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特開2024-123100自己免疫関連疾患を治療するための治療用ペプチドおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123100
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】自己免疫関連疾患を治療するための治療用ペプチドおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240903BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K38/00 ZNA
A61K38/04
A61K38/08
A61K38/16
A61K45/00
A61K47/30
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/06
A61P3/10
A61P5/14
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/50
A61K9/51
C07K7/06
C07K14/00
C07K7/08
A61K38/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097199
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2020557124の分割
【原出願日】2019-01-04
(31)【優先権主張番号】62/614,262
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/184,129
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520246973
【氏名又は名称】オーピー-ティー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ジュニア,デイビッド ハル
(72)【発明者】
【氏名】ユスマン,マーティン グレン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー,チャールズ ダブリュー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アテローム性動脈硬化を予防および調節するための方法および材料を提供する。
【解決手段】アテローム性動脈硬化症を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させるための薬剤の製造における、特定のアミノ酸配列を含むペプチドの使用であって、当該ペプチドはCD40とCD154/CD40リガンドとの相互作用に影響を与える、ペプチドの使用による。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム性動脈硬化症を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させるための薬剤の製造における、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むペプチドの使用であって、当該ペプチドはCD40とCD154/CD40リガンドとの相互作用に影響を与える、ペプチドの使用。
【請求項2】
2型糖尿病を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させるための薬剤の製造における、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むペプチドの使用であって、当該ペプチドはCD40とCD154/CD40リガンドとの相互作用に影響を与える、ペプチドの使用。
【請求項3】
前記ペプチドが、グルコース輸送タンパク質4(GLUT4)を調節し、2型糖尿病を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ペプチドが、細胞または対象におけるINFγを調節および/あるいは減少させ、2型糖尿病を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させる、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記ペプチドが、インターロイキン2あるいは17(IL-2あるいはIL-17)シグナル伝達を調節あるいは減少させ、2型糖尿病を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させる、請求項2から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
対象におけるグルコース不耐性および/またはインスリン非感受性を予防、調節、減少、治療および/又は逆転させるための薬剤の製造における、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むペプチドの使用であって、当該ペプチドはCD154/CD40リガンドとCD40との相互作用に影響を与える、ペプチドの使用。
【請求項7】
前記ペプチドがCD40に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ペプチドが、10-6より大きいKdでCD40タンパク質に結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ペプチドが、CD40とCD154との相互作用に影響を与える、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ペプチドが、CD40のCD154への結合を抑制する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ペプチドは、CD40がCD154と相互作用する部位でCD40に結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ペプチドが、Th40細胞の増殖を予防するような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記ペプチドが、Th40細胞の数を減少するような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記ペプチドが、前記ペプチドで処理された細胞集団のサイトカイン発現プロファイルを変化させるような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記ペプチドが、約45kDaのCD40を発現する複数の骨髄由来の細胞型に結合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
約45kDaのCD40を発現する前記骨髄由来の細胞型が、脾臓CD4hi細胞、CD8細胞、および他の抗原提示細胞を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ペプチドが、25未満のアミノ酸長である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記ペプチドが、筋肉内(IM)送達、静脈内(IV)送達、皮下(SC)送達、経口送達、胃管栄養送達、エモルメント(emolument)/皮膚送達、または経皮パッチから選択される送達方法を使用して投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記ペプチドが、移植可能なデバイス、親水性ポリマー製剤、透過性ポリマー膜、注入可能なゲルインプラント、溶媒抽出システム、相反転システム、感温性ゲル、pH依存性in situゲル、微粒子、マイクロスフェア、ナノ粒子、ナノスフェア、生分解性インプラント、または光活性化デポ(photoactivated depot)から選択される持続送達法を使用して投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むペプチドを含む医薬組成物。
【請求項21】
前記ペプチドが、25未満のアミノ酸長である、請求項20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CD40とCD154との相互作用を抑制し、治療有効量のペプチドを必要とする対象における心血管疾患および/またはアテローム性動脈硬化症の予防、調節および軽減のための方法または使用、ならびにそのような化合物のT細胞活性の調節および疾患の治療における使用に関するものである。さらに、本開示は、CD40とCD154の相互作用を抑制、影響、破壊、ブロック、および/または変化させる治療有効量のCD40結合ペプチドの投与を介して、2型糖尿病および/または自己炎症性疾患を予防、調節、減少、治療および/または逆転する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、正常な体の部分に対する異常な免疫応答から生じる状態である。身体自体の臓器、組織、細胞を攻撃する免疫系が原因で、80以上の疾患が発生する。1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、および炎症性腸疾患は、人類全体の広い範囲の人々に影響を与える一般的な自己免疫疾患である。重要なことに、上記の自己免疫疾患は、日常生活と日常の仕事に影響を与えるかなりの数の人々を苦しめ、たくさんの金銭、医療的資源、時間、医療従事者のケアを必要とする。
【0003】
世界保健機関(WHO)によると、2015年に推定する1770万人が心血管疾患(CVD)で死亡し、これは全世界の死亡の31%を占めた。CVDは心臓血管疾患としても知られ、多くの問題を含み、その多くはアテローム性動脈硬化症と呼ばれるプロセスに関連している。さらに、2011年にHealthcare Research and Quality(AHRQ)が後援するHealthcare Cost and Utilization Project(HCUP)によると、アテローム性冠動脈硬化だけで104億ドル以上の病院費用を占めている。したがって、2011年には、アテローム性冠動脈硬化だけでも、米国の入院患者の中で最も高額な10疾患の一つに数えられている。
【0004】
心血管疾患とアテローム性動脈硬化
アテローム性動脈硬化は、心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性のある動脈プラーク形成によって定義される。動脈プラーク形成は、コレステロール、死細胞、樹状細胞、発泡細胞、マクロファージ、肥満細胞、単球、平滑筋細胞、T細胞、コラーゲン、カルシウム、およびフィブリンを含むがこれらに限定されない細胞、物質、老廃物、および細胞屑の沈着によって引き起こされる。動脈壁とプラーク内の炎症性変化は、アテローム性動脈硬化性疾患の発症に重要な役割を果たし得る。そのため、自己免疫および炎症性疾患としてのアテローム性動脈硬化症の概念が検討されてきたが、その治療法は確立されていない。炎症を制御することの重要性は、自己免疫、炎症、および心血管疾患および死の他の側面を標的とした現在の臨床試験によって強調されている。
【0005】
例えば、CIRT(Cardiovascular Inflammation Reduction Trial)は、メトトレキサートを使用してインターロイキン-6(IL-6)を標的とし、メトトレキサートが2型糖尿病を有するアテローム性動脈疾患患者の心筋梗塞、脳卒中、および心血管死の割合を減少させるかどうかを試験しようとしている。別の例には、カナキヌマブが炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)を抑制することで、高リスクのままの心臓発作患者における心筋梗塞の再発、脳卒中、心血管疾患による死亡率を低下させるかどうかを検討しているCANTOS試験(Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study)が含まれる。このリスクは、炎症性バイオマーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)のレベルが上昇することで明らかになる。これらの研究が、炎症がアテローム血栓症およびアテローム性動脈硬化症において重要な役割を果たしていることを認めているが、炎症自体を抑制することで血管イベント発生率が低下するかどうかは不明であることも認識している。
【0006】
哺乳類およびヒトのアテローム性動脈硬化性病変は、単球、マクロファージ、内皮細胞、平滑筋細胞、血小板、およびT細胞を含む血管壁の慢性炎症性-線維増殖性疾患を特徴とする。これらの細胞型のそれぞれは、CD40/CD154の共刺激ペアのいずれかまたは両方を発現することができる。このダイアドは免疫応答の増強に関与しており、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病(T1D)を含む多くの慢性炎症性疾患に寄与している可能性がある。しかしながら、この高度にアテローム形成ダイアドに対して実行可能な治療法は存在しない。
【0007】
炎症は、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、マクロファージ、血小板、内皮細胞などの炎症性細胞が、炎症性のイベントや、微生物の侵入、細胞の損傷、または他の刺激物などの有害な刺激に反応して起こる。体内の炎症反応は、例えば、侵入微生物の場合、炎症反応が、免疫系による除去のために感染物質を局在化に重要なステップであるため、有益である。しかし、自己免疫では、感染がないにもかかわらず、重度の炎症が存在し、または持続している。この場合の炎症は、無菌性慢性炎症(ACI)と呼ばれ、正常組織を破壊するため、有害である。この無菌性炎症の結果は、生命を改変するものであり、場合によっては生命を脅かすものでもある。さらに、急性炎症と同様に、このプロセスはT細胞を含む免疫細胞によって介される。
【0008】
現代医学の大きな関心事は、自己免疫疾患中に発生することのようなACIをどのようにコントロールするか、また、外傷に起因する急性炎症をどのようにコントロールするかである。慢性および急性の炎症は、組織の変性を引き起こし、最終的には主要な臓器の機能を失うことになる。ACIは単一の疾患に限定されなく、以下を含むが、これらに限定されない多数の自己免疫疾患に助けがある:1型糖尿病(T1D)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、クローン病、炎症性腸疾患(IBS)、自己免疫性喘息を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化症、血管炎、高血圧症、橋本病およびグレーブス病を含む甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、および臓器移植に伴う無菌性慢性炎症(ACI)。
【0009】
自己免疫疾患は、臓器特異的(主に1つの臓器に向けられている)と非臓器特異的(全身に広く広がっている)の2種類に分類される。臓器特異的自己免疫疾患の例としては、膵臓に影響を与えるインスリン依存性1型糖尿病(T1D)、甲状腺に影響を与える橋本甲状腺炎およびグレーブス病、血液に影響を与える悪性貧血、副腎に影響を与えるアジソン病、肝臓に影響を与える慢性活動性肝炎、筋肉に影響を与える重症筋無力症、神経系の組織に影響を与える多発性硬化症(MS)である。非臓器特異的自己免疫疾患の例としては、関節リウマチ(RA)である。自己免疫疾患は、常に慢性的で衰弱させ、生命を脅かす。国立衛生研究所(NIH)は、最大2350万人のアメリカ人が自己免疫疾患に罹患し、その有病率が上昇していると推定している。自己免疫疾患は、65歳までのすべての年齢層の女性の死因の主要10位以内に入っていると推定されている。
【0010】
外傷や敗血症の際に見られるような急性炎症もまた、免疫細胞を介したものである。このプロセスにおける分子メディエーターの包括的、完全、網羅的なリストはまだ同定されていないが、T細胞、リンパ球、好中球、マクロファージ、単球、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、および他の炎症性細胞の顕著な役割が強く関与している。したがって、これらの細胞型を調節するプロセスが炎症反応を制御し得る。
【0011】
2型糖尿病
CD40-CD154ダイアドは1型糖尿病に重要な役割を果たす主要な炎症経路を構成している。2型糖尿病(T2D)は、歴史的にも科学的にも、主に代謝性疾患として分類されてきたが、2型糖尿病は、単なる代謝性疾患ではなく、自己免疫疾患として再定義される過程にある。
【0012】
米国疾病対策センターの2017年全国糖尿病統計報告書によると、2015年には、すべての年齢層の推定3,030万人-または米国人口の9.4%が糖尿病に罹患していた。推定2,300万人-または米国人口の7.2%が糖尿病と診断されており、糖尿病と診断された人の約95%が2型糖尿病である。空腹時血漿グルコース値に基づいて、2型糖尿病の症例の3分の1から2分の1は未診断と未治療である。
【0013】
2型糖尿病が45歳以上の人に発症することが最も多いが、2型糖尿病は2001年から2009年にかけてアメリカの若者に21%増加し、SEARCH for Diabetes in Youthと呼ばれる大規模な研究では、2002年から2012年の間に、子供および十代の若者に新たに診断された2型糖尿病の症例は、研究期間の各年で約4.8%増加したことが分かった。
【0014】
主要な併存疾患が糖尿病を複雑にしており、最も一般的なのは虚血性心疾患や脳卒中を含む心血管疾患(1,000人あたり70.4人)である。全体では、2012年の米国糖尿病協会の推計によると、米国での直接的・間接的な推定全体コストは2450億ドルで、その中には1,760億ドルの直接医療費と690億ドルの生産性低下が含まれる。
【0015】
1型糖尿病も2型糖尿病も、アテローム性動脈疾患(CAD)、脳卒中、末梢動脈疾患の強力的な独立した危険因子である。アテローム血栓症は、一般的な北米の人口における全死亡の約33%と比較して、北米の糖尿病患者の全死亡の65%から80%を占める。したがって、効果的であり、かつ長期間忍容可能な治療レジメンは、個人にとっても公衆衛生の観点からも有益であろう。理想的な抗糖尿病薬は、高血糖を矯正し、大血管合併症を予防し、2型糖尿病(「T2D」)の原因となる病態生理学的障害を矯正する薬であり得る。インスリン抵抗性はT2Dに基本的であるが、β細胞障害は、さらに合併症になるインスリン抵抗性とインスリン分泌との間の不均衡がことと共に最終的に起こる。したがって、治療的に有益な治療アプローチは、インスリン抵抗性を逆転させ、β細胞機能を改善することを目的とし得る。
【0016】
T2Dは常に肥満と一致しているが、最近では遺伝的と環境的な要因が疾患の原因として記載されている。さらに、T1Dと同様にT2Dには、T2D疾患の開始、発生、進行の原因および/または推進因子である顕著な炎症成分があることを示す追加の研究が明らかになった。CD40-CD154炎症性ダイアドは、自己免疫性炎症を促進する分子ドライバーとして作用し、ダイアドの過剰なレベルに影響を与えることが、T2Dの評価されていないが寄与している要因であり得る。
【0017】
一般に、炎症は、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、マクロファージ、血小板、内皮細胞、T細胞およびB細胞を含むがこれらに限定されないリンパ球などの炎症性細胞が、炎症性のイベントや、微生物の侵入、細胞の損傷、または他の刺激物などの有害な刺激に反応して起こる。体内の炎症反応は、例えば、侵入微生物の場合、炎症反応が、免疫系による除去のために感染物質を局在化に重要なステップであるため、有益である。しかし、自己免疫では、感染がないにもかかわらず、重度の炎症が存在し、または持続している。この場合の炎症は、無菌性慢性炎症(ACI)と呼ばれ、正常組織を破壊するため、有害である。この無菌性炎症の結果は、生命を改変するものであり、場合によっては生命を脅かすものでもある。さらに、急性炎症と同様に、このプロセスはT細胞を含む免疫細胞によって介される。
【0018】
現代医学の大きな関心事は、自己免疫疾患中に発生することのようなACIをどのようにコントロールするか、また、外傷に起因する急性炎症をどのようにコントロールするかである。慢性および急性の炎症は、組織の変性を引き起こし、最終的には主要な臓器の機能を失うことになる。ACIは単一の疾患に限定されなく、以下を含むが、これらに限定されない多数の自己免疫疾患に助けがある.:1型糖尿病(T1D)、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、自己免疫性喘息を含む慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、血管炎、高血圧症、橋本病およびグレーブス病を含む甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、および臓器移植に伴う無菌性慢性炎症。
【0019】
自己免疫疾患は、臓器特異的(主に1つの臓器に向けられている)と非臓器特異的(全身に広く広がっている)の2種類に分類される。臓器特異的自己免疫疾患の例としては、膵臓に影響を与えるインスリン依存性1型糖尿病(T1D)、甲状腺に影響を与える橋本甲状腺炎およびグレーブス病、血液に影響を与える悪性貧血、副腎に影響を与えるアジソン病、肝臓に影響を与える慢性活動性肝炎、筋肉と神経の間の関節にいるレセプターに影響を与える重症筋無力症、神経系の組織に影響を与える多発性硬化症である。非臓器特異的自己免疫疾患の例としては、関節リウマチである。自己免疫疾患は、常に慢性的で衰弱させ、生命を脅かす。国立衛生研究所(NIH)は、最大2350万人のアメリカ人が自己免疫疾患に罹患し、その有病率が上昇していると推定している。自己免疫疾患は、65歳までのすべての年齢層の女性の死因の主要10位以内に入っていると推定されている。
【0020】
外傷や敗血症の際に見られるような急性炎症もまた、免疫細胞を介したものである。このプロセスにおける分子メディエーターの包括的、完全、網羅的なリストはまだ同定されていないが、T細胞、リンパ球、好中球、マクロファージ、単球、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、および他の炎症性細胞の顕著な役割が強く関与している。したがって、これらの細胞型を調節するプロセスが炎症反応を制御する可能性がある。
【0021】
ユニークなT細胞サブセットは、自己免疫疾患の発症に役立つことが示されている。これらの細胞は、表現型的にCD4loCD40+を特徴とし、Th40細胞と呼ばれている。CD40の発現は、一般的に抗原提示細胞と関連しており、先行技術の大部分は、CD40がB細胞、マクロファージ、単球、およびその他の細胞に発現していると記載し;しかしながら、CD40タンパク質はT細胞にも発現している。Th40細胞は、ナイーブな非自己免疫マウスおよびヒトでは末梢CD4+コンパートメントの一部を含っているが、自己免疫を起こしやすいマウスおよびヒトでは、この割合はCD4+コンパートメントの50%にまで劇的に拡大している。これらのT細胞は、初期活性化マーカーを発現せず、非チャレンジマウスのナイーブ表現型で発現する。
【0022】
NOD(非肥満糖尿病)マウスでは、Th40細胞は、糖尿病発症前であっても、脾臓、リンパ節および膵臓で誇張されたレベルで発生する。非自己免疫性対照や2型糖尿病患者と比較して、1型糖尿病(T1D)患者の末梢血中には、これらのT細胞の数とパーセンテージが増加していることが明らかになる。
【0023】
Th40細胞の観察された増加は、それらのT細胞が抗原応答性であること、またはCD40発現が活性化誘導されていることを意味する可能性がある。さらに、いくつかの糖尿病原性T細胞クローンはCD40+である。NODマウスおよび糖尿病前のNOD(12~週齢)マウスからの精製一次Th40細胞は、1型糖尿病をNOD/Scid(非肥満糖尿病/重度複合免疫不全症)レシピエントマウスに移すことに成功し、Th40T細胞サブセットの病原性を直接実証する。Th40細胞が膵島β細胞に浸潤してインスリン産生を破壊し、それによって膵島抗原特異性を示唆することが示されている。また、Th40細胞が糖尿病移行に必要であることも示されている。CD40が枯渇し、次いでCD25、Tregが枯渇した末梢(脾臓および所属リンパ節)T細胞は、糖尿病をScid(重症複合免疫不全症)レシピエントに移行させることができなかった。Treg細胞を除去しても、自己攻撃性CD40+T細胞サブセットが欠乏していれば、疾患移行は起こらない。
【0024】
自己免疫の発症にはTh40細胞が重要であるが、もう一つの重要な因子はCD40-リガンドであるCD154の発現である。CD154は、CD3/TCR刺激に応答して活性化T細胞上に一時的に誘導される。CD154の発現は、血小板、単球、好塩基球、好酸球、樹状細胞、線維芽細胞、平滑筋、内皮細胞でも確認されている。CD154は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーであり、CD154の可溶性形態(sCD154)が記載されている。したがって、sCD154はサイトカインのように作用する可能性がある。T1Dの研究ではCD154が遺伝的に関連していないにもかかわらず、T1DではsCD154は有意に上昇しており、疾患過程での役割を果たし得る。自己免疫にCD40-CD154相互作用の重要性が確立されている。CD40-CD154 相互作用を抑制することで、NODマウスモデルを用いたコラーゲン誘発関節炎、実験的自己免疫性脳炎、前立腺炎、1型糖尿病を予防できる。糖尿病モデルでは、9週齢ではブロックする抗体が糖尿病予防効果を示さなかったため、3週齢のNODマウスにCD154ブロックする抗体を投与することが必要であった。
【0025】
また、以前の研究では、Th40細胞サブセットが、CD40が関与しているときに、RAG1およびRAG2(組換え活性化遺伝子)の転写、翻訳、および核移行を誘導することが示されている。CD3の関与がT細胞ではRAG1とRAG2を誘導しない。RAG1/RAG2誘導に続いて、CD40が介するT細胞受容体(TCR)リビジョン(receptor revision)が末梢T細胞で起こる。TCRリビジョンのCD40誘導は、RAG依存性である。TCR-Tgマウスから単離されたT細胞は、CD40が関与するとTCRリビジョンを受けるが、TCR-Tg.RAG-/-マウスからのT細胞が、CD40が関与するとTCRリビジョンを受けない。
【0026】
CD40は、腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)ファミリーの50kDaの膜タンパク質である。それは、ホモ三量体として構成的に発現される。一般に、すべてのCD40発現細胞型の刺激は、炎症に寄与する操作を誘導し、例えば、共刺激および接着分子の増強、およびタンパク質分解酵素のアップレギュレーションを誘導する。
【0027】
CD40のリガンド-CD154-は、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属する39kDaのタンパク質である。CD40は、3つのモノマーの界面でCD154と結合する三量体を形成する。CD154は、CD154が活性化後に細胞表面から流される可溶性生物学的に活性な形態(sCD154)でも存在するので、表面発現CD154を超えて細胞上で一般的に発現される。sCD154の主な供給源は血小板である。
【0028】
野生型マウスが一般的にアテローム性動脈硬化症の発症や進行に対する抵抗性が高いため、遺伝子操作されたマウスモデルはアテローム性動脈硬化症や心血管疾患に関する研究と開発に利用される。先行研究では、モノクローナル抗体を用いてCD40/CD154相互作用をブロックする試みが行われており、このアプローチは、Apoe-/-またはLDLr欠損のアテローム性動脈硬化モデルを用いたいくつかのマウスモデル研究で有効であることが証明されている。さらに、CD154の欠失で構築されたこれらの同じマウスモデルでは、全体でプラークの形成が大幅に減少し、より安定したプラーク表現型の産生にも寄与していることができる。臨床的に安定したプラークとは、コラーゲンと平滑筋の含有量の増加、厚い線維性のキャップ、T細胞、マクロファージ、脂質の蓄積の観察可能な減少によって識別可能であり、表示される。
【0029】
T2Dに関する研究と開発には、マウスモデルがインスリン抵抗性と、β細胞が人間のT2Dに特徴的な十分に補償できないことを表現できるため、遺伝子操作されたマウスモデルが利用される。T2Dのマウスモデルを含む動物モデルの多くは肥満であり、肥満がT2Dの発症に密接に関係しているヒトの状況を反映している。
【0030】
慢性炎症と急性炎症の両方に対処し、制御するために、複数の治療法が提案されている。多くのアプローチでは、局所的な炎症を引き起こす細胞内物質であるロイコトリエンやプロスタグランジンの産生を攻撃する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)が使用されている。その他の治療法としては、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリンなどのより強力な免疫抑制剤を使用し、免疫反応を抑制して病気の進行を止める。さらに他の治療は、自己免疫疾患の間に起こるように、自己組織に対する免疫応答を変化させるように設計されたモノクローナル抗体(mAb)を使用に関する。ただし、これらの治療法はすべて、常に、重度の長期的な副作用がある。
【0031】
現在の免疫調節療法は、合併症をもたらせるモノクローナル抗体治療に依存し得る。例えば、被験者に投与された抗体は、意図しない標的と交差反応し、重篤な腎合併症を引き起こす可能性があり、CD154に対して特異的に作用する抗体は、塞栓性合併症を引き起こす可能性がある。さらに、CD40-CD154相互作用は、抗体生成において重要な役割を果たし得り、これは、モノクローナル抗体の投与が自己抗体生成およびさらなる合併症を誘導し、正常な免疫機能の回復を抑制し得ることを示唆している(一般的に参照)。
【0032】
他の研究では、モノクローナル抗体を用いてCD154相互作用をブロックすること、またはモノクローナル抗体を用いてCD40受容体を制限することは、アテローム性動脈硬化症を消失させ、そしてより低い炎症およびより高い線維化を特徴とするより好ましいプラーク表現型を与えることができることが実証されている。これらの研究はさらに、CD154の相互作用を抑制することにより、新内膜形成と再狭窄が制限される可能性があることを実証している。ルーパス腎炎に関する研究では、CD40を介したシグナルをブロックすることで、抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体を減少させるのができることが実証されている。さらに、これらの研究は、抗dsDNAの減少が血清補体レベルの上昇および糸球体炎症の減少と関連していることを実証しており、これは臨床的観点から積極的に見ることができる。しかしながら、CD40/CD154ダイアドを標的とするモノクローナル抗体の使用は、血栓安定化におけるCD154の機能に関連し得る血栓塞栓性イベントのために放棄された。CD154がインテグリンαIIbβとの相互作用により血栓を安定化させ、CD154を抑制することで血栓の安定性が低下し、結果として血栓症の原因となる塞栓を排出すると推測される。
【0033】
また、T細胞の活性化と効果的な免疫応答の発達に重要なCD40-CD154の共刺激相互作用を抑制しようとするために、低分子の研究も行われている。例えば、対称性ポリスルホン化ナプチルアミン-ベンズアミド尿素誘導体であるスラミンについて、CD154のその受容体への結合を抑制し、ヒトB細胞のCD154誘発増殖を阻止する能力が研究され;しかしながら、その多くの可逆性毒性(嗜眠、発疹、疲労、貧血、高血糖症、低カルシウム血症、凝固病、好中球減少症、腎合併症、肝合併症)、タンパク質が豊富な培地での活性の喪失、および正の共刺激相互作用との妨害により、この薬および他の関連する低分子候補薬は、CD40-CD154ダイアドの有効な治療源とはなりにくいものとなっている。
【0034】
原発病変と各組織の相対的な重要性については不確実性があり、肝臓の代謝異常と脂肪、筋肉、膵β細胞などの末梢組織の代謝異常が全部で2型糖尿病の因子となっている可能性が高い。さらに、2型糖尿病の原因が、遺伝的影響と環境的影響の両方によって理解されておらず、複雑であり、混乱しているが、高血糖自体が膵β細胞の機能を抑制すると考えられている。
【0035】
したがって、ヒトにおける2型糖尿病は、典型的には、ますます破壊的な段階(phase または stage)の進行性シリーズを経て発症する。最初に、前糖尿病は耐糖能障害を特徴とし、体が食後にグルコースをクリアすることが困難であり(食後高血糖症)、および/または体がインスリンへの感受性を低下する可能性がある。第2の段階では、食後高血糖症および基礎高血糖症が発生する一方で、膵臓のインスリン産生β細胞が増加する速度で機能不全になる。疾患進行の次の段階では、空腹後も高血糖が起こり、細胞レベルではβ細胞の萎縮が起こる。最終的には、疾患進行の最終段階または終末期になると、β細胞はもはやインスリンを産生および/または放出することができなくなり、患者さんはインスリン補充療法を必要とする。
【0036】
T2Dは臨床的に高血糖症を特徴とし、病理学的に相対的なインスリン分泌障害を伴うインスリン抵抗性を特徴としている。遺伝的にT2Dを発症しやすい個人は、明らかに糖尿病が臨床的に発症する前に15~25年以上の間、インスリン抵抗性(最も早い検出可能な代謝障害)を経験する可能性がある。T2Dは従来、年齢と肥満と関連していったが、若年者のT2Dの診断が増加していることから、これら2つの因子だけでは疾患の信頼できる唯一の予測因子ではないことが明らかになっている。体格指数(BMI)もまた、明らかにT2Dと関連しているが、現在では遺伝的要因と環境的要因の両方が寄与因子としても識別される。肥満は炎症性の状態を作り出し、肥満または他の状態に起因する持続的な炎症は、T2D発症において重要であるかもしれない。
【0037】
したがって、自己免疫および炎症性経路およびCD40-CD154に関連するダイアドによって暗示されるT2Dの治療および予防のための、より安全でより効果的な方法が現有技術で必要とされる。本発明は、治療有効量のCD40結合ペプチドの投与によるT2Dの治療のための方法を記載することによって、この必要性に対処することができる。
【0038】
したがって、無菌性慢性炎症(ACI)によって暗示される心血管疾患(CVD)およびT2Dの治療および予防のための、より安全でより効果的な方法が現有技術で必要とされている。本発明は、CD40-CD154ダイアドに影響、調節、ブロック、抑制、または調節させるペプチドの治療有効量の投与によるアテローム性動脈硬化症の治療のための方法を記載することによって、この必要性に対処することができる。さらに、本発明は、自己抗体の生成を防止という付加的な利点を提供することでき、したがって正常な免疫機能の再開ことができる。
【0039】
この背景の記述は、情報提供のみを目的としたものであり、潜在的に関連するすべての背景を完全にまたは網羅的に説明することを意図したものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0040】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、身体(corporeal body)内で生じるアテローム性動脈硬化症を予防、調節、および/または低減するための新規な方法を提供し得る。アテローム性動脈硬化症は、動脈の壁における白血球の慢性的な炎症反応の結果として生じ得る。このような慢性的な炎症反応とそれに伴う動脈内のプラークの蓄積は、血中コレステロールやトリグリセリドの上昇、高血圧、喫煙などによって引き起こされると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、T細胞(Th40細胞)上に発現するCD40タンパク質とCD40リガンド(CD154タンパク質)との相互作用が、アテローム性動脈硬化症および自己免疫疾患の発症に重要である可能性があるという知見に基づいている。本発明は、この相互作用に重要であるかもしれないCD40とCD154の重要な残基の解明に基づいている。本発明は、CD154タンパク質が通常結合するであろう部位でCD40タンパク質と相互作用する小ペプチドの使用により、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を遮断することに関連している。本発明はまた、そのようなペプチドを使用してTh40細胞のレベルを低下させ、それによって疾患の重症度を低下させることにも関連する。
【0043】
本発明の一実施形態は、CD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触させることからなるアテローム性動脈硬化症を予防する方法である。好ましいペプチドは、25アミノ酸未満の長さであり、CD40タンパク質と結合し、それによってCD154タンパク質との相互作用を抑制するものであってもよい;しかしながら、ペプチドの長さは、その意図された所望の結果を実行するペプチドの能力に影響を与える他の多数の因子が存在するため、本明細書の開発において制限とみなされるべきではない。
【0044】
本発明の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を予防、調節、および/または減少させるための方法であって、この方法が、CD40タンパク質と相互作用するペプチドを用いて、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を抑制することを含む。好ましいペプチドは、CD154-結合部位でCD40タンパク質と相互作用する。好ましくは、そのようなペプチドは、25アミノ酸未満の長さである。さらに好ましいペプチドは、SEQ ID No.3~9およびSEQ ID No.25~30から選択されるアミノ酸配列である。
【0045】
本発明の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を予防、調節、および/または低減するための方法であって、この方法が、CD154/CD40リガンドとCD40との相互作用に影響を与える治療有効量のペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の一局面は、ペプチドがCD40に結合することである。本実施形態では、ペプチドは、10-6より大きいKdでCD40タンパク質に結合し得る。さらに、この実施形態では、ペプチドは、CD40とCD154との間の相互作用に影響を与えてもよい。さらに、好ましい実施形態では、ペプチドは、CD40のCD154への結合を抑制してもよい。さらに、この実施形態では、ペプチドは、CD40がCD154と相互作用する部位でCD40に結合する。本実施形態では、ペプチドは、Th40細胞の増殖を防止するような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える。本実施形態では、ペプチドは、Th40細胞の数を減少するような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える。本実施形態では、ペプチドは、前記ペプチドで処理された細胞集団のサイトカイン発現プロファイルを変化させるような方法で、CD40とCD154との相互作用に影響を与える。
【0046】
本発明の一実施形態は、動物におけるアテローム性動脈硬化症を調節および/または減少させる方法であって、該方法が、IFNγ(インターフェロンγ)を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを動物に投与することを含む。好ましいペプチドは、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用し、それによってIFNγを調節するペプチドである。好ましいペプチドは、Th40細胞のレベルを総T細胞集団の25%以下に減少させることによって炎症を調節する。そのような方法は、より一般的に、心血管疾患を伴う可能性のあるアテローム性動脈硬化および症状を予防および/または軽減するために使用することができる。
【0047】
本開発の一実施形態は、心血管疾患および/またはアテローム性動脈硬化症を発症するリスクがある患者を識別する方法であって、該方法は、検査されるべき患者からT細胞を含むサンプルを取得することと、該サンプルをCD40タンパク質を結合するペプチドと接触させることと、該CD40結合ペプチドを検出することと、該CD40結合量からTh40細胞のレベルを測定することとを含み、ここで、T細胞総数の25%を超えるTh40細胞のレベルは、患者が心血管疾患および/またはアテローム性動脈硬化症を発症するリスクがあることを示す。
【0048】
さらに、本発明の別の実施形態は、カルシウムの蓄積、または血管壁の石灰化を予防、調節、または減少させる方法であって、その方法は、CD154結合部位でCD40提示細胞に特異的に結合する治療有効量のペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0049】
本発明の別の実施形態は、アテローム性動脈硬化を予防、調節、および/または低減するためにCD40結合ペプチドを投与する方法であって、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを選択することと、筋肉内(IM)送達、静脈内(IV)送達、皮下(SC)送達、経口送達、胃管送達、エモリエント/皮膚送達、または経皮パッチを含む群から選択される送達方法を選択することとを含む。
【0050】
本発明の別の実施形態では、動物にアテローム性動脈硬化を予防、調節、および/または減少させるためにCD40結合ペプチドを投与する方法であって、CD154結合部位でCD40タンパク質との相互作用するペプチドを選択することと、移植可能なデバイス、親水性ポリマー製剤、透過性ポリマー膜、注入可能なゲルインプラント、溶媒抽出システム、相反転システム、感温性ゲル、pH依存性in situゲル、微粒子、マイクロスフェア、ナノ粒子、ナノスフェア、生体分解性インプラント、または光活性化デポ(depot)を含む群から選択される多種送達方法を使用することとを含む。
【0051】
さらに、本発明の別の実施形態は、対象においてLDLコレステロールを低下させる方法であって、その方法は、CD154結合部位でCD40提示細胞に特異的に結合する治療有効量のペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0052】
本発明、身体内で生じるT2Dを予防、調節、低減、治療および/または逆転させるための新規な方法を提供し得る。さらに、本明細書に開示された発明は、疾患、障害、および状態、特に免疫疾患および炎症性疾患の予防、制御、および治療のために追加的に使用され得る治療方法である。
【0053】
本発明は、T細胞(Th40細胞)上に発現するCD40タンパク質とCD40リガンド(CD154タンパク質)との相互作用が、2型糖尿病および自己免疫疾患の発症に重要である可能性があるという知見に基づいている。本発明は、この相互作用に重要であるかもしれないCD40とCD154の重要な残基の解明に基づいている。本発明は、CD154タンパク質が通常結合するであろう部位でCD40タンパク質と相互作用するおよび/または結合する合成した小ペプチドの使用により、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を遮断および/または破壊することに関連している。本発明はまた、そのようなペプチドを使用してTh40細胞のレベルを低下させ、それによって疾患の重症度を低下させることにも関連する。本発明のペプチドは、CD40の機能を変化させるような方法でCD40分子に直接および/または交互に結合し得る。
【0054】
自己免疫疾患および状態において、CD40の結合は、炎症を促進し得る。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチドは、もはや炎症性ではないようにCD40シグナル伝達を変化させ得る。したがって、一実施形態では、本発明のペプチドは、Th40細胞、膵β細胞、内皮細胞、B細胞、単球、および/またはマクロファージを含むがこれらに限定されない部位でのCD40機能を遮断、破壊、妨害、および/または抑制し得る。本発明は、CD40を提示し得る任意の細胞のCD40シグナル伝達経路をするために、本明細書に開示された小妨害ペプチド(SIP)の使用を企図する。これらのペプチドは、投与経路に応じて特定の部位で妨害することができる。
【0055】
本発明の一実施形態は、CD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触することを含む2型糖尿病を予防、調節、減少および/または逆転させるための方法である。好ましいペプチドは、25アミノ酸未満の長さであり、CD40タンパク質に結合し、それによってCD154タンパク質との相互作用を抑制するペプチドである。
【0056】
本発明の一実施形態は、2型糖尿病を予防、調節、減少および/または逆転させるための方法であって、この方法が、CD40タンパク質と相互作用するペプチドを用いて、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を抑制することを含む。好ましいペプチドは、CD154-結合部位でCD40タンパク質と相互作用する。好ましくは、そのようなペプチドは、25アミノ酸未満の長さである。さらに好ましいペプチドは、SEQ ID No.3~9およびSEQ ID No.25~30から選択されるアミノ酸配列である。
【0057】
一局面において、本発明は、グルコース輸送タンパク質4(GLUT4)を調節および/または増加させるための方法を提供し、この方法が、治療上十分な量のSEQ ID NO.3-9およびSEQ ID NO.25-30から選択されるペプチドを患者に投与することを含む。
【0058】
本発明の一実施形態は、動物における2型糖尿病を予防、調節、減少および/または逆転させる方法であって、この方法が、グルコース輸送タンパク質4(「GLUT4」)を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを動物に投与することを含む。好ましいペプチドは、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用し、それによってGLUT4を調節するペプチドである。好ましいペプチドは、未処理の群体と比較して、脂肪組織および筋肉組織の両方においてGLUT4を調節、アップレギュレート、または増加させ得る。そのような方法は、より一般的に、T2Dおよび自己免疫関連炎症を伴う可能性のあるT2Dおよび症状を予防および/または軽減するために使用することができる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、2型糖尿病を予防、調節、減少および/または逆転させるためにCD40結合ペプチドを投与する方法であって、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用するアペプチドを選択することと、筋肉内(IM)送達、静脈内(IV)送達、皮下(SC)送達、経口送達、胃管送達、エモリエント/皮膚送達、経皮パッチまたは鼻噴投与を含む群から選択される送達方法を選択することとを含む。
【0060】
本発明の別の実施形態は、動物に2型糖尿病を予防、調節、減少および/または逆転させるためにCD40結合ペプチドを投与する方法であって、CD154結合部位でCD40タンパク質との相互作用するペプチドを選択することと、移植可能なデバイス、親水性ポリマー製剤、透過性ポリマー膜、注入可能なゲルインプラント、溶媒抽出システム、相反転システム、感温性ゲル、pH依存性in situゲル、微粒子、マイクロスフェア、ナノ粒子、ナノスフェア、生体分解性インプラント、または光活性化デポを含む群から選択される多種送達方法を使用することとを含む。
【0061】
本発明の別の実施形態は、対象にGLUT4を調節、コントロールおよび/または増加させる方法であって、この方法が、治療有効量のSEQ ID NO.3-9およびSEQ ID NO.25-30から選択されるペプチドをそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0062】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるインターロイキン-2シグナル伝達を調節し、影響し、および/または低減する方法であって、インターロイキン-2シグナル伝達を低減または抑制するのに十分な量のSEQ ID NO3-9およびSEQ ID NO25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、インターロイキン-2シグナル伝達が、より一般的には、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アテローム性硬化症、血管炎、高血圧、甲状腺炎、原発性胆道性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、および/または無菌性慢性炎症を含む群から選択される状態に関連している。
【0063】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるインターロイキン-2シグナル伝達を調節および/または低減する方法であって、インターロイキン-2シグナル伝達を低減または抑制するのに十分な量のSEQ ID NO.3-9およびSEQ ID NO.25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、インターロイキン-2シグナル伝達は、2型糖尿病と関連する。
【0064】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるIFN-γを調節および/または低減する方法であって、IFN-γシグナル伝達を低減または抑制するのに十分な量のSEQ ID NO.3-9およびSEQ ID NO.25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、IFN-γシグナル伝達が、2型糖尿病と関連する。
【0065】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるインターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-22(IL-22)、IFNγ、TNFα、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球-マクロファージ結腸刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-10(IL-10)およびトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)の変化を調節し、影響し、および/または誘導する方法であって、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-22(IL-22)、IFNγ、TNFα、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球-マクロファージ結腸刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-10(IL-10)およびトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)を変化させるのに十分な量でSEQ ID NO.3-9および25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、より一般的には、前記インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-22(IL-22)、IFNγ、TNFα、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球-マクロファージ結腸刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-10(IL-10)およびトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)シグナル伝達が、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、動脈硬化症、血管炎、高血圧症、甲状腺炎、原発性胆道性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、2型糖尿病、および/または無菌性慢性炎症を含む群から選択される状態と関連している。
【0066】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるインターロイキン17(IL-17)を調節および/または低減するための方法を含み、インターロイキン17(IL-17)シグナル伝達を低減または抑制するのに十分な量でSEQ ID NO.3-9および25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、より一般的には、インターロイキン17(IL-17)シグナル伝達が、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、動脈硬化症、血管炎、高血圧症、甲状腺炎、原発性胆道性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、2型糖尿病、および/または無菌性慢性炎症を含む群から選択される状態と関連する。
【0067】
本発明の別の実施形態は、細胞または対象におけるインターロイキン17(IL-17)シグナル伝達を調節および/または低減する方法を含み、インターロイキン17シグナル伝達を低減または抑制するのに十分な量のSEQ ID NO.3-9および25-30から選択されるペプチドを投与することを含み、ここで、IL-17は、2型糖尿病と関連する。
【0068】
本発明の一実施形態は、2型糖尿病を発症するリスクのある患者を識別する方法であって、該方法が、検査されるべき患者からT細胞を含むサンプルを取得することと、該サンプルをCD40タンパク質を結合するペプチドと接触させることと、該CD40結合ペプチドを検出することと、該CD40結合量からTh40細胞のレベルを測定することとを含み、ここで、T細胞総数の25%を超えるTh40細胞のレベルは、患者が2型糖尿病を発症するリスクがあることを示す。
【0069】
本発明の一実施形態は、SEQ ID NO:4、27、28、29、および30に記載のものの小妨害ペプチドの物質組成物である。本発明のこれらの実施形態は、より一般的には、1型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アテローム性硬化症、血管炎、高血圧、甲状腺炎、原発性胆道性肝硬変、パジェット病、アジソン病、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、2型糖尿病、および/または無菌性慢性炎症を含む群から選択される疾患の治療のために使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】NODマウスにおける糖尿病発症に対するCD154の種々のペプチドの効果を示すチャートである。8-mer(SEQ ID NO:5)、10-mer(SEQ NO:24)、13-mer(SEQ ID NO:25)、15-mer(SEQ ID NO:7)、および24-mer(SEQ ID NO:26)を試験した。
図2A】CD154からの15-merペプチドの、NODマウスにおけるCD4/CD8比に対する効果のチャートである。
図2B】処理された対切除、検査、および採点された対照膵臓のβ島浸潤に対する15-merペプチドの効果のチャートである。
図3】CD154からの15-merペプチドを用いてNODマウスにおける糖尿病の逆転のグラフである。
図4】CD154由来のSIP-15-merペプチド用いてTh40細胞の検出のドットプロットである。
図5】CD154由来のSIP-15-merペプチド用いてB細胞のスクリーニングのドットプロットである。
図6】糖尿病マウスと非糖尿病マウスのTh40細胞レベルの比較を示すチャートである。
図7】15-merペプチドによる処理が膵臓のインスリン顆粒化に影響を示すグラフである。
図8】15-merペプチドの変異が、15-merペプチドがNODマウスにおける糖尿病の発症を抑制する能力に影響を示すグラフである。
図9】異なるマウスモデルにおけるCD3+CD4+CD40+の細胞数(x106)を示すチャートである。
図10】対照群と糖尿病群におけるヒト対象の末梢血中のTh40細胞のパーセントを示すチャートである。
図11】フローサイトメトリーで得られたCD4+細胞とCD40細胞のデータを比較したドットプロットである。Th40細胞(CD4+CD40+)は右上の象限にある。
図12】マウスモデルのCD3+CD4+群体のTh40細胞のパーセントを示すチャートである。
図13】C57B-6マウス、若年非糖尿病NODマウス、糖尿病NODマウスのマウス大動脈内のCD3+CD4+集団のTh40細胞パーセントを示すチャートである。
図14】ApoE-/-マウスモデルにおけるプラークの肩部部位におけるTh40細胞を示す倍率200倍の画像である。
図15】Th40増殖のインターフェロンγ制御を示すグラフである。
図16】インターフェロンγがCD40誘導増殖を媒介していることを示す抗インターフェロンγ抗体(αIFNγ)の存在/非存在下でのTh40細胞のCD40刺激増殖のプロットである。
図17】大動脈弓の曲率の小さい方の大動脈弓の染色のサンプルである。
図18】対照および処理された対象の大動脈弓の曲率の小さい方の染色である。
図19】大動脈弓の曲率の小さい方とプラークの面積測量のチャートである。
図20】処理したApoEマウス対象と対照ApoEマウス対象のチャートである。
図21】処理したApoEマウス対象と対照ApoEマウス対象のチャートである。
図22】処理したApoEマウス対象と対照ApoEマウス対象のチャートである。
図23】処理したApoEマウス対象と対照ApoEマウス対象のチャートである。
図24】正常な血栓と比較した15-メルペプチドの存在下でのヒト血液の血栓データの表である。
図25A】ExPASy分析によって評価された相対的なペプチド安定性を提供する表である。
図25B】ExPASy分析によって評価された相対的なペプチド安定性を提供する表である。
図26】対象マウスからの対照サンプルおよび処理したサンプルを比較するウエスタンブロットである。
図27】処理された対象と処理されていない対象で測量されたLDLコレステロールのグラフである。
図28A】KGYY6で処理した大動脈en-face SudanIV染色の画像である。
図28B】対照大動脈en-face SudanIV染色の画像である。
図29】SudanIV染色の病変部の減少を示すグラフである。
図30】曲線下面積に対するプラーク体積の減少を示すグラフである。
図31】KGYY6(SEQ ID NO:29)で処理した対象マウスおよび対照対象マウスのプラーク組成のグラフである。
図32A】KGYY6(SEQ ID NO:29)で処理した対象のトリクローム染色切片の画像である。
図32B】対照対象のトリクローム染色切片の画像である。
図33(a)】SEQ ID NO:29に応答して、グルコース耐性(GTT)およびインスリン感受性の統計的に有意な改善を示すグラフである。
図33(b)】SEQ ID NO:29に応答して、グルコース耐性(GTT)およびインスリン感受性の統計的に有意な改善を示すグラフである。
図34】処理した(SEQ ID NO:29を投与した)マウスと未処理マウスの脂肪組織および筋肉組織を比較したGLUT4(インスリン調節されたグルコース輸送タンパク質)のウエスタンブロット分析である。
図35】ApoE-/-マウスおよびC57BL/6マウスの脾臓細胞においてフローサイトメトリーにより測量した体外リンパ球サイトカインの変化率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本主題は、CD40タンパク質を発現し、したがってTh40細胞と呼ばれるT細胞のユニークなサブセットが、自己免疫性炎症に役立つ可能性があるという発見に基づく。さらに、自己免疫過程におけるTh40細胞の関与は、T細胞表面に発現するCD40タンパク質とCD154タンパク質の相互作用に依存している可能性がある。CD40とCD154の相互作用は、細胞間に活性化シグナルが伝達され、その後Th40細胞の活性化をもたらす。このような活性化は、Th40細胞の増殖と炎症の増加(例えば、系内に存在する免疫細胞および免疫調節分子の数の増加)をもたらす。したがって、CD40/CD154相互作用の抑制は、Th40細胞の活性を調節し、それによって炎症に影響を与えることができる。したがって、本主題は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用に影響を与え、それによって炎症を調節し得るペプチド、およびその投与に関する。さらに、本主題は、T細胞の表面に発現するCD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用に影響を与え、それによってT細胞の活性に影響を与え、炎症を制御し、その結果、アテローム性動脈硬化症を予防、調節、および減少させるペプチドに関する。本主題はまた、Th40細胞を検出するためのそのようなペプチドの使用を包含する。
【0072】
本開発をさらに説明する前に、本発明は、もちろんそのようなものが変化し得るので、記載された特定の実施形態に厳密に限定されないことが理解されるべきである。本発明の範囲は請求項によってのみ限定されるので、本明細書において使用する術語には特定の態様を説明するという目的しかなく、限定を意図していないことも理解すべきである。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特に内容上明示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。本明細書で使用されるように、用語「a」または「an」とは、そのものの1つまたは複数を表すことをさらに理解すべきである。例えば、核酸分子は、1つ以上の核酸分子を指す。このように、用語「1つの」(または「an」)、「1つ以上の」及び「少なくとも1つの」は、交換可能に使用することができる。同様に、「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する」という用語が交換可能に使用され得る。
【0074】
本明細書において別様に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、当該技術分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等であるすべての方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を本明細書に記載している。本明細書において言及する刊行物はいずれも、その刊行物への言及と関係する方法および材料を開示し説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において議論する刊行物は、本願の出願日前にそれらが開示されていたから記載するにすぎない。本発明が先行発明を理由としてそれらの公開に先行する資格がないことの自認であると解釈すべき記述は、本明細書にはない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある。
【0075】
本発明のいくつかの特徴は、分かりやすくするため別個の実施態様で記載してあるが、組み合わせて単一の実施態様で提供できることも分かるであろう。逆に言えば、簡略にするために1つの実施形態に照らして説明されている本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の適切な組合せで、提供することもできる。すべての実施形態の組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、それぞれの組み合わせが個別に明示的に開示されているように、本明細書に開示される。さらに、すべてのサブコンビネーションもまた、本発明によって具体的に包含され、それぞれのサブコンビネーションが個別に明示的に開示されているように、本明細書に開示される。
【0076】
さらに、請求項がいかなる選択的な要素も排除して記載されていることを留意すべきである。そのようなものとして、この記述は、請求項要素の引用と関連して「唯一」、「のみ」等の限定的用語を使用するため、または「否定的な」限定を使用するための先の記載として機能することが意図される。
【0077】
さらに、本明細書で使用されるように、動物という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを指す。本発明の方法を使用するのに適した哺乳動物は、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、マウス、ラット、馬、犬、猫、およびヒトを含むが、これらに限定されない。動物という用語は、対象または患者という用語と互換的に使用することができる。
【0078】
本主題の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を予防するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドである。本明細書で使用されるように、用語「相互作用」(interactまたはinteraction)、およびそのようなものは、2つの分子が炎症の調節を引き起こすように十分に物理的に近接することを意味する。そのようなタイプの相互作用の1つは、結合相互作用である。そのような相互作用では、ペプチドはCD40と結合して複合体を形成する。複合体形成の例は、抗原と抗体との結合である。本主題によれば、本発明のペプチドのCD40タンパク質への結合は、可逆的(例えば、非共有結合相互作用)または非可逆的(例えば、共有結合相互作用)であり得る。さらに、可逆的な相互作用は強い場合も弱い場合もあり、相互作用の強さは、各タンパク質が複合体中の他のタンパク質に及ぼす力(例えば、イオン電荷、水素結合、ファンデルウォール相互作用など)によって測定される。2つの分子間の相互作用の強さに影響を与える因子は、当業者には知られている。ペプチドとタンパク質のような2つの分子間の結合の強さの1つの有用な測量は、解離定数(Kd)である。本発明の好ましいペプチドは、約1×10-6M、約1×10-7M、または約1×10-8Mを超えないKdでCD40タンパク質に結合するペプチドである。特に好ましいペプチドは、約1×10-9M未満のKdを有するものである。一実施形態では、本発明のペプチドは、100nM未満、50nM未満、25nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、2nM未満、または1nM未満のKdでCD40タンパク質に結合する。ペプチドとCD40タンパク質との間の結合相互作用を測量および分析する方法は、当技術分野の当業者に知られている。
【0079】
本明細書で使用されるように、動物中に存在するTh40細胞のレベルの変化、またはT細胞の培養物中に存在するTh40細胞のレベルの変化は、炎症の調節を示し得る。本明細書で使用されるように、レベル、数、計数、および濃度という用語は、交換可能に使用することができる。炎症の調節は、炎症環境に存在するTh40細胞の数の増加または減少を意味し得;しかしながら、炎症の調節は、細胞数または細胞計数に限定されるべきではない。その結果、調節は陽性または陰性と呼ばれることがある。炎症の陽性調節(アップレギュレーションとも呼ばれる)は、炎症環境中のTh40細胞の数を増加させる結果となり得る。炎症の陰性調節(ダウンレギュレーションとも呼ばれる)は、炎症環境に存在するTh40細胞の数を減少させる結果となり得る。Th40細胞のレベル、計数、または濃度は、炎症性環境における炎症を示すものではない可能性がある。好ましいペプチドは、炎症をダウンレギュレーションし、それによって炎症環境に存在するTh40細胞の数を減少させるものであリ得る。炎症の陽性および陰性の調節は、炎症性環境に存在する免疫調節分子のタイプおよび量の変化をもたらしてもよいし、またはもたらさなくてもよい。いくつかの実施例では、Th40レベルは変化しないが、それらの細胞の活性は、それらの細胞が炎症性サイトカインおよび炎症の他のバイオマーカーをもはや発揮または増加させないように変化する可能性がある。したがって、本明細書で使用されるように、炎症を調節することは、身体またはサンプル中のTh40レベル、数、または濃度の変化を指してもよく、また、疾患、炎症性サイトカイン、および/または細胞由来の炎症性メディエーター分子に関連している可能性のある、より一般的な炎症の変化を指してもよい。
【0080】
細胞培養系および動物の免疫系の両方が、免疫細胞および免疫調節分子の基底レベルを含むことは、当業者によって理解されたい。基底レベルおよび正常レベルという表現は、交換可能に使用することができる。動物の免疫系に関しては、本明細書で使用されるように、免疫細胞(例えば、Th40細胞)の種類または免疫調節分子の基底レベルとは、健康と考えられる個体群(すなわち、代謝性疾患、自己免疫疾患または感染症のない個体群)に存在する、その細胞の種類または免疫調節分子の平均数を指す。細胞培養系に関しては、本明細書で使用されるように、免疫細胞の種類または免疫調節分子の基底レベルは、非活性化された細胞の集団中に存在する、その細胞の種類または免疫調節分子の平均レベルを指す。当業者は、T細胞またはそのような細胞の集団が活性化されるかどうかを測定することができる。例えば、細胞によるCD69、CD25および/またはCD154タンパク質の発現は、その細胞が活性化されていることを示す。
【0081】
細胞または分子の基底レベルは、特定の量(例えば、特定の濃度)であり得るか、または量の範囲を包含し得る。免疫細胞および免疫調節分子の基底レベルまたは範囲は、当業者に知られている。例えば、健康な個体では、ヒトの血液中に存在するCD4+T細胞の正常レベルは、500~1500細胞/mlである。この測量値の変動は、細胞計数を測定するために使用される方法の違いに起因し得る。さらに、細胞の正常レベルは、総細胞集団に対するパーセンテージとして報告され得る。例えば、健康な個体では、Th40細胞は総T細胞集団の25%未満を占める。したがって、本明細書で使用されるように、炎症という用語は、Th40細胞が、総T細胞集団の約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、または約80%以上を占める炎症性環境を指す。さらに、本明細書において好ましいペプチドは、Th40細胞のレベルを、総T細胞集団の約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約27%未満、または約25%に等しいレベルまで低下させるものである。T細胞集団中の異なるタイプのT細胞を測量する方法は、当業者に知られている。さらに、本明細書では、本発明のペプチドを用いてTh40細胞を検出するための新規な方法が開示される。
【0082】
本明細書で使用されるように、「炎症性環境」という表現は、細胞の培養物、または動物の体内に存在する免疫細胞および関連する免疫調節分子の全体的な集団を指す。このように、「炎症性環境」という表現は、細胞の培養物中、または動物の体内に存在する免疫細胞および免疫調節分子(例えば、サイトカイン)の種類、および/または相対的な量を包含し、これらは炎症反応に影響を与えることに関与する。炎症性環境という用語によって包含される細胞の例としては、T細胞、好中球、マクロファージ、顆粒球などが挙げられるが、これらに限定されない。炎症性環境は、急性および慢性炎症の両方を媒介する細胞および分子に関連する。炎症性環境が本発明のペプチドが投与されるシステムを指すことは、当業者によって理解されたい。一実施形態では、システムは、細胞培養システムである。一実施形態では、システムは、完全な動物である。
【0083】
本発明の好ましいペプチドは、免疫吸着アッセイのようなアッセイを用いて測定されるように、溶液中で、またはT細胞の表面上で、CD40タンパク質と選択的に相互作用するものである。本明細書で使用されるように、選択的(selectivelyまたは selective)、特異的などの用語は、ペプチドが、CD40タンパク質に関連しないタンパク質よりもCD40タンパク質に対してより高い親和性を有することを示す。より具体的には、選択的(selectivelyまたは selective)、特異的などの用語は、CD40に対するペプチドの親和性が、標準的なアッセイ(例えば、ELISA)を用いて測量された陰性対照(例えば、アルブミンなどの無関係なタンパク質)に対する親和性よりも統計的に有意に高いことを示す。CD40タンパク質と選択的に相互作用するペプチドの能力をアッセイするための適切な技術は、当業者に知られている。そのようなアッセイは、in vitroまたはin vivoアッセイであり得る。有用なアッセイの例としては、酵素結合免疫アッセイ、競合酵素結合免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、ラテラルフローアッセイ、フロースルーアッセイ、凝集アッセイ、微粒子ベースのアッセイ(例えば、磁性粒子やプラスチックポリマー(ラテックスやポリスチレンビーズなど)などに限定されない微粒子を使用)、免疫沈降アッセイ、免疫ブロットアッセイ(例えば、ウエスタンブロット)、燐光アッセイ、フロースルーアッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ベースのアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、分光光度法アッセイ、微粒子ベースのアッセイ、電子センサアッセイおよびフローサイトメトリーアッセイが含まれるが、これに限定されない。このようなアッセイを実施する方法は、当業者によく知られている。一実施形態では、アッセイは、培養中の細胞を用いて実施することができ、または完全な動物を用いて実施することができる。アッセイは、どのように使用されるかおよび所望の結果のタイプに応じて、定性的、定量的または半定量的な結果が得られるように設計できる。
【0084】
心血管疾患(CVD)、動脈硬化、およびコレステロール関連の開発
本発明の一実施形態は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用に影響を与えるような方法でCD40タンパク質と相互作用し、それによって炎症を調節するペプチドである。CD40/CD154相互作用に対するペプチドの効果は、正であってもよいし、負であってもよい。例えば、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さが増加するような方法でCD40タンパク質と相互作用することができる。あるいは、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さが減少するようにCD40タンパク質と相互作用することができる。ペプチドとCD40タンパク質との間の結合の強さを測量する方法は、当業者に知られている。本発明の好ましいペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さを減少させるものである。本発明の好ましいペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の結合の強さを、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。
【0085】
特に好ましいペプチドは、CD40とCD154との結合を完全に抑制するものである。CD40とCD154との結合を完全に抑制することは、通常CD40とCD154との相互作用を可能にする条件下で、本発明のペプチドをCD40タンパク質およびCD154タンパク質と近接させると、そのような相互作用は起こらず、CD40発現細胞において活性化シグナルが刺激されないことを意味する。その結果、炎症のCD40/CD154媒介による調節は起こらない。一実施形態では、ペプチドは、系内の炎症のレベルを低下させるような方法でCD40タンパク質と相互作用する。一実施形態では、ペプチドは、系内の炎症の発症を抑制するような方法でCD40タンパク質と相互作用する。
【0086】
本発明のペプチドが、CD40タンパク質上の任意の部位と相互作用することができるが、好ましいペプチドは、CD154結合部位と重なる位置でCD40タンパク質と相互作用する。一実施形態では、本発明のペプチドは、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用する。そのようなペプチドの例は、CD40リガンド競合的拮抗剤である。本明細書で使用されるように、CD154タンパク質のCD40タンパク質への結合を妨害または抑制するペプチドは、小妨害ペプチド(SIP)と呼ばれる。本明細書で使用されるように、小妨害ペプチドは、生理化学的特性を介して、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用を妨害し、それによって活性化シグナルがCD40保有細胞に送達されるのを防ぎ、それによってCD40保有細胞の活性化、それに炎症を制限するペプチドである。本明細書で実証されるように、このような妨害の結果は、T細胞の活性化および伝播の防止、および炎症の防止または減少である。本明細書で実証されるように、いくつかの実施例では、CD40とCD154との間の相互作用のそのような抑制または予防の結果は、アテローム性動脈硬化症、およびそれに関連する疾患の特徴を予防、調節、および/または減少することを実証する観察可能なデータを含み得る。
【0087】
さらに、小妨害ペプチドは、生理化学的特性を介して、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用を妨害し、それによって活性化シグナルがCD40保有細胞に送達されるのを防止し、それによってCD40保有細胞の活性化、それにアテローム性動脈硬化症を調節、抑制、および予防を制限する。本明細書で実証されるように、このような妨害の結果は、T細胞の活性化および伝播の防止、およびアテローム性動脈硬化症の防止、減少または調節である。
【0088】
本発明の方法を実践するのに有用なペプチドは、アテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するのに十分な大きさであるべきである。好ましいペプチドが、製造が容易であり、かつ安価であるので、比較的短いものであることは、当業者によって理解される。好ましいペプチドは、長さが25アミノ酸未満であるものであってもよいが、いくつかの実施例では、ペプチドの長さは25アミノ酸より長くてもよい。好ましいペプチドは、長さが4、6、8、10、13、15、または24アミノ酸であるものであってもよい。一実施形態では、ペプチドは、SEQ ID NO:3(コア配列は表1,2を参照)、SEQ ID NO:4(6-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO. 5(8-merマウスは表1,2を参照)、SEQ ID NO:6(8-merヒトは表1,2を参照)、SEQ IN NO:7(15-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO:8(15-merヒトは表1,2を参照)、SEQ ID NO:9(24-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO. 24(10-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO:25(13-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO:26(24-merは表1,2を参照)、SEQ ID NO:27(6-mer(様式2)は表1,2を参照)、SEQ ID NO.28(6-mer(様式3)は表1,2を参照)、SEQ ID NO:29(6-mer(様式4)は表1,2を参照)、SEQ ID NO:30(6-mer(様式4)は表1,2を参照)、およびSEQ ID NO:32(24-mer-マウス(様式2))の群から選択されるアミノ酸である。このようなペプチドの配列を以下に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用は、各タンパク質内の特定の領域で起こることが示される。本発明者らは現在、驚くべきことに、CD40と相互作用するCD154領域の短い部分を含むペプチドが、CD40タンパク質と結合し、それによってアテローム性動脈硬化症を調節することができることを示している。したがって、本明細書の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するようにCD154タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を含むペプチドである。一実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、アテローム性動脈硬化症の陰性調節をもたらす。一局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2の少なくとも一部を含む。
【0092】
一局面において、ペプチドは、可能な限り短いが、アテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40タンパク質との相互作用を可能にするのに十分なCD154タンパク質を含む。一実施形態において、本発明のペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2からの6、13または15の連続するアミノ酸を含み、アテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40と相互作用する。好ましいペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸142~145およびSEQ ID NO:2のアミノ酸143~146に対応するリジン-グリシン-チロシン-チロシン(KGYY; SEQ ID NO:3)のコア配列を含む。有用なペプチドは、そのペプチドがアテローム性動脈硬化症を調節することができる限り、コア配列に隣接するSEQ ID NO:1またはSEQ ID No:2からの配列の付加的な領域を含み得る。一実施形態において、ペプチドは、そのペプチドがアテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用する限り、SEQ ID NO:3, SEQ ID NO:4, SEQ ID NO:7, SEQ ID NO:8, SEQID NO:9, SEQ ID NO:24, SEQ ID NO:25, SEQ ID NO:26, SEQ ID NO:27, SEQ ID NO:28, SEQ ID NO:29, SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択される少なくとも1つの配列を含む。本主題の一実施形態において、本発明のペプチドは、SEQ ID NO:3, SEQ ID NO:4, SEQ ID NO:5, SEQ ID NO:6, SEQID NO:7, SEQ ID NO:8, SEQ ID NO:9, SEQ ID NO:24, SEQ ID NO:25, SEQ ID NO:26, SEQ ID NO:27, SEQ ID NO:28、およびSEQ ID NO:29から選択される配列である。本主題の一実施形態において、本発明のペプチドは、SEQ ID NO:3~9、SEQ ID NO:25~30、およびSEQ ID NO:32から選択される配列である。
【0093】
本主題のペプチドは、CD40タンパク質との相互作用を担う配列の全体またはそこから選択されるかもしれないが、CD40タンパク質と相互作用しないが他の有用な機能を有するアミノ酸配列をさらに含んでもよい。任意の有用な付加的なアミノ酸配列は、付加的な配列がCD40タンパク質と相互作用するCD40相互作用配列の能力に望ましくない影響を及ぼさない限り、CD40相互作用配列に追加することができる。例えば、CD40タンパク質と相互作用を担うアミノ酸配列に加えて、本発明のペプチドは、ペプチドの可視化または精製に有用なアミノ酸配列を含むことができる。そのような配列は、ラベル(例えば、酵素)またはタグ(抗体結合部位)として機能する。そのようなラベルおよびタグの例としては、B-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルタチオン-トランスフェラーゼ、チオレドキシン、HISタグ、ビオチンタグ、および蛍光タグを含むが、これらに限定されない。タンパク質のラベルおよびタグ付けのための他の有用な配列は、当業者に知られている。
【0094】
同様に、本発明のペプチドは、そのような改変がアテローム性動脈硬化を調節するペプチドの能力に著しく影響しない限り、修飾することができる。そのような修飾は、例えば、タンパク質の安定性、溶解性または吸収性を高めるために行うことができる。そのような修飾の例としては、ペプチドのPEG化、グリコシル化、および化学修飾を含むが、これらに限定されない。
【0095】
本発明のペプチドは、自然界から得られてもよく(例えば、植物、動物または微生物から得られる)、または実験室で生産されてもよい(例えば、組換え的または合成的により)。好ましいペプチドは、合成されたペプチドである。また、天然分子と合成分子の組み合わせであるペプチドも包含される。組換えペプチドまたは合成ペプチドを製造および単離するための一般的な方法は、当業者に知られている。本明細書で使用されるように、単離された、または生物学的に純粋な分子は、その天然の環境から取り除かれたものであることに留意されたい。このように、単離された、生物学的に純粋ななどの用語は、必ずしもタンパク質が精製された程度を反映しているわけではない。
【0096】
本明細書に記載されているように、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用は、アテローム性動脈硬化症におけるTh40細胞の関与に必要である。したがって、本発明のペプチドを用いたCD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の抑制は、アテローム性動脈硬化症に影響を与える有用な方法である。したがって、一実施形態は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を減少させる方法であり、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を減少させるような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質およびCD154タンパク質を含む環境に導入することを含む。本明細書の一局面において、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。一実施形態では、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで減少させる。CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さを測量する方法は、以前に議論されており、当業者に知られている。
【0097】
本明細書の一実施形態は、炎症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触させることを含む、アテローム性動脈硬化症を調節する方法である。一局面において、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。一実施形態では、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで減少させる。
【0098】
本発明の一局面は、炎症を改善するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触させることを含む、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、および/またはコレステロールレベルを調節する方法である。この代替実施形態の一局面は、CD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触させることに応答して、Th40レベルが変化しないことである。一局面において、ペプチドで処理されたTh40細胞は、炎症性サイトカインの産生を停止させ、遅くし、減少させ、または遅延させ得る。この局面において、Th40レベルの数は、比較的変化しないままであり得る。
【0099】
一局面は、患者におけるアテローム性動脈硬化症を減少させる方法であって、該方法が、本発明のペプチドを患者に投与することを含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO: 7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:24,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:24,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態において、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。別の実施形態では、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで減少させる。好ましい実施形態では、Th40細胞のレベルは、Th40細胞が総T細胞集団の約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%を超えないように低減される。
【0100】
本発明のペプチドおよび方法は、患者を治療するためだけでなく、細胞培養における使用にも適している。本明細書で使用されるように、用語「患者」は、そのような治療を必要とする任意の動物を指す。動物は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。治療するための好ましい動物は哺乳動物である。ペプチドは、それ自体、または医薬組成物として投与または適用することができる。本発明のペプチドまたはその医薬組成物は、注射投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、腹腔内)、吸入投与、経口投与(例えば、錠剤、タブレット、カプセル、粉末、シロップ、溶液、懸濁液、薄膜、分散液または乳剤中)、経皮投与、経粘膜投与、経肺投与、頬側投与、鼻腔内投与、舌下投与、脳内投与、膣内直腸投与または局所投与、または当業者に知られている任意の他の便利な方法を含むがこれらに限定されない様々な経路で患者に投与することができる。
【0101】
本発明のペプチドおよび/またはその医薬組成物の有効量は、当技術分野で知られている標準的な臨床技術によって測定することができる。そのような量は、他の要因の中で、患者の体重、年齢、および状態、化合物の意図される効果、投与方法および処方する医師の判断を含むがこれらに限定されない、治療される患者に依存する。また、この文脈において、関心のある障害を示す患者を治療する際には、治療有効量の薬剤またはそれらの薬剤が投与されることに留意されたい。治療有効量とは、患者における1つまたは複数の症状の改善または生存期間の延長をもたらす化合物のその量を指す。
【0102】
本発明のペプチドまたはその医薬組成物は、単独で、または本開示の他の化合物を含む1種または複種の他の医薬組成物と組み合わせて投与することができる。特定の医薬組成物は、当業者にはよく知られているように、所望の投与モードに依存する。
【0103】
Th40細胞が自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化、および心血管疾患の発生に密接に関与していることが本発明により実証されているので、本明細書に開示されたペプチドおよび方法は、そのような疾患に起因するアテローム性動脈硬化に影響を与えるために使用することができる。したがって、本明細書の一実施形態は、そのような治療を必要とする患者においてアテローム性動脈硬化性疾患を治療する方法であって、その方法は、CD40タンパク質と相互作用するペプチドを患者に投与し、それによってアテローム性動脈硬化を減少させることを含む。一実施形態では、ペプチドは、CD40およびCD154の相互作用に影響を与えるような方法でCD40タンパク質と相互作用し、それによりアテローム性動脈硬化症を減少させる。好ましい実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者におけるTh40細胞の数を、心血管疾患を有しない対象において観察されるのと等しいレベルまで減少させる。本発明の開発は、自己免疫疾患および/または心血管疾患を有する任意の患者を治療するのに適しており、その発症はTh40細胞に依存する。より具体的には、本発明のペプチドは、そのような患者におけるTh40細胞のレベルを減少させるのに適する。好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、心血管疾患に罹患している患者におけるTh40細胞のレベルを、総T細胞集団の約25%以下に低減する。別の実施形態では、本発明のペプチドは、患者のTh40レベルに影響を与えない一方で、炎症性サイトカインレベルを減少させる。
【0104】
本発明のペプチドを用いた治療に特に従順である疾患の一例は、アテローム性動脈硬化症であり得る。アテローム性動脈硬化症では、動脈壁の炎症性変化が動脈プラークの形成および蓄積をもたらす。したがって、CD40-CD154相互作用を介した炎症性細胞および細胞シグナル伝達の制御は、血管壁の慢性炎症性線維増殖性疾患を特徴とするアテローム性動脈硬化性病変を制御、調節、および/または減少させるために使用し得る。T2Dおよび/またはアテローム性動脈硬化症のいくつかのマウスモデルが開発される。病変形成の進行は、アポリポタンパク質E(ApoE)欠損トランスジェニックマウスにおいて観察可能であり、大動脈弓、プラークの数およびタイプの測量によって観察でき、AHAタイプIからAHAタイプVまでの米国心臓協会のアテローム性動脈硬化症の病期分類に従って特徴付けられる。AHAタイプ1は、早期病変または初期病変を特徴とし、組織学的に「正常な」細胞、マクロファージ浸潤、および単離された発泡細胞から構成され得る。AHAタイプVは、表面欠陥、血腫、出血、および/または血栓症を特徴とする内皮機能障害の増加を含むがこれらに限定されない、進行したまたは複雑な病変を特徴とし得る。したがって、本発明の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を発症する危険性のある個人におけるアテローム性動脈硬化症を予防する方法であって、該方法が、CD40発現細胞に選択的に結合するためにペプチドを該個人に投与することを含む。
【0105】
さらに、アテローム性動脈硬化症は、現在開発されているペプチドを用いて治療することに特に従順であり得る。アテローム性動脈硬化症のリスクは、家族性の要因(遺伝など)や、個人の体調などの他の要因から生じる。アテローム性動脈硬化性活動および疾患のレベルは、活動レベル、食事、喫煙状態、および炎症のレベルなどの動態のな他の可変因子などの多数の因子に依存して、個人ごとに異なり得る。アテローム性動脈硬化症のリスク評価のいくつかの方法は、当業者に知られている。したがって、本発明の一実施形態では、治療方法は、炎症をダウンレギュレートすることができる限り、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:5,SEQ ID NO:6,SEQ ID NO: 7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:24,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列である。
【0106】
本明細書の発明はまた、驚くべきことに、すでにアテローム性動脈硬化症の徴候を示す個体において、ペプチドが疾患プロセスを逆転させるために使用されることができることを示す。したがって、本主題の一局面は、アテローム性動脈硬化症を有すると診断された患者に、本発明のペプチドを投与することを含むアテローム性動脈硬化症を逆転させる方法である。一実施形態において、ペプチドは、炎症をダウンレギュレートすることができる限り、SEQ ID NO:3, SEQ ID NO:4, SEQ ID NO: 7, SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3, SEQ ID NO:4, SEQ ID NO: 7, SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9から選択されるアミノ酸配列である。本明細書で使用されるように、アテローム性動脈硬化症を逆転させるという表現は、アテローム性動脈硬化症を有する個体の大動脈弓部浸潤、プラーク、および病変を、観察的に低いレベルに匹敵するレベルまで、またはいくつかの実施例では、非アテローム性動脈硬化症を有する個体においてより一般的であり得るレベルまで減少させることを意味する。
【0107】
記載されているように、本発明のペプチドは、CD40発現細胞に選択的に結合する。したがって、本発明の主題のペプチドは、Th40細胞を鑑定するために使用することができる。したがって、本発明の一実施形態は、Th40依存性アテローム性動脈硬化症を検出する方法であって、前記方法が、T細胞集団を本発明のペプチドと接触させることを含む。好ましい実施形態では、ペプチドは、検出可能なマーカー、例えばルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼで標識される。そのような検出は、当業者に知られているアッセイ技術を用いて行うことができる。一般に、本発明のペプチドを使用してTh40細胞を検出するためのアッセイは、(a)細胞のサンプルを取得することと;(b)存在する場合には、Th40細胞へのペプチドの結合を可能にするのに適した条件で本発明のペプチドを前記細胞に接触させることと;(c)非特異的相互作用を破壊し、かつ未結合のペプチドを除去する条件で前記細胞を洗浄することと;(d)細胞に結合したペプチドを検出することとを含む。結合したペプチドの検出は、直接または間接的に達成することができる。例えば、直接検出は、本明細書に開示されるように、検出可能なマーカーを用いて標識されたペプチドを用いて達成することができる。上記の洗浄ステップに続いて、細胞は、検出可能なマーカーの存在について単純にスクリーニングされる。細胞サンプル中の検出可能なマーカーの存在は、Th40細胞の存在を示し、したがってTh40依存性のアテローム性動脈硬化症を示す。あるいは、間接的検出は、ペプチドに結合する抗体のような第二の分子の使用を関与する。間接検出アッセイでは、上記の洗浄ステップに続いて、ペプチドに結合する検出分子を細胞サンプルに添加する。この検出分子は検出可能なマーカーで標識される。結合していない検出分子を洗い流した後、細胞は検出可能なマーカーの存在についてスクリーニングされる。細胞サンプル中の検出可能なマーカーの存在は、Th40細胞の存在を示す。本明細書に記載されたアッセイは、有用なアッセイの例として意図されており、他のアッセイ技術を採用することができることを理解されたい。適切なアッセイ技術は、当業者に知られており、また、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Sambrook, J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T,Cold Spring Harbor Laboratory Press;2nd Edition(1989年12月)にも開示されている。本明細書に引用されたすべての参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
上記のアッセイ技術は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用に影響を与える他の分子を同定するためにも使用することができる。そのような分子の例としては、タンパク質、ペプチド、および低分子が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Th40細胞への結合のために、本発明のペプチドと競合する分子の能力を試験するアッセイを設計することができる。例えば、検出可能なマーカーで標識されたペプチドを、試験分子と、Th40細胞を含むことが知られている細胞の集団とを、Th40細胞へのペプチドの結合を可能にする条件下で混合することができる。適切な潜伏期の後、細胞を洗浄して未結合のペプチドを除去し、検出可能なマーカーの存在について細胞はスクリーニングされる。あるいは、標識されたペプチドを最初にTh40細胞に結合させ得、未結合ペプチドを除去するための洗浄ステップの後、結合されたペプチドを含む細胞に試験分子を添加することができる。インキュベーション期間および未結合分子または放出されたペプチドを除去するための洗浄ステップに続いて、細胞は、検出可能なマーカーの存在についてスクリーニングされる。いずれの場合も、細胞サンプル中の検出可能なマーカーの不在は、被験分子がTh40細胞への結合のためにペプチドと競合することができることを示し、検出可能なマーカーの存在は、被験分子がペプチドのTh40細胞への結合を抑制しないことを示すであろう。そのようなアッセイがまた、ペプチドのTh40細胞への結合を部分的に抑制する分子を同定するために有用であろうから、結合の抑制は100%である必要はない。そのようなアッセイが、陽性対照(例えば、標識されていないペプチド)および陰性対照(例えば、Th40細胞に結合しないことが知られているタンパク質/分子)の使用に関することは、当業者によって理解される。
【0109】
Th40細胞のレベルの増加が、自己免疫疾患の発症と関連しているので、本発明は、自己免疫疾患および自己免疫関連のアテローム性動脈硬化症および/または心血管疾患をより一般的に発症するリスクのある患者を同定するために使用することができる。したがって、本発明の一実施形態は、自己免疫関連のアテローム性動脈硬化症を発症するリスクのある患者を同定する方法である。一実施形態では、アテローム性動脈硬化症を発症するリスクのある患者は、検査されるべき患者からサンプルを取得することと、前記サンプルのT細胞部分を本発明のペプチドと接触させることと、サンプル中に存在するTh40細胞のレベルを測定することとによって同定され、ここで、T細胞の総集団の約25%よりも大きいTh40細胞のレベルが、患者がアテローム性動脈硬化症を発症するリスクがあることを示す。一実施形態において、ペプチドは、CD40タンパク質に結合する限り、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:24,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO: 7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:24,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、ペプチドは、例えばルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼのような適切な検出可能なマーカーで標識される。
【0110】
本発明はまた、本明細書に開示された方法を実践するのに有用なキットを含み、キットが、アテローム性動脈硬化症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを含む。一実施形態において、ペプチドは、アテローム性動脈硬化症をダウンレギュレートすることができる限り、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9から選択されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、Th40細胞のレベルを測定するためのキットであって、キットが、CD40タンパク質と相互作用するペプチド、およびCD40結合したペプチドを検出するための方法を含む。キットはまた、緩衝剤、ラベル、容器、挿入物、チューブ、バイアル、シリンジなどのような、これらに限定されない関連する試薬および構成要素を含み得る。
【0111】
2型糖尿病関連の発明
本主題は、CD40タンパク質を発現し、したがってTh40細胞と呼ばれるT細胞のユニークなサブセットが、2型糖尿病のような状態を含む自己免疫性炎症に役立つ可能性があるという発見に基づく。さらに、自己免疫過程におけるTh40細胞の関与は、T細胞表面に発現するCD40タンパク質とCD154タンパク質の相互作用に依存している可能性がある。CD40とCD154の相互作用は、細胞間に活性化シグナルが伝達され、その後Th40細胞の活性化をもたらす。このような活性化は、Th40細胞の増殖と炎症の増加(例えば、系内に存在する免疫細胞および免疫調節分子の数の増加)をもたらす。したがって、CD40/CD154相互作用の抑制は、Th40細胞の活性を調節し、それによって炎症に影響を与えることができる。したがって、本主題は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用に影響を与え、それによって炎症を調節し得るペプチド、およびその投与に関する。さらに、本主題は、T細胞の表面に発現するCD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用に影響を与え、それによってT細胞の活性に影響を与え、炎症を制御し、その結果、2型糖尿病を予防、調節、および減少させるペプチドに関する。本主題はまた、Th40細胞を検出するためのそのようなペプチドの使用を包含する。
【0112】
本主題の一実施形態は、2型糖尿病を予防するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドである。本明細書で使用されるように、用語「相互作用」(interactまたはinteraction)、およびそのようなものは、2つの分子が炎症の調節を引き起こすように十分に物理的に近接することを意味する。そのようなタイプの相互作用の1つは、結合相互作用である。そのような相互作用では、ペプチドはCD40と結合して複合体を形成する。複合体形成の例は、抗原と抗体との結合である。本主題によれば、本発明のペプチドのCD40タンパク質への結合は、可逆的(例えば、非共有結合相互作用)または非可逆的(例えば、共有結合相互作用)であり得る。さらに、可逆的な相互作用は強い場合も弱い場合もあり、相互作用の強さは、各タンパク質が複合体中の他のタンパク質に及ぼす力(例えば、イオン電荷、水素結合、ファンデルウォール相互作用など)によって測定される。2つの分子間の相互作用の強さに影響を与える因子は、当業者には知られている。ペプチドとタンパク質のような2つの分子間の結合の強さの1つの有用な尺度は、解離定数(Kd)である。本発明の好ましいペプチドは、約1×10-6M、約1×10-7M、または約1×10-8Mを超えないKdでCD40タンパク質に結合するペプチドである。特に好ましいペプチドは、約1×10-9M未満のKdを有するものである。一実施形態では、本発明のペプチドは、100nM未満、50nM未満、25nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、2nM未満、または1nM未満のKdでCD40タンパク質に結合する。ペプチドとCD40タンパク質との間の結合相互作用を測量および分析する方法は、当技術分野の当業者に知られている。
【0113】
本明細書で使用されるように、動物中に存在するTh40細胞のレベルの変化、またはT細胞の培養物中に存在するTh40細胞のレベルの変化は、炎症の調節を示し得る。本明細書で使用されるように、レベル、数、計数、および濃度という用語は、交換可能に使用することができる。炎症の調節は、炎症環境に存在するTh40細胞の数の増加または減少を意味し得;しかしながら、炎症の調節は、細胞数または細胞計数に限定されるべきではない。その結果、調節は陽性または陰性と呼ばれることがある。炎症の陽性調節(アップレギュレーションとも呼ばれる)は、炎症環境中のTh40細胞の数を増加させる結果となり得る。炎症の陰性調節(ダウンレギュレーションとも呼ばれる)は、炎症環境に存在するTh40細胞の数を減少させる結果となり得る。Th40細胞のレベル、計数、または濃度は、炎症性環境における炎症を示すものではない可能性がある。好ましいペプチドは、炎症をダウンレギュレーションし、それによって炎症環境に存在するTh40細胞の数を減少させるものであリ得る。炎症の陽性および陰性の調節は、炎症性環境に存在する免疫調節分子のタイプおよび量の変化をもたらしてもよいし、またはもたらさなくてもよい。いくつかの実施例では、Th40レベルは変化しないが、それらの細胞の活性は、それらの細胞が炎症性サイトカインおよび炎症の他のバイオマーカーをもはや発揮または増加させないように変化する可能性がある。したがって、本明細書で使用されるように、炎症を調節することは、身体またはサンプル中のTh40レベル、数、または濃度の変化を指してもよく、また、疾患、炎症性サイトカイン、および/または細胞由来の炎症性メディエーター分子に関連している可能性のある、より一般的な炎症の変化を指してもよい。
【0114】
細胞培養系および動物の免疫系の両方が、免疫細胞および免疫調節分子の基底レベルを含むことは、当業者によって理解されたい。基底レベルおよび正常レベルという表現は、交換可能に使用することができる。動物の免疫系に関しては、本明細書で使用されるように、免疫細胞(例えば、Th40細胞)の種類または免疫調節分子の基底レベルとは、健康と考えられる個体群(すなわち、代謝性疾患、自己免疫疾患または感染症のない個体群)に存在する、その細胞の種類または免疫調節分子の平均数を指す。細胞培養系に関しては、本明細書で使用されるように、免疫細胞の種類または免疫調節分子の基底レベルは、非活性化された細胞の集団中に存在する、その細胞の種類または免疫調節分子の平均レベルを指す。当業者は、T細胞またはそのような細胞の集団が活性化されるかどうかを測定することができる。例えば、細胞によるCD69、CD25および/またはCD154タンパク質の発現は、その細胞が活性化されていることを示す。
【0115】
細胞または分子の基底レベルは、特定の量(例えば、特定の濃度)であり得るか、または量の範囲を包含し得る。免疫細胞および免疫調節分子の基底レベルまたは範囲は、当業者に知られている。例えば、健康な個体では、ヒトの血液中に存在するCD4+T細胞の正常レベルは、500~1500細胞/mlである。この測量値の変動は、細胞計数を測定するために使用される方法の違いに起因し得る。さらに、細胞の正常レベルは、総細胞集団に対するパーセンテージとして報告され得る。例えば、健康な個体では、Th40細胞は総T細胞集団の25%未満を占める。したがって、本明細書で使用されるように、炎症という用語は、Th40細胞が、総T細胞集団の約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、または約80%以上を占める炎症性環境を指す。さらに、本明細書において好ましいペプチドは、Th40細胞のレベルを、総T細胞集団の約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約27%未満、または約25%に等しいレベルまで低下させるものである。T細胞集団中の異なるタイプのT細胞を測量する方法は、当業者に知られている。さらに、本明細書では、本発明のペプチドを用いてTh40細胞を検出するための新規な方法が開示される。
【0116】
本明細書で使用されるように、「炎症性環境」という表現は、細胞の培養物、または動物の体内に存在する免疫細胞および関連する免疫調節分子の全体的な集団を指す。このように、「炎症性環境」という表現は、細胞の培養物中、または動物の体内に存在する免疫細胞および免疫調節分子(例えば、サイトカイン)の種類、および/または相対的な量を包含し、これらは炎症反応に影響を与えることに関与する。炎症性環境という用語によって包含される細胞の例としては、T細胞、好中球、マクロファージ、顆粒球などが挙げられるが、これらに限定されない。炎症性環境は、急性および慢性炎症の両方を媒介する細胞および分子に関連する。炎症性環境が本発明のペプチドが投与されるシステムを指すことは、当業者によって理解されたい。一実施形態では、システムは、細胞培養システムである。一実施形態では、システムは、完全な動物である。
【0117】
本発明の好ましいペプチドは、免疫吸着アッセイのようなアッセイを用いて測定されるように、溶液中で、またはT細胞の表面上で、CD40タンパク質と選択的に相互作用するものである。本明細書で使用されるように、選択的(selectivelyまたは selective)、特異的などの用語は、ペプチドが、CD40タンパク質に関連しないタンパク質よりもCD40タンパク質に対してより高い親和性を有することを示す。より具体的には、選択的(selectivelyまたはselective)、特異的などの用語は、CD40に対するペプチドの親和性が、標準的なアッセイ(例えば、ELISA)を用いて測量された陰性対照(例えば、アルブミンなどの無関係なタンパク質)に対する親和性よりも統計的に有意に高いことを示す。CD40タンパク質と選択的に相互作用するペプチドの能力をアッセイするための適切な技術は、当業者に知られている。そのようなアッセイは、in vitroまたはin vivoアッセイであり得る。有用なアッセイの例としては、酵素結合免疫アッセイ、競合酵素結合免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、ラテラルフローアッセイ、フロースルーアッセイ、凝集アッセイ、微粒子ベースのアッセイ(例えば、磁性粒子やプラスチックポリマー(ラテックスやポリスチレンビーズなど)などに限定されない微粒子を使用)、免疫沈降アッセイ、免疫ブロットアッセイ(例えば、ウエスタンブロット)、燐光アッセイ、フロースルーアッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ベースのアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、分光光度法アッセイ、微粒子ベースのアッセイ、電子センサアッセイおよびフローサイトメトリーアッセイが含まれるが、これに限定されない。このようなアッセイを実施する方法は、当業者によく知られている。一実施形態では、アッセイは、培養中の細胞を用いて実施することができ、または完全な動物を用いて実施することができる。アッセイは、どのように使用されるかおよび所望の結果のタイプに応じて、定性的、定量的または半定量的な結果が得られるように設計できる。
【0118】
本発明の一実施形態は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用に影響を与えるような方法でCD40タンパク質と相互作用し、それによって炎症を調節するペプチドである。CD40/CD154相互作用に対するペプチドの効果は、正であってもよいし、負であってもよい。例えば、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さが増加するような方法でCD40タンパク質と相互作用することができる。あるいは、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さが減少するようにCD40タンパク質と相互作用することができる。ペプチドとCD40タンパク質との間の結合の強さを測量する方法は、当業者に知られている。本発明の好ましいペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さを減少させるものである。本発明の好ましいペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の結合の強さを、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。特に好ましいペプチドは、CD40とCD154との結合を完全に抑制するものである。CD40とCD154との結合を完全に抑制することは、通常CD40とCD154との相互作用を可能にする条件下で、本発明のペプチドをCD40タンパク質およびCD154タンパク質と近接させると、そのような相互作用は起こらず、CD40発現細胞において活性化シグナルが刺激されないことを意味する。その結果、炎症のCD40/CD154媒介による調節は起こらない。一実施形態では、ペプチドは、系内の炎症のレベルを低下させるような方法でCD40タンパク質と相互作用する。一実施形態では、ペプチドは、系内の炎症の発症を抑制するような方法でCD40タンパク質と相互作用する。一局面において、ペプチドは、細胞が細胞間相互作用の間に通常起こる他の分子と相互作用する方法を変化させ得る。そのような細胞間相互作用は、炎症をもたらすものであり得る。本発明のペプチドは、炎症促進性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)およびインターロイキン-18(IL-18)の成熟を促進するような、インフラマソーム複合体を破壊し得る。さらに、本明細書に記載のペプチドの一局面は、これらのペプチドが、カスパーゼ1、PYCARD、NALP、カスパーゼ5、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン、およびロイシンリッチリピート含有受容体(NLR)およびALR(AIM2様受容体)のインフラマソーム複合体を破壊する可能性があることである。
【0119】
本明細書に記載されたペプチドの一局面は、ペプチドの投与が、炎症を示すまたは結果として生じる可能性のある細胞間相互作用の間に通常生じる他の分子と細胞が相互作用する方法を変化させ得ることである。本明細書に記載のペプチドの一局面は、これらのペプチド(複数可)が、インフルマソームを破壊し、したがって炎症の結果を変化させ得ることである。
【0120】
本発明のペプチドが、CD40タンパク質上の任意の部位と相互作用することができるが、好ましいペプチドは、CD154結合部位と重なる位置でCD40タンパク質と相互作用する。一実施形態では、本発明のペプチドは、CD154結合部位でCD40タンパク質と相互作用する。そのようなペプチドの例は、CD40リガンド競合的拮抗剤である。本明細書で使用されるように、CD154タンパク質のCD40タンパク質への結合を妨害または抑制するペプチドは、小妨害ペプチド(SIP)と呼ばれる。本明細書で使用されるように、小妨害ペプチドは、生理化学的特性を介して、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用を妨害し、それによって活性化シグナルがCD40保有細胞に送達されるのを防ぎ、それによってCD40保有細胞の活性化、それに炎症を制限するペプチドである。本明細書で実証されるように、このような妨害の結果は、T細胞の活性化および伝播の防止、および炎症の防止または減少である。
【0121】
さらに、小妨害ペプチドは、生理化学的特性を介して、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用を妨害し、それによって活性化シグナルがCD40保有細胞に送達されるのを防止し、それによってCD40保有細胞の活性化を制限し、その結果、2型糖尿病を調節、抑制、予防、および/または逆転させ得る。本明細書で実証されるように、このような妨害の結果は、T細胞の活性化および伝播の防止、および2型糖尿病の発症の防止、減少、調節または逆転である。
【0122】
本発明の方法を実践するのに有用なペプチドは、2型糖尿病を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するのに十分な大きさであるべきである。好ましいペプチドが、製造が容易であり、かつ安価であるので、比較的短いものであることは、当業者によって理解される。好ましいペプチドは、20アミノ酸未満の長さである。好ましいペプチドは、長さが4、6、8、10、13、15、または24アミノ酸であるものである。一実施形態では、ペプチドは、SEQ ID NO:3(コア配列は表3,4を参照)、SEQ ID NO:4(6-merは表3,4を参照)、SEQ ID NO. 5(8-merマウスは表3,4を参照)、SEQ ID NO:6(8-merヒトは表3,4を参照)、SEQ IN NO:7(15-merマウスは表3,4を参照)、SEQ ID NO:8(15-merヒトは表3,4を参照)、SEQ ID NO:9(24-merは表3,4を参照)、SEQ ID NO. 24(10-merは表3,4を参照)、SEQ ID NO:25(13-merは表3,4を参照)、SEQ ID NO:26(24-merは表3,4を参照)、SEQ ID NO:27(6-mer(様式2)は表3,4を参照)、SEQ ID NO. 28(6-mer(様式3)は表3,4を参照)、SEQ ID NO:29(6-mer(様式4)は表3,4を参照)、SEQ ID NO:30(6-mer(様式4)は表3,4を参照)、およびSEQ ID NO:32(24-mer-マウス(様式2))の群から選択されるアミノ酸である。そのようなペプチドの配列を以下の表3,4に示す(これは、先に記載した表1,2と完全に重複しているが、読者の便宜のためにここに繰り返す)。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用は、各タンパク質内の特定の領域で起こることが示される。本発明者らは現在、驚くべきことに、CD40と相互作用するCD154領域の短い部分を含むペプチドが、CD40タンパク質と結合し、それによって2型糖尿病を調節することができることを示す。したがって、本明細書の一実施形態は、2型糖尿病を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するようにCD154タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を含むペプチドである。一実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、2型糖尿病の陰性調節、減少または抑制をもたらす。一局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2の少なくとも一部を含む。
【0126】
一局面において、ペプチドは、可能な限り短いが、2型糖尿病を調節するような方法でCD40タンパク質との相互作用を可能にするのに十分なCD154タンパク質を含む。一実施形態において、本発明のペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2からの6、13または15の連続するアミノ酸を含み、2型糖尿病を調節するような方法でCD40と相互作用する。好ましいペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸142~145およびSEQ ID NO:2のアミノ酸143~146に対応するリジン-グリシン-チロシン-チロシン(KGYY; SEQ ID NO:3)のコア配列を含む。さらに、別の好ましいペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸142~145およびSEQ ID NO:2のアミノ酸143~146に対応するリジン-グリシン-チロシン-チロシン-スレオニン-メチオニン(KGYYTM;SEQ ID NO:27)のコア配列を含む。有用なペプチドは、そのペプチドが2型糖尿病を調節することができる限り、コア配列に隣接するSEQ ID NO:1またはSEQ ID No:2からの配列の付加的な領域を含み得る。本明細書の一実施形態において、ペプチドは、そのペプチドが2型糖尿病を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用する限り、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択される少なくとも1つの配列を含む。本主題の一実施形態において、本発明のペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択される配列である。
【0127】
本主題のペプチドは、CD40タンパク質との相互作用を担う配列の全体またはそこから選択されるが、CD40タンパク質と相互作用しないが他の有用な機能を有するアミノ酸配列をさらに含んでもよい。任意の有用な付加的なアミノ酸配列は、付加的な配列がCD40タンパク質と相互作用するCD40相互作用配列の能力に望ましくない影響を及ぼさない限り、CD40相互作用配列に追加することができる。例えば、CD40タンパク質と相互作用を担うアミノ酸配列に加えて、本発明のペプチドは、ペプチドの可視化または精製に有用なアミノ酸配列を含むことができる。そのような配列は、ラベル(例えば、酵素)またはタグ(抗体結合部位)として機能する。さらに、本明細書に提示された発明は、15-merの位置-7(K)および15-merの位置-9(Y)以外の任意の位置でのアミノ酸の置換が行われてもよく、ペプチドの完全性および機能が維持されてもよいことを実証する(図8を参照のこと)。
【0128】
したがって、これらの発明は、ペプチドの有益な側面を維持しつつ、多数の置換が可能であることを暗示し得る。
【0129】
任意の有用な付加的なアミノ酸配列は、付加的な配列がCD40タンパク質と相互作用するCD40相互作用配列の能力に望ましくない影響を及ぼさない限り、CD40相互作用配列に追加することができる。例えば、CD40タンパク質と相互作用を担うアミノ酸配列に加えて、本発明のペプチドは、ペプチドの可視化または精製に有用なアミノ酸配列を含むことができる。そのようなラベルおよびタグの例としては、B-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルタチオン-トランスフェラーゼ、チオレドキシン、HISタグ、ビオチンタグ、および蛍光タグを含むが、これらに限定されない。さらに、アセチル基およびアミドは、N末端またはC末端に付加されていてもよく、本明細書の発明は、そのようなペプチドの安定性または所望の他の特性を増強し得る、これらおよび他のバリエーションを考慮する。タンパク質のラベルおよびタグ付けのための他の有用な配列は、当業者に知られている。
【0130】
同様に、本発明のペプチドは、そのような改変が2型糖尿病を調節するペプチドの能力に著しく影響しない限り、修飾することができる。そのような修飾は、例えば、タンパク質の安定性、溶解性または吸収性を高めるために行うことができる。そのような修飾の例としては、ペプチドのPEG化、グリコシル化、および化学修飾を含むが、これらに限定されない。
【0131】
本発明のペプチドは、自然界から得られる可能性があってもよく(例えば、植物、動物または微生物から得られる)、または実験室で生産されてもよい(例えば、組換え的または合成的により)。好ましいペプチドは、合成されたペプチドである。また、天然分子と合成分子の組み合わせであるペプチドも包含される。組換えペプチドまたは合成ペプチドを製造および単離するための一般的な方法は、当業者に知られている。本明細書で使用されるように、単離された、または生物学的に純粋な分子は、その天然の環境から取り除かれたものであることに留意されたい。このように、単離された、生物学的に純粋ななどの用語は、必ずしもタンパク質が精製された程度を反映しているわけではない。
【0132】
本発明のペプチドは、身体内で自然に発生するものではなく、むしろ、小妨害ペプチドを得るために構築および合成されなければならない。設計および合成の特定の局面は、ペプチドの安定性およびその意図された使用を実行する能力に影響を与える可能性がある。本明細書のペプチドは、SEQ ID NO:3のような4アミノ酸の長さ、5アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:4,27,28,29および30のような6アミノ酸の長さ、7アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:5および6のような8アミノ酸の長さ、9アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:24のような10アミノ酸の長さ、11アミノ酸の長さ、12アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:25のような13アミノ酸の長さ、14アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:7,8,11,12,13,14,15, 16,17,18および20のような15アミノ酸の長さ、16アミノ酸の長さ、17アミノ酸の長さ、18アミノ酸の長さ、19アミノ酸の長さ、20アミノ酸の長さ、21アミノ酸の長さ、22アミノ酸の長さ、23アミノ酸の長さ、SEQ ID NO:26および32のような24アミノ酸の長さ、および25アミノ酸の長さから長さが異なり得る。いくつかの実施例では、本発明の実施形態は、長さが50個以上のアミノ酸までであってもよく、そのような実施例では、SEQ ID NO:3のコア配列の繰り返しは、そのようなペプチドにおいて、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回またはそれ以上の回数で発生してもよい。他の実施例では、本発明の実施形態は、最大で50個以上のアミノ酸の長さであってもよく、そのような実施例では、SEQ ID NO:3のコア配列の繰り返しは、SEQ ID NO:4~9、25~30、および32の配列のような所望の効果を提供することが知られている他の配列で変化させてもよい。前記変化の繰り返しおよび配列は無数であり;しかしながら、本明細書の開発は、対象における炎症を変化、制御、または影響するような方法でCD40と相互作用するという意図された使用を実行する能力を維持するペプチドを考慮する。
【0133】
本明細書に記載されているように、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用は、2型糖尿病におけるTh40細胞の関与に必要である。したがって、本発明のペプチドを用いたCD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の抑制は、2型糖尿病に影響を与える有用な方法である。したがって、一実施形態は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を減少させる方法であり、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を減少させるような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質およびCD154タンパク質を含む環境に導入することを含む。本明細書の一局面において、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。一実施形態では、ペプチドは、CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用を、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで減少させる。CD40タンパク質とCD154タンパク質との間の相互作用の強さを測量する方法は、以前に議論されており、当業者に知られている。
【0134】
本明細書の一実施形態は、炎症を調節するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドをCD40タンパク質に接触させることを含む、2型糖尿病を調節する方法である。一局面において、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%増加させる。一実施形態では、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで増加させる。
【0135】
一局面は、患者における2型糖尿病を減少させる方法であって、該方法が、本発明のペプチドを患者に投与することを含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:5,SEQ ID NO: 6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:25,SEQ ID NO:26,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO: 28,SEQ ID NO: 29,SEQ ID NO:30、およびSEQ ID NO:32から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO: 28、およびSEQ ID NO:29から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態において、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。別の実施形態では、CD40タンパク質とペプチドとの相互作用は、Th40細胞の数を少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10000のファクターで減少させる。好ましい実施形態では、Th40細胞のレベルは、Th40細胞が総T細胞集団の約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%を超えないように低減される。
【0136】
本発明のペプチドおよび方法は、患者を治療するためだけでなく、細胞培養における使用にも適している。本明細書で使用されるように、用語「患者」は、そのような治療を必要とする任意の動物を指す。動物は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。治療するための好ましい動物は哺乳動物である。ペプチドは、それ自体、または医薬組成物として投与または適用することができる。本発明のペプチドまたはその医薬組成物は、注射投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、腹腔内)、吸入投与、経口投与(例えば、錠剤、タブレット、カプセル、粉末、シロップ、溶液、懸濁液、薄膜、分散液または乳剤中)、経皮投与、経粘膜投与、経肺投与、頬側投与、鼻腔内投与、舌下投与、脳内投与、膣内直腸投与または局所投与、または当業者に知られている任意の他の便利な方法を含むがこれらに限定されない様々な経路で患者に投与することができる。
【0137】
本発明のペプチドおよび/またはその医薬組成物の有効量は、当技術分野で知られている標準的な臨床技術によって測定することができる。そのような量は、他の要因の中で、患者の体重、年齢、および状態、化合物の意図される効果、投与方法および処方する医師の判断を含むがこれらに限定されない、治療される患者に依存する。また、この文脈において、関心のある障害を示す患者を治療する際には、治療有効量の薬剤またはそれらの薬剤が投与されることに留意されたい。治療有効量とは、患者における1つまたは複数の症状の改善または生存期間の延長をもたらす化合物のその量を指す。
【0138】
本発明のペプチドまたはその医薬組成物は、単独で、または本開示の他の化合物を含む1種または複種の他の医薬組成物と組み合わせて投与することができる。特定の医薬組成物は、当業者にはよく知られているように、所望の投与モードに依存する。
【0139】
本発明者らが、Th40細胞が自己免疫疾患および2型糖尿病の発症に密接に関与することを発見したので、本明細書に開示されたペプチドおよび方法は、そのような疾患に起因するコンディショニングに影響を与えるために使用することができる。したがって、本明細書の一実施形態は、そのような治療を必要とする患者において2型糖尿病を治療する方法であって、その方法が、CD40タンパク質と相互作用するペプチドを患者に投与し、それによって2型糖尿病を減少させることを含む。一実施形態では、ペプチドは、CD40およびCD154の相互作用に影響を与えるような方法でCD40タンパク質と相互作用し、それにより2型糖尿病を減少させる。好ましい実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者におけるTh40細胞の数を、2型糖尿病を有しない対象において観察されるのと等しいレベルまで減少させる。別の実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者における炎症性サイトカインレベルを減少させる。別の実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者における炎症性サイトカインレベルを、2型糖尿病を有しない対象において観察されるレベルと同等または類似のレベルまで減少させる。本発明は、自己免疫疾患および/または心血管疾患を有する任意の患者を治療するのに適しており、その発症が、Th40細胞に関連するか、Th40細胞と相関するか、またはTh40細胞に依存し得る。本発明はまた、自己免疫疾患および/または心血管疾患を有する任意の患者を治療するのに適し得、その発症は、Th40細胞計数、レベル、および/または濃度に関連しないか、相関しないか、または依存しない。
【0140】
一実施形態では、より具体的には、本発明のペプチドは、そのような患者におけるTh40細胞のレベルを減少させるのに適する。この実施形態では、本発明のペプチドは、自己免疫疾患に罹患している患者におけるTh40細胞のレベルを、総T細胞集団の約25%以下に低減し得る。
【0141】
本発明のペプチドを用いた治療に特に従順である疾患の一例は、2型糖尿病であり得る。2型糖尿病では、耐糖能が低下し、インスリン感受性が低下し、血漿中インスリン濃度が上昇する。したがって、CD40-CD154相互作用を介した炎症性細胞および細胞シグナル伝達の制御は、耐糖能低下、インスリン抵抗性、および血漿インスリンレベルの上昇を特徴とする2型糖尿病の症状を制御、調節、低減および/または逆転させるために使用することができる。T2Dおよび/またはアテローム性動脈硬化症のいくつかのマウスモデルが開発される。最初の研究では、高脂肪食から2型糖尿病を発症する能力のために、ApoE-/-マウスが選択された。すべてのマウスについて、耐糖能試験およびインスリン試験を実施した。マウスは、6-merペプチド(SEQ ID NO:29)を1mg/kgの割合で週1回静脈注射で投与され、モニターされた。ペプチドで処理したApoE欠損マウスは、対照と比較して、インスリン感受性を有意に改善し、インスリン抵抗性を改善し、血漿インスリンレベルを低下させたのと同様に、有意に増加したグルコース耐性を実証した。したがって、本発明の一実施形態は、2型糖尿病を発症する危険性のある個人における2型糖尿病を予防する方法であって、該方法が、CD40発現細胞に選択的に結合するためにペプチドを該個人に投与することを含む。そのような実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3~9、およびSEQ ID NO:24-30から選択され得る。
【0142】
本発明はまた、驚くべきことに、すでに2型糖尿病の徴候を示す個体において、本発明のペプチドが疾患プロセスを逆転させるために使用され得ることを示す。したがって、本主題の一局面は、2型糖尿病を有すると診断された患者に、本発明のペプチドを投与することを含む2型糖尿病を逆転させる方法である。一実施形態において、ペプチドは、炎症をダウンレギュレートまたは低減することができる限り、SEQ ID NO:3, SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列である。本明細書で使用されるように、2型糖尿病を逆転させるという表現は、耐糖能を増加させ、インスリン抵抗性を減少させ、血漿インスリンレベルを、2型糖尿病を有しない個体で観察されるレベルに近いか、またはそれに匹敵するレベルに減少させることを意味する。
【0143】
まだ別の発明では、驚くべきことに、すでに2型糖尿病の徴候を示す個体において、本発明のペプチドが疾患プロセスを逆転させるために使用され得ることを示す。したがって、本主題の一局面は、2型糖尿病を有すると診断された患者に、本発明のペプチドを投与することを含む2型糖尿病を逆転させる方法である。一実施形態において、ペプチドは、炎症を制御、調節、減少および/または逆転させることができる限り、SEQ ID NO:3-9およびSEQ ID NO:24-30から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、2型糖尿病を制御、調節、減少および/または逆転させることができる限り、SEQ ID NO:3-9およびSEQ ID NO:24-30から選択されるアミノ酸配列である。さらに、この実施形態の一局面では、本発明のペプチドは、自己免疫疾患に罹患している患者におけるTh40細胞のレベルを、総T細胞集団の約25%以下に低減し得る。代替的な実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者におけるTh40細胞の数を、2型糖尿病を有しない対象において観察されるのと等しいレベルまで減少させる。別の実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者における炎症性サイトカインレベルを減少させる。別の実施形態では、ペプチドとCD40タンパク質との相互作用は、患者における炎症性サイトカインレベルを、2型糖尿病を有しない対象において観察されるレベルと同等または類似のレベルまで減少させる。本開発は、自己免疫疾患および/または心血管疾患を有する任意の患者を治療するのに適し得、その発症が、Th40細胞に関連するか、Th40細胞と相関するか、またはTh40細胞に依存し得る。本発明はまた、自己免疫疾患および/または心血管疾患を有する任意の患者を治療するのに適し得、その発症は、Th40細胞計数、レベル、および/または濃度に関連しないか、相関しないか、または依存しない。
【0144】
記載されているように、本発明のペプチドは、CD40発現細胞に選択的に結合する。したがって、本発明の主題のペプチドは、Th40細胞を鑑定するために使用することができる。したがって、本発明の一実施形態は、Th40依存性2型糖尿病を検出する方法であって、前記方法が、本発明のペプチドをT細胞集団に接触させることを含む。好ましい実施形態では、ペプチドは、検出可能なマーカー、例えばフルオレセイン、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼで標識される。そのような検出は、当業者に知られているアッセイ技術を用いて行うことができる。一般に、本発明のペプチドを使用してTh40細胞を検出するためのアッセイは、(a)細胞のサンプルを取得することと;(b)存在する場合には、Th40細胞へのペプチドの結合を可能にするのに適した条件で本発明のペプチドを前記細胞に接触させることと;(c)非特異的相互作用を破壊し、かつ未結合のペプチドを除去する条件で前記細胞を洗浄することと;(d)細胞に結合したペプチドを検出することとを含む。結合したペプチドの検出は、直接または間接的に達成することができる。例えば、直接検出は、本明細書に開示されるように、検出可能なマーカーを用いて標識されたペプチドを用いて達成することができる。上記の洗浄ステップに続いて、細胞は、検出可能なマーカーの存在について単純にスクリーニングされる。細胞サンプル中の検出可能なマーカーの存在は、Th40細胞の存在を示し、したがってTh40依存性2型糖尿病を示す。あるいは、間接的検出は、ペプチドに結合する抗体のような第二の分子の使用を関与する。間接検出アッセイでは、上記の洗浄ステップに続いて、ペプチドに結合する検出分子を細胞サンプルに添加する。この検出分子は検出可能なマーカーで標識される。結合していない検出分子を洗い流した後、細胞は検出可能なマーカーの存在についてスクリーニングされる。細胞サンプル中の検出可能なマーカーの存在は、Th40細胞の存在を示す。本明細書に記載されたアッセイは、有用なアッセイの例として意図されており、他のアッセイ技術を採用することができることを理解されたい。適切なアッセイ技術は、当業者に知られており、また、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T,Cold Spring Harbor Laboratory Press;2nd Edition(1989年12月)にも開示されている。本明細書に引用されたすべての参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0145】
上記のアッセイ技術は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用に影響を与える他の分子を同定するためにも使用することができる。そのような分子の例としては、タンパク質、ペプチド、および低分子が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Th40細胞への結合のために、本発明のペプチドと競合する分子の能力を試験するアッセイを設計することができる。例えば、検出可能なマーカーで標識されたペプチドを、試験分子と、Th40細胞を含むことが知られている細胞の集団とを、Th40細胞へのペプチドの結合を可能にする条件下で混合することができる。適切な潜伏期の後、細胞を洗浄して未結合のペプチドを除去し、検出可能なマーカーの存在について細胞はスクリーニングされる。あるいは、標識されたペプチドを最初にTh40細胞に結合させ得、未結合ペプチドを除去するための洗浄ステップの後、結合されたペプチドを含む細胞に試験分子を添加することができる。インキュベーション期間および未結合分子または放出されたペプチドを除去するための洗浄ステップに続いて、細胞は、検出可能なマーカーの存在についてスクリーニングされる。いずれの場合も、細胞サンプル中の検出可能なマーカーの不在は、被験分子がTh40細胞への結合のためにペプチドと競合することができることを示し、検出可能なマーカーの存在は、被験分子がペプチドのTh40細胞への結合を抑制しないことを示すであろう。そのようなアッセイがまた、ペプチドのTh40細胞への結合を部分的に抑制する分子を同定するために有用であろうから、結合の抑制は100%である必要はない。そのようなアッセイが、陽性対照(例えば、標識されていないペプチド)および陰性対照(例えば、Th40細胞に結合しないことが知られているタンパク質/分子)の使用に関することは、当業者によって理解される。
【0146】
上記のアッセイ技術は、CD40タンパク質とCD154タンパク質との相互作用に影響を与える他の分子を同定するためにも使用することができる。そのような分子の例としては、タンパク質、ペプチド、および低分子が含まれるが、これらに限定されない。例えば、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、マクロファージ、血小板、内皮細胞、およびナチュラルキラー細胞およびB細胞を含むリンパ球などのT細胞以外の細胞のCD40タンパク質に結合について、本発明のペプチドと競合する分子の能力を試験するアッセイを設計することができる。例えば、検出可能なマーカーで標識されたペプチドを、試験分子と、CD40を含有する細胞を含むことが知られている細胞の集団とを、ペプチドのCD40保有細胞への結合を可能にする条件で混合することができる。適切な潜伏期の後、細胞を洗浄して未結合のペプチドを除去し、検出可能なマーカーの存在について細胞はスクリーニングされる。あるいは、標識されたペプチドを最初にCD40保有細胞に結合させ得、未結合ペプチドを除去するための洗浄ステップの後、結合されたペプチドを含む細胞に試験分子を添加することができる。インキュベーション期間および未結合分子または放出されたペプチドを除去するための洗浄ステップに続いて、細胞は、検出可能なマーカーの存在についてスクリーニングされる。いずれの場合も、細胞サンプル中の検出可能なマーカーの不在は、被験分子がCD40保有細胞への結合のためにペプチドと競合することができることを示し、検出可能なマーカーの存在は、被験分子がCD40保有細胞へのペプチドの結合を抑制しないことを示すであろう。そのようなアッセイはまた、CD40保有細胞へのペプチドの結合を部分的に抑制する分子を同定するために有用であろうから、結合の抑制は100%である必要はない。そのようなアッセイが、陽性対照(例えば、標識されていないペプチド)および陰性対照(例えば、CD40保有細胞に結合しないことが知られているタンパク質/分子)の使用に関するであろうことは、当業者によって理解される。
【0147】
Th40細胞のレベルの増加が、自己免疫疾患の発症と関連しているので、本発明は、自己免疫疾患および自己免疫関連の2型糖尿病を発症するリスクのある患者を同定するために使用することができる。したがって、本発明の一実施形態は、自己免疫関連の2型糖尿病を発症するリスクのある患者を同定する方法である。一実施形態では、2型糖尿病を発症するリスクのある患者は、検査されるべき患者からサンプルを得ることと、前記サンプルのT細胞部分を本発明のペプチドと接触させることと、サンプル中に存在するTh40細胞のレベルを測定することとによって同定され、ここで、T細胞の総集団の約25%よりも大きいTh40細胞のレベルは、患者が2型糖尿病を発症するリスクがあることを示す。一実施形態において、ペプチドは、CD40タンパク質に結合する限り、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、ペプチドは、適切な検出可能なマーカー、例えばフルオレセイン、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼで標識される。さらに別の実施形態では、ペプチドは、CD40タンパク質に結合する限り、SEQ ID NO:4-9,24-30,および 32から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
本開発はまた、本明細書に開示された方法を実践するのに有用なキットを含み、キットが、2型糖尿病の症状を調節、減少、予防、治療、または他の方法で改善するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを含む。一実施形態において、ペプチドは、2型糖尿病を調節することができる限り、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3,SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9,SEQ ID NO:27,SEQ ID NO:28,SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30から選択されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、Th40細胞のレベルを測定するためのキットであって、キットが、CD40タンパク質と相互作用するペプチド、およびCD40結合したペプチドを検出するための方法を含む。キットはまた、緩衝剤、ラベル、容器、挿入物、チューブ、バイアル、シリンジなどのような、これらに限定されない関連する試薬および構成要素を含み得る。
【0149】
本開発はまた、本明細書に開示された方法を実践するのに有用なキットを含み、キットが、2型糖尿病の症状を調節、減少、予防、治療、または他の方法で改善するような方法でCD40タンパク質と相互作用するペプチドを含む。一実施形態において、ペプチドは、2型糖尿病を調節することができる限り、SEQ ID NO:3-9および24-30から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ペプチドは、SEQ ID NO:3~9、およびSEQ ID NO:24-30から選択されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、Th40細胞のレベルを測定するためのキットであって、キットが、CD40タンパク質と相互作用するペプチド、およびCD40結合したペプチドを検出するための方法を含む。キットはまた、緩衝剤、ラベル、容器、挿入物、チューブ、バイアル、シリンジなどのような、これらに限定されない関連する試薬および構成要素を含み得る。
【0150】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例0151】
本実施例は、CD154の様々なペプチドフラグメントのCD4/CD8比およびNODマウスにおける糖尿病の発症に対する効果を実証する。
【0152】
ペプチドは、SwissProデータベースのマウスCD154タンパク質(SEQ ID NO:1)のアミノ酸配列に基づいて設計された。ペプチド(8-mer(SEQ ID NO:5;SEQ ID NO:6)、10-mer(SEQ ID NO:24)、13-mer(SEQ ID NO:25)、15-mer(SEQ ID NO:7)、24-mer(SEQ ID NO:26)、スクランブル(SEQ ID NO:23)、およびRGD(アルギニルグリシラスパラギン酸)は、次にNew England Peptideに注文した。RGDペプチドは、CD154配列からの15アミノ酸配列であり、CD40結合モチーフを含まない。
【0153】
凍結乾燥したペプチドを1mg/mlで滅菌生理食塩水に懸濁した。次に、100ul(1mg/kg)中に25ugの特定のペプチドを6週齢のNODマウスの尾静脈に注射した。対照マウスには100ulの滅菌生理食塩水を投与した。これは、糖尿病(およびアテローム性動脈硬化症)の発症前であるが、膵島の損傷が始まった後である。最初の注射の後、週に1回、ペプチドの別の25ug(対照マウスの場合は100ulの生理食塩水)を尾静脈に注射した。10週齢で、マウスを、3日間連続して250mg/dLを超える血糖値によって示される糖尿病についてモニターした。その研究の結果を図1に示す。この間、尾静脈から、または顎下静脈穿刺により血液を採取し、CD4タンパク質およびCD8タンパク質に対する抗体を用いたフローサイトメトリーによりCD4+およびCD8+細胞のレベルを測定した。その分析の結果を図2Aに示す。
膵臓を切除し、組織学的に細胞浸潤について調べ、観察可能、測量可能、および定量可能なデータに基づいてスコアを割り当てた:0=浸潤なし;1=一極浸潤;2=膵島周囲炎、両極浸潤;3=75%浸潤および4=完全浸潤。
【0154】
この分析の結果を図2Bに示す。
【0155】
この結果は、CD154タンパク質とは無関係のペプチドでの処理が、NODマウスにおける糖尿病の発症を減少させなかったことを実証する。対照的に、CD154タンパク質に由来する15-merペプチドでマウスを処理すると、糖尿病の発症が予防された。さらに、CD154タンパク質に由来する13-merペプチドは、糖尿病の発症に対して有意な効果を有した。さらに、このデータは、CD4/CD8比によって測定されるように、15-merペプチドが免疫系を損なう結果をもたらさなかったことを実証する。
【実施例0156】
本実施例は、新たに糖尿病を発症したNODマウスにおける高血糖に対する15-merペプチドの効果を実証する。
【0157】
実施例1の処理されなかった6匹のマウスを、その後糖尿病を発症させた。これらのマウスを、100ugの15-merペプチドを静脈内に注射した。次いで、これらのマウスに15-merペプチドを毎週尾静脈に注射し、血糖値を週2回モニターした。15-merペプチドを合計10週間投与した後、治療を中止した。その研究の結果を図3に示す。
【0158】
この研究は、すでに糖尿病を発症しているマウスに15-merペプチドを注射することで、高血糖を逆転させることができることを実証する。また、治療を中止すると5週間以内に高血糖が戻ることを実証する。
【実施例0159】
この研究は、15-merペプチドがTh40細胞およびB細胞に結合する能力を実証する。
【0160】
9週齢のNODマウスから全リンパ球を単離した。リンパ球を抗CD4、抗CD8、抗CD40およびFITC標識15-merペプチドでインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。細胞は、CD4(CD4hiおよびCD4loの両方の集団を含む)およびCD40対15-merペプチドについてゲートされた。この分析の結果を図4に示す。
【0161】
B細胞を、NODマウスの脾臓から単離した。ソートされたMHC-III+細胞を、全リンパ球から精製した。細胞は、FITC標識15merペプチド、抗CD40、およびB細胞マーカーCD19およびCD21で染色された。MHC-II+細胞をCD19+およびCD21+についてゲートし、次いで15-merペプチド対CD40抗体を測量した。その研究の結果を図5に示す。
【0162】
この研究は、CD40+T細胞の実質的な大部分、90%も15-merペプチドを結合し、それによって15-merペプチドがCD40+細胞に対して高度に特異的であることを実証することを示す。また、B細胞の90%がCD40陽性であったのに対し、B細胞の8%のみが15-merペプチドを結合したことを示す。
【実施例0163】
この実施例は、I型糖尿病被験者および非糖尿病(対照)対象の血液中のCD40陽性細胞のレベルを実証する。
【0164】
各個人から全血1mlを取得して、ビオチン共役15-merペプチドでインキュベートした。次いで、細胞をワサビペルオキシダーゼ(HRP)アビジンに曝露し、洗浄し、分光光度計を用いて405nmでの吸光度を測定した。その研究の結果を図6に示す。
【0165】
この研究は、I型糖尿病患者の血球が、非糖尿病対照者の血球よりも高い15-merペプチド結合活性を有したことを実証する。
【実施例0166】
この例は、15-merペプチドまたはオバルブミンからのペプチドのいずれかで処理されたNODマウスの膵臓で観察されるインスリン顆粒化のレベルを実証する。
【0167】
糖尿病の発症時に、6匹のNODマウスに100ug/mlの15-merペプチドを注射し、その結果、レシピエントの80%で高血糖の逆転をもたらした。高血糖症の逆転の6週間後、マウスを犠牲にし、分析のために膵臓を摘出した。膵臓を固定し、薄片に切り分けた後、インスリン顆粒の検出を可能にするアルデヒド/フクシン染色を用いて染色した。組織の顆粒化は、以下のようにスコアリングされた。4=完全に顆粒化した;3=75%膵島顆粒化;2=50%膵島顆粒化、膵島周囲炎;1=25%膵島顆粒化;0=インスリン顆粒は検出されなかった。この分析の結果を図7に示す。
【0168】
この分析は、15-merペプチドは、大多数のマウスにおいてインスリン顆粒を保存し、無関係なペプチドを受けた糖尿病マウスと比較して、ペプチド反転させた糖尿病マウスにおいて有意に改善されたことを実証する。
【実施例0169】
本実施例は、糖尿病の発症を予防する能力に対する15-merペプチドの変異の効果を実証する。図8は、この実施例6に関連する結果を提供する。
【0170】
ペプチドを、実施例1に記載したように設計し、製造した。各バリアントにおいて、以下のように、SEQ ID NO:7の位置1~7または9~12のアミノ酸に対応するアミノ酸をグリシンに置換されるように、バリアントペプチドを製造した。
Gly-1 G-L-Q-W-A-K-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:11)
Gly-2 V-G-Q-W-A-K-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:12)
Gly-3 V-L-G-W-A-K-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:13)
Gly-4 V-L-Q-G-A-K-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:14)
Gly-5 V-L-Q-W-G-K-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:15)
Gly-6 V-L-Q-W-A-G-K-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:16)
Gly-7 V-L-Q-W-A-K-G-G-Y-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:17)
Gly-9 V-L-Q-W-A-K-K-G-G-Y-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:18)
Gly-10 V-L-Q-W-A-K-K-G-Y-G-T-M-K-S-N (SEQ ID NO:19)
Gly-11 V-L-Q-W-A-K-K-G-Y-Y-G-M-K-S-N (SEQ ID NO:20)
Gly-12 V-L-Q-W-A-K-K-G-Y-Y-T-G-K-S-N (SEQ ID NO:21)
【0171】
NODマウスを10匹のグループに配置し、各グループのマウスに、25ugの野生型(WT;Legend)ペプチドまたは上記のバリアントペプチド(PBS中、ph7.2)を週1回静脈注射した。糖尿病の発症は、週単位で血糖値を測量することによりモニターした。マウスは、3回連続に測量した血糖値が250mg/dl以上であったときに「糖尿病」とみなされた。6週齢で注射を開始した=糖尿病前である。
【0172】
この例は、1~7位、または9~12位のいずれかの位置でグリシンに置換すると、糖尿病の発症を抑制する15-merペプチドの能力が低下することを実証する。また、そのような変異は、糖尿病の発症を抑制する変異した15-merペプチドの能力を完全には廃止しないことを示す。図8に示すように、Tyr位置9、Thr位置11、Met位置12の置換は、高血糖予防活性に差があることが証明された。したがって、第2の6-mer誘導体-SEQ ID NO:27~6-mer(様式2)、SEQ ID NO:28~6-mer(様式3)、SEQ ID NO:29~6-mer(様式4)、およびSEQ ID NO:30~6-mer(様式5)もまた、増加した治療効果を提供し得ると推測される。
【実施例0173】
本実施例は、アテローム性動脈硬化のApoE欠損マウスモデルにおけるTh40細胞レベルの同じ上昇が、ヒト1型糖尿病(T1D)においても顕著に上昇することを実証する。
【0174】
末梢血を、図9のように、NOD、NOR(非肥満糖尿病抵抗性)、BALB/c(対照)マウスにおけるCD3+CD4+CD40+細胞数の総計数について測量した。これを、図10のように、対照、糖尿病/新規発症、および長期糖尿病患者集団のヒト対象の末梢血中のTh40細胞のパーセントと比較した。9週齢のNODマウスからリンパ球を単離した。リンパ球を抗CD、抗CD8およびFITC標識15-merペプチドでインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。細胞は、CD4(CD4hiおよびCD4loの両方の集団を含む)およびCD40対15-merペプチドについてゲートされた。これらの結果は、図11に表示されている。
【0175】
正常なチャウ食上のApoE欠損マウスを、9週齢から始まる26週の期間にわたって、週3回IV尾部注射により1mg/kgの15-merペプチド(SEQ ID NO:7)の投与量を受けるように選択し、また対照を利用した。25週齢で、動物を安楽死させ、体重を測量し、分析のために血液、脾臓および膵臓を摘出した。
【0176】
対象は、その後、4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を介して灌流された。大動脈のアーチを解剖し、ショ糖勾配で脱水した後、急速冷凍した。様々な染色手順のために、マウス1匹あたり約35枚の8μm縦断切片を取得した。MACSQuant(R)Analyzer 10(MiltenyiBiotec Inc.)を用いて、フローサイトメトリーを行った。追加の解析は、FlowJo(R)(FlowJo,LLC、BectonDickinson,Inc.が完全所有)単細胞フローサイトメトリーソフトウェアを用いて行った。
【0177】
C57BL/6およびApoE-/-マウスは、図12に実証するように、高血糖になる前のすべてのCD3+CD4+細胞と比較して、Th40細胞のレベルが増加していることを実証した。
【0178】
さらに、図13に示すように、本研究で試験したNODマウスは、対照マウスおよび若年の非糖尿病性NODマウス集団と比較して、大動脈内に有意なTh40浸潤を実証した。
【0179】
図14に示すように、縦断面の1つの例示的な大動脈プラークを、オイルレッドO、トリクローム染色
および免疫蛍光を用いて200倍の倍率で観察した。この大動脈の顕微鏡検査と染色は、図10~14に実証するように、大動脈では末梢血と同様にTh40細胞が増加しているだけでなく、ApoE/モデル(プラーク/アテローム性動脈硬化の成長領域)ではプラークの肩領域内にもTh40細胞が存在することを示す。図14において、10および20は、有意な細胞内CD40を有するCD3+、CD4+、およびCD40+を表す細胞(Th40細胞)を示す。30は、細胞外発現を有し、細胞内CD40を示さないTh40細胞を示す。40は、CD3+、CD4+、CD40neg細胞を示す。
【実施例0180】
この例は、CD3+CD4+CD40+細胞がインターフェロンγ(INFγ)を豊富に産生するように見えることを実証する。さらに、インターフェロンγは、Th40増殖を制御する。
【0181】
通常の固形飼料食のApoE欠損マウスを、9週齢から始まる26週の期間にわたって、週3回IV尾部注射により1mg/kgの15-merペプチド(SEQ ID NO:7)の投与量を受けるように選択し、また対照を利用した。25週齢で、動物を安楽死させ、体重を測量し、分析のために血液、脾臓および膵臓を摘出した。対象は、その後、4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を介して灌流された。大動脈弓を解剖し、ショ糖勾配で脱水した後、急速冷凍した。様々な染色手順のために、マウス1匹あたり約35枚の8μm縦断切片を取得した。MACSQuant(R) Analyzer 10(MiltenyiBiotec Inc.)を用いて、フローサイトメトリーを行った。追加の解析は、FlowJo(R)(FlowJo,LLC、BectonDickinson,Inc.が完全所有)単細胞フローサイトメトリーソフトウェアを用いて行った。
【0182】
共焦点顕微鏡を介して図14に実証されるように、CD40は、CD3+CD4+細胞の内部または外部に存在し得る。フローサイトメトリーをさらに実行し、ほとんどのCD3+細胞がCD40を産生する能力を有するように見える一方で、CD3+CD4+CD40+細胞が、インターフェロンγ(IFNγ)を豊富に産生するように見えることを実証した。このフローサイトメトリー研究は、CD3、CD4、CD40およびIFNγの外部染色および内部染色の両方を取り入れた。
【0183】
図16は、インターフェロンγがTh40増殖を制御することを実証する。単離されたTh40細胞は、CD40に対する抗体によって架橋された。図16のグラフは、INFγに対する抗体(αIFNγ)および非刺激対照(UN)の存在/非存在下でのCD40刺激(CD40XL:活性化)Th40細胞の増殖を示す。さらに、IFNγをブロックすることにより、活性化されたTh40細胞は増殖しない。
【実施例0184】
この実施例は、KGYY15(15-mer-SEQ ID NO:7)およびKGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)がアテローム性動脈硬化症を消失することを実証する。
【0185】
通常の固形飼料食のApoE欠損マウスを、9週齢から始まる26週の期間にわたって、週3回IV尾部注射により1mg/kgの15-merペプチド(SEQ ID NO:7)の投与量を受けるように選択し、また対照を利用した。25週齢で、動物を安楽死させ、体重を測量し、分析のために血液、脾臓および膵臓を摘出した。対象は、その後、4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を介して灌流された。大動脈弓を解剖し、ショ糖勾配で脱水した後、急速冷凍した。
【0186】
図17は、大動脈流出(AO)から近位に定義された大動脈アーチのより少ない曲率の例を提供する。トリクローム染色で見られるセグメントのうち、遠位に2.4mmの内接距離を測量した。内膜のこの2.5mmのストレッチに対した大動脈アーチ壁面積は、グループごとの平均を計算するために各マウスの内側の大動脈アーチ壁の最大面積を使用して、すべてのマウスの各セクションについて計算された。内腔表面(L)、大動脈アーチ(AO)、および無名動脈(I)は、この図17でラベル付けされる。
【0187】
図18は、本実施例で概説されたステップに従って、15-merペプチドで処理されたマウスの大動脈弓のより少ない曲率と比較して、対照のApoEマウスの大動脈弓のより少ない曲率を実証する。
【0188】
図19は、ペプチド処理によって達成された総面積の減少を実証する。2.5mmのセグメント(図17に記載されるように)の総面積が実質的に減少した。
【0189】
図20は、初期の病変および進行したプラークを含むプラークの数の減少を実証する。プラークの総数は、治療群で有意に減少した。プラークは、より進行した線維性粥腫(様々な程度の脂質または壊死性コアおよび線維性キャップを含む)と比較して、初期病変(様々な程度の脂質蓄積を有するマクロファージ由来の発泡細胞を含む脂肪線条として観察可能)の形態に基づいて細分化された。指定された2.5mmセグメント内のすべてのプラークが含まれた。プラークの総数と種類の両方とも、ペプチドを投与された被験者で有意に減少した。
【0190】
この研究は、ペプチドの投与がアテローム性動脈硬化症を消失させることを実証する。
【実施例0191】
この実施例は、KGYY15(15-mer-SEQ ID NO:7)の投与が、既存の疾患の進行を減少させながらキャップ形成を増大させることを実証する。
【0192】
この研究では、6匹のApoE-/-マウスを、0週齢から20週齢までの間、通常の飼料を与えた。20週齢の時点で、3匹のマウスを無作為に割り当て、1mg/kgのKGYY15(15-mer-SEQ ID NO:7)の用量で、週1回、4週間の期間、尾部静脈注射で投与した。対照マウスは溶媒のみを投与した。処理の4週後、動物を安楽死させ、その後4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を介して灌流した。大動脈のアーチをショ糖勾配で解剖し、急速冷凍した。マウス1匹につき約50枚の8μm縦断切片を取得した。スライドは、トリクローム染色で処理し、測量のためのcellSensソフトウェアを使用して分析した。総プラークは、2.5mm以下の曲率および無名動脈を含めて測量した。
【0193】
図20は、個々の初期プラークおよび進行プラークの数が、対照群に比べて治療群で減少したことを示す。
【0194】
図21は、進行プラークのキャップ対コア比が、対照群に比べて治療群で減少したことを示す。
【0195】
図22は、平均キャップ幅(キャップサイズ)が対照群に比べて治療群で大きくなったことを示す。
【0196】
図23は、平均コア幅(コアサイズ/プラークサイズ)が対照群に比べて治療群で少なくなったことを示す。
【0197】
この実施例は、KGYY15(15-mer-SEQ ID NO:7)の投与が、既存の疾患の進行を減少させながらキャップ形成を増大させることを実証する。さらに、本研究では、KGYY15ペプチドの投与がプラーク安定性の結果に移行することを実証する。
【0198】
以上のことから、T1Dが自己免疫性炎症を促進するCD40-CD154ダイアドを動脈硬化と共有していることが明らかになった。NODマウス、ヒトT1D患者、ApoE-/-マウスの末梢血中にはTh40細胞が増加する。Th40細胞は大動脈壁に浸潤し、ApoE-/-マウスのプラーク内に見られる。Th40細胞は炎症性サイトカインIFNγを他の細胞よりも高いレベルで産生し、これが炎症を促進する。KGYY15ペプチドはTh40細胞を標的とする。特定ペプチドは、さらに、Th40遮断またはCD40の一般的な遮断に起因する可能性のあるアテローム性動脈硬化を抑制し、調節する。また、指定されたペプチドの投与により、より安定なプラーク型に移行する。
【実施例0199】
ヒト全血を、マウス試験に用いたものと同様の投与量で投与した。
【0200】
図24は、ヒトで観察された血栓試験の結果を示す。
【0201】
この研究は、ヒトに投与されたときのKGYY15ペプチドが、通常認識されるレベルの外で全ヒト血液の血栓を有意に変更しないか、または変化しないことを実証する。
【実施例0202】
この実施例は、アテローム性動脈硬化を得るために遺伝的に改変され、高脂肪食を与えられ、6-メルペプチドで処理されたApoEマウスが、未処理の対象と比較してLDLコレステロール値のレベルが低下する可能性があることを実証する。
【0203】
この研究では、6匹のApoE-/-マウスを、0週齢から20週齢までの間、通常の飼料を与えた。20週齢の時点で、3匹のマウスを無作為に割り当て、1mg/kgのKGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)の用量で、週1回、4週間の期間、尾部静脈注射で投与した。対照マウスは溶媒のみを投与した。
【0204】
未処理マウスから得られ、および処理したマウスのデータと比較したデータは、LDLコレステロール値の統計的に有意な減少(>50%)を示した。このデータを図27に示す。
【実施例0205】
この実施例は、ApoE-/-マウスがKGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)で処理したときに経験したアテローム性動脈硬化の変化を実証する。ApoE -/-マウスに高脂肪食を16週間与えた。マウスを無作為に割り当て、1mg/kgのKGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)の用量で、週1回、4週間の期間、尾部静脈注射で投与した。対照マウスは溶媒のみを投与した。アテローム性動脈硬化をいくつかの方法で調査した。SudanIV染色(脂質染色)を利用したエンフェース分析は、病変部の有意な減少を実証した。図28Aは、KGYY6で処理した大動脈のen-face SudanIV染色の画像であり、図28Bは、対照(未処理)の大動脈のen-face Sudan染色の画像である。図29は、SudanIV染色の病変部の減少を示すグラフである。
【0206】
さらに、プラーク面積および形態の測量を、Paigen法を用いて行った。この方法は、弁尖から始まる大動脈根から上行大動脈に至るまでの順次5μmの大動脈断面を取得する。50μm間隔でスライドを染色した後、テローム性動脈硬化性病変の面積を測量する。個々のプラーク面積の測量値がマイクロメートル間隔に対してプロットされ、曲線が確立され、曲線下面積(AUC)がプラークの総体積を与える。これらの結果は、図30にグラフ形式で示され、これは、KGYY(SEQ ID NO:29)で処理したマウスが曲線下のプラーク体積の減少を示したことを実証する。
【0207】
さらに、プラーク組成物または大動脈サンプルの特徴付けをトリクローム染色技術を用いて実施し、これらの結果を図31のグラフ形式で示す。実際、Image Pro Plusソフトウェア解析を使用して生成されたこの図31のデータは、コラーゲンの増加および平滑筋含量の減少を含むプラーク組成の変化が生じたことを定量化して示す。
【0208】
図32Aは、KGYY処理された対象の大動脈の断面のトリクローム染色された細胞の画像である。図32Bは、対照対象の断面のトリクローム染色された細胞の画像である。図32Aにおいて、50はプラーク形成に特徴的な領域を特定する。60は大動脈弁尖を特定する。図32Bにおいて、プラークに特徴的な対照(未処理)50領域(曲線下の領域)は、KGYYペプチドで処理された対象のものよりも大きい。
【実施例0209】
この実施例は、KGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)がグルコース耐性およびインスリン感受性の有意な改善をもたらすことを実証する。
【0210】
ApoE-/-マウスに60%高脂肪食(研究食)を1週間与えた。マウスの選択された集団に、次いで、1mg/kgの用量で6-メルペプチドを注射し、他は無処理で、対照として追跡した。グルコース耐性試験(GTT)は、6時間絶食し、次いで、1g/kg体重のグルコースを水で腹腔内注射して実施した。血糖値と血清インスリンの両方を0、15分、30分、60分、2時間に測量した。この研究の結果を図33(a)と33(b)に示す。ペプチドで処理したApoE欠損マウスは、対照と比較して、インスリン感受性を有意に改善し、血漿インスリンレベルを低下しただけでなく、有意に増加したグルコース耐性を実証した。
【0211】
処理したマウスおよび未処理マウスの脂肪組織および筋肉組織についてウエスタン分析を行い、図34に示すように、白色脂肪組織におけるグルコース輸送タンパク質(GLUT4)の発現量の増加を実証した。さらに、ウエスタン分析により、筋肉組織ではGLUT4タンパク質の発現量の増加が示されたことも実証した。GLUT4は、インスリンに応答してグルコースを取り込む役割を担っており、2型糖尿病では発現が低下することが知られる。
【0212】
本研究は、ペプチドの投与がグルコース耐性、インスリン感受性、およびGLUT4レベルに影響を与え、これらのそれぞれが2型糖尿病患者の治療に重要である可能性があることを実証する。
【実施例0213】
この実施例は、KGYY(6-mer-SEQ ID NO:29)の投与が、IL2、INFγ、およびIL17aの炎症性サイトカイン産生に影響を与えることを実証する。
【0214】
ApoEマウスおよびC57BL/6マウスからの脾臓をリンパ球について処理した。ApoE-/-マウスおよびC57BL/6マウスに60%高脂肪食(研究食)を1週間与えた。脾臓リンパ球を、24時間インビトロで6-merで処理した。細胞を、様々な濃度の6-merペプチドの存在下で培地に一晩入れた。翌朝、ブレフェルジンAを4時間投与した。すべての細胞を、CD3、CD4、CD40(Th40細胞)について染色し、IL2、INFγ、およびIL17aの産生についてフローサイトメトリーを使用して測量した。その結果を図35に示す。
【0215】
前述のように、本明細書では、驚くほど予想外の様式で多くの要求を満たす方法の新規かつ有用な実施形態が説明され、図示されていることが容易に明らかになっている。もちろん、本開示に直面する当業者に容易に起こり得るそのような修正、変更、および適応は、本開示の趣旨の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが理解される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28A
図28B
図29
図30
図31
図32A
図32B
図33(a)】
図33(b)】
図34
図35
【配列表】
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