG2D、NCR、DNAM1)を介して活性化される。NK細胞はまた、それらの表面におけるCD16受容体を介していくつかの免疫グロブリンの定常領域によって活性化される。活性化に対するNK細胞の全体的な感受性は、刺激シグナルおよび阻害シグナルの合計に依存する。
【0008】
CD37(細胞表面抗原のテトラスパニンスーパーファミリーのメンバー)は、実質的に全ての成熟Bリンパ球上で発現されるが、プロB細胞または形質細胞上では発現されない。それは、系統特異的B細胞抗原であり、正常なT細胞、胸腺細胞、単球、顆粒球、血小板、ナチュラルキラー(NK)細胞、および赤血球上には存在しないかまたは最小限にしか発現されない。さらに、CD37は、末梢成熟B細胞に由来する悪性腫瘍(例えば、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、非ホジキンリンパ腫、および急性骨髄性白血病)上で発現される。
【0009】
CD20は、プロB細胞相から成熟相までのB細胞分化の間にB細胞表面上で発現される活性化グリコシル化リンタンパク質である。それは、B細胞の発生および形質細胞への分化において役割を果たす。CD20はまた、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびB細胞悪性腫瘍上で見出される。
【0010】
CD19は、B細胞芽球への発生の間に、最も早期の認識可能なB系統細胞からBリンパ球の表面上に発現される膜貫通糖タンパク質である。それは主に、CD21およびCD81とともに、B細胞共受容体として作用する。CD19は、多くのがん(例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、B細胞悪性腫瘍、および急性骨髄性白血病)において発現される。
【0011】
CD22(B細胞限定リン糖タンパク質(B-cell-restricted phosphoglycoprotein))は、成熟B細胞の表面上で発現され、より低い程度には、いくらかの未成熟B細胞上で発現される。それは、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達の阻害性受容体として機能する。さらに、CD22は、がん細胞(例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、およびヘアリー細胞白血病)において発現される。
【0012】
CD30は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバー、特に、TNFR8である。CD30は、活性化リンパ球およびいくつかの他の正常な細胞上で発現される。そのシグナル伝達は、NF-κB転写因子を活性化し、遺伝子機能の多面発現性調節を生じる。CD30は、古典的なホジキンリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、および胎児性細胞癌の特徴的なマーカーであり、攻撃的なT細胞およびB細胞新生物のサブセット上で発現される。正常な細胞上でのその限定した発現は、それを、標的化療法の魅力的な候補にする。
【0013】
CAMPATH-1(分化抗原群52(CD52)としても公知)は、12アミノ酸のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーペプチドである。CD52は、成熟Bリンパ球およびTリンパ球、単球、ならびに樹状細胞の細胞膜上に発現されるが、これらのリンパ球が由来する幹細胞上では発現されない。さらに、CD52は、雄性生殖管内で見出され、成熟精子細胞の表面上に存在する。CD52は、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞性前リンパ球性白血病、B細胞悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、成熟T/ナチュラルキラー(NK)細胞新生物、ならびに胸腺腫を含むある種のがんに関連する。
CD133は、ヒト造血幹細胞および前駆細胞において主に同定される5回膜貫通糖タンパク質(pentaspan transmembrane glycoprotein)である。現在は、この表面受容体の生理学的役割は未知のままである。しかし、CD133は、種々の癌(乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮がんおよび精巣胚細胞がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠腫、膠芽腫ならびに頭頚部の扁平上皮癌が挙げられる)においてがん幹細胞のマーカーとして同定された。CD133は、p85と相互作用して、がん幹細胞においてPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路を活性化し得、この活性化は、その結果として、がん幹細胞を刺激して、腫瘍形成能力を促進させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2016/134371号
【特許文献2】国際公開第2015/095412号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
要旨
本発明は、ナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。かかるタンパク質は2種類以上のNK活性化受容体と会合することができ、天然リガンドのNKG2Dへの結合を阻止し得る。ある特定の実施形態では、タンパク質は、ヒトにおいてNK細胞を刺激し得る。一部の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにげっ歯動物およびカニクイザルなどの他の種においてNK細胞を刺激し得る。本発明の様々な態様および実施形態を以下にさらに詳細に記載する。
【0016】
したがって、本発明の一態様は、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する第2の抗原結合部位と、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメイン、その一部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位とを組み込んだタンパク質を提供する。
【0017】
抗原結合部位は各々、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメイン(例えば、抗体のように配列されるか、またはscFvを形成するために一緒に融合される)を組み込んでいてもよいか、または抗原結合部位の1つもしくは複数は、ラクダ科抗体のようなVHH抗体もしくは軟骨魚類に見出されるもののようなVNAR抗体などの単一ドメイン抗体であってもよい。
【0018】
一態様では、本発明は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。NKG2D結合部位は、配列番号1、配列番号41、配列番号49、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、および配列番号93から選択されるアミノ酸と少なくとも90%同一な重鎖可変ドメインを含む。
【0019】
NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、一部の実施形態では、例えば配列番号1と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有すること、ならびに/または、配列番号1のCDR1(配列番号105)、CDR2(配列番号106)、およびCDR3(配列番号107)配列と同一のアミノ酸配列を組み込むことにより、配列番号1に関連する重鎖可変ドメインを組み込んでいてもよい。配列番号1に関する重鎖可変ドメインは、種々の軽鎖可変ドメインと結びついてNKG2D結合部位を形成することができる。例えば、配列番号1に関する重鎖可変ドメインを組み込む第1の抗原結合部位はさらに、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および40に関する配列のうちのいずれか1つから選択される軽鎖可変ドメインを組み込み得る。例えば、第1の抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一なアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、ならびに配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および40から選択される配列のうちのいずれか1つと少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一なアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを組み込む。
【0020】
代替的に、第1の抗原結合部位は、配列番号41に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号42に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号41と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または列番号41のCDR1(配列番号43)、CDR2(配列番号44)、およびCDR3(配列番号45)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号42と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号42のCDR1(配列番号46)、CDR2(配列番号47)、およびCDR3(配列番号48)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0021】
他の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号49に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号50に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号49と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号49のCDR1(配列番号51)、CDR2(配列番号52)、およびCDR3(配列番号53)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号50と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号50のCDR1(配列番号54)、CDR2(配列番号55)、およびCDR3(配列番号56)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0022】
代替的に、第1の抗原結合部位は、例えば、それぞれ、配列番号57と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である、および配列番号58と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有することによって、配列番号57に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号58に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。
【0023】
別の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号59に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号60に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号59と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号59のCDR1(配列番号324)、CDR2(配列番号325)、およびCDR3(配列番号326)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号60と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号60のCDR1(配列番号327)、CDR2(配列番号328)、およびCDR3(配列番号329)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0024】
NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、一部の実施形態では、配列番号61に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号62に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号61と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号61のCDR1(配列番号63)、CDR2(配列番号64)、およびCDR3(配列番号65)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号62と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号62のCDR1(配列番号66)、CDR2(配列番号67)、およびCDR3(配列番号68)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号69に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号70に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号69と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号69のCDR1(配列番号71)、CDR2(配列番号72)、およびCDR3(配列番号73)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号70と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号70のCDR1(配列番号74)、CDR2(配列番号75)、およびCDR3(配列番号76)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0025】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号77に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号78に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号77と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号77のCDR1(配列番号79)、CDR2(配列番号80)、およびCDR3(配列番号81)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号78と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号78のCDR1(配列番号82)、CDR2(配列番号83)、およびCDR3(配列番号84)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0026】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号85に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号86に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号85と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号85のCDR1(配列番号87)、CDR2(配列番号88)、およびCDR3(配列番号89)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号86と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号86のCDR1(配列番号90)、CDR2(配列番号91)、およびCDR3(配列番号92)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0027】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号93に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号94に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号93と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号93のCDR1(配列番号95)、CDR2(配列番号96)、およびCDR3(配列番号97)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号94と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号94のCDR1(配列番号98)、CDR2(配列番号99)、およびCDR3(配列番号100)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0028】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、例えば、それぞれ、配列番号101と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である、および配列番号102と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有することによって、配列番号101に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号102に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、例えば、それぞれ、配列番号103と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である、および配列番号104と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有することによって、配列番号103に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号104に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。
【0029】
一部の実施形態では、CD37に結合する第2の抗原結合部位は、配列番号109に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号113に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号109と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号109のCDR1(配列番号110)、CDR2(配列番号111)、およびCDR3(配列番号112)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号113と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号113のCDR1(配列番号114)、CDR2(配列番号115)、およびCDR3(配列番号116)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0030】
CD37に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号117に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号121に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号117と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号117のCDR1(配列番号118)、CDR2(配列番号119)、およびCDR3(配列番号120)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号121と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号121のCDR1(配列番号122)、CDR2(配列番号123)、およびCDR3(配列番号124)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0031】
CD37に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号125に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号129に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号125と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号125のCDR1(配列番号126)、CDR2(配列番号127)、およびCDR3(配列番号128)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号129と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号129のCDR1(配列番号130)、CDR2(配列番号131)、およびCDR3(配列番号132)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0032】
一部の実施形態では、CD20に結合する第2の抗原結合部位は、配列番号134に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号138に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号134と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号134のCDR1(配列番号135)、CDR2(配列番号136)、およびCDR3(配列番号137)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号138と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号138のCDR1(配列番号139)、CDR2(配列番号140)、およびCDR3(配列番号141)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0033】
代替的に、CD20に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号142に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号146に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号142と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号142のCDR1(配列番号143)、CDR2(配列番号144)、およびCDR3(配列番号145)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号146と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号146のCDR1(配列番号147)、CDR2(配列番号148)、およびCDR3(配列番号149)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0034】
CD20に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号150に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号154に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号150と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号150のCDR1(配列番号151)、CDR2(配列番号152)、およびCDR3(配列番号153)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号154と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号154のCDR1(配列番号155)、CDR2(配列番号156)、およびCDR3(配列番号157)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0035】
代替的に、CD20に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号158に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号162に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号158と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号158のCDR1(配列番号159)、CDR2(配列番号160)、およびCDR3(配列番号161)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号163と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号162のCDR1(配列番号163)、CDR2(配列番号164)、およびCDR3(配列番号165)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0036】
代替的に、CD20に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号166に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号170に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号166と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号166のCDR1(配列番号167)、CDR2(配列番号168)、およびCDR3(配列番号169)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号170と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号170のCDR1(配列番号171)、CDR2(配列番号172)、およびCDR3(配列番号173)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0037】
一部の実施形態では、CD19に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号175に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号179に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号175と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号175のCDR1(配列番号176)、CDR2(配列番号177)、およびCDR3(配列番号178)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号179と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号179のCDR1(配列番号180)、CDR2(配列番号181)、およびCDR3(配列番号182)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0038】
代替的に、CD19に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号183に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号187に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号183と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号183のCDR1(配列番号184)、CDR2(配列番号185)、およびCDR3(配列番号186)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号187と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号187のCDR1(配列番号188)、CDR2(配列番号189)、およびCDR3(配列番号190)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0039】
代替的に、CD19に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号191に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号195に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号191と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号191のCDR1(配列番号192)、CDR2(配列番号193)、およびCDR3(配列番号194)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号195と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号195のCDR1(配列番号196)、CDR2(配列番号197)、およびCDR3(配列番号198)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
代替的に、CD19に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号199に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号203に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号199と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号199のCDR1(配列番号200)、CDR2(配列番号201)、およびCDR3(配列番号202)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号203と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号203のCDR1(配列番号204)、CDR2(配列番号205)、およびCDR3(配列番号206)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0040】
一部の実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号208に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号212に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号208と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号208のCDR1(配列番号209)、CDR2(配列番号210)、およびCDR3(配列番号211)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号212と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号212のCDR1(配列番号213)、CDR2(配列番号214)、およびCDR3(配列番号215)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0041】
代替的に、CD22に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号216に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号220に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号216と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号216のCDR1(配列番号217)、CDR2(配列番号218)、およびCDR3(配列番号219)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号220と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号220のCDR1(配列番号221)、CDR2(配列番号222)、およびCDR3(配列番号223)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。代替的に、CD22に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号224に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号228に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号224と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号224のCDR1(配列番号225)、CDR2(配列番号226)、およびCDR3(配列番号227)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号228と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号228のCDR1(配列番号229)、CDR2(配列番号230)、およびCDR3(配列番号231)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0042】
代替的に、CD30に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号233に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号237に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号233と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号233のCDR1(配列番号234)、CDR2(配列番号235)、およびCDR3(配列番号236)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号237と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号237のCDR1(配列番号238)、CDR2(配列番号239)、およびCDR3(配列番号240)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0043】
代替的に、CD30に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号241に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号245に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号241と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号241のCDR1(配列番号242)、CDR2(配列番号243)、およびCDR3(配列番号244)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号245と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号245のCDR1(配列番号246)、CDR2(配列番号247)、およびCDR3(配列番号248)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0044】
代替的に、CD30に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号249に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号253に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号249と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号249のCDR1(配列番号250)、CDR2(配列番号251)、およびCDR3(配列番号252)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号253と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号253のCDR1(配列番号254)、CDR2(配列番号255)、およびCDR3(配列番号256)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0045】
代替的に、CD30に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号257に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号261に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号257と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号257のCDR1(配列番号258)、CDR2(配列番号259)、およびCDR3(配列番号260)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号261と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号261のCDR1(配列番号262)、CDR2(配列番号263)、およびCDR3(配列番号264)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0046】
代替的に、CD30に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号265に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号269に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号265と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号265のCDR1(配列番号266)、CDR2(配列番号267)、およびCDR3(配列番号268)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号269と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号269のCDR1(配列番号270)、CDR2(配列番号271)、およびCDR3(配列番号272)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、CD52に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号274に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号278に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号274と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号274のCDR1(配列番号275)、CDR2(配列番号276)、およびCDR3(配列番号278)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号278と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号278のCDR1(配列番号279)、CDR2(配列番号280)、およびCDR3(配列番号281)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0048】
代替的に、CD52に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号282に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号286に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号282と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号282のCDR1(配列番号283)、CDR2(配列番号284)、およびCDR3(配列番号285)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号286と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号286のCDR1(配列番号287)、CDR2(配列番号288)、およびCDR3(配列番号289)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0049】
一部の実施形態では、CD133に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号291に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号295に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号291と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号291のCDR1(配列番号292)、CDR2(配列番号293)、およびCDR3(配列番号294)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号295と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号295のCDR1(配列番号296)、CDR2(配列番号297)、およびCDR3(配列番号298)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0050】
代替的に、CD133に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号299に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号303に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号299と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号299のCDR1(配列番号300)、CDR2(配列番号301)、およびCDR3(配列番号302)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号303と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号303のCDR1(配列番号304)、CDR2(配列番号305)、およびCDR3(配列番号306)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0051】
代替的に、CD133に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号307に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号311に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号307と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号307のCDR1(配列番号308)、CDR2(配列番号309)、およびCDR3(配列番号310)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号311と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号311のCDR1(配列番号312)、CDR2(配列番号313)、およびCDR3(配列番号314)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0052】
代替的に、CD133に結合する第2の抗原結合部位は、必要に応じて、配列番号315に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号319に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号315と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号315のCDR1(配列番号316)、CDR2(配列番号317)、およびCDR3(配列番号318)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号319と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であり、かつ/または配列番号319のCDR1(配列番号320)、CDR2(配列番号321)、およびCDR3(配列番号322)配列と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0053】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、第1の抗原結合部位に存在する軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを組み込んでいる。
【0054】
一部の実施形態では、本タンパク質は、CD16に結合するに十分な抗体Fcドメインの一部分を組み込んでおり、ここで抗体Fcドメインは、ヒンジおよびCH2ドメイン、および/またはヒトIgG抗体のアミノ酸配列234~332と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0055】
本明細書に記載のタンパク質のうちのいずれか1つを含有する製剤、このタンパク質を発現する1つまたは複数の核酸を含有する細胞、およびこのタンパク質を使用して腫瘍細胞死を増強する方法も提供される。
【0056】
本発明の別の態様は、患者のがんを処置する方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に、本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質を治療有効量で投与することを含む。CD37を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD37を発現する任意のがん、例えば、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、非ホジキンリンパ腫、および急性骨髄性白血病が挙げられる。CD20を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD20を発現する任意のがん、例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびB細胞悪性腫瘍が挙げられる。CD19を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD19を発現する任意のがん、例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、および急性骨髄性白血病が挙げられる。CD22を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、およびヘアリー細胞白血病を発現する任意のがんが挙げられる。CD30を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD30を発現する任意のがん、例えば、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および胎児性細胞癌が挙げられる。CD52を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD52を発現する任意のがん、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞性前リンパ球性白血病、B細胞悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、成熟T/ナチュラルキラー(NK)細胞新生物、ならびに胸腺腫が挙げられる。CD133を標的とする多重特異性結合タンパク質を使用して処置するがんとして、CD133を発現する任意のがん、例えば、乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮がん、精巣胚細胞がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠腫、膠芽腫、および頭頚部の扁平上皮癌が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、ヘテロ二量体の多重特異性抗体の図である。各アームは、NKG2D結合ドメインまたはCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133の結合ドメインのいずれかを表し得る。一部の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび抗原結合ドメインは、共通の軽鎖をもつ場合がある。
【0058】
【
図2】
図2は、ヘテロ二量体の多重特異性抗体の図である。NKG2D結合ドメインまたはCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される抗原への結合ドメインのいずれかは、scFvフォーマット(右アーム)をとることができる。
【0059】
【
図3】
図3は、ELISAアッセイにおけるヒト組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0060】
【
図4】
図4は、ELISAアッセイにおけるカニクイザル組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0061】
【
図5】
図5は、ELISAアッセイにおけるマウス組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0062】
【
図6】
図6は、フローサイトメトリーによる、ヒトNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示す棒グラフであり、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)の倍率(FOB)を示している。
【0063】
【
図7】
図7は、フローサイトメトリーによる、マウスNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示す棒グラフであり、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)の倍率(FOB)を示している。
【0064】
【
図8】
図8は、天然リガンドULBP-6と競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0065】
【
図9】
図9は、天然リガンドMICAと競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0066】
【
図10】
図10は、天然リガンドRae-1デルタと競合することによる、組換えマウスNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0067】
【
図11】
図11は、ヒトNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-α陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNKG2Dの活性化を示す棒グラフである。
【0068】
【
図12】
図12は、マウスNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-α陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNKG2Dの活性化を示す棒グラフである。
【0069】
【
図13】
図13は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0070】
【
図14】
図14は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0071】
【
図15】
図15は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0072】
【
図16】
図16は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0073】
【
図17】
図17は、腫瘍細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の細胞傷害作用を示す棒グラフである。
【0074】
【
図18】
図18は、示差走査型蛍光定量法によって測定された、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の融解温度を示す棒グラフである。
【0075】
【
図19A】
図19A~19Cは、CD16およびNKG2D結合を使用したNK細胞の相乗的活性化の棒グラフである。
図19AはCD107aのレベルを示し、
図19BはIFNγのレベルを示し、
図19CはCD107aおよびIFNγのレベルを示す。グラフは平均(n=2)±SDを示している。データは、5名の異なる健康なドナーを使用した、5つの独立した実験を代表するものである。
【0076】
【
図20】
図20は、IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体であるTriomab形態におけるTriNKETの図である。このキメラは、2つの親抗体に由来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。Triomab形態は、ラット抗体の1/2およびマウス抗体の1/2を含有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0077】
【
図21】
図21は、ノブ・イントゥ・ホール(KIH:knobs-into-holes)技術を用いるKiH共通軽鎖(LC)形態におけるTriNKETの図である。KiHは、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。KiHフォーマットにおけるTriNKETは、2つの異なる重鎖と、両方の重鎖と対合する共通の軽鎖とを含有する、標的1および標的2に結合する2つのFabを有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0078】
【
図22】
図22は、自然起源の可動性リンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるTriNKETの図である。DVD-Ig(商標)とは、抗原2を標的とする可変ドメインが、抗原1を標的とするFabの可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体構築物である。構築物は通常のFcを含有する。
【0079】
【
図23】
図23は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つのFabを含有するヘテロ二量体構築物である、直交性Fab界面(オルト-Fab)形態におけるTriNKETの図である。LC-HCの対合は、直交界面によって確実になっている。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0080】
【
図24】
図24は、2in1 IgフォーマットにおけるTriNKETの図である。
【0081】
【
図25】
図25は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つの異なるFabを含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態におけるTriNKETの図である。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリング突然変異によって確実になっている。
【0082】
【
図26】
図26は、Fabアーム交換形態におけるTriNKET、すなわち、重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子の重-軽鎖対とスワップすることによりFabアームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体の図である。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。
【0083】
【
図27】
図27は、標的1および2に結合する2つのFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である、SEED Body形態におけるTriNKETの図である。
【0084】
【
図28】
図28は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるTriNKETの図である。LuZ-Y形態は、Fcに融合した標的1および2に結合する2つの異なるscFabを含有するヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確実になっている。
【0085】
【
図29】
図29は、Cov-X-Body形態におけるTriNKETの図である。
【0086】
【
図30A】
図30Aおよび30Bは、ヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるTriNKETの図である。抗原1を標的とするFab1はカッパLCを含有し、一方、抗原2を標的とする第2のFabはラムダLCを含有する。
図30Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、
図30Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【0087】
【
図31】
図31は、Fcに融合した、標的1に結合するFabと、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体構築物である。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0088】
【
図32】
図32は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMabである。Fab 1および2は、軽鎖(LC)および重鎖(HC)の正確な対合を確実にする特異な(differential)S-S架橋を含有する。
【0089】
【
図33】
図33は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した標的1および2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAbである。CLドメインおよびCH1ドメインと、VhドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH1は、VLとインラインで融合しており、一方、CLは、VHとインラインで融合している。
【0090】
【
図34】
図34は、抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Igである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【0091】
【
図35】
図35は、EL4細胞上で発現されるNKG2DへのCD20標的化TriNKETの結合を示すヒストグラムである。染色されていないEL4細胞は、蛍光シグナルの陰性対照として使用した。染色されていない:黒塗り; F04-TriNKET-CD20:実線; CD26-TriNKET-CD20:破線。
【0092】
【
図36】
図36は、Rajiヒトリンパ腫細胞上で発現されるCD20へのCD20標的化TriNKETの結合を示すヒストグラムである。染色されていない細胞は、蛍光シグナルの陰性対照として使用した。染色されていない:黒塗り; F04-TriNKET-CD20:実線; CD26-TriNKET-CD20:破線。
【0093】
【
図37】
図37は、ヒトNK細胞が、これらをCD20+ Raji B細胞リンパ腫細胞と共培養した場合に、TriNKETによって活性化されたことを示す(CD107a/IFN-γ二重陽性細胞の増加によって示される)棒グラフである。
【0094】
【
図38】
図38は、CD20発現Raji B細胞リンパ腫細胞に向けたヒトNK細胞のTriNKET媒介性細胞傷害性活性を示す線グラフである。
【0095】
【
図39】
図39は、TriNKETが、親の抗CD20モノクローナル抗体よりもCD20発現Raji B細胞リンパ腫細胞に対して高いNK細胞の細胞傷害性を媒介したことを示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0096】
詳細な説明
本発明は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、多重特異性タンパク質はさらに、腫瘍関連抗原に結合するさらなる抗原結合部位を含む。本発明は、かかる多重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびに、がんの処置などの目的のためのかかる多重特異性タンパク質および医薬組成物を使用する治療方法も提供する。本発明の様々な態様を複数のセクションに分けて以下に記述する。しかしながら、1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、いずれかの特定のセクションに限定されるものではない。
【0097】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、「1つまたは複数」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部分を指す。ヒト抗体において、抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「フレームワーク領域」または「FR」として公知である、より保存された隣接するストレッチの間に介在している「超可変領域」と称される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンにおける超可変領域の間におよびそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合表面を形成するように三次元空間において互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。ラクダおよび軟骨魚類などのある特定の動物において、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」を提供する単一抗体鎖によって形成される。抗原結合部位は、インタクトな抗体中、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合断片中、またはscFvなどの組換えポリペプチド中に存在し、ペプチドリンカーを使用して単一ポリペプチドにおいて重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインに連結することができる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「腫瘍関連抗原」という用語は、がんに関連するタンパク質、糖タンパク質、ガングリオシド、炭水化物、脂質を含むがこれらに限定されない、任意の抗原を意味する。このような抗原は、悪性細胞において、または腫瘍関連血管、細胞外マトリックス、間葉系間質、もしくは免疫浸潤物におけるような腫瘍微小環境中で発現され得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物を指す。かかる生物には、好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれ、より好ましくはヒトが含まれる。
【0102】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬量で投与されてもよく、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。本明細書中で使用される場合、「処置する」という用語は、何らかの効果、例えば、状態、疾患、障害などの好転をもたらす、減少、低減、モジュレート、改善もしくは除去、またはそれらの症状の改善を含む。
【0103】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、組成物を、in vivoまたはex vivoでの診断的使用または治療的使用に特に適切にする、活性剤と、不活性または活性な担体との組合せを指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルションなど)、および種々の種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含んでもよい。担体、安定剤およびアジュバントの例に関しては、例えば、Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ.Co.、Easton、PA[1975年]を参照されたい。
【0105】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与すると、本発明の化合物またはその活性代謝産物もしくは残留物を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に公知であるように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導され得る。例示的な酸には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが含まれる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体では薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に利用され得る。
【0106】
例示的な塩基には、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニアおよび式NW4
+(式中、WはC1~4アルキルである)の化合物などが含まれる。
【0107】
例示的な塩には、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。塩の他の例には、Na+、NH4
+およびNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)などの適切なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが含まれる。
【0108】
治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されると意図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用することができる。
【0109】
組成物が特定の成分を有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されているか、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されている説明全体にわたって、さらに、列挙された成分から本質的になる、またはそれからなる本発明の組成物が存在すること、ならびに列挙されたプロセスステップから本質的になる、またはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが意図される。
【0110】
一般的事項として、パーセンテージを特定する組成物は、特に明記しない限り、重量による。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の以前の定義が優先する。
【0111】
I.タンパク質
本発明は、ナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体、およびCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。多重特異性結合タンパク質は、本明細書に記載の医薬組成物および治療方法において有用である。ナチュラルキラー細胞のNKG2D受容体およびCD16受容体に多重特異性結合タンパク質が結合すると、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133抗原を発現する腫瘍細胞の破壊を目的としたナチュラルキラー細胞の活性が増強される。CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133発現細胞に多重特異性結合タンパク質が結合すると、がん細胞がナチュラルキラー細胞に近接するため、ナチュラルキラー細胞によるがん細胞の直接的および間接的な破壊が容易になる。一部の例示的な多重特異性結合タンパク質のさらなる記載を以下に提供する。
【0112】
多重特異性結合タンパク質の第1の構成要素は、NK細胞、γδT細胞およびCD8+αβT細胞を含み得るがこれらに限定されない、NKG2D受容体発現細胞に結合する。多重特異性結合タンパク質は、NKG2Dに結合すると、ULBP6およびMICAなどの天然リガンドがNKG2Dに結合することおよびNKG2D受容体を活性化することを阻止し得る。
【0113】
多重特異性結合タンパク質の第2成分は、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133に結合する。CD37発現細胞は、例えば、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、非ホジキンリンパ腫、および急性骨髄性白血病において見出され得る。CD20発現細胞は、例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびB細胞悪性腫瘍において見出され得る。CD19発現細胞は、例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、および急性骨髄性白血病において見出され得る。CD22発現細胞は、例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、およびヘアリー細胞白血病において見出され得る。CD30発現細胞は、例えば、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および胎児性細胞癌において見出され得る。CD52発現細胞は、例えば、これらに限定されないが、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞性前リンパ球性白血病、B細胞悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、成熟T/ナチュラルキラー(NK)細胞新生物、ならびに胸腺腫において見出され得る。CD133発現細胞は、例えば、これらに限定されないが、乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮がん、精巣胚細胞がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠腫、膠芽腫、および頭頚部の扁平上皮癌において見出され得る。
【0114】
多重特異性結合タンパク質の第3の構成要素は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、マスト細胞、および濾胞性樹状細胞を含む白血球の表面にあるFc受容体であるCD16を発現する細胞に結合する。
【0115】
本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質は、様々なフォーマットをとることができる。例えば、1つのフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第1の免疫グロブリン軽鎖、第2の免疫グロブリン重鎖、および第2の免疫グロブリン軽鎖を含む、ヘテロ二量体の多重特異性抗体(
図1)である。第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第1の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第1のCH1重鎖ドメインとを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖定常ドメインを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖と一緒に、NKG2Dに結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第2のCH1重鎖ドメインとを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン重鎖と一緒に、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133に結合する抗原結合部位を形成する。第1のFcドメインおよび第2のFcドメインは一緒にCD16に結合することができる(
図1)。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン軽鎖と同一である。
【0116】
別の例示的フォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第2の免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、ヘテロ二量体の多重特異性抗体(
図2)に関する。第1の免疫グロブリン重鎖は、対合し、NKG2Dに結合する、またはCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される抗原に結合する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成された一本鎖可変断片(scFv)に、リンカーまたは抗体ヒンジのいずれかを介して融合している、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインを含む。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じてCH1重鎖ドメインとを含む。この免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン重鎖は、免疫グロブリン軽鎖と対合し、NKG2Dに結合する、またはCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に結合する。第1のFcドメインおよび第2のFcドメインは一緒にCD16に結合することができる(
図2)。
【0117】
1つまたは複数のさらなる結合モチーフが、必要に応じてリンカー配列を介して、定常
領域CH3ドメインのC末端に融合され得る。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、一本鎖もしくはジスルフィド安定化可変領域(scFv)であり得るか、または四価もしくは三価の分子を形成し得る。
【0118】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体である、Triomab形態である。このキメラは、2つの親抗体に由来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。
【0119】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)技術を用いるKiH共通軽鎖(LC)形態である。KIHは、ヘテロ二量体化を促進するために、CH3ドメインを工学操作して各重鎖に「ノブ」または「ホール」のいずれかを作出することを伴う。「ノブ・イントゥ・ホール(KiH)」Fc技術の背後にある概念は、小さな残基を嵩高の残基で置換することにより、1つのCH3ドメイン(CH3A)に「ノブ」(例えば、EU付番でT366WCH3A)を導入することであった。この「ノブ」に適応するように、他方のCH3ドメイン(CH3B)において、ノブに最も近い隣接残基をより小さな残基に置き換えること(例えば、T366S/L368A/Y407VCH3B)により、相補的な「ホール」表面が作出された。「ホール」突然変異は、構造情報に基づくファージライブラリスクリーニング(Atwell S、Ridgway JB、Wells JA、Carter P.、Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library、J Mol Biol(1997年)270巻(1号):26~35頁)によって最適化された。KiH Fc変異体のX線結晶構造(Elliott JM、Ultsch M、Lee J、Tong R、Takeda K、Spiess Cら、Antiparallel conformation of knob and hole aglycosylated half-antibody homodimers is mediated by a CH2-CH3 hydrophobic interaction. J Mol Biol(2014年)426巻(9号):1947~57頁、Mimoto F、Kadono S、Katada H、Igawa T、Kamikawa T、Hattori K. Crystal structure of a novel asymmetrically engineered Fc variant with improved affinity for FcγRs. Mol Immunol(2014年)58巻(1号):132~8頁)は、CH3ドメイン間のコア界面では、立体的相補性によって推進される疎水性相互作用がヘテロ二量体化に熱力学的に有利に働くが、ノブ-ノブおよびホール-ホールの界面は、それぞれ立体障害および好ましい相互作用の妨害が原因でホモ二量体化に有利に働かないことを示した。
【0120】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、自然起源の可動性リンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるものである。
【0121】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、直交性Fab界面(オルト-Fab)形態におけるものである。オルト-Fab IgGアプローチ(Lewis SM、Wu X、Pustilnik A、Sereno A、Huang F、Rick HLら、Generation of bispecific IgG antibodies by structure-based design of an orthogonal Fab interface. Nat. Biotechnol.(2014年)32巻(2号):191~8頁)では、構造に基づく領域デザインにより、一方のFabにおけるLCおよびHCVH-CH1の界面にのみ相補的突然変異が導入され、他方のFabが変化することはない。
【0122】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2in1 Igフォーマットにおけるものである。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つの異なるFabを含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリング突然変異によって確実になっている。
【0123】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるものである。抗原1を標的とするFab1はカッパLCを含有し、一方、抗原2を標的とする第2のFabはラムダLCを含有する。
図30Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、
図30Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【0124】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fabアーム交換形態(重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子の重鎖-軽鎖対とスワップすることによりFabアームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体)である。
【0125】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、SEED Body形態におけるものである。SEED(strand-exchange engineered domain)プラットフォームは、天然抗体の治療用途を広げる可能性がある非対称かつ二重特異性抗体様の分子を生成するためにデザインされた。このタンパク質工学操作プラットフォームは、保存されたCH3ドメインにおける免疫グロブリンの構造的に関連した配列の交換に基づく。SEEDデザインは、AGおよびGA SEED CH3ドメインのホモ二量体化を回避しつつ、AG/GAヘテロ二量体の効果的な生成を可能にする(Muda M.ら、Protein Eng. Des. Sel.(2011年、24巻(5号):447~54頁))。
【0126】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるものである(Wranik, BJ.ら、J. Biol. Chem.(2012年)、287巻:43331~9頁)。
【0127】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Cov-X-Body形態におけるものである。二重特異性CovX-Bodyでは、分枝状のアゼチジノンリンカーを使用して2つの異なるペプチドをひとつに結合させ、温和な条件下にてスキャフォールド抗体に部位特異的様式で融合させる。機能的活性に関与するのはファルマコフォアだが、抗体スキャフォールドは長い半減期およびIg様の分布をもたらす。最適化された、または独特の二重特異性抗体を生成するために、ファルマコフォアは化学的に最適化するか、または他のファルマコフォアに置き換えることができる(Doppalapudi VRら、PNAS(2010年)、107巻(52号);22611~22616頁)。
【0128】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した、標的1に結合するFabと、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっている。
【0129】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMab形態におけるものである。Fab1および2は、LCおよびHCの正確な対合を確実にする特異なS-S架橋を含有する。
【0130】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した、標的1および2に結合する2つの異なるFabを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAb形態におけるものである。CLドメインおよびCH1ドメインと、VHドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH1は、VLとインラインで融合しており、CLは、VHとインラインで融合している。
【0131】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原2に結合するFabが、抗原1に結合するFabのHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Ig形態におけるものである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【0132】
表1は、組み合わせてNKG2Dと結合することができる重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペプチド配列を記載している。NKG2D結合ドメインは、NKG2Dに対するそれらの結合親和性において変動し得、にも拘わらず、それらは全て、ヒトNKG2DおよびNK細胞を活性化する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0133】
代替的に、US9,273,136において説明されているように、配列番号101によって表される重鎖可変ドメインを、配列番号102によって表される軽鎖可変ドメインと対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化1】
【0134】
代替的に、US7,879,985において説明されているように、配列番号103によって表される重鎖可変ドメインを、配列番号104によって表される軽鎖可変ドメインと対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化2】
【0135】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD37に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表2は、組み合わせて、CD37に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的配列を列記する。
【表2-1】
【表2-2】
【0136】
代替的に、CD37に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号133によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化3】
【0137】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD20に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表3は、組み合わせて、CD20に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0138】
代替的に、CD20に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号174によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化4】
【0139】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD19に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表4は、組み合わせて、CD19に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0140】
代替的に、CD19に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号207によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化5】
【0141】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD22に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表5は、組み合わせて、CD22に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表5-1】
【表5-2】
【0142】
CD22に結合する抗原結合部位は、配列番号232によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化6】
【0143】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD30に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表6は、組み合わせて、CD30に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0144】
代替的に、CD30に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号273によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化7】
【0145】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD52に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表7は、組み合わせて、CD52に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表7-1】
【表7-2】
【0146】
代替的に、CD52に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号290によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化8】
【0147】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびに抗原CD133に結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。表8は、組み合わせて、CD133に結合し得る重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいくつかの例示的ペプチド配列を列記する。
【表8-1】
【表8-2】
【0148】
代替的に、CD133に結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号323によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって特定することができる。
【化9】
【0149】
Fcドメイン内で、CD16結合はヒンジ領域およびCH2ドメインによって媒介される。例えば、ヒトIgG1内で、CD16との相互作用は主に、アミノ酸残基Asp265~Glu269、Asn297~Thr299、Ala327~Ile332、Leu234~Ser239、およびCH2ドメインにおける炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンに焦点が当てられている(Sondermannら、Nature、406巻(6793号):267~273頁を参照されたい)。既知のドメインに基づいて、突然変異は、ファージディスプレイライブラリもしくは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリを使用することなどによって、CD16に対する結合親和性を増強もしくは低減させるように選択され得るか、または相互作用の既知の三次元構造に基づいてデザインされ得る。
【0150】
ヘテロ二量体抗体重鎖の構築は、同じ細胞内で2つの異なる抗体重鎖配列を発現させることによって達成することができ、これにより、各抗体重鎖のホモ二量体の構築およびヘテロ二量体の構築をもたらすことができる。ヘテロ二量体の選択的構築の促進は、US13/494870、US16/028850、US11/533709、US12/875015、US13/289934、US14/773418、US12/811207、US13/866756、US14/647480および、US14/830336に示されているように、各抗体重鎖定常領域のCH3ドメイン内に異なる突然変異を組み込むことによって達成することができる。例えば、突然変異は、ヒトIgG1に基づき、これらの2つの鎖が互いに選択的にヘテロ二量体化することを可能にする第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド内にアミノ酸置換の異なる対を組み込んでいるCH3ドメイン内で作製され得る。以下に例示したアミノ酸置換の位置は、Kabatにおけるように、すべてEUインデックスに従って番号付けしている。
【0151】
1つの状況では、第1のポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)から選択される、より大きなアミノ酸で置換し、第2のポリペプチドにおける少なくとも1つのアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、より大きなアミノ酸置換(突出)が、より小さなアミノ酸置換(空洞)の表面に適合するように、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはバリン(V)から選択される、より小さなアミノ酸で置換する。例えば、一方のポリペプチドはT366W置換を組み込むことができ、他方のポリペプチドは、T366S、L368A、およびY407Vを含む3つの置換を組み込むことができる。
【0152】
本発明の抗体重鎖可変ドメインは、必要に応じて、CH1ドメインを有するまたは有さないヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むIgG定常領域などの、抗体定常領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と連結され得る。一部の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、またはIgG4定常領域などの、ヒト抗体定常領域と少なくとも90%同一である。一部の他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウマなどの別の哺乳動物由来の抗体定常領域と少なくとも90%同一である。1つまたは複数の突然変異が、ヒトIgG1定常領域と比較して、例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411および/またはK439において定常領域に組み込まれ得る。例示的な置換には、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eが含まれる。
【0153】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1に組み込まれ得る突然変異は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171、および/またはV173であり得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCκに組み込まれ得る突然変異は、アミノ酸E123、F116、S176、V163、S174、および/またはT164であり得る。
【0154】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表9にされる置換のセットから選択され得る。
【表9】
【0155】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表10に示される置換のセットから選択され得る。
【表10】
【0156】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表11に示される置換のセットから選択され得る。
【表11】
【0157】
代替的に、各ポリペプチド鎖における少なくとも1つのアミノ酸置換は表12から選択され得る。
【表12】
【0158】
代替的に、以下の表13における置換のセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択してもよく、ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の正に帯電したアミノ酸に置き換えられる。
【表13】
【0159】
代替的に、以下の表14におけるセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択してもよく、ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられる。
【表14】
【0160】
代替的に、アミノ酸置換は、以下の表15に示されるセットから選択してもよい。
【表15】
【0161】
代替的にまたは付加的に、ヘテロ多量体タンパク質の構造安定性は、第1または第2のポリペプチド鎖のいずれかにS354Cを導入し、反対のポリペプチド鎖にY349Cを導入することによって増加させることができ、これにより、2つのポリペプチドの界面内で人工ジスルフィド架橋が形成する。
【0162】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366位においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、L368およびY407からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0163】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、L368およびY407からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366位においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0164】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405、およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0165】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405、およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0166】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、D399、S400およびY407からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、N390、K392、K409およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0167】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、N390、K392、K409およびT411からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、D399、S400およびY407からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0168】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、Y349、K360、およびK409からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、E357、D399およびF405からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0169】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、E357、D399およびF405からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、K360、Q347およびK409からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0170】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K370、K392、K409およびK439からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、D356、E357およびD399からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0171】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、D356、E357およびD399からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K370、K392、K409およびK439からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0172】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、E356、T366およびD399からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、L351、L368、K392およびK409からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0173】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、L351、L368、K392およびK409からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、E356、T366およびD399からなる群より選択される1またはこれより多くの位置においてIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0174】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、S35
4C置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349C置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0175】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349C置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、S354C置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0176】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K360EおよびK409W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、O347R、D399VおよびF405T置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0177】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、O347R、D399VおよびF405T置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K360EおよびK409W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0178】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366S、T368A、およびY407V置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0179】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366S、T368A、およびY407V置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0180】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、L351Y、F405A、およびY407V置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、T366L、K392L、およびT394W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0181】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、T366L、K392L、およびT394W置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なり、ここで抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、L351Y、F405A、およびY407V置換だけIgG1定常領域のアミノ酸配列とは異なる。
【0182】
上記の多重特異性タンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して作製され得る。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を第1の発現ベクターにクローニングすることができ、第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を第2の発現ベクターにクローニングすることができ、免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を第3の発現ベクターにクローニングすることができ、第1、第2および第3の発現ベクターを一緒に宿主細胞に安定にトランスフェクトして多量体タンパク質を産生することができる。
【0183】
多重特異性タンパク質の最も高い収率を達成するために、第1、第2および第3の発現ベクターの異なる比率を調べて宿主細胞へのトランスフェクションのための最適比率を決定することができる。トランスフェクション後、限界希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法、またはClonepixなどの当技術分野において公知の方法を使用して、細胞バンク生成のために単一クローンを単離することができる。
【0184】
クローンは、バイオリアクタスケールアップに適した条件下で培養することができ、多重特異性タンパク質の発現を維持することができる。多重特異性タンパク質は、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、均質化、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、およびミックスモードクロマトグラフィーを含む、当技術分野において公知の方法を使用して単離され、精製され得る。
【0185】
II.多重特異性タンパク質の特徴
本明細書で記載される多重特異性タンパク質は、NKG2D結合部位、CD16結合部位、およびCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原の結合部位を含む。一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、NKG2Dおよび/またはCD16を発現する細胞(例えば、NK細胞)、ならびに上記の抗原のうちのいずれか1つを同時に発現する腫瘍細胞に結合する。NK細胞への多重特異性タンパク質の結合は、がん細胞の破壊に向けたNK細胞の活性を増強し得る。
【0186】
一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原に、同じそれぞれの抗原結合部位を有するモノクローナル抗体の親和性に類似の親和性で結合する。一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、その抗原(複数可)を発現する腫瘍細胞の殺滅において、対応するそれぞれのモノクローナル抗体より有効である。
【0187】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合部位およびCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原の結合部位を含む本明細書で記載される多重特異性タンパク質は、それぞれCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133を発現する細胞と共培養すると、初代ヒトNK細胞を活性化する。NK細胞活性化は、CD107a脱顆粒およびIFNγサイトカイン産生の増加によって示される。さらに、対応するそれぞれのモノクローナル抗体と比較して、多重特異性タンパク質は、抗原CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133を発現する細胞の存在下において、ヒトNK細胞の優れた活性化を示し得る。
【0188】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合部位およびCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133から選択される腫瘍関連抗原の結合部位を含む本明細書で記載される多重特異性タンパク質は、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133を発現する細胞と共培養して、ヒト休止およびIL-2活性化NK細胞の活性を増強する。
【0189】
ある特定の実施形態では、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133に結合する対応するモノクローナル抗体と比較して、多重特異性タンパク質は、中程度レベルおよび低レベルのCD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52およびCD133を発現する腫瘍細胞を標的とするにあたって利点を提供する。
【0190】
III.治療用途
本発明は、本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質および/または本明細書に記載の医薬組成物を使用してがんを処置するための方法を提供するその方法は、CD37、CD20、CD19、CD22、CD30、CD52またはCD133を発現する種々のがんを処置するために使用され得る。CD37を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、非ホジキンリンパ腫、または急性骨髄性白血病であり得る。CD20を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、またはB細胞悪性腫瘍であり得る。CD19を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、または急性骨髄性白血病であり得る。CD22を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞悪性腫瘍、またはヘアリー細胞白血病であり得る。CD30を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または胎児性細胞癌であり得る。CD52を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫およびT細胞性前リンパ球性白血病、B細胞悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病-リンパ腫、成熟T/ナチュラルキラー(NK)細胞新生物、または胸腺腫であり得る。CD133を標的とする多重特異性結合タンパク質によって処置される例示的ながんは、乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮がん、精巣胚細胞がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、神経膠腫、膠芽腫、または頭頚部の扁平上皮癌であり得る。
【0191】
一部の他の実施形態では、処置されるがんとしては、脳がん、直腸がん、および子宮がんが挙げられる。さらに他の実施形態では、がんは、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆道がん、甲状腺がん、末端黒子型黒色腫、日光角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌(adenoid cycstic carcinoma)、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん、星細胞系腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆管がん、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管細胞癌、軟骨肉腫(chondosarcoma)、脈絡叢乳頭腫/細胞腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器系がん、十二指腸がん、内分泌系がん、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼および眼窩のがん、女性性器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、胃噴門がん、胃底部がん、ガストリン産生腫瘍、神経膠芽腫、グルカゴン産生腫瘍、心臓がん、血管芽腫(hemangiblastoma)、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮間扁平細胞新生物(interepithelial squamous cell neoplasia)、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮癌、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子由来黒色腫、リンパ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性癌、口がん、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉がん、鼻腔がん、神経系がん、神経上皮腺癌結節性黒色腫、非上皮性皮膚がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠細胞がん、口腔がん、骨肉腫、漿液性乳頭腺がん、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性細胞腫、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑筋がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、中皮下がん、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん、膀胱がん、泌尿器系がん、子宮頸部がん、子宮体がん、ぶどう膜黒色腫、膣がん、疣状癌、VIP産生腫瘍、外陰部がん、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0192】
ある特定の他の実施形態では、処置するがんは、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのB細胞リンパ腫である。ある特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0193】
IV.併用療法
本発明の別の態様は併用療法を提供する。本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質は、がんを処置するためにさらなる治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0194】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤には、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプチニウム、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンディフティトックス、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、ならびにその同種受容体に対して特異な結合、および増加したまたは減少した血清半減期を示し得る上述の薬剤の変形型が含まれる。
【0195】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る薬剤のさらなるクラスは免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、および(vii)TIM3のうちの1つまたは複数を阻害する薬剤が含まれる。CTLA4阻害剤であるイピリムマブは、黒色腫を処置するために米国食品医薬品局によって承認されている。
【0196】
がんを処置する際に併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的を標的とするモノクローナル抗体薬剤(例えば、ハーセプチン)および非細胞傷害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)である。
【0197】
抗がん剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKおよびmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤+2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1およびDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、ならびにWEE1阻害剤から選択される阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、またはICOSのアゴニスト;ならびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、およびG-CSFから選択されるサイトカインが含まれる。
【0198】
本発明のタンパク質はまた、原発病巣の外科的除去の補助として使用され得る。
【0199】
多重特異性結合タンパク質およびさらなる治療剤の量ならびに投与の相対的タイミングは、所望の併用療法効果を達成するために選択され得る。例えば、このような投与を必要とする患者に併用療法を投与する場合、組み合わせる治療剤、または治療剤を含む1つもしくは複数の医薬組成物は、例えば、連続的に、併せて、一緒に、同時になどの任意の順序で投与され得る。さらに、例えば、多重特異性結合タンパク質は、さらなる治療剤がその予防効果または治療効果を発揮する時間の間投与されてもよく、またはその逆であってもよい。
【0200】
V.医薬組成物
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載のタンパク質を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は、種々の薬物送達系で使用されるように製剤化することができる。適切な製剤を作るために、1種または複数の生理学的に許容される賦形剤または担体を組成物に含めることもできる。本開示で使用される好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.、第17版、1985年に見出される。薬物送達のための方法に関する簡潔な概説については、例えば、Langer(Science、249巻:1527~1533頁、1990年)を参照されたい。
【0201】
本開示の静脈内薬物送達製剤は、バッグ、ペン、または注射器に含有されてもよい。ある特定の実施形態では、バッグはチューブおよび/または針を含むチャネルに接続されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤または液体製剤であってもよい。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライ(凍結乾燥)されてもよく、約12~60個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライされてもよく、45mgのフリーズドライされた製剤が1個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、約40mg~約100mgのフリーズドライされた製剤が1個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、12、27、または45個のバイアルからのフリーズドライされた製剤は、静脈内薬物製剤中に治療用量のタンパク質を得るために組み合わされてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして保存されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約600mg/バイアルとして保存されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約250mg/バイアルとして保存されてもよい。
【0202】
タンパク質は、製剤を形成する緩衝溶液中に治療有効量のタンパク質を含む液体水性医薬製剤中に存在することができる。
【0203】
これらの組成物は従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または濾過滅菌されてもよい。得られた水溶液はそのままで使用するためにパッケージ化されてもよく、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。調製物のpHは、典型的に、3から11の間、より好ましくは5から9の間または6から8の間、最も好ましくは7から8の間、例えば7~7.5である。得られた固形の組成物は複数の単回用量単位でパッケージ化されてもよく、各々は一定量の上述の1つまたは複数の薬剤を含有する。固形の組成物はまた、柔軟な量のための容器にパッケージ化されてもよい。
【0204】
ある特定の実施形態では、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水、および酸化ナトリウムと組み合わせて本開示のタンパク質を含む、延長された貯蔵寿命を有する製剤を提供する。
【0205】
ある特定の実施形態では、pH緩衝溶液中に本開示のタンパク質を含む水性製剤が調製される。本発明の緩衝液は、約4~約8、例えば、約4.5~約6.0、もしくは約4.8~約5.5の範囲のpHを有してもよく、または約5.0~約5.2のpHを有してもよい。上記に列挙したpHの中間の範囲も、本開示の一部であることが意図される。例えば、上限および/または下限として上記に列挙した値のいずれかの組合せを使用する値の範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸緩衝液が含まれる。
【0206】
ある特定の実施形態では、製剤は、pHを約4~約8の範囲に維持するためにクエン酸塩およびリン酸塩を含有する緩衝系を含む。ある特定の実施形態では、pHの範囲は、約4.5~約6.0、または約pH4.8~約5.5、または約5.0~約5.2のpH範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、緩衝系には、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、および/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物が含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝系は、約1.3mg/mlのクエン酸(例えば、1.305mg/ml)、約0.3mg/mlのクエン酸ナトリウム(例えば、0.305mg/ml)、約1.5mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、1.53mg/ml)、約0.9mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、0.86)、および約6.2mg/mlの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/ml)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系は、1~1.5mg/mlのクエン酸、0.25~0.5mg/mlのクエン酸ナトリウム、1.25~1.75mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、0.7~1.1mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物、および6.0~6.4mg/mlの塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では、製剤のpHは水酸化ナトリウムを用いて調整される。
【0207】
トニシファイヤー(tonicifier)として作用し、抗体を安定化させることができるポリオールも、製剤に含めることができる。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関して変化し得る量で製剤に添加される。ある特定の実施形態では、水性製剤は等張性であってもよい。添加されるポリオールの量も、ポリオールの分子量に関して変化し得る。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、少量の単糖(例えば、マンニトール)が添加されてもよい。ある特定の実施形態では、等張化剤として製剤に使用され得るポリオールはマンニトールである。ある特定の実施形態では、マンニトール濃度は約5~約20mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約7.5~15mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約10~14mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約12mg/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、ポリオールソルビトールを製剤に含めることができる。
【0208】
洗剤または界面活性剤もまた、製剤に添加してもよい。例示的な洗剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロクサマー(例えば、ポロクサマー188)などの非イオン性洗剤が挙げられる。添加される洗剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低減させ、かつ/または製剤中の微粒子の形成を最低限に抑え、かつ/または吸着を低減させるようなものである。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含み得る。ある特定の実施形態では、製剤は、洗剤のポリソルベート80またはTween 80を含有し得る。Tween 80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを表すために使用される用語である(Fiedler、Lexikon der Hifsstoffe、Editio Cantor Verlag Aulendorf、第4版、1996年を参照されたい)。ある特定の実施形態では、製剤は、約0.1mg/mLから約10mg/mLの間のポリソルベート80、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間を含有し得る。ある特定の実施形態では、約0.1%のポリソルベート80が製剤に添加され得る。
【0209】
実施形態では、本開示のタンパク質産物は、液体製剤として製剤化される。液体製剤は、ゴム栓で閉じ、アルミニウムクリンプシールクロージャで密封した、USP/Ph EurいずれかのタイプI 50Rバイアルにおいて、10mg/mLの濃度で提供され得る。栓は、USPおよびPh Eurに準拠したエラストマーで作られていてもよい。ある特定の実施形態では、60mLの採取容量を可能にするために、バイアルに61.2mLのタンパク質産物溶液が充填され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、0.9%の生理食塩水で希釈され得る。
【0210】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、安定化レベルで糖と組み合わせた10mg/mL濃度溶液として調製され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は水性担体中で調製され得る。ある特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないまたは不適切な粘度をもたらし得る量以下の量で添加され得る。ある特定の実施形態では、糖は、二糖、例えば、スクロースであり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および保存剤のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0211】
ある特定の実施形態では、液体製剤のpHは薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0212】
凝集に加えて、脱アミドは、発酵、採取/細胞清澄化、精製、薬物物質/薬物製品貯蔵の間および試料分析の間に発生し得るペプチドおよびタンパク質の一般的な産物のバリアントである。脱アミドは、加水分解を受け得るスクシンイミド中間体を形成するタンパク質からのNH3の喪失である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質量減少をもたらす。その後の加水分解は、18ダルトンの質量増加をもたらす。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性に起因して困難である。したがって、脱アミドは、典型的に1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミドは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかを生じる。脱アミドの速度に影響を及ぼすパラメータには、pH、温度、溶媒誘電率、イオン強度、一次配列、局所ポリペプチド立体配座および三次構造が含まれる。ペプチド鎖におけるAsnに隣接するアミノ酸残基は、脱アミド化速度に影響を及ぼす。タンパク質配列におけるAsnに続くGlyおよびSerは、脱アミドに対してより高い感受性を生じる。
【0213】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミノを阻止するためのpHおよび湿度の条件下で保存され得る。
【0214】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0215】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0216】
静脈内(IV)製剤は、患者が、移植後に入院しており、IV経路を介してすべての薬物を受けている場合などの特定の場合に好ましい投与経路であり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、投与前に0.9%の塩化ナトリウム溶液により希釈される。ある特定の実施形態では、注射のための希釈された薬物製品は等張であり、静脈内注入による投与に適している。
【0217】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加することができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0218】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0219】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0220】
本開示のタンパク質は、タンパク質およびリオプロテクタントを含む凍結乾燥製剤として存在することもできる。リオプロテクタントは糖、例えば二糖であり得る。ある特定の実施形態では、リオプロテクタント(lycoprotectant)は、スクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥製剤は、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、および/または保存剤のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0221】
凍結乾燥された薬物製品の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、少なくとも1:2のタンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比であり得る。ある特定の実施形態では、タンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比は1:2~1:5であり得る。
【0222】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥前の製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0223】
凍結乾燥前に、本開示のタンパク質を含有する溶液のpHは6から8の間に調整され得る。ある特定の実施形態では、凍結乾燥した薬物製品についてのpH範囲は7~8であり得る。
【0224】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加することができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0225】
ある特定の実施形態では、「増量剤」を添加することができる。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を付加し、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開放気孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが含まれる。本発明の凍結乾燥製剤はこのような増量剤を含有し得る。
【0226】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0227】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥薬物製品は水性担体で構成され得る。本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(例えば、ヒトへの投与に安全かつ無毒であり)、凍結乾燥後、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0228】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥薬物製品は、注射用滅菌水、USP(SWFI)または0.9%の塩化ナトリウム注射液、USPのいずれかで再構成される。再構成の間、凍結乾燥粉末は溶液に溶解する。
【0229】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥タンパク質製品は、約4.5mLの注射用水に構成され、0.9%の生理食塩水溶液(塩化ナトリウム溶液)により希釈される。
【0230】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性を生じず、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変化し得る。
【0231】
特定の用量は、各患者に対して均一な用量、例えば、50~5000mgのタンパク質であってもよい。代替的に、患者の用量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせられ得る。適切な投薬量を決定する際の他の要因には、処置または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および医学的状態が含まれ得る。処置のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に、本明細書に開示される投薬量情報およびアッセイを考慮して当業者によって慣用的になされる。投薬量はまた、適切な用量応答データと併せて使用される投薬量を決定するための公知のアッセイの使用によって決定することができる。個々の患者の投薬量は、疾患の進行がモニターされるにつれて調節されてもよい。患者における標的化可能な構築物または複合物の血中レベルは、有効濃度に達するか、または有効濃度を維持するように投薬量が調節される必要があるかどうかを調べるために測定され得る。どの標的化可能な構築物および/または複合物、ならびにそれらの投薬量が、所与の個体に対して効果的である可能性が高いかを決定するために薬理ゲノム学が使用され得る(Schmitzら、Clinica Chimica Acta 308巻:43~53頁、2001年;Steimerら、Clinica Chimica Acta 308巻:33~41頁、2001年)。
【0232】
一般に、体重に基づく投薬量は、約0.01μg~約100mg/kg体重、例えば、約0.01μg~約100mg/kg体重、約0.01μg~約50mg/kg体重、約0.01μg~約10mg/kg体重、約0.01μg~約1mg/kg体重、約0.01μg~約100μg/kg体重、約0.01μg~約50μg/kg体重、約0.01μg~約10μg/kg体重、約0.01μg~約1μg/kg体重、約0.01μg~約0.1μg/kg体重、約0.1μg~約100mg/kg体重、約0.1μg~約50mg/kg体重、約0.1μg~約10mg/kg体重、約0.1μg~約1mg/kg体重、約0.1μg~約100μg/kg体重、約0.1μg~約10μg/kg体重、約0.1μg~約1μg/kg体重、約1μg~約100mg/kg体重、約1μg~約50mg/kg体重、約1μg~約10mg/kg体重、約1μg~約1mg/kg体重、約1μg~約100μg/kg体重、約1μg~約50μg/kg体重、約1μg~約10μg/kg体重、約10μg~約100mg/kg体重、約10μg~約50mg/kg体重、約10μg~約10mg/kg体重、約10μg~約1mg/kg体重、約10μg~約100μg/kg体重、約10μg~約50μg/kg体重、約50μg~約100mg/kg体重、約50μg~約50mg/kg体重、約50μg~約10mg/kg体重、約50μg~約1mg/kg体重、約50μg~約100μg/kg体重、約100μg~約100mg/kg体重、約100μg~約50mg/kg体重、約100μg~約10mg/kg体重、約100μg~約1mg/kg体重、約1mg~約100mg/kg体重、約1mg~約50mg/kg体重、約1mg~約10mg/kg体重、約10mg~約100mg/kg体重、約10mg~約50mg/kg体重、約50mg~約100mg/kg体重である。
【0233】
用量は、1日に1回もしくは複数回、1週間に1回もしくは複数回、1ヶ月に1回もしくは複数回または1年に1回もしくは複数回、またはさらに2~20年に1回与えられ得る。当業者は、体液または組織中の標的化可能な構築物または複合体の測定された滞留時間および濃度に基づいて投薬のための反復率を容易に推定することができる。本発明の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内であってもよく、カテーテルを介する潅流によってでもよく、または直接的な病巣内注射によってでもよい。これは、1日に1回または複数回、1週間に1回または複数回、1ヶ月に1回または複数回、および1年に1回または複数回、投与され得る。
【0234】
上記の説明は本発明の複数の態様および実施形態を記載している。本出願は特に、態様および実施形態のすべての組合せおよび置換を意図する。
【実施例0235】
ここで概して記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、これらの実施例は本発明のある特定の態様および実施形態の例示の目的のためにのみ含まれ、本発明を限定することを意図していない。
【0236】
(実施例1)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dに結合する
NKG2D結合ドメインは精製した組換えNKG2Dに結合する
ヒト、マウスまたはカニクイザルNKG2D細胞外ドメインの核酸配列を、ヒトIgG1 Fcドメインをコードする核酸配列と融合させ、発現させる哺乳動物細胞に導入した
。精製後、NKG2D-Fc融合タンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させた。非特異的結合を防ぐためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した後、NKG2D結合ドメインを滴定し、NKG2D-Fc融合タンパク質を予め吸着させたウェルに添加した。一次抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートし、Fc交差反応を回避するためにヒトカッパ軽鎖を特異的に認識する二次抗体を使用して検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼに対する基質である3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)をウェルに添加して結合シグナルを可視化し、その吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。NKG2D結合ドメインクローン、アイソタイプ対照または陽性対照(配列番号101~104、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択した重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)を各ウェルに添加した。
【0237】
アイソタイプ対照は組換えNKG2D-Fcタンパク質に対してわずかな結合を示したが、陽性対照が組換え抗原に対して最も強く結合した。クローン毎に親和性は異なったが、すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒト、マウス、およびカニクイザルの組換えNKG2D-Fcタンパク質のすべてで結合を示した。概して、各抗NKG2Dクローンは、ヒト(
図3)およびカニクイザル(
図4)の組換えNKG2D-Fcに同様の親和性で結合したが、マウス(
図5)の組換えNKG2D-Fcに対する親和性は比較的低かった。
NKG2D結合ドメインはNKG2Dを発現する細胞に結合する
【0238】
EL4マウスリンパ腫細胞株を、ヒトまたはマウスのNKG2D-CD3ゼータシグナル伝達ドメインキメラ抗原受容体を発現するように工学操作した。NKG2D結合クローン、アイソタイプ対照または陽性対照を100nM濃度にて使用して、EL4細胞において発現した細胞外NKG2Dを染色した。フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して抗体結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、親EL4細胞と比較したNKG2D発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を使用してバックグラウンドに対する倍率(FOB)を計算した。
【0239】
すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒトおよびマウスのNKG2Dを発現するEL4細胞に結合した。陽性対照抗体(配列番号101~104、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)が最も良好なFOB結合シグナルをもたらした。各クローンのNKG2D結合親和性は、ヒトNKG2Dを発現する細胞(
図6)とマウスNKG2Dを発現する細胞(
図7)との間で同様であった。
【0240】
(実施例2)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dへの天然リガンドの結合を阻止する
ULBP-6との競合
組換えヒトNKG2D-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した。飽和濃度のULBP-6-His-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインクローンを添加した。2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、NKG2D-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったULBP-6-His-ビオチンを、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびTMB基質とコンジュゲートしたストレプトアビジンによって検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、ウェル中のNKG2D-Fcタンパク質への結合を阻止されたULBP-6-His-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号101~104から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)および種々のNKG2D結合ドメイン
は、NKG2DへのULBP-6結合を阻止したが、アイソタイプ対照はULBP-6との競合をほとんど示さなかった(
図8)。
【0241】
ULBP-6配列は、配列番号108により表される。
【化10】
【0242】
MICAとの競合
組換えヒトMICA-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルを阻止した。NKG2D-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキュベーションおよび洗浄後、MICA-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったNKG2D-Fc-ビオチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質を使用して検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、MICA-Fcでコーティングされたウェルへの結合を阻止されたNKG2D-Fc-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号101~104から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)および種々のNKG2D結合ドメインはNKG2DへのMICA結合を阻止したが、アイソタイプ対照はMICAとの競合をほとんど示さなかった(
図9)。
【0243】
Rae-1デルタとの競合
組換えマウスRae-1デルタ-Fc(R&D Systemsから購入した)をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウェルをウシ血清アルブミンで阻止した。マウスNKG2D-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキュベーションおよび洗浄後、Rae-1デルタ-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったNKG2D-Fc-ビオチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質を使用して検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、Rae-1デルタ-Fcでコーティングされたウェルへの結合を阻止されたNKG2D-Fc-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号101~104、またはeBioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)および種々のNKG2D-結合ドメインクローンはマウスNKG2DへのRae-1デルタ結合を阻止したが、アイソタイプ対照抗体はRae-1デルタとの競合をほとんど示さなかった(
図10)。
【0244】
(実施例3)
NKG2D結合ドメインクローンはNKG2Dを活性化させる
CD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列に、ヒトおよびマウスNKG2Dの核酸配列を融合させて、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を得た。次に、ギブソンアセンブリを使用してNKG2D-CAR構築物をレトロウイルスベクターにクローニングし、レトロウイルス産生のためにexpi293細胞にトランスフェクトした。8μg/mLのポリブレンと共にNKG2D-CARを含有するウイルスにEL4細胞を感染させた。感染の24時間後、EL4細胞中のNKG2D-CARの発現レベルをフローサイトメトリーによって分析し、細胞表面で高レベルのNKG2D-CARを発現するクローンを選択した。
【0245】
NKG2D結合ドメインがNKG2Dを活性化させるかどうかを判定するために、それらをマイクロプレートのウェルに吸着させ、抗体断片でコーティングされたウェルにおいてNKG2D-CAR EL4細胞をブレフェルジン-Aおよびモネンシンの存在下で4時間にわたって培養した。NKG2D活性化の指標である細胞内TNF-α産生をフローサイトメトリーによってアッセイした。陽性対照で処置した細胞に対してTNF-α陽性細胞のパーセンテージを正規化した。すべてのNKG2D結合ドメインがヒトNKG2D(
図11)およびマウスNKG2D(
図12)の両方を活性化させた。
【0246】
(実施例4)
NKG2D結合ドメインはNK細胞を活性化させる
初代ヒトNK細胞
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細胞(CD3
-CD56
+)を単離した。単離されたNK細胞の純度は典型的には>95%であった。次に、単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で24~48時間にわたって培養した後、それらを、NKG2D結合ドメインを吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。培養後、CD3、CD56、およびIFN-γに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3
-CD56
+細胞におけるCD107aおよびIFN-γの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107a/IFN-γ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよび陽性対照(例えば、配列番号101または配列番号103によって表される重鎖可変ドメイン、および配列番号102または配列番号104によって表される軽鎖可変ドメイン)は、アイソタイプ対照よりも高いパーセンテージのNK細胞がCD107a
+およびIFN-γ
+になることを示した(
図13および
図14は、NK細胞の調製のために異なるドナーのPBMCをそれぞれ使用した、2つの独立した実験のデータを表す)。
【0247】
初代マウスNK細胞
C57Bl/6マウスから脾臓を得、70μmのセルストレイナーを通して押しつぶして、単一細胞懸濁液を得た。細胞をペレット化し、ACK溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientificから購入した、#A1049201;155mM塩化アンモニウム、10mM炭酸水素カリウム、0.01mM EDTA)に再懸濁して赤血球を除去した。残りの細胞を100ng/mLのhIL-2と共に72時間にわたって培養し、その後採取し、NK細胞単離の準備をした。次に、磁気ビーズを用いたネガティブディプリーション技術を使用し、典型的には>90%の純度で脾臓細胞からNK細胞(CD3
-NK1.1
+)を単離した。精製されたNK細胞を、100ng/mLのmIL-15を含有する培地中で48時間にわたって培養した後、NKG2D結合ドメインを吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。NKG2D結合ドメインでコーティングされたウェルにおいて培養した後、CD3、NK1.1、およびIFN-γに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3
-NK1.1
+細胞におけるCD107aおよびIFN-γの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107a/IFN-γ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよび陽性対照(eBioscienceから入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5から選択される)は、アイソタイプ対照よりも高いパーセンテージのNK細胞がCD107a
+およびIFN-γ
+になることを示した(
図15および
図16は、NK細胞の調製のために異なるマウスをそれぞれ使用した、2つの独立した実験のデータを表す)。
【0248】
(実施例5)
NKG2D結合ドメインは標的腫瘍細胞の細胞傷害性を可能にする
ヒトおよびマウス初代NK細胞活性化アッセイは、NKG2D結合ドメインとのインキュベーション後、NK細胞にある増加した細胞傷害性マーカーを示す。これが腫瘍細胞溶解の増加につながるかどうかに対処するために、各NKG2D結合ドメインが単一特異的抗体になる細胞ベースのアッセイを利用した。Fc領域を1つの標的化アームとして使用し、一方、Fab領域(NKG2D結合ドメイン)はNK細胞を活性化するための別の標的化アームとして作用した。ヒト起源であり、高レベルのFc受容体を発現するTHP-1細胞を腫瘍標的として使用し、Perkin Elmer DELFIA細胞傷害性キットを使用した。THP-1細胞をBATDA試薬で標識化し、105/mLにて培養培地に再懸濁した。次に、標識化したTHP-1細胞をNKG2D抗体と合わせ、マイクロタイタープレートのウェル中で37℃にて3時間、マウスNK細胞を単離した。インキュベーション後、20μlの培養上清を取り出し、200μlのユーロピウム溶液と混合し、暗所で15分間振盪しながらインキュベートした。時間分解蛍光モジュール(励起337nm、発光620nm)を備えたPheraStarプレートリーダーによって蛍光を経時的に測定し、キットの説明書に従って特異的溶解率を計算した。
【0249】
NKG2Dに対する天然リガンドである陽性対照のULBP-6は、マウスNK細胞によるTHP-1標的細胞の特異的溶解率の増加を示した。NKG2D抗体も、THP-1標的細胞の特異的溶解率を増加させたが、アイソタイプ対照抗体は特異的溶解率の低減を示した。点線は、抗体を添加していないマウスNK細胞によるTHP-1細胞の特異的溶解率を示す(
図17)。
【0250】
(実施例6)
NKG2D抗体は高い熱安定性を示す
NKG2D結合ドメインの融解温度を、示差走査型蛍光定量法を使用してアッセイした。外挿した見かけの融解温度は典型的なIgG1抗体と比較して高い(
図18)。
【0251】
(実施例7)
NKG2DおよびCD16の架橋によるヒトNK細胞の相乗的活性化
初代ヒトNK細胞活性化アッセイ
密度勾配遠心分離を使用し、末梢ヒト血液軟膜から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。ネガティブ磁気ビーズ(StemCell #17955)を使用してPBMCからNK細胞を精製した。NK細胞は、フローサイトメトリーによって決定して>90%のCD3-CD56+であった。次に、細胞を、活性化アッセイに使用する前に100ng/mLのhIL-2(Peprotech #200-02)を含有する培地中で48時間増殖させた。抗体を、100μlの滅菌PBS中で2μg/ml(抗CD16、Biolegend #302013)および5μg/mL(抗NKG2D、R&D #MAB139)の濃度にて4℃で一晩、96ウェル平底プレート上にコーティングし、続いてウェルを十分に洗浄して過剰の抗体を除去した。脱顆粒の評価のために、IL-2活性化NK細胞を、100ng/mLのヒトIL-2(hIL2)および1μg/mLのAPCコンジュゲート抗CD107a mAb(Biolegend #328619)を補充した培養培地に5×105個の細胞/mLにて再懸濁した。次に、1×105個の細胞/ウェルを、抗体でコーティングされたプレート上に添加した。タンパク質輸送阻害剤である
ブレフェルジンA(BFA、Biolegend #420601)およびモネンシン(Biolegend #420701)を、それぞれ1:1000および1:270の最終希釈にて添加した。播いた細胞を、37℃にて4時間にわたって5%CO2においてインキュベートした。IFN-γの細胞内染色のために、NK細胞を、抗CD3(Biolegend #300452)および抗CD56 mAb(Biolegend #318328)で標識化し、続いて固定し、透過処理し、抗IFN-γ mAb(Biolegend #506507)で標識化した。NK細胞を、生CD56+CD3-細胞においてゲーティングした後、フローサイトメトリーによってCD107aおよびIFN-γの発現について分析した。
【0252】
受容体の組合せの相対的効力を調査するため、プレート結合刺激により、NKG2DまたはCD16の架橋および両受容体の共架橋を行った。
図19(
図19A~19C)に示したように、CD16およびNKG2Dの組み合わせた刺激は、CD107a(脱顆粒)レベル(
図19A)および/またはIFN-γ産生レベル(
図19B)の大きな上昇をもたらした。点線は、各受容体の個々の刺激の相加効果を表す。
【0253】
抗CD16、抗NKG2Dまたは両方のモノクローナル抗体の組合せを用いた4時間のプレート結合刺激の後、IL-2活性化NK細胞のCD107aレベルおよび細胞内IFN-γ産生を分析した。グラフは平均(n=2)±SDを示している。
図19AはCD107aのレベルを示し、
図19BはIFNγのレベルを示し、
図19CはCD107aおよびIFN-γ産生のレベルを示す。
図19A~19Cに示したデータは、5名の異なる健康なドナーを使用した、5つの独立した実験を代表するものである。
【0254】
実施例8-細胞で発現されるヒトNKG2DへのTriNKET結合の評価
EL4マウスリンパ腫細胞株を、ヒトNKG2Dを発現するように工学操作した。NKG2D結合ドメイン、腫瘍関連抗原結合ドメイン(例えば、CD20結合ドメイン)および
図1に示されるとおりのCD16に結合するFcドメインを各々含む三重特異的結合タンパク質(TriNKET)を、EL4細胞上で発現される細胞外NKG2Dに対するそれらの親和性について試験した。TriNKETを、20μg/mLに希釈し、次いで、段階希釈した。NKG2DへのTriNKETの結合を、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。次いで、細胞をフローサイトメトリーによって分析し、ヒストグラムをプロットした。試験したTriNKETとしては、CD26-TriNKET-CD20(クローンADI-28226に由来するNKG2D結合ドメインおよびリツキシマブに由来するCD20結合ドメイン)、およびF04-TriNKET-CD20(クローンADI-29404に由来するNKG2D結合ドメインおよびリツキシマブに由来するCD20結合ドメイン)が挙げられる。CD26-TriNKET-CD20の結合プロファイル(破線)、およびF04-TriNKET-CD20の結合プロファイル(実線)は、染色されていないサンプルと一緒に、
図35に示される。その結果は、クローンADI-28226およびADI-29404による異なるレベルのNKG2Dへの結合を示す。
【0255】
実施例9-細胞で発現されるヒトがん抗原へのTriNKET結合の評価
CD20を発現するRajiヒトリンパ腫細胞を使用して、腫瘍関連抗原CD20へのTriNKETの結合をアッセイした。TriNKETをその細胞とともにインキュベートし、その結合を、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、ヒストグラムをプロットした。
図36に示されるように、F04-TriNKET-CD20およびCD26-TriNKET-CD20は、CD20に等しく十分に結合する。
【0256】
実施例10-TriNKETはNK細胞を活性化する。
末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離を使用してヒト末梢血バフィコートから単離した。NK細胞(CD3- CD56+)を、PBMCから磁性ビーズでの陰性選択を使用して単離し、その単離したNK細胞の純度は、代表的には>90%であった。単離されたNK細胞を、活性化に関して100ng/mL IL-2を含む培地中で培養したか、またはサイトカインなしで一晩休止させた。IL-2活性化NK細胞を、活性化後の24~48時間以内に使用した。休止NK細胞は常に、精製後に同日に使用した。
【0257】
腫瘍抗原を発現するヒトがん細胞を採取し、培養培地中2×106/mLで再懸濁した。腫瘍抗原を標的化する、モノクローナル抗体または腫瘍抗原を標的化するTriNKETを、培養培地で希釈した。休止および/または活性化NK細胞を採取し、洗浄し、培養培地中2×106/mLで再懸濁した。次いで、がん細胞をモノクローナル抗体/TriNKETと混合し、IL-2の存在下でNK細胞を活性化した。ブレフェルジンAおよびモネンシンも、その混合培養物に添加し、細胞内サイトカイン染色のため細胞からのタンパク質輸送を遮断した。フルオロフォアコンジュゲート抗CD107aを、その混合培養物に添加し、その培養物を、CD3、CD56およびIFN-γに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用して、FACS分析のためにサンプルを調製する前に、4時間にわたってインキュベートした。CD107aおよびIFN-γ染色をCD3- CD56+ 細胞において分析して、NK細胞活性化を評価した。CD107a/IFN-γ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合による、より良好なNK細胞活性化を示す。
【0258】
初代ヒトNK細胞とCD20陽性ヒトがん細胞とを共培養したところ、初代ヒトNK細胞のTriNKET媒介性活性化を生じた(
図37)。TriNKET標的化CD20(例えば、C26-TriNKET-CD20およびF04-TriNKET-CD20)は、CD107a脱顆粒およびIFN-γサイトカイン産生の増加によって示されるように、CD20陽性Raji細胞と共培養したヒトNK細胞の活性化を媒介した(
図37)。モノクローナル抗体リツキシマブと比較して、両方のTriNKET(例えば、C26-TriNKET-CD20およびF04-TriNKET-CD20)は、ヒトNK細胞の優れた活性化を示した。
【0259】
実施例11-TriNKETは、がん細胞に向けたヒトNK細胞の細胞傷害性を増強する
ヒトNK細胞がTriNKETの存在下でがん細胞を溶解する能力を試験するために、ヒトCD16a-158vを発現するように形質導入したヒトNK細胞株KHYG-1細胞を、エフェクター細胞として使用した。全ての細胞傷害性アッセイを、以下のとおりに調製した:目的の標的を発現するヒトがん細胞株(例えば、CD20陽性Raji細胞)を培養物から採取し、細胞をPBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer AD0116)で標識するために106/mLにおいて成長培地中で再懸濁した。標的細胞の標識を、製造業者の指示に倣った。標識後に、細胞をPBSで3回洗浄し、培養培地中で0.5~1.0×105/mLで再懸濁した。バックグラウンドウェルを調製するために、その標識した細胞のアリコートをとっておき、その細胞を培地からスピンアウトした。その培地100μlを、三連でウェルへと注意深く添加して、ペレット化した細胞が乱れるのを回避した。BATDA標識細胞100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。ウェルを、標的細胞からの自発的放出のために保全し、ウェルを、1% Triton-Xの添加による標的細胞の最大溶解のために調製した。目的の腫瘍標的に対するモノクローナル抗体またはTriNKETを、培養培地で希釈し、その希釈したモノクローナル抗体またはTriNKET50μlを、各ウェルに添加した。KHYG-1-CD16-158V細胞を洗浄し、所望のエフェクター細胞 対 標的細胞比に応じて、培養培地中に105~2.0×106/mLで再懸濁した。NK細胞50μlを、そのプレートの各ウェルに添加して、合計200μl培養容積にした。そのプレートを、そ
のアッセイを展開する前に、37℃において5% CO2と2~3時間にわたってインキュベートした。
【0260】
2~3時間の培養後に、そのプレートをインキュベーターから取り出し、細胞を、200gで5分間遠心分離することによってペレット化した。その培養上清20μlを、製造業者から提供されたきれいなマイクロプレートへと移し、室温のユーロピウム溶液200μlを、各ウェルに添加した。そのプレートを遮光し、プレート振盪機上で250rpmにおいて15分間インキュベートした。プレートを、Victor 3またはSpectraMax i3X機器のいずれかを使用して読み取った。% 特異的溶解を、以下のように計算した: % 特異的溶解=((実験的放出-自発的放出)/(最大放出-自発的放出))×100%。
【0261】
CD20標的化TriNKETは、CD20陽性Raji B細胞リンパ腫細胞に向けたヒトNK細胞の細胞傷害性を媒介する。
図39に示されるように、両方のTriNKET(C26-TriNKET-CD20およびF04-TriNKET-CD20)は、そのがん細胞に向けた休止ヒトKHYG-1-CD16a-158Vエフェクター細胞の細胞傷害性活性を用量応答性様式で増強できた。KHYG-1-CD16a-158V細胞は、TriNKETの添加なしでRaji細胞に対して活性が弱かった。点線は、TriNKETの添加なしでRaji標的細胞の特異的溶解を示す。
【0262】
F04-TriNKET-CD20(これは、CD20発現がん細胞に向けたNK細胞の細胞傷害性を媒介する)を、親のモノクローナル抗体リツキシマブと比較した。F04-TriNKET-CD20または抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブを、KHYG-1-CD16a-158V細胞(ヒトCD16a-158Vを発現するように形質導入したKHYG-1細胞)およびRaji細胞と混合し、NK細胞媒介性細胞傷害性を、上記のように測定した。
図39は、F04-TriNKET-CD20が、抗CD20モノクローナル抗体と比較して、Raji細胞に向けたNK細胞の細胞傷害性の効力および最大殺滅を増強したことを示す。点線は、TriNKETまたは抗CD20モノクローナル抗体の添加なしで、KHYG-1-CD16a-158V細胞によるRaji標的細胞の特異的溶解を示す。
【0263】
参照による組み込み
本明細書で参照される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、すべての目的のために参照により組み込まれる。
【0264】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱せずに他の特定の形態で実現されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書で記載している本発明を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入るすべての変更はその中に包含されることが意図される。