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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012326
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】均質な歯科器具の方法とシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20240123BHJP
   A61C 7/36 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240123BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20240123BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61F5/56
A61C7/36
B29C64/386
B29C64/10
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178707
(22)【出願日】2023-10-17
(62)【分割の表示】P 2020515113の分割
【原出願日】2019-05-30
(31)【優先権主張番号】62/679,007
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512183921
【氏名又は名称】フランツ デザイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FRANTZ DESIGN, INC.
【住所又は居所原語表記】3202 Oakmont Blvd. Austin, TX 78703 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ジョセフ リー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ドナルド イー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】明細書の方法およびシステムは、患者の歯列データを受信して、その歯列データの処理をサーバーで行い、垂直方向変位および下顎前方位置を判定して患者の気道を開くことで、睡眠中に患者が呼吸できるようにすること。
【解決手段】処理を行った歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造により均質な歯科器具の形成を行い、当該歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを備えた一対の垂直方向変位咬合パッドを含み、上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアが含まれ、第1ペアのボタン突出部および第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが上部歯科用トレイおよび下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、下顎前方位置を提供することに関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に関連付けられた1つ以上のデータセットをサーバーが受信するステップと、
スキャナから受信したデータセットに基づいて、ボタン突出部の位置決め用に1つ以上の位置をサーバーが判定するステップであって、前記受信したデータセットには、少なくとも前記患者の歯列パターン、軟口蓋形状の口蓋測定値、および前記患者の軟口蓋形状を基準にした口蓋垂位置および歯肉線の測定値を含む、該ステップと、
ボタン突出部および垂直方向変位の位置決め用に1つ以上の位置をサーバーが通信するステップを有する方法であって、
前記通信するステップは、
ボタン突出部の位置決め用の1つ以上の位置それぞれに関連付けられた値を割り当てるステップであって、各値が下顎前進に関して、上部トレイボタン突出部および下部トレイボタン突出部との間の距離を表す、該ステップと、
前記値を3Dプリンター、フライス加工装置、および射出成形装置の1つ以上に送信するステップとを有し、
前記方法は、さらに、
ボタン突出部の位置決め用の1つ以上の位置のそれぞれに関連付けられた前記値を使用した3Dプリンター、フライス加工装置、および射出成形装置のうちの1つ以上を使用した直接製造によって歯科器具を形成するステップであって、前記歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、前記上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、前記下部歯科用トレイには、垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを含め、前記上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、前記第1ペアのボタン突出部および前記第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが前記上部歯科用トレイおよび前記下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、下顎前方位置を提供する、該ステップ
を有する、方法。
【請求項2】
前記歯科器具が、光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯科器具が、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の1つ以上を使用してフライス加工または射出成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記歯科器具が、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および17つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記垂直方向変位が前記患者の軟口蓋形状の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記垂直方向変位が、前記下部歯科用トレイ上にある一対の咬合パッドから1つ以上、または前記下部歯科用トレイの厚さによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記歯肉線の判定が、上顎歯冠―歯肉接合部および下顎歯冠―歯肉接合部を特定し、前記上部歯科用トレイが、前記上顎歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルの距離に達するように形成され、前記下部歯科用トレイは、前記下顎歯冠―歯肉接合部の約3ミリメートル下に達するように形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
スキャナから患者に関連するデータセットを受信するように適合されたサーバーと、3次元プリンター、フライス加工装置および射出成形装置のうちの1つまたは複数にデータを送信する手段と、を備えるシステムであって、プロセッサと、請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶する非揮発性コンピュータ読み取り可能な記憶媒体と、をさらに備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月31日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「均質な歯科器具の方法とシステム」と題する米国仮特許出願第62/679,007号の非仮出願であり、米国特許法第119条(e)の下で利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸および閉塞性睡眠時無呼吸の治療には、手術、CPAP装置などの気道陽圧装置、および歯科器具などの治療がある。既知の歯科器具には、「弾性下顎前進器具」 (EMA(登録商標))および関連する器具がある。EMA(登録商標)器具は、下顎前方固定を促進して空気の流れを増やすことで効果を発揮する。EMA(登録商標)器具が抱える問題には、器具の各側部にある弾性バンドに取り付けられているボタン突出部が器具から外れてしまうという危険性がある。器具の各側部にあるボタン突出部を取り付ける方法の1つに接着がある。ただし、ボタン突出部を接着すると、時間の経過と共に使用が増加して、外れてしまう恐れがある。必要とされるものは、ボタン突出部が外れる危険性の低い歯科器具である。
【発明の概要】
【0003】
方法の実施形態の中には、患者の口腔特性データをサーバーで受信してその口腔特性データの処理を行い、歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を判定して患者の気道を開くことで、睡眠中に患者が呼吸できるようにすること、そして歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造による歯科器具の形成を行うことが挙げられ、当該歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを含み、上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアが含まれ、第1ペアのボタン突出部および第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが上部歯科用トレイおよび下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、下顎前方位置を提供する。
【0004】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つまたはそれ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される。
【0005】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および1つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される。
【0006】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の内から1つ以上を用いてフライス加工または射出成形される。
【0007】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、およびオレフィン系熱可塑性エラストマーの内から1つ以上を用いて射出成形される。
【0008】
1つ以上の実施形態において、患者の口腔特性データを受信することには、スキャナまたはカメラで患者の歯型をスキャンして、口腔特性データをサーバーに送信することが含まれる。
【0009】
1つ以上の実施形態において、患者の口腔特性データを受信することには、患者の口腔をスキャナで読み取ること、口腔を撮影して歯列データを判定すること、および当該口腔特性をサーバーに送信することが含まれており、ここで言う口腔特性データには、患者の歯および歯肉線を1枚以上撮影した画像、患者の軟口蓋を1枚以上撮影した画像が含まれる。
【0010】
1つ以上の実施形態において、当該方法には、患者の軟口蓋形状の関数としての垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することを含む。
【0011】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に5~7ミリメートルの空間がある場合、5~7ミリメートルの垂直方向変位を判定することを含む。
【0012】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数としての垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、口腔特性データの処理を行い、上顎中切歯の歯肉―歯冠接合部と下顎中切歯の歯肉―歯冠接合部の距離を測定することを含む。
【0013】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に3~5ミリメートルの空間があり、軟口蓋後縁が正常な軟口蓋よりも長い場合の判定、および8~10ミリメートルの垂直方向変位の提供を含む。
【0014】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、軟口蓋後縁が正常な軟口蓋よりも長くて翼状顎であり、軟口蓋と咽頭口部後壁に2ミリメートル以下の空間が存在する場合の判定、および少なくとも11~14ミリメートルの垂直方向変位の提供を含む。
【0015】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数としての垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、軟口蓋が短い、正常、および長いかを判定することを含む。
【0016】
1つ以上の実施形態において、下部歯科用トレイには、左側にある第1の垂直方向変位咬合パッドと、右側にある第2の垂直方向変位咬合パッドを含め、第1および第2垂直方向変位咬合パッドそれぞれの高さは口腔特性データに従って判定され、当該口腔特性データは患者の気道機能を示す軟組織データを提供する。
【0017】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は下部歯科用トレイの厚さによって提供される。
【0018】
別の実施形態は、患者の口腔特性データを受信すること、サーバー内にある口腔特性データの処理を行って、歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を判定して患者の気道を開くことで、睡眠中に患者が呼吸できるようにすること、および歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造により歯科器具を形成することを含む方法をプロセッサ上で実行する際に動作する命令を格納するプロセッサと持続性コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムを対象とし、当該歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを備えた垂直方向変位咬合パッドを含み、上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、第1ペアのボタン突出部および第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが上部歯科用トレイと下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合に下顎前方位置を提供する。
【0019】
別の実施形態は、患者に関連付けられた1つ以上のデータセットをサーバーで受信すること、スキャナから受信したデータセット、少なくとも患者の歯列パターン、歯肉線、軟口蓋形状から軟口蓋の測定値、および患者の口蓋形状に関しては口蓋垂の位置測定値に基づいて、サーバーでボタン突出部の位置を1つ以上判定すること、ボタン突出部および垂直方向変位の位置を1つ以上サーバーで通信すること、当該通信にはボタン突出部の位置決め用に1つ以上の位置のそれぞれに関連付けられた値を割り当てることを含め、各値は下顎前進に対する上部トレイのボタン突出部と下部トレイのボタン突出部との距離を表しており、値データを3次元プリンター、フライス加工装置、および射出成形装置の1つ以上に送信すること、ボタン突出部の位置決め用に判定した1つ以上の各位置に関連付けられた値を使用した直接製造によって歯科器具を形成すること、当該歯科器具には、下部歯科用トレイと上部歯科用トレイを含め、上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1ペアのボタン突出部を含め、上部歯科用トレイには第2ペアのボタン突出部を含め、第1ペアおよび第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドを上下歯科用トレイに取り付けて接続した場合に下顎前方位置を提供することを含む方法を対象としている。
【0020】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される。
【0021】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の内から1つ以上を用いて1回以上フライス加工または射出成形される。
【0022】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および1つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される。
【0023】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される。
【0024】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は患者の軟口蓋形状の関数である。
【0025】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は下部歯科用トレイ上にある一対の咬合パッドから1つ以上、または下部歯科用トレイの厚さによって提供される。
【0026】
1つ以上の実施形態において、歯肉線の判定では、上顎歯冠―歯肉接合部および下顎歯冠―歯肉接合部を特定し、上部歯科用トレイは、上顎歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルの距離に達するように形成され、下部歯科用トレイは、下顎歯冠―歯肉接合部の約3ミリメートル下に達するように形成される。
【0027】
いくつかの実施形態には、プロセッサと、本明細書に記載の方法を実行するプロセッサ上で実行する場合に動作する命令を格納する持続性コンピュータ可読記憶媒体とを含む。

【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】は、本開示における1つ以上の実施形態に従ったコンピュータ装置を含むシステムおよびネットワーク環境を示す。
【0029】
図1B】は、本開示における1つ以上の実施形態に従ったプロセッサおよびコンピュータ装置を示す。
【0030】
図2】は、本開示における1つ以上の実施形態に従ったネットワーク環境を示す。
【0031】
図3】は、本開示における1つ以上の実施形態に従ったフライス盤を示す。
【0032】
図4】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った直接製造によるボタン突出部および垂直方向変位咬合パッドを含む均質な歯科器具を示す。
【0033】
図5】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った直接製造による均質な歯科用トレイを作成するための例示的な熱射出成形用金型を示す。
【0034】
図6】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った底部歯科用トレイ用熱射出成形用金型の負部分を示す。
【0035】
図7】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って
図6】の金型と一緒に使用する底部歯科用トレイ用の熱射出成形用金型の正部分を示す。
【0036】
図8】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った上部歯科用トレイ用の熱射出成形用金型の負部分を示す。
【0037】
図9】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った
図8】の金型と一緒に使用する上部歯科用トレイ用の熱射出成形用金型の正部分を示す。
【0038】
図10】は、本開示における1つ以上の実施形態に従った直接製造によって、固体材料の「パック」を歯科用トレイの中でフライス加工する工程を示す。
【0039】
図11】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って取り付けられた弾性バンドを備えた歯科器具を示す。
【0040】
図12】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋の短い患者の口腔側面を示す。
【0041】
図13】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋および口蓋垂が正常な患者の口が開いた状態を示す。
【0042】
図14】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋が正常な患者の口腔側面を示す。
【0043】
図15】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋および口蓋垂が長い患者の口が開いた状態を示す。
【0044】
図16】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋の長い患者の口腔側面を示す。
【0045】
図17】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、軟口蓋および口蓋垂が長い患者の口が開いた状態を示す。
【0046】
図18】は、本開示における1つ以上の実施形態に従って、患者の歯が開いた状態で金型を配置した歯科器具を示す。
【発明の詳細な説明】
【0047】
以下に挙げる詳細な説明においては、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。図面においては、別途記載がない限り、同様の符号は、典型的に同様の構成要素を識別するものとする。発明の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載されている例示的な実施形態は、限定的であることを示すものではない。本明細書において提示される発明主題の趣旨や範囲を逸脱しない限り、詳細な説明で説明されていない実施形態を適用することも可能であり、詳細な説明で説明されていない変更をなすことも可能である。
【0048】
ここで図1Aを参照すると、当該図面は例示的環境100において、ネットワークインターフェースを介してコンピュータサーバー30に接続されたコンピュータ装置10を示している。本明細書中でさらに説明されているように、図示したコンピュータ装置10およびコンピュータサーバー30は、様々な実施形態に従って計算的に実装された方法、システム、および製造品を使用することができる。コンピュータ装置10およびコンピュータサーバー30は、様々な実施形態において、コンピュータ装置10の機能を可能にする。
【0049】
図1Aに示すコンピュータ装置10はタブレットコンピュータであってよく、他の実施形態では、様々な実施形態に従って計算的に実装される方法、システム、および製造品は、例えば携帯電話、ラップトップ、スマートフォン、電子書籍リーダーなどといった、他の種類のポータブルコンピュータ装置を含む他のフォームファクタを有する他の種類のコンピュータシステムで具現化され得る。コンピュータ装置には、コンピュータ装置として考えられるスマートフォン、クライアントコンピュータなどを含めることができる。図示のように、コンピュータ装置10には、コンピュータ装置10の入出力としてタッチスクリーンなどのディスプレイを含めることができる。コンピュータ装置10には、タッチ入力/出力キーボード、または付属のキーボードのいずれかとして、キーボードをさらに含めることができる。さらに示すように、コンピュータ装置10はスキャナ16に接続されてもよい。1つの実施形態において、スキャナ16は歯の3D画像を作成できる走査カメラであり得る。
【0050】
ここで図1Bを参照すると、コンピュータ装置10は、論理モジュール102、ネットワークインターフェース104、ユーザーインターフェース110、プロセッサ116、およびメモリ114と共にさらに図示されている。論理モジュール102は、ASICなどの回路部品を使用して実装でき、論理モジュール102および図示する他のモジュールは、ASICなどといった特別に設計された回路と、コンピュータ可読命令152を実行する1つ以上のプロセッサ116(またはフィールドプログラマブルゲートアレイ、FPGA)の組み合わせを使用して実装できる。例えば、いくつかの実施形態では、当該論理モジュールの少なくとも1つは特別に設計された回路(ASICなど)を使用して実装されてもよく、第2の論理モジュールは、コンピュータ可読命令152(ソフトウェアやファームウェアなど)を実行するプロセッサ116(またはFPGAなどといった他の種類のプログラマブル回路)を使用して実装されてもよい。システム要件は、本明細書の実施形態を満たすソフトウェア、ファームウェア、および回路の組み合わせを決定することができ、例えば、論理モジュールはソフトウェア/ハードウェア/ファームウェアの最も効率的な組み合わせを使用して、本開示の範囲にある方法とシステムを迅速に実装するよう設計できる。いくつかの実施形態において、コンピュータ支援設計/コンピュータ援用製造(CAD/CAM)プログラムは、本明細書に記載の方法を実装して、スキャンした画像から歯科器具を形成するよう動作する。例えば、CADプログラムはデータを3次元形式で作成し、3Dプリンター、フライス加工装置、または射出成形作成装置などといった製造装置にそのデータを送信できる。本明細書に記載の方法には、患者指向の口腔特性データを使用し、軟組織特性および歯列に従って、患者の睡眠時無呼吸におけるニーズを分類することで、ボタン突出部の位置決めおよび垂直方向変位を自動的に判定することを含む。本明細書に記載している軟組織とは、患者の口腔内における軟口蓋、歯肉線、口蓋垂の位置、および舌骨組織などを指す。
【0051】
様々な実施形態において、コンピュータ装置10のメモリ114には、大容量記憶装置、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、同期ランダムアクセスメモリ(SRAM)、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)などのキャッシュメモリ、および/または他の種類の記憶装置を1つ以上含めてもよい。様々な実施形態において、メモリ114に格納されている1つ以上のアプリケーション160には、例えば、オペレーティングシステム162、ブラウザ163、およびワードプロセッシングアプリケーション、または撮像アプリケーション、スキャンアプリケーションおよび1つ以上の通信アプリケーション166を含めてもよい。
【0052】
コンピュータ装置10は、アクセス制限モジュール106も含むことができる。コンピュータ装置10のアクセス制限モジュール106は、コンピュータ装置10を介してアクセスを制限する、あるいはコンピュータ装置10が1つ以上のアクションを防止するように構成することができる。コンピュータ装置10には、バスを介してアクセス制限モジュール106に結合された器具生成モジュール108を含めることができる。
【0053】
図2を参照すると、器具生成モジュール108は、第1使用者20がコンピュータ装置10の操作を試みることが許可された使用者であることを判定するように構成することができる。器具生成モジュール108は、コンピュータ装置10がネットワーク接続50に接続されている間にネットワーク受信データに基づいて確立された許可使用者を判定するように構成することもできる。器具生成モジュール108がクラウドコンピューティング設定またはコンピュータサーバー30に存在している場合、器具生成モジュール108は、ネットワーク50への初回ログイン時、またはコンピュータサーバー30へのクラウドコンピューティングログイン時に、第1使用者のネットワークベースの認証を判定するように構成できる。
【0054】
器具生成モジュール108は、スキャナ16から入力を受信するように構成できる。いくつかの実施形態において、器具生成モジュール108はフライス加工装置、3次元プリンター、または射出成形作成装置に結合される。器具生成モジュール108は、CAD/CAMデータまたは他の口腔特性データおよび/または歯列データを受信して、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って歯科器具の作成を可能にすることができる。
【0055】
ネットワーク50を介して図1Aおよび図1Bのコンピュータ装置10に接続するコンピュータサーバー30は、睡眠時無呼吸の治療を目的とした垂直方向変位および下顎前方位置を確立および/または決定することができる。例えば、スキャナ16および/または患者の歯型を使用および検査を行い、睡眠時無呼吸の治療に必要な調整を判定することができる。上下トレイはボタン突出部を含め、型から作成できる。例えば、不正咬合と睡眠時無呼吸のある患者には、スキャナ16または他の方法による判定が必要になる。各患者は、スキャンした歯、軟組織、および患者フィードバックに応じて、睡眠時無呼吸の治療に向けて水平および垂直両方の方向変位の異なる位置を必要とする場合がある。垂直方向変位は、下部咬合パッドを使用する、あるいは下部歯科用トレイの厚さを使用する場合がある。実施形態において、当該垂直方向変位は、型、フライス加工装置、または3D印刷による歯科器具の一部である。
【0056】
一実施形態において、当該型は、熱可塑性材料またはナイロンなどのFDA承認材料を注ぎ込み、下部トレイが上部トレイを基準として下顎前方位置を作成するように上下の歯にしっかりとフィットするが取り外しできるように適合した上下トレイの形成を可能とし、弾性材料が上下トレイの側面前方および後方部分にそれぞれ取り外し可能に取り付けられた場合、上部トレイを基準として下部トレイの下顎前方位置を可能にする。下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイ上にあるボタン突出部は、弾性バンドがそれぞれのトレイに取り付けられるように調整されている。一実施形態において、当該ボタン突出部は、射出成形用の型の一部として含まれる、歯科器具トレイ用の「パック」からフライス加工される、あるいは3D印刷中に直接製造される。
【0057】
一実施形態には、上部トレイを基準として弾性バンドが下部トレイの下顎前方位置を作成するように上下トレイのそれぞれにある突出部を介して上下トレイを接続するように適合された1つ以上の取り外し可能に取り付けできる弾性バンドの寸法および弾性の判定を含む。
【0058】
弾性バンドには、複数の弾性バンドの対を含めることができ、各対は異なる長さおよび/または弾性を有することができる。
【0059】
1つの実施形態において、当該歯科器具は睡眠中に着用されるように構成される。ここで図3を参照すると、当該歯科器具は、図3に示すように、フライス加工装置300に送信できる、スキャンなどを介した3D印刷または3Dデータ収集などの3次元(3D)技術を使用して製造される上下トレイを含めることができる。結果として得られる歯科器具については、図4に示す。
【0060】
ここで図4を参照すると、上部トレイ410、下部トレイ420、上部ボタン突出部450、下部ボタン突出部460、および咬合パッド470が含まれている歯科器具400が示されている。ボタン突出部および下部咬合パッドを含む他の歯科器具とは異なり、本明細書に記載の実施形態には、下部ボタン突出部とは一体ではないが、歯科用トレイの一部として直接製造される咬合パッドを含む。本明細書で使用する直接製造とは、患者に適したボタン突出部および垂直方向変位咬合パッドなどの異なる部品が歯科用トレイ自体と同時に製造され、型、フライス加工材料または3次元プリンターによる印刷のいずれかに組み込まれるという点において、歯科器具を均質に形成することを指す。
【0061】
3次元プリンターに適した材料は樹脂系材料、および2017年6月20日付Sadowskyらによる米国特許第9,682,018号「Denture Tooth and Material(義歯および材料)」に記載されている材料であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。当業者にとって明らかなように、歯科器具に適切な材料はFDA承認済みでなければならない。さらに、樹脂に適した材料については、Tanaka J、Hashimoto T、Stansbury JW、Antonucci JM、Suzuki Kによる「Polymer Properties of Resins Composed of UDMA an Methacrylates With the Carboxyl Group(UDMAおよびカルボキシル基を有するメタクリレートからなる樹脂のポリマー特性)」(Dental Material Journal、2001年10:206-215)に記載しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書で言う3次元印刷には、ステレオリソグラフィ(SLA)、マイクロ光造形マイクロ光造形法(pSLA)、OLP投影、2PP(2光子重合)、連続液界面製造、および材料噴射を含むが、これらに限定されない。実施形態において、3次元印刷には、離散層で形成された連続層による層ごとの印刷を含む。例えば、ポリマー/樹脂成分を配合した水槽に浸漬した構築プレートを備えた表面は、光重合を引き起こす光重合開始剤を活性化する波長と強度で光にさらされ得る。当業者にとって明らかなように、歯科用トレイが光重合性樹脂の水槽から構築される連続液界面製造などといった、3次元印刷の方法が他にもある。連続液界面印刷については、米国特許公開第2015/0097315号、2015/0097316号、および2015/0102532号に記載されており、それぞれの開示については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、当該歯科器具は射出成形によって形成できる。例えば、図5に示す型500などの2つの型は、上下歯科用トレイに使用できる。
【0064】
ここで図6を参照すると、底部歯科用トレイ600のネガ型を示す型の一部が示されている。具体的には、型600には、ネガ型歯640、610などのネガ型ボタン突出部、および620などのネガ型咬合パッドを含む。ここで図7を参照すると、底部歯科用トレイのポジ型700が示されている。ポジ型700には、710などのボタン突出部、咬合パッド720、および歯740を含む。
【0065】
ここで図8を参照すると、図6に類似した型が図示されており、上部歯科用トレイのネガ型を示している。図示するように、ネガ型800には、ボタン突出部810、812、およびネガ型歯840を含む。図9を参照すると、ボタン突出部910、912、および歯940を含む、上部歯科用トレイのポジ型900が示されている。
【0066】
ここで図10を参照すると、個体材料、または「パック」1010を含むフライス加工1000が示されており、FDA承認済み材料から作られた上部歯科用トレイ用にフライス加工されている。1つ以上の実施形態において、フライス加工される材料は、エチレン-プロピレン共重合体またはポリオキシメチレン共重合体であり得る。他の実施形態において、材料は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーであり得る。当業者にとって明らかなように、異なる材料をフライス加工用の「パック」に変えることができる。
【0067】
工程中、ボタン突出部1010は1020に示すようにフライス加工される。次に、1030に示すように、歯科器具の上部歯科用トレイはパックからフライス加工される。下部歯科用トレイは、同様の工程でフライス加工できる。従って、ボタン突出部および咬合パッドを後糊または後接着するとは無関係に下部歯科用トレイのボタン突出部および/または咬合パッドを直接製造することにより、均質な1つの歯科用トレイの一部となるように当該歯科器具をフライス加工できる。
【0068】
よって、上記に示すように、歯科器具の上下歯科用トレイは、フライス加工、射出成形加工および/または3D技術を使用して直接製造できる。歯科器具の射出成形に適した材料には、熱可塑性材料、熱可塑性エラストマーなどが含まれる。1つ以上の実施形態においては、エチレン-プロピレン共重合体またはポリオキシメチレン共重合体であり得る。他の実施形態において、材料は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーであり得る。3D印刷技術に適した材料には、光重合性液体材料などの熱硬化性ポリマーが含まれる。1つ以上の実施形態において、3D印刷に適した材料には、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーなどの架橋ポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、3D印刷材料には、ナイロン材料を含むことができる。
【0069】
1つ以上の実施形態において、フライス加工および/または射出成形に使用される材料は、表1に示す以下の特性を有するチレン-プロピレン共重合体である、VisiClear(登録商標)およびDuraFlex(登録商標)を含む、Myerson Tooth,Inc.によって提供できる。
【0070】
【0071】
別の実施形態において、フライス加工または射出成形材料は、表2に示す以下の特性を有するポリオキシメチレン共重合体であるDuraCetal(登録商標)によって提供でき、Myerson Tooth,Inc.からも入手できる。
【0072】
ここで図11を参照すると、歯科器具1100は、当該歯科器具の両側を接続する弾性バンドを備えた上部歯科用トレイ1102および下部歯科用トレイ1104と共に図示されている。図示するように、当該歯科器具の左側には、ボタン突出部のボタン1110および1120を接続する弾性バンド1108が示されている。
【0073】
射出成形、フライス加工、または3D印刷から得られる歯科器具は好都合なことに、図11に示す弾性バンド以外の部品を追加する必要はなく、これはボタン突出部および下顎咬合パッドを後で追加する必要がなく、型、フライス加工パックまたは3D生成機を介して均質に含まれるように歯科器具が直接製造されるからである。本明細書で開示する直接製造以前の歯科用トレイは、ボタン突出部および咬合パッドなどの異なる部品を接着剤などによって追加する、あるいは熱成形(フライス加工なし)方法で包み込む必要があった。
【0074】
直接製造では、歯科器具全体の製造中にボタン突出部および咬合パッドの位置決めが必要なため、各患者のボタン突出部および咬合パッドの位置を判定するための測定値は、均質な歯科用トレイを作成する前に確定される。再度図Aを参照すると、スキャナ/カメラ16は、1つの実施形態において、歯データおよび軟口蓋データを含めることができる歯列データを含む必要な口腔特性データの判定を含め、ボタン突出部および咬合パッドの適切な位置を確定する。
【0075】
1つ以上の実施形態において、方法には、軟口蓋形状の関数として、歯科器具の垂直成分の量、または咬合パッドの高さの判定を含む。他の実施形態において、垂直方向変位は、舌骨形状などといった、患者の軟組織によって判定される。1つ以上の実施形態において、スキャナ/カメラ16などのスキャナおよび/またはカメラは、軟口蓋形状を検出する。データは口腔特性データとして収集され、均質に器具を製造するために口腔特性を分類するように動作するプロセッサに提供される。
【0076】
1つ以上の実施形態において、軟口蓋には短い、正常、長いといった、3種類の分類がある。従って、1つ以上の実施形態において、方法には、軟口蓋の後縁が短いかどうかを判定することを含む。例えば、軟口蓋の後縁と咽頭口部の後壁の間に約5~7ミリメートルの空間がある場合、当該軟口蓋は短いと判定され、歯科器具には約5~7ミリメートルの垂直方向変位が必要になる。いくつかの実施形態では、垂直方向変位の判定において、スキャナが顎中切歯の歯肉―歯冠接合部から下顎中切歯の歯肉―歯冠接合部までの距離を測定することができる。この距離が、例えば、20mmであるため、7mmの垂直方向が望ましい場合、いくつかの実施形態では、咬合が7mmの垂直方向変位を有するように垂直方向変位を判定することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法には、軟口蓋の後縁が正常な軟口蓋よりも長いかどうかを判定することを含む。軟口蓋が長く、軟口蓋の後縁と咽頭口部の後壁との間に3~4mmの空間を有するようである場合、いくつかの実施形態では、8~10mmの垂直方向変位を提供する歯科器具を作り、患者が仰臥位にある場合に軟口蓋が軌道を塞がないようにすることができる。
【0078】
軟口蓋が非常に長く、軟口蓋と咽頭口部との間にわずか2mmまたはそれ以下の空間しかない翼状顎である場合、器具は11~14mmの垂直方向変位を必要とするであろう。
【0079】
1つ以上の実施形態において、スキャナは軟口蓋が短い、長い、または正常かを判断し、口蓋を基準にして口蓋垂の位置を判定する。図12図17は、患者の軟口蓋をスキャンして考えられる例を示している。
【0080】
図12および図13を参照すると、患者頭部側面1200および患者の口が開いた状態1300を示している。 図12は、短口蓋1210を示している。図13は、前方斜視図からの同一短口蓋1310を示している。
【0081】
図14は、患者の側面1400および正常口蓋1410を示している。 図15は、患者の口が開いた状態1500および正常口蓋1510の前方斜視図を示している。
【0082】
図16は、患者の側面1600および長口蓋1610を示している。図17は、患者の口が開いた状態1700および長口蓋1710の前方斜視図を示している。
【0083】
口蓋が短い、正常、または長いかを判定するのは、歯科専門医が検査を通じて行う、あるいは実施形態に従って、患者に関するデータを収集するスキャナ/カメラを介して行うことができる。
【0084】
下部歯科用トレイ咬合パッドの位置およびサイズの判定は、患者の口蓋長の関数である。さらに、いくつかの実施形態では、上部歯科用トレイの上顎ボタン突出部は、左右の犬歯と第1小臼歯との間にある空隙部の各切縁に配置される。
【0085】
下顎ボタン突出部の位置は、患者の運動範囲を判定することで判断できる。いくつかの実施形態では、スキャナは下顎の前後伸長を測定することで、最大運動範囲を検出する。例えば、患者の下顎が5~7mmしか前進しない場合、ボタンは患者の歯を中心にして23mm離して配置される。患者に7~10mmの潜在的な前進がある場合、ボタンは25mm離して配置され、患者に10~17mmの潜在的な前進がある場合、ボタンは27mm離して配置される。
【0086】
1つ以上の実施形態において、方法には、患者のモデルを中心に塞ぎ、下顎ボタンの中心を上顎ボタンの中心から23、25、または27mmの位置に配置することで、下顎弓のボタン位置を判定することを含む。
【0087】
前述のとおり、スキャナ/カメラは、患者の口の画像/スキャンを撮影して歯列データおよび軟口蓋データなどの軟組織データを判定し、スキャナ/カメラに組み込まれたスキャナまたはプロセッサに結合されたコンピュータシステムが前述したボタン突出部および咬合パッドの位置を決定する。
【0088】
ここで図18を参照すると、本明細書の実施形態に従った歯科器具の図が示されている。より具体的には、歯科器具1800には、上部歯科用トレイ1802、下部歯科用トレイ1804、上部歯科用トレイ1802上に配置された4つのボタン突出部1810、1820、および下部歯科用トレイ上に配置されたボタン突出部1830、1849を含む。垂直方向変位咬合パッド1850および1860を含む下部歯科用トレイ1804も示されている。一実施形態において、当該歯科器具には、その両側に弾性バンド1870および1880が配置されており、上部歯科用トレイ1802を下部歯科用トレイ1804に結合している。
【0089】
また、図18に図示しているモデル1890には患者の歯も含まれている。当該モデルは、患者をスキャンして3D印刷する、あるいは患者の歯型から作成できる。
【0090】
1つ以上の実施形態において、歯列データには、患者が歯科器具を保持できるようにするための歯肉線データを含む。より具体的には、歯科用トレイが歯肉線にフィットするように設計されている場合、歯科器具はよりしっかりと保持できる。従って、いくつかの実施形態では、方法には、切歯に突出した軸方向傾斜がない限り、上部歯科用トレイの歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルの距離を判定することを含む。切歯に突出した軸方向傾斜のある患者の場合、上部歯科用トレイは、前歯の3分の1から2分の1に達するように形成される。下部歯科用トレイは、患者の下顎切歯にも突出した軸方向傾斜がない限り、歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルに達するように形成される。下顎切歯に突出した軸方向傾斜のある患者の場合、下部歯科用トレイは、前切歯の歯冠―歯肉領域の上に達するように形成される。歯肉線データは、フライス加工の使用前、または型の使用前のいずれかで3Dモデルを使用して歯科用トレイを形成する際に提供される。
【0091】
前述のように、図18に示されているような歯科器具は、1つ以上の実施形態において、患者の口腔特性データを受信すること、サーバー内にある口腔特性データの処理を行って、歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を判定して患者の気道を開くことで、睡眠中に患者が呼吸できるようにすること、および歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造によって歯科器具を形成することを含む方法によって形成され、当該歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、当該上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには、垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを備えた垂直方向変位咬合パッドを含め、上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、第1ペアのボタン突出部および第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが上部歯科用トレイおよび下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、下顎前方位置を提供する。
【0092】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つまたはそれ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される。
【0093】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および1つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される。
【0094】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の内から1つ以上を用いてフライス加工または射出成形される。
【0095】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される。
【0096】
1つ以上の実施形態において、患者の口腔特性データを受信することには、スキャナまたはカメラで患者の歯型をスキャンして、口腔特性データをサーバーに送信することが含まれる。
【0097】
1つ以上の実施形態において、患者の口腔特性データを受信することには、患者の口腔をスキャナで読み取ること、口腔を撮影して歯列データを判定すること、および当該口腔特性をサーバーに送信することが含まれており、ここで言う口腔特性データには、患者の歯および歯肉線を1枚以上撮影した画像、患者の軟口蓋を1枚以上撮影した画像が含まれる。
【0098】
1つ以上の実施形態において、当該方法には、患者の軟口蓋形状の関数としての垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することを含む。
【0099】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に5~7ミリメートルの空間がある場合、5~7ミリメートルの垂直方向変位を判定することを含む。
【0100】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、口腔特性データの処理を行い、上顎中切歯の歯肉―歯冠接合部から下顎中切歯の歯肉―歯冠接合部の距離を測定することを含む。
【0101】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に3~5ミリメートルの空間があり、軟口蓋後縁が正常な軟口蓋よりも長い場合の判定、および8~10ミリメートルの垂直方向変位の提供を含む。
【0102】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数として垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、軟口蓋後縁が正常な軟口蓋よりも長くて翼状顎であり、軟口蓋と咽頭口部後壁に2ミリメートル以下の空間が存在する場合の判定、および少なくとも11~14ミリメートルの垂直方向変位の提供を含む。
【0103】
1つ以上の実施形態において、患者の軟口蓋形状の関数としての垂直方向変位を、口腔特性データを介して判定することには、軟口蓋が短い、正常、および長いかを判定することを含む。
【0104】
1つ以上の実施形態において、下部歯科用トレイには、左側にある第1の垂直方向変位咬合パッドと、右側にある第2の垂直方向変位咬合パッドを含め、第1および第2垂直方向変位咬合パッドそれぞれの高さは口腔特性データに従って判定され、当該口腔特性データは患者の気道機能を示す軟組織データを提供する。
【0105】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は下部歯科用トレイの厚さによって提供される。
【0106】
別の実施形態は、患者の口腔特性データを受信すること、サーバー内にある口腔特性データの処理を行って、歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を判定して患者の気道を開くことで、睡眠中に患者が呼吸できるようにすること、および歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造により歯科器具を形成することを含む方法をプロセッサ上で実行する際に動作する命令を格納するプロセッサと持続性コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムを対象とし、当該歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを含み、上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、第1ペアのボタン突出部および第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが上部歯科用トレイと下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合に下顎前方位置を提供する。
【0107】
別の実施形態は、患者に関連付けられた1つ以上のデータセットをサーバーで受信すること、スキャナから受信したデータセット、少なくとも患者の歯列パターン、歯肉線の測定値、軟口蓋形状から軟口蓋の測定値、および患者の口蓋形状を基準にした口蓋垂の位置測定値に基づいて、サーバーでボタン突出部の位置を1つ以上判定すること、ボタン突出部および垂直方向変位の位置を1つ以上サーバーで通信すること、当該通信にはボタン突出部の位置決め用に1つ以上の位置のそれぞれに関連付けられた値を割り当てることを含め、各値は下顎前進に対する上部トレイのボタン突出部と下部トレイのボタン突出部との距離を表しており、値データを3次元プリンター、フライス加工装置、および射出成形装置の1つ以上に送信すること、ボタン突出部の位置決め用に判定した1つ以上の各位置に関連付けられた値を使用した直接製造によって歯科器具を形成すること、当該歯科器具には、下部歯科用トレイと上部歯科用トレイを含め、上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1ペアのボタン突出部を含め、上部歯科用トレイには第2ペアのボタン突出部を含め、第1ペアおよび第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドを上下歯科用トレイに取り付けて接続した場合に下顎前方位置を提供することを含む方法を対象としている。
【0108】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される。
【0109】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の内から1つ以上を用いて1回以上フライス加工または射出成形される。
【0110】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および1つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される。
【0111】
1つ以上の実施形態において、当該歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される。
【0112】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は患者の軟口蓋形状の関数である。
【0113】
1つ以上の実施形態において、垂直方向変位は下部歯科用トレイ上にある一対の咬合パッドから1つ以上、または下部歯科用トレイの厚さによって提供される。
【0114】
1つ以上の実施形態において、歯肉線の判定では、上顎歯冠―歯肉接合部および下顎歯冠―歯肉接合部を特定し、上部歯科用トレイは、上顎歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルの距離に達するように形成され、下部歯科用トレイは、下顎歯冠―歯肉接合部の約3ミリメートル下に達するように形成される。
【0115】
別の実施形態は、プロセッサと、患者に関連付けられた1つ以上のデータセットをサーバー内で受信することを含む方法をプロセッサ上で実行する際に動作する命令を格納する持続性コンピュータ可読記憶媒体を含め、スキャナから受信したデータセット、少なくとも患者の歯列パターン、軟口蓋形状からの口蓋測定値、および患者の口蓋形状を基準にした口蓋垂の位置測定値に基づいて、サーバーでボタン突出部の位置を1つ以上判定すること、ボタン突出部および垂直方向変位の位置を1つ以上サーバーで通信すること、当該通信にはボタン突出部の位置決め用に1つ以上の位置のそれぞれに関連付けられた値を割り当てることを含め、各値は下顎前進に対する上部トレイのボタン突出部と下部トレイのボタン突出部との距離を表しており、値データを3次元プリンター、フライス加工装置、および射出成形装置の1つ以上に送信すること、ボタン突出部の位置決め用に判定した1つ以上の各位置に関連付けられた値を使用した直接製造によって歯科器具を形成すること、当該歯科器具には、下部歯科用トレイと上部歯科用トレイを含め、上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、下部歯科用トレイには垂直方向変位および第1ペアのボタン突出部を含め、上部歯科用トレイには第2ペアのボタン突出部を含め、第1ペアおよび第2ペアのボタン突出部は2つの弾性バンドを上下歯科用トレイに取り付けて接続した場合に下顎前方位置提供することを含むシステムを対象としている。
【0116】
当業者であれば、システムの側面でのハードウェアの実装形態とソフトウェアの実装形態との間には、ほとんど相違が残されていないとう点にまで従来技術が進歩したと認識するであろう。通常、ハードウェアまたはソフトウェアの使用は(必ずしもそうとは限らないが、特定の状況では、ハードウェアとソフトウェアの選択が重要になり得るという点で)、コスト対効率のトレードオフを表す設計選択である。当業者であれば、本明細書に記載の工程、システム、その他の技術を実施できる様々な手段(1つ以上の機械または製造品のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなど)があること、そして工程、システム、その他の技術が展開される状況によって好ましい手段が異なるということが分かるであろう。例えば、実施者が速度と精度が最重要であると判断した場合、実施者は主にハードウェアおよび/またはファームウェアの手段を選択できる。あるいは柔軟性が最重要であると判断した場合、実施者は主に1つ以上のマシンまたは製造品で実装されるソフトウェア実装を選択できる。またはさらに別の方法として、実施者は1つ以上のマシンまたは製造品のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアのうちのいくつかの組み合わせを選択できる。従って、本願明細書で説明する工程、装置、その他の技術を実施することができるいくつかの可能な手段があり、用いるべきどのような手段も、いずれも変化する可能性がある、該手段が展開される状況、および該実施者の特定の関心事(例えば、速度、柔軟性または予測性)に依存する選択であるという点で、他より本質的に優れているものはない。当業者であれば、一般的に実施の光学的態様は、1つ以上のマシンまたは製造品において光学指向のハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを使用することを認識するであろう。
【0117】
前述の詳細な説明では、ブロック図、フローチャート、および/または例を使用して、装置および/または工程の様々な実施形態を説明した。当該ブロック図、フローチャート、および/または例が1つ以上の機能および/または動作を含む限り、当業者は、かかるブロック図、フローチャート、および/または例は、広範囲にわたるハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または事実上それらの組み合わせによって、個々におよび/または集合的に実施することが可能であることを理解するであろう。一実施形態において、本明細書で説明される主題のいくつかの部分は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または他の統合フォーマットを介して実装され得る。しかし、本明細書で開示された実施形態のうちのいくつかの態様は、全部もしくは一部において、1つ以上のコンピュータ上で実行している1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行している1つ以上のプログラムとして)、1つ以上のプロセッサ上で実行している1つ以上のプログラムとして(例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ上で実行している1つ以上のプログラムとして)、ファームウェアとして、またはそれらの実質的に任意の組み合わせとして、集積回路内で等しく実施可能であり、ソフトウェアもしくはファームウェアに関する回路の設計および/またはコードの書込みは、本開示に照らして、十分当業者の範囲内にあることを当業者は理解されよう。さらに、本明細書で説明している主題のメカニズムは様々な形態のプログラム製品として配布することができ、本明細書で説明している主題の例示的実施形態は、配布を実際に実行するために使用される信号保持媒体の特定のタイプに関係なく適用されることが、当業者には理解されるだろう。信号保持媒体の例には、フロッピーディスク(登録商標)、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリなどの記録可能なタイプの媒体、そして、デジタル通信媒体および/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波管、有線通信リンク、無線通信リンクなど)の通信タイプの媒体が含まれるが、それらには限定されない。
【0118】
一般的な意味で、本明細書で説明している様々な実施形態は、幅広いハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって、個別におよび/または集合的に実施可能であることを、当業者は認識するであろう。従って、本明細書で使用する「電気回路」には、少なくとも1つの個別電気回路を有する電気回路、少なくとも1つの集積回路を有する電気回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路を有する電気回路、コンピュータプログラムによって構成された汎用コンピュータ装置(例えば、本明細書に記載の工程および/または装置を少なくとも部分的に実行するコンピュータプログラムによって構成された汎用コンピュータ、または本明細書に記載の工程および/または装置を少なくとも部分的に実行するコンピュータプログラムによって構成されたマイクロプロセッサ)を形成する電気回路、メモリ装置(例えば、ランダムアクセスメモリ)を形成する電気回路、および/または通信装置(例えば、モデム、通信スイッチ、または光学電気機器)を形成する電子回路を含むが、これらには限定されない。当業者は、本明細書に記載されている主題は、アナログもしくはデジタル形式またはそれらの何らかの組合せで実施され得ることを認識するであろう。
【0119】
当業者であれば、装置および/または工程を本明細書に記載の方法で説明し、その後、エンジニアリング方式を使用して、当該記載の装置および/または工程をデータ処理システムに統合することが当技術分野では一般的であることを認識するであろう。つまり、本明細書に記載の装置および/または工程の少なくとも一部は、合理的な量の実験を介してデータ処理システムに統合できる。通常のデータ処理システムは、一般に、システムユニットハウジング、ビデオディスプレイ装置、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどのメモリ、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ、オペレーティングシステムなどの計算実体、ドライバ、グラフィカルユーザインタフェース、およびアプリケーションプログラムのうちの1つもしくは複数、タッチパッドもしくはスクリーンなどの1つもしくは複数の相互作用装置、ならびに/またはフィードバックループおよびコントロールモータを含むコントロールシステム(例えば、位置検知用および/もしくは速度検知用フィードバック、コンポーネントの移動用および/もしくは数量の調整用コントロールモータ)を含むことを、当業者は理解するであろう。通常のデータ処理システムは、データコンピューティング/通信システムおよび/またはネットワークコンピューティング/通信システムの中に通常見られるコンポーネントなどの、市販の適切なコンポーネントを利用して実装することができる。
【0120】
本明細書に記載の本主題における特定の態様について図示を行い説明したが、本明細書の教示に基づいて、本明細書に記載の主題およびそのより広義の態様から逸脱することなく、変更および修正を加えることができ、したがって、本明細書に記載の主題における真の趣旨および範囲内に含まれるかかる変更および修正はすべて添付の特許請求の範囲に含まれることが、当業者には明らかであろう。さらに、本発明は、添付の特許請求の範囲により定義されることを理解されたい。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
方法は、以下の工程で構成する。
患者の口腔特性データを受信して、
サーバー内で前記口腔特性データの処理を行い、歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を判定し、前記患者の気道を開くことで睡眠中に呼吸できるようにして、
前記歯列データ、垂直方向変位、および下顎前方位置を用いた直接製造によって歯科器具を形成し、前記歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、前記上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、前記下部歯科用トレイには、垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを含め、前記上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、前記第1ペアのボタン突出部および前記第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが前記上部歯科用トレイおよび前記下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、前記下顎前方位置を提供する方法。<請求項2>
前記歯科器具が、光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される、請求項1に記載の方法。
<請求項3>
前記歯科器具が、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および1つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される、請求項1に記載の方法。
<請求項4>
前記歯科器具が、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の1つ以上からフライス加工または射出成形される、請求項1に記載の方法。
<請求項5>
前記歯科器具が、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される、請求項1に記載の方法。
<請求項6>
前記患者の口腔特性データを受信することには、スキャナまたはカメラで患者の歯型をスキャンして、前記口腔特性データをサーバーに送信することが含まれる、請求項1に記載の方法。
<請求項7>
患者の口腔特性データを受信することには、患者の口腔をスキャナで読み取ること、
口腔を撮影して歯列データを判定することが含まれており、前記口腔特性データには、前記患者の歯および歯肉線を1枚以上撮影した画像、患者の軟口蓋を1枚以上撮影した画像とを含め、
前記口腔特性をサーバーに送信することを含む、請求項1に記載の方法。
<請求項8>
さらに、
前記患者の軟口蓋形状の関数としての前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することを含む、請求項7に記載の方法。
<請求項9>
前記患者の軟口蓋形状の関数として前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することには、
前記患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に5~7ミリメートルの空間がある軟口蓋の場合、5~7ミリメートルの垂直方向変位を判定することを含む、請求項8に記載の方法。
<請求項10>
前記患者の軟口蓋形状の関数として前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することには、
前記口腔特性データの処理を行い、上顎中切歯の歯肉―歯冠接合部から下顎中切歯の歯肉―歯冠接合部の距離を測定することを含む、請求項8に記載の方法。
<請求項11>
前記患者の軟口蓋形状の関数として前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することには、
前記軟口蓋後縁が、前記患者の軟口蓋後縁と咽頭口部後壁に3~5ミリメートルの空間がある正常な軟口蓋よりも長いかどうかを判定することと、
8~10ミリメートルの前記垂直方向変位を提供することを含む、請求項8に記載の方法。
<請求項12>
前記患者の軟口蓋形状の関数として前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することには、
前記軟口蓋後縁が正常な軟口蓋より長くて翼状顎であり、前記軟口蓋と咽頭口部の後壁との間に2ミリメートルまたはそれ以下の空間が存在するかどうかを判定し、前記垂直方向変位に少なくとも11~14ミリメートルを提供することを含む、請求項8に記載の方法。
<請求項13>
前記患者の軟口蓋形状の関数として前記垂直方向変位を、前記口腔特性データを介して判定することには、
前記軟口蓋が短い、正常、長いかを判定することを含む、請求項8に記載の方法。
<請求項14>
前記下部歯科用トレイには、左側にある第1の垂直方向変位咬合パッドと、右側にある第2の垂直方向変位咬合パッドを含め、前記第1および第2垂直方向変位咬合パッドそれぞれの高さは前記口腔特性データに従って判定され、前記口腔特性データは前記患者の気道機能を示す軟組織データを提供する、請求項1に記載の方法。
<請求項15>
前記垂直方向変位が前記下部歯科用トレイの厚さによって提供される、請求項1に記載の方法。
<請求項16>
プロセッサと、請求項1に記載の方法を実行するプロセッサ上で実行する場合に動作する命令を格納する持続性コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステム。
<請求項17>
以下の工程からなる方法。
患者に関連付けられた1つ以上のデータセットをサーバーで受信し、
スキャナから受信したデータセットに基づいて、ボタン突出部の位置決め用に1つ以上の位置をサーバーで判定し、前記受信したデータセットには、少なくとも前記患者の歯列パターン、軟口蓋形状の口蓋測定値、および前記患者の軟口蓋形状を基準にした口蓋垂位置および歯肉線の測定値を含む、
ボタン突出部および垂直方向変位の位置決め用に1つ以上の位置をサーバーで通信し、前記通信には、
ボタン突出部の位置決め用の1つ以上の位置それぞれに関連付けられた値を割り当て、各値が下顎前進に関して、上部トレイボタン突出部および下部トレイボタン突出部との間の距離を表し、
前記値データを3Dプリンター、フライス加工装置、および射出成形装置の1つ以上に送信し、
ボタン突出部の位置決め用の1つ以上の位置のそれぞれに関連付けられた前記値を使用した直接製造によって歯科器具を形成し、前記歯科器具には下部歯科用トレイおよび上部歯科用トレイを含み、前記上下歯科用トレイはそれぞれ均質であり、前記下部歯科用トレイには、垂直方向変位および第1のボタン突出部ペアを含め、前記上部歯科用トレイには第2のボタン突出部ペアを含め、前記第1ペアのボタン突出部および前記第2ペアのボタン突出部は、2つの弾性バンドが前記上部歯科用トレイおよび前記下部歯科用トレイに取り付けられて接続した場合、前記下顎前方位置を提供する。
<請求項18>
前記歯科器具が、光重合性液体熱硬化架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートまたはコポリマーの1つ以上を三次元(3D)印刷することにより形成される、請求項17に記載の方法。
<請求項19>
前記歯科器具が、エチレン-プロピレン共重合体およびポリオキシメチレン共重合体の1つ以上を使用してフライス加工または射出成形される、請求項17に記載の方法。
<請求項20>
前記歯科器具が、ウレタンジメタクリラート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマー、および17つ以上の疎水性モノマーからなる重合性樹脂組成物の三次元(3D)印刷によって形成される、請求項17に記載の方法。
<請求項21>
前記歯科器具は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィン、またはオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて射出成形される、請求項17に記載の方法。
<請求項22>
前記垂直方向変位が前記患者の軟口蓋形状の関数である、請求項17に記載の方法。
<請求項23>
前記垂直方向変位が、前記下部歯科用トレイ上にある一対の咬合パッドから1つ以上、または前記下部歯科用トレイの厚さによって提供される、請求項17に記載の方法。
<請求項24>
前記歯肉線の判定が、上顎歯冠―歯肉接合部および下顎歯冠―歯肉接合部を特定し、前記上部歯科用トレイが、前記上顎歯冠―歯肉接合部の下3ミリメートルの距離に達するように形成され、前記下部歯科用トレイは、前記下顎歯冠―歯肉接合部の約3ミリメートル下に達するように形成される、請求項17に記載の方法。
<請求項25>
プロセッサと、請求項17に記載の方法を実行するプロセッサ上で実行する場合に動作する命令を格納する持続性コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステム。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む方法:
患者に関連する1つ以上のデータセットのサーバーによる受信。
スキャナーから受信したデータセットに基づいたボタン突起を配置するための1つまたは複数の位置のサーバーによる判定で、受信したデータセットには、少なくとも前記患者の歯列パターンおよび歯肉線を含む。
サーバーによるボタン突起の配置のための1つまたは複数の位置および垂直方向の変位の通信であり、通信には以下を含む。
ボタン突起を配置するための1つまたは複数の位置のそれぞれに関連付けられた値の割り当てで、各値は、上部トレイボタン突起と下顎を前進させるための下部トレイボタン突起の間の距離を表す。
値の3Dプリンター、フライス加工装置、射出成形装置のうちの1つまたは複数への送信。
3Dプリンター、ボタン突起を配置するための1つまたは複数の位置のそれぞれに関連付けられた値を使用するフライス加工装置および射出成形装置、下部歯科用トレイと上部歯科用トレイを含む歯科器具で下部歯科トレイと上部歯科トレイのそれぞれが均質であるもの、垂直変位および第1対のボタン突起を含む下部歯科用トレイ、第2対のボタン突起を含む上部歯科用トレイ、上部歯科トレイを下部歯科トレイに接続するときに下顎の前方位置を確保する第1対のボタン突起と第2対のボタン突起のうちの1つまたは複数を使用した歯科器具の形成。
【請求項2】
前記歯科器具が、光重合性液体熱硬化性架橋ポリマー、ポリウレタン、メタクリレートおよびコポリマー(共重合体)のうちの1つまたは複数の三次元(3D)プリンティングにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯科器具が、エチレンプロピレンコポリマーおよびポリオキシメチレンコポリマーのうちの1つまたは複数を使用して、フライス加工および射出成形したもののうちの1つまたは複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記歯科器具が、ウレタンジメタクリレート(UDMA)のウレタンモノマー、酸性モノマーおよび1つまたは複数の疎水性モノマーの重合性樹脂組成物の三次元(3D)プリンティングによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記歯科器具が、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリオレフィンまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用して射出成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記垂直変位は前記患者の軟口蓋の形状の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記垂直変位は前記下部歯科用トレイ上の1対のかみ合わせパッドのうちの1つまたは複数により、または前記下部歯科用トレイの厚さにより確保される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記歯肉線の判定により上顎の歯冠と歯肉の接合部および下顎の歯冠と歯肉の接合部が特定され、上部歯科用トレイは、上部歯科用トレイでの上顎の歯冠と歯肉の接合部から約3ミリメートル下の距離に達するように形成されており、下部歯科用トレイは下顎の歯冠と歯肉の接合部の約3ミリメートル下に達するように形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プログラムがコンピュータにより実行されると、コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
スキャナーから患者に関連するデータセットを受信するように適合させたサーバーと、3Dプリンター、フライス加工装置および射出成形装置のうちの1つまたは複数にデータを送信する手段を備えるシステムであって、そのシステムには、プロセッサと、請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体をさらに含む。