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特開2024-123124AGE修飾細胞を除去するための、抗カルボキシメチルリシン抗体及び超音波
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123124
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】AGE修飾細胞を除去するための、抗カルボキシメチルリシン抗体及び超音波
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240903BHJP
   A61K 41/13 20200101ALI20240903BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K41/13
A61P43/00 105
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098654
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021507529の分割
【原出願日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】62/721,932
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.プルロニック
3.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】518126074
【氏名又は名称】シワ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】グルバー ルイス エス.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】AGE修飾細胞を死滅させる方法を提供する。
【解決手段】方法は、超音波を、対象に印加するステップ;及び抗AGE抗体を含む組成物を、対象に投与するステップを含む。超音波を印加するステップは、抗AGE抗体を投与するステップの前に、又はこの後でなされうる。AGE修飾細胞は、制限部位にありうる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AGE修飾細胞を死滅させる方法であって、
超音波を、対象に印加するステップ;及び
抗AGE抗体を含む組成物を、前記対象に投与するステップ;
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
「SIW01-028-WO_Sequence_Listing.txt」と名付けられ、2019年7月10日に作成
され、120キロバイトのファイルサイズを伴う、ASCIIテキストファイル内に含有され
る配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
老化細胞は、部分的に機能的であるか、又は非機能的な細胞であり、増殖停止の状態にある。老化とは、細胞の独特な状態をいい、バイオマーカーp16Ink4aの活性化、及びβ-ガラクトシダーゼの発現などのバイオマーカーと関連する。複製老化は、DNA損傷応答をもたらす、テロメアの短縮から生じる。老化はまた、細胞の損傷又はストレス(増殖因子による過剰刺激などのストレス)によっても引き起こされうる。
【0003】
終末糖化反応最終産物(AGE:advanced glycation end-product;また、AGE修飾タンパク質又は糖化反応最終産物とも称される)は、糖とタンパク質側鎖との非酵素反応から生じる(Ando, K. et al., Membrane Proteins of Human Erythrocytes AreModified by Advanced Glycation End Products during Aging in the Circulation, Biochem Biophys Res Commun., Vol. 258, 123, 125 (1999))。この過程は、還元糖とアミノ基との可逆反応で開始してシッフ塩基を形成し、これが進行して、共有結合性のアマドリ再配列産物を形成する。形成されると、アマドリ産物は、さらなる再配列を経て、AGEを産生する。糖尿病(DM:diabetes mellitus)及び酸化ストレスにより引き起こされる高血
糖症は、膜タンパク質の、この翻訳後修飾を促進する(Lindsey JB, et al., “Receptor
For Advanced Glycation End-Products (RAGE) and soluble RAGE (sRAGE): Cardiovascular Implications,” Diabetes Vascular Disease Research, Vol. 6(1), 7-14, (2009))。AGEはまた、他の方法からも形成されうる。例えば、終末糖化反応最終産物である、Nε-(カルボキシメチル)リシンは、脂質の過酸化反応及び糖化反応の両方の産物である。AGEは、糖尿病性合併症、炎症、網膜症、腎症、アテローム性動脈硬化、脳卒中、内皮細胞機能障害、及び神経変性障害を含む、複数の病理学的状態と関連している(Bierhaus A, “AGEs and their interaction with AGE-receptors in vascular diseaseand diabetes mellitus. I. The AGE concept,” CardiovascRes, Vol. 37(3), 586-600 (1998))。
【0004】
AGE修飾タンパク質はまた、老化細胞のマーカーでもある。当技術分野では、この糖化反応最終産物と老化との関連が周知である。例えば、Gruber, L. (国際公開第200
9/143411号パンフレット、2009年11月26日)、Ando, K. et al. (Membrane Proteins of Human Erythrocytes Are Modified by AdvancedGlycation End Products during Aging in the Circulation, BiochemBiophys Res Commun., Vol.258, 123,
125 (1999))、Ahmed, E.K. et al. (“Protein Modification and Replicative Senescence of WI-38 HumanEmbryonic Fibroblasts” Aging Cells, vol. 9, 252, 260(2010))、Vlassara, H. et al. (Advanced Glycosylation Endproducts on Erythrocyte Cell Surface InduceReceptor-Mediated Phagocytosis by Macrophages, J. Exp. Med., Vol. 166, 539, 545(1987));及びVlassara et al. (“High-affinity-receptor-mediatedUptake and Degradation of Glucose-modified Proteins: A Potential Mechanism forthe Removal of Senescent Macromolecules” Proc. Natl.Acad. Sci. USAI, Vol. 82, 5588, 5591 (1985))を参照されたい。さらに、Ahmed, E.K. et al.は、糖化反応最終
産物が、「細胞内タンパク質及び細胞外タンパク質に対する自発的損傷の主要原因のうちの1つ」であることを指し示す(Ahmed,E.K. et al.、上記、353頁を参照されたい)。したがって、糖化反応最終産物の蓄積は、老化及び機能の欠如と関連する。
【0005】
細胞の老化を引き起こす損傷又はストレスはまた、細胞内のミトコンドリアDNAに負の影響も与えて、これらにフリーラジカルを産生させ、これが、細胞内の糖と反応して、メチルグリオキサール(MG:methyl glyoxal)を形成する。続いてMGは、タンパク質又は脂質と反応して、終末糖化反応最終産物を発生させる。タンパク質成分であるリシンの場合、MGは、AGEであるカルボキシメチルリシンを形成するように反応する。
【0006】
ミトコンドリアDNAに対する損傷又はストレスはまた、細胞周期をブロックするタンパク質を産生するように細胞を誘導するDNA損傷応答も誘発する。これらのブロックするタンパク質は、細胞分裂を阻害する。損傷又はストレスの持続は、mTORの産生を引き起こし、今度はこれが、タンパク質の合成を活性化させ、タンパク質の分解を不活化させる。細胞のさらなる刺激は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)をもたらす。
【0007】
p16とは、S期(合成期)を阻害することにより、細胞周期の調節に関与するタンパク質である。p16は、老化時に活性化される場合もあり、又はDNA損傷、酸化ストレス、若しくは薬物への曝露など、多様なストレスに応答して活性化される場合もある。p16は、典型的に、細胞を、DNA損傷に応答して老化させ、細胞が過剰増殖状態に入ることを不可逆的に防止する腫瘍抑制タンパク質であると考えられている。しかし、一部の腫瘍は、p16の過剰発現を示すが、他の腫瘍は、発現の下方調節を示すので、この点には、ある程度の両義性が存在している。一部の腫瘍におけるp16の過剰発現が、不全性網膜芽細胞腫タンパク質(「Rb」:retinoblastoma protein)の結果生じることを示唆する証拠がある。p16は、S期を阻害するように、Rbに作用し、Rbは、p16を下方調節し、負のフィードバックを創出する。不全性Rbは、S期の阻害及びp16の下方調節のいずれにも失敗するので、過剰増殖細胞内の、p16の過剰発現を結果としてもたらす(Romagosa, C. et al., p16Ink4a overexpression in cancer: atumor suppressor
gene associated with senescence and high-grade tumors, Oncogene, Vol. 30,2087-2097 (2011))。
【0008】
老化細胞は、炎症促進性因子を含む、細胞間シグナル伝達に関与する多くの因子の分泌と関連し;これらの因子の分泌は、老化関連分泌現象又はSASP(senescence-associated secretory phenotype)と称されている(Freund, A. “Inflammatory networks duringcellular senescence: causes and consequences” TrendsMol Med. 2010 May;16(5):238-46)。クローン病及び関節リウマチなどの自己免疫疾患は、慢性炎症と関連する(Ferraccioli, G. etal. “Interleukin-1β andInterleukin-6 in Arthritis Animal Models: Roles in the Early Phase ofTransition from Acute to Chronic Inflammation and Relevance for HumanRheumatoid Arthritis” Mol Med. 2010 Nov-Dec; 16(11-12):
552-557)。慢性炎症は、病理部位近傍における、ベースラインより高レベルであるが、急性炎症において見出されるレベルより低レベルの炎症促進性因子の存在により特徴づけられうる。これらの因子の例は、TNF、IL-1α、IL-1β、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-23、CD2、CD3、CD20、CD22、CD52、CD80、CD86、C5補体タンパク質、BAFF、APRIL、IgE、α4β1インテグリン、及びα4β7インテグリンを含む。老化細胞はまた、IL-1β、IL-8、ICAM1、TNFAP3、ESM1、及びCCL2を含む、炎症において役割を伴う遺伝子も上方調節する(Burton, D.G.A. et al., “Microarray analysisof senescent vascular smooth muscle cells: a link to atherosclerosis andvascular calcification”, Experimental Gerontology, Vol.44, No. 10, pp. 659-665 (October 2009))
【0009】
老化細胞は、SASPの一部として、反応性酸素分子種(「ROS」:reactive oxygenspecies)を分泌する。ROSは、細胞の老化の維持において、重要な役割を果たすと
考えられる。ROSの分泌は、老化細胞が、近隣細胞内の老化を誘導するバイスタンダー効果を創出する:ROSは、p16の発現を活性化させ、老化をもたらすことが公知である、細胞の損傷そのものを創出する(Nelson, G., A senescent cell bystander effect:
senescence-induced senescence, Aging Cell, Vo. 11, 345-349 (2012))。p16/Rb経路は、ROSの誘導をもたらし、これは、タンパク質キナーゼCデルタを活性化させ、ROSをさらに増強する正のフィードバックループを創出し、細胞周期の不可逆的な停止の維持の一助となり;がん細胞を、ROSに曝露すれば、過剰増殖細胞内の細胞期の停止を誘導することにより、がんを治療するのに効果的でありうることが示唆されてさえいる(Rayess, H. et al.,Cellular senescence and tumor suppressor gene p16, Int J Cancer, Vol. 130,1715-1725 (2012))。
【0010】
近年の研究は、老化細胞を除去することの治療的利益を裏付けている。Mayo Clinic in
Rochester、Minnesotaにおけるインビボ動物研究は、老化細胞の消失についてのバイオ
マーカーを保有するトランスジェニックマウスにおける老化細胞の消失は、細胞の老化と関連する老化関連障害を遅延させることを見出した。脂肪組織内及び筋肉組織内の老化細胞の消失は、サルコペニア及び白内障の発症を実質的に遅延させ、骨格筋及び眼における老化指標を低減した(Baker, D. J. et al., “Clearance of p16Ink4a-positivesenescent cells delays ageing-associated disorders”,Nature, Vol. 479, pp. 232-236, (2011))。老化細胞の消失を誘導するように治療されたマウスは、筋線維の直径が、非治
療マウスと比較して大きいことが見出された。トレッドミル運動試験は、治療がまた、筋肉の機能も保存することも指し示した。老化細胞の除去のための、トランスジェニックマウスの持続的治療は、負の副作用を及ぼさず、細胞に依存する老化関連現象を、選択的に遅延させた。このデータは、老化細胞の除去が、有益な治療効果をもたらすことを裏付け、これらの利益が、有害作用を伴わずに達成されうることを示す。
【0011】
マウスにおける、さらなるインビボ動物研究は、老化細胞溶解剤を使用する、老化細胞の除去が、老化関連障害、アテローム性動脈硬化、及び肺線維症を治療することを見出した。高齢マウス又は早老マウスにおける、老化細胞溶解薬による短期治療は、複数の老化関連現象を緩和した(Zhu, Y. et al., “The Achilles’ heel of senescent cells: from transcriptome to senolyticdrugs”, Aging Cell, vol. 14, pp. 644-658 (2015))。老化細胞溶解薬による長期治療は、アテローム性動脈硬化が確立されたマウスにおいて、血管運動機能を改善し、血管内膜プラークの石灰化を低減した(Roos, C.M. et al.,
“Chronic senolytic treatmentalleviates established vasomotor dysfunction in aged or atherosclerotic mice”, Aging Cell (2016))。老化細胞溶解剤の投与による、
老化細胞の除去は、マウスにおける放射線誘導性肺線維症を回復させた(Pan, J. et al., “Inhibition of Bcl-2/xl with ABT-263 selectively kills senescent typeII pneumocytes and reverses pulmonary fibrosis induced by ionizing radiation inmice”,
International Journal of Radiation Oncology Biology Physics, Vol. 99, No. 2,pp. 353-361 (2017))。このデータは、老化細胞を除去することの利益を、さらに裏付けている。
【0012】
老化細胞は、AGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドなど、老化の細胞表面マーカーに結合する抗体を使用してもまた、特異的にターゲティングされ、除去されうる。抗体は、2つの重鎖と、2つの軽鎖とから構成されるY字形タンパク質である。Y字形の2つアームが、抗体の抗原結合性断片(Fab:fragment antigen-binding)領域を形成するのに対し、Y字形の基部又はテール部は、抗体のFc(結晶性断片:fragment crystallizable)領域を形成する。抗原への結合は、相補性決定領域(また、CDR又は超可変
領域としても公知である)のセットである、パラトープと称される場所にある、抗原結合性断片領域(Y字形のアームの先端部分)の末端部分で生じる。相補性決定領域は、異なる抗体間で異なり、所与の抗体に、所与の抗原との結合のための特異性を与える。抗体のFc(結晶性断片)領域は、抗原への結合の結果を決定し、補体カスケードを誘発するか、又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)を誘起することなどにより、免疫系と相互作用しうる。抗体ベースの免疫
療法は、抗体が結合する抗原を発現する細胞を、特異的にターゲティングし、これらを死滅させる一方で、抗原を発現しない細胞を回避するそれらの能力のために、特に、所望である。
【0013】
終末糖化反応最終産物(AGE:advanced glycation end-product)に結合する抗体(抗AGE抗体)は、サルコペニア(国際公開第2009/143411号パンフレット、米国公開第2016/0215043号明細書、米国公開第2016/0175413号明細書)、アテローム性動脈硬化(米国公開第2013/0243785号明細書)、炎症及び自己免疫障害(国際公開第2016/044252号パンフレット)、神経変性障害(国際公開第2017/181116号パンフレット)、並びにがん(国際公開第2017/143073号パンフレット)を含む、多様なAGE障害の治療において効果的であることが示されている。AGE修飾細胞に結合する抗体は、当技術分野で公知である。例は、Bucalaによる米国特許第5,702,704号明細書、及びAl-Abed et al.による米国特許第6,380,165号明細書において記載されている例を含む。抗AGE抗体は、市販されているが、市販されている抗体は、治療的使用の対象とならない。
【0014】
超音波は、細胞の特異的なターゲティングにおいてもまた効果的な、機械的技法である。超音波は、細胞構造の物理的差違に基づき、細胞を特異的にターゲティングする。超音波は、標的とする細胞又は標的組織を、熱的効果(加熱)により損傷又は破壊する場合もあり、キャビテーション、マイクロストリーミング、及び音響流など、非熱的効果により損傷又は破壊する場合もある。非破壊的超音波もまた、炎症過程との相互作用など、治療的利益をもたらしうる(Aviles Jr., F. et al., “Contactlow-frequency ultrasound used to accelerate granulation tissue proliferationand rapid removal of nonviable tissue in colonized wounds: a case study”, Ostomy Wound Management, available online atwww.o-wm.com/content/contact-low-frequency-ultrasound-used-accelerate-granulation-tissue-proliferation-and-rapid(2011))。周波数、強度、波長、速度
、波形、連続性(パルス状印加又は定常印加)、及び印加の持続時間などの超音波パラメータは、特異的治療効果をもたらすように変動させうる。
【0015】
超音波は、がん性細胞及び腫瘍のターゲティングにおいて、特に、効果的である。悪性細胞は、超音波による損傷を、正常な健常細胞より受けやすい(Lejbkowicz, F. etal.,
“Distinct sensitivity of normal and malignant cells toultrasound in vitro”, Environmental HealthPerspectives, Vol. 105, Supplement 6, pp. 1575-1578 (1997)
)。低強度の超音波は、音響力学療法(感作分子と共に施される超音波)、超音波媒介型化学療法、音響穿孔、超音波媒介型遺伝子送達、及び抗血管超音波療法などの形態でがんを治療するのに、治療的に使用されうる(Wood, A. K. W. et al., “A review of low-intensityultrasound for cancer therapy”, Ultrasound in Medicine& Biology, Vol.
41, No. 4, pp. 905-928 (2015))。
【0016】
超音波は、多様な種類のがんに対して効果的であることが示されている。1.1MHzの周波数における、連続超音波の印加は、ヒト白血病細胞において、強度依存的な細胞膜の損傷及び細胞生存率の低下を引き起こす(Wang, P. et al., “Membrane damage effect ofcontinuous wave ultrasound on K562 human leukemia cells”, Journal of Ultrasound Medicine, Vol. 31, pp. 1977-1986 (2012))。低周波数及び低強度の超音波は、
インビトロ及びインビボのいずれの神経膠腫細胞においても、アポトーシスを誘導しうる(Zhang, Z. etal., “Low frequency and intensity ultrasound induces apoptosisof brain glioma in rats mediated by caspase-3 Bcl-2, and survivin”, Brain Research, Vol. 1473, pp. 25-34 (2012))。5-アミノレブリン酸、プロトポルフィリンIX、
及びタラポルフィンナトリウムを、音響増感剤として含む、ポルフィリン誘導体を使用する、音響力学療法は、インビトロの悪性神経膠腫細胞に対して、細胞毒性である(Endo, S. et al., “Porphyrinderivatives-mediated sonodynamic therapy for malignant gliomas in vitro”, Ultrasound in Medicine and Biology, Vol. 41, No. 9, pp. 2458-2465(2015))。
【0017】
細胞及び組織を、直接損傷することに加えて、超音波は、他の治療剤と組み合わせて施されうる。超音波媒介型キャビテーションは、低分子、抗体、又はウイルスベース薬の活性を減少させない(Myers, R. et al., “Ultrasound-mediatedcavitation does not decrease the activity of small molecule, antibody orviral-based medicines”, International Journal ofNanomedicine, Vol. 13, pp. 337-349 (2018))。超音波は、治療剤の、標的細胞又は標的組織への送達を、容易とするか、又は増強するのに使用されうる。超音波は、リポソームナノ粒子の蓄積、及び上皮腫瘍内の腫瘍透過性を増大させる(Watson, K. D. et al., “Ultrasound increasesnanoparticle delivery by reducing intratumoralpressure and increasing transport in epithelial and epithelial-mesenchymaltransition tumors”, Cancer Research, Vol. 72, No. 6,pp. 1485-1493 (2012)
)。同様に、音響力学療法は、がん細胞に特異的なタンパク質で修飾された二酸化チタンナノ粒子の、標的とする細胞への取込みを増大させる(Ninomiya, K. et al., “Targeted sonodynamictherapy using protein-modified TiO2 nanoparticles”,Ultrasonics Sonochemistry, Vol. 19, pp. 607-614 (2012))。
【0018】
超音波はまた、抗体など、大型の治療剤の送達及び活性も増強する。超音波は、抗原の、固定化された抗体への結合を、劇的に加速化させる(Chen, R. et al., “Ultrasound-acceleratedimmunoassay, as exemplified by enzyme immunoassay of choriogonadotropin”, Clinical Chemistry, Vol. 30, No. 9, pp. 1446-1451 (1984))。パルス状高強
度焦点化超音波は、マウスのIgG1κモノクローナル抗体の、ヒト類表皮腫瘍内の送達を増強する(Khaibullina, A. etal., “Pulsed high-intensity focused ultrasound enhancesuptake of radiolabeled monoclonal antibody to human epidermoid tumor in nudemice”, Journal of Nuclear Medicine, Vol. 49, pp.295-302 (2008))。微小気
泡と組み合わせて施されるパルス状超音波は、マウスモデルにおいて、抗表皮増殖因子受容体(EGFR:epidermalgrowth factor receptor)抗体の、神経膠腫細胞への送達を増強する(Liao, A-H.et al., “Enhanced therapeutic epidermal growth factorreceptor (EGFR) antibody delivery via pulsed ultrasound with targetingmicrobubbles for glioma treatment”, Journal of Medicaland Biological Engineering, Vol. 35, pp. 156-164 (2015))。低強度の超音波は、インビトロにおいて、セツキシマブ(抗EGFR抗体)の、ヒト頭頸部がん細胞の殺滅に対する抗がん活性を増強する(Masui, T. et
al., “Low-intensity ultrasound enhances the anticanceractivity of cetuximab in human head and neck cancer cells”, Experimental and Therapeutic Medicine, Vol. 5, pp. 11-16 (2013))。
【0019】
薬物療法の著明な限界は、「制限部位」として公知である、体内の、ある特定の領域への薬物送達である。治療剤を、脳、関節、前立腺、精巣、及び眼などの制限部位に送達することは、困難又は不可能である。アクセスは、血液脳関門、血液精巣関門、血液眼関門、血液網膜関門又は血液房水関門などの血液組織関門のために制限的でありうる。例えば、血液脳関門は、脳及び中枢神経系を、循環血液から分離することから、治療剤が、脳にアクセスする能力を制限する。アクセスはまた、関節へのアクセスを制限する、滑膜などの組織によっても制限されうる。滑膜は、滑膜内関節腔内の、大半の治療剤を濾過する(Allen, K. D. et al., “Evaluatingintra-articular drug delivery for the treatment of osteoarthritis in a ratmodel”, Tissue Engineering: Part B, Vol. 16, No. 1, pp.81-92 (2010))。抗体など、大型の治療剤を、制限部位に送達することは、特に、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2009/143411号パンフレット
【特許文献2】米国公開第2016/0215043号明細書
【特許文献3】米国公開第2016/0175413号明細書
【特許文献4】米国公開第2013/0243785号明細書
【特許文献5】国際公開第2016/044252号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2017/181116号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2017/143073号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,702,704号明細書
【特許文献9】米国特許第6,380,165号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Aviles Jr., F. et al., “Contact low-frequency ultrasound used to accelerate granulationtissue proliferation and rapid removal of nonviabletissue in colonized wounds: a case study”, Ostomy WoundManagement, available online atwww.o-wm.com/content/contact-low-frequency-ultrasound-used-accelerate-granulation-tissue-proliferation-and-rapid(2011)
【非特許文献2】Lejbkowicz, F. et al., “Distinct sensitivity of normaland malignant cells to ultrasound in vitro”,Environmental Health Perspectives, Vol. 105, Supplement 6, pp. 1575-1578 (1997)
【非特許文献3】Wood, A. K. W. et al., “A review of low-intensity ultrasound for cancer therapy”, Ultrasound in Medicine & Biology, Vol. 41, No. 4, pp. 905-928(2015)
【非特許文献4】Wang, P. et al., “Membranedamage effect of continuous waveultrasound on K562 human leukemia cells”, Journal ofUltrasound Medicine, Vol.31, pp. 1977-1986 (2012)
【非特許文献5】Zhang, Z. et al., “Lowfrequency and intensity ultrasound induces apoptosis of brain glioma in ratsmediated by caspase-3 Bcl-2, and survivin”, Brain Research, Vol. 1473, pp. 25-34 (2012)
【非特許文献6】Endo, S. et al., “Porphyrinderivatives-mediated sonodynamic therapy for malignant gliomas in vitro”, Ultrasound in Medicine and Biology, Vol. 41, No. 9, pp. 2458-2465(2015)
【非特許文献7】Myers, R. et al., “Ultrasound-mediatedcavitation does not decrease the activity of small molecule, antibody orviral-based medicines”, International Journal ofNanomedicine, Vol. 13, pp. 337-349 (2018)
【非特許文献8】Watson, K. D. et al., “Ultrasound increases nanoparticle delivery by reducing intratumoral pressure and increasing transport inepithelial and epithelial-mesenchymal transition tumors”, Cancer Research, Vol. 72, No. 6,pp. 1485-1493 (2012)
【非特許文献9】Ninomiya, K. et al., “Targeted sonodynamic therapy using protein-modified TiO2nanoparticles”, Ultrasonics Sonochemistry, Vol. 19, pp.607-614 (2012)
【非特許文献10】Chen, R. et al., “Ultrasound-acceleratedimmunoassay, as exemplified by enzyme immunoassay of choriogonadotropin”, Clinical Chemistry, Vol. 30, No. 9, pp. 1446-1451 (1984)
【非特許文献11】Khaibullina, A. et al., “Pulsed high-intensity focusedultrasound enhances uptake of radiolabeled monoclonal antibody to humanepidermoidtumor in nude mice”, Journal of Nuclear Medicine, Vol.49, pp. 295-302 (2008)
【非特許文献12】Liao, A-H. et al., “Enhancedtherapeutic epidermal growthfactor receptor (EGFR) antibody delivery via pulsed ultrasound with targetingmicrobubbles for glioma treatment”, Journal of Medicaland Biological Engineering, Vol. 35, pp. 156-164 (2015)
【非特許文献13】Masui, T. et al., “Low-intensityultrasound enhances the anticancer activity of cetuximab in human head and neckcancer cells”, Experimental and Therapeutic Medicine,Vol. 5, pp. 11-16 (2013)
【非特許文献14】Allen, K. D. et al., “Evaluating intra-articular drug delivery for the treatment ofosteoarthritis in a rat model”, Tissue Engineering PartB Reviews, Vol. 16, No. 1, pp. 81-92 (2010)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様では、本発明は、AGE修飾細胞を死滅させる方法であって、超音波を、対象印加する(apply)ステップ;及び抗AGE抗体を含む組成物を、対象に投与するステ
ップを含む方法である。
【0023】
第2の態様では、本発明は、組織培養物中又は細胞培養物中のAGE修飾細胞を死滅させる方法であって、超音波を、組織培養物又は細胞培養物に印加するステップ;及び抗AGE抗体を含む組成物を、組織培養物又は細胞培養物に投与するステップを含む方法である。
【0024】
第3の態様では、本発明は、AGE障害を治療する方法であって、超音波を、AGE障害を有する対象に印加するステップ;及び抗AGE抗体を含む組成物を、対象に投与するステップを含む方法である。
【0025】
第4の態様では、本発明は、神経膠腫に罹患している対象を治療する方法であって、対象の血液脳関門を破壊するステップ、その後、抗AGE抗体を含む組成物を、対象に投与するステップを含む方法である。
【0026】
第5の態様では、本発明は、骨関節炎に罹患している対象を治療する方法であって、超音波を、罹患関節に印加するステップ、その後、抗AGE抗体を含む組成物を、対象に投与するステップを含む方法である。組成物は、静脈内投与される。
【0027】
第6の態様では、本発明は、AGE障害を治療する方法であって、微小気泡にコンジュゲートした抗AGE抗体を、対象に投与するステップ;及び超音波を、対象に印加するステップを含む方法である。
【0028】
第7の態様では、本発明は、微小気泡にコンジュゲートした抗AGE抗体を含む組成物である。
【0029】
第8の態様では、本発明は、AGE障害の治療における使用のための、微小気泡にコンジュゲートした抗AGE抗体を含む組成物である。
【0030】
第9の態様では、本発明は、AGE障害を治療するための医薬の製造のための、微小気泡にコンジュゲートした抗AGE抗体の使用である。
【0031】
定義
「制限部位(restricted site)」という用語は、治療剤がアクセスすることが困難な
、ヒト体内の場所を意味する。制限部位の例は、脳、関節、眼、精巣、及び前立腺を含む。
【0032】
「ペプチド」という用語は、2~50アミノ酸から構成される分子を意味する。
【0033】
「タンパク質」という用語は、51アミノ酸以上から構成される分子を意味する。
【0034】
「終末糖化反応最終産物」、「AGE」、「AGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチド」、及び「糖化反応最終産物」という用語は、糖が、さらに再配列され、不可逆的架橋を形成するタンパク質側鎖と反応する結果として形成される、修飾タンパク質又は修飾ペプチドを指す。この過程は、還元糖とアミノ基との可逆反応であって、シッフ塩基を形成する可逆反応で始まり、これが進行して、共有結合性のアマドリ再配列産物を形成する。形成されると、アマドリ産物は、さらなる再配列を経て、AGEを産生する。AGE修飾タンパク質、及びAGE修飾タンパク質に対する抗体については、Bucalaによる米国特許第5,702,704号明細書(「Bucala」)、及びAl-Abedet al.による米国特許第6,380,165号明細書(「Al-Abed」)において記載されている。糖化アルブミン
上で見出されるN-デオキシフルクトシルリシンなど、AGEを形成するのに必要な再配列を経ない、糖化タンパク質又は糖化ペプチドは、AGEではない。AGEは、2-(2-フルオイル)-4(5)-(2-フラニル)-1H-イミダゾール(「FFI」:2-(2-furoyl)-4(5)-(2-furanyl)-1H-imidazole);5-ヒドロキシメチル-1-アルキルピロール-2-カルバルデヒド(「ピラリン」);非蛍光性のモデルAGEである、1-アルキル-2-ホルミル-3,4-ジグリコシルピロール(「AFGP」:1-alkyl-2-formyl-3,4-diglycosyl pyrrole);カルボキシメチルリシン;カルボキシエチルリシン;及び
ペントシジンなどのAGE修飾(また、AGEエピトープ又はAGE部分とも称される)の存在により同定されうる。別のAGEである、ALIについては、Al-Abedにおいて記
載されている。
【0035】
「AGE抗原」という用語は、細胞のAGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドに対する免疫応答を誘発する物質を意味する。細胞のAGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドに対する免疫応答は、AGEが修飾されていないタンパク質又はペプチドに対する抗体の産生を含まない。
【0036】
「細胞上のAGE修飾タンパク質に結合する抗体」、「AGE修飾細胞に結合する抗体」、「抗AGE抗体」、又は「AGE抗体」とは、好ましくは、抗体の定常領域を含み、AGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドが、通常、細胞、好ましくは、哺乳動物細胞、より好ましくは、ヒト細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ウマ細胞、ラクダ科動物細胞(例えば、ラクダ細胞又はアルパカ細胞)、ウシ細胞、ヒツジ細胞、ブタ細胞、又はヤギ細胞の表面上に結合していることが見出される、タンパク質又はペプチドである、AGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドに結合する、抗体、抗体断片、又は他のタンパク質若しくはペプチドを意味する。「細胞上のAGE修飾タンパク質に結合する抗体」、「AGE修飾細胞に結合する抗体」、「抗AGE抗体」、又は「AGE抗体」は、AGEが修飾されたタンパク質又はペプチド、及びAGEが修飾されていない、同じタンパク質又はペプチドの両方に、同じ特異性及び選択性で結合する(すなわち、AGE修飾の存在は、結合を増大させない)、抗体又は他のタンパク質を含まない。AGE修飾アルブミンは、アルブミンは、通常、細胞の表面上に結合していることが見出されるタンパク質ではないため、細胞上のAGE修飾タンパク質ではない。「細胞上のAGE修飾タンパク質に結合する抗体」、「AGE修飾細胞に結合する抗体」、「抗AGE抗体」、又は「AGE抗体」は、細胞の除去、破壊、又は死をもたらす抗体だけを含む。また、例えば、毒素、薬物、又は他の化学物質若しくは粒子にコンジュゲートした抗体も含まれる。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体であるが、ポリクローナル抗体もまた、可能である。
【0037】
「老化細胞」という用語は、増殖停止の状態にあり、p16Ink4aの活性化、又は老化と関連するβ-ガラクトシダーゼの発現など、1又は2以上の、老化のバイオマーカーを発現する細胞を意味する。また、ALS患者の筋肉内で見出される、一部のサテライト細胞など、インビボでは増殖しないが、ある特定の条件下にあるインビトロでは増殖しうる、1又は2以上の、老化のバイオマーカーを発現する細胞も含まれる。
【0038】
「老化細胞溶解剤」という用語は、老化細胞を破壊する、分子量900ダルトン未満の低分子を意味する。「老化細胞溶解剤」という用語は、抗体、抗体コンジュゲート、タンパク質、ペプチド、又は生物療法を含まない。
【0039】
「AGE障害」という用語は、終末糖化反応最終産物(AGE)、AGE修飾細胞、又は細胞の老化と関連する、病理学的な状態、疾患、又は障害を意味する。
【0040】
「バリアント」という用語は、特異的に同定された配列と異なり、1又は2以上のヌクレオチド、タンパク質又はアミノ酸の残基が、欠失するか、置換されるか、又は付加された、ヌクレオチド配列、タンパク質配列、又はアミノ酸配列を意味する。バリアントは、天然に存在する対立遺伝子バリアントの場合もあり、天然に存在しないバリアントの場合もある。同定された配列のバリアントは、同定された配列の機能的特徴の、一部又は全部を保持しうる。
【0041】
「配列同一性パーセント(%)」という用語は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列をアライメントし、必要な場合に、ギャップを導入し、保存的置換を、配列同一性の一部と考えずにおいた後で、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一な、候補配列のアミノ酸残基の百分率として規定される。アミノ酸配列の同一性パーセントを決定することを目的とするアライメントは、BLASTソフトウェア、BLAST-2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、又はMegalign(DNASTAR社製)ソフトウェアなど、公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、多様な方式で達成されうる。好ましくは、配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムである、ALIGN-2を使用して生成される
。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.社(South San Francisco、CA)から公開されているか、又は米国著作権局において、ユーザー文書と共に保管さ
れ、米国著作権登録番号第TXU510087号の下に登録されている、ソースコードからコンパ
イルされうる。ALIGN-2プログラムは、デジタル式のUNIXV4.0Dを含む、UNIXオペレーテ
ィングシステム上の使用のためにコンパイルされるものとする。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定され、変動しない。
【0042】
ALIGN-2が、アミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列
Aの、所与のアミノ酸配列Bに照らした、これとの、又はこれに対する配列同一性%(これは、代替的に、所与のアミノ酸配列Bに照らした、これとの、又はこれに対する、ある特定のアミノ酸配列の同一性%を有するか、又は含む、所与のアミノ酸配列Aとしても言及される)は、以下:100×比X/Y[式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2により、このプログラムのAとBとのアライメントにおいて、同一なマッチとして評定されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である]の通りに計算される
。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Aの、Bに照らした、アミノ酸配列の同一性%は、Bの、Aに照らした、アミノ酸配列の同一性%と等しくない。そうでないことが具体的に言明されない限りにおいて、本明細書で使用される、全てのアミノ酸配列の同一性%値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】抗体結合時間の時間と対比した応答についてのグラフである。
図2A】抗AGE抗体の、ヒト膵がんPANC-1細胞株に由来する膵がん細胞への結合を例示する図である。
図2B】抗AGE抗体の、ヒト膵がんPANC-1細胞株に由来する膵がん細胞への結合を例示する図である。
図2C】抗AGE抗体の、ヒト膵がんPANC-1細胞株に由来する膵がん細胞への結合を例示する図である。
図2D】抗AGE抗体の、ヒト膵がんPANC-1細胞株に由来する膵がん細胞への結合を例示する図である。
図3】抗AGE抗体の、HTB-14神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞への結合を例示する図である。
図4A】抗AGE抗体の、HTB-15神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞への結合を例示する図である。
図4B】抗AGE抗体の、HTB-15神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞への結合を例示する図である。
図4C】抗AGE抗体の、HTB-15神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞への結合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
超音波は、制限部位への一時的なアクセスを可能としうることが発見されている。微小気泡の投与と組み合わせた、診断用超音波の印加は、血液脳関門を破壊する(Zhao, B. et al., “Blood-brain barrierdisruption induced by diagnostic ultrasound combined with microbubbles in mice”, Oncotarget, Vol. 9, No. 4, pp. 4897-4914(2018))。微小気泡の存在下で印加された焦点化超音波は、ラットにおいて、血液脳関門を破壊して、化学療法薬である1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素(BCNU:1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea又はカルムスチン)及びドキソルビシンの、神経膠芽腫への送達を可能とする(Liu, H-L. et al., “Blood-brain barrierdisruption
with focused ultrasound enhances delivery of chemotherapeutic drugs forglioblastoma treatment”, Radiology, Vol. 255, No. 2,pp. 415-425 (2010);Sun, T. et al., “Closed-loop control of targeted ultrasound drug delivery across theblood-brain/tumor barriers in a rat glioma model”,Proceedings of the National Academy
of Sciences, pp. 1-10 (2017))。微小気泡の存在下で印加された超音波は、血液脳関
門を破壊して、単鎖抗体であり、抗EGFRモノクローナル抗体であるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))を、マウスの脳にアクセスさせることが可能である(Nisbet, R. M. et al., “Combined effects ofscanning ultrasound and a tau-specific single
chain antibody in a tau transgenic mouse model”, Brain,Vol. 140, pp. 1220-1230 (2017);Kinoshita, M. et al., “Noninvasive localized delivery of Herceptin to
the mouse brain by MRI-guided focused ultrasound-induced blood-brain barrierdisruption”, Proceedings of the National Academy ofSciences, Vol. 103, No. 31, pp. 11719-11723 (2006))。これらの研究は、超音波の印加及び抗体の投与を含む組合せ
療法が、制限部位における、細胞及び組織をターゲティングするための効果的な治療レジメンであることを示唆する。
【0045】
多数のAGE障害が、制限部位に影響を及ぼす。例えば、近年の研究は、細胞の老化と神経膠腫との関連を同定している。神経膠腫細胞は、インビトロにおいて、自発的に老化する(Stoczynska-Fidelus,E., et al., “Spontaneous in vitro senescence of gliomacells confirmed by an antibody against IDH1R132H”,Anticancer Research, Vol. 34, pp. 2859-2868 (2014))。同様に、終末糖化反応最終産物は、インビトロの神経膠腫細胞内で、亜硝酸塩蓄積の、用量依存的増大を引き起こす結果として、一酸化窒素の放出の増大、及び対応する酸化損傷の増大をもたらす(Lin, C-H. et al., “Advanced glycosylationend products induce nitric oxide synthase expression in C6 glioma cells
involvement of a p38 MAP kinase-dependent mechanism”,Life Sciences, Vol. 69, pp. 2503-2515 (2001))。加えて、神経膠腫の侵襲性は、細胞増殖活性の低減、老化の徴候も伴う(Berens, M. E. et al., “‘...those leftbehind.’ Biology and oncology
of invasive glioma cells”, Neoplasia, Vol. 1, No. 3,pp. 208-219 (1999))。細
胞の老化と神経膠腫との一般的連関を同定することにより、本出願は、終末糖化反応最終産物に結合する抗体が、神経膠腫に効果的な療法であることを示す。超音波の印加は、血液脳関門を破壊し、抗AGE抗体が、神経膠腫細胞をターゲティングし、死滅させることを可能とするのに使用されうる。
【0046】
本発明は、超音波と抗AGE抗体との組合せを使用して、制限部位内の、AGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチドを発現する細胞(AGE修飾細胞)を、特異的にターゲティングし、死滅させる。超音波は、制限部位へのアクセスをもたらし、次いで、これは、抗AGE抗体が、制限部位内のAGE修飾細胞にアクセスすることを可能とする。超音波は、微小気泡などの造影剤を伴うか、又は伴わずに、制限部位へのアクセスをもたらす。
【0047】
超音波と抗AGE抗体との組合せはまた、AGE修飾細胞の破壊を増強するのにも使用されうる。超音波は、抗体の、標的抗原への結合を増大させ、これは、抗AGE抗体の、AGE修飾細胞への結合を改善するであろう。結合が起きると、超音波はまた、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)機構を介する、細胞の殺滅も増強する。加えて、抗AGE抗体が結合したAGE修飾細胞は、超音波による破壊を、より受けやすい。超音波が炎症過程に干渉する能力はまた、細胞老化の鍵となる駆動因子である炎症も軽減するであろう。超音波と抗AGE抗体との組合せは、老化細胞などのAGE修飾細胞の殺滅において、相乗作用的であり、相加効果より大きな効果をもたらす。これらの細胞殺滅効果の増強は、体内の任意の場所又はインビトロ環境において実現されうる。
【0048】
AGE修飾細胞を死滅させる方法は、超音波を印加するステップ、及び糖化反応最終産物に結合する抗体(抗AGE抗体)を投与するステップを含む。超音波は、制限部位へのアクセスを容易とするように、抗体が投与される前に印加されうる。代替的に、超音波は、抗体が投与された後及び/又は投与時に印加される場合もある。
【0049】
AGE修飾細胞は、体内の任意の部分に見出されうる。好ましくは、AGE修飾細胞は、制限部位にある。制限部位の例は、脳、関節、眼、精巣、及び前立腺を含む。代替的に、AGE修飾細胞は、組織培養物又は細胞培養物など、インビトロ環境にありうる。
【0050】
超音波は、20,000Hz~15MHzの周波数で印加されうる。好ましくは、超音波は、0.6MHz、0.7MHz、0.8MHz、0.9MHz、1.0MHz、1.5MHz、2.0MHz、2.5MHz、3.0MHz、3.5MHz、4.0MHz、4.5MHz、5.0MHz、5.1MHz、5.2MHz、5.3MHz、5.4MHz、5.5MHz、5.6MHz、5.7MHz、5.8MHz、5.9MHz、6.0MHz、6.1MHz、6.2MHz、6.3MHz、6.4MHz、6.5MHz、6.6MHz、6.7MHz、6.8MHz、6.9MHz、7.0MHz、7.5MHz、8.0MHz、8.5MHz、9.0MHz、及び9.5MHzを含む、0.5~10MHzの周波数で印加される。
【0051】
超音波は、0.01~5W/cmの強度で印加されうる。好ましくは、超音波は、0
.06W/cm、0.07W/cm、0.08W/cm、0.09W/cm、0.1W/cm、0.2W/cm、0.3W/cm、0.4W/cm、0.5W/cm、0.6W/cm、0.7W/cm、0.8W/cm、0.9W/cm、1.0W/cm、1.1W/cm、1.2W/cm、1.3W/cm、1.4W/cm、1.5W/cm、1.6W/cm、1.7W/cm、1.8W/cm、1.9W/cm、2.0W/cm、2.5W/cm、3.0W/cm、3.5W/cm、4.0W/cm、及び4.5W/cmを含む、0.05~5W/cmの強度で印加される。
【0052】
超音波は、連続超音波の場合もあり、パルス状超音波の場合もある。好ましくは、超音波は、パルス状超音波である。パルス状超音波は、0.01~20kHzのパルス反復周波数(PRF:pulse repetition frequency)を有しうる。好ましくは、パルス状超音波は、0.06kHz、0.07kHz、0.08kHz、0.09kHz、0.1kHz、0.2kHz、0.3kHz、0.4kHz、0.5kHz、1.0kHz、1.5kHz、2.0kHz、3.0kHz、3.5kHz、4.0kHz、4.5kHz、5.0kHz、5.5kHz、6.0kHz、6.5kHz、7.0kHz、7.5kHz、8.0kHz、8.5kHz、9.0kHz、及び9.5kHzを含む、0.05~10kHzのPRFを有する。
【0053】
超音波は、毎日1回又は2回以上印加されうる。例えば、超音波は、毎日1~100回印加されうる。超音波は、1時間当たり1回(毎日24回)など、規則的な間隔で印加される場合もあり、1時間当たり60回など、一定時間内に2回以上印加される場合もある。毎週1回又は毎月1回を含む、低頻度の施行もまた可能である。
【0054】
超音波は、焦点化される場合もあり、非焦点化される場合もある。焦点化超音波は、典型的に、非焦点化超音波より、大きな強度を送達する。
【0055】
波長、速度、波形、印加の持続時間、パルスの持続時間、空間におけるパルス長及びパルス占有率など、他の超音波パラメータも、特異的治療効果をもたらすように変動させうる。好ましくは、超音波パラメータは、AGE修飾細胞をターゲティングする一方で、他の細胞を回避するように選択される。
【0056】
適切な超音波パラメータは、単純な実験により決定されうる。細胞は、患者に由来する試料中、又は細胞培養物中など、単離されうる。硬化又は弾力性の変化など、細胞間の物理的差違は、標的細胞の同定を可能とする(例えば、米国特許第6,067,859号明細書及び米国特許第7,751,057号明細書を参照されたい)。超音波は、所望の転帰が達成されるまで、細胞に印加することができる。細胞は、超音波の効果を決定するように、超音波印加の前及び後に観察する。1又は2以上の超音波パラメータを変動させる場合があり、超音波を再度印加することができる。次いで、細胞を観察して、改変された超音波パラメータの効果を決定する。所望の治療効果を達成するまで、この工程を反復する。例えば、AGE修飾細胞を単離し、超音波を印加して、細胞の破壊を結果としてもたらす、共鳴調和周波数を決定することができる。超音波の周波数は、共鳴調和周波数を決定するまで、漸増させることができる。適切な超音波パラメータの決定は、超音波は、予測可能な結果をもたらす、十分に研究された機械的技法であるので、当業者に単純な工程である。
【0057】
造影剤は、超音波を印加する前に投与されていてもよく、同時に投与されてもよい。好ましい造影剤は、ガス入り微小気泡を含む。微小気泡は、アルブミン(ALBUNEX(登録商
標)、BISPHERE(登録商標)、ECHOGEN(登録商標)、及びOPTISON(登録商標))、リン脂質(DEFINITY(登録商標)、IMAGENT(登録商標)、MICROMARKER(登録商標)、SONAZOID(登録商標)、SONOVUE(登録商標)、及びTARGESTAR(登録商標))、糖脂質(LEVOVIST(登録商標))、又はPLGA/リン脂質(IMAGIFY(登録商標))から構成される外殻を
有しうる。ナノメートルスケールの直径を有する微小気泡はまた、ナノ気泡とも称される。造影剤は、超音波が印加される場所の近傍に投与されうる。
【0058】
微小気泡はまた、超音波による薬物送達にも使用されうる。治療剤は、微小気泡の外側にコンジュゲートされる場合もあり、微小気泡の内側に、ガス入りで含有される場合もある。微小気泡は、ターゲティングリガンドにコンジュゲートされうる。好ましいターゲティングリガンドは、治療剤としてもまた作用しうる、モノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、それらの免疫原性を低減するように、好ましくは、ヒト化される(又は治療される種に適切であるように、同様に改変される)。特に、好ましいターゲティングリガンドは、ヒト化抗AGEモノクローナル抗体である。超音波による薬物送達のための、他の薬物担体は、リポソーム及びミセルを含む。リポソーム及びミセルもまた、抗AGE抗体などのモノクローナル抗体にコンジュゲートされうる。
【0059】
超音波は、任意の適切な超音波振動子を使用して発生させて印加しうる。好ましい超音波振動子は、超音波プローブである。超音波の、体内への透過を改善するように、水ベースのゲルが、治療領域に塗布されうる。代替的に、超音波発生器は、制限部位へのアクセスを、さらに容易とするように、体内に植え込まれる場合もある(例えば、U.S. Pat. No. 8,977,361を参照されたい)。
【0060】
抗AGE抗体は、FFI、ピラリン、AFGP、ALI、カルボキシメチルリシン(CML:carboxymethyllysine)、カルボキシエチルリシン(CEL:carboxyethyllysine
)、及びペントシジンなど、AGE修飾を有する、1又は2以上のAGE修飾タンパク質又はAGE修飾ペプチド、及びこのような抗体の混合物に結合しうる。好ましくは、抗体は、ヒト;ネコ、イヌ、及びウマを含む愛玩動物;並びにラクダ(又はアルパカ)、ウシ(ウシ)、ヒツジ、ブタ、及びヤギなど、商業的に重要な動物に対して非免疫原性であるなど、それが使用される動物に対して非免疫原性である。より好ましくは、抗体は、ヒト化抗体(ヒトに対する)、ネコ化抗体(ネコに対する)、イヌ化抗体(イヌに対する)、ウマ化抗体(ウマに対する)、ラクダ科動物化抗体(ラクダ又はアルパカに対する)、ウシ化抗体(ウシに対する)、ヒツジ化抗体(ヒツジに対する)、ブタ化抗体(ブタに対する)、又はヤギ化抗体(ヤギに対する)など、抗体に対する免疫応答を低減するように、動物の抗体と同種の定常領域を有する。最も好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ネコ抗体、イヌ抗体、ウマ抗体、ラクダ抗体、ウシ抗体、ヒツジ抗体、ブタ抗体、又はヤギ抗体など、それが使用される動物の抗体と同一(可変領域を除き)である。これらの動物に対する抗体の定常領域及び他の部分の詳細については、下記に記載される。抗体は、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もある。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0061】
好ましい抗AGE抗体は、カルボキシメチルリシンAGE修飾又はカルボキシエチルリシンAGE修飾を呈する、タンパク質又はペプチドに結合する抗AGE抗体を含む。カルボキシメチルリシン(また、N(イプシロン)-(カルボキシメチル)リシン、N(6)-カルボキシメチルリシン、又は2-アミノ-6-(カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸としても公知である)、及びカルボキシエチルリシン(また、N-イプシロン-(カルボキシエチル)リシンとしても公知である)は、酸化ストレス及び化学物質の糖化反応の結果として、タンパク質又はペプチド及び脂質において見出される。CML改変タンパク質又はCML改変ペプチド及びCEL改変タンパク質又はCEL改変ペプチドは、様々な細胞上で発現される受容体である、RAGEにより認識される。CML及びCELについては、十分に研究されており、CML関連製品及びCEL関連製品は市販されている。例えば、Cell Biolabs, Inc.社は、CML-BSA抗原、CMLポリクローナル抗体、CML免疫ブロットキット、及びCML競合ELISAキット(www.cellbiolabs.com/cml-assays)のほか、CEL-BSA抗原及びCEL競合ELISAキット(www.cellbiolabs.com/cel-n-epsilon-carboxyethyl-lysine-assays-and-reagents)を販売している。好ま
しい抗体は、キーホールリンペットヘモシアニンをコンジュゲートしたカルボキシメチルリシンに対して惹起された、市販のマウス抗糖化反応最終産物抗体であって、R&D Systems, Inc.社から入手可能であり(Minneapolis、MN;型番:MAB3247)、ヒト定常領域(又
はそれが投与される動物の定常領域)を有するように修飾された抗体であるカルボキシメチルリシンMAb(クローン:318003)の可変領域を含む。R&D Systems, Inc.社の型番
:MAB3247に対応するカルボキシメチルリシン抗体など、市販の抗体は、診断目的で対象
となる場合があり、動物又はヒトにおける使用に適さない材料を含有しうる。好ましくは、市販の抗体は、毒素又は他の潜在的に有害な材料を除去するように、動物又はヒトにおける使用の前に、精製及び/又は単離される。
【0062】
抗AGE抗体は、好ましくは、抗体-抗原複合体からの解離速度又はk(また、kback又はオフ速度とも称される)が小さい、好ましくは、9×10-3、8×10-3、7×10-3、6×10-3(1/秒)以下である。抗AGE抗体は、好ましくは、細胞のAGE修飾タンパク質に対する高アフィニティーを有し、これは、低解離定数である、9×10-6、8×10-6、7×10-6、6×10-6、5×10-6、4×10-6、又は3×10-6(M)以下のKとして表されうる。好ましくは、抗AGE抗体結合特性は、図1に例示される、R&D Systems, Inc.社(Minneapolis、MN;型番:MAB3247)から市販されているカルボキシメチルリシンMAb(クローン:318003)と、同等で
あるか、同じであるか、又はこれより優れている。
【0063】
抗AGE抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC:antibody-dependentcell-mediated cytotoxicity)を介して、AGE修飾細胞を破壊しうる。ADCCとは、免
疫系のエフェクター細胞が、膜表面抗原に特異的抗体が結合した標的細胞を、能動的に溶解する、細胞媒介性免疫防御のメカニズムである。ADCCは、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、マクロファージ、好中球、又は好酸球により媒介されうる。エフェクター細胞は、結合した抗体のFc部分に結合する。抗AGE抗体はまた、補体依存性細胞毒性(CDC:complement-dependent cytotoxicity)を介して、AGE修飾細胞
も破壊しうる。CDCでは、免疫系の補体カスケードは、抗体の、標的抗原に結合した抗体により誘発される。
【0064】
抗AGE抗体は、AGE修飾細胞の破壊を引き起こす薬剤にコンジュゲートされうる。このような薬剤は、毒素、細胞毒性剤、磁気ナノ粒子、及び磁気スピンボルテックスディスクでありうる。
【0065】
AGE修飾細胞を、選択的にターゲティングし、これらを除去するように、抗AGE抗体にコンジュゲートした小孔形成毒素(PFT:pore-forming toxin)(Aroian R. et al., “Pore-Forming Toxins andCellular Non-Immune Defenses (CNIDs),” Current Opinionin Microbiology, 10:57-61 (2007))などの毒素が、患者に注射されうる。抗AGE抗体は、AGE修飾細胞を認識し、これらに結合する。次いで、毒素が、細胞表面にポア形成を引き起こし、浸透圧溶解によって、細胞を除去する。
【0066】
抗AGE抗体にコンジュゲートした磁気ナノ粒子を患者に注射して、AGE修飾細胞をターゲティングし、除去することができる。AGE修飾細胞を、選択的に除去するために、磁場を印加することにより、磁気ナノ粒子は加熱されうる。
【0067】
代替法として、血管を遮断しうる自己凝集を回避するために、磁場が印加されたときだけ磁化される磁気スピンボルテックスディスクは、磁場が印加されると、スピンし始め、標的細胞の膜破壊を引き起こす。抗AGE抗体にコンジュゲートした磁気スピンボルテックスディスクは、他の細胞の除去を伴わずに、AGE修飾細胞型を、特異的にターゲティングする。
【0068】
本発明に従うヒト化抗AGE抗体は、配列番号22に示されるアミノ酸の、ヒト定常領域配列を有しうる。ヒト化抗AGE抗体の重鎖相補性決定領域は、配列番号23(CDR1H)、配列番号24(CDR2H)、及び配列番号25(CDR3H)に示されるタンパク質配列のうちの1又は2以上を有しうる。ヒト化抗AGE抗体の軽鎖相補性決定領域は、配列番号26(CDR1L)、配列番号27(CDR2L)、及び配列番号28(CDR3L)に示されるタンパク質配列のうちの1又は2以上を有しうる。
【0069】
ヒト化抗AGE抗体の重鎖は、配列番号1のタンパク質配列を有しうるか、又は含みうる。重鎖の可変ドメインは、配列番号2のタンパク質配列を有しうるか、又は含みうる。重鎖可変ドメインの相補性決定領域(配列番号2)は、配列番号41、配列番号42、及び配列番号43に示される。ヒト化抗AGE抗体のカッパ軽鎖は、配列番号3のタンパク質配列を有しうるか、又は含みうる。カッパ軽鎖の可変ドメインは、配列番号4のタンパク質配列を有しうるか、又は含みうる。配列番号4の128位におけるアルギニン(Arg又はR)残基は、省かれてもよい。軽鎖可変ドメインの相補性決定領域(配列番号4)は、配列番号44、配列番号45、及び配列番号46に示される。可変領域は、コドンが最適化され、合成され、ヒト免疫グロブリンG1定常領域を含有する発現ベクターにクローニングされうる。加えて、可変領域は、非ヒト抗AGE抗体の調製において使用されうる。
【0070】
抗体の重鎖は、マウス抗AGE抗体免疫グロブリンG2b重鎖のDNA配列である、配列番号12によりコードされうる。配列番号12によりコードされるマウス抗AGE抗体免疫グロブリンG2b重鎖のタンパク質配列は、配列番号16に示される。マウス抗体の可変領域は、配列番号16の25~142位に対応する、配列番号20に示される。抗体の重鎖は、代替的に、キメラ抗AGE抗体ヒト免疫グロブリンG1重鎖のDNA配列である、配列番号13によりコードされうる。配列番号13によりコードされる、キメラ抗AGE抗体ヒト免疫グロブリンG1重鎖のタンパク質配列は、配列番号17に示される。キメラ抗AGE抗体ヒト免疫グロブリンは、配列番号20の25~142位における、マウス可変領域を含む。抗体の軽鎖は、マウス抗AGE抗体カッパ軽鎖である、配列番号14のDNA配列によりコードされうる。配列番号14によりコードされる、マウス抗AGE抗体カッパ軽鎖のタンパク質配列は、配列番号18に示される。マウス抗体の可変領域は、配列番号21に示され、これは配列番号18の21~132位に対応する。抗体の軽鎖は、代替的に、キメラ抗AGE抗体ヒトカッパ軽鎖である、配列番号15のDNA配列によりコードされうる。配列番号15によりコードされる、キメラ抗AGE抗体ヒトカッパ軽鎖のタンパク質配列は、配列番号19に示される。キメラ抗AGE抗体ヒト免疫グロブリンは、配列番号21の21~132位におけるマウス可変領域を含む。
【0071】
本発明に従うヒト化抗AGE抗体は、1又は2以上のヒト化重鎖又はヒト化軽鎖を有しうるか、又は含みうる。ヒト化重鎖は、配列番号30、32、又は34のDNA配列によりコードされうる。配列番号30、配列番号32、及び配列番号34によりコードされるヒト化重鎖のタンパク質配列は、それぞれ、配列番号29、配列番号31、及び配列番号33に示される。ヒト化軽鎖は、配列番号36、配列番号38、又は配列番号40のDNA配列によりコードされうる。配列番号36、配列番号38、及び配列番号40によりコードされるヒト化軽鎖のタンパク質配列は、それぞれ、配列番号35、配列番号37、及び配列番号39に示される。好ましくは、ヒト化抗AGE抗体は、元の抗体特異性を保持しながら、ヒト配列の量を最大化する。配列番号29、配列番号31、及び配列番号33から選び出されるタンパク質配列を有する重鎖、並びに配列番号35、配列番号37、及び配列番号39から選び出されるタンパク質配列を有する軽鎖を含有する、完全ヒト化抗体が構築されうる。
【0072】
特に好ましい抗AGE抗体は、マウス抗AGE抗体モノクローナル抗体をヒト化することにより得られうる。マウス抗AGE抗体モノクローナル抗体は、配列番号47に示される重鎖タンパク質配列(可変ドメインのタンパク質配列は、配列番号52に示される)と、及び配列番号57に示される、軽鎖タンパク質配列(可変ドメインのタンパク質配列は、配列番号62に示される)とを有する。好ましいヒト化重鎖は、配列番号48、配列番号49、配列番号50、又は配列番号51に示されるタンパク質配列(ヒト化重鎖の可変ドメインのタンパク質配列は、それぞれ、配列番号53、配列番号54、配列番号55、及び配列番号56に示される)を有しうる。好ましいヒト化軽鎖は、配列番号58、配列番号59、配列番号60、又は配列番号61に示されるタンパク質配列(ヒト化軽鎖の可変ドメインのタンパク質配列は、それぞれ、配列番号63、配列番号64、配列番号65、及び配列番号66に示される)を有しうる。好ましくは、ヒト化抗AGE抗体モノクローナル抗体は、配列番号48、配列番号49、配列番号50、及び配列番号51からなる群から選択されるタンパク質配列を有する重鎖、並びに配列番号58、配列番号59、配列番号60、及び配列番号61からなる群から選択されるタンパク質配列を有する軽鎖から構成される。これらのタンパク質配列から構成されたヒト化抗AGE抗体モノクローナル抗体は、良好な結合及び/又は免疫系の活性化の改善を有する結果として、効能の増大をもたらしうる。
【0073】
非ヒト種に由来する抗体のタンパク質配列は、配列番号2に示される配列を有する重鎖、又は配列番号4に示される配列を有するカッパ軽鎖の可変ドメインを含むように修飾されうる。非ヒト種は、飼いネコ又は飼いイヌなどの愛玩動物の場合もあり、ウシ、ウマ、又はラクダなどの家畜の場合もある。好ましくは、非ヒト種は、マウスではない。ウマ(Equus caballus)抗体免疫グロブリンガンマ4の重鎖は、配列番号5のタンパク質配列(EMBL/GenBank受託番号:AY445518)を有しうるか、又は含みうる。ウマ(Equus caballus)抗体免疫グロブリンデルタの重鎖は、配列番号6のタンパク質配列(EMBL/GenBank受託番号:AY631942)を有しうるか、又は含みうる。イヌ(Canis familiaris)抗体免疫グロブリンAの重鎖は、配列番号7のタンパク質配列(GenBank受託番号:L36871)を有しう
るか、又は含みうる。イヌ(Canis familiaris)抗体免疫グロブリンEの重鎖は、配列番号8のタンパク質配列(GenBank受託番号:L36872)を有しうるか、又は含みうる。ネコ
(Felis catus)抗体免疫グロブリンG2の重鎖は、配列番号9のタンパク質配列(DDBJ/EMBL/GenBank受託番号:KF811175)を有しうるか、又は含みうる。
【0074】
ラクダ(ヒトコブラクダ(Camelus dromedarius)及びフタコブラクダ(Camelus bactrianus))、ラマ(llama)(ラマ(Lama glama)、アルパカ(Lama pacos及びLama vicugna))、アルパカ(Vicugna pacos)、及びグアナコ(Lama guanicoe)などのラクダ科の動物は、他の哺乳動物では見出されない、固有の抗体を有する。従来の免疫グロブリンG抗体から構成される重鎖及び軽鎖の四量体に加えて、ラクダ科動物はまた、軽鎖を含有せず、重鎖二量体として存在する、重鎖免疫グロブリンG抗体も有する。これらの抗体は、重鎖抗体、HCAb、単一ドメイン抗体、又はsdAbとして公知であり、ラクダ科動物の重鎖抗体の可変ドメインは、VHHとして公知である。ラクダ科動物の重鎖抗体は、重鎖CH1ドメインを欠き、他の種では見出されないヒンジ領域を有する。アラビアラクダ(ヒトコブラクダ)単一ドメイン抗体の可変領域は、配列番号10のタンパク質配列(GenBank 受託番号:AJ245148)を有しうるか、又は含みうる。アラビアラクダ(ヒトコブラクダ)の四量体免疫グロブリン重鎖の可変領域は、配列番号11のタンパク質配列(GenBank受託番号:AJ245184)を有しうるか、又は含みうる。
【0075】
ラクダ科動物に加えて、重鎖抗体はまた、サメ、ガンギエイ、及びエイなどの軟骨魚に
おいても見出される。この種類の抗体は、免疫グロブリン新抗原受容体又はIgNARとして公知であり、IgNARの可変ドメインは、VNARとして公知である。IgNARは、各々1つずつの可変ドメイン及び5つずつの定常ドメインから構成される、2つの同一な重鎖二量体として存在する。ラクダ科動物と同様に、軽鎖は存在しない。
【0076】
さらなる非ヒト種のタンパク質配列は、International ImMunoGeneTicsInformation System(www.imgt.org)、European Bioinformatics Institute(www.ebi.ac.uk)、DNA Databank of Japan(ddbj.nig.ac.jp/arsa)、又はNationalCenter for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)などのオンラインデータベース内で、たやすく見
出されうる。
【0077】
抗AGE抗体又はこのバリアントは、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、又は配列番号51のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖であって、それらの翻訳後修飾を含みうる。少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する重鎖は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有しうるが、この配列を含む抗AGE抗体は、AGEに結合する能力を保持する。
【0078】
抗AGE抗体又はこのバリアントは、配列番号2、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、又は配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域であって、それらの翻訳後修飾を含みうる。少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する可変領域は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有しうるが、この配列を含む抗AGE抗体は、AGEに結合する能力を保持する。置換、挿入、又は欠失は、可変領域外の領域内で生じうる。
【0079】
抗AGE抗体又はこのバリアントは、配列番号3、配列番号18、配列番号19、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、又は配列番号61のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖であって、それらの翻訳後修飾を含みうる。少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する軽鎖は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有しうるが、この配列を含む抗AGE抗体は、AGEに結合する能力を保持する。置換、挿入、又は欠失は、可変領域外の領域内で生じうる。
【0080】
抗AGE抗体又はこのバリアントは、配列番号4、配列番号21、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、又は配列番号66のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域であって、それらの翻訳後修飾を含みうる。少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する可変領域は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有しうるが、この配列を含む抗AGE抗体は、AGEに結合する能力を保持する。置換、挿入、又は欠失は、可変領域外の領域内で生じうる。
【0081】
代替的に、抗体は、CML-KLH(キーホールリンペットヘモシアニンをコンジュゲートしたカルボキシメチルリシン:carboxymethyl lysine conjugated with keyhole limpet hemocyanin)に対して惹起された、市販のマウス抗糖化反応最終産物抗体であって、R&D Systems, Inc.社から入手可能な抗体(Minneapolis、MN;型番:MAB3247)である、
カルボキシメチルリシンMAb(クローン:318003)の相補性決定領域を有しうる。
【0082】
抗体は、対象の免疫系による、標的とする細胞の破壊を可能とする定常領域を有しうるか、又は含みうる。
【0083】
AGE型が2以上のAGE修飾タンパク質に結合する抗体の混合物もまた、使用されうる。
【0084】
2つの異なるエピトープに向けられた抗AGE抗体である二重特異性抗体もまた、使用されうる。このような抗体は、1つの抗AGE抗体の可変領域に由来する可変領域(又は相補性決定領域)、及び異なる抗体に由来する可変領域(又は相補性決定領域)を有するであろう。
【0085】
抗体断片は、全抗体の代わりに使用されうる。例えば、免疫グロブリンGは、酵素による消化を介して、小型断片に分解されうる。パパイン消化は、重鎖間ジスルフィド架橋のN末端側を切断して、Fab断片をもたらす。Fab断片は、軽鎖と、重鎖の、2つのN末端ドメインのうちの1つとを含む(また、Fd断片としても公知である)。ペプシン消化は、重鎖間ジスルフィド架橋のC末端側を切断して、F(ab’)断片をもたらす。F(ab’)断片は、軽鎖、及びジスルフィド架橋により連結された、2つのN末端ドメインの両方を含む。ペプシン消化はまた、Fv(可変断片:fragment variable)及び
Fc断片(結晶性断片)も形成しうる。Fv断片は、2つのN末端可変ドメインを含有する。Fc断片は、細胞上の免疫グロブリン受容体、及び補体カスケードの最初の要素と相互作用するドメインを含有する。ペプシンはまた、重鎖の第3定常ドメイン(C3:third constant domain of the heavy chain)の前で、免疫グロブリンGを切断して、大型断片であるF(abc)と、小型断片であるpFc’とをもたらす場合もある。抗体断片は、代替的に、組換えによりもたらされる場合もある。好ましくは、このような抗体断片は、AGE修飾細胞の破壊を引き起こす薬剤にコンジュゲートされうる。
【0086】
さらなる抗体が所望される場合、これらは、周知の方法を使用して作製されうる。例えば、哺乳動物宿主において、ポリクローナル抗体(pAb)は、免疫原と、所望の場合、アジュバントとの、1回又は2回以上の注射により惹起されうる。典型的に、免疫原(及びアジュバント)は、哺乳動物において、皮下注射又は腹腔内注射により注射されうる。免疫原は、AGE-抗トロンビンIII、AGE-カルモジュリン、AGE-インスリン、
AGE-セルロプラスミン、AGE-コラーゲン、AGE-カテプシンB、AGE-ウシ血清アルブミン(AGE-BSA)、AGE-ヒト血清アルブミン、及びオボアルブミンなどのAGE-アルブミン、AGE-クリスタリン、AGE-プラスミノーゲン活性化因子、AGE-内皮細胞膜タンパク質、AGE-アルデヒドレダクターゼ、AGE-トランスフェリン、AGE-フィブリン、AGE-銅/亜鉛SOD、AGE-apo B、AGE-フィブロネクチン、AGE-膵リボース、AGE-apo A-I及びII、AGE-ヘモグロビン、AGE-Na/K-ATPアーゼ、AGE-プラスミノーゲン、AGE-ミエリン、AGE-リゾチーム、AGE-免疫グロブリン、AGE-赤血球Glu輸送タンパク質、AGE-β-N-アセチルヘキソミナーゼ、AGE-apo E、AGE-赤血球膜タンパク質、AGE-アルドースレダクターゼ、AGE-フェリチン、AGE-赤血球スペクトリン、AGE-アルコールデヒドロゲナーゼ、AGE-ハプトグロビン、AGE-チューブリン、AGE-甲状腺ホルモン、AGE-フィブリノーゲン、AGE-β-マイクログロブリン、AGE-ソルビトールデヒドロゲナーゼ、AGE-α-抗トリプシン、AGE-炭酸デヒドラターゼ、AGE-RNアーゼ、AGE-低密度リポタンパク質、AGE-ヘキソキナーゼ、AGE-apo C-I、AGE-RNアーゼ、AGE-ヒトヘモグロビンなどのAGE-ヘモグロビン、AGE-低密度リポタンパク質(AGE-LDL)、及びAGE-コラーゲンIVなど、細胞のAGE修飾タンパク質でありうる。AGE修飾全赤血球、AGE修飾溶解赤血球、又はAGE修飾部分消化赤血球などのAGE修飾細胞もまた、AGE抗原として使用されうる。アジュバントの例は、フロイント完全、モノホスホリルリピドA合成トレハロースジコリノミコレート、アルミニウム水酸化物(アラム)、熱ショックタンパク質HSP70又はHSP96、モノホスホリルリピドAを含有するスクアレンエマルジョン、α2-マクログロブリン、並びに油エマルジョン、プルロニック(pleuronic)ポリオール、ポリアニオン、及びジニトロフェノ
ールを含む表面活性物質を含む。免疫応答を改善するために、免疫原は、KLH(keyhole limpethemocyanin)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、コレラ毒素、不安定
性エンテロトキシン、シリカ粒子、又はダイズトリプシン阻害剤など、宿主において免疫原性のポリペプチドにコンジュゲートされうる。好ましい免疫原コンジュゲートは、AGE-KLHである。代替的に、pAbは、IgY分子を産生するニワトリにおいて作製されうる。
【0087】
モノクローナル抗体(mAb:monoclonal antibody)はまた、宿主又は宿主に由来す
るリンパ球を免疫化し、mAbを分泌する(又はmAbを潜在的に分泌する)リンパ球を採取し、これらのリンパ球を、不死化細胞(例えば、骨髄腫細胞)に融合させ、所望のmAbを分泌する細胞を選択することによっても作製されうる。EBVハイブリドーマ法など、他の技法も使用されうる。非ヒト抗体は、抗体を、非ヒト抗体の構成要素と、ヒト抗体の構成要素との組合せを含有するように改変することにより、ヒトに対して免疫原性でなくされうる。キメラ抗体は、非ヒト抗体の可変領域を、ヒト定常領域と組み合わせることにより作製されうる。ヒト化抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)を、非ヒト抗体のCDRで置きかえることにより作製されうる。同様に、抗体は、アミノ酸レベルで、実質的にネコ、イヌ、ウマ、ラクダ又はアルパカ、ウシ、ヒツジ、ブタ、又はヤギなど、所与の動物「化」されることにより、他の種に対しても免疫原性でなくされうる。所望の場合、mAbは、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、硫酸アンモニウム沈殿、又はアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の手順により、培養培地又は腹水から精製されうる。加えて、ヒトモノクローナル抗体は、第3のコピーである、ヒトIgGのトランス遺伝子座と、サイレンシングされた、内因性のマウスIg遺伝子座とを含有する、トランスジェニックマウスの免疫化により作出される場合もあり、ヒトトランスジェニックマウスを使用することにより作出される場合もある。ヒト化モノクローナル抗体及びその断片の作製はまた、ファージディスプレイ法を介してもなされうる。
【0088】
「薬学的に許容される担体」は、医薬の投与に適合性のものなど、任意の溶媒及び全ての溶媒、任意の分散媒及び全ての分散媒、任意のコーティング及び全てのコーティング、任意の抗菌剤及び抗真菌剤並びに全ての抗菌剤及び抗真菌剤、任意の等張剤及び全ての等張剤、並びに任意の吸収遅延剤及び全ての吸収遅延剤を含む。好ましい、このような担体又は希釈剤の例は、水、生理食塩液、リンゲル液、及びデキストロース溶液を含む。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれうる。非経口投与のために使用されうる溶液及び懸濁液は、注射用水、生理食塩液溶液、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなど、等張性を調整するための薬剤を含みうる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整されうる。非経口調製物は、ガラス製又はプラスチック製の、アンプル、ディスポーザブルのシリンジ、又は複数回投与用のバイアルに封入されうる。
【0089】
抗体は、静脈内注射などの注射により投与される場合もあり、関節への関節内注射など、局所投与される場合もある。注射に適切な医薬組成物は、滅菌注射用溶液又は滅菌注射用分散液の即席調製物のための、滅菌水溶液又は水性分散液を含む。注射に適切な抗体による医薬組成物中には、多様な賦形剤が含まれうる。適切な担体は、生理食塩液、静菌水、CREMOPHOR EL(登録商標)(BASF社製;Parsippany、NJ)、又はリン酸緩衝生理食塩液(PBS:phosphate buffered saline)を含む。いずれの場合も、組成物は、滅菌でな
ければならず、シリンジを使用して投与されるように、流体であるものとする。このような組成物は、製造時及び保管時に、安定であるものとし、細菌及び真菌などの微生物による汚染に対して保護されなければならない。多様な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールが、微生物汚染を封じ込めうる。組成物中には、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、及び塩化ナトリウムなどの等張剤が含まれうる。吸収を遅延させうる組成物は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤を含む。滅菌注射用溶液は、抗体と、他の任意の治療成分とを、適切な溶媒中に、要求される成分のうちの1つ又は組合せと共に、要求量で組み込むことに続き、滅菌を行うことにより調製されうる。滅菌注射用溶液を調製するために、滅菌固体を調製する方法は、固体をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥を含む。
【0090】
吸入による投与のために、抗体は、噴霧器又は適切な高圧ガス、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する高圧容器からのエアゾールスプレーとして送達されうる。抗体はまた、例えば、iSPERSE(商標)吸入型薬物送達プラットフォーム(PULMATRIX社製、Lexington、Mass.)を使用する乾燥粉末として、吸入を介しても送達されうる。ニワトリ抗体(IgY)である、抗AGE抗体の使用は、吸入により投与された場合、ヒトを含む、様々な動物において、非免疫原性でありうる。
【0091】
各種の抗体の、適切な投与量レベルは、一般に、患者の体重1kg当たり約0.01~500mgであろう。好ましくは、投与量レベルは、約0.1~約250mg/kg;より好ましくは、約0.5~約100mg/kgであろう。適切な投与量レベルは、約0.01~250mg/kg、約0.05~100mg/kg、又は約0.1~50mg/kgでありうる。この範囲内で、投与量は、0.05~0.5、0.5~5又は5~50mg/kgでありうる。各種の抗体は、毎日1回又は2回など、毎日1~4回のレジメンで投与されうるが、抗体は、典型的に、長いインビボ半減期を有する。したがって、各種の抗体は、毎日1回、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、毎月1回、又は60~90日間ごとに1回投与されうる。
【0092】
投与及び投与量の均一性を容易とするように、単位投与量形態(Unit dosage forms)
が創出されうる。単位投与量形態とは、治療される対象のための、単回の投与量として適し、要求される医薬担体と会合させた、治療有効量の、1種又は2種以上の抗体を含有する、物理的に個別の単位を指す。好ましくは、単位投与量形態は、密封容器に入れられ、滅菌されている。
【0093】
超音波の印加及び抗AGE抗体の投与を施される対象は、治療が、AGE修飾細胞を死滅させるのに効果的であったのかどうかを決定するように調べられうる。対象は、後続の測定の間において、又は時間経過にわたり、1又は2以上の、AGE障害の症状の低減を裏付ける場合、効果的な治療を施されたと考えられうる。例えば、神経膠芽腫に罹患している対象は、腫瘍サイズの低減に基づき、効果的な治療を施されたと考えられうる。代替的に、老化細胞の濃度及び/又は数が、時間経過にわたり測定される場合もある。治療、及び後続の検査は、所望の治療結果が達成されるまで反復されうる。
【0094】
本明細書に記載される方法により、任意の哺乳動物が治療されうる。ヒトは、治療に好ましい哺乳動物である。治療されうる、他の哺乳動物は、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、及びイヌ又はネコなどの愛玩動物を含みうる。代替的に、上記で同定された、哺乳動物又は対象のうちのいずれも、炎症と関連する疼痛治療を必要とする患者集団から除外されうる。方法はまた、細胞培養物又は組織培養物に適用されるなど、インビトロにおいても適用されうる。
【0095】
対象は、AGE障害を有することの診断に基づき、治療を必要とする対象として同定されうる。AGE障害の例は、アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis又はルー・ゲーリック病)、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)、ハンチントン舞踏病、特発性肺線維症、筋ジストロフィー(ベッカー型筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、及び山本型筋ジストロフィーを含む)、黄斑変性、白内障、糖尿病網膜症、パーキンソン病、早老症(ウェルナー症候群及びハッチソン-ギルフォード早老症を含む)、白斑、嚢胞性線維症、アトピー性皮膚炎、湿疹、関節炎(骨関節炎、関節リウマチ、及び若年性関節リウマチを含む)、アテローム性動脈硬化、がん及び転移性がん(例えば、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、肺がん、黒色腫、結腸がん、腎細胞癌、前立腺がん、子宮頸がん、膀胱がん、直腸がん、食道がん、肝がん、口腔咽頭がん、多発性骨髄腫、卵巣がん、胃がん、膵がん、及び網膜芽細胞腫を含む)、がん治療と関連する身体機能障害又はがん治療の副作用、高血圧症、緑内障、骨粗相症、サルコペニア、悪液質、脳卒中、心筋梗塞、心房細動、移植拒絶、I型糖尿病、II型糖尿病、放射線曝露、HIV治療の副作用、化学兵器曝露、中毒、炎症、腎症、レビー小体認知症、プリオン病(ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト-ヤコブ病、スクレピー、慢性消耗性疾患、クールー病、及び致死性家族性不眠症を含む)、前彎後彎症、自己免疫障害、脂肪組織の減少、乾癬、クローン病、喘息、老化の生理学的影響(しわ、しみ、脱毛、皮下脂肪組織の低減、及び皮膚の菲薄化などの「美容的」影響を含む)、特発性ミオパシー(例えば、特発性炎症性筋障害、特発性炎症性筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、散発性封入体筋炎、及び若年性筋炎を含む)、多発性硬化症、視神経脊髄炎(NMO:neuromyelitis optica、デビック病、又はデビック症候群)、てんかん、及び副腎皮質ジストロフィー(ALD:adrenoleukodystrophy、X染色体連鎖型副腎白質委縮症、X-ALD、大脳型ALD、又はcALD)を含む。
【0096】
特に、好ましい治療群は、体内の制限部位に影響を及ぼすAGE障害に罹患していると診断された対象を含む。体内の制限部位に影響を及ぼすAGE障害の例は、脳腫瘍(退形成性星状細胞腫、多形性神経膠芽腫、希突起神経膠腫、及びびまん性内因性橋神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、及び神経鞘腫瘍などの神経膠腫を含む)、髄膜炎、脳/大脳膿瘍、後期神経性トリパノソーマ症(睡眠障害)、脳浮腫、プリオン病、脳炎、狂犬病、関節炎/骨関節炎、変性性関節疾患、滑膜炎、滑液包炎、前立腺がん、眼がん、及び眼障害を含む。
【0097】
本出願は、本明細書と共に出願される配列表内の、66のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を含む。ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のバリアントが可能である。公知のバリアントは、配列番号4、配列番号16、及び配列番号20に示される配列に対する、置換、欠失、及び付加を含む。配列番号4では、128位におけるアルギニン(Arg又はR)残基は、省かれてもよい。配列番号16では、123位におけるアラニン残基が、セリン残基で置きかえられること、及び/又は124位におけるチロシン残基が、フェニルアラニン残基で置きかえられることがなされてもよい。配列番号20は、123及び124位において、配列番号16と同じ置換を含んでもよい。加えて、配列番号20は、末端のバリン残基の後に、1つのさらなるリシン残基を含有してよい。
[実施例]
【実施例0098】
抗糖化反応最終産物抗体の投与についてのインビボ研究
抗糖化反応最終産物抗体の効果について検討するために、抗体を、老齢CD1(ICR)マウス(CharlesRiver Laboratories社製)に、3週間にわたり、毎週1回(1、8、及び15日目に)、1日に2回、静脈内注射により投与するのに続き、10週間にわたる治療休止期間を設けた。被験抗体は、キーホールリンペットヘモシアニンをコンジュゲートしたカルボキシメチルリシンに対して惹起された、市販のマウス抗糖化反応最終産物抗体である、R&D Systems, Inc.社(Minneapolis、MN;型番:MAB3247)から入手可能なカ
ルボキシメチルリシンMAb(クローン:318003)であった。生理食塩液による対照参照は、対照動物において使用した。
【0099】
「若齢」と称されるマウスが、8週齢であったのに対し、「老齢」と称されるマウスは、88週(±2日)齢であった。抗体の投与に由来する有害事象は、認められなかった。研究で使用した異なる動物群を、表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
老化細胞についてのマーカーであるP16INK4a mRNAを、群の脂肪組織内で、リアルタイムqPCRにより定量した。結果を、表2に示す。表中、ΔΔCt=対照群におけるΔCt平均値(2)-被験群(1、3、5)におけるΔCt平均値であり;発現倍数=2-ΔΔCtである。
【0102】
【表2】
【0103】
上記の表は、予測される通り、非治療老齢マウス(対照群2)が、非治療若齢マウス(対照群1)の2.55倍のp16Ink4a mRNAを発現することを指し示す。これは、85日目における回収の終了時に安楽死させられた、群2の非治療老齢マウスを、22日目における治療の終了時に安楽死させられた、群1の非治療若齢マウスと比較する場合に観察された。群2の非治療老齢マウスからの結果を、85日目に安楽死させられた、群3の治療老齢マウスからの結果と比較したところ、p16Ink4a mRNAは、群2において、群3の1.23倍であることが観察された。したがって、p16Ink4a
mRNAの発現レベルは、老齢マウスを、1週間毎、毎日2回、1グラム当たり2.5μgの抗体で治療した場合に低下した。
【0104】
群2(対照)の非治療老齢マウスからの結果を、22日目に安楽死させられた、群5(1グラム当たり5μg)の治療老齢マウスからの結果と比較したところ、p16Ink4a mRNAは、群2(対照)において、群5(1グラム当たり5μg)の3.03倍であることが観察された。この比較は、群5の動物のp16Ink4a mRNA発現レベルが、1週間毎、毎日2回、1グラム当たり5.0μgで治療した場合に低下することを指し示したことから、若齢非治療マウス(すなわち、群1)の発現レベルと同等な、p16Ink4a mRNA発現レベルを提示する。85日目における回収の終了時に安楽死させられた、群3(1グラム当たり2.5μg)のマウスと異なり、群5マウスは、22日目における治療の終了時に安楽死させられた。
【0105】
これらの結果は、抗体の投与が、老化細胞の殺滅を結果としてもたらしたことを指し示す。
【0106】
また、抗体投与の、サルコペニアに対する効果を決定するように、腓腹筋量も測定した。結果を、表3に提示する。結果は、抗体の投与が、筋肉量を、対照と比較して増大させたが、これは、1週間毎、毎日2回、1グラム当たり5.0μgの高投与量における投与に限られたことを指し示す。
【0107】
【表3】
【0108】
これらの結果は、細胞のAGEに結合する抗体の投与が、老化のバイオマーカーである、p16Ink4aを発現する細胞の低減を結果としてもたらしたことを裏付ける。データは、老化細胞の低減が、老齢マウスにおける筋肉量の増大を、直接もたらすことを示す。これらの結果は、サルコペニアの古典的徴候である、筋肉量の減少が、細胞のAGEに結合する抗体の投与により治療されうることを指し示す。
【実施例0109】
被験抗体のアフィニティー及び反応速度
Nα,Nα-ビス(カルボキシメチル)-L-リシントリフルオロ酢酸塩(Sigma-Aldrich社、St. Louis、MO)を、細胞のAGE修飾タンパク質についてのモデル基質として使用して、実施例1で使用した被験抗体の、アフィニティー及び反応速度を解析した。ブランクとして設定されたFc1、及び被験抗体(分子量を150,000Daとする)を固定化したFc2を伴う、Series S sensor chip CM5(GE Healthcare社、Pittsburgh、PA
)を、BIACORE(商標)T200(GE Healthcare社、Pittsburgh、PA)上で使用して、無標識相互作用解析を実行した。ランニング緩衝液は、温度を25℃とする、HBS-EP緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.05%のP-20、pH7.4)であった。ソフトウェアは、BIACORE(商標)T200 evaluation software, version 2.0であった。解析では、二重参照(Fc2-1及び緩衝液だけの注射)を使用し、データは、ラングミュア1:1結合モデルに当てはめた。
【0110】
【表4】
【0111】
時間に対応する応答のグラフを、図1に例示する。以下の値:k(1/M秒)=1.857×10;k(1/秒)=6.781×10-3;K(M)=3.651×10-6;Rmax(RU)=19.52;及びχ=0.114は、解析から決定した。当てはめのχ値が、Rmaxの10%未満であるため、当てはめは信頼できる。
【実施例0112】
マウス抗AGE抗体 IgG2b抗体及びキメラ抗AGE抗体 IgG1抗体の構築及び作製
マウス抗AGE抗体及びキメラヒト抗AGE抗体を調製した。マウス抗AGE抗体IgG2b重鎖のDNA配列を、配列番号12に示す。キメラヒト抗AGE抗体IgG1重鎖のDNA配列を、配列番号13に示す。マウス抗AGE抗体カッパ軽鎖のDNA配列を、配列番号14に示す。キメラヒト抗AGE抗体カッパ軽鎖のDNA配列を、配列番号15に示す。遺伝子配列を合成し、高発現哺乳動物ベクターにクローニングした。配列は、コドン最適化した。完成したコンストラクトは、トランスフェクションに進む前に、配列を確認した。
【0113】
HEK293細胞を、トランスフェクションの1日前に、シェークフラスコに播種し、無血清既知組成培地を使用して増殖させた。DNA発現コンストラクトを、0.03リットルの懸濁HEK293細胞に、一過性にトランスフェクトした。20時間後に、細胞を採取して、生存率及び生細胞数を求め、力価を測定した(OCTET(登録商標)QKe、ForteBio社製)。一過性トランスフェクション作製工程によって、さらなる読取りを行った。5日目に、培養物を採取し、各々について、さらなる試料を、細胞密度、生存率、及び力価について測定した。
【0114】
マウス抗AGE抗体及びキメラ抗AGE抗体のための馴化培地を、一過性トランスフェクション作製工程から採取し、遠心分離及び濾過により清澄化させた。上清を、プロテインAカラム上に流過させ、低pH緩衝液で溶出させた。アリコート分割の前に、0.2μm膜フィルターを使用する濾過を実施した。精製及び濾過の後、タンパク質濃度を、OD280及び減衰係数から計算した。収率及びアリコートの概要を、表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
抗体純度は、LabChip(登録商標)GXII(PerkinElmer社)を使用するキャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS:capillary electrophoresis sodium-dodecyl sulfate)解析により査定した。
【実施例0117】
マウス(親)抗AGE抗体及びキメラ抗AGE抗体の結合
実施例3で記載された、マウス(親)抗AGE抗体及びキメラ抗AGE抗体の結合を、直接結合ELISAにより探索した。抗カルボキシメチルリシン(CML)抗体(R&D Systems社、MAB3247)を、対照として使用した。CMLを、KLHにコンジュゲートさせ(CML-KLH)、ELISAプレートを、CML及びCML-KLHの両方で、一晩にわたりコーティングした。HRP-ヤギ抗マウスFcを使用して、対照抗体及びマウス(親)抗AGE抗体を検出した。HRP-ヤギ抗ヒトFcを使用して、キメラ抗AGE抗体を検出した。
【0118】
抗原を、pH6.5の、1倍濃度リン酸緩衝液中、1μg/mLに希釈した。96ウェルマイクロ滴定ELISAプレートを、ウェル1つ当たり100μLの希釈抗原でコーティングし、4℃で、一晩にわたり静置した。プレートを、1倍濃度のPBS、2.5%のBSAでブロッキングし、翌朝、室温で、1~2時間にわたり静置した。抗体試料を、1倍濃度のPBS、1%のBSAを伴い、出発濃度を50μg/mLとする系列希釈液中で調製した。二次抗体を、1:5,000に希釈した。100μLの抗体希釈液を、各ウェルにアプライした。プレートを、マイクロプレートシェーカー上、室温で、0.5~1時間にわたりインキュベートした。プレートを、1倍濃度のPBSで、3回にわたり洗浄した。ウェル1つ当たり100μLの、希釈されたHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトFc二次抗体を、ウェルにアプライした。プレートを、マイクロプレートシェーカー上で、1時間にわたりインキュベートした。次いで、プレートを、1倍濃度のPBSで、3回にわたり洗浄した。100μLのHRP基質であるTMBを、各ウェルに添加して、プレートを発色させた。3~5分間の経過後、100μLの1N HClを添加することにより、反応を停止させた。次に、直接結合ELISAを、CMLコーティングだけを伴い実施した。マイクロプレートリーダーを使用して、OD450における吸光度を読み取った。
【0119】
CML ELISA及びCML-KLH ELISAについてのOD450吸光度の生データを、下記のプレートマップに示す。ウェルプレート内の96ウェル中48のウェルを使用した。プレートマップ内のブランクウェルは、非使用ウェルを指し示す。
【0120】
【表6】
【0121】
CMLだけによるELISAについてのOD450吸光度の生データを、下記のプレートマップに示す。ウェルプレート内の96ウェル中24のウェルを使用した。プレートマップ内のブランクウェルは、非使用ウェルを指し示す。
【0122】
【表7】
【0123】
対照抗AGE抗体及びキメラ抗AGE抗体は、CML及びCML-KLHの両方への結合を示した。マウス(親)抗AGE抗体はCML又はCML-KLHへの、極めて弱い結合を示し、乃至はCML又はCML-KLHへの結合を示さなかった。反復されたELISAからのデータは、対照抗AGE抗体及びキメラ抗AGE抗体の、CMLへの結合を確認する。全ての緩衝液対照は、負のシグナルを示した。
【実施例0124】
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、親(マウス)抗体配列の選択された部分を、ヒトフレームワーク配列と融合させる、複数のハイブリッド配列を創出することによりデザインした。アクセプターフレームワークは、フレームワークにわたる、全体的な配列同一性、インターフェース位置のマッチング、同様に分類された、カノニカルのCDR位置、及び除去されるN-グリコシル化部位の存在に基づき同定した。3つのヒト化軽鎖、及び3つのヒト化重鎖は、2つの異なる重鎖及び軽鎖の、ヒトアクセプターフレームワークに基づきデザインした。重鎖のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号30、配列番号32、及び配列番号34に示されるDNA配列によりコードされる、配列番号29、配列番号31、及び配列番号33に示す。軽鎖のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号36、配列番号38、及び配列番号40に示されるDNA配列によりコードされる、配列番号35、配列番号37、及び配列番号39に示す。ヒト化配列を、目視及びコンピュータモデル化により、方法に基づいて解析して、抗原への結合を保持する可能性が高い配列を取り出した。目標は、元の抗体特異性を保持しながら、最終的なヒト化抗体内のヒト配列の量を最大化することであった。ヒト化軽鎖とヒト化重鎖とを組み合わせて、9つの完全ヒト化抗体バリアントを創出することができた。
【0125】
3つの重鎖及び3つの軽鎖を解析して、それらのヒト性を決定した。抗体のヒト性スコアは、Gao, S. H.,et al., “Monoclonal antibody humanness score and itsapplications”, BMC Biotechnology, 13:55 (July 5, 2013)において記載されている方法に従い
計算した。ヒト性スコアは、抗体の可変領域配列が、どのくらいヒト配列に似て見えるのかを表す。重鎖スコアについて、79以上は、ヒト配列に似て見えることを指し示し;軽鎖スコアについて、86以上は、ヒト配列に似て見えることを指し示す。3つの重鎖、3つの軽鎖、親(マウス)重鎖、及び親(マウス)軽鎖のヒト性を、下記の表6に示す。
【0126】
【表8】
【0127】
まず、可変領域配列を合成することにより、全長抗体遺伝子を構築した。配列を、哺乳動物細胞内の発現について最適化した。次いで、これらの可変領域配列を、ヒトFcドメインを、既に含有する発現ベクターにクローニングし、重鎖には、IgG1を使用した。
【0128】
小スケールのヒト化抗体の作製は、既知組成培地を、血清の非存在下で使用して、懸濁HEK293細胞に、重鎖及び軽鎖のためのプラスミドをトランスフェクトすることにより実行した。MabSelect SuRe Protein A培地(GE Healthcare社製)を使用して、馴化培
地中の全抗体を精製した。
【0129】
配列番号29、配列番号31、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、3つの重鎖と、配列番号35、配列番号37、及び配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、3つの軽鎖との各組合せから、9つのヒト化抗体を作製した。比較のためのキメラ親抗体もまた調製した。抗体及びそれらのそれぞれの力価を、下記の表7に示す。
【0130】
【表9】
【0131】
ヒト化抗体の結合は、例えば、用量依存的結合ELISAアッセイ又は細胞ベースの結合アッセイにより査定することができる。
【実施例0132】
カルボキシメチルリシンモノクローナル抗体の投与についてのインビボ研究
カルボキシメチルリシン抗体の、腫瘍増殖、転移可能性、悪液質に対する効果を探索した。マウス乳がん腫瘍モデルを使用して、マウスにおいて、インビボ研究を実行した。雌BALB/cマウス(BALB/cAnNCrl、CharlesRiver社)は、研究の1日目において、1
1週齢であった。
【0133】
4T1マウス乳腺腫瘍細胞(ATCC CRL-2539)を、10%のウシ胎仔血清、2mMのグ
ルタミン、25μg/mLのゲンタマイシン、100単位/mLのペニシリンG Na、及び100μg/mLのストレプトマイシン硫酸塩を含有するRPMI 1640培地中で培養し
た。腫瘍細胞を、5%のCO及び95%の空気による雰囲気中、37℃の加湿型インキュベーター内の、組織培養フラスコ中で維持した。
【0134】
次いで、培養された乳がん細胞を、マウスに植え込んだ。4T1細胞を、対数増殖期に採取し、インプラント日において、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)中に、1mL当たりの細胞1×10個の濃度で再懸濁させた。腫瘍は、4T1細胞1×10個(0.1mLの懸濁液)を、各被験動物の、右脇腹に、皮下インプラントすることにより誘発した。それらの体積が、80~120mmの目標範囲に近づくのに伴い、腫瘍をモニタリングした。腫瘍体積は、式:腫瘍体積=(腫瘍幅)2(腫瘍長さ)/2を使用して決定した。腫瘍重量は、1mmの腫瘍体積が、1mgの重量を有するという仮定を使用して近似した。研究の1日目と名付ける、移植の13日後に、マウスを、個々の腫瘍体積の範囲を、108~126mmとし、腫瘍体積の群平均値を、112mmとする、4つの群(群1つ当たりのn=15)に区分した。4つの治療群を、下記の表8に示す。
【0135】
【表10】
【0136】
抗カルボキシメチルリシンモノクローナル抗体を、治療剤として使用した。250mgのカルボキシメチルリシンモノクローナル抗体を、R&D Systems社(Minneapolis、MN)から得た。カルボキシメチルリシンモノクローナル抗体の投与液を、媒体(PBS)中に、1及び0.5mg/mLで調製して、10mL/kgの投与容量中、それぞれ、10及び5μg/gの活性投与量をもたらした。投与液は、光から保護して、4℃で保管した。
【0137】
全ての治療は、マウスに1回の投与を行った、研究の1日目を除き、毎日2回、21日間静脈内(i.v.)投与した。研究の19日目に、尾静脈分解のために、i.v.投与できない動物には、i.v.投与を、腹腔内(i.p.)投与に変更した。投与容量は、体重20グラム当たり0.200mLの(10mL/kg)であり、各個別の動物の体重に照らしてスケーリングした。
【0138】
研究は、23日間にわたり続いた。腫瘍は、毎週2回、キャリパーを使用して測定した
。動物は、1~5日目に毎日秤量し、次いで毎週2回ずつ、研究が完了するまで秤量した。マウスはまた、任意の副作用についても観察した。許容可能な毒性は、研究中の体重減少の群平均値が20%未満であり、治療関連死が10%以下であることとして規定した。治療の有効性は、研究の最終日(23日目)からのデータを使用して決定した。
【0139】
抗カルボキシメチルリシン抗体が、腫瘍の増殖を阻害する能力は、腫瘍体積中央値(MTV)を、群1~3について比較することにより決定した。腫瘍体積は、上記で記載した通りに測定した。腫瘍増殖の阻害パーセント(TGI%)は、対照群(群1)のMTVと、薬物治療群のMTVとの差として規定し、対照群のMTVに対する百分率として表す。TGI%は、式:TGI%=(1-MTVtreated/MTVcontrol)×100に従い計算することができる。
【0140】
抗カルボキシメチルリシン抗体が、がんの転移を阻害する能力は、肺がん病巣を、群1~3について比較することにより決定した。阻害パーセント(阻害%)は、対照群の転移性病巣の平均値カウントと、薬物治療群の転移性病巣の平均値カウントとの差として規定し、対照群の転移性病巣の平均値カウントに対する百分率として表す。阻害%は、以下の式:阻害%=(1-病巣treatedの平均値カウント/病巣controlの平均値カウント)×100に従い計算することができる。
【0141】
抗カルボキシメチルリシン抗体が、悪液質を阻害する能力は、肺及び腓腹筋の重量を、群1~3について比較することにより決定した。組織重量はまた、体重100gに照らしても正規化した。
【0142】
治療の有効性はまた、研究中に観察された退縮応答の発生率及び大きさによっても査定した。治療は、動物において、腫瘍の部分退縮(PR:partial regression)又は完全退縮(CR:completeregression)を引き起こすことができる。PR応答では、腫瘍体積
は、研究の経過中に、3回の測定で、連続して、その1日目の体積の50%以下であり、これらの3回の測定のうちの、1又は2回以上において、13.5mm以上であった。CR応答では、腫瘍体積は、研究の経過中に、3回の測定で、連続して、13.5mm未満であった。
【0143】
統計学的解析は、Windows 6.07用のPrism(GraphPad社製)を使用して実行した。2つ
の群の、23日目における平均値腫瘍体積(MTV)の間の差違についての統計学的解析は、マン-ホイットニーのU検定を使用して達した。転移性病巣の比較は、ANOVA-ダネットにより評価した。正規化された組織重量は、ANOVAにより比較した。両側の統計学的解析は、P=0.05の有意水準で行った。結果は、統計学的に有意であるか、又は統計学的に有意でないとして分類した。
【0144】
研究の結果を、下記の表9に示す。
【0145】
【表11】
【0146】
治療関連死を伴わない場合、全ての治療レジメンは、許容可能に忍容された。唯一の動物死は、転移に起因する非治療関連死であった。TGI%は、5μg/g治療群(群2)及び10μg/g治療群(群3)について、有意性への傾向(マン-ホイットニーによるPは、0.05を超える)を示した。阻害%は、5μg/g治療群について、有意性への傾向(ANOVA-ダネットによるPは、0.05を超える)を示した。阻害%は、10μg/g治療群について、統計学的に有意(Pは0.01以下、ANOVA-ダネット)であった。カルボキシメチルリシン抗体が、悪液質を治療する能力は、肺及び腓腹筋の臓器重量の、治療群と、対照群との間における比較に基づき、有意性への傾向(ANOVAによるPは、0.05を超える)を示した。結果は、抗カルボキシメチルリシンモノクローナル抗体の投与が、がん転移を低減することが可能であることを指し示す。このデータは、抗AGE抗体のインビボ投与が、治療利益を、安全かつ効果的に提供しうることの、さらなる証拠を提示する。
【実施例0147】
イヌモデルにおける、神経膠腫の治療
自発的神経膠腫に罹患しているイヌを、治療のために選択する。神経膠腫について、磁気共鳴イメージング(MRI:magneticresonance imaging)、及び身体症状の査定により検証する。イヌを、下記の表10において示される5つの治療群に分ける。
【0148】
【表12】
【0149】
抗AGE抗体は、カルボキシメチルリシン抗体である。抗AGE抗体は、キメラ抗体、イヌ化抗体、又はイヌ抗体である。対照抗体は、イヌIgG1抗体(Novus Biologicals
社製)である。抗体は、10mg/kgの用量で投与する。抗体は、0日目に静脈内投与し、毎週1回、3週間にわたり静脈内投与する。
【0150】
超音波は、抗体と同時に施す。超音波は、5.7MHzの周波数、90mW/cmの強度、及び6.0kHzのパルス反復周波数(PRF)で施す。超音波は、各イヌの頭蓋の側頭窓に対して垂直に配置されたプローブにより施す。
【0151】
3週間にわたる投与レジメンの終了時に、全ての群を、MRIにより、神経膠腫の存在及び量、並びに身体症状について査定する。群2(抗AGE抗体及び超音波)における動物が、最小量の神経膠腫、及び最小限の身体症状を示し、これに、群1(抗AGE抗体)における動物、群4(超音波)における動物、及び群3(対照抗体及び超音波)における動物が続く。群5(対照)における動物は、症状の改善を示さない。超音波と抗AGE抗体との組合せは、脳の制限部位にアクセスし、血液脳関門を越えて、最も効果的な治療をもたらすことが可能である。
【実施例0152】
イヌモデルにおける、変性性関節疾患(骨関節炎)の治療
スタイフル(イヌにおける、ヒト膝の同等物)関節に、自発的な変性性関節疾患(骨関節炎)に罹患しているイヌを、治療のために選択する。変性性関節疾患について、磁気共鳴イメージング(MRI)、及び身体症状の査定により検証する。イヌを、下記の表11において示される5つの治療群に分ける。
【0153】
【表13】
【0154】
抗AGE抗体は、カルボキシメチルリシン抗体である。抗AGE抗体は、キメラ抗体、イヌ化抗体、又はイヌ抗体である。対照抗体は、イヌIgG1抗体(Novus Biologicals
社製)である。抗体は、10mg/kgの用量で投与する。抗体は、0日目に静脈内投与し、毎週1回、3週間にわたり静脈内投与する。
【0155】
超音波は、抗体と同時に施す。超音波は、5.7MHzの周波数、90mW/cmの強度、及び6.0kHzのパルス反復周波数(PRF)で施す。超音波は、罹患スタイフル関節上に配置されたプローブにより施す。
【0156】
3週間にわたる投与レジメンの終了時に、全ての群を、MRIにより、変性性関節疾患の存在及び量、並びに身体症状について査定する。群2(抗AGE抗体及び超音波)における動物が、最小量の変性性関節疾患、及び最小限の身体症状を示し、これに、群1(抗AGE抗体)における動物、群4(超音波)における動物、及び群3(対照抗体及び超音波)における動物が続く。群5(対照)における動物は、症状の改善を示さない。超音波と抗AGE抗体との組合せは、関節の制限部位にアクセスして、最も効果的な治療をもたらすことが可能である。
【実施例0157】
インビトロにおける、抗体及び超音波の、神経膠芽腫細胞及び神経膠芽腫/星状細胞腫細胞への施行
神経膠芽腫細胞の細胞株(CRL-1620)、及び神経膠芽腫/星状細胞腫細胞の細胞株(HTB-15)を、抗体(AB912)に曝露するのに続き、超音波を施した。AB912は、DNA複製過程に関与するタンパク質である、増殖細胞核抗原(PCNA:proliferatingcell nuclear antigen)に結合する。PCNAの発現は、増殖又は新生物性形質転換と関連する。
【0158】
抗体を、超音波への曝露の30分前に、0.2mg/mlの最終濃度で、細胞に加えた。細胞を、1MHzの周波数、0.4w/cm、及び50%のパルスで、1時間にわたり、超音波に曝露した。ディッシュの底部は、超音波ヘッドから、約3mmであった。曝露の後で、対照群、及びAB912を伴わない、1時間にわたる超音波群を、1cm当たり
の細胞2×10個で播種し、AB912を伴う、1時間にわたる超音波群を、1cm当た
りの細胞1.1×10個で播種した。
【0159】
抗体が結合したCRL-1620細胞のうちの、約90%は、培養ディッシュからの著明な解離を示した。抗体が結合していない細胞のうちの約10%だけが、培養プレートから解離した。試料を、37℃でインキュベートし、5%のCOを補充し、約64時間にわたり培養することを可能とした。インキュベーション時間の後、細胞培養物を、顕微鏡下で観察したところ、再付着は観察されなかった。複数の大型の細胞クラスターが、培地中に浮遊していることを観察した。これらの細胞を、手作業で破壊したところ、生細胞は、見出されなかった。結果を、下記の表12に示す。
【0160】
【表14】
【0161】
上記で記載したのと同じ、抗体及び超音波の施行の投与手順を、HTB-15細胞についても反復した。抗体が結合した細胞のうちの、約85%は、培養ディッシュからの著明な解離を示した。抗体が結合していない細胞のうちの約10%だけが、培養プレートから解離した。64時間にわたるインキュベーション時間の後、細胞培養物を、顕微鏡下で観察したところ、再付着は観察されなかった。結果を、下記の表13に示す。
【0162】
【表15】
【0163】
24時間後、抗体を結合させたが、超音波を施されていない両方の細胞株の培養物は、目視可能な毒性の徴候を示さなかった。超音波に曝露されるが、抗体を結合させていない培養物もまた、毒性を示さなかった。抗体及び超音波に曝露される細胞は、確かに、毒性を呈した。
【0164】
これらの結果は、抗体及び超音波の施行を併せて使用して、細胞を死滅させうることの原理証明である。組合せ療法は、インビボにおいて存在する場合、脳の制限部位において見出される、2種類のがんである、神経膠芽腫細胞及び神経膠芽腫/星状細胞腫細胞を、選択的にターゲティングし、死滅させた。結果は、抗体及び超音波の投与の組合せが、細胞の殺滅の、超音波単独の施行と比較した増強を結果としてもたらすことを裏付ける。
【実施例0165】
神経膠腫細胞パネルの免疫蛍光染色
ATCC神経膠腫細胞株パネルに由来する神経膠腫細胞を、0.25%のトリプシンEDTA中で、約5分間にわたりトリプシン処理し、次いで、洗浄し、1mL当たりの細胞約10個に再懸濁させた。懸濁液のアリコート100μLを、丸底96ウェルプレートに移し、遠心分離して、培地を除去した。各細胞株を、リン酸緩衝生理食塩液(PBS:phosphate-buffered saline)中に0.1μg/mLの、4’,6-ジアミジノ-2-フェニ
ルインドール(DAPI:4’,6-diamidino-2-phenylindole)200μLに、10分間にわたり再懸濁させ、次いで、3回にわたり洗浄した。次いで、細胞を、PBS中に10μg/mLの、AB912-T2-17G6抗体(増殖細胞核抗原(PCNA)抗体)中に再懸濁させ、
2~8℃で、30分間にわたりインキュベートした。細胞を、PBS中で、3回にわたりすすぎ、次いで、TexasRed(二次抗体)にコンジュゲートした、10μg/mLの抗ヒ
トIgG(H&L社製)中に懸濁させた。各回の洗浄のために、細胞を、200×gで、5
分間にわたり遠心分離し、上清を、各ウェルから吸引した。免疫蛍光検出を使用して、抗体の、神経膠腫細胞への結合を検証した。
【実施例0166】
インビトロにおける、抗AGE抗体結合研究
インビトロ実験は、SIWA 318Hと称される、ヒト化抗終末糖化反応最終産物(抗AGE
)モノクローナル抗体(SIWA Therapeutics, Inc.社製)の、神経膠腫細胞及び膵がん細
胞への結合について探索した。SIWA 318Hは、カルボキシメチルリシン修飾タンパク質に
結合することが公知である。結合は、実施例10で記載された、免疫蛍光染色により検証した。
【0167】
ヒト膵がんPANC-1細胞株に由来する膵がん細胞を、SIWA 318Hに曝露した。図2
A~2Dは、SIWA 318H抗体の、膵がん細胞への結合を例示する。
【0168】
ATCC神経膠腫細胞株パネルに由来する神経膠腫細胞を、SIWA318Hに曝露した。SIWA 318Hは、パネル内に含まれる、全ての細胞株(CRL-1620ヒト神経膠芽腫細胞、HTB-12ヒト星状細胞腫細胞、HTB-148ヒト神経膠腫細胞、HTB-15ヒト神経膠芽腫細胞、及びHTB-14ヒト神経膠芽腫細胞)に結合した。SIWA 318H抗体の、神
経膠腫細胞への結合は、フローサイトメトリーにより確認した。図3は、SIWA 318H抗体
の、HTB-14神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞への結合を例示する。図4A~4Cは、SIWA 318H抗体の、HTB-15神経膠芽腫細胞株に由来する神経膠腫細胞へ
の結合を例示する。
【0169】
これらの結果は、抗AGE抗体であるSIWA 318Hが、膵がん細胞及び神経膠腫細胞に結
合することを裏付ける。
【0170】
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図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
【配列表】
2024123124000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024123124000001.xml