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特開2024-123140遺伝子編集に基づく低フィトエストロゲンダイズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123140
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】遺伝子編集に基づく低フィトエストロゲンダイズ
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/54 20180101AFI20240903BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240903BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240903BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240903BHJP
【FI】
A01H6/54 ZNA
C12N15/09 100
A01H1/00 A
C12N5/10
A01H5/10
A01H5/00 A
A01H6/54
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099369
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2022517403の分割
【原出願日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】62/903,484
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511276161
【氏名又は名称】サイバス オイローペ ベスローテン ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】プレスネイル, ジム
(72)【発明者】
【氏名】デモレスト, ザック
(72)【発明者】
【氏名】シャン, チウェイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対応する改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有する遺伝子編集ダイズ植物、植物部分、および植物細胞、ならびにそれらの生産の方法を提供する。
【解決手段】例えば、Myb29遺伝子のコード領域、IFS2プロモーターのMYBCORE結合モチーフ、IFS1プロモーターのMYBCORE結合モチーフ、IFS2遺伝子のコード領域、IFS1遺伝子のコード領域、またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上の変異を導入することは、標的化ゲノム修飾を介して遺伝子編集植物、植物部分または植物細胞を生産するために使用される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞と比較して低減したイソフラ
ボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞であって、前記ダイズ植物、
植物部分、または植物細胞が、1つまたは両方のIFS1およびIFS2遺伝子のコード
領域において1つ以上の変異を含み、前記植物、植物部分、または植物細胞が、前記改変
されていないダイズ植物におけるIFS1またはIFS2遺伝子発現と比較して、前記1
つまたは両方のIFS1およびIFS2遺伝子の低減した発現によって特徴付けられる、
ダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項2】
改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞と比較して低減したイソフラ
ボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞であって、前記ダイズ植物、
植物部分、または植物細胞が、Myb29遺伝子のコード領域における変異のコード領域
において1つ以上の変異を含み、前記植物、植物部分、または植物細胞が、前記改変され
ていないダイズ植物におけるIFS1またはIFS2遺伝子発現と比較して、1つまたは
両方のIFS2遺伝子およびIFS1遺伝子の低減した発現によって特徴付けられる、ダ
イズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項3】
改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞と比較して低減したイソフラ
ボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞であって、前記ダイズ植物、
植物部分、または植物細胞が、IFS1プロモーターまたはIFS2プロモーターのMY
BCORE結合モチーフのコード領域において1つ以上の変異を含み、前記植物、植物部
分、または植物細胞が、前記改変されていないダイズ植物におけるIFS1またはIFS
2遺伝子発現と比較して、1つまたは両方のIFS2遺伝子およびIFS1遺伝子の低減
した発現によって特徴付けられる、前記ダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項4】
前記1つ以上の変異が、レアカッティング(rare-cutting)エンドヌクレ
アーゼを使用する標的化ゲノム修飾を使用して導入される、請求項1~3のいずれか一項
に記載のダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項5】
前記レアカッティングエンドヌクレアーゼが、転写活性化因子様エフェクターヌクレア
ーゼ(TALEN)である、請求項4に記載のダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項6】
前記変異が、配列番号1または配列番号2内の配列に結合するTALエフェクターを含
むTALENを使用して導入される、請求項1に記載のダイズ植物、植物部分、または植
物細胞。
【請求項7】
前記変異が、配列番号3または配列番号4内の配列に結合するTALエフェクターを含
むTALENを使用して導入される、請求項3に記載のダイズ植物、植物部分、または植
物細胞。
【請求項8】
前記変異が、配列番号5内の配列に結合するTALエフェクターを含むTALENを使
用して導入される、請求項2に記載のダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項9】
前記変異が、配列番号6~35のうちの1つ以上に結合するTALエフェクターを含む
TALENを使用して導入される、請求項1~3のいずれか一項に記載のダイズ植物、植
物部分、または植物細胞。
【請求項10】
前記植物、植物部分、または植物細胞が、導入遺伝子を含まない、請求項1~9のいず
れか一項に記載のダイズ植物、植物部分、または植物細胞。
【請求項11】
前記植物部分が、種子である、先行請求項のいずれか一項に記載のダイズ植物、植物部
分、または植物細胞。
【請求項12】
前記植物、植物部分、または植物細胞が、前記改変されていないダイズ植物、植物部分
、または植物細胞中のイソフラボンの含有量と比較して、約10%、約20%、約30%
、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%低減するイソフラボンの前
記含有量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のダイズ植物、植物部分、また
は植物細胞。
【請求項13】
標的化ゲノム修飾を使用して、改変されていない植物、植物部分、または植物細胞と比
較してイソフラボンの減少した含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞を
生産するための方法であって、前記ダイズ植物、植物部分または植物細胞のMyb29遺
伝子のコード領域、IFS2プロモーターのMYBCORE結合モチーフ、IFS1プロ
モーターのMYBCORE結合モチーフ、IFS2遺伝子のコード領域、IFS1遺伝子
のコード領域、またはそれらの組み合わせにおいて1つ以上の変異を導入することを含む
、方法。
【請求項14】
前記1つ以上の変異が、レアカッティングエンドヌクレアーゼを使用して導入される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レアカッティングエンドヌクレアーゼが、TALENである、請求項14に記載の
方法。
【請求項16】
前記1つ以上の変異が、配列番号1または配列番号2内の配列に結合するTALエフェ
クターを含むTALENを使用して導入される、請求項13~15のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の変異が、配列番号3または配列番号4内の配列に結合するTALエフェ
クターを含むTALENを使用して導入される、請求項13~15のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の変異が、配列番号18内の配列に結合するTALエフェクターを含むT
ALENを使用して導入される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の変異が、配列番号5~17および19~35のうちの1つ以上に結合す
るTALエフェクターを含むTALENを使用して導入される、請求項13~15のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記イソフラボンの減少した含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞が
、導入遺伝子を含まない、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、その全体の参照によって本明細
書に組み込まれる、配列表を含む。2020年9月18日に作成された該ASCIIコピ
ーは、1702_042PCT1_SL.txtと名付けられ、33,318バイトのサ
イズである。
【背景技術】
【0002】
ダイズは、ヒト消費のためのタンパク質の経済的かつ豊富な供給源である。ダイズ粕に
由来するタンパク質抽出物は、好ましいアミノ酸プロファイルおよび高いタンパク質含有
量を有する。ダイズ抽出物は、ダイズ全体と同様に、多種多様な消費者製品において使用
される。ダイズ抽出タンパク質は乳児フォーミュラの重要な成分であり、ダイズタンパク
質を含有する配合物は、例えば、乳糖不耐症を有する乳児に価値がある。
【0003】
植物は、通常の植物の発生および生理に不可欠な基本分子とともに、多種多様な二次化
学物質を産生する。イソフラボンは、多種多様な機能を有するマメ科植物によって産生さ
れた二次植物化学化合物の分類である。イソフラボンはまた、植物由来エストロゲン様化
合物であるため、フィトエストロゲン(phytoestrogen)とも記載される。
このように、イソフラボンは、ヒトホルモンおよび発生系へのそれらの潜在的な影響につ
いて調査されている。ダイズタンパク質抽出物はまた、成人女性などの消費者集団に有益
であり、閉経期症状の予防における潜在的な利益を有する、多様なイソフラボン(具体的
にはゲニステインおよびダイゼイン)を含む二次植物代謝産物も含有する。しかしながら
、これらのエストロゲン様イソフラボンは、乳児およびタンパク質サプリメントの消費者
を含む他の集団にとって潜在的にあまり望ましくない。
【0004】
イソフラボノイドの産生は、リグニン、アントシアニン、およびスチルベンを含むいく
つかの他の重要な植物化学物質の生合成経路も含む、マメ科植物のフェニルプロパノイド
経路からの分岐を表す。イソフラボンは、根圏細菌の結節形成および病原体応答を含む他
の生物との相互作用に関与することが知られている。
【0005】
植物におけるイソフラボンレベルの改変は、ゲノムにおける標的化誘導性局所病変(T
ILLING)、トランスジェニック過剰発現、またはトランスジェニック抑制などの技
法を使用してアプローチされている(例えば、米国特許第8,329,995号、米国特
許第5,994,075号、米国特許第7,098,011号を参照されたい)。しかし
ながら、これらの方法は、意図されない変異またはトランスジェニックDNA配列を含ま
ない生成物を送達することに失敗し、消費者需要および公衆の受け入れを満たすことに失
敗する。
【0006】
既存品種と比較してイソフラボンのより少ない含有量を有するダイズ植物に対する需要
が、存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様は、標的化された変異誘発法、具体的にはゲノム編集を伴い、従来の育種
方法によって植物を生成することにのみ基づく実施形態を除外する(すなわち、植物およ
び植物材料生成物(種子を含む)は本質的生物学的プロセスの手段によって排他的に得ら
れず、プロセス特徴は本質的生物学的プロセスを定義しない)。本明細書に記載されるよ
うに、本明細書に開示されるダイズ植物、植物部分、および植物細胞におけるイソフラボ
ンのより低いまたは低減した含有量は、導入遺伝子の存在に起因しない。
【0008】
一態様では、本明細書で提供されるのは、改変されていないダイズ植物、植物部分、ま
たは植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、ま
たは植物細胞であって、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞が、1つまたは両方のI
FS1およびIFS2遺伝子のコード領域において1つ以上の変異を含み、植物、植物部
分、または植物細胞が、1つまたは両方のIFS1およびIFS2遺伝子の低減した発現
によって特徴付けられる、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞である。
【0009】
別の態様では、本発明で提供されるのは、改変されていないダイズ植物、植物部分、ま
たは植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、ま
たは植物細胞であって、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞が、Myb29遺伝子の
コード領域における変異のコード領域において1つ以上の変異を含み、植物、植物部分、
または植物細胞が、1つまたは両方のIFS2遺伝子およびIFS1遺伝子の低減した発
現によって特徴付けられる、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞である。
【0010】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、改変されていないダイズ植物、植物部分、
または植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、
または植物細胞であって、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞が、IFS1プロモー
ターまたはIFS2プロモーターのMYBCORE結合モチーフのコード領域において1
つ以上の変異を含み、植物、植物部分、または植物細胞が、1つまたは両方のIFS2遺
伝子およびIFS1遺伝子の低減した発現によって特徴付けられる、ダイズ植物、植物部
分、または植物細胞である。
【0011】
本明細書に開示されるダイズ植物、植物部分、または植物細胞のいくつかの実施形態で
は、1つ以上の変異は、レアカッティング(rare-cutting)エンドヌクレア
ーゼを使用する標的化ゲノム修飾を使用して導入される。いくつかの実施形態では、レア
カッティングエンドヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TA
LEN)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号1または配列番
号2内の配列に結合するTALエフェクターを含むTALENを使用して導入される。い
くつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号3または配列番号4内の配列に結合
するTALエフェクターを含む1つ以上のTALENを使用して導入される。いくつかの
実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号18内の配列に結合するTALエフェクター
を含む1つ以上のTALENを使用して導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上
の変異は、配列番号5~17および19~35のうちの1つ以上に結合するTALエフェ
クターを含む1つ以上のTALENを使用して導入される。
【0012】
本明細書に記載されるダイズ植物、植物部分、または植物細胞のいくつかの実施形態で
は、植物、植物部分、または植物細胞は、導入遺伝子を含まない。いくつかの実施形態で
は、植物部分は、種子である。
【0013】
いくつかの実施形態では、植物、植物部分、または植物細胞は、対応する改変されてい
ないダイズ植物、植物部分、または植物細胞におけるイソフラボンの含有量と比較して、
約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約9
0%低減するイソフラボンの含有量を有する。
【0014】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、Myb29遺伝子のコード領域、IFS2
プロモーターのMYBCORE結合モチーフ、IFS1プロモーターのMYBCORE結
合モチーフ、IFS2遺伝子のコード領域、IFS1遺伝子のコード領域、またはそれら
の組み合わせに1つ以上の変異を導入することを含む、標的化ゲノム修飾を使用して、改
変されていない植物、植物部分、または植物細胞と比較してイソフラボンの減少した含有
量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞を生産するための方法である。
【0015】
いくつかの実施形態では、変異は、レアカッティングエンドヌクレアーゼを使用して導
入される。いくつかの実施形態では、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、TALE
Nである。
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号1または配列番号2内の配列に結
合するTALエフェクターを含むTALENを使用して導入される。いくつかの実施形態
では、1つ以上の変異は、配列番号3または配列番号4内の配列に結合するTALエフェ
クターを含むTALENを使用して導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上の変
異は、配列番号18内の配列に結合するTALエフェクターを含むTALENを使用して
導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号5~17および19
~35のうちの1つ以上に結合するTALエフェクターを含むTALENを使用して導入
される。
【0016】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、ダイズ植物、植物部分、または
植物細胞は、導入遺伝子を含まない。
【0017】
本発明の前述の態様および付随する利点の多くは、添付の図面と併せて考慮される際に
、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるようになるため、より容
易に認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】(A)ダイズIFS1(配列番号1)および(B)ダイズIFS2(配列番号2)のコード配列を示す。
図1B】(A)ダイズIFS1(配列番号1)および(B)ダイズIFS2(配列番号2)のコード配列を示す。
図2】標的配列に隣接する左および右の半分のTALENによって標的化されたIFS配列を示す(より大きな分解能が分解図に示される)。図は、それぞれ、出現順に配列番号44~49を開示する。
図3】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-1】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-2】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-3】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-4】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-5】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図3-6】Myb29転写因子配列および関連するTALENの例示である。図は、配列番号50を開示する。
図4】強調表示された4つのユニークなMYBCOREモチーフ(CNGTTR)を有するIFS1プロモーター配列(配列番号3)を示す。
図5】MYBCOREモチーフを有するIFS1プロモーターの例示である。
図6】特定されたMYBCOREモチーフを有するIFS2プロモーター配列(配列番号4)を示す。
図7】MYBCOREおよびTALEN結合部位を有するIFS2プロモーターの例示である。図は、配列番号51を開示する。
図8】Myb29(配列番号18)のコード配列を示す。
図9】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-25)の代表的なIFS1 DNA配列を示す。図は、配列番号36を開示する。
図10】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-34)の代表的なIFS1 DNA配列を示す。図は、配列番号37を開示する。
図11】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-4)の代表的なIFS1 DNA配列を示す。図は、配列番号38を開示する。
図12】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-4)の代表的なIFS2 DNA配列を示す。図は、配列番号39を開示する。
図13】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-38)の代表的なIFS2 DNA配列を示す。図は、配列番号40を開示する。
図14】再生したT0植物からの「IFS2.2」と称された、確認された変異体プロファイル(-4)の代表的なIFS2 DNA配列を示す。「IFS2.2」名称は、ユニークなバリアントを示す。この場合、欠失部位は、図12に記載される-4nt欠失変異体とは異なる。図は、配列番号41を開示する。
図15】再生したT植物からの確認された変異体プロファイル(-5)の代表的なIFS2 DNA配列を示す。図は、配列番号42を開示する。
図16】再生したT植物からの、「IFS2.2」と称された、確認された変異体プロファイル(-5)の代表的なIFS2 DNA配列を示す。欠失部位は、図15に記載される-5nt欠失変異体とは異なる。図は、配列番号43を開示する。
図17】3つの変異体植物株(#1~#3と称された)の種子から抽出されたダイジン、グリシチン、およびゲニスチンの量を、乾燥植物材料のμg/mgで表された野生型種子抽出物(対照)と比較するフィトエストロゲン分析の結果を示す。
図18図17に提供される値のグラフ表現である。
図19】3つの変異体植物株(#1~#3と称された)の種子から抽出された総フィトエストロゲン量を、乾燥植物材料のμg/mgで表された野生型種子抽出物(対照)と比較するフィトエストロゲン含有量分析の結果を示す。
図20】対照抽出物(上)および試料#1抽出物(下)におけるイソフラボン成分の代表的なHPLCクロマトグラムを示す。囲まれた領域は、それぞれ、ダイジン、グリシチン、およびゲニスチンに関連する吸光度ピークを示し、試料#1と比較して、対照において顕著に大きい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、イソフラボンの産生を担う最終生合成酵素、イソフラボン合成酵素(IFS
1およびIFS2)、同様にIFS1およびIFS2の発現を制御する遺伝子(Myb2
9など)および制御配列(プロモーターなど)の選択的標的化に焦点を当てる。
【0020】
本開示は、より低いイソフラボン含有量を有するダイズタンパク質および油製品に対す
る消費者のニーズに対処する。本開示は、より低いイソフラボン含有量を有する非トラン
スジェニックダイズタンパク質および油製品に対する消費者ニーズにさらに対処する。
【0021】
したがって、一態様では、本明細書で提供されるのは、イソフラボン合成酵素(IFS
)遺伝子、IFS1およびIFS2のコード領域において1つ以上の変異を含む本開示の
改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞、ダイズ植物、植物部分、およ
び植物細胞と比較して、低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、お
よび植物細胞である。本明細書に開示されるダイズ植物、植物部分、および植物細胞は、
導入遺伝子不含であり、標的IFS1およびIFS2に対する相同性を有する遺伝子にお
いて修飾を含まない。
【0022】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、遺伝子Myb29、IFS1およびIFS
2の制御された発現に重要な転写制御因子において1つ以上の変異を含む本開示の改変さ
れていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞、ダイズ植物、植物部分、および植物
細胞と比較して、低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、および植
物細胞である。
【0023】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、IFS1および/またはIFS2の制御領
域において1つ以上の変異を含む改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細
胞と比較して、低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、および植物
細胞である。いくつかの実施形態では、制御領域は、プロモーター領域である。
【0024】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、改変されていないダイズ植物、植物部分、
または植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、
または植物細胞を生産する方法であって、IFS1のコード領域、IFS2のコード領域
、IFS1の制御領域、IFS2の制御領域、遺伝子Myb29、またはそれらの組み合
わせに1つ以上の変異を導入することによって標的化遺伝子編集を含む、方法であり、こ
こで、IFS1および/またはIFS2遺伝子の発現は、排除される。いくつかの実施形
態では、遺伝子編集は、イソフラボンがダイズに有益であるダイズ根における発現を妨げ
ることなく、ダイズ種子におけるIFS1および/またはIFS2遺伝子の発現を排除す
るために、遺伝子のTALEN編集を使用して実行される。
【0025】
本発明者らは、IFS1およびIFS2遺伝子配列が、TALENなどの単一のレアカ
ッティングエンドヌクレアーゼによって同時に標的化され得る領域を有することを発見し
た。本発明者らは、いくつかのダイズ品種からのイソフラボン合成酵素遺伝子配列をさら
に分析し、保存領域を特定して、TALENなどのレアカッティングエンドヌクレアーゼ
の標的部位にさらに焦点を当てた。したがって、IFS1およびIFS2の遺伝子編集の
ために検証された、TALENなどのレアカッティングエンドヌクレアーゼは、多種多様
な市販のダイズ株において使用され得る。TALEN編集の下流で生成された植物は、同
様の条件下で栽培された標準的なダイズ品種よりも明らか低減したイソフラボンを有する
。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるダイズ植物、植物部分、または植物細
胞は、対応する改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞におけるイソフ
ラボンの含有量と比較して、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約7
0%、約80%、約90%、約95%、約98%、または約99%低減するイソフラボン
の含有量を有する。本明細書で使用される場合、「改変されていないダイズ」は、遺伝子
編集技法、例えば、本明細書に開示されるTALEN編集によって改変されていないダイ
ズを指す。改変されていない植物は、野生型植物を含む。いくつかの実施形態では、ダイ
ズ植物部分は、ダイズ種子である。
【0026】
したがって、本開示は、ゲノム全体の他の位置における変異をもたらさず、かつ最終的
に選択された編集された株への外来物質の導入を伴わない様式で、ダイズの複数の品種に
わたってイソフラボン合成酵素遺伝子を特異的に標的化するための以前に知られていない
方法を提供する。さらに、遺伝子編集技術に由来する植物は、有利には、細胞生物学的再
生が困難であるエリート株に交配され得る。
【0027】
IFS1およびIFS2遺伝子の発現は、少なくとも部分的に、Myb29転写因子に
よって制御されることが示されている(Chu S. et al.,PLoS Gen
et.13(5)(2017))。Myb29は、プロモーター領域におけるMYBCO
RE配列モチーフに結合し、IFS1/IFS2などの下流遺伝子の発現を上方制御する
、転写活性化因子である。したがって、本明細書に開示されるのは、Myb29遺伝子へ
の変異の導入によって、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞を生産し、それによって
、IFS1およびIFS2遺伝子のうちの1つ以上の発現を低減または排除する方法であ
る。さらに、本明細書に開示されるのは、Myb29遺伝子において1つ以上の変異を含
むダイズ植物、植物部分、または植物細胞であり、ダイズ植物、植物部分、または植物細
胞は、IFS1およびIFS2遺伝子のうちの1つ以上の低減または排除された発現を有
する。
【0028】
本発明者らは、IFS1およびIFS2のプロモーター領域におけるMYBCORE配
列ならびにこれらの結合モチーフを除去するように設計されたTALENを特定した。I
FS1および/またはIFS2プロモーターからのMYBCORE結合モチーフの除去は
、Myb29遺伝子が、IFS1および/またはIFS2のその調節を排除する間に改変
されず、かつ完全に機能的なままにされ、他の標的遺伝子を制御することができるため、
特に興味深い。
【0029】
本明細書に開示される方法、植物、植物部分、および植物細胞のいくつかの実施形態で
は、1つ以上の変異は、レアカッティングエンドヌクレアーゼを使用する標的化ゲノム修
飾を介して導入される。本明細書における「レアカッティングエンドヌクレアーゼ」とい
う用語は、約12~40bpの長さ(例えば、14~40bpの長さ)の認識配列(標的
配列)を有する核酸配列を対象とするエンドヌクレアーゼ活性を有する天然の、または操
作されたタンパク質を指す。典型的なレアカッティングエンドヌクレアーゼは、それらの
認識部位の内側で切断を引き起こし、3’OHまたは5’OHオーバーハングとともに4
つのヌクレオチドに段違い切断(staggered cut)を残す。これらのレアカ
ッティングエンドヌクレアーゼは、より具体的には、ドデカペプチドファミリーに属する
、ホーミングエンドヌクレアーゼの野生型もしくはバリアントタンパク質などのメガヌク
レアーゼであり得るか(WO2004/067736を参照されたい)、または切断活性
を有するDNA結合ドメインおよび触媒ドメインと会合する融合タンパク質から生じ得る
。TALエフェクターエンドヌクレアーゼおよびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN
)は、エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインとのDNA結合ドメインの融合の例で
ある。レアカッティングエンドヌクレアーゼの概説については、Baker,Natur
e Methods 9:23-26,2012を参照されたい。
【0030】
「レアカッティングエンドヌクレアーゼ」はまた、本明細書で提供される方法において
使用され得るRNA誘導系を包含する。例えば、クラスター化した規則的な間隔の短い回
文配列リピート/CRISPR関連(CRISPR/Cas)系は、RNAを使用してD
NA切断を指示する(例えば、Belahj et al.,Plant Method
s 9:39,2013を参照されたい)。これらの系は、Cas9エンドヌクレアーゼ
およびガイドRNA(CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化crRNA
(tracrRNA)との間の複合体、またはcrRNAの3’末端とtracrRNA
の5’末端との間の合成融合体のいずれか)からなる。ガイドRNAは、プロトスペーサ
ー隣接モチーフ(PAM)に隣接する配列に対するCas9結合およびDNA切断、例え
ば、Streptococcus pyogenesからのCas9に対するNGGを指
示する。標的DNA配列にあると、Cas9は、標的配列に相補的であるcrRNA配列
の3’末端から3つのヌクレオチドの位置でDNA二本鎖切断を生成する。Cas9に加
えて、PrevotellaおよびFrancisella 1(Cpf1)からのCR
ISPR系が、変異を導入するために用いられ得る(例えば、Zetsche et a
l.,Cell 163:759-771(2015)を参照されたい)。
【0031】
本明細書に開示される方法、植物、植物部分、および植物細胞のいくつかの実施形態で
は、1つ以上の変異は、配列番号1内の配列に結合するTALエフェクターを含むTAL
ENを使用して導入される(図1A)。本明細書に開示される方法、植物、植物部分、お
よび植物細胞のいくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号2内の配列に結合
するTALエフェクターを含むTALENを使用して導入される(図1B)。本明細書に
開示される方法、植物、植物部分、および植物細胞のいくつかの実施形態では、1つ以上
の変異は、配列番号3内の配列に結合するTALエフェクターを含むTALENを使用し
て導入される(図4)。本明細書に開示される方法、植物、植物部分、および植物細胞の
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号4内の配列に結合するTALエフ
ェクターを含むTALENを使用して導入される(図6)。本明細書に開示される方法、
植物、植物部分、および植物細胞のいくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番
号18内の配列に結合するTALエフェクターを含むTALENを使用して導入される(
図8)。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、以下の表1に示される配列番号5
~17および19~35から選択される配列に結合するTALエフェクターを含む1つ以
上のTALENを使用して導入される。
【表1】
【0032】
いくつかの実施形態では、TALENは、本明細書に開示される配列の機能的バリアン
ト内の配列、例えば、配列番号1~4および18に結合するTALエフェクターを含む。
「核酸またはタンパク質配列の機能的バリアント」という用語は、本明細書で使用される
場合、例えば、配列番号1~4および18に関して、非バリアント遺伝子の生物学的機能
を保持する変異体遺伝子配列または遺伝子配列の一部を指す。機能的バリアントはまた、
例えば、非保存残基において、得られるタンパク質の機能に影響を及ぼさない配列改変を
有するポリペプチドをコードする目的の遺伝子のバリアントも含む。また、本明細書に示
される遺伝子の改変されていない、例えば、野生型核酸配列と実質的に同一である、すな
わち、例えば、非保存残基においていくつかの配列多様性のみを有し、生物学的に活性で
ある、バリアントも、包含される。本明細書で使用される場合、本発明の様々な態様によ
る特定のヌクレオチドまたはアミノ酸配列のバリアントは、配列番号1~4および18の
うちの1つなどの、本明細書に開示される遺伝子の特定の非バリアントヌクレオチド配列
に対して、少なくとも約50%~少なくとも約99%、例えば、少なくとも約75%、少
なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少
なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少
なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、ま
たは少なくとも約99%以上の配列同一性を有し得る。配列同一性は、当該技術分野で周
知である配列アラインメントプログラムを使用して判定され得る。
【0033】
TALEN遺伝子編集は、レシピエント植物細胞における発現に必要な適切なプロモー
ター、ターミネーター、および他の非コード配列を含む、プラスミドにコードされたDN
A認識ドメインおよびFokIエンドヌクレアーゼドメインを含む2つの半TALENタ
ンパク質の遺伝子特異的標的化に基づく。FokIは二量体の組み合わせにおいてのみ活
性であり、2つの半分のTALENが、TALEN遺伝子編集に必要なエンドヌクレアー
ゼDNA切断を可能にするために必要である。TALENの細胞、例えば、ダイズGly
cine maxの細胞への導入は、当業者に既知の複数の方法において達成され得る。
遺伝子編集TALENの導入の一般的な方法は、TALEN遺伝子カセットを含むプラス
ミドを保有するAgrobacterium spp.を用いたトランスフェクション、
TALEN配列カセットをコードするプラスミドまたはmRNAを用いたバイオリスティ
ックボンバードメント、TALEN配列カセットをコードするプラスミドまたはmRNA
を用いたPEG媒介性形質転換、およびPEG媒介性トランスフェクションを含む複数の
方法によるTALENタンパク質の導入を含む。
【0034】
したがって、本明細書で提供される方法は、改変されていない植物からの対応する植物
部分または生成物と比較して、減少したイソフラボン含有量を有する植物部分(例えば、
種子)または植物生成物(例えば、粕、油)を生産するために使用され得る。本発明は、
特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載
される。
【0035】
いくつかの実施形態では、IFS1およびIFS2遺伝子のエンドヌクレアーゼ誘導変
異を有するダイズ植物の再生は、以下のように達成され得る。いくつかの実施形態では、
IFS1およびIFS2遺伝子は、両方のIFS1およびIFS2内の配列を標的化する
ように設計された1つのTALEN(対)を送達することによってノックアウトされ得る
。このことを達成するために、IFS1およびIFS2 TALENは、好適なDNAベ
クターにクローニングされる。かかるベクターは、Agrobacterium媒介性形
質転換によって、またはバイオリスティクスを使用することによって、植物細胞に送達さ
れ得る。TALエフェクターエンドヌクレアーゼを発現するトランスジェニックダイズ植
物は、標準的な形質転換プロトコルを使用して生成され得る。植物は土壌に移され、およ
そ4週間の成長後、小さな葉はDNA抽出および遺伝子型決定のために各植物から採取さ
れる。各DNA試料は、第1に、T-DNAの存在についてPCRを使用してスクリーニ
ングされる。IFS1およびIFS2遺伝子のさらなるPCRベースの特徴付けは、変異
が生じたかどうかを評価するために使用される。
【0036】
いくつかの実施形態では、IFS1またはIFS2プロモーターにおけるMYBCOR
E要素のエンドヌクレアーゼ媒介性欠失を用いたダイズ植物の再生は、以下のように達成
され得る。IFS1およびIFS2の上流領域の配列分析は、配列CNGTTRを有する
MYBCORE要素を特定するために実行され、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり
、Rはプリン(GまたはA)である。例えば、IFS1プロモーターについては、4つの
MYBCOREモチーフが特定され、TALEN対が設計される(図5)。IFS2プロ
モーターについては、例えば、1つのMYBCOREモチーフが特定され、TALEN対
が設計される(図7)。IFS1プロモーターおよびIFS2プロモーター、または両方
のプロモーターを標的化するTALEN対は、好適なDNAベクターにクローニングされ
、トランスジェニック小植物へと再生する植物細胞に送達される。土壌中でのおよそ4週
間成長後、小さな葉はDNA抽出および遺伝子型決定のために各植物から採取される。各
DNA試料は、第1に、T-DNAの存在についてPCRを使用してスクリーニングされ
る。IFS1およびIFS2遺伝子のプロモーター領域のさらなるPCRベースの特徴付
けは、変異が生じたかどうかを評価するために使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、Myb29におけるエンドヌクレアーゼ誘導変異を有するダ
イズ植物の再生は、以下のように達成され得る。Myb29のコード配列は分析され、T
ALENは、Myb29がIFS1またはIFS2発現を誘導することを防止するであろ
う機能喪失型欠失を誘導するように設計される。Myb29のエクソン2(例えば、配列
番号18内)の標的配列に結合するように設計されたTALEN対は、ダイズ細胞に送達
され、所望の変異を含む植物に再生する。
【0038】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載され、特許請求の範囲に記載される本発明
の範囲を限定しない。
【実施例0039】
実験を、IFS1およびIFS2における変異を有するダイズ植物を作成するために行
った。このことを達成するために、GmIFS1_T01 TALエフェクターエンドヌ
クレアーゼ対(配列番号5および6(表1))を細菌ベクターにクローニングし、TAL
エフェクターエンドヌクレアーゼ発現を、ノパリン合成酵素(NOS)プロモーターによ
って駆動し、Agrobacterium媒介性形質転換によって、またはバイオリステ
ィクスを使用することによってダイズ植物細胞に送達した。
【0040】
TALエフェクターエンドヌクレアーゼを発現するトランスジェニックダイズ植物を、
標準的な形質転換プロトコルを使用して生成した。TALエフェクターエンドヌクレアー
ゼ対をコードする配列を有する野生型ダイズ半分の子葉の形質転換に続いて、おそらくト
ランスジェニック植物を再生した。植物を土壌に移し、およそ4週間の成長後、小さな葉
をDNA抽出および遺伝子型決定のために各植物から採取した。複数のイベントを生成し
た。次いで、すべてのT導入遺伝子陽性植物をアッセイして、TALエフェクターエン
ドヌクレアーゼ認識部位に変異を有する植物を特定した。
【0041】
次いで、陽性植物のIFS1およびIFS2 PCR増幅子を、クローニングベクター
に挿入し、Sanger配列決定に供して、変異体プロファイルを確認し、特徴付けた。
次いで、得られるリードを野生型配列に整列させて、対立遺伝子の種類を決定した。代表
的な配列を、図9~16に示す(配列番号36~43)。
【0042】
ダイズIFS1およびIFS2遺伝子のTALエフェクターエンドヌクレアーゼ誘導変
異から生産された種子に関するフィトエストロゲンプロファイルを決定するために、ダイ
ズ株を、成熟するまで栽培し、自家受精させ、IFS1およびIFS2遺伝子のホモ接合
変異体である種子を生じさせた。これらの種子を、総フィトエストロゲン含有量ならびに
ダイジン、グリシチン、およびゲニスチンの量を決定することによってフィトエストロゲ
ン含有量について分析した。簡単に述べると、3つの変異体植物株(#1~#3)および
野生型植物株(対照)からの個々のダイズ種子をモルタルおよび乳棒で粉砕し、フィトエ
ストロゲンを80%メタノールで粉砕した組織から抽出した。変異体植物株からの抽出物
は、強い黄色の色合いを示したが、野生型種子抽出物は、クリーム色を有した(示さず)
。抽出物を遠心分離し、上清を濾過した。濾過された試料を加水分解して、定量的HPL
C分析(標準吸収波長としての260nm)を使用して非エステル化フィトエストロゲン
形態を決定した。代表的なクロマトグラムを、図20に示す。対照種子と比較して、分析
の結果は、各変異株は、総フィトエストロゲン(総フィトエストロゲンの55~100倍
の変化(図17および19))、ならびにダイジン、グリシチン、およびゲニスチンの各
々の顕著な低減を有する種子を生産したことを示す(図17および18)。例えば、試料
#3種子は、野生型種子と比較して、ダイジンの98.87%低減、グリシチンの97.
56%低減、およびゲニスチンの99.30%低減を示した(図17)。総フィトエスト
ロゲンは、試料#1において98.25%、試料#2において98.57%、試料#3に
おいて99.07%低減した(図19)。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、関連する値が、別段示されない限り、プラ
スまたはマイナス5パーセント(+/-5%)修正され得、開示される実施形態の範囲内
に留まることを示す。
【0044】
本明細書に開示される本発明の代替的要素または実施形態のグループ化は、限定として
解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個々に、またはグループの他のメンバ
ーまたは本明細書に見出される他の要素との任意の組み合わせで参照され、特許請求され
得る。グループの1つ以上のメンバーが、利便性および/または特許性の理由でグループ
に含まれるか、グループから削除され得ることが、予想される。任意のそのような包含ま
たは削除が生じる際、本明細書は、修正されたグループを含むように本明細書でみなされ
、したがって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのMarkushグルー
プの書面による記載を満たす。
【0045】
別段示されない限り、核酸またはオリゴヌクレオチドは、5’から3’の配向で左から
右に書かれる。
【0046】
「本明細書」、「上記」、および「下記」という単語、ならびに同様の意味の単語は、
本出願において使用される際、別段示されない限り、本出願全体を指し、本出願の任意の
特定の部分を指すものではない。本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」と
いう単語は、記載された値の周り、通常は、記載された値の10%以内などの標準的な誤
差の範囲内でのわずかな変動を含む。
【0047】
本明細書で参照される参照特許、特許出願、および科学的文献は、各個々の刊行物、特
許または特許出願が、参照によって組み込まれるように具体的かつ個別に示されているか
のように、それらの全体の参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態が、例示され、記載されている一方で、様々な変更が本発明
の主旨および範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2024123140000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されていないダイズ植物、植物部分、または植物細胞と比較して低減したイソフラボン含有量を有するダイズ植物、植物部分、または植物細胞であって、前記ダイズ植物、植物部分、または植物細胞が、1つまたは両方のIFS1およびIFS2遺伝子のコード領域において1つ以上の変異を含み、前記植物、植物部分、または植物細胞が、前記改変されていないダイズ植物におけるIFS1またはIFS2遺伝子発現と比較して、前記1つまたは両方のIFS1およびIFS2遺伝子の低減した発現によって特徴付けられる、ダイズ植物、植物部分、または植物細胞。