(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123280
(43)【公開日】2024-09-11
(54)【発明の名称】抗CD206抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240904BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240904BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240904BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240904BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240904BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61P43/00 105
A61P3/00
A61P3/10
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084874
(22)【出願日】2021-05-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人日本医療研究開発機構 令和3年度創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業「コムギ無細胞系による構造解析に適した複合体タンパク質生産・調製技術と低分子抗体作製技術の創出」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸邉 一之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】森 寿
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 喜子
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】本発明は、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な抗体、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤、および代謝障害の予防または治
療のための医薬組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な抗体、該抗体を有効成分として含む、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷
剤、および該抗体を有効成分として含む、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下から選択される抗体である、抗体またはその機能的断片:
(a)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号28で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号30で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号31で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(b)配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号39で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
LMSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号41で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(c)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号43で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号45で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号46で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(d)配列番号47で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号48で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号49で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号50で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
FASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号51で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(e)配列番号52で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号53で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
AATで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(f)配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号60で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号61で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(g)配列番号62で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号63で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号64で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号65で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
KASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号66で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(h)配列番号67で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号68で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号69で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号70で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号71で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(i)配列番号77で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号78で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号79で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号80で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
ATSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号81で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(j)配列番号82で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号83で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号84で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号85で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RANで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号86で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;並びに
(k)配列番号87で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号88で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号89で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号90で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号91で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【請求項2】
前記抗体が以下から選択される抗体である、請求項1に記載のCD206に特異的に結合す
る抗体またはその機能的断片:
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(B)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(C)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(D)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(F)配列番号13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(H)配列番号17で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(I)配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(J)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;並びに
(K)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片をコー
ドする、単離されたDNA。
【請求項4】
請求項1または2に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片を有効
成分として含む、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
【請求項5】
CDC活性によるCD206陽性M2マクロファージの細胞障害作用を有する、請求項4に記載のCD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
【請求項6】
ADCC活性によるCD206陽性M2マクロファージの細胞障害作用を有する、請求項4に記載
のCD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
【請求項7】
請求項1または2に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片を有効
成分として含む、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物。
【請求項8】
前記代謝障害が、耐糖機能障害、インスリン抵抗性および糖尿病から選択される1種以上である、請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD206抗体および該抗体の耐糖機能障害、インスリン抵抗性および糖尿病
等の予防または治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし、様々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群であり、病態の進行に伴い、眼、腎臓、神経、および血管を含む種々の器官に重篤な衰弱性合併症を引き起こす。
遺伝的素因に、高脂肪食・運動不足・肥満といったインスリン抵抗性増大をきたす生活環境因子が加わって発症するものと考えられている。
【0003】
脂肪組織の常在性マクロファージは、組織恒常性の維持に重要な役割を担っていて、例えば、炎症性あるいは抗炎症性のサイトカインを分泌することによってインスリン感受性を調節する。本発明者らは、先に、脂肪組織のM2マクロファージが、CD206/TGFβシグナ
ル伝達経路を介して前駆脂肪細胞の増殖を抑制することで、全身のグルコース恒常性を調節することを明らかにした。脂肪組織のCD206陽性細胞は主にM2マクロファージであり、CD206陽性M2マクロファージを除去すると小さな脂肪細胞の数が増加し全身のインスリン感受性が改善された(非特許文献1)。また、生体内のM2マクロファージだけを任意のタイミングで除去することができる遺伝子改変マウスを作成し解析したところ、寒冷時には正常のマウスで皮下脂肪のベージュ化が起こるが、M2マクロファージを除去しておくと、このベージュ化がより強く見られ、その結果基礎代謝が高まって血糖値が低下し、インスリン感受性が促進されることを明らかにした(非特許文献2)。
【0004】
したがって、脂肪組織におけるM2マクロファージを除去することで、基礎代謝を向上し、インスリン感受性を改善し、耐糖障害を予防または治療できる可能性がある。したがって、脂肪組織におけるM2マクロファージを除去する手段が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nat Commun. 2017 Aug 18;8(1):286. doi: 10.1038/s41467-017-00231-1.
【非特許文献2】Sci Rep. 2018 Oct 1;8(1):14567. doi: 10.1038/s41598-018-32803-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の状況を鑑み、本発明は、脂肪組織におけるM2マクロファージを除去する手段を提供することを課題とする。より具体的には、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な抗体、該抗体を有効成分として含む、CD206陽性M2マクロ
ファージの細胞殺傷剤、および該抗体を有効成分として含む、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な抗体を開発することを目的として鋭意検討を行った。その結果、このような機能を有する抗体の開発に成功した。そして、本発明の抗体は、CD206に結合し、脂肪組織におけ
るCD206陽性M2マクロファージを除去可能であり、代謝障害の予防および治療作用を有す
ることを見出した。このような知見に基づき、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下から選択される抗体である、抗体またはその機能的断片:
(a)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号28で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号30で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号31で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(b)配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号39で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
LMSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号41で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(c)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号43で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号45で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号46で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(d)配列番号47で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号48で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号49で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号50で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
FASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号51で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(e)配列番号52で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号53で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
AATで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(f)配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号60で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号61で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(g)配列番号62で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号63で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号64で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号65で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
KASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号66で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(h)配列番号67で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号68で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号69で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号70で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号71で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(i)配列番号77で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号78で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号79で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号80で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
ATSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号81で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;
(j)配列番号82で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号83で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号84で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号85で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RANで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号86で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体;並びに
(k)配列番号87で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号88で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号89で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号90で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号91で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0009】
[2] 前記抗体が以下から選択される抗体である、[1]に記載のCD206に特異的に結
合する抗体またはその機能的断片:
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(B)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(C)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体;
(D)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(F)配列番号13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(H)配列番号17で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(I)配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;
(J)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体;並びに
(K)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
[3] [1]または[2]に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断
片をコードする、単離されたDNA。
【0010】
[4] [1]または[2]に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断
片を有効成分として含む、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
[5] CDC活性によるCD206陽性M2マクロファージの細胞障害作用を有する、[4]に記載のCD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
[6] ADCC活性によるCD206陽性M2マクロファージの細胞障害作用を有する、[4]に
記載のCD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤。
[7] [1]または[2]に記載のCD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断
片を有効成分として含む、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物。
[8] 前記代謝障害が、耐糖機能障害、インスリン抵抗性および糖尿病から選択される1種以上である、[7]に記載の医薬組成物。
【0011】
[9] [3]に記載のDNAを含むベクター。
[10] [3]に記載のDNAまたは[10]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[11] CD206に特異的に結合する抗体を作製する方法であって、該抗体が産生される
ように[10]に記載の宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
[12] 予防または治療を必要とする対象に、[1]または[2]に記載のCD206に特
異的に結合する抗体またはその機能的断片を投与する工程を含む、代謝障害の予防または治療方法。
[13] CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片の、代謝障害の予防また
は治療のための使用。
[14] CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片の、代謝障害の予防また
は治療のための医薬組成物の製造のための使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な抗体が提供される。また、本発明により、該抗体を有効成分として含む、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤、および該抗体を有効成分として含む、代謝障害の予防ま
たは治療のための医薬組成物を提供が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の抗CD206抗体によるCD206陽性M2マクロファージのフローサイトメトリーによる検出結果を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の抗CD206抗体のCD206陽性細胞に対するCDC活性の評価結果を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の抗CD206抗体のCD206陽性細胞に対するADCC活性の評価結果を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の抗CD206抗体の生体組織におけるCD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用の評価結果(qPCR)を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の抗CD206抗体の生体組織におけるCD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用の評価結果(FACS)を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の抗CD206抗体の代謝障害改善作用の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書において、数値範囲を「下限~上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。
【0015】
<抗体またはその機能的断片>
本発明の一態様は、CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、前
記抗体が前記(a)~(k)から選択される抗体である、抗体(以下、「本発明の抗CD206抗体」ということがある)またはその機能的断片に関する。
【0016】
CD206は、マンノース受容体としても知られる、1回膜貫通構造を有するC型レクチン
受容体であり、M2マクロファージ特異的な表面抗原である。
上述のように、本発明者らは、脂肪組織におけるM2マクロファージを除去する手段を検
討していたところ、CD206に結合し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージに対し細胞殺傷活性を有し、脂肪組織におけるCD206陽性M2マクロファージを除去可能な本発明
の抗CD206抗体を開発した。また、このような作用を有する本発明の抗CD206抗体は、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物と用いられることを確認した。本発明はこのようにして完成されたものである。
【0017】
本発明の抗CD206抗体は、例えば、特定の抗原に対する抗体を産生する動物に抗原を投
与、免疫し、抗体産生細胞を回収し、その後、ISAAC(ImmunoSpot Array Assay on a Chip)法によるスクリーニングにより得ることができる。
ISAAC法は、マイクロウェルアレイチップを用いて抗原特異的抗体分泌細胞(ASC)を迅速かつ網羅的にスクリーニングする方法である。該方法においては、抗体産生細胞が1個入る程度の大きさ(直径10~15μm程度)のウェルを多数有するマイクロウェルアレイチ
ップであって、ウェルの周辺のチップ表面を抗免疫グロブリン抗体(または抗体を得ようとする抗原)で被覆したマイクロウェルアレイチップを用いる。特定の抗原に対する抗体を産生する動物から抗体産生細胞を含む脾臓リンパ球を採取し、マイクロウェルアレイチップのウェルに細胞を1個ずつ播種する。培養液中にチップを浸し、分泌された抗体がウェルから前記被覆層に拡散する条件で培養することにより、抗体を産生分泌する細胞から分泌された抗体が、格納されたウェルの周囲の抗免疫グロブリン抗体(または抗原)に結合する。次いで、蛍光物質で標識した前記抗原(または抗原に対する抗体)をマイクロウェルアレイチップに添加する。標識した前記抗原(または抗原に対する抗体)がウェルの周囲の抗免疫グロブリン抗体(または抗原)に結合し、標識物質から発せられるシグナルにより、どのウェル内に抗原特異的抗体を産生分泌する細胞が格納されているかがわかる。この細胞を蛍光顕微鏡下でマイクロキャピラリーを用いて回収する。細胞からDNAを抽
出し、RT-PCR等により抗体のcDNAを増幅し、抗体遺伝子をクローニングする。該遺伝子を用いて、所望の抗体をリコンビナント抗体として作製することができる。
【0018】
本発明においては、例えば、CD206抗原を投与したCD206欠損マウスの脾臓からリンパ球を採取し、前記のISAACにより、CD206に対するマウス抗体のcDNAを得ることができ、マウス抗ヒトCD206モノクローナル抗体をリコンビナント抗体として作製することができる。
【0019】
ISAAC法は、特開2009-34047号公報、特開2014-73100号公報、特開2014-162772号公報、Aishun Jin et al., Nature Medicine, Vol.15, No. 9, September 2009, pp.1088-1093
およびAishun Jin et al., Nature Protocols, Vol.6, No.5, 2011, pp.668-676の記載に従って行うことができる。
【0020】
本発明では、ISAAC法により、下記の11種類のマウス抗ヒト抗CD206モノクローナル抗体が得られた。
No, 10, 27, 35, 40, 44, 47, 54, 59, 72, 73, 83
【0021】
上記の特定の配列を有するモノクローナル抗体は、配列情報に基づいて化学合成・遺伝子組み換え等の当分野で通常用いられている技術を用いて取得することもできる。
【0022】
本発明の抗体には、前記モノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体等も含まれる。これらの抗体は、既知の
方法を用いて製造することができる。本明細書において、No, 10, 27, 35, 40, 44, 47, 54, 59, 72, 73および83抗体との語は、特にそのように解することが不整合である場合を除き、当該抗体の配列に基づき作製されたキメラ抗体及びヒト化抗体を含む。
【0023】
本発明は、No, 10, 27, 35, 40, 44, 47, 54, 59, 72, 73および83の抗体のいずれかの
H鎖またはL鎖を含んだシャッフル抗体も包含する。
【0024】
本発明の別の一態様は、本発明の抗CD206抗体またはその機能的断片をコードする、単
離されたDNA(以下、「本発明のDNA」ともいう)に関する。
本発明の抗CD206抗体は、抗体の重鎖をコードするDNAおよび軽鎖をコードするDNAを発
現ベクターに挿入し、該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、該宿主細胞を培養して産生させることができる。この際、上記の重鎖をコードするDNAおよび軽鎖をコードするDNAを同じ発現ベクターに挿入し、該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換してもよいし、重鎖をコードするDNAと軽鎖をコードするDNAを別々のベクターに挿入し、2つのベクターを用いて宿主細胞を形質転換してもよい。この際、特定のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域をコードするDNAを予め挿入したベクターに重鎖可変領域および軽鎖可
変領域をコードするDNAを挿入してもよい。また、該ベクターは宿主細胞からの抗体の分
泌を促進するシグナルペプチドをコードするDNAを含んでいてもよい。この場合、シグナ
ルペプチドをコードするDNAと抗体をコードするDNAをインフレームで連結するようにする。抗体が産生される際にシグナルペプチドが除去されるので、抗体を成熟タンパク質として得ることができる。
【0025】
11種類の抗CD206モノクローナル抗体の重鎖可変領域のDNA配列およびアミノ酸配列、軽鎖可変領域のDNA配列およびアミノ酸配列、重鎖可変領域のCDR(相補性決定領域)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)のアミノ酸配列、並びに軽鎖可変領域のCDR(相補性決定領域)(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列の配列または配列番号を、以下に示す。
【0026】
(抗体No.10)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(a)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号28で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号30で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号31で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0027】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体。
【0028】
(抗体No.27)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(b)配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号39で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
LMSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号41で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0029】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(B)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体。
【0030】
(抗体No.35)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(c)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号43で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号45で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号46で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0031】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(C)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽鎖
可変領域を含む抗体。
【0032】
(抗体No.40)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(d)配列番号47で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号48で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号49で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号50で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
FASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号51で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0033】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(D)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重鎖
可変領域、および
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0034】
(抗体No.44)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(e)配列番号52で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号53で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
AATで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0035】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0036】
(抗体No.47)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(f)配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号60で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号61で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0037】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(F)配列番号13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0038】
(抗体No.54)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(g)配列番号62で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号63で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号64で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号65で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
KASで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号66で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0039】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0040】
(抗体No.59)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(h)配列番号67で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号68で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号69で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号70で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号71で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0041】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(H)配列番号17で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0042】
(抗体No.72)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(i)配列番号77で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号78で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号79で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号80で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
ATSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号81で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0043】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(I)配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0044】
(抗体No.73)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(j)配列番号82で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号83で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号84で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号85で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
RANで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号86で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0045】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(J)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0046】
(抗体No.83)
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(k)配列番号87で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR1、
配列番号88で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR2、
配列番号89で表されるアミノ酸配列からなる重鎖HCDR3、
配列番号90で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR1、
YTSで表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR2、および
配列番号91で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖LCDR3を含む抗体。
【0047】
CD206に特異的に結合する抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が以下の抗体である、抗体またはその機能的断片:
(K)配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する重
鎖可変領域、および
配列番号26で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域または該アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、CD206への結合活性を有する軽
鎖可変領域を含む抗体。
【0048】
上記の11種類の抗CD206モノクローナル抗体において、重鎖可変領域はそれぞれの配列
番号で表わされるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域のみならず、該アミノ酸配列において、1もしくは数個、例えば、1~10個、1~5個、1~3個、1~2個、または1個のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなり、抗体の重鎖可変領域の活性、すなわちヒトCD206への結合活性を有するタンパク質からなる重鎖可変領域も含む。同
様に、軽鎖可変領域はそれぞれの配列番号で表わされるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のみならず、該アミノ酸配列において1もしくは数個、例えば、1~10個、1~5個、1~3個、1~2個、または1個のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなり、抗体の軽鎖可変領域の活性、すなわちヒトCD206への結合活性を有するタンパク
質からなる軽鎖可変領域も含む。
【0049】
このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。ここで、保存的置換とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、アミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合等が挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸の例として、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン
、メチオニン等が挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等が挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0050】
このようなアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列として、それぞれの配列番号のアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local
Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
【0051】
このようなアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質はそれぞれの配列番号のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
【0052】
また、上記のそれぞれの配列番号で表されるアミノ酸配列をコードするDNAとしては、
該DNA配列とBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検
索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有している塩基配列からなるDNAであって、抗体の重鎖可変領域または軽鎖
可変領域の活性、すなわちヒトCD206への結合活性を有するタンパク質をコードするDNAも、抗CD206抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードするDNAに含まれる。
【0053】
また、上記のそれぞれの配列番号で表されるアミノ酸配列をコードするDNAと相補的な
配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の活性、すなわちヒトCD206への結合活性を
有するタンパク質をコードするDNAも、抗CD206抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードするDNAに含まれる。ここで、当業者ならば、ストリンジェントな条件を適宜決定
することができる。
【0054】
また、前記の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むヒトCD206に特異的に結合するヒ
ト抗ヒトCD206モノクローナル抗体は、上記の重鎖可変領域および重鎖定常領域並びに上
記の軽鎖可変領域および軽鎖定常領域とから構成される。重鎖定常領域は、3個のドメインCH1、CH2およびCH3から構成されている。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってもよいが、最も好適には、IgG1またはIgG4定常
領域である。軽鎖定常領域は、1個のドメインCLで構成されている。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域である。
【0055】
抗体をコードするDNAは、重鎖可変領域をコードするDNAと重鎖定常領域をコードするDNAを連結し、さらに軽鎖可変領域をコードするDNAと軽鎖定常領域をコードするDNAを連結
することにより重鎖をコードするDNAおよび軽鎖をコードするDNAとして得られる。
【0056】
本発明の抗体は、抗体の機能的断片またはその修飾物も包含する。例えば、抗体の機能的断片は、抗体の断片であって抗原に特異的に結合し得る断片である。機能的断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、H鎖もしくはL鎖のFvを適当
なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)等が挙げられる。ポリヌクレオチド
は、DNAもRNAも包含する。
【0057】
<細胞殺傷剤>
本発明の別の一態様は、本発明の抗CD206抗体またはその機能的断片を有効成分として
含む、CD206陽性M2マクロファージの細胞殺傷剤(以下、「本発明の細胞殺傷剤」という
ことがある)に関する。
【0058】
本発明の抗CD206抗体は、CD206、好ましくは、M2マクロファージの細胞膜表面に存在するCD206の細胞外領域に結合し、CD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用を有する。細胞殺傷作用は、具体的には、CDC活性およびADCC活性から選ばれる1種以上であってよい。このように、本発明の抗CD206抗体は、CD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用を有し、生体組織等からCD206陽性M2マクロファージを除去することができ、糖代
謝を向上、およびインスリン感受性を改善することができ、代謝障害の予防または治療に用いることができる。本発明の細胞殺傷剤を試薬として使用する場合、試薬の製造、使用等は、分子生物学分野における常法に基づいて、行うことができる。本発明の細胞殺傷剤を医薬として使用する場合、任意成分、投与量、対象となる代謝障害、予防または治療対象等については、下記<医薬組成物>の項で説明した内容を、本発明の細胞殺傷剤においても適用することができる。
【0059】
<医薬組成物>
本発明の別の一態様は、本発明の抗CD206抗体またはその機能的断片を有効成分として
含む、代謝障害の予防または治療のための医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」ということがある)に関する。
【0060】
本発明の11種類のマウス抗ヒトCD206モノクローナル抗体のいずれの抗体も代謝障害を
予防もしくは治療するための医薬組成物として用いることができる。限定されないが、この中でも、CD206に強く結合する抗体No.10, 35, 54および83が好ましい。抗体は、1種のみまたは任意の2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0061】
本発明の医薬組成物の製造は製剤分野における常法に基づいて、行うことができる。なお、本発明の医薬組成物は、その効果を妨げない限り、本発明の抗CD206抗体以外の有効
成分を併用し得る。該医薬組成物は、本発明の抗CD206抗体に加えて、製剤分野において
通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含み得る。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウム等が使用される。注射用の水性液としては、生理食塩水、PBS、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が使用され、適当な溶解補助剤、
例えば、アルコール、プロピレングリコール等のポリアルコール、非イオン界面活性剤等と併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油等が使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。本発明の医薬組成物は、種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、または、注射剤、点滴剤、坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
【0062】
その投与量は、症状、年齢、体重等によって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、例えば、1日約0.01mg~1000mgであり、これらを1回、または数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、例えば、1回約0.01mg~1000mgを皮下注射、筋肉
注射または静脈注射によって投与することができる。
【0063】
予防または治療し得る代謝障害としては、限定されないが、耐糖機能障害、インスリン抵抗性、糖尿病、糖尿病に関連する疾患、メタボリック症候群、肥満症、および脂質異常症等が挙げられ、好ましくは、耐糖機能障害、インスリン抵抗性、および糖尿病である。
限定されないが、前記糖尿病としてより具体的には、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、およびグルコース不耐性糖尿病等が挙げられ、好ましくは2型糖尿病である。限定されないが、前記糖尿病に関連する疾患としてより具体的には、高血圧症、循環器病、腎疾患、神経障害、および網膜症等が挙げられる。
【0064】
本発明における予防または治療対象(好ましくは哺乳動物、特にヒト)は、代謝障害を発症する可能性が高いと診断された対象または代謝障害を発症した対象が対象となり、本発明の医薬組成物を、これらの対象に投与することができる。
【実施例0065】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(抗原)
培養細胞(FreeStyle (登録商標) 293-F cell)にマウスCD206抗原の細胞外領域(配列番号118の64~4161)を発現させ、精製したタンパク質を抗原として用いた。
(CD206欠損マウス)
B6.129P2-Mrc1<tm1Mnz>/Jマウスは Jackson Laboratoryより購入した。
【0067】
<実施例1:抗CD206モノクローナル抗体の作製>
CD206欠損マウスにCD206抗原とアジュバントを混合して投与し免疫を行った。1回目の抗体投与の2週間後にもう一度CD206抗原を投与し、その1週間後に脾臓を回収した。脾
臓細胞は単離した後、ISAAC法を用いたCD206特異的抗体の取得に使用し、残りは-80℃で
保存した。
脾臓細胞からISAAC法にて、CD206に結合する抗体を産生するリンパ球のファーストスクリーニングを行い、90クローンを得た。抗体cDNAをクローニングし、HEK293F細胞に遺伝
子導入して、抗体産生細胞を得て、マウス抗ヒトCD206モノクローナル抗体を13種類作成
した。
【0068】
上記のように作製した抗CD206抗体、および比較例の抗CD206抗体(市販の抗CD206抗体RATANTI MOUSE CD206(BIO-RAD社製)をAllophycocyanin Labeling Kit - NH2(APCで検出)(DOJINDO社製)で標識した。一方、培養細胞(HEK293Tcell)に遺伝子導入をしてCD206
とVenus(FITCで検出)(富山大学分子神経科学講座作製)を発現させ、抗体のCD206陽性M2マクロファージへの結合能をフローサイトメトリーで検出した。結果は
図1に示す。比較例の抗CD206抗体に対して、CD206陽性M2マクロファージを明瞭に検出することができた11種類(No, 10, 27, 35, 40, 44, 47, 54, 59, 72, 73, 83)を最終的に選択した。
【0069】
さらに、CD206抗原(富山大学分子神経科学講座作製)を固定化したプレートを用いて
、ELISAを行ったところ、抗CD206対照抗体(富山大学免疫学教室作製)を用いた場合にも認められる結合が、本発明の抗CD206抗体で結合が認められた。
したがって、本発明の抗CD206抗体がCD206に対する結合能を有することが示された。
【0070】
13種類の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域の塩基配列、並びに各CDRの塩基配列を解析
した。同塩基配列に基づいて得られた抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列、並びに各CDRのアミノ酸配列を、下記の表1および配列表に示す。
【0071】
【0072】
<実施例2:抗CD206抗体の補体依存性細胞傷害(CDC: complement-dependent cytotoxicity)活性の評価>
以下のようにして、本発明の抗CD206抗体のCD206陽性細胞に対するCDC活性を評価した
。
すなわち、FACSAria(登録商標)(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)にてCD206陽性分画を回収しCDC assayを行った。
[CDC assay]
1. マウス1匹から脾臓を採取
2. RPMI1640を使用してホモジナイズ
3. 50mL Falcon(登録商標)チューブにCell Strainer 70μmをセットし単離した脾臓細胞を回収する
4. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離
5. 上清を捨て、1x Lysis Bufferで再懸濁する
6. RTで10分間インキュベート
7. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離し、上清を捨てる
8. CD3e-PE(for T cell) 7.5μL、CD19-APCCY7(for B cell) 5μL、NK1.1-FITC(for NK cell) 5μLを加え、40分間on iceで染色
9. FACS buffer 200μLを加え、1,500rpmで3分間遠心(96 well plate にて)
10. 上清を捨てる(10.~11.を3回繰り返す)
11. FACSAriaにてT cell等の染色細胞と無染色のCD206陽性分画を回収
12. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離し、上清を捨てる
13. 回収した細胞を96 wellプレートにまく
14. 抗CD206抗体または抗CD206対照抗体(Hel2, Hel6, Hel 10(富山大学免疫学教室作製), rCD206(BIO-RAD社製), MR(Abcam社製))を加える
15. 補体(Low Tox-M Rabbit complement(Cedarlane Laboratories Ltd 社製))を入れる(10% Comp)
16. 37℃ 1hrインキュベート
17. 二次抗体にて染色CD206陽性細胞(APC)・死細胞(7AAD)
18. FACSにてCD206陽性細胞と、CD206陽性かつ7AAD陽性細胞の割合を確認する
【0073】
結果を
図2に示す。本発明で作製した抗CD206抗体を加えたwellではCD206陽性の生細胞の割合が減少し、CD206陽性の死細胞の割合が増加した。したがって、本発明の抗CD206抗体がCD206陽性細胞に対するCDC活性を有することが示された。
【0074】
<実施例3:抗CD206抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC: antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)活性の評価>
以下のようにして、本発明の抗CD206抗体のCD206陽性細胞に対するADCC活性を評価した。
すなわち、FACSAriaにてCD206陽性分画を回収しADCC assayを行った。
[ADCC assay]
1. マウス1匹から脾臓を採取
2. RPMI1640を使用してホモジナイズ
3. 50mL FalconチューブにCell Strainer 70μmをセットし単離した脾臓細胞を回収する
4. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離
5. 4.上清を捨て、1x Lysis Bufferで再懸濁する
6. RTで10分間インキュベート
7. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離し、上清を捨てる
8. CD3e-PE 7.5μL、CD19-APCCY7 5μL、NK1.1-FITC 5μLを加え、40分間on iceで染色
9. FACS buffer 200μLを加え、1500rpmで3分間遠心(96 well plate にて)
10. 上清を捨てる(10.~11.を3回繰り返す)
11. FACSAriaにてT cell等の染色細胞と無染色のCD206陽性分画を回収
12. 4℃、5分間、1,500rpmで遠心分離し、上清を捨てる
13. 回収した細胞を96 wellプレートにまく
14. 抗CD206抗体または抗CD206対照抗体を加える
15. 37℃ 12hrインキュベート
16. 二次抗体にて染色CD206陽性細胞(APC)・死細胞(7AAD)
17. FACSにてCD206陽性細胞と、CD206陽性かつ7AAD陽性細胞の割合を確認する
【0075】
結果を
図3に示す。本発明で作製した抗CD206抗体を加えたwellではCD206陽性の生細胞の割合が減少し、CD206陽性の死細胞の割合が増加した。したがって、本発明の抗CD206抗体がCD206陽性細胞に対するADCC活性を有することが示された。
【0076】
<実施例4:抗CD206抗体の生体組織におけるCD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用の評価>
以下のようにして、本発明の抗CD206抗体の生体組織におけるCD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用を評価した。
C57BL/6Jマウス(日本クレア株式会社製)に、PBSに希釈した被験抗体および対照としてPBSを、それぞれ1μg/マウス体重(g)の濃度で48時間毎に2回腹腔内に投与した(No.47 n=4, No. 83 n=5)。投与4日(96時間)後、以下のようにして脾臓・内臓脂肪・皮下脂肪を
マウスから回収しRNAを抽出し、F4/80、CD11c、CD206遺伝子についてqPCRを行った。また、以下のようにして脾臓(spleen)・内臓脂肪(epididymal white adipose tissue: eWAT)・鼠径部皮下脂肪(inguinal white adipose tissue: iWAT)細胞をマウスから回収し、FACS解析を行った。
その結果、
図4に示すqPCRによる結果より、抗CD206抗体投与群の内臓脂肪においてCD206陽性M2マクロファージの減少傾向が確認できた(矢印で示す)。また、
図5に示すFACS解析による結果より、抗CD206抗体投与群の内臓脂肪・皮下脂肪においてCD206陽性M2マクロファージの有意な減少が確認できた。したがって、本発明の抗CD206抗体が脂肪組織に
おけるCD206陽性M2マクロファージに対する細胞殺傷作用を有することが示された。
【0077】
[qPCR]
1. 脾臓・内臓脂肪・皮下脂肪をマウスから回収
2. 組織をホモジナイズした後、qiagen RNA抽出キットでRNA抽出
3. RNA濃度を測定
4. TaKaRa Prime Script(登録商標) ET reagent kitを使用して cDNAを作製
(逆転写反応)
37℃、 15分 (逆転写反応)
85℃、 5秒 (逆転写酵素を熱失活させる)
4℃、 ∞
5. Real Time PCR (SYBR)
(1) 氷とサンプル(cDNA)を準備する
(2) コントロールと調べるプライマーを-20℃の冷凍庫から出す
アルミホイルの上に置く
(3) マスターMixを -20℃の冷凍庫から出して氷上におく
(4) Micro Ampのtubeと蓋を用意しておく
(5) 薄黄色のtubeをプライマー数分準備し、蓋にプライマーの名前を書いておく
(6) 用意した薄黄色のtubeにマスターMixとプライマーのMixを作る
マスターMix 12.5μL(7.5) × サンプル数 = μL
H2O , PCR Grade 9μL(5.4) × サンプル数 = μL
プライマー FW 0.5μL (0.4) × サンプル数 = μL
プライマー RV 0.5μL (0.4) × サンプル数 = μL
ROX Reference Dye II 0.5μL(0.3) × サンプル数 = μL
※マスターMixを入れたtubeに、プライマーをピペッティングしながら加える。
よく混ぜた後、スピンダウンする。
(7) 作ったMixをMicro Ampのtubeに23μL(14)ずつ分注する。
(8) Mix 23μL(14)ずつ分注したら、サンプルを2μL(1)ずつ加えて、合計25μL(15)にする。
(7) 23μL + (8) 2μL = 25μL
(9) Micro Ampに蓋をして、泡がないか、蓋がきちんとしまっているかを確認したのち、スピンダウンして液を側面から落とす。
(10) リアルタイム定量PCRシステム(MX3000P(アジレント・テクノロジー株式会社
製))にセットする。
6. MX3000Pの結果を解析する
【0078】
(Krebs-Hense-leit-HEPES(KRHAG)buffer)
生理食塩水、5% BSA in 生理食塩水、1M KCl、1M CaCl2、1M KH2PO4、1M MgSO4、200mM Hepes、200mM glucose
(コラゲナーゼ)
18mg in 9mL KRHAG (事前に取り分けて-30℃ 使う直前に投入)
【0079】
[FACS解析]
(脂肪組織間質血管細胞群(stromal vascular fraction:SVF)の回収)
1. 白色脂肪組織(white adipose tissue:WAT)回収
2. ミンス
3. コラゲナーゼに入れ 37℃ 27回/min
4. 20min 40min の時にタッピング
5. 45min でon ice
6. KRHAG 4mL 追加 ストッキングで濾す
7. 1,500rpm 5min 4℃
8. 上清を吸う。ペレットを2mL残し2mLチューブに移す
9. 1500rpm 5min 4℃
10. 上清を吸って KRHAG 2mL 追加
11. 1,500rpm 5min 4℃
12. 上清を吸って KRHAG 2mL 追加
13. 1,500rpm 5min 4℃
14. 上清を吸って FACS buffer 150μl追加
15. lyse Lysis Buffer 1.35mL
16. protect from light 15min 4℃
17. 1,500rpm 5min 4℃
18. 上清 捨てる FACS Buffer 1mL
【0080】
(脾臓細胞の回収)
1. 脾臓 回収
2. ホモジナイズ
3. 1,500rpm 5min 4℃
4. 上清を吸って FACS buffer 150μl追加
5. lyse Lysis Buffer 1.35mL
6. protect from light 15min 4℃
7. 1,500rpm 5min 4℃
8. 上清 捨てる FACS Buffer 1mL
【0081】
(染色)
1. FC Brock:2%FCS/PBS = (1:100)を加えた後15min 4℃
2. CD45-PECy7:2%FCS/PBS = (1:400)
F4/80-APCCy7:2%FCS/PBS = (1:80)
CD11c-PE:2%FCS/PBS = (1:50)
CD206-APC:2%FCS/PBS = (1:80)を加えた後30min 4℃
3. 2%FCS/PBS を200μL加える
1,500rpm 5min 4℃
4. 上清を捨て2%FCS/PBS を200μL加える
5. 1,500rpm 5min 4℃
6. 上清を捨て2% FCS/PBSを200μL加える
7. FACSにて測定(計測の直前に7AAD 1μLを加える)
【0082】
<実施例5:抗CD206抗体の代謝障害改善作用の評価>
以下のようにして、本発明の抗CD206抗体の代謝障害改善作用を評価した。
【0083】
(高脂肪食負荷マウス)
C57BL/6Jマウス(日本クレア株式会社製)に、8週齢から16週間、高脂肪食(RESERCH DIETS社製 超高脂肪飼料60kcal%脂肪含有量、ラード使用)を負荷した、肥満の糖尿病のモ
デルマウスを作製した。
【0084】
[抗体投与]
PBSに希釈した被験抗体および対照としてPBSを、それぞれ1μg/マウス体重(g)の濃度で48時間毎に2回腹腔内に投与した(No. 83 n=3)。投与4日(96時間)後、実験を行った。
【0085】
[糖負荷試験]
1. 実験開始4時間前に餌を抜き、ケージを交換した
2. 2g/kgのブドウ糖をマウスの腹腔内に注射投与した
3. ブドウ糖投与前と投与後120分まで30分後ごとに尾静脈より採血した
4. 簡易血糖測定器にて血糖を測定した
【0086】
[インスリン負荷試験]
1. 実験開始4時間前に餌を抜き、ケージを交換した
2. 0.75単位/kgのインスリンをマウスの腹腔内に注射投与した
3. インスリン投与前と投与後120分まで30分ごとに尾静脈より採血した
4. 簡易血糖測定器にて血糖を測定した
【0087】
結果を
図6に示す。本発明で作製した抗CD206抗体を投与したマウスでは、糖負荷試験
の結果より、耐糖機能障害を改善することが示された。また、インスリン負荷試験の結果より、インスリン抵抗性を改善することが示された。したがって、本発明の抗CD206抗体
は、代謝障害の予防または治療用医薬組成物として用いることができると考えられる。