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特開2024-123016リソグラフィ及び他の用途において極端紫外線と共に使用するための材料、コンポーネント、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123016
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】リソグラフィ及び他の用途において極端紫外線と共に使用するための材料、コンポーネント、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20240903BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240903BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240903BHJP
【FI】
G02B5/26
G02B5/28
G02B1/14
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088060
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2020507590の分割
【原出願日】2018-08-08
(31)【優先権主張番号】62/542,734
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517186031
【氏名又は名称】ジャイスワル、スプリヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャイスワル、スプリヤ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】UV、DUV、又はEUV波長内のより短い波長での反射コーティングの帯域幅を改善する。
【解決手段】紫外(UV)、極端紫外線(EUV)、及び/又は軟X線波長で操作するデバイス並びにシステムに用いるための新規な種類の材料、及び関連するコンポーネントが記載される。EUV反射及び透過材料の帯域幅並びに全般的性能の向上に関する。そのような材料構造及び組み合わせは、リソグラフィ、ウェハのパターン形成、天文学及び宇宙用途、生物医学用途、又は他の用途などの用途に用いるためのミラー、レンズ若しくは他の光学素子、パネル、光源、フォトマスク、フォトレジスト、又は他のコンポーネントなどのコンポーネントの製造に用いることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子のための多層ブラッグ反射コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムで使用のためのものであり、前記コーティングは:
基板と;
多層スタックを形成する二層ペアの繰り返しセットであって、各二層ペアは、さらに:
第一の層;及び
比Mの炭素、H族元素、及び金属で形成された層、を備えた、二層ペアの繰り返しセットと;
保護層又はキャップ層と、
を備え、並びに、
x≧0、y≧0、及びz≧0であり、x=y=z=0、及びx=1、y=z=0は除く、
多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項2】
前記第一の層が、比Mの炭素、H族元素、及び金属で形成され、並びにx≧0、y≧0、及びz≧0であり、x=y=z=0、及びx=1、y=z=0は除く、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記H族元素が、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスからの原子である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、又はモリブデン、ニオブ、ルテニウム、ジルコニウム、テクネチウム、白金、パラジウム、金、若しくはニッケルの何れかである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項5】
前記炭素(C)及び前記水素(H)が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
前記コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングよりも広いスペクトル帯域幅を前記光学素子に与える、請求項1に記載のコーティング。
【請求項7】
前記コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングよりも広い角度帯域幅を前記光学素子に与える、請求項1に記載のコーティング。
【請求項8】
前記コーティングが、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、集光器の層である、又は光源に用いられる、請求項1に記載のコーティング。
【請求項9】
前記第一の層が、Siである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項10】
光学素子のための反射コーティング又は透過コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムでの使用のためであり、前記コーティングは:
二次元以上で構築されたコーティングに用いられる組み合わせ材料M
膜又は基板、
を備え、及び、
x=y=z=0は除外される、
反射コーティング又は透過コーティング。
【請求項11】
前記炭素(C)及び前記H族元素が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、請求項10に記載のコーティング。
【請求項12】
前記金属原子(M)が、前記炭素(C)又は前記H族元素(H)と、1又は複数のリガンドを用いて結合されている、請求項10に記載のコーティング。
【請求項13】
前記光学素子が、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、若しくは集光器である、又は光源に用いられる、請求項10に記載の光学素子。
【請求項14】
0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子での使用のための材料コーティングを製造するための方法であって:
金属(M)、炭素(C)、及びH族元素(H)を、x≧0、y≧0、及びz≧0である比Mで組み合わせて、組み合わせ材料を形成すること;
2種類以上のイオンの組み合わせをターゲットに衝突させること;
制御された堆積法を用いて、前記M組み合わせ材料を均一に堆積して、層とすること、
を含み、及び、
x=y=z=0は除外される、
方法。
【請求項15】
さらに:
第二の層の材料を提供すること;
2種類以上のイオンの組み合わせを第二のターゲットに衝突させること;及び
前記制御された堆積法を用いて、前記第二の材料を均一に堆積して、多層コーティングのための層ペアとすること、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イオンが、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、クリプトン、及びネオンのイオンから成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記H族元素が、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
スパッタリング、イオンビーム堆積、PECVD、原子層堆積、イオン支援堆積、電子ビーム堆積、化学蒸着、熱蒸着、イオン注入、又は分子ビームエピタキシなどの制御された堆積法を用いる、請求項14に記載のコーティングを製造するための方法。
【請求項19】
前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記光学素子が、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、若しくは集光器である、又は光源に用いられる、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子での使用のための材料コーティングを製造するための方法であって:
制御された堆積法を用いて、光学素子中の層として遷移金属を堆積すること;
制御された堆積法を用いて、前記光学素子の前記層に炭化水素を堆積すること、
を含み、並びに、
前記制御された堆積は、同時に、及び周囲ガスの存在下で行われる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年8月8に出願され、発明の名称が「Materials,Components,and Methods for use With Extreme Ultraviolet Radiation in Lithography and other Components」である米国特許仮出願第62/542734号明細書の優先権を主張するものであり、その全内容は、本明細書に援用される。本出願は、2013年1月18日に出願された米国特許出願第13/745618号明細書及び2016年6月30日に出願された米国特許出願第15/198291号明細書に関し、これらは何れも、その全内容が示されているかのごとく、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明の分野は、光学材料の、EUV材料の、より詳細には、多くの従来の光学材料によって強く吸収される波長範囲に対する反射材料の設計並びに製造である。
【背景技術】
【0003】
光学リソグラフィシステムは、例えばデバイスの製造用に一般に用いられる。そのようなシステムの分解能は、露光波長に比例する。したがって、波長が短いほど、製造時の解像度を向上させることができる。極端紫外線リソグラフィ(EUVL)は、極端紫外線(EUV)波長(およそ120ナノメートル~0.1ナノメートル)の電磁放射線を用いる。したがって、これらの波長でのフォトンは、およそ10電子ボルト(eV)~12.4keV(それぞれ、124nm及び0.1nmに相当する)の範囲内のエネルギーを有する。極端紫外線波長は、プラズマ及びシンクロトロン光源などのデバイスによって人工的に発生させることができる。リソグラフィにEUV波長を用いることは、半導体チップなどのデバイス、さらにはポリマーエレクトロニクス、太陽電池、バイオテクノロジー、医療テクノロジーなどの他の用途において、フィーチャサイズを低下させるという潜在的な利点を有する。
【0004】
より大きい光システムでは、ミラー、レンズ、フィルター、反射器、検出器、又は集光器などの受動光学素子が、多くの場合用いられる。例えば、フォトリソグラフィシステムは、薄フィルム又はシリコンウェハのパーツにパターン形成するために光を用いる微細加工プロセスである。それは、光を用いて、フォトマスクから、ウェハ上の感光性化学フォトレジスト又は単純にレジストへ、幾何学的パターンを転写する。このシステムは、ターゲット波長の光を発生させる光源を有し、その光は、ウェハの面に送達されるまでに、多くの光学素子を有する光学経路を通って送られる。実際、光経路が、光源とシリコンウェハとの間に12個を超えるミラーを有することも珍しくない。現在、多くのフォトリソグラフィシステムは、193nmのターゲット波長で作動するが、より良好な解像度及びより微細な加工を支援するためには、さらにより短い波長が用いられることになる。EUV紫外線リソグラフィは、13.5nmの光を用いている。しかし、ほとんどの天然材料は、これらの短波長の吸収性が高く、その結果、光がウェハに送達されるまでの光学経路が、非常に非効率でロスの大きいものとなる。したがって、13.5nmでの高い応答性及び共振性を有し、振幅が高く、スペクトル周波数の幅も広い反射スペクトルプロファイルを持つ新規な又は改善された材料を有することが望ましい。
【0005】
リソグラフィでは、ミラー、レンズ、フィルター、フィルム、及び検出器のシステムが、計測、伝送、反射、及び他のコンポーネントのために用いられる。単一のシステムでは、コンポーネントは、所与のスペクトル及び角度帯域幅を有し、システムを通しての伝送を最大化するためには、コンポーネント同士のミスマッチは、最小限に抑える又は回避する必要がある。システムを通して伝送される放射線又はコンポーネントごとに反射される放射線は、帯域放射線と称される。リソグラフィシステムは、特定のターゲット周波数で発光されることを意図する光源を有することから、光学経路中のすべての光学素子も、その周波数に対して調整され、最適化されることが重要である。そうでない場合、システム全体が、非常に低い効率、出力の浪費、帯域外放射線による光学素子の損傷、及び発熱を受けることになり、大規模な光源が必要となってしまう。多くの光学素子間での最適化を達成することは、極めて困難であり、なぜなら、各素子は、非常に狭い周波数帯域にしか反射ピークを有しないからである。このように、すべての光学素子を、すべての光学素子がその狭いピーク帯域で完全に反射するように構築可能である可能性は非常に低い。複数の光学素子間でのピーク帯域のこのミスマッチは、光学経路中の全体としての浪費及び非効率性に対する主たる要因である。
【0006】
リソグラフィの素子に用いられる反射材料又はコーティングの選択は、厳しく限定される場合が多い。従来の材料の組み合わせは、理論的には67%までの反射率をもたらすモリブデン-シリコン(Mo-Si)多層構造から成る。各コーティングは、反射スペクトル曲線及び反射角曲線を有する。反射スペクトル曲線は、放射線の波長の関数としての反射率を指定する。反射角曲線は、放射線の入射角(0~90度、0度は、典型的には、微小角入射であり、90度は、垂直入射である)の関数としての反射率を指定する。スペクトル幅は、半値全幅(「FWHM」)帯域幅として表されることが多い。FWHM帯域幅は、反射率がその値の50%であるスペクトル範囲である。Mo-Si層は、EUVリソグラフィシステムでのミラー、集光器、及びフォトマスクに用いられる。他の従来の多層構造の組み合わせとしては、タングステンと炭化ホウ素、タングステンと炭素が挙げられ、まとめて現行技術と称される。ピーク反射率の最大化が主要な課題であることから、材料は、最も高い絶対スペクトル反射率が得られる組み合わせで選択される場合が多い。しかし、ピーク反射率の最大化が、狭いスペクトル帯域幅と組み合わされる場合、コンポーネントの連続する一連の帯域放射線として知られる透過放射線は、コンポーネント同士のピークスペクトル波長及び反射コーティングの帯域幅をマッチングさせることによって制限される。反射率応答又は曲線において、重要であるのは、ピーク反射率だけではなく、スペクトル帯域幅、平均スペクトル反射率、及び合計帯域放射線、又は反射率曲線とx軸との間の積分面積も重要である。
【0007】
リソグラフィシステムでウェハに伝送されるエネルギーは、反射コーティングの帯域幅、その合計反射スペクトル範囲、及び各コンポーネントによって伝送されるエネルギーによっても制限される。帯域外放射線は、コンポーネントによって吸収され、コンポーネントの有害な加熱をもたらす結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、UV、DUV、又はEUV波長内のより短い波長での反射コーティングの帯域幅を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、リソグラフィ(EUVL)又は他の用途などにおいて、紫外線(UV)、深紫外線(DUV)、極端紫外線(EUV)、及び軟X線放射線と共に使用するための材料、デバイス、装置、及び方法全般に関する。限定するものではないが、より詳細には、本開示は、UV、EUV、及び軟X線用途で用いるための材料及びコンポーネント、さらには、そのような材料及びコンポーネントの、製造方法、並びにEUV放射線を用いる装置、デバイス、及びシステムでの使用に関する。
【0010】
ある特定の実施形態では、本開示は、露光システムに用いることができる素子に関し、そのシステム又はサブシステムは、ある波長を有する光を伝送するための光源を含む。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、フォトマスク、ミラー又はレンズ、基板素子を含有する露光システムに用いることができる素子に関する。そのシステム又はサブシステムは、ある波長を有する光を伝送するための光源を含み得る。素子は、複数の構造フィーチャを有する材料、又は1若しくは複数の材料の組み合わせを含み得る。
【0012】
別の実施形態では、本開示は、光学素子、並びにリソグラフィ関連の装置及びコンポーネントに用いられるコーティングに関する。
【0013】
本発明は、光学素子と共に使用するための新規な材料を開示するものであり、光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅(0.1nm~250nm)のターゲット波長で操作するために構築される。新規な材料の使用は、ターゲット帯域幅において、公知の反射器を超えて光学素子のスペクトル又は角度帯域幅を広げる。
【0014】
帯域幅のミスマッチは、ピーク波長を精密にマッチングさせることによって、及び/又はスペクトル帯域幅を広げることによって回避することができる。スペクトル帯域幅を広げることは、いくつかの利点を有する。それは、より多くのエネルギーを、リソグラフィシステム全体を通して運び、ウェハに送達することを可能とする。それは、各スペクトル曲線からの平均スペクトル反射率を増加させ、したがって、コンポーネント同士の帯域幅のミスマッチの可能性を低減する。帯域幅を広げることは、帯域スペクトル放射線が増加されることを意味し、光学コンポーネントに対する帯域外放射線に起因する冷却の必要性が低減される。
【0015】
角度帯域幅を広げることにより、コンポーネントに入射する光が、より広い入射角でシステムを通して伝送されることが可能となる。入射角が広がることにより、より高い開口数でシステムを設計することが可能となる。
【0016】
本発明は、スペクトル及び角度帯域幅を広げ、反射率曲線又は透過率曲線におけるピーク性能を、現行技術の反射器によって観察される性能を超えてより大きく最大化する材料の組成物及び組み合わせに関する。参考として、現行技術の反射器は、溶融シリカ又はシリコン基板上のモリブデンシリコン(Mo-Si)コーティングである。シミュレーション及び実験から、帯域幅は、半値全幅(FWHM)である。Mo-Siの場合、スペクトルFWHMは、0.63nmであり、角度帯域幅は、+/-10.8度である(垂直入射、90度から)。ピーク反射率は、73%であり、ピーク反射率が70%超で維持される有用な角度範囲は、垂直入射から+/-6度であり、これは、物体側での主光線入射角、CRAOとしても知られる。コンポーネントごとに伝送されるエネルギー、又は帯域放射線は、反射率(透過率)応答曲線の標準化された積分値に対して比例するとして計算することができ、以降、積分エネルギーと称する。平均反射率は、所与の波長一式にわたる平均スペクトル又は角度反射率である。角度帯域幅は、微小角近辺又は垂直角近辺で広がり得る。
【0017】
図1は、Mo-Siの多層スタックに対する(a)波長(90度での)及び(b)角度(13.5nmでの)の関数としての反射率応答100を示す。FWHMスペクトル帯域幅は、0.63nmである。角度帯域幅は、+/-10.8度である。CRAOは、+/-6度である。伝送される帯域エネルギーは、12.70(任意単位)に比例する。平均スペクトル反射率は、25%である。ピークスペクトル反射率は、73%である。
【0018】
本発明は、反射率(透過率)応答曲線のスペクトル及び角度帯域幅を調整する又は広げるための、特定の金属、合金、化合物、混合物、有機材料、及びこれらの組み合わせの使用を開示する。本発明は、基板上に堆積され得る単一のフィルム若しくはコーティング、多層フィルムの組み合わせ(一次元コーティング)、又はさらには二次元及び三次元コーティング、例えば二次元若しくは三次元のフィーチャ又は周期性を有するコーティング、に関する。コーティングは、多孔性コーティング、又は高い内部表面積を有するコーティング、自立膜、ナノスケールフィーチャを有するフィルムのコーティングであってよい。基板としては、Si若しくはSiO、又はサファイア、又はガラスが挙げられる。
【0019】
具体的には、本発明は、周期律表中の、金属(M)と、炭素(C)と、ヘリウム、水素、ネオン、又は他のガス、若しくは元素ガスを例とするいかなる軽元素であってもよいH族元素(H)との組み合わせに関し、組み合わせMの材料の製造に用いられ、x、y、zは、質量、体積、比、又は化学量論比の何れかを意味し、x>0、y≧0、z>0であり、並びにx及びy及びzは、いかなる数であってもよい。H族元素は、Mの原子番号よりも小さい原子番号を有する何れの元素であってもよい。例えば、シリコン基板上のM及びSiの多層コーティング(交互層)を用いて、反射性が高く帯域幅のより広いミラーを形成することができる。x、y、又はzは、整数又は非整数のいかなる数であってもよく、非化学量論的組み合わせを含む。
【0020】
そのような材料を利用する典型的な光学素子及びコンポーネントとしては、ミラー、フィルター、レンズ、検出器、反射器、ペリクル、基板、ファセット、カバー層、キャップ層、保護層、界面拡散層、バリア層、膜、集光器が挙げられる。これらのコンポーネントは、リソグラフィシステム、印刷、スキャニング、望遠鏡、検査ツール、光源、レーザー、イメージングツールに用いられ得る。
【0021】
金属(M)の例としては、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、ジルコニウム、テクネチウム、白金、パラジウム、金、ニッケル、及び周期律表の第4、5、及び6行にあるすべての金属が挙げられる。
【0022】
H族元素の例としては、ヘリウム、水素、ネオン、又は他の元素ガスが挙げられる。これらは、Mの堆積の過程でM及びCと組み合わされて、コーティング内に取り込まれ得る。ヘリウムは、その不活性で非反応性の性質、並びに軽量、及び透明性のために、最適なガスである。
【0023】
1つの実施形態では、He環境中での金属の共堆積が、その環境中のHeを取り込むことに繋がり得る。同様に、金属M及び炭素源の共蒸着によっても、混合された又はブレンドされた材料を形成することができる。
【0024】
いくつかの場合では、Mの存在は必要ではなく、純炭素又は炭化水素が、その代わりに用いられてよい。これは、特に、二次元又は三次元材料、すなわち二次元又は三次元構成のための複数のフィーチャを有する材料の場合である。この場合、x=0である。これはまた、層状材料の1つに金属非含有の組み合わせ材料又は誘電性組み合わせ材料を用いる1D多層構造の場合にも当てはまり、例えば、x=0、及びy≠0、z≠0の場合のSi-Mである。
【0025】
他の場合では、H又はCの存在が必要とされない場合があり、この場合、y又はzがゼロであってよいが、同時にゼロにはならず、xはゼロではない。例えば、MoCの場合、x=1、y=0、z=1であり、MoCの場合、x=2、y=0、z=1である。
【0026】
1つの実施形態では、x、y、z>1、又はy>z>xである。別の実施形態では、y及びz>xである。x=0、y=0、z=0の場合は、ここでは考慮されない。ゼロではない量が少なくとも1つ存在する必要がある。同様に、x=1、y=0、z=0の場合も、本発明の一部として考慮されず、なぜなら、多くの純金属/誘電体多層構造が既に存在するからである。本発明は、特に、定める通りのH及びCが、材料の組み合わせの一部又は全体に用いられる場合に関する。
【0027】
炭素(C)、及びHが水素である(H)で定められる元素の例としては、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、並びに水素及び炭素の何らかの有機金属複合体、又は金属(M)原子と炭素(C)若しくは(H)とのリガンドを介しての何らかの結合が挙げられる。同様に、水素貯蔵又は水素貯蔵のための触媒に用いられるいかなる材料も、適切な候補である。組み合わされた材料は、M、C、及びHの金属有機構造体フィルムであってもよい。複合体中に酸素が存在しないことが重要である。
【0028】
Cの存在は、材料を、高温に対してより強固とし、及び酸素による汚染を受けにくくし、保護層、又はキャップ層、又は多層構造の一部となり得る。
【0029】
本発明者らは、ドープ材料、炭化水素不純物、及び水素バブルの間の重要な区別を行う。本発明は、これらのケースの何れに関するものでもない。ドーピングとは、不純物を、典型的には純材料よりも数桁少ない量で別の材料中に注入することを意味する。ドーピングは、反射率帯域幅又は応答振幅に最小限の影響しか有しない。炭化水素不純物は、炭化水素がミラーコーティング上に、ランダムに又は望ましくない場所に(位相がずれて)堆積された場合を意味する。このことは、不要な吸収又は散乱を引き起こし、したがって、反射率が低下する。不純物中では、炭化水素は、正しい比又は位置で金属と適切に組み合わされてはいない。それは、意図的でなく、ランダムであり、計画的に意図されて精密な位置に存在するのではなく、偶然に存在するものである。それは、制御された堆積の一部ではない。水素バブルは、水素ガスが集められた望ましくないポケットを意味する。これも、反射率を劣化させるものであり、なぜなら、それは、金属と適切に組み合わされず、位相がずれた反射又は散乱を引き起こすからである。同様に、周囲ガスを用いてガラス基板が製造される場合も考慮されず、なぜなら、それは、コーティングの反射性能/透過性能、又は帯域幅に影響を与えないからである。
【0030】
素子がプラズマ源からのデブリで衝突される操作上の作用は、ここでは、リソグラフィツールに用いられる素子に含まれない。周囲ガスによるin-situ洗浄も含まれない。これらは、製造プロセスの一部ではなく、その開発の後のことである。
【0031】
金属をヘリウム、水素、及び/又は炭素と組み合わせるために、いくつかの方法を用いることができる。いくつかの例としては、水素化金属、金属水素複合体、共蒸着、共スパッタリング、共堆積、蒸着、熱アニーリング、及び真空チャンバー中での他の堆積方法が挙げられる。炭化水素の例は、例えば、アルカン、アルケン、及びアルキン、デカン、ペンタン、ペンタセンである。他の適切な分子の組み合わせとしては、フラーレン、例えばC60が挙げられる。例えば、金属は、周囲ガス、バッファガス、又は他のガスの下で堆積されて、水素富化金属、水素化金属、又は水素リッチ金属を形成することができる。ブレンドガス又は周囲ガスの例としては、He/Ar、He/N、He/H、Ne/He、H/Ar、又はN/H、Ne/Ar、Ne/N、Ne/He、Ne/Hが挙げられる。
【0032】
有機金属複合体としては、例えば、メタロセン、又はベンゼン/トルエンベースの化合物、又はシクロペンタジエニル環、又は他の複合体が挙げられ、この場合、原子又は分子は、リガンドによって結合されている。炭素の例としては、ダイヤモンド状炭素、グラフェン、グラファイト、二重結合炭素、単結合炭素が挙げられる。
【0033】
MoC及びMoCを用いて、温度安定性を、特に多次元構成において高め、及び反射率を劣化させる酸化を低減することができる。これは、反射又は透過コーティングの構築の際に考慮されてよく、キャップ層又は保護層の場合には必ずしも考慮されなくてよい。MoC/Si又はMoC/Siの多層構造の特定の場合は、本発明から除外される。
【0034】
本開示は、添付の図面と共に以下の詳細な記述と合わせて、より充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、多層構造Mo-Siの(a)波長及び(b)角度の関数としての反射率応答を示す。FWHMスペクトル帯域幅は、0.63nmである。
図2図2は、M-Siの多層構造の(a)波長及び(b)角度の関数としての反射率応答を示す。FWHMスペクトル帯域幅は、0.76nmである。
図3図3は、SiO基板上に堆積された単一層コーティングの反射率応答を示す。反射率応答は、13.5nmでのものであり、微小角入射(0度)から垂直入射(90度)までの角度の関数として測定される。1つの例では、金属コーティング(M)は、25度の角度帯域幅(FWHM)で堆積される。第二の例では、同様の厚さのMのコーティングは、51.3度の角度帯域幅(FWHM)で堆積される。
図4図4は、公知の多層ブラッグ反射コーティングの構成を示す。この構成は、基板上の材料1と材料2との交互の材料のスタック(多層構造)、及び保護層又はキャップ層から成る。
図5図5は、多層ブラッグ反射コーティングの構成を示す。この構成は、基板上の交互の材料のスタック(多層構造)、及び保護層又はキャップ層から成る。材料のスタックは、Mとシリコンとの二層ペア、又は交互のMとSi-Mとから成る。
図6図6は、コーティングの直接部分を形成するM材料を有する3D構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明で用いられる定義のリストを以下に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
フォトリソグラフィに用いられる光学素子としては、フォトマスク、ミラー、検出器、反射器、スペクトル純度フィルター、フィルター、ペリクル、回折格子、偏光子、集光器が挙げられる。各素子は、典型的には、溶融シリカ、シリコン、ガラス、クロムを例とする基板、及び続いて反射又は透過コーティング、及び所望に応じて保護層、を含有し得る。これらの素子の各々は、類似の材料を用いており、材料は、それらの材料のベースとして、モリブデン、ケイ素、ニオブ、ルテニウム、テクネチウム、ジルコニウム、ストロンチウムを例とする一式の純元素に主として基づいている。
【0039】
「金属」とは、金属性であり、中性であり得る、又は原子価殻中の電子が中性の金属性元素に存在するよりも多い若しくは少ない結果として負若しくは正に帯電し得る、周期律表の元素を意味する。本発明に有用である金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及びポスト遷移金属が挙げられる。アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaが挙げられる。遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Mg、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、及びAcが挙げられる。ポスト遷移金属としては、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、及びPoが挙げられる。希土類金属としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuが挙げられる。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、及びCsが挙げられる。当業者であれば、上記で述べた金属の各々が、複数の異なる酸化状態を取ることができ、それらのすべてが、本発明において有用であることは理解される。
【0040】
A.多層コーティングの実施形態
反射コーティングの典型的な実施形態を図4に示す。この構成は、基板、局所的には溶融シリカ、ガラス、クロム、シリコン、石英、1D多層ブラッグ反射コーティング、例えばMo-Si、Nb-Si、W-Si、Ru-Si、又は本発明で述べる、若しくは参照により援用される米国特許出願第15/198291号明細書に見出される他の材料、を有する。多層構造は、交互材料の多くの層から成り、各一式の材料は、二層ペアを形成している。所望に応じて、層又は二層構造のスタックの最上部に、キャップ層又は保護層があり、それは、ルテニウム又は他の貴金属から製造されたコーティングである。
【0041】
図4は、基板402、及び多くの二層ペア409で構築された多層スタック411を有する公知の多層反射光学素子400を示す。各二層ペアは、材料1の第一の層405、及び材料2の第二の層407を有する。公知かつ一般的であるように、層のうちの1つは、Siであってよく、他方の層は、Moであってよい。
【0042】
別の実施形態では、多層コーティングは、3D構成、又は全内容が示されているかのごとく参照により本明細書に援用される米国特許出願第13/745618号明細書に記載のものなどの複数の構造フィーチャ又は1若しくは複数の材料の組み合わせを有する構成に置き換えられてよい。この場合、3D構成は、単一の金属から、又は他の材料から製造されてよい。
【0043】
別の実施形態では、例えばペリクルで用いられる場合、コーティングは、膜上に存在してよく、又は基板なしで吊り下げられていてもよい。コーティングは、単一の材料、又は薄フィルム、又は多孔性構造から成っていてよい。材料は、Mo、又はSi、又はケイ素化金属であってよい。
【0044】
本発明は、多層反射コーティング中、ペリクルに用いられる透過性材料中、又は材料又は3D構成の材料中の1又は複数の層を、M組み合わせ材料で置き換える実施形態を開示する。
【0045】
組み合わせ材料は、制御堆積法を用いたコーティングの製造の過程で作られ、それは、計画的及び意図的に、制御された位置及び割合でコーティング中に分布されて、それらの位置での材料の光学的特性に均一に影響を与える。これは、コーティングの操作上の使用とは区別され、例えば、プラズマ源の前に配置されるミラーは、プラズマ源で又は真空チャンバー中で、デブリからの炭化水素を受け、そのような炭化水素又は粒子欠陥又はイオンは、素子の操作上の使用からの有害効果としてコーティング中にランダムに配置される。
【0046】
具体的には、多層構成を有する実施形態では、M組み合わせで置き換えられるのは、例えば、二層ペアの層のうちの1若しくは複数、又は交互層の1若しくは複数の層、又はこの構成の1若しくは複数の層であってよい。正味での効果は、図2に示されるように、反射スペクトル及び又は角度曲線200の改善である。M-Siの多層スタックの(a)波長及び(b)角度の関数としての反射率応答。FWHMスペクトル帯域幅は、0.76nmである。角度帯域幅は、+/-10.8度である。CRAOは、+/-8度である。伝送される帯域エネルギーは、16.14(任意単位)に比例する。平均スペクトル反射率は、31%である。ピークスペクトル反射率は、76%である。改善された反射率曲線は、現行技術のMo-Siと比較した場合の、スペクトル若しくは角度帯域幅のFWHMの増加、伝送された帯域放射線の積分値の増加、帯域幅ミスマッチの減少、又は曲線のピーク振幅の改善の何れかを含む。例えば、典型的な多層反射コーティング、例えばMo-Siでは、M組み合わせ材料は、Mo、又はSi、又は両方と置き換えられてよく、例えば、MoH-Siである。図5は、多層(501、502)構成500での本発明を示す。
【0047】
図3は、SiO基板上に堆積された単一層コーティングの反射率応答300を示す。反射率応答は、13.5nmでのものであり、微小角入射(0度)から垂直入射(90度)までの角度の関数として測定される。1つの例では、金属コーティング(M)は、25度の角度帯域幅(FWHM)で堆積される。第二の例では、同様の厚さのMのコーティングは、51.3度の角度帯域幅(FWHM)で堆積される。これらの多層コーティングのための堆積法は、スパッタリング、イオンビーム堆積、PECVD、原子層堆積、イオン支援堆積、電子ビーム堆積、化学蒸着、熱蒸着、イオン注入、分子ビームエピタキシである。スパッタリング、又はイオンビーム堆積、又は電子ビーム堆積の場合、荷電粒子がターゲットへの衝突に用いられてよく、したがって、平滑に、及び場合によっては均一に、Mの量、位置、及び分布に対する絶対的な制御と共に、これらの層が堆積され得る。M組み合わせ材料を堆積させるためのプロセスの1つの実施形態では、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、クリプトン、又はネオンのイオン何れかが用いられてよい。同様に、これらの元素の2つ以上の組み合わせをガス中に含有するブレンドガスが用いられてもよい。
【0048】
このプロセスは、チャンバー中に交互材料の2つのターゲットを装填すること、上述したイオンのうちの2つ以上の組み合わせをターゲットの各々に衝突させること、及びこれら2つの材料の各々の薄層を、基板上に交互に堆積させること、から成る。
【0049】
類似のプロセスが、イオンビーム堆積に用いられ、この場合、第二のビーム、又は1若しくは複数のイオンのブレンドイオン、イオン支援堆積ビーム、が基板の近辺に指向され、フィルムが形成されるに従って基板でのターゲット材料のプルームの相互作用が高められ得る。
【0050】
プロセスの別の実施形態は、堆積チャンバー中でのハイブリッド材料の共スパッタリング、又は共蒸着から成る。例えば、遷移金属が、同じ真空堆積システム中での炭化水素のスパッタリング又は蒸着と同時に、周囲ガス又はブレンドガスの存在下でスパッタリングされ得る。
【0051】
ペリクルのための堆積法としては、さらに、原子層堆積、又は蒸着、又は電着、又はイオン注入が挙げられ得る。この場合、金属は、コンフォーマルに堆積されて、次に炭化水素蒸気、ガス、周囲ガス、又はブレンドガスで後処理されてよい。
【0052】
図6は、3D構成の堆積605を有する光学素子600を示す。この場合、金属は、コンフォーマルに堆積されて、次に炭化水素蒸気、ガス、周囲ガス、又はブレンドガスで後処理されてよい。光学素子600は、所望に応じてキャップ層603を有していてよく、いくつかの場合では、基板607を有していてよい。他の場合では、例えば光学素子が膜構造の一部として構築される場合、基板は必要とされない場合がある。別の選択肢として、図6は、本明細書で述べる有機金属複合体によって形成されてもよい。
【0053】
B.3D構成の実施形態
以下の構成は、透過コーティング、膜、又はペリクルの一部として、光学素子に用いられ得る。それはまた、ミラー又はマスク上の反射コーティングにも用いられ得る。
【0054】
2D又は3D構成は、自己組織化有機合成テンプレート、ポリマー、有機無機ハイブリッド、又は有機金属複合体から形成される。そのような複合体は、金属(M)、炭素、及び水素原子を含有し、例えば、メタロセン、又はベンゼン/トルエンベースの化合物、又はシクロペンタジエニル環、又は他の複合体であり、この場合、原子又は分子は、リガンドによって結合されている。炭素の例としては、ダイヤモンド状炭素、グラフェン、グラファイト、二重結合炭素、単結合炭素が挙げられる。
【0055】
本発明のための有用な三次元反射フォトニック結晶は、米国特許第9322964号明細書に記載されている。材料は、1又は複数の電磁波長範囲での操作を必要とする用途で用いることができるフィーチャを含み得る。1つの実施形態では、構造フィーチャの寸法は、極端紫外線用途で用いられる波長とおよそ同じオーダーである。例えば、構造フィーチャは、およそ13.5nmの寸法を有してよい。いくつかの実施形態では、フィーチャは、10~20nmのオーダーの寸法を有する構造フィーチャであってよい。いくつかの実施形態では、材料は、0.001nm~10nmの範囲内の構造フィーチャを有していてよい。いくつかの実施形態では、材料は、10nm~250nmの範囲内の構造フィーチャを有していてよい。これらのフィーチャは、ナノスケールフィーチャと称され得る。ナノスケールフィーチャは、一次元、二次元、又は三次元であってよい。構造フィーチャは、材料の全体としての電磁吸収を低下させ得る。例えば、いくつかの用途では、ナノスケールフィーチャは、その用途で用いられる放射線の波長とおよそ相関し得る。材料は、サブ波長フィーチャを含んでいてよい。
【0056】
ナノスケールフィーチャは、例えば、周期的、半周期的、擬周期的、若しくは非周期的構造、又は繰り返し若しくは反復要素を含み得る。周期的構造は、一、二、又は三次元構造であってよい。構造は、層状構造の一部、又は基板上であってよい。基板は、平面であってよい。周期的構造の例としては、ナノ粒子の2D又は3Dアレイ、らせん状構造、球状体、円柱状体、セグメント、スイスロール構造が挙げられる。ナノスケールフィーチャは、いかなる寸法のいかなる形状であってもよく、例えば、限定されないが、層、フィルム、球状体、ブロック、角錐状体、リング、多孔性構造、円柱状体、連結形状、シェル、不規則形状、キラル構造、半球状体、セグメント、又はこれらの何れかの組み合わせである。
【0057】
材料は、例えば、勾配構造を含んでよい。例えば、材料中の一部の層が、その前の層よりも増加している又は減少している長さ、深さ、厚さ、周期、又は繰り返し単位を有する、いかなる寸法であってもよい層状構造である。1つの実施形態では、層が、勾配屈折率を作り出すように配置される場合、より広い波長又は角度範囲に対してカスタマイズされた光学応答が得られる。構造は、層状構造の一部、又は基板上であってよい。
【0058】
材料は、ポリマーを含んでいてもよい。材料はさらに、ポリマーのマイクロ又はナノ構造フィーチャを備えていてよい。ポリマーは、犠牲材料、又は軟質のテンプレート若しくは骨格構造であってもよい。ポリマーは、二次元又は三次元に自己組織化されていてもよい。
【0059】
ポリマー構造は、M組み合わせ材料を用いて有機金属複合体と複合体形成され、続いて組織化されて2D又は3D構成を形成してもよい。
【0060】
C.例
図5は、本発明に従うブラッグ反射器500を示す。図5は、2つの例としての実施形態を示す。1つの実施形態501では、多層スタック511が、基板502の上に堆積されている。例501では、各二層ペア509は、Siの層とM材料の層とを有する。キャップ層515が、最上部の二層ペアを保護するために形成されていてよい。例2の502では、各二層ペア509は、Moの層とM材料の層とを有する。キャップ層515が、最上部の二層ペアを保護するために形成されていてよい。なお別の例(図示せず)では、二層ペアは、M材料の第一の層を有してよく、第二の層は、層1に用いられたものとは異なる比を有する異なるM材料であってよい。
【0061】
図6は、M材料から形成された単一のコーティングで所与の3D構造に自己組織化された3D構成のコーティングを示す。
【0062】
D.コーティングの使用
本発明は、リソグラフィ、イメージング及び印刷のシステム及び設備に関連する装置、並びにそれらのコンポーネント及びそれらの中の素子におけるコーティングの使用を含む。これは、光源、スキャナーツール、検査ツール、計測、及び製造ツールを含む。
【0063】
上記の詳細な記述では、様々な実施形態に適用された場合の新規な特徴を示し、記載し、指摘してきたが、本開示の趣旨から逸脱することなく、示したデバイス又はアルゴリズムの形態及び詳細において様々な省略、置き換え、及び変更が成されてもよいことは理解される。したがって、上記の記述の何れも、特定の特徴、特性、工程、モジュール、又はブロックの何れかが必要又は不可欠であると暗示することを意図するものではない。理解されるように、本明細書で述べるプロセスは、本明細書で示される特徴及び有益性のすべてを提供するものではない形態の範囲内で実現されてよい。保護の範囲は、上記の記述によってではなく、添付の請求項によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子のための多層ブラッグ反射コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムで使用するためのものであり、前記多層ブラッグ反射コーティングは、
基板と、
多層スタックを形成する二層ペアの繰り返しセットであって、各二層ペアは、さらに、
第一の層、及び
比で炭素、H族元素、及び金属で形成された第二の層、
を備えた、二層ペアの繰り返しセットと、
選択的な保護キャップ層と、
を備え、
前記第二の層において、x≧0、y≧0、及びz≧0であり、ただし、x=y=z=0、及びx=1、y=z=0除くとともに、特定の多層の組み合わせであるMo C/Beを除く、ここで、前記第二の層がMo Cであり、前記第一の層がBeである、多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項2】
前記第一の層が、M比で炭素、H族元素、及び金属で形成され、y≧0、及びz≧0であ、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項3】
前記H族元素が、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスである、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項4】
前記H族元素が、前記M 層の中に取り込まれている、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項5】
前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、又はモリブデン、ニオブ、ルテニウム、ジルコニウム、テクネチウム、白金、パラジウム、金、若しくはニッケルの何れかである、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項6】
前記炭素(C)及び前記H族元素(H)が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項7】
光学素子のための反射コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムで使用するためのものであり、前記反射コーティングは、
構築されたコーティングに用いられる金属原子(M)、炭素(C)、及び水素(H)の混合材料M を含み、前記混合材料において、x≧0、y≧0、及びz≧0であり、ただし、x=y=z=0を除くとともに、多層の組み合わせであるMo C/Beを有する特定の反射コーティングを除く、ここで、第二の層がMo Cであり、第一の層がBeであり、
前記反射コーティングはさらに一次元以上のフィーチャを備える、反射コーティング。
【請求項8】
前記反射コーティングが基板又は膜上に適用される、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項9】
前記反射コーティングがさらにキャップ層を含む、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項10】
炭素(C)及び水素(H)が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項11】
金属原子(M)が、炭素(C)又はH族元素(H)とリガンドを介して結合されている、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項12】
前記多層ブラッグ反射コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングのスペクトル帯域幅よりも広いスペクトル帯域幅を前記光学素子に与える、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項13】
前記多層ブラッグ反射コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングの角度帯域幅よりも広い角度帯域幅を前記光学素子に与える、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項14】
前記多層ブラッグ反射コーティングが、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射、検出器、集光器のうちの少なくとも1つの層である、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項15】
前記基板は、局所的な溶融シリカ、ガラス、クロム、シリコン、石英、又は多層ブラッグ反射コーティングである、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項16】
前記保護キャップ層は貴金属である、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項17】
前記第一の層が、Siである、請求項1に記載の多層ブラッグ反射コーティング。
【請求項18】
0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子で使するための請求項1又は7に記載のコーティングを製造するための方法であって、
金属(M)、炭素(C)、及びHガス(H)を、M の比で混合して、混合材料を形成すること、
前記M の混合材料に2種類以上のイオンの組み合わせを衝突させること、及び
制御された堆積法を用いて、前記M混合材料を均一に堆積して層とすること、
備える方法。
【請求項19】
さらに、
第二の層材料を提供すること、
前記第二の層材料に2種類以上のイオンの組み合わせを衝突させること、及び
前記制御された堆積法を用いて、前記第二の層材料を均一に堆積して、多層コーティングのための層ペアとすること、
備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イオンが、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、クリプトン、及びネオンのイオンから成る群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記Hガスが、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記制御された堆積法が、スパッタリング、イオンビーム堆積、PECVD、原子層堆積、イオン支援堆積、電子ビーム堆積、化学蒸着、熱蒸着、イオン注入、又は分子ビームエピタキシである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記Hガスが、前記M 層の中に取り込まれている、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
M、C、及びHが1つ以上のリガンドを用いて混合されている、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項25】
前記混合するステップは、Mを炭化水素の形態であるC及びHと混合することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
M、C、及びHが混合されて有機金属構造体又は有機金属複合体を形成する、請求項7に記載の反射コーティング。
【請求項27】
前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
堆積された前記混合材料が、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングのスペクトル帯域幅よりも広いスペクトル帯域幅を前記光学素子に与える、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
堆積された前記混合材料が、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングの角度帯域幅よりも広い角度帯域幅を前記光学素子に与える、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記光学素子が、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射、検出器、若しくは集光器である、又は光源に用いられる、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子で使するための請求項1又は7に記載のコーティングを製造するための方法であって、
制御された堆積法を用いて、光学素子中の層として遷移金属を堆積すること、
制御された堆積法を用いて、前記光学素子の前記層に炭化水素を堆積すること、
備え
前記制御された堆積は、同時に、周囲ガスの存在下で行われる、
方法。
【請求項32】
前記周囲ガスは、ヘリウム、水素、ネオン、アルゴン、又は元素ガスである、請求項31に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
上記の詳細な記述では、様々な実施形態に適用された場合の新規な特徴を示し、記載し、指摘してきたが、本開示の趣旨から逸脱することなく、示したデバイス又はアルゴリズムの形態及び詳細において様々な省略、置き換え、及び変更が成されてもよいことは理解される。したがって、上記の記述の何れも、特定の特徴、特性、工程、モジュール、又はブロックの何れかが必要又は不可欠であると暗示することを意図するものではない。理解されるように、本明細書で述べるプロセスは、本明細書で示される特徴及び有益性のすべてを提供するものではない形態の範囲内で実現されてよい。保護の範囲は、上記の記述によってではなく、添付の請求項によって定められる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 光学素子のための多層ブラッグ反射コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムで使用のためのものであり、前記コーティングは:
基板と;
多層スタックを形成する二層ペアの繰り返しセットであって、各二層ペアは、さらに:
第一の層;及び
比M の炭素、H族元素、及び金属で形成された層、
を備えた、二層ペアの繰り返しセットと;
保護層又はキャップ層と、
を備え、並びに、
x≧0、y≧0、及びz≧0であり、x=y=z=0、及びx=1、y=z=0は除く、
多層ブラッグ反射コーティング。
[2] 前記第一の層が、比M の炭素、H族元素、及び金属で形成され、並びにx≧0、y≧0、及びz≧0であり、x=y=z=0、及びx=1、y=z=0は除く、[1]に記載のコーティング。
[3] 前記H族元素が、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスからの原子である、[1]に記載のコーティング。
[4] 前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、又はモリブデン、ニオブ、ルテニウム、ジルコニウム、テクネチウム、白金、パラジウム、金、若しくはニッケルの何れかである、[1]に記載のコーティング。
[5] 前記炭素(C)及び前記水素(H)が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、[1]に記載のコーティング。
[6] 前記コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングよりも広いスペクトル帯域幅を前記光学素子に与える、[1]に記載のコーティング。
[7] 前記コーティングが、前記ターゲット波長においてMo-Si多層コーティングよりも広い角度帯域幅を前記光学素子に与える、[1]に記載のコーティング。
[8] 前記コーティングが、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、集光器の層である、又は光源に用いられる、[1]に記載のコーティング。
[9] 前記第一の層が、Siである、[1]に記載のコーティング。
[10] 光学素子のための反射コーティング又は透過コーティングであって、前記光学素子は、UV、DUV、又はEUV帯域幅でのターゲット波長を操作する光学システムでの使用のためであり、前記コーティングは:
二次元以上で構築されたコーティングに用いられる組み合わせ材料M
膜又は基板、
を備え、及び、
x=y=z=0は除外される、
反射コーティング又は透過コーティング。
[11] 前記炭素(C)及び前記H族元素が、炭化水素、炭素化物、水素化物、カルベン、又は水素及び炭素の有機金属複合体である、[10]に記載のコーティング。
[12] 前記金属原子(M)が、前記炭素(C)又は前記H族元素(H)と、1又は複数のリガンドを用いて結合されている、[10]に記載のコーティング。
[13] 前記光学素子が、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、若しくは集光器である、又は光源に用いられる、[10]に記載の光学素子。
[14] 0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子での使用のための材料コーティングを製造するための方法であって:
金属(M)、炭素(C)、及びH族元素(H)を、x≧0、y≧0、及びz≧0である比M で組み合わせて、組み合わせ材料を形成すること;
2種類以上のイオンの組み合わせをターゲットに衝突させること;
制御された堆積法を用いて、前記M 組み合わせ材料を均一に堆積して、層とすること、
を含み、及び、
x=y=z=0は除外される、
方法。
[15] さらに:
第二の層の材料を提供すること;
2種類以上のイオンの組み合わせを第二のターゲットに衝突させること;及び
前記制御された堆積法を用いて、前記第二の材料を均一に堆積して、多層コーティングのための層ペアとすること、
を含む、[14]に記載の方法。
[16] 前記イオンが、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、クリプトン、及びネオンのイオンから成る群より選択される、[14]に記載の方法。
[17] 前記H族元素が、ヘリウム、水素、ネオン、又は元素ガスである、[14]に記載の方法。
[18] スパッタリング、イオンビーム堆積、PECVD、原子層堆積、イオン支援堆積、電子ビーム堆積、化学蒸着、熱蒸着、イオン注入、又は分子ビームエピタキシなどの制御された堆積法を用いる、[14]に記載のコーティングを製造するための方法。
[19] 前記金属(M)が、元素周期律表の第4、5、又は6行から選択される金属である、[14]に記載の方法。
[20] 前記光学素子が、フォトマスク、ミラー、レンズ、フィルター、カバー層、キャップ層、基板、フィルム、ペリクル、反射器、検出器、若しくは集光器である、又は光源に用いられる、[14]に記載の方法。
[21] 0.1nm~250nmの範囲内のターゲット波長で操作する光学素子での使用のための材料コーティングを製造するための方法であって:
制御された堆積法を用いて、光学素子中の層として遷移金属を堆積すること;
制御された堆積法を用いて、前記光学素子の前記層に炭化水素を堆積すること、
を含み、並びに、
前記制御された堆積は、同時に、及び周囲ガスの存在下で行われる、
方法。
【外国語明細書】