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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122998
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】原子量子クラスターの治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/38 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K33/38
A61K41/00
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024086007
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2021517797の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】18196959.3
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18196963.5
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】512136651
【氏名又は名称】ナノガップ スブ-エネエメ-パウダー ソシエダッド アノニマ
(71)【出願人】
【識別番号】521125464
【氏名又は名称】ウニベルシダーデ デ サンティアゴ デ コンポステーラ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ブセッタ フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド ドミンゲス プエンテ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル アルトゥロ ロペス クインテラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原子量子クラスター(AQC)を含む改善された治療的組成物を提供する。
【解決手段】細胞増殖性障害の治療において使用するための、5個のゼロ価遷移金属原子を含むAQCから本質的になる組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞増殖性障害の治療において使用するための5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子
量子クラスター(AQC)を含む組成物。
【請求項2】
放射線療法と組み合わせた、請求項1記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記放射線療法との同時的又は連続的投与のための、請求項2記載の使用のための組成
物。
【請求項4】
前記放射線療法が外部ビーム放射線療法である、請求項2又は3記載の使用のための組成
物。
【請求項5】
前記組成物が抗新生物薬と組み合わせて使用されない、請求項1~4のいずれか一項記載
の使用のための組成物。
【請求項6】
前記AQCが前記組成物の唯一の活性成分である、請求項1~5のいずれか一項記載の使用
のための組成物。
【請求項7】
単独化学療法として使用するための、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のための組
成物。
【請求項8】
前記金属原子が、Ag、Au、Cu、Pt、Fe、Cr、Pd、Ni、Rh、Pb、Ir、Ru、Os、Co、Ti、V
、又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のた
めの組成物。
【請求項9】
前記金属原子が、Ag、Au、Cu、Pt、又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項
8記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記金属原子がAgである、請求項8又は9記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記細胞増殖性障害が腫瘍及び/又は癌である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用
のための組成物。
【請求項12】
前記癌が、脳腫瘍、肺癌、乳癌、又は結腸癌から選択される、請求項11記載の使用のた
めの組成物。
【請求項13】
前記癌が脳腫瘍から選択される、請求項12記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記細胞増殖性障害がRAS突然変異を含む、請求項1~13のいずれか一項記載の使用のた
めの組成物。
【請求項15】
前記RAS突然変異がKRAS突然変異である、請求項14記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記組成物が、医薬として許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体を含む、請求項1~15
のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項17】
3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCと組み合わせた、請求項1~16のいずれか一項記
載の使用のための組成物。
【請求項18】
(i)5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子からなるAQCを実質的に含まず、(ii)5個よりも
少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCを実質的に含まず、かつ/又は(iii)金属イオンを
実質的に含まない:請求項1~17のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記組成物中に存在するAQCの約95%超が5個のゼロ価遷移金属原子からなる、請求項18
記載の使用のための組成物。
【請求項20】
癌の転移の予防及び/又は治療において使用するための、請求項1~19のいずれか一項記
載の組成物。
【請求項21】
癌のリンパ節転移の予防及び/又は治療において使用するための、請求項20記載の組成
物。
【請求項22】
肺癌の転移の予防及び/又は治療において使用するための、請求項20又は請求項21記載
の組成物。
【請求項23】
経口、静脈内、又は皮下投与される、請求項1~22のいずれか一項記載の使用のための
組成物。
【請求項24】
細胞増殖性障害の治療用の医薬組成物の調製のための、請求項1~23のいずれか一項記
載の組成物の使用。
【請求項25】
増殖細胞のための放射線療法増感剤としての5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の使用。
【請求項26】
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、請求項1~23のいずれか一項記載の
組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個のゼロ価遷移金属原子からなる
原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投
与することを含み、ここで、該方法が追加の抗新生物薬で前記患者を治療することを含ま
ない、前記方法。
【請求項28】
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個のゼロ価遷移金属原子からなる
原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、放射線療法と組み合わせて、そ
れを必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記組成物が前記放射線療法と同時に又はその前に投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の治療有効量を投与することを含む
、請求項28又は請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物が前記5個のゼロ価遷移金属原
子からなるAQCを含む組成物と同時に又は連続的に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、経口、静脈内、又は皮下投与される、請求項26~31のいずれか一項記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、原子量子クラスター、特に、5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子ク
ラスターの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
レドックスホメオスタシスは、細胞の生存にとって必要不可欠である。チオールは、レ
ドックスバランスの維持において中心的な役割を果たす。アミノ酸システインの側鎖中の
硫黄原子は、いくつかの異なる酸化状態で存在することができる。生理的条件下において
、システインの硫黄原子は、チオール状態とジスルフィド状態(それぞれ、還元状態と酸
化状態)の間を可逆的に推移するが、より高い酸化状態(スルホン酸を除く)への推移は、
不可逆的であり、これは、タンパク質が新しいタンパク質の合成によってのみ置き換えら
れることができることを意味する。小胞体を唯一の例外とする、その様々な区画内の細胞
は、酸素の存在によって自然に酸化されるタンパク質を絶えず還元している。細胞の内部
で、タンパク質機能は、その硫黄酸化状態に左右される。グルタチオン系とチオレドキシ
ン系という2つの重複する系が存在し、これらは、進化を通じて非常に良く保存され、タ
ンパク質システインをその機能的な還元状態に保つように働く。
【0003】
活性酸素種(ROS)は、細胞の通常の代謝時に発生し、グルタチオン系及びチオレドキシ
ン系は、還元状態を維持することにより、細胞を酸化的損傷から保護する。ROSレベルが
上昇し、グルタチオン系及びチオレドキシン系の緩衝能を超過した場合、細胞アポトーシ
スを誘導するシグナル伝達経路及び遺伝子発現の活性化が起こり得る。活発に増殖する腫
瘍細胞は、呼吸の増大、及び結果として、より高いROSレベルを示す。さらに、ヒト腫瘍
は、グルコース飢餓の一因となる不十分な血管形成及びレドックスホメオスタシスの不均
衡によるROS増加を示す。
【0004】
WO2012/059572号は、細胞増殖性障害の予防及び/又は治療のための少なくとも1つのAQC
と少なくとも1つの抗新生物薬の組合せを記載している。本出願は、癌細胞株に対する細
胞障害性かつ抗増殖性の効果を有する2~25個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを記載し
ており、それゆえ、細胞増殖性障害を治療するために、抗新生物剤と組み合わせて使用す
ることができる。
【0005】
AQCの改善された治療的組成物を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
第一の態様において、本発明は、細胞増殖性障害の治療において使用するための5個の
ゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、細胞増殖性障害の治療用の医薬組成物の調製のための、
本明細書で定義される組成物の使用を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、増殖細胞のための放射線療法増感剤としての5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の使用を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、本明
細書で定義される組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投与することを含
む、方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個
のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、
それを必要としている患者に投与することを含む、方法を提供し、ここで、該方法は、該
患者を追加の抗新生物薬で治療することを含まない。
【0011】
別の態様において、本発明は、細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個
のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、
放射線療法と組み合わせて、それを必要としている患者に投与することを含む、方法を提
供する。
【0012】
これらの及びその他の態様は、以下の説明でより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
(図面の簡単な説明)
図1図1: Ag5-AQCと大腸菌(E.Coli)のチオレドキシンとの相互作用。見て分かるように、Ag5-AQC(大きい灰色の5員の分子)は、活性部位を形成するシステイン(黒い矢印で強調されている分子)残基に結合する。結合のエネルギーは、好都合なものである(-167kJ/mol)。
図2図2:システイン(a)及びグルタチオン(b)並びにAg5-AQCの追加を有する対応するシステイン及びグルタチオン(それぞれ、c及びd):の正規化された硫黄KエッジX線吸収端近傍構造(S-K XANES)スペクトル。右のパネルは、左側のグラフの拡張された領域を示している。垂直の実線及び破線は、異なるS-酸化状態に関連したエネルギー位置を示している。
図3図3:(a)システイン並びに(b)参照ストック濃度(RSC)に対して1:106希釈、(c)RSCに対して1:103希釈、及び(d)RSC:という様々な濃度のAg5-AQCで処理されたシステインの正規化されたS-K XANESスペクトル。垂直の線は、異なるS-酸化状態についての対応するエネルギーを示している。
図4図4: Ag5-AQCによる処理の前(a)及び(b)後のPBSを含む水溶液中のチオレドキシン:の正規化されたS-K XANESスペクトル。垂直の線は、異なるS-酸化状態についての対応するエネルギーを示している。
図5図5: x軸上に示されているような、単独の又は様々な組合せのAg5-AQC、過酸化水素(H2O2)、及びヒドロキシルラジカル(HO・)で酸化されたチオレドキシン(TRX)のパーセンテージ。
図6図6:様々な処理の後のチオレドキシンシステインの硫黄酸化数。硫黄酸化は、Ag5-AQC、過酸化水素(H2O2)、及びヒドロキシルラジカル(HO・)によって影響される。Ag5-AQCとの組合せは、H2O2及びHO・の効果を大きく増強する。
図7図7:大腸菌の生存を、単独の(対照)又はAg5-AQCと組み合わせた、様々な濃度のジチオスレイトール(DTT)の添加後に測定した。DTTの非存在下(0mM)では、低濃度のAg5-AQCにより、細菌が死滅する。増加する濃度のDTT(0.1mM)をAg5-AQCと共投与した場合、細菌の生存能は一部回復し、これは、DTTが大腸菌をAg5-AQCの作用から救済することを示している。これに対して、10mMのDTTは、細菌にとって毒性があるが、Ag5-AQCとの共投与により、DTT効果が逆転する。
図8図8: Ag5-AQCを添加したときの様々な細胞株についての用量-応答(0.24~1.2mg/L)グラフ。
図9図9:対照と比較した場合の銅でできた5つの原子クラスター(Cu5-AQC)を添加したときのA549細胞株の細胞生存率を示す結果。
図10図10:タンパク質中のスルフヒドリル基のAg5-AQC酸化。A549細胞に、Premo Cellular Redox Sensorを形質導入した。48時間後、Leica TCS SP5共焦点顕微鏡を用いて、低速度撮影イメージングを行った。試料を405及び488nmのレーザーで励起し、緑のチャンネル(500~530nm)における放出比を計算した(405/488比)。Ag5-AQC(IC50)を10分間添加した後、10秒毎に画像を取得した。表示された時点での細胞の擬色比写真により、レドックス状態の変化が強調される。各々の実験において、この比を2つの個々の細胞について定量し(矢印)、時間に対してプロットした。
図11図11:(a)Ag5-AQCに応答したMTF1位置を間接的な免疫蛍光により検出した。A549細胞をAg5-AQCで1時間及び2時間処理し、その後、固定し、抗MTF1抗体と核を対比染色するためのDAPIとで染色した。Ag5-AQCは、対照細胞(左の列)と比較して、核へのMTF-1の明白な移行を示した(右の列)。(b)Ag5-AQCは、HEK293細胞における細胞質から核へのNrf2移行を誘導する。免疫蛍光染色を、抗Nrf2抗体(赤)及び抗Keap1抗体(緑)を用いて行った。核をHoechst(青)で対比染色した。合成画像は、Ag5-AQC(IC50)又はN-エチルマレイミド(NEM)(100μM、陽性対照)による処理から30分後のNrf2の核内位置を示している。
図12図12: Ag5-AQC処理はA549多細胞腫瘍スフェロイド(MCTS)のサイズを低下させる。(a)中心領域におけるMCTSサイズ及び細胞密度の違いを示すMCTS対照及びAg5-AQCで処理されたMCTSの画像。白いアステリスクは、処理の日を示し、矢印は、Ag5-AQC処理の結果としてより低い細胞密度を有する中心領域を指す。(b)MCTS対照又はAg5-AQCで処理されたMCTSの成長速度。データは、平均±SDを表す。エラーバーは、標準偏差を表す; n=8。マン・ホイットニー検定((*)p<0.05)。(c)低酸素剤及びHoechst染色を用いて、Ag5-AQC処理あり又はなし(対照)のチューモロイドにおける低酸素状態のレベルを示した画像。
図13図13:増殖細胞は、非増殖細胞よりもAg5-AQCの作用に対する感受性が高い。(A)増殖A549細胞及び非増殖A549細胞、(B)増殖U251細胞及び非増殖U251細胞、並びに(C)血清除去A549細胞を様々な濃度のAg5-AQCに1時間曝露させ、細胞生存率をMTTアッセイにより決定した。データは、3回の独立した実験の平均±SDとして示されている。D)血清除去又は血清コンフルエントA549細胞を単独の又はH2O2と組み合わせた1.2mg/LのAg5-AQCで処理した。Ag5-AQCとH2O2が共投与されたときに、相乗作用が明白に見られる。
図14図14: Ag5-AQCのインビボ効果。(a)Ag5-AQCは、同所性脳腫瘍を有するマウスにおける腫瘍成長の低下を引き起こす。実験群: Ag5-AQC(0.25mg/kg)及び対照(処置なし)。(b~d)Ag5-AQC処置は、同所性肺癌を有するマウスにおける腫瘍成長の低下を引き起こす。(b)発光(IVIS(登録商標) Spectrum)によってインビボで測定された腫瘍成長。黒い矢印は、本試験における処置投与回数を表す。(c)肺及び縦隔リンパ節においてエクスビボで測定されたルシフェラーゼ活性定量。(d)肺腫瘍の免疫組織化学染色(矢印は、腫瘍結節を示している)。実験群: CDDP(4mg/kg)、Ag5-AQC(0.25mg/kg)、及び対照(処置なし)。(e)実験全体にわたる体重。実験群: CDDP(4mg/kg)、Ag5-AQC(0.25mg/kg)、及び対照(処置なし)。データは、平均±SDを表す。エラーバーは、標準偏差を表す; n=5。マン・ホイットニー検定((*)p<0.05)。
図15図15: Ag5-AQC処置は患者に由来するB-CLL細胞における細胞生存率の低下を引き起こす。(a)Ag5-AQC処理後の濃度依存的なB-CLL初代細胞生存率の低下。細胞を様々な濃度のAg5-AQCに30分間曝露させ、細胞生存率をMTTアッセイにより24時間後に評価した。(b)Ag5-AQC処理は、対照と比較して、DHE陽性細胞のパーセンテージを2.5倍増大させる。B-CLL細胞をAg5-AQCで1時間及び4時間処理し、その後、DHE陽性細胞をフローサイトメトリーにより定量した。(c)Ag5-AQCで処理されたB-CLL細胞のTEM画像は、クロマチン周縁化(黒い矢印)及びミトコンドリアの破壊(黒い矢印)などのアポトーシスの明白な兆候を示した。
図16図16: Ag5-AQC処理は多発性骨髄腫異種移植モデルにおいて腫瘍体積の低下を引き起こす。腫瘍体積を、3つの異なる処置群:対照(生理食塩水溶液を静脈内投与、n=4)、Ag5-AQC(0.0125mg/kgを静脈内投与、n=4)、及びボルテゾミブ(0.25mg/kgを腹腔内投与、n=4)の間で、26日間にわたって測定した。
図17図17:ドキシサイクリン誘導性RasV12アレルを保有するW3T3細胞をドキシサイクリン(白い棒)又はビヒクル(対照-黒い棒)に24時間曝露させ、その後、様々な濃度のAg5-AQCで処理した。(a)RasV12発現をドキシサイクリンの添加時にウェスタンブロットにより評価し、(b)細胞生存率を24時間後にMTTアッセイにより決定した。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均±SDとして示されている。
図18図18: Ag5-AQC処理は放射線に対するA549細胞の感受性を増大させる。A)クローン原性アッセイ及びB)抗pH2AX染色を用いるDNA損傷アッセイで示された、Ag5-AQCで処理されたA549細胞における放射線の効果の結果。
図19図19: Ag5-AQC処理は放射線に対するU251細胞の感受性を増大させる。A)クローン原性アッセイ及びB)抗pH2AX染色を用いるDNA損傷アッセイで示された、Ag5-AQCで処理されたU251細胞における放射線の効果の結果。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書の全体を通して使用される技術的及び科学的用語は全て、当業者によって一般
に理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書の全体を通して、任意の量に関する「約」という用語の使用は、その量を含む
ことが想定される。
【0016】
本明細書の全体を通して、文脈上、別途要求されない限り、「含む(comprise)」という
単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変化形は、記述され
た整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数、工程、整
数の群、又は工程の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
【0017】
本明細書の全体を通して、文脈上、別途要求されない限り、「から本質的になる(consi
sting essentially of)」という用語及び「から本質的になる(consists essentially of)
」などの変化形は、記述された整数、工程、整数の群、又は工程の群の本質的な特徴に実
質的に影響を及ぼす任意の他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の排除とともに、記
述された整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味することが理解されるであろ
う。
【0018】
本明細書の全体を通して、文脈上、別途要求されない限り、「からなる(consisting of
)」という用語及び「からなる(consists of)」などの変化形は、任意の他の整数、工程、
整数の群、又は工程の群の排除を伴う、記述された整数、工程、整数の群、又は工程の群
の包含を意味することが理解されるであろう。
【0019】
本明細書で使用される「原子量子クラスター」又は「AQC」という用語は、2~500個の
ゼロ価遷移金属原子、例えば、2~200個、2~100個、2~50個、又は2~25個の遷移金属原
子の、及び2nm未満、例えば、1nm未満のサイズを有する集団/クラスターを指す。AQCは、
同一の(単核クラスター)又は異なる(異核クラスター)遷移金属のゼロ価遷移金属原子を含
み得る。この用語は金属イオンを含まないことが理解されるであろう。
【0020】
「遷移金属」という用語は、遷移金属として知られる周期表の元素を指すことが理解さ
れるが、これは、該元素の電気的挙動を指すものではない。EP1914196号で報告されてい
るように、AQCへの電子の閉じ込めは、これらの材料の特性の重大な変化をもたらすエネ
ルギー準位の量子分離を生じる。したがって、本明細書に記載されるAQC中の金属原子は
、半導体様又は絶縁様挙動さえも有することができる。
【0021】
「実質的に含まない」という用語は、その後に具体的に言及される実体をほとんどもし
くは全く含まないか、又は少なくとも実体が、組成物の効力、保存性、必要な安全性懸念
に関する有用性、及び/もしくは安定性に影響を及ぼすような量で実体を含有しない組成
物を指すために使用されることができる。
【0022】
「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、予防を含むことができ
、かつ症状を改善し、緩和し、症状の原因を一時的にもしくは恒久的に排除し、又は指定
の障害もしくは疾病の症状の出現を予防しもしくは減速させることを意味する。本発明の
組成物は、ヒト及び非ヒト動物の治療において有用である。
【0023】
「有効量」、「治療有効量」、又は「有効用量」という用語は、所望の薬理学的又は治
療的効果を引き出し、それにより、障害の有効な予防又は治療をもたらすのに十分な量を
指す。障害の予防は、障害の症状の発症を医学的に重要な程度にまで遅延させることによ
り示される。障害の治療は、障害と関連する症状の減少又は障害の症状の再発の改善より
示される。
【0024】
(組成物)
本発明者らは、5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)がグルタチ
オン系とチオレドキシン系の両方に影響を及ぼし、それにより、細胞生存に影響を及ぼす
という証拠を本明細書において提供する。5個の原子を有するAQCの生物系に対する作用の
基本的特徴は、両方の基質、タンパク質、及び電子受容体に対するその特異性である。理
論的及び実験的証拠は、Ag5-AQCとシステイン、グルタチオン、及びチオレドキシンとの
相互作用に関して提供されている。重要なことに、Ag5-AQCの活性がヒドロキシルラジカ
ル(HO・)>H2O2>O2でより大きいという事実によって示されるように、本発明者らは、Ag
5-AQCが電子受容体の存在に生物学的に依存するという証拠も提供している(例えば、図5
及び6)。理論によって束縛されるものではないが、本明細書に提示される証拠は、5個の
原子を有するAQCが、タンパク質中のROSと硫黄原子の間の触媒的架橋として作用して、チ
オール酸化のレベルを増大させることにより、ROSの効果を増大させることを示唆してい
る。この作用メカニズムは、当技術分野で現在知られている他の化学療法薬と異なってい
る。5個の原子のAQCの作用メカニズムは、インビトロ、2D及び3Dの細胞培養物中、動物モ
デル、並びに患者から得られた腫瘍細胞の初代培養物で示されている。
【0025】
それゆえ、本発明の第一の態様によれば、細胞増殖性障害の治療において使用するため
の5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物が提供される
【0026】
5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の潜在的な治療的使用が本明細書に
記載されている。驚くことに、そのような組成物は、追加の抗新生物剤が存在する必要な
く、それ自体で真核細胞に対する細胞傷害効果を有することが分かった。本明細書に提供
される理論的及び実験的証拠は、5個の原子からなるAQCがタンパク質中に存在するシステ
イン残基と選択的に相互作用し、活性酸素種(ROS)の存在下で硫黄酸化をもたらすことを
示している。このメカニズムは、このサイズのクラスターに特有である。それゆえ、本出
願は、5個のゼロ価遷移金属原子を有するAQCを、癌などの細胞増殖性疾患の治療における
単剤療法として使用する動機付けを初めて提供するものである。
【0027】
組成物は、細胞増殖性障害の治療において使用するための原子量子クラスター(AQC)か
ら本質的になることができ、ここで、該組成物は、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQC
を含む。一実施態様において、該AQCは、組成物の唯一の活性成分であり、すなわち、さ
らなる活性成分は、組成物中には存在しない。
【0028】
一実施態様において、組成物は、抗新生物薬を含まない。さらなる実施態様において、
組成物は、WO2012/059572号に記載されている抗新生物薬、例えば、アルキル化剤(例えば
、窒素マスタード類似体、ニトロソウレア、アルキルスルホネート、白金含有化合物、エ
チルエミン(ethylemine)、及びイミダゾテトラジン)、細胞毒性抗生物質(例えば、アント
ラサイクリン、アクチノマイシン)、植物アルカロイド並びに他の天然産物(例えば、カン
プトテシン誘導体、エピポドフィロトキシン、タキサン、及びビンカアルカロイド)、代
謝拮抗薬(例えば、シチジン類似体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジンアナログ、
尿素誘導体)、並びに標的療法用の薬物(例えば、キナーゼ阻害剤及びモノクローナル抗体
)を含まない。
【0029】
一実施態様において、組成物は、抗新生物薬と組み合わせて使用されない。一実施態様
において、WO2012/059572号に記載されている抗新生物薬、例えば、アルキル化剤(例えば
、窒素マスタード類似体、ニトロソウレア、アルキルスルホネート、白金含有化合物、エ
チルエミン(ethylemine)、及びイミダゾテトラジン)、細胞毒性抗生物質(例えば、アント
ラサイクリン、アクチノマイシン)、植物アルカロイド並びに他の天然産物(例えば、カン
プトテシン誘導体、エピポドフィロトキシン、タキサン、及びビンカアルカロイド)、代
謝拮抗薬(例えば、シチジン類似体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジンアナログ、
尿素誘導体)、並びに標的療法用の薬物(例えば、キナーゼ阻害剤及びモノクローナル抗体
)と組み合わせて使用されない。本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物(
AQCを含む)と抗新生物薬を1つにする行為を指すことが理解されるであろう。それゆえ、
この用語は、該使用が抗新生物薬を特許請求された組成物と組み合わせて使用することを
目的としない場合でも、癌療法の経過中の別の時点での抗新生物薬の使用を除外しない。
【0030】
一実施態様において、組成物は、単独化学療法として使用するためのものである。「単
独化学療法」に対する言及は、単一の化学的薬物の使用による、癌などの細胞増殖性疾患
の治療を指す。本明細書で論じられているように、本発明の組成物は、他の薬物と組み合
わせて使用される必要なく、それ自体の化学療法的効果を有しており、それゆえ、癌治療
との関連における単剤療法、特に、単独化学療法として使用することができる。
【0031】
「細胞増殖性障害」に対する言及は、生理的制御を伴わない、細胞の新たな異常増殖又
は異常な細胞の増殖をもたらす障害を指す。これは、構造化されていない塊、すなわち、
腫瘍を生じさせることができる。一実施態様において、細胞増殖性障害は、腫瘍及び/又
は癌である。本発明の組成物を用いて、限定されないが、原発性腫瘍、転移、及び前癌状
態(前癌段階)を含む、細胞増殖性障害を治療することができる。
【0032】
癌としては:脾臓、結腸直腸、及び/又は結腸癌、結腸癌、卵巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌
、乳癌、子宮癌、肺癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精
巣癌、骨癌、甲状腺癌、皮膚癌、例えば、黒色腫、肉腫、カポジ肉腫、脳腫瘍、例えば、
神経膠腫、髄芽腫、又は神経芽腫、血液癌、例えば、リンパ腫及び白血病、筋肉腫、並び
に頭頸部癌を挙げることができるが、これらに限定されない。一実施態様において、癌は
、肺癌、乳癌、結腸癌、又は脳腫瘍(特に、膠芽腫)から選択される。さらなる実施態様に
おいて、癌は、脳腫瘍、特に、神経膠腫(例えば、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、上衣腫、
脳幹神経膠腫)、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、悪性髄膜腫、松果体領域腫瘍、及び前庭シュワ
ン細胞腫から選択される脳腫瘍である。またさらなる実施態様において、脳腫瘍は、神経
膠腫、特に、膠芽腫である。
【0033】
本発明は、RAS突然変異、例えば、KRAS、NRAS、又はHRAS突然変異、特に、KRAS突然変
異を有する癌/腫瘍の治療において特に使用されている。そのような突然変異は、高レベ
ルのROSを生じさせる腫瘍細胞内の酸化的ストレスを引き起こすことが示されている。例
えば、Shawらの文献(2011) PNAS 108(21): 8773-8778を参照されたい。本明細書に記載さ
れているように、5個の原子からなるAQCは、高レベルのROSを含む細胞で効力がある。そ
れゆえ、一実施態様において、細胞増殖性障害(例えば、癌及び/又は腫瘍)は、RAS突然変
異を含む。さらなる実施態様において、RAS突然変異は、KRAS、NRAS、又はHRAS突然変異
、特に、KRAS突然変異から選択される。そのような癌/腫瘍を、RAS突然変異癌、例えば、
KRAS、HRAS、又はNRAS突然変異癌又は腫瘍と称することもできることが理解されるであろ
う。またさらなる実施態様において、RAS突然変異は、活性化突然変異である、すなわち
、該突然変異は、RASタンパク質の増大した又は構成的活性を生じさせる。本発明のAQCの
作用メカニズムの観点から、突然変異にかかわらず、組成物を用いて、RAS突然変異癌細
胞を治療することができることに留意されたい。これは、RAS遺伝子(特に、KRAS遺伝子)
の特定の突然変異に特有である現在の療法とは対照的である。
【0034】
RASファミリーのタンパク質は、GTPをGDPに加水分解して、いくつかの下流シグナル伝
達経路の活性化を可能にするGTPアーゼである。例えば、KRASは、有糸分裂促進因子活性
化キナーゼ経路に関与することが示されている。KRASにおける共通の突然変異は、その固
有のGTPアーゼ機能を低下させて、GTPからGDPへの加水分解を妨げ、それにより、KRASを
その活性状態に固定する。これにより、発癌を促進することができる下流シグナル伝達経
路の構成的活性化がもたらされる。
【0035】
多くのRAS突然変異が当技術分野で公知であり、KRAS突然変異は、ヒト癌における最も
頻度の高い発癌性突然変異である。癌における1以上の細胞がRAS突然変異を有する場合、
癌は、RAS突然変異を含む。RAS突然変異を有する対象は、当技術分野で公知の方法、例え
ば、PCR、核酸シークエンシング、アレル特異的PCR法、一本鎖立体構造多型解析、融解曲
線解析、プローブハイブリダイゼーション、パイロシークエンシング(すなわち、ヌクレ
オチド伸長シークエンシング)、ジェノタイピング、及び他のシークエンシング法によっ
て特定することができる(例えば、Andersonの文献(2011) Expert Rev Mol Diagn. 11(6):
635-642及びOginoらの文献(2005) J. Mol. Diagn. 7: 413-421を参照)。本明細書で示さ
れるように、5個の原子を含むAQCは、KRAS突然変異(例えば、位置12のグリシン残基が突
然変異しているKRAS G12S)を含むことが示されているA549細胞株に対する毒性効果を有し
ていた。さらに、HRAS突然変異(位置12のバリン残基の突然変異が突然変異しているHRasV
12)を含む細胞は、対照細胞と比較して、5個の原子を含むAQCの毒性効果に対する感受性
がより高かった。
【0036】
全ヒト癌の30%がRAS突然変異を保有すると推定される。例えば、膵管腺癌の88%、結
腸直腸癌の52%、多発性骨髄腫の43%、肺腺癌の32%、メラノーマの28%、子宮内膜癌の
25%、甲状腺癌の13%、胃癌の12%、急性骨髄性白血病の11%、膀胱癌の11%、頭頸部扁
平上皮細胞癌の6%、及び乳癌の2%は、RAS突然変異を保有すると考えられる(癌細胞株百
科事典(Cancer Cell Line Encyclopedia)(CCLE);国際癌ゲノムコンソーシアム(Internati
onal Cancer Genome Consortium)(ICGC);及び癌ゲノムアトラスデータポータル(The Canc
er Genome Atlas Data Portal)(TCGA)からまとめられたデータ)。それゆえ、一実施態様
において、細胞増殖性障害(特に、RAS突然変異を有する細胞増殖性障害)は、膵臓癌、結
腸直腸癌、血液癌、肺癌、皮膚癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、胃癌、膀胱癌、頭頸部癌、又
は乳癌から選択される。さらなる実施態様において、細胞増殖性障害(特に、RAS突然変異
を有する細胞増殖性障害)は、膵臓癌、結腸直腸癌、血液癌、肺癌、皮膚癌、子宮内膜癌
、甲状腺癌、胃癌、膀胱癌、頭頸部癌から選択される。
【0037】
一実施態様において、細胞増殖性障害は、膵癌、例えば、膵管腺癌、特に、RAS突然変
異膵癌、例えば、RAS突然変異膵管腺癌である。代わりの実施態様において、細胞増殖性
障害は、結腸直腸癌、特に、RAS突然変異結腸直腸癌である。代わりの実施態様において
、細胞増殖性障害は、血液癌、例えば、多発性骨髄腫又は急性骨髄性白血病、特に、RAS
突然変異血液癌、例えば、RAS突然変異多発性骨髄腫又はRAS突然変異急性骨髄性白血病で
ある。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、肺癌、例えば、非小細胞肺癌、例
えば、肺腺癌、特に、RAS突然変異肺癌、例えば、RAS突然変異非小細胞肺癌、例えば、RA
S突然変異肺腺癌である。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、皮膚癌、例え
ば、黒色腫、特に、RAS突然変異皮膚癌、例えば、RAS突然変異黒色腫である。代わりの実
施態様において、細胞増殖性障害は、子宮内膜癌、特に、RAS突然変異子宮内膜癌である
。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、甲状腺癌、特に、RAS突然変異甲状腺
癌である。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、胃癌、特に、RAS突然変異胃
癌である。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、膀胱癌、特に、RAS突然変異
膀胱癌である。代わりの実施態様において、細胞増殖性障害は、頭頸部癌、例えば、頭頸
部扁平上皮細胞癌、特に、RAS突然変異頭頸部癌、例えば、RAS突然変異頭頸部扁平上皮細
胞癌である。
【0038】
本発明は、薬物への接近可能性が低い癌、例えば、血液脳関門によって循環系から隔て
られている低レベルの血管分布を有する大きな腫瘍又は脳腫瘍の治療において特に使用さ
れている。これは、ちょうど5個の原子からなる治療的AQCの電荷が中性で、かつサイズが
小さいためであり、これにより、従来の抗新生物薬に容易に接近することができない腫瘍
又は癌の領域に該AQCが接近することが可能になる。多細胞腫瘍スフェロイドの中心の低
酸素領域に入り込む5個の原子からなるAQCの能力を示す証拠が本明細書に提供されている
【0039】
癌の転移を予防及び治療することは、二次癌及び再発を予防するための癌治療の重要な
部分である。驚くことに、本発明の組成物は、癌転移及び原発性腫瘍を治療するさらなる
有益な効果を有することが分かった(図14)。それゆえ、本発明の一態様によれば、リンパ
節転移などの転移の予防及び/又は治療において使用するための、特に、肺癌転移を治療
及び/又は予防するための、本明細書に記載される組成物(特に、5個のゼロ価遷移金属原
子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物)が提供される。本発明の別の態様によ
れば、癌のリンパ節転移の予防及び/又は治療において使用するための、本明細書に記載
される組成物が提供される。
【0040】
さらなる実施態様において、リンパ節は、縦隔リンパ節である。該縦隔リンパ節は、体
の胸腔に位置するリンパ節の集合体である。
【0041】
(組合せ療法)
本明細書に記載される組成物は、3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCと組み合わせて
使用することができる。3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCのサイズは、該AQCをDNAに
インターカレートさせ、クロマチン脱凝縮をもたらすことができることが分かっている。
それゆえ、これを用いて、処理された細胞の放射線に対する感受性を増大させ、放射線療
法の有効性を向上させることができる。
【0042】
一実施態様において、組成物(すなわち、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む)
及び3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCは、同時に投与される。この実施態様において
、これら2つの作用因子は、同時に又は実質的に同時に投与される。これらは、同じ経路
で、及び任意に、同じ組成物中で投与されることもできる。或いは、これらは、異なる経
路で、すなわち、別々に、しかし、同時に又は実質的に同時に投与されることができる。
【0043】
代わりの実施態様において、組成物及び3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCは、逐次
的に投与される。この実施態様において、これら2つの作用因子は、該作用因子のうちの
一方が、第二の作用因子の前に投与されるように、異なる時間に投与される。例えば、組
成物は、3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCの前又は後に投与されることができる。こ
れらは、同じ又は異なる経路で投与されることができる。
【0044】
本発明の別の態様によれば、細胞増殖性障害の治療において使用するための放射線療法
と組み合わせた3個及び5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物が提供される
。一実施態様において、組成物は、2~5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCからなる。
さらなる実施態様において、組成物は、3個及び5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCか
ら本質的になる。
【0045】
本発明者らは、驚くことに、5個の原子からなるAQCが細胞の死をもたらすチオール酸化
に対する触媒作用を有することを発見した。それゆえ、これらのAQCは、それ自体、癌療
法として使用することができ、したがって、一実施態様において、本明細書に記載される
組成物は、追加の抗新生物薬を含まない。
【0046】
一実施態様において、本発明の組成物は、追加の治療剤を含むか、又は追加の治療剤と
組み合わせて使用することができる。そのような薬剤は、癌療法、例えば、望ましくない
副作用を改善するための姑息的治療として使用される薬剤と併せて使用される活性剤であ
ることができる。それゆえ、一実施態様において、追加の治療剤は、姑息的治療として使
用される薬剤である。さらなる実施態様において、姑息的治療は:制吐剤、疼痛を緩和す
ることが意図される薬剤、例えば、オピオイド、高い血中尿酸値を減少させるために使用
される薬剤、例えば、アロプリノール又はラスブリカーゼ、抗鬱薬、鎮静薬、抗痙攣薬、
瀉下薬、止瀉薬、及び又は制酸薬からなる群から選択される。
【0047】
一実施態様において、追加の治療剤は、抗新生物薬ではない。代わりの実施態様におい
て、追加の治療剤は、抗新生物剤である。一実施態様において、抗新生物剤は:アルキル
化剤(例えば、窒素マスタード類似体、ニトロソウレア、アルキルスルホネート、白金含
有化合物、エチルエミン(ethylemine)、及びイミダゾテトラジン)、細胞毒性抗生物質(例
えば、アントラサイクリン、アクチノマイシン)、植物アルカロイド並びに他の天然産物(
例えば、カンプトテシン誘導体、エピポドフィロトキシン、タキサン、及びビンカアルカ
ロイド)、代謝拮抗薬(例えば、シチジン類似体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン
アナログ、尿素誘導体)、並びに標的療法用の薬物(例えば、キナーゼ阻害剤及びモノクロ
ーナル抗体)からなる群から選択される。
【0048】
一実施態様において、組成物及び追加の治療剤は、同時に投与される。この実施態様に
おいて、これら2つの薬剤は、同時に又は実質的に同時に投与される。これらは、同じ経
路で、及び任意に、同じ組成物中で投与されることもできる。或いは、これらは、異なる
経路で、すなわち、別々に、しかし、同時に又は実質的に同時に投与されることができる
【0049】
代わりの実施態様において、組成物及び追加の治療剤は、逐次的に投与される。この実
施態様において、これら2つの薬剤は、該薬剤のうちの一方が、第二の薬剤の前に投与さ
れるように、異なる時間に投与される。これらは、同じ又は異なる経路で投与されること
ができる。
【0050】
一実施態様において、組成物は、追加の治療剤の前に投与される。代わりの実施態様に
おいて、組成物は、追加の治療剤の後に投与される。
【0051】
(放射線療法)
放射線療法(radiation therapy)(放射線療法(radiotherapy)とも呼ばれる)は、細胞DNA
を損傷させ、それゆえ、癌細胞を死滅させ、腫瘍を縮小させるために、高線量の放射線を
使用する。そのような療法は、外部ビームの形態のものであっても、内部放射線療法とし
てのものであってもよい。放射線療法の選択は、癌のタイプ、腫瘍のサイズ、腫瘍位置、
並びに患者の年齢、全身の健康、及び病歴、並びに使用される他のタイプの癌治療などの
他の因子によって決まり得る。
【0052】
放射線療法は、全世界の全ての癌の50%超に施されており、開発途上国及び中所得国に
おいて特に重要である。しかしながら、放射線療法の有効性は、健康な周辺組織の損傷、
隣接器官の近接性、及び放射線耐性を発症する腫瘍を含む、様々な因子によって制限され
る。それゆえ、放射線療法の効力を向上させるための薬剤に対する満たされていない顕著
な必要性が存在する。
【0053】
癌細胞への放射線療法の適用は、ROSの産生の増大をもたらす。本明細書に提供される
証拠によって示されているように、5個の原子からなるAQCの効果は、ROSの存在によって
強化される。それゆえ、本発明の組成物は、放射線療法の有効性を増強する治療剤として
特に適している。
【0054】
本発明の一態様によれば、癌などの細胞増殖性障害の治療において使用するための放射
線療法と組み合わせた、本明細書に記載される組成物が提供される。
【0055】
放射線療法(radiation therapy)(放射線療法(radiotherapy)とも呼ばれる)は、細胞DNA
を損傷させ、それゆえ、癌細胞を死滅させ、腫瘍を縮小させるために、高線量の放射線を
使用する。そのような療法は、外部ビームの形態のもの又は内部放射線療法としてのもの
であってもよい。放射線療法の選択は、癌のタイプ、腫瘍のサイズ、腫瘍位置、並びに患
者の年齢、全身の健康、及び病歴、並びに使用される他のタイプの癌治療などの他の因子
によって決まり得る。
【0056】
本発明の一態様によれば、放射線療法増感剤としての、本明細書に記載される組成物の
使用が提供される。本発明の別の態様によれば、増殖細胞のための放射線療法増感剤とし
ての、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。「放射線増感剤」とも呼ばれる
「放射線療法増感剤」という用語は、放射線療法の細胞障害性効果を増強し/増大させる
ために使用される薬物を指すことが理解されるであろう。放射線療法による影響を受ける
癌又は腫瘍は、「放射線感受性」と呼ばれる。
【0057】
別の態様によれば、本発明は、非増殖細胞のための放射線療法脱感作剤として使用する
ための、5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物を提供
する。
【0058】
5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物を用いて、非
増殖(例えば、非分裂)細胞を放射線療法から保護することができる。「放射線脱感作剤」
とも呼ばれる「放射線療法脱感作剤」という用語は、放射線療法の細胞障害性効果を低下
/減少させるために使用される薬物を指すことが理解されるであろう。
【0059】
それゆえ、本発明の組成物は、放射線療法と組み合わせて使用される場合に特に有利で
あるが、それは、これが、増殖細胞(すなわち、癌細胞)に対する放射線療法の効果を増強
し、その一方でまた、非増殖細胞(すなわち、非疾患細胞)を有害な放射線から保護すると
いう二重の効果を有するからである。
【0060】
「増殖」に対する言及は、当業者によって理解されるであろう。本明細書で使用される
ように、「増殖細胞」は、細胞増殖、例えば、細胞の成長及び分裂を経ている細胞を指す
。特に、本発明は、急速な、異常な、及び/又は制御されない細胞増殖を有する癌細胞を
標的とするために使用される。一実施態様において、増殖細胞は、対象における癌細胞、
前癌細胞、又は他の急速に分裂している異常細胞である。また、本明細書で使用されるよ
うに、「非増殖細胞」は、細胞増殖を経ていない細胞を指す。これらの細胞はまた、「休
止」、「停止」、「静止」、「非分裂」、「非周期」、又は「G0細胞」と記載される場合
もある。一実施態様において、非増殖細胞は、非癌性細胞である。
【0061】
放射線療法は、外部ビームの形態のものであっても、内部放射線療法としてのものであ
ってもよい。
【0062】
一実施態様において、放射線療法は、外部ビーム放射線照射を含む。外部ビーム放射線
療法は、典型的には、コバルト-60(60Co)、セシウム-137(137Cs)などの放射性同位体、又
は線形加速装置(LINAC)などの高エネルギーX線源のいずれかの、患者の外部にある放射線
源を使用する。外部源は、患者に向けられた腫瘍部位への平行ビームを生み出す。外部放
射線ビームを種々の「ガントリー」角度で患者に投射して、ビームを腫瘍部位に集結する
ことにより、腫瘍組織内の所与の放射線線量を維持しながら、健康な組織の放射線照射の
有害作用を低下させることができる。
【0063】
外部放射線療法治療の例としては、共焦点放射線療法、強度変調放射線療法(IMRT)、画
像誘導放射線療法(IGRT)、4次元放射線療法(4D-RT)、定位放射線療法及び放射線手術、プ
ロトン療法、電子ビーム放射線療法、並びに適応放射線療法が挙げられるが、これらに限
定されない。
【0064】
代わりの実施態様において、放射線療法は、内部放射線療法を含む。この実施態様にお
いて、放射性医薬品は、患者に投与され、治療されることになる領域に配置される。一実
施態様において、放射性医薬品は、放射線を放出する放射性同位体を含む。放射性同位体
は、当業者に周知であり、金属又は非金属放射性同位体を含むことができる。
【0065】
好適な金属放射性同位体の例としては:アクチニウム-225、アンチモン-124、アンチモ
ン-125、ヒ素-74、バリウム-103、バリウム-140、ベリリウム-7、ビスマス-206、ビスマ
ス-207、ビスマス212、ビスマス213、カドミウム-109、カドミウム-115m、カルシウム-45
、セリウム-139、セリウム-141、セリウム-144、セシウム-137、クロム-51、コバルト-55
、コバルト-56、コバルト-57、コバルト-58、コバルト-60、コバルト-64、銅-60、銅-62
、銅-64、銅-67、エルビウム-169、ユウロピウム-152、ガリウム-64、ガリウム-67、ガリ
ウム-68、ガドリニウム153、ガドリニウム-157 金-195、金-199、ハフニウム-175、ハフ
ニウム-175-181、ホルミウム-166、インジウム-110、インジウム-111、イリジウム-192、
鉄55、鉄-59、クリプトン85、鉛-203、鉛-210、ルテチウム-177、マンガン-54、水銀-197
、水銀203、モリブデン-99、ネオジム-147、ネプツニウム-237、ニッケル-63、ニオブ95
、オスミウム-185+191、パラジウム-103、パラジウム-109、白金-195m、プラセオジム-14
3、プロメチウム-147、プロメチウム-149、プロトアクチニウム-233、ラジウム-226、レ
ニウム-186、レニウム-188、ルビジウム-86、ルテニウム-97、ルテニウム-103、ルテニウ
ム-105、ルテニウム-106、サマリウム-153、スカンジウム-44、スカンジウム-46、スカン
ジウム-47、セレン-75、銀-10m、銀-111、ナトリウム-22、ストロンチウム-85、ストロン
チウム-89、ストロンチウム-90、硫黄-35、タンタル-182、テクネチウム-99m、テルル-12
5、テルル-132、タリウム-204、トリウム-228、トリウム-232、タリウム-170、スズ-113
、スズ-114、スズ-117m、チタン-44、タングステン-185、バナジウム-48、バナジウム-49
、イッテルビウム-169、イットリウム-86、イットリウム-88、イットリウム-90、イット
リウム-91、亜鉛-65、ジルコニウム-89、及びジルコニウム-95が挙げられるが、これらに
限定されない。
【0066】
好適な非金属放射性同位体としては:ヨウ素-131、ヨウ素-125、ヨウ素-123、リン-32、
アスタチン-211、フッ素-18、炭素-11、酸素-15、臭素-76、及び窒素-13が挙げられるが
、これらに限定されない。
【0067】
本発明における使用のために好適である放射線のタイプは、様々に異なり得る。一実施
態様において、放射線療法は、電磁放射線又は粒子放射線を含む。電磁放射線としては、
X線及びγ線が挙げられるが、これらに限定されない。粒子放射線としては、電子ビーム(
β粒子)、α粒子、陽子ビーム、中性子ビーム、及び負パイ中間子が挙げられるが、これ
らに限定されない。
【0068】
一実施態様において、放射線療法は、近接照射療法を含む。近接照射療法において、放
射線源は、癌又は腫瘍の部位に直接配置される。これは、放射線照射が非常に限局された
領域にのみ影響を及ぼし、それにより、健康な組織の放射線への曝露を最小限に抑えると
いう利点を有する。さらに、これにより、腫瘍が非常に高い線量の局所放射線で治療され
ると同時に、周囲の健康な組織に対する不要な損傷の可能性を低下させることが可能にな
る。
【0069】
一実施態様において、近接照射療法は、洞内治療又は間質治療を含む。洞内治療は、放
射線源を体腔内に保持する容器を、腫瘍が存在する場所又は腫瘍が存在する場所付近に配
置することを含む。間質治療は、放射線源を保持する容器を腫瘍又は体組織内に直接配置
することを含む。これらの放射線源は、患者の中で恒久的に維持することができる。ほと
んどの場合、放射線源は、数日後に患者から除去される。容器は、針、シード、ワイヤー
、又はカテーテルを含むことができる。
【0070】
一実施態様において、放射線療法は、全身放射性同位体療法を含む。全身放射性同位体
療法において、放射性同位体を含む放射性医薬品は、注入又は摂取を通じて送達される。
投与された放射性同位体は、同位体の化学的性質によりターゲティングされることができ
、例えば、甲状腺によって優先的に吸収される放射性ヨウ素がある。ターゲティングは、
放射性同位体を、ターゲティング部分、例えば、標的組織に結合する分子又は抗体にコン
ジュゲートすることにより達成することもできる。一実施態様において、放射性医薬品は
、放射性コンジュゲートを含む。さらなる実施態様において、放射性コンジュゲートは、
放射性標識抗体である。
【0071】
一実施態様において、放射性医薬品は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮
、舌下、筋肉内、経直腸、経頬、鼻腔内、吸入により、膣内、眼球内、局所、皮下、脂肪
内、関節内、又は髄腔内に投与される。一実施態様において、放射性医薬品は、徐放性剤
形のものである。
【0072】
放射線療法の選択は、癌のタイプ、腫瘍のサイズ、腫瘍位置、並びに患者の年齢、全身
の健康、及び病歴、並びに使用される他のタイプの癌治療などの他の因子によって決まり
得る。
【0073】
一実施態様において、組成物及び放射線療法は、同時に適用される。代わりの実施態様
において、組成物及び放射線療法は、逐次的に適用され、好ましくは、ここで、該組成物
は、放射線療法の前に適用される。薬剤が別々に投与される場合、放射線療法は、組成物
がまだ効果的であるうちに投与することができる、すなわち、組成物及び放射線療法は、
患者に投与するときに、相乗的な又は少なくとも複合的な効果を発揮する時間枠内で投与
される。一実施態様において、組成物は、放射線療法の前の6時間以内、例えば、放射線
療法の1~6時間前に投与される。さらなる実施態様において、組成物は、放射線療法の約
6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間前に投与される。
【0074】
一実施態様において、組成物及び放射線療法の治療効果は相乗的である。一実施態様に
おいて、組成物は、患者の癌細胞を放射線療法に感作する。
【0075】
一実施態様において、本発明の組成物は、放射線療法の効力を、障害の治療のための放
射線療法のみの効力と比較して、少なくとも2倍、例えば、3倍、4倍、5倍、又はそれを上
回って改善することができる。
【0076】
(医薬組成物)
本発明の一態様によれば、本明細書に記載される組成物を含む医薬組成物が提供される
【0077】
組成物、及び適切な場合、組合せは、医薬として許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体
を任意に含む医薬組成物として製剤化することができる。該担体、希釈剤、及び/又は賦
形剤は、組成物の他の成分と適合性があり、かつそのレシピエントにとって有害でないと
いう意味において、「許容し得る」ものでなければならない。
【0078】
医薬として許容し得る担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブ
ドウ糖、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ又は複数、及びこれらの組合せを挙
げることができる。好適な医薬担体、賦形剤、又は希釈剤は、E.W.Martin著、「レミント
ンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。医薬とし
て許容し得る担体は、本発明の組成物の貯蔵寿命又は有効性を高める微量の補助物質、例
えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、又は緩衝剤をさらに含むことができる。医薬組成
物は、抗接着剤、結合剤、コーティング、崩壊剤、香味料、着色料、滑沢剤、吸着剤、防
腐剤、甘味料、凍結乾燥賦形剤(凍結保護物質を含む)、又は圧縮助剤を含むこともできる
【0079】
本発明の医薬組成物は、複数の医薬投与形態、例えば、固体(例えば、錠剤、丸剤、カ
プセル剤、顆粒剤など)又は液体(例えば、溶液、懸濁液、シロップ、軟膏、クリーム、ゲ
ル、又はエマルジョン)で投与することができる。
【0080】
本発明の医薬組成物は、治療有効量を含むことができる。対象に投与することができる
治療有効量(すなわち、治療されるべき障害を治療する又は治癒させるのを助ける効果を
生む量)は、複数の因子、例えば、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに個体にお
いて所望の応答を誘発する医薬組成物の能力によって決まる。治療有効量は、本発明の医
薬組成物の任意の毒性又は有害効果を治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0081】
一実施態様において、AQCは、水性溶液中に存在する。さらなる実施態様において、水
性溶液は、混合物中に存在するAQCの濃度(特に、5個のゼロ価遷移金属原子を含むAQCの濃
度)の、例えば、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍の溶存酸素を含む。
【0082】
一実施態様において、組成物は、静脈内、動脈内、心臓内、皮内、皮下、経皮、腹腔内
、筋肉内、経口、舌上、舌下、口腔内、直腸内、又は浣腸剤によるものなどの、任意の好
適な送達様式によって投与される(又は投与用に製剤化される)。
【0083】
本発明の組成物は、標的部位(すなわち、腫瘍の部位)に直接又は全身に(すなわち、循
環系に)投与することができる。標的投与は、組成物の治療効果を治療されるべき癌又は
腫瘍に集中するという利点を有する。そのような投与は、副作用も最小限に抑える。しか
しながら、本発明の組成物は、その作用様式が細胞アポトーシスが高レベルのROSを有す
る細胞でしか起こらないことを保証するので、全身投与にも好適である。ROSのレベルは
、増殖細胞、例えば、癌性細胞で高い。しかしながら、正常な非増殖細胞において、ROS
のレベルは、比較的低く、それゆえ、5個の原子からなるAQCは、正常細胞に対してそれほ
ど効果がなく、これは、有害な副作用を最小限に抑えるのに役立つ。
【0084】
一実施態様において、組成物は、経口、静脈内、又は皮下投与される。さらなる実施態
様において、組成物は、経口投与される。本発明の組成物の利点は、それが比較的速やか
に除去されることができ、それゆえ、AQCが体内に長期間存続しないので、任意の副作用
を最小限に抑えることができるということである。
【0085】
局所適用も可能である(例えば、メラノーマの治療用)。特定の形態の局所適用は、組成
物を担体系、特に、薬物送達系に導入し、該担体系を癌性組織に移植することからなり、
ここで、該担体系は、その後、該組成物を癌性組織の部位で特異的に放出する。このよう
に、全身投与の場合に生じ得るような副作用を回避する、すなわち、体への全体的な負担
を軽減することが可能である。
【0086】
(使用)
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害の治療のための、本明細書に記載される組成
物の使用が提供される。
【0087】
本発明の一態様によれば、癌の転移を治療及び/又は予防するための、本明細書に記載
される組成物の使用が提供される。一実施態様において、組成物は、癌のリンパ節転移を
治療及び/又は予防するために使用される。さらなる実施態様において、組成物は、肺癌
の転移を治療及び/又は予防するために使用される。
【0088】
本発明の一態様によれば、増殖細胞のための放射線療法増感剤としての5個のゼロ価遷
移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の使用が提供される。該薬剤
は、細胞増殖性障害の治療のために使用することができる。
【0089】
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害の治療のための放射線療法と組み合わせた、
本明細書に記載される組成物の使用が提供される。
【0090】
本発明の一態様によれば、増殖細胞のための放射線療法増感剤の製造/調製における、
本明細書に記載される組成物の使用が提供される。
【0091】
本発明の一態様によれば、非増殖細胞のための放射線療法脱感作剤としての5個のゼロ
価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の使用が提供される。
【0092】
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害の治療のための医薬組成物の調製のための、
本明細書に記載される組成物の使用が提供される。
【0093】
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害の治療のための医薬の製造における、本明細
書に記載される組成物の使用が提供される。
【0094】
(原子量子クラスター(AQC))
本明細書に記載されるAQCは安定である、すなわち、これは、原子の数、それゆえ、そ
の性質を、長期間にわたって保存し、そのため、これは、任意の他の化学化合物のように
単離し、操作することができる。AQCは、外部安定剤を必要とせずに、何カ月も、何年も
保存することができる。
【0095】
一実施態様において、金属原子は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、鉄(Fe)、クロ
ム(Cr)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ルテ
ニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、又はこれら
の任意の組合せから選択される。さらなる実施態様において、金属原子は、Ag、Au、Cu、
Pt、又はこれらの任意の組合せから選択される。さらなる実施態様において、金属原子は
、Ag、Cu、又はPtから選択される。またさらなる実施態様において、金属原子は、Agであ
る。
【0096】
AQCの混合物は、当技術分野で公知の種々の方法、例えば、引用により本明細書中に組
み込まれるEP1914196号に記載されている方法によって合成することができる。
【0097】
混合物は、本明細書中の実施例1に記載される方法を用いて合成することもできる。よ
り具体的には、銀AQCを合成する方法であって、該方法を参照電極としての水素電極及び
対作用電極としての2つの銀電極を含む3電極電気化学セルで実施することを含む、方法が
提供され、ここで、該銀電極は、5cm2よりも大きい、例えば、10cm2よりも大きい、例え
ば、約17cm2である表面積を含む。5個の原子のクラスターは、徐々に増加する電流を約5
時間(300分間)流すことにより得ることができる。例えば、増加する電流は:工程(i)約200
~300μA(例えば、約250μA)の電流、工程(ii)約430~530μA(例えば、約480μA)の電流
、工程(iii)約800~1200μA(例えば、約1000μA/1mA)の電流、工程(iv)約2000~2400μA(
例えば、約2200μA/2.2mA)の電流、及び/もしくは工程(v)約3800~4200μA(例えば、約40
00μA/4mA)の電流、又は工程(i)~(v)のいずれかの組合せを含むことができる。一実施態
様において、各々の工程は、少なくとも30分間、例えば、約1時間実施される。銀電極は
、合成前及び/又は合成中に、例えば、紙やすり及び/又はアルミナを用いて研磨すること
ができる。該方法は、脱気精製水、例えば、脱気MilliQ水中で実施することができる。任
意に、NaClの添加、並びにその後の沈殿及び濾過によって、余分なAg+イオンを除去する
ことができる。
【0098】
本明細書で使用されるAQCに対する言及は、水和物の形態のものを含む、すなわち、こ
れは、非共有結合を介してクラスターに結合した水分子を有する。
【0099】
本明細書に記載されているように、増大する硫黄酸化の機構は、5個の金属原子からな
るAQCに特有であるが、それは、これらのクラスターのサイズが硫黄原子とROSの相互作用
を可能にするからである。それゆえ、理論に束縛されるものではないが、本発明の組成物
は、他のサイズのクラスター(例えば、5個よりも少ない及び/又は多い金属原子を含むク
ラスター)からなるAQCを全く含まないものである必要はないことが理解されるであろう。
一実施態様において、組成物は、約50%超、例えば、約55%、約60%、約65%、約70%、
約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%超の5個のゼロ価遷移金属原
子からなるAQCを含む。特に、組成物中に存在する約95%超のAQCは、5個のゼロ価遷移金
属原子からなる。一実施態様において、組成物は、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQC
から本質的になる。さらなる実施態様において、組成物は、5個のゼロ価遷移金属原子か
らなるAQCからなる。
【0100】
本発明の一実施態様において、組成物は、5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子からな
るAQCを実質的に含まず、例えば、組成物は、約10mol%(組成物の全AQC含量に基づくモル
濃度百分率)未満、例えば、約7mol%未満、約5mol%未満、約2mol%未満、約1mol%未満
、又は約0.5mol%未満の5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含有すること
ができる。
【0101】
本発明の一実施態様において、組成物は、5個よりも少ないゼロ価遷移金属原子からな
るAQCを実質的に含まず、例えば、組成物は、約10mol%(組成物の全AQC含量に基づくモル
濃度百分率)未満、例えば、約7mol%未満、約5mol%未満、約2mol%未満、約1mol%未満
、又は約0.5mol%未満の5個よりも少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含有すること
ができる。5個よりも少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCは、2、3、又は4個のゼロ価
遷移金属原子からなるAQCを含む。
【0102】
一実施態様において、組成物は、金属イオンを実質的に含まない。金属イオンは、多く
の場合、AQCの合成時の副生成物である。これらは、例えば、NaClを用いて除去すること
ができる。金属イオンに対する言及は、AQCに含まれる遷移金属のイオンに関するもので
あることが理解されるであろう。
【0103】
一実施態様において、組成物は、約20mol%未満、例えば、約15mol%、10mol%、5mol
%、2mol%、1mol%、又は0.5mol%未満の金属イオン(すなわち、AQCを合成するために使
用される遷移金属の遊離イオン)を含有する。
【0104】
本発明のさらなる態様によれば、5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子及び/又は金属イ
オンからなるAQCを実質的に含まない(すなわち、20%、15%、10%、5%、2%、1%未満
の)2~5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物が提供さ
れる。本発明のさらなる態様によれば、5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子及び/もしく
は金属イオンからなるAQC並びに/又は5個よりも少ないゼロ価遷移金属原子及び/もしくは
金属イオンを実質的に含まない(すなわち、20%、15%、10%、5%、2%、1%未満の)5個
のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物が提供される。
【0105】
5個よりも多い又は少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCを除去するために組成物を精
製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Portoらの文献(2018) Adv Mater. 30(
33): e1801317に記載されている通りである。そのような方法は:(i)AQCの混合物を含む溶
液を分離媒体に適用すること(ここで、該分離媒体は、5個よりも多くのゼロ価遷移金属原
子からなるAQCに結合するか、又は結合しないかのいずれかである);及び(ii)5個のゼロ価
遷移金属原子からなるAQCを単離することを含むことができる。
【0106】
一実施態様において、分離媒体は、クロマトグラフィー法で使用される。クロマトグラ
フィーは、混合物を含む移動相を固定相(例えば、本明細書に記載される分離媒体を含む)
に通すことにより、混合物を分離するために使用される方法である。混合物は、移動相の
成分が固定相と相互作用するやり方に基づいて分離される。保持又は廃棄される画分は、
内容物及び5個のゼロ価遷移金属原子が存在するかどうかによって決まることが理解され
るであろう。例えば、分離媒体が5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子からなるAQCを保持
する場合、溶出物(5個以下のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む)を収集する。或いは
、分離媒体が5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを保持する場合、溶出物(5個よりも多
い及び/又は少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む)を廃棄する。一実施態様にお
いて、分離媒体は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。そのようなクロマトグラフ
ィーカラムは、市販されている。
【0107】
分離媒体は、例えば、特定のサイズのAQCに結合する官能基、例えば、3個よりも多くの
ゼロ価遷移金属原子からなるAQCに結合するチオール基を含むことができる。或いは、官
能基は、芳香族基、例えば、環式又は多環式芳香族基を含むことができる。分離媒体は、
例えば、実質的に二本鎖であるデオキシリボ核酸(DNA)を含むこともできる。3個の金属原
子のクラスターは、クラスター中の原子の数に厳密に依存し、かつ二重らせんの塩基対(G
CのAT)のタイプに依存しないインターカレーションを介して、DNAと相互作用することが
分かっている。それゆえ、DNAを用いて、3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを分離す
ることができる。
【0108】
一実施態様において、分離媒体は、透析法で使用される。透析は、半透膜を通るその拡
散の速度に基づいて分子を分離する方法である。例えば、AQCの混合物を含む溶液を分離
媒体に適用し、その後、透析装置(例えば、透析カセット又は透析チューブ)に入れること
ができる。そのような透析カセット、チュービング、又は装置は、市販されている。分離
の要件に従って(例えば、分離媒体中で使用されるDNAの分子量に従って)選択された分子
量カットオフを有する透析膜を選択することができる。
【0109】
本明細書に開示される1以上の精製方法を組み合わせて実施し、かつ/又は1回以上反復
することができることが理解されるであろう。精製方法を複数回実施することにより、試
料の精製が増大し、達成されるべき所望の精製が可能になることができる。
【0110】
(治療方法)
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害を予防及び/又は治療する方法であって、5個
のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、
それを必要としている患者に投与することを含む、方法が提供される。一実施態様におい
て、該方法は、追加の抗新生物薬で患者を治療することを含まない。
【0111】
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害を予防及び/又は治療する方法であって、本
明細書に記載される組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投与することを
含む、方法が提供される。
【0112】
本発明の一態様によれば、細胞増殖性障害を有する患者を治療する方法であって、本明
細書に記載される組成物を投与することを含む、方法が提供される。組成物について先に
本明細書に記載されている実施態様(例えば、投与のタイミング及び様式、組成物の製剤
、など)を該治療方法に適用することができる。
【0113】
本発明の一態様によれば、癌の転移を予防及び/又は治療する方法であって、本明細書
に記載される組成物を投与することを含む、方法が提供される。一実施態様において、該
方法は、癌のリンパ節転移を予防及び/又は治療する。さらなる実施態様において、該方
法は、肺癌の転移を予防及び/又は治療する。
【0114】
一実施態様において、本明細書に記載される治療方法は、例えば、組成物の投与後、患
者を放射線療法で治療することをさらに含む。先に本明細書に記載されているように、本
発明の組成物は、放射線療法増感剤として特に使用されている。
【0115】
一実施態様において、組成物は、経口、静脈内、又は皮下投与される。
【0116】
一実施態様において、組成物は、放射線療法と同時に又はその前に投与される。
【0117】
一実施態様において、該方法は、3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の
治療有効量を投与することをさらに含む。一実施態様において、3個のゼロ価遷移金属原
子からなるAQCを含む組成物は、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物と同
時に又は逐次的に投与される。
【0118】
患者は、障害に罹患している任意の対象であることができる。一実施態様において、患
者は、哺乳動物である。さらなる実施態様において、哺乳動物は、ヒト又はマウスから選
択される。
【0119】
一実施態様において、組成物及び放射線療法の治療効果は、相乗的である。一実施態様
において、組成物は、患者の癌細胞を放射線療法に対して感作する。
【0120】
該方法は、放射線の治療有効量を投与することを含む。放射線療法で使用される放射線
の量は、グレイ(Gy)単位で測定され、治療されている癌のタイプ及びステージによって様
々に異なる。さらに、放射線の総線量は、負の副作用を最小限に抑えるために、数日間に
わたる、「分割(fraction)」として知られる、複数のより小さい線量に分割することがで
きる。大人向けの典型的な分割スケジュールは、1日当たり1.8~2Gyを週5日である。小児
向けの典型的な分割スケジュールは、1日当たり1.5~1.8Gyを週5日である。
【0121】
一実施態様において、合計少なくとも約10Gy、例えば、15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy
、40Gy、45Gy、50Gy、55Gy、60Gy、65Gy、70Gy、75Gy、80Gy、85Gy、90Gy、95Gy、又は10
0Gyが、それを必要としている患者に投与される。患者は、週に3、4、又は5回、放射線を
受けることができる。治療の全過程は、癌のタイプ及び治療の目的に応じて、1~7週間続
く可能性がある。一実施態様において、放射線療法は、少なくとも2、3、又は4週間、例
えば、2~6週間、例えば、2~4週間又は5~8週間、特に、5~7週間にわたって行われる。
例えば、患者は、2Gy/日の線量を、約30日間(すなわち、4~5週間)、受容することができ
る。
【0122】
一実施態様において、放射線は、週に連続5日間、1日に少なくとも1回投与される。例
えば、放射線は、1日に少なくとも1回、少なくとも約2Gy分割で投与される。一実施態様
において、放射線は、週に3回、1日おきに投与される。例えば、放射線は、週に3回、1日
おきに、10Gy分割で投与される。
【0123】
一実施態様において、放射線療法は、少分割される。少分割は、少ない受診でより高い
線量の放射線を送達する治療レジメンである。代わりの実施態様において、放射線療法は
、過分割される。過分割は、総線量を分割してより多くの送達にする治療レジメンである
。線量を選択するとき、患者が化学療法を受けているかどうかということ、患者の併存疾
患、放射線療法が外科手術の前後に投与されているかどうかということ、及び外科手術の
成功度を含む、多くの他の因子が考慮されることが理解されるであろう。
【0124】
別の態様によれば、本発明は、放射線療法を受けている患者における非増殖細胞の損傷
を予防する方法であって、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の治療有効
量を放射線療法の前に該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0125】
本発明の一態様によれば、転移、例えば、リンパ節転移を治療する方法であって、5個
のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の治療有効量を、放射線療法と組み合わ
せて、それを必要としている患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0126】
(キット)
本発明の一態様によれば、医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体と任
意に混合されている、本明細書に記載される組成物:を含むキット・オブ・パーツが提供
される。本発明のこの態様によるキットは、細胞増殖性障害の治療において使用すること
ができる。
【0127】
一実施態様において、キットは、細胞増殖性障害の治療のための放射線療法と組み合わ
せて使用することができる。
【0128】
(さらなる態様)
本発明の一態様によれば、5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含むアポトーシス剤
が提供される。アポトーシス剤は、本明細書に記載される組成物を含むことができる。
【0129】
本発明の別の態様によれば、チオール酸化を誘導する方法であって、本明細書に記載さ
れる組成物を、活性酸素種(ROS)と任意に組み合わせて投与することを含む、方法が提供
される。本明細書に記載されているように、5個の原子からなるAQCは、細胞内に存在する
ROSとタンパク質のシステイン残基中の硫黄原子の間の触媒架橋をもたらす。それゆえ、
本発明の組成物を用いて、チオール酸化を増強することができる。ROSの追加は、標的がR
OSを既に含有しているかどうかによって決まる。
【0130】
本発明者らは、5個の原子からなるAQCが強い殺菌作用を有するという証拠も提供してい
る。それゆえ、本発明の別の態様によれば、細菌によって引き起こされる疾患の治療にお
いて使用するための、本明細書に記載される組成物が提供される。
【0131】
以後、本発明を以下の非限定的な実施例において例示することにする。
【0132】
(略語)
本明細書で使用される単位は全て、(別途規定されない限り)当技術分野で公知のその標
準的な定義で理解されるべきである。
A549 ヒト肺腺癌細胞株
Ag 銀
Ag5 5個の銀原子
AQC 原子量子クラスター
ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション
BBB 血液脳関門
B-CLL B-慢性リンパ球性白血病
CDDP シスプラチン
Cul3 カリン3
Cys システイン
DAPI 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール
DHE ジヒドロエチジウム
DMEM ダルベッコの改変イーグル培地
DSMZ ドイツ微生物細胞培養コレクションGmbH
DTT ジチオトレイトール
FBS 胎仔ウシ血清
GBM 多形性膠芽腫
GPx グルタチオンペルオキシダーゼ
GRX1 グルタレドキシン1
GSH グルタチオン
GSSG グルタチオンジスルフィド
H2O2 過酸化水素
HCT116 ヒト結腸直腸癌 細胞株
HEK293 ヒト胎児腎臓293細胞株
HMOX1 ヘムオキシゲナーゼ-1
Keap1 Kelch様ECH関連タンパク質1
Luc 北米ホタルルシフェラーゼ遺伝子
MCF7 ヒト乳腺癌細胞株
MCTS 多細胞腫瘍スフェロイド
MEC-1 ヒトB-慢性リンパ球性白血病細胞株
MM.1S ヒト多発性骨髄腫細胞株
MRE 金属応答性エレメント
MT メタロチオネイン
MTT 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド
MTF-1 金属応答性転写因子1(MTF-1
NaCl 塩化ナトリウム
NAD(P)H ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート
Neh Nrf2-ECH相同性ドメイン
NEM N-エチルマレイミド
NQO-1 NAD(P)Hキノンオキシドレダクターゼ
Nrf2 核因子(赤血球由来2)様2
O2 酸素
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PFA パラホルムアルデヒド
RL ヒト非ホジキンリンパ腫細胞株
roGFP 還元-酸化感受性緑色蛍光タンパク質
ROS 活性酸素種
TEM 透過型電子顕微鏡検査
U87 ヒト多形性膠芽腫細胞株
XANES X線吸収端近傍構造
【0133】
(材料及び方法)
(試薬及び材料)
別途規定されない限り、試薬は全て、Sigma Aldrich社, Spainから購入した。銀シート
(99%)は、Goodfellow Cambridge社, Huntingdon, UKから購入した。アルミナナノ粒子(
平均サイズ≒50nm)及びクロスパッドは、Buehler, Dusseldorf, Germanyから購入した。
【0134】
紙やすり(1,000グリット)は、Wolfcraft Espana S.L, Madrid, Spainにより供給された
。水性溶液は全て、Millipore製のDirect-Q8UVシステム(Millipore Iberica S.A., Madri
d, Spain)を用いて、MilliQ等級水で調製した。雲母シート(等級V-1 Muscovite)は、SPI
Supplies, West Chester, PA, USAから購入した。
【0135】
(X線吸収端近傍構造(XANES))
S K-エッジ(2470eV) XANES実験を、S K-端で約0.5eVの分解能を達成するための1mmのス
リット開口を有するInSb(111)二結晶モノクロメーターが装備されたシンクロトロン放射
光研究所(Laboratorio Nacional de Luz Sincrotron)(LNLS, Campinas, Brazil)のde SXS
ビームラインで実施した。X線吸収スペクトルを、各々の測定された端のS Kα1,2(それぞ
れ、2309.5及び2308.4eV)輝線からの放出されたX線を収集して、蛍光モードで記録した。
吸収実験を、10-8mbarの真空中、室温、並びに活性酸素種を用いる実験のために特別に設
計された特殊な液体試料ホルダー中、室温及び大気圧のいずれかで実施した。光子エネル
ギーを、Vairavamurthyの文献(1998) Spectrochim. Acta. A. Mol. Biomol. Spectrosc.
54: 2009-2017により以前に報告された基準に従って、2481.5eVという値をNa2S2O3の最高
の最大値(いわゆる、内圏に対応する)に割り当てることにより較正した。最終的なXANES
スペクトルを、別所に記載されている通常の手順に従って、バックグラウンド減算及び後
端部強度への正規化の後に取得した。XANES定量をAthenaソフトウェアで、その後の解析
をOrigin labソフトウェアで実施した。グルタチオン特徴解析については、検出可能な値
のAg又はS濃度を有するために、溶液の一部をドロップキャスティングによって炭素ディ
スク(Ted Pella社)上に堆積させた。チオレドキシン試料については、これらを、この実
験のために特別に設計された液体試料ホルダー中に慎重に入れた。同じ細胞内pH及びイオ
ン強度を再現する目的で、PBS溶液をチオレドキシンとの全ての反応混合物における溶媒
として使用した。ヒドロキシルラジカル溶液をH2O2及びFeCl2とのFenton反応により調製
した。
【0136】
(細胞株)
本研究の開発において使用された細胞株には: A549(ヒト肺腺癌、DSMZ番号: ACC 107)
、A549 Luc-C8(Bioware(登録商標))、MCF7(ヒト乳腺癌、DSMZ番号: ACC 115)、HCT116(ヒ
ト結腸直腸癌、ATCC番号: CCL-247)、HEK293(腎臓、ヒト由来の胚)、U87-luc(ヒト多形性
膠芽腫、Joan Seoaneにより親切に提供された)、U251-Luc(ヒト膠芽腫、Joan Seoaneによ
り親切に提供された)、MM.1S(ヒト多発性骨髄腫、ATCC番号: CRL-2974)、RL(ヒト非ホジ
キンリンパ腫、ATCC番号: CRL-2261)、及びMEC-1(ヒトB-慢性リンパ球性白血病、DSMZ番
号: ACC 497)が含まれた。A549、A549-Luc、MCF7、U87-Luc、及びHCT116は、固形腫瘍に
由来し、単層として接着して増殖する一方、MM.1S、RL、及びMEC-1は、血液学的悪性腫瘍
に由来し、懸濁状態で増殖する。A549、A549-Luc、U251-Luc、及びHEK293細胞株をDMEM低
グルコース(D6046、Sigma)中で; MCF7及びU87-Luc細胞株をDMEM高グルコース(D5671、Sig
ma)中で; HCT116、MM.1S、及びRLをロズウェルパーク記念研究所(RPMI) 1640培地(R-5886
、Sigma)中で、及びMEC-1細胞株をDMEM/栄養混合物F-12 Ham混合物1:1中で維持した。培
地に、10%胎仔ウシ血清並びに1%(v/v)のL-グルタミン、ペニシリン、及びストレプトマ
イシン(Gibco)を補充した。安定なトランスフェクト細胞を選択するために、改変細胞株(
A549-Luc及びU87-Luc)に、ピューロマイシン(A549-Lucについては、1.3μg/ml、U87-Luc
については、5μg/ml)を補充した。細胞株は全て、5%CO2及び95%大気の存在下、湿潤雰
囲気中、37℃で培養した。
【0137】
(動物)
Janvier Laboratoriesによって供給される、体重約20~25gかつ8~12週齢の雌の無胸腺
ヌードマウスをインビボ試験で使用した。動物を実験前に少なくとも1週間順応させ;それ
らを、22℃の平均温度で、毎日、12時間の明及び12時間の暗に曝露させて、換気したポリ
プロピレンケージで飼育した。全てのマウスは、適宜、標準的な実験食及び水を受容した
。実験は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学生命倫理委員会の規則(Rules of the
Santiago de Compostela University Bioethics Committee)に従い、かつスペイン国内法
(RD 53/2013)による実験動物の管理に関する原則(Principles of Laboratory Animal Car
e according to Spanish national law)を順守して実施した。
【0138】
(インビトロ細胞毒性アッセイ)
細胞毒性をMTTアッセイにより評価した。増殖細胞: A549(4×103細胞/ウェル)及びU251
(5×103細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種した。24時間後、培地を廃棄し、様々な
濃度のAg5-AQC(1.2~0.24mg/L)を含有する無血清培地に1時間交換し、完全培地中でさら
に24時間増殖させておいた。B-CLL初代培養物(4×104細胞/ウェル)を無血清培地中に播種
し、様々な濃度のAg5-AQC(1.2~0.24mg/L)を直ちにウェルに30分間添加した。その後、完
全培地を添加し、細胞を24時間増殖させておいた。非増殖細胞(コンフルエント又は血清
除去): A549細胞(4×103細胞/ウェル)及びU251(5×103細胞/ウェル)を96ウェルプレート
に播種した。コンフルエントな細胞を培地-10%のFBS中で96時間増殖させておき、コンフ
ルエンスに到達させた。血清除去細胞については、播種から24時間後、培地を培地-0.05
%のFBSに72時間交換した。両方の条件において、細胞の非増殖状態をフローサイトメト
リーにより確認した。その後、細胞を、無血清培地中で1時間、Ag5-AQC(1.2~0.24mg/L)
で処理し、完全培地中でさらに24時間インキュベートした。
【0139】
その後、試験した全ての条件について、10μlのMTT溶液(5mg/ml)を各々のウェルに添加
し、遮光して37℃でインキュベートした。4時間後、100μlの可溶化溶液(SDS/0.1NHCl)を
添加し、試料を37℃で18時間インキュベートした。吸光度を、CLARIOstar(登録商標)マイ
クロプレートリーダーを用いて、595nmで測定した。同様のプロトコルに従って、MTTアッ
セイを用いて、他の細胞型についての細胞生存率を測定した。
【0140】
(生細胞におけるGSH酸化の放射測定)
PREMO Cellular Redox Sensor Grx-1-roGFP(Molecular Probes, P36242)は、生細胞に
おけるグルタチオンレドックス状態の変化を検出するために使用される遺伝的にコードさ
れたセンサーである。このセンサーは、GFPタンパク質のβ-バレル構造への2つのシステ
インの導入をベースにしている。酸化条件下において、ジスルフィド結合の形成は、バイ
オセンサーの蛍光特性を変化させ、2つの異なる波長(400及び488nm)における励起後の発
光強度の変化をもたらす。発光強度の比は、roGFPのレドックス状態の変化と相関する。
【0141】
Ag5-AQCの存在下におけるGSHの酸化状態の変化を解析するために、2.5×104個のA549細
胞を35mmプレートディッシュ(Mattek. P35GC-0-10-C)に播種し、細胞がプレーティングさ
れた直後に、PREMO Cellular Redox Sensor Grx-1-roGFPを形質導入した。センサー容量
をこの方程式に従って計算した:
センサー容量(ml)=(細胞の数)×(MOI)/(1×108)
式中、「細胞の数」は、ディッシュ当たりの播種された細胞の数であり; MOIは、細胞
当たりのウイルス粒子の数であり、1×108は、試薬1ml当たりのウイルス粒子の数である
【0142】
この方程式から得られた結果に従って、培養培地1ミリリットル当たり60μlのPREMO Ce
llular Redox Sensorを添加した。試料を48時間インキュベートして、センサーの最適な
発現を取得し、Leica TCS SP5 X共焦点顕微鏡を用いて、生細胞のレドックス変化を電動
化した。Ag5-AQC(IC50)をディッシュに添加し、画像を10秒毎に10分間撮影した。PREMO C
ellular Redox Sensorを400及び488nmで励起し、放出を500~530nmで収集した。各々の細
胞によって放出された蛍光強度を両方の励起で測定し、400ex/488exの比を計算した。Ima
geJソフトウェアを用いて、画像を処理した。
【0143】
(免疫蛍光)
MTF-1: A549(2.5×104個)細胞を24ウェルプレート中のガラスカバースリップ上で増殖
させ、Ag5-AQC(IC50)で、無血清培地中、1時間処理し、その後、培地を完全培地に2時間
交換した。HEK293(8×104個)細胞を24ウェルプレート中のガラスカバースリップ上で増殖
させ、Ag5-AQC(IC50)、DTT(0.5mM)、又は両方の組合せで、無血清培地中、10又は30分間
、その後、培地で処理した。その後、細胞をPBS Ca2+/Mg2+で2回洗浄し、メタノール/ア
セトン(希釈1:1)で、-20℃で10分間固定した。その後、該細胞を、10%FBSを含有するPBS
で1時間ブロッキングし、PBSで2回洗浄し、MTF-1に対する一次抗体(希釈1:200)(sc-48775
、Santa Cruz Biotechnology)とともに4℃で一晩インキュベートした。その後、細胞を洗
浄し、0.25μg/mlのAlexa Fluor-594ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(希釈1:500)(A11037、Life
Technologies)及びHoechst(希釈1:1000)(Molecular Probes)とともに45分間インキュベ
ートした。染色された細胞を含むカバースリップを、Fluoroshield Mounting Medium(F61
82、Sigma)を用いてスライドガラス上に装着した。Leica TCS SP8共焦点顕微鏡を用いて
画像を取得し、LasXソフトウェアを用いて解析した。
【0144】
Nrf2: HEK293細胞(3×104個)を24ウェルプレート中のガラスカバースリップ上に一晩播
種し、Ag5-AQC(IC50)、DTT(0.5mM)、又は両方の組合せで、無血清培地中、10又は30分間
処理した。処理後、細胞をホルマリン溶液(10%)中で30分間固定し、PBS Ca2+/Mg2+で2回
洗浄し、0.5%Triton X-100で5~10分間透過処理した。その後、細胞を再度洗浄し、1%B
SAを含有するPBSでブロッキングした。その後、細胞を、Nrf2に対する一次抗体(希釈1:10
0)(sc-722, Santa Cruz Biotechnology)とともに、室温で2時間インキュベートし、PBSで
2回洗浄し、Alexa Fluor-594ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(希釈1:250)(A11037、Life Techno
logies)及びHoechst(希釈1:1000)(Molecular Probes)とともに45分間インキュベートした
。一次抗体なしの陰性対照を解析に含めた(データは示さない)。染色された細胞を含むカ
バースリップを、Fluoroshield Mounting Medium(F6182、Sigma)を用いてスライドガラス
上に装着した。Leica TCS SP8共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、LasXソフトウェアを
用いて解析した。
【0145】
(ROS測定)
スーパーオキシド指示薬のジヒドロエチジウム(DHE)(Molecular Probes、D11347)を用
いて、フローサイトメトリー測定を行った。細胞を12ウェルプレートディッシュに播種し
、無血清培地中、Ag5-AQC(IC50)で処理した。処理から30分、1、2、及び3時間後に、細胞
を回収し、冷PBSで2回洗浄し、DHE(3.17mM)とともに室温で20分間インキュベートし、遮
光した。InCyteソフトウェアとともにGuava EasyCyteフローサイトメーターを用いて、染
色された細胞を解析した。
【0146】
(多細胞腫瘍スフェロイド)
A549及びU251多細胞腫瘍スフェロイド(MCTS)をハンギングドロップ法により作製した。
500個の細胞を含有する20μlの細胞懸濁液を60ウェルミニトレイ(Nunc)に分配した。その
後、トレイを逆さまにし、標準的な条件下で5日間インキュベートした。5日目に、トレイ
を直立させ、スフェロイドを、50μlの1%アガロースでコーティングした96ウェルプレー
トに移した。その後、スフェロイドをAg5-AQCで1日おきに4回処理し、Olympus DP72カメ
ラ及びCellSens Imaging Softwareが装着されたOlympus IX51顕微鏡を用いて、スフェロ
イドの画像を処理の終了まで毎日取得した。画像をImageJを用いて処理し、スフェロイド
面積と細胞密度の間接的指標としての濃淡比の差を測定した。
【0147】
実験の最後に、スフェロイドを5μMのImage-iT Green Hypoxia Reagent(Molecular Pro
bes、I14834)及びHoechst(1μg/μl)で1時間染色した。対照及び処理したスフェロイドの
画像をLeica AOBS-SP5共焦点顕微鏡検査で取得し、ImageJソフトウェアを用いて解析した
【0148】
(Ag5-AQCのインビボ有効性)
Borrajoらの文献(2016) J. Control Release 238: 263-271に記載されているプロトコ
ルに従って、A549luc同所性肺癌モデルを開発した。50μlのPBSに懸濁した1×106個のA54
9Luc細胞を肋間腔から無胸腺ヌードマウスの左肺に注射した。腫瘍の発生後、イメージン
グの約5分前に、ルシフェリン注射を150mg/kg体重の用量で腹腔に行った。ルシフェラー
ゼ生物発光を、蒸発イソフルラン麻酔下でIVIS LIVING IMAGEシステム(Caliper Life Sci
ences)を用いてイメージングした。
【0149】
Ag5-AQC処置のために、マウスを3つの群(各々に5匹の動物)に分け:第一の群(対照)は、
処置を受けさせず、第二の群は、シスプラチン(CDDP)(4回の単一用量、4mg/kg)で処置し
、第三の群は、Ag5-AQC(4回の単一用量、0.25mg/kg)で処置した。腫瘍を接種した後、薬
物を、20、22、24、及び26日目に、尾静脈から静脈内適用した。37日目に、マウスを屠殺
した。肺及び縦隔リンパ節を除去し、体内のタンパク質のマイクログラム当たりの発光を
Borrajoらの文献(2016)に記載されている通りに定量した。
【0150】
(組織学的解析)
肺を10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定し、パラフィンに包埋した。4mm厚の切片
をFLEX IHC顕微鏡スライド(Dako-Agilent, Glostrup, Denmark)上に標本化し、60℃で1時
間加熱した。AutostainerLink 48(Dako-Agilent)を用いて、免疫組織化学的技法を自動で
実施した。脱パラフィン処理及びEnVision FLEX標的賦活化溶液(高pH)中、97℃で20分間
のエピトープ賦活化の後、スライドをPT Link中で65℃に、その後、Dako洗浄バッファー
中、室温(RT)で5分間、冷却させておいた。免疫染色プロトコルには:(1)EnVision FLEXペ
ルオキシダーゼブロッキング試薬(Dako-Agilent)で5分間;(2)使用準備済みのFLEX一次抗
体(Dako-Agilent)抗CK7(クローンOV-TL12/30)で20分間;(3)EnVision FLEX/HRP(西洋ワサ
ビペルオキシダーゼ並びに親和性単離ヤギ抗マウス及び抗ウサギ免疫グロブリンとコンジ
ュゲートされたデキストランポリマー)で20分間;(4)基質作業溶液(ミックス)(3,3'-ジア
ミノベンジジンテトラヒドロクロリド色原体溶液)(Dako-Agilent)で10分間;並びに(5)EnV
ision FLEXヘマトキシリン(Dako-Agilent)で9分間のRTでのインキュベーションが含まれ
た。切片を調べ、Olympus DP70カメラが装備されたOlympus PROVIS AX70顕微鏡を用いて
写真撮影した。
【0151】
(放射線処理)
A549(3×104細胞/ウェル)及びU251(3.5×104細胞/ウェル)細胞を24ウェルプレートに播
種し、96時間インキュベートして、コンフルエンスに到達させた。その後、培地を、様々
な希釈のAg5-AQC(A549については、1:50、1:75、及び1:100、並びにU251については、1:1
50、1:175、及び1:200)を含有するFBSを含まない培地に交換した。Ag5-AQCで10分間の前
処理の後、サンディエゴ大学(Universidade de Santiago)の放射線物理研究所(Radiation
Physics Laboratory)の線形加速器を用いて、細胞に、0~10Gyの線量で放射線照射した
【0152】
(統計解析)
統計解析は全て、GraphPad Prism Version 5.0ソフトウェア(GraphPad Software社、La
Jolla, USA)を用いて実施した。差は、*p<0.05の場合は有意、*p<0.01の場合は非常に
有意とみなした。
【0153】
(実施例1: Ag5-AQC合成法)
Biologic VMP3 potentiostat(Seyssinet-Oarsetm France)を用いて、Ag5-AQCクラスタ
ーの合成を25℃で行った。水素電極を参照とし、2つのAgホイル(17.5cm2表面積)を対電極
及び作用電極とするMethrom製の絶縁3電極電気化学セルを使用した。これらの電極は互い
に向き合い、3cmの距離を離して隔てられた。第一の工程は250μAで1時間、第二の工程は
480μAで1時間、第三の工程は1mAで1時間、第四の工程は2.2mAで1時間、2回の最終工程は
各々25℃で4mAで30分間である。合成前と4時間後及び4時間半後にも、両方の銀電極を、
紙やすり、その後、アルミナ(約50nm)で研磨し、MilliQ水で徹底的に洗浄し、超音波処理
した(各々の工程で水を5分間交換する2回の工程)。超音波処理後及び合成前に、水中、25
0mAで5分間の工程からなる電気化学的浄化を行った。
【0154】
精製:溶液中の未反応イオンの量をAgイオン選択的電極(Hanna)により推定した。Agイオ
ン濃度の1.5倍の量のNaClをAgイオンの沈殿に使用した。完全な沈殿のために、このシス
テムを、夜間、25℃で放置した。
【0155】
濃度: 16の合成物をまとめて回収し(合計8L)、0.1μmの膜に通して濾過し、ロータリー
エバポレーター(Heidolphlaborota 20)中、35℃(≒30mbarの真空)で10mLの容量に濃縮し
た。最後に、この溶液を0.22ミクロンの膜に通して濾過し、バイアル中でさらに2mLまで
濃縮した。精製及び濃縮のプロセスの終了時のAg5-AQCの濃度は、フレーム原子吸光分析(
Perkin-Elmer製の銀中空陰極ランプLumia(Madrid, Spain)(電流10mA)を備えたPerkin-Elm
er 3110を用いて実施)によって推定された、約30mg/Lである。質量スペクトル分析は、主
にAg5-AQC種が存在すること(約>50%)を示している。
【0156】
クラスター試料を、UV-Vis及び蛍光分光法、AFM(原子間力顕微鏡法)、HRTEM(高分解能
透過型電子顕微鏡法)、XANES、並びにESI-TOF(エレクトロスプレーイオン化飛行時間型)
質量分析により特徴解析し、その組成がN=5個の原子(Ag5-AQC)を有するクラスターを主
に含有することが示された。
【0157】
(実施例2: Ag5との相互作用のモデル)
Ag5-AQCとグルタチオン及びチオレドキシンとの相互作用の理論的モデルにより、この
反応が熱力学的に起こり得ることが示されている。さらに、Ag5-AQCは、「チオレドキシ
ンフォールド」と命名された、原核生物と真核生物の両方のタンパク質に見られるチオレ
ドキシンの基本ドメインと選択的に相互作用する。このフォールドの多くの領域における
配列のばらつきにもかかわらず、チオレドキシンタンパク質は、2つの反応性システイン
残基: Cys-X-Y-Cys(ここで、X及びYは、多くの場合、疎水性アミノ酸であるが、必ずしも
そうであるとは限らない)を有する共通の活性部位配列を共有している。理論によって束
縛されるものではないが、Ag5-AQCは、図1に示されるような、これら2つのシステイン残
基と相互作用するように思われる。
【0158】
(実施例3: Ag5-AQCは硫黄酸化を促進する)
Ag5-AQCは、X線吸収端近傍構造(XANES)を用いて見られるようなシステイン及びグルタ
チオンにおける硫黄酸化を促進する(図2)。さらに、この反応は、用量依存的である(図3)
。大腸菌チオレドキシンは、Ag5-AQCの存在下で酸化されることも示されている(図4)。予
想通り、純粋なチオレドキシン分子は、その2つのシステイン基に対応する、S(-2)酸化状
態と一致した、2474.3eVでのピークしか示さない。2473~2475eVの範囲で約1.5eVの特徴
的な分裂を有するジスルフィド種のシグナルが観察されないので、この分子の還元形態を
Ag5-AQCによる触媒処理の前に確認することができることに留意することが重要である。A
QCによる処理の後、S+6に関連した強いピークが明確に視認できる。
【0159】
XANES解析は、様々な電子受容体がチオレドキシンのAg5-AQC媒介性酸化に対して有する
効果も示している(図5)。生物学的な観点から、Ag5-AQCが、硫黄酸化に対する酸素、H2O2
、及びヒドロキシルラジカル(HO・)の効果を増強し、生物系において不可逆的である酸化
状態に達することを確かめることが非常に重要である。これにより、Ag5-AQC作用が細胞
代謝及び腫瘍血管化に関連付けられる(図6)。
【0160】
(実施例4: Ag5-AQCは殺菌効果を有する)
Ag5-AQCは、大腸菌に対して静菌性かつ殺菌性である。関与するメカニズムは、チオー
ル酸化であると考えられる。実際、チオール還元剤のジチオスレイトール(DTT)は、大腸
菌をAg5-AQC作用から救済する。逆もまた正しい、すなわち、Ag5-AQCは、反対の作用を有
するレドックス剤に対するものから予想される通り、大腸菌をDTT作用から救済する。銅
及び白金から作られるクラスターも殺菌活性を有する。
【0161】
DTT(0mM)の非存在下では、低濃度(1.2mg/L)のAg5-AQCによって、細菌が死滅する。DTT
を0.1mMに増大させたとき、細菌の生存率は、部分的に回復する。10mMのDTTは、細菌にと
って毒性があるが、Ag5-AQC共投与は、DTTの効果を覆す(図7)。
【0162】
(実施例5:ヒト細胞株に対するAg5-AQCの効果)
9種の細胞株のパネル: A549(ヒト肺腺癌、DSMZ番号: ACC 107)、A549 Luc-C8(BIOWARE(
登録商標))、MCF7(ヒト乳腺癌、DSMZ番号: ACC 115)、HCT116(ヒト結腸直腸癌、ATCC番号
: CCL-247)、HEK293:(腎臓、ヒト由来胚)、U87-luc(ヒト多形性膠芽腫、Joan Seoaneによ
り親切に提供された)、MM.1S(ヒト多発性骨髄腫、ATCC番号: CRL-2974)、RL(ヒト非ホジ
キンリンパ腫、ATCC番号: CRL-2261)、及びMEC-1(ヒトB慢性リンパ球性白血病、DSMZ番号
: ACC 497)を使用した。
【0163】
細胞株は全て、Ag5-AQCに対して感受性であった。図8では、用量応答(0.24~1.2mg/L)
グラフが様々な細胞株について表示されている。重要なことに、DTTをAg5-AQCと共投与し
たとき、毒性効果は低下し、これは、Ag5-AQC効果がチオール酸化によって媒介されるこ
とを示している。
【0164】
A549細胞株を用いて、銅から作られたクラスターが細胞毒性効果を示すことも分かった
図9を参照されたい。
【0165】
レドックス感受性GFP分子の開発により、蛍光顕微鏡法による生細胞内のレドックス状
態のモニタリングが可能になる。roGFP-Grx1キメラは、GFPタンパク質のβ-バレル構造に
導入された2つのシステインを介してチオール酸化の変化を測定するための遺伝的にコー
ドされたセンサーである。システイン間のジスルフィド形成は、GFPのプロトン化をもた
らし、488nm励起スペクトルを犠牲にして、400nm励起スペクトルを増大させる。A549細胞
に、このセンサーを48時間形質導入し、共焦点蛍光顕微鏡法により、蛍光強度の変化を、
Ag5-AQC(IC50-約0.3mg/L)処理後10分間、モニタリングした。対照細胞は、その時間にわ
たって、そのレドックス状態を変更しないが、試料へのAg5-AQCの添加は、6分間の処理の
後、最大シグナルまでの迅速な酸化応答をもたらした。合計34種の無作為に選択された細
胞(合計3回の実験から、実験当たり少なくとも10種の細胞)を解析し、そのうちの20種の
細胞は、Ag5-AQCへの曝露後、そのレドックス状態の明白な変化を示した。さらに、残り
の細胞のうちの13種は、その酸化状態を変更したが、その効果は、上述の20種の細胞のも
のほど顕著ではない。roGFPは、グルタレドキシン(GRX1)との電子交換を通じてGSH/GSSG
のレベルに応答し、したがって、GSHに対するAg5-AQC効果を示す(図10)。
【0166】
(実施例6: Ag5-AQCは、タンパク質中に存在する重要なチオールに対して作用する)
メタロチオネイン(MT)は、酸化剤から保護する際に重要な役割を果たす低分子量のシス
テインリッチな細胞内金属結合タンパク質の群である。MT発現は、金属応答性転写因子1(
MTF-1)の制御下にある。通常の条件下において、MTF-1は、細胞質と核の間を通るが、多
様なストレスによって、これは、核内に蓄積し、いくつかある遺伝子の中で特に、MTの発
現を誘導する金属応答性エレメント(MRE)に結合する。生理的条件下において、MTは、そ
のシステイン残基のチオール基を介して亜鉛に結合し、2つの亜鉛/チオレートクラスター
を形成するが、酸化的ストレスの条件下において、亜鉛は、亜鉛/チオレートクラスター
の酸化を通じて放出され、MT-ジスルフィドの形成をもたらす。このMT-ジスルフィド状態
は、還元環境で反転することができ、亜鉛イオンと会合して、MTを形成することができる
MT-チオールの形成をもたらす。このプロセスは、MTの生物学的機能において極めて重要
な役割を果たすMTレドックスサイクルを構成する。
【0167】
Ag5-AQCが、MT-チオールからMT-ジスルフィドへの変換を触媒することができ、亜鉛の
放出、MTF-1活性化、及び核内への移行が結果として生じると推測された。これを検証す
るために、Ag5-AQC処理後のMTF-1の位置を解析した。A549細胞をAg5-AQC(IC50-約0.3mg/
L)で処理し、2時間後、細胞を固定し、MTF-1に対する抗体で染色した。免疫蛍光画像は、
対照細胞に対して、処理細胞におけるMTF-1の明白な核蓄積を示した(図11a)。合計300個
の細胞を各々の条件についてカウントし、そのうちの242個は、Ag5-AQC処理細胞における
MTF-1の核位置が陽性であり、対照では9個が陽性であった。さらに、Ag5-AQCによる処理
から4時間後に、細胞株MM.1Sを用いて得られたマイクロアレイデータは、MTF-1活性化か
ら予想された通り、MT遺伝子がAg5-AQC処理に応答して上方調節されることを示した。
【0168】
Nrf2-Keap1経路は、一般に、細胞内で抗酸化機能を有する遺伝子の発現を制御する主要
な細胞防御経路と考えられている。基本状態において、Nrf2は、細胞質でKeap1により転
写的に抑制され、次に、これが、Nrf2のCul3媒介姓ポリユビキチン化を促進し、そのプロ
テアソーム分解をもたらす。Keap1は、27個のシステイン含有し、そのうちのいくつかは
、それらを修飾して、Nrf2の脱抑制を促進する求電子剤及び酸化剤の標的であると報告さ
れた。ストレスに曝されると、Keap1がシステインチオール残基の直接的な修飾によって
不活化され、その後、Nrf2が安定化されて、プロテアソーム分解を回避し、核に移行して
、抗酸化応答に関係があるとされる種々の遺伝子、例えば、グルタチオンペルオキシダー
ゼ(GPx)、NAD(P)Hキノンオキシドレダクターゼ(NQO-1)、及びヘムオキシダーゼ-1(HMOX1)
の活性化を媒介する。Keap1とは独立に、Nfr2を調節する他のメカニズムが存在し、これ
には、Nrf2の核内蓄積をもたらすNrf2のNehドメイン中のシステインの修飾が含まれる。A
g5-AQCがKeap1又はNrf2中のスルフヒドリル基の酸化に関与し、Nrf2の放出及び核内への
その移行が結果として生じ得ると推論された。間接的な免疫蛍光を用いて、N-エチルマレ
イミド(NEM、陽性対照)及びAg5-AQCに応答したNrf2タンパク質の局在化を評価した。NEM
は、チオールに対して反応性であり、かつタンパク質及びペプチド中のシステイン残基を
修飾するために一般的に使用されるアルケンである。A549細胞株は、Nrf2に対するその抑
制的機能を果たさなくなるKeap1活性の変化をもたらし、通常条件下での核におけるNrf2
の優勢な局在化をもたらす、Keap1遺伝子の突然変異を示す。それゆえ、この細胞株は、N
rf2細胞部位の研究に好適ではない。その代わりに、ヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞をNEM(
100μM)及びAg5-AQC(IC50-約0.3mg/L)に30分間曝露させ、その後、Keap1及びNrf2に対す
る特異的抗体で染色した。Ag5-AQC処理により、Nrf2が主に細胞質にある対照細胞と比較
して、30分後のタンパク質の安定化及び核内蓄積(青色のHoechst染色との共局在)を示すN
rf2タンパク質染色(赤色の染色)の増加がもたらされた(図11b)。予想された通り、NEM処
理は、Nrf2の核内蓄積を増大させた。Ag5-AQC及びNEMが同様の染色のパターン(分解の低
下及び核局在の増加によるNfr2発現の増大)を共有することは明白であり、したがって、
チオールに対するAg5-AQC作用を裏付けている。
【0169】
(実施例7: Ag5-AQCは多細胞スフェロイド腫瘍増殖を低下させる)
多細胞腫瘍スフェロイド(MCTS)は、ヒト腫瘍組織内の病態生理学的状態の多くの側面に
類似し、薬物試験に広く使用される。それゆえ、A549細胞のMCTSを、Ag5-AQC活性を評価
するためのエクスビボ腫瘍モデルとして開発した。MCTS中の細胞の生理的状態は、そのサ
イズに依存し; 4日間のインキュベーション後の直径約400~500μmの単一のMCTSを薬物試
験のための選択することが多い。それゆえ、MCTSをこれらの基準に従って選択し、Ag5-AQ
C(2.4mg/L)で4回(処理の最初の日を0と考えて、0、2、4、及び6日目に)処理した。対照及
び処理したMCTSの画像を0日目から7日目まで毎日取得した。ImageJを用いてMCTS面積を測
定することにより推定したとき、画像は、Ag5-AQC処理がMCTS増殖を低下させることを示
した(図12a)。MCTSサイズの低下は、処理の最初の投与の後に明白であり、長期間維持さ
れ、3日目から有意差があった(図12b)。さらに、注目すべきは、Ag5-AQCで処理されたMCT
Sの中心部分における透明な領域の存在であり、これは、より低い細胞充実度の結果であ
るように思われる(図12a、矢印)。先に記載されている通り、大きいMCTS(すなわち、600
μmを超えるサイズ)は、末梢の活発に増殖する細胞並びに内部領域の休止細胞、低酸素細
胞、及び壊死細胞を有する、不均一な細胞亜集団の存在を特徴とする。Ag5-AQC処理後のM
CTSにおけるこれらの透明な領域の存在は、その小さいサイズ及び中性電荷のおかげで、M
CTSに浸透し、これらの中心の低酸素領域に達するAg5-AQCの能力と関連すると考えられる
【0170】
この仮説を検証するために、本発明者らは、蛍光プローブを使用することにより、チュ
ーモロイドにおける低酸素のレベルを評価した。図12cに示されているように、低酸素の
レベルは、1,000個の細胞のチューモロイドの内側部分で増大する。興味深いことに、増
加濃度のAg5-AQCへのチューモロイドの曝露は、低酸素細胞の用量依存的な低下をもたら
した。
【0171】
(実施例8: Ag5-AQC作用はH2O2によって増強される)
上の実施例は、Ag5-AQCとO2、H2O2、及びヒドロキシルラジカルとの相互作用の重要性
の証拠を提供している。同じことが細胞培養物にも当てはまるという証拠が本明細書に提
供されている。Ag5-AQC細胞毒性活性は、細胞呼吸、したがって、ROSレベルが減少し、そ
れにより、細胞代謝を修飾するときに影響を受けることが示された。実際、(これらをコ
ンフルエンスに到達させた後に)呼吸が低下したA549細胞及びU251細胞は、Ag5-AQC作用に
対する感受性が低かった(図13A及び13B)。予想された通り、血清飢餓A549細胞も、増殖細
胞よりAg5-AQCに対する感受性が低かった(図13C)。感受性は、低用量のH2O2をAg5-AQCと
ともに共投与した場合に回復した(図13D)。
【0172】
(実施例9: Ag5-AQCのインビボ効果)
Ag5-AQCのインビボ効果をU87luc同所性神経膠腫癌モデル及び縦隔リンパ節に転移するA
549luc同所性肺癌モデルで試験した。
【0173】
高悪性度悪性神経膠腫である多形性膠芽腫(GBM)は、5年後の生存率が5%未満の最も攻
撃的かつ致死的な形態の脳腫瘍である。GBMの治療における主な限定要因の1つは、血液脳
関門(BBB)を横断する脳への治療剤の送達である。この高拘束性の生理的障壁は、低分子
薬物の98%及び巨大分子薬物のほぼ100%が血液循環から中枢神経系に達するのを妨げる
。生理的pHでのその中性電荷と共役したAQCの小さいサイズは、少なくとも理論上は、生
体組織におけるその拡散性に有利に働く。これらの性質により、Ag5-AQCがBBBを横断して
自由に拡散し、腫瘍に達することが可能になり得るかどうかを考慮した。この目的のため
に、U87luc同所性神経膠腫モデルを開発して、Ag5-AQCがBBBを横断し、腫瘍を低下させる
潜在的な能力を試験した。
【0174】
U87luc細胞の同所性移植の後、Ag5-AQC(0.5mg/kg)を4回静脈内投与した。IVIS(登録商
標) Spectrum Systemを用いて、脳内の腫瘍細胞の生体発光を14日間測定することにより
、腫瘍増殖を追跡した。結果は、対照動物の場合、腫瘍サイズが実験の全体を通して指数
関数的に増大する一方、Ag5-AQCで処理された動物では、腫瘍の増殖が低下することを示
した(図14a)。したがって、これらの結果は、Ag5-AQCがBBBを横断し、腫瘍に到達し、そ
のサイズを低下させることができることを示している。
【0175】
癌治療における別の限定要因は、転移の出現である。転移性疾患は、その全身性及び既
存の治療剤に対する播種性腫瘍細胞の耐性のために、大部分は治療不可能である。これに
より、癌による90%超の死亡率が、これらの悪性病変が発生する原発性腫瘍ではなく、転
移のせいである理由が説明される。縦隔リンパ節に転移する以前に記載されているA549lu
c同所性肺癌モデル(Portoらの文献(2018) Adv. Mater. e1801317)を用いて、原発性腫瘍
と転移の両方を低下又は消失させるAg5-AQCの能力を評価した。A549細胞株は、KRAS突然
変異癌細胞株であることが知られている。このモデルにおいて、リンパ節への転移の出現
は十分に確立されており、腫瘍細胞の注射から13日後に検出することができた。それゆえ
、Ag5-AQC作用の評価は、リンパ節転移が既に明らかであるA549luc細胞の移植から20日後
に開始した。3つの群:対照未処理マウス、陽性対照としてのCDDP(4mg/kg)で処理したマウ
ス、及びAg5-AQC(0.25mg/kg)で処理したマウスを樹立した。治療を静脈内に4回(20、22、
24、及び26日目に)施し、IVIS(登録商標) Spectrum Systemを用いて、肺の腫瘍細胞の生
体発光を37日間測定することにより、腫瘍の発生をインビボでモニタリングした。結果は
、腫瘍が実験の全体を通して指数関数的に増殖する対照動物と比較した、CDDP処置マウス
とAg5-AQC処置マウスの両方における腫瘍サイズの有意な低下を示した(図14b)。対照マウ
スが罹病の明白な兆候を示したので、37日目に動物を屠殺し、癌細胞の負荷を測定するた
めに、ルシフェラーゼ活性を定量した。Ag5-AQC処置マウス及びCDDP処置マウスは、対照
マウスと比較した原発性腫瘍及び縦隔リンパ節におけるルシフェラーゼ活性の有意な低下
を示した(図14c)。その後、ルシフェラーゼ活性をAg5-AQCで処理したマウス及びCDDPで処
置したマウスで比較した。Ag5-AQC処置マウスにおいて、シグナルは、原発性腫瘍と縦隔
リンパ節の両方で、他のものよりも明らかに低かった(図14b、c)。腫瘍細胞を特異的に染
色するヒトサイトケラチンに対するモノクローナル抗体による肺切片の免疫組織化学的染
色もこれらの結果を確証した(図14d)。さらに、Ag5-AQC処置は、動物の体重に影響を及ぼ
さず、化合物の重篤な毒性の可能性を排除した(図14e)。
【0176】
まとめると、これらの結果は、原発性腫瘍と転移の両方に達し、かつさらなる毒性効果
を引き起こすことなく、サイズを顕著に減少させるAg5-AQCの能力を示した。それゆえ、A
g5-AQCは、BBBを横断し、かつ転移に達し、それを低下させるその能力のため、ヒト腫瘍
の治療を改善し得る新たな手法を提供する。
【0177】
(実施例10:ヒト腫瘍由来の初代培養物に対するAg5-AQC効果)
Ag5-AQC感受性を、診断が確立した後のルーチンの骨髄培養物から得られたB-慢性リン
パ球性白血病(B-CLL)患者に由来する細胞で、エクスビボで評価した。Ag5-AQC処理に伴う
細胞毒性効果及び微細構造形態変化の評価を3人の患者に由来する細胞で実施した。B-CLL
細胞を様々な用量のAg5-AQCとともに培養し、細胞毒性をMTTアッセイにより評価した。樹
立された細胞株から得られた以前の結果と一致して、濃度依存的な細胞生存率の低下が24
時間後に観察された(図15a)。癌細胞株におけるAg5-AQCがO2・-を増大させたので、本発
明者らは、フローサイトメトリーによりDHE陽性細胞を測定して、Ag5-AQCに曝露されたB-
CLL細胞におけるO2・-のレベルの変化を定量した。処理から4時間後に、DHE陽性細胞にお
ける2倍を上回る有意な増加が観察された(図15b)。さらに、TEM画像は、Ag5-AQC処理後の
明白なアポトーシスによる形態変化及び破壊されたミトコンドリアの存在を示した(図15c
)。それゆえ、これらの結果は、上の実施例で論じられた、細胞株及びスフェロイドで得
られた結果を裏付けている。
【0178】
(実施例11:多発性骨髄腫腫瘍モデルに対するAg5-AQC効果)
Ag5-AQCの効果を多発性骨髄腫異種移植MM.1Sマウス腫瘍モデルで試験した。マウス(各
々の実験群についてn=4)を、生理食塩水溶液(対照)、0.125mg/kgのAg5-AQC、又は0.25mg/
kgのボルテゾミブ(多発性骨髄腫の治療に関して米国及び欧州で承認されているプロテア
ソーム阻害剤)で処理した。腫瘍体積を数日間にわたってモニタリングした。結果は、図1
6に示されている。結果は、Ag5-AQC処理が、投与の最適化を行わなくても、ボルテゾミブ
と同等の効力を有することを示した。
【0179】
(実施例12: Ag5-AQCはRas形質転換細胞において優先的に細胞死を引き起こす)
癌遺伝子の活性化が活性酸素種の蓄積を引き起こすことは広く報告されている(Iraniら
の文献(1997) Science)。形質転換細胞がAg5-AQCによる処理によって優先的に死滅し得る
と推測された。この仮説を検証するために、H-Rasのドキシサイクリン誘導性活性化アレ
ル(RasV12)を非形質転換不死化マウス線維芽細胞(W3T3)に導入し、癌遺伝子誘導時のAg5-
AQCの効果を解析した。図17Bに示されているように、Ag5-AQCは、用量応答的な様式でW3T
3における生存の減少を引き起こした。興味深いことに、RasV12を発現する細胞は、Ag5-A
QCの毒性効果に対してより感受性が高く、試験した全てのAQC用量で、非誘導細胞(対照)
と比較した生存率の有意な減少を伴った。
【0180】
この選択的死滅化はDTT処理によって覆され、Ras誘導性ROS蓄積が示差効果の原因であ
ることが示唆された。癌遺伝子形質転換細胞に対するAg5-AQCのこの優先的な効果は、特
に、RAS突然変異癌における抗新生物剤としてのAg5-AQCの使用の証拠を提供する。
【0181】
(実施例13:放射線療法と組み合わせたAQCの効果)
放射線で処理した細胞に対するAg5-AQC処理の効果を試験した。A549細胞及びU251細胞
を様々な希釈のAg5-AQCで処理し、様々な線量の放射線(0~10Gy)をすぐに照射した。
【0182】
細胞生存を、Frankenらの文献(2006) Nat. Protocol. 1(5): 2315-2319に記載されてい
るクローン形成アッセイを用いて測定した。簡潔に述べると、放射線照射後、細胞をトリ
プシン処理し、TC20自動細胞カウンター(Biorad)を用いてカウントした。各々の試料由来
の100個の細胞を6-ウェルプレートに3連で播種し、湿潤雰囲気下、37℃で1週間インキュ
ベートして、肉眼的コロニーの形成を可能にした。その後、細胞を固定し、クリスタルバ
イオレットで染色した。50個よりも多くの細胞を有するコロニーをカウントした。対照細
胞のプレーティング効率に対して補正した後、生存率(SF)を計算した。結果は、図18A
び19Aに示されている。これらの結果は、Ag5-AQCの投与が放射線療法の殺細胞効果を増大
させることを示している。
【0183】
DNA損傷も放射線照射細胞で測定した。放射線照射後、Muslimovicらの文献(2008) Nat.
Protocol. 3: 1187-1193に記載されている通りに、細胞をトリプシン処理し、PFA(0.04
%)で固定し、抗pH2AX抗体(Millipore, 製品番号: 16-202A)で染色した。リン酸化ヒスト
ンH2AX(pH2AX)発現は、DNA損傷のマーカーである(Sharmaらの文献、DNA修復プロトコル(D
NA Repair Protocol)(編集: L. Bjergbaek), Springer Science, New York, 2012, Ch. 4
0所収)。染色された細胞を、InCyteプログラム(Millipore)を用いて、Guava EasyCyteフ
ローサイトメーターで解析した。結果は、図18B及び19Bに示されている。
【0184】
5個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCの効果を2つの異なるモデルでさらに試験して、
放射線療法を用いる効果を決定することができる。A)多細胞腫瘍スフェロイド(MCTS)を用
いるエクスビボ試験: U251-luc細胞のMCTSをハンギングドロップ法により得ることができ
る。B)インビボモデル:同所性膠芽腫癌モデルを、無胸腺マウスの脳へのU251-luc細胞(増
殖腫瘍のインビボイメージングを可能にするためのルシフェラーゼ遺伝子を保有するヒト
膠芽腫細胞株)の注射により開発することができる。
【0185】
(結論)
本明細書に記載されているのは、高いシステイン含有量及びメタロチオネイン又はグル
タレドキシンなどの接近可能なチオール基を有するタンパク質の酸化におけるAg5-AQCの
効果である。その小さいサイズのために、Ag5-AQCは、腫瘍組織への優れた浸透を示すは
ずであるという説が出された。MTCSでの実験により、Ag5-AQCがどのようにして内部領域
に浸透し、これらの領域の低酸素細胞を死滅させるかが示された。縦隔リンパ節に転移す
る同所性肺癌モデルにより、インビボの腫瘍に達するAg5-AQCの能力が明らかにされてい
る。腫瘍サイズの低下は、肺原発性腫瘍と縦隔リンパ節転移の両方で観察された。これら
の結果は、転移に達し、それを軽減するAg5-AQCの能力を強調しており、癌治療における
大きな問題のうちの2つを解決するための革新的なツールとなる。
【0186】
本明細書に言及される全ての特許及び特許出願は、引用により完全に組み込まれる。さ
らに、本明細書に記載される全ての実施態様は、本発明の全ての態様に適用することがで
きる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-01】
図8-02】
図9
図10
図11a
図11b
図12a-b】
図12c
図13A-B】
図13C-D】
図14a-b】
図14c-d】
図14e
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞増殖性障害の治療において使用するための5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子量子クラスター(AQC)を含む組成物。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0186
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0186】
本明細書に言及される全ての特許及び特許出願は、引用により完全に組み込まれる。さ
らに、本明細書に記載される全ての実施態様は、本発明の全ての態様に適用することがで
きる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
細胞増殖性障害の治療において使用するための5個のゼロ価遷移金属原子からなる原子
量子クラスター(AQC)を含む組成物。
(態様2)
放射線療法と組み合わせた、態様1記載の使用のための組成物。
(態様3)
前記放射線療法との同時的又は連続的投与のための、態様2記載の使用のための組成物

(態様4)
前記放射線療法が外部ビーム放射線療法である、態様2又は3記載の使用のための組成物

(態様5)
前記組成物が抗新生物薬と組み合わせて使用されない、態様1~4のいずれか一項記載の
使用のための組成物。
(態様6)
前記AQCが前記組成物の唯一の活性成分である、態様1~5のいずれか一項記載の使用の
ための組成物。
(態様7)
単独化学療法として使用するための、態様1~6のいずれか一項記載の使用のための組成
物。
(態様8)
前記金属原子が、Ag、Au、Cu、Pt、Fe、Cr、Pd、Ni、Rh、Pb、Ir、Ru、Os、Co、Ti、V
、又はこれらの任意の組合せから選択される、態様1~7のいずれか一項記載の使用のため
の組成物。
(態様9)
前記金属原子が、Ag、Au、Cu、Pt、又はこれらの任意の組合せから選択される、態様8
記載の使用のための組成物。
(態様10)
前記金属原子がAgである、態様8又は9記載の使用のための組成物。
(態様11)
前記細胞増殖性障害が腫瘍及び/又は癌である、態様1~10のいずれか一項記載の使用の
ための組成物。
(態様12)
前記癌が、脳腫瘍、肺癌、乳癌、又は結腸癌から選択される、態様11記載の使用のため
の組成物。
(態様13)
前記癌が脳腫瘍から選択される、態様12記載の使用のための組成物。
(態様14)
前記細胞増殖性障害がRAS突然変異を含む、態様1~13のいずれか一項記載の使用のため
の組成物。
(態様15)
前記RAS突然変異がKRAS突然変異である、態様14記載の使用のための組成物。
(態様16)
前記組成物が、医薬として許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体を含む、態様1~15の
いずれか一項記載の使用のための組成物。
(態様17)
3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCと組み合わせた、態様1~16のいずれか一項記載
の使用のための組成物。
(態様18)
(i)5個よりも多くのゼロ価遷移金属原子からなるAQCを実質的に含まず、(ii)5個よりも
少ないゼロ価遷移金属原子からなるAQCを実質的に含まず、かつ/又は(iii)金属イオンを
実質的に含まない:態様1~17のいずれか一項記載の使用のための組成物。
(態様19)
前記組成物中に存在するAQCの約95%超が5個のゼロ価遷移金属原子からなる、態様18記
載の使用のための組成物。
(態様20)
癌の転移の予防及び/又は治療において使用するための、態様1~19のいずれか一項記載
の組成物。
(態様21)
癌のリンパ節転移の予防及び/又は治療において使用するための、態様20記載の組成物

(態様22)
肺癌の転移の予防及び/又は治療において使用するための、態様20又は態様21記載の組
成物。
(態様23)
経口、静脈内、又は皮下投与される、態様1~22のいずれか一項記載の使用のための組
成物。
(態様24)
細胞増殖性障害の治療用の医薬組成物の調製のための、態様1~23のいずれか一項記載
の組成物の使用。
(態様25)
増殖細胞のための放射線療法増感剤としての5個のゼロ価遷移金属原子からなる
原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の使用。
(態様26)
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、態様1~23のいずれか一項記載の組
成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
(態様27)
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個のゼロ価遷移金属原子からなる
原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投
与することを含み、ここで、該方法が追加の抗新生物薬で前記患者を治療することを含ま
ない、前記方法。
(態様28)
細胞増殖性障害を予防又は治療する方法であって、5個のゼロ価遷移金属原子からなる
原子量子クラスター(AQC)を含む組成物の治療有効量を、放射線療法と組み合わせて、そ
れを必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
(態様29)
前記組成物が前記放射線療法と同時に又はその前に投与される、態様28記載の方法。
(態様30)
3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物の治療有効量を投与することを含む
、態様28又は態様29記載の方法。
(態様31)
前記3個のゼロ価遷移金属原子からなるAQCを含む組成物が前記5個のゼロ価遷移金属原
子からなるAQCを含む組成物と同時に又は連続的に投与される、態様30記載の方法。
(態様32)
前記組成物が、経口、静脈内、又は皮下投与される、態様26~31のいずれか一項記載の
方法。

【外国語明細書】