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  • 特開-有機無機複合組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123119
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】有機無機複合組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08G 64/42 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/22
C08K3/36
C08K9/04
C08G64/42
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098484
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2020184219の分割
【原出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 智大
(72)【発明者】
【氏名】小森 千晶
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形後であっても光学樹脂として実用上利用可能な、無機微粒子がポリカーボネート樹脂中に均一分散した有機無機複合組成物を提供する。
【解決手段】重合鎖末端に下記式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂と、無機微粒子とを含み、前記無機微粒子が、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、およびAl(酸化アルミニウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、有機無機複合組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合鎖末端に下記式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂と、無機微粒子とを含み、前記無機微粒子が、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、およびAl(酸化アルミニウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、有機無機複合組成物。
【化1】
(式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立であっても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、a及びbはそれぞれ1~2の整数であり、Xは単結合あるいは下記式(2)
【化2】
のいずれかで表される二価の基であり、ここでRはアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、R中の水素原子はカルボキシル基で置換されてもよい。)
【請求項2】
重合鎖末端のモル比が、全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して1.0モル%以上10モル%以下である、請求項1に記載の有機無機複合組成物。
【請求項3】
前記式(1)は、下記式(3)で表される構造単位を含む、請求項1または2に記載の有機無機複合組成物。
【化3】
(式(3)において、Rは、単結合、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。)
【請求項4】
前記式(1)は、下記式(4)で表される構造単位を含む、請求項1または2に記載の有機無機複合組成物。
【化4】
(式(4)において、Rは、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。)
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂のカルボキシル基量が1eq/ton~200eq/tonである、請求項1~4のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項6】
前記無機微粒子の表面が、表面修飾剤により修飾されている、請求項1~5のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項7】
前記表面修飾剤が、酸性官能基を有する、請求項6に記載の有機無機複合組成物。
【請求項8】
前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、請求項7に記載の有機無機複合組成物。
【請求項9】
前記無機微粒子の表面が、前記無機微粒子に対して1~30質量%の前記表面修飾剤により修飾されている、請求項6~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項10】
前記無機微粒子の平均粒子径が1~20nmである、請求項1~9のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項11】
前記無機微粒子の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂に対して1~50質量%である、請求項1~10のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項12】
前記無機微粒子が、ZrO(酸化ジルコニウム)である、請求項1~11のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られる成形品。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られるフィルムまたはシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート樹脂と、無機微粒子とを含む有機無機複合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の開発が盛んに行われている。例えば、光学レンズ材料の分野においては、高屈折率、高アッベ数、耐熱性、透明性に優れた光学材料が求められている。従来用いられていたガラスは、要求される様々な光学特性を実現することが可能であると共に、環境耐性に優れているが、加工性に劣るという問題があった。これに対し、ガラス材料に比べて安価であると共に加工性に優れる樹脂材料が光学部品に用いられてきている。しかし、樹脂はガラスに比べて一般的に屈折率が低いため、光学部品を薄肉化するには素材自体を高屈折率化することが求められている。
【0003】
高屈折率化する方法として、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機酸化物の微粒子を樹脂に均一分散させる方法がある。しかしながら、このような微粒子は、粒子の表面エネルギーが大きいため、マトリクス樹脂に均一に分散させることは困難であるため、これまで様々な検討がなされている。
【0004】
微粒子を樹脂に均一に分散させる手法として、微粒子表面を表面修飾剤で化学修飾する手法がある。例えば特許文献1には、特定の化学構造で修飾した微粒子と樹脂とを混合しマスターバッチを作製し、その後熱可塑性樹脂と溶融混錬して透明な樹脂組成物を得る方法が記載されている。この方法では表面修飾剤を選択することにより分散性がある程度向上するものの、いまだ十分な分散性が得られているとは言い難い。また、無機微粒子の含有量が少なく高屈折率化の点から十分なものでないという課題を有する。
【0005】
特許文献2には、ポリカーボネート樹脂を重合した後に、その末端にカルボキシル基を導入する方法、およびカルボキシル基を有するジオール化合物を共重合してカルボキシル基含有ポリカーボネート樹脂を得る方法が記載されており、無機微粒子と複合化したフィルムが透明性に優れることが記載されている。末端にカルボキシル基を導入する方法では、ポリマー末端の水酸基と酸無水物との反応を利用している。この方法では、酸無水物として多官能性化合物を用いているため、特に高温での加工プロセスにおいてゲル化が問題になる可能性がある。また共重合による方法では、重合中にカルボキシル基が他のジオール化合物と反応してしまうため、カルボキシル基の導入量を制御することが困難であり、特に高温条件下において、無機微粒子の分散安定性が問題になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-38012号公報
【特許文献2】特開2018-138624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカーボネートを高屈折率化するために、ポリマーの分子構造を設計して電子密度を向上させる方法が一般的に用いられているものの、微粒子を樹脂に均一分散させて高屈折率化する方法は、実用上ほぼ用いられていない。これは、上述のように微粒子が均一に分散した樹脂組成物を得ることが難しいことに加えて、そのような樹脂組成物が得られたとしても、その樹脂組成物を成形した場合には、微粒子の分散状態が変化して、微粒子が凝集する場合があったことに起因する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、成形後であっても光学樹脂として実用上利用可能な、無機微粒子がポリカーボネート樹脂中に十分に分散させた有機無機複合組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、重合鎖末端に特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を使用することにより、無機微粒子のポリカーボネート樹脂への分散性を向上させることを見出し、前記ポリカーボネート樹脂と無機微粒子とを含む有機無機複合組成物が、透明性、成形性、屈折率に優れることを究明し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
【0010】
1.重合鎖末端に下記式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂と、無機微粒子とを含む有機無機複合組成物。
【化1】
(式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立であっても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、a及びbはそれぞれ1~2の整数であり、Xは単結合あるいは下記式(2)
【化2】
のいずれかで表される二価の基であり、ここでRはアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、R中の水素原子はカルボキシル基で置換されてもよい。)
2.重合鎖末端のモル比が、全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して1.0モル%以上10モル%以下である、前項1に記載の有機無機複合組成物。
3.前記式(1)は、下記式(3)で表される構造単位を含む、前項1または2に記載の有機無機複合組成物。
【化3】
(式(3)において、Rは、単結合、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。)
4.前記式(1)は、下記式(4)で表される構造単位を含む、前項1または2に記載の有機無機複合組成物。
【化4】
(式(4)において、Rは、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。)
5.前記ポリカーボネート樹脂のカルボキシル基量が1eq/ton~200eq/tonである、前項1~4のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
6.前記無機微粒子の表面が、表面修飾剤により修飾されている、前項1~5のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
7.前記表面修飾剤が、酸性官能基を有する、前項6に記載の有機無機複合組成物。
8.前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、前項7に記載の有機無機複合組成物。
9.前記無機微粒子の表面が、前記無機微粒子に対して1~30質量%の前記表面修飾剤で修飾されている、前項6~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
10.前記無機微粒子の平均粒子径が1~20nmである、前項1~9のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
11.前記無機微粒子の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂に対して1~50質量%である、前項1~10のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
12.前記無機微粒子が、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、およびAl(酸化アルミニウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前項1~11のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
13.前項1~12のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られる成形品。
14.前項1~12のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られるフィルムまたはシート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重合鎖末端に特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂と、無機微粒子とを用いることで、無機微粒子のポリカーボネート樹脂への分散性を向上させた、透明性、成形性、屈折率に優れる有機無機複合組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1の写真は、実施例1で製造された有機無機複合組成物のTEM画像を示す。
図2図2の写真は、比較例3で製造された有機無機複合組成物のTEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
本発明の一態様は、上記式(1)で表されるような、カルボキシル基を有する構造単位を重合鎖末端に含むポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする。本発明の有機無機複合組成物は、高温条件下での無機微粒子の分散安定性に優れ、透明性、成形性、屈折率に優れる。
【0015】
一方、上記特許文献2に記載される方法では、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に有するポリマーを用い、透明性に優れる有機無機複合組成物が示されているものの、本発明者らの検討によれば、射出成形等の高温条件では透明性が低下するとともに成形中に分解が生じ、成形品を得ることができないことが明らかとなった。
【0016】
本発明の技術的範囲を制限するものでは無いが、本発明において、かような効果が得られるメカニズムは、以下のように推察される。上記式(1)で表されるような、カルボキシル基を有する構造単位をポリカーボネート樹脂の重合鎖末端に導入することによって、無機微粒子表面に効果的に被覆されやすくなり、高温条件下でも高度な透明性を維持することができる。さらに、無機微粒子表面に被覆されやすくなったことから、無機微粒子表面の活性な水酸基が効果的に遮蔽されるため、高温条件下でのポリマーの加水分解が抑制されうる。その結果、高い透明性が得られると同時に、加水分解が抑制され、高温条件で成形が可能な有機無機複合組成物を提供することができる。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、重合鎖末端に下記式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
【0018】
【化5】
【0019】
式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立であっても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、a及びbはそれぞれ1~2の整数であり、Xは単結合あるいは下記式(2)
【化6】
のいずれかで表される二価の基であり、ここでRはアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、R中の水素原子はカルボキシル基で置換されてもよい。)
【0020】
上記式(1)において、好ましくは、RおよびRは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。RおよびRが夫々複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良い。
【0021】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
炭素原子数1~18のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0022】
炭素原子数1~18のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。
炭素原子数6~20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルキル基が好ましい。
【0023】
炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基として、好ましくはシクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルコキシ基が好ましい。
炭素原子数2~10のアルケニル基として、メテニル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましい。
【0024】
炭素原子数6~14のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数6~14のアリールオキシ基として、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
炭素原子数7~20のアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基として、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
好ましくは、式(1)中のaおよびbはそれぞれ1~2の整数であり、より好ましくは、aおよびbはそれぞれ1の整数である。
好ましくは、式(2)中のRは単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数7~20のアラルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0026】
好ましくは、式(2)中のRおよびRそれぞれ独立しても同一であってもよく、アルキレン基、アルキリデン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。好ましくは、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~20のアラルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~12のアラルキレン基である。
【0027】
前記式(1)で表される構造単位を有する重合鎖末端のモル比は、ポリカーボネート樹脂の全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して、1.0モル%以上10モル%以下であることが好ましく、1.5モル%以上8.0モル%以下であることがより好ましく、2.0モル%以上7.0モル%以下であることがさらに好ましく、3.0モル%以上6.0モル%以下であることが特に好ましい。上記範囲内であると、本発明の効果を十分に発揮できる。
【0028】
(好ましい態様(1))
本発明において好ましい態様(1)としては、前記式(1)として、特に下記式(3)で表される構造単位を含むものが好ましい。
【0029】
【化7】
【0030】
式(3)において、Rは、単結合、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは好ましくは、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数7~20のアラルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0031】
上記式(3)で表される構造を重合鎖末端に含むポリカーボネート樹脂は、通常のポリカ―ボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段において、末端停止剤としてカルボキシル基を有するフェノール化合物を用いる方法、あるいは末端停止剤としてカルボン酸エステル基を有するフェノール化合物を用いて重合反応を行った後、酸変性反応を行ってカルボン酸エステル基をカルボキシル基に変性する方法、あるいはその両方を用いることで製造される。重合反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、およびカーボネートプレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。中でも、式(3)で表される構造を重合鎖末端に定量的に導入する観点から、界面重縮合法において、カルボキシル基を有するフェノール化合物あるいはカルボン酸エステル基を有するフェノール化合物、あるいはその両方を末端停止剤として作用させる方法が好ましい。
【0032】
末端停止剤として用いられる、カルボキシル基を有するフェノール化合物を例示すると、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、等が挙げられる。重合末端への導入効率の観点から、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸が好ましく、4-ヒドロキシ安息香酸がより好ましい。これらは単独で使用しても良く、または2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0033】
末端停止剤として用いられる、カルボン酸エステル基を有するフェノール化合物を例示すると、4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチル、4-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、等が挙げられる。後述する脱保護反応効率の観点から、4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチル、4-ヒドロキシ安息香酸イソプロピルが好ましく、4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチルがより好ましい。これらは単独で使用しても良く、または2種類以上組み合わせて用いても良い。カルボキシル基を、カルボン酸エステル構造とすることで疎水性が向上し、重合鎖末端に定量的に導入されやすくなる。
【0034】
カルボキシル基やカルボン酸エステル基を有しないフェノール化合物類を、末端停止剤として組み合わせて用いてもよい。カルボキシル基やカルボン酸エステル基を有しないフェノール化合物類とは、例えば、フェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。末端停止剤として、これらのカルボキシル基を有しないフェノール化合物を組み合わせて使用することで、重合鎖末端のカルボキシル基量を定量的に調整することができ、有機無機複合組成物の熱安定性、無機微粒子の分散性、溶融時の流動性を制御することができる。
【0035】
カルボン酸エステル基を有するフェノール化合物を用いる方法では、重合反応によってポリカーボネート樹脂を製造した後、酸変性反応によってカルボン酸エステル基をカルボキシル基に変換することで、重合鎖末端を式(3)で表される構造とすることができる。酸変性反応とは例えば、これらに限定されるものではないが、酸性化合物を作用させる方法、熱処理する方法、など公知の方法を用いることができる。反応効率の観点から酸性化合物を用いる方法が好ましい。酸性化合物とは例えば、これらに限定されるものではないが、トリフルオロ酢酸、塩酸などの強酸性化合物が挙げられる。反応効率の観点から、トリフルオロ酢酸が特に好ましい。
【0036】
酸性化合物を用いた酸変性反応の製造工程は、例えば、固化したポリマーを溶媒に溶解し酸性化合物を作用させる工程でも良いし、界面重縮合法のように溶媒を用いた重合方法であれば、重合反応が終了したポリマー溶解液に酸性化合物を作用させる工程を用いても良い。
【0037】
(好ましい態様(2))
本発明において好ましい態様(2)としては、前記式(1)として、特に下記式(4)で表される構造単位を含むものが好ましい。
【0038】
【化8】
【0039】
式(4)において、Rは、アルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、およびシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは好ましくは、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~20のアラルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~12のアラルキレン基である。
【0040】
本発明で用いられる前記式(4)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の製造方法は、例えば、炭素-炭素二重結合を有するポリカーボネート樹脂を製造する工程(工程(I))および前記ポリカーボネート樹脂とカルボキシル基を有するチオール化合物を反応させる工程(工程(II))により製造することができる。
【0041】
(工程I)
炭素-炭素二重結合を重合鎖末端に有するポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段によって、少なくとも1種の、炭素-炭素二重結合を有するフェノール化合物を用いることで製造される。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、およびカーボネートプレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。中でも、式(4)で表される構造を重合鎖末端に定量的に導入する観点から、界面重縮合法において、炭素-炭素二重結合を有するフェノール化合物を末端停止剤として作用させる方法が好ましい。
【0042】
末端停止剤として用いられる炭素-炭素二重結合を有するフェノール化合物を例示すると、パラヒドロキシアリルフェノール、メタヒドロキシアリルフェノール、オルトヒドロキシアリルフェノール等が挙げられる。重合末端への導入効率の観点から、オルトヒドロキシアリルフェノールが特に好ましい。これらは単独で使用しても良く、または2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0043】
炭素-炭素二重結合を有しないフェノール化合物類を、末端停止剤として組み合わせて用いてもよい。炭素-炭素二重結合を有しないフェノール化合物類とは、例えば、フェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。末端停止剤として、これらの炭素-炭素二重結合を有しないフェノール化合物を組み合わせて使用することで、重合鎖末端のカルボキシル基量を定量的に調整することができ、有機無機複合組成物の熱安定性、無機微粒子の分散性、溶融時の流動性を制御することができる。
【0044】
(工程II)
工程(I)にて製造した炭素-炭素二重結合を有するポリカーボネート樹脂と、カルボキシル基を有するチオール化合物とを反応(エンチオール反応)させることにより、前記式(4)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂を製造することができる。エンチオール反応とは、炭素-炭素二重結合とチオール基が1対1で付加する反応である。すなわち、チオールに光照射をするか、またはラジカル発生剤を加えると、容易にチイルラジカルが発生し、炭素-炭素二重結合に付加する。それにより生成した炭素ラジカルがチオール基から水素を引き抜くことで1対1の付加体が生成する。水素を引き抜かれたチオール基はチイルラジカルになるので、連鎖的に反応が進行する。このように、エンチオール反応を用いることにより、定量的かつ高収率にて、カルボキシル基を有するポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0045】
カルボキシル基を有するチオール化合物を例示すると、3-メルカプトプロパン酸、3-メルカプト-2-メチルプロパン酸、メルカプトコハク酸、2-メルカプト安息香酸、1-(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸等が挙げられる。
【0046】
エンチオール反応においては、ラジカル発生剤を反応触媒として用いることが好ましい。ただし、光(紫外線)を照射することによるラジカル反応であってもよい。ラジカル発生剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられ、熱によりラジカルが発生するもの、光照射によりラジカルが発生するもののいずれも好適に用いることができる。アゾ化合物の例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、ジ-tert-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
【0047】
エンチオール反応は、より詳細には、炭素-炭素二重結合を有するポリカーボネート樹脂と、カルボキシル基を有するチオール化合物と、ラジカル発生剤を、有機溶媒に溶解させ、ラジカルが発生する条件下に保持することにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酪酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなど)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は、単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。また、反応温度は、特に限定するものではないが、50~120℃であることが好ましい。
【0048】
(その他の単位)
重合鎖末端以外の単位、すなわち主鎖の単位としては、各種ジオール化合物が挙げられる。かかるジオール化合物としては、芳香族ジオール化合物、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物のいずれでも良く、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。以下にジオール成分の代表的具体例を示すが、本発明のその他の成分は、それらによって限定されるものではない。
【0049】
芳香族ジオール化合物としては、具体的には4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ビフェノール、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(通常“BPM”と称される)、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド(以下“TDP”と略すことがある)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド(以下“HMPS”と略すことがある)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“BPA”と称される)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(通常“BPC”と称される)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下“BPF”と略すことがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略すことがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン(以下“BPPF”と略すことがある)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシー3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(2,3-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)デカン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(通常“BPAF”と称される)、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジメチル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジフェニル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、および2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
上記の中でも、BPM、TDP、HMPS、BPA、BPC、BPF、BCF、BPPFが好ましい。
【0050】
脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0051】
脂環式ジオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)などが挙げられる。
【0052】
(ポリカーボネート樹脂重合体の製造方法)
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0053】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0054】
本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて脂肪酸を共重合することができる。例えば、1,10-ドデカンジオン酸、アジピン酸、ヘキサンジオン酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、及び4-ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0055】
本発明のポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を、共重合することもできる。
【0056】
本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0057】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0058】
(粘度平均分子量)
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは5,000~40,000、より好ましくは8,000~30,000、さらに好ましくは10,000~25,000、特に好ましくは12,000~23,000である。このような範囲である場合、成形性と機械強度のバランスに優れるため好ましい。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0060】
(ガラス転移温度:Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~200℃、より好ましくは100~190℃であり、さらに好ましくは110~180℃である。Tgが上記範囲内であると、光学成形体として使用した際に、耐熱安定性及び成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0061】
(カルボキシル基量)
本発明のポリカーボネート樹脂のカルボキシル基量は、好ましくは1~200eq/tonであり、より好ましくは10~170eq/tonであり、さらに好ましくは30~150eq/tonであり、特に好ましくは50~120eq/tonである。カルボキシル基量が下限以上であれば、高温条件下における無機微粒子の分散安定性が十分となり、透明な有機無機複合組成物を与えることができる。上限以下であれば、ポリカーボネート樹脂の分子量低下が抑制され物性に好ましい影響を与えることができる。
【0062】
本発明でいうカルボキシル基量は、例えば次の要領で測定することができる。まず、ポリカーボネート樹脂を窒素雰囲気下でベンジルアルコールに溶解させ、水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液でフェノールレッドを指示薬に滴定し、その滴下量からカルボキシル基量を算出する。
【0063】
<無機微粒子>
本発明で用いられる無機微粒子は、表面修飾剤により修飾されていることが好ましい。無機微粒子は、その平均粒子径が好ましくは20nm以下のナノスケールの範囲にあり、酸性官能基を有する表面修飾剤で修飾されているものが好ましく使用できる。
【0064】
無機微粒子の種類としては、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)等のものを例示することができる。中でも、本発明においては、光学部材、光学部品としての利用の観点からZrOやTiOが好ましく、ZrOが特に好ましい。
【0065】
本発明での無機微粒子の表面修飾剤は、複合化するポリカーボネート樹脂などに対し、無機微粒子の分散性を確保できれば特に制限はないけれども、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボン酸基のいずれかの酸性官能基を有することが分散性や屈折率向上効果に優れるため好ましい。以下に表面修飾剤の代表的具体例を示すが、本発明の表面修飾剤は、それらによって限定されるものではない。それらは単一で用いられても良く、また、複数種のものを混合して用いてもよい。特に、表面修飾処理後の無機微粒子を樹脂の分散する際に、樹脂の種類に応じて、当該樹脂との親和性を向上しやすい表面修飾剤を適宜選択して用いることが望ましい。
【0066】
スルホン酸としては、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸やベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールスルホン酸が好ましい。
【0067】
ホスホン酸としては、プロパンホスホン酸等のアルキルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸等のアリールホスホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールホスホン酸が好ましい。
【0068】
ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジ(2-エチルへキシル)ホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸が挙げられる。また、ホスフィン酸基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオホスフィン酸、ジチオホスフィン酸を用いることで、ホスフィン酸を用いる場合より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールホスフィン酸が好ましく、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸がさらに好ましく、ジフェニルホスフィン酸が特に好ましい。
【0069】
カルボン酸としては、ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリル酸等のアルキルカルボン酸や、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェノキシ安息香酸等のアリールカルボン酸が挙げられる。また、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオカルボン酸、ジチオカルボン酸を用いることで、カルボン酸を用いる場合より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールカルボン酸が好ましく、オルトまたはメタまたはパラ位にフェノキシ基を有するフェノキシ安息香酸がさらに好ましく、パラフェノキシ安息香酸が特に好ましい。
【0070】
本発明における無機微粒子の表面修飾は、例えば以下のような工程により行われる。すなわち、平均粒子径20nm程度以下の親水性の無機微粒子が分散した透明の水分散液、およびメタノールの混合液に、酸性官能基を有する表面修飾剤を添加し、その後、水とメタノールを共沸により除去して、トルエンや塩化メチレンに溶媒置換することで表面修飾無機微粒子が分散した、トルエン分散液あるいは塩化メチレン分散液を調整できる。その後、溶媒留去することで表面修飾無機微粒子の白色粉末が得られる。
【0071】
表面修飾剤で修飾された無機微粒子における、表面修飾剤の含有量は、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、無機微粒子に対して1~30質量%であることが好ましく、3~28質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることが特に好ましい。樹脂複合体への分散性の観点からは、表面修飾剤の含有率は高いほど良く、屈折率の向上効果の観点からは、表面修飾剤の含有率は低いほど良い。表面修飾剤の含有率は、分散性および所望の屈折率に応じて適宜調整することが望ましい。
【0072】
<ポリカーボネート樹脂および無機微粒子以外の成分>
本発明の有機無機複合組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂および無機微粒子以外に、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、流動改質剤および帯電防止剤などのそれ自体公知の機能剤を含有できる。
【0073】
本発明の有機無機複合組成物に、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂や、添加剤を配合させる方法は、特に限定されるものではなく公知の方法が利用できる。最も汎用される方法として、ポリカーボネート樹脂、無機微粒子、添加剤を予備混合した後、押出機に投入して溶融混練を行い、押出されたスレッドを冷却し、ペレタイザーにより切断して、ペレット状の成形材料を製造する方法が挙げられる。
【0074】
<有機無機複合組成物の製造方法>
本発明の有機無機複合組成物の製造方法は、前記式(1)で表される構造を重合鎖末端に有するポリカーボネート樹脂を得ること、および表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子をそのポリカーボネート樹脂に分散させることを含む。
【0075】
無機微粒子をポリカーボネート樹脂に分散させる工程については、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリカーボネート樹脂溶液と、無機微粒子分散液を混合する方法、ポリカーボネート樹脂紛体と無機微粒子紛体を溶融混合する方法等を挙げることができ、これらのいずれの方法で作成してもよい。
【0076】
例えば、ポリカーボネート樹脂溶液と無機微粒子分散液を混合する方法では、ポリカーボネート樹脂溶液と、無機微粒子分散液を一気に混合してもよいし、ポリカーボネート樹脂溶液を、無機微粒子分散液に徐々に滴下し混合してもよい。また、可塑剤を存在させてもよく、このような可塑剤は樹脂溶液や無機微粒子分散液に予め添加しておいてもよいし、樹脂溶液と無機微粒子分散液の混合時に添加してもよい。
【0077】
本発明の有機無機複合組成物における、無機微粒子の含有量は、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~40質量%であり、もっとも好ましくは5~30質量%である。表面修飾無機微粒子が下限未満の場合は、無機微粒子を含有する効果が得られにくく、上限を超えると有機無機複合体の強度が低くなるためである。
【0078】
前記式(1)で表される構造を重合鎖末端に有するポリカーボネート樹脂と表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子とを含む有機無機複合組成物を、マスター樹脂として別の樹脂に添加して、混合して使用することもできる。この方法を用いることで、屈折率およびアッベ数を任意の範囲で調整し、光学樹脂として好適な有機無機複合組成物を得ることが可能である。
【0079】
(成形方法)
本発明における有機無機複合組成物の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶液キャスト法等、一般のポリカーボネート樹脂の成形法を採用することができる。本発明の有機無機複合組成物は、透明性、高屈折率に優れているので種々の成形体として利用することができる。殊に光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料、パソコンや携帯電話の外装や前面板などの電気電子部品、自動車のヘッドランプや窓などの自動車用途、または機能材料用途に適した成形体として有利に使用することができ、特に光学レンズや光学フィルムに好適である。
【0080】
(平均粒子径)
本発明の有機無機複合組成物において、無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは1~100nmの範囲であり、より好ましくは1~50nmの範囲であり、さらに好ましくは1~20nmの範囲である。平均粒子径がかかる範囲の上限を超えると、有機無機複合組成物の透明性が不十分となる可能性がある。
【0081】
(透過率)
本発明の有機無機複合組成物は透過率が高いことが好ましい。1mm厚の成形体のD線透過率70%以上であることが好ましく、D線透過率80%以上であることがより好ましい。かかる特性を満足することで光学レンズ用途や光学フィルム用途に好適に用いることができる。
【0082】
(屈折率)
本発明の有機無機複合組成物の25℃で測定した波長589nmの屈折率(以下nDと略すことがある)は、1.500~2.000であることが好ましい。屈折率が下限以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くすることができる。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「質量部」を意味する。実施例において使用したポリカーボネート樹脂、無機微粒子および各評価方法は以下のとおりである。
【0084】
<評価方法>
(組成比)
日本電子社製 JNM-AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0085】
(粘度平均分子量)
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに試料0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0086】
(ガラス転移温度(Tg))
試料8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0087】
(カルボキシル基量)
試料を窒素雰囲気下でベンジルアルコールに溶解させ、水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液でフェノールレッドを指示薬に滴定し算出した。
【0088】
(成形性)
押出機で溶融混錬したペレットを射出成形機(日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型樹脂プレートを成形し、各種評価を実施した。上記の条件で3段型樹脂プレートが得られた場合には成形性「◎」、樹脂プレートは得られたが気泡の発生など外観不良が生じた場合には「〇」、加水分解等により樹脂の強度が不十分となり樹脂プレートが得られなかった場合には成形性「×」として評価した。
【0089】
(平均粒子径)
押出機で溶融混錬したペレットを、熱プレス成形機((神藤金属工業所(株)製 圧縮成形機:SFV-10、真空ポンプユニット:GXD-360)でプレス成形し、厚さ約1mmの成形板を得た。プレス成形条件は、金型温度220℃、1次圧:1MPa(30秒)、2次圧:1.5MPa(5分)とした。この成形板を切削して超薄切片を作成し、グリッド(日本電子株式会社製 EM FINE GRID No.2632 F-200-CU 100PC/CA)に付着させ、日本電子株式会社製 透過型電子顕微鏡TEM JEM-2100を用いて加速電圧200kVで観察した。
【0090】
観察倍率100,000倍の顕微鏡写真を用い、画像解析ソフトWin ROOF Ver.6.6(三谷商事(株))を用いて粒子解析を行い、試料薄片中の無機微粒子の平均サイズおよび粒径分布(頻度分布)を得た。ここで各粒子のサイズとして最大長径(粒子の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最大になるように選んだ時の長さ)を利用した。3枚の試料切片で同様の解析を行い、その平均値を各試料の値とした。
【0091】
(透明性)
射出成形して得られた3段型樹脂プレートの1.0mm厚における、589nmの分光透過率が80%以上の場合を〇、80%未満の場合を×として評価した。
【0092】
(屈折率)
射出成形して得られた3段型樹脂プレートをATAGO製DR-M2アッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(nD)(波長:589nm)を測定した。
【0093】
<ポリカーボネート樹脂の製造>
(製造例1)
(重合反応)
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水8,523部、25%水酸化ナトリウム水溶液3787部を入れ、二価フェノールとして2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPAと称することがある)901部および2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、BPCと称することがある)1,010部、およびハイドロサルファイト5.73部を溶解した後、塩化メチレン6708部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン(以下“FH”と略することがある)1,000部を70分要して吹き込んだ。25%水酸化ナトリウム水溶液631部を加え、さらに末端停止剤として4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチル(富士フィルム和光純薬株式会社製)58.2部を塩化メチレン580部に溶解した溶液を加え、攪拌して乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン2.0部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、樹脂パウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥した。
【0094】
(酸変性反応)
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に、かかる樹脂パウダー500部を入れ、塩化メチレン650部に溶解し、攪拌しながらトリフルオロ酢酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)500部を30分かけて加えた後、温度20~30℃において5時間攪拌を続けて反応を終了した。反応終了後、塩化メチレンで希釈し、イオン交換水で繰り返し洗浄して水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥した。得られた樹脂の粘度平均分子量は19,800、ガラス転移温度は130℃、カルボキシル基量は68eq/tonであった。
【0095】
(製造例2)
二価フェノールとしてBPA1,988部、末端停止剤として4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチル54.1部、塩化メチレン7,401部に変更した以外は、製造例1と同様の方法で製造した。
【0096】
(酸変性反応)
製造例1と同様の方法で製造した。得られた樹脂の粘度平均分子量は22,300、ガラス転移温度は148℃、カルボキシル基量は72eq/tonであった。
【0097】
(製造例3)
(重合反応)
二価フェノールとして9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン(以下、BPPFと称することがある)2,538部および4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド(以下、TDPと称することがある)735部、末端停止剤として4-ヒドロキシ安息香酸ターシャリブチル83.3部、塩化メチレン7,154部に変更した以外は、製造例1と同様の方法で製造した。
【0098】
(酸変性反応)
製造例1と同様の方法で製造した。得られた樹脂の粘度平均分子量は15,000、ガラス転移温度は179℃、カルボキシル基量は112eq/tonであった。
【0099】
(製造例4)
(重合反応)
二価フェノールとしてBPA901部およびBPC1010部、末端停止剤として2-アリルフェノール(東京化成工業製)40.2部に変更した以外は、製造例1と同様の方法で製造し樹脂パウダーを得た。
【0100】
(酸変性反応)
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に、かかる樹脂パウダー500部、1,2-ジクロロエタン5,000部を加え溶解した後、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBN)117部、および3-メルカプトプロパン酸150部を加え、窒素雰囲気下70℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応溶液をアセトンに添加しポリカーボネート樹脂を沈殿させた後、減圧ろ過で沈殿物を回収した。次いで、沈殿物を塩化メチレンに溶解し、アセトンに添加しポリカーボネート樹脂を沈殿させた後、減圧ろ過で沈殿物を回収した。得られた沈殿物を減圧ろ過で回収し、乾燥してポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は20,300、ガラス転移温度は136℃、カルボキシル基量は58eq/tonであった。
【0101】
(製造例5)
(重合反応)
二価フェノールとしてBPA1,712部および2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPDAL)122部、末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール47.3部に変更した以外は、製造例1と同様の方法で製造し樹脂パウダーを得た。
【0102】
(酸変性反応)
製造例4と同様の方法で製造した。得られた樹脂の粘度平均分子量は20,400、ガラス転移温度は132℃、カルボキシル基量は228eq/tonであった。
【0103】
(製造例6)
末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール45.0部に変更した以外は製造例1の(重合反応)と同様の方法で製造し、酸変性反応は行わなかった。得られた樹脂の粘度平均分子量は20,000、ガラス転移温度は131℃であった。
【0104】
(製造例7)
末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール41.8部に変更した以外は製造例2の(重合反応)と同様の方法で製造し、酸変性反応は行わなかった。得られた樹脂の粘度平均分子量は22,000、ガラス転移温度は146℃であった。
【0105】
(製造例8)
末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール64.4部に変更した以外は製造例3の(重合反応)と同様の方法で製造し、酸変性反応は行わなかった。得られた樹脂の粘度平均分子量は15,200、ガラス転移温度は180℃であった。
【0106】
<無機微粒子の製造>
(製造例9)
スターラーチップをセットした2Lナスフラスコに、表面修飾剤としてパラフェノキシ安息香酸3.84gをとり、メタノール300mLおよびクロロホルム700mLを加え、溶解させた。次に、ZrO水分散液(堺化学工業製:SZR-W)37.2を15分かけて滴下した。混合液を1時間室温で撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより200mL程度になるまで溶媒を留去した。留去は液相内で突沸が生じない程度の圧力に減圧することにより行った。その混合液に、さらにメタノール300mL、クロロホルム700mLを加えて再び界面がない透明な分散液とし、再度200mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を3回繰り返し、粉状の固体を得た。
【0107】
その固体に塩化メチレン500mLを加えて、再び界面がない透明な分散液とし、100mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を3回重ねることにより、水/メタノール/クロロホルムホルム混合溶媒から塩化メチレンのみの溶媒に置換してZrO微粒子の塩化メチレン分散液を得た。さらに、この塩化メチレン分散液を室温で24時間真空乾燥させ、塩化メチレンを除去した後、さらに120℃で48時間乾燥させ、表面修飾ZrOの粉末を得た。
【0108】
(製造例10)
表面修飾剤としてジフェニルホスフィン酸1.34gを用いた以外は、製造例9と同様の方法で表面修飾ZrOの粉末を得た。
【0109】
<有機無機複合組成物の製造>
[実施例1~6、比較例1~4]
前記無機微粒子を塩化メチレンに分散させ、前記ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を5分かけて滴下した後、30分撹拌した。この塩化メチレン分散液を、80℃4時間乾燥して塩化メチレンを留去し、さらに120℃24時間乾燥させて有機無機複合体のフレークを得た。このフレークを二軸押出機(テクノベル社製 KZW15-25MG)により、シリンダ・ダイス温度300℃条件で溶融混錬し、吐出された樹脂を水槽で冷却しながらペレタイザーでカットしてペレットを得た。かかる押出後のペレットを射出成形機(日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型樹脂プレートを成形した。各種評価を行い、その結果を表3に記載した。使用した樹脂の種類、表面修飾剤の種類と無機微粒子の添加量は、表3に示す通りである。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
実施例1~6のように、本発明のポリカーボネート樹脂を用いた場合、成形性、透明性、屈折率に優れた有機無機複合組成物を提供できた。比較例1のように側鎖にカルボキシル基を有し重合鎖末端にカルボキシル基を有さないポリカーボネート樹脂を用いた場合には、分解が著しく溶融成形性に乏しかった。比較例2~4のように重合鎖末端にカルボキシル基を有しないポリカーボネート樹脂を用いた場合には、無機微粒子を均一に分散することができず、微粒子が凝集しており透過性が低かった。
【0114】
図1に実施例1で得られた有機無機複合組成物のTEM画像を示す。透明性が高く無機微粒子が均一に分散していた。
図2に比較例3で得られた有機無機複合組成物のTEM画像を示す。透明性が低く無機微粒子が凝集していた。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の有機無機複合組成物は、透明性、屈折率、成形性の点で優れている。また、無機微粒子の含有量により屈折率等の特性を任意に調整することができる。このため、本発明を用いて得られる成形品、フィルム、およびシートは各種分野に利用可能である。
図1
図2