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特開2024-123082二重特異抗体またはその抗原結合断片、及びそれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123082
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】二重特異抗体またはその抗原結合断片、及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240903BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240903BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096090
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2023515550の分割
【原出願日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066030
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522457553
【氏名又は名称】マストバイオ株式会社
【氏名又は名称原語表記】MUSTBIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】パン,ヒョジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,メンソプ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異種二量体形成率が高いタンパク質複合体を提供する。
【解決手段】IgGの第1 CH3抗体不変領域を含む第1ポリペプチド、及びIgGの第2 CH3抗体不変領域を含む第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドは、異種二量体を形成するタンパク質複合体であり、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、及び407位置に、バリン(V)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、351位置に、フェニルアラニン(F)またはグリシン(G)を含む、タンパク質複合体(ただし、前記アミノ酸の位置は、Kabat EU indexによる)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgGの第1 CH3抗体不変領域を含む第1ポリペプチド、及びIgGの第2 CH3抗体不変領域を含む第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドは、異種二量体を形成するタンパク質複合体であり、
前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、及び407位置に、バリン(V)を含み、
前記第2 CH3抗体不変領域は、351位置に、フェニルアラニン(F)またはグリシン(G)を含む、タンパク質複合体(ただし、前記アミノ酸の位置は、Kabat EU indexによる)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月1日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0066030号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
本発明は、異種二量体形成率が高い二重特異抗体またはその抗原結合断片、及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然のヒト免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)は、互いに同一な2つの重鎖(heavy chain)と、2つの軽鎖(light chain)とが結合された形態によってなっている。また、該免疫グロブリンは、機能的に、抗原・抗体結合をなすFab(antigen-binding fragment)領域と、2個の重鎖が二量体(dimer)を形成するFc(fragment crystallizable)領域とに分けることができる。そのような自然免疫グロブリン、すなわち、単一クローン抗体(mAB:monoclonal antibody)は、一般的に、2つのFab領域が互いに同一であるために、同一抗原の同一結合位置(epitope)を標的として作用し、二価(bi-valent)の単一特異的(mono-specific)である結合特性を有する。
【0003】
該免疫グロブリンは、Fab領域が有する標的特異的抗原結合機能と、Fc領域が有する免疫細胞誘導及び生体内半減期増大機能により、多様な疾病の治療剤として広く活用されている。しかしながら、最近になり、癌または自己免疫疾患のような難治性疾患において、互いに異なる標的に作用する2つの薬物を共に使用し、シナジーを出す治療法が、単一薬物を使用するより、高い治療効果を示すようになりながら、2つの標的物質に作用することができる多様な二重特異(bi-specific)抗体が開発されている。
【0004】
そのように開発された二重特異抗体のうち、互いに異なる抗体の可変部位切片をポリペプチド鎖で連結したscFv-scFv形態の二重抗体は、分子量が小さく、安定性が低く、生体内に長く留まり、薬効を持続させるということができないという短所を有する。また、自然免疫グロブリンのポリペプチド末端に、他の抗体の可変部位切片を連結したscFv-Fab-Fc形態またはFab-Fc-scFv形態の二重抗体は、構造的安定性が低く、凝集物(aggregate)を形成し、生体内において、免疫原性(immunogenicity)を示しうるという短所がある。従って、そのような問題を解決するために、可能な限り、自然免疫グロブリンの形態に撚りながら、互いに異なる可変部位を有する二重抗体の開発が必要である。
【0005】
そのような形態の二重抗体が形成されるためには、互いに異なる2つのFab-FcのFc領域間に、異種二量体(heterodimer)形成がなされなければならない。Fc異種二量体形成には、それぞれのCH3ドメインが互いに相互作用する位置のアミノ酸が重要に作用するので、それらアミノ酸を他のアミノ酸で置換する方式により、Fc異種二量体技術開発がなされている(米国特許番号5731168A(1998.03.24.)、韓国特許番号10-2098919(2020.04.02.))。
【0006】
しかしながら、そのように開発された既存のFc異種二量体技術も、全てのFc構造体を100%異種二量体形態に作ることができないという限界を有しており、異種二量体と同種二量体との混合物を形成することになる。
【0007】
従って、異種二量体形成効率が改善されたタンパク質複合体、それを含む二重特異抗体またはその抗原結合断片、受容体、及び該受容体に結合する作用剤(agonist)、拮抗剤(antagonist)、リガンド、並びに受容体誘引(decoy)二重接合体などを開発する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一態様は、異種二量体形成率が高いタンパク質複合体を提供することである。
他の態様は、異種二量体形成率が高いタンパク質複合体を製造する方法を提供することである。
さらに他の態様は、異種二量体形成率が高いタンパク質複合体を含む疾病予防用または疾病治療用の薬学的組成物を提供することである。
さらに他の態様は、異種二量体形成率が高いタンパク質複合体を利用した疾病予防方法または疾病治療方法を提供することである。
さらに他の態様は、疾病の予防剤または治療剤の製造のための異種二量体形成率が高いタンパク質複合体の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様は、第1 CH3抗体不変領域を含む第1ポリペプチド、及び第2 CH3抗体不変領域を含む第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドは、異種二量体(heterodimer)を形成するタンパク質複合体を提供する。
一具体例において、前記第1 CH3抗体不変領域は、366番目位置にトリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置にセリン(S)、368位置にアラニン(A)、及び407位置にバリン(V)を含み、該第1 CH3抗体不変領域及び該第2 CH3抗体不変領域のうち1以上は、351及び394からなる群の中から選択された1以上の位置に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)及びアラニン(A)からなる群の中から選択された1以上のアミノ酸を含むものでもある。
前記タンパク質複合体は、第1 CH3抗体不変領域を含む第1ポリペプチド、及び第2 CH3抗体不変領域を含む第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドは、異種二量体を形成することができる。
【0010】
用語「抗体 (antibody)」は、用語「免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)」と相互交換的に使用される。完全な抗体は、2個の全長(full length)軽鎖(light chain)、及び2個の全長重鎖(heavy chain)を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖と二硫化結合(SS-bond:disulfide bond)で結合する。前記軽鎖は、λ、κの2種があり、大体において、211個ないし217個のアミノ酸によって構成されている。ヒト抗体のそれぞれには、いずれも同一に、1種の軽鎖だけが存在する。該軽鎖は、不変領域と可変領域(variable region)とが連続してなっている。前記重鎖は、5種(γ、δ、α、μ、ε)があり、重鎖が抗体の種類を決定する。αとγは、450個、μとεは、550個のアミノ酸によって構成されている。該重鎖は、2つの領域、すなわち、可変領域と不変領域とがある。前記可変領域は、抗体において、抗原が結合する領域を意味する。前記可変領域は、抗原との結合特異性を付与する相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)を含むものでもある。
【0011】
前記抗体は、抗原に結合するFab(antigen-binding fragment)領域と、細胞表面受容体に結合するFc(fragment crystallizable)領域とを含むものでもある。パパイン(papain)で切断する場合、完全な抗体は、2個のFab領域と、1個のFc領域とに切断することができる。該Fab領域は、重鎖の可変領域(VH)ドメインと、重鎖の不変領域1(CH1)ドメインとを含むポリペプチド;及び軽鎖の可変領域(VL)ドメインと、軽鎖の不変領域(CL)ドメインとのポリペプチドが、二硫化結合で連結されたものでもある。該Fc領域は、重鎖の不変領域2(CH2)ドメインと、不変領域3(CH3)ドメインとを含むポリペプチド2個が連結されたものでもある。該Fc領域は、ヒンジ領域を形成することができる。
【0012】
前記CH3抗体不変領域は、抗体の重鎖不変領域3ドメインを意味する。
第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、抗体のFc領域を形成することができる。
前述の異種二量体またはヘテロダイマーは、アミノ酸残基の順序、個数または種類が互いに異なる2つのポリペプチドが結合したものを意味する。前記タンパク質複合体は、互いに異なる標的に特異的に結合する2つのポリペプチドが結合して形成された二重特異抗体またはその抗原結合断片でもある。
【0013】
前記タンパク質複合体は、二重特異(bispecific)抗体またはその抗原結合断片、受容体と作用剤(agonist)の接合体、受容体と拮抗剤(antagonist)との接合体、受容体とリガンド(ligand)との接合体、またはリガンドと誘引(decoy)受容体との接合体でもある。また、前記タンパク質複合体は、抗原結合断片(Fab)、一本鎖可変断片(scFv)、膜受容体の細胞外ドメイン、作用剤、拮抗剤、リガンド、誘引受容体、サイトカイン、凝固因子及び親和性タグからなる群の中から選択されたものを含むものでもある。
【0014】
前記抗体は、例えば、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMでもある。前記抗体は、モノクーナル抗体またはポリクローナル抗体でもある。前記抗体は、動物由来抗体、マウス・ヒトキメラ抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)またはヒト抗体でもある。
【0015】
用語「抗原結合断片(antigen-binding fragment)」は、免疫グロブリン全体構造に係わるその断片であり、抗原が結合することができる部分を含むポリペプチドの一部を意味する。例えば、該抗原結合断片は、scFv、(scFv)2、Fv、Fab、Fab’、FvF(ab’)2、またはそれらの組み合わせでもある。
用語「二重特異(bispecific)」とは、互いに異なる標的タンパク質を特異的に認識することを意味する。二重特異抗体またはその抗原結合断片は、異なる標的抗原を認識する2つの抗原結合部位を有する抗体またはその抗原結合断片を意味する。該二重特異抗体またはその抗原結合断片は、二重特異抗体(BsAb:bispecific antibody:)とも呼ばれる。
【0016】
前記二重特異抗体またはその抗原結合断片は、kih(knob into hole)IgG、scFv-Fc、scFv2-Fc、トリオマブ(triomab)、IgG類似(IgG-like)抗体、CrossMab、2:1 CrossMab、2:2 CrossMab、DuoBody、DVD-Ig(dual variable domain immunoglobulin)、scFv-IgG、IgG-IgG、Fab-scFv-Fc、ADPTIR、BiTE(bispecific T cell engager)-Fc、DART(dual affinity retargeting)-Fc、Tetravalent DART-Fc、LP-DART、CODV(Cross-Oover Dual Variable)-Ig、CODV-Fab-TL、HLE(Half-Life Extended)-Bite、Tandem VHH(heavy chain-only variable domain)-Fc、またはそれらの組み合わせでもある。
【0017】
用語「受容体(receptor)」とは、生物学的系に伝達することができる信号を受けたり、伝達したりする物質を意味する。前記受容体は、タンパク質受容体でもある。前記受容体は、作用剤(agonist)、拮抗剤(antagonist)、リガンド(ligand)またはサイトカイン(cytokine)に結合することができる。前記作用剤は、受容体と結合し、受容体を活性化させ、生物学的反応を誘導する物質でもある。前記拮抗剤は、受容体と結合し、受容体を抑制し、生物学的反応を抑制する物質でもある。前記リガンドは、受容体に結合する物質でもある。前記リガンドは、誘引(decoy)受容体と結合することができる。該誘引受容体は、リガンドに特異的に結合することにより、実際の受容体を介する信号伝逹を阻害する受容体を意味する。前記サイトカインは、細胞の信号伝逹、炎症過程の調節及び維持に作用する小型タンパク質を意味する。
【0018】
前記タンパク質複合体は、変形されたものでもある。例えば、前記タンパク質複合体は、接合(conjugation)または結合、糖化(glycosylation)、タグ付着、またはそれらの組み合わせに変形されたものでもある。前記抗体は、抗癌剤のような他の薬物と接合されうる。例えば、前記タンパク質複合体は、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)、アルカリンホスファターゼ、ヘプテン(hapten)、ビオチン、ストレブトアビジン、蛍光物質、放射性物質、量子点、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)、ヒスチジンタグ、またはそれらの組み合わせと結合されたものでもある。前記蛍光物質は、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 750、Alexa Fluor 790、またはAlexa Fluor 350(いずれも登録商標)でもある。
【0019】
前記アミノ酸の位置は、Kabat EU index(「Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)」)に記載されたEUインデックス)による。前記CH3ドメインのアミノ酸位置、及びここに該当するアミノ酸種類は、ヒトIgG1を基準にする。
【0020】
前記タンパク質複合体において、第1 CH3抗体不変領域は、366番目位置に、トリプトファン(W)を含むものでもある。第1 CH3抗体不変領域において、366番目位置は、スレオニン(T)からトリプトファン(W)に置換されたもの(T366W)でもある。前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、そして407位置に、バリン(V)を含むものでもある。第2 CH3抗体不変領域において、366位置は、スレオニン(T)からセリン(S)に置換されたもの(T366S)でもある。第2 CH3抗体不変領域において、368位置は、ロイシン(L)からアラニン(A)に置換されたもの(L368A)でもある。第2 CH3抗体不変領域において、407位置は、チロシン(Y)からバリン(V)に置換されたもの(Y407V)でもある。
【0021】
前記タンパク質複合体において、第1 CH3抗体不変領域及び第2 CH3抗体不変領域のうち1以上は、351及び394からなる群の中から選択された1以上の位置に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)、アラニン(A)、イソロイシン(I)及びセリン(S)からなる群の中から選択された1以上のアミノ酸を含むものでもある。
【0022】
例えば、前記第1 CH3抗体不変領域は、351及び394からなる群の中から選択された1以上の位置に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)、アラニン(A)及びイソロイシン(I)からなる群の中から選択された1以上のアミノ酸を含むものでもある。また、前記第2 CH3抗体不変領域は、351及び394からなる群の中から選択された1以上の位置に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)、アラニン(A)及びセリン(S)からなる群の中から選択された1以上のアミノ酸を含むものでもある。
【0023】
一具体例において、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、394位置に、フェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)またはトリプトファン(W)を含むものでもある。前記394位置は、スレオニン(T)からフェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)またはトリプトファン(W)に置換されたもの(T394F、T394HまたはT394W)でもある。
【0024】
他の具体例において、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、351位置に、トリプトファン(W)、バリン(V)、アラニン(A)またはフェニルアラニン(F)を含むものでもある。前記351位置は、ロイシン(L)から、トリプトファン(W)、バリン(V)、アラニン(A)またはフェニルアラニン(F)に置換されたもの(L351W、L351V、L351AまたはL351F)でもある。
【0025】
さらに他の具体例において、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、アラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)またはフェニルアラニン(F)を含むものでもある。前記351位置は、ロイシン(L)から、アラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)またはフェニルアラニン(F)に置換されたもの(L351A、L351G、L351V、L351MまたはL351F)でもある。
【0026】
前記第1 CH3抗体不変領域は、
366位置に、トリプトファン(W)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び394位置に、ヒスチジン(H)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び394位置に、フェニルアラニン(F)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び394位置に、トリプトファン(W)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、フェニルアラニン(F)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、トリプトファン(W)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、バリン(V)、
366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、アラニン(A)、並びに
366位置に、トリプトファン(W)、394位置に、ヒスチジン(H)、及び351位置に、フェニルアラニン(F)からなる群の中から選択されたものを含むものでもある。
【0027】
前記第2 CH3抗体不変領域は、
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、及び407位置に、バリン(V)、
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、アラニン(A)、
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、グリシン(G)、
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、バリン(V)、
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、メチオニン(M)、並びに
366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、フェニルアラニン(F)からなる群の中から選択されたものを含むものでもある。
【0028】
前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、394位置に、フェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)またはトリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、及び407位置に、バリン(V)を含むものでもある。
【0029】
前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、フェニルアラニン(F)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、アラニン(A)を含むものでもある。前記第1 CH3抗体不変領域は、394位置に、ヒスチジン(H)をさらに含むものでもある。
【0030】
前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、グリシン(G)を含むものでもある。前記第1 CH3抗体不変領域は、351位置に、フェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)をさらに含むものでもある。
【0031】
前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、アラニン(A)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)またはメチオニン(M)を含むものでもある。
【0032】
前記第1 CH3抗体不変領域は、351位置に、バリン(V)、またはアラニン(A)をさらに含むものでもある。例えば、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、バリン(V)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、アラニン(A)を含むものでもある。また、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)、及び351位置に、アラニン(A)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、フェニルアラニン(F)を含むものでもある。
【0033】
一態様によるタンパク質複合体は、Fc変異体の逆配列置換された変異体でもある。本明細書において、用語「逆配列置換変異体」は、タンパク質複合体の左右重鎖不変領域が、座標平面上において、Y軸に対して対称になる構造を示す。例えば、前記逆配列置換変異体は、一具体例によるタンパク質複合体において、アミノ酸置換された特定位置及び種類は、同一であるが、第1 CH3抗体不変領域と第2 CH3抗体不変領域とが座標平面上において、Y軸に対して対称になる構造を示しうる。前記逆配列置換変異体は、特定アミノ酸の置換前と類似した比率で異種二量体を形成するので、高効率のFc変異体を形成することができる。前記タンパク質複合体の具体的な内容は、前述の通りである。
【0034】
一具体例において、前記第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、及び407位置に、バリン(V)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366番目位置に、トリプトファン(W)を含み、第1 CH3抗体不変領域及び第2 CH3抗体不変領域のうち1以上は、351及び394からなる群の中から選択された1以上の位置に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、メチオニン(M)及びアラニン(A)からなる群の中から選択された1以上のアミノ酸を含むものでもある。前記第1 CH3抗体不変領域及び第2 CH3抗体不変領域の具体的な内容は、前述の通りである。
【0035】
また、第1 CH3抗体不変領域は、366位置に、セリン(S)、368位置に、アラニン(A)、407位置に、バリン(V)、及び351位置に、グリシン(G)を含み、前記第2 CH3抗体不変領域は、366位置に、トリプトファン(W)を含むものでもある。前記第2 CH3抗体不変領域は、351位置に、フェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)をさらに含むものでもある。
【0036】
一実施例においては、抗体のCH3抗体不変領域において、特定位置のアミノ酸を置換して選別されたFc変異体の異種二量体形成率を比較した結果、野生型IgG1と、GenentechのKiH(knobs-into-hole)二重抗体とを比較し、異種二量体形成率が顕著に高いだけでなく、熱力学的安定性にすぐれているということを確認した。また、前記Fc変異体の逆配列置換された変異体においても、野生型IgG1と、GenentechのKiH(knobs-into-hole)二重抗体とを比較し、異種二量体形成率が顕著に高いことを確認した。従って、一態様によるタンパク質複合体は、異種二量体形成効率が改善されたが、それを含む二重特異抗体またはその抗原結合断片、受容体と、該受容体に結合する作用剤、拮抗剤、リガンド、サイトカイン及び受容体誘引二重接合体として、活用可能である。
【0037】
他の態様は、一態様による第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせをコーディングする1以上の発現ベクターを、1以上の細胞に形質転換し、前述の第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせを発現させる段階を含むタンパク質複合体を製造する方法を提供する。
【0038】
前述の第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、及びタンパク質複合体の具体的な内容は、前述の通りである。
【0039】
該発現ベクターは、適切な宿主細胞において、目的タンパク質を発現することができる発現ベクターであり、挿入された核酸配列が発現されるように作動自在に(operably linked)連結された必須な調節要素を含むベクターを意味する。前記「作動自在に連結された」とは、一般的機能を遂行するように、核酸発現調節配列と、目的タンパク質をコーディングする核酸とが機能的に連結されていることを意味する。前記発現ベクターは、前述の第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせをコーディングするポリヌクレオチドを含むものでもある。前記発現ベクターは、遺伝子の発現に必要な調節部位、例えば、エンハンサ(enhancer)、プローモーター、ポリ(A)配列などを含むものでもある。
【0040】
前記細胞は、癌細胞でもある。前記細胞は、試験管内(in vitro)細胞でもある。前記細胞は、細菌、酵母、植物細胞または哺乳動物細胞でもある。前記細菌は、大腸菌でもある。前記哺乳動物細胞は、マウス、ラット、兎、犬、猫、羊、牛、馬、猿、チンパンジーまたはヒトに由来する細胞を意味する。前記細胞は、細胞株でもある。前記細胞は、例えば、中国ハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、ヒト胚芽腎臓(HEK:human embryonic kidney)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、NS0細胞、PER.C6細胞、HeLa細胞、MDCK(Madin-Darby Canine Kidney)細胞、SP2/0マウス骨髄腫細胞、COS-7及びYB2/0ラット骨髄腫細胞からなる群の中から選択される。前記CHO細胞は、CHO DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO-S細胞、GS-CHO細胞またはCHODUKX(DXB11)細胞でもある。前記HEK細胞は、HEK293細胞でもある。
【0041】
「形質転換(transformation)」とは、特定核酸断片を細胞の遺伝体内に挿入し、挿入された核酸を発現させる方法を意味する。
【0042】
前記第1ポリペプチドをコーディングする発現ベクターと、前記第2ポリペプチドをコーディングする発現ベクターとを、細胞に共形質転換(co-transfection)させるか、あるいは第1ポリペプチドをコーディングする発現ベクターと、前記第2ポリペプチドをコーディングする発現ベクターとを、2種以上の細胞にそれぞれ形質転換させることができる。
【0043】
前記細胞は、細胞培養培地においても培養される。該細胞培養培地は、細胞を培養するのに必要な栄養成分を含む溶液を意味する。前記培地は、細胞を培養するのに利用される、商業化された培地または製造された培地を含む。前記細胞培養培地は、抗生物質を含むものでもある。前記細胞培養培地は、G418(ジェネティシン(Geneticin))、ピューロマイシン(Puromycin)、ブラストサイジン(Blasticidin)、ゼオシン(Zeocin)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。前記細胞培養培地は、化学組成培地(chemically defined medium)を含むものでもある。
【0044】
前記細胞は、細胞の生存または増殖を許容する条件下においても培養される。前記細胞の生存または増殖を許容する条件は、細胞の種類によっても異なる。前記細胞は、約25℃ないし約42℃、約25℃ないし約40℃、約30℃ないし約40℃、約30℃ないし約37℃、または約37℃においても培養される。前記細胞は、約1% CO2ないし約10% CO2、または約5% CO2ないし約10% CO2の空気存在下においても培養される。前記細胞は、約pH6ないし約pH8、約pH6.2ないし約pH7.8、約pH6.4ないし約pH7.6、約pH6.6ないし約pH7.4、または約pH6.8ないし約pH7.2の培地においても培養される。前記細胞は、溶存酸素約10%ないし約80%、約15%ないし約70%、または約20%ないし約60%の条件においても培養される。
【0045】
前記培養は、細胞の種類によっても異なる。前記培養は、周知の方法を利用することができる。前記培養は、プレート、フラスコなどによっても行われる。前記培養は、基質に付着させるか、あるいは培養液に浮遊させる方法によっても行われる。前記培養は、継代培養(subculture)、回分培養(batch culture)、流加培養(fed-batch culture)、灌流培養(perfusion culture)、またはそれらの組み合わせでもある。前述の培養時、細胞培養培地を新鮮な培地に周期的に交換することができる。前記細胞を、約1日以上、約2日以上、約3日以上、約4日以上、約5日以上、約6日以上、約1週間以上、約10日以上、約2週間以上、約3週間以上、約1ヵ月以上、約1日ないし約1ヵ月、約1日ないし約3週、約1日ないし約2週、約2日ないし約2週、約3日ないし約2週、約4日ないし約2週、約5日ないし約2週、約6日ないし約2週、または約1週ないし約2週の間、培養することができる。
【0046】
前記細胞または細胞培養液から、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、または第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのタンパク質複合体を得る段階を含むものでもある。
前記細胞培養液は、前記細胞がない培養液でもある。
【0047】
前記発現ベクターを細胞に共形質転換する場合、前記細胞または前記細胞培養液から、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのタンパク質複合体を得ることができる。前記第1ポリペプチドをコーディングする発現ベクターと、前記第2ポリペプチドをコーディングする発現ベクターとを、2種以上の細胞にそれぞれ形質転換する場合、前記細胞または前記細胞培養液から、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドをそれぞれ得ることができる。
【0048】
前記タンパク質複合体を得る段階は、得られた第1ポリペプチドと、得られた第2ポリペプチドとをインキュベーションし、タンパク質複合体を形成させる段階を含むものでもある。前記インキュベーションは、還元条件下においても行われる。前記還元条件は、2-メルカブトエタノール(2-ME:2-mercaptoethanol)、ジチオトレイトール(DTT:dithiothreitol)、またはそれらの組み合わせの存在下にでもある。
【0049】
前記タンパク質複合体を得る段階は、タンパク質複合体を精製する段階を含むものでもある。前記精製は、濾過、遠心分離、クロマトグラフィ、透析、免疫沈降、またはそれらの組み合わせによっても行される。
【0050】
さらに他の態様は、一態様によるタンパク質複合体を含む癌の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0051】
前記タンパク質複合体に係わる具体的な内容は、前述の通りである。
【0052】
前記癌は、固形癌または非固形癌でもある。該固形癌は、例えば、肝臓、肺、乳房、皮膚のような臓器に癌腫瘍が発生したものを意味する。非固形癌は、血液内に発生した癌であり、血液癌とも呼ばれる。前記癌は、癌腫(carcinoma)、肉腫(sarcoma)、造血細胞由来癌、胚細胞腫瘍(germ cell tumor)または芽細胞腫(blastoma)でもある。前記癌は、乳癌、皮膚癌、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓癌、腎臓癌、透明細胞肉腫、黒色腫、脳脊髄腫瘍、脳癌、胸腺腫、中皮腫、食道癌、胆道癌、睾丸癌、生殖細胞腫、甲状腺癌、副甲状線癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、リンパ腫、骨髄形成異常症侯群(MDS:myelodysplastic syndromes)、骨髄線維症(myelofibrosis)、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、内分泌系癌及び肉腫からなる群の中からも選択される。
【0053】
用語「予防」とは、前記薬学的組成物の投与によって疾患を抑制するか、あるいはその発病を遅延させる全ての行為を意味する。用語「治療」とは、前記薬学的組成物の投与によって疾患の症状が好転するか、あるいは良好に変更される全ての行為を意味する。
【0054】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むものでもある。前記担体は、賦形剤、希釈剤または補助剤を含む意味に使用される。前記担体は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、生理食塩水、PBSのような緩衝液、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルからなる群の中から選択されたものでもある。前記組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、風味剤、乳化剤、保存剤、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0055】
前記薬学的組成物は、通常の方法により、任意の剤形で準備することができる。前記組成物は、例えば、経口投与剤形(例えば、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、錠剤または顆粒)、あるいは非経口剤形(例えば、注射剤)にも剤形化される。また、前記組成物は、全身剤形または局所剤形にも製造される。
【0056】
前記薬学的組成物は、他の抗癌剤をさらに含むものでもある。前記抗癌剤は、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、エルロチニブ(erlotinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、トラスツズマブ(trastuzumab)、T-DM1、パージェタ(Perjeta)、ラパチニブ(lapatinib)、パクリタキセル、タキソール、タモキシフェン、シスプラチン、またはそれらの組み合わせでもある。前記薬学的組成物は、単一組成物、または個別的な組成物でもある。例えば、前記抗体またはその抗原結合断片の組成物は、非経口投与剤形の組成物であり、該抗癌剤は、経口投与剤形の組成物でもある。
【0057】
前記薬学的組成物は、前記タンパク質複合体を有効な量で含むものでもある。用語「有効な量」とは、疾患の予防または治療を必要とする個体に投与される場合、予防または治療の効果を示すに十分な量を意味する。前記有効な量は、当業者が、選択される細胞または個体により、適切に選択することができる。疾患の重症度、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の比率、治療期間、使用された組成物との配合、または同時使用される薬物を含む要素、及びその他医学分野に周知の要素によっても決定される。前記有効な量は、前記薬学的組成物当たり、約0.5μgないし約2g、約1μgないし約1g、約10μgないし約500mg、約100μgないし約100mg、または約1mgないし約50mgでもある。
【0058】
前記薬学的組成物の投与量は、例えば、成人基準で、約0.001mg/kgないし約100mg/kg、約0.01mg/kgないし約10mg/kg、または約0.1mg/kgないし約1mg/kgの範囲内でもある。前記投与は、1日1回、1日多会、または1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、または1年に1回投与されうる。
【0059】
さらに他の態様は、一態様によるタンパク質複合体を、細胞または個体に投与する段階を含む癌の予防方法または治療方法を提供する。
前述のタンパク質複合体、細胞、癌、予防、または治療に係わる具体的な内容は、前述の通りである。
【0060】
前記個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、牛、馬、豚、犬、羊、山羊または猫でもある。前記個体は、癌を病むとか病む可能性が高い個体でもある。
【0061】
前記方法は、前記個体に第2の有効成分を投与する段階をさらに含むものでもある。該第2の有効成分は、癌の予防または治療のための有効成分でもある。前記有効成分は、前記タンパク質複合体と、同時、個別または順にも投与される。
【0062】
前記タンパク質複合体は、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経口、経皮(transdermal)、粘膜、鼻内(intranasal)、器官内(intratracheal)または皮下投与のような任意の手段により、個体に直接投与されうる。前記タンパク質複合体は、全身的または局所的にも投与され、単独、または他の薬学的活性化合物と共に投与されうる。
【0063】
前記タンパク質複合体の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択されうる。前記投与量は、例えば、成人基準で、約0.001mg/kgないし約100mg/kg、約0.01mg/kgないし約10mg/kg、または約0.1mg/kgないし約1mg/kgの範囲内でもある。前記投与は、1日1回、1日多会、または1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、または1年に1回投与されうる。
【発明の効果】
【0064】
異種二量体形成率が高いタンパク質複合体、それを製造する方法、タンパク質複合体を含む癌の予防用または治療用の薬学的組成物、及びそれを利用した癌の予防方法または治療方法によれば、増大された安定性を有する二重特異抗体または抗原結合断片、受容体と、該受容体に結合する作用剤、拮抗剤、リガンド、サイトカインまたは受容体誘引二重接合体を容易に製造することができ、疾病の予防または治療、及び疾病診断のような多様な分野に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:PTCWT(陰性対照群)、019:PTC019(陽性対照群)、039:PTC039、040:PTC040、074:PTC074、111:PTC111)。
図2】Fc変異体のCE-SDS(Capillary Electrophoresis-SDS)分析結果を示したグラフである。
図3A】PTCWTのサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図3B】PTC019のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図3C】PTC039のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図3D】PTC040のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図3E】PTC074のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図3F】PTC111のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:Size Exclusion-High-Performance Liquid Chromatography)分析結果を示したグラフである。
図4】逆配列置換Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:PTCWT(陰性対照群)、019:PTC019(陽性対照群)、088:PTC088、089:PTC089、090:PTC090)。
図5】一部配列置換Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:PTCWT(陰性対照群)、019:PTC019(陽性対照群)、074:PTC074、097:PTC097、098:PTC098、099:PTC099、111:PTC111、112:PTC112)。
図6】Fab-Fc × scFv-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体)。
図7】Fab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体)。
図8】Fab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体)。
図9】抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体のイン・ビトロ癌細胞死滅誘導能を評価したグラフである(アベルマブ:陽性対照群、抗PD-L1×抗CD3 scFvBsAb:CH3ドメインに、PTC074配列を保有している抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体)。
図10】抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体のイン・ビボ癌成長抑制効能を評価したグラフである(アベルマブ:陽性対照群、抗PD-L1×抗CD3 scFvBsAb:CH3ドメインに、PTC074配列を保有している抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体)。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の理解の一助とするために、望ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明につき、さらに容易に理解することができるように提供されるのみ、下記実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例0067】
実施例1.Fc異種二量体変異体の準備
抗体のCH3ドメインから、アミノ酸置換によって変化されるFc異種二量体形成能を評価するために、設計された各Fc変異体の発現系を構築した。
【0068】
異種二量体をなす2つのFcポリペプチドの区分及び分析を容易にするために、第1ポリペプチドは、重鎖と軽鎖とがいずれも連結された完全な形態のIgG鎖(Fc1)を発現するように設計され、第2ポリペプチドは、重鎖のFc領域(Fc2)のみを発現するように設計された。Fc1は、野生型IgG1 Fc領域を含むアベルマブ抗体(Bavencio、Pfizer、登録商標)を基に、CH3ドメインのアミノ酸を置換し、Fc2は、野生型IgG1抗体のFc領域を基とし、CH3ドメインのアミノ酸を置換した。Fc1軽鎖は、アベルマブ抗体の軽鎖と同一なアミノ酸配列(配列番号2)を有する。
【0069】
比較のために、野生型IgG1(表1の「PTCWT」に対応する)を陰性対照群にし、GenentechのKiH(knobs-into-hole)二重抗体(表1の「PTC019」に対応する)を陽性対照群として利用した。
具体的には、それぞれのポリペプチドをコーディングするヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)をpCHO1.0ベクターに導入し、発現ベクターを準備した。ExpiCHO-STM(Thermo Fisher)細胞株を、ExpiCHOTM発現培地で培養した。ExpiFectamieTM CHO Transfection Kit(Thermo Fisher)を使用し、Fc1発現ベクターとFc2発現ベクターとを、1:1で混合し、ExpiCHO-STM細胞株に形質感染させた。形質感染された細胞を発現培地で培養した後、培養液を分離して回収した。回収された培養液は、Protein A HP SpinTrapTMカラム(GE Healthcare)を使用し、発現タンパク質を精製した。精製されたタンパク質は、緩衝液をPBS(pH7.4)に交換し、タンパク質の濃度を測定した。
発現されたアミノ酸配列は、以下に記載されている通りである。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
実施例2.Fc変異体の異種二量体形成能比較
前述の実施例1で構築された一時的発現系を利用し、CH3ドメインのアミノ酸置換によって変化されるFc異種二量体の形成能を比較し、それを介し、高効率Fc異種二量体変異体を選別した。
【0077】
評価方法として、非還元SDS-PAGE後、異種二量体に該当するPAGEバンドの強度を測定して比較した。
具体的には、実施例1で精製されたタンパク質を、2-メルカプトエタノールで還元させるか、あるいは2-メルカプトエタノールで処理していない試料を準備した。還元または非還元の試料をSDS-PAGE方法によって電気泳動し、ChemiDocTM Imaging System(Bio-Rad)とImage LabTM Software(Bio-Rad)を利用し、電気泳動バンドの強度を測定した。
測定されたバンドの強度を介し、CH3ドメインのアミノ酸置換によるFc異種二量体形成能を算出し、その結果を下記表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
その結果、表1に示されているように、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PTC019)の異種二量体形成率は、それぞれ41.5%及び64.6%を示す一方、PTC032、PTC033、PTC034、PTC037、PTC039、PTC040、PTC061、PTC074、PTC082、PTC091、PTC111及びPTC113の異種二量体形成率は、それぞれ78.7%、76.4%、76.1%、85.8%、93.8%、94.6%、70.9%、94.9%、79.3%、75.4%、92.7%及び82.8%を示すということを確認することができた。特に、PTC039、PTC040、PTC074及びPTC111は、Fc異種二量体の比率が90%を超えることを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、非常にすぐれたFc異種二量体形成能を示しうる。
【0080】
実施例3.高効率Fc変異体の異種二量体形成能評価
3-1.SDS-PAGE分析
前記実施例2で選別された高効率Fc変異体の異種二量体形成能を評価するために、前記実施例2と同一方法により、SDS-PAGE分析を行った。
具体的には、SDS-PAGE分析から、電気泳動バンドの強度を測定した。その後、測定されたバンドの強度を介し、CH3ドメインのアミノ酸置換によるFc異種二量体形成の比率を確認し、その結果を下記表2に示した(N/A:該当事項なし)。
【0081】
【表2】
【0082】
図1は、Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである。
その結果、図1に示されているように、選別されたPTC039、PTC040、PTC074及びPTC111のFc変異体は、陰性対照群(PTCWT)と比較し、Fc1-1同種二量体(146.8kDa)のバンド強度が顕著に低減され、陽性対照群(PTC019)と比較し、Fc2単量体(25.9kDa)のバンド強度が顕著に低減されていることを確認することができた。一方、Fc1-2異種二量体は、99.3kDaにおいて、高効率に形成されることを確認することができた。
【0083】
また、表1に示されているように、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PTC019)の場合、Fc1-2異種二量体だけではなく、Fc1-1同種二量体が、陰性対照群(PTCWT)において、17.1%の比率で形成され、Fc-2-2同種二量体が、陰性対照群(PTCWT)において、39.9%で形成され、陽性対照群(PTC019)において、13.3%の比率で形成されることを確認することができた。なお、選別されたPTC039、PTC040、PTC074及びPTC111のFc変異体の場合、Fc1-1同種二量体及びFc-2-2同種二量体の形成率が低く、Fc1-2異種二量体の形成率が顕著に高いということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、Fc1-2異種二量体の選択的形成が可能であるということが分かる。
【0084】
3-2.CE-SDS分析
前記実施例2で選別された高効率Fc変異体の異種二量体形成能を検証するために、毛細管電気泳動法であるCE-SDS(Capillary Electrophoresis-SDS)分析を行った。
具体的には、PA 800 plusTM pharmaceutical analysis system(SCIEX)を利用し、毛細管電気泳動を行い、Fc変異体のFc異種二量体形成の比率を検証し、その結果を下記表3に示した。
【0085】
【表3】
【0086】
図2は、Fc変異体のCE-SDS(Capillary Electrophoresis-SDS)分析結果を示したグラフである。
その結果、図2に示されているように、滞留時間の23分ごろ、陰性対照群(PTCWT)のFc-2-2同種二量体形成率は、34.44%を示し、陽性対照群(PTC019)のFc-2-2同種二量体形成率が13.71%であるということを確認することができた。なお、PCT039、PTC040、PTC074の場合、Fc-2-2同種二量体が形成されておらず、PCT111の場合、0.57%であり、陰性対照群(PTCWT)と陽性対照群(PCT019)とを比較し、顕著に低い比率に形成されるということを確認することができた。
【0087】
また、表2に示されているように、PTC039、PTC040、PTC074及びPTC111の異種二量体形成率は、それぞれ81.0%、80.2%、83.8%及び84.8%であり、陰性対照群(PCTWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、有意的に高いということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、異種二量体形成能にすぐれているということが分かる。
【0088】
3-3.SE-HPLC分析
前記実施例2で選別された高効率Fc変異体の異種二量体形成能を検証するために、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC:size exclusion-high-performance liquid chromatography)分析を行い、その結果を下記表4に示した。
【0089】
【表4】
【0090】
図3Aないし図3Fは、それぞれPTCWT、PTC019、PTC039、PTC040、PTC074及びPTC111のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SE-HPLC)分析結果を示したグラフである。
その結果、図3Aないし図3Fに示されているように、Protein Aで精製されたタンパク質のSE-HPLC分析において、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PTC019)を含むFC変異体は、滞留時間16.989分ないし17.197分において、異種二量体の主ピーク(main peak)が観察された。具体的には、陰性対照群(PTCWT)の場合、滞留時間16.079分において、Fc-1-1同種二量体ピークが観察され、18.377分において、Fc2-2同種二量体ピークが観察された(図3A)。また、陽性対照群(PTC019)の場合、滞留時間18.343分において、Fc-2-2同種二量体ピークが観察され、19.14分において、Fc-2単量体ピークが観察された(図3B)。すなわち、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PCT019)の場合、Fc1-2異種二量体を含む多重ピーク(multi peak)を示し、異種二量体形成率が低いということを確認することができた、なお、PTC039、PTC040、PTC074及びPTC111のFc変異体の場合、主ピークが単一ピークの形態に観察された。すなわち、選別されたFc変異体の場合、陰性対照群(PTCWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、異種二量体の形成率にすぐれているということを確認することができた。
【0091】
また、表4に示されているように、選別されたPTC039、PTC040、PTC074及びPTC111のFc変異体は、異種二量体形成能が、PTCWTとPTC019との2つの対照群に比べ、すぐれているということを確認することができた。
従って、一態様によるFC変異体は、異種二量体を高効率で形成することができ、二重特異抗体を容易に製造することができる。
【0092】
実施例4.高効率Fc変異体異種二量体の熱力学的安定性評価
前記実施例3で確認された高効率Fc変異体の異種二量体構造安定性を間接的に確認するために、示差走査熱量測定法(DSC:differential scanning calorimetry)を利用した熱力学的安定性評価を行った。
具体的には、Nano DSCTM(TA Instruments)を使用し、選別されたFc変異体の熱的安定性を測定し、融点(Tm:melting temperature(℃))を算出した。算出されたFc変異体の融点を下記表5に示した。
【0093】
【表5】
【0094】
その結果、表5に示されているように、選別されたFc変異体であるPTC039、PTC040、PTC074及びPTC111は、野生型Fc異種二量体(PTCWT)と比較し、熱的安定性が若干不安定であったが、Genentech社のKiH Fc異種二量体(PTC019)と比較し、比較的高い熱力学的安定性を有するということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、異種二量体形成能にすぐれているだけではなく、熱力学的安定性にすぐれており、安定した二重特異抗体の形成が可能である。
【0095】
実施例5.高効率Fc変異体のCH3ドメインにおける逆配列置換変異体の異種二量体形成能比較
前記実施例3で選別された高効率Fc変異体のCH3ドメインにおける逆配列置換変異体の異種二量体形成能を評価するために、前記実施例2と同一方法により、SDS-PAGE分析を行った。
SDS-PAGE分析から測定されたバンドの強度を介し、CH3ドメインのアミノ酸置換によるFc異種二量体形成能を算出し、その結果を下記表6に示した。
【0096】
【表6】
【0097】
図4は、逆配列置換Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:PTCWT(陰性対照群)、019:PTC019(陽性対照群)、088:PTC088、089:PTC089、090:PTC090)。
その結果、図4に示されているように、逆配列置換Fc変異体は、陰性対照群(PTCWT)と比較し、150kDa近辺でバンドが形成されておらず、49.2kDaにおいて、バンドが弱く形成されるということを確認することができた。すなわち、逆配列置換Fc変異体は、Fc-1-1同種二量体が形成されず、Fc-2-2同種二量体形成が低減されたということを確認することができた。また、陽性対照群(PCT019)と比較し、25kDa近辺において、バンドが弱く形成されることを確認することができた。すなわち、逆配列置換Fc変異体は、Fc-2単量体の形成が低減され、それは、PTC039、PTC040及びPTC074と類似した異種二量体形成率を示すということを知ることができる(図1参照)。
【0098】
また、表6に示されているように、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PTC019)の異種二量体形成率が、それぞれ40.9%及び64.7%を示す一方、PTC039、PTC040及びPTC074の逆配列置換Fc変異体であるPTC088、PTC089及びPTC090は、それぞれ72.1%、83.3%及び92.1%の異種二量体形成率を示すということを確認することができた。
従って、一態様によるFc変異体の逆配列置換変異体は、置換前後において、類似した比率でもって、異種二量体を形成するということを知ることができる。また、Fc変異体の逆配列置換変異体は、異種二量体形成率にすぐれているので、Fc1またはFc2に挿入される配列の置換いかんにかかわらず、Fc変異体を高効率で形成することができる。
【0099】
実施例6.CH3ドメインの351位置配列変更Fc変異体の異種二量体形成能比較
前記実施例3で選別された高効率FC変異体であるPTC074及びPTC111と共に、CH3ドメインの351番位置が、類似性質のアミノ酸に置換された変異体の異種二量体形成能を評価するために、前記実施例2と同一方法により、SDS-PAGE分析を行った。
該SDS-PAGE分析から測定されたバンドの強度を介し、CH3ドメインのアミノ酸置換によるFc異種二量体形成能を算出し、その結果を下記表7に示した。
【0100】
【表7】
【0101】
図5は、一部配列置換Fc変異体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:PTCWT(陰性対照群)、019:PTC019(陽性対照群)、074:PTC074、097:PTC097、098:PTC098、099:PTC099)。111:PTC111、113:PTC113)。
その結果、図5に示されているように、PTC074及びPTC111の場合、陰性対照群(PTCWT)と比較し、150kDa近辺において、バンドが形成されておらず、陽性対照群(PTC019)と比較し、49.2kDa及び24.6kDaのバンドの強度が顕著に低減されたことを確認することができた。また、Fc-2 351位置に、配列が置換されたPTC097、PTC098及びPTC099と比較し、24.6kDaにおいて、バンドの強度が顕著に低減されたことを確認することができた。一方、Fc-1-2異種二量体の予想分子量である98kDaにおいて、バンドの強度が増大したことを確認することができた。
【0102】
また、表7に示されているように、PTC074、PTC097、PTC099及びPTC0111の異種二量体形成率は、それぞれ93.5%、82.7%、86.5%及び92.7%を示し、陰性対照群(PTCWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、有意的に高いということを確認することができた。特に、CH3ドメインの351番位置を、グリシン(G)またはフェニルアラニン(F)で置換したPTC074とPTC111との場合、Fc異種二量体の形成率が90%を超えることを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、CH3ドメインの351番位置を、特定アミノ酸で置換することにより、すぐれたFc異種二量体形成能を有することが知ることができる。
【0103】
実施例7.高効率Fc変異体を含む二重特異抗体の異種二量体形成能評価
7-1.Fab-Fc × scFv-Fc二重特異抗体
前記実施例3で選別された高効率Fc変異体を含む異種二重抗体の異種二量体形成収率を評価するために、第1ポリペプチドは、重鎖と軽鎖とがいずれも連結された完全な形態のIgG鎖(Fc1)を発現するように設計し、第2ポリペプチドは、scFV-Fc形態(Fc2)を発現するように設計した。その後、Fc1は、IgG1 Fc領域を含むアベルマブ抗体(Bavencio、Pfizer)を基に発現が進められ、Fc2は、ブリナツモマブ(blinatumomab)の抗CD3 scFv配列を基とするIgG1 Fc領域を含むscFv形態に発現が進められた。
【0104】
比較のために、野生型CH3ドメイン配列を有するFc変異体(表1の「PTCWT」に対応する)のFc2に、ブリナツモマブの抗CD3 scFvを結合したFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体を陰性対照群にし、CH3ドメインに、GenentechのKiH(knobs-into-hole)配列を有するFc変異体(表1の「PTC019」に対応する)のFc2に、ブリナツモマブの抗CD3 scFvを結合したFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体を陽性対照群として利用した。
【0105】
前記実施例1で構築された一時的発現系を利用し、各試験物質の発現を進め、非還元SDS-PAGE後、異種二量体に該当するPAGEバンドの強度を測定し、異種二量体形成収率を比較した。
測定されたバンドの強度を介し、CH3ドメインのアミノ酸置換によるFc異種二量体形成能を算出し、その結果を下記表8に示した。
【0106】
【表8】
【0107】
図6は、Fab-Fc × scFv-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc二重複合体)。
その結果、図6に示されているように、PTC074配列が適用されたFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体は、陰性対照群(PTCWT)の配列が適用された異種二重抗体と比較し、144kDaにおいて、バンドが形成されないことを確認することができた。また、PTC019配列が適用された異種二重抗体と比較し、104.8kDaにおいて、バンドの強度が低減されることを確認することができた。一方、完全なFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体の予想分子量である124.4kDaにおいては、陰性対照群(PCTWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、バンドの強度が増大したことを確認することができた。
【0108】
また、表8に示されているように、Fab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体のCH3ドメイン配列がPTC074である異種二重抗体のFc1-2異種二量体形成率は、88.8%であり、陰性対照群(PTCWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、異種二量体形成率が有意に高いということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、互いに異なる構造の抗体を形成する異種二重抗体構造に適用が可能であり、すぐれた異種二量体形成能を有するということを知ることができる。
【0109】
7-2.Fab-Fc × scFv-scFv-Fc二重特異抗体
第2ポリペプチドが、scFv-scFv-Fc形態(Fc2)に発現するように設計されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重特異抗体を使用し、Fc2は、ブリナツモマブの抗CD3 scFv配列と、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin、Roche)のVH-VL配列を基とするIgG1 Fc領域を含む二重scFv(scFv × scFv)形態に発現が進められたという点を除いては、前記実施例7-1と同一方法により、異種二量体形成収率を評価した。
【0110】
比較のために、野生型CH3ドメイン配列を有するFc変異体(表1の「PTCWT」に対応する)のFc2に、二重scFvを結合させたFab-Fc × scFv-scFv-Fc異種二重抗体を陰性対照群にし、CH3ドメインに、GenentechのKiH(knobs-into-hole)配列を有するFc変異体(表1の「PTC019」に対応する)のFc2に、二重scFvを結合させたFab-Fc × scFv-scFv-Fc異種二重抗体を陽性対照群として利用した。
【0111】
【表9】
【0112】
図7は、Fab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc × scFv-scFv-Fc二重複合体)。
その結果、図7に示されているように、PTC074配列を適用したFab-Fc × scFvxscFv-Fc二重複合体は、陰性対照群(PTCWT)配列及び陽性対照群(PTC019)配列が適用された重合体を比較し、196kDaバンドの強度が顕著に低減されたことを確認することができた。また、陽性対照群(PTC019)配列が適用された二重複合体で示される異種二量体以外のバンド強度が低減されたが、目標とする167.8kDaのFc1-2異種二量体が高効率に形成されたことを確認することができた。
【0113】
また、表9に示されているように、Fab-Fc × scFv-scFv-Fc異種二重抗体のCH3ドメイン配列がPTC074である異種二重抗体のFc1-2異種二量体形成率は、70.2%であり、陰性対照群(PTCWT)と陽性対照群(PTC019)とを比較し、異種二量体形成率が有意に高いということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、いくつかの構造が連結され、分子量が大きい構造の異種二重抗体構造に適用が容易であるだけではなく、前記構造に適用するとき、異種二量体形成にすぐれているということが分かる。
【0114】
7-3.Fab-Fc ×サイトカイン-Fc二重特異抗体
第2ポリペプチドがサイトカイン-Fc形態(Fc2)を発現するように設計されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重特異抗体を使用し、Fc2は、インターロイキン-2(IL-2(アルデスロイキン(aldesleukine))配列を基とするIgG1 Fc領域を含むサイトカイン形態に発現が進められたという点を除いては、前記実施例7-1と同一方法により、異種二量体形成収率を評価した。
【0115】
比較のために、野生型CH3ドメイン配列を有するFc変異体(表1の「PTCWT」に対応する)のFc2に、IL-2変異体(IL-2v)を結合したFab-Fc×IL-2v-Fc異種二重抗体を陰性対照群にし、CH3ドメインに、GenentechのKiH(knobs-into-hole)配列を有するFc変異体(表1の「PTC019」に対応する)のFc2に、IL-2変異体(IL-2v)を結合したFab-Fc×IL-2v-Fc異種二重抗体を陽性対照群として利用した。
【0116】
【表10】
【0117】
図8は、Fab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体のSDS-PAGE分析結果を示したイメージである(M:サイズマーカー、WT:CH3ドメインに、PTCWT配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体(陰性対照群)、019:CH3ドメインに、PTC019配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体(陽性対照群)、074:CH3ドメインに、PTC074配列が適用されたFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体)。
その結果、図8に示されているように、PTC074配列及びPTC111配列を適用したFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体は、陰性対照群(PTCWT)または陽性対照群(PTC019)と比較し、94.4kDa(Fc-2-2同種二量体)及び77.4kDa(Fc1単量体)において、バンドの強度が低減され、136.5kDa(Fc-1-2異種二量体)において、バンドの強度が増大されたことを確認することができた。従って、PTC074配列及びPTC111配列を適用したFab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体は、Fc-2-2同種二量体バンド及びFc-1単量体の形成が低減されることにより、Fc-1-2異種二量体が高効率に形成されたことが分かる。
【0118】
また、表10に示されているように、Fab-Fc ×サイトカイン-Fc二重複合体に、陰性対照群(PTCWT)、陽性対照群(PTC019)、PTC074及びPTC111の配列が反映された構造により、Fc-1-2異種二量体の比率が、それぞれ40.6%、68.8%、90.4%及び89.9%と、PTC074、PTC111が反映された二重複合体が、陰性対照群(PTCWT)、陽性対照群(PTC019)と比較し、異種二量体の形成率が有意に高いということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、抗体を形成する構造に適用するだけではなく、サイトカインタンパク質を適用する場合、異種二量体形成能にすぐれているということが分かる。
【0119】
7-4.Fab-Fc×Fab-Fc二重特異抗体
前記実施例3で選別された高効率Fc変異体を含む異種二重抗体の異種二量体形成収率を評価するために、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのいずれも、重鎖と軽鎖とがいずれも連結された完全な形態の二重特異抗体を発現するように設計した。具体的には、Fc1は、野生型IgG1 Fc領域を含むアベルマブ抗体(Bavencio、Pfizer)を基に、発現が進められ、Fc2は、IgG1 Fc領域を含むベバシズマブ抗体(Avastin、Roche)を基に、発現が進められた。
【0120】
比較のために、野生型CH3ドメイン配列を有するFc変異体(表1の「PTCWT」に対応する)を含むFab-Fc×Fab-Fc異種二重抗体を陰性対照群にし、CH3ドメインに、GenentechのKiH(knobs-into-hole)配列を有するFc変異体(表1の「PTC019」に対応する)を含むFab-Fc×Fab-Fc異種二重抗体を陽性対照群として利用した。
【0121】
評価方法としては、Intact MASS(ESI-LC-MS)分析方法が使用された。具体的には、Thermo Scientific DionexTM UHPLC Ultimate 3000とTripleTOF 5600+(AB sciex)とを利用し、LC-MSを進め、分析プログラムは、Analyst software(登録商標)、PeakView software(登録商標)を利用し、異種二量体形成能を算出し、その結果を下記表11に示した。
【0122】
【表11】
【0123】
表11に示されているように、陰性対照群(PTCWT)及び陽性対照群(PTC019)の配列を適用したFab-Fc×Fab-Fc異種二重抗体のFc-1-2異種二量体形成率は、それぞれ25.4%及び32.4%である一方、CH3ドメイン配列がPTC039、PTC040及びPTC074である異種二重抗体のFc-1-2異種二量体形成率は、それぞれ58.1%、40.5%、46.8%であるということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体は、二重特異抗体への適用が容易であるだけではなく、前記構造への適用時、異種二量体形成にすぐれているということが分かる。
【0124】
実施例8.高効率Fc変異体を含むFab-Fc × scFv-Fc二重特異抗体の抗癌活性評価
8-1.癌細胞死滅及び癌成長抑制の確認
前記実施例7-1で製造した抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体の癌細胞死滅及び癌成長抑制能力を評価した。
【0125】
具体的には、RPMI1640培地(#11875-093、Gibco)に、10%(v/v)FBSと1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンを添加した後、37℃、5% CO2条件において、乳癌細胞(MDA-MB-231)を培養した。その後、前記細胞を10,000細胞/ウェルの濃度でもって、96ウェルプレートに分注した後、37℃、5% CO2条件で一晩(overnight)培養し、ヒト末梢血単核細胞(PBMC:human peripheral blood mononuclear cells)(エフェクタ細胞)を、20:1(エフェクタ細胞:ターゲット(MDA-MB-231)細胞)の比率で分注し、共培養した。その後、前記細胞に、抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体をウェルに処理した後、48時間培養した。その後、上澄み液を回収した後、LDH Cytotoxicity assay kit(#C20301、Invitrogen)を使用し、下記数式1によって細胞毒性を分析した。陽性対照群においては、アベルマブ(抗PD-L1抗体、Bavencio)を使用した。
【0126】
【数1】
【0127】
【表12】
【0128】
図9は、抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体のイン・ビトロ癌細胞死滅誘導能を評価したグラフである(アベルマブ:陽性対照群、抗PD-L1×抗CD3 scFv BsAb:CH3ドメインに、PTC074配列を保有している抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体)。
その結果、図9に示されているように、陽性対照群のEmax(最大細胞毒性効果)は、物質最大濃度において26%である一方,Fab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体のEmaxは、76.3%であり、癌細胞に対する細胞毒性効果が顕著に高いということを確認することができた。また、陽性対照群は、物質濃度2log(ng/mL)以上において、細胞溶解が増大せずに飽和され、0log~2log(ng/mL)区間において、有効量が形成されるということを確認することができた。一方、Fab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体は、物質濃度1log(ng/mL)以上において、細胞溶解が増大せずに飽和され、-1log~1log(ng/mL)において、有効量が形成されるということを確認することができた。
【0129】
また、表12に示されているように、MDA-MB-231癌細胞に対する増殖抑制効果が、陽性対照群の場合、11.8ng/mLEC50である一方、Fab-Fc × scFc-Fc異種二重抗体は、1.3ng/mLEC50と、癌細胞増殖抑制にさらに効果的であるということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体によって形成されたFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体は、公知された免疫抗癌剤と比較し、低い濃度において、すぐれた抗癌効果を示すが、正常細胞破壊や耐性のような既存治療剤の副作用を代替することができる。
【0130】
8-2.抗癌効能の確認
ヒト化されたマウス異種移植モデル(humanized mouse xenograft model)を使用し、抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体のイン・ビボ抗癌効能を評価した。具体的には、MDA-MB-231細胞(5×106)と、精製されたヒトT細胞(purified human T cells)(2.5×106)との混合物を、同一量のマトリゲルと混合し、NOD/SCIDマウス(メス、6週齢、JA BIO)の脇腹に、0.2mL/マウスの容量で皮下投与した。接種一時間後、前記実施例7-1で製造した抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体2.5mg/kgを静脈投与(5回/株)した。陽性対照物質であるアベルマブは、20mg/kgで静脈投与(3回/株)した。接種7日後から、腫瘍体積を測定(3回/週)し、2つの物質の抗癌効能を比較評価した。
【0131】
図10は、抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体のイン・ビボ癌成長抑制効能を評価したグラフである(アベルマブ:陽性対照群、抗PD-L1×抗CD3 sc FvBsAb:CH3ドメインに、PTC074配列を保有している抗PD-L1×抗CD3 scFv二重特異抗体)。
その結果、図10に示されているように、陰性対照群の場合、平均腫瘍体積が600mm3以上になるまで、28日間漸進的に増大し、腫瘍成長抑制効果がないということを確認することができた。また、陽性対照群の場合、腫瘍体積が持続的に増大し、28日目、腫瘍成長抑制効果が59%と示されることを確認することができた。一方、Fab-Fc × scFv-Fcの場合、9日目から21日目まで、同一腫瘍成長抑制回帰(regression)を維持し、28日目、腫瘍成長抑制効果が80%と、ヒト化されたマウス異種移植モデルにおいて、効果的に腫瘍成長を抑制するということを確認することができた。
すなわち、一態様によるFc変異体によって形成されたFab-Fc × scFv-Fc異種二重抗体は、腫瘍成長抑制効果にすぐれるが、乳癌を含む多様な癌の予防または治療に利用されうる。
【0132】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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