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特開2024-123105グロボシリーズの抗原を介した免疫活性化又は免疫調節によるがん免疫療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123105
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】グロボシリーズの抗原を介した免疫活性化又は免疫調節によるがん免疫療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240903BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/64
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097870
(22)【出願日】2024-06-18
(62)【分割の表示】P 2022074266の分割
【原出願日】2017-04-24
(31)【優先権主張番号】62/345,755
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/381,875
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/343,530
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/326,623
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516080655
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン-ダー・トニー・ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウエ-コン・シュエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン-シン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】ペイウェン・ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チウェン-チェン・チェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グロボシリーズ抗原(すなわちグロボH、ステージ特異的胚抗原3「SSEA3」及びステージ特異的胚抗原4「SSEA4」)に対するワクチンを投与することを含む、がん患者のための免疫療法の方法を提供する。
【解決手段】方法は、転移性乳がんを有する患者にグロボH-KLH(OBI-822)を投与することを含む。本開示はまた、免疫療法の治療候補として適切ながん患者を選択することを含む方法を提供する。さらに、本開示は、グロボシリーズ抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)及びそのような治療レジメン及び診断レジメンに焦点を合わせるのに有用な関連バイオマーカーを含む治療薬を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳がんを治療する方法であって、治療有効用量のグロボシリーズ抗原ワクチンを、乳がんの治療を必要とする被験体に投与すること及び/又はグロボシリーズ抗原ワクチンと交差反応させることを含む、方法。
【請求項2】
グロボシリーズ抗原ワクチンが、担体タンパク質と結合したグロボシリーズ抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グロボシリーズ抗原が、グロボH、ステージ特異的胚抗原3(SSEA3)及びステージ特異的胚抗原4(SSEA4)から選択される抗原を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT-CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
グロボシリーズ抗原ワクチンを医薬組成物として投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が、グロボH-KLH及びアジュバントを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アジュバントが、サポニン、フロイントアジュバント又はα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)アジュバントから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
医薬組成物がOBI-822/OBI-821を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記投与によって生じる免疫学的反応が、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原及び/又は担体タンパク質によって誘導される免疫応答を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
被験体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療有効用量が100μg未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
投与手順が、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、動脈内注射、滑液包内注射、髄腔内注射、硬膜外注射又は胸腔内注射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ワクチンを1週間~5年以上の時間間隔で間欠的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ワクチンを、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、11週間に1回又は12週間に1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
患者における腫瘍の治療方法であって、前記患者に薬学的有効量のグロボシリーズ抗原ワクチンを投与すること及び/又はグロボシリーズ抗原ワクチンと交差反応させることを含む、方法。
【請求項16】
グロボシリーズ抗原ワクチンが、担体タンパク質と結合したグロボシリーズ抗原を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グロボシリーズ抗原が、グロボH、ステージ特異的胚抗原3(SSEA3)又はステージ特異的胚抗原4(SSEA4)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT-CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
グロボシリーズ抗原ワクチンが、グロボH-KLH及びアジュバントを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
アジュバントが、サポニン、フロイントアジュバント又はα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)アジュバントから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
グロボシリーズ抗原ワクチンがOBI-822/OBI-821を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
グロボシリーズ抗原ワクチンが、OBI-822及び薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記投与によって生じる免疫学的反応が、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原及び/又は担体タンパク質によって誘導される免疫応答を特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
グロボシリーズ抗原ワクチン又はグロボシリーズ抗原ワクチンとの交差反応が、グロボシリーズ抗原に対するモノクローナル抗体の免疫原性産生を誘導する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
産生される抗体が、IgG、IgM又はその両方である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍が、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝臓がん、口腔がん、胃がん、腸がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、胆嚢がん、口咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍である、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
腫瘍が、転移性又は非転移性である、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
グロボシリーズ抗原ワクチン又はグロボシリーズ抗原ワクチンとの交差反応を、1つ以上の抗増殖剤と組み合わせて患者に投与する、請求項15~23に記載の方法。
【請求項29】
抗増殖剤が、シクロホスファミド、アヘン製剤、顆粒球-コロニー刺激因子(GCSF)、エストロゲン阻害剤、アロマターゼ阻害剤、下垂体下方調節剤、タモキシフェン選択的エストロゲン受容体調節剤、ラロキシフェン、エストロゲン受容体下方調節剤、抗凝固薬、酵素、造血成長因子、抗腫瘍薬、代謝拮抗物質、種々の細胞傷害性薬剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、アルキル化剤、タキサン、抗腫瘍抗生物質、カンプトテシン、ニトロソ尿素、HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害剤、VEGFタンパク質阻害剤、HER-2/ErbB2阻害剤、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体又はグルココルチコイドステロイドから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗増殖剤が、エルロチニブ、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン;カルボプラチン;パクリタキセル、トラスツズマブ、テモゾロミド、タモキシフェン、ドキソルビシン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、スーテント、レトロゾール、イマチニブメシレート、MEK阻害剤、フルベストラント、ロイコボリン(フォリン酸);ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、イリノテカン、チピファルニブ、クレモフォール不含、パクリタキセル、バンデタニブ、クロラムムブシル、テムシロリムス、パゾパニブ、カンフォスファミド、チオテパ、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキセート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、トレミフェンシトレート、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲストロールアセテート、エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール、アナストロゾール、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、トロキサシタビン(α-1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、脂質キナーゼ阻害剤、オブリメルセン、アンギオザイム、アロベクチン、ロイベクチン、バクシド、アルデスロイキン、ルートテカン、アバレリクス、ベバシズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシツモマブ、ゲムツズマブ又はオゾガマイシンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
免疫療法によってがんに罹患している被験体を治療する方法であって、免疫応答を誘導する又は調節するために有用な治療有効用量の免疫原性物質を、治療を必要とする被験体に投与すること及び/又は前記免疫原性物質と交差反応させることを含む、方法。
【請求項32】
免疫原性物質が、担体タンパク質と結合したグロボシリーズ抗原を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
グロボシリーズ抗原が、グロボH、ステージ特異的胚抗原3(SSEA3)又はステージ特異的胚抗原4(SSEA4)を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT-CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
免疫原性物質がOBI-822及び関連する変異体である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記投与によって生じる免疫学的反応が、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原及び/又は担体タンパク質によって誘導される免疫応答を特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
被験体がヒトである、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
免疫応答が、IgG、IgM又は細胞媒介応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
細胞がB細胞又はT細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、グロボシリーズ抗原の相互作用を調節することによって被験体の生存率を改善することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
生存率が、全生存率及び/又は無増悪生存率を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
グロボシリーズ抗原相互作用の調節が、以下の1つ以上:
(a)腫瘍を死滅させるための抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導;
(b)抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)媒介腫瘍細胞死滅を誘発するための抗グロボシリーズ抗原IgM/IgG免疫応答の誘導;
(c)腫瘍細胞からのグロボシリーズ抗原-セラミドを捕捉し、トランスリン関連因子X(TRAX)依存性血管新生をブロックするための抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;
(d)グロボシリーズ抗原-セラミド誘導Notch 1依存性免疫抑制をブロックし、それによってT細胞増殖及びサイトカイン産生を増強する抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;
(e)アポトーシスをもたらす抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;
(f)グロボシリーズ抗原誘導性血管新生の阻害;又は
(g)OBI-822ワクチン接種がアポトーシスを誘導すること
をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
被験体における免疫応答を誘導/増強する方法であって、前記被験体に免疫原性物質を投与すること及び/又は前記免疫原性物質と交差反応させることを含む、方法。
【請求項44】
免疫原性物質が、担体タンパク質と結合したグロボシリーズ抗原である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
グロボシリーズ抗原が、グロボH、ステージ特異的胚抗原3(SSEA3)又はステージ特異的胚抗原4(SSEA4)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT-CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
免疫原性物質がOBI-822及び関連する変異体である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記投与によって生じる免疫学的反応が、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原及び/又は担体タンパク質によって誘導される免疫応答を特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
被験体がヒトである、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
免疫応答が、細胞性免疫又は体液性免疫である、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
OBI-822ワクチン誘導免疫応答性を、それを必要とする被験体において改善する方法であって、OBI-822を含む免疫原性有効量の薬学的に許容される賦形剤を投与すること及び以下から選択される1つ以上を含む、方法:
(a)ワクチンの2回以上(例えば3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回又は12回以上)の投与;
(b)2回の連続する投与の間の時間間隔及び/若しくは投与量の調整;
(c)投与経路の調整及び/若しくは投与の注射部位の変更;又は
(d)各々の投与が抗体免疫応答を増加させる及び/若しくは抗原-抗体結合親和性を増加させる、上記の任意の組み合わせ。
【請求項52】
注射を、免疫応答ブースター剤の添加によって変更及び/又は補完することができる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
免疫応答が、細胞性免疫又は体液性免疫である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
免疫応答が、IgG、IgM又は細胞媒介応答を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
細胞がB細胞又はT細胞である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
被験体がヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
がん治療に適切な、がん治療を必要とする患者を同定するための方法であって、
(a)前記患者に有効用量のグロボシリーズ抗原ワクチンを投与すること;
(b)前記患者の免疫応答を評価すること;
(c)各患者におけるグロボシリーズ抗原の発現を測定すること;並びに
(d)免疫応答の指標及びグロボシリーズ抗原の発現に基づいて患者の適合性を分類し、ここで、前記指標が、回復の良好な予後を有する前記患者を示すこと
を含む、方法。
【請求項58】
グロボシリーズ抗原ワクチンが、担体タンパク質と結合したグロボシリーズ抗原を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
グロボシリーズ抗原が、グロボH、ステージ特異的胚抗原3(SSEA3)又はステージ特異的胚抗原4(SSEA4)を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT-CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
グロボシリーズ抗原ワクチンを医薬組成物として投与する、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
医薬組成物が、グロボH-KLH及びアジュバントを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
アジュバントが、サポニン、フロイントアジュバント又はα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)アジュバントから選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
医薬組成物がOBI-822/OBI-821を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
がんが、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝臓がん、口腔がん、胃がん、腸がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、胆嚢がん、口咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍である、請求項57に記載の方法。
【請求項66】
がんが乳がんである、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
乳がんが、ステージI、II、III、ER(+)、PR(+)、HER2(+)、トリプルネガティブ、転移性又は非転移性である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
免疫応答の指標が、IgG力価、IgM力価、無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)の評価を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
がん治療の予後及び/又はがん治療を必要とする患者の薬剤応答を決定するための方法であって、
(a)がんを有すると診断された患者を同定すること;
(b)請求項1に記載の治療を受けた後の前記患者の適合性を測定することによって免疫応答のレベルを決定すること;
(c)請求項57で得られたデータを分析すること
を含む、方法。
【請求項70】
がんが、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝臓がん、口腔がん、胃がん、腸がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、胆嚢がん、口咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍である、請求項69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/326,623号(2016年4月22日出願)、同第62/343,530号(2016年5月31日出願)、同第62/345,755号(2016年6月4日出願)及び同第62/381,875号2016年8月31日)の優先権を主張するものである。前記出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、グロボシリーズの抗原に対するワクチンを患者に投与することを含む、がん患者の免疫療法のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖鎖抗原グロボH(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)は、セラミド結合糖脂質として最初に単離され、1984年にHakomori et al.によって乳がんMCF-7細胞から同定された(Bremer E G,et al.(1984)J Biol Chem 259:14773-14777)。抗グロボHモノクローナル抗体に関するさらなる試験は、グロボHが、前立腺がん、胃がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん及び結腸がんを含む多くの他のがんに存在し、並びに免疫系が容易にアクセスできない正常分泌組織の内腔表面にごくわずかに発現されることを示した(Ragupathi G et al.(1997)Angew Chem Int Ed 36:125-128)。さらに、乳がん患者の血清は、高レベルの抗グロボH抗体を含むことが証明されている(Gilewski T et al.(2001)Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275;Huang C-Y,et al.(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103:15-20;Wang C-C,et al.(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11661-11666)。グロボH陽性腫瘍を有する患者は、グロボH陰性腫瘍を有する患者と比較してより短い生存期間を示した(Chang,Y-J,et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104(25):10299-10304)。これらの所見により、六糖エピトープであるグロボHは、魅力的な腫瘍マーカー及びがんワクチン開発のための実現可能な標的となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bremer E G,et al.(1984)J Biol Chem 259:14773-14777
【非特許文献2】Ragupathi G et al.(1997)Angew Chem Int Ed 36:125-128
【非特許文献3】Gilewski T et al.(2001)Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275
【非特許文献4】Huang C-Y,et al.(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103:15-20
【非特許文献5】Wang C-C,et al.(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11661-11666
【非特許文献6】Chang,Y-J,et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104(25):10299-10304
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様及び実施形態は、免疫応答(IgG及び/又はIgM)を誘導/調節するために有用なグロボシリーズの抗原を標的とする免疫原性物質(例えばOBI-822)を、がんの治療を必要とする被験体に投与することを含む、がんに罹患した被験体を免疫療法によって治療するための方法を提供し、前記方法は、被験体の生存率を改善するように、グロボシリーズ抗原の相互作用を調節することによって生存率(全生存率及び/又は無増悪生存率を含む)を改善することを含む。一態様では、グロボシリーズの抗原を標的とする免疫原性物質は、例えばOBI-822である。本発明者らの以前のPCT特許出願(公開番号:WO2015159118A2及びWO2016044326A1)を参照されたい。これらの出願の開示は、グロボH-KLH複合糖質(OBI-822)及び/又は治療用アジュバント(OBI-821/OBI-834)を含む免疫原性/治療用組成物、並びにこれらを製造し、がんなどの増殖性疾患を治療するために使用する方法を包含する。治療用組成物は、一部には、がん細胞などの損傷細胞又は異常細胞によってもたらされる危険性から、免疫系を介して自らを守る身体の自然の能力を強化するためのがんワクチンとして働くことが想定されている。
【0006】
一実施形態では、免疫原性物質は、OBI-822及び関連する変異体を含み得る。
【0007】
特定の実施形態では、免疫応答は、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgM、グロボHシリーズ抗原/腫瘍に対するCTL(細胞傷害性リンパ球)を含み得る。
【0008】
特定の実施形態では、臨床的に意味のある利点には、以下における変化が含まれ得る:無増悪生存率;全生存率;(十分に耐容される及び/又は重大な安全性の懸念がない);客観的な奏功率;進行までの時間;無病生存率;腫瘍応答;生活の質の改善;固形腫瘍のサイズの縮小及び/又は腫瘍関連抗原(主にグロボH又はグロボHを含む)の減少。
【0009】
特定の態様では、投与レジメンは、2回以上(例えば3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回以上)のワクチンの投与;2回の連続する投与の間の時間間隔及び/若しくは投与量レジメンの調整;投与経路の調整及び/若しくは注射部位/投与位置の変更/交互実施又は上記のいずれかの任意の組み合わせを含むことができ、これにより、各々の投与は免疫応答を増加させる[例えば力価-IgG及び/若しくはIgM Abの量及び/又は親和性/アビディティの増加;グロボH抗原複合体のグロボH部分の免疫原性がより低い部位へのAbの誘導(例えば複合体中のよりアクセスしにくいと考えられるグロボH抗原の部分)]。特定の態様では、注射は、免疫応答ブースター剤の添加によって変更及び/又は補完することができる。
【0010】
特定の態様では、グロボシリーズ抗原の相互作用の調節には、以下のものが含まれ得る:複数回のワクチン接種で親和性が高められた抗グロボH抗体の誘導;B細胞の胚中心のグロボHシリーズ腫瘍抗原への拡大;高親和性抗グロボH抗体を含む胚中心の優先的な拡大;通常、単回(又は少ない回数の抗原への暴露の反復)では意味のある応答を生じさせるのに十分な数で存在しない低頻度のB細胞の誘導(例えば、それらはほとんどの抗体が結合しないエピトープに結合し得る);抗腫瘍応答の長期間の維持にとって重要であり得る抗体分泌形質細胞(「抗体分泌形質細胞」はB細胞が分化するものである)及び記憶B細胞の増殖拡大;Abクラススイッチの速度の増加[良好なT細胞ヘルパー機能を必要とするか又はB細胞がIgGに切り替わらない];抗体応答の速度の増加(例えば、連続的なワクチン接種は、KLHへの結合なしで、シクロホスファミドの同時投与なしで及び/又は反復ワクチン接種なしで得られるよりも迅速な抗体の拡大をもたらし得る);上記の抗腫瘍応答の発現及び維持を妨げるTreg活性の低下;腫瘍の死滅のための抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導;CDC及びADCC媒介腫瘍細胞死滅を誘発するための抗グロボシリーズ抗原のIgM/IgG免疫応答の誘導;腫瘍細胞からのグロボシリーズ抗原-セラミドを捕捉し、トランスリン関連因子X(TRAX)依存性血管新生をブロックする抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;グロボシリーズ抗原-セラミド誘導Notch 1依存性免疫抑制をブロックし、それによってT細胞増殖及びサイトカイン産生を増強する抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;アポトーシスをもたらす抗グロボシリーズ抗原抗体の誘導;グロボシリーズ抗原誘導性血管新生の阻害;OBI-822ワクチン接種はアポトーシスを誘導する;CTL(細胞傷害性リンパ球)の誘導。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】OBI-822:能動的がん免疫療法は、腫瘍の死滅のためにADCC及びCDCを誘導する。OBI-822によるグロボH-セラミド枯渇は、TRAX依存性血管新生を有効に阻止し、腫瘍退縮を達成する。腫瘍分泌可溶性因子は、内皮細胞上のそれぞれの受容体に結合し、ホスホリパーゼC(PLC)活性化及び細胞内カルシウム放出を誘発し、内皮細胞の増殖、遊走及び管形成を促進する。PLCは、セカンドメッセンジャーの「初期発生器」としての機能を果たし、血管新生の初期段階を駆動する。PLC活性は、PLCβ1活性をブロックするトランスリン関連因子X(TRAX)を含むいくつかの結合パートナーによって調節される。この事象の分子機構は、TRAXへのグロボ-Hセラミドの結合と、結果として生じるPLCβ1の放出及び活性化を含む。
図2】OBI-822は、グロボH-セラミドを枯渇させ、これは次にNotch 1分解を増加させ、腫瘍の免疫抑制作用をブロックし、腫瘍退縮をもたらす。Notchシグナル伝達経路は、ほとんどの生物において進化的に保存された細胞シグナル伝達系であり、細胞増殖、分化、アポトーシス及び生存を調節することができる。Notch 1の調節は、Eタンパク質転写因子E2A及びその天然阻害剤ID3によって制御される。Notch 1は、E3ユビキチンリガーゼ、ITCHを介したユビキチン化によって分解される。免疫細胞へのグロボ-Hセラミドの添加は、それらの増殖及びサイトカイン又は免疫グロブリン分泌を阻害し得る。グロボ-Hセラミドは、ITCH発現を伴うID3及びEGR2/3の誘導を介したNotch 1シグナル伝達の阻害を含む免疫抑制を誘導することができた。
図3】OBI-822はアポトーシスをもたらす。アポトーシス(プログラム細胞死)は、多細胞生物の正常な発達及び組織リモデリングに寄与する。焦点接着キナーゼ(FAK)は、インテグリン、がん遺伝子及び神経ペプチドからのシグナルの組み込みに関係づけられている。ヒト臍帯静脈内皮細胞における増殖因子欠乏誘発性アポトーシスの間に、カスパーゼ3によるFAKのタンパク質分解切断が報告されており、これはFAKとアポトーシスとの間の関連を示唆する。
図4図4は、試験薬の9回の注射を受けた後の無増悪生存率(mITT)を示している(層別ログランク検定、p=0.0542)。
図5図5は、試験薬の9回の注射を受けた後の無増悪生存率(mITT)をベースライン時の疾患と共に示している(層別ログランク検定、P=0.0362)。
図6図6は、IgG免疫応答(IgG基準1:640)を伴う/伴わない試験薬治療対プラセボの無増悪生存率(mITT)を示している。
図7図7は、IgG免疫応答(IgG基準1:640)を伴う/伴わない試験薬治療対プラセボの全生存率(mITT)を示している。
図8図8は、初期IgM免疫応答(IgM基準)を伴う/伴わない、第2週に試験薬の1回の注射を受けた後の無増悪生存率(mITT)をプラセボと比較して示している。
図9図9は、患者がOBI-822ワクチンの注射を受けた後、高い抗KLH IgG免疫応答があることを示している。
図10図10は、OBI-822治療の卵巣がん臨床試験を受けた陰性対照(患者番号:065)を示している。
図11図11は、OBI-822治療の卵巣がん臨床試験を受けたステージIIIの卵巣がん(患者番号:035)を示している。
図12図12は、OBI-822治療の卵巣がん臨床試験を受けたステージIVファローピウス管がん(患者番号:041)を示している。
図13図13は、OBI-822治療の卵巣がん臨床試験を受けたステージIIIの卵巣がん(患者番号:060)を示している。
図14図14は、治験薬混合の手順を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、がん又は感染症などの疾患に罹患した被験体の免疫療法のための方法であって、内因性免疫応答を増強し、内因性応答の活性化を刺激するか又は内在性応答の抑制を阻害する治療有効量の化合物又は薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法に関する。より具体的には、本開示は、がんに罹患した被験体における内因性免疫応答を増強し、それによって患者を治療するための方法であって、治療有効量の免疫原性物質を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
定義:
本明細書で使用される場合の「投与する」、投与レジメンの実施形態は、以下の特徴を含み得る:1)2回以上(例えば3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回以上)ワクチンを投与する;2)各々の投与は免疫応答(上記参照)を増加させる[力価-IgG及び/若しくはIgM Abの量及び/又は親和性/アビディティを増加させる;グロボH抗原複合体のグロボH部分のより低い免疫原性部位へのAbの誘導(例えば複合体中のよりアクセスしにくいと考えられるグロボH抗原の部分)]。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「治療」は、治療される個体又は細胞の自然経過を改変しようとする臨床的介入を指し、予防のために又は臨床病理の経過中のいずれかに実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発症又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接又は間接的な病理学的結果の縮小、炎症及び/又は組織/臓器の損傷の予防又は減少、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、並びに寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患又は障害の発症を遅らせるために使用される。
【0015】
「有効量」とは、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を指す。
【0016】
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの因子に応じて異なり得る。治療有効量はまた、物質/分子の治療上の有益な効果が毒性又は有害作用を上回る量である。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を指す。必ずしも必要ではないが典型的には、予防用量は疾患の前又は初期段階の被験体において使用されるので、予防有効量は治療有効量より低い。
【0017】
「有害事象」(AE)毒性は、国立がん研究所のがん治療評価プログラムによって開発された米国NCI共通毒性基準、バージョン4に従って測定される。許容できない毒性の基準には、任意のグレード4以上の毒性が含まれるべきであるが、局所皮膚反応、発熱、悪寒、発汗、蕁麻疹及び/又は掻痒は、抗体/アジュバント投与の一般的な副作用であって、可逆性でありかつ支持的管理によって制御されるものであるので、これらを除くべきである。理論的には、皮膚、関節、腎臓又は他の症状発現によって顕在化するような免疫複合疾患は、起こり得るが、マウスタンパク質への事前暴露がない場合には滅多に起こらないものである。これらは、影響を受けた被験体の治療を中止するための指標となるが、新たな被験体の追加は継続し得る。有害事象は、治験薬の使用に関連するとみなされるか否かに関わらず、無作為化の日から、被験体の無作為化から最大2年間続く追跡期間までの間に、被験体が経験した任意の身体的又は臨床的変化又は疾患である。これには、新たな疾病の発症及び既存の状態の増悪が含まれる。治療期間中に治療を中止した被験体については、試験治療(OBI-822/OBI-821又は対照)の最終投与後28日目まで有害事象を記録すべきである。
【0018】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体及び一般に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系によって低レベルで産生され、骨髄腫によって高レベルで産生される。「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば完全長又は無傷モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りは二重特異性抗体)を含み、特定の抗体フラグメント(本明細書中でより詳細に説明される)をも含み得る。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟抗体であり得る。
【0019】
「可変」及び「相補性決定領域」(CDR)
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。これは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方における相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、3つのCDRによって連結された、主としてβシート構造をとる4つのFR領域を含み、CDRは、βシート構造を連結するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域によって近接して一緒に保持され、他の鎖由来のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition, National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、及び残りの、容易に結晶化する能力を反映した名前を有する「Fc」フラグメントを、生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しかつ依然として抗原を架橋することができる、F(ab’)2フラグメントを生じる。
【0020】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小限の抗体断片である。二本鎖Fv種において、この領域は、緊密で非共有結合的に結合した1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv種では、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインを、軽鎖と重鎖が二本鎖Fv種のものと類似の「二量体」構造で結合できるように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合させることができる。この構造において、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定する。集合的に、6つのCDRは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0021】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加によってFabフラグメントと異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(1つ又は複数)が遊離チオール基を担持するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体フラグメントはもともと、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。
【0022】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる型の1つに割り当てることができる。
【0023】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)を異なるクラスに割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの主要なクラスの免疫グロブリンがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類し得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合によって形成される、より大きな融合分子の一部であり得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「単離された抗体」は、同定され、その天然環境の成分から分離及び/又は回収されたものである「単離された」抗体を含み得る。その天然環境の夾雑成分は、抗体の研究、診断又は治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。一実施形態では、抗体は、(1)例えばローリー法によって測定した場合に抗体の95重量%を超えるまで、いくつかの実施形態では99重量%を超えるまで、(2)例えばスピニングカップシーケネータを用いてN末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えばクマシーブルー若しくは銀染色を用いる還元若しくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内にインサイチュで抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0025】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」(mAB)という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、起こり得る天然の突然変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。そのようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を包含し、ここで、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含む工程によって得られた。例えば、選択工程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからユニークなクローンを選択することであり得る。選択された標的結合配列は、例えば標的に対する親和性を改善する、標的結合配列をヒト化する、細胞培養におけるその産生を改善する、インビボでその免疫原性を低減する、多重特異性抗体を作製する等のためにさらに改変することができ、改変された標的結合配列を含む抗体も本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。モノクローナル抗体調製物は、それらの特異性に加えて、典型的には他の免疫グロブリンが夾雑していないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特性を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えばKohler et al.,Nature,256:495(1975);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えばClackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)参照)、並びにヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する、動物におけるヒト又はヒト様抗体を作製するための技術(例えばWO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号; Marks et al.,Bio.Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)を含む、様々な技術によって作製し得る。
【0026】
「ヒトモノクローナル抗体」(HuMAb)
「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有しかつ/又は本明細書で開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを用いて作製された、mAbである。ヒト抗体のこの定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0027】
「ヒト化抗体」
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長動物などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体中には見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに高めるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。また、以下の総説及びその中で引用されている参考文献も参照されたい:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)。
【0028】
「キメラ抗体」
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖(1又は複数)の残りの部分は別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。
【0029】
「抗原結合部分」又は「抗体フラグメント」
「抗体フラグメント」は無傷抗体の一部分のみを含み、この部分は、無傷抗体に存在する場合にその部分に通常関連する機能の少なくとも1つ、できるだけ多く又は全部を保持する。一実施形態では、抗体フラグメントは無傷抗体の抗原結合部位を含み、したがって抗原に結合する能力を保持する。
【0030】
別の実施形態では、抗体フラグメント、例えばFc領域を含むものは、FcRn結合、抗体半減期の調節、ADCC機能及び補体結合などの、無傷抗体に存在する場合にFc領域と通常関連する生物学的機能の少なくとも1つを保持する。一実施形態では、抗体フラグメントは、無傷抗体と実質的に類似したインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体フラグメントは、そのフラグメントにインビボでの安定性を付与することができる、Fc配列に連結された抗原結合アームを含み得る。
【0031】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す又は表す。がんの例には、癌腫、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽腫、肉腫及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。そのようながんのより特定の例には、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、白血病及び他のリンパ増殖性障害及び様々な種類の頭頸部がんが含まれる。「腫瘍」は、本明細書中で使用される場合、悪性又は良性に関わらず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」は、本明細書中で言及される場合、互いに排他的ではない。
【0032】
「免疫応答」とは、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性細胞若しくは他の異常細胞、又は、自己免疫若しくは病的炎症の場合は、正常ヒト細胞若しくは組織の選択的標的化、これらへの結合、損傷、破壊及び/又は脊椎動物の身体からの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞及び好中球)並びにこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指す。
【0033】
「免疫調節剤」は、免疫応答を調節する物質、薬剤、シグナル伝達経路又はその構成要素を指す。免疫応答を「調節する」、「修飾する」又は「調整する」とは、免疫系の細胞又はそのような細胞の活性の任意の改変を指す。そのような調節には、様々な細胞型の数の増加若しくは減少、これらの細胞の活性の増加若しくは減少、又は免疫系内で起こり得る他の何らかの変化として現れ得る、免疫系の刺激又は抑制が含まれる。阻害性及び刺激性免疫調節剤の両方が同定されており、そのいくつかは、がん微小環境において増強された機能を有し得る。
【0034】
「免疫療法」とは、免疫応答を誘導、増強、抑制又は別の方法で修飾することを含む方法による、疾患に罹患しているか又は疾患に罹患する若しくは疾患の再発をきたす危険性がある、被験体の治療を指す。
【0035】
被験体の「治療」又は「療法」とは、疾患に関連する症状、合併症、状態又は生化学的徴候の発症、進行、発現、重症度又は再発を逆転させる、緩和する、改善する、阻害する、減速させる又は予防する目的で、被験体に対して実施される任意の種類の介入若しくは工程、又は被験体への活性物質の投与を指す。
【0036】
「内因性免疫応答を増強する」とは、被験体における既存の免疫応答の有効性又は効力を増加させることを意味する。有効性及び効力のこの増加は、例えば、内因性宿主免疫応答を抑制する機構を克服することによって又は内因性宿主免疫応答を増強する機構を刺激することによって、達成され得る。
【0037】
「被験体」には、任意のヒト又はヒト以外の動物が含まれる。
【0038】
本発明のAbなどの薬剤又は治療薬の「治療有効量」又は「治療上有効な用量」は、単独で又は別の治療薬と組み合わせて使用される場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度及び持続時間の増加又は疾患の苦痛による機能低下若しくは障害の予防によって証明される疾患の退行を促進する、薬剤の量である。疾患の退行を促進する治療薬の能力は、当業者に公知の様々な方法を用いて、例えば臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効果を予測する動物モデル系において、又はインビトロアッセイで薬剤の活性を検定することによって評価することができる。
【0039】
「がん退行を促進する」とは、有効量の薬剤を単独で又は抗腫瘍薬と組み合わせて投与すると、腫瘍増殖若しくは腫瘍サイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の苦痛による機能低下若しくは障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、治療に関する「有効な」及び「有効性」という用語には、薬理学的有効性及び生理学的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性は、患者におけるがんの退行を促進する薬剤の能力を指す。生理学的安全性とは、薬剤の投与によって生じる細胞、臓器及び/又は生物レベルでの毒性又は他の有害な生理学的作用(副作用)のレベルを指す。
【0040】
「免疫関連」応答パターンとは、がん特異的免疫応答を誘導することによって又は先天免疫過程を改変することによって抗腫瘍効果を生じさせる免疫療法剤で治療されたがん患者においてしばしば観察される、臨床応答パターンを指す。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価において疾患進行として分類され、薬剤の失敗と同義である、腫瘍負荷の初期増加又は新たな病変の出現に続く有益な治療効果を特徴とする。したがって、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれらの薬剤の作用の長期モニタリングを必要とし得る。
【0041】
薬剤の治療有効量は、がんを発症する危険性のある被験体(例えば前悪性状態を有する被験体)又はがんの再発をきたす危険性のある被験体に、単独で又は抗腫瘍薬と組み合わせて投与した場合、がんの発症又は再発を阻止する薬剤の任意の量である、「予防有効量」を含む。好ましい実施形態では、予防有効量は、がんの発症又は再発を完全に予防する。がんの発症又は再発を「阻止する」とは、がんの発症若しくは再発の可能性を低減すること、又はがんの発症若しくは再発を完全に予防することのいずれかを意味する。
【0042】
「腫瘍浸潤性炎症細胞」は、典型的には被験体における炎症応答に関与し、腫瘍組織に浸潤する任意の種類の細胞である。そのような細胞には、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、マクロファージ、単球、好酸球、組織球及び樹状細胞が含まれる。
【0043】
本発明の免疫原性物質及び生成される抗体は、1つのAb又はAbの組み合わせ、又はその抗原結合部分、及び薬学的に許容される担体を含む組成物、例えば医薬組成物中で構成され得る。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性のありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は注入による)に適する。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性及び非水性担体、並びに/又は補助剤、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含み得る。
【0044】
好ましい被験体には、免疫応答の増強を必要とするヒト患者が含まれる。本明細書中に開示される免疫治療方法は、免疫応答を増強することによって治療することができる障害を有するヒト患者の治療に特に適する。特定の実施形態では、本方法は、感染因子によって引き起こされる疾患に罹患した被験体の治療のために用いられる。好ましい実施形態では、この方法は、がんに罹患しているか又はがんに罹患する危険性のある被験体の治療に用いられる。
【0045】
「がん免疫療法」
本明細書中で使用される場合、がん免疫療法は、転移性がんを有する患者の腫瘍サイズを縮小させることができる、免疫に基づく治療法を含み得るが、これに限定されない。現在、がん免疫療法には3つの主要なアプローチ、すなわち、エフェクター細胞を刺激すること及び/又は調節細胞を阻害することによる免疫反応の非特異的刺激、特異的抗腫瘍反応を増強するための能動的免疫化(がんワクチンとして知られる)、並びに抗腫瘍抗体又は抗腫瘍活性を有する活性化免疫細胞の受身移入(養子免疫療法としても知られる)がある(DeVita et al.,2008)。
【0046】
「併用療法」特定の実施形態では、本明細書中で論じる免疫調節剤を、重大な全身毒性を伴わずに腫瘍負荷を低減するのに有効であり、免疫応答の有効性を改善するように作用し得る1つ以上の抗増殖剤/化学療法剤と組み合わせて使用し得る。薬剤は、同時投与併用療法及び/又は共製剤化併用療法として組み合わせることができる。
【0047】
いくつかの投薬レジメン又は投与形態において2つ以上の薬剤を一緒に使用する併用療法は、典型的には以下の1つ以上の目標を有する:(i)最小の交差耐性を有する薬剤を組み合わせることによって獲得耐性が生じる頻度を低減すること、(ii)より少ない副作用で効果を達成するために、重複しない毒性及び類似の治療プロフィールを有する薬剤の用量を減少させること、すなわち治療指数を高めること、(iii)別の薬剤の使用を介して1つの薬剤の作用に細胞を感作させること、例えば細胞周期段階又は成長特性を改変すること、並びに(iv)2つの薬剤の生物学的活性における相加性又は相加性よりも大きな作用を利用することによって効力の増強を達成すること(Pegram,M.,et al(1999)Oncogene 18:2241-2251;Konecny,G.,et al(2001)Breast Cancer Res.and Treatment 67:223-233;Pegram,M.,et al(2004)J.of the Nat.Cancer Inst.96(10):739-749; Fitzgerald et al(2006)Nature Chem.Biol.2(9):458-466;Borisy et al(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(13):7977-7982)。Loewe相加性(Chou,T.C.and Talalay,P.(1977)J.Biol.Chem.252:6438-6442;Chou,T.C.and Talalay,P.(1984)Adv.Enzyme Regul.22:27-55;Berenbaum,M.C.(1989)Pharmacol.Rev.41:93-141)及びBliss独立作用/相乗作用(Bliss,C.I.(1956)Bacteriol.Rev.20:243-258;Greco et al(1995)Pharmacol.Rev.47:331-385)は、50%標的阻害を達成するのに必要な薬剤の用量であり、最も単純な場合にはKiに等しいIC50などのパラメータに基づき、単剤療法と比較して併用療法の予想される用量応答関係を計算するために使用される方法である。
【0048】
「化学療法剤」は、作用機序に関わらず、がんの治療において有用な化合物である。化学療法剤のクラスには、アルキル化剤、代謝拮抗物質、紡錘体阻害剤植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤及びキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。化学療法剤には、「標的療法」及び従来の化学療法で使用される化合物が含まれる。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(R)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(R)、Sanofi-Aventis)、5-FU(フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、CAS番号51-21-8)、ゲムシタビン(GEMZAR(R)、Lilly)、PD-0325901(CAS番号391210-10-9、Pfizer)、シスプラチン(シス-ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663-27-1)、カルボプラチン(CAS番号41575-94-4)、パクリタキセル(TAXOL(R)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(R)、Genentech)、テモゾロミド(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド、CAS番号85622-93-1、TEMODAR(R)、TEMODAL(R)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブト-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン、NOLVADEX(R)、ISTUBAL(R)、VALODEX(R))及びドキソルビシン(ADRIAMYCIN(R))、Akti-1/2、HPPD及びラパマイシンが挙げられる。
【0049】
化学療法剤のさらなる例には、以下のものが含まれる:オキサリプラチン(ELOXATIN(R)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(R)、Millennium Pharm.)、スーテント(SUNITINIB(R)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(R)、Novartis)、イマチニブメシレート(GLEEVEC(R)、Novartis)、XL-518(MEK阻害剤、Exelixis、WO2007/044515)、ARRY-886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF-1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ-235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL-147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(R)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(R)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(R)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SARASAR(商標)、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(R)、BAY43-9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(R)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(R)、Pfizer)、チピファルニブ(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、ABRAXANE(商標)(クレモフォール不含)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(R)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(R)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスファミド(TELCYTA(R)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(R)、NEOSAR(R));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;エチレンイミン類及びメチルメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード類、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、カリケアマイシンγ1I、カリケアマイシンωI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183-186);ジネマイシン、ジネマイシンA;ビスホスホネート類、例えばクロドロネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン類、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフロルニチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;ガリウムニトレート;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド類、例えばメイタンシン及びアンサミトシン類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(R)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(T-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(R));ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(R),Roche);イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド類、例えばレチノイン酸;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体。
【0050】
「化学療法剤」の定義には、以下のものも含まれる:(i)例えばタモキシフェン(NOLVADEX(R);タモキシフェンシトレート)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(R)(トレミフェンシトレート)を含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(R)(メゲストロールアセテート)、AROMASIN(R)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(R)(ボロゾール)、FEMARA(R)(レトロゾール;Novartis)及びARIMIDEX(R)(アナストロゾール;AstraZeneca)などの、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素、アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);(iv)MEK阻害剤(WO2007/044515)などのプロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子、例えばPKC-α、Raf及びH-Rasの発現を阻害するもの、例えばオブリメルセン(GENASENSE(R)、Genta Inc.);(vii)VEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(R))及びHER2発現阻害剤などのリボザイム;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(R)、LEUVECTIN(R)及びVAXID(R);PROLEUKIN(R)rIL-2;LURTOTECAN(R)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(R)rmRH;(ix)ベバシズマブ(AVASTIN(R)、Genentech)などの抗血管新生剤;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体。
【0051】
また、「化学療法剤」の定義には、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(R)、Genentech)などの治療用抗体;セツキシマブ(ERBITUX(R)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(R)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(R)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(R)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)及び抗体-薬剤複合体であるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(R)、Wyeth)も含まれる。
【0052】
本発明の免疫原性物質/治療薬と組み合わせて化学療法剤としての治療可能性を有するヒト化モノクローナル抗体は、以下のものの1つ以上を含み得るか又は除外し得る:アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ及びビシリズマブ。
【0053】
「スタンダードオブケア治療法」は、薬剤又は薬剤の組み合わせ、放射線療法(RT)、手術又は医師によって適切と認められ、受け入れられ、及び/若しくは特定の種類の患者、疾患若しくは臨床状況のために広く使用されている他の医学的介入を含む治療方法である。種々のタイプのがんに対するスタンダードオブケア治療法が、当業者に周知である。例えば、米国における21の主要ながんセンターの連合である全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)は、多種多様ながんに対するスタンダードオブケア治療についての詳細な最新情報を提供するNCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン(NCCN GUIDELINES(R))を発行している(NCCN GUIDELINES(R)、2013参照)。
【0054】
キット:治療用途のための医薬キット及び診断キットを含むキットも、本発明の範囲内である。
【0055】
本明細書中で使用される場合、本開示のさらなる態様は、用量漸増;患者コホート;安全性;及び薬物動態/薬力学分析に関する態様及び因子を含む。
【0056】
広義には、免疫系は自然免疫と適応免疫に分けることができる。自然免疫は、2つのうちでより原始的であり、物理的障壁(例えば皮膚)、非特異的防御細胞(例えばマクロファージ)及び種々のサイトカイン(例えばIL-1)などの非特異的防御からなる。一般に、ワクチンは、特定の病原体又は疾患に対する自然免疫系を上方調節することはないが、ワクチンに添加されるアジュバントは、自然免疫を非特異的に活性化することができ、これが適応免疫応答を改善し得る。適応免疫は、体液性(すなわち抗体)及び細胞性(例えば細胞傷害性T細胞)免疫応答にさらに分けることができる。体液性免疫応答のエフェクター細胞は、適応免疫のみに特化された細胞(例えばTリンパ球及びBリンパ球)で構成される;しかし、自然免疫の細胞は必須の機能(例えば抗原提示)を提供する。したがって、例えば、ウイルスに対する抗体産生の誘導は、いくつかの細胞型の一連の複雑な相互作用を必要とする。簡単に言うと、これらには、樹状細胞によるウイルス成分(例えばウイルスのエンベロープタンパク質)の捕捉及びプロセシングが含まれ、これらが次に、提示される抗原に特異的なT細胞に提示される。提示された抗原によって活性化されると、T細胞は、ウイルス特異的B細胞が侵入病原体に対する抗体を産生するのを「助ける」。
【0057】
寛容
免疫系は宿主抗原を認識する能力を有するが、通常、そのような応答は観察されない(すなわち免疫系は自己に対する寛容を示す)ことが長い間認められてきた。この自己に対する寛容は、「正常」抗原及び腫瘍抗原の両方を含む。
【0058】
一態様では、本開示は、腫瘍抗原グロボHに対する免疫系の寛容を破壊することができるワクチンを特徴とする。
【0059】
寛容の種類
寛容は、中枢性寛容及び/又は末梢性寛容のいずれかから生じ得る。中枢性寛容は、自己を認識するTリンパ球及びBリンパ球の成熟を妨げる。自己寛容は絶対的ではなく、抗自己抗体を産生するいくつかのB細胞は正常個体で見出され得る。しかし、B細胞活性化の必須成分である自己抗原に対する抗自己T細胞の助けがないため、自己に対する抗体はまれにしか見出されない。末梢性寛容は、自己に対する免疫応答の進行中の能動的抑制であり、主にTreg細胞によって維持されると考えられている。Treg細胞は、正常抗原及び腫瘍抗原の両方を含む自己抗原に対するT細胞支援の誘導を妨げると考えられている。
【0060】
自己に対する寛容を打ち破るための方法
一態様では、本開示は、グロボHシリーズの腫瘍抗原に対する中枢性及び末梢性寛容の両方を克服するための組成物及び方法を特徴とする。例えば、いくつかの態様では、組成物及び方法は、Treg抑制を低減し、抗グロボH抗体を産生するB細胞に対するT細胞支援を刺激するのに有用である。
【0061】
いくつかの態様では、本開示は、末梢性寛容を克服するためのTreg下方調節剤の同時投与を特徴とする。態様において、Treg下方調節剤は、シクロホスファミド、抗Treg抗体又は(選択的に)Treg活性を阻害する(適応免疫系の他の細胞よりも)他の薬剤であり得る。
【0062】
したがって、いくつかの態様では、シクロホスファミドをグロボH-KLH複合体と同時に患者に投与することができ、それによって抗グロボH抗体産生のTreg抑制を阻止することができる。いくつかの態様では、Treg下方調節剤はまた、グロボH抗原陽性細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球の増殖拡大を刺激し、グロボHを発現する腫瘍細胞の直接死滅を可能にし得る。
【0063】
B細胞抗体産生は、抗原を認識するT細胞からの助けを必要とすることが認識されている。しかし、中枢性寛容及び/又は抗原提示欠損は、グロボH(自己)抗原のT細胞認識の欠如をもたらし得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、KLHなどの強い免疫原性物質へのグロボHシリーズ抗原の結合を介して抗グロボH抗体を産生するB細胞に対するT細胞の支援を刺激するための組成物及び方法を特徴とする。KLHは、系統発生的に遠い生物で、大きな分子量(390,000を超える)を有しており、どちらも免疫原性を高めることが公知の特性である。グロボH複合体を患者に投与する場合、樹状細胞及び/又は他の抗原提示細胞はグロボH複合体をプロセシングし、例えばグロボH-KLH複合体をグロボHとKLH成分にプロセシングする。T細胞はKLH抗原を認識し、これが次に、B細胞が所望の抗グロボH抗体を産生するのを助ける。
【0064】
腫瘍ワクチンの他の作用
抗体価の増加:いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、閾値力価を上回る抗体応答を生じさせることによる臨床的利益を特徴とする。閾値力価未満では、抗腫瘍応答は有意な臨床的利益を生じさせるには不十分であり得る。
【0065】
抗グロボH抗体の親和性の増加:いくつかの実施形態では、本開示の方法は、グロボH複合体を患者に2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はそれ以上投与することを特徴とする。
【0066】
いくつかの実施形態では、グロボHに対する最も高い親和性を有する表面抗体を発現するB細胞は、より低い親和性の抗体を発現するB細胞よりも良好に抗原に結合するため、注入された抗原によって優先的に刺激されるので、反復投与は生じる抗体応答の親和性を高める。いくつかの実施形態では、投与の各サイクルは、抗体応答を高め、抗体の親和性及び/若しくはアビディティを増加させ、並びに/又はグロボH複合体のグロボH部分の免疫原性がより低い部位に抗体の産生を誘導する。
【0067】
いくつかの実施形態では、反復投与はさらに、通常、単回(又は抗原への暴露の少ない回数の反復)では意味のある応答を生じさせるのに十分な数で存在しない低頻度のB細胞(例えば、それらはほとんどの抗体が結合しないエピトープに結合し得る)を誘導し、抗腫瘍応答の長期間の維持にとって重要であり得る抗体分泌形質細胞(「抗体分泌形質細胞」はB細胞が分化するものである)及び記憶B細胞を増殖拡大させ、並びにAbクラススイッチの速度を増加させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、反復投与はまた、グロボHシリーズ腫瘍抗原に対するB細胞の胚中心の拡大及び高親和性抗グロボH抗体を含む胚中心の優先的拡大をもたらす。
【0069】
IgGサブクラスの拡大:T細胞の支援は、B細胞が重鎖クラス及びサブクラスの発現を切り替えるように誘導することができる。ヒトにおいては、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の4つのIgGサブクラスが存在する。各IgGサブクラスは、それを他のサブクラスと区別する生物学的エフェクター機能を有する。4つのサブクラスの全ての発現は、抗グロボH応答の腫瘍死滅活性を最大にし得る。
【0070】
抗体応答の速度の増加:いくつかの実施形態では、グロボH-KLH複合体、シクロホスファミド及びアジュバントの反復接種は、KLHへの結合、シクロホスファミド又はアジュバントの反復注射なしで得られるよりも迅速な抗体の拡大をもたらす。
【0071】
特定の実施形態では、OBI-822は、グロボH誘導Notchシグナル伝達を低減することによってがんの免疫抑制をブロックすることができる。
【0072】
特定の態様では、OBI-822は、がん治療におけるグロボHの特定の負の形質に対抗することができる。
【0073】
特定の実施形態では、OBI-822はグロボHを枯渇させ、これは次にNotch 1分解を増加させ、腫瘍の免疫抑制作用をブロックし、腫瘍退縮をもたらす。
【0074】
特定の実施形態では、OBI-822は、T細胞増殖及びサイトカイン分泌のグロボHに関連する減少に対抗することができる。
【0075】
特定の実施形態では、OBI-822は、B細胞分化及びIg分泌のグロボHに関連する阻害に対抗することができる。
【0076】
がんの発症におけるグロボシリーズ抗原の役割は重要である。特定の実施形態では、それらは、カスパーゼ3の活性化を阻害することによって腫瘍生存に影響を及ぼすことができる。特定の実施形態では、カスパーゼ3の不活性化を逆転させ、アポトーシスを導く。
【0077】
特定の実施形態では、グロボシリーズのクラスター化は、カスパーゼ3カスケードを阻害することによって腫瘍生存を増強する。
【実施例0078】
出願人の本開示並びに肯定的免疫原性応答及び治療効果を裏付ける例示的データ以前に、グロボHワクチンの前臨床試験;第I相試験におけるQS-21とOBI-822;及びがん臨床試験におけるOBI-821とOBI-822を含む、実施例の項で証明されるアジュバントとしてのOBI-821の使用の成功に関連して本明細書で開示される免疫調節剤の有効な使用についての事前の決定的な実証/報告はない。
【0079】
治験の概要:グロボHは、乳がんにおいて高発現されることが認められた糖脂質である。OBI-822、グロボH-KLH複合体及び2つの第I相試験におけるアジュバントであるOBI-821を用いた能動免疫療法は、グロボHを発現する乳がん細胞へのインビトロ結合及び細胞傷害性を媒介することができるグロボH特異的抗体を誘導した。
【0080】
方法:国際的無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験(NCT01516307)において、進行性疾患(PD)の2以下の事象があり、1回以上の抗がんレジメン後に少なくとも安定した疾患(SD)を達成した転移性乳がんの患者を、第1、2、3、5、9、13、17、25、37週に又はPDまで、低用量のシクロホスファミド(300mg/m)と組み合わせて皮下OBI-822(グロボH 30μg)/OBI-821(100μg)又は対照(PBS)を摂取するように2:1に無作為に割り付ける。ホルモン療法は許容される。有効性の主要及び副次評価項目は、体液性抗体応答と相関する、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)である。
【0081】
結果:349名の患者を無作為に割り付け、348名が治験薬(ITT)を摂取し、168名(48%)が9回全ての注射を受けた。70%はホルモン受容体陽性乳がんを有しており、13%はトリプルネガティブであり、62%はホルモン療法を受けていた。グロボH特異的IgG応答を発現した患者及びグロボH特異的IgG応答を発現しなかった患者を含む全患者において、PFS(HR、0.96[95%CI、0.74-1.25]P=0.77)又は中間OS(HR、0.79[95%CI、0.51-1.22]P=0.29)に差は認められなかった。しかし、ベースライン疾患状態及び/又はホルモン使用について調整すると、治療期間中のいずれかの時点で1:160以上の力価でOBI-822/OBI-821に対するグロボH特異的IgG応答を発現した患者の50%において、対照(PFSについては、HR、0.71[95%CI、0.52-0.97]P=0.029、OSについては、HR、0.57[95%CI、0.33-0.97]P=0.04)及び非応答者(PFSについては、HR、0.52[95%CI、0.37-0.71]P<0.0001、OSについては、HR、0.52[95%CI、0.29-0.92]P=0.025)と比較してPFS及びOSが有意に改善された。時間依存型Coxモデルにおいて、対照と比較してOBIの全9回の注射を受けた患者ではPFSが改善された(HR、0.66[95%CI、0.42-1.01]P=0.057)。OBI-822/OBI-821は良好に耐容された;最も一般的な薬剤関連有害事象は、グレード1/2の注射反応であった。
【0082】
結論:OBI-822/OBI-821によるワクチン接種は、ITTにおけるPFSを改善しなかった。しかし、PFS及び中間OSは、ワクチンに対する免疫応答を発現した患者において有意に改善された。これらのサブグループデータを、最終的な第III相試験を設計するために使用する。
【0083】
治験デザインの理論的根拠:OBI-822は、能動免疫療法の新規クラスに属する新しい治験抗がん治療薬である。これは、担体タンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に共有結合した腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)、グロボHからなる合成糖タンパク質である。OBI-821は、サポニンベースのアジュバントである。グロボHは、乳がん、前立腺がん、胃がん、肺がん、結腸がん、膵臓がん及び卵巣がん等のような多くの上皮がんにおける悪性腫瘍の表面上に高レベルで発現される。抗原の免疫原性は、グロボHをKLH担体タンパク質に結合してOBI-822(グロボH-KLH)を形成し、アジュバントであるOBI-821と同時投与することによって増強される。
【0084】
試験デザイン:国際的無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験(NCT01516307)は、41週間の治療期間にOBI-822の9回の注射、無作為化から最大2年までの疾患進行追跡期間及び最大5年までの生存追跡期間からなる。組織学的又は細胞学的に確認された転移性BCを有する合計349名の以前に治療された女性を、低用量のシクロホスファミド(300mg/m)と組み合わせた皮下OBI-822(グロボH 30μg)/OBI-821(100μg)又は対照(PBS)での処置に無作為に割り付ける(2:1)。
【0085】
適格基準:(選択基準及び除外基準を確立した)
1.選択基準
2.除外基準
【0086】
試験手順スケジュール:
1.スクリーニング期-無作為化の3週間前(訪問1)
2.治療期間:第1週~第3週(訪問2~訪問5)
3.治療期間:第5週~第41週(訪問6~訪問19)
4.追跡期間(8週間ごと)
5.早期中止基準を確立した
6.生存追跡期間(12週間ごと)
7.完全性のために他の試験手順を検討した
【0087】
治療計画:(考慮される項目)
1.無作為化及び盲検化
2.シクロホスファミド投与スケジュール
3.OBI-822/OBI-821及びプラセボ投与スケジュール
【0088】
毒性の管理及び治療の中止:(デザインの一部として考慮された例示的因子)
1.一般的管理
2.薬剤誘発毒性の管理
3.個別被験者試験治療(OBI-822/OBI-821、プラセボ)中止のガイドライン
4.シクロホスファミド治療中止のガイドライン
【0089】
試験期間中に許可される治療及び禁止される治療:(デザインの一部として考慮された例示的な因子)
1.試験期間中許可される治療
2.試験期間中禁止される治療
【0090】
薬剤情報:(デザインの一部として考慮される例示的な因子)
1.シクロホスファミド
2.OBI-822(グロボH-KLH)
3.OBI-821
4.臨床試験材料(CTM)の供給、包装、ラベル付け及び保存
【0091】
試験評価項目:
1.有効性評価
2.安全性評価
3.安全性変数
【0092】
応答基準:
1.腫瘍病変の測定可能性の定義
2.腫瘍病変の記録
3.応答の評価
4.プロトコル治療からの除外の基準
5.試験外判定基準
【0093】
統計的考察:
1.目的及び仮説
2.標的サンプルサイズ
3.試験評価項目の評価
4.統計方法
5.安全性分析
【0094】
有害事象:
1.有害事象の定義:
2.治療との関係の評価
【0095】
有効性の実証:特定の実施形態では、シクロホスファミドを伴うOBI-822/OBI-821は、転移性乳がんを有する非応答者(IgG/IgM応答なし)と比較して「応答者」(グロボH特異的IgG/IgMの増加)を改善した。
【0096】
転移性乳がんを有する患者における免疫後の体液性免疫応答(グロボH特異的IgG/IgM)の頻度及び程度並びにPFS及びOSとの相関。
【0097】
シクロホスファミドを伴うPBSと比較した、シクロホスファミドを伴うOBI-822/OBI-821の安全性及び毒性プロフィール。
【0098】
特定の例としての臨床試験:転移性乳がんを有する被験者におけるグロボH-KLH(OBI-822)及びOBI-821アジュバントを用いた能動免疫療法の二重盲検無作為化第II/III相試験。
【0099】
治療計画:これは、転移性乳がんを有する被験者における二重盲検無作為化2アーム第II/III相試験である。
【0100】
スクリーニング時の腫瘍評価:全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)をスクリーニング時に実施し、ベースラインスキャンとして使用する。全身CTスキャンがスクリーニングスキャンから2週間以内に実施された場合は、この実施されたスキャンをベースラインスキャンとして使用することができる。スクリーニング前の全身CTスキャンが利用できない場合、転移性乳がんの診断後の病変部を含む切片は、腫瘍状態を確認するためにCT又はMRIスキャンからの画像を有さなければならない。
【0101】
腫瘍応答の状態(SD、PR、CR)は、RECIST 1.1基準に基づく。スクリーニング時(ベースライン)の確証的CTスキャンをスクリーニング前の過去の全身CTスキャンと比較した。スクリーニングスキャン前のスキャンの疾患状態は、スクリーニングスキャンと同じ疾患状態でなければならない。SDについては少なくとも6週間の間隔が必要であり、PR及びCRについては少なくとも4週間の間隔が必要である。
【0102】
スクリーニング時に新たな病変が検出された場合(すなわち、以前の画像では明らかでない腫瘍及び/又は以前に画像には記録されていない腫瘍)、この症例はPDとみなされ、したがって選択に適格ではない。
【0103】
層別化のための疾患状態を、疾患の証拠がある(PR/SD)又は疾患の証拠がない(CR)のいずれかに分類する。
【0104】
スクリーニング前の転移性病変の切除により疾患の証拠がない(CR)被験者については、治験責任医師は、外科的切除の前に腫瘍応答状態が画像によって記録されることを確実にする必要がある。
【0105】
腫瘍の状態は、登録されている場合、疾患の証拠(PR/SD)として記録される。
【0106】
画像は施設の放射線科医によって評価され、施設の解釈及び決定に干渉されない独立した検討のために、コピーが中央の放射線検査室に送られる。
【0107】
被験者を、OBI-822/OBI-821(治療群)又はPBS(対照群)のいずれかを摂取するように2:1の配分で無作為に割り付ける。
【0108】
被験者を、試験中のホルモン療法の使用及び登録時の疾患状態に従って層別化する。
【0109】
ホルモン療法の非使用者として登録された場合、患者が試験中にホルモン療法を開始することは認められない。
【0110】
ホルモン療法の使用者として登録された場合、患者はホルモン療法を受けなければならない。
【0111】
以前のホルモン療法による毒性の不耐性のためにホルモン療法の別のレジメンに変更することは許可される。
【0112】
4つの層が存在する:
1.ホルモン療法の使用者-疾患の証拠あり(PR/SD)
2.ホルモン療法の使用者-疾患の証拠なし(CR)
3.ホルモン療法の非使用者-疾患の証拠あり(PR/SD)
4.ホルモン療法の非使用者-疾患の証拠なし(CR)
【0113】
被験者の腫瘍生検/組織試料を収集して、腫瘍のグロボH発現を試験し、治療応答と相関させる。
【0114】
特定の併用療法の実施形態では、治療被験者に、第1、5、9、13、17、25及び37週(訪問2、6、8、10、12、14及び17)に又は疾患の進行まで、シクロホスファミド(300mg/m)を静脈内投与する。
【0115】
OBI-822/OBI-821又は対照(PBS)を第1、2、3、5、9、13、17、25及び37週(訪問3、4、5、7、9、11、13、15及び18)に皮下投与する。疾患の進行まで又は無作為化から最大2年まで被験者を追跡する。
【0116】
治療中及び治療の開始から最大2年まで又は疾患の進行までの追跡期間中、グロボH-KLHに対する免疫応答の評価のために血液試料を採取する。
【0117】
試験中の腫瘍評価
1.全身CTスキャン(胸部、腹部及び骨盤)を、試験の終了まで又は疾患の進行まで8週間ごとに実施する。
2.各時点からのCTスキャンを、RECIST 1.1基準に基づき、無増悪生存期間(PFS)及び腫瘍応答状態(PD、SD、PR、CR)に関してベースラインスキャン(スクリーニング時)及び過去の時点と比較する。
【0118】
全ての生存被験者を、全生存期間(OS)に関して無作為化から最大5年まで12週間の間隔で追跡調査する。
【0119】
PDの被験者については、進行の時点で又は被験者が試験から離脱する前に血液及び尿試料を採取する。
【0120】
[実施例1]
OBI-822の修正インテント・トゥ・トリート(Mitt)集団についての無増悪生存期間(PFS)の臨床試験データ
OBI-822(元の名称OPT-822)の修正インテント・トゥ・トリート(mITT)集団についてのカプラン-マイヤープロットの無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)は、患者がOBI-822の9回の注射を完了した後、プラセボと比較してより高いPFS及びOSが存在することを示した。
【0121】
ELISAによるヒト抗グロボH IgG力価測定の臨床試験データ
試薬/緩衝液の調製
コーティング抗原:1mg/mLのグロボH-セラミドをエタノール(OBI Pharma Inc.)に溶解した;ヒト血清の二次抗体:ヤギ抗ヒトIgG-AP(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-055-008);10×PBS、pH7.4(Gibco、カタログ番号70011-044);Tween-20(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2287);基質溶液:アルカリホスファターゼイエロー(pNPP)液体基質(Sigma-Aldrich、カタログ番号P7998);ブロッキング緩衝液(Sigma-Aldrich、カタログ番号B6429);PBST:PBS中0.05%tween-20;停止溶液:アルカリホスファターゼ停止溶液(Sigma-Aldrich、カタログ番号A5852)。
【0122】
アッセイ手順
グロボH-セラミドをエタノール中で4μg/mLに希釈した。希釈したグロボH-セラミド溶液50μLを標準反応プレートの各ウェルに添加した。反応混合物を含むプレートを室温で一晩インキュベートした。プレートをデカントし、200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄した。ブロッキング緩衝液100μLを各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。
【0123】
血清試料の希釈:試料を20、40、80、160、320、640、1280~2560倍の範囲のブロッキング緩衝液で2倍連続希釈した(20倍希釈液を作製するには、血清試料40μLをブロッキング緩衝液760μLに添加した)。血清試料50μLを、コーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、室温で60分間インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。0.3mg/mLの保存抗ヒトIgG-AP二次抗体40μLを、1:200希釈のためにブロッキング緩衝液7960μLに添加した。希釈した抗ヒトIgG-AP 50μLを、コーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、室温で45分間インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。基質溶液100μLを、コーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、37℃で20分間インキュベートした。停止溶液50μLを各ウェルに添加した。プレートをELISAリーダーによって吸光度405nmで読み取った。
【0124】
データ分析
カットオフ値は、コーティングしたプレートからの二次抗体のみの平均OD値と、コーティングしていないプレートからの二次Abのみの平均OD値との差プラス0.1によって得た。
【0125】
力価は、各希釈におけるコーティングしたプレートのOD値とコーティングしていないプレートのOD値との差として定義した。カットオフ値を上回る最も高い希釈液は、抗グロボH IgG力価であった。GraphPad Prism 6ソフトウェアを用いて統計分析を行った。
【0126】
臨床患者の特徴を表1に列挙した。
【0127】
【表1】
【0128】
無増悪生存期間(PFS)は、OBI-822がいくつかの生物学的サブタイプの乳がん(ステージI、II、III、ER(+)、PR(+)、HER2(+)又はトリプルネガティブ)において反応性であることを示した。異なる腫瘍サブタイプ間のグロボH発現のプロフィールを表2に列挙した。
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
図4及び5は、試験薬の9回の注射を受けた後の無増悪生存期間(PFS)を示した。これは、OBI-822ワクチンが乳がん患者の生存率をより長期間延長できることを示した。
【0132】
図6及び7は、IgG免疫応答を伴う/伴わない(IgG基準1:640)、試験薬の摂取後の無増悪生存期間(PFS)/全生存期間(OS)を示した。これは、OBI-822ワクチンがIgG免疫応答を誘導し、乳がん患者の生存率をより長期間延長できることを示した。
【0133】
グリカンアレイによるヒト抗グロボH IgM力価測定の臨床試験データ
背景
グリカンアレイプラットフォームは、マイクロ流体カートリッジ内でELISAが実施される自動化Agnitio BioICシステムを利用する。マイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体ポンプ及びバルブのアレイ、チャネルネットワーク、試薬貯蔵リザーバ、グリカンアレイ反応ゾーン及び廃棄物貯蔵リザーバを含む。自動化Agnitio BioICシステムは、それぞれのリザーバからの試薬及び試料を、化学発光を伴う多重ELISA反応のための反応ゾーンにポンプで送り込む。収集されたデータを、Agnitio Science and Technology Inc.によって提供されるLabITソフトウェアによって分析する。Agnitio BioICシステムの装置の仕様は、以前のPCT特許出願(WO2017041027A1)に開示されている。
【0134】
試薬/緩衝液の調製
66μLの、正常ヒト血清(NHS)又は220名の乳がん患者試料からの血清及び124のプラセボ試料からの血清を、試料希釈緩衝液(BioCheck Inc.、カタログ番号MB10175)594μLに添加して、10倍希釈液を形成した。二次抗体溶液は、複合体緩衝液(SuperBlock(TBS)ブロッキング緩衝液+0.2%Tween20、Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号37535)98μL中にホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトIgM(KPL Inc.、カタログ番号474-1003)2μLを混合して、50倍希釈液を形成することによって調製した。希釈した二次抗体溶液40μLを複合体緩衝液2360μLにポンプで注入して、二次抗体溶液(3000倍希釈)を形成した。
【0135】
アッセイ手順
洗浄緩衝液(0.2%(v/v)Tween 20(J.T.Baker、カタログ番号JTB-X251-07)中のリン酸緩衝生理食塩水(Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号70011))620μlを「洗浄」リザーバに添加した。ブロッキング緩衝液(無タンパク質ブロッキング緩衝液、Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号37571)120μLを「ブロッキング」リザーバに添加した。二次抗体溶液120μLを「複合体」リザーバに添加した。血清100μLを「血清」リザーバに添加した。基質緩衝液(SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate、Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号37074)120μLを10分間で「基質」リザーバに添加した。
【0136】
データ分析
グリカンアレイをAgnitio BioIC Pumping Machineによって30分間加圧した。結合した血清を、Agnitio BioIC Analyzerを用いて視覚的にモニターした。アレイの吸光度を抗ヒトグロボH IgGに関する「Abレベル(μg/mL)」に換算した。内部曲線は、0.0625、0.125、0.25、0.5、0.75及び1μg/mLのヒトIgMを用いて作成した。各チップの内部曲線の線形回帰を用いて勾配及び切片を計算した。特定の例では、Abレベル(μg/mL)=[(生データ-切片)/勾配]×0.1である。
【0137】
図8は、初期IgM免疫応答を伴う/伴わない、第2週に試験薬の1回の注射を受けた後の無増悪生存期間(PFS)を示した。これは、OBI-822ワクチンが初期IgM免疫応答を誘導し、乳がん患者の生存率をより長期間延長できることを示した。
【0138】
ヒト抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)IgG力価アッセイに基づく臨床試験データを用いた有効性の実証
ヒト抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)IgG力価アッセイを用いて、グロボシリーズ抗原ワクチンの投与によって生じる免疫学的反応が、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原及び/又は担体タンパク質によって誘導され得ることを示した。
【0139】
試薬/緩衝液の調製
KLH(Sigma-Aldrich、カタログ番号H1158、海洋収穫物、ストック濃度5mg/mL);コーティング緩衝液:カーボネート-ビカーボネート緩衝液、pH9.2(Sigma-Aldrich、カタログ番号C3041-50CAP);二次抗体:ヤギ抗ヒトIgG-HRP(KPL、カタログ番号474-1002);10×PBS、pH7.4(Gibco、カタログ番号70011-044);Tween-20(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2287);TMB基質溶液(Clinical、カタログ番号01016-1-500);ブロッキング緩衝液(Sigma-Aldrich、カタログ番号B6429);PBST:PBS中0.05%tween-20;停止溶液:1N HSO
【0140】
アッセイ手順
KLHをコーティング緩衝液で4μg/mLに希釈した。希釈したKLH溶液50μLを標準ウェルの各ウェルに添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。プレートをデカントし、200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄した。ブロッキング緩衝液100μLを各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。
【0141】
血清試料の希釈:試料を約1000、2000、4000、8000、16000、32000、64000~128000倍の範囲のブロッキング緩衝液で2倍連続希釈した(1000倍希釈液を作製するには、血清試料1μLをブロッキング緩衝液999μLに添加した)。試料50μLをコーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、次いで室温で1時間半インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。抗ヒトIgG-HRP二次抗体をブロッキング緩衝液で1:20000に希釈した。1mg/mLのストックから1μLを取り、ブロッキング緩衝液20mLに添加して1:20000希釈液を作製した。抗ヒトIgG-HRP 50μLをコーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、室温で45分間インキュベートした。プレートをデカントし、PBST 200μL/ウェルで3回洗浄した。TMB基質溶液100μLをコーティングしたプレート及びコーティングしていないプレートの各ウェルに添加し、次いで室温で5分間インキュベートした。停止溶液100μLを各ウェルに添加した。プレートをELISAリーダーによって吸光度450nmで読み取った。
【0142】
図9は、患者がOBI-822ワクチンの注射を受けた後の高い抗KLH IgG免疫応答を示した。合計30の臨床血清試料を3つの群(応答者:OBI-822ワクチン注射を受け、抗グロボH IgG/IgMレベルが上昇した;非応答者:OBI-822ワクチン注射を受け、抗グロボH IgG/IgMレベルが上昇しなかった)に分けた。これは、OBI-822ワクチンの投与が実際に抗KLH免疫応答を誘導できることを実証した。したがって、グロボシリーズ抗原ワクチンの投与によってもたらされる免疫学的反応は、グロボシリーズ抗原ワクチン、グロボシリーズ抗原又は担体タンパク質によって誘導することができる。
【0143】
[実施例2]
代表的な卵巣がんモデルを用いた有効性の実証
特定の例としての臨床試験:非進行性上皮卵巣がん又はファローピウス管がんを有する女性におけるグロボH-KLH(OBI-822/821)を用いた能動免疫療法のオープンラベル第II相試験。
【0144】
方法:これは、細胞減少手術を受けた後進行していなかったが、その後新たに診断されたステージII以上の上皮卵巣がん又はファローピウス管がんのために白金ベースの化学療法を受けた女性における、オープンラベル第II相試験であった。
【0145】
治療を受けるために参加する被験者については、第1、2、3、4、12、20、28、36、44及び52週(訪問1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10)にOBI-822(グロボH 30μg)/OBI-821(100μg)を皮下投与した。疾患状態は、RECIST 1.1基準を組み込んだ評価の結果に従って決定した。被験者は、客観的RECIST 1.1基準に基づいてPDを有すると評価された。RECIST基準のためのCTスキャン/MRIを、スクリーニング時、第28週及び第52週に実施した。腹部全体(腹部及び骨盤)のCTスキャンを、約24週間の間隔で治療中の指定された時点に実施した。CTスキャンのウィンドウ期間は、プロトコルスケジュールで予定された訪問から+/-14日間であった。予定されていなかった腫瘍評価を治験責任医師の裁量で実施し、これは、評価の時点で、ベースライン時に実施した検査と一致した。CT禁忌の被験者については、代わりにMRIを実施した。
【0146】
病変がない被験者、測定可能な疾患を有する被験者及び測定不能の疾患を有する被験者は、この試験への参加に適格であった。測定可能な疾患は、1つ以上の測定可能な病変(最長直径[LD]が、螺旋状コンピュータ断層撮影[CT]スキャンで10mm以上又は従来のCT、磁気共鳴イメージング[MRI]若しくはX線で20mm以上)の存在によって定義された。関与する全ての病変を代表する最大5つの測定可能な病変(器官当たり最大2つの病変)を、ベースライン時に標的病変(TL)として同定した。TLの客観的腫瘍応答を決定するために使用されるRECIST 1.1基準を表3に要約する。
【0147】
【表4】
【0148】
TLとして記録されない他の全ての病変(又は疾患の部位)は、非標的病変(NTL)として同定した。NTLの客観的腫瘍応答を決定するために使用されるRECIST基準を表4に要約する。
【0149】
【表5】
【0150】
新しい病変の詳細も記録した;1つ以上の新たな病変の存在を進行として評価した。全体的応答のRECIST評価を表5に要約する。
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
【表9】
【0155】
試験対象母集団:
患者の内訳:以下の患者データを要約し、募集した全ての被験者について提示した:スクリーニングされた患者、試験薬を摂取した患者、治療期間中に完了した患者及び中止された患者、追跡期間中に完了した患者及び中止された患者の数及び割合。
【0156】
全ての募集患者の試験群別の、各解析集団における患者の数及び割合並びに除外理由。
【0157】
プロトコル違反は、どのような違反がEVA集団から患者を不適格とするかを決定するために、データベースをロックする前に試験チームによって検討される。
【0158】
臨床結果:陰性対照(患者番号:065)(図10):評価日は、2015年3月18日又はそれ以前に開始された。これは、OBI-822治療が28週間(訪問7)以内にいかなる腫瘍生成ももたらさないことを示した。したがって、OBI-822の安全性が確認された。
【0159】
ステージIIIの卵巣がん(患者番号:035)(図11):評価日は、2014年4月24日又はそれ以前に開始された。患者の元の症状は、CTスキャンにより「サブセンチメートルの腸間膜リンパ節腫瘍」(病変カテゴリー:非標的腫瘍)であった。これは、OBI-822治療後、28週間(訪問7)以内に腫瘍の進行/転移がないこと(SD)を示した。したがって、OBI-822の腫瘍阻害能は28週間以内に確認される。
【0160】
ステージIVのファローピウス管がん(患者番号:041)(図12):評価日は、2014年5月22日又はそれ以前に開始された。患者の元の症状は、CTスキャンにより「肺腫瘍」(病変カテゴリー:非標的腫瘍)であった。これは、OBI-822治療後、28週間(訪問7)以内に腫瘍の進行/転移がないこと(SD)を示した。したがって、OBI-822の腫瘍阻害能は28週間以内に確認される。
【0161】
ステージIIIの卵巣がん(患者番号:060)(図13):評価日は、2015年1月6日又はそれ以前に開始された。患者の元の症状は、CTスキャンにより「腹膜腫瘍」(病変カテゴリー:非標的腫瘍)であった。これは、OBI-822治療後、28週間(訪問7)以内に腫瘍の進行/転移がないこと(SD)を示した。したがって、OBI-822の腫瘍阻害能は28週間以内に確認される。
【0162】
[実施例3]
OBI-822とOBI-821の混合の指示
保存条件:OBI-822及びそのプラセボであるPBSのバイアルは、2~8℃で保存する。OBI-821及びそのプラセボであるPBSのバイアルは、-15~-25℃で保存する。
【0163】
試験群:
A群:能動的治療群;注射あたりの投薬量:OBI-822(30μgのグロボHに相当)/100μgのOBI-821。総最終注入量:0.8mL。
【0164】
B群:対照群;注入あたりの投薬量:PBS。総最終注入量:0.8mL。
【0165】
治験薬:
バイアル1a(PBS:OBI-821対照試験品)充填容量-0.5mL。含量:10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH6.8;
バイアル1b(OBI-821)充填容量-0.5mL。含量:10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl中250μg/mL OBI-821、pH6.8;
バイアル2a(PBS:OBI-822対照試験品)充填容量-0.75mL。含量:100mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.2;
バイアル2b(OBI-822)充填容量-0.75mL。含量:100mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl中75μgのグロボH/mL OBI-822に相当、pH7.2。
【0166】
OBI-822とOBI-821の混合の指示:
治療の時点で、シリンジを用いてバイアル2a(PBSのみ)0.5mLを取り出し、バイアル1a(PBSのみ)に入れるか、又はバイアル2b(PBS中のOBI-822)0.5mLを取り出し、バイアル1b(PBS中のOBI-821)に入れる。バイアル(バイアル1a又はバイアル1bのいずれか)の内容物を、バイアルを穏やかに4~5回ひっくり返すことによって静かに混合する。バイアルを強く振とうしてはならない。この時点で、このバイアルはプラセボ(PBSのみ)又は治療薬(OBI-822+OBI-821)のいずれかを含んでおり、注射の準備ができている。次いで、被験者への注射のためにこのバイアルから0.8mLを取り出す。各試験群の最終投与量を表6に要約する。
【0167】
【表10】
【0168】
組み合わせたOBI-822とOBI-821の安定性は、室温で再構成してから10時間まで安定である。組み合わせた製品の投与は、潜在的な微生物増殖を最小限に抑えるために再構成から2時間以内に行うべきである。再構成から2時間以内に投与することが不可能な場合は、施設の薬局の標準操作手順に従って混合した製品を破壊し、治験薬管理記録に記録すべきである。図14は、治験薬の混合手順を示す。
【0169】
[実施例4]
許可される併用薬及び禁止される併用薬
許可される併用薬:
【0170】
アヘン製剤:痛みの管理のために使用してもよく、便秘の予防的治療も許可される。
【0171】
GCSF:医師が必要と考える場合は許可される。
【0172】
ビスホスホネート。
【0173】
ホルモン療法(ホルモン療法使用者として層別化されている被験者の場合)。
【0174】
使用される場合、ホルモン療法の選択される形態、用量又は用法は、毒性の不耐性に起因するのでない限り、一貫している必要があり、すなわち、治療の切り替え、さらなる療法の追加又は用量の増加があってはならない。全ての種類のホルモン療法をこの試験で使用することができ、一般的に使用されるホルモン療法を以下に列挙する。
【0175】
エストロゲン阻害剤(例えばタモキシフェン、Fareston)。
【0176】
アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール[Arimidex]、エキセメスタン[Aromasin]及びレトロゾール[Femara])。
【0177】
下垂体下方調節剤(例えばゴセレリン[Zoladex]、ロイプロリド[Lupron]-これらはLHRH類似体とも呼ばれる。
【0178】
Novaldex(R)(タモキシフェン選択的エストロゲン受容体調節剤、SERM)。
【0179】
Evista(R)(ラロキシフェン、別のSERM)。
【0180】
Faslodex(R)(フルベストラント、エストロゲン受容体下方調節剤)。
【0181】
抗凝固薬(レピルジン[Refludan])。
【0182】
酵素(ラスブリカーゼ[Elitek])。
【0183】
造血成長因子。
【0184】
投与方法は、好ましくは、表7に列挙される併用薬の不在下で実施される。
【0185】
【表11】
【0186】
禁止される併用薬(例えばシクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、リツキシマブ等)。
【0187】
東部腫瘍学共同研究グループ(ECOG)パフォーマンス。
【0188】
これらの尺度及び基準は、被験者の疾患がどのように進行しているかを評価し、疾患が被験者の日々の生活能力にどのように影響するかを評価し、適切な治療及び予後を決定するために医師及び研究者によって使用される。それらは、医療従事者がアクセスするために表8に含まれる。
【0189】
【表12】
【0190】
本発明の特定の態様を説明し、例示したが、そのような態様は、本発明の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本発明を限定するものではないと考えられるべきである。個々の刊行物又は特許出願が、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれることが具体的及び個別に示されているかのように、本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。上記発明を、理解の明瞭さのために例示及び実施例によってある程度詳細に説明したが、特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく行われ得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳がんを治療する方法であって、治療有効用量のグロボシリーズ抗原ワクチンを、乳がんの治療を必要とする被験体に投与すること及び/又はグロボシリーズ抗原ワクチンと交差反応させることを含む、方法。