(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012327
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】歯科修復物、ブランク、及びブランクの製造の方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/083 20060101AFI20240123BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20240123BHJP
A61K 6/833 20200101ALI20240123BHJP
【FI】
A61C13/083
A61C5/77
A61K6/833
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178855
(22)【出願日】2023-10-17
(62)【分割の表示】P 2019521068の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】102016119934.6
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504013395
【氏名又は名称】デグデント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローター・フォルクル
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・フェチャー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ボルマン
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ビースネル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セラミック材料のブランクの製造方法を提供する。
【解決手段】第1のセラミック材料14、及び次いで異なる組成の第2のセラミック材料20がモールド10中に充填され、及びここにおいて、材料がプレスされ、プレス後に焼結される、方法に関する。第1のセラミック材料の層がモールド中に充填され、第1の開放空洞18が層に形成され、第2のセラミック材料が第1の開放空洞中に充填され、そしてそれら材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理される。第1のセラミック材料及び第2のセラミック材料の両方は、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料のブランク(28、48)、特に歯科修復物(42)の製造のために使用されるブランクの製造の方法であって、ここにおいて、粉末状の第1のセラミック材料(14)、及び次いで異なる組成の粉末状の第2のセラミック材料(20)がモールド(10)中に充填され、ここにおいて、前記材料がプレスされ、プレス後に焼結され、
以下の点、すなわち、
使用される前記第1の若しくは前記第2の、又は前記第1の及び前記第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、前記第1のセラミック材料(14)の層が前記モールド(10)中に充填される点、第1の開放空洞(18)が前記層に形成される点、前記第2のセラミック材料(20)が前記第1の開放空洞(18)中に充填される点、及び前記材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理される点、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の及び/又は第2のセラミック材料を製造するために、出発ガラスの前記組成が、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 13.5~20.5%
ZrO2 8.5~11.5%
P2O5 3.0~7.5%
Al2O3 0.5~6.0%
K2O 0.5~3.5%
CeO2 0.5~2.5%
B2O3 0~3%
Na2O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
を含有するか又はそれらから成る点を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の及び/又は第2のセラミック材料を製造するために、出発ガラスの前記組成が、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 14.0~16.0%
ZrO2 9.0~10.5%
P2O5 5.0~6.0%
Al2O3 2.5~3.0%
K2O 1.0~1.5%
CeO2 0.5~1.0%
B2O3 2.5~3.0%
Na2O 0.1~2.0%
V2O5 0.1~0.7%
Er2O3 0~1.0%
Y2O3 0.3~0.5%
MnO2 0~0.2%
を含有するか又はそれらから成る点を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1μm~150μmの間、特に10μm~30μmの間の平均結晶粒度を有する粉末が、前記第1の及び/又は第2のセラミック材料として使用される点を特徴とする、請求項1~請求項3のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセラミック材料が、半透明性及び/又は蛍光性及び/又は色及び/又は乳白光性の観点から前記第2のセラミック材料とは異なる組成を有する点を特徴とする、請求項1~請求項4のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のセラミック材料(18)を充填した後に、第2の開放空洞(26、36)がその中に形成される点を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第3のセラミック材料(38)がケイ酸リチウムガラスセラミックから成る又はケイ酸リチウムガラスセラミックを含有する点を特徴とする、請求項1~請求項6のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
いくつかの第1の開放空洞(18)が前記第1のセラミック材料(14)の前記層に形成され、その中にセラミック材料(18)、特に前記第2のセラミック材料が充填される点を特徴とする、請求項1~請求項7のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の開放第1空洞(18)のうちの少なくともいくつかが、互いに異なる内部形状を有する点を特徴とする、請求項1~請求項8のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の開放空洞(18)の内部形状が、顎領域から出る支台歯、又は残根のような、修復物を提供される歯の顎領域の経路に幾何学的に位置調整される点を特徴とする、請求項1~請求項9のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ブランク(28、48)から前記歯科修復物を加工する際、前記歯科修復物の象牙質領域が、少なくとも前記第2のセラミック材料(20)からの領域に形成され、及び切縁領域が前記第1のセラミック材料(14)から形成される点を特徴とする、請求項1~請求項10のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
Tb2O3及び/又はEr2O3が、蛍光に影響を与えるために出発材料に添加される点を特徴とする、請求項1~請求項11のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記乳白光に影響を与えるために、結晶相の結晶が10nm~800nmの間の最大長の伸びを有する点を特徴とする、請求項1~請求項12のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項14】
プレス中に、インプラント接続輪郭のネガ型(126)に対応する凹部が前記ブランク(28)に形成される点を特徴とする、請求項1~請求項13のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
円錐形の形状を有する凹部(130)が、プレス中に前記ブランク(28)に形成され、そこからミリング及び/又は研磨によって歯科修復物の内部空洞が形成される点を特徴とする、請求項1~請求項14のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項16】
異なる組成の領域を有する、セラミック材料から成る、歯のフレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、支台歯、ピン構造、特にクラウン又は部分的クラウンのような歯科修復物(42)を製造する際に使用される予備焼結された又は完全焼結されたブランク(28、48)であって、ここにおいて、第1の領域(32、50)が第1のセラミック材料(14)であり、少なくとも1つの第2の領域(34)が第2のセラミック材料(20)であり、前記領域が互いに隣接し、
以下の点、すなわち、
前記第1の若しくは前記第2の、又は前記第1の及び前記第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、前記第2の領域(34、52、54、56)が前記第1の領域(32)内で延び、基部領域(35)又は底部表面から次第に細くなる外面形状を有する点
を特徴とする、ブランク。
【請求項17】
前記第2の領域(34)の前記底部表面/前記基部領域(35)が前記第1の領域(32)の外面(33)の前記領域に延び、及び好ましくはそれと統合する点を特徴とする、請求項16に記載のブランク。
【請求項18】
それの底部表面/それの基部領域(35)から始まる前記第2の領域(34)が空洞(26)を有する点を特徴とする、請求項16又は請求項17に記載のブランク。
【請求項19】
前記第2の領域(34)がそれの外面側に円錐状の形状を有する点を特徴とする、請求項16~請求項18のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項20】
第3の領域(38)が、前記第2の領域(34)内に延び、且つ、前記第1の及び/又は第2のセラミック材料(14、20)の組成とは異なる組成を有する、及び特にケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る第3のセラミック材料から成る点を特徴とする、請求項16~請求項19のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項21】
複数の第2の領域(52、54、56)が前記第1の領域(32、50)によって囲まれている点を特徴とする、請求項16~請求項20のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項22】
前記複数の第2の領域(52、54、56)のうちの少なくともいくつかが、それらの外面形状が互いに異なる点を特徴とする、請求項16~請求項21のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項23】
前記ブランク(28、48)が、重量の割合で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 13.5~20.5%
ZrO2 8.5~11.5%
P2O5 3.0~7.5%
Al2O3 0.5~6.0%
K2O 0.5~3.5%
CeO2 0.5~2.5%
B2O3 0~3%
Na2O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
を含有するか又はそれらから成る前記組成のケイ酸リチウムガラスセラミックにより製造される点を特徴とする、請求項16~請求項22のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項24】
前記ブランク(28、48)が、重量の割合で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 14.0~16.0%
ZrO2 9.0~10.5%
P2O5 5.0~6.0%
Al2O3 2.5~3.0%
K2O 1.0~1.5%
CeO2 0.5~1.0%
B2O3 2.5~3.0%
Na2O 0.1~2.0%
V2O5 0.1~0.7%
Er2O3 0~1.0%
Y2O3 0.3~0.5%
MnO2 0~0.2%
を含有するか又はそれらから成るケイ酸リチウム出発ガラスから製造される点を特徴とする、請求項16~請求項23のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項25】
前記第2のセラミック材料(20)が、特にMnO、Fe2O2、Y2O3、V2O3、CeO2、他の希土類酸化物から成る群からの少なくとも1つの酸化物の添加により、着色において前記第1のセラミック材料(14)と異なる点を特徴とする、請求項16~請求項24のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項26】
完全密度へと焼結した後に、前記ブランク(28)から製造された前記修復物(42)が、切縁側において象牙質側よりも高い半透明性を有する点を特徴とする、請求項16~請求項25のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項27】
前記ブランク(28)が、それの基底部側に、インプラント接続輪郭の形状を有する凹部又は窪み(126)を有する点を特徴とする、請求項16~請求項26のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項28】
前記窪み(126)から、ネジ溝を形成するために貫通開口が出る点を特徴とする、請求項16~請求項27のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項29】
それの基底部側において前記ブランク(28)が円錐形の形状を有する窪み(130)を有する点を特徴とする、請求項16~請求項28のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
【請求項30】
少なくとも請求項1に従って製造される、歯科修復物(42)、特にクラウン又は部分的クラウンであって、
以下の点、すなわち、
前記修復物(42)が、モノリシック形状であり、且つ、切縁側において延びる第1のセラミック材料(14)の少なくとも1つの第1の層(32)と、象牙質側において延びる第2のセラミック材料(20)の第2の層(34)とから成り、ここにおいて、前記第1の層がより高い半透明性を有し、且つ前記第1の層が前記第2の層とは色が異なる点 を特徴とする、歯科修復物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はとりわけ、セラミック材料のブランク、特に歯科修復物の製造のために使用されるブランクの製造の方法であって、ここにおいて、第1のセラミック材料、及び次いで異なる組成の第2のセラミック材料がモールド中に充填され、及びここにおいて、材料がプレスされ、プレス後に焼結される方法に関する。
【0002】
本発明はまた、異なる組成の領域を有する、セラミック材料から成る、歯のフレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、支台歯、ピン構造、特にクラウン又は部分的クラウンのような歯科修復物を製造する際に使用される予備焼結された又は完全に焼結されたブランクに関する。
【背景技術】
【0003】
US8 936 845B2は、歯の代用品の製造のために使用され、異なる化学組成のいくつかの層を備える二酸化ジルコニウムのブランクを開示している。個々の層はそれにより異なる割合の酸化イットリウムを有する。
【0004】
二酸化ジルコニウムのボディは、L*a*b*色空間中で直線に沿って色度の減少又は増加を示す(US2014/0328746Al)。
【0005】
WO2014/062375Alによる歯科用物品の製造のための二酸化ジルコニウムのブランクは、異なる割合の正方及び立方晶の結晶相を有する少なくとも2つ材料領域を有し、ここにおいて、これら領域のうちの1つにおいて、比率(quotient)は1よりも大きく、他の領域では比率は1よりも小さい。
【0006】
EP2 371 344Alは、表面から所望の深さまで安定化剤で強化されたセラミック体に関する。
【0007】
歯科用成形部品の製造のために使用される二珪酸リチウムガラスセラミックが、WO2011/076422A1及びWO2012/059143A1に開示されている。対応するガラスセラミックは、良好な機械的及び光学的特性を有すると言われている。
【0008】
WO2013/053865A2は、歯科用成形部品がそこから製造されるケイ酸リチウムガラスセラミックのブランクを開示している。セラミックが、Y2O3、La2O3、Yb2O3、Bi2O3及びそれらの混合物から成る群からの三価金属酸化物を含有することが必須である。さらに、ガラスセラミックは事実上K2O及びNa2Oを含まない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、労力を要する仕上げなしに、審美的要件を満たし、且つ高い強度のセラミック材料から歯科修復物が製造されることができるような方法で、前述のタイプの方法を開発することである。
【0010】
この目的を達成するために、とりわけ、第1の若しくは第2の、又は第1の及び第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成るものであること、第1のセラミック材料の層がモールド中に充填されること、第1の開放空洞が層に形成されること、第2のセラミック材料が第1の開放空洞中に充填されること、及び材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理されることが提案される。
【0011】
特に本発明は、セラミック材料のブランク、特に歯科修復物の製造のために使用されるブランクの製造の方法であって、ここにおいて、粉末状の第1のセラミック材料、及び次いで異なる組成の粉末状の第2のセラミック材料がモールド中に充填され、ここにおいて、材料がプレスされ、プレス後に焼結され、以下の点を特徴とする、方法に関する。
【0012】
a)使用される第1の若しくは第2の、又は第1の及び第2のセラミック材料がケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成ること、第1のセラミック材料の層がモールド中に充填されること、
b)第1の開放空洞が層に形成されること、
c)第2のセラミック材料が第1の開放空洞中に充填されること、
d)第2のセラミック材料を充填した後に、第2の開放空洞がその中に形成されること、
e)第3のセラミック材料が第2の開放空洞中に充填されること、ここで前記第3のセラミック材料が第1の及び/又は第2のセラミック材料の組成とは異なる組成を有する、 f)材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理されること、
工程d)及びe)の代替として、第2のセラミック材料が中に充填されるいくつかの第1の開放空洞が、第1のセラミック材料の層に形成される。
【0013】
本発明によれば、注入可能な材料の層が最初にモールド中に充填される。これは、例えば、1~150μmの範囲にある、特に10~30μmの範囲にある粒度を有する、無色のケイ酸リチウムガラス粉末であり得る。粉末を充填した後、例えばプレスプランジャによって開放空洞が形成される。これは例えば、第1のセラミック材料の一部を排出すること及び/又は第1のセラミック材料を軽く圧縮することによって実施される。
【0014】
そのように形成された凹部又は空洞は特に、事実上円錐状の形状を有し、それは、クラウン又は部分的クラウンがブランクから製造されることになる場合に、残根又は支台歯の形状に幾何学的に位置調整(geometrically aligned with)されることができる。次いで第2のセラミック材料がこの空洞又は凹部中に充填され、次いでこれら材料が合わせてプレスされる。
【0015】
また、第1の開放空洞を充填する第2のセラミック材料中に、第2の開放空洞を形成する可能性もある。この工程は、全ての材料の同時プレスを伴うことができる。
【0016】
材料の圧縮は、それとは独立して実施される。
【0017】
モールド中に充填されるセラミック材料の圧縮(Compression)/圧縮(compaction)は、好ましくは50MPa~400MPaの間、特に150~350MPaの間、とりわけ好ましくは150~250MPaの間の圧力で実施される。それにより2.6g/cm3という理論密度のおおよそ40~70%の密度が実現される。結合剤が存在する場合、脱バインダ(debinding)及び予備焼結又は部分焼結が、650°C~750°Cの間の温度で、10分~40分の間の時間期間の間、実施される。
【0018】
第2の開放空洞が第2のセラミック材料に形成され、第3のセラミック材料がその中に充填される場合、するとそれの組成は特に第2の/第1の材料よりも低い半透明性を有する点で、第2のセラミック材料の組成とは異なっているべきである。
【0019】
それとは無関係に、第3のセラミック材料はまた、ケイ酸リチウムガラスセラミックから成るか又はケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するべきである。
【0020】
本発明は特に、いくつかの第1の開放空洞が第1のセラミック材料の層に形成されること、及び第2のセラミック材料がそれら中に充填されることを提供する。これにより、いくつかの個別のブランクセクション、いわゆるネストが得られ、その結果、予備焼結後に、いくつかの歯科修復物が、特にミリング及び/又は研磨によってそのようなブランクのセクションから得られることができる。それにより、ブランクセクションの寸法が互いに異なり、異なる形状の修復物を得ることが可能である。得られた修復物はまた、それぞれの根側/象牙質側材料領域の幾何学的な配列が異なることができる。ゆえに、ネスト/ブランクセクションの数及びそれらの形状に従って、1つのブランクから異なる形の複数の歯が得られることが可能である。既に述べたように、象牙質コアは第2の領域から形成され、切縁領域は第1の領域から形成される。
【0021】
ブロック形状を有するブランクが製造されるとき、単一の第1の開放空洞が第1のセラミック材料の層に形成される。第1の開放空洞に第2のセラミック材料を充填した後、第2の開放空洞が形成され、次いで第3のセラミック材料を充填されるが、ただし第3の空洞がインプラント接続輪郭のネガ型に対応しない場合である。
【0022】
通常、そのようなブロックブランクのサイズは、14mm×14mm×16mm~20mm×20mm×20mmの間の範囲にある。
【0023】
円盤のような形状を有するブランクが製造されるとき、いくつかの第1の開放空洞が、第1のセラミック材料の層に形成され、第2のセラミック材料を充填される。必要な場合、第1の開放空洞を第2のセラミック材料で充填した後、1つ又は複数の充填された第1の空洞中に、第2の開放空洞が形成され、第3のセラミック材料を充填される可能性がある。
【0024】
そのような円盤の典型的なサイズは、直径80mm~100mm、高さ10mm~20mmである。
【0025】
さらに、特に、第1の領域について、第2のセラミック材料に比べてより半透明であり、より着色が少ない切縁材料が使用されるように、セラミック材料を所望の程度に着色する可能性がある。
【0026】
歯科修復物又は他の成形体は、好ましくは予備焼結されたブランクから得られるが、当然、ブランクが最初に完全に焼結され、次いで、特にミリング又は研磨によって成形体を製造する可能性もまたある。
【0027】
いつブランクが完全密度に焼結されるかとは無関係に、特に、この焼結が5分~120分の間の期間にわたって、750°C~950°Cの間の範囲の温度で実施されることが提供される。結晶化焼成は、いくつかの温度段階において、完全焼結処理と同時に又はその後に実施されることができ、例えば、第1の結晶化を600°C~670°Cでおおよそ10~120分間、第2の結晶化を720°C~780°Cでおおよそ10~60分間、そして第3の結晶化焼成を800°C~860°Cでおおよそ5~15分間、等である。メタケイ酸リチウム及びニ珪酸リチウム結晶が主結晶相として形成される。
【0028】
結晶化焼成は、好ましくは完全密度への焼結後に実施され、それは液相で実施される、すなわちそれは粒子が部分的に溶融された状態である。
【0029】
歯科用成形部品を製造するために、本発明によれば圧縮されたケイ酸リチウムガラスセラミック粉末から成るブランクが使用される。ガラスセラミック粉末を利用可能にするために、最初に重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 13.5~20.5%
ZrO2 8.5~11.5%
P2O5 3.0~7.5%
Al2O3 0.5~6.0%
K2O 0.5~3.5%
CeO2 0.5~2.5%
B2O3 0~3%
Na2O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
の組成を有する出発ガラスが溶融によって用意される。
【0030】
出発ガラスは特に、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 14.0~16.0%
ZrO2 9.0~10.5%
P2O5 5.0~6.0%
Al2O3 2.5~3.0%
K2O 1.0~1.5%
CeO2 0.5~1.0%
B2O3 2.5~3.0%
Na2O 0.1~2.0%
V2O5 0.1~0.7%
Er2O3 0~1.0%
Y2O3 0.3~0.5%
MnO2 0~0.2%
の組成を有する。
【0031】
少なくとも1つの添加剤が、色顔料及び/又は蛍光剤の群からの少なくとも1つである。
【0032】
さらに、乳白光が、結晶形成を制御することによって影響を受けることができる。結晶は、好ましくは10nm~800nmの間の最大長を有するべきである。
【0033】
特に、添加剤が希土類金属の群からの少なくとも1つの酸化物であるか又はそれを含有することが提供される。
【0034】
オプションとして、結合剤が添加され得る。しかしそれらの含有量は、上記の重量%の提示では考慮されていない。
【0035】
出発材料の対応する混合物は次いで耐火材料又は貴金属合金のるつぼ中に充填され、1350°C~1600°Cの間の温度で、1~10時間の間、特に、4~7時間の間、1540°Cの温度で溶融される。均質化が同時に又は続いて、例えば撹拌によって実施される。このように準備された液体ガラスは次いで、高温断熱ウール又は例えば水等の液体のような好適な媒体中で急冷される。このような方法で準備された急冷されたガラスフリットは次いで乾燥される。それは次いで例えばボールミルにおいて粉に挽かれ、続いてふるいにかけられる。ここで、メッシュサイズが50~500の間のメッシュのふるいが使用されることができる。必要であれば、例えば、ジェットミル又は磨砕機ミル(attritor mill)を使用したさらなるミリングが実施されることができる。
【0036】
1~150μmの範囲の粒度を有する粒子が特にこのように準備されたガラス粉末/ガラス粒子粉末から選択される。
【0037】
ブランクが難なく、ブランクから得られた成形部分が完全密度への焼結の際に不安定になることなく、加工されることを可能にするために、溶融後に得られたフリット、又は事前に粉に挽かれた若しくは最終に粉に挽かれた粉末のいずれかが結晶化工程を受ける。結晶化焼成に関連して言及された好ましくは多段階熱処理がここで実施されることができる。
【0038】
次いで、さらなる熱処理が、例えば、350~500°Cの間の温度で、10~120分の間の時間期間の間、緩和のために実施されることができる。
【0039】
特に本発明による教示のために必要なケイ酸リチウムガラスセラミック粉末の形態で所望の色及び半透明特性を有する第1の及び/又は第2のセラミック材料を利用可能にするように出発材料が選択される。上述したように用意されたケイ酸リチウムガラスセラミック粉末材料は次いで、本発明の教示に従ってモールド/プレスモールド中に充填される。
【0040】
本発明の教示によれば、完全密度への焼結後に、モノリシックの歯科修復物が、ブランクのミリング又は研磨等の、材料の除去によって得られる。修復物は、必ずしもベニアリングされなければならないわけではないが、もしもそうだとしても、本発明から逸脱するものではない。
【0041】
異なる組成の複数の領域を有する、セラミック材料から成る、歯のフレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、支台歯、ピン構造、特にクラウン又は部分的クラウンのような歯科修復物を製造する際に使用される予備焼結された又は完全に焼結されたブランクであって、ここにおいて、第1の領域が第1のセラミック材料であり、少なくとも1つの第2の領域が第2のセラミック材料であり、それら領域が互いに隣接しているブランクは、第1の若しくは第2の、又は第1の及び第2のセラミック材料がケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、少なくとも1つの第2の領域が第1の領域内で延び、基部領域から次第に細くなる外面形状を有する点を特徴とする。それによって、基部領域は、第1の領域の外面の領域において延びるはずであり、及び好ましくはそれと統合する(merge)。
【0042】
第2の領域が基部領域から延びる空洞を有する可能性もまたある。
【0043】
それとは無関係に、それの外面形状における第2の領域は、円錐のように延びた形状を有する。
【0044】
第3の領域が第2の領域内で延び、ここで前記第3の領域が第2のセラミック材料の組成とは異なる組成の第3のセラミック材料から成る可能性もまたある。
【0045】
本発明の特徴及び強調されるべきことは、いくつかの第2の領域が第1の領域によって囲まれており、ここにおいて、特に複数の第2の領域のうちのいくつかがそれらの外部の形状が異なるという事実である。
【0046】
したがって、例えば、切縁領域よりも象牙質においてより硬い、異なる形の人工歯又はクラウンが製造されることができる。この目的のために、歯科修復物の象牙質部分は第2の領域のセクションに形成され、それに対して、切縁部はブランクの第1の領域のセクションに形成される。
【0047】
本発明はさらに、ブランクが、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 13.5~20.5%
ZrO2 8.5~11.5%
P2O5 3.0~7.5%
Al2O3 0.5~6.0%
K2O 0.5~3.5%
CeO2 0.5~2.5%
B2O3 0~3%
Na2O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
の組成のケイ酸リチウム出発ガラスから作られる点を特徴とする。
【0048】
ブランクは特に、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 14.0~16.0%
ZrO2 9.0~10.5%
P2O5 5.0~6.0%
Al2O3 2.5~3.0%
K2O 1.0~1.5%
CeO2 0.5~1.0%
B2O3 2.5~3.0%
Na2O 0.1~2.0%
V2O5 0.1~0.7%
Er2O3 0~1.0%
Y2O3 0.3~0.5%
MnO2 0~0.2%
を含有する出発ガラスから作られるべきである。
【0049】
さらに、第2の領域のセラミック材料が着色され、及び第1の領域のセラミック材料は着色されないか又はより低い程度着色され、その結果第2の領域よりも高い半透明性がもたらされるという可能性がある。
【0050】
歯科修復物、特に歯、クラウン又は部分的クラウンは、切縁側上に延びる第1のセラミック材料の第1の層と、第2のセラミック材料から成る根側に延びる第2の層を備えることによって特徴付けられ、第1の層がより高い半透明性を有する点、及び第1の層が第2の層とは色が異なる点を特徴とする。
【0051】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、請求項及びそこに開示された特徴-単独で及び/又は組み合せにおいて-からだけでなく、図面に示される例示的な実施形態の以下の説明からももたらされる。
【0052】
以下の図面は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1a)~c)は、装置とその装置を使用して実施される処理工程図である。
【
図3】
図3は、異なる材料特性の領域を有するブランクの図である。
【
図4】
図4は、異なる材料特性の領域を有するさらなるブランクの図である。
【
図5】
図5は、ブランクとそこから得られる歯の概略図である。
【
図6】
図6は、異なる材料特性の複数の領域を有するブランクの上面図である。
【
図7】
図7は、ブランクのさらなる実施形態の図である。
【
図8】
図8は、ブランクのさらなる実施形態の図である。
【0054】
本発明の教示は図を参照して例示され、そこでは同じ要素が同じ参照符号を割り当てられており、ここにおいて、特に歯科修復物は完全焼結後に即座に使用可能なモノリシックの歯の代用品が利用可能となるように、モノリシックの構造を有するセラミック材料から製造される。
【0055】
この目的のために、本発明は、ブランクの製造を提供し、それは複数の異なる組成、及びそれ故に特性、を有するセラミック材料の領域を有し、それによって製造される修復物の特定の所望の光学特性が達成されることができ、それは前述したように、例えば切縁層を手動で加えて焼成することを必要とせずに、完全焼結後にモノリシックに作成された歯の代用品の即座の使用の可能性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1~
図3を参照して、歯科修復物、例示的な実施形態ではクラウンがそこから製造されことができる、ケイ酸リチウムガラスセラミックブランクの製造が説明される。ブランクは円筒形である。直方体のような他の形も可能である。
【0057】
よって、ケイ酸リチウムガラスセラミックから成る第1のセラミック材料14が用意される。このために、重量%で、
SiO2 57.5~60.5%
Li2O 13.5~20.5%
ZrO2 8.5~11.5%
P2O5 3.0~7.5%
Al2O3 0.5~6.0%
K2O 0.5~3.5%
CeO2 0.5~2.5%
B2O3 0~3%
Na2O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
の組成の出発ガラスが、溶融される。
【0058】
少なくとも1つの添加剤は着色顔料及び/又は蛍光剤の群からの少なくとも1つである。添加剤が希土類金属の群からの少なくとも1つの酸化物であること、又はそれがそのような酸化物を含有することが特に提供される。
【0059】
出発材料の対応する混合物は次いで耐火材料又は貴金属合金のるつぼ中に充填され、1350°C~1600°Cの間の温度で、1~10時間の間、特に4~7時間の間、1540°Cの温度で溶融される。均質化が同時に又は続いて、例えば撹拌によって実施される。このように準備された液体ガラスは次いで、高温断熱ウール又は例えば水等の液体のような好適な媒体中で急冷される。このような方法で準備された急冷されたガラスフリットは次いで乾燥される。それは次いで、例えばボールミルにおいて粉に挽かれ、続いてふるいにかけられ、ここにおいて、50μm~250μmの間のメッシュサイズを有するふるいが使用されることができる。必要であれは、例えばジェットミル又は磨砕機ミルを使用したさらなるミリングが実施されることができる。
【0060】
1~150μmの範囲の粒度を有する粒子が特にこのように準備されたガラス粉末/ガラス粒子粉末から選択される。
【0061】
ブランクが難なく、ブランクから得られた成形部分が完全密度への焼結の際に不安定になることなく、加工されることを可能にするために、溶融後に得られたフリット、又は事前に粉に挽かれた若しくは最終に粉に挽かれた粉末のいずれかが結晶化工程を受ける。フリット/粉末は、それにより好ましくは多段階熱処理を受け、ここにおいて、例えば、第1の部分的な結晶化が600°C~670°Cで、10分~120分の間の保持期間の間、実施され、第2の部分的な結晶化が730°C~780°Cの範囲で10~60分の間の保持期間の間、実施され、及び第3の部分的な結晶化工程が800°C~860°Cの範囲で5分~15分の間の時間期間の間、実施される。必要に応じて、緩和のために、例えば、350°C~500°Cの間の温度で10~120分の間の時間期間の間、さらなる熱処理が次いで実施されることができる。
【0062】
また結晶化は後の段階において、例えば完全密度への焼結後に実施されることもできることに留意されたい。
【0063】
第1のセラミック材料14の形態の注入可能な粉末又は粒状物がプレスツール12のプレスモールド又はモールド10中に充填される。
【0064】
結合剤もまた添加されることができる。
【0065】
次いで、プレスプランジャ16によって、開放空洞18が、材料14に又はこの材料から形成される層に形成される。材料14はプレスプランジャの使用を通じて軽く圧縮されるか又は動かされる(displaced)。一旦空洞18が形成されると(図lb)プレスプランジャ16は取り除かれ、第2のセラミック材料20が空洞18中に充填され、それはその組成が、着色物質の割合がずれることを制限して第1の材料の組成と大部分対応し、その結果、製造される歯の象牙質は第2のセラミック材料20から得られるので所望の歯色が達成される。
【0066】
第2のセラミック材料20を空洞18に充填した後(図lc)、材料14、20又はこれらから形成される層若しくは領域が、下方又は上方パンチ22、24によってモールド10においてプレスされ、それを通じて圧縮が成される。プレス後には、ブランク28は2.6g/cm3という理論密度のおおよそ40~70%の密度を有する。プレスは、好ましくは50MPa~400MPaの間の圧力で実施される。
【0067】
図2は、より詳細に図lb)の表現を示す。空洞18が、プレスプランジャ16によって第1のセラミック材料14に、その材料を備える層においてそれぞれ形成されることが分かる。底側ではモールド10がプレスプランジャ22によって制限される。
【0068】
図3から分かるように、第2の空洞26が、プレスプランジャ22、24によるそれの圧縮の後に、又はオプションとして予備焼結の後に、例えばミリングによって、第2の材料20に形成されることができる。
【0069】
しかしながら、示されていないプレスプランジャによって、完全に基底部側の開放空洞18を充填する、図lc)による材料20に、対応する第2の空洞26を形成する可能性もまたある。
【0070】
さらに、ブランクの底における又は底から生じる貫通孔又は凹部を形成する可能性があり、それは例えば、歯科修復物の機能のために設計されるか、又はそれは後続の加工のために使用されることができる。その結果、インプラント接続のネガ輪郭を呈する開口を底に設ける可能性がある。これは
図7に例示される。よって
図7は、本発明の教示による3次元層構造を有する例えば
図3に対応するブランク28を示す。図から明らかなように、当然焼結の際のブランクの収縮特性を考慮しつつ、本発明によればブランク28の底から生じる、インプラント接続のネガ形状に対応する凹部126が形成される。必要な場合、成形部分の製造後にネジ溝の役割を果たす貫通開口128もまた形成されることができる。当然、ミリング又は研磨によってブランク28の焼結後にネジ溝を形成することもまた可能である。次いで、ブランク28から支台歯が、特に研磨によって形成され、それに関して少なくともインプラント接続が既に存在している。
【0071】
凹部126/128の形成は、プレスツールが凹部126又は126/128のための所望の形状に対応するマンドレルを組み込んでいることから、ブランク28をプレスする際に実施されることができ、それは例示的な実施形態ではプレスプランジャから出る。
【0072】
図8はまた、上述したような3次元層構造を有するブランク28を示す。プレスの際に、底から生じる円錐形の空洞130がブランク28に形成され、歯科修復物、-それは例示的な実施形態ではクラウン132である-のミリング(the milling out)/研磨を容易にし、同時に、使用されるツール134、特にボールヘッドミリング又は研磨ツール、の摩耗が、対応する空洞を有しないブランクの加工に比べて減少することを保証する。刻まれた円錐形の空洞130又は凹部の利点は、球形ヘッドのミリング/研磨ツールの使用に際し、第一に、クラウン132の製造のために必要な円錐がもはや作られる必要がないこと、及びそれに加えて、最初にボールヘッドの中心で加工が実施されないことであり、もし対応する円錐が無い場合には、ツールは最初に球形ヘッドで、主にそれの中心で、円錐を作り上げなければならず、それにより摩耗が大きくなる。
【0073】
円錐形の空洞130はまた、プレスツールにおける対応するマンドレルの使用を通じてブランク28をプレスする際に形成されることもできる。
【0074】
例えばネジ溝又はインプラント接続のための、窪み又は穴又は第2の空洞26が存在するか否かに関わらず、ブランク28の焼結は、プレスの後に、ある温度で、特に750°C~950°Cの間の範囲において5分~120分の間の時間期間の間、実施される。最初に脱バインダ(debinding)し、次いで予備焼結される。完全密度への焼結の後のブランク28の密度は、理論最終密度の>99.9%及び/又はおおよそ2.6g/cm3である。完全に焼結された又は最終焼結された(end-sintered)ブランク28の破壊強度は、190MPaよりも大きい。
【0075】
ブランク28はホルダ30を提供され、その結果ブランク28が、例えばミリング又は研磨機で加工され、
図5を参照して説明されたように、ブランク28から歯冠等の歯科修復物を得ることができる。それによって、製造される歯冠は、切縁領域が第1のセラミック材料14によって形成された領域32へと延び、セクションにおける象牙質領域が第2のセラミック材料20によって形成される第2の領域34へと延びるように、少なくとも実質的にブランク28中に置かれる。ブランク28は次いで、このデータを考慮して加工される。
【0076】
図4は、第1のセラミック材料14における第1の空洞18の充填、及び第2のセラミック材料20の空洞18への充填の後に、オプションとして、第2の空洞36が図lb)の手順に従って形成され、次いで第3のセラミック材料が空洞36中に充填され、それは、それが異なる色を有するようにそれの組成が第2のセラミック材料とは異なることを例示する。空洞40が、
図3を参照して説明されたように、第3のセラミック材料38に同様に形成され得る。
【0077】
図5に例示されるように、歯科修復物、例示的な実施形態では歯42が、ブランク28から加工によって得られる。この目的のために、ブランク28における、第1のセラミック材料14の第1の領域32及び第2のセラミック材料20の第2の領域34の経路(course)を知った上で、製造される歯42は、切縁領域が第1の領域32において延び、象牙質46が第2の領域34へと延びるように、実質的に領域32、34に置かれる。
【0078】
そのように実質的に位置付けられた歯42がブランク28からの加工によって得られた後、歯の代用品が利用可能となり、それは特に、直接的に使用されることができ、及び特にいかなるベニアリングも必要としない。モノリシックの歯42が本発明の教示に基づいて準備される。このケースでは、
図3を参照して説明されたように、及び
図5から分かるように、第2の領域34は既に開放空洞26を有しているので、加工によるブランク28からの製造が容易となる。
【0079】
本発明の教示は、第2の及びオプションとして第3のセラミック材料で作られ、異なる形状を有することができる、複数の領域52、54、56を有するブランク48(
図6)を形成する可能性を取り入れ、その結果、対応する異なる形の歯が形成されることができる。特に図によって例示されるように、第2のセラミック材料20から形成された第2の領域52、54、56が、第1のセラミック材料48に埋め込まれている、すなわち、これによって囲まれている。第2の領域52、54、56の底側は覆われていない。
【0080】
特に
図2~
図4から分かるように、第2の領域は基底部から、すなわち、底領域35から開始する次第に細くなる外部形状を有する。それは円錐状の形状と呼ばれ得、ここにおいて、外面輪郭は自由形状の表面を表す。
【0081】
底領域35/それを下側で制限する底部表面は、第1の領域32の底部表面33の下方側と統合する。
【0082】
ネストとも呼ばれるブランクセクション52、54、56を準備するために、
図1を参照して説明されたように、第1の材料14で作られ、第1の領域50と指定された層において対応する開放空洞を有することが必要であり、その結果、注入可能な第2のセラミック材料20が上述された方法で空洞中に充填されることができ、次いで材料14、20が合わせてプレスされる、すなわち圧縮されることができる。
【0083】
ブランク28、48に関して、これらは、本発明の教示をそれにより限定することなく、例えば、18x15x25mmの寸法の直方体形状、又は例えば直径100mm、高さ15mmのディスク形状を有することができることに留意されたい。これにより、特に、
図6を参照して説明されたように、例えば、異なる形状の修復物を得るためだけでなく、半透明性及び強度に関して好ましい層の経路を有する修復物を得るために、複数の第2の領域52、54、56、いわゆる象牙質コアが、ディスク状のブランクに形成されることができるという利点がもたらされる。
【0084】
オプションとして異なる形状を有する1つ又は複数の第2の領域52、56すなわちネストの位置は知られているので、それらはデータ記録に記憶されることができる。次いで、CADデータセットとして利用可能な製造される修復物が、歯の代用品がミリング及び/又は研磨によってブランクから得られることができるように、ブランクセクションに対して、及びその中に、位置を特定される。
【0085】
言い換えれば、異なる形状の歯が、例えば対応する円盤状のブランクから作られることができる。概略図は、第2の領域52、56が異なる寸法を有し、異なる寸法を有する象牙質コアを対象としていることを明確に示す。
【0086】
修復物が例えばミリングによって予備焼結された又は部分的に焼結されたブランクから得られることは上述されたが、当然、ブランクが初めに完全に焼結され、歯の代用品が次いで得られる場合も本発明から逸脱しない。本発明の両方の実施形態を用いて、特許性を有する教示からもたらされる全ての利点が実現されることができる。
【0087】
完全を期すために、第1の及び第2のセラミック材料中のケイ酸リチウム結晶の割合は、10~80体積%の範囲にあるべきであることに留意されたい。出発材料は、所望の蛍光及び/又は着色をもたらす化合物を含有し得る。
【0088】
したがって、例えばTb2O3/Er2O3が蛍光に影響を与えるために使用されることができ、例えば、MnO、Fe2O3、Y2O3、V2O3、CeO2又は他の希土類酸化物が色に影響を与えるために使用されることができる。
【0089】
ニ珪酸リチウム結晶の量は、好ましくは全リチウム結晶含有量の10~95重量パーセントの間である。結晶相はまたリン酸リチウムを含み得る。
【0090】
参照符号56で示された象牙質コアは、例として前歯用であり、参照符号54で示された象牙質コアは大臼歯用である。領域54の上のさらなる指定の無いセクションは、犬歯用であることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料のブランク(28、48)、特に歯科修復物(42)の製造のために使用されるブランクの製造の方法であって、ここにおいて、粉末状の第1のセラミック材料(14)、及び次いで異なる組成の粉末状の第2のセラミック材料(20)がモールド(10)中に充填され、ここにおいて、前記材料がプレスされ、プレス後に焼結され、
以下の点、すなわち、
使用される前記第1の若しくは前記第2の、又は前記第1の及び前記第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、前記第1のセラミック材料(14)の層が前記モールド(10)中に充填される点、第1の開放空洞(18)が前記層に形成される点、前記第2のセラミック材料(20)が前記第1の開放空洞(18)中に充填される点、及び前記材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理される点、
を特徴とする、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
参照符号56で示された象牙質コアは、例として前歯用であり、参照符号54で示された象牙質コアは大臼歯用である。領域54の上のさらなる指定の無いセクションは、犬歯用であることができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] セラミック材料のブランク(28、48)、特に歯科修復物(42)の製造のために使用されるブランクの製造の方法であって、ここにおいて、粉末状の第1のセラミック材料(14)、及び次いで異なる組成の粉末状の第2のセラミック材料(20)がモールド(10)中に充填され、ここにおいて、前記材料がプレスされ、プレス後に焼結され、
以下の点、すなわち、
使用される前記第1の若しくは前記第2の、又は前記第1の及び前記第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、前記第1のセラミック材料(14)の層が前記モールド(10)中に充填される点、第1の開放空洞(18)が前記層に形成される点、前記第2のセラミック材料(20)が前記第1の開放空洞(18)中に充填される点、及び前記材料が合わせてプレスされ、次いで熱処理される点、
を特徴とする、方法。
[2] 前記第1の及び/又は第2のセラミック材料を製造するために、出発ガラスの前記組成が、重量%で、
SiO
2
57.5~60.5%
Li
2
O 13.5~20.5%
ZrO
2
8.5~11.5%
P
2
O
5
3.0~7.5%
Al
2
O
3
0.5~6.0%
K
2
O 0.5~3.5%
CeO
2
0.5~2.5%
B
2
O
3
0~3%
Na
2
O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
を含有するか又はそれらから成る点を特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記第1の及び/又は第2のセラミック材料を製造するために、出発ガラスの前記組成が、重量%で、
SiO
2
57.5~60.5%
Li
2
O 14.0~16.0%
ZrO
2
9.0~10.5%
P
2
O
5
5.0~6.0%
Al
2
O
3
2.5~3.0%
K
2
O 1.0~1.5%
CeO
2
0.5~1.0%
B
2
O
3
2.5~3.0%
Na
2
O 0.1~2.0%
V
2
O
5
0.1~0.7%
Er
2
O
3
0~1.0%
Y
2
O
3
0.3~0.5%
MnO
2
0~0.2%
を含有するか又はそれらから成る点を特徴とする、[1]に記載の方法。
[4] 1μm~150μmの間、特に10μm~30μmの間の平均結晶粒度を有する粉末が、前記第1の及び/又は第2のセラミック材料として使用される点を特徴とする、[1]~[3]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[5] 前記第1のセラミック材料が、半透明性及び/又は蛍光性及び/又は色及び/又は乳白光性の観点から前記第2のセラミック材料とは異なる組成を有する点を特徴とする、[1]~[4]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[6] 前記第2のセラミック材料(18)を充填した後に、第2の開放空洞(26、36)がその中に形成される点を特徴とする、[1]に記載の方法。
[7] 第3のセラミック材料(38)がケイ酸リチウムガラスセラミックから成る又はケイ酸リチウムガラスセラミックを含有する点を特徴とする、[1]~[6]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[8] いくつかの第1の開放空洞(18)が前記第1のセラミック材料(14)の前記層に形成され、その中にセラミック材料(18)、特に前記第2のセラミック材料が充填される点を特徴とする、[1]~[7]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[9] 複数の開放第1空洞(18)のうちの少なくともいくつかが、互いに異なる内部形状を有する点を特徴とする、[1]~[8]のうちの少なくとも1項に記載の方法。 [10] 前記第1の開放空洞(18)の内部形状が、顎領域から出る支台歯、又は残根のような、修復物を提供される歯の顎領域の経路に幾何学的に位置調整される点を特徴とする、[1]~[9]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[11] 前記ブランク(28、48)から前記歯科修復物を加工する際、前記歯科修復物の象牙質領域が、少なくとも前記第2のセラミック材料(20)からの領域に形成され、及び切縁領域が前記第1のセラミック材料(14)から形成される点を特徴とする、[1]~[10]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[12] Tb
2
O
3
及び/又はEr
2
O
3
が、蛍光に影響を与えるために出発材料に添加される点を特徴とする、[1]~[11]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[13] 前記乳白光に影響を与えるために、結晶相の結晶が10nm~800nmの間の最大長の伸びを有する点を特徴とする、[1]~[12]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[14] プレス中に、インプラント接続輪郭のネガ型(126)に対応する凹部が前記ブランク(28)に形成される点を特徴とする、[1]~[13]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[15] 円錐形の形状を有する凹部(130)が、プレス中に前記ブランク(28)に形成され、そこからミリング及び/又は研磨によって歯科修復物の内部空洞が形成される点を特徴とする、[1]~[14]のうちの少なくとも1項に記載の方法。
[16] 異なる組成の領域を有する、セラミック材料から成る、歯のフレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、支台歯、ピン構造、特にクラウン又は部分的クラウンのような歯科修復物(42)を製造する際に使用される予備焼結された又は完全焼結されたブランク(28、48)であって、ここにおいて、第1の領域(32、50)が第1のセラミック材料(14)であり、少なくとも1つの第2の領域(34)が第2のセラミック材料(20)であり、前記領域が互いに隣接し、
以下の点、すなわち、
前記第1の若しくは前記第2の、又は前記第1の及び前記第2のセラミック材料が、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る点、前記第2の領域(34、52、54、56)が前記第1の領域(32)内で延び、基部領域(35)又は底部表面から次第に細くなる外面形状を有する点
を特徴とする、ブランク。
[17] 前記第2の領域(34)の前記底部表面/前記基部領域(35)が前記第1の領域(32)の外面(33)の前記領域に延び、及び好ましくはそれと統合する点を特徴とする、[16]に記載のブランク。
[18] それの底部表面/それの基部領域(35)から始まる前記第2の領域(34)が空洞(26)を有する点を特徴とする、[16]又は[17]に記載のブランク。 [19] 前記第2の領域(34)がそれの外面側に円錐状の形状を有する点を特徴とする、[16]~[18]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[20] 第3の領域(38)が、前記第2の領域(34)内に延び、且つ、前記第1の及び/又は第2のセラミック材料(14、20)の組成とは異なる組成を有する、及び特にケイ酸リチウムガラスセラミックを含有するか又はケイ酸リチウムガラスセラミックから成る第3のセラミック材料から成る点を特徴とする、[16]~[19]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[21] 複数の第2の領域(52、54、56)が前記第1の領域(32、50)によって囲まれている点を特徴とする、[16]~[20]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[22] 前記複数の第2の領域(52、54、56)のうちの少なくともいくつかが、それらの外面形状が互いに異なる点を特徴とする、[16]~[21]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[23] 前記ブランク(28、48)が、重量の割合で、
SiO
2
57.5~60.5%
Li
2
O 13.5~20.5%
ZrO
2
8.5~11.5%
P
2
O
5
3.0~7.5%
Al
2
O
3
0.5~6.0%
K
2
O 0.5~3.5%
CeO
2
0.5~2.5%
B
2
O
3
0~3%
Na
2
O 0~3%
少なくとも1つの添加剤0~4%
を含有するか又はそれらから成る前記組成のケイ酸リチウムガラスセラミックにより製造される点を特徴とする、[16]~[22]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[24] 前記ブランク(28、48)が、重量の割合で、
SiO
2
57.5~60.5%
Li
2
O 14.0~16.0%
ZrO
2
9.0~10.5%
P
2
O
5
5.0~6.0%
Al
2
O
3
2.5~3.0%
K
2
O 1.0~1.5%
CeO
2
0.5~1.0%
B
2
O3 2.5~3.0%
Na
2
O 0.1~2.0%
V
2
O
5
0.1~0.7%
Er
2
O
3
0~1.0%
Y
2
O
3
0.3~0.5%
MnO
2
0~0.2%
を含有するか又はそれらから成るケイ酸リチウム出発ガラスから製造される点を特徴とする、[16]~[23]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[25] 前記第2のセラミック材料(20)が、特にMnO、Fe
2
O
2
、Y
2
O
3
、V
2
O
3
、CeO
2
、他の希土類酸化物から成る群からの少なくとも1つの酸化物の添加により、着色において前記第1のセラミック材料(14)と異なる点を特徴とする、[16]~[24]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[26] 完全密度へと焼結した後に、前記ブランク(28)から製造された前記修復物(42)が、切縁側において象牙質側よりも高い半透明性を有する点を特徴とする、[16]~[25]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[27] 前記ブランク(28)が、それの基底部側に、インプラント接続輪郭の形状を有する凹部又は窪み(126)を有する点を特徴とする、[16]~[26]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[28] 前記窪み(126)から、ネジ溝を形成するために貫通開口が出る点を特徴とする、[16]~[27]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[29] それの基底部側において前記ブランク(28)が円錐形の形状を有する窪み(130)を有する点を特徴とする、[16]~[28]のうちの少なくとも1項に記載のブランク。
[30] 少なくとも[1]に従って製造される、歯科修復物(42)、特にクラウン又は部分的クラウンであって、
以下の点、すなわち、
前記修復物(42)が、モノリシック形状であり、且つ、切縁側において延びる第1のセラミック材料(14)の少なくとも1つの第1の層(32)と、象牙質側において延びる第2のセラミック材料(20)の第2の層(34)とから成り、ここにおいて、前記第1の層がより高い半透明性を有し、且つ前記第1の層が前記第2の層とは色が異なる点 を特徴とする、歯科修復物。
【外国語明細書】