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特開2024-123234アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123234
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240903BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20240903BHJP
   C07K 14/81 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240903BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240903BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240903BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/765
C07K14/81
C12N15/12
C12N15/14
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/16
A61K47/64
A61P11/00
A61P1/16
A61K48/00
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024103143
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2021548539の分割
【原出願日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】62/752,182
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521185479
【氏名又は名称】スピン セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アーロン サト
(72)【発明者】
【氏名】マーク デソウザ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症の治療に有用な組成物及び方法を提供する。
【解決手段】特定の実施形態では、(a)アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと、(b)ヒト血清アルブミン結合ドメインとを含む、組換えタンパク質が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、本明細書において参照により援用する2018年10月29日出願の62/752,182号の優先権を主張する。
【0002】
セルピンは、プロテアーゼを阻害するそれらの能力が最初に特定された類似の構造を持つタンパク質のスーパーファミリーである。セルピンという名称は、元々は造語であったが、これは最初に特定されたセルピンが、キモトリプシン様セリンプロテアーゼに対して作用することが発見されたことが理由である。結果として、serine rotease inhibitor(セリンプロテアーゼインヒビター)の語の最初の文字の組み合わせを組み込むように、頭字語であるセルピン(serpin)が選択された。
【0003】
セルピンは、大規模なコンホメーション変化を受けて標的プロテアーゼにおける活性部位を破壊することによって不可逆的に標的プロテアーゼを阻害する、というセルピンの稀な作用機序を理由に関心がもたれている。セルピンによるプロテアーゼ阻害は、凝血及び炎症を含めて数々の生物学的プロセスを制御する。このプロテアーゼ阻害の機序は、一定の利点を与えるが、欠点も有する。主要な欠点のひとつには、タンパク質の折り畳み異常及び不活性な長鎖高分子形成等であるセルピン病(serpinopathy)を結果としてもたらす可能性がある変異に対して、セルピンが特に脆弱であるということがある。
【0004】
アルファ-1-アンチトリプシン又はα-アンチトリプシン(「A1AT」、「A1A」、又は「AAT」)は、セルピンスーパーファミリーに属するタンパク質である。アルファ-1-アンチトリプシンはヒトにおいては、SERPINA1遺伝子がコードするが、当該遺伝子は、4個のコードエキソンと3個の非翻訳エキソンとを有して、14番染色体のq31-31.2に位置する。アルファ-1-アンチトリプシンはまたアルファ-プロテイナーゼインヒビター又はアルファ-アンチプロテイナーゼとしても知られるが、これはトリプシンだけでなく、様々なプロテアーゼを阻害するからである。アルファ-1-アンチトリプシンはアンチプロテアーゼとして機能する52kDの糖タンパク質である。アルファ-1-アンチトリプシンは、長さが24アミノ酸であるシグナルペプチドが付加した、394個のアミノ酸の単鎖を有する。アルファ-1-アンチトリプシンは、あるタイプの酵素インヒビターとして、特に好中球エラスターゼ及びプロテイナーゼ3(「PR3」)である炎症細胞の酵素から組織を保護し、そして血中での正常な基準域は1.5~3.5g/Lである。このアルファ-1-アンチトリプシンの濃度は、急性炎症の際に何倍も上昇する可能性がある。
【0005】
好中球エラスターゼは、肺に弾性収縮力を与えるゴム様巨大分子であるエラスターゼを破壊するセリンプロテアーゼである。血液が、十分な量のアルファ-1-アンチトリプシンを含有していない又は機能的に欠陥のあるアルファ-1-アンチトリプシンを含有していると、好中球エラスターゼが過度に自由にエラスチンを破壊でき、肺の弾力が低下する。弾力が低下すると、結果として、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器合併症がもたらされる。
【0006】
PR3は、主に好中球顆粒細胞中で発現したセリンプロテアーゼ酵素である。好中球の機能におけるその正確な役割はわかっていないが、ヒト好中球においては、プロテイナーゼ3は、抗菌ペプチドのタンパク質生成に寄与する。
【0007】
アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症(「AATD」)は、アルファ-1-アンチトリプシンの産生不全の原因となる遺伝性疾患である。AATDは、AATDの低下した血清中レベルが引き起こす常染色体劣性遺伝疾患である。この疾患は、アルファ-1-アンチトリプシンの減少を導く。この疾患はしばしば、肺及び肝臓の疾患を引き起こし、遺伝性肺気腫と呼ばれる。AATDは、ヨーロッパ系子孫のコーカソイドの最も多くみられる致死性の遺伝性疾患のひとつである。
【0008】
アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症にはいくつかの形態と程度があり、当該形態と程度は、患者が欠陥のある対立遺伝子のコピーを1つ持っているか又は2つ持っているかに左右される。深刻なアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症では、症状をもつ多くの人々の成人期において、特に彼らがタバコの煙に曝露するのであれば、汎小葉性肺気腫又はCOPD様症状を引き起こす可能性がある。当該疾患はまた、小児及び成人において種々の肝疾患につながる可能性があり、そして場合によっては、より稀な問題につながる可能性がある。アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症によれば、通常、ある程度の障害がもたらされ、余命が短くなる。
【0009】
アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症は、有害な吸入剤を回避して、アルファ-1-アンチトリプシンの静脈内注入によって又は肝臓もしくは肺の移植によって治療する。組換え型のアルファ-1-アンチトリプシンもまた公知であるが、現在は治療としてよりも医学研究で用いられている。承認されたアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症の製剤は、ヒト血漿から精製されて、高用量(60~120mg/kg)での毎週の頻繁な注入を必要としており、そして限られた効能しか得られない。アルファ-1-アンチトリプシンを増大する療法は、血漿由来のAATを高濃度で投与するにもかかわらず、循環AATレベルで確認されるピーク値とトラフ値から貧弱な薬物動態であることを理由に理想的ではない。
【0010】
近年の研究では、タンパク質工学を介した長時間作用性のアルファ-1-アンチトリプシン融合体を開発することに焦点を当てているものもある。例えば、以下の2つのグループによって、AAT Fcが発現及び開発されている:Soohyun Kim(建国大学校(Konkuk University)、韓国ソウル;OmniBio社がライセンスをもつ(「Kim/OmniBio分子」)(Lee S,Lee Y,Hong K,Hong J,Bae S,Choi J,Jhun H,Kwak A,Kim E,Jo S,Dinarello CA,Kim S.Effect of recombinant α1-antitrypsin Fe-fused(AAT-Fc)protein on the inhibition of inflammatory
cytokine production and streptozotocin-induced diabetes.Mol Med.2013 May 20;19:65-71.doi:10.2119/molmed.2012.00308.PubMed PMID:23552726;PubMed Central PMCID:PMC3667213を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、全体として本明細書において参照により援用する)及びInhibRx(「InhibRx分子」)(例えば、米国特許第8,980,266B2号、Serpin Fusion Polypeptides and Methods and Use Thereof(セルピン融合ポリペプチドならびにその方法及び使用)を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、全体として本明細書において参照により援用する。)。いずれの分子も、IgG1 FcとのN-末端AAT融合体である。Kim/OmniBio分子は、ヒト好中球エラスターゼのみならず血漿由来のAATを阻害せず、これは精製中にプロテインAクロマトグラフィーからの溶出でpH不安定性が低いという結果となり得る。InhibRx分子は、血漿由来のAAT同様にヒト好中球エラスターゼを阻害することが報告されている。
【0011】
他の者は、N-グリカンの数を増加させることによって(例えば、Chung HS,Kim JS,Lee SM,Park SJ.Additional N-glycosylation in the N-terminal region of recombinant human alpha-1 antitrypsin enhances the circulatory half-life in Sprague-Dawley rats.Glycoconj J.2016 Apr;33(2):201-8.doi:10.1007/s10719-016-9657-3.Epub
2016 Mar 7.PubMed PMID:26947874を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)、又はポリシアル化(polysialyation)を付加することによって(例えば、Lindhout T,Iqbal U,Willis LM,Reid AN,Li J,Liu X,Moreno M,Wakarchuk WW.Site-specific enzymatic polysialylation of therapeutic proteins using bacterial enzymes.Proc Natl Acad Sci U S A.2011 May 3;108(18):7397-402.doi:10.1073/pnas.1019266108.Epub 2011 Apr 18.PubMed PMID:21502532;PubMed Central PMCID:PMC3088639を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)、AATのグリコシル化パターンを改変した。一部の者はアグリコシル化AAT(例えば、Cantin AM,Woods DE,Cloutier D,Heroux J,Dufour EK,Leduc R.Leukocyte elastase inhibition therapy in cystic fibrosis:role of glycosylation on the distribution of alpha-1-proteinase inhibitor in blood versus lung.J Aerosol Med.2002 Summer;15(2):141-8.PubMed PMID:12184864を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)を産生した。さらに他の者は、半減期が伸びるようにペグ化されたアグリコシル化AATを開発した(例えば、Cantin AM,Woods DE,Cloutier D,Dufour EK,Leduc R.Polyethylene glycol conjugation at Cys232 prolongs the half-life of alpha1 proteinase inhibitor.Am J Respir Cell
Mol Biol.2002 Dec;27(6):659-65.PubMed PMID:12444025を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)。
【0012】
AATは肺においてMet酸化する傾向があるため、一部のグループは、メチオニン酸化に対して抵抗性があるが活性は保持している変異AATバリアントを構築した。特に、M351V/M358V変異体は、酸化に対して抵抗性がある(例えば、Taggart C,Cervantes-Laurean D,Kim G,McElvaney NG,Wehr N,Moss J,Levine RL.Oxidation of either methionine 351 or methionine 358 in alpha 1-antitrypsin causes loss of anti-neutrophil elastase activity.J Biol Chem.2000 Sep 1;275(35):27258-65.PubMed PMID:10867014を参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)。Baekらは、AAT内にジスルフィド結合(K168C-F189C)を導入して、ループ-シート重合に対する抵抗性を実質的に増加させた(Baek JH,Im H,Kang UB,Seong KM,Lee C,Kim J,Yu MH.Probing the local conformational change of alpha 1-antitrypsin.Protein Sci.2007 Sep;16(9):1842-50.Epub 2007 Jul 27.PubMed PMID:17660256;PubMed Central PMCID:PMC2206966mを参照されたく、これはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)。またAAT内に単一の点変異(F51L、G117F、K331F、K335A)を作製して安定性とループ/シート重合に対する抵抗性とが増加した(Dafforn TR,Mahadeva R,Elliott PR,Sivasothy P,Lomas DA.A kinetic mechanism for the polymerization of alpha1-antitrypsin.J Biol Chem.1999 Apr 2;274(14):9548-55.PubMed PMID:10092640;Parfrey H,Mahadeva R,Ravenhill NA,Zhou A,Dafforn TR,Foreman RC,Lomas DA.Targeting a
surface cavity of alpha 1-antitrypsin to prevent conformational disease.J Biol Chem.2003 Aug 29;278(35):33060-6.Epub 2003 Jun 13.PubMed PMID:12807889;Gilis D,McLennan HR,Dehouck Y,Cabrita LD,Rooman M,Bottomley SP.In vitro and in silico design of alpha1-antitrypsin mutants with different conformational stabilities.J Mol Biol.2003 Jan 17;325(3):581-9.PubMed PMID:12498804;及びIm H,Seo EJ,Yu MH.Metastability in the inhibitory mechanism of human alpha1-antitrypsin.J Biol Chem.1999 Apr 16;274(16):11072-7.PubMed PMID:10196190を参照されたく、このそれぞれはいずれの図面も含めて、本明細書においてその全体として参照により援用する)。
しかしながら、上記した進捗にもかかわらず、さらなる治療上の選択肢が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8,980,266号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Lee S,Lee Y,Hong K,Hong J,Bae S,Choi J,Jhun H,Kwak A,Kim E,Jo S,Dinarello CA,Kim S.Effect of recombinant α1-antitrypsin Fe-fused(AAT-Fc)protein on the inhibition of inflammatory cytokine production and streptozotocin-induced diabetes.Mol Med.2013 May 20;19:65-71.doi:10.2119/molmed.2012.00308.PubMed PMID:23552726;PubMed Central PMCID:PMC3667213
【非特許文献2】Chung HS,Kim JS,Lee SM,Park SJ.Additional N-glycosylation in the N-terminal region of recombinant human alpha-1 antitrypsin enhances the circulatory half-life in Sprague-Dawley rats.Glycoconj J.2016 Apr;33(2):201-8.doi:10.1007/s10719-016-9657-3.Epub 2016 Mar 7.PubMed PMID:26947874
【非特許文献3】Lindhout T,Iqbal U,Willis LM,Reid AN,Li J,Liu X,Moreno M,Wakarchuk WW.Site-specific enzymatic polysialylation of therapeutic proteins using bacterial enzymes.Proc Natl Acad Sci U S A.2011 May 3;108(18):7397-402.doi:10.1073/pnas.1019266108.Epub 2011 Apr 18.PubMed PMID:21502532;PubMed Central PMCID:PMC3088639
【非特許文献4】Cantin AM,Woods DE,Cloutier D,Heroux J,Dufour EK,Leduc R.Leukocyte elastase inhibition therapy in cystic fibrosis:role of glycosylation on the distribution of alpha-1-proteinase inhibitor in blood versus lung.J Aerosol Med.2002 Summer;15(2):141-8.PubMed PMID:12184864
【非特許文献5】Cantin AM,Woods DE,Cloutier D,Dufour EK,Leduc R.Polyethylene glycol conjugation at Cys232 prolongs the half-life of alpha1 proteinase inhibitor.Am J Respir Cell Mol Biol.2002 Dec;27(6):659-65.PubMed PMID:12444025
【非特許文献6】Taggart C,Cervantes-Laurean D,Kim G,McElvaney NG,Wehr N,Moss J,Levine RL.Oxidation of either methionine 351 or methionine 358 in alpha 1-antitrypsin causes loss of anti-neutrophil elastase activity.J Biol Chem.2000 Sep 1;275(35):27258-65.PubMed PMID:10867014
【非特許文献7】Baek JH,Im H,Kang UB,Seong KM,Lee C,Kim J,Yu MH.Probing the local conformational change of alpha 1-antitrypsin.Protein Sci.2007 Sep;16(9):1842-50.Epub 2007 Jul 27.PubMed PMID:17660256;PubMed Central PMCID:PMC2206966m
【非特許文献8】Dafforn TR,Mahadeva R,Elliott PR,Sivasothy P,Lomas DA.A kinetic mechanism for the polymerization of alpha1-antitrypsin.J Biol Chem.1999 Apr 2;274(14):9548-55.PubMed PMID:10092640
【非特許文献9】Parfrey H,Mahadeva R,Ravenhill NA,Zhou A,Dafforn TR,Foreman RC,Lomas DA.Targeting a surface cavity of alpha 1-antitrypsin to prevent conformational disease.J Biol Chem.2003 Aug 29;278(35):33060-6.Epub 2003 Jun 13.PubMed PMID:12807889
【非特許文献10】Gilis D,McLennan HR,Dehouck Y,Cabrita LD,Rooman M,Bottomley SP.In vitro and in silico design of alpha1-antitrypsin mutants with different conformational stabilities.J Mol Biol.2003 Jan 17;325(3):581-9.PubMed PMID:12498804
【非特許文献11】Im H,Seo EJ,Yu MH.Metastability in the inhibitory mechanism of human alpha1-antitrypsin.J Biol Chem.1999 Apr 16;274(16):11072-7.PubMed PMID:10196190
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に記載の発明は、ヒト血清アルブミン結合ドメイン又はヒト血清アルブミンドメインと融合した、組換え操作されたアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインに一部基づく。
一部の実施形態は、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインとヒト血清アルブミン結合ドメイン又はヒト血清アルブミンドメインとを含む組換えタンパク質を含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1の全て又は一部を含む配列を有する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、1又は複数のリンカーを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインのC末端が、組換えタンパク質においてヒト血清アルブミン又はヒト血清アルブミン結合ドメインのN末端と融合する。一部の実施形態は、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインとヒト血清アルブミンドメインとを含む組換えタンパク質であって、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン及びヒト血清アルブミンドメインが、いずれも野生型アルファ-1-アンチトリプシン及び野生型ヒト血清アルブミンではない、当該組換えタンパク質を含む。
【0016】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと比較して、活性を保持する。一部の実施形態においては、1又複数の変異は、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、メチオニン酸化に対する抵抗性を引き起こす。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのM351V及び/又はM358Vを含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのK168C及びF189Cを含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、ループ-シート重合に対する実質的に増加した抵抗性を与える。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのF51L、G117F、K331F又はK335Aから選択された1又は複数の点変異である。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと比較して、ヒト好中球エラスターゼ及び/又はPR3に対する活性を保持する。
【0017】
一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に従う以下の残基位置のうちの少なくとも1つにおける変異を含む:51、100、114、117、163、164、165、168、169、172、173、174、183、189、232、283、300、302、303、304、306、330、331、333、335、336、337、338、339、340、351、356、358、又は361。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に以下の変異のうちの1又は複数を含む:F51L、L100F、L100C、T114F、G117F、K163T、G164V、T165S、K168C、K168I、K168A、K169V、L172V、L172A、L172C、V173C、K174T、A183V、F189C、F189I、F189V、C232S、S283C、K300A、V302A、L303A、G304A、L306A、S330R、K331F、K331I、K331V、K331T、K331C、V333C、V333A、K335A、K331F、K335G、K335T、A336G、V337C、V337A、L338A.、T339S、I340V M351V、I356M、M358I、M358P、M358A、M358R、M358L、M358V、又はP361C。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にF51L、G117F、K168C、F189C、C232S、S283C、K331F、K335A、M351V、M358V、M358L、又はP361Cを含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にK168C及びF189Cの両方である。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にP361C及びS283Cの両方である。
【0018】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232Sを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にM351V及びM358Vを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にM351V及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、M351V、及びM358Vを含む1又は複数の変異を有する。
【0019】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、G117F、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK51L、K168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、K335A、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、K168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K331F、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、K331F、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、K335A、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異K335Aを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異K331Fを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異G117Fを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異S283Cを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異P361Cを含む。
【0020】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、配列番号3又は配列番号5の少なくとも一部分である。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインは、配列番号22~36のうちの1つである。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインは、配列番号6~21から選択された1又は複数のCDRを含む。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン又はヒト血清アルブミン結合ドメインが、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較してアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの血漿中半減期を長くする。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン内の組換えタンパク質のN-グリカン又はポリシアル化(polysialyation)の数が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインよりも多い。
【0021】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、1又は複数の変異を含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号5に従って番号付けられた1又は複数の残基である残基407、408、409、410、413、及び414のうちの1又は複数である。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号5に従って番号付けられた1又は複数の残基であるL407A、L408V、V409A、R410A、L413Q、及びL414Qのうちの1又は複数である。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンの部分又はバリアントを含む。
【0022】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合タンパク質は、配列番号3又は配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンタンパク質の全て又は一部と結合することが可能であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号64~68又は配列番号71のいずれか1つを有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号64を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号65を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号66を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号67を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号68を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、配列番号71を有するタンパク質を含む又は当該タンパク質からなる。
【0024】
一部の実施形態においては、本明細書で提供する組換えタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態においては、核酸はベクターを含む。一部の実施形態においては、ベクターは宿主細胞を含む。
【0025】
一部の実施形態は、本明細書で提供する核酸のうちの1つと共に宿主細胞を培養することと、組換えタンパク質を回収することとを含む、組換えタンパク質の作製方法に向けられる。一部の実施形態においては、宿主細胞は、真核生物宿主細胞である。一部の実施形態においては、宿主細胞は、哺乳類宿主細胞である。一部の実施形態においては、哺乳類宿主は、CHO細胞である。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、pHが中性のアルファ-1-アンチトリプシン-Fc捕捉選択培地を用いて回収する。
【0026】
一部の実施形態は、それを必要とする患者におけるアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症を治療する方法であって、当該患者に対して、本明細書で提供する組換えタンパク質を投与することを含む、当該方法に向けられる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、医薬組成物を含む。一部の実施形態においては、組換えタンパク質の投与は、約週1回もしくは約週1回よりも長い間隔で、約10日毎に1回もしくは約10日毎に1回よりも長い間隔で、約15日毎に1回もしくは約15日毎に1回よりも長い間隔で、約20日毎に1回もしくは約20日毎に1回よりも長い間隔で、約25日毎に1回もしくは約25日毎に1回よりも長い間隔で、約1月毎に1回もしくは約1月毎に1回よりも長い間隔で、又は約2月毎に1回もしくは約2月毎に1回よりも長い間隔で、投与する。
【0027】
一部の実施形態は、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインを含むタンパク質の薬物動態を改善する方法に向けられる。一部の実施形態においては、タンパク質は、本明細書に記載する組換えタンパク質のいずれかである。一部の実施形態においては、改善された薬物動態は、Prolastin(プロラスチン)に対する改善を意味する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
(a)アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと、
(b)ヒト血清アルブミン結合ドメインと
を含む、組換えタンパク質。
(項目2)
配列番号63からなるリンカーをさらに含む、項目1記載の組換えタンパク質。
(項目3)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインのC末端が、前記ヒト血清アルブミン結合ドメインのN末端と融合する、項目1から2のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目4)
前記ヒト血清アルブミン結合ドメインは、配列番号3又は配列番号5のいずれかを有するヒト血清アルブミンの少なくとも一部分である、項目1から3のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目5)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの半減期が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して長い、項目1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目6)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン内の組換えタンパク質のN-グリカン又はポリシアル化(polysialyation)の数が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインよりも多い、項目1から5のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目7)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと比較して、1又は複数の変異を有する、項目1から6のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目8)
前記1又は複数の変異は、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと比較して、メチオニン酸化に対する抵抗性を引き起こす、項目7記載の組換えタンパク質。
(項目9)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと比較して、活性を保持する、項目7又は8に記載の組換えタンパク質。
(項目10)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのM351V及び/又はM358Vを含む、項目7又は8に記載の組換えタンパク質。
(項目11)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けされた残基でのK168C及びF189Cを含み、また前記1又は複数の変異が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、ループ-シート重合に対する増加した抵抗性を与える、項目7から10のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目12)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのF51L、G117F、K331F、又はK335Aより選択された1又は複数の点変異である、項目7から11のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目13)
アルファ-1-アンチトリプシンが、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、ヒト好中球エラスターゼ及び/又はPR3に対する活性を保持する、項目1から12のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目14)
前記ヒト血清アルブミン結合ドメインは、配列番号22~36のいずれか1つに記載の配列を有するポリペプチドを含む、項目1から13のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目15)
項目1から14のいずれか一項に記載の組換えタンパク質をコードする、単離された核酸。
(項目16)
項目15に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
(項目17)
項目16に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
(項目18)
項目17に記載の前記宿主細胞を培養することと、組換えタンパク質を回収することとを含む、組換えタンパク質の作製方法。
(項目19)
前記宿主細胞は、哺乳類宿主細胞である、項目17又は項目18に記載の方法。
(項目20)
哺乳類宿主は、CHO細胞である、項目19記載の方法。
(項目21)
前記組換えタンパク質は、pHが中性のアルファ-1-アンチトリプシン-Fc捕捉選択培地を用いて回収する、項目18から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
それを必要とする患者におけるアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症を治療する又は予防的に治療する方法であって、当該患者に対して、項目1から14のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を投与することを含む、方法。
(項目23)
前記組換えタンパク質の投与は、約週1回もしくは約週1回よりも長い間隔で、約10日毎に1回もしくは約10日毎に1回よりも長い間隔で、約15日毎に1回もしくは約15日毎に1回よりも長い間隔で、約20日毎に1回もしくは約20日毎に1回よりも長い間隔で、約25日毎に1回もしくは約25日毎に1回よりも長い間隔で、約1月毎に1回もしくは約1月に1回よりも長い間隔で、又は約2月毎に1回もしくは約2月毎に1回よりも長い間隔で、投与する、項目22記載の方法。
(項目24)
(a)アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと、
(b)ヒト血清アルブミンドメインと
を含む、組換えタンパク質。
(項目25)
前記ヒト血清アルブミンドメインは、野生型ヒト血清アルブミンである、項目24記載の組換えタンパク質。
(項目26)
配列番号63に記載の配列を有するリンカーを含む、項目24から25のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目27)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインのC末端が、前記ヒト血清アルブミンドメインのN末端と融合する、項目24から26のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目28)
前記ヒト血清アルブミンドメインが、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較してアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの血漿中半減期を長くする、項目24から27のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目29)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン内の組換えタンパク質のN-グリカン又はポリシアル化(polysialyation)の数が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインよりも多い、項目24から28のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目30)
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、1又は複数の変異を有する、項目24から29のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目31)
前記1又は複数の変異は、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、メチオニン酸化に対する抵抗性を引き起こす、項目30記載の組換えタンパク質。
(項目32)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのC232S、M351V、M358L及び/又はM358Vを含む、項目30又は31に記載の組換えタンパク質。
(項目33)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのK168C及びF189Cを含み、また前記1又は複数の変異が、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、ループ-シート重合に対する実質的に増加したアルファ-1-アンチトリプシンの抵抗性を与える、項目30から32のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目34)
前記1又は複数の変異は、配列番号1に従って番号付けした残基でのF51L、G117F、S283C、K331F、K335A、又はP361Cより選択される1又は複数の点変異である、項目30から33のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目35)
前記1又は複数の変異は、配列番号1にC232S、配列番号1にM351V及びM358V、配列番号1にM351V及びM358L、ならびに配列番号1にC232S、M351V及びM358V、から選択される変異を含む、項目30から34のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目36)
アルファ-1アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にG117F、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、K331F、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、K335A、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にK168C、F189C、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、S283C、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異、配列番号1にF51L、G117F、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にF51L、C232S、K331F、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にF51L、C232S、K335A、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にK51L、K168C、F189C、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にF51L、C232S、S283C、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異、配列番号1にG117F、C232S、K331F、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にG117F、K335A、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にG117F、K168C、F189C、C232S、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にG117F、C232S、S283C、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、K331F、K335A、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K331F、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、S283C、K331F、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K335A、M351V及びM358Lを含む1又は複数の変異、配列番号1にC232S、S283C、K335A、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異、又は配列番号1にK168C、F189C、C232S、S283C、M351V、M358L及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する、項目30から35のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目37)
アルファ-1-アンチトリプシンは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、活性を保持する、項目24から36のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目38)
アルファ-1-アンチトリプシンは、野生型アルファ-1-アンチトリプシンと比較して、ヒト好中球エラスターゼ及び/又はPR3に対する活性を保持する、項目24から37のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
(項目39)
項目24から38のいずれか一項に記載の組換えタンパク質をコードする、単離された核酸。
(項目40)
項目39に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
(項目41)
項目40の前記ベクターを含む、宿主細胞。
(項目42)
項目41の前記宿主細胞を培養することと、組換え融合タンパク質を回収することとを含む、組換えタンパク質の作製方法。
(項目43)
前記宿主細胞は、真核細胞である、項目42記載の方法。
(項目44)
前記真核細胞は、酵母細胞である、項目43記載の方法。
(項目45)
前記宿主細胞は、哺乳類宿主細胞である、項目44記載の方法。
(項目46)
哺乳類宿主は、CHO細胞である、項目45記載の方法。
(項目47)
前記組換えタンパク質は、pHが中性のアルファ-1-アンチトリプシン-Fc選択培地を用いて回収する、項目40から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
それを必要とする患者におけるアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症を治療する又は予防的に治療する方法であって、当該患者に対して、項目1から14又は項目24から38のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を投与することを含む、方法。
(項目49)
前記組換えタンパク質の投与は、約週1回もしくは約週1回よりも長い間隔で、約10日毎に1回もしくは約10日毎に1回よりも長い間隔で、約15日毎に1回もしくは約15日毎に1回よりも長い間隔で、約20日毎に1回もしくは約20日毎に1回よりも長い間隔で、約25日毎に1回もしくは約25日毎に1回よりも長い間隔で、約1月毎に1回もしくは約1月に1回よりも長い間隔で、又は約2月毎に1回もしくは約2月毎に1回よりも長い間隔で、投与する、項目48記載の方法。
(項目50)
(a)アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと、
(b)ヒト血清アルブミンドメインと
を含む、組換えタンパク質であって、
前記アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインと、当該ヒト血清アルブミンとは、野生型のアルファ-1-アンチトリプシン及びヒト血清アルブミンではない、組換えタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、アルファ-1-アンチトリプシンのタンパク質及び遺伝子の構造を表す。上方図は、その直線状形態での通常の当該タンパク質、配列番号1に従う残基46、83及び247において3つのアスパラギニル連結複合体炭水化物の側鎖を伴う394アミノ酸の単鎖タンパク質、を示す。下方図は、当該遺伝子(配列番号69)であって、3つの非コードエキソン(IA、IB及びIC)及び4つのコードエキソン(IIからV)からなる当該遺伝子を示す。アルファヘリックスを四角で示しており、またベータシートをジグザグ線で示す。開始コドンは、エキソンII内にあり、その後に24残基のシグナルペプチドが続く。炭水化物付加部位は、CHOとして図面に示している。
図2図2は、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症と関連するアルファ-1-アンチトリプシン遺伝子と関連する変異の位置を示している。
図3図3は、アルファ-1-アンチトリプシン二次構造を示す。
図4A図4は、本発明のコンストラクトに関する精製CE-SDSを表す。図4Aは、PP11288に関する精製CE-SDSを表す。図4Bは、PP11289に関する精製CE-SDSを表す。図4Cは、PP11290に関する精製CE-SDSを表す。図4Dは、PP11291に関する精製CE-SDSを表す。図4Eは、PP11292に関する精製CE-SDSを表す。図4Fは、精製した試料に関する精製CE-SDSを表す(還元のオーバーレイ)。図4Gは、精製した試料に関する精製CE-SDSを表す(非還元条件)。
図4B】同上。
図4C】同上。
図4D】同上。
図4E】同上。
図4F】同上。
図4G】同上。
図5図5は、5種のAAT-アルブミン融合体の安定性解析を表す。
図6図6は、5種のAAT-アルブミン融合体によるhNE阻害アッセイの結果を表す。
図7A図7は、本発明のコンストラクトに関する精製CE-SDSを表す。図7Aは、PP13579に関する精製CE-SDSを表す。図7Bは、PP13580に関する精製CE-SDSを表す。図7Cは、PP13581に関する精製CE-SDSを表す。図7Dは、PP13582に関する精製CE-SDSを表す。図7Eは、PP13583に関する精製CE-SDSを表す。図7Fは、PP13584に関する精製CE-SDSを表す。図7Gは、PP13585に関する精製CE-SDSを表す。図7Hは、PP13586に関する精製CE-SDSを表す。図7Iは、PP13587に関する精製CE-SDSを表す。図7Jは、PP13588に関する精製CE-SDSを表す。図7Kは、PP13589に関する精製CE-SDSを表す。図7Lは、PP13590に関する精製CE-SDSを表す。図7Mは、PP13592に関する精製CE-SDSを表す。図7Nは、PP13593に関する精製CE-SDSを表す。図7Oは、PP13594に関する精製CE-SDSを表す。図7Pは、PP13595に関する精製CE-SDSを表す。図7Qは、PP13596に関する精製CE-SDSを表す。図7Rは、PP13597に関する精製CE-SDSを表す。図7Sは、PP13598に関する精製CE-SDSを表す。図7Tは、PP13599に関する精製CE-SDSを表す。図7Uは、PP13600に関する精製CE-SDSを表す。
図7B】同上。
図7C】同上。
図7D】同上。
図7E】同上。
図7F】同上。
図7G】同上。
図7H】同上。
図7I】同上。
図7J】同上。
図7K】同上。
図7L】同上。
図7M】同上。
図7N】同上。
図7O】同上。
図7P】同上。
図7Q】同上。
図7R】同上。
図7S】同上。
図7T】同上。
図7U】同上。
図8図8は、21種のAAT-アルブミン融合体の安定性解析を表す。
図9A図9は、AAT変異体のIC50解析を表す。図9Aは、AAT変異体のIC50解析を表す。図9Bは、AAT変異体のIC50解析を表す。図9Cは、AAT変異体のIC50解析を表す。
図9B】同上。
図9C】同上。
図10図10は、正規化して、標準化スケール上にプロットしたEpiMatrixタンパク質スコアを表す。
図11図11は、ベース(C232S、M351V、M351L)でのAATバリアント(K335A、S283C/P361C)の安定性解析を表す。
図12図12は、カニクイザル(cyno)PKデータを表す。
図13図13は、10mg/kg後のサルにおけるPK後のAAT-HSA及びprolastin(プロラスチン)が3コンパートメントであったことを表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
専門用語
本明細書で用いる場合、「約」の語は、おおよその数学量を指すものとし、整数値のみならず百分率に対しても用いることがある。上限又は下限が整数値を含む場合、約という語はおおよそである境界を指すものとし、そしてその語はまた、その境界(下限に対して)よりも上又はその境界(その上限に対して)よりも下の全てを含むものとする。例えば、393残基配列のうちの「約」20残基を含む配列の部分は、およそ20残基である境界と、その値よりも上の全ての整数値とを含むものとする。
【0030】
本明細書で用いる場合、「アルブミン」は、アルブミンタンパク質、もしくはアルブミンの1もしくは複数の機能活性を有するアルブミンの断片、部分もしくはバリアントを指すか、又はアルブミンの1もしくは複数の機能活性を有する、アルブミンのタンパク質、断片、部分又はそのバリアントをコードする核酸配列を指すものとする。アルブミンは、任意の脊椎動物由来、特に任意の哺乳類由来であり得る。一部の実施形態においては、アルブミンは、ヒト、ウシ、ヒツジ、又はブタに由来する。非哺乳類のアルブミンとしては、雌鳥及びサケが挙げられるがこれに限定されない。一部の実施形態においては、任意の脊椎動物由来のアルブミンは、ヒトアルブミン又はヒト血清アルブミンの代替となり得る。
【0031】
本明細書で用いる場合、「抗体」の語はあるタイプの免疫グロブリン分子を指し、その広義の意味で用いる。抗体は、詳細には、インタクトな抗体(例えば、インタクトな免疫グロブリン)及び抗体断片を含む。抗体は、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。抗原結合ドメインの一例は、V-V二量体により形成される抗原結合ドメインである。抗体の他の例は、以下の節において記載する。
【0032】
及びV領域は、より保存された領域が分散した、超可変性の領域(「超可変領域(HVR)」、本明細書で規定される場合、CDRとも呼ぶ)にさらに細分化され得る。より保存された領域をフレームワーク領域(FR)と呼ぶ。V及びVはそれぞれ、概して以下の順序(N-末端からC-末端へ)で配置した、3つのCDRと4つのFRとを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。CDRは、抗原結合に関与して、抗原特異性と、抗体に対する結合親和性とを与える。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th ed.(1991)Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDを参照されたく、当該文献はその全体として参照により援用する。
【0033】
任意の脊椎動物種よりの軽鎖は、定常ドメインの配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2種のうちの一方に割り当てることが可能である。
【0034】
任意の脊椎動物種よりの重鎖は、以下の5つの異なるクラス(又はアイソタイプ)のうちの1つに割り当てることが可能である:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM。これらクラスはまた、それぞれα、δ、ε、γ、及びμとも示す。IgG及びIgAのクラスは、配列及び機能の違いに基づいてサブクラスにさらに分けられる。ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2。
【0035】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域等である、インタクトな抗体の部分を含む。抗体断片としては、例えばFv断片、Fab断片、F(ab’)断片、Fab’断片、scFv(sFv)断片、及びscFv-Fc断片が挙げられる。
【0036】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合的に連結した二量体を含む。
【0037】
「Fab」断片は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインに加えて、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とを含む。Fab断片は、例えば全長抗体のパパイン消化によって生成し得る。
【0038】
「F(ab’)」断片は、ジスルフィド結合によってヒンジ領域付近で結合した2つのFab’断片を含有する。F(ab’)断片は、例えばインタクトな抗体のペプシン消化によって生成し得る。F(ab’)断片は、例えばβ-メルカプトエタノールでの処理によって分離可能である。
【0039】
「単鎖Fv」又は「sFv」又は「scFv」の抗体断片は、ペプチドリンカーで連結した一本鎖ポリペプチド内のVドメイン及びVドメインを含む。Pluckthun
A.(1994)を参照されたい。「scFv-Fc」断片は、Fcドメインに付加したscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC-末端に付加し得る。Fcドメインは、V又はVに続き得るものであり、これはscFvにおける可変ドメインの配置(すなわち、V-V又はV-V)に左右される。当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の好適なFcドメインを用いることができる。
【0040】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ヒト化抗体は、概して、1又は複数のCDRよりの残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)の1又は複数のCDRよりの残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0041】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生した又はヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列(例えば、ヒトから取得又はデノボで設計)を利用する非ヒトの源に由来する、抗体の配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体は特に、ヒト化抗体を除外する。
【0042】
本明細書において用いる場合、「単一ドメイン抗体」は、そのCDRが単一ドメインポリペプチドのうちの一部である抗体を指すものとする。例としては、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠いている抗体、従来の四鎖抗体由来の単一ドメイン抗体、及び抗体由来のもの以外の単一ドメイン足場が挙げられるが、これに限定されない。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、サメ、及びウシを含むがこれに限定されない任意の種に由来し得る。例として、単一ドメイン抗体は、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、及びグアナコ等のラクダ科の種で生じ得る。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号22~28及び配列番号29~36のうちのいずれか1つに記載の配列を含む。
【0043】
本明細書で用いる場合、「相補性決定領域」又は「CDR」は、抗体内の可変鎖の一部である。CDRは、特異抗体に重要である。当業者は、特異抗体のために抗体内のCDRの位置を決定する方法を認識するものであり、またCDRの位置を決定するシステムがいくつか存在する。明確にするため、本願においては、単一ドメイン抗体のCDRは、本明細書においてその全体として参照によって援用する米国特許出願公開第2010/011339号に従って決定するものとする。
【0044】
「エピトープ」の語は、例えば限定するものではないが抗体等である結合タンパク質に特異的に結合することが可能である抗原の部分を意味する。エピトープは、表面接近可能なアミノ酸残基及び/もしくは糖の側鎖からなることがよくあり、また特異的な三次元構造特性のみならず特異的な電荷特性を有し得る。エピトープは、当該結合に直接関与するアミノ酸残基と、当該結合に直接関与しない他のアミノ酸残基とを含み得る。抗体が結合するエピトープは、エピトープ決定に関する公知の技術を用いて決定することが可能である。
【0045】
本明細書で用いる場合、「ヒトアルブミン」は、ヒトアルブミンタンパク質、もしくはヒトアルブミンの1もしくは複数の機能活性を有するヒトアルブミンの断片もしくはバリアントもしくは部分を指すか、又はヒトアルブミンの1もしくは複数の機能活性を有する、ヒトアルブミン、その断片、部分もしくはバリアントをコードする核酸配列を指す。ヒトアルブミンは、609個のアミノ酸のポリペプチド配列であり、その最初の18個のアミノ酸は、最終的な血液由来産物では見られないリーダー配列を構成する。ヒトアルブミンは、一部の実施形態において配列番号3で記載する。
【0046】
本明細書で用いる場合、「ヒト血清アルブミン」は、ヒト血液中に存在するヒト血清アルブミンを指すものとし、これは通常、最初の18個のアミノ酸リーダー配列を欠いている。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、配列番号5で記載する配列を有する。ヒト血清アルブミンドメインはまた、任意のヒト血清アルブミンタンパク質、又はヒト血清アルブミンの1もしくは複数の機能活性を有するヒト血清アルブミンの断片又はバリアント又は部分を指すものとする。
【0047】
本明細書で用いる場合、「ヒト血清アルブミン結合タンパク質」又は「ヒトアルブミン結合ドメイン」は、ヒトアルブミン又はヒト血清アルブミンに対する1又は複数の結合活性を有する、任意のタンパク質又はタンパク質の断片もしくはバリアントを指すものとする。
【0048】
本明細書で用いる場合、「アルファ-1-アンチトリプシン」又は「α-アンチトリプシン」(「A1AT」、「A1A」又は「AAT」とも)は、アルファ-1-アンチトリプシンタンパク質、又はアルファ-1-アンチトリプシンの1もしくは複数の機能活性を有するアルファ-1-アンチトリプシンの断片もしくはバリアント、又はアルファ-1-アンチトリプシンの1もしくは複数の機能活性を有する、アルファ-1-アンチトリプシンタンパク質、断片もしくはそのバリアントをコードする核酸配列を指すものとする。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンタンパク質は、配列番号1で記載の配列を有する。
【0049】
本明細書で用いる場合、「アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン」又は「α-アンチトリプシンセルピンドメイン」(「A1ATドメイン」、「A1Aドメイン」又は「AATドメイン」とも)は、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン、又はアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質もしくは断片の1もしくは複数の機能活性を有するアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの断片もしくはバリアント、又はアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質の1もしくは複数の機能活性を有する、アルファ-1-アンチトリプシンタンパク質セルピンドメインもしくは断片もしくはそのバリアントをコードする核酸配列を指すものとする。
【0050】
本明細書で用いる場合、「アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症」又は「AATD」は、アルファ-1-アンチトリプシンの産生不全の原因となる遺伝性疾患である。当該疾患は、アルファ-1-アンチトリプシンの減少につながり、また遺伝性肺気腫とも呼ばれ、結果的に肺及び肝臓の疾患を生じる。当該欠乏症にはいくつかの形態と程度が存在する。当該形態及び程度は、患者が欠陥のある対立遺伝子のコピーを1つ持っているか又は2つ持っているかに左右される。深刻なアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症では、症状をもつ多くの人々の成人期において、特に彼らがタバコの煙に曝露するのであれば、汎小葉性肺気腫又はCOPDを引き起こす。当該疾患はまた、少数の小児及び成人において種々の肝疾患につながる可能性があり、そして場合によっては、より稀な問題につながる可能性がある。アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症によれば、通常、ある程度の障害がもたらされ、余命が短くなる。
【0051】
本明細書に記載の組換えタンパク質又はその機能的断片もしくはバリアントの「有効量」は、複数用量の集合体を投与したとき、又は任意の他のタイプの規定された治療レジメンの一部として投与したときに、合併症と関連する少なくとも1つの臨床パラメータによって明らかになされるような、予後又は予防における測定可能な統計学的な改善を生じるような、ポリペプチド又はその機能的断片もしくはバリアントの量を指す。
【0052】
本明細書において用いる場合、「好中球エラスターゼ」は、肺に弾性収縮力を与えるゴム様巨大分子であるエラスターゼを破壊するセリンプロテアーゼを指すものである。血液が含有するAATが不十分な量であるとき、好中球エラスターゼはエラスチンを破壊する可能性があり、肺の弾力は低下し、これは結果的に、例えば慢性的な閉塞性肺疾患等の呼吸器合併症をもたらす。
【0053】
本明細書で用いる場合、「部分」の語は、例えばタンパク質又はポリペプチド等である何かの全体の一部又は欠片を意味するものとする。
【0054】
本明細書で用いる場合、タンパク質又はポリペプチドの分子に関する「組換え」は、単離した核酸分子又は組換え核酸分子を利用して発現した、タンパク質又はポリペプチドの分子を指す。
【0055】
本明細書において用いる場合、「バリアント」の語は、例えば挿入、欠失及び保存性又は非保存性のいずれかである置換であって、こうした変化が、アルブミンもしくはアルブミン結合ドメインのコロイド的な有用なリガンド結合及び非免疫原性特性のうちの1又は複数を実質的に変化させない、又はセルピンドメインを変えない、当該挿入、欠失及び当該置換含むがこれに限定されない、タンパク質の異なる配列を意味するものである。
【0056】
本明細書に記載するポリペプチドのバリアントは、本明細書で提供するヒト野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有するポリペプチドを含む。例えば、アルファ-1-アンチトリプシンのバリアントは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有するポリペプチドを含む。例えば、ヒトアルブミンのバリアントは、配列番号3又は配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有するポリペプチドを含む。2つの配列間の「同一性」又は「配列相同性」(これら語は本明細書において区別なく用いる)の計算は、最適比較用のアラインメントによって実施する(例えば、第1及び第2のアミノ酸又は核酸の配列のうちの一方又は両方に、最適なアラインメントのためにギャップを挿入することが可能であり、また比較目的のために、非相同性の配列を無視することが可能である)。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドで占有されている場合、当該分子同士は、その位置で同一である(本明細書において用いる場合、アミノ酸又は核酸の「同一性」は、アミノ酸又は核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性の割合は、その配列が共有する同一の位置の数の関数である。バリアントは、ヒト野生型ポリペプチドと比較して化学的に改変されているか、及び/又はヒト野生型ポリペプチドと比較して1もしくは複数のアミノ酸配列の変更を含有しているかのいずれかであるポリペプチドを含むがこれに限定されない。
【0057】
本明細書に記載するポリペプチドのバリアントは、ポリペプチドの野生型のアミノ酸配列に対してアミノ酸修飾(例えば、欠失、付加、又は例えば保存的置換等である置換)を有するものであり得る。一部の実施形態においては、AATのバリアントは、アルファ-1-アンチトリプシン(配列番号1)と少なくとも1、2、3、4、5又はそれ以上の残基が異なり得、またヒト血清アルブミンのバリアントは、ヒト血清アルブミン(配列番号5)より少なくとも1、2、3、4、又は5の残基が変動し得る。
【0058】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において既に規定されている。これらファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を含む。保存的置換を有する組換えタンパク質は、本発明の範囲内にあることを意図する。
【0059】
「融合体」又は「融合分子」の語は、その文脈に応じて、ポリペプチド又は核酸の融合体を指し得る。それは、全長配列又はタンパク質又は核酸又はその断片を含み得る。またそれは、リンカー分子を伴う又は伴わない組換えタンパク質を含み得る。
【0060】
「単離」タンパク質は、それから単離されるタンパク質を取得することが可能である天然試料の少なくとも1つの成分のうちの少なくとも約90%から回収したタンパク質を指す。タンパク質は、その種又は関心の種の集団が重量対重量基準で少なくとも約5、25、50、75、80、90、92、95、98、又は99%純粋であれば、「少なくともおよそ」ある程度の純度のものであり得る。
【0061】
本明細書で用いる場合、「コロイドの」の語は、コロイド浸透圧又は膠質コロイド浸透圧を指すものとする。それは、循環系へと水を引き入れる血管の血漿において、特にアルブミンであるタンパク質によって発揮されるコロイド浸透圧の形態である。それは、静水圧に対する反力である。それは、糸球体のフィルターを通る圧力に対して大きな影響を及ぼす。
【0062】
主題の方法によって治療しようとする「患者」、「対象」又は「宿主」(これら語は区別なく用いられる)は、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを意味し得る。好ましくは、患者、対象、又は宿主は、ヒト患者を指す。
【0063】
対象における疾患を「予防的に治療すること」の語は、対象を薬物治療に供することを指し、例えば、疾患の少なくとも1つの症状を予防的に治療するような、すなわち、それが望ましくない症状の発達から宿主を保護するように、望ましくない症状の臨床的出現に先立って投与されるような、薬剤の投与である。疾患を「予防的に治療すること」はまた、「予防」とも呼び得る。一部の実施形態においては、予防的治療が当該疾患を防ぐ。
【0064】
本明細書において用いる場合、それを必要とする対象においてアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連した障害を「治療すること」又はアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連した障害を有する対象を「治療すること」は、当該対象を薬物治療に供すること、例えば疾患の少なくとも1つの症状を治癒、緩和又は軽減するように薬物を投与すること、を指す。
【0065】
本明細書に記載する治療のいずれかを、別の薬剤又は療法と併用して施与することが可能である。「併用」の語は、同一の患者を治療するために2以上の薬剤又は療法を用いることを指すものであり、当該薬剤又は療法の使用又は作用は、時間的に重複している。薬剤又は療法は、同時に(例えば、患者に投与する単一の剤形として又は同時に投与する2つの別個の剤形として)又は任意の順序で順次に、施与することが可能である。
【0066】
組換えタンパク質
一部の実施形態は、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン又はその機能的断片もしくはバリアントと、ヒト血清アルブミンドメインもしくはその機能的断片もしくはバリアント、又はヒト血清アルブミン結合ドメインもしくはその機能的断片もしくはバリアントとを含む組換えタンパク質を提供する。
【0067】
アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、全長アルファ-1-アンチトリプシンを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンは、配列番号1で記載の配列を含むタンパク質である。
【0068】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、1又は複数の変異を含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に従う以下の残基位置のうちの少なくとも1つにおける変異を含む:51、100、114、117、163、164、165、168、169、172、173、174、183、189、232、283、300、302、303、304、306、330、331、333、335、336、337、338、339、340、351、356、358、又は361。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1に以下の変異F51L、L100F、L100C、T114F、G117F、K163T、G164V、T165S、K168C、K168I、K168A、K169V、L172V、L172A、L172C、V173C、K174T、A183V、F189C、F189I、F189V、C232S、S283C、K300A、V302A、L303A、G304A、L306A、S330R、K331F、K331I、K331V、K331T、K331C、V333C、V333A、K335A、K331F、K335G、K335T、A336G、V337C、V337A、L338A、T339S、I340V、M351V、I356M、M358I、M358P、M358A、M358R、M358L、M358V、又はP361Cのうちの1又は複数を含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にF51L、G117F、K168C、F189C、C232S、S283C、K331F、K335A、M351V、M358V、M358L、又はP361Cを含む。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にK168C及びF189Cの両方である。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、配列番号1にP361C及びS283Cの両方である。
【0069】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232Sを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にM351V及びM358Vを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にM351V及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、M351V、及びM358Vを含む1又は複数の変異を有する。
【0070】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、G117F、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK51L、K168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にF51L、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、K335A、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、K168C、F189C、C232S、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にG117F、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、K331F、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K331F、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、K331F、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、K335A、M351V、及びM358Lを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にC232S、S283C、K335A、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1にK168C、F189C、C232S、S283C、M351V、M358L、及びP361Cを含む1又は複数の変異を有する。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異K335Aを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異K331Fを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異G117Fを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異S283Cを含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に点変異P361Cを含む。
【0071】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン内のグリカン部位は、切断されて、欠失している。一部の実施形態においては、配列番号1のうちの最初の残基は、グリカン部位が欠失するように変異している。一部の実施形態においては、配列番号1のうちの残基1~46が欠失している。
【0072】
一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、酸化に対する安定性の向上、ヒト好中球エラスターゼに対する効力の保持、重合に対する抵抗性、及び産生の容易性を含めた、安定性の向上を提供するものであって、当該向上した安定性は、野生型に対して測定される。
【0073】
一部の実施形態においては、当該1又は複数の変異は、配列番号1に従って記載した残基位置での、表1及び表2~5に記載するような1又は複数の変異である。

AAT-アルブミン融合体
ベース WT(野生型)
ベース C232S
ベース M351V、M358V
ベース M351V、M358L
ベース C232S、M351V、M358L
【0074】
【表1】
【0075】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、アルファ-1-アンチトリプシンの部分を含む。一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの部分は、例えば配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメイン等であるがこれに限定されない全長ヒトアルファ-1-アンチトリプシン以上の活性を有する。一部の実施形態においては、当該部分は、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約20の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約30の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約40の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約50の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約60の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約70の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約80の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約90の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約100の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約110の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約120の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約130の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約140の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約150の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約160の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約170の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約180の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約190の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約200の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約210の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約220の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約230の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約240の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約250の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約260の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約270の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約280の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約290の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約300の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約310の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約320の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約330の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約340の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約350の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約360の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約370の残基、アルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約380の残基、又はアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約390の残基である。
【0076】
一部の実施形態においては、当該部分は、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約20の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約30の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約40の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約50の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約60の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約70の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約80の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約90の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約100の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約110の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約120の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約130の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約140の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約150の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約160の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約170の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約180の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約190の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約200の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約210の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約220の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約230の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約240の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約250の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約260の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約270の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約280の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約290の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約300の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約310の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約320の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約330の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約340の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約350の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約360の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約370の残基、配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約380の残基、又は配列番号1に記載の配列を有するアルファ-1-アンチトリプシンの少なくとも約390の残基である。
【0077】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、配列番号1に記載の通常のアルファ-1-アンチトリプシンのバリアントを含む。一部の実施形態においては、当該バリアントは、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの活性部分を含む。
【0078】
アルブミン
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインは、全長ヒトアルブミンを含む。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインは、配列番号3又は配列番号5で記載する配列を含む。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインは、配列番号3又は配列番号5を含む配列を有する。
【0079】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインは、1又は複数の変異を含む。一部の実施形態においては、当該1又は複数の変異は、以下の位置:407、408、409、410、413及び414のうちの1又は複数における変異を含むものであって、当該位置の番号は配列番号5に対する。一部の実施形態においては、1又は複数の変異が、以下の変異:L407A、L408V、V409A、R410A、L413Q、及びL414Qのうちの少なくとも1つを含むものであって、当該位置の番号は、配列番号5に対する(例えば、本明細書において参照によってその全体としてここに援用する、国際公開第95/23857号を参照)。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、L407A、L408V、V409A、及びR410Aを含むものであって、当該位置の番号は、配列番号5に対する。一部の実施形態においては、1又は複数の変異は、R410A、L413Q及びL414Qを含むものであって、当該位置の番号は、配列番号5に対する。一部の実施形態においては、1又は複数の変異が、安定性を向上させ、及び/又は組換えタンパク質の産生を増加させる。
【0080】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインは、ヒトアルブミンの部分を含む。一部の実施形態においては、当該部分は、ヒト血清アルブミンの少なくとも約20の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約30の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約40の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約50の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約60の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約70の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約80の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約90の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約100の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約110の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約120の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約130の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約140の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約150の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約160の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約170の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約180の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約190の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約200の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約210の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約220の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約230の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約240の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約250の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約260の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約270の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約280の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約290の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約300の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約310の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約320の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約330の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約340の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約350の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約360の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約370の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約380の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約390の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約400の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約410の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約420の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約430の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約440の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約450の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約460の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約470の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約480の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約490の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約500の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約510の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約520の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約530の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約540の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約550の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約560の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約570の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約580の残基、ヒト血清アルブミンの少なくとも約590の残基、又はヒト血清アルブミンの少なくとも約600の残基である。
【0081】
一部の実施形態においては、当該部分は、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約20の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約30の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約40の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約50の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約60の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約70の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約80の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約90の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約100の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約110の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約120の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約130の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約140の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約150の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約160の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約170の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約180の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約190の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約200の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約210の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約220の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約230の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約240の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約250の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約260の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約270の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約280の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約290の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約300の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約310の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約320の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約330の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約340の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約350の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約360の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約370の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約380の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約390の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約400の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約410の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約420の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約430の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約440の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約450の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約460の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約470の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約480の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約490の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約500の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約510の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約520の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約530の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約540の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約550の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約560の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約570の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約580の残基、配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約590の残基、又は配列番号3もしくは配列番号5に記載の配列を有するヒト血清アルブミンの少なくとも約600の残基である。
【0082】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンの部分は、配列番号5のアミノ酸残基1~194、配列番号5のアミノ酸残基195~387、配列番号5のアミノ酸残基388~585、配列番号5の1~387、配列番号5の195~585に記載の配列の、又は配列番号5のアミノ酸残基1~194及び配列番号5のアミノ酸残基388~585の、少なくとも1つのアミノ酸配列もしくはそのバリアントを含む、又は当該少なくとも1つのアミノ酸配列もしくはそのバリアントからなる。各ドメイン自体は、フレキシブルなサブドメイン間リンカー領域を備えた2つの相同なサブドメイン、すなわち1~105、120~194、195~291、316~387、388~491及び512~585で構成されている(例えば、いずれの図面も含めて、本明細書において参照によって援用する、欧州特許出願公開第2 090 589A1号を参照)。一部の実施形態においては、当該部分は、少なくとも1つのサブドメインからなる、又は当該サブドメインを含む。
【0083】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインの部分は、全長ヒトアルブミンなど以上の活性を有する。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、配列番号5で記載する配列を含む配列を有する。
【0084】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンドメインが、野生型ヒト血清アルブミンのバリアントを含む。
【0085】
アルブミン結合タンパク質
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインは、ヒト血清アルブミンに結合することが可能であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンは、配列番号3又は配列番号5で記載する配列を有する。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミンが、配列番号5で記載するヒト血清アルブミンの部分を含む。一部の実施形態においては、ヒトアルブミンの部分が、エピトープを含む。
【0086】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインが、抗体を含む。一部の実施形態においては、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態においては、抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態においては、抗体はヒト免疫グロブリン((例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4);IgE(例えば、IgE1)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgM(例えば、IgM1)、IgD(例えば、IgD1))、又はヒト免疫グロブリンの断片、部分、もしくはバリアントである。
【0087】
一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインは、単一ドメイン抗体を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号6~9から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR1配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号10~16から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR2配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号17~21から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR3配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号37~62を含む配列を有するフレームワーク領域のいずれか1つ又は複数を含む。
【0088】
一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、1又は複数の結合ドメインの組み合わせを含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、CDR1、CDR2及びCDR3のうちの1又は複数の組み合わせを含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号6~9から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR1配列と、配列番号10~16から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR2配列とを含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号6~9から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR1配列と、配列番号17~21から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR3配列とを含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号10~16から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR2配列と、配列番号17~21から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR3配列とを含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号6~9から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR1配列と、配列番号10~16から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR2配列と、配列番号17~21から選択される配列を含む、当該配列からなる、又は実質的に当該配列からなる、CDR3配列とを含む。
【0089】
一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号22~28から選択される配列を含む。
【0090】
一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号29~36から選択されるヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号29を含む、配列番号29からなる、又は実質的に配列番号29からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号30を含む、配列番号30からなる、又は実質的に配列番号30からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号31を含む、配列番号31からなる、又は実質的に配列番号31からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号32を含む、配列番号32からなる、又は実質的に配列番号32からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号33を有するヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号34を含む、配列番号34からなる、又は実質的に配列番号34からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号35を含む、配列番号35からなる、又は実質的に配列番号35からなる、ヒト化配列を含む。一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号36を含む、配列番号36からなる、又は実質的に配列番号36からなる、ヒト化配列を含む。
【0091】
一部の実施形態においては、単一ドメイン抗体は、配列番号29~36から選択されるヒト化配列のバリアントを含む。本明細書に記載するバリアントは、本明細書で提供するポリペプチドの任意の配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有するポリペプチドを含む。例えば、ヒト化単一ドメイン抗体のバリアントは、配列番号29~36のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有することとなる。
核酸
【0092】
一部の実施形態は、ヒト血清アルブミン又はヒト血清アルブミン結合ドメインをコードするヌクレオチド配列に結合していてもよいアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインをコードする核酸を含む組換えタンパク質をコードする単離された核酸分子を含む。一部の実施形態においては、ヒト血清アルブミン結合ドメインは、抗体を含む。一部の実施形態においては、抗体は、単一ドメイン抗体を含む。
【0093】
一部の実施形態においては、本開示は、配列をコードするアルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの断片と、配列をコードするヒト血清アルブミン結合ドメイン又はヒト血清アルブミンドメインの断片とを含む核酸分子を特徴とする。一部の実施形態においては、ヌクレオチド配列は、配列番号1のアルファ-1-アンチトリプシンの断片もしくはバリアントを、及び/又は配列番号3もしくは配列番号5もしくは配列番号22~36のうちのいずれかの配列をコードするヒト血清アルブミン結合ドメインもしくはヒト血清アルブミンドメインの断片をコードする。
【0094】
一部の実施形態においては、核酸は、以下に記載するようなベクターを含む。
【0095】
ドメイン、ドメインの順序及びリンカー
一部の実施形態においては、本発明の組換えタンパク質は、1つのヒト血清アルブミンドメイン又は1つのヒト血清アルブミン結合ドメインと、1つのアルファ1-アンチトリプシン血清ドメインとを有する。しかしながら、一部の実施形態においては、各タンパク質の複数のドメインを用いて本発明の組換えタンパク質を作製してもよい。同様に、1以上のアルファ-1-アンチトリプシン血清ドメインを用いて、本発明の組換えタンパク質を作製することができる。例えば、アルファ-1-アンチトリプシン血清ドメインは、ヒト血清アルブミンドメイン又はヒト血清アルブミン結合ドメインのN-末端の端部及びC-末端の端部の両方に融合することができる。
【0096】
一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、ポリペプチドの融合部分間にリンカーを含有しない(例えば、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの部分は、ヒト血清アルブミンドメイン及び/又はヒト血清アルブミン結合ドメインの部分に融合する)。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、ポリペプチドの融合部分間にリンカーペプチドを含む。当該リンカーは、ペプチドリンカーであり得る。リンカーが、組換えタンパク質の発現量を向上させ得る。リンカーが、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインの生物学的活性を向上及び/又は増強させ得る。
【0097】
当業者は、本発明に用いることが可能なリンカーは多数存在するということを認識するであろう(例えば、Chen at al.,Fusion Protein Linkers:Property,Design,and Functionality,Adv Drug Deliv Rev.2013 October 15;65(10):1357-1369(2012)を参照されたく、当該文献はその全体として本明細書に参照により援用する)。一部の実施形態においては、リンカーは、配列番号63の記載を含む、当該記載からなる、又は実質的に当該記載からなる配列を有するペプチドである。
【0098】
組成物
本開示は、本明細書で記載する組換えタンパク質のいずれかを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、任意の許容可能な医薬製剤の形態をとり得る。医薬組成物は、液体、半固体、及び固体の剤形等の種々の異なる形態、例えば溶液(例えば、注射液及び不溶解性溶液)、分散剤又は懸濁剤、タブレット、錠剤、粉剤、リポソーム、及び座薬等で製剤化することが可能である。好ましい形態は、投与及び治療の適用の意図する形態に左右され得る。
【0099】
例示的な医薬組成物を以下に記載する。医薬組成物には、非経口(静脈内、皮下、皮内、筋肉内、及び関節内を含む)、外用(皮膚、経皮、経粘膜、頬側、舌下、及び眼内を含む)、及び直腸内の投与に好適であるものを含むが、最も好適なルートは、例えば、レシピエントの症状及び障害に左右され得る。
【0100】
本明細書に記載する医薬組成物は、例えば非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、及び関節内)で、全身に投与することが可能である。本明細書に記載の医薬組成物は、局所的に施与、例えば医薬組成物を投与することにより治療される症状又は障害が影響を及ぼす領域に施与することが可能である。
【0101】
非経口投与用の組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び組成物を意図するレシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有し得る、水系及び非水系の滅菌注射液、ならびに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水系及び非水系の滅菌懸濁液が含まれる。組成物は、例えば密閉されたアンプル及びバイアルである単位用量又は複数回用量の容器中に存在してもよく、そして使用の直前に、例えば生理食塩水又は注射用蒸留水である滅菌液キャリアを加えることだけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時の注射液及び懸濁剤は、無菌の粉剤、顆粒剤、及びタブレットから調製され得る。非経口投与用の例示的な組成物としては、例えば好適な無毒の非経口的に許容可能な希釈剤、又は例えばEDTA、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液等の溶媒、又は他の好適な拡散用もしくは湿潤用の懸濁剤を含有することが可能である注射剤又は懸濁剤が挙げられる。組成物は、EDTA、例えば0.5mMのEDTA;pH調製用及び緩衝用の薬剤、及び/又は、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンラウリン酸モノエステルである等張化剤、例えば湿潤剤又は乳化剤又は防腐剤等の少量の無毒の補助剤、を含むがこれに限定されない、薬理学的に許容可能な物質又はアジュバントを含有し得る。
【0102】
治療
一部の実施形態においては、本開示は、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を治療する方法であって、それを必要とする、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を有する患者又は対象に、本明細書に提供する有効量の組換えタンパク質又は医薬組成物を投与することを含む方法、を特徴とする。一部の実施形態においては、本開示は、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を予防的に治療する方法であって、それを必要とする、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を有する患者又は対象に、本明細書に記載する有効量の組換えタンパク質又は医薬組成物を投与することを含む方法、を特徴とする。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、それを必要とする患者に、単独で又は別の化合物と併用で投与することができる。
【0103】
一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物の投与は、約週1回もしくは約週1回よりも長い間隔で、約10日毎に1回もしくは約10日毎に1回よりも長い間隔で、約15日毎に1回もしくは約15日毎に1回よりも長い間隔で、約20日毎に1回もしくは約20日毎に1回よりも長い間隔で、約25日毎に1回もしくは約25日毎に1回よりも長い間隔で、約1月毎に1回もしくは約1月毎に1回よりも長い間隔で、約2月毎に1回もしくは約2月毎に1回よりも長い間隔で、又は約3月毎に1回もしくは約3月ごとに1回よりも長い間隔で、投与する。
【0104】
一部の実施形態においては、対象は、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症と診断されたか、又はアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症と診断される危険性がある。一部の実施形態においては、当該アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症が、肝疾患の根拠又は肺疾患の根拠を示している。一部の実施形態においては、当該アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症が、肝疾患又は肺疾患の原因が現れていなかった者で発症する。一部の実施形態においては、肝疾患の根拠又は肺疾患の根拠は、肺気腫、肝不全、肝炎、ヘパトモロジー(hepatomology)、黄疸、肝硬変、ネフローゼ症候群、常染色体劣性遺伝、COPD様症状、呼吸困難、肝トランスアミナーゼ上昇、及び肝細胞癌からなる群から選択された少なくとも1つである。
【0105】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症は、SERPINA1遺伝子における欠乏変異が引き起こす。SERPINA1遺伝子における120以上の欠乏変異が同定されているが、本発明による診断法に有用であり得る。一部の欠乏変異は、アルファ-1アンチトリプシンの産生に影響を及ぼさないが、他の欠乏変異は当該タンパク質の不足又は欠乏を引き起こす。一部の実施形態においては、SERPINA1遺伝子における欠乏変異が、配列番号1に従う342位のタンパク質においてアミノ酸であるグルタミン酸を、アミノ酸であるリシンで置換させる。
【0106】
異常なアルファ-1アンチトリプシンタンパク質同士が共に結合して、肝臓を出ることができない大きい分子を形成する可能性がある。これら高分子の蓄積がしばしば、結果として肝障害をもたらす。さらに、アルファ-1アンチトリプシンが好中球エラスターゼ又はPR3からの保護に利用するのに十分でないという理由から、肺組織は破壊される。アルファ-1アンチトリプシンの高分子はまた、過度の炎症に寄与し得るが、これは例えば脂肪織炎と呼ばれる皮膚症状等のアルファ-1アンチトリプシン欠乏症の他の特徴の一部を説明することができる。他のSERPINA1欠乏変異は、肝臓において素早く破壊される異常に小さい形態のアルファ-1アンチトリプシンの産生を招く。その結果、肺で利用できるアルファ-1アンチトリプシンがほぼ無いか全く無くなる。これら欠乏変異をもつ個体では、肝臓は健常なままであるが、肺は好中球エラスターゼ又はPR3から保護されないままである。
【0107】
一部の実施形態においては、欠乏変異は、機能喪失型変異である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、結果として停止コドンをもたらす。一部の実施形態においては、欠乏変異は、結果としてアミノ酸置換をもたらす。一部の実施形態においては、欠乏変異は、点変異、挿入、欠失及び/又は置換である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、点変異である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、欠失である。当該欠失は、1つのみ又は少量の塩基対、複数のエキソン又は遺伝子全体に関与し得る。一部の実施形態においては、欠乏変異は、遺伝子全体の欠失である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、部分的な遺伝子の欠失である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、結果として、スプライシングに影響を及ぼすイントロンの変化をもたらす。一部の実施形態においては、欠乏変異は、遺伝子の3’-非翻訳領域の変更である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、大規模染色体再編(gross chromosomal rearrangement)である。一部の実施形態においては、欠乏変異は、結果としてSERPINA1遺伝子産物の切断をもたらす。
【0108】
一部の実施形態においては、対象は、参照標準と比較してアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質の発現が異常である。一部の実施形態においては、当該参照標準は、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を有していない対象におけるアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質の発現レベルである。一部の実施形態においては、対象は、参照標準と比較してアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質の発現が低下している又は実質的に無い。一部の実施形態においては、当該参照標準は、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症に関連する障害を有していない対象におけるアルファ-1-アンチトリプシンタンパク質の発現レベルである。
【0109】
一部の実施形態においては、アルファ-1-アンチトリプシンセルピンドメインは、通常のアルファ-1-アンチトリプシンドメインの対立遺伝子である(Crystal,R.G.The alpha-1-antitrypsin gene and its deficiency states.Trends Genet.5:411-417,1989.[PubMed:2696185]を参照されたく、当該文献は、その全体として本明細書に参照により援用する)。一部の実施形態においては、当該対立遺伝子は、配列番号1に従う213位にバリンを含む対立遺伝子と(M1V、107400.0002)、213位にアラニンを含む対立遺伝子(M1A;107400.0001)である(Nukiwa,T.,Brantly,M.L.,Ogushi,F.,Fells,G.A.,Crystal,R.G.Characterization of the gene and protein of the common alpha-1-antitrypsin normal M2 allele.Am.J.Hum.Genet.43:322-330,1988.[PubMed:2901226]を参照されたく、当該文献は本明細書においてその全体として参照により援用する)。一部の実施形態においては、対立遺伝子は、欠乏対立遺伝子又はヌル対立遺伝子である。
【0110】
一部の実施形態においては、対象は、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症と関連する障害をもつと診断されたか、又は当該障害の危険性がある。一部の実施形態においては、対象は、アルファ-1-アンチトリプシンドメインをコードする遺伝子において変異を有する。一部の実施形態においては、変異は、アルファ-1-アンチトリプシンのエキソンのひとつにおける変異である。一部の実施形態においては、変異は、アルファ-1-アンチトリプシンのエキソン1、アルファ-1-アンチトリプシンのエキソン2の5プライムコード領域、又はアルファ-1-アンチトリプシンのエキソン5の3プライム部分にある変異である(Long,G.L.,Chandra,T.,Woo,S.L.C.,Davie,E.W.,Kurachi,K.Complete sequence of
the cDNA for human alpha-1-antitrypsin and the gene for the S variant.Biochemistry 23:4828-4837,1984.[PubMed:6093867]を参照されたく、当該文献は、本明細書においてその全体として参照により援用する)。
【0111】
一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、静脈内に投与する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、皮内に投与する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、局所的に投与する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、皮下に投与する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、くも膜下腔内に投与する。一部の実施形態においては、組換えタンパク質又は医薬組成物は、くも膜下腔内に投与する。
【0112】
ベクター及び宿主細胞、及びポリペプチドの発現
一部の実施形態においては、核酸はベクターである。一部の実施形態においては、ベクターは宿主細胞を含む。一部の実施形態は、本明細書で提供する核酸のうちの1つと共に宿主細胞を培養することと、組換えタンパク質を回収することとを含む、組換えタンパク質の作製方法に向けられる。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、pHが中性のアルファ-1-アンチトリプシン-Fc捕捉選択培地を用いて回収する。
【0113】
本明細書に記載する組換えタンパク質は、例えば任意の好適な宿主細胞からの分泌によって組換え分子として産生することができる。 多数の発現系が公知であり、細菌(例えば大腸菌(E.coli)及び枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、Kluyveromyces lactis及びPichia pastoris、糸状菌(例えば、Aspergillus属)、植物細胞、動物細胞、及び昆虫細胞、を含めて用いることができる。
【0114】
一部の実施形態においては、宿主細胞は、真核細胞である。一部の実施形態においては、宿主細胞は、哺乳類細胞である。一部の実施形態においては、宿主細胞は、CHO細胞、BHK細胞、COS-7細胞、L細胞、C127細胞及び3T3細胞からなる群から選択される。一部の実施形態においては、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0115】
一部の実施形態においては、宿主細胞は、酵母細胞である。本明細書に記載する宿主として用いることが可能である酵母の例示的な属としては、ピキア属(Pichia)、酵母菌属(Saccharomyces)、Kluyveromyces属、Aspergillus属、カンジダ属(Candida)、トルロプシス属(Torulopsis)、Torulaspora属、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces)、Citeromyces属、Pachysolen属、Zygosaccharomyces属、Debaromyces属、Trichoderma属、Cephalosporium属、Humicola属、Mucor属、Neurospora属、Yarrowia属、Metschunikowia属、Rhodosporidium属、Leucosporidium属、Botryoascus属、Sporidiobolus属、Endomycopsis属等が挙げられるがこれに限定されない。酵母菌種(Saccharomyces spp)の例としては、S.cerevisiae、S.italicus及びS.rouxiiがある。本明細書に記載の融合ポリペプチドの産生に好適な酵母菌株としては、D88、DXY1及びBXP10を挙げることができるがこれに限定されない。
【0116】
また本明細書においては、形質転換した宿主細胞自体に加えて、栄養培地における、それら細胞の培養、好ましくはモノクローナル(クローン的に均一)な培養、又はモノクローナルな培養に由来する培養について記載する。組換えタンパク質が分泌される場合、培地が、細胞とともに、又は細胞がろ過された又は遠心分離で除かれた場合には細胞を伴わずに、組換えタンパク質を含有することとなる。
【0117】
組換えタンパク質は、例えば宿主の染色体内に又は遊離プラスミド上に挿入されたコード配列から、従来のやり方で産生することが可能である。宿主細胞は、例えば電気穿孔法である当技術分野で公知の任意の方法によって、組換えタンパク質のためのコード配列で形質転換される。良好に形質転換された細胞、すなわち本明細書に記載するDNAコンストラクトを含有する細胞は、当業者にとって公知の技術によって同定することが可能である。例えば、発現コンストラクトの導入の結果得られた細胞を増殖させて、組換えタンパク質を産生することが可能である。細胞は回収して、溶解させて、それらのDNA含量を当技術分野で公知の方法を用いてDNAの存在に対して調べることが可能である。上清中の組換えタンパク質の存在は、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、抗体に基づく検出方法)を用いて検出することが可能である。
【0118】
また、本明細書に記載する組換えタンパク質の発現に用いる核酸を含むプラスミドベクターも本明細書において開示する。本明細書に記載する組換えタンパク質を発現するために、適切な組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は機能的に同等のものを、好適なベクター内に挿入することが可能である。好適なベクターは、挿入された核酸配列の発現にとって必要かつ適切な転写制御配列及び翻訳制御配列を含有する。当業者に公知である標準的な方法を用いて、本明細書に記載の核酸配列を含有する組換え発現ベクターを構築してもよい。これら方法としては、in vitroの組換え技術、合成技術、及びin vivoの組換え/遺伝子組換えが挙げられるがこれに限定されず、方法の選択は、特定のヌクレオチド断片の性質に依存するものであり、当業者が決定してよい。
【0119】
本明細書で用いるために好適なベクターは、複製の源及び制限エンドヌクレアーゼ配列部位を含有してもよい。当業者は、宿主細胞において用いるための好適な複製の源及び制限エンドヌクレアーゼ配列についての知識を有するであろう。本明細書で用いるために好適なベクターは、プロモーター要素及びエンハンサー要素を含むがこれに限定されない、転写を支援する配列要素を含有してもよい。当業者は、宿主細胞において好適となるであろう、プロモーター、誘導性プロモーター、及びエンハンサー要素を含むがこれに限定されない、様々な転写制御要素の知識を有するであろう。
【0120】
本明細書で用いるための好適なベクターはまた、特定の条件下で増殖及び生存する宿主細胞に必要な産物をコードする選択的マーカー遺伝子であって、その中にベクターが導入されている宿主細胞の選択を支援する、選択的マーカー遺伝子を含有し得る。典型的な選択遺伝子は、抗生剤、薬剤又は毒(例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、ネオマイシン、ハイグロマイシン等)に対する抵抗性を与えるタンパク質をコードする遺伝子を含み得るがこれに限定されない。当業者は、宿主細胞において用いるための好適な選択的マーカー及びレポーター遺伝子のためのコード配列についての知識を有するであろう。
【0121】
本明細書に記載する発現ベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクションの技術を経て宿主細胞に導入することが可能である。形質転換及びトランスフェクションの技術としては、リン酸カルシウム又は塩化カルシウムの共沈殿、DEAE-デキストラン介在性のトランスフェクション、リポフェクタミン、電気穿孔法、微量注入法及びウイルス介在性のトランスフェクションが挙げられるがこれに限定されない(米国特許第6,632,637号を参照されたいが、これはその全体として本明細書において参照により援用する)。当業者は、宿主細胞/ベクターの組み合わせに基づく好適な形質転換及びトランスフェクションの方法についての知識を有するであろう。長期間にわたる、高産生量の組換えタンパク質、当該組換えタンパク質の安定した発現が好ましいものであり得る。組換えタンパク質を安定的に発現する宿主細胞は、設計することができる。酵母プラスミドベクターとしては、pRS403~406、pRS413~416、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pRS413~416、pPPC0005、pScCHSA、pScNHSA、及びpC4を含むことが可能であるがこれに限定されない。
【0122】
別の実施形態においては、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型において優先的にポリペプチドの発現を司ることが可能である(例えば、組織特異的な制御因子を用いてI、ポリペプチドを発現する)。組織特異的制御因子は、当技術分野で公知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al.(1987)Genes Dev.1:268-277)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235-275)、T細胞プロモーター(Winoto and Baltimore(1989)EMBO J.8:729-733)及び免疫グロブリンプロモーター(Banerji et al.(1983)Cell 33:729-740及びQueen and Baltimore(1983)Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.(1985)Science 230:912-916)、及び乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州特許出願第264,166号)が挙げられる。発達的に制御されるプロモーターもまた包含され、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss(1990)Science 249:374-379)及びアルファ-フェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman(1989)Genes Dev 3:537-546)である。上記に特定した参考文献はそれぞれ、いずれの図面も含めて、それら全体として参照により援用する。
【0123】
本明細書に記載する組換えタンパク質は、硫酸アンモニウム又はエタノール沈降、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性の電荷相互作用クロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーを含む、周知の方法によって組換え細胞培養液から回収及び精製することが可能である。一部の実施形態においては、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に用いる。本明細書に記載する組換え及び分子生物学的な方法によって産生及び回収されたポリペプチドは、当技術分野で公知の標準プロトコールに従って精製され得る(例えば、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、SDSゲル電気泳動等)。本明細書に記載するポリペプチド及び/又は融合ポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はゲルろ過によって均一に精製され得る。組換え産生手順に用いる宿主に応じて、本発明のポリペプチドは、グリコシル化され得るか、又は非グリコシル化され得る。一部の実施形態においては、組換えタンパク質は、pHが中性のアルファ-1-アンチトリプシン-Fc捕捉選択培地により精製することとなる。
【0124】
一部の実施形態においては、本明細書に記載する組換えタンパク質をコードする核酸は、酵母における発現に最適である。本明細書に記載する融合ポリペプチドを発現するための宿主として用いることが可能である酵母の例示的な属としては、ピキア属(Pichia)、酵母菌属(Saccharomyces)、Kluyveromyces属、Aspergillus属、カンジダ属(Candida)、トルロプシス属(Torulopsis)、Torulaspora属、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces)、Citeromyces属、Pachysolen属、Zygosaccharomyces属、Debaromyces属、Trichoderma属、Cephalosporium属、Humicola属、Mucor属、Neurospora属、Yarrowia属、Metschunikowia属、Rhodosporidium属、Leucosporidium属、Botryoascus属、Sporidiobolus属、Endomycopsis属等が挙げられるがこれに限定されない。本明細書に記載の融合ポリペプチドの産生に好適な酵母菌株としては、D88、DXY1及びBXP10を挙げることができるがこれに限定されない。酵母プラスミドベクターとしては、pRS403~406、pRS413~416、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pRS413~416、pPPC0005、pScCHSA、pScNHSA、及びpC4を含むことが可能であるがこれに限定されない。酵母における発現のためのアルブミン融合タンパク質を作製するベクターには、pPPC0005、pScCHSA、pScNHSA、及びpC4:HSAが含まれる。
【0125】
一部の実施形態においては、本明細書に記載する組換えタンパク質をコードする核酸は、酵母菌(Saccharomyces)において発現する。酵母菌(Saccharomyces)の好ましい例示的な種には、S.cerevisiae、S.italicus、S.diastaticus、及びZygosaccharomyces rouxiiが含まれる。Kluyveromyces属の好ましい例示的な種には、K fragilis及びK lactisが含まれる。ハンヌゼラ属(Hansenula)の好ましい例示的な種には、H.polymorpha(現在はPichia angusta)、H.anomala(現在はPichia anomala)及びPichia
capsulataが含まれる。
【0126】
発現のために、他の有機体を用いてもよい。ピキア属(Pichia)のさらなる例示的な種には、P.pastorisが含まれる。Aspergillus属の例示的な種には、A.niger及びA.nidulansが含まれる。Yarrowia属の好ましい例示的な種は、Y.lipolyticaが含まれる。ATCC(登録商標)(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)より、多数の好ましい酵母種が利用可能である。
【0127】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【実施例0128】
実施例1:AAT-アルブミンの構築
野生型のアルファ-1-アンチトリプシン(アルファ-1-アンチトリプシン、配列番号1)と4つのバリアント(C232S、配列番号64;M351V、M358V、配列番号65;M351V、M358L、配列番号66;C232S、M351V、M358L、配列番号67)とを、長いグリシン-セリンリンカー(GGSGGSGGSGGSGG(配列番号63))を介してヒト血清アルブミンのN-末端に融合した。ヒトAATをコードする遺伝子を、ヒト肝臓cDNA(Zyagen社)よりPCR増幅させることが可能である。AAT遺伝子内の特異的な点変異は、重複PCRによって生成する(例えば、Higuchi R,Krummel B,Saiki R(1988)“A general method of in vitro preparation and specific mutagenesis of DNA fragments:study of protein and DNA interactions”.Nucleic Acids Res.16(15):7351-67を参照されたく、当該文献は、いずれの図面も含めて、その全体として本明細書において参照により援用する)。アルファ-1-アンチトリプシン遺伝子は、アルファ-1-アンチトリプシン遺伝子挿入部位の上流の哺乳類の分泌シグナル配列を含有する哺乳類発現ベクターに、ヒト血清アルブミンをコードする遺伝子及びリンカーを用いてフレーム内においてクローンニングする。
【0129】
最初のAATバリアントは、それらがシステイン酸化及び/又はメチオニン酸化のいずれかに抵抗性があることを理由に選択される。メチオニン酸化は、ヒト好中球エラスターゼに対するAAT阻害活性を低下させることがわかっている。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内で発現したら、AATヒト血清アルブミン(野生型(WT)又はバリアント、配列番号1~5)はそれぞれ、抗AAT樹脂(GE社)を用いて精製して、ヒト好中球エラスターゼ(hNE)の阻害に関して試験する。AATヒト血清アルブミン(野生型(WT)又はバリアント、配列番号1~5)はまたそれぞれ、動的光散乱法(DLS)及び動的スキャン蛍光分析法(dynamic scanning fluorimetry)(DSF)の機器(UNcle、Unchained社)を用いて、タンパク質全体の安定性を試験する。
【0130】
AATタンパク質全体の安定性は、AATの自己重合に対する抵抗性と関連があることがわかっている。このデータを用いて、少なくとも1つの追加的な変異(上記表1を参照)によるさらなる変異誘発性のために、AAT-ヒト血清アルブミンを選択する。これら変異は、AAT安定性をさらに増大させて自己重合を防止することがわかっている。AATヒト血清アルブミンバリアントはそれぞれ、CHOで発現し、精製し、そしてhNE阻害及びタンパク質安定性について試験する。
【0131】
複数の変異を共に組み合わせることによって、hNE阻害ほとんど又は全く失わずに、予期されない相乗的な安定性の増加が観察された。
【0132】
各遺伝子配列を、専売の高発現哺乳類ベクターにクローンニングした。完成したコンストラクトはそれぞれ、DNAのスケールアップに進める前に配列確認した。DNA発現コンストラクトはそれぞれ、トランスフェクションに適切な量までスケールアップした。プラスミドDNAを、品質評価のためにアガロースゲルにかけて、そしてトランスフェクションに進める前に配列を確認した。
【0133】
実施例2:AATアルブミン結合ドメインの構築
好ましいAATドメインを、実施例1に記載するようなヒト血清アルブミンの代わりに、アルブミン結合単一ドメイン抗体に融合する。例えば、それぞれの配列である配列番号22~36のいずれかを有する単一ドメイン抗体を、実施例1に提供するようなAATに融合する。AATアルブミン結合ドメインバリアントは、CHOにおいて発現し、精製し、そして実施例1に記載するようにhNE阻害及びタンパク質安定性について試験する。
【0134】
各遺伝子配列を、専売の高発現哺乳類ベクターにクローンニングした。完成したコンストラクトはそれぞれ、DNAのスケールアップに進める前に配列確認した。DNA発現コンストラクトはそれぞれ、トランスフェクションに適切な量までスケールアップした。プラスミドDNAを、品質評価のためにアガロースゲルにかけて、そしてトランスフェクションに進める前に配列を確認した。
【0135】
実施例3:CHO一過性トランスフェクション
懸濁CHO細胞を振とうフラスコに播種し、血清を含まない化学的に確認された培地を用いて増殖させた。増殖した細胞は、トランスフェクションの日に、新しい培地を含む新しいフラスコに播種した。各DNAコンストラクトを、CHO細胞内に一過性的にトランスフェクションした。産生操作の終了まで、細胞は、流加培養液(C1603及びC1604、Medna社)で維持した。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4-1】
【表4-2】
【0138】
実施例4:CHOアルブミンのアフィニティ精製
一過性的産生操作よりの馴化培地を回収して、遠心分離及びろ過により精製した。アルファ-1アンチトリプシン選択樹脂を充填してPBS、pH7.4で予め平衡化したカラムに、上清をロードした。カラムをPBSで洗浄して、OD280(NanoDrop、Thermo Scientific社で測定)がゼロ周辺に低下するまで、不純物を除去した。標的タンパク質を、高塩濃度溶出緩衝液(20mMのTris、2MのMgC12、pH7.4)で溶出して、フラクションを回収して、OD280を測定して記録した。標的タンパク質を含有するフラクションを貯留し、最終緩衝液からPBS、pH7.4へ透析した。最終産物を、0.2μm膜フィルターでろ過した。緩衝液交換後に、タンパク質濃度及び最終収量をOD280値から計算し、吸光係数(extinction coefficient)を計算した。
【0139】
LabChip GXII(Perkins Elmer社)を用いて、標的タンパク質のCE-SDS解析を行った。
【0140】
この結果は、図4及び図7に見ることが可能である。
【0141】
実施例5:安定性解析
解析のために、試料をUNcleシステム(Unchained Labs社)にかけた。動的光散乱(「DSF」)及び静的光散乱(「SLS」)のために、25℃から95℃まで観察しながら1℃/minでの温度傾斜(temperature ramp)を実施した。UNcleで、266nm及び473nmでのSLSを測定した。DLSは、温度傾斜の開始時点で測定した。UNcle Analysisソフトウェアを用いて、Tm、Tagg、及びDLSの測定値を計算して分析した。測定したTmは、DSFグラフにおいて実線のドロップラインで示される。
【0142】
この結果は、図5及び図8に見ることが可能である。
【0143】
実施例6:hNA解析
Abcam社よりのスクリーニングキット(カタログ番号ab118971)を用いて、好中球エラスターゼ阻害アッセイを実施した。結果を図6に示している。
【0144】
実施例7:IC50
AAT変異体のIC50解析もまた、Abcam社よりのスクリーニングキット(カタログ番号ab118971)を用いて実施した。IC50解析のために用いる濃度範囲を400nM~98pMとし、また2つのデュプリケートより得たデータを、GraphPad Prismを用いて解析した。
【0145】
【表5】
【0146】
21種のAAT変異体タンパク質及び1種のAAT血清対照をまた用いて、IC50解析曲線を生成した。表5は、変異体AATに関するIC50を示している。
【0147】
【表6】
【0148】
図9は、AAT変異体のIC50解析を示しており、x軸はAATタンパク質のlog濃度(nM)を示しており、y軸は阻害率を示している。より高い傾斜を有する曲線は、非常に協働的な阻害特性を示す。変異体G11F/K335A、G117F/K331F、F51L/K331F及びK331F/K335Aは全て、非常に協働的な阻害特性を有する。
【0149】
実施例8:インシリコ免疫原性
専売のスクリーンを用いて、タンパク質を、臨床で既に使用されているものと比較した(Jawa et al.,T-cell dependent immunogenicity of protein therapeutics:Preclinical
assessment and mitigation,149 Clinical Immunology,534-555(2013)を参照されたく、当該文献は、いずれの図面も含めて、その全体として本明細書に参照により援用する)。推定されるT細胞エピトープの存在に関して、AATアルブミン融合体(「AAT_MLA」)、AAT変異体(「AAT_Mutant」)及びアルブミンタンパク質(「Albumin」)をスクリーニングした。AAT変異体は、配列番号1に以下の変異を有する:C232S、M351V、M358L、K335A、S283C、及びP361C。各T細胞エピトープ又はAAT-アルブミン融合体、AAT変異体及びアルブミンタンパク質の免疫原性を互いに比較して、正規化して、順位付けした。
【0150】
入力した配列を、重複する9-merフレームに分解して、各フレームを、8つの共通のII型HLA対立遺伝子のパネルに対して評価した。当該対立遺伝子は、上位型と呼ぶ。各上位型は、多数のさらなるファミリーメンバーの対立遺伝子に対して、機能的に同等であるか又はほぼ同等である。まとめると、8つの上位型の対立遺伝子は、それらそれぞれのファミリーメンバーと共に、ヒト母集団の95%を良好にカバーする。フレーム対対立遺伝子での各評価は、予測されるHLA結合親和性についての記載となる。
【0151】
評価のスコアは、およそ-3から+3までの範囲にわたる。1.64より高い評価スコアを「ヒット」として規定して、免疫原性の可能性があり、さらに検討する価値があるものとみなした。しばしば、全ての評価の約5%が、1.64より高いスコアであることを期待することが可能である。これらペプチドは、HLA分子を中程度から高い親和性で結合する有意な機会を有しているため、樹状細胞又はマクロファージ等のAPCであって、通過するT細胞によって照合され得る当該APCの表面上に存在するという有意な機会を有する。所与のタンパク質が含有するHLAリガンドの量(すなわち、ヒット)が大きいほど、タンパク質が免疫応答を誘発する可能性が高くなる。
【0152】
EpiMatrixタンパク質スコアは、所与のサイズのタンパク質において発見することを期待することができる推定されるT細胞エピトープの数と、EpiMatrixシステムで予測される推定上のエピトープの数との間の差異である。EpiMatrixタンパク質スコアは「正規化」されて、また標準化されたスケール上にプロットすることができる(例えば、図10を参照)。「平均」のタンパク質のEpiMatrixタンパク質スコアは、ゼロである。ゼロを超えるEpiMatrixタンパク質スコアは、過剰なMHCリガンドの存在を示唆し、また免疫原性の可能性がより高いことを示す一方で、ゼロより低いスコアは期待されるよりも潜在的なMHCリガンドの存在が少ないこと、及び免疫原性の可能性がより低いことを示唆する。
【0153】
完全なAAT_MLA配列の解析において、アルゴリズムで、合計7,880のフレーム対対立遺伝子評価を実施した。AAT_MUTANTドメインの解析において、アルゴリズムで、合計3,088のフレーム対対立遺伝子評価を実施した。ALBUMINドメインの解析において、アルゴリズムで、合計4,616のフレーム対対立遺伝子評価を実施した。この結果は、表6に示している。変異体AATは、野生型AATと比較して、わずかに高い免疫原性スコアを示す。高スコアのAAT_MUTANTドメインの、低スコアのグリシン-セリンリンカー及び低スコアのALBUMINドメインとの融合は、AAT_MLA融合体のエピトープ全体の密度を低下させる。AATは、アルブミンと融合する場合(AAT_MLA)、マイナスのスコアを有し、これは野生型又はAAT単独の変異体と比較して、免疫原性が低いことを示唆する。
【0154】
【表7-1】
【表7-2】
【0155】
完全融合配列AAT_MLAにおいて、ペプチド対HLAの384ヒットが確認されたが、これは結果として全体スコアが-10.72となった。完全融合配列AAT_MUTANTにおいては、206ヒットが確認されたが、これは結果として全体スコアが26.87となった。完全融合配列AAT_WTにおいては、202ヒットが確認されたが、これは結果として全体スコアが21.01となった。完全融合配列AAT_MLAにおいては、178ヒットが確認されたが、これは結果として全体スコアが-32.04となった。この結果を図10に示している。
【0156】
実施例9:ベース(C232S、M351V、M351L)でのAATバリアント(K335A、S283C/P361C)の安定性解析
解析のために、試料をUNcle(Unchained Labs社)にかけた。DSF及びSLSのために、1℃/miの温度範囲を、25℃から95℃までで観察しながら実施した。UNcleで、266nm及び473nmでのSLSを測定した。DLSは、温度傾斜の開始時点で測定した。UNcle Analysisソフトウェアを用いて、Tm、Tagg、及びDLSの測定値を計算して分析した。Tmは、図11の実線のドロップラインで表すように測定された。確認できるように、バリアントAATアルブミン融合体は、非常に安定である。
【0157】
実施例10:Cyno PK
カニクイザルに静脈内ボーラス注入で1度に与えた場合の、ヒト血清アルブミンに融合した組換えアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)K335A/S283C/P361C(AATアルブミン融合体)の潜在毒性を求めた。カニクイザルは、規制当局により前臨床毒性試験で許可された非げっ歯類の種であり、またヒト対象において予測される試験薬剤の薬物動態及び薬理学を最も正確に反映することから、この試験のために動物モデルとして選択された。ヒト血漿由来のAAT(Prolastin C)と比較した、AATアルブミン融合体の薬物動態特性もまた求めた。
【0158】
表7に、被験物質及び対照物質を示す。
【0159】
【表8】
【0160】
被験物質の希釈には、対照物質を用いた。被験物質のストック(7.8mg/mL)を、対照物質での4倍以下の段階希釈で希釈することによって、被験物質の2mg/mLの用量製剤を調製して、用量レベルの要件を満たした。用量レベルは、これまでに発行されている研究に基づいて選択した(Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease(2013)10(6):687-95;Lancet(2015)386(9991):360-8)。ヒト血漿由来のアルファ-1アンチトリプシン(AAT)の静脈内(IV)注射での毎週60mg/kgでの療法は、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症を罹患した個体で承認されている。120mg/kg用量のAATの毎週の注射についての安全性及び薬物動態プロファイルは、AATDを罹患した成人において、安全でありまた良好に忍容であると考えられた。
【0161】
動物はランダム化して、試験に移行する前にコンピュータに基づく手順により複数のグループに割り当てた。用いた実験設計を表8に示す。
【0162】
【表9】
【0163】
被験物質を、1日目に1回、静脈内(遅いボーラス)注射で動物に投与した。動物毎の用量は、直近の体重測定値に基づいた。用量投与のために動物を一時的に拘束したが、鎮静させなかった。
【0164】
静脈穿刺により血液を採取した。試料は、表9に従って採取した。
【0165】
【表10】
【0166】
採血は、1mLの目標体積及びカリウム(K3)EDTAの抗凝固剤で実施した。各血液試料から血液塗抹標本を調製した。塗抹標本を調べて、以下の動物の健康状態を評価した。非健常な動物は認められなかった。
【0167】
2mLの目標体積で、抗凝固剤なしで、臨床化学を実施した。
【0168】
試料は、表10に従って採取した。
【0169】
【表11-1】
【表11-2】
【0170】
被験物質の濃度のために試料からの血漿を解析し、気管支肺胞洗浄試料を麻酔した動物から採取して、解析した(データは示さず)。
【0171】
血漿の結果を図12に示しており、またグラフパッドプリズム(Graphpad Prism)で2相の指数関数減衰モデルに当てはめた。図12より確認できるように、バリアントは、有意に長い消失相半減期を有する。AAT-HSAバリアント(被験物質1)の半減期(ベータ相、遅い)は、Prolastin(血漿AAT)がより少ない10時間であるのと比較して30時間を超えていた。
【0172】
血漿の結果は、3コンパートメントモデル(表11~13)でさらに解析し、図13にも示している。図13は、個別の測定値(シンボル)を伴う、シミューレションによる1000のPKプロファイルからの中央値(線)、第5及び第95のパーセンタイル(領域)を示す。定量限界(BLQ、×印)を下回る測定値については、解析に含めなかった。
【0173】
上記より確認できるように、10mg/kg以後のサルのPKは3コンパートメントであった。10mg/kgの化合物に関して、被験物質2のCmaxは、被験物質1のCmaxよりも約40倍高かった。中央分布容積は、被験物質2で0.213L、被験物質1で8Lであった。合計の分布容積は、被験物質2で1.45L、被験物質1で42Lであった。ヒトにおけるAralast(血漿由来のAAT)の分布容積は5.6Lであった[https://www.drugbank.ca/drugs/DB00058]。NHPに対する非比例的スケーリング(allometric scaling)より、分布容積は0.240Lと予測することができるが、これはこの試験よりの被験物質2と同等である。
【0174】
サルにおけるHSAの消失相半減期は、約5日である。被験物質1のβ半減期及びγ半減期は、それぞれ、0.75日及び5.8日であった。被験物質2のβ半減期及びγ半減期は、それぞれ、0.36日及び1.49日であった。被験物質2のγ半減期は、被験物質1のγ半減期よりも約3.9倍長い。HSAのγ消失相半減期(文献より)と被験物質1のγ消失相半減期は、サルでは同等である。
【0175】
表11は、被験物質2及び被験物質1のPKパラメータを示している。
【0176】
【表12-1】
【表12-2】
【0177】
表12は、被験物質2の母集団PKパラメータを示す:
【0178】
【表13】
【0179】
表13は、被験物質1の母集団PKパラメータを示す:
【0180】
【表14-1】
【表14-2】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図7M
図7N
図7O
図7P
図7Q
図7R
図7S
図7T
図7U
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024123234000001.app
【外国語明細書】