(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012313
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による処置のための投与
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240123BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240123BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240123BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240123BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K31/573
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174115
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2019524370の分割
【原出願日】2017-11-15
(31)【優先権主張番号】62/422,391
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/500,217
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ユイ-ワーイェー
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ, イーラジ
(72)【発明者】
【氏名】ラマヌジャン, サロージャ
(72)【発明者】
【氏名】ガドカール, カピル
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジーチョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗表面抗原分類20(CD20)/抗表面抗原分類3(CD3)の二重特異性抗体を使用する、B細胞増殖性疾患を有するヒト患者の治療方法を提供する。
【解決手段】B細胞増殖性疾患を有する被検体を処置する方法であって、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画においてCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を前記被検体へ投与することを備え、
(a)第一投与サイクルは二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、C1D1及びC1D2はC1D3より各多くなく、
(b)第二投与サイクルは二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1はC1D3以上である、
前記方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞増殖性疾患を有する被検体を処置する方法であって、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画においてCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を前記被検体へ投与することを備え、
(a)前記第一投与サイクルは前記二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、前記C1D1及び前記C1D2は前記C1D3より各多くなく、前記C1D1は約0.02mgから約4.0mgの間にあり、前記C1D2は約0.05mgから約20.0mgの間にあり、前記C1D3は約0.2mgから約20.0mgの間にあり、
(b)前記第二投与サイクルは前記二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、前記C2D1は前記C1D3以上であり、約0.2mgから約20mgの間にある、
前記方法。
【請求項2】
(a)前記C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、前記C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、前記C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、
(b)前記C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある、
請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
(a)前記C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、前記C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、前記C1D3は、約3.0mgから約6.0mgの間にあり、
(b)前記C2D1は、約3.0mgから約6.0mgの間にある、
請求項2に記載の前記方法。
【請求項4】
(a)前記C1D1は、約0.8mgであり、前記C1D2は、約2.0mgであり、前記C1D3は、約4.2mgであり、前記C2D1は、約4.2mgである、または
(b)前記C1D1は、約1.0mgであり、前記C1D2は、約1.0mgであり、前記C1D3は、約3.0mgであり、前記C2D1は、約3.0mgである、または
(c)前記C1D1は、約1.0mgであり、前記C1D2は、約2.0mgであり、前記C1D3は、約6.0mgであり、前記C2D1は、約6.0mgである、または
(d)前記C1D1は、約0.8mgであり、前記C1D2は、約2.0mgであり、前記C1D3は、約6.0mgであり、前記C2D1は、約6.0mgである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項5】
前記第一投与サイクルの長さは、21日である、請求項1から4のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項6】
前記方法は、前記被検体へ前記C1D1、前記C1D2、及び前記C1D3を前記第一投与サイクルの、それぞれ1日目、8日目、及び15日目に、または約1日目、約8日目、及び約15日目に投与することを備える、請求項5に記載の前記方法。
【請求項7】
前記第二投与サイクルの長さは、21日である、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項8】
前記方法は、前記被検体へ前記C2D1を前記第二投与サイクルの1日目に投与することを備える、請求項7に記載の前記方法。
【請求項9】
前記投与計画は、1回以上の追加の投与サイクルを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項10】
前記投与計画は、1回から6回の追加の投与サイクルを含む、請求項9に記載の前記方法。
【請求項11】
前記1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれの長さは、21日である、請求項9または10に記載の前記方法。
【請求項12】
前記1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれは、前記二重特異性抗体の単回投与量を含む、請求項9から11のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項13】
前記方法は、前記被検体へ前記1回以上の追加の投与サイクルの前記単回投与量を前記1回以上の追加の投与サイクルの1日目に投与することを備える、請求項12に記載の前記方法。
【請求項14】
前記二重特異性抗体は、以下の6箇所の超可変領域(HVR)を含む第一結合ドメインを含む抗CD20アームを備え、
前記6箇所の超可変領域は、
(a)前記アミノ酸配列のGYTFTSYNMH(配列番号1)を含むHVR-H1、
(b)前記アミノ酸配列のAIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)を含むHVR-H2、
(c)前記アミノ酸配列のVVYYSNSYWYFDV(配列番号3)を含むHVR-H3、
(d)前記アミノ酸配列のRASSSVSYMH(配列番号4)を含むHVR-L1、
(e)前記アミノ酸配列のAPSNLAS(配列番号5)を含むHVR-L2、及び
(f)前記アミノ酸配列のQQWSFNPPT(配列番号6)を含むHVR-L3、を備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項15】
前記二重特異性抗体は、
(a)前記アミノ酸配列の配列番号7に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、
(b)前記アミノ酸配列の配列番号8に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または
(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、
を含む第一結合ドメインを含む抗CD20アームを備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項16】
前記第一結合ドメインは、アミノ酸配列の配列番号7を含むVHドメイン、及びアミノ酸配列の配列番号8を含むVLドメインを含む、請求項15に記載の前記方法。
【請求項17】
前記二重特異性抗体は、以下の6箇所のHVRを含む第二結合ドメインを含む抗CD3アームを備え、
前記6箇所のHVRは、
(a)前記アミノ酸配列のNYYIH(配列番号9)を含むHVR-H1、
(b)前記アミノ酸配列のWIYPGDGNTKYNEKFKG(配列番号10)を含むHVR-H2、
(c)前記アミノ酸配列のDSYSNYYFDY(配列番号11)を含むHVR-H3、
(d)前記アミノ酸配列のKSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)を含むHVR-L1、
(e)前記アミノ酸配列のWASTRES(配列番号13)を含むHVR-L2、及び
(f)前記アミノ酸配列のTQSFILRT(配列番号14)を含むHVR-L3、を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項18】
前記二重特異性抗体は、
(a)前記アミノ酸配列の配列番号15に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)前記アミノ酸配列の配列番号16に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、
を含む第二結合ドメインを含む抗CD3アームを備える、請求項1から17のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項19】
前記第二結合ドメインは、アミノ酸配列の配列番号15を含むVHドメイン、及びアミノ酸配列の配列番号16を含むVLドメインを備える、請求項20に記載の前記方法。
【請求項20】
前記二重特異性抗体は、アグリコシル化部位変異を含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項21】
前記アグリコシル化部位変異は、前記二重特異性抗体のエフェクター機能を低下させる、請求項20に記載の前記方法。
【請求項22】
前記アグリコシル化部位変異は、置換変異である、請求項20または21に記載の前記方法。
【請求項23】
前記二重特異性抗体は、エフェクター機能を低下させる前記Fc領域における置換変異を含む、請求項22に記載の前記方法。
【請求項24】
前記置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/またはD265(EU番号付け)におけるものである、請求項23に記載の前記方法。
【請求項25】
前記置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235A、D265A、及びP329Gからなる群から選択される、請求項24に記載の前記方法。
【請求項26】
前記置換変異は、アミノ酸残基N297におけるものである、請求項24または25に記載の前記方法。
【請求項27】
前記置換変異は、N297Aである、請求項26に記載の前記方法。
【請求項28】
前記二重特異性抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1から27のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項29】
前記二重特異性抗体は、ヒト化抗体である、請求項1から28のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項30】
前記二重特異性抗体は、キメラ抗体である、請求項1から29のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項31】
前記二重特異性抗体は、CD20及びCD3を結合する抗体フラグメントである、請求項1から30のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項32】
前記抗体フラグメントは、Fab、Fab’-SH、Fv、scFV、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される、請求項31に記載の前記方法。
【請求項33】
前記二重特異性抗体は、抗体全長である、請求項1から30のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項34】
前記二重特異性抗体は、IgG抗体である、請求項1から30及び33のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項35】
前記IgG抗体は、IgG1抗体である、請求項34に記載の前記方法。
【請求項36】
前記二重特異性抗体は、1箇所以上の重鎖定常ドメインを含み、前記1箇所以上の重鎖定常ドメインは、第一CH1(CH11)ドメイン、第一CH2(CH21)ドメイン、第一CH3(CH31)ドメイン、第二CH1(CH12)ドメイン、第二CH2(CH22)ドメイン、及び第二CH3(CH32)ドメインから選択される、請求項1から35のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項37】
前記1箇所以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1箇所は、別の重鎖定常ドメインと対合される、請求項36に記載の前記方法。
【請求項38】
前記CH31及びCH32ドメインは、突起または空洞を各含み、前記CH31ドメイン内の前記突起または空洞は、前記CH32ドメイン内の、それぞれ、前記空洞また突起内に配置可能である、請求項36または37に記載の前記方法。
【請求項39】
前記CH31及びCH32ドメインは、前記突起と空洞との間の境界面において会合する、請求項38に記載の前記方法。
【請求項40】
前記CH21及びCH22ドメインは、突起または空洞を各含み、前記CH21ドメイン内の前記突起または空洞は、前記CH22ドメイン内の、それぞれ、前記空洞または突起内に配置可能である、請求項36から39のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項41】
前記CH21及びCH22ドメインは、前記突起と空洞との間の境界面において会合する、請求項40に記載の前記方法。
【請求項42】
前記二重特異性抗体は、前記被検体へ単剤療法として投与される、請求項1から41のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項43】
前記二重特異性抗体は、前記被検体へ併用療法として投与される、請求項1から41のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項44】
前記二重特異性抗体は、前記被検体へ追加の治療剤と同時に投与される、請求項43に記載の前記方法。
【請求項45】
前記二重特異性抗体は、追加の治療剤の前記投与前に、前記被検体へ投与される、請求項43に記載の前記方法。
【請求項46】
前記追加の治療剤は、アテゾリズマブである、請求項44または45に記載の前記方法。
【請求項47】
前記二重特異性抗体の前記C2D1と同時にアテゾリズマブの第一投与量を前記第二投与サイクルの1日目に前記被検体へ投与することをさらに備える、請求項13に記載の前記方法。
【請求項48】
アテゾリズマブを前記1回以上の追加の投与サイクルの前記二重特異性抗体の前記単回投与量と同時に前記1回以上の追加の投与サイクルの1日目に前記被検体へ投与することをさらに備える、請求項47に記載の前記方法。
【請求項49】
アテゾリズマブは、前記被検体へ前記二重特異性抗体と同時にのみ投与される、請求項48に記載の前記方法。
【請求項50】
アテゾリズマブの各投与量は、約1200mgである、請求項46から49のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項51】
前記二重特異性抗体は、追加の治療剤の前記投与後に、前記被検体へ投与される、請求項43に記載の前記方法。
【請求項52】
前記追加の治療剤は、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))である、請求項51に記載の前記方法。
【請求項53】
前記追加の治療剤は、トシリズマブである、請求項51に記載の前記方法。
【請求項54】
前記B細胞増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)または慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1から53のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項55】
前記NHLは、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PMLBCL)、または濾胞性リンパ腫(FL)である、請求項54に記載の前記方法。
【請求項56】
前記DLBCLは、再発性または難治性DLBCLである、請求項55に記載の前記方法。
【請求項57】
前記投与は、静脈内注入によるものである、請求項1から56のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項58】
前記投与は、皮下投与である、請求項1から56のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項59】
前記被検体は、サイトカイン放出症候群(CRS)事象を有し、前記方法は、前記二重特異性抗体による処置を保留しながら前記CRS事象の前記症状を処置することをさらに備える、請求項1から53のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項60】
前記方法は、前記被検体へトシリズマブの有効量を投与し、前記CRS事象を処置することをさらに備える、請求項59に記載の前記方法。
【請求項61】
トシリズマブは、前記被検体へ約8mg/kgの単回投与量として静脈内に投与される、請求項60に記載の前記方法。
【請求項62】
前記CRS事象は、前記CRS事象の前記症状を処置してから24時間以内に回復せず、または悪化せず、前記方法は、前記被検体へ1回以上の追加の投与量のトシリズマブを投与し、前記CRS事象を管理することをさらに備える、請求項61に記載の前記方法。
【請求項63】
前記1回以上の追加の投与量のトシリズマブは、前記被検体へ約8mg/kgの1回投与量で静脈内に投与される、請求項62に記載の前記方法。
【請求項64】
前記被検体へコルチコステロイドの有効量を投与することをさらに備える、請求項62または63に記載の前記方法。
【請求項65】
前記コルチコステロイドは、前記被検体へ静脈内に投与される、請求項64に記載の前記方法。
【請求項66】
前記コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである、請求項64または65に記載の前記方法。
【請求項67】
メチルプレドニゾロンは、1日あたり約2mg/kgの投与量で投与される、請求項66に記載の前記方法。
【請求項68】
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンである、請求項64または65に記載の前記方法。
【請求項69】
デキサメタゾンは、約10mgの投与量で投与される、請求項68に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願には、ASCII形式にて電子的に提出され、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる配列表を含む。2017年11月13日に作成された該ASCIIコピーは、50474-150WO3_Sequence_Listing_11.13.17_ST25と称され、21,101バイトのサイズである。
【0002】
本発明は、B細胞増殖性疾患などの、がんの処置に関する。さらに特に、本発明は、抗表面抗原分類20(CD20)/抗表面抗原分類3(CD3)の二重特異性抗体を使用する、B細胞増殖性疾患を有するヒト患者の特異的治療に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、細胞亜集団の制御されない増殖を特徴とする。がんは、先進国世界における死因の第1位、及び発展途上国における死因の第2位であり、毎年1千4百万を超える新たながん症例が診断され、8百万を超えるがん死亡が生じている。米国国立がん研究所は、2016年には50万人を超えるアメリカ人ががんによって死亡すると推定しており、これは、ほぼ米国の死亡4件中1件の割合を占める。がんの発症確率は70歳を過ぎると2倍超高くなるため、高齢者人口が増加するにつれて、がんの発生率も同時に上昇している。このため、がん治療は、重大かつ増え続ける社会的負担を意味する。
【0004】
血液癌は、特に、がん関連死因の第2位である。血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)(たとえば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL))などの、B細胞増殖性疾患を含み、急速に進行し、治療されなければ死に至る。モノクローナル抗表面抗原分類20(CD20)抗体のリツキシマブによる治療が再発性DLBCL患者をより少なくするが、再発性または難治性DLBCLを有するこれらの患者を治療することがますます難しくなる。これらのような患者について、二重特異性抗体に基づく免疫療法などの、代替の、または二次治療様式は、特に効果的であることができる。二重特異性抗体は、結合された細胞傷害性細胞が結合されたがん細胞を破壊する意図をもって、細胞表面抗原を細胞傷害性細胞(たとえば、表面抗原分類3(CD3)に結合することを介して、T細胞など)及びがん細胞(たとえば、CD20に結合することを介して、B細胞など)上で同時に結合することが可能である。しかしながら、これらのような抗体に基づく免疫療法は、サイトカイン駆動毒性(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS))、輸液関連反応(IRR)、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、及び中枢神経系(CNS)毒性を含む、望まれない影響により制限される可能性がある。
【0005】
このため、より好ましいベネフィット-リスクプロファイルを達成するがん(たとえば、B細胞増殖性疾患)の処置のために治療用二重特異性抗体(たとえば、抗CD20/抗CD3の二重特異性抗体)を投与する効果的な方法の開発についての分野において未だ対処されていない必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、抗表面抗原分類20(CD20)/抗表面抗原分類3(CD3)の二重特異性抗体を使用して、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を処置する方法に関する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを含む投与計画に、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を処置する方法を特徴とする。その中で、(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、C1D1及びC1D2は、C1D3よりそれぞれ多くなく、(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1は、C1D3以上であり、C1D1、C1D2、及びC1D3は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量より約50%多い累積投与量を有し、最も高く清澄化された投与量は、約0.2mgから約30mgの間にある。いくつかの実施形態において、C1D3は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量に等しい。いくつかの実施形態において、C1D2及びC1D1は、等しい。いくつかの実施形態において、C1D2は、約50%から約250%までC1D1より多い。いくつかの実施形態において、C1D3は、約150%から約300%までC1D2より多い。
【0008】
別の態様において、本発明は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画においてCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体に投与することを備える、B細胞増殖性疾患を有する被検体を処置する方法を特徴とする。そこで(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、C1D1及びC1D2は、C1D3よりそれぞれ多くなく、C1D1は、約0.0056mgから約12.50mgの間にあり、C1D2は、約0.0125mgから約20.00mgの間にあり、C1D3は、約0.0500mgから約50.00mgの間にあり、(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体の単回投与量を有し、C2D1は、C1D3以上であり、約0.0500mgから約50.00mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.02mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約0.05mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約0.2mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約0.2mgから約50.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約3.0mgから約50.0mgの間にあり(たとえば、C1D3は、約6.0mgであり)、(b)C2D1は、約3.0mgから約50.0mgの間にある(たとえば、C2D1は、約6.0mgである)。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約3.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、C1D3に等しい。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgであり、(b)C2D1は、C1D3に等しい。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.02mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約0.05mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約0.2mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約6.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約6.0mgの間にある。
【0009】
いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約4.2mgであり、(b)C2D1は、約4.2mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約1.0mgであり、C1D3は、約3.0mgであり、(b)C2D1は、約3.0mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgであり、(b)C2D1は、約6.0mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgであり、(b)C2D1は、約6.0mgである。上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、第一投与サイクルの長さは、21日である。いくつかの実施形態において、方法は、被検体へC1D1、C1D2、及びC1D3を第一投与サイクルの、それぞれ1日目、8日目、及び15日目に、または約1日目、約8日目、及び約15日目に投与することを備える。
【0010】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、第二投与サイクルの長さは、21日である。いくつかの実施形態において、方法は、被検体へC2D1を第二投与サイクルの1日目に投与することを備える。
【0011】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、投与計画は、1回以上の追加の投与サイクルを含む。いくつかの実施形態において、投与計画は、1から14回の追加の投与サイクルを含む。いくつかの実施形態において、投与計画は、1から6回の追加の投与サイクルを含む。いくつかの実施形態において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれの長さは、7日、14日、21日、または28日である。いくつかの実施形態において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれの長さは、21日である。いくつかの実施形態において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれは、二重特異性抗体の単回投与量を含む。いくつかの実施形態において、方法は、被検体へ1回以上の追加の投与サイクルの単回投与量を1回以上の追加の投与サイクルの1日目に投与することを備える。
【0012】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、以下の6箇所の超可変領域(HVR)を含む第一結合領域を有する抗CD20アームを含む。これらの6箇所の超可変領域(HVR)は、(a)アミノ酸配列のGYTFTSYNMH(配列番号1)を含むHVR-H1、(b)アミノ酸配列のAIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のVVYYSNSYWYFDV(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のRASSSVSYMH(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のAPSNLAS(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のQQWSFNPPT(配列番号6)を含むHVR-L3、を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、(a)アミノ酸配列の配列番号7に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)アミノ酸配列の配列番号8に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第一結合ドメインを有する抗CD20アームを備える。いくつかの実施形態において、第一結合ドメインは、アミノ酸配列の配列番号7を含むVHドメイン、及びアミノ酸配列の配列番号8を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、以下の6箇所のHVRを含む第二結合ドメインを有する抗CD3アームを含み、これら6箇所のHVRは、(a)アミノ酸配列のNYYIH(配列番号9)を含むHVR-H1、(b)アミノ酸配列のWIYPGDGNTKYNEKFKG(配列番号10)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のDSYSNYYFDY(配列番号11)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のKSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のWASTRES(配列番号13)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のTQSFILRT(配列番号14)を含むHVR-L3、を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、(a)アミノ酸配列の配列番号15に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)アミノ酸配列の配列番号16に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第二結合ドメインを備える抗CD3アームを含む。いくつかの実施形態において、第二結合ドメインは、アミノ酸配列の配列番号15を含むVHドメイン、及びアミノ酸配列の配列番号16を含むVLドメインを含む。
【0013】
上記の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、アグリコシル化部位変異を含む。いくつかの実施形態において、アグリコシル化部位変異は、二重特異性抗体のエフェクター機能を低下させる。いくつかの実施形態において、アグリコシル化部位変異は、置換変異である。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、エフェクター機能を低下させるFc領域における置換変異を含む。いくつかの実施形態において、置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/またはD265(EU番号付け)におけるものである。いくつかの実施形態において、置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235A、D265A、及びP329Gからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、置換変異は、アミノ酸残基N297におけるものである。いくつかの実施形態において、置換変異は、N297Aである。
【0014】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、モノクローナル抗体である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、ヒト化抗体である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、キメラ抗体である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、CD20及びCD3を結合する抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、抗体全長である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態において、IgG抗体は、IgG1抗体である。
【0015】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、1箇所以上の重鎖定常ドメインを含み、これらの1箇所以上の重鎖定常ドメインは、第一CH1(CH11)ドメイン、第一CH2(CH21)ドメイン、第一CH3(CH31)ドメイン、第二CH1(CH12)ドメイン、第二CH2(CH22)ドメイン、及び第二CH3(CH32)ドメインから選択される。いくつかの実施形態において、1箇所以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1箇所は、別の重鎖定常ドメインと対合される。いくつかの実施形態において、CH31及びCH32ドメインは、突起または空洞を各含み、CH31ドメイン内の突起または空洞は、それぞれ、CH32ドメイン内の空洞または突起中に配置可能である。いくつかの実施形態において、CH31及びCH32ドメインは、突起と空洞との間の境界面において会合する。いくつかの実施形態において、CH21及びCH22ドメインは、突起または空洞を各含み、CH21ドメイン内の突起または空洞は、それぞれ、CH22ドメイン内の空洞または突起中に配置可能である。いくつかの実施形態において、CH21及びCH22ドメインは、突起と空洞との間の境界面において会合する。
【0016】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、被検体へ単剤治療として投与される。
【0017】
上記の態様のいずれかの他の実施形態において、二重特異性抗体は、被検体へ併用療法として投与される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、被検体へ追加の治療剤(たとえば、アテゾリズマブ)と同時に投与される。他の実施形態において、二重特異性抗体は、追加の治療剤(たとえば、アテゾリズマブ)の投与前に、被検体へ投与される。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、アテゾリズマブである。いくつかの実施形態において、この方法は、二重特異性抗体のC2D1と同時にアテゾリズマブの第一投与量を第二投与サイクルの1日目に被検体へ投与することをさらに備える。いくつかの実施形態において、この方法は、アテゾリズマブを1回以上の追加の投与サイクルの二重特異性抗体の単回投与量と同時に1回以上の追加の投与サイクルの1日目に被検体へ投与することをさらに備える。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、被検体へ二重特異性抗体と同時にのみ投与される。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブの各投与量は、約1200mgである。
【0018】
さらに他の実施形態において、二重特異性抗体は、追加の治療剤(たとえば、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))またはトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の投与後に、被検体へ投与される。
【0019】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、B細胞増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)または慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態において、NHLは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態において、DLBCLは、再発性または難治性DLBCLである。いくつかの実施形態において、NHLは、濾胞性リンパ腫(FL)である。いくつかの実施形態において、NHLは、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PMLBCL)である。
【0020】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、投与は、静脈内注入によるものである。
【0021】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、投与は、皮下投与である。
【0022】
上記の態様のいずれか1つのいくつかの実施形態において、被検体は、サイトカイン放出症候群(CRS)事象を経験し、方法は、この被検体へインターロイキン6受容体(IL-6R)拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の有効量を投与し、CRS事象を管理することをさらに備える。
【0023】
いくつかの実施形態において、トシリズマブは、被検体へ約8mg/kgの単回投与量として静脈内に投与される。
【0024】
他の実施形態において、CRS事象は、このCRS事象の症状を処置してから24時間以内に回復しない、または悪化しないため、この方法は、被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ)の1回以上の追加の投与量を投与し、CRS事象を管理することをさらに備える。いくつかの実施形態において、CRS事象は、CRS事象の症状を処置してから24時間以内に回復しない、または悪化しないため、方法は、被検体へトシリズマブの1回以上の追加の投与量を投与し、CRS事象を管理することをさらに備える。いくつかの実施形態において、トシリズマブの1回以上の追加の投与量は、被検体へ約8mg/kgの1回投与量で静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、方法は、被検体へ有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに備える。いくつかの実施形態において、コルチコステロイドは、被検体へ静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである。いくつかの実施形態において、メチルプレドニゾロンは、1日あたり約2mg/kgの1回投与量で投与される。他の実施形態において、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。いくつかの実施形態において、デキサメタゾンは、約10mgの1回投与量で投与される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0026】
本明細書の目的での「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、あるいはアミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列において同一である。
【0027】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定されることができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0028】
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0029】
「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」という用語は、抗体がCD3を標的とする際に診断剤及び/または治療剤として有用であるように、CD3に十分な親和性で結合可能である抗体を指す。一実施形態では、無関係の非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定されるとき、CD3への抗体への結合の約10%未満である。ある一定の実施形態において、CD3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8Mから10-13M、たとえば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗CD3抗体は、異なる種由来のCD3間で保存されるCD3のエピトープに結合する。
【0030】
「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」という用語は、抗体がCD20を標的とする際に診断剤及び/または治療剤として有用であるように、CD20に十分な親和性で結合可能である抗体を指す。一実施形態では、無関係の非CD20タンパク質への抗CD20抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定されるとき、CD20への抗体への結合の約10%未満である。ある一定の実施形態において、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8Mから10-13M、たとえば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗CD20抗体は、異なる種由来のCD20間で保存されるCD20のエピトープに結合する。
【0031】
用語「抗CD20抗体/抗CD3抗体」及び「CD20及びCD3に結合する抗体」、またはその変異体は、抗体がCD20及び/またはCD3を標的とする際に診断剤及び/または治療剤として有用であるように、十分な親和性によってCD20及びCD3に結合することが可能である多特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)を指す。1つの実施形態において、無関係の非CD3タンパク質及び/または非CD20タンパク質への、抗CD20/抗CD3抗体の結合の程度は、たとえば、放射免疫測定法(RIA)などによって測定されるとき、CD3及び/またはCD20への抗体の結合の約10%未満である。ある一定の実施形態において、CD20及びCD3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8Mから10-13M、たとえば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある一定の実施形態において、抗CD20/抗CD3抗体は、異なる種由来のCD3間で保存されるCD3のエピトープ、及び/または異なる種由来のCD20間で保存されるCD20のエピトープに結合する。
【0032】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0033】
「抗体フラグメント」は、無傷抗体が結合する抗原に結合する無傷抗体の一部分を含む、無傷抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2と、ダイアボディと、線状抗体と、単鎖抗体分子(たとえば、scFv)と、抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
「結合ドメイン」とは、標的エピトープ、抗原、リガンド、または受容体に特異的に結合する化合物または分子の一部を意味する。結合ドメインは、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体フラグメントまたはその部分(例えば、Fabフラグメント、Fab’2、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、ならびに抗体のVH及び/またはVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、及び特定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤(チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))など);アルキルスルホネート類(ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなど);アジリジン類(ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)など);エチレンイミン類及びメチルアメラミン類(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含む);アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;窒素マスタード(クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど);ニトロソ尿素(カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)など);抗生物質、たとえば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンωII(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい);CDP323、経口α4インテグリン阻害剤;ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注入(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標)、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝物(メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);コンブレタスタチン;葉酸類似体(デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセートなど);プリン類似体(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど);ピリミジン類似体(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど);アンドロゲン(カルステロン、ドロスタノロン(dromostanolone)プロピオン酸エステル、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど);抗副腎(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど);葉酸補充物質(replenisher)(フォリン酸(frolinic acid)など);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブチル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);マイタンシノイド(マイタンシン及びアンサミトシンなど);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド(たとえば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、アルブミン工学的に設計されたパクリタキセルナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhome-Poulene Rorer,Antony,France));クロランブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メソトレキセート;白金剤(シスプラチン、オキサリプラチン(たとえば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチンなど);ビンカス(vincas)(ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、マイクロチューブルをチューブリン重合が形成するのを妨げる);エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン(novantrone);エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイン酸など);ビスホスホネート(クロドロネート(たとえば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))など);トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド類(特に、たとえば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGF-R)などの異常な細胞増殖と関連付けられるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの(たとえば、エルロチニブ(Tarceva(商標))));ならびにVEGF-A(細胞増殖を減少させる);ワクチン類(THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、たとえば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチンなど);トポイソメラーゼ1阻害剤(たとえば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(たとえば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(たとえば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(たとえば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;Bcl-2阻害剤(オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))など);ピクサントロン;EGFR阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;セリン-スレオニンキナーゼ阻害剤(ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))など);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(ロナファーニブ(SCH6636、SARASAR(商標))など);ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸または誘導体;ならびにCHOP、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法についての略称などの上記の2つ以上の組み合わせ;ならびにFOLFOX、5-FU及びロイコボリンと併用されるオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))による治療計画についての略称、及び上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組み合わせ、などが含まれる。
【0036】
本明細書で定義される化学治療剤は、がんの成長を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療薬」を含む。それらは、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON.cndot.トレミフェンを含む;副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール等;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的には、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、及びH-Ras等;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;ワクチン、例えば、遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照されたい)、ならびに上述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上述のうちの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない、ホルモン自体であることができる。
【0037】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、一方で重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0038】
「表面抗原分類3」または「CD3」という用語は、本明細書で使用されるとき、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3α、及びCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD3(例えば、プロセシングされていない、若しくは修飾されていないCD3εまたはCD3γ)、ならびに細胞内のプロセシングから得られるCD3の任意の形態を包含する。この用語は、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を含む、CD3の自然発生変異型も包含する。CD3は、例えば、207のアミノ酸長であるヒトCD3εタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000724)、及び182のアミノ酸長であるヒトCD3γタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000064)を含む。
【0039】
本明細書で使用される「表面抗原分類20」または「CD20」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD20を指す。用語は、「全長」の非プロセシングCD20、及び細胞内でのプロセシングから得られるCD20の任意の形態を包含する。この用語は、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を含む、CD20の自然発生変異型も包含する。CD20は、たとえば、ヒトCD20タンパク質(たとえば、NCBI参照配列番号NP_068769.2及びNP_690605.1、参照)を含み、これは、たとえば、297アミノ酸長であり、たとえば、5’UTRの一部を欠く変異型mRNA転写物(たとえば、NCBI参照配列番号NM_021950.3、参照)、またはより長い変異型mRNA転写物(たとえば、NCBI参照配列番号NM_152866.2、参照)から産生されることができる。
【0040】
抗体の「クラス」は、その重鎖が所有する定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。5つの主要なクラスの抗体、つまり、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類され得る。免役グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0041】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性剤」という用語は、細胞機能を阻害若しくは防止する、及び/または細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤若しくは化学療法薬(たとえば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤);増殖抑制剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらのフラグメント;抗生物質;細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらのフラグメント及び/または変異形を含む)などの毒素;ならびに下に開示される種々の抗腫瘍または抗がん薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
「障害」は、哺乳動物を問題の疾患に罹患しやすくする病態を含む慢性及び急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、処置から利益を受け得る任意の状態である。
【0044】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。他の実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0045】
「B細胞増殖性疾患」または「B細胞悪性腫瘍」という用語は、ある程度異常なB細胞増殖性に関連し、たとえば、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び骨髄異形成症候群を含む疾患を指す。1つの実施形態において、B細胞増殖性疾患は、たとえば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)(たとえば、再発性または難治性DLBCL)などを含む、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのリンパ腫である。他の実施形態において、B細胞増殖性疾患は、慢性リンパ性白血病(CLL)などの、白血病である。
【0046】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的に未制御の細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的病態を指すか、または説明する。がんの例は、ホジキンリンパ腫を除外するが、再発性または難治性DLBCLであることができる、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)などの非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む、成熟B細胞癌などの、血液癌を含むが、これらに限定されない。またがんの他の特異的な例は、胚中心B細胞様 (GCB)びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、活性型B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞性前リンパ球性白血病、脾辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾リンパ腫/白血病、分類不可能な、びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性CNS DLBCL、原発性皮膚DLBCL、下肢型、高齢者のEBV陽性DLBCL、慢性炎症関連DLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PMLBCL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に起因する大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫:DLBCLとバーキットリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫、及びDLBCLと古典的ホジキンリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫、を含む。さらに、がんの例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはB細胞リンパ腫を含むリンパ性悪性腫瘍を含むが、これらに限定されない。これらのようながんのさらに特定の例は、多発性骨髄腫(MM);低グレード/濾胞性NHL;小リンパ球性(SL)NHL;中間グレード/濾胞性NHL;中間グレードびまん性NHL;高グレード免疫芽球性NHL;高グレードリンパ性NHL;高グレード小型非分割細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;AIDS関連リンパ腫;及び急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、及び「腫瘍」は、本明細書で言及されるように、相互排他的ではない。
【0048】
本明細書で使用される「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示される抗原として理解され得る。これらの抗原は、分子の膜貫通及び細胞質部分と結合していることが多い細胞外部分とともに細胞表面に提示されることがある。これらの抗原は、腫瘍細胞によりのみ提示され、通常細胞によっては決して提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上にのみ発現されるか、または通常細胞と比較して腫瘍特異的な変異を表すことがある。この場合、それらは腫瘍特異的抗原と称される。腫瘍細胞及び通常細胞により提示される腫瘍抗原がより一般的であり、それらは腫瘍関連抗原と称される。これらの腫瘍関連抗原は、通常細胞と比較して過剰発現される場合がある、または通常組織と比較して腫瘍組織の構造が小さくないことから腫瘍細胞中で結合する抗体にアクセス可能である。1つの態様において、腫瘍抗原は、CD20である。
【0049】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因しうる生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、以下が挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0050】
「有効量」の化合物、例えば、抗CD20/抗CD3抗体またはその組成物(例えば、薬学的組成物)は、特定の疾患(たとえば、がん、たとえば、B細胞増殖性疾患、たとえば、NHL、たとえば、DLBCL)の測定可能な改善または予防のような所望の治療的または予防的結果の達成に必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な効果が治療の任意の毒性効果または有害効果を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除若しくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的に関しては、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬の投与に関連して考慮される場合があり、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せると望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられるとみなされ得る。
【0051】
本明細書の「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。本用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在することもあれば、しないこともある。本明細書において別段明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0052】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で出現する。
【0053】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために本明細書で同義に使用される。
【0054】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当技術分野で既知の種々の技術を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991).Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体についても、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0055】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3.にあるようなサブグループである。一実施形態において、VLについて、サブグループは、Kabat et al.,(上記参照)におけるサブグループカッパIである。一実施形態において、VHについて、サブグループは、Kabat et al.,(上記参照)におけるサブグループIIIである。
【0056】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0057】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、及び/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。本明細書における例示的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触体(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/または(c)の組み合わせ、を含む。
【0058】
別途示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.,(上記参照)に従って本明細書において番号付けされる。
【0059】
「免疫コンジュゲート」は、細胞毒性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0060】
「対象」または「個体」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象または個体は、ヒトである。
【0061】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって決定される、95%または99%を超える純度に精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0062】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一である、及び/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能なバリアント抗体を除いて、そのようなバリアントは一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、様々な技法により作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0063】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、薬学的製剤中に存在し得る。
【0064】
「天然抗体」は、異なる構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0065】
「添付文書」という用語は、そのような治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然タンパク質を指す。用語は、「全長」の非プロセシングタンパク質、及び細胞内でのプロセシングから得られるタンパク質の任意の形態を包含する。用語は、タンパク質の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。
【0067】
基準ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一であるパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当業者が備えている技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.,20559にユーザ文書と共に提出され、ここで、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合はコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0068】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下、
100×分数X/Y
のように計算され、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへのアミノ酸配列同一性%は、BのAへのアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解されるだろう。別段具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0069】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、かつ製剤が投与され得る対象に許容できない毒性を有する追加の成分を含有しない、調製物を指す。
【0070】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中に行われ得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
【0072】
本明細書で使用されるとき、障害または疾患の「進行を遅延させること」とは、疾患または障害(例えば、B細胞増殖性疾患、例えば、NHL、例えば、DLBCL)の発達を延期する、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化させる、及び/または延滞させることを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分な、または著しい遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含し得る。例えば、転移の発症などの末期がんを遅延させることができる。
【0073】
「低減する」または「阻害する」とは、例えば、20%以上の、50%以上の、または75%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上の全体的な減少を生じる能力を意味する。ある一定の実施形態において、低減または阻害は、非分画投与計画を使用する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による治療と比較して本発明の分画用量漸増投与計画を使用する、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による治療後の、サイトカイン駆動毒性(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS))、輸液関連反応(IRR)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、神経毒性、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、好中球減少症、血小板減少症、肝酵素上昇、及び/または中枢神経系(CNS)毒性などの望ましくない事象の低減または阻害を指す。他の実施形態では、低減するまたは阻害するとは、抗体Fc領域によって媒介される抗体のエフェクター機能を指すことができ、かかるエフェクター機能は、具体的に補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。
【0074】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は一般に、類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、VHドメインまたはVLドメインを使用して抗原に結合する抗体から単離されて、それぞれ相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0075】
「PD-1軸結合拮抗薬」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を復元または増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合拮抗薬には、PD-1結合拮抗薬、PD-L1結合拮抗薬、及びPD-L2結合拮抗薬が含まれる。
【0076】
「PD-1結合拮抗薬」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体である。特定の実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、本明細書に記載のMDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、本明細書に記載されるMK-3475(ランブロリズマブ)である。別の特定の実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、本明細書に記載のCT-011(ピディリズマブ)である。別の特定の実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、本明細書に記載のAMP-224である。
【0077】
「PD-L1結合拮抗薬」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-L1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-L1抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、MPDL3280Aとしても知られており、本明細書に記載される、アテゾリズマブ(CAS登録番号:1422185-06-5)である。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。さらに別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のMEDI4736である。
【0078】
「PD-L2結合拮抗薬」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様において、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2拮抗薬は、抗PD-L2抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介してTリンパ球媒介シグナル伝達で発現された細胞表面タンパク質によって、またはそれを介して媒介される、負の共刺激性シグナルを低減させる。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、イムノアドヘシンである。
【0079】
本明細書において使用される場合、1「週間」は、7日±2日である。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「投与する」とは、ある投薬量の化合物(例えば、本発明の抗CD20/抗CD3抗体)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、抗CD20/抗CD3抗体を含む薬学的組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に用いられる化合物及び/または組成物は、例えば、静脈内(たとえば、静脈内注入による)、皮下、筋肉内、皮内、経皮的、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、腹膜内、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、経口、局所的(topically)、局所的(locally)、吸入、注射、注入、持続注入、標的細胞に直接的に流す局所灌流、カテーテル、洗浄、クリーム、または脂質組成物で投与することができる。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。
【0081】
II.治療方法
本発明は、抗表面抗原分類20(CD20)/抗表面抗原分類3(CD3)の二重特異性抗体による分画用量漸増投与計画を使用して、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を治療する方法に部分的に基づく。方法は、サイトカイン駆動毒性(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS))、輸液関連反応(IRR)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、神経毒性、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、好中球減少症、血小板減少症、肝酵素上昇、及び/または中枢神経系(CNS)毒性を含む、望まれない治療効果を低下させる、または阻害すると予想される。したがって、これらの方法は、より好ましいベネフィット-リスクプロファイルを達成しながら被検体を処置するために有用である。
【0082】
本発明は、分画用量漸増投与計画におけるCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体(すなわち、抗CD20/抗CD3抗体)を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患、たとえば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、たとえば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)(たとえば、再発性または難治性DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、または縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PMLBCL))を有する被検体を治療するために有用な方法を提供する。
【0083】
本発明は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画における、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を治療する方法を提供する。その中で、(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、C1D1及びC1D2は、C1D3よりそれぞれ多くなく、(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1は、C1D3以上であり、C1D1、C1D2、及びC1D3は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量(すなわち、患者に許容不可能な毒性を誘導しない投与量)より約50%多い累積投与量を有し、最も高く清澄化された投与量は、約0.05mgから約30mgの間(たとえば、約0.05mgから約25mgの間、たとえば、約0.05mgから約20mgの間、たとえば、約0.05mgから約15mgの間、たとえば、約0.05mgから約13mgの間、たとえば、約0.1mgから約13mgの間、たとえば、約0.2mgから約13mgの間、たとえば、約0.2mgから約10mgの間、たとえば、約0.2mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.4mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.4mgから約6mgの間、たとえば、約0.4mgから約5mgの間、たとえば、約0.8mgから約5mgの間、たとえば、約1mgから約5mgの間、たとえば、約2.8mg)にある。いくつかの実施形態において、C1D3は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量に等しい。いくつかの実施形態において、C1D2及びC1D1は、等しい。いくつかの実施形態において、C1D2は、約50%から約250%までC1D1より多い(たとえば、C1D2は、約50%から約225%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約200%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約175%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約150%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約125%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約100%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約75%までC1D1より多い)。いくつかの実施形態において、C1D3は、約150%から約300%までC1D2より多い(たとえば、C1D3は、約150%から約275%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約250%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約233%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約225%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約200%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約180%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約175%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約167%までC1D2より多い、たとえば、C1D3は、約150%から約157%までC1D2より多い)。
【0084】
また本発明は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを含む投与計画における、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を治療する方法を提供する。その中で、(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、C1D1及びC1D2は、C1D3よりそれぞれ多くなく、C1D1は、約0.0056mgから約12.50mgの間(たとえば、約0.0075mgから約12.50mgの間、たとえば、約0.0075mgから約12mgの間、たとえば、約0.0075mgから約10mgの間、たとえば、約0.0075mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約7mgの間、たとえば、約0.010mgから約6mgの間、たとえば、約0.010mgから約5mgの間、たとえば、約0.010mgから約4mgの間、たとえば、約0.010mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.015mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.2mgの間、たとえば、約0.8mgから約1mgの間)にあり、C1D2は、約0.0125mgから約20.00mgの間(たとえば、約0.0125mgから約17.5mgの間、たとえば、約0.0125mgから約15mgの間、たとえば、約0.020mgから約15mgの間、たとえば、約0.025mgから約15mgの間、たとえば、約0.030mgから約15mgの間、たとえば、約0.035mgから約15mgの間、たとえば、約0.040mgから約15mgの間、たとえば、約0.045mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約12.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約10mgの間、たとえば、約0.050mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約5mgの間、たとえば、約1mgまたは約2mg)にあり、C1D3は、約0.0500mgから約50mgの間(たとえば、約0.055mgから約50mgの間、たとえば、約0.10mgから約50mgの間、たとえば、約1.0mgから約50mgの間、たとえば、約2mgから約10mgの間、たとえば、約3.0mgから約6.0mgの間、たとえば、約3.0mg、4.2mg、または6mg)にあり、(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1は、C1D3以上であり、約0.0500mgから約50mgの間(たとえば、約0.0500mgから約50mg(たとえば、約0.055mgから約50mgの間、たとえば、約0.10mgから約50mgの間、たとえば、約1.0mgから約50mgの間、たとえば、約1.0mgから約35mgの間、たとえば、約2mgから約10mgの間、たとえば、約3.0mgから約6.0mgの間、たとえば、約3.0mg、4.2mg、または6mg)にある。いくつかの例において、たとえば、(a)C1D1は、約0.02mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約0.05mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約0.2mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの例において、(a)C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの例において、(a)C1D1は、約1.0mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約2.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約6.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約6.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの例において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約6.0mgから約50.0mgの間にある。いくつかの例において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgから約50.0mgの間にあり、(b)C2D1は、C1D3に等しい。いくつかの例において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約20.0mgであり、(b)C2D1は、C1D3に等しい。いくつかの例において、たとえば、(a)C1D1は、約0.02mgから4.0mgの間にあり、C1D2は、約0.05mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約0.2mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約0.2mgから約20.0mgの間にある。いくつかの例において、(a)C1D1は、約0.4mgから約4.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約20.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgの間にあり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgの間にある。他の例において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約20.0mgであり、(b)C2D1は、約3.0mgから約20.0mgである。他の例において、(a)C1D1は、約0.8mgから約3.0mgの間にあり、C1D2は、約1.0mgから約6.0mgの間にあり、C1D3は、約3.0mgから約6.0mgであり、(b)C2D1は、約3.0mgから約6.0mgである。
【0085】
いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約4.2mgであり、(b)C2D1は、約4.2mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約1.0mgであり、C1D3は、約3.0mgであり、(b)C2D1は、約3.0mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約1.0mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgであり、(b)C2D1は、約6.0mgである。いくつかの実施形態において、(a)C1D1は、約0.8mgであり、C1D2は、約2.0mgであり、C1D3は、約6.0mgであり、(b)C2D1は、約6.0mgである。また本発明は、第一投与サイクル、及び任意選択で第二投与サイクルを有する投与計画における、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を処置する方法を提供する。その中で、(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)及び第二投与量(C1D2)を有し、C1D1は、C1D2投与量より多くなく、任意選択で(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1は、C1D2以上であり、C1D1及びC1D2は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量より約50%多い累積投与量を有し、最も高く清澄化された投与量は、約0.05mgから約30mgの間(たとえば、約0.05mgから約25mgの間、たとえば、約0.05mgから約20mgの間、たとえば、約0.05mgから約15mgの間、たとえば、約0.05mgから約13mgの間、たとえば、約0.1mgから約13mgの間、たとえば、約0.2mgから約13mgの間、たとえば、約0.2mgから約10mgの間、たとえば、約0.2mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.4mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.4mgから約6mgの間、たとえば、約0.4mgから約5mgの間、たとえば、約0.8mgから約5mgの間、たとえば、約1mgから約5mgの間、たとえば、約2.8mg)にある。いくつかの実施形態において、C1D2は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の最も高く清澄化された投与量に等しい。いくつかの例において、C1D2は、約50%から約250%までC1D1より多い(たとえば、C1D2は、約50%から約225%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約200%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約175%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約150%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約125%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約100%までC1D1より多い、たとえば、C1D2は、約50%から約75%までC1D1より多い)。
【0086】
いくつかの例において、C1D1は、約0.0056mgから約12.50mgの間(たとえば、約0.0075mgから約12.50mgの間、たとえば、約0.0075mgから約12mgの間、たとえば、約0.0075mgから約10mgの間、たとえば、約0.0075mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約7mgの間、たとえば、約0.010mgから約6mgの間、たとえば、約0.010mgから約5mgの間、たとえば、約0.010mgから約4mgの間、たとえば、約0.010mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.015mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.2mgの間、たとえば、約0.8mgまたは約1mg)にある。いくつかの例において、C1D2は、約0.0125mgから約19.44mgの間(たとえば、約0.0125mgから約17.5mgの間、たとえば、約0.0125mgから約15mgの間、たとえば、約0.020mgから約15mgの間、たとえば、約0.025mgから約15mgの間、たとえば、約0.030mgから約15mgの間、たとえば、約0.035mgから約15mgの間、たとえば、約0.040mgから約15mgの間、たとえば、約0.045mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約12.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約10mgの間、たとえば、約0.050mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約5mgの間)にある。いくつかの例において、C1D2は、約0.0500mgから約50mgの間(たとえば、約0.055mgから約50mgの間、たとえば、約0.055mgから約45mgの間、たとえば、約0.055mgから約40mgの間、たとえば、約0.055mgから約35mgの間、たとえば、約0.055mgから約30mgの間、たとえば、約0.10mgから約30mgの間、たとえば、約0.15mgから約30mgの間、たとえば、約0.15mgから約25mgの間、たとえば、約0.15mgから約20mgの間、たとえば、約0.15mgから約17.5mgの間、たとえば、約0.15mgから約15mgの間、たとえば、約0.20mgから約15mgの間、たとえば、約0.20mgから約12.8mgの間、たとえば、約0.20mgから約12.5mgの間)にある。
【0087】
いくつかの例において、C1D1は、約0.0056mgから約12.50mgの間(たとえば、約0.0075mgから約12.50mgの間、たとえば、約0.0075mgから約12mgの間、たとえば、約0.0075mgから約10mgの間、たとえば、約0.0075mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約7mgの間、たとえば、約0.010mgから約6mgの間、たとえば、約0.010mgから約5mgの間、たとえば、約0.010mgから約4mgの間、たとえば、約0.010mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.015mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.2mgの間、たとえば、約1.6mg)にあり、C1D2は、約0.0125mgから約19.44mgの間(たとえば、約0.0125mgから約17.5mgの間、たとえば、約0.0125mgから約15mgの間、たとえば、約0.020mgから約15mgの間、たとえば、約0.025mgから約15mgの間、たとえば、約0.030mgから約15mgの間、たとえば、約0.035mgから約15mgの間、たとえば、約0.040mgから約15mgの間、たとえば、約0.045mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約15mgの間、たとえば、約0.050mgから約12.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約10mgの間、たとえば、約0.050mgから約7.5mgの間、たとえば、約0.050mgから約5mgの間)にある。いくつかの例では、C1D1は、約0.0056mgから約12.50mgの間(たとえば、約0.0075mgから約12.50mgの間、たとえば、約0.0075mgから約12mgの間、たとえば、約0.0075mgから約10mgの間、たとえば、約0.0075mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約8mgの間、たとえば、約0.010mgから約7mgの間、たとえば、約0.010mgから約6mgの間、たとえば、約0.010mgから約5mgの間、たとえば、約0.010mgから約4mgの間、たとえば、約0.010mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.015mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.5mgの間、たとえば、約0.020mgから約3.2mgの間、たとえば、約1.6mg)にあり、C1D2は、約0.0500mgから約50mgの間(たとえば、約0.055mgから約50mgの間、たとえば、約0.055mgから約45mgの間、たとえば、約0.055mgから約40mgの間、たとえば、約0.055mgから約35mgの間、たとえば、約0.055mgから約30mgの間、たとえば、約0.10mgから約30mgの間、たとえば、約0.15mgから約30mgの間、たとえば、約0.15mgから約25mgの間、たとえば、約0.15mgから約20mgの間、たとえば、約0.15mgから約17.5mgの間、たとえば、約0.15mgから約15mgの間、たとえば、約0.20mgから約15mgの間、たとえば、約0.20mgから約12.8mgの間、たとえば、約0.20mgから約12.5mgの間)にある。上記の例のいずれかにおいて、投与計画は、第一投与サイクル、及び任意選択で第二投与サイクルを備えることができる。そこで(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体のC1D1及びC1D2からなり、任意選択で(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体のC2D1を含む。上記の例のいずれかにおいて、投与計画は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有することができる。そこで(a)第一投与サイクルは、二重特異性抗体のC1D1及びC1D2からなり、(b)第二投与サイクルは、二重特異性抗体のC2D1からなる。
【0088】
いくつかの例において、上述されるこれらの方法は、3週間または21日の第一投与サイクルを有することができる。いくつかの例において、方法は、被検体へC1D1、C1D2、及びC1D3を第一投与サイクルの、それぞれ1日目、8日目、及び15日目に、または約1日目、約8日目、及び約15日目に投与することを備えることができる。
【0089】
いくつかの例において、上述されるこれらの方法は、3週間または21日の第二投与サイクルを有することができる。いくつかの例において、これら方法は、被検体へC2D1を第二投与サイクルの1日目に、またはほぼ1日目に投与することを備えることができる。
【0090】
いくつかの例において、上述されるこれらの方法は、1回以上の追加の投与サイクルを有することができる。いくつかの例において、投与計画は、1から14回の追加の投与サイクル(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14回の追加の投与サイクル(すなわち、投与計画は追加の投与サイクル(複数可)C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、及びC16のうちの1回以上を含む))を有する。いくつかの例において、投与計画は、1から6回の追加の投与サイクルを含む(すなわち、投与計画は追加の投与サイクル(複数可)C3、C4、C5、C6、C7、及びC8の1回以上を含む)。いくつかの実施形態において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれの長さは、7日、14日、21日、または28日である。いくつかの例において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれの長さは、3週間または21日である。いくつかの例において、1回以上の追加の投与サイクルのそれぞれは、二重特異性抗体の単回投与量を含む。いくつかの例において、方法は、被検体へ1回以上の追加の投与サイクルの単回投与量を、1回以上の追加の投与サイクルの1日目に、またはほぼ1日目に投与することを備える。
【0091】
いくつかの例において、二重特異性抗体は、被検体へ皮下に投与される。この実施形態において、二重特異性抗体は、約0.5mgから約40mgの間の投与量で投与される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、約1.0から約20mgの間、約1.0から約10mgの間、または約1.0から約5mgの間の投与量で投与される。1つの実施形態において、二重特異性抗体は、1.6mgの投与量内で投与される。その後の投与量は、最初の皮下投与量に等しい量内で投与される。
【0092】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、被検体へ単剤治療として投与される。
【0093】
他の例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、被検体へ併用療法で投与される。たとえば、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、1つ以上の追加の治療剤と同時に投与されることができる。1つの例において、治療剤は、CD20を標的にする別の抗体である。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、キメラモノクローナルCD20抗体リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))またはモノクローナルCD20抗体オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))から選択されるCD20を標的にする1つ以上の抗体と同時に投与される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブと同時に投与される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブと同時に投与される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ及びリツキシマブと同時に投与される。他の例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))と同時に投与される。
【0094】
いくつかの例において、上述されるこれらの方法は、CD20モノクローナル抗体の有り無しで、さらに化学療法剤及び/または抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体を投与することを備える。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロン(CHOP)から選択される1つ以上の追加の化学療法剤と同時に投与される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、ADCと同時に投与される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、CHOPと同時に投与され、ビンクリスチンは、ADCと置換される。いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(米国第8,088,378号及び/または米国第2014/0030280号のうちのいずれか1つに記載される抗CD79b-MC-vc-PAB-MMAE若しくは抗CD79b抗体薬物コンジュゲート、またはポラツズマブベドチンなどの)、抗CD19抗体薬物コンジュゲート、抗CD22抗体薬物コンジュゲート、抗CD45抗体薬物コンジュゲート、及び抗CD32薬物コンジュゲートから選択されるADCと同時に投与される。
【0095】
いくつかの例において、治療剤は、生物学的修飾物質である。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3Kデルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675,206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の養子移入(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与される。
【0096】
いくつかの例において、たとえば、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、PD-1軸結合拮抗薬を含む併用療法で被検体へ投与される。PD-1軸結合拮抗薬は、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体の前に、後に、及び/またはこれと同時に投与されることができる。PD-1軸結合拮抗薬は、いくつかの例において、PD-1結合拮抗薬、PD-L1結合拮抗薬、またはPD-L2結合拮抗薬であり得る。
【0097】
いくつかの例において、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体である。たとえば、いくつかの特定の例において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(CAS登録番号:1422185-06-5)である。アテゾリズマブ(Genentech)は、MPDL3280Aとしても知られている。
【0098】
アテゾリズマブは、(a)HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3の、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号33)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号34)及びRHWPGGFDY(配列番号35)の配列、ならびに(b)HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3の、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号36)、SASFLYS(配列番号37)及びQQYLYHPAT(配列番号38)の配列を含む。
【0099】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、(a)重鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号39)を含み、(b)軽鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号40)を含む。
【0100】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、(a)重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号41)を含み、(b)軽鎖は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号42)を含む。
【0101】
その結果、いくつかの例において、これらの方法は、CD20モノクローナル抗体の有り無しで、アテゾリズマブを含む、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体を投与することを備える。いくつかの例において、アテゾリズマブの投与量は、二重特異性抗体のC2D1と同時に第二投与サイクルの1日目に投与される。いくつかの例において、アテゾリズマブの第一投与量は、二重特異性抗体のC2D1と同時に第二投与サイクルの1日目に投与される(すなわち、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体のC2D1とのその同時投与前に、被検体は投与計画に照らしてアテゾリズマブを投与されない)。いくつかの例において、これらの方法は、アテゾリズマブを1回以上の追加の投与サイクルの二重特異性抗CD20/抗CD3抗体の単回投与量と同時に1回以上の追加の投与サイクルの1日目に被検体へ投与することをさらに備える。いくつかの例において、アテゾリズマブは、被検体へ二重特異性抗CD20/抗CD3抗体と同時にのみ投与される。上記の例のいずれかにおいて、アテゾリズマブの各投与量は、約1200mgであることができる。
【0102】
その結果、いくつかの例において、本発明は、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画においてCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を被検体へ投与することを備える、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体を治療する方法を提供し、(a)第一投与サイクルは二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を含み、C1D1及びC1D2はC1D3よりそれぞれ多くなく、C1D1は約0.02mgから約4.0mg(たとえば、約0.8mgまたは約1.0mg)の間にあり、C1D2は約0.05mgから約20.0mgの間(たとえば、約1mgまたは2mg)にあり、C1D3は約0.2mgから約50.0mgの間(たとえば、約2mgから約10mgの間、たとえば、約3.0mg、4.2mg、または6.0mg)にあり、(b)第二投与サイクルは二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、C2D1はほぼC1D3以上であり、約0.2mgから約50.0mgの間(たとえば、約2mgから約10mgの間、たとえば、約3.0mg、4.2mg、または6.0mg)にあり、投与計画の各投与サイクルの長さは21日であり、C1D1、C1D2、及びC1D3は第一投与サイクルの、それぞれ1日目、8日目、及び15日目に、または約1日目、約8日目、及び約15日目に投与され、二重特異性抗体のC2D1は第二投与サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブの第一投与量と同時に投与され、投与計画は任意選択で、各21日の長さの1から6回の追加の投与サイクルを含み、1から6回の追加の投与サイクルのそれぞれの1日目に、約1200mgのアテゾリズマブの単回投与量と当時に投与される、C2D1にほぼ等しい二重特異性抗体の単回投与量を各有する。アテゾリズマブは、投与計画において被検体へ二重特異性抗CD20/抗CD3抗体と同時にのみ投与されることができる。これらのような例において、この方法は、投与計画に照らして1つ以上の追加の治療剤の投与を有することができる。たとえば、特定の例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))、またはトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))と同時に投与されることが可能であり、患者は、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))またはトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))を最初に投与された後に、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体を別々に投与される(たとえば、患者はオビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))またはトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))により事前に治療される)。
【0103】
いくつかの例において、PD-1結合拮抗薬は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される抗PD-1抗体などの、別の抗PD-1抗体である。MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブとしても知られるMDX-1106は、国際公開第WO2006/121168号に記載される抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブまたはランブロリズマブとしても知られるMK-3475は、国際公開第WO2009/114335号に記載される抗PD-1抗体である。hBAT、hBAT-1、またはピディリズマブとしても知られるCT-011は、国際公開第WO2009/101611号に記載される抗PD-1抗体である。他の例において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されるPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。他の例において、PD-1結合拮抗薬は、AMP-224である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、国際公開第WO2010/027827号及び第WO2011/066342号に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0104】
他の例において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MDX-1105、及びMEDI4736(デュルバルマブ)、ならびにMSB0010718C(アベルマブ)から選択される。抗体YW243.55.S70は、国際公開第WO2010/077634号に記載される抗PD-L1である。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第WO2007/005874号に記載される抗PD-L1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、国際公開第WO2011/066389号及び米国公開第2013/034559号に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、及びその作製方法は、国際公開第WO2010/077634号、第WO2007/005874号、及び第WO2011/066389号に、また米国特許第8,217,149号、及び米国公開第2013/034559号にも記載されており、これらは参照により本明細書に援用される。
【0105】
他の例において、PD-L2結合拮抗薬は、抗PD-L2抗体(たとえば、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗PD-L2抗体)である。いくつかの例において、PD-L2結合拮抗薬は、イムノアドヘシンである。
【0106】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ、及び1つ以上の化学療法剤と同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ及びCHOPと同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ及びADCと同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ及びCHOPと同時に投与され、ビンクリスチンは、ADCと置換される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(米国第8,088,378号及び/または米国第2014/0030280号のうちのいずれか1つに記載される抗CD79b-MC-vc-PAB-MMAE若しくは抗CD79b抗体薬物コンジュゲート、またはポラツズマブベドチンなどの)、抗CD19抗体薬物コンジュゲート、抗CD22抗体薬物コンジュゲート、抗CD45抗体薬物コンジュゲート、及び抗CD32薬物コンジュゲートから選択されるADCと同時に投与される。
【0107】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ、及び1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与され、これらの1つ以上の生物学的修飾物質は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3K-デルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675、206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の養子移入(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される。
【0108】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ、1つ以上の化学療法剤、及び1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与され、これらの1つ以上の生物学的修飾物質は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3K-デルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675、206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の養子移入(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される。
【0109】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、リツキシマブ、ADC、及び1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与され、これらの1つ以上の生物学的修飾物質は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3K-デルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675、206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)の養子移入、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される。
【0110】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ、及び1つ以上の化学療法剤と同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ及びCHOPと同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ及びADCと同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ及びCHOPと同時に投与され、ビンクリスチンは、ADCと置換される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(米国第8,088,378号及び/または米国第2014/0030280号のうちのいずれか1つに記載される抗CD79b-MC-vc-PAB-MMAE若しくは抗CD79b抗体薬物コンジュゲート、またはポラツズマブベドチンなど)、抗CD19抗体薬物コンジュゲート、抗CD22抗体薬物コンジュゲート、抗CD45抗体薬物コンジュゲート、及び抗CD32薬物コンジュゲートから選択されるADCと同時に投与される。1つの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ及び1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与され、これらの1つ以上の生物学的修飾物質は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3K-デルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675、206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)の養子移入、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される。
【0111】
いくつかの例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ、ADC、及び1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与され、これらの1つ以上の生物学的修飾物質は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3K-デルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、PD-1軸結合拮抗薬、アゴニスト、たとえば、活性化する共刺激分子、たとえば、CD40、CD226、CD28、OX40(たとえば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(たとえば、CDX-1127)、HVEM、またはCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、たとえば、抑制共刺激分子、たとえば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(たとえば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(たとえば、TRX518)またはアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675、206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、たとえば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(たとえば、細胞傷害性T細胞若しくはCTL)の養子移入、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、たとえば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される。
【0112】
いくつかの例において、追加の療法は、アルキル化剤を含む。1つの例において、アルキル化剤は、4-[5-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-1-メチルベンゾイミダゾール-2-イル]ブタン酸及びその塩類である。1つの例において、アルキル化剤は、ベンダムスチンである。
【0113】
いくつかの例において、追加の療法は、BCL-2阻害剤を含む。1つの実施形態において、BCL-2阻害剤は、4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミド及びその塩類である。1つの例において、BCL-2阻害剤は、ベネトクラックス(CAS番号:1257044-40-8)である。
【0114】
いくつかの例において、追加の療法は、ホスホイノシタイド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤を含む。1つの例において、PI3K阻害剤は、デルタアイソフォームPI3K(すなわち、P110δ)を阻害する。いくつかの例において、PI3K阻害剤は、5-フルオロ-3-フェニル-2-[(1S)-1-(7H-プリン-6-イルアミノ)プロピル]-4(3H)-キナゾリノン及びその塩類である。いくつかの例において、PI3K阻害剤は、イデラリシブ(CAS番号:870281-82-6)である。1つの例において、PI3K阻害剤は、PI3Kのアルファ及びデルタアイソフォームを阻害する。いくつかの例において、PI3K阻害剤は、2-{3-[2-(1-イソプロピル-3-メチル-1H-1,2-4-トリアゾール-5-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル]-1H-ピラゾール-1-イル}-2-メチルプロパンアミド及びその塩類である。
【0115】
本発明のさらなる態様において、追加の療法は、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を含む。1つの例において、BTK阻害剤は、1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロップ-2-エン-1-オン及びその塩類である。1つの例において、BTK阻害剤は、イブルチニブ(CAS番号:936563-96-1)である。
【0116】
いくつかの例において、追加の療法は、サリドマイドまたはその誘導体を含む。1つの例において、サリドマイドまたはその誘導体は、(RS)-3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン及びその塩類である。1つの例において、サリドマイドまたはその誘導体は、レンダリドミド(lendalidomide)(CAS番号:191732-72-6)である。
【0117】
本明細書に記載される方法が上記の特定の併用療法などの併用療法を伴う場合には、併用療法は、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体の1つ以上の追加の治療剤との同時投与を含み、このような同時投与は、併用投与(2つ以上の治療剤は同一の製剤、または別々の製剤に含まれる)、または別々の投与であることができ、この事例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与は、追加の単一の治療剤または複数の治療剤の投与の前に、これらの投与と同時に、及び/またはこれらの投与の後に生じることが可能である。1つの実施形態において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与、及び追加の治療剤の投与、または放射線治療への曝露は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間若しくは3週間以内、または約1、2、3、4、5若しくは6日以内に生じることが可能である。特定の例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))と同時に投与されることが可能であり、患者は、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))を最初に投与された後、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体と別々に投与される(たとえば、患者はオビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))によって事前に治療される)。別の特定の例において、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体は、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))と同時に投与されることが可能であり、患者はトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))を最初に投与された後、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体と別々に投与される(たとえば、患者はトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))によって事前に治療される)。
【0118】
本明細書に記載される本発明のこれらの方法のうちのいずれかは、B細胞増殖性疾患/悪性腫瘍を含む血液癌などの、がんを治療するために有用であることができる。特に、B細胞増殖性疾患は、本明細書に記載されるこれらの方法に従い二重特異性抗CD20/抗CD3抗体による治療に受け入れられ、再発性または難治性であることができるびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)及び他のがんを含む非ホジキンリンパ腫(NHL)を含むが、これらに限定されず、これらの他のがんは、胚中心B細胞様(GCB)びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、活性型B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞性前リンパ球性白血病、脾辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾リンパ腫/白血病、分類不可能な、びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、原発性CNS DLBCL、原発性皮膚DLBCL、下肢型、高齢者のEBV陽性DLBCL、慢性炎症関連DLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PMLBCL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に起因する大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫:DLBCLとバーキットリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫、及びDLBCLと古典的ホジキンリンパ腫との間の中間型の特徴を有する、分類不可能なB細胞リンパ腫、を含む。B細胞増殖性疾患のさらなる例は、多発性骨髄腫(MM);低グレード/濾胞性NHL;小リンパ球性(SL)NHL;中間グレード/濾胞性NHL;中間グレードびまん性NHL;高グレード免疫芽球性NHL;高グレードリンパ性NHL;高グレード小型非分割細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;AIDS関連リンパ腫;及び急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を含むが、これらに限定されない。特定の例において、B細胞増殖性疾患は、NHL(たとえば、DLBCL(たとえば、再発性若しくは難治性のDLBCL)、PMLBCL、若しくはFL)またはCLLであることができる。
【0119】
本明細書に記載されるこれらの方法は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体により治療されているがん(たとえば、B細胞増殖性疾患、たとえば、NHL(たとえば、DLBCL(たとえば、再発性若しくは難治性DLBCL)、PMLBCL、若しくはFL)またはCLL)を有する患者のために改善されたベネフィット-リスクプロファイルをもたらすことができる。いくつかの例において、分画用量漸増投与計画に照らして抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を投与することをもたらす本明細書に記載される方法を使用する治療は、非分画投与計画を使用する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による治療と比較して本発明の分画用量漸増投与計画を使用する、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による治療後の、サイトカイン駆動毒性(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS))、輸液関連反応(IRR)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、神経毒性、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、好中球減少症、血小板減少症、肝酵素上昇、及び/または中枢神経系(CNS)毒性などの望ましくない事象の低下(20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上まで)、または完全阻害(100%低下)をもたらす。
【0120】
これらの方法は、非経口投与、肺内投与、及び鼻腔内投与、ならびに局所治療に望ましい場合、病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって抗CD20/抗CD3二重特異性抗体(及び/または任意の追加の治療剤)を投与することを備えることができる。非経口注入は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、及び腹腔内投与経路を含む。いくつかの実施形態において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、静脈内注入によって投与される。他の例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、皮下に投与される。いくつかの例において、静脈内注入によって投与される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、皮下注入によって投与される同一の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体よりも患者においてより低い毒性反応(すなわち、より不要な効果が少ない)を示す、または逆も同様である。
【0121】
本明細書に記載されるこれらの方法のすべてについて、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化され、投薬され、投与されるであろう。これに関連して考慮すべき要素には、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要素が含まれる。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、問題の疾患を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される必要はないが、任意選択で製剤化される。これらのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の量、疾患または治療の種類、及び上で考察される他の要因に依存する。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、一連の治療にわたって患者に適切に投与されることができる。
【0122】
上述される方法のいずれかの開始後に、被検体がサイトカイン放出症候群(CRS)の有害事象を有した場合、これらの方法は、CRS事象を治療するために追加の処置を含むことができる。
【0123】
米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0は、CRSについてグレーディングシステムを含み、その後Lee et al.(Blood.124(2):188-95,2014)によって改定され、刺激剤にもかかわらず、軽症、中等症、重症、または生命を脅かすCRSを定義した。この改定されたCRSグレーディングシステムは、以下の表1に示される。
【0124】
表1に示されるように、CRSは、うまく管理されない場合に有意な身体障害または死亡をもたらす可能性がある。現在の臨床的対応は、個々の徴候及び症状を治療すること、支持療法を提供すること、及び高い投与量のコルチコステロイドを使用して炎症反応を弱めることを試みることに焦点が置かれている。しかしながら、この手法は、特に遅い介入の事例において、必ずしも成功するとは限らない。二段階の分画用量漸増投与計画中に患者において観察されたCRSを、代替に管理することができる。
【0125】
CRSは、IFNγ、IL-6、及びTNF-αレベルにおける著しい上昇を有する、多様なサイトカイン類における上昇と関連する。現れた証拠は、特に、中心的なメディエータとしてCRSとIL-6を関連付ける。IL-6は、さまざまな細胞型により産生される炎症誘発性多機能サイトカインであり、このサイトカインは、T細胞活性化を有する、多種多様な生理学的なプロセスにかかわるように示されている。刺激剤にもかかわらず、CRSは、高レベルのIL-6と関連し(Nagorsen et al.Cytokine.25(1):31-5,2004;Lee et al.Blood.124(2):188-95,2014);Doesegger et al.Clin.Transl.Immunology.4(7):e39,2015)、IL-6は、CRSの重症度と相関し、患者は、CRSを経験しない、またはより軽症のCRS(グレード0-3)を経験する患者と比較してさらにより高レベルのIL-6を含む、グレード4または5のCRS事象を経験する(Chen et al.J.Immunol.Methods.434:1-8,2016)。したがって、IL-6媒介型シグナル伝達を阻害し、二段階分画用量漸増投与計画中に患者に観察されるCRSを管理する薬剤を使用してIL-6の炎症作用を遮断することは、ステロイド治療への代替であり、B細胞増殖性疾患の治療において、T細胞機能へ負に影響する、または抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療の有効性若しくは臨床的有用性を低下させると予想されない。
【0126】
トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))は、IL-6媒介型シグナル伝達を阻害する、可溶性膜結合型IL-6Rに対して作られる組換え、ヒト化、抗ヒトモノクローナル抗体である(たとえば、WO1992/019579参照、これはその全体が参照により本明細書に援用される)。
【0127】
被検体が二重特異性抗体の投与後にサイトカイン放出症候群(CRS)事象を有した場合に、方法は、この被検体へインターロイキン-6受容体(IL-6R)拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の有効量を投与し、この事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブは、被検体へ約8mg/kgの単回投与量として静脈内に投与される。他の抗IL-6R抗体は、トシリズマブの代替に、またはトシリズマブと併せて使用されることが可能であり、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、SA-237、及びその変異体を含む。
【0128】
被検体がIL-6R拮抗薬を投与してCRS事象の症状を処置してから24時間以内に回復しない、または悪化しないCRS事象を有する場合、この方法は、被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ)の1回以上の追加の投与量を投与し、CRS事象を管理することをさらに備えることができる。CRS事象がIL-6R拮抗薬の投与を通じて管理されない場合、被検体は、メチルプレドニゾロンまたはデキサメタゾンなどのコルチコステロイドを投与されることができる。
【0129】
CRS事象の管理をCRSの段階、及び併存疾患の存在に基づき合わせることができる。たとえば、二重特異性抗体の投与後に、被検体が併存疾患の非存在下で、または最小併存疾患の存在下で、グレード2のサイトカイン放出症候群(CRS)事象を有した場合、この方法は、二重特異性抗体による治療を保留しながらグレード2のCRS事象の症状を治療することをさらに備えることができる。連続した少なくとも3日間で、グレード2のCRS事象がグレード≦1のCRS事象へ回復する場合、この方法は、投与量を変えずに二重特異性抗体による治療を再開することをさらに備えることができる。一方、グレード2のCRS事象がグレード2のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復しない、またはグレード≧3のCRS事象に悪化しない場合、方法は、被検体へインターロイキン-6受容体(IL-6R)拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の有効量を投与し、グレード2、またはグレード≧3のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブは、被検体へ約8mg/kgの単回投与量として静脈内に投与される。他の抗IL-6R抗体は、トシリズマブの代替に、またはトシリズマブと併せて使用されることが可能であり、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、SA-237、及びその変異体を含む。
【0130】
被検体が二重特異性抗体の投与後の広範囲の合併症の存在下でグレード2のCRS事象を有する場合、方法は、この被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の第一投与量を投与し、二重特異性抗体による治療を保留しながらグレード2のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブの第一投与量は、被検体へ約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。他の抗IL-6R抗体は、トシリズマブの代替に、またはトシリズマブと併せて使用されることが可能であり、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、SA-237、及びそれらの変異体を含む。いくつかの例において、グレード2のCRS事象がグレード≦1のCRS事象へ2週間以内に回復する場合、この方法は、減少した投与量で二重特異性抗体による治療を再開することをさらに備える。いくつかの例において、減少した投与量は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の次に最も高く清澄化された投与量である。一方、グレード2のCRS事象がグレード2のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復しない、またはグレード≧3のCRS事象に悪化しない場合、方法は、被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ)の1回以上の(たとえば、1、2、3、4、または5回以上の)追加の投与量を投与し、グレード2、またはグレード≧3のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの特定の例において、グレード2のCRS事象は、グレード2のCRS事象の症状を処置してから24時間以内に回復しない、またはグレード≧3のCRS事象へ悪化しないので、方法は、被検体へトシリズマブの1回以上の追加の投与量を投与し、グレード2、またはグレード≧3のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブの1回以上の追加の投与量は、被検体へ約1mg/kgから約15mg/kg、たとえば、約4mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約6mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。いくつかの例において、方法は、被検体へ有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに備える。コルチコステロイドは、トシリズマブまたは他の抗IL-6R抗体の1回以上の追加の投与量の前、後、またはこれらの投与量と同時に投与されることができる。いくつかの例において、コルチコステロイドは、被検体へ静脈内に投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである。いくつかの例において、メチルプレドニゾロンは、1日あたり約1mg/kgから1日あたり約5mg/kg、たとえば、1日あたり約2mg/kgの投与量で投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。いくつかの例において、デキサメタゾンは、約10mgの投与量(たとえば、静脈内に約10mgの単回投与量)で投与される。
【0131】
被検体が二重特異性抗体の投与後にグレード3のCRS事象を有する場合、方法は、この被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の第一投与量を投与し、二重特異性抗体による治療を保留しながらグレード3のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブの第一投与量は、被検体へ約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。他の抗IL-6R抗体は、トシリズマブの代替に、またはトシリズマブと併せて使用されることが可能であり、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、SA-237、及びそれらの変異体を含む。いくつかの例において、グレード3のCRS事象がグレード≦1のCRS事象へ2週間以内に回復するため、この方法は、減少した投与量で二重特異性抗体による治療を再開することをさらに備える。いくつかの例において、減少した投与量は、非分画用量漸増投与計画の第一投与サイクルにおける二重特異性抗体の次に最も高く清澄化された投与量である。他の例において、グレード3のCRS事象がグレード3のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復しない、またはグレード4のCRS事象に悪化しない場合、方法は、被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ)の1回以上の(たとえば、1、2、3、4、または5回以上の)追加の投与量を投与し、グレード3またはグレード4のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの特定の例において、グレード3のCRS事象は、グレード3のCRS事象の症状を処置してから24時間以内に回復しない、またはグレード4のCRS事象へ悪化しないので、方法は、被検体へトシリズマブの1回以上の追加の投与量を投与し、グレード3またはグレード4のCRS事象を管理することをさらに備える。いくつかの例において、トシリズマブの1回以上の追加の投与量は、被検体へ約1mg/kgから約15mg/kg、たとえば、約4mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約6mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。いくつかの例において、方法は、被検体へ有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに備える。コルチコステロイドは、トシリズマブまたは他の抗IL-6R抗体の1回以上の追加の投与量の前、後、またはこれらの投与量と同時に投与されることができる。いくつかの例において、コルチコステロイドは、被検体へ静脈内に投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである。いくつかの例において、メチルプレドニゾロンは、1日あたり約1mg/kgから1日あたり約5mg/kg、たとえば、1日あたり約2mg/kgの1回の投与量で投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。いくつかの例において、デキサメタゾンは、約10mgの1回の投与量(たとえば、静脈内に約10mgの単回投与量)で投与される。
【0132】
被検体が二重特異性抗体の投与後にグレード4のCRS事象を有する場合、方法は、この被検体へIL-6R拮抗薬(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の第一投与量を投与し、グレード4のCRS事象を管理し、二重特異性抗体による治療を持続的に中断することをさらに備えることができる。いくつかの例において、トシリズマブの第一投与量は、被検体へ約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。他の抗IL-6R抗体は、トシリズマブの代替に、またはトシリズマブと併せて使用されることが可能であり、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、SA-237、及びそれらの変異体を含む。グレード4のCRS事象は、いくつかの例において、グレード4のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復することができる。他の例において、グレード4のCRS事象がこのグレード4のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復しない場合、この方法は、被検体へIL-6Rアンタゴニスト(たとえば、抗IL-6R抗体、たとえば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))))の1回以上の追加の投与量を投与し、グレード4のCRS事象を管理することをさらに備えることができる。いくつかの特定の例において、グレード4のCRS事象は、グレード4のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に回復しないので、方法は、被検体へトシリズマブの1回以上の(たとえば、1、2、3、4、または5回以上の)追加の投与量を投与し、グレード4のCRS事象を管理することをさらに備える。いくつかの例において、トシリズマブの1回以上の追加の投与量は、被検体へ約1mg/kgから約15mg/kg、たとえば、約4mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約6mg/kgから約10mg/kg、たとえば、約8mg/kgの1回の投与量で静脈内に投与される。いくつかの例において、方法は、被検体へ有効量のコルチコステロイドを投与することをさらに備える。コルチコステロイドは、トシリズマブまたは他の抗IL-6R抗体の1回以上の追加の投与量の前、後、またはこれらの投与量と同時に投与されることができる。いくつかの例において、コルチコステロイドは、被検体へ静脈内に投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである。いくつかの例において、メチルプレドニゾロンは、1日あたり約1mg/kgから1日あたり約5mg/kg、たとえば、1日あたり約2mg/kgの1回の投与量で投与される。いくつかの例において、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。いくつかの例において、デキサメタゾンは、約10mgの1回の投与量(たとえば、静脈内に約10mgの単回投与量)で投与される。
【0133】
A.抗CD20/抗CD3二重特異性抗体
本明細書に記載されるこれらの方法は、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患、たとえば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、たとえば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)たとえば、再発性または難治性DLBCL)を有する被検体へCD20及びCD3(すなわち、抗CD20/抗CD3抗体)に結合する二重特異性抗体を投与することを備える。
【0134】
いくつかの例において、本明細書に記載されるこれらの方法のいずれかは、二重特異性抗体を投与することを備えることができ、この二重特異性抗体は、(a)アミノ酸配列のGYTFTSYNMH(配列番号1)を含む超可変領域(HVR)-H1、(b)アミノ酸配列のAIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のVVYYSNSYWYFDV(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のRASSSVSYMH(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のAPSNLAS(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のQQWSFNPPT(配列番号6)を含むHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6箇所のHVRを有する第一結合ドメインを有する抗CD20アームを含む。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号17から20の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、及び/または配列番号21から24の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)を含む。いくつかの例において、二重特異性抗体は、(a)配列番号7に対して、若しくは配列番号7のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8に対して、若しくは配列番号8のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第一結合ドメインを備える抗CD20アームを含む。その結果、いくつかの例において、第一結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0135】
いくつかの例において、本明細書に記載されるこれらの方法のいずれかは、二重特異性抗体を投与することを備えることができ、この二重特異性抗体は、(a)アミノ酸配列のNYYIH(配列番号9)を含むHVR-H1、(b)アミノ酸配列のWIYPGDGNTKYNEKFKG(配列番号10)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のDSYSNYYFDY(配列番号11)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のKSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のWASTRES(配列番号13)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のTQSFILRT(配列番号14)を含むHVR-L3、から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6箇所のHVRを有する第二結合ドメインを有する抗CD3アームを含む。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号25から28の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、及び/または配列番号29から32の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)を含む。いくつかの例において、二重特異性抗体は、(a)配列番号15に対して、若しくは配列番号15のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号16に対して、若しくは配列番号16のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第二結合ドメインを備える抗CD3アームを含む。その結果、いくつかの例において、第二結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを備える。
【0136】
いくつかの例において、本明細書に記載されるこれらの方法のいずれかは、二重特異性抗体を投与することを備えることができ、この二重特異性抗体は、(1)(a)アミノ酸配列のGYTFTSYNMH(配列番号1)を含むHVR-H1、(b)アミノ酸配列のAIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のVVYYSNSYWYFDV(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のRASSSVSYMH(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のAPSNLAS(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のQQWSFNPPT(配列番号6)を含むHVR-L3を含むHVR-L3、から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6箇所のHVRを含む第一結合ドメインを含む抗CD20アーム、ならびに(2)(a)アミノ酸配列のNYYIH(配列番号9)を含むHVR-H1、(b)アミノ酸配列のWIYPGDGNTKYNEKFKG(配列番号10)を含むHVR-H2、(c)アミノ酸配列のDSYSNYYFDY(配列番号11)を含むHVR-H3、(d)アミノ酸配列のKSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)を含むHVR-L1、(e)アミノ酸配列のWASTRES(配列番号13)を含むHVR-L2、及び(f)アミノ酸配列のTQSFILRT(配列番号14)を含むHVR-L3、から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6箇所のHVRを含む第二結合ドメインを含む抗CD3アーム、を含む。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)配列番号17から20の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、及び/または配列番号21から24の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、ならびに(2)配列番号25から28の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、及び/または配列番号29から32の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4の少なくとも1箇所(たとえば、1、2、3、または4箇所)、を含む。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)(a)配列番号7に対して、若しくは配列番号7のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号8に対して、若しくは配列番号8のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第一結合ドメインを含む抗CD20アーム、ならびに(2)(a)配列番号15に対して、若しくは配列番号15のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号16に対して、若しくは配列番号16のアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性(たとえば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン、及び(b)にあるようなVLドメイン、を含む第二結合ドメインを含む抗CD3アームを備える。いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第一結合ドメイン、ならびに、(2)配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第二結合ドメインを含む。
【0137】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、たとえば、米国特許第4,816,567号に記載されるような、組換え方法及び組成物を使用して産生されることができる。
【0138】
いくつかの例において、上記の実施形態のいずれかによる抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、以下の項1から5に記載されるような、特長のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせて組み込まれることができる。
【0139】
1.抗体親和性
ある一定の実施形態において、本明細書に提供される二重特異性抗体は、CD20、CD3、または両方に関して、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8Mから10-13M、たとえば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0140】
一実施形態では、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態では、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて行われる。たとえば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、Fabを、未標識抗原の一連の滴定の存在下で最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化させ、次いで抗Fab抗体コーティングプレートと結合した抗原を捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性のプレート(Nunc番号#269620)中で、100pMまたは26pM[125I]-抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。次に、目的とするFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のため、捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。20%以下の最大結合を付与する各Fabの濃度を競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0141】
別の実施形態に従うと、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイを、約10の反応単位(RU)で、固定化された抗原CM5チップによって25℃で実行する。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5,BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質の約10反応単位(RU)を達成する。抗原の注射に続いて、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃で、およそ25μL/分の流量で注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software第3.2版)を使用して、会合センサグラム及び解離センサグラムを同時に適合することによって、算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、106M-1s-1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃でのPBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、判定することができる。
【0142】
2.抗体フラグメント
ある一定の実施形態において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、たとえば、CD20及びCD3に結合する抗体フラグメントなどの、抗体フラグメントである。抗体フラグメントには、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFvフラグメント、ならびに以下に記載される他のフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。scFvフラグメントの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、また、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0143】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、欧州特許第404,097号、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0144】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部、または軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む、抗体フラグメントである。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、たとえば、米国特許第6,248,516B1号参照)。
【0145】
抗体フラグメントは、本明細書に記載の、インタクトな抗体のタンパク質消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、種々の技術によって作製され得る。
【0146】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある一定の実施形態において、本明細書に記載される方法に従って使用するための抗CD20/抗CD3抗体は、キメラ抗体である。ある一定のキメラ抗体は、たとえば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載される。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合フラグメントが含まれる。
【0147】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、及びFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0148】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633,(2008)に概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)と、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)と、米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号と、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記載する)と、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載する)と、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載する)と、Osbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)と、Klimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチを記載する)となどにさらに記載される。
【0149】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「最も適合した」方法(たとえば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照)を使用して選択されるフレームワーク領域と、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体の共通配列に由来するフレームワーク領域(たとえば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照)と、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(たとえば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照する)と、FRライブラリのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(たとえば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照する)とが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
4.ノブインホール(Knob-in-Hole)二重特異性抗体工学的設計
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、抗体全長または抗体フラグメントとして調製されることができる。二重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照する)、ならびに「ノブインホール」工学的設計(たとえば、米国特許第5,731,168号を参照する)が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異性抗体の「ノブインホール」工学的設計を利用して、ノブを含む第一アーム、及び第一アームのノブが結合することができるホールを含む第二アームを生成することができる。二重特異性抗体のノブは、1つの実施形態において、抗CD3アーム上にあることができる。代替に、本発明の二重特異性抗体のノブは、抗CD20アーム上にあることができる。本発明の二重特異性抗体のホールは、1つの実施形態において、抗CD3アーム上にあることができる。代替に、本発明の二重特異性抗体のホールは、抗CD20アーム上にあることができる。いくつかの例において、ノブインホール技術を使用して産生される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、1箇所以上の重鎖定常ドメインを含むことができ、1箇所以上の重鎖定常ドメインは、第一CH1(CH11)ドメイン、第一CH2(CH21)ドメイン、第一CH3(CH31)ドメイン、第二CH1(CH12)ドメイン、第二CH2(CH22)ドメイン、及び第二CH3(CH32)ドメインから選択される。いくつかの例において、1箇所以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1箇所は、別の重鎖定常ドメインと対合される。いくつかの例において、CH31及びCH32ドメインは、突起または空洞を各含み、CH31ドメイン内の突起または空洞は、それぞれ、CH32ドメイン内の空洞または突起中に配置可能である。いくつかの例において、CH31及びCH32ドメインは、突起と空洞との間の境界面において会合する。いくつかの例において、CH21及びCH22ドメインは、突起または空洞を各含み、CH21ドメイン内の突起または空洞は、それぞれ、CH22ドメイン内の空洞または突起中に配置可能である。いくつかの例において、CH21及びCH22ドメインは、突起と空洞との間の境界面において会合する。
【0151】
また二重特異性抗体は、免疫グロブリンクロスオーバー(Fabドメイン交換またはCrossMab形式としても知られる)技術(たとえば、WO2009/080253、Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 108:11187-11192(2011)を参照する)を使用して工学的に設計されることができる。また二重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電式ステアリング効果を工学的に設計すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(たとえば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照する)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(たとえば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照する)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体フラグメントを作製すること(たとえば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-6448(1993)を参照する)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(たとえば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照する)、ならびにたとえば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)などに記載されるような三重特異性抗体を調製することによって作製されることができる。
【0152】
また抗CD20/抗CD3二重特異性抗体、またはそれらの抗体フラグメントは、CD3及びCD20に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」を含むことができる(たとえば、米国公開第2008/0069820号を参照する)。
【0153】
5.抗CD20/抗CD3の二重特異性抗体変異体
いくつかの例において、上述される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体のアミノ酸配列変異体を予想する。例えば、二重特異性抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体を符号化するヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/または残基への挿入、及び/または残基の置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
【0154】
a.置換、挿入、及び欠失変異体
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体を提供する。置換変異原性のために対象となる部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換は、表2の「好ましい置換」という見出しの下に示される。より実質的な変化は、表2の「例示的な置換」という見出しの下に示され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングされ得る。
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0155】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0156】
ある種類の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験のために選択される結果として生じる変異体(複数可)は、親抗体と比較してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、及び/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異体は、例えば、本明細書に記載の技術等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が突然変異され、変異形抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。
【0157】
改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/または抗原と接触する残基で行われ得、結果として得られた変異形VHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、ライブラリがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)が無作為化されるHVR指向手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が標的化されることが多い。
【0158】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であり得る。上で提供される変異型VH及びVL配列のある一定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0159】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の識別のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されている。この方法では、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換えられ、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかを決定する。さらなる置換は、最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造は、抗体と抗原との間の接触点を特定する。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされてもよく、または排除されてもよい。変異体は、スクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかどうかが決定され得る。
【0160】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、及び単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異形には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端若しくはC末端への融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0161】
b.グリコシル化変異体
いくつかの例において、本発明の方法は、二重特異性抗体をグリコシル化する程度まで増加させる、または減少させるように、修飾されている抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の変異体を分画用量漸増投与計画に照らして被検体へ投与することを備える。本発明の抗CD20/抗CD3抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を作り出すかまたは除去するように、アミノ酸配列を変化させることによって、簡便に達成されることができる。
【0162】
二重特異性抗体がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の改善された特性によって抗体変異体を作製するために、本発明の抗体中にオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0163】
いくつかの例において、これらの方法は、Fc領域へ付着している(直接的に、または間接的に)フコースを欠く糖鎖構造を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の変異体を投与することを備える。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定するとき、Asn297に結合した全ての糖鎖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計と比べた、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta,L.)、第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照する。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adamsら)(特に実施例11で))、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株を含む(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照する)。
【0164】
上記の観点から、いくつかの例において、本発明の方法は、アグリコシル化部位の変異を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の変異体を分画用量漸増投与計画に照らして被検体へ投与することを備える。いくつかの例において、アグリコシル化部位変異は、二重特異性抗体のエフェクター機能を低下させる。いくつかの例において、アグリコシル化部位の変異は、置換変異である。いくつかの例において、二重特異性抗体は、エフェクター機能を低下させるFc領域における置換変異を含む。いくつかの例において、置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/またはD265(EU番号付け)におけるものである。いくつかの例において、置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235A、D265A、及びP329Gからなる群から選択される。いくつかの例において、置換変異は、アミノ酸残基N297におけるものである。好ましい実施形態において、置換変異は、N297Aである。
【0165】
他の例において、二分されたオリゴ糖を含む二重特異性抗体の変異体は、本発明の方法に従い、たとえば、抗体のFc領域に付着している二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されることなどに使用される。かかる抗体変異体は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及び米国特許公開第2005/0123546号(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体変異体も提供される。かかる抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0166】
c.Fc領域変異体
いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体変異体は、二重特異性抗体のFc領域(すなわち、Fc領域変異体(たとえば、US2012/0251531を参照する))に導入される1つ以上のアミノ酸修飾を有し、本発明の方法に従い、がん(たとえば、B細胞増殖性疾患)を有する被検体へ投与されることができる。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0167】
いくつかの例において、二重特異性Fc領域抗体の変異体は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有し、かつインビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要または有害である用途に望ましい候補にする。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/欠乏を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464ページの表3に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I. et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照のこと)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、同第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照する)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison,WI)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、体内で、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて、評価されてもよい。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.Blood.101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie Blood.103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及び体内クリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0168】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号、及び第8,219,149号)。かかるFc突然変異体は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0169】
ある特定の例において、抗体中の野生型ヒトFc領域の329位におけるプロリンは、グリシン若しくはアルギニン、または、Fcのプロリン329とFcgRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成される、Fc/Fcγ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分に大きなアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.Nature.406,267-273(2000))。ある一定の実施形態において、二重特異性抗体は、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を有する。1つの実施形態において、さらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sであり、さらに別の実施形態において、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E(たとえば、US2012/0251531参照)であり、またさらに別の実施形態において、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A及びP329Gである。
【0170】
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと)。
【0171】
ある一定の例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0172】
いくつかの例において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、変化した(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化が、Fc領域において行われる。
【0173】
母体IgGの胎児への移入の原因である、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国公開特許第2005/0014934A1号(Hinton et al.)に記載される。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する、1つ以上の置換を内部に有するFc領域を含む。かかるFc変異体には、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0174】
またFc領域変異体の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0175】
d.システイン工学的設計抗体の変異体
ある特定の実施形態において、二重特異性抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン工学的に設計された抗CD20/抗CD3二重特異性抗体、たとえば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が二重特異性抗体のアクセス可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分(薬物部分またはリンカー-薬物部分など)にコンジュゲートして、免疫コンジュゲートを作製することができる。ある一定の実施形態において、以下の残基、軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のいずれか1つ以上が、システインで置換され得る。システイン工学的に設計された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように産生され得る。
【0176】
したがって、化学療法剤若しくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(たとえば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、若しくはそれらのフラグメント)、または放射性同位体等の1つ以上の細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされた抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の免疫コンジュゲートを特に企図する。
【0177】
いくつかの例において、免疫コンジュゲートは、二重特異性抗体が、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)等のオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはそれらの誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993);ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006);Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:358-362(2006);Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002);King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002);ならびに米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン(ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、及びオルタタキセル(ortataxel)等);トリコテセン;ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つ以上の薬物とコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0178】
いくつかの例において、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むが、これらに限定されない、酵素的に活性な毒素、またはそれらのフラグメントにコンジュゲートされた二重特異性抗体を含む。
【0179】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する、二重特異性抗体を含む。放射性コンジュゲートの産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素を含む。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99m若しくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、この場合もやはりヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄を含み得る。
【0180】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び細胞傷害性剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲート化のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0181】
本明細書の免疫コンジュゲートまたはADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されるかかるコンジュゲートを明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0182】
e.他の抗体誘導体
いくつかの例において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、本明細書に記述される方法に従い、当該技術分野において知られており、被検体へ容易に利用可能であり、投与される追加の非タンパク質性部分を含有するように修飾されることができる。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、いずれの分子量のものであってもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよい。抗体に付着したポリマーの数は異なり得、1つ超のポリマーが付着している場合、それらは同じ分子であることも異なる分子であることもできる。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
【0183】
いくつかの例では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。1つの例において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、いずれの波長のものであってもよく、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加温する波長を含むが、これらに限定されない。
【0184】
B.薬学的組成物及び製剤
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の薬学的組成物及び製剤は、所望の程度の純度を有するこれらのような抗体を、1つ以上の任意選択の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製されることが可能である。薬学的に許容される担体は一般に、レシピエントに対し、用いられる投薬量及び濃度で無毒であり、緩衝液(リン酸、クエン酸、及び他の有機酸など)、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル若しくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなど)、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖類(スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/または非イオン性界面活性剤(ポリエチレングリコール(PEG)など)を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤をさらに含む。rHuPH20を含むある特定の例示のsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼ等の1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0185】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0186】
本明細書における製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、及び/または抗ホルモン剤、例えば、本明細書において上に言及されたもの)をさらに提供することが望ましくあり得る。かかる活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0187】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにより、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)内、またはマクロ乳濁液中にも取り込まれ得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0188】
徐放性調製物が調製され得る。持続放出調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0189】
インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成され得る。
【0190】
III.製造品
本発明の別の態様では、上述の疾患の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器、及び容器上の、または容器と関連したラベルまたは添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な材料から形成され得る。容器は、それ自体で、または別の組成物との組み合わせで、病態の治療、予防、及び/または診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって穿孔可能な栓を有するバイアルであり得る)。本組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物を使用して選択状態(たとえば、B細胞増殖性疾患、たとえば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、たとえば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、たとえば、再発性または難治性DLBCL)を処置し、さらに本明細書に記載される投与計画の少なくとも1つに関する情報を含むことを示す。さらに、製品は、(a)本明細書に記載される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む組成物をその中に収容した第一容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬剤、またはその他の治療剤を含む組成物をその中に収容した第二容器を含み得る。あるいは、または加えて、本製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及びユーザの立場から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【実施例0191】
IV.実施例
以下は、本発明の方法の例である。上述の概要を考慮すると、様々な他の実施形態が実施され得ることを理解する。
【0192】
実施例1.抗分化抗原群20(CD20)/抗分化抗原群3(CD3)の二重特異性抗体によるB細胞増殖性疾患の治療のための分画用量漸増投与計画
「ノブインホール」工学的設計を使用して、CD20及びCD3の両方を結合するIgG1二重特異性抗体全長を産生した(たとえば、米国特許第5,731,168号参照)。安全性及び薬力学(PD)は、その提案された作用機序とカニクイザルの毒物学研究において一致した。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による処置と関連する毒性は、サイトカインレベル、及び活性化されたT細胞数におけるPD変化によって明らかなように、T細胞の刺激により主に駆動された。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による、カニクイザルの反復投与毒性試験において、サイトカインレベル、T細胞活性化、及び急性投与後観察の向上は、第一投与量に主に限定され、次の後の投与量を減少させた、または無視できた。したがって、臨床計画は、代替の投与計画を通してT細胞刺激の程度を制御するように設計された。
【0193】
以前の投与試験において、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を非分画方式でサイクル1中に投与し、全投与量をサイクル1で1日目(C1D1)に与えた。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体に関する前臨床データは、二段階分画がサイトカイン駆動毒性の危険性を低下させる可能性を有することを示した。したがって、我々は、二段階分画用量漸増投与スケジュールのサイクル1に照らして抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を投与するプロトコルを修正した。
【0194】
抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による、この分画投与スケジュールを支援するために、探索の定量的システム薬理学(QSP)モデルを使用し、非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者における抗CD20/抗CD3二重特異性抗体のさまざまな投与計画を用いて、単剤として抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与後の、サイクル1における全身のサイトカイン(IL6)及び活性化されたT細胞プロファイルの時間経過をシミュレーションした。単剤として抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による2サイクルの処置後の、血清サイトカイン濃度、及び活性化されたT細胞時間プロファイルのモデルに基づく予測を使用して、非分画投与スケジュール及び二段階分画投与スケジュールを比較した。モデル化及びシミュレーションは、B細胞増殖性疾患(たとえば、NHL、たとえば、DLBCL)などの血液癌を抗CD20/抗CD3二重特異性抗体によって処置するために二段階分画用量漸増投与計画を通して、より好ましいベネフィット-リスクプロファイルを達成することを支援する。上記に基づき、二段階分画用量漸増投与計画は、サイトカイン駆動毒性(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS))、輸液関連反応(IRR)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、神経毒性、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、好中球減少症、血小板減少症、肝酵素上昇、及び/または中枢神経系(CNS)毒性を低下させる、または阻害すると予想される。
【0195】
二段階分画用量漸増投与計画は、用量漸増の第一投与サイクル(C1)と同時に開始し、この中で患者は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体をサイクル1の1日目、8日目、及び15日目(それぞれC1D1、C1D8、及びC1D15)に受容する。サイクル2以降において、単回投与量としてそれぞれ21日サイクルの1日目にのみ二重特異性抗体を与え、サイクル2の1日目(C2D1)はC1D15投与量後、約7日である。二重特異性抗体を単回投与量として各21日サイクルの1日目にのみ与える、サイクル2以降において、二重特異性抗体を各21日サイクルの1日目にアテゾリズマブと同時に投与することができる。ロジスティック/スケジューリングのために、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及びアテゾリズマブを、スケジューリングされた日付から±2日までに(すなわち、投与間の最低19日で)与える。
【0196】
サイクル1の累積投与量は、非分画用量漸増投与計画の第一サイクルの最も高く清澄化された投与量より約50%多く、開始C1D15投与量は非分画用量漸増投与計画の第一サイクルの最も高く清澄化された投与量に対応している。C1D15投与量は、その後のサイクル(サイクル2から最終投与サイクル)の1日目に投与された投与量レベルである。この用量漸増は、標準的な3+3設計を使用する。
【0197】
実施例2.抗インターロイキン-6受容体(IL-6R)抗体によるサイトカイン放出症候群(CRS)の管理
実施例1に記載された二段階分画用量漸増投与計画に照らして抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を投与する患者のCRSを観察する事象において、観察されたCRSは、適切に管理される。
【0198】
CRSは、うまく管理されない場合に有意な身体障害または死亡をもたらす可能性がある。現在の臨床的対応は、個々の徴候及び症状を治療すること、支持療法を提供すること、及び高い投与量のコルチコステロイドを使用して炎症反応を弱めることを試みることに焦点が置かれている。しかしながら、この手法は、特に遅い介入の事例において、必ずしも成功するとは限らない。二段階の分画用量漸増投与計画中に患者において観察されたCRSを、代替に管理することができる。
【0199】
CRSは、IFNγ、IL-6、及びTNF-αレベルにおける著しい上昇を有する、多様なサイトカイン類における上昇と関連する。現れた証拠は、特に、中心的なメディエータとしてCRSとIL-6を関連付ける。IL-6は、さまざまな細胞型により産生される炎症誘発性多機能サイトカインであり、このサイトカインは、T細胞活性化を有する、多種多様な生理学的なプロセスにかかわるように示されている。刺激剤にもかかわらず、CRSは、高レベルのIL-6と関連し(Nagorsen et al.Cytokine.25(1):31-5,2004、Lee et al.Blood.124(2):188-95,2014)、Doesegger et al.Clin.Transl.Immunology.4(7):e39,2015)、IL-6は、CRSの重症度と相関し、患者は、CRSを経験しない、またはより軽症のCRS(グレード0-3)を経験する患者と比較してさらにより高レベルのIL-6を含む、グレード4または5のCRS事象を経験する(Chen et al.J.Immunol.Methods.434:1-8,2016)。したがって、IL-6媒介型シグナル伝達を阻害し、二段階分画用量漸増投与計画中に患者に観察されるCRSを管理する薬剤を使用してIL-6の炎症作用を遮断することは、ステロイド治療への代替であり、B細胞増殖性疾患の治療において、T細胞機能へ負に影響する、または抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療の有効性若しくは臨床的有用性を低下させると予想されない。
【0200】
トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))は、IL-6媒介型シグナル伝達を阻害する、可溶性膜結合型IL-6Rに対して作られる組換え、ヒト化、抗ヒトモノクローナル抗体である(たとえば、WO1992/019579参照、これはその全体が参照により本明細書に援用される)。
【0201】
グレード1のCRS発症の事象において、管理は、トシリズマブ療法なしで達成されることが可能であり、CRSの症状はたとえば、必要に応じて抗ヒスタミン薬、解熱薬、及び/または鎮痛薬を使用して症候により治療される。加えて、発熱及び好中球減少症が存在する場合、治療し、患者を体液バランスについて監視し、静脈内流体を臨床的に指示されるように投与する。
【0202】
グレード1のCRS事象についての管理スキームに従い、CRSの症状が連続した3日間でグレード≦1へ回復するまで抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療を直ちに一時的に保留し(すなわち、投与を遅延させ)、この回復した時点でメディカルモニターの承認による投与量の減少をせずに患者が抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の次の投与量を受容することができることにより、合併症を有さない(または最小限の合併症を有する)患者において、グレード2のCRS事象を管理する。グレード2のCRSを有する患者の心臓及び他の臓器機能を注意深く監視し、低酸素症に必要に応じて酸素を与える。24時間以内に臨床的な改善がない場合、メディカルモニターは、通知し、トシリズマブを患者の静脈内に8mg/kgの単回投与量として投与することを可能にする。下記のグレード3のCRS事象についての管理スキームに従うことによって、広範な合併症を有する患者のグレード2のCRS事象を管理する。
【0203】
グレード3のCRS発症の事象において、メディカルモニターは、直ちに通知する。心肺及び臓器機能を監視し、低酸素症に酸素を与え、血行動態支持及び他の支持療法(たとえば、発熱及び/または好中球減少症)を必要に応じて提供する。加えて、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療を直ちに保留し、患者の静脈内に8mg/kgでトシリズマブを投与する。臨床的な改善が24時間以内にない場合、任意選択で静脈内コルチコステロイド治療の開始(たとえば、神経症状のために、2mg/kg/日でメチルプレドニゾロン、または10mgでデキサメタゾン)と併せて、患者へ8mg/kgでトシリズマブの第二投与量を静脈内に投与する。CRS毒性から患者が回復するために、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与は、2週間まで遅延することが可能である。トシリズマブ投与後、CRSの症状が2週間以内にグレード≦1に回復した場合、次に抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の投与を減少した投与量で継続する。抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の減少した投与量は、用量漸増(すなわち、非分画用量漸増投与計画)中に評価された二番目に最も高く清澄化された投与量レベルである。減少した投与量で同様の毒性を観察する場合、次に抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療を中断する。加えて、減少した投与量が抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の薬力学的活性範囲を下回る場合、次に抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療も中断する(すなわち、持続的に停止する)ことができる。
【0204】
グレード4のCRS事象をグレード3のCRS事象について上述されるように管理するが、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体治療を直ちに中断する(すなわち、持続的に停止する)。
【0205】
他の実施形態
前述の発明は、明確な理解のために例証及び例によっていくらか詳細に記載されているが、説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
B細胞増殖性疾患を有する被検体を処置する方法であって、少なくとも第一投与サイクル及び第二投与サイクルを有する投与計画においてCD20及びCD3に結合する二重特異性抗体を前記被検体へ投与することを備え、
(a)前記第一投与サイクルは前記二重特異性抗体の第一投与量(C1D1)、第二投与量(C1D2)、及び第三投与量(C1D3)を有し、前記C1D1及び前記C1D2は前記C1D3より各多くなく、前記C1D1は約0.02mgから約4.0mgの間にあり、前記C1D2は約0.05mgから約20.0mgの間にあり、前記C1D3は約0.2mgから約20.0mgの間にあり、
(b)前記第二投与サイクルは前記二重特異性抗体の単回投与量(C2D1)を有し、前記C2D1は前記C1D3以上であり、約0.2mgから約20mgの間にある、
前記方法。