(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123205
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】覚醒支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240903BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102282
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2020126105の分割
【原出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】520208122
【氏名又は名称】NOT A HOTEL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼渦 伸次
(57)【要約】 (修正有)
【課題】宿泊施設、特に、保養地や観光地にあるリゾートホテル等の宿泊施設に宿泊する宿泊客の睡眠からの覚醒にあたり感じるストレスを低減することができる覚醒支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】宿泊客の覚醒を支援する覚醒支援システム1であって、宿泊施設の客室に設置された窓に対して開閉可能に設けられ、外部から内部へ入射する光を遮る遮光手段(カーテン3)と、遮光手段を開閉する開閉手段(リニアモータ4)と、入床中の宿泊客から生体情報を取得する生体情報取得部(シート体6及び圧力検知部7)と、生体情報取得部が取得した生体情報に基づいて、宿泊客の睡眠状態を検出する睡眠状態検出部を含む宿泊者端末8と、睡眠状態検出部が検出した睡眠状態に基づいて、開閉手段を動作させることにより遮光手段を開放して光を客室内に通す覚醒支援動作を実行する覚醒支援動作実行部を含むサーバ端末9と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿泊施設の客室に設置された窓に対して開閉可能に設けられ、外部から内部へ入射する光を遮る遮光手段と、前記遮光手段を開閉する開閉手段とを備え、宿泊客の覚醒を支援する覚醒支援システムであって、
入床中の前記宿泊客から生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記宿泊客の睡眠状態を検出する睡眠状態検出部と、
前記睡眠状態検出部が検出した前記睡眠状態に基づいて、前記開閉手段を動作させることにより前記遮光手段を開放して前記光を前記客室内に通す覚醒支援動作を実行する覚醒支援動作実行部と、を備える、
覚醒支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記覚醒支援動作実行部は、前記睡眠状態検出部が検出した前記睡眠状態が浅い眠りの状態であるレム睡眠状態にあるときに、前記覚醒支援動作を実行する、
覚醒支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記宿泊客の過去の睡眠状態に関する睡眠履歴情報を記憶する睡眠履歴記憶部と、
前記睡眠履歴記憶部に記憶されている前記履歴情報と、前記睡眠状態検出部が検出した現在の睡眠状態とに基づいて、将来において前記宿泊客が浅い眠りの状態であるレム睡眠状態になるか否かを予測する睡眠状態予測部と、を備え、
前記覚醒支援動作実行部は、前記睡眠状態予測部の予測結果に基づいて前記覚醒支援動作を実行する、
覚醒支援システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記遮光手段は、カーテン又はブラインドである、
覚醒支援システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記生体情報には、入床中の前記宿泊客の心拍数、呼吸数、体動の有無、又は、前記宿泊客の睡眠の深さを示す情報が含まれる、
覚醒支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿泊施設に宿泊する宿泊客の覚醒を支援する覚醒支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人体を睡眠から目覚めさせる際には、予め決められた時刻に音などの刺激を用いてユーザの目覚めを促す目覚まし時計等の装置が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、目覚まし動作を行なったときの人体の反応を検出し、その検出結果に応じた刺激を選択して人体に加えることが可能な目覚まし装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、目覚めを促す音を発生させるスピーカ等の音声出力手段を用いて、半ば強制的に人体を睡眠から覚醒させるものである。このため、ユーザがストレスを感じる可能性があった。このような傾向は、例えば、リゾート気分を味わえる保養地・観光地にあるリゾートホテル等に宿泊する宿泊客において特に顕著に現れ得る。
【0006】
そこで、本発明は、宿泊施設、特に、保養地・観光地にあるリゾートホテル等の宿泊施設に宿泊する宿泊客が睡眠からの覚醒にあたり感じ得るストレスを低減することのできる覚醒支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における覚醒支援システムは、宿泊施設の客室に設置された窓に対して開閉可能に設けられ、外部から内部へ入射する光を遮る遮光手段と、前記遮光手段を開閉する開閉手段とを備え、宿泊客の覚醒を支援する覚醒支援システムであって、入床中の前記宿泊客から生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記宿泊客の睡眠状態を検出する睡眠状態検出部と、前記睡眠状態検出部が検出した前記睡眠状態に基づいて、前記開閉手段を動作させることにより前記遮光手段を開放して前記光を前記客室内に通す覚醒支援動作を実行する覚醒支援動作実行部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、宿泊施設、特に、保養地・観光地にあるリゾートホテル等に宿泊施設に宿泊する宿泊客が睡眠からの覚醒にあたり感じ得るストレスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る覚醒支援システムを示すブロック構成図である。
【
図2】
図1の宿泊客端末8の機能ブロック構成図である。
【
図3】
図1のサーバ端末9を示す機能ブロック構成図である。
【
図4】宿泊客端末8又はサーバ端末9に格納される宿泊客データの一例を示す図である。
【
図5】宿泊客端末8又はサーバ端末9に格納される宿泊施設データの一例を示す図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る、覚醒支援方法に係るフローチャートの一例である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る、宿泊客端末8に表示されるユーザインターフェース画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0011】
(実施形態1)
<構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る覚醒支援システムを示すブロック構成図である。本システム1は、保養地・観光地にあるリゾートホテル等の宿泊施設に宿泊する宿泊客の覚醒を支援するものであって、当該宿泊施設に設置された窓2に対して開閉可能に設けられ、外部から内部へ入射する光を遮る遮光手段としてのカーテン3と、カーテン3を開閉する開閉手段としてのリニアモータ4と、横たわった状態にある宿泊客とベッド5との間に配置され、宿泊客からの外的な作用を受けて内圧が変動するシート体6と、シート体6における圧力変動を検知するとともに、その検知した圧力に応じた値を示す生体情報を生成して出力する圧力検知部7と、圧力検知部7から出力される生体情報が入力される宿泊客端末8と、宿泊客端末8とネットワークNWを介して接続されるサーバ端末9と、を備える。ネットワークNWは、インターネット、イントラネット、無線LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等により構成される。
【0012】
シート体6は、例えば、複数枚の帯状の樹脂フィルムの周縁を熱融着又は接着等により接合し、袋状に形成したものであり、内部に充填された流体(例えば、空気を漏出不能な気密性)を備えている。ここでの樹脂フィルムは、例えば、塩化ビニル、ゴム等からなり、自らの形状を保持可能な弾性と、ベッド5に横たわった宿泊客からの外的な作用に対する内圧変動に耐え得る強度又は耐圧性を有する。シート体6のうち圧力検知部7との接続部分には、シート体6内の流体を圧力検知部7に流通させるための、図示しない中空状のチューブ等が設けられている。シート体6は、ベッド5に横たわった宿泊客からの外的な作用を受けることで、内圧が変化する。より具体的に、シート体6は、ベッド5に横たわっている宿泊客から発せられる、例えば、心拍、呼吸、寝返り、いびきなどに起因する宿泊客の体動により、外的な作用を受ける。これに伴い、シート体6の内部では、流体が外圧を受けて圧縮し、チューブを通して圧力検知部7に流入され得る。
【0013】
圧力検知部7は、シート体6から流入してきた流体の圧力を検知し、この圧力に応じた値を示す信号を生体情報として宿泊客端末8に出力する。圧力検知部7には、例えば、圧電式又は抵抗式の圧力センサ(不図示)が設けられている。圧力センサは、流体に直接接触し得る位置に配置されており、この流体の圧力に応じた値を示す電流又は電圧を生体情報として出力する。ここでの生体情報には、入床中の宿泊客の心拍数、皮膚電位、呼吸数、血圧、体温、体動の有無、又は、宿泊客の睡眠の深さ(例えば、位相コヒーレンス)を示す情報が含まれる。圧力検知部7は、宿泊客端末8と電気的に接続されており、宿泊客端末8との間で生体情報を送受信可能となっている。
【0014】
本実施形態では、シート体6及び圧力検知部7で、入床中の宿泊客から生体情報を取得する生体情報取得部が構成される。
【0015】
宿泊客端末8は、例えば、宿泊施設のフロントで宿泊客に貸し出され、宿泊客が所持可能又は持ち運び可能に小型化された携帯型の端末機器である。宿泊客端末8は、プログラム制御により動作するコンピュータであって、ネットワークNWに有線又は無線で接続可能となっており、そのネットワークNWに接続されたサーバ端末9などの他の情報処理装置にアクセスして、所定の情報を取得したり、所定のプログラムをダウンロードしたりするなどの機能を備えている。このような機能を備えた宿泊客端末8の具体例として、例えば、スマートフォン、携帯電話、PDA等を挙げることができる。
【0016】
サーバ端末9は、一または複数の宿泊施設を運営するサービス提供者によって管理されてもよく、サービス利用者である宿泊客からの要求に応じて、睡眠からの覚醒を支援する。サーバ端末9は、例えば、ワークステーション・パーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。本実施形態においては、説明の便宜上サーバ端末として1台を例示しているが、これに限定されず、複数台であってもよい。
【0017】
本実施形態では、システム1は、宿泊客端末8及びサーバ端末9を有し、宿泊客が宿泊客端末8を利用して、サーバ端末9に対する操作を行う構成として説明するが、サーバ端末9がスタンドアローンで構成され、サーバ端末自身に、宿泊客が直接操作を行う機能を備えても良い。また、サーバ端末9とは別に、宿泊施設を運営する宿泊施設提供者が所有する端末を当該システムに含むこともできる。
【0018】
図2は、
図1の宿泊客端末8の機能ブロック構成図である。宿泊客端末8は、通信部81と、記憶部82と、制御部83とを備える。
【0019】
通信部81は、ネットワークNWを介して圧力検知部7又はサーバ端末9と通信を行うための通信インターフェースであり、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信規約により通信が行われる。
【0020】
記憶部82は、各種制御処理又は制御部83内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。また、記憶部82は、睡眠履歴記憶部821等を有する。さらに、記憶部82は、サーバ端末9と通信を行ったデータを一時的に記憶することもできる。なお、各種データを格納したデータベース(図示せず)が記憶部82又は宿泊客端末8外に構築されていてもよい。
【0021】
睡眠履歴記憶部821は、宿泊客(特には連泊客)の過去の睡眠状態に関する睡眠履歴情報を記憶する機能を有する。本実施形態において、例えば、睡眠するための姿勢を取った状態を示す「入床状態」、入床状態の後、かつ眠りに入っていない状態を示す「覚醒状態」、眠りに入った状態を示す「入眠状態」、浅い眠りの状態を示す「レム睡眠状態」、深い眠りの状態を示す「ノンレム睡眠状態」、睡眠を終えた状態を示す「起床状態」、入眠状態から起床状態までの間に眠りから覚醒した状態を示す「中途覚醒状態」等の状態を含み得る。
【0022】
制御部83は、記憶部82に記憶されているプログラムを実行することにより、サーバ端末100の全体の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等から構成される。制御部83は、睡眠状態検出部831等を有する。この睡眠状態検出部831は、記憶部82に記憶されているプログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である宿泊客端末8により実行される。
【0023】
睡眠状態検出部831は、シート体6並びに圧力検知部7が宿泊客から取得した生体情報に基づいて、宿泊客の睡眠状態を検出する機能を有する。睡眠状態の検出は、公知の手法を用いることができる。例えば、睡眠状態検出部831は、入床中の宿泊客から取得した生体情報に含まれる振幅・周期に基づいて、横たわっている宿泊客の状態が上述した各睡眠状態の何れであるかを検出する。
【0024】
図3は、
図1のサーバ端末9を示す機能ブロック構成図である。サーバ端末9は、通信部91と、表示操作部92と、記憶部93と、制御部94とを備える。
【0025】
通信部91は、ネットワークNWを介して宿泊客端末8と通信を行うための通信インターフェースであり、例えばTCP/IP等の通信規約により通信が行われる。
【0026】
表示操作部92は、例えば、宿泊施設を運営するサービス提供者が指示を入力し、制御部94からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、サーバ端末9がパーソナルコンピュータで構成されている場合はディスプレイとキーボード又はマウスにより構成され、サーバ端末9がスマートフォンまたはタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部92は、記憶部93に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)であるサーバ端末9により実行される。
【0027】
なお、宿泊客端末8に表示操作部の機能を備える構成としても良く、この場合、サーバ端末9を備えない構成としても良い。
【0028】
記憶部93は、各種制御処理又は制御部94内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAM又はROM等から構成される。また、記憶部93は、宿泊客端末8との通信内容を一時的に記憶している。
【0029】
制御部94は、記憶部93に記憶されているプログラムを実行することにより、サーバ端末9の全体の動作を制御するものであり、CPU又はGPU等から構成される。制御部94は、覚醒支援動作実行部941、睡眠状態予測部942等を有する。これら覚醒支援動作実行部941、睡眠状態予測部942は、記憶部93に記憶されているプログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である宿泊客端末8により実行される。
【0030】
覚醒支援動作実行部941は、宿泊客端末8の制御部83が備える睡眠状態検出部831が検出した睡眠状態に基づいて、開閉手段としてのリニアモータ4を動作させることにより、遮光手段としてのカーテン3を開放して外部からの光を客室内に通す覚醒支援動作を実行する機能を有する。具体的に、覚醒支援動作実行部941は、睡眠状態検出部831が検出した睡眠状態が「レム睡眠状態」にあるときに、上述の覚醒支援動作を実行することができる。
【0031】
ここで、睡眠中の宿泊客の睡眠深度は周期的に増減を繰り返す。一般に、このような睡眠深度の増減の周期はウルトラディアンリズムと呼ばれている。ウルトラディアンリズムの一周期は約90分であり、その内訳として、ノンレム睡眠が60~80分にわたって出現し、その後、レム睡眠が10~30分ほど続いて1つの睡眠周期が終了する。そのため、宿泊客の希望する睡眠時間が6時間等の90分の倍数である場合には、覚醒時間において、宿泊客の睡眠深度がちょうど最も浅くなる状態となるため、睡眠慣性が少なく、快適な覚醒が得られる。かかる知見のもと、覚醒するにあたり最も好ましい時期は、睡眠周期の終了時期にあたるレム睡眠の後半であることが判明している。
【0032】
睡眠状態予測部942は、宿泊客端末8の記憶部82が備える睡眠履歴記憶部821に記憶されている、宿泊客の過去の睡眠状態に関する睡眠履歴情報と、宿泊客端末8の制御部83が備える睡眠状態検出部831が検出した、宿泊客の現在の睡眠状態とに基づいて、将来において宿泊客が「レム睡眠状態」になるか否かを予測する機能を有する。睡眠状態予測部942は、例えば、履歴情報に含まれる、過去における宿泊客の眼球運動等の生理的指標に基づき、宿泊客の脳波からθ波が出現する傾向が高い時間帯(宿泊客の眼球運動がレム睡眠で生じる鋸波状でない時間帯)を把握し、宿泊客の現在の睡眠状態と照らし合わせることで、将来において宿泊客が「レム睡眠状態」になる時間帯を予測する。
【0033】
例えば、θ波の出現を脳波により確認する場合は、θ波のパワースペクトル、パワースペクトルの比率(4Hz~8Hzのスペクトルの和/0.5Hz~24Hzのスペクトルの和)、ウェーブレット変換等を用いることが可能である。また例えば、θ波の出現の確認を眼電位により確認する場合は、1Hz~10Hzの高振幅の波が出現していることで検出することが可能である。
【0034】
覚醒支援動作実行部941は、睡眠状態予測部942の予測結果に基づいて覚醒支援動作を実行することができる。ここで、睡眠履歴情報に、宿泊客からのコメント又は評価に関連する情報が含まれる場合は、過去に実施した覚醒支援に対する宿泊客のフィードバック情報として利用することで、複数の宿泊客データ並びに宿泊施設データに基づいて機械学習による学習モデルを生成し、学習モデルに基づいた覚醒支援を実行することもできる。また、年齢、性別及び家族構成別に宿泊客を属性化し、属性化された宿泊客別に学習モデルを生成することで、カスタマイズされた覚醒支援を実現することもできる。
【0035】
図4は、宿泊客端末8又はサーバ端末9に格納される宿泊客データの一例を示す図である。
【0036】
図4に示す宿泊客データ1000は、宿泊客に関連する各種データを格納する。
図4において、説明の便宜上、一宿泊客(宿泊客ID「10001」で識別される宿泊客)の例を示すが、複数の情報を格納することができる。宿泊客に関連する各種データとして、例えば、宿泊客の基本情報(宿泊客の氏名、住所、Eメールアドレス等の連絡先、年齢、性別、嗜好情報、身長、体重等)、宿泊履歴情報(宿泊客が宿泊した宿泊施設名、部屋タイプ、利用した設備、飲食施設等)、睡眠履歴情報(過去における宿泊客の眼球運動等の生理的指標(脳波、眼電位等を含む))、決済情報(宿泊施設料、旅行計画に含まれる交通手段、施設、プラン等を予約/決済するために必要な情報)等が挙げられる。
【0037】
ここで、宿泊客の嗜好情報(特に、睡眠に関する嗜好情報)の一例としては、宿泊客が要求する客室内の空間内における環境(温度、湿度、風量等)、宿泊客が使用する枕との相性、宿泊客が起床時に好んで流す音楽・BGM(例えば風の吹く音、さざ波の音、その他のヒーリングミュージック)、就寝中にリラックスできるアロマの香り等を挙げることができる。また、嗜好情報は、本人の嗜好を覚醒支援に反映させるための情報となり得るものである。
【0038】
図5は、宿泊客端末8又はサーバ端末9に格納される宿泊施設データの一例を示す図である。
【0039】
図5に示す宿泊施設データ2000は、宿泊施設に関連する各種データを格納する。
図5において、説明の便宜上、一宿泊施設(宿泊施設ID「20001」で識別される宿泊施設)の例を示すが、複数の宿泊施設に関する情報を格納することができる。宿泊施設に関連する各種データとして、例えば、宿泊施設の基本情報(施設名、住所、宿泊プラン(料金)、アクセス(交通手段等))、施設情報(部屋情報(部屋タイプ、グレード別)、設備情報(部屋内、施設内の設備)、飲食施設情報(レストラン、カフェ、バー等)、レクリエーション施設(ボーリング場、カラオケ、プール、ゴルフ場、プライベートビーチ、アスレチック等)、周辺情報(宿泊施設周辺の観光地、飲食施設(レストラン等)、その他レンタカー、シャトル等の情報)、レクリエーション施設情報(ゴルフ場、遊園地、動物園、水族館等、サービス情報(シュノーケリング体験、ダイビング体験、トレッキング体験等)、交通情報(バス、タクシー、鉄道、航空等)が挙げられる。
【0040】
<処理の流れ>
図6を参照しながら、本実施形態のシステム1が実行する覚醒支援方法の処理の流れについて説明する。
図6は、本発明の第一実施形態に係る、覚醒支援方法に係るフローチャートの一例である。
【0041】
ここで、本システム1を利用するために、宿泊客は、宿泊客端末8のウェブブラウザ又はサービス提供者によって提供されるアプリケーション等を利用してサーバ端末9にアクセスし、初めてサービスを利用する場合は、前述の宿泊客基本情報等を入力し、既にユーザアカウントを取得済の場合は、例えばIDとパスワードを入力する等の所定の認証を受けてログインすることで、サービスが利用可能となる。この認証後、ウェブサイト、アプリケーション等を介して所定のユーザインターフェースが提供され、
図6に示すステップS101へ進む。
【0042】
まず、ステップS101の処理として、サーバ端末9の通信部91は、宿泊客端末8の通信部81と交信して、覚醒条件として、所定の事前情報を受信する。所定の情報として、例えば、宿泊客は、
図7に示す、宿泊客端末8に備えられる、ウェブブラウザ又はアプリケーションを介して提供されるユーザインターフェースにおいて表示される画面例のように、覚醒支援の設定情報が挙げられる。
図7に示すように、宿泊客は、覚醒支援を得るに際して、宿泊客端末8を介して宿泊客ID「10001」を入力又は選択するとともに、希望する目覚まし時刻「15:30」を入力又は選択した後、覚醒支援制御開始ボタンをクリックまたはタップ等して入力し得る。
【0043】
次に、ステップS102の処理として、宿泊客端末8の制御部83は、宿泊客により入力された目覚まし時刻と、覚醒支援制御開始指示とを、通信部81を介してサーバ端末9に送信する。
【0044】
次に、ステップS103の処理として、サーバ端末9の制御部94は、将来において宿泊客が「レム睡眠状態」になるか否かの予測に要する演算時間が経過したか否かを判定する。制御部94は、予め定められた演算時間(例えば1分)が経過したか否かを判定することによって、演算時間に基づいた周期で、宿泊客が「レム睡眠状態」になるか否かを予測する。制御部94は、演算時間が経過した場合(ステップS103におけるYES)、ステップS104へ進み、演算時間が経過していない場合(ステップS103におけるNO)、ステップS102へ戻る。
【0045】
次に、ステップS104の処理として、制御部94が備える睡眠状態予測部942は、宿泊客の過去の睡眠状態に関する睡眠履歴情報と、宿泊客の現在の睡眠状態とに基づいて、将来において宿泊客が「レム睡眠状態」になり得る時刻であって、宿泊客に覚醒を促す時刻(以下、覚醒支援制御開始時刻という)を予測する。なお、予測処理に必要な情報は、宿泊客端末8の睡眠状態検出部831による検出結果が必要に応じて取得されて使用される。制御部94は、ステップS104の処理が完了した後、ステップS105へ進む。
【0046】
次に、ステップS105の処理として、制御部94は、睡眠状態予測部942の予測結果に基づき算出した覚醒支援制御開始時刻を含む時間帯(例えば60分単位の時間幅)と、制御部94が取得した現在時刻とを比較することで、覚醒支援制御開始時刻を含む時間帯に現在時刻が含まれるかどうかを判定する。制御部94は、覚醒支援制御開始時刻を含む時間帯に現在時刻が含まれない場合(ステップS105におけるNO)、ステップS105を繰り返し、覚醒支援制御開始時刻を含む時間帯に現在時刻が含まれる場合(ステップS106におけるYES)、ステップS106へ進む。
【0047】
次に、ステップS106の処理として、制御部94は、覚醒支援制御開始時刻に基づいた時刻に覚醒支援制御を行う。具体的に、制御部94が備える覚醒支援動作実行部941は、開閉手段としてのリニアモータ4を動作させることにより、遮光手段としてのカーテン3を開放して外部からの光を客室内に通す覚醒支援動作を実行する。この例では、目覚まし時刻「15:30」にリニアモータ4の動作を開始させ、最初は暗めの光で、90分周期の睡眠が終了する時刻「15:40」に最も明るくなるように、徐々に、外部から射し込む太陽光の照射強度を高めるような覚醒支援動作が実行される。
【0048】
こうして、宿泊客は睡眠中から少しずつ光を浴び、90分周期の睡眠が終了する時刻である「15:40」に最も明るい光を浴びることで、快適に覚醒することができる。
【0049】
従来のシステムは、目覚めを促す音を発生させるスピーカ等の音声出力手段を用いて、半ば強制的に人体を睡眠から覚醒させるものであった。このため、ユーザがストレスを感じる可能性があった。このような傾向は、例えば、リゾート気分を味わえる保養地・観光地にあるリゾートホテル等に宿泊する宿泊客において特に顕著に現れ得る。
【0050】
この点、本実施形態によれば、覚醒支援動作実行部941は、遮光手段としてのカーテン3を開放して外部からの光を客室内に通すことで、徐々に宿泊客の覚醒を支援するものであるので、ノンストレスで宿泊客を覚醒させることができる。
【0051】
従って、本実施形態の覚醒支援システム1によれば、宿泊施設、特に、保養地・観光地にあるリゾートホテル等の宿泊施設に宿泊する宿泊客が睡眠からの覚醒にあたり感じ得るストレスを低減することができる。
【0052】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
なお、上記の実施形態では、遮光手段をカーテン3で構成する例を示した。しかし、これに限らない。例えば、遮光手段を、窓の内側に付けられるブラインドで構成しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 覚醒支援システム、2 窓、3 カーテン(遮光手段)、4 リニアモータ(開閉手段)、5 ベッド、6 シート体、7 圧力検知部、8 宿泊客端末、9 サーバ端末、NW ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿泊施設の客室に設置された窓に対して開閉可能に設けられ、外部から内部へ入射する光を遮る遮光手段と、前記遮光手段を開閉する開閉手段とを備え、宿泊客の覚醒を支援する覚醒支援システムであって、
入床中の前記宿泊客から生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記宿泊客の睡眠状態を検出する睡眠状態検出部と、
前記宿泊客の過去の睡眠状態に関する睡眠履歴情報と、前記睡眠状態検出部が検出した現在の睡眠状態とに基づいて、将来において前記宿泊客がレム睡眠状態になる時刻を予測する睡眠状態予測部と、
過去に実施した覚醒支援に対する前記宿泊客のフィードバック情報および前記睡眠状態予測部の予測結果に基づいて、前記開閉手段を動作させることにより前記遮光手段を開放して前記光を前記客室内に通す覚醒支援動作を実行する覚醒支援動作実行部と、を備える、覚醒支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記宿泊客の過去の睡眠状態に関する前記睡眠履歴情報を記憶する睡眠履歴記憶部を備え、
前記睡眠履歴情報は、前記宿泊客からのコメント又は評価に関連する前記フィードバック情報を含む、
覚醒支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記遮光手段は、カーテン又はブラインドである、
覚醒支援システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の覚醒支援システムにおいて、
前記生体情報には、入床中の前記宿泊客の心拍数、呼吸数、体動の有無、又は、前記宿泊客の睡眠の深さを示す情報が含まれる、
覚醒支援システム。