IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティー2 バイオシステムズ,インコーポレーテッドの特許一覧

特開2024-123121複合試料における増幅のための方法及びシステム
<>
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図1
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図2
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図3
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図4A
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図4B
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図4C
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図4D
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図5
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図6
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図7
  • 特開-複合試料における増幅のための方法及びシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123121
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】複合試料における増幅のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240903BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240903BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098532
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2022100434の分割
【原出願日】2017-04-12
(31)【優先権主張番号】62/322,551
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】511105894
【氏名又は名称】ティー2 バイオシステムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマン,ウルリヒ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,ジェシカ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー,トーマス,ジェイ,ジュニア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複合試料、例えば全血における標的核酸の増幅のための方法を提供する。
【解決手段】対象から得られた生物学的試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、生物学的試料は対象由来の細胞又は細胞破砕物を含み、前記方法は、(a)生物学的試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップ、(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ、及び(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた生物学的試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、生物学的試料は対象由来の細胞又は細胞破砕物を含み、前記方法は、
(a)生物学的試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップ、
(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ、及び
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(d)における熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)が、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料が約0.2mL~約5mLである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料が約0.9mLである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
生物学的試料が血液、血の混じった液体、組織試料及び痰からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
血液が全血、粗血液溶解物、血清又は血漿である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
血の混じった液体が、傷からの滲出液、痰又は胆汁である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
組織試料が組織生検である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
組織生検が皮膚生検、筋肉生検又はリンパ節生検である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
組織試料がホモジナイズされた組織試料である、請求項6、9又は10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ、
(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ、並びに
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
【請求項13】
全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、
(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ、
(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップ、並びに
(e)標的核酸を増幅して、単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
【請求項14】
ステップ(c)がステップ(d)の前に変性反応混合物を遠心するステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、ステップ(b)中又はステップ(d)中に、(i)デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)、(ii)マグネシウム、(iii)フォワードプライマー、及び/又は(iv)リバースプライマーを添加するステップを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
全血試料が約0.2mL~約5mLである、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
全血試料が約0.9mLである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
全血試料から生成される粗血液溶解物が約10μL~約500μLの容量を有する、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
全血試料から生成される粗血液溶解物が約25μL~約200μLの容量を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
全血試料から生成される粗血液溶解物が約50μLの容量を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)の反応混合物が約1%~約70%の粗血液溶解物を含有する、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)の反応混合物が約50%の粗血液溶解物を含有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
未処理全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ、
(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ、並びに
(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
【請求項24】
全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、混合物は混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを含有するステップ
(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ、並びに
(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
【請求項25】
反応混合物が約1%~約50%(v/v)の全血を含有する、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
反応混合物が約30%~約40%(v/v)の全血を含有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
室温での適度にアルカリ性のpHが約pH7.1~約pH10.5である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
室温での適度にアルカリ性のpHが約pH7.5~約pH9.5である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
室温での適度にアルカリ性のpHが約pH8~約pH9である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
室温での適度にアルカリ性のpHが約pH8.7である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
緩衝液のpHが95℃でおよそ中性pHのままであるか又は中性pHよりも上のままである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
緩衝液のpHが95℃で約6.5~約9.0である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
緩衝液のpHが95℃で約7.0~約8.5である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
緩衝液のpHが95℃で約7.0~約7.5である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
緩衝液のpHが95℃で約7.2である、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.02~約0.8ユニット/μLの範囲である、請求項2~12、14~23、又は25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.125~約0.5ユニット/μLの範囲である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.125~約0.25ユニット/μLの範囲である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラムである、請求項3~11、13~22、又は24~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラムである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.0001マイクログラムである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
熱安定性核酸ポリメラーゼが熱安定性DNAポリメラーゼである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
熱安定性DNAポリメラーゼが野生型熱安定性DNAポリメラーゼ又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
野生型熱安定性DNAポリメラーゼが、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラブス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼ、又は古細菌ポリメラーゼである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、Klentaq(登録商標) 1、Klentaq(登録商標) LA、Cesium Klentaq(登録商標) AC、Cesium Klentaq(登録商標) AC LA、Cesium Klentaq(登録商標) C、Cesium Klentaq(登録商標) C LA、Omni Klentaq(登録商標)、Omni Klentaq(登録商標) 2、Omni Klentaq(登録商標) LA、Omni Taq、OmniTaq LA、Omni Taq 2、Omni Taq 3、Hemo KlenTaq(登録商標)、KAPA Blood DNA polymerase、KAPA3G Plant DNA polymerase、KAPA 3G Robust DNA polymerase、MyTaq(商標) Blood、及びPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項46】
変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼである、請求項43記載の方法。
【請求項47】
ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼがAPTATAQ(商標)、Hawk Z05、又はPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で対象由来の細胞又は細胞破砕物の存在によって阻害される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で全血の存在によって阻害される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で1%(v/v)の全血によって阻害される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で8%(v/v)の全血によって阻害される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
通常の反応条件が熱安定性DNAポリメラーゼの製造者によって推奨される反応条件である、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記方法がマルチプレックス化PCR反応において1以上の付加的な標的核酸を増幅して1以上の付加的な単位複製配列を生成するステップをさらに含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
単位複製配列が少なくとも10μgの対象DNAの存在下で生成される、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
単位複製配列が少なくとも20μgの対象DNAの存在下で生成される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
単位複製配列が少なくとも35μgの対象DNAの存在下で生成される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記方法の結果として少なくとも106コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記方法の結果として少なくとも109コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記方法の結果として少なくとも1010コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記方法の結果として少なくとも1012コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列を検出するステップをさらに含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列が、光学的測定、蛍光測定、質量測定、密度測定、磁性測定、クロマトグラフィー測定及び/又は電気化学的測定によって検出される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
単位複製配列を検出するステップが、以下のステップ:
(a')増幅溶液の一部分に増幅溶液1ミリリットル当たり1x106~1x1013の磁性粒子を添加することによってアッセイ試料を調製するステップであって、磁性粒子が700nm~950nmの平均直径と、それらの表面上に結合性部分とを有し、結合性部分が単位複製配列の存在下で磁性粒子の凝集を変更するように作動するものであり、前記磁性粒子が1x109~1x1012mM-1s-1の粒子1つ当たりのT2緩和度を有するステップ、
(b')アッセイ試料をデバイス内の検出チューブに用意するステップであって、デバイスが、アッセイ試料を含む検出チューブを保持するウェルを規定する支持体を含み、1つ以上の磁石及びRFパルス列を使用して創出されたバイアス磁界へと混合物を曝露することによりもたらされる信号を検出するように構成されたRFコイルを有するステップ、
(c')アッセイ試料を、バイアス磁界及びRFパルス列へと曝露するステップ、
(d')ステップ(c')に続き、アッセイ試料によって生成された信号を測定し、それによって単位複製配列が存在するか又存在しないかを検出するステップ
を含む、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
磁性粒子が、第1のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第1の集団、及び第2のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第2の集団を含み、第1のプローブが単位複製配列の第1のセグメントに結合するように作動し、第2のプローブが単位複製配列の第2のセグメントに結合するように作動し、磁性粒子が単位複製配列の存在下で凝集物を形成する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
検出がステップ(a)の開始から4時間以内に起きる、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
検出がステップ(a)の開始から3時間以内に起きる、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記方法が1012コピーの単位複製配列を検出することができる、請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記方法が1010コピーの単位複製配列を検出することができる、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記方法が109コピーの単位複製配列を検出することができる、請求項68記載の方法。
【請求項70】
標的核酸が病原体に特徴的である、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
病原体が真菌病原体、細菌病原体、原生動物病原体又はウイルス病原体である、請求項70記載の方法。
【請求項72】
真菌病原体がカンジダ属(Candida)種である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
カンジダ属(Candida)種が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
細菌病原体が、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)からなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項75】
原生動物病原体がバベシア・マイクロティ(Babesia microti)又は多型バベシア(Babesia divergens)である、請求項71記載の方法。
【請求項76】
前記方法が全血試料中の約10コロニー形成ユニット(CFU)/mLの濃度の病原体種を検出することができる、請求項70~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記方法が全血試料中の約5 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記方法が全血試料中の約3 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記方法が全血試料中の約1 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、請求項78記載の方法。
【請求項80】
単位複製配列の検出に基づいて対象を診断するステップをさらに含み、単位複製配列の存在によって対象が病原体に関連する疾患を罹患していることが示される、請求項70~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記方法が好適な治療法を対象に付与するステップをさらに含む、請求項80記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料、例えば血液試料(例えば全血)中の標的核酸(例えばDNA)の増幅のための方法及びシステムを特色とする。
【背景技術】
【0002】
細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料(例えば血液)は、哺乳動物細胞からであっても病原体からであっても核酸に基づく標的の直接検出を妨げる、増幅方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を時には阻害しうる干渉物質を含有する。この阻害は、1ミリリットルのヒト血液に含有される1~10個の微生物細胞から増幅する場合など(これは、低力価で存在する病原体が該当しうる)、微小濃度でのみ存在する特定の遺伝子座を増幅しなければならない場合に特に問題である。例えば、ヘモグロビン及びヘマチンを含む血液中に見出される様々なヘム化合物は、PCR反応物中に添加するとTaqポリメラーゼに対して阻害的であることが示されている。しかし、ヘモグロビンを有しない血液画分もまた免疫グロブリンG(IgG)の存在のために阻害的であることが見出されたため、単純にヘム化合物の供給源を除去するだけでは十分でない。
【0003】
宿主細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料中に存在する病原体由来の標的核酸の増幅における別の課題は、試料中に含有される膨大な量の哺乳動物DNAによって与えられる。例えば、1ミリリットルのヒト血液は、およそ300万~600万個の白血球細胞を含有する。1つのヒト細胞はおよそ6pgの核DNAを含有するため、18~36μgのヒトDNAが1ミリリットルの粗血液溶解物中に含有される。これに対して、10個の細菌細胞は33fgのDNA(2M塩基ゲノムに基づいて)を含有する。したがって、目的の微生物DNAに対しておよそ84億倍過剰なヒトDNAが存在しうる。ヒト血液から抽出され精製された全DNA中で病原体標的を検出することを目的とする診断アッセイにおける高濃度DNAの阻害効果は、当技術分野において公知である。
【0004】
干渉物質又は高濃度の非標的(例えば宿主)核酸による阻害を低減するために、複合試料中の病原体を検出するための現行のアッセイは、一般的に核酸単離及び分画/濃縮に依存する。核酸単離は時間がかかり、微生物標的DNAなどの低コピー数で存在する核酸の喪失は、その過程の間に失われうる。核酸単離の前に無傷の病原体を精製する試みはまた結果として標的の著しい喪失とアッセイ感度の低下をもたらしうる。消耗品と試薬を伴う長い精製過程の別の側面は、環境及び共生微生物種の混入の危険性である。したがって、増幅及び検出アッセイ前に複合試料を最小限に処理することが望ましく、ある場合には最高レベルの感度と特異度を達成するのに必要でさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼなどの既存の市販の酵素を使用して、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料中で直接標的核酸を増幅する改善された方法の当技術分野における必要性が、依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複合試料中の標的核酸を増幅するための方法、パネル及びシステムを特色とする。
【0007】
一態様では、本発明は、対象から得られた生物学的試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、生物学的試料が対象由来の細胞又は細胞破砕物を含む方法を特色とし、当該方法は、(a)生物学的試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップ;(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリのpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して、変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ;及び(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む。一部の実施形態では、ステップ(d)における熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、1マイクロリットルの変性反応混合物当たり少なくとも約0.02ユニットである。一部の実施形態では、ステップ(d)は、1マイクロリットルの変性反応混合物当たり少なくとも約2.4×10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップを含む。一部の実施形態では、生物学的試料は約0.2mL~約5mL(例えば、約0.2mL、約0.4mL、約0.6mL、約0.8mL、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約3mL、約3.5mL、約4mL、約4.5mL又は約5mL)である。一部の実施形態では、生物学的試料は約0.9mLである。一部の実施形態では、生物学的試料は血液、血の混じった液体、組織試料、及び痰からなる群より選択される。一部の実施形態では、血液は全血、粗血液溶解物、血清、又は血漿である。一部の実施形態では、血の混じった液体は、傷からの滲出液、痰、又は胆汁である。一部の実施形態では、組織試料は組織生検である。一部の実施形態では、組織生検は皮膚生検、筋肉生検、又はリンパ節生検である。一部の実施形態では、組織試料はホモジナイズされた組織試料である。
【0008】
別の態様では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法を特色とし、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は1マイクロリットルの変性反応混合物当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ;並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法を特色とし、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)1マイクロリットルの変性反応混合物当たり少なくとも約2.4×10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップ;並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む。
【0010】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(c)はステップ(d)の前に変性反応混合物を遠心するステップをさらに含む。先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、方法は、ステップ(b)中又はステップ(d)中に、(i)デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)、(ii)マグネシウム、(iii)フォワードプライマー、及び/又は(iv)リバースプライマーを添加するステップを含む。先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、全血試料は約0.2mL~約5mL(例えば、約0.2mL、約0.4mL、約0.6mL、約0.8mL、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約3mL、約3.5mL、約4mL、約4.5mL又は約5mL)である。先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、全血試料は約0.9mLである。先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、全血試料から生成される粗血液溶解物は約10μL~約500μL(例えば、約10μL、約25μL、約50μL、約75μL、約100μL、約125μL、約150μL、約175μL、約200μL、約225μL、約250μL、約275μL、約300μL、約325μL、約350μL、約375μL、約400μL、約425μL、約450μL、約475μL又は約500μL)の容量を有する。一部の実施形態では、全血試料から生成される粗血液溶解物は約25μL~約200μLの容量を有する。先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、全血試料から生成される粗血液溶解物は約50μLの容量を有する。一部の実施形態では、ステップ(b)の反応混合物は約1%~約70%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%)の粗血液溶解物を含有する。一部の実施形態では、ステップ(b)の反応混合物は約50%の粗血液溶解物を含有する。
【0011】
別の態様では、本発明は、未処理全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法を特色とし、当該方法は、(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は1マイクロリットルの混合物当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ;(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ;並びに(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む。一部の実施形態では、反応混合物は約1%~約50%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%又は約50%)(v/v)の全血を含有する。一部の実施形態では、反応混合物は約30%~約40%(v/v)の全血を含有する。
【0012】
別の態様では、本発明は、全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法を特色とし、当該方法は、(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、混合物は1マイクロリットルの混合物当たり少なくとも約2.4×10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを含有するステップ;(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して、反応混合物を形成するステップ;並びに(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む。一部の実施形態では、反応混合物は約1%~約50%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%又は約50%)(v/v)の全血を含有する。一部の実施形態では、反応混合物は約30%~約40%(v/v)の全血を含有する。
【0013】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは約pH7.1~約pH10.5(例えば、約pH7.1、約pH7.5、約pH8.0、約pH8.5、約pH9、約pH9.5、約pH10又は約pH10.5)である。一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは約pH7.5~約pH9.5である。一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは約pH8~約pH9である。一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは約pH8.7である。
【0014】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃でおよそ中性pHのままであるか又は中性pHよりも上のままである。一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃で約6.5~約9.0(例えば、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5又は約9.0)である。一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃で約7.0~約8.5である。一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃で約7.0~約7.5である。一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃で約7.2である。
【0015】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は約0.02~約0.8ユニット/μLの範囲(例えば、約0.02、約0.04、約0.06、約0.08、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.65、約0.7、約0.75又は約0.8ユニット/μL)である。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は約0.125~約0.5ユニット/μLの範囲である。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は約0.125~約0.25ユニット/μLの範囲である。
【0016】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、1マイクロリットルの変性反応混合物又は反応混合物当たり約2.4×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム(例えば、1マイクロリットル当たり約2.4×10-5、約5×10-5、約7.5×10-5、約1×10-4、約2.5×10-4、約5×10-4、約7.5×10-4、約1×10-3、約2.5×10-3、約5×10-3、約7.5×10-3又は約0.01マイクログラム)である。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、1マイクロリットルの変性反応混合物又は反応混合物当たり約2.4×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラムである。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、1マイクロリットルの変性反応混合物又は反応混合物当たり約2.4×10-5マイクログラム~約0.0001マイクログラムである。
【0017】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは熱安定性DNAポリメラーゼである。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは野生型熱安定性DNAポリメラーゼ又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼである。一部の実施形態では、野生型熱安定性DNAポリメラーゼは、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラブス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼ、又は古細菌ポリメラーゼである。一部の実施形態では、変異型熱安定性DNAポリメラーゼは、Klentaq(登録商標)1、Klentaq(登録商標) LA、Cesium Klentaq(登録商標) AC、Cesium Klentaq(登録商標) AC LA、Cesium Klentaq(登録商標) C、Cesium Klentaq(登録商標) C LA、Omni Klentaq(登録商標)、Omni Klentaq(登録商標) 2、Omni Klentaq(登録商標) LA、Omni Taq、OmniTaq LA、Omni Taq 2、Omni Taq 3、Hemo KlenTaq(登録商標)、KAPA Blood DNA polymerase、KAPA3G Plant DNA polymerase、KAPA 3G Robust DNA polymerase、MyTaq(商標) Blood及びPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseからなる群より選択される。一部の実施形態では、変異型熱安定性DNAポリメラーゼはホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼである。一部の実施形態では、ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼはAPTATAQ(商標)、Hawk Z05又はPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseである。
【0018】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは通常の反応条件下で対象由来の細胞又は細胞破砕物の存在によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは通常の反応条件下で全血の存在によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは通常の反応条件下で1%(v/v)の全血によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは通常の反応条件下で8%(v/v)の全血によって阻害される。一部の実施形態では、通常の反応条件は熱安定性DNAポリメラーゼの製造者によって推奨される反応条件である。
【0019】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、方法はマルチプレックス化PCR反応において1以上の付加的な標的核酸を増幅して1以上の付加的な単位複製配列を生成するステップをさらに含む。
【0020】
先行する態様のいずれかの一部の実実施形態では、単位複製配列は少なくとも10μgの対象DNAの存在下で生成される。一部の実施形態では、単位複製配列は少なくとも20μgの対象DNAの存在下で生成される。一部の実施形態では、単位複製配列は少なくとも35μgの対象DNAの存在下で生成される。
【0021】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも106コピーの単位複製配列の生成がもたらされる。一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも109コピーの単位複製配列の生成がもたらされる。一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも1010コピーの単位複製配列の生成がもたらされる。一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも1012コピーの単位複製配列の生成がもたらされる。
【0022】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、方法は単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列を検出するステップをさらに含む。一部の実施形態では、単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列は、光学的測定、蛍光測定、質量測定、密度測定、磁性測定、クロマトグラフィー測定及び/又は電気化学的測定によって検出される。一部の実施形態では、単位複製配列の検出は、以下のステップ:(a')増幅溶液の一部分に1ミリリットルの増幅溶液当たり約1×106~約1×1013の磁性粒子を添加することによってアッセイ試料を調製するステップであって、磁性粒子は約700nm~約950nmの平均直径と、それらの表面上に結合性部分とを有し、結合性部分は単位複製配列の存在下で磁性粒子の凝集を変更するように作動するものであり、前記磁性粒子は約1×109~約1×1012mM-1s-1の粒子1つ当たりのT2緩和度を有するステップ;(b')アッセイ試料を、デバイス内の検出チューブ中に用意するステップであって、デバイスは、アッセイ試料を含む検出チューブを保持するウェルを規定する支持体を含み、1つ以上の磁石及びRFパルス列を使用して創出されたバイアス磁界へと混合物を曝露することによりもたらされる信号を検出するように構成されたRFコイルを有するステップ;(c')アッセイ試料を、バイアス磁界及びRFパルス列へと曝露するステップ;(d')ステップ(c')に続き、アッセイ試料によって生成された信号を測定し、それによって単位複製配列が存在するか又存在しないかを検出するステップを含む。一部の実施形態では、磁性粒子は、第1のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第1の集団、及び第2のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第2の集団を含み、第1のプローブは単位複製配列の第1のセグメントに結合するように作動し、第2のプローブは単位複製配列の第2のセグメントに結合するように作動し、磁性粒子は単位複製配列の存在下で凝集物を形成する。一部の実施形態では、検出はステップ(a)の開始から4時間以内に起きる。一部の実施形態では、検出はステップ(a)の開始から3時間以内に起きる。一部の実施形態では、方法は1012コピーの単位複製配列を検出することができる。一部の実施形態では、方法は1010コピーの単位複製配列を検出することができる。一部の実施形態では、方法は109コピーの単位複製配列を検出することができる。
【0023】
先行する態様のいずれかの一部の実施形態では、標的核酸は病原体に特徴的である。一部の実施形態では、病原体は真菌病原体、細菌病原体、原生動物病原体又はウイルス病原体である。一部の実施形態では、真菌病原体はカンジダ属(Candida)種である。一部の実施形態では、カンジダ属(Candida)種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群より選択される。一部の実施形態では、細菌病原体は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)からなる群より選択される。一部の実施形態では、原生動物病原体はバベシア・マイクロティ(Babesia microti)又は多型バベシア(Babesia divergens)である。一部の実施形態では、方法は全血試料中の約10コロニー形成ユニット(CFU)/mLの濃度の病原体種を検出することができる。一部の実施形態では、方法は全血試料中の約5 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる。一部の実施形態では、方法は全血試料中の約3 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる。一部の実施形態では、方法は全血試料中の約1 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる。一部の実施形態では、方法は、単位複製配列の検出に基づいて対象を診断するステップをさらに含み、単位複製配列の存在によって対象が病原体に関連する疾患を罹患していることが示される。一部の実施形態では、方法は、好適な治療法を対象に付与するステップをさらに含む。
【0024】
本発明の他の特色及び利点については、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Taq又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼによって合成されたA/T及びIC特異的増幅産物から得られたT2磁気共鳴(T2MR)信号(ms)を示すグラフである(n=4、「A/T」はC.アルビカンス(C.albicans)検出を示し、「IC」は内部対照検出を示す)。
図2】粗全血溶解物中でTaq又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼによって合成されたA/T及びIC特異的増幅産物から得られたT2MR信号(ms)を示すグラフである(n=4、「A/T」はC.アルビカンス(C.albicans)検出を示し、「IC」は内部対照検出を示す)。
図3】添加緩衝液及び粗全血溶解物中でHawk Z05によって合成されたK.ニューモニエ(K.pneumoniae)増幅産物から得られたT2MR信号(ms)を示すグラフである(n=4)。
図4A図4A図4Dは、変異型熱安定性DNAポリメラーゼ(図4A及び図4C)並びにTaq(図4B及び図4D)に対する付加的な外因性DNAの効果を示す一連のグラフである。変異型ポリメラーゼは4通りの希釈(1:1、1:5、1:10又は1:20)で調製され、増幅は緩衝液(図4A)及び粗全血溶解物(図4C)中で試験された。比較のために、4通りの濃度のTaqポリメラーゼ(0.25ユニット/μL、0.125ユニット/μL、0.05ユニット/μL又は0.025ユニット/μL)が、緩衝液(図4B)及び粗全血溶解物(図4D)における増幅反応のために使用された。超音波処理サケ精子DNA(0μg(対照)、2.5μg、5μg、10μg又は20μg)は、示されている通りに反応物に添加された。合成されたC.アルビカンス(C.albicans)単位複製配列から得られたT2MR信号(ms)が示される。
図4B図4Aの続きである。
図4C図4Bの続きである。
図4D図4Cの続きである。
図5】K.ニューモニエ(K.pneumoniae)ゲノムDNA及びICを添加した緩衝液(左)及び粗全血溶解物(中央右)におけるAPTATAQ(商標)及び変異型ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼ(「変異型HSポリメラーゼ」)増幅の機能性を示すグラフである。(n=4、「Kp」はK.ニューモニエ(K.pneumoniae)T2MR信号を示し、「IC」は内部対照T2MR信号を示す)。
図6】異なる試薬及び変性順序を有する8つのワークフローの解析を示すグラフである。(n=4、「A/T」はC.アルビカンス(C.albicans) T2MR信号を示し、「IC」は内部対照T2MR信号を示す)。
図7】変異型熱安定性DNAポリメラーゼ(1×濃度)又はTaqポリメラーゼ(最終:0.025又は0.125U/μl)を含有するPCR反応物に全血が添加された実験の結果を示すグラフである(n=4、C.アルビカンス(C.albicans) T2MR信号)。変異型ポリメラーゼ及び10%全血を含有する反応から得られたT2MR信号の見かけ上の減少は、産物の過飽和によりT2MR信号が抑制される(フック効果)ためであると考えられる点に留意されたい。
図8】実施例3に記載されるように粗全血溶解物又は緩衝液中でTaq又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼ(「M.P.」)を使用した増幅の結果を示す臭化エチジウム染色アガロースゲルの画像である。「Neg」は陰性対照を示す。ラダーは単位複製配列の相対的なサイズを示すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合的な生物学的試料中の1以上の標的核酸の増幅のための方法、システム、カートリッジ及びパネルを提供する。一部の実施形態では、本発明はまた、標的核酸単位複製配列を検出する方法を提供する。一部の実施形態では、標的核酸単位複製配列(単数又は複数)の検出により、例えば、疾患(例えば、敗血症、血流感染(BSIs)(例えば、菌血症、真菌血症(例えば、カンジダ血症)及びウイルス血症)、ライム病、敗血性ショック、微生物病原体により引き起こされるか、又は微生物病原体と関連する疾患と類似の症状を伴って顕在化しうる疾患、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS))の診断のために使用されうる、宿主細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料(例えば、全血、処理された全血(例えば、粗全血溶解物)、血清、血漿、又は他の血液派生物;血の混じった液体、例えば傷からの滲出液、痰、胆汁など;組織試料(例えば、組織生検);及び痰(例えば、膿性痰及び血痰))中に存在する微生物病原体の迅速、正確及び高感度の検出及び同定が可能になる。一部の実施形態では、本発明の方法は、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料、例えば血液の存在によって通常阻害される核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqなどの市販の熱安定性DNAポリメラーゼを含む、熱安定性DNAポリメラーゼ)を使用して標的核酸の増幅を可能にする。
【0027】
一部の実施形態では、本発明の方法及びシステムは、磁性粒子を利用する。一部の実施形態では、方法及びシステムは、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2012/054639号において記載されている通り、NMRユニット、任意選択で、1つ以上の磁気支援型アグロメレーション(MAA)ユニット、任意選択で、1つ以上の、異なる温度のインキュベーションステーション、任意選択で、1つ以上のボルテクサー、任意選択で、1つ以上の遠心分離機、任意選択で、流体操作ステーション、任意選択で、ロボットシステム、及び、任意選択で、1つ以上のモジュラーカートリッジを利用する。一部の実施形態では、本発明の方法は、完全自動システム、例えばT2Dx(登録商標)装置を使用して実施する。本発明の方法、システム、デバイス、パネル及びカートリッジを使用して、細胞及び細胞破砕物を含む生物学的試料(例えば、全血、処理された全血(例えば、粗全血溶解物)、血清、血漿、又は他の血液派生物;血の混じった液体、例えば傷からの滲出液、痰、胆汁など;ホモジナイズされた組織試料を含む、組織試料(例えば、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検、又はリンパ節生検));及び痰(例えば、膿性痰及び血痰))をアッセイすることができる。一部の実施形態では、生物学的試料は病原体細胞(単数又は複数)並びに宿主細胞及び/又は細胞破砕物を含む。
【0028】
定義
本明細書で記載される磁性粒子の文脈では、「凝集」、「アグロメレーション」、及び「クラスター形成」という用語は、互換的に使用され、例えば、多価解析物、解析物の多量体形態、抗体、核酸分子、又は他の結合性分子若しくは実体を介する、2つ以上の磁性粒子の、互いとの結合を意味する。一部の場合には、磁性粒子のアグロメレーションは、可逆性である。このような凝集は、単位複製配列、及び結合性部分を保有する磁性粒子を含みうる「凝集物」の形成をもたらしうる。
【0029】
本明細書で使用される「増幅」若しくは「~を増幅する」という用語、又はこれらの派生形は、標的又は鋳型核酸をコピーし、これにより選択された核酸配列のコピー数を増大させる、当技術分野で公知の1つ以上の方法を意味する。増幅は、指数的又は直線的でありうる。標的又は鋳型核酸は、DNAの場合もあり、RNAの場合もある。このようにして増幅された配列は、「増幅領域」又は「単位複製配列(アンプリコン)」を形成する。プライマー及びプローブは、特異的な鋳型核酸配列をターゲティングするように、当業者がたやすくデザインすることができる。
【0030】
「解析物」とは、解析される試料の物質又は成分を意味する。例示的な解析物は、以下:タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、核酸、オリゴヌクレオチド、RNA(例えばmRNA)、DNA、抗体、炭水化物、多糖、グルコース、脂質、ガス(例えば、酸素又は二酸化炭素)、電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、血中尿素窒素(BUN)、マグネシウム、リン酸塩、カルシウム、アンモニア、乳酸塩)、リポタンパク質、コレステロール、脂肪酸、糖タンパク質、プロテオグリカン、リポ多糖、細胞表面マーカー(例えば、病原体の細胞表面タンパク質)、細胞質マーカー(例えば、CD4/CD8又はCD4/ウイルス負荷)、治療剤、治療剤の代謝物、兵器を検出するマーカー(例えば、化学又は生物兵器)、生物、病原体、病原体副産物、寄生虫(例えば、原虫又は蠕虫)、原生生物、真菌(例えば、酵母又はカビ)、細菌、放線菌、細胞(例えば、全細胞、腫瘍細胞、幹細胞、白血球、T細胞(例えば、CD3、CD4、CD8、IL2R、CD35、又は他の表面マーカーを提示する)、又は1つ以上の特異的マーカーにより同定される別の細胞)、ウイルス、プリオン、植物成分、植物副産物、藻類、藻類副産物、植物成長ホルモン、殺虫剤、人造毒素、環境毒素、油成分、及びこれらから派生する成分のうちの1つ以上の1つ以上の分子種を含む。特定の実施形態では、解析物は核酸(例えばRNA(例えばmRNA)又はDNA)である。
【0031】
「生物学的試料」とは、対象から得られる試料であって、とりわけ、血液(例えば、全血、処理された全血(例えば、粗全血溶解物)、血清、血漿及び他の血液派生物)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、脳脊髄液(CSF)、尿、滑液、母乳、汗、涙、唾液、精液、糞便、膣液若しくは組織、痰(例えば、膿性痰及び血痰)、鼻咽頭の吸引物若しくはスワブ、涙液、粘液、又は上皮スワブ(口腔スワブ)、組織ホモジネートを含む組織(例えば、組織生検(例えば皮膚生検(例えば、創傷、熱傷又はダニ咬傷)、筋肉生検又はリンパ節生検))、臓器、骨、歯を含むがこれらに限定されない試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、試料を得た対象に由来する細胞及び/又は細胞破砕物を含有する。特定の実施形態では、対象は病原体の宿主であり、対象から得られた生物学的試料は対象(宿主)由来の細胞及び/又は細胞破砕物、並びに1つ以上の病原体細胞を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「低分子」という用語は、ヒトへの治療的使用に想定される、薬物、薬、医薬、又は他の化学合成された化合物を指す。
【0033】
「バイオマーカー」とは、生物の特定の疾患状態又は特定の生理学的状態の指標として使用しうる生物学的物質であり、一般に、バイオマーカーとは、それらの濃度が、疾患状態又は機能不全の、存在又は重症度又は病期分類を反映する、体液中において測定されるタンパク質又は他の天然化合物であり、疾患若しくは障害若しくは機能不全の処置の治療的進展についてモニタリングするのに使用することができ、又は臨床転帰若しくは進行の代用測定値として使用することができる。一部の実施形態では、バイオマーカーは核酸(例えばRNA(例えばmRNA)又はDNA)である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「連結された」とは、共有結合、非共有結合により、接合若しくは結合しており、且つ/又はファンデルワールス力、水素結合、及び/若しくは他の分子間力を介して連結されていることを意味する。
【0035】
「磁性粒子」という用語は、磁化率が正で大きい材料、例えば、常磁性化合物、超常磁性化合物、及び磁鉄鉱、ガンマ酸化鉄、又は金属鉄を含む粒子を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「非特異的可逆性」とは、液体試料中の非特異的凝集に対する、磁性粒子のコロイドの安定性及び頑健さを指し、粒子を、特異的クラスター形成部分(すなわち、解析物又はアグロメレーター)の非存在下で、意図されたアッセイ条件下に置くことにより決定することができる。例えば、非特異的可逆性は、一様な磁界(<5000ppmとして規定される)内、0.45T、37℃で3分間にわたるインキュベーションの前及び後において、磁性粒子の溶液のT2値を測定することにより決定することができる。磁性粒子を、意図されるアッセイ条件下に置く前、及び置いた後におけるT2値の差異の変動が10%未満である(例えば、変動が9%、8%、6%、4%、3%、2%、又は1%未満である)場合、磁性粒子は、非特異的可逆性を有すると見なされる。差異が、10%を超えれば、粒子は、被験緩衝液、希釈液、及びマトリックス中で不可逆性を呈し、粒子が非特異的可逆性を有するシステムを作製するには、粒子及びマトリックス特性の操作(例えば、コーティング及び緩衝液の処方)が要求されうる。別の例では、1ガウス/mm~10000ガウス/mmの勾配磁界内のインキュベーションの前及び後で、磁性粒子の溶液のT2値を測定することにより、検査を適用することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「NMR緩和率」という用語は、試料中において、以下:T1、T2、T1/T2ハイブリッド、T1rho、T2rho、及びT2 *のうちのいずれかを測定することを指す。本発明のシステム及び方法は、解析物が液体試料中に存在するかどうかについて特徴的なNMR緩和率をもたらすようにデザインされる。一部の場合には、NMR緩和率は、液体試料中に存在する解析物の数量に特徴的である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「T1/T2ハイブリッド」という用語は、T1及びT2の測定を組み合わせる任意の検出法を指す。例えば、T1/T2ハイブリッドの値は、2つ以上の異なるT1及びT2測定値の組合せ、比、又はこれらの間の差異によって得られる合成信号でありうる。T1/T2ハイブリッドは、例えば、T1及びT2を、交互に測定するか、又はインターリーブで収集したパルス列を使用することにより得ることができる。加えて、T1/T2ハイブリッド信号は、T1及びT2両方の緩和率又は機構から構成される緩和率を測定するパルス列により収集することができる。
【0039】
「病原体」とは、その宿主に対して、疾患又は疾病を引き起こす作用物質、例えば、別の生物において疾患をもたらすことが可能な生物又は感染性粒子を意味し、細菌、ウイルス、原虫、プリオン、酵母及び真菌、又は病原体の副産物を含むがこれらに限定されない。「病原体副産物」とは、病原体から生じる生物学的物質であって、宿主に有害でありうるか、又は過剰な宿主免疫応答を刺激しうる生物学的物質、例えば、病原体の抗原、代謝物質、酵素、生物学的物質、又は毒素である。
【0040】
「病原体関連解析物」とは、試料中の病原体(例えば、細菌、真菌、又はウイルス)の存在に特徴的な解析物を意味する。病原体関連解析物は、病原体に由来する特定の物質(例えば、病原体により産生される、核酸(例えばRNA(例えばmRNA)又はDNA)、タンパク質、脂質、多糖、又は他の任意の材料)、又は病原体に由来する混合物(例えば、全細胞又は全ウイルス)でありうる。ある特定の場合に、病原体関連解析物を、検出される病原体の属、種、又は特異的な株に特徴的であるように選択する。代替的に、病原体関連解析物を、病原体の特性、例えば、特定の治療に対する耐性を確認するように選択する。一部の実施形態では、病原体関連解析物は、増幅された標的核酸(例えばDNA又はRNA(例えばmRNA))でありうる。
【0041】
「パルス列」又は「RFパルス列」とは、試料へと適用され、例えば、ある特定のNMR緩和率、例えば、スピンエコー列を測定するようにデザインされた、1つ以上のラジオ周波数のパルスを意味する。パルス列はまた、1つ以上のパルスの後における信号の収集であって、ノイズを最小化し、結果として得られる信号値の精度を改善する収集も含みうる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「信号」という用語は、NMR緩和率、周波数のシフト、磁化率の測定値、拡散の測定値、又は相関の測定値を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、磁性粒子の「サイズ」に対する言及は、顕微鏡法、光散乱、又は他の方法により決定される、磁性粒子の混合物についての平均直径を指す。
【0044】
「対象」とは、動物、好ましくは哺乳動物(例えば、齧歯動物(例えば、マウス又はラット)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ウマ、及びロバ)、愛玩動物(例えば、ネコ及びイヌ)、又は霊長動物(例えば、非ヒト霊長動物及びヒト)を含む)である。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。対象は、患者(例えば、病原体と関連するか、又はこれにより引き起こされる疾患を有するか、又はこれを有することが疑われる患者)でありうる。一部の実施形態では、対象は1つ以上の病原体の宿主である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「実質的に単分散」という用語は、光散乱測定における粒子サイズの分布曲線の形状により決定されるサイズ分布において、多分散性を有する磁性粒子の混合物を指す。粒子分布曲線のFWHM(半値全幅)であって、ピーク位置から25%未満であるFWHMは、実質的に単分散であると考えられる。加えて、光散乱実験では1つのピークだけが観察されるべきであり、ピーク位置は、公知の単分散粒子集団の1標準偏差以内にあるものとする。
【0046】
「粒子1つ当たりのT2緩和度」とは、磁性粒子の集団内の、粒子1つ当たりの平均T2緩和度を意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「非分画」とは、被験試料のうちのいずれの成分も、磁性粒子を試料へと添加した後、及びNMR緩和を測定する前に除去しないアッセイを指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ユニット(unit)」又は「ユニット(units)」という用語は、熱安定性核酸ポリメラーゼに言及しながら使用される場合、熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ)の量を指す。通常、ユニットとは、特定のアッセイ条件下で65℃~75℃、30~60分間で特定量のdNTPs(例えば10~20nmol)を酸不溶性材料に取り込む酵素の量として定義されるが、各製造者がユニットに異なる定義を与えうる。市販の熱安定性核酸ポリメラーゼのためのユニットの定義とアッセイ条件は当技術分野において公知である。一部の実施形態では、1ユニットの熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えばTaq DNAポリメラーゼ)は1×ThermoPol(登録商標) Reaction Buffer (New England Biosciences)、[3H]-dTTPを含む200μM dNTPs及び15nM primed M13 DNAを含有するアッセイにおいて、75℃、30分で15nmolのdNTPを酸不溶性材料に取り込む酵素の量でありうる。
【0049】
特許請求される発明のユニット、方法、システム、及び工程は、本明細書で記載される実施形態からの情報を使用して開発される変化形及び適応形を包含することが想定される。本明細書を通して、ユニット及びシステムについて、特異的成分を有するか、若しくはこれらを含むものとして記載する場合、又は工程及び方法について、特異的ステップを有するか、若しくはこれらを含むものとして記載する場合、さらに、列挙された成分から本質的になるか、又はこれらからなる、本発明のユニット及びシステムが存在し、列挙された処理ステップから本質的になるか、又はこれらからなる、本発明に従う工程及び方法が存在することが想定される。本発明が作動可能なままである限りにおいて、別に特定されない限り、ステップの順序、又はある特定の動作を実施する順序は、重要ではないことを理解されたい。さらに、多くの場合、2つ以上のステップ又は動作を、同時に行うことができる。
【0050】
解析物
本発明の実施形態は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検若しくはリンパ節生検))又は痰を含む、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合的な生物学的試料中で、1つ以上の解析物を検出及び/又はこれらの濃度を測定する方法及びシステムを含む。いくつかの実施形態では、解析物は、生物に由来する核酸でありうる。一部の実施形態では、核酸は、生物に由来する標的核酸であって、単位複製配列を形成するように増幅された標的核酸である。一部の実施形態では、生物は、植物、哺乳動物、又は微生物種である。
【0051】
いくつかの実施形態では、解析物は、微生物病原体に由来しうる。そのような実施形態では、生物学的試料は宿主哺乳動物対象に由来する細胞及び/又は細胞破砕物並びに1つ以上の微生物病原体細胞を含みうる。一部の実施形態では、解析物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、真菌病原体(例えば、酵母(例えばカンジダ属(Candida)種)又はアスペルギルス属(Aspergillus)種)、原生動物病原体又はウイルス病原体に由来する。一部の実施形態では、解析物は、アシネトバクター属(Acinetobacter)種(例えば、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ピティー(Acinetobacter pittii)及びアシネトバクター・ノソコミアリス(Acinetobacter nosocomialis))、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(耐性マーカーであるvanA/Bを伴うE.フェシウム(E. faecium)を含む)及びエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis))、クレブシエラ属(Klebsiella)種(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(例えば、耐性マーカーであるKPCを伴うK.ニューモニエ(K. pneumoniae))及びクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca))、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)種 (例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えば、耐性マーカーであるmecAを伴う黄色ブドウ球菌(S. aureus))、スタフィロコッカス・ヘモリティクス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌属(Staphylococcus)種、及びコアグラーゼ陰性(CoNS)ブドウ球菌属(Staphylococcus)種)、レンサ球菌属(Streptococcus)種(例えば、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosa)、ウシレンサ球菌(Streptococcus bovis)、G群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysgalactiae)、ミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、及び化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、エスケリキア属(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)種(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia))、プロテウス属(Proteus)種(例えば、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris))、セラチア属(Serratia)種(例えば、セラチア菌(Serratia marcescens))、シトロバクター属(Citrobacter)種(例えば、シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)及びシトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri))、ヘモフィルス属(Haemophilus)種(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、リステリア属(Listeria)種(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、ナイセリア属(Neisseria)種(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、バクテロイデス属(Bacteroides)種(例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis))、バークホルデリア属(Burkholderia)種(例えば、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia))、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli))、クロストリジウム属(Clostridium)種(例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens))、キンゲラ属(Kingella)種(例えば、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae))、モーガネラ属(Morganella)種(例えば、モーガネラ・モーガニー(Morganella morgana))、プレボテラ属(Prevotella)種(例えば、プレボテラ・ブッケ(Prevotella buccae)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、及びプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica))、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)種(例えば、アクネ菌(Propionibacterium acnes))、サルモネラ属(Salmonella)種(例えば、サルモネラ菌(Salmonella enterica))、赤痢菌属(Shigella)種(例えば、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)及びフレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri))、ボレリア属(Borrelia)種(例えば、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi sensu lato)(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii))種)、リケッチア属(Rickettsia)種(リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)及びリケッチア・パルケリー(Rickettsia parkeri)を含む)、エーリキア属(Ehrlichia)種(エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)及びエーリキア・ムリス様(Ehrlichia muris-like)を含む)、コクシエラ属(Coxiella)種(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)を含む)、アナプラズマ属(Anaplasma)種(アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)を含む)、フランシセラ属(Francisella)種(野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病菌(Francisella tularensis)亜種ホラークティカ(holarctica)、メディアシアティカ(mediasiatica)、及びノビシダ(novicida)を含む)を含む)及びエンテロバクター属(Enterobacter)種(例えば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)及びエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae))を含む細菌病原体に由来する。一部の実施形態では、解析物は、抗微生物剤耐性マーカーである。例示的で非限定的な抗微生物剤耐性マーカーは、vanA、vanB、mecA、IMP、CTX-M、KPC、NDM、OXA、VIM、及びFKSを含む。一部の実施形態では、解析物は、真菌病原体、例えば、カンジダ属(Candida)種(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dublinensis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))及びアスペルギルス属(Aspergillus)種(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))に由来する。一部の実施形態では、解析物は、原生動物病原体、例えば、バベシア属(Babesia)種(例えば、バベシア・マイクロティ(Babesia microti)及び多型バベシア(Babesia divergens))に由来する。一部の実施形態では、解析物はウイルス病原体に由来する。
【0052】
一部の実施形態では、病原体関連解析物は、上記で記載した生物のうちのいずれかに由来する核酸、例えば、DNA又はRNA(例えば、mRNA)でありうる。一部の実施形態では、核酸は、生物に由来する標的核酸であって、単位複製配列を形成するように増幅された標的核酸である。一部の実施形態では、標的核酸は、マルチコピー遺伝子座でありうる。特に、増幅を伴う方法における、マルチコピー遺伝子座に由来する標的核酸の使用は、アッセイにおける感度の増大をもたらしうる。例示的なマルチコピー遺伝子座は、例えば、リボソームDNA(rDNA)オペロン及びマルチコピープラスミドを含みうる。他の実施形態では、標的核酸は、シングルコピー遺伝子座でありうる。特定の実施形態では、標的核酸は、必須遺伝子座、例えば、必須のハウスキーピング遺伝子に由来しうる。特定の実施形態では、標的核酸は、毒力に関与する遺伝子座(例えば、毒力遺伝子)に由来しうる。上記の実施形態のうちのいずれかでは、遺伝子座は、遺伝子及び/又は遺伝子内領域、例えば、rRNA遺伝子の間の内部転写配列(ITS)(例えば、16S rRNA遺伝子及び23S rRNA遺伝子の間のITS1、又は5S rRNA遺伝子及び23S rRNA遺伝子の間のITS2)を含みうる。
【0053】
一部の実施形態では、標的核酸は、(a)種特異的、(b)種包含的(言い換えれば、所与の種の全ての株又は亜種に存在する)、(c)増幅/検出プロトコールに適合的、且つ/又は(d)複数のコピー内に存在しうる。特定の実施形態では、標的核酸は、染色体によりコードされ、これは、例えば、プラスミド交換及びプラスミドキュアリング/形質導入イベントによる喪失を回避する一助となりうる。
【0054】
磁性粒子及びNMRベースの検出
本発明の方法及びシステムは、磁性粒子及びNMRの使用を伴いうる。解析物又は多価結合剤の存在下で、凝集物が形成されるように、磁性粒子を、結合性部分(例えば、オリゴヌクレオチド、抗体など)でコーティングすることができる。凝集は、溶媒のT2信号を破壊する微視的磁性の非一様性から試料の一部を除去し、T2緩和の増大をもたらす(例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO2012/054639号の図3を参照されたい)。
【0055】
T2の測定は、全てのスピン総体についての単一の尺度であり、測定は、典型的に、1~10秒間にわたり存続し、これは、溶媒が、液体試料中の微視的非一様性と比べて長い距離である、数百ミクロン移動することを可能とする。各溶媒分子は、液体試料中のある容量をサンプリングし、T2信号は、試料中の溶媒分子上の全体(核スピン)の平均(正味の全信号)であり、言い換えれば、T2の測定値は、溶媒分子が経験する全環境の正味の測定値であり、試料中の全ての微視的非一様性についての平均測定値である。
【0056】
液体試料中の溶媒分子の観察されるT2緩和率は、磁界の存在下では、高度な磁性双極子モーメントを形成する磁性粒子によって支配される。磁性粒子の非存在下では、液体試料について観察されるT2緩和率は、典型的に長い(すなわち、T2(水)=約2000ms、T2(血液)=約1500ms)。粒子濃度を増大させると、試料中の微視的非一様性は増大し、これらの微視的非一様性を通した溶媒の拡散は、スピンデコヒーレンスの増大及びT2値の低下をもたらす。観察されるT2値は、非直線的な形で、粒子濃度に依存し、粒子パラメータ1つ当たりの緩和度に依存する。
【0057】
本発明の凝集アッセイでは、磁性粒子の数、及び、存在する場合、アグロメラント粒子の数は、アッセイ中に一定のままである。粒子がクラスター形成すると、粒子の空間的分布は変化する。粒子の、より均一な粒子分布ではなく、クラスターへの局在化を促進するため、凝集は、溶媒分子の平均「経験」を変化させる。高度の凝集時には、多くの溶媒分子は、磁性粒子により創出される微視的非一様性を経験せず、T2は、溶媒のT2に近づく。液体試料中では、凝集した磁性粒子の画分が増大するので、観察されるT2は、凝集及び単独(非凝集)磁性粒子の非一様な懸濁液についての平均である。本発明のアッセイは、凝集によるT2の変化を最大化させて、解析物の存在、及び解析物濃度の差異に対するアッセイの感度を増大させるようにデザインする。
【0058】
一部の実施形態では、本発明の方法は、溶液(例えば、全血又は粗全血溶解物を含む試料)を、液体試料1ミリリットル当たり、1×106~1×1013個の間の磁性粒子(例えば、1ミリリットル当たり、1×106~1×108、1×107~1×108、1×107~1×109、1×108~1×1010、1×109~1×1011、又は1×1010~1×1013個の磁性粒子)と接触させるステップを伴う。
【0059】
一部の実施形態では、本発明の方法及びシステムにおいて使用される磁性粒子は、150nm~1200nm(例えば、150~250、200~350、250~450、300~500、450~650、500~700nm、700~850、800~950、900~1050、又は1000~1200nm)の平均直径を有する。例えば、一部の実施形態では、本発明の方法で使用される磁性粒子は、150nm~699nm(例えば、150~250、200~350、250~450、300~500、450~650、又は500~699nm)の平均直径を有しうる。他の実施形態では、本発明の方法で使用される磁性粒子は、700nm~1200nm(例えば、700~850、800~950、900~1050、又は1000~1200nm)の平均直径を有しうる。特定の実施形態では、磁性粒子は、700nm~950nm(例えば、700~750、700~800、700~850、又は700~900nm)の平均直径を有しうる。
【0060】
一部の実施形態では、本発明の方法で使用される磁性粒子は、粒子1つ当たり1×108~1×1012mM-1s-1のT2緩和度(例えば、1×108~1×109、1×108~1×1010、1×109~1×1010、1×109~1×1011、又は1×1010~1×1012mM-1s-1)を有しうる。一部の実施形態では、磁性粒子は、粒子1つ当たり1×109~1×1012mM-1s-1のT2緩和度(例えば、1×109~1×1010、1×109~1×1011、又は1×1010~1×1012mM-1s-1)を有する。
【0061】
一部の実施形態では、磁性粒子は、実質的に単分散でありうる。一部の実施形態では、液体試料(以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検若しくはリンパ節生検))又は痰を含む、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料)中の磁性粒子は、1つ以上の解析物及び/又は多価結合剤の非存在下では、非特異的可逆性を呈しうる。一部の実施形態では、磁性粒子は、アルブミン、魚類皮膚ゼラチン、ガンマグロブリン、リゾチーム、カゼイン、ペプチダーゼ、及びアミン保有部分(例えば、アミノポリエチレングリコール、グリシン、エチレンジアミン、又はアミノデキストランから選択されるブロッキング剤で修飾された表面をさらに含みうる。
【0062】
医学的状態
本発明の方法はまた、疾患及び他の医学的状態をモニタリングし、診断するのにも使用することができる。一部の実施形態では、本発明の方法を使用して、マルチプレックス化され、自動式であるが、試料の調製は伴わないシステムにおいて、疾患をモニタリングし、診断することができる。
【0063】
本発明の方法及びシステムを使用して、対象における疾患の発症機序を同定及びモニタリングし、治療的介入を選択し、選択された処置の有効性をモニタリングすることができる。例えば、菌血症及び/又は敗血症を有するか、又はこれらの危険性がある患者に、本発明の方法及びシステムを使用して、感染性の病原体、病原体負荷を同定し、感染の状態を示す白血球カウント及び/又はバイオマーカーをモニタリングすることができる。病原体の識別を使用して、適切な治療を選択することができる。一部の実施形態では、方法は、感染性の疾患をモニタリング又は診断した後で、治療剤を投与するステップをさらに含みうる。また、治療的介入(例えば、特定の抗生剤)をモニタリングして、処置レジメンを、抗生剤の循環濃度及び病原体の負荷と相関させて、患者が、処置に対して応答することを確実にすることもできる。
【0064】
本発明の方法及びシステムにより診断及び/又はモニタリングされうる例示的な疾患は、微生物病原体(例えば、細菌感染又は真菌感染)により引き起こされるか、又はこれと関連する疾患、ライム病、血流感染(例えば、菌血症又は真菌血症)、肺炎、腹膜炎、骨髄炎、髄膜炎、膿胸、尿路感染、敗血症、敗血症性ショック、及び敗血症性関節炎)、及び微生物病原体により引き起こされるか、又はこれと関連する疾患と類似の症状を伴って顕在化しうる疾患(例えば、SIRS)を含む。
【0065】
例えば、本発明の方法及びシステムを使用して、以下の非限定的な病原体の例:アシネトバクター属(Acinetobacter)種(例えば、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ピティー(Acinetobacter pittii)及びアシネトバクター・ノソコミアリス(Acinetobacter nosocomialis))、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(耐性マーカーであるvanA/Bを伴うE.フェシウム(E. faecium)を含む)及びエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis))、クレブシエラ属(Klebsiella)種(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(例えば、耐性マーカーであるKPCを伴うK.ニューモニエ(K. pneumoniae))及びクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca))、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えば、耐性マーカーであるmecAを伴う黄色ブドウ球菌(S. aureus))、スタフィロコッカス・ヘモリティクス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌属(Staphylococcus)種、及びコアグラーゼ陰性(CoNS)ブドウ球菌属(Staphylococcus)種)、レンサ球菌属(Streptococcus)種 (例えば、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosa)、ウシレンサ球菌(Streptococcus bovis)、G群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysgalactiae)、ミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)及び化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、エスケリキア属(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)種(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia))、プロテウス属(Proteus)種(例えば、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris))、セラチア属(Serratia)種(例えば、セラチア菌(Serratia marcescens))、シトロバクター属(Citrobacter)種(例えば、シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)及びシトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri))、ヘモフィルス属(Haemophilus)種(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、リステリア属(Listeria)種(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、ナイセリア属(Neisseria)種(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、バクテロイデス属(Bacteroides)種(例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis))、バークホルデリア属(Burkholderia)種(例えば、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia))、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli))、クロストリジウム属(Clostridium)種(例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens))、キンゲラ属(Kingella)種(例えば、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae))、モーガネラ属(Morganella)種(例えば、モーガネラ・モーガニー(Morganella morgana))、プレボテラ属(Prevotella)種(例えば、プレボテラ・ブッケ(Prevotella buccae)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)及びプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica))、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)種(例えば、アクネ菌(Propionibacterium acnes))、サルモネラ属(Salmonella)種(例えば、サルモネラ菌(Salmonella enterica))、赤痢菌属(Shigella)種(例えば、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)及びフレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri))、及びエンテロバクター属(Enterobacter)種(例えば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)及びエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae))を含む細菌病原体;並びにカンジダ属(Candida)種(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dublinensis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))及びアスペルギルス属(Aspergillus)種(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))を含むがこれらに限定されない真菌病原体により引き起こされる疾患を診断及び/又はモニタリングすることができる。一部の実施形態では、病原体は、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi sensu lato)(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii))種、ボレリア・アメリカーナ(Borrelia americana)、ボレリア・アンダーソニ(Borrelia andersonii)、ボレリア・ババリエンシス(Borrelia bavariensis)、ボレリア・ビセッティ(Borrelia bissettii)、ボレリア・カロニリネンシス(Borrelia carolinensis)、ボレリア・カルフォルニエンシス(Borrelia californiensis)、ボレリア・チレンシス(Borrelia chilensis)、ボレリア・ゲノモスプ1及び2(Borrelia genomosp. 1 and 2)、ボレリア・ジャポニカ(Borrelia japonica)、ボレリア・クルテンバチイ(Borrelia kurtenbachii)、ボレリア・ルシタニエ(Borrelia lusitaniae)、ボレリア・ミヤモトイ(Borrelia myomatoii)、ボレリア・シニカ(Borrelia sinica)、ボレリア・スピエルマニイ(Borrelia spielmanii)、ボレリア・タヌキ(Borrelia tanukii)、ボレリア・タルジ(Borrelia turdi)、ボレリア・バライシアナ(Borrelia valaisiana)並びに未分類のボレリア属(Borrelia)種を含む、ボレリア属(Borrelia)種であってもよい。他の実施形態では、病原体は以下:リケッチア属(Rickettsia)種(リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)及びリケッチア・パルケリー(Rickettsia parkeri)を含む)、エーリキア属(Ehrlichia)種(エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)及びエーリキア・ムリス様(Ehrlichia muris-like)を含む)、コクシエラ属(Coxiella)種(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)を含む)、バベシア属(Babesia)種(バベシア・マイクロティ(Babesia microti)及び多型バベシア(Babesia divergens))、アナプラズマ属(Anaplasma)種(アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)を含む)、フランシセラ属(Francisella)種(野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病菌(Francisella tularensis)亜種ホラークティカ(holarctica)、メディアシアティカ(mediasiatica)、及びノビシダ(novicida)を含む)を含む)、レンサ球菌属(Streptococcus)種(肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)を含む)並びにナイセリア属(Neisseria)種(髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)を含む)から選択されてもよい。
【0066】
処置(治療)
一部の実施形態では、方法は、診断の後で、治療剤を対象へと投与するステップをさらに含む。典型的に、対象から得られた生物学的試料(例えば、宿主細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料、例えば、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検若しくはリンパ節生検))、又は痰)中の特定の病原体の同定は、適切な治療剤の選択を誘導するであろう。
【0067】
例えば、細菌感染(例えば、菌血症)に対して、治療は、抗生剤を含みうる。一部の場合には、抗生剤を、経口投与することができる。他の場合には、抗生剤を、静脈内投与することができる。本発明の方法において使用しうる、例示的で非限定的な抗生剤は、アクロソキサシン、アミフロキサシン、アミカシン、アモキシシリン、アンピシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アジスロマイシン、アズトレオナム、バロフロキサシン、ベンジルペニシリン、ビアペネム、ブロジモプリム、セファクロル、セファドロキシル、セファトリジン、セフカペン、セフジニル、セフェタメット、セフメタゾール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキサジン、セフタロリン、セフタジジム、セフチブテン、セフトビプロール、セフロキシム、セファレキシン、セファロニウム、セファロリジン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、クロルキナルドール、クロルテトラサイクリン、シクラシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、コリスチン、ダノフロキサシン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジフロキサシン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エノキサシン、エンロフロキサシン、エリスロマイシン、フレロキサシン、フロモキセフ、フルクロキサシリン、フルメキン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、イソニアジド、イミペネム、カナマイシン、レボフロキサシン、リネゾリド、マンデル酸、メシリナム、メロペネム、メトロニダゾール、ミノサイクリン、モキサラクタム、ムピロシン、ナジフロキサシン、ナフシリン、ナリジクス酸、ネチルミシン、ネトロマイシン、ニフイルトイノール、ニトロフラントイン、ニトロキソリン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、オキシテトラサイクリン、パニペネム、ペフロキサシン、フェノキシメチルペニシリン、ピペミド酸、ピロミド酸、ピバンピシリン、ピブメシリナム、ポリミキシン-b、プルリフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、スルバクタム、スルファベンズアミド、スルファシチン、スルファメトピラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルアミド、スルファソミジン、スルファチアゾール、テイコプラニン、テマフロキサシン、テトラサイクリン、テトロキソプリム、チゲサイクリン、チニダゾール、トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、バンコマイシン、及びこれらの薬学的に許容される塩又はエステルを含むがこれらに限定されない。
【0068】
別の例では、真菌感染に対して、処置は、抗真菌剤を含みうる。例示的な抗真菌剤は、ポリエン(例えば、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、及びリモシジン)、アゾール(例えば、イミダゾール、例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エベルコナゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、及びチオコナゾール;トリアゾール、例えば、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、及びボリコナゾール;並びにチアゾール、例えば、アバファンギン)、アリラミン(例えば、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、及びテルビナフィン)、エキノキャンディン(例えば、アニデュラファンギン、カスポファンギン、及びミカファンギン)、及び安息香酸、シクロピロクスオラミン、5-フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフタート、アミノキャンディン、クロルダントイン、クロルフェネシン、ニフロキシム、ウンデシレン酸、クリスタルバイオレット、並びにこれらの薬学的に許容される塩又はエステルを含むがこれらに限定されない、他の抗真菌剤を含むがこれらに限定されない。
【0069】
一部の実施形態では、処置法は、例えば、本発明の方法による、患者に由来する生物学的試料中に存在する病原体の検出及び/又は同定に基づき、処置を無症状性の患者に施す(付与する)ステップを含みうる。他の実施形態では、処置法は、本発明の方法による、患者に由来する生物学的試料中に存在する病原体の検出又は同定に基づき、処置を症状性の患者に施すステップを含みうる。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検若しくはリンパ節生検))、又は痰(例えば膿性痰及び血痰)を含む、宿主対象及び病原体の両方に由来する細胞及び/又は細胞破砕物を含有しうる。一部の実施形態では、生物学的試料は血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、又は血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)である。特定の実施形態では、生物学的試料は全血である。他の特定の実施形態では、生物学的試料は粗全血溶解物である。
【0070】
一部の実施形態では、患者に選択される処置は、本発明の方法による、病原体の検出及び/又は同定に基づく。当技術分野では、異なる病原体種に適切な処置が公知である。一例では、グラム陽性菌を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、バンコマイシンの投与を伴いうる。別の例では、グラム陰性菌を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、ピペラシリン-タゾバクタムの投与を伴いうる。別の例では、一部の実施形態では、アシネトバクター属(Acinetobacter)種(例えば、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii))を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、コリスチン、メロペネム、及び/又はゲンタマイシンの投与を伴いうる。別の例では、一部の実施形態では、クレブシエラ属(Klebsiella)種(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae))を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、メロペネムの投与を伴いうる。さらに別の例では、一部の実施形態では、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、ピペラシリン-タゾバクタムの投与を伴いうる。さらなる例では、一部の実施形態では、エスケリキア属(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、メロペネムの投与を伴いうる。別の例では、一部の実施形態では、エンテロコッカス属(Enterococcus)種(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium))を、患者に由来する生物学的試料中において検出する場合、処置法は、ダプトマイシンの投与を伴いうる。
【0071】
アッセイ試薬
本明細書で記載される方法は、任意の適切な試薬、例えば、界面活性剤、緩衝液成分、添加剤、キレート剤などを含みうる。界面活性剤は、一般に、GAF Companyから、IGEPAL(登録商標)の商標名で市販されている界面活性剤を含む、多種多様な可溶性の非イオン性表面活性剤から選択することができる。液体の非イオン性界面活性剤であるIGEPAL(登録商標)は、ポリエチレングリコールp-イソオクチルフェニルエーテル化合物であり、多様な分子量呼称、例えば、IGEPAL(登録商標)CA720、IGEPAL(登録商標)CA630、及びIGEPAL(登録商標)CA890で入手可能である。他の適切な非イオン性界面活性剤は、TETRONIC(登録商標)909の商標名で、BASF Corporationから市販されている界面活性剤を含む。この材料は、一級ヒドロキシル基を末端とする、四官能性ブロックコポリマー界面活性剤である。適切な非イオン性界面活性剤はまた、ALPHONIC(登録商標)の商標名で、Vista Chemical Companyからも入手可能であり、このような材料は、多様な分子量の直鎖状一級アルコールのブレンドに由来する、非イオン性生体分解性物質であるエトキシレートである。界面活性剤はまた、ポロキサマー、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えば、SYNPERONIC(登録商標)PEシリーズ(ICI)、PLURONIC(登録商標)シリーズ(BASF)、Supronic、MONOLAN(登録商標)、PLURACARE(登録商標)、及びPLURODAC(登録商標)の商標名で入手可能なポロキサマー、ポリソルベート界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)20(PEG-20ソルビタンモノラウレート)、並びにグリコール、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールからも選択することができる。
【0072】
このような非イオン性界面活性剤は、アッセイ反応に対して有害な作用を及ぼさずに、アッセイに適量の洗浄力をもたらすように選択することができる。特に、界面活性剤は、本発明の凝集アッセイの多様な成分間の非特異的相互作用を抑制する目的で、反応混合物中に組み入れることができる。非イオン性界面活性剤は典型的に、液体試料へと、0.01%(w/w)~5%(w/w)の量であらかじめ添加する。
【0073】
非イオン性界面活性剤を、これもまた、液体試料へと、0.01%(w/w)~5%(w/w)の量であらかじめ添加された、1つ以上のタンパク質(例えば、アルブミン、魚類皮膚ゼラチン、リゾチーム、又はトランスフェリン)と組み合わせて使用することができる。
【0074】
さらに、本発明のアッセイ、方法、及びカートリッジユニットは、さらなる適切な緩衝液成分(例えば、反応環境内に約7.8~8.2のpHをもたらすように選択されるトリス塩基)、及びカチオンを除去するキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム、クエン酸、酒石酸、グルクロン酸、糖酸、又はこれらの適切な塩)を含みうる。
【0075】
複合試料からの核酸の増幅及び検出
いくつかの実施形態では、本発明の方法及びシステムは、1つ以上の核酸の増幅を伴う。増幅は、指数的又は直線的でありうる。標的又は鋳型核酸は、DNAの場合もあり、RNA(例えばmRNA)の場合もある。このようにして増幅された配列は、「増幅領域」又は「単位複製配列」を形成する。プライマープローブは、特異的な鋳型核酸配列をターゲティングするように、当業者がたやすくデザインすることができる。ある特定の好ましい実施形態では、結果として得られる単位複製配列は、迅速なサイクリング、及びコピーの生成を可能とするように、短い。単位複製配列のサイズは、例えば、標的核酸を、非標的核酸から弁別する能力をもたらすように、必要に応じて変動させることができる。例えば、単位複製配列は、約1,000ヌクレオチド未満の長さでありうる。単位複製配列は、100~500ヌクレオチドの長さ(例えば、100~200、150~250、300~400、350~450、又は400~500ヌクレオチドの長さ)であることが望ましい。一部の実施形態では、1つを超える(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10又は10を超える)標的核酸を、1回の反応で増幅することができる。他の実施形態では、単一の標的核酸を、1回の反応で増幅することができる。一部の実施形態では、本発明は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検(例えば皮膚生検、筋肉生検若しくはリンパ節生検))、又は痰(例えば膿性痰及び血痰)を含むがこれらに限定されない、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料中において行われる、増幅ベースの核酸検出アッセイを提供する。一部の実施形態では、方法は、宿主哺乳動物対象と微生物、特に微生物病原体の両方に由来する細胞及び/又は細胞破砕物を含む生物学的試料中で標的核酸を増幅するための方法を提供する。
【0076】
試料の調製は、典型的に、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料中に見出される、一般的なPCR阻害因子に対する耐性を除去するか、又はもたらすことを伴う。一般的な阻害因子は、表1(また、Wilson、Appl. Environ. Microbiol.、63:3741 (1997)も参照されたい)に列挙されている。表1中の「促進因子」とは、阻害を低減又は克服するのに使用しうる方法又は組成物を示す。阻害因子は、典型的に、細胞の溶解、分解の防止、若しくは標的核酸の封鎖、及び/又はポリメラーゼ活性の阻害により作用する。最も一般に利用されるポリメラーゼであるTaqは、通常は反応物中の0.1%の血液の存在により阻害される。血液中で見出される、一般的な阻害因子(例えば、ヘモグロビン及び/又はフミン酸)に対して耐性である、変異型Taqポリメラーゼが操作されている(Kermekchievら、Nucl. Acid. Res.、37(5):e40(2009))。製造元の推奨は、これらの変異が、最大で20%の血液からの直接的な増幅を可能とすることを示す。変異によりもたらされる耐性にもかかわらず、リアルタイムPCRによる正確な検出は、血液試料の存在下で観察される蛍光の消光に起因して、複雑である(Kermekchievら、Nucl. Acid. Res.、37:e40(2009))。
【0077】
【表1】
【0078】
ポリメラーゼ連鎖反応による、DNA又はcDNAの増幅は、試みられて、信頼されている方法であるが、上記で論じた通り、ポリメラーゼは、一般に使用される抗凝固剤及びヘモグロビンを含むがこれらに限定されない、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合的な生物学的試料中に含有される薬剤により阻害される。変異型Taqポリメラーゼが、血液中及び土壌中で見出される、一般的な阻害因子に対する耐性を擁するように操作されている。現在入手可能なポリメラーゼ、例えば、HemoKlenTaq(登録商標)(New England BioLabs, Inc.、Ipswich、MA)、並びにOmniTaq(登録商標)及びOmniKlenTaq(登録商標)(DNA Polymerase Technology, Inc.、St. Louis、MO)は、それらが、最大で10%、20%、又は25%の全血の存在下で、生成物及び反応条件に応じて、DNAを増幅することを可能とする、変異(例えば、N末端切断及び/又は点変異)型のTaqポリメラーゼである(例えば、Kermekchievら、Nucl. Acids Res.、31:6139(2003)、及びKermekchievら、Nucl. Acid. Res.、37:e40(2009)を参照されたい。また、米国特許第7,462,475号を参照されたい)。加えて、PHUSION(登録商標)Blood Direct PCR Kits(Finnzymes Oy、Espoo、Finland)は、従来型のポリメラーゼ、例えば、Taq又はPfuに対して、典型的に阻害性である条件下で、増幅を可能とし、最大で約40%全血の存在下、ある特定の反応条件下で、DNAの増幅を可能とする、二重鎖DNA結合性ドメインを組み込むように操作された、固有の融合DNAポリメラーゼ酵素を含む。Wangら、Nucl. Acids Res.、32:1197(2004)を参照されたい。また、米国特許第5,352,778号及び同第5,500,363号を参照されたい。さらに、Kapa Blood PCR Mixes(Kapa Biosystems、Woburn、MA)は、ある特定の反応条件下で、反応容量の最大で約20%の全血の直接的な増幅を可能とする、遺伝子操作されたDNAポリメラーゼ酵素を提供する。これらのブレークスルーにもかかわらず、蛍光、吸光度、及び他の光ベースの方法は、血液の存在により消光される信号をもたらすので、既存の方法による、生成させた単位複製配列の、直接的で光学的な検出は、通常は可能ではない。Kermekchievら、Nucl. Acid. Res.、37:e40(2009)を参照されたい。表2は、多くの種類の干渉物質と適合性であり、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料中の標的核酸の増幅のために本発明の方法において使用しうる変異型熱安定性DNAポリメラーゼのリストを示す。
【0079】
【表2】
【0080】
全血の様々な不純物及び成分は、ポリメラーゼ及びプライマーアニーリングに対して阻害性でありうる。これらの阻害因子は、偽陽性及び低感度の発生をもたらしうる。複合試料中の核酸を増幅及び検出する場合に、偽陽性及び低感度の発生を低減するためには、例えば、上記で記載した通り、全血試料により阻害されない熱安定性ポリメラーゼを用い、1つ以上の内部PCRアッセイ対照を組み入れることが望ましい(Rosenstrausら、J. Clin Microbiol.、36:191(1998)及びHoofarら、J. Clin. Microbiol.、42:1863(2004)を参照されたい)。
【0081】
例えば、アッセイは、臨床検体の増幅及び検出の成功を確保するように、標的配列の領域と同一なプライマー結合性領域を含有する内部対照核酸を含みうる。一部の実施形態では、標的核酸及び内部対照は、各々が、内部対照を標的核酸から差別化する、固有のプローブ結合性領域を有するように選択することができる。内部対照は、任意選択で、例えば、全血臨床試料中の感染性生物を、安全且つ正確に決定及び同定するのに、処理陽性対照、処理陰性対照、及び試薬対照と組み合わせて利用される。内部対照は、検出される核酸標的と共に共増幅されるようにデザインされる阻害対照でありうる。内部阻害対照の増幅の失敗は、試薬の不良又は工程のエラーの証拠である。ユニバーサルプライマーは、標的配列及び内部対照配列を、同じ反応チューブ内で増幅するようにデザインすることができる。したがって、このフォーマットを使用すると、標的DNAは増幅されるが、内部対照は増幅されなければ、標的DNAは相対的に内部対照より多量に存在することが仮定され、内部対照の増幅は不要であるので、陽性結果は妥当である。他方、内部対照も標的も増幅されなければ、PCR反応の阻害が生じ、この特定の試料についての検査は、妥当ではないことが仮定される。
【0082】
本発明のアッセイは、1つ以上の標的核酸を、アッセイ中に、検出限界の3倍~5倍で組み入れた(例えば、各々を、1つ以上のカートリッジにより組み入れた)、1つ以上の陽性処理対照を含みうる。陽性処理対照の各々について測定されるT2は、標的核酸の存在を示す所定の閾値を上回らなければならない。陽性処理対照は、工程の各ステップ(例えば、溶解、PCR、及びT2の検出)における、全ての試薬の不良を検出することが可能であり、システムの品質管理に使用することができる。本発明のアッセイは、標的核酸非含有溶液(例えば、緩衝液単独)からなる、1つ以上の陰性処理対照を含みうる。陰性処理対照についてのT2測定値を、陰性結果を示す閾値を下回るものとする一方、内部対照について測定されるT2は、内部対照の陽性結果を示す判定閾値を上回る。陰性対照の目的は、キャリーオーバー汚染及び/又は試薬汚染を検出することである。本発明のアッセイは、1つ以上の試薬対照を含みうる。試薬対照は、反応のPCR段階における試薬不良(すなわち、マスターミックスの、PCRチューブへの不完全な導入)を検出するであろう。試薬対照はまた、T2検出の前における、試薬導入の大きな失敗も検出しうる。
【0083】
一部の実施形態では、液体試料(例えば、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清、若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む、細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料を含む)でありうる、複合的な生物学的試料は、増幅反応中に、約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約25%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、又は約70%以上の複合的な液体試料を使用して、直接増幅することができ、結果として得られる単位複製配列は、例えば、標的核酸配列と相補的なオリゴヌクレオチドに結合させた、コンジュゲート磁性粒子の添加時における、磁気共鳴(MR)緩和の測定値を使用して、増幅反応から直接検出することができる。代替的に、磁性粒子は、増幅の前に、試料へと添加することができる。したがって、複合的な汚染試料中における核酸増幅の使用、結果として得られる単位複製配列の、常磁性粒子とのハイブリダイゼーション、その後の磁性粒子ベースの検出システムを使用するハイブリダイズさせた磁性粒子コンジュゲート及び標的単位複製配列の直接的な検出の方法が提供される。特定の実施形態では、ハイブリダイズさせた磁性粒子コンジュゲート及び単位複製配列の直接的な検出は、MR緩和の測定値(例えば、T2、T1、T1/T2ハイブリッド、T2 *など)を介する。さらに、試料中の、元の核酸コピー数を定量化するための反応速度法(例えば、あらかじめ規定されたサイクル数におけるサンプリング及び核酸の検出、内因性の内部対照核酸の比較、外因性の、添加された、相同な競合的対照核酸の使用)が提供される。一部の実施形態では、結果として得られる単位複製配列は、非MRベースの手法、例えば、光学的測定、蛍光測定、質量測定、密度測定、クロマトグラフィー測定、及び/又は電気化学的測定を使用して検出される。
【0084】
本明細書の以下で記載される例示的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を使用する増幅に関するが、当技術分野では、核酸を増幅する他の多数の方法(例えば、等温方法、ローリングサークル方法など)も公知である。当業者は、これらの他の方法を、PCR法の代わりに、又はこれと併せて使用しうることを理解するであろう。例えば、Saiki、「Amplification of Genomic DNA」、PCR Protocols、Innisら編、Academic Press、San Diego、Calif.、13~20頁(1990)、Wharamら、Nucleic Acids Res.、29:E54(2001)、Hafnerら、Biotechniques、30:852(2001)を参照されたい。本方法を伴う使用に適する、さらなる増幅法は、例えば、逆転写PCR(RT-PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅システム(TAS)、転写媒介型増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)法、鎖置換増幅(SDA)法、ループ媒介型等温増幅(LAMP)法、等温及びキメラプライマー誘発型核酸増幅(ICAN)法、並びにスマート増幅システム(SMAP)法を含む。当技術分野では、これらの方法並びに他の方法が周知であり、提供される、増幅された核酸の検出法を伴う使用に適応させることができる。
【0085】
PCR法は、特異的な鋳型DNA配列の多くのコピーを作製する技法である。PCR工程については、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、及び同第4,965,188号において開示されている。鋳型DNAと相補的なプライマーの1つのセットをデザインし、プライマーに挟まれる領域を、複数の増幅サイクルを含む反応において、DNAポリメラーゼにより増幅する。各増幅サイクルは、初期の変性、及び、最大で50サイクルのアニーリング、鎖の延長(又は伸長)、及び鎖の分離(変性)を含む。反応の各サイクルでは、プライマーの間のDNA配列をコピーする。プライマーは、コピーされるDNAのほか、元の鋳型配列にも結合しうるので、コピーの総数は、時間と共に指数的に増大する。PCRは、Whelanら、Journal of Clinical Microbiology、33:556(1995)に従い実施することができる。当技術分野では、多様な改変PCR法が利用可能であり、周知である。当業者には、多様な改変、例えば、PCRを実施する前に、逆転写酵素を使用して、DNAをRNAから合成する「RT-PCR」法、並びに蛍光標識されたTaqMan(登録商標)プローブ及びTaq DNAポリメラーゼを使用して、特異的対立遺伝子だけを増幅及び検出する「TaqMan(登録商標)PCR」法が公知である。RT-PCR及びその変化形については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,804,383号、同第5,407,800号、同第5,322,770号、及び同第5,310,652号、並びにその中に記載される参考文献において記載されており、TaqMan(登録商標)PCR及び方法において使用される関連する試薬については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,210,015号、同第5,876,930号、同第5,538,848号、同第6,030,787号、及び同第6,258,569号において記載されている。
【0086】
一部の実施形態では、非対称PCRを実施して、二重鎖DNA鋳型の1つの鎖を優先的に増幅する。非対称PCRは典型的に、増幅でターゲティングされる鎖の、過剰量のプライマーの添加を伴う。例示的な非対称PCRの条件は、一本鎖の増幅を優先する、300nMの過剰量プライマー及び75nMの限定量プライマーである。他の実施形態では、400nMの過剰量プライマー及び100nMの限定量プライマーを使用して、一本鎖の増幅を優先することができる。
【0087】
マルチプレックス化PCR反応を利用する実施形態を含む一部の実施形態では、ホットスタートのPCR条件を使用して、ミスプライミング、プライマー二量体の形成を低減し、収量を改善し、且つ/又はPCRの高特異度及び高感度を確実にすることができる。ホットスタートDNAポリメラーゼ(例えば、アプタマーベースの阻害因子、又は低温における活性を制限する変異を伴う、ホットスタートDNAポリメラーゼ)、並びにホットスタートdNTP(例えば、CLEANAMP(商標)dNTP、TriLink Biotechnologies)を含む、様々な手法を利用して、ホットスタートPCR条件を達成することができる。
【0088】
一部の実施形態では、PCR反応は、約20サイクル~約55サイクル以上(例えば、約20、25、30、35、40、45、50、又は55サイクル)を含みうる。
【0089】
LCRとは、2つではなく、4つのプライマーを使用し、DNAの2つのセグメントをライゲーション又は接合するのに、酵素リガーゼを使用することを除き、PCRと類似のDNA増幅法である。増幅は、サーマルサイクラー(例えば、Abbott Labs、North Chicago、ILのLCx)において実施することができる。LCRは、例えば、Mooreら、Journal of Clinical Microbiology、36:1028(1998)に従い実施することができる。LCR法及び変化形については、例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許出願公開第EP0320308号及び米国特許第5,427,930号において記載されている。
【0090】
TAS法とは、標的RNAを特異的に増幅する方法であって、cDNA合成ステップ及びRNA転写ステップにより、転写物を鋳型RNAから得る方法である。cDNA合成ステップでは、DNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される配列(すなわち、ポリメラーゼ結合性配列又はPBS)を、2ドメイン型オリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅される標的又はマーカー配列の下流のcDNAのコピーへと挿入する。第2のステップでは、RNAポリメラーゼを使用して、RNAの複数のコピーを、cDNA鋳型から合成する。DNA依存性RNA転写は、cDNA鋳型の各コピーにつき、10~1000コピーを結果としてもたらしうるため、TASを使用する増幅は、少数のサイクルしか要求しない。TASは、Kwohら、PNAS、86:1173(1989)に従い実施することができる。TAS法については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO1988/010315号において記載されている。
【0091】
転写媒介型増幅(TMA)とは、RNAポリメラーゼによるRNA転写、及び逆転写酵素によるDNA転写を使用して、標的核酸に由来するRNA単位複製配列を生成する、転写ベースの等温増幅反応である。TMA法は、それらが、増幅サイクル1つ当たり100~1000コピーの単位複製配列を作製するという点で、サイクル1つ当たり2コピーだけを作製するPCR又はLCR法と対比して有利である。TMAについては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,491号において記載されている。NASBAとは、標的RNAを、RNA又はDNA鋳型から特異的に増幅する、転写ベースの方法である。NASBAは、1つの温度で、単一の混合物中の核酸の連続的な増幅に使用される方法である。標的RNAと同一な配列を有するフォワードプライマー、及び3'側において標的RNAと相補的な配列を有するリバースプライマー、及び5'側においてT7 RNAポリメラーゼを認識するプロモーター配列を使用して、DNA依存性RNAポリメラーゼにより、転写物を鋳型RNAから得る。鋳型として得られる転写物を使用して、転写物をさらに合成する。この方法は、Heimら、Nucleic Acids Res.、26:2250(1998)に従い実施することができる。NASBA法については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,130,238号において記載されている。
【0092】
SDA法とは、制限酵素により生成される一本鎖ニックにより5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠く、鎖置換型のDNAポリメラーゼにより合成される鎖で置換されるDNA鎖を、次の複製の鋳型として使用して、標的DNAを増幅する等温核酸増幅法である。制限部位を含有するプライマーを鋳型とアニールさせ、次いで、増幅プライマーを5'側の隣接配列とアニールさせる(ニックを形成する)。増幅は、一定温度で誘発される。新たに合成されたDNA鎖に、制限酵素がニックを施し、ポリメラーゼ増幅は、新たに合成された鎖の置換を再開する。SDAは、Walkerら、PNAS、89:392(1992)に従い実施することができる。SDA法については、それらの各々が参照により組み込まれる、米国特許第5,455,166号及び同第5,457,027号において記載されている。
【0093】
LAMP法とは、合成されるDNAの3'端にループを常に形成し、プライマーをループ内でアニールさせ、標的DNAの特異的増幅を等温的に実施する等温増幅法である。LAMPは、Nagamineら、Clinical Chemistry.、47:1742(2001)に従い実施することができる。LAMP法については、それらの各々が参照により組み込まれる、米国特許第6,410,278号、同第6,974,670号、及び同第7,175,985号において記載されている。
【0094】
ICAN法とは、RNA-DNAを含むキメラプライマー、及び鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、及びRNアーゼHを使用して、鎖置換反応、鋳型交換反応、及びニック導入反応により、標的DNAの特異的増幅を等温的に実施する等温増幅法である。ICANは、Mukaiら、J. Biochem.、142:273(2007)に従い実施することができる。ICAN法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,951,722号において記載されている。
【0095】
SMAP(MITANI)法は、2種類のプライマーを含むプライマーセット、及び鋳型としてのDNA又はRNAを使用して、標的核酸を等温条件下で連続的に合成する方法である。プライマーセットに含まれる第1のプライマーは、その3'端領域内に、標的核酸配列の3'端領域内の配列(A)とハイブリダイズ可能な配列(Ac')を含むほか、上述の配列(Ac')の5'側に、上述の標的核酸配列内の、上述の配列(A)の5'側に存在する配列(B)と相補的な配列(Bc)とハイブリダイズ可能な配列(B')を含む。第2のプライマーは、その3'端領域内に、上述の標的核酸配列と相補的な配列の3'端領域内の配列(C)とハイブリダイズ可能な配列(Cc')を含むほか、上述の配列(Cc')の5'側の同一な鎖上で、互いとハイブリダイズ可能な、2つの核酸配列を含むループバック配列(D-Dc')を含む。SMAPは、Mitaniら、Nat. Methods、4(3):257(2007)に従い実施することができる。SMAP法については、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2006/0160084号、同第2007/0190531号、及び同第2009/0042197号において記載されている。
【0096】
増幅反応は、特異的な種類の増幅産物、例えば、二本鎖、一本鎖、3'若しくは5'突出を伴う二本鎖、又は5'及び3'端上に化学的リガンドを伴う二本鎖である核酸をもたらすようにデザインすることができる。増幅されたPCR産物は、(i)増幅産物の、相補的なオリゴヌクレオチドに結合させた磁性粒子とのハイブリダイゼーションであって、核酸が、粒子のアグロメレーションを促進する粒子間繋留として用いられるように、増幅産物とハイブリダイズする、2つの異なるオリゴヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーション、(ii)増幅産物のDNAをまず変性させなければならない、ハイブリダイゼーション媒介型検出、(iii)粒子が、増幅産物の5'及び3'突出とハイブリダイズする、ハイブリダイゼーション媒介型検出、(iv)増幅産物の末端における、化学的又は生化学的リガンドへの、粒子の結合、例えば、ストレプトアビジンで官能化させた粒子の、ビオチンで官能化させた増幅産物への結合により検出することができる。
【0097】
本発明のシステム及び方法を使用して、リアルタイムPCRを実施し、試料中に存在する標的核酸の量についての定量的情報をもたらすことができる(例えば、WO2012/054639の図52及び実施例18を参照されたい)。定量的リアルタイムPCRを行う方法は、文献に提示されている(例えば、RT-PCR Protocols、Methods in Molecular Biology、193巻、Joe O'Connell編、Totowa、NJ:Humana Press、2002、378頁、ISBN 0-89603-875-0を参照されたい)。WO2012/054639の実施例18は、全血試料のリアルタイムPCR解析のための本発明の方法の使用について記載している。
【0098】
本発明のシステム及び方法を使用して、捕捉プローブで改変された磁性ナノ粒子及び磁性分離を使用して、不透明試料、例えば、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞又は細胞破砕物を含有する生物学的試料中で直接、リアルタイムPCRを実施することができる。リアルタイムPCRの使用は、PCR反応を開始した後で、反応チューブを開栓せずに、標的核酸の定量化を可能とする。
【0099】
一手法では、ビオチン又はアビジンで標識されたプライマーを使用して、リアルタイムPCRを実施することができる。これらの標識は、磁性粒子上に、極めて短い結合時間を有しうる、対応する結合性部分を有するであろう。これは、二本鎖産物の生成を可能とし、粒子の結合時間の大幅な短縮を可能とし、全体のターンアラウンド時間を短縮する。結合化学反応は、可逆性であり、プライマーが、粒子に結合したままとなることを防止する。結合を逆行させるために、試料を加熱するか、又はpHを調整することができる。
【0100】
別の手法では、リアルタイムPCRは、超常磁性粒子とハイブリダイズしうる突出を伴う二重鎖DNAの生成により達成することができる。加えて、LNA及び/又はフッ素化捕捉プローブは、ハイブリダイゼーション時間を短縮しうる。
【0101】
さらに別の手法では、粒子は、単位複製配列に対する捕捉プローブの結合性部位が埋め込まれているヘアピンを有するようにデザインする。粒子を、より高い溶融温度へと加熱すれば、粒子上の捕捉プローブのヘアピンの結合性部位が曝露されて、標的への結合が可能となるであろう。
【0102】
別の手法では、単位複製配列とハイブリダイズするプローブは、2つ(以上)の粒子を繋留している。反応は、5'エキソヌクレアーゼ活性を伴うポリメラーゼの存在下で行う結果として、粒子間繋留の切断、及びその後におけるT2の変化をもたらすであろう。ポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼ活性、及び選択したマトリックス(例えば、血液)との適合性を有するように選択する。この手法では、小型の粒子(例えば、30nmのCLIO)を使用して、標的とのハイブリダイゼーションに対する立体障害、又はその後の重合中の酵素による消化を低減することができる(例えば、Heidら、Genome Research、1996、6:986~994を参照されたい)。
【0103】
別の手法では、相補的な捕捉プローブを保有するように、2つの粒子集団を合成することができる。単位複製配列の非存在下で、捕捉プローブは、ハイブリダイズして、粒子のクラスター形成を促進する。単位複製配列の生成時に、単位複製配列は、競合し、ハイブリダイズし、捕捉プローブを置換し、粒子のクラスターの解離をもたらすことができる。方法は、ナノ粒子の存在下で行うこともでき、非存在下で行うこともできる。溶液中で遊離した粒子は、サーモサイクリングに起因して、クラスター形成及びクラスター解離するであろう(例えば、Tmは、95℃を下回りうるため)。粒子へと固定化された捕捉プローブのうちの1つに結合する単位複製配列のTmは、この結合相互作用が、粒子間の結合相互作用より好適となる(例えば、捕捉プローブ内の点変異を操作して、二重鎖を熱力学的に不安定化させることにより)ようにデザインすることができる。この実施形態では、粒子濃度は、例えば、低レベルで保つこともでき、高レベルで保つこともできる。
【0104】
過去の研究は、場合によって、PCR反応物中の粒子の存在が、PCRを阻害しうることを示した。これらの阻害性粒子については、粒子が、チューブの側面(又は容器内の他の場所)へと引き寄せられて、PCR反応中に溶液外に保持されうることが想定される。方法を使用して、粒子を懸濁液へと放出し戻し、それらが、PCR産物とハイブリダイズすることを可能とし、次いで、それらを溶液外に引き戻すことができる。他の過去の研究は、粒子の具体的製剤が、PCR反応に対して阻害性ではなく、増幅中に溶液中に残りうることを示している。
【0105】
ある特定の実施形態では、本発明は、NEB HemoKlenTaq(商標)、DNAP OmniKlenTaq(商標)、Kapa Biosystems全血用酵素、Thermo-Fisher Finnzymes PHUSION(登録商標)酵素、又は表2に示される変異型熱安定性DNAポリメラーゼのいずれかを含むがこれらに限定されない変異型熱安定性DNAポリメラーゼなどの、全血と適合性の酵素の使用を特色とする。
【0106】
本発明はまた、定量的非対称PCRも特色とする。本発明のリアルタイムPCR法のうちのいずれかでは、方法は、以下のステップ:
1.超常磁性粒子を含有する、調製されたPCRマスターミックスへと、全血をアリコート分割するステップ、
2.第1のPCRサイクルの前に、PCRサイクリングが完了するまで、チューブを閉止するステップ、
3.チューブをサーマルサイクラーへとロードするステップ、
4.「n」サイクルの標準的なPCRサーマルサイクリングを行うステップ、
5.T2検出を行うステップ(正確な持続時間及びこれを検出するステップは、下記に記載される生化学法及び粒子デザイン法に応じて変動する)、並びに
6.初期標的濃度の正確な定量化に十分なT2のリーディングがなされるまで、ステップ4及び5を反復するステップ
を伴いうる。
【0107】
上記の方法を、本明細書で記載される、凝集又は解離の検出についての以下の類型であって、表3で記載される類型を含む類型のうちのいずれかと共に使用することができる。
【0108】
【表3】
【0109】
試料の調製及び細胞の溶解
本発明の方法及びシステムは、試料の調製及び/又は細胞の溶解を伴いうる。例えば、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清、若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞又は細胞破砕物を含有する生物学的試料中に存在する病原体は、標的核酸を増幅する前に溶解させることができる。生物学的試料中の病原体細胞を溶解させるのに適する溶解法は、例えば、機械的溶解(例えば、ビーズビーティング及び超音波処理)、熱溶解、及びアルカリによる溶解を含む。一部の実施形態では、ビーズビーティングは、ガラスビーズ(例えば、0.5mmのガラスビーズ、0.6mmのガラスビーズ、0.7mmのガラスビーズ、0.8mmのガラスビーズ、又は0.9mmのガラスビーズ)を生物学的試料へと添加して、混合物を形成し、混合物を撹拌することにより実施することができる。例として述べると、試料の調製及び細胞の溶解(例えば、ビーズビーティング)は、WO2012/054639で記載されている手法及び方法のうちのいずれかを使用して実施することができる。溶解後、試料は、試料中に存在する哺乳動物宿主細胞に由来する及び/又は病原体細胞(単数又は複数)に由来する細胞破砕物を含みうる。
【0110】
一部の実施形態では、本発明の方法は、組織ホモジネートを調製するステップを含んでもよい。粉砕(例えば、乳鉢及び乳棒粉砕、低温乳鉢及び乳棒粉砕又はガラスホモジナイザー)、剪断(例えば、ブレンダー、ローターステーター、ダウンスホモジナイザー又はフレンチプレス)、ビーティング(例えばビーズビーティング)、又は超音波処理に限定されないが、これらを含む、当技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載される任意の好適な方法又は手法を使用してもよい。一部の実施形態では、いくつかの手法を組み合わせて組織ホモジネートを調製してもよい。
【0111】
一部の実施形態では、本発明の方法は、全血試料中の、1つ以上の病原体関連解析物の検出を伴う。一部の実施形態では、方法は、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))の破壊を伴いうる。一部の実施形態では、赤血球の破壊は、赤血球溶解剤(すなわち、溶解緩衝液、等張性溶解剤、又は非イオン性洗浄液)を使用して実行することができる。本発明の方法において使用しうる赤血球溶解緩衝液は、限定なしに述べると、塩化アンモニウムの等張性溶液(任意選択で、炭酸緩衝液及び/又はEDTAを含む)及び低張性溶液を含む。等張性塩化アンモニウムを使用する、溶血の基礎的機構は、赤血球膜を通るアンモニアの拡散による。このアンモニアの流入は、ヒドロキシルイオンの細胞内濃度を増大させ、これは次に、CO2と反応して炭酸水素塩を形成する。赤血球は、アニオンチャネルを介して、過剰な炭酸水素塩を、血漿中に存在する塩化物と交換し、その後、細胞内の塩化アンモニウム濃度を増大させる。結果として生じる細胞の膨張は、最終的に、膜の完全性の喪失を引き起こす。
【0112】
代替的に、赤血球溶解剤は、非イオン性洗浄液(例えば、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、4-オクチルフェノールポリエトキシレート(TRITON(商標)X-100)、BRIJ(登録商標)58、又は類縁の非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物)の水溶液でありうる。赤血球溶解剤は、赤血球の少なくとも一部を破壊し、全血のうちのある特定の成分(例えば、ある特定の全血タンパク質)の大きな画分を、全血試料中に存在する白血球又は他の細胞(例えば、病原体細胞(例えば、細菌細胞及び/又は真菌細胞))から分離すること(例えば、遠心分離後の上清として)を可能とする。赤血球溶解及び遠心分離の後、結果として得られるペレットを、例えば、上記で記載した通りに溶解させることができる。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の方法は、(a)対象に由来する全血試料を用意するステップ、(b)全血試料を赤血球溶解剤溶液と混合して、破壊赤血球を作製するステップ、(c)ステップ(b)に続き、試料を遠心分離して、上清及びペレットを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、ペレットを再懸濁させて、抽出物を形成するステップ、(d)抽出物(白血球及び/又は病原体細胞を含みうる)の細胞を溶解させて、溶解物を形成するステップを含みうる。一部の実施形態では、方法は、溶解物中の1つ以上の標的核酸を増幅するステップをさらに含む。一部の実施形態では、全血の試料は、約0.5~約10mLの全血、例えば、0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、又は10mLの全血である。一部の実施形態では、方法は、ペレットを再懸濁させ、任意選択で、ステップ(c)を反復する前に、ペレットを洗浄するステップ(例えば、緩衝液、例えば、TE緩衝液で)を含みうる。一部の実施形態では、方法は、1、2、3、4、5回以上の洗浄ステップを含みうる。他の実施形態では、方法を、洗浄ステップを一切実施せずに実施する。一部の実施形態では、増幅するステップは、全血タンパク質、非標的核酸、又はこれらの両方の存在下でなされる。一部の実施形態では、増幅するステップは、0.5μg~60μg(例えば、0.5μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、又は60μg)の対象(すなわち宿主)DNAの存在下でなされうる。一部の実施形態では、対象(すなわち宿主)DNAは、対象の白血球に由来する。
【0114】
細胞及び/又は細胞破砕物を含有する複合試料中の標的核酸の増幅
本発明は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞又は細胞破砕物を含有する生物学的試料中の標的核酸の増幅のための方法を提供する。いくつかの実施形態では、試料は、哺乳動物宿主対象及び1つ以上の病原体細胞に由来する細胞及び/又は細胞破砕物を含有する。
【0115】
一実施形態では、本発明は、対象から得られた生物学的試料中の標的核酸を増幅する方法であって、生物学的試料は対象由来の細胞又は細胞破砕物を含み、当該方法は、(a)生物学的試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップ;(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温(周囲温度)で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ;及び(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ステップ(d)における熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.01ユニット(例えば、約0.01ユニット、約0.02ユニット、約0.03ユニット、約0.04ユニット、約0.05ユニット、約0.06ユニット、約0.07ユニット、約0.08ユニット、約0.09ユニット、約0.10ユニット、約0.15ユニット、約0.2ユニット、約0.25ユニット、約0.3ユニット、約0.35ユニット、約0.4ユニット、約0.45ユニット、約0.5ユニット、約0.6ユニット、約0.65ユニット、約0.7ユニット、約0.8ユニット、約0.9ユニット、又は約1ユニット以上)である。一部の実施形態では、ステップ(d)は、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約1×10-5マイクログラム(例えば、約1×10-5マイクログラム、約1.5×10-5マイクログラム、約2×10-5マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム、約2.5×10-5マイクログラム、約3×10-5マイクログラム、約4×10-5マイクログラム、約5×10-5マイクログラム、約6×10-5マイクログラム、約7×10-5マイクログラム、約8×10-5マイクログラム、約9×10-5マイクログラム、約1×10-4マイクログラム、約2×10-4マイクログラム、約3×10-4マイクログラム、約4×10-4マイクログラム、約5×10-4マイクログラム、約6×10-4マイクログラム、約7×10-4マイクログラム、約8×10-4マイクログラム、約9×10-4マイクログラム、約1×10-3マイクログラム、約2×10-3マイクログラム、3×10-3マイクログラム、約4×10-3マイクログラム、約5×10-3マイクログラム、約6×10-3マイクログラム、約7×10-3マイクログラム、約8×10-3マイクログラム、約9×10-3マイクログラム、約0.01マイクログラム、約0.02マイクログラム、約0.03マイクログラム、約0.04マイクログラム、又は約0.05マイクログラム以上)の熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップを含む。一部の実施形態では、生物学的試料は、約0.2mL~約5mL(例えば、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約3mL、約3.5mL、約4mL、約4.5mL、約5mL、約5.5mL、約6mL、約6.5mL、約7mL、約7.5mL、約8mL、約8.5mL、約9mL、約9.5mL又は約10mL)である。一部の実施形態では、生物学的試料は約0.9mLである。一部の実施形態では、生物学的試料は、血液、血の混じった液体、組織試料及び痰からなる群より選択される。一部の実施形態では、血液は全血、粗血液溶解物、血清又は血漿である。一部の実施形態では、血の混じった液体は、傷からの滲出液、痰又は胆汁である。一部の実施形態では、組織試料は組織生検である。一部の実施形態では、組織生検は皮膚生検、筋肉生検又はリンパ節生検である。一部の実施形態では、組織試料はホモジナイズされた組織試料である。
【0116】
一部の実施形態では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステッ;並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。
【0117】
他の実施形態では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、PCR緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ、並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。
【0118】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、反応混合物中の熱安定性核酸ポリメラーゼの濃度は、熱安定性核酸ポリメラーゼの製造者によって通常推奨される量に比べて、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍以上高くする。
【0119】
さらに他の実施形態では、本発明は全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.01ユニット(例えば、約0.01ユニット、約0.02ユニット、約0.03ユニット、約0.04ユニット、約0.05ユニット、約0.06ユニット、約0.07ユニット、約0.08ユニット、約0.09ユニット、約0.10ユニット、約0.15ユニット、約0.2ユニット、約0.25ユニット、約0.3ユニット、約0.35ユニット、約0.4ユニット、約0.45ユニット、約0.5ユニット、約0.6ユニット、約0.65ユニット、約0.7ユニット、約0.8ユニット、約0.9ユニット、又は約1ユニット以上)であるステップ、並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。
【0120】
さらに他の実施形態では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約1×10-5マイクログラム(例えば、約1×10-5マイクログラム、約1.5×10-5マイクログラム、約2×10-5マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム、約2.5×10-5マイクログラム、約3×10-5マイクログラム、約4×10-5マイクログラム、約5×10-5マイクログラム、約6×10-5マイクログラム、約7×10-5マイクログラム、約8×10-5マイクログラム、約9×10-5マイクログラム、約1×10-4マイクログラム、約2×10-4マイクログラム、約3×10-4マイクログラム、約4×10-4マイクログラム、約5×10-4マイクログラム、約6×10-4マイクログラム、約7×10-4マイクログラム、約8×10-4マイクログラム、約9×10-4マイクログラム、約1×10-3マイクログラム、約2×10-3マイクログラム、3×10-3マイクログラム、約4×10-3マイクログラム、約5×10-3マイクログラム、約6×10-3マイクログラム、約7×10-3マイクログラム、約8×10-3マイクログラム、約9×10-3マイクログラム、約0.01マイクログラム、約0.02マイクログラム、約0.03マイクログラム、約0.04マイクログラム、又は約0.05マイクログラム以上)の熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップ、並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。
【0121】
一部の実施形態では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、以下のステップ:(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.01ユニット(例えば、約0.01ユニット、約0.02ユニット、約0.03ユニット、約0.04ユニット、約0.05ユニット、約0.06ユニット、約0.07ユニット、約0.08ユニット、約0.09ユニット、約0.10ユニット、約0.15ユニット、約0.2ユニット、約0.25ユニット、約0.3ユニット、約0.35ユニット、約0.4ユニット、約0.45ユニット、約0.5ユニット、約0.6ユニット、約0.65ユニット、約0.7ユニット、約0.8ユニット、約0.9ユニット、又は約1ユニット以上)であるステップ、並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップの1つ以上を含む方法を提供する。
【0122】
別の例では、一部の実施形態では、本発明は、全血試料中の標的核酸を増幅する方法であって、当該方法は以下のステップ:(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ;(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ;(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ;(d)変性反応混合物に変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約1x10-5マイクログラム(例えば、約1×10-5マイクログラム、約1.5×10-5マイクログラム、約2×10-5マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム、約2.5×10-5マイクログラム、約3×10-5マイクログラム、約4×10-5マイクログラム、約5×10-5マイクログラム、約6×10-5マイクログラム、約7×10-5マイクログラム、約8×10-5マイクログラム、約9×10-5マイクログラム、約1×10-4マイクログラム、約2×10-4マイクログラム、約3×10-4マイクログラム、約4×10-4マイクログラム、約5×10-4マイクログラム、約6×10-4マイクログラム、約7×10-4マイクログラム、約8×10-4マイクログラム、約9×10-4マイクログラム、約1×10-3マイクログラム、約2×10-3マイクログラム、3×10-3マイクログラム、約4×10-3マイクログラム、約5×10-3マイクログラム、約6×10-3マイクログラム、約7×10-3マイクログラム、約8×10-3マイクログラム、約9×10-3マイクログラム、約0.01マイクログラム、約0.02マイクログラム、約0.03マイクログラム、約0.04マイクログラム、又は約0.05マイクログラム以上)の熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ;並びに(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップの1つ以上を含む方法を提供する。
【0123】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は変性反応混合物1マイクロリットル当たり約0.01ユニット~約1ユニット(例えば、約0.01ユニット~約1ユニット、約0.01ユニット~約0.9ユニット、約0.01ユニット~約0.8ユニット、約0.01ユニット~約0.7ユニット、約0.01ユニット~約0.6ユニット、約0.01ユニット~約0.5ユニット、約0.01ユニット~約0.4ユニット、約0.01ユニット~約0.3ユニット、約0.01ユニット~約0.25ユニット、約0.01ユニット~約0.2ユニット、約0.01ユニット~約0.1ユニット、約0.02ユニット~約1ユニット、約0.02ユニット~約0.9ユニット、約0.02ユニット~約0.8ユニット、約0.02ユニット~約0.7ユニット、約0.02ユニット~約0.6ユニット、約0.02ユニット~約0.5ユニット、約0.02ユニット~約0.4ユニット、約0.02ユニット~約0.3ユニット、約0.02ユニット~約0.25ユニット、約0.02ユニット~約0.2ユニット、約0.02ユニット~約0.1ユニット、約0.04ユニット~約1ユニット、約0.04ユニット~約0.9ユニット、約0.04ユニット~約0.8ユニット、約0.04ユニット~約0.7ユニット、約0.04ユニット~約0.6ユニット、約0.04ユニット~約0.5ユニット、約0.04ユニット~約0.4ユニット、約0.04ユニット~約0.3ユニット、約0.04ユニット~約0.25ユニット、約0.04ユニット~約0.2ユニット、約0.04ユニット~約0.1ユニット、約0.06ユニット~約1ユニット、約0.06ユニット~約0.9ユニット、約0.06ユニット~約0.8ユニット、約0.06ユニット~約0.7ユニット、約0.06ユニット~約0.6ユニット、約0.06ユニット~約0.5ユニット、約0.06ユニット~約0.4ユニット、約0.06ユニット~約0.3ユニット、約0.06ユニット~約0.25ユニット、約0.06ユニット~約0.2ユニット、約0.06ユニット~約0.1ユニット、約0.08ユニット~約1ユニット、約0.08ユニット~約0.9ユニット、約0.08ユニット~約0.8ユニット、約0.08ユニット~約0.7ユニット、約0.08ユニット~約0.6ユニット、約0.08ユニット~約0.5ユニット、約0.08ユニット~約0.4ユニット、約0.08ユニット~約0.3ユニット、約0.08ユニット~約0.25ユニット、約0.08ユニット~約0.2ユニット、約0.08ユニット~約0.1ユニット、約0.1ユニット~約1ユニット、約0.1ユニット~約0.9ユニット、約0.1ユニット~約0.8ユニット、約0.1ユニット~約0.7ユニット、約0.1ユニット~約0.6ユニット、約0.1ユニット~約0.5ユニット、約0.1ユニット~約0.4ユニット、約0.1ユニット~約0.3ユニット、約0.1ユニット~約0.25ユニット、約0.1ユニット~約0.2ユニット、約0.2ユニット~約1ユニット、約0.2ユニット~約0.9ユニット、約0.2ユニット~約0.8ユニット、約0.2ユニット~約0.7ユニット、約0.2ユニット~約0.6ユニット、約0.2ユニット~約0.5ユニット、約0.2ユニット~約0.4ユニット、約0.2ユニット~約0.3ユニット、約0.2ユニット~約0.25ユニット、約0.3ユニット~約1ユニット、約0.3ユニット~約0.9ユニット、約0.3ユニット~約0.8ユニット、約0.3ユニット~約0.7ユニット、約0.3ユニット~約0.6ユニット、約0.3ユニット~約0.5ユニット、約0.3ユニット~約0.4ユニット、約0.4ユニット~約1ユニット、約0.4ユニット~約0.9ユニット、約0.4ユニット~約0.8ユニット、約0.4ユニット~約0.7ユニット、約0.4ユニット~約0.6ユニット、約0.4ユニット~約0.5ユニット、約0.5ユニット~約1ユニット、約0.5ユニット~約0.9ユニット、約0.5ユニット~約0.8ユニット、約0.5ユニット~約0.7ユニット、約0.5ユニット~約0.6ユニット、約0.6ユニット~約1ユニット、約0.6ユニット~約0.9ユニット、約0.6ユニット~約0.8ユニット、約0.6ユニット~約0.7ユニット、約0.6ユニット~約0.6ユニット、約0.7ユニット~約1ユニット、約0.7ユニット~約0.9ユニット、約0.7ユニット~約0.8ユニット、約0.8ユニット~約1ユニット、又は約0.8ユニット~約0.9ユニット)の範囲であってもよい。
【0124】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(d)は、変性反応混合物1マイクロリットル当たり約1×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム(例えば、約1×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約1×10-5マイクログラム~約1×10-4マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約2×10-5マイクログラム~約1×10-4マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム~約1×10-4マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約5×10-5マイクログラム~約1×10-4マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約8×10-5マイクログラム~約1×10-4マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.005マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約1×10-4マイクログラム~約0.001マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.05マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.025マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.01マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.005マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約5×10-4マイクログラム~約0.001マイクログラム、約1×10-3マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1×10-3マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1×10-3マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1×10-3マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1×10-3マイクログラム~約0.005マイクログラム、又は約1×10-3マイクログラム~約0.0025マイクログラム)の熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップを含んでもよい。先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(c)は、ステップ(d)の前に変性反応混合物を遠心するステップをさらに含んでもよい。先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(c)は、反応混合物を約55℃よりも高く、例えば、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃又は100℃に熱するステップを含んでもよい。
【0125】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、方法は、ステップ(b)中又はステップ(d)中に、(i)デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)、(ii)マグネシウム、(iii)1つ以上のフォワードプライマー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のフォワードプライマー)、及び/又は(iv) 1つ以上のリバースプライマー(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のリバースプライマー)を添加するステップをさらに含む。
【0126】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、全血試料は約0.2mL~約2mL(例えば、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約1.1mL、約1.2mL、約1.3mL、約1.4mL、約1.5mL、約1.6mL、約1.7mL、約1.8mL、約1.9mL又は約2mL)である。
【0127】
本発明は、より大きな容量の全血から調製され濃縮粗血液溶解物の使用を許容する。一部の実施形態では、約0.2mL~約10mLの全血試料から生成された粗血液調製物は約10μL~約1000μL(例えば、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、約125μL、約150μL、約175μL、約200μL、約225μL、約250μL、約275μL、約300μL、約325μL、約350μL、約375μL、約400μL、約425μL、約450μL、約475μL、約500μL、約525μL、約550μL、約600μL、約625μL、約650μL、約675μL、約700μL、約725μL、約750μL、約775μL、約800μL、約825μL、約850μL、約875μL、約900μL、約925μL、約950μL、約975μL又は約1000μL)の容量を有する。一部の実施形態では、全血試料から生成された粗血液溶解物は、約25μL~約200μLの容量を有する。一部の実施形態では、全血試料から生成された粗血液溶解物は、約50μLの容量を有する。
【0128】
一部の実施形態では、粗血液溶解物は全血試料に比べて少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上、濃縮されている。
【0129】
一部の実施形態では、ステップ(b)の反応混合物は約20%~約60%の粗血液溶解物(例えば、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%又は約60%の粗血液溶解物)を含有する。
【0130】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、変性反応混合物は約0.1μL~約250μL以上の範囲の容量、例えば約1μL、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、約110μL、約120μL、約130μL、約140μL、約150μL、約160μL、約170μL、約180μL、約190μL、又は約200μL以上を有する。一部の実施形態では、変性反応混合物の容量は約100μLである。
【0131】
別の例では、一部の実施形態では、本発明は、未処理全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.01ユニット(例えば、約0.01ユニット、約0.02ユニット、約0.03ユニット、約0.04ユニット、約0.05ユニット、約0.06ユニット、約0.07ユニット、約0.08ユニット、約0.09ユニット、約0.10ユニット、約0.15ユニット、約0.2ユニット、約0.25ユニット、約0.3ユニット、約0.35ユニット、約0.4ユニット、約0.45ユニット、約0.5ユニット、約0.6ユニット、約0.65ユニット、約0.7ユニット、約0.8ユニット、約0.9ユニット、又は約1ユニット以上)であるステップ;(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ;並びに(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、反応混合物は、約1%~約70%(v/v)の全血、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%(v/v)の全血を含有する。
【0132】
さらにさらなる例では、一部の実施形態では、本発明は、全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、当該方法は、(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、混合物は熱安定性核酸ポリメラーゼの混合物1マイクロリットル当たり約少なくとも約1×10-5マイクログラム(例えば、約1×10-5マイクログラム、約1.5×10-5マイクログラム、約2×10-5マイクログラム、約2.4×10-5マイクログラム、約2.5×10-5マイクログラム、約3×10-5マイクログラム、約4×10-5マイクログラム、約5×10-5マイクログラム、約6×10-5マイクログラム、約7×10-5マイクログラム、約8×10-5マイクログラム、約9×10-5マイクログラム、約1×10-4マイクログラム、約2×10-4マイクログラム、約3×10-4マイクログラム、約4×10-4マイクログラム、約5×10-4マイクログラム、約6×10-4マイクログラム、約7×10-4マイクログラム、約8×10-4マイクログラム、約9×10-4マイクログラム、約1×10-3マイクログラム、約2×10-3マイクログラム、3×10-3マイクログラム、約4×10-3マイクログラム、約5×10-3マイクログラム、約6×10-3マイクログラム、約7×10-3マイクログラム、約8×10-3マイクログラム、約9×10-3マイクログラム、約0.01マイクログラム、約0.02マイクログラム、約0.03マイクログラム、約0.04マイクログラム、又は約0.05マイクログラム以上)の熱安定性核酸ポリメラーゼを含有するステップ;(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ;並びに(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、反応混合物は約1%~約70%(v/v)の全血、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、又は約70%(v/v)の全血を含有する。
【0133】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は、混合物1マイクロリットル当たり約0.01ユニット~約1ユニット(例えば、約0.01ユニット~約1ユニット、約0.01ユニット~約0.9ユニット、約0.01ユニット~約0.8ユニット、約0.01ユニット~約0.7ユニット、約0.01ユニット~約0.6ユニット、約0.01ユニット~約0.5ユニット、約0.01ユニット~約0.4ユニット、約0.01ユニット~約0.3ユニット、約0.01ユニット~約0.25ユニット、約0.01ユニット~約0.2ユニット、約0.01ユニット~約0.1ユニット、約0.02ユニット~約1ユニット、約0.02ユニット~約0.9ユニット、約0.02ユニット~約0.8ユニット、約0.02ユニット~約0.7ユニット、約0.02ユニット~約0.6ユニット、約0.02ユニット~約0.5ユニット、約0.02ユニット~約0.4ユニット、約0.02ユニット~約0.3ユニット、約0.02ユニット~約0.25ユニット、約0.02ユニット~約0.2ユニット、約0.02ユニット~約0.1ユニット、約0.04ユニット~約1ユニット、約0.04ユニット~約0.9ユニット、約0.04ユニット~約0.8ユニット、約0.04ユニット~約0.7ユニット、約0.04ユニット~約0.6ユニット、約0.04ユニット~約0.5ユニット、約0.04ユニット~約0.4ユニット、約0.04ユニット~約0.3ユニット、約0.04ユニット~約0.25ユニット、約0.04ユニット~約0.2ユニット、約0.04ユニット~約0.1ユニット、約0.06ユニット~約1ユニット、約0.06ユニット~約0.9ユニット、約0.06ユニット~約0.8ユニット、約0.06ユニット~約0.7ユニット、約0.06ユニット~約0.6ユニット、約0.06ユニット~約0.5ユニット、約0.06ユニット~約0.4ユニット、約0.06ユニット~約0.3ユニット、約0.06ユニット~約0.25ユニット、約0.06ユニット~約0.2ユニット、約0.06ユニット~約0.1ユニット、約0.08ユニット~約1ユニット、約0.08ユニット~約0.9ユニット、約0.08ユニット~約0.8ユニット、約0.08ユニット~約0.7ユニット、約0.08ユニット~約0.6ユニット、約0.08ユニット~約0.5ユニット、約0.08ユニット~約0.4ユニット、約0.08ユニット~約0.3ユニット、約0.08ユニット~約0.25ユニット、約0.08ユニット~約0.2ユニット、約0.08ユニット~約0.1ユニット、約0.1ユニット~約1ユニット、約0.1ユニット~約0.9ユニット、約0.1ユニット~約0.8ユニット、約0.1ユニット~約0.7ユニット、約0.1ユニット~約0.6ユニット、約0.1ユニット~約0.5ユニット、約0.1ユニット~約0.4ユニット、約0.1ユニット~約0.3ユニット、約0.1ユニット~約0.25ユニット、約0.1ユニット~約0.2ユニット、約0.2ユニット~約1ユニット、約0.2ユニット~約0.9ユニット、約0.2ユニット~約0.8ユニット、約0.2ユニット~約0.7ユニット、約0.2ユニット~約0.6ユニット、約0.2ユニット~約0.5ユニット、約0.2ユニット~約0.4ユニット、約0.2ユニット~約0.3ユニット、約0.2ユニット~約0.25ユニット、約0.3ユニット~約1ユニット、約0.3ユニット~約0.9ユニット、約0.3ユニット~約0.8ユニット、約0.3ユニット~約0.7ユニット、約0.3ユニット~約0.6ユニット、約0.3ユニット~約0.5ユニット、約0.3ユニット~約0.4ユニット、約0.4ユニット~約1ユニット、約0.4ユニット~約0.9ユニット、約0.4ユニット~約0.8ユニット、約0.4ユニット~約0.7ユニット、約0.4ユニット~約0.6ユニット、約0.4ユニット~約0.5ユニット、約0.5ユニット~約1ユニット、約0.5ユニット~約0.9ユニット、約0.5ユニット~約0.8ユニット、約0.5ユニット~約0.7ユニット、約0.5ユニット~約0.6ユニット、約0.6ユニット~約1ユニット、約0.6ユニット~約0.9ユニット、約0.6ユニット~約0.8ユニット、約0.6ユニット~約0.7ユニット、約0.6ユニット~約0.6ユニット、約0.7ユニット~約1ユニット、約0.7ユニット~約0.9ユニット、約0.7ユニット~約0.8ユニット、約0.8ユニット~約1ユニット、又は約0.8ユニット~約0.9ユニット)の範囲であってもよい。
【0134】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、混合物は、混合物1マイクロリットル当たり約1×10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム(例えば、約1x10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約1x10-5マイクログラム~約1x10-4マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約2x10-5マイクログラム~約1x10-4マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約2.4x10-5マイクログラム~約1x10-4マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約5x10-5マイクログラム~約1x10-4マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.05マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.025マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.005マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラム、約8x10-5マイクログラム~約1x10-4マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.005マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約1x10-4マイクログラム~約0.001マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.05マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.025マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.01マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.005マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.0025マイクログラム、約5x10-4マイクログラム~約0.001マイクログラム、約1x10-3マイクログラム~約0.05マイクログラム、約1x10-3マイクログラム~約0.025マイクログラム、約1x10-3マイクログラム~約0.01マイクログラム、約1x10-3マイクログラム~約0.0075マイクログラム、約1x10-3マイクログラム~約0.005マイクログラム、又は約1x10-3マイクログラム~約0.0025マイクログラム)の熱安定性核酸ポリメラーゼを含む。
【0135】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、混合物は約0.1μL~約250μL以上の範囲の容量、例えば、約1μL、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、約110μL、約120μL、約130μL、約140μL、約150μL、約160μL、約170μL、約180μL、約190μL、又は約200μL以上を有する。一部の実施形態では、混合物の容量は約100μLである。
【0136】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、室温(周囲温度)での適度にアルカリ性のpHは、約pH7.1~約pH11.5以上(例えば、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、約pH7.4、約pH7.5、約pH7.6、約pH7.7、約pH7.8、約pH7.9、約pH8.0、約pH8.1、約pH8.2、約pH8.3、約pH8.4、約pH8.5、約pH8.6、約pH8.7、約pH8.8、約pH8.9、約pH9.0、約pH9.1、約pH9.2、約pH9.3、約pH9.4、約pH9.5、約pH9.6、約pH9.7、約pH9.8、約pH9.9、約pH10.0、約pH10.1、約pH10.2、約pH10.3、約pH10.4、約pH10.5、約pH10.6、約pH10.7、約pH10.8、約pH10.9、約pH11、約pH11.1、約pH11.2、約pH11.3、約pH11.3、約pH11.4、又は約pH11.5以上)である。一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは、約pH7.1~約pH11.5、約pH7.1~約pH11.0、約pH7.1~約pH10.5、約pH7.1~約pH10.0、約pH7.1~約pH9.5、約pH7.1~約pH9.0、約pH7.1~約pH8.5、約pH7.1~約pH8、約pH7.1~約pH7.5、約pH7.5~約pH11.5、約pH7.5~約pH11.0、約pH7.5~約pH10.5、約pH7.5~約pH10.0、約pH7.5~約pH9.5、約pH7.5~約pH9.0、約pH7.5~約pH8.5、約pH7.5~約pH8.0、約pH8.0~約pH11.5、約pH8.0~約pH11.0、約pH8.0~約pH10.5、約pH8.0~約pH10.0、約pH8.0~約pH9.5、約pH8.0~約pH9.0、約pH8.0~約pH9.0、約pH8.0~約pH8.5、約pH8.5~約pH11.5、約pH8.5~約pH11.0、約pH8.5~約pH10.0、約pH8.5~約pH9.5、約pH8.5~約pH9.0、約pH9.0~約pH11.5、約pH9.0~約pH11.0、約pH9.0~約pH10.5、約pH9.0~約pH10.0、約pH9.0~約pH9.5、約pH9.5~約pH11.5、約pH9.5~約pH11.0、約pH9.5~約pH10.5、又は約pH9.5~約pH10.0である。一部の実施形態では、室温での適度にアルカリ性のpHは、約pH8.7である。一部の実施形態では、室温とは約25℃(例えば、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃)である。
【0137】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃でおよそ中性pH又は中性pHよりも高いままである。一部の実施形態では、緩衝液のpHは95℃で約pH6.5~約pH10(例えば、約pH6.5、約pH6.6、約pH6.7、約pH6.8、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、約pH7.4、約pH7.5、約pH7.6、約pH7.7、約pH7.8、約pH7.9、約pH8.0、約pH8.1、約pH8.2、約pH8.3、約pH8.4、約pH8.5、約pH8.6、約pH8.7、約pH8.8、約pH8.9、約pH9.0、約pH9.1、約pH9.2、約pH9.3、約pH9.4、約pH9.5、約pH9.6、約pH9.7、約pH9.8、約pH9.9、又は約pH10.0)である。例えば、一部の実施形態では、95℃での緩衝液のpHは約pH6.5~約pH10.0、約pH6.5~約pH9.5、約pH6.5~約pH9.0、約pH6.5~約pH8.5、約pH6.5~約pH8.0、約pH6.5~約pH7.5、約pH7.0~約pH10.0、約pH7.0~約pH9.5、約pH7.0~約pH9.0、約pH7.0~約pH8.5、約pH7.0~約pH8.0、約pH7.0~約pH7.5、約pH7.5~約pH10.0、約pH7.5~約pH9.5、約pH7.5~約pH9.0、約pH7.5~約pH8.5、約pH7.5~約pH8.0、約pH8.0~約pH10.0、約pH8.0~約pH9.5、約pH8.0~約pH9.0、約pH8.0~約pH8.5、約pH8.5~約pH10.0、約pH8.5~約pH9.5、約pH8.5~約pH9.0、約pH9.0~約pH10.0、又は約pH9.5~約pH10.0である。
【0138】
任意の好適な緩衝剤が本発明の方法において使用されうる。例えば、一部の実施形態では、約7.0~約9.2(例えば、約7.0~約7.6;約7.6~約8.2;又は約8.2~約9.2)の範囲のpKaを有する任意の緩衝液を使用してもよい。約7.0~約7.6の範囲のpKaを有する例示的な緩衝剤は、以下に限定されないが、MOPS、BES、リン酸、TES、HEPES及びDIPSOを含む。約7.6~約8.2の範囲のpKaを有する例示的な緩衝剤は、以下に限定されないが、TAPSO、TEA、n-エチルモルフォリン、POPSO、EPPS、HEPPSO、トリス及びトリシンを含む。約8.2~約9.2の範囲のpKaを有する例示的な緩衝剤は、以下に限定されないが、グリシルグリシン、ビシン、TAPS、モルフォリン、n-メチルジエタノールアミン、AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、ジエタノールアミン及びAMPSOを含む。一部の実施形態では、9.2よりも大きなpKaを有する緩衝剤を使用してもよい。9.2よりも大きなpKaを有する例示的な緩衝剤は、以下に限定されないが、ホウ酸、CHES、グリシン、CAPSO、エタノールアミン、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、ピペラジン、CAPS、1,3-ジアミノプロパン、CABS及びピペラジンを含む。
【0139】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼは熱安定性DNAポリメラーゼである。任意の好適な熱安定性DNAポリメラーゼ、例えば、市販の熱安定性DNAポリメラーゼ、又は本明細書に記載の及び/又は当技術分野で公知の任意の熱安定性DNAポリメラーゼを本発明の方法において使用してもよい。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは、野生型熱安定性DNAポリメラーゼ、例えば、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第4,889,818号を参照されたい)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第5,192,674号;第5,242,818号;及び5,413,926号を参照されたい)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラブス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、テルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第5,332,785号を参照されたい)、テルモトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種spsl 7(現称サーマス・オシマイ(Thermus oshimai))由来Tsp sps17 DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第5,405,774号を参照されたい)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第5,747,298号を参照されたい)、古細菌ポリメラーゼ(例えば、超好熱性古細菌ピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)由来熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、Pfu;例えば、米国特許第5,948,663号を参照されたい)、ピュロコックス属(Pyrococcus)種KOD1由来KOD DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第6,033,859号を参照されたい)、テルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(例えば、VENTR(登録商標)(NEB))、及び9°N(商標)(NEB))、又はDNAポリメラーゼ活性を有するそれらの変異体、派生体若しくは断片(例えば、参照熱安定性DNAポリメラーゼ配列と比較して点変異を含む変異型DNAポリメラーゼ、例えば、Taq A271 F667Y、Tth A273 F668Y、及びTaq A271 F667Y E681W;トランケーション変異体、例えば、KlenTAQ(登録商標)、最初の280アミノ酸を有しないTaqのN末端欠失バリアント;並びにトランケーション及び点変異を含む変異体、例えば、Hemo KlenTaq(登録商標)、全血中の阻害因子に対して抵抗性を与える3つの内部の点変異を含有する最初の280アミノ酸を有しないTaqのN末端欠失バリアント)である。例えば、好適なDNAポリメラーゼは、以下に限定されないが、Taq、Hemo KlenTaq(登録商標)、Hawk Z05、APTATAQ(商標)、Pfu及びVENTR(登録商標)を含む。
【0140】
一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは変異型熱安定性DNAポリメラーゼである。一部の実施形態では、変異型熱安定性DNAポリメラーゼは表2に列挙される。一部の実施形態では、変異型熱安定性DNAポリメラーゼは、Klentaq(登録商標)1、Klentaq(登録商標)LA、Cesium Klentaq(登録商標)AC、Cesium Klentaq(登録商標)AC LA、Cesium Klentaq(登録商標)C、Cesium Klentaq(登録商標)C LA、Omni Klentaq(登録商標)、Omni Klentaq(登録商標)2、Omni Klentaq(登録商標)LA、Omni Taq、OmniTaq LA、Omni Taq 2、Omni Taq 3、Hemo KlenTaq(登録商標)、KAPA Blood DNA polymerase、KAPA3G Plant DNA polymerase、KAPA 3G Robust DNA polymerase、MyTaq(商標)Blood、及びPHUSION(登録商標)Blood II DNA polymeraseからなる群より選択される。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼはホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、APTATAQ(商標)、Hawk Z05、又はPHUSION(登録商標)Blood II DNA polymerase)である。
【0141】
一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ)は、通常の反応条件下で対象由来の細胞又は細胞破砕物の存在によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ)は、通常の反応条件下で全血によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ)は、通常の反応条件下で1%(v/v)の全血によって阻害される。一部の実施形態では、熱安定性核酸ポリメラーゼ(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ)は、通常の反応条件下で8%(v/v)の全血によって阻害される。一部の実施形態では、通常の反応条件は、熱安定性DNAポリメラーゼの製造者によって推奨される反応条件、又は当技術分野で一般に使用される反応条件である。
【0142】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、方法は、マルチプレックス化PCR反応において1以上の付加的な標的核酸を増幅して1以上の付加的な単位複製配列を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、マルチプレックス化PCR反応は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12以上の標的核酸を増幅する。
【0143】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、単位複製配列は、少なくとも1μgの対象DNA、例えば、少なくとも1μgの対象DNA、少なくとも5μgの対象DNA、少なくとも10μgの対象DNA、少なくとも15μgの対象DNA、少なくとも20μgの対象DNA、少なくとも25μgの対象DNA、少なくとも30μgの対象DNA、少なくとも35μgの対象DNA、少なくとも40μgの対象DNA、少なくとも45μgの対象DNA、少なくとも50μgの対象DNA、少なくとも55μgの対象DNA、又は少なくとも60μgの対象DNAの存在下で生成される。
【0144】
先行する方法のいずれかの一部の実施形態では、方法の結果として、少なくとも105コピーの単位複製配列、例えば、少なくとも106コピー、少なくとも107コピー、少なくとも108コピー、少なくとも109コピー、少なくとも1010コピー、少なくとも1011コピー、少なくとも1012コピー、少なくとも1013コピー、又は少なくとも1014コピーの単位複製配列が生成される。例えば、一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも108コピーの単位複製配列が生成される。一部の実施形態では、方法の結果として少なくとも109コピーの単位複製配列が生成される。
【0145】
汚染の管理
解析ツールとしてのPCRなどの増幅方法の使用における、潜在的な1つの問題は、古い増幅産物で汚染された新たな反応物を有する危険性である。潜在的な汚染源は、a)交差汚染を結果としてもたらしうる、臨床検体中の多数の標的生物、b)既に解析された生物に由来し、検査室環境内に多数で存在しうるプラスミドクローン、及びc)検査室環境内の増幅産物の蓄積をもたらす、同じ標的配列の増幅の反復を含む。PCRの単位複製配列の一般的な蓄積源は、産物のエアゾール化である。典型的に、制御不能のエアゾール化が生じれば、単位複製配列は、検査室の試薬、器具、及び換気システムを汚染するであろう。これが生じると、全ての反応物は、陽性となり、汚染試料又は真の陽性試料からの増幅産物を識別することはできない。古い産物のこのキャリーオーバーを回避又は制御するように注意を払うことに加えて、好ましい実施形態は、キャリーオーバーについて点検するように、あらゆるPCR実験において、ブランクの基準反応物を含む。例えば、キャリーオーバー汚染は、とりわけ、TaqMan(登録商標)プローブ、MolBeacons、又は挿入染料を、検出機構として利用する場合、アガロースゲル上で、弱いバンド又は蛍光信号として目視可能となるであろう。さらに、陽性試料を組み入れることが好ましい。例として述べると、一部の実施形態では、WO2012/054639において記載されている手法及び方法のうちのいずれかを使用して、汚染の管理を実施する。一部の実施形態では、例えば、本発明の方法を実施するのに使用される、T2Dx(登録商標)デバイスの反応チューブ内で、漂白溶液を使用して、潜在的な単位複製配列を中和する。一部の実施形態では、汚染の管理は、例えば、カートリッジ構成要素のエチレンオキシド(EtO)処理の使用を含む。
【0146】
典型的に、計装、及び増幅を経る試料の処理領域は、増幅前帯域及び増幅後帯域へと分けられる。これは、増幅の前における、単位複製配列による試料の汚染の可能性を最小化する。例えば、T2Dx(登録商標)装置のデザインは、増幅前の計装及び処理領域、並びに増幅後の計装及び処理領域を、単一の装置へと統合するようなデザインである。これは、下記の節で記載される通りに可能とされる。
【0147】
システム
本発明は、本発明の方法を実行するシステムであって、WO2012/054639に記載されている通り、1つ以上のNMRユニット、MAAユニット、カートリッジユニット、及び撹拌ユニットを含みうるシステムを提供する。このようなシステムは、本発明の自動アッセイを実行するのに、他の構成要素、例えば、オリゴヌクレオチドを増幅するサーモサイクリングユニット、遠心分離機、液体試料をシステム内のユニットからユニットへと送達するロボットアーム、1つ以上のインキュベーションユニット、アッセイ試薬及び生物学的試料(例えば、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料)を組み合わせて液体試料を形成する流体導入ユニット(すなわち、ピペッティングデバイス)、データを保存し、データを処理し、1つ以上のあらかじめ設定されたプロトコールに従い、多様なユニットの作動化及び脱作動化を制御する、プログラム可能なプロセッサーを伴うコンピュータ、並びにあらかじめ充填されたカートリッジをシステムへと送達するカートリッジ挿入システムであって、任意選択で、試薬を同定するコンピュータへの命令、及びカートリッジと共に使用されるプロトコールを伴うカートリッジ挿入システムをさらに含みうる。WO2012/054639の図42は、本発明の例示的なシステムについて描示する。
【0148】
本発明のシステムは、対象に由来する体液中に存在する解析物をハイスループット且つリアルタイムで検出するのに有効な手段をもたらしうる。検出法は、具体的な生物学的過程、生理学的状態、障害、又は障害の病期と関連する解析物の同定及び/又は定量化を含むがこれらに限定されない、多種多様な状況下で使用することができる。したがって、システムは、例えば、疾患の診断、親の同定及び法医学的同定、疾患の発症及び再発、処置に対する、集団ベースと対比した、個々の応答、並びに治療のモニタリングにおける、広範なスペクトルの有用性を有する。デバイス及びシステムは、個別化医療に向けた、柔軟なシステムをもたらしうる。本発明のシステムは、本明細書で記載される多種多様なアッセイを実施するシステムのプログラム可能なプロセッサーへの、プロトコール又は命令と共に、変化させるか、又は相互交換することができる。本発明のシステムは、デスクトップ又はより小型サイズの自動装置に含有される検査室環境の多くの利点をもたらす。
【0149】
本発明のシステムは、同じ液体試料中に、広範な濃度範囲にわたり存在する解析物について、同時にアッセイするのに使用することもでき、単一の対象における、解析物の濃度及び/又はPD若しくはPKのマーカーの濃度の、ある期間にわたる変化率をモニタリングするのに使用することもでき、PD若しくはPKのマーカーの濃度について、それらが、薬物の濃度であろうと、それらの代謝物の濃度であろうと、傾向解析を実施するのに使用することもできる。したがって、対象の流体デバイス及びシステムを使用して生成されるデータは、対象における解析物の濃度についての傾向解析を実施するのに用いることができる。
【0150】
例えば、対象(例えば、微生物病原体により引き起こされるか、又はこれと関連する疾患を有するか、又はこれを有することが疑われる患者)に、様々な解析物、例えば、異なる組織から、所定の時点においてサンプリングされた解析物を検出するのに使用される、複数のカートリッジユニットを用意することができる。対象は、例えば、週の異なる日において、異なるカートリッジユニットを使用しうる。一部の実施形態では、カートリッジ上の識別子を認識し、システムコンピュータに、アッセイを行い、且つ/又はデータを処理する、特定のプロトコールを実行することを命令するように、システム上のソフトウェアをデザインする。システム上のプロトコールは、外部のインターフェース、例えば、USBドライブ若しくはイーサネット(登録商標)接続を介してアップデートすることもでき、一部の実施形態では、全プロトコールを、カートリッジへと添付されたバーコード内に記録することもできる。プロトコールは、必要に応じて、使用者に指示することにより、多様な入力について(すなわち、試料の希釈率、液体試料へともたらされる試薬の量の変化、インキュベーション時間若しくはMAA時間の変更、又はNMR緩和の収集パラメータの変更について)最適化することができる。
【0151】
マルチプレックス化アッセイは、様々なシステムデザインを使用して実施することができる。例えば、マルチプレックス化アッセイは、以下の構成のうちのいずれかを使用して実施することができる。
(i)空間ベースの検出アレイを使用して、磁性粒子を、チューブの特定の領域へと方向付け(すなわち、凝集を伴わずに)、検出される特定の解析物に従い、粒子を異なる場所に固定化することができる。固定化された粒子は、固定化部位における緩和効果に対する、それらの局所的効果をモニタリングすることにより検出される。粒子は、流動内の重力分離(すなわち、大型の粒子ほど、重力に対して垂直で緩徐な流動に沿って迅速に沈殿して、異なる標的で標識された異なる磁性粒子サイズ集団について、粒子サイズに基づく空間的分離をもたらす)により空間的に分離することができる。代替的に、捕捉プローブを使用して、磁性粒子を、チューブの特定の領域に(すなわち、凝集を伴わずに)配置し、粒子を異なる場所(すなわち、官能化表面、フォーム、又はゲル上)に固定化することができる。任意選択で、アレイは、各コイルを、適切な粒子をその中に固定化した個別の検出器とする、複数のコイル及び磁石を伴うフロースルーシステムであり、解析物の存在下で、クラスター形成により信号の変化が生じて、解析物の存在を検出する。任意選択で、粒子を空間的に分離したら、コイルを試料にわたりスライドさせて、今や空間的に分離された粒子を読み取ることにより、マルチプレックス化アッセイ中の各個々の解析物を検出することができる。
(ii)試料を、多くの分枝間に物理的に分割し、各分枝内で、個別の信号を検出し、各分枝を、マルチプレックス化アッセイ中の個別の解析物を検出するように構成したマイクロ流体チューブ。
(iii)各ウェルが、それ自体のコイル及び磁石を有し、各ウェルを、マルチプレックス化アッセイ中の個別の解析物を検出するように構成した、96ウェルの(又はこれ未満若しくはこれを超える)アレイ。
(iv)1つの磁石の内側、又は複数のミニ磁石の内側に、複数の独立にアドレス可能なコイルを伴う、シッパー又はフロースルーデバイスであって、各読取りを、マルチプレックス化アッセイ中の個別の解析物を検出する個別の反応とする、逐次的な読取りに使用しうるデバイス。
(v)1つの磁石の内側、又は複数のミニ磁石の内側に、プレート上の、複数の独立にアドレス可能なウェルを伴う、シッパー又はフロースルーデバイスであって、各読取りを、マルチプレックス化アッセイ中の個別の解析物を検出する個別の反応とする、プレートを横断させうる片面コイルを使用する、逐次的な読取りに使用しうるデバイス。
(vi)同時に読み取られ、結果として、1つの緩和曲線をもたらし、次いで、これは双指数関数への当てはめを使用して当てはめられ、マルチプレックス化アレイについての個別の読取りをもたらす、2つのコンパートメントを含有するチューブ。
(vii)液体の各液滴が、個々に移動させられて、マルチプレックス化アレイについての読取りをもたらす、マイクロ流体システム。
(viii)磁性による分離及び再懸濁を使用する逐次的測定は、新規結合プローブ、又はそれらをオン及びオフにする能力を要求する。この方法であれば、オン/オフ機構の大半が、融解温度(高温では、ヘアピンループが弛緩し、二重鎖結合に変性が生じる)に基づき、ハイブリダイゼーションが異なる温度で生じるので、核酸解析物に使用されるであろう。 (ix)各々がそれらの中に乾燥粒子を装備した個々のキャピラリーは、1つの小アリコートの少容量の迅速なマルチプレックス化を可能とする。乾燥粒子を空間的に分離し、この空間的分離により、MR Readerが、各キャピラリーチューブを、独立に読み取ることを可能とする。
(x)ナノ粒子へとコンジュゲートさせた結合性部分を、領域及び解析物特異的粘性溶液を形成する、ゲル又は他の粘性材料中に入れる。試料をゲルと相互作用させた後、標的解析物は、ゲル中をたやすく拡散し、ゲル又は粘性溶液により保持されたナノ粒子上のコンジュゲート部分に特異的に結合しうるため、ゲル又は粘性溶液は、出発試料中の1つを超える解析物の空間的分離を増強する。任意選択で、記載される磁性支援型アグロメレーション法のうちの1つを介して増強された、特異的解析物のクラスター形成又は凝集、及び解析物特異的クラスターの検出は、特異的場所についてのNMRリーダーを使用することにより実施することができる。このようにして、ナノ粒子の空間的アレイを、例えば、2dアレイとしてデザインすることができる。
(xi)磁性粒子は、チューブ内の複数の場所へと、スポッティングし、乾燥させることができ、次いで、各場所を個別に測定することができる。例えば、1つの種類の粒子を表面へと結合させ、第2の粒子を溶液中に懸濁させると、これらのいずれもが、検出される解析物とハイブリダイズする。クラスターは、ハイブリダイゼーション反応が生じる表面であって、各表面が個別に検出可能な表面において形成されうる。
(xii)各々が、標的核酸のアレイの第1の部分とハイブリダイズするように構成された、核酸のスポッティングアレイを試料チューブ内で創出することができる。磁性粒子は、標的核酸の第2の部分とハイブリダイズするプローブと共にデザインすることができる。各場所は、個別に測定することができる。代替的に、任意の包括的ビーコン又は検出法を使用して、核酸アレイからの出力をもたらすこともできるであろう。
(xiii)標的のアレイを検出する、磁性粒子のアレイを、各々が、凝集物の形成を伴う、異なるNMR緩和シグネチャーをもたらすように構成された(例えば、サイズ又は緩和特性により)、単一の試料中に組み入れることができる。例えば、粒子の各々は、顕著に異なるT2緩和時間をもたらす(例えば、粒子の1つのセットは、10~200ミリ秒を対象とし、第2のセットは、250~500ミリ秒を対象とし、第3のセットは、550~1100ミリ秒を対象とするなど)ように選択することができる。各々を、緩和率の個別のバンドとして測定することができる。
(xiv)多様なサイズの解析物若しくは磁性粒子、又は多様なサイズの凝集物を検出するのに、複数の解析物及び磁性粒子を伴う単一の試料は、磁界又は電界の存在下における分離(すなわち、解析物でコーティングされた磁性粒子の電気泳動による分離)を経、これにより、個別の磁性粒子及び/又は凝集物は、異なる時点において、検出器の部位に到達する。
(xv)検出チューブは、各々が検出用の異なるナノ粒子を含有する、2つ(以上)のチャンバーへと分けられうるであろう。チューブは、リーダーを使用して読み取ることができ、複数の指数関数曲線、例えば、A*exp(T2_1)+B*exp(T2_2)への当てはめを介して、定数であるA及びB、並びにT2_1及びT2_2の相対的サイズを参照することにより、各解析物の応答を決定することができるであろう。
(xvi)勾配磁界をシミングして、狭小な磁界を形成することができる。特異的場内のシムパルス又は他のRFベースのシミングを実施して、特異的領域内でパルスを発し、信号を受信することができる。このようにして、シム内のRFパルスの層別化を想定することができ、特異的シムから特異的共鳴信号を受信しうるであろう。この方法は、勾配磁界のシミングに依拠するが、この場合、マルチプレックス化は、記載される他の方法のうちの1つに依拠して、これらの異なるシム内に存在する、異なるナノ粒子及びクラスターを得ることを含むであろう。したがって、磁界シムによりもたらされる1つの次元、及びナノ粒子の、1つを超える解析物への結合を変動させることによりもたらされる第2の次元の、2つの次元が存在するであろう。解析物を伴うクラスター形成時における、2つの異なるNMR緩和信号を有するナノ粒子を、マルチプレックス化アッセイにおいて利用することができる。この方法では、小型の粒子(30~200nm)が、クラスター形成によるT2の低下を引き起こすのに対し、大型の粒子(>800nm)は、クラスター形成によるT2の増大を引き起こすことが観察される。反応アッセイは、標的の添加により、標的が平衡緩和信号を変化させるような、競合的反応としてデザインする。例えば、T2緩和時間が、短縮されれば、小型の粒子を伴う解析物のクラスターが形成される。他方、T2緩和が延長されれば、大型の粒子を伴う解析物のクラスターが形成される。おそらく、添加剤、例えば、トレハロース又はグルコース又はグリセロールにより、溶液の密度/粘性を変化させて、大型の粒子が溶液中に確実にとどまるようにすることが有用である。クラスター形成時に、そのT2信号が低下する特異的解析物に対する結合性部分を有する1つのナノ粒子を、クラスター形成時に、そのT2信号が増大する、第2の解析物に対する、第2の結合性部分を有する、第2のナノ粒子と組み合わせることができる。試料が、両方の解析物を有することが疑われ、クラスター形成反応が互いに相殺し合う可能性がある(クラスター形成の増大が、クラスター形成の低下を相殺する)場合は、解析の秩序化、すなわち、競合的結合剤を添加して、競合的結合を、したがって、試料中の目的の解析物の有無と関連するT2信号を検出することを想定しうるであろう。代替的に、このマルチプレックス化フォーマットにおいて、クラスター形成の増大が、クラスター形成の低下を相殺する場合は、試料中の解析物の有無又は濃度を同定するのに、異なる緩和パルス列又は緩和決定因子の使用を想定しうるであろう。
(xvii)粒子の沈殿測定。この方法では、粒子サイズが、解析物と結合した粒子が、溶液中で懸濁状態のままであるのに十分に小型となるように、核酸の異なる標的配列を捕捉するようにデザインされた複数種類の粒子をデザインする。粒子の第2のセット(必ずしも磁性特性を有さない大型の粒子)へとコンジュゲートさせた核酸配列と相補的であり、捕捉された標的DNA配列と相補的な配列を含有する「誘発」配列の逐次的添加を行う。ハイブリダイゼーションの後、標的DNA配列が存在する、例えば、プローブとコンジュゲートさせた磁性ナノ粒子が、標的解析物上の1つの特異的配列とアニールし、他の粒子が、標的核酸配列上の別の配列に結合すれば、クラスターが形成されるであろう。これらのクラスターは、沈殿するのに十分に大きいであろう(このステップは、遠心分離ステップを要求しうる)。同じ反応において、同時に、さらなる磁性粒子である、第2の核酸配列とアニールする第2の粒子セットであって、磁性ナノ粒子-解析物-第2の粒子クラスターの形成が沈殿しない、第2の粒子セットをデザインしうるであろう。このようにして、粒子の逐次的添加は、示差的信号伝達を結果としてもたらしうる。
(xvii)1つの可能な異なる検出法は、コンジュゲートナノ粒子-解析物間相互作用に最適化された、異なるRFコイルパルス列から発生する、位相分離信号を含む。これは、異なるRFパルス及び緩和信号の検出をマッピング及び差別化して、1つを超える解析物の有無を確認する能力を最適化する、アレイ内の複数のコイルにより達成しうることが最適である。マルチプレックス化はまた、ナノ粒子-解析物クラスター形成反応の固有の特徴、及びその後における試料中の水溶媒の検出、クラスターが、多様な「ポケット」を形成し、これらの協同的クラスターが、多様な多孔性を有する能力も利用しうる。例えば、多様な長さ又はコンフォメーション構造を有するリンカーを利用して、結合性部分を磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせることができる。このようにして、解析物の存在下で形成される、1つを超える種類のクラスターであって、ナノ粒子-解析物-ナノ粒子凝集物の形成を介して、溶媒水の異なる流動、したがって、緩和信号の差異をもたらす能力を有するクラスターをデザインしうるであろう。次いで、このようにして、2つ以上のリンカー/結合性部分をデザインすれば、同じ試料中の1つを超える解析物の検出が可能となるであろう。
(xviii)本発明の方法は、エマルジョン中の粒子を捕捉するフッ素化油性/水性混合物を含みうる。このデザインでは、1つの疎水性捕捉粒子セット及び水性捕捉セットを使用し、疎水性捕捉粒子セットを、疎水性環境下で、よりたやすく結合及び凝集するようにデザインするのに対し、水性捕捉粒子セットは、水性環境下で結合及び凝集するようにデザインする。次いで、疎水性又は水性粒子に結合する特異的解析物を有する解析物含有試料の導入、並びに、その後における、疎水性及び水性溶媒の両方を有する検出チューブ内の混合、結合、及びクラスター形成は、解析物の、水性又は疎水性相への物理的分離を結果としてもたらすであろう。緩和信号は、いずれかの溶液相中において検出しうるであろう。このようにしてデザインされた解析物及びナノ粒子が、疎水性/水性相を混合することにより創出されるエマルジョン中に、物理的に見出される場合、緩和曲線は、エマルジョン相中で識別可能であろう。検出チューブは、カプセルをMR検出器中で動かして、信号を読み取る能力を増強する、カプセル型デザインを有しうる。さらに、プローブの同一性を読み取る蛍光タグの使用を利用することができる、すなわち、同じ水性又は疎水性相中の2つの異なる解析物の場合、蛍光タグの添加は、解析物の識別の決定の一助となり得る。この方法は、記載される共鳴信号が、試料の質に依存しないため、試料中の他の材料からの標的解析物の単離又は精製が限定的な試料中では適する。さらに、これらのタグは、緩和測定に決して干渉しないため、蛍光タグは、典型的な蛍光の研究において通例添加されるより、はるかに高濃度で添加することができる。この方法では、特異的制限エンドヌクレアーゼ部位が、アニール区画内に位置するように、磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせたオリゴヌクレオチド捕捉プローブをデザインする。次いで、ナノ粒子-解析物クラスターを形成する試料とのハイブリダイゼーションの後、次いで緩和測定により基礎信号をもたらす。特異的制限エンドヌクレアーゼの検出チューブへの導入、及びインキュベーションは、制限消化が生じた後における、ナノ粒子/解析物クラスターの特異的低減を結果としてもたらすであろう。後続する緩和測定、信号パターン、及び制限酵素消化の後、標的を推定することができる。
(xix)組合せ法では、磁性ナノ粒子を、2つの個別の異なる結合性部分、すなわち、オリゴヌクレオチド及び抗体とコンジュゲートさせる。このナノ粒子は、その試料中に両方の種類の解析物を有する試料と共にインキュベートすると、ナノ粒子-解析物複合体を形成し、ベースラインのT2緩和信号が検出可能となるであろう。その後、既知の濃度の解析物のうちの1つの添加を添加して、試料に由来するこの特異的解析物により形成されるクラスター形成を低減することができる。既知の解析物を添加した後、後続のT2緩和信号を検出し、試料解析物の有無を推測することができる。さらに、試料中の解析物と競合して、クラスターを形成するように、第2の解析物を添加することができる。ここでもまた、後続のT2緩和信号の検出後、第2の試料解析物の有無を推測することができる。これを反復することができる。
【0152】
大まかに述べれば、本発明の方法を利用するマルチプレックス化アッセイは、試料に由来する解析物と共にクラスターを発生させる、1つの非超常磁性ナノ粒子の使用が、アッセイ検出容器内の全体的なFe2+を低減し、ダイナミックレンジを拡張して、複数の反応を、同じ検出容器内で測定しうるようにデザインすることができる。
【0153】
核酸検出のマルチプレックス化は、コンジュゲートさせた磁性ナノ粒子及び標的核酸解析物の、異なるハイブリダイゼーションの質を使用することができる。例えば、磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせた捕捉プローブは、磁性ナノ粒子の、標的核酸配列とのアニーリングが、1つを超える核酸標的配列について異なるようにデザインすることができる。これらの異なるプローブ-標的配列のデザインの因子は、G-C含量(ハイブリッド体を形成する時間)、様々な塩濃度、ハイブリダイゼーション温度、及び/又はこれらの因子の組合せを含む。次いで、この方法は、多様な核酸をコンジュゲートさせた磁性ナノ粒子が、1つを超える標的核酸解析物を有することが疑われる試料と相互作用することを可能とするステップを伴うであろう。多様な処置、すなわち、加熱、塩の添加、ハイブリダイゼーションのタイミングの後で検出される緩和時間は、疑われるどの核酸配列が、試料中に存在するのか、非存在であるのかを推測することを可能とするであろう。
【0154】
相補的な単位複製配列を使用して、1つの反応を遮断し、連続的なハイブリダイゼーションを可能とする。この方法では、ユニバーサルの増幅プライマーを使用して、出発試料中の1つを超える特異的核酸配列を増幅し、単位複製配列のプールを形成する。磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせた特異的オリゴヌクレオチドを試料へと添加し、緩和の測定を行う。次いで、試料を、オリゴヌクレオチド-解析物相互作用を融解させる温度へと曝露し、磁性ナノ粒子へと接合させていないオリゴヌクレオチドを添加して、磁性ナノ粒子に結合する任意の解析物を遠ざけるように競合させる。次いで、第2のオリゴヌクレオチドをコンジュゲートさせた第2の磁性ナノ粒子を添加して、第2の特異的標的核酸解析物によるクラスターを形成する。代替的に、方法は、第2の磁性ナノ粒子を添加する前に、第1の磁性ナノ粒子を反応容器から有効に隔離するステップ、すなわち、反応容器を磁界へと曝露して、粒子を、第2又は後続の反応に利用可能とならない領域へと移動させるステップを有しうるであろう。
【0155】
上記のマルチプレックス化法の各々は、試料を凍結させて、拡散及びクラスター形成時間を緩徐化させ、これにより、緩和時間の測定値を変更するステップを利用しうる。方法の拡散及びクラスター形成の緩徐化は、1つを超える緩和時間を分離及び検出する能力を増強しうる。上記のマルチプレックス化法の各々は、コンジュゲートさせたナノ粒子の逐次的添加に続く、各添加の後における緩和の検出を使用しうる。各逐次的添加の後で、その後における緩和のベースラインが、最後の添加からの新たなベースラインとなり、緩和時間を、試料中の解析物の有無又は解析物の濃度と相関させる一助とするのに使用することができる。
【0156】
一部の実施形態では、マルチプレックス化法は、捕捉プローブの隠蔽を伴いうる。このマルチプレックス化法では、磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせたオリゴヌクレオチドを、粒子の表面上の二次構造又は相補的なプローブが、当初、反応容器内のハイブリダイゼーションに対して、配列を隠蔽するか、又は覆うようにデザインする。次いで、これらの隠蔽されたハイブリダイゼーション配列を、アッセイ中に、試料容器内で、空間的又は時間的に曝露するか、又は露出させる。例えば、上述の通り、ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズするのに、塩、温度、及び時間の影響を受けうる。したがって、この方法の一形態では、磁性ナノ粒子へとコンジュゲートさせたオリゴヌクレオチドプローブ上の二次又は相補的構造を低減するか、又は弛緩させて、次いで標的の核酸試料とハイブリダイズするように、配列を曝露するか、又は露出させることができる。さらに、化合物、例えば、DMSOを使用して、二次構造を低減するか、又は弛緩させうるであろう。オリゴヌクレオチドをコンジュゲートさせたナノ粒子の、標的解析物とのハイブリダイゼーションのために、配列を選択的に露出させるか、又は曝露する別の方法は、制限エンドヌクレアーゼ部位を有するステムループ構造をデザインすることであり、その後における、制限エンドヌクレアーゼによる消化は、ステムループ構造を弛緩させ、ハイブリダイゼーションが生じることを可能とするであろう。代替的に、ステムループ構造の化学的切断、一方の端部の放出は、配列を遊離させ、次いで、標的核酸配列とハイブリダイズさせうるであろう。
【0157】
標的核酸を検出するように、マルチプレックス化アレイを構成する場合、アッセイは、異なる単位複製配列を生成させ、次いで、異なる反応物を逐次的に検出するようにマルチプレックス化PCRを含みうる。
【0158】
マルチプレックス化アッセイは、任意選択で、二分検索により標的を準備して、要求されるアッセイの数を低減する論理的アレイを含む(例えば、グラム陽性又は陰性は、一方の群又は他方の群だけについて行われる、異なる種ベースの検査をもたらす)。
【0159】
本発明のシステムは、体液試料から検出される解析物に関わらず、様々なアッセイを行いうる。使用されるカートリッジユニットの識別に依存するプロトコールは、システムコンピュータ上に保存することができる。一部の実施形態では、カートリッジユニットは、システムコンピュータにより検出されるか、若しくは読み取られる識別子(ID)、又はカード上のバーコード(1D又は2D)を有し、次いで、これは、アッセイに特異的であるか、又は患者若しくは対象に特異的な情報であって、解析情報と共に追跡又はアクセスされる必要がある情報(例えば、検量線、プロトコール、過去の解析物の濃度又はレベル)をもたらす。所望の場合、カートリッジユニットの識別子を使用して、システムコンピュータ上に保存されたプロトコールを選択するか、又はカートリッジユニット内の多様なアッセイ試薬の場所を同定する。システム上で実行されるプロトコールは、行われる特定のアッセイ、及び実施される検出法を含むがこれらに限定されない、プロトコールを実施するシステムのコントローラーへの命令を含みうる。システムによりアッセイを実施したら、生物学的試料中(例えば、全血、粗全血溶解物、血清又は血漿)の解析物を示すデータを生成し、通信アセンブリーへと送信し、ここで、データを、限定なしに述べると、試料中の解析物濃度の計算を含む処理用の外部デバイスへと転送することもでき、システムコンピュータにより処理し、結果を、ディスプレイのリードアウトに提示することもできる。
【0160】
例えば、識別子は、カートリッジユニットを挿入すると、バーコードリーダー(又は別の種類の検出器)により読み取られうる、一連の黒白線によるバーコード識別子でありうる。他の識別子、例えば、カートリッジユニット上に配置することができ、システムコンピュータにより検出されるか、又は読み取られうる、一連の英数字値、色、隆起、RFID、又は任意の他の識別子を使用することができる。検出器はまた、光を反映し、特定のカートリッジユニットの同一性を決定するように、システムコンピュータにより測定される識別子と相互作用しうる光を発するLEDでもありうる。一部の実施形態では、システムは、カートリッジユニット、又は情報をシステムコンピュータへと転送する検出器と共に、保存又は記憶デバイスを含む。
【0161】
したがって、本発明のシステムは、異なるアッセイを実行する作動プログラム、及び(i)作動プログラムへと、あらかじめプログラムされた、どのアッセイを利用していたかについて報告するか、(ii)作動プログラムへと、カートリッジの構成を報告するか、(iii)作動システムに、アッセイを実行するステップの順序を通知するか、(iv)システムに、あらかじめプログラムされた、どのルーチンを利用するかを通知するか、(v)ある特定のアッセイ変数に関して、使用者からの入力を指示するか、(vi)患者識別番号(患者識別番号はまた、血液試料を保有するVACUTAINER(登録商標)上にも含有されうる)を記録するか、(vii)ある特定のカートリッジ情報(例えば、ロット番号、較正データ、カートリッジ上のアッセイ、解析データ範囲、有効期限、保存要件、許容可能な試料詳細)を記録するか、又は(viii)作動プログラムへと、アッセイのアップグレード若しくは改訂(すなわち、アッセイの新たなバージョンが、カートリッジアップグレードだけで生じ、より大規模で、より高価なシステムには至らないようなアップグレード又は改訂)について報告するようにコードされたカートリッジを含みうる。
【0162】
本発明のシステムは、ロボットアームに接着するように構成された、1つ以上の流体導入ユニット(例えば、WO2012/054639の図43A~43Cを参照されたい)を含みうる。流体導入ユニットは、ピペット、例えば、空気置換、液戻り、又はシリンジピペットでありうる。例えば、流体導入ユニットは、システムコンピュータのプログラム可能なプロセッサーと連絡したモーターをさらに含むことが可能であり、モーターは、プログラム可能なプロセッサーからのプロトコールに基づき、複数のヘッドを動かしうる。したがって、システムのプログラム可能なプロセッサーは、命令又はコマンドを含むことが可能であり、閉空間からピストンを引き抜く(液体を引き入れるのに)か、又は閉空間へとピストンを押し入れる(液体を押し出すのに)ことにより、液体試料を導入する命令に従い、流体導入ユニットを作動させうる。動かす空気の容量及び動かす速度の両方は、例えば、プログラム可能なプロセッサーにより、正確に制御することができる。試料(又は試薬)の、希釈液(又は他の試薬)との混合は、混合される成分を共通のチューブへと吸引し、次いで、組み合わされた液体容量の著明な画分を、往復するように繰り返しチップ中に吸引することにより達成することができる。乾燥させた試薬の、チューブへの溶解も、同様の形で行うことができる。
【0163】
システムは、液体試料を加熱し、且つ/又はアッセイ温度を制御する、1つ以上のインキュベーションユニットを含みうる。アッセイ反応のインキュベーションステップにおいて、熱を使用して、反応を促進し、インキュベーションステップに必要な持続時間を短縮することができる。システムは、所定の時間にわたり、所定の温度で液体試料を受容するように構成されたヒーティングブロックを含みうる。ヒーティングブロックは、複数の試料を受容するように構成することができる。
【0164】
システム温度は、注意深く調節することができる。例えば、システムは、撹拌により温度制御された空気を使用して、所定の温度(例えば、37℃)に保たれたケーシングを含む。ユニットの各々からの廃熱は、空気への伝導及び対流により、単純なエンクロージャにより受動的に散逸されうる廃熱を超えるであろう。廃熱をなくすために、システムは、断熱床により隔てられた2つのコンパートメントを含みうる。上側コンパートメントが、液体試料の操作及び測定に必要とされる構成要素部分を含むのに対し、下側コンパートメントは、個々のユニットの発熱エレメント(例えば、遠心分離機のモーター、撹拌ユニットのモーター、分離ユニットの各々の電子回路、及びインキュベーションユニットのヒーティングブロック)を含む。次いで、下床は換気され、強制された空気冷却を使用して、システムから熱を逃がす。例えば、WO2012/054639の図44A及び44Bを参照されたい。
【0165】
MRユニットは、より緊密に制御された温度(例えば、±0.1℃)を要求する場合があるので、任意選択で、所定の温度で加熱された空気を吹き込む、別個のケーシングを含みうる。ケーシングは、液体試料を挿入し、取り出し、加熱された空気を逃がす開口部を含みうる。例えば、WO2012/054639の図45A及び45Bを参照されたい。他の温度制御法もまた、用いることができる。
【0166】
カートリッジユニット
本発明は、1つ以上のカートリッジユニットを伴いうる方法及びシステムであって、アッセイ試薬及び消耗品の全てをシステム上に取り付ける簡便法をもたらす方法及びシステムを提供する。例えば、特殊な機能を実施するように、システムをカスタマイズすることもでき、例えば、その中にカスタマイズされた磁性粒子を含有したマイクロウェルアレイを含有する交換型カートリッジユニットを介して、1つを超える機能を実施するように、システムを適応させることもできる。システムは、磁性粒子をあらかじめロードされたウェルアレイを含有する置換型及び/又は交換型カートリッジを含むことが可能であり、特定の解析物を検出し、且つ/又は濃度を測定するようにデザインすることができる。代替的に、システムは、各々が、異なる解析物を検出し、且つ/又は濃度を測定するようにデザインされた、異なるカートリッジと共に使用可能な場合もあり、所与のアッセイに応じた、試薬及び検出の、個別のカートリッジモジュールにより構成される場合もある。カートリッジは、システム内の他のユニット(例えば、磁性支援型アグロメレーションユニット又はNMRユニット)へと導入される液体試料を調製するのに、筐体への挿入及び筐体からの駆出を容易とするサイズでありうる。カートリッジユニット自体は、潜在的に、操作ステーションのほか、MRリーダー(複数可)とも、直接インターフェース接続されうる。カートリッジユニットは、試薬モジュールとは独立して滅菌されうる注入モジュールを有するモジュラーカートリッジでありうる。
【0167】
生物学的試料、例えば、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料を操作するには、カートリッジデザインの多数の競合的要件であって、交差汚染及び偽陽性検査結果を防止する、注入モジュールの滅菌性に対する必要、並びに照射のような標準的な末端滅菌法を使用して容易に滅菌することができないパッケージ内に試薬を組み入れる必要を含む競合的要件が存在する。試料をアリコート分割する注入モジュールは、無蓋のVACUTAINER(登録商標)チューブとインターフェース接続され、例えば、病原体を検出するアッセイを実施するのに使用しうる、2つの試料容量をアリコート分割するようにデザインすることができる(WO2012/054639の図7D~7Fを参照されたい)。VACUTAINER(登録商標)は、部分的又は完全な充填を可能とする。注入モジュールは、一体に超音波溶接され、第2の試料ウェルへと溢流する、第1のウェルへの流路を形成することを可能とする、チャネルのネットワークを形成するようにフォイルシーリングされた、2つの硬質のプラスチック部分を有する。軟質のVACUTAINER(登録商標)シール部分は、VACUTAINER(登録商標)のシーリングに使用され、試料流動のためのポート、及び換気ポートを含む。VACUTAINER(登録商標)にロードし、反転させたら、流動抵抗を凌駕するために、ある程度の静水圧が必要となる。試料を試料ウェルから取り出すたびに、ウェルは、VACUTAINER(登録商標)からの流動で再補充されるであろう。
【0168】
モジュラーカートリッジは、ある特定のアッセイ中に、交差汚染を管理する簡単な手段であって、複数の検出アリコートへの、増幅(例えば、PCR)産物の分配を含むがこれに限定されない手段をもたらしうる。加えて、モジュラーカートリッジは、自動式流体分注にも適合性であることが可能であり、試薬を、極めて小容量で、長時間(1年間を超える)にわたり保持する方式をもたらす。最後に、これらの試薬のあらかじめの分注は、濃度及び容量の精度を、製造工程が設定することを可能とし、要求しうるピペッティング精度がはるかに低いので、より簡便なポイントオブケア用の装置をもたらす。
【0169】
本発明のモジュラーカートリッジは、パッケージングすることができ、必要な場合は、個別に滅菌しうるモジュールへと分離されたカートリッジである。それらはまた、例えば、試薬モジュールは、冷却を要求するが、検出モジュールは、これを要求しない場合、個別に操作及び保存することもできる。WO2012/054639の図6は、注入モジュール、試薬モジュール、及び検出モジュールを併せてスナップで取り付けた、代表的なカートリッジを示す。この実施形態では、注入モジュールは、滅菌パッケージ内に別個にパッケージングされ、試薬及び検出モジュールは、あらかじめアセンブルされ、併せてパッケージングされることになろう。
【0170】
保存中に、試薬モジュールは、冷却装置内で保存しうるのに対し、注入モジュールは、乾燥保存により保存しうるであろう。これは、多くのアッセイを保存するのに極めてわずかな冷却装置又は冷凍室空間しか要求されないという、さらなる利点をもたらす。使用時において、操作者は、検出モジュールを検索し、パッケージを開け、アッセイにより要求される場合は、滅菌法を潜在的に使用して、皮膚微生物叢による汚染を防止することになろう。次いで、WO2012/054639の図7Aにおいて示される通り、VACUTAINER(登録商標)チューブの蓋を外し、反転させた注入モジュールを、チューブへと取り付ける。このモジュールは、WO2012/054639の図7B及び7Cにおいて示される通り、単一の描画ツールを使用して、容易に成形可能となるようにデザインされており、カートリッジの上部及び底部は、汚染を防止し、また、チャネルも閉じるように、フォイルでシーリングされている。注入モジュールを使用して、チューブを再シーリングしたら、アセンブリーを正しい面が上になるように向け、カートリッジの残余部分へと、スナップで取り付ける。注入区画は、2~6mlの間の生物学的試料(例えば血液)を伴う試料チューブの使用を可能とする溢流を伴うウェルを含み、システムの自動化に、一定の深さのインターフェースを依然としてもたらす。注入区画は、WO2012/054639の図8に示される溢流によりこれを達成するが、この場合、サンプリングウェルを溢流する生物学的試料(例えば血液)は、カートリッジ本体だけへと流れ込み、汚染を防止する。
【0171】
WO2012/054639の図9A~9Cは、正確にピペッティングされた小容量の試薬を保存する手段を示す。試薬は、WO2012/054639の図9Cに示されているピペットチップに保持される。これらは、製造自動化により充填され、次いで、断面図である、WO2012/054639の図9Bに示されている、ぴったり合うウェル内で、それらのチップをシーリングするように、カートリッジへと取り付けられる。最後に、フォイルシールを、チップの後面に貼付して、完全な水蒸気気密シールを施す。また、前述のフォイルの代わりに、又はこれに加えて、操作者により剥がされるシールで、全モジュールをシーリングすることも可能である。このモジュールがまた、装置により使用される、空の反応容器及びピペットチップの保存ももたらす一方、検出モジュールは、最終的な測定を行うのに装置により使用される有蓋の200μl PCRバイアルの保存をもたらす。
【0172】
WO2012/054639の図10~13Cは、例えば、増幅後(例えば、PCR)産物をピペッティングする間の汚染の管理をもたらすデザインである、カートリッジの検出モジュールについての代替的な実施形態を示す。これは、DNA増幅(例えば、PCR)によりもたらされる10億倍の増幅が、交差汚染及び偽陽性の大きな危険性を提示するため、要求される。しかし、低頻度の解析物が増幅され、分配されて、別個に検出又は同定されうるため、この混合物を、安全にアリコート分割しうることが望ましい。このアリコート分割の作業中に、カートリッジのこの部分が、汚染の管理の一助となる3つの方式がある。
【0173】
第1に、WO2012/054639の図10A及び10Bにおいて示される通り、カートリッジは、導入作業を実施するための凹部ウェルを含有する。第2に、WO2012/054639の図11において示される通り、マシンは、このウェルを通り、且つ、ウェル底部の穴を通って、カートリッジへと至る気流をもたらす。ウェルの深さは、ピペットチップを気流内に保持し、エアゾールの漏出を防止するような深さである。WO2012/054639の図12は、検出チューブの底部、及び気流を確認するのに使用される2つの穴を示す、検出モジュールの底面図について描示する。液体エアゾールを捕捉し、これがマシンに流入することを防止する、任意選択のフィルターを挿入することができる。このフィルターはまた、空気の漏出は許容するが、液体の漏出は許容しない、GORE-TEX(登録商標)のような疎水性材料のシートでもありうる。最後に、WO2012/054639の図13A~13Cにおいて示される通り、各200μlチューブ上に、特殊なシールキャップがあり、次いで、各ピペットチップが容器に進入するときに、シールを破る。アリコート分割するのに使用されるピペットチップは、とにかくこのウェル内に保存し、これにより、チップが、制御された気流領域を決して離れないようにすることを可能にすることが想定される。
【0174】
代替的に、モジュラーカートリッジを、マルチプレックス化アッセイ用にデザインする。マルチプレックス化アッセイにおける難題は、1つのカートリッジ上に、適合しないアッセイ要件(すなわち、異なるインキュベーション時間及び/又は温度)を有する複数のアッセイを組み合わせることである。WO2012/054639の図14A~14Cに描示されるカートリッジフォーマットは、アッセイ要件が大幅に異なる、異なるアッセイの組合せを可能とする。カートリッジは、2つの主要な構成要素:(i)完全なアッセイパネル(例えば、下記で記載されるパネル)に要求される、個々の試薬の全てを含有する試薬モジュール(すなわち、試薬ストリップ部分)、及び(ii)検出モジュールを特色とする。一部の実施形態では、カートリッジは、2~24以上の病原体(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24以上の病原体)を検出するように構成することができる。検出モジュールは、インキュベーションを完遂するカートリッジの部分だけを含有し、必要に応じて、単一のアッセイを保有する場合もあり、いくつかのアッセイを保有する場合もある。WO2012/054639の図14Bに描示される検出モジュールは、単一のアッセイに、対照としての第1の検出チャンバー、及び試料用の第2の検出チャンバーの、2つの検出チャンバーを含む。このカートリッジフォーマットは、試薬及びさらなる検出モジュールを含むことにより、さらなるアッセイを追加しうるという点で、拡張可能である。
【0175】
モジュールの作動は、使用者が、カートリッジの全部又は一部を装置へと挿入するときに始まる。装置は、アッセイの作動を実施し、アッセイを、個別の検出チャンバーへとアリコート分割する。次いで、これらの個々の検出チャンバーは、試薬ストリップ及び互いから取り外され、システム内を個別に進む。試薬モジュールは、分離及び廃棄されるため、可能な最小の試料単位が、装置内を移動し、内部装置空間を保つ。各アッセイを、その固有の単位に分割することにより、各マルチプレックス化アッセイが、他のアッセイから物理的に取り出され、各試料が個々に操られるので、異なるインキュベーション時間及び温度が可能となる。
【0176】
本発明のカートリッジユニットは、1つ以上の磁性粒子の集団であって、液体懸濁液又は使用の前に復元される乾燥磁性粒子としての集団を含みうる。例えば、本発明のカートリッジユニットは、1×106~1×1013個の磁性粒子(例えば、1×106~1×108、1×107~1×109、1×108~1×1010、1×109~1×1011、1×1010~1×1012、1×1011~1×1013、又は1×107~5×108個の磁性粒子)を含むコンパートメントであって、単一の液体試料をアッセイするコンパートメントを含みうる。
【0177】
パネル
本発明の方法、システム、及びカートリッジは、病原体の所定のパネルを検出するように構成することができる。一部の実施形態では、パネルは、以下:アシネトバクター属(Acinetobacter)種(例えば、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ピティー(Acinetobacter pittii)及びアシネトバクター・ノソコミアリス(Acinetobacter nosocomialis))、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(耐性マーカーであるvanA/Bを伴うE.フェシウム(E. faecium)を含む)及びエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis))、クレブシエラ属(Klebsiella)種(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(例えば、耐性マーカーであるKPCを伴うK.ニューモニエ(K. pneumoniae)を含む)及びクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca))、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えば、耐性マーカーであるmecAを伴う黄色ブドウ球菌(S. aureus))、スタフィロコッカス・ヘモリティクス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌属(Staphylococcus)種、及びコアグラーゼ陰性(CoNS)ブドウ球菌属(Staphylococcus)種を含む)、レンサ球菌属(Streptococcus)種(例えば、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosa)、ウシレンサ球菌(Streptococcus bovis)、G群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysgalactiae)、ミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、及び化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、エスケリキア属(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)種(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia))、プロテウス属(Proteus)種(例えば、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris))、セラチア属(Serratia)種(例えば、セラチア菌(Serratia marcescens))、シトロバクター属(Citrobacter)種(例えば、シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)及びシトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri))、ヘモフィルス属(Haemophilus)種(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、リステリア属(Listeria)種(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、ナイセリア属(Neisseria)種(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、バクテロイデス属(Bacteroides)種(例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis))、バークホルデリア属(Burkholderia)種(例えば、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia))、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli))、クロストリジウム属(Clostridium)種(例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens))、キンゲラ属(Kingella)種(例えば、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae))、モーガネラ属(Morganella)種(例えば、モーガネラ・モーガニー(Morganella morgana))、プレボテラ属(Prevotella)種(例えば、プレボテラ・ブッケ(Prevotella buccae)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、及びプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica))、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)種(例えば、アクネ菌(Propionibacterium acnes))、サルモネラ属(Salmonella)種(例えば、サルモネラ菌(Salmonella enterica))、赤痢菌属(Shigella)種(例えば、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)及びフレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri))、及びエンテロバクター属(Enterobacter)種(例えば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)及びエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae))、ボレリア属(Borrelia)種(例えば、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi sensu lato)(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii))種)、リケッチア属(Rickettsia)種(リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)及びリケッチア・パルケリー(Rickettsia parkeri)を含む)、エーリキア属(Ehrlichia)種(エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)及びエーリキア・ムリス様(Ehrlichia muris-like)を含む)、コクシエラ属(Coxiella)種(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)を含む)、アナプラズマ属(Anaplasma)種(アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)を含む)、フランシセラ属(Francisella)種(野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病菌(Francisella tularensis)亜種ホラークティカ(holarctica)、メディアシアティカ(mediasiatica)及びノビシダ(novicida)を含む)を含む)、レンサ球菌属(Streptococcus)種(肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)を含む)並びにナイセリア属(Neisseria)種(髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)を含む)から選択される1~18の間(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18)の病原体を個々に検出するように構成してもよい。一部の実施形態では、真菌病原体、例えば、カンジダ属(Candida)種(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dublinensis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))及びアスペルギルス属(Aspergillus)種(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))を検出するように、細菌病原体パネルをさらに構成する。一部の実施形態では、カンジダ属(Candida)種(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dublinensis)、及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)を含む)を検出するように、病原体パネルをさらに構成する。属の複数の種を検出する場合、種は、個々の標的核酸を使用して検出することもでき、種の全てに対してユニバーサルである標的核酸、例えば、ユニバーサルプライマーを使用して増幅される標的核酸を使用して検出することもできる。
【0178】
一部の実施形態では、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ)を個々に検出するように、パネルを構成することができる。
【0179】
一部の実施形態では、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つ)のカンジダ属(Candida)種(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dublinensis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))を個々に検出するように、パネルを構成することができる。
【0180】
一部の実施形態では、パネルは、1つ、2つ又は3つのライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi sensu lato)(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii))種を個々に検出するように構成されたライム病病原体パネルであってもよい。これらの種は、個々の標的核酸を使用して検出することもでき、3種全てに対してユニバーサルである標的核酸、例えば、ユニバーサルプライマーを使用して増幅される標的核酸を使用して検出することもできる。一部の実施形態では、パネルはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)及びボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、パネルはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)を検出するように構成される。一部の実施形態では、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、バベシア・マイクロティ(Babesia microti)、野兎病菌(Francisella tularensis)及びアナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)のうち1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ)を個々に検出するように、パネルを構成してもよい。
【0181】
上記の実施形態のうちのいずれかでは、属に特徴的なマーカー、例えば、汎細菌マーカー、汎カンジダ属(Candida)マーカー、又は汎ボレリア属(Borrelia)マーカーを検出するように、パネルを構成することができる。上記のパネルのうちのいずれかでは、解析物は、核酸(例えば、上記で記載した通りの増幅された標的核酸)、又はポリペプチド(例えば、病原体に由来するポリペプチド、又は宿主対象により産生される病原体特異的抗体、例えば、IgM若しくはIgG抗体)でありうる。一部の実施形態では、複数の解析物(例えば、複数の単位複製配列)を使用して、病原体を検出する。上記のパネルのうちのいずれかでは、生物学的試料は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清、若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料であってもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清、若しくは血漿)である。そのようなパネルは、例えば、血流感染を診断するために使用してもよい。一部の実施形態では、生物学的試料は組織試料、例えば、ホモジナイズされた組織試料であってもよい。そのようなパネルは、例えば、組織中に存在する感染を検出するために使用してもよく、例えば、ライム病の診断のためにボレリア属(Borrelia)種を同定するために、組織、例えばダニ咬傷部位における皮膚組織生検中に存在する感染を検出するために使用してもよい。
【0182】
感度及び/又は特異度を改善する、種に特徴的な複数の単位複製配列の増幅
一部の実施形態では、本発明の方法は、以下に限定されないが、血液(例えば、全血、粗全血溶解物、血清若しくは血漿)、血の混じった液体(例えば、傷からの滲出液、痰、胆汁など)、組織試料(例えば、ホモジナイズされた組織試料を含む、組織生検)又は痰を含む細胞及び/又は細胞破砕物を含有する生物学的試料中で種に特徴的な1つを超える単位複製配列の増幅及び検出を伴いうる。一部の実施形態では、種に特徴的な1つを超える標的核酸の増幅は、アッセイ中の、種に特徴的な単位複製配列の総量を増大させる(言い換えれば、アッセイ中の解析物の量を増大させる)。この増大は、例えば、種に特徴的な単一の単位複製配列の増幅及び検出を伴う方法と比較した、種の検出の感度及び/又は特異度の増大を可能としうる。一部の実施形態では、本発明の方法は、種に特徴的な2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の単位複製配列を増幅するステップを伴いうる。
【0183】
一部の実施形態では、種に由来する、複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10)のシングルコピー遺伝子座を増幅及び検出する。一部の実施形態では、種に由来する、2つのシングルコピー遺伝子座を増幅及び検出する。一部の実施形態では、種に由来する、複数のシングルコピー遺伝子座の増幅及び検出は、マルチコピー遺伝子座に由来する単位複製配列の検出を伴う方法と同等な検出感度を可能としうる。一部の実施形態では、微生物種から増幅された、複数のシングルコピー遺伝子座の検出を伴う方法は、液体試料中の約1~10細胞/mL(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10細胞/mL)の微生物種を検出しうる。一部の実施形態では、微生物種から増幅された、複数のシングルコピー遺伝子座の検出を伴う方法は、微生物種が、液体試料中に、5細胞/mL(例えば、1、2、3、4、又は5細胞/mL)の液体試料以下の頻度で存在する場合に、少なくとも95%の正確な検出をもたらす。
【0184】
本発明はまた、少なくとも3つの単位複製配列を、それらの各々が種に特徴的である、2つの標的核酸の増幅により作製する実施形態も提供する。例えば、一部の実施形態では、増幅される第1の標的核酸及び第2の標的核酸は、約50塩基対~約1500塩基対(bp)の範囲の距離、例えば、約50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は1000、1100、1200、1300、1400、又は1500bpだけ隔てられている(例えば、染色体上又はプラスミド上で)ことができる。一部の実施形態では、増幅される第1の標的核酸及び第2の標的核酸は、約50bp~約1000bp(例えば、約50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は1000bp)の範囲の距離だけ隔てられている(例えば、染色体上又はプラスミド上で)ことができる。一部の実施形態では、増幅される第1の標的核酸及び第2の標的核酸は、約50bp~約1500bp、約50bp~約1400bp、約50bp~約1300bp、約50bp~約1200bp、約50bp~約1100bp、約50bp~約1000bp、約50bp~約950bp、約50bp~約900bp、約50bp~約850bp、約50bp~約800bp、約50bp~約800bp、約50bp~約750bp、約50bp~約700bp、約50bp~約650bp、約50bp~約600bp、約50bp~約550bp、約50bp~約500bp、約50bp~約500bp、約50bp~約450bp、約50bp~約400bp、約50bp~約350bp、約50bp~約300bp、約50bp~約250bp、約50bp~約200bp、約50bp~約150bp、又は約50bp~約100bpの範囲の距離だけ隔てられていることができる。一部の実施形態では、個々のプライマー対(各々が、フォワード及びリバースプライマーを有する)を使用する、第1及び第2の標的核酸の増幅は、第1の標的核酸を含む単位複製配列、第2の標的核酸を含む単位複製配列、並びに第1及び第2の標的核酸の両方を含有する単位複製配列の増幅をもたらしうる。これは、第3の単位複製配列が存在しない試料と比較した種の検出の感度の増大を結果としてもたらしうる。先行する実施形態のうちのいずれかでは、増幅は、非対称PCRによるものでありうる。
【0185】
本発明は、種に特徴的な2つ以上の単位複製配列を検出するように、核酸プローブで修飾された磁性粒子を提供する。例えば、一部の実施形態では、磁性粒子は、磁性粒子が、2つ以上の単位複製配列の各々に作動可能に結合しうるように、各集団をプローブへとコンジュゲートさせた、2つの集団を含む。例えば、2つの標的核酸を増幅して、第1の単位複製配列及び第2の単位複製配列を形成した実施形態では、それらの各々が、それらの表面上に捕捉プローブのミックスを有する粒子の対を使用することができる。一部の実施形態では、磁性粒子の第1の集団を、第1の単位複製配列の第1のセグメントに作動可能に結合する核酸プローブ、及び第2の単位複製配列の第1のセグメントに作動可能に結合する核酸プローブへとコンジュゲートさせることができ、磁性粒子の第2の集団を、第1の単位複製配列の第2のセグメントに作動可能に結合する核酸プローブ、及び第2の単位複製配列の第2のセグメントに作動可能に結合する核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。例えば、1つの粒子集団を、第1の単位複製配列に特異的な5'側捕捉プローブ、及び第2の単位複製配列に特異的な5'側捕捉プローブとコンジュゲートさせることができ、他の粒子集団を、第1の単位複製配列に特異的な3'側捕捉プローブ、及び第2の単位複製配列に特異的な3'側捕捉プローブとコンジュゲートさせることができる。
【0186】
このような実施形態では、磁性粒子は、第1の単位複製配列の存在下で凝集することができ、第2の単位複製配列の存在下で凝集することができる。凝集は、両方の単位複製配列が存在する場合に、より大きな程度で生じうる。
【0187】
一部の実施形態では、磁性粒子を、それらの各々が、異なる標的核酸のセグメントに作動可能に結合する、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。一部の実施形態では、磁性粒子を、第1の核酸プローブが、第1の標的核酸に作動可能に結合し、第2の核酸プローブが、第2の標的核酸に作動可能に結合する、第1の核酸プローブ及び第2の核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。他の実施形態では、磁性粒子を、第1の標的核酸に作動可能に結合する第1の核酸プローブ、第2の標的核酸に作動可能に結合する第2の核酸プローブ、及び第3の標的核酸に作動可能に結合する第3の核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。さらに他の実施形態では、磁性粒子を、第1の標的核酸に作動可能に結合する第1の核酸プローブ、第2の標的核酸に作動可能に結合する第2の核酸プローブ、第3の標的核酸に作動可能に結合する第3の核酸プローブ、及び第4の標的核酸に作動可能に結合する第4の核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。さらに他の実施形態では、磁性粒子を、第1の標的核酸に作動可能に結合する第1の核酸プローブ、第2の標的核酸に作動可能に結合する第2の核酸プローブ、第3の標的核酸に作動可能に結合する第3の核酸プローブ、第4の標的核酸に作動可能に結合する第4の核酸プローブ、及び第5の標的核酸に作動可能に結合する第5の核酸プローブへとコンジュゲートさせることができる。一部の実施形態では、磁性粒子の1つの集団は、検出される各単位複製配列の5’捕捉プローブを含み、磁性粒子の他方の集団は、検出される各単位複製配列の3’捕捉プローブを含む。
【実施例0188】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で記載されるデバイス、システム、及び方法を、どのようにして実施、作製、及び査定するかについての、完全な開示及び記載を提示するように明示され、本発明を純粋に例示することを意図するものであり、本発明者らが、それらの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。
【0189】
[実施例1:Taq及び変異型熱安定性DNAポリメラーゼの比較]
TE緩衝液、pH8.0中で添加されたゲノムDNAを含有する100μl PCR反応物において、Taqポリメラーゼ(NEB)の性能を変異型熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、表2を参照されたい)の性能と比較した。反応物は、終濃度で2ゲノム等価物の精製カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ゲノムDNA、及び200コピーの内部対照(IC)を含有した。使用したPCR反応緩衝液は、60mMトリシン、pH8.7、3.5mM MgCl2、6%グリセロール、5mM 硫酸アンモニウム(終濃度)を含んだ。75~500nMプライマー及び200nM dNTPが使用された。すべての反応成分を3~5回上下にピペッティングすることによって混合した。温度サイクルは以下のように実施した:95℃にて10分;続いて、95℃にて20秒、62℃にて30秒、68℃にて30秒を40サイクル、さらに68℃にて最後の伸長。完了したPCR反応物を50μlのTE、pH8.0で希釈して、希釈物の2つの15μlアリコートを、参照によりその全体において本明細書に組み込まれるNeelyら、Science Translational Medicine 5(182):182ra54, 2013に記載されるように、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(A/T)及び内部対照(IC)特異的検出反応に使用した。
【0190】
3種類の濃度のTaqを試験した。終濃度0.025~0.05U/μl反応物(100μl反応物で2.5ユニット~5ユニット/反応に相当)が供給元によって推奨され、公表されているアッセイにおいて通常使用されている。濃度を5倍まで増加させても、T2MR信号値の平均に基づき、感度と特異度に検出可能な損失はなかった(図1)。3種類の濃度のTaqはすべて、緩衝液試料中で変異型熱安定性DNAポリメラーゼのものと同等の性能を示した。
【0191】
[実施例2:バルク粗全血溶解物の調製]
健康なドナーに由来する17.5mLのヒト全血を、1グラムの0.8mm酸化ジルコニウムビーズ(OPS、New Jersey)を含有する、8本の50mL FALCON(商標)チューブの各々に加えた。1mLの赤血球溶解溶液(TRAx:TRITON(商標) X-100/Nonidet)を添加し、溶液を混合し、室温で5分インキュベートした。チューブを室温にて3200gで8分回転させた。ヒト赤血球及び白血球に由来する膜及び濃縮された不溶性膜タンパク質、白血球に由来する部分的に無傷の核及びミトコンドリア(及びそこに含まれるゲノムDNA)、並びに他の細胞成分、例えばヘム、ヘモグロビン、タンパク質に結合したイオン、例えば鉄を含む、細胞破砕物を含有する粘液性のペレットを乱すことなく、暗赤色の上清を注意深く取り除いた。
【0192】
4コピー/μLの内部PCR対照(IC)断片を含有する、1.5mLのTE緩衝液、pH8.0を加え、1~2秒ボルテクスした。チューブを3200gで5分遠心した。実施例1で上述されるように上清を取り除き、上述のような成分を含有する赤色の粘液性のペレットを残した。最後に、4コピー/μLのICを含有する1mLのTE緩衝液をペレットに添加し、細胞をベンチトップボルテクサーで4分ボルテクスすることによって溶解させた。ホモジナイズされた泡沫状の赤色の溶解物を短い遠心後に各チューブから回収し、まとめた。結果として得られたバルク粗全血溶解物を-20℃で凍結保存した。
【0193】
この方法に続いて、全部で7~8mLの粗血液溶解物が全部で140mlのヒト全血から得られた。この手法によって、17.5mLの血液を1mLの溶解物に効果的に濃縮し、各50μLの実験試料は0.875mLの全血の等価物である。この溶解物の単一バッチを使用して70~80の異なる増幅反応物をもたらすことができる。この手法はスケールアップ又はスケールダウンすることができる。
【0194】
このような濃縮溶解物は、140mLの全血(300~600万個の白血球/mLの推定値に基づく)から抽出可能である、約2.5~5mgのヒトDNAを含有すると考えられる。粗全血溶解物は、310~620μg DNA/mLまでを含有すると考えられる。本明細書において記載される通常のPCR反応物は、約50μlのこの溶解物又はその等価物、すなわち約16~32μgのヒトDNAを含有する。
【0195】
[実施例3:粗全血溶解物における市販の熱安定性DNAポリメラーゼ及び変異型熱安定性DNAポリメラーゼの比較]
Taqポリメラーゼ及び変異型熱安定性DNAポリメラーゼの性能を、実施例2に記載されるように、かつ上記Neelyら、2013に従って調製された粗全血溶解物中で比較した。粗全血溶解物は、短い洗浄ステップ後に溶解物中に残存するヘム及びヘモグロビン化合物の存在を示す赤色の呈色を有する。溶解物はまた、機械的溶解で白血球から放出される約30~50μgのヒトDNAを含有する(例えば、実施例2を参照されたい)。さらに以下の実施例4は、遊離DNAを追加する結果として最終的にはPCR反応が完全に阻害されることを示す。したがって、粗全血溶解物は、Taqポリメラーゼの性能に影響し得る、高濃度の既知のPCR阻害因子(DNA、ヘム及びヘモグロビン、タンパク質に結合した鉄などを含む)を含有する。
【0196】
100μlの反応容量は、2ゲノムコピー等価物のC.アルビカンス(C. albicans)及び200コピーのICが添加された、実施例2に記載されるように調製された50μlの粗全血溶解物を含有した。反応緩衝液は、60mMトリシン、pH8.7、3.5mM MgCl2、6%グリセロール、5mM硫酸アンモニウム(終濃度)だった。反応物を以下のワークフローに従って調製した:30μlの試薬A(反応緩衝液、dNTPs及びプライマーを含有する)を50μlの添加された粗全血溶解物に加えて、95℃で5分変性させた。結果として得られる茶色の固形物を室温、12,000gにて5分遠心した。暗褐色のペレットが、その上の茶色/赤みを帯びた上清とともに見えた。20μlの変異型熱安定性DNAポリメラーゼ又はTaq希釈物を添加し、PCR及びその後の検出を実施例1に記載されるように行った。
【0197】
その結果、Taqポリメラーゼは、製造者によって推奨され、公表されているアッセイにおいて一般に使用される濃度で、かなり阻害されたことが示された(図2;例えば、0.05 U/μlを参照されたい)。Taqの終濃度を5倍上昇(0.125 U/μl)させた後は、感度は、変異型熱安定性DNAポリメラーゼの粗血液溶解物中の感度と同程度であった。Taqの濃度をさらに増加させて推奨される作業濃度より10倍高くしても、結果としてT2信号値に大きな変化は生じなかった(図2)。非特異的増幅産物の増加による、過剰なポリメラーゼの産物収量に対する有害な影響が文献に記載されているため、これは予期しないことであると考えられた(例えば、Innisら、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications. Academic Pres, Waltham MAを参照されたい)。
【0198】
さらに、上記の増幅ワークフローによって生成される単位複製配列はまた、ゲル電気泳動及び臭化エチジウムによる染色を使用して検出された(図8)。この知見は、上述のワークフロー及び反応条件によって生成される単位複製配列を検出するために、T2MR以外の検出手法を使用することができることを示す。
【0199】
テルムス属(Thermus)種Z05由来の改変されたアプタマーベースのホットスタートDNAポリメラーゼである、市販されている酵素のHawk Z05(Roche)もまた粗全血溶解物中の性能について試験された。各50μl反応物は、25μLの粗血液溶解物(実施例2に記載されるように調製された)を含有し、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)DNAの10ゲノムコピー等価物が添加された。15μLの反応緩衝液及びプライマーを加えた後、95℃にて5分、変性ステップを行った。結果として得られた凝固血液溶解物を12,000gで5分スピンダウンした。最後に、Hawk Z05を希釈してdNTPsと混合し、この混合物の10μLを、Hawk Z05の終濃度が0.4 U/μl(製造者の推奨)となるように、各反応物に添加した。粗血液溶解物の反応物は、TE緩衝液、pH8.0中に鋳型を含有するもの(図3における「緩衝液」)と比較された。PCR及び検出は実施例1に記載されるように実施した。
【0200】
Hawk Z05は、Taq及び変異型熱安定性DNAポリメラーゼのように、粗血液溶解物中で標的を増幅することが可能であった(図3)。しかし、Taqとは異なり、酵素濃度を製造者によって推奨されるよりも高く増加させることは必要なかった。この観察は、ある特定のテルムス属(Thermus)種ポリメラーゼ、例えばTthは、Taqに比べ、PCR反応物中のより高い全血濃度を許容するという公表されている知見を確証し得る。
【0201】
[実施例4:過剰な非標的DNAの影響]
宿主細胞から抽出されたDNAなどの非標的DNAは、PCRの阻害因子であることが決定されているため、Taq及び変異型熱安定性DNAポリメラーゼの性能に対する付加的な外因性DNAの効果を試験した。
【0202】
C.アルビカンス(C. albicans)ゲノムDNA及びIC DNAを添加した、TE緩衝液又は粗全血溶解物を含有する反応物を、実施例1及び3にそれぞれ記載されるように調製し検出した。緩衝液及び粗全血溶解物中で増幅の成功を許容できる全DNA濃度を評価するために(リードアウトとしてT2信号を使用する)、外因性の超音波処理サケ精子DNA(Agilent)を反応物に添加した。粗血液溶解物中でヒト細胞から寄与される内因性DNAの全濃度は、1反応物当たりおよそ16~32μgであると見積もられた(例えば、実施例2を参照されたい)。添加された外因性DNAを0μgから20μgまで変化させた。Taq終濃度を0.025 U/μl~0.25 U/μlの間で10倍変化させた。変異型熱安定性DNAポリメラーゼ濃度を、1:1(1:5終濃度の変異型ポリメラーゼ:反応混合物に対応する、上記Neelyら、2013において利用された当初の終濃度)から1:20(1:100終濃度の変異型ポリメラーゼ:反応混合物に対応する)まで変化させた。
【0203】
予想された通り、外因性DNAの添加により、粗全血溶解物と比較して緩衝液中では異なる濃度であったが、C.アルビカンス(C. albicans)標的の増幅が阻害された(図4A図4D)。緩衝液中では、アッセイ感度への影響が確認されるためには、20μgのサケ精子DNAが必要であった(図4A及び4B)。しかし、Taqの場合では、この効果は低いポリメラーゼ濃度、すなわち0.025 U/μlで観察されたのみであり、酵素濃度を2~5倍増加させると克服された(図4B)。変異型熱安定性DNAポリメラーゼに対する外因性DNA添加の影響は、上記Neelyら、2013で使用された濃度に比べて1:10希釈で酵素が存在した場合に明確であった(図4A)。5μg外因性DNAの添加は、上記Neelyら、2013で使用された濃度に比べて1:5希釈で変異型熱安定性DNAポリメラーゼが存在する場合に、アッセイ感度に影響した。
【0204】
粗全血溶解物中の増幅に対する添加DNAの影響は、内因性DNAによりDNAの出発濃度がすでに高いため、より劇的であった。粗全血溶解物中では、2.5μgの追加DNAの添加の結果として、0.125ユニット/μLのTaqポリメラーゼの場合に、感度の低下がもたらされた(図4D)。変異型熱安定性DNAポリメラーゼの場合には、上記Neelyら、2013に記載される濃度に比べて1:5希釈の変異型ポリメラーゼ濃度の結果として、粗全血溶解物中の増幅のほぼ完全な阻害がもたらされた。
【0205】
ポリメラーゼは、緩衝液に比べて、粗全血溶解物への外因性DNAの添加によって、より大きく影響を受け、これは、粗全血溶解物中の内因性細胞DNA並びに他の阻害因子のバックグラウンドが高いためである可能性が高い。ポリメラーゼ濃度が高くなると、特異度に関わらず、阻害に抵抗することができる、すなわちより多くの開始複合体を形成することができるから、DNA阻害の機構は化学量論的である可能性が高く、よって、特異的増幅がそれでも可能となる。言い換えれば、ポリメラーゼ濃度の増加は、酵素の非特異的結合/隔離に対抗すると考えられる。
【0206】
[実施例5:ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼの比較]
マルチプレックスPCRは、診断アッセイに通常使用される。ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼをマルチプレックスPCR反応で使用してもよい。ホットスタートPCRは、Taq、Taq変異型酵素及び他の熱安定性DNAポリメラーゼの内因的残存活性による、より低い温度におけるプライマー2量体の形成又は非特異的伸長を回避する。一部の場合には、特異的鋳型へのアニーリングよりも低い温度でプライマーが非特異的伸長産物に変換されてしまうことによってプライマーが使用し尽くされるために、そのような残存活性は特異的産物の形成を完全に阻害しうる。
【0207】
6つの細菌種のパネル並びに内部対照に特異的な標的核酸の増幅を可能にする7重PCR反応において、ホットスタートTaq/アプタマー剤形(APTATAQ(商標)、Roche Molecular Systems)を評価し、変異型ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼ(「変異型HSポリメラーゼ」)と比較した。精製K.ニューモニエ(K.pneumoniae)DNAの10ゲノム等価物及び200コピーのICをTE緩衝液中に含有する反応物を実施例1に記載されるように調製した。試薬Aを試薬Bに置き換えた。試薬Bは、反応緩衝液及び7重プライマーミックスを含有する。反応物は、変異型HSポリメラーゼ/dNTPミックスの1×剤形、又は濃度を10倍変化させたAPTATAQ(商標)/dNTPミックス(最終0.025 U/μl~0.25 U/μlのAPTATAQ(商標))のいずれかを含有した。
【0208】
緩衝液中では、製造者の推奨APTATAQ(商標)濃度の0.025ユニット/μlは、T2信号で測定した場合に感度が十分であり、これは変異型HSポリメラーゼで得られる感度と区別がつかないものだった(図5)。しかし、同じ濃度は、粗全血溶解物を含有する反応物には十分ではなかった(図5)。これは、緩衝液(実施例1)と比較して粗全血溶解物(図3を参照されたい)中でTaqを用いてなされた観察と類似していた。しかし、APTATAQ(商標)濃度を0.125ユニット/μLまで5倍上昇させた場合には、K.ニューモニエ(K.pneumoniae)信号の感度によって示されるように、増幅が回復した(図5)。10×濃度(最終0.25 U/μl)では、IC及びKpのT2信号は、変異型HSポリメラーゼを用いて得られたものと区別がつかなかった(図5)。
【0209】
結論としては、既にTaqポリメラーゼについて観察されたように(図3を参照されたい)溶解物中でAPTATAQ(商標)濃度を増加させると、血液成分による抑制を克服しただけでなく、増幅感度及び特異度に対する高い内因性宿主DNA濃度の影響にも対抗した。
【0210】
[実施例6:アッセイマトリックスの重要性]
全血又は全血溶解物中でDNA(例えば、カンジダ属(Candida)DNA)を増幅し検出するためのワークフローが実施例3に記載される。試薬及び溶解物の添加並びに処理ステップの順序は最適な結果を得るために重要である。
【0211】
これらのステップは以下の通りである。
a. 50μlの粗血液溶解物への、30μlの試薬Aの添加
b. 結果として得られる混合物の95℃、5分の変性。このステップの結果として固体様マトリックスがもたらされ、この固体様マトリックスは、暗褐色に見える、血液溶解物中に存在する、凝固タンパク質、膜断片などの混合物である。
c. 高速(>10,000g)で5分の遠心。このステップの結果として固体が暗褐色ペレットへと沈殿し、薄茶色~暗褐色だが透明な上清が分離される。
d. 20μlの熱安定性DNAポリメラーゼの添加
e. サーマルサイクラ―における増幅
f. 単位複製配列の検出
【0212】
試薬添加と変性ステップの順序は成功のために重要である。重要なステップ/順序を評価するために、ワークフローにいくつかの改変を加えて検討した。
【0213】
表4は、粗全血溶解物を使用して試験された上記のワークフローの変形を示す。図6はT2MR信号によって示される結果を示す。順序は、50μlの添加粗全血溶解物(実施例2に記載されるような)をPCRチューブへ加えることにより開始する。表4に示される8対の反応緩衝液は、95℃における変性の前又は後に添加するために調製された。粗全血溶解物は実施例2に記載されるように調製された。粗全血溶解物は、反応物当たり終濃度でC.アルビカンス(C. albicans)ゲノムDNAの2ゲノムコピー等価物及び200コピーの内部対照DNAに添加された。変性ステップの前の試薬添加とは、添加された標的DNAを含有する粗全血溶解物への添加である。次いで、試料を95℃で5分変性させ、8000rpmで5分遠心した。変性ステップ後の試薬添加は、ペレットを乱すことなく行った。ワークフロー変形#8は実施例3に使用されたワークフローである。
【表4】
【0214】
一般的に、変性ステップ前にPCR緩衝液を添加したアッセイ(ワークフローの変形4、6、7及び8)は、T2MR信号によって測定された場合にC.アルビカンス(C. albicans)(A/T)及び内部対照(IC)の良好な増幅を示した(図6)。これは、実施例3に記載されるようなワークフロー#8を含む。
【0215】
IgGなどのPCR阻害因子を不活性化すると考えられる変性ステップは、その前には透明だった溶解物を凝固させ、それを偽固体マトリックスに変化させる。塩化マグネシウム、グリセロール及び緩衝剤を含むPCR緩衝液を添加すると、標的DNAが偽固体マトリックスに捕捉されその後遠心中に除去されるのを防ぐことができる。PCR緩衝液(室温で約8.7のpH)の存在下で溶解物を適度にアルカリ性のpHにすると、ヘム化合物をさらに不活性化させることにつながると考えられる。緩衝化合物に固有の性質により、加熱するとPCR緩衝液のpHはpH7よりも下に落ちることが当技術分野において公知である。これは、PCR緩衝液が変性前に添加されていた場合にのみ、ペレットの色が変性/遠心後に赤色から茶色に変化することによって実証される。理論に束縛されることを望まずに述べると、ヘムをヒドロキシル化するか又は減少させると、その結果、ヘムが不活性化し、及び/又は変性/遠心ステップ中に除去され、それによってPCR阻害を低減又は防止するのかもしれない。変性/遠心中の、血液溶解物からの、阻害性物質のpHに基づく減少又は除去を含む機構は、上述の反応緩衝液を代替PCR反応緩衝液に置換した場合に比較的低い増幅性能(T2MR信号によって評価したもの)が観察されることによってさらに支持された。pH8.0を有する製造者のTaq反応緩衝液を粗全血溶解物中でTaqポリメラーゼと共に使用した場合には、増幅は全く見られなかった。
【0216】
[実施例7:未処理全血を含有する反応物におけるTaq DNAポリメラーゼの使用]
過去の報告は、1%よりも多い全(未処理の)血がPCR反応物に添加される場合にTaqポリメラーゼが時には阻害されうることを示した(Panaccioら、Nucl. Acids Res. 19(5):1151, 1991)。対照的に、変異型熱安定性DNAポリメラーゼは、反応物当たり30%までの全血を許容する。上述の血液処理方法は、粗全血溶解物の存在下で、阻害因子の減少、及び標的核酸を増幅する能力を結果としてもたらす一方で、出願人はまた、反応混合物への一連の全血添加を試験することによって、阻害因子が、熱安定性DNAポリメラーゼ濃度の増大によって打ち負かされるかどうか、及びアルカリ性pH緩衝液によって変性されるかどうか(実施例6を参照されたい)を試験した。
【0217】
PCR成分(PCR緩衝液pH8.7、dNTPs、プライマー及び酵素)は血液添加前に混合された。血液添加パーセンテージに関わらず、5ゲノムコピーのC.アルビカンス(C. albicans)DNAが各試料に添加されるように、全(未処理の)血が添加された。全血は各チューブに注意深く添加され、混合しないでPCR成分の下に沈ませた。100μl反応物における未処理全血の濃度は、それぞれ10%、20%、30%及び40%だった。T2MR信号によって決定された場合の変異型熱安定性DNAポリメラーゼの性能は、製造者が推奨する濃度(0.025ユニット/μL)及び5×推奨濃度(0.125ユニット/μL)のTaqと比較された。
【0218】
製造者が推奨する濃度では、試験された全ての血液添加で、Taqは低い性能を示した(図7)。Taqの濃度を製造者によって推奨される濃度の5×に増加させることによって、より高いT2MR信号によって示されるように、増幅の増大が達成された(図7)しかし、Taqはより高い血液濃度で阻害された。T2値がベースラインより上回ることで確認した場合の許容上限は、0.125 U/μL Taqでは30%全血であるようであり、変異型熱安定性DNAポリメラーゼでは40%全血であるようだった(図7)。
【0219】
他の実施形態
本発明について、その具体的実施形態との関連で記載してきたが、さらなる改変が可能であることが理解され、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、且つ、本開示からのこのような逸脱であって、本発明が関する技術分野内の、公知又は通例の慣行内に収まる逸脱を含め、本発明の任意の変化、使用、又は適応を対象とすることが意図され、本明細書の前出で明示され、特許請求の範囲で後述される、不可欠の特色へ適用されうる。
【0220】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)対象から得られた生物学的試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、生物学的試料は対象由来の細胞又は細胞破砕物を含み、前記方法は、
(a)生物学的試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップ、
(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ、及び
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
(2)ステップ(d)における熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットである、(1)記載の方法。
(3)ステップ(d)が、変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップを含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)生物学的試料が約0.2mL~約5mLである、(1)~(3)のいずれか一に記載の方法。
(5)生物学的試料が約0.9mLである、(4)記載の方法。
(6)生物学的試料が血液、血の混じった液体、組織試料及び痰からなる群より選択される、(1)~(5)のいずれか一に記載の方法。
(7)血液が全血、粗血液溶解物、血清又は血漿である、(6)記載の方法。
(8)血の混じった液体が、傷からの滲出液、痰又は胆汁である、(6)記載の方法。
(9)組織試料が組織生検である、(6)記載の方法。
(10)組織生検が皮膚生検、筋肉生検又はリンパ節生検である、(9)記載の方法。
(11)組織試料がホモジナイズされた組織試料である、(6)、(9)又は(10)のいずれか一に記載の方法。
(12)全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ、
(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ、並びに
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
(13)全血試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、
(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップ、
(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有するステップ
(c)ステップ(b)に続き、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成するステップ
(d)変性反応混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを変性反応混合物に添加するステップ、並びに
(e)標的核酸を増幅して、単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
(14)ステップ(c)がステップ(d)の前に変性反応混合物を遠心するステップをさらに含む、(1)~(13)のいずれか一に記載の方法。
(15)前記方法が、ステップ(b)中又はステップ(d)中に、(i)デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)、(ii)マグネシウム、(iii)フォワードプライマー、及び/又は(iv)リバースプライマーを添加するステップを含む、(1)~(14)のいずれか一に記載の方法。
(16)全血試料が約0.2mL~約5mLである、(12)~(15)のいずれか一に記載の方法。
(17)全血試料が約0.9mLである、(16)記載の方法。
(18)全血試料から生成される粗血液溶解物が約10μL~約500μLの容量を有する、(12)~(17)のいずれか一に記載の方法。
(19)全血試料から生成される粗血液溶解物が約25μL~約200μLの容量を有する、(18)記載の方法。
(20)全血試料から生成される粗血液溶解物が約50μLの容量を有する、(19)記載の方法。
(21)ステップ(b)の反応混合物が約1%~約70%の粗血液溶解物を含有する、(12)~(20)のいずれか一に記載の方法。
(22)ステップ(b)の反応混合物が約50%の粗血液溶解物を含有する、(21)記載の方法。
(23)未処理全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約0.02ユニットであるステップ、
(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ、並びに
(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
(24)全血を含む試料中の標的核酸を増幅するための方法であって、前記方法は、
(a)緩衝剤を含む緩衝液、dNTPs、マグネシウム、フォワードプライマー、リバースプライマー及び熱安定性核酸ポリメラーゼを含む混合物を用意するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性のpHを有し、混合物は混合物1マイクロリットル当たり少なくとも約2.4x10-5マイクログラムの熱安定性核酸ポリメラーゼを含有するステップ
(b)混合物に対象から得られた全血試料の一部を添加して反応混合物を形成するステップ、並びに
(c)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップ
を含む方法。
(25)反応混合物が約1%~約50%(v/v)の全血を含有する、(23)又は(24)に記載の方法。
(26)反応混合物が約30%~約40%(v/v)の全血を含有する、(25)記載の方法。(27)室温での適度にアルカリ性のpHが約pH7.1~約pH10.5である、(1)~(26)のいずれか一に記載の方法。
(28)室温での適度にアルカリ性のpHが約pH7.5~約pH9.5である、(27)記載の方法。
(29)室温での適度にアルカリ性のpHが約pH8~約pH9である、(28)記載の方法。
(30)室温での適度にアルカリ性のpHが約pH8.7である、(29)記載の方法。
(31)緩衝液のpHが95℃でおよそ中性pHのままであるか又は中性pHよりも上のままである、(1)~(30)のいずれか一に記載の方法。
(32)緩衝液のpHが95℃で約6.5~約9.0である、(31)記載の方法。
(33)緩衝液のpHが95℃で約7.0~約8.5である、(32)記載の方法。
(34)緩衝液のpHが95℃で約7.0~約7.5である、(33)記載の方法。
(35)緩衝液のpHが95℃で約7.2である、(33)又は(34)に記載の方法。
(36)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.02~約0.8ユニット/μLの範囲である、(2)~(12)、(14)~(23)、又は(25)~(35)のいずれか一に記載の方法。
(37)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.125~約0.5ユニット/μLの範囲である、(36)記載の方法。
(38)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が約0.125~約0.25ユニット/μLの範囲である、(37)記載の方法。
(39)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.01マイクログラムである、(3)~(11)、(13)~(22)、又は(24)~(38)のいずれか一に記載の方法。
(40)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.001マイクログラムである、(39)記載の方法。
(41)熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物又は反応混合物1マイクロリットル当たり約2.4x10-5マイクログラム~約0.0001マイクログラムである、(40)記載の方法。
(42)熱安定性核酸ポリメラーゼが熱安定性DNAポリメラーゼである、(1)~(41)のいずれか一に記載の方法。
(43)熱安定性DNAポリメラーゼが野生型熱安定性DNAポリメラーゼ又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼである、(42)記載の方法。
(44)野生型熱安定性DNAポリメラーゼが、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラブス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼ、又は古細菌ポリメラーゼである、(43)記載の方法。
(45)変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、Klentaq(登録商標) 1、Klentaq(登録商標) LA、Cesium Klentaq(登録商標) AC、Cesium Klentaq(登録商標) AC LA、Cesium Klentaq(登録商標) C、Cesium Klentaq(登録商標) C LA、Omni Klentaq(登録商標)、Omni Klentaq(登録商標) 2、Omni Klentaq(登録商標) LA、Omni Taq、OmniTaq LA、Omni Taq 2、Omni Taq 3、Hemo KlenTaq(登録商標)、KAPA Blood DNA polymerase、KAPA3G Plant DNA polymerase、KAPA 3G Robust DNA polymerase、MyTaq(商標) Blood、及びPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseからなる群より選択される、(43)記載の方法。
(46)変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼである、(43)記載の方法。
(47)ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼがAPTATAQ(商標)、Hawk Z05、又はPHUSION(登録商標) Blood II DNA polymeraseである、(46)記載の方法。
(48)熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で対象由来の細胞又は細胞破砕物の存在によって阻害される、(1)~(47)のいずれか一に記載の方法。
(49)熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で全血の存在によって阻害される、(48)記載の方法。
(50)熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で1%(v/v)の全血によって阻害される、(49)記載の方法。
(51)熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で8%(v/v)の全血によって阻害される、(50)記載の方法。
(52)通常の反応条件が熱安定性DNAポリメラーゼの製造者によって推奨される反応条件である、(48)~(51)のいずれか一に記載の方法。
(53)前記方法がマルチプレックス化PCR反応において1以上の付加的な標的核酸を増幅して1以上の付加的な単位複製配列を生成するステップをさらに含む、(1)~(52)のいずれか一に記載の方法。
(54)単位複製配列が少なくとも10μgの対象DNAの存在下で生成される、(1)~(53)のいずれか一に記載の方法。
(55)単位複製配列が少なくとも20μgの対象DNAの存在下で生成される、(54)記載の方法。
(56)単位複製配列が少なくとも35μgの対象DNAの存在下で生成される、(55)記載の方法。
(57)前記方法の結果として少なくとも106コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、(1)~(56)のいずれか一に記載の方法。
(58)前記方法の結果として少なくとも109コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、(57)記載の方法。
(59)前記方法の結果として少なくとも1010コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、(58)記載の方法。
(60)前記方法の結果として少なくとも1012コピーの単位複製配列の生成がもたらされる、(59)記載の方法。
(61)単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列を検出するステップをさらに含む、(1)~(60)のいずれか一に記載の方法。
(62)単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列が、光学的測定、蛍光測定、質量測定、密度測定、磁性測定、クロマトグラフィー測定及び/又は電気化学的測定によって検出される、(61)記載の方法。
(63)単位複製配列を検出するステップが、以下のステップ:
(a')増幅溶液の一部分に増幅溶液1ミリリットル当たり1x106~1x1013の磁性粒子を添加することによってアッセイ試料を調製するステップであって、磁性粒子が700nm~950nmの平均直径と、それらの表面上に結合性部分とを有し、結合性部分が単位複製配列の存在下で磁性粒子の凝集を変更するように作動するものであり、前記磁性粒子が1x109~1x1012mM-1s-1の粒子1つ当たりのT2緩和度を有するステップ、
(b')アッセイ試料をデバイス内の検出チューブに用意するステップであって、デバイスが、アッセイ試料を含む検出チューブを保持するウェルを規定する支持体を含み、1つ以上の磁石及びRFパルス列を使用して創出されたバイアス磁界へと混合物を曝露することによりもたらされる信号を検出するように構成されたRFコイルを有するステップ、
(c')アッセイ試料を、バイアス磁界及びRFパルス列へと曝露するステップ、
(d')ステップ(c')に続き、アッセイ試料によって生成された信号を測定し、それによって単位複製配列が存在するか又存在しないかを検出するステップ
を含む、(61)又は(62)に記載の方法。
(64)磁性粒子が、第1のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第1の集団、及び第2のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第2の集団を含み、第1のプローブが単位複製配列の第1のセグメントに結合するように作動し、第2のプローブが単位複製配列の第2のセグメントに結合するように作動し、磁性粒子が単位複製配列の存在下で凝集物を形成する、(63)記載の方法。
(65)検出がステップ(a)の開始から4時間以内に起きる、(63)又は(64)に記載の方法。
(66)検出がステップ(a)の開始から3時間以内に起きる、(65)記載の方法。
(67)前記方法が1012コピーの単位複製配列を検出することができる、(61)~(66)のいずれか一に記載の方法。
(68)前記方法が1010コピーの単位複製配列を検出することができる、(67)記載の方法。
(69)前記方法が109コピーの単位複製配列を検出することができる、(68)記載の方法。
(70)標的核酸が病原体に特徴的である、(1)~(69)のいずれか一に記載の方法。
(71)病原体が真菌病原体、細菌病原体、原生動物病原体又はウイルス病原体である、(70)記載の方法。
(72)真菌病原体がカンジダ属(Candida)種である、(71)記載の方法。
(73)カンジダ属(Candida)種が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群より選択される、(72)記載の方法。
(74)細菌病原体が、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)からなる群より選択される、(71)記載の方法。
(75)原生動物病原体がバベシア・マイクロティ(Babesia microti)又は多型バベシア(Babesia divergens)である、(71)記載の方法。
(76)前記方法が全血試料中の約10コロニー形成ユニット(CFU)/mLの濃度の病原体種を検出することができる、(70)~(75)のいずれか一に記載の方法。
(77)前記方法が全血試料中の約5 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、(76)記載の方法。
(78)前記方法が全血試料中の約3 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、(77)記載の方法。
(79)前記方法が全血試料中の約1 CFU/mLの濃度の病原体種を検出することができる、(78)記載の方法。
(80)単位複製配列の検出に基づいて対象を診断するステップをさらに含み、単位複製配列の存在によって対象が病原体に関連する疾患を罹患していることが示される、(70)~(79)のいずれか一に記載の方法。
(81)前記方法が好適な治療法を対象に付与するステップをさらに含む、(80)記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた全血試料中の病原体に特徴的な標的核酸を増幅するための方法であって、
全血試料は、対象由来の細胞又は細胞破砕物を含み、
前記方法は、
(a)全血試料中の細胞を溶解させて溶解物を形成するステップであって、全血試料は0.2mL~5mLであるステップ、
(b)溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性の8.5~9.5のpHを有するステップ、
(c)ステップ(b)に続いて、ステップ(d)の前に、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成し、変性反応混合物を遠心分離するステップ
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップ、及び
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップであって、増幅がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われるステップ
を含む方法。
【請求項2】
(i)ステップ(d)における熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が、変性反応混合物1μL当たり0.125~0.5ユニットの範囲であり、かつ/又は(ii)全血試料が0.9mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全血試料中の病原体に特徴的な標的核酸を増幅するための方法であって、
前記方法は、
(a)対象由来の全血試料中の赤血球を溶解させることによって生成される粗血液溶解物を用意し、試料を遠心分離して上清と細胞を含むペレットとを形成し、上清の一部又は全部を廃棄し、任意選択でペレットを洗浄し、及びペレット中の細胞を溶解させるステップであって、全血試料は0.5mL~10mLであるステップ、
(b)粗血液溶解物に緩衝剤を含む緩衝液を添加して反応混合物を形成するステップであって、緩衝液は室温で適度にアルカリ性の8.5~9.5のpHを有するステップ、
(c)ステップ(b)に続いて、ステップ(d)の前に、反応混合物を加熱して変性反応混合物を形成し、変性反応混合物を遠心分離するステップ、
(d)変性反応混合物に熱安定性核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度は変性反応混合物1μL当たり0.125~0.5ユニットの範囲であるステップ、並びに
(e)標的核酸を増幅して単位複製配列を含む増幅溶液を形成するステップであって、増幅がPCRによって行われるステップ
を含む方法。
【請求項4】
(i)全血試料が0.9mLであり;
(ii)全血試料から生成される粗血液溶解物が10μL~500μLの容量を有し、任意選択で全血試料から生成される粗血液溶解物が25μL~200μLの容量を有し、さらに任意選択で全血試料から生成される粗血液溶解物が50μLの容量を有し;
(iii)ステップ(b)の反応混合物が1%~70%の粗血液溶解物を含み、任意選択でステップ(b)の反応混合物が50%の粗血液溶解物を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(i)室温で適度にアルカリ性のpHが、pH8.7であり;及び/又は
(ii)緩衝液のpHが95℃でおよそ中性pHのままであるか又は中性pHよりも上のままであり、任意選択で緩衝液のpHが95℃で6.5~9.0であり、さらに任意選択で緩衝液のpHが95℃で7.0~8.5であり、さらに任意選択で緩衝液のpHが95℃で7.0~7.5であり、さらに任意選択で緩衝液のpHが95℃で7.2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
熱安定性核酸ポリメラーゼの終濃度が0.125~0.25ユニット/μLの範囲である、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(i)熱安定性核酸ポリメラーゼが熱安定性DNAポリメラーゼであり、任意選択で熱安定性DNAポリメラーゼが野生型熱安定性DNAポリメラーゼ又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼであり、任意選択で野生型熱安定性DNAポリメラーゼが、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、サーマス・フラブス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、テルムス属(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼ、又は古細菌ポリメラーゼであり、又は変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、Omni Taq、OmniTaq LA、Omni Taq 2、Omni Taq 3、KAPA Blood DNA polymerase、KAPA3G Plant DNA polymerase、KAPA 3G Robust DNA polymeraseからなる群より選択され、さらに任意選択で変異型熱安定性DNAポリメラーゼが、ホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼであり、任意選択でホットスタート熱安定性DNAポリメラーゼがHawk Z05であり;
(ii)熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で対象由来の細胞又は細胞破砕物の存在によって阻害され、任意選択で熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で全血の存在によって阻害され、さらに任意選択で熱安定性核酸ポリメラーゼが通常の反応条件下で1%又は8%(v/v)の全血によって阻害され、さらに任意選択で通常の反応条件が熱安定性DNAポリメラーゼの製造者によって推奨される反応条件であり;及び/又は
(iii)前記方法がマルチプレックス化PCR反応において1以上の付加的な標的核酸を増幅して1以上の付加的な単位複製配列を生成するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列を検出するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単位複製配列又は1以上の付加的な単位複製配列が、光学的測定、蛍光測定、質量測定、密度測定、磁性測定、クロマトグラフィー測定及び/又は電気化学的測定によって検出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
単位複製配列を検出するステップが、以下のステップ:
(a')増幅溶液の一部分に増幅溶液1ミリリットル当たり1×106~1×1013の磁性粒子を添加することによってアッセイ試料を調製するステップであって、磁性粒子が700nm~950nmの平均直径と、それらの表面上に結合性部分とを有し、結合性部分が単位複製配列の存在下で磁性粒子の凝集を変更するように作動するものであり、前記磁性粒子が1×109~1×1012mM-1s-1の粒子1つ当たりのT2緩和度を有するステップ、
(b')アッセイ試料をデバイス内の検出チューブに用意するステップであって、デバイスが、アッセイ試料を含む検出チューブを保持するウェルを規定する支持体を含み、1つ以上の磁石及びRFパルス列を使用して創出されたバイアス磁界へと混合物を曝露することによりもたらされる信号を検出するように構成されたRFコイルを有するステップ、
(c')アッセイ試料を、バイアス磁界及びRFパルス列へと曝露するステップ、
(d')ステップ(c')に続き、アッセイ試料によって生成された信号を測定し、それによって単位複製配列が存在するか又存在しないかを検出するステップ
を含み、
任意選択で、
(i)磁性粒子が、第1のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第1の集団、及び第2のプローブへとコンジュゲートさせた磁性粒子の第2の集団を含み、第1のプローブが単位複製配列の第1のセグメントに結合するように作動し、第2のプローブが単位複製配列の第2のセグメントに結合するように作動し、磁性粒子が単位複製配列の存在下で凝集物を形成し;
(ii)検出がステップ(a)の開始から4時間以内に起き、任意選択で検出がステップ(a)の開始から3時間以内に起きる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
病原体が真菌病原体、細菌病原体、原生動物病原体又はウイルス病原体であり、さらに任意選択で真菌病原体がカンジダ属(Candida)種である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)カンジダ属(Candida)種が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群より選択され;
(ii)細菌病原体が、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、アナプラズマ・ファゴサイトフイルム(Anaplasma phagocytophilum)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)からなる群より選択され、
任意選択で細菌病原体が(i)クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるか、又は(ii)ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、又はボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)であるか、又は(iii)原生動物病原体がバベシア・マイクロティ(Babesia microti)又は多型バベシア(Babesia divergens)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
全血試料中の1、3、5、又は10 コロニー形成ユニット(CFU)/mLの濃度の病原体種を検出することができる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
単位複製配列の検出に基づいて対象を診断するステップをさらに含み、単位複製配列の存在によって対象が病原体に関連する疾患を罹患していることが示される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。