(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123130
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 5/00 20060101AFI20240903BHJP
C09D 163/02 20060101ALI20240903BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240903BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240903BHJP
【FI】
C09D5/00 D
C09D163/02
C09D163/00
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098880
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021084451の分割
【原出願日】2017-09-08
(31)【優先権主張番号】16187921.8
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510326647
【氏名又は名称】ヨツン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ク-シク
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヒュン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】リスバーグ、エリック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高固形分プライマー塗料組成物を提供する。
【解決手段】(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む、
超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、
前記組成物は、ASTM D5201-05による固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;
前記硬化剤中の水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲であるプライマー塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、超高い固形分のプライマー塗料組成物。
【請求項2】
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)1.0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む
請求項1に記載の超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、
前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、超高い固形分のプライマー塗料組成物。
【請求項3】
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0.5~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む
請求項1に記載の超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、
前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、超高い固形分のプライマー塗料組成物。
【請求項4】
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0.5~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)1.0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む
請求項1に記載の超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、
前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、超高い固形分のプライマー塗料組成物。
【請求項5】
請求項1~4に記載の塗料組成物であって、前記組成物は、5℃、50%RHでの粘度が300~600cpsである塗料組成物。
【請求項6】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記ビスフェノールFは、エポキシ当量重量が、300またはそれ以下、例えば、100~300である塗料組成物。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記シランは、例えばGLYMOのような、エポキシ官能性シランである塗料組成物。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記組成物は、溶媒含有量が、5重量%未満、好ましくは1.0重量%未満である塗料組成物。
【請求項9】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記炭化水素樹脂は、前記組成物の0.5~20重量%を形成する塗料組成物。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記シランは、前記塗料組成物の2.0~10重量%を形成し、かつ/または前記炭化水素樹脂は、前記塗料組成物の2~10重量%を形成する塗料組成物。
【請求項11】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記反応性希釈剤は、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルまたは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである塗料組成物。
【請求項12】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記塗料組成物は、固形分が少なくとも95%である塗料組成物。
【請求項13】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記プライマー層組成物アミン硬化剤は、フェナルカミンであるか、またはポリアミン硬化剤である塗料組成物。
【請求項14】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記反応性希釈剤は、粘度が50cPsまたはそれ以下である塗料組成物。
【請求項15】
先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物であって、前記反応性希釈剤は、脂肪族反応性希釈剤であり、かつ、二官能性である塗料組成物。
【請求項16】
23℃でのポットライフが70分より長い、好ましくは80分より長い、先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項17】
23℃で測定した円錐平板粘度が500cPs未満である、先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項18】
VOCが100g/Lまたはそれ以下、好ましくは50g/Lまたはそれ以下である、先行する請求項のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項19】
(i)20~60重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)2.0~15重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の、例えば0.5~20重量%の、少なくとも一つの炭化水素
樹脂;および
(iv)0~15重量%の、例えば1.0~15重量%の、少なくとも一つの反応性希釈剤;を含む成分(A)と、
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B)とを含むキット。
【請求項20】
請求項19に記載のキットであって、前記炭化水素樹脂が、ホルムアルデヒドと1,3-ジメチルベンゼンとの反応生成物を含むキット。
【請求項21】
金属基板であって、その上に請求項1~18に記載の塗料組成物が被覆された金属基板。
【請求項22】
金属基板を保護するための、請求項1~18に記載の塗料組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の無気噴霧装置により適用可能であり、迅速に硬化する防腐食性プライマー層を基板上に生じる、低溶媒または溶媒無しのエポキシプライマー塗料組成物に関する。特に、前記プライマーは、ユニバーサル・プライマーであり得、上塗り塗料の必要なく、単一コートで適用可能である。
無気噴霧が可能で、非常に低い溶媒含有量を有する塗料組成物を提供するために、本発明は、ビスフェノールFエポキシ樹脂と、特定含有量のシラン架橋剤ならびに、好ましくは反応性希釈剤および炭化水素樹脂との組合せを要件とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
船の通常のペンキ塗布において、船の様々な部分が、抗腐食性ペンキで個々にコートされている。船は、個々のブロックを製造し、それらを組み立てることにより建設され、そのため、ペンキ塗布仕事は、組み立て前に各ブロックについて行う必要がある。
【0003】
優秀な天候抵抗性、様々な最終塗料への接着性および抗腐食性特性を典型的に有するユニバーサル・プライマー(単一層プライマー)は、ブロック(このブロックは、表面処理にあらかじめ付される)をコートするのに用いられる。これにより、ペンキ塗布プロセスをシンプルにし、廃棄物を最小限にしている。
【0004】
公知ユニバーサル・プライマーには、エポキシ樹脂、塩化ビニル系コポリマーおよび硬化剤をベースにしたもの(JP211464/1998)を含む。しかしながら、この塗料組成物は、固体状エポキシ樹脂と固体状アミン系硬化剤を用い、ゆえに、大量の溶媒を必要とする。通常、安全的、経済的および環境的理由から、溶媒含有量は減じるのが好ましい。高固形分ユニバーサル・プライマーは、従って、求められていた。
【0005】
上記問題を解決する高固形分エポキシ系防腐食性ペンキとして、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂と、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド等を単独または組合せて用いるアミン系硬化剤とを含む主剤成分を含む防腐食性塗料組成物が開発されてきた(例えば、JP80563/2002)。この高固形分さび止めペンキは、固形分が約80重量%であり、溶媒含有量は約20重量%である。
【0006】
EP-A-1788048は、迅速に硬化する高固形分抗腐食性塗料組成物を説明している。この文献は、100%以下の高固形分含有量に言及する一方、多くの実施例は、ベンジルアルコール(新しい規制の元ではVOCに貢献すると考えられている)のような溶媒を大量に含む。本発明の塗料は、VOCがより低く、通常の無気噴霧装置で適用でき、1.5時間以上の有用なポットライフ(可使時間)を有する。高固形分実施例16~18は、ポットライフが非常に乏しく、混合物の過剰な粘度が原因である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-211464号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1788048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ここに、特に実用的なポットライフおよび柔軟性の観点から、既存の技術
を優れた性能で発揮する新規な高固形分ユニバーサル・プライマーを考案した。従って、本発明の組成物がより長期にわたって適用可能なだけでなく、生じる塗料がより柔軟である。理論により制限されることを望むものではないが、これらの両方の効果は、他の高固形分塗料組成物と比較して、我々の発明において達成した、より低い粘度に関連すると我々は推測する。
【0009】
水バラストタンクに適用されるようなユニバーサル・プライマーの耐用年数の主な制限の一つは、脆さである。容器の鋼構造が環境からの歪み(波、風、流れおよび温度変化)により動くため、塗料が割れるという危険性が存在し、溶接は最も敏感な領域であると考えられる。
【0010】
本発明の無溶媒システムは、はるかに柔軟であることが証明されており、これは、容器が使用できない間のメンテナンスおよび修理作業を大幅に減じることに貢献すると期待されうる。
【0011】
これらのタンクの別の弱点は、低DFT領域であり、開発された製品は、DFTが160マイクロメーターのように低くとも、著しく良好な性能を示している。
【0012】
開発された塗料の抗腐食性特性も、非常に優れていることが示されている。開発された製品の抗腐食性特性(錆クリープおよび鋼基板からの塗料剥離など)を評価するため、幾つかの加速試験方法が用いられている。実施された全ての試験は、新規の無溶媒エポキシの単一コーティングが、同一の全DFT(320マイクロメータ)で比較した場合、既存のユニバーサル・プライマー塗料の二つのコーティングより優れていることを示している。
最大保護膜インターバルはむしろ短くなる傾向があるので、無溶媒システムでは、保護膜インターバルは、別の一般的な課題である。現在の配合物では、屋外暴露で最大2週間の再コーティングインターバルを提供する。これは、既存の無溶媒製品と同等であり、無溶媒システムに適していると考えられる。
【0013】
この開発の別の目的は、従来の無気噴霧装置を用いて、良好なポットライフで、一年中適用可能な製品を開発することである。この目的を達成するために、抗腐食特性を維持しながら粘度を下げることに多くの努力が費やされたが、-5℃から40℃の温度範囲範囲で少なくとも成功した。
【0014】
さらに、現在の無溶媒エポキシ塗料組成物は、優秀な抗腐食特性、長いポットライフおよび良好な乾燥時間を提供することを見出した。対照的に、大部分の無溶媒システムは、著しく増加した乾燥時間と、短いポットライフを示している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
従って、一つの観点から、本発明は、
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0.5~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)1.0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である超高い固形分のプライマー塗料組成物を提供する。
【0016】
好ましくは、前記塗料組成物は、溶媒含有量は5重量%未満である。
一つの観点から、本発明は、
(i) 5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0.5~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が、少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃で、50%RHでの粘度が200~800cpsであり;かつ、
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、
超高い固形分のプライマー塗料組成物を提供する。
【0017】
別の観点から、本発明は、
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つのの炭化水素樹脂;
(iv)1.0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;および
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、
超高い固形分のプライマー塗料組成物を提供する。
【0018】
別の観点から、本発明は、
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;および
(v)少なくとも一つの硬化剤;を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、前記組成物は、ASTM D5201-05に従い測定された固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度(ASTM D4287)が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である。
超高い固形分のプライマー塗料組成物を提供する。
【0019】
別の観点から、本発明は、
少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂を含む成分(A);および
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B);を含む超高い固形分のプライマー塗料組成物であって、
前記プライマー塗料組成物は、少なくとも一つのシラン、および任意に少なくとも一つの
炭化水素樹脂;ならびに任意に少なくとも一つの反応性希釈剤を更に含み;
前記塗料組成物は、
(i)5.0~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%、例えば0.5~20重量%、の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%、例えば1.0~15重量%、の少なくとも一つの反応性希釈剤;を含み、
前記組成物は、固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である
超高い固形分のプライマー塗料組成物を提供する。
【0020】
別の観点から、本発明は、
少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂を含む成分(A);および
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B);を含むキットであって、
成分(A)および成分(B)は、生じた組成物を基板に塗布する前の混合に適しており:成分(A)と成分(B)の混合に際し、生じた組成物は、
(i)10~50重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)1.5~12重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%、例えば0.5~20重量%、の少なくとも一つの炭化水素樹脂;
(iv)0~15重量%、例えば1.0~15重量%、の少なくとも一つの反応性希釈剤を含み;
前記組成物は、固形分が少なくとも90重量%であり;
前記組成物は、23℃、50%RHでの粘度が200~800cpsであり;ならびに
前記硬化剤中の水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比が、50:100~120:100の範囲である、
キットを提供する。
【0021】
別の観点から、本発明は、
(i)20~60重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)2.0~15重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0.5~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;および
(iv)0~15重量%、例えば1.0~15重量%、の少なくとも一つの反応性希釈剤;を含む成分(A)と、
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B)とを含むキットを提供する。
【0022】
別の観点から、本発明は、
(i)20~60重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)2.0~15重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;および
(iv)1.0~15重量%の少なくとも一つの反応性希釈剤;を含む成分(A)と、
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B)とを含むキットを提供する。
【0023】
別の観点から、本発明は、
(i)20~60重量%の少なくとも一つのビスフェノールFエポキシ樹脂;
(ii)2.0~15重量%の少なくとも一つのシラン;
(iii)0~20重量%の少なくとも一つの炭化水素樹脂;および
(iv)0~15重量%、例えば1.0~15重量%、の少なくとも一つの反応性希釈剤;を含む成分(A)と、
少なくとも一つの硬化剤を含む成分(B)とを含むキットを提供する。
【0024】
別の観点から、本発明は、基板であって、前記に定義したプライマー組成物が被覆された基板を提供する。
【0025】
別の観点から、本発明は、基板であって、硬化された、前記に定義したプライマー塗料組成物が被覆された基板を提供する。
【0026】
別の観点から、本発明は、成分(A)および成分(B)を混合する工程を含む、前記に定義した塗料組成物の製造方法を提供する。
【0027】
別の観点から、本発明は、成分(A)および成分(B)を混合して混合物を形成する工程、および前記混合物を基板に塗布する工程を含む、塗料組成物を基板へ塗布する(例えば、無気噴霧により、および任意に前記塗料を硬化させることにより)ための方法を提供する。
【0028】
別の観点から、本発明は、
(I)前記で定義した成分(A)および成分(B)を混合して混合物を形成する工程と、前記混合物を基板へ塗布(例えば、無気噴霧により)する工程;
(II)前記混合物が前記基板上で硬化する前に、前記混合物の第2塗料を前記被覆された基板へ塗布する工程;
任意に工程(II)を繰り返す工程;および
(III)前記塗料組成物を硬化させる工程を含む、基板への塗料組成物の塗布のための方法を提供する。
【0029】
全ての実施形態において、前記塗料組成物が少なくとも一つの反応性希釈剤を1.0~15重量%含むのが好ましい。
【0030】
全ての実施形態において、前記塗料組成物が少なくとも一つの炭化水素樹脂を0.5~20重量%含むのが好ましい。
【0031】
[定義]
本発明は、高固形プライマー塗料組成物に関する。用語「塗料組成物」は、第1組成物(A)と第2組成物(B)の組合せから形成された組成物を定義するのに用いられる。早期硬化を防ぐため、本発明の前記プライマー塗料組成物は、二つの部分、エポキシ樹脂を含む第1組成物(A)と、硬化剤を含む第2組成物(B)に分けて提供される。前記組成物の他の成分は、成分(A)中に存在するのが好ましいが、成分(B)を経て添加されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明の詳細な説明]
本発明は、(例えば金属基板、特に鋼基板のような)基板のための、防腐食性プライマー塗料組成物に関する。その鋼基板は、本発明の塗料が有用であるいずれの物体の上に存在しうる。特に、前記基板は、成分(例えば風、雨、氷または雪)に暴露されるもの、または水、特に海水に暴露されるものである。前記基板は、海上プラットフォーム、風力タービン、煙突、発電所もしくは他の産業単位、橋、クレーン、船、車等の上に存在してもよい。重要な領域には、長い耐用年数が必要な、空間、デッキ、沖合施設上の船体飛沫帯外部の上部構造および、沖合施設上の通常外側の上部構造を含む。
【0033】
最も好ましい実施形態において、前記基板は、船、特に船の水バラストタンクまたはポータブル水タンクの一部である。
【0034】
前記プライマー塗料組成物は、前記基板上にエポキシプライマー層を形成する。理想的には、本発明の組成物は、ユニバーサル・プライマーであるが、所望のように、そのプライマー層は、上塗りされてもよい。前記ユニバーサル・プライマーは、良好な耐腐食性特性保護を提供する。更なる防汚特性、色安定性またはUV抵抗性が必要な場合、保護膜を適用してもよい。
【0035】
好ましい実施形態において、プライマー塗料組成物は、単独層として適用され、上塗りされない。どの保護膜層の性質も、この発明の特徴ではなく、ゆえに、公知のいずれの保護膜層を用いてもよい。または、前記プライマー層は、前記基板中に存在する、唯一の層であってもよい。前記塗料組成物が単独コートとして適用される、すなわち、一つの適用工程として適用されるのが、好ましいことに着目される。従って、複数のコート中に前記プライマー組成物を適用する必要は無い。
【0036】
<プライマー塗料組成物>
前記プライマー層塗料組成物は、少なくとも一つのエポキシ樹脂に基づくバインダーを含む。前記プライマー層組成物中のエポキシ樹脂の組合せは、本文中ではバインダーと呼ぶ。前記プライマー層組成物を基板へ適用するほんの少し前に、第一組成物を、硬化剤を含む第二組成物と混合して、前記プライマー層組成物を形成する。そのプライマー層組成物は、その後、前記基板上で硬化して、前記プライマー層を形成する。
【0037】
前記プライマー層組成物中の前記バインダーは、1またはそれ以上のエポキシ樹脂を含んでもよい。理想的には、前記プライマー層組成物は、少なくとも一つ液状エポキシ樹脂を含む。用語「液体」は、室温、23℃、1気圧でのエポキシ樹脂の状態を指す。
本発明の塗料システムの特有の特徴は、高い固形分であり、それにより、存在する揮発性有機化合物(VOC)の含有量が低い。前記プライマー層塗料組成物の固形分は、好ましくは、少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、より好ましくは、少なくとも99重量%である。
【0038】
本発明の塗料システムの特有の特徴は、ボリュームソリッド%(「VS%」)(塗料が乾燥した後の容積)が高く、それにより、存在する揮発性有機化合物(VOC)の含有量が低い。前記プライマー層塗料組成物は、ボリュームソリッドが、好ましくは、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、特に100%である。
【0039】
前記第一組成物は、少なくとも80%、例えば、さらに少なくとも90%のボリュームソリッドを有するのが好ましい。前記第二組成物は、少なくとも80%、例えば、さらに少なくとも90%のボリュームソリッドを有するのが好ましい。
【0040】
前記ボリュームソリッド(%で表現)は、しばしば、「VS%」として言及される。VS%は、D5201-05に従って決定される。
【0041】
本発明の前記プライマー組成物は、例えば5重量%未満の溶媒、詳細には2重量%未満の溶媒、より詳細には1.0重量%未満の溶媒、例えば0.5重量%またはそれ以下の非常に低い溶媒含有量を有する。理想的には、我々の高固形塗料組成物中に溶媒が全く存在しない。
【0042】
前記第一組成物は、例えば5.0重量%未満の溶媒、詳細には2.0重量%未満の溶媒、より詳細には1.0重量%未満の溶媒、例えば0.5重量%またはそれ以下の、非常に低いレベルの溶媒を含有してもよい。前記第一組成物中、溶媒が全く存在しないのが理想的である。前記第二組成物は、例えば5.0重量%未満の溶媒、詳細には2.0重量%未満の溶媒、より詳細には1.0重量%未満の溶媒、例えば0.5重量%またはそれ以下の、非常に低いレベルの溶媒を含有してもよい。前記第二組成物中、溶媒が全く存在しないのが理想的である。
【0043】
高い固形容量および低溶媒含有量により、より低いVOC含有量が得られる。VOC含有量は、好ましくは250g/L未満、より好ましくは100g/L未満、最も好ましくは50g/L未満である。幾らかの実施形態において、VOC含有量は、25g/Lまたはそれ以下、例えば10g/Lまたはそれ以下であってもよい。この点において、揮発性有機化合物は、ベンジルアルコールを含む。
【0044】
非常に低い含有量のVOCにより、非常に短い「T2」時間(すなわち、不粘着時間)および非常に短い「T3」時間(硬化乾燥)を有する、迅速硬化塗料システムを確立することが可能になる。前記T2時間は、20時間未満、例えば17時間未満であってもよい。前記T3時間は、24時間未満(ASTM D5895、350ミクロンのフィルム厚さ塗料上で50%RHで10℃で測定)であってもよい。特定の好ましい実施形態において、前記「T2」時間は、23℃/50%RHにおいて、12時間未満である。同じ条件下でのT3時間は、14時間またはそれ以下、例えば、12時間またはそれ以下であってもよい。
【0045】
本発明の塗料組成物のポットライフは、好ましくは少なくとも1時間、例えば1~3時間、例えば1.5~2.5時間である。ポットライフにより意味される内容は、前記組成物が、無気噴霧方法により基板に依然として適用可能なときの、第一および第二成分の混合後の時間である。前記組成物が非常に迅速に硬化する場合、前記塗料組成物は、非常に短いポットライフを有する。30分未満のポットライフは、船ブロック、およびスプレーガンへ供給するのに150m以下の容積の家のような大きな物体を塗布するのにかかる時間を考慮すると、商業的には困難がある。
【0046】
本発明の組成物の重要な特性の多くは、請求する組成物の高い固形分および相対的に低い粘度の結果である。
【0047】
2成分を組み合せた直後に測定した塗料組成物の粘度は、80~130KU、例えば90~120KU(5℃で)または、23℃で60~105KU、例えば70~100KUの範囲であってもよい。
【0048】
または、2成分を組み合わせた直後に測定した粘度は、23℃で200~800cps、例えば200~700cps、詳細には250~600cpsであってもよい。
前記第一組成物の粘度は、23℃で、300~800cps、例えば350~750cpsの範囲であってもよい。
【0049】
前記組成物は時間と共に硬化し、ゆえに、前記組成物の粘度は、硬化の間に増加することが理解できるであろう。請求項1における測定された粘度は、混合の直後、ゆえに、著しい硬化プロセスが起こる前に、得られる。混合の直後とは、混合から5~10分以内を意味する。
【0050】
<エポキシ樹脂>
前記エポキシ系バインダーシステムは、1またはそれ以上のビスフェノールFエポキシ樹
脂を含む。前記樹脂中に複数のエポキシ基を使用(すなわち、少なくとも2のそのような基)することにより、架橋されたネットワークを形成できることが確実にできる。
【0051】
前記プライマー組成物の前記ビスフェノールFエポキシ樹脂は、100~350のEEW値を有してもよい。しかし、前記プライマー層組成物のエポキシ樹脂のEEWは、300またはそれ以下、例えば100~300、詳細には150~250、詳細には170~200の場合、特に好ましい。理想的には、前記エポキシ樹脂は、液体である。
【0052】
このレベルのEEWは、エポキシ樹脂成分(第一組成物A)と硬化剤成分(第二組成物B)との間の所望の混合比(例えば、1:1~4:1体積固体、例えば3:1体積固体)を有するプライマー層組成物を製造することが可能になるので、重要である。
【0053】
また、低いMw(しばしば低いEEWと相関する)樹脂は、より低い粘度を有し、そのため、生成のために、より少ない溶媒が必要となることがよく知られている。それは、VOC含有量を減じ、本発明の高固形分を可能にする。しかし、Mwがあまりに低い場合、結晶化のリスクが存在するため、Mwがあまりに低くならないように注意する必要がある。
前記ビスフェノールF樹脂のMwは、170g/molより高くてもよい。
【0054】
好ましいビスフェノールF(4’,4’-メチレンビスフェノール)樹脂は、ビスフェノールFおよびエピクロルヒドリンの組合せから誘導される。二官能性樹脂の使用は、特に好ましい。
【0055】
ビスフェノールF樹脂の使用は、これらが、より一般的なビスフェノールA樹脂を含む塗料組成物に比べて、本塗料組成物の粘度を減じることが知られているので、重要である。
1またはそれ以上のエポキシ樹脂、例えば2つの液状エポキシ樹脂の混合物を用いることができる。従って、2つの種類のビスフェノールF樹脂を用いてもよい。
【0056】
これらの樹脂は、YDF-170(Kukdo)、GY285(Huntsman)、DER354(Dow)、EPIKOTE 862(Momentive)、BFE-170(CCP)またはKF8100(Kolon)のように、市販で入手可能な製品である。
【0057】
ビスフェノールF基と同様、前記組成物は、内部に、末端に、または環状構造上に、配置される、分子毎に1またはそれ以上のエポキシ基を含有する、芳香族または非芳香族のエポキシ樹脂から選択される更なるエポキシ樹脂を含んでもよい。
適切な更なるエポキシ系バインダーシステムは、ビスフェノールA、ノボラック・エポキシ、二量体修飾エポキシ、脂環式エポキシ、グリシジルエステルおよびエポキシ官能性ポリアクリレートまたはいずれかの組合せから選択されるエポキシおよび修飾エポキシ樹脂を含む。
【0058】
<固体状エポキシ>
更に好ましい実施形態において、液状エポキシプライマーは、前記バインダー組成物中、半固体状または固体状のエポキシ樹脂と合わされる。固体状および液状のエポキシ樹脂の組合せにより、VOCを最小限下にする一方、理想的な乾燥時間/硬化時間が導きだされる。固体状および液状のエポキシ樹脂を添加することにより、溶媒を減じることができ、従って、乾燥時間/硬化時間の間の理想的なバランス、ハンドリングの容易さ、およびVOC要件を提供することができる。
【0059】
固体状エポキシ樹脂は、1またはそれ以上のエポキシ基を有する。適切なエポキシ系バインダーシステムは、ビスフェノールA、ノボラックエポキシ、非芳香族水素添加エポキシ、二量化修飾エポキシ、脂環式エポキシ、グリシジルエステルおよびエポキシ官能性ポリアクリレートまたはこれらのいずれかの組合せから選択されるエポキシ樹脂と修飾エポキシ樹脂を含むと考えられている。
【0060】
好ましい固体状エポキシ樹脂には、ビスフェノールA系樹脂、例えば、4,4’-イソプロピリデンジフェノール-エピクロルヒドリン樹脂、ノボラック樹脂等を含む。
【0061】
最も好ましいのは、300~1000の当量エポキシ重量(EEW、エポキシ当量)の固体状エポキシ樹脂である。しかし、固体状エポキシ樹脂のEEWが350~750、例えば400~700、詳細には500~670の範囲の場合、最も好ましい。ビスフェノールA型樹脂の使用が、最も好ましい。
【0062】
また別の観点からは、好ましい実施形態において、少なくとも一つのエポキシ樹脂成分のEEWは300未満であり、第二エポキシ樹脂のEEWは、300を超える。
【0063】
液状および固体状の両方のエポキシ樹脂がプライマー層のバインダー中の存在する場合、前記液状エポキシ樹脂が前記固体状エポキシ樹脂に対して過剰に存在する場合、好ましい。典型的には、固体状エポキシ樹脂に対する液状エポキシ樹脂の重量比は、前記バインダー中、2:1~1:1、例えば2:1~1.1:1の範囲である。
【0064】
しかし、前記プライマー層組成物および、ゆえに前記第一組成物が液状エポキシ樹脂のみを含むのが好ましい。
【0065】
以下に示すように、前記プライマー層組成物は、バインダー成分を形成するエポキシ樹脂に加えて、他の成分を含みうる。前記バインダー成分は、好ましくは、前記プライマー層組成物の10~50重量%、例えば10~40重量%、詳細には20~40重量%、最も詳細には25~35重量%を形成する。
【0066】
前記バインダー成分は、前記プライマー層組成物を形成する第一組成物の25~70重量%、たとえば第一組成物の25~60重量%を形成するのが好ましい。
【0067】
<シラン>
本発明の前記塗料組成物は、また、少なくとも一つのシランを含む。シランは、低温での乾燥特性、柔軟性、基板への付着性および防腐食性性能を向上させることがでいる。前記シランは、前記第一組成物の一部、または前記第二組成物の一部、好ましくは前記第一組成物として提供されうる。理想的には、前記シランは、エポキシ基を含むものである。本発明において使用されるシランは、通常、400g/mol未満のような、低いMWのシランである。適切なシランは、一般式(I)または(II)のものである。
【0068】
Y-R(4-z)SiXz (I)または
Y-R(3-y)R1SiXy (II)
式中、zは、1~3の整数であり、
yは、1~2の整数であり、
Rは、エーテルまたはアミノリンカーを任意に含む1~12のC原子を有するヒドロカルボニル基であり、
R1は、1~12のC原子を有するヒドロカルボニル基であり;
Yは、対応する硬化剤またはバインダー官能基と反応し得るRに結合した官能基であり、かつ、好ましくはアミンまたはエポキシ基であり、
各Xは、独立して、ハロゲン基またはアルコキシ基を意味する。
【0069】
官能基Yとしては、イソシアネート、エポキシ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、アクリレートまたはメタクリレート基が好ましい。Y基は、前記鎖Rのいずれの部分とも結合しうる。Yがエポキシ基を意味する場合、そのとき、Rは、少なくとも2つの炭素原子を有し、エポキシド環システムを形成しうることが理解されるであろう。
【0070】
Yがアミノ基またはエポキシ基であると、特に好ましい。アミノ基は、NH2が好まし
い。Yは、エポキシ基が好ましい。
【0071】
前記Y基が、ポリアミンであり、かつ、エポキシバインダーと反応する場合、前記シランはこの状況では(B)成分の一部として提供されるのが好ましい。一般に、本発明のキット中、前記シランは、前記シランが存在するキットの成分のいずれの材料とも反応すべきではない。
【0072】
Xが、アルコキシ基、例えばC1-6アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシ基であると、特に好ましい。また、2または3つのアルコキシ基が存在すると、特に好ましい。従って、zは、理想的には2または3、特に3である。下付きyは、2が好ましい。
【0073】
R1は、C1-4アルキル、例えばメチルであるのが好ましい。
Rは、12以下の炭素原子を有するヒドロカルボニル基である。ヒドロカルボニルにより、C原子およびH原子のみを含む基を意味する。それは、アルキレン鎖またはアルキレン鎖と環(例えばフェニルまたはシクロヘキシル環)の組合せを含んでもよい。 用語「エーテルリンカーまたはアミノリンカーを任意に含有する」は、前記炭素鎖は、前記鎖中、-O-または-NH-基により中断され、例えば、シラン、例えば[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン:H2COCHCH2OCH2CH2CH2
Si(OCH3)3を形成してもよいことを意味する。基Yは、-O-または-NH-のようなリンカーに結合する炭素原子と結合しない場合、好ましい。
【0074】
Rは、従って(C6H5)-NH-(CH2)3-またはPh-NH-(CH2)3-または(C6H5)-(CH2)3等を意味してもよい。
【0075】
Rは、任意にエーテルまたはアミノリンカーを含有する、2~8の炭素原子を有し、非置換(明らかにY以外)、非分岐状のアルキル鎖であるのが好ましい。
【0076】
好ましいシラン一般式は、従って、構造(III)である。
Y’-R’(4-z')SiX’z' (III)
[前記式中、
z’は、2~3の整数であり、
R’は、任意にエーテルまたはアミノリンカーを含有する、2~8の炭素原子を有し、非置換、非分岐状のアルキル鎖であり、
Y’は、R’基に結合した、アミノ官能基またはエポキシ官能基であり、
X’は、アルコキシ基を意味する。
【0077】
そのようなシランの例は、多くの代表的なもの、商標名Dynasylan(R)Dのもと市販されているDegussa in Rheinfeldenにより製造された製品、OSi Specialtiesにより製造されたSilquest(R)シラン、およびWacker により製造されたGENOSIL(R)シランである。
【0078】
詳細な例には、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO, Silqu
est A-174NT)、3-メルカプトプロピルトリ(メ)エトキシシラン(Dynasylan MTMOまた
は3201; Silquest A-189)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO, Silquest A-187)、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Silquest Y-11597)、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-189)、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A-186)、ガンマ-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 35, Genosil
GF40)、(メタクリルオキシメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 33)、イソシアナ
ートメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 43)、アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO; Silquest A-1110)、アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)またはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan
DAMO, Silquest A-1120)もしくはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリ
エトキシシラン、トリアミノ-官能性トリメトキシシラン(Silquest A-1130)、ビス(ガ
ンマ-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A-1170)、N-エチル-ガンマ-
アミノイソブチル(isobytyl)トリメトキシシラン(Silquest A-Link 15)、N-フェニル-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y-9669)、4-アミノ
-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest Y-11637)、(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン(Genosil XL 926)、(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 973)、Deolink Epoxy TEおよびDeolink Amino TE (D.O.G Deutsche Oelfabrik)ならびにその混合物を含む。
【0079】
興味ある、他の特定のシランには、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシランH2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3、3,3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、(H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2)、[3-
(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン(H2COCHCH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3,[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン(H2COCHCH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3)を含む
。
【0080】
シランGLYMOの使用が特に好ましい。シランの混合物もまた、用いてもよい。
前記第一組成物中に存在するシランの量は、全重量に対して2.0~15重量%、好ましくは2.0~10重量%、より好ましくは2.0~8.0重量%、理想的には2.0~7.0重量%であってもよい。前記塗料組成物中のシランの量は、全重量に対して1.5~12重量%、好ましくは1.5~8.0重量%、より好ましくは1.5~6.0重量%、理想的には2.0~6.0重量%であってもよい。通常、シランは、前記第二組成物中に存在しない。合わせた組成物中のシランの量は、次に加えられる第二組成物の量を考慮に入れて、第一組成物中の量によって、決定する。前記シラン含有量が増加すると、前記組成物の粘度は低下する傾向にある。従って、ビスフェノールFと相対的に高いシラン含有量(最低1.5重量%)の組合せにより、使用される溶媒の非常に低いレベルを考慮すると、著しく低い粘度を有する塗料組成物が得られる。
【0081】
<反応性希釈剤>
前記プライマー層組成物は、更に反応性希釈剤、好ましくは修飾エポキシ化合物から形成された反応性希釈剤を含むのが好ましい。
【0082】
そのような反応性希釈剤の例には、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基中の炭素原子の数:1~16)、バーサチック酸(versatic acid)のグリシジルエステル(R1 R2 R3 C-COO-Gly、式中、R1
R2 R3 は、アルキル基、例えば、C8~C10アルキルのような基であり、Gly
は、グリシジル基である)、オレフィンエポキシド(CH3-(CH2)n-Gly、式中
、n=11~13、Gly:グリシジル基)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2)6-O-Gly)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-Gly)、トリメチルオールプロパントリグリシジルエーテル(CH3-CH2-C(CH2-O-Gly)3)およびC1-20-アルキルフェニルグリシジルエーテル(好ましくはC1-5アルキルフェニルグリシジルエーテル)、例えば、メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテルおよびグリシジルネオデカン酸エステルを含む。別の好ましい選択肢は、カシューナッツの殻から得られる油とエピクロルヒドリンとの反応から誘導されるCardolite NC-513である。
もちろん、上記反応性希釈剤は、脂肪族反応性希釈剤、例えば1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルまたは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが好ましい。8~14の鎖の脂肪族グリシジルエーテルは、また、好ましい。好ましい反応性希釈剤は、塗料の柔軟性に貢献するため、脂肪族であろう。p-TBPGEの使用も可能である(パラtert-ブチルフェニルグリシジルエーテル)。
【0083】
前記反応性希釈剤が、モノ官能性とは逆のポリ官能性である場合、これにより乾燥プロセスがスピードアップし、かつ、架橋密度が増加するため、好ましい。これはまた、より良い抗腐食性特性に貢献する。
【0084】
上記反応性希釈剤は、単独または2もしくはそれ以上の希釈剤の組合せを用いることができる。
【0085】
前記反応性希釈剤は、前記エポキシ樹脂と共に、前記第一組成物中に存在するのが好ましい。
【0086】
全体として前記プライマー層組成物中、前記反応性希釈剤は、0.5~20重量%、好ましくは1.0~20重量%、例えば1.0~15重量%、詳細には2.0~12重量%の量で含まれるのが望ましい。
【0087】
前記第一組成物中、前記反応性希釈剤は、2.0~30重量%、好ましくは5.0~20重量%、例えば5.0~15重量%、詳細には6.0~12重量%の量で含まれるのが望ましい。
【0088】
前記反応性希釈剤を上記量で添加することにより、前記主のプライマー層組成物の粘度は低下して、高固形組成物の製造を可能にする。
【0089】
好ましくは、前記反応性希釈剤の粘度は、23℃で50%RHにおいて、<50cP、好ましくは<30cP、最も好ましくは粘度<20cPである、方法は、ISO2884-1:2006に従って、円錐平板粘度計である。
【0090】
<炭化水素樹脂>
本発明の前記塗料組成物は、炭化水素樹脂も含んでもよい。これは、好ましくは、前記第一組成物の一部として処方される。通常、全てのタイプの炭化水素樹脂、例えば、固体状または液状の純粋なC5およびC9の炭化水素樹脂、C5/C9の混合物、脂肪族/芳香族原料およびエポキシまたはヒドロキシルでの修飾型の炭化水素樹脂を用いることができる。C5樹脂は、通常、5つの炭素を有するオリゴマーまたはポリマーである。前記C9樹脂は、通常、9つの炭素の芳香族モノマーのオリゴマーまたはポリマーである。好ましくは、前記炭化水素樹脂は、1000g/mol未満の分子量、最も好ましくは、500g/mol未満の分子量を有する。
【0091】
最も好ましい実施形態において、前記炭化水素樹脂は、キシレンホルムアルデヒド樹脂(例えばEPODIL LV5)である。
【0092】
理想的には、前記炭化水素樹脂は、石油樹脂である。前記石油樹脂は、ヒドロキシル基を含んでもよいポリマーであり、主な原料として、石油化学製品および炭素原料から石油精製における副生成物として生成される画分を、用いて形成される。
【0093】
本発明において用いられうる前記石油樹脂の例には、ナフサ分解による副生成物として製造された、重油から得られた、C9画分(例えばスチレン誘導体、例えばアルファメチルスチレン、o,m,p-クレゾール、インデン、メチルインデン、クメン、ナフタレン(napthalene)またはビニルトルエン)を重合することにより得られる芳香族石油樹脂;1,3-ペンタジエンまたはイソプレン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンまたはシクロペンテンのようなC5分画を重合することにより得られた脂肪族石油樹脂を含む。また、本発明において、C9画分およびC5画分を重合することにより得られるコポリマー系石油樹脂;C5画分の共役ジエンの一部(例えば、シクロペンタジエンまたは1,3-ペンタジエン)が環状重合された脂肪族石油樹脂;芳香族石油樹脂を水素添加することにより得られる樹脂;およびジシクロペンタジエンを重合することにより得られる脂環式石油樹脂も、用いることができる。触媒条件下でC9ブレンドの反応から得られるジアリールおよびトリアリール化合物の混合物も、用いることができる。これらの石油樹脂中へ、ヒドロキシル基が導入される。もちろん、上記石油樹脂、ヒドロキシル基含有芳香族石油樹脂は、水抵抗性および海水抵抗性の観点から特に好ましい。
【0094】
別の可能性がある炭化水素樹脂は、1,3-ジメチルベンゼンとホルムアルデヒドから合成されたキシレン樹脂(例えば、Epodil LV5)である。また、2官能性フェノール(例えばフェノール、パラ-t-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、o,p-ジクミルフェノール)のようなフェノールで修飾したキシレン樹脂も使用可能である。
別の選択肢は、クマロン構成単位、インデン構成単位および/またはスチレン構成単位をその主鎖に含有するコポリマーである、クマロン樹脂である。
【0095】
前記インデン-クマロン樹脂は、末端をフェノールで修飾してもよく、クマロン樹脂の少なくとも一部の芳香環は、水素添加されてもよい。そのようなクマロン樹脂には、数平均分子量Mn(GPCにより測定、ポリスチレンを単位として、以下同様)が200~300の液状生成物と、数平均分子量Mnが600~800の固体状生成物とを含み、それらのいずれか一つは、単独または組み合わせて用いてもよい。
【0096】
固体状の炭化水素樹脂の使用は、通常、避けられるであろう。
好ましくは、前記炭化水素樹脂は、塗料の0.5~20重量%、好ましくは1.0~20重量%、例えば1.0~15重量%、詳細には2.0~12重量%を形成する。
【0097】
前記第一組成物において、前記炭化水素樹脂は、2.0~30重量%、好ましくは2.0~15重量%、例えば3.0~10重量%の量で含まれるのが望ましい。
【0098】
最も好ましくは、OH含有量が0~5重量%の炭化水素樹脂または、OH含有量が<3%であるキシレンホルムアルデヒドである。
【0099】
天然樹脂(例えば、ガムロジン、ウッドロジンおよびタル油ロジン)の水素添加物をベースにした炭化水素樹脂を用いることも可能である。炭化水素樹脂は、ロジンエステルの
エステル化物をベースにしたものを用いてもよい。
【0100】
<添加剤>
前記プライマー層組成物は、様々な他の成分、例えば、その抗腐食性特性を向上させる成分も含んでもよい。特に、前記プライマー層組成物は、金属酸化物、金属炭酸塩、タルク、長石等を含んでもよく、防腐食性材料として機能することができる。特定の抗腐食性機能性顔料は、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛末、アルミニウム・フレーク、酸化鉛を含む。亜鉛粉末または亜鉛末は、エポキシプライマー中に含まれて亜鉛エポキシプライマーを形成することがよく知られており、この点において、非常に興味がある。亜鉛粉末または亜鉛末は、亜鉛合金、例えば、国際公開公報WO2008/125610号において記載したものと、全体または部分的に置き換えることができる。補助のさび止め剤、例えば、モリブデン酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩またはバナジウム酸塩、超微細な二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛および/またはフィラー(例えば、シリカ、焼成粘土、ケイ酸アルミニウム(alumina silicate)、タルク、バライトまたは雲母)。
【0101】
好ましいフィラーパッケージは、低油吸収値を有する増量剤(例えば、BaSO4、ガ
ラス球、長石、カルサイト、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ドロマイト、カオリンまたは珪灰石)、および任意に薄層状の増量剤(例えば、雲母、タルク、アルミニウム・フレーク、緑泥石およびカオリン)を含む。
【0102】
前記プライマー層組成物または前記第一組成物は、抗腐食性剤を30~70重量%含んでもよい。理想的には、これらの物質は、前記プライマー層組成物の45重量%より多くを形成する。
【0103】
上記様々な成分以外の他の成分には、抗たるみ剤/抗硬化剤、可塑剤、無機または有機の脱水剤(安定剤)、防汚剤、色素および他のフィルム形成成分を含み、必要な時に添加することができる。
【0104】
抗たるみ剤/抗硬化剤(チキソトロープ剤)としては、チキソトロープ剤、例えば、ポリアミドワックス、ポリエチレンワックスまたはベントナイト系チキソトロープ剤を用いることができる。そのような抗たるみ剤/抗硬化剤の例には、Cryvallac Ultra、 Crayvallac LV(両方ともArkemaより)、Thixatrol STおよびThixatrol Max(両方ともElementisより)、Disparlon 6650(Kusumoto Chemicals Ltdより)を含む。
着色顔料の例には、チタン白、赤色酸化鉄、鉄黄、カーボンブラックおよび有機着色顔料を含む。種ペイントを用いて特定の色を製造してもよい。
【0105】
上記様々な添加剤成分の総量は、用途に依存し、無差別に決定できないが、前記第一組成物中に10~65重量%の合計量でしばしば含まれる。さらに、これらは、塗料組成物の100重量部中、10~65重量部の合計量でしばしば含まれる。
【0106】
存在する場合、適切な溶媒は、キシレンのような炭化水素である。存在する場合、溶媒は、前記プライマー層組成物を製造するのに用いられる前記第一組成物に添加するのが好ましい。幾つかの溶媒は、前記硬化剤と共に存在するか、または、用いる添加剤の幾つかの中に存在してもよい。前記プライマー層中の前記溶媒の性質は制限されないが、広範囲の沸点を有する公知溶媒を用いることができる。そのような溶媒の例には、キシレン、トルエン、MIBK、メトキシプロパノール、MEK、酢酸ブチル、ベンジルアルコール、オクチルフェノール、レゾルシノール、n-ブタノール、イソブタノールおよびイソプロパノールを含む。上記溶媒は、単独または2種類以上の組合せを用いてもよい。
【0107】
<硬化剤>
前記エポキシバインダーを含有する前記第一組成物を硬化させるために、当該分野でよく知られているように、ポリアミド、ポリアミン、エポキシ-アミン付加物、フェナルカミン(フェナルカミン)またはフェナルカミド(phenalkamide)硬化剤を用いてもよい。これは、また、架橋剤または硬化剤としても知られている。硬化剤として機能するためには、前記化合物は、窒素に結合した、少なくとも2つの「反応性」水素原子を含まなければならない。従って、前記硬化剤は、典型的には、少なくとも2つのアミン(一級または二級であってもよい)を含む。
【0108】
適切な硬化剤は、脂肪族アミンおよびポリアミン(例えば、脂環式アミンおよびポリアミン)、ポリアミドアミン、ポリオキシアルキレンアミン(例えば、ポリオキシアルキレンジアミン)、アミノ化ポリアルコキシエーテル(例えば、「Jeffamines」として市販されているもの)、アルキレンアミン(例えば、アルキレンジアミン)、アラルキルアミン、芳香族アミン、マンニッヒ塩基(例えば、「フェナルカミン」として市販されているもの)、アミノ官能性シリコーンまたはシラン、ならびにそれらのエポキシ付加物および誘導体を含むものから選択されるアミンまたはアミノ官能性ポリマーを含むと考えられる。
【0109】
適切な市販で入手可能な硬化剤の例は、以下のとおりである。
o Cardolite NC-541, ex Cardanol Chemicals (USA), マンニッヒ塩基
o Cardolite Lite 2001, ex Cardanol Chemicals (USA), マンニッヒ塩基
o Sunmide CX-105X, ex Sanwa Chemical Ind. Co. Ltd. (シンガポール), マンニッヒ塩
基
o Epikure 3090 硬化剤, ex Resolution Performance Products (USA), エポキシとのポ
リアミドアミン付加物
o Epikure 3140 硬化剤, ex Resolution Performance Products (USA), ポリアミドアミ
ンEpikure 3115X-70 硬化剤, ex Resolution Performance Products (USA), ポリアミド
アミン
o SIQ Amin 2015, ex SIQ Kunstharze GmbH (ドイツ), ポリアミドアミン
o SIQ Amin 2030, ex SIQ Kunstharze GmbH (ドイツ), ポリアミドアミン
o Polypox VH 40309/12, ex Ulf Prummer Polymer-Chemie GmbH (ドイツ), ポリオキシアルキレンアミン
o Polypox VH 40294, ex Ulf Prummer Polymer-Chemie GmbH (ドイツ), マンニッヒ塩基
o Ancamine 2609, ex Air Products (UK), マンニッヒ塩基
o Ancamine 2695, ex Air Products (UK), polyamine Ancamine 2738, ex Air Products (UK), ポリアミン
o Adeka 硬化剤, ex Adeka Corporation (日本), マンニッヒ塩基
o AP1077, Admark, マンニッヒ塩基
o CeTePox 1490 H, ex CTP Chemicals and Technologies for Polymers (ドイツ), ポリ
オキシアルキレンアミン
o エポキシ 硬化剤 MXDA, ex Mitsubishi Gas Chemical Company Inc (USA), アラルキルアミン
o ジエチルアミノプロピルアミン, ex BASF (ドイツ), 脂肪族アミン
o Gaskアミン 240, ex Mitsubishi Gas Chemical Company Inc (USA),アラルキルアミン
o Cardolite Lite 2002, ex Cardanol Chemicals (USA), マンニッヒ塩基
o Aradur 42 BD, ex Huntsman Advanced Materials (ドイツ), 脂環式アミン
o Isophorondiamin, ex BASF (ドイツ), 脂環式アミン
o Crayamid E260 E90, ex Cray Valley (Italy), エポキシとのポリアミドアミン付加物
o Aradur 943 CH, ex Huntsman Advanced Materials (スイス), エポキシとのアルキレン
アミン付加物。
【0110】
修飾ポリアミンの使用が最も好ましい。フェナルカミンも用いることができる。前記硬化剤は、前記エポキシ樹脂とは分けて輸送し、適用のほんの少し前のみに、前記エポキシ樹脂と混合することが、理解されるであろう。本発明の前記硬化剤は、従って、前記第一組成物と組み合わされ、前記プライマー層組成物を形成する第二組成物として輸送される。前記第二組成物は、前記硬化剤からなってもよい。
【0111】
興味がある硬化剤の重要なパラメータは、300cPより低い粘度、例えば、100~300cPの粘度である。
【0112】
好ましい実施形態において、前記硬化剤は、架橋プロセスを促進するための別個の触媒を用いることなく、用いられる。しかし、幾つかの公知硬化剤は、三級アミン触媒のような触媒と組合せ、それは本発明の範囲内である。硬化剤はニートまたは溶媒中で供給され、理想的にはニートで供給されうると理解されるであろう。
【0113】
室温で硬化するエポキシ系バインダーシステムの場合が好ましい。
1以上の硬化剤との関連する「活性水素当量」の数は、前記1以上の硬化剤のそれぞれからの貢献の合計である。前記活性水素当量への前記1以上の硬化剤のそれぞれからの貢献は、前記硬化剤の活性水素当量重量で割った前記硬化剤のグラムとして定義される。前記硬化剤の前記活性水素当量重量は、1molの活性水素と等価な前記硬化剤のグラムとして決定される。エポキシ樹脂との付加物については、付加前の反応剤の貢献は、前記完全なエポキシ系バインダーシステム中の「活性水素当量」の数の決定のために用いられる。「エポキシ当量」の数は、前記1以上のエポキシ樹脂および前記シランおよび反応性希釈剤のような、エポキシを含有する他の成分のそれぞれからの貢献の合計である。前記1以上のエポキシ樹脂のそれぞれの、エポキシ当量への貢献は、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量重量で割った前記エポキシ樹脂のグラムとして定義される。前記エポキシ樹脂の前記エポキシ当量重量は、1molのエポキシ基と等価な前記エポキシ樹脂のグラムとして決定される。エポキシ樹脂との付加物については、付加(adductation)前の反応剤の貢献は、前記エポキシ系バインダーシステム中の「エポキシ当量」の数の決定のために用いられる。
【0114】
好ましくは、前記硬化剤の合計の水素当量とエポキシ当量の合計の比は、50:100~120:100の範囲である。
【0115】
詳細には、好ましいエポキシ系塗料組成物は、前記硬化剤の活性水素当量と、前記組成物のエポキシ当量の比が、60:100~110:100、例えば、70:100~105:100、例えば、80:100~90:100の範囲である。
【0116】
前記第一組成物と前記第二組成物の混合比は、もちろん、存在するエポキシと活性水素の相対的な量に影響される。理想的には、前記混合比は、固形分体積で、第二組成物に対して第一組成物の比で、1:1~10:1、例えば5:1~2:1である。
言及がない限り、固体分体積%(% by solids volume)で表される全ての量は、適用の準備がされた混合されたプライマー層組成物の固体分体積%として理解される。
【0117】
前記硬化剤組成物(第二組成物)および第一組成物は、基板に適用する少し前に混合される。
【0118】
<前記プライマー組成物の製造>
前記プライマー組成物は、ペンキ製造の分野において通常用いられる適切な技術のいずれかによって製造することができる。従って、様々な構成成分は、高速ディスペンサー、ボールミル、パールミル(pearl mill)、三本ロール練り機、インラインミキサー等を用いて一緒に混合してもよい。本発明によるペンキは、バグフィルター、パトロンフィルター(patron filter)、線問隙濾過器、ウェッジワイヤーフィルター(wedge wire filter)、金属エッジフィルター、EGLM turnocleanフィルター(ex Cuno)、DELTAストレインフィルター(ex
Cuno)およびジェンガ・ストレイナー(Jenag Strainer)フィルター(ex Jenag)を用いるか、又は振動ろ過により、ろ過されてもよい。
【0119】
ここで用いられる前記プライマー組成物は、成分を混合することにより、通常、製造される。例として、前記第一組成物と前記硬化剤成分(前記第二組成物)は、前記硬化剤を前記エポキシ第一組成物へ添加し、混合物が均一になるまでよく攪拌することにより混合できる。前記混合物は、ただちに適用(例えば、スプレー適用)の用意ができているが、適用の前に誘導時間を与えてもよい。
【0120】
<前記プライマー組成物の適用>
前記プライマー組成物は、通常のエアスプレー装置またはエアレススプレー装置もしくはエアマックススプレー装置により、または2K無気噴霧ポンプ(または代わりに、ブラシまたはローラーを用いて、特にストライプコートとして用いられた際)のような、よく知られた標準的適用方法により、基板(特に鋼構造の基板)へ適用できる。好ましくは、前記組成物は、周囲条件で、前記塗料組成物を予備加熱することなく、適用される。通常の圧力、例えば3~5バールを用いることができる。
【0121】
<フィルム厚み>
前記塗料は、典型的には、100~500μm、例えば150~350μmの総乾燥フィルム厚みで適用される。前記プライマー層の乾燥フィルム厚みは、少なくとも100μmであるのが好ましい。適用されたフィルム厚みは、塗布される基板の性質および予想される暴露状況に応じて変化してもよい。
【0122】
<硬化>
一旦、基板が前記塗料で塗布されると、前記塗料は、硬化するせざるを得ない。前記プライマー層は、自然に硬化してもよい。硬化を促進するために照射および加熱を用いてもよいが、本発明の組成物は、更なる干渉なしに室温で硬化する。
【0123】
本発明の塗料の揮発性含有量が非常に低いため、単一の塗料を適用するのが好ましいが、前記プライマー層が「湿っている」間に、更なる塗料を適用することが可能である。従って、更なる塗料を適用する前に、前記第一塗料が硬化するのを待つ必要が無い。層厚みを積み上げるために、前記プライマー塗料の多数の層を適用することが知られているが、通常は、更なる層を適用する前に、各層を硬化(乾燥)させる。本発明においては、更なる層の適用は、湿った(または未硬化の)プライマー層上に行うことができる。これにより、適用プロセスが加速する。
【0124】
従って、更なる観点において、本発明は、中間の硬化工程無しに前記プライマー層組成物のアンダーコートへ、前記プライマー層塗料組成物の更なるコートを適用する方法を含む。または、本発明は、前記プライマー層塗料組成物の更なるコートを、アンダーコートが硬化する前に、前記プライマー層組成物のアンダーコートへ適用する方法を含む。
本発明は、以下の実施例を参照して説明するが、これらの実施例には限定されない。
【0125】
<分析方法>
前記組成物の製造のための一般的な方法
前記プライマー層の成分(I)を、指示された成分(重量部で)を当該分野の当業者に公知の通常の方法で、全て混合して製造した。成分(I)は、その後、適用前に成分(II)/硬化剤と混合した。前記プライマー層は、通常の無気噴霧により、鋼基板へ典型的に適用する。
【0126】
<円錐平板粘度計を用いた粘度の測定>
前記バインダーおよびペンキ組成物の粘度を、円錐平板粘度計を用いて、23℃の温度50%RHに設定して、ISO2884-1:2006(ASTM D4287)に従って、10000s-1で0~10Pの範囲の粘度測定を提供して、測定する。
ストーマー粘度(KU)は、23℃でストーマー粘度計でASTM D 562に従って行った。
【0127】
<BeckおよびKoller(BK)乾燥時間記録装置による乾燥時間の測定>
適用されたフィルムを、23℃/50%RH(または指示された他の条件)で乾燥時間を測定する間じゅう、暴露した。Beck Koller乾燥時間を、ASTM D5895に従いBeck and Koller 乾燥時間記録装置を用いて試験した。T2-半乾燥(タックフリー)、T3-硬化乾燥時間。
この試験のため、300ミクロンDFTを用いる。
【0128】
<ポットライフの測定>
前記ペンキのポットライフは、最低限100gの前記ペンキ組成物を23℃で混合した後、直接、粘度増加を測定することにより測定する。粘度は、15分ごとに23℃の温度でストーマー粘度計を用いてASTM D 562に従って測定する。ポットライフは、粘度が110KUに達した時刻が設定される。
【0129】
<伸び:円錐形マンドレル屈曲試験。方法は、ASTM D 522である。>
円錐形パネル(110×170×1T)上に、各ペンキをアプリケーターにより600μmの厚みで適用した。屈曲前の乾燥条件は、4週間、室温(23℃、50%RH)であった。
【0130】
<乾燥フィルム厚み(DFT)の測定>
乾燥フィルム厚みは、エルコメーター(Elcometer)456FBSIを用いて測定する。
【0131】
<前記組成物の固形分の測定>
前記組成物中の固形分は、ASTM D5201-05に従って算出する。
前記塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量の計算
前記塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量は、ASTM D5201-05の従って計算する。
【0132】
[実施例]
全ての実施例において、前記硬化剤中の活性水素当量と、前記塗料組成物のエポキシ当量との比は、100:100である。これら全ての実施例の計算したVOCは0である、ゆえに、固形分は100%である。
【0133】
以下の実施例を調製した。
【0134】
【0135】
化学量論量の硬化剤とバインダーを用いる。
【0136】
エポキシ樹脂の種類
1. BPF液状エポキシ:ビスフェノール-Fエポキシ樹脂
2. BPA液状エポキシ:ビスフェノール-Aエポキシ樹脂
3. BPA(n=0)エポキシ:ビスフェノール-A(n=0)エポキシ樹脂
【0137】
【0138】
前記樹脂の粘度は、表2に示す。
【0139】
【0140】
データは、レシピC2より粘性が低い塗料を提供するため、ビスフェノールFが好ましい選択肢であることを示す。レシピC3のより低い分子量のビスフェノールAは、低温で、結晶化しやすい傾向を有する。
【0141】
[シランカップリング剤の効果]
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
シランカップリング剤は、乾燥時間を短くするのに貢献し、レベルが増加するとより顕著な効果を有する。
【0148】
乾燥時間は、通常用いられる溶媒型(born)ユニバーサル・プライマーよりわずかに長いが、単一コートシステムとして、そのシステムの全適用時間は、著しく減じるであ
ろう。
シランA-187(エポキシ官能性シラン)の量を増加させると、前記ペンキの粘度は減じる(レシピ4~9参照)。
【0149】
[エポキシ反応性希釈剤の効果]
【0150】
【0151】
【0152】
脂肪族希釈剤は、前記塗料の柔軟性に貢献するため、好ましい。二官能性反応性希釈剤は、乾燥速度を速めることができるため、一官能性より好ましく、架橋密度の増加は、よりよい抗腐食性特性に貢献する。
【0153】
【0154】
【0155】
[炭化水素樹脂の効果]
【0156】
【0157】
炭化水素およびその代替物のタイプ
1. Epodil LV5: OH 含有量(0%)、1,3-ジメチルベンゼンを有するホルムアルデヒド
2. Novares LC15:OH含有量(1.5%),フェノール修飾炭化水素
3. Novares LS500:OH含有量(7.3%),フェノール修飾炭化水素4. Novares TL10:OH含有量(0%),C9炭化水素
5. Novares LR600:OH 含有量(0%),エポキシ官能化炭化水素,EEW=295
6. Evonik Albidur EP2240:エポキシ官能化シリコーンゴム,EEW=300
【0158】
【0159】
【0160】
炭化水素樹脂の量が増加すると、ポットライフが増加する。
Epodil LV5の量が増加すると、組成物A、および、組成物A+組成物Bの混合物の両方において、粘度が減少する。
Epodil Lv-5は、他の炭化水素樹脂より、より効果を生じるようである。Novares LR600(レシピ8)は、粘度低下において最も近かった。