(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123004
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】エキソソーム標的化二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240903BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024086669
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2021521141の分割
【原出願日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】62/746,862
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520448980
【氏名又は名称】イムノーム、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン、マシュー、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】モリン、マイケル、ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌の治療に使用することができる、エキソソームを選択的に標的化する二重特異性抗体を提供する。
【解決手段】第1のエキソソーム関連タンパク質及び第2のエキソソーム関連タンパク質としてのプログラム死リガンド1(「PD-L1」)に特異的に結合することによってエキソソームを選択的に標的化することができる二重特異性抗体に関する。これらの二重特異性抗体は、T細胞活性化を阻害する腫瘍細胞由来のエキソソームを標的とすることによって免疫細胞による抗腫瘍活性の抑制を破壊することができる。したがって、本発明の二重特異性抗体は、癌を治療するための方法において使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エキソソームタンパク質に特異的な第1の抗原結合部分、及び
(B)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に特異的な第2の抗原結合部分
を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
第2の抗原結合部分が、
(1)(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(「CDR」)1;
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
(c)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
の少なくとも1つ;ならびに
(2)(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
の少なくとも1つ
を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
第2の抗原結合部分が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ及びBMS-936559から選択される抗PD-L1抗体のVH鎖又はその断片、及びVL鎖又はその断片を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
第1の抗原結合部分が、EPN1、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90及びNKCC2から選択されるエキソソームタンパク質に特異的に結合する、請求項1~3のいずれかに記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
第1の抗原結合部分がヒトEPN1上のエピトープに特異的に結合する、請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
第1の抗原結合部分が、
(1)配列番号2のアミノ酸配列又はその断片を含む可変重鎖;及び
(2)配列番号4のアミノ酸配列又はその断片を含む可変軽鎖
を含む、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
第1の抗原結合部分が、
(1)配列番号6のアミノ酸配列又はその断片を含む可変重鎖;及び
(2)配列番号8のアミノ酸配列又はその断片を含む可変軽鎖
を含む、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
第1の抗原結合部分が、
(1)(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
(c)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
の少なくとも1つ;ならびに
(2)(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(c)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
の少なくとも1つ
を含む、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
第1及び第2の抗原結合部分が直接又はリンカーによって連結されている、請求項1~8のいずれかに記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
リンカーが、化学的リンカー又はポリペプチドリンカーからなる群より選択される、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
ノブ・イントゥ・ホール誘導体、SEED-IgG、DEKK変異型Fc、DVD-Ig、ヘテロFc-scFv、IgG-scFv、scFv2-Fc、scDB-Fcからなる群より選択される、請求項1~10のいずれかに記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
Fcドメインを含有せず、タンデムscFv、ダイアボディ、Fab-scFvからなる群より選択される、請求項1~10のいずれかに記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
完全ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1~12のいずれかに記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の二重特異性抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の少なくとも1つの二重特異性抗体と、適切な保存容器、pH緩衝液及びキットを使用するための説明書のうちの少なくとも1つとを含むキット。
【請求項16】
対象において癌を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1~13のいずれかに記載の二重特異性抗体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
二重特異性抗体が、腫瘍細胞由来のエキソソームを標的とすることによって免疫細胞による抗腫瘍活性の抑制を破壊する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗腫瘍活性の抑制がCD8+サプレッサT細胞によって媒介される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象がヒトである、請求項16~18のいずれかに記載いずれかに記載の方法。
【請求項20】
約0.5~20mg/kgの二重特異性抗体を対象に投与する、請求項16~19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、癌の治療のための抗体に基づく治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト適応免疫系は、細胞性(T細胞)プロセス及び体液性(B細胞)プロセスの両方を介して抗原投与に応答する。体液性応答は、抗原に結合することができる表面結合免疫グロブリン(Ig)分子を発現するB細胞の選択及びクローン増幅をもたらす。T細胞は、骨髄に由来する未成熟前駆体から発生し、次いで胸腺に移動し、そこで増殖して成熟Tリンパ球に分化する。
【0003】
体液性応答の発生は、クローン増幅と一致して起こる体細胞高頻度突然変異及びクラススイッチのプロセスを含む。合わせて、これらのプロセスは、標的抗原に対して親和性成熟し、4つの一般的なクラス(M、D、A、G、又はE)の1つに属する定常ドメインを含有する分泌抗体をもたらす。抗体の各クラス(IgM、IgD、IgA、IgG、及びIgE)は、細胞免疫系と異なる方法で相互作用する。標的抗原に対して親和性成熟した抗体の特徴は、1)生殖細胞系列遺伝子と比較してヌクレオチド及びその後のアミノ酸の変化、2)標的抗原に対する高い結合親和性、3)他のタンパク質と比較して標的抗原に対する結合選択性を含み得る。
【0004】
腫瘍患者が腫瘍細胞抗原に対する免疫応答を開始できることはよく理解されている。それらの抗原は、変異タンパク質をもたらす腫瘍内の遺伝的変化又は免疫系への他の正常なタンパク質の異常な提示のいずれかに起因し得る。異常な提示は、新生児タンパク質の異所性発現、細胞内タンパク質の細胞表面への誤った局在化、又は細胞の溶解を含むがこれらに限定されないプロセスによって起こり得る。タンパク質のグリコシル化の変化をもたらす酵素の異常な発現はまた、体液性免疫系によって認識される非自己抗原の生成をもたらし得る。
【0005】
癌に関連するものを含む疾患関連タンパク質に選択的に結合する抗体は、治療効果をもたらす方法でそれらの標的タンパク質の機能を調節することに成功していることが証明されている。変異した、又は他の異常なタンパク質に対する抗体応答を開始するヒト免疫系の能力は、患者の免疫応答が、重要な腫瘍ドライバを認識し、その機能を調節することができる抗体を含み得ることを示唆する。これに関して、細胞膜輸送に関与するタンパク質の発現増加は、腫瘍成長及び腫瘍転移の増加に関連する。
【0006】
膜輸送は、広範囲の細胞プロセスの調節に寄与する。細胞表面受容体の内在化は、成長因子受容体を介したシグナル伝達の適切な調節のための重要な機構である。クラスリン被覆小胞を介した内在化は、細胞表面からの癌関連受容体の内在化のための1つの経路である。クラスリン被覆小胞におけるその後の内在化のための、クラスリン被覆ピット(CCP)へのこれらの受容体の負荷は、経路の最初の段階の1つである。CCPへの受容体の負荷は、一部には、エプシン1(EPN1)などのアダプタ分子との相互作用によって決定される。
【0007】
EPN1は、細胞膜に局在する約60.3kDaのタンパク質である。これは、PI(4,5)P2、ユビキチン、及びクラスリン/AP-2相互作用ドメインを含有する。EPN1の内因性発現の発現をノックダウンすること、EPN1の変異型を過剰発現すること、又はEPN1とそのカーゴ分子との相互作用を遮断するように設計された薬剤で細胞を処理することは、公知のCCP依存性カーゴの内在化を阻害することができる。そのようなカーゴの例は、VEGFR及びERBB3である。特に、特定の種類の癌腫瘍細胞はEPN1担持エキソソームを放出し、そのような細胞の増殖は、EPN1がその受容体と相互作用するのを防ぐことによって阻止することができる。
【0008】
ナイーブ成熟T細胞は、胸腺を離れ、リンパ節、脾臓、及び扁桃などの特殊なリンパ器官に移動する。ナイーブT細胞が活性化シグナルを受け取ると、複数回の分裂を受けて、エフェクタ細胞の集団、ならびにそれらが活性化シグナルへのその後の曝露に応答するためにプライミングされたままである静止期に戻る他の細胞を生じる。
【0009】
T細胞の活性化は、2シグナル共刺激モデルによって起こる(
図21)。T細胞活性化のための一次シグナルは、主要組織適合遺伝子複合体(「MHC」)タンパク質との複合体における、抗原提示細胞(「APC」)の表面上に提示されるその同族抗原(Ag)へのT細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)の結合である。この活性化様式は、外来抗原に対する応答を可能にすることに加えて、自己対非自己の識別、及び免疫寛容の達成も可能にする。
【0010】
第2の活性化シグナルは、APCの表面に存在する共刺激分子を介してTリンパ球に伝達される。一次シグナルと二次シグナルの強度間の相互作用は、適切なT細胞活性化のために必要である。抗原活性化の存在下での共刺激の欠如は、T細胞の枯渇又は外来抗原刺激に対する寛容をもたらし得る。対照的に、TCRを介した強力な一次シグナル伝達は、共刺激の欠如を克服することができる。
【0011】
共刺激によるT細胞の活性化はまた、負の共刺激シグナルによって均衡が保たれる。正及び負の共刺激シグナル間の相互作用は、寛容の破壊及び自己免疫の発生を防止しながら、外来抗原に対する免疫活性化の適切なバランスを提供する。
【0012】
共刺激に関与する分子は、それらの分子を介したシグナル伝達の操作がT細胞応答を増強又は減弱させることができるので、治療上重要である。T細胞の枯渇又はアネルギーは、T細胞の表面上のプログラム細胞死1(PD-1)の発現と相関する。リガンドであるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のその同族受容体PD-1への結合は、T細胞活性化を低下させる。PD-1/PD-L1経路を、PD-L1のPD-1への結合を防止することができる抗体でアンタゴナイズすることにより、T細胞の活性化が増強され、腫瘍患者の臨床転帰が改善されることが実証されている。
【0013】
腫瘍由来のエキソソーム上に存在するPD-L1は、T細胞に対する強力な負の調節シグナルである。エキソソームは、多胞体に由来し、細胞外環境に分泌されるナノサイズ(30~150nm)の膜小胞である。エキソソームは、細胞由来の膜結合受容体及びリガンド、ならびにRNA及び代謝産物などの細胞内成分を含有する。腫瘍細胞は、ある距離で腫瘍由来成分を正常細胞に移入することができるエキソソームを産生することが公知である。腫瘍由来のエキソソームは、とりわけ、正常細胞の形質転換及び転移ニッチの調整に関連付けられてきた。
【0014】
エキソソーム関連PD-L1のレベル上昇は進行疾患のマーカであり、頭頸部癌、胃癌、黒色腫、及び多形性神経膠芽腫を含む特定の癌における臨床転帰と逆相関し得る。腫瘍におけるエキソソーム誘導性T細胞抑制の破壊は、癌の治療のための治療戦略である。その目的を念頭に置いて、エキソソームPD-L1及び別のエキソソームマーカを標的化することができる二重特異性抗体を、PD-L1誘導性免疫抑制を克服し、様々な癌を治療するための有効な薬剤として本明細書で説明する。より具体的には、PD-L1及びEPN1を標的とする二重特異性抗体を本明細書に開示し、例示する。
【0015】
発明の概要
本明細書に記載される発明は、第1のエキソソーム関連タンパク質及び第2のエキソソーム関連タンパク質としてのプログラム死リガンド1(「PD-L1」)に特異的に結合することによって、エキソソームを同時に標的化することができる二重特異性抗体に関する。そのような二重特異性抗体は、T細胞活性化を阻害するPD-L1などのリガンドを含有する腫瘍細胞由来のエキソソームを標的とすることによって、免疫細胞による抗腫瘍活性の抑制を破壊することができる。したがって、本発明の組成物及び方法は、癌の治療に使用することができる。
【0016】
二重特異性抗体の第1のエキソソーム関連標的は、例えば、テトラスパニン膜貫通ファミリータンパク質、腫瘍感受性遺伝子101(「TSG101」)、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子、プログラム細胞死6相互作用タンパク質(「PDCD6IP」)、熱ショックタンパク質、細胞骨格タンパク質、アネキシン、又は膜輸送タンパク質であり得る。したがって、本発明による二重特異性抗体の第1の結合部分は、例えば、エプシン1(「EPN1」)、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90、及びNKCC2に特異的に結合することができる。
【0017】
本発明による二重特異性抗体の第2の結合部分は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はBMS 936559などであるがこれらに限定されない、PD-L1特異的抗体のVH鎖及びVL鎖を含む任意のPD-L1特異的抗体に由来し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、B7ファミリーのT細胞共刺激分子のグラフィック表示である。
【
図2】
図2は、フローサイトメトリによってアッセイした場合の抗CD63被覆ビーズへのエキソソームの用量依存的結合を示す。抗CD63ビーズに結合したエキソソームを、蛍光標識抗CD63抗体で検出した。
【
図3】
図3は、結合をフローサイトメトリによって評価した場合、吸着によってラテックスビーズ上に捕捉されたエキソソームが抗EPN1抗体、IMM20059と反応性であることを示す。対照的に、IMM20059はBSA被覆ビーズに結合しない。
【
図4】
図4は、Attune(商標)NxT装置(Life Technologies)を用いたフローサイトメトリによって、無傷のA549肺癌細胞株へのIMM20059結合について観察された濃度依存的結合曲線を示す。無傷の細胞へのIMM20059の結合を、フルオロフォア標識抗ヒト二次抗体で検出した。
【
図5】
図5は、Attune(商標)NxT装置(Life Technologies)を用いたフローサイトメトリによって、無傷のHuh7肝細胞癌細胞へのIMM20059結合について観察された濃度依存的結合曲線を示す。無傷の細胞へのIMM20059の結合を、フルオロフォア標識抗ヒト二次Abで検出した。
【
図6】
図6は、そのホモログEPN2と比較したEPN1に対するIMM20059の選択性を表す定量的ドットブロット結果を示す。IMM20059の結合を、漸増濃度の組換えEPN1又はEPN2に対するドットブロットによって分析した。
【
図7】
図7は、IMM20059がマウスEPN1抗原と交差反応することを実証するフローサイトメトリ分析を示す。マウスNIH3T3及びヒトMFE296細胞株の細胞の表面及び細胞内染色を行った。IMM20059の細胞表面及び細胞内結合が、両方の細胞株のプールで観察された。マウス及びヒトの両方のEPN1と交差反応することが公知の市販の抗EPN1抗体は、NIH3T3及びMFE296細胞に同様に結合した。しかしながら、市販の抗体は、両方の細胞プールにおいて細胞表面でEPN1と相互作用することができなかった。
【
図8】
図8は、2つの単一特異性IgG抗体及び2つの異なるIgG抗体のそれぞれから単離された可変ドメインから作製された二重特異性抗体のカートゥーン表示である。
【
図9】
図9は、二重特異性抗EPN1/抗PDL1抗体が両方のマーカを含有するエキソソームに結合することを表すカートゥーン表示である。
【
図10】
図10は、二重特異性抗体内の抗PD-L1可変ドメインの位置が、EPN1ではなくPD-L1に結合する抗体の能力に影響を及ぼすことを実証するドットブロット結果を示す。
【
図11】
図11は、Attune(商標)NxT装置(Life Technologies)を用いたフローサイトメトリによって、無傷のA549肺癌細胞株に対するAte/PR045-2H11:L抗EPN1/抗PD-L1二重特異性抗体について観察された濃度依存的結合曲線を示す。無傷の細胞へのIMM20059の結合を、フルオロフォア標識抗ヒト二次抗体で検出した。
【0019】
詳細な説明
本明細書に記載される発明は、第1及び第2のエキソソーム関連タンパク質に特異的に結合することによって、エキソソームを同時に標的化することができる二重特異性抗体に関する。より具体的には、本発明による第2のエピソーム関連タンパク質は、プログラム死リガンド1(「PD-L1」)である。したがって、本発明による二重特異性抗体は、エキソソーム会合タンパク質上のエピトープに特異的に結合する第1の抗原結合部分と、PD-L1上のエピトープに特異的に結合する第2の抗原結合部分とを有する。本発明による二重特異性抗体は、T細胞活性化を阻害するPD-L1などのリガンドを含有する腫瘍細胞由来エキソソームを標的とすることによって、免疫細胞による抗腫瘍活性の抑制を破壊することができる。したがって、二重特異性抗体は、様々な種類の癌に罹患している対象を治療するために使用され得る。したがって、本発明はまた、癌治療プロトコルの構成要素として、本発明の二重特異性抗体の投与及び送達を必要とする対象への投与及び送達のために製剤化される組成物を含む。
【0020】
一般に、エキソソームは、以下の群の1つ以上に属するタンパク質を含有することが公知の小胞である:CD9、CD63及びCD81などのテトラスパニン膜貫通ファミリータンパク質;腫瘍感受性遺伝子101(「TSG101」);主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子;プログラム細胞死6相互作用タンパク質(「PDCD6IP」)18、22、37、38、41;熱ショックタンパク質(HSP60、HSP70及びHSP90);細胞骨格タンパク質(アクチン及びチューブリン);アネキシン(膜の細胞骨格変化及び膜融合を調節するタンパク質);ならびに膜輸送タンパク質。エキソソームは、一般に、カルネキシン及びゴルジマトリックスタンパク質又は核タンパク質などの小胞体タンパク質を含有しないと考えられている。エキソソームは、タンパク質CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3又はNKCC2も含み得ることが公知である。
【0021】
基本的な抗体構造は、2つの重(H)及び2つの軽(L)ポリペプチド鎖を含み、それらの各々は、定常領域及び可変領域を含み、ジスルフィド結合によって相互接続されている。ヒトには、ラムダ(「λ」)及びカッパ(「κ」)と呼ばれる2種類の免疫グロブリン軽鎖と、抗体分子の機能活性を決定する、アイソタイプとしても知られる5つの主要な免疫グロブリン重鎖クラス:IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとが存在する。可変重(「VH」)領域と可変軽(「VL」)領域は一緒になって、抗体のその抗原への特異的結合を担う可変フラグメント「Fv」を形成する。完全長重鎖はまた、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を有する。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクタ細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0022】
VH及びVL領域は、相補性決定領域(「CDR」)と呼ばれる3つの超可変領域によって中断される「フレームワーク」領域を含む。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合を担う。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されており、CDRを三次元空間で位置決め及び整列するのに役立つ。各鎖の3つのCDRは、典型的には、N末端から順に番号付けられるCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、特定のCDRが位置する鎖によって同定されることが多い。したがって、重鎖CDRは、H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3と称される;同様に、軽鎖CDRは、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3と称される。重鎖及び軽鎖のそれぞれの抗原結合断片である、1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインは、Fabフラグメントと呼ばれる。F(ab)’2フラグメントは、2つのFabフラグメントを含み、免疫グロブリン分子をそのヒンジ領域の下で切断することによって生成することができる。
【0023】
二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに同時結合することができる。本発明による二重特異性抗体は、同じ分子内に存在する任意の免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン由来の分子、又は分子の複合体の形態であり得る。様々な実施形態では、本発明による二重特異性抗体の第1の結合部分は、エプシン1(「EPN1」)、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90及びNKCC2などであるがこれらに限定されないエキソソーム関連タンパク質上のエピトープに結合する抗体から選択され得る。例えば、二重特異性抗体は、参照により組み込まれる国際特許出願第PCT/US19/54259号に記載されている結合部分などの、ヒトEPN1上のエピトープに特異的に結合する第1の抗原結合部分を含むことができる。様々な実施形態では、本発明による二重特異性抗体のEPN1特異的第1結合部分は、配列番号2又は配列番号6に示す可変重鎖、配列番号4又は配列番号8に示す可変軽鎖を含むことができる。他の実施形態では、本発明による二重特異性抗体の第1の抗原結合部分は、(1)(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3の少なくとも1つ;(2)(a)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3の少なくとも1つを有する。
【0024】
本発明による二重特異性抗体の第2の結合部分は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はBMS-936559などであるがこれらに限定されない、PD-L1特異的抗体のVH鎖及びVL鎖を含む任意のPD-L1特異的抗体に由来し得る。
【0025】
二重特異性抗体の前述の説明を念頭に置いて、本発明による二重特異性抗体の一実施形態は、配列番号9に基づく重鎖CDR1、配列番号10に基づく重鎖CDR2及び配列番号11に基づく重鎖CDR3、配列番号12に基づく軽鎖CDR1、配列番号13に基づく軽鎖CDR2及び配列番号14に基づく軽鎖CDR3を有するEPN1特異的第1結合部分と、PD-L1特異的抗体に由来する重鎖及び軽鎖CDRを有するPD-L1特異的第2結合部分とを有し得る。したがって、本発明による二重特異性抗体の別の実施形態は、配列番号9に基づく重鎖CDR1、配列番号10に基づく重鎖CDR2及び配列番号11に基づく重鎖CDR3、配列番号12に基づく軽鎖CDR1、配列番号13に基づく軽鎖CDR2及び配列番号14に基づく軽鎖CDR3を有するEPN1特異的第1結合部分と、配列番号17に基づく重鎖CDR1、配列番号18に基づく重鎖CDR2及び配列番号19に基づく重鎖CDR3、配列番号20に基づく軽鎖CDR1、配列番号21に基づく軽鎖CDR2及び配列番号22に基づく軽鎖CDR3を有するPD-L1特異的第2結合部分とを有し得る。
【0026】
二重特異性抗CD-63/抗PD-L1抗体は、PD-L1陽性エキソソームプールを選択的に標的とすることができる二重特異性抗体の別の実施形態である。抗CD-63/抗PD-L1二重特異性抗体の実施形態には、抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ(配列番号15及び16);アベルマブ(配列番号23及び24);デュルバルマブ(配列番号25及び26);又はBMS-936559(配列番号27及び28)のうちの1つの可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRと組み合わせた、抗CD-63抗体(配列番号44及び45)の可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRを有する抗体が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態は、DVD-Ig型に操作された、抗CD-63抗体(配列番号44及び45)ならびにアテゾリズマブのVH及びVLドメインを含む抗CD-63/抗PD-L1二重特異性抗体である。抗CD-63可変ドメイン及びアテゾリズマブ可変ドメインの4つの異なる構成が、抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体について定義されたリンカー及び配向を使用して可能である。
【0027】
二重特異性抗HER2/抗PD-L1抗体は、PD-L1陽性エキソソームプールを選択的に標的とすることができる二重特異性抗体のさらに別の実施形態である。抗HER2/抗PD-L1二重特異性抗体の実施形態には、抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ(配列番号15及び16);アベルマブ(配列番号23及び24);デュルバルマブ(配列番号25及び26);又はBMS-936559(配列番号27及び28)の1つの可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRと組み合わせた、抗HER2抗体トラスツズマブ(配列番号46及び47)の可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRを有することが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態は、DVD-Ig型に操作された、抗HER2抗体(配列番号46及び47)ならびにアテゾリズマブのVH及びVLドメインを含む抗HER2/抗PD-L1二重特異性抗体である。抗HER2可変ドメイン及びアテゾリズマブ可変ドメインの4つの異なる構成が、抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体について定義されたリンカー及び配向を使用して可能である。
【0028】
二重特異性抗EpCAM/抗PD-L1抗体は、PD-L1陽性エキソソームプールを選択的に標的とすることができる二重特異性抗体のさらに別の実施形態である。抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ(配列番号15及び16);アベルマブ(配列番号23及び24);デュルバルマブ(配列番号25及び26);又はBMS-936559(配列番号27及び28)のうちの1つの可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRと組み合わせた、抗EpCAM抗体オポルツズマブ(配列番号48及び49)の可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRを有する抗EpCAM/抗PD-L1二重特異性の実施形態。好ましい実施形態は、DVD-Ig型に操作された、抗EpCAM抗体(配列番号48及び49)ならびにアテゾリズマブのVH及びVLドメインを含む抗EpCAM/抗PD-L1二重特異性抗体である。抗EpCAM可変ドメイン及びアテゾリズマブ可変ドメインの4つの異なる構成が、抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体について定義されたリンカー及び配向を使用して可能である。
【0029】
二重特異性抗HER3/抗PD-L1抗体は、PD-L1陽性エキソソームプールを選択的に標的とすることができる二重特異性抗体のさらに別の実施形態である。抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ(配列番号15及び16);アベルマブ(配列番号23及び24);デュルバルマブ(配列番号25及び26);又はBMS-936559(配列番号27及び28)のうちの1つの可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRと組み合わせた、抗HER3抗体(配列番号50及び51)の可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRを有する抗HER3/抗PD-L1二重特異性の実施形態。好ましい実施形態は、DVD-Ig型に操作された、抗HER3抗体(配列番号50及び51)ならびにアテゾリズマブのVH及びVLドメインを含む抗HER3/抗PD-L1二重特異性抗体である。抗HER3可変ドメイン及びアテゾリズマブ可変ドメインの4つの異なる構成が、抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体について定義されたリンカー及び配向を使用して可能である。
【0030】
本発明による二重特異性抗体は、完全ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。言い換えれば、本発明による二重特異性抗体は、1つ以上のヒト免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域及びCDRを含み得る。実際に、フレームワーク領域は、1つのヒト抗体に由来し得、異なるヒト抗体に由来するCDRを含むように操作され得る。例えば、本発明による抗体は、i)エキソソームタンパク質標的に特異的なヒト抗体に由来する1つ以上のCDR;ii)PD-L1に特異的なヒト抗体に由来する1つ以上のCDR;及び別のヒト抗体に由来するフレームワーク領域を有し得る。
【0031】
本発明による二重特異性抗体は、抗体フラグメント変異体であり得る。例えば、本発明による二重特異性抗体のフラグメント変異体には、二価F(ab)’2フラグメント、二価一本鎖Fvタンパク質(「bi-scFv」)、及び二価ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「bi-dsFv」)が含まれる。(Fab’)2フラグメントは、抗体全体を酵素ペプシンで処理して、その後還元することなく得ることができる2つのFab’フラグメントの二量体であり、そのためFab’単量体は2つのジスルフィド結合によって一緒に保持されたままである。bi-scFvフラグメントなどの一本鎖(「sc」)抗体は、第1の抗体の重鎖及び軽鎖のVL領域及びVH領域、ならびに第2の抗体の重鎖及び軽鎖のVL領域及びVH領域を含む遺伝子操作された分子であり、すべてが1つ以上の適切なポリペプチドリンカーによって連結されて、遺伝子融合された一本鎖分子を生成する。本発明による二重特異性抗体はまた、2つの異なるscFV抗体の二量体であり得る。二重特異性抗体のさらに他の例としては、タンデムscFv(taFv又はscFv2)、ダイアボディ、dAb2NHH2、ノブ・イントゥ・ホール誘導体、SEED-IgG、ヘテロFc-scFv、Fab-scFv、scFvJun/Fos、Fab’-Jun/Fos、トリボディ、DNL-F(ab)3、scFv3-CHl/CL、Fab-scFv2、IgG-scFab、IgG-scFv、scFv-IgG、scFv2-Fc、F(ab’)2-scFv2、scDB-Fc、scDb-CH3、Db-Fe、scFv2-H/L、DVD-Ig、タンデムダイアボディ(「TandAb」)、scFv-dhlx-scFv、dAb2-IgG、dAb-IgG、dAb-Fc-dAbが挙げられる。
【0032】
当業者は、二重特異性抗体の保存的変異体が産生され得ることを認識するであろう。そのような保存的変異体は、VH領域とVL領域との間の正しい折り畳み及び安定化に必要な重要なアミノ酸残基を保持し、分子の低いpI及び低い毒性を保存するために残基の電荷特性を保持する。収率を高めるために、VH領域及びVL領域においてアミノ酸置換(例えば、多くとも1個、多くとも2個、多くとも3個、多くとも4個、又は多くとも5個のアミノ酸置換)を行うことができる。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換表は、当業者に周知である。以下の6つのアミノ酸群は、互いに保存的置換であると考えられるアミノ酸の例である:i)アラニン(A)、セリン(S)及びトレオニン(T);ii)アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E);iii)アスパラギン(N)及びグルタミン(Q);iv)アルギニン(R)及びリジン(K);v)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)及びバリン(V);ならびにvi)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)。
【0033】
本発明による二重特異性抗体はまた、内因性抗体のバックグラウンドに対する生物製剤の検出を容易にするための「タグ付き」免疫グロブリンCH3ドメインを含み得る。より具体的には、タグ付きCH3ドメインは、ヒトIgG由来CH3ドメインのAB、EF、又はCD構造ループの1つ以上に組み込まれた異種抗体エピトープである。CH3タグは、好ましくはIgG1サブクラス抗体の構造的状況に組み込まれ、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む他のヒトIgGサブクラスも本発明に従って利用可能である。「CH3足場」とも呼ばれるエピトープタグ付きCH3ドメインは、一般に免疫グロブリンFc部分の形態で、重鎖定常領域を有する本発明の任意の抗体に組み込むことができる。CH3足場タグの例、及びそれらを抗体に組み込む方法は、PCT特許出願第PCT/US19/32780号に開示されている。エピトープタグ付きCH3足場を検出するために使用される抗体は、本明細書では一般に「検出抗体」と呼ばれる。
【0034】
本発明による二重特異性抗体の治療有効性は、その標的抗原に対する結合親和性と相関する。結合親和性は、Frankel et al.,Mol.Immunol.,16:101-106,1979によって記載されているScatchard法の変法によって算出され得る。あるいは、結合親和性は、抗体のその抗原からの解離速度によって測定され得る。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、競合ラジオイムノアッセイ、ELISA、及びフローサイトメトリを含む様々な方法が、結合親和性を測定するために使用できる。
【0035】
抗原に「特異的に結合する」抗体は、抗原に高親和性で結合し、他の無関係な抗原には有意に結合しない抗体である。抗体のその抗原に対する高親和性結合は、抗原標的の抗原決定基としても知られるエピトープに対する抗体のCDRの1つ以上の結合相互作用によって媒介される。エピトープは、抗原性である分子上の特定の化学基又はペプチド配列であり、特異的免疫応答を誘発することができることを意味する。本発明による抗体によって特異的に結合されるエピトープは、例えば、1つ以上の種類の癌の細胞によって発現されるタンパク質内に含まれ得る。一般に、抗体は、その解離定数値(「KD」)が50nM以下である場合、「高親和性結合」を示す。したがって、本発明による二重特異性抗体は、抗体と結合標的の少なくとも1つとの間のKDが50nM、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下である場合、そのエキソソームタンパク質又はPD-L1結合標的に対して高親和性結合を示す。
【0036】
本発明による二重特異性抗体の高親和性結合は、例えば、PD-L1を発現する細胞へのその結合に関して説明することができる。より具体的には、本発明による抗体は、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下の最大半量有効濃度(EC50)値を示す場合、PD-L1発現細胞に対して高親和性結合を示す。同様に、PD-L1に高親和性で結合することに加えて、同じ抗体は、TSG101、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90、又はNKCC2に結合するなどの、異なるエキソソーム関連タンパク質にも高親和性で結合することができる。様々な変異体では、例えば、本発明による二重特異性抗体は、(i)10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のEPN1発現エキソソーム又は細胞に対するEC50;及び10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のPD-L1発現エピソーム又は細胞に対するEC50を示す。
【0037】
上記のように、本発明による二重特異性抗体は、対象における疾患を予防、治療又は改善するための方法において使用することができる。より具体的には、本発明による二重特異性抗体は、癌を予防、治療又は改善するために使用することができる。疾患を「予防する」とは、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「治療する」とは、腫瘍量の減少又は転移の数又はサイズの減少などの、疾患又は病的状態が発症し始めた後に疾患又は病的状態の徴候又は症状を改善する治療的介入を指す。「改善する」とは、癌などの疾患の徴候又は症状の数又は重症度の減少を指す。症状(1つ又は複数)の主観的軽減又は臨床医もしくは他の資格のある専門家によって認められた客観的に同定可能な改善のいずれかを提供する、本発明による二重特異性抗体の量。癌を予防、治療又は改善するための方法は、i)抗腫瘍誘導T細胞活性化の抑制因子であるPD-L1;及びii)T細胞活性化を抑制してもしなくてもよい1つの他のエキソソームタンパク質を含む腫瘍細胞由来エキソソームを標的とすることによって、免疫細胞による抗腫瘍活性の抑制を破壊することによって腫瘍成長又は転移を阻害するために、有効量の本発明による二重特異性抗体を含む組成物を対象に投与することを必要とし得る。したがって、投与された二重特異性抗体は、腫瘍細胞由来エキソソームと接触し(すなわち、エキソソームと直接物理的に会合して配置され)、二重特異性抗体は、そのエキソソーム標的の少なくとも1つに結合して、PD-L1がT細胞活性化の抑制因子として機能するのを妨げることができる。様々な実施形態では、本発明による二重特異性抗体は、さもなければリンパ節における抗原特異的T細胞の増殖を減少させる阻害性シグナルを伝達する、PD-L1媒介性細胞シグナル伝達を防止すると同時に、制御性T細胞(抗炎症性、抑制性T細胞)のアポトーシスを減少させる。
【0038】
本発明による二重特異性抗体を必要とする対象に投与される、本発明による二重特異性抗体は、組成物に製剤化される。より具体的には、二重特異性抗体は、全身投与、又は腫瘍内投与などの局所投与のために製剤化することができる。例えば、本発明による二重特異性抗体は、静脈内投与などの非経口投与のために製剤化され得る。組成物は、対象への投与のための単位剤形で調製することができる。投与の量及びタイミングは、所望の結果を達成するために、治療する臨床医の裁量に委ねられる。本発明による二重特異性抗体の投与はまた、他の抗癌剤の投与又は腫瘍の外科的切除などの治療的治療を伴い得る。任意の適切な抗癌剤を、本明細書に開示される二重特異性抗体と組み合わせて投与することができる。例示的な抗癌剤としては、化学療法剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤、生物学的応答調節剤、抗ホルモン剤(例えば抗アンドロゲン剤)及び抗血管形成剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗癌治療には、放射線療法及び癌細胞を特異的に標的化する他の抗体が含まれる。
【0039】
投与のための組成物は、水性担体などの薬学的に許容される担体に溶解した二重特異性抗体の溶液を含み得る。一般に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、薬学的及び生理学的に許容される流体、例えば水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース又はグリセロールをビヒクルとして含む注射用流体を含む。粉末、丸剤、錠剤、又はカプセル形態などの固体組成物の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤等のような少量の非毒性の補助物質、例えば酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタンを含み得る。前述の担体溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まず、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、ならびに酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムなどの毒性調整剤などの、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質を含有し得る。これらの製剤中の抗体の濃度は大きく異なる可能性があり、選択される特定の投与様式及び対象の必要性に従って、主に体液量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0040】
本発明による二重特異性抗体組成物を投与するための選択肢には、低速注入による投与、又は静脈内プッシュもしくはボーラスによる投与が含まれるが、これらに限定されない。投与に先立って、本発明による二重特異性抗体組成物を凍結乾燥形態で提供し、投与前に滅菌溶液中で所望の濃度に再水和し得る。次いで、二重特異性抗体溶液を、例えば、0.9%塩化ナトリウム、USPを含有する注入バッグに加えてもよく、場合によっては、0.5~20mg/kg体重の投与量で投与してもよい。本発明による抗体組成物の投与の一例では、より高い負荷用量が投与され、その後の維持用量はより低いレベルで投与される。例えば、4mg/kgの初期負荷用量を約90分間にわたって注入し、続いて、先の用量が十分に忍容された場合、30分間にわたって注入される2mg/kgの4~8週間にわたる毎週の維持用量を注入し得る。
【0041】
本発明による二重特異性抗体組成物はまた、制御放出製剤であり得る。制御放出非経口製剤は、例えば、埋め込み剤又は油性注射剤として作製することができる。ミクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子を含む粒子系もまた、本発明による二重特異性抗体組成物を送達するために使用され得る。本明細書で言及されるマイクロカプセルは、本発明による二重特異性抗体を中心コア成分として含有する。ミクロスフェアでは、本発明による抗体は粒子全体に分散される。約1μmより小さい粒子、ミクロスフェア、及びマイクロカプセルは、一般に、それぞれナノ粒子、ナノスフェア、及びナノカプセルと呼ばれる。
【0042】
本発明による二重特異性抗体組成物は、対象の癌を治療するためのキットに包装することもできる。そのようなキットは、本明細書に開示される任意の組成物を含む。キットはまた、各医薬組成物用のアンプル、バイアル及びチューブなどの適切な保存容器、ならびに組成物を対象に投与する際に使用するための緩衝液及び平衡塩類溶液などの他の含まれる試薬を含み得る。組成物及び他の試薬は、溶液又は粉末形態などの任意の好都合な形態でキット中に存在し得る。キットは、組成物の使用説明書をさらに含み得る。キットは、医薬組成物及び他の試薬を収容するための1つ以上の区画を有し得る包装容器をさらに含み得る。
【0043】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、二重特異性抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現を使用して組換え生産することができる。例えば、Milstein,et al.(1983)Nature 305:537-39を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。例えば、Brennan,et al.(1985)Science 229:81を参照されたい。二重特異性抗体には、二重特異性抗体断片が含まれる。例えば、Bolliger,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444-48,Gruber,et al.(1994)J.Immunol.152:5368を参照されたい。したがって、本発明による二重特異性抗体は、培養中の生細胞におけるそれらのアミノ酸配列をコードする核酸配列の発現によって産生され得る。本発明による「単離された」二重特異性抗体は、細胞、タンパク質及び細胞小器官などの他の生物学的成分環境から実質的に分離又は精製されたものである。例えば、二重特異性抗体は、以下のように精製される場合、単離され得る:i)ローリー法によって決定される場合、タンパク質の95重量%超、96重量%超、97重量%超、98重量%超、もしくは99重量%超、又は99重量%超;ii)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度;iii)クマシーブルー又は銀染色を使用した還元条件下又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性。単離された抗体はまた、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内にインサイチュで存在する本発明による抗体であり得る。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0044】
様々な宿主発現ベクター系を利用して、本発明による抗体のための適切なヌクレオチドコード配列で細胞を形質転換又はトランスフェクトすることによって、本発明による二重特異性抗体を発現させ得る。宿主発現細胞の例には、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクター内に含まれる二重特異性抗体コード配列でトランスフェクトされ得る、大腸菌(E.coli)及び枯草菌(B.Subtilis)などの細菌;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された、サッカロミセス属(Saccharomyces)及びピキア属(Pichia)などの酵母;抗体コード配列を含むバキュロビン1(baculovin1)などの組換えウイルス発現ベクターに感染した昆虫細胞系;抗体コード配列を含む、カリフラワーモザイクウイルス(「CaMV」)又はタバコモザイクウイルス(「TMV」)などの組換えウイルス発現ベクターに感染した植物細胞系;ならびにメタロチオネインプロモータもしくは伸長因子Iαプロモータなどの哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモータ、又はアデノウイルス後期プロモータ及びワクシニアウイルス7.5Kプロモータなどの哺乳動物ウイルスに由来するプロモータを含む組換え発現構築物を有する、COS、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞、ExpiCHO、ベビーハムスター腎臓(「BHK」)細胞、HEK293、Expi293、3T3、NSO細胞などであるがこれらに限定されない哺乳動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。例えば、重鎖断片及び軽鎖断片をそれぞれ発現するためにマウス及びラット伸長因子1αプロモータを組み込んだ二重プロモータベクターと併せて、ヒト胚性腎臓細胞293(HEK293)又はExpi293などのその誘導体などの哺乳動物細胞は、本発明による抗体のための有効な発現系であり、これは、発現される抗体分子の意図される使用に依存して有利に選択することができる。
【0045】
本発明による二重特異性抗体を抗体の医薬組成物の生成のために大量に生産する場合、高レベルの容易に精製される融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列がlac Zコード領域とインフレームでベクターに個別に連結され得る、pUR278ベクター(Ruther et al.EMBO J.2:1791(1983));plNベクター(Inouye&Inouye,Nucleic Acids Res.13:3101-3109(1985)、及びVan Heeke&Schuster,J.Biol.Chem.24:5503-5509(1989));本発明の抗体をグルタチオンS-トランスフェラーゼ(「GST」)と融合させるためのpGEXベクターが含まれるが、これらに限定されない。本発明による抗体とポリペプチドタグのGST融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着及び結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解細胞から容易に精製することができる。対照的に、pGEXベクターは、クローン化標的遺伝子産物、すなわち本発明による抗体がGST部分から放出され得るように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0046】
本発明による抗体をコードする挿入配列(1つもしくは複数)の発現を調節するか、又は所望に応じて遺伝子産物を修飾及び処理する宿主発現細胞系も選択され得る。例えば、タンパク質産物の切断などのグリコシル化及びプロセシングを含む修飾は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。実際に、様々な宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的及び特異的な機構を有する。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、ならびに本発明による遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための適切な細胞機構を有する真核宿主細胞を使用し得る。
【0047】
例
以下の例は、エキソソームを標的とする二重特異性抗体の設計及び特性付けを説明する。
【0048】
例1.エキソソームは、抗体の標的となり得る膜結合タンパク質を含有する。
正常組織及び腫瘍組織の両方に由来する細胞は、少なくとも2つのクラスの細胞外小胞(EV)、エキソソーム及びエクトソームを生成することができ、これらは異なる生物学的プロセスを介して誘導される。EVは、細胞間コミュニケーションにおいて役割を果たすと認識されている。EVは、小胞の脂質二重層に挿入されるタンパク質を含む、一連の異なるタンパク質構成要素を特徴とする。エキソソーム膜に存在することが公知のタンパク質は、テトラスパニン、熱ショックタンパク質、膜輸送体、細胞表面受容体、及び脂質結合分子を含むがこれらに限定されない機能クラスに分類することができる。これらの機能クラスを含む認識されたタンパク質には、TSG101、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90、NKCC2、及びPD-L1が含まれるが、これらに限定されない。CD63などのエキソソームの表面に存在するタンパク質は、それらの表面分子に特異的な抗体によって検出することができる。
図2は、22Rv1前立腺癌細胞に由来するエキソソームが、抗CD63被覆ビーズとの相互作用を介して用量依存的に単離され得ることを示す。エキソソームに関連する膜貫通タンパク質の組成は、エキソソームが由来する細胞型に依存し得る。エキソソームのバルク調製物をラテックスビーズにコンジュゲートさせ、フローサイトメトリによって抗CD63抗体で検出することができる(
図3)。バルクエキソソーム被覆ビーズは、抗EPN1抗体IMM20059とも反応性であった。IMM20059染色は、ビーズ表面上に存在するエキソソームに依存していた;BSA被覆ビーズはIMM20059と相互作用しなかった。データは、EPN1がエキソソームの少なくとも一部の表面に存在することを示唆する。
【0049】
例2.IMM20059は、EPN1に結合する抗体である。
ヒトハイブリドーマPR045-2H11を、頭頸部癌患者のリンパ節から単離したヒトB細胞をB56T融合パートナーと融合させることによって作製した。ヒトB細胞とB56Tとの融合は、本質的にUSPTO#EP2242836’’Method of making hybrid cells that express useful antibodies.’’に記載されている電気融合によって実施した。PR045-2H11の可変重鎖(VH)ドメイン及び可変軽鎖(VL)ドメインをコードするヌクレオチド配列を、PR045-2H11を産生したハイブリドーマ株の細胞から単離したRNAのRT-PCR増幅によって得て、得られた抗体cDNAを配列決定反応に供した。配列番号1は、ハイブリドーマから単離したPR045-2H11のVHに対応し、配列番号3はVLに対応する。RT-PCR戦略に起因して、これらの配列は、可変ドメインのフレームワーク1の5’側最末端部分に対応する領域を欠く。IGHV及びIGKL遺伝子割り当てを、公知の生殖系列遺伝子配列との相同性に基づいて予測し、VH及びVL配列の真の5’末端の代用物として使用した。IMM20059は、PR045-2H11のVHドメイン及びVLドメインを含む組換え発現されたヒトIgG1抗体である。IMM20059 VH(配列番号5)の発現断片を、IGHV3-48*02のフレームワーク1の5’末端に対応する生殖系列配列を使用して作製した。PR045-2H11 VL(配列番号7)の完全長発現断片を、IGKV3-11*01のフレームワーク1の5’末端に対応する生殖系列配列を使用して作製した。配列番号5及び配列番号7に対応する断片を、二重プロモータIgG1発現ベクターへのギブソン様式のクローニングを容易にするために、さらなる5’及び3’伸長を用いて合成した。VH断片及びVL断片によってコードされる対応するタンパク質配列を、それぞれ配列番号6及び配列番号8に定義する。VH及びVLドメインのコード領域は、それぞれ15及び14ヌクレオチドだけ生殖系列配列とは異なる体細胞高頻度突然変異の特徴を有する。
【0050】
IMM20059を、製造業者が推奨する条件を使用したExpi293細胞への一過性トランスフェクションによって組換え発現させた。組換え抗体を、プロテインA/Gアフィニティクロマトグラフィによって馴化培地から精製し、緩衝液をPBSに交換し、フローサイトメトリによって活性を分析した。IMM20059は、元のPR045-2H11ハイブリドーマ産生抗体と一致する結合活性を示す。
図4及び
図5に示すように、IMM20059は、フローサイトメトリによって分析した場合、A549肺腺癌及びHuh7肝細胞癌細胞株の表面への飽和結合を示す。IMM20059は、それぞれ0.9及び1.3μg/mLのEC50でA549及びHuh7に結合する。これらの値は、6~9nMのEC50値に対応する。
【0051】
IMM20059は、そのホモログEPN2と比較して、用量依存的に組換えEPN1に選択的に結合する(
図6)。IMM20059はまた、逆相タンパク質アッセイ(RPPA)において、EPN3と比較してEPN1に対する選択性を示した。組換えEPN1との相互作用の強さを、表面プラズモン共鳴によってさらに定義した(表1)。IMM20059又はアイソタイプ対照を抗ヒトFcセンサ表面上に捕捉して、結合表面及び対照表面を生成した。組換えEPN1を、三つ組みで、漸増濃度で表面上に流した。二重サブトラクションデータを1:1結合モデルに当てはめた。表1に概説するように、IMM20059は、950+/-10pMの平均K
DでEPN1への再現性のある結合を示した。
【表1】
【0052】
IMM20059は、EPN-1陽性マウス細胞の表面に結合する。
図7に示すように、IMM20059は、マウスNIH-3T3細胞に存在する抗原の細胞表面及び細胞内プールの両方に結合する。この結合パターンは、ヒト細胞株MFE296に対しても観察される。市販の抗マウスEPN1抗体は、EPN1の細胞表面プールを認識しない。
【0053】
例3.抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体の設計。
2つのユニークな標的抗原に結合することができる抗体である二重特異性抗体は、2つの単一特異性抗体からの可変ドメインを1つの抗体様分子に組み合わせることによって作製することができる。複数の二重特異性抗体構造が文献に記載されている(Brinkman,U.and Kontermann,R.mAbs,9:182-212;2017)。二重特異性抗体構造の一実施形態は、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)である。
図8は、2つの単一特異性抗体及び2つの単一特異性抗体から作製されたDVD-Ig型二重特異性抗体のカートゥーン表示である。二重特異性抗体は、標的の1つのみを発現するものと比較して、両方の標的抗原を発現する細胞、ひいてはエキソソームに対する標的化選択性を改善することができる(Robinson et al BR J Cancer 99:1415-1425;2008)。
図9は、EPN1又はPD-L1のみを標的化することができる単一特異性抗体と比較した、EPN1及びPD-L1の両方に結合することができる二重特異性抗体によるエキソソーム標的化のカートゥーン表示である。
【0054】
いくつかの抗PD-L1抗体が文献に記載されている。それらには、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-936559が含まれるが、これらに限定されない。エキソソームPD-L1及び第2のエキソソームマーカを共標的化することができる二重特異性抗体を、腫瘍細胞局在PD-L1と比較してエキソソームPD-L1を選択的に標的化するために開発することができた。PD-L1二重特異性において標的化され得るエキソソームマーカには、CD9、CD10、CD26、CD37、CD45/ICAM-1、CD63、CD69、CD81、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、フロチリン1、グリピカン1、HER2、HER3、HSP70、HSP90、NKCC2及びEPN-1が含まれるが、これらに限定されない。二重特異性抗EPN-1/抗PD-L1抗体は、1つの可能な実施形態を表す。好ましい実施形態は、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(配列番号15及び16)、アベルマブ(配列番号23及び24)、デュルバルマブ(配列番号25及び26)、又はBMS-936559(配列番号27及び28)のうちの1つの可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRと組み合わせた、IMM20059の可変ドメイン又は可変ドメイン内に存在するCDRを含む抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性である。好ましい実施形態は、DVD-Ig型に操作された、IMM20059及びアテゾリズマブのVH及びVLドメインを含む抗EPN-1/抗PD-L1二重特異性抗体である。IMM20059及びアテゾリズマブ可変ドメインの4つの異なる構成を設計した。VHドメインを、ペプチドリンカーASTKGPSVFPLAP(配列番号29)を介して、IMM20059-L-アテゾリズマブ(配列番号33)配向及びアテゾリズマブ-L-IMM20059(配列番号39)配向の両方で連結した。IMM20059及びアテゾリズマブのVLドメインを、2つの異なるリンカーを用いて、N末端からC末端に両方の順序で単一のポリペプチドに融合した。「L」リンカーは、アミノ酸配列TVAAPSVFIFPP(配列番号30)を含み、「S」リンカーは、アミノ酸配列TVAAP(配列番号31)を含む。配列番号35及び配列番号41は、それぞれIMM20059-L-アテゾリズマブ及びアテゾリズマブ-L-IMM20059の順序で構築物を含む「L」リンカーを表す。配列番号37及び配列番号43は、「S」リンカー配列によって連結された二重特異性構築物に対応する。
【0055】
例4.抗EPN1/抗PD-L1 DVD-IgG二重特異性抗体の結合活性。
4つの抗EPN1/抗PD-L1二重特異性抗体を、二重特異性抗体の重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトしたHEK293哺乳動物細胞株の誘導体の馴化培地からプロテインAアフィニティクロマトグラフィによって精製した。4つの二重特異性抗体を含む可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列は、配列番号33及び35、配列番号33及び37、配列番号39及び41、ならびに配列番号39及び43であった。精製された抗体をドットブロット分析に供して、それらが組換えEPN1及び組換えPD-L1の両方に結合することができるかどうかを決定した。精製された組換えタンパク質を、
図10に示すように3つの用量レベルでスポットし、4つの抗EPN1/抗PD-L1二重特異性抗体でプローブした。単一特異性IMM20059/PR045-2H11及びアテゾリズマブは、それぞれEPN1及びPD-L1への結合についての陽性対照として機能した。デングウイルスのコートタンパク質に特異的な抗体を陰性対照として使用した。4つの二重特異性抗体はすべて、IMM20059と同様のレベルでEPN1に結合した。PD-L1への結合は、抗PD-L1可変ドメインがDVD-IgGのN末端(Ate/PR045-2H11:S及びAte/PR045-2H11:L)に存在することを必要とした。それらを抗EPN1可変ドメインのC末端(PR045-2H11/Ate:S及びPR045-2H11/Ate:L)に配置すると、ドットブロット形式でPD-L1に結合する能力が低下した。可変軽鎖構築物内のリンカーの長さは結合に影響を及ぼさなかった。配列番号37及び39に対応する可変軽鎖ドメインを含む抗体は、ドットブロット形式で組換えPD-L1に同等に結合した。
【0056】
フローサイトメトリによって分析した場合、配列番号33及び39によって定義される可変ドメインを含む二重特異性抗体は、細胞表面上でEPN1及びPD-L1の両方を発現することが公知のA549細胞の表面に結合した。細胞表面への二重特異性抗体の結合は、約0.3マイクログラム/mLのEC50で用量依存的結合プロフィールを示した(
図11)。
配列表
【0057】
配列番号1-VH PR045-2H11ヌクレオチド配列
GACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTATCCATAGCCTGAATTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGACTGGAGTGGGTTTCGTATATTAGTAGTAACAGTACTACCATATATTACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGGACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTCAGAGACGAGGACACGGCTGTATATTACTGTGCGAGAGACTACTACTGTACTGGTGGTACCTGCTTCTTTCTTCCTGACCTCTGGGGCCGGGGAGCCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCGC
配列番号2-VH PR045-2H11アミノ酸配列
LSCAASGFTFSIHSLNWVRQAPGKGLEWVSYISSNSTTIYYADSVKGRFTISRDNAKDSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARDYYCTGGTCFFLPDLWGRGALVTVSSASTKKGPSVFPLA
【0058】
配列番号3-VL PR045-2H11ヌクレオチド配列
AAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAACGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCT
配列番号4-VL PR045-2H11アミノ酸配列
RATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFI
【0059】
配列番号5-IMM20059 VHドメインヌクレオチド配列
ACAGGCGCGCACTCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTATCCATAGCCTGAATTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGACTGGAGTGGGTTTCGTATATTAGTAGTAACAGTACTACCATATATTACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGGACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTCAGAGACGAGGACACGGCTGTATATTACTGTGCGAGAGACTACTACTGTACTGGTGGTACCTGCTTCTTTCTTCCTGACCTCTGGGGCCGGGGAGCCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATC
配列番号6-IMM20059 VHドメインアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSIHSLNWVRQAPGKGLEWVSYISSNSTTIYYADSVKGRFTISRDNAKDSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARDYYCTGGTCFFLPDLWGRGALVTVSSASTKGPSVFPL
【0060】
配列番号7-IMM20059 VLドメインヌクレオチド配列
TCAGATACCTCCGGAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAACGAACTGTGGCTG
配列番号8-IMM20059 VLドメインアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIKRTVA
【0061】
配列番号9-IMM20059 H-CDR1
SIHSLN
配列番号10-IMM20059 H-CDR2
YISSNSTTIYYADSVKG
配列番号11-IMM20059 H-CDR3
DYYCTGGTCFFLPDL
配列番号12-IMM20059 L-CDR1
RASQNISNFLA
配列番号13-IMM20059 L-CDR2
DASIRAT
配列番号14-IMM20059 L-CDR3
QQRYNWLT
【0062】
配列番号15-アテゾリズマブVHドメイン
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号16-アテゾリズマブVLドメイン
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVA
【0063】
配列番号17-アテゾリズマブH-CDR1
SDSWIH
配列番号18-アテゾリズマブH-CDR2
PYGGSTYYADSVKG
配列番号19-アテゾリズマブH-CDR3
ARRHWPGGFDY
配列番号20-アテゾリズマブL-CDR1
RASQDVSTAVA
配列番号21-アテゾリズマブL-CDR2
SASFLYS
配列番号22-アテゾリズマブL-CDR3
QQYLYHPAT
【0064】
配列番号23-アベルマブVHドメイン
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号24-アベルマブVLドメイン
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGV
SNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLG
【0065】
配列番号25-デュルバルマブVHドメイン
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号26-デュルバルマブVLドメイン
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVA
【0066】
配列番号27-BMS-936559 VHドメイン
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGDTFSTYAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGKAHYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARKFHFVSGSPFGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号28-BMS-936559 VLドメイン
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEP
EDFAVYYCQQRSNWPTFGQGTKVEIKRTVA
【0067】
配列番号29-VH「L」リンカー
ASTKGPSVFPLAP
配列番号30-VL「L」リンカー
TVAAPSVFIFPP
配列番号31-VL「S」リンカー
TVAAP
【0068】
配列番号32-IMM20059-L-ATE二重特異性VHドメインヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTATCCATAGCCTGAATTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGACTGGAGTGGGTTTCGTATATTAGTAGTAACAGTACTACCATATATTACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGGACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTCAGAGACGAGGACACGGCTGTATATTACTGTGCGAGAGACTACTACTGTACTGGTGGTACCTGCTTCTTTCTTCCTGACCTCTGGGGCCGGGGAGCCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCGAGCACAAAAGGACCATCTGTATTTCCACTCGCCCCCGAAGTACAGCTCGTAGAGTCCGGAGGAGGCCTGGTCCAACCTGGTGGTTCCCTTCGACTGTCATGTGCCGCGTCTGGCTTCACTTTTTCCGATTCATGGATACACTGGGTGAGGCAAGCACCTGGCAAAGGTTTGGAATGGGTGGCCTGGATCTCACCGTATGGGGGTAGTACTTATTATGCGGATTCAGTAAAGGGAAGATTTACCATTTCAGCGGACACAAGTAAAAATACCGCCTATTTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCGGAAGACACTGCTGTCTATTATTGTGCTAGACGCCACTGGCCTGGTGGTTTTGACTACTGGGGGCAGGGCACTTTGGTGACCGTTTCCTCA
配列番号33-IMM20059-L-ATE二重特異性VHドメインアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSIHSLNWVRQAPGKGLEWVSYISSNSTTIYYADSVKGRFTISRDNAKDSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARDYYCTGGTCFFLPDLWGRGALVTVSSASTKGPSVFPLAPEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS
【0069】
配列番号34-IMM20059-L-ATE二重特異性VLドメインヌクレオチド配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAACGAACAGTAGCAGCTCCGTCAGTTTTTATTTTTCCTCCAGATATTCAGATGACCCAGTCCCCGTCCTCTCTCTCCGCTAGTGTAGGTGATAGAGTGACAATAACATGCCGGGCCAGCCAGGATGTATCCACGGCGGTCGCGTGGTACCAGCAGAAACCTGGGAAAGCCCCCAAACTGCTTATTTATAGCGCCAGCTTCTTGTACTCAGGAGTACCTAGCAGATTTAGCGGTTCAGGAAGTGGGACTGATTTTACACTCACTATATCTTCCCTGCAACCGGAGGATTTTGCAACATATTATTGTCAACAATATCTCTACCATCCCGCGACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTAGAGATCAAACGA
配列番号35-IMM20059-L-ATE二重特異性VLドメインアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR
【0070】
配列番号36-2H11-S-ATE二重特異性VLドメインヌクレオチド配列
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAACGAACAGTAGCAGCTCCGGATATTCAGATGACCCAGTCCCCGTCCTCTCTCTCCGCTAGTGTAGGTGATAGAGTGACAATAACATGCCGGGCCAGCCAGGATGTATCCACGGCGGTCGCGTGGTACCAGCAGAAACCTGGGAAAGCCCCCAAACTGCTTATTTATAGCGCCAGCTTCTTGTACTCAGGAGTACCTAGCAGATTTAGCGGTTCAGGAAGTGGGACTGATTTTACACTCACTATATCTTCCCTGCAACCGGAGGATTTTGCAACATATTATTGTCAACAATATCTCTACCATCCCGCGACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTAGAGATCAAACGA
配列番号37-2H11-S-ATE二重特異性VLドメインアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIKRTVAAPDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR
【0071】
配列番号38-ATE-L-2H11二重特異性VHドメインヌクレオチド配列
GAAGTACAGCTCGTAGAGTCCGGAGGAGGCCTGGTCCAACCTGGTGGTTCCCTTCGACTGTCATGTGCCGCGTCTGGCTTCACTTTTTCCGATTCATGGATACACTGGGTGAGGCAAGCACCTGGCAAAGGTTTGGAATGGGTGGCCTGGATCTCACCGTATGGGGGTAGTACTTATTATGCGGATTCAGTAAAGGGAAGATTTACCATTTCAGCGGACACAAGTAAAAATACCGCCTATTTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCGGAAGACACTGCTGTCTATTATTGTGCTAGACGCCACTGGCCTGGTGGTTTTGACTACTGGGGGCAGGGCACTTTGGTGACCGTTTCCTCAGCCGCGAGCACAAAAGGACCATCTGTATTTCCACTCGCCCCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTATCCATAGCCTGAATTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGACTGGAGTGGGTTTCGTATATTAGTAGTAACAGTACTACCATATATTACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGGACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTCAGAGACGAGGACACGGCTGTATATTACTGTGCGAGAGACTACTACTGTACTGGTGGTACCTGCTTCTTTCTTCCTGACCTCTGGGGCCGGGGAGCCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTC
配列番号39-ATE-L-2H11二重特異性VHドメインアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSAASTKGPSVFPLAPEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSIHSLNWVRQAPGKGLEWVSYISSNSTTIYYADSVKGRFTISRDNAKDSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARDYYCTGGTCFFLPDLWGRGALVTVSSASTKGPSV
【0072】
配列番号40-ATE-L-2H11二重特異性VLドメインヌクレオチド配列
GATATTCAGATGACCCAGTCCCCGTCCTCTCTCTCCGCTAGTGTAGGTGATAGAGTGACAATAACATGCCGGGCCAGCCAGGATGTATCCACGGCGGTCGCGTGGTACCAGCAGAAACCTGGGAAAGCCCCCAAACTGCTTATTTATAGCGCCAGCTTCTTGTACTCAGGAGTACCTAGCAGATTTAGCGGTTCAGGAAGTGGGACTGATTTTACACTCACTATATCTTCCCTGCAACCGGAGGATTTTGCAACATATTATTGTCAACAATATCTCTACCATCCCGCGACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTAGAGATCAAACGAACCGTCGCCGCACCATCAGTTTTTATTTTTCCTCCAGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAACGA
配列番号41-ATE-L-2H11二重特異性VLドメインアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIKR
【0073】
配列番号42-ATE-S-2H11二重特異性VLドメインヌクレオチド配列
GATATTCAGATGACCCAGTCCCCGTCCTCTCTCTCCGCTAGTGTAGGTGATAGAGTGACAATAACATGCCGGGCCAGCCAGGATGTATCCACGGCGGTCGCGTGGTACCAGCAGAAACCTGGGAAAGCCCCCAAACTGCTTATTTATAGCGCCAGCTTCTTGTACTCAGGAGTACCTAGCAGATTTAGCGGTTCAGGAAGTGGGACTGATTTTACACTCACTATATCTTCCCTGCAACCGGAGGATTTTGCAACATATTATTGTCAACAATATCTCTACCATCCCGCGACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTAGAGATCAAACGAACAGTAGCAGCTCCGGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATATCAGCAACTTCTTAGCCTGGTACCAACACAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCATCAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGTCTCACCATCAGCAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTTCTGTCAGCAGCGTTACAACTGGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTAGAGATCAAA
配列番号43-ATE-S-2H11二重特異性VLドメインアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNISNFLAWYQHKPGQAPRLLIYDASIRATGIPARFSGSGSGTDFSLTISSLEPEDFAVYFCQQRYNWLTFGGGTKVEIK
【0074】
配列番号44-抗CD-63抗体のVHドメインアミノ酸配列
QVQLQESGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTTYVIHWVKQKPGQGLEWIGYFDPNNDGTKYNERFKGKATLTSDRSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCARSRTYYDASMDYWGQGTSVTVSS
配列番号45-抗CD-63抗体のVLドメインアミノ酸配列
DIWMTQSPSSLAVSPGEKVTMNCKSSQSVLYSSNQKNFLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGGSGTDFTLTISNIQTEDLAVYYCQQIFSSYTFGGGTKLELKR
【0075】
配列番号46-抗HER2抗体のVHドメインアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号47-抗HER2抗体のVLドメインアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIK
【0076】
配列番号48-抗EpCAM抗体のVHドメインアミノ酸配列
EVQLVQSGPGLVQPGGSVRISCAASGYTFTNYGMNWVKQAPGKGLEWMGWINTYTGESTYADSFKGRFTFSLDTSASAAYLQINSLRAEDTAVYYCARFAIKGDYWGQGTLLTVSS
配列番号49-抗EpCAM抗体のVLドメインアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSTKSLLHSNGITYLYWYQQKPGKAPKLLIYQMSNLASGVPSRFSSSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQNLEIPRTFGQGTKVELK
【0077】
配列番号50-抗HER3抗体のVHドメインアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSHWMHWVRQAPGQGLEWIGEFNPSNGRTNYNEKFKSKATMTVDTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCASRDYDYDGRYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA
配列番号51-抗HER3抗体のVLドメインアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVTYMYWYQQKPGKAPKLLIYDTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSHIFTFGQGTKVEIK
【0078】
配列番号52-抗EGFR抗体のVHドメインアミノ酸配列
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPL
配列番号53-抗EGFR抗体のVLドメインアミノ酸配列
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELK
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エキソソームタンパク質に特異的な第1の抗原結合部分、及び
(B)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に特異的な第2の抗原結合部分
を含む、二重特異性抗体。
【外国語明細書】