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特開2024-123292情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123292
(43)【公開日】2024-09-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
G05B23/02 302N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023113302
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】半谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA01
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF09
3C223FF16
3C223GG03
3C223HH02
3C223HH03
(57)【要約】
【課題】非定常な動作を連続して行う設備から所望のデータを容易に取得する情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出し部と、ステージ毎に、切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、前記ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出し部と、
前記ステージ毎に、前記切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセスデータは、前記切り出し条件の設定に用いる条件プロセスデータと、監視対象である監視プロセスデータと、を含み、
前記監視プロセスデータから前記切り出しデータを切り出す前記切り出し条件は、前記プロセスデータから選択された1または複数の前記条件プロセスデータに基づき設定される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記切り出し条件を設定する切り出し条件設定部を備え、
前記切り出し条件設定部は、前記条件プロセスデータの値または前記条件プロセスデータから導出される値を条件設定値として、前記条件設定値により定まる前記条件プロセスデータのデータ状態に基づき、前記切り出し条件を設定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記データ状態は、前記条件設定値が、オン状態、オフ状態、指定の下限値以上である状態、指定の上限値以下である状態、指定の下限値未満である状態、または、指定の上限値を超える状態、のうちいずれかの状態である、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記切り出し条件として、ユーザの指定により、前記条件プロセスデータそれぞれに対して条件プロセスデータを抽出する抽出形式が設定されており、
前記抽出形式には、前記条件プロセスデータが、設定された前記データ状態に該当した時点、または、前記条件プロセスデータが、設定された前記データ状態に該当している間、が設定される、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記抽出形式に対して、ユーザの指定により、
前記条件プロセスデータがデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間が設定されている、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特徴量抽出ロジック設定部は、前記特徴量抽出ロジックとして、
前記監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの変化量を、前記特徴量として算出する変化量算出ロジック、
2つの前記監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータの偏差、または、1つの前記監視プロセスデータから切り出した切り出しデータと予め設定された基準データとの偏差を算出し、前記偏差の代表値または積算値を前記特徴量として算出する偏差算出ロジック、
前記監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの代表値または積算値を、前記特徴量として算出する切り出しロジック、または、
2つの前記監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータがユーザに指定された状態に該当した時間の差を、前記特徴量として算出する時間計測ロジック、を設定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、
前記表示処理部は、前記切り出し条件の設定項目を入力するための条件設定エリアを含む設定画面をユーザ端末に表示させ、
前記切り出し条件設定部は、ユーザによって前記設定画面の前記条件設定エリアに入力された情報に基づいて、前記切り出し条件を設定する、請求項3~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示処理部は、前記特徴量抽出ロジックの設定項目を入力するための特徴量抽出ロジック設定エリアを含む設定画面をユーザ端末に表示させ、
前記特徴量抽出ロジック設定部は、ユーザによって前記設定画面の前記特徴量抽出ロジック設定エリアに入力された情報に基づいて、前記特徴量抽出ロジックを設定する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセスにおいて稼働する設備の監視項目の動向を表す前記特徴量に基づいて、前記プロセスの異常を検知する異常検知部を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、
前記異常検知部は、前記特徴量の時系列データであるトレンドにおいて、前記特徴量が前記監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、
前記表示処理部は、前記異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面を、前記ユーザ端末に表示させる、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、
前記異常検知部は、
前記特徴量の時系列データであるトレンドにおいて、前記特徴量が前記監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、
前記異常状態トレンドそれぞれについて、前記監視項目への対処の重要度を判断するための評価指標に基づき対処の優先順位を算出し、
前記表示処理部は、前記対処の優先順位に基づいて前記異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面を、前記ユーザ端末に表示させる、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、前記ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出しステップと、
前記ステージ毎に、前記切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定ステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、前記ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出し部と、
前記ステージ毎に、前記切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定部と、
を備える、情報処理装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内に設置された各種設備の保全効率化及び操業安定化を目的として、設備データ、操業データを監視して、設備の異常を検知する技術が提案されている。ここで、設備データは、操業時に設備を構成するモータやシリンダ、バルブ等の機器から得られるデータであり、例えば回転数や電流値、速度、角速度、オンオフ状態等のような設備を構成する機器の動作に関するデータである。操業データは、設備に設置された温度センサ、湿度センサ等の計測機器から得られるデータであり、例えば温度、湿度等の計測機器により計測された計測値(センサ値)である。
【0003】
例えば特許文献1には、プラント運転におけるオペレータの運転効率を向上させるためのプラント運転支援装置であって、装置及び機器をユニットの形式で記述した運転操作手順を画面に表示し、画面表示したユニットの形式の運転操作手順に従ってプラント運転の支援を実行する技術が開示されている。かかる技術では、ユニット毎にこれを形成しているオブジェクト群を定義していくだけでそのユニットのシーケンス操作と監視ロジックとを簡単にひとまとめとして一体に生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-346562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、例えばプラントの異常時等においてアラームを発生させる等の処理条件をオペレータが設定する必要がなく、プログラミング等の特別な知識を持たない人でも直感的かつ簡単に処理条件を設定することができる。しかし、上記特許文献1に記載の技術では、常に同じ動作を繰り返している設備の定常運転動作を監視対象としており、非定常な動作を連続して行う設備の非定常運転動作を監視対象とする場合に、処理条件を容易に設定するのは難しい。また、例えば鉄鋼設備は非定常な動作を連続して行う上、操業条件に応じて動作仕様が多様に変化する。このような設備の動作を監視するには、特定の時間領域を細かく指定して監視条件を揃え、比較可能にしたデータを用意する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、非定常な動作を連続して行う設備から、所望のデータを容易に取得することが可能な、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出し部と、ステージ毎に、切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0008】
プロセスデータは、切り出し条件の設定に用いる条件プロセスデータと、監視対象である監視プロセスデータと、を含み、監視プロセスデータから切り出しデータを切り出す切り出し条件は、プロセスデータから選択された1または複数の条件プロセスデータに基づき設定されてもよい。
【0009】
情報処理装置は、切り出し条件を設定する切り出し条件設定部を備え、切り出し条件設定部は、条件プロセスデータの値または条件プロセスデータから導出される値を条件設定値として、条件設定値により定まる条件プロセスデータのデータ状態に基づき、切り出し条件を設定してもよい。
【0010】
データ状態は、条件設定値が、オン状態、オフ状態、指定の下限値以上である状態、指定の上限値以下である状態、指定の下限値未満である状態、または、指定の上限値を超える状態、のうちいずれかの状態であってもよい。
【0011】
切り出し条件として、ユーザの指定により、条件プロセスデータそれぞれに対して条件プロセスデータを抽出する抽出形式が設定されており、抽出形式には、条件プロセスデータが、設定されたデータ状態に該当した時点、または、条件プロセスデータが、設定されたデータ状態に該当している間、が設定されてもよい。
【0012】
また、抽出形式に対して、ユーザの指定により、条件プロセスデータが設定されたデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間が設定されてもよい。
【0013】
特徴量抽出ロジック設定部は、特徴量抽出ロジックとして、監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの変化量を、特徴量として算出する変化量算出ロジック、2つの監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータの偏差、または、1つの監視プロセスデータから切り出した切り出しデータと予め設定された基準データとの偏差を算出し、偏差の代表値または積算値を特徴量として算出する偏差算出ロジック、監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの代表値または積算値を、特徴量として算出する切り出しロジック、または、2つの監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータがユーザに指定された状態に該当した時間の差を、特徴量として算出する時間計測ロジック、を設定してもよい。
【0014】
情報処理装置は、ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、表示処理部は、切り出し条件の設定項目を入力するための条件設定エリアを含む設定画面をユーザ端末に表示させ、切り出し条件設定部は、ユーザによって設定画面の条件設定エリアに入力された情報に基づいて、切り出し条件を設定してもよい。
【0015】
また、表示処理部は、特徴量抽出ロジックの設定項目を入力するための特徴量抽出ロジック設定エリアを含む設定画面をユーザ端末に表示させ、特徴量抽出ロジック設定部は、ユーザによって設定画面の特徴量抽出ロジック設定エリアに入力された情報に基づいて、特徴量抽出ロジックを設定してもよい。
【0016】
情報処理装置は、プロセスにおいて稼働する設備の監視項目の動向を表す特徴量に基づいて、プロセスの異常を検知する異常検知部を備えてもよい。
【0017】
情報処理装置は、ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、異常検知部は、特徴量の時系列データであるトレンドにおいて、特徴量が監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、表示処理部は、異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面を、ユーザ端末に表示させてもよい。
【0018】
また、情報処理装置は、ユーザ端末に表示する情報を処理する表示処理部を備え、異常検知部は、特徴量の時系列データであるトレンドにおいて、特徴量が監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、異常状態トレンドそれぞれについて、監視項目への対処の重要度を判断するための評価指標に基づき対処の優先順位を算出し、表示処理部は、対処の優先順位に基づいて異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面を、ユーザ端末に表示させてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出しステップと、ステージ毎に、切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定ステップと、を含む、情報処理方法が提供される。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得するデータ切り出し部と、ステージ毎に、切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する、特徴量抽出ロジック設定部と、を備える、情報処理装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、プロセスデータを用いてデータの切り出し条件を設定することで、非定常な動作を連続して行う設備から所望のデータを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】設備の非定常運転動作の一例として、巻取機のフレームの動作状態と各動作状態でのフレーム動作量とを示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の一構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
図4】圧延設備の冷却水圧力と、ポンプの動作状態とを示す説明図である。
図5】1つの監視プロセスデータに対してユーザが設定する切り出し条件の設定項目を示す説明図である。
図6】切り出し条件により切り出されるデータの例を示す説明図である。
図7】切り出し条件の設定項目を入力するための設定画面の一例を示す説明図である。
図8】特徴量算出ロジックの例を示す説明図である。
図9】データ切り出し結果及び特徴量抽出結果の一例を示す説明図である。
図10】アラーム一覧画面及び長期傾向監視画面の一例を示す説明図である。
図11】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
[1.概要]
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理装置により実行される処理の概要を説明する。図1は、設備の非定常運転動作の一例として、巻取機のフレームの動作状態と各動作状態でのフレーム動作量とを示す説明図である。
【0025】
本実施形態に係る情報処理装置は、非定常な動作を連続して行う設備から、所望のデータを容易に取得するための装置である。非定常な動作を連続して行う設備の一例として、鋼板の巻取機のフレームがある。フレームは、マンドレルに巻き取られた鋼板の外面を押さえるロールを支持する部材であり、フレームを移動させることによりロールとマンドレルとの距離が調整される。
【0026】
巻取機のフレームは、操業時、図1に示すように「鋼板巻き取り中」、「待機位置への移動中」及び「待機中」の3つの動作状態(ステージ)を取り得る。「鋼板巻き取り中」のステージでは、フレームはマンドレルによる鋼板の巻き取り量に応じて移動し、鋼板の巻き取りが完了すると、「待機位置への移動中」のステージとなりフレームは待機位置に移動し、移動後次の鋼板の巻き取りが開始するまで「待機中」のステージとなり待機位置で待機する。
【0027】
ここで、巻取機のフレームは、「待機位置への移動中」には毎回同一の動作速度で移動する。したがって、「待機位置への移動中」のフレームの動作速度(すなわち、フレーム動作量の変化率)に動作速度が遅くなる等の変化があれば、巻取機に不具合が生じている可能性がある。そこで、待機位置への移動中のフレーム動作量を監視して、フレームの動作速度の変化を検知したいが、そのためには「待機位置への移動中」の動作状態(ステージ)におけるフレーム動作量を正確に切り出してフレームの動作速度の変化を算出する必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置は、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出した切り出しデータを取得する。本実施形態において、複数のステージを有するプロセスとは、非定常運転動作をする設備のプロセスをいい、例えば、図1の巻取機のフレームの操業プロセス等である。ステージは、設備の動作状態を意味する。例えば、図1の巻取機のフレームの操業プロセスは、「鋼板巻き取り中」、「待機位置への移動中」及び「待機中」の3つのステージを有している。プロセスデータは、プロセスにおいて取得されるデータである。例えば、プロセスデータは、設備を構成する機器の動作に関するデータや、操業状態を把握するために設備に設置された計測器により測定されたデータ等である。
【0029】
プロセスデータの切り出し条件は、プロセスデータのデータ状態により設定され、これにより、ステージの開始タイミング及び終了タイミングが指定される。ユーザは監視対象とするプロセスデータ(以下、「監視プロセスデータ」ともいう。)に対して特定のステージのデータを切り出す切り出し条件を設定しさえすれば、監視プロセスデータから監視したい範囲のデータが情報処理装置によって切り出される。このように、本実施形態に係る情報処理装置によれば、非定常な動作を連続して行う設備から、所望のデータを容易に取得することができる。
【0030】
そして、情報処理装置は、監視プロセスデータから切り出したデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する。特徴量は、切り出したデータから得られる監視対象の動作の特徴を表している。特徴量抽出ロジックは、切り出したデータから特徴量を算出するための汎用的な計算処理である。情報処理装置は、ユーザの指示を受けて、切り出したデータから特徴量を算出する際に用いる特徴量抽出ロジックを設定する。これにより、切り出したデータから所望の特徴量を算出することができ、算出した特徴量を用いて、例えばプロセスの異常検知等を行うことが可能となる。
【0031】
以下、本実施形態に係る情報処理装置とこれによる情報処理方法について、詳細に説明していく。
【0032】
[2.情報処理装置]
図2に基づいて、本実施形態に係る情報処理装置100の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る情報処理装置100の一構成例を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態に係る情報処理装置100は、図2に示すように、例えば、複数の工場10(例えば工場10X、10Y、10Z)の工場データデータベース(DB)50及びユーザ端末300と、ネットワーク5を介して接続されている。工場10は、例えば製鉄所や、製鉄所内の工場等であり、それぞれ複数の設備20が設置されている。以下の説明では、一例として、工場10は、製鉄所内の製銑工場、製鋼工場、熱延工場、等の製造工程単位の設備とする。また、設備20は、各製造工程においてさらに細分化された工程の設備とし、例えば熱延工場の加熱設備、粗圧延設備、仕上圧延設備、巻取設備である。なお、図2では、工場10Xのみ、工場内のシステム構成を示しているが、他の工場10Y、10Zも同様に構成されているものとする。
【0034】
図2に示す工場10Xには、3つの設備20(設備20A、20B、20C)が設置されている。各設備20には、ロールを稼働させるためのモータ31や冷却水の供給量を調整するためのバルブ32等のような設備20を構成する機器、温度センサ33等のような操業状態を把握するために設備に設置された計測器等が、複数設置されている。ここでは、設備20を構成する機器及び計測器をまとめて「機器30」とも称する。なお、計測器としては、温度センサ33の他、圧力センサ、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、湿度センサ、照度センサ等がある。機器30の動作に関するデータ及び機器30により計測された計測値は、プロセスデータとして、工場10内のすべての設備20の機器30から得られたデータを蓄積する工場データDB(データベース)50に蓄積される。
【0035】
工場データDB50は、直近の所定期間(例えば直近1か月)に機器30から得られたデータを蓄積する。工場データDB50は、機器30毎に、取得時刻と機器30から得られたデータと関連付けて蓄積する。工場データDB50に蓄積されたデータは、情報処理装置100に送信される。
【0036】
情報処理装置100は、図2に示すように、入出力処理部110と、切り出し条件設定部120と、特徴量抽出ロジック設定部130と、データ収集部140と、データ切り出し部150と、特徴量抽出部160と、異常検知部170と、定義情報DB180と、表示処理部190とを備える。
【0037】
(入出力処理部)
入出力処理部110は、情報処理装置100のインタフェース部である。入出力処理部110は、ユーザがユーザ端末300を介して入力した情報を、ネットワーク5を介して受信し、表示処理部190へ出力する。また、入出力処理部110は、情報処理装置100にて処理されたデータ、特徴量等を、ユーザ端末300に出力する。入出力処理部110は、後述する表示処理部190によって処理された情報をユーザ端末300に出力し、ユーザ端末300から入力された情報を表示処理部190へ出力するインタフェース部としても機能する。
【0038】
(切り出し条件設定部)
切り出し条件設定部120は、ユーザ端末300を介してユーザが指定した情報に基づいて、プロセスデータを切り出す切り出し条件を設定する。ここで、プロセスデータは、切り出し条件の設定に用いる条件プロセスデータと、監視対象である監視プロセスデータと、を含む。ユーザは、ユーザ端末300に表示される設定画面から、監視プロセスデータを指定するとともに、1または複数の条件プロセスデータを用いて当該監視プロセスデータの切り出し条件を指定する。なお、監視プロセスデータは、他の監視プロセスデータの条件プロセスデータとなり得る。また、条件プロセスデータも、監視プロセスデータとなり得る。ユーザがユーザ端末300を用いて入力した情報は、表示処理部190を介して切り出し条件設定部120へ出力される。
【0039】
プロセスデータの切り出し条件は、条件プロセスデータの値または条件プロセスデータから導出される値(以下、これらをまとめて「条件設定値」ともいう。)により表される条件プロセスデータのデータ状態に基づき設定される。なお、条件プロセスデータから導出される値は、例えば、条件プロセスデータの値の微分値等である。ユーザは、少なくとも、監視プロセスデータを切り出すときの条件プロセスデータのデータ状態及び抽出形式を指定して、切り出し条件を設定する。
【0040】
データ状態とは、条件プロセスデータの値または条件プロセスデータから導出される値(条件設定値)に応じて定まる状態である。本実施形態では、切り出し条件設定部120は、監視プロセスデータを切り出すときの条件プロセスデータのデータ状態を、条件プロセスデータそれぞれに対して設定する。
【0041】
具体的には、条件プロセスデータのデータ状態には、例えば、条件プロセスデータがオンオフ信号である場合には、オン状態またはオフ状態のいずれかが指定される。このとき、条件プロセスデータの値(例えば、オン状態を「1」、オフ状態を「0」で表すオンオフ信号の値)を条件設定値としてもよい。また、条件プロセスデータが実数信号である場合には、条件設定値が指定の下限値以上である状態、条件設定値が指定の上限値以下である状態、条件設定値が指定の下限値未満である状態、条件設定値が指定の上限値を超える状態、のいずれかが、条件プロセスデータのデータ状態として指定される。
【0042】
抽出形式は、監視プロセスデータを切り出す開始タイミング及び終了タイミングを指定するために設定される。抽出形式では、条件プロセスデータ毎に、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当したときの抽出範囲が指定される。例えば、抽出形式として、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出すること、あるいは、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間を抽出すること、等が指定される。これにより、例えば、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を、監視プロセスデータを切り出す開始タイミングあるいは終了タイミングとして指定することができる。また、例えば、複数の条件プロセスデータの抽出範囲をすべて満たす1つの時点を、監視プロセスデータを切り出す開始タイミングあるいは終了タイミングとして指定することができる。なお、この場合には、少なくとも1つの条件プロセスデータに対して、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出する抽出形式が指定される。
【0043】
さらに、ユーザは、抽出形式として、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間を指定してもよい。抽出形式では、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を含むデータの切り出しを指定できるが、かかる時間の指定により、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点の前後の時点を抽出することが可能となる。
【0044】
切り出し条件設定部120は、ユーザにより指定されたプロセスデータの切り出し条件を、データ切り出し部150へ出力する。
【0045】
(特徴量抽出ロジック設定部)
特徴量抽出ロジック設定部130は、切り出し条件に基づきプロセスデータを切り出した切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する。特徴量抽出ロジックは、切り出したデータから特徴量を算出するための汎用的な計算処理である。特徴量抽出ロジックには、例えば、切り出しデータの変化量を算出する変化量算出ロジック、2つの切り出しデータの偏差を算出する偏差算出ロジック、切り出しデータの代表値を特徴量とする切り出しロジック、2つの切り出しデータがユーザに指定された状態に該当した時間の差を特徴量として算出する時間計測ロジック等がある。これらの特徴量抽出ロジックは、定義情報DB180に予め記録されている。
【0046】
ユーザは、ユーザ端末300を用いて、切り出しデータから特徴量を抽出するために用いる特徴量抽出ロジックを指定する。この際、ユーザは、特徴量抽出ロジックを実行させるために必要な情報を指定してもよい。ユーザがユーザ端末300を用いて入力した情報は、表示処理部190を介して特徴量抽出ロジック設定部130へ出力される。特徴量抽出ロジック設定部130は、監視プロセスデータから切り出した切り出しデータそれぞれに対して、切り出しデータから特徴量を算出するための特徴量抽出ロジックと、特徴量抽出ロジックを実行するためにユーザから指定された情報を、特徴量抽出部160へ出力する。
【0047】
(データ収集部)
データ収集部140は、ネットワーク5を介して接続された各工場10の工場データDB50から、機器30から得られたデータを取得する。データ収集部140は、例えばデータ収集周期毎に工場データDB50へデータの送信を要求し、機器30から得られたデータを取得してもよい。データ収集部140は、取得したデータを、データ切り出し部150へ出力する。
【0048】
(データ切り出し部)
データ切り出し部150は、複数のステージを有するプロセスから取得された1または複数のプロセスデータを、ステージ毎に指定された切り出し条件に基づいて切り出し、切り出しデータを取得する。データ切り出し部150は、切り出し条件設定部120により設定された切り出し条件に基づいて、指定された監視プロセスデータからデータを切り出す。データ切り出し部150は、切り出した切り出しデータを特徴量抽出部160へ出力する。
【0049】
(特徴量抽出部)
特徴量抽出部160は、特徴量抽出ロジック設定部130により設定された特徴量抽出ロジックに基づき、データ切り出し部150から入力された切り出しデータを用いて、特徴量を抽出する。特徴量抽出部160は、抽出した特徴量を、入出力処理部110を介してユーザ端末300へ送信する。これにより、ユーザは、ユーザ端末300を介して監視プロセスデータの特徴量を確認することができる。このとき、特徴量抽出部160は、条件プロセスデータの条件設定値の時系列データも合わせてユーザ端末300へ送信してもよい。また、特徴量抽出部160は、監視プロセスデータの特徴量を、異常検知部170へ出力してもよい。
【0050】
(異常検知部)
異常検知部170は、特徴量抽出部160から入力された特徴量に基づいて、プロセスの異常を検知する。異常検知部170は、例えばプロセスにおいて稼働する設備の監視項目の動向を表す特徴量に基づいて、プロセスの異常を検知し得る。異常検知部170は、例えば、監視プロセスデータの特徴量の時系列データを管理して、特徴量がプロセスの異常を検知するために設定された閾値を超えた場合に、プロセスに異常が発生したと検知するようにしてもよい。また、異常検知部170は、監視プロセスデータの特徴量の時系列データに基づき、特徴量の変化の有無や変化の傾向を長期的に監視して、プロセスの異常を検知してもよい。
【0051】
異常検知部170は、プロセスの異常を検知したとき、入出力処理部110を介して、プロセスに異常が発生したことをユーザ端末300へ送信する。ユーザ端末300は、プロセスに異常が発生したことの通知を受けて例えばアラームを発報し、ユーザにプロセスに異常が発生したことを通知する。
【0052】
また、異常検知部170は、異常検知結果を表示処理部190へ出力してもよい。例えば、異常検知部170は、特徴量の時系列データ(トレンド)において、任意の特徴量が監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、異常状態トレンドと判定された設備の監視項目を、表示処理部190へ出力してもよい。また、異常検知部170は、異常状態トレンドそれぞれについて、監視項目への対処の重要度を判断するための評価指標に基づき対処の優先順位を算出し、異常状態トレンドと判定された設備の監視項目とともに表示処理部190へ出力してもよい。
【0053】
(定義情報データベース)
定義情報DB180は、特徴量抽出ロジックの定義を記憶する記憶部である。定義情報DB180には、指定値抽出ロジック、変化量算出ロジック、偏差算出ロジック、切り出しロジック、時間計測ロジック等の各種ロジックの定義が記憶されている。特徴量抽出部160は、定義情報DB180を参照し、特徴量抽出ロジック設定部130により設定された特徴量抽出ロジックを実行して、監視プロセスデータの切り出しデータから特徴量を抽出する。
【0054】
(表示処理部)
表示処理部190は、ユーザ端末300に表示する情報を処理する機能部である。表示処理部190は、例えば、切り出し条件の設定項目を入力するための条件設定エリアを含む設定画面や、特徴量抽出ロジックの設定項目を入力するための特徴量抽出ロジック設定エリアを含む設定画面を、ユーザ端末300に表示する。なお、条件設定エリアと特徴量抽出ロジック設定エリアとは、同一の設定画面内に表示されてもよく、異なる設定画面に表示されてもよい。表示処理部190は、設定画面に入力された情報を、切り出し条件設定部120や特徴量抽出ロジック設定部130に出力する。
【0055】
また、表示処理部190は、異常検知部170から入力された異常検知結果を一覧表示したり、異常が検知された設備の特徴量の時系列データ(トレンド)を表示したりしてもよい。例えば、表示処理部190は、異常検知部170により異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面を、ユーザ端末300に表示させてもよい。また、表示処理部190は、アラーム一覧画面に表示した設備の監視項目のうち、ユーザにより指定された設備の監視項目のトレンドや、当該監視項目と同一の動作を行う設備のトレンドを、ユーザ端末300に表示させてもよい。さらに、表示処理部190は、異常検知部170により算出された対処の優先順位に基づいて異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を表示したアラーム一覧画面をユーザ端末300に表示させてもよい。
【0056】
なお、情報処理装置100とネットワーク5を介して接続されているユーザ端末300は、情報の入出力を行うための情報処理端末であり、ディスプレイ等の表示部と、キーボードやタッチパネル等の入力部とを備える。ユーザ端末300は、スピーカ等の音声を出力する音声出力部をさらに備えていてもよい。ユーザ端末300は、情報処理装置100により処理された情報をユーザに提示したり、ユーザが入力した指示を情報処理装置100に出力したりする。ユーザは、例えばユーザ端末300により、情報処理装置100にて処理されたデータ、特徴量等の情報を確認することができる。また、ユーザは、ユーザ端末300を用いて、情報処理装置100で実行される処理にて用いられる各種情報を入力することができる。
【0057】
以上、本実施形態に係る情報処理装置100の一構成例について説明した。なお、図2に示した情報処理装置100は、入出力処理部110と、切り出し条件設定部120と、特徴量抽出ロジック設定部130と、データ収集部140と、データ切り出し部150と、特徴量抽出部160と、異常検知部170と、定義情報DB180と、表示処理部190とを備えているが、本発明は係る例に限定されない。情報処理装置100が備える各機能部のうち、1または複数の機能部を、別体の情報処理装置に備えるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施形態に係る情報処理装置100の各機能を実現するためのプログラムを作成し、パーソナルコンピュータ等に実装することも可能である。さらに、かかるプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0059】
[3.情報処理方法]
次に、図3に基づいて、本実施形態に係る情報処理装置100を用いた情報処理方法について説明する。図3は、本実施形態に係る情報処理方法の一例を示すフローチャートである。また、以下では、圧延設備において鋼板を冷却する冷却水の圧力(以下、「冷却水圧力」ともいう。)を、本実施形態に係る情報処理方法を適用して監視する場合の具体例を合わせて説明する。
【0060】
圧延設備において冷却水を噴射するポンプは、非定常運転動作をする設備の1つである。冷却水圧力は、図4に示すように、製造材条件及び冷却水を噴射するポンプのポンプ圧設定値によって様々に変化する。図4は、圧延設備の冷却水圧力と、ポンプの動作状態とを示す説明図である。図4に示すように、ポンプの動作状態(ステージ)としては、冷却水の噴射を停止している「待機中」と、冷却水噴射中の動作状態として製造材条件及びポンプ圧設定値に応じた複数の「噴射中」とがある。冷却水圧力に関係する製造材条件としては、材料幅があり、幅広材と幅狭材とによって設定される冷却水圧力は異なる。また、ポンプ圧は製造材等に応じて設定され、例えば、所定値よりも高いポンプ圧(高ポンプ圧)に設定されたり、所定値よりも低いポンプ圧(低ポンプ圧)に設定されたりする。すなわち、材料幅とポンプ圧設定値との組み合わせによって、複数の「噴射中」の動作状態があることになる。例えば、図4には、「噴射中」の動作状態として、幅広材かつ高ポンプ圧の「噴射中A」、幅狭材かつ高ポンプ圧の「噴射中B」、低ポンプ圧の「噴射中C」の3つの動作状態がある。
【0061】
以下では、このように非定常運転動作をするポンプの冷却水圧力を監視プロセスデータとして、冷却水の噴射中に、鋼板の材料幅がW[mm]以上(幅広材)かつポンプ設定値が最大圧力のα[%]以上(高ポンプ圧)であるとき(すなわち、動作状態が「噴射中A」のとき)の最大値を抽出する場合を考える。
【0062】
(S100:監視プロセスデータの切り出し条件設定)
本実施形態に係る情報処理方法では、図3に示すように、まず、監視プロセスデータの切り出し条件を設定する(S100)。切り出し条件は、ユーザがユーザ端末300を用いて指定した情報に基づき設定される。ユーザは、表示処理部190によってユーザ端末300に表示される設定画面に必要な情報を入力することにより、監視プロセスデータからデータを切り出す切り出し条件に必要な情報を指定する。
【0063】
図5に、1つの監視プロセスデータに対してユーザが設定する切り出し条件の設定項目を示す。図5に示すように、切り出し条件の設定項目として、条件プロセスデータのデータ名、データ状態、抽出形式、タイマー指定、接続条件等がある。このうち、条件プロセスデータのデータ名、データ状態、及び、抽出形式は、必須の設定項目である。
【0064】
条件プロセスデータのデータ名には、切り出し条件の設定に用いるプロセスデータ名が設定される。この際、条件プロセスデータのデータ状態を判定するときの条件設定値(条件プロセスデータの値または条件プロセスデータから導出される値)を設定する。
【0065】
データ状態には、データ切り出しの開始条件または終了条件となる条件プロセスデータの状態が設定される。データ状態には、例えば、条件プロセスデータがオンオフ信号である場合には、オン状態またはオフ状態のいずれかが指定される。また、条件プロセスデータが実数信号である場合には、条件設定値が指定の下限値以上である状態、条件設定値が指定の上限値以下である状態、または、条件設定値が指定の下限値未満である状態、条件設定値が指定の上限値を超える状態、のいずれかがデータ状態として指定される。
【0066】
抽出形式は、監視プロセスデータを切り出す開始タイミング及び終了タイミングを指定するために設定される。抽出形式には、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当したときの抽出範囲が設定される。例えば、抽出形式として、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出すること、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間を抽出すること、等が指定される。
【0067】
例えば、条件プロセスデータがオンオフ信号であり、データ状態としてオン状態が指定されているとする。一例として、オン状態を「1」、オフ状態を「0」で表すオンオフ信号の値を条件設定値とする。この場合に、抽出形式として条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出することが設定されたときには、図6左側に示すように、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点(すなわち、オンオフ信号の値が「1」となった時点)が抽出される。また、抽出形式として条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間を抽出することが設定されたときには、図6中央に示すように、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間(すなわち、オンオフ信号の値が「1」である間)が抽出される。
【0068】
タイマー指定には、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間が設定される。タイマー指定では、例えば、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点からN1秒前、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点からN2秒後(N1、N2は正の値)、等が設定される。例えば、条件プロセスデータがオン状態を「1」、オフ状態を「0」で表すオンオフ信号であり、データ状態としてオン状態が指定されているとする。この場合に、抽出形式として条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点からN1秒後を抽出することが設定されたときには、図6右側に示すように、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点からN1秒後の時点(すなわち、オンオフ信号の値が「1」となった時点からN1秒後の時点)が抽出される。なお、タイマー指定を用いて、図6中央に示した、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間の開始点または終了点を前後にずらすことも可能である。
【0069】
接続条件には、複数の条件プロセスデータを用いて切り出し条件を設定する場合に、各条件プロセスデータについて設定した抽出形式の連結の仕方が設定される。接続条件には、「かつ」(AND接続)、「または」(OR接続)のいずれかが設定される。
【0070】
監視プロセスデータを切り出す開始タイミング及び終了タイミングは、それぞれ1つの時点によって指定される。したがって、開始タイミング及び終了タイミングそれぞれについて、少なくとも1つの条件プロセスデータについてそのデータ状態と抽出形式とが設定されれば、その時点を指定し得る。タイマー指定及び接続条件は、必要に応じて任意に設定すればよい。
【0071】
例えば、図6左側または図6右側に示すような、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を、監視プロセスデータを切り出す開始タイミングあるいは終了タイミングとして指定することができる。
【0072】
また、複数の条件プロセスデータの抽出範囲を満たす1つの時点を、監視プロセスデータを切り出す開始タイミングあるいは終了タイミングとして指定することもできる。各条件プロセスデータに対する抽出形式は、接続条件によって接続される。この場合、開始タイミングあるいは終了タイミングはある1つの時点に示されることから、少なくとも1つの条件プロセスデータに対して、例えば図6左側または右側に示すような、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出する抽出形式が指定される。その他の条件プロセスデータに対しては、例えば図6中央に示すような、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当している間を抽出する抽出形式を指定してもよい。
【0073】
図7に、切り出し条件の設定項目を入力するための設定画面500の一例を示す。図7に示す設定画面500には、切り出し条件の設定項目を入力するための切り出し条件設定エリア510と、特徴量抽出ロジックを指定するための特徴量抽出ロジック設定エリア520とがある。当該設定画面500では、1つの監視プロセスデータに対する切り出し条件設定と、切り出しデータから抽出する特徴量の特徴量抽出ロジックの設定とを行う。
【0074】
切り出し条件設定エリア510は、監視対象である監視プロセスデータを指定する監視プロセスデータ入力エリア511を有する。監視プロセスデータの単位換算係数を入力する単位換算係数入力エリア512を有してもよい。図7に示す例では、監視プロセスデータとして、「冷却水圧力」が指定されている。
【0075】
また、切り出し条件設定エリア510は、データ切り出し条件を設定するためのエリアとして、開始条件設定エリア513と、終了条件設定エリア515とを有する。
【0076】
開始条件設定エリア513は、データ名指定エリア513a、データ状態指定エリア513b、抽出形式指定エリア513c、タイマー指定エリア513d、及び、接続条件指定エリア513eを有する。
【0077】
データ名指定エリア513aには、切り出し条件の開始条件を指定するために用いる条件プロセスデータの条件設定値が入力される。データ状態指定エリア513bには、データ切り出しの開始条件となる条件プロセスデータの状態が入力される。抽出形式指定エリア513cには、指定されたデータ状態に該当したときに条件プロセスデータを抽出する範囲が入力される。タイマー指定エリア513dには、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間が入力される。接続条件指定エリア513eには、複数の条件プロセスデータについて設定した条件の連結の仕方が入力される。
【0078】
ユーザは、少なくとも1つの条件プロセスデータについて、データ名指定エリア513a、データ状態指定エリア513b、抽出形式指定エリア513cに情報を入力し、切り出し条件の開始条件を設定する。図7に示す例では、「在荷信号」が「ON状態」に「該当した時点」、かつ、「仕上目標板幅」が「W[mm]以上」に「該当している間」、かつ、「ポンプ圧設定値」が「α[%]以上」に「該当している間」の条件を満たしたとき、監視プロセスデータである冷却水圧力のデータの切り出しを開始することが指定されている。図7に示す例では、複数の条件プロセスデータによって監視プロセスデータを切り出す開始タイミングを指定していることから、少なくとも1つの条件プロセスデータに対して、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出する抽出形式が指定される。ここでは、「在荷信号」についてON状態に「該当した時点」との抽出形式が指定されている。
【0079】
同様に、終了条件設定エリア515は、データ名指定エリア515a、データ状態指定エリア515b、抽出形式指定エリア515c、及び、タイマー指定エリア515dを有する。
【0080】
データ名指定エリア515aには、切り出し条件の終了条件を指定するために用いる条件プロセスデータの条件設定値が入力される。データ状態指定エリア515bには、データ切り出しの終了条件となる条件プロセスデータの状態が入力される。抽出形式指定エリア515cには、指定されたデータ状態に該当したときに条件プロセスデータを抽出する範囲が入力される。タイマー指定エリア515dには、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を基準として指定する前または後の所定時間が入力される。なお、図7に示す終了条件設定エリア515には、接続条件指定エリアが表示されていないが、複数の条件プロセスデータについて条件を設定する場合には、開始条件設定エリア513と同様に、接続条件指定エリアが表示され、接続条件が入力可能となる。
【0081】
ユーザは、少なくとも1つの条件プロセスデータについて、データ名指定エリア515a、データ状態指定エリア515b、抽出形式指定エリア515cに情報を入力し、切り出し条件の終了条件を設定する。図7に示す例では、「在荷信号」が「OFF状態」に「該当した時点」となったとき、監視プロセスデータである冷却水圧力のデータの切り出しを終了することが指定されている。図7に示す例では、1つの条件プロセスデータによって監視プロセスデータを切り出す開始タイミングを指定していることから、1つの時点を指定するため、条件プロセスデータが指定されたデータ状態に該当した時点を抽出する抽出形式が指定される。ここでは、「在荷信号」についてOFF状態に「該当した時点」との抽出形式が指定されている。
【0082】
このように、ユーザは、ユーザ端末300に表示される設定画面500に必要な情報を入力することにより、監視プロセスデータからデータを切り出す切り出し条件に必要な情報を指定する。
【0083】
図2に示したように、製鉄所等には製造工程単位で複数の工場(例えば工場10X、10Y、10Z)があり、各工場には複数の設備が設置されている。そして、各設備には、設備を構成する機器(例えばモータ31、バルブ32)、操業状態を把握するために設備に設置された計測器(例えば温度センサ33)等の複数の機器が設置されている。設備や機器の動作を監視するためには、それぞれの監視項目について情報を取得するための処理を設定する必要がある。
【0084】
例えば、監視項目について情報を取得するためのプログラムを作成し、実行させれば、情報を自動的に取得することはできる。しかし、上述のように多数の設備や機器の動作を監視する場合には、それぞれの監視項目についてプログラムを作成するのは負荷が高く、設定したプログラムを見直す場合にもプログラム自体を修正して再設定する必要があり、即応性がない。また、設備や機器が多いとトラブルの種別も多いため、適切に情報を取得するためには、監視項目についての情報を取得するための処理(ロジック)を常に見直す必要がある。
【0085】
そこで、情報処理装置100により図7に示したような設定画面500を提供することで、ユーザは、監視項目について情報を取得するために用いる切り出しデータを取得するための切り出し条件を、容易に設定することが可能となる。また、切り出し条件を見直す場合にも、設定画面500の切り出し条件設定エリア510に入力された内容を変更するだけで、切り出し条件を変更することができる。さらに、オペレータが、現場で設備等の監視項目に関連する情報を得ることもある。例えば、オペレータが、経験的に、設備の稼働音が大きかったり異音であったりした場合に設備に異常が発生している可能性があるとの知見を得ている場合には、オペレータは、設定画面500から、異音の発生している設備について、異音の発生要因である振動値や電流値を条件プロセスデータとして切り出し条件を容易に設定することができる。このように、設定画面500を用いれば、監視項目について情報を取得するためのロジックを容易に設定したり変更したりすることが可能となる。
【0086】
ユーザが指定した切り出し条件は、ユーザ端末300からネットワーク5を介して、情報処理装置100へ送信される。情報処理装置100の表示処理部190は、受信した情報を切り出し条件設定部120へ出力する。切り出し条件設定部120は、ユーザが指定した情報に基づいて、プロセスデータを切り出す切り出し条件を設定し、切り出し条件をデータ切り出し部150へ出力する。
【0087】
(S110:特徴量抽出ロジック設定)
次いで、監視プロセスデータの切り出しデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定する(S110)。特徴量抽出ロジックは、定義情報DB180に予め記録されており、ユーザは、切り出しデータから特徴量を抽出するために用いる特徴量抽出ロジックを、ユーザ端末300を用いて指定する。特徴量抽出ロジックには、例えば、変化量算出ロジック、偏差算出ロジック、切り出しロジック、時間計測ロジック等がある。
【0088】
変化量算出ロジックは、監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの変化量を、特徴量として算出するロジックである。例えば、図8左上に示すように、切り出しデータの切り出し開始点Pから切り出し終了点Qまでの切り出しデータの変化量を、特徴量として算出する。
【0089】
偏差算出ロジックは、2つの監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータの偏差、または、1つの監視プロセスデータから切り出した切り出しデータと予め設定された基準データとの偏差を算出し、偏差の代表値または積算値を特徴量として算出するロジックである。例えば、図8左下に示すように、切り出しデータ1と切り出しデータ2との偏差を算出し、データを切り出した時間領域内における偏差の代表値を、特徴量として算出する。
【0090】
切り出しロジックは、監視プロセスデータから切り出した切り出しデータの代表値または積算値を、特徴量として算出するロジックである。例えば、図8右上に示すように、切り出しデータの最大値を、特徴量として算出する。
【0091】
時間計測ロジックは、2つの監視プロセスデータからそれぞれ切り出した2つの切り出しデータがユーザに指定された状態に該当した時間の差を、特徴量として算出するロジックである。例えば、図8右下に示すように、切り出しデータ1がON状態となってから切り出しデータ2がON状態となるまでの時間の差を、特徴量として算出する。
【0092】
監視プロセスデータの切り出しデータから特徴量を算出するための特徴量抽出ロジックは、例えば、図7に示した設定画面500から設定することができる。図7に示す設定画面500の特徴量抽出ロジック設定エリア520には、特徴量抽出ロジックを選択する特徴量抽出ロジック選択エリア521と、抽出する特徴量を指定する特徴量指定エリア523とがある。特徴量抽出ロジック選択エリア521は、例えば選択可能な特徴量抽出ロジックをプルダウン表示して、1つの特徴量抽出ロジックを選択できるようにしてもよい。特徴量指定エリア523には、選択された特徴量抽出ロジックにて抽出可能な特徴量をプルダウン表示して、1つの特徴量を選択できるようにしてもよい。図7に示す例では、特徴量抽出ロジックとして「切り出しロジック」が選択され、切り出しデータから特徴量として「最大値」を抽出することが指定されている。
【0093】
このように、ユーザは、ユーザ端末300に表示される設定画面500に必要な情報を入力することにより、特徴量抽出ロジック及び抽出する特徴量を指定する。ユーザが指定した特徴量抽出ロジックの情報は、ユーザ端末300からネットワーク5を介して、情報処理装置100へ送信される。情報処理装置100の表示処理部190は、受信した情報を特徴量抽出ロジック設定部130へ出力する。特徴量抽出ロジック設定部130は、切り出しデータから特徴量を算出するための特徴量抽出ロジックと、特徴量抽出ロジックを実行するためにユーザから指定された情報を、特徴量抽出部160へ出力する。
【0094】
(S120:プロセスデータの取得)
図3の説明に戻り、監視プロセスデータの切り出し条件及び特徴量抽出ロジックの設定を終えると、データ収集部140は、ネットワーク5を介して接続された各工場10の工場データDB50から、機器30から得られたデータを取得する(S120)。データ収集部140は、取得したデータを、データ切り出し部150へ出力する。
【0095】
(S130:データ切り出し)
データ切り出し部150は、切り出し条件に基づいて監視プロセスデータからデータを切り出し、切り出しデータを取得する(S130)。データ切り出し部150は、ステップS120にて取得したプロセスデータを用いて、ステップS100にて切り出し条件設定部120により設定された切り出し条件に基づいて、指定された監視プロセスデータからデータを切り出す。データ切り出し部150は、切り出し条件によって指定された開始タイミングから終了タイミングまでの、監視プロセスデータを切り出し、切り出しデータとする。データ切り出し部150は、切り出した切り出しデータを特徴量抽出部160へ出力する。
【0096】
(S140:特徴量抽出)
そして、特徴量抽出部160は、ステップS110にて特徴量抽出ロジック設定部130により設定された特徴量抽出ロジックに基づき、ステップS130にて切り出した切り出しデータから特徴量を抽出する(S140)。特徴量抽出部160は、抽出した特徴量を、入出力処理部110を介してユーザ端末300へ送信する。ユーザ端末300は、受信した監視プロセスデータの特徴量をユーザに提示する。このとき、特徴量抽出部160は、条件プロセスデータの条件設定値の時系列データも合わせてユーザ端末300へ送信してもよい。
【0097】
図9に、図4に示した冷却水圧力について、図7に示した設定画面500にて設定された切り出し条件にてデータを切り出した結果と、切り出しデータから特徴量として最大値を抽出した結果とを示す。図9に示すように、「在荷信号」が「ON状態」に「該当した時点」、かつ、「仕上目標板幅」が「W[mm]以上」に「該当している間」、かつ、「ポンプ圧設定値」が「α[%]以上」に「該当している間」の条件を満たしたとき、データの切り出しが開始され、「在荷信号」が「OFF状態」に「該当した時点」となったときに、データの切り出しが終了している。そして、切り出された冷却水圧力の切り出しデータから、「切り出しロジック」により「最大値」が特徴量として抽出される。
【0098】
なお、図9に示した例では、1つの監視プロセスデータから切り出された1つの切り出しデータから特徴量を抽出したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図8に示した偏差計算ロジックや時間計測ロジックを用いて特徴量を抽出する場合のように、複数の切り出しデータから特徴量を抽出してもよい。複数の切り出しデータは、例えば、同一の監視プロセスデータに対して異なる切り出し条件を設定して取得してもよく、異なる監視プロセスデータに対して同一の切り出し条件あるいは異なる切り出し条件を設定して取得してもよい。
【0099】
以上、本実施形態に係る情報処理方法について説明した。本実施形態に係る情報処理方法によれば、ユーザは監視プロセスデータに対して特定のステージのデータを切り出す切り出し条件を設定しさえすれば、監視プロセスデータから監視したい範囲のデータを情報処理装置によって切り出すことができる。また、ユーザは切り出したデータから特徴量を抽出する特徴量抽出ロジックを設定すれば、情報処理装置によって所望の特徴量を抽出することができる。したがって、本実施形態に係る情報処理方法によれば、非定常な動作を連続して行う設備から、所望のデータを容易に取得することができる。
【0100】
さらに、本実施形態に係る情報処理方法では、ステップS140にて抽出した監視プロセスデータの特徴量を異常検知部170へ出力し、特徴量に基づいてプロセスの異常を検知する異常検知処理を行ってもよい。異常検知部170は、例えばプロセスにおいて稼働する設備の監視項目の動向を表す特徴量に基づいて、プロセスの異常を検知し得る。
【0101】
異常検知部170は、例えば、監視プロセスデータの特徴量の時系列データを管理して、特徴量がプロセスの異常を検知するために設定された閾値を超えた場合に、プロセスに異常が発生したと検知するようにしてもよい。また、異常検知部170は、監視プロセスデータの特徴量の時系列データに基づき、特徴量の変化の有無や変化の傾向を長期的に監視して、プロセスの異常を検知してもよい。異常検知部170は、プロセスの異常を検知したとき、入出力処理部110を介して、プロセスに異常が発生したことをユーザ端末300へ送信する。ユーザ端末300は、プロセスに異常が発生したことの通知を受けて例えばアラームを発報し、ユーザにプロセスに異常が発生したことを通知する。これにより、ユーザはプロセスに異常が発生したことを認識することができる。
【0102】
また、異常検知部170は、異常検知結果を表示処理部190へ出力し、表示処理部190により、異常が発生した設備の監視項目の一覧や異常状態トレンドをユーザ端末300に表示させてもよい。
【0103】
例えば、異常検知部170は、特徴量の時系列データ(トレンド)において、任意の特徴量が監視項目の異常発生を判定するための異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定し、当該設備には異常が発生していると判定する。例えば、異常検知部170は、n個分(n≧1)の特徴量のうち少なくとも1つが異常判定閾値を超えているトレンドを異常状態トレンドと判定してもよい。異常検知部170が異常状態トレンドと判定された設備の監視項目を表示処理部190へ出力すると、表示処理部190は、異常状態トレンドと判定された設備の監視項目の一覧を示すアラーム一覧画面をユーザ端末300に表示させる。
【0104】
ユーザ端末300には、例えば、図10左側に示すようなアラーム一覧画面600が表示される。アラーム一覧画面600には、異常検知部170により異常が発生していると判定された設備の監視項目の一覧が表示される。これにより、ユーザは、異常が発生している設備の監視項目を認識することができる。
【0105】
また、異常検知部170は、異常状態トレンドそれぞれについて、監視項目への対処の重要度を判断するための評価指標に基づき対処の優先順位を算出し、異常状態トレンドと判定された設備の監視項目とともに表示処理部190へ出力してもよい。評価指標は、監視項目に対してオペレータがとり得る対処(アクション)の優先順位を決定するために用いられる。評価指標には、例えば、異常状態の発生頻度、異常状態の継続時間、異常状態の再発時間、及び、異常判定閾値に対する特徴量の超え値、等を用い得る。
【0106】
異常状態の発生頻度は、直近の頻度評価期間以内に、特徴量が正常から異常に状態変化した回数を表す。異常状態の発生頻度が高いほど、対処の優先順位は高くなる。異常状態の継続時間は、直近で特徴量が正常から異常に状態変化したときからの、異常状態の経過時間を表す。異常状態の継続時間が長いほど、対処の優先順位は高くなる。異常状態の再発時間は、特徴量が最後に異常から正常に状態変化してから新たに正常から異常に状態変化するまでの時間を表す。異常状態の再発時間が短いほど、対処の優先順位は高くなる。超え値は、少なくとも一つの特徴量の値が異常判定閾値に対してどのくらい超えた値であるかを表し、例えば特徴量を異常判定閾値で割った割合(%)で表される。超え値が大きいほど、対処の優先順位は高くなる。
【0107】
なお、評価指標は、これらの値に限定されるものではない。また、異常状態の発生頻度、異常状態の継続時間、異常状態の再発時間、及び、異常判定閾値に対する複数の特徴量の超え値のうち、2つ以上を用いて、評価指標を設定してもよい。このような評価指標に基づき、異常検知部170は、異常を検知した監視項目に対して、対処の優先順位を算出することができる。
【0108】
そして、表示処理部190は、異常検知部170により算出された優先順位に基づいて、アラーム一覧画面600に表示される設備の監視項目を表示してもよい。例えば、図10に示すアラーム一覧画面600において、優先順位の高い設備の監視項目から、上から順に表示してもよい。この場合、「シリンダA 動作速度」の優先順位が最も高く、「ロールB 冷却水圧力」、「サーボC 電流ノイズ」、・・・の順に優先順位は高いものとなる。これにより、異なる監視項目間での重要度の比較が可能となり、対処の優先順位をつけることができる。その結果、より優先して対処すべき監視項目への保全アクションが可能となる。
【0109】
さらに、アラーム一覧画面600から特徴量の変化の有無や変化の傾向を確認したい監視対象の設備がユーザにより選択されると、表示処理部190は、ユーザ端末300に長期傾向監視画面700を表示してもよい。長期傾向監視画面700には、監視対象の設備の特徴量の時系列データ(トレンド)が表示される。
【0110】
図10の例では、アラーム一覧画面600から「シリンダA 動作速度低下」が選択され、長期傾向監視画面700に、シリンダAの動作速度の特徴量の時系列データ(横軸:時間、縦軸:特徴量)が表示されている。異常が検知された「シリンダA 動作速度低下」の特徴量の時系列データは、異常状態トレンドである。長期傾向監視画面700に表示されたシリンダAの動作速度の特徴量の時系列データから、特徴量が閾値(横軸に平行な直線で示された縦軸位置での特徴量の値)を超えていることが確認できる。
【0111】
また、表示処理部190は、ユーザにより指定された設備の監視項目のトレンドとともに、当該監視項目と同一の動作を行う設備のトレンドを、ユーザ端末300に表示させてもよい。例えば、図10に示すように、表示処理部190は、長期傾向監視画面700には、シリンダA(ユーザにより指定された設備の監視項目)と同様の動作をするシリンダB、シリンダCの動作速度の特徴量の時系列データも表示されている。これにより、異常が検知されたシリンダAと、正常に動作しているシリンダB、シリンダCとの特徴量の変化の傾向を比較することができ、異常原因の推定に役立てることができる。
【0112】
また、本実施形態に係る情報処理方法により抽出された特徴量に基づいて、例えば、品質管理、操業管理、システムリソース管理等を行うことも可能である。
【0113】
例えば、品質管理では、製品の品質の指標としてKPI(Key Performance Indicator)を設定し、KPIが基準値からどの程度乖離しているかを、偏差計算ロジックを用いて抽出される特徴量により表すことができる。かかる特徴量から、製品の品質を評価することができる。
【0114】
また、操業管理では、製品の製造ピッチを、時間計算ロジックを用いて抽出される特徴量により表すことができる。例えば、前材と次材とについて製造ラインにおける在荷信号を2つの切り出しデータとして、時間計算ロジックにより、前材の在荷信号がON状態となってから次材の在荷信号がON状態となるまでの時間を、特徴量として取得する。これにより、製品の製造ピッチの詰まり度合いを評価することができる。
【0115】
システムリソース管理では、システムを構成する端末のCPU負荷、メモリ負荷や、ネットワーク負荷等の異常増加を、変化量計算ロジックを用いて抽出される特徴量により表すことができる。例えば、あるプロセスが起動してから所定時間における負荷変化率を、変化量計算ロジックを用いて、特徴量として取得する。これにより、システムにおける急激な以上増加を検知することが可能となる。
【0116】
[4.ハードウェア構成]
図11に基づいて、本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成について説明する。図11は、本実施形態に係る情報処理装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0117】
情報処理装置900は、プロセッサ(図11ではCPU901)と、ROM903と、RAM905とを含む。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0118】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0119】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス、PCI Express(登録商標)などの外部バスに接続されている。
【0120】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0121】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0122】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0123】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0124】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、eSATA(external Serial Advanced Technology Attachment)、SAS(Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface))ポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。例えば接続ポート917を介して、アラーム情報を通知するための回転灯等のアラーム通知装置を接続してもよい。また、外部機器927として、NAS(Network Attached Storage)を接続し、記憶装置として用いてもよい。
【0125】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。例えば、通信装置919を介して、情報処理装置900を操作するためのコンピュータを接続することもできる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0126】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【0127】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0128】
5 ネットワーク
10(10X、10Y、10Z) 工場
30 機器
50 工場データデータベース(DB)
100、900 情報処理装置
110 入出力処理部
120 切り出し条件設定部
130 特徴量抽出ロジック設定部
140 データ収集部
150 データ切り出し部
160 特徴量抽出部
170 異常検知部
180 定義情報DB
190 表示処理部
300 ユーザ端末
500 設定画面
510 条件設定エリア
511 監視プロセスデータ入力エリア
512 単位換算係数入力エリア
513 開始条件設定エリア
515 終了条件設定エリア
520 特徴量抽出ロジック設定エリア
521 特徴量抽出ロジック選択エリア
523 特徴量指定エリア
600 アラーム一覧画面
700 長期傾向監視画面
901 CPU
903 ROM
905 RAM
907 バス
909 入力I/F
911 出力I/F
913 ストレージ装置
915 ドライブ
917 接続ポート
919 通信装置
921 入力装置
923 出力装置
925 リムーバブル記録媒体
927 外部機器
929 通信網
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11