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特開2024-123070サイトカインをコードするRNAを用いた治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123070
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】サイトカインをコードするRNAを用いた治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K31/7105 ZNA
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K38/20 ZNA
C12N15/24
C12N15/26
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095672
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2020565536の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/053454
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】クランツ, レナ
(72)【発明者】
【氏名】フォルメール, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ディケン, ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】クライター, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン, ボード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワクチン、特に癌ワクチンの有効性を高めるための方法および組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、対象において免疫応答を誘導するための方法および組成物であって、ワクチン接種に使用されるペプチドまたはタンパク質をコードするRNAならびに薬物動態修飾基に結合したIL-2をコードするRNAおよび/または薬物動態修飾基に結合したIL-7をコードするRNAを対象に同時投与することを含む方法および組成物に関する。ワクチンは、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤をさらに投与する場合に特に有効である。本開示はさらに、標的器官または標的組織へのサイトカインの標的特異的送達を含む方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において免疫応答を誘導するための方法であって、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項3または5に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項3または5に記載の方法。
【請求項8】
前記対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA、ならびに任意で前記免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象に、
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象に、
a.延長PK IL7をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL2をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象に、
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療が、前記抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療が短命なエフェクタ細胞の数を減少させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象における癌を治療または予防するための方法であって、前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象における癌を治療または予防するための方法であって、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法。
【請求項22】
前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を含む医薬製剤。
【請求項24】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項25または27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項25または27に記載の医薬製剤。
【請求項30】
c.免疫チェックポイント阻害剤
をさらに含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、請求項30または31に記載の医薬製剤。
【請求項33】
前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、請求項32に記載の医薬製剤。
【請求項34】
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
キットである、請求項23~35のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項37】
各RNAを別々の容器に含む、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記RNAを含まない容器内にある、請求項36または37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含み、前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項36~38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記RNAを含む医薬組成物である、請求項23~35のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項41】
前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項40に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記RNAが、液体形態、固体形態、またはそれらの組合せから選択される形態で存在する、請求項23~41のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記固体形態が凍結形態または脱水形態である、請求項42に記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記脱水形態が凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態である、請求項43に記載の医薬製剤。
【請求項45】
医薬用途のための、請求項23~44のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む、請求項45に記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための、請求項23~46のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、請求項39および42~47のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項49】
腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を含まない、請求項23~48のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項50】
対象において免疫応答を誘導するための方法で使用するためのRNAであって、前記方法が、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む、RNA。
【請求項51】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、請求項50に記載のRNA。
【請求項52】
前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項51に記載のRNA。
【請求項53】
前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、請求項50~52のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項54】
前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項53に記載のRNA。
【請求項55】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項52または54に記載のRNA。
【請求項56】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項52または54に記載のRNA。
【請求項57】
前記方法が、前記対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む、請求項50~56のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項58】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、請求項57に記載のRNA。
【請求項59】
前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、請求項57または58に記載のRNA。
【請求項60】
前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、請求項59に記載のRNA。
【請求項61】
延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA、ならびに任意で前記免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する、請求項50~60のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項62】
前記方法が、前記対象に、
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項57~61のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項63】
前記方法が、前記対象に、
a.延長PK IL7をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL2をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項57~61のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項64】
前記方法が、前記対象に、
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、請求項57~63のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項65】
前記治療が、前記抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる、請求項50~64のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項66】
前記治療が短命なエフェクタ細胞の数を減少させる、請求項50~65のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項67】
前記治療が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、請求項50~66のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項68】
前記方法が、対象における癌を治療または予防するための方法であり、前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項50~67のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項69】
腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない、請求項68に記載のRNA。
【請求項70】
対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む、前記対象における癌を治療または予防するための方法で使用するためのRNA。
【請求項71】
前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、請求項68~70のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項72】
前記方法で投与される前記RNAの1つ以上であるか、またはそれを含む、請求項50~71のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項73】
延長PK IL2をコードする前記RNA、延長PK IL7をコードする前記RNA、および前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNAからなる群より選択される1つ以上であるか、またはそれを含む、請求項72に記載のRNA。
【請求項74】
延長PK IL2をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、請求項72または73に記載のRNA。
【請求項75】
延長PK IL7をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、請求項72または73に記載のRNA。
【請求項76】
前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、請求項72または73に記載のRNA。
【請求項77】
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/もしくは延長PK IL7をコードする前記RNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNA
であるか、またはそれを含む、請求項72または73に記載のRNA。
【請求項78】
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;および
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNA
であるか、またはそれを含む、請求項72または73に記載のRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象において免疫応答を誘導するための方法および組成物であって、ワクチン接種に使用されるペプチドまたはタンパク質をコードするRNAならびに薬物動態修飾基に結合したIL2をコードするRNAおよび/または薬物動態修飾基に結合したIL7をコードするRNAを対象に同時投与することを含む方法および組成物に関する。ワクチンは、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤をさらに投与する場合に特に有効である。本開示はさらに、標的器官または標的組織へのサイトカインの標的特異的送達を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、病原体関連疾患だけでなく癌、自己免疫、アレルギーにおいても重要な役割を果たす。T細胞は抗腫瘍免疫応答の重要なメディエータである。CD8+T細胞は、腫瘍細胞を直接溶解することができる。一方、CD4+T細胞は、CD8+T細胞およびNK細胞を含む様々な免疫サブセットの腫瘍への流入を媒介することができる。CD4+T細胞は、抗腫瘍CD8+T細胞応答のプライミングのために樹状細胞(DC)をライセンス化することができ、IFNγを介したMHCの上方制御と成長阻害によって腫瘍細胞に直接作用することができる。CD8+およびCD4+腫瘍特異的T細胞応答は、ワクチン接種によって誘導することができる。mRNAに基づくワクチンプラットフォームの文脈において、mRNAは、さらなるアジュバントを必要とせずに、リポソーム製剤(RNA-LPX)によって二次リンパ器官に位置する抗原提示細胞に送達され得る(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))。
【0003】
腫瘍は、PD-L1の上方制御またはPD-L1を発現する免疫細胞の誘引によってT細胞媒介攻撃を回避することが公知である。T細胞上のPD-L1とPD-1の相互作用は、それらの抗腫瘍機能を阻害する。PD-1/PD-L1軸をブロックする抗体は、既存のT細胞応答の可能性増加と相関する高い変異負荷を有する患者のサブセットにおいて強力な腫瘍制御を誘導することが示された(Rizvi,N.A.et al.Science 348,124-128(2015))。
【0004】
したがって、T細胞ワクチンは、T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント遮断を介した再活性化から恩恵を受ける可能性がある。一方、チェックポイント遮断は、既存のT細胞応答がない患者でT細胞ワクチンから恩恵を受ける可能性がある。mRNAワクチン接種と抗PD-L1チェックポイント遮断の組合せは、現在臨床試験中である(RO7198457)。
【0005】
サイトカインは免疫において重要な役割を果たす。例えば、インターロイキン‐2(IL2)は、T細胞の分化、増殖、生存およびエフェクタ機能を支持することが公知である(Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003))。例えば、組換えIL2は、後期悪性黒色腫の治療において数十年間使用されてきた(Maas,R.A.,Dullens,H.F.&Den Otter,W.Cancer Immunol.Immunother.36,141-8(1993))。インターロイキン-7(IL7)は、T細胞およびB細胞のリンパ球生成および生存ならびに記憶T細胞形成において重要な役割を果たすことが示されている(Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-1198(2003);Fry,T.J.&Mackall,C.L.Blood 99,3892-3904(2002);Palmer,M.J.et al.Cell.Mol.Immunol.5,79-89(2008))。これらのサイトカインは、単独では効果のない癌治療法である。しかし、癌ワクチンおよび免疫チェックポイント遮断などの免疫療法にサイトカインを追加すると、優れた抗腫瘍効果につながるT細胞応答をさらに増強することが約束される。
【0006】
樹状細胞(DC)およびT細胞などの細胞成分と、サイトカインおよびケモカインなどの可溶性成分との間の複雑な相互作用が、免疫がどちらかと言えば炎症誘発性であるかまたは主に寛容原性であるかを制御する。したがって、関心対象の細胞に対するそれらの活性を制限し、毒性作用を防ぐために、サイトカイン発現の厳しい時空間的調節が存在する。インターロイキン-12(IL12)などのいくつかのサイトカインは、リンパ節または脾臓でのTh1 T細胞応答のプライミング中に決定的に必要(すなわち癌/ウイルス免疫にとって重要)であるが、全身投与した場合は好ましくないか、さらには毒性が高い(Lasek,W.,Zagozdzon,R.&Jakobisiak,M.Cancer Immunol.Immunother.63,419-35(2014))。IL7のような他のサイトカインは、血液および組織におけるT細胞の維持のために全身的に必要である(Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-8(2003);Fry,T.J.&Mackall,C.L.Blood 99,3892-3904(2002);Palmer,M.J.et al.Cell.Mol.Immunol.5,79-89(2008))。IL2などの他のサイトカインもやはり、T細胞のプライミング中だけでなく、血液および組織における維持の間、または癌免疫の場合は、腫瘍中のT細胞のエフェクタ機能中にも二次リンパ器官で必要である(Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015)
【非特許文献2】Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)
【非特許文献3】Rizvi,N.A.et al.Science 348,124-128(2015)
【非特許文献4】Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003)
【非特許文献5】Maas,R.A.,Dullens,H.F.& Den Otter,W.Cancer Immunol.Immunother.36,141-8(1993)
【非特許文献6】Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-1198(2003)
【非特許文献7】Fry,T.J.& Mackall,C.L.Blood 99,3892-3904(2002)
【非特許文献8】Palmer,M.J.et al.Cell.Mol.Immunol.5,79-89(2008)
【非特許文献9】Lasek,W.,Zagozdzon,R.& Jakobisiak,M.Cancer Immunol.Immunother.63,419-35(2014)
【非特許文献10】Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-8(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
癌ワクチンは、腫瘍細胞によって発現される抗原に対する免疫系を刺激するために使用することができる。これらの治療法は有望な結果を示しているが、その有効性は依然として限られている。
【0009】
ワクチン、特に癌ワクチンの有効性を高めるための新規戦略が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、ワクチン接種に使用されるペプチドまたはタンパク質をコードするRNA(抗原をコードするRNA)の有効性が、薬物動態修飾基に結合したIL2をコードするRNA(以下、「延長薬物動態(PK)IL2と称する)および/または薬物動態修飾基に結合したIL7をコードするRNA(以下、「延長薬物動態(PK)IL7」と称する)を同時投与することによって増加され得ることを見出した。ワクチンは、延長PK IL2をコードするRNAおよび/または延長PK IL7をコードするRNAが、全身アベイラビリティのために肝臓を標的とする場合に特に有効である。肝細胞は効率的にトランスフェクトすることができ、大量のタンパク質を生産できる。抗原をコードするmRNAは、好ましくは二次リンパ器官を標的とする。さらに、ワクチンは、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤がさらに投与される場合に特に有効である。
【0011】
一態様では、本発明は、対象において免疫応答を誘導するための方法であって、対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法に関する。
【0012】
一実施形態では、延長PK IL2は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL2部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0013】
一実施形態では、延長PK IL7は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL7部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0014】
一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0015】
一実施形態では、方法は、対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0017】
一実施形態では、延長PK IL2をコードするRNAおよび/または延長PK IL7をコードするRNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、ならびに任意で免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する。
【0018】
一実施形態では、方法は、対象に、
a.延長PK IL2をコードするRNAおよび任意で延長PK IL7をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;ならびに
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0019】
一実施形態では、方法は、対象に、
a.延長PK IL7をコードするRNAおよび任意で延長PK IL2をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;ならびに
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0020】
一実施形態では、方法は、対象に、
a-1.延長PK IL2をコードするRNA;
a-2.延長PK IL7をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;および
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0021】
一実施形態では、治療は、抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる。一実施形態では、治療は、短命なエフェクタ細胞の数を減少させる。一実施形態では、治療は、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる。
【0022】
一実施形態では、方法は、対象における癌を治療または予防するための方法であり、ここで抗原は腫瘍関連抗原である。一実施形態では、腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、対象における癌を治療または予防するための方法であって、対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法に関する。
【0024】
一実施形態では、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0025】
対象における癌を治療または予防するための方法の実施形態は、対象において免疫応答を誘導するための方法について上述したとおりである。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を含む医薬製剤に関する。
【0027】
一実施形態では、延長PK IL2は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL2部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0028】
一実施形態では、延長PK IL7は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL7部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0029】
一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0030】
一実施形態では、医薬製剤は、
c.免疫チェックポイント阻害剤
をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0032】
一実施形態では、医薬製剤は、
a.延長PK IL2をコードするRNAおよび/または延長PK IL7をコードするRNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;ならびに
c.免疫チェックポイント阻害剤
を含む。
【0033】
一実施形態では、医薬製剤は、
a-1.延長PK IL2をコードするRNA;
a-2.延長PK IL7をコードするRNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;および
c.免疫チェックポイント阻害剤
を含む。
【0034】
一実施形態では、医薬製剤はキットである。一実施形態では、医薬製剤は、各RNAを別々の容器に含む。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、RNAを含まない容器内にある。一実施形態では、医薬製剤は、癌を治療または予防するための医薬製剤の使用説明書をさらに含み、ここで抗原は腫瘍関連抗原である。
【0035】
一実施形態では、医薬製剤は、RNAを含む医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
【0036】
医薬製剤の一実施形態では、RNAは、液体形態、固体形態、またはそれらの組合せから選択される形態で存在する。一実施形態では、固体形態は、凍結形態または脱水形態である。一実施形態では、脱水形態は、凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態である。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、医薬用途のための本明細書に記載の医薬製剤に関する。一実施形態では、医薬用途は、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための本明細書に記載の医薬製剤に関し、ここで抗原は腫瘍関連抗原である。
【0039】
一実施形態では、本明細書に記載の癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0040】
一実施形態では、医薬製剤は、腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を含まない。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、対象において免疫応答を誘導するための方法で使用するためのRNAに関し、この方法は、対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む。
【0042】
一実施形態では、延長PK IL2は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL2部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0043】
一実施形態では、延長PK IL7は融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、IL7部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。
【0044】
一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0045】
RNAの一実施形態では、方法は、対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む。
【0046】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0047】
一実施形態では、延長PK IL2をコードするRNAおよび/または延長PK IL7をコードするRNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、ならびに任意で免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する。
【0048】
RNAの一実施形態では、方法は、対象に、
a.延長PK IL2をコードするRNAおよび任意で延長PK IL7をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;ならびに
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0049】
RNAの一実施形態では、方法は、対象に、
a.延長PK IL7をコードするRNAおよび任意で延長PK IL2をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;ならびに
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0050】
RNAの一実施形態では、方法は、対象に、
a-1.延長PK IL2をコードするRNA;
a-2.延長PK IL7をコードするRNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA;および
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む。
【0051】
RNAの一実施形態では、治療は、抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる。RNAの一実施形態では、治療は、短命なエフェクタ細胞の数を減少させる。RNAの一実施形態では、治療は、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる。
【0052】
RNAの一実施形態では、方法は、対象における癌を治療または予防するための方法であり、ここで抗原は腫瘍関連抗原である。一実施形態では、腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない。
【0053】
さらなる態様では、本発明は、対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するためのRNAに関する。
【0054】
一実施形態では、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0055】
一実施形態では、RNAは、前記方法で投与されるRNAの1つ以上であるか、またはそれを含む。一実施形態では、RNAは、延長PK IL2をコードするRNA、延長PK IL7をコードするRNA、および前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードするRNAからなる群より選択される1つ以上であるか、またはそれを含む。一実施形態では、RNAは、延長PK IL2をコードするRNAであるか、またはそれを含む。一実施形態では、RNAは、延長PK IL7をコードするRNAであるか、またはそれを含む。一実施形態では、RNAは、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードするRNAであるか、またはそれを含む。
【0056】
一実施形態では、RNAは、
a.延長PK IL2をコードするRNAおよび/もしくは延長PK IL7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードするRNA
であるか、またはそれを含む。
【0057】
一実施形態では、RNAは、
a-1.延長PK IL2をコードするRNA;
a-2.延長PK IL7をコードするRNA;および
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードするRNA
であるか、またはそれを含む。
【0058】
本明細書に記載されるすべての態様の一実施形態では、延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAは、コードされるタンパク質の発現のために肝臓に送達される、および/または肝臓への送達用に製剤化される。本明細書に記載されるすべての態様の一実施形態では、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、コードされるタンパク質の発現のためにリンパ系に送達される、および/またはリンパ系への送達用に製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】mIL2をコードする構築物の検証。 A mIL2をコードする構築物の発現後のHEK-293T-17上清のELISA分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAで、またはmRNAなしで(モック)リポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、ELISA分析に使用した。 B mIL2をコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗mIL2抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C mIL2をコードする構築物の生物学的活性を分析するためのCTLL-2増殖アッセイ。CTLL-2細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAの24時間の発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下で72時間培養した。組換えIL2の存在下でのCTLL-2増殖を対照として使用した。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。Rec.IL2:組換えインターロイキン-2、mAlb:マウス血清アルブミン、mIL2:マウスインターロイキン-2、mIFNβ:マウスインターフェロンβ、rec:組換え体。
図2】mIL15sushiをコードする構築物の検証。 A mIL15sushiをコードする構築物の発現後のHEK-293T-17上清のELISA分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAで、またはmRNAなしで(モック)リポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、ELISA分析に使用した。 B mIL15sushiをコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗mIL15抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C mIL15sushiをコードする構築物の生物学的活性を分析するためのCTLL-2増殖アッセイ。CTLL-2細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAの24時間の発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下で72時間培養した。組換えhIL15sushiの存在下でのCTLL-2増殖を陽性対照として使用した。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。Rec hIL15sushi:インターロイキン-15受容体αに融合した組換えヒトIL15、mAlbまたはMmAlb:マウス血清アルブミン、mIL15sushiまたはMmIL15sushi:インターロイキン-15受容体αに融合したマウスインターロイキン-15。
図3】mIL7をコードする構築物の検証。 A mIL7をコードする構築物の発現後のHEK-293T-17上清のELISA分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAで、またはmRNAなしで(モック)リポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、ELISA分析に使用した。 B mIL7をコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗mIL7抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C mIL7をコードする構築物の生物学的活性を分析するためのT細胞増殖アッセイ。2人の異なるドナー(ドナーNo.59 上のパネル、ドナーNo.800 下のパネル)のPBMC細胞を抗CD3抗体(ドナーNo.59 0.05μg/ml、ドナーNo.800 0.1μg/ml)で活性化し、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色し、示されているタンパク質をコードするmRNAの24時間の発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下で96時間培養した。組換えIL7の存在下でのT細胞増殖を陽性対照として使用した。T細胞の増殖を、抗CD4-PEおよび抗CD8-PE-Cy7染色後にフローサイトメトリを使用したCFSEモニタリングによって分析した。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。Rec IL7:組換えインターロイキン-7、mAlbまたはMmAlb:マウス血清アルブミン、mIL7またはMmIL7:マウスインターロイキン-7。
図4】mIFNβおよびsec-nLUCをコードする構築物の検証。 A mIFNβをコードする構築物の発現後のHEK-293T-17上清のELISA分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAで、またはmRNAなしで(モック)リポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、ELISA分析に使用した。 B mIFNβをコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗mIFNβ抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C mIFNβをコードする構築物の生物学的活性を評価するために、得られたmRNAの能力を、マウス結腸癌細胞(CT26)におけるMHCクラスI発現のmIFNβ依存性上方制御によって分析した。CT26細胞を、mIFNβをコードするmRNAの24時間の発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下で24時間培養した。組換えIFNβを対照として使用した。処理後のCT26細胞上のMHCクラスIの表面レベルを、FITC結合H2Kb抗体によるMHCクラスI染色およびその後のフローサイトメトリ分析によって評価した。 D sec-nLUCをコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17の上清中で、sec-nLUCの発現および得られた遺伝子産物のルシフェラーゼ活性を測定した。示されているタンパク質をコードするmRNAの発現後の上清中のルシフェラーゼ活性をプロットしている。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。Rec IFNβ:組換えインターフェロンβ、mAlb:マウス血清アルブミン、mIFNβ:マウスインターフェロンβ、mIL2:マウスインターロイキン-2、sec-nLUC:分泌型ナノルシフェラーゼ。
図5】mAlbに融合され、ヌクレオシド修飾mRNAにコードされた場合、サイトカインの全身アベイラビリティが延長される。 C57BL/6マウス(群および時点あたりn=3)に、TransITを用いて製剤化した3μgの未改変またはmAlb融合タンパク質をコードするmRNA(示されているとおり)を静脈内注射した。注射後6、24および48時間目ならびに5日目に血液を採取し、血清を調製した。注射後6、24および48時間目ならびに5日目に血液中でサイトカイン濃度を測定した。平均±s.e.m.。mAlb:マウス血清アルブミン、mIL2:マウスインターロイキン-2、mIFNβ:マウスインターフェロンβ。
図6】mAlb-mIL2は脾臓の免疫細胞サブセットを拡大する。 mRNAの注射後5日目に、図5に記載されているように処置したC57BL/6マウスから脾臓を単離し、免疫細胞サブセットの絶対細胞数をフローサイトメトリによって測定した。脾臓あたりのT細胞サブセット、B細胞およびNK細胞の絶対細胞数(A)、ならびに脾臓重量(B)を示す。一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した(表1参照)。平均±s.e.m.。
図7】mIFNβ-mAlbは脾臓の免疫細胞サブセットを活性化する。 mRNA注射の24時間後に、図5に記載されているように処置したC57BL/6マウスから脾臓を単離し、免疫細胞サブセットの活性化状態(CD40、CD69およびCD86発現)をフローサイトメトリによって測定した。中央値蛍光強度(MFI)を示す。一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した(表2参照)。平均±s.e.m.。
図8】mAlb融合は、血液、腫瘍および腫瘍排出リンパ節におけるタンパク質のアベイラビリティを高め、延長する。 BALB/cマウス(群および時点あたりn=3匹のマウス)に、100μlのPBS中の5×10 CT26腫瘍細胞を皮下接種し、24日目にTransITを用いて製剤化した3μgのsec-nLUC、mAlbに融合したsec-nLUC(sec-nLUC-mAlb)を静脈内注射するか、または未処理のまま(対照)にした。注射後2、6、24、48および72時間目に血清を調製し、6、24、48および72時間目に組織を採取した。生物発光強度を、50μlの血清または組織溶解物に由来する30μgの総タンパク質から定量化した。対照群から得たデータを、時点0でのベースラインとして使用した。平均±s.e.m.。
図9】mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、mRNAワクチン接種およびPD-L1遮断の腫瘍制御を強力に増強する。 BALB/cマウス(群あたりn=8)に、100μl PBS中の5×10 CT26-WT腫瘍細胞を皮下注射した。10日後、マウスをgp70 mRNAリポプレックスワクチン接種(20μg i.v.)および抗PD-L1ブロッキング抗体(最初の処置時に200μg i.p.、その後100μg i.p.)で処置した。2日後、様々なサイトカイン(図に示されている)をコードする1μgのヌクレオシド修飾mRNAを、肝臓を標的とするナノ粒子製剤中で静脈内注射した。対照として、マウスアルブミン(mAlb)RNAを投与した。上のパネルに示すように、処置スケジュールを毎週繰り返した。個々のマウスの成長曲線を示す。mIL2:マウスインターロイキン-2、mIFNβ:マウスインターフェロンβ、mIL7:マウスインターロイキン-7、mIL15sushi:インターロイキン-15受容体αに融合したマウスインターロイキン-15。
図10】mAlb-mIL2は、ワクチンが誘導するT細胞応答を容易に増加させる。 図9に示したCT26-WT腫瘍担持マウスを、最初の処置の7日後(腫瘍接種後17日目)の血液中のgp70 AH1四量体+CD8+T細胞についてフローサイトメトリによって分析した。血液1μlあたりの絶対数(左)およびCD8+T細胞中の四量体+細胞の割合(右)を示す。一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m.。
図11】mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、抗原特異的T細胞の高い力価を維持する。 図9で紹介したマウスの腫瘍接種後17、24および31日目の血液1μlあたりのgp70 AH1四量体+CD8+細胞の数を示す。平均±s.e.m.。
図12】mAlb-mIL2は主に腫瘍抗原特異的T細胞を拡大する。 最初の処置の7日後の、図9で紹介したmAlb処置対照動物のCD8+四量体陽性またはCD8+四量体陰性T細胞数の中央値に対する倍数増加を示す。一元配置分散分析とそれに続くSidakの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m.。
図13A】腫瘍サイズは腫瘍抗原特異的T細胞力価と逆相関する。 図9で紹介したマウスからの血液1μlあたりの四量体陽性細胞の数を、17日目(A)、24日目(B)および31日目(C)の腫瘍サイズに対してプロットしている。Spearmanの順位相関係数に基づいて有意性を決定した。
図13B】腫瘍サイズは腫瘍抗原特異的T細胞力価と逆相関する。 図9で紹介したマウスからの血液1μlあたりの四量体陽性細胞の数を、17日目(A)、24日目(B)および31日目(C)の腫瘍サイズに対してプロットしている。Spearmanの順位相関係数に基づいて有意性を決定した。
図13C】腫瘍サイズは腫瘍抗原特異的T細胞力価と逆相関する。 図9で紹介したマウスからの血液1μlあたりの四量体陽性細胞の数を、17日目(A)、24日目(B)および31日目(C)の腫瘍サイズに対してプロットしている。Spearmanの順位相関係数に基づいて有意性を決定した。
図14】IL7-mAlbは、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の割合を減少させつつ、CD4+T細胞数を強力に増加させる。 フローサイトメトリによるCD4+(絶対数)およびCD4+CD25+FoxP3+(CD4+T細胞の割合)T細胞の定量化。マウス(図9で紹介した)の血液を、腫瘍接種後31日目に分析した。一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して有意性を決定した。平均±s.e.m.。
図15】mIL7-mAlbおよびmAlb-mIL2は、長命のCD127+記憶前駆細胞のために短命の抗原特異的エフェクタ細胞の割合を減少させる。 腫瘍接種の31日後に、図9で紹介したマウスの血液を、短命エフェクタ細胞(SLEC、KLRG1+/CD127-)およびCD127+細胞(記憶前駆体エフェクタ細胞;MPEC、KLRG1-/CD127+)(KLRG1+/CD127+)のマーカについて分析した。CD127:インターロイキン7受容体、KLRG-1:キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーGメンバー1。二元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定は、mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbによるSLECの有意な減少とCD127+細胞の増加を明らかにした(表3参照)。
図16A】短命のエフェクタ細胞の頻度は腫瘍体積と正の相関があり、一方高いCD127+抗原特異的T細胞の頻度は腫瘍サイズの縮小に付随する。 gp70 AH1四量体+CD8+細胞のうちのSLEC(A)またはCD127+(B)細胞の割合を、図9で紹介したマウスの31日目の腫瘍サイズに対してプロットしている。Spearmanの順位相関係数に基づいて有意性を決定した。
図16B】短命のエフェクタ細胞の頻度は腫瘍体積と正の相関があり、一方高いCD127+抗原特異的T細胞の頻度は腫瘍サイズの縮小に付随する。 gp70 AH1四量体+CD8+細胞のうちのSLEC(A)またはCD127+(B)細胞の割合を、図9で紹介したマウスの31日目の腫瘍サイズに対してプロットしている。Spearmanの順位相関係数に基づいて有意性を決定した。
図17】mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbとmRNAワクチン接種およびPD-L1遮断との組合せは、完全な腫瘍根絶をもたらす。 CT26-WT腫瘍担持マウス(n=11)を図9に記載されているように処置した。マウスに、gp70 RNA-LPXおよび抗PD-L1ブロッキング抗体の注射を毎週行った。2日後、mAlb-mIL2、mIL7-mAlbまたはその両方(各1μg)をコードするヌクレオシド修飾mRNAを投与した。腫瘍接種後13日目に処置を開始した(上のパネル参照)。個々のマウスの成長曲線を示す。
図18A】mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、長期持続性ワクチンが誘導するT細胞応答の増強において相乗作用する。 図17に示すマウスの血液を、腫瘍接種後19、27および34日目にフローサイトメトリによってgp70 AH1四量体+CD8+T細胞(A)ならびにそれらのKLRG1およびCD127(B)の発現について分析した。平均±s.e.m.。
図18B】mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、長期持続性ワクチンが誘導するT細胞応答の増強において相乗作用する。 図17に示すマウスの血液を、腫瘍接種後19、27および34日目にフローサイトメトリによってgp70 AH1四量体+CD8+T細胞(A)ならびにそれらのKLRG1およびCD127(B)の発現について分析した。平均±s.e.m.。
図19】mIL7-mAlbは、mALb-mIL2によって増加した腫瘍促進性制御性T細胞の数を正常化する。 腫瘍接種後57日目に、図17に示した残りのマウスを、血液中のCD4+T細胞のうちのCD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の割合について分析した。一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して有意性を決定した。平均±s.e.m.。
図20】mIL12をコードする構築物の検証。 mIL12をコードするmRNAの生物学的活性を分析するためのHEK-Blue IL12ルシフェラーゼアッセイ。HEK-Blue IL12細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAの24時間の発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下で24時間培養した。組換えヒトIL12を対照として使用した。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。Rec hIL12:組換えヒトインターロイキン-12、mAlb:マウス血清アルブミン、mIL12:マウスインターロイキン-12、SEAP:分泌型胚性アルカリホスファターゼ。
図21AB】二次リンパ器官におけるDCに限定されたmRNAにコードされるタンパク質の発現。 A BALB/cマウス(群あたりn=5)に、20μgのLUCをコードするRNA-LPXまたはLUC mRNA単独を静脈内注射し、インビボイメージングによって注射の6時間後に生物発光を測定した。 B 鼠径部リンパ節および骨を、100μgのLUC RNA-LPXまたはLUC mRNA単独の注射の24時間後にBALB/cマウス(群あたりn=5)から単離し、エクスビボイメージングによって生物発光を定量化した。
図21C】CD11c-DTRマウス(群あたりn=3)に、100μgのLUC RNA-LPXの注射の12時間前に4ng/g体重のDTを腹腔内投与し、インビボで脾臓および鼠径部リンパ節の生物発光を定量化し、注射の6時間後にエクスビボLUCアッセイによって骨髄単細胞懸濁液の生物発光を定量化した。未処置の器官または細胞のバックグラウンド生物発光について補正したデータ。平均±SD。DT:ジフテリア毒素;LUC:ルシフェラーゼ;BM:骨髄;LN:リンパ節。Lena Kranzの許可を得て(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))から部分的に導出されたデータ。
図22】肝臓に限定されたmRNAにコードされるタンパク質の発現。 BALB/cマウスに、5μgのポリマー/脂質製剤化LUC mRNA(n=3)またはポリマー/脂質(TransIT)単独(n=2)を静脈内注射し、インビボイメージングによって注射後の示されている時点で生物発光を測定した。LUC:ルシフェラーゼ。Katalin Karikoの許可を得て(Stadler,C.et al Nat Med 23(7):815-817(2017))から導出されたデータ。
図23】二次リンパ器官を標的とする、mIL15をコードするmRNAの毒性を伴わない高い有効性。 BALB/cマウス(群あたりn=5)に、200μl PBS 中の4×10 CT26-B2MKO腫瘍細胞(表面に機能的MHCクラスIを欠くCT26細胞)を静脈内注射した。4日後および7日後、全身アベイラビリティのために、RNA-LPXによって二次リンパ器官(40μg)または肝臓(3μg i.v.)のいずれかに送達されるmIL15 mRNAでマウスを処置した。対照として、同じ量の無関係なmRNAをコードするLUCおよびPBSを使用した。腫瘍接種の12日後、肺を採取し、腫瘍結節を数えた。肝臓を標的とする(全身性)mIL15 mRNAを投与されたすべてのマウスは、2回目の処置で死亡し、分析することができなかった(n.d.、未決定)。mIL15:マウスIL15受容体αに融合したマウスIL15。
図24】生理学的機能に従って標的とされるIL12とIL2の組合せは、腫瘍特異的T細胞療法および治療効果を増強する。 C57BL/6マウス(群あたりn=11)に3×10のB16F10黒色腫細胞を接種した。腫瘍接種の8日後、マウスを腫瘍サイズに従って層別化し、10μgの分化抗原チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2180-188)および10μgのMHCクラスII拘束性ネオ抗原B16_M30を含むRNA-LPXベースのT細胞ワクチンi.v.、または無関係なmRNA(20μgの挿入物のないワクチン骨格)のいずれかを投与した。すべてのマウスに200μl PBS 中の200μg(100μgでの連続処置)の抗PD-L1抗体(クローン6E11、mIgG2A、L234A、L235A、P329G;Genentech)を腹腔内投与した。マウスに、RNA-LPXとして送達される(二次リンパ器官に送達)3μg(4回目の処置からは1μg)のmIL12 mRNAまたは無関係なmRNAを静脈内に同時注射した。およそ48時間後、mIL2-mAlbをコードする1μgのmRNA、またはTransITを用いて製剤化した1μgのmAlb対照(全身アベイラビリティのために肝臓に送達)を静脈内注射した。処置スケジュールを週に1回、7週間繰り返した。マウスの生存率(A)、ならびに抗PD-L1抗体およびmIL12をmAlb-mIL2、mIL12単独またはmAlb-mIL2単独と組み合わせたmRNAワクチンによる処置に応答して目の周りに白斑の徴候を示した代表的なマウス(B)を示す。
図25】二次リンパ器官ではなく肝臓を標的とするmAlb-mIL2は、ワクチンが誘導するT細胞応答を容易に増加させる。 BALB/cマウス(n=5)を、0日目と7日目にgp70 RNA-LPXワクチン接種(20μg iv)および抗PD-L1ブロッキング抗体(100μg ip)で処置し、2日後にTransIT中で(mAlb-mIL2(TransIT))またはリポプレックスとして((mAlb-mIL2(RNA-LPX)))mAIb-mIL2をコードする1μgのmRNAを投与した。7日目および14日目に、gp70 AH1四量体CD8T細胞についてフローサイトメトリによって血液を分析した。一元配置分散分析とそれに続くTukeyの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m.。
図26】hIL2をコードする構築物の検証。 A ELISAによるhIL2構築物のヒトIL2受容体α(CD25)への結合。プレート結合組換えヒトCD25を、HEK-293T-17における3μgのhIL2コードmRNAのリポフェクションからのhIL2含有上清と共にインキュベートし、結合タンパク質をHRP結合抗ヒト血清アルブミン抗体によって検出した。示されているデータは、n=2の技術的複製物の平均±SDである。 B hIL2をコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗hIL2抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C hIL2構築物の生物学的活性を測定するCTLL-2増殖アッセイ。CD25highマウスT細胞株CTLL-2を、hIL2含有上清の段階希釈液と共に72時間インキュベートし、CellTiter-Glo(登録商標)2.0アッセイを使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。hAlbをコードするmRNAでリポフェクトしたHEK-293T-17細胞の上清を陰性対照として使用した。示されているデータは、n=2の技術的複製物の平均±SDである。RLU=相対発光単位。 D ヒトCD4+およびCD8+T細胞におけるhIL2構築物の生物学的活性。CFSE標識ヒトPBMCを、準最適濃度の抗CD3抗体およびhIL2含有上清の段階希釈液と共に4日間インキュベートした。hAlbをコードするmRNAでリポフェクトしたHEK-293T-17細胞の上清を陰性対照として使用した。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の抗原非特異的増殖のhIL2を介した増強をフローサイトメトリによって測定した。1人の代表的なドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを使用して計算した分裂細胞%の平均値として示す。エラーバー(SD)は実験内の変動を示す(3つの複製物)。
図27】hIL7をコードする構築物の検証。 A mRNAにコードされたhIL7構築物の発現。HEK-293T-17細胞を3μgのmRNA(Lipofectamine MessengerMAX 1μLあたり400ng mRNA複合体)でリポフェクトした。20時間のインキュベーション後、無細胞上清中のhIL7レベルをELISAによって測定した。示されているデータは、n=2~3の複製物の平均±SDである。 B hIL7をコードするmRNAの24時間の発現後のHEK-293T-17上清のウェスタンブロット分析。HEK-293T-17細胞を、示されているタンパク質をコードするmRNAでリポフェクトし、24時間の発現後に上清を採取し、抗hIL7抗体を用いたウェスタンブロット分析に使用した。 C ヒトCD4+およびCD8+T細胞におけるhIL7構築物の生物学的活性。CFSE標識ヒトPBMCを、準最適濃度の抗CD3抗体およびhIL7含有上清の段階希釈液と共に4日間インキュベートした。hAlbをコードするmRNAでリポフェクトしたHEK-293T-17細胞の上清を陰性対照として含め、組換えhIL-7タンパク質を陽性対照として含めた。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の抗原非特異的増殖のhIL7を介した増強をフローサイトメトリによって測定した。1人の代表的なドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを使用して計算した分裂細胞%の平均値として示す。エラーバー(SD)は実験内の変動を示す(3つの複製物)。
図28】活性タンパク質内のサイトカインおよびアルブミン部分のそれぞれの順序は、インビボでの安定性、薬物動態プロフィールまたは機能のいずれにも影響を及ぼさない。 BALB/cマウス(群および時点あたりn=3)に、1μgのhAlbのN末端(hIL2-hAlb)もしくはC末端(hAlb-hIL2)に融合したhIL2またはTransIT i.v.を用いて製剤化したhAlbをコードする対照mRNAを静脈内注射した。 A サイトカインレベルを、hIL2シングルプレックスアッセイによって注射の6、24、48および72時間後に血清中で測定した。 B 絶対Tリンパ球数を、フローサイトメトリによって注射の96時間後に脾臓で測定した。平均±s.e.m.。
図29A】mRNAワクチン接種とhAlb-hIL2およびhIL7-hAlbの組合せによる腫瘍拒絶。 BALB/cマウス(群あたりn=11)に、100μlのPBS中の5x×10 CT26-WT腫瘍細胞を皮下注射した。10日後、マウスを、gp70 RNA-LPX(20μg i.v.)、および脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化し、静脈内注射した3μgのhAlb-hIL2、hIL7-hAlbまたはこの2つの組合せで処理した(肝臓標的化)。対照として、hAlb RNAを投与した。上のパネルに示すように、処置スケジュールを毎週繰り返した。 A 個々のマウスの成長曲線を示す。
図29B】処置群の生存率パーセントを示す。
図30】hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2とhIL7-hAlbの組合せは、抗原非特異的CD8+T細胞応答よりもワクチン誘導性の抗原特異的CD8+T細胞応答を増強する。 実施例21に記載されるCT26腫瘍担持マウスを、3回の連続処置のそれぞれ7日後(腫瘍接種後17、24および31日目)の血液中のgp70 AH1四量体+CD8+T細胞についてフローサイトメトリによって分析した。 A 最初のワクチン接種後の腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の絶対数(左)、およびCD8+T細胞のうちのその割合(右)を示す。 B 経時的な各ワクチン接種後の腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の絶対数を示す。 C 経時的な各ワクチン接種後の腫瘍抗原非特異的CD8+T細胞の絶対数を示す。 D 最初の処置の7日後のhAlb処置した対照動物の抗原特異的または非特異的CD8+T細胞数の中央値に対する倍数増加を示す。一元配置分散分析(A)または二元配置分散分析(B)とそれに続くDunnettの多重比較検定、および二元配置分散分析とそれに続くSidakの多重比較検定(C、D)を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m。
図31】hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbは、経時的にT reg細胞レベルを制御する。 実施例21に記載されるCT26腫瘍担持マウスを、3回の連続処置のそれぞれ7日後(腫瘍接種後17、24および31日目)の血液中のTreg細胞についてフローサイトメトリによって分析した。 A 最初のワクチン接種後のCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞の絶対数(左)、およびCD4+T細胞のうちのその割合(右)を示す。 B 経時的な各ワクチン接種後のCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞の絶対数。一元配置分散分析(A)または二元配置分散分析(B)とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m。
図32】hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbはどちらもTreg細胞よりもCD8+T細胞を拡大する。 実施例21に記載し、実施例22および23で分析するCT26腫瘍担持マウスからのTreg細胞(B)に対する腫瘍抗原特異的(A)または非特異的CD8+T細胞の絶対数の比率を示す。二元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して統計的有意性を決定した。平均±s.e.m。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示を以下で詳細に説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0061】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0062】
本開示の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0063】
以下において、本開示の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および実施形態は、本開示を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素と組み合わせた実施形態を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、この説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0064】
「約」という用語はおよそまたはほぼを意味し、本明細書に記載の数値または範囲の文脈において、一実施形態では、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%、または±3%を意味する。
【0065】
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個々に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をより良く説明することを意図しており、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に必須の特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0066】
特に明記されない限り、「含む」という用語は、「含む」によって導入されたリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意に存在し得ることを示すために本文書の文脈で使用される。しかし、「含む」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが本開示の特定の実施形態として企図され、すなわちこの実施形態の目的のためには、「含む」は「からなる」の意味を有すると理解されるべきである。
【0067】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有さなかったことの承認と解釈されるべきではない。
【0068】
以下において、本開示のすべての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。未定義の用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
【0069】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、約2以上、約3以上、約4以上、約6以上、約8以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上、および最大約50、約100または約150までの、ペプチド結合によって互いに連結された連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約151アミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では通常同義語として使用される。
【0070】
「治療用タンパク質」は、治療有効量で対象に提供された場合、対象の状態または病状に対してプラスのまたは有利な作用を及ぼす。一実施形態では、治療用タンパク質は治癒的または緩和的特性を有し、疾患または障害の1つ以上の症状の重症度を改善する、緩和する、和らげる、逆転させる、発症を遅延させる、または重症度を軽減するために投与され得る。治療用タンパク質は予防特性を有し、疾患の発症を遅延させるため、またはそのような疾患もしくは病的状態の重症度を軽減するために使用され得る。「治療用タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチド全体を含み、治療的に活性なその断片を指すこともできる。それはまた、タンパク質の治療的に活性な変異体を含み得る。治療的に活性なタンパク質の例には、サイトカインが含まれるが、これに限定されない。
【0071】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えばオープンリーディングフレームの3'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始させるように働く開始コドンを含む限り、例えばオープンリーディングフレームの5'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えばアミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0072】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、すべてのスプライス変異体、翻訳後修飾変異体、コンフォメーション変異体、アイソフォーム変異体および種ホモログ、特に細胞によって天然に発現されるものを含む。
【0073】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。
【0074】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸について与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最適な配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0075】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0076】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことが意図されており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違はそれらの全長にわたってランダムに分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手動のほかに、Smith and Waterman,1981,Ads AppMath.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0077】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0078】
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98、または少なくとも99%の同一性を示す。
【0079】
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、当業者によって、例えば組換えDNA操作によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
【0080】
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片または変異体は、好ましくは「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価の任意の断片または変異体に関する。サイトカインに関して、1つの特定の機能は、断片もしくは変異体が由来するアミノ酸配列によって、および/または断片もしくは変異体が由来するアミノ酸配列が結合する受容体(1つまたは複数)への結合によって示される1つ以上の免疫調節活性である。
【0081】
指定されたアミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。例えば、本明細書での使用に適したサイトカイン(例えばIL2またはIL7)は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在するまたは天然の配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0082】
本開示において、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基のすべてまたは大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されることなく、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端(1つまたは複数)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書ではまた、RNA中のヌクレオチドは、化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることが企図される。本開示では、これらの改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体とみなされる。
【0083】
本開示の特定の実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは一般に、5'非翻訳領域(5'-UTR)、ペプチドコード領域および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。一実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写によって生成され、ここで、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を指す。
【0084】
一実施形態では、RNAはインビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0085】
一実施形態では、RNAは修飾リボヌクレオチドを有し得る。修飾リボヌクレオチドの例には、限定されることなく、5-メチルシチジン、プソイドウリジンおよび/または1-メチルプソイドウリジンが含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは5'キャップを含む。一実施形態では、本開示のRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。一実施形態では、RNAは5'キャップ類似体によって修飾され得る。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められる構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、5'キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写によって達成され得るか、またはキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに付加され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5'-UTRおよび/または3'-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5'側(上流)(5'-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3'側(下流)(3'-UTR)に存在し得る。5'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の、5'末端に位置する。5'-UTRは5'キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5'キャップに直接隣接している。3'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終結コドンの下流の、3'末端に位置するが、「3'-UTR」という用語は、好ましくはポリ(A)尾部を含まない。したがって、3'-UTRはポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)配列に直接隣接している。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは3'-ポリ(A)配列を含む。「ポリ(A)配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関する。本開示によれば、一実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約80、または少なくとも約100、および最大約500、最大約400、最大約300、最大約200、または最大約150個までのAヌクレオチド、特に約120個のAヌクレオチドを含む。
【0089】
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
【0090】
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖が、ペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列の集合体に指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0091】
本開示によれば、「RNAがコードする」という用語は、RNAが、標的組織の細胞内などの適切な環境に存在する場合、翻訳過程中にそれがコードするペプチドまたはタンパク質を産生するようにアミノ酸の集合体に指令できることを意味する。一実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。細胞は、コードされたペプチドもしくはタンパク質を細胞内で(例えば細胞質内および/もしくは核内で)産生することができ、コードされたペプチドもしくはタンパク質を分泌することができ、またはそれを表面上で産生し得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「半減期」は、例えば分解および/または天然の機構によるクリアランスもしくは隔離のために、インビボでペプチドまたはタンパク質の血清または血漿濃度が50%減少するのに要する時間を指す。本明細書での使用に適した延長PKインターロイキン(IL)は、インビボで安定化しており、その半減期は、例えば血清アルブミン(例えばHSAまたはMSA)への融合によって増加し、分解および/またはクリアランスもしくは隔離に抵抗する。半減期は、薬物動態分析などによる、それ自体公知の任意の方法で決定することができる。適切な技術は当業者に明らかであり、例えば一般に、適切な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適切に投与する工程;前記対象から定期的な間隔で血液試料または他の試料を収集する工程;前記血液試料中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定する工程;およびこのようにして得られたデータ(のプロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する工程を含み得る。さらなる詳細は、例えば、Kenneth,A.et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacistsなどの標準的なハンドブックおよびPeters et al.,Pharmacokinetic Analysis:A Practical Approach(1996)に提供されている。Gibaldi,M.et al.,Pharmacokinetics,2nd Rev.Edition,Marcel Dekker(1982)も参照されたい。
【0094】
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要である小さなタンパク質(約5~20kDa)のカテゴリである。サイトカインの放出は、それらの周りの細胞の挙動に影響を及ぼす。サイトカインは、免疫調節剤としてオートクリンシグナル伝達、パラクリンシグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれるが、一般にホルモンまたは成長因子は含まれない(用語が一部重複しているにもかかわらず)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球およびマスト細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞および様々な間質細胞を含む、幅広い細胞によって産生される。所与のサイトカインは、複数の種類の細胞によって産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系において特に重要である;サイトカインは体液性免疫応答と細胞性免疫応答のバランスを調整し、特定の細胞集団の成熟、成長、および応答性を調節する。一部のサイトカインは、他のサイトカインの作用を複雑な方法で増強または阻害する。
【0095】
インターロイキン-2(IL2)は、抗原活性化T細胞の増殖を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞を刺激するサイトカインである。IL2の生物学的活性は、細胞膜にまたがる3つのポリペプチドサブユニットのマルチサブユニットIL2受容体複合体(IL2R)を介して媒介される:p55(IL2Rα、αサブユニット、ヒトではCD25としても知られる)、p75(IL2Rβ、βサブユニット、ヒトではCD122としても知られる)およびp64(IL2Rγ、γサブユニット、ヒトではCD132としても知られる)。IL2に対するT細胞応答は、(1)IL2の濃度、(2)細胞表面上のIL2R分子の数、および(3)IL2が占有するIL2Rの数(すなわちIL2とIL2Rの間の結合相互作用の親和性)を含む様々な因子に依存する(Smith,「Cell Growth Signal Transduction is Quantal」In Receptor Activation by Antigens,Cytokines,Hormones,and Growth Factors 766:263-271,1995))。IL2:IL2R複合体はリガンド結合時に内在化され、様々な成分が異なる選別を受ける。静脈内(i.v.)ボーラスとして投与された場合、IL2は急速な全身クリアランスを有する(半減期が12.9分の初期クリアランス期、続いて半減期が85分のより遅いクリアランス期)(Konrad et al.,Cancer Res.50:2009-2017,1990)。
【0096】
癌患者における全身性IL2投与の結果は理想からほど遠い。患者の15~20%は高用量のIL2に客観的に応答するが、大多数は応答せず、多くが吐き気、錯乱、低血圧、および敗血症性ショックなどの重篤で生命にかかわる副作用を経験する。高用量のIL2治療に関連する重篤な毒性は、主にナチュラルキラー(NK)細胞の活性に起因する。用量を減らして投与レジメンを調整することによって血清濃度を低下させる試みがなされており、毒性は低くなるが、そのような治療は有効性も低かった。
【0097】
本開示によれば、特定の実施形態では、IL2は薬物動態修飾基に結合される。以下、「延長薬物動態(PK)IL2」と称する、得られた分子は、遊離IL2と比較して延長された循環半減期を有する。延長PK IL2の延長された循環半減期は、インビボでの血清IL2濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的にT細胞を含む多くの種類の免疫細胞の活性化の増強につながる。その有利な薬物動態プロフィールのために、非修飾IL2と比較すると、延長PK IL2はより少ない頻度で、より長期間投与することができる。
【0098】
本開示によれば、IL2(任意で延長PK IL2の一部として)は、天然に存在するIL2またはその断片もしくは変異体であり得る。IL2はヒトIL2であり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、IL2は、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL2またはIL2断片もしくは変異体は、IL2受容体、特にIL2受容体のαサブユニットに結合する。
【0099】
特定の実施形態では、延長PK IL2のIL2部分は、ヒトIL2である。他の実施形態では、延長PK IL2のIL2部分は、ヒトIL2の断片または変異体である。
【0100】
本明細書に記載される特定の実施形態では、IL2は異種ポリペプチド(すなわちIL2ではないポリペプチド)に融合される。異種ポリペプチドは、IL2の循環半減期を増加させることができる。以下でさらに詳細に論じるように、循環半減期を増加させるポリペプチドは、ヒトまたはマウス血清アルブミンなどの血清アルブミンであり得る。
【0101】
IL7は、骨髄および胸腺の間質細胞によって分泌される造血成長因子である。またIL7は、ケラチノサイト、樹状細胞、肝細胞、ニューロン、および上皮細胞によっても産生されるが、正常なリンパ球からは産生されない。IL7は、B細胞およびT細胞の発生に重要なサイトカインである。IL7サイトカインと肝細胞増殖因子は、プレプロB細胞増殖刺激因子として機能するヘテロ二量体を形成する。マウスでのノックアウト試験は、IL7がリンパ系細胞の生存に必須の役割を果たすことを示唆した。
【0102】
IL7は、IL7受容体αと共通のγ鎖受容体からなるヘテロ二量体であるIL7受容体に結合する。結合は、胸腺内でのT細胞の発生と末梢内での生存に重要なシグナルのカスケードをもたらす。IL7受容体が遺伝的に欠損しているノックアウトマウスは、胸腺萎縮、T細胞発生の二重陽性段階での停止、および重度のリンパ球減少を示す。マウスへのIL7の投与は、胸腺から血中に移行したばかりのT細胞の増加、B細胞とT細胞の増加、およびシクロホスファミド投与後または骨髄移植後のT細胞の回復の増加をもたらす。
【0103】
本開示によれば、特定の実施形態では、IL7は薬物動態修飾基に結合される。以下、「延長薬物動態(PK)IL7」と称する、得られた分子は、遊離IL7と比較して延長された循環半減期を有する。延長PK IL7の延長された循環半減期は、インビボでの血清IL7濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的にT細胞を含む多くの種類の免疫細胞の生存の増強につながる。その有利な薬物動態プロフィールのために、非修飾IL7と比較すると、延長PK IL7はより少ない頻度で、より長期間投与することができる。
【0104】
本開示によれば、IL7は、天然に存在するIL7またはその断片もしくは変異体であり得る。IL7はヒトIL7であり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、IL7は、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL7またはIL7断片もしくは変異体は、IL7受容体に結合する。
【0105】
特定の実施形態では、延長PK IL7のIL7部分は、ヒトIL7である。他の実施形態では、延長PK IL7のIL7部分は、ヒトIL7の断片または変異体である。
【0106】
本明細書に記載される特定の実施形態では、IL7は異種ポリペプチド(すなわちIL7ではないポリペプチド)に融合される。異種ポリペプチドは、IL7の循環半減期を増加させることができる。以下でさらに詳細に論じるように、循環半減期を増加させるポリペプチドは、ヒトまたはマウス血清アルブミンなどの血清アルブミンであり得る。
【0107】
インターフェロン(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生虫、およびまた腫瘍細胞などのいくつかの病原体の存在に応答して、宿主細胞によって生成および放出されるシグナル伝達タンパク質の群である。典型的なシナリオでは、ウイルスに感染した細胞がインターフェロンを放出し、近くの細胞に抗ウイルス防御を高めさせる。
【0108】
IFNβタンパク質は、線維芽細胞によって大量に産生される。それらは、主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。2種類のIFNβ、すなわちIFNβ1とIFNβ3が記述されている。IFNβ1の天然型と組換え型は、抗ウイルス、抗菌、および抗癌特性を有する。インターフェロンβ1a(商品名:AvonexおよびRebif)とインターフェロンβ1b(商品名:Betaseron/Betaferon)が薬剤として使用されている。
【0109】
本開示によれば、IFN-βは、天然に存在するIFN-βまたはその断片もしくは変異体であり得る。IFN-βはヒトIFN-βであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、IFN-βは、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列または配列番号3もしくは4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0110】
本明細書に記載されるサイトカイン、例えばIL2またはIL7などのインターロイキンは、循環半減期を増加させる延長PK基に融合させ得る。延長PK基の非限定的な例については以下で説明する。サイトカインまたはその変異体の循環半減期を増加させる他のPK基もまた、本開示に適用可能であることが理解されるべきである。特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミンドメイン(例えばマウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「PK」という用語は、「薬物動態」の頭字語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝、および排泄を含む化合物の特性を包含する。本明細書で使用される場合、「延長PK基」は、生物学的に活性な分子に融合されるかまたは一緒に投与された場合、生物学的に活性な分子の循環半減期を増加させるタンパク質、ペプチド、または部分を指す。延長PK基の例には、血清アルブミン(例えばHSA)、FcまたはFc断片およびその変異体、トランスフェリンおよびその変異体、ならびにヒト血清アルブミン(HSA)バインダー(米国特許出願公開第2005/0287153号および同第2007/0003549号に開示されている)が含まれる。他の例示的な延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kontermann et al.,Current Opinion in Biotechnology 2011;22:868-876に開示されている。本明細書で使用される場合、「延長PK IL」は、延長PK基と組み合わせたインターロイキン(IL)部分を指す。一実施形態では、延長PK ILは、IL部分が延長PK基に連結または融合されている融合タンパク質である。例示的な融合タンパク質は、IL2部分がHSAと融合しているHSA/IL2融合物である。別の例示的な融合タンパク質は、IL7部分がHSAと融合しているHSA/IL7融合物である。
【0112】
特定の実施形態では、延長PKサイトカインの血清半減期は、サイトカイン単独(すなわち延長PK基に融合されていないサイトカイン)と比較して増加する。特定の実施形態では、延長PKサイトカインの血清半減期は、サイトカイン単独の血清半減期と比較して少なくとも20、40、60、80、100、120、150、180、200、400、600、800、または1000%長い。特定の実施形態では、延長PKサイトカインの血清半減期は、サイトカイン単独の血清半減期より少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍、または50倍長い。特定の実施形態では、延長PKサイトカインの血清半減期は、少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間、または200時間である。
【0113】
特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミン、またはその断片、または血清アルブミンもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、そのすべてが「アルブミン」という用語に含まれる)を含む。本明細書に記載されるポリペプチドは、アルブミン(またはその断片もしくは変異体)に融合されてアルブミン融合タンパク質を形成し得る。そのようなアルブミン融合タンパク質は、米国特許出願公開第20070048282号に記載されている。
【0114】
本明細書で使用される場合、「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子のアルブミン(またはその断片もしくは変異体)と、治療用タンパク質、特にIL2またはIL7(またはその断片もしくは変異体)などの少なくとも1分子のタンパク質との融合によって形成されるタンパク質を指す。アルブミン融合タンパク質は、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、アルブミンをコードするポリヌクレオチドとインフレームで結合している核酸の翻訳によって生成され得る。治療用タンパク質およびアルブミンは、アルブミン融合タンパク質の一部になると、それぞれ、アルブミン融合タンパク質の「一部」、「領域」、または「部分」(例えば「治療用タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と称され得る。非常に好ましい実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療用タンパク質(治療用タンパク質の成熟形態を含むがこれに限定されない)および少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むがこれに限定されない)を含む。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、投与されたRNAの標的器官の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞によってプロセシングされ、循環中に分泌される。RNAの発現に使用される宿主細胞の分泌経路で発生する新生アルブミン融合タンパク質のプロセシングには、シグナルペプチド切断、ジスルフィド結合の形成、適切な折り畳み、炭水化物の付加とプロセシング(例えばN-結合型およびO-結合型グリコシル化など)、特異的タンパク質分解切断、および/または多量体タンパク質へのアセンブリが含まれ得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にそのN末端にシグナルペプチドを有する非プロセシング形態のRNAによってコードされ、細胞による分泌後、好ましくは、特にシグナルペプチドが切断されたプロセシング形態で存在する。最も好ましい実施形態では、「プロセシングされた形態のアルブミン融合タンパク質」は、N末端シグナルペプチド切断を受けたアルブミン融合タンパク質産物を指し、本明細書では「成熟アルブミン融合タンパク質」とも称される。
【0115】
好ましい実施形態では、治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合されていない場合の同じ治療用タンパク質の血漿安定性と比較して、より高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、典型的には、治療用タンパク質がインビボで投与され、血流に運ばれたときから、治療用タンパク質が分解され、血流から腎臓または肝臓などの器官へとクリアランスされ、最終的に治療用タンパク質が体内からクリアランスされるときまでの期間を指す。血漿安定性は、血流中の治療用タンパク質の半減期に関して計算される。血流中の治療用タンパク質の半減期は、当技術分野で公知の一般的なアッセイによって容易に決定することができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「アルブミン」は、アルブミンの1つ以上の機能的活性(例えば生物学的活性)を有する、アルブミンタンパク質もしくはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくは変異体を集合的に指す。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンもしくはその断片もしくは変異体、特にヒトアルブミンの成熟形態、または他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の変異体を指す。アルブミンは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンには、雌鶏およびサケが含まれるが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療用タンパク質部分とは異なる動物由来であり得る。
【0117】
特定の実施態様では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはその断片もしくは変異体、例えば米国特許第5,876,969号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2013/075066号、および国際公開第2011/0514789号に開示されているものである。
【0118】
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という用語は、本明細書では互換的に使用される。「アルブミンおよび「血清アルブミン」という用語はより広範であり、ヒト血清アルブミン(およびその断片と変異体)ならびに他の種由来のアルブミン(およびその断片と変異体)を包含する。
【0119】
本明細書で使用される場合、治療用タンパク質の治療活性または血漿安定性を延長するのに十分なアルブミンの断片は、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分の血漿安定性が非融合状態での血漿安定性と比較して延長または拡張されるように、タンパク質の治療活性または血漿安定性を安定化または延長するのに十分な長さまたは構造のアルブミン断片を指す。
【0120】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の全長を含んでもよく、または治療活性もしくは血漿安定性を安定化もしくは延長することができるその1つ以上の断片を含んでもよい。そのような断片は、10個以上のアミノ酸の長さであってもよく、またはアルブミン配列からの約15、20、25、30、50個以上の連続するアミノ酸を含んでもよく、またはアルブミンの特定のドメインの一部もしくは全部を含んでもよい。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにわたるHSAの1つ以上の断片を使用し得る。好ましい実施形態では、HSA断片は、HSAの成熟形態である。
【0121】
一般的に言えば、アルブミン断片または変異体は、少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
【0122】
本開示によれば、アルブミンは、天然に存在するアルブミンまたはその断片もしくは変異体であり得る。アルブミンはヒトアルブミンであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、アルブミンは、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0123】
好ましくは、アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミン、およびC末端部分として治療用タンパク質を含む。あるいは、C末端部分としてアルブミンを含み、N末端部分として治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質も使用し得る。他の実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端とC末端の両方に融合した治療用タンパク質を有する。好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、同じ治療用タンパク質である。別の好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、異なる治療用タンパク質である。一実施形態では、異なる治療用タンパク質は、同じまたは関連する疾患、障害、または状態を治療または予防するために有用であり得る。一実施形態では、異なる治療用タンパク質は両方ともサイトカインであり、好ましくは、異なる治療用タンパク質の一方はIL2またはIL7であり、他方はIFNβなどのインターフェロンである。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端に融合したIFNβおよびC末端に融合したIL2を有する。
【0124】
一実施形態では、治療用タンパク質(1つまたは複数)は、ペプチドリンカー(1つまたは複数)を介してアルブミンに結合される。融合部分の間のリンカーペプチドは、部分間のより大きな物理的分離を提供し、したがって、例えばその同族受容体への結合のための治療用タンパク質部分のアクセス可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかまたはより剛性であるように、アミノ酸で構成され得る。リンカー配列は、プロテアーゼによってまたは化学的に切断可能であり得る。
【0125】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの2本の重鎖のそれぞれのFcドメイン(またはFc部分)によって形成される天然免疫グロブリンの部分を指す。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」という用語は、FcドメインがFvドメインを含まない単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の一部または断片を指す。特定の実施形態では、Fcドメインは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ(例えば上部、中間および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはその変異体、部分もしくは断片の少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわちヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えばCH2ドメインの全部または一部)を欠く。本明細書におけるFcドメインは、一般に、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全部または一部を含むポリペプチドを指す。これには、CH1、ヒンジ、CH2、および/またはCH3ドメイン全体を含むポリペプチド、ならびに例えばヒンジ、CH2、およびCH3ドメインのみを含むそのようなペプチドの断片が含まれるが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体を含むがこれらに限定されない、任意の種および/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは、天然のFcおよびFc変異体分子を包含する。本明細書に記載されているように、アミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子の天然のFcドメインとは異なるように任意のFcドメインを修飾し得ることは、当業者には理解されるであろう。特定の実施形態では、Fcドメインは、エフェクタ機能(例えばFcγR結合)が低下している。
【0126】
本明細書に記載されるポリペプチドのFcドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子に由来するCH2および/またはCH3ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含み得る。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含むことができる。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0127】
特定の実施形態では、延長PK基は、Fcドメインもしくはその断片、またはFcドメインもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、そのすべてが「Fcドメイン」という用語に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本開示での使用に適したFcドメインは、いくつかの異なる供給源から入手し得る。特定の実施形態では、Fcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。特定の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1定常領域に由来する。しかしながら、Fcドメインは、例えばげっ歯動物種(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長動物種(例えばチンパンジー、マカク)を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることが理解される。
【0128】
さらに、Fcドメイン(またはその断片もしくは変異体)は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
【0129】
様々なFcドメイン遺伝子配列(例えばマウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)は、公的にアクセス可能な寄託物の形で入手可能である。特定のエフェクタ機能を欠き、および/または免疫原性を低下させる特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、適切なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその断片もしくは変異体)は、当技術分野で広く認められている技術を使用してこれらの配列から得ることができる。
【0130】
特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2005/0287153号、米国特許出願第2007/0003549号、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2007/0269422号、米国特許出願第2010/0113339号、国際公開第2009/083804号、および国際公開第2009/133208号に記載されているものなどの血清アルブミン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,176,278号および米国特許第8,158,579号に開示されているように、トランスフェリンである。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2007/0178082号に開示されているものなどの血清免疫グロブリン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2012/0094909号に開示されているものなどの、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質を作製する方法もまた、米国特許出願第2012/0094909号に開示されている。Fn3ベースの延長PK基の非限定的な例は、Fn3(HSA)、すなわちヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
【0131】
特定の態様では、本開示による使用に適した、延長PK ILなどの延長PKサイトカインは、1つ以上のペプチドリンカーを使用することができる。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の線状アミノ酸配列中の2つ以上のドメイン(例えば延長PK部分とIL2またはIL7などのIL部分)を接続するペプチドまたはポリペプチド配列を指す。例えば、ペプチドリンカーを使用して、IL2部分をHSAドメインに接続し得る。別の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、IL7部分をHSAドメインに接続し得る。
【0132】
例えばIL2またはIL7に延長PK基を融合するのに適したリンカーは、当技術分野で周知である。例示的なリンカーには、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、グリシン-プロリンポリペプチドリンカー、およびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーが含まれる。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、すなわちグリシンおよびセリン残基からなるペプチドである。
【0133】
本開示による使用に適したペプチドおよびタンパク質抗原は、典型的には、免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質を含む。ペプチドまたはタンパク質またはエピトープは、標的抗原、すなわちそれに対して免疫応答が惹起されるべき抗原に由来し得る。例えば、ペプチドもしくはタンパク質抗原またはペプチドもしくはタンパク質抗原内に含まれるエピトープは、標的抗原または標的抗原の断片もしくは変異体であり得る。
【0134】
本開示に従って投与されるRNAによってコードされるペプチドおよびタンパク質抗原、すなわちワクチン抗原は、好ましくは、RNAが投与される対象においてT細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。前記刺激された、プライミングされたおよび/または拡大されたT細胞は、好ましくは標的抗原、特に疾患細胞、組織および/または器官によって発現される標的抗原、すなわち疾患関連抗原に対して向けられる。したがって、ワクチン抗原は、疾患関連抗原、またはその断片もしくは変異体を含み得る。一実施形態では、そのような断片または変異体は、疾患関連抗原と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、「抗原の断片」または「抗原の変異体」という用語は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす作用物質を意味し、刺激、プライミングおよび/または拡大されたT細胞は、特に疾患細胞、組織および/または器官によって提示された場合、抗原、すなわち疾患関連抗原を標的とする。したがって、本開示に従って投与されるRNAによってコードされるワクチン抗原は、疾患関連抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る、疾患関連抗原の断片に対応し得るかもしくはそれを含み得る、または疾患関連抗原もしくはその断片と相同である抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る。本開示に従って投与されるRNAによってコードされるワクチン抗原が、疾患関連抗原の断片または疾患関連抗原の断片に相同であるアミノ酸配列を含む場合、前記断片またはアミノ酸配列は、疾患関連抗原のT細胞エピトープなどのエピトープ、または疾患関連抗原のT細胞エピトープなどのエピトープと相同である配列を含み得る。したがって、本開示によれば、投与されるRNAによってコードされる抗原は、疾患関連抗原の免疫原性断片、または疾患関連抗原の免疫原性断片と相同であるアミノ酸配列を含み得る。本開示による「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞を刺激、プライミング、および/または拡大することができる抗原の断片に関する。ワクチン抗原は(疾患関連抗原と同様に)、T細胞による結合のための関連エピトープを提供するために、抗原提示細胞などの細胞によって提示され得ることが好ましい。本開示に従って投与されるRNAによってコードされるワクチン抗原は、組換え抗原であり得る。
【0135】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または、例えば免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を発揮することを意味する。本開示の文脈において、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化のために使用される抗原または抗原変異体の免疫学的作用または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が、参照アミノ酸配列に結合するT細胞または参照アミノ酸配列を発現する細胞などの対象の免疫系に暴露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。したがって、抗原と免疫学的に等価である分子は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大に関して、T細胞が標的とする抗原と同じもしくは本質的に同じ特性を示し、および/または同じもしくは本質的に同じ作用を発揮する。
【0136】
「プライミング」という用語は、T細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞への分化を引き起こす過程を指す。
【0137】
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫学的応答の文脈で使用される。好ましくは、クローン拡大はリンパ球の分化をもたらす。
【0138】
「抗原」という用語は、免疫応答を生じさせることができるエピトープを含む作用物質に関する。「抗原」という用語には、特にタンパク質およびペプチドが含まれる。一実施形態では、抗原は、樹状細胞またはマクロファージのような抗原提示細胞などの免疫系の細胞によって提示される。抗原またはT細胞エピトープなどのそのプロセシング産物は、一実施形態では、T細胞もしくはB細胞受容体によって、または抗体などの免疫グロブリン分子によって結合される。したがって、抗原またはそのプロセシング産物は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応し得る。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
【0139】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患に関連する任意の抗原を指すためにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して細胞性抗原特異的免疫応答および/または疾患に対する体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原またはそのエピトープは、治療目的に使用され得る。疾患関連抗原は、微生物、典型的には微生物抗原による感染に関連し得るか、または癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
【0140】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分を指す。特に、この用語は、細胞内でまたは腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。腫瘍抗原は、典型的には癌細胞によって選択的に発現され(例えば非癌細胞上よりも癌細胞においてより高いレベルで発現される)、一部の場合には、癌細胞によってのみ発現される。腫瘍抗原の例には、限定されることなく、p53、ART-4、BAGE、β‐カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディン-6、クローディン-18.2およびクローディン-12などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap 100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90マイナーBCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、およびWT-1が含まれる。
【0141】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0142】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意の細菌成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞質膜に由来し得る。
【0143】
「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含んでもよく、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約10~約25アミノ酸の長さであり得、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の長さであり得る。一実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語には、T細胞エピトープが含まれる。
【0144】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方を表示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドも有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドも有効であり得る。
【0145】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」という用語または類似の用語は、特にMHC分子に関連して抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面に提示された場合、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。T細胞が抗原を発現する標的細胞を死滅させる場合、T細胞は抗原に特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、様々な標準的技術のいずれかを使用して、例えばクロム放出アッセイまたは増殖アッセイ内で評価し得る。あるいは、リンホカイン(インターフェロンγなど)の合成を測定することができる。
【0146】
一実施形態では、標的抗原は腫瘍抗原であり、エピトープを含むペプチドもしくはタンパク質またはその断片(例えばエピトープ)は、腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、様々な癌で発現されることが一般的に公知の「標準」抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、個体の腫瘍に特異的であり、それまで免疫系によって認識されていなかった「ネオ抗原」であり得る。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化をもたらす癌細胞のゲノムにおける1つ以上の癌特異的変異から生じ得る。腫瘍抗原がネオ抗原である場合、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質は、好ましくは1つ以上のアミノ酸変化を含む前記ネオ抗原のエピトープまたは断片を含む。
【0147】
癌の変異は各個人によって異なる。したがって、新規エピトープ(ネオエピトープ)をコードする癌変異は、ワクチン組成物および免疫療法の開発における魅力的な標的である。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内で強力な免疫応答を誘導することができる癌特異的抗原およびエピトープの選択に依存する。RNAは、患者特異的腫瘍エピトープを患者に送達するために使用できる。脾臓に存在する樹状細胞(DC)は、免疫原性エピトープまたは腫瘍エピトープなどの抗原のRNA発現に特に関係のある抗原提示細胞である。複数のエピトープの使用は、腫瘍ワクチン組成物における治療効果を促進することが示されている。腫瘍ミュータノームの迅速な配列決定は、本明細書に記載のRNAによってコードされ得る個別化ワクチンのための複数のエピトープを、例えばエピトープが任意にリンカーによって分離されている単一のポリペプチドとして提供し得る。本開示の特定の実施形態では、RNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、または少なくとも10のエピトープをコードする。例示的な実施形態は、少なくとも5つのエピトープ(「ペンタトープ」と呼ばれる)をコードするRNAおよび少なくとも10のエピトープ(「デカトープ」と呼ばれる)をコードするRNAを含む。
【0148】
ペプチドおよびタンパク質抗原は、例えば5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、または50アミノ酸を含む2~100アミノ酸の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、50個を超えるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、100個を超えるアミノ酸であり得る。
【0149】
ペプチドまたはタンパク質抗原は、ペプチドまたはタンパク質に対する抗体およびT細胞応答を発生させる免疫系の能力を誘導または増加させることができる任意のペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0150】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載される他の治療薬(例えば延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAならびにエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)と組み合わせて使用される。
【0151】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、抗原のT細胞受容体認識の大きさおよび質を調節する共刺激および阻害シグナルを指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1の間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD28結合を置き換えるCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、LAG3とMHCクラスII分子の間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、TIM3とガレクチン9の間の相互作用である。
【0152】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全面的または部分的に低減する、阻害する、妨げるまたは調節する分子を指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害性シグナル伝達を妨害する抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性シグナル伝達を妨害する小分子である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントブロッカータンパク質間の相互作用を妨げる抗体、その断片、または抗体模倣物、例えばPD-1とPD-L1の間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用を防げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3とそのリガンド、またはTIM-3とそのリガンドの間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。チェックポイント阻害剤はまた、分子(またはその変異体)自体の可溶性形態、例えば可溶性PD-L1またはPD-L1融合物の形態であってもよい。
【0153】
「プログラムされた死1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、PD-L1とPD-L2の2つのリガンドに結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0154】
「プログラムされた死リガンド1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞の活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(もう1つはPD-L2)である。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0155】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)」は、T細胞表面分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、CD80およびCD86に結合することによって免疫系を下方制御する。本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCTLA-4と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0156】
「リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)」は、MHCクラスII分子に結合することによるリンパ球活性の阻害に関連する阻害性受容体である。この受容体は、Treg細胞の機能を高め、CD8+エフェクタT細胞の機能を阻害する。本明細書で使用される「LAG3」という用語は、ヒトLAG3(hLAG3)、hLAG3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0157】
「T細胞膜タンパク質3(TIM3)」は、TH1細胞応答の阻害によるリンパ球活性の阻害に関与する阻害性受容体である。そのリガンドは、様々な種類の癌で上方制御されるガレクチン9である。本明細書で使用される「TIM3」という用語は、ヒトTIM3(hTIM3)、hTIM3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0158】
「B7ファミリー」は、未定義の受容体との阻害性リガンドを指す。B7ファミリーはB7-H3およびB7-H4を包含し、どちらも腫瘍細胞および腫瘍浸潤細胞で上方制御される。
【0159】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法での使用に適した免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、またはTIM3を標的とする抗体である。これらのリガンドと受容体は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012で総説されている。
【0160】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する抗体またはその抗原結合部分である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する小分子である。
【0161】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、PD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それによって免疫活性を増加させる。
【0162】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CTLA4シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CTLA4を標的とし、CD80およびCD86とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0163】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、LAG3を標的とし、MHCクラスII分子とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0164】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、B7ファミリーシグナル伝達経路の成分である。特定の実施形態では、B7ファミリーメンバーはB7-H3およびB7-H4である。したがって、本開示の特定の実施形態は、B7-H3またはB7-H4を標的とする抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。B7ファミリーは定義された受容体を有さないが、これらのリガンドは腫瘍細胞または腫瘍浸潤細胞で上方制御される。前臨床マウスモデルは、これらのリガンドの遮断が抗腫瘍免疫を増強できることを示している。
【0165】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TIM3(T細胞膜タンパク質3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TIM3を標的とし、ガレクチン9とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0166】
標的化が、例えばT細胞増殖の増加、T細胞活性化の増強、および/またはサイトカイン産生の増加(例えばIFN-γ、IL2)に反映されるような抗腫瘍免疫応答などの免疫応答の刺激をもたらすことを条件として、他の免疫チェックポイント標的もまた、アンタゴニストまたは抗体によって標的とされ得ることが当業者に理解されるであろう。
【0167】
本開示によれば、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体およびキメラ抗体が含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0168】
抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない様々な種に由来し得る。
【0169】
本明細書に記載される抗体には、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、およびIgD抗体が含まれる。様々な実施形態では、抗体はIgG1抗体、より特定するとIgG1、カッパもしくはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
【0170】
抗体の「抗原結合部分」(もしくは単に「結合部分」)もしくは抗体の「抗原結合断片」(もしくは単に「結合断片」)という用語または類似の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')断片;(iii)VHドメインとCHドメインからなるFd断片;(iv)抗体の1本の腕のVLドメインとVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)任意に合成リンカーによって連結されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLとVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて連結することができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号にさらに開示されている。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0171】
本開示によれば、本明細書に記載されるRNAの投与後、RNAの少なくとも一部が標的細胞に送達される。一実施形態では、RNAの少なくとも一部は、標的細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態では、RNAは標的細胞によって翻訳されて、コードされたペプチドまたはタンパク質を生成する。
【0172】
本開示のいくつかの態様は、本明細書に開示されるRNA(例えば延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAならびにエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)の特定の組織への標的化送達を含む。
【0173】
一実施形態では、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることを含む。投与されるRNAが、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAである場合、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることが特に好ましい。
【0174】
一実施形態では、標的細胞は脾臓細胞である。一実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施形態では、標的細胞は脾臓の樹状細胞である。
【0175】
「リンパ系」は循環系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の伝導ネットワーク、および循環リンパからなる。一次または中枢リンパ器官は、未成熟な前駆細胞からリンパ球を生成する。胸腺および骨髄は一次リンパ器官を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始する。
【0176】
RNAは、カチオン性脂質および任意でさらなる脂質またはヘルパー脂質を含むリポソームに結合して注射可能なナノ粒子製剤を形成する、いわゆるリポプレックス製剤によって脾臓に送達され得る。リポソームは、エタノール中の脂質の溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームとRNAを混合することによって調製され得る。脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子は、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的とするために使用し得ることが見出された。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓においてRNAを発現させるために使用し得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓におけるRNA蓄積および/もしくはRNA発現は起こらないか、または本質的に起こらない。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓内のプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞においてRNAを発現させるために使用し得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0177】
本開示の文脈において、「RNAリポプレックス粒子」という用語は、脂質、特にカチオン性脂質、およびRNAを含む粒子に関する。正に帯電したリポソームと負に帯電したRNAの間の静電相互作用は、RNAリポプレックス粒子の複合体化と自発的形成をもたらす。正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質とDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成し得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0178】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」は、正味の正電荷を有する脂質を指す。カチオン性脂質は、静電相互作用によって負に帯電したRNAを脂質マトリックスに結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシルまたはジアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭基は、典型的には正の電荷を有する。カチオン性脂質の例には、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が含まれるが、これらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、およびDOSPAが好ましい。特定の実施形態では、カチオン性脂質は、DOTMAおよび/またはDOTAPである。
【0179】
RNAリポプレックス粒子の正電荷と負電荷の全体的な比率および物理的安定性を調整するためにさらなる脂質を組み込んでもよい。特定の実施形態では、さらなる脂質は中性脂質である。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、ゼロの正味電荷を有する脂質を指す。中性脂質の例には、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、およびセレブロシドが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、さらなる脂質は、DOPE、コレステロールおよび/またはDOPCである。
【0180】
特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0181】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約2:1である。
【0182】
本明細書に記載されるRNAリポプレックス粒子は、一実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250nm~約700nm、約400nm~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0183】
本開示のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する電荷とRNAに存在する電荷との合計である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の比である。少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の電荷比は、以下の式によって計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(mol))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(mol))*(RNA中の負電荷の総数)]。
【0184】
生理的pHでの本明細書に記載の脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、好ましくは、正電荷と負電荷の電荷比が約1.9:2~約1:2などの正味負電荷を有する。特定の実施形態では、生理的pHでのRNAリポプレックス粒子における正電荷と負電荷の電荷比は、約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。
【0185】
RNA送達システムは、肝臓への固有の選択性を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性のナノ粒子、特にリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲートの親油性リガンドなどの脂質ナノ粒子に関係する。肝臓蓄積は、肝血管系の不連続な性質または脂質代謝(リポソームおよび脂質またはコレステロールコンジュゲート)によって引き起こされる。
【0186】
肝臓へのRNAのインビボ送達のために、薬物送達システムを使用して、その分解を防止することによってRNAを肝臓に輸送し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面とmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルは、ナノミセルが生理的条件下でRNAの卓越したインビボ安定性を提供するため、有用なシステムである。さらに、密なPEGパリセードからなるポリプレックスナノミセル表面によって提供されるステルス特性は、宿主の免疫防御を有効に回避する。
【0187】
本明細書に記載されるRNA、RNA粒子およびさらなる作用物質、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、治療的または予防的処置のための医薬組成物または薬剤中で投与されてもよく、任意の適切な医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0188】
「医薬組成物」という用語は、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に、治療上有効な作用物質を含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を軽減するのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても公知である。本開示の文脈において、医薬組成物は、RNA、RNA粒子および/または本明細書に記載のさらなる作用物質を含む。
【0189】
本開示の医薬組成物は、好ましくは1つ以上のアジュバントを含むか、または1つ以上のアジュバントと共に投与され得る。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激複合体などの不均一な化合物の群を含む。アジュバントの例には、限定されることなく、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、およびモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインなどのサイトカインが含まれる。ケモカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示で使用するための他の適切なアジュバントには、Pam3Cysなどのリポペプチドが含まれる。
【0190】
本開示による医薬組成物は、一般に「薬学的に有効な量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0191】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0192】
「薬学的有効量」または「治療有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0193】
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤、および任意で他の治療薬を含み得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
【0194】
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤には、限定されることなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0195】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例には、限定されることなく、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤が含まれる。
【0196】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする作用物質に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体もしくは固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロールおよび水が含まれる。
【0197】
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体物質には、限定されることなく、滅菌水、リンガー液、乳酸リンガー液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが含まれる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0198】
医薬用途のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0199】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準製薬法に関して選択することができる。
【0200】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、胃腸管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与を含み得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈注射などによる、胃腸管を介する以外の任意の方法での投与を指す。好ましい実施形態では、医薬組成物は全身投与用に製剤化される。別の好ましい実施形態では、全身投与は静脈内投与による。
【0201】
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、異なる化合物または組成物(例えば延長PKインターロイキンをコードするRNA(例えば延長PK IL2をコードするRNAおよび/または延長PK IL7をコードするRNA)、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAおよび任意に免疫チェックポイント阻害剤)を同じ患者に投与する工程を意味する。延長PKインターロイキンをコードするRNAとエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同時に、本質的に同時に、または連続的に投与され得る。投与が連続的に行われる場合、延長PKインターロイキンをコードするRNAは、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAの投与の前または後に投与され得る。投与が同時に行われる場合、延長PKインターロイキンをコードするRNAとエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同じ組成物内で投与される必要はない。延長PKインターロイキンをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは1回以上投与されてもよく、各成分の投与回数は同じであっても異なっていてもよい。さらに、延長PKインターロイキンをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同じ部位に投与される必要はない。
【0202】
本明細書に記載されるRNA、RNA粒子およびさらなる作用物質、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、様々な疾患、特に対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質を前記対象に提供することが治療効果または予防効果をもたらす疾患の治療的または予防的処置に使用され得る。例えば、ウイルスに由来する抗原またはエピトープを提供することは、前記ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療において有用であり得る。腫瘍抗原またはエピトープを提供することは、癌細胞が前記腫瘍抗原を発現する癌疾患の治療において有用であり得る。
【0203】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように対象にRNAを投与することを含む、対象において免疫応答を誘導するための方法に関する。例示的な実施形態では、免疫応答は癌に対するものである。
【0204】
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部からの要因によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能障害、苦痛、社会問題、もしくは死を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型のバリエーションを含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリとみなされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
【0205】
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした、対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは除去するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことを意図しており、ここで、予防は、疾患、状態または障害と闘う目的での個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
【0206】
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長(増加)させる任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を除去し、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体における症状の頻度もしくは重症度を減少させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0207】
「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0208】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患もしくは障害(例えば癌)に罹患し得るかまたは罹患しやすいが、疾患もしくは障害を有していてもよくまたは有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、子供、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0209】
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に罹患した個体または対象を意味する。
【0210】
本開示の一実施形態では、目的は、腫瘍抗原を発現する癌細胞などの抗原を発現する疾患細胞に対する免疫応答を提供し、腫瘍抗原などの抗原を発現する細胞が関与する癌疾患などの疾患を治療することである。
【0211】
エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを含む医薬組成物を対象に投与して、治療的であり得るまたは部分的もしくは完全に保護的であり得る、対象における前記エピトープを含む抗原に対する免疫応答を惹起し得る。当業者は、免疫療法およびワクチン接種の原理の1つが、治療される疾患に関して免疫学的に関連する抗原またはエピトープで対象を免疫することによって疾患に対する免疫防御反応が生じるという事実に基づくことを理解するであろう。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を誘導または増強するために適用可能である。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的処置において有用である。
【0212】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。細胞性免疫応答には、限定されることなく、抗原を発現し、クラスIまたはクラスII MHC分子による抗原の提示を特徴とする細胞に向けられる細胞応答が含まれる。細胞応答はTリンパ球に関連し、Tリンパ球は、免疫応答を制御することによって中心的な役割を果たすヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称される)、または感染した細胞もしくは癌細胞におけるアポトーシスを誘導するキラー細胞(細胞傷害性T細胞、CD8+T細胞、もしくはCTLとも称される)として分類され得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物を投与することは、1つ以上の腫瘍抗原を発現する癌細胞に対する抗腫瘍CD8+T細胞応答の刺激を含む。特定の実施形態では、腫瘍抗原はクラスI MHC分子と共に提示される。
【0213】
本開示は、防御的、防止的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を企図する。本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」は、特定の抗原に対する免疫応答が誘導前に存在しなかったことを示し得るか、または誘導前に特定の抗原に対する基礎レベルの免疫応答があり、これが誘導後に増強されたことを示し得る。したがって、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」には、「免疫応答を増強する(または増強すること)」が含まれる。
【0214】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導または増強することによる疾患または状態の治療に関する。「免疫療法」という用語は、抗原免疫または抗原ワクチン接種を含む。
【0215】
「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、例えば治療的または予防的理由により、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する工程を表す。
【0216】
一実施形態では、本開示は、脾臓組織を標的とする、本明細書に記載されるRNAリポプレックス粒子などのRNA製剤が投与される実施形態を想定する。RNAは、例えば本明細書に記載されるような、例えばエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする。RNAは、樹状細胞などの脾臓内の抗原提示細胞によって取り込まれ、ペプチドまたはタンパク質を発現する。抗原提示細胞による任意のプロセシングおよび提示に続いて、エピトープに対する免疫応答が生じ、エピトープまたはエピトープを含む抗原が関与する疾患の予防的および/または治療的処置がもたらされ得る。一実施形態では、本明細書に記載のRNAによって誘導される免疫応答は、樹状細胞および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞による抗原またはエピトープなどのその断片の提示、ならびにこの提示による細胞傷害性T細胞の活性化を含む。例えば、RNAまたはそのプロセシング産物によってコードされるペプチドまたはタンパク質は、抗原提示細胞上に発現される主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質によって提示され得る。次に、MHCペプチド複合体はT細胞またはB細胞などの免疫細胞によって認識され、それらの活性化をもたらすことができる。
【0217】
したがって、本開示は、抗原が関与する疾患、好ましくは癌疾患の予防的および/または治療的処置に使用するための、本明細書に記載されるRNAに関する。
【0218】
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によって生成される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物によって活性化されるマクロファージは、マクロファージ内の外来病原体を非特異的に飲み込み、病原体の分解をもたらす加水分解および酸化的攻撃によって死滅させる。分解されたタンパク質からのペプチドは、T細胞によって認識され得るマクロファージ細胞表面に表示され、B細胞表面の抗体と直接相互作用して、T細胞およびB細胞の活性化と免疫応答のさらなる刺激をもたらす。マクロファージは抗原提示細胞のクラスに属する。一実施形態では、マクロファージは脾臓マクロファージである。
【0219】
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。一実施形態では、樹状細胞は造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初は未成熟な樹状細胞に変化する。これらの未成熟細胞は、高い食作用と低いT細胞活性化能を特徴とする。未成熟な樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体の周囲環境を絶えずサンプリングしている。それらは、提示可能な抗原と接触すると、活性化されて成熟樹状細胞となり、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、タンパク質を小さな断片に分解し、成熟すると、MHC分子を使用して細胞表面でそれらの断片を提示する。同時に、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化の共受容体として機能する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化するそれらの能力を大幅に増強する。それらはまた、樹状細胞が血流を通って脾臓に、またはリンパ系を通ってリンパ節に移動するように誘導する走化性受容体であるCCR7を上方制御する。ここでそれらは抗原提示細胞として機能し、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞、ならびに非抗原特異的共刺激シグナルと共に抗原を提示することによってB細胞も活性化する。したがって、樹状細胞はT細胞またはB細胞関連の免疫応答を積極的に誘導することができる。一実施形態では、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
【0220】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、その細胞表面上に(またはその細胞表面で)少なくとも1つの抗原または抗原性断片を表示、獲得、および/または提示することができる様々な細胞の1つである。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と非プロフェッショナル抗原提示細胞とに区別することができる。
【0221】
「プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用する場合、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を生成する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0222】
「非プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロンγなどの特定のサイトカインによる刺激を受けると発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞には、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞が含まれる。
【0223】
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセシング産物への分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特定のT細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0224】
「抗原が関与する疾患」または「エピトープが関与する疾患」という用語は、抗原またはエピトープが関係する任意の疾患、例えば抗原またはエピトープの存在を特徴とする疾患を指す。抗原またはエピトープが関与する疾患は、感染症、または癌疾患もしくは単に癌であり得る。上記のように、抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり得、エピトープはそのような抗原に由来し得る。
【0225】
「感染症」という用語は、個体から個体へ、または生物から生物へ伝染する可能性があり、微生物因子によって引き起こされる(例えば普通の風邪)任意の疾患を指す。感染症は当技術分野で公知であり、例えばウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患が含まれ、これらの疾患はそれぞれウイルス、細菌、および寄生虫によって引き起こされる。これに関して、感染症は、例えば肝炎、性感染症(例えばクラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、およびインフルエンザであり得る。
【0226】
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする個体の生理学的状態を指すかまたは表す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。本開示による「癌」という用語は、癌転移も含む。
【0227】
癌治療における併用戦略は、結果として生じる相乗効果のために望ましい場合があり、これは単剤療法アプローチの影響よりもかなり強力であり得る。一実施形態では、医薬組成物は免疫療法剤と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法剤」は、特定の免疫応答および/または免疫エフェクタ機能(1つまたは複数)の活性化に関与し得る任意の作用物質に関する。本開示は、免疫療法剤としての抗体の使用を企図する。理論に拘束されることを望むものではないが、抗体は、アポトーシスを誘導する、シグナル伝達経路の成分をブロックする、または腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、様々な機構を通して癌細胞に対する治療効果を達成することができる。特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して細胞死を誘導し得るか、または補体タンパク質に結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)として知られる直接的な細胞傷害性をもたらし得る。本開示と組み合わせて使用し得る抗癌抗体および潜在的な抗体標的(括弧内)の非限定的な例には、アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴル(VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトクス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、アテゾリズマブ(PD-L1)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(CD44 v6)、ブリナツモマブ(CD 19)、ブレンツキシマブベドチン(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNT0888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブボガトクス(EpCAM)、シクスツムマブ(IGF-1受容体)、クローディキシマブ(クローディン)、クリバツズマブテトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンανβ3)、ファルレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH 900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-1)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、ゲボキズマブ(ILΙβ)、ギレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブベドチン(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマ(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブオゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD 152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レクサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(CD22)、ナコロマブタフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(5T4)、ナマツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-R a)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブモナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマ(MUC1)、ペルツズマ(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチンエクストラドメインB)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シルツキシマブ(IL6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(CD19)、テナツモマブ(テネイシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、ティガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650(IL13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブセルモロイキン(EpCAM)、ウブリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1 BB)、ボロキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA 16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、およびザノリムマブ(CD4)が含まれる。
【0228】
別の態様では、本発明は、対象の標的器官または標的組織にサイトカインを送達する方法であって、前記標的器官または組織へのRNAの選択的な送達のための製剤中でサイトカインをコードするRNAを対象に投与することを含む方法を提供する。サイトカインは、任意のサイトカイン、特にサイトカイン断片および変異体を含む、ならびにまた、本明細書に記載されるもののような延長PKサイトカイン、特に延長PKインターロイキンなどのサイトカイン、サイトカイン断片およびサイトカイン変異体の融合タンパク質を含む、任意の治療上有用なサイトカインであり得る。
【0229】
一実施形態では、標的器官はリンパ系、特に二次リンパ系器官、より具体的には脾臓であり、標的組織はリンパ系の組織、特に二次リンパ系器官の組織、より具体的には脾臓組織である。そのような標的組織へのサイトカインの送達は、特に、この器官または組織におけるサイトカインの存在が望ましい(例えば免疫応答を誘導するために、特にサイトカインがT細胞プライミング中に必要とされる場合、または常在免疫細胞の活性化のために)が、サイトカインが全身的に、特に有意の量で存在することは望ましくない(例えばサイトカインが全身毒性を有するため)場合に好ましい。
【0230】
したがって、別の態様では、本発明は、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に、
a.サイトカインをコードするRNAおよび
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含み、サイトカインをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAがリンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓に送達される、方法を提供する。
【0231】
一実施形態では、サイトカインをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、リンパ系を標的とするための(共通または別個の)製剤、特に二次リンパ器官を標的とするための製剤、より具体的には脾臓を標的とするための製剤中で投与される。そのような製剤は、本明細書で上記に記載されている。適切なサイトカインの例には、IL12、IL15、IFN-α、またはIFN-β、その断片および変異体、ならびに本明細書に記載されるもののような延長PKサイトカインなどの、これらのサイトカイン、断片および変異体の融合タンパク質が含まれる。適切なサイトカインの特に好ましい例は、T細胞プライミングに関与するサイトカインである。
【0232】
対象の標的器官または標的組織にサイトカインを送達する方法の別の実施形態では、標的器官は肝臓であり、標的組織は肝臓組織である。そのような標的組織へのサイトカインの送達は、特に、この器官もしくは組織におけるサイトカインの存在が望ましい場合、および/または大量のサイトカインを発現することが望ましい場合、および/またはサイトカインの全身的な存在、特に有意の量での存在が望ましいかもしくは必要とされる場合に好ましい。
【0233】
一実施形態では、サイトカインをコードするRNAは、肝臓を標的とするための製剤中で投与される。そのような製剤は、本明細書で上記に記載されている。適切なサイトカインの例には、IL2またはIL7、その断片および変異体、ならびに本明細書に記載されるもののような延長PKサイトカインなどの、これらのサイトカイン、断片および変異体の融合タンパク質が含まれる。適切なサイトカインの特に好ましい例は、T細胞の増殖および/または維持に関与するサイトカインである。
【0234】
本開示はまた、1つ以上のサイトカインを送達する方法を含み、この方法では、サイトカインは対象の第1の標的器官または標的組織に送達され、これは、前記第1の標的器官または組織へのRNAの選択的送達のための製剤中でサイトカインをコードするRNAを対象に投与することを含み、および同じまたは異なるサイトカインは、対象の第2の標的器官または標的組織に送達され、これは、前記第2の標的器官または組織へのRNAの選択的送達のための製剤中でサイトカインをコードするRNAを対象に投与することを含む。一実施形態では、第1の標的器官はリンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓であり、第1の標的組織はリンパ系の組織、特に二次リンパ器官の組織、より具体的には脾臓組織であり、第2の標的器官は肝臓であり、第2の標的組織は肝臓組織である。サイトカインを第1の標的器官または標的組織に送達するための投与およびサイトカインを第2の標的器官または標的組織に送達するための投与は、同時、本質的に同時、または連続的であり得る。リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓、およびリンパ系の組織、特に二次リンパ器官の組織、より具体的には脾臓組織の選択的標的化のためのサイトカイン、ならびに肝臓および肝臓組織の選択的標的化のためのサイトカインは、上記のとおりである。1つ以上のサイトカインを異なる標的器官または組織に送達する方法は、リンパ系におけるT細胞プライミングに関与する第1のサイトカイン、ならびに全身的にT細胞の増殖および/または維持に関与する第2のサイトカインを提供し得る。1つ以上のサイトカインを異なる標的器官または組織に送達する方法はまた、上記のように、対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAの投与を含み得る。
【0235】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認を意図するものではない。これらの文書の内容に関するすべての記述は、申請者が入手できる情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さについての承認を構成しない。
【0236】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の機器、技術、および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書で説明され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるべきである。
【実施例0237】
実施例1:構築物の設計および検証
構築物の設計およびmRNAの作製
mRNAをコードするサイトカインのインビトロ転写は、pST4-T7-GG-TEV-MCS-FI-A30LA70プラスミド骨格および派生DNA構築物に基づいた。これらのプラスミド構築物は、タバコエッチウイルス(TEV)の5'リーダー配列、3'FIエレメント(Fはスプリットのアミノ末端エンハンサーの136ヌクレオチド長の3'-UTR断片であるmRNAであり、Iはミトコンドリアにコードされた12S RNAの142ヌクレオチド長の断片であり、両方ともヒト(Homo sapiens)において同定されている;国際公開第2017/060314号)および100ヌクレオチドのポリ(A)尾部と、70ヌクレオチドの後にリンカーを含む。サイトカインおよびAlbコード配列はハツカネズミ(Mus musculus)に由来し、得られたアミノ酸配列に変化は導入されなかった(mIL2:NP_032392.1;mIFNβ:NP_034640.1;mIL7:NP_032397.1;mIL15Rα:NP_032384.1;mIL15:NP_032383.1)。コードされるタンパク質は、それぞれのタンパク質の天然シグナルペプチドであるN末端シグナルペプチド(SP)を備える。融合タンパク質の場合、N末端部分のSPのみが維持され、さらなる部分については成熟部分(SPのないタンパク質)のみがコードされた。終止コドンは、ほとんどのC末端部分についてのみ維持された。サイトカインおよびAlb融合構築物の異なるタンパク質部分は、グリシンおよびセリン残基をコードする30ヌクレオチド長のリンカー配列によって分離された。マウス(m)IL15sushiの場合は、mIL15Rαの最初の103アミノ酸(SPを含む)のコード配列とmIL15の成熟ドメインの間の融合タンパク質を使用した。この融合タンパク質では、mIL15Rα部分がN末端を規定し、グリシンおよびセリン残基をコードする60ヌクレオチドのリンカーによって分離されている。分泌型ナノルシフェラーゼ(sec-nLUC)の配列を購入し(Promega)、上記のプラスミド骨格にサブクローニングした。sec-nLUCとmAlbの融合のために、sec-nLUCの終止コドンを欠失させ、mAlbの成熟ドメインを、グリシンおよびセリン残基をコードする30ヌクレオチド長のリンカー配列によって分離されたsec-nLUCのC末端に融合した。mRNAは、通常ヌクレオシドウリジンを1-メチルプソイドウリジンに置き換えて、Kreiter et al.(Kreiter,S.et al.Cancer Immunol.Immunother.56,1577-87(2007))に記載されているようにインビトロ転写によって生成した。得られたmRNAはキャップ1構造を備えており、二本鎖(dsRNA)分子はセルロース精製によって枯渇させた。精製したmRNAをHOに溶出させ、さらに使用するまで-80℃で保存した。記載されているすべてのmRNA構築物のインビトロ転写は、BioNTech RNA Pharmaceuticals GmbHによって行われた。
【0238】
構築物の検証
生成したmRNAからのサイトカイン発現を、HEK-293T-17細胞へのmRNAのリポフェクション、およびその後の上清の酵素免疫測定法(ELISA)分析によって制御した(図1A図2A図3A図4A)。Lipofectamine MessengerMax(Thermo Fisher Scientific)を使用して、mRNAを無菌のRNアーゼ不含条件下で製剤化した。ここで、125または250ng mRNA/μlのLipofectamine MessengerMaxを複合体化し、約80%の集密度のHEK-293T-17細胞のリポフェクションのために1cmの培養皿ごとに使用した。上清を無菌条件下で24時間の発現後に収集し、さらに使用するまで-80℃で保存した。それぞれの細胞培養上清中のサイトカインの存在を、それぞれのサイトカインに特異的な市販のELISAキット(Biolegend,R&D systems)を使用して決定した。ELISA分析を製造者のプロトコルに従って実施した。タンパク質が天然の折り畳み状態のままである限り、ELISA抗体のエピトープはしばしば融合タンパク質中でアクセスできないように見えるため、変性条件下でタンパク質濃度を半定量的に決定するために同じ上清をウェスタンブロット分析に使用した(図1B図2B図3B図4B)。したがって、適切なVivaSpinカラム(Sartorious AG)を使用して総タンパク質を濃縮し、Image Quant TLソフトウェア(GE Healthcare)を使用したSDS-PAGEおよびクマシー染色での試料の分離後に、著明なバンドの定量化によって濃度を評価した。ウェスタンブロット法のために、均一なタンパク質の量をSDS-PAGEによって分離し、セミドライまたはウェットブロットプロトコルでニトロセルロース膜に転写した。ブロットした後、ニトロセルロース膜をブロックし(1×PBS-T中の5%脱脂粉乳)、続いて適切な希釈の一次抗体(抗mIL2:BioLegend(BLD-503701)、抗mIL15:R&D Systems(MAB447-SP)、抗mIFNβ:Abcam(ab151605);抗mIL7:Thermo Scientific(PA5-46944))および二次抗体と共にインキュベートした。二次抗体のインキュベーションの前と後に膜を洗浄した(1×PBS-T)。Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration Substrate(Thermo Fisher Scientific)、またはTrident femto Western HRP Substrate(Gene Tex)の添加後に発生した化学発光シグナルを、LAS 4000システム(GE Healthcare)を使用して記録した。発現されたサイトカインの生物学的活性を適切な活性アッセイによって試験した。mIL2およびmIL15sushiの活性を、マウスCTLL-2細胞(マウスC57b1/6 T細胞、Sigma-Aldrich)のサイトカイン依存性増殖を分析することによってアッセイした(図1C図2C)。CTLL-2増殖を、それぞれのサイトカインmRNAの発現後またはAlbのみをコードするmRNAの発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下でのCTLL-2培養時に、2つのサイトカインのいずれかに依存して観測した。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用して、72時間のそれぞれの処理後に細胞の量を測定した。組換えヒト(h)IL2およびIL15sushiタンパク質を対照として使用した。mIL7をコードするmRNAの発現後に採取したHEK-293T-17上清の存在下での培養時に、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した抗CD3活性化PBMC集団においてCD4+T細胞増殖を誘導する能力を分析することによって、mIL7をコードするmRNAの生物学的活性を試験した(図3C)。T細胞の増殖を、抗CD4-PEおよび抗CD8-PE-Cy7染色後にフローサイトメトリを使用したCFSEモニタリングによって分析した。組換えmIL7タンパク質を対照として使用した。マウスのIFNβ部分を有するmRNAの生物学的活性を、マウス大腸癌細胞(CT26)でMHCクラスI発現を上方制御する、それぞれ発現されたタンパク質産物の能力を調へることによって確認した(図4C)。mIFNβをコードするmRNAの発現後に採取したHEK293T-17上清の存在下でCT26細胞を培養した。組換えmIFNβを対照として使用した。処理の前後のCT26細胞上のMHCクラスIの表面レベルを、FITC結合H2-K抗体によるMHCクラスI染色およびその後のフローサイトメトリ分析によって評価した。製造者のプロトコルに従ってNano-Glo Luciferase Assay System(Promega)を使用して、sec-nLUCをコードするmRNAの24時間の発現後に、HEK-293T-17の上清中でsec-nLUCの発現および得られた遺伝子産物のルシフェラーゼ活性を測定した(図4D)。mRNAの非存在下でリポフェクトしたHEK-293T-17(モック)の上清を対照として使用した。
【0239】
実施例2:アルブミンに融合し、ヌクレオシド修飾mRNA上にコードされたサイトカインの全身アベイラビリティ。
アルブミン融合サイトカインと比較した未改変サイトカインの全身バイオアベイラビリティの強度と持続時間を、血液循環中のサイトカインレベルを測定することによって検討した。雌性C57BL/6(9週齢)(群および時点あたりn=3匹のマウス)をEnvigoから購入し、TransIT(Mirrus)を用いて製剤化した3μgの未改変またはmAlb融合タンパク質をコードするmRNAを静脈内(i.v.)注射した。マウスに、mIL2もしくはmAlbに融合したmIL2(mAlb-mIL2)、マウスインターフェロンβ(mIFNβ)もしくはmAlbに融合したmIFNβ(mIFNβ-mAlb)、mIFNβに結合したmIL2(mIFNβ-mIL2)もしくはmIFNβに結合し、mAlbに融合したmIL2(mIFNβ-mAlb-mIL2)、またはmAlbのみをコードする対照mRNAを投与した。注射後6、24および48時間目ならびに5日目に血液を採取し、血清を調製した。450nmでの光学密度を、製造者の指示に従って標準的なELISAキット(Biolegend,PBL Assay Science)によって測定し、Infinite M200プレートリーダ(Tecan)を使用して基質活性を測定した。図5に示すように、mAlbのmIL2またはmIFNβへの融合は、全身アベイラビリティを高め、延長する。mAlbとIFNβおよびmIL2の二重融合物は、mIL2の存在を増強しないが、循環中のより多量のmIFNβを促進する。
【0240】
実施例3:mAlb-mIL2による脾臓における免疫細胞サブセットの拡大。
免疫細胞サブセットの組成に対する、延長されたサイトカイン、特にmIL2のアベイラビリティの影響を、主要な免疫関連器官として脾臓において決定した。実施例2に記載された実験設定に従って、mRNA注射の5日後に脾臓を採取し、重さを量り、細胞ストレーナおよび赤血球の低張溶解によって器官をすりつぶして単細胞懸濁液を調製した。フローサイトメトリによる単一細胞分析のために、固定可能な生存性色素(Ebioscience)を使用して5×10の脾細胞を2~8℃で15分間、生存性について染色し、続いてCD8、CD19、CD25およびNK1.1(すべてBD Biosciences)ならびにCD4(Biolegend)に特異的な抗体を使用してT、BおよびNK細胞を2~8℃で30分間染色した。絶対細胞数を決定するために、細胞をTrucount(登録商標)チューブ(BD Biosciences)に移した。フローサイトメトリデータをFACSCanto IIフローサイトメータ(BD Biosciences)で取得し、FlowJo 7.6.5ソフトウェア(Tree Star)で分析した。免疫細胞サブセットは、ダブレットおよび死細胞を除外し、その後のNK1.1+CD19-(NK細胞)、NK1.1-CD19+(B細胞)、NK1.1-CD19-CD8+(CD8+T細胞)、NK1.1-CD19-CD4+(CD4+T細胞)、およびNK1.1-CD19-CD4+CD25+(CD4+CD25+T細胞)のゲーティングによって決定した。ゲート内の細胞を、それらの細胞数を同じ試料で測定されたTrucount(登録商標)ビーズの数に関連付けることによって定量化した。GraphPad Prism 7を使用して結果を描画し、統計(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定)を分析した。図6Aでは、脾臓あたりの絶対細胞数を視覚化しており、図6Bは脾臓の重量を示す(平均±平均の標準誤差(s.e.m.))。mAlbのmIL2への融合物は、mAlbに比べてCD4+T細胞、CD4+CD25+T細胞、CD8+T細胞、B細胞およびNK細胞を有意に拡大することができたが、一方、未改変のmIL2は細胞数を増加させたが、その差は有意ではなかった。予想されたように、マウスIFN-β(mIFNβ)もmIFNβ-mAlbも、これらの細胞サブセットの増殖を誘導しなかった。当然のことながら、mIFNβのmIL2への融合物は、細胞サブセットの中間的な拡大をもたらし、mIFNβはmIL2およびmAlb-mIL2の両方の増殖能力を制限した。これに対応して、脾臓は、mAlb-mIL2で処置した群では高度に拡大し、mIFNβ-mAlb-mIL2で処置した群ではより小さな程度に拡大したが、有意ではなかった。
【0241】
実施例4:脾臓における免疫細胞サブセットの活性化
抗原に加えて適切な刺激環境を提供することは、堅固で長続きするT細胞免疫を開始するための1つの重要な前提条件である。我々は以前に、I型IFN(IFNαおよびIFNβ)が、IFNα/β受容体(IFNAR)を介したオートクリンまたはパラクリンシグナル伝達によって脾臓免疫細胞サブセットを活性化することができ(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))、抗原提示樹状細胞(DC)およびエフェクタ細胞に一連の活性化マーカを選択的に上方制御させることを示した。mIFNβの存在の増加によって媒介されるマーカ発現の変化を測定するために、実施例2に記載されている実験からの未改変またはアルブミン融合サイトカインの注射の24時間後に得られた脾細胞を、固定可能な生存性色素(Ebioscience)を使用して2~8℃で15分間、生存性について染色し、続いてCD11c(Miltenyi)、CD11b、CD3、CD40、CD69、NK1.1(すべてBD Biosciences)およびCD86(Biolegend)に特異的な抗体を用いてDC、NKおよびT細胞を染色した。フローサイトメトリデータをFACSCanto IIフローサイトメータ(BD Biosciences)で取得し、FlowJo 7.6.5ソフトウェア(Tree Star)で分析した。免疫細胞サブセットを、ダブレットおよび死細胞を除外し、その後のNK1.1+CD3-(NK細胞)、NK1.1-CD3+(T細胞)、およびNK1.1-CD3-CD11c+CD11bint(DC)のゲーティングによって決定した。GraphPad Prism 6を使用して結果を描画し、統計(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定)を分析した。図7に示すように、mIFNβを含むすべてのmRNAにコードされたタンパク質は、DC上の活性化マーカCD40、CD69およびCD86の類似で有意な上方制御を誘導することができた。mIFNβおよびmIFNβ-mAlbは、mIFNβ-mIL2またはmIFNβ-mAlb-mIL2と比較して、NKおよびT細胞上でのCD69発現の媒介において優れていた。
【0242】
実施例5:mAlbとの融合による血液、腫瘍および腫瘍排出リンパ節におけるタンパク質アベイラビリティの延長。
サイトカインのmAlbへの融合がどのように生体内分布を変化させ、特に腫瘍組織および腫瘍排出リンパ節でのアベイラビリティを変化させたかを視覚化するために、NanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ(sec-nLUC)の分泌変異体をmAlbに融合するかまたは融合せず、ヌクレオシド修飾mRNAにコードした。酸素の存在下で、その基質であるフリマジンは、フリマミド、二酸化炭素および光に変換され、後者は、従来のルミネセンスリーダによって測定することができる。雌性BALB/c(6~9週間齢)マウス(群および時点あたりn=3匹のマウス)をJanvier Labsから購入し、100μl PBS中の5×10 CT26腫瘍細胞(ATCC CRL-2638ロット番号58494154)を右側腹部に皮下(s.c.)注射した。24日目に、マウスを、すべてTransIT(Mirrus)で製剤化した3μgのsec-nLUC、mAlbに融合したsec-nLUC(sec-nLUC-mAlb)でi.v.処置するかまたは未処置のままにした(対照)。注射後2、6、24、48および72時間目に血液を採取し、血清を調製した。肝臓、腫瘍、腫瘍排出鼠径リンパ節および非腫瘍排出鼠径リンパ節を単離し、重さを量り、1.4mmおよび2.8mmのセラミックボール(Bertin Instruments)が入った2mlプラスチックチューブに移し、注射の6、24、48および72時間後に液体窒素に浸したイソペンタン中で凍結保存した。対照群を2時間目に犠死させ、この群から得たデータを時点0に使用した。組織溶解物を、-80℃で保存した試料から調製した。簡単に述べると、組織試料を20~25℃で解凍した。1×Halt(商標)Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktail(Thermo Scientific)を添加したDPBS-Buffer(Gibco)を添加し、Precellys(登録商標)24Dualホモジナイザ(Bertin Instruments)を使用して組織をホモジナイズした。溶解物を遠心分離によって清澄化し、上清を清浄な冷却したエッペンドルフチューブに移し、氷上で保存した。溶解物中のタンパク質濃度を、Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific)を製造者の指示に従って使用して測定した。その後、溶解物を液体窒素中で瞬間凍結し、-80℃で保存した。Infinite M200プレートリーダ(Tecan)を使用して、製造者の指示に従って30μgのタンパク質または50μlの血清を用いてNano-Glo(登録商標)Luciferase Assay(Promega)を実施した。生物発光強度を図8に示す。未改変sec-nLUCは、選択したどの時点でもほとんどまたは全く検出されなかった。しかし、mAlbの融合は、全身(血清)および腫瘍内のアベイラビリティを高め、延長させて、注射後72時間でも高レベルのレポータタンパク質がまだ存在した。同様に、mAlbとの融合は、腫瘍排出リンパ節におけるタンパク質の蓄積をもたらした。肝臓での発現は、増加されるのではなく主に延長された。標的器官におけるmAlbの存在は最初は無関係であると考えられる;注入されたmRNAの翻訳の程度は、製剤およびそのトランスフェクション率のみに依存するが、mAlbは、翻訳されたタンパク質を安定化し、末梢での高いアベイラビリティを保証する。
【0243】
実施例6:mRNAワクチン接種およびPD-L1遮断と組み合わせたアルブミン融合サイトカインの治療効果。
選択したサイトカインアルブミン融合構築物の治療効果をマウス大腸癌モデルCT26で試験した。6~9週齢のBALB/cマウスをJanvier Labsから購入し、200μl PBS s.c中の5×10 CT26腫瘍細胞(ATCC CRL-2638ロット番号58494154)を右側腹部に皮下注射した。10日後、マウスをgp70 mRNAリポプレックス(RNA-LPX)(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))ワクチン接種(20μg i.v.)および抗PD-L1ブロッキング抗体(クローン6E11、mIgG2A、L234A、L235A、P329G;Genentech;最初の処置時は腹腔内(i.p.)に200μg、2回目から最後の処置までは100μg i.p.)で処置した。各ワクチン接種/抗体処置の2日後、TransIT(Mirrus)に製剤化した1μgのアルブミン融合タンパク質をコードするmRNAを静脈内注射した。マウスに、マウスインターロイキン-2に融合したアルブミン(mAlb-IL2)、マウスインターフェロンβに融合したアルブミン(mIFNβ-mAlb)、インターフェロンβと結合したインターロイキン-2に融合したアルブミン(mIFNβ-mAlb-mIL2)、マウスインターロイキン-7に融合したアルブミン(mIL7-mAlb)、インターロイキン-15受容体αに融合したマウスインターロイキン-15に融合したアルブミン(mIL15sushi-mAlb)、またはマウスアルブミンのみをコードする対照mRNA(mAlb)を投与した。図9の上のパネルに示すように、処置スケジュールを毎週繰り返した。腫瘍体積をキャリパーで2また3日ごとに測定し、式(A×B)/2(Aは腫瘍の最大径、Bは腫瘍の最小径)を使用して計算し、GraphPad Prism 6を使用して描画した。図9に示すように、構築物mAlb-IL2、mIFNβ-mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、ワクチン接種およびPD-L1遮断の治療効果を高め、それぞれ63%、50%および75%のマウスで腫瘍拒絶をもたらすことができた。
【0244】
実施例7:ワクチン誘導T細胞の存在率に対するサイトカインアルブミン融合物の影響
次に、融合タンパク質をコードするmRNAの注射が、CT26腫瘍に特異的なワクチン誘導性T細胞応答を促進するかどうかを分析した。図9に示したCT26-WT腫瘍担持マウスを、最初の処置の7日後(腫瘍接種後17日目)の血液中のgp70 AH1四量体+CD8+T細胞についてフローサイトメトリによって分析した。このために、マウスの末梢血を眼窩洞から採取した。50μlの血液を、H-2Ld/AH1423-431(SPSYVYHQF)四量体(MBL)とCD45およびCD8(BD)に特異的な抗体を用いて2~8℃で30分間染色した。溶解液(BD FACS(商標))を使用して血液を溶解した。絶対細胞数を決定するために、細胞をTrucount(登録商標)チューブ(BD)に移した。FACSCanto IIまたはFACSCelestaフローサイトメータ(両方ともBD Biosciences)でフローサイトメトリデータを取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。Gp70 AH1特異的T細胞を、CD45+CD8+四量体+リンパ球をゲーティングすることによって定量化した。ゲート内の細胞を、それらの細胞数を同じ試料で測定されたTrucount(登録商標)ビーズの数に関連付けることによって定量化した。GraphPad Prism 6を使用して結果を描画し、統計(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定)を分析した。図10には、血液1μlあたりの絶対数(左)およびCD8+T細胞中の四量体+細胞のフラクションの割合(右)を示している(平均±平均の標準誤差(s.e.m.))。mAlb-IL2投与は、非常に迅速に最初のワクチン接種の7日後に、gp70特異的T細胞数および頻度を有意に数倍高めることができた。図11に示すように、反応速度はより緩やかであるが、mIFNβ-mAlb-mIL2、mIL7-mAlbおよびmIL15sushi-mAlbも、経時的にgp70特異的T細胞数を増加させることができた。図11に示す測定は、図10について説明したのと同様に実施した。注目すべきことに、図12に示すように、mAlb-IL2のみが、非特異的四量体陰性CD8+T細胞よりも特にgp70特異的T細胞数を増加させた(平均±s.e.m.)。mIFNβ-mAlb-mIL2、mIL7-mAlbおよびmIL15sushi-mAlbは、四量体陰性および四量体陽性細胞を同程度に増加させた。一元配置分散分析とそれに続くSidakの多重比較検定を使用して、図12の統計的有意性を決定した。各測定日の腫瘍サイズに対して血液1μlあたりの四量体陽性細胞の数をプロットすると、統計的に有意な(spearmanの順位相関係数)負の相関を示す(図13)。これは、gp70腫瘍抗原特異的T細胞の数が多いほど、より少ない腫瘍体積、すなわち腫瘍制御の改善をもたらすことを示す。
【0245】
実施例8:制御性T細胞の存在率に対するサイトカインアルブミン融合物の影響
IL2は、エフェクタT細胞の機能と増殖を支持することに加えて、制御性T細胞(Treg)の公知の誘導因子である。Tregは、抗腫瘍CD8+およびCD4+T細胞の機能を抑制することが公知のCD4+T細胞のサブセットである(Nishikawa,H.&Sakaguchi,S.,Curr.Opin.Immunol.27,1-7(2014))。続いて、サイトカインアルブミン融合物をコードするmRNAがCD4+T細胞の数を変化させるかどうか、およびそれらの中で望ましくないTregの割合を変化させるかどうかを試験した。図9のマウスの末梢血を、腫瘍接種の31日後に眼窩洞から採取した。50μlの血液を、CD45、CD8(BD)、CD25およびCD4(eBioscience)に特異的な抗体を用いて2~8℃で30分間染色した。次に、溶解液(BD FACS(商標))を使用して血液を溶解した。FoxP3の細胞内染色のために、eBioscienceの固定化/透過化緩衝液(Foxp3/転写因子染色緩衝液セット)を使用した。透過処理後、FoxP3(eBioscience)特異的抗体を2~8℃で30分間添加した。Trucount(登録商標)チューブ(BD)を使用して絶対細胞数を決定した。FFACSCelestaフローサイトメータ(BD Biosciences)でフローサイトメトリデータを取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。GraphPad Prism 6を使用して結果を描画し、統計(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定)を分析した。血液1μlあたりのCD4+T細胞の数は、mIL7-mAlbによって有意に増加した(図14、左)。mAlb-IL2群では、わずかな有意でない増加のみが観察された。他のすべての群は、mAlb対照群と同様のCD4 T細胞レベルを示した。予想されたように、mAlb-IL2はCD25+FoxP3+CD4+Tregの割合を有意に増加させた(図14、右)。重要な点として、mIL7-mAlbはTregの割合を減らすことができた。同様に、mIL7-mAlbはCD4+T細胞数を強力に増加させ、Tregの割合を減少させるので、エフェクタT細胞の割合が増加すると想定できる。注目すべきことに、IFNβをmAlb-IL2に結合すると(mIFNβ-mAlb-mIL2)、Tregの頻度をベースラインレベルに正常化することができた。
【0246】
実施例9:長命のCD127+記憶前駆細胞の割合に対するサイトカインアルブミン融合物の影響
抗原特異的T細胞は、KLRG-1+、CD127-短命エフェクタT細胞(SLEC)および記憶T細胞の前駆体である長命CD127+T細胞に細分することができる(Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-1198(2003);Joshi,N.S.et al.Immunity 27,281-295(2007))。どちらのサブセットも同等の細胞傷害性を示すが、生存能力が異なる(Yuzefpolskiy,Y.,Baumann,F.M.,Kalia,V.&Sarkar,S.Cell.Mol.Immunol.12,400-408(2015))。CD127+T細胞は、KLRG-、CD127+のいわゆる記憶前駆エフェクタ細胞(MPEC)と、これまでに特徴付けられていないKLRG+、CD127+T細胞に細分することができる。後者は、数回増殖したか、またはKLRG-、CD127+MPECへの移行段階のMPECであり得る。
【0247】
我々は、アルブミンサイトカイン融合タンパク質が記憶前駆T細胞とSLECの比率を変化させるかどうかに関心があった。例えば、IL2とIL7は、それぞれT細胞の生存と記憶形成に重要な役割を果たすことが示されている(Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003);Kaech,S.M.et al.Nat.Immunol.4,1191-1198(2003);Fry,T.J.&Mackall,C.L.Blood 99,3892-3904(2002);Palmer,M.J.et al.Cell.Mol.Immunol.5,79-89(2008))。腫瘍接種の31日後、図9に示すマウスの血液を、gp70 AH1四量体+CD8+T細胞上のKLRG1およびCD127の発現について分析した。フローサイトメトリ分析のための血液の染色を、実施例7に記載されているように実施した。二元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定を使用して、T細胞サブタイプの割合の有意差を決定した。SLEC画分は、mIFNβ-mAlbを除くすべての構築物で有意に減少した(図15)。SLECの最も強力な減少は、mAlb-IL2およびIL7-mAlb処置後に達成された。IL7-mAlbのみが、KLRG-、CD127+MPECを有意に増加させることができた。KLRG+、CD127+細胞は、mAlb-mIL2、mIFNβ-mAlb-mIL2およびIL7-mAlbを投与された群で有意に増加した。重要な点として、gp70特異的SLEC細胞の割合は腫瘍サイズと正の相関があった(図16A)。対照的に、CD127(IL7受容体)陽性のgp70特異的T細胞のより高い割合は、より小さな腫瘍サイズと強く相関した(図16B)。
【0248】
実施例10:mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbとmRNAワクチン接種およびPD-L1遮断との組合せは、完全な腫瘍根絶をもたらす。
mAlb-mIL2およびIL7-mAlb構築物はどちらも、独自の長所を有していた。mAlb-mIL2は、高い抗原特異的T細胞数を非常に早く(図10)、選択的に(図12)達成したが、加えてTregの頻度を増加させた(図14、右)。しかし、IL7-mAlbは、CD4+エフェクタT細胞を強力に増加させ、Tregの割合を減少させ(図14)、CD127+記憶前駆T細胞の支持に特に有効であった。したがって、両方の構築物との併用処置が抗腫瘍効果を相乗的に高め得ると結論付けた。
【0249】
実施例6に記載されているように、BALB/cマウスに、200μl PBS中の5×10 CT26腫瘍細胞を右側腹部に皮下注射した。図9と比較して、より大きな腫瘍を得るために13日目に処置を開始した。再び、マウスにgp70 RNA-LPXおよび抗PD-L1遮断抗体の注射を毎週行った。2日後、Alb-mIL2、mIL7-mAlbまたはその両方(各1μg)をコードするヌクレオシド修飾mRNAを投与した(図17、上のパネル)。Alb-mIL2およびmIL7-mAlbの両方の処置群が、対照群(mAlb)と比較して腫瘍増殖の低下を示した。対照群の18%とは対照的に、Alb-mIL2は55%のマウスで、mIL7-mAlbは36%のマウスで完全な腫瘍拒絶を誘導した。驚くべきことに、Alb-mIL2とmIL7-mAlbの組合せは、100%のマウスで完全な腫瘍拒絶を生じさせた(図17)。
【0250】
実施例11:mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、長期持続性ワクチンが誘導するT細胞応答の増強において相乗作用する
実施例7および実施例9に記載されているように、図17に示すマウスの血液を、腫瘍接種後19、27および34日目にフローサイトメトリによってgp70 AH1四量体+CD8+T細胞(図18a)ならびにそれらのKLRG1およびCD127の発現(図18b)について分析した。図10および図11におけるように、Alb-mIL2処置は抗原特異的T細胞数を非常に早く増加させた。Alb-mIL2とmIL7-mAlbはどちらも、mAlb対照よりも抗原特異的T細胞の数を増加させた。Alb-mIL2とmIL7-mAlbの組合せは、特により後の時点で、最も高い抗原特異的T細胞数を誘導した(図18A)。同様に、SLECの最も強力な減少とCD127+gp70特異的T細胞の増加が、腫瘍接種後34日目に併用群で観察された(図18b)。
【0251】
実施例12:mIL7-mAlbは、mALb-mIL2によって増加した制御性T細胞数を正常化する。
図14の結果に基づいて、mIL7-mAlbはAlb-mIL2によって増加する制御性T細胞の割合を減らすことができると仮定した。実施例8に記載されているように、図17に示すマウスの血液中のgp70特異的T細胞を、57日目にCD4+CD25+FoxP3+T細胞の割合について分析した。やはり、Tregの頻度はAlb-mIL2によって有意に増加し、mIL7-mAlbによって減少した。仮定したように、両方の組合せは、mAlb対照と同様のTreg頻度をもたらした(図19)。
【0252】
実施例13:構築物の設計および検証
構築物の設計およびmRNAの作製
以下の実施例で使用される構築物は、実施例1に記載されるように設計し、mRNAを生成した。マウスインターロイキン-12のコード配列を、39ヌクレオチド長のエラスチンリンカーによって分離された2つのサブユニットp40とp35の間の融合タンパク質としてクローニングした。
【0253】
構築物の検証
生成されたmRNAからのサイトカイン発現とmIL12の生物学的活性を、それぞれのmRNAのHEK-293T-17細胞へのリポフェクション、およびその後のHEK-Blue IL12細胞(Invivogen)を使用した上清のmIL12活性の分析によって制御した。ここで、250ng mRNA/μlのLipofectamine MessengerMaxを複合体化し、約80%の集密度のHEK-293T-17細胞のリポフェクションのために1cmの培養皿ごとに使用した。上清を無菌条件下で24時間の発現後に収集し、さらに使用するまで80℃で保存した。mIL12をコードするmRNAの生物学的活性を、製造者のプロトコルに従ってHEK-Blue IL12細胞(Invivogen)を使用して試験した。これらの細胞はIL12R(IL12受容体)を発現し、IL12のIL12Rへの結合は、STAT4誘導性の分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポータ遺伝子の発現を誘導する。HEK-Blue IL12細胞を上記のHEK-293T-17上清の存在下で24時間培養した。組換えヒトIL12を対照として使用し、Infinite 200装置(Tecan)を使用してアルカリホスファターゼの存在を決定した。mIL12のみを含む上清とmAlbに融合したmIL12を含む上清でのレポータ遺伝子SEAPの発現の増加は、これらの構築物の生物学的活性が組換えタンパク質と同様であることを確認した(図20)。
【0254】
実施例14:リンパ組織常在DCにおけるmRNAにコードされたタンパク質の選択的翻訳。
抗原特異的免疫の誘導のために、抗原提示はリンパ組織、特に抗原提示DCで行われる必要がある。しかし、抗原送達だけでは十分な免疫応答を開始するには不十分であるが、病原性の脅威の性質に応じてT細胞応答を調節するにはサイトカインが存在する必要がある。IL12などのサイトカインは、高度に増殖するT細胞とIFNγの産生を特徴とするTh1免疫を強力に促進する。T細胞のプライミング中、そのような強力なサイトカインの発現は厳しく制御されており、全身的な有害作用を回避するために、外因性の供給を関心対象の微小環境に限定する必要がある。そのようなサイトカインをそれらの生理的機能に応じて送達するために、抗原をコードするmRNAの翻訳をリンパ系組織、特にDCのみに指令する製剤の開発を目指した。
【0255】
我々は、わずかに負に帯電したリポソームmRNA製剤が、脾臓、リンパ節および骨髄のDCを特異的にトランスフェクトするのに最も適することを見出した。インビボでこの製剤によって送達された抗原発現の生体内分布を視覚化するために、6~9週齢のBALB/cマウス(群あたりn=5、Janvier Labsから購入)に20μgのLUCをコードするRNA-LPXまたはLUC mRNA単独を静脈内(i.v.)注射し、注射の6時間後に、Xenogen IVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を使用したインビボイメージングによって生物発光を測定した(エクスビボリンパ節および骨髄イメージング:100μgのLUC RNA-LPXのi.v.注射の24時間後)。簡単に述べると、D-ルシフェリンの水溶液(250μl、1.6mg、BD Biosciences)を腹腔内(i.p.)注射し、10分後に生存動物または抽出した組織の放出光子を露光時間1分で定量化した。関心領域(ROI)を平均放射輝度(光子/秒/cm/sr、カラーバーで表される)として定量化した(IVIS Living Image 4.0)。図21Aに示すように、RNA-LPXとして製剤化し、i.v.注射した場合、LUC mRNAはもっぱらリンパ組織、主に脾臓で翻訳されたが、鼠径リンパ節、大腿骨および脛骨でも翻訳された(図21B)。裸のmRNAの翻訳は、血管系に入ると急速に分解するため、これらの組織のいずれにおいても、また他の組織においても検出されなかった。
【0256】
製剤化されたmRNAの細胞標的としてCD11cDCを確認するために、CD11cDTRマウスでCD11cAPCを枯渇させた。CD11c細胞の枯渇のために、CD11cDTRマウス(群あたりn=3)に、100μgのLUC RNA-LPXを投与する12時間前に、200μl PBSで希釈した4ng/g体重のジフテリア毒素(DT)を腹腔内投与した(CD11cDTR細胞の枯渇効率:>97.2%)。CD11c細胞の枯渇は特異的であり、他の細胞は影響を受けなかった。上記のように、注射の6時間後にインビボで脾臓および鼠径リンパ節の生物発光を定量化した。骨髄単細胞懸濁液の生物発光をエクスビボLUCアッセイによって定量化した。単細胞懸濁液は、注射の6時間後にマウスの大腿骨と脛骨の骨髄から調製し、5×10細胞を96ウェルのNunc白色プレート(Thermo Scientific)にプレーティングした。細胞懸濁液を等量のBright-Gloルシフェリン試薬(Promega)で処理し、マイクロプレートシェーカで3分間インキュベートし、Infinite M200プレートリーダ(Tecan)を使用して積分時間1秒で生物発光を測定した。未処置マウスから得た細胞で測定されたバックグラウンド発光は、1秒あたり15±5カウント(cps)の範囲内であった。図21Cに示すように、CD11c+細胞のアブレーションは、脾臓、外植した鼠径リンパ節および骨髄でLUCシグナルの有意の減少を生じさせ、RNA-LPXとして製剤化されたmRNAの標的細胞としてCD11c+DCを強く指し示した。
【0257】
実施例15:特に肝臓における製剤化されたmRNAの翻訳。
IL2またはIL7などのサイトカインがその生理学的機能、すなわちT細胞の増殖と維持の誘導を実行するためには、全身アベイラビリティが鍵となる。タンパク質プロデューサのプールとしての肝細胞のトランスフェクションのためにサイトカインをコードするmRNAを肝臓に標的化することは、ポリマー/脂質製剤で製剤化されたmRNAの静脈内注射によって達成された。肝臓におけるmRNAにコードされたタンパク質の選択的で高い発現を確認するために、BALB/cマウスに5μgのポリマー/脂質製剤化LUC mRNA(n=3)またはポリマー/脂質(TransIT)単独(n=2)を静脈内注射し、実施例14に記載されているように、注射の6、24、48、96および120時間後にインビボイメージングによって生物発光を測定した。図22に示すように、生物発光はすべての時点で肝臓においてのみ検出された。驚くべきことに、翻訳された活性タンパク質は、注射後120時間まで検出可能であった。強力な肝臓トランスフェクションの結果として、血液、腫瘍および腫瘍排出リンパ節におけるタンパク質のアベイラビリティが増強および延長することは、実施例2および実施例5に記載されている。
【0258】
実施例16:肝臓を標的とするサイトカイン産生と比較して、二次リンパ器官を標的とする、mIL15をコードするRNAの高い有効性と低い毒性。
IL15およびIL12のような特定のサイトカインは、全身投与された場合非常に毒性である。この毒性は、例えば胃腸および肝臓機能障害を媒介する二次IFNγ放出に大きく依存することが公知である(Guo,Y.et al.J.Immunol.195,2353-64(2015);Car,B.D.,Eng,V.M.,Lipman,J.M.&Anderson,T.D.Toxicol.Pathol.27,58-63)。しかし、それらの治療効果は、二次リンパ組織において最も一般的であるNK細胞、T細胞およびDCなどの免疫細胞サブタイプの活性化に依存する。
【0259】
mIL15を二次リンパ器官に標的化することは、治療効果を保持しつつ、全身毒性を減少させるはずであると仮定した。これを試験するために、6~9週齢のBALB/c(群あたりn=5、Janvier Labsから購入)に200μlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の4×10 CT26-B2MKO結腸癌細胞を静脈内接種した。CT26-B2MKO細胞はMHCクラスIの表面発現を欠いており、mIL15によって活性化され得るNK細胞による認識の改善をもたらす。腫瘍接種の4日後および7日後に、マウスを、RNA-LPXによって二次リンパ器官(40μg RNA-LPX i.v.)(実施例14に記載されたように)または肝臓(TransIT(Mirrus)に製剤化した3μg RNA i.v.)(実施例15に記載されたように)のいずれかに送達されるmIL15 RNA(マウスインターロイキン-15受容体α鎖に融合したマウスインターロイキン-15)で処置した。腫瘍接種の12日後、肺を青色インクで染色し、フェケテ溶液で固定し、腫瘍結節を他の場所で説明されているように計数した(Kreiter,S.et al.Nature(2015)520,692-696)。仮定したように、mIL15の全身アベイラビリティをもたらす肝臓を標的とする送達は、重篤な毒性につながる。この群のすべてのマウスは、非常に低用量にもかかわらず、2回目のmRNA投与後に死亡した。対照的に、二次リンパ器官にのみ送達されるmRNAを投与されたマウスは、13回以上mRNAを投与しても生存したままであった。二次リンパ器官に送達されるmIL15 mRNAで処置されたすべてのマウスは腫瘍を有していなかったが、対照動物では最大数百までの腫瘍結節が検出された(図23)。
【0260】
実施例17:生理学的機能に従って標的化されたmIL12とmIL2の組合せによる腫瘍特異的T細胞療法および治療効果の増強
同様に、IL12の二次リンパ器官への標的化は、堅固な治療効果を示しながら、耐容できる毒性をもたらすと仮定した。IL12は、T細胞のプライミング中にDCによって放出され、ナイーブT細胞のCD4+またはCD8+T細胞の抗腫瘍性または抗ウイルス性Th1型への分化を媒介する重要なサイトカインである。この理由から、IL12は、二次リンパ器官に送達された場合、特にT細胞ワクチンの効果を増強するはずである。関心対象のもう1つのサイトカインであるIL2は、T細胞プライミング中のリンパ組織だけでなく、二次リンパ器官を離れて新たにプライミングされたT細胞の増殖を促進する末梢で選択的にその生理学的機能を発揮し、腫瘍微小環境での機能維持を促進する。これら2つのサイトカインについて得られた時空間要件を念頭に置いて、mRNAワクチン接種およびチェックポイント遮断の状況で、mIL12のリンパ組織への送達と、mIL2のわずかに遅れた全身送達とを組み合わせることを意図した。Envigoから購入したC57BL/6マウス(群あたりn=11)に、100μl PBS中の3×10 B16F10黒色腫細胞(ATCC)を皮下接種した。腫瘍接種の8日後、マウスを腫瘍サイズに従って層別化し、10μgの分化抗原チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2180-188)および10μgのMHCクラスII拘束性ネオ抗原B16_M30を含むRNA-LPXベースのT細胞ワクチンi.v.、または無関係なmRNA(20μgの挿入物のないワクチン骨格)のいずれかを投与した。すべてのマウスに200μl PBS 中の200μg(100μgでの連続処置)の抗PD-L1抗体(クローン6E11、mIgG2A、L234A、L235A、P329G;Genentech)を腹腔内投与した。マウスに、RNA-LPXとして送達される(二次リンパ器官に送達)3μg(4回目の処置からは1μg)のmIL12 mRNAまたは無関係なmRNAを静脈内に同時注射した。およそ48時間後、mIL2-mAlbをコードする1μgのmRNA、またはTransITを用いて製剤化した1μgのmAlb対照(全身アベイラビリティのために肝臓に送達)を静脈内注射した。処置スケジュールを週に1回、7週間繰り返した。IL12処置は免疫療法を強く改善し、60日間超にわたってマウスの80%の生存をもたらした(図24A)。mIL12またはmIL2のいずれかを除いた場合、それぞれマウスの45%または64%のみが60日目まで生存した。この時点で、PD-L1抗体と組み合わせた対照mRNAを投与された対照マウスの9%のみが生存していた。さらに、PD-L1抗体およびmAlb-mIL2と組み合わせたmIL12、mIL12単独またはmAlb-mIL2単独を含むmRNAワクチン接種を受けたマウスの大部分は、白斑の徴候、すなわち処置に起因したTRP-2含有細胞に対する強力な自己免疫の結果としての眼の周囲の毛皮の色素沈着の喪失を示した(図24B)。倫理上の理由により、耐容できない毒性を示すために肝臓に送達されるIL12の投与を試験する対照群は、この実験には加えなかった。
【0261】
【表1】
【表2】
【表3】
【0262】
実施例18:二次リンパ器官ではなく肝臓を標的とするmAlb-mIL2は、ワクチン誘導性T細胞応答を容易に増加させる。
実施例16および17で観察されるように、二次リンパ器官へのサイトカインRNAの標的化は、強力な治療効果を有することができ、IL12などの特定のサイトカインの毒性を減少させることができる。しかし、他のサイトカイン、例えばIL2およびIL7については、腫瘍抗原特異的T細胞に対する強力で長期的な効果のためには高い量のサイトカインの全身アベイラビリティが必要である。この理由から、TransITで送達されたまたはRNA-LPXとして製剤化されたmAlb-mIL2 RNAの、gp70特異的T細胞の数に対する効果を比較した。BALB/cマウス(n=5)を、0日目と7日目にgp70 RNA-LPXワクチン接種(20μg i.v.)と抗PD-L1ブロッキング抗体(100μg i.p.)で処置し、2日後にTransIT中でまたはRNA-LPXとして、mAlb-mIL2をコードする1μgのmRNAを投与した。実施例6に記載されるように、Gp70特異的T細胞応答を血液中で測定した。図25に示すように、肝臓を標的とするmAlb-mIL2(mAlb-mIL2(TransIT))のみが、最初のワクチン接種(左)または2回目のワクチン接種(右)の7日後にgp70特異的CD8T細胞応答を有意に増加させることができたが、二次リンパ器官を標的とするmAlb-mIL2(mAlb-mIL2(RNA-LPX))は、有意に増加させることができなかった。
【0263】
実施例19:構築物の設計および検証
構築物の設計およびmRNAの作製
実施例1に従って、ヒトサイトカインをコードするmRNAのインビトロ転写のためのDNAプラスミド構築物を設計した。サイトカインとAlbをコードする配列はヒト(Homo sapiens)に由来し、得られたアミノ酸配列に変化は導入されなかった(hIL2:NP_000577.2;hIL7:NP_000871.1;NCBIタンパク質リソース;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/)。hAlbをサイトカインのN末端またはC末端のいずれかに付加した。実施例1に記載されるように、mRNAをインビトロ転写によって生成し、キャップし、精製した。
【0264】
構築物の検証
生成したmRNAからのサイトカイン発現を、HEK-293T-17細胞へのmRNAのリポフェクション、および得られた上清の酵素免疫測定法(ELISA)を使用したその後の分析によって分析した。リポフェクションの1日前に、1.2×10個のHEK-293T-17細胞を、6ウェルプレート中の3mL DMEM(Life Technologies GmbH、カタログ番号31966-021)+10%ウシ胎仔血清(FBS、Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)に播種した。リポフェクションのために、3μgのmRNAを無菌のRNアーゼ不含条件下で、Lipofectamine MessengerMax(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号LMRNA015)1μLあたり400ng mRNAを使用して製剤化し、10cmの培養皿ごとに約80%の集密度でHEK-293T-17細胞に適用した。20時間の発現後、無細胞上清を無菌条件下で収集し、さらに使用するまで-20℃で保存した。細胞培養上清中のhIL2サイトカインの存在を、組換えヒトCD25へのhAlb-hIL2およびhIL2-hAlbの結合をELISAで分析することによって決定した。ここで、1μg/mLの組換えヒトCD25(C-Fc、Novoproteinカタログ番号CJ78)を、100μL DPBS中で高タンパク質結合96ウェルプレート(Nunc MaxiSorp(商標)、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号439454)に被覆した。hIL2を含有する上清を被覆したCD25に1:4希釈で適用し、結合タンパク質をHRP結合抗ヒト血清アルブミン抗体(Abcam、カタログ番号ab8941)によって検出した。一般的なELISA試薬と手順を、DuoSet ELISA Ancillary Reagent Kit2(R&D Systems、カタログ番号DY008)のプロトコルに従って使用した。hIL7の場合、細胞培養上清中のサイトカインレベルは、市販のHuman IL-7 DuoSet ELISA(R&D Systems、カタログ番号DY207)を製造者のプロトコルに従って使用して決定した。
【0265】
hIL2またはhIL7を含有する細胞培養上清をウェスタンブロット分析にも使用して、変性条件下で選択した構築物のサイトカイン発現を半定量的に確認した。したがって、適切なVivaSpinカラム(Sartorious AG)を使用して総タンパク質を濃縮し、Image Quant TLソフトウェア(GE Healthcare)を使用したSDS-PAGEおよびクマシー染色での試料の分離後に、著明なバンドの定量化によって濃度を評価した。ウェスタンブロット法のために、均一なタンパク質の量をSDS-PAGEによって分離し、セミドライまたはウェットブロットプロトコルでニトロセルロース膜に転写した。ブロッティング後、ニトロセルロース膜をブロックし(1xPBS-T中の5%脱脂粉乳)、続いて適切な希釈の一次抗体(抗hIL2:Abcam(ab92381)、抗hIL7:Abcam(ab193358))および二次抗体と共にインキュベートした。二次抗体のインキュベーションの前と後に膜を洗浄した(1×PBS-T)。Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration Substrate(Thermo Fisher Scientific)、またはTrident femto Western HRP Substrate(Gene Tex)の添加後に発生した化学発光シグナルを、LAS 4000システム(GE Healthcare)を使用して記録した。
【0266】
hIL2およびhIL7の生物学的活性を、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるヒトCD4+T細胞およびCD8+T細胞集団の抗原非特異的増殖のサイトカイン媒介性増強を分析することによって評価した。さらに、hIL2の生物学的活性を、CD25を高発現しているマウスCTLL-2細胞(マウスC57BL/6 T細胞株、ATCC TIB-214)のhIL2依存性増殖によって評価した。CTLL-2増殖分析のために、細胞を採取し、DPBSで2回洗浄して残留IL2を除去し、10%FBSおよび1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies GmbH、カタログ番号11360070)を添加したRPMI 1640(Life Technologies GmbH、カタログ番号61870010)に再懸濁した。合計5,000細胞/ウェルを白色96ウェル平底プレート(Fisher Scientific GmbH、カタログ番号10072151)に播種し、4倍に段階希釈したhIL2含有上清と共にインキュベートした。3日間の培養後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assay(Promega、カタログ番号G9242)を使用して、ATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。発光をTecan Infinite(登録商標)F200 PROリーダ(Tecan Deutschland GmbH)で記録し、GraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットした。ヒトT細胞の増殖を測定するために、PBMCを健常ドナーのバフィーコートからFicoll-Paque(VWR International、カタログ番号17-1440-03)密度勾配分離によって取得した。1.6μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Thermo Fisher、カタログ番号C34564)を使用してPBMCを標識した。75,000個のCFSE標識PBMCを、ウェルごとに、96ウェル丸底プレート(Costar、カタログ番号734-1797)中の5%血漿由来ヒト血清(PHS;One Lambda lnc.、カタログ番号A25761)を添加したlscoveの改変ダルベッコ培地(IMDM;Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-053)に播種し、準最適濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1;R&D Systems、カタログ番号MAB100;最終濃度0.03μg/mL)と共にインキュベートした。並行して、hIL2およびhIL7を含有する上清の4倍連続希釈液を、5%PHSを添加したIMDMで生成した。播種した細胞を上清と1:1で混合し(播種した細胞の培地の容量を参照)、37℃、5%COで4日間刺激した。hIL-7の場合、PBMCを採取し、FACS緩衝液(5%FBSおよび5mM EDTAを含有するD-PBS)ですべて1:100に希釈した以下の試薬で染色した:抗ヒトCD4-PE(TONBO Bioscience、カタログ番号50-0049)、抗ヒトCD8-PE-Cy7(TONBO Bioscience、カタログ番号60-0088)および7-AAD(Beckman Coulter、カタログ番号A07704)。フローサイトメトリ分析を、増殖読み出しとしてCFSE希釈を用いてBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメータ(Becton Dickinson)で実施した。取得した増殖データをFlowJo 10.4ソフトウェアを使用して分析し、分裂細胞%のエクスポート値を使用してGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットした。
【0267】
hCD25結合ELISAおよびhIL7 ELISAでは、両配向のhAlb-hIL2とhIL2-hAlbまたはhAlb-hIL7とhIL7-hAlbがそれぞれ比較可能なシグナルをもたらし、試験されたすべてのサイトカインが細胞培養上清中に十分に発現されたこと、および配向はサイトカイン発現に影響を及ぼさないことを示した(図26A図27A)。さらに、hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbのサイトカイン発現はウェスタンブロット分析によって確認された(図26B図27B)。hAlb-hIL2およびhIL2-hAlbは、CTLL-2細胞の増殖を誘導し、ならびにヒトCD4+およびCD8+T細胞の抗原非特異的増殖を用量依存的に増強した。両方の配向が同等に機能し、分子内のhAlbの位置はhIL2の生物学的活性に影響を及ぼさないことを示した(図26C、D)。同様に、hAlb-hIL7およびhIL7-hAlbは、ヒトCD4+およびCD8+T細胞の抗原非特異的増殖を用量依存的に増強した。2つの異なる配向は同様に機能したが、hIL7-hAlbはhAlb-hIL7よりも、有意ではないがわずかに生物学的活性が高いようであった(図27C)。これらの結果に基づいて、hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbをさらなる実験のために選択した。
【0268】
実施例20:活性タンパク質内のサイトカインおよびアルブミン部分のそれぞれの順序は、インビボでの安定性、薬物動態プロフィールまたは機能性に影響を及ぼさない。
薬物動態修飾基の位置は、サイトカインに関してN末端またはC末端に位置し得る。どちらかの位置が安定性、全身バイオアベイラビリティまたは機能性に影響を及ぼすかどうかを判定するために、ヒトIL2(hIL2)をヒトアルブミン(hAlb)のN末端(hIL2-hAlb)またはC末端(hAlb-hIL2)に融合し、血液循環中でサイトカインレベルを測定した。雌性BALB/cマウス(12~15週齢)(群および時点あたりn=3匹のマウス)をJanvier Labsから購入し、TransIT(Mirrus)を用いて製剤化した1μgのhIL2-hAlbもしくはhALb-hIL2をコードするmRNA、またはhAlbのみをコードする製剤化した対照mRNAを静脈内(i.v.)注射した。注射後6、24、48および72時間目に血液を採取し、血清を調製した。製造者の指示に従ってMESO QuickPlex SQ120装置(Meso Scale Diagnostics,LLC)でV-Plex Human IL-2キット(Meso Scale Diagnostics,LLC)を使用して、サイトカイン濃度を測定した。潜在的な機能の違いを検討するために、Tリンパ球数を、実施例3に記載されているように調製して染色した脾細胞の単細胞懸濁液のフローサイトメトリ分析によって、注射の96時間後に脾臓で決定した。フローサイトメトリデータをFACSCelestaフローサイトメータ(両方ともBD Biosciences)で取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。図28Aに示すように、2つの異なるhIL2融合タンパク質の薬物動態プロフィールは同一であり、翻訳されたタンパク質の初期レベルおよび経時的な全身アベイラビリティは非常に類似していた。Tリンパ球サブセットのCD4+、TregおよびCD8+T細胞数は、対照動物と比較して、両方のhIL2融合タンパク質で同様に拡大した(図28B)。これらのデータセットは、薬物動態修飾基、この場合はhAlbの、サイトカインに関してN末端またはC末端の位置が、適切なサイトカインの機能性に無関係であることを示す。
【0269】
実施例21:hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbとmRNAワクチン接種の組合せは、ほぼ完全な腫瘍根絶をもたらす。
実施例10において、mAlb-mIL2およびmIL7-mAlbは、特に組み合わせて適用した場合に、ワクチン誘導性抗腫瘍免疫を増強することが示された。これらの所見をヒトサイトカイン融合物で確認するために、BALB/cマウス(群あたりn=11)に、200μl PBS中の5×10 CT26腫瘍細胞を右側腹部に皮下注射し、マウスに、腫瘍接種後10日目から、20μgのgp70 RNA-LPX i.v.および脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化し、静脈内注射した(肝臓標的化)3μgのhAlb-hIL2、hIL7-hAlbまたはその2つの組合せを4週間ごとの投与でワクチン接種した。対照動物には、mRNAワクチン接種およびLNP i.v.として製剤化したhAlbを投与した。hAlb-hIL2またはhIL7-hAlbのいずれかを投与された両方の群は、対照群(hAlb)と比較して腫瘍増殖を減少および減速させ、確立された腫瘍でさえも拒絶した(図29A)。hAlb-hIL2の場合、処置下にある間、腫瘍は増殖せず、64%のマウスで高い腫瘍拒絶をもたらしたが、hIL7-hAlbで処置した場合は、18%のマウスで腫瘍が拒絶された。hAlb-hIL2とhIL7-hAlbの組合せは、マウスの対応物と極めて類似しており、対照群では生存マウスが存在しなかったのと比較して、91%のマウスで腫瘍拒絶と無腫瘍生存をもたらした(図29AおよびB)。
【0270】
実施例22:hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbは、高レベルのワクチン誘導性腫瘍特異的CD8+T細胞応答を増強および維持する。
実施例7および11に沿って、融合タンパク質をコードするmRNAのワクチン誘導性T細胞応答の拡大に対する効果を、hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbに対する応答で検討した。実施例21に記載されるCT26腫瘍担持マウスを、3回の連続処置のそれぞれ7日後(腫瘍接種後17、24および31日目)の血液中のgp70 AH1四量体+CD8+T細胞についてフローサイトメトリによって分析した。このために、実施例7に記載されているようにマウスの末梢血を収集し、gp70 AH1四量体+CD8+T細胞について染色した。フローサイトメトリデータをFACSCelestaフローサイトメータ(BD Biosciences)で取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。実施例7に記載されているように、Gp70 AH1特異的T細胞をゲーティングし、定量化した。GraphPad Prism 7を使用して統計(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの多重比較検定)を分析した。
【0271】
腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の絶対数およびCD8+T細胞のうちのその割合によって明らかにされるように、hAlb-hIL2処置は、最初のワクチン接種後すぐに腫瘍抗原特異的CD8+T細胞を増加させ(図30A)、有意により高いレベルを経時的に維持した(図30B)。hIL7-hAlbは対照群を超えて抗原特異的CD8+T細胞を拡大しなかったが、hAlb-hIl2とhIL7-hAlbの組合せは、経時的な抗原特異的CD8+T細胞の拡大において相乗作用し、hAlb-hIL2単独よりも優れていた(図30A、B)。hAlb-hIL2およびhIL7-hAlbはどちらも、ワクチン接種された腫瘍抗原に特異的ではないCD8+T細胞の数を増加させ、この場合もやはり、2つのサイトカインの組合せは単一処置よりも優れていた(図30C)。マウスの対応物について前述したように(実施例8)、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2とhIL7-Albの組合せは、抗原非特異的CD8+T細胞よりも抗原特異的CD8+T細胞を選択的に拡大することができた(図30D)。
【0272】
実施例23:hAlb-hIL2はTreg細胞を最初だけ拡大するが、hIL7-hAlbは全体を通して低い数のTreg細胞を維持する。
実施例8に沿って、融合タンパク質をコードするmRNAの望ましくないTregの拡大に対する効果をhAlb-hIL2およびhIL7-hAlbに対する応答で検討した。実施例21に記載されるCT26腫瘍担持マウスを、3回の連続処置のそれぞれ7日後(腫瘍接種後17、24および31日目)の血液中のTreg細胞についてフローサイトメトリによって分析した。このために、実施例8に記載されているようにマウスの末梢血を収集し、Treg細胞について染色した。フローサイトメトリデータをFACSCelestaフローサイトメータ(BD Biosciences)で取得し、FlowJo Xソフトウェア(Tree Star)で分析した。実施例8に記載されているように、Treg細胞をゲーティングし、定量化した。
【0273】
hAlb-hIL2は、最初はTreg細胞を有意に拡大するが(図31A)、Treg細胞の数は連続的な処置で正常化し、対照レベル未満に減少する(図31B)。マウスの対応物と同様に、hIL7-hAlbでの処置は、最初の処置時にTreg細胞を拡大せず、Treg細胞数はさらなる処置全体を通して制御されたままである(図31A、B)。2つのサイトカインの組合せは、2回目のワクチン接種以降、対照と同様にTreg細胞数を等しく減少させる(統計的に有意ではない)。その結果、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2とhIL7-hAlbの組合せは、Treg細胞よりもCD8+T細胞を選択的に拡大する(図32)。特に、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2とhIL7-hAlbの組合せは、Treg細胞よりも抗原特異的および非特異的CD8+T細胞の数を大幅に増加させ(図32A)、一方で、hIL7-hAlbは、ワクチンが対象としない非特異的CD8+T細胞を選択的に拡大する(図32B)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21AB
図21C
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
【配列表】
2024123070000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAおよび対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと組み合わせて使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAを含む、医薬組成物。
【請求項2】
延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと組み合わせて使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAを含む、医薬組成物。
【請求項3】
延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNAと組み合わせて使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを含む、医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、延長PK IL7をコードする前記RNAおよび/または対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNAを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNAを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNAを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記使用は、対象において免疫応答を誘導することにおけるものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項8】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項9】
前記使用は、対象における癌を治療または予防することにおけるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項10】
前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、請求項9に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項11】
前記延長PK IL2が融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項12】
前記延長PK IL7が融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項13】
前記IL2部分を含む前記融合タンパク質の前記部分がヒト血清アルブミン部分であり、および/または、前記IL7部分を含む前記融合タンパク質の前記部分がヒト血清アルブミン部分である、請求項11または12に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、免疫チェックポイント阻害剤を含むまたは免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項15】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とし、および/または、前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片であり、前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項17】
前記使用が、延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA、ならびに任意で前記免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項18】
前記使用が、前記抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる、および/または、前記使用が短命なエフェクタ細胞の数を減少させる、および/または、前記使用が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
【請求項19】
a.IL-2をコードするRNAおよびIL-7をコードするRNA;ならびに
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するのに適したエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を含む医薬製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0235
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0235】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認を意図するものではない。これらの文書の内容に関するすべての記述は、申請者が入手できる情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さについての承認を構成しない。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 対象において免疫応答を誘導するための方法であって、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法。
2. 前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、1.に記載の方法。
3. 前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、2.に記載の方法。
4. 前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5. 前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、4.に記載の方法。
6. 前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、3.または5.に記載の方法。
7. 前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、3.または5.に記載の方法。
8. 前記対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む、1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、8.に記載の方法。
10. 前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、8.または9.に記載の方法。
11. 前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、10.に記載の方法。
12. 延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA、ならびに任意で前記免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する、1.~11.のいずれか一つに記載の方法。
13. 前記対象に、
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、8.~12.のいずれか一つに記載の方法。
14. 前記対象に、
a.延長PK IL7をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL2をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、8.~12.のいずれか一つに記載の方法。
15. 前記対象に、
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、8.~14.のいずれか一つに記載の方法。
16. 前記治療が、前記抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる、1.~15.のいずれか一つに記載の方法。
17. 前記治療が短命なエフェクタ細胞の数を減少させる、1.~16.のいずれか一つに記載の方法。
18. 前記治療が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、1.~17.のいずれか一つに記載の方法。
19. 対象における癌を治療または予防するための方法であって、前記抗原が腫瘍関連抗原である、1.~18.のいずれか一つに記載の方法。
20. 腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない、19.に記載の方法。
21. 対象における癌を治療または予防するための方法であって、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む方法。
22. 前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、19.~21.のいずれか一つに記載の方法。
23. a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を含む医薬製剤。
24. 前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、23.に記載の医薬製剤。
25. 前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、24.に記載の医薬製剤。
26. 前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、23.~25.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
27. 前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、26.に記載の医薬製剤。
28. 前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、25.または27.に記載の医薬製剤。
29. 前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、25.または27.に記載の医薬製剤。
30. c.免疫チェックポイント阻害剤
をさらに含む、23.~29.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
31. 前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、30.に記載の医薬製剤。
32. 前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、30.または31.に記載の医薬製剤。
33. 前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、32.に記載の医薬製剤。
34. a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を含む、30.~33.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
35. a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を含む、30.~34.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
36. キットである、23.~35.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
37. 各RNAを別々の容器に含む、36.に記載の医薬製剤。
38. 前記免疫チェックポイント阻害剤が、前記RNAを含まない容器内にある、36.または37.に記載の医薬製剤。
39. 癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含み、前記抗原が腫瘍関連抗原である、36.~38.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
40. 前記RNAを含む医薬組成物である、23.~35.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
41. 前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、40.に記載の医薬製剤。
42. 前記RNAが、液体形態、固体形態、またはそれらの組合せから選択される形態で存在する、23.~41.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
43. 前記固体形態が凍結形態または脱水形態である、42.に記載の医薬製剤。
44. 前記脱水形態が凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態である、43.に記載の医薬製剤。
45. 医薬用途のための、23.~44.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
46. 前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む、45.に記載の医薬製剤。
47. 前記抗原が腫瘍関連抗原である、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための、23.~46.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
48. 前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、39.および42~47のいずれか一つに記載の医薬製剤。
49. 腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を含まない、23.~48.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
50. 対象において免疫応答を誘導するための方法で使用するためのRNAであって、前記方法が、前記対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む、RNA。
51. 前記延長PK IL2が融合タンパク質を含む、50.に記載のRNA。
52. 前記融合タンパク質が、IL2部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、51.に記載のRNA。
53. 前記延長PK IL7が融合タンパク質を含む、50.~52.のいずれか一つに記載のRNA。
54. 前記融合タンパク質が、IL7部分ならびに血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される部分を含む、53.に記載のRNA。
55. 前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、52.または54.に記載のRNA。
56. 前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、52.または54.に記載のRNA。
57. 前記方法が、前記対象に、
c.免疫チェックポイント阻害剤
を投与することをさらに含む、50.~56.のいずれか一つに記載のRNA。
58. 前記免疫チェックポイント阻害剤が、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86の間の相互作用を標的とする、57.に記載のRNA。
59. 前記免疫チェックポイント阻害剤が抗体または抗体断片である、57.または58.に記載のRNA。
60. 前記抗体または抗体断片がPD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする、59.に記載のRNA。
61. 延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/または延長PK IL7をコードする前記RNA、前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA、ならびに任意で前記免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する、50.~60.のいずれか一つに記載のRNA。
62. 前記方法が、前記対象に、
a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、57.~61.のいずれか一つに記載のRNA。
63. 前記方法が、前記対象に、
a.延長PK IL7をコードする前記RNAおよび任意で延長PK IL2をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、57.~61.のいずれか一つに記載のRNA。
64. 前記方法が、前記対象に、
a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする前記RNA;ならびに
c.前記免疫チェックポイント阻害剤
を投与することを含む、57.~63.のいずれか一つに記載のRNA。
65. 前記治療が、前記抗原に特異的なCD127陽性T細胞の数を増加させる、50.~64.のいずれか一つに記載のRNA。
66. 前記治療が短命なエフェクタ細胞の数を減少させる、50.~65.のいずれか一つに記載のRNA。
67. 前記治療が、制御性T細胞に対する抗原特異的T細胞の比率を増加させる、50.~66.のいずれか一つに記載のRNA。
68. 前記方法が、対象における癌を治療または予防するための方法であり、前記抗原が腫瘍関連抗原である、50.~67.のいずれか一つに記載のRNA。
69. 腫瘍抗原に対する治療用抗体または抗体断片を投与しない、68.に記載のRNA。
70. 対象に、
a.延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-2をコードするRNAおよび/または延長薬物動態(PK)インターロイキン(IL)-7をコードするRNA;ならびに
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA
を投与することを含む、前記対象における癌を治療または予防するための方法で使用するためのRNA。
71. 前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、68.~70.のいずれか一つに記載のRNA。
72. 前記方法で投与される前記RNAの1つ以上であるか、またはそれを含む、50.~71.のいずれか一つに記載のRNA。
73. 延長PK IL2をコードする前記RNA、延長PK IL7をコードする前記RNA、および前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNAからなる群より選択される1つ以上であるか、またはそれを含む、72.に記載のRNA。
74. 延長PK IL2をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、72.または73.に記載のRNA。
75. 延長PK IL7をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、72.または73.に記載のRNA。
76. 前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNAであるか、またはそれを含む、72.または73.に記載のRNA。
77. a.延長PK IL2をコードする前記RNAおよび/もしくは延長PK IL7をコードする前記RNA;ならびに
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNA
であるか、またはそれを含む、72.または73.に記載のRNA。
78. a-1.延長PK IL2をコードする前記RNA;
a-2.延長PK IL7をコードする前記RNA;および
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドもしくはタンパク質をコードする前記RNA
であるか、またはそれを含む、72.または73.に記載のRNA。