(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123092
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240903BHJP
C11D 1/40 20060101ALI20240903BHJP
C11D 1/92 20060101ALI20240903BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20240903BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20240903BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240903BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C07F7/18 X
C11D1/40
C11D1/92
C11D1/75
A61K8/58
A61Q5/02
A61Q5/12
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096461
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2022511204の分割
【原出願日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】62/890,341
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ホンチュク,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ミハリ,ボイチータ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体を合成する方法であって、簡単な経路を介して商業スケールで容易に合成することができる方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸のシロキサン誘導体を合成する方法であって、6-アミノヘキサン酸のアミノ末端基をアルキル化して二置換アミンを製造すること、及び前記二置換アミンのカルボキシル末端基を3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと反応させて前記アミノ酸のシロキサン誘導体を製造すること、を含む、方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸のシロキサン誘導体を合成する方法であって、
6-アミノヘキサン酸のアミノ末端基をアルキル化して二置換アミンを製造すること、及び
前記二置換アミンのカルボキシル末端基を3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと反応させて前記アミノ酸のシロキサン誘導体を製造すること、
を含む、方法。
【請求項2】
式Iのシロキサン誘導体を合成する方法であって、
以下
【化1】
のN-アルキル化アミノ酸のカルボキシル末端基を3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと反応させて、式I
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記C
1~C
6アルキルのアルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
nは、3~12の整数であり、
末端窒素は、所望に応じて、R
3でさらに置換され、この場合、R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択され、前記C
1~C
6アルキルのアルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され、及び
所望に応じて存在してよい前記化合物に付随する対イオンは、存在する場合、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択される)
のアミノ酸のシロキサン誘導体を製造すること、
を含む方法。
【請求項3】
前記式Iのnが3~6の整数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記式Iのnが5である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル化する工程の前に、カプロラクタムの環を開環して6-アミノヘキサン酸を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミドであり、以下の式
【化3】
を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記反応させる工程の後に、前記アミノ酸のシロキサン誘導体を塩酸で処理して、以下の式
【化4】
を有する6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサアミニウムクロリドを形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応させる工程の後に、前記アミノ酸のシロキサン誘導体をヨウ化メチルで処理して、以下の式
【化5】
を有する6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージドを形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記反応させる工程の後に、前記アミノ酸のシロキサン誘導体を過酸化水素で処理して、以下の式
【化6】
を有する6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシドを形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記反応させる工程の後に、前記アミノ酸のシロキサン誘導体を1,2-ブタンスルトンで処理して、以下の式
【化7】
を有する4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネートを形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が以下の式
【化8】
を有する6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が以下の式
【化9】
を有する6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサアミニウムクロリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が以下の式
【化10】
を有する6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が以下の式
【化11】
を有する6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸のシロキサン誘導体が以下の式
【化12】
を有する4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記反応させる工程の前に、カプロラクタムの環を開環して6-アミノヘキサン酸を形成する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全開示内容が参照により本明細書に援用される、2019年8月22日に出願された「SILOXANE DERIVATIVES OF AMINO ACIDS HAVING SURFACE-ACTIVE PROPERTIES」と題する米国仮特許出願第62/890,341号の利益を、米国特許法第119条(e)の下で主張する。
【0002】
本開示は、アミノ酸のシロキサン誘導体、及びその合成方法に関し、シロキサン誘導体は、表面活性特性を有する。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤(表面活性特性を有する分子)は、需要の高い特徴を有する分子の重要なクラスである。界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、カチオン性、又はアニオン性であり得る。多くの場合、これらの化合物は、非水溶性の疎水性「尾部」基及び水溶性の親水性「頭部」基を有する両親媒性分子である。これらの化合物は、二液間、気液間、又は固液間の界面などの界面で吸着し得る。水と油との間の界面の場合、親水性の頭部基は、水中へ延び、一方疎水性の尾部基は、油中へ延びる。水に添加されると、親水性の頭部基は、水中へ延び、一方疎水性の尾部基は、空気中へ延びる。界面活性剤が存在すると、水分子間の分子間相互作用が乱され、それが、水分子と界面活性剤との間のより弱い相互作用に置き換わる。これは、表面張力を低下させる結果となり、界面を安定化させるようにも働き得る。
【0004】
充分に高い濃度では、界面活性剤は、凝集体を形成して、疎水性の尾部が極性溶媒に曝露することを制限し得る。1つのそのような凝集体は、ミセルであり、この場合、分子は球状に配列され、疎水性の尾部が球の内側にあり、親水性の頭部が外側にあって、極性溶媒と相互作用する。任意の化合物が表面張力及びミセルを形成する濃度に対して有する効果は、界面活性剤にとっての典型的な特徴として有用であり得る。
【0005】
界面活性剤は、洗剤からヘアケア製品や化粧品まで様々な製剤における商業的用途に広く用いられている。表面活性特性を有する化合物は、中でも、石鹸、洗剤、潤滑剤、湿潤剤、起泡剤、及び展着剤として用いられる。したがって、そのような化合物を識別し、合成することが継続的に求められている。
【0006】
しかし、その構造からだけでは、界面吸着動態、実現可能な最小表面張力、並びに/又は疎水性面及び/若しくは疎油性面の湿潤能力などのその化合物が有用な界面活性剤となるかどうかに関してやはり不可欠である他の重要な特徴は言うまでもなく、任意の化合物が表面活性特性を有するかどうかを予測することは困難であり得る。例えば、ある特定のアミノ酸及びその誘導体は、界面活性剤のためのビルディングブロックとして望ましいが、どのアミノ酸を用いるかの選択は、直観的に分かりやすいとはとても言えない。同様に、いくつかのシロキサンは、表面活性特性を有することが分かっているが、やはり、どのシロキサンが有効となるかを予測することは、非常に困難である。そのような化合物の合成は、同じ分子中に存在する異なる元素及び部分に起因すると考えられる溶解性の相違により、困難の度を深める。簡単な経路を介して商業スケールで容易に合成することができる効果の高い界面活性剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体を提供する。アミノ酸は
、天然若しくは合成アミノ酸であってよい、又はカプロラクタムを例とするラクタムなどの分子の開環反応を介して得られてもよい。アミノ酸は、異なる種類のシロキサン基で官能化されて、表面活性特性を有する化合物が形成されてもよい。特徴的なことには、これらの化合物は、低い臨界ミセル濃度(CMC)及び/又は液体の表面張力を低下させる能力を有し得る。
【0008】
本開示は、以下の式Iの化合物を提供し:
【0009】
【0010】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは、1~12の整数であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換さ、この場合、R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0011】
本開示によって提供されるさらなる化合物は、式Iaの化合物であり:
【0012】
【0013】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
mは、1~6の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0014】
本開示によって提供されるさらなる化合物は、式Ibの化合物であり:
【0015】
【0016】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
pは、5であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0017】
本開示によって提供されるさらに他の化合物は、R1及びR2がメチルである、式Iの化合物である。
本開示によって提供される他の化合物は、nが5である、式Iの化合物である。
【0018】
本開示によって提供されるさらに他の化合物は、R1及びR2がメチルである、式Ibの化合物である。
本開示によって提供されるなお他の化合物は、R3が水素である、式Ibの化合物である。
【0019】
本開示によって提供される他の化合物は、対イオンがクロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択される、式Ibの化合物である。
本開示によって提供されるさらなる化合物は、対イオンがクロリドである、式Ibの化合物である。
【0020】
本開示によって提供される他の化合物は、R3がメチルである、式Ibの化合物である。
本開示によって提供される他の化合物は、対イオンがヨージドである、式Ibの化合物である。
【0021】
本開示によって提供されるさらに他の化合物は、R3が酸素である、式Ibの化合物である。
本開示によって提供されるさらなる化合物は、R3がスルホネートで置換されたC1~C6アルキルである、式Ibの化合物である。
【0022】
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(
3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミドであり、以下の式を有する。
【0023】
【0024】
本開示によって提供される第二の具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサアミニウムクロリドであり、以下の式を有する。
【0025】
【0026】
本開示によって提供される第三の具体的な化合物は、3 6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージドであり、以下の式を有する。
【0027】
【0028】
本開示によって提供される第四の具体的な化合物は、6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシドであり、以下の式を有する。
【0029】
【0030】
本開示によって提供される第五の具体的な化合物は、4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-
3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネートであり、以下の式を有する。
【0031】
【0032】
本開示によって提供される第六の具体的な化合物は、5-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ペンタン-1-スルホネートであり、以下の式を有する。
【0033】
【0034】
本開示の上述の及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の実施形態の記述を添付の図面と合わせて参照することによって、より明らかとなり、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、例1bで述べるように、界面活性剤2においてクロリドを対イオンとした場合のpH=7で測定した表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図2】
図2は、例2bで述べるように、界面活性剤3における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図3】
図3は、例2bで述べるように、界面活性剤3における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図4】
図4は、例3bで述べるように、界面活性剤4における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図5】
図5は、例3bで述べるように、界面活性剤4における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図6】
図6は、例4bで述べるように、界面活性剤5における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図7】
図7は、例4bで述べるように、界面活性剤5における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかに関わらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択されてよい。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」の語は、いずれの飽和炭素鎖をも意味し、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよい。
本明細書で用いられる場合、「表面活性」の句は、関連する化合物が、それが溶解されている媒体の表面張力及び/又は他の相との界面張力を低下させることができ、したがって、気液界面及び/又は他の界面に吸着し得ることを意味する。「界面活性剤」の用語は、そのような化合物に適用され得る。
【0038】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」の用語は、交換可能に用いられてよく、記載された測定値を含み、その記載された測定値に対して合理的に近いいずれの測定値も含む測定値を意味する。記載された測定値に対して合理的に近い測定値は、該当する技術分野の当業者によって理解され、容易に確認される合理的に小さい量の分、記載された測定値から逸脱している。そのような逸脱は、例えば、測定誤差又は性能を最適化するために成される少しの調整に起因すると考えられ得る。該当する技術分野の当業者が、そのような合理的に小さい差異に関する値が容易に確認されるものではないと判断する場合には、「約」及び「およそ」の用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解されてよい。
【0039】
本開示は、アミノ酸のシロキサン誘導体を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から得られてもよい。本開示の化合物は、表面活性特性を有することが示され、例えば界面活性剤及び湿潤剤として用いられ得る。特に、本開示は、以下に示される式Iの化合物を提供し:
【0040】
【0041】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基であり、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの1つ以上を含む置換基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは、1~12の整数であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0042】
本開示は、さらに、式Iaの化合物を提供し:
【0043】
【0044】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
mは、1~6の整数であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0045】
本開示は、さらに、式Ibの化合物を提供し:
【0046】
【0047】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
pは、5であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0048】
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)であり、以下の式を有する。
【0049】
【0050】
本開示によって提供される第二の具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサミニウムクロリド(界面活性剤2)であり、以下の式を有する。
【0051】
【0052】
本開示によって提供される第三の具体的な化合物は、3 6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)であり、以下の式を有する。
【0053】
【0054】
本開示によって提供される第四の具体的な化合物は、6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)であり、以下の式を有する。
【0055】
【0056】
上記の構造において、「N→O」の表記は、窒素と酸素との間の非イオン性結合相互作用を意味することを意図している。
本開示によって提供される第五の具体的な化合物は、4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)であり、以下の式を有する。
【0057】
【0058】
本開示によって提供される第六の具体的な化合物は、5-((6-((3-(1,1,
1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ペンタン-1-スルホネートであり、以下の式を有する。
【0059】
【0060】
これらの化合物は、様々な方法によって合成され得る。1つのそのような方法は、N-アルキル化又はN-アシル化アミノ酸などのアミノ酸をシロキサンと反応させて、アミノ酸C末端を所望されるシロキサン誘導体に変換することを含む。アミノ酸N末端が、さらにプロトン化、アルキル化、又は酸化されて、四級アミン又はN-オキシドが例えば得られてもよい。
【0061】
アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から誘導されてもよい。開環反応は、酸又はアルカリ触媒反応であってよく、酸触媒反応の例を以下のスキーム1に示す。
【0062】
【0063】
アミノ酸は、少なくは1個の又は多くは12個の炭素を、N末端とC末端との間に有し得る。アルキル鎖は、分岐鎖又は直鎖であってよい。アルキル鎖には、窒素、酸素、又は硫黄が介在していてもよい。アルキル鎖は、さらに、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。N末端窒素は、アシル化又は1つ以上のアルキル基でアルキル化されていてもよい。例えば、アミノ酸は、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸であってよい。
【0064】
シロキサンは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシなどの1つ以上のアルコキシ基で置換されていてもよい。シロキサンは、プロピルなどの1つ以上のアルキル基でさらに置換されていてもよく、この場合、アルキル基は、なおさらに、窒素などのアミノ酸へのシロキサンのカップリングを可能とするための適切な官能基で置換されていてもよい。例えば、シロキサンは、3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであってよい。
【0065】
アミノ酸のシロキサン誘導体は、以下のスキーム2に示されるように合成されてもよい。示されるように、6-アミノヘキサン酸が、還流下、ギ酸中でホルムアルデヒドで処理されて、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸が得られる。次に、この遊離カルボン酸が、還流トルエン中で3-アミノプロピル(トリスメチルシロキシ)シランにカップリングされて、所望されるシロキサン誘導体が得られる。
【0066】
【0067】
N末端窒素は、水溶性及び表面活性特性を改変又は改善するために、さらに誘導体化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下のスキーム3に示し、この場合、N末端窒素は、塩酸で処理されて、対応する塩酸塩が得られる。
【0068】
【0069】
N末端窒素は、アルキル化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下に示し、この場合、N末端窒素は、ヨウ化メチルで処理されて、対応する四級アミン塩が得られる。
【0070】
【0071】
N末端窒素は、以下のサンプル合成スキームのスキーム5に示されるように、還流水中で過酸化水素で処理されて、対応するN-オキシドが得られてもよい。
【0072】
【0073】
本開示の化合物は、表面活性特性を呈する。これらの特性は、様々な方法によって測定し、表され得る。界面活性剤を表し得る1つの方法は、分子の臨界ミセル濃度(CMC)
による。CMCは、ミセルを形成する界面活性剤の濃度として定義され得るものであり、それよりも高い濃度では、追加の界面活性剤はすべてミセルに取り込まれる。
【0074】
界面活性剤濃度が上昇するに従って、表面張力は低下する。表面が界面活性剤分子で完全に覆われると、ミセルが形成し始める。この時点が、CMC、さらには最小表面張力を表している。界面活性剤をさらに添加しても、表面張力にさらに影響を与えることはない。CMCは、したがって、界面活性剤濃度の関数として表面張力の変化を観察することによって測定され得る。この値を測定するためのそのような1つの方法は、ウィルヘルミープレート法である。ウィルヘルミープレートは、通常、ワイヤで天秤に取り付けられた薄いイリジウム-白金プレートであり、空気-液体界面に対して垂直に配置される。天秤を用いて、濡れによってプレートに働く力が測定される。次に、この値を用い、式1に従って表面張力(γ)が算出され:
式1:γ=F/l cosθ
式中、lは、濡れ周長(w及びdをそれぞれプレートの厚さ及び幅とした場合に、2w+2d)に等しく、cosθについては、液体とプレートとの間の接触角は、現存文献値がない場合は0と仮定する。
【0075】
界面活性剤の性能を評価するために用いられる別のパラメータは、動的表面張力である。動的表面張力は、特定の表面又は界面の経過時間に対する表面張力の値である。界面活性剤が添加された液体の場合、これは、平衡値と異なり得る。表面が生成された直後は、表面張力は、純液体の表面張力と等しい。上記で述べたように、界面活性剤は、表面張力を低下させるため、表面張力は、平衡値に到達するまで低下する。平衡に到達するのに要する時間は、界面活性剤の拡散速度及び吸着速度に依存する。
【0076】
動的表面張力を測定する1つの方法は、最大泡圧式張力計によるものである。この装置は、液体中に形成された気泡の最大内圧を、キャピラリーによって測定する。測定された値は、気泡形成の開始から最大圧力となるまでの時間である、ある特定の表面の経過時間での表面張力に相当する。表面張力の表面経過時間に対する依存性は、気泡が生成される速度を変動させることによって測定することができる。
【0077】
表面活性化合物は、接触角によって測定される固体基材上での湿潤能力によっても評価され得る。液滴が、空気などの第三の媒体中で固体表面と接触する場合、液体、気体、及び固体間で三相線が形成される。三相線で役割を果たしており、液滴の接線である表面張力の単位ベクトルと、表面と、の間の角度が、接触角として表される。接触角(湿潤角としても知られる)は、液体による固体の濡れ性の尺度である。完全濡れの場合、液体は固体上に完全に拡がっており、接触角は0°である。濡れ特性は、典型的には、任意の化合物に対して1~10×CMCの濃度で測定されるが、濃度に依存する特性ではないことから、濡れ特性の測定値は、これよりも高い又は低い濃度で測定されてもよい。
【0078】
1つの方法では、光学接触角ゴニオメーターが、接触角の測定に用いられ得る。この装置は、デジタルカメラ及びソフトウェアを用いて、表面上の液体の静止液滴の輪郭形状を分析することによって接触角を求める。
【0079】
本開示の表面活性化合物に対する考え得る用途としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、洗剤、スポットフリーリンス溶液、床及びカーペットクリーナー、落書き除去用の洗浄剤、作物保護用の湿潤剤、作物保護用の補助剤、並びにエアロゾルスプレーコーティング用の湿潤剤として用いるための製剤が挙げられる。
【0080】
当業者であれば、化合物間の少しの相違が、著しく異なる界面活性剤特性に繋がり得ることから、異なる基材、異なる用途においては、異なる化合物が用いられ得ることは理解
される。
【0081】
以下の限定されない実施形態は、異なる界面活性剤の異なる特性を示すために提供される。以下の表1では、界面活性剤の略称と、それらの対応する化学構造との関連を示している。
【0082】
【0083】
5つの化合物の各々は、表面活性剤として有効であり、数ある用途の中でも、湿潤剤又は起泡剤、分散剤、乳化剤、及び洗剤用として有用である。
界面活性剤1及び2は、起泡剤又は湿潤剤として、様々な表面洗浄製品製剤及びパーソナルケア製品製剤に用いるための候補である。
【0084】
界面活性剤3は、カチオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途、及び
表面処理剤などの、パーソナルヘアケア製品などの、いくつかのさらなる特別な用途の両方に有用であり、また、撥水性表面を生成するために用いることもできる。
【0085】
界面活性剤4は、非イオン性であり、シャンプー、洗剤、硬質表面クリーナー、及び様々な他の表面洗浄製剤に用いることができる。
界面活性剤5は、双性イオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途のすべてにおける共界面活性剤として有用である。
【0086】
製剤に用いられる本明細書で開示される化合物の量は、低くは約0.001重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、若しくは約5重量%、又は高くは約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、若しくは約25重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってよい。
【0087】
実施例
核磁気共鳴(NMR)分光法は、Bruker 500MHz分光計で行った。臨界ミセル濃度(CMC)は、ウィルヘルミープレート法により、Pt-Irプレートを備えた張力計(DCAT 11,DataPhysics Instruments GmbH)を用いて23℃で特定した。動的表面張力は、最大泡圧式張力計(Kruss BP100,Kruss GmbH)を用いて23℃で特定した。接触角は、デジタルカメラを備えた光学接触角ゴニオメーター(OCA 15 Pro,DataPhysics GmbH)を用いて特定した。
【0088】
例1a:
6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)及び6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウム塩(界面活性剤2)の合成
【0089】
【0090】
6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(2.00g、12.56mmol、1当量)を、Dean Starkトラップを取り付けた100mLの丸底沸騰フラスコ中のトルエン(50mL)に溶解し、続いて3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(5.48mL,13.81mmol、1.1当量)を添加した。反応容器を加熱し、Dean Stark管に水が分離されなくなるまで、24時間にわたって反応物を還流させた。溶媒を真空除去して、界面活性剤1を、黄色オイルとして94%の収率で得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ:0.09(s,27H),0.28-0.31(m,2H),1.12-1.26(m,2H),1.27-1.30(m,4H),1.38-1.41(m,2H),1.94(t,J=7.3Hz,2H),2.00(s,6H),2.06-2.03(m,2H),2.89(dd,J=12.9,6.8
Hz,2H)
中性の形態では、界面活性剤1は、ヒドロトロープ剤又は他の界面活性剤の添加なしでは、純水に僅かに可溶性であるが、僅かな酸性条件でプロトン化すると、界面活性となる(界面活性剤2)。酸性条件は、pH範囲が4~7であるいずれの酸又は酸性緩衝剤の添加によって作り出してもよい。界面活性剤2は、非水性溶液中で調製されてもよく、例えば、界面活性剤1の存在下で、トルエン中に気体HClを注入することによる。
【0091】
例1b:
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)の特定
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)を、クロリド対イオンで試験し、約2mmolであると特定した。この界面活性剤で到達可能である最小界面活性剤のプラトー値は、約23mN/mである。
図1は、これらの結果のプロットであり、表面張力対濃度を示している。
【0092】
例2a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)の合成
【0093】
【0094】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中のアセトニトリル(10mL)に溶解した。次に、Na2CO3(0.26g、2.42mmol、1.2当量)を添加し、混合物を10分間撹拌した。ヨウ化メチル(0.377mL、6.06mmol、3当量)を添加し、反応物を40℃で24時間加熱した。冷却した反応混合物をろ過し、溶媒を真空除去して、界面活性剤3を、僅かに黄色い固体として定量的収率で得た。1H NMR(500 MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.42(m,2H),1.23-1.26(m,2H),1.37-1.40(m,2H),1.52-1.55(m,2H),1.65-1.69(m,2H),2.08(t,J=7.4Hz,2H),2.99(dd,J=13,6.9Hz,2H),3.04(s,9H),),3.24-3.33(m,2H)
純生成物は、水に可溶性であり、界面活性剤特性を有する。ハロゲンアニオンは、N-アルキル化反応から直接得ることができ、他の所望される対アニオンは、アニオン交換によって得ることができる。
【0095】
例2b:
界面活性剤3の物理的特性の特定
界面活性剤3に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約1.6mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図2に示す。
【0096】
界面活性剤3の動的表面張力を、新たに作り出された空気-水界面の表面張力の経時での変化を測定する最大泡圧式張力計で特定した。
図3は、表面張力対時間としての結果の
プロットを示し、界面活性剤3が、500ms未満で界面を完全に飽和させており、界面吸着という点で極めて高速となっていることを示している。
【0097】
界面活性剤3の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、界面活性剤のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材は、接触角0°の完全表面濡れを呈する。テフロンなどの疎油性及び疎水性基材上では、測定した接触角は極めて小さく、10.5°であった(表2)。
【0098】
【0099】
例3a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)の合成
【0100】
【0101】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の蒸留水(80mL)に添加し、続いて50%の過酸化水素(1.15mL、20.2mmol、10当量)を添加した。反応物を12時間還流し、次に真空濃縮した。残渣をアセトンで3回洗浄して、99%の収率で界面活性剤4を得た。
1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.44(m,2H),1.21-1.25(m,2H),1.35-1.42(m,2H),1.50-1.55(m,2H),1.71-1.75(m,2H),2.05-2.08(m,2H),2.97-3.00(m,2H),3.01(s,9H),3.11-3.14(m,2H)
例3b:
界面活性剤4の物理的特性の特定
界面活性剤4に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.49mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図4に示す。
【0102】
界面活性剤4の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図5は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤4が、新たに作り出された空気-水界面を
1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速となっていることを示している。
【0103】
界面活性剤4の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、1~100×CMCの濃度で界面活性剤4のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、10×CMCの濃度の界面活性剤4水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロンなどの粗油性及び疎水性基材上では10.6°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて小さい(表3)。
【0104】
【0105】
例4a:
4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)の合成
【0106】
【0107】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の酢酸エチル(EtOAc)(30mL)に添加し、続いて1,2-ブタンスルトン(0.27mL、2.2mmol、1.1当量)を添加した。反応物を12時間還流し、その後、溶媒を除去し、得られた白色のワックス状固体をアセトンで洗浄して、50%の収率で界面活性剤5を得た。
1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.10(s,27H),0.38-0.46(m,2H),1.23-1.27(m,2H),1.37-1.68(m,10H),1.73-1.78(m,2H),2.45-2.48(m,2H),2.97-3.01(m,8H),3.18-3.21(m,2H),3.23-3.27(m,2H)
例4b:
界面活性剤5の物理的特性の特定
界面活性剤5に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.39mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約21mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図6に示す。
【0108】
界面活性剤5の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図7は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤5が、新たに作り出された空気-水界面を1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速となっていることを示している。
【0109】
最後に、10×CMCの濃度の界面活性剤5水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロンなどの粗油性及び疎水性基材上では10.2°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて小さい(表4)。
【0110】
【0111】
例5:
シャンプーのための製剤
この例では、シャンプーとして用いるための製剤を提供する。この製剤は、ヘアに滑らかでシルキーな感触を与えるのに有用である。製剤の成分を以下の表4に示す。加えて、製剤は、他の天然油及び原材料、さらには消費者へのアピールのためにビタミンを、1重量%未満の量で含んでもよい。
【0112】
【0113】
例6:
ヘアコンディショナーのための製剤
この例では、ヘアコンディショナーとして用いるための製剤を提供する。この製剤は、ヘアコンディショナーがもたらす櫛通りの良さ及びシルキーでソフトな感触は保持しながら、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-7、及びジメチコン油を置き換える又は削減するために用いられ得る。製剤を以下の表5に示す。
【0114】
【0115】
例7:
表面の頑固なシミを除去するための洗車用洗剤のための製剤
この例では、表面の頑固なシミを除去するための洗車用洗剤のための製剤を提供する。製剤を以下の表6に示す。
【0116】
【0117】
例8:
スポットフリーリンス又は乾燥溶液のための製剤
この例では、スポットフリーリンス又は乾燥溶液のための製剤を提供する。この溶液は、メイン洗浄の完了後に、車の窓又はボディに適用され得る。製剤を以下の表7に示す。
【0118】
【0119】
例9:
ヘビーデューティーカーペットクリーナーのための製剤
この例では、ヘビーデューティーカーペットクリーナーのための製剤を提供する。このクリーナーは、高起泡性ディープクリーナーである。製剤を以下の表8に示す。
【0120】
【0121】
例10:
ヘビーデューティー表面クリーナーのための製剤
この例では、ヘビーデューティー表面クリーナーのための製剤を提供する。このクリーナーは、手動又は自動の表面クリーニングマシン用に用いられ得る。製剤を以下の表9に示す。
【0122】
【0123】
例11:
落書き除去用濃縮洗剤のための製剤
この例では、落書き除去用濃縮洗剤のための製剤を提供する。この洗剤は、高圧ホースで使用され得る。製剤を以下の表10に示す。
【0124】
【0125】
例12:
エアロゾルスプレーの湿潤剤のための製剤
この例では、エアロゾルスプレーの湿潤補助剤のための製剤を提供する。エアロゾルスプレーは、殺虫剤又は他の作物保護剤を適用するために用いられ得る。提供される製剤は、非常に優れた湿潤性及び低CMCによるより良好な性能を提供することによって、殺虫
剤及び他の作物保護剤中の界面活性化学薬品の量を削減し(典型的には2~5%)、したがって、より環境にやさしい選択肢を提供することを目的としている。製剤を以下の表11に示す。
【0126】
【0127】
例13:
エアロゾルスプレー塗料用添加剤の製剤
この例では、水性エアロゾルスプレー塗料又はコーティング用添加剤のための製剤を提供する。この製剤は、適用時に、エアロゾル液滴の表面上での良好な動的湿潤を提供し、したがって塗料のクレーター及びそのような他の問題を防止することを目的としている。製剤を以下の表12に示す。
【0128】
【0129】
態様
態様1は、式Iの化合物であり:
【0130】
【0131】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
nは、1~12の整数であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、ヒ
ドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0132】
態様2は、式Iaで表される態様1に記載の化合物であり:
【0133】
【0134】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
mは、1~6の整数であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0135】
態様3は、式Ibで表される態様1又は2のいずれかに記載の化合物であり:
【0136】
【0137】
式中、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
pは、5であり;
末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合、R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、所望に応じて、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択されてよい。
【0138】
態様4は、態様1~3のいずれか1つに記載の化合物であり、R1及びR2は、メチルである。
態様5は、態様1に記載の化合物であり、nは、5である。
【0139】
態様6は、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物であり、R3は、水素である。
態様7は、態様1~6のいずれか1つに記載の化合物であり、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択される。
【0140】
態様8は、態様7に記載の化合物であり、対イオンは、クロリドである。
態様9は、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物であり、R3は、メチルである。
態様10は、態様9に記載の化合物であり、対イオンは、クロリド、ブロミド、及びヨージドから成る群より選択される。
【0141】
態様11は、態様10に記載の化合物であり、対イオンは、ヨージドである。
態様12は、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物であり、R3は、酸素原子である。
【0142】
態様13は、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物であり、R3は、末端スルホネートで置換されたC1~C6アルキルである。
態様14は、態様1~3のいずれか1つに記載の化合物であり、化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミドであり、以下の式を有する。
【0143】
【0144】
態様15は、態様6~8のいずれか1つに記載の化合物であり、化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサアミニウムクロリドであり、以下の式を有する。
【0145】
【0146】
態様15は、態様9~11のいずれか1つに記載の化合物であり、化合物は、3 6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージドであり、以下の式を有する。
【0147】
【0148】
態様17は、態様12に記載の化合物であり、化合物は、6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシドであり、以下の式を有する。
【0149】
【0150】
態様18は、態様13に記載の化合物であり、化合物は、4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネートであり、以下の式を有する。
【0151】
【0152】
態様19は、態様13に記載の化合物であり、化合物は、5-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ペンタン-1-スルホネートであり、以下の式を有する。
【0153】