(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012311
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】比重による鉱物の分離
(51)【国際特許分類】
B03B 5/28 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B03B5/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】51
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173595
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2020554485の分割
【原出願日】2019-04-03
(31)【優先権主張番号】62/652,494
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】520380680
【氏名又は名称】ロビンス,ジョディ,ジー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビンス,ジョディ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ワントゥロック,ジョセフ,アール.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体又はスラリーからの重金属などの、より高い比重の材料をより低い比重の材料から分離又は濃縮するための装置、方法、及びシステムを提供する。
【解決手段】比重によって鉱物を分離するための装置であって、軸206を中心に回転するように構成され、収集領域210aを含む遠心分離機200と、振動エネルギーを前記収集領域に提供するように構成されたエネルギー注入モジュール218aと、を含み、前記遠心分離機、前記収集領域および前記エネルギー注入モジュールは、鉱物含有流体から鉱物を沈降させ、比重によって鉱物を層化するように構成される、装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重によって鉱物を分離するための装置であって、
軸を中心に回転するように構成され、収集領域を含む遠心分離機と、
振動エネルギーを前記収集領域に提供するように構成されたエネルギー注入モジュールと、を含み、
前記遠心分離機、前記収集領域および前記エネルギー注入モジュールは、鉱物含有流体から鉱物を沈降させ、比重によって鉱物を層化するように構成される、装置。
【請求項2】
前記遠心分離機が、前記収集領域の外側チャンバーと流体連通する内側チャンバーを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記外側チャンバーと前記内側チャンバーとの間の流路が、前記鉱物含有流体を前記内側チャンバーから前記収集領域に運ぶように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記エネルギー注入モジュールは、音響エネルギーを前記収集領域に提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギー注入モジュールは、亜音速周波数で音響エネルギーを提供するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギー注入モジュールは、複数の周波数で同時に音響エネルギーを提供するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記エネルギー注入モジュールは、振動する圧力波を前記収集領域に提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記エネルギー注入モジュールは、振動エネルギーが前記収集領域での求心加速度に実質的に平行な方向に沿って前記収集領域に伝播するように、前記振動エネルギーを前記収集領域に提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記収集領域と前記エネルギー注入モジュールとの間に膜をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記遠心分離機が、スラリー中の前記鉱物含有流体を受け取るように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記遠心分離機は、スラリー中の前記鉱物含有流体を受け取るように構成されるとともに、前記遠心分離機が前記軸を中心に回転するときに、前記収集領域を横切って前記スラリーを循環させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記エネルギー注入モジュールに作用し、前記遠心分離機の回転による求心加速度の少なくとも一部に対抗する少なくとも1つのばねをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記収集領域内に存在する材料の量を測定する少なくとも1つのセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
材料が前記収集領域に収集され、前記材料が質量を有し、前記収集領域に収集された前記材料の質量を測定する少なくとも1つのセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
比重によって鉱物を分離する方法であって、
異なる比重を有する少なくとも2つの鉱物を含む流動化されたスラリーを得ることと、
前記スラリーが遠心分離機内で少なくとも1つの収集領域を横切って循環するように、前記スラリーを含む前記遠心分離機を、軸を中心に回転させることと、
前記収集領域内で前記スラリーの少なくとも一部を受け取ることと、
エネルギー波を生成し、前記収集領域に前記エネルギー波を注入することと、
前記収集領域内の鉱物を比重によって層化することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記エネルギー波を生成することは、音波を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記音波を生成することは、亜音波を生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記音波を生成することは、複数の周波数で同時に音波を生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記エネルギー波を生成することは、圧力波を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記エネルギー波を生成することは、前記収集領域内に少なくとも1つの定在波を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記流動化されたスラリーを得ることが、前記鉱物が100ミクロンの最大粒サイズを有するように前記鉱物を粉砕することと、前記鉱物に流体を加えることとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記遠心分離機が回転している間に、前記収集領域内に収集された前記材料の重量を量ることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記エネルギー波を生成することは、可動膜によって前記収集領域から分離されたエネルギー注入モジュールを用いて前記エネルギー波を生成することを含む請求項15に記載の方法であって、
前記遠心分離機が回転している間に、前記可動膜の測定されたたわみと前記遠心分離機の回転速度とに基づいて、前記収集領域内に収集された材料の重量を決定することをさらに含む、方法。
【請求項24】
スラリー中の異なる比重を有する複数の鉱物を分離するためのシステムであって、
前記複数の鉱物を含む前記スラリーを受け取るように構成された第1の遠心分離機と、
前記第1の遠心分離機にエネルギーを加えるように構成された第1のエネルギー注入モジュールと、を含み、
前記第1の遠心分離機の回転と前記第1のエネルギー注入モジュールのエネルギーにより、前記スラリーから第1の鉱物が分離され、
前記第1の遠心分離機と流体連通し、前記第1の遠心分離機によって前記スラリーから第1の鉱物が分離された後、前記スラリーの少なくとも一部を受け取るように構成された第2の遠心分離機と、
前記第2の遠心分離機にエネルギーを加えるように構成された第2のエネルギー注入モジュールと、を含み、
前記第2の遠心分離機の回転と前記第2のエネルギー注入モジュールのエネルギーにより、前記スラリーから第2の鉱物が分離される、システム。
【請求項25】
前記第2の鉱物の第2の比重が、前記第1の鉱物の第1の比重よりも低い、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
請求項24に記載のシステムにおいて、
前記第1の遠心分離機は、前記第1の鉱物の少なくとも一部を収集するように構成された第1の収集領域をさらに備え、
前記第1のエネルギー注入モジュールは、前記第1の収集領域に結合され、振動エネルギーを前記第1の収集領域に提供するように構成され、
前記第2の遠心分離機は、前記第2の鉱物の少なくとも一部を収集するように構成された第2の収集領域をさらに備え、
前記第2のエネルギー注入モジュールは、前記第2の収集領域に結合され、前記第2の収集領域に振動エネルギーを提供するように構成される、システム。
【請求項27】
前記第1および第2の遠心分離機が移動式処理ユニットの内部に配置され、前記移動式処理ユニットが、複数の粉砕機、複数の回転ふるい、複数のオーガ、複数のパドル、入力ホッパー、出力ホッパー、外部ストレージ、および内部ストレージのうちの少なくとも1つを備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1のエネルギー注入モジュールは、第1の亜音速周波数で前記第1の収集領域に音響エネルギーを提供するように構成され、前記第2のエネルギー注入モジュールは、第2の亜音速周波数で前記第2の収集領域に音響エネルギーを提供するように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1のエネルギー注入モジュールおよび前記第2のエネルギー注入モジュールは、複数の周波数で同時に音響エネルギーを提供するように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1の遠心分離機が、ボールで形成された固体担体媒体中に前記スラリーを受け取るように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項31】
前記第2の遠心分離機が、前記第1の遠心分離機によって前記スラリーから前記第1の鉱物が分離された後、ボールで形成された固体担体媒体中に前記分離されたスラリーの少なくとも一部を受け取るように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1の遠心分離機と前記第2の遠心分離機が直列に接続される、請求項24に記載のシステム。
【請求項33】
第3の遠心分離機および第4の遠心分離機をさらに備え、前記第1の遠心分離機と前記第3の遠心分離機は並列に接続され、前記第2の遠心分離機と前記第4の遠心分離機は並列に接続され、前記第1および第3の遠心分離機が前記第2および第4の遠心分離機に直列に接続されており、
前記第3の遠心分離機は前記スラリーを受け取るように構成されており、
第3のエネルギー注入モジュールは、前記第3の遠心分離機にエネルギーを印加するように構成されており、
前記第3の遠心分離機の回転と前記第3のエネルギー注入モジュールのエネルギーにより、前記スラリーから第1の鉱物が分離され、
前記第4の遠心分離機は、前記第1および第3の遠心分離機のうちの少なくとも1つと流体連通しており、前記第1および第3の遠心分離機のうちの少なくとも1つによって前記スラリーから前記第1の鉱物が分離された後、前記スラリーの少なくとも一部を受け取るように構成され、
第4のエネルギー注入モジュールは、前記第4の遠心分離機にエネルギーを印加するように構成されており、
前記第4の遠心分離機の回転と前記第4のエネルギー注入モジュールのエネルギーにより、前記スラリーから前記第2の鉱物が分離される、請求項24に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の遠心分離機が第1の内部室をさらに備え、前記第1の収集領域が前記第1の内部室と連通する第1のキャビティを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記第2の遠心分離機が第2の内部室をさらに備え、前記第2の収集領域が前記第2の内部室と連通する第2のキャビティを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1および第2のエネルギー注入モジュールは、前記第1および第2の収集領域内にスーパーキャビテーションを誘発するように構成され、前記スーパーキャビテーションは、前記スラリー中の前記複数の鉱物間の摩擦を低減する、請求項26に記載のシステム。
【請求項37】
第1の比重の第1の鉱物を、少なくとも前記第1の比重とは異なる第2の比重の第2の鉱物および前記第2の比重とは異なる第3の比重の第3の鉱物から分離するための方法であって、
前記第1の鉱物、前記第2の鉱物、および前記第3の鉱物を含むスラリーを得ることと、
前記スラリーが第1の遠心分離機内で循環するように前記スラリーを含む第1の遠心分離機を回転させ、第1のエネルギー注入モジュールを使用してエネルギー波を前記第1の遠心分離機に印加することによって、前記第1の鉱物を前記第2および第3の鉱物から分離することと、
前記第1の遠心分離機から前記第2の鉱物と前記第3の鉱物を含むリジェクトスラリーを得ることと、
前記リジェクトスラリーが第2の遠心分離機内で循環するように前記リジェクトスラリーを含む前記第2の遠心分離機を回転させ、第2のエネルギー注入モジュールを使用してエネルギー波を前記第2の遠心分離機に印加することによって、前記第2の鉱物を前記第3の鉱物から分離することと、を含む方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記第1の遠心分離機と前記第2の遠心分離機を直列に接続することを、さらに含む、方法。
【請求項39】
前記第1の遠心分離機にエネルギー波を印加することが、第1の亜音速周波数で音波を発生させて前記第1の遠心分離機の第1の収集領域に印加することを含み、前記第2の遠心分離機にエネルギー波を印加することが、第2の亜音速周波数で音波を発生させて前記第2の遠心分離機の第2の収集領域に印加することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
第1の収集領域にエネルギー波を印加することが、複数の周波数で音波を生成し、前記第1の遠心分離機の第1の収集領域に同時に印加することを含み、第2の収集領域にエネルギー波を印加することが、複数の周波数で音波を生成し、前記第2の遠心分離機の第2の収集領域に同時に印加することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
第3の遠心分離機を前記第1の遠心分離機に接続し、前記スラリーが前記第3の遠心分離機内で循環されるように前記スラリーを含む前記第3の遠心分離機を回転させて、第3のエネルギー注入モジュールを使用して前記第3の遠心分離機にエネルギー波を印加することによって、前記第2および第3の鉱物から前記第1の鉱物を分離することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記第3の遠心分離機を前記第1の遠心分離機に接続することが、前記第3および第1の遠心分離機を並列に接続することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第4の遠心分離機を前記第2の遠心分離機に接続することと、
前記第1の遠心分離機から前記第2の鉱物と前記第3の鉱物を含むリジェクトスラリーを得ることと、をさらに含み、
前記リジェクトスラリーが前記第4の遠心分離機内で循環するように前記リジェクトスラリーを含む前記第4の遠心分離機を回転させ、第4のエネルギー注入モジュールを使用して前記第4の遠心分離機にエネルギー波を印加することによって、前記第2の鉱物を前記第3の鉱物から分離する、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記第4の遠心分離機を前記第2の遠心分離機に接続することが、前記第4および第2の遠心分離機を並列に接続することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
スラリー中のそれぞれ異なる比重を有する少なくとも2つの鉱物を分離するためのシステムであって、
前記少なくとも2つの鉱物を受け取るように構成された遠心分離機と、
前記遠心分離機に取り外し可能に取り付けられた第1の収集領域と、
前記遠心分離機に取り外し可能に取り付けられた第2の収集領域と、
前記第1および第2の収集領域に結合され、前記第1および第2の収集領域にエネルギーを印加するように構成されたエネルギー注入モジュールと、を含み、
システムの動作中に、前記遠心分離機の回転および前記エネルギー注入モジュールのエネルギーにより、前記少なくとも2つの鉱物のうちの第1の鉱物が、前記少なくとも2つの鉱物のうちの少なくとも第2の鉱物から分離される、システム。
【請求項46】
スラリーから少なくとも2つの鉱物を分離するための方法であって、前記少なくとも2つの鉱物はそれぞれ異なる比重を有し、
前記少なくとも2つの鉱物を含む流動化スラリーを得ることと、
スラリーが遠心分離機内で循環するように前記スラリーを含む前記遠心分離機を回転させ、エネルギー注入モジュールを使用して前記遠心分離機にエネルギー波を印加することによって、前記スラリーから第1の鉱物を分離することと、
第1の収集領域で前記第1の鉱物を収集することと、
前記スラリーが前記遠心分離機内で循環するように前記遠心分離機を回転させ、前記エネルギー注入モジュールを使用して前記遠心分離機にエネルギー波を印加することによって、前記スラリーから第2の鉱物を分離することと、
第2の収集領域で前記第2の鉱物を収集することと、を含む、方法。
【請求項47】
第1の比重の第1の鉱物を、第1の比重よりも低い第2の比重の少なくとも第2の鉱物から分離するための装置であって、
軸を中心に回転するように構成された遠心分離機であって、
内部室と、
少なくとも1つの収集領域が、前記遠心分離機が軸を中心に回転するときに求心加速度を受ける前記内部室と連通するキャビティを備え、
前記収集領域に結合され、振動エネルギーを提供し、流体を前記収集領域に注入するように構成された少なくとも1つのエネルギー注入モジュールと、
を備え、前記収集領域および前記エネルギー注入モジュールは、前記第1および第2の鉱物を層化するように構成される、装置。
【請求項48】
前記振動エネルギーが音響エネルギーを含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記振動エネルギーが振動する圧力波を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記遠心分離機が、スラリー中の前記第1および第2の鉱物を受け取るように構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項51】
前記遠心分離機が、スラリー中の前記第1および第2の鉱物を受け取るように構成され、前記遠心分離機が前記軸を中心に回転するときに、前記収集領域にわたって前記スラリーを循環させるように構成される、請求項47に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
この出願は、「比重による鉱物の分離(SEPARATION OF MINERALS BY SPECIFIC GRAVITY)」と題され、2018年4月4日に提出された米国特許仮出願62/652,494の優先権を主張する。上記の出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、流体又はスラリーからの重金属などの、より高い比重の材料をより低い比重の材料から分離又は濃縮するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
重金属などの特定の材料をそれらの周囲の材料から抽出することはしばしば望ましいが、所望の材料は、周囲の材料と比較して低濃度で存在する可能性があり、したがって抽出が困難である。例えば、採掘作業では混合材料のストリームが生成され、そこから所望の材料が濃縮及び抽出される。しかしながら、鉱山で生産された混合材料のストリームから特定の材料を濃縮して抽出する技術には限界があるため、採掘作業では一般に、全ての所望の材料を抽出できない。多くの歴史的な鉱山も劣った抽出技術を利用していたため、大量の貴重な材料を含む尾鉱が残っていた。さらに、歴史的な鉱山は、技術的又は経済的要因のために、鉱山の操業中に抽出されなかった希土類金属などの大量の材料で尾鉱を生み出した(例えば、そのような材料を抽出するコストは、その時点で利用可能な技術を考えると、回収可能な材料の価値よりも高くなる可能性がある。)現代の採掘作業はまた、所望の材料を回収するためのより安価でより効率的な技術を常に求めている。同様に、産業プロセスでは、環境、規制、又は安全上の理由から抽出する必要のある有害な元素を含む廃棄物が生成される可能性がある。
【0004】
本開示は、重金属などの低濃度の標的材料を周囲の材料から回収するためのシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、重金属などの低濃度の標的材料を周囲の材料から分離回収するための装置(システム)及び方法を提供するものであり、鉱物を含む混合材料から標的材料を分離回収するための方法及び装置の様々な例を開示している。本開示のいくつかの顕著な特徴をここで簡単に説明するが、これらによって特許請求の範囲が制限されるものではない。
【0006】
本発明で開示された技術の一態様は、第1の比重を有する第1の鉱物を、第1の比重よりも低い比重を有する少なくとも第2の鉱物から分離するための装置である。この装置は、軸を中心に回転するように構成された遠心分離機を含む。この遠心分離機には、軸を中心に回転するときに、その側壁(周壁)に設けた少なくとも1つの収集領域が求心加速度を受け、遠心分離機中の鉱物を含むスラリーの少なくとも一部が収集領域へ移動するように構成されている。さらに、少なくとも1つのエネルギー注入モジュールが収集領域に結合され、振動エネルギーを収集領域に提供するように構成されている。そして、前記収集領域とエネルギー注入モジュールは、第1及び第2の鉱物を層化(層別化)するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、エネルギー注入モジュールは、音響エネルギーを収集領域に提供するように構成される。エネルギー注入モジュールは、亜音速周波数で音響エネルギーを提供するように構成することができる。エネルギー注入モジュールは、複数の周波数で同時に音響エネルギーを提供するように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、エネルギー注入モジュールは、振動する圧力波を収集領域に提供するように構成される。エネルギー注入モジュールは、振動エネルギーが収集領域での求心加速度に実質的に平行な方向に沿って収集領域に伝播するように、振動エネルギーを収集領域に提供するように構成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、装置は、収集領域とエネルギー注入モジュールとの間に膜を更に含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、遠心分離機は、スラリー中の第1及び第2の鉱物を受け取るように構成される。遠心分離機は、遠心分離機が軸を中心に回転するときに、収集領域を横切ってスラリーを循環させるように構成することもできる。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置は、エネルギー注入モジュールに作用し、エネルギー注入モジュールでの求心加速度の少なくとも一部に対抗する少なくとも1つのばねを更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、装置は、収集領域に存在する材料の量を測定する少なくとも1つのセンサを更に含む。例えば、装置は、収集領域に収集された材料の質量を測定する少なくとも1つのセンサを含むことができる。
【0013】
開示された技術の別の態様は、第1の比重を有する第1の鉱物を、第1の比重よりも低い第2の比重を有する少なくとも第2の鉱物から分離するための方法である。この方法は、第1及び第2の鉱物を含む流動化されたスラリーを得ることを含む。この方法では、前記スラリーが、遠心分離機内に供給され、前記スラリーが前記遠心分離機の側壁(周壁)に設けられた少なくとも1つの収集領域を横切って循環する。前記スラリーの少なくとも一部は、前記収集領域で受け取られ、前記収集領域は、軸を中心とした遠心分離機の回転により求心力を受ける。さらに、エネルギー波が生成されて、前記収集領域に注入され、この収集領域で第1及び第2の鉱物が、層化(層別化)される。
【0014】
いくつかの実施形態では、エネルギー波を生成することは、音波を生成することを含む。例えば、音波を生成することは、亜音速波を生成することを含み得る。音波を生成することはまた、複数の周波数で同時に音波を生成することを含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、エネルギー波を生成することは、圧力波を生成することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、エネルギー波を生成することは、収集領域に少なくとも1つの定在波を生成することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、流動化されたスラリーを得ることは、第1及び第2の鉱物が100ミクロンの最大粒子サイズを有するように第1及び第2の鉱物を粉砕することと、第1及び第2の鉱物に流体を加えることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、この方法は、遠心分離機が回転している間に、収集領域内に収集された材料の重量を量ることを更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、エネルギー波を生成することは、可動膜によって収集領域から分離されたエネルギー注入モジュールでエネルギー波を生成することを含み、この方法はまた、遠心分離機が回転している間に、可動膜の測定された撓みと遠心分離機の回転速度とに基づいて、収集領域内に収集された材料の重量を決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、材料分離システムの例を概略的に示している。
【0021】
【
図1B】
図1Bは、比重量によって材料を層化するための例示的なエネルギー注入 モジュール及び収集領域を概略的に示している。
【0022】
【
図2】
図2は、比重量によって材料を分離するための遠心分離機の概略断面側面図 を示している。
【0023】
【
図3】
図3は、
図2の遠心分離機内で放射状に取り付けられたエネルギー注入モジ ュール及び収集領域の拡大概略図である。
【0024】
【
図4】
図4は、材料分離システムを使用するための方法の一例のプロセスフロー図 である。
【0025】
図面全体を通して、参照番号は、参照される要素間の対応を示すために再利用され得る。図面は、本明細書に記載の例示的な実施形態を説明するために提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
ここで、同様の参照番号が全体を通して同様の部品を参照する図面を参照する。特に明記しない限り、図面は概略図であり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【0027】
遠心分離機108を用いて比重によって鉱物を分離するためのシステム100が
図1Aに示されている。
【0028】
図1Aに示されるように、適切な供給源102は、流体104と組み合わされて、スラリー106を形成する。いくつかの実施形態において、スラリーは、遠心分離機108に供給され得る。いくつかの実施形態では、スラリーは、乾燥材料(例えば、粉末)及び流体(例えば、液体)の別々の供給物から遠心分離機内で形成することができる。いくつかの実施形態では、供給源102は、鉱山、産業廃棄物、又は異なる比重の鉱物を含む他の材料からの尾鉱であり得る。いくつかの実施形態では、供給源102は、海底の火山噴火口からの材料、川からの扇状地、小惑星又は他の天体からの材料、又は異なる比重の鉱物を含む任意の他の材料源を含み得る。
【0029】
少なくともいくつかの実施形態では、遠心分離機108は、天体の周りの軌道上、又は地球以外の自然又は人工の物体の表面上など、低減重力環境又は無重力環境で操作することができる。必要に応じて、遠心分離機108は、遠心分離機108の密封しなければ開いている部分(上部など)を密封することなどによって、低重力での動作のために変更され得る。別の例として、遠心分離機108は、遠心分離機108を地球以外の自然又は人工の物体上の所望の場所に輸送することができる移動処理ユニット(MPU)に統合することができる。MPUは、材料を収集及び前処理することができ得る(例えば、MPUは、レゴリス又は他の原料を所望の粒子サイズに前処理するための粉砕機及び/又は回転ふるい装置を含み得る)。さらに、MPU及び/又は遠心分離機108は、遠心分離機108及び関連する構成要素(例えば、入力ホッパー、出力ホッパーなど)を通る材料の移動を支援するためのオーガ又はパドルを含み得る。これは、材料の移動に重力を当てにすることができない低重力環境で特に有益な場合がある。いくつかの実施形態では、MPUは、濃縮物116などの貴重な材料を保管するための内部及び/又は外部ストレージを含み得る。特定の例として、MPUは、遠心分離機から飽和収集セル(収集領域144及び収集領域210a、210bなど)をロボットで除去し、後で収集するために飽和収集セルを保存するためのメカニズムを含み得る。
【0030】
様々な実施形態において、遠心分離機108は、様々な温度の環境(例えば、地球上の環境、宇宙、又は極度の寒さ、極度の熱、又はその両方にさらされる地球以外の物体の表面)で操作され得る。必要に応じて、遠心分離機108は、極度の寒さ又は極度の熱などの異なる温度の環境での動作のために変更され得る。一例として、遠心分離機108が地球上又は宇宙の低温環境で操作されるとき、アンモニアなどの耐寒性流体を流体104として利用することができる。別の例として、耐寒性材料(例えば、過度に脆くなく、低温で十分な構造強度を保持する材料)を、遠心分離機108の構造を形成する際に使用することができる。更に別の例として、遠心分離機108は、遠心分離機108、流体104、スラリー106、及び/又は遠心分離機108の他の構成要素を加熱する加熱要素を含み得る。月などの環境では、レゴリスなどの採掘された材料は、表面で過度に高温であり、表面下で過度に低温である可能性がある。そのような環境では、遠心分離機108に、表面レゴリスと表面下レゴリスの選択的混合物を供給して、作動材料の所望の温度を達成することができる(例えば、供給源102が適切な温度範囲内にあるように)。
【0031】
必要に応じて、流体104の代替物を、分離される材料の媒体として使用することができる。特に、流体104は、遠心分離機108によって分離されている供給源102よりも大きいサイズを有し得るボール又は粒子で形成された固体媒体で置き換えることができ、そのような固体担体媒体は、回転ふるい又は他の回収機構で回収することができる。流体104の代替の固体媒体は、厳しい温度及び/又は低圧又は真空条件での流体の問題を克服するのに有益であり得る。本明細書に記載の実施形態は、地球外での用途に典型的な低重力又は無重力及び低温環境に特によく適しており、人間の介入なしで動作することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、供給源102は、適切な粒子サイズ又は適切な範囲の粒子サイズに粉砕された尾鉱又は他の同様の材料を含み得る。一例として、供給源102は、供給源102の公称最大粒子サイズが約50ミクロンから200ミクロンの範囲、例えば、約100±15ミクロンとなるように、粉砕又は他の方法で処理された材料を含み得る。いくつかの実施形態では、供給源102は、水又はアンモニアなどの流体104と組み合わせて、スラリー106(例えば、流動化されたスラリー106)を形成することができる。流体104は、任意の適切な流体を含むことができ、そして必要に応じて、遠心分離機108内の比重量による層化を助ける化学物質を含み得る。一例として、流体104は、遠心分離機108内の比重量による層化を促進又は加速する潤滑剤、界面活性剤、及び他の化学物質を含み得る。別の例として、流体104は、遠心分離機108が地球外環境などの低温環境で動作しているときに流体104の凍結を防止するのを助ける、流体の凝固点を下げる不凍液添加剤を含み得る。上記のように、様々な実施形態において、スラリー106は、流体104及び供給源102を遠心分離機108に別々に加えることによって、遠心分離機108の内部に生成され得る。
【0033】
スラリー106は、遠心分離機108によって処理されて、濃縮物116及び尾鉱114を生成し得る。
図1Aに示されるように、遠心分離機108は(矢印112によって示されるように)回転して、重力による加速度よりも著しく高い求心力(例えば、求心加速度)を生成することができる。これらの求心力は、スラリー106の成分の分離を、それらの成分の異なる比重量によって容易にし得る。換言すれば、より大きな比重量を有するスラリー106中の鉱物は、加速場(重力など、又は遠心分離機で見られる放射状に向けられた場など)において「落下」する傾向があり、一方、より低い比重量を有するスラリー106中の鉱物は、「上昇」する傾向がある。かなりの求心力を提供する遠心分離機を使用することにより、比重量による材料の分離を加速することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、スラリー106は、互いに直列に結合された複数の遠心分離機108によって処理されることができ、ここで、各遠心分離機は、前の遠心分離機からのリジェクト材料、すなわち尾鉱114を処理する。そのような実施形態では、互いに直列に結合された遠心分離機の複数の段階は、スラリー106から様々な材料を分離するように構成され得る。一例として、1つ以上の遠心分離機で形成された初期段階は、第1の比重量の第1の材料を分離することができ、1つ以上の追加の遠心分離機で形成された第2段階は、初期段階から尾鉱を受け取り、第1の比重量よりも小さい第2の比重量の第2の材料を分離することができ、1つ以上の追加の遠心分離機で形成された第3段階は、第2段階から尾鉱を受け取り、第2の比重量よりも小さい第3の比重量の第3の材料を分離することができ、以下、所望の数の段階についても同様である。そのような実施形態は、特定の供給源からの高比重量から低比重量までの多くの材料の範囲の処理を可能にし得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数の遠心分離機108を互いに並列に結合して、処理速度及び/又は処理量を増加させることができる。他の実施形態では、直列結合と並列結合の両方の構成が提供される。一例として、システム100は、互いに並列に結合された1つ以上の遠心分離機108から形成された第1段階を含むことができ、第1段階は、互いに並列に結合された1つ以上の遠心分離機から形成された少なくとも第2段階と直列に結合され得る。このような例では、第1段階は、比較的重い比重量の第1の鉱物を分離することができ、第2段階は、第1の鉱物よりも低い比重量の第2の鉱物を分離することができる。一般に、段階は、互いに直列に結合された同数の遠心分離機から形成する必要はない。一例として、第1段階は、単一の遠心分離機から形成されることができ、第2段階は、互いに並列に結合された2つ以上の遠心分離機から形成されることができる。一般に、本開示における遠心分離機への言及は、単一の遠心分離機に限定されず、代わりに、単一の遠心分離機と、直列、並列、又は直列接続と並列接続の組み合わせで互いに結合された複数の遠心分離機の組み合わせを包含する。
【0036】
音波110によって示されるように、遠心分離機108は、振動又は振動エネルギーを遠心分離機108内の流体に結合することによって支援され得る。実施形態では、エネルギーは音響範囲内にあることができ、いくつかの実施形態では、所望のエネルギーが音響範囲外で振動し得ることが理解されるが、遠心分離機は音響的に支援された遠心分離機108と呼ばれ得る。一例として、遠心分離機108は、遠心分離機108内のスラリー106に音響エネルギー110を提供する1つ以上の音響モジュールを含み得る。エネルギー110は、一例として、亜音速の音波を表すことができる。例として、エネルギー110は、0.5Hzから9Hzの範囲にあることができ、時間とともに0.5Hzから9Hzの間で変化し得る。別の例として、エネルギー110は、時間とともに0.5Hzから40Hzの間で変化し得る。
【0037】
音響エネルギー110は、様々な実施形態において、同時に提供される複数の周波数での振動を含むことができ、ポリフォニックエネルギーと呼ばれることもある。例えば、エネルギー110は、複数の音響周波数のエネルギーを含み得る。いくつかの実施形態では、エネルギー110の異なる周波数は、異なる所望の効果を生み出し得る。一例として、第1の周波数(又は周波数のセット)は、第1の鉱物の移動度を増加させるように調整されることができ、第2の周波数(又は周波数のセット)は、遠心分離機108内の第2の鉱物又はスラリーの流体成分の移動度を増加させるように調整され得る。別の例として、粒子間の摩擦又は付着を低減するために第1の周波数(又は周波数のセット)を提供することができ、一方、収集領域から所望よりも低い比重量の鉱物を押し出すために第2の周波数(又は周波数のセット)を提供することができる。
【0038】
必要に応じて、音響エネルギー110は、望ましくない周囲エネルギー又はシステムの構成要素によって生成されるエネルギーをキャンセル、最小化、又は低減するエネルギーを含み得る。一例として、対象の材料及び遠心分離機の寸法に応じて、遠心分離機内の層化の速度を遅くする周囲音響エネルギー又は遠心分離機108の動作によって生成される音響エネルギーがあり得る。そのような例では、音響エネルギー110は、そのような望ましくない音響エネルギーを相殺するエネルギーを含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、エネルギー110の周波数は、スラリー106の成分の流動化を増加させるように構成され得る。特に、音響エネルギー110は、スラリー106の成分間の摩擦を低減するのに役立ち、それにより、加速力(遠心分離機108によって生成される求心力など)の下で比重量による材料の分離を加速することができる。様々な実施形態では、エネルギー110は、収集領域内のスラリー106内の潤滑を増加させ、収集領域内にスーパーキャビテーションを誘発し、収集領域内に1つ以上の定在波を生成し得る。
【0040】
必要に応じて、遠心分離機108は、音波110によって示されるタイプの振動エネルギー以外の何かによって支援され得る。一例として、いくつかの実施形態では、システム100は、空気又は流体を遠心分離機108に注入し、特に、空気又は流体を収集領域(
図1Bの領域144など)に注入するエネルギー注入モジュールを含み得る。収集領域に空気又は流体を注入することは、堆積物を乱し、スラリー106の成分間の摩擦を低減し、及び/又は収集領域内の比重量による材料の層化を助けるのに役立つ場合がある。いくつかの実施形態では、注入された空気又は流体は、濃縮されている鉱物よりも低い比重量を有し、より低い比重量の鉱物を収集領域から洗い流す効果を有し得る。
【0041】
図1Bは、
図1Aのエネルギー110を生成することができるタイプのエネルギー注入モジュール140の例を示している。エネルギー注入モジュール140は、膜142によって収集領域144から分離され得る。
図1Bに示されるように、収集領域144内のスラリーは、回転する遠心分離機108の求心力150のために、そしてエネルギー注入モジュール140からのエネルギー110の助けを借りて、比重量によって層化することができる。特に、最も高い比重量を有するスラリー106の成分は、遠心分離機108の外側に向かって移動する傾向があり(例えば、
図1Bに示される求心力150の方向)、一方、より低い比重量を有する成分は、内側に移動し得る。エネルギー注入モジュール140は、振動することができ(例えば、求心力150に平行な方向で、亜音速範囲にあり得る適切な周波数で)、エネルギー注入モジュール140の振動は、エネルギー110として、膜142を介して収集領域144に伝達され得る。一例として、エネルギー注入モジュール140は、
図1Bに示される求心力150の方向に平行に伝播するエネルギーを生成することができる。エネルギー110は、スラリー106の粒子間の摩擦を低減することができ、それにより、収集領域144内の比重量に従って層化の速度を増加させる。
【0042】
膜142は、モジュール140から収集領域144へのエネルギーの結合を容易にする材料から形成することができる。例として、膜142は、ケブラー、グラフェン、鋼、チタン、窒化チタン、ゴム、合成ゴム、金属、プラスチック、他の適切な材料、又はこれらと他の適切な材料の組み合わせから形成され得る。いくつかの実施形態において、膜142は、可撓性膜であり得る。
【0043】
再び
図1Aを参照すると、濃縮物116は、1つ以上の遠心分離機108によって生成されることができ、これらは、直列、並列、又は並列及び直列の組み合わせを含む構成で互いに結合され得る。様々な実施形態において、濃縮物116は、最高の比重を有するスラリー106の成分を表し得る。同様に、尾鉱114は、遠心分離機108によって生成されることができ、より低い比重を有するスラリー106の成分を表し得る。尾鉱は廃棄物と呼ばれることもあるが、いくつかの実施形態では、尾鉱114は所望の生成物であり得る(例えば、濃縮物116が望ましくない汚染物質を表す例など)。
【0044】
経路118によって示されるように、過剰な流体は、尾鉱114から抽出され、インフィード流体104として再利用されることができ、したがって、材料を周期的に処理して、更なる鉱物を徐々に抽出する。
【0045】
遠心分離機200の断面側面図が
図2に示されている。
図2の遠心分離機200は、
図1A及び
図1Bに関連して説明された遠心分離機108の例であり得る。
図2に示されるように、遠心分離機200は、軸206を中心として方向204に回転する側壁202を有することができ、求心力207を生成する。求心力207は、重力加速度よりも著しく大きい可能性があり、遠心分離機200によって処理されるスラリーの成分の比重量によって層化の速度を増加させる可能性がある。遠心分離機200は、遠心分離機200の半径と組み合わせて、求心力207の所望の大きさを生成するのに十分な速度(例えば、毎分回転数又はRPM)で軸206を中心として回転することができる。一例として、遠心分離機200は、約500RPMで回転することができる。遠心分離機200は、適切な材料で形成することができる。必要に応じて、遠心分離機200の壁及び内部構成要素は、窒化チタン、セラミック、金属などのような摩耗性の高いコーティングでコーティングすることができ、これは、スラリー208からの急速な摩耗を防ぐのに役立つ可能性がある。必要に応じて、遠心分離機200は、所定の、又は観察された動作条件に基づいて決定され得るある数の動作時間後に1つ又は複数の摩耗アイテムが交換、修理、又は他の方法で改修されない限り、遠心分離機200の動作を防止する制御回路を含み得る。
【0046】
図2に示されるように、スラリー208は、遠心分離機200内を循環することができる。特に、スラリー208は、求心力207によって側壁202に押し付けられ得る。側壁202の上部は、側壁を上に移動するスラリー208が遠心分離機の底部に戻されるように、内側に湾曲させることができる。結果として、スラリーは、
図2に示される方法で循環することができる。必要に応じて、遠心分離機200は、側壁202の上部に固定子(例えば、遠心分離機と共に回転しないか、又はより遅い速度で回転する固定要素)を含み得る。そのような固定子は、スラリーが遠心分離機の底部に戻るように側壁202の上部に到達するスラリーの運動量を向けることができ、したがって、遠心分離機内のスラリー208の循環を改善する。そのような固定子は、いくつかの実施形態では、側壁202における遠心分離機の上部から遠心分離機200の中央底部に向かって、スラリー208を下向き及び内向きに向けるのを助けるように湾曲させることができる。固定子によるスラリーの下向きの方向は、地上環境と地球外(低重力又は無重力)環境の両方で役立つ。いくつかの実施形態では、遠心分離機200は密封され得る。さらに、遠心分離機200は、スラリー208の添加並びにスラリー及び/又は濃縮物の除去を容易にするように作動する、バルブ及び可動ゲートなどの機構を含み得る。密閉構成で操作される遠心分離機200は、低減重力環境での操作に有益であり得る。
【0047】
循環スラリー208は、収集領域210aを含む収集領域を通過することができる。スラリー208が領域210aなどの収集領域を通過するとき、より大きな比重量を有する粒子が収集領域内に閉じ込められる可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、収集領域210aは、遠心分離機200の側壁202に取り外し可能に結合され得る。
【0048】
図2はまた、圧力波、音響エネルギー、又は他の形態のエネルギーであり得るエネルギー212を領域210aなどの収集領域に注入する、図示の発生器218aなどのエネルギー注入発生器を含み得るハウジング214を示す。ハウジング214は、少なくともいくつかの実施形態では、遠心分離機に取り外し可能に結合することができる。
図1A及び
図1Bに関連して論じたように、発生器218aなどのエネルギー注入発生器は、収集領域内の比重量によって、スラリー208中の鉱物の層化を強化及び加速することができる。さらに、エネルギー注入発生器は、収集領域内のスラリーと収集領域を通過するスラリーとの混合を促進することにより、収集領域の詰まりを防ぐのに役立つ可能性がある。特に、エネルギー注入発生器は、収集領域を流れる混合スラリーを用いて、収集領域の「上部」(例えば、求心力207の方向で半径方向内側)に位置する、より低い比重量を有する層化された鉱物の交換を促進し得る。このようにして、最大の比重量を有するスラリー208中の鉱物は、収集領域の「底部」に収集又は濃縮する傾向がある(例えば、求心力207の方向で半径方向外側)。
【0049】
いくつかの実施形態では、遠心分離機200は、廃棄物ドレン216を含み得る。そのような実施形態では、必要に応じてスラリー208が遠心分離機200から排出され得るときに、廃棄物ドレン216を開くことができる。一例として、最も高い比重量を有する鉱物が収集領域に濃縮された後、残りのスラリー208は、そのような鉱物を実質的に欠いている可能性があり、廃棄物ドレン216を開くことができる。必要に応じて、遠心分離機200がまだ回転している間に(例えば、遠心分離機200をその典型的な動作速度から減速するかどうかにかかわらず)、廃棄物ドレン216を開くことができる。廃棄物ドレン216を介して廃棄物スラリーを排出した後、更なる処理のために、新鮮なスラリー208を遠心分離機200に加えることができる。
【0050】
図2のエネルギー注入モジュール218及び収集領域210の拡大図は、
図3に示されている。
図3に示されるように、スラリー208は、収集領域210a、210bなどを通過することができ、求心力207(遠心分離機200の回転からの)は、スラリー208を収集領域に押し込むことができる。
【0051】
図3に示されるように、ハウジング214は、1つ以上の収集領域210a、210bなどを含むことができ、これらのそれぞれは、エネルギー注入モジュール218a、218bなどに関連付けることができる。さらに、ハウジング214は、遠心分離機の側壁202に取り外し可能に結合され得る。
図1A、
図1B、及び
図2に関連して論じたように、モジュール218a、218bなどのエネルギー注入モジュールは、膜222a、222bなどの膜によって収集領域から分離され得る。収集領域からエネルギー注入モジュールを分離する膜222a、222bなどの膜は、モジュール140から収集領域144へのエネルギーの結合を容易にする材料から形成することができる。例として、膜は、ケブラー、グラフェン、鋼、チタン、窒化チタン、ゴム、合成ゴム、金属、プラスチック、他の適切な材料、又はこれらと他の適切な材料の組み合わせから形成することができる。いくつかの実施形態では、膜は可撓性膜であり得る。
【0052】
少なくともいくつかの実施形態では、エネルギー注入モジュール218a、218bなどは、ばね220a、220bなどによって収集領域210a、210bなどに対して保持され得る。ばね220a、220bは、求心力207に対抗する力を提供することができ、その結果、エネルギー注入モジュール218a、218bは、求心力207に打ち勝つ必要なしに、エネルギーを収集領域に結合することができるように、収集領域210a、210bと連絡し続ける。少なくともいくつかの実施形態では、ばね220a、220bは、可変ばね力を提供することができ、これは、遠心分離機200の回転速度に関連して、並びに収集領域210a、210b内の鉱物の質量に関連して変化させることができる。一例として、ばね220a、220bによって提供されるばね力は、遠心分離機200の回転速度の増加とともに増加することができ、より高い比重量を有する鉱物が収集領域に収集されるにつれて増加することができる。いくつかの実施形態では、ばね220a、220bは、空気室から形成することができ、ばね力は、空気を空気室に、又は空気室から送り出すことによって増加又は減少させることができる。
【0053】
必要に応じて、遠心分離機200は、収集領域210a、210b内の材料の質量を測定するセンサを含み得る。一例として、ばね220a、220bは、収集領域内の質量によってばねにどれだけの力が加えられるかを検出するセンサを含み得る(求心力207の影響を受ける)。収集領域210a、210b内の材料の質量は、遠心分離機が適切にバランスを取れているかどうか、ばねの剛性を高める必要があるかどうか(例えば、より多くの空気を適切な空気室に送り込むことによって)、又は、特定の収集領域が満杯であるか詰まっているのかを決定するために使用され得る。少なくともいくつかの実施形態では、遠心分離機200は、そのようなセンサからの情報を使用して、遠心分離機のバランスを取るように(例えば、1つ以上のエネルギー注入モジュールを選択的に無効にして、それらのモジュールにおける質量蓄積の速度を低減することによって)、スラリーの処理がいつ完了するかを決定するように(例えば、最大の比重量を有する所望の材料が収集領域に適切に濃縮されたとき)、又は他の目的のために構成された制御回路を含み得る。
【0054】
図3に示されるように、スラリー208は、比重量に従って収集領域210a、210b内で層化することができ、最も重い比重量を有する鉱物は、収集領域の「底部」(例えば、遠心分離機200の外側)に蓄積する。さらに、比重量がより軽い鉱物は、収集領域から逃げ出し、新鮮なスラリーが収集領域に入るのを可能にする可能性がある。その結果、比重量が最も重い鉱物が、時間の経過とともに遠心軸からより離れた収集領域の部分に蓄積する可能性がある。
【0055】
図4は、層化を強化するためにそれに結合されたエネルギーを有する遠心分離機を使用して、比重によって鉱物を分離するための例示的な方法400のプロセスフロー図である。方法400は、例えば、本明細書に記載の遠心分離機によって実施することができる。
【0056】
ブロック402において、遠心分離機で処理するための材料を得ることができる。本明細書で論じられるように、材料は、異なる比重量を有する鉱物の混合物を含む鉱山尾鉱又は他の材料ストリームであり得る。さらに、材料は、遠心分離機での分離の準備として、粉砕、ふるい分け、又はその他の方法で処理することができる。一例として、材料は、適切な粒子サイズを有するように処理され得る。
【0057】
ブロック404で、材料を適切な流体と混合してスラリーにすることができる。いくつかの実施形態では、スラリーを遠心分離機に加えることができる。少なくともいくつかの実施形態では、遠心分離機は、スラリーの添加中に回転していてもよい。他の実施形態では、遠心分離機は、スラリーの導入後にスピンアップすることができる。他の実施形態では、スラリーは、粉末などの乾燥材料と流体を別々に添加することによって、遠心分離機内で形成することができる。
【0058】
ブロック406で、遠心分離機を回転させ、モジュールを作動させて、遠心分離機の収集領域にエネルギーを導入することができる。
図1A~
図3に関して説明したように、遠心分離機の回転によって生成される求心力と、収集領域に結合された潤滑エネルギー(例えば、音響モジュールであり得るエネルギー注入モジュールによって生成される音響エネルギー)の両方が、遠心分離機の収集領域において高い比重を有する鉱物の濃縮及び層化を強化及び促進し得る。例として、エネルギー注入モジュールによって注入されたエネルギーは、スラリー中の粒子間の潤滑を増加させ、スラリー内の摩擦を低減し、スラリー中の粒子間の摩擦を低減する定在波を収集領域内に生成し、及び/又は、スラリー中の粒子間の摩擦を低減するスーパーキャビテーションを誘発することができる。
【0059】
ブロック408で、廃棄物スラリーは、遠心分離機から除去又は排出され得る。いくつかの実施形態では、ブロック408は、遠心分離機内のセンサが、収集領域が満杯、ほぼ満杯、所望の容量まで満たされている、又は収集領域の質量が安定している(例えば、スラリー中のより高い比重量の鉱物は既に収集領域内に含まれており、循環スラリーは廃棄する必要があることを示す)と決定した後に実行され得る。矢印410で示されているように、ブロック408で廃棄物スラリーを排出した後、追加のスラリーを遠心分離機に追加することができる。言い換えれば、ブロック404、406、及び408は、必要に応じて繰り返され得る。いくつかの実施形態では、ブロック404、406、及び408は、遠心分離機内のセンサが、収集領域が高い比重量を有する材料で満杯又はほぼ満杯であることを示すまで繰り返され得る。
【0060】
ブロック412において、重い材料、すなわち高い比重量を有する材料が、遠心分離機から抽出され得る。いくつかの実施形態では、ブロック412は、遠心分離機を停止し、現在濃縮された高比重量の鉱物を含んでいる収集領域を物理的に除去して空にすることを含むことができる。
【0061】
文脈上明確に別段の定めがない限り、説明及び特許請求の範囲全体を通じて、「comprise(含む)」、「comprising(含む)」、「include(含む)」、「including(含む)」などの用語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的意味、つまり、「含むがこれに限定されない」という意味で解釈されるべきである。本明細書で一般的に使用される「結合」という用語は、互いに直接結合され得るか、又は1つ以上の中間要素を介して結合され得る2つ以上の要素を指す。同様に、本明細書で一般的に使用される「接続された」という用語は、直接接続され得るか、又は1つ以上の中間要素を介して接続され得る2つ以上の要素を指す。さらに、「ここに」、「上記」という言葉、及び同様の意味の言葉は、この出願で使用される場合、この出願の特定の部分ではなく、この出願全体を指すものとする。文脈が許す場合、単数又は複数を使用する上記の詳細な説明の単語はまた、それぞれ複数又は単数を含み得る。文脈が許す場合、2つ以上の項目のリストを参照する単語「又は」は、単語の次の解釈の全てをカバーすることを意図している:リスト内の任意の項目、リスト内の全ての項目、及び、リスト内の項目の任意の組み合わせ。
【0062】
さらに、本明細書で使用される条件付き言語、例えば、とりわけ、「can(できる)」、「could(できる)」、「might(できる)」、「may(できる)」、「e.g.(例えば)」、「for example(例えば)」、「such as(など)」などは、特に明記されていない限り、又は使用されている文脈内で別の方法で理解されている場合を除いて、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又は状態が1つ以上の実施形態に何らかの形で必要であることを意味することを意図していない。
【0063】
特定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は例として提示されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規の方法、装置、及びシステムは、他の様々な形態で具体化することができる。さらに、本明細書に記載の方法、装置、及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更は、本開示の精神から逸脱することなく行うことができる。例えば、本明細書に記載の装置構成要素は、削除、移動、追加、細分化、結合、及び/又は修正され得る。これらの装置構成要素のそれぞれは、様々な異なる方法で実装できる。付随する請求項及びそれらの同等物は、開示の範囲及び精神に属するような形式又は修正をカバーすることを意図している。
【0064】
上記の説明は、説明を目的としたものであり、限定的なものではない。例えば、上記の例(又はその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。他の実施形態は、上記の説明を再検討する際の当業者などによって使用され得る。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるようにするために提供されている。それは、特許請求の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないことを理解した上で提出される。また、上記の詳細な説明では、開示を合理化するために、様々な特徴が一緒にグループ化され得る。これは、請求されていない開示された特徴が請求に不可欠であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴にある可能性がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態としてそれ自体で立っている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられている同等物の全範囲とともに決定されるべきである。