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▶ ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122979
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】AAV治療の方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20240903BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N33/569 L
G01N33/543 545A
G01N33/543 575
A61P31/12
A61P9/00
A61K35/76
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024080074
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2020570711の分割
【原出願日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】62/687,564
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ウマ・カビタ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンシャン・ダイ
(72)【発明者】
【氏名】リサ・サルバドール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存抗体に関する情報を提供する低変動性で、より堅牢な方法であって、患者選別の目的で多数の対象のスクリーニングに使用できる自動化可能なハイスループット法に対する要求がなお存在する。
【解決手段】アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む、方法。
【請求項2】
低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象における疾患を処置する方法であって、対象にAAV治療剤を投与することを含み、ここで、該対象はELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定して低力価の抗AAV抗体を有するとして同定されているものである、方法。
【請求項4】
対象における疾患を処置する方法であって、(1)ELISAで対象から得た生物学的サンプルの抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、該対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(2)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法。
【請求項5】
対象における疾患を処置する方法であって、(1)対象から生物学的サンプルを得て、(2)ELISAで生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(3)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法。
【請求項6】
疾患が心臓、肝臓、肺、眼、血液、神経系、リンパ系、筋肉、幹細胞またはこれらの何れかの組み合わせにおけるものである、請求項3~5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
疾患が心疾患である、請求項3~6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定するためのハイスループット法であって、ELISAを使用して、複数の対象から得た対応する複数の生物学的サンプルの各々の力価を測定することを含む、方法。
【請求項9】
複数の対象が約5~約10、約10~約20、約30~約40または約40~約50の対象を含む、請求項8のハイスループット法。
【請求項10】
複数の生物学的サンプルの各々における力価が、並行してまたは連続して測定される、請求項8または9のハイスループット法。
【請求項11】
抗AAV抗体の力価が中和抗AAV抗体の力価、非中和抗AAV抗体の力価または両者を含む、請求項1~10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
ELISAが中和抗AAV抗体または非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ELISAが中和抗AAV抗体および非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
AAV治療が組み換えAAVの投与を含む、請求項1~13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
AAV治療がAAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAVおよびこれらの何れかの組み合わせからなる群から選択されるAAVの投与を含む、請求項1~14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
AAV治療がAAV5型の投与を含む、請求項1~15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
AAV治療がAAV9型の投与を含む、請求項1~16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
AAV治療がAAV2型の投与を含む、請求項1~17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
抗AAV抗体が抗AAV1型抗体、抗AAV2型抗体、抗AAV3型A抗体、抗AAV3型B抗体、抗AAV4型抗体、抗AAV5型抗体、抗AAV6型抗体、抗AAV7型抗体、抗AAV8型抗体、抗AAV9型抗体、抗AAV10型抗体、抗AAV11型抗体、抗AAV12型抗体、抗AAV13型抗体、抗ヘビAAV抗体、抗トリAAV抗体、抗ウシAAV抗体、抗イヌAAV抗体、抗ウマAAV抗体、抗ヒツジAAV抗体、抗ヤギAAV抗体または抗エビAAV抗体である、請求項1~18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
抗AAV抗体が抗AAV5型抗体である、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
抗AAV抗体が抗AAV9型抗体である、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項22】
抗AAV抗体が抗AAV2型抗体である、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項23】
AAV治療のためのAAVが抗AAV抗体が結合するAAVとは異なる血清型である、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項24】
ELISAが化学発光ELISAを含む、請求項1~23の何れかに記載の方法。
【請求項25】
ELISAが集団ELISAである、請求項1~24の何れかに記載の方法。
【請求項26】
生物学的サンプルが血清サンプルを含む、請求項1~25の何れかに記載の方法。
【請求項27】
生物学的サンプルが血液サンプルを含む、請求項1~26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
生物学的サンプルをELISAの前に希釈する、請求項1~27の何れかに記載の方法。
【請求項29】
生物学的サンプルを少なくとも約1:2、少なくとも約1:3、少なくとも約1:4、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:100、少なくとも約1:150、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:1000に希釈する、請求項1~28の何れかに記載の方法。
【請求項30】
抗AAV抗体力価が約800未満~約40,000未満である、請求項1~29の何れかに記載の方法。
【請求項31】
抗AAV抗体力価が約40,000未満、約35,000未満、約30,000未満、約25,000未満、約20,000未満、約15,000未満、約10,000未満、約5000未満、約4000未満、約3000未満、約2000未満、約1000未満、約900未満または約800未満である、請求項1~30の何れかに記載の方法。
【請求項32】
抗AAV抗体力価が約800未満である、請求項1~31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
対象が生物学的サンプルが化学発光ELISAで約100,000未満、約10,000未満、約1000未満、約950未満、約900未満、約850未満、約800未満、約750未満、約700未満、約650未満、約600未満、約550未満または約500未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される、請求項1~32の何れかに記載の方法。
【請求項34】
対象が生物学的サンプルが化学発光ELISAで約700未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される、請求項1~33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
低力価の抗AAV抗体が低力価の中和抗AAV抗体と相関する、請求項2~34の何れかに記載の方法。
【請求項36】
AAV治療が目的の遺伝子を含むAAVの投与を含む、請求項1~35の何れかに記載の方法。
【請求項37】
目的の遺伝子が生物学的に活性なポリペプチドをコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
AAVが制御配列をさらに含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
制御配列が組織特異的プロモーターを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
組織特異的プロモーターが心臓、肝臓、肺、眼、神経系、リンパ系、筋肉および幹細胞からなる群から選択される組織における目的の遺伝子の発現を誘導する、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)治療を使用する、対象における疾患を処置する方法に関する。ある態様において、方法は、対象における抗AAV抗体の総レベルの検出により、AAV治療に適する患者を同定し、低抗AAV抗体力価を有する対象にAAV治療剤を投与することを含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)を担持する導入遺伝子は、変異体もしくはヌルタンパク質発現をもたらす遺伝的欠損の矯正または既存の低レベルタンパク質発現の増強のための遺伝子療法(Nathwani et al to A.M Keeler et. al)ならびにおそらく遺伝子ノックダウン、ゲノム編集または修飾および非コード化RNA調節(Valdmanis et. al 2017)のための重要なツールである。しかしながら、ヒトは、AAVに幼少期に暴露され、AAVベクターの中和により遺伝子治療薬物の有効性に負に影響し得る、中和抗AAV抗体を含む、抗AAV抗体を獲得するようになっている(Blacklow et al., 1967; Boutin et al., 2010; Calcedo et al., 2009, 2011; Liu et al., 2013)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高レベルの中和AAV特異的抗体が予め存在する患者のプレスクリーニングおよび除外は、高い薬物有効性を達成する一つの方法である。インビトロの細胞ベースのレポーターアッセイは、ある集団における中和抗体の出現頻度を決定し、AAV治療に応答する可能性がおそらく低い患者を除外するために、頻繁に用いられる(Amine M et. al., 2015, Manno C et. al., 2006)。しかしながら、細胞ベースの中和抗体アッセイは、処理量が限られる上に所要労力が大きく、一般に高変動性で低感受性という欠点があり、多数の患者のサンプルのスクリーニングは困難である。従って、既存抗体に関する情報を提供する低変動性で、より堅牢な方法であって、患者選別の目的で多数の対象のスクリーニングに使用できる自動化可能なハイスループット法に対する要求がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
ある態様において、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む、方法に関する。ある実施態様において、方法は、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することをさらに含む。
【0005】
ある態様において、本発明は、対象における疾患を処置する方法であって、対象にAAV治療剤を投与することを含み、ここで、該対象は、ELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定して、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定されているものである、方法に関する。
【0006】
ある態様において、本発明は、ELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定し、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定されている対象における疾患の処置に使用するためのAAV治療剤に関する。
【0007】
ある態様において、本発明は、対象における疾患を処置する方法であって、(1)ELISAで対象から得た生物学的サンプルの抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、該対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(2)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法に関する。
【0008】
ある態様において、本発明は、対象における疾患の処置に使用するためのAAV治療剤であって、ここで、対象から得た生物学的サンプルの抗AAV抗体の力価がELISAで測定され、そして、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象に投与される、AAV治療剤に関する。
【0009】
ある態様において、本発明は、対象における疾患を処置する方法であって、(1)対象から生物学的サンプルを得て、(2)ELISAで生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(3)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法に関する。
【0010】
ある態様において、本発明は、対象における疾患の処置に使用するためのAAV治療剤、ここで、ELISAで対象から得た生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価が測定され、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象に投与される、AAV治療剤に関する。
【0011】
ある実施態様において、疾患は心臓、肝臓、肺、眼、血液、神経系、リンパ系、筋肉、幹細胞またはこれらの何れかの組み合わせにおけるものである。ある実施態様において、疾患は心疾患である。
【0012】
ある態様において、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定するためのハイスループット法であって、ELISAを使用して、複数の対象から得た対応する複数の生物学的サンプルの各々の力価を測定することを含む、方法に関する。ある実施態様において、複数の対象は約5~約10、約10~約20、約30~約40または約40~約50の対象を含む。ある実施態様において、複数の生物学的サンプルの各々における力価は、並行してまたは連続して測定される。
【0013】
ある実施態様において、抗AAV抗体の力価は中和抗AAV抗体の力価、非中和抗AAV抗体の力価または両者を含む。ある実施態様において、ELISAは、中和抗AAV抗体または非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む。ある実施態様において、ELISAは、中和抗AAV抗体および非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む。
【0014】
ある実施態様において、AAV治療は、組み換えAAVの投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAVおよびこれらの何れかの組み合わせからなる群から選択されるAAVの投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV5型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV9型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV2型の投与を含む。
【0015】
ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV1型抗体、抗AAV2型抗体、抗AAV3型A抗体、抗AAV3型B抗体、抗AAV4型抗体、抗AAV5型抗体、抗AAV6型抗体、抗AAV7型抗体、抗AAV8型抗体、抗AAV9型抗体、抗AAV10型抗体、抗AAV11型抗体、抗AAV12型抗体、抗AAV13型抗体、抗ヘビAAV抗体、抗トリAAV抗体、抗ウシAAV抗体、抗イヌAAV抗体、抗ウマAAV抗体、抗ヒツジAAV抗体、抗ヤギAAV抗体または抗エビAAV抗体である。ある実施態様において、抗AAV抗体は抗AAV5型抗体である。ある実施態様において、抗AAV抗体は抗AAV9型抗体である。ある実施態様において、抗AAV抗体は抗AAV2型抗体である。
【0016】
ある実施態様において、AAV治療のためのAAVは、抗AAV抗体が結合するAAVとは異なる血清型である。
【0017】
ある実施態様において、ELISAは化学発光ELISAを含む。ある実施態様において、ELISAは集団ELISAである。
【0018】
ある実施態様において、生物学的サンプルは血清サンプルを含む。ある実施態様において、生物学的サンプルは血液サンプルを含む。ある実施態様において、生物学的サンプルをELISAの前に希釈する。ある実施態様において、生物学的サンプルを少なくとも約1:2、少なくとも約1:3、少なくとも約1:4、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:100、少なくとも約1:150、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:1000希釈する。
【0019】
ある実施態様において、抗AAV抗体力価は約800未満~約40,000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は約40,000未満、約35,000未満、約30,000未満、約25,000未満、約20,000未満、約15,000未満、約10,000未満、約5000未満、約4000未満、約3000未満、約2000未満、約1000未満、約900未満または約800未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は約800未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は約40,000未満である。
【0020】
ある実施態様において、対象は、生物学的サンプルが化学発光ELISAで約100,000未満、約10,000未満、約1000未満、約950未満、約900未満、約850未満、約800未満、約750未満、約700未満、約650未満、約600未満、約550未満または約500未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、生物学的サンプルが化学発光ELISAで約700未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、低力価の抗AAV抗体は低力価の中和抗AAV抗体と相関する。
【0021】
ある実施態様において、AAV治療は、目的の遺伝子を含むAAVの投与を含む。ある実施態様において、目的の遺伝子は生物学的に活性なポリペプチドをコードする。ある実施態様において、AAVは制御配列をさらに含む。ある実施態様において、制御配列は組織特異的プロモーターを含む。ある実施態様において、組織特異的プロモーターは、心臓、肝臓、肺、眼、神経系、リンパ系、筋肉および幹細胞からなる群から選択される組織における目的の遺伝子の発現を誘導する。
実施態様
【0022】
E1. アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む、方法。
【0023】
E2. 低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することをさらに含む、E1の方法。
【0024】
E3. 対象における疾患を処置する方法であって、対象にAAV治療剤を投与することを含み、ここで、該対象はELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定して低力価の抗AAV抗体を有するとして同定されているものである、方法。
【0025】
E4. 対象における疾患を処置する方法であって、(1)ELISAで対象から得た生物学的サンプルの抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、該対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(2)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法。
【0026】
E5. 対象における疾患を処置する方法であって、(1)対象から生物学的サンプルを得て、(2)ELISAで生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定し、ここで、対象は低力価の抗AAV抗体を有するとして同定され、そして(3)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法。
【0027】
E6. 疾患が心臓、肝臓、肺、眼、血液、神経系、リンパ系、筋肉、幹細胞またはこれらの何れかの組み合わせにおけるものである、E3~E5の何れかの方法。
【0028】
E7. 疾患が心疾患である、E3~E6の何れかの方法。
【0029】
E8. アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定するためのハイスループット法であって、ELISAを使用して、複数の対象から得た対応する複数の生物学的サンプルの各々の力価を測定することを含む、方法。
【0030】
E9. 複数の対象が約5~約10、約10~約20、約30~約40または約40~約50の対象を含む、E8のハイスループット法。
【0031】
E10. 複数の生物学的サンプルの各々における力価が並行してまたは連続して測定される、E8またはE9のハイスループット法。
【0032】
E11. 抗AAV抗体の力価が中和抗AAV抗体の力価、非中和抗AAV抗体の力価または両者を含む、E1~E10の何れかの方法。
【0033】
E12. ELISAが中和抗AAV抗体または非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む、E11の方法。
【0034】
E13. ELISAが中和抗AAV抗体および非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む、E11の方法。
【0035】
E14. AAV治療が組み換えAAVの投与を含む、E1~E13の何れかの方法。
【0036】
E15. AAV治療がAAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAVおよびこれらの何れかの組み合わせからなる群から選択されるAAVの投与を含む、E1~E14の何れかの方法。
【0037】
E16. AAV治療がAAV5型の投与を含む、E1~E15の何れかの方法。
【0038】
E17. AAV治療がAAV9型の投与を含む、E1~E16の何れかの方法。
【0039】
E18. AAV治療がAAV2型の投与を含む、E1~E17の何れかの方法。
【0040】
E19. 抗AAV抗体が抗AAV1型抗体、抗AAV2型抗体、抗AAV3型A抗体、抗AAV3型B抗体、抗AAV4型抗体、抗AAV5型抗体、抗AAV6型抗体、抗AAV7型抗体、抗AAV8型抗体、抗AAV9型抗体、抗AAV10型抗体、抗AAV11型抗体、抗AAV12型抗体、抗AAV13型抗体、抗ヘビAAV抗体、抗トリAAV抗体、抗ウシAAV抗体、抗イヌAAV抗体、抗ウマAAV抗体、抗ヒツジAAV抗体、抗ヤギAAV抗体または抗エビAAV抗体である、E1~E18の何れかの方法。
【0041】
E20. 抗AAV抗体が抗AAV5型抗体である、E1~E19の何れかの方法。
【0042】
E21. 抗AAV抗体が抗AAV9型抗体である、E1~E19の何れかの方法。
【0043】
E22. 抗AAV抗体が抗AAV2型抗体である、E1~E19の何れかの方法。
【0044】
E23. AAV治療のためのAAVが、抗AAV抗体が結合するAAVとは異なる血清型である、E1~E19の何れかの方法。
【0045】
E24. ELISAが化学発光ELISAを含む、E1~E23の何れかの方法。
【0046】
E25. ELISAが集団ELISAである、E1~E24の何れかの方法。
【0047】
E26. 生物学的サンプルが血清サンプルを含む、E1~E25の何れかの方法。
【0048】
E27. 生物学的サンプルが血液サンプルを含む、E1~E26の何れかの方法。
【0049】
E28. 生物学的サンプルをELISAの前に希釈する、E1~E27の何れかの方法。
【0050】
E29. 生物学的サンプルを少なくとも約1:2、少なくとも約1:3、少なくとも約1:4、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:100、少なくとも約1:150、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:1000希釈する、E1~E28の何れかの方法。
【0051】
E30. 抗AAV抗体力価が約800未満~約40,000未満である、E1~E29の何れかの方法。
【0052】
E31. 抗AAV抗体力価が約40,000未満、約35,000未満、約30,000未満、約25,000未満、約20,000未満、約15,000未満、約10,000未満、約5000未満、約4000未満、約3000未満、約2000未満、約1000未満、約900未満または約800未満である、E1~E30の何れかの方法。
【0053】
E32. 抗AAV抗体力価が約800未満である、E1~E31の何れかの方法。
【0054】
E33. 対象が、生物学的サンプルが化学発光ELISAで約100,000未満、約10,000未満、約1000未満、約950未満、約900未満、約850未満、約800未満、約750未満、約700未満、約650未満、約600未満、約550未満または約500未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される、E1~E32の何れかの方法。
【0055】
E34. 対象が、生物学的サンプルが化学発光ELISAで約700未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される、E1~E33の何れかの方法。
【0056】
E35. 低力価の抗AAV抗体が低力価の中和抗AAV抗体と相関する、E2~E34の何れかの方法。
【0057】
E36. AAV治療が目的の遺伝子を含むAAVの投与を含む、E1~E35の何れかの方法。
【0058】
E37. 目的の遺伝子が生物学的に活性なポリペプチドをコードする、E36の方法。
【0059】
E38. AAVが制御配列をさらに含む、E36またはE37の方法。
【0060】
E39. 制御配列が組織特異的プロモーターを含む、E38の方法。
【0061】
E40. 組織特異的プロモーターが心臓、肝臓、肺、眼、神経系、リンパ系、筋肉および幹細胞からなる群から選択される組織における目的の遺伝子の発現を誘導する、E38の方法。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1A図1A~1Bは、商業的に得た正常ヒト血清サンプルにおける抗rAAV9型抗体の化学発光(図1A)および比色分析(図1B)ELISA検出結果のグラフ表示である。血清サンプルを示すとおりにSBT20緩衝液で希釈し、rAAV9S100A1被覆プレートに加えた。化学発光(CL)(図1A)または吸光度(図1B)単位を、最適化量の抗κおよび抗λ抗体でのrAAV9型結合抗体の検出により得た。バックグラウンドは、SBT20緩衝液とインキュベートした対照ウェルを抗κおよび抗λ抗体で検出したときに観察されるCL(図1A)または吸光度(図1B)単位である。
図1B】同上。
【0063】
図2図2は、化学発光(黒色棒)および比色分析(灰色棒)ELISA検出法のシグナル対ノイズ比の比較を表す棒グラフである。400倍血清希釈での化学発光または吸光度単位を、抗κおよび抗λ検出抗体を使用して得て、rAAV9被覆プレートで、SBT20緩衝液インキュベーションのみおよび抗κおよび抗λ検出抗体で得たデータ単位で除すことにより得た。
【0064】
図3図3Aは、化学発光法と比色分析検出法の相関を示す散布図である。データを、示す相関プロットを作成するために各方法について血清希釈の線形範囲を選択した。図3Bは、図3Aに示すデータの統計分析を提供する。
【0065】
図4A図4A~4Cは、化学発光ELISAにおける抗rAAV9S100A1抗体結合の競合の結果のグラフ表示である。4つの異なる正常ヒト血清サンプルを希釈し、各希釈物の3複製を溶液中のrAAV9とのプレインキュベーションあり(Comp)およびなし(Non Comp)で試験した(図4A)。図4B~4Cは、1:4血清希釈(図4B)およびモノクローナル抗体対照(1:1000でのADK9;図4C)の競合ELISAデータを示す。四角で囲った数字は、競合血清サンプルにおけるシグナルのパーセント阻害を示す(図4B~4C)。
図4B】同上。
図4C】同上。
【0066】
図5A図5A~5Bは、化学発光ELISA法における抗AAV9抗体検出の再現性を説明するグラフ表示である。12の異なる正常ヒトサンプルを40倍(図5A)または400倍(図5B)希釈し、総抗AAV9抗体について2つの異なる実験で試験した。表(図5Aおよび5B)は、各希釈での各サンプルの実験間精度を示す。
図5B】同上。
【0067】
図6-1】図6A~6Cは、rAAV9カプシドを含む導入遺伝子(rAAV9S100A1;灰色棒)およびルシフェラーゼレポーター(rAAV9HLuc;黒色棒)の互換性を示す棒グラフである。各カプシドタイプを等濃度で被覆し、材料および方法に記載する化学発光総抗体結合ELISAにおける正常ヒト血清(NHS)サンプルの3つの異なるロットの連続希釈(図6A~6C)で検出した。
図6-2】同上。
【0068】
図7図7は、心疾患患者血清サンプルにおける総抗AAVと中和抗体の相関を示す散布図である。100名の患者を、1:400の血清希釈で総結合抗体および1:10の希釈で中和抗体について評価し、スピアマンの順位相関法を使用して相関させた。点線で示す任意のカットオフを各アッセイで設定する。
【0069】
図8図8は、心疾患患者血清サンプルにおける総抗AAV抗体とAAV9中和抗体の相関を示す散布図である。100名の患者を、1:400の血清希釈でAAV9との競合後AAV特異的抗体についてELISAでおよび1:10の希釈で中和抗体について細胞ベースの中和抗体アッセイで評価し、スピアマンの順位相関法を使用して相関させた。点線で示す任意のカットオフを各アッセイで設定する。
【0070】
図9図9は、心疾患患者血清サンプルにおける総AAV2型結合抗体と中和抗体の相関を示す散布図である。36名の患者を、1:400の血清希釈でAAV特異的抗体についてELISAでおよび1:10の希釈で中和抗体について細胞ベースの中和抗体アッセイで評価した。点線で示す任意のカットオフを各アッセイで設定する。
【0071】
図10図10は、100名の患者サンプルにおけるAAV9中和、総抗AAV9および特異的(競合工程に基づく、実施例参照)総抗AAV9抗体の相関を示すノンスケールのベン図である。任意のカットオフは、各データセットについて括弧内に示す。総抗体(tAb)データセットのカットオフは、細胞ベースの中和抗体アッセイにおける中和および非中和集団の分割に基づいた。
【0072】
図11A図11A~11Bは、化学発光(黒色棒)および比色分析(灰色棒)ELISA検出法のシグナル対ノイズ比の比較を表す棒グラフである。4倍(図11A)および40倍(図11B)血清希釈での化学発光または吸光度単位を抗κおよび抗λ検出抗体を使用して得て、rAAV9被覆プレートにおいてSBT20緩衝液のみでのインキュベーションおよび抗κおよび抗λ検出抗体で得たデータ単位で除した。
図11B】同上。
【0073】
図12図12は、rAAV9 AbのHRPコンジュゲート抗κおよび抗λ検出とHRPコンジュゲート抗IgG検出の比較を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
発明の詳細な記載
本発明のある態様は、アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む、方法に関する。本発明のある態様は、対象にAAV治療剤を投与することを含む、対象における疾患を処置する方法に関する。ある態様において、対象は、ELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定して低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある態様において、本発明は、AAV治療に適する対象を同定するハイスループット法であって、ELISAを使用して、複数の対象から得た対応する複数の生物学的サンプルの各々の力価を測定することを含む、方法に関する。
【0075】
I. 用語
本発明がより容易に理解され得るために、一部用語をまず定義する。本出願で使用するものであって、本明細書で特に断らない限り、下記用語の各々は、次に示す意味を有する。さらなる定義は、本明細書をとおして示される。
【0076】
用語「および/または」は、ここで使用されているとき、2つの特定した特性または要素の各々の、他方を伴うまたは伴わない具体的開示と解釈される。故に、ここで「Aおよび/またはB」などの言い回しで使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの言い回しで使用される用語「および/または」は、次の態様の各々を含むことを意図する:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0077】
本明細書である態様が用語「含む」を用いて記載されている場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」の用語で記載されているものを除き、類似する態様も記載されていると理解される。
【0078】
他に定義されない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に本明細書で使用される用語の多くの一般的辞書を提供する。
【0079】
単位、接頭辞および記号は、その国際単位系(SI)が認めた形態である。数値範囲は、該範囲を定義する数値を含む。ここに提供する表題は、本明細書を全体として引用して得られる種々の態様の開示を制限しない。従って、すぐ下に定義する用語は、本明細書をその全体として引用して、より完全に定義される。
【0080】
ここで使用する用語「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」は、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gao et al.(J. Virol. 78:6381 (2004))およびMoris et al.(Virol. 33:375 (2004))により開示されるAAV血清型および系統群ならびに現在知られるまたは今後発見されるあらゆる他のAAVを含み、かつこれらに限定されない。例えば、FIELDS et al. VIROLOGY, volume 2, chapter 69 (4th ed., Lippincott-Raven Publishers)参照。AAVは、ウイルスのパルボウイルス科内のデペンドパルボウイルス(属)をいう。例えば、AAVは、天然に存在する「野生型」ウイルス由来のAAV、天然に存在するcap遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質由来カプシドにパッケージされた組み換えAAV(rAAV)ゲノムおよび/または非天然カプシドcap遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質由来カプシドにパッケージされたrAAVゲノムに由来するAAVであり得る。ここで使用する「AAV」は、ウイルスそれ自体またはその誘導体をいうために使用し得る。本用語は、他に具体的に示されていない限り、全サブタイプおよび天然に存在するおよび組み換え両者の形態を包含する。AAVは、AAV1型(AAV-1)、AAV2型(AAV-2)、AAV3型(AAV-3)、AAV4型(AAV-4)、AAV5型(AAV-5)、AAV6型(AAV-6)、AAV7型(AAV-7)、AAV8型(AAV-8)、AAV9型(AAV-9)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAVおよびヒツジAAVを含む。「霊長類AAV」は霊長類に感染するAAVをいい、「非霊長類AAV」は霊長類ではない哺乳動物に感染するAAVをいい、「ウシAAV」はウシ属哺乳動物に感染するAAVをいうなど。例えば、BERNARD N. FIELDS et al., VIROLOGY, volume 2, chapter 69 (3 d ed., Lippincott-Raven Publishers)参照。
【0081】
用語「rAAV」は「組み換えAAV」をいう。ある実施態様において、組み換えAAVは、repおよびcap遺伝子の一部または全てが異種配列で置き換わっているAAVゲノムを有する。ここで使用する「rAAVベクター」は、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVにとって異種のポリヌクレオチド)、一般に細胞の遺伝形質転換にとって興味深い配列を含むAAVベクターをいう。一般に、異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1個および一般に2個のAAV末端逆位配列(ITR; Inverted Terminal Repeated Sequences)が隣接する。用語rAAVベクターはrAAVベクター粒子およびrAAVベクタープラスミド両者を含む。
【0082】
「カプシド・フリー」または「カプシド・レス」(またはその変形)ベクターまたは核酸分子は、カプシドがないベクター構築物をいう。ある実施態様において、カプシド・レスベクターまたは核酸分子は、例えば、AAV Repタンパク質をコードする配列がない。
【0083】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」は、少なくとも1個のAAVカプシドタンパク質(一般に野生型AAVの全カプシドタンパク質)およびカプシド形成されたポリヌクレオチドrAAVベクターからなるウイルス粒子をいう。ウイルスまたは粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち哺乳動物細胞に送達すべき導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含むならば、「rAAVベクター粒子」と呼び得る。それ故に、rAAV粒子の産生は、ベクターがrAAV粒子内に含まれる限り、必然的にrAAVベクターの産生を含む。
【0084】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、AAV(例えば、野生型AAV)が哺乳動物細胞により複製かつパッケージされることを可能にするウイルスをいう。多様なこのようなAAVのためのヘルパーウイルスが当分野で知られ、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアなどのポックスウイルスを含む。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを含むが、サブグループCのアデノウイルス5型が最も一般に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物およびトリ起源の多数のアデノウイルスが知られ、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペス科のウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)ならびにサイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を含み、これらはまたATCCなどの寄託機関から入手可能である。
【0085】
ここで使用する「末端逆位配列」(または「ITR」)は、一本鎖核酸配列の5’または3’末端に位置する核酸部分配列をいい、これは、一組のヌクレオチド(初期配列)とその後下流にその逆相補がある、すなわち、パリンドローム配列を含む。初期配列と逆相補の間のヌクレオチドの介在性配列はどんな長さでもよい。
【0086】
ここで使用する用語「トロピズム」は、AAVベクターまたはビリオンが1以上の特定の細胞型に感染する能力をいうが、1以上の特定の細胞型の細胞にベクター機能を形質導入する方法も包含する。すなわち、トロピズムは、AAVベクターまたはビリオンのある細胞または組織タイプへの優先的侵入および/またはある細胞または組織タイプへの侵入を促進する細胞表面との優先的相互作用をいい、所望によりおよび好ましくは細胞内でのAAVベクターまたはビリオンにより運ばれた配列の発現(例えば、転写および、所望により、翻訳)、例えば、組み換えウイルスについては、異種ヌクレオチド配列の発現が続く。ここで使用する用語「形質導入」は、AAVベクターまたはビリオンが1以上の特定の細胞型に感染する能力をいう;すなわち、形質導入は、AAVベクターまたはビリオンの細胞への侵入と、ベクターゲノムから発現をさせるためのAAVベクターまたはビリオン内に含まれる遺伝物質の細胞への伝達を含む。一部例では、しかし、全例ではないが、形質導入およびトロピズムは相関し得る。
【0087】
「投与する」は、当業者に知られる種々の方法および送達系の何れかを使用した、対象への治療剤の物理的導入をいう。例えば、AAV治療剤について、例示的投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語「非経腸投与」は、経腸および局所投与以外の、通常、注射による投与方法をいい、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内注射および点滴ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。治療剤は非経腸ではない経路または経口で投与し得る。他の非経腸ではない経路は、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣、直腸、舌下または局所を含む。投与するはまた、例えば、1回、複数回および/または1以上のより長い期間にわたって実施され得る。
【0088】
用語「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互接続された、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリンをいう。各H鎖は、重鎖可変領域(ここではVと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は少なくとも3個の定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域1個の定常ドメイン、Cを含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VおよびVは3個のCDRおよび4個のFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、次の順に配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。
【0089】
用語「抗体」(Ab)はまた、限定しないが、抗原に特異的に結合し、ここに定義するとおりである、免疫グロブリンのあらゆる抗原結合部分もまた含む。
【0090】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般に知られるアイソタイプの何れかに由来し得る。IgGアイソタイプも当分野で周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、それぞれIgMまたはIgG1)をいう。用語「抗体」は、例として、天然に存在するおよび天然に存在しない両者の抗体、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラおよびヒト化抗体、ヒトまたは非ヒト抗体、完全合成抗体、および一本鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低減するために組み換え方法によりヒト化され得る。明示されず、文脈に反しない限り、用語「抗体」はまた、前記免疫グロブリンの何れかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分も含み、一価および二価フラグメントまたは一部および一本鎖Abを含む。
【0091】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(例えば、AAVに特異的に結合する単離抗体は、AAV以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離抗体は、実質的に他の細胞物質および/または化学物質を含まない抗体をいい得る。
【0092】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに単一結合特異性および親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物をいう。モノクローナル抗体は単離抗体の一例である。モノクローナル抗体はハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニックまたは当業者に知られる他の技術により産生され得る。
【0093】
用語「中和抗体」(nAb)は、標的に結合し、標的の機能を阻害または遮断する抗体をいう。例えば、AAV-9に結合する中和抗体は、AAV-9と結合し、AAV-9の機能を妨害できる。ある実施態様において、中和AAV抗体は、ウイルス粒子が結合し、標的細胞に入る前にAAVウイルス粒子と結合し、ウイルス粒子が標的細胞と結合しおよび/または侵入し、細胞内で導入遺伝子を放出するのを阻止する。
【0094】
「抗抗原抗体」は、抗原に特異的に結合する抗体をいう。例えば、抗AAV抗体はAAVウイルス粒子に特異的に結合する。
【0095】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも称する)は、抗体全体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントをいう。
【0096】
ここで使用する「ハイスループット法」は、一アッセイで複数の生物学的サンプルの特徴づけを可能にする方法またはアッセイをいう。例えば、ハイスループット法を使用して、一アッセイで少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個または少なくとも100個の生物学的サンプルにおける抗体力価を測定できる。ある実施態様において、ハイスループット法またはアッセイは、多ウェルプレートを使用する。ある実施態様において、複数の生物学的サンプルは、並行して測定される。ここで使用する「並行して」測定されるサンプルは、同時に測定される。ある実施態様において、複数の生物学的サンプルは連続的に測定される。
【0097】
対象の「処置」または「治療」は、疾患と関連する症状、合併症、状態または生化学的徴候の発症、進行、進展、重症度または再発の反転、軽減、改善、阻止、減速または予防を目的として、対象に行う活性剤の投与を含むあらゆるタイプの介入または過程をいう。
【0098】
「対象」はあらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌおよび齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモットを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、対象はヒトである。用語「対象」および「患者」は、ここでは、相互交換可能に使用される。
【0099】
ここで使用する「力価」または「抗体力価」は、サンプル、例えば、対象から得た生物学的サンプル中の特定の抗体の量をいう。抗体の力価は、当分野で知られる方法の何れかを使用して測定され得る。ある実施態様において、抗体の力価は、抗体を含むサンプルを、抗体がバックグラウンドを超えてもはや検出されなくなるまで連続希釈することにより測定される。このような例では、抗体の力価は、それ以下では抗体の濃度がバックグラウンドレベルより低くなる希釈倍率として表される。例えば、1:800の希釈が、一連の希釈でバックグラウンドレベルを超えて検出される最高希釈であるならば、抗体の力価は800として表される。1:40,000の希釈が、一連の希釈でバックグラウンドレベルを超えて検出される最高希釈であるならば、抗体の力価は40,000として表される。ある実施態様において、抗AAV抗体の力価は約40,000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体の力価は約800未満である。
【0100】
ある実施態様において、抗体力価は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して測定される。当分野で知られるあらゆるELISAを、本発明の方法において使用できる。ELISAは、インビトロでサンプルにおける標的の存在を検出するための一連の抗体相互作用により特徴づけられる。ELISAは、直接アッセイ、間接アッセイまたは捕捉アッセイ(すなわち、サンドイッチアッセイ)を含み得る。直接アッセイでは、抗原を表面に結合させる。酵素にコンジュゲートした一次抗体を表面に適用し、一次抗体が抗原に結合する。次いで、基質を加え、それが酵素と反応して、検出可能なシグナルを発生させ、これが表面上の抗原の存在を示す。間接アッセイでは、抗原を表面に結合させる。次いで一次抗体を表面に適用し、一次抗体が抗原に結合する。次いで、酵素にコンジュゲートした二次抗体を表面に適用する。二次抗体は一次抗体と結合できる。次いで、基質を加え、それが酵素と反応して、検出可能なシグナルを生じさせ、これが表面上の抗原の存在を示す。捕捉アッセイでは、抗体を表面に結合させ、抗原を含むサンプルを表面に適用する。次いで、一次抗体および二次抗体を間接アッセイにおけるとおりに適用する。
【0101】
ある実施態様において、ELISAは「化学発光ELISA」である。「化学発光ELISA」または「発光アッセイ」または「化学発光アッセイ」は、標的の存在の指標として発光を使用するタイプのELISAである。次いで、発光強度を測定し、サンプルにおける標的の量と相関させ得る。化学発光ELISAにおいて、酵素は、基質を光量子を発する反応産物に変換する。ルミネセンスは、電子励起状態から基底状態に戻る際の物質からの発光として説明される。化学発光は、化学反応により生じる光である。励起中間体が安定な基底状態に戻るとき、光子が放出され、これが発光シグナル装置のセンサーにより検出される。発光シグナルの強度は化学発光単位として表すことができ、ここで、検出される化学発光単位数が大きいほど、生物学的サンプルにおける標的の力価が高い。
【0102】
あらゆる化学発光酵素および基質をここに記載する方法において使用できる。ある実施態様において、化学発光酵素はアルカリホスファターゼ(AP)を含む。ある実施態様において、化学発光酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を含む。ある実施態様において、化学発光酵素はベータガラクトシダーゼおよびベータラクタマーゼを含む。
【0103】
ある実施態様において、ELISAアッセイは、(1)表面をAAV標的、例えば、AAV-9ウイルス粒子でコーティングし;(2)表面を1以上の抗AAV抗体を含むサンプル、例えば、対象から得た生物学的サンプルと接触させ;(3)表面を酵素、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と融合した第二抗体と接触させ、ここで、第二抗体は抗AAV抗体と結合でき;(4)表面と化学発光基質を接触させ;そして(5)表面からの発行を測定することを含む。
【0104】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方またはこれらの何れかの組み合わせを意味すると理解すべきである。ここで使用する単数表現は、何らかの記載または列記された要素の「1以上」をいうと理解されるべきである。
【0105】
用語「約」または「本質的に含む」は、値または組成の測定または決定方法、すなわち、測定系の限界に一部依存する、当業者により決定される特定の値または組成について許容される誤差範囲内である値または組成をいう。例えば、「約」または「本質的に含む」は、当分野での実務により1または1を超える標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」または「本質的に含む」は、20%までの範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的系または過程に関して、本用語は値の一桁までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本明細書および請求の範囲に提供されるとき、特に断らない限り、「約」または「本質的に含む」の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲内であることが推定される。
【0106】
ここで使用する用語「ほぼ週1回」、「ほぼ2週に1回」または何らかの他の類似投与間隔用語は、おおよその数字を意味する。「ほぼ週1回」は7日±1日、すなわち、6日毎~8日毎を含み得る。「ほぼ2週に1回」は14日毎±3日、すなわち、11日毎~17日毎を含む。類似の近似が、例えば、ほぼ3週に1回、ほぼ4週に1回、ほぼ5週に1回、ほぼ6週に1回およびほぼ12週に1回に適用される。ある実施態様において、ほぼ6週に1回またはほぼ12週に1回の投与間隔は、最初の投与を第一週目の任意の曜日に実施してよく、次の投与を、それぞれ6週目または12週目の任意の曜日に投与してよいことを意味する。他の実施態様において、ほぼ6週に1回またはほぼ12週に1回の投与間隔は、最初の投与を第一週目の特定の曜日(例えば、月曜日)に実施し、次の投与をそれぞれ6週目または12週目の同じ曜日(すなわち、月曜日)に実施することを意味する。
【0107】
ここに記載する、あらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲または整数範囲は、特に断らない限り、記載する範囲内のあらゆる整数値および、適切なとき、その分数(例えば整数の1/10および1/100)を含むと理解されるべきである。
【0108】
本発明の種々の態様を、次のサブセクションにさらに詳細に記載する。
【0109】
II. 方法の開示
本発明のある態様は、アデノ随伴ウイルス(AAV)治療に適する対象を同定する方法であって、ELISAを使用して対象から得た生物学的サンプルにおけるAAVに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗AAV抗体」)の力価を測定することを含む、方法に関する。ある実施態様において、方法は、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することをさらに含む。
【0110】
本発明のある態様は、対象にAAV治療剤を投与することを含む、対象における疾患を処置する方法に関し、ここで、該対象はELISAで対象から得た生物学的サンプルを使用して測定して低力価の抗AAV抗体を有するとして同定されている。本発明のある態様は、対象における疾患を処置する方法であって、(1)ELISAで対象から得た生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定し、そして(2)低力価の抗AAV抗体を有するとしてとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法に関する。ある態様において、本発明は、対象における疾患を処置する方法であって、(1)対象から生物学的サンプルを得て、(2)ELISAで生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定し、そして(3)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法に関する。ある態様において、本発明は、対象における疾患を処置する方法であって、(1)対象からの生物学的サンプルを得ることまたは得られていること、(2)ELISAで対象から得た生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を測定することまたは測定されていること、そして(3)低力価の抗AAV抗体を有するとして同定された対象にAAV治療剤を投与することを含む、方法に関する。
【0111】
本発明の方法は、AAV治療を使用して処置できる当分野で知られるあらゆる疾患または状態の処置に有用である。例えば、ここに開示する方法を、対象の心臓、肝臓、肺、眼、血液、神経系、リンパ系、筋肉、幹細胞およびこれらの何れかの組み合わせに影響する疾患または状態の処置に使用し得る。ある実施態様において、疾患または状態は、中枢神経系に影響する疾患または状態である。ある実施態様において、疾患または状態は、心疾患を含む。ある実施態様において、疾患または状態は、心不全を含む。ある実施態様において、疾患または状態は、急性または慢性心不全を含む。具体的実施態様において、疾患または状態は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)を含む。具体的実施態様において、疾患または状態は、駆出率が保持された心不全を含む。ある実施態様において、疾患または状態は、嚢胞性線維症、血友病B、関節炎、遺伝的気腫、レーベル先天性黒内障、黄斑変性症(例えば、加齢黄斑変性症)、デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)、パーキンソン病、カナバン病、バッテン病、アルツハイマー病、脊髄筋萎縮、うっ血性心不全、二対立遺伝子RPE65変異関連網膜ジストロフィーまたはこれらの何れかの組み合わせである。
【0112】
本発明のある態様は、AAV治療に適する対象を同定するハイスループット法であって、ELISAを使用して、複数の対象から得た対応する複数の生物学的サンプルの各々の力価を測定することを含む、方法に関する。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約500、少なくとも約750または少なくとも約1000対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約10対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約20対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約30対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約40対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約50対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約60対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約70対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約80対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約90対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、少なくとも約100対象を含む。
【0113】
ある実施態様において、複数の対象は、2~約100対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は、2~約90対象、2~約85対象、2~約80対象、2~約75対象、2~約70対象、2~約65対象、2~約60対象、2~約55対象、2~約50対象、2~約45対象、2~約40対象、2~約35対象、2~約30対象、2~約25対象、2~約20対象、2~約15対象、2~約10対象または2~約5対象を含む。
【0114】
ある実施態様において、複数の対象は、約5~約100対象、約10~約100対象、約15~約100対象、約20~約100対象、約25~約100対象、約30~約100対象、約35~約100対象、約40~約100対象、約45~約100対象、約50~約100対象、約55~約100対象、約60~約100対象、約65~約100対象、約70~約100対象、約75~約100対象、約80~約100対象、約85~約100対象、約90~約100対象または約95~約100対象を含む。
【0115】
ある実施態様において、複数の対象は、約10~約90対象、約20~約80対象、約30~約70対象、約40~約60対象、約25~約50対象、約50~約75対象、約25~約75対象または約50~約100対象を含む。ある実施態様において、複数の対象は約5~約10、約10~約20、約30~約40または約40~約50の対象を含む。
【0116】
ある実施態様において、複数の生物学的サンプルの各々における力価は並行して測定される。ある実施態様において、複数の生物学的サンプルの各々における力価は連続的に測定される。
【0117】
ある実施態様において、本発明の方法は、生物学的サンプルまたは複数の生物学的サンプルの各々における抗AAV抗体の力価の測定を含む。抗AAV抗体は1クラスの抗AAV抗体、例えば、中和抗AAV抗体のみまたは1を超えるクラスの抗AAV抗体、例えば、中和および非中和抗AAV抗体の混合を含み得る。ある実施態様において、抗AAV抗体の力価は中和抗AAV抗体の力価、非中和抗AAV抗体の力価または両者を含む。ある実施態様において、抗AAV抗体の力価は中和抗AAV抗体の力価または非中和抗体の力価のみを含む。ある実施態様において、ELISAは、中和抗AAV抗体または非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む。ある実施態様において、本発明の方法は中和および非中和両者の抗AAV抗体を測定する。ある実施態様において、ELISAは、中和抗AAV抗体および非中和抗AAV抗体に結合する二次抗体を含む。ここに記載するとおり、本発明は、生物学的サンプルにおける総抗AAV抗体力価と中和抗AAV抗体の力価の相関を驚くべきことに同定する。
【0118】
抗AAV抗体は任意の1タイプまたはクラスの抗AAV抗体、例えば、抗AAV-9抗体または抗AAV-2抗体またはAAV-5抗体または1を超える抗AAV抗体、例えば、抗AAV-9抗体と抗AAV-2抗体;抗AAV-9抗体と抗AAV-5;抗AAV-2抗体と抗AAV-5の混合物であり得る。抗AAV抗体はまた任意のアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgD、IgAまたはIgEまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0119】
II.A. アデノ随伴ウイルス(AAV)
本発明のある態様は、対象における抗AAV抗体を検出するおよび/またはAAVを投与する方法に関する。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルス科の無エンベロープ、一本鎖DNAウイルスである。パルボウイルス科の大部分の他のメンバーと対照的に、AAVは複製欠損であり、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルス存在下でのみ効率的に複製できる。
【0120】
AAVは、アデノウイルスのウイルス調製物への混入物として1960年代半ばに最初に報告された。Atchison R W, Casto B C, HAMMON W M. Science. 149(3685), 754-756 (1965)参照。それ以来、組み換えDNAベクターとしてAAVのより安全かつ有効な使用方法が開発され続けている。例えば、Hermonat P.L. and Muzyczka N. Proc Natl Acad Sci USA. 81(20), 6466-6470 (1984). 3. Laughlin C.A., et al. Gene, 23(1), 65-73 (1983). Matsushita T., et al. Gene Ther. 5(7), 938-945 (1998). Xiao X., et al. Journal of Virology. 72(3), 2224-2232 (1998)参照。少ない数のAAVゲノムが宿主染色体に統合され得ることが報告されている(Cheung AK, Hoggan MD, Hauswirth WW, et al. Integration of the adeno-associated virus genome into cellular DNA in latently infected human detroit 6 cells. J Virol 1980;33:739-748)。AAVは、あらゆる既知アデノウイルス抗原と免疫学的に異なる。AAVカプシドは一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを含む((Rose JA, Berns KI, Hoggan MD, et al. Proc Natl Acad Sci USA 1969;64:863-869)。
【0121】
AAVは、2個の末端逆位配列(ITR)が隣接した複製(rep)遺伝子およびカプシド(cap)遺伝子をコードする一本鎖、4.7kb DNAゲノムである。優勢に非統合性であり、非分裂組織で安定なエピソームを形成する。成人集団での高い血清検出率にも関わらず、如何なるヒト疾患とも連づけられていない。Goncalves, M. Virol. J. 2, 43 (2005)参照。組織におけるAAVの安定な発現、病原性欠如および高い力価産生の容易さにより、魅力的かつ汎用される遺伝子移入プラットフォームとなっている。
【0122】
組み換えAAVは、repおよびcap遺伝子の一部または全てが異種配列で置き換えられている遺伝子操作されたAAVである。野生型AAVと同様、rAAVは、最も可能性の高い理由としては、rAAVの組み換えゲノムが核内に大型環状エピソームとして持続するため、有糸分裂後組織における長期導入遺伝子発現を誘発する。rAAVの産生に必要なrAAVの唯一のシスエレメントはAAV末端逆位配列(ITR)であり、一方rep、capおよびアデノウイルスヘルパー遺伝子はトランスで提供され得る。それ故に、ここに開示するある実施態様において、rAAVは、ITRが隣接する導入遺伝子DNAのみを含み、このゲノムは、血清型特異的カプシド内でカプシド形成される。
【0123】
AAVは、細胞への外来DNA送達のためのベクターとして魅力的となる特有の性質を有する。培養での細胞のAAV感染は一般に非細胞傷害性であり、ヒトおよび他の動物の天然感染は無症状かつ無症候性である。さらに、AAVは多くの異なるタイプの哺乳動物細胞に感染し、インビボで多くの異なる組織を標的とすることが許容される。AAVはまた、他の形態の遺伝子送達と比較して穏やかな免疫応答の促進ならびに非統合ベクターとして分裂および静止状態両者の細胞における永続性発現を含む、遺伝子送達に特に魅力的なウイルス系となるさらなる利点も有する。また、AAVは、アデノウイルス不活性化に使用する条件に耐え(56°~65℃。数時間)、rAAVベースのワクチンをあまり極端でない低温保存できる。
【0124】
ヘルパーウイルスは、AAV形質導入およびAAVゲノムの標的細胞への侵入に必要でない。さらに、AAV複製、ゲノムカプシド形成および組込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれるため、内部の約4.7kbのゲノム(複製および構造カプシドタンパク質、rep-capをコード)を、遺伝子治療剤として使用するAAVに重要な機能を何ら失うことなく、プロモーター、目的のDNAおよびポリアデニル化シグナルを含む遺伝子カセットなどの外来DNAで置き換え得る。
【0125】
AAVベクターは、シスまたはトランスで機能するさらなる要素を含み得る。具体的実施態様において、ベクターゲノムを含むAAVベクターはまたドナー配列の5’または3’末端に隣接する1以上の末端逆位配列(ITR);構成的または制御可能制御要素または組織特異的発現制御要素などのドナー配列の転写を駆動する発現制御要素(例えば、プロモーターまたはエンハンサー);イントロン配列、スタッファーまたはフィラーポリヌクレオチド配列;および/またはドナー配列の3’に位置するポリアデニン配列も含む。
【0126】
ある実施態様において、AAVはヘルパーウイルスを利用して複製する。AAVのための多様なこのようなヘルパーウイルスが当分野で知られ、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアなどのポックスウイルスを含む。個々のアデノウイルスタイプは多数の異なるサブグループを含むが、サブグループCのアデノウイルス5型が最も一般に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物およびトリ起源の多数のアデノウイルスが知られ、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペス科のウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)ならびにサイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を含み、これらはまたATCCなどの寄託機関から入手可能である。
【0127】
AAVベクターの例は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74またはAAV-2i8の何れかのカプシドタンパク質またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74またはAAV-2i8のカプシドバリアントを含む。本発明の組み換えAAVベクターはまたAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74またはAAV-2i8何れかからのカプシドタンパク質およびそのバリアントを含む。特定のカプシドバリアントは、アミノ酸置換、欠失または挿入/付加を有するカプシドタンパク質などのAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74またはAAV-2i8のカプシドバリアントを含む。
【0128】
本発明のある態様は、生物学的サンプルにおける抗AAV抗体を検出する方法に関する。抗AAV抗体は、当分野で知られるAAVの何れかまたは当分野で知られるAAVの何らかの面、例えば、表面タンパク質に特異的であり得る。AAVの例は、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAVおよびエビAAVを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV1型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV1型抗体、抗AAV2型抗体、抗AAV3型A抗体、抗AAV3型B抗体、抗AAV4型抗体、抗AAV5型抗体、抗AAV6型抗体、抗AAV7型抗体、抗AAV8型抗体、抗AAV9型抗体、抗AAV10型抗体、抗AAV11型抗体、抗AAV12型抗体、抗AAV13型抗体、抗ヘビAAV抗体、抗トリAAV抗体、抗ウシAAV抗体、抗イヌAAV抗体、抗ウマAAV抗体、抗ヒツジAAV抗体、抗ヤギAAV抗体または抗エビAAV抗体である。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV2型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV3型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV4型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV5型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV6型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV7型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV8型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV9型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV10型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV11型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV12型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、抗AAV13型に結合する。
【0129】
ある実施態様において、抗AAV抗体は1を超えるAAV血清型、例えば、AAV2型およびAAV9型に結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は一つのAAV血清型、例えば、AAV9型またはAAV2型に、他のあらゆるAAV血清型より高い親和性で結合する。ある実施態様において、抗AAV抗体は、一つのAAV血清型、例えば、AAV9型またはAAV2型のみに特異的に結合する。
【0130】
本発明のある態様において、方法は、さらに、対象にAAV治療剤を投与することを含む。ある実施態様において、AAV治療は、組み換えAAVの投与を含む。当分野で知られるおよび/またはここに開示するあらゆる組み換えAAVが本発明の方法で使用され得る。ある実施態様において、AAV治療は、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAVおよびこれらの何れかの組み合わせからなる群から選択されるAAVの投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV1型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV2型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV3型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV4型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV5型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV6型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV7型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV8型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療はAAV9型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV10型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV11型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV12型の投与を含む。ある実施態様において、AAV治療は、AAV13型の投与を含む。
【0131】
ある態様において、本発明は明確な組織標的化能を有するAAV(例えば、組織トロピズム)に関する。ある実施態様において、バリアントAAVカプシドポリペプチドは、さらに、非バリアント親カプシドポリペプチドと比較して1以上のヒト幹細胞型における形質導入またはトロピズムの増加を示す。ある実施態様において、ヒト幹細胞型は、胚幹細胞、成人組織幹細胞(すなわち、体性幹細胞)、骨髄、前駆細胞細胞、誘導型多能性幹細胞および初期化幹細胞を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、成人幹細胞は、オルガノイド幹細胞(すなわち、体内の興味ある何れかの臓器または臓器系由来の幹細胞)であり得る。ある実施態様において、AAVの標的組織は、生殖腺、横隔膜、心臓、胃、肝臓、脾臓、膵臓または腎臓である。ある実施態様において、体内のAAV標的臓器は、皮膚、髪、爪、感覚受容体、汗腺、脂肪分泌腺、骨、筋肉、脳、脊髄、神経、下垂体、松果体、視床下部、甲状腺、副甲状腺、胸腺、副腎、膵臓(島組織)、心臓、血管、リンパ節、リンパ管、胸腺、脾臓、扁桃、鼻、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門管、歯、唾液腺、舌、肝臓、胆嚢、膵臓、盲腸、腎臓、輸尿管、膀胱、尿道、精巣、輸精管、尿道、前立腺、陰茎、陰嚢、卵巣、子宮、子宮(ファローピウス)管、膣、外陰および乳腺(乳房)を含むが、これらに限定されない。体内の臓器系は、外皮系、骨格系、筋系、神経系、内分泌系、心血管系、リンパ系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系および生殖器系を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、形質導入および/またはトロピズムは、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、65%、約70%%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%増加される。ある実施態様において、形質導入および/またはトロピズムは約5%~約80%、約10%~約70%、約20%~約60%または約30%~約60%増加される。
【0132】
ある実施態様において、AAV治療のためのAAVは、抗AAV抗体が結合するAAVとは異なる血清型である。例えば、ある実施態様において、AAV治療はAAV2型の投与を含み、抗AAV抗体は抗AAV9型抗体である。ある実施態様において、AAV治療のためのAAVは抗AAV抗体が結合するAAVと同じ血清型である。ある実施態様において、AAV治療は組み換えAAV9型の投与を含み、抗AAV抗体は抗AAV9型抗体である。ある実施態様において、AAV治療は組み換えAAV5型の投与を含み、抗AAV抗体は抗AAV5型抗体である。ある実施態様において、AAV治療は組み換えAAV2型の投与を含み、抗AAV抗体は抗AAV2型抗体である。
【0133】
II.A.1. 複製、カプシドおよびアセンブリーAAV遺伝子
AAVの一本鎖ゲノムは、3遺伝子s、rep(複製)、cap(カプシド)およびaap(アセンブリー)を含む。これら3遺伝子は、3個のプロモーター、オルタナティブ翻訳開始部位および選択的スプライシングの使用を介して少なくとも9個の遺伝子産物を生じさせる。
【0134】
rep遺伝子はウイルスゲノム複製およびパッケージングに必要な4個のタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52およびRep40)をコードする。
【0135】
cap遺伝子発現は、外部カプシド殻を形成するウイルスカプシドタンパク質(VP1;VP2;VP3)を生じさせ、これはウイルスゲノムを保護し、細胞結合および内在化に能動的に関与する。ウイルス外皮は二十面体構造に配置された60個のタンパク質からなると推定される。
【0136】
aap遺伝子は、cap遺伝子に重複する代替リーディングフレームでアセンブリー活性化タンパク質(AAP)をコードする。この核タンパク質は、カプシドアセンブリーのための足場機能を提供し、一部AAV血清型におけるVPタンパク質の核小体局在化に役割を有すると考えられる。
【0137】
ある実施態様において、rep、capまたはaap遺伝子の1以上は天然に存在する、例えばrep、capまたはapp遺伝子は、パルボウイルスrep、capまたはaap遺伝子の全てまたは一部を含む。ある実施態様において、rep、capまたはaap遺伝子の1以上は合成配列を含む。
【0138】
ある実施態様において、rep遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、cap遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、aap遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、repおよびcap遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、repおよびaap遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、capおよびaap遺伝子は合成配列を含む。ある実施態様において、rep、capおよびaap遺伝子は合成配列を含む。
【0139】
ある実施態様において、repはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびこれらの何れかの組み合わせから選択されるAAVゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV1ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV2ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV3ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV4ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV5ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV6ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV7ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV8ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV9ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV10ゲノム由来である。特定の実施態様において、repはAAV11ゲノム由来である。
【0140】
ある実施態様において、capはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびこれらの何れかの組み合わせから選択されるAAVゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV1ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV2ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV3ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV4ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV5ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV6ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV7ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV8ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV9ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV10ゲノム由来である。特定の実施態様において、capはAAV11ゲノム由来である。
【0141】
ある実施態様において、aapはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびこれらの何れかの組み合わせから選択されるAAVゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV1ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV2ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV3ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV4ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV5ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV6ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV7ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV8ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV9ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV10ゲノム由来である。特定の実施態様において、aapはAAV11ゲノム由来である。
【0142】
ここに記載する特定のAAVゲノムは、種々のAAVゲノム(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11からのゲノム)からの遺伝子を有し得ることは理解される。それ故に、ここに開示されるのは、rep、capまたはaapの何れかの可能な並べ替えを含むAAVである。
【0143】
ここに開示するある実施態様において、AAVは組み換えAAV(rAAV)である。ある実施態様において、rAAVはrep遺伝子、cap遺伝子およびaap遺伝子の1以上を欠く。ある実施態様において、rAAVはrep遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはcap遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはaap遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはrep遺伝子を欠き、かつcap遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはrep遺伝子を欠き、かつaap遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはcap遺伝子を欠き、かつaap遺伝子を欠く。ある実施態様において、rAAVはrep遺伝子、cap遺伝子およびaap遺伝子を欠く。
【0144】
ここに開示するある実施態様において、rAAVは、AAV遺伝子の1以上の発現が修飾されるように、rep遺伝子、cap遺伝子およびaap遺伝子の1以上が変異されるように修飾される。ある実施態様において、rep遺伝子が変異される。ある実施態様において、cap遺伝子が変異される。ある実施態様において、aap遺伝子が変異される。ある実施態様において、rep遺伝子およびcap遺伝子が変異される。ある実施態様において、rep遺伝子およびaap遺伝子が変異される。ある実施態様において、cap遺伝子およびaap遺伝子が変異される。ある実施態様において、cap遺伝子、rep遺伝子およびaap遺伝子が変異される。
【0145】
II.A.2. 末端逆位配列
ある実施態様において、AAVは第一ITR、例えば、5’ ITRおよび第二ITR、例えば、3’ ITRを含む。一般に、ITRは原核生物プラスミドからのパルボウイルス(例えば、AAV)DNA複製およびレスキューまたは切除に関与する(Samulski et al., 1983, 1987; Senapathy et al., 1984; Gottlieb and Muzyczka, 1988)。さらに、ITRは、AAVプロウイルス組込みおよびAAV DNAのビリオンへのパッケージングに必要な最小配列であると報告されている(McLaughlin et al., 1988; Samulski et al., 1989)。これらの要素は、パルボウイルスゲノムの効率的増殖に必須である。
【0146】
ある実施態様において、ITRは天然に存在するITRを含む、例えば、ITRはパルボウイルスITRの全てまたは一部を含む。ある実施態様において、ITRは合成配列を含む。ある実施態様において、第一ITRまたは第二ITRは合成配列を含む。他の実施態様において、第一ITRおよび第二ITRの各々は合成配列を含む。ある実施態様において、第一ITRまたは第二ITRは天然に存在する配列を含む。他の実施態様において、第一ITRおよび第二ITRの各々は天然に存在する配列を含む。
【0147】
ある実施態様において、ITRは、AAVゲノムからのITRを含む。ある実施態様において、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびこれらの何れかの組み合わせから選択されるAAVゲノムのITRである。特定の実施態様において、ITRはAAV2ゲノムのITRである。他の実施態様において、ITRは、5’および3’末端に1以上のAAVゲノム由来のITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。ある実施態様において、ITRは、同じゲノム、例えば、同じウイルスのゲノムまたは異なるゲノム、例えば、2以上の異なるAAVゲノムのゲノムに由来する。ある実施態様において、ITRは同じAAVゲノムに由来する。具体的実施態様において、本発明の核酸分子に存在する2個のITRは同じであり、特にAAV2 ITR、AAV5 ITRまたはAAV9 ITRであり得る。ある特定の実施態様において、第一ITRおよび第二ITRは同一である。
【0148】
ある実施態様において、ITRはヘアピンループ構造を形成する。ある実施態様において、第一ITRはヘアピン構造を形成する。他の実施態様において、第二ITRはヘアピン構造を形成する。なお他の実施態様において、第一ITRおよび第二ITR両者はヘアピン構造を形成する。
【0149】
ある実施態様において、ここに記載する核酸分子におけるITRは、転写活性化ITRである。転写活性化ITRは、少なくとも1個の転写活性のある要素の挿入により転写活性化されている野生型ITRの全てまたは一部を含み得る。種々のタイプの転写活性のある要素がこの状況における使用に適する。ある実施態様において、転写活性のある要素は構成的に転写活性のある要素である。構成的に転写活性のある要素は、継続しているレベルの遺伝子転写を提供し、導入遺伝子が継続的に発現されることが望まれるとき好ましい。他の実施態様において、転写活性のある要素は、誘導可能な転写活性のある要素である。誘導可能な転写活性のある要素は、一般にインデューサー(または誘導条件)非存在下では低活性を示し、インデューサー(または誘導条件へのスイッチ)の存在下で上方制御される。誘導可能な転写活性のある要素は、一定時間または一定場所でのみ発現が望まれるときまたは誘導剤を使用して発現レベルを力価測定することが望ましいときに、好ましいことがある。転写活性のある要素は組織特異的でもあり得る;すなわち、ある組織または細胞型でのみ活性を示す。
【0150】
転写活性のある要素を、多様な方法でITRに組み込み得る。ある実施態様において、転写活性のある要素を、ITRの任意の部分の5’またはITRの任意の部分の3’に組み込み得る。他の実施態様において、転写活性化ITRの転写活性のある要素は、2つのITR配列間にある。転写活性のある要素が、離されているべき2以上の要素の間にあるならば、これらの要素はITRの部分と交互であり得る。ある実施態様において、ITRのヘアピン構造は欠失し、転写要素の逆方向反復と置き換わる。この後者の配置は、構造における欠失部分を模倣するヘアピンを作る。複数のタンデムの転写活性のある要素も転写活性化ITRに存在でき、これらは隣接していても離されていてもよい。さらに、タンパク質結合部位(例えば、Rep結合部位)を転写活性化ITRの転写活性のある要素に導入し得る。転写活性のある要素は、RNAを形成するためのRNAポリメラーゼによるDNAの制御転写を可能にする何れかの配列を含んでよく、例えば、下記定義の転写活性のある要素を含み得る。
【0151】
転写活性化ITRは、核酸分子により運搬され、発現され得る導入遺伝子の長さを効率的に最大化する、比較的制限されたヌクレオチド配列長の核酸分子に、転写活性化およびITR機能両者を提供し得る。転写活性のある要素のITRへの取り込みは多様な方法で達成され得る。ITR配列と転写活性のある要素の配列要件の比較は、ITR内に該要素をコードする方法に関する洞察を提供し得る。例えば、転写活性を、転写活性のある要素の機能的要素を複製する特定の変化のITR配列への導入を介して、ITRに付加し得る。特定部位で特定のヌクレオチド配列を効率的に付加、欠失および/または変化させる多数の技術が当分野で存在する(例えば、Deng and Nickoloff (1992) Anal. Biochem. 200:81-88参照)。転写活性化ITRを作る他の方法は、ITRの所望の位置への制限部位の導入を含む。さらに、複数の転写活性化要素を、当分野で知られる方法を使用して、転写活性化ITRに組み込み得る。
【0152】
転写活性化ITRは、TATAボックス、GCボックス、CCAATボックス、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP制御要素)部位、ATF-1/CRE部位、APBβボックス、APBαボックス、CArGボックス、CCACボックスまたは当分野で知られる転写に関与するあらゆる他の要素などの1以上の転写活性のある要素を含むことにより産生され得ると説明できる。
【0153】
II.A.3. 目的の遺伝子および他の配列
本発明のある態様は、対象にAAV治療剤を投与する方法に関する。ある実施態様において、AAVは目的の遺伝子(GOI, Gene of Interest)を含む。ある実施態様において、目的の遺伝子は非AAV遺伝子である。ある実施態様において、GOIは哺乳動物遺伝子である。ある実施態様において、GOIはヒト遺伝子である。ある実施態様において、目的の遺伝子は生物学的に活性なポリペプチドをコードする。ある実施態様において、生物学的に活性なポリペプチドはサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、凝固因子、ホルモン、抗体、インスリンまたはこれらの何れかの組み合わせである。
【0154】
ある実施態様において、目的の遺伝子は、例えば、治療ポリペプチドまたはその治療有効部分をコードする。目的の遺伝子は、ポリペプチドをコードする何れかのポリヌクレオチドであり得る。発現される遺伝子は、使用者により望まれるあらゆる必要な制御要素(例えば、プロモーター、オペレーター)を伴うタンパク質をコードするDNAセグメントまたは転写によりリボザイムまたは抗感覚分子などのあるRNA含有分子の全てまたは一部が産生される非コード化DNAセグメントであり得る。
【0155】
ある実施態様において、AAVは1を超えるGOIを含む。1を超えるGOIを有するAAVにおいて、ある実施態様は、一つのプロモーターからIRESまたは2Aなどの要素を共発現させるためにこれらの要素を含む。ある実施態様において、AAVは、IRES要素により離された2個の目的の遺伝子を含む。ある実施態様において、AAVは、2A要素により離された2個の目的の遺伝子を含む。ある実施態様において、AAVは、目的の遺伝子間のIRES要素により離された、3個の目的の遺伝子を含む(例えば、GOI-IRES-GOI-IRES-GOI)。ある実施態様において、AAVは、目的の遺伝子間の2A要素により離された、3個の目的の遺伝子を含む。
【0156】
ある実施態様において、AAVは制御配列を含む。ある実施態様において、AAVは非コード化制御DNAを含む。ある実施態様において、AAVゲノムは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を含む。用語「制御配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような制御配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載される。制御配列の選択を含むAAVの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの因子により得ることは、当業者に認識される。ある実施態様において、AAVゲノムは、mRNAスプライスドナー/スプライスアクセプター部位を含む。哺乳動物宿主細胞での発現のための好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40 (SV40)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素を含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス制御配列が使用され得る。なおさらに、制御要素は、SV40早期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1の長い末端反復からの配列を含むSRaプロモーター系などの種々の供給源からの配列からなる(Takebe, Y. et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。ある実施態様において、制御配列は組織特異的プロモーターを含む。ある実施態様において、組織特異的プロモーターは、心臓、肝臓、肺、眼、神経系、リンパ系、筋肉および幹細胞からなる群から選択される組織における目的の遺伝子の発現を誘導する。
【0157】
II.B. ELISA
本発明のある態様は、ELISAを使用して生物学的サンプルにおける抗AAV抗体の力価を検出および/または測定する方法に関する。当分野で知られるあらゆるELISAをここに記載する方法において使用できる。ある実施態様において、ELISAは集団ELISAである。ある実施態様において、ELISAは発光ELISAである。ある実施態様において、ELISAは化学発光ELISAである。
【0158】
本発明のある態様において、ELISAは、表面、例えば、表プレート表面への標的AAVの結合を含む。ある実施態様において、次いで、ELISAは、表面に結合したAAVと生物学的サンプルの接触を含む。ある実施態様において、次いで、ELISAは、二次抗体の適用を含む。ある実施態様において、二次抗体は酵素に結合される。ある実施態様において、次いで、ELISAは、は基質の適用を含み、ここで、基質は二次抗体に結合した酵素に特異的である。ある実施態様において、ELISAは、基質上で作用する酵素の産物の測定を含む。
【0159】
ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、AAV1型、AAV2型、AAV3型、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型またはこれらの何れかの組み合わせを含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、AAV2型を含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、rAAV2型を含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、AAV5型を含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、rAAV5型を含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、AAV9型を含む。ある実施態様において、表面に結合する標的AAVは、rAAV9型を含む。
【0160】
ある実施態様において、生物学的サンプルは、ELISAの表面に適用される。生物学的サンプルは、対象から得た何らかのサンプルであってよく、ここで、該サンプルは1以上の抗AAV抗体を含むかまたは含むことが考えられる。ある実施態様において、生物学的サンプルは血液サンプルを含む。ある実施態様において、生物学的サンプルは血漿サンプルを含む。ある実施態様において、生物学的サンプルは血清サンプルを含む。
【0161】
生物学的サンプルを、当分野で知られる何れかの方法により取得および/または獲得できる。ある実施態様において、生物学的サンプルは、対象から直接、例えば、対象の循環系から直接サンプルを採取することにより得る。他の実施態様において、生物学的サンプルを試験室から得て、ここで、該試験室またはその前任者は、対象から生物学的サンプルを予め直接得ている。ある実施態様において、生物学的サンプルは新鮮であり、例えば、サンプルは凍結されておらずまたは長期間保存されていない。他の実施態様において、生物学的サンプルは、37℃未満の温度で保存されている。
【0162】
ある実施態様において、生物学的サンプルをELISAの前に希釈する。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:2、少なくとも約1:3、少なくとも約1:4、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:100、少なくとも約1:150、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:1000、少なくとも約1:2000、少なくとも約1:3000、少なくとも約1:4000、少なくとも約1:5000、少なくとも約1:10,000、少なくとも約1:20,000、少なくとも約1:30,000、少なくとも約1:40,000、少なくとも約1:50,000または少なくとも約1:100,000に希釈される。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:4に希釈される。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:40希釈にされる。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:400に希釈される。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:4000に希釈される。ある実施態様において、生物学的サンプルは、少なくとも約1:40,000に希釈される。これらの状況で一般に使用され、当分野で知られるあらゆる希釈剤が使用される。
【0163】
ある実施態様において、生物学的サンプルは、ELISAの表面への適用前に精製される。
【0164】
ある実施態様において、二次抗体は、抗ヒト抗体を含む。ある実施態様において、二次抗体は、抗ヒトλ抗体を含む。ある実施態様において、二次抗体は、抗ヒトκ抗体を含む。ある実施態様において、二次抗体は、抗ヒトκ抗体と抗ヒトλ抗体の組み合わせを含む。ある実施態様において、二次抗体はヤギ抗ヒトλ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はウサギ抗ヒトκ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はウサギ抗ヒトλ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はマウス抗ヒトκ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はヤギ抗ヒトλ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はマウス抗ヒトκ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はラット抗ヒトλ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はラット抗ヒトκ抗体である。
【0165】
ある実施態様において、二次抗体は酵素と結合される。酵素はELISAに当分野で使用されるあらゆる酵素であり得る。ある実施態様において、二次抗体は、アルカリホスファターゼ(AP)に結合される。ある実施態様において、二次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合される。ある実施態様において、二次抗体はHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトλ抗体である。ある実施態様において、二次抗体はHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトκ抗体である。ある実施態様において、二次抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗ヒトλ抗体とHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトκ抗体の組み合わせを含む。
【0166】
本発明のある態様は、ELISAを使用して、低力価の抗AAV抗体を有する対象を同定する方法に関する。ある実施態様において、低力価の抗AAV抗体は約800未満~約40,000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約50,000未満、約45,000未満、約40,000未満、約35,000未満、約30,000未満、約25,000未満、約20,000未満、約15,000未満、約10,000未満、約9000未満、約8000未満、約7000未満、約6000未満、約5000未満、約4000未満、約3000未満、約2000未満、約1000未満、約900未満、約800未満、約700未満、約600未満または約500未満である。
【0167】
ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約40,000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約10,000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約4000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約1000未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約900未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約850未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約800未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約750未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約700未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約650未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約600未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約550未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約500未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約400未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約300未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約200未満である。ある実施態様において、抗AAV抗体力価は、化学発光ELISAにより測定して、約100未満である。
【0168】
ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約100,000未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約100,000未満、約50,000未満、約45,000未満、約40,000未満、約35,000未満、約30,000未満、約25,000未満、約20,000未満、約15,000未満、約10,000未満、約9000未満、約8000未満、約7000未満、約6000未満、約5000未満、約4000未満、約3000未満、約2000未満、約1000未満、約950未満、約900未満、約850未満、約800未満、約750未満、約700未満、約650未満、約600未満、約5500未満または約500未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。
【0169】
ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約10,000未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約4000未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約1000未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約900未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約850未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約800未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約750未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、生物学的サンプルが化学発光ELISAで約700未満の化学発光単位を発するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約650未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約600未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約550未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。ある実施態様において、対象は、化学発光ELISAで生物学的サンプルが約500未満の化学発光単位を放出するならば、低力価の抗AAV抗体を有するとして同定される。
【0170】
ある実施態様において、低力価の抗AAV抗体は低力価の中和抗AAV抗体と相関する。
【0171】
本発明を、さらに次の実施例により説明し、これはさらなる限定として解釈すべきではない。本明細書をとおして引用する全引用文献は、引用により明示的に本明細書に包含させる。
【実施例0172】
実施例1
本試験は、患者除外目的のために細胞ベースのアッセイを総抗体アッセイに置き換えることを目的として、ELISAを使用して測定した抗AAV抗体の総力価と標準の細胞ベースのアッセイを使用して測定した中和抗体の力価の間に相関性があるかを決定することを意図とする。
【0173】
抗AAV9抗体のための高度に感受性の化学発光プレートベースのELISA検出法を開発した。ELISAシグナルの特異性を評価するための総抗体スクリーニング方法に確認層(confirmatory tier)も組み込んだ。このアッセイを使用して、100を超える心疾患患者血清サンプルを総AAV抗体について評価した。同じサンプルを抗体がAAV結合および細胞への侵入を阻止する能力を測定する、典型的細胞ベースのレポーターアッセイにおいて中和抗体についても評価した。
【0174】
結果は、AAV血清型9での総抗体集団と中和抗体集団の強い相関を示唆する。これらの結果に基づき、AAV9ベースの遺伝子治療を受ける患者のスクリーニングおよび選択のための総抗体ELISAアッセイの使用が提案される。
【0175】
材料および方法
材料
血清サンプルを、スコットランド、ダンディー大学で同意した患者から採取した。対象は、HFrEF(駆出率が低下した心不全)またはHFpEF(駆出率が保持された心不全)を有する心不全患者であった。血清サンプルをBMSとダンディー大学間で締結された材料移送契約(MTA)により調達し、使用するまでBMS Biorepositoryで-80℃において保管した。
【0176】
酵素結合免疫吸着測定法
rAAV9S100A1(AMT-120; uniQure Amsterdam)またはrAAV9HLuc(AAV9-CMV-ルシフェラーゼ924;uniQure Amsterdam)保存品を炭酸-重炭酸緩衝液(SRE0034; SIGMA)で2.5~5.1×1011力価粒子/mL(約4~8μg/mL総タンパク質濃度)に希釈した。100μLをELISプレートにコートし、プレートをマイクロプレートシーラー(WHA77040001; SIGMA)でシールし、4℃冷蔵庫で16~18時間インキュベートして、プレートのポリスチレン表面へAAV9を受動吸着させた。比色分析ELISAには、Nunc 96ウェル透明ポリスチレンプレート(Thermo Fisher Roskilde, Denmark)を使用した。化学発光ELISAには、Corning 96ウェル黒色ポリスチレンプレート(Corning Inc. NY)を使用した。翌日、プレートを300μLのPBS/0.05%Tween 20緩衝液(Chata Biosystems)を各回使用して、3回自動化プレート洗浄機(Biotek ELx405, Winooski VT)で洗浄した。300μLのSuper遮断 T20(SBT20)緩衝液(ThermoScientific)をプレートに加えて、さらなる工程における非特異的タンパク質検出を遮断した。プレートを密封し、22℃インキュベーターで2.5~3時間、振盪せずにインキュベートした。
【0177】
ADK9抗rAAV9モノクローナル抗体対照(651162; Progen)およびヒト血清希釈をポリプロピレンプレート(951031861; Eppendorf)で、SBT20緩衝液を希釈剤として使用して調製した。ADK9対照抗体を図面の説明文に示すとおり、1:50、1:100または1:1000希釈で使用した。血清サンプルを、図に示す種々のレベルに希釈した。希釈物を使用するまで4℃で保管した。競合ELISAについて、ADK9対照および血清希釈を意図する濃度の2倍で調製し、等量を8μg/mLのrAAV9(競合Ab)または等体積のSBT20緩衝液(非競合対照)と混合し、使用前ポリプロピレンプレートで22℃において2時間インキュベートした。プレートを先に記載のとおり洗浄し、100μLの希釈rAAV9 ADK9対照抗体またはヒト血清をプレートに加えた。バックグラウンド対照について、100μLのSBT20緩衝液を対照ウェルに加えた。競合ELISAで、100μLの競合または非競合対照rAAV9 ADK9抗体およびヒト血清をプレートに加えた。
【0178】
プレートを密封し、1.5~2時間、22℃インキュベーターで、約200~250rpmのマイクロプレートシェーカーでインキュベートした。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(62-6720; Thermo Scientific)検出抗体を希釈1,000倍に希釈し、HRPコンジュゲートヤギ抗ヒトκ(2060-05; SouthernBiotech)およびHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトλ(2070-05; Southern Biotech)検出抗体をSBT20緩衝液で10,000倍希釈した。希釈物を使用するまで4℃で保管した。プレートを再び洗浄し、100μLの希釈検出抗体を、バックグラウンド対照ウェルを含む適当なウェルに加え、プレートを密封し、45分~1.5時間、22℃でシェーカー上にてインキュベートした。プレートを再び洗浄し、100μLのTMB基質(T5569; SIGMA)を比色分析ELISプレートに加え、または100μLの化学発光基質(37069; Thermo Scientific)を化学発光ELISプレートに加えた。100μLの停止試薬(S5814; SIGMA)を比色分析ELISプレートに加え、吸光度を450nMでSpectramax M5eプレートリーダー(Molecular Device, Sunnyvale, CA)で読んだ。化学発光ELISプレートを同じプレートリーダーで、500ミリ秒積分時間設定のルミネセンスで読んだ。
【0179】
ELISA計算
ELISAのシグナル対ノイズ(S/N)を、抗AAV9 ADK9抗体または血清インキュベートウェルで得た平均化学発光または吸光度単位(比色分析ELISA)を、バックグラウンド対照ウェル(SBT20緩衝液インキュベーションのみ)で得た平均化学発光または吸光度単位で除することにより計算した。ADK9のS/Nは、ヤギ抗マウス検出抗体で得た単位を必要とした。ヒト血清のS/Nは、ヤギ抗ヒトκおよび抗ヒトλ検出抗体で得た単位を必要とした。
【0180】
rAAV9と溶液で競合したとき(競合ELISA)のELISプレートにコートされたrAAV9に対する抗体結合のパーセント阻害を、次式を使用して計算した。100×{(平均非競合化学発光単位-平均競合化学発光単位)/平均非競合化学発光単位}。
【0181】
グラフ作成および統計分析
全グラフを、GraphPad Prism v 7.03ソフトウェアを使用して作成した。総ELISA抗体および中和抗体の順位ベースのスピアマンの順位相関分析も同じソフトウェアを使用して実施した。両側P値および95%信頼区間を相関分析で計算した。
【0182】
中和抗体アッセイ
Lec-2細胞(CRL 1736; ATCC)を、一夜、96ウェルプレートで、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Catalog #15140122; ThermoFisher Scientific)および2mM L-グルタミン(Catalog #25030081; ThermoFisher Scientific)を添加した10%FBS(Catalog #10438; Gibco)含有MEM培地(M8042; Millipore SIGMA)で、37℃/5%COで、20,000 Lec-2細胞/ウェル密度で培養した。翌日rAAV9HLucストックをFBS不含MEM培地で22,500MOIまで希釈し、FBS不含MEM培地で20倍希釈したヒト血清サンプルと、室温で1時間インキュベートした。陰性対照は、熱不活性化FBSのみと混合したrAAVHLucからなった。培養培地をLec-2細胞から吸引し、100μLのAAV9および血清混合物または対照を細胞に加え、30分間、37℃/5%COでインキュベートした。培地を10%FBS-DMEMに置き換え、細胞を16~20時間、37℃/5%COでインキュベートした。培地の除去および100μL 1×DPBS(Catalog #14190094; Invitrogen)洗浄後、細胞を100μLのGLO溶解緩衝液(E2661: Promega)を使用して溶解し、室温で5分間インキュベートした。100μL ルシフェラーゼ基質(E6120; Promega)を製造業者の指示に従い調製し、溶解細胞に加え、3分間インキュベートした。ルミネセンスシグナルをプレートリーダー(Enspire; Perkin Elmer)を使用して測定した。血清サンプルの中和活性を、陰性FBS対照のパーセンテージ(%FBS)として示した。
【0183】
結果
【0184】
マウスモノクローナル抗体対照を使用する総抗AAV9抗体についての化学発光と比色分析ELISA検出法の比較
比色分析ELISAは、抗AAV Abの検出に以前使用されている。タンパク質特異的抗体全般の検出における化学発光ELISAの優れた感受性から、抗AAV抗体検出について2つの方法を比較した。透明または黒色ポリスチレンプレートを、ルシフェラーゼ(rAAV9-HLuc)またはS100A1(rAAV9-S100A1)の導入遺伝子を含むAAV9カプシドで、炭酸緩衝液中8μg/mL濃度で一夜コートし、方法セクションに記載するADK9、マウスモノクローナル抗AAV9抗体で検出した。rAAV9-HLuc粒子は、細胞ベースの中和抗体アッセイで使用するホタルルシフェラーゼレポーター構築物を含む。両AAV9粒子は、同一カプシドを有するよう構築しているが、ルシフェラーゼカプシドをカプシド類似性を証明するためおよび総および中和抗体データセットの相関的照合を可能にするために、ELISAに含めた。表1に示すとおり、1:50および1:100 ADK9希釈で、およびルシフェラーゼおよび導入遺伝子含有構築物両者で、化学発光ELISAは、比色分析ELISAと比較してシグナル対ノイズ(S/N)比の21~38倍改善を示した。rAAV9-S100A1およびrAAV9-ルシフェラーゼ検出に差異はなく、AAV9カプシドが抗体反応性の点で類似していることを示した。
【0185】
【表1】



S/N=シグナル対ノイズ比
【0186】
ヒト血清サンプルにおける総抗AAV9抗体検出についての化学発光ELISAの評価
上でマウスモノクローナル対照を使用して決定した条件が、ヒト抗AAV9抗体検出に適用できることを確認するために、2種のELISA検出法を商業的に得た正常ヒト血清(NHS)サンプルを使用して再評価した。プレートを、コーティング最適化実験(データは示していない)に従い4μg/mLのrAAV9S100A1でコートした。8つの異なるロットのNHSサンプルの10倍希釈を、SBT20緩衝液を使用して4倍希釈から出発して調製した。希釈物の一部を二等分し、HRPコンジュゲート抗κおよび抗λ検出抗体を使用する化学発光および比色分析検出法で試験した。化学発光法において、4倍~4000倍希釈範囲で直線性が観察され(図1A)、一方比色分析法において、400倍希釈範囲まで直線性が検出された(図1B)。故に、化学発光法は少なくとも1ログの動的範囲の改善を示す。シグナル対ノイズ比(S/N)を、方法セクションに記載のとおり1:4、1:40および1:400の血清希釈で、全3希釈が両方法でほぼ直線範囲に入ったため計算した。代表的コンパレーターとして、1:400倍希釈で計算したS/Nを示す(図2)。全試験サンプルで、S/Nは比色分析法と比較して化学発光法で高かった(図2)。CL方法で17/21サンプルがS/N>4.0を示し、比色分析法で1/21サンプルのみ、S/N>4.0を示した。1:4および1:400倍血清希釈でのS/N比較を図11Aおよび図11Bに示す。
【0187】
化学発光ELISA使用の実行可能性をさらに分析するため、比色分析ELISAで4倍血清希釈および化学発光ELISAで400倍血清希釈から取得したデータを使用して、順位ベースのノンパラメトリック相関分析を実施した。血清希釈を、各方法で直線範囲から選択した(図1A~1B)。2方法に有意な相関関係が観察され(図3)、全試験サンプルで比色分析法を超える化学発光ELISA検出法の感受性の相関的増加が示された。
【0188】
化学発光ELISAにおける抗rAAV9抗体結合特異性の確認
特異性層を、プレートに直接結合する非特異的血清要素ではなく、AAV9特異的抗体が、検出されたことを確認するため、化学発光ELISAに組み込んだ。正常ヒト血清サンプルを、示す濃度の2倍で調製し、ポリプロピレンプレート中、8μg/mL rAAV9S100A1(4μg/mL最終濃度)で2時間プレインキュベートし、その後血清サンプルを、洗浄し、遮断したrAAV9S100A1被覆プレートに加えた(図4A~4C)。溶液中の競合AAV9カプシドに結合したままの抗体はAAV9S100A1被覆プレートでのインキュベーション後のELISAで洗い流されたと予測された。プレート被覆AAV9カプシドの競合レベルまたは抗体結合特異性を、材料および方法に記載のとおり計算し、ELISAシグナルのパーセント阻害として示した。この方法を使用して、4個の試験血清サンプルは競合ELISAで50%以上の阻害を示した(図4A~4B)。マウスADK9モノクローナル抗体対照は96%の阻害を示し、競合パラメータが阻害および特異性決定のほぼ最高レベルで最適であることを示した。
【0189】
化学発光ELISA法の再現性
12の異なるロットの正常ヒト血清を、方法の再現性を確認するために異なる日に2回、各回、別の分析者により、化学発光ELISA法で試験した(図5A~5B)。直線範囲の2つの血清希釈物(図1A~1B参照)を本実験に選択した。結果は両試験希釈物での分析者間の良好な再現性を示し、実験間精度は30%未満であった(図5A~5B)。
【0190】
導入遺伝子とルシフェラーゼ含有構築物の互換性
最終的目的は、心疾患集団からの血清サンプルのプレスクリーニングにおいて抗rAAV9総抗体と中和抗体の相関があるかの決定であった。しかしながら、総抗体アッセイは、S100A1導入遺伝子を封入するrAAV9カプシドを使用し、一方中和抗体アッセイは、ルシフェラーゼレポーターを封入するrAAV9カプシドを使用した。2つのデータセット間で見られる何らかの非相関が、各アッセイで使用したAAV9カプシド材料の差異によるものではないことを確認するために、両構築物を陽性対照として3つの異なるロットの正常ヒト血清を使用する総抗体ELISAでまず試験した。等量のルシフェラーゼおよび導入遺伝子含有rAAV9カプシドをELISAプレートにコートし、3つの異なるロットの正常ヒト血清サンプルの4希釈物を遮断および洗浄ELISプレートのプローブに使用した。両カプシドは、全3個の血清サンプルおよび全試験希釈でプローブしたとき、類似シグナルを示した(図6A~6C)。したがって、総および中和抗体アッセイデータ間で可能性のある相関は、2カプシドタイプ間の抗体結合エピトープにおける予期しない変動によるものではない。
【0191】
心疾患血清サンプルにおける総および中和抗rAAV9抗体の相関分析
2つのアッセイ、すなわち、細胞ベースの中和抗体および総抗体ELISAで使用したカプシドが免疫反応性の点で類似することが証明され、心疾患患者からの100血清サンプルのパネルで中和抗体データと総抗体データの相関の評価を勧めた。細胞ベースのアッセイについて、血清サンプルを20倍希釈し、rAAV9-HLucカプシドと1時間インキュベートし、培養中のLec-2細胞に加えた。対照はHLucカプシド単独またはマウスモノクローナル抗体ADK9からなった。次いで、細胞を洗浄し、ルシフェラーゼ基質を加え、アッセイを材料および方法に記載のとおり完了させた。
【0192】
抗体の中和能を、FBS陰性対照(抗rAAV9中和抗体不含)存在下観察されたrAAV9HLucの形質導入のパーセンテージとして表した。陰性対照とのrAAV9HLucのインキュベーションが、カプシドの最大細胞侵入と続くルシフェラーゼ発現をもたらすと予測されるため、血清サンプルの何れかの存在下のルシフェラーゼ発現レベル減少は、サンプルにおける中和抗体の存在を示す。
【0193】
同じサンプルを400倍希釈し(アッセイで直線範囲)、総抗体について材料および方法に記載のとおりELISAで評価した。ELISAデータを生データ単位に基づきプロットした。2つのデータセット間の順位ベースのスピアマンの順位相関分析は、中和および総抗体の有意な負の相関(r-0.8286、p<0.0001)を示した(図7、p値<0.0001)。50%の、任意のしかし広く用いられる中和カットオフ基準は、100サンプル中65を中和抗体陽性と同定した。総抗体ELISAで、全中和抗体陽性対象は>700化学発光単位を示した(図7)。総抗体アッセイにおける700化学発光単位カットオフは、上部右四分円に示す7つのさらなる中和抗体陰性個体も捕捉した(図7)。
【0194】
確認または競合ELISAも、材料および方法に記載のとおり非競合ELISAと並行して全100対象で実施した。中和抗体および確認ELISA抗体データセット間の順位付けされた相関分析も、有意な負の相関を示した(r-0.7193、p<0.0001)。65中和抗体陽性対象中、7個体が競合総抗体ELISAで30%以下の阻害レベルの抗体を示した(図8、下部左四分円)。7つのさらなる中和抗体陰性対象は、30%の任意のカットオフでELISAにおいて特異的抗体を有するとして同定された(図8、上部右四分円)。
【0195】
抗AAV9型抗体で得られたのに類似する結果が、抗AAV2型抗体の結果で観察された(図9)。
【0196】
全体的統計は、細胞ベースの中和アッセイおよび確認総抗体Eで除外される患者が近似であることを示す(65対66)(表2)。総抗体ELISAで、中和抗体アッセイおよび確認ELISAに対して、それぞれ、7または6のさらなる対象が、除外され得る。3つのデータセットを、患者スクリーニングおよび除外に3アッセイの何れか一つを使用する適切性を決定するために、重複について精査した。これらの評価は、中和抗体アッセイで≦50%、スクリーニングまたは総抗体ELISAで≧700単位および確認抗体ELISAで≧30%の任意のカットオフに基づいた。中和アッセイのみ基準は、ELISAで抗体の陽性が確認されなかった6対象の除外を伴った(図10)。総抗体ELISAのみに基づく患者の選択は、中和抗体集団の一部ではない(中和抗体偽陽性)7対象およびELISAで陽性が確認されない11対象を除外する。確認総抗体ELISAに基づく患者の選択は、中和抗体アッセイで陽性である6対象を含む。
【表2】


【0197】
AAV2に関する相関分析を、AAV2カプシドをELISAおよび中和抗体アッセイで使用し、抗AAV9抗体ではなく抗AAV2抗体を検出した以外、ここに記載するAAV9に関する相関分析を実施したのと同じ方法(方法および図7参照)で、36個体心疾患患者からの血清を使用して実施した(図9参照)。
【0198】
HRPコンジュゲート抗κおよび抗λ抗体によるrAAV9抗体の検出を、HRPコンジュゲート抗IgG抗体による検出と比較した。rAAV9S100A1を4μg/mLで被覆し、ELISAを、示す正常ヒト血清ロットの1:400希釈倍率を使用して、材料および方法に記載のとおり実施した。1:10,000希釈のペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(A6029 SIGMA)を使用した。
【0199】
考察
ヒトは、野生型AAVに幼少期に暴露され、抗AAV抗体を獲得するようになっている。血清型1~9由来のAAVベクターは、非臨床および臨床試験で最も一般に使用される血清型である。このような既存の抗AAV抗体は、多様な実験成績により証明されるとおり、遺伝子療法のための組み換えアデノウイルのインビボ適用に限界を提起する。例えば、凝固第IX因子導入遺伝子をコードするAAV8ベクター投与前の精製ヒトIgGでの受動免疫化の非臨床モデルは、肝臓の形質導入の遮断を示した(Mingozzi et al., 2012)。マウスまたは非ヒト霊長類へのAAV血清型の連続投与を含む他の研究において、1血清型に応答して産生された中和抗体は、同じ血清型による形質導入を完全に遮断したが、異なる血清型による形質導入は阻害しなかった(Majowicz et. al., 2014)。抗AAV2中和抗体の相対力価の差異は、ヒト臨床治験における血友病B導入遺伝子形質導入の予防に貢献する可能性があると報告された(Manno et. al., 2006)。これら観察に鑑みて、既存のAAV抗体を有する臨床治験対象および患者の同定および除外は、導入遺伝子の形質導入率を増加させ得る。
【0200】
一般に、細胞表面受容体へのウイルス結合と、続く宿主細胞への侵入を阻止するAAV中和抗体が、インビトロ細胞ベースのアッセイおよび非標準化アッセイ条件および同定基準を使用して患者血清サンプルで検出される。中和抗体アッセイは、通常アッセイ読み出しを可能にするために導入遺伝子の代わりにレポーター遺伝子(通常ルシフェラーゼ)を含むAAVウイルスカプシドを用いる。細胞ベースのアッセイは大きな労働力を要し、処理量が少なくおよび変動しやすい。標的とする内因性宿主細胞受容体に類する適切な受容体を発現する細胞株の選択を含む、相当量のアッセイ最適化が各AAV血清型について検討下にある。比較として、ELISAは処理量が高く、低変動性であり、開発、自動化および検証が容易である。さらに、AAV遺伝子治療剤は、ELISAにおけるプレートコーティングおよび抗AAV抗体の検出のための試薬として直接使用され得る。細胞ベースの中和抗体とELISAで検出される総または結合抗体で相関が証明されたら、後者を既存のAAV抗体を有する個体の同定と臨床治験および薬物投与からの除外に使用できる。
【0201】
患者集団における中和および総両者の既存の抗体の出現頻度の理解と、次いでもしあるならば細胞ベースの中和データと総抗体データの間の強い相関を確立することを意図した。この目的に向けた第一段階として、抗AAV9抗体検出のための高度に感受性のおよび特異的化学発光ELISAの開発を実施した。精製ヒト抗AAV抗体陽性対照がないため、初期アッセイ開発ならびにウイルス粒子コーティング濃度、コーティング緩衝液(PBS対CaCO)、遮断緩衝液およびPBS-Tweenでの洗浄サイクル数などのパラメータを含む最適化に市販マウスモノクローナルAAV9抗体(ADK9)を使用した(データは示していない)。
【0202】
その後、正常健常ヒトドナーからのいくつかの市販血清サンプルを使用して、広い動的アッセイ範囲および直線性(約4ログの血清希釈)、再現性および精度を証明した。確認または特異性層を、血清サンプルを溶液でrAAV9とプレインキュベートし、その後プレート結合rAAV9を加えることによりアッセイに組み込んだ。確認アッセイ条件は、マウスモノクローナルADK9陽性対照の高レベルのELISAシグナル阻害(96%)により示されるとおり最適であった。種々のレベルの阻害が種々の血清サンプルロットで見られ(50~72%範囲)、アッセイ条件が種々の特異性の抗体差別化にも最適であることが示唆された。抗ヒトIgG検出抗体を使用する早期試験が、12の正常ヒト血清サンプル中少なくとも5つが抗ヒトκおよびλ検出抗体と比較して相対的に低いまたはバックグラウンドシグナル未満である結果となったため、CLELISAで汎アイソタイプ抗ヒトκおよびλ定常領域検出抗体を使用したことは注意すべきである(図12)。
【0203】
遺伝子治療試験がAAV抗体検出のために慣習的に比色分析ELISAを用いるため、2方法(化学発光対比色分析)間の一対一比較の実施が重要であると考えた。シグナル対ノイズ比(S/N)の観点で、化学発光(CL)ELISAは結果セクションに記載するとおり明らかに比色分析ELISAより優れた。CLタンパク質ELISAは抗体検出に使用されているが、知る限り、これが抗AAV抗体検出にCLELISAを適用した初めての報告である。また抗AAV抗体検出のための確認または特異性層についても初めての報告である。
【0204】
心疾患を有する患者からの100血清サンプルを、総抗体データセットと細胞ベースの中和抗体データを相関させる目的で、既存のAAV9抗体について分析した。相関分析前に、2つのカプシドが正常ヒト血清サンプルまたはマウスADK9モノクローナル対照でプローブしたとき、抗体反応性について互いに類似することを確認した。100心疾患患者血清サンプルの総抗体および中和抗体データの評価は、総抗体と中和抗体データセットの間の有意な負の相関を示し、CLELISAで検出された総抗体の大部分が中和性質を有したことが示された。中和抗体データと確認ELISAデータ間の類似の相関分析はこれより低いが、なお強い有意レベルの負の相関をもたらした。本試験で観察された強い相関のため、総および/または確認抗体ELISAは、rAAV9ベースの遺伝子治療のための対象のスクリーニングおよび除外のための細胞ベースの中和抗体アッセイの価値ある代替である。
【0205】
数個体の血清サンプルの重複における差にかかわらず、総および確認抗体ELISAは、中和抗体陽性集団の大部分を捕捉するため、細胞ベースの中和抗体アッセイの容易かつ速い代替である。さらに、CLELISAは、受容体結合および侵入と無関係の機構により中和し得る抗体を同定するさらなる利点を有する。両形態(中和抗体および確認総抗体)で抗AAV9抗体陽性と試験される個体の高いパーセンテージが推定されかつ研究員が多数の患者サンプルをスクリーニングすることが予測されるため、速度および低変動性により得られる利点は大きい。アッセイの阻害部分と競合する十分な薬物(導入遺伝子をカプセル封入するウイルスカプシド)が得られない場合、≧700単位のカットオフでの総抗体アッセイは、対象スクリーニングおよび除外の価値ある代替である。総抗体ELISAを、精製ヒトIgGを使用する相対的定量を組み込むためにさらに開発でき、カットオフを体積抗体レベルあたりの重量に基づき確立し得る。
【0206】
過去に、ELISAで検出された抗体力価(結合抗体)と細胞ベースのアッセイで測定された中和抗体力価の間に相関があるか否かに取り組んだいくつかの試験があったが、細胞ベースのアッセイをELISA方法に置き換える教示はどこにもない。さらに、これらの試験は、ELISAにおける検出の比色分析法を使用し、AAV1、AAV2、AAV9および他のAAV血清型に対する抗体を検出するためにβ-ガラクトシダーゼ、AAV複製タンパク質およびルシフェラーゼを含む多様なレポーターを細胞ベースの中和アッセイで使用した。これらの試験の2つは、AAV2抗体について2アッセイ間で相関が低いことを示した(Chirmule et al., 1999; Erles et al., 1999)。51の健常ドナー血清におけるAAV1力価を試験した一つの研究は、その特定の状況で、ELISAにおけるIgG力価と中和力価の間に相関があるはずであることを示したが(Veron et al., 2012)、もう一つの研究は、100の健常ヒトドナーサンプルでAAV9ELISAと中和抗体力価の相関を評価し、大部分の抗AAV9 IgG力価が非中和性質であることを報告した(Thwaite et al., 2015)。我々は、AAV9およびAAV2について総ELISA抗体と中和抗体の強い相関を証明した;CL方法の感受性増加およびELISAで汎アイソタイプ抗ヒトκおよびλ定常領域検出抗体を使用した事実が助けとなった可能性がある。方法開発初期は抗ヒトIgG検出抗体を試験し、12の正常ヒト血清サンプル中少なくとも5つが、抗ヒトκおよびλ検出抗体と比較して比較的低いまたはバックグラウンドシグナル未満であることを示した(図12)。
【0207】
要約すると、抗AAV9抗体の検出のための高度に感受性の化学発光ELISAが開発され、AAV9中和力価との有意な相関関係が証明された。これにより、FDA承認AAV9モダリティでの臨床治験および患者処置における、患者スクリーニングおよび除外のために、細胞ベースの中和抗体アッセイの代わりにAAV9ELISAが使用可能となる。またAAV9ELISAに確認層を組み込み、これはスクリーニングのための第二層を容易にする。これは、特異性も評価する化学発光法でのAAV抗体検出について初めての報告である。力価測定と組み合わせて、このアッセイは、3層スクリーニング、確認および力価アプローチのAAV9ベースの遺伝子治療に対する応答により産生された抗薬物抗体(ADA)同定にも使用でき、ここでカットオフは未処置対象に基づき設定される。
【0208】
具体的実施態様の前の記載は本発明の一般的性質を十分に確認し、他者が、当分野の技術内の知識を適用することにより、過度の実験なくおよび本発明の一般的概念から逸脱することなく、種々の適用のために具体的実施態様を容易に修飾および/または適用させることができる。それ故に、このような適用および修飾は、ここに提示する教示および指針に基づき、開示する実施態様の等価物の意味および範囲内であることが意図される。ここでの表現法および用語法は、本明細書の表現法および用語法が全体的教示および指針に鑑みて当業者により解釈されるように記載の目的であり、限定的ではないことは理解される。
【0209】
本発明の他の実施態様は、明細書の考察および本開示の実施により当業者には明らかである。明細書および実施例は単なる例として解釈されるべきであり、本開示の真の範囲および精神は次の特許請求の範囲により示されることが意図される。
【0210】
ここに引用する全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許および特許出願が具体的におよび個々に引用によりその全体を本明細書に包含させると開示したのと同程度に、引用によりその全体を本明細書に包含させる。
【0211】
本出願は2018年6月20日出願の米国仮出願62/687,564の理系を請求yし、それは引用によりその全体を本明細書に包含させる。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【外国語明細書】