(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123240
(43)【公開日】2024-09-10
(54)【発明の名称】印刷配線板および印刷配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103288
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2021561562の分割
【原出願日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2019216629
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 淳男
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キャビティを有する印刷配線板および印刷配線板の製造方法に関する。
【解決手段】多層基板は、キャビティと、第2の面に部品実装ランドを含む配線パターンである第1の導体層と、第2の導体層とを有している。第1の導体層は、キャビティの前記底面に位置している。第2のビルドアップ層のコア基板側の表面は、底面を構成する第1領域と、コア基板と接する第2領域とを有している。第1の導体層の表面は、第2のビルドアップ層のコア基板側の表面である第1領域と面一、または第1領域よりも3μmまでの低い位置にある。第2の導体層は、第2のビルドアップ層内に位置するとともに、平面透視でキャビティの底面の周縁部の少なくとも一部に重なって位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有するコア基板と、該コア基板における前記第1の面に位置する第1のビルドアップ層と、前記コア基板における前記第2の面に位置する第2のビルドアップ層とを有する多層基板を備えており、
該多層基板は、キャビティと、前記第2の面に部品実装ランドを含む配線パターンである第1の導体層と、第2の導体層とを有しており、
前記キャビティは、前記第1のビルドアップ層および前記コア基板を貫き、底面が前記第2のビルドアップ層の表面であり、
前記第1の導体層は、前記キャビティの前記底面に位置し、
前記第2のビルドアップ層の前記コア基板側の表面は、前記底面を構成する第1領域と、前記コア基板と接する第2領域とを有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも低い位置にあり、
前記底面を構成する前記第1の導体層は、前記第2のビルドアップ層に埋め込まれており、前記第1の導体層の表面は、前記第2のビルドアップ層の前記コア基板側の表面である前記第1領域と面一、または前記第1領域よりも3μmまでの低い位置にあり、
前記第2の導体層は、前記第2のビルドアップ層内に位置するとともに、平面透視で前記キャビティの前記底面の周縁部の少なくとも一部に重なって位置する、印刷配線板。
【請求項2】
前記第2の導体層は、平面透視で前記キャビティの前記底面の前記周縁部の全てと重なって位置する、請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記第2の導体層は、帯状である、請求項1または2に記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記第2の導体層は帯状であり、前記多層基板の平面方向において、前記キャビティの壁面の真下が、前記第2の導体層の中央となるように位置している、請求項3に記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記第1の導体層が、電子部品と接続する接続パッドを含む、請求項1~4のいずれかに記載の印刷配線板。
【請求項6】
前記第1の導体層が、前記接続パッドと前記キャビティの前記底面に沿った方向に接続される回路配線を含む、請求項5に記載の印刷配線板。
【請求項7】
第1の面および第2の面を有し、前記第2の面にシード層が設けられたコア基板を用意する第1の工程と、
前記コア基板に設けられた前記シード層にパターンメッキを行って第1の導体層を形成する第2の工程と、
前記コア基板の前記第1の導体層を含む前記シード層の表面に、キャビティが形成される領域である前記コア基板の中央部に前記シード層が残るように前記シード層の一部を除く第3の工程と、
前記コア基板の前記第1の面に、第1の絶縁樹脂層を有する第1のビルドアップ層を形成するとともに、前記コア基板の前記第2の面に、前記第1の導体層および前記シード層を埋め込むように積層された第2の絶縁樹脂層を有する第2のビルドアップ層を形成する第4の工程と、
前記第2のビルドアップ層の表面にパターンメッキを行い、平面透視で前記形成されるキャビティの底面の周縁部の少なくとも一部に重なる位置に第2の導体層を形成する第5の工程と、
前記コア基板を前記第1のビルドアップ層側からレーザ加工によって該第1のビルドアップ層および前記コア基板を貫く際、前記シード層の前記コア基板側の面および前記第2の導体層をレーザ光の遮蔽部材として用い、前記底面が前記第2のビルドアップ層の表面となる前記キャビティを形成する第6の工程と、
を具備する、印刷配線板の製造方法。
【請求項8】
前記第2の導体層は、前記キャビティの前記底面の周縁部を周回するように形成される、請求項7に記載の印刷配線板の製造方法。
【請求項9】
前記パターンメッキは、ニッケル、金、ニッケル、銅の順に連続して行うことを特徴とする、請求項7または8に記載の印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャビティを有する印刷配線板および印刷配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板および配線の高集積化および高密度化に伴い、多層基板に大きな容積でキャビティを設けて、そこに電子部品を実装するケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の印刷配線板は、第1の面および第2の面を有するコア基板と、コア基板における第1の面に位置する第1のビルドアップ層と、コア基板における第2の面に位置する第2のビルドアップ層とを有する多層基板を備えている。多層基板は、キャビティと、第2の面に部品実装ランドを含む配線パターンである第1の導体層と、第2の導体層とを有している。キャビティは、第1のビルドアップ層およびコア基板を貫き、底面が第2のビルドアップ層の表面である。第1の導体層は、キャビティの前記底面に位置している。第2のビルドアップ層のコア基板側の表面は、底面を構成する第1領域と、コア基板と接する第2領域とを有している。第1領域は、第2領域よりも低い位置にある。底面を構成する第1の導体層は、第2のビルドアップ層に埋め込まれており、第1の導体層の表面は、第2のビルドアップ層のコア基板側の表面である第1領域と面一、または第1領域よりも3μmまでの低い位置にある。第2の導体層は、第2のビルドアップ層内に位置するとともに、平面透視でキャビティの底面の周縁部の少なくとも一部に重なって位置する。
【0005】
本開示の印刷配線板の製造方法は、第1の面および第2の面を有し、第2の面にシード層が設けられたコア基板を用意する第1の工程と、コア基板に設けられたシード層にパターンメッキを行って第1の導体層を形成する第2の工程と、コア基板の第1の導体層を含むシード層の表面に、キャビティが形成される領域であるコア基板の中央部にシード層が残るようにシード層の一部を除く第3の工程と、コア基板の第1の面に、第1の絶縁樹脂層を有する第1のビルドアップ層を形成するとともに、コア基板の第2の面に、第2の導体層およびシード層を埋め込むように積層された第2の絶縁樹脂層を有する第2のビルドアップ層を形成する第4の工程と、第2のビルドアップ層の表面にパターンメッキを行い、平面透視で形成されるキャビティの底面の周縁部の少なくとも一部に重なる位置に第2の導体層を形成する第5の工程と、コア基板を第1のビルドアップ層側からレーザ加工によって第1のビルドアップ層およびコア基板を貫く際、シード層の基板側の面および第2の導体層をレーザ光の遮蔽部材として用い、底面が第2のビルドアップ層の表面となるキャビティを形成する第6の工程とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の印刷配線板の構成を説明する断面図である。
【
図3】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図4】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図5】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図6】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図7】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図8】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図9】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図10】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図11】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図12】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図13】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図14】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図15】実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図16】実施形態の印刷配線板に係る効果を説明する断面図である。
【
図17】実施形態の印刷配線板に係る効果を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
図1は、開示した一つの実施の形態の印刷配線板の構成を示す図である。
図1に示す印刷配線板は、一例である。
【0008】
実施形態として示した印刷配線板は、以下に示す多層基板54を有する。多層基板54は、コア基板51、第1のビルドアップ層61および第2のビルドアップ層62を有する。コア基板51は、第1の面51aおよび第2の面51bを有する。コア基板51には第1のビルドアップ層61および第2のビルドアップ層62が積層されている。第1のビルドアップ層61は、絶縁樹脂層61aと、絶縁樹脂層61bとを有している。第2のビルドアップ層62は、絶縁樹脂層62aと、絶縁樹脂層62bとを有している。
【0009】
第1のビルドアップ層61は、コア基板51の第1の面51aに面するように配置されている。第2のビルドアップ層62は、コア基板51の第2の面51bに面するように配置されている。また、多層基板54は、キャビティ20と、第1の導体層17と、第2の導体層12aとを有する。
【0010】
キャビティ20は、多層基板54に、第1のビルドアップ層61側からコア基板51まで開口している。キャビティ20は、第2のビルドアップ層62の表面62aaが底面79となるように設けられている。
【0011】
第1の導体層17は、キャビティ20の底面79に露出するように配置されている。第2の導体層12aは、絶縁樹脂層62aのコア基板51とは反対の面62abに設けられている。
【0012】
第2の導体層12aは、第2のビルドアップ層62内に位置する。また、多層基板54を平面透視したときに、キャビティ20の底面79の周縁部79tの少なくとも一部に重なって位置している。言い換えると、第2の導体層12aは、多層基板54を平面透視したときに、キャビティ20の底面79の周縁部79tに対応する位置に設けられている。このような構成によれば、印刷配線板に容積の大きいキャビティ20が設けられても印刷配線板を曲がりにくくすることができる。
【0013】
多層基板54に、容積が大きく底面側の厚みが薄くなるようなキャビティ20が形成されると、底面79側で曲がりやすい。その曲がりやすいキャビティ20の底面79の周縁部79tの部分に金属部材を挿入することで機械的強度を高められる。これは金属部材の高い弾性率に因るものである。この場合、第2の導体層12aの位置は、キャビティ20の底面79に露出した第1の導体層17、シード層12とは絶縁樹脂層62aの厚み分ほど距離を隔てた下層の位置に配置されている。
【0014】
多層基板54を平面視したときに、第1の導体層17はキャビティ20の底面79の中央に位置し、第2の導体層12aがキャビティ20の底面79の周縁部79tに位置している。また、第1の導体層17と第2の導体層12aとは、多層基板54の厚み(積層)方向において絶縁樹脂層を1層分ほど隔てるように配置されている。
【0015】
このことで、キャビティ20の容積が大きく、キャビティ20の下側の絶縁樹脂層(62a、62b)の厚みが薄い場合にも、多層基板54を曲がりにくくすることができる。仮に、第2の導体層12aをキャビティ20の底面79に露出するように配置させた場合には、多層基板54が曲がりやすくなるとともに、キャビティ20内において、元々配置されている第1の導体層17との間で電気的な絶縁性を確保しにくくなることが懸念される。
【0016】
以下、多層基板54を詳細に説明する。
図1に示すように、この実施の形態の印刷配線板は、多層基板54を有する。多層基板54は、コア基板51と、第1のビルドアップ層61と、第2のビルドアップ層62とを有している。
【0017】
コア基板51は、例えば、基材11の両面にシード層12を有する基板である。基材11はいわゆる絶縁樹脂製のシート状成形体である。コア基板51の一方の面(上面)には、電気回路をなす導体層16が形成されている。
【0018】
コア基板51の他方の面(下面)には、電気回路をなす導体層17が形成されている。コア基板51は、導体層16および導体層17を接続するビア15を有している。
【0019】
すなわち、多層基板54は、導体層16および導体層17、ビア15を有している。ビア15は、絶縁樹脂層11の厚み方向に貫通している。ビア15は、導体層16および導体層17の間に配置されている。導体層16は、基材11の一方の面(上面)に形成されたシード層12に、その一部が重なるように配置されている。また、導体層17は、基材11の他方の面(下面)に形成されたシード層12に、その一部が重なるように配置されている。
【0020】
第1のビルドアップ層61は、コア基板51の上面に配設され、下記に示す絶縁樹脂層61aおよび導体層を有する。
図1に示す例では、第1のビルドアップ層61は、一方の面(下面)がコア基板51と接する絶縁樹脂層61aと、一方の面(下面)が絶縁樹脂層61aの他方の面(上面)と接する絶縁樹脂層61bとを有している。
【0021】
絶縁樹脂層61aの上面には、電気回路をなす導電層が形成されている。絶縁樹脂層61aは、その上面に形成された導体層とコア基板51の上面に形成された導体層16とを接続するビア15を有している。ビア15は、絶縁樹脂層61aを厚み方向に貫通するように形成されている。
【0022】
絶縁樹脂層61bの他方の面(上面)には、導体層63が形成されている。絶縁樹脂層61bは、その上面に形成された導体層63と絶縁樹脂層61aの上面に形成された導体層とを接続するビア15を有している。ビア15は、絶縁樹脂層61bを厚み方向に貫通するように形成されている。
【0023】
すなわち、ビア15は、コア基板15の上面側に配置されている2層の第1のビルドアップ層61にそれぞれ設けられている。
【0024】
第2のビルドアップ層62は、コア基板51の他方の面(下面)に配設され、下記に示す絶縁樹脂層62aおよび導体層を有する。
図1に示す例では、第2のビルドアップ層62は、一方の面(上面)がコア基板51と接する絶縁樹脂層62aと、一方の面(上面)が絶縁樹脂層62aの他方の面(下面)と接する絶縁樹脂層62bとを有している。以下、絶縁樹脂層62aを第1の絶縁樹脂層62aと表記する場合がある。同様に、絶縁樹脂層62bを第2の絶縁樹脂層62bと表記する場合がある。
【0025】
絶縁樹脂層62aの上面には、電気回路をなす第1の導体層17が形成されている。絶縁樹脂層62aの他方の面(下面)には、電気回路をなす導電層が形成されている。絶縁樹脂層62aは、上面に形成された第1の導体層17と下面に形成された導電層とを接続するビア15を有している。ビア15は、絶縁樹脂層62aを厚み方向に貫通するように形成されている。また、ビア15は、絶縁樹脂層62aの中で第1の導体層17に面の平行方向について重なるように形成されている。
【0026】
絶縁樹脂層62bの他方の面(下面)には、導体層64が形成されている。絶縁樹脂層62bは、下面に形成された導体層64と絶縁樹脂層62aの下面に形成された導電層とを接続するビア15を有している。すなわち、多層基板54の最下層に位置する絶縁樹脂層62bは、ビア15を有している。ビア15は、絶縁樹脂層62bを厚み方向に貫通するように形成されている。
【0027】
図1においては、絶縁樹脂層62aに設けられたビア15と絶縁樹脂層62bに設けられたビア15とは重なった状態にある。
図1に示す例では、第2のビルドアップ層62に形成されたビア15は、キャビティ形成領域65の範囲内で、かつキャビティ20直下に形成されている。絶縁樹脂層62aと絶縁樹脂層62bとは、重なった状態にある。
【0028】
繰り返しになるが、多層基板54は、キャビティ20を有している。キャビティ20は、多層基板54の導体層63側から第1のビルドアップ層61およびコア基板51を貫通している。すなわち、キャビティ20は、第2のビルドアップ層62の上面を底面とする空間を形成している。キャビティ20は、多層基板54の導体層63の形成面における一部領域(キャビティ形成領域65)を占めるように開口している。
【0029】
キャビティ20は、断面が凹形状を有している。キャビティ20には、第2のビルドアップ層62の一部の領域の絶縁樹脂の面(底面79)と、第2のビルドアップ層62の上面に形成された第1の導体層17とが、同等の高さの底面(平坦な状態で)として露出するように形成されている。すなわち、キャビティ20内における第1の導体層17は、キャビティ20の底面となっている絶縁樹脂層62aの表面に露出するように配置されている。
【0030】
また、キャビティ20内における第1の導体層17は、絶縁樹脂層62aにその一部が埋設された状態となっている。そして、キャビティ20の底面においては、絶縁樹脂層62a上の面79(底面79)と第1の導体層17とがほぼ面一に配置されているのがよい。なお「ほぼ」と記載しているのは、エッチング処理により第1の導体層17を露出させるため、若干(2μm~3μm)の凹凸(段差)を生じる場合があるからである。キャビティ20の底面に形成された第1の導体層17は、その一部が電子部品との接続パッドとして機能する。
【0031】
多層基板54は、キャビティ20の周囲において、前述した導体層16および第1の導体層17、ビア15に加えて、シード層12a(以下、第2の導体層12aとする。)を有している。
【0032】
第2のビルドアップ層62は、厚さ方向の略中央部でキャビティ形成領域65に対応する位置に第2の導体層12aを有している。第2の導体層12aは、少なくともキャビティ20の深さ方向に対する側壁面に対応する位置に形成されている。すなわち、第2の導体層12aは、キャビティ20の側壁面(
図1中符号20a)を第1の絶縁樹脂層62aおよび第2の絶縁樹脂層62b側へ延長した部分に位置する。第2の導体層12aを多層基板54について厚み方向に見たときの位置は、コア基板51の下層側に配置された第2のビルドアップ層62の中で、キャビティ20の側壁面20aを第1絶縁樹脂層62aの方向へ垂下させた位置となる。
【0033】
第2の導体層12aの多層基板54における平面方向の位置は、キャビティ20の壁面20aの真下が中央となる位置になる。なお、キャビティ20の壁面20aの位置、並びにキャビティ20の壁面20aの位置から第1の絶縁樹脂層62aの方向へ垂下させた位置のことを、キャビティ20の輪郭部ということもできる。第2の導体層12aは、キャビティ20の輪郭部の真下に配置されているのがよい。
【0034】
第2の導体層12aは、例えば絶縁樹脂層62aおよび絶縁樹脂層62bの層間(接合面上)に形成することができる。第2の導体層12aは、他の導体層および導電層と接続されていない状態であってもよい。つまり、第2の導体層12aは、他の導体層および導電層から電気的に孤立していてもよい。
【0035】
導体層63および導体層64は、キャビティ形成領域65以外の領域において、第1のビルドアップ層61、コア基板51、第2のビルドアップ層62を貫通するスルーホール10を介して相互に接続されている。なお、スルーホール10の上下に、必要に応じて後工程で導体層73、74(
図14参照)やソルダーレジスト71、72(
図13参照)が形成されてもよい。ソルダーレジスト71、72は、多層基板54の最上層および/または最下層の表面に形成される。導体層73、74は、ソルダーレジスト71、72によりその周囲が絶縁被膜されて接続パッドとして機能する。
【0036】
導体層16と導体層17は、電気的には同じものではあるが、ビア15と一体的に形成される導体層を導体層16といい、後述するシード層12に積層される導体層を第1の導体層17という。
【0037】
このように、実施形態の印刷配線板は、絶縁樹脂層11を有する基板としてのコア基板51の上面(第1の面)に第1のビルドアップ層61を積層し、コア基板51の下面(第2の面)に第2のビルドアップ層62を積層した多層基板54のキャビティ形成領域65に、第1のビルドアップ層61の上からのザグリ加工でコア基板51内を貫通して第2のビルドアップ層62の絶縁樹脂層62aの面79を底面として形成したキャビティ20と、第2のビルドアップ層62の絶縁樹脂層62aの面79と同等の高さの面を有しその面がキャビティ20の底面の一部を形成するように第2のビルドアップ層62の絶縁樹脂層62aに埋め込まれた導体層17とを備える。
【0038】
なお、
図1に示す例では、コア基板51の下面には予めキャビティ形成領域65を含む範囲にシード層12が形成されており、キャビティ形成時のザグリ加工によりコア基板51の絶縁樹脂層11が除去されて導体層17のみが残った状態になっている。
【0039】
実施形態の印刷配線板は、キャビティ20の下層側に配置された第2のビルドアップ層62内に第2の導体層12aを有している。この印刷配線板(多層基板54)では、キャビティ20が第1のビルドアップ層61からコア基板51までを貫通し、多層基板54の厚みの1/2を超える範囲、特には、3/5を超える範囲に至るように形成されている。キャビティ20は、多層基板54の厚み方向の深い位置まで形成されている。キャビティ20が多層基板54の厚み方向の深い位置まで形成されているので、多層基板54は、キャビティ20の辺りで曲がりやすくなる。すなわち、キャビティ20が多層基板54の厚み方向の1/2以下の位置まで形成されている印刷配線板と比較すると、曲がりやすくなる。
【0040】
実施形態の印刷配線板では、多層基板54の厚み方向の中央部分に位置するコア基板51の部分まで除かれた状態にある。すなわち、通常ガラスクロスを有しているコア基板51の部材が、キャビティ20の形成位置において存在しない状態となっている。このように、コア基板51が部分的に除かれているために、この印刷配線板は機械的強度が弱くなるおそれがある。
【0041】
この印刷配線板を、例えば電気接続のコネクター部として用いる場合においては、キャビティ20にソケットなどが挿入されることになる。通常では、コネクターをキャビティ20に挿入したときに、印刷配線板が変形しやすくなってしまう。
【0042】
しかし、実施形態の印刷配線板では、第2の導体層12aがキャビティ20の壁面20aの下側に設けられているため、印刷配線板はキャビティ20の存在する位置においても曲がりにくくなる。この印刷配線板では、コア基板51を貫通したキャビティ20が形成されていても、キャビティ20の底面側に位置する第2のビルドアップ層62の機械的強度を高めることが可能になる。
【0043】
この場合、第2の導体層12aは、キャビティ20の輪郭部から広がるように形成されていてもよい。第2の導体層12aは、キャビティ20の壁面20aの垂下の位置を中央にしてキャビティ20側とキャビティ20の外側の位置を跨ぐように配置されているのがよい。
【0044】
第2の導体層12aは、その形状が帯状であってもよい。ここで、帯状とは、所定の幅で長尺状を成す形状のことである。第2の導体層12aの場合、所定の幅とは、キャビティ20の壁面20aの位置を中央としたときに、その中央から両方向へ広がった領域のことである。広がった領域とは、隣接する他の導体(
図1ではビア15を含む導体層)との間に絶縁部が設けられる範囲である。具体的な所定の幅としては、5μm以上500μm以下を目安とすることができる。
【0045】
また、第2の導体層12aは、
図2に示すように、多層基板54に設けられたキャビティ20の底面79と壁面20aとが交わる位置の真下付近を周回する配置でもよい。
図2は、絶縁樹脂層62aと絶縁樹脂層62bとの間の界面を平面視した様子を示す図であり、第2の導体層12aが帯状となってキャビティ20の周縁部79tを周回するように配置した状態が示されている。つまり、第2の導体層12aがリング状を成した状態で第2のビルドアップ層62内に配置されると、さらに多層基板54を曲がりにくくすることができる。
【0046】
キャビティ20は、多層基板54の所定の層の一部の領域(コア基板51上に形成されたシード層12の範囲及びシード層12が形成されていないキャビティ部と非キャビティ部の境界部の遮蔽導体禁止エリアを含むキャビティ形成領域65(
図7参照))を所定の深さ(コア基板51の内部の板厚中心以上を除去したシード層12の近傍位置)までドリル加工および/またはレーザ加工でザグリ加工し、この加工で残った残部をレーザ加工で除去してシード層12を露出させ、その後、シード層12をフラッシュ・エッチングにより除去した断面凹形状部である。板厚中心以上とは、コア基板51の板厚の1/2以上でかつシード層12に到達しない深さまでをいう。
【0047】
すなわち、キャビティ20は、キャビティ形成領域65を電子部品が収容可能な面積でザグリ加工してコア基板51の下面に形成したシード層12を露出させた後、露出したシード層12をフラッシュ・エッチングにより除去してその下の絶縁樹脂層62aおよび導体層17をほぼ平坦に露出させたキャビティ底部(底面)を有する。また、上記したキャビティ形成領域65のうち、シード層12が形成されていないキャビティ部と非キャビティ部の境界部の直下には、キャビティ20の底面より一層下層(絶縁樹脂層62aと、絶縁樹脂層62bとの間)に、第2の導体層12aが形成されている。この第2の導体層12aは、キャビティ20の底面の真下より周囲に広がっている。また、本実施形態では、第2の導体層12aは、キャビティ20の底面のキャビティ輪郭部の真下の周囲と内側に、帯状に広がっている。第2の導体層12aは、例えば厚さが12μm以上の銅等から構成され、ダミーパターン又はグラウンド層、電源層等からなる。
【0048】
キャビティ20に収容される電子部品は、例えばベアチップ(パッケージ化されていない端子なしのIC)などであり、底部に多層基板54との接続用の電極を備える。電子部品底部の電極は、キャビティ底部に平坦に露出した導体層17の面を部品実装ランドとして接続してもよく、導体層17の上にめっきを施して形成した金属めっき層80(
図14参照)を介して接続してもよい。この場合の金属めっき層80は、ニッケルめっき、金めっきなどのめっき層を積層して形成するものとする。
【0049】
導体層63、64は、この多層基板54(コア基板51とその上下の第1および第2のビルドアップ層61、62)の表面に形成されるものであり、後のエッチングで回路配線の一部(導体層63a)として形成される。導体層63、64は、銅ベタパターンであり、例えば銅箔(厚み9μm程度)に銅めっき(厚み15μm程度)を施して形成したものである。
【0050】
導体層63、64の延伸先(面に沿う方向)にはビア15が接続されている。ビア15は、多層基板54の任意の層に設けられる導体(導体層16、17、63、64など)を層間接続する。
【0051】
コア基板51は、上下の面にシード層12を形成した絶縁樹脂層11(
図3-7参照)を加工しビア15を形成したものである。
【0052】
絶縁樹脂層11を形成する絶縁樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ケイ素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合してもよい。
【0053】
ビア15は、めっき処理によりビアホール下穴14(
図4参照)に金属めっきが充填されたものである。ビア15は、多層基板54(
図8参照)の各層(内層、外層を含む)に設けられる導体(導体層63、64、16、17など)を層間接続するものである。
図8では、上面の導体層63はビア15を通じて導体層17に接続され、また下面の導体層64はビア15を通じて導体層17に接続されていることがわかる。
【0054】
シード層12は、例えば1μm~10μm(1μm以上10μm以下)の厚みの銅であり、一部が導体層17の下に残った状態で配置されている。シード層12としては、電気的に接続され、かつレーザを遮蔽できるならば特に制限されないが、例えば薄銅箔または無電解銅めっきなどを用いる。金属組成が緻密な薄銅箔の方が、より適している。
【0055】
コア基板51は、絶縁樹脂層11の上面および下面をモディファイド・セミアディティブ・プロセス(M-SAP)またはセミアディティブプロセス(SAP)などの手法で形成し、シード層12の一部領域に設けた接続パッドや回路配線となる導体層17(
図5のコア基板51下面の中央部分)を、エッチングレジストでフラッシュ・エッチングから保護しつつ露出させたものである。
【0056】
本開示の印刷配線板は、基本的に、上記した第1の工程から第6の工程を経ることによって得ることができる。以下、
図3乃至
図15を参照して実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する。
【0057】
図3に示すように、コア基板用基材11Aは、絶縁樹脂製の基材11の上面(第1の面11a)および下面(第2の面11b)にシード層12(例えば薄銅箔などの導電性金属箔)を積層して形成される。この場合、シード層12の厚みは、例えば1μm~10μm程度であるのがよい。また、コア基板用基材11Aとして、基材11の上面、下面のうち少なくとも下面にシード層12を有するものを用いてもよい。
【0058】
続いて、
図4に示すように、コア基板用基材11Aにレーザ加工を行ってビアホール下穴14を形成する。
【0059】
レーザ加工によってビアホール下穴14を形成すると、ビアホール下穴14の底部に薄い樹脂膜が残存する場合がある。この場合、デスミア処理が行われる。デスミア処理は、強アルカリによって樹脂を膨潤させ、次いで酸化剤(例えば、クロム酸、過マンガン酸塩水溶液など)を用いて樹脂を分解除去する。
【0060】
この他、例えば研磨材によるウェットブラスト処理やプラズマ処理によって、樹脂膜を除去してもよい。さらに、めっき処理のためにビアホール下穴14の内壁面を粗面化処理してもよい。粗面化処理としては、例えば、酸化剤(例えば、クロム酸、過マンガン酸塩水溶液など)によるウェットプロセス、プラズマ処理やアッシング処理などのドライプロセスなどが挙げられる。
【0061】
(パターンめっき処理工程)
この工程は、
図5に示すように、絶縁樹脂製の基材11の上面、下面に設けたシード層12の一部領域の上およびビアホール下穴14にパターンめっきを施して導体層16、第1の導体層17およびビア15を形成する工程である。具体的には、シード層12上にドライフィルム13(めっきレジスト)をラミネート加工で貼り付けた上で、露光および現像して、上面の導体層16、ビア15などの回路部および下面の導電回路である第1の導体層17を形成したい箇所のドライフィルム13を除去する。
【0062】
続いて、ドライフィルム13の一部を除去した絶縁樹脂製の基材11の回路部形成用のビアホール下穴14とその周囲のシード層12にパターンめっき処理を施して絶縁樹脂製の基材11の上面の導体層16と基材11の内部のビア15および基材11の下面の導電層(シード層12、第1の導体層17を含む)を形成する。
【0063】
ここで、パターンめっきとしては、銅めっきのみ行う場合と、銅めっきにニッケルめっきを組み合わせる場合がある。銅めっきとニッケルめっきとの組合せを用いるのは、後工程でシード層12を除去する際に、シード層12以外のパターンめっき部分もややエッチングされてしまうことに懸念があるためである。ニッケルめっきはシード層12の除去に対するバリアとして機能する。ニッケルめっきと銅めっきは連続して行う。この場合、ニッケルめっきの厚みは、2μm以上であるのがよい。
【0064】
このニッケルめっき処理のことを「バリアめっき」という場合がある。この工程において形成されるめっき膜が部品実装の表面処理用のめっき膜も兼ねる場合には、ニッケル、金、ニッケル、銅めっきの連続めっきを行うこともある。この場合もニッケルめっきの厚みは、1回目を2μm以上、2回目を3μm以上とし、金めっきは、部品の実装方法によるが、ワイヤボンディングの場合は0.3μm以上とするのがよい。
【0065】
回路幅の補正は、本技術だからといって、通常のM-SAPやセミアディティブ法と違うことはなく、設計値+6μm程度太く補正して露光すればよい。
【0066】
(ドライフィルム剥離工程)
次に、パターンめっきを行った後、残ったドライフィルム13を剥離してシード層12を露出させる。
【0067】
(キャビティ形成領域の加工工程)
次に、
図6に示すように、基材11の下面(第2の面11b)のシード層12および第1の導体層17にドライフィルム18(感光性エッチングレジスト)をラミネート加工で貼り付ける。この後、露光および現像し、キャビティ形成領域65(キャビティ部と非キャビティ部の境界部の遮蔽導体禁止エリアを除く)にドライフィルム18を残し、それ以外の箇所のドライフィルム18を除去する。露出させたシード層12のうちドライフィルム18が覆われていない部分で導電回路として不要な箇所をフラッシュ・エッチングにより除去する。この後、ドライフィルム18はシード層12および第1の導体層17の表面から除去される。
【0068】
つまり、この工程では、基材11の面(この場合、第2の面11b)側のシード層12が形成されたエリア内のうち、キャビティ形成領域65にドライフィルム18を貼り付けて状態とし、続いて、ドライフィルム18外のシード層12をフラッシュ・エッチングにより除去する。その後、シード層12の上のドライフィルム18を剥離する。この場合、基材11の上面(第1の面11a)側に形成されたシード層12も除去される。
【0069】
このようにして、
図7に示すようなコア基板51が完成する。このコア基板51の基材11の上面(第1の面11a)には、ビア15に電気的に接続される回路の一部としての導体層16が形成される。この他、コア基板51の下面(第2の面11b)のキャビティ形成領域65(キャビティ部と非キャビティ部の境界部の遮蔽導体禁止エリアを除く)には、シード層12が残った状態となる。シード層12のうちキャビティ形成領域65の範囲の部分は、後述するレーザ加工の際のレーザの受け(遮蔽部材)となる。
【0070】
また、基材11の下面には、導電回路としての第1の導体層17が形成される。この例では、M‐SAPを例にして回路を形成したが、無電解銅めっきをシード層に用いるSAPでも回路(この場合、第1の導体層17)の形成は可能である。
【0071】
(ビルドアップ層形成工程)
この工程では、コア基板51となるコア基板用基材11Aの上層(上面)および下層(下面)のうち少なくとも下層(下面)に、任意回数のビルドアップを行ない、積層基板54Aを作製する。つまり、この工程では、キャビティ形成領域65にシード層12を部分的に残したまま、コア基板51となるコア基板用基材11Aに第1のビルドアップ層61および第2のビルドアップ層62を形成する。このことで、シード層12の一部が内部のコア基板51(絶縁樹脂基板)と第2のビルドアップ層62(下部構造体)との間に埋め込まれた積層基板54Aが形成される。
【0072】
ここで、第1のビルドアップ層61、第2のビルドアップ層62を形成するビルドアップの工程としては、慣用的な方法を用いてもよい。例えば、まず、コア基板51となるコア基板用基材11Aに絶縁樹脂層61aを貼り付けた後、レーザを用いてビアホールを形成する方法を挙げることができる。この後、絶縁樹脂層61aのビアホールを含む表面にめっき処理を行い、ビア15、導体層17を形成する。第1のビルドアップ層61を
図7に示すように多層化する場合は同様の工程を繰り返す。
【0073】
第1のビルドアップ層61および第2のビルドアップ層62の回路形成には、例えば回路として不要な導体をエッチングで除去するサブトラクティブ法のみならず、コア基板51の場合と同様に、M-SAP、SAPなどが適用できる。第1および第2のビルドアップ層61、62の積層には、多段プレスまたは樹脂ラミネートなどの技術が利用される。
【0074】
この例では、上層の第1のビルドアップ層61には、絶縁樹脂層61a、絶縁樹脂層61b、導体層17(第1の導体層17)が形成される。最も上の層(表層)の第1のビルドアップ層61の上面には、ビア15と接続された導体層63が形成される。多層基板54の最上層(絶縁樹脂層61b)の上面に導体層63を形成する際に、キャビティ形成領域65の範囲を除去しておく。これは後述のキャビティ形成工程でのザグリ加工をし易くするためである。
【0075】
第2のビルドアップ層62は、絶縁樹脂層62a、絶縁樹脂層62b、導体層17を有する。コア基板51となるコア基板用基材11Aの直下の絶縁樹脂層62aには、キャビティ形成領域65の範囲内にビア15が形成される。このビア15は、上部ではコア基板51の第1の導体層17と接続され、下部では下層の絶縁樹脂層62bのビア15と接続される。絶縁樹脂層62a、絶縁樹脂層62bの左右の下面には、第1の導体層17が形成される。この第1の導体層17をスルーホール10が貫通して形成されることで、他層の第1の導体層17、最上層の導体層63および最下層の導体層64と層間接続される。
【0076】
さらに、キャビティ形成領域65のうち、キャビティ部と非キャビティ部の境界部の直下(キャビティ形成領域65およびその境界部に対応する位置)には、キャビティ20の底面より一層下層(絶縁樹脂層62aと、絶縁樹脂層62bとの間)に、前述した第2の導体層12aが形成される。この第2の導体層12aは、後述するレーザ加工の際のレーザの受け(遮蔽部材)となり、レーザの下層への貫通を防止する。この第2の導体層12aの形成方法は、どのような方法でもよく、サブトラクティブ法、M-SAP、セミアディティブ法等でよい。
【0077】
(キャビティ形成工程)
この工程では、
図9に示すように、積層基板54Aの第1のビルドアップ層61の側からコア基板51に残したシード層12の方向にドリルを向けて加工する。言い換えると、積層基板54Aに予め設けたキャビティ形成領域65をドリルで抉るように加工する。
【0078】
この場合、ドリルがキャビティ形成領域65を積層方向(厚み方向)に刺さるようにして第1のビルドアップ層61を貫通し、コア基板51の内部のシード層12上に基材11の一部を残して絶縁樹脂層61aおよび絶縁樹脂層61bを部分的に除去してキャビティ20を形成する工程(ザグリ加工1)と、シード層12及び一層下の層の第2の導体層12aをレーザ光の遮蔽部材にして、キャビティ20に残した絶縁樹脂68をレーザ加工により除去し、シード層12をキャビティ20の底部に露出させる工程(ザグリ加工2)の2つの工程を有する。
【0079】
(ザグリ加工1(ドリル加工))
この工程では、積層基板54Aの上方から、キャビティ形成領域65の第1のビルドアップ層61を貫通してコア基板用基材11A内の基材11までザグリ加工(ドリル加工とレーザ加工を併用した切削加工も可)して、コア基板用基材11Aの下面のシード層12上に基材11の一部を残して大半の絶縁樹脂を除去してキャビティ20を形成する。
【0080】
具体的には、
図9に示すように、キャビティ形成領域65の一端(例えば図に向かって左端)に、ビット先端にセンサーを有するドリル66を配置し、コア基板用基材11Aの表面のシード層12の手前の位置(キャビティ20の底部に至る手前の位置)まで削り込み、ドリル66をその位置から横方向Aへ移動させてドリル66による絶縁樹脂層11の除去を実施する。
【0081】
なお、この例では、キャビティ20の底部の上に基材11の一部を残しているが、ドリル加工精度が高い場合は、シード層12の面ぎりぎりまで削り込んでもよい。
【0082】
ザグリ加工を後述するレーザ加工のみではなく、ドリル加工を加えた2段階にしている理由は、後述するレーザ加工のレーザの受け導体(遮蔽部材)として、シード層12等を使い、基材11の残部である絶縁樹脂68を除去するからである。
【0083】
(ザグリ加工2(レーザ加工))
この工程では、
図10に示すように、キャビティ20の開口上方から矢印B方向にレーザ光を照射して、
図8のドリル加工でキャビティ20底部に残した絶縁樹脂68を除去する。レーザ加工には、例えば炭酸ガスレーザ(CO
2レーザ)やYAGレーザなどの加工用レーザが適用可能である。
【0084】
従来の技術では、レーザアブレーションの条件が適切でないような場合、キャビティ部と非キャビティ部の境界部の遮蔽導体禁止エリアにおいて、レーザが下層に貫通する箇所が発生し、基材を破損する可能性があるという課題がある。
【0085】
本開示の印刷配線板の製造方法では、シード層12及び一層下層の第2の導体層12aをレーザ光の遮蔽部材にして、キャビティ20の底部に残した上層部分の残部をレーザ加工により除去し、
図11に示すように、平坦な面のシード層12をキャビティ20の底部に露出させる。この時、第2の導体層12aをレーザ光の遮蔽部材として用いることにより、レーザ照射の条件が適切でないような場合においても、キャビティ部と非キャビティ部の境界部の遮蔽導体禁止エリアにおいて、レーザが下層に貫通して基材(この場合絶縁樹脂層62a)が破損することを防止することができる。
【0086】
レーザ加工によってキャビティ20の底部の絶縁樹脂68を加工すると、その部分に薄い樹脂膜(微細樹脂クズ)が残存する場合がある。このように残った微細樹脂クズを除去するには、レーザによって炭化した部分をクリーニングする。このために、高圧水洗などの水洗処理またはプラズマ処理、過マンガン処理などによるデスミア処理を行う。これらの処理は2重3重に行っても構わない。
【0087】
デスミア処理は、強アルカリによって樹脂を膨潤させ、次いで酸化剤(例えば、クロム酸、過マンガン酸塩水溶液など)を用いて樹脂を分解除去する処理である。また、研磨材によるウェットブラスト処理やプラズマ処理によって樹脂膜を除去してもよい。プラズマ処理をする際には、表面基材を保護するために、ドライフィルムでマスキングを実施してもよい。
【0088】
また、デスミア処理をする際には、最外層基材及び最外層回路を保護するために、工程を入れ替えて、キャビティ20を形成してから最外層の回路形成を実施しても構わない。その場合は、キャビティ20を保護するために、ドライフィルムなどで保護することが必要である。電着レジスト(EDなど)も使用できる。
【0089】
なお、レーザ光の受け導体(レーザ光の遮蔽部材)として使用する第2の導体層12aは、キャビティ20により上部構造体がないことで低下する多層基板54の剛性を向上させることができる。この場合、第2の導体層12aは、レーザ光の遮蔽部材としては、キャビティ輪郭部にのみ設ければ十分であるが、キャビティ底面全面に配置すると更に剛性を強化することができる。さらに、配線のみではばらつきやすかったキャビティ部の板厚を安定させることができる。なお、キャビティ輪郭部のみに第2の導体層12aを配置する場合、レーザの照射径、層間位置ずれを考慮し、シード層12の端部を基準に外側へ200μm幅で第2の導体層12aを配置すれば、レーザを十分に遮蔽できる。
【0090】
また、基材11にシード層12が入り込んでいることで、第1の導体層17からキャビティ外に複数の回路を延ばそうとすると、複数の回路同士がシード層12でショートしてしまうことになるが、シード層12をキャビティ20よりやや狭く形成することによって、シード層12が基材11に入り込まなくなり、キャビティ外に複数の回路を延ばすことができる。
【0091】
キャビティ20の底部のシード層12の銅箔(バリア層)は、プロファイルフリー箔、またはロープロファイル箔、スタンダード箔等、色々使用できる。
【0092】
ここで、
図16および
図17を参照して、第2の導体層12aを形成する効果について説明する。
図16はキャビティ20の概略を示す図、
図17は
図16中破線Aにて示したキャビティ20の輪郭部周辺を拡大した図である。第2の導体層12aは、絶縁樹脂層62aの下側の表面に配置されているが、上述のように、レーザ光Lの遮蔽部材としての機能を果たす。この場合、本実施形態では、絶縁樹脂層62aはその表面付近が局部的にレーザ光の影響を受けるように加工するようにしてもよい。
【0093】
キャビティ20の輪郭部下の絶縁樹脂層62aに第2の導体層12aが設けられると、レーザ光によって輪郭部のところを加工したときに、第2の導体層12aの上側は、わずかに抉られる。これは、第2の導体層12aが設けられていない場合に比較してその体積は小さくなる。
【0094】
抉られた部分の形状は、キャビティ20の壁面20a側(図中62aL)は段差が付いた状態となるが、その反対側のキャビティ20の内部側(符号62aR)は、絶縁樹脂層62aの表面(底面79)に対して垂直な形状となる。
【0095】
キャビティ20の底面79側にソルダーレジストRが形成されるときに、壁面20aを這い上がることを抑制することができると同時に、キャビティ20の底面に均一な厚みでソルダーレジストを形成することができる。これは、キャビティ20の壁面20a側(62aL)は階段状になっているためにソルダーレジストが這い上がりやすいが、内部側(62aR)は垂直な面であるためにソルダーレジストが這い上がりにくいためである。
【0096】
抉れ部分の内部側62aRと底面79との交点Xにおいては、ソルダーレジストが底面79の他の部分と同じ厚みにすることができる。すなわち、
図17において、抉れた箇所の角のところのソルダーレジストの厚みt
C1と、底面79上のソルダーレジストの厚みt
79は同じとすることができる。ここで、「同じ」とは、おおむね次式を満たす関係を意味する。
t
C1-t
79≦1μm
【0097】
本実施形態では、最外層回路の形成を行った後、キャビティ20を形成するという順序であるが、キャビティ20をレーザ処理後に過マンガン酸処理等のデスミア処理をする場合には、表面の基材を保護、及び回路ピール強度劣化を防ぐために、最外層の回路を形成する前にキャビティ20を形成してもよい。また、最外層の回路をM-SAPなどのパターンめっきで形成する場合、後述のシード層除去工程と兼ねることで、工程を削減できる。
【0098】
(シード層除去工程)
この工程は、
図12に示すように、キャビティ20の底部に露出したシード層12をフラッシュ・エッチングにより除去して、第2のビルドアップ層62の絶縁樹脂層62aの面79と絶縁樹脂に埋め込まれた導体層17の面とを露出させる工程である。
【0099】
詳述すると、この工程では、キャビティ形成領域65の底部をフラッシュ・エッチングすることにより、バリア層であるシード層12(銅箔)を除去する。こうして多層基板54が得られる。コア基板51の下層の絶縁樹脂層62aの面(底面79)と、この底面79と同等な高さ(位置)に表面が露出して絶縁樹脂層62aに埋め込まれた第1の導体層17がキャビティ20の底面79の一部を形成する。このようにキャビティ20の底面に平坦に露出した第1の導体層17が部品実装ランドとして機能し、この多層基板54内の回路配線とキャビティ20に収容される電子部品とを接続できるようになる。
【0100】
フラッシュ・エッチングによって、最外層の導体厚みを減らしたくない場合には、ソルダーレジスト後に実施する。またはソルダーレジスト後にドライフィルムによるマスキングを実施し、任意的にエッチング処理される箇所を選択してもよい。
【0101】
なお、前段で、シード層以外にパターンめっき部分もややエッチングされてしまうことが懸念されることについて説明したが、エッチング量は2μm程度で、フラッシュ・エッチング液は縦方向に均一にエッチングして行く性質があるため、導体厚に悪影響ができるようなことはない。
【0102】
バリアめっきとしてニッケルめっきした場合は、さらにニッケルをエッチングする。ニッケルのエッチングは、ニッケル除去剤NH-1860シリーズ(メック株式会社製)などが適している。
【0103】
ワイヤボンディング用途でバリアめっきのニッケルめっきの下に金めっきをしている場合、サブトラクティブ法の代表的なエッチング液である塩化第二鉄溶液、塩化第二銅溶液は金を溶かさないので原理的には可能だが、界面への浸透力が強いために、金めっきと絶縁材料の界面に浸透し、金めっきの更に下のニッケルめっき、銅めっきを溶かすサイドエッチングが起きるため、不適である。
【0104】
(外層回路形成工程)
この工程では、
図12のように形成した多層基板54の下部の第2のビルドアップ層62の導体層64に対して、エッチングを行い一部領域を除去することで、
図13に示すように、回路として導体層64aを形成する。また、基板上部の第1のビルドアップ層61の導体層63に対してエッチングを行うことで一部領域を除去して回路配線または配線パターンとしての導体層63aを形成する。なお、外層回路の形成は、凹みや貫通孔の壁面への追従性が優れた電着レジストをエッチングレジストに用いたサブトラクティブ法を適用してもよい。なお電着レジストは、電着塗装の性質を応用したエッチングレジストである。
【0105】
(ソルダーレジスト工程)
この工程では、
図13に示した第1および第2のビルドアップ層61、62に対して導体層63a、64aの一部を含めて絶縁被膜し、
図14に示すように、ソルダーレジスト71、72を形成する。ソルダーレジストは、ドライフィルムタイプ、液状タイプが使用可能である。
【0106】
(電子部品装着場所形成工程)
この工程以降は、部品実装ランドに段差が必要な場合に行うものとする。この工程では、
図15に示すように、キャビティ20の底部に露出した導体層17の上にめっきを施して金属めっき層80を形成し、底面から段差を持たせた部品実装ランドである接続パッドを形成する。
【0107】
多層基板54の上部の第1のビルドアップ層61の導体層63aの上にも同様にめっきを施して回路パターンを形成してもよい。この際、スルーホール10が樹脂または金属で充填されていれば、ソルダーレジスト71のないスルーホール10の上下の部分にもめっきが施されるので、ここにも導体層73、74が形成される。
【0108】
必要に応じて電子部品を実装する工程を以下のように追加してもよい。この工程では、キャビティ20に電子部品を収容し、電子部品の底部に設けた電極と金属めっき層80(接続パッド)とを当接させて互いの回路を接続する。なお、ここでは電子部品を実装せず、他で実装する場合は電子部品実装工程以下の工程は不要である。
【0109】
このように、この実施形態の印刷配線板を形成するためのコア基板用基材11Aは、第1の面(上面)11aと、この第1の面(上面)11aと対向する第2の面(下面)11bとを有する絶縁樹脂製の基材11を有している。絶縁樹脂製の基材11の第2の面(下面)11bにはシード層12が形成される。シード層12の一部領域には、第1の導体層17がパターンめっきにより形成される。コア基板51は、絶縁樹脂製の基材11、シード層12、第1の導体層17を有している。コア基板51の少なくとも下面には、絶縁樹脂でビルドアップした第2のビルドアップ層62が形成され、複数層の基板(積層基板54A)をなしている。積層基板54に対して、第1のビルドアップ層61の側からコア基板51の一部領域(キャビティ形成領域65)をザグリ加工して、コア基板51の第2の面(下面)51bのシード層12が底部に露出するように加工することで、キャビティ20が形成される。このキャビティ20の底部に露出したシード層12をフラッシュ・エッチングにより除去すると、コア基板51の下に位置する第2のビルドアップ層62の絶縁樹脂層62aの面(底面79)が残る。底面79には、上面がほぼ面一に並ぶように第1の導体層17が埋め込まれる。このような構成により、キャビティ20内に収容した電子部品と基板側との回路接続を電子部品の底部で行うことができるようになる。
【0110】
このようにキャビティ20の底面79とほぼ面一の第1の導体層17を接続パッド(部品実装ランド)として形成して電子部品の底部の電極と接続することで、キャビティ20の底部の配線パターンとしての部品実装ランドのピール強度を向上することができる。
【0111】
上記各実施形態における印刷配線板の製造手順の例は一例であり、各処理工程を入れ替え、また新たな処理工程を追加し、一部の処理工程を削除することで、処理工程をさまざまに変えることも可能である。
【0112】
本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として示したものであり、この他の様々な形態で実施が可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
10 スルーホール
11 絶縁樹脂製の基材
12 シード層
12a 第2の導体層
13、18 ドライフィルム
14 ビアホール下穴
15 ビア
16、63、64 導体層
17 第1の導体層
20 キャビティ
51 コア基板
54 多層基板
61、62 ビルドアップ層
61a、61b、62a、62b 絶縁樹脂層
66 ドリル
68 絶縁樹脂
71、72 ソルダーレジスト
79 底面
80 金属めっき層