(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123125
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】肝臓に向けられた遺伝子補充療法によって重度のPKUを処置するための改善されたヒトPAHの生成
(51)【国際特許分類】
C12N 9/06 20060101AFI20240903BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240903BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240903BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20240903BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240903BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240903BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240903BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20240903BHJP
A61K 38/51 20060101ALI20240903BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240903BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240903BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240903BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240903BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240903BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240903BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C12N9/06 Z ZNA
C12N15/53
C07K19/00
C07K14/475
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/44
A61K38/51
A61K45/00
A61K48/00
A61K47/60
A61K47/64
A61K35/76
A61K35/12
A61K31/519
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N9/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098655
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021519879の分割
【原出願日】2019-10-11
(31)【優先権主張番号】62/744,944
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】シルッカ・キョスティオ-ムーア
(72)【発明者】
【氏名】パルタ・マナヴァラン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内因性(野生型)ヒトフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(hPAH)と比較して改善されたタンパク質安定性および酵素活性をもたらすhPAHを提供する。
【解決手段】一部の態様において、2つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、前記バリアントPAHポリペプチドが提供される。それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症(PKU)を処置する、および/またはフェニルアラニンのレベルを低減する方法も提供される。さらに、それを必要とする個体においてバリアントPAHポリペプチドを発現させるための、発現カセット、ベクター(例えば、rAAVベクター)、ウイルス粒子、医薬組成物およびキットも提供される。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、前記バリアントPAHポリペプチド。
【請求項2】
3つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、前記バリアントPAHポリペプチド。
【請求項3】
野生型ヒトフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【請求項4】
アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aの1つまたはそれ以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項5】
アミノ酸置換は、K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項6】
アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項7】
H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項8】
野生型ヒトPAHポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項9】
ヒトPAHポリペプチドである、請求項1~8のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項10】
配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項11】
配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項12】
バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項13】
バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、および453位におけるSの付加をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項14】
バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項15】
野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【請求項16】
野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、および453位におけるSの付加を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【請求項17】
野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【請求項18】
N末端の短縮化を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項19】
N末端の短縮化は、N末端調節ドメインの短縮化を含む、請求項18に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項20】
N末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基1~102の短縮化を含む、請求項18または19に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項21】
C末端の短縮化を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項22】
C末端の短縮化は、四量体化ドメインの短縮化を含む、請求項21に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項23】
C末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基429~452の短縮化を含む、請求項21または22に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項24】
野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基103~428に対応するアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項25】
可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項26】
可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、野生型PAHポリペプチドの270~295位および/または380~405位に配置されている、請求項25に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項27】
肝臓標的化ポリペプチドに融合されている、請求項1~26のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項28】
肝臓標的化ポリペプチドは、HGFもしくはそのフラグメントまたは肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に結合する糖タンパク質である、請求項27に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項29】
ペグ化および/またはニトロシル化されている、請求項1~25のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項30】
I374Cアミノ酸置換を含み、374位におけるcys残基は、ニトロシル化されている、請求項26に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドを含む組成物。
【請求項32】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項34】
バリアントPAHポリペプチドをコードする単離された核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項33に記載の単離された核酸。
【請求項35】
プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、mTTR482プロモーター、mA1MB2-mTTR482プロモーター、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、LP1プロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターまたは配列番号17、レトロウイルスであるラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、およびβ-アクチンプロモーターから選択される、請求項34に記載の単離された核酸。
【請求項36】
プロモーターは、LP1プロモーターまたはmA1MB2-mTTR482プロモーターである、請求項34または35に記載の単離された核酸。
【請求項37】
ポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項33~36のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項38】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである、請求項37に記載の単離された核酸。
【請求項39】
イントロンをさらに含む、請求項33~38のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項40】
イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、請求項39に記載の単離された核酸。
【請求項41】
イントロンは、配列番号15の改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、請求項39に記載の単離された核酸。
【請求項42】
1つまたはそれ以上のITRをさらに含む、請求項33~41のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項43】
スタッファー核酸をさらに含む、請求項33~42のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項44】
スタッファー核酸は、ATG配列が除去されるように最適化されている、請求項43に記載の単離された核酸。
【請求項45】
スタッファー核酸は、配列番号16のA1ATイントロンスタッファー配列である、請求項44に記載の単離された核酸。
【請求項46】
コドン最適化されている、ヒトPAHポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項47】
核酸配列は、配列番号14の核酸配列に少なくとも80%同一である、請求項46に記載の単離された核酸。
【請求項48】
配列番号14の核酸配列を含む、請求項46に記載の単離された核酸。
【請求項49】
mRNAである、請求項33に記載の単離された核酸。
【請求項50】
請求項33~49のいずれか1項に記載の核酸を含む組成物。
【請求項51】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
請求項33~49のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項53】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した請求項33~41または43~49のいずれか1項に記載の核酸を含むrAAVベクター。
【請求項55】
請求項33~48のいずれか1項に記載の核酸は、2つのAAVのITRと隣接してい
る、請求項54に記載のrAAVベクター。
【請求項56】
AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、請求項54または55に記載のrAAVベクター。
【請求項57】
AAVのITRは、AAV2のITRである、請求項54~56のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項58】
5’から3’に、AAV2のITR、プロモーター、イントロン、PAHポリペプチドをコードする核酸、スタッファー核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、請求項57に記載のrAAVベクター。
【請求項59】
プロモーターは、m1A1MB2-mTTR482プロモーターまたはLP1プロモーターである、請求項58に記載のrAAVベクター。
【請求項60】
イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、請求項58または59に記載のrAAVベクター。
【請求項61】
PAHポリペプチドは、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドである、請求項58~59のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項62】
PAHポリペプチドをコードする核酸は、請求項46~48のいずれか1項に記載のコドン最適化された核酸である、請求項58~60のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項63】
スタッファー核酸は、ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロン由来の核酸を含む、請求項58~62のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項64】
ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロンは、ATG配列が除去されるように突然変異されている、請求項63に記載のrAAVベクター。
【請求項65】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、請求項58~64のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項66】
自己相補性ベクターである、請求項53~65のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項67】
PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる、請求項66に記載のrAAVベクター。
【請求項68】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、請求項67に記載のrAAVベクター。
【請求項69】
請求項53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含むrAAV粒子。
【請求項70】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む、請求項69に記載のrAAV粒子。
【請求項71】
AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む、請求項69に記載のrAAV粒子。
【請求項72】
操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである、請求項71に記載のrAAV粒子。
【請求項73】
rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である、請求項69または70に記載のrAAV粒子。
【請求項74】
rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である、請求項69または70に記載のrAAV粒子。
【請求項75】
rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含む、請求項69~70または73~74のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項76】
rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含み、ベクターは、AAV2のITRを含む、請求項74に記載のrAAV粒子。
【請求項77】
請求項69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む組成物。
【請求項78】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
請求項33~49のいずれか1項に記載の核酸または請求項52もしくは53に記載のベクターまたは請求項54~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含む細胞。
【請求項80】
バリアントPAHポリペプチドを生産する方法であって、請求項79に記載の細胞を、バリアントPAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、前記方法。
【請求項81】
バリアントPAHポリペプチドを精製する工程をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドまたは請求項31もしくは32に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項83】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または請求項33、34または49に記載の核酸を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項84】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、
前記方法。
【請求項85】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項86】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項31、32、50、51、77または78に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項87】
それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、請求項79に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項88】
個体は、PAH活性を欠如している、請求項82~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドまたは請求項31もしくは32に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項90】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または請求項33、34または49に記載の核酸を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項91】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項92】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項93】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項31、32、50、51、77または78に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項94】
それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、請求項79に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項95】
処置の前における個体の血液中のフェニルアラニンのレベルは、同等の対応する対照個体の血液中のフェニルアラニンのレベルと比較して上昇している、請求項89~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
バリアントPAHポリペプチド、核酸、rAAVベクター、rAAV粒子、組成物または細胞は、静脈内、動脈内、肝内、門脈内、腹腔内、または皮下に投与される、請求項82~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
投与は、別の療法と組み合わされる、請求項82~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
別の療法は、テトラヒドロビオプテリンでの処置、フェニルアラニンアンモニアリアー
ゼ(PAL)もしくはペグ化PALでの処置、またはフェニルアラニンが制限された食事である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
PAHポリペプチドを作製するための方法であって、請求項79に記載の細胞を、PAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、前記方法。
【請求項100】
PAHポリペプチドを精製することをさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
請求項1~24のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドを含むキット。
【請求項102】
請求項33~46のいずれか1項に記載の核酸、請求項53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクター、請求項69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子、または請求項77もしくは78に記載の組成物を含むキット。
【請求項103】
使用説明書;緩衝液および/もしくは医薬的に許容される賦形剤;ならびに/またはボトル、バイアルおよび/もしくはシリンジをさらに含む、請求項101または102に記載のキット。
【請求項104】
肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含む、前記発現カセット。
【請求項105】
mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、請求項104に記載の発現カセット。
【請求項106】
エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある、請求項104または105に記載の発現カセット。
【請求項107】
肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3’エレメントである、前記発現カセット。
【請求項108】
mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、請求項107に記載の発現カセット。
【請求項109】
3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている、請求項107または108に記載の発現カセット。
【請求項110】
肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改
変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含み;該3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3’エレメントである、前記発現カセット。
【請求項111】
mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、請求項110に記載の発現カセット。
【請求項112】
エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある、請求項110または111に記載の発現カセット。
【請求項113】
3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている、請求項110~112のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項114】
イントロンをさらに含む、請求項104~113のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項115】
イントロンは、ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、請求項114に記載の発現カセット。
【請求項116】
ポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項104~115のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項117】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、請求項116に記載の発現カセット。
【請求項118】
導入遺伝子は、PAHポリペプチドまたはバリアントPAHポリペプチドをコードする、請求項104~117のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項119】
バリアントPAHポリペプチドは、請求項1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドである、請求項118に記載の発現カセット。
【請求項120】
請求項104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項121】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項120に記載のベクター。
【請求項122】
1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した請求項104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを含むrAAVベクター。
【請求項123】
請求項104~119のいずれか1項に記載の発現カセットは、2つのAAVのITRと隣接している、請求項122に記載のrAAVベクター。
【請求項124】
AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、請求項122または123に記載のrAAVベクター。
【請求項125】
AAVのITRは、AAV2のITRである、請求項122~124のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項126】
自己相補性ベクターである、請求項122~125のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項127】
PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる、請求項126に記載のrAAVベクター。
【請求項128】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、請求項127に記載のrAAVベクター。
【請求項129】
請求項122~127のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含むrAAV粒子。
【請求項130】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む、請求項129に記載のrAAV粒子。
【請求項131】
AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む、請求項130に記載のrAAV粒子。
【請求項132】
操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである、請求項131に記載のrAAV粒子。
【請求項133】
rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である、請求項131または132に記載のrAAV粒子。
【請求項134】
rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である、請求項131または132に記載のrAAV粒子。
【請求項135】
請求項129~134のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む組成物。
【請求項136】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項135に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる2018年10月12日に出願された米国仮出願第62/744,944号の優先権の利益を主張する。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる:配列表のコンピューター読取り可能な形態(CRF)(ファイル名:159792016640SEQLIST.TXT、記録した日付:2019年10月16日、サイズ:33KB)。
【0003】
本発明の開示は、バリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼポリペプチドに関する。一部の態様において、本開示は、遺伝子治療を使用してフェニルケトン尿症を処置するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
フェニルケトン尿症(PKU)は、フェニルアラニン(Phe)のチロシン(Tyr)への水酸化を触媒する肝臓酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)の遺伝学的欠損である。この疾患は、北米で1:10~15,000の全体的な発生率を有する最も一般的な先天性アミノ酸代謝異常であり、これは、ほとんどの先進国で新生児スクリーニングプログラムによって検出される。まったく処置を行わないと、PKUの重度の形態は、神経毒性であり重度の精神遅滞に関連する高度に上昇した血液Pheレベルをもたらす(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。影響を受けたタンパク質であるPAHは、N末端の調節性(1~117)、中央の触媒性(118~410)およびC末端の四量体化ドメイン(411~452)からなるマルチドメインタンパク質である(非特許文献4)。これまで560種を超える疾患を引き起こす突然変異が各ドメインにマッピングされており、触媒領域は、最も高頻度で影響を受ける部位である(非特許文献5)。ホモ多量体酵素は、基質PheがN末端ドメインに結合することにより、リン酸化およびアロステリック活性化を用いた複雑な制御を受け、これは、酵素の様々な構造および多量体化の状態を変更することによってPAH酵素活性を微調整する(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。
【0005】
PKUのための現行の処置は、低タンパク質の食事と液状の医療調合食(medical formula)を使用した生涯続くPheの食事制限である(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。有効であるにもかかわらず、医療用食品の不十分な味と食品選択に対する厳しい制限が、食品の遵守を難しくしており、および小児期中に服薬不履行は徐々に増大し、十代後半までに患者のほぼ80%が推奨レベルより高い血液Pheレベルを有する(非特許文献9、非特許文献10)。また、Phe制限食の優れた遵守にもかかわらず、多くの患者は、様々な神経認知および神経精神病学的機能の欠損を経験し、加えて、注意欠陥多動障害(ADHD)の高い発生率を有するという証拠も出現している。この理由は不明瞭であるが、考えられる説明としては、脳におけるアミノ酸不均衡、特定のビタミンおよび微量元素の栄養不足、加えて、肝臓PAH活性によって通常安定に維持される血液Pheレベルの変動が挙げられる(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。興味深いことに、PKUのより軽度の形態を有する患者の補因子テトラヒドロビオプテリン(BH4)の合成形態(サプロプテリン二塩酸塩)での処置は、血液Pheレベルを低くすることにおいて有効であることが示されただけでなく、ADHD症状の
低減などの神経学的転帰における改善も実証した(非特許文献14)。この療法は、薬理学的なシャペロンとして作用することによって残留したPAH酵素活性を増加させ、したがって正常なPheが制御されたPAH活性を提供することによって遺伝学的欠陥の部分的な修正を提供することができる(非特許文献3)。近年承認された別の療法は、Pheをトランス-ケイ皮酸に代謝する細菌フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)のペグ化形態を使用した酵素置換療法からなる。この療法は、血液Pheレベルにおける顕著な低減をもたらすが、神経学的なエンドポイントに対する効果はそれほど高くないようである(非特許文献15)。全身のPheレベルの調節因子およびTyrのプロデューサーとしてのPAH機能の修正を行わずに主として血液Pheレベルを低くすることに基づく、このまたは他のあらゆる療法が、食事を遵守するPKU患者でさえも観察される認知および神経精神病学的な問題に対処することができるかどうかは、不明瞭なままである。
【0006】
本明細書において引用される特許出願および広報を含む全ての参考文献は、参照によってそれら全体が本明細書に組み入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kochhar JSら、Drug Deliv Transl Res 2012、2:223~237
【非特許文献2】Ho G、Christodoulou J.Transl Pediatr 2014、4:49~62
【非特許文献3】Blau N、Longo N.Expert Opin Pharmacother 2015、16:791~800
【非特許文献4】Flydal MI、Martinez A.IUBMB Life 2013、65:341~349
【非特許文献5】Erlandsen Hら、Pediatrics 2003、112:1557~1565
【非特許文献6】Knappskog PMら、Eur J Biochem 1996、242:813~821
【非特許文献7】Jaffe Eら、 Arch Biochem Biophys 2013、530:73~82
【非特許文献8】Arturo ECら、PNAS 2016、113:2394~2399
【非特許文献9】Waisbren SEら、Mol Genet Metab 2007、92:63~70
【非特許文献10】Thomas Jら、J Inborn Errors Metabolism & Screening 5:1~9
【非特許文献11】Cleary Mら、Mol Gen Metab 2013、110:418~423
【非特許文献12】Gonzales MJら、SeminPediatr Neurol 2016、23:332~340
【非特許文献13】Vogel KRら、J Inherit Metab Dis 2017、40:227~235
【非特許文献14】Burton Bら、Mol Gen Metab 2015、114:415~424
【非特許文献15】Longo Nら、Lancet 2014、384:37~44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内因性hPAHと比較して改善されたタンパク質安定性および酵素活性をもたらす4つのアミノ酸変化を含有する、hPAHの改善されたバリアント、特定にはバリアント-1(V1)を発明者らが発見したことに少なくとも部分的に基づく。臨床的に意義のある用量のrAAVを使用した、このhPAH-V1バリアントをコードするcDNAの肝臓への送達は、ヒトPKUのモデルであるPAHenu2マウスにおいて様々な疾患のエンドポイントを改善し、改変されていないhPAHより有効であった。したがって、この新規のバリアントをコードするrAAVベクターは、低減されたベクター用量で効能をもたらすことにより、PKU遺伝子治療への道を提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一部の態様において、本発明は、2つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、バリアントPAHポリペプチドを提供する。一部の態様において、本発明は、3つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、バリアントPAHポリペプチドを提供する。一部の態様において、本発明は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドを提供する。一部の実施形態において、アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態において、アミノ酸置換は、K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含む。一部の実施形態において、アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、野生型ヒトPAHポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、ヒトPAHポリペプチドである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、および453位におけるSの付加をさらに含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312
A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。
【0010】
一部の態様において、本発明は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446H、および453位におけるSの付加から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドを提供する。一部の態様において、本発明は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドを提供する。
【0011】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、N末端の短縮化を含む。一部の実施形態において、N末端の短縮化は、N末端調節ドメインの短縮化を含む。一部の実施形態において、N末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基1~102の短縮化を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、C末端の短縮化を含む。一部の実施形態において、C末端の短縮化は、四量体化ドメインの短縮化を含む。一部の実施形態において、C末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基429~452の短縮化を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基103~428に対応するアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、野生型PAHポリペプチドの270~295位および/または380~405位に配置されている。
【0013】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、肝臓標的化ポリペプチドに融合されている。一部の実施形態において、肝臓標的化ポリペプチドは、HGFもしくはそのフラグメントまたは肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に結合する糖タンパク質である。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、ペグ化および/またはニトロシル化されている。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、I374Cアミノ酸置換を含み、374位におけるcys残基は、ニトロシル化されている。
【0014】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0015】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、mTTR482プロモーター、mA1MB2-mTTR482プロモーター、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(
TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、LP1プロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターまたは配列番号17、レトロウイルスであるラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、およびβ-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、プロモーターは、LP1プロモーターまたはmA1MB2-mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、核酸は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TKポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において、核酸は、イントロンをさらに含む。一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、配列番号15の改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。一部の実施形態において、核酸は、1つまたはそれ以上のITRをさらに含む。一部の実施形態において、核酸は、スタッファー核酸をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、ATG配列が除去されるように最適化されている。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、配列番号16のA1ATイントロンスタッファー配列である。
【0016】
一部の態様において、本発明は、コドン最適化されている、ヒトPAHポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の実施形態において、核酸配列は、配列番号14の核酸配列に少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、核酸は、配列番号14の核酸配列を含む。一部の実施形態において、核酸は、mRNAである。一部の態様において、本発明は、本明細書に記載される核酸を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0017】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載される単離された核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した本明細書に記載される核酸を含む。一部の実施形態において、核酸は、2つのAAVのITRと隣接している。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、5’から3’に、AAV2のITR、プロモーター、イントロン、PAHポリペプチドをコードする核酸、スタッファー核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、m1A1MB2-mTTR482プロモーターまたはLP1プロモーターである。一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。一部の実施形態において、PAHポリペプチドは、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドである。一部の実施形態において、PAHポリペプチドをコードする核酸は、コドン最適化された核酸である。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロン由来の核酸を含む。一部の実施形態において、ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロンは、ATG配列が除去されるように突然変異されている。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補性(self-complimenting)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む。
【0018】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターを含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む。一部の実施形態において、操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含む。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含み、ベクターは、AAV2のITRを含む。
【0019】
一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV2血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV3血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV4血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV5血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV6血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、
少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV7血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV8血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV9血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV11血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV12血清型のカプシドと少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するカプシドを含む。
【0020】
一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、ハイブリッドカプシドを含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV1/AAV6、AAV2/AAV6、AAV3/AAV6、AAV4/AAV6、AAV5/AAV6、AAV7/AAV6、AAV8/AAV6、AAV9/AAV6、AAV10/AAV6、AAV11/AAV6、AAV12/AAV6、AAV1/AAV8、AAV2/AAV8、AAV3/AAV8、AAV4/AAV8、AAV5/AAV8、AAV7/AAV8、AAV9/AAV8、AAV10/AAV8、AAV11/AAV8、AAV12/AAV8、またはAAV1/AAV6/AAV8ハイブリッドカプシドである。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV8/AAV6ハイブリッドカプシドである。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV1/AAV6/AAV8ハイブリッドカプシドである。
【0021】
一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、ハイブリッドカプシドを含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV1/AAV6、AAV2/AAV6、AAV3/AAV6、AAV4/AAV6、AAV5/AAV6、AAV7/AAV6、AAV8/AAV6、AAV9/AAV6、AAV10/AAV6、AAV11/AAV6、AAV12/AAV6、AAV1/AAV8、AAV2/AAV8、AAV3/AAV8、AAV4/AAV8、AAV5/AAV8、AAV7/AAV8、AAV9/AAV8、AAV10/AAV8、AAV11/AAV8、AAV12/AAV8、またはAAV1/AAV6/AAV8ハイブリッドカプシドである。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV8/AAV6ハイブリッドカプシドである。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV1/AAV6/AAV8ハイブリッドカプシドである。
【0022】
一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV1カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV2カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV3カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配
列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV4カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV5カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV6カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV7カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV8カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV9カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV10カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ハイブリッドカプシドは、AAV12カプシド配列の一部と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、上記一部は、少なくとも100アミノ酸、例えば少なくとも150、200、250、300、350、または400アミノ酸を含む。
【0023】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載されるrAAV粒子を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0024】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載される単離された核酸を含む細胞を提供する。一部の態様において、本発明は、バリアントPAHポリペプチドを生産する方法であって、上述した細胞を、バリアントPAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、バリアントPAHポリペプチドを精製する工程をさらに含む。
【0025】
一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドまたは本明細書に記載される組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または本明細書に記載される核酸を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載されるrAAVベクターを個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載されるrAAV粒子を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載される組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、本明細書に記載される細胞を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、個体は、PAH活性を欠如している。
【0026】
一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドを個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または本明細書に記載される核酸を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載されるrAAVベクターを個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載されるrAAV粒子を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載される組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、処置の前における個体の血液中のフェニルアラニンのレベルは、同等の対応する対照個体の血液中のフェニルアラニンのレベルと比較して上昇している。一部の態様において、本発明は、それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、本明細書に記載される細胞を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0027】
一部の実施形態において、核酸、rAAVベクター、rAAV粒子、組成物または細胞は、静脈内、動脈内、肝内、門脈内、腹膜内、または皮下に投与される。一部の実施形態において、投与は、別の療法と組み合わされる。一部の実施形態において、別の療法は、テトラヒドロビオプテリン(tetrahydribiopterin)での処置、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)もしくはペグ化PALでの処置、またはフェニルアラニンが制限された食事である。
【0028】
一部の態様において、本発明は、PAHポリペプチドを作製するための方法であって、本明細書に記載される細胞を、PAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、PAHポリペプチドを精製することをさらに含む。
【0029】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドを含むキットを提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される核酸、本明細書に記載されるrAAVベクター、本明細書に記載されるrAAV粒子、または本明細書に記載される組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態において、キットは、使用説明書;緩衝液および/もしくは医薬的に許容される賦形剤;ならびに/またはボトル、バイアルおよび/もしくはシリンジをさらに含む。
【0030】
一部の態様において、本発明は、肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニン(microbikunin)エンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含む、発現カセットを提供する。一部の実施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある。
【0031】
一部の態様において、本発明は、肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現
カセットであって、プロモーターおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3’エレメントである、発現カセットを提供する。一部の実施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている。
【0032】
一部の態様において、本発明は、肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含み;3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3’エレメントである、発現カセットを提供する。一部の実施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある。一部の実施形態において、3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている。
【0033】
一部の実施形態において、発現カセットは、イントロンをさらに含む。一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。一部の実施形態において、発現カセットは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。
【0034】
一部の実施形態において、導入遺伝子は、 PAHポリペプチドまたはバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される発現カセットを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。
【0035】
一部の実施形態において、本発明は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した本明細書に記載される発現カセットを含むrAAVベクターを提供する。一部の実施形態において、発現カセットは、2つのAAVのITRと隣接している。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。
【0036】
一部の実施形態において、ベクターは、自己相補性ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む。
【0037】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターを含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む。一部の実施形態において、操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAV粒子を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1-1】
図1A~1Cは、肝臓プロモーターの最適化を示す図である。
図1Aは、プレウイルス(previral)プラスミドコンストラクトの図表を示す。コンストラクトmTTR482(#1)を、様々な肝臓エンハンサーエレメント(コンストラクト#2~6)または3’安定性エレメント(コンストラクト#7~8)の付加によって改変した。CBAプロモーターを含有するコンストラクトを比較に使用した。全てのコンストラクトは、隣接するITR、ハイブリッドイントロンおよびSEAPレポーターを含有していた。次いでコンストラクトを、Huh7細胞(
図1B)またはHepG2細胞(
図1C)にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、分泌型SEAP活性のレベルを測定し、コトランスフェクトされたLacZプラスミドからのb-ガラクトシダーゼレベルによって正規化した。各評価は、n=3~4/プラスミドを含有していた。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、インビボにおけるSEAP生産による肝臓プロモーターの評価を示す図である。
図2Aは、正常なC57BL/6マウスにおけるSEAPレベルを示す。
図2Bは、PAH
enu2マウスにおけるSEAPレベルを示す。両方の実験において、プラスミドベクターを高容量の注射によって送達し、血漿を様々なタイムポイントでSEAP活性に関して測定した。各処置グループは、n=3~6匹の動物を含有していた。
【
図3-1】
図3A~3Dは、PAH
enu2マウスにおける肝臓プロモーターの性能の比較を示す図である。sc-LP1またはss-A1MB2-mTTRプロモーター(リード)からmPAHを発現するrAAV8ベクターを、雄PAH
enu2マウスに4e10(L)または1e11(M)VG/マウスで投与した。
図3Aは、56日の時間経過中の血液Pheレベルを示す。レベルは、ナイーブ動物がn=2での平均であることを除き、n=8/グループの平均である。
図3Bは、56日目の血液Pheレベルを示す。4e10または1e11VG/マウスで投与された2つのコンストラクトで処置した動物または未処置の動物における血漿Pheレベルが示される。
図3Cは、血液Tyrレベルを示す。ベクター投与の前(プレブリード(prebleed))およびベクター投与の7および56日後に、レベルを測定した。各値は、n=8/グループの平均である。
図3Dは、56日目の肝臓中のベクターゲノムを示す。ベクターのコピーをqPCRによって決定し、n=5/グループの平均が示される。
【
図4-1】
図4A~4Dは、PAH
enu2マウスの脳の分析を示す図である。未処置の、ss-mA1MB2-mTTR(リード)コンストラクト(4e10および1e11vg/マウス)およびsc-LP1(1e11vg/マウス)で処置したPAH
enu2マウスからの5匹の動物を処置の56日後に殺し、PBSで灌流し、分析のために脳を収集した。野生型対照(WT)としてBalb/Cマウスを使用した。
図4Aは、脳のPheレベルを示す。
図4Bは、血液および脳のPheレベルの相関を示す。
図4Cは、脳のドーパミンレベルを示す。
図4Dは、脳のセロトニンレベルを示す。全ての値は、n=5/グループの平均を表す(未処置のPAH
enu2マウスではn=2であることを除く)。
図3A~3Cに記載されたように研究を実行した。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、ヒトPAH cDNAのコドン最適化を示す図である。FLAGでタグ付けされたhPAHをコードするcDNAを、mTTR482-hPAH-BGHpA発現プラスミドにクローニングした。hPAH生産をインビトロとインビボの両方で試験した。
図5Aは、Huh7細胞におけるFLAG-hPAHレベルを示す。プラスミドをトランスフェクトし、48時間後に細胞溶解産物を調製した。細胞溶解産物におけるPAHタンパク質レベルをウェスタンブロットによって分析した。
図5Bは、C57BL/6マウスの肝臓中のFLAG-hPAHレベルを示す。プラスミドを水圧注射によって投与し、24時間後に肝臓を収集した。肝臓溶解産物におけるFLAGでタグ付けされたhPAHのレベルをFLAG-ELISAを使用して定量化し、総タンパク質によって正規化した。値は、動物n=4~5/グループでの平均を表す。略語:C、陰性対照プラスミド;GS、Genscript、GA、GeneArt、GS CpG、CpGが除去されたGenscript配列;non、元のhPAHDNA配列;ナイーブ、未処置の動物。
【
図6A】
図6Aは、異なるプロモーター(mTTR482、CBA、およびLP1)の制御下におけるヒトフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(hPAH)およびマウスフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(mPAH)の発現を示すウェスタンブロットを示す図である。発現プラスミドを、Huh7細胞にトランスフェクトし、2日後に細胞溶解産物を、FLAGに対する抗体を使用してFLAG-PAHレベルに関して分析した。
【
図6B】
図6Bは、インビトロにおける全長(FL)および二重短縮化(DT)ヒトおよびマウスPAH発現の比較を示すウェスタンブロットを示す図である。分析は
図6Aの通りである。
【
図6C】
図6Cは、全長(FL)および二重短縮化(DT)形態の両方に関するhPAHおよびmPAHタンパク質レベルの比較を示す図である。発現プラスミドでのトランスフェクション後、FLAGでタグ付けされたタンパク質のELISAによる定量をHuh7細胞溶解産物で実行した。
【
図6D】
図6Dは、hPAHおよびmPAHのmRNAレベルの比較を示す図である。
図6Cで使用された材料に、qPCRによるRNA分析を実行した。
【
図6E】
図6Eは、精製したhPAHおよびmPAH(両方とも全長および二重短縮化形態として生成された)の分析を示すウェスタンブロットを示す図である。タンパク質をFLAG-アフィニティーカラムによって精製し、SDS-PAGEゲル中に泳動し、続いて抗FLAG抗体で検出した。
【
図6F】
図6Fは、PKUマウスモデルにおけるhPAHまたはmPAHをコードするrAAV8ベクターの効能を示す図である。hPAHおよびmPAHの両方を、LP1プロモーター(sc-LP1)を有する自己相補性ベクターから発現させた。効能を、PAH
enu2マウスへの単回のIV注射後の血液Pheレベルの低減として測定した。
【
図7-1】
図7A~7Cは、マウス/ヒトハイブリッドPAHコンストラクトの生成を示す図である。
図7Aは、マウス/ヒトハイブリッドPAHコンストラクトの図解を示す。ヒト(緑色)およびマウス(灰色)PAH由来の領域を示す。
図7Bは、タンパク質発現レベルへのhPAHのN末端領域の置き換えの作用を示す。
図7Cは、タンパク質発現レベルへのhPAHのC末端領域における変化の作用を示す。実験を、CBA-PAH発現カセットを有するプラスミドを293T細胞にトランスフェクトすることによって実行した。48時間後、FLAG ELISAによるFLAG-PAHの定量のために細胞を収集した。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、インビトロにおける二重短縮化hPAH(hPAH-DT)バリアントのスクリーニングを示す図である。
図8Aは、プラスミドによって発現されたhPAHタンパク質バリアント(#1~#8)のタンパク質発現レベルを示す。
図8Bは、プラスミドによって発現されたhPAHタンパク質バリアントのPAH活性レベルを示す。全てのバリアントを293細胞にトランスフェクトし、CBAプロモーターを有するプラスミドから発現させた。バリアントプラスミドからの結果を、ヒトまたはマウスPAHを発現する類似のプラスミドと比較する。
【
図9】
図9A~9Cは、インビトロにおけるPAH生産に関するhPAH-V1-DT誘導体の特徴付けを示す図である。
図9Aは、hPAH-V1-DT誘導体のPAH活性レベルを示す。
図9Bは、hPAH-V1-DT誘導体のPAHタンパク質レベルを示す。
図9Cは、hPAH-V1-DT誘導体の特異的なPAH活性を示す。結果は、トランスフェクトされた293細胞からの細胞溶解産物の分析に基づく。
【
図10-1】
図10A~10Cは、インビトロにおけるPAH生産に関するhPAH-V1-DT誘導体の反復分析を示す図である。
図10Aは、選択されたhPAH-V1-DT誘導体のPAH活性レベルを示す。
図10Bは、hPAH-V1-DT誘導体のPAHタンパク質レベルを示す。
図10Cは、hPAH-V1-DT誘導体の特異的なPAH活性を示す。
図8Aおよび8Bに記載されたようにデータを作成した。
図10Dは、バリアント-1の3つの二重突然変異体バージョンのPAH活性を示す。
図8Aおよび8Bに記載されたようにデータを作成した。
【
図11-1】
図11A~11Cは、インビトロにおける、全長hPAH-V1の、マウスPAH(mPAH)およびヒトPAH(hPAH)との比較を示す図である。
図11Aは、タンパク質発現の分析ウェスタンブロットである。
図11Bは、FLAG-ELISAによるPAHタンパク質レベルを示す。
図11Cは、PAH活性レベルを示す。肝臓プロモーターA1MB2-mTTR482を有し、全長PAHタンパク質をコードする発現プラスミドをHuh7にトランスフェクトし、続いて細胞溶解産物を分析することによって、データを作成した。Mは、マーカーのレーンを示す。
【
図12-1】
図12A~12Cは、全長hPAH-V1を発現するrAAVベクターの効能の、PAH
enu2マウスにおけるマウスおよびヒトPAHの効能との比較を示す図である。
図12Aは、血液中のフェニルアラニンのレベルを示す。
図12Bは、血液中のチロシンのレベルを示す。
図12Cは、血液中のフェニルアラニン代謝産物レベルを示す。P値は、
*はP<0.05)であり、
**はP<0.01であり、
***はP<0.001であるとして示される。全ての処置グループは、肝臓プロモーターからのFLAGでタグ付けされたPAHを発現するAAV8ベクターからなっていた。0日目に、ベクターを、IV経路によって、3e11(hPAH、hPAH-V1およびmPAH)または1e12vg/マウス(hPAHおよびhPAH-V1)で注射した。ナイーブPAH
enu2マウスおよびヘテロ接合型(HET)をそれぞれ陰性および陽性対照として使用した。
【
図13】
図13A~13Cは、肝臓中のrAAVベクターゲノムおよび3x-FLAG-PAHレベルの定量を示す図である。
図13Aは、PAHタンパク質レベルを示す。
図13Bは、PAH活性レベルを示す。
図13Cは、肝臓中のベクターゲノムコピーを示す。
図12A~12Cに記載されたように実験を実行し、ベクター投与の69日後に肝臓収集した。各パネルにおいて、3e11VG/マウスの処置グループ(hPAH、hPAH-V1およびmPAH)および1e12vg/マウスの処置グループ(hPAH、hPAH-V1)のデータが示される。P値、
***は、<0.001である。
【
図14】
図14A~14Dは、脳における様々なアミノ酸レベルの定量を示す図である。
図14Aは、脳のフェニルアラニンレベルを示す。
図14Bは、脳のチロシンレベルを示す。
図14Cは、脳および血液中のフェニルアラニンのレベルの間の相関を示す。
図14Dは、脳のトリプトファンレベルを示す。
図12A~12Cに記載されたように実験を実行した。示されたデータは、3e11VG/マウス(n=5/グループ)(69日目)で投与された処置グループからのものである。P値、
***は、<0.001である。
【
図15】
図15A~15Dは、脳中の神経伝達物質レベルを示す図である。
図15Aは、脳のドーパミンレベルを示す。
図15Bは、ドーパミン代謝産物であるDOPACの脳のレベルを示す。
図15Cは、脳のセロトニンレベルを示す。
図15Dは、セロトニン代謝産物であるHIAAの脳のレベルを示す。
図12A~12Cに記載されたように実験を実行し、値は、3e11VG/マウスコホート(69日目)からのものである。P値、
**は、P<0.01であり、
***は、P<0.001である。
【
図16】
図16A~16Bは、効能に関する3.8および4.6kbのA1MB2-mTTR-hPAV-V1ベクターゲノムの比較を示す図である。
図16Aは、ベクターの図解を示す。
図16Bは、PAH
enu2マウスにおける効能試験を示す。肝臓プロモーター(リード)からhPAH-V1を発現するAAV8ベクターを、1e11vg/マウスで1回投与し、効能を血液Pheレベルとして測定した。これらのベクターも、hPAH-V1を有しN末端タグを有さない4.6kbのベクターと比較した(1e11および3e11vg/マウスで試験した)。
【
図17】
図17A~17Cは、rAAVベクターを用いた送達後の非ヒト霊長類肝臓におけるhPAH-V1生産とhPAH生産のインビボにおける比較を示す図である。
図17Aは、それぞれ個々の動物の肝臓中のrAAVベクターゲノムのレベルを示す。
図17Bは、処置した各動物の肝臓および脾臓中のベクターから得られたmRNAのレベルを示す。mRNAレベルを、各動物中のベクターゲノムコピーに正規化した。
図17Cは、肝臓ホモジネート中のFLAGでタグ付けされたPAHタンパク質の検出を示す。等しい溶解産物のローディングは、ハウスキーピングタンパク質であるGAPDHの検出を用いて確認された。A1MB2-mTTRプロモーターからのFLAGでタグ付けされたPAHまたはPAH-V1を発現するrAAVベクターの5e12g/kgのIV投与によって実験を実行した。肝臓中のベクターゲノム、ベクターから得られたmRNAおよびPAHタンパク質の分析のために、2週間後、組織を収集した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一部の態様において、本明細書に記載される発明は、インビトロおよびインビボにおいて、野生型hPAHと比較してより高いPAHタンパク質および/または活性レベルを付与する、少なくとも2つ、4つのアミノ酸変化を含む、ヒトPAH(hPAH-V1)ポリペプチドのバリアントを提供する。他の態様において、本明細書に記載される発明は、インビトロおよびインビボにおいて、野生型hPAHと比較してより高いPAHタンパク質および/または活性レベルを付与する少なくとも2、3または4つのアミノ酸変化を含むヒトPAH(hPAH-V1)の改善されたバリアントを提供する。一部の態様において、本発明は、ヒトPAHの前記バリアントをコードする核酸を提供する。一部の態様において、本発明は、発現カセット、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターおよびウイルス粒子、ならびに本開示のバリアントPAHポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)を処置するための方法であって;例えば、PAH活性を増加させること、脳へのチロシンおよびトリプトファン輸送を増加させること、およびドーパミンおよびセロトニンなどの脳神経伝達物質レベルを正規化することによる、方法を提供する。さらなる追加の態様において、本発明は、本開示のバリアントPAHを用いて個体におけるPKUを処置するためのキットを提供する。
【0040】
I.全般的な技術
本明細書に記載または参照された技術および手順は、一般的によく理解されており、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual
(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);Methods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies,A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to
Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian
Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford
University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)に記載される広く利用されている手法などの当業者により従来の方法論を使用して一般的に採用される。
【0041】
II.定義
「ベクター」は、本明細書で使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達しようとする核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0042】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、あらゆる長さを有するヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語は、これらに限定されないが、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNA
ハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、もしくは他の天然の、化学的もしくは生化学的に改変された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。ポリヌクレオチドのバックボーンは、糖およびリン酸基(典型的にRNAまたはDNAに見出すことができる通り)、または改変もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含んでいてもよい。代替として、ポリヌクレオチドのバックボーンは、ホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含んでいてもよく、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミデート(P-NH2)または混成のホスホルアミデート-リン酸ジエステルオリゴマーであってもよい。加えて、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成し、鎖を適切な条件下でアニーリングすること、またはDNAポリメラーゼを使用して適切なプライマーと共に相補鎖をデノボ合成することのいずれかによって、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド生成物から得ることができる。
【0043】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小限の長さに限定されない。このようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有していてもよく、その例としては、これらに限定されないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、および多量体が挙げられる。全長タンパク質およびそのフラグメントはどちらも、この定義に包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後改変、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本開示の目的に関して、「ポリペプチド」は、タンパク質が望ましい活性を維持する限り、天然配列への欠失、付加、および置換(一般的に自然界において保存的な)などの改変を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的変異誘発によってなされるように計画的であってもよいし、または偶発的であってもよく、例えばタンパク質を生産する宿主の突然変異またはPCR増幅に起因するエラーによって偶発的であってもよい。
【0044】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターのケースにおいて、組換え核酸は、少なくとも1つの、ある実施形態では2つの逆方向末端反復配列(ITR)が隣接している。
【0045】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つの、ある実施形態では2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接している、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターは、複製され、好適なヘルパーウイルスに感染した(または好適なヘルパー機能を発現している)宿主細胞、およびAAV repおよびcap遺伝子産物(すなわちAAV ReおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、感染性ウイルス粒子にパッケージングすることができる。rAAVベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体中に、または別のベクター例えばクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミド中に)取り込まれる場合、rAAVベクターは、「プロベクター(pro-vector)」と称される場合もあり、これは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下で複製およびカプシド化により「レスキュー」することができる。rAAVベクターは、これらに限定されないが、脂質と複合体化した、リポソーム内に封入された、およびウイルス粒子、特定にはAAV粒子中にカプシド化された、プラスミド、直鎖状人工染色体などの多数の形態のいずれであってもよい。rAAVベクターは、AAVウイルスカプシドにパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成することができる。
【0046】
「異種」は、それが比較される、またはそれに導入されるかもしくは取り入れられる実体の残りのそれと遺伝的に別個の実体から誘導されていることを意味する。例えば、遺伝
子工学技術によって異なる細胞型に導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(さらに発現される場合、異種ポリペプチドをコードし得る)。同様に、ウイルスベクターに取り込まれる細胞性の配列(例えば、遺伝子またはその部分)は、ベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0047】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、RNAに転写され、任意選択で適切な条件下で翻訳および/または発現させることが可能なポリヌクレオチドを指す。態様において、これは、それが導入された細胞に望ましい特性を付与するか、またはそれ以外の方法で望ましい治療または診断結果をもたらす。
【0048】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBank Entrez遺伝子番号396526によって表される、ニワトリ(Gallus gallus)ベータアクチン)由来のポリヌクレオチド配列を指す。「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、本明細書で使用される場合、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント、ニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターおよび第1のエクソンおよびイントロン、ならびにウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含有するプロモーター、例えばMiyazaki,J.ら(1989)Gene 79(2):269~77に記載される配列を指す場合もある。用語「CAGプロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用することができる。用語「CMV初期エンハンサー/ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用することができる。
【0049】
用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価体」、または「ゲノムコピー」は、ウイルスタイターへの言及において使用される場合、感染力または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物におけるゲノム粒子の数は、例えば、本明細書の実施例に、または例えばClarkら(1999)Hum.Gene Ther.、10:1031~1039;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、6:272~278に記載されたような手順によって測定することができる。
【0050】
用語「ベクターゲノム(vg)」は、本明細書で使用される場合、ベクター、例えばウイルスベクターのポリヌクレオチド配列のセットを含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指す場合もある。ベクターゲノムは、ウイルス粒子中にカプシド化することができる。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、または一本鎖RNA、もしくは二本鎖RNAを含んでいてもよい。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターに関連する内因性配列、および/または組換え技術を介して特定のウイルスベクターに挿入されたあらゆる異種配列を含んでいてもよい。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、プロモーターに隣接する少なくとも1つのITR配列、スタッファー、目的の配列(例えば、RNAi)、およびポリアデニル化配列を含んでいてもよい。完全なベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全なセットを含み得る。一部の実施形態において、ウイルスベクターの核酸のタイターは、vg/mLの単位で測定することができる。このタイターを測定するのに好適な方法は、当業界において公知である(例えば、定量PCR)。
【0051】
用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、ウイルスタイターへの言及において使用される場合、感染中心アッセイ(infectious center assay)によって測定した場合の、感染性の、および複製可能な組換えAAVベクター粒子の数を指し、このアッセイはまた、複製中心アッセイ(replication center assay)としても公知であり、例えば、McLaughlinら(1988)J.Virol.、62:1963~1973に記載される通りである
。
【0052】
用語「形質導入単位(tu)」は、ウイルスタイターへの言及において使用される場合、機能アッセイで、例えば、本明細書に記載の実施例、または例えば、Xiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、144:113~124;もしくはFisherら(1996)J.Virol.、70:520~532(LFUアッセイ)に記載されたような機能アッセイで測定した場合の、機能的な導入遺伝子産物の生産をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0053】
「逆方向末端反復」または「ITR」配列は、当業界においてよく理解されている用語であり、ウイルスゲノムの末端に見出される逆方向の相対的に短い配列を指す。
【0054】
「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、当業界においてよく理解されている用語であり、天然の一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、2つの択一的な方向のいずれかに存在していてもよく、異なるAAVゲノム間、および単一のAAVゲノムの2つの末端間に不均質性をもたらす。最も外側の125ヌクレオチドはまた、自己相補性を有するいくつかのより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と名付けられた)も含有し、これは、ITRのこの部分内において鎖内の塩基対形成を可能にする。
【0055】
「末端分解配列」または「trs」は、ウイルスDNA複製中にAAV repタンパク質によって切断されるAAVのITRのD領域中の配列である。突然変異末端分解配列は、AAV repタンパク質による切断に対して不応性である。
【0056】
「AAVヘルパー機能」は、宿主細胞によってAAVを複製し、パッケージングすることを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、これらに限定されないが、AAVの複製およびパッケージングに役立つヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子などの多数の形態のいずれかで提供することができる。他のAAVヘルパー機能は当業界において公知であり、例えば遺伝毒性物質などである。
【0057】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、宿主細胞によってAAV(これは欠損パルボウイルスである)を複製し、パッケージングすることを可能にするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。多数のこのようなヘルパーウイルスが同定されており、その例としては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス、例えばワクシニアおよびバキュロウイルスが挙げられる。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳類および鳥類起源の多数のアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの受託機関から入手可能である。ヘルペスファミリーのウイルスも、ATCCなどの受託機関から入手可能であり、その例としては、例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。AAVの複製のためのアデノウイルスヘルパー機能の例としては、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能が挙げられる。受託機関から入手可能なバキュロウイルスとしては、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルスが挙げられる。
【0058】
rAAVの調製物は、感染性AAV粒子の感染性ヘルパーウイルス粒子に対する比率が、少なくとも約102:1;少なくとも約104:1、少なくとも約106:1;または少なくとも約108:1またはそれより高い比率である場合、ヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と言われる。一部の実施形態において、調製物はまた、等価な量のヘルパ
ーウイルスタンパク質(すなわち、上記したヘルパーウイルス粒子の不純物が崩壊した形態で存在する場合、このようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在すると予想されるタンパク質)も含まない。ウイルスおよび/または細胞タンパク質汚染は、SDSゲルにおけるクーマシー染色バンドの存在(例えば、AAVカプシドタンパク質VPl、VP2およびVP3に対応するもの以外のバンドの出現)として一般的に観察することができる。
【0059】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントし、必要に応じて最大の配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮に入れない、参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一な候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージと定義される。アミノ酸または核酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当業界における能力の範囲内の様々な方法で、例えば、公共的に利用可能なコンピューターソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubelら編、1987)、Supp.30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載され、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどを含むものを使用して達成することができる。好ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、ペンシルバニア)である。当業者は、比較されている配列の全長にわたり最高のアライメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書に記載の目的のために、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(これは、その代わりに、所与のアミノ酸配列Bへの、それと、またはそれに対して特定のアミノ酸配列同一性%を有するかまたは含む所与のアミノ酸配列Aと言うことができる)は、X/Yの分数に100をかけることによって計算され、式中Xは、配列アライメントプログラムによって、AとBのそのプログラムのアライメントにおいて同一な一致とスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解されると予想される。本明細書に記載の目的のために、所与の核酸配列Cの核酸配列同一性%への、それとの、またはそれに対する所与の核酸配列D(これは、その代わりに、所与の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する特定の核酸配列同一性%を有するかまたは含む所与の核酸配列Cと言うことができる)は、W/Zの分数に100をかけることによって計算され、式中Wは、配列アライメントプログラムによって、CとDのそのプログラムのアライメントにおいて同一な一致とスコア付けされたヌクレオチドの数であり、Zは、Dにおけるヌクレオチドの総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さに等しくない場合、CのDに対する核酸配列同一性%は、DのCに対する核酸配列同一性%と等しくないことが理解されると予想される。
【0060】
「単離された」分子(例えば、核酸またはタンパク質)または細胞は、それが、その天然環境の成分から、同定、分離および/または回収されていることを意味する。
【0061】
「有効量」は、臨床結果(例えば、症状の改善、臨床エンドポイントの達成など)を含む有益な、または望ましい結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数の投与で投与することができる。病気の状態に関して、有効量は、疾患を改善する、安定化する、またはその発症を遅延させるのに十分な量である。
【0062】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、これらに限定されな
いが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0063】
「処置」は、本明細書で使用される場合、有益な、または望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。この開示の目的のために、有益な、または望ましい臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能かまたは検出不能かにかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の低減、安定化された(例えば、悪化していない)疾患の状態、疾患の拡がり(例えば、転移)の防止、疾患進行の遅延または減速、病気の状態の改善または一時的緩和、および寛解(部分的かまたは全体かにかかわらず)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味する場合もある。
【0064】
用語「予防的処置」は、本明細書で使用される場合、個体が、障害を有することがわかっている、もしくはその疑いのある、または障害を有するリスクがあるが、障害の症状を呈示していないかまたは最小の症状しか呈示していない場合の処置を指す。予防的処置を受けている個体は、症状が発症する前に処置することができる。
【0065】
「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)」は、本明細書で使用される場合、フェニルアラニンの芳香族側鎖の水酸化を触媒してチロシンを生成する酵素(EC1.14.16.1)である。PAHは、触媒作用のためにテトラヒドロビオプテリン(BH4、プテリジン補因子)および非ヘム鉄を使用するモノオキシゲナーゼである。反応中、分子酸素は、BH4およびフェニルアラニン基質への1つの酸素原子の逐次的な取り込みによってヘテロリシスにより切断される。フェニルアラニンのチロシンへの水酸化は、フェニルアラニンの異化における律速工程であり、この酵素活性の欠損は、常染色体劣性障害であるフェニルケトン尿症を引き起こす。PAHはまた、PH、PKU、またはPKU1と称される場合もある。PAHは、N末端調節(1~117)、中央触媒(118~410)およびC末端四量体化ドメイン(411~452)からなるマルチドメインタンパク質である。ヒトPAHは、GenBank;例えば、NM_000277、NM_00877、NM_001354304、NP_000268、NP_032803、NP_001341233、AAA60082.1、AAH26251.1、AAC51772.1、およびAAL78816.1(GI:18765885)で提供される。ヒトPAHの例は、配列番号1として提供される。
【0066】
「フェニルケトン尿症(PKU)」は、本明細書で使用される場合、肝臓酵素のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)の遺伝学的欠損を指す。いかなる処置も行われなければ、PKUの重度の形態は、高度に上昇した血液Pheレベルに至り、これは、神経毒性であり重度の精神遅滞に関連する。
【0067】
「mTTRプロモーター」は、マウストランスチレチン遺伝子由来のポリヌクレオチド配列を指す。mTTRプロモーターの例であるmTTR482は、Kyostio-Moore、(2016)およびNambiar(2017)によって提供される。
【0068】
「改変されたプロトロンビンエンハンサー(mPrT2)」は、ヒトプロトロンビン遺伝子由来のポリヌクレオチド配列の2つのコピーを指す。mPrT2エンハンサーの例は、(McEachern 2006、Jacobs 2008)によって提供される。mPrT2配列の例は、配列番号7によって提供される。
【0069】
「改変されたアルファ1-マイクロビクニン(mA1MB2)」は、ヒトアルファ1-ミクログロブリン/ビクニン遺伝子由来のポリヌクレオチド配列の2つのコピーを指す。
mA1MB2の例は、(McEachern 2006、Jacobs 2008)によるエンハンサーである。mA1MB2配列の例は、配列番号8によって提供される。
【0070】
「改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)」は、マウスアルブミン遺伝子由来のポリヌクレオチド配列を指す。mEalbエンハンサーの例は、(Kramer 2003)によって提供される。mEalb配列の例は、配列番号9によって提供される。
【0071】
「B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)」は、PreCoreプロモーターの上流に配置されたB型肝炎ウイルス由来のポリヌクレオチド配列を指す。hEIIエンハンサーの例は、(Kramer 2003)によって提供される。HEII配列の例は、配列番号10によって提供される。
【0072】
「CRM8」は、ヒトSerpina1遺伝子からのポリヌクレオチド配列由来のシス作用性調節モジュールを指す(Chuah 2014)。CRM8配列の例は、配列番号11によって提供される。
【0073】
「Alb3’」は、ヒトアルブミン遺伝子のコード領域に対して3’のポリヌクレオチド配列を指す。Alb3’エレメントの例は、Wooddell(2008)によって提供される。Alb3’配列の例は、配列番号12によって提供される。「Alb3’/SMAR」は、ヒトアルファ1-抗トリプシン遺伝子(AF156542)の足場/マトリックス付着領域に連結されたAlb3’を指す。Alb3’/SMAR配列の例は、配列番号13によって提供される。
【0074】
本明細書において「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーターそのものに向けられた実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及している記載は、「X」の記載を含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の単数形は、別段の指定がない限り、複数形の対象を含む。
【0076】
本明細書に記載される開示の態様および実施形態は、「含む」、「からなる」、および/または「から本質的になる」態様および実施形態を含むことが理解される。
【0077】
III.PAHバリアント
一部の態様において、本発明は、個体で発現される場合、より高いPAH発現および/または活性レベルを付与するバリアントPAHポリペプチドを提供する。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、S251、H264、G256、G272、G275、P279、T323およびF327から選択される部位にある。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、H264およびG275に少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸置換を含み、このアミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、M180、K199、S250、S251、G256、G272およびP279に5つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、M180、K199、S250、G256、T323およびF327に6つ
のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、H264PおよびG275Hの少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される少なくとも3つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含むアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換であるアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、表1~3に提示されるバリアントPAHポリペプチドのいずれか1つである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、M180T、K199P、S250P、およびG256Aであるアミノ酸置換を含み、少なくともおよその野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持しながらさらなるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、アミノ酸置換の配置は、野生型ヒトPAHポリペプチド;例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトPAHポリペプチドに基づく。
【0078】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、ヒトPAHポリペプチドである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドは、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有する。一部の実施形態において、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドは、配列番号1の野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有する。
【0079】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持する短縮化されたPAHポリペプチドである。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、N末端の短縮化を含む。一部の実施形態において、N末端の短縮化は、N末端調節ドメインの一部または全ての短縮化である。一部の実施形態において、N末端の短縮化は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1からおよそアミノ酸残基102の欠失である。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、C末端の短縮化を含む。一部の実施形態において、C末端の短縮化は、四量体化ドメインの一部または全ての短縮化である。一部の実施形態において、C末端の短縮化は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約429から452の欠失である。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、N末端の短縮化およびC末端の短縮化を含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、N末端調節配列の一部または全ておよび四量体化ドメインの一部または全ての短縮化を含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の、アミノ酸残基1からおよそアミノ酸残基102およびアミノ酸残基約429から約452の欠失を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約102~約428に対応す
るアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基102~428に対応するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、短縮化されたバリアントPAHポリペプチドは、表1~3に提示されるアミノ酸置換の組合せのいずれか1つをさらに含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有する。
【0080】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、以下の部位:G33、G46、G103、G139、G148、G188、G218、G239、G247、G257、G272、G289、G307、G312、G332、G337、G344、G352、またはG442の1つまたはそれ以上に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:G33A、G46(A、P)、G103A、G139(A、P)、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、またはG442Aの1つを含む。一部の実施形態において、バリアント#1のPAHポリペプチドは、以下の部位:G33、G46、G103、G139、G148、G188、G218、G239、G247、G257、G272、G289、G307、G312、G332、G337、G344、G352、またはG442の1つまたはそれ以上に、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、バリアント#1のPAHポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:G33A、G46(A、P)、G103A、G139(A、P)、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、またはG442Aの1つまたはそれ以上を含む。
【0081】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチド(例えば、バリアント#1のPAHポリペプチド)は、以下のアミノ酸置換:P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチド(例えば、バリアント#1)は、ヒトPAHのC末端にセリン残基(Ser453)をさらに含む。
【0082】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチド(例えば、バリアント#1のPAHポリペプチド)は、以下のアミノ酸置換:F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、N376Pの1つまたはそれ以上を含む。
【0083】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチド(例えば、バリアント#1のPAHポリペプチド)は、可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するようなあらゆるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するようなアミノ酸置換は、PAHフラグメント270~295および380~405の範囲内である。
【0084】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチド(例えば、バリアント#1のPAHポリペプチド)は、ヒトPAHの安定性を強化するための翻訳後修飾を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、翻訳後修飾、例えば、外部のニトロシル化剤による、Cys残基、特定にはI374Cのペグ化およびニトロシル化を含む。
【0085】
III.核酸
一部の態様において、本発明は、個体で発現される場合、より高いPAH活性レベルを付与するバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を提供する。一部の実施形態において、核酸は、少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードし、このアミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含むアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、表1~3に提示されるバリアントPAHポリペプチドのいずれか1つであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含み、少なくともおよその野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持しながらさらなるアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸によってコードされたアミノ酸置換の配置は、野生型ヒトPAHポリペプチド;例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトPAHポリペプチドに基づく。
【0086】
一部の実施形態において、核酸は、バリアントヒトPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含み、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%のいずれかで同一なアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。
【0087】
一部の実施形態において、核酸は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持する
短縮化されたPAHポリペプチドであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端の短縮化を含む短縮化されたPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端調節ドメインの一部または全ての短縮化であるN末端の短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1からおよそアミノ酸残基102の欠失を含むN末端の短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、C末端の短縮化を含む短縮化されたPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、四量体化ドメインの一部または全ての短縮化であるC末端の短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約429から452の欠失を含むC末端の短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端の短縮化およびC末端の短縮化を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、N末端調節配列の一部または全ておよび四量体化ドメインの一部または全ての短縮化を含む。一部の実施形態において、短縮化されたPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の、アミノ酸残基1からおよそアミノ酸残基102およびアミノ酸残基約429から約452の欠失を含む。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約102から約428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基102~428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換をさらに含む短縮化されたPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される4つのアミノ酸置換を含む短縮化されたPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化されたバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、表1~3に提示されるアミノ酸置換の組合せのいずれか1つをさらに含む。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)の活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%より大きい活性を有する短縮化されたPAHポリペプチドをコードする。
【0088】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、マウストランスチレチンプロモーター(mTTR)、mTTR482プロモーター、mA1MB2-mTTR482プロモーター、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、LP1プロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、プロモーターは、LP1プロモーターまたはmA1MB2-mTTR482プロモーターである。
【0089】
一部の実施形態において、核酸は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、Levitt,Nら(1989)、Genes Develop.3:1019~1025に記載されたような合成ポリアデニル化シグナルである。
【0090】
一部の実施形態において、核酸は、イントロンをさらに含む。本発明で使用するための様々なイントロンが当業者に公知であり、その例としては、MVMイントロン、F IX短縮化イントロン1、β-グロビンSD/イムノグロビン(immunoglobin)重鎖SA、アデノウイルスSD/イムノグロビンSA、SV40後期SD/SA(19S/16S)、およびハイブリッドアデノウイルスSD/IgG SAが挙げられる。(Wuら、2008、Kurachiら、1995、Choiら、2014、Wongら、1985、Yewら、1997、Huang and Gorman(1990)。一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、誤った翻訳開始部位を最小化するために全てのATG部位が除去されている、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドプロモーターおよびイントロンである(配列番号15)。
【0091】
一部の実施形態において、核酸は、(1つまたはそれ以上の)スタッファー核酸を含んでいてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、レポーターポリペプチドをコードする配列を含んでいてもよい。当業者により認識されると予想されるように、スタッファー核酸は、核酸内の様々な領域に配置されていてもよいし、核酸内の連続する配列(例えば、単一の場所における単一のスタッファー核酸)または複数の配列(例えば、1つより多くの場所(例えば、2つの場所、3つの場所など)における1つより多くのスタッファー核酸)で構成されていてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸配列の下流に配置されていてもよい。実施形態において、スタッファー核酸は、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸配列の上流に(例えば、プロモーターとバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸配列との間に)配置されていてもよい。同様に当業者により認識されると予想されるように、様々な核酸をスタッファー核酸として使用することができる。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、ヒトアルファ-1-抗トリプシン(AAT)スタッファー配列またはC16P1第16染色体P1クローン(ヒトC16)スタッファー配列の全部または一部を含む。一部の実施形態において、スタッファー配列は、遺伝子の全部または一部を含む。例えば、スタッファー配列は、ヒトAAT配列の部分を含む。当業者は、スタッファーフラグメントとして遺伝子の異なる部分(例えば、ヒトAAT配列)を使用できることを認識していると予想される。例えば、スタッファーフラグメントは、遺伝子の5’末端、遺伝子の3’末端、遺伝子の中央、遺伝子の非コード部分(例えば、イントロン)、遺伝子のコード領域(例えばエクソン)、または遺伝子の非コード部分とコード部分との混合物からであってもよい。当業者はまた、スタッファー配列の全部または一部をスタッファー配列として使用できることも認識していると予想される。一部の実施形態において、スタッファー配列は、内部ATGコドンを除去するように改変されている。一部の実施形態において、スタッファー配列は、配列番号16のヌクレオチド配列を含む。
【0092】
一部の実施形態において、ヒトPAHポリペプチドをコードする単離された核酸は、コドン最適化されている。一部の実施形態において、ヒトPAHポリペプチドをコードする単離された核酸は、特定の細胞、例えば真核細胞における発現のためにコドン最適化されている。真核細胞は、特定の生物の細胞であるか、またはそれ由来であってもよく、このような生物は、例えば哺乳動物であり、これらに限定されないが、ヒト、マウス、ラット
、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長類が挙げられる。一般的に、コドン最適化は、天然のアミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、その宿主細胞の遺伝子においてより高い頻度で、または最も高い頻度で使用されるコドンと置き換えることによって、目的の宿主細胞における発現の強化のために核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種が、特定のアミノ酸の特定のコドンに対して特定のバイアスを示す。コドン出現頻度表は、例えば「コドン出現頻度データベース」で容易に入手可能であり、これらの表は、多数の方法で適合させることができる(例えば、Nakamura, Y.ら(2000)Nucleic Acids Res.28:292を参照)。特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピューターアルゴリズムも利用可能であり、例えば、Gene Forge(Aptagen;Jacobus、Pa.)、DNA2.0、GeneArt(GA)またはGenscript(GS)およびCpG含量の低減と組み合わせたGSアルゴリズムが利用可能である。一部の実施形態において、PAHポリペプチドをコードする核酸は、 GAアルゴリズムを使用してコドン最適化されている。一部の実施形態において、核酸配列は、配列番号14の核酸配列に少なくとも80%同一である。一部の実施形態において、核酸は、配列番号14の核酸配列を含む。
【0093】
IV.肝臓特異的発現カセット
一部の態様において、本発明は、肝臓細胞において導入遺伝子を発現するための発現カセットであって、発現カセットが、プロモーターおよびエンハンサーに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、プロモーターが、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、エンハンサーが、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(mPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含む、発現カセットを提供する。一部の実施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’である。一部の実施形態において、導入遺伝子は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする。
【0094】
一部の実施形態において、本発明は、肝臓細胞において導入遺伝子を発現するための発現カセットであって、プロモーターおよび3’エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、3’エレメントは、アルブミン3’エレメント(3’Alb)、またはヒトα1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’AlbSMAR)である、発現カセットを提供する。一部の実施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に位置する。一部の実施形態において、導入遺伝子は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする。
【0095】
一部の実施形態において、本発明は、肝臓細胞内で導入遺伝子を発現するための発現カセットであって、発現カセットが、プロモーターおよびエンハンサーおよび3’エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、エンハンサーが、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(mPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)、またはCRM8エンハンサーを含み、3’エレメントが、アルブミン3’エレメント(3’Alb)、またはヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’AlbSMAR)である、発現カセットを提供する。一部の実
施形態において、mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態において、エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’である。一部の実施形態において、3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に位置する。一部の実施形態において、導入遺伝子は、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする。
【0096】
一部の実施形態において、発現カセットは、イントロンをさらに含む。一部の実施形態において、イントロンは、MVMイントロン、FIX短縮化イントロン1、β-グロビンSD/免疫グロビン重鎖SA、アデノウイルスSD/免疫グロビンSA、SV40後期SD/SA(19S/16S)、またはハイブリッドアデノウイルスSD/IgG SAである。一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである。
【0097】
一部の実施形態において、発現カセットは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである。
【0098】
一部の実施形態において、発現カセットは、ベクターに組み込まれる。一部の実施形態において、発現カセットは、ウイルスベクターに組み込まれる。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、本明細書に記載されるrAAVベクターである。
【0099】
V.ベクターおよびウイルス粒子
ある特定の態様において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、ベクターに含まれる。一部の実施形態において、本発明は、ウイルス粒子、例えば、以下に記載されるウイルス粒子にパッケージングするためのバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸配列の導入のための組換えウイルスゲノムの使用を企図する。組換えウイルスゲノムは、バリアントPAHポリペプチドの発現を確立するための任意のエレメント、例えば、プロモーター、ITR、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製起点を含み得る。ウイルス粒子についての例示的なウイルスゲノムエレメントおよび送達方法を、より詳細に以下に記載する。
【0100】
非ウイルス送達系
核酸を細胞または標的組織に導入するために、従来の非ウイルス遺伝子導入方法も使用される。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、裸の核酸、および送達系に複合化される核酸が挙げられる。例えば、ベクターは、脂質(例えば、カチオン性もしくは中性脂質)、リポソーム、ポリカチオン、ナノ粒子、または核酸の細胞取り込みを増強する薬剤に複合化される。ベクターは、本明細書に記載される送達方法のいずれかに適した薬剤に複合化される。一部の実施形態において、核酸は、1つまたはそれ以上のウイルスITR(例えば、AAV ITR)を含む。
【0101】
ウイルス粒子
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含むベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。
【0102】
rAAV粒子
一部の実施形態において、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、1つまたは
それ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接している。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、1つまたは2つのITRと隣接しているバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、2つのAAV ITRと隣接している。
【0103】
一部の実施形態において、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、転写の方向の構成要素、転写開始および終了配列を含む制御配列と作動可能に連結され、それによって発現カセットを形成する。発現カセットは、5’端および3’端において、少なくとも1つの機能的AAV ITR配列と隣接している。「機能的AAV ITR配列」とは、ITR配列が、AAVビリオンの救出、複製およびパッケージングのために意図される通りに機能することを意味する。Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40頁;およびPechanら、Gene Ther.、2009、16:10~16頁が参照され、これらは全て、参照により全体として本明細書に組み入れる。本発明の一部の態様を実施するために、組換えベクターは、カプシド形成(encapsidation)に不可欠なAAVの配列の全て、およびrAAVによる感染のための物理構造を少なくとも含む。本発明のベクターで使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列(例えば、Kotin、Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801頁に記載されるような配列)を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換による改変を有してもよく、またはAAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来してもよい。40種類を超えるAAVの血清型が現在知られており、新しい血清型および既存の血清型のバリアントが引き続き特定されている。Gaoら、PNAS、2002、99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6頁;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810頁を参照。
【0104】
任意のAAV血清型の使用が、本発明の範囲内とみなされる。一部の実施形態において、rAAVベクターは、AAV血清型に由来するベクターであり、例えば、限定されないが、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV ITRなどである。一部の実施形態において、AAV中の核酸は、AAVのITRを含む。AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV ITR等である。ある特定の実施形態において、AAV ITRは、AAV2 ITRである。
【0105】
一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸を含んでもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質をコードしてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸に対して3’に位置し得る。
【0106】
一部の態様において、本発明は、組換え自己相補性ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補性ベクターである。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、同第7,765,583号、同第7,785,888号、同第7,790,154号、同第7,846,729号、同第8,093,054号、および同第8,361,457号、ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されており、これらの
各々は、参照により全体として本明細書に組み入れる。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、導入遺伝子の相補的コード鎖および非コード鎖)によって、迅速に二本鎖DNA分子を形成する。一部の実施形態において、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子であって、rAAVゲノムが、第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明のバリアントPAHポリペプチドのコード鎖)および第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本開示のバリアントPAHポリペプチドの非コード鎖またはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種ポリヌクレオチド配列が、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2のポリヌクレオチド配列と鎖内塩基対を形成することができる、AAVウイルス粒子を提供する。
【0107】
一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内塩基対合を容易にする配列、例えば、ヘアピンDNA構造によって連結される。ヘアピン構造は、当該技術分野において公知であり、例えば、siRNA分子中にある。一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列と第2の異種ポリヌクレオチド配列とは、変異型ITR(例えば、右ITR)によって連結される。変異型ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。その結果、AAVウイルスゲノムを複製すると、repタンパク質が、変異型ITRでウイルスゲノムを切断しないため、以下を5’から3’へ順に含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスカプシドにパッケージングされる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、変異型AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドに対して逆向きの第2の異種ポリヌクレオチド、および第3のAAV ITR。
【0108】
一部の実施形態において、第1の異種核酸配列および第2の異種核酸配列は、変異型ITR(例えば、右ITR)によって連結される。一部の実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号17)を含む。変異型ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。その結果、AAVウイルスゲノムを複製すると、repタンパク質が、変異型ITRでウイルスゲノムを切断しないため、以下を5’から3’へ順に含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスカプシドにパッケージングされる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、変異型AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドに対して逆向きの第2の異種ポリヌクレオチド、および第3のAAV ITR。
【0109】
一部の実施形態において、ベクターは、ウイルス粒子中にカプシド形成される。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。異なるAAV血清型が、特定の標的細胞の形質導入を最適化するために、または特定の標的組織(例えば、眼組織)内の特定の細胞型を標的とするために使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えば、一部の実施形態において、rAAV粒子は、本発明のAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2 ITRを含むことができるか、またはAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV1 ITRを含むことができる。rAAV粒子の作製のためのAAV血清型の任意の組合せが、それぞれの組合せが本明細書に明示的に記載されているかのように、本明細書において提供される。一部の実施形態において、本発明は、本発明のAAV2カプシドを含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本発明のAAVrh8Rカプシドを含むrAAV粒子を提供する。
【0110】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド(例えば、野
生型AAV6カプシド、または米国特許出願公開第2012/0164106号に記載されるShH10などのバリアントAAV6カプシド)、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド(例えば、野生型AAV9カプシド、または米国特許公出願公開第2013/0323226号に記載される改変AAV9カプシド)、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、チロシンカプシド変異体、ヘパリン結合カプシド変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、または米国特許出願公開第2012/0066783号に記載される任意の他のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開第2003/042397号に記載されるAAVカプシドを含む。一部の実施形態において、変異体カプシドタンパク質は、AAVカプシドを形成する能力を維持している。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV5チロシン変異体カプシド(Zhong L.ら、(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(22):7827~7832頁)を含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のカプシドタンパク質(Gaoら、J.Virol.、2004、78(12):6381頁)を含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシドタンパク質またはその変異体を含む。他の実施形態において、rAAV粒子は、AAV2カプシドタンパク質またはその変異体を含む。一部の実施形態において、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、またはAAVrh10である。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型1(AAV1)カプシドを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。一部の実施形態において、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10カプシドを含む。一部の実施形態において、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10カプシドは、例えば、以下に記載されるチロシン変異またはヘパラン結合変異を含む。一部の実施形態において、カプシドは、肝臓標的化カプシドであり、例えば、限定されないが、LK03カプシド、HSC15カプシド、または17カプシドである。一部の実施形態において、カプシドは、操作されたAAVカプシド(例えば、シャッフルされたカプシド)である。操作されたカプシドの例としては、DJ(Grimm Dら、J Virol.、2008、82:5887~911頁)、LK03(Lisowski Lら、Nature、2014、506:382~6頁)ならびにHSC15およびHSC17(Smith LJら、Mol Ther、2014年9月;22(9):1625~34頁)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
AAV(例えば、AAV2、AAV8等)のカプシドは、3つのカプシドタンパク質:VP1、VP2およびVP3を含むことが知られている。これらのタンパク質は、かなりの量の重複アミノ酸配列と、固有のN末端配列を含む。AAV2カプシドは、正二十面体対称性(icosahedral symmetry)によって配置される60個のサブユニットを含む(Xie、Q.ら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99(16):10405~10頁)。VP1、VP2、およびVP3は、1:1:10の比率で存在することがわかっている。
【0112】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置において1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質と、b)異種核酸および少なくとも1つのAAV逆方向末端反
復を含むrAAVベクターとを含む。
【0113】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンへの結合を低減または除去するカプシドタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで該1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1番号付けに基づく番号付けで484位、487位、532位、585位または588位にある。本明細書で使用されるとき、「AAV2のVP1に基づく番号付け」とは、AAV2のVP1の列挙されたアミノ酸に対応する列挙されたカプシドタンパク質のアミノ酸をいう。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換がAAV2のVP1に基づく番号付けで347位、350位、390位、395位、448位、451位、484位、487位、527位、532位、585位および/または588位にある場合、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1のアミノ酸347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585および/または588に対応する列挙されたカプシドタンパク質のアミノ酸にある。一部の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1の484位、487位、532位、585位または588位にある。一部の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づく番号付けで、AAV3のVP1の484位、487位、532位、585位または588位にある。一部の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1番号付けに基づく番号付けで485位、488位、528位、533位、586位または589位にある。一部の実施形態において、アミノ酸585および/または588(AAV2のVP1に基づく番号付け)に対応する位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸は、アルギニン残基によって置き換えられる(例えば、AAV1またはAAV6についてはS586および/またはT589、AAV9についてはS586および/またはA589、AAVrh8RについてはA586および/またはT589、AAV8についてはQ588および/またはT591、ならびにAAVrh10についてはQ588および/またはA591)。他の実施形態において、アミノ酸484、487、527および/または532(AAV2のVP1に基づく番号付け)に対応する位置にある1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、アルギニンまたはリジン)は、アラニンなどの正に荷電されていないアミノ酸によって置き換えられる(例えば、AAV1またはAAV6についてはR485、R488、K528および/またはK533;AAV9またはAAVrh8RについてはR485、R488、K528および/またはR533;ならびにAAV8またはAAVrh10についてはR487、R490、K530および/またはR535)。
【0114】
AAV粒子の作製
rAAVベクターの作製のための多数の方法が当該技術分野において知られており、例えば、トランスフェクション、安定細胞株作製、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway、JEら、(1997)J.Virology、71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッド(Urabe、M.ら、(2002)Human Gene Therapy、13(16):1935~1943頁;Kotin、R.(2011)Hum Mol Genet.20(R1):R2~R6頁)を含む感染性ハイブリッドウイルス産生系が挙げられる。rAAVウイルス粒子の作製のためのrAAV産生培養は全て、1)好適な宿主細胞、2)好適なヘルパーウイルス機能、3)AAV repおよびcap遺伝子および遺伝子産物、4)少なくとも1つのAAV ITR配列(例えば、バリアントPAHポリペプチドをコードするAAVゲノム)と隣接している核酸(治療用核酸など)、ならびに5)rAAV産生を支持するための好適な培地および培地成分を必要とする。一部の実施形態において、好適な宿主細胞は、霊長類宿主細胞である。一部の実施形態において、好適な宿主細胞は、ヒト由来細胞株、例えば、HeLa、A549、293、またはPerc.6細胞である。一部の実施形態において、好適なヘルパーウイルス
機能は、野生型または変異体アデノウイルス(例えば、温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス(HSV)、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミドコンストラクトによって提供される。一部の実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子産物は、任意のAAV血清型由来であり得る。必ずではないが、一般に、AAV rep遺伝子産物は、rep遺伝子産物がrAAVゲノムの複製およびパッケージングに機能し得る限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型の遺伝子産物である。当該技術分野で公知の好適な培地が、rAAVベクターの産生のために使用される。これらの培地には、限定するものではないが、改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む、Hyclone LaboratoriesおよびJRHによって製造される培地、米国特許第6,566,118号に記載されているものなどのカスタム調製物、ならびに米国特許第6,723,551号に記載されているSf-900II SFM培地が含まれ、これらの各々は、特に組換えAAVベクターの作製に使用するためのカスタム培地調製物に関係して、参照により全体として本明細書に組み入れる。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0115】
rAAV粒子の作製のための方法の1つは、トリプルトランスフェクション法である。簡潔に述べると、rep遺伝子およびカプシド遺伝子を含有するプラスミドを、ヘルパーアデノウイルスプラスミドとともに、細胞株(例えば、HEK-293細胞)にトランスフェクトし(例えば、リン酸カルシウム法を使用して)、ウイルスを回収して、場合により精製する。そのように、一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、AAV repおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の宿主細胞へのトリプルトランスフェクションによって作製され、核酸の宿主細胞へのトランスフェクションにより、rAAV粒子を作製可能な宿主細胞が生成される。
【0116】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、プロデューサー細胞株法によって作製される(Martinら、(2013)Human Gene Therapy Methods、24:253~269頁;米国特許出願公開第2004/0224411号;およびLiu、X.L.ら、(1999)Gene Ther.6:293~299頁)。簡潔に述べると、細胞株(例えば、HeLa、293、A549、またはPerc.6細胞株)を、rep遺伝子、カプシド遺伝子、およびプロモーター-異種核酸配列(例えば、バリアントPAHポリペプチド)を含むベクターゲノムを含有するプラスミドで安定的にトランスフェクトしてもよい。細胞株を、rAAV産生のためのリードクローンを選択するためにスクリーニングしてもよく、次いで、生成バイオリアクターに拡張し、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはHSV)に感染させて、rAAV産生を開始してもよい。その後、ウイルスを収集し、アデノウイルスを不活化(例えば、熱によって)および/または除去してもよく、rAAV粒子を精製してもよい。そのように、一部の実施形態において、rAAV粒子を、rAAVベクターをコードする核酸、AAV repおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸のうちの1つまたはそれ以上を含むプロデューサー細胞株によって作製した。本明細書に記載されるように、プロデューサー細胞株法は、トリプルトランスフェクション法と比較して、オーバーサイズのゲノムを有するrAAV粒子の作製にとって有利であり得る。
【0117】
一部の実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、プロデューサー細胞株において安定して維持される。一部の実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1つまたはそれ以上のプラスミドで細胞株に導入されて、プロデ
ューサー細胞株を生成する。一部の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、同じプラスミドで細胞に導入される。他の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、異なるプラスミドで細胞に導入される。一部の実施形態において、プラスミドで安定的にトランスフェクトされた細胞株は、細胞株の複数の継代(例えば、細胞の5、10、20、30、40、50または50を超える継代)にわたってプラスミドを維持する。例えば、プラスミドは、細胞が複製するときに複製され、またはプラスミドは、細胞ゲノムに組み込まれる。プラスミドが細胞(例えば、ヒト細胞)内で自律的に複製することを可能にする様々な配列が同定されている(例えば、Krysan、P.J.ら、(1989)Mol.Cell Biol.9:1026~1033頁)。一部の実施形態において、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする選択マーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有し得る。哺乳類細胞において一般的に使用される選択マーカーとしては、ブラスチシジン、G418、ハイグロマイシンB、ゼオシン、ピューロマイシン、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。核酸を細胞に導入するための方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、限定されないが、ウイルス形質導入、カチオン性トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン等のカチオン性ポリマー、またはリポフェクタミン等のカチオン性脂質を使用)、リン酸カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、エレクトロポレーション、およびナノ粒子トランスフェクションが挙げられる(詳細について、例えば、Kim、T.K.およびEberwine、J.H.(2010)Anal.Bioanal.Chem.、397:3173~3178頁を参照)。
【0118】
一部の実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、プロデューサー細胞株に安定して組み込まれる。一部の実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1つまたはそれ以上のプラスミドで細胞株に導入されて、プロデューサー細胞株を生成する。一部の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、同じプラスミドで細胞に導入される。他の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、異なるプラスミドで細胞に導入される。一部の実施形態において、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする選択マーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有し得る。核酸を様々な宿主細胞株に安定に組み込むための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、反復選択を使用して(例えば、選択マーカーの使用を通じて)、選択マーカー(ならびにAAV
capおよびrep遺伝子および/またはrAAVゲノム)を含む核酸を組み込んだ細胞が選択される。他の実施形態において、部位特異的様式で核酸を細胞株に組み込んで、プロデューサー細胞株を生成してもよい。いくつかの部位特異的組換え系は、FLP/FRT(例えば、O’Gorman,S.ら、(1991)、Science 251:1351~1355頁参照)、Cre/loxP(例えば、Sauer,B.およびHenderson、N.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5166~5170頁参照)、およびphi C31-att(例えば、Groth,A.C.ら、(2000)、Proc.Natl.Acad.Sci.97:5995~6000頁参照)のように、当該技術分野において公知である。
【0119】
一部の実施形態において、プロデューサー細胞株は、霊長類細胞株(例えば、非ヒト霊長類細胞株、例えば、VeroまたはFRhL-2細胞株)に由来する。一部の実施形態において、上記細胞株は、ヒト細胞株に由来する。一部の実施形態において、プロデューサー細胞株は、HeLa、293、A549、またはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞に由来する。例えば、AAV repおよびcap遺伝子ならびに/またはオーバーサイズrAAVゲノムをコードする核酸を細胞株に導入および/または安定的に維持/組み込んでプロデューサー細胞株を生成する前に、細胞株は、HeLa、293
、A549、もしくはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞株、またはその誘導体である。
【0120】
一部の実施形態において、プロデューサー細胞株は、懸濁液中の増殖のために適合される。当該技術分野で公知であるように、アンカー依存細胞は、通常、マイクロキャリアビーズのような基板なしでは懸濁液中で増殖することができない。懸濁液中で増殖させるために細胞株を適合させることは、例えば、スピナー培養液中で攪拌パドルを用いて細胞株を増殖させること、凝集を防ぐためにカルシウムおよびマグネシウムイオンを欠く培地(および場合により消泡剤)を使用すること、シリコーン化化合物で被覆された培養容器を使用すること、ならびに各継代で培養液中の細胞(大きな凝集塊中にないまたは容器の側面上にない)を選択することを含み得る。さらなる説明については、例えば、ATCCのよくある質問の文書(www.atcc.org/Global/FAQs/9/1/Adapting%20a%20monolayer%20cell%20line%20to%20suspension-40.aspxから入手可能)およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0121】
一部の態様において、本明細書に開示される任意のrAAV粒子の作製方法であって、(a)rAAV粒子が作製される条件下で宿主細胞を培養する工程であり、宿主細胞が、(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子であり、それぞれAAV複製および/またはカプシド形成タンパク質をコードしている、AAVパッケージ遺伝子と、(ii)少なくとも1つのAAV ITRと隣接している本明細書に記載の異種核酸をコードする核酸を含むrAAVプロベクターと、(iii)AAVヘルパー機能とを含む、培養する工程、ならびに(b)宿主細胞によって作製されるrAAV粒子を回収する工程、を含む方法が提供される。一部の実施形態において、前記少なくとも1つのAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型ITR等からなる群から選択される。例えば、一部の実施形態において、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10またはAAVrh10である。ある特定の実施形態において、AAV中の核酸は、AAV2 ITRを含む。一部の実施形態において、カプシド形成タンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1血清型カプシドタンパク質またはその変異体からなる群から選択される。一部の実施形態において、カプシド形成タンパク質は、AAV8カプシドタンパク質である。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8カプシド、AAV2 ITRを含む組換えゲノム、および治療用導入遺伝子/核酸をコードする核酸(例えば、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸)を含む。
【0122】
本発明の好適なrAAV産生培養培地は、0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで血清または血清由来組換えタンパク質で補足してもよい。代替的に、当該技術分野で公知であるように、rAAVベクターは、動物由来の生成物を有しない培地としても参照される無血清条件下で作製し得る。当業者であれば、rAAVベクターの作製を支持するように設計された市販培地またはカスタム培地も、産生培養物中のrAAVの力価を増加させるために、当該技術分野で公知の1つまたはそれ以上の細胞培養成分、例えば、限定されないが、ブドウ糖、ビタミン、アミノ酸、および/または成長因子で補足してもよいことを理解し得る。
【0123】
rAAV産生培養は、利用される特定の宿主細胞に好適な様々な条件下(広い温度範囲、様々な時間の長さなど)で増殖させ得る。当該技術分野で公知であるように、rAAV産生培養としては、付着依存培養、例えば、ローラーボトル、中空繊維フィルタ、マイクロキャリア、および充填床または流動床バイオリアクターのような好適な付着依存容器中で培養可能な培養が挙げられる。rAAVベクター産生培養はまた、懸濁適合宿主細胞、例えば、スピナーフラスコ、攪拌タンクバイオリアクター、およびWaveバッグシステムのような使い捨てシステムを含む様々な方法で培養可能なHeLa、293およびSF-9細胞などを含んでもよい。
【0124】
本発明のrAAVベクター粒子は、米国特許第6,566,118号でさらに完全に記載されているように、当該技術分野で公知の条件下で細胞を培養してrAAV粒子をインタクトな細胞から培地へ放出させられるのであれば、産生培養物の宿主細胞の溶解によって、または産生培養物からの使用済み培地の収集によって、rAAV産生培養物から収集してもよい。好適な細胞溶解方法も、当該技術分野で公知であり、例えば、複数の凍結/解凍サイクル、超音波処理、マイクロ流動化、ならびに界面活性剤および/またはプロテアーゼのような化学物質を用いた処理が挙げられる。
【0125】
さらなる実施形態において、rAAV粒子は精製される。本明細書で使用されるとき、用語「精製される」には、rAAV粒子が天然に存在する場所または最初に調製される場所に存在する他の成分の少なくとも一部が除去された、rAAV粒子の調製物が含まれる。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解物または産生培養上清などの供給源混合物から濃縮精製技術を用いて調製される。濃縮は、例えば、溶液中に存在するDNase耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の割合による方法、もしくは感染性による方法などの様々な方法で測定することができ、または、濃縮は、混入物、例えば、産生培養混入物、もしくはヘルパーウイルス、培地成分等の工程内混入物等の、供給源混合物中に存在する第2の潜在的に干渉する物質に関係させて測定することができる。
【0126】
一部の実施形態において、rAAV産生培養収集物は、宿主細胞デブリスを除去するために清澄化される。一部の実施形態において、産生培養収集物は、一連のデプスフィルタ、例えば、グレードDOHC Millipore Millistak+ HC Podフィルタ、グレードA1HC Millipore Millistak+ HC Podフィルタ、および0.2μm Filter Opticap XL10 Millipore Express SHC親水性膜フィルタなどを通じた濾過によって清澄化される。清澄化は、当該技術分野で公知の他の様々な標準技術、例えば、遠心分離または当該技術分野で公知の0.2μmまたはそれ以上の孔径の酢酸セルロースフィルタを通じた濾過によっても達成される。
【0127】
一部の実施形態において、rAAV産生培養収集物は、産生培養物中に存在する任意の高分子量DNAを消化するために、ベンゾナーゼ(Benzonase)(登録商標)でさらに処理される。一部の実施形態において、ベンゾナーゼ(登録商標)消化は、当該技術分野において公知の標準条件下、例えば、周囲温度~37℃の温度範囲で30分~数時間、最終濃度1~2.5ユニット/mlのベンゾナーゼ(登録商標)の条件で実行される。
【0128】
rAAV粒子は、以下の精製工程:平衡遠心分離;フロースルー陰イオン交換濾過;rAAV粒子を濃縮するためのタンジェンシャルフロー濾過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝
液交換;ナノ濾過;および陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーによるrAAV捕捉、のうちの1つまたはそれ以上を使用して単離または精製される。これらの工程は、単独で、様々な組合せで、または異なる順序で使用される。一部の実施形態において、方法は、下記のような順序で全ての工程を含む。rAAV粒子を精製する方法は、例えば、Xiaoら、(1998)Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6,989,264号および同第8,137,948号;ならびに国際公開第2010/148143号に見出される。
【0129】
VI.処置方法
本開示のある特定の態様は、それを必要とする個体においてフェニルケトン尿症を処置する方法および/またはフェニルアラニンのレベルを低減する方法に関する。フェニルケトン尿症(PKU)は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)の欠損によって引き起こされ、脳に有毒である血液Pheレベルの上昇が生じ、その後、処置なしでは重度の精神障害に至る。食事制限による現行の療法は有効であるものの、十代の若者や成人の非遵守が大きな問題となっている。
【0130】
PKUを処置する努力は、遺伝子療法ベクター由来のヒトPAHの活性が低いことによって妨げられてきた。本発明の方法は、内在性ヒトPAHポリペプチドと比較して改善されたタンパク質安定性および酵素活性を有するバリアントPAHポリペプチドの発見に部分的に基づくものである。本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードするrAAVベクターを使用する遺伝子療法を介したPKUの処置は、内在性ヒトPAHをコードするベクターと比較して、血液中および脳Pheレベルのより良好な低減を導く。さらに、hPAHおよびhPAH-V1の両方が、脳へのTyrおよびTrpの移行を改善したが、バリアントPAHで処置した動物のみが、ドーパミンおよびセロトニンを含む脳神経伝達物質レベルを正常にし、Pheに関与する機能に対して異なる感受性を示した。
【0131】
一部の実施形態において、本発明は、PKUを処置するための方法であって、それを必要とする個体に、治療有効量の本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドを投与する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256部位において4つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される少なくとも3つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、アミノ酸置換K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、アミノ酸置換H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、表1~3に提示されるバリアントPAHポリペプチドのいずれか1つである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含み、少なくとも野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活
性をほぼ維持しながら、さらなるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、アミノ酸置換の位置は、野生型ヒトPAHポリペプチド、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトPAHポリペプチドに基づく。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、融合ポリペプチドである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、組織標的化ペプチドに融合された融合ポリペプチドである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、肝臓標的化ポリペプチドに融合された融合ポリペプチドである。肝臓標的化ポリペプチドとしては、限定されないが、ヒト肝臓細胞増殖因子の断片(Eavri and Lorberboum-Galkski、J Biol Chem 2007、282:23402~23409頁)または肝臓細胞アシアロ糖タンパク質受容体に結合する糖タンパク質(Huangら、Bioconjugate Chemistry 2017、28:283~295頁)が挙げられる。
【0132】
一部の実施形態において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドの有効量を投与することによってPKUを処置する方法を提供する。バリアントPAHポリペプチドを、目的の特定の組織に投与してもよく、または全身的に投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、非経口的に投与してもよい。非経口投与経路としては、静脈内、腹腔内、骨内、動脈内、脳内、筋肉内、髄腔内、皮下、脳室内、肝臓内等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、1つの投与経路を介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、2つ以上の投与経路の組合せを介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、1つの場所に投与する。他の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、2つ以上の場所に投与してもよい。
【0133】
一部の実施形態において、本発明は、PKUを処置するための方法であって、それを必要とする個体に、治療有効量の、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸(例えば、DNAまたはmRNA)を投与する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態において、核酸は、少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドであって、該アミノ酸置換が、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、バリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256部位において4つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換K199P、S250PおよびG256A;M180T、S250PおよびG256A;M180T、K199PおよびG256A;またはM180T、K199PおよびS250Pを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、表1~3に提示されるバリアントPAHポリペプチドのいずれか1つであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250PおよびG256Aを含み、少なくとも野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性をほぼ維持しながら、さらなるアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸によってコードされ
るアミノ酸置換の位置は、野生型ヒトPAHポリペプチド、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトPAHポリペプチドに基づく。
【0134】
一部の実施形態において、核酸は、バリアントヒトPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、DNAである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、RNA(例えば、mRNA)である。
【0135】
一部の実施形態において、核酸は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持する短縮化PAHポリペプチドであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端調節ドメインの一部または全部の短縮化であるN末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1~アミノ酸残基約102の欠失を含むN末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、C末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、四量体化ドメインの一部または全部の短縮化であるC末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約429~452の欠失を含むC末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、核酸は、N末端短縮化およびC末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化PAHポリペプチドは、N末端調節配列の一部または全部および四量体化ドメインの一部または全部の短縮化を含む。一部の実施形態において、短縮化PAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1~アミノ酸残基約102およびアミノ酸残基約429~452の欠失を含む。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約102~約428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基102~428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のM180、K199、S250およびG256部位に4つのアミノ酸置換をさらに含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、核酸は、M180T、K199P、S250PおよびG256Aから選択される4つのアミノ酸置換を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、表1~3に提示されるアミノ酸置換の組合せのいずれか1つをさらに含む。一部の実施形態において、核酸は、野生型PAH(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有する短縮化PAHポリペプチドをコ
ードする。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、組織標的化ペプチドに融合された融合ポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドは、肝臓標的化ペプチドに融合された融合ポリペプチドである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、DNAである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、RNA(例えば、mRNA)である。
【0136】
一部の実施形態において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を投与することによってPKUを処置する方法を提供する。バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、目的の特定の組織に投与してもよく、または全身的に投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、非経口的に投与してもよい。非経口投与経路としては、静脈内、腹腔内、骨内、動脈内、脳内、筋肉内、髄腔内、皮下、脳室内、肝臓内等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、肝臓を越える組織からのバリアントPAHの発現は、補因子BH4の存在を必要とし得る(例えば、全身的に送達されるか、または核酸から共発現される)Dingら、Mol Ther 2008、16:673~681頁。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、1つの投与経路を介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、2つ以上の投与経路の組合せを介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、1つの場所に投与する。他の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量を、2つ以上の場所に投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、DNAである。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、RNA(例えば、mRNA)である。
【0137】
本発明の一部の態様において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸は、ウイルスベクターによって個体に送達される。遺伝子療法のためのウイルスベクターは、当該技術分野で公知である。一部の態様において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードするレンチウイルス粒子の有効量を投与することによってPKUを処置する方法を提供する。一部の態様において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードするrAAV粒子の有効量を投与することによってPKUを処置する方法を提供する。rAAVを、目的の特定の組織に投与してもよく、または全身的に投与してもよい。一部の実施形態において、rAAVの有効量を、非経口的に投与してもよい。非経口投与経路としては、静脈内、腹腔内、骨内、動脈内、脳内、筋肉内、髄腔内、皮下、脳室内、肝臓内等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、rAAVの有効量を、1つの投与経路を介して投与してもよい。一部の実施形態において、rAAVの有効量を、2つ以上の投与経路の組合せを介して投与してもよい。一部の実施形態においてrAAVの有効量を、1つの場所に投与する。他の実施形態において、rAAVの有効量を、2つ以上の場所に投与してもよい。
【0138】
rAAV(一部の実施形態では、粒子の形態の)の有効量を、処置の目的に応じて投与する。例えば、低いパーセンテージの形質導入により所望の治療効果を達成することができる場合、処置の目的は、概して、この形質導入レベルを満たすこと、またはそれを超えることである。一部の事例において、この形質導入レベルは、所望の組織型の標的細胞のわずか約1~5%、一部の実施形態において、所望の組織型の細胞の少なくとも約20%、一部の実施形態において、少なくとも約50%、一部の実施形態において、少なくとも約80%、一部の実施形態において、少なくとも約95%、一部の実施形態において、所望の組織型の細胞の少なくとも約99%の形質導入によって達成される。rAAV組成物は、同じ処理の間に、または数日間、数週間、数ヶ月間、もしくは数年間間隔を置いて、
1回またはそれ以上の投与によって投与される。本明細書に記載される投与経路のいずれか1つまたはそれ以上を使用し得る。一部の実施形態において、ヒトを処置するために、複数のベクターを使用してもよい。
【0139】
AAVウイルス粒子によって形質導入された細胞を同定する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、免疫組織化学または増強緑色蛍光タンパク質のようなマーカーを使用して、ウイルス粒子、例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するrAAVカプシドを含むウイルス粒子、の形質導入を検出することができる。
【0140】
一部の実施形態において、rAAV粒子の有効量を、2つ以上の場所に同時にまたは連続して投与する。他の実施形態において、rAAV粒子の有効量を、1つの場所に2回以上投与する(例えば、繰り返す)。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、または24時間以下の間隔である。
【0141】
一部の実施形態において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与することによって、PKUを有するヒトを処置する方法を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0142】
一部の実施形態において、方法は、PKUの処置を必要とする個体において、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与して、PKUを処置することを含む。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×109、6×109、7×109、8×109、9×109、10×109、11×109、15×109、20×109、25×109、30×109、または50×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×109~6×109、6×109~7×109、7×109~8×109、8×109~9×109、9×109~10×109、10×109~11×109、11×109~15×109、15×109~20×109、20×109~25×109、25×109~30×109、30×109~50×109、または50×109~100×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×109~10×109、10×109~15×109、15×109~25×109、または25×109~50×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010
、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010または50×1010~100×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0143】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、少なくとも約1×108~約6×1013ゲノムコピー/kg体重である。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、約1×108~約6×1013ゲノムコピー/kg体重である。
【0144】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、少なくとも約1×109~約1×1014ゲノムコピーである。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、約1×109~約1×1014ゲノムコピーである。
【0145】
本発明の組成物(例えば、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子)は、単独で、またはPKUを処置するための1つまたはそれ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。連続する投与の間の間隔は、少なくとも数分、数時間もしくは数日(または、代替的に、数分、数時間もしくは数日未満)であり得る。
【0146】
rAAV(一部の実施形態では、粒子の形態の)の有効量を、処置の目的に応じて投与する。例えば、低いパーセンテージの形質導入により所望の治療効果を達成することができる場合、処置の目的は、概して、この形質導入レベルを満たすこと、またはそれを超えることである。一部の事例において、この形質導入レベルは、標的細胞のわずか約1~5%、一部の実施形態において、所望の組織型の細胞の少なくとも約20%、一部の実施形態において、少なくとも約50%、一部の実施形態において、少なくとも約80%、一部の実施形態において、少なくとも約95%、一部の実施形態において、所望の組織型の細胞の少なくとも約99%の形質導入によって達成される。rAAV組成物は、同じ処理の間に、または数日間、数週間、数ヶ月間、もしくは数年間間隔を置いて、1回またはそれ以上の投与によって投与される。一部の実施形態において、哺乳類(例えば、ヒト)を処置するために、複数のベクターを使用してもよい。
【0147】
一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、ヒトへの投与のために使用される。一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、小児投与のために使用される。理論に束縛されることを望むものではないが、PKUの症状の多くは本質的に発達上のもの(例えば、重度の精神障害)であるため、一生のうちのできるだけ早期にPKUを処置することが特に有利であり得る。一部の実施形態において、rAAV(一部の実施形態において、粒子の形態の)の有効量は、生後1ヶ月未満、2ヶ月未満、3ヶ月未満、4ヶ月未満、5ヶ月未満、6ヶ月未満、7ヶ月未満、8ヶ月未満、9ヶ月未満、10ヶ月未満、11ヶ月未満、1年未満、13ヶ月未満、14ヶ月未満、15ヶ月未満、16ヶ月未満、17ヶ月未満、18ヶ月未満、19ヶ月未満、20ヶ月未満、21ヶ月未満、22ヶ月未満、2年未満、または3年未満の患者に投与される。
【0148】
一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、若年成人への投与のために使用される。一部の実施形態において、rAAV(一部の実施形態では、粒子の形態のrAAV)の有効量は、12歳未満、13歳未満、14歳未満、15歳未満、16歳未満、17歳未満、18歳未満、19歳未満、20歳未満、21歳未満、22歳未満、23歳未満、24歳未満、または25歳未満の患者に投与される。
【0149】
一部の実施形態において、本発明は、PKUを処置するための方法であって、それを必要とする個体に、本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む細胞の治療有効量を投与する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドであって、該アミノ酸置換が、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチドのM180、K199、S250、およびG256部位において4つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aから選択される少なくとも3つのアミノ酸置換を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、アミノ酸置換K199P、S250PおよびG256A;M180T、S250PおよびG256A;M180T、K199PおよびG256A;またはM180T、K199PおよびS250Pを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、アミノ酸置換H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、表1~3に提示されるバリアントPAHポリペプチドのいずれか1つであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、アミノ酸置換M180T、K199P、S250PおよびG256Aを含み、少なくとも野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性をほぼ維持しながら、さらなるアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸によってコードされるアミノ酸置換の位置は、野生型ヒトPAHポリペプチド、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトPAHポリペプチドに基づく。
【0150】
一部の実施形態において、細胞中の核酸は、バリアントヒトPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型PAHのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有するバリアントPAHポリペプチドをコードする。
【0151】
一部の実施形態において、細胞中の核酸は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を維持する短縮化PAHポリペプチドであるバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、N末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、N末端調節ドメインの一部または全部の短縮化であるN末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1~アミノ酸残基約102の欠失を含むN末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、C末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、四量体化ドメインの一部または全部の短縮化であるC末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約429~452の欠失を含むC末端短縮化をコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、N末端短縮化およびC末端短縮化を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化PAHポリペプチドは、N末端調節配列の一部または全部および四量体化ドメインの一部または全部の短縮化を含む。一部の実施形態において、短縮化PAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基1~アミノ酸残基約102およびアミノ酸残基約429~約452の欠失を含む。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基約102~約428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型PAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のアミノ酸残基102~428に対応するアミノ酸配列を含むバリアントPAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型ヒトPAHポリペプチド(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のM180、K199、S250およびG256部位に4つのアミノ酸置換をさらに含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、M180T、K199P、S250PおよびG256Aから選択される4つのアミノ酸置換を含む短縮化PAHポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、短縮化バリアントPAHポリペプチドをコードする細胞中の核酸は、表1~3に提示されるアミノ酸置換の組合せのいずれか1つをさらに含む。一部の実施形態において、細胞中の核酸は、野生型PAH(例えば、配列番号1のPAHポリペプチド)のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の少なくとも約25%、50%、75%、100%、または100%超を有する短縮化PAHポリペプチドをコードする。
【0152】
一部の実施形態において、本発明は、本開示のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む細胞の有効量を投与することによってPKUを処置する方法を提供する。バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む細胞は、目的の特定の組織に投与してもよく、または全身的に投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、非経口的に投与してもよい。非経口投与経路としては、静脈内、腹腔内、骨内、動脈内、脳内、筋肉内、髄腔内、皮下、脳室内、肝臓内等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、細胞は、封入されるか、またはデバイス内にある。一部の実施形態において、肝臓外のPAH発現細胞は、外因的に付加されるかまたは共発現される補因子BH4を必要とし得る。一部の実施形態において、細胞は、BH4をさらに含んで封入されるかまたはBH4をさらに含むデバイス内にある。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む細胞の有効量を、1つの投与経路を介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、2つ以上の投与経路の組合せを介して投与してもよい。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸の有効量を、1つの場所に投与する。他の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドの有効量は、2つ以上の場所に投与してもよい。
【0153】
一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸を含む細胞は、肝臓細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、血液細胞、骨髄細胞、幹細胞、または誘導多能性幹細胞である。一部の実施形態において、細胞は、外因的に付加される補因子BH4および/または共発現される補因子BH4をさらに含む。
【0154】
一部の実施形態において、細胞は、細胞株(例えば、CHO細胞株、HeLa細胞株など)である。一部の実施形態において、本発明は、バリアントPAHポリペプチドを作製するための方法であって、バリアントPAHポリペプチドをコードする核酸(例えば、バリアントPAHポリペプチドをコードする発現ベクター)を含む細胞を、バリアントPAHポリペプチドを作製する条件下で培養する工程を含む、方法を提供する。一部の実施形態において、バリアントPAHポリペプチドを作製するための方法は、バリアントPAHポリペプチドを精製する1つまたはそれ以上の工程をさらに含む。
【0155】
VII.キットまたは製造物品
本明細書に記載されるバリアントPAHポリペプチド、核酸、rAAVベクター、粒子、および/または医薬組成物は、例えば、本明細書に記載される本発明の方法の1つで使用するように設計されたキットまたは製造物品内に含まれる。
【0156】
一般に、システムは、カニューレ、1つまたはそれ以上(例えば、1個、2個、3個、4個、またはそれ以上)のシリンジ、および本発明の方法での使用に好適な1つまたはそれ以上(例えば、1個、2個、3個、4個またはそれ以上)の流体を含む。
【0157】
シリンジは、流体の送達のためにカニューレに接続可能であれば、任意の好適なシリンジであり得る。一部の実施形態において、システムは、1つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、2つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、3つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、4つまたはそれ以上のシリンジを有する。本発明の方法での使用に好適な流体としては、本明細書に記載の流体、例えば、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のベクターの有効量をそれぞれ含む1つまたはそれ以上の流体、および1つまたはそれ以上の治療剤を含む1つまたはそれ以上の流体が挙げられる。
【0158】
一部の実施形態において、キットは、単一の流体(例えば、ベクターの有効量を含む医薬的に許容される流体)を含む。一部の実施形態において、キットは、2つの流体を含む。一部の実施形態において、キットは、3つの流体を含む。一部の実施形態において、キットは、4つまたはそれ以上の流体を含む。流体は、本開示のバリアントPAHポリペプチドまたはrAAVベクター組成物を送達、希釈、安定化、緩衝、またはそれ以外の方法で輸送するために好適な、本明細書に記載されるかもしくは当該技術分野において公知の任意の希釈剤、緩衝剤、賦形剤、または他の液体を含み得る。一部の実施形態において、キットは、1つまたはそれ以上の緩衝液、例えば、pH緩衝水溶液を含む。緩衝液の例としては、リン酸、クエン酸、Tris、HEPESおよび他の有機酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
一部の実施形態において、キットは、容器を含む。好適な容器としては、例えば、バイアル、バッグ、シリンジ、およびボトルが挙げられる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチックなどの材料の1つまたはそれ以上から作製される。一部の実施形態において、容器は、本開示のrAAV組成物を保持するために使用される。一部の実施形態において、容器は、流体および/または他の治療剤を保持してもよい。
【0160】
一部の実施形態において、キットは、本開示のrAAV組成物と共に追加の治療剤を含
む。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、混合される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、別個に保持される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、同じ容器内にある。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、異なる容器内にある。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、同時に投与される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療剤は、同じ日に投与される。一部の実施形態において、rAAV組成物は、追加の治療剤の投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、4週、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月以内に投与される。
【0161】
一部の実施形態において、キットは、AAV投与の前に免疫系を一過的に抑制するための治療剤を含む。一部の実施形態において、患者は、AAV粒子に対するT細胞の応答を阻害するために、ウイルスの注射の直前および直後に一過的に免疫抑制される(例えば、Ferreiraら、Hum.Gene Ther.25:180~188頁、2014参照)。一部の実施形態において、キットは、シクロスポリン、マイコフェノール酸モフェチル、および/またはメチルプレドニゾロンをさらに提供する。
【0162】
本発明のrAAV粒子および/または組成物を、使用説明書を含むキットにさらにパッケージングしてもよい。一部の実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物の送達(例えば、本明細書に記載される任意の種類の非経口投与)のためのデバイスをさらに含む。一部の実施形態において、使用説明書は、本明細書に記載される方法のうちの1つに係る使用説明書を含む。一部の実施形態において、説明書は、容器と共に(例えば、容器に貼付されて)提供されるラベルに印刷される。一部の実施形態において、使用説明書は、例えば、個体におけるPKUを処置するために、個体(例えば、ヒト)に、rAAV粒子の有効量を投与するための説明書を含む。
【0163】
VIII.例示的な実施形態
実施形態1.2つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、前記バリアントPAHポリペプチド。
【0164】
実施形態2.3つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチドであって、該アミノ酸置換は、野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256から選択される部位にある、前記バリアントPAHポリペプチド。
【0165】
実施形態3.野生型ヒトPAHポリペプチドの、M180、K199、S250、およびG256の部位に4つのアミノ酸置換を含むバリアントフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)ポリペプチド。
【0166】
実施形態4.アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aの1つまたはそれ以上を含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0167】
実施形態5.アミノ酸置換は、K199P、S250P、およびG256A;M180T、S250P、およびG256A;M180T、K199P、およびG256A;またはM180T、K199P、およびS250Pを含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0168】
実施形態6.アミノ酸置換は、M180T、K199P、S250P、およびG256Aを含む、実施形態1~5のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0169】
実施形態7.H264P、G272A、G272P、P275L、P279Q、G272PおよびP275L、またはT323RおよびF327Tアミノ酸置換をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0170】
実施形態8.野生型ヒトPAHポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態1~7のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0171】
実施形態9.ヒトPAHポリペプチドである、実施形態1~8のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0172】
実施形態10.配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも約80%同一なアミノ酸配列を含む、実施形態1~9のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0173】
実施形態11.配列番号3のアミノ酸配列を含む、実施形態1~6のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0174】
実施形態12.バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載のバリアントPAH。
【0175】
実施形態13.バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、および453位におけるSの付加をさらに含む、実施形態1~12のいずれか1項に記載のバリアントPAH。
【0176】
実施形態14.バリアントPAHポリペプチドは、野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む、実施形態1~13のいずれか1項に記載のバリアントPAH。
【0177】
実施形態15.野生型ヒトPAHポリペプチドの、G33A、G46A、G46P、G103A、G139A、G139P、G148A、G188A、G218A、G239A、G247A、G257A、G272A、G289A、G307A、G312A、G332A、G337A、G344A、G352A、およびG442Aから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【0178】
実施形態16.野生型ヒトPAHポリペプチドの、P9G、G10V、G12S、K184R、K192R、S196A、Y206H、H220R、Q336E、E360D、I374C、N376E、N401T、I421V、I441V、S446Hから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、および453位におけるSの付加を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【0179】
実施形態17.野生型ヒトPAHポリペプチドの、F240W、A246P、G247A、Y268W、C284F、T323R、F327Y、E319P、I306(Y、F)、K113P、G188A、F191Y、T193R、Y206H、G337P、およびN376Pから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、バリアントPAHポリペプチド。
【0180】
実施形態18.N末端の短縮化を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0181】
実施形態19.N末端の短縮化は、N末端調節ドメインの短縮化を含む、実施形態18に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0182】
実施形態20.N末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基1~102の短縮化を含む、実施形態18または19に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0183】
実施形態21.C末端の短縮化を含む、実施形態1~20のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0184】
実施形態22.C末端の短縮化は、四量体化ドメインの短縮化を含む、実施形態21に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0185】
実施形態23.C末端の短縮化は、野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基429~452の短縮化を含む、実施形態21または22に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0186】
実施形態24.野生型PAHポリペプチドのアミノ酸残基103~428に対応するアミノ酸配列を含む、実施形態1~23のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0187】
実施形態25.可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、実施形態1~24のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0188】
実施形態26.可能性のあるプロテアーゼ切断部位を消去するような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、野生型PAHポリペプチドの270~295位および/または380~405位に配置されている、実施形態25に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0189】
実施形態27.肝臓標的化ポリペプチドに融合されている、実施形態1~26のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0190】
実施形態28.肝臓標的化ポリペプチドは、HGFもしくはそのフラグメントまたは肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に結合する糖タンパク質である、実施形態27に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0191】
実施形態29.ペグ化および/またはニトロシル化されている、実施形態1~25のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0192】
実施形態30.I374Cアミノ酸置換を含み、374位におけるcys残基は、ニトロシル化されている、実施形態26に記載のバリアントPAHポリペプチド。
【0193】
実施形態31.実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドを含む組成物。
【0194】
実施形態32.医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態31に記載の組成物。
【0195】
実施形態33.実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする単離された核酸。
【0196】
実施形態34.バリアントPAHポリペプチドをコードする単離された核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態33に記載の単離された核酸。
【0197】
実施形態35.プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、mTTR482プロモーター、mA1MB2-mTTR482プロモーター、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、LP1プロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターまたは配列番号17、レトロウイルスであるラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される、実施形態34に記載の単離された核酸。
【0198】
実施形態36.プロモーターは、LP1プロモーターまたはmA1MB2-mTTR482プロモーターである、実施形態34または35に記載の単離された核酸。
【0199】
実施形態37.ポリアデニル化シグナルをさらに含む、実施形態33~36のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【0200】
実施形態38.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである、実施形態37に記載の単離された核酸。
【0201】
実施形態39.イントロンをさらに含む、実施形態33~38のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【0202】
実施形態40.イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、実施形態39に記載の単離された核酸。
【0203】
実施形態41.イントロンは、配列番号15の改変されたニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、実施形態39に記載の単離された核酸。
【0204】
実施形態42.1つまたはそれ以上のITRをさらに含む、実施形態33~41のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【0205】
実施形態43.スタッファー核酸をさらに含む、実施形態33~42のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【0206】
実施形態44.スタッファー核酸は、ATG配列が除去されるように最適化されている、実施形態43に記載の単離された核酸。
【0207】
実施形態45.スタッファー核酸は、配列番号16のA1ATイントロンスタッファー配列である、実施形態44に記載の単離された核酸。
【0208】
実施形態46.コドン最適化されている、ヒトPAHポリペプチドをコードする単離された核酸。
【0209】
実施形態47.核酸配列は、配列番号14の核酸配列に少なくとも80%同一である、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0210】
実施形態48.配列番号14の核酸配列を含む、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0211】
実施形態49.mRNAである、実施形態33に記載の単離された核酸。
【0212】
実施形態50.実施形態33~49のいずれか1項に記載の核酸を含む組成物。
【0213】
実施形態51.医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態50に記載の組成物。
【0214】
実施形態52.実施形態33~49のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
【0215】
実施形態53.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、実施形態52に記載のベクター。
【0216】
実施形態54.1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した実施形態33~41または43~49のいずれか1項に記載の核酸を含むrAAVベクター。
【0217】
実施形態55.実施形態33~48のいずれか1項に記載の核酸は、2つのAAVのITRと隣接している、実施形態54に記載のrAAVベクター。
【0218】
実施形態56.AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、実施形態54または55に記載のrAAVベクター。
【0219】
実施形態57.AAVのITRは、AAV2のITRである、実施形態54~56のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0220】
実施形態58.5’から3’に、AAV2のITR、プロモーター、イントロン、PAHポリペプチドをコードする核酸、スタッファー核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、実施形態57に記載のrAAVベクター。
【0221】
実施形態59.プロモーターは、m1A1MB2-mTTR482プロモーターまたは
LP1プロモーターである、実施形態58に記載のrAAVベクター。
【0222】
実施形態60.イントロンは、ニワトリβ-アクチン(CBA)/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、実施形態58または59に記載のrAAVベクター。
【0223】
実施形態61.PAHポリペプチドは、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドである、実施形態58~59のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0224】
実施形態62.PAHポリペプチドをコードする核酸は、実施形態46~48のいずれか1項に記載のコドン最適化された核酸である、実施形態58~60のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0225】
実施形態63.スタッファー核酸は、ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロン由来の核酸を含む、実施形態58~62のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0226】
実施形態64.ヒトアルファ1抗トリプシン遺伝子のイントロンは、ATG配列が除去されるように突然変異されている、実施形態63に記載のrAAVベクター。
【0227】
実施形態65.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、実施形態58~64のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0228】
実施形態66.自己相補性ベクターである、実施形態53~65のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0229】
実施形態67.PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる、実施形態66に記載のrAAVベクター。
【0230】
実施形態68.第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、実施形態67に記載のrAAVベクター。
【0231】
実施形態69.実施形態53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含むrAAV粒子。
【0232】
実施形態70.AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む、実施形態69に記載のrAAV粒子。
【0233】
実施形態71.AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む、実施形態69に記載のrAAV粒子。
【0234】
実施形態72.操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである、実施形態71に記載のrAAV粒子。
【0235】
実施形態73.rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である、実施形態69または70に記載のrAAV粒子。
【0236】
実施形態74.rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である、実施形態69または70に記載のrAAV粒子。
【0237】
実施形態75.rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含む、実施形態69~70または73~74のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【0238】
実施形態76.rAAVウイルス粒子は、AAV8カプシドを含み、ベクターは、AAV2のITRを含む、実施形態74に記載のrAAV粒子。
【0239】
実施形態77.実施形態69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む組成物。
【0240】
実施形態78.医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態77に記載の組成物。
【0241】
実施形態79.実施形態33~49のいずれか1項に記載の核酸または請求項52もしくは53に記載のベクターまたは実施形態54~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含む細胞。
【0242】
実施形態80.バリアントPAHポリペプチドを生産する方法であって、実施形態79に記載の細胞を、バリアントPAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、前記方法。
【0243】
実施形態81.バリアントPAHポリペプチドを精製する工程をさらに含む、実施形態80に記載の方法。
【0244】
実施形態82.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドまたは実施形態31もしくは32に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0245】
実施形態83.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または実施形態33、34または49に記載の核酸を個体に投与することを含む、前記方法。
【0246】
実施形態84.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、前記方法。
【0247】
実施形態85.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【0248】
実施形態86.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態31、32、50、51、77または78に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0249】
実施形態87.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態79に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【0250】
実施形態88.個体は、PAH活性を欠如している、実施形態82~87のいずれか1項に記載の方法。
【0251】
実施形態89.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドまたは請求項31もしくは32に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0252】
実施形態90.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドをコードする核酸または実施形態33、34または49に記載の核酸を個体に投与することを含む、前記方法。
【0253】
実施形態91.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、前記方法。
【0254】
実施形態92.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【0255】
実施形態93.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態31、32、50、51、77または78に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0256】
実施形態94.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態79に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【0257】
実施形態95.処置の前における個体の血液中のフェニルアラニンのレベルは、同等の対応する対照個体の血液中のフェニルアラニンのレベルと比較して上昇している、実施形態89~94のいずれか1項に記載の方法。
【0258】
実施形態96.バリアントPAHポリペプチド、核酸、rAAVベクター、rAAV粒子、組成物または細胞は、静脈内、動脈内、肝内、門脈内、腹腔内、または皮下に投与される、実施形態82~95のいずれか1項に記載の方法。
【0259】
実施形態97.投与は、別の療法と組み合わされる、実施形態82~96のいずれか1項に記載の方法。
【0260】
実施形態98.別の療法は、テトラヒドロビオプテリンでの処置、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)もしくはペグ化PALでの処置、またはフェニルアラニンが制限された食事である、実施形態97に記載の方法。
【0261】
実施形態99.PAHポリペプチドを作製するための方法であって、実施形態79に記載の細胞を、PAHポリペプチドを生産する条件下で培養することを含む、前記方法。
【0262】
実施形態100.PAHポリペプチドを精製することをさらに含む、実施形態99に記載の方法。
【0263】
実施形態101.実施形態1~24のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドを含むキット。
【0264】
実施形態102.実施形態33~46のいずれか1項に記載の核酸、実施形態53~68のいずれか1項に記載のrAAVベクター、実施形態69~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子、または実施形態77もしくは78に記載の組成物を含むキット。
【0265】
実施形態103.使用説明書;緩衝液および/もしくは医薬的に許容される賦形剤;ならびに/またはボトル、バイアルおよび/もしくはシリンジをさらに含む、実施形態101または102に記載のキット。
【0266】
実施形態104.肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含む、前記発現カセット。
【0267】
実施形態105.mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、実施形態104に記載の発現カセット。
【0268】
実施形態106.エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある、実施形態104または105に記載の発現カセット。
【0269】
実施形態107.肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3’エレメントである、前記発現カセット。
【0270】
実施形態108.mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、実施形態107に記載の発現カセット。
【0271】
実施形態109.3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている、実施形態107または108に記載の発現カセット。
【0272】
実施形態110.肝臓細胞において導入遺伝子を発現させるための発現カセットであって、プロモーターおよびエンハンサーおよび3’エレメントに作動可能に連結した導入遺伝子を含み、該プロモーターは、マウストランスチレチン(mTTR)プロモーターを含み、該エンハンサーは、1つまたは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つの改変されたアルファ1-マイクロビクニンエンハンサー(mA1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)またはCRM8エンハンサーを含み;該3’エレメントは、ヒトアルファ1抗トリプシン足場/マトリックス付着領域(SMAR)(3’AlbSMAR)に連結されたアルブミン3’エレメント(3’Alb)またはアルブミン3
’エレメントである、前記発現カセット。
【0273】
実施形態111.mTTRプロモーターは、mTTR482プロモーターである、実施形態110に記載の発現カセット。
【0274】
実施形態112.エンハンサーは、mTTRプロモーターに対して5’にある、実施形態110または111に記載の発現カセット。
【0275】
実施形態113.3’エレメントは、導入遺伝子に対して3’に配置されている、実施形態110~112のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0276】
実施形態114.イントロンをさらに含む、実施形態104~113のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0277】
実施形態115.イントロンは、ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンハイブリッドイントロンである、実施形態114に記載の発現カセット。
【0278】
実施形態116.ポリアデニル化シグナルをさらに含む、実施形態104~115のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0279】
実施形態117.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、実施形態116に記載の発現カセット。
【0280】
実施形態118.導入遺伝子は、PAHポリペプチドまたはバリアントPAHポリペプチドをコードする、実施形態104~117のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0281】
実施形態119.バリアントPAHポリペプチドは、実施形態1~30のいずれか1項に記載のバリアントPAHポリペプチドである、実施形態118に記載の発現カセット。
【0282】
実施形態120.実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを含むベクター。
【0283】
実施形態121.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、実施形態120に記載のベクター。
【0284】
実施形態122.1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを含むrAAVベクター。
【0285】
実施形態123.実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットは、2つのAAVのITRと隣接している、実施形態122に記載のrAAVベクター。
【0286】
実施形態124.AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、実施形態122または123に記載のrAAVベクター。
【0287】
実施形態125.AAVのITRは、AAV2のITRである、実施形態122~124のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0288】
実施形態126.自己相補性ベクターである、実施形態122~125のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【0289】
実施形態127.PAHポリペプチドをコードする第1の核酸配列およびPAHポリペプチドの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2の核酸配列との鎖内塩基対を形成することができる、実施形態126に記載のrAAVベクター。
【0290】
実施形態128.第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、実施形態127に記載のrAAVベクター。
【0291】
実施形態129.実施形態122~127のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含むrAAV粒子。
【0292】
実施形態130.AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2
N708A、AAV2 V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型のカプシドを含む、実施形態129に記載のrAAV粒子。
【0293】
実施形態131.AAVウイルス粒子は、操作されたAAVカプシドを含む、実施形態130に記載のrAAV粒子。
【0294】
実施形態132.操作されたAAVカプシドは、DJカプシドまたはLK03カプシドである、実施形態131に記載のrAAV粒子。
【0295】
実施形態133.rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、同じAAV血清型由来である、実施形態131または132に記載のrAAV粒子。
【0296】
実施形態134.rAAVウイルス粒子のITRおよびカプシドは、異なるAAV血清型由来である、実施形態131または132に記載のrAAV粒子。
【0297】
実施形態135.実施形態129~134のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む組成物。
【0298】
実施形態136.医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態135に記載の組成物。
【0299】
実施形態137.実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットまたは実施形態120~128のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞。
【0300】
実施形態138.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを個体に投与することを含む、前記方法。
【0301】
実施形態139.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための
方法であって、実施形態122~128のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、前記方法。
【0302】
実施形態140.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態129~134のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【0303】
実施形態141.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態135または136に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0304】
実施形態142.それを必要とする個体におけるフェニルケトン尿症を処置するための方法であって、実施形態137に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【0305】
実施形態143.個体は、PAH活性を欠如している、実施形態138~142のいずれか1項に記載の方法。
【0306】
実施形態144.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセットを個体に投与することを含む、前記方法。
【0307】
実施形態145.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態122~128のいずれか1項に記載のrAAVベクターを個体に投与することを含む、前記方法。
【0308】
実施形態146.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態129~134のいずれか1項に記載のrAAV粒子を個体に投与することを含む、前記方法。
【0309】
実施形態147.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態135または136に記載の組成物を個体に投与することを含む、前記方法。
【0310】
実施形態148.それを必要とする個体の血液中のフェニルアラニンのレベルを低減させるための方法であって、実施形態137に記載の細胞を個体に投与することを含む、前記方法。
【0311】
実施形態149.処置の前における個体の血液中のフェニルアラニンのレベルは、同等の対応する対照個体の血液中のフェニルアラニンのレベルと比較して上昇している、実施形態144~148のいずれか1項に記載の方法。
【0312】
実施形態150.核酸、rAAVベクター、rAAV粒子、組成物または細胞は、静脈内、動脈内、肝内、門脈内、腹腔内、または皮下に投与される、実施形態138~149のいずれか1項に記載の方法。
【0313】
実施形態151.投与は、別の療法と組み合わされる、実施形態138~150のいずれか1項に記載の方法。
【0314】
実施形態152.別の療法は、テトラヒドロビオプテリンでの処置、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)もしくはペグ化PALでの処置、またはフェニルアラニン
が制限された食事である、実施形態151に記載の方法。
【0315】
実施形態153.実施形態104~119のいずれか1項に記載の発現カセット、実施形態122~128のいずれか1項に記載のrAAVベクター、実施形態129~134のいずれか1項に記載のrAAV粒子、または実施形態135もしくは136に記載の組成物を含むキット。
【0316】
実施形態154.使用説明書;緩衝液および/もしくは医薬的に許容される賦形剤;ならびに/またはボトル、バイアルおよび/もしくはシリンジをさらに含む、実施形態153に記載のキット。
【実施例0317】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例および実施形態は例示目的にすぎないこと、ならびに様々な修正または変更が、本明細書に記載される実施例および実施形態に照らして当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の実施形態の範囲内に含まれることが理解される。
ヒトまたはマウスPAHプラスミド発現カセットを生成するために、完全長PAH(アミノ酸1~452)をコードする対応するcDNAが3つの発現プラスミドにクローニングされた。これらのプラスミドは、肝臓特異的(LP1;Nathwani 2011)
、A1MB2-mTTR482またはCBAプロモーター、ハイブリッドイントロンおよびpA配列(BGHまたはサルウイルス40[SV40]pA)(Nathwani 2011、Kyostio-Moore 2016)を含んだ。全ての発現プラスミドは、隣接したAAV2 ITRを含んだ。mTTR482(Nambiar 2017)を、hPAHをコードする様々なcDNAを評価するための骨格として使用した。DNA2.0、GeneArt(GA)またはGenscript(GS)からのアルゴリズムおよびCpG含有量の減少と組み合わせたGSアルゴリズムによって、4つのコドン最適化cDNAを生成した。各発現プラスミドにおいて、検出および定量化を目的として、PAHタンパク質にN末端22アミノ酸3×FLAGペプチド(MDYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK(配列番号18)でタグ付けした。
肝臓プロモーター、ハイブリッドイントロン、PAH cDNA、およびBGHpAを有する、選択されたAAV2 ITR含有プラスミドを、rAAVベクター作製のために使用した。AAV8血清型カプシドを有するrAAVベクターを、トリプルトランスフェクション法、続いてCsCl2精製(Univ. Massachusetts Gene Therapy Core)を使用して生成した。ベクターロットを、BGHpAに対するqPCRによって定量した(Nambiar 2017)。
脳神経伝達物質の定量のために、Kankaanpaa 2001に記載されるように、但し軽微な変更を加えて、脳を処理した。簡潔に述べると、矢状に切断されたPBS灌流脳の半分を、氷冷溶解緩衝液(1mMシュウ酸、3mMシステイン、0.1M酢酸)中で、Bead Ruptor 24(Omni)と共に、4℃で20秒間、4.85m/秒でホモジナイズした。試料を14Kで10分間スピンし、その後、上清を凍結した。次いで、脳ホモジネート(200mg/mL)を、API5000トリプル四重極型質量分析計(AB SCIEX、Framingham、MA USA)にハイフンで繋いだAcquity UPLC(Waters Corporation、Milford、MA USA)を使用して、UPLC-MS/MSによって、L-ドーパ、ドーパミン、ホモバニリン酸(HVA)、セロトニン、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)、5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)およびノルエピネフリンレベルについて定量した。神経伝達物質の安定性を高めるために、試料希釈緩衝液として、0.1%ギ酸(FA)およびアセトニトリル中の300ng/mLシステインを使用した。各分析物(Sigma-Aldrich)の標準および標準液については、上記の通りに試料と同様に調製した。MS/MS検出はポジティブイオンモードで実施した(HVAはネガティブイオンモードで検出した)。分析は、勾配分離を伴うAcquity HSS C18 SB(1.7μm、2.1×100mm)を使用して行った。勾配分離は、0.5分間の
98%移動相A(水中0.1%FA)の保持、続いて3.5分間の2~40%移動相B(アセトニトリル中0.1%FA)勾配、0.1分間の95%Bへの増加、0.5分間の95%Bでの洗浄、および2.4分間の0.5mL/分の流速で98%Aでの再平衡を含んだ。ポジティブイオンMS/MSトランジションは、L-ドーパについては198/152、セロトニンについては177/160.1、ドーパミンについては154/137.1、5-HIAAについては192/146、ノルエピネフリンについては170.1/107、5-HTPについては221.1/201であった。HVA検出は、勾配の初期相保持を除いたこと以外は、上述した方法と同様に、ネガティブイオンモードで実施した。ネガティブイオンモードでのHVAについてのMS/MSトランジションは、181.1/137.1であった。レベルは、μg/mLホモジネートまたはuMで表した。脳PheおよびTyrレベルは、上記セクションで記載した通りに定量した。
肝臓試料について、ベクターゲノム、PAH活性およびタンパク質レベルを定量した。ベクターゲノムのコピーは、qPCRによって定量した(Martin 2013)。FLAGタグ付きタンパク質の定量は、以下のように行った。肝臓試料を、ビーズ(15-340-153;Fisher Scientific)を備えるチューブ内で、1×プロテアーゼ阻害剤を含む1×PBSまたはRIPA緩衝液中で、ホモジナイザー(Bead Ruptor24;Omni)において4℃で20~30秒間、5.65rpmにてホモジナイズした。試料を、4℃で30分間、14,000gでスピンした。次いで、上清を使用して、FLAG ELISAアッセイによるPAH定量を行い、総タンパク質によって正規化した(BCAタンパク質アッセイキット、Pierce)。肝臓ホモジネートにおけるPAHタンパク質活性は、上記の通りに行った。