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特開2024-123033バイオロジカルニューラルネットワークに基づく認知コンピューティングの方法とシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123033
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】バイオロジカルニューラルネットワークに基づく認知コンピューティングの方法とシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240903BHJP
   G06N 3/092 20230101ALI20240903BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240903BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G06N3/092
C12N5/079
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024090949
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2021537495の分割
【原出願日】2019-09-08
(31)【優先権主張番号】62/728,765
(32)【優先日】2018-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】521095640
【氏名又は名称】アルプビジョン、ソシエテアノニム
【氏名又は名称原語表記】ALPVISION S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク、ヨルダン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、クッター
(72)【発明者】
【氏名】イーブ、デラクレタス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物学的な脳機能を模倣および拡張して、多様な高レベルの複雑な認知タスクを実行する認知コンピューティングのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】神経系細胞培養物、入力刺激ユニット、出力読出ユニットを備えるBNNコアユニットは、データ処理機能を提供する為、様々なライフサイクルを通じて制御され得る。BNNの刺激及び読出データのインターフェースを動作するように適応された環境及び化学の制御ユニットを含む自動システムは、BNNコアユニットの変数の監視と適応を容易にする。提案システムは、高次認知計算タスクの為のシリコンベースの従来ハード及びソフトの情報処理より大幅減のエネルギー要求で、BNNコアユニット要素をクライアントユーザに公開せずに、違うクライアントアプリの為にデータを受信、処理、送信する為のウェットウェアサーバのコア要素としてBNNオペレーティングシステムを提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時空間的入力データ信号(105)を時空間的出力データ信号(135)に変換する自動処理システムであって、
イン・ビトロの生物学的神経系細胞培養物、BNNコアユニット(120)と、
入力時空間的刺激信号(605)を前記神経系細胞の第1セットに適用するように適応された入力刺激ユニットSU(110)と、
前記神経系細胞の第2セットからの出力時空間的読み出し信号(635)をキャプチャするように適応された出力読み出しユニットRU(130)と、
1以上の栄養素ディスペンサ(320)と接続されて、1以上の栄養素を前記生物学的神経系細胞培養物(120)に注入する1以上の栄養素タンク(319)と、
1以上の添加物ディスペンサ(322、324)とそれぞれ接続されて、1以上の添加物を前記BNN培養物(120)に注入する1以上の添加物タンク(321、323)と、
前記BNN培養物(120)から栄養素廃棄物をろ過して排出するための、1以上の栄養素廃棄物収集器(325)と、
前記BNN培養物(120)から添加物廃棄物をろ過して排出するための、1以上の添加物廃棄物収集器(326、327)と、
前記栄養素ディスペンサ(320)、前記添加物ディスペンサ(322、324)、前記栄養素廃棄物収集器(325)および前記添加物廃棄物収集器(326、327)を前記BNN培養物(120)に接続する、1以上の血管形成ネットワークと、
前記BNN培養物(120)の少なくとも一つの環境パラメータを測定する1以上のセンサと、
前記刺激信号(605)を前記入力データ信号(105)に適応し、前記出力データ信号(135)を前記読み出し信号(635)に適応し、
BNNコアユニットの環境パラメータと、
BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、
BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、
BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、
BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、
のうちの少なくとも一つを制御するように構成されて、前記時空間的入力データ信号(105)が前記時空間的出力データ信号(135)に連続的に変換されるように、前記BNN神経系細胞培養物の恒常性を経時的に維持する、自動コントローラ(600)と、
を備える自動処理システム。
【請求項2】
前記栄養素が、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、または、それらの組み合わせのうちから選ばれる、
請求項1に記載の自動処理システム。
【請求項3】
前記添加物が、前記BNNのドーパミン作動性反応を増大させるドーパミン作動性刺激増強剤、前記BNNのドーパミン作動性反応を減少させるドーパミン作動性刺激抑制剤、ボトックス、ニコチン、クラーレ、アンフェタミン、コカイン、MDMA、ストリキニーネ、THC、カフェイン、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、アルコール、アヘン、成長因子、ホルモン、ガス、または、それらの組み合わせのうちから選ばれる、
請求項1または2に記載の自動処理システム。
【請求項4】
前記血管形成ネットワークが、生体適応性材料を用いた3次元バイオプリンティングを用いて製造されている、
請求項1から3のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項5】
前記血管形成ネットワークが、前記BNN(120)の培養支持体上の幹細胞から成長される、
請求項1から3のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項6】
前記血管形成ネットワークが、3次元細胞培養物として前記BNN細胞の成長展開に合わせながら、その細孔内に前記BNN細胞を機械的に受け入れるのに適した3次元構造を形成している、軟質で圧縮可能であって多孔質で吸収性のある物質である、
請求項1から3のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項7】
前記センサは、前記BNN培養物(120)の、温度、湿度、pHまたはCO2の環境パラメータを測定する、
請求項1から4のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項8】
前記自動コントローラは、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、または
リザーバコンピューティング法
のうちの少なくとも一つを用いて、前記入力データ信号(105)を前記刺激信号(605)に変換する前処理ユニット
をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項9】
前記自動コントローラは、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、または
リザーバコンピューティング法、
のうちの少なくとも一つを用いて、前記読み出し信号(635)を前記出力データ信号(135)に変換する後処理ユニット
をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項10】
BNNコアユニットのスタックを制御するようにさらに適応されており、前記BNN神経系細胞の第1部分は、前記スタックからの第1BNNコアユニット内にあり、前記BNN神経系細胞の第2部分は、前記スタックからの第2BNNコアユニット内にある、
請求項1から9のいずれかに記載の自動処理システム。
【請求項11】
自動処理タスクを実行するためのサーバであって、請求項1から10のいずれかに記載の自動処理システムを備えるサーバ。
【請求項12】
自動コントローラ(600)およびバイオロジカルニューラルネットワークのBNNコアユニット(120)、前記BNNコアユニットは少なくとも適応されたイン・ビトロの神経系細胞培養物を備えている、を用いて、時空間的入力データ信号(105)を時空間的出力データ信号(135)に変換し、入力刺激ユニット(SU)110を用いて、時空間的刺激信号(605)を前記神経系細胞の第1セットに供給するように適応させ、出力読み出しユニットRU(130)を用いて、前記神経系細胞の第2セットから時空間的信号(635)を読み出すように適応させる、方法であって、前記方法は、
前記自動コントローラ(600)を用いて、前記時空間的入力データ信号(105)を前記時空間的刺激信号(605)に前処理するステップと、
前記自動コントローラ(600)を用いて、前記時空間的読み出し信号(635)を前記時空間的出力データ信号(135)に後処理するステップと、
BNNコアユニットの環境パラメータと、
BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、
BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、
BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、
BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、
前処理のパラメータと、
後処理のパラメータと、
のうちの少なくとも一つを制御して、前記BNNコアユニットが前記時空間的入力データ信号(105)を前記時空間的出力データ信号(135)に連続的に変換するように、前記BNN神経系細胞培養物の恒常性を経時的に維持するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
対象の時空間的出力データ信号を受信するステップと、
前記BNNコアユニットの環境パラメータと、
前記BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、
前記BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、
前記BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、
前記BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、
前処理のパラメータと、
後処理のパラメータと、
のうちの少なくとも一つを適応させて、前記時空間的出力データ信号(135)と前記対象の時空間的出力データ信号との間における誤差を最小化するステップと、
をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前処理は、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、
リザーバコンピューティング法、
のうちの少なくとも一つを用いて、時空間的入力データ信号105を時空間的刺激信号(605)に変換するステップを含む、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
後処理は、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、
リザーバコンピューティング法、
のうちの少なくとも一つを用いて、時空間的読み出し信号(635)を空間的出力データ信号(135)に変換するステップを含む、
請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物学的な脳機能を模倣および拡張して、多様な高レベルの複雑な認知タスクを実行する認知コンピューティングのシステム、方法、およびプロセスに関する。提案されている認知コンピューティングのシステム、方法、およびプロセスは、複数の神経系細胞をバイオテクノロジーのコア処理要素として採用し、ブレインオンチップのインターフェースおよびコントローラと組み合わせて、従来の情報技術ネットワークおよびコンピューティングアーキテクチャを補完し、相互作用させる。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の情報技術(IT)の目覚ましい発展に伴い、計算、データの最適化、データの分類、自然言語処理や翻訳、画像や映像の処理や認識などといった、多様な計算タスクを実行する方法やシステムが利用可能である。最近の認知コンピューティングは、機械学習、深層学習、バイオロジカルニューラルネットワークを模倣した人工ニューロコンピューティングを含みつつ発展している。さらに、後者は、職場と同様、家庭やソーシャルメディアでも、さらには、深海、宇宙、原子炉などの人間にとって敵対的な環境においても、人間のあらゆる作業、例えば、物体や顔の認識、自然言語処理(NLP)や感情分析などを、補助する人工知能を提供しようとしている。このように、ハイパフォーマンスコンピューティング、ハイスループットコンピューティング、並びに、ハイアベイラビリティシステムおよびインフラは、Google(Google Cloud Platform)、Amazon(Amazon Web Services AWS)、Microsoft(Azure)などの大企業によって、クラウドコンピューティングサービスとして提供されている。また、フェイスブックやアップルは、手頃で安定した電力が得られる世界各地の厳選された「データファーム」という場所で、自社のプライベートデータセンターを運営している。しかし、ソフトウェアとハードウェアを含む、現在のシリコンベースのコンピューティング環境の主要制限の一つは、複雑な認知タスクを実行するために必要とされる途方な高電力である。シリコンベースのシステムの消費電力は、同程度の性能を持つ生体システム、例えば脳、よりも桁違いに大きい。また、別の制限は、高次の認知プロセス、創造的思考、意識などといった人間科学によってまだ理解およびモデル化されていない概念を実装するのに今日では適していない、明示的な論理プログラミングおよび構造化されたデータ表現が、少なくとも要求されることである。
【0003】
ニューラルネットワークは、異なる次元の二つの空間の間に時空間的マッピングを作成する手段と見なすことができる。すなわち、入力数よりも出力数が少ない構成においては、ニューラルネットワークは、限られた次元の空間において問題の簡潔化表現を作成する。例えば、よく知られた空間変換としては、2次元空間を2パラメータの投票空間に写すハフ変換、時間的に周期的な信号をその周波数表現に写すフーリエ変換、画像をスケール空間表現に写すウェーブレットの変換クラスなどがある。もちろん、これらの変換は数学的によく記述されており、直接実装することができるし、仮にニューラルネットワークがそのために用いることができたとしても、最も計算効率の良い選択とはなりそうにはない。しかし、例えば、1000次元の多変量入力空間が出力として10個の関連する変数しか生成しない場合、明示的な数学的解決手法は、通常、複雑すぎる。ニューラルネットワークは、このような問題を解く良い候補である。しかし、このような問題を解くための内部状態空間の必要な次元数は膨大であるだろうし、現在のハードウェア技術では、あまりにも多くの計算リソースが必要となり得る。
【0004】
従来のソフトウェアやハードウェアの情報技術に代わるものとして、20世紀末と同時期には、トランジスタに代わる培養細胞などの生体部品に基づくウェットウェア・ソリューションが、主に学術的に、検討されていました(https://www.technologyreview.com/s/400707/biological-computing/)。ほとんどの科学者は、これまで、例えばDNAコンピューティングのように、論理ゲート、計算、メモリ保存といったITの基本的なコアプロセスに似た基本機能を「どのようにして」実現するかに焦点を当てている(https://www.nature.com/subjects/dna-computing)。特に、近年の合成生物学やDNA編集技術の発展にともない、この手順は有望視されているが、そのような基本機能から高次の認知プロセスを構築するエンジニアリングパスは、従来のシリコンベースのロジックと同様にチャレンジングなままである。
【0005】
高次の認知機能の例としては、一般的知能の機械がチューリングテストに合格するために必要とされる機能である。この目的に対する人工ニューラルネットワーク(ANN)を用いた現在の研究には、少なくとも二つの大きな限界がある。
・深層学習で使用されている最先端の多層ネットワークは、バイオロジカルニューラルネットワーク(BNN)に比べて時間的な柔軟性に欠けている。人間の脳は基本的に生物学的なマルチコアシステムであり、そのための数学的モデリングはない。量子力学や一般相対性理論のような偉大な科学モデルに使用されている強力な数学のほとんどは、このケースでは役に立たない。
・これまでに開発された再帰のスパイキングニューラルネットワーク(SNN)は、主にデジタル処理の計算効率の欠乏のせいで、複雑なタスクを学習することができず、大規模なシミュレーションもできなかった。全てのニューロンは本質的に並列に動作しているため、それらは、基本的に最大1000億個のプロセッサを表している(例えば、人間の平均的な脳に約1000億個のニューロンがあると仮定した場合では)。仮に各ニューロンが1フロップ(Flop)の計算能力と同等であるならば、この処理能力を再現することは可能かもしれないが、実際には、チューリングテストの目標を達成するために必要なニューロンのシミュレーションの精度は不明である。仮に1ニューロンあたり100Mflopsほどの大きさのオーダーの場合、現在の技術でもってしてもそれを実装することは不可能である。実際、最高の計算能力は1E16Flops程度であり、100E9x100E6=1E11x1E8=1E19であり、これは世界最高の高性能コンピューティングシステムで利用できる計算能力の約1000倍である。非リアルタイムのシミュレーションでさえ遅すぎて、まともな時間内で意味のある結果は得られないだろう。生物の脳の計算効率も、デジタルコンピューターに比べて数桁ほど高い。例えば、脳は、典型的には、1000億個のニューロンに対して20W(50億ニューロン/W)を消費するが、デジタルシミュレーションでは、「統合して発射する(integrate&fire)」スパイキングニューロンのような単純なニューロンモデルでも、数桁以上の電力を必要とする。
【0006】
そこで、シリコンベースのデジタル計算機を用いて高度な認知プロセスをAIで再現するのではなく、バイオロジカルニューラルネットワークを利用するという代替のアプローチが登場している。近年のバイオテクノロジーの進歩は、ラット胚性幹細胞などの胚性幹細胞や、分化したヒト人工多能性幹細胞(IPSc)からの、バイオロジカルニューラルネットワークの培養および構築を可能にした。そして、培養されたBNNは、MEA(マルチ電極アレイ)を用いて刺激され、読み取られ得る。これまでにおけるMEAの主な用途は、薬理学、医薬品の試験、毒性研究を目的としたニューロンおよびブレインモデルを開発するための適用であり、同様に、アルツハイマーやパーキンソンなどの一般的な脳疾患の理解も深める。また、ここ数年、他の産業分野への適用も提案されている。例えば、航空機制御に対するBNNの適用は、DeMarseなどが「Adaptive Flight Control With Living Neuronal Networks on Microelectrode Arrays」(Proceedings IEEE International Joint Conference on Neural Networks、 2005)において提案している。米国海軍による米国特許7947626は、様々な生物学的または化学的毒素の検出および/または定量化に用いられ得る、継代された前駆細胞由来の神経ネットワークMEAを開示す。培養された神経系細胞に基づくコンピューティングチップとして「ウェットチップ」を開発した最初の企業であるKoniku(www.koniku.com)は、同じ手順に沿って、セキュリティ、軍事、農業/食品市場における臭気化合物の検出のために、2017年から高度に専門化した製品を商品化している。彼らの特許出願WO2018/O81657に記載されているように、ニューロン細胞は、生物学の最先端から知られているように、細胞表面の受容体を用いて独自の臭気物質受容体プロファイルを発現するように、遺伝子編集、メチル化編集、その他の様々なバイオテクノロジープロセスにより、改変されてもよい。ニューロン細胞は、MEA(マルチ電極アレイ)の電極などといった最先端の神経生理学的インターフェースを用いて、コンピュータと連結されてもよい。コンピュータは、専用のチャンバー内で匂い物質にさらされたときに神経系細胞によって生成された電気信号を測定し、特定の匂い物質の存在を従来の信号処理方法、場合によっては学習および分類のための人工ニューラルネットワーク(ANN)や機械学習の分類器を含む、によって検出してもよい。ANNは、複数の検出可能な化合物の複雑な組み合わせを含む可能性のある実際の環境において匂いの受容体の特性が異なるニューロンのネットワークが採用される場合に、複数の信号を識別するのに特に有用である。しかし、このような手法の主要な限界の一つは、非常に特殊なセンサのアプリケーションに限定されることである。
【0007】
Baker Hughesの米国特許出願US20140279772は、コンテナ内でボアホールを通して地層に搬送された信号をダウンホールで処理する装置における培養したバイオロジカルニューラルネットワークの使用を開示す。バイオロジカルニューラルネットワークは、MEAの電極と結合されており、センサからの入力信号を受信してニューラルネットワークから測定値を出力する。また、提案されているBNNシステムは、栄養ディスペンサなどの環境制御コンポーネントを含んでいる。一方、この開示は、並列計算能力、振動や電気的ノイズに対する堅牢性、自己修復能力の観点から、チャレンジングな環境における従来のコンピューティングシステムにおけるBNNの利点を言及しているが、システムの経時的な管理方法、特に動的な学習プロセスについては明示していない。むしろ、特定のアプリケーションに高度に特化しているため、前処理学習は、困難なランタイム環境ではなく、オフラインの準備プロセスとして適用され得る。
【0008】
シンガポール大学のJu Hanは、「Computing with simulated and cultured neuronal networks」と題した彼の2013年の博士論文において、状態依存型計算パラダイムの観点から、18日目のラット胚皮質細胞を解離させたニューロナル培養物の能力を探り、生きたニューロンによって形成されるランダムネットワークが複雑な時空間的情報を処理することができ、LSM(Liquid State Machine)パラダイムに基づくニューロコンピュータデバイスのプロトタイプの実装に適していることを示した。時間パターンや複雑な時空間的パターンを分類するニューロナル培養物の能力を検証するために、LSMのベンチマークテストであるジッタースパイクトレインテンプレート分類タスクと、ランダムに作曲されたピアノ音楽の分類と、いう二つの刺激をデザインした。時間的な入力に対する処理は、フェードしていくメモリに頼ることになり、Ju Hanは、彼のセットアップにおいて、解離したニューロナル培養物の短期記憶が4秒よりも長くなることを観察した。ニューロナル培養物を制御するために、Ju Hanは、ニューロンへの入力を刺激するという観点と、ニューロンの出力を記録する観点と、の両方から、多電極アレイ(MEA)と組み合わされたオプトジェネティクス(変更されたニューロンを光で刺激する方法)を用いた。MEAは、低空間かつ低時間の分解で、電気刺激(BNN入力)および計測(BNN出力)の両方を行うことができるが、オプトジェネティクスは、より精密な刺激制御、非接触操作、ニューロンへの反復的な問い合わせが可能であるため、この分野は、過去5年間において、調査の集中エリアとしてさらに発展した。最近のオプトジェネティクスの刺激的進歩の例は、2017年12月のCurr. Opin. BiotechnolにおけるAgusとJanovjakによる「Optogenetic methods in 薬剤 screening: technologies and applications」に対するレビューにおいて見受けられるし、1.44kHz以上の時間的な表示パターンを可能にしながら、単一ニューロンまで光刺激を空間的に集中させることができる、Digital Micromirror Device(DMD)の働きに基づいた高速ビデオプロジェクターを記載した2017年8月のBio ProtocにおけるBarralとReyesによる「Optogenetic Stimulation and Recording of Primary Cultured Neurons with Spatiotemporal Control」に見受けられる。
【0009】
BNNシステムの全体的な機能を最適化するために、Ju Hanは標準的な機械学習アプローチ(特に遺伝的アルゴリズム)を用いてバイオロジカル培養ユニットをさらに制御し、最終的に高レベルの機能を実現するために電気刺激と処理を定義することを提案した。神経科学の実験でよく考えられている単一ニューロンの読み出しの代わりに、ネットワーク層の出力を多変量信号として読み出されて処理され得る(例えば、MEA電気生理測定プローブと、Matlabのような信号処理ソフトウェアと、を組み合わせて用いる)。
【0010】
さらに最近の神経科学やニューロコンピューティングの研究は、生物学的なニューナルシステムが、そのコンピューティング能力を発達させるために、脳と同様に、学習プロセスを必要とすることを強調している。Ju Hanは2013年に発表した博士論文の中で、生物学的なニューロナルシステムは、光刺激によって学習したり操作されたりすることができることを指摘し、このネットワークの学習能力と薬物操作を組み合わせることで、ニューラルサーキットを計算に最適化するためのステップになる可能性があると述べている。BNNシステムは、行動結果のフィードバックに基づいてグローバルな報酬または罰の信号を放出するなど、強化学習によって参照モデルで指定された行動を生成するように訓練することができる。Ju Han氏は、強化学習にNDMA受容体拮抗薬による薬物治療を用いることを提案している。
【0011】
より一般的には、神経科学実験で広く使用されているオープンループシステムに加えて、通常の自動システムエンジニアリングのように、クローズドループシステムを設計することができる。現在の最先端のBNNシステムは、小規模で非常に特殊な用途に合わせて作られているため、(異なるニーズに対し)適合的で(時間経過ともに)進化的である高レベルの認知能力を有した汎用のウェットウェア・コンピューティング・システム全体の一元コンポーネントとして使用するという観点からは、二つの大きな制限がある。それらのアーキテクチャが、一元の入力(所定の設定とプロトコルによる単一のニューロンまたは層の刺激)と出力層の設計(所定の生物学的または信号の処理方法による単一のニューロンまたは層の測定)に限定されていることと、その固有のネットワーク接続性が、事前のトレーニングの有無にかかわらず、一度に一つの機能しか処理できないことと、である。
【0012】
そのため、従来のシリコンベースの情報技術処理システム、デバイス、ソフトウェア、および電子チップに対する低電力の代替品または共同処理の補完品として、バイオロジカルニューラルネットワークの固有の高度な認知処理能力を活用する新しいソリューションやアーキテクチャが必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
時空間的入力データ信号を時空間的出力データ信号に変換する自動処理システムが記載されており、当該システムは、イン・ビトロの生物学的神経系細胞培養物(BNNコアユニット)と、入力時空間的刺激信号を神経系細胞の第1セットに適用するように適応された入力刺激ユニット(SU)と、神経系細胞の第2セットからの出力時空間的読み出し信号をキャプチャするように適応された出力読み出しユニット(RU)と、1以上の栄養素ディスペンサと接続されて、1以上の栄養素を生物学的神経系細胞培養物に注入する1以上の栄養素タンクと、1以上の添加物ディスペンサとそれぞれ接続されて、1以上の添加物をBNN培養物に注入する1以上の添加物タンクと、BNN培養物から栄養素廃棄物をろ過して排出するための、1以上の栄養素廃棄物収集器と、BNN培養物から添加物廃棄物をろ過して排出するための、1以上の添加物廃棄物収集器と、栄養素ディスペンサ、添加物ディスペンサ、栄養素廃棄物収集器および添加物廃棄物収集器をBNN培養物に接続する、1以上の血管形成ネットワークと、BNN培養物の少なくとも一つの環境パラメータを測定する1以上のセンサと、刺激信号を入力データ信号に適応し、出力データ信号を読み出し信号に適応し、BNNコアユニットの環境パラメータと、BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、のうちの少なくとも一つを制御するように構成されて、時空間的入力データ信号が時空間的出力データ信号に連続的に変換されるように、BNN神経系細胞培養物の恒常性を経時的に維持する、自動コントローラと、を備える。
【0014】
自動コントローラは、時空間的信号フィルタ、時空間的信号分類器、数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、人工ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクタマシン分類器、ランダムフォレスト分類器、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミングアルゴリズム、またはリザーバコンピューティング法、のうちの少なくとも一つを用いて、入力データ信号を刺激信号に変換する前処理ユニットを備えていてもよい。
【0015】
自動コントローラは、時空間的信号フィルタ、時空間的信号分類器、数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、人工ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクタマシン分類器、ランダムフォレスト分類器、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミングアルゴリズム、またはリザーバコンピューティング法、のうちの少なくとも一つを用いて、読み出し信号を出力データ信号に変換する後処理ユニットをさらに備えていてもよい。
【0016】
自動コントローラおよびバイオロジカルニューラルネットワーク(BNN)のコアユニット、BNNコアユニットは少なくとも適応されたイン・ビトロの神経系細胞培養物を備えている、を用いて、時空間的入力データ信号を時空間的出力データ信号に変換し、入力刺激ユニット(SU)を用いて、時空間的刺激信号を神経系細胞の第1セットに供給するように適応させ、出力読み出しユニット(RU)を用いて、神経系細胞の第2セットから時空間的信号を読み出すように適応させる、方法もまた記載されている。当該方法は、自動コントローラを用いて、時空間的刺激信号を形成するために、時空間的入力データ信号を前処理するステップと、自動コントローラを用いて、時空間的出力データ信号を形成するために時空間的読み出し信号を後処理するステップと、BNNコアユニットの環境パラメータと、BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、前処理のパラメータと、後処理のパラメータと、のうちの少なくとも一つを制御してBNNコアユニットが時空間的入力データ信号を時空間的出力データ信号に連続的に変換するように、BNN神経系細胞培養物の恒常性を経時的に維持するステップと、を備える。
【0017】
当該方法は、BNNコアユニットの環境パラメータと、BNN神経系細胞培養物の栄養素供給と、BNN神経系細胞培養物の添加物供給と、BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集と、BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集と、前処理のパラメータと、後処理のパラメータと、のうちの少なくとも一つを適応させることにより、出力データ信号と、対象の出力データ信号と、の間における誤差を最小化するステップもまた備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、バイオロジカルコンピューティングサーバの構築ブロックとしてのコアBNNユニットを示す。
図2図2a)b)c)d)e)は、BNNコアユニットを組み立てるための様々な配置や製造オプションを表す。
図3図3は、BNNコアユニットで動作する自動血管形成システム(AVS)の例示的な模式図である。
図4図4は、3次元BNN培養物で神経系細胞を成長させるための固有の血管形成ネットワークの支持体を備えた神経系細胞の可能なホストとしての例示的なスポンジ状構造物の側面カット図である。
図5図5は、3次元BNN培養物で神経系細胞を成長させるための固有の血管形成ネットワークの支持体を備えた神経系細胞の可能なホストとしての例示的なスポンジ状構造物の側面カット図である。
図6図6は、BNNの自動成長、維持、および制御のシステムの可能性を示す模式図である。
図7図7は、バイオロジカルオペレーティングシステム(BOS)として可能なBNNの自動成長、維持、および制御の別の模式図である。
図8図8は、リアルタイム処理ソフトウェアによって実施され得る学習プロセスを示す。
図9図9a)と図9b)は、BNNバイオロジカルコンピューティングスタック(BCS)の可能な実施形態を示す。
図10図10a)および図10b)は、学習に適したBNNバイオロジカルコンピューティングスタック(BCS)の可能な実施形態(T-BCS)を示す。
図11図11は、ANNを用いたT-BCSの実現例を示す。
図12図12は、T-BCSのメンテナンスプロセスの一例を示す。
図13図13は、T-BCSのウェットウェアのアーキテクチャで動作するホストサーバを示す。
図14図14は、ユーザクライアントを管理するために、ホストサーバによって操作される可能性のある機能を示す。
図15図15は、同一のT-BCSサーバホストから複数のクライアントにサービスを提供するためのロードバランシングを備えた一般的なアーキテクチャをさらに示す。
図16図16は、画像処理のために提案されたBNNサーバが可能なアプリケーションを、深層学習アーキテクチャを持つレガシーアプリケーションと比較したものである。
図17図17は、ラット皮質幹細胞を4日間成熟させた後の、~200μm幅のニューロスフェアを示す。
図18図18は、三つの異なる成長段階にある皮質神経幹細胞のニューロスフェアの仮想円周に沿って、12個の電極を規則的に配置した例を模式的に示す。
図19図19は、三つの異なる成長段階にある皮質神経幹細胞のニューロスフェアの仮想円周に沿って、12個の電極を規則的に配置した例を模式的に示す。
図20図20は、三つの異なる成長段階にある皮質神経幹細胞のニューロスフェアの仮想円周に沿って、12個の電極を規則的に配置した例を模式的に示す。
図21図21は、MEA回路上のバイオロジカルニューラルネットワークの写真を示す。
図22図22は、MEA表面上で成長した神経系細胞を含む付着細胞およびMatrigelの顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<BNNコアユニット>
図1は、バイオロジカルコンピューティングサーバの構築ブロックとしてのコアBNNユニット100を示す。BNNユニットの生物学的物質は、限定されるわけではないが、典型的には、複数の生きた神経系細胞および神経膠細胞の集合体であるアクティブな生物学的培養物120で構成される。細胞は、これに限定されるわけではないが、例えば、細胞培養または器官形成のようなアプローチなどの様々な異なるプロセスを通じて組み立てられてもよい。本開示では、細胞培養という用語は、イン・ビトロでの細胞の成長と、自然なイン・ビボ環境からの生涯にわたる維持と、の区別なく、用いられる。BNN細胞は、2次元または3次元で配置されてもよい。刺激ユニット110(SU)は、デジタルデータ入力信号105と生物学的培養物120との間の入力インターフェースを表す。異なるニューロン、樹状突起または軸索を選択的に刺激するために使用される。刺激ユニット110は、生物学的培養物へのデジタルデータ入力信号の転送を、空間的に(異なるニューロンに対処する)、時間的に(経時的に可変信号で刺激する)、および/または時空間的に変化させることによって制御することができる。SU110の実現例としては、これらに限定されるわけではないが、多電極アレイ(MEA)や、パッチクランプや、オプトジェネティクスシステムなどの光誘導刺激や、磁場や、電場や、イオン刺激や、集束レーザー光や、光ピンセットや、重力または圧力変化による機械的誘導刺激などが挙げられる。リードアウトユニット130は、生体培養物120とデジタルデータ出力信号135との間の出力インターフェースを表す。これは、異なるニューロン、樹状突起または軸索の活動を選択的に測定するために使用される。リードアウトユニット130は、空間的に(異なるニューロンの個々の活動をキャプチャする)、時間的に(経時的に変動する信号をキャプチャする)、および/または時空間的にサンプリングすることによって、デジタルデータ出力信号への生物学的培養活動の変換を、場合によっては多次元的に、制御することができる。RU130の実現例としては、これらに限定されるわけではないが、多電極アレイ(MEA)、パッチクランプ、イメージングシステム、イオン感応型センサ、電気感応型センサ、磁気感応型センサ、化学センサ、ニューロン培養に適した他のセンサが挙げられる。
【0020】
ニューロンのサブセットは、多電極アレイ(MEA)の電気信号などのBNN入力インターフェースを介して、入力信号で励起される。あるいは、ニューロンの一部を遺伝的に改変し、入力信号としてオプトジェネティクスシステムからの光刺激を受けるようにしてもよい。ニューロン細胞の電気的活動は、電気信号を受信する多電極アレイ(MEA)などの測定システムを用いて、BNNユニットの出力として、生体材料の複数の場所でモニタされてもよい。あるいは、ニューロンの一部を遺伝的に改変して、BNNからイメージングセンサシステムへの出力信号として蛍光を発現させることもできる。しかし、BNNとの連携を可能にするシステムは他にも多数存在する。例えば、電気化学的な刺激を、筋肉の動きや音声といった機械的な動きであって観察可能な、人体のシステムに類似した概念を利用したプロセスなどがある。
【0021】
考えられる実施形態では、Maxwell Biosystems(https://www.mxwbio.com)からのMaxOne MEAが、BNNコアユニット100に対するホストプラットフォームとして使用されてもよい。解離した細胞培養BNN120は、https://www.mxwbio.com/applications/neuronal-networks/applications/neuronal-networks/から、以下のように提案されているようなプロトコルに従って、CMOS技術のMaxOneマイクロセンサ上にプレートして成長させてもよい。
●サンプル細胞培養プレーティング手順
〇pH8.5のホウ酸緩衝液(Chemie Brunschwig、バーゼル、スイス)で0.05重量%に希釈された、ポリエチレンイミン(PEI)(Sigma、ミズーリ、USA)の薄い層を、電極アレイの表面にプレコートする。
〇細胞接着のために、Neurobasal培地(Invitrogen、カルフォルニア、USA)中の0.02mg/mlのラミニン(Sigma)を10μl滴下する。
〇20~30分後に1mlのめっき液を加える。
〇24時間後に、プレーティングの培地を、1~2mlの増殖用培地に交換し、環境条件(37℃、65%湿度、5%CO2)をコントロールしながらインキュベーター内で培養を維持する。
〇週に2回、成長培地の50%を交換する。
【0022】
Maxwell Biosytemsが提案しているプロトコルでは、プレーティングの培地は、10%のウマ血清(HyClone、ユタ、USA)、0.5mMのGlutaMAX(Invitrogen、カルフォルニア、USA)および2%のB27(Invitrogen、カルフォルニア、USA)を添加した850mlのNeurobasalで構成されているが、細胞培養の技術に精通した人であれば、他の配合も可能である。
【0023】
Maxwell Biosytemsが提案しているプロトコルでは、成長培地は、10%のウマ血清、0.5mMのGlutaMAXおよび1mMピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM(Invitrogen、カルフォルニア、USA)850mlで構成されているが、細胞培養の技術に精通した人であれば、他の処方も可能である。
【0024】
可能な実施形態では、MaxwellのMEAマイクロセンサは、刺激ユニット110として動作する可能性がある。これらは、アクティブな刺激電極部位のサブセットを使用して、入力デジタルデータパターンからBNN活動を刺激することを可能にする。入力デジタルデータパターン105は、様々なデータ処理方法やソフトウェアによって準備されてもよい。可能な実施形態では、32の刺激チャネルを提供するために、SU110としてMaxwellの刺激モジュールを使用してもよい。各刺激チャネルは、2nAの振幅分解能および2μsの時間分解能で、最大±1.6Vの電圧または±1.5mAの電流振幅を提供してもよい。MaxLab Liveソフトウェアコンポーネントは、単相、二相、三相のパルス、ランプ波形、その他のカスタムパルス形状など、これらの分解能に適した様々なデジタルデータ刺激パターンを生成してもよい。
【0025】
可能な実施形態では、MaxwellのMEAマイクロセンサは、読み取りユニット130として動作することができる。それらのセンサは、マイクロ秒から月単位までの設定可能な時間スケールで、複数の活性電極部位を用いて同時に記録できるBNN活動を、デジタルデータ読み出しとして出力することができる。デジタルデータ読み出し135は、その後、様々な信号処理方法によって処理されてもよい。また、読み出したデータは、例えばラスタープロットなどのイメージングシステムで可視化されてもよい。現在のMaxwell BiosystemsのMEA技術は、Balliniらが「A 1024-Channel CMOS Microelectrode Array With 26,400 Electrodes for Recording and Stimulation of Electrogenic Cells In Vitro”, IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 49, no. 11, pp. 2705-2719, 2014」で述べているように、1024の低ノイズ読み出しチャネル、26400の電極、3265の電極/mm2の密度を特徴とする高解像度のCMOSベースの微小電極アレイを2次元メッキとして埋め込み、オンチップの10ビットADCを含み、消費電力はわずか75mWであり、他の配置も可能である。
【0026】
上記の可能な実施形態では、最近の技術の進歩に基づく高密度かつ高スループットのコアBNNユニットの例示的な実現として、Maxwell BiosytemsのMEAソリューションを用いて説明してきたが、機能的なコアBNNユニット100を提供するために、他のニューロテクノロジー、電気生理学および/またはオプトジェネティクスのシステム、回路、デバイス、プローブ、コンポーネント、ソフトウェア、プロトコルおよび方法を個別にまたは互いに組み合わせて同様に採用することができることは、当業者には明らかであろう。例えば、Harvard Bioscience Inc.の一部門であるMultichannel Systems社()によって開発されたものがある。(www.multichannelsystems.com)、3Brain (www.3brain.com)、Nuvectraの子会社であるNeuroNexus (www.neuronexus.com)、Axion Biosystems (https://www.axionbiosystems.com/)、Charles River Laboratries (www.criver.com)、Plexon (www.plexon.com)、Koniku (www.koniku.com)、Georgia TechのPotter Lab (https://sites.google.com/site/neurorighter/)、Harvard UniversityのLieber lab (http://cml.harvard.edu)による単一ニューロンレベルの慢性的な記録のためのメッシュエレクトロニクスなどによって開発されたものがある。
【0027】
当業者には明らかなように、BNN120の生物学的基盤として、異なるタイプのニューロナル細胞を採用してもよい。さらに、生物学的基盤は、もちろん、単一の神経系細胞タイプを含んでいてもよいし、異なる神経系細胞タイプの所定の組み合わせ、さらには他の細胞を含んでいてもよい。さらに、細胞タイプの構成は、BNN120の2次元または3次元構造の全体にわたって異なっていてもよい。可能な実施形態では、Invitrogenから提供されるようなラット胎児神経幹細胞(NSCs)、Catalog nos.N7744-100、N7744-200や、ThermoFisher ScientificからのGibco(登録商標)の細胞株などが採用され得る。また、代替の実施形態では、Lonza Poietics(商標)のNeural Progenitor Cells(NHNP)、MiliporeSigmaのReNcell(登録商標)のVM、またはReNcell(登録商標)のCXなどのヒト神経幹細胞(hmNPCs)が採用され得る。ThermoFisher Scientific社のStemProTMの神経幹細胞などもある。ニューロナル細胞は、例えばMEM(Modified Eagle Medium - Gibco)やDMEM (Dulbecco’s modified Eagle’s medium - Gibco, Invitrogen, ThermoFisher)などの生物学的培地を用いてイン・ビトロで維持することができる。
【0028】
可能な実施形態では、BNN120は、BNN細胞および/または神経幹細胞(NSC)などの他の細胞を固定するために、ニューロスフェアまたはニューロボリュームのシステム、付着性単層システムまたは他の専用の配置および構築物を採用してもよい。生体材料の技術分野の当業者には明らかなように、BNN120は、細胞に適切な生活環境を提供するために、様々な種類のスキャフォールドを用いて2次元、好ましくは3次元で配置されてもよい。これには、これらに限定されるわけではないが、例えば脳オルガノイドに成長させるプロセスや、生きた細胞の位置を維持するだけのプロセスが含まれる。このようにして得られたイン・ビトロ脳オルガノイドは、哺乳類の脳環境にできるだけ近い形で持続的に機能し得る。ラット、マウスおよびヒトの神経系細胞の多様性の3次元培養および分化のために採用することができるハイドロゲルなどの最先端のスキャフォールドフォーマットおよび材料の例は、「Scaffolds for 3D in vitro culture of neural lineage cells, A.Murphy et al. Acta Biomaterialia 54 (2017) 1-20」の表1に記載されている。また、「Evaluation of RGD functionalization in hybrid hydrogels as 3D neural stem cell culture systems”, Mauri et al., Biomater Sci. 2018 Feb 27;6(3):501-510」に最近記載されているような、ハイブリッドハイドロゲルを採用してもよい。Corning、Lonza、Qgel、Ibidiなどの市販のハイドロゲルスキャフォールドも採用することができる。さらなる実施形態では、スキャフォールド自体も、神経幹細胞の複製や分化に合わせて成長することを可能にする生物学的物質で構成されていてもよい。
【0029】
また、生体適応性材料は、刺激ユニットSU110および/または読み出しユニットRU130のマイクロエレクトロニクスコンポーネントに特別に適応させてもよい。可能性のある実施形態として、図2a)は、下層の多電極アレイ構造250と密接に一致する生体適応性層251を作成するために、マスクエッチングの可能な適用を提示する。実際、正確な位置決めをしないと、読み出し電極や刺激電極は、同時に複数のニューロンに信号を読み込んだり注入したりすることになる。刺激ユニット110がニューロンレベルでBNN120を刺激することができるように、および/または読み出しユニット130がニューロンレベルでBNN120を読み出すことができるように、生体適応性材料251を下地のMEA250と整列させることによって、より正確な位置にニューロンの位置決めを誘導する生体層251を作成するために、MEAアレイ構造250と反対側のマスク252を使用してエッチングを行ってもよい。
【0030】
可能な実施形態では、神経系細胞が好ましくはそれらの領域に付着および/または成長するように、RUセンサおよび/またはSUプローブが配置されている場所に特別に付着層がコーティングされてもよく、その結果、RUおよびSUインターフェースを介した制御が容易になると考えられる。可能な代替実施形態として、図2b)は、RUおよびSUインターフェースの神経系細胞との通信の最大効率を確保するために適応されたBNNコアユニットのアセンブリ支持体270の概略図を示す。RUおよびSUインターフェースの位置271は、従来のアプローチにおいて付着層272でコーティングされてもよく、細胞273がRUおよびSUインターフェース制御の外に付着して展開するのを防止するために、マスキング特性を有する追加の層274が、RUおよびSUインターフェースの位置の外にさらに堆積されてもよい。また、界面層は、異なる目的のための分子および原子の最適な付着および交換を可能にする特別な膜、例えば、成長および接続性をシミュレートするMatrigel(登録商標)のマトリックスまたは任意の類似の材料を含む、によって構成されてもよい。
【0031】
図2c)は、ニューロスフェア280の3次元層状スタックの可能な実施形態の側面図である。BNN培養物の成長および維持に有用な栄養素および添加物の液体溶液は、ニューロスフェアスタックジョイント全体に最適に流れてもよい。その流れは、自然の重力、遠心分離、電気的または磁気的な力、および/またはポンピングなどの様々な手段によって、促進および制御されてもよい。
【0032】
図2d)は、遺伝子改変された光感受性ニューロン293にスパイクを発生させるためのオプトジェネティクス刺激ユニットSUインターフェースの可能な実施形態を示す。複数の光ビーム290、291、292が同じニューロンを対象にし、全てのビームが神経系細胞293の位置で交差するようにして、スパイクを発生させてもよい。この方法により、神経系細胞の3次元集合体にスパイクを発生させることができる。ここで、光が当てられたニューロンがスパイクを起こす光刺激の強度閾値をTとする。そうすると、p個のビームの強度値Iは、各ビームの個々の強度がスパイク閾値よりも低いI<Tでも、sum(I)≧Tとなるように定義することができる。オプトジェネティクスの技術に精通した人には明らかなように、遺伝子改変された光感受性神経系細胞の特性に応じて、様々な照明手段が使用され得る。可能な実施形態では、オプトジェネティクス用のレーザーを照明ビームとして使用してもよい。ニューロンの3次元凝集体の内部の所定の深さにある特定のニューロンを励起するために、ニューロンの深さの位置で正確に光の最大エネルギーに達するように、レーザー(またはマルチスペクトル)ビームを集束してもよい。さらに、発光素子の位置を変えたり、ビームの方向を変えるためのミラーの向きを変えたりすることで、目標とする位置を調整することができる。
【0033】
可能な代替実施形態として、図2e)は、ニューロン260がデジタルディスプレイ支持体261上に堆積される代替実施形態を示す。デジタルディスプレイ支持体は、例えば、LCDスクリーンまたはOLEDスクリーンであってもよい。さらに、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)、DLPまたはDMDマイクロミラーアプローチのような他の技術は5um以下であるのに対し、ニューロンサイズは4~100mの範囲でμあるため、ニューロンの外側262と、ニューロンの境263と、ニューロンを伴うライン264と、のいずれかのピクセル照明を選択的に制御することが可能である。また、遺伝子改変された光感受性神経系細胞の特性に合わせて、ニューロンの活動に特定の効果が得られるようにカラーピクセルを選択することができる。
【0034】
<自動BNNの製造、成長、維持>
高度な認知能力を身につけるためには、BNNコアユニットを、イン・ビオと同様、その生物学的ニーズに応じてその内部バイオロジカルネットワークを最適に成長させかつ訓練するのに十分に長い間、安定して持続可能な安全な環境に維持する必要がある。バイオテクノロジー分野の当業者には明らかなように、多くの用途において、十分にマスターされた細胞株を用いて効率的にバイオ製造を行うための様々な自動化システムが開発されている。しかし、哺乳類の神経系細胞は、機械的な歪みや衝撃、病原体や化学物質による汚染、光照射などの潜在的な妨害要因から特によく保護されている自然の脳内環境から離れて、イン・ビトロで扱うには特に脆弱である。もう一つの問題は、従来の細胞株培養は、典型的には細胞レベルで動作するが(細胞は、例えば、目的のタンパク質を生成するための基本的な「工場」コンポーネントである)、神経系細胞が高レベルの認知機能システムとして動作するためには、より高次元のレベルで、典型的には多次元ネットワークの相互接続を通じて動作する必要があることである。さらに問題なのは、ヒトの脳が生体内で高レベルの認知機能を発現するまでに成長するには何年もかかり、このプロセスを試験管内で加速できる可能性があるという研究証拠は現在のところないことである(Pasca, “The rise of three-dimensional human brain cultures”, Nature Vol. 553, Jan 2018)。
【0035】
そのため、自動的に並行して実行できる、持続可能で再現性のあるプロセスで、神経系細胞培養物を製造、維持、制御するための、専用のバイオロジカルニューラルネットワーク自動化の方法とシステムが必要とされている。製造プロセスは、自動学習プロセスを含む、BNNコアユニット要素の組み立ておよび機能的なBNNコアユニットへのBNN培養物の成長の両方から構成される。維持および制御プロセスは、供給、刺激、測定、さらには硬化や洗浄などの多様な活動からなる。次に、そのような自動化方法およびシステムの可能な実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0036】
BNNコアユニットの開発を、現在の手作業による実験室でのセットアップ作業よりもスケールアップするために、製造プロセスはBNNコアユニット要素の自動組み立てを含んでいてもよい。可能な実施形態では、スキャフォールドや神経系細胞を成長させるために必要な要素とともに、神経系細胞に対する3次元バイオプリンティングを採用してもよい。3次元生体適応性組織工学は、例としては、Sichuan Revotek Co., Ltd.、Biosynsphere、Organovo、Aspect Biosystemsなどによって開発された製品がある。可能な実施形態では、BNNコアユニットアセンブリは、例えば、「Joung et al. in “3D printed stem-cell derived ニューラル progenitors generate spinal cord scaffolds”, Adv. Funct. Mater. 2018」に記載のように、神経系前駆体由来の幹細胞を採用してもよい。これにより、スキャフォールドの上に直接、細胞の最適な局在化が促進される可能性がある。細胞を含んだハイドロゲルなどのバイオインク中の細胞のクラスタは、約200μmの解像度でチャネルの連続した層に堆積される可能性がある。著者らが組織モデルと脊髄損傷を治療するための将来のインプラントに関する研究で報告しているように、この方法は、イン・ビトロのCNS組織構築プロセスにおいて、軸索の伝播と細胞の生存率および機械的安定性の維持の両方を容易にする。
【0037】
事前に組み立てられたBNNコアユニットを、現在の手動による実験室でのメンテナンス作業を超えて、自動的に動作状態に維持するために、自動化プロセスの第2段階では、BNNコアユニットの細胞に生物学的に供給し、その生物学的廃棄物を収集するために、マイクロ流体回路を介した自動血管形成を行うことができる。3次元脳オルガノイドのイン・ビトロの血管形成については、これまで限定的なソリューションしか提案されておらず、それらは、オルガノイドが一定の深さと密度に達した後では、末梢栄養素では到達できなくなった細胞の中心的な壊死のせいで、サイズが制限されたままとなっている。そのため、研究生物学者は最近、それらを成体マウスの脳に移植することを提案している(Mansour et al. “An in vivo model of functional and vascularized human brain organoids”, Nature Biotechnology, Vol.36, No. 5, May 2018 and Lancaster, “Brain organoids get vascularized”, Nature Biotechnology, Vol.36, No. 5, May 2018)。また、患者自身の内皮細胞で脳オルガノイドを血管化する技術的な実現可能性が、Generation of human vascularized brain organoids”, NeuroReport, Vol. 29, Issue 7, pp.588-593, May 2018によって最近示された。しかし、後者のアプローチは、本質的に自然流体の配布に限定されており、「ブラックボックス」的に外部から制御することしかできないため、自動化能力は非常に単純なモデルに限定される。先行のBNN培養のこの制限を克服するために、これからさらに詳細に説明するように、様々な可能な代替実施形態が、別々に、または組み合わせて考えられる。
【0038】
図3は、BNNコアユニット100で動作する自動血管形成システム(AVS)300についての第1の可能な実施形態を示す概略図であり、以下を備える。
・BNN培養物120に1以上の栄養素を注入するために、1以上の栄養素ディスペンサ320に接続された1以上の栄養素タンク319。栄養素ディスペンサ320は、バルブ、インジェクタ、またはポンプなどの機械的デバイス351を用いて、BNN培養物特有の栄養ニーズに応じた正しい用量の栄養素を送出することを担当するミキサ-インジェクタアクティブモジュールを含んでもよい。
・1以上の添加物ディスペンサ322、324とそれぞれ接続され、1以上の添加物をBNN培養物120に注入する1以上の添加物タンク321、323。添加物ディスペンサ322、324は、バルブ、インジェクタ、ポンプなどの機械的デバイス352、353を用いて、BNN培養物の成長ニーズに応じた正しい用量の添加物を送出することを担当するミキサ-インジェクタアクティブモジュールを含んでいてもよい。
・バルブ、インジェクタ、ポンプなどの機械的デバイス331を備え、栄養素廃棄物をろ過してタンク335に排出したり、BNNに戻したりするための、1以上の栄養素廃棄物収集器325。
・バルブ、インジェクタ、ポンプなどの機械的デバイス332、333を備え、添加物廃棄物をろ過してタンク336、337に排出したり、BNNに戻したりするための、1以上の添加物廃棄物収集器326、327。
・栄養素および添加物のディスペンサ320、322、324、ならびに、栄養素および添加物の廃棄物収集器325、326、327をBNN培養物120に接続するための1以上の血管形成ネットワーク。異なる血管形成フローは、損失を最小限にするためにシステムに再注入することもできる。
【0039】
栄養素には、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどがあるが、これらは同じ溶液内、または、別々の溶液内にあってもよい。
【0040】
添加物は、例えば、BNNのドーパミン作動性反応を増加させるドーパミン作動性刺激増強剤、BNNのドーパミン作動性反応を減少させるドーパミン作動性刺激抑制剤など、化学物質、薬剤、その他の要素で構成され得る。自動化の当業者には明らかなように、これにより、ドーパミン作動性/抗ドーパミン作動性システムを再現し、制御することができる。より一般的には、添加物は、ボトックス、ニコチン、クラーレ、アンフェタミン、コカイン、MDMA、ストリキニーネ、THC、カフェイン、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、アルコール、アヘンなど、中枢神経系の神経伝達物質に影響を与えることが知られている化学物質を含むことができる。添加物は、成長因子、ホルモン、ガス(CO2、O2など)も含まれる場合がある。
【0041】
各栄養素ディスペンサ320は、栄養素をBNN細胞に伝える栄養素血管形成ネットワーク328を介して、BNN培養物120に相互に接続されている。各添加物ディスペンサ322、324は、添加物をBNN細胞に伝える添加物血管形成ネットワーク329、330を介してBNN培養物120に相互に接続されている。栄養素血管形成ネットワーク328と添加物血管形成ネットワーク329、330は、同じネットワークであっても、異なるネットワークであってもよい。
【0042】
各栄養素廃棄物収集器は、BNN細胞からの栄養素廃棄物を伝える栄養素廃棄物血管形成ネットワークを介して、BNN細胞120に相互に接続される。各添加物廃棄物収集器は、BNN細胞からの添加物廃棄物を搬送する添加物廃棄物血管形成ネットワークを介してBNN培養物120に相互に接続されている。
【0043】
栄養性廃棄物血管形成ネットワークは、栄養素血管形成ネットワーク328と同じであってもよいし、異なるネットワークであってもよい。添加物廃棄物血管形成ネットワークは、添加物血管形成ネットワーク329、330と同じまたは異なるネットワークであってもよい。血管形成ネットワークは、生体適応性材料を用いた3次元バイオプリンティングを用いて製造されてもよいし、BNN120の培養支持体上の幹細胞から成長させてもよい。
【0044】
血管形成は、人間の脳内の同様のシステムを考慮してもよいし、多孔質材料の構造など、全く異なるタイプのものを考慮してもよいことが指摘されている。図4は、3次元BNN120で神経系細胞440を成長させるために、固有の血管形成ネットワークの支持体を備えた神経系細胞440の可能なホストとしてのスポンジ状構造物の例示的な実施形態の側面カット図である。スポンジ材料439は、好ましくは、BNN細胞440をその孔442(410に示すように)内に機械的にホストしつつ、後に3次元BNN培養物としての成長展開に適応するために、軟質で圧縮可能である。スポンジ材料439は、さらに好ましくは多孔質で吸収性があり、BNN培養物全体に栄養素および/または添加物および/または廃棄物を伝える。可能な実施形態では、神経系細胞440を含む溶液をスポンジ状構造物439に浸して、神経系細胞がその細孔およびチャネル全体に規則的に分布するようにしてもよい。可能な実施形態では、接着因子を強化するために、ポリエチレンイミン(PEI)ポリマーを使用してもよい。さらなる可能な実施形態では、神経幹細胞440は、幹細胞がスポンジ状構造物439に分配されるまで、細胞の特殊化を防ぐために、線維芽細胞成長因子FGF2などの成長因子を含む溶液から浸されてもよい。分配された細胞がスポンジ状構造物439に付着すると、BNN培養物120が組み立てられ、スポンジ状構造物439がさらにその血管形成システムとして使用されてもよい。接着および成長因子溶液は、洗い流され、BNN培養物細胞の特殊化、成長および維持に適したさらなる栄養および添加物溶液441と交換されてもよい。別の実施形態(表されていない)では、誘導多能性幹細胞を機械的に挿入し、その固有の血管形成ネットワークシステムとしてスポンジ状構造物339上に直接培養してもよい。
【0045】
図5は、刺激ユニットおよび/または読み出しユニットの電気および/または光学コンポーネントの3次元BNN培養物へのインターフェースを容易にしながら、3次元BNN培養物で神経系細胞544を成長させるための固有の血管形成ネットワークの支持体を備えた神経系細胞544の可能なホストとしてのスポンジ状構造物の別の例示的な実施形態の上面カット図を示すものである。この目的のために、スポンジ状構造物は、球体として形成されてもよく、電気生理学的クランプまたは電極は、球体の周りに分散された多様な配置からスポンジ状構造物を横断し、異なる深さでそれを貫通してもよい。
【0046】
さらなる可能な例示的な実施形態(図示せず)では、3次元BNNは、二つの平面間に懸架された生体適応性のあるフィラメントに沿って、サンドイッチ状の構造で培養されてもよい。神経系細胞は、様々な方法で生体適応性のあるフィラメントに付着させてもよい。可能な実施形態では、フィラメントはPEIなどの付着因子でコーティングされていてもよいが、他の実施形態も可能である。
【0047】
<BNNコントローラ>
図6は、BNNコアユニット120と、刺激モジュール110と、読み出しモジュール130と、栄養素や添加物のタンクやディスペンサや廃棄物収集器を含み得る自動血管形成システム(AVS)300と、を備える、BNNの自動成長、維持、および制御システムの一例を示す概略図である。好ましい実施形態では、AVSの動作は、AVSによってBNN培養物に注入される栄養素および添加物の選択および量、ならびにAVSによってBNN培養物から収集される廃棄物の量をリアルタイムで計算することを担当するBNN自動コントローラ600によって指揮される。BNN自動コントローラは、電子機器のハードウェアで構築され、ソフトウェアのアルゴリズムを実行するように適応されたコンピュータプロセッサであってもよい。簡潔な実施形態では、BNN自動コントローラは、オープンループで動作し、必要な栄養素および添加物を特定して定量化し、神経生理学的パラメータ化における科学的専門知識に基づいて結果として生じる廃棄物の値を導き出してもよい。さらなる実施形態では、BNN自動コントローラは、最新のBNN培養物の状態を判断するために、BNN読み出しモジュール130からの読み出し情報635をさらに継続的に監視し、それに応じてAVSのパラメータを調整してもよい。
【0048】
さらに別の実施形態では、BNN自動コントローラは、刺激ユニットのための刺激信号605を、BNNの状態と同期して動作するように制御してもよい。例えば、BNNの培養物の培地にAVSによって注入される栄養素および添加物、並びに、収集される廃棄物は、分化段階(組み立て)、成長段階(学習)、動作段階(安定した機能)、死滅段階(余分な廃棄物の発生)といったBNN細胞のライフサイクルに沿った成熟段階に応じて異なる。栄養素や薬剤の再注入や廃棄の割合は、栄養素ディスペンサ、添加物ディスペンサ、それぞれの廃棄物収集器で制御することができる。これらのフィードバックループにより、栄養素や薬剤の量は、1/寿命の最適化、2/手作業によるケアの最小化、3/BNNの応答性の調整および性能の安定化、に動的に調整することができる。このようにして、BNNの恒常性を経時的に維持することができる。
【0049】
可能な実施形態では、BNN自動コントローラ600は、生のデータ入力信号105を刺激信号605として直接供給してもよい。代替実施形態では、BNN自動コントローラは、データ入力信号105を刺激信号605に変換することを担当する前処理ユニット610をさらに含んでもよい。これにより、BNN自動コントローラは、生の入力を実際の刺激ユニットSUの能力およびBNNの能力により良く適応させることができ、エンドユーザが自分の入力信号を可能な各構成に具体的に適応させる必要なく、エンドツーエンドのBNN処理タスクが最適に実行される。これは、BNNの能力が時間とともに進化し得るし、信号前処理610もそれに応じて適応され得るので、学習タスクも容易にする。
【0050】
可能な実施形態では、BNN自動コントローラは、生のBNN読み出し信号635を、エンドツーエンドのBNNシステム処理の結果としての信号として直接出力してもよい。代替実施形態では、BNN自動コントローラ600は、生のBNN読み出し信号635を出力信号135に変換することを担当する後処理ユニット630をさらに含んでもよい。これにより、BNN自動コントローラは、ノイズが多すぎて容易に解釈できない可能性がある生の読み出しを、実際のアプリケーションのニーズにより良く適応させることができる。例示的なアプリケーションは、スパイクソート信号処理アルゴリズムを用いた一連のスパイクからの関連信号の抽出であるが、統計モデル、分類器、あるいは機械学習法など、他のアプローチを使用してもよい。これはまた、それぞれの可能な内部BNN生物培養または読み出しユニット構成に従って測定された出力信号を、エンドユーザが具体的に解釈する必要なしに、包括的な対象の出力信号135を事前に定義された入力信号105に関連付けるように、エンドツーエンドのBNNシステムを訓練することができるので、学習タスクを容易にする。これはまた、BNNの能力が時間とともに進化し得るし、信号後処理630もそれに応じて適応され得るので、学習タスクを容易にする。
【0051】
図7は、バイオロジカルオペレーティングシステム(BOS、コンピュータオペレーティングシステムの例え)として可能なBNNの自動成長、維持、および制御の別の概略図である。このようなBOSは、従来のコンピュータオペレーティングシステムまたはクラウドコンピューティングサービスが、基礎となるハードウェア固有のデバイスおよび操作を抽象化するのと同様に、エンドユーザがBNN処理ユニット機能を実行するためのリアルタイム機能制御ソフトウェアを、エンドユーザがそれらに気づかないようにBNN自動化プロセスを抽象化することによってホストすることができる。提案されたBOSは、先に説明した、BNNコアユニット培養物120と、刺激モジュールおよび読み出しモジュールSU/RU110/130と、自動血管形成システム(AVS)のためのBNN健康制御ユニット710と、ともに動作する。BNN健康制御ユニット710は、栄養素および添加物のタンクおよびディスペンサと、廃棄物収集器を備えた化学物質制御ユニットと、温度、圧力、湿度、O2またはCO2の比率などのBNN培養物の別の環境パラメータの制御を担当する環境制御ユニットと、を含んでもよい。環境制御ユニットは、例えば、温度、湿度、pH、CO2のセンサと同様、化学物質を供給するためのデジタル制御のマイクロポンプを含んでもよいし、環境制御ユニットは、例えば、任意の周波数帯の音や光の波を含む他の環境パラメータを変更してもよい。BNN健康制御ユニットは、BNN健康制御ソフトウェア700によるリアルタイムの監視のもと、BNN細胞の健康状態の監視を担当する。この健康監視システムは、BNNの性能が時間とともに自然に変化していくのを、エンドユーザにはわからないように調整する恒常性維持システムとして機能する。このシステムは、環境パラメータ(化学物質、栄養素、温度、CO2など)を調整することで、BNN処理ユニットの適切な機能性を長期にわたって確保する。これは、SU入力信号のトレーニングセットが依然として期待されるRU出力信号をもたらすことを定期的にチェックすることを含んでもよい。BNN健康制御ソフトウェア700は、管理者インターフェース740を介してシステムのユーザ管理者によって管理されてもよい。
【0052】
リアルタイム機能制御ソフトウェア701は、BNN機能インターフェース730を介して、処理ユニットとしてのBNNの機能を管理することをさらに担当する。BNNインターフェース730は、BNNの入力および出力をリアルタイムに処理するために使用されてもよく、それらは前述のSU/RUシステムを用いてインターフェースされる。BNNインターフェース730は、例えば、必要な任意の刺激信号の前処理タスク(610)および/または読み出し信号の後処理タスク(630)を適用してもよい。
【0053】
エンドユーザは、ユーザーインターフェース741によって、リアルタイム制御ソフトウェア701と対話することができる。ユーザーインターフェース741は、エンドユーザおよび/または管理者ユーザにとって同じまたは異なるユーザーインターフェースであってもよいが、同じであれば、管理者ユーザはより多くの機能にアクセスすることができる。リアルタイム機能制御ソフトウェア701だけでなく、BNN健康制御ソフトウェアおよび/またはBNN機能インターフェースのパラメータは、データベース720に格納されてもよい。
【0054】
非常に低いレイテンシーと高いデータスループット帯域幅を必要とする可能性のある高レベルのBNN認知処理ユニット機能のために、BNN機能インターフェース730は、リアルタイム機能制御ソフトウェア701による制御のもと、さらなるデータ前処理610および/またはデータ後処理アルゴリズム630を適用してもよい。可能な実施形態では、リアルタイム制御ソフトウェアは、インターネット上で動作せず、ローカルで動作する。したがって、機能制御ソフトウェア701は、管理者インターフェース740を用いた管理者によってアップロードされてもよいし、ユーザーインターフェース741を用いたエンドユーザによって直接アップロードされてもよい。
【0055】
BNNコントローラコンピュータシステム(本明細書では「システム」または「自動システム」ともいう)は、所定の用途に応じて、刺激入力信号の受信および/または結合、それらの処理、読み出し出力信号の生成および/または結合など、異なるBNN処理方法を実施するように、プログラムされているか、またはその他の方法で、構成されている。
【0056】
BNNコントローラは、中央処理ユニット(CPU、本明細書では「プロセッサ」または「コンピュータプロセッサ」)、RAMなどのメモリ、ハードディスクなどの記憶ユニット、および、例えばインターネットやローカルネットワークなどの通信ネットワークを介して他のコンピュータシステムと通信するための通信インターフェースを含む、コンピュータシステムまたはコンピュータシステムの一部であってもよい。コンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、これらに限定されるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、サーバコンピュータシステム、シンクライアント、シッククライアント、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラマブルなコンシューマ電化製品、ネットワークPC、ミニコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステムなどがある。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、1以上のコンピュータサーバを備えていてもよく、これらのサーバは、多数の他の汎用または特殊目的のコンピューティングシステムで動作可能であり、例えばBNNデータファームでクラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、BNNコントローラは、超並列システムに統合されてもよい。
【0057】
BNNコントローラシステムは、プログラムモジュールなどのコンピュータシステム実行可能な命令が、コンピュータシステムによって実行されるという一般的なコンテキストにおいて適応されてもよい。一般的に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、または、特定の抽象データタイプを実装するといったルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、ロジック、データ構造などを含み得る。プログラムモジュールは、当業者にはよく知られているように、ネイティブオペレーティングシステムやファイルシステム機能で使われ得るし、スタンドアロンアプリケーション、例えばブラウザやアプリケーションのプラグイン、アプレットなどで使われ得るし、Python、Biotython、C/C++、その他のプログラミング言語でプログラムされた商用またはオープンソースのライブラリおよび/またはライブラリツールで使われ得るし、PerlやBioperlスクリプトなどのカスタムスクリプトで使われ得るし、線形遺伝的プログラミングや認知コンピューティングに適した高度に専門化された言語、例えばSlashAやマシンコード、または計算ステップを記述するその他のデータ構造(Push Genetic Programming、Cartesian Genetic Programming、Tree-based Genetic Programmingに使用されるようなもの)で使われ得る。
【0058】
命令は、通信ネットワークを介してリンクされているリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散型クラウドコンピューティング環境で実行されてもよい。分散型クラウドコンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶デバイスを含むローカルおよびリモート両方のコンピュータシステム記憶メディアに配置されてもよい。
【0059】
このように、BNNコンピューティングシステムの動作を保証するために必要な全てのシステムを集めているため、システム全体がバイオロジカルオペレーティングシステム750として動作することがある。
【0060】
可能な実施形態では、BNN機能インターフェース730は、前処理または後処理フィルタ、分類器、数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズムなどの様々な入力および/または出力信号処理アルゴリズムを含んでもよく、機能制御ソフトウェア701は、エンドユーザのニーズに応じて、それらのアルゴリズムおよびそのパラメータを制御してもよい。信号の前処理は、BNNに学習させる信号を、SU刺激能力やフォーマットに最適に適応するように変換することを備えていてもよい。信号の後処理は、BNNから出力された信号をより包括的なフォーマットに変換して、目標とする機能を提供することを備えていてもよい。可能な実施形態では、BNNは非線形システムとしてモデル化されてもよく、信号前処理は、入力信号に非線形利得を適用することを備えていてもよい。可能な実施形態では、BNN機能インターフェースは、プリプロセッサおよび/またはポストプロセッサとして1以上の人工ニューラルネットワークを含み、パラメータは、信号の学習および/またはその分類を達成するための重み値、活性化関数の選択、およびその他のパラメータを含んでもよい。例えば、プリプロセッサは、入力されたアプリケーション信号をある期間にわたって繰り返したり、よりロバストなトレーニングや学習プロセスの再強化のために信号をわずかに変化させたりするのに役立ち得る。
【0061】
一般に、自動化の目的は、与えられた時空間的入力信号Sj(t)(iは刺激入力電極、jは検出出力電極、tはサンプリング時間)に対して正しい時空間的出力信号Oi(t)を生成するBNN処理システムを構築することである。典型的には、BNNは、O(t)とS(t)がそれぞれ成分Oi(t)とSi(t)のベクトルを表す「トレーニングセット」と呼ばれる、k個の異なる関数{O(t)、S(t)}(k)の集合で学習され得る。学習の成功後は、BNNは、学習セットに属していない入力S(t)に対する正しい出力を予測するために使用することができる。学習の成功および予測の成功は、対象の信号O(t)と測定されたBNN出力信号との間の差の最小化として測定され得る。この目的のために、例えば平均二乗誤差(MSE)、より一般的にはユークリッド距離や1ノルム距離などといったnノルム距離など、様々なメトリックスを使用することができる。形式的には、学習セットに属さない「テストセット」と呼ばれるp個の異なる関数{O(t)、S(t)}(p)の集合に対して、正しい値を出力できることを意味する。
【0062】
一般に、自動化の目的は、与えられた時空間的入力信号Sj(t)(iは刺激入力電極、jは検出出力電極、tはサンプリング時間)に対して正しい時空間的出力信号Oi(t)を生成するBNN処理システムを構築することである。典型的には、BNNは、O(t)とS(t)がそれぞれ成分Oi(t)とSi(t)のベクトルを表す「トレーニングセット」と呼ばれる、k個の異なる関数{O(t)、S(t)}(k)の集合で学習され得る。学習の成功後は、BNNは、学習セットに属していない入力S(t)に対する正しい出力を予測するために使用することができる。学習の成功および予測の成功は、対象の信号O(t)と測定されたBNN出力信号との間の差の最小化として測定され得る。この目的のために、例えば平均二乗誤差(MSE)、より一般的にはユークリッド距離や1ノルム距離などといったnノルム距離など、様々なメトリックスを使用することができる。形式的には、学習セットに属さない「テストセット」と呼ばれるp個の異なる関数{O(t)、S(t)}(p)の集合に対して、正しい値を出力できることを意味する。
【0063】
いくつかの実施形態では、この成功した学習を達成するために、入力を最適に提示し、出力を最適に測定するために、機械学習アルゴリズム(特には、人工ニューラルネットワークANN、畳み込みニューラルネットワークCNN、サポートベクタマシンSVM、深層学習があり、これには、ランダムフォレスト、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、リザーバコンピューティングなどの任意のMLアプローチも含まれる)を使用してもよい。例えば、
- {O(t)、S(t)}(k)というk個の関数のうちのいくつかは他の関数よりも頻繁に繰り返す必要があり得る、
- 入力のいくつかは、時間の経過とともに異なる電極にマッピングされることがあり得る、
- 複数の電極の同時読み取りが必要な場合もあり得る、
- などなど、
である。
【0064】
より一般的には、生の信号入力135は、SU110と共にBNN120に供給する前に処理するBNNインターフェース730の第1の前処理サブユニット610に供給されてもよく、一方、RU130から読み出されたBNN120の出力信号635は、アプリケーションのニーズに応じて、より適切な出力信号135を生成するために、BNNインターフェース730の第2の後処理サブユニット630によって、それ自体がさらに変換されてもよい。オープンループアーキテクチャでは、前処理サブユニットおよび後処理サブユニットは、互いに独立して動作してもよい。クローズドループアーキテクチャでは、それらは共同で動作してもよく、例えば、後処理ユニットからのいくつかの出力が刺激前処理ユニットにフィードバックされてもよい。
【0065】
好ましくは、前処理ユニットは、SUとともにBNNに供給される処理済み信号S(t)を生成するために、生の入力Sr(t)の時空間的処理を行ってもよい。その後、BNNは生の信号O(t)を出力し、これが後処理ユニットによって処理され、処理済みの出力信号O(t)が生成される。これらの信号の次元は、それぞれ異なる可能性がある。例えば、BNNが、周波数1hzの単純な生の一次元正弦信号に対して一つのスパイクを出力するためには、100hzの解像度で定義された異なる時間信号を有する100個の異なる電極を次々と励起することが必要となる場合がある。前処理ユニット610は、それに応じて適応されてもよい。また、前処理ユニット610だけでなく、後処理ユニット630も機械学習を用いてもよい。後者の実施形態では、予め定義された入力信号105について、対象信号と、測定された最終の出力信号135と、の差を全体的に最小化するという目標に到達するために、三つのサブシステムが訓練されてもよい。なお、BNN技術の発展に伴い、前処理ユニット610および/または後処理ユニット630を、ソフトウェアまたはハードウェアではなくウェットウェアで、例えば単純なBNNとして実装して、より高い認知機能を学習するのに適したより複雑なシステムを徐々に構築することも可能であると考えられる。
【0066】
このように、BOS750は、以下の機能を実現することで、リアルタイムで持続可能かつ信頼性の高いBNNコンピューティング動作(学習を含む)をエンドユーザに提供するために、BNN培養物120のヘルスモニタリングと機能制御の両方を統合している。 ・一定のレベルのパフォーマンスを確保するために、BNNの機能インターフェース730とECCUのパラメータ710を最適化することによって機能する、恒常性機能
・新たな入出力の関連性を学習するために必要なECCUパラメータを共同で用いてBNNインターフェース(入力側の信号の前処理や出力側の信号の後処理アルゴリズムを含む場合もある)を最適化することで機能する、学習機能。特に、機能制御ソフトウェア701は、BNN機能インターフェースによって処理された刺激信号および読み出し信号とのクローズドループ協調において、トレーニングセットでの最適な学習を促進するために、BNN健康制御のための添加物の供給および/または環境パラメータの値をリアルタイムに調整する能力を有する。
・既存のBNNによって既に学習されたトレーニングセットで直接動作するように、老化したBNNの培養物のクローン化を要求し得る、メンテナンス機能。既存のBNNのBNNインターフェースとECCUパラメータの少なくとも一部は、データベース720から検索され、新しいBNNでの学習時間を短縮するために複製され得る。
【0067】
<BNN自動学習>
ニューロン細胞の本質的な動的相互接続性は、データフィードに基づいて(再)プログラム可能な機能を作り出す手段と考えられ、機械学習に必要な構築ブロックを構成している。神経科学の技術に精通している人には明らかなように、BNNシステムは、まず、入力データ信号105を用いて、所望の出力データ信号135を与え、学習中に供給されなかった入力についても安定した状態になるまで、学習され得る。BNNが期待通りに対象の出力データ信号を入力データ信号に関連付けることができたとき、システムは学習して一般化したと言うことができ、与えられた入力が供給されたときに決定論的な反応を生成することができる。
【0068】
BNNを学習するために、自動コントローラは、出力時空間的データ信号135が対象の出力データ信号と一致するまで、刺激ユニットSU用の入力時空間的信号605を入力データ信号105と出力時空間的データ信号135の両方に適応させてもよい。自動コントローラは、
- BNNコアユニットの環境パラメータ
- BNN神経系細胞培養物用の栄養素供給
- BNN神経系細胞培養物用添加物供給
- BNN神経系細胞培養物の栄養素廃棄物の収集
- BNN神経系細胞培養物の添加物廃棄物の収集
- BNNインターフェース信号の前処理アルゴリズムのパラメータ
- BNNインターフェース信号の後処理アルゴリズムのパラメータ
のうちの少なくとも1以上を、出力された時空間的データ信号が、期待された出力データ信号と一致するまで、さらに適応させてもよい。
【0069】
図8は、刺激信号605を測定された読み出し信号635に適応させるためのフィードバックループH800を備えた、リアルタイム処理ソフトウェアによって実装され得るような学習プロセスを示す。可能な実施形態では、リアルタイム処理ソフトウェアは、長期増強を促すために、BNNへの刺激信号605の周期的な繰り返しをトリガしてもよい。より一般的には、健康モニタリングシステムによって制御される環境パラメータおよび化学パラメータもまた、クローズドループ学習システムの一部であってもよい。可能な実施形態では、リアルタイム処理ソフトウェアは、測定された読み出し信号635が、与えられた刺激信号入力に対するトレーニングセットの期待信号と一致したときに、報酬としてBNNを強化することが知られている薬剤の投与をトリガすることができる。
【0070】
さらに可能性のある実施形態(図示せず)では、BNNは、BNN自動コントローラのインターフェースを介して、例えばインターネットのウェブデータベースなどの外部情報源と接続されてもよい。さらに、この外部情報にアクセスして利用することで、より多くのことを学び、新しい概念を結びつけ、時間をかけてより高度な認知能力を学習し得る。
【0071】
<バイオロジカルコンピューティングスタック>
フィードバックループを機能させるためには、BNNコアユニットの綿密な制御が必要である。提案されている自動血管形成システムは、哺乳類の脳と比較して、例えば10000個の相互接続されたニューロンのオーダーのような、比較的小さなBNN培養物の成長と維持に限定される可能性がある。そのため、高レベルの認知機能を学習および動作するためには、一つのBNNコアユニットをBNNコンピューティングシステムに統合するだけでは十分ではない可能性がある。この制限は、図9a)および図9b)に表されているように、BNNバイオロジカルコンピューティングスタック(BCS)によって克服され得る。可能な実施形態では、1以上のBNNコアユニットが直列に配置されてもよい。第1のBNNコアユニットの読み出しユニットRUは、次のBNNコアユニットの刺激ユニットSUに接続されてもよいし、代わりにそれらが単一のハードウェアに統合されてもよい。また、ブロック間の各インターフェースでは、図9b)で表されるように、外部刺激信号入力900(ES)を受け付けてもよい。
【0072】
可能な実施形態として、2次元のBNNコアユニットを垂直に積み重ねてもよい。また、別の実施形態として、ニューロスフェアのスタックまたは3次元のバイオプリントされた材料の層として製造されたBNNコアユニットを、隣接する二つのユニット間の界面に電気生理プローブを挿入した状態で、機械的に直列スタックとして配置してもよい。
【0073】
図9b)に表されているように、深層学習のレイヤードアーキテクチャーに似た配置で、最後の読み出しユニットと最初の刺激ユニットの間で動作するフィードバックループを用いて、学習プロセスをエンドツーエンドで制御することができる。この構成では、バイオロジカルニューラルネットワークの固有な性質により、フィードバック要素がスタビライザーとして使用され、外部からの刺激がなくても内部の状態が変化する。
【0074】
図10a)および図10b)は、追加の後処理ブロックO1010を使用した場合と使用しない場合の、さらなる非線形ゲインP1000を有するBNNコンピューティングスタックを制御する適応型クローズドループシステムの二つのさらなる実施形態をそれぞれ示す。深層学習の技術に精通した人には明らかなように、前処理ブロックPは学習プロセスを促進し、後処理ブロックOはリザーバコンピューティングのためのトポロジーを表してもよい。このような構成により、T-BCS(Trainable Bio-Computing Stack)が実現される。
【0075】
図11は、Oの出力信号後処理ブロック1010が人工ニューラルネットワーク(ANN)で実現されている場合の、図10b)に関連する具体的な実現例を示す。バイオロジカルニューラルネットワーク(BNN)120は、多電極アレイ(MEA)1135によって、デジタルインターフェースである読み出しユニット(RU)および刺激ユニット(SU)に接続されている。フィードバック関数(H1)1137は、ANNの学習プロセス、例えば、限定されるわけではないが、バックプロパゲーションに対応する。外側フィードバック機能(H2)1136は、BNNに長期増強を課す手段に相当する。外側フィードバック関数H2は、BNN培養物120の出力で所望のスパイクを作る正しい時空間的シーケンスを決定するように、遺伝的プログラミングまたは機械学習を用いて達成することができる。長期増強を課す別の方法は、RUを所望のスパイクシーケンスを持つ刺激ユニットとして使用し、BNN内部の内部接続を強化することである。このアプローチを用いて、いくつかの実施形態では、ANNが省略され得る。
【0076】
S(t)を、MEAの異なる刺激ユニットSに対する時間(t)に依存する周期的なデータ入力関数とする。時間(t)に依存し、MEAの異なる読み出しユニットOに対する、与えられたS(t)に対するデータ出力関数をO(t)とする。
【0077】
そして、H2は、周期の任意の数Pに対してLが最小(または最大)のとき、BNNが与えられた入力S(t)に対して常に同じスパイク時間関数O(t)を生成するように、スカラーメトリックLを最小化(または最大化)する関数またはアルゴリズム(遺伝的プログラミングまたは機械学習の助けを借りて例として発見されたもの)である。Lは損失(または報酬)関数として知られている。
【0078】
例えば、Lは次式となり得る。
【数1】
ここで、Nは入力関数S(t)の周期である。この場合、関数またはアルゴリズムH2はLを最小化することになる。
【0079】
図12は、T-BCS動作の経時的な維持を容易にするための、図11の実現についての更なる可能な実施形態を示す。実際、BNN培養物120は、その初期(学習された)構造から経時的に進化し得るし、したがって、T-BCSのデータ出力においてドリフトを引き起こす可能性がある。これは、初期信号のトレーニングセットの1以上をSU入力として含む検証セットを用いてT-BCS動作を定期的にテストすることによって監視され得る。その後、T-BCSの読み出しユニットRUの出力は、予想される予測セットに対してチェックされてもよく、それらがあまりにも異なる場合、T-BCSは、学習プロセスを再適用しなければならない。学習プロセスには時間がかかり、T-BCSの機能が中断されるため、可能な実施形態では、T-BCSシステムを、事前に準備された新しいものと交換する。
【0080】
<BNNサーバ>
提案されている自動化されたBNNシステム、BNNオペレーティングシステム(BOS)および学習可能なBNNコンピューティングスタック(T-BCS)は、ウェットウェアベースのコンピューティングサーバのコアアーキテクチャを提供することができる。このようなBNNサーバは、従来のソフトウェアやハードウェアベースのサーバアーキテクチャよりも、高レベルの認知処理をより効率的に提供するのにより適しているかもしれない。
【0081】
図13に示すように、T-BCSのウェットウェアのアーキテクチャは、ユーザクライアントに異なるサービスを提供するホストを操作動し得る。図14はさらに、リクエストの処理、ジョブのスケジューリング、ログの報告と記録、ダッシュボードの管理、請求書の発行など、ユーザクライアントを管理するためにホストサーバによって操作される可能性のある機能を示す。図15は、同一のT-BCSサーバホストから複数のクライアントにサービスを提供するためのロードバランシングを備えた一般的なアーキテクチャをさらに示す。
【0082】
好ましくは、BNNサーバは、一つのT-BCSがメンテナンス(再学習など)のために取り外されても、少なくとも一つの他のT-BCSがクライアントの要求に応えるために動作し続けるような、冗長なT-BCSの動作をサポートする。
【0083】
<BNNの維持および更新>
[模範的なアプリケーション]
図16b)は、従来の深層学習サーバ16a)と比較して、逆画像検索サービスというT-BCSサーバの可能性のある適用を示したものである。図16a)のレガシーアプリケーションでは、例えばGoogleによって実装されているように、逆画像検索サービスは、入力として画像を受け取り、この画像がネット上のどこにあるかを教え、画像の説明を与え、場合によっては類似画像のコレクションも返す。図16a)の先行技術の逆画像検索バックエンドは、典型的にはハッシュ値1614として、画像のロバストなコンパクト表現を得るために、いくつかの異なる画像処理または画像視覚システム1613を使用する。提案された適用は、T-BCS1615によって完全なバックエンド処理を置き換え、同じコンピューティング能力に対し大幅な電力消費の削減を実現する。特に、適切に学習されると、バイオロジカルコンピューティングスタック(BCS)は、機械学習AIネットワーク、または特徴記述子抽出アルゴリズム、または知覚的ハッシュ関数、または追加の画像処理タスク、またはこれらのタスクの任意の組み合わせからなる特徴抽出部分と、データベースに格納される画像のコンパクトな表現を得るために必要である所謂ハッシュ化後処理と、の両方を有利に置き換え得る。
【0084】
[その他の実験、実施、適用]
図17は、Glutamax(商標)、Fibroblast Growth Factor、Epiderman Growth Factor、およびStempro(登録商標)を補充したDMEM-F12製の培地で、ラットの皮質幹細胞を4日間成熟させた後の、~200μm幅のニューロスフェアを示す。可能な実施形態では、3次元電極をニューロスフェア(または他のタイプのニューロン集合体)の表面上に分布させてもよい。成長刺激の後、電極の先端は、成長したニューロスフェアの内部に徐々に収まるようになる。図18-19-20は、15日間かけて400μmから1mm以上に成長した皮質神経幹細胞のニューロスフェアの仮想円周に沿って12個の電極を規則的に配置し、各電極の先端が自然にニューロスフェアの中に深く入り込むようにした例を模式的に示す。この特殊のケースでは、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)のマウス肉腫から抽出して得られたMatrigel(登録商標)のマトリックスによって成長が刺激されている。
【0085】
マトリックスは、MEA上で直接、神経系細胞の3次元成長を刺激するためにも使用できる。これは、図21に、付着細胞2120が、神経突起2121、2122を伸ばすように、またはMatrigel(登録商標)のマトリックス2100を通って移動するように、成長させることが示されている。これにより、MEAの表面210から数ミリ以上伸びる可能性のある、より太いネットワークを得ることができる。図22は、MEA表面上で成長した神経系細胞を含む付着細胞2201およびMatrigel(登録商標)2202の顕微鏡画像を示す。当業者には明らかなように、同じ原理がニューロスフェアまたは神経系細胞の任意の集合体にも適用される。
【0086】
以上、様々な実施形態を述べてきたが、これらは例示であって限定ではないことを理解すべきである。関連分野の当業者には、その精神と範囲から逸脱することなく、その中で形態や詳細に様々な変更を加えることができることが明らかである。実際、上記の説明を読んだ後には、代替的な実施形態をどのように実施するかが関連技術の当業者に明らかになるであろう。
【0087】
デジタルデータ通信分野の当業者には明らかなように、本明細書に記載されている方法は、データファイルやデータストリームなどの様々なデータ構造にも違いなく適用することができる。したがって、「データ」、「データ構造」、「データフィールド」、「ファイル」、または「ストリーム」という用語は、本明細書において違いなく用いられてもよい。
【0088】
上記の詳細な説明には多くの具体的な詳細が含まれているが、これらは実施形態の範囲を限定するものではなく、単にいくつかの実施形態の一部を例示するものと解釈すべきである。
【0089】
以上、様々な実施形態を述べてきたが、これらは例示であって限定ではないことを理解すべきである。関連分野の当業者には、その精神と範囲から逸脱することなく、その中で形態や詳細に様々な変更を加えることができることが明らかである。実際、上記の説明を読んだ後には、代替的な実施形態をどのように実施するかが関連技術の当業者に明らかになるであろう。
【0090】
さらに、機能性や利点を強調した図は、例示の目的でのみ提示されていることを理解すべきである。開示された方法は、十分に柔軟で構成可能であるため、図示されている以外の方法で利用され得る。
【0091】
本明細書、特許請求の範囲、および図面において、「at least one」という用語がしばしば使用されることがあるが、「a」、「an」、「the」、「said」などの用語も、本明細書、特許請求の範囲、および図面において、「少なくとも一つ」または「the at least one」を意味する。
【0092】
本明細書では、複数のインスタンスが、単一のインスタンスとして記述されたコンポーネント、操作、または構造を実装してもよい。1以上の方法の個々の操作は、別々の操作として図示および説明されているが、個々の操作の1以上を同時に実行してもよく、図示された順序で操作を実行する必要はない。例示された構成において、別々のコンポーネントとして提示された構造および機能は、結合された構造またはコンポーネントとして実装されてもよい。同様に、単一のコンポーネントとして提示された構造と機能は、別のコンポーネントとして実装されてもよい。これらおよびその他の変形、変更、追加、および改良は、本明細書の主題の範囲内である。
【0093】
本明細書には、特定の実施形態を、論理または多数のコンポーネント、モジュール、ユニット、またはメカニズムを含むものとして記載している。モジュールまたはユニットは、ソフトウェアモジュール(例えば、機械読み取り可能な媒体上または伝送信号内に具現化されたコード)またはハードウェアモジュールのいずれかを構成してもよい。「ハードウェアモジュール」は、特定の操作を行うことができる有形のユニットであり、特定の物理的な方法で構成または配置してもよい。様々な例示的な実施形態において、1以上のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロンコンピュータシステム、クライアントコンピュータシステム、またはサーバコンピュータシステム)またはコンピュータシステムの1以上のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサまたはプロセッサのグループ)は、本明細書に記載されているような特定の動作を行うように動作するハードウェアモジュールとして、ソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)によって構成されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、ハードウェアモジュールは、機械的、電子的、生物学的、またはそれらの任意の適切な組み合わせで実装されてもよい。例えば、ハードウェアモジュールは、特定の操作を実行するように恒久的に構成された専用回路または論理を含んでいてもよい。例えば、ハードウェアモジュールは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASICなどの特殊用途のプロセッサであってもよい。また、ハードウェアモジュールには、特定の動作を行うようにソフトウェアによって一時的に構成されたプログラマブルなロジックや回路が含まれる場合がある。例えば、ハードウェアモジュールは、汎用プロセッサやその他のプログラマブルプロセッサに包含されるソフトウェアを含んでいてもよい。ハードウェアモジュールを機械的に実装するか、専用の恒久的に構成された回路に実装するか、一時的に構成された回路(例えば、ソフトウェアで構成されたもの)に実装するかは、コストと時間を考慮して決定され得ることを理解すべきである。合成生物学の発展に伴い、ハードウェアモジュールの全部または一部を、ニューロスフェアや遺伝子操作された細胞などの生物学的細胞(ウェットウェアとしても知られている)で製造されてもよい。
【0095】
本明細書に記載されている例示的な方法の様々な操作は、関連する操作を実行するように一時的に(例えば、ソフトウェアによって)または恒久的に構成されている1以上のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行されてもよい。一時的または恒久的に構成されているかどうかにかかわらず、そのようなプロセッサは、本明細書に記載されている1以上の操作または機能を実行するように動作するプロセッサ実装モジュールを構成してもよい。本明細書では、「プロセッサ実装モジュール」とは、1以上のプロセッサを使用して実装されたハードウェアモジュールを指す。
【0096】
同様に、本明細書に記載されている方法は、少なくとも部分的にプロセッサで実装されていてもよく、プロセッサはハードウェアの一例である。例えば、ある方法の操作の少なくとも一部は、1以上のプロセッサまたはプロセッサを実装したモジュールによって実行されてもよい。
【0097】
本明細書に説明する内容の一部は、機械のメモリ(例えば、コンピュータのメモリ)内にビットまたは2進デジタル信号として格納されたデータに対する操作のアルゴリズムまたは記号的表現で示されている場合がある。このようなアルゴリズムまたは記号的表現は、データ処理技術に精通した当業者が、自分の仕事の本質を他の当業者に伝えるために使用する技術の例である。本明細書では、「アルゴリズム」とは、所望の結果を導く自己完結型の一連の操作または同様の処理のことである。本文脈では、アルゴリズムと演算は物理量の物理的操作を伴う。
【0098】
特定の例示的な実施形態を参照して本発明の主題の概要を説明してきたが、本発明の実施形態の広範な精神および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な修正および変更を加えることができる。例えば、様々な実施形態またはその特徴は、当業者によって混合および適合されたり、オプションにされたりしてもよい。本発明の主題のそのような実施形態は、本明細書では、単に便宜上、本願の範囲を任意の単一の発明または発明概念に限定することを意図せずに、複数のものが実際に開示されている場合には、個別にまたは集合的に、「発明」という用語で参照され得る。
【0099】
本明細書に例示されている実施形態は、当業者が開示された教示を実施できるように十分に詳細に説明されていると考えられる。他の実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、使用され、そこから派生することができる。したがって、詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、様々な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲が権利を有する完全な範囲の等価物によってのみ定義される。
【0100】
さらに、単一のインスタンスとして本明細書に記載されているリソース、操作、または構造に対して、複数のインスタンスが提供される場合がある。さらに、様々なリソース、操作、モジュール、エンジン、およびデータストアの間の境界はある程度任意であり、特定の操作は特定の例示的な構成の文脈で説明されている。機能の他の割り当てが想定されており、本発明の様々な実施形態の範囲内に入る可能性がある。一般的に、例示した構成で個別のリソースとして提示された構造および機能は、結合された構造またはリソースとして実装することができる。同様に、単一のリソースとして提示された構造と機能は、別々のリソースとして実装されてもよい。これらおよびその他の変形、修正、追加、および改良は、添付の特許請求の範囲で表される本発明の実施形態の範囲に含まれる。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で捉えられるべきである。
【0101】
最後に、出願人の意図するところは、「means for」または「step for」という表現を明示的に含む請求項のみが35 U.S.C. 112の第6項に基づいて解釈されるということである。「means for」または「step for」という表現を明示的に含まない請求項は、35 U.S.C. 112の第6項に基づいて解釈されるべきではない。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図2e)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動処理システムを用いて時空間的入力データ信号(105)を時空間的出力データ信号(135)に変換する方法であって、前記自動処理システムは、
BNNコアユニット(100)内のイン・ビトロの生物学的神経系細胞培養物(BNN培養物(120))と、
入力時空間的刺激信号(605)を前記神経系細胞の第1セットに適用するように適応された入力刺激ユニットSU(110)と、
前記神経系細胞の第2セットからの出力時空間的読み出し信号(635)をキャプチャするように適応された出力読み出しユニットRU(130)と、
1以上の栄養素ディスペンサ(320)と接続されて、1以上の栄養素を前記BNN培養物(120)に注入する1以上の栄養素タンク(319)と、
1以上の添加物ディスペンサ(322、324)とそれぞれ接続されて、1以上の添加物を前記BNN培養物(120)に注入する1以上の添加物タンク(321、323)と、
前記BNN培養物(120)から栄養素廃棄物をろ過して排出するための、1以上の栄養素廃棄物収集器(325)と、
前記BNN培養物(120)から添加物廃棄物をろ過して排出するための、1以上の添加物廃棄物収集器(326、327)と、
前記栄養素ディスペンサ(320)、前記添加物ディスペンサ(322、324)、前記栄養素廃棄物収集器(325)および前記添加物廃棄物収集器(326、327)を前記BNN培養物(120)に接続する、1以上の血管形成ネットワークと、
前記BNN培養物(120)の少なくとも一つの環境パラメータを測定する1以上のセンサと、
前記時空間的入力データ信号(105)を前記時空間的刺激信号(605)に前処理するように構成された前処理ユニット(610)、および、前記時空間的読み出し信号(635)を前記時空間的出力データ信号(135)に後処理するように構成された後処理ユニット(630)を有する自動コントローラ(600)であって、
BNNコアユニットの環境パラメータと、
BNN培養物の栄養素供給と、
BNN培養物の添加物供給と、
BNN培養物の栄養素廃棄物の収集と、
BNN培養物の添加物廃棄物の収集と、
前処理のパラメータと、
後処理のパラメータと、
のうちの少なくとも一つを制御するように構成されて、前記時空間的入力データ信号(105)が前記時空間的出力データ信号(135)に連続的に変換されるように、前記BNN培養物の恒常性を経時的に維持する、自動コントローラ(600)と、
を備え、
前記方法は、
前記自動コントローラ(600)の前処理ユニット(610)を用いて、前記時空間的入力データ信号(105)を前記時空間的刺激信号(605)に前処理するステップと、
前記自動コントローラ(600)の後処理ユニット(630)を用いて、前記時空間的読み出し信号(635)を前記時空間的出力データ信号(135)に後処理するステップと、
前記自動コントローラ(600)を用いて、
BNNコアユニットの環境パラメータと、
BNN培養物の栄養素供給と、
BNN培養物の添加物供給と、
BNN培養物の栄養素廃棄物の収集と、
BNN培養物の添加物廃棄物の収集と、
前処理のパラメータと、
後処理のパラメータと、
のうちの少なくとも一つを制御して、前記BNNコアユニットが前記時空間的入力データ信号(105)を前記時空間的出力データ信号(135)に連続的に変換するように、前記BNN培養物の恒常性を経時的に維持するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
対象の時空間的出力データ信号を受信するステップと、
前記BNNコアユニットの環境パラメータと、
前記BNN培養物の栄養素供給と、
前記BNN培養物の添加物供給と、
前記BNN培養物の栄養素廃棄物の収集と、
前記BNN培養物の添加物廃棄物の収集と、
前処理のパラメータと、
後処理のパラメータと、
のうちの少なくとも一つを適応させて、前記時空間的出力データ信号(135)と前記対象の時空間的出力データ信号との間における誤差を最小化するステップと、
をさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前処理は、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、
リザーバコンピューティング法、
のうちの少なくとも一つを用いて、時空間的入力データ信号105を時空間的刺激信号(605)に変換するステップを含む、
請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
後処理は、
時空間的信号フィルタ、
時空間的信号分類器、
数学的または統計的モデルに基づく機械学習アルゴリズム、
人工ニューラルネットワーク、
畳み込みニューラルネットワーク、
サポートベクタマシン分類器、
ランダムフォレスト分類器、
遺伝的アルゴリズム、
遺伝的プログラミングアルゴリズム、
リザーバコンピューティング法、
のうちの少なくとも一つを用いて、時空間的読み出し信号(635)を空間的出力データ信号(135)に変換するステップを含む、
請求項からのいずれかに記載の方法。
【外国語明細書】