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特開2024-123159遺伝子治療のためのアデノ随伴ウイルスベクターのくも膜下腔内投与
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  • 特開-遺伝子治療のためのアデノ随伴ウイルスベクターのくも膜下腔内投与 図1A
  • 特開-遺伝子治療のためのアデノ随伴ウイルスベクターのくも膜下腔内投与 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123159
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】遺伝子治療のためのアデノ随伴ウイルスベクターのくも膜下腔内投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20240903BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240903BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
A61K35/76
A61P25/16 ZNA
A61P25/00
A61P25/14
A61P17/02
A61P19/00
A61P25/06
A61P31/00
A61K39/395 V
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K48/00
A61P31/06
A61P31/04
A61P31/18
A61P31/22
A61P31/12
C12N15/13
C12N15/864 100Z
C07K16/18
C07K16/40
C07K16/12
C07K16/08
C07K16/10
A61P9/10
A61P25/16
A61K35/76 ZNA
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024100272
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2022085777の分割
【原出願日】2016-10-27
(31)【優先権主張番号】62/247,498
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロスウェル,ウイリアム・トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中枢神経系へのくも膜下腔内送達のため配合されるAAVベクターを含む組成物を提供する。
【解決手段】中枢神経系へのくも膜下腔内送達のため配合されている最低1種のAAVベクターを含む組成物が提供される。該組成物は、そのための発現制御配列に連結されている免疫グロブリン構築物をコードする配列を含有する最低1種の発現カセット及び製薬学的に許容できる担体を含む。該免疫グロブリン構築物は新生児Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか又は測定可能な親和性を有しないように改変されている免疫グロブリンでありうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、偏頭痛、卒中及び/又は感染症の1種又はそれ以上から選択される神経変性障害の処置のためにくも膜下腔内に送達するため配合される最低1種のAAVベクターを含む組成物であって、該組成物は中枢神経系の細胞を標的とするAAVキャプシドを含むAAVベクターを含み、前記キャプシドは最低1個のAAV末端逆位配列と、そのための発現制御配列とに操作可能に連結されている免疫グロブリン構築物をコードする配列をその中にパッケージングしており、前記組成物は製薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤をさらに含む、組成物。
【請求項2】
前記免疫グロブリン構築物は、一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)、Fv、Fab、F(ab)2、F(ab)3、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、イムノアドヘシン、モノクローナル抗体、ラクダ科又はサメの重鎖免疫グロブリンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記障害はアルツハイマー病であり、かつ前記組成物は、Aβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質に特異的な免疫グロブリンを発現する最低1種のベクターストックを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫グロブリンはscFvである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記scFvは、配列番号8、配列番号10又は配列番号12から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
最低2種の異なる抗体発現カセットを含むAAVストックを含む、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
単一免疫グロブリン発現カセットを含むAAVストックを含む、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
くも膜下腔内に送達され、中枢神経系及び全身の双方で症状を処置する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリン構築物が、新生児Fc受容体(FcRn)に対する親和性が低下するか又は測定可能な親和性がないように改変されている免疫グロブリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
中枢神経系の細胞を標的とするAAVキャプシドを含む最低1種のAAVベクターストックを含む、アルツハイマー病の処置に有用な組成物であって、該キャプシドが最低1個のAAV末端逆位配列と、そのための発現制御配列とに操作可能に連結されている免疫グロブリン構築物をコードする配列をその中にパッケージングしており、前記最低1種のベクターストックが、Aβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質に特異的な免疫グロブリンを発現し、かつ、製薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤をさらに含む、上記組成物。
【請求項12】
前記免疫グロブリンがscFvである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記scFvが、配列番号8、配列番号10又は配列番号12から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
アルツハイマー病の処置方法であって、最低1種のベクターストックが、Aβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質に特異的な免疫グロブリンを発現する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の組成物のくも膜下腔内送達をそれの必要な被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項15】
ALSの処置方法であって、請求項1又は2に記載の組成物をくも膜下腔内に送達することを含み、最低1種のAAVベクターストックの組成物が、Derlin-1結合領域に特異的な免疫グロブリン、神経突起伸長阻害物質及び/又はALS酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)に対する抗体構築物並びにそれらのバリアントを発現するが、但し抗SOD1抗体はScFvフラグメント以外である、方法。
【請求項16】
パーキンソン病又は関連するシヌクレイン病の処置方法であって、請求項1又は2に記載の組成物をくも膜下腔内に送達することを含み、該組成物中で最低1種のベクターストックが、1種又はそれ以上のロイシンリッチリピートキナーゼ2抗体、dardarin(LRRK2)抗体、αシヌクレイン抗体及び/又はDJ-1(PARK7)抗体をコードする、方法。
【請求項17】
多発性硬化症の処置方法であって、請求項1又は2に記載の組成物をくも膜下腔内に送達することを含み、該組成物中で最低1種のベクターストックが、a4インテグリン、LINGO1、CD20、CD25、IL12、p40+IL23p40、LINGO-1、CD40、及びrHIgM22、CD52、IL17、CD19、並びに/又はSEMA4Dの1種又はそれ以上に対し向けられる免疫グロブリンをコードする、方法。
【請求項18】
中枢神経系の感染症の処置方法であって、請求項1又は2に記載の組成物をくも膜下腔内に送達することを含み、該組成物中で最低1種のベクターストックが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)、リステリア菌(Listeria monocytogens)、ライム病菌(Borrelia burdorferia)、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペス科ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス、日本脳炎、ヨーロッパ脳炎及び/又はJCウイルスの1種に対し向けられる免疫グロブリンをコードする、方法。
【請求項19】
プリオン関連疾患の処置方法であって、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の組成物をくも膜下腔内に送達することを含み該組成物中で最低1種のベクターストックが、主要プリオンタンパク質又はPrPScの1種又はそれ以上に向けられる免疫グロブリンをコードする、方法。
【請求項20】
前記組成物は血液脳関門の化学的又は物理的破壊の非存在下で投与される、請求項14ないし20のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
中枢神経系へのくも膜下腔内送達のため配合されている最低1種のAAVベクターを含む組成物が説明される。
【背景技術】
【0002】
電子形式で提出される資料の引用することによる組み込み
出願人は、ここに、これとともに提出される配列表の資料を引用することにより組み込む。
【0003】
生物医学及び製薬学の研究者は、中枢神経系を冒す疾患を処置するための新たなかつより効果的な治療薬を考案するために働いてきた。しかしながら、脳の保護における血液脳関門の有効性を含む中枢神経系それ自体の生物学は、薬物送達に対する深刻な難題を提示する。これは、卒中、神経変性障害及び脳腫瘍のような多くの中枢神経系疾患のための利用可能な処置の欠如につながる。
【0004】
神経変性はニューロンの死を含むニューロンの構造又は機能の進行性の喪失の包括的用語である。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病及びハンチントン病を含む多くの神経変性疾患は神経変性過程の結果として起こる。モノクローナル抗体治療を含む多様な治療がこうした神経変性疾患の処置について記載されている。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムはヌクレオチド145個の末端逆位配列(ITR)を含む長さが約4.7kbである。AAV血清型2(AAV2)ゲノムのヌクレオチド配列は、非特許文献1により修正されるとおり非特許文献2に提示されている。ウイルスDNAの複製(rep)、被胞化/パッケージング及び宿主細胞染色体組込みを指図するシスに作用する配列がITR内に含まれている。3種のAAVプロモーター(それらの相対的な地図位置についてp5、p19及びp40と命名される)が、rep及びcap遺伝子をコードする2個のAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一AAVイントロンの(ヌクレオチド2107及び2227での)差次的スプライシングと結合した2個のrepプロモーター(p5及びpi 9)は、rep遺伝子からの4種のrepタンパク質(rep 78、rep 68、rep 52及びrep 40)の産生をもたらす。Repタンパク質は、究極的にウイルスゲノムの複製を司る複数の酵素特性を保有する。cap遺伝子はp40プロモーターから発現され、そしてそれは3種のキャプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3をコードする。選択的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位が3種の関連したキャプシドタンパク質の産生を司る。単一のコンセンサスポリアデニル化部位はAAVゲノムの地図位置95に配置されている。AAVの生活環及び遺伝学は非特許文献3で総説されている。AAVゲノムのコーディング配列はトランスで提供され得、内因性ウイルス遺伝子よりはむしろ目的の遺伝子を運搬するAAVベクターを生成することを可能にする。これらAAVベクターはin vivoで遺伝子移入が可能である。複数の血清型のAAVが存在しかつ多様な組織向性を提供する。既知の血清型は、例えばAAVl、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10及びAAV1を含む。AAV9は特許文献1及び非特許文献4に記載されている。
【0006】
SOD1を標的とするための一本鎖の分泌可能なScFv抗体を運搬するAAVベクターのくも膜下腔内投与がALSのための潜在的治療アプローチとして記載されている。例えば非特許文献5を参照されたい。
【0007】
必要とされるのは、完全長抗体を制限なしに含む免疫グロブリン構築物の中枢神経系への他の送達方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,198.951号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ruffing ET ah、J Gen Virol、75:3385-3392(1994)
【非特許文献2】Srivastavaら、J Virol、45:555-564(1983)
【非特許文献3】Muzyczka、Current Topics in Microbiology and Immunology、158:97-129(1992)
【非特許文献4】Gaoら、J.Virol、78:6381-6388(2004)
【非特許文献5】P Patelら、Molecular Therapy(2014):22、3、498-510
【発明の概要】
【0010】
中枢神経系へのくも膜下腔内送達のため配合されるAAVベクターを含む組成物が提供され、該組成物は、そのための発現制御配列に操作可能に連結されているCNSへの送達のための免疫グロブリン生成物をコードする配列を含む最低1種の発現カセット並びに製薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤を含む。一局面において、組成物は血液脳関門の化学的又は物理的破壊の非存在下で投与される。一例において、免疫グロブリン構築物は新生児Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか又は測定可能な親和性を有しないように改変されている免疫グロブリンを含む。
【0011】
一局面において、中枢神経系の状態の処置のためのくも膜下腔内送達のため配合されるAAVベクターを含む組成物が記載され、前記組成物は、中枢神経系の細胞を標的とするAAVキャプシドを含むAAVベクターを含み、該キャプシドは最低1個のAAV末端逆位配列及びそのための発現制御配列に操作可能に連結されている免疫グロブリン構築物をコードする配列をその中にパッケージングしており、前記組成物は製薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤をさらに含む。適切に、コードされる免疫グロブリンは、新生児Fc受容体(FcRn)に対する低下された親和性を有するか又は測定可能な親和性を有しないように変異又は操作されている。
【0012】
神経障害及び/又は中枢神経系の感染症の処置で有用な免疫グロブリン構築物をコードする最低1種のAAVベクターストックを含む組成物の使用が本明細書に提供される。
【0013】
別の局面において、最低1種のAAVベクターストックがAβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質に特異的な免疫グロブリンを発現する本明細書説明のAAVベクター組成物をそれの必要な被験体のくも膜下腔内に送達することを含むアルツハイマー病の処置方法が提供される。
【0014】
なお別の局面において、最低1種のAAVベクターストックがALS酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)に特異的な免疫グロブリン及びそのバリアントを発現するが、但し該抗SOD1抗体はScFvフラグメント、Derlin-1結合領域及び/
又は神経突起伸長阻害物質に対する抗体構築物以外である、本明細書説明のAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含むALSの処置方法が提供される。
【0015】
なお別の態様において、最低1種のAAVベクターストックが1種又はそれ以上のロイシンリッチリピートキナーゼ2抗体、dardarin(LRRK2)抗体、αシヌクレイン抗体及び/又はDJ-1(PARK7)抗体をコードする、本明細書に提供されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含むパーキンソン病又は関連するシヌクレイン病の処置方法が提供される。
【0016】
なおさらなる一局面において、本明細書に提供されるところのAAVベクター組成物のくも膜下腔内送達を必要とする多発性硬化症の処置方法が本明細書に提供され、その組成物中で、最低1種のベクターストックがa4インテグリン、CD20、CD25、IL12、p40+IL23p40、LINGO-1、CD40、及びrHIgM22、CD52、IL17、CD19、並びに/又はSEMA4Dの1種又はそれ以上に対し向けられる免疫グロブリンをコードする。
【0017】
別の局面において、本明細書に提供されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含む中枢神経系の感染症の処置方法が提供され、その組成物中で、最低1種のベクターストックは前記感染症を引き起こす病原体に対し向けられる免疫グロブリンをコードする。例は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(結核)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎)、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)、リステリア菌(Listeria monocytogens)(リステリア症)、ライム病菌(Borrelia
burdorferia)(ライム病)、ヒト欠乏ウイルス(human deficiency virus)(後天性免疫不全症候群)、ヘルペス科ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス及び/又はJCウイルスの1種又はそれ以上に対し向けられる1種又はそれ以上の免疫グロブリンを含むが、これらに限られない。免疫グロブリンの標的の他の例が本出願の別の場所に提供され、そして引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0018】
一局面において、最低1種のベクターストックが主要プリオンタンパク質又はPrPScの1種又はそれ以上に向けられる免疫グロブリンをコードするAAVベクター組成物のくも膜下腔内送達を含む、プリオン関連疾患の処置方法が提供される。
【0019】
本発明のなお他の局面及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】ニワトリβアクチン(CB)プロモーター下にイムノアドヘシンを発現し、後頭下穿刺によりくも膜下腔内に送達される、AAV9ベクターを投与された動物2頭についての脳脊髄液(CSF)中のアカゲザル由来イムノアドヘシン(201IA)の濃度を示すグラフである。CSFはベクター投与後定期的に回収し、400日が本図に示される最後の収集時間点である。CSFの目盛は800ng/mLまでである。
図1B】ニワトリβアクチン(CB)プロモーター下にイムノアドヘシンを発現し、後頭下穿刺によりくも膜下腔内に送達される、AAV9ベクターを投与された動物2頭についての血清中のアカゲザル由来イムノアドヘシン(201IA)の濃度を示すグラフである。血清はベクター投与後定期的に回収し、400日が本図に示される最後の収集時間点である。血清の濃度目盛は120μg/mLまでである。
【0021】
[発明の詳細な説明]
本明細書に説明される組成物及び投与計画は中枢神経系への免疫グロブリン構築物の送達に有用である。本明細書に説明される組成物は中枢神経系(CNS)へのくも膜下腔内送達のための免疫グロブリン構築物を有するAAVを含む。
【0022】
本明細書で使用される免疫グロブリン構築物(本明細書で定義される抗体又は抗体フラグメントを含む)は、中枢神経系内に位置する細胞表面抗原又は受容体に結合するポリペプチドに基づく部分をコードする。こうした受容体は、中枢神経系に感染する細菌、ウイルス、真菌又は他の病原体上に配置されている場合があり、及び/又は、中枢神経系の障害及び/又はこうした病原体と関連するタンパク質、例えば分泌タンパク質及び/又はタンパク質凝集物の場合がある。
【0023】
「免疫グロブリン」という用語は抗体、その機能的フラグメント及びイムノアドヘシンを含むように本明細書で使用される。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ラクダ科の動物の単一ドメイン抗体、細胞内抗体(intracellular
antibody)(「細胞内抗体(intrabody)」)、組換え抗体、多特異性抗体、Fv、Fab、F(ab)2、F(ab)3、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2のような抗体フラグメント、一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)、タンデ
ム/ビスscFv、Fc、pFc’、scFvFc(又はscFv-Fc)、ジスルフィドFv(dsfv)、BiTE抗体のような二特異性抗体(bc-scFv);ラクダ科の動物の抗体、再表面化抗体(resurfaced antibody)、ヒト化抗体、完全にヒトの抗体、単一ドメイン抗体(sdAb、NANOBODY(登録商標)としてもまた知られる)、キメラ抗体、最低1個のヒト定常領域を含むキメラ抗体などを含む多様な形態で存在しうる。「抗体フラグメント」はその標的例えば細胞表面抗原又は受容体に結合する免疫グロブリンの可変領域の少なくとも一部分を指す。
【0024】
一態様において、本明細書に説明される組成物は、完全長抗体、二特異性抗体、イムノアドヘシン[免疫グロブリン定常ドメイン及び典型的にはまたヒンジ及びFc領域も含む]、モノクローナル抗体、重鎖のラクダ科の動物又はサメの免疫グロブリンに存在するようなものを含むフラグメントの結晶化可能な領域(Fc部分)を含む免疫グロブリンのAAVに媒介される送達を提供する。完全長抗体及び2種の抗体の組合せを送達するためのAAVの使用は、例えば“Compositions Comprising AAV Expressing Dual Antibody Constructs and Uses Thereof”、国際出願第PCT/US15/30533号明細書、2015年5月13日出願、“Methods and Compositions for
Treating Metastatic Breast Cancer and Other Cancers in the Brain”、国際出願第PCT/US15/27491号明細書、2015年4月24日出願に説明されており、引用することにより本明細書に組み込まれる。場合によっては、組成物は本明細書に説明される2種又はそれ以上の異なるAAV-免疫グロブリン構築物を含む場合がある。
【0025】
別の態様において、本明細書に説明される組成物は、Fc部分、例えばFab(典型的にAbのパパイン消化により形成されるフラグメント抗原結合フラグメント)、F(ab’)2フラグメント(典型的にAbのペプシン消化により形成される2個の抗原結合フラ
グメントを含有する)、Fab’フラグメント(典型的にF(ab’)2の還元により形
成される)、Fab’-SH、F(ab)3(三特異性抗体フラグメント)、Fv(2個
の可変ドメインのみ含有する免疫グロブリン)、単一ドメイン抗体(sdAb又はVH
ナノボディ(nanobody))例えばラクダ科の動物又はサメの抗体、又はscFv構築物を除外する免疫グロブリンのAAVに媒介される送達を提供する。こうした組成物は2個又はそれ以上の異なるAAVscFv構築物を含む場合がある。
【0026】
タンパク質又は核酸に言及して使用される場合の「異種」という用語は、該タンパク質又は核酸が、天然では相互に対し同一の関係で見出されない2種又はそれ以上の配列又は下位配列を含むことを示す。例えば、新たな機能的核酸を作成するために配置される無関係の遺伝子からの2種又はそれ以上の配列を有する核酸は組換えで製造されるのが典型的である。例えば、一態様において、核酸は、異なる遺伝子からのコーディング配列の発現を指図するよう配置される1つの遺伝子からのプロモーターを有する。従って、前記コーディング配列に関して該プロモーターは異種である。
【0027】
本明細書で使用されるところの「発現カセット」は、免疫グロブリン遺伝子(1種又は複数)(例えば免疫グロブリン可変領域、免疫グロブリン定常領域、完全長軽鎖、完全長重鎖又は免疫グロブリン構築物の別のフラグメント)、プロモーターを含みかつそのための他の制御配列を包む場合がある核酸分子を指し、そのカセットは、遺伝要素(例えばプラスミド)を介してパッケージング宿主細胞に送達されそしてウイルスベクターのキャプシド(例えばウイルス粒子)中にパッケージングされうる。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのこうした発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナル及び本明細書に説明されるもののような他の発現制御配列により隣接される本明細書に説明される免疫グロブリン配列を含む。
【0028】
本明細書で使用される「ベクターストック」又は「AAVベクターストック」は、本明細書で定義されるところの免疫グロブリン(1種又は複数)をコードするAAV以外の配列をその中にパッケージングしているAAVウイルス粒子のゲノムコピーの集団を指す。適切には、ベクターストックは、所望の生理学的効果を達成するのに十分な数の組換えAAVベクターのゲノムコピー(GC)を含む。所望の生理学的効果が達成される場合、組成物中のベクターストックの量、用量又は投与計画を、rAAVベクター又はベクターストックの「有効量」と称することができる。
【0029】
別の方法で明記されない限り、「中枢神経系」は脊髄及び脳を指し、脊髄及び脳を除外する「末梢神経系」と対照をなす。ニューロン細胞及びグリア細胞を含む中枢神経系内の多様な細胞タイプが存在する。成熟系中のグリアは星状細胞、乏突起細胞及びミクログリア細胞を含む。本発明で使用されるベクターのためのAAVキャプシドは、好ましくは、中枢神経系のこれら細胞タイプの最低1種を形質導入し及び/又はそれら中で発現することができるもののなから選択される。
【0030】
本明細書で使用されるところの「くも膜下腔内送達」又は「くも膜下腔内投与」という用語は、脊柱管中への、より具体的にはそれが脳脊髄液(CSF)に達するようにくも膜下腔中への注入を介する薬物のための投与経路を指す。くも膜下腔内送達は腰椎穿刺、脳室内(intraventricular)(脳室内(intracerebroventricular)(ICV)を含む)、後頭葉下/大槽内及び/又はC1-2穿刺を含む場合がある。例えば、物質を腰椎穿刺によってくも膜下腔全体への拡散のため導入しうる。別の例において、注入は大槽中への場合がある。
【0031】
本明細書で使用されるところの「大槽内送達」又は「大槽内投与」という用語は、直接、脳延髄大槽(cisterna magna cerebellomedularis)の脳脊髄液中に、より具体的には後頭葉下穿刺を介する又は大槽中への直接注入による又は永続的に配置されるチューブを介する、薬物のための投与経路を指す。
【0032】
上で説明される、数値を修飾するために使用される場合の「約」という用語は、別の方法で明記されない限り±10%の変動を意味する。
【0033】
本明細及び請求の範囲全体で使用される「含む(comprise)」及び「含む(c
ontain)」という用語、並びに変形のなかでも「含む(comprises)」、「含む(こと)(comprising)」、「含む(contains)」及び「含む(こと)(containing)」を含むその変形は、他の成分、要素、整数、段階などを含む。「からなる(consists of)」又は「からなる(こと)(consisting of)」という用語は他の成分、要素、整数、段階などを排除する。
【0034】
AAVベクターからの発現のため、1種又はそれ以上の神経変性障害の処置で有用な免疫グロブリンをコードする核酸構築物が、本発明のAAV組成物を介する送達のため操作又は選択されうる。こうした障害は、伝達性海綿状脳症(例えばクロイツフェルト・ヤコブ病)、パーキンソン病、筋萎縮性(amyotropic)側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、カナバン病、外傷性脳損傷、脊髄損傷(ATI335、Novartisによる抗nogo1)、偏頭痛(Alder BiopharmaceuticalsによるALD403;EliによるLY2951742;Labrys BiologicsによるRN307)、リソソーム蓄積症、卒中、及び中枢神経系を冒す感染症を含むがこれらに限られない。
【0035】
なお他の核酸は、ロイシンリッチリピート、及びNogo受容体の機能的成分でありかつ多発性硬化症、パーキンソン病又は本態性振戦を伴う患者における本態性振戦に関連する免疫グロブリン様ドメイン含有タンパク質1(LINGO-1)に向けられる免疫グロブリンをコードしうる。1つのこうした商業的に入手可能な抗体はオクレリズマブ(Biogen、BIIB033)である。例えば米国特許第8,425,910号明細書を参照されたい。
【0036】
一態様において、核酸構築物はALSを伴う患者に有用な免疫グロブリン構築物をコードする。適する抗体の例は、ALS酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)に対する抗体及びそのバリアント(例えばALSバリアントG93A、C4F6 SOD1抗体);Derlin-1結合領域に向けられるMS785);神経突起伸長阻害物質に対する抗体(NOGO-A又はレティキュロン(Reticulon)4)、例えばGSK1223249、オザネズマブ(ヒト化、GSK、多発性硬化症に有用としてもまた説明されている)を含む。
【0037】
アルツハイマー病を有する患者で有用な免疫グロブリンをコードする核酸配列を設計又は選択しうる。こうした抗体構築物は、例えばアデュマヌカブ(adumanucab)(Biogen)、バピネオズマブ(Elan;Aβのアミノ末端に向けられるヒト化mAb);ソラネズマブ Eli Lilly、可溶性Aβの中央部分に対するヒト化mAb);ガンテネルマブ(中外及びHoffmann-La Roche、Aβのアミノ末端及び中央部分双方に対し向けられる完全ヒトmAbである);クレネズマブ(Genentech、単量体及び立体構造エピトープに作用するヒト化mAb、オリゴマー及び前原線維の(protofibrillar)形態のAβを含む;BAN2401(エーザイ株式会社、Aβ前原線維に選択的に結合しかつAβ前原線維の消失を高め及び/又は脳中のニューロンに対するそれらの毒性効果を中和するのいずれかと考えられているヒト化免疫グロブリンG1(IgG1)mAb);GSK 933776(Aβのアミノ末端に対し向けられるヒト化IgG1モノクローナル抗体);AAB-001、AAB-002、AAB-003(Fcが操作されているバピネオズマブ);SAR228810(前原線維及び低分子量Aβに対し向けられるヒト化mAb);BIIB037/BART(不溶性線維性ヒトAβに対する完全ヒトIgG1、Biogen Idec)、m266、tg2576のような抗Aβ抗体(Aβオリゴマーに対する相対的特異性)[BrodyとHoltzman、Annu Rev Neurosci、2008;31:175-193]を含む。他の抗体はβアミロイドタンパク質、Aβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質を標的とする場合がある。
【0038】
完全長抗アミロイドβ(Aβ)のFc領域を除外するよう設計された3種の抗Aβ scFv構築物が本明細書の実施例に具体的に説明される。これら構築物は、アミロイド関連の画像化の異常のリスクを低下させ及び/又は高モノクローナル抗体濃度への血管の曝露を制限するよう設計された。一態様において、具体的に説明するscFVは線維性βアミロイドを結合する。例えば、重鎖可変領域がアミノ酸21ないし143の配列を有しかつ軽鎖可変領域がアミノ酸159ないし265の配列を有する配列番号8のアミノ酸配列を有するscFVを参照されたい。このscFVのバリアントもまた含まれる。例えば、配列番号8に関して、異なるシグナル配列(アミノ酸1-20)、異なるリンカーをGly-Serリンカー(アミノ酸144ないし158)の代わりに用いることができるか、又はHisタグ(アミノ酸266ないし271)を除去しうる。本明細書に説明されるscFVアミノ酸配列をコードする核酸配列が本明細書に提供される。例えば配列番号7を参照されたい。
【0039】
別の態様において、具体的に説明するscFVはオリゴマー、可溶性及び線維性のβアミロイドに対し向けられる。例えば、aa21ないし131の重鎖可変領域及びaa147ないし258の軽鎖可変領域を有する配列番号10のアミノ酸配列を参照されたい。このscFVのバリアントもまた含まれる。例えば、配列番号10に関して、異なるシグナル配列(アミノ酸1-20)、異なるリンカーをGly-Serリンカー(アミノ酸132ないし146)の代わりに用いることができるか、又はHisタグ(アミノ酸259-264)を除去しうる。本明細書に説明されるscFVアミノ酸配列をコードする核酸配列が本明細書に提供される。例えば配列番号9を参照されたい。
【0040】
なお別の態様において、具体的に説明するscFVは可溶性βアミロイドに対し向けられる。例えば、aa21ないし131の重鎖可変領域及びaa147ないし258の軽鎖可変領域を有する配列番号12のアミノ酸配列を参照されたい。このscFVのバリアントもまた含まれる。例えば、配列番号12に関して、異なるシグナル配列(アミノ酸1-20)、異なるリンカーをGly-Serリンカー(アミノ酸132ないし146)の代わりに用いることができるか、又はHisタグ(アミノ酸259-264)を除去しうる。本明細書に説明されるscFVアミノ酸配列をコードする核酸配列が本明細書に提供される。例えば配列番号11を参照されたい。
【0041】
なお他の態様において、抗βアミロイド抗体は、エフェクター機能を最小限にするためにβアミロイドを標的とするためのIgG4モノクローナル抗体から得られるか、又は、Fc領域を欠くscFv以外の構築物が、アミロイド関連の画像化の異常(ARIA)及び炎症反応を回避するため選択される。これらの態様のあるものにおいて、scFv構築物の1種又はそれ以上の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を、本明細書に提供されるところの別の適する免疫グロブリン構築物中で使用する。これらscFV及び他の操作された免疫グロブリンは、Fc領域を含有する免疫グロブリンに比較して血清中の免疫グロブリンの半減期を低下させうる。抗アミロイド分子の血清濃度を低下させることはARIAのリスクをさらに低下させうる。血清中の抗アミロイド抗体の極めて高レベルは、アミロイド斑の高負荷量で脳血管を不安定化して血管透過性を引き起こしうるからである。
【0042】
パーキンソン病を伴う患者の処置のための他の免疫グロブリン構築物をコードする核酸を、例えばロイシンリッチリピートキナーゼ2、dardarin(LRRK2)抗体、;抗シヌクレイン及びαシヌクレイン抗体並びにDJ-1(PARK7)抗体、を含む構築物を発現するように操作又は設計しうる。他の抗体はPRX002(Prothena及びRoche)パーキンソン病及び関連シヌクレイン病を含む場合がある。これら抗体、とりわけ抗シヌクレイン抗体は、1種又はそれ以上のリソソーム蓄積症の処置でもまた有用でありうる。
【0043】
多発性硬化症を処置するための免疫グロブリン構築物をコードする核酸構築物を操作又は選択しうる。こうした免疫グロブリンは、2006年に承認されたナタリズマブ(ヒト化抗a4イングリン(ingrin)、iNATA、Tysabri、Biogen Idec及びElan Pharmaceuticals)、アレムツズマブ(Campath-1H、ヒト化抗CD52)、リツキシマブ(リツジン(rituzin)、キメラ抗CD20)、ダクリズマブ(Zenepax、ヒト化抗CD25)、オクレリズマブ(ヒト化、抗CD20、Roche)、ウステキヌマブ(CNTO-1275、ヒト抗IL12 p40+IL23p40);抗LINGO-1、並びにch5D12(キメラ抗CD40)、並びにrHIgM22(再ミエリン化モノクローナル抗体;Acorda and the Mayo Foundation for Medical Education and Research)のような抗体を含むか、それらに由来する場合がある。なお他の抗a4インテグリン抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗IL-17、抗CD19、抗SEMA4D及び抗CD40抗体を、本明細書に説明されるところのAAVベクターを介して送達しうる。
【0044】
中枢神経系の多様な感染症に対する抗体のAAVに媒介される送達もまた本発明により企図している。こうした感染症は、例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ケカビ目(Mucorales)目、アスペルギルス属(Aspergillus)スピーシーズ及びカンジダ属(Candida)スピーシーズにより引き起こされるクリプトコッカス髄膜炎、脳膿瘍、脊髄硬膜感染症のような真菌性疾患;例えばトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、有鉤条虫(Taenia solium)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparus)、マンソン裂頭条虫(Spirometra mansonoides(孤虫症(sparaganoisis))、エキノコックス属(Echinococcus)スピーシーズ(neuro hydatosisを引き起こす)のような病原体により引き起こされるトキソプラズマ症、マラリア及び原発性アメーバ性髄膜脳炎、並びに脳アメーバ症のような原生動物性;例えば結核、ハンセン病、脳梅毒、細菌性髄膜炎、ライム病(ライム病菌(Borrelia burgdorferi))、ロッキー山紅斑病(リケッチア・リケッチ(Rickettsia rickettsia))、CNSノカルジア症(ノカルジア属(Nocardia)スピーシーズ)、CNS結核(結核菌(Mycobacterium tuberculosis))、CNSリステリア症(リステリア菌(Listeria monocytogenes))、脳膿瘍及び神経ボレリア症のような細菌性;例えば、ヘルペス科ウイルス(HSV)、HSV-1、HSV-2(新生児単純ヘルペス脳炎)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ビッカースタッフ脳炎、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(TCN-202はTheraclone Sciencesにより開発中であるのようなCMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、Bウイルス(サルヘルペスウイルス)により引き起こされうるウイルス性髄膜炎、東部ウマ脳炎(EEE)、セントルイス脳炎、ウエストナイルウイルス及び/又は脳炎、狂犬病、カリフォルニア脳炎ウイルス、ラクロス脳炎、麻疹脳炎、灰白髄炎、フラビウイルス脳炎、日本脳炎、マレー渓谷熱(Murray
valley fever)、JCウイルス(進行性多病巣性白質脳症)、ニパウイルス(NiV)、麻疹(亜急性硬化性全脳炎)のようなウイルス感染症;並びに、例えば亜急性硬化性全脳炎、進行性多病巣性白質脳症のような他の感染症;ヒト免疫不全ウイルス(後天的免疫不全症候群(AIDS));化膿性連鎖球菌(streptococus pyogenes)及び他のβ溶血性連鎖球菌(例えば小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害、PANDAS)並びに/又はシデナム舞踏病、及びギラン・バレー症候群、並びにプリオンを含む場合がある。
【0045】
適する抗体構築物の例は、例えば第WO 2007/012924A2号明細書、2015年1月29日(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明されるものを含む場合がある。
【0046】
例えば、他の核酸配列は抗プリオン免疫グロブリン構築物をコードしうる。こうした免疫グロブリンは、主要プリオンタンパク質(PrP、プリオンタンパク質(prion protein)又はプロテアーゼ抵抗性タンパク質(protease-resistant protein)に対する、CD230(表面抗原分類(cluster of
differentiation)230)としてもまた知られる)に対し向けられうる。PrPのアミノ酸配列は、例えば、本明細書に引用することにより組み込まれるhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_000302に提供されている。該タンパク質は複数のアイソフォーム、すなわち正常PrPC
、疾患を引き起こすPrPSc及びミトコンドリア中のアイソフォームで存在し得る。ミスフォールドしたバージョンPrPScは、クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症及びクールーのような多様な認知障害及び神経変性疾患と関連する。
【0047】
標的及び免疫グロブリンが一旦選択されれば、選択された免疫グロブリン(例えば重鎖及び/又は軽鎖(1種又は複数))のコーディング配列を得及び/又は合成することができる。タンパク質、ペプチド又はポリペプチド(例えば免疫グロブリンのような)の配列決定方法は当業者に既知である。タンパク質の配列が一旦知られれば、ウェブに基づく及び商業的に利用可能なコンピュータプログラム、ならびに前記アミノ酸配列を核酸コーディング配列に戻し翻訳するサービスに基づく企業が存在する。例えば、EMBOSSによるbacktranseq、http://www.ebi.ac.uk/Tools/st/;Gene Infinity(http://www.geneinfinity.org/sms/sms_backtranslation.html);ExPasy(http://www.expasy.org/tools/)を参照されたい。一態様において、RNA及び/又はcDNAコーディング配列がヒト細胞中の最適の発現のため設計される。
【0048】
コドン最適化されたコーディング領域は多様な異なる方法により設計し得る。この最適化は、オンラインで利用可能な方法(例えばGeneArt)、公表された方法、又はコドン最適化サービスを提供する企業例えばDNA2.0(カリフォルニア州メンローパーク)を使用して実施しうる。1つのコドン最適化アルゴリズムが、例えば米国国際特許公開第WO 2015/012924号明細書(本明細書に引用することにより組み込まれる)に説明されている。例えば米国特許公開第2014/0032186号明細書及び米国特許公開第2006/0136184号明細書もまた参照されたい。適切には、産物のオープンリーディングフレーム(ORF)の完全長を改変する。しかしながら、いくつかの態様において、ORFの1フラグメントのみを変えることができる。これらの方法の1つを使用することにより、いずれかの所定のポリペプチド配列に該頻度を適用しかつポリペプチドをコードするコドン最適化されたコーディング領域の核酸フラグメントを製造し得る。
【0049】
多数の選択肢が、コドンに対する実際の変化を実施するため又は本明細書に説明されるとおりに設計されるコドン最適化されたコーディング領域を合成するために利用可能である。こうした改変又は合成は、当業者に公知の標準的及び通例の分子生物学的操作を使用して実施し得る。あるアプローチにおいて、長さがそれぞれヌクレオチド80-90個でかつ所望の配列の長さにわたる一連の相補オリゴヌクレオチド対を、標準的方法により合成する。アニーリングに際してそれらが付着端を含有する塩基対80-90個の二本鎖フラグメントを形成するようなこれらオリゴヌクレオチド対を合成し、例えば、該オリゴヌ
クレオチド対中の各オリゴヌクレオチドを、該オリゴヌクレオチド対中の他のオリゴヌクレオチドに相補性である領域を超えて3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の塩基を伸長するように合成する。オリゴヌクレオチドの各対の一本鎖端はオリゴヌクレオチドの別の対の一本鎖端とアニーリングするよう設計する。前記オリゴヌクレオチド対がアニーリングされ、そして、これらの二本鎖フラグメントのおよそ5ないし6個がその後付着一本鎖端を介して一緒にアニーリングされ、そしてその後それらは一緒に連結され、及び標準的細菌クローニングベクター、例えばInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能なTOPO(登録商標)ベクター中にクローン化される。前記構築物をその後標準的方法により配列決定する。所望の配列全体が一連のプラスミド構築物中で表されるような、一緒に連結された塩基対80ないし90個のフラグメントのフラグメント5ないし6本からなるこれら構築物、すなわち塩基対約500個のフラグメントのいくつかを製造する。これらプラスミドの挿入断片をその後適切な制限酵素で切断し及び一緒に連結して最終構築物を形成する。最終構築物をその後標準的細菌クローニングベクター中にクローン化し及び配列決定する。付加的な方法は当業者に即座に明らかであろう。加えて、遺伝子合成が商業的に容易に利用可能である。
【0050】
本明細書に説明される免疫グロブリン遺伝子を、「野生型」すなわち公表され若しくは商業的に入手可能な、又は他の既知の定常免疫グロブリンドメインを発現するために使用しうるか、或いは、免疫グロブリン上に存在するFc結合部位に対する親和性を減少若しくはそれへの結合を消失させるよう操作し得る。数種の異なる種類のFc受容体が存在し、それらはそれらが認識する抗体のタイプに基づき分類される。本明細書で使用される「FcRn」はIgGを結合する新生児Fc受容体を指す。それは構造がMHCクラスIタンパク質に類似している。ヒトにおいて、それはFCGRT遺伝子によりコードされる。Fc受容体は例えば血液脳関門の上皮細胞を含む多様な細胞タイプ上に存在している。本明細書で使用される「FcRn結合ドメイン」という用語は、FcRnに直接又は間接的に結合するタンパク質ドメインを指す。FcRnは哺乳動物FcRnでありうる。さらなる態様において、FcRnはヒトFcRnである。FcRnに直接結合するFcRn結合ドメインは抗体Fc領域である。一方では、ヒトFcRn結合活性を有するアルブミン又はIgGのようなポリペプチドに結合することが可能な領域は、アルブミン、IgG又はこうしたものを介してヒトFcRnに間接的に結合し得る。従って、こうしたヒトFcRn結合領域はヒトFcRn結合活性を有するポリペプチドに結合する領域でありうる。本明細書で使用されるところの「Fc領域」という用語は、FcRn、哺乳動物FcRn又はヒトFcRnに直接結合するFcRn結合ドメインを指す。具体的には、Fc領域は抗体のFc領域である。Fc領域は哺乳動物Fc領域又はより具体的にはヒトFc領域でありうる。とりわけ、Fc領域はヒト免疫グロブリンの第二及び第三定常ドメイン(CH2及びCH3)内に位置しうる。さらに、Fc領域はCH2及びCH3のヒンジでありうる。一態様において、免疫グロブリン構築物はIgGである。さらなる一態様において、Fc領域はヒトIgG1のFc領域である。他のIgアイソタイプを同様に使用し得る。
【0051】
こうしたアライメント作成用方法及びコンピュータプログラムが利用可能でありかつ当業者に公知である。置換は(1文字コードにより特定されるアミノ酸)-位置番号-(1文字コードにより特定されるアミノ酸)としてもまた書かれることができ、それにより第一のアミノ酸は置換されるアミノ酸でありかつ第二のアミノ酸は指定される位置の置換するアミノ酸である。本明細書で使用されるところの「置換」及び「アミノ酸の置換」及び「アミノ酸置換」という用語は、アミノ酸配列中のアミノ酸1個を別のアミノ酸で置換することを指し、ここで後者は置換されるアミノ酸と異なる。アミノ酸の置換方法は当業者に公知であり、そして、該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の突然変異を挙げることができるがこれに限られない。IgG中のアミノ酸置換の作成方法は、例えば第WO 2013/046704号明細書(アミノ酸改変技術のその論考について引用するこ
とにより本明細書に組み込まれる)に説明されているとはいえ、この文書は本明細書に説明される結合親和性を減少又は消失させすることよりむしろFcRnの親和性を増大させることを説明する。
【0052】
「アミノ酸置換」という用語と、上述のその同義語は、あるアミノ酸の別のアミノ酸での置換によるアミノ酸配列の改変を含むことを意図している。置換は保存的置換でありうる。アミノ酸2個に言及しての保存的という用語は、該アミノ酸が当業者により認識される共通の特性を共有することを意味することを意図している。アミノ酸2個に言及しての非保存的という用語は、当業者により認識される最低1種類の特性の差異があるアミノ酸を意味することを意図している。例えば、こうした特性は、疎水性の非酸性側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖(酸性又は非酸性としてさらに差別化されうる)を有するアミノ酸、脂肪族疎水性側鎖を有するアミノ酸、芳香族疎水性側鎖を有するアミノ酸、極性中性側鎖を伴うアミノ酸、電気的に荷電した側鎖を伴うアミノ酸、電気的に荷電した酸性側鎖を伴うアミノ酸、及び電気的に荷電した塩基性側鎖を伴うアミノ酸を包む場合がある。天然及び非天然の双方のアミノ酸が当該技術分野で既知であり、そして実施態様において置換アミノ酸として使用されうる。従って、保存的アミノ酸置換は、疎水性側鎖を有する第一のアミノ酸を疎水性側鎖を有する異なるアミノ酸で変えることを含む場合があり;一方、非保存的アミノ酸置換は、酸性疎水性側鎖を伴う第一のアミノ酸を異なる側鎖例えば塩基性疎水性側鎖又は親水性側鎖を有する異なるアミノ酸で変えることを含む場合がある。なお他の保存的又は非保存的変化が当業者により決定され得る。
【0053】
なお他の態様において、所定の1位置での置換は、本明細書で同定される目的を成し遂げるため当業者に明らかなアミノ酸1個又はアミノ酸の群の1種に対してであろう。
【0054】
一態様において、本明細書に定義されるところの免疫グロブリン構築物は、免疫グロブリンFc領域の保存された領域に位置する天然の配列が、FcRnへの結合を排除するため、及び(CNS領域から)血液脳関門を通過して全身循環中への前記タンパク質性免疫グロブリン構築物の輸送を最小化又は排除するために除去されるように操作されている。一例において、これは例えば選択されたアミノ酸(1個又は複数)のためのコドンの改変によりFcRn結合ドメインの1個又はそれ以上のアミノ酸を変えることにより成し遂げることができる。例えば第US 8618252 B2号明細書を参照されたい、
加えて、又は、あるいは、エフェクター機能を増強するよう工作された免疫グロブリン構築物(例えばFcバリアント)が選択される。例えばT.Matsushita、Korean J Hematol、2011 Sep;46(3):148-150;米国特許第6,946,292号明細書を参照されたい。
【0055】
変異体の場所を同定するのに本明細書で使用される重鎖アミノ酸番号付けは、EU番号付け体系[IMGT unique numbering、Edelman,G.M.ら、Proc.Natl.Acad.USA、63、78-85(1969);http://www.imgt.org/-IMGTScientificChart/-Numbering/Hu_IGHGnber.html]]に基づき、そしてFcRn結合ドメイン、具体的にはFc領域中の位置を指す。類似の一様式において、置換は例えば「EU387R」又は「EU440E」として示され、ここで「EU」後に示される数字はEU番号付けに従った置換の位置を示し、そして該番号の後の文字は1文字コードで示される置換されるアミノ酸である。他の番号付け体系は、例えば、Kabat,E.A.,T.T.Wu,H.M.Perry,K.S.Gottesman,C.Foeler.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest.No.91-3242 アメリカ公衆衛生局(U.S.Public Health Services)、米国国立保健研究所(National
Institutes of Health)、ベセスダ)を含む。
【0056】
プロモーター(1個又は複数)は、多様な供給源、例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー/プロモーター、SV40初期エンハンサー/プロモーター、JCポリモウイルス(polymovirus)プロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)又はグリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)潜伏関連プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)末端反復配列(LTR)プロモーター、ニューロン特異的プロモーター(NSE)、血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーター、hSYN、メラニン濃縮ホルモン(MCH)プロモーター、CBA、マトリックス金属タンパク質プロモーター(MTP)及びニワトリβアクチンプロモーターから選択し得る。
【0057】
ある態様において、本明細書に説明される発現カセットは、重及び軽鎖のコーディング領域の間に配置される最低1個の内部リボソーム結合部位すなわちIRESを含む。あるいは、重及び軽鎖はフューリン2a自己切断型ペプチドリンカーにより分離される場合がある[例えばRadcliffeとMitrophanous、Gene Therapy(2004)、11、1673-1674を参照されたい。前記発現カセットは最低1個のエンハンサーすなわちCMVエンハンサーを含む場合がある。なお他のエンハンサーエレメントは、例えば、アポリポタンパク質エンハンサー、ゼブラフィッシュエンハンサー、GFAPエンハンサーエレメント、及び第WO 2013/1555222号明細書に説明されるような脳特異的エンハンサー、ウッドチャック肝炎後転写後調節エレメントを包む場合がある。加えて、又は、あるいは、他の、例えばハイブリッドヒトサイトメガロウイルス(HCMV)前初期(IE)-PDGRプロモーターその他のプロモーター-エンハンサーエレメントを選択しうる。発現を高めるため、他のエレメントは(PromegaTMイントロン又はキメラニワトリグロビン-ヒト免疫グロブリンイントロンのような)イントロンであり得る。
【0058】
2種又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列の状況での「同一の」又は「同一性」パーセントという用語は、下に記述されるデフォルトのパラメータを用いるBLAST又はBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動アライメント及び視覚的検査(例えばNCBIウェブサイトなどを参照されたい)により測定されるところの、指定される1領域(例えば、ある比較窓又は指定される領域にわたり最大の対応のため比較及び整列される場合に本明細書に提供される改変されたORFのいずれか1つ)にわたり同一であるか、又は同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの指定されたパーセンテージ(すなわち約70%の同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い同一性を有する、2種又はそれ以上の配列又は下位配列を指す。別の例として、ポリヌクレオチド配列はGCG バージョン6.1中のプログラムFastaを使用して比較する場合がある。Fastaはクエリ及び検索配列の間の最良の重複領域のアライメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、GCGバージョン6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)中に提供されるところのデフォルトのパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリング マトリックス(scoreing matrix)のためのNOPAMファクター)を用いてFastaを使用して決定する場合がある。一般に、これらプログラムはデフォルトの設定で使用されるとはいえ、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変えることができる。あるいは、当業者は、少なくとも、参照されるアルゴリズム及びプログラムにより提供されるもののような同一性又はアライメントのレベルを提供する別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用する場合がある。この定義は、1配列の相補物もまた指すか又はそれにも適用し得る。該定義は欠失及び/又は付加を有する配列ならびに置換を有するものもまた含む。下に説明されるとおり、好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明し得る。好ましくは、同一性は長さ最低約25、50、75、100、150、200アミノ酸又はヌクレオチ
ドである1領域にわたり、及びしばしば長さ225、250、300、350、400、450、500個のアミノ酸又はヌクレオチドである1領域にわたるか、又は1個のアミノ酸又は核酸配列の完全長にわたり存在する。
【0059】
典型的に、アライメントをアミノ酸配列に基づき製造する場合、該アライメントは、参照AAV配列に関してそのように同定される挿入及び欠失を含み、アミノ酸残基の番号付けは前期アライメントについて提供される参照尺度に基づく。しかしながら、いかなる所定のAAV配列も前記参照尺度より少ないアミノ酸残基を有する場合がある。本発明において、親配列を論考する場合、「同一位置」又は「対応する位置」という用語は、整列された配列の参照尺度に関して該配列のそれぞれ中の同一残基番号に位置するアミノ酸を指す。しかしながら、アライメントから取り出される場合、タンパク質のそれぞれは異なる残基番号に位置するこれらアミノ酸を有する場合がある。アライメントは、多様な公的に又は商業的に利用可能な複数配列アライメントプログラム(Multiple Sequence Alignment Program)のいずれかを使用して実行する。配列アライメントプログラム、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」及び「Match-Box」プログラムがアミノ酸配列について利用可能である。一般に、これらプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれら設定を必要とされるとおりに変えることができる。あるいは、当業者は、少なくとも、参照されるアルゴリズム及びプログラムにより提供されるもののような同一性又はアライメントのレベルを提供する別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用し得る。例えばJ.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.、“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”、27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0060】
別の態様において、FcRnに対するその親和性を消失し、かつ生理学的に有効な活性を保持する改変免疫グロブリンが提供される。1個又はそれ以上のアミノ酸改変を、FcRnへの機能的結合を消失させるため選択しうる。一態様において、前記突然変異はFcRnに対する免疫グロブリンの結合親和性を天然のタンパク質の10%未満に低下させる。これら突然変異を伴う免疫グロブリンは実質的に通常全部の他のFc受容体に結合するのが適切である。アミノ酸配列が一旦選択されれば、核酸配列を設計し得、及び/又は以前に説明された配列を上記説明のとおり操作しうる。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発か、当業者に既知の他の遺伝子操作技術かを使用して核酸コーディング領域を操作することにより作成する。
【0061】
一態様において、本明細書に説明される免疫グロブリン遺伝子は、運搬される免疫グロブリン構築物の配列を導入するAAVベクターを生成するのに有用な遺伝要素(例えばプラスミド)中に入るように操作される。本明細書の実施例並びに配列番号13、14及び15は、それぞれAβ標的に向けられる3種の異なるscFV構築物を含むAAVベクターゲノムを具体的に説明する。選択されるベクターは、トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染及びプロトプラスト融合を含むいずれかの適する方法によりAAVパッケージング細胞に送達しうる。安定なパッケージング細胞もまた作成し得る。こうした構築物を作成するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子操作、組換え操作及び合成技術を含む。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、GreenとSambrook編、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)を参照されたい。
【0062】
AAVベクター
本明細書に説明されるAAVベクターは1個又はそれ以上の核酸配列を含む場合があり
、それらのそれぞれは免疫グロブリン構築物の重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドの1種若しくはそれ以上又は他のポリペプチドをコードする。組成物は、in vivoで免疫グロブリン構築物を形成するポリペプチドの全部をコードする核酸配列を含有する1種又はそれ以上のAAVベクターを含むのが適切である。例えば、完全長抗体は4種のポリペプチド:2コピーの重(H)鎖ポリペプチド及び2コピーの軽(L)鎖ポリペプチドからなる。重鎖のそれぞれは1個のN末端可変(VH)領域並びに3個のC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域を含み、各軽鎖は1個のN末端可変(VL)領域及び1個のC末端定常(CL)領域を含む。軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は抗体の抗原結合部位を形成する。この点に関して、本明細書に説明されるAAVベクターは、免疫グロブリン構築物の重鎖ポリペプチド(例えば定常 可変)及び軽鎖ポリペプチドをコードする単一核酸配列を含む場合がある。あるいは、AAVベクターは、最低1個の重鎖定常ポリペプチド及び最低1個の重鎖可変ポリペプチドをコードする第1の発現カセット、並びに免疫グロブリン構築物の定常及び可変軽鎖ポリペプチドをコードする第2の発現カセットを含む場合がある。なお別の態様において、AAVベクターは、第1の重鎖ポリペプチドをコードする第1の発現カセット、第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2の発現カセットを含み得、及び軽鎖ポリペプチドをコードする第3の発現カセットは2個の重鎖により共有される。別の態様において、AAVベクターは1、2、3又は4個のscFvオープンリーディングフレーム(ORF)を発現することができ、それらのそれぞれは同一又は異なってよい。
【0063】
典型的に、AAVベクターのための発現カセットは、AAV 5’末端逆位配列(ITR)、免疫グロブリン構築物のコーディング配列及びいずれかの制御配列、並びにAAV
3’ITRを含む。しかしながらこれらエレメントの他の構成が適する場合がある。D配列及び末端解離部位(terminal resolution site)(trs)が欠失されている、ΔITRと命名される5’ITRの短縮されたバージョンが説明されている。他の態様において、完全長AAV5’及び3’ITRを使用する。
【0064】
シュードタイピングされたAAVが産生されるべきである場合、発現におけるITRはキャプシドのAAV供給源と異なる供給源から選択される。例えば、AAV2のITRを、CNS又はCNS内の組織又は細胞を標的とするための特定の効率を有するAAVキャプシドとの使用のため選択する場合がある。一態様において、AAV2からのITR配列又はその欠失されたバージョン(ΔITR)を、便宜性のため及び規制上の承認を加速するために使用する。しかしながら他のAAV供給源からのITRを選択しうる。ITRの供給源がAAV2からでありかつAAVキャプシドが別のAAV供給源からである場合、生じるベクターはシュードタイピングされたと呼ばれることができる。しかしながらAAV ITRの他の供給源を利用しうる。
【0065】
「scAAV」という略語は自己相補性を指す。「自己相補性AAV」は、組換えAAV核酸配列により運搬されるコーディング領域が分子内二本鎖DNA鋳型を形成するよう設計されている構築物を指す。感染に際して、第2鎖の細胞媒介性の合成を待たずにscAAVの2個の相補性の半分が会合して、即座の複製及び転写の準備ができている1個の二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成するであろう。例えば、D M McCartyら、“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”、Gene Therapy、(August 2001)、Vol 8、Number 16、1248-1254ページを参照されたい。自己相補性AAVは例えば米国特許第6,596,535号明細書;同第7,125,717号明細書;及び同第7,456,683号明細書(それらのそれぞれは引用することにより全体が本明細書に組み込まれる)に説明されている。
【0066】
発現カセットは、典型的に、例えば選択された5’ITR配列と免疫グロブリン構築物のコーディング配列の間に配置される発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含む。組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーター[例えば第WO 2011/126808号明細書及び第WO 2013/04943号明細書を参照されたい]、又は生理学的合図に応答性のプロモーターを使用しうるを本明細書に説明されるベクターで利用しうる。プロモーターに加え、発現カセット及び/又はベクターは、他の適切な転写開始、終止、エンハンサー配列と、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナルと、細胞質mRNAを安定化する配列と、翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列)と、タンパク質の安定性を高める配列と、所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列とを含む場合がある。
【0067】
これら制御配列は免疫グロブリン構築物の遺伝子配列に「操作可能に連結」される。本明細書で使用されるところの「操作可能に連結される」という用語は、目的の遺伝子と隣接する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためトランスで又は遠隔で作用する発現制御配列との双方を指す。
【0068】
一態様において、自己相補性AAVが提供される。このウイルスベクターはΔ5’ITR及びAAV 3’ITRを含む場合がある。別の態様において、一本鎖AAVウイルスベクターが提供される。被験者への送達に適するAAVウイルスベクターの生成及び単離方法が当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書;第WO 2003/042397号明細書;第WO 2005/033321号明細書、第WO 2006/110689号明細書;及び第US 7588772 B2号明細書を参照されたい]。1つの系において、産生体細胞株を、ITR並びにrep及びcapをコードする構築物(1個又は複数)により隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。第2の系において、rep及びcapを安定に供給するパッケージング細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。これらの系のそれぞれにおいて、AAVビリオンが、ヘルパーアデノウイルス又はヘルペスウイルスへの感染に応答して産生され、混在するウイルスからのrAAVの分離を必要とする。より最近、AAVを回収するためにヘルパーウイルスへの感染を必要としない系が開発された―必要とされるヘルパー機能(すなわちアデノウイルスE1、E2a、VA及びE4、又はヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52及びUL29並びにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた前記の系によりトランスに供給される。これらのより新しい系において、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物での細胞の一過性トランスフェクションにより供給され得るか、又は、細胞を、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含有するよう操作し得、それらの発現は転写又は転写後レベルで制御され得る。なお別の系において、ITR及びrep/cap遺伝子により隣接される導入遺伝子が、バキュロウイルスに基づくベクターへの感染により昆虫細胞中に導入される。これら産生系に関する総説については、全般として、例えばZhangら、2009、“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production、”Human Gene Therapy 20:922-929(そのそれぞれの内容は引用することにより全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これら及び他のAAV産生系の作成及び使用方法は、以下の米国特許(それらのそれぞれの内容は引用することにより全体が本明細書に組み込まれる):第5,139,941号明細書;同第5,741,683号明細書;同第6,057,152号明細書;同第6,204,059号明細書;同第6,268,213号明細書;同第6,491,907号明細書;同第6,660,514号明細書;同第6,951,753
号明細書;同第7,094,604号明細書;同第7,172,893号明細書;同第7,201,898号明細書;同第7,229,823号明細書;及び同第7,439,065号明細書にもまた説明されている。
【0069】
パッケージングのための利用可能な空間は1個以上の転写ユニットを単一発現カセット中に組合せることにより保存することができ、従って必要とされる制御配列の量を減らせる。例えば、単一プロモーターが2個又は3個又はそれ以上の遺伝子をコードする単一RNAの発現を指図することができ、そして下流の遺伝子の翻訳がIRES配列により駆動される。別の例において、単一プロモーターが、自己切断ペプチド(例えば2A)及び/又はプロテアーゼ認識部位(例えばフューリン)をコードする配列により相互から分離されている2個又は3個又はそれ以上の遺伝子を単一オープンリーディングフレーム(ORF)中に含むRNAの発現を指図しうる。該ORFは従って単一のポリタンパク質をコードし、これは、翻訳中又は後のいずれかに個別のタンパク質(例えば重鎖及び軽鎖のような)に切断される。しかしながら、これらIRES及びポリタンパク質系をAAVパッケージング空間を節約するために使用し得るとはいえ、それらは同一プロモーターにより駆動され得る成分の発現にのみ使用し得ることに注目されるべきである。別の代替において、AAVの導入遺伝子容量は、アニーリングしてヘッドトゥテールのコンカタマー(concatamer)を形成し得る2種のゲノムのAAV ITRを提供することにより増大させ得る。さらなる代替案において、双方向性プロモーターを選択しうる。
【0070】
以下の実施例において、AAV9キャプシドを有するAAVベクターが説明される。本明細書で使用されるところの「AAV9キャプシド」は、GenBank受託:AAS99264(本明細書に引用することにより組み込まれる)のアミノ酸配列を有するAAV9を指す。このコードされる配列からの若干の変動が本発明に含まれ、それはGenBank受託:AAS99264及び第US7906111号明細書(また第WO 2005/033321号明細書も)中の参照されるアミノ酸配列に対する最低約95%、最低約97%又は最低約99%の同一性を有する配列を包む場合がある。キャプシドの生成方法、そのためのコーディング配列、及びrAAVウイルスベクターの製造方法が説明されている。例えば、Gaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10)、6081-6086(2003)及び第US 2013/0045186A1号明細書を参照されたい。AAV9ベクターの生成は、例えば米国特許第7,906,111号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に説明されている。しかしながら、AAVキャプシド及び他のウイルスエレメントの他の供給源を、他の免疫グロブリン構築物及び他のベクターエレメントと同様に、選択する場合がある。AAVベクターの生成方法は、例えば第WO 2003/042397号明細書;第WO 2005/033321号明細書、第WO 2006/110689号明細書;第US 7588772 B2号明細書を含む文献及び特許文書に広範囲に説明されている。AAVキャプシドの供給源は、CNS、CNS内の特定の細胞及び/又は特定の抗原若しくは受容体を標的とするAAVから選択しうる。適するAAVは、例えば、AAV9[第US 7,906,111号明細書;第US 2011-0236353-A1号明細書]、rh10[第WO 2003/042397号明細書]及び/又はhu37[例えば第US 7,906,111号明細書;第US 2011-0236353-A1号明細書を参照されたい]を包む場合がある。しかしながら、例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8[米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書]その他を含む他のAAVを、本明細書に説明されるAAVベクターを製造するために選択しうる。
【0071】
使用及び投与計画
本発明の組成物は、AAVベクターが、免疫グロブリン構築物及び選択された細胞中でその免疫グロブリンの発現を指図する制御配列をコードする核酸発現カセットを運搬する
ように設計されることが適切である。CNS中への前記ベクターの投与後に、該ベクターは発現カセットをCNSに送達し、in vivoでタンパク質性免疫グロブリン構築物を発現する。治療目的上の本明細書に説明される組成物の使用が、1種又はそれ以上の他の有効成分の送達を場合によっては必要としうる多様な投与計画におけるこれら組成物の使用と同様に、説明される。
【0072】
上記のとおり、組成物は、免疫グロブリン構築物をin vivoで送達するための発現カセットを含む本明細書に説明される単一の型のAAVベクターを含む場合がある。あるいは、組成物は、それらのそれぞれが多様な発現カセットをその中にパッケージングしている2種又はそれ以上の異なるAAVベクターを含む場合がある。例えば、該2種又はそれ以上の異なるAAVは、in vivoで集合して単一の機能的免疫グロブリン構築物を形成する免疫グロブリンポリペプチドを発現する多様な発現カセットを有する場合がある。別の例において、前記2種又はそれ以上のAAVは、多様な標的のための免疫グロブリンポリペプチドを発現する多様な発現カセットを有する場合があり、例えば、2種が2種の機能的免疫グロブリン構築物(例えば第1の免疫グロブリン構築物及び第2の免疫グロブリン構築物)を提供する。なお別の代替策において、前記2種又はそれ以上の異なるAAVは、同一標的に向けられる免疫グロブリン構築物(該免疫グロブリン構築物の1種がFcRn結合を消失するよう改変されている)、及び、FcRnに結合するその能力を保持する又は高められた能力を有する第2の免疫グロブリン構築物を発現しうる。こうした組成物は、CNS中の増大された保持を伴う抗体及び免疫グロブリン構築物の全身送達のための抗体を同時に提供するのに有用な場合がある。
【0073】
本明細書に説明される投与計画は、本明細書に説明される組合せの1種又はそれ以上に加え、生物学的薬物、小分子薬物又は他の療法の1種又はそれ以上とのさらなる組合せを含む場合がある。本明細書に説明される生物学的薬物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、核酸分子、ベクター(ウイルスベクターを含む)などに基づく。
【0074】
本明細書に説明される組成物は、注入、浸透圧ポンプ、くも膜下腔内カテーテルを介する被験体への送達のため、又は別の装置若しくは経路による送達のため設計された製薬学的に適する担体に懸濁され及び/又は適する賦形剤と混合されている1種又はそれ以上のAAVの有効量を含むことが適切である。一例において、組成物はくも膜下腔内送達のため配合される。一態様において、くも膜下腔内送達は脊柱管、例えば、くも膜下腔中への注入を含む。しかしながら、適切な直接又は全身経路のなかでも、例えば頭蓋内、鼻内、大槽内、脳脊髄内液送達を含むAAV組成物のための他の送達経路すなわちオンマヤリザーバーと、製薬学的に許容できる担体とを選択される場合がある。
【0075】
前記組成物は、約1×109ゲノムコピー(GC)ないし約5×1014GCの範囲にあ
るAAVの量を含むよう配合される場合がある。一例において、ベクターは約3×1013GC、しかし約1×109GC、約5×109GC、約1×1010GC、約5×1010GC、約1×1011GC、約5×1011GC、約1×1012GC、約5×1012GC又は約5×1013GCのような他の量である。こうした組成物は、選択された標的に向けられる免疫グロブリンを発現する単一AAVストックを含む場合がある。別の態様において、こうした組成物は、標的とされた宿主細胞中で集合して、選択された標的に対する所望の免疫グロブリン(例えば完全長抗体)を形成する、免疫グロブリンを同時発現する2種のAAVストックを含む場合がある。別の態様において、組成物は2種又はそれ以上のAAVストックを含む場合があり、それらのそれぞれが異なる免疫グロブリン構築物を発現する。こうした組成物中で、発現されるタンパク質は、結合して単一免疫グロブリンを形成しうるか、又は異なる標的を有する2種若しくはそれ以上の免疫グロブリンを発現しうる。これら異なる標的は、同一細胞タイプ又は同一ウイルス(又は他の標的)上の異なるリガンドか、2種の完全に異なる病原体かに対する場合がある。組成物はくも膜下腔内送達のた
め設計される。一態様において、脊椎穿刺を実施し、そこで約15mL(又はより少ない)から約25mLまでのCSFを取り出し、ベクターを適合性の担体に懸濁しそして被験体に送達する。
【0076】
前記rAAVは、好ましくは生理学的に適合性の担体に懸濁され、及び場合によっては1種又はそれ以上の賦形剤と混合され、ヒト又はヒト以外の哺乳動物患者に投与される場合がある。適切な担体は、前記導入ウイルスが指定される適応症を考慮して、当業者により容易に選択される場合がある。例えば、ある適切な担体は、多様な緩衝溶液と配合されうる生理的食塩水(例えばリン酸緩衝生理的食塩水)を含む。他の例示的担体は、Elliot’s B、滅菌生理的食塩水、乳糖、ショ糖、麦芽糖及び水を含む。担体の選択は本発明を限定するものではない。場合によっては、本発明の組成物は、rAAV及び担体(1種又は複数)に加え、保存剤又は化学的安定化剤のような他の従来の製薬学的成分を含む場合がある。
【0077】
一態様において、本明細書に説明される組成物は中枢神経系の障害及び疾患を処置するための医薬品の製造において使用される。
【0078】
別の局面において、最低1種のAAVベクターストックがAβ、βセクレターゼ及び/又はτタンパク質に特異的な免疫グロブリンを発現する、本明細書に説明されるAAVベクター組成物をそれの必要な被験体のくも膜下腔内に送達することを含む、アルツハイマー病の処置方法が提供される。
【0079】
なお別の態様において、最低1種のAAVベクターストックが、1種又はそれ以上のロイシンリッチリピートキナーゼ2抗体、dardarin(LRRK2)抗体、αシヌクレイン抗体及び/又はDJ-1(PARK7)抗体をコードする本明細書に提供されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含む、パーキンソン病又は関連するシヌクレイン病の処置方法が提供される。
【0080】
なおさらなる一局面において、その組成物中の最低1種のベクターストックが、a4インテグリン、CD20、CD25、IL12、p40+IL23p40、LINGO-1、CD40、及びrHIgM22、CD52、IL17、CD19、並びに/又はSEMA4Dの1種又はそれ以上に対し向けられる免疫グロブリンをコードする、本明細書に提供されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含む、多発性硬化症の処置方法が本明細書に提供される。
【0081】
なお別の局面において、最低1種のAAVベクターストックが、ALS酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)及びそのバリアント、Derlin-1結合領域に特異的な免疫グロブリン、及び/又は、神経突起伸長阻害物質に対する抗体構築物を発現する本明細書に説明されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含むALSの処置方法が提供される。一態様において、ベクター及び/又は組成物は抗SOD1免疫グロブリンFcフラグメントを含む。
【0082】
一局面において、最低1種のベクターストックが主要プリオンタンパク質又はPrPScの1種又はそれ以上に向けられる免疫グロブリンをコードするAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含む、プリオン関連疾患の処置方法が提供される。
【0083】
本明細書に説明される多様な障害及び疾患に対する処置の有効性を評価するための動物モデルが利用可能である。例えば、例えばD Van DamとP.P.De Deyn、Br J Pharmacol、2011 Oct;164(4):1285-1300に記述されるアルツハイマー病を評価するための動物モデルを参照されたい。パーキン
ソン病薬を評価するためのモデルもまた、例えばHT Tranら、Cell Reports、Vol.7、Issue 6、p2054-2065、June 26,2014.、RM Ransajoff、Nature Neuroscience、Aug 2012、Vol 15、1074-1077(多発性硬化症);M.A Pouladiら、Natuer Reviews Neuroscience、14、708-721(2013)(ハンチントン病);N Fernandez-Borgesら、Cur
top Med Chem 2013;13(19):2504-21(抗プリオン薬);PMcGoldrickら、Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Molecular Basis of Disease、Vol.1832、Issue 9、September 2013、pp.1421-1436及びJM Moserら、Mol Genet Genomics、2013 Jun;288(5-6):207-29(ALS)に説明されている。なお他のモデルが当業者に既知である。
【0084】
別の局面において、その組成物中で最低1種のベクターストックが中枢神経系の感染症を引き起こす病原体に対し向けられる免疫グロブリンをコードする本明細書に提供されるAAVベクター組成物をくも膜下腔内に送達することを含む、前記感染症の処置方法が提供される。例は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(結核)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎)、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)、リステリア菌(Listeria monocytogens)(リステリア症)、ライム病菌(Borrelia
burdorferia)(ライム病)、ヒト欠乏ウイルス(後天的免疫不全症候群)、ヘルペス科ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス及び/又はJCウイルスの1種又はそれ以上に対し向けられる1種又はそれ以上の免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。
【0085】
場合によっては、本明細書に説明されるAAV組成物は、付加的な外因性薬理学的又は化学的剤か、血液脳関門の他の物理的破壊かの非存在下で投与される。
【0086】
併用療法において、本明細書に説明されるAAVで送達される免疫グロブリン構築物は、別の剤での治療を開始する前、治療中又は治療後、並びにそれらのいずれかの組合せ、すなわち治療を開始する前及び治療中か、治療前及び治療後か、治療中及び治療後か治療前、治療中及び治療後かに投与される。
【0087】
本明細書に説明される組成物は他の有効成分の同時投与を必要とする投与計画で使用される場合がある。いずれかの適する方法又は経路をこうした他の剤を投与するために使用する場合がある。投与経路は、例えば、全身、経口、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内投与を含む。場合によっては、本明細書に説明されるAAV組成物はこれら経路の1つによってもまた投与される場合がある。
【0088】
以下の実施例は具体的説明のみでありかつ本明細書に説明される本発明を限定するものではない。
【0089】
実施例
【実施例0090】
抗SIVイムノアドヘシンのAAV9に媒介される送達のCNS発現
IT AAV送達後のCNS中の長期抗体産生の可能性を評価するため、イムノアドヘシンをコードするベクターを2匹のヒト以外の霊長類に投与して、CSF中の導入遺伝子産物の濃度をELISAにより評価した。アカゲザル由来イムノアドヘシン(201IA
)を発現するAAV9ベクターを、CBプロモーター(サイトメガロウイルスエンハンサーを伴うニワトリβアクチン)をサイトメガロウイルスプロモーターの代わりに使用し[Greig JAら(2014)Intramuscular Injection of AAV8 in Mice and Macaques Is Associated with Substantial Hepatic Targeting and
Transgene Expression.PLoS ONE 9(11):e112268]、AAV9キャプシドをAAV8の代わりに使用したことを除いて、AAV8について以前に説明されたとおり構築した。
【0091】
簡潔には、アカゲザル抗SIV mac251 gp120 IgG-201(Glamannら J Virol.1998;74(15):7158-7163.doi:10.1128/JVI.74.15.7158-7163.2000.Updated.)イムノアドヘシン(201IA)のコドン最適化されたヌクレオチド配列をAAV発現構築物中にクローン化した。該構築物はAAV2末端逆位配列により挟まれ、CB7プロモーター、キメライントロン及びウサギグロビンポリアデニル化配列を含んだ(pAAV.CB7.CI.201IA.rBG)。このプラスミドの配列を確認した[配列番号1(配列番号2はコードされる201IA配列に対応する)]。
【0092】
rAAV9.CB7.CI.201IA.rBGベクター(3×1012GC/kg)をカニクイザル2頭(ID0411及び9860)の脳脊髄液(CSF)中に後頭葉下穿刺により送達した。血清及びCSFをベクター投与後定期的に収集した。CSF及び血清中の201IAの濃度を後に続くとおりELISAにより測定した。
【0093】
全部の処置は、別の方法で示されない限り室温で実施した。プレートを、PBS+0.05%Tween-20を使用してBioTek 405TSマイクロプレート洗浄機を用い洗浄した。PBSで2μg/mLに希釈されたmac251 gp120(Immune Technology Corp.)をCostar(登録商標)96ウェルEasyWashTMELISAアッセイプレート(Corning)上4℃で一夜インキュベートした。プレートをその後、201IA ELISAブロッキング緩衝液(PBS+5%熱不活性化ウシ胎児血清+1mM EDTA+0.07%Tween-20)でブロッキングした。希釈されたサンプルをプレートに添加し、そしてプレートを最低4回2倍希釈した。プレートを37℃で1hインキュベートし、及び201IA ELISAブロッキング緩衝液で再度ブロッキングした。プレートをその後、PBSで希釈されたAffiniPureポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-ビオチン(Jackson ImmunoResearch Labs)、その後PBSで希釈されたストレプトアビジン-ワサビペルオキシダーゼ(Abcam)とともにインキュベートした。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を使用してプレートを発色させた。発色反応をH2SO4で停止した後にプレートをSpectraMax M3(Molecular Devices)プレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0094】
動物2頭のそれぞれの結果を図1A及び1Bに具体的に説明し、それらは投与から投与後第400日までのそれぞれ脳脊髄液及び血清中の201IAの濃度を示す。CSFの濃度尺度はng/mLで提示される一方、血清中の発現レベルはマイクログラム(μg)/mLで測定された。
【実施例0095】
FcRn結合を抑止するための201IAのI253A突然変異
201IA遺伝子に相補的だが重鎖アミノ酸配列のI253A又はH453A(Kabatの番号付け)に対応する1突然変異を含む長さ768bpのヌクレオチド配列をGeneArt(Life Technologies)から得た。前記配列は、pAAV.
CB7.CI.201IA.rBG中のものに一致するPst1およびBstZ17I制限部位に挟まれた。前記変異された配列を、製造元により説明されたとおり示される酵素(NEB)を使用する制限消化及びライゲーション(TaKaRa Inc.)によりpAAV.CB7.CI.201IA.rBG中に別々にクローン化した。サンガーシークエンシング(GeneWiz)を使用して、pAAV.CB7.CI.201IA.rBG[配列番号1(配列番号2はコードされる201IA配列に対応する)]、pAAV.CB7.CI.201IA(I253A).rBG[配列番号3(配列番号4をコードする)]及びpAAV.CB7.CI.201IA(H435A).rBG[配列番号5(配列番号6をコードする]の相補性を、所望の突然変異のいずれの側でも確認した。
【0096】
AAV9ベクターを、これらプラスミドを使用して実施例1に説明される方法を使用して作成する。
【実施例0097】
例示的AAV.scFv構築物の作成
具体的に説明するscFv構築物を3種製造した。これら構築物は、完全長抗アミロイドβ(Aβ)にまだ結合できるがFc領域を除去するよう設計した。これら構築物は、アミロイド関連の画像化の異常のリスクを低下させ、及び/又は高モノクローナル抗体濃度への血管の曝露を制限するよう設計した。
【0098】
A.アデュカヌバムのscFv
前記完全長抗体は線維性Aβを標的とするとして説明されている[Weinerら、Nature Reviews,Immunology、6:404-416(May 2006)]。前記scFvを作成するため、組換えの完全ヒト型の抗Aβ IgG1 mAb(アデュカヌバム、Biogen)の重鎖可変ドメイン(配列番号8のaa21-143)及び軽鎖可変ドメイン(配列番号8のaa159-265)のアミノ酸配列を、WHOが公表した配列[製薬学的物質の国際一般名(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances)(INN)、WHO Drug Information、Vol 27、No.4、2013、p401-402;第WO 2014/089500A1号明細書もまた参照されたい]に基づき同定し、それを核酸配列に逆翻訳する際にコドン最適化した。重鎖及び軽鎖ドメインをGly-Serリンカーをコードする核酸配列(GGGGSGGGGSGGGGS、配列番号8のaa144-158)と結合した。IL-2分泌シグナルペプチド(配列番号8のaa1-20)のコーディング配列が前記核酸配列の5’端に融合され、そして6×Hisタグのコーディング配列が精製を容易にするために該核酸の3’端に配置された。われわれにより設計されたこれら配列は商業的契約施設から発注されかつ合成された。前記プラスミドは、他のプラスミドエレメントのうち:配列番号13:5’AAV2-ITR、CMV IEプロモーター、CBプロモーター、ニワトリβアクチンイントロン、scFV配列、ウサギβグロビンポリA及びAAV2-3’ITRからなるAAVベクターゲノムを含む。このプラスミドを、パッケージング293細胞株中で前記AAV9キャプシドを発現するプラスミドと同時発現させた。AAVI ITRに挟まれるscFVコーディング配列及び他の調節エレメントを含むAAVゲノムをAAV9キャプシド中にパッケージングするために必要とされる、AAV rep機能及びアデノウイルスヘルパー機能もまた、パッケージング293細胞株中で同時発現させた。得られた組換えベクターは、AAV9キャプシドと、パッケージングされたAAVベクターゲノム[配列番号13]とを有し、AAV9.CB7.CI.aducanumabscFv.rGBと命名される。
【0099】
本明細書に説明される研究において、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)により測定されるベクター収量は5.89×1013ゲノムコピー(GC/mL)であった。
ベクターのロットを、M.Lockら、Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14中のddPCRによりAAVベクターゲノム力価を測定するためのddPCR技術を使用して評価した。
【0100】
B.クレネズマブ_scFv
クレネズマブは、AC Immuneにより開発されかつGenentechにライセンスされた、ヒト1-40及び1-42Aβ(βアミロイドともまた呼ばれる)に対する組換えヒト化モノクローナル抗体である。クレネズマブはまたMABT5102Aとしても知られる。それは第WO 2015/120233A1号明細書の図2のHVR領域配列及びその中の配列番号2-9の配列を有することを特徴とする。前記抗体は、オリゴマー、可溶性及び線維性のAβを標的とすることが可能であるとして説明されている。
【0101】
クレネズマブのscFvは、WHOが公表した配列[製薬学的物質の国際一般名(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances)(INN)、WHO Drug Information、Vol 25、No.2、pp.163-164(2011);第WO 2015/120233A号明細書もまた参照されたい]に基づき合成されたクレネズマブの重鎖可変ドメイン[配列番号10のaa21-131]及び軽鎖可変ドメイン[配列番号10のaa147-258]のアミノ酸配列を置換して、アデュカヌマブについて前記のとおり製造した。得られた組換えベクターは、AAV9キャプシド及びパッケージングされたAAVベクターゲノム[配列番号14]を有し、AAV9.CB7.CI.crenezumabscFv.rGBと命名される。
【0102】
本明細書に説明される研究において、ddPCRにより測定されるところのベクター収量は3.79×1013GC/mLであった。ベクターのロットを精製し、そして、M.Lockら、Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14に説明されるとおり、ddPCRを使用して評価した。
【0103】
C.ソラネズマブのscFv
ソラネズマブはEli Lillyから入手可能な組換えヒト化モノクローナル抗体である。それはクレネズマブに高度に相同であると説明されているとはいえ、それは可溶性Aβのみを標的とするのに対し、クレネズマブはオリゴマー、可溶性及び線維性のAβを標的とする。ソラネズマブは第US 7,195,761号明細書のHVR領域配列を有することを特徴とする。前記scFVを構築するのに使用される配列は、製薬学的物質の国際一般名(International Nonproprietary Names
for Pharmaceutical Substances)(INN)、WHO
Drug Information、Vol.23、No.3、pp.263-264(2009)から得た。
【0104】
ソラネズマブのscFvは、WHOが公表した配列[製薬学的物質の国際一般名(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances)(INN)、WHO Drug Information、Vol 25、No.2、pp.163-164(2011);第WO 2015/120233A号明細書もまた参照されたい]に基づき合成されたソラネズマブの重鎖可変ドメイン[配列番号12のaa21-131]及び軽鎖可変ドメイン[配列番号12のaa147-258]のアミノ酸配列を置換して、アデュカヌマブにつ
いて前記のとおり製造した。得られた組換えベクターは、AAV9キャプシドとパッケージングされたAAVベクターゲノムと[配列番号15]を有し、AAV9.CB7.CI.solanezumabscFv.rGBと命名される。
【0105】
本明細書に説明される研究において、ddPCR収量は5.25×1013GC/mLであった。ベクターのロットを精製し、説明されるとおりddPCRにより力価測定した。
【0106】
D.抗Aβ scFvを検出するためのELISA
前述のA-C部のscFv発現プラスミドを使用して、AAV9キャプシド中にプラスミドをパッケージングする前にELISA標準品を製造した。scFvのELISA標準品を精製するために、pAAVプラスミドを293細胞中にトランスフェクトした。scFvは細胞培養物上清中に分泌された。scFvの端のHisタグを利用して、上清をHisトラップカラム[GE Healthcare]上を流す(run)ことによりscFvを精製した。上清の残部はカラムを通過する。結合されたHis標識された物質(scFv)をその後高塩緩衝液を使用して溶離した。
【0107】
以下の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して抗Aβ scFvを検出した。プレートを、「混合種」アミロイド(凝集された及び単量体の形態のペプチド)を使用して1μg/mLの組換えヒトアミロイドβで4℃で一夜被覆する。該アッセイは後に続くとおり実行する。PBS+0.05%Tween-20で5回洗浄する。PBS+1%ウシ血清アルブミンで室温で1時間ブロッキングする。血清/脳ライセート/精製された抗Aβ scFvを添加する。本実施例のA、B及びC部に記述される3種のscFvは、ELISA分析を容易にするためHisタグを伴って構築され、それらは、製造元の説明書[http://www.gelifesciences.com/-webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciencesus/products/AlternativeProductStructure_17555/17524701]に従って、Hisトラップカラム[His-Trap FF 1mlカラム、GE Healthcare]を使用して293上清から精製された。37℃で1時間インキュベートする。PBS+0.05%Tween-20で5回洗浄する。PBSで1:10,000希釈された抗Hisタグ抗体(AbCam
ab1187)を添加する。RTで1時間インキュベートする。PBS+0.05%Tween-20で5回洗浄する。TMB基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を用いてRTで30分間発色させる。2N H2SO4を添加して反応を停止する。プレートリーダーで450nm及び540nmで読み取る。
【0108】
E.3xTGマウスモデルにおける抗Aβ scFvについてのパイロット研究
AAV9.CB7.aducanumabSCFV.RBG、AAV9.CB7.crenezumabSCFV.RBG、AAV9.CB7.solanezumabSCFV.RBG、又はPBSを、6週齢の3xTGマウス(MMRRC Repository/Jackson)[例えばR.Sternicdzukら、“Characterization of the 3xTg-AD mouse model of Alzheimer’s disease:part 2.Behavioral and cognitive changes”.Brain Res.2010 Aug 12;1348:149-55.doi:10.1016/j.brainres.2010.06.011.Epub 2010 Jun 15、及びR.Sterniczukら、“Characterization of the 3xTg-AD mouse model of Alzheimer’s disease:part 1.Circadian changes.”、Brain Res.2010 Aug 12;1348:139-48.doi:10.1016/j.brainres.2010.05.013.Epub 2010 May 31を参照されたい。]に、1×1011gc/マ
ウス、投与コホートあたりマウス6頭に脳室内(ICV)投与する。対照マウス(アルツハイマー病の病態を発生しない)はB6129SF2/J(Jackson)である。血清を毎月採取してscFv発現を監視する。マウスはベクター投与後6か月にモーリスの水迷路及び/又はY迷路交替行動試験を受ける[例えば、Websterら Using
mice to model Alzheimer’s dementia:an overview of the clinical disease and the preclinical behavioral changes in 10 mouse models.Front Genet.2014;5:88を参照されたい。]。モーリスの水迷路は空間記憶、運動制御及び認知マッピングを評価するよう設計されている[Whishaw,I.Q.(1995).“A comparison of rats and mice in a swimming pool place task and matching to place task:some surprising differences”.Physiology&Behavior.58(4):687-693.doi:10.1016/0031-9384(95)00110-5;Crusio,Wim(1999).“Methodological considerations for testing learning in mice”.Crusio,W.E.;Gerlai,R.T.Handbook of molecular-genetic techniques for brain and behavior research(第1版)。アムステルダム:Elsevier.pp.638-651中。]。Y迷路は、とりわけ自発的交替課題についてラット及びマウスにおける空間ワーキングメモリを評価するために使用される。前記迷路は例えばPanlabから商業的に購入しうる。マウスは、Aβの病態の組織学的評価と脳ライセートからのELISAによるscFv/アミロイドの定量とのため12月齢で安楽死させる。他の予備研究はより高齢のマウス(約4~6か月に投与する、それはこのモデルにおける可視的なAβの病態の発生の平均齢である)におけるscFvの有効性を検査する。マウスのコホートに、τタンパク質の病態の組織学的評価のため6週齢及び4~6月齢に投与し、次いで該マウスを15月齢に安楽死させる。
【0109】
本出願は引用することによりここに組み込まれる配列及び配列表を含む。本出願で引用される優先権米国特許出願第62/247498号明細書、2015年10月28日出願を含む全部の刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願を引用することにより組み込まれることを具体的にかつ個々に示されたかのように、引用することにより全体がここに組み込まれる。前述の発明は理解の明快さの目的上具体的説明及び例として若干詳細に説明されているとはいえ、付属する請求の範囲の技術思想又は範囲から離れることなくそれに対しある種の変更及び改変をなし得ることが、本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかであろう。
【配列表フリーテキスト】
【0110】
表(配列表フリーテキスト)
以下の情報は識別番号<223>の下にフリーテキストを含む配列について提供される。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
図1A
図1B
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024123159000001.xml
【外国語明細書】