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特開2024-12310燃料経済性のための乗用車用潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012310
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】燃料経済性のための乗用車用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20240123BHJP
   C10M 159/12 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 133/08 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 129/08 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 159/20 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 129/40 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 133/10 20060101ALN20240123BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240123BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M159/12
C10M133/08
C10M133/16
C10M129/08
C10M139/00 A
C10M159/22
C10M159/20
C10M159/24
C10M129/10
C10M129/54
C10M129/40
C10M133/10
C10M139/00 Z
C10M137/10 A
C10N20:04
C10N10:04
C10N10:12
C10N40:25
C10N30:06
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173503
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2020516881の分割
【原出願日】2018-09-28
(31)【優先権主張番号】15/726,652
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佳尚
(72)【発明者】
【氏名】金内 雅也
(72)【発明者】
【氏名】曽根 智尋
(72)【発明者】
【氏名】スエン、ヤット ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、トレバー ダブリュー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料経済性を改良した内燃期間潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】本発明の内燃機関潤滑油組成物は、以下を含む。(a)主要量の潤滑粘度の基油、(b)窒素含有分散剤、(c)アルカリ土類金属含有清浄剤、(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、(ii)ホウ素源、および(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの(d)反応生成物を含む化合物。また、上記エンジンを上記潤滑油組成物で潤滑することを含む、内燃機関において新油または使用済み油の燃料経済性を改善する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用車用内燃機関潤滑油組成物であって、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、乗用車用内燃機関潤滑油組成物。
【請求項2】
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、ビスエトキシアルキルアミンまたはビスエトキシアルキルアミドを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記ホウ素源がホウ酸である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物が、150℃で約1.3~約3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチル酸塩、カルボン酸塩、フェネート、スルホン酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
ZnDTP化合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記エンジンを潤滑油組成物で潤滑することを含む、乗用車用内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油組成物は、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、方法。
【請求項14】
前記内燃機関が、ハイブリッド車両の電気モーター/バッテリーシステムに結合された直噴火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エンジンがガソリン微粒子フィルターを備えている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物であって、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物。
【請求項17】
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、ビスエトキシアルキルアミンまたはビスエトキシアルキルアミドを含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記ホウ素源がホウ酸である、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
前記潤滑油組成物が、150℃で約2.5~約3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチレート、カルボキシレート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
ZnDTP化合物をさらに含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記潤滑油組成物がリン含有添加剤を実質的に含まない、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
前記潤滑油組成物が亜鉛含有添加剤を実質的に含まない、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
前記エンジンを潤滑油添加剤組成物で潤滑することを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油添加剤組成物は、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、方法。
【請求項31】
エンジンがディーゼル微粒子フィルターを備えている、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
低粘度エンジンオイルの設計では、境界摩擦レジームが重要な考慮事項である。2つの表面を分離する流体膜が、表面の凹凸の高さより薄くなると、境界摩擦が発生する。生じる表面同士の接触は、エンジンに望ましくない高い摩擦と低い燃料経済性をもたらす。エンジンの境界摩擦は、高負荷、低エンジン速度および低オイル粘度で発生する可能性がある。低粘度のエンジンオイルは、オイルが薄く、フィルムの堅牢性が低いため、エンジンを境界摩擦状態で作動させるのをより容易にする。基油ではなく添加剤が境界条件下での摩擦係数に影響するため、境界条件下での摩擦係数がより低い添加剤は、エンジンの低粘度オイルで優れた燃料経済性を与える。
【0002】
潤滑油配合技術の進歩にもかかわらず、摩擦低減特性およびデポジットコントロールを維持または改善する一方で、燃料経済性を効果的に改善するハイブリッド車および直噴エンジンの両方に適した低粘度エンジンオイル潤滑剤に対する必要性が存在する。
本開示は、一般に、当技術分野でより一般的に知られている摩擦調整剤と比較して、驚くほど良好な摩擦特性および改善された燃料経済性を示す有機摩擦調整剤を含む低粘度の大型車両用(heavy-duty)および乗用車用潤滑油組成物(すなわち、0Wまたは5WのSAE粘度グレードおよび2.9cP未満のHTHS粘度)に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一実施形態によれば、以下を含む化合物を含む内燃機関潤滑油組成物が提供される。(a)主要量の潤滑粘度の基油、(b)窒素含有分散剤、(c)アルカリ土類金属含有清浄剤、(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、(ii)ホウ素源、および(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの(d)反応生成物を含む化合物。
また、上記エンジンを上記潤滑油組成物で潤滑することを含む、内燃機関において新油(fresh oil)または使用済み油の燃料経済性を改善する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書で開示される主題の理解を容易にするために、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない任意の用語、略語または略記は、本出願の提出と同時に当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。
【0005】
定義:
本明細書では、以下の単語および表現は、使用されるならば、および使用される場合、以下に示される意味を有する。
【0006】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0007】
「少量」とは、組成物の50重量%未満を意味し、記載された添加剤に関して、および組成物中に存在するすべての添加剤の総質量に関して、1つまたは複数の添加剤の有効成分としてみなされる。
【0008】
「有効成分」または「有効物質」とは、希釈剤または溶媒ではない添加剤を指す。
【0009】
報告されているすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、有効成分ベースの重量%である(すなわち、担体または希釈油に関係なく)。
【0010】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、重量の百万分率を意味する。
【0011】
150°Cでの高温高せん断(HTHS)粘度は、ASTM D4683に従って測定した。
【0012】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って測定した。
【0013】
金属-用語「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲を通して、油溶性または分散性という表現が使用される。油溶性または分散性とは、所望のレベルの活性または性能を提供するのに必要な量を、潤滑粘度の油に溶解、分散、または懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。通常、これは、材料の少なくとも約0.001重量%が潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。用語油溶性および分散性、特に「安定した分散性」のさらなる議論については、米国特許第4,320,019号を参照にし、この点に関する関連する教示が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書で使用される用語「硫酸灰分」は、潤滑油中の清浄剤および金属添加剤から生じる不燃性残留物を指す。硫酸灰分は、ASTM Test D874を使用して測定することができる。
【0016】
本明細書で使用される用語「全塩基価」または「TBN」は、1グラムのサンプル中のKOHのミリグラムに相当する塩基当量の量を指す。したがって、TBNの数値が高いほど、アルカリ性生成物が多く、したがって、アルカリ度がより高いことを反映する。ASTM D 2896試験を使用してTBNを測定した。
【0017】
特に指定しない限り、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0018】
一般に、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.7重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.70重量%、0.01~0.6重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.4重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.2重量%、0.01重量%~0.10重量%の硫黄のレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.60重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下である。
【0019】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.12重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.12重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.11重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.11重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.10重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.10重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.09重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.09重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.08重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.08重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.07重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.07重量%のリンのレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%以下、例えば、約0.01重量%~約0.05重量%のリンのレベルである。一実施形態では、潤滑油は、実質的にリンを含まない。
【0020】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により測定されるように、約1.60重量%以下であり、例えば、ASTM D 874により測定されるように、約0.10~約1.60重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により測定されるように、約1.00重量%以下であり、例えば、ASTM D 874により測定されるように、約0.10~約1.00重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により測定されるように、約0.80重量%以下であり、例えば、ASTM D 874により測定されるように、約0.10~約0.80重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874により測定されるように、約0.60重量%以下であり、例えば、ASTM D 874により測定されるように、約0.10~約0.60重量%の硫酸灰分のレベルである。
【0021】
本明細書で言及されるすべてのASTM規格は、本出願の出願日時点での最新バージョンである。
【0022】
一態様では、以下を含む乗用車用内燃機関潤滑油添加剤組成物が提供される。
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油、
(b)窒素含有分散剤、
(c)潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物。
【0023】
また、上記エンジンを潤滑油組成物で潤滑することを含む、乗用車用内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法も提供され、潤滑油組成物は以下を含む。
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油、
(b)窒素含有分散剤、
(c)潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物。
【0024】
一態様では、以下を含む大型車両用ディーゼルエンジン潤滑油添加剤組成物が提供される。
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油、
(b)窒素含有分散剤、
(c)潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物。
【0025】
また、上記エンジンを潤滑油組成物で潤滑することを含む、大型車両用ディーゼルエンジンにおいて新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法も提供され、潤滑油組成物は以下を含む。
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油、
(b)窒素含有分散剤、
(c)潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物。
【0026】
特定の実施形態では、本開示は、乗用車用内燃機関、特に火花点火式、直噴および/またはポート燃料噴射エンジンの摩擦を低減するのに適した潤滑油組成物を提供する。特定の実施形態では、エンジンは、ハイブリッド車の電気モーター/バッテリーシステムに連結させることができる(例えば、ハイブリッド車の電気モーター/バッテリーシステムに連結されたポート燃料噴射火花点火エンジン)。特定の実施形態では、本開示は、大型車両用ディーゼル内燃機関の摩擦を低減するのに適した潤滑油組成物を提供する。
【0027】
窒素含有反応物
アルカノールアミド
一実施形態では、窒素含有反応物はアルキルジアルカノールアミドである。そのようなアルキルジアルカノールアミドには、ヤシ油に由来するジエタノールアミドが含まれるが、これらに限定されない。通常、ヤシ油のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチルステアリル、オレイルおよびリノレイルの混合物を含む。
【0028】
通常、アルキルジアルカノールアミドは、カルボン酸およびエステルをジアルカノールアミンと反応させることにより調製される。アルキルジアルカノールアミドは、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などの個々のC~C30カルボン酸、または例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸としてのそれらのメチルエステル、あるいは動物性脂肪または植物性油、つまり獣脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、魚油などに由来するアルキルの混合物油から調製することができる。これらは、様々なジアルカノールアミンと容易に反応して、所望のアルキルジアルカノールアミドを生成することができる。アルキルジアルカノールアミドは、米国特許第4,085,126号;米国特許第4,116,986号;および米国特許第8,901,328号に記載されているプロセスを含むがこれに限定されない、当技術分野で公知の方法に従って調製することができ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
一実施形態では、窒素含有反応物は、以下の式(I)を有するアルキルジアルカノールアミドであって:
【化1】

式中、Rは1~30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは6~22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは約8~約18個の炭素原子を含み、QはC~Cの直鎖状または分岐状アルキレン基である。一実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0030】
一実施形態では、ジアルカノールアミドはビスエトキシアルキルアミドを含む。例えば、ビスエトキシアルキルアミドは、以下の式(II)を有し:
【化2】

式中、Rは1~30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは6~22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは約8~約18個の炭素原子を含む。一実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
アルカノールアミン
【0031】
一実施形態では、窒素含有反応物はアルキルジアルカノールアミンである。そのようなアルキルジアルカノールアミンには、ヤシ油に由来するジエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。通常、ヤシ油のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチルステアリル、オレイルおよびリノレイルの混合物を含む。
【0032】
一実施形態では、窒素含有反応物は、以下の式(III)を有するアルキルジアルカノールアミンであって:
【化3】

式中、Rは1~30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは6~22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは約8~約18個の炭素原子を含み、QはC~Cの直鎖状または分岐状アルキレン基である。一実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0033】
一実施形態では、ジアルカノールアミンはビスエトキシアルキルアミンを含む。例えば、ビスエトキシアルキルアミンは、以下の式(IV)を有し:
【化4】

式中、Rは1~30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは6~22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは約8~約18個の炭素原子を含む。一実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0034】
ジアルカノールアミドおよびジアルカノールアミンのアルキル基は、様々なレベルの不飽和を有することができる。例えば、アルキル基は二重結合および三重結合を含むことができる。
【0035】
通常、アルキルジアルカノールアミンはアクゾノーベル社から市販されている。例えば、商品名Ethomeen(いずれかの国における登録商標)C/12またはEthomeen(いずれかの国における登録商標)O/12で販売されている製品は、本発明で使用するのに適したジアルカノールアミンである。
【0036】
アルキルアルカノールアミンの例には、以下の:ヤシ油由来のオレイルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、2-エチルヘキシルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、および牛脂由来のジエタノールアミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
アルコキシル化アルキルアルカノールアミド
一実施形態では、窒素含有反応物はアルコキシル化アルキルアルカノールアミドである。アルコキシル化部分は、エトキシ化、プロポキシル化、ブトキシ化などであってもよい。
【0038】
アルコキシル化アルキルアルカノールアミドのアルキル部分は、好ましくは、3~21個の炭素原子を含む、より好ましくは8~18個の炭素原子を含む分岐鎖または直鎖、アルキルまたはアルケニル基、またはそれらの組み合わせである。アルコキシ部分は、エトキシ、プロポキシ、またはブトキシ基、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。好ましい実施形態では、プロポキシル化アルキルアルカノールアミド、より好ましくはプロポキシル化アルキルエタノールアミドが使用される。
【0039】
以下の式(V)で表されるアルコキシル化アルキルアルカノールアミドであって:
【化5】

式中、Rは分岐鎖または直鎖、飽和または不飽和C~C21アルキルラジカル、好ましくはC~C18アルキルラジカル、またはそれらの組み合わせであり;Rは水素、あるいはC~Cアルキルラジカルまたはそれらの組み合わせであり、好ましくはRは水素またはCアルキルラジカルのいずれかであり;xは約1~約8、好ましくは約1~約5、より好ましくは約1~約3である。
【0040】
有用なアルコキシル化アルキルアルカノールアミドの例には、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、アルキルエタノールアミドまたはアルキルイソプロパノールアミドが含まれる。アルコキシル化アルキルエタノールアミド、特にプロポキシル化アルキルエタノールアミドが好ましい。アルキルエタノールアミド部分は、好ましくは、アルキルモノエタノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸モノエタノールアミド、カプリン酸モノエタノールアミド、カプリル酸モノエタノールアミド、カプリル酸/カプリン酸モノエタノールアミド、デカン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、リノール酸モノエタノールアミド、オクチデカン酸モノエタノールアミド、2-ヘプチルウンデカン酸モノエタノールアミド、ヤシ油由来のアルキルモノエタノールアミド、牛脂由来のアルキルモノエタノールアミド、大豆油由来のアルキルモノエタノールアミドおよびパーム核油由来のアルキルモノエタノールアミドに由来する。これらのうち、カプリル、リノレイル、ステアリン酸、イソステアリン酸、および大豆油またはヤシ油に由来するものが好ましい。
【0041】
好ましいプロポキシル化脂肪族エタノールアミドには、プロポキシル化ヒドロキシエチルカプリルアミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルコカミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルリノールアミド、プロポキシル化ヒドロキシエチルイソステアリンアミド、およびそれらの組み合わせが含まれる。プロポキシル化ヒドロキシエチルコカミドがより好ましい。好ましい特定の材料は、PPG-1ヒドロキシエチルカプリルアミド、PPG-2ヒドロキシエチルコカミド、PPG-3ヒドロキシエチルリノールアミド、PPG-2ヒドロキシエチルイソステアリンアミド、およびそれらの組み合わせである。PPG-2ヒドロキシエチルコカミドが特に好ましい。
【0042】
別の実施形態では、アルコキシル化アルキルイソプロパノールアミドが使用される。アルキルイソプロパノールアミド部分は、好ましくは、アルキルモノイソプロパノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、カプリン酸モノイソプロパノールアミド、カプリル酸モノイソプロパノールアミド、カプリル酸/カプリン酸モノイソプロパノールアミド、デカン酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノイソプロパノールアミド、パルミチン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミド、イソステアリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、リノール酸モノイソプロパノールアミド、オクチルデカン酸モノイソプロパノールアミド、2-ヘプチルウンデカン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油由来のアルキルモノイソプロパノールアミド、牛脂由来のアルキルモノイソプロパノールアミド、大豆油由来のモノイソプロパノールアミド、およびパーム核油由来のアルキルモノイソプロパノールアミドに由来する。
【0043】
以下の式(VI)で表されるアルコキシル化アルキルジアルカノールアミドであって:
【化6】

式中、Rは分岐鎖または直鎖、飽和または不飽和C-C21アルキルラジカル、好ましくはC-C18アルキルラジカル、またはそれらの組み合わせであり;Rは水素、あるいはC-Cアルキルラジカルまたはそれらの組み合わせであり、好ましくはRは水素またはCアルキルラジカルであり;xは約1~約8、好ましくは約1~約5、より好ましくは約1~約3である。
【0044】
有用なアルコキシル化アルキルジアルカノールアミドの例には、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、アルキルジエタノールアミドまたはアルキルジイソプロパノールアミドが含まれる。アルコキシル化アルキルジエタノールアミド、特にプロポキシル化アルキルジエタノールアミドが好ましい。アルキルジエタノールアミド部分は、好ましくはアルキルジエタノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸ジエタノールアミド、カプリン酸ジエタノールアミド、カプリル酸ジエタノールアミド、カプリル酸/カプリン酸ジエタノールアミド、デカン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、リノール酸ジエタノールアミド、オクチデカンジエタノールアミド、2-ヘプチルウンデカン酸ジエタノールアミド、ヤシ油由来のアルキルジエタノールアミド、牛脂由来のアルキルジエタノールアミド、大豆油由来のアルキルジエタノールアミドおよびパーム核油由来のアルキルジエタノールアミドに由来する。これらのうち、カプリル、リノレイル、ステアリン酸、イソステアリン酸、および大豆油またはヤシ油に由来するものが好ましい。
【0045】
好ましいプロポキシ化脂肪族ジエタノールアミドには、プロポキシル化ビスエトキシカプリルアミド、プロポキシル化ビスエトキシコカミド、プロポキシル化ビスエトキシリノールアミド、プロポキシル化ビスエトキシイソステアリン酸アミド、およびそれらの組み合わせが含まれる。プロポキシル化ビスエトキシコカミドがより好ましい。好ましい特定の材料は、PPG-1ビスエトキシカプリルアミド、PPG-2ビスエトキシコカミド、PPG-3ビスエトキシリノールアミド、PPG-2ビスエトキシイソステアリン酸アミド、およびそれらの組み合わせである。PPG-2ビスエトキシコカミドが特に好ましい。
【0046】
別の実施形態では、アルコキシル化アルキルジイソプロパノールアミドが使用される。アルキルイソプロパノールアミド部分は、好ましくは、アルキルアルキルジイソプロパノールアミドであり、より好ましくは、ラウリン酸ジイソプロパノールアミド、カプリン酸ジイソプロパノールアミド、カプリル酸ジイソプロパノールアミド、カプリル酸/カプリン酸ジイソプロパノールアミド、デカン酸ジイソプロパノールアミド、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミド、パルミチン酸ジイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジイソプロパノールアミド、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミド、オレイン酸ジイソプロパノールアミド、リノール酸ジイソプロパノールアミド、オクチルデカン酸ジイソプロパノールアミド、2-ヘプチルウンデカン酸ジイソプロパノールアミド、ヤシ油由来のアルキルジイソプロパノールアミド、牛脂由来のアルキルジイソプロパノールアミド、大豆油由来のジイソプロパノールアミド、およびパーム核油由来のアルキルジイソプロパノールアミドに由来する。
アルコキシル化アルキルアルカノールアミン
【0047】
一実施形態では、窒素含有反応物は、以下の式(VIIまたはVIII)のうちの1つを有するアルキルアルカノールアミンであって:
【化7】

式中、Rは分岐鎖または直鎖、飽和または不飽和のC~C21アルキルラジカル、好ましくはC~C18アルキルラジカル、またはそれらの組み合わせであり;Rは水素、あるいはC-Cアルキルラジカルまたはそれらの組み合わせであり、好ましくはRは水素またはCアルキルラジカルであり;xは約1~約8、好ましくは約1~約5、より好ましくは約1~約3である。
【0048】
一実施形態では、窒素含有反応物は、アルキルモノアルカノールアミンまたはアルキルジアルカノールアミンである。そのようなアルキルモノアルカノールアミンおよびアルキルジアルカノールアミンには、ヤシ油に由来するモノエタノールアミンまたはヤシ油に由来するココモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ラウリン酸ミリスチンジエタノールアミン、ラウリン酸モノエタノールアミン、ラウリン酸ジエタノールアミンおよびラウリン酸モノイソプロパノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。通常、ヤシ油のアルキル基は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸の混合物を含む。
【0049】
通常、アルキルモノアルカノールアミンおよびアルキルジアルカノールアミンはアクゾノーベル社から市販されている。
【0050】
アルキルアルカノールアミンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
【0051】
オレイルジエタノールアミン、ヤシ油由来のジエタノールアミン、牛脂由来のジエタノールアミンなど。
【0052】
有用なアルコキシル化アルキルジアルカノールアミンの例には、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、アルキルジエタノールアミンまたはアルキルジイソプロパノールアミンが含まれる。アルコキシル化アルキルジエタノールアミン、特にプロポキシル化アルキルジエタノールアミンが好ましい。アルキルジエタノールアミン部分は、好ましくは、アルキルジエタノールアミンであり、より好ましくは、ラウリン酸ジエタノールアミン、カプリン酸ジエタノールアミン、カプリル酸ジエタノールアミン、カプリル酸/カプリン酸ジエタノールアミン、デカン酸ジエタノールアミン、ミリスチン酸ジエタノールアミン、パルミチン酸ジエタノールアミン、ステアリン酸ジエタノールアミン、イソステアリン酸ジエタノールアミン、オレイン酸ジエタノールアミン、リノール酸ジエタノールアミン、オクチデカン酸ジエタノールアミン、2-ヘプチルウンデカン酸ジエタノールアミン、ヤシ油由来のアルキルジエタノールアミン、牛脂由来のアルキルジエタノールアミン、大豆油由来のアルキルジエタノールアミンおよびパーム核油由来のアルキルジエタノールアミンに由来する。これらのうち、カプリル、リノレイル、ステアリン酸、イソステアリン酸、および大豆油またはヤシ油に由来するものが好ましい。
【0053】
好ましいプロポキシ化脂肪族ジエタノールアミンには、プロポキシ化ビスエトキシカプリルアミン、プロポキシル化ビスエトキシコカミン、プロポキシル化ビスエトキシリノールアミン、プロポキシル化ビスエトキシイソステアリンアミン、およびそれらの組み合わせが含まれる。プロポキシル化ビスエトキシコカミンがより好ましい。好ましい特定の材料は、PPG-1ビスエトキシカプリルアミン、PPG-2ビスエトキシコカミン、PPG-3ビスエトキシリノールアミン、PPG-2ビスエトキシイソステアリンアミン、およびそれらの組み合わせである。PPG-2ビスエトキシコカミンが特に好ましい。
【0054】
別の実施形態では、アルコキシル化アルキルジイソプロパノールアミンが使用される。アルキルイソプロパノールアミン部分は、好ましくは、アルキルジイソプロパノールアミンであり、より好ましくは、ラウリン酸ジイソプロパノールアミン、カプリン酸ジイソプロパノールアミン、カプリル酸ジイソプロパノールアミン、カプリル酸/カプリン酸ジイソプロパノールアミン、デカン酸ジイソプロパノールアミン、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミン、パルミチン酸ジイソプロパノールアミン、ステアリン酸ジイソプロパノールアミン、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミン、オレイン酸ジイソプロパノールアミン、リノール酸ジイソプロパノールアミン、オクチルデカン酸ジイソプロパノールアミン、2-ヘプチルウンデカン酸ジイソプロパノールアミン、ヤシ油由来のアルキルジイソプロパノールアミン、牛脂由来のアルキルジイソプロパノールアミン、大豆油由来のジイソプロパノールアミン、およびパーム核油由来のアルキルジイソプロパノールアミンに由来する。
【0055】
窒素含有反応物は、当技術分野で公知の方法により調製することができる。アルキルアルカノールアミドおよびアルキルアルカノールアミンは、米国特許第4,085,126号;米国特許第7,479,473号および当技術分野で公知の他の方法に従って調製することができ;または、アクゾノーベル社から購入することができる。
【0056】
ホウ素源
適切なホウ素化合物には、酸化ホウ素、またはメタホウ酸(HBO)、オルトホウ酸(HBO)およびテトラホウ酸(H)を含むホウ酸の様々な形態のいずれかが含まれる。モノ-、ジ-、トリ-C1-6アルキルホウ酸塩などのアルキルホウ酸塩を使用することができる。したがって、適切なアルキルホウ酸塩は、モノ-、ジ-およびトリ-メチルホウ酸塩;モノ-、ジ-およびトリ-エチルホウ酸塩;モノ-、ジ-およびトリ-プロピルホウ酸塩、ならびにモノ-、ジ-およびトリ-ブチルホウ酸塩およびそれらの混合物である。特に好ましいホウ素化合物は、ホウ酸、特にオルトホウ酸である。これらは、アルドリッチ社またはフィッシャーサイエンティフィック社などの供給業者から購入することができる。
【0057】
ヒドロカルビルポリオール反応物
一実施形態では、ヒドロカルビルポリオール反応物は、ヒドロカルビルポリオール成分を含み、エステルを除くその誘導体は、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する。より好ましくは、ヒドロカルビルポリオール成分は、以下の式(IX)を有し:
【化8】

式中、nは0または1~5の整数である。好ましくは、nは0または1である。
【0058】
本発明で使用することができるヒドロカルビルポリオールの例には、以下の式(X)および(XI)の化合物が含まれる:
【化9】
【0059】
潤滑油添加剤組成物の作成方法
【0060】
潤滑油添加剤組成物は、芳香族溶媒と共に窒素含有反応物を容器に充填することにより調製される。好ましくは、窒素反応物は、ビスエトキシアルキルアミン(アルキルジエタノールアミンとしても知られている)またはビスエトキシアルキルアミドである。次いで、ホウ酸などのホウ素源を容器に添加する。混合物を、水が実質的に除去されて反応が完了するまで還流し、次いで、グリセロールまたはペンタエリスリトールなどの少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールを混合物に添加する。
【0061】
一実施形態では、少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールを、ホウ素源と同時に容器に添加する。次いで、混合物を2時間還流する。
【0062】
好ましくは、窒素含有反応物、ホウ素反応物源およびグリセロールの比率は、約1:0.2:0.2~1:2.5:2.5である。より好ましくは、比率は約1:0.2:0.2~1:1.5:1.5である。さらにより好ましくは、比率は約1:0.4:0.4~1:1:1である。最も好ましくは、比率は約1:0.5:0.5~1:0.75:0.75である。
【0063】
潤滑粘度の油
【0064】
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、そこに添加剤および場合によってはその他の油をブレンドして、例えば最終潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。基油は、濃縮物を作成するために、ならびにそれから潤滑油組成物を作成するために有用であり、天然および合成潤滑油およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0065】
天然油には、動物性および植物性油、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン系の溶剤処理された鉱物処理潤滑油が含まれる。石炭または頁岩に由来する潤滑粘度の油も有用な基油である。
【0066】
合成潤滑油には、重合および共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)などの炭化水素油;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、アルキル化ナフタレン;ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにその誘導体、類似体および同族体が含まれる。
【0067】
合成潤滑油の別の適切なクラスには、カルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが挙げられる。
【0068】
合成油として有用なエステルにはまた、C~C12モノカルボン酸およびポリオール、ならびにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのポリオールエーテルから作成されるものが含まれる。
【0069】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素に由来してもよい。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、HおよびCOを含む合成ガスから作成される。そのような炭化水素は、通常、基油として有用であるために、さらなる処理が必要である。例えば、炭化水素は、当業者に公知の方法を使用して;水素化異性化;水素化分解および水素化異性化;脱ろう;または水素化異性化および脱ろうされていてもよい。
【0070】
本発明の潤滑油組成物では、未精製、精製および再精製油を使用することができる。未精製油とは、天然または合成原料からさらに精製処理せずに直接得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらに処理せずに使用されるエステル油は、未精製油である。精製油は、1つまたは複数の特性を改善するために、1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油に類似している。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過および浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に公知である。
【0071】
再精製油は、すでに使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスによって得られる。そのような再精製油はまた、再生油または再処理油としても公知であり、多くの場合、使用済み添加物および油分解生成物を承認するための技術によって処理される。
【0072】
したがって、本潤滑油組成物を作成するために使用することができる基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(API Publication 1509)に明記されているように、グループI~Vの基油のいずれかから選択することができる。このような基油グループを、以下の表1に要約する:
【表1】
【0073】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油およびそれらの組み合わせに対応する任意の種類のものであり、好ましくは、それらの並外れた揮発性、安定性、粘度および清浄度の特徴に起因するグループIII~グループVの油である。
【0074】
本開示の潤滑油組成物に使用するための潤滑粘度の油は、基油とも呼ばれ、通常、組成物の総重量を基準として、主要量、例えば、50重量%超、好ましくは約70重量%超、より好ましくは約80~約99.5重量%、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造業者によって同じ仕様(供給源または製造業者の場所に依存しない)で製造される潤滑剤成分であり;同じ製造業者の仕様を満たし;独特の式、製品識別番号、またはその両方によって認識されるベースストックのベースストックまたはブレンドを意味するものと理解されるべきである。本明細書で使用するための基油は、そのようなあらゆる用途、例えば、エンジンオイル、船舶用シリンダ油、作動油、ギア油、トランスミッション油などの機能性流体などのための潤滑油組成物を配合する際に使用される、現在知られているか、または後に発見される潤滑粘度の油であってもよい。さらに、本明細書で使用するための基油は、粘度指数向上剤、例えば、高分子アルキルメタクリレート;オレフィン系共重合体、例えば、エチレン-プロピレン共重合体またはスチレン-ブタジエン共重合体;およびそれらの混合物を含んでもよい。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形、または櫛形のトポロジーが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
当業者が容易に理解するように、基油の粘度は用途に依存する。したがって、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常、摂氏100度(C.)で約2~約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般に、エンジンオイルとして使用される基油は、個々に、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の最終用途および完成油中の添加剤に応じて選択またはブレンドして、所望のグレードのエンジンオイル、例えば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40などのSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物を得る。
【0076】
潤滑油組成物は、少なくとも135(例えば、135~400、または135~250)、少なくとも150(例えば、150~400、150~250)、少なくとも165(例えば、165~400、または165~250)、少なくとも190(例えば、190~400、または190~250)、または少なくとも200(例えば、200~400、または200~250)の粘度指数を有する。潤滑油組成物の粘度指数が135未満である場合、150℃でのHTHS粘度を維持しつつ、燃料効率を向上させることが困難となる可能性がある。潤滑油組成物の粘度指数が400を超える場合、蒸発特性が低下する可能性があり、添加剤の不十分な溶解性およびシール材料とのマッチング特性による欠陥が生じる可能性がある。
【0077】
潤滑油組成物は、150℃で、3.5cP以下(例えば1.0~3.5cP)、3.3cP以下(例えば1.0~3.3cP)、3.0cP以下(例えば、1.3~3.0cP)、2.6cP以下(例えば、1.3~2.6cP)、2.3cP以下(例えば、1.0~2.3cP、または1.3~2.3cP)、2.0cP以下(例えば、1.0~2.0cP、または1.3~2.0cP)など、または1.7cP以下(例えば、1.0~1.7cP、または1.3~1.7cP)の高温せん断(HTHS)粘度を有する。
【0078】
潤滑油組成物は、100℃で、3~12mm/s(例えば、3~6.9mm/s、3.5~6.9mm/s、または4~6.9mm/s)の範囲の動粘度を有する。
【0079】
適切には、本潤滑油組成物は、4~15mgKOH/g(例えば、5~12mgKOH/g、6~12mgKOH/g、または8~12mgKOH/gの全塩基価(TBN)を有し得る。
【0080】
一実施形態では、本開示の潤滑油組成物は、有機モリブデン化合物をさらに含むことができる。
【0081】
有機モリブデン化合物
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン、炭素および水素原子を含むが、硫黄、リン、窒素および/または酸素原子を含んでもよい。適切な有機モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、およびカルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどの様々な有機モリブデン錯体が含まれ、これらは、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムを脂肪、グリセリド、脂肪酸、あるは脂肪酸誘導体(例えば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得ることができる。用語「脂肪」は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、通常は、直鎖炭素鎖を意味する。
【0082】
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)は、以下の式(XII)で表される有機モリブデン化合物であって:
【化10】

式中、R、R、R、およびRは、互いに独立して、4~18個の炭素原子(例えば、8~13個の炭素原子)を有する直鎖状または分岐状アルキル基である。
ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、以下の式(XIII)で表される有機モリブデン化合物であって:
【化11】

式中、R、R、R、およびRは、互いに独立して、4~18個の炭素原子(例えば、8~13個の炭素原子)を有する直鎖状または分岐状アルキル基である。
一実施形態では、モリブデンアミンは、モリブデン-スクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物を、式(XIV)または(XV)のポリアミンのアルキルまたはアルケニルスクシンイミド、あるいはそれらの混合物と反応させることを含むプロセスにより調製され:
【化12】

式中、RはC24~C350(例えば、C70~C128)のアルキルまたはアルケニル基であり;R’は、2~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン基であり;xは1~11であり;yは1~10である。
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物、または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性」とは、ASTM D664またはD2896により測定されるように、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般的に、酸性モリブデン化合物は六価である。適切なモリブデン化合物の代表例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のアルカリ金属モリブデン酸塩、ならびに水素塩(例えば、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl、MoOBr、MoClなどのモリブデン塩などが挙げられる。
【0083】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用することができるスクシンイミドは、多くの参考文献に開示されており、当技術分野で公知である。スクシンイミドのある基本的なタイプおよび技術用語「スクシンイミド」に包含される関連する物質は、米国特許第3,172,892号;第3,219,666号;および第3,272,746号に教示されている。用語「スクシンイミド」は、当技術分野では、形成される可能性のあるアミド、イミド、およびアミジン種の多くを含むと理解されている。しかし、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸または無水物と、窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして一般に受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸を、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびそれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンと反応させることにより調製されるものである。
【0084】
モリブデン-スクシンイミド錯体は、適切な圧力および120℃を超えない温度で硫黄源で後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を提供することができる。硫化ステップは、約0.5~5時間(例えば、0.5~2時間)行うことができる。硫黄の適切な供給源としては、元素硫黄、硫化水素、五硫化二リン、式RでRがヒドロカルビル(例えば、C~C10アルキル)、xが少なくとも3である有機ポリスルフィド、C~C10メルカプタン、無機硫化物およびポリスルフィド、チオアセトアミド、およびチオ尿素が挙げられる。
【0085】
モリブデン-スクシンイミド錯体は、潤滑油組成物に対して、少なくとも50ppm(例えば、50~1500ppm)、少なくとも100ppm(例えば、100~1500ppm)、少なくとも200ppm(例えば、200~1500ppm、200~1100ppm、250~1500ppm、250~1100ppm、または300~1000ppm)のモリブデンを与える量で使用される。
【0086】
一実施形態では、本開示の潤滑油組成物は、耐摩耗剤をさらに含むことができる。特定の実施形態では、耐摩耗剤は、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)化合物であってもよい。
【0087】
耐摩耗剤
本明細書で開示される潤滑油組成物は、摩擦および過度の摩耗を低減することができる耐摩耗剤を含むことができる。適切な耐摩耗剤の非限定的な例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸の金属(例えば、Pb、Sb、Moなど)塩、ジチオカルバメートの金属(例えば、Zn、Pb、Sb、Moなど)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sbなど)、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。耐摩耗剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%まで変化してもよい。
【0088】
特定の実施形態では、耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩を含む。ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってもよい。いくつかの実施形態では、金属は亜鉛である。別の実施形態では、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩のアルキル基は、約3~約22個の炭素原子、約3~約18個の炭素原子、約3~約12個の炭素原子、または約3~約8個の炭素原子を有する。さらなる実施形態では、アルキル基は直鎖状または分岐状である。
【0089】
本明細書で開示される潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛塩を含むジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の量は、そのリン含有量により測定される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される潤滑油組成物のリン含有量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約0.12重量%、約0.01重量%~約0.10重量%、約0.01重量%~約0.08重量%、約0.01重量%~約0.05重量%、または0.08重量%未満である。
【0090】
特定の実施形態では、潤滑油組成物は、実質的にリンを含まない。特定の実施形態では、潤滑油組成物は、実質的に亜鉛含有化合物を含まない。
【0091】
ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩は、通常は1種以上のアルコールおよびフェノール化合物をPと反応させて、最初にジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで、形成されたDDPAを、金属の酸化物、水酸化物または炭酸塩などの金属の化合物で中和することにより、公知の方法に従って製造することができる。いくつかの実施形態では、DDPAは、第一級および第二級アルコールの混合物をPと反応させることにより作成することができる。別の実施形態では、2種以上のジヒドロカルビルジチオリン酸を調製することができ、ここで、一方のヒドロカルビル基は完全に第二級であり、他方のヒドロカルビル基は完全に第一級である。亜鉛塩は、亜鉛化合物と反応させることにより、ジヒドロカルビルジチオリン酸から調製することができる。いくつかの実施形態では、塩基性または中性亜鉛化合物が使用される。別の実施形態では、亜鉛の酸化物、水酸化物または炭酸塩が使用される。
【0092】
いくつかの実施形態では、油溶性ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、式(XVI)によって表されるジアルキルジチオリン酸から生成することができ:
【化13】
【0093】
式中、RおよびRは、互いに独立して、直鎖状または分岐状アルキルあるいは直鎖状または分岐状置換アルキルである。一部の実施形態では、アルキル基は、約3~約30個の炭素原子または約3~約8個の炭素原子を有する。
【0094】
式(XVI)のジアルキルジチオリン酸は、アルコールROHおよびROHを、Pと反応させることにより調製することができ、RおよびRは上記定義の通りである。いくつかの実施形態では、RおよびRは同じである。別の実施形態では、RおよびRは異なる。さらなる実施形態では、ROHおよびROHは、Pと同時に反応する。さらに別の実施形態では、ROHおよびROHは、Pと順次反応する。
【0095】
ヒドロキシルアルキル化合物の混合物も使用することができる。これらのヒドロキシルアルキル化合物は、モノヒドロキシアルキル化合物である必要はない。いくつかの実施形態では、ジアルキルジチオリン酸は、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、および他のポリヒドロキシアルキル化合物、または前述の2つ以上の混合物から調製される。別の実施形態では、第一級アルキルアルコールのみから誘導されるジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単一の第一級アルコールから誘導される。さらなる実施形態では、その単一の第一級アルコールは2-エチルヘキサノールである。特定の実施形態では、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第二級アルキルアルコールのみから誘導される。さらなる実施形態では、第二級アルコールのその混合物は、2-ブタノールおよび4-メチル-2-ペンタノールの混合物である。
【0096】
ジアルキルジチオリン酸形成ステップで使用される五硫化二リン反応物は、一定量のP、P、P、またはPの1種またはそれ以上を含むことができる。そのような組成物はまた、少量の遊離硫黄を含むことができる。特定の実施形態では、五硫化二リン反応物は、P、P、P、またはPのいずれも実質的に含まない。特定の実施形態では、五硫化二リン反応物は、遊離硫黄を実質的に含まない。
【0097】
特定の実施形態では、潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)化合物を含む。特定の実施形態では、ZnDTPは、第一級ZnDTP、第二級ZnDTP、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0098】
清浄剤混合物
清浄剤混合物は、少なくとも1種のカルシウム含有清浄剤を含み、任意で、少なくとも1種のマグネシウム含有清浄剤を含んでもよい。
【0099】
典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分および分子のより小さい陰イオン性または疎油性親水性部分を含む陰イオン性物質である。清浄剤の陰イオン性部分は、通常、硫黄酸、カルボン酸、亜リン酸、フェノール、またはそれらの混合物などの有機酸から誘導される。対イオンは、通常、アルカリ土類またはアルカリ金属である。
【0100】
実質的に化学量論的な量の金属を含む塩は、中性塩として記載され、0~80mgKOH/gの全塩基価(TBN)を有する。多くの組成物は過塩基性であり、酸性ガス(例えば、二酸化炭素)を豊富に含む過剰の金属化合物(例えば、金属水酸化物または酸化物)を反応させることによって達成される大量の金属塩基を含んでいる。有用な清浄剤は、中性、弱過塩基性、または高度に過塩基性であってもよい。
【0101】
清浄剤混合物に使用される清浄剤の少なくとも一部が過塩基性化されていることが望ましい。過塩基性清浄剤は、燃焼プロセスで生成される酸性不純物を中和し、油に閉じ込められるようにする。通常、過塩基性材料は、当量基準で、金属イオンと清浄剤の陰イオン部分の比が1.05:1~50:1(例えば、4:1~25:1)である。得られる清浄剤は、通常150mgKOH/g以上(例えば、250~450mgKOH/g以上)のTBNを有する過塩基性清浄剤である。異なるTBNの清浄剤の混合物を使用することができる。
【0102】
適切な清浄剤には、スルホネート、フェネート、カルボキシレート、フォスフェート、およびサリチレートである金属塩が含まれる。
【0103】
スルホネートは、通常は石油の分留または芳香族炭化水素のアルキル化により得られるもののような、アルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化により得られるスルホン酸から調製することができる。例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することにより得られたものが挙げられる。アルキル化は、触媒の存在下で、約3~70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートは、通常、アルキル置換芳香族部分当たり約9~80個以上の炭素原子(例えば、約16~60個の炭素原子)を含む。
【0104】
フェネートは、アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、MgO、またはMg(OH))と、アルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールとを反応させることにより調製することができる。有用なアルキル基には、直鎖または分岐鎖C~C30(例えば、C~C20)アルキル基、またはそれらの混合物が含まれる。適切なフェノールの例としては、イソブチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが挙げられる。出発アルキルフェノールは、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖である複数のアルキル置換基を含んでもよいことに留意すべきである。非硫化アルキルフェノールが使用される場合、硫化生成物は、当技術分野で公知の方法により得ることができる。これらの方法は、アルキルフェノールおよび硫化剤(例えば、元素硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄など)の混合物を加熱し、次いで、硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることを含む。
【0105】
サリチレートは、塩基性金属化合物を少なくとも1つのカルボン酸と反応させ、反応生成物から水を除去することにより調製することができる。サリチル酸から作成された清浄剤は、カルボン酸から調製された清浄剤の一種である。有用なサリチレートには、長鎖アルキルサリチレートが含まれる。組成物の有用なファミリーの1つは、以下の式(XVI)であって:
【化14】

式中、R”はC~C30(例えば、C13~C30)アルキル基であり;nは1~4の整数であり;Mはアルカリ土類金属(例えば、CaまたはMg)である。
【0106】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、コルベ反応によりフェノールから調製することができる(米国特許第3,595,791号を参照)。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、水またはアルコールなどの極性溶媒中で、金属塩を複分解することにより調製することができる。
【0107】
アルカリ土類金属フォスフェートも清浄剤として使用され、当技術分野で公知である。
【0108】
好ましいカルシウム含有清浄剤には、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネート、およびサリチル酸カルシウム、特にスルホン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、およびそれらの混合物が含まれる。
【0109】
好ましいマグネシウム含有清浄剤には、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、およびサリチル酸マグネシウム、特にスルホン酸マグネシウムが含まれる。
【0110】
粘度調整剤
粘度調整剤は、潤滑油に高温および低温での操作性を付与するように機能する。使用される粘度調整剤は、その唯一の機能を備えていても、多機能であってもよい。分散剤としても機能する多機能粘度調整剤も公知である。適切な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンの共重合体、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレート共重合体、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物の共重合体、スチレンとアクリル酸エステルの共重合体、ならびにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分水素化共重合体、ならびにブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化同種重合体が含まれる。一実施形態では、粘度調整剤はポリアルキルメタクリレートである。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形、または櫛形のトポロジーが含まれるが、これらに限定されない。粘度調整剤は、非分散タイプまたは分散タイプであってもよい。一実施形態では、粘度調整剤は分散ポリメタクリレートである。
【0111】
適切な粘度調整剤は、30以下(例えば、10以下、5以下、または2以下)の永久せん断安定性指数(PSSI)を有する。PSSIは、添加剤によってもたらされる油の粘度における、せん断から生じる不可逆的減少の尺度である。PSSIは、ASTM D6022に従って測定される。本開示の潤滑油組成物は、stay-in-grade能力を示す。新油とそのせん断バージョンによる単一SAE粘度グレード分類内の100°Cでの動粘度の保持は、オイルのstay-in-grade能力の証拠である。
【0112】
粘度調整剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、0.5~15.0重量%(例えば、0.5~10重量%、0.5~5重量%、1.0~15重量%、1.0~10重量%、または1.0~5重量%)の量で使用することができる。
【0113】
追加の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、添加剤が分散または溶解される潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与または改善することができる他の従来の添加剤を含むことができる。本明細書で開示される潤滑油組成物では、当業者に公知の任意の添加剤を使用することができる。いくつかの適切な添加剤は、モルティエら、“Chemistry and Technology of Lubricants”、第2版、ロンドン、シュプリンガー社(1996年);およびレスリー・R・ラドニック、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、ニューヨーク、マルセル・デッカー社(2003年)に記載され、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、防錆剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など、およびそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が公知であり、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により、本開示の潤滑油組成物を調製するために使用することができる。
【0114】
潤滑油配合物の調製では、炭化水素油、例えば鉱物潤滑油、または他の適切な溶媒中の10~80重量%の有効成分濃縮物の形態で添加剤を導入することが一般的な方法である。
【0115】
通常、これらの濃縮物は、完成潤滑剤、例えばクランクケースモーター油を形成する際に、添加剤パッケージの重量部当たり、3~100重量部、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈することができる。濃縮物の目的は、当然のことながら、様々な材料の取り扱いを、より困難でなく扱いやすくすること、および最終ブレンドでの溶液または分散を促進することである。
【0116】
前述の各添加剤は、使用される場合、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量であろう。
【0117】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であってもよい。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であってもよい。
【0118】
内燃機関は、排気ガス再循環システムを備えていても備えていなくてもよい。内燃機関には、排気制御システムまたはターボチャージャーが取り付けられていてもよい。排出制御システムの例としては、ディーゼル微粒子フィルター(DPF)、ガソリン微粒子フィルター(GPF)、三元触媒(TWC)、または選択的触媒還元(SCR)を使用するシステムが挙げられる。
【0119】
一実施形態では、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジン(典型的には大型車両用ディーゼルエンジン)、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、または水素燃料内燃機関であってもよい。一実施形態では、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジンであってもよく、別の実施形態では、ガソリン燃料エンジンであってもよい。一実施形態では、内燃機関は、大型車両用ディーゼルエンジンであってもよい。一実施形態では、内燃機関は、ガソリン直噴エンジン(GDIエンジン)などのガソリンエンジンであってもよい。GDIエンジンは、腐食性摩耗を引き起こす高レベルのすすを生成する。本開示の有機タイプ摩擦調整剤は、MDOTなどの他のタイプの摩擦調整剤と比較して優れた摩擦低減性能を示す。
【0120】
以下の例は、本開示の実施形態を例示するために提示されているが、本開示を記載する特定の実施形態に限定することを意図するものではない。反対に示さない限り、すべての部およびパーセントは重量基準である。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられている場合、記載された範囲外の実施形態が、依然として本開示の範囲内にある可能性があることを理解されたい。各例に記載された特定の詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0121】
本明細書で開示された実施形態に対して様々な修正がなされる可能性があることを理解されたい。したがって、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、上述し、本開示を動作させるための最良の形態として実施される機能は、例示のみを目的とするものである。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、他の配置および方法が当業者によって行うことができる。さらに、当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲および精神内で、他の変更を想定するであろう。
【0122】

以下の例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる方法においても本開示の範囲を限定するものではない。
【0123】
例A
例Aは、ビスエトキシコカミドとグリセロールとの混合ホウ酸エステルであり、米国特許第9,371,499号の例3に従って調製した。
【0124】
比較例A
比較例Aは、ジチオカルバミン酸モリブデン(SAKURA-LUBE(いずれかの国における登録商標)515;アデカ社)である。
【0125】
比較例B
比較例Bは、ホウ素化モノオレイン酸グリセロール摩擦調整剤である。
【0126】
ベースライン1
150℃で3.3cP(5W-30)のHTHS粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む大型車両用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)コハク酸エステル分散剤;
(4)カルシウム含有量が2870ppmである過塩基性カルシウムサリチレートおよびスルホネート清浄剤の混合物;
(5)リン含有量が400ppmである第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(6)220ppmの硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)アルキル化ジフェニルアミンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤;
(8)分散した水和ホウ酸カリウム
(9)発泡防止剤;
(10)非分散OCP VII;および
(11)残りのグループIII基油。
【0127】
例1
配合物ベースライン1に、0.6重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0128】
比較例1
配合物ベースライン1に、0.6重量%の比較例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0129】
例2
配合物ベースライン1に、0.3重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0130】
ベースライン2
150℃で3.2cP(5W-30)のHTHS粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む大型車両用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)カルシウム含有量が2730ppmである過塩基性カルシウムサリチレート、フェネートおよびスルホネート清浄剤の混合物;
(4)リン含有量が400ppmである第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)160ppmの硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(6)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(7)分散した水和ホウ酸カリウム;
(8)発泡防止剤;
(9)非分散OCP VII;および
(10)残りのグループIII基油。
【0131】
例3
配合物ベースライン2に、0.6重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0132】
例4
配合物ベースライン1に、0.6重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0133】
例5
配合物ベースライン1に、0.6重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0134】
例6
配合物ベースライン2に、0.6重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0135】
JASO DH-2F燃料経済性試験
JASO DH-2F燃料経済性試験は、JASO M362に開示された手順に従って行われ、Hashimoto,K.、Tomizawa,K.、Nakamura,Y.、Hashimoto,T.ら「The Development of Fuel Economy Test Method for Heavy-duty Diesel Engine Oil(The First HD Engine Test Method and the New JASO DH-2F Category),」SAE Int.J.Fuels Lubr.10(2):2017に要約されている。
【0136】
新油の平均([新油60℃+新油90℃]/2)に対する(JASO M 355:2017)適用マニュアルの基準は、燃料経済性ディーゼルエンジンオイルについては3.7%を超えるように設定され、平均新油および平均エージング油の合計は、6.8%を超える燃料経済性向上に設定された。
【表2】

【表3】
【0137】
ベースライン3
0W-8のSAE粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む乗用車用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)1410ppmのCaおよび470ppmのMgを配合物に提供するカルシウムサリチレートおよびマグネシウムスルホネート清浄剤の混合物;
(4)リン含有量が770ppmである第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)800ppmのMoDTC;
(6)アルキル化ジフェニルアミンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤;
(7)発泡防止剤;
(8)低SSI PMA VII;および
(9)残りのグループIII基油。
【0138】
例7
配合物ベースライン3に、0.20重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0139】
ベースライン4
0W-8のSAE粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む乗用車用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)1410ppmのCaおよび470ppmのMgを配合物に提供するカルシウムサリチレートおよびマグネシウムスルホネート清浄剤の混合物;
(4)リン含有量が770ppmである第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(5)800ppmのMoDTC;
(6)アルキル化ジフェニルアミンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤;
(7)発泡防止剤;
(8)低SSI PMA VII;および
(9)残りのグループIII基油。
【0140】
例8
配合物ベースライン4に、0.20重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0141】
例9
配合物ベースライン4に、0.10重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0142】
例10
配合物ベースライン4に、0.50重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0143】
例11
配合物ベースライン4に、0.10重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの800ppmのモリブデンを添加した。
【0144】
例12
配合物ベースライン4に、0.20重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの800ppmのモリブデンを添加した。
【0145】
例13
配合物ベースライン4に、0.50重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの800ppmのモリブデンを添加した。
【0146】
例14
配合物ベースライン4に、0.10重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの400ppmのモリブデンおよびMoDTCからの400ppmのモリブデンを添加した。
【0147】
例15
配合物ベースライン4に、0.20重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの400ppmのモリブデンおよびMoDTCからの400ppmのモリブデンを添加した。
【0148】
例16
配合物ベースライン4に、0.50重量%の例Aの摩擦調整剤を添加し、MoDTCからの800ppmのモリブデンの代わりに、硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの400ppmのモリブデンおよびMoDTCからの400ppmのモリブデンを添加した。
【0149】
例17
配合物ベースライン4に、0.05重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0150】
例18
配合物ベースライン4に、0.01重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0151】
高周波往復動リグ(HFRR)
HFRR試験リグは、潤滑油の性能を測定するための、工業的に認識された摩擦計である。PCS装置は、電磁バイブレーターを使用して、固定試料(フラットディスク)に対して押圧しながら、試料(ボール)を小さな振幅で振動させる。振動の振幅および周波数ならびに負荷は可変である。ボールとフラットとの間の摩擦力、および電気接触抵抗(ECR)を測定する。平坦で固定された試料は、潤滑油が添加される浴に保持され、加熱することができる。この試験のために、52100スチールの平坦な試料上の6mmのボールを使用して、摩擦計を20Hzで作動するように設定した。荷重は400gで、温度は70℃で行った。この試験では、摩擦係数が小さいほど、より効果的な摩擦調整剤添加剤に相当する。HFRR摩擦性能データを表4に示す。
【表4】
【0152】
したがって、例7~18が明らかに改善された摩擦性能を提供することは明らかである。
【0153】
ベースライン5
5W-20のSAE粘度を有するZnDTPを含まず、0.15重量%の硫酸灰分を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む乗用車用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)過塩基性カルシウムフェネート清浄剤からの400ppmのカルシウム;
(5)硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの180ppmのMo;
(6)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(7)発泡防止剤;
(8)OCP VII;および
(9)残りのグループII基油。
【0154】
例19
配合物ベースライン5に、0.5重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0155】
比較例2
配合物ベースライン5に、0.3重量%の比較例Bの摩擦調整剤を添加した。
【0156】
ベースライン6
5W-20のSAE粘度を有し、0.40重量%の硫酸灰分を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む乗用車用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)過塩基性カルシウムフェネート清浄剤からの400ppmのカルシウム;
(4)第二級ZnDTPの770ppmのリン;
(5)硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの180ppmのMo;
(6)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(7)発泡防止剤;
(8)OCP VII;および
(9)残りのグループII基油。
【0157】
例20
配合物ベースライン6に、0.5重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0158】
比較例2
配合物ベースライン6に、0.3重量%の比較例Bの摩擦調整剤を添加した。
【0159】
ベースライン7
5W-20のSAE粘度を有し、1.0重量%の硫酸灰分を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含む乗用車用潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)過塩基性カルシウムフェネートおよびカルシウムサリチレート清浄剤からの2190ppmのカルシウム;
(4)第二級ZnDTPの770ppmのリン;
(5)硫化モリブデンスクシンイミド錯体からの180ppmのMo;
(6)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(7)発泡防止剤;
(8)OCP VII;および
(9)残りのグループII基油。
【0160】
例18
配合物ベースライン7に、0.5重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【0161】
比較例3
配合物ベースライン7に、0.3重量%の比較例Bの摩擦調整剤を添加した。
【0162】
ミニトラクション機械(MTM)
上述の組成物は、MTMベンチ試験で摩擦性能を試験した。MTMはPCS Instruments社によって製造され、回転ディスク(52100スチール)に対して負荷されたボール(直径0.75インチの8620スチールボール)で作動する。条件は、約10~30ニュートンの負荷、約10~2000mm/sの速度、および約125~150°Cの温度を使用する。このベンチ試験では、摩擦性能は、生成された第2のストライベック曲線下の総面積として測定される。総面積の値が小さいほど、摩擦性能が向上する。結果を表5に示す。
【表5】

表5のデータは、本開示の例が摩擦を低減し、したがって、内燃機関の燃料経済性を改善することを明確に示している。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用車用内燃機関潤滑油組成物であって、
(a)100℃で2.0~12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有し、グループI~Vの基油のいずれかから選択される主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、0.03~0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.01重量%~2.0重量%の化合物とを含む、乗用車用内燃機関潤滑油組成物。
【請求項2】
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、アルキルジエタノールアミンまたはアルキルジエタノールアミドを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記ホウ素源がホウ酸である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物が、150℃で1.3~3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチル酸塩、カルボン酸塩、フェネート、スルホン酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
ZnDTP化合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記エンジンを潤滑油組成物で潤滑することを含む、乗用車用内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油組成物は、
(a)100℃で2.0~12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有し、グループI~Vの基油のいずれかから選択される主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、0.03~0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.01重量%~2.0重量%の化合物とを含む、方法。
【請求項14】
前記内燃機関が、ハイブリッド車両の電気モーター/バッテリーシステムに結合された直噴火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エンジンがガソリン微粒子フィルターを備えている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物であって、
(a)100℃で2.0~12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有し、グループI~Vの基油のいずれかから選択される主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、0.03~0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~2.0重量%の化合物とを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物。
【請求項17】
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、アルキルジエタノールアミンまたはアルキルジエタノールアミドを含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記ホウ素源がホウ酸である、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
前記潤滑油組成物が、150℃で2.5~3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチレート、カルボキシレート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
ZnDTP化合物をさらに含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記潤滑油組成物がリン含有添加剤を実質的に含まない、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
前記潤滑油組成物が亜鉛含有添加剤を実質的に含まない、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
前記エンジンを潤滑油添加剤組成物で潤滑することを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油添加剤組成物は、
(a)100℃で2.0~12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有し、グループI~Vの基油のいずれかから選択される主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、0.03~0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~2.0重量%の化合物とを含む、方法。
【請求項31】
エンジンがディーゼル微粒子フィルターを備えている、請求項30に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
本明細書で開示される主題の理解を容易にするために、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない任意の用語、略語または略記は、本出願の提出と同時に当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。
なお、下記[1]から[31]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
乗用車用内燃機関潤滑油組成物であって、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、乗用車用内燃機関潤滑油組成物。
[2]
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、ビスエトキシアルキルアミンまたはビスエトキシアルキルアミドを含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、[2]に記載の潤滑油組成物。
[4]
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、[2]に記載の潤滑油組成物。
[5]
前記ホウ素源がホウ酸である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[6]
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[7]
前記潤滑油組成物が、150℃で約1.3~約3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[8]
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチル酸塩、カルボン酸塩、フェネート、スルホン酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載の潤滑油組成物。
[9]
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[10]
ZnDTP化合物をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[11]
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[12]
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[13]
前記エンジンを潤滑油組成物で潤滑することを含む、乗用車用内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油組成物は、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む約0.01重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、方法。
[14]
前記内燃機関が、ハイブリッド車両の電気モーター/バッテリーシステムに結合された直噴火花点火エンジンおよびポート燃料噴射火花点火エンジンから選択される、[13]に記載の方法。
[15]
エンジンがガソリン微粒子フィルターを備えている、[13]に記載の方法。
[16]
大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物であって、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関潤滑油添加剤組成物。
[17]
前記窒素含有反応物が、アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物であり、ビスエトキシアルキルアミンまたはビスエトキシアルキルアミドを含む、[16]に記載の潤滑油組成物。
[18]
前記ビスエトキシアルキルアミン中のアルキル基が、オレイル、ドデシル、または2-エチルヘキシルを含む、[17]に記載の潤滑油組成物。
[19]
前記ビスエトキシアルキルアミド中のアルキル基が、ヤシ油に由来する、[17]に記載の潤滑油組成物。
[20]
前記ホウ素源がホウ酸である、[16]に記載の潤滑油組成物。
[21]
前記ヒドロカルビルポリオールが、グリセロールまたはペンタエリスリトールを含む、[16]に記載の潤滑油組成物。
[22]
前記潤滑油組成物が、150℃で約2.5~約3.5cPの範囲のHTHS粘度を有する、[16]に記載の潤滑油組成物。
[23]
前記アルカリ土類金属清浄剤が、カルシウムまたはマグネシウム含有サリチレート、カルボキシレート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、[16]に記載の潤滑油組成物。
[24]
前記潤滑油組成物が有機モリブデン化合物をさらに含む、[16]に記載の潤滑油組成物。
[25]
ZnDTP化合物をさらに含む、[16]に記載の潤滑油組成物。
[26]
前記潤滑油組成物のリン含有量が0.08重量%未満である、[16]に記載の潤滑油組成物。
[27]
前記潤滑油組成物がリン含有添加剤を実質的に含まない、[16]に記載の潤滑油組成物。
[28]
前記潤滑油組成物が亜鉛含有添加剤を実質的に含まない、[16]に記載の潤滑油組成物。
[29]
前記潤滑油組成物が、1.6重量%未満、1.3重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.6重量%未満、または0.3重量%未満の硫酸灰分レベルを有する、[16]に記載の潤滑油組成物。
[30]
前記エンジンを潤滑油添加剤組成物で潤滑することを含む、大型車両用ディーゼル内燃機関において新油および使用済み油の燃料経済性を改善する方法であって、前記潤滑油添加剤組成物は、
(a)100℃で約2.0~約12センチストークス(cSt)の動粘度(Kv)を有する主要量の潤滑粘度の基油と、
(b)窒素含有分散剤と、
(c)前記潤滑油組成物に対して、その金属含有量に基づいて、約0.03~約0.7重量%で提供されるアルカリ土類金属含有清浄剤と、
(i)アルキルアルカノールアミド、アルキルアルコキシル化アルカノールアミド、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルコキシル化アルカノールアミンまたはそれらの混合物を含む窒素含有反応物、
(ii)ホウ素源、および
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を有するヒドロカルビルポリオールの
(d)反応生成物を含む0.30重量%~約2.0重量%の化合物とを含む、方法。
[31]
エンジンがディーゼル微粒子フィルターを備えている、[30]に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0158
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0158】
比較例
配合物ベースライン6に、0.3重量%の比較例Bの摩擦調整剤を添加した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0160
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0160】
21
配合物ベースライン7に、0.5重量%の例Aの摩擦調整剤を添加した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0161
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0161】
比較例
配合物ベースライン7に、0.3重量%の比較例Bの摩擦調整剤を添加した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0162
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0162】
ミニトラクション機械(MTM)
上述の組成物は、MTMベンチ試験で摩擦性能を試験した。MTMはPCS Instruments社によって製造され、回転ディスク(52100スチール)に対して負荷されたボール(直径0.75インチの8620スチールボール)で作動する。条件は、約10~30ニュートンの負荷、約10~2000mm/sの速度、および約125~150°Cの温度を使用する。このベンチ試験では、摩擦性能は、生成された第2のストライベック曲線下の総面積として測定される。総面積の値が小さいほど、摩擦性能が向上する。結果を表5に示す。
【表5】

表5のデータは、本開示の例が摩擦を低減し、したがって、内燃機関の燃料経済性を改善することを明確に示している。
【外国語明細書】